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担当委員外委員(
木村禧八郎君) 御承知のように、明治百年につきましては、いろいろな意見や立場が
国民の中にあるわけですね。たとえば右翼の側からは、この維新百年祭に結集する動きがあると伝えられております。また
政府は、明治から百年間のわが国の発展の歩みは世界史上まれに見るものである、そこで
総理大臣を委員長とする官民合同の
準備会を発足させて、盛大にこの記念行事を行なおうとしているわけです。これは御承知のとおりですね。また一方、明治維新後の日本は、多くの人々に悲惨な生活をしいたり、あるいは戦争と侵略の百年史であったこと等を考え合わせなければならないと思うのです。そういう事実のあったことはもうおおうことができないのですね。ですから、戦後の日本の文化はこうした戦争と侵略の強い反省の上に発展してきたとも言えるわけですね。この国立
国会図書館法の前文に、「真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法に誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、」この国立
国会図書館を設立するのだ、こういうふうに前文に書かれているわけですね、図書館法の前文に。ですから、国立
国会図書館は厳に中立性を守るべき文化
機関であるという
性格を持っているわけです。したがって、ある一方の立場に偏するようになると、これは重大だと思うのです。だから、明治期の
資料の整備と目録作成は、これは国立
国会図書館にとってきわめて重要な
仕事で、十分な体制を確立して完成していただきたい。そのこと自体にわれわれは異議はないわけですが、しかしそれはこの明治百年の記念事業に安易に便乗してやるのではいけないのであって、その高い文化的な意義にかんがみて、地道にかつ長期的
構想で行なうべきではないか、十分に練ってですね。そうしませんと、この問題は非常にデリケートな
性格を一つ持っているわけですから、十分想を練り、地道にひとつ取り組んでいただきたい。明治以前には岩波に非常にいい文献ものがあるのだそうですね。ですから、ああいうようなものを明治以降についてつくってもらいたい、できれば。これは
予算も十分なければならぬと思いますけれ
ども、そういうものを期待しているわけです。ですから、何かこの国立
国会図書館の二十周年の記念ということももちろんあるわけですからね。そういう
意味で記念したいというお気持ちもよくわかります。しかし、あまりそれにとらわれないで、それは加味してはいけないということはわれわれはもちろん言うわけじゃないのですけれ
ども、それにとらわれちゃって、何でも二十周年記念のあれに合わせるようにやると、十分な、岩波の明治以前の目録のようななかなか質の高いものができにくいのじゃないかと思うのです。その点じっくりかまえる、取り組むという姿勢が必要じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。