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国務大臣(
小平久雄君) 第一に、法制上、賃金の規定を
実質賃金でやったらどうかという点でございますが、この点につきましては、外国にも例があるようでありますし、また、わが国でも、終戦直後の
インフレがあった場合には、実際問題として
実質賃金になるように、これは第二と関連しますが、スライドでいくといったような協定をしたところもあるようでありますが、これを法律的に
実質賃金でいくという点につきましては、まあ、いろいろ問題があると思うんでございます。御承知のとおり、終戦直後、ベースアップというようなことが逐次行なわれまして、まあ名目的に申しましても、むしろ、物価の上昇よりも名目賃金の上昇のほうが上回って今日までまいっておりまして、これを
実質賃金で見まするというと、三十五年以来四十年度におきましては、大体二二%
実質賃金においても上昇をいたしておるわけでございます。したがってこれを、賃金の支払い等を
実質賃金でやるべきだと、こういうことによりますことは、これは事務的にも非常にもちろん繁雑になりますし、また、実際の
状況が、いま申しましたとおり、
実質賃金でも相当の上昇を今日いたしておるんでありますから、これを法制的にきめるということはいかがであろうかと思います。もちろん、次のスライド制とも関連しますが、
政府の関与いたします賃金につきましては、たとえば最賃の問題であるとか、あるいは失対事業の賃金であるとか、そういうものは十分実質的にも物価の上昇を上回るように、十分その点も留意して決定をいたしておることは、先生も御承知のとおりでございます。
それから、スライド制につきましても、先ほどちょっと申しましたが、これは全然例のないものではございませんが、しかし、これを一般にまでやるべきだと、こういうところまではいかがかと
考えております。終戦後には、わが国でもあったようでありますが、逐次これを廃止をいたしてまいっておりまして、今日では一、二の会社等で、やはり協定によってやっておるとこういうことでございます。というのは、やはり先ほど来申しますように、相当ベースアップ等がありまして、あえてスライド制をとる必要性も薄くなってきたと、こういう点に廃止の
理由があるようでございます。
それから、第三の
所得政策の問題でございますが、これにつきましても、先生がよく御承知のとおり、外国等でもそういうことをやっておる向きもありますが、しかし、われわれの承知しておるところでは、必ずしも目的を果たしておらない、こういうことでございますし、まあ
所得政策といいますと、ややともすれば、賃金の上昇を抑制するというような部分に、その点にだけ重点を置いて
考えられがちのようでありますが、しかし、賃金だけについてそういうことをやるということは、これは現在の諸般の情勢から、もちろん、一般の納得する、特に労働組合等の納得をするところとはならぬと思います。そういう各般の情勢から
考えまして、これは検討には値いたしましょうが、まあ、これをやろうという
考えは私は持っておりません。