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1966-03-09 第51回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月九日(水曜日)    午前十時四十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月九日     辞任         補欠選任      迫水 久常君     平島 敏夫君      加瀬  完君     小柳  勇君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古地 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 平島 敏夫君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 向井 長年君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  上原 正吉君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府人事局長  増子 正宏君        中央青少年問題        協議会事務局長  赤石 清悦君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁計画        局長       梅澤 邦臣君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        科学技術庁振興        局長       谷敷  寛君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省関税局長  谷川  宏君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長事務代理   村井 七郎君        文部省初等中等        教育局長     齋藤  正君        文部省大学学術        局長       杉江  清君        文部省社会教育        局長       宮地  茂君        文部省体育局長  西田  剛君        文部省管理局長  天城  勲君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農林経済        局長       森本  修君        農林省農地局長  大和田啓気君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        農林園芸局長   小林 誠一君        食糧庁長官    武田 誠三君        通商産業省通商        局長       渡邊彌榮司君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省繊維        局長       乙竹 虔三君        中小企業庁長官  山本 重信君        運輸省航空局長  佐藤光夫君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        農林省畜産局参        事官       太田 康二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、迫水久常君が辞任され、その補欠として平居敏夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  一昨日御報告いたしました質疑者順位につきまして、その後の順位を昨日の委員長及び理事打合会において協議いたしました結果、公明党社会党自由民主党社会党自由民主党社会党自由民主党社会党自由民主党公明党社会党自由民主党民主社会党社会党自由民主党、共産党、第二院クラブ、社会党自由民主党の順とすることになりましたので、右、御報告いたします。     ―――――――――――――
  4. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それでは、昨日に続き質疑を行ないます。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと資料要求をお願いいたします。昭和四十一年度の資金需給見込み及び産業資金供給見込みについて、資料をすみやかに提出されるようお願いをし、同時に、その資料提出の際は、できるだけすみやかに御提出願うとともに御説明をいただきたいと思います。これがないと、四十年度は公債発行はなかったのですが、四十一年度の公債問題を審議する資料になりませんので、すみやかに御提出を願います。
  6. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 政府側よろしゅうございますか。
  7. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) できる限り、企画庁のやつは例年三月末に出すことになっておりますので……。
  8. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) できるだけ早く御提出を願います。  矢山有作君。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 私は農業問題を中心にいたしまして、さらに沖縄の問題等についてお伺いしたいと思います。  最初に総理にお伺いしますが、農業と他産業との生産性なり生活水準格差というのは、年次報告を見ても御存じのように、一向に縮小されておるということは言えないと思います。経済高度成長のときにも、ますます格差拡大傾向にありましたし、また、景気停滞のときにおいても、格差は、むしろ実質的にいえば拡大基調を変えてないということが言えるのじゃないかと思いますが、そういうふうになったことに対してどういうふうなところに欠陥があったのか、そういう点でどういう反省をしておられるか、まずその点、総理からお答え願いたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業基本法ができて以来、他産業との格差はわずかながら改善されておると思います。また、生計費等におきましても、ごくわずかではありますが、これまた改善されておる、かように思っております。しかし、私ども予期したような状況でないことはただいま御指摘になったとおりであります。これは一に農業、林業、漁業等生産性が低い、そうして他産業生産性が急激に増高した、これが前進した。そういうことで、農業との格差がどうしてもはなはだしい格差を生じておるというのが現状だと、かように思っております。一に他産業伸び方が非常に早かった、かようなところに原因があるのではないかと、かように思います。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 総理は、農業基本法施行以来、格差は多少縮小したと言っておられますが、それは誤りなんじゃないですか。年次報告をごらんになったら、むしろ農業基本法施行前よりも施行後のほうが、農業比較生産性格差拡大していっておるということが明瞭に示されておりますが、その点どうですか。
  12. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 格差は、年次報告におきましても、最近の情勢からいいますと、やはり若干――きわめてわずかでありますが、縮小されております。これは年次報告で示しておるのであります。その点は総理の御答弁どおりでございます。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 そういうような認識でおられるから、農業に対する根本的な振興政策というものが打ち出されてこないのですよ。白書を読んでごらんなさい、白書をお持ちなら、その白書の三六ページに、これが比較生産性について書いてある。さらに生活水準の問題については、四四ページにちゃんと書いてあるじゃありませんか。これは政府自体がつくった資料でしょう。この資料を見て格差縮小しておると言えるのですか。
  14. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 数字はいま……。(「数字じゃない、年次報告を読めよ」と呼ぶものあり)
  15. 矢山有作

    矢山有作君 そこ読んでください。
  16. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いま御答弁いたします。
  17. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) いまの御指摘のところの三六ページでございますが、まず数字の表が載っておりますけれども、比較生産性が、三十九年に三〇%というふうに、その前の二八・八よりも縮まったという数字が載っております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 農基法施行前と以後だよ。三十八年と三十九年だけとらえていてはだめだ。
  19. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 三十四年から引き続いて読みます。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 三十二年から読んでごらん。
  21. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 三十二年三〇・三、三二・六、三〇・一、二九・三、二六・九、二九・一、二八・八、三〇・〇というふうに、ただいま農林大臣答弁をいたしましたのは、最近に至ってわずかではありまするが、縮小傾向にあるということをいまの数字からお答えになったものと思います。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 こういうことで議論をしておっただけでは時間を食うだけですが、さらに、年次報告内容というのは政府のほうでつくっているのですから御存じでしょう。内容に立ち至って見ると、比較生産性はわずかに縮小したけれども、その縮小原因というものが分析してあるはずです。もしその原因の分析が正しいとするならば、格差縮小傾向にはないということが言えるのじゃないですか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申しましたように、きわめてわずかでございますから、これが縮小したとか、あるいはどうしたとかと言えるほどのものでないことは御指摘のとおりでありますが、どうか次に進んでいただきたいと思います。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 この議論をやめて次に進めということですが、そういうふうな農業に対する甘い認識があるということが、農業基本的な発展策が講じられないから私はその認識を改めていただきたいと思うのです。年次報告にも指摘してあるように、比較生産性が三十九年に多少縮小したらしく見えるというのは、他産業景気がにぶったということ、さらに農産物の総体的な価格が非常に有利に推移したこと、このことが比較生産性縮小したかのごとくに見えるのだ。したがって、基本的には縮小傾向にはないんだということを言ってあるじゃありませんか。この辺の認識というものを的確にやっていただきたいと思います。さらに、そういうふうに格差縮小が見られなかった、むしろ基調としては拡大傾向にあると思いますが、そういうふうになったのはなぜかという原因、その答弁として、他産業が急激に伸びたからだとおっしゃるのですが、これは答弁にならぬと思うのです。私は他産業伸びというものも一応考えながら、農業をそれに劣らないように持っていくということが政策基本的な考え方じゃないか。農業基本法というのは、それを踏まえているわけなんです。そうすると、他産業伸びたから格差が縮まらぬのだというのでは答弁にならぬ。なぜ格差が縮まらないのか、それは農業政策のどこに欠陥があったのかということを明らかにしていただきたい。
  25. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お答えしますが、先ほど申しましたように、現在、農業所得あるいは生産性もふえてはおるのでありまするけれども、他産業伸び方に比較してはるかに小さい。そういうことが、この数字を示しておるのであって、その点は矢山委員もよく御了承であろうと思うのであります。こういうぐあいに農業生産性の非常におそいということにつきましては、言うまでもなく非常な零細な農業者が多数存在しておるのでございまして、これに対する生産性向上をはかるということは、工業のように、あるいは商業のように急激にいかないということは、これは農業本質であると思うのでございます。あえてこれは日本だけでありませんので、各国実情を見ても、なかなかそう簡単に早くはいき得ないという性格を持っておるものでございます。商業の面においても小売り商機構の問題にいたしましても、やはり多数の零細小売り商がおる場合において、その機構の困難な問題はやはり同様でございまして、これはやはりそう短期に進むわけにいかないのであります。これはできる限りの力を注ぐべきであることは言うまでもございませんけれども、そう普通の工業のように非常に早くこれが進み得るということは困難であることは言うまでもないのであります。その点は矢山委員もよく御了承であろうかと思う。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 もちろん農業短期生産性向上ができないということを承知の上で農業基本法がつくられたということは、第一条を見れば明らかだろうと思うんです。しかも問題は、基本法制定以来五年間たつのに、格差縮小する傾向にあるどころではない、むしろ拡大傾向にあるということを私は問題にしておるわけです。このところの認識がないというと、そしてこれまでの政策に対する反省がないというと、今後の農業生産力増強のための政策の展開ができぬのじゃないかと思います。この点十分にお考えをいただきたい。  次に移りますが、それでは一体、農業生産力を上げていくために、その中心の目標といいますか、考え方というのか、それはどこにあるんですか。政策中心ですね。政策基本
  27. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この政策中心と申しますのは、言うまでもなく農業基本法本質によって進もう、こういうのでございます。言いかえますると、農業生産性を高めてまいる、しこうして農業所得増強をはかる、こういう方向に向かって進みます。そのための手段その他、政策その他の問題はいろいろございまするが、中心はそこにあるというふうに御了承を願います。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 その生産性を高める、所得の増額をはかっていく、その場合の農家というのは、一体どういう農家農業経営をになう農家を予想されておるのですか。
  29. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この中心をになっていくものといたしましては、基本法におきましても、自立農業をできる限り育成してまいるということが一つであり、さらに全般的な問題として協同、協業、そういう方面に向かって、集団的に小さなものが協業的にあるいは協同的にこれらの問題の生産に従事しているということを加えておるわけでございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 自立経営農家育成中心であるということはそのとおりだと思います。それに対して協業育成というのが補完的な立場で考えられておると思いますが、じゃ、その自立経営農家、いわゆる他産業従事者と均衡した所得が得られ、生活水準が確保できる自立経営農家というのは、具体的に言えばどういうものを考えておいでになりますか。
  31. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お答え申します。自立経営農家と申しますと、農業によって生計を営む、しこうしてその労働力はでき得る限りフルに燃焼せしめる、そして農業によって生計を営んでいるというところをねらっておるわけでございます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 私が聞きたいのは、そういう抽象的な議論でなしに、具体的にそういう農家というのはどういう農家を想定しておるのかということを言っておるわけです。所得倍増計画に考えられておるあの農家だと考えていいのですか。
  33. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お答えしますが、その具体的な問題となりますと、地方地方によって全部違います。これは矢山委員もよく御了承のはずであります。たとえば都市近郊農業においてはきわめて小さい面積において資本装備拡大していくということにならざるを得ないし、また都市より離れたもの、あるいは非常に生産力の貧弱な地方ということになりますと、やはり面積拡大しないと、大きくしないと、わずかであってもいかないのであります。相当大きくしないと経営が安定しないということは、ただに日本ばかりではありません。世界各国を通じてその現象でありますることは、これは言うまでもないことでございます。したがいまして、それを具体的に、これは全体としてこうだああだと言うことは、やはり具体的にその地帯を見てこれを述べなければならない、こう思います。単に平均して述べるということは非常な間違いを持ち来たすものであろうということを私は確信いたしております。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 それは当然、個々の農業の実態というものに立ち至ったれば、そういうことになろうかと思うのです。しかしながら、農業基本法なり、さらに所得倍増計画で考えられておるのは、一応、経営規模ならとの程度のものが自立農家だと言えるのだという立場をとって一応の想定を出しておるのじゃないのですか。だから、農業を考える以上、経営規模というものを度外視して問題を考えるということが間違いじゃないですか、これは。
  35. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) それは北海道のようなところになりますというと、やはり大きくならなきゃならない。それが北海道においても、北のほうとまた違います。それから畑地と水田もまた違います。そういうぐあいであって、これを面積でこうだああだと言うことは間違いであるということを私ははっきり申し上げます。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 そうするとね、農林大臣、あなたは農業というものを考える場合に、経営規模というものを度外視していいというのですか。やはり経営規模というものを一応中心に考えていかにゃならぬ。もちろん都市近郊においては、それは資本集約的な農業というものが所得を上げている例はあります。しかし、それは特殊な例であって、農業一般としてはやはり経営規模というものを基本に考えて、いくべきじゃないですか。
  37. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) もちろん経営規模を考えるのでありますが、その経営規模は反別だけで、耕作面積だけではそれはきめることができない。地方実情に即応しなければならぬのでありまして、面積だけではいかない。都市近郊農業で、その面積の大きなものでは成立いたしません、これは。これは資本装備によって拡大をするのであります。そういうことでございまするので、あながち、常に面積面積と言われますることは、私もそれはよほど考えなければならぬ問題であると存ずるので、これは矢山委員もよく御了承のことであると思うのでございます。ただ、申し上げたいことは、現在の日本農家全体を通じて非常に零細ではないか、こういうことはあると思います。それは全体としていかにも零細農業でございます。これは全体として、やはりもう少しその点においては経営面積が大きくなるということがわれわれとしても希望、期待するところでございまするが、先ほどお話がありましたとおりに、具体的に申し上げまするとそういうことになる、こう申したのでございます。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 まあこの問題で議論しても水かけ論になってしまうので、私はそういう資本集約的な農業が成立する、そういう特殊な例を取り上げて問題を議論すべきじゃない。やはり農業というものは、基本的にその生産力増強のためには経営基盤というもの、経営規模というものを考えていかなければならぬと思いますが、それはこの程度にしておきまして、いずれにしても、農業生産性を高めるためには、いま大臣がおっしゃったように、零細経営のままではどうにもならぬ。やはり経営規模拡大というものがなされなければならぬということはお認めになるだろうと思います。ところが、この経営規模拡大ということが順調に進んでおるかどうかということについてひとつお伺いしたいと思います。
  39. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 経営規模拡大という面につきましては、全般的に申しますと、あまり早く進捗はいたしておりません。したがって、現在の情勢から申しますと兼業農家が非常にふえておりますことは御存じのとおりでございます。ただし、ここにいろいろ問題があります点は、兼業農家にも兼業農家があるのでありまして、北陸地帯のごときは兼業農家はもう九〇%をこしている、統計上の数字でありますが。そういういろいろの問題をよく検討していく必要があると思いますから、また御指摘に応じてお答えをいたしたいと思うのでございまするが、全般的にはそう迅速には進んでおりません。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 白書を見ましても、農地の流動というのはかなりふえているけれども、それが必ずしも経営規模拡大につながってもおらぬというのは白書の示すところです。私の聞いたのは、経営規模拡大の困難性というのはどこにあるのか、こういうふうに聞いたんです。経営規模拡大していく上の障害といいますか、困難性はどこにあるのか。
  41. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お答えいたします。経営規模拡大が全体的に非常にそう早く進まれていないということの大きな根本は、多数の農家が存在しておることでございます。これらの農家の問題をいかにするかという問題が大きいのでございます。そのときにおいて、また一つの問題としては、一方において兼業所得というものがある程度これは増強されておることは御了承のとおりでございます。したがいまして、農業所得格差は、先ほど申しましたように、若干まあ他産業との間の縮小はいたしておるけれども、農家全体の所得からいいますというと、その開きは農業所得よりも開きが少なくなっておることもよくこの点も御了承であろうと思いますが、そういういろいろの実態からくることであろうと思います。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 それは大臣答弁にならない。私ども問題にするのは、農業政策の面では農業所得を上げていくということが問題なんでしょう。農家所得を上げるということに逃げてしまったら農業政策というものはなくなってしまう。私が言っているのは、なぜ経営規模拡大ができないかということを言っているのですから、その原因というものを端的に言ってください。
  43. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) その原因を単純に申すということでありますが……。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 端的にです。
  45. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 単純に言える場合となかなか単純に言えない場合とがありまして、きわめてこれを大ざっぱに言えば、非常に零細なる農業者が多いということであります。しこうしてその非常に多い農業は、現在までそれで集約農業として育ってきた、過去の歴史を持って育ってまいったという基礎を持って、それだけの多数の農家が存在しておるということに帰するのではないかと思うのであります。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 どうもぼけたような答弁になってしまうのですがね、私が言っておるのは、そういう零細農家が多いだとかなんだとか、そういうふうなことは承知しております。農業人口の流出が激しいのに農家が減らない、多少農地が流動しても規模の拡大に直接結びついておらない、その原因というのを言っておるのです。それが答えられぬとすれば、私のほうで考えている点を申し上げます。  私は、農地価格が高過ぎる点、あるいはまた他産業に人口流出という形はとっても脱農しないというのは、そういうような社会的な条件が整備されておらないというところにあるのだろうと思うんですが、この点はどうですか。
  47. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お答えいたします。  そういうことも一つの要因であろうかと思います。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 そのほかに何があるのですか。
  49. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この問題を論議しますと、十分や一時間では、これはかえって誤解を招く結果になると思うのであります。それよりも、矢山委員が率直に御質問になる点についてお答えを申し上げたいと思うのでございます。
  50. 矢山有作

    矢山有作君 私の質問に対する率直な答弁になっていないんじゃないですか。
  51. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長。それはちゃんと、農林大臣答弁しなければだめですよ。あなたは、それも一つだと。そのほか何かと聞いているのだから。この間、新聞によると、藤山さんは、答える場合にはこういう要領で答えるのだといったようなことを言ったらしいが、そういうことをまねしちゃだめですよ。そのほかは何か……。あなたは、簡単にはいかぬと言うが、質問があるのだから、詳細でもいいから、それはやってもらわなければだめです。
  52. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この問題についていろいろ申し上げたいと思うのでありますが、たとえば兼業農家が非常にふえるという問題を一つとらえてみますというと、これにはいろいろあるわけでございますが、一つの例を言いますと、稲作単作地帯の北陸地帯をかりにあげてみますというと、先ほど申しましたように、兼業農家が九〇%でございます。よその地帯は七十何%、約八〇%でございまするが、そういうことに相なっております。  これはその原因等を見ますというと、一つには、この単作地帯で米作に対して近代化が相当進んでいる。これは機械等も入っておりまするし、そのほか省力経営も行なわれておるということで、非常にその近代化が進んでおる。そういたしますと、生産性向上、いわゆる米作の生産性向上は上がって、結果として、原因、結果でありましょうが、労働時間が非常に短縮されておる。その短縮されておることが相当大きく伸びておる。その結果、米作プラス・アルファという要求が従来ともこの単作地帯には多いわけでございますが、最近は特にそれが多くなってきている。最近特に多くなってきておるので、この地帯においては一町五反あるいは二町、三町の相当大きな経営農家の場合でも、米作プラス・アルファを得ることに努力する。その際に園芸あるいは畜産の方面に進む場合もありましょうけれども、それが得られないというもののほうが多いわけでありまして、これらは生活が困るというよりも、そういう面から、さらにプラス・アルファを求めるというところから、他の就業をいたすということ、そういうことによって、これらの地帯において兼業農家がふえてくるということでございます。こういうカテゴリーに入るところの兼業農家は、いわばこれは規模の大きさにおいても、農業の熱情においても、生産性の上においても、あるいはまた食糧増産の熱意の上においても、相当、一般の専業農家と少しも劣らないという関係に入るというものでございます。こういうものは、単に北陸地帯のみならず、その他の地帯においても存在するということなども考えなければならぬ点でございます。  それから、そういうぐあいに兼業農家と専業というものを見た場合において、また考えなければならぬ点といたしまして、そのほかになお問題としては、生産力を若干停滞せしめる要因でありまするものに、第二種兼業の中に問題が相当あろうかと思うのでございます。これらの第二種兼業農家の問題についてはどうするかという問題等もございまするわけでありまして、その農村内部のいろいろの実態というものを見詰めながら、これらの問題を進めていくのでございまして、その際において、原因がこれである、あれであるということを一つ一つ拾っていく場合においても、これはやはりその地域、その農業の実態というものをよく見ていかなければ、むしろ抽象的に、一般的に述べた場合において、実際の問題として、ビジョンとかいろいろの問題を作成する場合は差しつかえないかもしれませんが、実際の問題を扱う場合においては、これらの問題について詳細にこれはやはり見ていかないと、なかなかその解決が、かえって反対のことが起こったり、いろいろのことが行なわれまするのでございまするわけであります。  したがって、先ほど申しましたように、非常に零細なる農家が多いということ、その零細なる農家は、歴史的に小さな農業でもって相当進歩した農業を、これは日本農業としては進んできたという歴史の上に、この小さな零細農業が存在しておるということが、この進行がなかなか早くいかないところの大きな一つの原因であることは言うまでもありません。それと同時に、それらの第二種兼業的ないわゆる片手間農業というもの、そういうものに属するいわゆる第二種兼業農家というもの、これが就業する場合の職業、いわゆる就職というか、就業条件というものが、そういうものが十分に育っていないということ、そういう点が抽象的に申すと大きな原因であろうかと思うのでございますが、全般的にはさように地方地方の実態によく照らしてこれを述べなければたいへん間違いが起こるということを心配するために、私はこれはそう簡単に短く述べるということについては、弊害があるということを申したのでありまして、決して答弁をそらすという意味ではございません。
  53. 北村暢

    ○北村暢君 ちょっと、関連して御質問いたしますが、確かに兼業農家がふえている。面積の移動からいえば、大きな方向へ専業農家のほうに面積的な移動は若干移動はしておる。しかしながら、そういう移動をしながら、なおかつ兼業農家がふえていくという傾向にある。これは農業基本法でいう自立経営農家というものを育成するという方針、これとは逆な方向に現実には進んでいるわけなんです。したがって、今日兼業農家対策というものは非常に大事であるということだけは、大臣のおっしゃるとおり、これは圧倒的なものが兼業農家なんですから、兼業農家対策は対策として重要でありましょうけれども、今後の日本農業の方向として、基本法では、専業農家育成していくというのが基本法基本的な考え方なんです。したがって、そういう方向になかなかいっていないので、そういう基本法考え方というものを農林省としてはこれは放棄したのかどうなのかということを、どうも兼業農家対策のほうだけで、基本法の方向というのが何かこうもうあきらめてしまったような答弁に聞こえますもので、そこのところをひとつもう少し明らかにしていただきたい。
  54. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) まず最初申したいのは、やはり自立経営をでき得る限り多数育成していくという方針であって、農業基本法の趣旨を曲げるという考えはありませんということを、十分前もって申し上げておきたい。  それから、兼業農家と自立経営の問題でございまするが、生活ができなくて、そして兼業農家に、兼業をやらざるを得ないという者、その兼業農家にもいろいろそれはございますることであって、先ほど単作地帯の面を申しましたが、単作地帯においては、一町五反、二町、三町と、相当大きなものであっても兼業農家になっておる、統計上。農業以外の仕事をやるから。そういうぐあいに、兼業農家であるから自立経営自立農業ではないということは、少しそれは相反しておると思う。もちろん、兼業農家のうちでも、いま分析いたしまして、農業によって生活できない、そういう面でやむを得ず兼業をやらざるを得ないという、むしろ農業を片手間にやるといったような面、いわゆる第二種兼業の中に問題があると思うのでございます。  したがって、また例を北陸に引きますというと、兼業農家であっても、一町五反、二町、三町、幾ら大きくても、近代化の結果、いわゆる生産性向上の結果余裕が出てくるのでございます。したがって、兼業をやらなくても所得は相当いいという者であっても、そういうことが行なわれるというそういう実態もあるのでございまするので、それらの問題とやはり区別して、自立経営農業で生活を十分にできるということ、そしてそれは自分の労働力を燃やし得るということ、だから、もっといえば、いま言ったようなそういう種類の兼業であっても、農業的な兼業であれば問題が起こらない、統計上それは専業に出るから。しかし、経済理論の上に立つならば、米作地帯において米作の近代化が行なわれた結果として、そのいわゆる近代化されたる効果が、労力が出てくる、こういうこと。で、もっともこれについても簡単に言えないのであって、実はもっと篤農、精農家はあいた労力を土地を肥やす方向へいくんです。そうすると、あまり時間が余裕が出てこないのであるから、ほかの仕事をするよりも、むしろ計算するとそのほうが利益であるというほんとうの精農家もおるくらいであるんであって、そういう点についても、またこれは一つのことでこれを論じたのではまた誤解が及ぶので、私はそういうことの影響も心配しながらお話を申し上げておるようなわけでございます。したがって、答弁は非常に長くなる傾向があるのでありますから、その点は御了承を願いたいと思います。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 長々と答弁をなさっても、それが首尾一貫して納得のできるものならいいんですがね、あなたの答弁というのは、聞いていると何を言っているのかわけがわからない。大体、あなた、兼業農家でも農業に熱意があって生産力は上がるのだとおっしゃっていますが、一体、あなた、年次報告なり、あるいは農林省でいろいろ検討された文書というものに目を通されているんですか。私どもが目を通したところによると、一番いま問題になっておるのは、一種兼業であろうと二種兼業であろうと、要するに兼業化するということによって農業に対する農民の熱意が失われておる、そしてその結果が土地利用率の低下あるいは労働生産性の低下、そういうことになって農業生産力が減退してきた、端的な例は米だと、そのことがいま問題になっている。あなたの認識はだいぶ違うようですね。
  56. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) それは年次報告で特に申しておるのは、兼業のうちでも、いま矢山委員がお話しのとおりのものであって、いわゆる第二種兼業というものが確かに生産の減退、停滞を来たしております。そういう点について特に年次報告で触れておるのでございます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 では、お伺いしますが、兼業農家が集中しておる経営階層、それらの中で一種兼業農家の集中しておる階層と、二種兼業農家が集中しておる階層というものを、どういうふうに考えておられますか。  よくわからないようだから、もう一ぺん言うけれども、これは時間に勘定せぬでおいていただきたい。こういうことですよ。兼業が進んでおる。ところが、その兼業化の状態を見たときに、一種兼業に集中しておるのは、たとえば経営規模でいえばどの階層であり、二種兼業に集中しておるのは経営規模でいうたらどの階層であると考えているか。
  58. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) それはどちらかと申しますと、それよりも所得の問題から来ておるのでございます。
  59. 矢山有作

    矢山有作君 全くナマズ答弁で、これは話になりませんが、大体二種兼業農家が多いのは、大体一町未満、五反未満のそういった非常な零細なところに二種兼業が多い。一種兼業というのは一町だとか一町五反、さらにそれの上にまで一種兼業がこれは及んできております。これも二種兼業の農家もありますが、総体としてはそういうことになるのじゃないかと思う。  それで、経済審議会の農林漁業分科会ですか、あそこが所得倍増計画の中間検討を出したときに一番問題にしておるのは、五反から一町五反層にまで非常な兼業化が進んで、ここの生産力が落ちておる、これが現在の農業生産の非常な停滞の要因をなしておるのだということを指摘しておりますね。そうすると、あなたの認識のように、兼業化しておっても全体としては農業に非常に魅力を持っておって生産力は下がっていないのだということは成り立たぬと思うのですがね。その辺の認識はどうなんですか。
  60. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いま申しましたように、この農業というものに精を出すよりも兼業のほうに主力を非常に輝いて、そうして農業を手間、やっぱり手間農業というので、いわゆるその方向に進むような、第二種兼業と名づけられるものの中に、いま矢山委員の言われたものがある、こういうふうに考えておるということでございます。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 これはわからぬよ、大臣は。事務当局、どう考えているのか。
  62. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えします。  ただいま矢山委員が御指摘のように、第二種兼業農家が一番多い階層というのは、かりに経営規模で申しますると、もちろん一町未満、五反未満くらいのところが一番多いのでございまして、第一種兼業農家のほうは相当経営規模面積の大きいところにまで及んでおります。したがいまして、ただいま農林大臣が申されましたように、第一棒兼業農家の中には生産力の面でもそう専業農家と見劣りのしない農家があるというのは、そういうことをさして申されたのだと思います。しかし、一般論として申しますれば、兼業農家と専業農家と比べますると、兼業農家のほうが生産力の点で平均的なことを申しますれば落ちるという傾向は私どもも認めております。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 農政の最高責任者である農林大臣が、いま言ったような、当局の言ったことに対する認識がないというのは、これは日本農業の悲劇ですよ、これは。農林大臣、もっと勉強してもらわなければいけませんね。勉強しますか。するのかせぬのか、農林大臣。いまの調子でいってはだめだよ。
  64. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) その点を申しておるのであって、つまり、第二種兼業というものについては、特にその生産の減退が非常にあるということを認めておるのであります。ただ、一極の中に先ほど申しましたいろいろの業態のものがあるのであって、この第二種兼業というものにそういう大きな問題が包含されておるということを申したわけであります。
  65. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。矢山君が自分の一番大事な点について質問をされておるわけでありまして、農林大臣もおそらくよくおわかりになっているのでしょうが、やはり実態をどう把握するかという点がこれははっきりしませんと、次へ進まぬわけですね。同じことをこう何べんも先ほどから聞いておるわけだ。官房長のほうは若干すなおに、第一種兼業についての実態というものを認められたようなお答えをされておるわけなんです。あれが私は実態だと思う。だから、その点について農林大臣も、やはりそういう非常に第一種兼業についてまで心配な状態にあるということを認めるのかどうか、実態をはっきりやはりここでおっしゃってもらいたい。これは農水委員会であれば十分やれるのでしょうが、そうじゃありませんから、そういう点を、農林大臣もなかなか長く説明される場合もあるのですから、大事なところでうんとはっきりおっしゃってもらいたいと思う。  農林大臣説明を聞ていると、ともかく特殊な事例を引き出してきて、そうでもないのだ、そうでもないのだ。まるでそれではその兼業問題についてわれわれ何も心配する必要がないということになってしまう。そんな特殊なことを言っているのじゃない。通じてどうかという点を矢山君がまずはっきりさせたいということでやっているわけですから、これはもうちょっとすなおに農林大臣からひとつお答えを重ねて願いたいと思う。どうでしょう。
  66. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 私は大きな方向を申し上げておるのでございまして、兼業農家であっても、第二種兼業農家というと、現在四二%であります。四二%の第二種兼業というものの多くは、それは例外もありましょうが、多くはやはり生産の減退を招来しておるということは、これは十分申し上げることができると思います。第一種兼業についてははっきり申し上げることはできません。
  67. 亀田得治

    ○亀田得治君 農林省の各種の文書などを矢山君が引用して、指摘して、こう言われておるわけなんです。官房長もその点をやや認めて言われておるわけなんです。ところが、農林大臣はどうもそれはお認めにならない。認めたくないというどうも気持ちが先に勝っておるような感じがする。そういうことでは、これは正確な審議にはならぬわけでありまして、あれじゃ、ただいまのお答えでは、その点の認識農林大臣ははっきりしておらぬ。どうとも言えないということなんです。これは非常に大事な問題ですからね。はっきりしておらぬということは、いや、そんな心配するような状態ではないということにも解釈ができるわけでありまして、それなら中堅の農家であるこの第一種兼業というものの心配はもう要らぬということにも逆になるわけで、おそらく農林大臣はそんな極端な意味でおっしゃっておるのではないだろうと思いますが、そういうわからぬというようなことじゃなしに、もう少しそれは丁寧に実態を、あなたの認識をおっしゃってもらいたいと思う。
  68. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 何も兼業農家がふえるということがいいとか悪いとかという議論になっていないから、申し上げないのであります。ただ、先ほど申しましたいろいろの過程の中において生産力の減退の問題が出ましたので、そういうときに兼業農家であるからそれは生産が減退するということを申すということは、それを申し上げるということは私はできないということを申したのであります。ただ、第二種兼業においては、それは生産の減退があります。それははっきり申し上げます。第一種兼業の中にもそれはあるでしょう、そういうのがあるでしょう。ところが、それはいま明確に私統計がありませんから申し上げられません。それからもう一つ、第二種の中にも生産力を落とさないものもあると思う。そういう点があるのでありまして、私はいま、生産力の問題になっておるのでありますために、それを申したのでありまして、それを総括的に申しまして、第二種兼業は、これは総括的に申しまするならば、生産力が減退しておるということをはっきり言うことができると思う。しかし、第一種になりますと、それを申し上げることはできない。しかし、第一極の中にも減退を来たしておるものもありましょう、それは。それから専業にもあるでしょう。しかし、どっちにそれが多いかという問題も、調べた数字はありませんから申し上げられませんが、それはやっぱり専業よりも兼業のほうにその率が多いでしょう、悪いほうが、というそういう常識的なことは申し上げますけれども、それを数字にして申し上げる数字は、まだ調査しておりませんからわかりません。
  69. 北村暢

    ○北村暢君 実は、こういうことなんですよ。日本農業のいま主力をなしているのは、第一種兼業が主力をなしている。これが農業生産を一番上げているわけです。専業農家がいいことは事実なんだけれども、これはもう微々たるもので、数が少ないわけなんですね。しかしながら、少ないんだが専業農家も若干ずつふえていっていることは事実なんです。ふえていっている。そのふえ方が、第二種兼業の、一番農業生産では農業を片手間でやっている、これがふえているわけなんですよ。したがって、いま一番日本農業の主体をなしておる第一種兼業が分解していって、大きい方向と小さい方向へいっていることが、日本農業生産の停滞をしている非常に大きな要素になっているんじゃないか、これを心配しているのですよ。第二種兼業が、片手間にやっているのが農業をやめて、そして第一種兼業が大きくなって専業農家になっていくのならいい、そういうような形にいまなっていないんじゃないか。日本農業の主体をになっている第一種兼業が分解しているというところに生産が上がってない、それから兼業収入のほうが所得は上がっているけれども、農業生産ではなくして、農外所得が上がって第一種兼業の所得というのが上がっているというような形になっている。ここに問題があるのじゃないかと言う。これを一体、部分的なものでものをしゃべっているのじゃなくて、統計に基づいて、平均的な統計に基づいて、いま矢山君は質問をしているわけなんです、農業の危機を叫ばれているのは、やはり第一種兼業が専業化していくことが望ましい、それを、その傾向にないものですから農業生産が停滞している、こういうことなんです。そういうことの認識について農林大臣は――先ほどの私言った自立経営農家という問題についても、聞いているのはそこなんです。そこで、大臣も認められているように、第二種兼業がこれは離れられないということは、農業の問題じゃないんです、これは。やはり一般都市労働力が集中し、思い切って農村を離れていけるような施策があればいいのだけれども、出ていった、都市に集中した人口は、どうしても臨時工であったり、低賃金であったりして、半分農業に足を入れてなければならない、ここに問題があるのです。この問題を解決しない限り、第二種兼業はどうしても少なくならない。それがまた日本農業全体における生産というものを停滞させる非常に大きな要素になる。したがって、ここら辺のところをひとつですね、農業生産だけで解決できない問題が出てきている、これは総合的にひとつ考えてもらわなければならないということなんです。そういうことをひとつ、第一種兼業についてはしゃべられないとか、わからないとかじゃ、これは日本農業、どうしていいんだかわからなくなっちゃう。ここを聞いてるんですよ。
  70. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いま問題が生産力にきておりますから、その点を申したのでございます。そこで、生産力の問題から申しますと、第二種兼業農家は、明らかに生産の停滞ないし減退を来たしております。それから第一種兼業農家については、それをはっきりさせる材料がまだないわけです。だから申し上げませんが、それはその生産の停滞、減退のほうが専業農家よりも多いであろうということを、推測して申し上げることはできるかと思うのでございます。それから先ほども申しましたように、根本原因と申しますのは、先ほど繰り返して北村委員からお話のあったこと並びに歴史的な零細企業であること、それらについては繰り返して申し上げません。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 私はね、質問の時間制限があるから、くだくだ説明ができぬので、質問をしたら質問に端的に答えてください、的をはずさぬようこ。  私は、先ほど北村議員の言われたように、一種兼業も生産力の減退が起こっている、このことが非常に重大な問題だと、それをあなたは統計的なものがないとおっしゃるけれども、所得倍増計画の中間検討をやったときに、五反から一町五反層の生産力が減退しているということが、将来の日本農業の非常な問題だということを指摘されておる。しかも先ほどの政府委員答弁のように、一町だとか一町五反といえば、これは比較的に一種兼業が多い。二種兼業は大体五反未満に集中している。そういうところから私は問題があるということを言っている。だからあなたはそれを端的に認めぬことには、今後の的確な農業政策は立たぬと言うのです。  論点を変えます。ところで、脱農が進まない一つの原因として、大臣もいわゆる農業外の条件が問題だということをおっしゃったのですが、私はその点でやはり現在の日本の雇用条件――低賃金を中心にした雇用条件の非常に不十分なところに、脱農が進まない理由があると思う。したがって、この低賃金構造、これを根本的にメスを入れぬ限り、脱農は幾ら言っても進まないと思いますが、この雇用条件の整備について、労働大臣はどう考えておるのか、承りたい。
  72. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 農家から他産業へ出て働くという場合には、御承知のとおり大体二つの形態があると思うのであります。全然離農して他の産業につくという場合、それからいわゆる出かせぎでつく場合、まあ大まかに分けまして、この二つの形態があると思うわけであります。そこで、それらの人の賃金の問題でございますが、出かせぎの場合におきましては、労働省としましては、その労働条件が適正にいくようにということで、就職前あるいは就職後において、それぞれ指導監督をいたしているわけでございますが、それ自体というものは、これは労使閥できめられるわけでございまして、それを労働省が直接賃金の額をきめるというたてまえには相なっておりません。もちろん非常に低廉であるというような場合においては、あるいは内々と申しますか、その相談に応じて適正になるように指導はいたしますが、究極的には労働省がこれを決定するというわけにはまいりません。全然離農して他に就職するという場合には、もちろんあらゆる就職促進の措置をとりまして、適正な職場に就職できるように労働省としてもつとめておるところでございます。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 大体兼業の状態を見るというと、雇用条件はますます悪化する状況にあります。したがって、それに対して労働省が適切な手を打つということはもちろんですが、問題は、私はそういう狭いワク内の問題でなしに、脱農を進めていって、ほんとうに農業経営規模拡大していって能率的な生産力増強する、そういう農業というものをつくり出していくのには、いまの日本経済全体の中での低賃金というものが最大の問題になっておるんだ。だからこの問題が解決されなければ、いわゆる農業基本法がいう他産業との所得格差の是正あるいは生産性格差の是正はできぬのだということを申し上げたいのです。この点に対して、総理はほんとうに日本農業というものを向上発展さしていこうというのなら、そういう低賃金構造にまで手を加えていくという決意があるのかないのか。それをやらぬ限り、日本農業の発展は考えられないと思いますが、この点の見解。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業を興すも、またこれを疲弊さすも賃金問題だ、こう言われておりますが、賃金の持つ意義、そういう関係のあることは、これは見逃がすことはできないと私も思います。農業の、まあ先ほど来の議論を聞いておりまして、非常に問題になるのは、年間を通じての労働力の有効な使い方、農業はどうしてもこれは季節的な労働になりやすいのでありますから、その季節的にあいているときにどういうように使ったらいいか、もう一つは、土地の生産性向上の問題でございます。二つからいろいろ議論されておると思います。その二つが十分に果たされて、労働の生産性向上、また土地の生産性向上、それで初めて農業生産性向上されるんだと、私はかように、私は私なりに、しろうとなりに実は結論を出しておるわけでありますが、この観点から、先ほど来の議論をずっと伺い、また、ただいまの労賃についてのお話を伺ってみますと、それぞれ私どもが今後持っていくその政治の目標というものも、実は非常にはっきりしているので、こういう観点でただいまの労賃の問題も結論を出すようにしたらいいと思います。これはいわゆる出かせぎ労働の問題があるし、また同時に、米価算定の場合、価格を決定する場合に、やはり労賃の問題がありますし、また、いろいろそういうような関係を持っておると、かように私は思いますので、ただいまの、時間が非常に短いために、お尋ねになりますのも、別に私答えるのが要点をはずすつもりじゃございませんけれども、なかなかつかみにくいので、ただいまのように私の感じておることを率直に申し上げます。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 どうもはっきりしないのですがね。兼業によって農家所得が増大するということでは、なるほど農家所得水準というものは高まるけれども、それは農業所得が高まり、農業それ自体が発展することとは別問題ですね。農業それ自体の発展ということを考えるんならば、むしろ兼業化の方向というものは間違いだ、兼業化をさせないようにして、いわゆる専業的に農業に従事できる、しかもその農業が能率的な、非常に近代的な農業になるためには、経営規模拡大というものも、これは必要なことだ、そうすれば脱農条件というものが整備されなきゃいけぬじゃないかと、こう言ってるわけです。ところが、脱農条件で非常に重大な問題は賃金問題だ。ところが、低賃金の中で、しかも生活の保障が、老後の生活の保障、いろいろな保障がない、社会保障制度の貧弱な中では、そういう脱農が進まない。だから日本農業の発展の一番の障害になっているのは、農業外のそういうところには問題があるのだ。それを改革しなければだめなんだと、こう言っているんですよ。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、もう一つは賃金と地価の問題を言われたと思います。この二つが解決ができないと、なかなか脱農が円滑にいかない、こういう御指摘だろうと思います。私はもっと根本的な問題として話をし、これはやや矢山君と違っておるかもわかりませんが、どうも日本農業自身、これはその地域的な状況にもよるわけでありますが、よほど農業自身が兼業農家としてやはり発達するような部分も多分にあるんじゃないか。こういう状態を十分見きわめて、いわゆる農業所得をふやすというばかりでもないんですが、同時に農家所得をふやすという意味からは、ただいまの兼業の状態についても考慮しなければならぬと思います。単純な理論で言えば、先ほど来言っておられるように、農業所得をふやす。そのためにはどうすればいいか。それはもう専業農家一本やりでいくんだ。だから第一種兼業農家もできるだけ専業農家になるように、農地管理事業団なども協力をすると、こういうことであり、またどんどん協業をやる、こういう形でいいようでございますが、どうも簡単にはそうは割り切れない。先ほど来農林大臣がお答えしておりますように、地域的な状況もあるんだし、農業経営の実態に即応して考えていかなければならないんだ。こういうことを先ほどから申しておると思います。もちろん地域的な問題としての農業の見方、これを無視されてはおらないと思います。これはもう簡単なことですが、どうもそういうように思うので、簡単に割り切るわけにいかないんじゃないか、かように私は思います。
  77. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。先ほど来の議論を承わっておって、こう考えるのですが、所得倍増計画は一応たな上げになったわけですが、ここでは二・五ヘクタールの自立経営農家を十年後に百万戸にする。ところが、実際その実績はその何分の一にも及ばない、これが実情であります。その原因はいまそれぞれ御指摘になったとおりであります。そこで問題は、兼業農家に移行しつつあるこの趨勢は、理屈のいかんを問わず、いま必然的な傾向になっている。それからしばらくこれは変えることはできないでしょう。そういう中で、所得倍増計画というものは一応御破算にしたけれども、二・五ヘクタール自立経営農家百万戸創設というこの目標ですね、この目標はまだ残っておるのかどうか。そういう基本的な方針で、いまの兼業農家の現状の趨勢というものはやむを得ざる事情とは認めるけれども、目標としてはそういうことを志向して、なおかつ今後もやるのかやらぬのか。その辺をはっきりしていただくと、矢山さんが次に質問を発展すると思う。これは総理から先にお答え願いたい。だめだめ農林大臣所得倍増に関する基本的な問題ですから、総理から先に。
  78. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) ちょっと……。この自立経営育成ということはやはり強力にやってまいりたいと、こう存じております。それというのは、確かにいま、御存じであろうと思うが、やはり一町五反以上層の農家が増加いたしております。これはまあ御存じであろうと思う。これが一つ。それからまた、これは所得の上でありますけれども、農業所得が年額七十万円程度農家も、これもパーセントにおいて増加いたしております。だから、そういう点において確かにある程度自立経営に向かっての動向は、兼業農家がふえるという動向等はありまするけれども、そういう動向がまた一つあることはよく御存じであろうと思う。そういうときでありまするので、私どもとしてはやはり自立経営を強力に育成してまいりたい、こういうことを考えておるわけであります。ただし、この二町五反とかというようなことは考えておりません。これは地域によってことごとく違うのでございまするので、これは経済学者の羽生委員もよく御存じだろうと思いますので、これは日本だけではございません、全国的、世界的に見て当然これは違うのでございますので、それを平均してどうとかこうとかということは非常に間違いを招来いたしまするので、そのために地方によっては非常に問題が起こっておるくらいでありまするので、平均を申し上げることは、これは私はここではばかるのでございます。そういうことでありませんので、その反別の問題は地域によって異なるというふうにひとつ御了承願いたい。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 所得倍増計画日本経済全体の点で公債発行等をせざるを得ない条件が出てきて、一応たな上げにされた。しかし、いま農業問題では二・五ヘクタールの問題は御破算だということは、自立経営は促進するけれども、そういう目標の数字はこれでやめたということは重大なやはり変更だと思いますが、これはどうですか。こまかいことは要りません、農林大臣、私は農業の中にあるいろいろな要素のあることは百も承知ですから、そんなことは言いません。これは重大な問題ですよ。
  80. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) その自立経営の目標についての、いわゆる全国的に非常に計算的に見ればそういうことも考えられるわけでありますのでございまするが、いま申しましたように、地域的に非常に違うので、私はそれをはっきり申し上げることは弊害があると思いまするので申し上げませんが、そういうような全国的な意味においてそういうような方向に向かって自立経営育成するという点については、これは別に変更というわけでありませんので、そういう方向に向かって努力を払っておるというふうに御了承願いたいと思います。
  81. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点だけ。二・五ヘクタールというものがなくなったのか、それだけ伺いたい。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二・五ヘクタール、これは一応の目標でございます。これは改正しておりません。これははっきり申し上げておきます。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。
  84. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君、一問だけ。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、農林大臣の先ほどの発言は言い過ぎだと思うのです。計画としては二・五ヘクタール、十年間、百万戸、これは所得倍増計画だけじゃなしに農業基本法をつくるときにもそういう根拠の上に立って説明をされてきておるわけなんです。いま総理大臣からは二・五というものは多少やわらげた標準ですが、しかし、数はちゃんと残っているんだ、こういうことなんですが、私はついでに聞きたいんですが、百万戸、十年、この数については総理大臣、どうお考えです。二・五についてはいま総理大臣から言われました。ところが、百万戸、十年間、こういう説明がずっとされてきているわけです。この点の数字も多少やわらげた意味であっても残っておるということになるのかどうか、その点、ついでにはっきりしてもらいたい。それから農林大臣坂田さん、いま総理大臣からお答え願いますから、それを聞いた上であなたの所信をはっきりしてもらいたい。そうぜんと羽生さんの関連質問の結末がつきません。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も農業には弱いですからあれですが、倍増計画の問題でございまして、当時の事情をよく知りませんでしたけれども、所得倍増計画では二・五、中期経済計画になりまして農業所得と他産業所得、その平衡を得るような状況ということに中期計画では変えた表現をしているそうでございます。
  87. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは所得面のことですよ、それはおかしいですよ。そんなことであなた、前の数字がいつの間にか自然に変わっているなんということは了承できません。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま企画庁長官からお答えしたように、いわゆる百万戸計画というものをただいま実施しているかといわれると、そのとおりには実施しておらない、かように私も思います。だからこの点は……。それで私は先ほど来言っておる二・五ヘクタール、二町五反といいますか、この目標というものはあると思います。やはり専業農家、一通りの規模を考えて進めないと、それはできるものではございません。だから先ほど来、農林大臣が答えているように、地域やまた経営の実態等でなかなかそうまとまらないところもございますが、しかし、一応そういうものを目標にしている。これは専業農家だ、それから、より以上だ、こういうことは言えると思うのでござまいす。たいへん先ほど来議論がありましたが、私はさように考えております。
  89. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 総体的に申しますると、そういうことになるので、いま二町五反とかということになるわけでありますが、それを具体的にはめる場合においてはそういうはめ方にはならないということを先ほど申しておるのでございます。それはよくおわかりになっていただきたいのであります。
  90. 矢山有作

    矢山有作君 いま所得倍増計画に示された自立経営農家というものの目標というものが明らかになったわけですが、これが指向すべき方向として失われておらないとするならば、現在までのそういう方向に行っているかどうかということになると、これはいままでの議論から明らかなようになかなか私はいっていない。そうすると農業基本法に基づく、いわゆる所得倍増計画でいう自立経営農家というものの育成がこれはなかなか困難である。むしろできないという見通しに立っておられるのか、あくまでもそれを遂行していこうとするのか、その辺がこれからの議論の発展上ちょっと必要があるのでお答えを願いたい。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この辺で専業農家に全部を踏み切ろうという農政のあり方、もう一つは最近の実態等に即して、いままでの政策をもう一度再検討すべきじゃないか、どういうような有力な議論も出ております。ただいまそういう方向で、いずれどちらの方向を取るべきかということがいま検討されつつある、かように私は理解しておりますし、また、そういうように農林当局にもお願いしているような次第であります。
  92. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、いわゆる二町五反程度農家百万戸育成というものには自信がない、したがって、これは再検討するということになりますね。そうすると、所得倍増計画というものを踏まえて農業基本法というものがいままでいろいろと議論されてき、そして農業基本法はそういう所得倍増計画にいうようなもので自立経営農家育成するということできているわけですから、それができないというような、あるいは再検討しなければならぬということになると、いままでの農基法農政それ自体も、これは再検討に迫られる、そうすると、農業基本法自体も再検討すべき時期にきているのじゃないですか。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま結論が出ておるわけではございません。しかし、これはもう御承知のように現在の状況等からみまして、なかなか短期間の間に専業農家育成もできない、また、それにはそれ相応の理由がある、こういうようなことでございますから、十分その辺を検討してみようということでありまして、ただいまきまっておる、こういうわけではありません。だから、いろいろ農林省が出しております報告におきましても、専業農家一本やりの報告も出ておりますし、また、それと反対な意見も出ておる、かように私は理解しておりますので、ただいま非常な転換期にきておる、こういうことであります。また、農村から見ましても、また、農民から見ましても、農業のあり方、基本的なあり方ですから、これはたいへんな心配だろうと思いますので、十分その検討をして、そうして結論を出したい、かように思っております。
  94. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、農基法それ自体も再検討する、いわゆる農基法それ自体も改正というものが考えられるということですか。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 必要があればそのときにそういうことになるだろうと思います。ただいまは農業基本法農業の憲法のように考えられておりますから、そう簡単にこれを改正する、かような意味ではありません。
  96. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、改正するということは考えておらないが、明らかにこれまでの経過で農基法農政の失敗はあなたはお認めになった。そうすると、あくまでもこの農基法というたてりを通していこうというならば、それ相応の政策的な反省をやってもらいたいと思うのです。そうして農基法のいわゆる自立経営農民というものが達成されるような政策展開が今後必要だと思います。  それから、次に移りますが、あなた施政演説で、自立経営農家育成のために、経営規模拡大を進める一方、兼業農家の増加傾向にかんがみ、その所得増大のための施策を推進する、こう言っておられるのですが、これは明らかにいわゆる農業基本法とは反したことを言っておられるのじゃないですか、先ほどの質問に関連するのですが。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が施政演説で申しましたことは、農村の実情に即し、また、農家実情に即した方向でお話をしたわけであります。ただいま言われますように、専業農家、いわゆる農業としての農業所得ということと農家所得というものの実は二通りに分けて説明しました。この点は御指摘のとおりでありまして、これがなぜそういうような説明をするかといえば、現在の実情に即した私の考え方であります。
  98. 矢山有作

    矢山有作君 農業の現在の実情というものが悪いから、したがって、それを改めるために農業基本法というものを制定したわけでしょう。農業基本法によると、第一条でも明らかなように、所得の増大を農家所得の増大とは考えておらないのです。これは明らかに農業所得を増大させるということに基礎的に立っているわけですね。そうすると、あなたの施政演説での説明というのは、農業基本法のワクからはみ出ているのですね。そういうことになりますよ。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の施政演説は、いわゆる農業基本法、これで要求しておる農業所得の増大ということばかりには私とらわれておらない。これはそのとおりなんで、農家実情、農村の実情というものを見ますと、さらに農家収入もふやすように考えていく、これはもうきまっておるのだから、農家収入の増大は考えないで、一本やりで考えろ、これは政治をやるものとしてはさようには考えない。やはり農家収入もふえるということを考えなければならない。さらに、漁業をやっているものは、漁業だけで考えろ、漁労家の収入を考えるのは、それは間違っている。林業は林業だけで考えろ、林業家がその他のことを、林業家の所得というようなこと、こんなことを考えてはいかぬ、こう言われるのはどうかと思います。私は、農業基本法で命じておる農業所得、これの増加、それについては、もちろん専業農家育成強化し、また、農産物の価格の安定等によりまして十分こたえておる、かように思いますが、現在の実情はそういうわけにいかない一やはり農家所得というものを考え、そうしてそこにただいまのような農家のしあわせを考えていくということでなければならぬ、かように私は思っております。
  100. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、当面のいわゆる兼業対策であって、基本は、いわゆる農業所得増大の方向でいくということですね。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこのところが、先ほど申しますように、兼業という事態がやはり農業のあり方としてこれは当然といいますか、自然の姿だ、こういうような言い方をされる向きもあるのです。学者その他でもそういう議論をしておるものもありますから、そこで十分ひとつ考えてみようということであります。いろいろ農業の場合でも、適地適作、あるいは総合的経営、多角的経営、こういうようなことが言われております。だんだん農業におきましても、労働生産性を上げるために、また、土地の生産性を上げるためにいろいろくふうをされておると思います。在来からの米麦だけにとらわれたような農産物じゃないと思います。この点に別にとらわれたお尋ねとも私思いませんが、やはり多角的経営の方向へいくんだろうと思います。しかし、どうも日本農業自身、一つの兼業形態による農家収入、そういう立場でみずからの考え方を立てておる、生計を立てておる、こういうようなものもあるのじゃないか、かように思うのでありまして、そういう点がいろいろ議論をされておるゆえんであります。そこらに研究の問題があるのだということを先ほど印しておるので、これがはっきり結論が出たわけじゃありません。
  102. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、兼業化の方向で農業生産を安定させることが一つの考え方だということであったのですか、そこのところをもう一ぺんちょっと。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業の場合において、農業基本法もいっており、また、理論的で申せば、農業所得をふやすというのが本来の姿でございます。これはもうそのとおりだ。これは第一の原則です。ところが、同時に、日本農業の場合においてこれは特殊な事情にあるのじゃないのか。どうも兼業として育つことが、やはり労働生産性を上げる上においても、また、土地の生産性を上げる上において考慮さるべきような状況に置かれておるのじゃないか、こういう議論がいま出ておる。そこで十二分にひとつこれは検討の対象として見ていかなければならぬのだ、こういうことを実は申しておるのであります。いわゆる兼業をすすめるというつもりはございませんよ。ございませんが、これは幾ら兼業がよくないのだ、専業農家でなければいかぬのだ、かように申しましてもいろいろな事情がありまして兼業の方向へいく。とにかく、わずかながらでも自分が土地を持っていたい、自分のところの食糧だけはぜひ自作したい、こういうのがみんなの気持ちであって、この気持ちを無視はできない。だから、そういうような農家、いわゆる五反以下、五反前後のものを耕作しておる、どういうような場合には、ただいまのような場合に、一年を通じての労働力を一体どういうようにあんばいしたらいいか、また、そういう意味で労働力生産性を上げるという意味から、いわゆる兼業の余地があるし、また、土地自身も多角的な、米麦だけによらないいろいろなものを耕作することによりまして生産性を上げている、こういうような実態も見のがすことができないのじゃないか。だから、こういう点を、いわゆる専業農家育成強化、何でもかんでもこのワクの中へ押し込んでいくということは実情に合わないのではないか、こういう理論、これは確かに私は耳をかすべきものがある、かように実は思っておりますので、そういう意味でただいま十分検討しておりますということを実は申し上げておるのであります。そうしてそれが結論が出て、農業基本法を改正しなければならないような結論になれば、それはそのときに考えてみたらどうですかということを申し上げた。私は、もちろん理論的に、お話のように、専業農家育成強化して、それは捨てるわけじゃございません。しかし、とにかく第二種兼業農家がどんどんふえておる、そうして農業中心をなす第一種兼業農家というものがだんだん専業農家になったのか、第二種兼業農家になったのか、とにかくこの存在がだんだん小さくなりつつある。こういうことを考えた場合に、農業のあり方についてくふうをしなければならないものがあるのではないか、こういうことを私は申しておるのであります。だから、その点ではいわゆる農業所得の増加ばかり考えないで、やはり農家所程をふやすように考える、そこに農家のしあわせもあるのではないか、かように私は思う次第であります。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 関連ですから、簡単にやります。  この問題は、日本農業の国際競争力をどうしてつけるのか、日本経済全体の体質の問題、あるいは物価問題と関連してこうやらなければならぬということで進んできた政策ですね。それが兼業農家がいま総理説明のような趨勢であることは私認めますが、これは理屈のいかんを問わず、現にそういう趨勢にあるんです。簡単に変えるわけにいかない。しかし、いまの御説明のニュアンスから見ると、国内だけの問題で農業収入だけで他産業との格差の是正が困難であるので、農家収入ということになりますから、長い閥政府が言ってきた国際競争力との関係、日本経済全体の体質の改善、あるいは物価問題、こういう全体的な国際的要因との関連では、非常に大きな私は変化を示しておると思うので、これらの点は一体どうされるのか。まるでいまの近代化がいいか悪いか、いろいろ批判があるところですが、近代化そのものはいいけれども、やり方の問題ですね。しかし、それと非常に違った方向へいまや転換を始めるんではないかと思われる節が相当あるのです。これはどうですか。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ねですが、たとえば一番大事な主食、こういう点では在来の管理方式を変える考え方はございません。ただいま米については国内滝で九六%の供給度、こういうことをいわれております。いわゆる一〇〇%とは私申しませんが、こういう意味で、食糧の安定供給と同時に、価格の維持というもののために、現在のような食管制度、管理方式、これを変える考え方はございません。また、その他の問題について、たとえば酪農品等が最近問題になりますが、こういうものは国際価格と一番競争しておる。こういう場合においては、確かに大きな規模で経営さるべき筋のものだ。比較的小さな農家で一頭の牛を飼えというような話もございましたが、牧畜に関する限り、酪農製品に関する限り、規模が強大でなければ国際的にはこれが競争できない、かように私は思います。その他、林業等におきましても、それぞれの点についてそれぞれ考えていくべきだ、かように思います。ただ、果樹等も、これはやはり小規模ではなくて、大規模の方向へいく、そういう方向ではないかと思います。これらも、そうすれば国際価格に競争できるのではないか。また、構造的な改革の点で、今度は一体どの点を相手にして他産業と比較するかということになれば、やはりこれは専業農家、それが他産業と比較されるべき筋のものだろう、かように私思いますので、まあもちろんこれからさらにこまかく分けていかなきゃならないと思いますが、ただいまお尋ねのありました構造改革、また、他産業との問題、同時に、国際価格との競争というような点についてはおくれをとらないように、それぞれ必要な処置は講じ得ると、かように私は考えております。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。  ただいま他産業との関連というか、経済企画庁のほうに伺ったらいいのかもしれませんが、このような農業の停滞が生じた根本の原因は重化学工業化ですね、これが非常に急速に行なわれたということだと思うのです。これは日本ばかりでなく、社会主義国でも、あまり重化学工業化に重点を置くと農業のほうに停滞が起こるのです。そういうような状況は高度成長政策のもとで起こったと思うのです。そこで、重化学工業化の比率ですね、大体どの辺に目標を置いているのか。これは所得倍増計画のときには、たいへんなスピードでこの重化学化をやることになって、昭和四十五年に軽工業二六・九%、重化学工業七三・一%に置いているのですよ。こんな高い比率は世界の先進諸国でもないのですね。これを、ですから中期計画ではどのくらいに縮めたのか。高度成長の行き過ぎを是正するということは、具体的に言うと、この重化学工業化のテンポ、これをやはりモデレートにするということも含まれていると思うのです。どの辺を目標に置くのか、この点がどうもはっきりしないのですが、その点をひとつお聞きしたい。
  107. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 重化学のほうは中期経済計画では六七・三に下げているそうでございますが、私は高度成長の……。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 六十何%ですか。
  109. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 六七・三です。私は、今日のような状況が起こったのは、大体木村委員と同じような考え方でございますから、そこにゆがみもできて、成長のテンポも違ったというような考え方で、今後まあ重化学工業も押えつける必要はございませんけれども、伸ばしていかなきゃならぬが、もし伸びていくならば農業のほうのテンポをずっと上げる、あるいは重化学工業を少し抑えられるならば、それに対応した数字を出す。将来の考え方としては、そういう考え方でいくことが、格差是正と申しますか、ひずみ是正になるだろうと、こう思っております。
  110. 矢山有作

    矢山有作君 いま羽生委員の質問に対する総理答弁というのは、私は、その質問にずばり答えた答弁ではなかったと思います。しかし、羽生委員の言われたように、私は、総理のいままで示された考え方というものは、これまでの農業基本法立場からいうならば、一つの農政の基本方針の大きな転換だと考える。しかし、このことはあらためてまたそれぞれの委員会において論議をさしていただきたいと思います。小さな議論はいろいろありますが、はしょりまして、最近、御存じのように、農業生産の停滞が出てきたことは、これは明らかである。ところが、その反面に、消費構造は非常に高度化してきまして、食糧消費のほうは相当ふえてまいりました。その結果、御承知のように、農産物の輸入が非常にふえている。それで、それに対応して国内自給率は低下する、こういうことになっております。一説によりますというと、こういうような生産の状態でいったならば、四十五年ごろには国内自給率は四五%程度に落ちてしまうじゃないかというような議論をなす人もあります。そこで、私は、これからの農業政策を展開する上でもやはり必要になってくるのは、食糧自給率というものをどの程度に定めていくのかということが、これが一つのポイントだと思う。その点を承りたい。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど米については申しましたが、いわゆる食糧としては大体八〇%程度前後を目標としております。
  112. 矢山有作

    矢山有作君 米についていま言われたわけですが、米だけでなしに、いまの食糧消費の構造変化というのが非常に高度化していきおるわけですから、私は、その点を含んで、全体的にとらえて食糧自給率というものを考えていかなきゃいかんのじゃないか、これが一つです。もう一つは、その自給率を考える場合に重要な要素になるのは、やはり国際食糧需給の動向がどうあるかということが一つは重要な要素になると思います。この点についてどういうふうな見通しを持っておられるか。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど、米については日本国内で九六%ということを申しました。それで、ただいま八〇%前後というのは、その他の食糧、飼料まで含めて全部置いてあるのでございます。今後の食糧の実情というものはどういうように変わるか。これは大体どう言ったらいいのですか、赤道の北というか、赤道より北側のほうが大体食糧はよく生産されておる。もっと南においてもこれと同様な生産があってしかるべきじゃないか、こういう方向で努力したらいい、かように思いますが、国際的に見まして、ただいままで食糧が残っておるというのは、ただいま申し上げるような地域でございます。
  114. 矢山有作

    矢山有作君 国際食糧需給の動向というものは非常に逼迫しておるということはFAOの報告等でも御存じのとおりだと思うのです。いまの御答弁の中で、将来の食糧自給度は八〇%に維持するのだというふうに解釈していいのですか。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはいまの何もかも含めてというように御理解をいただきたい。果樹から肉から魚から、また、飼料まで含めて大体そういうことになるのだと、かように思っております。
  116. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、現在の自給率を八〇%程度に維持するということになりますと、これは農業に対してはそれこそ文字どおり画期的な施策が行なわれぬと非常に困難じゃないか。そのことで一つの議論がなされておるのは、農業総合研究所の中山先生が言っておられる、その人の試算によると、現在日本の食糧のでん粉化率というものが大体六四%、それを将来昭和五十五年に大体四五%ないし四六%程度に持っていく、大体現在のイタリーの水準の前後じゃないかと思うのであります。その程度にするのに所要のいわゆる総カロリーといいますか、これは現在の八十二兆三千四百十億カロリーに対して、大体三倍近い二百三十八兆一千四百三十億カロリーの食糧確保が必要だと言っているわけです。それで、これを確保するために、たとえば生産の面を見たら、これは正確なものじゃないと言っておりますが、どういうふうなことを考えなきゃならぬかというので試算をしておるのを見ると、たとえば米なんかはたいしてこれは動きがありません。ところが、小麦の場合は顕著な例として見られるのは、生産量が三十五年で七十二万トン、五十五年に必要な量は二百二十五万トン、大裸麦でいうと七十六万トンが百二十万トン。それから、飼料でいうと、いま千百五十六万トンが九千万トン必要だ、大きな開きがあるものを見るとそういうふうな試算をしておるわけです。さらに畜産物についての試算は、牛乳、乳製品二百七十六万トンが千三百五十万トン、豚肉なら二十八万トンが百二十万トン、牛肉なら十九万トンが四十万トン、鶏卵なら八十四万トンが百六十万トン。これは三十五年に対してですが、三十五年と五十五年の比較を言った。これだけの生産が確保されなきゃならぬだろう。この生産を確保して自給率はようやく七七%であると、こういうことを言っているのですね。ところが、この生産を確保するといったら、これはたいへんなことです。そのことに対する認識というものは総理ありますか。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかそこまで実は考えたものではございません。私、大体八〇%前後と、かように申した、その数字を目標にしてこれから施策をやろうというように申しておるわけであります。ただいま言われるように、たいへんな事柄だ、かように思いますが、それぞれの専門家が八〇%前後の目標でいろいろ計算もしております。ことに一番問題になるのは、今後の飼料問題というのが非常に大きい。パーセンテージを占めている、ここにウエートが置かれている、かように私思いますが、これらの点がどう事務当局において検討されておりますか、さらに私よりも専門家のほうに答えさしたいと思います。
  118. 太田康二

    説明員(太田康二君) ただいま総理からお話のありました飼料の問題でございますが、御承知のとおり、濃厚飼料に依存いたします豚、鶏等が非常にふえるということが見通されるわけでございますし、そういった面で、実は今回の土地改良の長期計画を立てますときに、一応われわれの内部で、昭和五十年度を目標にして、家畜がどのくらいふえるかというような想定のもとに、一応昭和五十年度の飼料がどういう状況になるだろうかということをはじいたものがございます。それで申し上げますと、総需要量が約二千九百万トン、そのうち、国内産の粗飼料で供給されるものが、これは草地改良とか、既耕地における飼料作物の作付け強化という施策を進めることによりまして千百万トン供給される。したがって、残りの約千八百万トンが濃厚飼料に依存するわけでございますが、その際、国内産でどれだけ供給するか、輸入にどれだけ仰ぐかということは、今後の施策の講じ方によって変わってくるわけでございますが、昭和四十一年度の需給計画では九百十二万トンというのが濃厚飼料に依存いたしているわけですが、これが約倍の千八百万トン近くになるという想定を立てているわけでございます。
  119. 矢山有作

    矢山有作君 いま飼料問題だけについてお話になったのですが、もちろん飼料問題の重要性は私も承知しておりますが、しかし、いまは当面している食糧自給度の問題を議論しているわけですから、その立場で申し上げたいのですが、やはり農業政策を進める上でも、食糧消費、需要というものがどうなるのかということを一応想定して考えていかないと、底の抜けたおけの中に水をくみ込むようなことになってしまう。これが的確につかめないから農業施策がみんな見込み違いになってくると思うのですが、そういう点で、食糧自給問題については、イギリスあたりでは学者の間で非常に論議されて、国際食糧事情の動向とか、あるいは国際収支の動向等から、どの程度にウエートを置いたらいいのか、いわゆる適正な食糧自給度の水準というものが真剣に論議されている。私はそれは当然だと思う。その点で、わが国でそういうような問題についていままで研究がなされているかどうか、どうですか。
  120. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 食糧自給の問題については、農業基本法に基づいて三十六、七年ですか、長期見通しをやっております。それによりますと、大体十年を見ているわけでございますが、ごくざっぱくに申しますと、その見通しの概観を申しますと、大体において、先ほど申しましたように、食生活のいろいろな変更、また、向上もありますが、そのような関係もありまして、それぞれの物資において需要がその見通しよりも大体ふえております。現在中間的に検討いたしますとふえている。ところが、生産のほうはそういうふうにはなっておりません。そういうのは現在の長期見通しと中間における検討の結果でございます。したがいまして、これらについては、いま長期見通しとしての全般の関係を、この中間検討をいたしましたのに引き続いて、さらに検討を加えているわけでございます。現在は、酪農計画につきましては、これは具体的にこの方針を定めまして、昨年の暮れ、そうして今年各県において計画を立て、そうしてそれを一千町村にわたって二カ年間で生産の具体的な計画を立てるということになっておるのが一つでございます。それに対応して、いま、先ほど申しました飼料の問題をあわせて検討を加えている、こういうことでございます。  それから、米については先ほど申しましたとおりでございまして、これは大体自給の方向に持っていくことはそう困難ではないこういう見通しをつけております。穀類のうちで一番問題でありまするのは麦類であります、御了承のとおり。これは価格も、国際的な価格の問題もあり、また、生産性が非常に低い作物であります。そういう点から見まして、いまのところ、これは非常に国内生産が十分にいかないということは、これははっきり申し上げることができると思うくらいうまくいかない。これらについては、それぞれの施策は講じておりまするけれども、十分にいきませんので、その需要に対しては、これは不足分については、特にこのえさの問題でございますが、これは結局輸入に待っておる、こういう実態でございます。ごく概略を申し上げたのでございますが。
  121. 矢山有作

    矢山有作君 まあごく概略の話が、えらく個々の話になったんですがね。私の言うているのは大臣、長期計画、長期見通しが狂ったというのは、要するに需要が予想外に伸びて、生産がそれに伴わなかったから狂ってきたわけです。そこで、私はやはり食糧の需要というものを確実にはいきませんがね、見通しですから。これはやはり真剣に論議をして、そうして食糧需要がどの程度になるのかということを、まずつかむ必要があるのじゃないか。それに合わせてやはり生産体制というものを考えなければいかぬのじゃないか。いわゆるそういう長期にわたる検討というものがなされなければいかぬと思う。そうせぬと、これは予想外に需要が伸びれば、またたちまち足らなくなるということは、わかり切ったことなんです。だから、そういう点をやるべきではないかということを言うておるんです。そのときに私は一つ疑問が出てくるのは、じゃ、食糧消費の動向に全くまかせておいていいのかどうかという問題が出てくると思う。日本の国土の状態、生産の状態からして、やはり食糧需要のあるべき姿というものを一応想定をして、それに対する生産対策だというふうに出していかぬと、やはり食糧消費のおもむくままにまかせておいたら、これはいつも計画に見込み違いが起こると思うんですがね、この点はどうですか。これは総理から。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 具体的な問題として矢山君の言われておるように、全然まかせておいてもいかぬだろう。しかし、やっぱり想定をするにしましても、それがやっぱり現実に即したものでなければならぬ。なかなかつくることはむずかしいでしょうが。しかし、矢山君の言われるような一つの目標をこしらえて、そうして計画的な生産の方向へいくことが望ましいと私も思います。
  123. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうにやっていただきたいのですが、そこで、先ほど私が一つの試算を示しましたように、自給率八〇%維持なんていうことは、これはなまはんかでできる仕事ではありません、たいへんな仕事です。ところが、今度これを新しい経済計画の長期にわたるものを立てられるそうですが、そういう点は、十分検討して長期計画の中で考えられるんですか。それともその辺の検討は、いままでどおりのお座なりの検討で立てようとするんですか。このところは経済企画庁としては、やっぱり真剣に考えてもらいたいと思う。
  124. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当然、最近の食生活というものは、過去から見ても上がっております。それからその内容から見ましても、大きな変化がございます。また、同時に望ましい外国並みのカロリーを摂取していくという立場も、国民生活の中からでき得れば考えていく、これらの三つのものを総合しまして考えてまいらなければなりませんが、同時にそれぞれに対して、日本農業がそれを負担し得るだけの気候条件なり、土地なりあるいは面積なり、そういう条件も今度は逆に、お話しのように考えなければいかぬ。そういう両面を考えながら適当な長期計画において数字を出してまいりたい、各方面の意見を聞きながら数字を出してまいりたい、こう考えております。
  125. 矢山有作

    矢山有作君 そういうような長期計画を立てられる場合の問題については、もっとこまかくお伺いをしたいんですが、時間が許しませんから、その点はまたの論議に譲ります。  ただこの場合、先ほど来言っておりますように、相当な国費を投入する必要が私は出てくると思うんです。その場合、国費投入についてどういうふうに考えておられるのか、これは私は大蔵大臣にお伺いしたいんですがね。いまのようないわゆる大資本中心高度成長政策をとっていく中で、いわゆるいま高度成長とは言いませんがね、大資本中心政策であることに間違いはない。それを貫いていく中で、はたしてそれだけの農業生産を確保できるようないわゆる行政投資というものが得られるのかどうか。この点は見通しの問題ですから、はっきりは言いませんが、十分検討しておいていただかぬといかぬと思う。またそれをやるだけの覚悟もつけておいてもらわぬといかぬと思うんですがね。
  126. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農業は、わが国経済全体からいいまして、きわめて重要な地位を占めるものである。ところがこの生産性が、他の経済部門に比して落ちております。そういうようなことから、どうしても政府がこれを援助するという政策が必要である、こういうふうに考えます。ただ、その援助の方式が所得補償というような形で行なわれることは、これは私はいけない。やはり農家生産性を高める、こういうところに中心的な考え方が置かれなければならぬ、かように考えます。そういう考え方を今回は大きく取り上げまして、四十一年度の予算において土地改良十カ年計画、これは農家所得の根源である生産性向上、これを大いに進めていくという上に役立つだろう、かように確信しております。その他そういう同じ考え方において、農業各部面に対処していきたい、また対処できる、かように考えております。
  127. 矢山有作

    矢山有作君 価格・所得補償の立場からだけでは考えられぬとおっしゃいましたがね。これは私は農業生産力増強していくのは、容易じゃないと思うんですよ。その点は、中間検討における農林漁業分科会でも検討された結果、やはり短期的には所得・価格補償によってこれは農民の所得を補償するという政策をとらざるを得ぬだろう。そうせぬと、農業生産力は上がっていかないということを指摘されているわけですよ。私はそれを裏づけをするようなものが、今度の白書では出てきていると思うんですね。農業所得率はもう年々低下してきている、農産物価格は上がっている。しかも所得率が低下しているというのは、これは何かといったら、資本効率が落ちていることでしょう。それを反映して農家の固定投資というのは、非常に減ってきているわけですね。そういう中において、やはり農民の負担によって生産力増強政策を考えようということでは、これはやっぱりむつかしいんじゃないか。これはやはり土地基盤整備といったような生産条件を整備する基本的なものについては、これは思い切った行政投資というものが必要になってくると思う。この点の考え方はどうですか。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それでありますから、私は農家を援助する方式ですね、これは政府の投資、つまりその投資によって農業基盤を培養する、生産性向上する、これが主軸でなければならない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  129. 矢山有作

    矢山有作君 ところがその行政投資は、過去の実績で見ると、私は所得倍増計画で見たんですが、年々むしろ低下しておるんですよね。農業生産力の停滞が言われておりながら、それを増強するような行政投資というものが停滞をしてきておる、その点が私は問題じゃないかと思う。したがって、これはばく大な投資を農民に期待するといったことは、先ほど言ったようにできません。だから基本的なものは、土地基盤整備のようなものは、これは全額国費でやるべきだ。かつて大蔵大臣は、土地改良等の全額国家投資は、これは個人資産形成だからよくねえだろうというようなことを言っておられますけれども、食糧確保ということは、これは単なる個人的な問題じゃないです。これはやはり日本経済全体に、国民生活全体に関係してくることなんです。きわめて公共性の高い問題ですからね、いままでのそういった観念を捨ててもらわなければいかぬ。特に経済合理的な立場から資本効率がいいから悪いからといって、農民にできるだけ負担をかけて財政投資を少なくしょうというような考え方は、改めてもらわなければならぬと思うんです。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 土地改良事業にいたしましても、政府は非常に高率な援助をいたしております。それに地方団体の援助を加えますと、これはほとんど大半というか、個人負担はごく軽微なものになるわけであります。その程度の軽微な自己負担は、私はその農民の資産形成、その熱意、努力、これが自主的に働いてくるということをあらわす意味合いにおいて必要である、そういうふうに考えますけれども、大体個人負担は、さしておっしゃるような状況でない程度になっておる、かように考えております。
  131. 矢山有作

    矢山有作君 その点は、大蔵大臣認識は甘いと思うのです。個人負担が軽微であるようならば、どんどん農民は基盤整備のために積極的になるはずです。ところが、さっぱりならない。構造改善を進めるのだって、一生懸命役人が説得しなければ農民が乗ってこない、むしろそっぽ向いておるという形は、あなたの言われておるような状態ではないということなんです。だから、その点はこれはよほど考え直していただかなければならないと思うのです。もっと農業問題についてお伺いしたいのですが、時間がありませんからこのくらいでやめます。要は、格差是正の問題にしても、あるいは国内の食糧自給率を維持するにしても、画期的な農業政策を打ち出されないとやれませんぞということを、私は申し上げたかったわけです。さらに、農業基本法に基づく農政の失敗というものが明らかに出てきたのじゃないか。この辺で農業のあり方というものを再検討していただきたい。そのためにわれわれが考えられる方法としては、いわゆる自立経営だなんだというやり方でやっておってはだめ、当面の農業生産力を増大していくためには、やはり何といったって基礎的な条件になるのは、経営規模拡大をやるということなんだから、そういう立場に立つならば、農業のいわゆる集団的な経営方式というか、そういったものも検討していただきたい。そういった方向を目ざすべきじゃないか。現実に農民の中からそういう傾向が出てきておるということを、指摘されてきております。この点をお考えになっておいていただきたいと思います。これは答弁要りません。  それでは次に、沖縄の問題で簡単に触れたいと思うのですが、総理はこの夏沖縄においでになったときに、私は沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとっては戦後は終わらぬとおっしゃった。じゃあ具体的に祖国復帰のために一体どういうことをやってきたのか。私どもの目から見れば、祖国復帰のための努力はなされておらぬじゃないかと思うのですが、どうですか。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の答えたのは、九千万同胞の念願であり、また沖縄百万の同胞の念願を実現したい。しかし、とのことを実現する方法といたしましてしばしば申し上げましたように、アメリカの理解と援助によってこの問題を解決するということがこの骨子でございます。だからそういう方向で努力するのでありますから、ただいま何をしたか、こう言われても、こういうことですと言えば、ただいまの理解と援助による、これが答えになる、かように私は思います。
  133. 矢山有作

    矢山有作君 私は復帰の考え方が、理解と援助によるのだということに対しては、異論がありますが、じゃああなたは祖国復帰に対して理解と援助を求めるために、一体具体的に何をやったかということなんです。それを承りたい。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一々申しませんけれども、私が昨年ジョンソン大統領に会い、またその後現地におきましていろいろ折衝しておるのも、その意味でございます。
  135. 矢山有作

    矢山有作君 ところが大臣、共同声明をよく読んで検討してみると、まず共同声明を出すときに、沖縄の軍事基地が極東の平和と安全のために重要である、こういうことを積極的にぴしゃっとあなたは認めてしまったわけですね。アメリカも、返還をしない理由として、極東の平和と安全に対して懸念のある限りは返還をしない、こう言っておる。そうすると、あなたは返還しないほうに重点を置いて共同声明を出しておるのじゃありませんか。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 共同声明をそう拾い読みされても困るのです。御承知のように、私は「これら諸島の施政権ができるだけ早い機会に日本へ返還されるようにとの願望を表明するとともに、沖縄住民の自治の拡大と民政の一層の向上に対し深い関心を表明した。」ここをぜひ読んでもらわなければ、あとのほうだけ読まれちゃ困ります。
  137. 矢山有作

    矢山有作君 あとのほうじゃないですよ、一番前提がそうなっているんですよ、あなたの共同声明は。大前提がアメリカの軍事基地が極東の平和と安全のために必要なんだ、これが大前提になっているから、願望を表明したところで、願望が受け入れられるわけないでしょう。だから願望が受け入られない証拠に、向こうさんが一方的に平和と安全に対して心配なくなるまでは、無期限にでも占領するんだ、こういうことに逆に共同声明解釈すればなるでしょう。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、部分的に読んだからいけないようだから、これをもう少し引用します。その次が「大統領は施政権返還に対する日本政府および国民の願望に理解を示し、」これが大事なところでございます。「極東における自由世界の安全保障上の利益が」こう続くのでありますから、これは十分私が願望を表明し、それに対して大統領は、国民のこの願望に理解を示した。これははっきり書いてある。よく読んでいただきたい。
  139. 矢山有作

    矢山有作君 まあ都合のいいように解釈しておるんでしょうが、あなたの共同声明というのは、私だけでなしに、これはだれが読んだって、やっぱり向こうの言ういわゆる極東の平和と安全のためにこれを保持するんだ、それに対しては期限がついていない、これをあなたは前提にされて返していただけませんかとおっしゃっただけですね。返してもらうための熱意は一つも出ていない、共同声明に。そういうことに私は考えておるし、また実態はそうなんでしょう。  それで、次に沖縄占領している根拠というのは何なんですか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはサンフランシスコ平和条約第三条でございます。
  141. 矢山有作

    矢山有作君 この平和条約第三条の問題について深く議論をする時間がありませんが、この平和条約第三条と国連憲章の解釈問題では、いろいろと問題がありますね。そうするとこれはやはりあなたが祖国復帰というものを真剣に考えられるなら、この平和条約三条と国連憲章との間の解釈の相違、いろいろな矛盾がある。これを解決するために、そうして沖縄復帰をやらせるために、なぜ国際司法裁判所あたりに提訴しないんですか。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはただいま言われるような提訴すべしという議論もございますが、それとまた別な言い方もあるようでございます。また、これはアメリカと争ってというような意味だろうと私は思いますが、私は基本的態度として、アメリカの理解とその援助のもとにこれを実現するという考え方でございますから、ただいまのせっかくのこういう具体的な方法があるではないか、かようにお示しになりましても、その方法は私はとらない。
  143. 矢山有作

    矢山有作君 あなたは頭から、平和条約第三条なり国連憲章の解釈上疑義のある問題を明らかにする国際司法裁判所の提訴が、アメリカとの何かいざこざを起こすようなふうに解釈しておられるところに問題があるんじゃないですか。やはりこういう法理の解釈というものは、これは明確にするために提訴するというのは、あなたが祖国復帰、返還を真剣に考えるなら、これをやるべきが態度でしょう、一国の総理として。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ここは矢山君と私の考え方の相違ですから、私は先ほど来お答えしたような方法をとるつもりでございます。
  145. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると総理、あなたは、沖縄の祖国返還が実現しないと戦後は終わらぬとおっしゃったが、これは一つの外交辞令で、祖国返還のために何らの努力をしないということを意味するんじゃありませんか。私はそういうふうに解釈します。それではあなた総理としての責任果たせないでしょう。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもお答えに困るんですが、矢山君がそう断ずる、こう言われても、国民全体多数の方は、私を支持しておられるようでございます。この点は、どうも矢山君のただいまの御意見にはお答えするわけにいかないような気がします。
  147. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連、時間がないのでちょっと一つ。この問題は、全く短時間で質疑応答できない重要問題ですが、前回の通常予算の審議のときだったと思いますが、私もこの沖縄占領の根拠について、佐藤総理に相当お尋ねしたはずであります。その際も、私はいろんな専門家の論文なども示して、沖縄占領についてはアメリカの法的根拠というものはないということを相当はっきりさせたつもりであります。その質疑を始めたときには、総理大臣は、何かあるようなことをおっしゃっておられましたが、しかし、専門家の間で、これほどはっきりアメリカの根拠の薄弱さについて指摘されておるものを、わが総理大臣が、あたかも非常に合法的な占領であるかのごとく言われると、これは返還の問題自体に非常に響いてくるんじゃないかということを心配して――あれは相当じみな論議でありましたが、言及したわけなんです。総理大臣もそのとき若干、資料は見ておられなかったようでありますので、私が十分引用できなかった書物もお渡しして読んでいただいたはずなんです。ともかく、このへ理屈を法制局長官がつけるような、そういうことを離れて率直に考えたら、これはやはり平和条約三条からいっても無理があるというふうなことが、もうこれは定説なんです。だから、その点は、これは公式の場でありますから、いかぬものはいかぬということを総理大臣がはっきりしておいてもらいませんと――しかし、なかなか安保条約の関係なり、別個の立場からその理屈どおりいかない面もあるんだというなら、これはまた、その点は多少われわれの立場とも違いますが、一応の説明に私はなろうかと思う。その根拠について、いやそれはアメリカのあそこを持っているのは、はっきりとこれは合法的なんだ、これでは、返還問題がいよいよ具体的になってきた場合に、おまえさん、佐藤さんはいつ幾日こういうふうに言うておるぞ、こういうことではたいへんなことになる。私はその点を非常に憂えておるわけなんです。政府立場はいますぐ変えられないから、どうもそういう点について、はっきり言うのは困るというような気持ちがどうもこう見える。私はそれははなはだ間違いだと思うんです。それはそれとして、また別個な政治的な理由があるならあるで、それはまた別個に割り切って説明をされるべきじゃないか。あのときも私、時間がありませんで、非常に残念なところで近い詰め得なかったわけですけれども、きょうもまた同じ問題なんです。ところが、あと一分ですから、あまり時間をとらさぬように、そこだけははっきりしてもらわぬと禍根を残すと思うんです。どうなんです。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点は、平和条約第三条が基礎になっておることは、これはもう社会党も承認だと思います。ただ、第三条にしても、その後、管理あるいは信託統治云々の問題が提案されるべきじゃないか、それも提案されないでいまずっと来ておる、こういうことでございますが、この法律論は、私は法制局長官からお答えさすつもりでございますが、ただ、その点は別にいたしまして、わがほうが潜在主権、これは認められておるのであります。したがって、私どもがこの主権国として主張すべきものは主張できる、こういう立場にある、かように思っております。同時にまた、沖縄の米軍が、日本を含め同時に極東の平和に寄与しておると、こういう事実は、これはやっぱり認めざるを得ないんだ。だから、ジョンソン・佐藤共同声明におきましても、それらの点を伝えて、そして極東の状態が、もうそういうものが必要でなくなる、そういう時期の来ることを心から願っておる、こういうことを当方も了承しておるわけでありますから、ただいま申し上げますように、私どもは返還を放棄したわけではない、双方の意思の合致によって初めてこれを実現さす、こういう方向でいきたいと、かように私は思っておるのであります。それらの点で、先ほど来言われることと、どうも社会党と私どもとの基本的な態度が違っておりますので、その議論の進め方もここで変わってきているのだと、かように私は思っております。
  149. 亀田得治

    ○亀田得治君 非常に大事な点です。あとのほうはね、あとのほうの部分につきましては、これはいろいろ政治的な立場があって違ってくるんです、社会党と自民党と。しかし、私は、出発点の前段の問題はそう違うべきものではないと考えているんです。そこが一致しますると、どうもあとのほうも、社会党の言い分に引きずられはせぬかというふうな懸念等もあって、何かこうぼやかされるように思うんです。それが私は共同声明にあらわれていると思う。あなたは、共同声明で施政権返還についての願望を述べたと、こう言っていますが、願望――願望じゃないですよ。この権利の主張をしてもらわんけりゃいかぬです、権利の主張を。願望なんちゅうのは、これは陳情ですよ。言ってみたら、はなはだこれは弱いものです。いや、きょうも沖縄の人は見えているわけです。それから国民の皆さんの気持ちも、願望とか、そんな一体弱いものじゃないですよ。だから、私は、そこのやはり出発点の違いがそういうところに出てくるのだと思うんです。権利を主張して、その権利をジョンソン大統領にはっきり認めさせて、正しいと――後段というか、前段というか、その点は、それは皆さん政府と米国とがおやりになることはなかなかいまタッチできない。だけれども、そんな願望じゃだめですよ。返還を佐藤総理が要求した、なぜこういけなかったんですか。原案ではあまり強く言うてくれなかったということですか。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 願望という字句にとらわれた御意見のようですが、私どもは、これは日本が当然権利があるから、そういう願いを、そういうまた希望を述べる、これはあたりまえのことだ。これは願望だから、ただお願いだ、かように解釈されることはまことに遺憾です。私はそういう意味でいろいろ共同声明を書いたわけじゃありません。
  151. 矢山有作

    矢山有作君 端的に平和条約第三条が国連憲章その他諸決議から見て不当なのかどうか、したがって、沖縄占領が不法な毛のなのかどうか、それをはっきりしてもらいたい。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法制局長官に答えさせます。
  153. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  これは亀田委員が先ほど仰せになりましたような機会にお話をしたこともあろうと思いますが、国連憲章の七十六条、七十七条、七十八条あたりとの関連において、しばしばこの問題が国会においても問題になっております。私ども、むろん、内外の学者の見解等を調べておりまして、この間も策議院で問題になりましたが、私が一つ見落としていた「中京商学論叢」というのに、ただいま仰せになりましたような説が出ております。しかし、同時にまた、ケルゼンとか、日本の著名な学者の方々の中には、それと違った見解もまたかなり多くございます。したがって、そのおっしゃる一つの考え方というものを私は否定はいたしません。むろん否定はいたしませんが、しかし、同時に、そういう考え方できまっているというようなことは、いまの学界の説から申して、画然とこれを断定することはできないではないか、これは法制当局としてのわれわれの理論的な考え方からいって、そう断じ切れないものがある、むしろ、内外の学者の中には、そうでない考え方が多いというのが現況であるということを申し上げたいと思います。
  154. 矢山有作

    矢山有作君 いま総理、法制局長官の説明のように、明らかに解釈上の相違が出てきておるのですよ。だから私は、解釈上の相違を明確にするために、国際司法裁判所に提訴せいと、それから後の問題はまた別個の問題としてそれをやりませんか、そうすれば明確になってくるんですよ、沖縄の法的地位というものが。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢山君のただいまの熱心なお話に、私も十分検討してまいることにします。
  156. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 矢山君、時間が来ております。
  157. 矢山有作

    矢山有作君 検討するじゃだめですよ、現に解釈上の問題が出ておるのだから。それで、あなた方は自分の都合のいいような解釈をとって議論しておるのだから、だから、それを明確にするために、当然国際司法裁判所に提訴すべきだというのだ。そのことがなぜ日米の、あなた方が言う友好関係をそこなうんですか。そんなことにならぬですよ。英国だって、フランスだって、かつてドーバー海峡のあの小さな島の帰属問題についてやっているじゃないですか、国際司法裁判所に。そのくらいのことをやりなさい。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は先ほど政府の態度をはっきりして、さようなことはしないと、かように申したんですが、重ねての御要望であり、非常に熱心にお説きになりますから、さらに私は検討すると、これは最大のお答えをしたつもりでございます。
  159. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、その再検討するということ、国際司法裁判所に提訴して、沖縄の地位というものを明確にすると、そういう方向でやっていただきたい。  これで私の質問を終わります。
  160. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 矢山君の質疑は終了いたしました。
  161. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、白井勇君。
  162. 白井勇

    ○白井勇君 私は、同僚議員の質疑と重複を避けまして、国民の生活に即しましたごく身近なことにつきましてお尋ねをいたしてみたいと思います。ただ、時間が非常にたちましたので、できるだけ解説をやめましてお尋ねをいたしたいと思いますので、趣旨をおくみ取りの上に、端的にお答えを願いたいと思います。  まず最初に、総理にお伺いいたしたいのでありますが、昭和三十年代は経済成長、所得倍増の時代と称せられております。昭和四十年代を迎えました今日、総理が全国民に呼びかけられます目標の二青は何であるかということをまずお伺いをいたしたいのであります。  総理は、施政方針演説におきまして、平和に徹する外交の基本方針を明らかにされ、また、国内におきましては、ことしこそ、この不況を克服いたしまして、経済を立て直し、物価対策を強力に推進される御決意を示され、また、議会民主政治のためには、国民多数の意思を背景といたしました多数決原理に基づく調和と前進の政治を行なって、国民の信頼を確保したいと念願されましたし、さらにまた、青少年諸君に対しましては、未来に向かって輝かしい理想を求め、真理と平和を愛し、公共に奉仕する豊かな人間性を期待されるなど、まことに広範にわたります御抱負を披瀝されたのであります。国民も頼もしく感じておることと思いまするが、この広範な御抱負を貫く柱は何であるかという一点であります。  諸外国を見ましても、古いことになりますが、フルシチョフ首相当時というものは、アメリカに追いつけ、追い越せという合いことばで経済建設を進めましたし、今日、コスイギン首相は、国民の消費支出の増加ということを約束いたしまして、国民、ことに婦人方の要望にこたえているようであります。また、アメリカは、ジョンソン大統領は、偉大なる社会の建設ということを主張いたしております。イギリスは、かつての大英帝国のような面影はありませんけれども、偉大なるイギリスの再建というものを国民に訴えておりますし、また、フランスにおきましては、ドゴール大統領は、フランスの栄光を再現せよと呼びかけております。  日本におきましても、昭和三十年代というものは、池田総理の呼びかけられました経済成長、所得倍増のかけ声のもとに、急速なる経済の成長をもたらしたわけであります。戦後の日本を復興させましたものは、申すまでもなく、最大の力というものは、国民大衆のエネルギーであり、活力であります。明治の革新後百年という昭和四十年代を迎えました今日、全国民はその情熱を傾けまして、祖国興隆に邁進しようとしておるのでありますが、この国民大衆の活力に向かうべき方向と価値を与えますことは、総理の重大なる私は使命と考えるのであります。総理が国民に対しまして呼びかけられまする昭和四十年代の目標の一言を承りたいと思うのであります。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昭和四十年代、こういうものでなくて、私は、もう少し長い目で見た一つの目標というものがあってもしかるべきだと、かように思います。しかし、申し上げるまでもなく、前戦争に敗れてから、日本の国内では経済はめちゃくちゃになりました、考え方、思想もめちゃくちゃになった、何もかも破壊され、国民生活そのものも破壊された、かように思います。そこで、新しい社会をつくる、また新しい国家をつくる、こういうことで営々として過去二十年間努力してまいりました。まず、その経済の繁栄を取り戻すということで、これは国民の英知と努力によりまして、そういう方向に向かってまいったのであります。白井君も記憶していらっしゃることだと思いますが、ちょうど戦争が済んだ直後におきまして、この状態ならば三百万人の餓死者が出るだろう、こういうことも言われました。それほど物資が窮乏し、生産も停滞した、食糧自身も非常に不足の、その時期を迎えたと思います。今日の状態を見ますと、これは雲泥の相違でありまして、戦後のあの苦しい時代を思い起こすべき何ものもないような気がいたします。しかし、私どもは、さらにこの日本のあり方を静かに考えてみますると、これでよろしいのか、こういうことをまず考える。二十世紀はこの大戦争もあり、こういうことで破壊されたが、二十一世紀、これこそは希望に満ちたものであるようにということを実は提唱しておるのであります。二十一世紀の日本はいかにあるべきか、こういうことをいま課題にいたしております。そうして、これが国民の関心を持っていただくという意味で、あらゆる企画を持って、そして、この二十一世紀の日本の構想が生まれつつある、まとまりつつある、かように思います。この場合に、一番の骨子になるものは一体何か。これは私が申し上げるまでもなく、繁栄と平和に満ちた光輝ある日本の建設、こういうことばに尽きるのではないかと思います。このことによりまして、ただいまは、アジアにおける日本というだけではなく、国際社会に、日本の地位、それが高まっていかなければならぬ。そこで、ただいまも申し上げるように、繁栄と平和に満ちた光輝ある日本の建設、これをひとつ各界各層ともどもに手を携えて邁進したい、また邁進しよう、こういうように呼びかけておるわけであります。まず本年の課題といたしましては、ただいま申し上げるような高い理想を、それを目標といたしますと同時に、足元を強固にしなければならない、かような意味から、不況の克服と物価の安定、これが本年の課題である、かように考えまして、予算の編成等にも努力をしておるわけであります。ただいま御審議をいただいておるのもそういうことであります。大幅減税を実施し、そうして今後とも国民の負担を軽くしていくように、さらに減税の長期的な考え方も進めてまいりたいと思うし、同時にまた、本格的な公債発行政策、これによりまして、真に不況を克服して、繁栄への道へ、力強い繁栄への道を歩んでいく。同時にまた、私が絶えず唱えておる、平和に徹する日本であるようにということであります。また、この二つとも過去におきまして日本が歩んできたものだ、かように私は確信をいたしております。この二つの目標を十二分に達成さして、そうして輝かしい光輝ある日本の建設、これにひとつ邁進したい、かように私は考えて、国民にも呼びかけておる次第であります。
  164. 白井勇

    ○白井勇君 まことにありがとうございました。私は、総理のおっしゃるような目標のもとに国民とともに進んでまいりたいと、こう思っております。  総理にお伺いしたいことはもう二つございまするが、時間の都合でまとめまして要点だけ申し上げてみたいと思います。  一つは、政府はいま長期経済見通しというものを示しておるわけでありまするが、私は、この長期の経済見通しとともに、国づくりのビジョンというものを樹立をいたしまして、国民の祖国建設の指針とすべきものでないかという一点であります。所得倍増計画というものが中期経済計画に書き直されまして、そうしていままた新たなる長期経済計画が立案中であるようでありますが、わが国の開発計画について見ますると、昭和二十五年に国土総合開発法というようなものが制定をされ、その後低開発地域工業開発促進法というものとか、あるいは新産業都市建設促進法、さらにまた工業整備特別地域整備促進法でありまするとか、あるいはまた離島振興法、さらに東北三法でありまするとか、あるいはまた中部、四国、北陸、近畿というふうに、各地区にわたりましてそれぞれの開発の立法というものがありまして、それが二十二を数えておると私は記憶いたしておりまするが、それらのものは関連があってないようで、ばらばらに立案をされておるのであります。総合的な国づくりの計画というものは明らかでない。私はこれではならないと思うのであります。特に自然を相手にいたしまする、しかも長年月を要する農業におきましては、特にこの計画性というものが必要であろうと思うのでありまするが、農業におきましても、法律はありまするけれども、国づくり全体の計画に基づいての長期の展望もなければ、また地域計画というものもないように私は思うのであります。国民の知りたいことというのは、農業に例をとって見まするならば、この地帯でわれわれというものは、ここで酪農をやるべきか、果樹園を経営すべきか一かりに果樹園をやったほうがよいということがわかりましても、それならば果樹園を経営します場合に、ブドウがよいのか、モモがよいのか、あるいはナシを植えべきか、リンゴを植えべきかというような判断は、これはなかなかむずかしいことであります。世界の経済の渦の中におりまして、一農家の力をもってそういうことを的確に判断をするということは困難なわけでありまして、そこにどうしましても農家が判断をし得るに足りまする一つの指針というものが私はなければならないと、こう思うのであります。わが国は南北に長い国だとは言いまするけれども、最近のように道路、通信網というものが整備をされまして、加速度的に一つの小さな島に圧縮されつつあるわけであります。にもかかわりませず、現在四十五、六に達しまする旧藩制の残渣をとどめておりまする都道府県というものがある。しかし、そういった縄張り的な区域というものを超越しまして近代化しました産業経済の基盤といたしまして、この日本の国土というものを最も有効に活用するようなそういう地域政策、あるいは総合的な国づくりのビジョンを示すことが、国民の今後の祖国建設の指針になるのではなかろうかと私は思うのであります。そういう点につきまして、総理及び主管省の企画庁長官の御所見を伺いたいのであります。  もう一点は、政治に国民の総意というものが反映をしまして、他面また、政府考え方なりあるいは施策というものを国民に徹底させるような体制というものを私は確立をすべきものじゃなかろうかと思うのであります。総理は国民に溶け込んだ政治を行なうというようなことを言われたと私は記憶をいたしておりまするが、まことにそのとおりと思うのであります。でありまするから、為政者というものは国民の感覚とズレがありましては困ります。国民生活の実態に即しました政治が行なわれるようにならなければ私はならないと思います。一方また、政府が行なうその施策のPR活動について見ましても、わずか六億円の予算しかない総理府の広報室があるだけなのであります。府県庁の姿を見ておりましても、各町村の末端まで広報連絡員というようなものがありまして、県政のPRに当たっている実態であります。私たち、かつての教育二法、あるいは安保協定、日韓条約等の場合を振り返って見ましても、政府考え方なりあるいは施策のPR活動というものはほとんどなきにひとしい姿でありまして、与党でありまする自民党がこのことのPRの衝に当たっておるというようなことは、私は本末転倒のかっこうでなかろうかと思うのであります。政府は常に国民生活の実態というものを把握いたしますると同時に、国民の暮らしの実感というものを背景といたしましたあたたかい政治を行なえるようにしまするとともに、一方また、政府考え方なり施策を国民に納得をさせまして、国民の協力を求め得るような体制というものを確立をしなきゃならぬ、こう私は思うのでありまするが、総理の御所見を伺います。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一は、国土開発、これに総合性がないんじゃないか、こういう御指摘であります。二十二の開発法、あるいはその他の地方産業振興等の法律が出ておりまして、確かに白井君の御指摘のような点があります。しかし、最近近く御審議をいただくように、高速道路網の整備計画が出てまいります。これは地域開発をまず第一に考えての交通網の整備でありますから、この全国網が御審議をいただくと、さらに積極的に国土開発に乗り出したということがはっきりわかるだろうと思います。この点については、建設大臣からさらにつけ加えて御説明をいたすと思います。いわゆる国土開発、そういう意味では、しばしば治山治水等が云々されますが、ただいま申し上げように、交通網が整備されますことによって、今後の経済活動、また文化の交流、これが期せられるのでありまして、そういう意味で私は非常に期待をかけております。  次の問題は、PRの問題でありまして、政府はもちろんそういうことについて最善を尽くすということでなければならぬ。そういう意味では、政府は弱いのではないか、こういう御指摘でありますが、ただいま戦後の政治的な問題といたしましては、われわれが絶えず考えていかなければならないのは、いわゆる民主政治、これはいかにあるべきか、こういうことでありますし、また、その民主政治の場合に国会の審議がまことに大事でありますが、同時に、政党の活動というものはいかにあるべきかということだと思います。今日、民主政治の成果をあげると、こういうためには、政党がそういう意味で役割りを果すべきこと、これは非常に大きいと思います。もちろん政府も、本来の政府自体の仕事でありますから、広報活動をすべきでありますが、ただいまは政府も、政党のもとにおいて政府ができておるのでありまして、国民とのつながりにおいては何といっても政党が第一だと。政府はその上に立ったいわゆる衣みたいなものでございますから、実態が政党にあるんだと、そういう点を十分注意して、政策の徹底を期し、また同時に国民の協力をお願いするということで進んでまいりたいと思います。どこまでも民主政治を守り抜く、そしてりっぱな民主政治で成果をあげると、こういうことに努力すべきだと私考えております。
  166. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと議事進行。これはせっかく白井さんにやってもらっているのに、席があまりにも少な過ぎる。ことに自民党の方が、自分のところの質問者がやっておるのに、こういうことじゃ――これはまあ時間的に大体おなかがすいて無理な時間であるが、まあこちらが協力するつもりで実は続けようと、こういうことに理事間ではなったわけですが、しかしこういう事態で総括質問を続けるということは私は間違いだと思う。だから、すぐ委員長のほうでそろえてもらいたい。大臣のほうもみんなそろっておられるのに、これはちょっとぐあい悪いです。
  167. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 手配いたします。
  168. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま総理から、私のほうで補足の説明があるかもしれない、こういう御発言がありましたが、簡単に申し上げたいと思います。  私ども、いまの日本情勢というものを考えまして、先ほど来、各種の地域開発の法律その他があるが必ずしも総合的ではないではないか――それもさように感じております。さらに、けさほど来農業問題をいろいろ論じられておりますが、これも率直に申して、農業内部だけで解決する問題ではないという点が非常に多いと思う。さらに全国の地域格差の問題、あるいはいわゆる産業間の格差の問題、人口移動の問題等、いろいろ私どものほうで検討いたしまして、これには各種の要件があることは事実でありますが、やはり国土全体の姿というものが、先ほど総理から二十一世紀というお話がありましたけれども、二十世紀も後半に入っております現段階では、一億の人口を持つわが国の姿としては不適当な状態が現にあり、進行しつつある。これはやはり、国づくりと申しますか、道路、交通、運輸、通信、こういうものが、必ずしもわが国の地形その他と、人口一億以上に備える対策が整っておらないというところに大きな原因があると、かように考えております。したがって、簡単に申し上げますけれども、現在の道路網、その他、鉄道はいま二万キロあるそうでありますが、明治時代に七千キロというたいへんな仕事をいたしている。それが非常に効果があっておりますが、いまや自動車時代といいますか、非常な科学技術の進歩によって変わってきておりますから、その状態の中で、昔ながらの地域に人間が集中しなければやむを得ないという事態がわが国に存在しておる。これを解消するため、今後主として道路交通に重点を置いていかなければならない。ちょうど明治時代に新しい国をつくるために鉄道の建設に非常に尽力をされておる。いま申し上げたように、七千キロの鉄道が明治時代につくられておる。これだけで解決するとは言いませんけれども、これぐらいの新しい道路網を建設するということが今後の日本の国づくりの基幹である、かように考えております。その点を総合して政策を進めたい。そうして国民の皆さんに、将来の日本はどういうふうになるんだ、こういうことで、国民的な関心を持って国づくりに邁進し、あるいは農業問題の解決に進み、あるいは地方都市の開発に進む、こういう段階に来ておりますということの判断に基づいて政策を進めたい、かように考えておるわけであります。
  169. 白井勇

    ○白井勇君 私は、物価問題に関連をいたしまして、公共料金の取り扱いにつきまして、政府は、その管掌しておりまする事業の運営の合理化というものを断行する上におきまして非常に欠ける点があるんじゃないかということを考えておるのであります。私は、だからといって、政府がやってこられました、またやろうとしておりまする消費者米価、あるいは鉄道料金、また郵便料金等々の公共料金の値上げに反対しておるのではありません。最小限度の値上げはやむを得ないものだと私は思っておりますが、総理は、公共料金の取り扱いにつきましては、経営の合理化を強力に進め、その上昇要因というものをできるだけ吸収する措置をとり、値上げを極力押えることはもちろん、便乗値上げのごときは、これは絶対許さないということを強調され、当委員会におきましても、きのうまたそういうおことばを繰り返しておられるのであります。ところが、関係各省の実際やっておりまするやり方を見ておりまするというと、この総理の強い施政方針というものをはたして尊重してやっておるのであるかどうか、あるいはまたそれに対しまする努力なりくふうというものに欠ける点があるんじゃなかろうかと思われるのであります。  私ここに一々問題を取り上げてお話をしまするというと長くなりますから説明を省略いたしまするけれども、たとえば消費者米価の値上げというものを、米審におきましてはかってない一本答申にまとめまして答申をされたのでありまするが、それも政府の原案どおり決定をする。私はそのことはいま批判をしようとは思いませんけれども、ただ、それに至りまする前に、いまの食糧管理制度の現業そのものというものが、戦争中からそのままの姿で放置をされておる、そこにもつと改善をしなければならない問題点が多々残されておる、こういうふうに私は思っておるのであります。たとえば、この間ありました小麦粉の値上げにつきましても、これは時局柄適切な措置ではありましても、一方、たとえば一袋当たり二十五円の値上げをしてもらわなければ立っていけないという問題は、相変わらず残っておるのであります。その主たる問題というものは、やはり生産量の四割にも満たない粉を、四百六十の非能率的な工場で生産せざるを得ないという姿、そのものもやはり戦争中と同じ姿であります。一方、粉と同じように働いてまいりました精麦関係は、政府の援助のもとに三、四回の企業整備が行なわれておる。そういうものとのつり合いもとれないのじゃなかろうかというようなまず感じを受けるのでありまして、そこらあたりの合理化をはかりますることが公共料金の値上げにつきましてはまず必要なことではなかろうかと思うのであります。これからやられようとしておりまする、たとえば郵便料金の値上げにつきましても、これは郵便というものは、御承知のとおりに、もう八、九割というものは人件費であるということでありまするから、その合理化というものは非常に困難なわけでありまするけれども、郵政当局もこの合理化というものが必要なことは認めまして、郵政審議会に諮問をいたしまして、その答申というものがおととし三十九年の十一月にはりっぱな答申が出ておるわけであります。そういう答申の線に沿いまして郵便業務の近代化というものをはかるのがまず先決であろうと思いますが、これも、そういうことをほとんど顧みられずに、ただ料金値上げをすればいいんだというような姿になっておりますることは、まことにこれは物事の運び方の順序が違っておるのじゃなかろうか。鉄道料金の値上げにつきましても、私は非常に理解をしておったつもりでありまするが、この間当委員会におきまする国鉄総裁の話を聞いておりまして、実施延期によります一日四億足らずの不足というものが、持っておりまする財産の処分でありまするとか、あるいは能率を上げることによって五十億、六十億というものがすぐに出てくるのだと、こういうような話を聞いておりまするというと、やはり国鉄の料金値上げというものにつきましても、そういうような多少ルーズな運び方というものがあったのかというような感じもいたしまするというと、なかなかこういうことは国民の納得がいかないのじゃなかろうか、こう私は思うのであります。そういうことをいろいろ考えてみまするというと、私はやはり、政府が少なくも管掌いたしておりまする事業というものは、もう少し本気になってその合理化、近代化というものをはかりますることが、首相のおっしゃる趣旨に合うことじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。これは別に答弁を求めようとは思いません。私の率直な感じを申し上げました次第であります。  そのほかに、私は、労働大臣に対しまして、差し迫りました技能者の養成の問題、それに関連をいたしまして、日本の最近の人口の状態を見ておりまして、人口対策といたしまして、厚生省はどういうような措置をお考えであろうかという点、さらにまた文部省につきましては、現在の教育というものはあまりにも知育に偏していないか、もうちょっと常時若い者が体育というものに気を使ってやれるような、知育と体育というものがバランスのとれたような教育でなけりゃならぬじゃなかろうかという点、さらに私は、教育というものにテレビ、ラジオというものをいかに活用していく方針であるか、これは非常に文部省の考え方は私はおくれておると、こう思いますので、それらの点につきましてお尋ねをいたしたいと思ったのでありまするが、時間もないようでありまするので、私はこれをもって終わりたいと思います。
  170. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 答弁は。
  171. 白井勇

    ○白井勇君 けっこうです。
  172. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 白井君の質疑は終了いたしました。  午後二時三十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後二時五十二分開会
  173. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  先刻、加瀬完君が辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。
  174. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 午前に引き続き、昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし、質疑を行ないます。木村禧八郎君。
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、佐藤総理大臣が一月二十八日の施政方針演説におきまして、四十一年度のこの予算は不況克服に重点を置くのである、したがって、本格的な公債発行中心として大幅減税を行ない、そうしてこの不況を克服するのである、こういう施政方針演説を行ないました。従来の施政方針演説は、内外情勢から説き起こして、経済問題に移って言われているのですが、今回は、冒頭に不況対策、ここに四十一年度予算の重点を置いたのだ、こういう施政方針演説をされているわけです。ですから、この四十一年度予算をわれわれが審議するにあたりまして、この四十一年度予算と不況対策との問題、はたしてこれが適切なる不況対策であるかどうか、ほんとうに国民の経済生活を安定させ、また国の経済を安定的成長の方向に持っていく、そういう財政であるのかどうかということ、もう一つは、本格的なこの公債政策を導入されたのですから、これは画期的な問題でございますので、この公債発行の問題、この二つの問題を中心に質問をいたしたいと思うのです。  その前に、実は私は当初の質問にこれは予定していなかったのでありますが、そうして、これを取り上げることがはたして日本の国の利益になるかならないかについて私は非常に迷ったのであります。しかし、私はいろいろ考えた末、これはこの際取り上げておいたほうが長期的に見まして国の利益になるのだ、そういう観点から、私はこれを取り上げることを決意をいたしたのですが、それはすでに公然の秘密になっておるのでございますが、もし、これが事実でありとしますれば、今後の日本の対外貿易あるいは外交上にも重大な悪影響を及ぼす問題だと思うのであります。そこで端的に伺いますが、これは日本の輸出業者がアメリカに対して鉄鋼を輸出いたしましたが、これについてアメリカの関税法と、それからアンチ・ダンピング・ロー、ダンピング防止法に違反する事実が摘発されました。そして、新聞で伝えられるところによれば、七千万ドルの課徴金が課せられるということになったと言われておるのであります。もしこれが事実でありますれば、その課徴金を払うだけでもこれは二百五十何億ということになるのでありまして、貿易商社  大体伊藤忠を中心として十三社ぐらいが関係していると言われます、これを一体どうして払うかということが重大問題になるわけであります。また、このような関税法違反あるいはダンピング防止法違反を日本の貿易商社が犯したということになると、これは今後の対外的信用にも重大な私は影響を及ぼす、しかも、あとで質問しますが、これは単にどうも鉄鋼だけではないともいわれております。繊維関係にもあるのではないか、あるいはその他の雑貨品についてもあるのではないか、こういうようなことがいわれているのです。今後日本経済を安定成長に持っていく場合、国際収支、これは重大な問題でございますが、このような姿で今後対外貿易をやっていくということになると、これはたいへんな国益のマイナスになると思う。この際、この真相を明らかに私はすべきであると思うのであります。したがいまして、これは総理大臣のお耳に入っているのではないかと思いますが、その点についてこれを明らかにしていただきたい。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、実は初耳でございまして、どういう事情になっておりますか、その点主管大臣のほうから……。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 木村さんの御指摘のような関税法違反の疑いを受けて、いまこの問題で折衝をアメリカの財務局との間に、こちらの商社を代表して弁護士との交渉が続けられているわけであります。これはやはり運賃の記載についての、いろいろ悪意なものとも思えない節もございます。たとえばこちらで契約した場合と輸送との間に、ライナーで送るようなもの、またトランパーですね、急に船のつごうで変えるような場合、記載が事実に反するというようなことで、それで疑いを受けて、いまアメリカの財務局との間に折衝中であるということをわれわれも聞いておるのでございます。ただ、しかし、御指摘のように七千万ドルというのですか、そういうことはわれわれ聞いてもいないし、また、そういうことは事実でないのではないかと、かように考えております。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私もこれにつきましては、十分ではありませんが、相当調べてあります。そこで、通産大臣が七千万ドルというようなそんな大きなものでないといわれますが、もうちゃんと御存じのはずですよ。もっとはっきり言われたらいいと思う。私も資料を持っております。そうしてこれがどうしてこういう問題が起こってきたかということについてもいろいろ聞いております。それで外務省として外務大臣、この問題について何ら関知しておらないのですか、外務大臣は。
  179. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま三木通産大臣から申し上げたような程度のことは聞いております。まだ当事者間において折衝しておる段階でございまして、まだ外務省としてそれに介入すべき段階ではない、かように考えております。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな程度の御答弁でよろしいのですか。これはもう公然の秘密になっているのです。そうして三月の四日の衆議院において、予算委員会でこれは取り上げられた問題なんですよ。そうして三木通産大臣もこれについては、嫌疑を受けておることは聞いておる、こういうことも言っているのです。したがって、いま私は突然質問するのではないのでありまして、そういう質問がもう出ておるのでありますから、詳細これは調べてなければならぬはずであります。そうでなかったら非常な怠慢ですよ。なぜこれが発覚したかということは、もうおわかりでしょう。アメリカで港湾ストがあって、そこで倉庫の荷物を調べたところが、倉庫の使用料と実際荷物との間に非常に開きが出てきて、おかしいというのでだんだん調べたら、こういう不正申告が発覚したというのですね。これは私は日本の関税法にも違反するのじゃないかと思うのです。こういうことを日本の税関は認めておったのですかどうか。この点いかがですか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の聞いておるところでは、国内的には何ら問題がない。つまり正当の価格で税関に対しては申告が行なわれておる、こういうことであります。
  182. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国内では正当であって、それじゃアメリカではどうしてそれが正当でないのですか。
  183. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は衆議院の予算委員会でもそういう疑いを受けておることはあるということを申したのですが、いまはいろいろ手続上の錯誤もあろう、一例として私が申し上げたように、船積みの船の都合で、やはりライナーで積もうと思ったがトランパーに変えるような場合もある。そういうこともあったので、一切のことを引っくるめて、こちらの商社側の代表の弁護士とアメリカの財務当局との間に折衝がなされておるので、われわれが多少商社から聞いておることもございますけれども、これは全部引っくるめていま折衝の過程にありますので、やはりそういう折衝の経過を見たいと思うのでございます。ただ、われわれとして考えなければならぬことは、こういう疑いを受けるようなことが日本の大商社の間に起こるということは、将来の日本の貿易上の信用にも関係をするので、そういうことに対して今後厳重に商社自身の自粛を求めると同時に、われわれとしても全般の貿易監督の立場からいって、秩序のある輸出をするような行政指導はしなきゃならない、その責任は感じておるわけでございますが、ただいま折衝中の内容をとやかくいろいろ申し上げることは、かえってこの問題の解決に私は利益するとは思わないのでございます。それで木村さんにも御了承を願いたいと思うのでございます。
  184. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。ちょっと、木村さんのこの質問の主題でないことで非常に時間を取り過ぎてもいけないと思いますが、まず大蔵大臣、先ほど日本側の手続はちゃんとできておるというふうに言われておりますが、本件につきまして、日本側の税関関係ではどういう書類上の手続などができておるのか、そういう点を明らかにしてほしいと思うのですね。書類上の手続ができておるということと、事実がそのまま進行しておるということは、必ずしもこれは一致しないわけなんです。書類と事実が一致しておれば、アメリカ側でこれは問題になったのが、またおかしいわけなんですね。だからどのような日本国側の手続がなされておるのか。その点を、これは急に言うてもお答えできなかったら、きちんとそれは明らかにしてほしいと思うのです。明らかに。  それともう一つは、外務省なり通産省の関係になろうかと思いますが、向う側で問題にしておるこの問題点、おおよそのことじゃなしに、こことここということを明確にしてほしいと思う。両者のものを突き合わせてみれば、事態がはっきりするわけであります。そうなって初めて、なるほどこれはアメリカ側も法律違反ということで追及しておるが、日本の場合から見ても、関税法違反ということになるかならぬかということが、初めて私ははっきりすると思うのです。これはもう事実関係だけでありますからね。これもいま言うてすぐ通産大臣からお答えになるのは無理かと思いますが、そういう点をきちっと整理してお願いをしたいと思うのです。こちらの要求は、まずその点どうですか、できますか。
  185. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま私が申し上げたように、いまアメリカの財務当局と折衝をしておるのでありますから、ある一つの段階がきたならばこれは明らかにして、そういう解決というものに対してのしかたに対して、木村さんをはじめ御批判を受けたい。しかし、いまのこの話が途中においていろいろなことが、まあ商社からの聞き込みということになるでしょうが、そういうことが私はこの場合における処理としては適当であるとは思わない。ある段階がくればこれは明らかにいたしまして、全貌を明らかにして、国会においても御批判を受けたい。出すことをいとうものではございませんが、その時期に対してはこちらのある適当な時期ということにしていただきたいと思うのでございます。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 両当事者で折衝が行なわれておるということでありますから、折衝に私たちが関与しようというのは、これは時期がちょっと早いと思います。しかし、ある見方によっては、これは当事者同士の問題ではないと、こういうことを当事者同士でやらすからやはりルーズになるのだというふうな見方もあるわけで、しかしその点は一歩譲ったとしてもですよ、この事実関係は、これはアメリカ側でもちゃんとにぎっておるから問題にしているわけでありますから、われわれが揣摩憶測でいろいろなことを考えるよりも、日本側ではこうなっておる、米側の手続ではこういうふうになっている、問題点はこことここだ、三つぐらいのところはですね、事実関係だけはわれわれとしては明らかにしてほしい。それに対する批判は多少これは両者折衝中なら待ってもよかろうとか、あるいはまた日本側の関税法なりそういったようなものの発動も、若干これはまあ待っていいとは言いませんが、ともかくその辺の判断は、ちょっとあとでもいいと思う。事実についての疑惑が出てるわけですからね、その点だけは私は明らかに最小限度していただきませんと、木村委員としても引き下がれないのではないかというふうに思いますが、適当な方法としてそれはできるでしょうか。
  187. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま日米側の認識は必ずしも一致しておるわけではないのです。こちらにはこちら側としての言い分もあって、そういうので、いま御要求になっておるようなことを私はいとうものではないのです。しかしその時期の判断というものは、その折衝の過程ともにらみ合わせて、こちらにひとつ時期の判断はまかしてもらいたい、こういうことでございます。いま直ちにということはいろんな両方に意見の食い違いがあって、それで折衝しておるのに、それを全貌をこうだこうだというようなことが出ることがやはりこの問題の解決というものに対して私は有益だと思わない。しかし今後のことについては、これはやはりきびしく、こういう疑いを受けるようなことがかりそめにもないように、これに対しては厳重な、いろんな商社の機構にも考えなきゃならぬ点も私はある、そういう改革はいたすつもりでありますが、そのいろいろ提出の時期については判断をおまかせを願いたいと思うのでございます。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これについては、アメリカ側も日本側も、これは行政当局に相当責任がある問題だと思うのです。そこで、くさいものにふたをするという、そういう形でこれを伏せておいたのでは、ますます疑惑を深めるばかりです。これは通産省も鉄鋼行政において手抜かりがあったわけでしょう。輸出について、この伊藤忠はじめ十何社ですよ。全部がこれに関係しているということは、この輸出に対して通産省は知らないはずがないですよ。そうでしょう。また大蔵省もアメリカの関税法なりあるいはアンチ・ダンピング法を知らないはずがないですよ。そういうことを知らないで、そうして向こうの法律にひっかかったなんていうことは、これはたいへんな行政上のやはり責任があると思うのですよ。どうですか。
  189. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 秩序のある輸出をするということに対しては通産省も絶えず考えなきゃならぬ。しかし鉄鋼の輸出に対しては、木村さん御承知のように承認制にもなってないのでありますから、一々チェックする方法はないですよ、これを。何らチェックする方法はない。ただしかし、常に日本の輸出ということは国策的な課題ですから、商社に対していやしくもそういう疑いを受けることのないように、秩序のある輸出をするようにという、絶えず商社に対して注意を喚起しながら、商社自身の自粛といいますか、秩序ある輸出に対する協力を求めていくということに対してはわれわれも責任を感じておりますが、このこと自体に対して、一々の鉄鋼の輸出に対してチェックできない点もあるというような事情も御了承を願いたいと思うのでございます。全般としては、秩序ある輸出に対してはわれわれも大いに責任を感ぜなきゃならぬと考えております。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もしこの課徴金がきまると、この課徴金は一一〇%ですよ、率が。だから五千万ドルなら五千五百万ドルの課徴金になるんですよ。七千万ドルなら七千七百万ドルになるんです。これはもうそれだけの外貨をもし払うとなったら、これは国際信用にとってたいへんな問題でしょう。日本経済にとっても重大な問題ですよ。そういう問題が含まれておりますし、それからいま話し合いでだんだんいい方向になりつつあるというようなお話ですが、聞くところによりますと、いろいろ過税において日本の業者あるいは鉄鋼等についてのオブリゲーション――義務がしょわされるという危険があると言われておるんです。たとえば鉄鋼の原料炭については値上げを認めたでしょうが、弱味があるから値上げを認めざるを得なかったんじゃないかとか、あるいはアメリカの原料炭を買って中国の原料炭の輸入をチェックしろとか、日中貿易をチェックしろとか、そういう弱味につけ込んで言われる危険もあるんではないかとか、いろいろそういう今後の日本の輸入の規制について弱味があるものですから、それを譲歩しなきゃならないのじゃないか、今後の対米貿易について、将来この点非常なマイナスの解決になる危険もあるのですよ。そういうことを含めて、これは日本で正当なる主張があるなら堂々とすべきですよ。また国会でも明らかにして、向こうと意見が違うなら、こういうわけで決してアンチ・ダンピング法違反じゃない、関税法違反じゃないということをなぜ堂々と政府がここで主張できないのですか。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 手違いも商社にあったことは事実でしょう、手違いも……。  いろいろないま申したような関税法の疑いを受けるような手違いもあったことは事実で、そういうことをひっくるめて、将来の輸出に対する秩序のある輸出をしなければならない、これ以外に、このこと自体からいろいろなオブリゲーションを受けるとは私は思ってない。しかし、やはり輸出にいやしくも関税法の違反の疑いを受けようなことは、今後厳に慎まなければならない、そういうことはオブリゲーションというよりも当然のことです。それ以外にいろいろなオブリゲーションがつくとは私は思わない。そういう意味でこの問題は、ただいま一切のことをひっくるめて折衝しておるのでありますから、できるだけ早く、その時期がくればこの全貌を明らかにして御批判を受けたいと思っております。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この鉄鋼以外には問題ないのですか。
  193. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は鉄鋼以外に問題があるということは聞いておりません。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私他にあるようにも聞いておりますが、いま通産大臣がなるべく早く解決をはかって明らかにすると言われましたが、しかしその結果、日本の国益に非常に反するような結果になってはいけないわけなんです。国益に反しないようなそういう形においてこれは解決されるように努力されることを希望しまして、この問題は保留しておきます。それでなお、われわれももっと、これは単にこういう一つの何か関税法違反とか、アンチ・ダンピング違反という問題だけじゃなく、今後の日本の対米貿易なり対外貿易、あるいは経済外交等にも大きく響く問題で、前に日本のイエロー・ダンピング、ああいうようなことがまた各国で言われないとも限りませんから、ことに日本のこの設備過剰の状態を打破するにあせるためにそういうことになりかねないのです。この点はひとつ警告を発し、今後の事態を見守ることにいたします。それで次の問題に移りますが、いまの点について御答弁ありましたら……。
  195. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 木村さんの御指摘のとおり、今後もやはり貿易にこういうことを再び繰り返すようなことがあれば、輸出上非常な影響を与えますから、今後貿易の秩序という点については、われわれも一段と貿易業者の自粛、政府自体としての行政指導を行ないたい決意でございます。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと締めくくりで……。  それではこちらから要求しておきますが、一般質問の段階でもよろしいし、あるいは分科会の段階でもいいですが、予算案の審議中に、もうしばらく待ってもらいたいということを言われた事実関係、これを明らかにするようにしてほしいと思うのです。これはまあ両者の話し合いがそう簡単に進行するかどうかということにも関連のあることだと思いますが、この総括質問の段階で木村委員が出しておる問題ですから、目標として予算案の審議段階でひとつ報告できるように努力をしてもらいたい、これだけ要望しておきます。その要望はよろしいな。
  197. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御要望として承らせていただきます。
  198. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、四十一年度予算と不況対策について佐藤総理大臣に伺いたいのです。  先ほど申しましたように、総理大臣は、施政方針演説で冒頭に、この予算は不況対策に最重点を置いたと。それではなぜ財政にこの不況打開の指導的な役割りを果たさせなければならなくなったのか。過去においては設備投資とかあるいは輸出とかそういうような、あるいは個人消費の増加というものが景気打開の要因になっておる。今度は非常に大胆にいわゆるフィスカルポリシーを打ち出したわけですよ。ですから、私から見れば、ほとんど一〇〇%財政におんぶしてこの不況を打開しようとしているわけです。なぜそんなに財政にもうほとんど一〇〇%近いほどおんぶしなければこの不況は打開できない不況なんであるか、その点を伺います。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあことし政府に課せられた課題、これは不況の克服と物価安定と、この二つにある、かように考えておるわけです。そういう意味で、民間の有効需要を喚起することを考えなければなりませんが、昨年の経過を見ますると、民間においてさような力はほとんど考えられない。この際は財政の面から有効需要の喚起をしようというのがそのねらいであったと思います。また、個人の消費等におきましても、たいへん減税をいたしまして、それぞれ個人の消費もふえてくる、こういう形にはありますけれども、どうも昨年までの消費で耐久消費財などは一巡したというようなこともございますから、そういう点を考えまして今回は財政に力を置いて、そして不況克服と取り組む、こういうことが望ましい。そういう際に、おくれております社会資本の充実、住宅建設その他等を実施していく。そうして有効需要を喚起して刺激を与える、こういうような政策をとったわけであります。
  200. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、日本の不況というものをどういうふうに理解されてくるのか。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私がお答えするよりも、あるいは経済企画庁のほうが適当かと思いますが、特に名ざしでありますからお答えいたします。  今回の不況は、いわゆる景気循環のものもございますが、同時に、構造的なものだと、こういうことが指摘されております。過去の設備投資が非常に過大であると、まあ過大というよりも設備投資の結果、需給がアンバランスになり、供給が十分あって、そして需要がそれに相応してない、こういうところに構造上の問題があるのだ、かようにいわれております。私どもも、そのとおりだと考えて対策をとったわけであります。
  202. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の不況は、いま総理の言われましたように、私どもも構造上の問題だと、こう思っております。ただ、今回の不況がまあこれほどひどくなって、金融の方面からの調節がきかなくなったということは、過度の、信用の膨張が多かったのじゃないか。したがって、今度の不況が起こりまして、景気回復――三十九年に一ぺん不況が起こって、そして回復途中に金融の調節がもうきかなくなったほどいわゆる信用が膨張しておるということではないかと思います。   〔委員長退席、理事小沢久太郎君着席〕 したがって、金融をゆるめただけでは景気刺激にならない。そこで、やはり財政のほうから刺激していかなければならない。ですから、ゆがみ、ひずみができたところが不況の主たる原因でございますけれども、それをさらにこういう不況に落ち込ませたということは、金融調節の機能が十分でなくなったというところにあると、私はそう判断しております。
  203. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が質問している意図は、不況対策を講ずる場合、それを効果的な対策ならしめるためには、いまの不況の実態というものがどういうものであって、その原因がどこからきたかということをはっきり認識しておかないと、その不況対策が的はずれになる。そういうので、いまの不況の実態認識について、まず伺っているわけですよ。そうしますと、社会党の不況対策と、いまの政府の不況対策の違いが、これがだんだんはっきりしてくると思うのです。いま総理の御答弁、それから経企長官の御答弁も、大体実態としては非常な設備過剰ということなんでしょう。いわゆるデフレ・ギャップが大きいと、だから有効需要をつくると、そこで財政の面から設備投資では期待できないと、金融をゆるめてもだめだと、個人消費もだめだと、輸出も年々伸び率が低いと、だから借金してまでも、公債発行してまでも、うんと拡大して、政府が物をたくさん買って、デフレ・ギャップを埋めようと、こういう認識なんじゃないですか。そう理解していいですか。
  204. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体そう理解していただいていいと思います。
  205. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、日本のいまの不況は、従来の循環的不況以外に、それからまた、先進資本主義国のいわゆる設備過剰による不況と違った特殊の要因があると思うのです。それを政府は見のがしているのじゃないかと思うのです。その特殊の原因というのは何だとお考えですか。
  206. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いまおそらく木村さんの御指摘になったものは、私どもも気づいているところじゃないかと思うのですが、国民生活は相当向上してまいりまして、そうして生活の内容が、現在の段階ではかなりまあ改善されてきたと、そこで需要の問題が、必ずしもいままでのような勢いで、戦後何にもなかったと、着物もなかったと、住む家もなかったと、あるいは家具その他、そういうものもなかったと、そういうところではどんどんそういうものの要求が非常にふえてきましたけれども、まあ非常にみんなの生活がよくなったとは申しませんけれども、一応そういうものがある程度充足したと、したがって、たとえばテレビが二千五百万台もあるといわれております。これは外国に比べても、世界でもって二番とか三番とかいうような、そこまでテレビの台数がふえれば、テレビが必ずしもいまの現状では、そう買いかえるといいましても、よくいわれておりますが、テレビは十年ぐらいたつと一割ぐらい買うというのですが、十年前に日本のテレビが二千五百万台あったわけじゃないので、おそらく三百万台か五百万台ですから、一割としても三十万台、ですから、そういう買いかえるような段階になってきての需要というものは、わりあい減っていると言わざるを得ないと思います。ですから、そういうものが新しい需要を喚起するのには、私はやっぱり住宅やなんかつくって、新しい家具を買うと、あるいは一台持っていたテレビを二台買うというような状態になってこないと、なかなかその方向からの消費はふえないのじゃないか。そこらにある種のものにつきましては設備過剰であると、いたずらに過当競争で膨張さしたというところに、そういう要因も重なってきたから、テレビなどは、昨年あたりはまあ稼働率四〇%とかなんとかいう状態が起こったのじゃないかと思います。だから、そういう点は私どもも考慮の中には入れておりますけれども、おそらくその点じゃないかと思います。
  207. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 遺憾ながら、財界人でありながら、ちょっと落第ですね。及第点を差し上げられないですね。というのは、設備過剰になった原因は、もっと探求していけばわかるでしょう。先進資本主義国と日本の会社の資本比率をごらんになって、これはもう大蔵省の法人統計によりますと、自己資本が一九・九%じゃないですか。八割以上も借金でやっているのでしょう。こんな経営しているところ、諸外国にありますか。これは日本の特殊の状態じゃないですか。
  208. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が過度に信用が膨張したと言うのは、そういうことを言っておるので、私は自己資本の比率が非常に低いと、これはいけない。この前私が企画庁長官をしておりましたときは、自己資本の率は三〇%でございました。今月それからずっと落ちていく一方であります。ですからこれは、私は、平素から自己資本比率を直さなければいかぬ。これはいま申し上げたのは、過度に信用が膨張してそうしていったということばの中に含んで言ったつもりであるのでございまして、したがって、それだけのものができましたから、金融の回復機能というものはなくなってしまった、こういうことを先ほど申したのであります。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう意味でしたら私のまあ誤解で、さっきのことは失礼申し上げましたが、それならそれで、それは対策にあらわれていないのですよ。政府は、大型積極予算を組んで有効需要をつけてデフレ・ギャップを埋めることのみに重点を置いている、四十一年度予算は。これは私は、それも必要ですよ。いまの不況の原因、つまり不況というのは、資本主義の経済のもとでは、経理面からいえば利潤率の低下ですよ。もうからなくなるということでしょう。もうからなくなる一つの原因は設備過剰、生産過剰、しかし、ものすごい操短をやっていることでしょう。もう一つは、これは日本特殊の原因として、資本費が非常にふえているということですよ。これは諸外国の会社にはないのでしょう、特殊なんですから。うんとふえちゃう。ここになぜ着目しないか。これは一つの日本の不況の特殊な、しかし大きな要因ですよ。不況対策を講ずるときに、政府は単なる有効需要の増大ばかり考えている。だから、公債を発行してそうしてこの積極拡大予算を組まなければならぬ。そこだけに頭を置いているのですよ。もう一つの不況の日本の特殊の要因としての資本費の増加、これに対してどう対処するかという、そういう対策が必要ではないかと思うのですが、いかがですか。
  210. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) したがいまして、自己資本の充実ということは、個人と同じように経営主体ができるだけ自分の経営の堅実化をはかって蓄積をするということと同時に、私は、やはりある程度の企業減税というものが必要じゃないかということを実はかねてから力説いたしておる。それによって自己資本の充実という問題が促進されるのじゃないかということを言っておったわけなんですが、今度の財政措置の中にも、従来になく企業減税の面が取り上げられてきておるのでございまして、これは私はやはり一つの、そういうことに気づいて大蔵大臣もやられた、われわれもそういうことを考えておるわけでございます。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな企業減税なんかで直るような資本構成ですか、あとで具体的数字で承りますが。  で、まあ資本費の問題について伺う前に、政府がまず有効需要のほうをふやしてこの不況を打開しよう、デフレ・ギャップを打開しようといっているのですが、一体どの程度にデフレ・ギャップを見て、四十一年度予算でどのくらい有効需要をふやそうとしているのですか。大体デフレ・ギャップは埋まる計算になるのか、その点いかがですか。
  212. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) デフレ・ギャップということがいわれますが、これはなかなか計算がむずかしいのです。つまり設備に対しまして供給力が幾ら、いま設備過剰でありますから、その過剰が生産力にして、金に換算してどのくらいあるか、こういうことでありまするから、なかなかこれは数字的に言うことはむずかしい。しかし、いろいろな人が大まかに言いますのは、少ない人が二兆と言います。大きい人でまあ四兆と言うような人もあるようでありますが、しかし、私は直観的に二兆――四兆よりもう少し大きいのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。そこで、私どもの考え方としては、昭和四十一年度の予算を通じまして景気回復と取り組む、こういう際に、一挙にデフレ・ギャップを解消せよ、そのためには二兆円も公債出せというような議論がありますが、私は、これは非常に危険なことであり、また、そんなことをやったら  やろうとしてもできやしませんけれども、やったら、これは今日以上のまたひどい目にあうことになる。日本経済を破壊するようなことになる。それはやるべきじゃない。二、三年の時間をかけてこのギャップを解消していかなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。そういうふうな考え方で七・五%の成長、その限度においてデフレ・ギャップが埋まると、こういうことになるわけでありますが、今日大体まあ皆さんがおっしゃるのは、パーセントにすると三〇%のデフレ・ギャップだ。つまり操業度が七〇%ぐらいじゃないか、こういうことでございますが、それが八五から九〇ぐらいまでいけば、まあ好況状態、つまり増収、増益状態と言えますから、やはりまあそういう成長速度でやっていくと二、三年はかかるのじゃないか、まあ二、三年をかけてもそのほうが堅実な行き方じゃないか、こういうふうに思うわけであります。そういうことで七・五%の成長率というものを考え、それに即応する財政はどうかというと、四兆三千億の一般会計、四兆一千億の地方財政、まあ財政投融資二兆円、こういうようなことになりますが、それによって喚起される有効需要、これは予算面では大体一兆円ですか、これがまあ概数の、どういう比率になりますか、学者によっては二・丘であるとか二・〇だとか一まあ中間的に二・五とか言いますが、そういう購買力喚起の効力を持つと、こういわれておりますが、ともかく、相当程度のギャップは埋まる、しかし、二、三年はかかる、こういうような見当で予算は編成されておるわけであります。
  213. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ数字にあんまりとらわれるとよくないと思うのですけれども、しかし、政府が発表した数字ですからね、その四十一年経済見通しによると、国民総生産は大体三十兆をこえるわけで、三兆一千三百億ふえるのでしょう。これが総需要の増加じゃないですか。そうでしょう。いま言われた政府の財貨及びサービスの購入は、国及び地方財政全部ひっくるめて、そうして長期勘定を引きますと七兆一千億ですよ。約一兆ふえるのですよ。しかし、それが結局は回り回って三兆一千二百億の有効需要の増加ということになるのですよ。そうでしょう、総需要とすれば三兆一千二百億、そうでしょう。それは輸入が入りますから少し違いますけれども、大体そうなんですよ。そうでしょう。すると、三兆一千三百億だと、四十年度の増加は大体二兆なんですよ。そうすると、四十年度より一兆ふえている。だから、あなたがいろいろ乗数効果を言いましたけれども、四十年度より一兆ふえる、それでデフレ・ギャップが埋まりますか、とうてい私は埋まらないと思うのですよ。それで埋まらないけれども、そこで私は通産行政が問題だと思うのです。政府がどんどん物を拡大政策で買い出すと、その場合、いまの操短はどうなるんですか。カルテルを、有効需要がどんどんふえていくに従って通産省は行政指導で、どんどんこれを緩和して物価が上がらないように行政指導をしていくかどうか。これは私は、物価が上がるか上がらないかのキーポイントになると思うのです。その点いかがですか。
  214. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、日本の一つの産業界の実態は、むしろ過当競争というところに象徴的な面があらわれております。そして貿易もどんどん自由化されております。まあそういうことで産業の、企業間の競争条件というものは、非常に日本は現在持っておる状態だと思います。だから価格などについても、いまカルテルのお話がありましたけれども、不況カルテルなんかも、これは一時的なもので、木村さん御承知のように、平均生産費を割っているような業種に対して、一時的にやっているわけですから、これは長期にわたってやる性質のものでもない。そういうもの以外のものについては非常にやっぱり競争が激しい。したがって、今後日本工業製品に関する限りは、価格をつり上げようといっても、そういうふうな外国でいわれるような寡占、独占態勢に日本産業界が入っているとは私は見ない。そういうことで、今後とも通産行政としても、そういう日本産業界の状態が非常に競争的だし、価格をつり上げていくということよりも競争して下げるような要素が非常にある。われわれの指導としても、むちゃなやっぱり値下げ競争は抑制しなきゃならぬが、工業製品などについては、生産性が高まるにつれて価格は下げていくような指導を通産省はしなければならない、こう考えております。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府が、だんだん不景気が底をついて景気がだんだんよくなるという場合に、その説明として、たとえばこの生産水準が伸びたと、出荷が伸びたと、その中で一つ市況が堅調になったということを言うでしょう。これは物価が上がるということなんですよ。卸売り物価が上がるということでしょう。今後はそこが非常に重大な問題なんです。それで公債発行して積極財政をとってもインフレにならぬということを、大蔵大臣もそれから総理大臣も言われておりますよ。その場合ですよ、非常な過剰設備をこれは生産制限をやっているんですから、それを次々に有効需要がふえていくに従って緩和していけばそのとおりになるんですよ。ところが、そうならないところに問題がある。鉄鋼もしばらく操短を続けるということをきめたんでしょうが、カルテルも簡単になかなか解決しない。卸売り物価がだんだん上がるような形においてしか緩和していかないと思うのです。通産省はそれは資本のほうの味方ですから、消費者の味方じゃないから利潤を擁護するからそういう方向に見ている。そこが問題だと思うのです。そこが私は、総理大臣、ここのところ一番きめ手になると思いますが、いかがですか。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま木村君のお話ですが、私も実はそれを心配しておる。景気はよくなったと、かように申しましても、いまの生産調整下において生産調整をやっているから一応鉱工業生産伸びると、こういう状態であれば結局価格をつり上げることになるんじゃないか。だからその点において、先ほど通産大臣がお答えいたしましたように、この現に設備能力としては十分のものを持っている。設備投資は過大だといわれておる。だからその生産調整をやらなくても済むような状態になるんだということで、順次生産の全体がふえていくということでなければならない。また、今日の経済から申せば、それがフルに働くようになることが、いわゆる鉱工業のあり方として十分その生産性向上したということになるわけなんです。それならば価格は高くしなくて済むじゃないか。むしろ安くしてそうして消費者の利便を供給すると、こういうことにもなる、かように思います。ただいま御指摘になったとおりその点が一つの問題だと、かように私ども思っておりますので、十分注意してまいるつもりであります。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところがそうならないじゃないかというのが問題で、もしそうなれば、昭和三十年ごろ、いわゆる数量景気がありましたね。物価が上がらないで、それで生産がどんどん伸び、輸出も伸びて企業が操業能力が高まってもうかったが、ああいう状態が正常なる好景気でしょう。これから政府が有効需要の増大にばかり、それに一〇〇%不況打開の重点を置いている。そこで結局、その有効需要も足りないんですよ。だから、この規模でも確信がないから上期に集中して使うんでしょう。そして上期に成長率を高めていかないと下期でうんと高めなければならない。上期に高まらなければどうなりますか。上期に集中して使うと支払いベースで四〇%使うというのですが、実際にできますか。四十年は二八%しか使っていないんですよ。地方自治体なんか、これがいっていまの人員の定員でそんなことが一体できますかね、事実問題として。これは督励するかもしれませんが、非常に私は無理な計画になっているんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  218. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点は確実にただいま事務を進行しております。私どもは、上半期に六〇%の契約を完了したい、こういう目標なんです。しかし、各省ごとに精細な具体的な契約を立ててみると、平均して七〇%ということになります。しかし私は、今後不測の事態がいろいろ起こり得るというようなことを考えまして、そのくらいの余裕があったほうがいい、こういうふうに考えますが、六〇%契約、これができることについては確信を持っております。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自治大臣、どうですか、地方公共団体のベースでそんなことが可能ですか、いまの人員で。
  220. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 国の補助事業の個所づけを建設省はすでに平生より一カ月前のきのう内定をいたして、地方へ内示をいたしましたのでございます。また、それに即応しまして起債のほうの関係も、四月の中ごろまでには、起債の許可基準等を地方へ早く内示をいたします。平生よりも早く内示をいたします。さらにまた四月、五月、地方に金がございませんので、交付税を、四月予算が通るとすると、四分の一かと思いますが、地方へ送りまして、六月には臨時特別交付税がございますので、これをまた五月に送りまして、地方の事業促進を計画いたしております。なお、各地方団体を中心に促進協議会を設けまして、具体的にこれをやるようにいたしております。なおまた、起債の金は財務局並びに日銀の支店長等を中心に、銀行も入れまして懇談会をいたして、必要な金を大蔵省と協力いたしまして、早く出すようにというような手配をいたしておりますので、消化も促進するものだと考えております。
  221. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 口で言えば段取りはわかりますよ。従来の定員で、四十年の定員で大体倍くらいのことをやるのですから、それはたいへんな努力が必要で、私はできないとは言いません、しかし非常に困難性があると思います。  次に、もう一つの不況の原因、つまり資本がもうからない、利潤が低下してくる原因としての資本費の方面になぜ政府は手を打たないか。この資本費は、これは二つあるわけですね。一つは利払い、金利の支払い、もう一つは減価償却。そこで私は、政府資料を要求しましたが、私が言っておりますと時間がありませんから、政府委員からでもいいですから、いまの付加価値資本に占める減価償却と金融資本の割合に対してどう変化しておるか。これは諸外国にないことなんですよ。これは不景気の特殊の要因になっておりますから、そのことをちょっと報告してください、計数的に。
  222. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) お答え申し上げます。  先般木村委員の御要求によりまして、売り上げ高に対する支払金利を、さらに減価償却費の比率を出したのでございますが、三十五年には減価償却費は一・九一%の割合でございましたが、三十九年には二・五九%、支払い利子は三十五年には二・二五%でございましたが、現在二・七九%と上昇している状況でございます。
  223. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ。付加価値のほうを聞いているんですよ。主税局長、付加価値のほうを聞いている。――
  224. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) 付加価値ベースで申し上げますと、昭和三十年は減価償却費は一〇・一%でございました。三十九年は一三・八%でございました。金融費用は、三十年は一一・七%でございました。三十九年は一五・二でございます。
  225. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金額にしまして、いまの日本の法人の一カ年の利払いはどのくらいになるか。それから、減価償却費はどのくらいになるか。金額で、最近の時点で言ってください。
  226. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) 木村委員御存じのように、各種の資料がございますが、私どもお手元に出しましたものは、法人企業統計によりまして作成したものでございます。  金額にいたしまして、減価償却費が、三十九年の実績でございますが、一兆九千二百五十七億、支払い利子が二兆七百四十四億でございます。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは「日本の税金」という本ですが、昭和四十年版で、関東信越国税局長の谷川さんと国税庁の総務課長の宮川さんの編さんしたものによりますと、昭和三十八年で支払い利子が二兆二千億なんですよ。いまのはもっと少ない。三十九年度のが少ないのはどういうわけですか。
  228. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) 先ほども申し上げましたように、木村委員に申し上げました数字は、法人企業統計からとりました数字でございます。いま引用されました「日本の税金」という書物に出ておりますその資料は、御承知のように、税務統計からとりました資料でございます。その違いは、主として年度区分、さらにまた、事業年度の期間のズレによるものでございまして、さらにまた、税務統計は、金融保険業に対する見方……、金融保険業に対します統計も入っておりますが、法人企業統計のほうは産業だけの統計でございます。そのあたりに食い違いが出ているのでございます。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま主税局長が言われたように、日本の金融費用、それから減価償却ですね。減価償却と利払いが非常に多くなっているということはおわかりになったと思うんですよ。計数的にも御存じのわけです。ところが、この木では、こう言っているのですよ。この利払いについて、こういう注をしているのです。これは昭和三十八年ですけれども、「利子の支払い総額は約二兆二千億円で、会社の所得総額約二兆三千億円にほぼ匹敵する」というのですよ。どうですか。こういうような経営をやっている先進諸外国の会社が、一体ございましょうか。こんなに利払いが多過ぎるのですよ。ですから、この金利を下げることにどうして政府は着目しないのですか。金利を下げるということ、これによってどのくらい金利負担は軽くなるか。一厘下げた場合どれくらい軽くなるか。これは答弁してください。一厘切り下げたらどのくらい金利負担が軽くなるか。
  230. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) これも、木村委員の御要請によりまして、金利が一厘低下した場合の資料提出してございます。昭和三十九年度の全国銀行貸し出しの平均約定金利は、統計によりますと、日歩二銭一厘八毛二糸となっております。そこで、一厘下げますと、金利水準の低下の割合は四・五八%になるわけでございますが、そういたしますと、金利負担の減少額は約九百五十億円。利潤が九百五十億だけ逆に上がることになります。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一厘下げても、そうでしょう。二兆千億でそうですよ。この統計では二兆二千億ですからね。約一千億も違ってくる、この税務統計で見ると。昭和三十八年でそうですからね。ですから、日本銀行は三厘公定歩合を下げているのに、市中の銀行はこれにつれて金利を十分下げていないですよ。なぜ、これを大蔵省は行政指導して――両建て、歩積みの問題もあります。もっと金利を下げないか。これが日本の特殊の不況の原因の一つになっている。いまお話をしているように、非常な高金利なんですよ。銀行をうんともうけさしているんですよ。こんな不景気だのに、銀行は笑いがとまらないほど、もうけているのですよ。銀行の利益について報告してください。銀行はどれくらい利益があるか。昨年の九月決算において、百億以上、償却前利益で利益を出しているところをあげてください。
  232. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 昨年九月期決算におきまして、全国銀行のいわゆる償却前経常純益で申しますと、千四百六億円でございまして、これは前期の利益に比べて約百三十億円の増加でございます。率で申し上げますと、一〇・二%の増でございます。ただ、ただいま先生お尋ねの個々の銀行の資料を、いまちょっと手元に持ち合わせておりませんので、後刻調べまして御報告いたします。
  233. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 新聞に出ている。後刻じゃない。いま報告しないとだめですよ。後刻じゃ、あれにならぬですよ。いますぐわかるでしょう。そんなこと、わからんでどうするんですか。要求してあるのですよ。ぼくが言うと時間を食っちゃうから。ちゃんと、ここに切り抜きがありますけれどもね。
  234. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) どうもお手間をとらして恐縮でございますが、すぐに調べますから、どうぞひとつ、そのまま続行をしていただきたいと思います。
  235. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それがなければ、段取りがつかないじゃないですか。
  236. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) どうも失礼いたしました。ただいま先生、百億以上とおっしゃいましたですか。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そう。
  238. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) つまり、九月決算において……。
  239. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そう。
  240. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 半年分でございますから、経常純益において百億をこえるものは、実は都市銀行の中においてもございません。最高のもので、九十五億八千二百万円でございます。
  241. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことはないですよ。償却前利益ですよ。
  242. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) ただいま申し上げましたのは経常純益でございます。償却前利益で申しますと、百億をこえますものは二行ございます。
  243. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四行ですよ。
  244. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 間違いなく二行でございます。
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、どことどこですか。
  246. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 一つは富士銀行でございます。それからもう一つは住友銀行でございます。
  247. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは朝日新聞ですが、昨年の十月三十日、住友は百二十一億、富士が百十九億、三菱が百十億、三和が百二億、こうなっています。これはどうなんですか。経常利益ですよ。
  248. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) お答えいたします。私が申し上げましたのは、昨年九月期決算におきますところの公表決算の数字でございます。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは新聞でも公表利益と書いてあるのですよ。新聞に出ていますよ。これを見てごらんなさい。ぼくが言ってもいいんだけれども、時間が……。とにかく、新聞には、四行あるのです。はっきりしているのですが、これは時期が少し早いので推測じゃないかというお話です。大蔵省のほうの報告が、あとから調べたので確実だと言いますから、それを信用します。それにしても、とにかく、ずいぶんものすごい利益でしょう。どうして銀行ばかり……。中小業者はどんどん倒産しているんですよ。そうして企業のほうは、販売利益はもうかっても、銀行にごっそり持っていかれているんです。ですから、この高金利、これを調整することが、この不況対策のやはり重要な柱になるだろう。それを、政府が、ただ有効需要ばかりふやすことに、公債を発行して大型予算を組んでいる。そこに、不況対策の一つの欠陥があるのじゃないか、こう私は見ているわけです。  そこで、市中銀行は、これは大蔵大臣、もうけ過ぎているとは思いませんか。行政指導で、もっと下げさせるべきですよ。いま、市中銀行の預金コストは下がっているはずですよ。こんなに銀行ばかりもうけさせる必要はございませんよ。なぜ、これは行政指導しないのですか。いま、日銀から五分四厘七毛で借りて――市中銀行は千億以上も借りているのですが、幾らで貸していますか。五分四厘七毛で借りて、市中銀行は、これを企業に幾らで貸しておりますか。
  250. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨年市中銀行で利益が出ましたのは、その金利の関係があると思うのです。つまり、公定歩合の利下げが行なわれておる。三厘下げました。市中銀行のほうでは一厘五毛ぐらい下げておるわけです。ところが、その下げるのは、手形の切りかえとか、そういう際に逐次下げているわけです。手形の期限の来ないものを、これを変えるということは、いたさないのであります。そういう切りかえなんかが、昨年の九月期までは非常に少なかったと思います。そういうよなうことが響いておると思いますが、私どもの見通しでは、今期の市中銀行の収益はそういう状態ではない、相当ダウンをしてくるであろうと、こういうふうに見ております。
  251. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 また、さっきのあれを答弁してください。日銀の貸し出しは、どのくらいあるか。
  252. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 日銀からのいわゆる借り入れ金でございますが、これは先生御指摘のとおり、昨年来、公定歩合は下がっております。ただ、全体として大きく響きましたのは、いわゆるコールレートの低下でございます。そこで、それを総合的に見ますために一番端的に見ていただけますのは、コールマネーをとっておりますところのいわゆる利回りでございますが、これが、四十年上期中におきましては平均七・八一%、これが前期に比べますと、三十九年下期は一一・二四%でございました。したがって、その間に三・四三%の低下ということになっておるわけでございます。一方、貸し出し金利回りでございますが、これは三十九年下期におきましては平均で七分七厘六毛ということでございましたが、四十年上期におきましてはこれが七・五五、つまり七分五厘五毛、すなわち〇・二一%の低下をいたしております。ただ、この点、先生も先刻御承知のように、現在都市銀行のいわゆる資金構成でございますが、大体外部負債が総預金に対しまして約三割、二割五分程度でございます。大体十兆円程度の預金に対して二兆二、三千億円の外部負債ということでございますので、コールマネー等の低下による影響が、つまり全体の資金の中で約二割五分、これは、ただいま申しましたようなかなり大きい低下の、軽減の影響を受けております。ただ、全般に、預金のほうでございますが、預金の利回りが実は昨今だんだん上がってまいりました。と申しますのは、これもまた先生十分御案内のことでございますけれども、つまり、定期性預金の割合が逐月高くなっております。したがって、そのために定期性預金の利回りが上がるということでございますので、一方においてコールマネー等の負担軽減がございますけれども、全体として、貸し出し金利引き下げの努力をやってまいっておりまするところの、いわゆる利ざやというもの  いま御指摘の、非常に銀行はもうけているではないかという、その点は利ざやにあらわれるわけでございますが、利ざやの点は、その増加はわずかでございます。非常に端的に申しますと、貸し出しの利息収入は、これは三十九年の下期に比べまして、わずかに八十六億円しか実はふえてないわけでございます。その率で申しますと、二・二八%の増加になっておる。つまり、利息収入全体のふえ方でございますね。  ところが、問題は、その場合の貸し出し金の平均残高がどのくらいふえたかということでございますが、貸し出し金の平均残高のほうは大体五・一%、つまり、貸し出しの平残は五・一%ふえておる。ところが、その貸し出しから入ってくるところの利息の収入の伸びは、いま申したように、わずかに二・二八%。つまり、貸し出しの量がふえた、その伸び率の半分にも及ばぬところしか利息収入はふえていないというところは、やはりそれだけ利息の引き下げ、これに非常に努力している。一方、預金のほうは、預金の平均残高というものは約五・九%伸びております。ところが、その預金に対する支払い利息、この利息の増加率、これは実に八・八%、つまり預金の伸びの倍近いものが利息のほうで負担増になっている。まあそういうことでございますので、世上伝えられるほど実は銀行というものはめちゃくちゃにもうけているものではないんでございまして、先ほど大蔵大臣答弁のように、一月以来すでに一厘四毛六糸――ちょうど一年間で一厘四毛六糸の約定平均金利において引き下げが行なわれておるわけでございます。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、銀行の経理をもっと分析してみる必要があると思うんですよ。預金コストといったって、たとえばですよ、四十年の銀行の資本金は三千七百六十三億です。これに対して貸し倒れ準備金だけで三千六百七十四億あるんです。価格変動準備金八百六十一億ある。資本金以上にものすごい蓄積資金があるんですよ。こういうものは、これはコストはただですよ。そういうものをもっと入れて考えれば、これはそんな資金コストというものはもっと安くなると、こう思います。だから、もっといまの不況の実態を――それからまあ両建て、歩積みでありますが、大蔵省はもっと実勢金利を、これはアメリカもまた金利が上がるかもしれないといっていますけれども、この金利政策についても不況対策としてもっと真剣に取り組む必要があるんですよ。この経理内容を見てごらんなさいよ、こんな経理内容ってありませんよ。ここにひとつ着目すべきこと、いかがですか。
  254. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんから言われるまでもなく、産業界を圧迫している要因の一つの大きな問題は、この金利であります。そして、この金利はなるべく下げたいと、こういうふうに考えまして、長期金利につきましては、まずその中心におる開発銀行の金利を下げて、それに連動いたしまして長期三銀行の金利引き下げが行なわれる、こういうことでございます。それから短期金利につきましては、いま銀行局長からお話がありましたように、公定歩合に連動いたしまして下がってきておるわけでありまして、ただ問題は表面的には下がっているけれども、実質的になかなか下がらぬじゃないか、歩積み、両建ての問題がある。この問題の処理にいま大蔵省は努力を傾注していると、こういうわけでありまして、まさに、あなたの言われるところの方向でやっておると、かように御了承願います。
  255. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはね、それだけじゃだめなんですよ。全体としていま金融正常化ということをよくいっているんですけれども、この正常化を妨げているのは銀行なんですよ。ほんとは、もっと長期金利を上げて、社債等でこれはもっと資金を調達できるようにすべきですよ。私は、社債も自己資金の中に含めて考えるぐらいにしまして  銀行から短期金利で高いのを借りているんですよ。だから銀行が正常化されちゃ困るんですよ。ここにガンがあるんですよ、ガンが。だから金融正常化についてはもっと長期金利――長期の金融と短期の金融との調整をやっていかなきゃだめですよ、根本的に変えて。銀行にこんなにもうけさす必要はない。それから公債だってそうですよ。銀行は何にもしないで、あれに四十二銭も手数料をもらうなんて、何にもしないでただ引き受けるだけですよ、五一%。こんなにもうけさしていいんですか。そのために手数料は多くなるでしょう。六分八厘なんて高過ぎますよ。日銀の公定歩合を考えてごらんなさい、こんなに金利幅があるでしょう。ですから、どうしたって金融機関をもうけさせる。もうけさせるために市中消化させるようなものですよ。そんなら逆説ですけれども、最初から日銀にその条件で持っていったほうが、結局日銀に回ってくるんですから、手数料だけ助かりますよ、いかがですか。
  256. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 結局日銀に回るとは絶対に考えておりませんです。結局、私どもが公債の利回りを検討する、これは一面においては、金融機関がまあ九割方持つんですから、また一割は国民大衆が持つんですから、そういう場合において喜んで持っていただけるように  しかし同時に、これは結局国民全体の負担になる。つまりその償還、また利息、これは国民の税で将来払う、こういうことになるんでありますから国民に最小限の負担で済ませなきゃならぬ。この二つの問題の調和、その一点がただいま発行しておる公債の利回りになる。決して、ゆるがせにしているわけではないのであります。
  257. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 絶対に日銀に回ってこないと言いましたが、これはあとで質問します。私は絶対に回ってくると思うんです、それは。  それからもう一つ、日本の不況の特殊の要因としまして、減価償却があるんですね。これは議論があると思うんですが、私はこの不景気のときに、どうして――昭和三十六年までは固定資産の耐用年数は十七年だったんですね。三十七年に十四年に短縮し、三十九年に一一・九年に短縮し、また今度は建物、倉庫については一五%短縮するんですよ。そのために、減価償却が非常に大きくなってきているんですね。もちろん、それをやれば法人税は安くなりますよ。だけれども、こんな不景気のときに早く元を取らせるために、減価償却を三十六年の十七年からもう五年も短縮しているんですよ。しかも、さらにまた短縮するんですよ、建物、倉庫はね。だから、これを緩和すれば、そこに余裕が出てくるんですよ。その余裕をまた設備拡張しちゃだめですよ。金利の引き下げによる余裕は、一厘下げると九百二十億、二厘下げれば二千億出てきます。減価償却を十七年に戻した場合、どのくらい余裕が出てくるのですか。
  258. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) ただいま木村先生御指摘のように、三十七年と三十九年の二度、耐用年数を短縮いたしております。したがいまして三十六年以前の水準に返しますと、法人税の増収額は千億円ばかりになりまして、企業といたしまして利益の増加いたします分が二千九百十五億円でございます。さらにまた、三十九年度改正前の水準に戻しますと、法人税といたしましては四百億円ばかりの増収になりまして、法人企業の利益の増加は千百六十億円ばかりとなるのでございます。
  259. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですね、法人税の増収になるとともに、企業はそれだけ余裕が出てくるんですよ。これを春闘の大幅賃上げに向けろというんですよ。そうすれば赤字公債を発行しなくとも――政府は、このデフレ・ギャップを埋めるために公債を発行して、有効需要をつくると、積極財政ばかりで考えておる。それだけに頭が――もちろん、われわれも有効需要をつけることに反対じゃないんですよ。しかし政府のやり方ですと、跛行的になりますよ、かりに景気がついても。鉄鋼とか、セメントはほとんど公共事業じゃありませんか。これは景気がよくなる。しかし、あとは景気がよくならない。非常に跛行的に――かりに景気がよくなっても、そうなるんです。だから私が言うように、金利を引き下げ、減価償却をもっとゆるめて、余裕が出てきたのを設備投資しちゃだめ。これを賃上げに向けるんですよ。そうすれば大衆購買力が出てきて、そこでデフレ・ギャップが埋まってくるんです。こういう面も、やはり見落としちゃいけないと思うのですよ。ただ、積極財政、積極財政で、財政規模の拡大ばかりに目を取られて、それで公債発行をするでしょう。結局、政府のもたらす好景気はインフレ景気ですよ、インフレ景気です。私が主張しているのは、そういう場合には数量景気でなければならぬと、こう言っておる。その点どうですか、いまの点。
  260. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんのおっしゃられることは、私にも非常に参考になるのです。しかし、いまの減価償却を減らすことにすれば不況対策になるんだという、この一点だけは私は納得がどうしてもいきません。つまり、あなたは先ほどから企業の内部蓄積をしなければならぬ、ならぬと言っている。減価償却というのは、つまり内部留保の最大な手段であります。それをしないで、そうして配当あるいは給与などに、こうして分散しちゃう。会社の地位はいよいよ脆弱にならざるを得ない。私は、いまの段階において償却が景気対策になるんだという説には、どうも根本において納得できません。
  261. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 イギリスでは租税特別措置をもっと弾力的に運用しているんですよ。たとえば設備近代化のための特別償却、これは景気対策としてやっているんですが、不況になったときにはやはり弾力的にこれをやめるんですよ。日本は、一たんそれをやっちゃうと、ちっとも弾力的に運用しない。ずっと続けちゃうんですよ。そこに問題があるんです。だから過剰蓄積になる。私は減価償却をやめろなんて、そんな暴論を言っているんではない、減価償却は、これはもう再生産に必要なわけですから。それが極端なんですよ、政府の最近のやり方は。なるほど技術革新が非常に進んで、陳腐化がひどくなりますから考えなければなりませんけれども、不景気のときに、わざわざそんなにどんどん強化して――景気がよくなったらまた元に戻せばいいじゃないか。イギリスでは弾力的に租税特別措置を運用している。そういうことを参考にすべきですよ。ただ一ぺん設備近代化の特別償却を認めたら、ずっと認めちゃう、それじゃだめだと言うんですよ。もっと弾力的に運用しろ、こう言っているんですよ、いかがですか。
  262. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 償却年限を短縮すれば減税になるわけですね、これは御承認なさると思うんです。これが私は、いまの不況対策としては重要である、そういうふうに考えております。それから私どもは、不況を切り抜けるばかりではないですよ、この切り抜けの過程を通じまして、企業にも、国民の面にも蓄積を持ってまいりたい。そして将来、安定的な生活、安定的な経営ができるようにしたい、こういうことを念願しておるわけでありまして、したがいまして、これを償却を緩和して、そして何か財源をつくってということになりますと、これは配当利子として流れて分散しちゃう。これは私は、企業の将来のためにも、また今日の不況対策にもならぬ、そういうふうに考えます。
  263. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこは私も、むちゃくちゃを言っているわけではないですが、技術革新もこれは頭に入れて、不況のときにわざわざ強化しないで、もっと弾力的に考えろと言うんですよ、その研究課題ですよ。ただ、いま見ていると、さっき言ったように、大蔵大臣は低圧経済がずっと続く、だからデフレ・ギャップを埋め、有効需要をつけるために、財政規模の拡大ばかりをどうも考えているようだ。それでは結局、景気がついてもインフレ景気になっちゃうのだから――そうじゃなく、もっと私が言ったような面で、大衆の購買力をつけて――物が余って困っているんですから、こんなばかな話はないでしょう。自然科学のほうでは月のほうまで行くというのに、いまの人間関係では物が余って困っている。豊富の中の貧困ですよ。ですから、いま私が言ったような形で、やはりもっと総合的に考えていけば、公債発行をしないでも不況対策ができる。これは社会党の主張ですよ。これは私は参考にすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 償却を減らすということにすれば、これは会社の内部留保になるわけですね。内部留保になれば、その金がかん詰にされておるのかというと、そうじゃないんです。これは会社の事業資金また設備投資資金として活躍するわけであります。購買力はそれで出てくるわけです。それが配当になって個々に分散してしまう。これこそ死んだ金になってしまう、私はそう思います。
  265. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がなくなりましたから、それでは最後に、さっき絶対に日銀引き受けにならぬと言いましたけれども、それに関連しまして、特別会計の予算総則の第五条、これはどういう意味か説明してください。
  266. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 御指摘の点は、四十一年度特別会計予算の予算総則第五条、すなわち「国債整理基金特別会計において、「財政法」第五条ただし書の規定により、政府昭和四十一年度において発行する公債を日本銀行に引受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする。」、これでございましょう。
  267. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 具体的にどういうことですか。
  268. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) これは、国債整理基金が日本銀行所有の公債を借りかえるわけでございます。従来とも、かような形で日本銀行所有の公債の借りかえをやっております際には、財政法の規定に基づきまして国会の議決を経る、かようになっております。その規定でございます。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀でしょう、日銀引き受けを認めることでしょう。特例でしょう。
  270. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) さようでございます。これは借りかえにつきまして、日本銀行保有のものを従来とも借りかえております際に、お願いしておるものでございまして、今回に限ったものではございません。
  271. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうありませんから、今回に限ったことではないと言うが、従来は、公債をあまり発行しない当時のことなんですよ。今度は巨額な公債を発行するときに、従来のような、こういう特別会計法で、こういう日銀引き受けを許すということは、財政法第五条の、これは特例になりますよ、これは重大な問題。  それからもう一つは、償還計画については、これはまだ解決がついていないのです。これは従来の経過もあります。これは明らかに財政法違反ですから、これについてどういうふうに調整するか、これを十分に最後に決着をしないと、私は大蔵大臣に、貸しを貸しっぱなしですから、ここのところで一応解決してもらいたい。
  272. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財政法の公債償還に関する規定の運用につきましては、いろいろと検討してみたのです。財政制度審議会が大蔵省にあることは御承知のとおりであります。この法制部会を特に設けて、そうして財政法の立案者にも意見を聞いてみた。ところが、立案者は、いろいろその当時のことを振り返り、また今日の情勢も検討いたしましたが、その結論というものは、これは財政法に命ずる償還計画、それは四十一年度公債でいえば七年後に返す、こういうことになっております。そのことを書いておくほかはあるまい、こういう結論であります。しかし私は、先般の国会で木村委員からもお話がありましたように、それじゃあまり簡単過ぎるじゃないか、特に財政法でぎょうぎょうしく規定するほどのこともないのじゃないか、こういうふうに考えまして、いろいろ考えました結果、四十年度の特例債とは違った形で、ただいま御審議をお願いしておるような次第でございます。そういうようなことで、今後も私は、これはどういうふうにするか検討してみたいと思いますが、現在の段階でなし得ることは、ただいま御審議を願っておる、あの形以外にはない、こういうことに相なっております。
  273. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がありませんから、結局公債が日銀に回ってくるということにつきましては、時間がありませんから、他の機会に譲りまして私の質問はこれで終わります。
  274. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。ただいま大蔵大臣が最後にお答えになった点は、結局もう少しかっこうのつくものを検討中だということのようですね、償還計画について。そういうことですね。
  275. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまところ、御審議を願っておる形以外のものは考えられない。しかし、これは前々から木村委員からもいろいろ御意見が出ております。そういうことについて私も耳を傾けておるわけであります。その耳を傾けた結果が今日の段階ではそこまでしかきていないわけでございますが、なお今後、財政制度審議会なんかもありますので、皆さんの意見を聞いたり、あるいは考えたりいたしまして、もう少し合理化してみる方向でやっていく、これらのことを申し上げます。
  276. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう少し合理化したものを考えるという結論のめどというのは、どういうことになっておりますか。これは木村委員が非常に将来を心配してやかましく問題を提起しておるわけで、これもできれば、先ほどの問題と同じように、予算審議の過程においてそういう点等もお答え願えれば非常にけっこうなわけです。そういう意味でひとつ聞いておるわけです。
  277. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どもの段取りは、また財政制度審議会を再開してもらいたいと思っております。この再開調査会において結論を出すというふうにいたしたいと思っておりますので、その結果を御審議願いますのは昭和四十二年度予算、こういうふうに思っております。
  278. 小沢久太郎

    ○理事(小沢久太郎君) 木村君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  279. 小沢久太郎

    ○理事(小沢久太郎君) 多田省吾君。
  280. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、おもに政治姿勢、防衛、教育、中小企業問題で若干質問させていただきます。  首相はこの前、一月の二十八日の施政方針演説におきましても、また常日ごろ国会の正常化、また政治姿勢を正すとおっしゃっておられます。まあしかしながら、日韓国会以来、今度の国鉄運賃値上げの合同委員会等においても審議打ち切り、前には強行採決というようなものが目立っておるわけでございます。そういう政府与党の理不尽な審議手続の無理というものは、野党の場合の反対と全く質的に異なっておる。もう与党の暴挙の結果は、直接に国家の法律や条約をつくり出して、そしてそれが与党の人のみならず、国家の法律や条約として、全国民の言動や生活を拘束することになります。首相は、いつも野党に対しても協力を望んでおりますけれども、根本はやはり、政府与党が国会正常化に対して根本的に姿勢を正すべきじゃないかと思いますが、その点に関して。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君にお答えいたします。  私は、前国会の審議にあたりまして、大いに反省するところがあり、また各党におきましても、前国会の審議状況、これは正常であったと、かようには言わなかった。そこで、いわゆる少数意見、少数党の意見も尊重し、いわゆる言論の自由、これを国会においては守らなければいかぬ、同時にまた、物理的な抵抗はこれを廃止する、こういうような申し合わせをし、さらにそれだけでは足らなくて、どういうふうにしたら真に民主政治が守られるか、こういうことで各党とも知恵をしぼっておる最中だと思います。私は、さような意味におきまして、ぜひとも国民の信頼にこたえるような民主政治を実施したい、かように念願いたしております。ただいま与党の場合においては、それは法律ができ、あるいは条約ができる、かような言い方をされておりますが、これは必ずしも与党という意味ではなくて、いわゆる多数党の場合には、こういうことではないだろうかと私は考えますが、このことは、いわゆる多数党の横暴にならないように、多数派の横暴にならないように、十分言論は尊重される、少数派の意見でもかすべき、また聞くべき意見はこれを取り入れろ、こういうことではないかと思います。ちょうど国会におきまして、今回の与党が運賃改正その他を実施した、それについて多田君の御批判がございますが、同時にまた、東京都議会においては、これとまた別な形があらわれております。問題は、やはり多数党の横暴ということを戒める、こういうことではないだろうか、かように思います。国会におきましては与党が多数を制しておりますので、私どもの責任がそういう意味で非常に重いと、こういう御指摘であれば、そういう意味で、特に私どもも注意すべきものは注意してまいりたいと、かように思います。
  282. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理大臣は、しばしば政治の姿勢を正すとおっしゃっている口の下から、政府与党の内部にいろいろな汚職、収賄事件とか、いかがわしい事件がたくさん起こっております。このたびも武州鉄道事件の判決や、あるいは新潟県知事選挙における買収事件が起こりましたけれども、これは根本的に政治の姿勢を正すには・考え直す必要があるのではないかと思います。うわさではありますけれども、自民党の総裁選挙となりますと数十億の金が乱れ飛ぶとか、あるいは国会議員の選挙になりますと何百万、何千万という金を一人で使うという風評が絶えないわけです。事実こういった政治献金問題あるいは収賄問題、あるいは選挙の買収問題等、相当たくさん起こっております。これは、総理大臣がほんとうに政治の姿勢を正すという前向きのお考えを心から持っておられるものならば、一つ提案があるのですが、前から言われておりますけれども、会社や法人の政治献金を禁止する、あるいは個人の政治献金に対しても課税をする、そういった姿になれば、イギリスで選挙法改正のときに腐敗防止法というようなものをつくって、選挙政治における買収禁止等を強力に罰則を強化した結果、ただいまのように政治献金はすこぶるきれいになっておるわけでございますが、これは前向きに考えるお心はございませんか。
  283. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ別にことばじりを取ってやかましく言うわけじゃございませんが、政府与党においてどうも選挙違反その他がある、こういう表現はちょっといただきかねるのであります。与党の一部においてとおっしゃるなら、それはまた表現の自由だと思いますけれども、与党が悪いのだ、こういうような言い方は私は返上したいと思います。これは別にことばじりを取ったわけじゃございません。あるいは表現が不十分だったとおっしゃれば、それでいいかと思います。  そこで、具体的な提案で、政治献金等についてこれに課税をしたらどうか、こういう御提案でございます。ただいま選挙につきまして、どうしたら選挙が公正に、また金がかからないようにできるだろうか、こういうことで選挙制度審議会におきましていろいろ審議をいたしております。それに、その点におきましては、一つは選挙区制の問題、もう一つは、選挙が個人個人に流れるよりも、やっぱり政党本位の選挙ができるようにくふうすることはできないだろうか、そうすればいまよりかよほど変わった方向へ行くのではないか、こういうようなことが審議されておる最中でございます。ただいままだ結論は出ておりません。もちろん区制の変更ということになると、これはたいへんな問題でありますし、また、すべてのものが選挙に金がかからないように、こういうことは願っておりますので、そういうような名案があれば、必ず選挙制度審議会におきましても採用されるだろうと思いますが、ただいま、まだ具体的な成案を得るに至っておりません。ただいまの多田君の御提案も、こういうような審議会等におきまして、十分検討さるべきことだろうと思いますが、私はいまの献金について税を課するというだけでは、やや目的を達しかねるのじゃないだろうか、全然効果がないと申すわけじゃありません。こういうことも審議会において十分考究されてしかるべきものと、かように思います。
  284. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ政府与党と申し上げたのは、ことばが過ぎたかもしれませんけれども、結局、東京都議会の昨年の腐敗事件におきましても、まあこういった例にあげた武州鉄道事件や新潟県知事選挙等においても、自民党の中からそういった容疑者があらわれておるということで申し上げておるのです。で、ただ、政治献金に税金をかけたらどうかということを提案しただけでなしに、私は会社、法人等の政治献金は禁止したらいいじゃないか、それが政界浄化に連なり、政界と財界とのまあ世間ではくされ縁といっておりますけれども、そういったものをつぶすにはそういう方法が一番いいのではないかということが、学者間においても提出され、私どももそう思っておるわけです。その点に関しては、どういうふうにお考えですか。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま政治資金規正法というものがございますが、この政治資金規正法、これがただいまのところ不十分だという御意見もあります。全然法律なしに勝手にやっておられるわけではございません。ただいまこういうような法律もございますから、制度を十分充実さして、そうして乱に流れずに、また公正に、また公明に選挙ができるように一そうくふうすべきと、かように私は思います。
  286. 多田省吾

    ○多田省吾君 ことばを濁されたようでございますが、私どもは、あくまでもその会社、法人としての政治献金は禁止して、そうして政界の浄化をしなければ、日本の政治はいつまでたってもよくならない。日本の政治に対する信頼が失われた姿というものを挽回できない、そう思っておるわけです。  次に同じような問題ですが、最近高級公務員の道義退廃を憂える声が強いわけです。小林章派の選挙違反にしましても、あるいは聖成派、あるいは公団等に、公民権停止といった、元高級公務員が復帰したという事実、これは不法ではないかもしれませんが、道義的に考えて、非常に国民は疑惑を感じておるわけでございますが、この点に関していかがでございましょうか。
  287. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の発生しました事件等につきましては、多田君と同じような考え方を持ちます。私は、本来公務員は国民に対する奉仕者であると、かように考えておりますので、その公務員が上級であると下級であるとを問わず、法を守り、同時にまた国民のサービスに徹すると、こういうことで適法な行動をすること、まずみずからを正していくということであってほしいと、かように思って、あらゆる機会に、公務員の綱紀粛正について努力しておるわけであります。しかしながら、なかなか、いまなおかような指弾を受けるような、また批判を受けるような事件が次々に起こっておることは、まことに残念に思っておるような次第でございます。
  288. 多田省吾

    ○多田省吾君 二月十九日から新たに公務員の服務の宣誓が改正されたわけであります。そうして前と違いまして、上司の職務上の命令に従い、また不偏不党という点が加味されたわけでありますけれども、一つは高級公務員の方、行政公務員の方にとっては、基本的には非常に党派的な現象を持っていらっしゃる。それにもかかわらず不偏不党ということは、非常に矛盾しているのではないか。それから、上司の職務上の命令に従いとなりますと、戦前のやはり服務規程の、政府に対する絶対服従というような規程と非常にまぎらわしいし、そういった服務規程の内容というものが、はなはだそぐわないと思いますが、この点に関して総務長官からお答えいただきたい。
  289. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 職務服務宣誓につきましては、御承知のとおり、先般のこの八十七号条約の改定の際、人事院の一部から総理府に人事業務の一部が移ってまいりました。その際に、これは二月十八日までに政令をもってそれぞれの手続をきめるという一環の仕事がありまして、その中で服務宣誓につきましても政令を出したわけです。今度のものは、従来のものに比べまして、従来の宣誓はどうも形容詞が多過ぎるし、そのものずばりでないというような批判もございましたので、今度は新しく簡単直截な宣誓書にいたしたわけでございます。ことに、いま御指摘の職務上の仕事については、これは上司の命令に従う、これは国家公務員法でもきめておりますことで、当然のことを当然と申したわけでございます。また不偏不党ということばは、これは、いずれにも偏せず、中正に、公正に仕事をやっていくという意味から、まあ放送あるいは新聞界等での綱領等でもみな使われておることばでございまして、私は、これが公務員の自分の政治信念であるとか、政治的自由を妨げるものではなく、仕事の上から当然そうあってほしい、こういう意味でつけ加えたわけでございます。
  290. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど申し上げましたように、一つには不偏不党という内容が、特に高級公務員、行政公務員の方は、実際行政に携わっている方が多いのだし、また不偏不党となりますと、下級公務員の人は上司の命令に従って、絶対政治活動を個人的にもしちゃいかぬというような強制をされる、基本的人権を無視されるような考えが強いわけです。それで、戦前においても、また戦後の服務宣誓におきましても、そういったことばが入っておりませんし、また外国の例を見ましても、アメリカと西ドイツの例もありますけれども、憲法を守る、あるいは職務を遂行するという内容の宣誓規定はありますけれども、こういった上司の命令に従うとか、あるいは不偏不党というような内容は例がありませんし、こういったことは、非常に誤解を受けるもとになるじゃないか、できればこういったものはとったほうがいいのじゃないか、そう思います。その点に関してはどうですか。
  291. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 同じようなことを申し上げることで恐縮でございますが、いまの公務員が職務を執行する際に、これは法令並びに上司の命令に従ってやる、これは当然のことでなければなるまいと思います。これによって誤解が生じる、あるいは上司の命令を聞かなくてもよろしいとか、法令に従わなくてもよろしいというような解釈がもし生じるようなことがあっては、これはたいへんだと思いますので、これは国家公務員法の規定にもありますとおり、これをうたっておるわけであります。また、不偏不党ということばによって、何か個人の思想の自由が侵されるのではないかという御懸念もあろうかと思いますが、今日公務員が個人としてどういう思想を持つ、あるいはどういう政党へ加盟する、これはあくまで自由でございます。ただ職務を執行する場合には、あくまで片寄らずに、忠実にこれは上司の命令によってやらなければならないということで、これは決して誤解をいただくような筋のものではなく、当然のことであろうと私どもは思っております。
  292. 多田省吾

    ○多田省吾君 公務員の問題でございますが、きょうの九時からの院内の五人委員会で、地方公務員に定年制をしくということが内定されたようでありますが、その点に関していかがでございましょう。
  293. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 定年制の問題は、私は国の公務員も地方公務員も、本来ならば、人事の長期的な管理を計画的にやるという意味から、あったほうがいいと思っておるわけであります。ただ、国家公務員の場合につきましては、これをただばく然と、それぞれの地域なり職域で勝手にきめてよろしいというようなものを出すわけにはまいりません。これはどうしてもやりますれば、その職域あるいは地域、あるいは中央とか地方の関係、また年齢をどう線を引くか、いろいろな問題を的確にきめなければならぬ。そういうような意味で、実は国家公務員の定年制の問題は、私はこれは将来あるべきものだと思いますが、これをきめるのには非常に慎重な態度と検討が必要であるので、ただいまのところ、これを直ちに出す予定にはなっておらぬわけであります。地方の場合には、御承知のとおりに、これはそれぞれの各自治体が、自分の判断においてこれをきめてよろしいという大きなワクを示すのでありまするから、私はこれはたいへんけっこうなことじゃなかろうかと思っております。
  294. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは地方財政がいま逼迫しておりますから、それをネタにして五十五歳くらいで首を切ろうというような考えにつながるのじゃないかと思いますが、そういうことはありませんか。
  295. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 行政の効率化をはかって行政能率をよくしていくということは、今日最も要望されておるのでございますので、硬直した行政を、これを合理的に進展をせしめていくというような積極的な意味を持っておるのでございまして、そういうことで、その必要がある町村は、国家公務員と同じように特別職だけについてやる場合もよろしい、また一般職だけをやるのもよろしい、その必要性のあるところだけが自主的に判断をしてやるということで、能率の効率化の線に沿うて必要なところがこれをやるというような考え方でおります。
  296. 多田省吾

    ○多田省吾君 服務宣誓の内容といい、今度の地方公務員の定年制といい、矢つぎばやに何か公務員に対して圧力が加わっているというような疑惑が持たれると思う。特に服務宣誓の場合に、実際に高級公務員が行政に携わっていながら、不偏不党をうたうなんということは非常に矛盾しておりますし、また、そういった個人の政治活動やあるいは良心の自由といったようなものを規制する、あるいは公務員の首切りをはかるんじゃないかというようなことは絶対にないと言い切れるかどうか、最後に総理大臣にお聞きしたい。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申し上げましたように、公務員が公共の、国民に対する奉仕者であるということを忘れて、不正をしたり、あるいはわがままなことをしたりしてはならない。これはまず第一に糾弾されるべきことだと、かように思います。これは、私、そのときにお答えいたしましたように、高級公務員であろうが、下級公務員であろうが、それは全部同じだと、こういうことを実は申したのでございます。この点では十分御理解をいただいたと思います。  そこで、今回新しく採用いたします際に、ただいまのような宣誓書、これを変えたということでありますが、しかし、これを変えましたことは、在来の少しややっこしい表現よりも、すっきりした表現のほうがいいだろう、こういうことで憲法や法令を守ることと同時に、また職務に関しての上司の命令、これは聞かなければ、職務に関しての上司の命令を聞かないようでは、これは役所としての統制もとれないということですから、こういうことを要求するのは私はあたりまえだと思います。また、公正だという、公正な扱い方をする、行動をする、その表現といたしまして、不偏不党であるとか、こういうことが要求されておるのでありまして、これは私はもっともなことで、ただいま御批判を受けるような問題ではない、かように思います。むしろ公務員の綱紀粛正、こういう観点で多田君にもほめていただくことではないかと実は思ったのであります。  ただ、次の地方公務員の定年制の問題につきましては、それぞれの地方実情等がございましょうから、十分考えなければならないことだと思います。しかし、いま考えておることも、そう若い身にかかわらず定年制でこれをやめさすというような考え方は毛頭持っておらないようです。また、それが自治体自身において当然考うべき事柄でございますので、私もそれをとやかくは言わないつもりでございます。私はむしろ公務員の綱紀粛正、こういう観点に立って今回の改正等が望ましいのかどうか。また、公務員が国民に対しましても能率をあげていく、十分奉仕者としてのその責任を果たしていく、こういう観点に立っていかにやるべきかということを考えたのでございますので、その定年制等につきましても、かような意味において御理解をいただきたいと思います。
  298. 多田省吾

    ○多田省吾君 防衛問題に関して防衛庁長官にお尋ねしたいのですが、一昨日、北村委員の質問に答えられて、まあ中共は三年以内に核兵器を持つとおっしゃって、中共の核武装は脅威であり、わが国の防衛力は格段の変革を来たすべきであると言われました。さらにけさの新聞を見ますと、マクナマラ米国国防長官が、もう二、三年以内に中共が核ミサイルを持つだろう、そのように言っております。で、格段の変革を来たすべきであると言われましたが、具体的にはどういう変革を来たすのでありましょうか。
  299. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 目下、三次防を検討中でございますが、諸外国、諸国に核装備というものが前進するならば、日本の防衛も、それに応ずる影響、及びそれに対処しなきゃならない、かように思います。ただ、日本は御承知のごとく、核装備を持たないで核攻撃を防御するという基本立場から言うと、相当これは検討を要し、なお研究をもって十分な防衛に当たりたいと思います。具体的にどうだというのには、まだ今日検討中でございます。
  300. 多田省吾

    ○多田省吾君 四十一年度は第三次防の初年度でございましょうか。移行段階でございましょうか。
  301. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 第二次防衛計画の最終年度でございます。
  302. 多田省吾

    ○多田省吾君 前に内閣委員会に来た防衛庁の説明にも、実質的には、昭和四十一年度は第三次防衛力整備計画の初年度であるという考え方で、また、移行の年であるという定義が置かれたと思いますけれども、これはどうでしょうか。
  303. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) その説明にも書いてありますように、第三次防衛計画へつながる初年度であるという意味で、四十一年度は第二次防の最終年度であると同時に、第三次防につながる初年度である、こういう二つの意味を四十一年度に掲げて説明を申し上げたと思います。
  304. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ結局第三次防衛力整備計画の初年度であると考えて間違いございませんか。
  305. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛計画は、国防会議で決定いたしたいと思いますので、この予算が通過いたしまして、五月、六月ごろ、四十一年度予算の決定を見た上で第三次防衛計画の基本、基礎としてスタートをいたしたいというので、つながる初年度であるという表現を今日いたしております。
  306. 多田省吾

    ○多田省吾君 ホーク基地の候補地、あるいはホークの国産化というのは考えていらっしゃいますか。
  307. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ホークの関東地区における整備がまだ完全にできておりません。これを、今日ございますものを早く整備いたしたいというのが、今日の段階でございます。将来、ホークの整備というのは日本の防衛上必要でございますので、国産化をいたしたい。しかし、今日国産化できるかどうか、まだ実は確答が――確実な資料もございません。できるならば国産化をしたいという意向を持って、国産可能かどうかという技術的な研究をただいまいたさせております。
  308. 多田省吾

    ○多田省吾君 ホークを国産化する場合には、日米間で技術提携を行なったような会社と契約するのでございましょうけれども、その契約の候補者がきまっておるかどうか、また、契約したかどうか、お伺いします。
  309. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まだホークの契約をした会社は私はないと思います。同時に、まだその段階に至っていない。また、日本に国産ができるかどうか、まだ決定しておりませんので、どういう会社ができるかということも、これはまだきまっておりません。したがって、目下、国産ができるかどうか、その上においていかなる方法がいいかというこの二段でございまして、まだもちろんホークの問題を日本で契約した会社は一社も私はないと思います。
  310. 多田省吾

    ○多田省吾君 ある新聞や雑誌によりますと、すでに日本無線にきまったのが三菱電機に変わったとか、あるいは日本無線と契約を結んだところのレイセオン社の副社長のクリスチャンセンが、その責めを負って首を切られたとか、そういう黒いうわさがありますけれども、それは事実無根でございましょうか。
  311. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いろいろ業界のうわさは私は耳にしておりますが、そういう契約をしたという事実が実はないのです。したがって、変更したという事実も私は出てこないんじゃなかろうか。その支店長がどうのこうの、私は支店長の問題は全然関与しておりません。したがって、まだその段階ではない。もちろん業界ですから、いろいろ憶測あるいはうわさというのはあるかもしれません。しかし、まだ防衛庁として、日本の技術、会社において国産化ができるという確証をいまだに私は持っておりません。したがって、そういうことを考えながら、将来にきめたい。多少、いまのお話は業界の先のほうの見通しが早過ぎる、もっぱらのうわさかもしれませんけれども、事実というものではこれはございません。
  312. 多田省吾

    ○多田省吾君 契約しないまでも、候補会社とか、それから下調べとか、そういったものはやっていらっしゃると思うんですが、その現状、それからナイキハーキュリーズは開発するかどうか。
  313. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ナイキハーキュリーズを実は日本装備するかしないかというのが第一問題であります。これは多年国会でも議論があります。したがって、これは私は今日ナイキアジャックスという現有装備では旧式である、世界の水準から見て旧式である。大体世界はナイキハーキュリーズを防空兵器として採用しておる。それならば日本も世界の水準に達するものを装備しなければならないと私は思っております。しかし、国産までにはまだ、このほうはもっとおくれておりまして、国産ができるという見通しが五〇%、できないという見通しが五〇%、そのほうがもっと実は技術的におくれておるのではなかろうかと私は考えております。
  314. 多田省吾

    ○多田省吾君 ハーキュリーズの国産化ということはまだ聞いておりませんが、結局、ホークの国産化につながる候補会社等のうわさ、あるいは下準備が進んでいるかどうかということを一点聞きたい。  もう一つは、いまのハーキュリーズは、長官は備えたいと言っていらっしゃいますが、これは核弾頭をつけるのが目的のミサイルに当たるわけでございますが、この問題は前から論議されておりますけれども、いま中国が核開発、核装備、あるいは核ミサイルを二、三年中に装備するという現在の段階において、それが妥当かどうか。
  315. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ナイキハーキュリーズは、まだナイキハーキュリーズと私は特定して言っているわけじゃありません。今日のナイキアジャックスよりも性能がいいもの、ナイキハーキュリーズに匹敵するようなものというので、ハーキュリーズときめたわけでは実はございません。かりにハーキュリーズの性能を申しますならば、ナイキアジャックス、現在日本装備しておりますものの大体距離が三倍という性能ですから、性能においては格段な進歩であると私は思っております。ナイキハーキュリーズの国産は私はまだ非常にむずかしいんじゃないか。日本の技術はまだそこまでは追いつかないんじゃなかろうかと私は考えます。   〔理事小沢久太郎君退席、委員長着席〕
  316. 多田省吾

    ○多田省吾君 ホークのほうは……。
  317. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ホークのほうの国産は、これは比較的ナイキハーキュリーズと比べれば、もっと性能が、日本において技術開発が、ある部分では可能である、ある部分がまだわからないというのが現状で、そのほうの調査のほうが前進しておると私は思っております。
  318. 多田省吾

    ○多田省吾君 確かにハーキュリーズはアジャックスよりも三倍飛ぶ。二百キロの射程距離だといわれておりますけれども、遠く飛ぶからには、発射角度が一度狂っても相当誤差を生じます。それで、戦略的には、そういった一度狂っても着弾点がそれますから、核兵器を装備しなければ無意味であるというような論議もある。通常兵器をそれにつけるのでしたならば意味がない。その点はどうですか。
  319. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本で核装備をする前提でこの計算をしておるわけではございません。通常弾を装備した場合において、どちらが性能がいいかというのがわれわれが研究しておるところです。したがって、いま私が申しました数字、私の考えは全部通常弾を用いたにしても、ナイキアジャックスよりナイキハーキュリーズのほうがより性能がいい、こういうことでございます。
  320. 多田省吾

    ○多田省吾君 通常兵器ではそんなに意味がありませんし、結局、核兵器の持ち込みを禁止するとは言っていながら、その前提ではないか、そういうふうに誤解されがちでございますし、私どもはそういう装備を持つことは反対でございますが、話を変えまして、外務大臣は訪ソの際に、ベトナム紛争調停の依頼をされたそうでございますが、アメリカに対しては具体的に、ベトナム紛争解決に対して、こちらからいかなる提案をなされたか、いかなる働きかけをなされたか、全部言ってください。
  321. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ハリマンあるいはハンフリー副大統領が先般日本に参りました。これは記憶に新たなところでございますが、通常、外交チャンネルを通じ、あるいはまた、私自身もすでに着任してアメリカに三べん行っております。そのほかに向こうからいろいろな要人が来ることもあります。そういう場合に、その内容は一々申し上げるわけにはいきませんけれども、広く国際問題について、特にベトナム問題の収拾の問題については、そのつど意見の交換をしておる次第であります。そうして概括的に申し上げることは、一日も早くアジアの平和、世界の平和のために和平の収拾を急がなければならない。それからまた、終局的にはやはりただ軍事行動のみならず、平和建設の方面もともにこれは適用すべきものであるというようなことを私どもは絶えずアメリカに言っておる次第であります。この間のホノルル会談等において、かような考え方がアメリカの政府によって力強く取り上げられてきたのではないか、かように考えております。
  322. 多田省吾

    ○多田省吾君 どうもいままでも言われましたけれども、総理並びに外務大臣のアメリカに対する姿勢というものが、総理は絶対にアメリカ追随ではない、国益を考えてやっておるのだと、そうおっしゃいますけれども、一般のAA諸国の見方にしましても、一般の諸外国の論調も、どうもアメリカの追随ではないか、そういう国際的な風評があるわけです。もっともっとわれわれはアメリカに対しても北爆の停止とか、あるいはベトナム紛争を解決する具体的な提案をアメリカからの一方通行ではなしに、こちらから具体的にどんどん示していくべきではないか。むしろ訪ソによって調停を依頼するよりも、アメリカに外務大臣が飛んで、北爆停止等を申し込む、また、この前も武器を捨てて会議のテーブルにつかせるべきだ、そのようにいつもおっしゃっておりますが、それならばアメリカに対しても、また北ベトナム等に対しても、あるいは関係諸国に対しても、即時停戦または関係諸国の平和会議開催というものを同じ立場で強く主張していけないものか、そういうことを外務大臣並びに総理からお伺いしたいと思います。
  323. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 自主的に考えて、その結果がアメリカの考え方と一致すれば、これは別に追随でもなんでもない、何が追随か、むしろこちらから伺いたいわけであります。すべてわれわれは自分の立場日本の国益を考えてやっておることであります。それから先般、アメリカがクリスマスから今年にかけて四十数日間北爆を停止し、さらにこの期間において八方に人を派遣して活発な和平工作をやった、これによって見てもアメリカはこれ以上一体何をすればいいかということになるわけであります。問題は要するに、相手方がこれに応じて武器を置く、そうして静かな、平和裏にこの収拾についての話し合いを始める、その話し合いによってどうせ主張が一致するわけじゃありませんから、あるいは出過ぎたところは引っ込める、引っ込んだところは出るということになるだろう、その折衝において初めて北越の主張も、あるいはアメリカの主張もそこに表面化して、そしてその結果、一致点を見出して真の平和というものがそれからくるのでありまして、まず戦争をやめて話し合いに入るということが一番必要である。それは一体どこに引っかかりがあるかといったら、北越はアメリカの提案に対してどこまでもこれを拒否している、この一点にしかないのではないか、ほかに何か考え方があるかといったら私はないと思う、そこをやっているのであります。同時に、アメリカにもそういうことを話しかけたらどうか、話しかける余地がない、向こうはそれを待ちかまえておるのですから、問題はそこの一点にあると思います。
  324. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま椎名外務大臣がお答えしたとおりでございます。また、私は、一国の外交はその国益確保増進にある、これが私の信念でもあります。そのためにはやはり国内におきまして外交の問題は政争の具に供されないこと、これがまず望ましいことであります。日本国民のうちに一部、どうも日本の国益の追求にあらずして米国の追随外交をしているんではないか、こういうような意見が国内にあるときに、それは東南アジア諸国におきましても、日本日本の国益のためにやっている、かような印象を与えないことになる、かように思います。ここに外交の国民的支持が必要なことが、一致した支持が必要なことがよくわかるだろうと思います。どうか、たまたま結論が同一であったからといって、そこであれは追随外交である、かような批判はなさらないようにお願いしておきます、これは多田君がさように言われるというわけじゃありません。私はこの質問を通じまして国民に訴えたいところであります。また、ただいまアメリカにどうして早く日本の主張をわかるように話ししないのか、こういうことでありますが、ただいまも椎名君が答えたように、アメリカ自身も非常に弾力的な態度でこのベトナム問題に臨んでおるわけであります。これは数次の声明によりましても明らかであります。また、私どもがアメリカに話をしましても、その点においては完全に意見が一致しておるのであります。いわゆる新聞等におきまして、日本がアメリカにこれこれを要求した、こういうことを麗々しくは書いてはございませんけれども、そういう点においてはアメリカ自身も弾力的な態度でこの問題と取り組んでおる、このことは国際的にもだんだん認められておると私はかように確信をいたしております。また、わがほうの主張等についても十分の理解を示してくれている、かように思っております。
  325. 多田省吾

    ○多田省吾君 意見が一致したからといって追随ではないとおっしゃいますけれども、アメリカ等の主張がいつも通って一致して、こちらの主張が向こうに納得されて、向こうのやり方を変えるというのでしたならば話がわかりますけれども、どうもいつもアメリカの主張が通り、こちらが自然に一致するような姿ですから追随ではないか、そのように思われる。総理は一昨日、日米安保条約の改定に関しまして、一定の延長をきめるような発言をなさいましたけれども、その御趣旨はいずこにございますか。
  326. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) わが国の防衛力、これはやはり長期的な計画を持たなければならない。先ほども二次防がどうした、あるいは三次防はどうなるかというようなお話がございます。これはやはり長期的な計画において初めて防衛計画が立ち、防衛計画を持っておる、こういうことが言えるわけであります。そういう観点から日米安全保障条約をいかにすべきか、こういうことを考えようというのが私の趣旨でございます。
  327. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在の総理考え方は、一定の延長をきめるのか、それともいまのままで一年ずつ延ばしていく考えか、どちらでございますか。
  328. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君も御承知のように、まだ期限が来ておるわけじゃございません。期限が来た後に一年ごとに延ばすか、あるいはそのときに十年あるいは二十年にするか、そういうことを考えればいいわけでありますが、ただいま私がものの考え方として描いておりますものは、いわゆる防衛計画というものは長期でなければならぬ、だから一年ごとに云々というようなことはこれは適当しないんだと、かように私は思っておる次第でございます。
  329. 多田省吾

    ○多田省吾君 新聞によりますと、外務省の態度というのは現行のままで存続さしたほうがいいというようなお考えのようですが、その点はどうですか。
  330. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省としてはまだ時間もあることだし、そう急いでこの問題をきめなければならぬというようなことじゃなく、ゆっくりと研究してみたいと思います。  それから御参考までに申し上げておきますが、米華条約、米比条約、それから米韓条約いずれも安全保障条約でございます。これを十年で一応の期限が来て、来た状態から始めていく。つまり初めから一年と思いますが、一定の期限をきめて、そうしてあらかじめ通告することによって両国の条約を破棄するという状態で初めから進んでおる、こういう状況であります。それは一年一年で刻んでいくのではなくて、通告して破棄しなければいつまでも続く、こういうわけであります。でありますから、一九七〇年になると日米安保条約というものは、通告しなければいつまでも続く、一こういうふうに御了解を願います。
  331. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあいま外務大臣は通告しなければいつまでも続く、自動延長のような考え方でございますが、いま総理のおっしゃったのは、一定の期間を設けて長期間存続させたいというようなお考えのように思いますけれども……。
  332. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理がお答えになれば一番いいんでしょうけれども、総理の言われることもそういうことでございます。
  333. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理のおっしゃった先ほどのお話と……。
  334. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に外務大臣と私の答弁が食い違っているわけじゃございません。ただいまお聞きになりましたとおり、まだ、まず第一に相当期間があるものだから、そういう場合に十分検討したい。それでもしやめるならば、これを一年前に通告する必要があるのだと、しかし、やめないのなら、長期的な考え方でそれを見ているなら、やめないのですから、そういう場合には必要はない、こういうことを実は言っているようであります。私の言っている長期的な観点に立って防衛計画は持たないといけませんというのは、そういう意味なんであります。とにかく一年ずつにきめていくということでは、それは困るのです。そういうようなわけですから、刑に表現のしかた、また、これからどういうような方法をとるか、それはいろいろな方法があると思います。双方で当分は、やめるという通告をしないという申し合わせで、それでできるのかもわからぬし、これははっきり、また期限が来たら、同じような文言でも再び条約を結ぶ、こういうようなことがあるかもわからぬし、そういうような問題のいかにあるべきかという、その取り扱いの問題だと思います。ただいまの私が申していることと別に矛盾するものではございません。
  335. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどの総理のお話だと、確かに矛盾するように思えるのです。外務大臣のおっしゃったのは、自動延長でよろしい。先ほど総理大臣のおっしゃったのは、長期固定化、一定の期間を設けて、また延ばすというお話のように思うのですが、どうなんでしょう。
  336. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま最終的にお答えしたとおり、防衛計画そのものは長期的な構想を持っていなければ、防衛計画は立たないということを申しておるわけであります。そうして安全保障条約をいかにするか、どういうような締結の方法をとるか、これは別途のことだと、こういうことを申しておるのであります。それは誤解のないように願いたいと思います。
  337. 多田省吾

    ○多田省吾君 別途のやり方……。
  338. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはただいま言うように、条約そのものの書き方で、これは日本側が声明もしない、相手も声明しない、双方で申し合わせができる場合もあるかもしれません。あるいは十分考えて、その協定をいかにするか、こういうことも扱い方の問題だ、調印するかもしれない、そういう問題をただいま申し上げるわけじゃありません。だからそういう点はまだ時間があることですから十分検討いたします、かように申しておるわけであります。
  339. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど外務大臣が自動延長ということをおっしゃって、それも総理考え方と同じである、総理もその考え方だ、そのように外務大臣はおっしゃっているのです。だから総理も結局、自動延長を考えておられるのか。
  340. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは条約に書いてある。だれが考えているというわけじゃない。条約そのものがそのようにできておる。十年間たったならば、今度は一年の予告によって条約を破棄することができる、こういうことが条約に書いてある。別に総理のお考えとか、私の考えとか、そういうものはない。
  341. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから外務大臣が言ったように、そのまま自動延長でいくのか、それとも一九七〇年に総理はまた十年とか五年とか区切って改定するのか、その点……。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は日本の国の防衛計画というもの、これを中心にしてただいまの問題を見たわけですね。ですから防衛計画というものは長期の計画でなければならぬ。それに合うような措置がほしいということを申したわけです。また、外務大臣の話は、ただいまの安全保障条約、その文言だけからどういうことがきておるか、やめるときのことだけが書いてある。やめないときのことは何にも意思表示をしなければこれは続くのだ、こういう説明をしているようであります。これは条約そのものについての説明だ、かように私は思います。
  343. 多田省吾

    ○多田省吾君 くどいようですけれども、それでは総理の一昨日のお話も結局は一九七〇年に改定する、こういう意向ではないか。そのまま自動延長でもよいというお考えでございますか。
  344. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一昨日私がお話しいたしましたのは、ただいまのように、一年ごとにどうこうということが、やめるということが表現されるような状態では私は十分でない。かように思っております。でありますからそういう点は今後の問題だ、かように思うのであります。これは別にいまの外務省で言っている、また外務大臣が言っているように、とにかく十年たったらこの条約がなくなるのだ、こういうことではないという、これはまだそれから先の説明が出ていないのですから、その辺のところはもう少しよく検討を要する。かように思います。言っている事柄がニュアンスの違うことは私も認めますけれども、防衛計画そのものから見ればこれは長期に永続する計画を持つ、これは当然のことです。二次防が期限が来れば今度は三次防というものが云々されるように、長期の防衛計画を持たなければならぬ。それに合うように私は考えていきたいということを申しておるわけであります。
  345. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ総理大臣からニュアンスの違いを認めるとおっしゃったのですから、これ以上言いませんけれども、小選挙区制にしましても、衆議院解散にしましても、改造問題にしましても、この問題にしましても、いつもニュアンスが違って、そのたびにお話が違うようでありますから、こちらはちょっと納得できないのですが、最後に、この前から衆議院解散は御油断めさるなということをおっしゃったし、まあ景気回復の時期とは無関係だとも言われましたけれども、衆議院解散並びに改造についてはどういうお考えでございますか。どんな状態のときに解散の手を打ちますか。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私解散について考えてはおりません。そのことを申し上げておきます。
  347. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日はたしか景気回復の時期とは無関係だと申されましたが、それじゃ景気回復じゃなくて、不景気回復の時期じゃなくて、どういう状態と関係があるのですか。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 迫水君のお尋ねでは、景気がよくならないから解散しないのか、こういうお尋ねでありますから、解散と景気とは別でございますということを申した。私はただいま解散について考えておりません。どういうとき考えるかという問いに対しましては私は答えません。
  349. 多田省吾

    ○多田省吾君 たびたび論議されたことでございますが、全日空、カナダ太平洋航空、またBOACのこのたびの事故に対しましてはまことに残念に思いますし、心から冥福を祈るものでございますけれども、パイロット養成機関がはなはだ貧弱で、宮崎航空大学でも年間に二十名か三十名しか養成できない。あとの七十名は自衛隊にお願いしているとか、あるいは化学消火器も非常に足りない、医療設備も足りない、まあ管制官の問題もあります。この前も、今度の四十一年度の予算にあたって運輸省が要求しました東京航空保安事務所の三十九人の増員要求も大蔵省の査定で一人も認められなかった。そういう事態があるわけでございます。そういった航空の安全の体制について運輸大臣並びに科学技術庁長官からお答えを願います。
  350. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 航空企業の面につきまして安全性を確保するという点につきましては、企業自体にもできるだけ安全を確保するという基本方針によって運営するように指導しておりますが、飛行場の設備等につきましても、これはできるだけ安全度を高めていく方向で努力を続けてまいっておるのであります。非常の際の消防施設等につきましては、現在羽田の施設は国際民間航空の機構の勧告の線を大体充足するだけの設備をいたしておるのであります。具体的に申しますと、 0-11型の化学消防車を三台、それから給水車、これが三台、救急車、破壊車、指揮車各一台、合計九台、これが一つの水準でございまして、これをいま整えておるわけでございますが、しかしながら、これだけでは多田議員の仰せられましたように、今回の全日空、カナダの飛行機事故等の実情にかんがみまして、必ずしも十分ではないと考えますので、今後はこれの強化、充実をはかりますとともに、外にあるいわゆる一般の消防等との関連を密接にいたしまして万全の処置を考えたい、かように考えておるわけでございます。人員等の整備につきましても、できるだけ強化の方向で努力を続けてまいる所存でございます。
  351. 上原正吉

    国務大臣(上原正吉君) お答え申し上げます。  科学技術庁といたしましては、航空安全と申し上げるよりも航空機の安全性、このほうがおもな仕事なのでございます。  昨日の御答弁にも申し上げましたように、全日空の沈没と申しますか、事故以来、非常に関心を高めまして、二月十八日から航空技術審議会で検討を始めたわけでありますが、続いて、カナダ航空の防潮堤に衝突する事故並びにBOACがたぶん悪気流に巻き込まれたのだと思いますが、空中分解する、こういう事故が生じましたので、一段と関心を深めまして、さっそく今度は二月七日から対策樹立の協議を始めたわけでございます。昨日も御答弁申し上げましたように、二百フィート以下になると、着陸の際、計器がものを言わない、目測と勘だけで着陸するということが、悪天候の場合、濃霧の場合あるいは夜間、こういう場合に危険でもございますようです。それからまた、気流が悪い、悪気流が激しいというときはレーダーで探知できない、こういうふうなことから、何とかこれを目測、勘だけで着陸するのでなく、かつまた、気流が非常に悪い場合にこれを探知する方法はないものか、こういうことでいろいろ検討を重ねまして、イギリスでだいぶ開発が進んでおりまするように、目測、勘だけでなく計器ではかって、濃霧の場合でも、暗夜の場合でも、ちゃんと着陸ができるというふうな計器の開発をしなければならぬ。それからレーダーでとらえられない悪気流も、相当気流の激しい場合には空電を空気が帯びておる。だから、空電から出る電波をとらえることができれば、悪気流の場所、強さ、こういうものを探知できやしないか、こういうことで、可能性があるということになりましたので、科学技術庁が持っております航空宇宙技術研究所、ここでさっそく調査に取りかかったわけでございます。これは、もうきのうから、スタッフを割り当てるとか、あるいはデータ並びに文献を集めるとか、こういうことで着手いたしたわけでございまして、一刻も早くこれを完成して災害を防止したい、こういう努力を重ね始めたわけでございます。
  352. 多田省吾

    ○多田省吾君 厚生大臣にお尋ねしたいのですが、最近、産業公害が非常にひどくなっております。まあ、四十年度も相当な予算で産業公害について対策を練られたと思いますけれども、ことに排気ガスとかスモッグとか、工場汚水とか、こういう問題に対して、予算に対してどの程度仕事をなされたか、また、公害防止事業団等の事業の予算、あるいは、どれほど公害がそれによって減ったか、その点をお尋ねしたい。
  353. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 公害の問題は、ただいま御指摘のとおり、近年非常に激化いたしておりまして、重大な社会問題に発展をしつつあるわけでございます。政府といたしましても、この公害対策を強化することに全力をただいま尽くしておりまして、昨年十月に公害防止事業団を発足させまして、共同の施設等に対しまして、いろいろ計画を具体的に進めておる段階でございます。現在の段階におきましては、大気の汚染あるいは水質の汚濁、こういう、従来規制しておりますその規制の基準につきましても、再検討を要する段階になっております。また、騒音でありますとか、あるいは排気ガスでありますとか、従来規制をしていないそういう公害の規制につきましても、法制化を検討しなければならないと考えているのであります、こういう対策につきましては、総理府に設けられております公害対策推進連絡会議、これを中心に、関係各省庁が一体になりまして、公害対策の整備強化を急いでいる段階でございます。  そこで、ただいま、公害防止事業団が昨年の十月に発足してからどういう仕事をしているかというお尋ねがございましたが、発足早々でありますので、業務方法書の決定でありますとか、人的陣容の整備でありますとか、また、特に共同施設のことでございますから、各企業の事情等も十分調整をいたしまして、そうして具体的な共同施設についての計画を立て、近く実施の段階に入ることに相なっているのであります。四十一年度におきましては、四十年度事業団の予算は二十億でございましたが、これを四十五億に大幅にふやしますと同時に、今度は、この公害の発生源でありますところの各企業に対しても、防除施設を講ずる必要がある、それを金融面等から援助して、積極的にそれを進める必要があるということで、個々の企業にも融資ができるようにいたしているのであります。また、金利の面でも、大きな企業には七分、中企業には六分五厘というぐあいに金利の引き下げをいたしまして、公害襲業団の活動を積極的に活発に今後行ないまして、公害対策の強化をはかってまいりたいと考えております。
  354. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨年末に厚生省で大阪と四日市の両市のばい煙なんかの問題の影響調査をなされたと思うのですが、その結果はいかがでございますか。
  355. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 大気の汚染、ばい煙による大気の汚染度は近年急速に悪化をしておりまして、東京、大阪等におきましてはおおむね汚染度がロンドンの状態に近いように相なっておるのであります。特に最近は自動車が激増してまいりました関係で、この排気ガスによる一酸化炭素の公害というものが激生いたしておるのでありまして、この交通の整理に当たっております警察官はもとより、その付近の住民に対するところの人体に及ぼす影響もだいぶ深刻になってきておるのであります。厚生省といたしましては、そういう人体に及ぼす影響の調査をただいま積極的に行なっておりまして、これを調査の結果を持ち寄りまして、そうして総理府の連絡会議で具体的な規制の措置を進めようとせっかく努力中でございます。
  356. 多田省吾

    ○多田省吾君 このたびの東京国際空港の霧あるいはスモッグのための事故というものも相当考えられておりますが、ことしの二月の二十六日一日だけでスモッグのために七時間五十分も離着陸が不能であったという、そういう事態もありますし、また、東京のあの隅田川が非常に汚染していろ。最近魚がちょっと住んでおりますので少しきれいになったのかと思ったら、不況のために工場汚水が少し少なくなった。それも一因であるというようなこともいわれておりますし、まだまだそういう工場汚水の問題は絶えない。また、ばい煙にしましても、大阪と四日市では、もうすでに非汚染地区の四倍から十倍の汚染のひどさである。亜硫酸ガスでそのくらい汚染している。人体に被害がございますから、呼吸器疾患なども四日市の場合は三倍から四倍も他地区に比べて多い。そういう人命にかかわるような姿が多々あるわけでございます。それに対していま厚生大臣のお答えによりますと、昨年の公害防止事業団は初年度とはいえ二十億の予算がありながら、たしか五億しか使っていない。十五億余っている。ことしの予算四十五億と合わせて六十億ばかり予算があるわけでございますが、もっと積極的に公害対策を立てられないかどうか、その点を。
  357. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほども御答弁申し上げましたように、公害防止事業団を督励をいたしまして、早急にこのせっかく取りました、計上いたしました予算を活用いたしまして、公営の防止対策を強化してまいる所存でございます。
  358. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に教育問題でございますが、この前早大の紛争がございまして、私学問題ということがだいぶん問題になったわけでございます。まあ、一応入学試験も無事に済んだそうでございまして御同慶にたえませんけれども、この私学問題といい、大学問題、教育問題全体にわたってこれから国家百年の大計のためにも真剣に考えていかなければならない問題である。特に大学問題においてしかりであると思います。で、いままで私学助成に対してはさまざまな御答弁がありましたけれども、いま考えておられる、特に私学寄付金に対する優遇指貫といったようなものがどう考えておられるかどうか。
  359. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私学振興につきましてはいろいろな方策が考えられるわけで、どういう方法をとることが一番妥当であるか。これにつきましては、政府が積極的に打ち出すのも非常に至難でありますし、そういう関係で、昨年以来調査会を設けまして鋭意検討を開始しておる段階でございます。さしあたり、さりとは申しながら、私学の現状にかんがみまして、財政的なことも考えなければなりませんので、昭和四十一年度におきましては、私学振興会の運用資金を、御承知のとおり、約昨年の倍の二百四十二億円ぐらいに増強をいたしまして、またその中では、高利の負担をしておる債務について借りかえの道を講ずると、当面の措置を講じておる次第でございますが、調査会の検討とも並行いたしまして、われわれも鋭意研究し、そうしてしかるべき方法で私学の健全な育成、振興の道を考えたい、かように考えております。
  360. 多田省吾

    ○多田省吾君 私学振興に対して二点お伺いします。  私学寄付金の免税措置を考えられることはないか。それから、日本育英会の奨学資金をふやして、金額もふやし、人員もふやし、特に私大生の奨学金をもらっている人が少ない。国立大学生並みにふやせないかという問題。この二点をお尋ねします。
  361. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 免税措置につきましては、あるいは大蔵大臣からお答え願ったほうがよろしかろうと思いますが、四十一年度におきましても、寄付に対する免税の方法及び範囲等について相当緩和の措置を講ずることになりました。  なお、育英会につきましては、御承知のとおり、最近のように学費の増高しておりまする段階におきましては、育英資金の増強をはかりまして、さらに育英を拡大するということは非常に緊要なことでございます。一面、従来から、すでに育英資金の貸し付けをされたものがありますので、これらの学業の終わった者からはできるだけ返還を願いまして、これらの資金も新しい育英の資金に投入をいたしまして、さらにさらに育英の充実をはかってまいりたい。
  362. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 免税のことにつきましては、ただいまでもそういう制度があるのであります。昭和四十一年度減税計画の中でもそれを強化いたしまして、その寄付条件を緩和するなどの措置を目下御審議を願っているわけであります。しかし、その後できました早大の事件、そういうものを考えまして、私学振興会を通ずるこの私学の助成ということです。これはそういう方式が考えられないか。私学に対して寄付をする、そういう際に、免税をさらに拡大をするというようなことは考えられないか。目下、文部当局とも相談中でございます。
  363. 多田省吾

    ○多田省吾君 臨時私立学校振興方策調査会が昨年発足いたしましたので、大体答申の時期はいつでございますか。
  364. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 昨年、この国会の議決を経て制度をつくります際に、これはなかなか半年や一年では具体的な掘り下げた研究は無理であろうということで、昭和四十二年六月までに答申を得ると、こういうことで制度ができたわけでございます。現在は、昨年国会が終わりまして早速委員の人選をし発足をいたしまして、総会等も数回開き、さらに部会をつくりまして、部会で私学の実態調査等をいま進めております段階でございますから、いつ結論を出していただけるかということは目下明確でございませんが、つい三、四日前にさらに一度総会を開いていただきまして、この総会の席上で文部省側としましては最終的な結論がもし来年の六月までかかる場合があるとしても、できるだけひとつ中間的にでも、あるいは応急措置としてでも考えられることを検討して中間答申ができればしてもらいたいと、こういうことを実は要望をいたしておる次第でございまして、まだこれについても大ぜいの委員の方々が鋭意検討しておりますので、期限を付して私どものほうから督促がましいことはいたしかねますけれども、できるだけ早く適切な結論を得たいと、かように考えております。
  365. 多田省吾

    ○多田省吾君 この調査会で、現在までに大体調査されたことはどういうことでございますか。
  366. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 調査会のいままでの作業としましては、いま申し上げましたように、当初全体会議を数回やりまして、さらに第一部会、第二部会、部会を設けまして、そして基本的な問題及び私学の実態の調査に入りまして、現在では各大学の実情聴取をしておるという現状でございます。
  367. 多田省吾

    ○多田省吾君 特に私学の問題に関しては、昨年の春におきましても慶大の授業料値上げの反対の問題があったわけでございます。そういった緊迫した事態をかかえて、方策調再会が現在まで中間報告も出していないというような現状は、文部当局としてもはなはだ施策がなまぬいのじゃないか、このように思われます。特にことしはベビーブームといわれて、大学の受験者が激増する、そういう予想は初めから立っていたわけでございます。で、われわれはもっともっと政府に、文部当局に、大学の政策に関して力を入れていただきたい。特にいま私学におきましては、私のところにも手紙が来ていますけれども、中央大学の法学部の政治学科に受験して合格しましたが、入学時に必要な十五万三千円という大金ができなくて困っております。せっかく合格したのに、みすみすこの大学を見送り、大学をあきらめるのは残念であります。そういった例が幾多あるわけです。そこで、これはまだ法文科ですから入学金は少ないほうですが、理工科になりますと、あるいは医学部ともなりますと、それこそ三十万、四十万あるいは百万をこえるような入学金さえ取られるようでございます。で、アメリカ等の例を見ますと、もうすでに百年前に、一八六二年にモリル法というものができまして、それで大きな大学に対しては、州立大学というようなもので、私立大はつくっておりません。そういった対策がもうすでに百年前につくられておる。ソ連においても、一九一七年の革命を経て大学の知識の大衆化というものが、実用化というものが行なわれ、特にこの技術革新期を迎えてそれが大きく効用を発揮しておるわけでございます。それに対して大学全般に対する政策というものが非常に少ないように思います。野放し的な考え方で私大に対しても昭和四十一年度の大学士の増加に対しては七〇%まで私大におんぶしているというような姿も見られるわけで、はなはだわれわれにとっては不本意でございます。それで特に理工科系の大学生が日本においては非常に少ない。まあ時間もありませんから詳しくは述べませんが、欧米諸国においては五割、六割という例がざらにありますのに、日本はわずか理工科系の学生は二割四分にすぎない。そういったことから、一つには文部大臣にお尋ねしたいことは、理工科系大学生をふやす方針はあるのか。もう一つは国立大学等に二部制、夜間制を考えて、広く大学の門戸を開放していく考えはありませんか。その二点をお願いします。
  368. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えいたします。  御承知のとおり、非常になだらかに発展をしてきた先進国と違いまして、日本は戦後急に進学熱が高まり、また、私立大学等の設備も微々たるものであったのが、急激にいろいろな努力をしてこられた関係で、多額の負担をになっておる次第でございますので、私どもとしましては、根本的な方策としましては、私学と政府との関連等の関係もありますから、十分下から盛り上がった意見を聴取して参考にしたいと思っているわけでありますが、さしあたり、昨年度も前年に比較すればかなり大幅の融資計画を立て、今年はさらに昨年の倍額以上の融資計画を立てまして、当面はこうした融資で、大学生急増期を迎えた今日つなぎをしていきたいと思っておりますが、反面、理科教育の重要性にかんがみまして、現在では理科教育設備の三分の二、及び理科関係の研究費の三分の二を国庫が助成することにいたしました。もっとも、現在ある設備の改良の場合には二分の一になっておりますが、そういう高率の補助をいたしまして、これらの充実を実は期しておるわけでございます。なお、理科系学生をできるだけ多くしたい。したがって国立大学では今年度も増員分の約六割は理科系の学生にしておるわけであります。さらに私立大学には、いま申し上げたような設備助成等を講じまして、理科系の学生をふやしていきたい。かような方法で目下努力をしておる段階でございます。なお、夜間の大学を国立の場合特に考えたらどうか、こういう御指摘でございますが、この点は全く私ども同感でございまして、したがって、そういう方向に近年努力をしておる次第で、すでに十二の国立大学に十二の夜間学部を設置し、また、学部では年月は長くかかりますから、夜間の短期大学を二十ほど設置しております。さらに、四十一年度では六つほど夜間の短期大学を国立大学に併置する方針で進んでおりまする次第で、夜間の大学というものにも今後大いに重点を置いて、特に国立の夜間部というものについては考えてまいりたいと思っております。
  369. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近、科学者の頭脳流出という問題がはなはだ憂慮されておるわけでございます。これは国益にとりましても、日本の科学技術の将来、また日本の将来の産業にとっても非常に重要なことであると思います。これは特に待過がよくないためにそうなるのじゃないかと思われます。で、特に日本の方で国際的な数学者が百五十名のうち五十名はもうアメリカに行っておりまして、二十名は長期契約をしている、こういった実態もあるようでございますが、この科学者、学者等の頭脳流出という問題に対して、文部大臣、また科学技術庁長官はどのようにお考えになっておられますか。
  370. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 現在、御指摘のとおり、日本の学者が相当海外に出ております。これは、まあ考え方によりましては、日本の大学の待遇より外国の待遇のほうがいい、こういうことの御意見も一部にはございますが、それも若干あるかもしれませんが、やはり主としてアメリカを中心に先進国に出向いておる人たちが多いのでありまして、この方々は要するに研究を十分に国際的な視野に立って研究をしたい、こういう意図が多いように思うのであります。私どもの調査したところでは、大体、国立大学で、現在、最近の三カ年間のうちに海外に出ております教授が三十三名ほどおります。そのほか、私立関係の学者を合わせれば百四十名からになりますが、これらの人たちが永遠に外国で教べんをとろうというのじゃなくて、むしろ研究心を高め、新しい研究を身につけよう、こういうことでありますから、やがてはやはり日本の学術振興の上に寄与していただけるものと現在は考えております。ただ、一面、この教授の待遇あるいは研究費等につきましては、逐年改善を求めておりまするところで、さらにこの点も将来考慮すべき課題であろうと、かように考えております。
  371. 上原正吉

    国務大臣(上原正吉君) お答えいたします。  科学技術者の海外流出ということは、ずっと以前から続いておりまして、まことに痛恨にたえない次第なのでございまするが、おっしゃるように、待遇が悪いことも確かにございまするけれども、待遇が悪いというだけでもないようなのでございます。やはり、学者、技術者というものは、環境が大切で、気持ちよく豊かに研究できる場所、つまり、仲間同士で知識の交換、技術の交流がなめらかにできるような場所が働きよい場所と、こうなるらしいのでございまして、その点も、日本の学問の府並びに技術関係の働き場所というものが、技術者の海外流出を助けるといいますか、促進するといいますか、まあ適当なことばが見つかりませんが、そういうことになっているようでございまして、この点も大いに留意しなければならぬことだと思っております。  そして、先ほど文部大臣が申し上げましたように、待遇の改善ということにつきましては、年々歳々文部省も私どもも人事院に向かいまして待遇の改善方をお願いをいたしておりまして、年々多少ずつよくなっております。  それから海外に流出いたしまする頭脳と申しますか、物質名詞でおそれ入りますけれども、こういう方々も幾らずつかは減っておる、これが実情でございまして、ますますこの海外流出を食いとめまするように今後とも努力を重ねてまいりたい、かような覚悟でございます。
  372. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ上原長官は痛恨だとおっしゃいましたけれども、文部大臣のほうはそんなに痛恨がっておらないようでございますが、大学問題全体の政策が非常になまぬるいように感ぜられます。私学紛争があったときだけちょっと対策を考えようといったようなどろなわ式の大学政策であったならば絶対にならないと思うわけであります。また、それは、何も私学だけでなしに、大学全体の問題として、しかも大学管理法のような自治権を侵害するような姿じゃなくて、あくまでも日本の大学全体の政策を根本的に考え直さなければならぬ段階に来ているのではないかと思われるわけであります。  それからもう一つは、頭脳流出の問題に対しましても、イギリスでは、ウィルソン首相が、一九六四年の十一月に、やはりイギリスでも待遇が悪かったのか、相当すぐれた頭脳が、すぐれた学者が海外流出したのに対して、イギリス人よ、祖国にとどまってほしい、そう言って、大学の開放、あるいは研究教育の強化、学者の待遇改善を演説の中で約束して政権をとっているわけでございますけれども、大学全体のそういった問題、海外への頭脳流出の問題、その点に関して総理大臣はどのようなお考えを持っておるか、方針をお伺いいたしたいと思うのであります。
  373. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大学問題これは、青少年を教育する、ことに次代をになわしていく、そういう意味で多大に私どもは期待をかけてこの問題と取り組んでいるわけであります。ことに、戦後ちょうど生まれた諸君が大学に入学するような時期になっておりますので、ことしなどは、そういう意味におきましても、大学問題が一つの隘路になって、非常に各方面に心配を与えておるということであります。ただいま申し上げましたように、第一の観点からいたしまして、日本の国にふさわしい教育制度をどうしても確立しなければならない、かように思います。しかし、今日まで、学校はずいぶんできましたけれども、その中身の整理等については、なお遺憾とする点が多々あると思います。そういうことが、今日のような経済不況に遭遇し、そうしてまた、急に拡充しなければならない、こういろ場合に、その資金をどこからとるかというようなことでいろんな問題が起こり、あるいはまた、学校の管理方式につきましても、自治ということが言われておる。本来、自治は喜ぶべきことだと思います。学校管理者と学生との間に問題を起こすとか、こういうようなどうも在来の考え方では理解のできないような事態も起きておるわけであります。こういう際に、各方面の人たちにも集まっていただいて、そうして学校教育のあり方について根本的に考えるべきときだ、かように私も思います。私立学校振興方策等の審議会についてもこういう意味から真剣に取り組んでおるのでございます。おそらくその結論もなお急いでくだされるようになるのではないか、かように思いますし、この問題の成り行きもよく私どもも監視する必要がある。ことに、一部の思想的な偏向者等によって学園等が荒らされておる、こういう事実も見のがすことはできないのであります。そういう意味では、なお一そう重大さを加えておる、かように思います。  もう一つの問題は、ただいまの日本の学者、ことに優秀なる数学者が外国へ出ていく、そうして帰らない、この問題であります。このことは、将来の科学技術の発展を期する、こういう意味におきまして、たいへんな重大な問題でございます。これが、待遇の問題から来たり、あるいは研究体制から来たり、いろいろ考えなければならない問題があるようでございます。ただいま多田君からも御指摘がありました各方面の学者、そのうちでもことに基礎的な数学の学者が外国に出かける、こういうことはゆゆしい問題でございますので、日本のりっぱな学者が国内でさらに研究を遂げ、また、後継者――あとに継く者を十分教育できるようなそういう場をつくりたいものだ、かように私どもいろいろ努力しておる際でございます。
  374. 多田省吾

    ○多田省吾君 このたび中小企業白書も出たようでございますが、大企業と中小企業の格差はますます開く一方でございます。昭和四十年度と、特に二月以後における倒産件数はいかほどか、また、その傾向は小口化しておるといわれておりますが、なぜであるか、通産大臣にお伺いします。
  375. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一月には倒産件数が少し減ったのであります。十二月では六百十一件もあったのが三百七十一件、二月には五百四十二件とまた少しふえてまいっております。まだ中小企業がこの不況を脱出しておるという形勢はありません。これは何かといえば、やはり受注が減ったということ、仕事が減ったということ、その結果いろいろな経理上の困った状態になったわけでありますが、根本はやっぱり仕事が減ったということであります。その倒産しておる企業を見ますと、繊維、建築、あるいは金属工業、こういうものが一番多いわけであります。不況の余波を非常に受けておる。これに対して、政府は、御承知のように、まず景気を直して、中小企業にも仕事が出るようにしなければならない、また、中小企業それ自体の対策も強化して、なるべく倒産件教がそんな何百という数字に出ないような努力をしていかなければならぬと考えておる次第でございます。
  376. 多田省吾

    ○多田省吾君 通産大臣は、大臣に就任されたころは、だいぶ前向きの姿勢で、ただ保護一点ばりのやり方だけじゃなくて、前向きの姿勢をとっておられたようでありますけれども、昨年はさておき、四十一年度の予算におきましては、一般会計中では中小企業対策費が二百九十三億三千万円、〇・六八%、それから財投も二千五百四億円、一二・三%で、前年の一二・六%よりも低いという姿であります。それから輸出振興とか基幹産業の財投は三千四百三十二億円で、大企業偏重の姿が見られるのでありますけれども、施政方針演説等の中にも中小企業の育成ということが強く叫ばれているにもかかわらず、どうして、昭和四十一年度は、ふえたとはいっても、これはもともと少ないのでございますから、要は焼け石に水に終わってしまった、たかが知れておると思いますが、これはどうでございますか。
  377. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 全体の予算の中では決して多い金額ではないわけですが、たとえば中小企業対策費でも三六%昨年度に比べて――予算というものは、一ぺんに何倍もふくれ上がって予算がふえるというような形にはなかなかなりにくい。三六%という増加率は、これはほかにはあまり例のないぐらいの伸び方でございます。あるいは中小企業の金融機関に対する財政投融資も、二千五百三億、これは二二・四%ぐらい前年よりも伸びている。金額は少ないですけれども、全体としては中小企業関係の金融機関は今年度は貸し付けのワクは工千五百億円ぐらいのワクを持っている。対策費は必ずしも多くないけれども、それくらいのワクを持っておるのであります。したがって、大企業偏重という考えはありません。むしろ、中小企業とか農業とか、こういう低生産部門の近代化を促進しなければ、物価問題も解決しないし、また、ひずみの是正と言われておるこの経済の不均衡な状態も是正できるものではありませんので、これは政策の重点に置いておることは間違いがありません。
  378. 多田省吾

    ○多田省吾君 中小三機関、政府の三機関の金融の貸し付け規模はどのぐらいか、また、金利はどのぐらいか。それから、中小金融機関というものを再編するような構想が大蔵省にはおありだと聞きますが、これはどうですか。
  379. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 貸し付け規模は政府委員が申し上げますが、三機関を統合するというような考えはいま持っておりません。
  380. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) お答え申し上げます。  先ほど通産大臣からお答えがございましたように、合計五千五百十七億円でございますが、そのうち、国民公庫は二千七百八十七億円、中小公庫は千九百八十億円、商工中金七百五十億円、以上のとおりであります。また、三機関の金利は、昨年九月に年利〇・三%の引き下げが行なわれまして八分七厘になったわけでございますが、さらに、昭和四十一年度予算におきまして、本年四月以後さらにまた〇・三%下げて、すなわち八分四厘と、かように相なっておるわけでございます。
  381. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでもまだ都銀よりも高いような傾向にありますし、それからいま中小企業の受注が減少しておる。通産大臣も、仕事がないということを言われるけれども、特にここで官公需要を法制化して中小企業や零細企業に受注する考えはございませんか。
  382. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 官公需に対してはいま検討を加えております。多少これを義務づける必要があるのではないかということで、何らかいまのよりも一歩前進して中小企業のために官公需を確保したいという、その方法論について検討を加えておる最中であります。何らかの処置を講じたいと考えております。
  383. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは絶対前向きに中小企業のためにお願いしたい問題でありますけれども、昨年秋にできた中小企業団体組織法というものが改正されて、現在までにどのような効果があったか、それをお聞きしたいと思います。
  384. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) すでに近代化促進の業種の指定を行なった――計画の実施期間は五カ年で、三十九の業種指定を行なったが、さらに二十九の業種の指定を行なうべく、いま計画を策定中であります。こうすることによって、三十九業種に五千億円の所要近代化資金が、それから二十九業種に四千億円、都合九千億円程度の資金需要がある見込みであります。このようにして近代化を促進していきたいということで、相当の実績をあげつつあると考えております。
  385. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近、特に大手の会社が中小企業の各分野に進出しまして中小企業をおびやかしておるような傾向がありますが、その実態はいかがですか。
  386. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 昨年、中小企業の組織に関する法律の一部改正を行なって、そして、大企業が中小企業を圧迫する場合に、特別契約制度というものを新設して、中小企業は大企業に対して団体交渉ができる、主務大臣は調停・あっせんができる権限をその法律の改正によって得たわけであります。これは不当な大企業の進出に対して中小企業を防衛できる法的な根拠になるわけでありますから、こういう点で、この法律があるということは、ある程度大企業の進出を抑制する力を持っている。これはひんぱんに発動はされておりませんけれども、この法律なども活用して、大企業が中小企業でやっていけるような分野に不当に進出することは、この法律の基礎と行政指導によって抑制をしたいと考えております。
  387. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの抑制の問題、特殊契約の問題でございますが、たしか、昨年一ぱい中には、特殊契約というものが一件もまだ結ばれていない。ことしになって特殊契約はどのくらい結ばれましたか。
  388. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、実際にはこの法律が発動したことはないのであります。しかし、こういう法律があるということが、いま言った相当な行政指導をするときの一つの大きなやっぱり力になっていく。いざというときにはこういう法律であるのだということが、行政指導の上において無言のやっぱり力になっている。その抑制力は認めざるを得ないと考えます。
  389. 多田省吾

    ○多田省吾君 核抑止力みたいなことをおっしゃいますけれども、中小企業団体組織法がせっかく制定されて特殊契約が生かされていないということは、やっぱり何か一つ隘路があるのじゃないかと思いますが、その点はどうですか、お聞きします。
  390. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 大企業と中小企業の関係は、何か敵対関係のようなものではないのです。非常にやっぱり相互補完的な面があるので、こういう法律を発動して団体交渉権によって話し合いがつくよりも、もう少し行政指導などによって分野を調整するほうが、産業のあり方としては非常にそのほうが好ましい。だから、この法律がひんぱんに発動していないということが中小企業が非常に圧迫されておるのだとも私は言い切れない。むしろやはりわれわれの行政指導によってやっていく。行政指導ということは、そういうことはひんぱんにやっております。中小企業のやっていけるような仕事を大企業はする必要はないんじゃないか、やはり分野を残していくべきである、こういうことで、こういう法的根拠を持ちながら行政指導するほうが産業のあり方としては好ましいという一面もあるので、これは発動しないから中小企業がやっつけられておるのだという、こういうふうに考えることもいかがかと思うのであります。
  391. 多田省吾

    ○多田省吾君 それは逆でございまして、いま通産大臣がおっしゃったように、大企業と中小企業の間に相互補完がある。結局、中小企業がいわゆる弾圧されておりまして、なかなか大企業に食いついていけない。そういう傾向があって、結局は、中小企業団体組織法というものが核抑止力みたいな抑制力があるということではなくて、現在、発動していない、役に立っていないという考え方がむしろ妥当じゃないか、このように思うのですが、そこで、倒れておるのは中小企業が圧倒的に多いし、また、在庫率なども、大企業のほうが在庫率が低いのに、中小企業の在庫率がふえているという傾向がございます。特に魔法びんなどで一例をあげますと、ずいぶん過当競争が激しくて、大企業が特に中小企業に食い込んできているという傾向があるそうでございますが、そういった具体的な面に対する対策というものは考えられないのかどうか。
  392. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 幸いに中小企業の団体組織法によって主務大臣があっせん・調停する権限を持っているわけですから、行政指導する場合に法的な根拠があるわけです。通産省の行政というものは、今後はやはり中小企業というものに対するウェートを、いままでも置いておりますけれども、もっと置かなければならないと私は思うのです、大企業というものは力を持っておるのですから。大いにやりなさいといろいろ条件を整備する意味でもっと政府が関与しなければならないのは中小企業であると私は思うのです。そういう点で、今後とも、これだけの根拠があるのですから、大企業がむやみに中小企業の分野に進出して中小企業の生きていく分野を縮めるようなものに対しては強力な行政指導をしたいという熱意であります。
  393. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうあっていただきたいわけでありますが、もう一歩進めて、中小企業の市場支配率が七割以上の場合は、組織分野を拡充して、大企業から中小企業に進出できないような法制化を設けるとか、そういった中小企業育成のもう一歩進んだ具体的な施策は考えられないのですか。
  394. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中小企業は、そういうふうにして大企業の進出することを押える、こういうようなこと、今度は、同時に、積極的にはやはり中小企業の近代化、技術とかあるいは設備とかいう面でこれを進めていかなければ、ただ押えるということだけでは目的は達成できませんので、今年も、御承知のように、零細企業には機械の貸与制度とか、工場を建てて貸与制度とか、かなりきめこまかい中小企業の近代化のために心を配った予算になっておるわけであります。今後は、ただ消極的に押えるというだけではなしに、中少企業自体の体質の改善ということに主力を注いでいかなければならぬ。予算も相当つけてはありますが、中小企業の近代化のために三百八十億くらいを本年は使えるわけであります。しかし、この金額は私ども多いとは思っていない。もっとやっぱり中小企業の近代化――設備、技術、経営の近代化のために政治の重点を置かなければならないというふうに考えております。消極面ではなしに、積極面においても大いにやらなければいかぬという考えでございます。
  395. 多田省吾

    ○多田省吾君 大企業の進出が中小企業を脅かしておるだけではなしに、今度は、米国とか外国の産業が相当圧迫してくるような可能性が考えられますが、その点に対する対策はどうですか。
  396. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この点は、もう外国から常に被告席に日本は立たされて、資本の自由化をせよということ、外資が入ってくる場合は、直接の投資の場合も、株式の取得の場合も、技術で入ってくる場合も、みんな日本はこれに対して資本が入る場合にはスクリーンにかけて、これは政府の認可がなければ入ってこられないわけですから、これは外国から見れば資本をあまり日本は制限し過ぎるということで、われわれは常に国際会議で非難を受けております。これは何を考えておるかというと、いまのような状態で外資が入ってくればもう中小企業がやっていけないということも大きくわれわれの頭にあるわけでありまして、外資法のこれが大きな防衛がございますから、そういうことは、外資が入ってきて中小企業がみんな倒れていくという事実は考えられません。
  397. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 時間が参りました。
  398. 多田省吾

    ○多田省吾君 では、最後に一問だけ総理大臣にお伺いいたします。  中小企業や農林漁業等の近代化がおくれるということも結局物価価上がりの一つの原因だとも言われておりますけれども、また、中小企業がこのようにたくさん倒産しておる現状、こういう現状にあって、ひとつ中小企業に対するこれからの振興の考え方について一言お伺いしたいと思います。
  399. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま多田君が御指摘になりましたように、不況を克服する意味におきましても、いわゆる生産性の低い部門、かように表現されておる中小企業あるいは農業等に対して生産性を上げるようにしなければ、不況の克服もできない。これはわが国の置かれておる経済の二重構造といわれておる面でございまして、さらにまた、中小企業の果たしておる役割り等を見ますときに、ただいま御指摘になりましたように、物価対策からもこれはゆるがせにできない問題でございます。そうして、ただいまの通産大臣との間の質疑応答でその要点はそれぞれ触れられたように思います。中小企業振興のための金融面におきまして質及び量において特に考慮するということ、あるいは、無担保、無保証の金融をするとか、とにかく円滑なる金融をし、そうして近代化を進めていく。あるいはまた、大企業との分野、これが中小企業が大企業に乱されないように、これは国内ばかりではなく、外国の資本に対しましても同様なことが言える。あるいは、下請難業等の下請代金支払いの遅延防止について政府が特段の留意をするとか、等々の施策をいたしまして、こまかな注意、こまかな手当てをすることによってぜひともこの中小企業を育成強化していく。そうして、わが国の構造上のこれが非常なガンだと、かようにまで指摘されておるこの二布構造、これをなくして、生産性を高めて、そうして経済の正常化に一そう努力してまいるつもりであります。どこまでも中小企業のその性質、性格等を十分理解し、そうしてこれに協力するについては有効適切な方途を講ずるきめこまかな注意をすることによって初めて成果をあげるように実は思っておる次第でございます。
  400. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 多田君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後六時三十一分散会