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1966-03-29 第51回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十九日(火曜日)    午前十時二十七分開会     ————————————— 昭和四十一年三月二十八日予算委員長におい て、左のとおり本分科担当委員を指名した。                 青柳 秀夫君                 石原幹市郎君                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 宮崎 正雄君                 和田 鶴一君                 稲葉 誠一君                 亀田 得治君                 田中寿美子君                 鈴木 一弘君     —————————————    委員異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      亀田 得治君     山本伊三郎君  三月二十九日     辞任         補欠選任      和田 鶴一君     松野 孝一君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         田中寿美子君     副主査         宮崎 正雄君     委 員                 青柳 秀夫君                 石原幹市郎君                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 山本伊三郎君                 鈴木 一弘君    国務大臣        国 務 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣参事官兼内        閣総理大臣官房        会計課長     高橋 弘篤君        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       高柳 忠夫君        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        総理府総務副長        官        古屋  亨君        内閣総理大臣官        房広報室長    三井 芳文君        内閣総理大臣官        房臨時在外財産        問題調査室長   栗山 廉平君        内閣総理大臣官        房臨時農地被買        収者給付金業務        室長       八塚 陽介君        総理府賞勲局長  岩倉 規夫君        総理府人事局長  増子 正宏君        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        中央青少年問題        協議会事務局長  赤石 清悦君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        公正取引委員会        事務局長     竹中喜満太君        警察庁長官    新井  裕君        警察庁長官官房        長        浜中 英二君        警察庁長官官房        会計課長     土田 国保君        警察庁刑事局長  日原 正雄君        警察庁警備局長  高橋 幹夫君        行政管理庁長官        官房会計課長   北山 恭治君        行政管理庁行政        管理局長     井原 敏之君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君    説明員        警察庁警備局警        備課長      後藤 信義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者青柳秀夫主査席に着く〕
  2. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 御異議ないと認めます。  それでは、主査田中寿美子君、副主査宮崎正雄君を指名いたします。(拍手)     —————————————   〔田中寿美子主査席に着く〕
  4. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) では、ただいま皆さまの御推選によりまして、私が主査をつとめることとなりました。御協力をいただきまして、本分科会の運営を行なうことにいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。     —————————————
  5. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 分科担当委員異動について報告いたします。  昨二十八日、亀田得治君が委員辞任され、その補欠として山本伊三郎君が選任されました。また、本日、和田鶴一君が委員辞任され、その補欠として松野孝一君が選任されました。  ちょっと速記をとめていただきたいと思います。   〔速記中止
  6. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) それでは速記を起こしていただきます。     —————————————
  7. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 本分科会は、昭和四十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣及び総理府のうち、防衛庁及び経済企画庁、科学技術庁を除く部分、法務省及び他分科会所管外事項を審査することになっております。  まず、四十一年度総予算中、内閣及び総理府所管を便宜一括して議題といたします。  なお、慣例では、政府側からの説明を求める順序でありますが、説明はこれを省略して、お手元に配付してある資料をごらん願うことといたしまして、直ちに質疑に入り、その説明資料は本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは直ちに質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 総理府の中で沖縄関連することをお尋ねしたいと思いますが、いろいろありますけれども、まず、基本的なことでお尋ねしたいのは、沖縄県というのが現在あるのかないのかということになるのですけれどもへん質問で恐縮なんですけれども沖縄県というのはどういうことになっているのですか。
  10. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のように、本土におきましては、戦後、新憲法に基づく地方自治法によりまして、都道府県市町村が置かれておりますが、この法律は沖縄には適用がないということになっておるのであります。したがいまして、戦前の沖縄県というのは、これは現在のように、沖縄施政平和条約第三条に基づきまして米国にあるというたてまえになっておりますし、その施政権に基づいて大統領の行政命令基本法として沖縄施政が行なわれておりますので、旧沖縄県は事実上存在しないというぐあいにどもは考えておるのであります。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、どうもへん質問で恐縮なんですけれども沖縄県というのは事実上存在しないけれども、潜在的にはあるというのですか。
  12. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、むしろ潜在的に沖縄県があるというよりか、日本沖縄が復帰しましたら、県の地位を回復するというぐあいに御理解いただいたほうがいいと思います。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、沖縄というのと琉球というのとはどういう関係になっているか、琉球というのは一体何なんですか。
  14. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは現在、米国民政府施政下におけるいろいろの諸立法は、全部英語琉球ということばを使っておりますが、たとえば琉球政府とか、琉球諸島とか、こういうぐあいに申しておりますが、本土側からすれば、沖縄ということばをもって呼称しておるのでありまして、二十七度以南の沖縄木島、宮古、八重山、その付属諸島を含めまして私ども沖縄と呼んでおるのでありますが、それに対してアメリカ側のほうでは、英語による琉球諸島、こういうことに呼称しておるのであります。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 元来、琉球というのはどういう意味なんですか。
  16. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) どうも先生のおっしゃることが私ははっきりわかりませんけれども呼称でございまして、昔、琉球王朝というのがあったのでありますが、そういう歴史的な琉球ということばはあるわけでございます。そのことばがいかなる語源によって出てきたかということは、私は不敏にして承知していません。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくの質問というのは、別に意識してわかりにくいようなことを言って聞いているわけじゃないのですけれども、ぼくは自分でわからないものですから聞いているわけで、琉球というのは地名なんですか、琉球列島というものがあるのですか、その地名を言うわけなんですか。
  18. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 琉球諸島と、こういうのはあります。したがいまして、そういう私ども琉球ということばは、一応地名、地理的な呼称と考えておるのであります。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ琉球ということの言語学的な意味だとか、そういうことを聞くわけではありませんけれども、そうすると、沖縄にいる日本人沖縄から出てくるときにはあれですか、日本人というパスポートといいますか、出国許可証というんですか、そういう形で出てくるんですか。あるいはそうでなくて琉球人という形で出てくるのだという説もあるんですがね。
  20. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄から本土へこられます場合には、これは日本人でございますから、国籍を特に明示はしないのであります。沖縄から外国へ、日本以外の外国へ行かれる場合には、これは琉球アンということば国籍欄に書くわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから琉球アンという人種はあるんですか。
  22. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは国籍はもう当然日本国籍を持っているのでありまして、聞くところによりますと、これはたとえばアメリカ人のうちにテキサス人がいるとか、そういう意味の本籍が、籍が琉球にあるという意味呼称であると言われておるやに聞いておるのであります。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 聞くところというのはどういう意味なんですか。
  24. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 私が直接民政府のほうから聞いたわけではございませんので、人づてに聞いたことばがそういう解釈のようでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何かくだらない——というのは取り消しますけれども、あまり本質的なものでないようなことをお聞きしているような印象を与えるかもしれませんけれども、そうではない、こう思うんですが、沖縄にいる人は日本人なんでしょう、日本人日本を経由して外国へ出るときに、なぜアメリカではそれを日本人として国籍欄に記載することを拒否しているわけですか。事実上拒否しているわけですね、なぜなんですか、それは。
  26. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この沖縄先生も御案内のとおりでございますが、アメリカ施政権がございますので、たとえば沖縄の人が諸外国に行った場合のいろいろ外交的な保護権の問題に関連があるわけでございまして、その外交保護権の行使はやはり第一次的に施政権を持っておるアメリカが行使するという、そういうたてまえになっております。もちろん、同時に日本外交保護権も働くわけでございますが、そういう意味から民政府のほうとしては、高等弁務官のほうとしては琉球アンということでこの本土にいる日本人と区別をしておるというぐあいに聞いておるのであります。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本にくる場合にはこれはどういうふうに考えているのですか。
  28. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは先ほど出しましたように特に国籍は書かないのであります。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの問題について琉球アンと書くのではなくて、それを日本人と書く、日本を経由して外国へ行く場合ですね、こういう場合でも日本人と書くようにということを交渉したことはあるんですか。
  30. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは従来からも継続的に折衝をいたしてまいっておるのであります。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本側でそれを琉球人と書かないようにという主張をする根拠はどこにあるのですか。
  32. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これはいま申し上げました意味で、外交保護権の問題とか、その他理論的な面ではいろいろな問題がありましょうけれども、やはり本土日本人と同じような日本人なんだ。したがって、日本の民族、国民感情と申しますか、そういう立場からも日本人として外国に行かしてもらいたい、それからまた琉球アンということばを使っても、なかなか琉球アンとは一体何だというような疑問を持っている国がないとはいえない。そういうことのためにいろいろトラブルを起こしても困る、だから、やはり日本人として国籍欄に正規の国籍を示すようにしてもらいたい、こういう趣旨交渉しておるのであります。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカ施政権があるのは沖縄に対してある。だから沖縄にいる間には沖縄住民に対する施政権というものは及ぶけれども、それが一たん日本へ来て、その人が外国へ行くということになれば、アメリカ施政権とは切り離されるのじゃないですか。アメリカ施政権というのは沖縄に、属地的といいますか、そこに及ぶものであって、沖縄住民がほかへ行けば、日本にくればもちろん切れるけれども日本を経由して外国へ行けば、これはアメリカ施政権というものは切れてしまうのじゃないですか。そうなるのじゃないですか。
  34. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは包括的になかなか議論のできない問題ではないかと思うのでありまして、属人的なもの属地的なものとすっかり割り切るわけにもいかぬ場合があると思います。したがいまして、先生のおっしゃるような趣旨に解釈できるような問題と、やはり外国へいっても当該施政権者が行使する余地の分野とあると思うのでありますが、こまかくは私どもいまここで申し上げるほど明確につかんでいないのであります。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安井総務長官がほかへというようなことがあるようですから質問いたしますけれども、いま言った外交保護権の問題なり、いま私が質問した点は、ぼくはなかなかむずかしいというか、確かに議論はあるところだと思いますけれども、もっと日本側主張を明らかにしていい点だ、こう思いますが、そこで外交保護権関連をいたしまして、これはいつでしたか、日本人沖縄施政権を受けておる人ですが、この人が船に乗って行ってインドネシアですか、砲撃か何か受けて一人が死亡して数人の方が負傷をされたという事件が前にあるわけですね。この事件と、その後に何か領海侵犯で拿捕された、三日後に釈放された事件があるようですが、前の事件の概要についてひとつ御説明願いたいと思いますが。
  36. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ちょっと具体的に特連局長から。
  37. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 昭和三十七年に沖縄漁船が、百三十トンぐらいと記憶しておりますが、乗員は二十人でございます。それがセレベス近海におきましてインドネシア空軍機から銃撃を受けて、そのために一人が死亡し、一人が重傷し、二人が軽傷を負った、そういう事件があったのであります。その後、その事件が発生しますと同時に、民政府米国大使館を通じまして、再三にわたりましてこの補償要求をいたしたのでありますが、当初は、その補償額は四万六千五百八十九ドルでございますが、それに対して当初はインドネシアのほうで支払うという意思を示したのでありますが、その後、昭和三十九年に至って補償額をもう一度検討してもらいたいという要請がありまして、四万四百十六ドルという請求額に改めて折衝米民政府に依頼したのであります。ところがこの米民政府のほうから再三にわたってこの補償方要請現地大使館を通じて行なわれたのでありますが、現在に至るまでも、まだ補償実現を見ていないのであります。補償実現を見ていない理由として、インドネシアの政情不安のため、政情が安定していない等の理由もあるというような釈明が行なわれておるのでありますが、そこで、昭和四十一年度、一九六七会計年度予算編成を現在琉球政府で行なっておりますが、これに対しまして、補償のめどが立ちませんので、一部その補償について予算化琉球政府側で解決する、さしあたり解決しておくという措置がとられつつあるように聞いておるのであります。その次のインドネシア海域におきまして拿捕事件が起きましたのは、この四十一年の二月十九日、第八恵陽丸という船がインドネシア海域を、領海内を航行中であるという領海侵犯の疑いでインドネシア警察パトロールボートに拿捕されてメナドに連れて行かれまして、そして所要の取り調べを受けてまいったのでありますが、最近の情報によりますと、二十四日に無事釈放されまして、罰金として魚二トン相当額を支払って沖縄に向かったということになっておるのであります。本件の早期釈放方につきましては、もちろん米国側においてもいろいろ折衝をされましたが、日本側としましても、日本現地大使館を通じまして折衝を続けてまいったものであります。以上が、大体の経過でございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その前の事件で一人がなくなられ、一人が重傷、二人が軽傷と、そのようになった理由と言いますか、状況というか、それはどういうところに原因があるわけですか。
  39. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この前の事件につきましては、私も当時の国会速記録等を読みまして、政府側説明を勉強したところ、領海侵犯という問題もある反面、やはり国旗を掲げておる旗が鮮明でなかった、どこの船かわからなかったというような理由もあげられておるように承知をいたしております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、国旗の問題になるわけですけれども、そうすると、沖縄にある沖縄人の船というのにあれですか、日本国旗を掲げるということは、これはアメリカが認めないわけですか。
  41. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄におきましては、船舶規則という高等弁務官布令が出ておりまして、それによりますと、沖縄に籍の置かれてある沖縄船籍を持っておる船は、デルタ旗国際信号旗デルタ旗の両端から等辺三角形で切り取った、いわゆるデルタ旗特殊旗を掲揚しなければならないということになっておりまして、その規定に従ってデルタ旗を掲揚しておる次第でございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのデルタ旗というのはあれですか、どういう場合、国際法上掲げるのが慣例になっているのですか。
  43. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の船が掲げておるのは、いま申しましたようにデルタ旗特殊旗を掲げておるのでございますが、そのデルタ旗そのものは、船舶が故障したときに危険を知らせる意味で近寄るなという趣旨の国際的な信号旗になっておるようでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうして問題は、その日本国旗を掲げるようにという要求というものを、日本では沖縄アメリカ政府に対して、民政府に対して従来どの程度やってきたわけですか。
  45. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは佐藤総理ジョンソン会談のために渡米されました以前からも行なわれておりますが、特にその際にも、この事前の資料でもってアメリカ側折衝をしておりますし、その後におきましても外務省を通じましていろいろ折衝を行なってきておるのであります。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安井長官にお尋ねするわけですが、いま言った前の件ですね。これに対して今後日本政府としてはどういうような交渉をして、この損害の補償を十分にするのか。この点についてはどういうふうにお考えになっているわけですか。
  47. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いま局長から御答弁いたしましたように、まだ未解決であることははなはだ遺憾でございます。今後もこれはインドネシア側に対して十分その結論を得るように、これからも努力を続けていきたいと思っております。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは抽象論であって、具体的にどうするんですか。こういう場合、日本としてはどういうことができるのか、この点はどうなんですか。インドネシア側交渉すると言ったって、日本が直接交渉をするのですか。あるいは第一次的にはアメリカがやるのだ、第二次的には日本がやるのだとか、そこら辺のところは具体的にどういうふうにしておるわけですか。
  49. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これはやはりいま外交保護権琉球人についてはアメリカ側が持っておるわけでございます。アメリカを通しての請求が第一義的に行なわれる。しかし、同じ日本人であることは間違いございません。そういう意味から、日本側としては、日本人立場でこれをやはり促進するように今後も努力していきます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、具体的に促進するというのはどういうことなのかと、こういうわけです。間接的なことしかできないわけですか、直接やることもできるのでしょう。
  51. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは技術的には外務省分野になろうかと思いますが、アメリカから申し入れをしておるという事実に基づいて、日本側としても、日本人である琉球住民に対する補償を、こちらの大使館を通じてまたインドネシア政府請求をしていく、その基礎になるアメリカ側交渉を第一義的にして、その範囲内でこちらでやっていくという形になろうかと思います。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 はっきりしないんですが、従来、日本の、これはまああなたのほうでないから、外務省かもしれませんが、インドネシアのほうへ直接交渉したことはあるんですか。
  53. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これはやはり第一義的にはアメリカ側インドネシア交渉をすることになっております。日本としては正式な外交ルートを通じての折衝というものはやっておりません。非公式にそういう問題についての善処を促すという程度のことしかやっておらぬわけでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、アメリカインドネシア交渉しているという内容は一々こちらのほうに報告されるわけですか、あるいは報告されないけれども、ぼくらが聞きに行って教えてもらえるのですか。
  55. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 義務的に報告義務を負っているという形ではなくて、事実上われわれは認知している、こういう形でございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本政府としては公式にインドネシア交渉はこれはできないのですか、あるいはできるのですか。
  57. 安井謙

    国務大臣安井謙君) この点は直接外務省外交事項でございますので、外務省にいままで預けたような形に事実上なっております。そこで、いまのお問いのような問題でありますが、私ども沖縄担当としまして、今後もう少し具体的な方法について外務省とよく相談をした上で御答弁したいと思います。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、外務省はどこがやっているのですか。
  59. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 北米局でございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よくわからないのは、セレベス近海インドネシア空軍が何で沖縄漁船砲撃したんでしょうね、間違えたって、何を間違えたのか、かりに領海侵犯があったって攻撃するのはおかしいですね、ここのところは事実関係はどうなんですか。
  61. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 私どももいま事実関係について十分に事実は存じませんが、だいぶ前のことでございますが、デルタ旗特別旗種というのですか、この旗自体がかなり国際的に通知は十分してあるという話はございまするが、徹底していない、あるいは故障の旗じるしというふうに理解せられながらも、自由に運航しておったというような事情から誤認をされたものじゃないかと推測をしております。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 誤認されたのはされたとして、それが砲撃を受けるというのはちょっと理解できないわけですよ。どういうわけで、どういう理由から砲撃を受けるようになったんでしょうか。
  63. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 事情は向こう側の行為でございますのではっきりいたしませんが、その旗自身が、あるいは舵機故障といったようなことで運航が不自由の船のはずである、にもかかわらず、何かの合図なり警告をしたら、これは普通の船並みに走っておったとか、逃げておったとかいう状況で、その事情を誤認をしたんじゃないかというふうな推測はございますが、これはどうも向こう側がやったことでございますのではっきりしませんが、局長から補足的に状況説明をさせます。
  64. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 当時のインドネシア海軍省の本件に関しての発表によりますと、同船が領海侵犯であり、適切な国籍表示をしなかったため銃撃をした。そういう発表が当時あったように承知をしております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 領海侵犯国籍がはっきりしないからといって銃撃していいのですか、そんな法律がどこにあるのですか、どこにあるのか、そういうのがわからなければ、日本人の生命、身体の保護というものは日本としても十分できないじゃないですか、そんなばかなことはないでしょう、ぼくが言うだけでなくしておかしいでしょう、本質的に。インドネシアとけんかするつもりはないから、あまり詳しくあれしてかえって逆な効果を招いてもいけないから、ぼくはある程度の限度であれしておきます。もっと事実関係を調べてくださいませんかね。これ、調べられないですか、その船が向こうに対して何か敵性行為というか、敵対行為でもやったのか、何かやったのならわかりますが、全く理由がよくわからないですね。それもちょっとぼくは納得いかないですね。もっと事実関係を明らかにしてくれませんか。
  66. 安井謙

    国務大臣安井謙君) おっしゃるとおり、これはいわば私どもは穏当を欠いた行為だと思っております。ただ、向こう側が一方的にやった行為でございますし、直接、外交ルートを通じて正式に折衝という段階でないもので、いま御指摘のように非常に行き届かない点はあったと思います。今後ひとつ外務省とも十分相談をいたしまして、できるだけ早期にひとつさらに事態の解明、その後の処置等についても検討いたしてみたいと思います。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは外務省北米局長に来てもらうのが一番いいと思うのですが、そうすると、四万六千五百八十九ドルを支払うという意思をインドネシア政府民政府に対してしたのか、どういう形でしたのですか。
  68. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 昭和三十七年十月に高等弁務官から行政主席あてに書簡が出されまして、インドネシア政府は賠償請求を認めて支払う旨の回答があったと、こういう通知が琉球政府にあったわけでございます。先ほど申しましたように、その後要請を続けましたところ、その賠償額をもう一度再検討してもらいたいということがあって、さらに検討して、賠償額を下げて四万四百十六ドルに直して請求して、その後折衝を継続しておりますけれども、現在に至るもまだ補償の実施は行なわれていない、こういうことでございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の聞いたのは、そういうように支払うという意思表示が文書で回答というか、文書であったようですが、そういう場合には、日本側アメリカのほうから、こういう回答があったということの連絡でもあるのですか、全然ないわけですか、これは。
  70. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いま総務長官がおっしゃいましたように、義務的に米国政府日本政府に通知しなきゃいかぬということにはならないと思いますが、日本政府が照会したところ、そういう関係が明らかになった、こういうことでございます。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、いまの沖縄漁船なり船舶に日の丸を掲げるということですね。日本国旗を掲げるということについて、これは佐藤・ジョンソン会談、その後でもいろいろ交渉しているという話ですが、具体的にアメリカ側としては、それを何だというのですか、拒否しているのですか。
  72. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは御案内のように、法律的なこの問題として取り上げますと、非常に複雑な問題になるわけでございまして、まあ日本船舶法自体が、日本国旗を掲げる場合には、日本の一定の船舶行政権が及ぶことを前提にして、そういう日本籍の船に日本国旗を掲げるという規定になっておるのであります。そういう意味からいっても現行の船舶法ではなかなか困難がある。それからまた沖縄側においては、先ほど申しましたように、布令が出ていてデルタ旗を掲げるということになっている。もちろんアメリカの領土でもございませんし、ただ施政権があるだけでございますから、アメリカ国旗を掲げるわけにはいかない。これはまたさらに日本も参加しておりませんし、私も専門ではございませんが、公海に関する条約というものがございまして、その公海に関する条約には、その船が掲げる旗、その旗の属する国との間には真正な関係がなきゃいかぬ。たとえば行政上、社会上、技術上、そういう面で真実の関係がなきゃいかぬということを規定しておるのでございまして、これは当然、旗国主義と申しますか、その旗の属する国の船舶に行政権が及んでおることをいったものでございます。そこで、そういう関係がございまして、法理論的に申しましたら、沖縄の船に日の丸を掲げることはそう簡単な問題ではないということが御了解いただけると思うのでございます。それを乗り越えまして、しかし、沖縄には日本の潜在主権があり、しかも、沖縄の人は日本人である、日本国旗も自由に掲げられるじゃないか、公共施設は一定の制限のもとに掲げられるじゃないか、だから、そういういま御指摘にありましたように、船舶の被害等もあるので、沖縄住民の不安を除き、日本国民感情をいれて、何らかの形で日本国旗を掲揚するようにできないかということをアメリカ側折衝しているのでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その民政府の布令とか、布告というのはどういう性質のものなんですか、それでどの程度あるのですか。
  74. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 民政府の布令、布告は実質的には立法と異ならない、沖縄における法律と異ならない性格を持っているのでありまして、聞くところによりますと、ワトソン高等弁務官が着任されたときに、たしか約百四十七、八の布告、布令がありましたが、その後、布告、布令をできるだけ廃止したいという趣旨から整理されまして、現在九十七件の布告、布令があるように聞いております。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 布令、布告というものの関係、布令と布告とどういうふうに違うのか、ちょっと説明いただきたいと思いますが、それと、沖縄にはやはりあれですか、沖縄立法院でつくった法律というのがあるのですか、それとの関係はどういうふうになるのですか。
  76. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のように、沖縄にはいろいろな法のグループがあると申しますか、布告、布令、弁務官の出される布令、布告の一群の法令があり、それから立法院で立法される法律があり、それから終戦前の日本の法令がそのまま生きている分野があるのでございまして、この三つのグループに分かれているわけでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから布令と布告とはどういうふうに違うのですか。
  78. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 布令は、規定によりますと、全琉球人もしくは一部琉球人に効力を有する立法的性格をおびた規定からなっておる。だからこれは全く立法、法律そのものであります。それから布告でございますが、これは占領政策に最も重要なるものについて発布する。それから注釈としては、大体、占領政策——これは昔の規定でございますので、占領政策の最も重要なものに関して発布するのが布告であるということになっておりますが、この基本的な、米民政府の統治の基本的なものにつきまして布告が発せられております。たとえば琉球民裁判所の制度、琉球民裁判所制、それから琉球政府の設立、こういうような沖縄統治の基本的なものについて発せられるものでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、布令、布告というもののおもなものはどんなものがあるのですか、これはいまでなくてもいいですから、たいへんですから、全部でなくていいですから、資料として出していただきたいと思うのですが。  なぜそういうことを言うかというと、立法院というものがあっても、現実にその作用というものが布令なり、布告との関係でどういうふうに現実的に制限されておるかということがはっきりしないというと、問題の自治権の拡大の問題にも関連してくると思うのですから、それはお願いをするわけですが、そうすると、何か日本政府としては、布令、布告をできるだけ廃止をしてほしいということの要求——要求ということはがいいかどうかは別として、そういうふうな希望というか、何というか、そういうようなものをアメリカ側に申し入れたことはあるわけですか。
  80. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは先ほどもちょっと局長が答弁したと思いますが、従来からそれは日本政府を通じアメリカ政府にもしばしば申し入れをしております。せんだっての佐藤・ジョンソン会談の際にもこれは強く申し入れをして、自来それぞれ主張を続けてきておるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは布令というものを一般的に廃止をしてくれという意味なんですか、あるいは特定の布令というものを、これは沖縄の自治権なり、あるいは人権を侵害するから廃止をしてくれと、こういうふうな意味なのですか、そこら辺はどういうふうになっておるのですか。
  82. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これはやはりアメリカ施政権を持っております関係から、全面的にこれは廃止してほしいということは現在の段階でも言えない、したがいまして、でき得る限り沖縄住民琉球政府の自主性を尊重し得るような状況に置くために、そういったものを逐次廃止してほしい、こういうような要求でございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、現実に日本側が廃止してほしいと、沖縄の自治権の問題なり、あるいは何なりを制限するというか、こういうふうな形で廃止をしてほしいというふうに要請をしたものは一体何と何があるわけですか。
  84. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、政府のほうから向こうのほうへ要請しましたのは、基本的には軍政と申しますか、基地と申しますか、米軍事基地の維持と申しますか、直接にそういう関係のものを除いた一般民生に関するものについては、できるだけ立法院の法令に移してもらいたいという趣旨折衝をいたしておるのでありまして、手元に当時出しましたこまかい資料がございませんが、たとえば、当時出しましたのは出版許可制が布令で出ておりましたが、そういうものについて要請しました。これは出版許可制が廃止になりましたが、現在はそういうものがございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 調べていただいてけっこうですが、現実に廃止せられるべきもの、廃止をしてほしいという意味での布令を日本側としては要望しているわけですが、それがどういうふうなものなのかということを、これは時間がありますから、いまの間に調べていただき、質問を続けておきますけれども、お答えをお願いしたい、こういうふうに考えます。  それは廃止されたものはもちろん明らかにしなければなりませんし、いまなお残っておるおもなものですね、いまなお残っているおもなものが結局沖縄の自治権といいまするか、あるいは人権というか、そういうふうなものに対してどういう影響があるかということは一つのポイントだと、こういうふうに考えるわけですから、これを明らかにしていただきたいと、こういうふうに考えるわけです。そして、アメリカのほうとしては、そういう布令を廃止するということについてはどういう見解というか、どういう返答になっておるわけなんですか。
  86. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 私ども聞くところによりますと、この民政府の側におかれましても、この布告、布令の整理につきましては審議会か委員会かをおつくりになって検討されておりまして、一つのグループとしては基地の維持のためにどうしても最小限必要、残さなければいかぬという布告、布令の分野がある、それからその次には無条件に民立法に移してよろしいという布告、布令の分野もある。その中間にいろいろな段階の、どっちにも解釈できるような一つのグループがあるのじゃないか。そういうグループに分けて民政府のほうで検討をされておるように聞いております。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのお話を聞いておりますと、聞くところによりますとか、それからというふうに、何とか聞いておりますとかという、いわゆる間接話法というのか、そういうのが非常に多いのですが、どういうわけなんですか、それは。
  88. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 私のほうに直接、民政府ではこういうものについてはこういうことをするというような、沖縄施政について直接的に報告されたことはないのでありまして、そういう具体的な問題につきまして。したがいまして、間接的にその実情を南方連絡事務所等を通じまして調べたものでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、いまの問題はいまの問題としてあれしておきますが、前のインドネシアとの関係については、これは直接間接のいろいろな方法、ルートを通じて積極的にこれは解決をされるように、あるいは外務大臣に本来聞くのが筋かもわかりませんけれども、これは沖縄担当の安井総務長官としても、これは解決をしたいというふうなことをさらに明らかにしていただきたいと、こういうふうに思います。その点いかがですか。
  90. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 最初の漁船の問題につきましては、先ほどお答えしましたように、今後も外務省と十分折衝いたしまして、その促進をいたしたいと思っております。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あとのほうは、これは沖縄漁船が三日程度抑留された、罰金を払ったというのですけれども、そのほかに日本船舶も一隻つかまったのですか、これは。
  92. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の船がたまたまメナドに回航されましたときに、ちょうどメナドには日本船舶が一隻、日本漁船がつかまっていたというところから、初めて日本船舶がつかまったことがわかったのでありますが、これは沖縄船舶が釈放になると同時に日本船舶も釈放されたと聞いております。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはことしのできごとですね。これはやはり領海の取り方が違うところに問題が起きてきておるわけですか。これはここでの問題じゃありませんから、これ以上はお尋ねいたしません。領海の規制のしかたが違うところに一つの問題があるように考えられますね。  それで、第二の沖縄関連をする問題に移りますが、沖縄の経済の状態はいまどういうような形になっておるわけですか。これはちょっと大ざっぱな質問で恐縮ですけれども沖縄の経済状態、貿易状態、そういうようなものについて概略を御説明を願いたいと思います。
  94. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは非常に広範囲の御質問だと思うのですが、御承知のように、沖縄琉球政府自身がこの住民の税金でまかなう収入、アメリカ及び日本側が経済援助として出す金、これを合わせまして琉球政府としては行政をやっておるわけであります。それについて、毎年、日米間でこの援助の額については取りきめをやり、それぞれその計画に基づいて支出をしておるという状況でございます。貿易その他の額につきましては、局長のほうから御説明いたさせます。
  95. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の貿易の事情でございますが、移出の規模は一九六四年に二億六百万ドルになっております。で、一般の貿易輸出が六千六百万ドルございまして、基地収入が九千七百万ドル、大きいのはそういうものでございまして、一方、移入が二億二千五百万ドル、そして貿易上の輸入が二億九百万ドル、そのうち大部分が一般の貿易上の輸入になっておるのであります。輸出の面で大きいものは、これは何と申しましても砂糖とパイン、その他の加工品というものが中心でありまして、輸入のおもなるものは食料品、日用雑貨品、機械類、そういうものがおもなるものでございます。概括的に申しまして、輸出は、六、七千万ドルしかございませんから、したがって、一億二、三千万ドル、——一億から一億二、三千万ドルのものは、基地収入とそれから日米経済援助等の収入でまかなわれておるというのが実態でございます。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実の問題として、沖縄経済をささえておるのは基地収入だと、これはいまの姿ですが、将来は沖縄の経済を自立させるためにといいますか、そういうようなためには、日本としてどういう方向に持っていかなければならないというふうにお考えなんでしょうか、これは総務長官から概略、こまかい点はいいです。概略をお願いしたいと思います。
  97. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いま沖縄の経済をほとんどささえておりますのはパインとサトウキビが大部分でございます。今後そのほうの経営をさらに合理化していく、またさらに農業部門におきまして砂糖、パインだけにたよらない、多角経営をやっていくような素地をつくっていく必要があるのじゃないか、そういう方面で現在日本政府としてもいろいろの指導を農林省等を通じてやっているわけでございます。それから一方いろいろな経済界に対する金融関係、あるいは中小企業等の金融等につきましても、でき得る限り今後日本からの金融のでき得るような方途をとりつつあるわけでございまして、従来の地元あるいはアメリカの資本による経営を漸次できるだけ日本側からの金融によってそれを補っていくという方向でいま進めているわけであります。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの話があったサトウキビだとか、パインですね。これは現在沖縄の経済の中では将来性というものはどういうふうにあるわけですか。それが一つと、それからいまお話のあった金融ですね。日本からの金融というのは、これは直接には沖縄には、いままでどういうふうにやっておったのですか、これはできないのですか。
  99. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 沖縄の何と申しましても基本産業は砂糖、パイン、これは今後といえども大数的には動かないであろうと思います。ただ、これを合理化し、さらにもっと農業の多角経営をやっていくという方向でより水準を高めていくということで、基礎はそれを中心にやはり行なわれると思います。日本からの金融につきましては、いま輸出入銀行を通じて新しい施設その他に対しましては金融措置がとられております。また、そういうものをさらに計画的に今後はよりふやしていきたいというふうにいま考えて、それぞれの部門でいま検討中でございます。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本からの経済援助はいつごろから始まったわけですか。その金額の伸びの関係は、これは予算書を調べれば、毎年のものを調べればわかるのですけれども、明らかにしていただきたいと思います。
  101. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ただいま暦年のやつを御報告させますが、大体四十年度は二十八億六千万円、日本からの経済援助でございます。これが四十一年度には五十八億という経済援助に、約倍以上のものに上がっているわけでございます。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ドルですか。
  103. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 円です。ついでによろしゅうございましょうか、手元にいまありますので。——これは昭和三十五年からでございますが、昭和三十五年が八千百万円、昭和三十六年が五億三千九百万円、昭和三十七年が十億一千三百万円、昭和三十八年が十八億三千百万円、昭和三十九年が十八億七千五百万円、昭和四十年度が二十八億六千六百万円、昭和四十一年度が五十八億円とちょっとでございます。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 昭和三十五年に日本からの経済援助が八千百万円いった、それ以前はどういう理由日本からの経済援助というものを沖縄が受け入れなかったわけですか。
  105. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは私も詳細は承知いたしませんが、アメリカ民政府のほうが正式に援助を始めたのが三十年ごろからと記憶しておりますが、その後は、やはりこれは高等弁務官をはじめとする米国民政府沖縄統治の政策にも関係したでございましょう。そうして日本政府の援助についてのある程度の抵抗があったものと思われるのでありますが、御案内のように、一九六二年でございましたか、池田・ケネディ会談がありまして、そうしてそのときに日本の経済援助について歓迎する旨のケネディ大統領の意思が表明され、それに呼応して、三十六年から本格的な日本の援助が認められるようになった。こういうぐあいに私は理解いたしておるのであります。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのほうで説明しにくい点があるのではないかと思うのですが、いまあなたの言われた沖縄の統治政策に関係をして、ある程度の向こうのほうの抵抗があったのではないかと、こう言われましたね。これはあなたもちょっと答えにくい、いやな質問で恐縮ですけれども、具体的にどういうことでしょうか。
  107. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄施政につきましては、米国政府に責任があるという体制から、あくまで米国がみずから沖縄施政、行政、財政にわたる責任を持っていこうという態度を、逆に私は申し上げたのであります。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 逆に申し上げたといっても、あなたはわかっているかもしれませんけれども、私はよくお聞きしてもわからないのですね。もう少し具体的に、ゆっくり時間をかけてその間の経過をひとつ御説明願いたいと思います。
  109. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) どうも非常に私の表現がまずくて先生の誤解を招いたと思いますが……。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 率直にいえば、あなたの立場もわかりますがね。
  111. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いま申しましたように、米国政府日本政府の援助を待つまでもなく、自分のほうで責任を持って沖縄の行政をやっていくのだという態度が、そのまま日本側にも反映しておったということではないかと思うのであります。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、安井総務長官はその点についてどういうふうにお考えになりますか。アメリカはそういう態度を続ければよかったといえば、また誤解を招くと思いますが、アメリカはどうしてそういう態度をとったのですか。
  113. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これはやはり占領当時の非常にきびしい考え方が、平和条約を結んでも、しばらくあとまで続いておったというような実情じゃなかったかと思います。しかし、だんだんと落ちついてきまして、アメリカ側の援助だけではなく、同じ日本人に対しては日本政府からも援助すべきものだという主張がだんだん認められてきたというようなことで、年を追ってアメリカ側の同じ施政権下にありながら、内容的には相当日本側の意向、あるいは琉球住民の意向が逐次取り入れられてくるという方向に今日なってきているのだと思っております。
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 率直にいえば、池田・ケネディ会談の前といいますか、そういうことでは日本沖縄に経済援助をしていく、このことを通じて日本沖縄が非常に近づく、一体化して近づいていく方向に向かう、そういうことはアメリカとしては好ましくないという関係がそこにあった、そういう意向があったのじゃないですか、裏を返して言えばそういうことじゃないですか。
  115. 安井謙

    国務大臣安井謙君) やはり一種の軍事目的のために施政権を握っているのでございまするから、それ以外の国からなるべく関与されたくないという気持ちはかなり強かったと思いますし、そういうものが響いてきておったのだと思います。したがいまして、正直にいいまして、現段階におきましても、そういうものに著しい影響なり相当なる影響を加えられるという部分に対しましては、やはり施政権を持っている上の強い権利をやはりいまでも行使している、こういうふうに私ども考えております。
  116. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安井さん、何かほかに御要件があるようでありますが。
  117. 安井謙

    国務大臣安井謙君) たいへん恐縮ですが、あとまたすぐまいりますから、副長官をかわりにといってはあれですが。
  118. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 御要件があるようでありますから、あとまたこられますか。
  119. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 一時ごろには。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それまでにはこちらはあれになりますので、ちょっと関連してお聞きしておきますが、結論をしぼって先にお聞きしてまいりますが、沖縄関係する協議委員会が四月中に開かれるということがいわれておりますが、これは具体的にどういうふうな目安になっているわけですか。
  121. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 大体、昨年の秋三回にわたって開きまして、四十一年度における日米の援助関係、あるいはアメリカが計画しておりまする沖縄の産業計画といったようなものの折衝ができたわけでございます。その後、そういった予算がきまり、さらに新しい問題についても今後検討していくというような趣旨から、大体できれば四月中を目途にひとつ協議委員会を開きたいと思って、これは内々の折衝をまだいたしております。まだ正式の決定には至っておりません。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そこで、日米協議委員会で、日本側としてアメリカ側要請をするのは、具体的にどういうことを考えておられるわけですか。差しつかえない範囲でお答え願いたい。
  123. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 先ほど問題になりました船舶に対する日の丸の問題等も、これはまだ正式に協議したわけじゃございません。はたして私がここで明言することが適切かどうかは若干疑問がありますが、私どもはこれは解決を目途に議題にしたいと考えているわけでございます。それからその他、いまの経済計画に伴ういろいろな援助の形式、あるいは金融形式、そういうものについても協議をいたしたいと思います。また、そのほかこれはいま確定はいたしておりませんが、布令、布告等につきましても、あるいは内政上の福祉問題等の促進につきましても、いろいろ協議をいたしたいと思っております。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本アメリカ会計年度が違う。沖縄会計年度アメリカ流に七月から始まる、こういうことで、何か支障があるのですか、別にそこのところはないわけですか。
  125. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 若干の食い違いがありますし、支障はございますが、たとえば来年度計画しておりまするテレビの施設といったようなものは、日本側予算が通れば、日本側として準備にかかれるわけでございます。やれるものはもう四月から始めていくというようなことで、大きな支障はなかろうと思っております。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは前に戻って、基本問題になるのですが、平和条約の三条で日本沖縄施政権アメリカに認めておる。そうすると、あれですか、その施政権を持つ範囲でアメリカ沖縄をどういうふうに活用というか、利用といいますか、するということについては、日本はあれですか、全然関与はできないわけですか。
  127. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 施政権そのものを云々することは、これは外交上、平和条約そのものの改正というような問題が起きれば別でございますが、いまはそのワクの中ですべて行動はしておるというふうに考えております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、沖縄アメリカの軍事基地になり、アメリカが核を沖縄に持ち込んでいると、核基地になっていると、こういうことがあっても、日本としてはそれに対してかれこれ言えないことになるわけですか。
  129. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 現在の段階では、これは日本として当然の申し入ればできないと思っております。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから平和条約によって施政権アメリカに譲渡——ということばがいいかどうかは別として、とにかくアメリカが持っている。これは平和条約という連合国との間の契約ですから、それをある場合にアメリカが一方的に、アメリカだけの意思で日本に返還できる、施政権の一部返還あるいは全面返還ということができるのですか。そこはどういうふうに考えておられますか。
  131. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 当然できると思っております。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、それはアメリカだけでできるのですか。平和条約日本はあれしたわけでしょう。日本アメリカだけで契約したわけじゃないでしょう。連合国との間の条約できめているわけですからね。アメリカ日本だけの間でできるのですか、それは。
  133. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ちょっと外交的な、その条約の専門でございませんので言い切れませんが、実際問題としてはアメリカの意思でできると思います。現に奄美大島を返したといったこともそれに当たると思います。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは奄美大島を返したというのは、ほかの連合国がそれに対して何といいますか、どういうことばを使ったらいいか、異議を言わなかったとか、別に問題にしなかったというだけの話であって、平和条約アメリカ日本とで結んだわけじゃありませんからね。連合国と結んだのであって、そうして連合国の間の中においてアメリカ施政権が認められたわけですから。アメリカが一方的にできるのですか、安保条約ならば別ですよ。それはどういう解釈をとっておられるわけですか。
  135. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは外務省の問題で専門的な知識はございませんが、これは事実上の問題とすればアメリカの意思で解決するものだ。したがって、施政権をもしアメリカが放棄すれば自然に日本施政権がそれに及んでいくというふうに考えております。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはあなたにお聞きするのは当を得ておりませんから、外務省の本来ならば条約局あたりが詳細にあれすべきだと思いますが、そういう場合にほかの連合国が異議を言ったらどうなるんですかね。そこら辺、まだちょっとここでは無理ですね。
  137. 安井謙

    国務大臣安井謙君) おっしゃるとおりで、これはちょっと専門家にお聞き願いたいと思いますが、アメリカ施政権を持つという条項になっておるので、ほかが持つということは全然ないわけでございまするから、アメリカ自身がそれを放棄するならば、あるいは返還するならば、それはもう自然、当然日本へそれが返ってくるというふうに事実上の問題は考えていいのだと私ども考えております。
  138. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) ちょっと稲葉委員安井長官は産業災害対策審議会の答申をお聞きにいらっしゃるので、しばらくお帰りになって副長官とかわられますから……。じゃ、かわりに総理府総務副長官の古屋亨さんにおいで願います。
  139. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの施政権の——総務長官ね、一部返還なり全部返還の問題については、いろいろむずかしい議論があると思いますから、これはここの問題じゃありませんので、外務省なり何なりに別途確めるなり何なりすることにいたします。  そこで、問題は、日本の法律で本邦ですね、日本の国というのはこういうところを言うのだ、そうして沖縄を除くと、こういう書き方をしているところの法律がありますね。これはおわかりですか。本邦とはこれこれこれこれを言う、それで沖縄を除くのだということを書いてあるのもあるわけですね。書いてないのもあるわけですよね。
  140. 古屋亨

    政府委員(古屋亨君) 私、一般的な法律につきまして実は十分な知識を持っておりませんので、もし具体的にお示しいただければお答えさしていただきますが、いまの一般的問題につきましては、ちょっと私からまことに申しわけありませんが……。
  141. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 法律の中で沖縄をはっきり除くと明示して書いてある法律は私は記憶しておりませんが、たとえばたしか関税法でございましたか、そういうものにつきましては、本邦とみなす、逆にみなすような書き方の法律はございます。
  142. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、本邦とみなすという法律と、それから本邦とはこれこれを言うという形で沖縄を除いているものと二種類あるのではないですか。あるいは全然断わっていないものもあるわけですね。全然沖縄のことを断わっていない法律もあるわけでしょう。全然沖縄のことを断わっていない法律の場合に、それが沖縄に適用になるものとならないものと、こうあるわけでしょう。三つあるのですか。全然断わっていないものと、それから本邦とみなすというものと、本邦というものはこれこれなんで沖縄を除外するというものと、三つあるのか。沖縄を除外するというものはないのですか。
  143. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 私も全く正確には申し上げられませんが、大体、概括的に申しまして沖縄を除くとか含むとか、そういうことを書いていない法律がほとんどだろうと思います。そうして特定の、たとえばこの関税法その他の法律でみなす規定があります。それからはっきり除いた法律は私は存じておりません。
  144. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、沖縄を本邦とみなすというふうに出ておるのは何と何ですか。——じゃ沖縄を本邦から除くというやつは、ちょっといま問題外にしておきます。  あれはどうなっていますか、お医者さんの検疫法、検疫法というのがあるでしょう、注射や何かするやつ。
  145. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 関税定率法の施行令でございますが、これは「(外国とみなす地域の指定)」とございまして、「北緯二十七度以南の南西諸島」と、こう書いてございます。それから……。
  146. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何ですか、それ、外国とみなすの。日本とみなさないんでしょう。
  147. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 日本とみなさない、むしろ外国とみなす地域、だから、はっきりとにかく別に分けてあるという意味でございます。それからあとはちょっと記憶がありませんが。
  148. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすれば、関税法であなたの言ったのは、最初言われたのは間違っているわけですね。ぼくの言ったのが合っているわけだな。それから検疫法はどうなっておりますか。
  149. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いまちょっと調べておりますが、沖縄から入ってくるものについての検疫は相当厳重に行なわれておりますから、それから類推しますと、おそらく関税定率施行令と同じようになっているのじゃないかという気がしますが、いま調べております。
  150. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 別に質問を楽しんでやっているわけではないのですよ。それは重要な問題になってくると思うのですよ。それでお聞きしているわけですから、おそらくというようなあれじゃなくて、はっきりさしてください。
  151. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) いまのは少しあとからお答えいただきまして……。
  152. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 進めますが、そうすると、日本の法律でストレートに沖縄で適用されているものもあるわけですか。
  153. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 恩給法関係の法律、それから遺家族援護法とか、そういう終戦時の戦争被害に関連したもので対人的と申しますか、そういう関係の法律が適用されております。
  154. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは恩給法と遺家族援護法の三法ですか、具体的にどういう法律か。
  155. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 適用になっている法律につきまして申し上げますと、元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別措置に関する法律、それから戦傷病者戦没者遺族等援護法、戦傷病者特別援護法、未帰還者留守家族等援護法、未帰還者に関する特別措置法、戦没者の妻に対する特別給付金支給法、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法、引揚者給付金等支給法、こういうような法律でございます。
  156. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは適用になるのは私は正しいと思うのですが、適用になっておる根拠がどういうふうなところにあるのですか。いまちょっと説明されましたけれども、もう少し詳しく説明願えませんか。
  157. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これはむしろ、法律適用問題の基本的な考え方は法制局の問題だろうと思いますが、私どもとしましては、一般的には日本の法律は沖縄に適用にならない、観念的には適用されている、施行されているけれども、現実には適用されないというのは、アメリカ施政権があるからそういう結果になっておる。しかし、いわゆる属人的な法律で沖縄に適用することを前提としてつくられた法律、そういうものについては沖縄に適用がある、属地的なものはもちろん適用がない、こういうぐあいにどもは一応考えておるのです。
  158. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 遺家族の方の援護の法律ですね、これは適用になるわけでしょう。それが適用になるのに、原爆の被爆者の援護法というのですか、これは適用にならないという見解のようですね。これはどういうふうに違うわけですか。
  159. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 原爆被爆法の適用の問題は、これは法律で原爆被爆者の取り扱い者として都道府県知事ということが明示されておるのでありまして、そうでないこの適用されておる法律は、都道府県知事と限定しませんで、その他政令で定めるものとか、そういう規定があって、そういう書き分がしてあるのであります。したがいまして、そういうところで沖縄に適用し得る法律と適用し得ない法律と分かれる、こういうぐあいにどもは考えております。なお、この問題は、法制局なり厚生省なりの御解釈を正規には聞いていただきたいと思います。
  160. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 形式的な法律論としてはいま言ったようなことがあるいは言えるかもしれませんけれども、都道府県知事が云々ということは、それは通常の場合はそれが扱うということだけであって、原爆の被爆者と遺家族の援護と、具体的にそれが敗戦前のことを原因として発生しており、それから対人的なものであるということは、これはあれじゃないですか。理論的には間違いないというが、両者を区別するのはおかしいじゃないかと、こうぼくは思うのです。ですから、原爆被爆者が日本で原爆を受けた、それで沖縄に行っておる、その場合に日本で行なわれておる原爆被爆者の何といいますか、いろいろな被爆者の方に対する手当といいますか、そういうふうなものが沖縄にいるために与えられないというのはこれはおかしいじゃないですか。その点についていま訴訟が起きているでしょう。ですから沖縄の、あなたのほうでもその関係は相当詳しく調べてなければならないじゃないかと、こう思うのですがね。その原爆被爆者が、都道府県知事が云々ということは、これは単なる形式論であって、実質的には適用されても筋は違わないと、こういうふうには考えていないのですか。
  161. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは申し上げるまでもございませんが、この日本の法律では、あくまで日本の主権、現実の施政権が及んでいる範囲のことをたてまえにしてつくられておるわけでございます。したがいまして、沖縄に特殊な法律が適用になるという場合におきましても、向こうの施政権者のアプルーバルによって現実の適用が可能になっておるというぐあいに解釈されるのであります。原爆被爆法の問題につきましては、私どもとしては沖縄に適用するというたてまえではつくられていないというのが政府部内での意見でございます。なお、この訴訟問題等につきましては、法務省、法制局、厚生省等が中心でございまして、私ども直接にこの原爆被爆法の解釈その他についてそう詳細な知識を持っていないわけでございます。
  162. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私がわからないのは、両者の間にどうしてそういう差別があるのだろうかということがはっきりしないのですが、そうすると、前の恩給法とか、遺家族援護法のいろんな法律というのは、法律のたてまえ、形式からいって沖縄でも適用されるように法律のたてまえがなっているのだと、こういう御説明のようですが、そうすると、そのときにはアメリカ施政権があるのですか、アメリカ側の了解を得てそういうような法律をつくったのですか。
  163. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いや、その法律を適用する場合には、それぞれこの施政権者と話をして、了解をとって適用をしておるというぐあいに聞いております。
  164. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その法律の形式はどういうふうになっているのですか。
  165. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 法律自体は沖縄に当然適用するというたてまえで書かれておるものと承知しております。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうたてまえでそうしておるというのですけれども、具体的にどういうふうになっておるか私もあまり研究しておりませんから、これから研究しますから、条文に即してちょっと説明願えませんか、法律の条文でどこにどういうふうに書いてあるか。
  167. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この法律の中で、元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別措置に関する法律、これは当然その南西諸島に適用される前提でつくられておりますから、たとえばこの戦傷病者遺家族援護法は、この権限に属する事務の委任の政令が出ておりまして、その政令の中で、「法に定める厚生大臣の権限に属する事務のうち、次に掲げるものは、都道府県知事に委任する。」、ただし、南西諸島に居住する者を除くと、こうありまして、二項に、「法に定める厚生大臣の権限に属する事務のうち、沖縄地域に居住する者に係る次に掲げるものは、琉球政府の当局に委任することができる。」と、こういう定めになっておるわけでございます。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃそれと同じようなことが、なぜ原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、昭和三十二年法律第四十一号かに書かれてないわけですか、これはあなたのほうに聞いても無理ですか。これは厚生省のどこですか、医務局か……。
  169. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 公衆衛生局です。
  170. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの問題はなかなか基本的な問題ですから、本来ここへ厚生省の人にあとで来てもらってよく確かめたほうがいいんじゃないかと、こう思うのですが、現実にはしかしどういうふうになっているのですか。現実には沖縄にいる原爆被爆者の治療の問題は具体的にどういうふうにやっているわけですか。
  171. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の原爆被爆者につきましては、昨年、米民政府のほうとの話し合いがつきまして、日本から調査団を二回にわたって出しまして、そして被爆者百七十三名につきましていろいろ検診、診断をいたしました結果、本土の病院に収容して治療を要すると認められた人が十三人おりまして、そのうち二名は家庭の事情で本土へこられなかったんですが、十一名の人を病院に収容いたしまして治療を実施したのであります。明年度におきましては、さらにこの四月早々、第二回目の調査班を出しまして、この被爆者につきましてもう一度再調査をいたしまして、その後の経過、それから入院して帰国された人の病状その他を検診しまして、そして必要のある人については本土に連れてくる場合もありましょうし、それから現地の治療で済む人は現地の治療を行ない、投薬で済む人は投薬を行ない、そうして大体本土の被爆者と同じような取り扱いをするということにいたしております。
  172. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現実にはあれですか、沖縄における原爆被爆者と日本にいる原爆被爆者との取り扱い上に実質的な差別はないというのですか、あるいはないというところまでは言えないと、これはある程度の差があるということは認められるということですか。
  173. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 明年度からは実質的には本土の被爆者と差のないような待遇を与えていきたいと、かように考えております。
  174. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこら辺の問題はなおかついろいろ残っておると思いますが、前に戻って、関税法とか、その他の法律で、本法にはこれこれこれこれといって沖縄が入っていないようなものがありましたね、これは何と何だかお調べ願いたいと思うのですが。沖縄日本から除外をしておる理由はどういうところにあるのか、これはひとつお調べ願いたい。こう思うのですけれども、わかりましたか。
  175. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いま調べております。
  176. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは別の問題に一応入っていきますが、これは日本からこの沖縄へ渡航する場合、それから沖縄から日本へくる場合、こういう場合の渡航の制限というのは具体的にどういうふうになっているのですか、どこでどういうふうなものがきまっていて制限が行なわれているわけですか。
  177. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄へ渡航する場合には入域申請書を出すことになっておりまして、その入域申請書を私のほうで都道府県知事から受け取りまして、それを米国民政府の東京のトラベル・ユニットというのがございまして、そこへ提出をいたしまして、そこで直ちに許可になるものもございますが、あるいはものによっては沖縄まで送付されまして、そうして米国民政府の所管のところで調査されて許可がおりる、手続的にはそういうぐあいになっております。
  178. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 沖縄から日本へくる場合どういうふうになっていますか。どういう制限があるのですか、沖縄人日本へくる場合。
  179. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄人がこちらへくる場合には、琉球政府のほうへ入域申請の書類を提出されまして、そうしてそれを琉球政府民政府との関係で許可するようになっておりまして、その場合にどういう内容がこの調査の手続になっておるか、私どもは知りません。
  180. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本人沖縄へ行く場合のいろいろな渡航の制限、向こうで認める認めないに関連して、日本にいる沖縄県民、沖縄で生まれていま日本にいる人が沖縄へ帰るということについて、アメリカ民政府はもう認めないというのですか。非常に厳重な制限をつけて認めないということを言われているのですけれども、これは事実なんですか。
  181. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 一般的には私どもはそういうことは聞いておりません。沖縄出身の本土の人が特に厳重に渡航申請を調査されるということは聞いておりません。
  182. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくはいま沖縄へ行くのでね、行くというか、一般の旅券を——旅券というか、パスポートを申請しているのですがね。そのことに関連して、ぼくはそっちこっち走り回って聞いてみたのですけれども日本にいる沖縄人というか、沖縄県民が沖縄へ帰るということをアメリカでは極度にきらっておる、それでもうほとんど認めないということですね。その人は一たん沖縄へ行ってまた日本へ帰ってきていろいろ活動するからか、あるいは沖縄の実情というものを正しく日本の中に発表するというか、何というかわかりませんけれども、そういうこともあってか非常に制限がきびしいということが言われているわけなんですよね。それから沖縄にいて日本で学校へ入ってそして夏休みに沖縄へ帰ろうとするわけですね。日本人沖縄人、県民が日本の大学へ留学している、そして夏休みに沖縄へ帰ろうとするとなかなかそれを認めない、入域を。また認めてしまっても、今度は夏休みが終わって日本へ帰ってくるということ、今度は出るわけですね。それをアメリカ民政府は認めないということで、学生なんか非常に困ったり憤慨しているのですがね。それは具体的にどういう点で制限しているとか、どういう点が条件になっているとか、こういうようなことについては総理府のほうでは詳しくわからないわけですか。
  183. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いま、最初のほうの問題でございますが、その本土沖縄からこられて、そして沖縄へ帰りたいという場合に非常に厳密な調査をやるということでございますけれども、私どもはそうは考えておりません。それから学生につきましては、私もそういうことを聞きましたので、ことしの二月民政府へ行きましたときに、直接、担当局長に会っていろいろその点を、学生の帰省問題につきまして聞きましたが、その学生が本土から帰っていってさらに本土へくる場合には、全部出城の許可は数次の往復ができるようにしてありまして、決して、昔はそういうことがあったかしれないけれども、いまは即刻許可になるようになっているのだという説明を聞きましたから、私はそれが間違いないのじゃないかと思っております。
  184. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この場合、学生が夏休みに沖縄へ帰ると、沖縄にいる間の行動について非常に厳密な制限をつけるのですか。これはどうなんですか。
  185. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そういうことはないと思います。
  186. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ、ないと思いますと言うのですから、それ以上聞きませんけれども、どうもそういうふうなことを学生などからずいぶん訴えられるわけですよね。これ以上ここでその点は質問しませんけれども、実際はどうもそうでないようですね。  いずれにいたしましても、沖縄をめぐるといいますか、いろいろな問題について、これは施政権の返還の問題を中心としてさらにお聞きをしたいわけですけれども総理府の長官もおられないし、これはむしろ総理なり何なりにもっと基本的な問題としてただすべき問題であろうかと、こういうふうに思いますので、私は概略のところをお尋ねをして、残っておる問題については、さらに分科会の中で時間をあらためるなり何なりして、未解決の問題もあるからお聞きをする、こういうふうなことにして、終わったことではなくて、一応この程度にしまして、鈴木さんのほうからこれにまた関連してお聞きになるということがありますので、一応これで終わります。
  187. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの沖縄の旅券に関連してなんですがね、沖縄の人が外国へ行く場合の旅券はどうなっていますか、手続そのほか全部。
  188. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄から外国へ行かれる場合には二通りありまして、日本本土へこられて、そして日本本土からそれぞれの所要の外国のビザを取って出られる場合と、それから沖縄から直接外国へ行かれる場合とあるわけでございます。
  189. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 直接行く場合にはビザが取れるのですか。
  190. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ビザは取れます。
  191. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは日本政府がやるわけですか。
  192. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) それは米国民政府がやります。
  193. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 米国民政府がやる——それから日本へ来て手続をするときにはどうなります。旅券は一つで済むのか二つになるのか。
  194. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄から日本へこられて、そして日本を経由して外国へ行くという場合には一つの許可書で済むと思うのでございますが、日本へ一度こられて数カ月かいらして、そしてそれから外国へ行くというような場合には二通の手続が要る場合があります。
  195. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その場合の二通というと、結局、沖縄のほうで発行した旅券と日本政府の発行した旅券と二つが必要ということですか。
  196. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 日本へくる場合には沖縄から日本にくるだけの手続でございます。あとは今度は外務省に申請をいたしまして所要の外国へ行く手続をとる、こういうことでございます。
  197. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その主要なる外国へ行く手続をとるとなれば、日本政府の発行の旅券をもらうわけですね。そうして二つ携帯して行かなければ外国への入国はできない、こういうことになるわけですか。
  198. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) いや、そうじゃございません。日本から出ていくパスポートをもらっていけばいいわけでございます。
  199. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ところが事実はそうじゃない。先日も私は同行してずっと行ったのですけれども日本政府発行のパスポートと、それから沖縄から出したのと両方持たなければ動けない。必ず入国のときに相手政府から、相手の入国管理官からもう一つ見せてくださいと、出国の場合も、もう一つを持ってきてください、二つなければ許可できない、出入国について。香港もそうでありましたし、そのほかの国でもそうであったのですが、その辺どうなっているのですか。
  200. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ちょっといまその点正確に調べてお答えいたしたいと思います。
  201. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そんなことはない、これから調べますということですけれども、現実に日本政府発行の旅券だけを提示しただけでは困るということらしいですね。いま一つお持ちでしょう、両方添えて出してくださいと、これがほとんどの入国ないし出国に当たっての相手政府の出入国管理官の態度ですよ。そうなると非常にこれは不便ですよ。はっきりいいまして、日本に滞在することが長い人もあるわけですから、そのときに日本政府から、向こうへ、わざわざ沖縄へ帰らないでこちらから再びビザをとるということになるわけですから、ほんとうならば一つのパスポートだけですっと行ければいいのですけれども、二つ持って行かなければならない。そうでなくても紛失の心配のあるものでありますし、三種の神器と言われているものが四つになってくるわけですから非常な不便です。その点について何とか米国民政府との間の話し合いというものは全然考えられなかったわけですか。
  202. 古屋亨

    政府委員(古屋亨君) 私の理解している範囲におきましては、いまの先生のお詰め、ダブルに持って行かなければはいれないということは、私は実は、いまお調べ申し上げてから正確にお答え申し上げたいと思いますが、アメリカ側とは、私どもの考え方としては、沖縄の人が外国に行く場合に日本を経由して行く場合には、日本に来て日本のパスポートを持って出ればいい。それから沖縄から直接行く場合には沖縄の渡航証明を持って行くということがあれでございますから、それなら初めから日本のやつを一本にしたらどうか、かえって手続がめんどうくさいのじゃないかということで、事務的ないま私どもはその簡素化と申しますか、そういう点について折衝をしておる次第でございます。相当私どもも、ただいま先生のお話の、ダブルに持っていかなければならないということは現実の問題として私承知していなかったのでございまして、これはいま調査をしてお答えいたしますが、とにかく直接行く場合と、それから日本を経由して行く場合と非常に手続が複雑になるという点はこれはまずいということで、何とか日本の人が外国へ行くときと同じようなかっこうにできないかという点で、いま先方と事務的な面から折衝を数回続けておる次第でございます。ただ、いま先生の御質問の、検討しますという問題とも相関連しておりますので、私どもの考え方としては、先方へそういう点はもっと簡素化して、たとえば沖縄から外国へ行く場合、あるいは日本を通して行く場合も同じような手続で簡単に、しかも日本のパスポートでできないかという点もいま交渉中でございます。それから、先ほどのお話の点、私ども承知しておりませんでしたので、ダブる点を確認いたしましてからさらにお答えしたいと思いますが、先方とはそういうふうな折衝を続けておる次第であります。
  203. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日本を経由してそのままずっと行けるという場合、あるいは沖縄からまっすぐ行けるという場合とあるということですがね、旅券について向こうの旅券だけで。ですが、実際問題として那覇なり、あるいは沖縄の中に在外公館があるのですか、ビザを発行できる。
  204. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄から一本の入域許可書で外国へ行かれる場合は米国民政府のほうで発行するわけでございます。私のほうの南方連絡事務所は関係ございません。
  205. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 旅券にきちっと書き込むのは一体どこがやるのですか。外国大使館なり領事館なりでなければできないでしょう。それがあるのですか。
  206. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 本土を経由して行く場合も直接行く場合も本土のほうへ、本土にある在外公館を通じてビザをとって、そうしてそれを送って沖縄を出られるということになっております。
  207. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 本土を通って、本土にある在外公館でビザをとってということになりますと、ビザをとるには本人が出頭しなければどこの公館だってやってくれません。そうすると、必ずこなければならぬのですね。
  208. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) たとえばボリビアへ行きます場合には、本土のボリビアの在外公館から文書によってビザを沖縄に送ってもらいまして、本人は出頭しないでよろしいそうです。そうして一方、高等弁務官から身分証明書をもらって出国する、こういうことになります。
  209. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、そのビザは旅券にいわゆるはんこを押したようなかっこうじゃなくて、別の紙きれで行くのですか。
  210. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そのこまかい点につきましては、ひとついますぐまいりますから確かめましてはっきり御答弁申し上げます。
  211. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日本人外国へ行く場合でも、国会議員等は別ですけれども、大体、本人が出頭しなければビザというものはなかなか出さぬ。首実験をしてというわけでもないわけでしょうけれども、そういうことが多いわけです。それが、まして沖縄からということなんですから、その点のところをあなたの推量で、いいだろうということじゃなくて、十分調査して、あとでお返事をお願いしたいと思います。
  212. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) それでは午後一時三十分再開することにいたしまして休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  213. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) ただいまから予算委員会第一分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き、内閣及び総理府所官を議題として、質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  214. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどの沖縄の人が外国に行く場合の旅券の扱いの問題、御調査になられたんでしたら、わかりましたら、言っていただきたい。
  215. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) お答えいたします。  沖縄から外国へ行きます場合に、直接外国に行く場合と、日本を経由していく場合とございます。その手続についてちょっと御説明しますが、まず、沖縄から直接外国に行きます場合には、米国民政府の発行する身分証明書をまずもらうわけです。そうしまして入国したいという必要がある国の相手国の入国許可証を取らなきゃならぬわけでございます。そこで、その場合沖縄で相手国のビザの取れる国は米国と台湾でございます。これは在外公館ないし在外公館に準じたものがございます。それから、香港、タイ、ビルマ、フィリピン、インドネシア、インド、ブラジル、これは旅行業者が米国民政府の身分証明書で、それをたとえば本土とか香港へ送りまして、本人が出頭しないで送りまして、当該在外公館でビザが取れる、こういうことになっております。  それでは、その他の国へ旅行する場合、これは米国民政府の発行する身分証明書ではビザが取れませんので、東京へ来まして外務省で旅券を得て、そうして外務省の発行する旅券で必要な国の入国許可を取りつける、こういうことになっております。これが沖縄から外国へ直接行く場合。  それから、沖縄から日本へ参ります場合は、米国民政府の発行する日本渡航証明書、これが身分証明書に当たるのでございますが、これをもらいまして日本へ来ます。そうして日本から外国に行きます場合には、外務省で普通の外務省の旅券をもらって、そうして当該国のビザを得て行く。  それで、ただいまおっしゃいましたこのパスポートを、たとえば御例示になりました香港で両方見せろということが行なわれているというお話でございますが、これは法規上からいきますと、日本から香港へ行くやつを提示すれば足りるわけでございます。おそらく沖縄と香港、台湾等は、非常に特殊な地理的距離から申しましても、経済的にその他密接な関係にございますから、あるいは密貿易その他いろいろな配慮からそういうことが行なわれる場合がある、こういうぐあいにどもは承知しているわけでございます。
  216. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、渡航証明書と旅券とは絶えず持っていなきゃならないというようなかっこうになっているわけですけれども、その点を日本政府の旅券だけで、どっちみち帰って来るときは日本に帰って来るわけでありますから、そのようにさせる必要がある。  いま一つは、いまのお答えの中で私はちょっと心配だったのは、ブラジルの場合ですね、ブラジルの場合は、各国、南米はほとんどそうですが、東南アジアはそうですけれども、指定の病院でコレラの予防注射その他をやらなければビザが出ないのが通常ですけれども、ビザというか入国ができないのが。特にブラジルはうるさくて、それを便宜上指定でないところでやってもだめである。特に日本のブラジル大使館は相当きびしく言っておりますから、特定の病院へ行ってそこでのコレラの予防注射でなければ許可しないというのが方針です。日本人の場合も特にその病院へ行くということが慣例になっていると思いますけれども、いまのお話だとそういうところは——これは沖縄にあるわけですか。旅行業者が米民政府の身分証明書でビザを取るのだという中にブラジルが入っていたようでありますけれども
  217. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そのブラジルの場合は、入国のために必要な注射を特定病院でしなければならぬという場合があるが、その特定病院が沖縄にあるかどうかという御指摘でございますが、従来ブラジルへ旅行する者につきましてはいま申し上げました手続で全部できておりますから、おそらく那覇市かどこかにそういう指定病院があるのじゃないかと想像されるわけでございます。
  218. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この問題はこの程度にして、次は公取に移りたいと思います。  今回の公正取引委員会予算書を見ますというと、職員が増加をすることになっておりますね。三十人増加ということになっているわけでありますが、公正取引委員会の機構の中でどことどこにそれがふえる予定ですか。
  219. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 本局におきまして、審査部に一つの課を設けまして、八人、それから取引部に一課を設けまして、この関係で五人、それから調整裸に五人、それから取引部下請課に六人、それと広島に地方事務所が設けられますと、六人、それと大阪地方事務所、名古屋地方事務所に合わせて三人、合計いたしますと予算定員といたしましては三十三名ということになります。欠員不補充で三名帳消しになりますので、三十人、こういう配置になるわけでございます。
  220. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 人数がこれで充足されるかどうかということについてはあとで伺いますけれども、この人員増加というのは新規の増加ですね。そうすると、ほかの省からのいわゆる配転というようなことは全然ないわけですか。
  221. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) なかなか、一挙に実人員三十人の増員を実現することは、外部から人を採用することはむずかしゅうございますので、他の各省各庁の応援を求めまして、出向で相当部分をとりあえずまかなうつもりでございます。なお、新年度新規採用もございますので、合わせまして三十名の充足ができるわけでございます。
  222. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 各省から出てきているのは大体どこに——課別でけっこうですが、何名ぐらいという予定ですか。
  223. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これはこれからの折衝でございますので、いま各省と打ち合わせておりますので、まだ具体的な振り分けはきまっておりません。
  224. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 予定は何名くらいですか。
  225. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいままで各省と協定のつきましたのは五、六名でございます。なお多くの人員を各省庁からもらうことになるのでございます。
  226. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 なお多くの人員をというのは、何名なんですか、大体。多くの人員は、いいかげんに何でもかまわないから引っぱってこいというのか。それは目算があっておやりになるのじゃないですか。  目算がなくては、五、六名は大体きまったけれども、あとはどうなるかわからない。折衝次第によってはたくさんも採れるし、採れないかもしれない。だから、そうなると、公正取引委員会の中の仕事というのは、これはたいへんな仕事です。はっきり言いまして。私はあとで、人員の増加要求という問題についてもっと積極的にやってもらいたいと思っておるわけですけれども、そういうものすごい仕事量をかかえているんだから、一体どの程度にすればいいというめどがあるでしょうし、そういうことになればどのくらい出向を求めるかということもきまってくる。それをその場限りの行き方でこれはいいんですか。そんな態度なら、何もできないじゃないですか。
  227. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 予算定員といたしましては、新規増員分は九カ月でございます。広島の地方事務所も七月から開放ということになりますので、四、五、六の三カ月間でこの人員を獲得する考えでございますが、ただいまのところ各省庁から新規に約束済みのものは五、六名でございますが、なお、中級国家公務員職員試験を先般実施いたしまして、その関係でさしあたり中級三名、上級三名、合わせて六名は確定いたしております。六名と、それからただいままできまっております他省庁の五、六人ということになりますと、十一、二名、あと二十名近くを七月初めまでに充足するということでございます。
  228. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総定員で三百七名ということになるわけですね。増員が三十三名のところを三十名にした、欠員不補充で。その三十名増員すれば、現在かかえているいわゆる独占禁止法の問題、違反の問題ですね、あるいは下請代金の支払い遅延の処理、そういうことが円滑にできるわけですか。
  229. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 決してこれで十分とは考えておりません。
  230. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで、私は基本的な問題として最初に考えておきたいと思うんですが、公正取引委員会の活動のポイント、それはどこに一体委員長は置こうとしておるのか。最近はかなり、産業界に傾けてきた通産省の考え方と変わらなくなってきた、偏向してきたということを指摘されているわけでありますけれども、自由競争の原理というものをとうとべるようにして、消費者行政を守るという方向に持っていくのか、それともそのほうは多少目をつぶってもいいから、目こぼしがあってもけっこうだからという考えでいくのか、どちらがポイントですか。
  231. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 独占禁止法の目的は第一条にはっきり規定いたしておりまして、私的独占と不当な取引制限、それから不公正な取引方法、この三つを禁止する、そういうことによりまして公正かつ自由な競争を促進する、それによって究極的には一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展をはかる、こういうことでございます。公正取引委員会昭和二十二年にできましてからただいままで、一貫してこの目的のために活動してまいったわけでございますが、要は結局この独占禁止法の厳正かつ公正な運用によるとともに、経済の実態を把握して、経済の実情に応じてこれを誤りなきを期するというのが公正取引委員会の従来からの態度で、この方向は今後とも変えないわけでございます。
  232. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうように、いまこの独禁法の第一条に示されておる目的を実施するためにどうしても公取が果たさなければならない仕事、それを考えると、非常に定員というものは不足しているんではないかということはいつも言われていることです。それが欠員不補充ということで三名切り捨ててある。本来ならば、三名でも五名でも十名でも、あるいは場合によれば百名でも余分に獲得をして、そうして内容的には消費者保護ということ、国民経済の民主化という問題、そういう問題の確保のために努力しなければならないわけでしょう。それが今回、先ほどの答弁では不十分であると言っていながら、三十名でがまんした理由は何ですか。
  233. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昭和四十一年度の概算要求に際しましては、まず前年度の予算額の三割以内の範囲でとどめるという閣議の決定がございまして、これに従いまして概算要求いたしたわけでございますが、公正取引委員会は大部分が人件費でございますので、このワクによりますと五十七名の増員要求になったわけでございます。この五十七名の増員要求に対しまして、種々折衝いたしました結果、予算的に三十三名の新規増員が認められたということでございまして、私どもといたしましては決してこれで十分とは思っておりませんが、現在の情勢下におきまして、他の省庁に比較いたしましては著しく認めてもらえたものと考えておる次第であります。四十一年度は実行上の問題もこれあり、とりあえずこの実人員三十名の増加をフルに活用して独禁法の厳正かつ公正な運用をはかる、こういうふうに考えているわけでございます。
  234. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで厳正かつ公正な独禁法の施行というものが行なわれるかどうか。
  235. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 決して私ども理想的な人員とは思っておりません。
  236. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで、職員一人当たりが現在見なければならない仕事の量について伺いたいのですが、たとえば適用除外のカルテルがある。この独禁法に従えば、自由な競争が行なわれていない場合には、これは自由な競争といいますか、共同行為に参加したり脱退することを不当に制限しないこととか、一般消費者、関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこととか、こういうことが必ずうたわれているわけです。そういうのを監視していく場合に、非常に仕事の量というものが問題になると思うのですが、職員一人当たりで適用除外カルテルは一体どのくらい見ているのか。適用除外カルテルは一人どのくらい見ているのか。不況カルテルにはどうなのか、合理化カルテルにはどうなのか。独禁法についてはどのくらい、一人当たりでは当たっているのか。件数ではどのくらいか。下請代金の支払い遅延の問題ですけれども、これも訴えられたものと、そうでない潜在的なものとありますけれども、これについてもどのくらいの人間が要るのか。あるいは再販売の価格維持契約が非常に悪用されている。その問題についてはどのくらい職員が要るのか。一人当たりの量を、件数でもけっこうですが、言っていただきたい。
  237. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいま一人当たりの件数を割った数字は手元にございませんが、逐次申し上げてまいりますと、一体どの程度の人員でどの程度の仕事をしているかが、おわかりいただけるかと思いますが、私、公正取引委員会に参りまして、まず最初に気がついたことは、下請代金支払遅延等防止法の仕事が非常に大きな事務であるにもかかわらず、人員が著しく少ないではないかということに気がついたのでございます。下請代金支払遅延等防止法の仕事は現在取引部の下請課でいたしておりますが、これが本局で十三人でございます。それで、本局で十三人、地方でほぼ同人数で十三人でございますので、合わせて二十六人、これでどの程度の仕事かと申しますと、親事業者の数が日本全体で約一万、それから事業所数でございますと約一万二千あると考えられます。したがいまして、この人数でもって、下請代金支払遅延等防止法の仕事をいたしておるわけでございますが、親事業者一万と、いわんや親事業所の数一万二千を書面で毎年検査ということはとうていできないのでございまして、一万あるいは一万二千の親事業者あるいは親事業所数に対して、昭和四十年度においては二千五百の親事業所に対して書面でもって報告を取るということをいたしております。したがいまして、四年または五年かからないと全体の親事業所まで書面調査も及ばない、こういう数字でございますので、法律自体はよくできておっても、なかなかこれは、いわばザル法と言われるゆえんではないか、こういう感じがいたしました。  それからなお、独占禁止法違反の取り締まりについてでございますが、これは本局で審査部の三課合わせまして五十六人で現在ございまして、それから地方でこれが十四人で、七十人というのが現在の定員でございます。これでもって独占禁止法違反の審査事件をいたしておるわけでございますが、審査事件は年々ふえてまいりまして、最近では百七、八十件ぐらいございます。なお、これ以外に実際に表へ出てこない独占禁止法違反事件は相当あると思われるのでございますが、全体七十人でいたしておりまして、これは少しく少ないなという感じでございます。  彼此勘案いたしますと、ことに最近のように問題となってまいりました再販売価格維持契約の実態調査などにいたしましても、現在これを担当しておるのはわずか二名ということでございますので、とうてい現状の把握すらなかなかできないという実情でございます。  まあこういう点にかんがみまして、昭和四十一年度は、違法な価格協定の取り締まり等の独占禁止法違反事件、それから再販売価格維持契約の実態調査並びにやみの再販売価格維持行為の取り締まりを強化する、あるいはまた管理価格の調査を強化する等の必要がございますので、先ほど来申しました三十名の実人員の増加を獲得したわけでございます。
  238. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 再販売価格に移りたいと思うのですけれども、再販売価格のほうはいま二名ですね。やみと合わせて二名ですね。それが今度は何名になる予定ですか。
  239. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現在の取引部の取引課ですべていたしておりますので、今度取引部の取引課を二つに分けまして、一つは従来どおりの不当景品類及び不当表示防止法関係の課とし、もう一つの課を、これは再販売価格維持契約を中心とし、かつその他の不公正な取引方法の所管をさせるために課を設けるということにいたしまして、その課の関係で五名の新規増員をお認め願ったわけでございます。
  240. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで、再販売価格の問題でありますけれども、この法律によると、独禁法によれば、かなり厳重な制限をしているということがわかるのです。自由な競争が行なわれていることであるとか、不当な差別をしてはならないとか、そういうことがかなり載っておるわけでありますけれども、現在摘発している状況といいますか、いままで取り上げてきた事件はどういうものがあって、何件ぐらいあるかということを伺いたい。
  241. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 最近新聞にも出ておりますような森永商事、明治商事、和光堂の粉乳の再販売価格維持行為、これに対して目下審判をいたしておりますが、なお昨年来三種の事件を処理いたしております。
  242. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 三件ですね。これまで指定を受けたものと指定の年月日はおわかりになりませんか。
  243. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 再販売価格維持契約が独占禁止法に認められましたのは、昭和二十八年の改正でございまして、これに基づきまして昭和二十八年の九月三十日に化粧品と染毛料——染め毛ですね、染毛料が告示になっております。それから、二十八年の十一月十日に歯みがきと家庭用石けん、それから二十九年の三月十日に雑酒とキャラメル、それから二十九年九月二十日に医薬品、三十年一月二十日に写真機、三十四年二月十日に既製えりつきワイシャツをそれぞれ告示いたして指定をいたしました。ただし、このうち雑酒、キャラメル、それと既製えりつきワイシャツは二月の十四日に指定を取り消しまして、それに写真機は範囲をきわめて縮小いたしまして、もっぱら海外旅行者用免税のものに限ると、こういうふうに改正をいたしました。
  244. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この再販売価格の維持契約、これはかなり現在問題になっているわけです。御存じのように、現在までにスーパーマーケットそのほかで値引いて売られておったものが売られなくなってきたとか、あるいは生活協同組合はこれの契約からはずされているわけでありますけれども、やはり実際問題としては、こういうようなやみの契約をやらない限りはそういうところへ出さないとか、そういうような圧力がかなり大きくなってきておるという話でありますけれども、現在まで指定を受けた化粧品とか歯みがき、石けんあるいは医薬品、こういうようなものについてそのような傾向はありませんか。また、具体的につかまえられたものがあったら、言っていただきたい。
  245. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ちょっと私、御質問趣旨をつかみ得なかったかと思いますけれども、そのような傾向といいますと、あれでございますか、指定された商品でなくて……。
  246. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 指定された商品でも。
  247. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 指定された商品でございますれば、届け出によって再販売価格維持契約ができるわけでございまして、この契約ができますと、もし小売り店が指定価格で売らないというような場合には荷どめなどもできるというようなことになります。ただし、生活協同組合等に対しましてはこの再販売価格維持契約は適用になりませんので、生活協同組合においては再販売価格維持契約の商品を安く売ることができるわけでございます。ただし、こういう組合に対しまして荷どめをした例はございます。これはもちろん不公正な取引法に該当するものでございまして、公正取引委員会といたしましては排除措置をとったわけでございます。そのような傾向は若干あるわけでございます。
  248. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私が聞きたいのは、問題は消費者の立場に立ってものを考えていただきたいということです。現在まで実際の生活を見るというと、どこどこのスーパーへ行けば町で売っている化粧品、たとえばポマード類を見ても定価の三割引きで売っているとか、そういうことが実際問題としてある。薬についても同じように、どこの薬屋へ行けば確かに安かったということがあるわけですが、最近とみに変わってきて、どこへ行っても同じ価格になってきた。実際としては消費者の立場からいえば、今まで値引きがスーパーマーケットでされていたものが、実際スーパーマーケットでも再販売価格維持契約を結んだところもあるというような状態になってきて、消費者保護のためにあのようなスーパーマーケットというものを奨励しなければならぬだろうと思うのですが、それがさかさの傾向になってきている。そうなっていくと、このような現在の物価高の中で痛めつけられるというとおかしいですが、それは消費者だけになるんじゃないか。一度ここで、いままでもこの維持契約の届け出があり、指定をしたものも再検討し直す必要があるんではないか。その点、具体的に、実際利潤があがっているのに、あるいはさらに自由競争としていかれるはずのものができていないという点を検討し直す必要がある。その点はどうなのかということなんです。
  249. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまの御発言が、実は再販売価格維持契約が最近非常に問題になってきた原因でございます。昭和二十八年に再販売価格維持契約が認められましたが、当初はこれを実施に移す会社が比較的少なかったのでございまして、化粧品、それから医薬品の一部等に行なわれたにすぎなかったのでございますが、これがこの二、三年来急激にふえてまいりました。たとえば薬で申しますと、昭和三十八年末におきましてはこの再販売価格維持契約を実施しておりました会社は四十一にすぎなかったのでございますが、三十九年末は五十一になり、さらに昨年末は六十五社になると、こういうふうに再販売価格維持契約を実施に移す会社が多くなりました。これが消費者の目にとまったわけでございます。  ただ、いままでスーパーマーケットでこれこれの医薬品が割り引きされておったのに、急に名前が変わって同じようなものが高い値段になって値引きしないということが、再販売価格維持契約の問題になったのでございます。これは実は再販売価格維持契約というのは、業者にとりましては実はなかなかほんとうはたいへんな仕事でございます。と申しますのは、小売り店をしっかりつかまえまして、そうしてもし小売り店が指定した値段を守らない場合には、これに対するペナルティーを課さなければなりません。したがって、そういう監視機構が相当必要なわけでございます。したがいまして、なかなか会社も手を出さなかったのでございますが、この再販売価格維持契約を熱心に推進した業者の成績がこうぐっと伸びてまいりまして、それを見て他の会社も、これはひとつ本気になって再販売価格維持契約を実施しようかなということで、急に会社の数がふえてまいった。これが物価高のおりから非常に問題になってまいったわけでございます。  もっとも、再販売価格維持契約につきましては、これは一応考え方といたしましては、これこれの商品はメーカーの商標を保護するとともに小売りの秩序を維持するという目的のためにできた制度ではございますが、ただ、自由な競争がメーカーの間に行なわれておるならば、消費者のほうにもそう悪い影響はないのだということでできているわけでございますが、はたして現在の指定しております商品につきまして自由な競争が行なわれているかどうか、これについては大いに再検討の必要があるわけでございまして、ただいままでこの再検討が不十分でございましたが、新年度におきまして、現在指定しております商品について一々実態を洗いまして、もし自由な競争が行なわれていないということになりますれば、この指定の条件を欠くことになりますので、取り消すようにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  250. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その自由な競争が行なわれているということが、これは一番維持契約の中のきびしい条件の一つですけれども、実際石けんの場合はどうなんですか。すでに市場占拠率がかなり高まっているものもある。そういうことになってくると、これは目的にはずれてきているのじゃないか。いま調査するということでありまするけれども、石けんあたりはかなりいわれているわけです。花王石けんが相当の市場占拠率を持っているということは新聞にも報道されているわけですから、その辺の実態はいかがになっておりますか。
  251. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そういう点が実は問題となっておりまして、石けん、洗剤について、もうプライス・リーダーシップが確立されているのではないか、こういう考え方もあります。これは実態をよく調査してみませんとまだ軽々には判断が下せませんので、新年度におきまして、他の品目とあわしてひとつ徹底的に検討してみたいと、こう考えております。
  252. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっとそれは、主査、私としては不満がある。というのは、花王石けんは、非常に市場支配が高まってきたということから、発言力も強くなってきておる。そうしていわゆる生活協同組合であるとか農協みたいな団体に対して維持契約とか価格維持ということを指示している、そういうことから公取の違反事件として取り上げられたわけですね。そこまでの問題になっているのに、これから全部一ぺん調査しなければというようなことでは、これは納得できないのですけれどもね。
  253. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 特定の事件に関する問題でございますが、これは自分の再販売価格維持契約の商品を扱わないところには他の一切の商品を扱わせないということにした事件でございまして、これは不公正な取引方法にまさに該当するわけでございますが、ただ、お話の会社のものが、はたしてこの石けん、洗剤においてそういうような実質的に競争を制限するような地位にあるかどうかということは、なお検討を要するわけでございまして、何ぶんにも二人の人員ではとてもそこまで手が及びません。そこでとりあえず、当面あまりいままで行なわれていない品目について三品目削除し、一つの品目について大幅に制限した。他の品目についてはひとつこれから徹底的に検討していこう、こういう態度でおるわけでございます。
  254. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのでよくわかりますけれども、問題は、それだけ契約をしていないところには圧力が加わるとかなんとかいう、発言力が強くなったということは、逆にいえば、もはや市場支配というものが確定的になっているということじゃないんですか。
  255. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) まだそこまではいかないと思います。
  256. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この再販売価格維持契約が認められたのは、言いかえれば、中小企業、いわゆる小メーカーの過当競争防止にあると私は思う。一つには、過当競争もあるでしょうし、それと価格を指示することによって、その中小企業保護を与えていきたいというところにあったろうと思うのです。ところが、実際は、もうテレビやなんかでかなり大幅に商品の名前が出ていると、そういうようなところに対して維持契約をする。維持契約をしたのを指定するということになると、これは実際問題としては公正取引委員会の姿勢としては好ましくないんじゃないか。そういう点についてはどうなんですか。
  257. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまのお話は、まさに再販売価格維持契約の本旨に触れる問題でございます。もともと再販売価格維持契約というのは、独禁法の性質にはそぐわないものであります。そぐわないものでありますので、一定の場合これを適用除外ということで、政府の監視監督のもとで認めているわけでございますが、これは各国ともそういう考え方になっておりますが、その考え方を申しますと、とにかく商標制度の発達に伴いまして、このような商品が、メーカーが宣伝をし、そしてメーカーが実際に価格と品質について保証する地位にあるという考え方になってきているわけでございます。小売り店で売っているが、それはメーカーが自分でもって大きな広告をし、そして何々会社の何と言えばすぐ皆もわかると、こういうような商品でございますと、そこに小売り店のほうではえてしてこれをおとり廉売に使いやすい。おとり廉売に使われますと、それはメーカーの信用を傷つけることになる。そこで、メーカーの信用を保持するとともに、いわばおとり廉売などが行なわれますと小売り店間における流通市場も乱れるというようなことで、その点も頭に入れまして再販売価格維持契約という制度が世界各国に、独禁法のあるところでは適用除外として大体認められているわけでございますが、もともとこれは消費者の立場からいえば問題のあるものでございます。ただし、これは自由な競争が行なわれておるならば、こういう品物はメーカー同士の競争なんだから、小売り店は頭に入れないで、メーカーが競争しているから、メーカー同士に自由な競争が行なわれておるならば、末端の価格もお互いに牽制されて競争が行なわれて、消費者にも迷惑がかかることはあまりないだろうというような考え方で、独占禁止法の適用除外になっているというわけでございます。  ただし、これはヨーロッパにおきましても最近の物価問題からだいぶ問題になりまして、一般的にいままでヨーロッパ、ことに英国ではほとんど野放し状態になっておりましたのを、全部規制を強めております。ドイツでも同じく規制を強めておる。そういう傾向にございます。ただ、日本は幸いにしてと申しますか、非常に適用除外してやっておったのが少ないという点にまだ救いがございます。しかし、消費者を守る立場からいえば、これは非常に問題のある制度。ただ一方、ただいま申しましたような、メーカーの商標の保護、それから小売り店間の流通市場の維持という問題は依然としてある。両者のかね合いで考えなければならぬ問題かと思います。
  258. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのお話で、大体諸外国においては、欧米においては、この再販売価格維持契約というものはどんどん廃止の方向に向かっていると。日本だけがここのところえらく契約ブームになってきているという、さかさの現象になってきているわけですね。そういうブームを起こしていくのも、結局、言いかえれば、公正取引委員会がその契約をしたところを指定したと。指定した九品目があるわけでありますけれども、指定をした、そういうことから、安心して、いわゆる価格カルテルとはいかないまでも一種のカルテル形態で、各企業がだんだんまねをして、薬品も四十一社が六十五社になるというように変わってきているのじゃないですか。ですから、公正取引委員会が逆に物価引き上げに利用されている、そういう面はどうなんですか。
  259. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 価格引き上げに利用されているとは考えませんけれども、もともと法律でもって再販売価格維持契約という制度は厳として認められているわけでございますので、この法律の不備とも申せるかもしれませんが、この法律の範囲内において、メーカーはもし条件が当てはまれば公正取引委員会に届けて再販売価格維持契約もできるわけでございます。ただ、先ほど来申しましたように、この制度は消費者にとって相当問題のある制度であるので、これはもう一ぺん再検討する必要もあるということは、私ども痛切に感じているわけでございます。ただ、法律に認められていない再販売価格維持行為、これは目下のところどしどし取り締まっていくよりいたし方ないがゆえに、制度的には、はたしてこの再販売価格維持契約を現在認めております品目が適当であるかどうかという点について、今後再検討したい、こう考えているわけであります。
  260. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 じゃ、ちょっと法律のほうに入りますけれども、当該行為が一般消費者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りではないというようにはっきりとした制限があるわけですが、その「一般消費者の利益を不当に害する」というのは、どのようなものを言うのですか。
  261. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この点は私はいい規定だと思っておりますが、この規定を利用いたしまして、今後、再販売価格維持契約、現在行なわれております維持契約について、実態を調査し、もしこのただし書きに該当するような場合には、これは適法な再販売価格維持契約と認めないと、こういう方針でいくつもりでございます。  ただ、何と申しましても、私どものただいままでの不備はおおうべくもございません。  それは再販売価格維持契約を実施いたしますその届け出の規則、これを何とか改正しなければいかぬ。届け出規則が非常に実施の状況を具体的に把握し得るようにできておりません。したがいまして、まず第一に、この再販売価格維持契約の届け出規則を改正する必要があるということを考えまして、ただいま作業いたしているわけでございます。そうして届け出規則を改正することによって、再販売価格維持契約の実施状況を常時監視していくと。そうしてたとえ指定された商品でありましても、その結果、この行為が一般消費者の利益を不当に害するような内容になっている場合には、これは適法な再販売価格維持契約として取り扱わない、こういうようにいたす方針でございます。
  262. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その届け出の規則を変更すること、まあ常時監視ができるようになっていることが一つのあれになっているようですが、そのほかに特に規則として変更を意図されているものはない、こういうあれですか。
  263. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 規則の内容は、ただいま事務局で検討いたしておりますが、たとえばこの価格のマージンなどもよく把握できるようにいたしたい。それが把握できませんと、はたしてそれが不当に一般消費者の利益を害しているかどうかということもわかりませんので、こういうことも把握できるようにいたしておきたい、こう考えております。
  264. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほど商品の、いわゆるメーカーの商標ですね、そういうものを保護するという目的からも、この契約というものの効果があったと、必要性もあったと、こういう話だったわけですが、実際頭を洗う何といいますか、シャンプーの最近のやつ、ああいうのを見ていましても、どんなメーカーもいわゆる商標どおりの製品と、それから別工場——そのほかにもう一つ工場をつくりまして、品物の質を落として、価格も落として、まあそうたいして変わらないという程度のものでありますけれども、値段は大幅に違う、こういうものを第二工場みたいなもの、あるいは別の商社のようなものをつくりましてやっているという実態がかなりあるわけですね。そうすると、メーカーは、自分の商品を守ると同時に、それを売り込むときに、それよりも安いのと言われれば、それではここの製品をどうぞと言いながら、その製品は安いが、同じ会社の資本である、重役陣も同じ重役陣というか、そこから派遣された役員でできておる、そういう場合がかなりあるわけなんです。だから、メーカーとしては自分で独自に商標の保護というのはやっていると思うのです。だから、この独禁法の第二十四条の二の項がなくても、私はやっていくんじゃないかと思うのですが、その辺はどう思っておられますか、実態から見て。
  265. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) その辺は考え方の問題でございますが、結局、再販売価格維持契約が認められましたのは、こういったメーカー品、有名なものにつきましては、小売り店でこれをおとり廉売に使いやすい。そうすると、自分のところの商品がこんな安値で売られているということになりますと、やはりメーカーの信用を傷つけることになる。一方また、おとり廉売をやることによって一般消費者を引き寄せて、場合によったら他の高いものをつかませる危険もある。こういうことになりますと、小売り秩序の問題になるわけです。こういう見地から、もしメーカー同士の間で横の競争が自由に行なわれておるならば、消費者の利益もそう害することもないというたてまえで認められておるわけでございます。これに対しましては、先ほど来申しましたように、いろいろ問題もあるわけでございます。
  266. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それはおとり廉売のことはよくわかるのですが、メーカー自体としてそういうように対抗策を商標を守るためにやっているというのが現実の姿ですよ。そういう事実、そういう状態というのはかなりあるのです。それから、あるもについても今後はそういうものがあるんだから、こういう維持契約というような項目については考え直していくなりする必要があるのではないか。できれば独禁法から消していくというような考え方をするべきではないか。むしろ商標を守ろうとするならば、不当に廉売されないように、安い第二次的なものを売るということも考えられるわけです、そこの会社で徳用びんみたいなかっこうで。そういうこともあると思う。その辺はどうなんですか。
  267. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) たとえば、再販売価格維持契約が認められませんと、そういった安いものも、さらにまた廉売されるおそれもあるわけでございます。ただいま再販売価格維持契約が認められておるのでそういったことがなくなっているということには一応思っております。ただし、これに対してはやはり消費者との関連からいろいろ問題点があるということは、あくまでも私ども十分承知いたしておるわけでございます。
  268. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この維持契約でもって現在勧告しているのは三件という話でありますけれども、勧告しているのは三件なんですか、それとも審判をしているのが三件なんですか。
  269. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この正式に認められていない再販価格維持行為を独禁法違反としてただいま審査いたし、それからさらに審判にのぼしているのが三件でございます。
  270. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、勧告しているのはどのくらいでしょう。
  271. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまの審判の三件も、ともに当初はまず独禁法上の勧告でいったわけでございますが、勧告を応諾しないで審判開始になる。現在審判をいたしておるわけでございます。勧告だけですでにとどまって応諾した例は、いままで二、三ございます。
  272. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 二、三……。何と何ですか。
  273. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) かん詰め関係、それから先ほど問題となりました会社の生活協同組合に対する荷どめの問題でございます。
  274. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、これは消費者の立場から考えれば不当なものだとしか映らないのです。現在のところ、スーパーマーケットに行きましても、そういう状態、いままで安く売られていた化粧品が上がってくる。石けんについても、いままでは何個か一ぺんに買えるほどでよかったものが、最近はどこへ行っても値段が同じであるというような不平というものはものすごく多いわけですから、先ほどやられるということを積極的にやっていただきたいと思うのです。それをやりあげていくのに、先ほど言ったように五名追加して七名でやり切れるのですか、これは。
  275. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 必ずしも十分とは思いませんが、目下のところは与えられた人員をフルに活用して、これを効果的に運用したいと考えております。
  276. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 七名のうちで、地方の事務所ですか、地方事務所で当たっているのはどのくらいなんですか。これは全部本局で七名ですか。
  277. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 本局で七名でございます。
  278. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 地方ではこの再販売価格維持契約行為あるいは再販売価格維持契約の吟味といいますか、あるいは不当を摘発したり、その実際に消費者の利益をそこなっていないかどうかということを見るのは、何名ずついるのですか、各地方事務所に。
  279. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 地方には再販売価格維持契約の実施を担当いたしておる職員はおりません。ただ、やみの再販売価格維持契約の摘発という問題になりますと、これは審査の人員でございますので、この人員は中央で他の独占禁止法違反の事件と合わせて五十六名、それから地方で十四名、七十名の審査関係の人員がおるわけでございます。
  280. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 では、次に共同カルテルですか、独禁法二十四条の三の不況の共同行為の許可あるいはそのほかのことについてちょっと伺っていきたいのですが、鉄とそれから紡績について、この中に「その共同行為に参加し、又はその共同行為から脱退することを不当に制限しないこと。」とあるわけでありますが、鉄の場合にはかなり強力に、あるいは綿の場合もかなり強力な運動がなされたように聞くのですけれども、その点を不当に制限しなかったのかどうか。綿というか、繊維の場合ですね。
  281. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 鉄の場合は、通産省が行政指導で粗鋼減産の勧告をいたしておるわけでございますが、綿紡関係も結成にあたりましては、その共同行為に参加またはその共同行為から脱退することを不当に制限はいたしておりません。ただ、この三月末で綿紡の不況カルテルの期限が切れるにつきまして、延長するかどうかで業界の内部でいろいろ問題になったことは事実でございますが、ただいま一致して延長の認可申請がただいま出ております。
  282. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 非常にふしぎなんですが、いわゆる通産省の行政指導によるカルテルというのは、これは独占禁止法には違反しないのですか。
  283. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは行政指導は通産省が直接各会社に対して勧告するものでございまして、共同行為がもしその中にあれば、これは独占禁止法違反ということがございますが、業界が、かりに主務官庁の行政指導というかっこうをとりましても、あらかじめ業者間で共同行為があるということになりますと、これは独占禁止法違反ではございますが、ただいまの粗鋼の減産勧告は通産省が直接業者に対して指示いたしておる、こういう関係でございます。
  284. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それでは、住友ですか、あの行政指導から私だけははずれたいと言ったのは。通産省の次官が、輸入石炭の割り当てをしないとかいう圧力をかけたという話が伝わっておるわけですが、そういう行為等から考えると、ただの各社ごとの行政指導というようには考えられない。新聞等を通じて見ると、鉄鋼業界が集まっていろいろ協議をしてなされたように思う。その点はどうなんですか。
  285. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは、その点は通産省でも業界の意向を無視してやるわけにはいきませんが、結局最終のところ通産省の裁断でもって通産省が指示した。そこでああいうふうな問題になっているわけでございます。もちろん、いま片づいている問題でもございますが。
  286. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私が申し上げるのは、鉄鋼業界の意向を無視してはできないことはわかる。やはり鉄鋼業界が同じように粗鋼減産の計画を各社がのんだわけでしょう。のまなければああいうことはできないわけですね。
  287. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはそれで、お話の住友金属工業が従わないということで、そこで通産省が説得して、そして最後には住友金属も納得したわけでございましょう。しかし、えてしてこの行政指導による減産勧告については、いま言ったような問題点は確かにございます。そこで、公正取引委員会はこのような方式の生産調整は好まないところでございます。
  288. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 好まないのはわかりました。好まないだけでは、独占禁止法の精神からははっきりとはずれてきているように私は思うのです。ただ、幾ら行政指導で各社別にやったからといったって、鉄鋼業界へ、おまえのところでどのくらいのめと、お互いに減産をするならばどの程度ということを生産量をきめて、それを各社が納得をし、うちのほうが少ないとかあそこが多いとかということなしに、納得をしなければでき得ないことでしょう。そうすると、もう共同行為になっていませんか、それは。
  289. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) その辺のところは微妙でございますが、この行政指導によるところの勧告操短というのは、かつてはこれはたいへん多く行なわれたのでございます。昭和三十四年あたりはたしか二十八ぐらい勧告操短がございましたが、しかし、これはえてしてただいま言ったように独占禁止法の問題がある。そこで、公正取引委員会といたしましては、もしそのような生産調整を必要とする事態にあるならば、それは独占禁止法上の不況カルテルの要件にも当てはまっておるであろうから、そういう場合には不況カルテルの独占禁止法の正式のルールにのっとって不況カルテルをやってもらいたいということを強く主張してまいりまして、そこで、池田内閣時代からその方針を得て除々に減らしていって、ゼロにまでいったわけでございますが、たまたま昨年の粗鋼の減産勧告になりましたのでございますが、この際におきましても公正取引委員会といたしましては、あくまでも不況カルテルでやるべきだということを主張をいたしましたのに対しまして、通産当局においては、これは鉄鋼業者が約九十社もあって、なかなかまとまりにくい、しかも粗鋼の減産は早急に実施する必要がある、しかもそれを景気振興のてことして使う必要があるのだ、通産省の責任においてやるのだということでございますので、公正取引委員会は、それならば、これは独禁法は通産省を押えるわけにはいきませんので、通産省がもし行政指導で行なうというなら、その事態の推移を見ましょうということで、ただいままでに至っておるわけでございます。
  290. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 九十社があって、非常に忙しいしたいへんであると、急ぐことでもあるから不況カルテルというようなところまではいきません、そう言いながら行政指導で減産の態勢ができ上がった。結果としては、商況、市況というものは非常によくなってきている。鉄鋼の価格は上がっております。そういう結果を生んでいるでしょう。そんなに忙しいことであり、九十社あって、これが押えられないというものであれば、独占禁止法の公取が扱わなくても、通産省ですらまとめることは不可能なはずじゃないですか。ずいぶんそこは矛盾がある、疑問がある。
  291. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そういう点は主管の通産省にもお聞きいただきたいのでありますが、通産大臣は、このような減産勧告は例外中の例外である、そして緊急に実施する必要あるところを、しかも九十社もあって、中のまとまりも非常に悪い、したがって通産省の責任において指導していくのだ、こういうお話であったわけでございます。
  292. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 公取委員会の活動が、だから私は先ほど申し上げたんですが、小さいプロパンガスの価格協定であるとか、そういうようなものは取り上げているようでありますけれども、そういう基幹産業には手を触れられないのですか。自動車教習所のような特殊な団体については、捜査の対象としてすぐ動かれるようでありますが、基幹産業には、特に鉄鋼等については、これは通産省のおやりになることであるから手を触れないということである。政治的に公正取引委員会は動いているわけですか。
  293. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そのようなことは毛頭ございません。
  294. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 毛頭なければ、なぜ不況カルテルにさせないのですか。
  295. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはおかしいですよ。不況カルテルというのはこちらがさせるのじゃありません。業者がお互いに申請してくるのですから、申請もないのに不況カルテルをこちらで認可するわけにはいきません。
  296. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 だから、申請をさしたらいかがですか。
  297. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それは業者のまとまりが悪くて申請しないということなんで、通産省で行政指導をされているわけです。
  298. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これはほんとうは通産省に聞くことかもしれませんけれども、しかし、通産省がそういうような行政指導で、特例中の特例ということで一つやったわけです。ということは、今後もそういう特例中の特例としてやるかもしれぬということが残っておるわけです。可能性が残されたわけです。悪くいえば、公正取引委員会を踏みつぶしてというようなかっこう、無視してというようなかっこうで、そのような生産調整に踏み込んでいったということになれば、共同行為を行なったということになっているんですから、だれが見ても、共同行為。それは全然個々別々な行為でございますというわけにはいかぬだろうと思う。ということになると、公正取引委員会の存在意義が私はなくなると思う。その点でもっと強く通産省に対しても言ったらいいと思うし、向こうのことだからしかたがありませんということでいるのか。  それが私が最初に、最近の公正取引委員会のポーズというものは大衆のほうを向かないで通産省のほうを向いているのではないかと言うんで、そういう懸念があるからそうお伺いした。もっとこれは確実に、不況カルテルと同じじゃないかということで、鉄鋼業界についてもあなたのほうで、き然たる姿というものを、通産省にもどこにも見せることはできないのですか。
  299. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そういうようなことでございますので、これは私の時代ではございませんが、前任者の時代に、粗鋼の減産勧告を始めたいといったときに、それならば不況カルテルにすべきだと主張いたしたのでございますが、通産省は、あくまでもこれは緊急でどうしても景気振興のてことして急速に実施する必要がある、したがって自分の省の責任においてやるんだということでございますので、何も独占禁止法は通産省自体を縛ばるわけではございません。そうして通産省が自己の責任においてただいまやっていらっしゃる、こういう状態でございます。それに対してもちろん私どもは、これは好ましい状態とは考えておりません。
  300. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その点はわかりました。私が非常におそれるのは、そうすると、非常に緊急を要する事態であるからということで、不況が続くとすれば、そのほかの中小企業についてのカルテルも通産省が指導して、絶対責任を持って生産調整をするからよろしいと、こういうふうになったときに、やはり手をこまねいていらっしゃる気でございますか。
  301. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはケース・バイ・ケースによって判断いたすよりしかたがないわけでございます。おそらく通産省もそのような中小企業のカルテルについて一々そういう行政指導をやるなんということは私はとうてい考えられない。いままでの通産省の折衝の態度からいっても、鉄鋼はほんとうに緊急で、しかもこれを景気振興のてことして急速に政府としてもやる必要がある。しかも八十五社、九十社近くもあって、お互いの共同行為というものはなかなかとまりにくい、だから通産省の責任において急速に指導するんだ、実施するんだ、こういうわけであったわけでございます。こういうのがたびたび行なわれるとは私ども考えておりません。もちろん、そのようなことのないように厳重に私どもは見守っていくわけでございます。
  302. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここでひとつ、変なうわさを聞いているので、ここで確かめておきたいんですけれども、自動車タイヤのカルテルのとき、このときに公取がいままでの計算と違って赤字をわざと計算するようにしていったというようなうわさが出ているわけです。その点は事実はいかがですか。
  303. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは赤字をわざとごまかしたのではございません。不況カルテルの二十四条の三の要件に、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」という、この条項にはたして当たるかどうかという問題でございます。実は平均生産費の解釈の問題でございます。大きな平均生産費の解釈の問題といたしましては、従来の取り扱いといたしましては、そういう特殊な事例はなかったわけでございますが、加重平均によってやっておった。ところが、自動車タイヤの不況カルテルの申請がありましたときに調べてみますと、ある一社のみが特に強大な力を持っておって、シェアも大きいし、しかもその会社は黒である。したがって、もし従来のやり方をいたしますと、この平均生産費を下回らない他の五社は全部赤字だ、そういった場合に、独占禁止法のたてまえから申しまして、いままでどおり加重平均でやるのがいいのか算術平均でやるのがいいかということは、これは部内でも当然大きな問題になったわけでございまして、これは前任行時代ではございますが、その際にいろいろ議論いたしまして、このような状態においてもし従来どおりこれを加重平均でやるならば、これは不況要件に当てはまらないということです。その結果どうなるかというと、一社のみ栄えて他の五社は事業の継続は困難だ、こういうことになりますれば、独占禁止法の精神にはそぐわないということから、これはこういう場合には算術平均でもよいじゃないかということで、前任者時代にそういうふうにいたしたわけでございます。  この点、私もなるほどもっともと思いますし、もしいままでの単純な取り扱いでもってこれを加重平均でやったならば、これは不況カルテルはできない。その場合に一社だけ残って他は継続困難だ、こういう事態になれば、独占禁止法の精神にも実は沿わない。そこで、そういうような解釈をとったのでございまして、この点は、私もあとに参りまして、その説明を聞いて、なるほど、もっともだと、私もそういうふうに思ったのです。
  304. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いわゆる加重平均でいけば黒字になる、しかし単純平均をとることにしたわけですね。そうすると、二千二百円の赤字になった——三万四千円ぐらいの黒字が出たということです。結局一社といえばブリヂストンですね。ブリヂストンが市場の支配も半分ということですが、市場占拠率も大きいし、大量生産をやっているということから黒字が出たわけですが、それをなるほど単純平均にすれば、ほかのところもよくなりますけれども、しかし今度は一社だけは不当な利益ということになってきませんか。不当に何というか、いままでも経営の上でいけばいいわけですから、そうすると、平均生産費というものが高くなっているのが実際は低いわけですから、その分だけ一社だけ非常に援護をしたというかっこうにならないですか。その点のところはどうしますか。
  305. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それよりも他の五社が事業の継続が困難ということに私どもは重点を置きます。もちろん、ある一社が強大になったというのは、これは戦後合理化の努力を怠らなかったためで、他の五社に出おくれたわけです。出おくれたのは、ほんとうは他の五社に責任はあるわけです。あるわけですが、とにかく緊急避難という状態で、他の五社はもうあぶないというわけで、強力に一社を説得して、そうして不況カルテルの認可申請をしてきたわけです。私のほうといたしましては、その内容をよく見ますと、これはやはりいままでどおりのやり方だったらかえって独占を助長するということになって、したがって、他の会社も目下合理化努力でやってはおりますから、しばらく緊急避難的な機会を与えるべきだ、こう考えて、ただいまのような平均生産費の解釈をとったわけでございます。これは前任者がまことにいいことをされたと私も思っております。
  306. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これがわれわれの側から見て、今度は国民の側からということで考えてみると、そういうようないまだにカルテル結成の必要もないところも説得されて入ったという形ですから、国民から見ると、公取委員会の不信ということになるわけですね。むしろ活発な活動をやられても、そういうような黒字の出ているところまで不況カルテルに持っていった、おかしいじゃないかという疑問が出てくる。
  307. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはひとつ誤解のないようにしていただきたいのですが、私のほうで説得したわけじゃないのです。不況カルテルを業界が結成するについて、ある一社が、自分のところは入りたくないと言った。そうすると、他の五社が、自分たちを助けると思って入ってくれということで結成をして、そして公正取引委員会に認可を申請してきたという事実があるのでありまして、公取といたしまして、これは説き伏せて入れたということではありません。公正取引委員会は、むしろアウトサイダーのできることを好みこそすれ、これを排斥するわけではないのであります。  もともと、独禁法の不況カルテルというのは、独禁法の適用除外でございますから、本来は公正かつ自由な競争を促進することが目的でございますが、他の経済政策の側からカルテルの結成もやむなしという場合には、法律で認めておるわけであります。いまの不況カルテルはたまたまそういう場合に当てはまるわけであります。
  308. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは公正取引委員会がブリヂストンを説得したと私は申しておりません。業界が説得してということを申し上げたわけです。こういう市場占拠率が五割をこえているそういう巨大なメーカーが一つあって、あとは弱小メーカーであったために、それはやむを得ず不況カルテルを認めざるを得なかった、あとの五社が悪かったからと、こういうことですよ。  そうすると、同じような例がこれは将来起きるかどうかわかりませんけれども、市場占拠率が八割のところと、あとは三%くらいしかないのがたくさんある、その三%を助けるために八割のところを不況カルテルに参加させる、そういう申請が出てきたときに、これを許可する、こういう前例にはならないですか。
  309. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それは具体的の場合においてそれぞれケース・バイ・ケースに、はたしてこの要件に当てはまるかどうかを検討するよりほかにしかたがないわけであります。
  310. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、国民の目から見るというと、公正取引委員会がいわゆる大企業擁護というような感じに最近変わっている、こういう声が出てくるのはいまのようなことからだと私は思うのです。その点はさらに今後はっきりしていただきたいと思うのですね。先ほどの問題、いわゆる鉄鋼カルテルの問題についても、行政指導が行き過ぎていれば、どっかでもって、あるいは裁判所が扱うべきことである、このように委員長説明になったこともあるようですが、そういうようなことでなく、積極的な発言というものをなさる、こういうように私はしていただきたいと思います。  それから次に、投資調整ということがありますけれども、そういうカルテルというものの実態はどうなんでしょうか。
  311. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 投資調整と一言に申しましても、いろいろな意味があるかと思います。自主的に自分でもって業者の方が業界の動向を判断して調整する、これはほんとうの自主の投資調整、これが一番好ましいわけでありますが、業界がその情報を交換して、お互いにその情報の交換に基づいて自主的に判断して投資を調整するならば、あえて独禁法違反ということにはならないわけであります。ただし、やはり業者の合意によって投資を制限するということになりますと、独禁法の問題が出てくるわけであります。
  312. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 具体的な問題について伺いたいのですが、北海道においては内地に比べてセメントがトン当たり千円は高い。これに対して公正取引委員会の札幌地方事務所が動き出した。その理由は、本州のうちの東北地方と北海道とほとんど変わらないのに、値段が千円高いということはどういうわけであろうかということ。その点の実態調査についてはどうなっておりましょうか、報告していただきたいと思います。
  313. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これはいわゆる北海道価格の問題でございまして、北海道につきましては、昔から、遠距離にございますので、運賃その他の要素を加算いたしまして、特別内地よりか高い価格ができております。これについて、はたしてそれが独禁法上の問題になるかどうかという点につきましては、よく内容を検討してみる必要があるわけでありまして、もしそれが業者間の協定によってそういうことを維持しておるならば、独禁法違反ということになります。自然な競争によりまして北海道がおのずから高くなっていく、あるいは昔からの植民地的な風潮から値引きはしないというようなことになっておりまするならば、これはあえて独占禁止法違反という判断は下せないわけでありまして、北海道の問題につきましても私どものほうで一応調査いたしましたが、ただいままでのところ独占禁止法違反というような結論は全般的に出ておらないわけであります。
  314. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで、北海道でつくったセメントが東北地方へ行くと、道内で売っているより千円安いという現象は、これはどういうふうに説明したらよろしいですか。
  315. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはおそらく需要供給の関係で行なわれるわけであります。たとえば、内地から北海道へ送る場合には、運賃を加算して高くなる。しかし、内地ではそれが安いという場合には、もし北海道の業者の人が内地と競争する場合には低くしなければならぬということで、これは需要供給の原則からも出てくるわけであります。ただし、そのようなことが業者の共同行為によって行なわれているものなら、価格協定ということになって、独禁法違反というこういう問題を生ずるのであります。
  316. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは業者間協定がないかもしれませんけれども、道内でつくったセメントが、それが北海道より東北へ持っていったときにトン当たり千円も安く卸されるということは、どう考えてもおかしいと思わないですか。これは輸送すればするほど安くなるみたいなことで、先ほどの委員長の話は、輸送すれば高くなるんだと、北海道道内へ持っていく場合は。ところが、北海道から持ってくる場合は安くなる。経済の需給の関係からそうしている。そうしているにしても、千円足さなくてもやっていけるわけですから、そうなると、道内へこの内地の本州のほうから入ってくるセメントが内地の値段より千円高い。したがって、それに合わせて道内のセメント工場のほうも千円高く卸している。ちょっと、そうなりますと、共同行為的なものでないにしても、業者間協定的なものでないにしても、おそれは出てきませんか。
  317. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはプライス・リーダーシップという問題になりまして、そういう点は確かにございます。普通に考えてみますと、北海道で——もと北海道ではセメントはつくっておらなかった、一カ所しか。内地から入ってきた。内地から入れて充足する場合には、やっぱり高い値段で売らなければならない。そのうち北海道でもセメントができるようになった。その場合、内地から来るセメントの価格がたとえば七千円なら七千円としますと、それに歩調を合わせて北海道から出てきたものもその値段で売るということになるわけです。逆にそれを内地で売れば、七千円では売れないから下げる。競争原理からそういうふうになっておるわけですが、これはいかにも北海道の特殊事情で、おかしな点は多々あるかと思います。
  318. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのおかしな点が多々あるというのに対して、いままでのところでは違反は認められないというけれども、しかし、まあ勧告までいかないにしても、ゼスチュアくらいはできないのですか。
  319. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 残念ながら、公正取引委員会は価格統制機関ではございません。あくまでも価格を統制するものではない。その点はひとつ十分に御了解いただきたいと思います。独占禁止法の運用によって、もし価格の騰貴が防げるなら、私どもはぜひいたしたいところでございますが、ただいま言ったような状況でございますと、これは価格協定がなければ取り締まれない、こういうことでございます。もともと北海道では、私多少存じておりますが、化粧品とか医薬品、これは再販売価格維持をやっていないものについても値引きをしないということになっております。内地から札幌へ行った人たちの家族が非常に悩んでいるわけです。どうして北海道へ来たら薬屋さんは値段を引かないんだということになってくる。これは昔からのその土地の習慣もあるかと思います。しかし、これをもって一がいに独占禁止法違反というわけにはいかないわけであります。
  320. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここでこれからの独禁法関係として特に重要になる問題ですが、企業合併がものすごく現在進められている。その企業合併の問題については、前の委員長が発言したものには、マーケット・シェアが二五%から三〇%以上になるものは合併を認可をしたくないような意向があったようでありますけれども、現在としては、合併に対して公取としてはどのように考えていらっしゃいますか。
  321. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) おそらく前委員長もお話のようなことは言わなかったかと思います。ただ、公取の従来の態度といたしましては、合併の基準、合併を承認できない基準といたしましては、独禁法の十五条で「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、それからもう一つ、「当該合併が不公正な取引方法によるものである場合」、この場合合併ができないことになっておりまして、特に第一項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」というのはどの程度であろうかというのが問題でございまして、これに対しましては、従来から公正取引委員会といたしましては、これはケース・バイ・ケースによって判断しなければならないが、一応シェアとしては二五%から三〇%ぐらいになると一応の危険点になるということで説明いたしております。ただし、それ以下のシェアの場合でも、他の業者が弱小ばかりであって、そしてこの合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することができることもあります。その場合には、それ以下のシェアでもやはり合併は認められない。それからまた、二五%なり三〇%以上のシェアになる場合であっても、たとえば他の競争会社の事情、それからまた取引する相手方の事情、それからまた商品の性質、それから輸入品との関係、こういった関係を総合的に判断いたしまして、一定の取引分野における競争を実質的に制限するかどうかということをいままで判定しておるわけでありまして、具体的にケース・バイ・ケースによって判断するよりいたしかたない。ただ、危険なラインとしては、シェアとして二〇%ないし三〇%程度が一応あげられる。なお、具体的にはケース・バイ・ケースで判断するよりほかにいたしかたない、こういう態度でございます。
  322. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 昨年の三菱重工の合併はどういうような基準で認可ということになったのですか。
  323. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 三菱重工の場合は、過度経済力集中排除法によって分かれました会社の合併は重大な問題でございますので、特に公聴会など開きまして広く意見を聞いたわけでございますが、その結果、新三菱重工業、三菱日本重工業、三菱造船の合併につきましては、一応公聴会を開きまして検討いたしました結果、本件は自動車を除いてはいずれも注文生産品であり、かつ資本財であって、見込み生産品または消費財とは競争条件をかなり異にする。すなわち、マスプロが困難であること、それから需給の変動が多いこと、それから競争各社とも特殊な技術を持つ場合が多いこと、それからまた需要者の立場が強いこと、それから需給の系列が存在することなどの市場支配を困難にする要因が認められる、こういうことで、究極におきまして一定の取引分野における競争を実質的に制限することにならない、こういうふうにして認定しておるわけであります。
  324. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それじゃ、日産とプリンスの合併の認可はどうなんですか。
  325. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 日産自動車とプリンスの合併につきましては、世上に話が出ておるだけで、公正取引委員会にはまだ届け出もされておりませんので、調査いたしておりません。
  326. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その場合もおそらく、先ほどの市場占拠率ですか、シェアですね、二五%、三〇%をこえるであろうということは想像されようと思いますが——現在はこえておるかどうかわかりませんけれども、だんだんといわゆる自由競争の形から独占、寡占へと移っていって、まあ競争というものが終止符を打たれるような心配が出てくるわけです。有効競争が起きないということになれば、企業の独創性も失われてくるし、また消費者に対しての圧力というものもかなり大きなものにならざるを得ない。いまのところは、日産、プリンスについては申請もないというわけで考えてもいらっしゃらないのか、それとも基本的には、大体あれだけ大きくニュースで騒がれておるようなことですから、こういうような考え方でいこうというような基本的な判断の基準というようなものはお持ちじゃないですか。
  327. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは全然私どものほうにアプローチがございませんので、アプローチがありまして、それからいろいろ資料を整えてもらって検討するという段階でありますので、まだ私どものほうでは検討もいたしておりません。
  328. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 結局、そういうような重工業関係あるいは板ガラスみたいなものがもっとだんだんまとまってくれば、どうしても管理価格的にならざるを得なくなってくる。特に最近板ガラスについては公取が目をつけておるというような話を聞いておるのですけれども、その点の管理価格等については何かありませんか。
  329. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) まあ管理価格ということは、いろいろことばは使われますが、お話のような意味でございますと、寡占状態における一つの業態の中における価格、生産性が上がってもなかなか値段が下がらない、こういった問題であります。それでございますから、寡占というのは私どもは十分警戒しなければならぬ問題だろう。それから、ただ寡占なることによってこれは合併も制限するということはできません。その事態に応じまして、一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるかどうかを具体的に判断しなければなりません。えてして寡占状態になりますと、業者間の競争というものは行なわれやすくなる、業者が少ないですから。その間に価格協定なども行なわれる危険があるということでもって、たとえ寡占ということが国際競争力を増すために必要だというような議論がありましても、私どもといたしましては、独占禁止法の見地からその点の独占禁止法違反の問題を十分監視しなければならない、こう考えております。
  330. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、合併については、公正取引委員会としてはそういうようなトラストというようなものについては明確な基準というものは現在ないということですね。
  331. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 具体的にこれこれとかけるような基準はございません。また、そう画一的に運用すべきものではないと思っております。先ほど申しました状況を総合判断して、その上で十五条に該当するかどうかを検討すると、こういうことでございます。
  332. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その第十五条に、「合併をしてはならない。」とありますけれども、その「合併をしてはならない。」というところが、制限というものがほかに比べると非常にゆるいようである。特に、先ほどの話のように、寡占だけをもって云々と、それは確かにバターのように一社で九〇%以上のマーケット・シェアを持っておるものもありますから、そういうようなものもあるでしょう。しかし、だからといって、国際競争力強化のためにはマーケット・シェアがかなり大きくなってもやむを得ないというわけにはいかないでしょう。だから、もう少しはっきりした基準というものをつくるなり、法を改正していくなり、あるいは規則のほうか政令のほうか知りませんけれども、やるなんというわけにはいかないですか。
  333. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それは非常にむずかしいと思いますが、世界各国の合併の取り扱いにつきましても、具体的なしゃくし定木的な規定はございません。ただ、合併を規制しておりますのは、アメリカ日本、それから最近英国が若干規制を始めました。ドイツは合併自体は規制しておらない。ある場合になると届け出させるというようなことでございまして、むしろ合併に対する規制がはっきりしておりますのは、日本のほうがはっきりしておる。アメリカに次いで日本のほうがはっきりしておるんじゃないかと、こう考えております。しかも、すべてのものにつきましてそれぞれ事前に届け出させる、そして一月たたなければ合併してはならないと、こういうような規定はほかの国にはないわけでございまして、その点は、合併の規制は非常に行き届いておると思います。  ただ、問題は、ある一定の取引分野における競争を実質的に制限するということでございます。これは具体的に、ケース・バイ・ケースでそのそれぞれの業態によってやっていくよりしかたがないと考えております。
  334. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまアメリカの話が出たわけですが、世界的な傾向としては、合併をして私企業を集中するということについてはこれを避けるという傾向がある。ロバート・ケネディ長官ですか、あの人は、銀行合併を五つも最近になって却下しておるというような状態もある。当然、アメリカのほうがいいからということをいえば、対米追随ということを言われるかもしれないと思うのでありますけれども、そういう面だったらば、むしろアメリカの規定のようにきつくしていってもいいんじゃないですか、いいところをとって。そうして世界的にそういう中にあるのですが、日本がさかさに、合併、寡占という方向に向かっていくということは、とても望めたもんじゃないと思います。最後に泣くものはだれかといえば消費者以外にないわけですから、特にこれから大企業が少なくなって、競争がなくなって安定してくる、安定成長で競争を排除する方向にお互いに向くようになる、そうなれば、管理価格というものが生まれる、公取の知らないうちに秘密協定というものができるということも考えられる。それについての監視というものはほんとうに真剣にやらなければならない。それだけに、現在の合併の制限の十五条というのはきつくしていく必要がないですか。
  335. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私どもは、現在のこの規定は日本の状態に適しておると思います。  それから、世界の合併の傾向ですが、なるほどアメリカは確かに合併に対してはきつい。一方、ヨーロッパについては盛んに合併の奨励が行なわれておるというが、これは誤り伝えられておるところでありまして、ヨーロッパは合併を野放しにしておるじゃないか、明らかに合併を奨励しているが、それに対して日本はどうかという議論が行なわれますが、これは議論が違いますので、ヨーロッパにおいては国際競争力をつけるために合併は奨励すると。しかし、その反面、独禁法の最後の線は厳重に守っていくという傾向が強うございまして、そのために英国でも合併の規制などを始めるようになったわけであります。一方において合併を奨励するとともに、他方において独占を生じないようにするというのが世界的な傾向ではなかろうかと、こう考えます。
  336. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうことから考えていくと、いままで私も多少の例をあげたのですけれども、今回の新規増員というのは、はなはだしく寡占の状態が生まれてくるということになれば、まだ私のほうには申請はございませんけれどもというふうに委員長のんびりしておるようでありますが、この日産とプリンスの合併決議というものは業界をあっと言わせたというようなこと、また紡績も合併がはやってきておると。そういうようなことから見ると、日本の現在の大企業が考えているのは寡占形態だということがはっきりしている。それだけに、そういうものを厳重に調査し、審査し、基準をつくり、規制もきびしくせいということになれば、これは法的な改正もあるでしょうけれども、その前にまず陣容の確保が大事であろう。これでほんとうに十分なのですか。
  337. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この点は決して十分とは思っておりません。
  338. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これはもう積極的にもっとやってください。  それから、今度は三重運賃の問題についてちょっと伺っておきたいのですが、三重運賃の現在までの経過、運輸省からいろいろ話等もあるようでありますけれども、それについて御報告していただきたい。
  339. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) たいへんむずかしい問題で、国際的にも関係がある問題でございますが、三重運賃制度について一応審決案を出したわけでございます。そのあとで、私が公正取引委員会に参りましていろいろ状況を聞いておる間に、運輸省のほうからも、また業界にアプローチが行なわれまして、一ぺんその三重運賃はやめたい、それについてはかわった案を出したいということで、かわった案が出てきております。これに対して目下私どもでも調査いたしております。
  340. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 かわった案というのは、どういうのですか。
  341. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これはまだ役所同士のことでございましてあれですが、結局いままでのような拘束を弱める考え方ができてくるということでございまして、具体的にちょっと申し上げることははばかるわけでございますが、きびしい拘束でなくて、もっと自由に、もしかりにあと引き続いて何カ月間盟外船も使わなかったという場合には、ボーナス的に運賃をリベートするという、いわゆるフィデリティー・リベートの方法をとるというやり方でございます。
  342. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 リベートを戻すわけですね、はっきりいうならば、三重目の運賃を。
  343. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) はあ。
  344. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国際的な問題で、非常にむずかしいというのですけれども、独禁法の第六条には、国際的協定または国際的契約の制限というのがありますね、これに引っかかってきませんか。
  345. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それではございませんで——それにも入りますかな。不公正な取引方法の特殊指定、海運業における特殊指定の問題でございます。
  346. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 第六条においては、「事業者は、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしてはならない。」ということになっておるわけです。そうすると、これは欧州復航通貨同盟等の間に結ばれているもので、その同盟に入っているものがやるということですから、はっきりいえば、不当な不公正な取引、契約ということにならないのですか。
  347. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) その不公正な取引方法になるかならないかという問題でございまして、お話のとおり、まず日本の業者が入る場合については、先ほどのお話のような規定がまずございまして、そうしてはたして不公正な取引かどうかについては海運業における特殊指定、不公正な取引方法の特殊指定、このほうに具体的な基準がございまして、これに当てはまるかどうかという問題でございます。
  348. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これに対して公正取引委員会は、運輸省から、はっきりいえば三重目の運賃を戻すという、そういうふうな案が出てきた、それに対しては、現在は態度はどうなっておりますか。
  349. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまのところ、運輸省から一応話を聞きまして、それから今度荷主側の意見を聞くということになっております。しかし、ただいま国会関係で仕事がございますので、ちょっと運賃委員会の話を聞けないわけでありますが、落ちつきましたら、荷主側の話をよく聞く、そうして両方の主張をよく頭に入れまして判断する、こういうことにしたいと考えております。
  350. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、私、とても心配なことが一つあるのは、運輸省からの要請をいれて、荷主側に運輸省案をのめと働きかけておる、このように新聞報道ではされておるわけです。そうすると、ここで、国会審議があるということでまあやむを得ないとしても、日を延ばして、その間に通産省側でも荷主側にいろいろ話をして、いつの間にか公正取引委員会がつんぼさじきにおる間に向こうのほうは妥結しておった、聞きましたところが、それでけっこうでございますということになりかねない。ほんとうの声というものはぜひなくされたから出てきたので、ほんとうのことはわからない、荷主側の意見は。
  351. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) その点は、当初の三重運賃申請のときにやはり同盟側であまり性急に荷主の意向を無視して聞かないでやったということに一つの結局原因があったのであります。今回の運輸省案につきましては、荷主側とも話し合って、荷主側の希望もできるだけいれて、それをモデファイするということのようでございますので、あとで最後的に荷主側がどういう意見を持ってまいりますか、やがて近いうちにその荷主側の意見も聞いて、その上で判断いたしたいと思っております。
  352. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在公正取引委員会それ自体が、まあはっきりいって、いまのままではあまりにも力が弱いのではないか。言いにくいことですけれども、はっきり申し上げれば、もっと司法的な権限というか、性格といいますか、そういうものを強くしていかなければならない。また、独占の実情というものをどんどんはっきりあらわす必要があるのではないか、こういうことがかなり言われているわけです。そういうような機能強化あるいは性格、体質改善ですか、そういうことについての公正取引委員会としての方向というものを、考えというものを聞きたい。
  353. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 独禁法につきましては、昭和二十二年占領下におきましていわば占領軍のディレクティブによりまして当初つくったわけであります。その当初の案は、私どもいまから考えましても、これは日本の国家に合っていないとはっきり思います。これは他の占領軍側の方針と同じようであったでありましょう。ただし、その後二十四年に相当大幅に改正されて、それからまた二十八年に相当大幅に改正されました。いろいろ御批判がございますけれども、現在のような法律になっておる。そのまま二十八年以後ただいままで参っております。これは日本の風土にいわば根づいた制度になっている、こう考えております。これに対しまして昭和三十三年におきましては独禁法の大幅な改正法が国会に提案されたわけでございますが、その際は実質的審議に入ることなく廃案になっております。その後独禁法を緩和しようというような改正案はただいままで出ておりません。私のほうといたしましても、現在の独禁法が必ずしも万全ではございませんけれども、現在の日本の事情にもうすでに十三年にわたって施行されてきた、風土に合ってきた、これを私どもとしてはまず第一に厳正に守っていくのが必要ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  354. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、下請代金支払遅延等防止法の関係で伺っておきたいのですが、現在この法律で支払い期日が六十日以内ということになったわけですね。第六条のところでは、中小企業庁長官は親事業社が違反をしたようなときにこれを公正取引委員会に対して適当な措置をとるべきことを求めるということになっておりますが、その第六条に基づいて中小企業庁長官からの請求があったのはどのくらいですか。年度別でお願いしたい。
  355. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 下請代金支払遅延等防止法の第六条で、中小企業庁長官がこの法律に違反の事実があると認めたときに適当なる措置をとることを公取に対して求めることができることになっております。これに基づきまして本年度ただいままでに措置要求ございましたのが、二月末までにたしか三十一件ございます。この措置要求がございますと、公取といたしましては直ちにその会社に対して立ち入り検査を実施いたします。もちろん、いままで立ち入り検査をすでに実施いたしまして、監視中の工場もございます。これに対しましては、さらに監査の強化をいたしております。ただいままで三十一件、昨年は十四件ございました。
  356. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 第九条に基づいて、公正取引委員会が親事業者あるいは下請業者の事務所とか事業所に入って帳簿書類その他の物件を検査したというのは何件くらいありますか。
  357. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは本年度におきましては二月末までに二百二十件ございます。三月一ぱいでたぶん三百件程度になると思います。
  358. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのような立ち入り検査をしてもらいたい、あるいはこういうような下請代金支払いの事実があるのだけれどもといったような訴えとか、何といいますか、そういう件数はどのくらい上がっておりますか。
  359. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは下請事業者からの直接の申告でございますが、このほうは本年度二月末までに二十一件、それから三十九年度では十八件ございました。何ぶんにも下請業者は親事業者に対して弱い地位にあるわけでございますので、なかなか積極的には出しにくいということでございますが、中には進んで、自分の名前も出していいからということで、措置要求を申し立ててあるのもございます。こういうものに対しましてはどしどし立ち入り検査を実行いたしております。
  360. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 実際非常にこれは扱いにくい、下請業者が親事業者が不払いであるということを訴えれば、自分のところへの仕事を差しとめられるということが往々にしてあるわけですね。その実際の違反というものはしたがって上がってないのは見当がつかない、どのくらいの件数にのぼっているかということがわからないということが言えると思います。それに対して地方事務所で、先ほど聞いたところでは二十六人ということですね。
  361. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 本局で十三人、地方が十三人です。
  362. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 十三人というと、一つの地方事務所で二人あるいは三人ですか、その程度のことになるわけですね。京浜地帯と京葉地帯は ——この地方事務所が札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡、今度広島でできたわけですけれども、京浜地帯については、これは本局の十三人がやるわけですか。
  363. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) さようでございます。
  364. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 本局の十三人というのは、全国の扱いと一緒に京浜地帯もやる、こういうことでございますか。
  365. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) さようでございます。もっとも地域的な関係がございますので、本局の者は大体京浜、京葉等関東地区の取り扱いをしております。それから、名古屋、大阪につきましては、名古屋地方事務所、大阪地方事務所にそれぞれまかしております。
  366. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、全体まとめるのは十三人のうち何人ですか。十三人全部が京浜地帯なり京葉地帯に入り切りになっちゃうわけですか。
  367. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 全体のとりまとめもございますので、課長と、それから他の課長を除きました十二人のうちの一人が、総括の関係をやっております。総括をするとともに、みずからも事業所検査に行っております。そういうかっこうになっております。
  368. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この問題でいま一つだけ聞いておきたいのですけれども、確かに品物を受領した日から起算して六十日以内の期間で、かつできるだけ短かい期間に下請代金を支払わねばならないということになっているわけですね、したがって、検査をするしないにかかわらずということにこの前法律改正でなりましたけれども、じゃ別にそこの親企業が倉庫を別の会社につくっておいて、その倉庫に入れさせるというふうなトンネルをやったときはどうなるのでございますか。
  369. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それはあれでございますか、親事業者の工場の中に下請事業者の倉庫を置くというようなことでございますか、どういうことでございましょう。
  370. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういう意味でございます。
  371. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そのようなことは最近行なわれかけているという情報を聞いております。これは実態を調査いたしまして、適当な措置をとらなければならないと思っております。
  372. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 下請事業者の倉庫を親企業の中につくらせる場合と、親事業者が自分の敷地外に別の倉庫をつくって、しかもそれを別の会社にして、そこに納めさせるというケースも起こってくるというおそれがあるわけですね。その点についてはこの法律の第二条の二では引っかけられないわけですか。
  373. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 第二条のトンネル会社ではちょっと規制できないかと思います。
  374. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、ここのところ、その製品が受領というより、製品が完成した口からということになる以外にないですね。
  375. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ちょっと失礼いたしました。私、ちょっと勘違いいたしておりまして、第二条の五項にトンネル会社の規定がございますが、これには関係ないと思います、別段いまのお話では。ただ、二条の二の問題につきまして、親事業者が下請事業者の給付を受領した日をどういうふうに見るか、こういう問題でございますが、これにつきましては、もし脱法的なことがあるならば、これはやっぱり認めるべきじゃない。実際に、この法律の精神に従って監査するよりしようがないと私ども思っております。
  376. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 下請代金の実施の場合、立ち入り検査をやって違反を発見した場合、行政の指導だけをやって、法律に基づいての勧告というのはなされていないではないかという声があるんですが、どうでしょう。
  377. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そのようなことはございません。この四十年度におきまして二百二十の立ち入り検査を二月末までに実施いたしておりますが、そのうちで法に基づく勧告が十五件、その他は勧告にまではいかないけれども、行政指導で直さしたもの、それを合わせて二百二十件の中で百四十七件というものが是正措置を講じさせております。方法といたしましては、違反の程度の軽微なものにつきましては、行政指導でもって今後の措置を監査する、報告を出さして支払いの改善をさせるというのが手っとり早いわけでございますので、少数の人員で効果をあげるという意味で、比較的軽微なものについては行政指導でやっておりまして、それから軽微でないものについては、法律に基づいて勧告を講じております。これが昭和四十年十五件、それから三十九年度で十四件と、こういう件数でございます。
  378. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 行管だと思うのですけれども政府のどこで御担任になっているかわかりませんけれども、おそらく行管だと思ってお尋ね申し上げますけれども、初めにごく簡単にお尋ねしますけれども、事務的のことを政府委員からお伺いしまして、最後に長官からこれに対する御所見を伺えればけっこうでございます。  審議会とか調査会、委員会等は、いま政府にどれぐらいできておりますか。それが第一。それから、その設置の古いものはいつごろからできておりますか、また、いまの調査会等は、省別では何省にどれぐらい、またそれは法律に基づくものか、あるいはその他のものがあるか。それから、それらの委員会、審議会の一年間における開会の数はどれぐらいであるか、まず初めにそれだけちょっとお伺いします。
  379. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 審議会等につきましては、総数二百九十一でございます。なお、こまかい点につきましては、政府委員より御答弁させますが、相当長い間、しかも非常に複雑な機構でございます。私は今度調査いたしまして驚いたわけでありますが、過去三年間に年一回以内しか開かないものが三十五もあるというような状況でありまして、なお議員立法も相当含んでおります。お尋ねの詳細につきましては、政府委員からお答えさせます。
  380. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 審議会のほうは、先ほど長官がお答えいたしましたように二百九十一ございますが、いずれも法律に基づくものばかりでございます。従来多少運用で存在したものもございましたけれども、これは今日の段階では、私どもの承知している範囲では、全部法律に基づいております。  それから、開催頻度の問題は、いまのとおり過去三年間に一回未満のものが三十五あるというような状況でありまして、審議会等ごとに非常に幅がございます。また、総会を開きませんけれども、部会ということで実質は相当活発にやっておるというものもございますので、一様ではございません。  それから、これは審議会等の制度は戦前もあったわけでありまして、新憲法になってから新たに認められたものではございません。  それから、各省別でございますが、ちょっとここに持参いたしておりませんので、別に資料で御説明申し上げます。
  381. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 一番古いというか、長いのは終戦後でどれくらい続いているのですか。
  382. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 各省別の区分けと一緒に、すべて資料で御説明申し上げます。
  383. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 次に、その委員会に属している大体の委員の数ですね、それがどれくらいか。それから、同一の委員がそれらの委員会にどれくらい関係しているか、すなわち一人の方があっちこっちの委員会に関係しているのはどういうふうになっているか。それから、こまかいことですけれども、それらの委員の人の委員会における出席状況はどうか。ちっとも出ない人があるのではないか。それから、ついでに聞きますけれども、それらの審議会等の予算は全体でどれくらいになっておるか。一つの委員会でいえば、一番予算が少ない、委員会はどれくらいか、一番大きい委員会はどれくらいか、またそういう審議会には事務局というものが一々ついていて、そこに専任の職員がいるようになっているかどうか、これらの点を。政府委員の方でけっこうです。
  384. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) あとで先ほどのお尋ねの件と一緒に資料で申し上げますが、いま私が宙で申し上げられますことは、委員の数は二十名程度から、大きいものは百人をこえるものもあったかと記憶しております。  それから、兼務状況も、大体最近は委員の発令を相当にその面でチェックいたしておりますが、なお五つないし六つくらいの兼務も相当あろうかと思っております。  それから、出席状況等、こまかいことも別に資料で申し上げます。  それから、予算は、これも、二百九十一ございまして、ここで委員会の状況をいま申し上げられませんが、全体で八億ぐらいの予算が、会議費手当等という名前で合計八億程度は計上されているはずでございます。  それから、事務局の専門のものを持つものと、役所の関係部局が事務局になっておりますものと、これはそれぞれでございまして、これも委員会区々の状況でございます。
  385. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 私は、この審議とか調査会といいますか、そういうものは、民間の委員といいますか、できるだけ各方面の意見を聞く意味で必要だと思っているのです。しかし、たくさんの調査会をつくりましても、有効な働きをしているのと、あるいはもう機能を果たして廃止してもいいものがあるのではないかというような感じもしますので、お伺いをしたわけでございますが、私はここで長官にこういうことをお伺いといいますか、要望をし、そうして御所見を伺いたい。  それは、審議会の効果のないようなものは、もうお調べになればわかっていると思いますから、そういうものは廃止したほうがいい。一度つくると、なかなか廃止ということをしないでずるずる延びる場合がございますが、そういうものは開店休業というか、意味がございませんから廃止する。それも政府で毎年各審議会の活動状況を御調査になって、その上できめていただきたい。それから委員の人選についても、適任者を得ていると思いますけれども、しかし、私どもが前に聞きましたのでは、一人の方が三十くらいの委員会に顔を出している。そんなことではとても真剣にやれるものじゃありませんから、それは間違いかもしれませんけれども委員はあまりたくさんの委員会に同じ人を選任しないで、むしろ広く適任者、人材をお集めになったほうがいいんじゃないか、こういうふうに思いまするので、委員の人選、また、それを再任されるというか、そういう場合にはできるだけ刷新していただきたい、こういうふうに思いまして、できるだけひとつ、予算を惜むのじゃございませんけれども、むだなものを使わないで効果をあげていく。行政管理庁のお仕事はきわめて国家的には大事なものである。民間でいえば、会社の経営といいますか、能率増進のようなもので、政府の各省間の配置についても権限をお持ちになっておる。あらゆる機構を整備されると同時に、審議会というものは付属のものでございますけれども、これの意義は重大でございまするので、この機会に、私はぜひともひとつ要らないものはやめるし整理して、いいものはまたつくっていくということをお願いして、長官の御所見を伺って、質問を終わります。
  386. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 御指摘のとおり、審議会の本来の任務は民意を反映さすことでありますが、どうも、設置以来たくさんの内容を厳密に調査いたしますと、その本来の目的からだいぶはずれているものも出ておるようであります。昨年八月に閣議決定をいたしまして、不要不急の審議会は整理統合するという基本方針をきめまして、それ以来各省庁ごとに事務当局を鞭撻いたしまして、鋭意その整理統合を急いでまいりました。現在まで三十三整理することにめどがつきましたが、まだ不十分である。現在わが党内にも小委員会が特別に設置せられまして、その協力をいただいておりますし、この問題はむしろ超党派的にもいろいろと究明されながら、いままた私の目標としては、少なくとも七十ないし八十ぐらいは整理いたしたい。内容から申しましても、大蔵事務次官のごときは五十も委員会を持ち、実際調べますと、課長補佐あたりが出てそれを糊塗しておるという、まことに不まじめな状況でございます。また、委員の顔ぶれを見ましても、とかく有名人を委嘱するという形になりまして、私はやはり問題ごとに、決して有名人は悪いとは申しませんが、実質上物理的に不可能なことをお名前だけ借りても意味ないことでありますから、有名でなくても相当まじめな方がおられるのじゃないか。もう少し設置する側におきましても、もっと真剣に内容的に取っ組んでいただきたいと、いろいろ私どももいま具体的にデータをそろえておる次第でございます。何とか国会中に相当大幅な成果をあげたい。もちろん中には非常にまじめに、そしてまた実績をあげ、本来の目的を十分発揮せられる審議会がたくさんございますけれども、残念ながら玉石混淆でございまして、この機会に、長い間手をつけられなかった審議会の整理統合だけはぜひともひとつ断行いたしたいと考えておる次第でございます。
  387. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 ただいまの長官の御熱意に心から敬意を表するものでございますが、ぜひひとつ断行していただきたいということを重ねて要望して、私の質問を終わります。
  388. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのに関連してお聞きしますが、行管関係鈴木さんがあとからゆっくり聞くことになっておりますからあれですけれども、いまの大蔵次官の五十くらいの委員を兼任していると言いましたね、それで委員会手当というものは、みみっちい話ですけれども出るわけですか。それはどういうふうになっているのですか。
  389. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 現職の役人が委員会の委員をかねておる場合と、委員会の幹事になっておる場合がありますが、そういうふうなのを総じて、いま、ごく回数を一例として申し上げたと思いますけれども、役人で現職で出ている者については手当は出ません。
  390. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 手当は出ないけれども、何か出るのですか。
  391. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 何も出ません。
  392. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現職の役人以外の人には出るわけですね。これはまあ調べればわかりますからいいです。  もう一つ、行管が各地へ出かけたりなんかして監察なり調査されますね、そうすると、ある省から非常に文句が出てくるのです。文句という意味は、よくやったという意味で文句が出る場合もあります、よけいなことをやってくれたというので。そういうことで、行って報告を出せと言って報告を出させると、こういった問題点だと言って、それがそのまま行管の月報に出てきて、行管でまるでそれを発見して研究した結果のように月報に出てくるわけですよ。それで、ある省の人に会ったら、行管は人をばかにしているというわけです。まるで、自分が発見して研究してやったようなことを書いてあるけれども、こっちから出した資料そのままじゃないかと、だいぶおこっているのですよ。おこっていることがいいか悪いかは別ですよ、具体的にそういうような改善すべき点があったのですから。これはあしたぼくは法務省で質問しますけれども、法務省という名前を出してわかっちまって申しわけないのですけれども、むくれているわけです。人をばかにしておるというわけです。それはここだけの話にしておいてください、ほかへあれするといけませんから。そういうように実際調査するときはどうやってやるのですか。向こうから改善すべき点とか、問題点を出させて、それをうのみにしておるわけではないでしょうけれども、どの程度行管自体として判断するのですか。
  393. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 大体一・四半期四つ程度の項目に分けて、調査監察の対象に応じてやるわけでございますが、いま御指摘の点もないとは私は言えないと思いますけれども、ただ、相当やはり専門家を全国的に整備いたしております。なお、こまかい点につきましては、いまの点に触れて、政府委員から……。
  394. 稲木進

    政府委員(稲木進君) ただいまの問題ですが、われわれ監察をやりますときには、まず最初に、その業務についての一応の責任者といいますか、たとえば本省の局長あるいは部長、課長段階の人からその業務の概略を聞きまして、そうしてその際に、いろいろと担当しておる所管の業務について、こういう点が非常にむずかしい問題だと、あるいはこういう点は自分たちでもどうもうまくいっていないのじゃないかというような話が出ることがございます。しかし、そういうことは出なくて、むしろ非常にうまくやっているつもりだというような説明の場合もありますし、いろいろあるわけであります。われわれは一応そういうようなことを全般的にアウトラインを聞きまして、そうしてその聞いた結果によりまして監察する場合に、何かその行政について問題点になりそうだということをわれわれ相当勉強しまして、そうして問題点になりそうな柱を立てて、その柱について調査を実施する。調査する場合には、そういうような事項についていろいろ数字的なデータですね、そういうものを出していただく、それをわれわれ内部で検討しまして、場合によっては実地に出先における仕事のやりぶり、そういうものも現実に見まして、そうして判断をする。そこでできれば、その行政が必ずしもうまくいっていないということであれば、なぜいっていないか、そういうような原因をできるだけ探求しまして、改善の一つの方法、そういうものを考えて、いろいろと相手方と話し合った上で勧告をする、こういう手順でやっております。
  395. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点は、きょうはこれでやめますけれども、ただ、行政管理庁がうんとやって各省から恨まれるようになるほうがいいことなんですから、その点遠慮しないでやってほしいと思いますが、福田さん、結論的に言って、行管ができて、いろいろの勧告なり監察をして、勧告をしていて、それがどの程度効果が上がってるんだ、これはいやな質問ですけれども、どの程度効果が上がってるんだというふうに、あなたとしてはお考えなんでしょうかね。
  396. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 実は私就任以来、その点も個人的に感ぜられた問題なんで、次官以下に申したことは、言いっ放し、聞きっ放しじゃいかぬ。せっかく非常な苦労をして、りっぱなものをつくり上げて、しかも閣議に責任のある報告をしまして、文書をもって関係省庁に通告するわけです。したがって、いまのところ一つの慣行といたしまして、内規的につくりましたことは、文書で勧告をした半年以内に、必らず文書で回答を求める。勧告に基づいて具体的にこうこうこういう点だけは改善いたしまして結果を見た、この点は今後検討する、この点はやろうと思ったけれども、実際上無理であるとか、そういうような大体の基準で責任のある回答を求めております。これに基づいて、私どもはまた必要に応じては再調査をやる、また再勧告をするということを、すでに実施しております。具体的に申しますと、昨年の夏に不幸な炭鉱の事故が三回引き続いておる。そのときにも私ども炭鉱に対する災害の防止に対する行政改善として、具体的に相当こまかく出したことがある。前に沿ってどのくらい改善をあげているか、ことしの二月、一月の終わりごろにまとめまして、主として北海道、九州でございますが、具体的にまだこういう点が改善の実があがってないじゃないかということを、文書で鉱山保安局長あてに通告した例がございます。なお公害方面でも、昨年の夏私ども専門員、それから行政調査員の方々と御一緒に、各省の責任者を全部同行いたしまして、隅田川を視察したことがあります。他方でも、前に出した勧告がどれほど実際に行なわれておるか、現地に調査しまして、まだまだきわめて不十分だということがわかりました。その結果再勧告いたしまして、通産省あるいはその他との方面で相当活発にこれに対応して改善の実をあげたという例がございます。報告事項についても同じような……。したがって、その結果につきましては、私は相当最近は実績をあげてるんじゃないか、いわゆる言いっ放し、聞きっ放しということは許さないし、またそういうやり方ではいけない。今後もきびしく申したことは責任を持つ。その結果については、少し執拗ではありますが、あくまで実効をあげるまで、私どもは目を放さないということを実際に行なっております。
  397. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) ちょっと速記やめてください。   〔速記中止〕   〔主査退席、副主査着席〕
  398. 宮崎正雄

    ○副主査宮崎正雄君) 速記つけてください。
  399. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 行管長官、いま積極的に行政の合理化をはかりたいということなんですが、けさの新聞でしたかな、自民党の小委員会で各種審議会の大幅整理ということがうたわれておる。その中で、開催数が極度に少ないもの、社会情勢、経済情勢の変化から不要になったもの、審議内容が類似しているもの、緊急かつ必要性のないもの、単なる地域別だけで分けられたものというような、審議会としては有名無実というものがあるということ、先ほどは八十ばかり大体整理をしていきたい、こういう御答弁があったわけですが、その八十をこれにわけますと、おのおのどの程度になるかということですが。
  400. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 昨年八月の審議会整理の基本方針閣議決定したあとで、庁内で整理の基準を設けた、その大体のあらましが、いま御指摘の新聞に出た、一種の整理する基準でございます。なお、その内容につきましては政府委員より答弁させます。
  401. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 新聞に出ましたのはおそらく自民党の小委員会のニュースだと思いますが、私どものほうでは実はいろいろ密接な連絡はとっておりますけれども、与党の中と行管とは直接には関連を持たずに仕事を進めておるわけでございます。しかし、最終的には非常に関係が深いもんでございますから、密接な連絡をとりながら進めておりますが、いまの段階では、開催頻度のきわめて不活発なもの、これをまず廃止する。それから審議事項が類似のものはこれは統合する。それから地域的にそれぞれ置かれておるようなものは全国的な規模のものに統合して、部会等でこれに対処する。それから設置がされておりましても、不服の審査であるとか、いろいろ案件が起こらぬ限りは平生は活動しないものがある。しかし、これは開催頻度が少ないからということでなしにするわけにまいりませんので、そういうものにつきましては、政令をもって必要の都度設置することにしたらどうか。常置の機関としてはやめる。その他試験とか資格検定をやっておるような審査会というようなたぐいのもの、こういうものについては、そういう審議会とか審査会というような機関にせずに、試験委員を非常勤として任命しておいて協力を求める、こういう考え方でございます。その他その一行政機関の全般の政策について、大臣の顧問といいますか、というようなものは、これは審議会というような名前でなしに、別個の考え方で民意をいれる、学識経験者の声をいれるような体制にしたらどうかということは、これを今後つくられるものについての考え方として持っております。私どもがいま検討いたしました結果は、長官が七、八十を目途ということを申しましたが、事務の段階では目途にいたしておりますけれども、いま申し上げました基準で、第一の類型のものが幾つということをまだ御報告する段階には至っておりません。
  402. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのお話の中で、地域的なものは全国的な規模に直して部会で対処する、審議事項が類似したものをまとめるということになれば、これは場合によれば専門部会を設けなければならないという事態が発生するだろう、このように思うわけですが、そういう専門部会をつくるということになれば大きな形の審議会ができる。大きな形の審議会ができるということになれば実質的内容ということに大きな変化がなかったということにならないか。その点が心配だ。むしろ変えたときに、大きい幾つもの審議会を合わせて大きな審議会にして、専門部会というふうにする。場合によっては地域的なものは必要かもしれませんけれども、全体的の人数としてはかなり圧縮したものになってくる。こういうような方向でなければならないと思うのですが、その点についての基本的な考え方、これは大臣いかがですか。
  403. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 地域的と申しますと、大体御想像のとおり、たとえば開発法案的なものでございます。これがいままで私どもの考え方としましては、各地方、地域ごとに設置されている。むしろセクショナリズムと申しますか、お互いに縄張り的な色彩が強くなってきて、しかもそれが相当形式的に、あそこの地区で設けるならおれの地方もせにゃいかぬというようなこともないとは言いません。したがって、むしろ開発というような広域行政のいまの時代の傾向からすると、これと対応するような開発自体という共通問題に取っ組む一つの委員会、その中に各地域ごとの部会を設ける。そのほうが合理的であるし、また集まった場合にも、狭い地域だけの観点じゃなくして広域行政に見合った一つの総合的な掘り下げができるんじゃないか、そういう考えを持っております。
  404. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 したがって、これは具体的には圧縮された形になってきますね。それは確認してよろしゅうございますか。  その次は、臨時行政調査会の答申も出たわけでありますが、そのいろいろの実施のために行政監理委員会というものが現在あるわけですね。その行政監理委員会というのはいままで何回くらい会議が開かれて、どのようなことがきまってきたのでありますか。
  405. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 昨年の七月発足以来現在まで二十七回開催をして、大体、毎週木曜日午前中に審議をすることになっておりますが、それ以外に、常勤的に六人の委員のうちの三人は一日置きごとに役所に来ていただきまして、それぞれの主査的なお仕事を担当さしていただいております。大体いままでやってまいりましたものは、たとえば首都圏に関する法案の問題であるとか、なお内閣強化に関する問題とか、あるいは科学技術に関する問題を、それぞれ主査を設けて検討を続けております。それ以外に、先ほどお話になりました行政監察の問題、それからこの各機構あるいは定員に関する問題、また、予算関連する行政機構のあり方というような、すべて監理委員会が審議すべき相当幅の広い問題を毎週取り上げて検討しておる次第であります。
  406. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのようになされてきて、いままでが、はっきり言えば、機構が増加すると機構がふえてくるということで、事務の能率ということから離れていく、機構が増加すればするほど事務の能率化ということは、各省間あるいは各部間の連絡というものをとらなければならぬということで、ますます非能率ということができてきたわけです。それが三十九年度の臨調の答申というかっこうになってあらわれた、このように見ているわけですけれども、その答申以後ですね、どれほどに機構の整備といいますか、非能率化防止というか、そういうようなことがなされてきたか、ここでこの機会にひとつ教えていただきたいと思います。
  407. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 二つの面があると思います。たとえば積極的に従来既存のものの整理統合、それから消極的には増加を押えるという面であります。既存のものの整理につきましては、たとえば大蔵省の臨時貴金属処理部を整理する、そういう一つの実例があります。なおまた、膨大な一つの機構の拡大化を防ぐという意味におきまして、実は四十一年度の予算関連して、約二十ばかり特殊法人の設置要求があったわけでございますが、これは閣議でも確認し、そういう臨時貴金属処理部のように一切これを認めなかった。いままでそういう例は初めてでございまして、相当強い決意で新しい特殊法人の設置は一切認めない、この点、両面あるわけでございます。
  408. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その既存のものの整理、これは事務当局のほうからでけっこうですが、貴金属以外にどういうものがありますか。
  409. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) 実は臨調が機構の統配合のくだりで、全省庁について整理すべき機構として三十近く提案しておるわけです。残念ながら既存のものの整理はほとんどできておりません。いま大臣が申し上げました臨時貴金属処理部の廃止が機構としちゃ私は唯一のものじゃないかと思っております。これは決して——私は事務的にも懈怠があったと言うことは実はつらいわけでありまして、一生懸命やったわけでありますが、既存のものの廃止ということは非常に困難であります。そこで、四十一年度の査定におきまして、新規のものは原則として一切押える。特殊法人につきましても、局についても部についても実は純増は認めないという非常にシビアな態度をとったわけであります。既存のものの廃止というものを、名前を言えとおっしゃられますと実はつらいのであります。非常に数が少ない。ただ、簡素化の面で許認可の整理ということが事務の面では相当進んでおります。
  410. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 実際は、戦後の特殊事情なんかでもってできてしまって、現在目的を達して必要のないものでも、各省庁でいえば、自分のところから一つの課でも一つの部でも減ることはきらうわけですね。そういうことからこれはなかなかでき得ないと思うのですが、長官が現在長官でいるうちに、これを一つでも二つでも前進させていく。一つの臨時貴金属処理部の廃止ということは、これははっきりしてきましたけれども、その遺産というものは、かなり残していかなければまずかろうと思うのです。これは異常の決意というか、抱負というか、そういうものがなければでき得ない。行監の仕事のかなめは、結局やるかやらないかという問題だけになってしまいますので、多少の犠牲はあるかもしれませんけれども、その点についての決意のほどを伺っておきたいのですが。
  411. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 先ほど申し上げましたとおり、積極面では残念ながらきわめて芳しくない実績でございます。それだけいかにむずかしいかということは私ども痛感しているわけでございますが、各省ごとに小さい部局、課を対象としてやってはこれはきりがないということを大体私どもは感じております。この際思い切って観点を変えて、抜本的なひとつ整理統合をいたしたい。総理の了解を得まして、今月中——大体、今月末でございますが、実は特別班を結成いたしまして各省庁にわたる職場の再検討、もっと具体的に申しますと、各職域において場合によっては相当ひまなところもある、あるいはまた非常に多忙をきわめて人員不足で困っているというところもある、そのアンバランスが相当累積しているというのが実情ではないかと考えます。したがって、こういう点を具体的に各省とか、庁内の部局というようなこまかい点を離れて、行政の実態というものの観点から中央並びに地方の実態を、この夏ごろまでにデータを整備いたしまして、その結果に基づいて、省内における配置転換はもとよりでございますが、各省間における配置転換を思い切ってやってみたい、これは幸い行政監理委員会も全員一致の同意を得ておりまして、労働組合の関係などでも、たとえば太田君のごときは、先般の総評の臨時大会でもはっきり協力を表明している、この点は非常にむずかしい問題でございますが、ぜひとも一ぺん見方を変えて、行政の実態、行政の需要という実質的な面から掘り下げて、その上で思い切った一つの行政簡素化という実をあげてまいりたい。いままでのやり方、たとえば、おまえのところの部を減らせ、課を動かして、この課はひとつ統合しろといったような、枝葉末節的な、技術的な面では、とうてい百年河清を待つという私どもは考えを持つに至っているわけでございます。実態をきわめ、そうして行政需要の本質を客観的な資料によって見きわめた上で、相当思い切った省庁間の配置転換をいたしたい、目標は大体五千  人でありますが、まだ人数をはっきり申し上げる段階ではもちろんございません。二千名という人もある。これはやはり客観的に、主観を交えない一つの実態をつかんだ上で、正確にはじき出したい。そういう構想を持って、これは何とか夏までには資料を整備して、そうしていままでと違った行政簡素化の方法をもってやっていきたい、こう考えている次第でございます。
  412. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大臣、積極的に進めてください。実際問題として、ぼくはちょっと商品取引所を調べたとき、一つの課でもってデパートの業務をやる、取引所の業務をやる、そのところだけは毎晩十時、十一時までやるということでどうにもならない。ところが一方は、ある局に至っては、ほとんど毎日早々と帰る、仕事がないというような状態のところもあるということです。それは積極的に進めていただきたい。  そこで、今度は話が違うのですが、行政管理庁の行政監察局から出ている、監察月報によると、国際会議のことがかなり問題になっている、特にそういうものの増大の傾向について、会議主催等については効果的な助成をしてほしい、民間団体についても、国の場合も、両方とも同様に考えるべきであるということがかなり詳しい説明の点もあるわけでございますが、国が主催するところの国際会議、国際行事、こういうようなものについてどのように考えているか、ことしの効果はどうであったかということですね。
  413. 稲木進

    政府委員(稲木進君) 昨年、観光行政監察というのを実施いたしまして、十月にそれぞれその調査結果に基づいて勧告を行なったわけでございます。その中で、観光事業というもののわが国における重要性、観光事業を発展させる必要がある、そういう観点から、いまお話がありました国際会議等をなるべく日本に誘致するような方向で施策をすべきじゃないかと。その場合に、やはり日本に誘致するためには、ある程度国がそういうような国際会議の開催について助成をするということを考えるべきじゃないかということで、そういうふうな趣旨の勧告を行なったわけでございます。国が直接主催いたします国際会議につきましては、これは最近非常に多くなってきております。もちろんそういう場合の経費等は、ほとんど全部国が負担しておるわけでございまするけれども、この勧告の際には、特に民間団体等が主催する会議につきましても国の助成ということを考えるべきじゃないかと、こういうふうな趣旨の勧告をしたわけでございます。
  414. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで効果はどうでございましたか。
  415. 稲木進

    政府委員(稲木進君) この勧告につきましては、実は先ほど申し上げましたように、十月に勧告を行ないましたけれども、この勧告に対する回答はまだ受け取っておりません。それぞれ近いうちに来るものと思っております。その回答の内容を検討した上で、さらに第二次の、またさらに積極的にもう一度その問題について関係省に申し入れをするかどうかということを考えていきたいと思っております。   〔副主査退席、主査着席〕
  416. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 で、四十年の一二月に行政管理局で出した「臨時行政調査会の「行政改革に関する意見」に対する各省庁等の意見一覧」というのをずっと拝見していったんですけれども、賛成というのはわりと多いけれども、反対意見というのはよほどのときでないとなかなかないように私ども見たわけです。特に反対というのは、自分のところから切れていくとか、自分のところの業務から抜けていく、たいして影響がなさそうだと思うようなものでも、それが取られることについては反対している空気がある。行政改革をやっていくについては、こういう空気を取り除いていくということが非常に大事な問題だと思うんです。ただ、行管が大上段からどうしてもやるんだということだけでは行政改革は不可能だと。何としてもそういう空気、当然これはするべきである、国損になることでもあるし国家の利益を考えればやらなきゃならぬと、こういうような大きい立場に立つようなムードをつくらなければならないと思うんです。これを全部読んでいって、これでは私はとうてい実現不可能じゃないかというふうに考えたわけです。そういう、ムードづくりというとことばがあまりよくありませんけれども、雰囲気を積極的につくる方策を行管のほうはどのようにお持ちなのか。
  417. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) この行政改革、特に簡素化に関する問題については非常な抵抗が各方面に起こりました。まず役所側、それから労働組合あるいは政党、もうほとんど各方面からの圧力ないし抵抗が必ずつきまとう、結局一番たよりと申しますか、私どもが一番大切にし、またその協力を仰がなければならぬのは、結局国民の声でございます。世論であります。幸いあらゆる機会を通じまして、行政改革が必要であるという国民世論と申しますか、大衆の声と申しますか、そういうものが相当徹底してまいって、こういう世論を背景とした形でそういう門を開く、高い立場からこの問題と取り組んでいただくというふうに私どもやる以外に、いまのところ残念ながらないわけでございますが、刊行物でございますとか、また、いろんな文化的な媒介物を通じまして、あらゆる機会にそういう国民世論を高めて、世論を背景として私どもは断行する以外にない。それにはやはり内閣の長である総理が固い決意を持って、並びに関係の各方面とも高い立場で国民の世論にこたえていただくというような心がまえをしていただかなければ、私ども幾らやりましても、司法権的な力はありませんし、あくまで勧告で協力を依頼する立場でありますので、最後のよりどころと申しますか、私どもを実行せしめる大きな背景は、国民の声、国民大衆の政治をするという国民の声を大きくして、それをまた強く反映さしていく、私はいまのところこれが一番有効であり大切なことではないか、かように考えております。
  418. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 速記とめて。   〔速記中止
  419. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 速記をつけて。
  420. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今度、栄典制度の近代化と統一のために、栄典制度の運用基本方針というのをやって草案ができたと、こういうふうに新聞に発表になっておるわけですけれども、これはできたんですか。
  421. 古屋亨

    政府委員(古屋亨君) 新しい基準と申しますのは、御承知のように、生存者叙勲が復活する前におきましては、いわゆる褒章関係というものがずっと行なわれておりました。生存者叙勲が復活いたしましてからは、従来の褒章がそのままでよろしいか、つまり、御承知のように、戦前におきましては勲章というのは大体軍人、公務員関係中心で、民間は褒章関係ということでやってきたのでございますが、生存者の叙勲が昭和二十一年に停止になりましてからは、褒章制度というものがその後運用されてまいりました。したがいまして、褒章制度というものを運用してまいりまして、生存者叙勲が復活した暁におきましては、褒章と勲章との関係をいかに調整すべきであるか、その考え方をはっきりすべきであるという問題を中心にいたしまして、現在事務的に検討をしておる段階でございます。ことばをかえますと、藍綬褒章を一回もらった方が、その後特別な業績がありまして、再び藍綬褒章を出すべきである。あるいは生存者叙勲の勲章ということを考えるべきであるかというような点におきまして、生存者叙勲と褒章とをいかに調整をして併用するかという問題が起こりましたので、そういう問題をいま事務的に検討を続けまして、従来の褒章関係におきましても、調整を要するという点についていま検討をしておる最中でございまして、私ども事務当局の検討の段階にあるということを申し上げたいと思います。
  422. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今度の内容、賛否は別として、この基本方針で伺っておきたいのは、徳行卓絶の場合、これは緑綬褒章になっておりますが、従来は孝行な人などを対象としていた。戦後は幅広く道徳的行為と解されている。これは基準はどういうのですか、徳行卓絶の場合というのは。
  423. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) それは緑綬褒章というものに関する規定でございまして、明治十四年の太政官布告によりますと、「孝子順孫節婦義僕ノ類ニシテ徳行卓絶」というふうに、「類ニシテ」という修飾がついておりました。徳行卓絶というのは従来からある観念でございますが、江戸時代、徳川時代から日も浅い明治十四年には、その例示といたしまして、孝子、順孫、節婦、義僕というふうに取り上げたのだろうと思いますが、時代の変遷に伴いまして、そのたぐいというものを拡張解釈してもよろしいのではないか、かように考えておるわけでございます。
  424. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、前のように、孝子、節婦、何ですか、むずかしいようなことを言われたのですけれども、そういうたぐいというのはそのまま残しておいて、それにプラスということですか。
  425. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 戦後やはり孝子のたぐいで褒章が三件ばかり出ております。したがいまして、これを孝子、順孫、節婦、義僕のたぐいを除いてしまうという考え方ではございません。
  426. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 義僕というのは、忠実な召使という意味ですね。考え方としては完全に前世紀のような考え方じゃないですか。
  427. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) これは具体的な例といたしまして、たとえば主人がなくなったある商店の番頭さんが、未亡人を助けてその店を従来どおりの繁栄に導いて、三十年、五十年お勤めになったというような場合、やはり義僕という、江戸時代の義僕ということばには当たらないかもしれませんけれども、そういうことも考えられるのではあるまいか。これはしかしケース・バイ・ケースに考えていかなければならぬ問題だと思います。
  428. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうもぴんとこないのですが、ことば自体が、義僕ということばを言われると、そんなことばにこだわっちゃ失礼かもしれないけれども、現在の民主化された時代になれば、いわゆる全部契約でやっているわけです。前のように年期奉公をして、これも契約の一つかもしれないけれども、年期奉公を勤め上げた上に一軒店を出してもらう。その長い間一緒にいて育てられたからということで、先ほどのお話しのように、未亡人の場合にも、また子供が一人残された場合にも、ずっとやっておられる。塩原多助のような、講談にでも出てきそうな話ですけれども、そういう基準というのは、無理して、逆に言えば、徳川時代、いわば封建時代の残渣として残っていて、一般大衆に、何と言いますか、奉仕させるというようなふうにのみきている。むしろ現在はきちんと契約をさせるというふうな形にいくんじゃないでしょうか。むしろ義僕というよりも、そこにいて、たとえ主人がおっても、さらにその家業をよくしていったというような例があればいいんじゃないですか。そうだとすると、義僕という観念よりも、もう少し変えなければならぬ。そういうことばを変えなければ、これはただのいわゆる儒教精神に基づいたような感じになって、何となくぴんとこないような感じになりますね。
  429. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 確かに先生おっしゃいますように、「義僕ノ類」というので、戦後、道徳観念の変遷と申しますか、そういうことで、「義僕ノ類」、特に義僕という項目でもって褒章の申請があったケースはございません。こういう一部死文化している、その例文につきましては、そういうふうな感じがいたすわけでございます。
  430. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうようになっているとなれば、制度運用というよりも、それを変えなければならないということですね、その文を。
  431. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 文章そのものは、明治十四年の太政官布告でございますけれども、この「類ニシテ徳行卓絶」そちらのほうに主点を置いて読めば別にじゃまにならないのではないかというように考えております。
  432. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうもすれ違いの理論のようですけれどもね。むしろ新しい方針を出すときに、まあ太政官布告とは別のものになるでしょうけれども、その新しい方針を出すときに、そろいう何々何々のたぐいというような、いままでの使われたようなことばは使わないようにしてもらいたい。そうして新しい観念で出発しなかったらですね、せっかく褒章制度を直すとなれば、もっと近代化するということを言っておるならば、いままでのような明治時代のことばをそのまま使っている、徳川時代のようなことばを使っているんでは話にならないんですから、直していかなければならないのではないか。
  433. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 先ほど総務副長官がお答え申し上げました運用の基準と申しますか、運用の準則と申しますか、これはこの褒章条例そのものの文句をそのまま書くつもりではございませんので、その褒章条例運用に当たりましての各省庁並びにわれわれの心がまえ、一部こういうケースは勲章にすぐに持っていこうとか、こういうケースについては黄綬褒章にしようとかというような、一つの取り扱い準則のつもりでございますので、これについてはきわめて近代化した表現をとりたいと考えております。
  434. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ですから、そういうふうに片一方は近代化されておるのに、明治十四年ですか、太政官布告をそのまま使っておるというんでは話にならないんですから、いまから太政官布告を戻すわけにいかんですけれども、新しいことばでもって出すべきだということです。  それからその次に伺いたいのは、普通勲章の順序ですね、普通、勲章は次の場合に授与するということで、一応、新聞に発表になったのを見ると、最初は国家公務員、地方公務員、政府関係機関職員、学校職員、学校教育法に基づく校長、教員、そういうようなのが先にきている。これはどういう考え方でそうなっておるんですか。
  435. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 新聞に発表されましたもの、別にまだ私どものほうで決定いたしたものというわけではございませんので、まあ書き方はただ便宜あるいはそういう順序をとったかもしりませんが、別にいわゆる官尊民卑というような気持ちで書いたのでは毛頭ございません。ただ、比較的まあいわゆる功績をはかりますものさしと申しますか、そういうものを当てがいやすい領域というものが、自然先にきたと、そういう気持ちでございます。
  436. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 官尊民卑ということではないということですけれどもですね、私としては、逆に公務員ということは、これははっきり言えば国民の税金をもって自分の生活をささえていくということですから、公僕といわれるような、義僕ではありません、公僕といわれるようなものでありますから、ほんとうは一般人のほうに、勲章にしても、あるいは褒章にしても、できる限り持っていく、そうして勲章などは公務員等はできる限り遠慮をしていくというような、そういうような精神のあり方でなければならない。ただ、公務のために働いたがために、国家に奉仕をしたということでもって勲章をもらう。あたりまえじゃないですか。公務員が国家のために奉仕をするのはきまっておることでしょう。
  437. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 昭和三十九年の四月以来、いわゆる春秋叙勲が始まりまして、現在までに三千人以上の方々が叙勲されておりますけれども、それらの方々の職業別と申しますか、これを調べてみればはっきりいたすわけでございますが、公務員というものは、この戦後再開されました春秋の叙勲の中ではきわめて少のうございます。大部分が民間人でございます。したがいまして、先ほど先生の御指摘のような、そういう文章の表現等につきまして、われわれ至らなかった点もございますので、将来正式に決定いたす文章については、官尊民卑的な印象になることを避けるように細心の注意を払った文章にいたしたい、かように考えております。
  438. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 危険性の高い環境や人のいやがる環境の職務に従事して、普通、勲章をもらうというような場合は、年令制限はどうなりますか。
  439. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 春秋叙勲、ただいままで行なっております分につきましては、いわゆる管理職以上と申しますか、そういう方々につきましては、現在まで年齢は次第に下がりましたけれども、なお七十才という原則でやっております。しかし、いま先生のおっしゃいました危険性の高い環境あるいは職務、あるいは通常、人の従事するのを好まないような職業に従事されるような方々につきましては、今回行なわれます春の叙勲につきましては、年令を五十五才まで引き下げております。前回は六十五才以上ということでございました。
  440. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は全体の案を見て特に感じたことなんですけれども、もっと野にいる人であって、国家的に大きい貢献をした人であれば、年齢制限が五十五才以上ということを言っているんだったら、七十五才以上ということじゃなしにやってよいんじゃないでしょうか。
  441. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 確かに先生おっしゃいますように、たとえば非常に歴史の古いイギリスにおきましては、二十五、六才のビートルズが叙勲されたというようなことがございます。これが当然な姿であろうかと思うのでございますが、わが国におきましては戦後二十年間、いわゆる生存者叙勲といいますか、これがストップになっておりました関係上、非常に御功績の高い、高年齢の方が非常にたくさんいらっしゃる。そこで長老優先というようなことで、第一回には百才の方が最高でございまして、次第に年齢が下がりまして七十才まできた。これは今後しかるべき手続を踏みまして順次年齢は低下していくものだと考えるわけでございますが、何分にも御功績の多い方が各方面に非常にたくさん高齢者がいらっしゃいますので、現在のところそういうふうな年齢の制限をつけざるを得ないということでございます。
  442. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 年齢が非常に……国家に貢献した人である、第一回叙勲以来見ていると、生存者叙勲というものは、大臣が長かったとか議員が長かったとかいう人が多いわけです。はっきり言えば、そのような人たちは国家に奉仕するべき人だから当然なことで、むしろ栄典をもらうというようなことはやめるべきである。そのような人は除外してあたりまえです。大臣となって国政に寄与したからということで勲章が出る、大臣となったら自分が名誉であるのですから、それだけで十分満足して国家に尽すのはあたりまえである。国家に尽さない大臣がいたのでは困ってしまう。考え方はさかさだと思う。私が申し上げたいのは、たとえば偉大な発明をしたといわれている江崎玲於奈ですか、ああいう人もあるでしょうし、あるいは今回の、例のカドニカ電池というような、ああいうような発明というようなものができている。これなども社会に対する貢献、国家に対する貢献というものは、それはへたな大臣よりたいへんなものですよ。そういう点についてはどういうふうに考えておるのですか。
  443. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) ただいま御例示がありました若い発明家の方、これは確かにその功績は非常に大きいものだと思うのでございますが、先ほどから申しましたように、同じ発明功労でございましても、戦後、紫綬褒章の制度が昭和三十年から始まっておりますけれども、この発明発見が、学術、芸術の領域におきまして紫綬褒章をすでにもらっておられる方々、これは発明家が相当入っておりますが、これらの方々の中にまだ相当高齢者の方でいわゆる勲章をちょうだいしておられない方々が残っていますために、やはり長老優先の原則でいままでまいっておるわけでございます。
  444. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その人が紫綬に該当する、あるいはそのほかの多くの方で何に該当するというときにはどうしているか、年齢が若くても。
  445. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) 発明発見等につきましては、いまの危険業務とか苦労のわりに人の目につかない高い功績の方々とかいうものと同じように、七十才という原則をはずしてはどうかという有力な御意見もございますので、将来発明発見の領域につきましては非常にぴかっとした御功績でございますので、年齢にかかわらず考えたらどうかということは、今後の問題として検討いたしたいと思います。
  446. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 野にいる人を積極的に探してやることがなければ、栄典制度をなんぼつくっても一部の人の独占になってしまう、それについての探す方法はどういうふうに考えておりますか。
  447. 岩倉規夫

    政府委員(岩倉規夫君) その点は内閣の官房長、官、総務長官も、いわゆる有名人に片寄らないで、広くいわゆる野にある功績者を探すようにという御方針でございますので、それを受けまして、私どもは各省庁の特に会議等の場合にその旨を強調いたしまして、たとえば教育者の場合でも校長、教頭というような管理職のみならず僻地の教育に非常に貢献のあった普通の先生、そういう人を積極的に探すように、特に関係省庁に功労者の発掘といいますか、そういう点をやっておりますが、なかなかむずかしい問題もございます。といいますのは、五十、六十で引退して郷里にお帰りになったが、いまどこに住んでいるかわからないということもありますが、各省庁にはできるだけそういう方々にこの光をお分けするように督励をいたしているのであります。
  448. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 授章対象者は七十才という原則はあるが、特別の場合は五十五才でもいいというこういう方針はわかりました。しかし、その特例の中の特例として、野にいる人については考えるべきじゃないか。従来、ともすると紫綬褒章、藍綬褒章等について見ても、大体地方のボスとか議員とかに片寄っている、これがほとんどです。そういうようなやり方ですと、これはいわゆる前にも、賞状をくれてやるからということで、どこもかしこも褒賞ブームということになりかねない。そういうことじゃなく、むしろこつこつと何年間も大学で助手をやっている人もある、薄給の助手で甘んじている、あるいはその人のおかげで教授の名が売れている、こういう人もある。そういうような縁の下の力持ちというような人、そういうのを本格的に……、ただ、各省庁に言っておりますので何とかなるでしょうという考え方でなくて、積極的に大衆の中に飛び込んで探すべきじゃないか。
  449. 古屋亨

    政府委員(古屋亨君) いまのお話を伺いまして、実は総理府におきましては、賞勲局のほうで関係省庁に対して推薦方を、ただいま申し上げましたような基準を示しまして、そのつど数カ月前に指示をいたしまして推薦させておりますが、私どもその推薦に必ずしも、その場合、いまお話しのような点につきまして、そういう方につきましては推薦がなくても、各省から申請が出ました後におきましてもそういう方がありますと、再度各省に要望いたしまして推薦方をお願いしているわけであります。しかし、それだけでももちろん足らないわけでありまして、地方長官その他に種々指示をいたしているのでありますが、なお一そうそういうただいまの御意見の点は、地方からの選考をできるだけ広く、民間の隠れた方という人にお願いする。率直に申し上げまして、私ども一番考えておりますのは、らい病院の看護婦さんを長くやられて、そうして二十年間勤められまして郷里にお帰りになっているという方を、なかなかいままで私たちの不備な点もあろうかと思いますが、できるだけそういう方をお願いしようと思って各省に指示いたしておりますが、なかなか所期の期待どおりにいかないのでございます。年齢制限という点もあると思いますが、ただいまお話の五十五才というような問題につきましては、次回以降におきましてよく御趣旨を一そう……、実は事務当局におきましては、五十五才では少し若過ぎるのではないかというのを、この委員会その他で御意見を承りまして五十五にしたのでございますが、一そうそういう点につきましては、年齢をあまり何と申しますか、功績本位といいますか、民間の隠れた陰の力の、ほんとうにありがたい方という点を中心にしまして、年齢の点はむしろ例外的に将来の方向としては考えてまいるように進みたいと思っております。
  450. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 栄典関係はこの程度にしておきます。  予算書でちょっと一、二点伺いたいのですが、総理府本府のほうですが、「沖縄援助其他諸費」の中に「南西諸島関係職員未払諸給与費」というのが二千七百万もあるわけですが、これはどういうのですか、中身は。
  451. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のとおり、琉球政府の職員でございまして、終戦時において日本の旧沖縄県の職員であった者、そして引き続いて琉球政府職員になった者につきましては、恩給の通算もいたしておりますし、また、退職されたときに退職金を出しておるわけでございます。これらの職員の所要退職見込み額を計上したものでございます。
  452. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 つまり未払いになっている給与ということですか。
  453. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そうです。
  454. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それを今回これでもって整理がつくということですか。
  455. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そういうわけでございます。
  456. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 同じくこの中に、旅費の関係だと思いましたが、その他「外国旅費」というのがあるわけです。それは何ですか。
  457. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 八項の「外国旅費」一億七千八百九十何万円の費目でございますか。
  458. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 はい。
  459. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは御案内のとおり、沖縄の医療援助のために歯科医師を派遣いたしましたり、それから結核、らい、その他の専門の医師を送りましたり、それから無医地区に医者を置きましたり、政府立の病院に医者を出しましたりする経費、それからその他各省関係の技術指導に沖縄へ参ります、そういうものに必要な「外国旅費」でございます。
  460. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 各省関係のがここに入っているわけですね。そうすると、その下にある「赴任帰朝旅費」というのは、これは本省関係ということですか。
  461. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 「赴任帰朝旅費」は、これは本土から南方連絡事務所に赴任いたしましたり、それから南方連絡事務所に勤務しておる者が本省へ帰ったりする場合に支出します赴任旅費でございます。
  462. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 じゃ「委員等旅費」というのは。
  463. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この「委員等旅費」につきましては、たとえば沖縄で技術委員会が開かれます場合に、こちらから参ります経費、それから明年度の予算にございますように、沖縄琉球大学に医学部を設置するために専門の委員さんを委嘱しまして、医学部設置の研究をしていただくようになっておりますが、そういう関係委員等が使われる旅費でございます。
  464. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  465. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) それじゃ速記お願いします。
  466. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうは警察の関係についていろいろお聞きいたしたいと思いますが、最初に、国家公安委員長にお尋ねをするわけですが、国家公安委員長の職責というのはどういうものなんでしょうか、長の。
  467. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 公安委員長は公安委員会並びに警察庁を通じまして警察行政に対して指導、助言をいたし、さらに政府との予算その他についてその意をよく通じて連絡を密にしてやるという、大体常識的なことでございますが。
  468. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 指導、助言ですか。指揮権というものは国家公安委員長というものは持っていないわけですか。
  469. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 指揮権はないのでございます。したがいまして、公安委員会におきましても、委員会のほうで、たとえば人事の問題で委員会の意見が同数なときには、委員長がこれに対して意見を言うことができるということで、大体公安委員会に対しての——委員会のほうでの審議権は直接持っていないのでございますが、もちろん委員会を通じていろいろ連絡、助言等はいたすことになっておるのでございまして、指揮権は全然持っておりません。
  470. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、警察行政なりいろいろな捜査の問題について、国家公安委員長であるあなたにお尋ねをして、あなたがいろいろお答えになるわけですが、答えたことがどれだけの効力があるわけなんですかね。
  471. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) それは警察庁長官を通じていろいろ助言をすることができるわけでございます。
  472. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 助言だから聞かなくてもいいのでしょう。聞かなかったらどうなるのですか。
  473. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 指揮命令権はございませんのでございます。
  474. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 指揮命令権のない人に警察行政のことを聞いても何だか意味がないような感じがするのですけれども、非常に大きな意味があるわけですか。
  475. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 警察庁長官を通じていたすのでございますが、警察庁長官はやはり、まあ長官に聞いてもらえばわかるわけですが、いわゆる各警察関係と十分連絡をとって、その意のあるところを十分指導いたすことができる体制でございます。
  476. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 こんな問答をしていてもいたし方がありませんから、具体的なものに入るわけですけれども、あなたがここでお答えになると、そうするとそれは警察庁長官を通じて指導、助言という形になるのですけれども、具体的な方針としてあなたがお答えになったことは、警察全体がそれをその方針として受け入れていくのがたてまえなんだというふうにこれはお伺いしておいてよろしいわけですか。
  477. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) やはり公安委員会は警察を管理する権限がございますので、したがいまして、警察庁長官は公安委員会の意見を聞いて地方の指導をいたすことができるわけでありますが、委員長はやはり公安委員会と内閣とよく連絡をとりまして、予算その他警察行政全般についての意見を述べて、公安委員会にその意を反映するということでございます。
  478. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう基本的な問題については、別な機会にゆっくりお互いに研究して論議を深めたいと思いますが、きょうは具体的な事件について二、三お伺いをしたいと思います。  で、国家公安委員長なり、あるいは警察庁長官なり、警察庁として、労働運動が行なわれると、その場合に警察としては具体的な争議なり、あるいは団体交渉なり、そういうふうなものが行なわれているときに、警察としてはどういうふうな態度をとっていくべきなのかと、こういう点については国家公安委員長としてはどのようにお考えでしょうか。そして同時に、そういうふうな趣旨を、これはまああなた指揮権はないかもしれませんが、指導、助言をされて、全警察に徹底されるようにしておられるのでしょうか。そこいら辺のところはどうなんでしょうか。
  479. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 公安委員会を通じまして意のあるところを十分指導、助言をいたしておるのでございますが、正当な労働争議に対しましては、常に労使いずれの側にも偏することなく、厳正中立の立場を堅持をいたし、これに介入するものではないという基本的な態度をもって臨んでおるのでございます。ただ、その争議行為でありましても、正当性の限界を逸脱しまして、刑罰法令に触れるものに対しては、警察の職務上、法の定めるところに従うて犯罪の予防、鎮圧、捜査を行なっておるような状況でございます。
  480. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃあ具体的な事件になりますが、二月二十八日に国鉄の立川駅の北口のところで、全金という組合がありますが、そこの、プリンスというのと日産のとがいま合併する問題があるわけですね。そこでそれらの人たちが十四名ビラをまいていたと。そうしたら一方の日産派といいますか、それらの人に取り囲まれて、非常に暴行などを受けた。こういうふうな事件があったわけですが、この事件全体を警察としてはどういうふうに把握をされておるか。事実関係ですね。そしてその結果としてどういうことをいままでやってこられたかと、概略をお聞きをいたしましてから、こまかい点についてはまたあらためて個別的にお聞きをしたいと、こういうふうに考えます。概略の御説明をひとつお願いします。
  481. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) ただいま御指摘になりました二月二十八日の事件の概要について、ただいま御指摘のような点でございますが、なお、ふえんして申し上げたいと思いますが、二月二十八日の七時十分ごろ、立川駅の北口付近で全金の東京地方書記の佐伯信夫氏ら十四名が三々五々に分かれてビラ張りをしておったわけでございます。
  482. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ビラ張り——ビラの配布じゃないですか。
  483. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) ビラの配布でございます。ビラ配り。  ところがそこへ出勤の途中、当所付近に集まっていた支部員、これが約七十名ぐらいが十人ぐらいの集団に分かれて、いま申し上げたビラ配りをしておる者を取り囲んでビラ配りをやめろと、組合のことはわれわれで解決をするというようなことで、所持をしておりましたビラを奪う等のことから、双方の間にもみ合いができたということの事件でございます。  この過程で、その中に仲裁に入った者とそれからそれとの間に、まあ具体的な点については後刻また御説明申し上げますが、傷害事件がございまして、双方に傷害事件があったということが一つの事件の内容でございます。  で、もう一つは、他の場所で支部員に取り囲まれまして、奪取されようとしましたビラを同僚から受け取って、そこからその場を離脱をしようとした者に対しまして、支部員十数名が追いかけて、側方からこれを押す等の暴行を加えたために、道路上に転倒して、右鎖骨折全治七十日の傷害を与えたという事件、この二つでございます。  で、これらの二つの事件につきましては、御質問に応じましてお答えをいたしたいと思っておりますが、それぞれから警察措置をしたものと、あるいは告訴、告発を受けまして、現在捜査の過程にあるものと、こう二つあるわけでございます。  以上が当時の事案の概要でございます。
  484. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その支部員、支部員というのですけれども、これはどこのどういう支部なんですか。取り囲んだほうですね。七十名と言っていますが、これはもっと人数が多いんじゃないですか。
  485. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 一応私どもの報告を受けているのでは七十名ということになっております。
  486. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、その支部員というのはどこの支部員ですか。
  487. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) これは正式に申し上げますと、プリンス自動車工業支部と、そういうことでございます。
  488. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その七十名ぐらいだろうということはですね、警察官のだれがそういうふうに確認をしたのですか。まあこちらの調べではもっといたようになっているのですがね。約二百名となっているのですが。これはあるいは違うかもわかりませんけれどもね。
  489. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) この点について一つの事件の措置、警察措置について御説明申し上げますとその間の事情が明らかになると思うので御説明を申し上げますが、七時十五分ごろ、ひき逃げ死亡事件の臨場のためにそこを通りかかりました角田警部という者がおりました。それがその場所を通りました。ところが、いま申し上げたような現場に通り合わせたわけであります。そこで、一応角田警部は、その事件の内容を、事故を起こした運転手が通行人にとがめられてつるし上げを受けているのではないだろうか、こういうふうにまあ見たわけでありますが、そこで、中に割っていってみますと、先ほど申し上げたように、指をけがをして口論をしておった。そこで、その両人に対して、角田警部は自分の身分を示した上、北口巡査派出所に任意同行をいたしまして、任意同行を求めたわけであります。で、その両人は任意同行に応じまして、北口巡査派出所に一緒に参ったわけであります。そこで、角田警部は、本件を勤務中の巡査に引き継ぎまして、指にかみついた一方の者を傷害の現行犯人として逮捕いたしました。ところが、取り調べました結果、その逮捕いたしました片方の被疑者から供述がありまして、その間に相手方も同様に口の付近に傷害を受けたということがわかりまして、そこで二人の調べがわかりましたので、同日、現行犯逮捕いたしました一方の者を釈放いたしまして、そこで一応の捜査を打ち切ったわけでございます。  それが第一の事件ということで、いま申し上げたように、一つの事件につきましては、先ほど申し上げたような角田警部がそこに通りかかり、それを現認をいたしまして、派出所に引き継ぎ、そうして以上申し上げたような事件の結末をしたというのが概要でございます。
  490. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまり広げちゃうとかえってわからなくなりますから、少し切ってお尋ねしていったほうがいいと思いますが、そうすると、角田警部という人が行ったときに、このつるし上げを受けているのではないかと、こう思ったと、こういうのですが、そうすると、つるし上げているのはあとで調べたらどういう人たちであって、つるし上げられているのはどういう人であったというのは、どういうふうにわかってきたわけですか。
  491. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) その点は要するに、角田警部がそういうことでつるし上げられておるのではなかろうか、こう直感したわけで、具体的につるし上げられた云々ということではございません。
  492. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 つるし上げられているのではないかと直感したというんですから、それに見合う状況というものがそこにあったはずです。一対一でつるし上げるということはなかなかない——ないことはないでしょうが、普通はない。すべてつるし上げるほうとつるし上げられる人数は違うのが多いわけです。だから、多数の方が少数の者をつるし上げたんだというふうに見られて直感したんではないか、こうとられるわけですね。あなたの説明を聞いていて常識的にそう思われるわけです。そうして角田警部が直感した、つるし上げておったと、あるいはつるし上げられていたのではないかもしれませんが、つるし上げておったと直感していた人たちは、あとでわかった人はどういう人たちで何人くらいだったかということであります。
  493. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) この点は、ただいま局長から申し上げましたように、当日七十名くらいの者が十四名ばかりのビラ配布の人たちを取り囲んだというような状況でございまして、これはそれぞれ数人ずつのグループに分れたようでございますので、いま局長が申し上げましたように、つるし上げという状況は一対一という以外に、数名の人がビラ配布をしている人たちを取り囲んでおるというような状況だったと思います。
  494. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、私の聞くのは、角田警部がそういうように直感したというんでしょう。そのつるし上げられていたという人があとで現行犯逮捕を受けた草間貞夫という人ではないですか。
  495. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) そのとおりでございます。
  496. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなれば、つるし上げておったという人たちが何人くらいの人で、どういう状況でつるし上げていたのか——つるし上げていたと直感したわけだから、これはあとで調べたら違ったかもしれませんが、ぼくはそういう点は公平に物事を断定して言うわけじゃありませんから、あなたのほうで角田警部が言うように、つるし上げを受けているのではないかと直感した、つるし上げられているのは、あとで傷害の現行犯でつかまった草間貞夫だといろ、これは率直に言って社会党のオルグですが、こういうわけですから、その草間という人をつるし上げているように角田警部が直感した、それらの人々というのは多数であることははっきりしたんですから、何人くらいでどういう状況であったのか、これがはっきりしてこなければ問題はなかなか出発点がはっきりしませんから、それをお聞きしているわけです。
  497. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは先ほど局長から御説明申し上げましたように、当日、ビラ配布をしている者に対して七十名くらいの者がやめろと言って、それぞれ手分けをして取り囲んだわけであります。当該のこの問題のときには、いま先生のおっしゃいました草間という人と、もう一人の相手方の間で特に口論の状態にあった。そこに角田警部が通りかかった、こういう状況でございます。その内容は、特に二人で言い合っておるということでございましたから、この二人の任意同行を求めて派出所に行った。それで調べた結果、この草間という人が、ビラ配布をやめろということでもみ合いになった状況の中で仲裁に入ったということもあるのでございますけれども、その混乱の状況下において、指が草間という人の口の中に入った。それがかみつかれたという状況であったようでございます。それを引っぱったので、草間という人も口にけがをした、両方ともけがをしたということはあとで判明したわけでございます。
  498. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あとで判明した、けがをしたことは。これはあとで聞くわけですけれども、しつこいようですけれども、大事なことは、つるし上げを受けたのではないかと直感したということ、そういうふうに角田警部は報告しているんだから、そのときの状況というのは一対一ではないわけでしょう。それはあなた方認められたわけですし、それから何か片方は七十名で片方は十四名だ、そうすると、これは五人に一人の割合ですが、私どもの調べでは七十名ではなく約二百名といっておりますが、これも二百名かどうかはわかりませんが、いずれにしても七十名より多いように調べているわけですが、二百名近かったというんですが、そうすると、何人ぐらいの人が草間という人を、取り囲んだのかどうかは別としてとにかくつるし上げておったというような状況だったというんですから、これがどういう状況だったのか、それを明らかにしないと、警察のやり方が片手落ちであったかどうかという点がはっきりしないんですから、だからぼくはしつこいようですけれども、確めておるんです。どういうような状況であったか、それ以上報告はなかったんですか。
  499. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 繰り返して申し上げましたようなこと以外には、報告はございません。ビラ配布をやめろということで、いま先生おっしゃいましたように、数名ずつのグループに分かれて、ビラ配布の者を取り囲んで、やめろ、やめろという状況であった。たまたまその中の一対一で言い争っておる状況を角田警部が目撃した、こういう状況でございます。
  500. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一対一で言い争っておったというのと、取り囲んでおったというのとは、どういう関係になるんですか。取り囲んでおる中で一対一で言い争っておったということでございますか。
  501. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) そのとおりでございます。
  502. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、何人ぐらいが何人を取り囲んでおったのか。全体の数はあなたのほうに言わせればわかりますけれども、グループごとにある程度分かれたでしょうから、この一つのグループは何人で何人を取り囲んでおったのかよくわかりませんが、取り囲んで、そうしてやめろ、やめろと言っておったんですか。そうすると、取り囲んで、やめろ、やめろと言っておったということ、そのやめろ、やめろと言った言動その他にもよりますけれども、それはどの程度の調べがついているんですか。
  503. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) どの程度と申しますか、それぞれこの問題を中心にいたしまして捜査を進めたわけでございますので、その捜査の結果に基づいて、私ども報告を申し上げておるわけでございます。それによりますと、繰り返して申し上げますように、数名ずつに分かれてビラ配布をやめさせようとした、その中で特に一対一でもって言い争っておるという状況を角田警部が目撃して、この二人だけに同行してもらえば様子がわかるであろうということで来てもらった、こういう状況でございます。
  504. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 取り囲んでビラ配布をやめろと言ったことは、どの程度になれば、これは犯罪になるんですか。軽犯罪法か、何犯罪かは別として、どの程度になれば犯罪になるんですか、なる場合と、それから、ならない場合もあるしね。どの程度の犯罪になりますか。取り囲んで、ビラ配布をやめろ、やめろと言ったことが、どの程度の犯罪になりますか、どの程度になれば、犯罪になるんですか。
  505. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) ビラ配布そのものが、当該場所でやっておること自体がどうであるかということは別にあると思いますけれども、ビラを配布すること自体が何ら差しつかえないことであるとするならば、これに対しまして、その意思の自由を抑圧して、ビラ配布をやめさせるということは、これは行き過ぎであって、犯罪になると思います。
  506. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あとで聞きますけれども、これは局長から一応答えたほうがいい場合もあると思いますから、局長から答えてほしいんですけれども、その当時はあれですか、東京高裁の刑事二部だと思いましたが、著しく公衆に迷惑を与えない範囲でビラをまくということは、許可が要らないんだという判例が出ましたね、これは確定しましたね、上告なしに。だから今後それに対する取り締まり——取り締まりということばがいいか悪いかは別として、変わってくると思いますが、この当時はその判例はどういうふうになっていたんですか。
  507. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いま御指摘の判例は、二月二十八日当日出されたものと私ども承知しております。
  508. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 当日出たんですから、まだ高裁ですからね、確定していたわけじゃありませんけれども、いずれにいたしましても、その前に地裁で出ておるのは、ちょっと日にちははっきりしませんけれども、いずれにいたしましても、一月二十三日ですか、に判決があったわけですね、それで高裁の判決が二月二十八日というのはちょっと早過ぎますね。去年の一月二十三日ですか、去年の一月二十三日に地裁で無罪の判決があって、検事控訴でことしの二月二十八日に東京高裁で判決があった。この判決については、あとでビラまきの違法性なり何なりが関連してまいります。話が横道にそれますからこれは元に戻りますが、そうすると、取り囲んでそのビラをまく人の意思を抑圧するような行為であったならば、それは何に該当するんですか、刑法並びに軽犯罪法で言うと何に該当するんですか。
  509. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは軽犯罪で申しますと、あるいは罰条としましては、他人の身辺につきまとっていろんな不安を覚えさせるような状態になったという場合と、それから、いたずらなどで他人の業務を妨害をした場合といずれかに該当すると思います。また、刑法で申しますと、威力を用いて業務を妨害したという威力業務妨害罪に当たる場合もあろうかと思います。
  510. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ場合によれば、脅迫に当たる場合もあると思うのですけれども、取り囲んで、そのビラを配布するのをやめろといった程度しか警察は事実を認定してないんですか。そうではなくて、体当たりを食わせたり、肩をこづいたり、腕を押えたり、け飛ばしたりなどということをやっていたんではないですか。いわゆるプリンス日産派と称する、あなた方に言わせると、七十名の人たちが——その点はどういうふうに捜査して事実をいまの段階で認定しているんですか。
  511. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 当日、角田警部が現場に行きましたときには、そういう状況は承知しなかったようでございます。で、捜査を進めていく過程におきまして、だんだんにその状況が明らかになったわけでございます。捜査がだいぶ延びておりますけれども、これは当初告訴、告発があったということは、先ほど局長から御説明申し上げましたが、告訴人ないし告発人のほうからいろいろ事情を聴取したいということで、供述調書などもつくらなければなりませんし、出てきて説明してもらいたいということを要求したのでございますが、なかなかそれに応じられない、まだ全然応じておられない方が二人ばかりあるというぐらいに、なかなか協力が得られないためにおくれておるという状況もございますが、まず被害者のほうから事情を聴取する、あるいは告発人のほうから事情を聴取するということをいたしまして、それから被告訴人、被告発人のほうの調べをいたし、さらに当日現場付近におりました人々の参考人の供述を得ておる、こういう状況で捜査を進めておるわけでございます。
  512. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、それらの人が取り囲んで、片方は十四人でしょう、片方は七十人以上——二百人かは別として、多数で取り囲んで、暗にビラを配布しちゃいけないということを言うだけじゃなくて、体当たりを食わせたり、肩をこづいたり、腕を押えたり、け飛ばしたり、全体を、グループごとに全部やっておったと、こういうのじゃないかもしれませんが、いずれにいたしましても、こういうような行為がそこに行なわれておったんじゃないんですか、そういう点の犯罪の捜査の中での認定は、現在の段階でどういうふうになっているんですか。
  513. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) そういうことの告訴、告発はございまして、捜査を進めたわけでございますが、具体的にどうであったかということの確信を得るまでにまだ捜査が進んでおらぬようでございます。
  514. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あれですか、ビラは結局どうなっちゃったんですか、このビラはどうなったんです、結局。
  515. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) ビラ配布はそれで取りやめと申しますか、終わりになったと思います。終わりになったわけでございます。
  516. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、ビラ配布が終わりになったわけですというのは、最終的な結果はそうなったというだけの話で、その途中においてビラは一体どうなったんですか、取り囲んだ連中がビラを持っていっちゃったんですか、そこのところはどういうふうになっているんですか。
  517. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 持っていったという告訴、告発がございます。その点は捜査をいたしておるわけでございます。
  518. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは持っていかれた人を調べれば、そうしてビラを配付してはいけないということで取り囲んだり何かしておったんですから、ビラを持っていった、もうさっき何か局長の報告は、取り囲んでビラを奪おうというんですか、どういうんでしたか。奪おうとしたというような御報告でしたか、一番最初の警備局長説明は……。そこはどうだったでしたかね。
  519. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) これは取り囲れて奪われようとしたビラを同僚から受け取った、そう私は申し上げたのでございます。
  520. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 奪われようとしたビラを同僚から受け取ったというと、同僚といっても二つに分かれていますからね。どっちのほうのことですか。
  521. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) それはあとのほうの全治七十日の傷害を与えたというときの事件について、取り囲まれて奪われようとした同僚から、その傷を受けた者がそのビラを受け取って、そうしてその場を離脱しようとして傷害を受けた、そう私は御説明をしたわけです。
  522. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そのビラを取ろうとして、あとのほうの話ですね。七十日のけがの話ですから、これはあとにしましょう、話がごたごたになりますから。そうすると、前のほうの事件で、そのビラは結局結果としては配付できなかった、それはわかりましたが、そのビラが取り囲んだほうの日産の、何というんですか、ことばはあれですが、そのほうに移ったんですか、そこはどうなっているんですか。
  523. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) その点は、何と申しますか、奪われたという告訴、告発があったことは先ほど申し上げたとおりでございますが、その点の捜査はまだ確定するに至っておらぬわけでございます。
  524. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 持っているビラを強いて奪った場合には、それは法律的には犯罪は何が成立するんですか。
  525. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは告訴、告発状にございますように、暴行脅迫を用いて他人の財物を強取したということになれば強盗罪が成立すると思います。
  526. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 強取した場合、その場合においてけがをしたということになれば強盗傷人罪が成立する、これはあたりまえのことですけれども、そういうことになるわけですね。その点いかがですか。丸説明員(後藤信義君) そのとおりと思います。
  527. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結論として、そのビラが配付できなかったということは間違いないんですか。
  528. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) その点は間違いがないようでございます。
  529. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、なぜビラが配付できなかったという経過については、いま捜査中だそうですから、捜査に幾らも協力するんですから、早く事実を明らかにしていただきたい。これは警備局長が部下を督励してやらせるように要望をしておきます。その点についての御回答をお願いしたいと思います。
  530. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 先ほど来、事件の内容とその捜査の経過について御説明したわけですが、現在警視庁におきましては、所轄警察署と協力をいたしまして、総員約十名の捜査員が本件に従事しているわけでございます。したがいまして、この事件について総員十名を従事させて、ただいま御指摘のような点について、いろいろ告訴、告発の内容に従いまして捜査を進めたいと思っておりますし、また同時に、先ほど後藤警備課長から申し上げましたように、相手側からもいろいろと御協力をいただかなければならぬという意味において、捜査に協力をいただくという点が非常に大事な点かと思いますので、その点については、事件の真相を明らかにするように、私どもとしても警視庁によく連絡をして、今後の捜査についてそういう方針で進みたい、こういうふうに考えております。
  531. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的に捜査に協力という意味はどういう意味なのか、これを御説明願いたいのと、そうすると、これは全金派と日産派とあるわけですけれども、どちらが捜査に協力をしていないということになるわけですか。
  532. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 先ほど後藤警備課長から申し上げましたように、たとえば、いろいろと告訴、告発されたほうの関係で出頭を求めて、いろいろ私のほうで取り調べをした場合あるいは供述を得る場合において、必ずしもすぐ出頭されないというようなこともあって、そういう点を私は申し上げたわけであります。現在はそういう点についても私のほうとして十分よく連絡をしてやっていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  533. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、草間という社会党のオルグですが、これが現行犯として逮捕されたと、そして調べたら、相手方も何かけがをさしているということがわかったんですか。草間という人もけがをしていたことは間違いないんですか、その点はどうなんですか。
  534. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 双方ともに全治七日間の負傷のようでございます。
  535. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、片方だけが現行犯逮捕されて、片方が逮捕されなかったというのはどういうわけなのですか。
  536. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) それは先ほど私が御説明申し上げましたように、指をかまれた、かまれたほうをまず被害者と、こう考えたわけでございます。ところがかまれたほうが、これは引っぱるのは当然でございましょう、これは私の想像でございますけれども、痛いので引っ込めた、その引っぱり方がきつかったかどうかして、口の中に傷ができた、こういうことのようでございますので、そのかんだほうを現行犯逮捕した、こういうことでございます。
  537. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 口の中だけでなくて、そのほかにも草間というのはけがをしているんじゃないですか。診断書があるでしょう。
  538. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私ども聞いておりますのでは、口の中だけでございます。
  539. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 くちびると、口と、目と、これをけがしたと、こういうんではないですか。
  540. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 目の点は私聞いておりませんでした。
  541. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そして釈放したのは夕方ですね。五時ごろですかに、弁護士を身柄引き受け人として釈放したわけですか。
  542. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) そのとおりでございます。
  543. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 弁護士を身柄引き受け人としたのはどういうわけなのですか。
  544. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは必ずしも身柄引き受け人というものがなければ釈放しないというようなことはございませんけれども、まあ署によりましては、あるいは県によりましてはそういう指導をいたしているところもあるようでございます。と申しますのは、逮捕されたりしまして警察から取り調べを受けたというようなことになりますと、そのまままっすぐうちに帰らないというようなことも全国的に見ますとまま例がございますので、心配なく家に届けてもらうというような意味で、あるいは親元を呼び出して、来てもらったり、あるいは適当な方に引き受けてもらう、こういうようなことをいたしておる向きがあるわけでございます。この場合はその例に従って処置した、そういうことでございます。
  545. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この七十人ぐらいいたという中で、指揮者というか、指導者というか、全体の行動を指導した人がいるわけですね、当然。その点についてはどういうふうに把握しているんですか。
  546. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) この点はだれが指揮者であったかというようなことについては、私どものほうにまだ報告が参っておりません。
  547. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だれが指揮者で、どういう指揮をとっていて、そして取り囲んだりあるいは私どもに言わせれば体当たりなど、肩をこづいたりなどさせた、あるいはビラを奪取させたというようなことをやらしておったかということは、本件の捜査の上で非常に重要なポイントになる、要素になる、こういうふうに考えるわけですね。これは群集行動じゃないわけですから、初めから一つの団体としてやっているわけですからね。そういう点についての捜査は必要であるというふうにお考えになりますか。
  548. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) おそらくその点は重要な意味を持つと思います。告訴、告発状によりますと、それぞれ被告訴人、被告発人があるわけでございますので、おそらくこれは当該事件において先生いまおっしゃいましたように、指導的な役割りを演じた人々を告訴、告発したものだと私ども承知いたしておりますが、ただ、これはどうも捜査の内容に立ち入りますので申し上げにくいのでございますが、七十名ばかりおって、そしてその中から特定の人々を告訴、告発されたわけですが、はたしてその現場におったかどうかということについて、若干と申しますか、問題があるような人も中に含まれておりますので、この点はさらに捜査を進める必要があろうと考えております。
  549. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 捜査は原則として任意捜査でやるのが原則である、これは間違いないわけですね、多数犯罪であったとしてもね。あなた方のやり方は、場合によっては任意捜査なんだと——これはあとで北海道の苫小牧の動力車のあれが出てくるのですが、これはもう全部逮捕したわけですね、六人ですか。それでこれは検事が拘留請求して、裁判官が拘留を認めなかった事件ですが、これはあとで申しますが、もういきなり逮捕してしまったのですね。だから、ときによって任意捜査と強制捜査というもの、これは抽象的に一がいにこの場合はこうだということは言えないかもわかりませんが、自分たちがやろうと思うときは強制捜査でやる、それで、まあやらないほうがいろいろな面で政策的にもいいだろうということになると任意捜査でやる、任意捜査でやっておるうちに事件がはっきりしなくなってくる、こういうきらいが現実にあるわけですが、これはまあ一般論であって、具体的な事件に即して処理をしなければならない、考えなければいけないことですから、この程度にしておきますが、いずれにいたしましても、そうするとこのときに警察官は何人くらいいたのですか。
  550. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 何名当時現場におりましたか私ども承知いたしておりません。
  551. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはおかしいのじゃないですか。北口の駐在所もあるし——駐在所というのか、派出所というのがあるわけでしょう。私服の人もいたのじゃありませんか。
  552. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 申しわけありませんが、その点は私ども承知しておりませんのです。
  553. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その日の朝の現況を現認していって報告をしたというのは、一体警察としては何人いるんですか。だれなんですか。いまの、前に出た角田警部ですか。これはしかし前のほうの事件だけでしょう。ほんの一部分だけじゃないんですか、見ているのは。
  554. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 一部分と思います。そしてあとのほうの、例の七十日のけがをしたというのは、これは翌日告訴、告発があって初めて承知をした、こういう状況でございます。
  555. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それではあとのほうに移るんですけれども、その前に、私どもの調べでは、全体に対する七十名なら七十名として、その指揮者がいて、それがあちこち飛び歩いて、取り囲んでビラを奪おうとすると、腕をこづいたり、肩をこづいたり、け飛ばしたりしていると、そうすると、このぐらいでやめておけとか、それから押しつけておいて、ガラス戸が破れそうになってくると、ガラスが破れるからこのぐらいでやめろと、こういうふうに指示して飛び歩いておったわけでしょうね。これが七十名——あなたのほうで七十名、こっちはもっと多いのですけれども、その中で少なくとも正規な指揮官らしき者が二人はいたということがこちらのほうでは調べているわけですから、そういう点については十分調べていただきたい、これはこういうふうに思います。これはあなたのほうで調べると言いましたから、調べていただけるものと確信をしております。そこで、山口祐雄というんですか、この人が七十日間のけがをした、このときの状況はどういうふうな状況なんですか、けがをした状況は。
  556. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは告訴、告発状の中に書かれてあることに基づいて申し上げますが、それによりますと、これは三月一日に出されたわけでございます。「二月二十八日七時三十分ごろ、立川駅北口付近で、二百人のプリンス労組員が、ビラ配付中の告訴人に対し、つきとばし、足げり等して暴行し、所持していた全金所有のビラ三千枚を強奪し、その際、山口祐雄に右さ骨骨折全治七十日、および草間貞夫に口蓋切創全治七日のそれぞれ傷害を与えた。」と、こういう告訴、告発状が立川署に提出されております。
  557. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そして現実にその山口祐雄という人を調べたのですか。もうこの人は右鎖骨完全骨折で七十日の重傷を負っておるということは事実なんですか。
  558. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは病院に入院されたわけでございまして、その入院のときの診断によりますと、全治六十日というふうになっておるようでございますが、まあいずれにしましても、七十日ないし六十日程度の傷害を受けたようでございます。
  559. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは鎖骨骨折したことは間違いないですか。
  560. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは間違いないようでございます。右鎖骨骨折、全治七十日……、失礼しました、これは接骨院でそういう診断がされ、さらに入院されるときに六十日と診断されて入院しておるようでございます。
  561. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、そのときの状況というのはあれでしょう、ビラを奪おうとして、そうしてこれを食いとめようとした山口という人に対して暴行したり、突き倒したりして、そういうけがを負ったんだ、こういうふうに告訴人のほうでは言っているわけですね。ですから、この鎖骨が完全骨折というのは、何か暴力行為、暴行がなければ起きないわけですからね。ですから、そのときに一体具体的にだれがどういうふうなことをしたかということは、これはある程度はっきりしてきて、わかり得ることなのではないですか。何か筋肉に食い込むほどの非常に大きな重傷だったと、こういうふうにいっておりますね。これがどうしていままでその調べがわからないのですか。
  562. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どもの承知しておりますところでは、この山口さんは、負傷しました山口という人は、その場で倒れるとか云々ということではなくて、労組の事務所のほうに引き揚げておるようでございます。それから痛み出したということで、診断を受けておるようでございます。それからなお、だれが直接手を下したかといったようなことにつきましては、これは当然捜査の過程において明かにしていかなければならぬ問題と考えております。
  563. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでの捜査の過程で、これは警察側としても事件を非常に重視して、それで真実を発見するために相当大きなウエートをさいて努力をしておる、こういうふうに承ってよろしいですか。
  564. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これはかなりの重傷でごさいますし、当然重要な事件といたしまして力も入れておると、こうお考えいただいてけっこうと思います。先ほど局長から申し上げましたように、警視庁の本部から四名の者を派遣し、署員六名と合わせて十名でただいま専従しておるわけでございます。
  565. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この事件が、これだけ大きなけがをしており、また、片方の人が逮捕された、それはみな社会党側なんですね。それで片方のほうのいわゆる日産派と称するものが、何派か何かこれは私はよくわかりませんが、いずれにいたしましても、そういう方面に現実の姿としては何かこう加担をしておるというか、そのためにあまりやらないで手を抜いておるのではないかというような印象を与えておる、そういうふうなきらいがあるというふうにも考えられるものですから、これは徹底的に、早急に、厳重にひとつ事実を明かにしてやっていただきたいということを、これはさっきから申し上げておるわけです。  そこで、もう一つは、この草間君が逮捕されたわけですね、これはあれですか、現行犯として逮捕して本署へ持っていったわけですか、持っていかなかったわけですか。
  566. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは正確に私ども調べておりませんが、おそらく立川署においでをいただいて、おいでをいただいてと申しますか、本署において取り調べをし、そして夕刻釈放になったものと考えております。
  567. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おいでを願ったといったって、これは現行犯逮捕なら、おいでを願うというのは変なものでね、やけに丁寧なことばを使うからおかしくなるのだけれども、それは別として、そうすると現行犯逮捕であって、まあ立川の警察で現行犯逮捕したということだから連れていったんでしょうけれども、この交番にいる間に抗議しましたね。そこにいた人たちが。そうしたら警察官はなかなか、まあ釈放しておると、交番でですよ。交番へすぐ連れて行ったもんですから、交番へ抗議に行ったんですね。そうしたら、ここにはいないとか何とかいろいろなことを言っておるわけですが、巡査が。これは職務上ある程度の捜査の秘密があるから、ある程度うそを言うのもいいと思いますが、いいというか、いいというのはおかしいけれども、それに対して抗議したら、警官もときによってはうそをつく、暴力もふるうこともあり、人を殺すこともある、そう警察官が言ったというのです。非常識な話でしてね、こっちが抗議したから興奮して言ったのかもしれませんけれども、警察官もときによってはうそをつくこともあり、暴力をふるうこともあり、人を殺すこともあるというようなことを、そういうようなことを駅前交番の警察官は言ったんですか。これはどうなんですか、その点は調べてないの。
  568. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 調べておりません。私初耳でございます。
  569. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは抗議したときですからある程度興奮したことがあるかもわかりませんけれども、人を殺すこともあるというようなことを言ったとすると、どうもこれは少しく常軌を失しているように考えられますので、その点は事件とは直接ではありませんけれども、付随事項として調べていただきたい、こう思います。  それからビラは何千枚くらいが持っていかれたということなんですか。持っていかれたというのか、とにかく配付できなかったというのか、何千枚くらいだというふうに一応認定しておるわけですか。
  570. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは告訴、告発状には、先ほど読み上げましたように三千枚とございます。警察のほうで事実として確定した枚数は、ただいまのところ私どもも報告に接しておりません。
  571. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ビラを奪ったということは、強盗になるか強盗傷人になるか一つの大きな争点ですよ。そうすれば、何枚くらいのビラを奪われたかということを調べなければならぬわけです。調べたけれどもその報告に接していない、こういうのですか、あるいは全然調べるつもりがないということになってくると、ビラを奪ったということを強盗なら強盗という形で問擬するというつもりは全然ない、だから捜査を手を抜いている、こういうふうなことにとられますがね、そういう意味ですか。
  572. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは告訴、告発によりまして強盗あるいは強盗傷人ということでございますので、当然どれだけの財物が取られたのかということは調べなければなりませんので、捜査はいたしておるわけでございます。
  573. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうして、それらの片方の日産派と称する者が指揮官がいて、そうしてビラはいわば一枚もまかせない、持ってきたビラはみんな取り上げるのだ、こう言って持っていってしまった。一般通行人に配ったわけですけれども、そういうようなものまで取り上げて持っていってしまった、こういう事実がいわれているわけですよ。だから、こういう点などについても、ビラがどういうような、あなたのほうに言わせるとビラをまけなかったということは認めておるわけだ、まけなかったことを認めている。それは結果であって、どういう事情でそれはまけなかったのか、そこら辺は一つの法律的な論点になりますけれども、これはどうもあまり調べてないような、あまり報告を受けてないような印象を与えるのはこれは残念だと思うので、その点については決して軽いものではありませんから、よく捜査をしていただきたい、こういうふうに考えます。  それからまた、その立川警察に行ったら、これはこの判決が確定してなかった前だから、あるいは無理もないかとも思いますけれども、ビラまきを規制するのだ、ビラをまくのはけしからぬのだというようなことを盛んに言っているわけですね。そうすると、今度は、この判決が出て確定したわけですから、検事上告ないですから、ということになると、路上でビラをまくことについての何といいますか、警察の態度というものは、判決が出て確定したのですから、確定しなければ議論別です。確定したのですから、考え方がぼくは変わってこなくちゃいかぬと思いますね。その点についてはどういうふうに警察としては考えておるわけですか。
  574. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 先般の判決が確定いたしましたので、私どもといたしましても、ビラの問題についての具体的な私どもの規則の適用の問題については、いろいろと検討を要すべきことが多々あるのでございます。そこで、現在私どもといたしましては、そういうような点について判決の内容等を詳細検討いたしまして、今後について、あの判決の趣旨を生かして考えていかなければならないというふうに、一般的に私どもは考えておりまして、そういう趣旨に沿った方向で具体的な内容を検討いたしております。
  575. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで道路でビラをまくということ、ことに労働組合なんかが何かビラまきをいたしますね。そのことに関連をして警察が取り締まったものが、この東京高裁の確定した判決と相当違ったものであるということは言えるのですか。いままでの警察のやり方が、この確定した判決で言われていることと違ったような行き方をとっておったと、こういうことは認めざるを得ないわけですか。
  576. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは具体的にこの今回の判決に出ましたのは、東京都の道路交通規則、公安委員会で定めました規則に基づきます条文に該当するということで取り締まりをいたしたわけでございます。それが今回の判決になったわけでありますが、地方によりましてそれぞれその公安委員会の規則の内容が違いますので、一律には申し上げることができません。また、一律に取り締まっておるわけでもございません。それで従来、今回の判決と違ったようなやり方をしておったのかということになりますと、これは私どもといたしましては、当該公安委員会が定めました規則に違反をするというようなことになりますと、これが道路交通法七十七条の規定によります警察署長の許可を受けないでビラを配布するというようなことが禁止されておる、そういう公安委員会の定めを持っております地方におきましては、今回高裁の判決で示されましたように、たとえそれらの規定に該当しても、なお一般交通に著しい影響を及ぼすというような形態、態様でなければ、取り締まりの対象にはならぬのだと、こういうような趣旨でございますけれども、そういう趣旨とは違って、私どもはこの規則に該当する行為がありまして、それが署長の許可を受けておらないということになりますと、これは私どものほうでは取り締まりの対象になるということで、取り締まりをしておったわけでございます。
  577. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから従来の行き方が、この高裁の判決に従って変わってこなければならぬわけですね。それに反する慣行なり、公安委員会の規則といいますか、そういうふうなものが違っておるものがあれば直さなければならぬわけですから、そういう点については今後どういうふうにするかということを、いま警備局長が検討するということですから、それはいつごろまでにどういうふうに検討して、どういう結果を明らかにする、こういうことになるわけですか。
  578. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは局長、十分に検討するということをおっしゃいましたが、私どもといたしましては、局長のこれは指示を得まして、とりあえずこの間の高裁の判決の写しを地方に流しまして、こういう判決が出たので、今後取り締まりについては、当分の間一般交通に著しい影響を与えるようなそういう行為というものに限定をして取り締まりをしてほしいということをとりあえず通達したわけでございます。
  579. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その話はまたあれですけれども、そうすると、この事件については二つの事件があって、見るところによるというと、いわゆる日産とプリンスの合併をめぐって、いろいろ問題があるわけですが、労働委員会にも出ているいろいろな問題がそこに出ております。その一つの派生ですけれども、警察のやり方が、一方のほうに味方をしておるとは私はすぐ言いませんけれども、そういうような印象を与えるようなやり方を少なくともとっておる、こういうように考えられる、そういうふうな疑いを持たれることになるような事件に見受けられるわけですね。たとえば山口氏が七十日もけがしておるのに、まだその捜査も十分に行なわれない。あるいは草間君がけがだけしておる、これは現行犯逮捕をされ、その相手方は逮捕も何もされない、こういうふうな行き方が、そういうふうな疑惑というか疑いを持たれては非常に感心しない、こういうふうに思いますので、いま十名だか行ってやっているそうですけれども、早急に徹底的な捜査を遂げて、この事件を公正に解決をするように私は要請をいたしておきます。その結果、今後の進展に従いまして、再度時期を見て、この問題について質問をする機会を得たい、こういうふうに考えております。その結果として、いま警察側が説明されたことが、事実と違うことがあるいは明らかになってくるかもしれませんが、いずれにいたしましても、再度質問をする、早急に厳正にこの事件を解決をしてほしいということを要請しまして、この点についての質問は一応終らしていただきます。
  580. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 速記をとめて。   〔速記中止
  581. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) 速記を始めて。  それでは午後七時に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後五時五十六分休憩      —————・—————    午後七時十六分開会
  582. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) それでは、ただいまから予算委員会第一分科会を再会いたします。  休憩前に引き続いて、内閣及び総理府所管を議題として、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言をお願いいたします。
  583. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 北海道の追分町ですか、国鉄動力車労働組合札幌地方本部追分支部と同機関区管理者側との団体交渉関連して、事件が発生をしたと称して警察が出て、六人を逮捕した事件があるわけですが、逮捕に至るまでの経過をまず最初にお伺いしたいと思います。
  584. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) まず、事案の内容を申し上げまして、それから捜査の経過を申し上げたいと思います。  この事件は、北海道支社で実施いたそうといたしました機関士登用試験制度、これに反対をして、ただいまお話の追分機関区の勤務員、つまり動力車労組に属します労働組合員が五十名ばかりで、機関区長以下管理者側を、二月の十七日の夜から翌日の午前八時頃までの間、いわゆるつるし上げを行ないまして、その間におきまして、この区長以下管理職員、これは区長及び助役でございますが、九名の者に対しまして、それぞれ暴行ないし脅迫を加え、あるいは辞職願いを書かせるなど、そういうことをいたしました事件でございます。  これにつきましては、当初、国鉄側のほうで、公安職員によりまして捜査を進めておったのでございますが、二月の末に至りまして、公安職員のほうから北海道警察本部のほうに、警備課のほうに事件を通報してまいりました。そこで、所轄署であります苫小牧署、それから、北海道警察本部の警備課とが協力いたしまして、三月一日以降捜査を進めた結果、ただいま申し上げましたような事実が出てまいりましたので、そのうち、六名の指導的役割りを演じておりました被疑者を特定いたしまして、そうして三月の十六日に逮捕令状と捜索差し押え許可状をとりまして、翌三月十七日の朝、これら被疑者六名を逮捕するとともに、動労追分支部事務所を捜査したのでございます。被疑者六名は、翌日八時前に身柄付きで札幌地検室蘭支部に送致をいたしました。そうして室蘭支部では、翌日全員について勾留を請求いたしましたが、これが却下され、さらに準抗告いたしましたが、棄却されましたので、三月二十一日に全員釈放された、こういう経過でございます。
  585. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事実の経過、いろいろなことはあとで聞きますが、いまあなたのいわれた勾留請求が却下されたわけですね、その却下された理由はどういう理由ですか。
  586. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは刑事訴訟法第六十条に列挙してあります各条項に該当しないということで却下されたのでございます。
  587. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは却下されて準抗告をしておるわけですから、警察庁のほうではなくて、法務省のほうに聞くのがほんとうだと思うので、ちょっと筋が違うのですが、いずれにいたしましても、どういう理由で勾留が却下をされたか、もう少し具体的に条項別に分けて説明を願いたい。それに基づいて準抗告までしたけれども、準抗告も棄却されたわけですね、その経過を法律的に説明を願いたいと思います。ぼくのところに準抗告の棄却の決定がありますが、あなたのところにありますか。ぼくのところにありますから、それに基づいて説明願えればと思います。
  588. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 刑事訴訟法第六十条は、申し上げるまでもなく、勾留することができる場合を列挙してあるわけでございます。「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。」、その第一号は、「被告人が定まった住居を有しないとき。」、第二号は、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」、第三号は、「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」、こう三つの場合を書いてございますが、勾留の請求に対します却下の理由は、まず、被告人がそれぞれ定まった住居を有しておるので、第一号に該当しないのは明らかである。それから、第三号の、逃亡し、または逃亡するおそれがあるかということについては、それぞれ定職を持っておる者であり、すでに事案が発生しましたときから一カ月を経過しておるが、何らその間において逃走しようとするような気配も見えなかったとすれば第三号にも当たらない。そこで、第二号の、罪証を隠滅するおそれがあるかということにつきましては、これはこの一カ月の間に、それぞれ被害者である区長ないしは助役に対して罪証を隠滅するような働きかけもなかったし、あるいは、これは試験を実際に受けましたのは二名でございますけれども、その二名に対しても何ら働きかけをしておらない。それから、また、事案は、それぞれ目撃者もあることであるし、罪証を隠滅すると疑うに足りる理由がないと、こういうことで却下なり棄却になったわけでございます。
  589. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、勾留を請求した理由は、いまの三つのものそれぞれについてどういう理由で勾留を請求したのか、どういう理由で逮捕状を出して執行したのか、この点を説明願いたいと思うのです。いまの裁判所側の勾留却下、あるいは準抗告の棄却との対比において、警察側が逮捕した根拠、それから、勾留請求、勾留請求は警察がやったんじゃない、検事がやったんですけれども、これは警察が検事にいろいろ事案の内容をおそらく説明しているはずですから、訴訟法上はこれは警察がやったのでありませんけれども、一応便宜的に一体と見て、その根拠ですね、それが警察なり検察庁が言っておる根拠が、それがどういうような形で裁判所に受け入れられなかったのか、その点をひとつ項目別に、住居不定、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれと、この三つに当てはめて御説明を願いたいわけです。
  590. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 警察が逮捕いたしましたのは、これは単独犯でありませんので、共犯がおるということで、通常、共犯のあります場合においては、お互いに示し合わせをするというようなことからして、まあ罪証を隠滅する疑いは十分にある、多分にあるということから、一応第六十条の第二号にあげておりますような、そういう罪証隠滅のおそれということが主になるわけでございます。もっとも、警察が逮捕状を請求いたしましたのは、これは百九十九条の条文によります逮捕状の請求でございますので、これは必ずしも罪証隠滅云々という問題はちょっとかかってまいりません。百九十九条にございますように、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。」わけでございますので、逮捕状を出すか出さないかは、これは裁判所の考え次第でございますけれども、といたしましては、この百九十九条の趣旨にのっとって逮捕する必要があると、こういうことでやったわけでございます。
  591. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとあなたのほうに聞くのは筋が違うかもわかりませんが、勾留請求をしたのは、あなたのほうでは勾留請求をしてくれと検事に対して要求しておるわけですか。これは正式に文書で要求したわけではないでしょう、送検してくれということは。いま勾留請求をしてくれという検事が指揮するわけではないでしょうけれども、何らかの形で勾留請求してくれということを頼んだということばは悪いとしても、その意思は検事のところに通じておるわけでしょう。
  592. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは具体的に頼みましたかどうですかわかりませんけれども、こうした少なくとも六名の被疑者を逮捕したわけでございますから、その身柄を拘束して調べたほうが、拘束しないで調べるよりは捜査が進むことは明らかでございますので、これはそういう希望は表明したかもしれないと思います。これは想像でございます。
  593. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、検察官のほうでは、その三つの条項に当てはめて勾留請求したわけですか、あるいは住居不定ではなくて、隠滅のおそれと逃走と二つだけですか。
  594. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは確かめておりませんが、第一の、少なくも住所不定というのは当たりませんので、第一号はおそらく入っておらぬと思います。
  595. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、刑訴法の百九十九条で罪を犯したと疑うに足りる理由があれば、これは必ず逮捕するんですか。
  596. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは申し上げるまでもなく、捜査は、任意でその目的を達することができればこれにこしたことはないわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、単独犯ではございませんで、数人共同の事件でございますので、これは単独犯の場合よりは、身柄を拘束して、その間の通謀を防ぐというのが通常の捜査のやり方であると考えております。
  597. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、警察側の説明によると、もう多数犯罪と考えられるならばみんな逮捕するのが原則だと言わんばかりに、そういうふうに承ってよろしいですか。
  598. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これはことばが足りませんで恐縮でございましたが、単独犯以外のもの、つまり共犯がおるような場合においては必ず逮捕する、逮捕することが原則である、強制捜査が原則であると、そういうことはもちろんないわけでございます。そういう場合でも任意でもって捜査をする場合がたくさんございますし、それで目的を十分達することもできるわけでございます。ただ、本件の場合におきましては、やはり動力車労組という、そういう組織のもとにおいて五十人からの人々がそういう犯行があったわけでございますから、それらのうちの指導者につきましては、捜査を進めるためにはこれは強制でやらなければ目的を達することができない、証拠隠滅のおそれが十分にあると、こういうことで強制捜査をやっておるわけでございます。
  599. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 犯罪が成立することを疑う相当な理由があると、そういうふうなことを疎明資料として出すわけですね、逮捕状を請求するときに。それは具体的に何をもとにしてそういう疎明資料をつくったのですか。
  600. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは具体的に何を疎明資料に使いましたか、私ども報告を受けておりませんが、おそらく被害者のほうの調べ、あるいはその他参考人などの供述を得て、裁判官の少なくも令状を出すに足りるそういう程度の疎明はいたしたものと考えます。
  601. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その場合に、これは準抗告の棄却の決定の中にもありまするけれども、本件については「犯罪の成否に相当の疑問があるものといわねばならない」と、いろいろこれは「管理者側の不誠実な態度がいたずらに組合側を激昂させ、また交渉時間を長びかせたふしも窺われ、被疑者らの言動をもって、直ちに管理者らに対する生命、身体への加害の告知があったものと判断し得るかについては相当疑問があり、また強要の各被疑事実については、右に述べたことに加え、管理者側において自己の失態に責任を感じて、自から行為したと、疑われる余地もある。従って、被疑者らに対する各被疑事実については、その大部分について、犯罪の成否に相当の疑問があるものといわねばならないが、その点はしばらくおいても、」云々と、「しばらくおいても、」刑訴の六十条の三つの理由には該当しないということでやっておるわけですが、この裁判所の決定を見ても、これは管理者側にいろいろ不誠実な態度なり、あるいは手落ちというか、失態があって、その結果として、何と申しますか、その場がそういうような状態につくられたとか、そういうふうな余地は十分あるということを、これは決定で裁判所は言っているわけですよね。これはこういう点について警察は、いわゆる被害者側、だれを調べたかわからない。逮捕状の疎明資料は、だれを調べたか、まあはっきりしないと言われますけれども、本件については、いわゆる被害者側と見られる、その場におった、これは機関区の管理者側ですか、これを調べて、それが疎明資料になっているということは、これは常識的に明らかなわけですね。その内容を裁判所側はここまではっきり言っているわけですから、そういう点についての吟味は警察としてはしなかったのですか。また、警察はそういうことを吟味する必要がないのだと、ただそういう人たちが言えばうのみにしてしまって逮捕状を請求するのだ、逮捕状を出したのは裁判所側が出したので、自分たちが出したのでないと言うかもしれぬけれども、これは逮捕状は、現実には裁判所は、そう言っては失礼かもしれませんけれども、東京あたりでは別ですけれども、いなかの裁判所あたりは、そう言っちゃ語弊がありますけれども、いつでもほとんど出しているわけですから、こういうふうに決定にいわれているような内容を吟味したのですかしないのですか、どうなんですか、その点は。
  602. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) この点は、私は、裁判所がすでに逮捕状を出したから、したがって、責任がないなどとは毛頭考えておらないのでございまして、私どものほうに捜査の責任は十分あるわけでございます。いま犯罪事実、被疑事実については検討したかどうかというお話でございますが、私どもの調べた範囲におきましては、先ほども申し上げましたが、二月十七日の午後九時から翌日の午前八時まで、十一時間の長きにわたりまして、これは途中休憩もしておるようでございますけれども管理職員、区長及び助役九名に対しまして、五十名の者がそれぞれ脅迫いたし、さらに暴行を加え、あるいは辞職願いを書かせていると、こういうようなことでございますので、これはどうも私ども勾留請求の却下に対する準抗告、これに対する棄却、この決定の中で、確かにいま先生おっしゃいましたようなことを言っておるのでございますが、この点は、今後かりにこの事件が公判にかかるといたしますならば、やがてその公判の過程において争わるべき問題であると考えますが、少なくも、私どもは、従来の一般的な事例と比較いたしまして、本件が、特に犯罪を構成しない通常の団交に随伴するような程度の行為であるということはとうてい考えることができないのでございます。
  603. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、この中で安部昌というのがおりますね。これはそのときに列車乗務中であって、この事実とは無関係だったのでしょう。それを逮捕しているのじゃないですか。
  604. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いま御指摘の点も、この棄却の理由の中の一節で若干触れておるわけでございますが、この点につきましては、私どもやや心外なんでございます。と申しますのは、安部被疑者につきましては、なるほど二月十七日には乗務いたしておりましたが、十八日の午前三時に機関区に戻っているのでございます。したがいまして、午前一二時以降の時点につきまして私どもは被疑事実ありと考えているのでございます。
  605. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、裁判所があれですか、はっきりと「(もっとも被疑者安部については一の(一)の被疑事実のあった当時列車乗務中でこの被疑事実と無関係なことはほぼ明白である)」と、こう裁判所は断定しているわけですね。これは相当資料を調べての結果だと思うわけですが、あなた方は、三時なら三時にこれが帰ってきて、その後団交に加わって具体的にどういう行動をしたのですか、この人がですね。そのことをはっきりつかんでいるのですか。
  606. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) そのことは、はっきりと申しますが、捜査の過程で明らかにいたしまして送致いたしました。被疑事実の中には、はっきり安部被疑者につきましては、少なくも午前三時以前の事実について関与したということは書いてないのでございます。
  607. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、具体的に、それではあなた方が、いわゆる被害者側と目される人を調べたと、調べたわけですね。そしてそれに対してこの六名の人たちに任意出頭をかけて、それが来なかったと、来なかったから逮捕したというなら、これまた話はある程度別になっていくと思うのですけれども、あれですか、任意呼び出しをかけたことはないのですか。
  608. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 任意出頭をかけなかったようでございます。
  609. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは全くそのいわゆる被害者側と称せられる人の一方的な言い分、しかも、それは裁判所の決定によりますると、非常に不誠実な態度があって、いたずらに組合側を激昂させたのだと、そして同時に、管理者側は、「自己の失態に責任を感じて、自から行為したと、疑われる余地もある。」のだと、こう言っているわけですね。これは決定ですから、最終判決ではありませんで、公判を開いて証人として調べたわけではないと思いますからあれかもわかりませんし、あるいは、これは準抗告だから書面審理ですね、だと思いますから、そこまでいったかどうかは別として、いずれにいたしましても、裁判所側ではそこまで認定しているわけですね、はっきりとね。そうすると、そういう人たちの言い分だけをほんとうに信じてしまって、本人たちを一ぺんも呼ばないで、その弁解を聞くこともなしに逮捕してしまった、結果はこうなるわけですね、筋道として。それは間違いないわけですか。
  610. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは任意出頭で出てもらって、そして弁解を聞くというのもこれは一つの筋かと思いますが、これは結果的に見てはなはだ恐縮なんでございますが、この六人の被疑者は、中に黙秘をしている人もおります。それから、あとは事実を否認するというようなかっこうでございます。この黙秘をするというような人は、往々にして任意出頭に応じないというようなこともままあるわけでございます。通常まあ任意でやるというのがたてまえでございますけれども、こういう五十人からの者の犯罪、そのうちのリーダー格ということになりますと、これはやはり一斉に身柄を拘束して、それぞれ分けて調べるということが最も真実を発見するのに近いということも、これは否定することができないことだと思います。したがいまして、本件の場合は任意出頭をかけることなく、同時に逮捕するという手段に出たのでございます。
  611. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうするとあれですね、黙秘しているということはあれですか、直ちに証拠隠滅のおそれがあるというふうに推定——推定ですよ、推定してよろしいというふうにお聞きしてよろしいのですか。それはおかしいのじゃないですか、黙秘権という権利が認められているわけですからね。権利が認められておることをやったら、もうそれはすでに罪証の隠滅のおそれがあるのだとか、あるいは逃亡のおそれ——逃亡のおそれとは言わないかもしれませんが、罪証の隠滅のおそれでしょう。そこに持っていくには、何のために憲法上、刑訴法上でそういう権利が認められておるのか、全くわからないのじゃないですか。
  612. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) あるいは私のお話のしかたがまずかったかと思いますが、これは私の申し上げたのは、黙秘をしている被疑者もあると、そうしますと黙秘するような被疑者という者は、これは往々にして任意出頭などをかけても、逮捕状を持ってこいというようなことが落ちであって、とても任意出頭などというよらな手段ではらちがあかないということがままあるという意味で申し上げたのでございまして、これが直ちに証拠隠滅につながる、あるいは逃走につながるということを申し上げたつもりではございません。
  613. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 厳格に言えばあなたの言うとおりですね、法律的にそうなんだから。だけれども、裁判所のこれにも書いてあるように、「また、被疑者らにおいて黙秘または否認していることをもって直ちに罪証隠滅の虞があるといい得ないことは、多言を要しないところである。」、これはもう憲法上なり、あるいは法律上から言ってもあたりまえのことなんですね。あたりまえのことなんだけれども、現在の警察なり検察庁では、黙秘をしたり否認をすると、直ちに証拠隠滅のおそれがあるのだということで逮捕し、勾留を請求する。まま裁判所もそのままそれを受けているということが非常に多いわけですね。そうすると、本件に戻りますと、任意出頭をかけないということ、これはかけないほうがいいと判断したのは具体的にはどこに理由があるのですか。いまは一般論として言われましたけれども、初めから否認するということを前提とし、初めから黙秘権を使うんだと、これが前提なんですか。
  614. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 任意でもって目的を達することができれば、これはこれにこしたことはございませんが、動力車労組という組合を背景にし、そして当日少なくも警察のほうで一応疑いました事実というのは、十一時間ばかりの長きにわたって管理者をつるし上げて暴行、脅迫を加え、あるいは職務強要を行なった、こういうことでございますので、これはどうも簡単に調べがつくという被疑者ではないという推定を下したわけでございます。そうして、任意でかりにやりました場合に、任意でありますと、これは御承知のように、いつ何どきでも退出することができますし、まあ捜査の方法といたしまして、そういう任意出頭をかけてうまくいかない場合に逮捕状を執行するということになりますと、何か時間かせぎをしたのだという非難を受けることもございます。そういうわけで、この六人の被疑者はそれぞれお互いに通謀し、口裏を合わせることができないような状態で取り調べをすることが最も事実を究明するのに適当な方法であろうと、こういうことで任意をやめて強制捜査をやったものでございます。
  615. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、具体的にこれらのものが証拠隠滅をはかったと疑わせるような行動があったと、こういうのですか、ないというのですか。
  616. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 棄却の決定の理由の中には、証拠隠滅をするということを疑うに足りる事実はなかったというふうに言っておるわけでございます。ただ、しかしながら、その内容は、被害者に対してそういう働きかけと申しますか、もみ消し運動をしたこともなければ、あるいは当該問題の発端になりました二名の受験者に対して口裏を合わせるような働きかけもしなかった。そういうところを見れば、どうも証拠隠滅をするおそれはなかったのではないか、こういうような言い方に受け取れるわけでございますが、これはどうも私ども、はたしてそうであるかどうか。それから、お互いに六名の被疑者同士が話し合いをする、あるいは口裏を合わせるということもございましょう。あるいは、また、六名以外の、被疑者になっておりません残りの四十数名の人々についても同様に働きかけが行なわれるというおそれは、これはもう十分に考えられることだと思うのでございます。
  617. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 こういう事件で、じゃあ証拠力として何が証拠になるか。これはもちろん自由な心証による判断ですけれども、証拠力としてなるのは、あなた方が逮捕状の請求につけた疎明資料、それが一応の証拠になるわけでしょう、具体的には。だから、これらの六名が何を言うかということよりも、その一応被害者側でこういうことを言っているということになってくれば、そこで一応証拠は固まっているわけですよね、あなた方に言わせれば。だから本人の供述をとるとか何とかということは必要がなくなってくるんじゃないですか。だから、そこで六人を証拠隠滅とか何とかということ——この六人の者に対して自白を強要する、まあ強要とまでいかないとしても、とにかく逮捕して、そうして自白をとるのだという前提、その目的のために逮捕をしたというふうに考えられる、考えざるを得ないんじゃないですか。それが目的じゃないですか、これ。
  618. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは私いま申しましたように、六名の者がお互いに通謀するということ、これのおそれがあるということが一つ。これはまさしく裏を返しますと、先生おっしゃいますように、被疑者供述に期待をする、こういうことにとれるかと思いますが、それ以外に、もちろん私ども自白に非常に期待をかけるというものではございません。しかし、自白が得られればこれにこしたことはございません。それから、それ以外に、当日現場におりました者は、やはり被害者とそれから加害者と、両方以外にはちょっとほかに第三者がおったというふうな話は聞いておりませんのです。そういたしますと、この五十名ばかりの者が管理者側に対して暴行をやったわけでございますから、この被疑者六名以外の四十数名という者は、これは非常に重要な参考人、少なくとも被疑者でないとするならば、重要な参考人でございます。そういたしますと、そういう人々に対する働きかけ、これはやはり十分に考えまして、そういう人々と口裏を合わせるというような、そういう証拠隠滅のしかたも考えられますので、そういうことを防ぐことも必要だろうと考えております。
  619. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ六人以外の人が重要な参考人というのですけれども、こういう人に対してはとういう——逮捕までやったのですか。
  620. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 逮捕の前段においてどの程度の調べをいたしましたかは聞いておりませんが、少なくとも、現在までの段階におきましては、これらの人々にも捜査の手を伸べておるわけでございます。
  621. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題は、本件の逮捕が、いわゆる官側と称せられる者の一方的な供述をたやすく措信して、それに乗っかっていって、そして六人の者を逮捕した。それによって組合の組合活動というものを、これは警察としては弾圧しようとする意図は主観的にはなかったかもしれません。しかし、客観的には弾圧ということにならざるを得ない結果が生まれてきておる。しかも、その結果として、裁判所に勾留請求したら、裁判所はそういう犯罪事実そのものが成否が疑問だから認めない。しかも、刑訴法の六十条の三つの条件というものについては、これも認められないといって勾留を却下しておる。準抗告したけれども棄却になっているのですから、だから、警察のやり方は、これは結果から見て非常に、何といいますか、軽卒にというか、一方的に事を信じて逮捕に踏み切った、非常に捜査として常道からはずれておる。常道からはずれておることは何かといえば、そういうようないわゆる労働運動に対する見方が正しい見方をしていない。非常にへんぱなものの見方をしていて、そういうような団体交渉などというものは、なお多衆の威力を背景としたりすれば、もうそこに犯罪が起きてくるのだという形のもの考え方でやっているからこういう結果が生まれてくるのじゃないかと私は思います。この判決の中にはっきり書いてあるのですね。——判決じゃない、決定ですが、結局、「本来このような交渉は、団結権に基づく組合員多数の力を背景に行なわれるものであるから、交渉の際の組合員の言動に対し刑責を問うには構成要件該当の有無について厳格慎重な判断が要求されるところ、」云々と、こういうふうに言っているわけですね。だから、団体交渉というものは多数の力を背景に行なわれることがあたりまえなんですから、それが行なわれたからといってすぐ構成要件に該当するというような考え方をとるべきではない。厳格慎重なる判断が必要なんだ。その厳格慎重なる判断というのは、いわゆる一方的な管理者側の供述だけではなくて、これらの人々の言い分というものを聞いた中で判断すべきことなんだ。これは裁判所も言っている。これは当然過ぎるくらい当然だと思うのですね。どうもその点について、何か労働運動というか、団体交渉というかを犯罪視しているというまだ古い考え方が残っていて、警察が乗っかったというか、乗っけられた、こういうふうに私には考えられてならないわけですね。私はそういうふうにこの事件はどうも思うわけです。ですから、あれですか、団結権に基づく団体交渉というのは多数の力を背景に行なわれるのだ、こういうことは認めるわけでしょう、これは。その点どうなんですか。警備局長、どうなんですか。
  622. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) いまおっしゃるとおりでございますが、ただ、一般的に申し上げまして、ただいまの事件についての問題について私からも御説明申し上げますと、事件の捜査の概要とか、あるいは勾留却下の問題については警備課長から説明をし、また、御指摘のような点については、確かに客観的に申し上げますといろいろな点があると思います。ただ、しかし、この事件につきまして、私どもが単に管理者の言うことを聞いて警察が一方的に捜査をして、そうしてこの労働運動を弾圧したということは、率直に申し上げまして、全くそういうことはないのでございます。ただ、客観的にその捜査の過程において、あるいは私どもの疎明資料等の不備のために、あるいはいまの勾留却下等の事由の中に書いてありますようなことがもし一般的にあるとするならば、これらの点については、今後の公判の問題におきましていろいろ真相が明らかになるというふうに私は思っております。ただ、率直に、そういう点については、私どもも捜査のやり方として、その結果労働運動を弾圧したのではないかというような誤解のないように、また、そういうことを第三者から指摘されないように、私どもは十分戒心もしなければならないというふうに思っておりますが、この事件について、私どもはそういう意図を持ってこの捜査に着手をしたということは全くございませんので、その点誤解のないようにお願いをいたしたい、こういうふうに考えております。
  623. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう意図を持ってやったかどうかということは、これはやはり客観的な事実関係、逮捕すべきと常識的に考えられるものを逮捕したということならば、あるいはそういうふうに言えるかもわかりませんけれども、本来逮捕すべきではない、そこまでいってない、これは裁判所の言うことを何も金科玉条にするわけではないといたしましても、少なくとも、合議の裁判所が勾留却下、準抗告も棄却したと、その中に書いてあるのは、相当きつく書いてありますよ。あなた方にとっては心外かもしれませんけれども、相当きつい文章ですよ、これは。この団体交渉というのは、団結権に基づく組合員多数の力を背景に行なわれるものであるから、だから、このときの言動に対して刑事責任をとるには、構成要件該当の有無について厳格慎重な判断が要求されるのだと、こういうふうなことで言っておりますが、これらの六人の者の言動の中に、管理者をそれぞれ非難する、いやがらせ、ないし、侮べつ的な発言が強い調子で繰り返され、その意味で不穏当であり、非礼な言動があったことは明らかであるにしてもと、こういうことで、あとは法律的な判断になっているわけですけれども、あなた方は、それじゃ調べた範囲で、いま警備局長管理者の一方的なことばを聞いてやったのではないということを言われましたね、そうすると、管理者の一方的なことばではなくて、じゃあほかの者が逮捕までどういうような管理者以外の者をつかんでおったのか、これが一つ明らかにならないといけませんね。  もう一つ、決定の中で言っているのは、管理者側の不誠実な態度がいたずらに組合を激高させたのだ、交渉時間を長引かせた節もうかがわれるのだと、それから、管理者側において自己の失態に責任を感じてみずから行為したと疑われる余地がある、ここまで言っていますね、裁判所は。相当きつくと言うか、言っているわけで、これはやはり証拠に基づいて言っているものだというふうに考えられるわけです。そこで、問題は、いま言った管理者側の一方的なものでなくしてやったのだというならば、管理者以外の者のどういうような資料に基づいて逮捕に踏み切ったのか、これが一つと、第二に、決定の中に書いてある管理者側の不誠実な態度とか、自己の失態に責任を感じて云々とか、自分からやったと疑われる余地があるとはっきり言っておるのですから、そういう点についてどういうふうに調べて判断をしたのか、これはぼくは大事なことだと思うのです。うのみにしたというふうにぼくにはとれるわけです。あなた方の言っていることとその決定を比べてみると、あなた方は管理者側の言ったことを一方的にうのみにしたというふうにとれるわけですね。管理者側の言ったことを一方的にうのみにして逮捕したのではないか、勾留請求したのではないかと言って裁判所は判断しているわけですから、そうとれる判断ですから、そこに私は二つ問題点が一応出てきておると、こう考えるわけです。あまりくどくなってはいけませんから、二つの点についての一応の御説明を願いたいと思います。
  624. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いま局長が申し上げましたのは、その被害者の供述だけではない、こういう意味で申し上げられたわけでございますが、具体的に被害者以外の者をどういうふうに調べて、そしてそれを疎明資料に使ったか、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、私ども明確に承知しておりませんので、これはいずれ調べてみたいと存じます。やはり何と申しましても、これは先ほど裁判所に肩がわりするというような考え方は毛頭持っておらぬということを申し上げましたが、少なくとも、やはり令状を出すというふうに裁判所が考える程度の疎明資料はあったわけでございます。少なくも、かりにその疎明資料の中に第三者の供述がなくて、被害者だけの供述調書であったと、こういたしましても、それはかなり信憑性の高い、逮捕状を出すに足るほどの信憑性の高いものであったと推定されたに違いなかろうかと考えております。区長以下これらの九名の助役の方々が十一時間の長きにわたってこういう事態があったのだということを全然事実無根でそういうことを言うということは、通常、常識では考えられないことでございます。また、本件が発生します以前から、試験制度反対ということでいろいろ動きがあったというような事情もございましょう。そういうことで、まあその被害者側の一方的な供述だけでなくて、他にこれらを信用すべき状況にあったように私ども思いますけれども、具体的な問題につきましては、なお確かめたいと存じます。  それから、構成要件に該当するかどうかを慎重に判断しなければならぬということ、これは棄却の決定の中に言っていることは私ども承知いたしております。ただ、これは、あるいは裁判所の意図といたしましては、構成要件に該当するとしても、それが違法であるか、つまり正当な範囲に属するのか属しないのかという、いわゆる違法性の問題として、違法性を阻却するかどうかということと、慎重に判断しようというような意味ではなかろうかと考えます。少なくとも、私どもの報告に接したところによりますというと、通常、団体の威力を背景とする団交でございますから、ある程度の乱暴なことばづかいといったようなのはあるでございましょうが、通常、団交に随伴しますこれらの行動等と比較しまして、本件の場合は、少なくとも正当性の範囲を逸脱して刑罰法令に触れる行為である、こういうふうに私ども考えておるのでございます。
  625. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の聞いているあとのことに答えてないわけですが、決定で言っているように、管理者側の不誠実な態度がいたずらに組合側を激高させたとか、交渉時間を長引かせた節があるとか、それから、自分で自分の失態に責任を感じて、みずから行為をしたと疑われる余地もあると、こう決定で言っているわけですから、こういう点について、どういう判断というか、考慮を警察が逮捕状を請求するときにしていたのか、いや、そういう事実は全然考えなかったのだ、こういうのか、どっちかということなんですよ。
  626. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) これは当局側の態度がどうであったかということは、まあ調査と申しますか、そういうことで特別に取り上げたかどうかは、これは問題でございますが、少なくも、しかしながら、試験制度という管理者側のほうで出したその新しい提案に対して反対闘争を組んでいる、こういうことでございますから、管理者側のほうの失態をみずから悔いておるというようなふうに裁判所が認定されましたことは、はたして事実に即するものかどうか、私ども疑問ではなかろうかと思います。試験制度でございますから、これはもちろん労使双方の話し合いという対象にあるいはなるのかもしれませんが、しかしながら、当局側が新しい制度を取り入れようとして、これを実施しようというものをいろいろな手を使って妨害するような行動に出ておるわけでございます。そういう点からいたしますと、はたして裁判所が言っておりますように、管理者側のほうがみずからの手落ちを認めているというふうに認定してしまうことはいささかどうかと私どもは考えます。
  627. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 管理者が自分の手落ちを認めておるという意味ではなくて、ここに書いてあることは、「管理者側において自己の失態に責任を感じて、自から行為したと、疑われる余地もある。」、こう決定で言っているわけでしょう。だから、あなた方の構成要件に該当するとして逮捕状の請求した行為が、あとで合議体の裁判所が調べた内容によっては——だから、これが疎明資料なのか。決定ですから、疎明資料だと思いますが、自分から行為したと疑われる節もある、こう言っているわけですよね。そうすると、あなた方が構成要件に該当するとした行為が、もう何といいますか、それだけはっきりしないというか、すでにそこに疑問があるのだね。管理者側、被害者側と目されている人が自分で言ったことも入っているというように疑われるのだということを言われておるのです。そういうことをこういうふうに言われている。言っていることは、警察から見れば心外かもわかりませんけれども、いま言ったような、ここに書いてあるような、管理者側の不誠実な態度が組合側を激高させ、それから、交渉時間を長引かせたとか、あるいは管理者側が自分から行為したと疑われる、こういうような点についてあなた方のほうでは疑問を持たなかったのか、こういうことですよ。いや、疑問を持たなかったのだ、それは裁判所がそういうふうに決定したのがこれは全然間違いなんだと、こういうふうな考え方なら、そういう考え方もありますから、これを強制するわけにいきませんから、それならそれでいたしかたないことになりますが、そこのところはどうなんですか。
  628. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どものほうは、どうも裁判所を批判するようなかっこうで、はなはだ恐縮なんでありますが、先ほど先生は、被疑者の弁解を聞かないで逮捕したということをおっしゃいましたが、同様の意味で、被害者側の話を裁判所側が聞いた上で、そしてみずから行動したと疑われる節もある、こう言っておるならば、私どもまた言うことばもないのでございますけれども、おそらくこれは疎明資料でございまして、疎明の上にあらわれた限りにおいての判断でございましょう。おそらくこの点は辞職願いを書かせられたという強要の点ではなかろうかと思いますが、辞職願いを書いたのは、みずからどうも当然だと思って書いたんだと、こういうふうに認定されたとするならば、これはどうも私ども非常に事実と違うのではなかろうか。やはり五十人からの者につるし上げを食って、十一時間ばかりこれはかん詰めではございませんけれども、家にも帰れないというような状態が続いておって、そして、おまえは辞職願いを書けというようなことを言われた。書かない人もあったわけでございますが、大部分と申しますか、最初は一人でございましたが、そのうち数人になった、こういうような状況でございます。でありますので、どうも管理者側のほうで自分で進んでやった行為だと見られる節もある、こういうふうに認定してしまわれるのはいささかどうかというような気持ちがするわけでございます。  それから、私ども思いますのに、これはその機関区長とか助役でございます、被害者は。この区長とか助役に対してそういう試験制度反対であるというようなことを言いましても、これはそういう試験制度を云々するという立場にない人々でございます。こういう人々に対して、その機関区から二名の受験者を出したということについてたいへんにつるし上げをしたのでございますから、これはどうも試験制度に反対をするというほこ先の向け方の向け先が違っておったことは明瞭でございますし、その試験制度の当否は別といたしましても、それも試験に参加した者二名、この二名に受験させたという行為について区長以下助役をつるし上げた、こういうことでございますので、どうも当局側にその誠意がなかったといったような感じで受け取ることはいささかどうであろうか、こういうふうな感じがするのでございます。
  629. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 逮捕するときに、いわゆる被害者側を先に調べていて、そして本人たちの陳弁も何も聞かないで逮捕したわけですね、これは事実だと。それから、裁判所のほうで被害者側の弁解を聞かないで、そして一方的に今度は被疑者側の言い分を聞いてこういう認定をしたのでは心外だ、心外とまで言わないでも、そういう意味のことでございますけれども、裁判所が勾留するときには、いわゆる被害者側と称せられる人も、警察も調書はもちろんとっている。それから、検事のところでもおそらく検事調書をとっておるに違いないのです、被害者側の。と思いますけれども、あるいは、また、被害者側が検事調書をとられていないかもしれませんが、これはぼくもよくわかりませんが、常識的にとったとみていいでしょう。こうなってくると、それを前のことを全然調べていないで逮捕したということと、あとのほうで被害者側を調べないで、被疑者側の言い分だけを聞いたということとは全然違うわけですよ、内容が。これを一緒くたにしてしまって、裁判所のやったことはあまりおもしろくない——気分的にあなたのほうでおもしろくないと思われるのは自由として、そういう非難のあり方というのは、ぼくは少しく筋が違うのじゃないかと、こう思いますが、その点はどうですか。
  630. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私、先ほどお答え申し上げましたように、裁判所を批判するようなかっこうで、はなはだ恐縮でございますが、おっしゃるように、逮捕するということと勾留を求めるかどうかということとは、これまたおのずから性質の違うものだと思います。ただ、私どもも承知しておりますような事実関係でございますので、どうもその被害者側のほうが任意に退職願を書いたり、あるいはみずから落ち度があるようなことを認めるというようなことで、唯々諾々として組合側の言い分に従ったんだというふうにとれない節もないといったようなぐあいにまあどうも棄却決定の理由の中のものが見えるわけでございまして、これはちょっと私どもとして、はたして事実と違わないのかどうかということについてただいまのところ調べておる、こういうふうなことについて申し上げたのでございます。
  631. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 論議が少しくぐるぐる回りしておりますから、別のところにいきます。  そうすると、あなたのほうでは、どうもはっきりしないのは、管理者側の一方的な供述を聞いたのではないということを言っておりながら、それでは管理者以外の人の、まあ第三者というか、どういう人かは別として、その供述を聞いたのかどうか。その第三者というのは試験に直接関係がない人ですね、こういう運動というか、試験制度のことがどうとかかんとかということではなくて、その目撃をしたとか何とかという人ですね、そういう人のほうを聞いたのか聞かないのか、これがはっきりしないのですね。これはいまの段階ではわからないと、こういうことですか。
  632. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いまの段階では、これはもう被疑者以外の人々を調べておることは確かでございます。ただ、逮捕状を請求する前の段階においてどの程度調べたかということにつきましては、これはあとで調べたいと存じます。
  633. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもはっきりしません。というのは、そのでき事というのは、管理者側がおるところの前でできたことだけなんでしょう。そのほかのことはないのでしょう。そこはどうなんですか。一人じゃなくて、管理者側が多数いるところでできたことだけなんでしょう。ほかに何かあるのですか。
  634. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) この九人が被害者でございますが、九人の面前で行なわれたものが大部分でございますが、一人の助役に対する暴行事件というのは別でございます。
  635. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一人の助役に対する暴行事件というのは、やっぱりあれですか、こっちは共同関係でやったものですか、単独のものですか。
  636. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは当夜試験を受けました者のかわりに乗務いたしました助役を迎えるために機関区を出ていった助役があるわけでございます。その助役を取り囲んで、どこへ行くのだといったようなことで引っぱったりこづいたりという暴行を加えたという事件がございます。
  637. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは捜索、差し押えと逮捕とは、これはどうなんですか。一緒ですか、どっちが先なんですか。
  638. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 同じ日でございます。
  639. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 同じ日だけれども、執行はどっちが先なんです。捜索、差し押えのときですね。あれですか、被疑者は立ち会っているのですか、全然。
  640. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) その点ははっきりいたしておりません。被疑者は、自宅で逮捕された者と、それから、捜索、差し押えの対象になりました動労の追分支部で逮捕された者と、両方ございます。
  641. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この警察官の捜索、差し押えに対しても、ある程度積極的に応じているのだと、こう言っておりますが、この点はどうなんですか。
  642. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 棄却決定の中にそういうことを言っておることは承知しておりますが、事実どうであったかということは私ども承知いたしておりません。これも後刻調べたいと思います。
  643. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十一時間団体交渉をやったということが、まるで何か犯罪のように聞こえるのですが、あなたの話を聞いていると。十一時間十一時間と盛んに言うのですけれども、徹夜で団体交渉をやることは幾らでもあるのじゃないですか。何か団体交渉を長い間やったから、何時間か夜から朝にかけてやったというのです。それだからこれは犯罪のような印象を聞くんですが、団体交渉を徹夜でやったって別にどうということはないのじゃないですか、そういう例は幾らでもあるんじゃないですか。
  644. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 団体交渉にはそういうものが多くあろうかと思います。それで、ただし、これはしかしながら団体交渉の当事者がその自由意思を抑圧されるような形において行なわれることは、これはもちろん問題があるわけでございます。本件の場合には、そもそも団体交渉の名前をつけていいものかどうか、これは私どもはなはだ疑問ではないかと思います。と申しますのは、先ほど申しましたように、この機関区から二名の受験者が出た、その二名を受験させるために助役がかわりに機関車に乗ってやった、それがけしからぬということで区長以下を非難攻撃したのでございますから、これはどうも労働条件に関して団体交渉をした、こういうふうにとっていいものかどうか、これははなはだ疑問だと思います。
  645. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはちゃんと、しかし、通告をしてやったのじゃないですか。
  646. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 団体交渉をするという通告がなされたということは私ども承知しておりません。
  647. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所はそこまで法律的な、労働法的なことを知らなかったのかもしれませんけれども、団体交渉関連して発生したのだと、こう言っていますね。そうじゃないですか。
  648. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私は、これは一体団体交渉という日本語の意味では、確かに団体で交渉するのですから団体交渉かもわかりません。しかしながら、労働法上言う団体交渉というものに当たるかどうか、これははなはだ疑問だと思います。
  649. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、労働法上の団体交渉に当たるかどうかわからないという理由は、いまちょっと説明があったのだけれども、ちょっとはっきりしなかったのですが、聞き漏らしたのですが、端的にちょっともう一ぺん説明願いたいと思います。
  650. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 先ほど申し上げましたように、勤務条件とか、あるいは労働条件とか、そういうものについて当局と話し合うというのではありませんで、五十何人の人々がわっと押しかけて、そうして管理者側をつるし上げた。それは一方的につるし上げたのである。その内容は何かといえば、二人の受験者を、組合が反対しているその試験を二人の希望者、これは希望したのであります。二人が希望した、その希望した二人に受験できるように便宜をはからってやったそういうことがけしからん、こういうことで非難攻撃したのでございますから、これはどうもはたして団体交渉という名に値するものかどうか。また、はたしてそれがいわゆる労働法上の団体交渉としての対象になるものかどうかということについて私は疑問がある、こういうことを申し上げたのでございます。
  651. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点は非常に大きな問題だと思います。団体交渉というのはそういうふうに狭く解釈すべきものなのかどうか、議論があるところですが、これは議論としてあとに残しておきます。  そこで、問題になってまいりますのは、十一時間団体交渉か何か、とにかくやったと、そのうちに三回ぐらい休憩を求めて、ちゃんと休憩をしてやっているのじゃないですか。だから、初めからけんか腰だったんじゃないんじゃないですか。
  652. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 初めからけんか腰であったようでございます。で、裁判所が先ほどから引用しておられます棄却決定のうちには、当局側の要求によって休憩をはさんでと、こういうふうなことばがございます。まさしくことばはやわらかいのでございますが、どうも事実はつるし上げという形態でございまして、まあ助役さんのほうも、くたびれちゃった、しばらく待ってくれ、こういうようなことでしばらくとぎれるというようなことがあった、こういうような状況であると私ども聞いております。
  653. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 つるし上げつるし上げということばが出てくるのですけれども、つるし上げで犯罪になって逮捕されるような状況として、今度はこちらがやられているわけですね。もうさっきの全金の者と、それから日産の者との、例のプリンスと日産の合併をめぐるときがありますね。あのときには日産派の連中が何人か集まって、まあつるし上げるように見えたと、こう言っているわけですがね。そういうようなときについては、具体的にどういうような行動があったか、全く調べないわけですね。これはいわゆる日産というのはどこのどういう上部のあれに属しているのか、私はここでは言いませんけれども、いずれにいたしましても、ああいうときには全金側がいわば被害者になっておる。こういうときにはほったらかしておいて、そうして今度はこういうときになってくるると、逆な立場みたいに見えるといきなりそれがつるし上げだと、しかも、つるし上げだから、そこに何らかの犯罪行為というものが付随的に起きてきているのだ、こういうような形で逮捕したり何かしている。こういうふうな行き方をとっているのは、だから、結局本件の場合には官側に味方をして、主観的には別かもわからぬ、客観的にはそういう形が出てきているということ。前の全金の場合については、全金側に逆に味方をしないで、——味方ということばは悪いかもしれないけれども、いわば何だか日産のほうに味方をして、そうしてあのときには犯罪がある程度明らかに考えられるのにやらない、非常にへんぱな行動を警察側はとっておると、こういうふうに疑わざるを得ない、こういうふうな結論に私はなってくると、こういうふうに考えるわけです。  そこで、本件について問題を戻すわけですが、そうすると、これはあれですか、国鉄側が警察側に対してどういうような申し出があったのですか。
  654. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは先ほど御説明申し上げましたように、当初公安職員が取り調べをしておったのでございますが、これを二月の二十八日に至りまして、警察のほうに事件の引き継ぎがあったわけでございます。
  655. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公安職員がやっている場合には、事件を警察に引き継ぐというよりも、公安職員がそのまま警察署に送るのが多いんじゃないか。どういうわけで警察が特に引き継いだのですか。
  656. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) その点は、なぜこちらのほうに引き継いだか、私ども具体的なことは存じませんが、おそらく事件の内容が複雑と申しますか、そういうことで手なれておらないので、なれたほうでやってもらったほうがいいんじゃないかということだと存じます。
  657. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、結論的には勾留は認められない、却下されてそのままになっている。そうすると、勾留は認められない、却下されるようなものを警察は逮捕したんだ、しかも、その勾留請求は、これは検事がやったといたしましても、それはおそらく警察側との意思を通じていることだと考えられるのですが、勾留の請求をしたのだが、こういうふうな結論が出てきて、警察側のとった態度が、少なくとも裁判所においては否定されたんだと、こういうふうに結論づけられるかと思うのですが、この点はどういうふうに見ておりますか。
  658. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは勾留という問題をめぐりまして、勾留状を発付しているかどうかという、その観点から事案につきましてもある程度の判断はなされると思いますけれども、しかしながら、本件の事案そのものに関する判断というものは、裁判所の法的な判断はいまだ下されたというふうには私どもは考えません。
  659. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはあなたのほうで裁判所の法的な判断を求めるわけではございませんから、これは検察庁がやるわけでしょう。検察庁がこの事件をどう扱うかは、これは別個の問題ですからね。私に従えば、この程度の事件で、しかも、事実関係がきわめて不明確である、犯罪の成否に相当の疑問があるというふうにすでに言われている事件、そういうような事件で、全く証拠の上から見ても起訴価値がないし、また、事件そのものとしても、この団体交渉がいわゆる労働法上の団体交渉であるかどうかは、あなた方に言わせれば議論のあるところだとしても、団結権に基づいて、とにかく組合員多数の力に基づいて行なわれたそのものに、ある程度の不穏というか、そういう言動があったとして、侮べつ的な言辞があったとして、それが直ちに犯罪であるというものの考え方、そういう前提に立ってどうも警察側が処しているとしか考えられないんですね、私には。それで私は、こういうようなこの程度のことで一々大警察、北海道の本部が乗り出していって、そうして逮捕し、勾留を請求するのは、これは結論的に客観的に見て労働運動の弾圧にならざるを得ないと、これは私の考え方ですし、多くの人はそういうふうに本件について考えているのではないかと、私はこういうふうに考えるわけです。そこで、本件についての質問は一応きょうはこの程度にしておきます。これは結論をどうこう言ってここで私のほうで求めても、あなた方のほうで、結論として、これ以上捜査はやりませんとか、この事件をどうこうとか言える段階ではもちろんあなたのほうではないわけですから、この問題についてはここら辺にしておきますけれども、私は、どうもいままでの説明を聞いていて、本件について逮捕状を請求したり勾留を請求したということが、これは鉄道側から頼まれて、そうしてここら辺である程度組合運動を押えつけてやろうとか、そういうふうにしなければならないというような意識が潜在的にか何かにあってやったことだとしか考えられないことだというふうに思います。いずれにいたしましても、本件については、さらにまた別な機会にこの経過を見て質問もしたいということを申し添えて、このことに関連する質問は一応この程度で終わらせていただきます。この場合にとった警察の態度ということについては、これは私は納得ができません。いずれにいたしましても、その後の進展に合わせてもう一度やりたいと、こういうふうに考えます。  そこで、別の問題に入りたいと思いますが、時間の関係もありますから、あんまりおそくまでやるのもいかがかと思いますので、短くお尋ねをいたしますが、きのうの午後一時に福岡地裁の小倉支部で、もとの九州の暴力団の工藤組ですか、何とかの幹部と称する者の裁判があった。そのときに本人が、門司や小倉の競輪場で私設車券売り取り締まりの警察官から食事をたかられたことがあったとか、あるいは反対に取り締まりに手心を加えてもらいたいので昼めしをおごってやったとか、食事代の金銭を取られたことがあったとか、バーの営業許可がなかなかおりないので、小倉署の防犯課員に頼んだらすぐおりたとか、こういうふうなことが小倉の公判廷で供述をされたということが言われておるわけですね。このことに関連して聞くのですが、こういう事実関係はどの程度警察としては確められたわけですか。きのうのことですから、十分なことまでいかないかと思いますが。
  660. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 工藤組幹部の桑野は、昨年の十月二十五日に恐喝罪で逮捕いたしまして地検に送致をいたして、十一月の十二日に起訴されて、現在公判中であるわけでございます。三月二十八日の公判でお話のようなことが供述されたようでございますが、これは警察、検察の取り調べの段階では、全くそのような供述はありませんで、現在公判廷の供述等に基づいて十分調査いたしたいと考えております。きのうのこの供述では、弁護人の質問に答えて、警察官に食事を出してやったことがあるとか、あるいはバー、カフェーの許可にからんで頼んでやったことがあるとかいうようなことを言っておるようでございますが、検事が、その警察官はだれかということについては供述を拒否いたしております。そういうような状況でございますので、そのような事実があったかどうか、現在調査をしてみたいと考えております。
  661. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この人が公判で言ったからといって、それは直ちにそのままほんとうだとぼくは言っているわけじゃありませんけれども、それは誤解を招くといけませんけれども、それはいろんなことがありますから、自分の罪を軽くしてもらうつもりで言うこともあるし、それをそのままぼくは信頼して言っているわけじゃありません。それは誤解しないでいただきたいのですが、ただ、問題は、いままでとかくそういうような警察官と暴力団なり何なりとのくされ縁というような、そういうようなものが問題になって、相当あちこちでこういう問題があるわけです。北九州は従来もそういうようなことがあったのですか。あるいは京都などはよくありますね。よくありますなんというと悪いけれども、京都、大阪、ぼくら何か聞いている範囲でも、相当従来警察官と暴力団とのくされ縁というようなことで、供応を受けたとか、あるいは何とかというようなことで内部で監察したとか、そういうふうなことはどの程度あるんですか。
  662. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) この本件の供述は、暴力団取り締まりで検挙された暴力団員の供述でありますので、くされ縁があって検挙されなかったという事案ではなくて、実際に検挙された点から見て、くされ縁があったかどうかということは即断できないことでございます。  それから、従来の問題としては、お話のとおり、福岡、京都等でときどきそういうような問題がありまして、それぞれ懲戒処分を受けた事例があるわけでございます。ただいま手元に統計を持ってまいっておりませんが、ただ、私どもの一般方針としては、暴力団取り締まりの強化をしてまいりました一昨年から、結局取り締まり強化ということになりますると、こういうくされ縁があったんではできないし、暴力団を強力に取り締まる意欲を全警察官が持たなければ暴力団取り締まりはできない。そういう意味から申しまして、ひとり暴力団の取り締まり係のみならず、外勤警察官はじめ、全警察官に取り締まりの意欲を徹底させるということで進んでまいってきているわけでございますが、過去の事例を見ますと、やはりお話のような、ときどきそういう不心得な者があったことは事実でございますので、この点は今後とも十分指導してまいりたいと考えております。
  663. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここに出ています防犯の問題ですね、防犯の問題でいろいろ問題があるわけですよ。どういう問題かというと、バーとかパチンコ屋とか、ああいうところの取り締まりなどを、防犯課にやらせると全然事件があがらない。いいですか、ところが、刑事にやらしたら——やらしたらということばは悪いけれども、やらしたらその事件があがってきた、こういう具体的な例があるわけですよ。これ以上はぼくは言いませんけれども、いろいろな迷惑がかかる人があると気の毒だから言いませんが、そういう例があるわけですよ。防犯課の人が取り締まりなんかを通報するわけですよ。通報しちゃって、きょういつやるかということがずっとわかっちゃっていて全然事件があがらない。それでは困るというので、刑事警察がやったら事件があがっちゃったというんです。刑事警察と防犯警察がうまくいかない、気分的にうまくいかないという例があるわけです。どこだということは、あなたのところで教えてくれと言われれば教えますけれども、これ以上ぼくもあまり言いたくないから言いませんけれども、だから、防犯課の人たちとそういう業者とのくされ縁というものが相当あるわけですね。この点については、これはきょうは官房長来ておられるわけですか——そういうふうな人事関係の中で、警察官の監察の機構というのはどういうふうな行き方になっているのですか。具体的にいままでどういうようないわゆる処分が行なわれてきたのですか。ということは、懲戒処分というのは一年間にどのくらいあったか。ぼくはその数字を見てわかっていますけれども、なかなか懲戒処分しないわけですよ。内部的に諭旨免職とか依願退職にしちゃうのです、警察では。実際に懲戒に当たるような事案がどの程度あったかというと、出てくる数字は少ないのです。それに当たるものはいま言った依願免とか諭旨免にしちゃって、わからないようにしているのです。これはどういうふうになっていますか。
  664. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 国家公務員につきましては、警察庁に懲戒審査委員会がございまして、警察庁職員の規律違反を問責いたしておるわけでございます。地方の職員につきましては、それぞれの県本部に懲戒委員会が設けられまして、それぞれの申し立てに基づいて責任を追及いたしておるわけでございます。従来、懲戒の事案は、昭和二十五、六年ごろですか、そのころが一番多かったわけでございますが、その後漸次減ってまいりまして、大体年間六、七百件、こういうような処分状況でございます。昭和三十九年度中は七百七十七件でございます。本年はまだ全体の統計をとってございませんが、四十年の十月末現在で五百八十件、こういうふうな状況になっております。御承知のように、懲戒の種類といたしまして免職、停職、減給、戒告、こういうふうに分かれておりまして、四十年におきまして懲戒免職を受けた者は二十三名、停職二十七名、その他あとは減給、戒告等、以上のような状況でございます。
  665. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、私の言うのは、ここにあらわれないものがあるわけなんですよ。これは警察でやっているのじゃないですか。依願免職の場合もあるし、それから諭旨免職というのがあるのですが、諭旨免職というのは正式にあるのですか。
  666. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) お説の諭旨免というのがございます。これも私どものほうには報告がまいってございます。三十九年は論旨免になりましたものが十八件でございます。これはいわゆる処分としては懲戒免には該当しない、あるいは減給であり、あるいは戒告の処分に相当するものがございましても、本人の性格なり、あるいは同じあやまちをどうも繰り返しやすい、このような人を警察官としていつまでも置いておいても不適格であるというような場合に、本人を諭旨して免職させることがございます。
  667. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その諭旨免職というのは懲戒処分とは関係はないのですか。どういうふうにあとで違うのですか。恩給とか退職金とか、そういうことについて。
  668. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 普通の依願免の場合でございますと、退職の場合にあるいは昇給させる、また、いろいろな手当上にも特典があるわけでございますが、論旨免につきましては、そういうような一切の恩典を与えないでそのままやめさせる。ですから、これは公務員法上のいわゆる懲戒処分ではございませんが、実質的な懲戒に値する処分だとまあ理解していただいてもいいのじゃないかと考えております。
  669. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、このほかに各県本部で依願免にしてしまう場合もありましたね。これは実際事実があってもこっちに報告がないわけでしょう、あるのですか。
  670. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 依願免につきましてちょっと資料を持ち合わせておりませんが、一般的には依願免は報告はされないことになっております。しかし、いろいろ特殊な事件なり、重要な問題について本人が責任を感じてやめる、これはいわゆる本人の責任ということでなくて、監督上の責任を痛感して辞表を出してやめるというような場合もあろうかと思いますけれども、これはちょっと件数を手元に持ち合わせてございません。
  671. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察の監察官室の運用ですね、これは具体的にはどういうふうにやるのですか。私の聞きたいのは、いろいろな警察官の非行について投書なんかあるでしょう。ありますと、直接監察官室へ投書がいくのもあるし、それから、ほかの部課へいくのもあるわけですね。ほかの部課にいったときにすぐ監察官室へ回されないわけですよ。回さないで、そうして投書の主みたいな者を呼ぶわけですよ。たとえば警務部なら警務部へ投書があると、呼んで、そうして警務部長が、投書されておる人、投書だから、事実の場合もあるし、事実でない場合もありますから、これは内容を吟味しなければいけませんけれども、おまえこういう投書が来ているぞという形で言って、そうして暗にその事実について十分な対策を立てていくようにと、こういう形を打っていて、それであとから監察室に呼ばれても、呼ばれるときは十分な対策が出ているのだと、そういう行き方をどうもとっているようなんですね。これはぼくの知っている範囲できわめて例外のことだと、そんなことないんだと言われるかもわかりませんけれども、私の知り得る人たちの範囲では、どうもそういうのがあるらしいですね。そこはどういうふうになっているのですか。
  672. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 個々の具体的な事情によりましていろいろの扱い方があろうと思いますが、しかし、いずれの部課に投書がまいりましても、これは全部監察宮室に通報いたしまして、これをどういうふうにして取り調べるか、監察官室で責任をもって事実の真相を追及していくことをてたまえにいたしておるわけでございます。ただ、投書とか、そういうようなものがございましても、明らかに中傷のためのものもありましょうし、中にはいろいろと全く見当違いのものもございますので、そういうようなものの扱いについても、所属長がその責任において本人にただしていくということもあろうと思いますけれども、しかし、原則として、すべて監察官室に集中して処置をしていくというたてまえをとっております。
  673. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 監察官室が具体的にどういう活動をしていて、各県の監察官室がどういう内容でどういう処分をしたのかということ、これを私いますぐここで出してくれということを言うのじゃないのです。将来それをここに正式に出せということはぼくも言いません、そういうことは。ですけれども、聞いているのは、投書などが来た場合に、投書だから、内容はいろいろなものがあるし、気違いみたいのもあるし、気違いというとなんだけれども、マニアみたいな人もいるから、内容は判断しなければいけませんけれども、警務部長のところでどうも握っちゃうんじゃないですか、監察官室へなかなか回さないのじゃないですか、どうもぼくはそういうことを聞くのですがね。一カ月ぐらい握っているわけですね。投書の主を呼んで、おまえこういう投書が来ているぞ、投書の主は大体見当がつきますから、あわててあっちこっちかけずり回るということをやっていることもあるのじゃないですか。
  674. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 警務部長が握って監察官室に回さないというようなことは、通常は考えられないわけです。ただ、こういうものを監察官室におとす場合にも、あるいは警務部長なら部長としての上級者の判断があります。これをどういう形に処理していくのかということは、本部長なり最高首脳部の判断によるものでございますが、これをそのまま握りつぶしてしまうというようなことは考えられないことでございます。
  675. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 握りつぶしてしまうのではない。回すのです。回すのだけれども、回す間に投書の中の問題の人に十分に防御の期間を与えるわけです。防御の期間というとおかしいけれども、そういうことも現実にやっている。一カ月ぐらい置いてから回すのが多いのではないですか。すぐ回さないでしょう。すぐ回すようになっているのですか。そこはどういう取り扱いになっているのですか。
  676. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 通常は監察官室に直ちに回すというのが普通の姿かと思っております。事案の性質によっては先ほど申し上げましたような場合もあるかと思っております。
  677. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあここらであれにしておきますけれども、もう一つ、よく下級の警察官から聞きますのは、新任の警察官が各署に配属になるでしょう。そうすると、どういうのですかね、同じ年に卒業して別の警察に入るわけですね。そうすると、超勤手当とかが非常に違うのだというのですね、警察によって。そしておまえのところは幾らだとか、おれのところは少ないんだと言って、同じ同期の警察官がぶうすかみんな言っているのですね。それで署長に超勤手当を割り当てて、それをあれですか、警察官にどういうふうに割り振るかということは署長にまかしてあるのですか。どういう割り振り方をするのですか、あれは。
  678. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 超過勤務は、御承知のように、予算の範囲内において時間外勤務手当を支払うということになっております。これは職種によりまして、私ども予算を編成する場合におきましても、一般の警察官であればこれは九%、私服といいますか、刑事とかそういう者であれば一二%であるとか、それぞれの職種によって超勤のきめ方が違っております。それから、現実には、同じ外勤警察官でありましても、やはり実際に超過勤務した時間によって差異のあるのが当然でございますので、一緒に卒業した初任の警察官がそれぞれの部署によって非常にひまなところ、非常に忙しいところによりまして超勤の手当のつきぐあいが変わってくるということは、初めから当然のことであると思うわけでございます。
  679. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、同期の警察官が各署に配属されて、同じような仕事をしていてなおかつ違うのですね。ということは、署長がある程度権限を持っているのじゃないですか、超勤手当を分ける権限を。それだものだから、ある署ではそういう人に多くやったり、ある署では少なくやったりして、大きな警察と小さな警察と違いがあるかもしれませんけれども、そういう点の違いは出てくるのじゃありませんか。そういう点はどうなんですか。ぼくも詳しいことは知りませんけれども、たいぶ各署に配属された警察によって同期の者が違うのだといって、盛んに集まるとやっているのですよ。おまえのところは超勤幾ら出た、おれのところはこれだけだ、こんなに少ないといってやっているのですよ。同じような仕事をしてやっているのですよ。まあこれはそれでいいでしょう。  そこで、もう一つの問題は、捜査費がありますね、捜査費が、非常に一つの事件が起きますと刑事の人が夜おそくまで徹夜徹夜のような形で、長い日にち夜おそくまで仕事をしているわけですね。そうすると、そういう場合に十分にいかないのでしょう。どういうぐあいになっているのですか。夜おそくまで働きますね、刑事が。殺人事件なら殺人事件が起きた場合に、それが一週間とか十日でなくて、一カ月も続くわけでしょう。そういう場合にはどういうふうになるのですか。
  680. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 捜査費は犯罪の捜査活動に使うわけでございますので、いわゆる夜おそくまで勤務するというものについては、やはり超過勤務手当がございます。超過勤務手当で本人の時間外をカバーしていく、こういうたてまえになっております。
  681. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは捜査費ではなくて、別に何か超過勤務手当というのがあるわけですか。一般的な超過勤務手当から出すわけですか。
  682. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 一般的な超過勤務手当でございます。
  683. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その一般的な超過勤務手当は、そういうふうにある特定な事件が起きた場合に、何日間も働いている人には全部いかないわけでしょう。そこまでないわけですか、ワクは。
  684. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 超過勤務手当は、必ず超過勤務した時間についてはこれを何とか支給していくというのが理想でございますが、実際の姿としてはなかなかそうはいかないわけでございます。刑事につきましても、やはりひどいのになりますと週に六十数時間も超勤をすると、こういうような状況がございますけれども、現実にはなかなかそれだけの超過勤務をみてやることができない、こういうことにつきましては、私どもといたしまして、待遇の改善という部面に一そうの努力をしていかなきゃならぬと考えておるわけでございます。ただ、捜査費等につきまして、非常に長期、困難な事件が続いて起こるというような場合に、慰労あるいは激励していくとかいうようなことのために、簡素な飲食の費用というようなものを支給できることになってございます。また、めったにないような非常な大事件がある、そのためたいへんに一線の警察官が苦労を重ねるというような場合に、激励という意味で、その諸君に五百円なり千円なりの金を捜査費の中から支出するということも、まれな例として認められております。
  685. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう飲食費だとか何とかいう形で激励するわけですね。
  686. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) ええ。
  687. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう費用は警察にないからというので、それで防犯協力会から金を出さして、そして使っている例が相当あるのじゃないですか。相当と言えるかどうか、あるのじゃないですか。ぼくは防犯協力会という制度は非常に問題だと思いますがね。防犯協力会から一体どの程度の寄付を受けているんですか。警察全体としてその金を何に使うのですか。
  688. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 防犯協力会は、防犯協力というその団体自身の目的のためにいろいろ会費なり寄付金を集めて事業をやっておるわけでございますが、そこから警察が寄付を受けるということは禁止いたしております。したがいまして、その防犯協力会の金を使って警察官が飲み食いをするというようなことはあってはならないことでございます。
  689. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、あってはならないのですけれども、それはあってはならないということはそのとおりですよ。それから、寄付を受けちゃいけないということもそうですけれども、防犯協力会というのは警察のほうに寄付するためにできているのじゃないですか、実際は。
  690. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 警察に寄付をするために昔は警察後援会というものがあったわけでございます。これは形はいろいろな名前をとりましても、現実には寄付金を集めて警察の活動がやりやすいようにという意味でつくられたものでありますが、たしか昭和三十年でございましたか、一切これを廃止いたしたのであります。したがって、防犯協力会というものが、警察と民間との協力態勢によりまして、いわゆる民間協力という形で本来の防犯事業をしていくということのための団体であれば、われわれはこれを警察後援会と同一視するわけにいきませんので、そういう意味で現在いろいろと活動をいたしておるわけでございます。そういうようなことでございますので、防犯事業遂行の上に防犯協力会の人方と懇談する機会もあろうかと思いますけれども、いま先生の御指摘のように、それで警察が金をもらって飲食に費やすというようなことのないように強く指導していかなきゃならぬと考えております。
  691. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まだあなたの話を聞くと、何かちょっと歯切れが悪いのですけれどもね。まあ歯切れの悪いのはどういう理由か別として、防犯協力会が各県でどういう程度の予算で、どういう活動をしているかということは、いまでなくていいです。これは現実に警察の設備や何かの寄付をやっているのじゃないですか。ぼくも防犯協力会の会員になっているわけですよ。そして派出所で扇風機がないから寄付してくれとか、夏だから扇風機ですね、冬は何か炭がないからといって寄付してくれとかいって金を集めに来て、防犯協力会で集めて寄付しているわけですね。これは直ちに悪いとは言いませんけれども、そういう形でやっております。そこにボスが入ってきて、そういうあれがあるわけですけれども、これは別として、それから、いまいった形の中で、ぼくのところへ来る警察官がしきりに訴えるのはこういうことですよ。それは県警の本部から署へ捜査費や超過勤務手当をおろすでしょう、おろすときにしっぽを切るというのですよ。しっぽを切るというか頭を切るというか、しっぽでも頭でもどっちかを切るのですね、これは架空の領収書をつくって、架空の領収書で判を押させて、そしてしっぽを切るのか頭を切るのか、切るわけですね、そして県警本部でプールしている金を持っているわけです。そして署へおろすでしょう、署へおろすときは金が減っているわけです。署は下の捜査課とかへおろす、おろすときに架空の領収書をつくってしっぽを切るのだそうです。だから下の連中はぶうすか文句ばかり言っているわけです。その文句が正当かどうか知りませんけれども、どうもおもしろくない。私たちが朝から晩まで働いているのに、上のほうはうまいことをやっていると言っているわけじゃないですけれども、どうもそういう点はおかしいということを盛んに言うんですよ。これ以上詳しいことをここでは言いませんけれども、どうもそういうことを盛んに言うんですよ。架空の領収書をとっているということを警察で認めるわけにいかぬかもしれぬけれども、何らかの目的でそういうふうな金を、実際予算書にあらわれている金の中のある程度のものを切って保存していくということはあるのですか。
  692. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 捜査費は捜査活動に直接つながる経費でありますので、その性格が特殊でございます。これはその事案発生のつど、一々会計法上の手続を経て支出するということは事実上不可能であります。したがって、これは現金経理されておるわけです。これはそれぞれその取り扱い者たる課長、署長から現金をもって捜査員に交付されております。そうして担当者はそれぞれ必要な諸経費を支払って精算書、領収書等を添えて課長、署長に報告する、課署長がこれを確認して証拠書類として保存しております。そういう金でございますので、経理上あるいは使用方法で不明朗となっているものはないわけでありますけれども、ただ、現金で動くというところに、全然部外者から見まして、この辺がまま誤解の入るところもありますが、こういう点につきましては、私どもといたしましては適正な経理が行なわれておると信じておるわけでございます。  それから、領収書という問題が出ましたが、これはやはり領収書を原則としてとることになっております。しかし、実際問題としてとれない場合も多いわけであります。したがって、領収書は緊急やむを得ないとか、あるいはその他領収書をとりにくい場合もありますので、何もかにも領収書を整備しなければならないということになっておりません。領収書がなければ、こういうものに使ったという明確な報告書なり所長の確認書でこれにかえることが認められておりますので、架空の領収書をつくるのにいろいろ何しているというようなことはございません。それから、これはやはり捜査活動の費用でありますので、何もかにもやはり一ぺんに渡してしまうというわけではなくして、大体計画的にそれぞれ第一線へ流す。しかし、いろいろな大事件も起こってまいりますので、ある程度の部分は本部なりに留保して、必要に応じて支出するというようなたてまえをとっておるわけでございます。いま御指摘のような点につきましては、人間のことでありますので、間違いが絶対ないということは言えないかもわかりませんが、私どもといたしましては、捜査費の経理につきましては、いま申し上げましたような方法であやまちのないように十分に監査、指導いたしておる次第であります。
  693. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたが何となくすなおな形で答弁されるものですから、逆に何かぼくの言っていることがほんとうのような印象を与えるのですよ。何というのかな、ぼくの言っているようなことがあるような感じにぼくもなってくるのですがね。これはふしぎかもしれませんけれども、いま言ったように、頭を切るというのは、あとへある程度残しておくんでしょう。しっぽを切るというのは、予算書にあらわれたものが全部が下部へいかないでしょう。残しておいて、それが三月になって予算が切りかえになるときに、次に繰り越せないもので、本部なら本部だけでいろんな形で使っちゃうんじゃないですか、そういうのもあるんじゃないですか。それで下部のほうで批判が出てくるんじゃないですか。本部のほうはうまくやっているとか、警察に行くと、いわゆる店というのがあるでしょう。店というのは、店の表で人が見えるところにいる。そして裏のほうにいるのは、刑事やなんか裏のほうにいるわけですよ。店のほうの連中はうまくやっているとかなんとかというようなことで、盛んにそう言う。ひがみかもわかりませんけれども、出てくるのですね、変なあれが。それで、いままでいわゆる捜査費が全然こなかった、殺人事件が起きて一カ月もやっていてこなかった。ちょっと県会で問題になると、あくる日からとたんに三百五十円ですか、くるようになったというのですね。どういうわけだろうと、今度は逆に刑事の人たちはふしぎだふしぎだと言い出すのですね。これはある県の例ですが、これは日本じゃないかもわかりませんけれどもね。どっかほかの国かもわかりませんけれども、どうも捜査費の配分というものがそういう点が不明瞭なんですね。だから簡易検査でいいわけでしょう、会計検査院も。ですから、領収書は取れなければ取れないでいいのじゃないですか。それはちょっとおまえの判こ貸せというような形で領収書をつくるのじゃないですか、それならば変なものになるのじゃないですか。そこら辺にしますが、内部に食い入ったような話になって恐縮ですけれども。  それから、もう一つ、いま言った外郭団体としてあるのは防犯協力会と交通安全協会と二つだけですか。あと何かあるのですか。
  694. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 以上二つであります。
  695. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その運用はどういうふうにされておるか、これはなかなかむずかしいと思いますが、ある程度わかった資料だったら出していただきたいと、こう思うのです。それから、警察が警察の庁舎や何かをつくるときに寄付金をもらっちゃいけないというふうな通達が出たわけです。これは県会議員のところに出たのですよ。ところが、その後、警察は署を新しくつくるときにはどんどん寄付金をもらってやったのじゃないですか。寄付金じゃないのだ、向こうから出してくれたのだと言うかもしれませんけれども、そういうふうに言うに違いない。寄付というのは強制割り当てじゃ決してありません、向こうから任意に出していただいたと言うでしょうけれども、それだけでやっているところもあるのじゃないですか。それだけでやっていないかもわからぬ。ずいぶん警察署をつくるときにもらっておるのじゃないですか。
  696. 浜中英二

    政府委員(浜中英二君) 寄付金の問題につきましては、これは先ほど申し上げましたように、かりに寄付を受けるときでありましても、これがほんとうに弊害がないかどうか、そういう点を十分本部長におきまして精査いたしまして、しかも、県の定めましたいろいろな会計規則、財務規則にのっとりまして一たん県費の収入といたしまして、その上で県費の支出を受けるということはやっております。したがって、警察が直接寄付を受けるということは庁舎の建物等についてもやっておりません。で、よく警察署をつくる場合、県費が足りない、したがって、その県費を半分ぐらい市町村に持たせて一応寄付を受けるというやり方をやっておるところもございますし、県と市町村との関係においてやっておるおるわけであります。しかし、その金は一応県費という形で出ておるわけであります。しかし、その金は一応県費という形で出ておるわけであります。しかし、これはやはり地方財政の、何と申しますか、超過負担とか、いろいろな問題でいま非常に議論の出ておるところでございます。私どもといたしましては、できるだけそういうようなことのないように、すべて法のたてまえどおりに警察署が建築できるように積極的に指導してまいりたいと思っております。
  697. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょうど九時になったものですから、質問はまだありますけれども、この程度で、途中ですけれども、きょうはやめさせていただきたいと、こういうふうに考えます。あとはあしたにいたします。
  698. 田中寿美子

    主査田中寿美子君) それでは、総理府所管に対する質疑に対しましては、本日はこの程度にとどめます。明日は午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会することにいたします。    午後九時一分散会      —————・—————