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1965-12-26 第51回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十六日(日曜日)    午前十時二十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十二月二十六日    辞任          補欠選任      日高 広為君     徳永 正利君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 二木 謙吾君                 吉江 勝保君                 米田 正文君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 小山邦太郎君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 徳永 正利君                 林田 正治君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 横山 フク君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 北村  暢君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中 寿美君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 藤田藤太郎君                 村田 秀三君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 春日 正一君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  上原 正吉君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     瀧本 忠男君        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        総理府人事局長  増子 正宏君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        行政管理庁行政        管理局長     井原 敏之君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        防衛施設庁施設        部長       財満  功君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省管理局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        文部政務次官   中野 文門君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省初等中等        教育局長     齋藤  正君        文部省管理局長  天城  勲君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生大臣官房会        計課長      戸澤 政方君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若林 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        厚生省援護局長  実本 博次君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農政局長  和田 正明君        林野庁長官    田中 重五君        通商産業大臣官        房長       川原 英之君        通商産業省通商        局長       渡邊彌榮司君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省公益        事業局長     熊谷 典文君        中小企業庁長官  山本 重信君        運輸省航空局長  佐藤 光夫君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設大臣官房会        計課長      多治見高雄君        建設省河川局長  古賀雷四郎君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        建設省住宅局長  尚   明君        自治大臣官房長  松島 五郎君        自治省行政局長  佐久間 彊君        自治省選挙局長  長野 士郎君        自治省財政局長  柴田  護君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2  号)(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)、昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2号)、  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に続き質疑を行ないます。小林武君。
  3. 小林武

    小林武君 昨日はちょっと先を急ぎましたので、終わりのほうがどうも締めくくりがつかなかったのでありますが、これはまあひとつ、きのうの続きをやることは避けまして、きょうの問題に入るわけでありますが、それにしても公務員給与の問題は、他の労働者労使の間に起こるところの問題とは切り離して考えられないことは、大体御理解いただいたと思うわけでありますが、そうしますというと、労働問題が、いろいろな面で不況下に激発的な争議やあるいは紛争を起こすというようなことになりますというと、政府使用者の側である公務員労使関係というようなものは、私は相当日本全体の労働問題の立場から、少なくとも近代的な、だれからも納得されるような労働行政というものが考えられなければならぬ。そういう角度からお尋ねをいたすわけでありますけれども、先日この本会議の席上において、安井総務長官が、人事院勧告についてこれを実施するのは義務ではない、こういうお話答弁があった。義務ではないということになった場合、これは私は人事院制度そのもの代償機関としての人事院制度に、もう一ぺんやはりわれわれが実態をつかむような究明をする必要があるのじゃないかと思います。そこで、私はとにかく労働者の側からは、労働者の基本的な権利というものも召し上げられておるわけでありますから、そのほうは召し上げられておるけれども勧告があっても実施するのは義務でないということになるとどういうのかという問題が残ってくる。その点について代償機関としての人事院、この勧告一体どうなければならないものなのか。義務でないとしたら、これは代償機関なのかどうかということについて、私は総理府総務長官並びに人事院総裁にその点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  4. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 人事院というものの存在は、公務員のいわゆる労働関係の保障をするために置かれておるということには一向変わりはなかろうと思います。私が申し上げましたのは、人事院勧告というものは、御承知のとおりに、国会及び政府に対して、人事院公務員給与ベースについての見解勧告するものである。それに対して法律的な義務づけを政府が制約されておるもんじゃありません。しかしながら、そういうものがあるなしにかかわらず、そういう公務員関係の地位を人事院が保障するというたてまえから勧告をしておるのでございまするから、そういう法的義務があるなしにかかわらず、そのたてまえを十二分に尊重をして処理すべきものと心得ておる、こういう趣旨で御答弁をしたつもりでおります。
  5. 小林武

    小林武君 そこらのですね。勧告というものは法的な義務づけはない。これは法律的な面からいっていろいろ究明していった場合に、そういうことが言えるか言えないかということは、これは別段ここで議論する気持ちはない。法的にそれがいいか悪いかといって議論していったところでこれはしようがない。ただ勧告をされたら金がもらえるのかどうか。これはこの前の場合にも私は質問をしているのですが、何月から実施されたということになると、何月から実施されたということ、これは計算される。月に幾らで、一体何カ月分、こうなるわけです。勧告はその総額に対しての勧告なんです。それを一体値切られていくというような場合、五月から実施するというのを九月から実施されたといったら、これはたいへん値切られた。五、六、七、八と、こう四カ月値切られた。これはやはり労働者側としては承知できないことになると思うのですね。だから、そう簡単に尊重というのは、とにかくその中の部分的な支払いをやればお前らは文句を言うなと、こういうふうに考えられて総務長官おられるのかどうか。これは法律がどうだとかこうだとかということで、労使の間でこれは団体交渉その他によってとらるべきものなんです。この労使の間できめられたことが――きめられたら最後ですよ。あとでそいつをほごにするというわけにいかないのですから。それのかわりとしての代償機関が、こうやったらどうだということを勧告した場合、私はそこらのところがはっきりしていないものだから、両者の間では常に不信感が燃え上がっておって、非常に、まあいわば日本労働運動にいろいろな影響を及ぼす政府やり方自体に問題があるんだ、政府自体労働者に対する扱いを知らないようなやり方をやっておると、こう言われるわけですから、私はILO条約も批准されて、労使の間に、政府の労働問題に対する考え方がだんだんいまよくなりつつあると、こういうふうに善意に解釈しているんでありますが、そういう時期にこの問題がいつまでも残るということはちょっと問題だ。あなたのほうでは、それはしかし当然だとおっしゃるのですか、どうですか。
  6. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 勧告を十二分に尊重したいという政府気持ちは、でき得るも一のならばこれは、勧告どおり実施を何とかやりたい。こういう熱意を持っておることに間違いはないんであります。しかし、御承知のように年度途中で千億に近い国、地方を合わせましての財源補てんでございます。これにはなかなか諸般の事情から思うようにこなせない。これはまことに申しわけないが、どうしてもそういうふうにいかない場合があり得るという点でございます。ことにことしの九月実施というのは、時期につきましては最後総理の裁断できまったわけであります。例年の財政状態に比べましてことし九月にきめるというようなことは、これは非常な決意を要したことじゃなかろうかと思っておりますので、そういう点についても御了解を賜わりたいと思う次第であります。
  7. 小林武

    小林武君 ちょっと人事院総裁にお答えをいただく前に、一言だけ先ほどのあれにつけ加えて申し上げたい。総裁はいまの質疑をお聞きになったと思います。大体これは政府考えとしては、勧告があってもこの勧告を額面どおり実施しなくても、これはけっこうなんだという考え方があるのです。これは法的にも規制されてないのだからいいのだ。それに総裁も御存じのように、ことしで六回、一ぺんも勧告どおり実施されたことがない。まあ二へんでも三べんでもやってですね、ことしは特殊な事情があってやれませんでしたというなら、これは労働者のほうも、これはまあ一ぺんくらいしかたないというかどうか知らないけれども、これはまあ納得までいかぬでも、これはしかたないのかなということなるかもしれない。しかし、いままで全然やられたことがないということになりますと、これはちょっと勧告というものに対して私どもは再検討しなきゃならぬと思うのですが、あなたは代償機関として、いまのような政府見解に立った場合に、これはどうですか、代償機関と言えるのかどうか、労働三権を完全に召し上げておいてやるところの政府としては妥当なのかどうか、これひとつあなたの率直な御意見をお伺いしたい。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お答え申し上げます。ただいまお話に出ておりますように、公務員労働基本権を制約されておる、そのかわりの一つ機能として人事院給与に関する勧告その他の権限を与えられておるわけであります。したがいまして、その意味でこの給与勧告代償的機能と申し上げてよろしいと思います。ただ代償的機能とは申しましても、人事院が独自に給与法を決定する、とことんまでの権限はございませんので、それは御承知のように国会に対して御勧告申し上げ、あわせて政府に対しても御勧告を申し上げて、その完全な実施をお願いするという立場にありますために、この勧告とそれらの最高機関その他の機能とが合体して真の代償機能はそこに果たされたということになる、そういう筋合いのものだと思います。しかしながら、過去の現実は遺憾ながらこれが完全なる形でわれわれの勧告が実を結んではおりません。その点についてはきわめて遺憾なことと考えております。
  9. 小林武

    小林武君 私はここで労働大臣にちょっと御見解を承りたいのですが、まあ波乱の起きないようなというとはなはだ悪いのですけれども労使間においてある程度の話し合いができて、ものを進めていくというようなかっこうからいって、一体どうですか、勧告があってその勧告どおり実施されないということですね。これはたとえば団体交渉が行なわれて、団体交渉で妥結されたことが実施されないということと私は大体同じようなことになると思うのです。一体こういういき方に対して、労働行政をあずかっているあなたの見解としてはどう思いますか。これはやむを得ないということになりますか。
  10. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 人事院勧告政府がどう扱うかという点につきましては、先ほど来、総務長官からも御答弁申し上げておりますとおり、政府は原則としてこれを尊重して完全実施を期するということは、これは法律的にはいずれにいたしましても、労働行政という面からいたしますならば、むしろ当然のことであろうと私もさようには考えております。ただし、ただいま人事院総裁からもお話がございましたが、人事院勧告は単に政府に対してのみなされるものではございませんで、政府国会両者に対して行なわれるものであります。またこれをILOあたり見解によりましても、公務員給与というものは法令によって規定をされておるのでありますから、人事院勧告そのものが厳密な意味においてのいわゆる代償機関――争議権等を剥奪しておるものに対する厳密な意味での代償機関とは解しておらないようであります。しかしながら、それは先ほど来申しますように、人事院を設置しました理由からいたしまして、政府はその勧告をできるだけ尊重すべきである、原則的には尊重してやるべきであるという考えはもちろん私どもも持っておるわけであります。
  11. 小林武

    小林武君 私は重大な問題だと思うのです。ILOは、一体日本のこの人事院というようなものを代償機関として認めないというのはどこに書いてあるのです。ドライヤーの勧告でさえも、そういうものについては実施しなさいということを勧告しているじゃないですか。一体認めないというようなことはどこに書いてあるのですか、重大ですよ。
  12. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 私は、ですから厳格な意味においてと、こういうことを言っておるのでありまして、要するに、公務員給与は終局的には法律によってきめられるべきものである、法律をきめるのは最終的には国会であると、こういうことに筋道は、理屈はそうなるのでありますが、しかし人事院を設置した理由に基づいて、政府はそれを極力基本的には尊重すべきであると、こういうことを申し上げておるわけであります。
  13. 小林武

    小林武君 それではあれですか。労働三権をとにかく制約していると、それについての厳格な意味代償機関というのは何ですか。そういうものはどっかに例はありますか。
  14. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 厳格な意味代償機関というのは、勧告が出ましたならば、何がなんでもそのとおりやらねばならぬと、こういう意味で私は言っておるのであります。
  15. 小林武

    小林武君 それではあれですか。人事院というのはやってもやらぬでもいい、そういう機関である、こういうことになりますか。
  16. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) いや、決してそういう気持ちじゃございません。その点も先ほど来再三申しておりますように、基本的には、それを完全実施するように政府としては努力すべきである、こういうことを申し上げておるのであります。
  17. 小林武

    小林武君 それでは人事院総裁お尋ねをいたします。あなたは、いまの代償機関――厳密とか厳密でないとかいうような議論がいまされておるわけです。当事者であるあなたの御意見をひとつ伺いたい。
  18. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど私が申し上げましたように、われわれ人事院は、代償機関だと考えております。それは一面において内閣からも独立したという形をもって、いわゆる中立機関として一つの特異の合議体を形成しておるわけであります。そこに中立的な立場からの代償的な公平な機能が期待されておると思うわけであります。したがいまして、その人事院の行ないました勧告は、一応これは公正なものだとお認めいただいて私はしかるべきものだと思うわけです。それを極力尊重していただきたい、こういう筋合いになると思います。
  19. 小林武

    小林武君 おかしい。一体政府は、代償機関だと人事院はそう言っている、人事院総裁がそういう答弁しているのに何で代償機関でないと、こういうのですか。どういうわけなんです。そういう一体答弁はおかしい。
  20. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ですから、私は先ほど来申しておりますように、人事院勧告なるものが、政府あるいは国会をも拘束するのだという意味においての、それだけの、何といいますか、そういう性格のものでありますならば、厳格な意味においての代償機関でございましょうが、とにかく現在のたてまえはそうなっておりません。そういう点を申して私は厳格な意味では代償機関ではない、そういうふうに申し上げておるのであります。極力これを尊重すべきだということは、もう人事院を設置した意味において、またそれが公正なものであるという、政府もそう認めておるのですから、ですからそういう意味においては代償機関とも言えるでありましょうが、先ほどから申すような意味においての、拘束力があるのだという意味においての、そういうことを意味して厳格な意味での代償機関とは言い切れない、こういうことを申しておるわけであります。
  21. 小林武

    小林武君 総理大臣お尋ねいたしますが、さっきから厳密な意味とか何とか盛んに言われておりまして、人事院総裁は、これは代償機関だと、こう言っている、総理大臣はこれについてどういう一体見解をお持ちですか。私は納得がいかないわけなんです。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。ただいま大事な議論をしていらっしゃるのを横で聞いておりまして、実は私はあまり人事院総裁労働大臣との答弁食い違いがあるようには感じなかったのでありまして、それぞれの立場においてそれぞれ申し上げて、これは同じようなことを言っている、ただ見方が、それぞれの立場において表現のしかたがやや違っている、かように私は思っております。私自身はこの人事院が設立された当時からのいきさつをよく知っておるのでありまして、ただいま人事院総裁の言われる、中立的な公平な立場において人事院勧告をする、こういう制度を導入したそのときのいきさつもよく知っておりますので、人事院総裁の言っておることはよくわかります。また同時に、労働大臣の言っておることも、ただいま申し上げるように、これで、勧告があったら直ちにそれがそのとおりの効果を示すのか。そういうものじゃないのだ、これは結局法律できまるのだ、こういうことを私は言っておるように思いますので、そこらに、人事院政府並びに国会に対して勧告をする、こういうところの意味があるように思った次第であります。どうも食い違いが、小林さんの言われるように対立しておるようにお考えになることはないのじゃないか。ことに労働大臣自身が、政府ではございますが、これは政府を代表したいわゆる資本家的立場で申しておるのではなくて、労働行政そのものがもうすでに中立的なものでございますから、それらの点では誤解のないように願いたいと思います。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連。私はいまの人事院の果たす機能について、いかにあるべきかという問題について総理労働大臣に質問をしたいと思うのであります。一九一九年にILOができて、そうして一九三八年に脱退して、そうして改めて五一年に加盟した。日本は今日常任理事国としてこのILO十二カ国の中の一つの柱となっている。ILOがいつも唱えているように、労働者を保護する。そうしてもっと極端な言い方をすれば、労働を通じて生産が上がって人類の幸福に達する。先日批准された結社の自由、団結権の擁護の条約もその一つであります。団体交渉を守る九十八号条約も労使間の問題の一つであります。問題は、世界のあらゆるところの貧乏が世界の繁栄の障害になるという、一九四四年に改めてその宣言をして労働保護というものを強く打ち出しているわけであります。日本法律を見ても、基本法である憲法に労働三権が確立されている。基準法の二条には、賃金、労働条件は労使が対等の立場できめるということを明確にしているわけであります。ところが、公務員には団体交渉すら認めていない。国家の事業の国鉄や電通には団体交渉協約までは認めているけれども、その三権の一番大きな柱である労働権も認めていない。公益事業、一般、民間というように四つの段階があるわけであります。憲法で三権を確立し、賃金というものは世界の水準に達しているとして、基準法の二条で賃金、労働条件は対等の立場できめる、こういうのが日本労働関係の原則だと私は思うのです。それにもかかわらず、公務員はスト権をはずして、そしてその代償機関として人事院というものが生まれてきた。いま、労働大臣意見を聞いていると、国会でチェックされるものだから云々という話があるわけであります。本来の姿にかえって、スト権を取り上げるというなら、完全な代償機関という、法律人事院機能を確立すべきである。それが原則であるはずです。あなたのおっしゃるように、一応代償機関らしいものをつくっておいて、いつでも多数党によって国会でチェックするというなら、代償機関じゃない。このことを労働行政を担当する労働大臣が率先してここで発言すべきがあたりまえなんです。そのことを代償機関で完全に、人事院勧告が完全であろうと不完全であろうと――不完全ならば社会的問題が起きます。そういう中立的な立場できめたものを完全に実施するのだといって、あなたがここではっきり代償機関を成立しなければいかぬということをはっきり言わない限り、労働行政というものは何の方向に向いているかということを疑わざるを得ないのです。先日もドライヤーがまいりまして、日本代償機関らしいものがあるけれども、スト権を、労働三権を取り上げておって代償機能を果たしていない。まずこのことから直すべきだという、ドライヤーがあの長時間かけてあらゆる問題に触れていますけれども、一番大きい問題は私はそこだと思います。そのことを無視するようなことを労働大臣考えていていいのかどうか。私は心して考え直してもらいたい。そういうことではわれわれは納得できない。小林委員も言われているように、実際の代償機関としての役割りを人事院が今日果たせないから、代償機関としてりっぱに果たせるように法律改正をあなたが率先してやるべきじゃないですか。それを五月からやって国会で九月か十月という発表をして、尊重すると言いながら、そのやっている行為は何たることですか。国際的な関連の中において、日本の法体制の中において、そんなことをいつまでもやっていていいのかどうかということをまず第一に反省するのが労働大臣じゃなかろうかと私は思うわけでありますが、見解を承りたい。総理労働大臣に。
  24. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 私は藤田先生の御意見、大体そのとおりに心得ておるのであります。ただ、先ほど来申しておりますことは、現在の人事院勧告、現在の制度のもとにおける人事院勧告というものは、こういうことでありますということをそれは申し上げておるのでありまして、しかしながら、私は労働大臣という立場におきましては、あくまでもこれを完全実施すべきものであると、こういう立場から強く今回の勧告につきましてもそれを主張してまいったのであります。でありますからこそ、先ほど総務長官からも申し上げましたとおり、関係閣僚の打ち合わせだけでは結論に達せずに、最終的には総理の裁決によりまして今回のような決定に至ったのでありまして、私は人事院勧告はあくまでも、少なくも労働大臣立場においてはこれを完全実施してもらいたい、すべきである、こういう考えに立っておることは、もう先生と全く同じでございます。今後この制度をどうするかということとは、またおのずから別個の問題でございまして、この点につきま  してはもちろん私一存にはまいりません。しかし、そういう方向にいくことは私の立場からすればきわめて望ましいことである、かように申し上げます。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤岡君のお尋ねにお答えいたしますが、国家公務員の地位というものは、憲法十五条でちゃんと明定しておるように、これは一般のいわゆる労働者とは違う立場にあるわけでございます。この点はよく御承知おき願わないと、ただいまのILOの条約批准からもたらされるこの議論にいたしましても、議論の進め方が私は違うだろう、これは申すまでもなく、国家国民に対する、国家全体に対する奉仕者である、こういう地位で国家公務員はあるのであります。しかしながら、奉仕者てあって、これが代償――これの地位その他が擁護されないということはまことに遺憾だ、国民そのものが使用者だと、かような立場でございますから、いわゆる人事院というものができ、そうしてこれが先ほど来申すような公平中立な立場勧告をすると、こういうことになるわけであります。だから、この公平な立場勧告するそのものが尊重されなければならない。このことはもうもちろん申すまでもないところであります。私どもはそういう立場でこれを取り扱っておるというのでございますから、先ほど人事院総裁の話をするところも、私もどのお答えしておることも矛盾はないように実は思うのであります。ただ、今日ILO条約を批准いたしました結果、この公務員の地位等につきましてなお研究する問題が残っておるように思う。かように思いますから、今回、公務員制度審議会等を設け、そうして公務員の地位についての労働関係を主としての、この地位の確保といいますか、そういうものもあらためてつくろうじゃないかというので、ただいま審議会が設けられておるわけで、これは前国会も――臨時国会前の通常国会における取り扱いでございますが、その関係はよく御承知のことだと思います。私どもそういう方向で一そう努力いたします。ただいまのところは、これはまことに不十分な状態にあるというこのことは、皆さまのおっしゃるとおり、御指摘のとおりでありますけれども、国家公務員がいわゆる民間における労使関係、そういう関係に立ってのいわゆる政府が雇用者だと、かような意味での非難はあたらない。こういうことを実は申し上げたいのであります。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのいまの総理の発言ですが、いまここで言う小林委員の問題にしているのは、人事院というのは労働三権実施していない。そこで労働者が労働力を、公務員法というものに公務員の地位が規定されていますことは私は百も承知であります。しかし、働くだけ働かして、あとはどうでもいいというわけでないから、そこで、私はこういうあいまいなものは反対であります。三権確立がたてまえでありますけれども公務員制度という中で、人事院というここで給与、労働条件をきめるということになって、そうしたら三権を取った代償機関であるということが明確にならなければならぬと私は思うのです。労働大臣気持ちは同じだけれどもというお話がありましたが、それならこの人事院というものは完全に代償機関としての機能を果たすという代償機関であるということを認識の中に明確にしていただかない限り、そのところがくずれるといろいろと議論が出てくるわけであります。このことを私は明確に労働大臣にはしていただきたい。  それから総理大臣には同じことでありますけれども、その前段の総理が言われたことはよく承知しておりますけれども、この公務員労働者の生活、労働条件を守って、より再生産という道を行くのには、少なくとも今日の法律体系の中では、中立的な人事院勧告というものは、三権を取り上げた代償機関として一〇〇%動くということでなければいかぬと私はそう思う。そのことをお尋ねしているので、もう一度御意見を承りたい。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  もう先ほどからいろいろ申し上げておるとおり、人事院勧告というものは、ほんとうに誠心誠意これは尊重していかなければならない。形だけ、あるいは文字だけの問題ではないということをよく私も承知しております。
  28. 小林武

    小林武君 どうも総理お話を聞いても労働大臣見解を聞きましても、これはやはり形式論ですよ。人事院がこの勧告をやって、とにかくこういう形になってから六回やられて、どのぐらい一体値切られたかというと、労働者側は二千億と、こう言っていますね。私は二千億というから、あんまり膨大なので実は計算してみたのです。やっぱりそのとおりです。六回ですから。今度の勧告をごらんになっても、五、六、七、八と四カ月、これはもう目の子勘定やっても大体そのぐらいの金になるということ、どうして一体そういうことになるのかということは、これは不満として当然残る。そういう問題のことがひとつも考慮されていない。それから先ほどから議論されているのですが、その前に私は聞き拾てならぬと思うが、労働大臣、この一項だけを初めに聞いておきたい。ILOは、日本のあれは代償機関でない、こういうようなことを認めていないというようなことを何でそれを発表しておりますか。どこにそれがあるのですか、それをお聞きしたい。代償機関でないということは、先ほど一体法的にも労働者の権利の問題からも必守しなくていいとかいう、それをILOが認めたということになると、私は重大な問題になると思うから聞いておきたい。
  29. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 私が先ほど申し上げたのは、あるいは申し上げ方が適切でなかったか存じませんが、ILO人事院代償機関でない、こうはっきり言っているわけではないのであります。それは要するに、給与等の勤務条件が法律で定められておるものについては、必ずしも代償機関というものを問題にしておらない、こういう考えであるということを申し上げたいのであります。どこでどういう場合にどういう形で、人事院代償機関でないとILOが言ったという意味ではないのであります。
  30. 小林武

    小林武君 ちょっとおかしいのだ。ILOの問題を取り上げて議論する場合は、ドライヤーが来て、そうして労使間におけるいろいろな不信感がある、これを払拭しなければいかぬ。そういう角度からいろいろ調査もし、彼らの意見も述べておる。その中であなたのおっしゃるのは、あれでないですか、代償機関としての機能を果たしていないという意味の発言があったということをおっしゃるのじゃないかと私は思うのですが。とにかく日本のあれは法律で規定されているのだから、だからこれは代償機関として認めなくてもいいのだ、人事院勧告は、端的に言えばたいした実施の責任は政府にはないのだ、こういうことを言うはずが私はないと思うのですがね。だから、あなたがさつき言っていることは、そうたいした責任がないのだ。安井総務長官の話によれば、これは法的義務がないと突っぱねられた。やらぬでもけっこうだ、そういうような意図で言っているのじゃないと思う。そうでないとしたら取り消してもらおう。そうでないと速語録にそういうことが残るとたいへんだ。
  31. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ただいまも申しましたように、先ほど私が申し上げたことがあるいは表現が適切でなかったかとも思いますが、ILOが積極的に人事院というものは代償機関でないのだとか、そういうことを言っているという意味で決してないということは、いまも申し上げたとおりなんであります。
  32. 小林武

    小林武君 取り消しますね。
  33. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 前の表現が間違っておりましたら取り消すのにやぶさかでありません。取り消します。
  34. 小林武

    小林武君 これは取り消せば、私はあまりそんなことはこだわらない。  それでは安井さん、何か言いたそうだったが。
  35. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いや、私の発言でいろいろ物議をかもしましたことは、たいへん恐縮でございますが、私は最後総理が説明されたことで尽きておるのではないかと思うわけであります。いま言われましたとおり、公務員に労働条件上の規制があることは、これは当然の措置です。しかし、そのために、それを保障するためには法律、法令をもって公務員の地位、身分を保障しておるわけであります。しかし、それが正しいかどうか、あるいは改善を要するかどうかといったような意味で、代償措置等をやる機関として人事院があるわけであります。しかし、これはあくまで勧告でございまして、それを尊重して最後にきめるのは国会である、またそれの方針をきめるのは法令である、こういう趣旨であると思います。ILOの精神、あるいは言っておることもまさにそういった言い方をしておると思っております。
  36. 鈴木強

    鈴木強君 関連、一言……。
  37. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) なお、御注意申し上げますが、関連質問はできるだけ簡潔にお願いいたします。
  38. 鈴木強

    鈴木強君 簡単にやりますが、これは非常に重要な点ですから、私はあえて時間をいただいたのです。佐藤総理もいま御発言ございましたけれど、当時のいきさつを知っておる総理としてはちょっと私は解せないのです。というのは、公務員が国民全体の奉仕者であるということはこれは当然ですね。しかしながら、その奉仕者である公務員に対して、昭和二十三年のあの公務員法の改正まではストライキ権と団体交渉権は明らかに賦与されておった。ところが、マッカーサー書簡に基づく国家公務員法の改正によって二権は取られたわけですね。ですから、安井さんの言うように、国実公務員労働運動上の制約をするのは当然だという、そういうものの考え方がおかしいというのだ、ぼくは。いいですか、本来労働者に対して基本権というものが与えられていること、三権が与えられるということが原則であって、そういう時代が日本にもあったわけです。ですから、そういうよき慣行を労使間においてお互いに奉仕的な立場においてやっていくということは、これは労使とも考えなきゃならぬ。しかし、たまたま二・一闘争というものがあってストライキ権の行使をやったところで、ああいう制約が出てきたわけです。ですから、そういう意味合いの経過的な話ならば私もわかりますが、だから、明らかにその当時のストライキ権にかわるものとして人事院が設けられた。これは代償ですから明らかだ。代償であるものが勧告するものを、予算編成権を持つ政府の手によって実際に実行できなかった、十七年間も。そういうところに国家公務員の不満があるわけですから、小林さんのおっしゃるように、たっだ一ぺんでも二へんでもこれがやられておれば、これは政府立場もよくわかりますけれども、そういうことがないために今日紛争があるわけですから、私は公務員制度審議会等も持たれて、労働問題の基本権等もせっかくいま審議をする段階でありますから、いま小平さんの言うように、もし代償機関というものが給与法まで改正をし、そしてその給与法によって予算が直ちに出せるようなところまでいくという意味における代償機関――これは代償機関の定義が違うわけです。ですから、そういうことであれば――それがないなら、これは小平さんの言うように、そういう方向にやはりやって、ストライキ権を奪ったならば、少なくとも第三者機関として公平な立場に立ってやる人事院の結論というものは、必ずこれは政府尊重していく、実行していくのだということにするか、あるいは法律的にそういうことにするか、一歩前進していきませんと、これはやはり国家公務員の労働問題というものは私は解決しないと思うのです。そういう前向きに立って総理か御発言なさったと思わぬし、また労働大臣もそうですし、安井長官のごときは全くそういう当時の意見を無視して、制約するのは当然のごときことをのたまう。これはちょっと私はおかしいと思う。ですから、そういう点をひとつ総理からももう少し、経過を知っておる総理ですから、私は前向きな考え方をお聞きしたいと、こういう意味でお伺いしておる。
  39. 北村暢

    ○北村暢君 関連、同じ問題だから。  私も鈴木さんの意見と同じですけれども人事院代償機関であり、その人事院勧告が代償措置である、これはもうはっきりしている。したがって、政府は特別な理由のない限りは、これを当然の経費として予算編成をする義務があると、私はそう思っている。それを法律的な拘束力がないとか、あるいは国会にもかけておるのだから国会の意思にもよるというけれども、これは第一に政府は代償措置としての当然の経費として組む義務があるのですよ。それをいままで一回もやったことがない。ことしは財源も苦しいからこれはやむを得ないというのなら、まだ理屈はわかるが、自然増収が二千億、四千億あった当時ですら組まないのですよ。これは組んでいない。したがって、過去の五年なり六年なりやらなかったというこの事実に基づいて、ドライヤーは、せっかくの人事院代償機関としての機能を発揮していない、どうしても機能を発揮しないというのであれば、何かこれは根本的にやはり考え直さなければならぬ欠陥がある、こういうことなんですよ。  それで、いま公務員制度審議会でこれを一体どうするかということを検討しようというのでしょう。ドライヤー委員会の勧告のあった後とそれ以前とでは、私は政府のものごとの考え方というものが反省の色なり何なりというものがなければならない。若干これは私は、橋本官房長官寝たようなかっこうをしているけれども、今度の交渉をしてきた結果において、その考え方が直ってきているということを聞いているのです。ということは、これは当然経費として組むべきだ、しかし一気にこれを全部五月実施を、いままで十月というのを五月実施に一気にいくということじゃいけないから、二年計画か三年計画でこれを守る癖をつけなければならない、政府の悪い癖だったとこれはよく反省しなければならない、こういうことを橋本官房長官は言っている。だから、政府の態度がそういうふうにならなければいけない。当然の経費として守られなければいけない。それは給与担当大臣なり労働大臣が、五人委員会で主張をした。これは主張をしたことはわれわれも知っている。ところが、総理の裁定で主張されたことがいれられておらない。いれられておらない段階において、私はやはり問題がある。このことを私ははっきりすべきである。それで、代償機関としての人事院というものの機能を発揮しないというならば、これはやはりもとに返って、やはり正規の団体交渉権を認めて賃金を確定するという藤田君の論理に返っていかなければならない筋合いのものである。こういうことをはっきりして答弁していただきたい。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お二方にお答えをいたします。  ただ、お二方では、だいぶ違う点のようでございまして、最初は同じかと思ったら、違っておるようです。北村君からは、今回は政府の処置がほめられたのかと思ったら、しまいにはまたしかられた、こういうことでございますから、これはだいぶ違うようですが、私は労働関係は、皆さん方に私から申し上げるまでもなく、まず三つに分けて考えられるのじゃないか。ただいま国家公務員の場合の問題をどうする、どう処置する、また公共企業体の場合にはどういう処置をする、また民間の場合にはどういう扱い方をする、こういうように大体分かれておるように記憶するのであります。  そこで、ただいま問題になっておるのは、その考え方はおそらく同じ基準に立って労使双方の関係できまるのだという、そういうたてまえでございましょうが、それが労使双方できめるという慣例のきめ方は、民間の場合にこれがある。しかし、ゼネラル・ストライキなどになるとなかなかそうもいかないので、これにつきましてもそれぞれ仲裁調停機関などがある。そうして公共企業体の場合もこういう救済方法というものがあり、そうしてその場合にそれの扱い方について予算上あるいは資金上問題がある場合においては、どういうように扱うかという規定までがされておるのです。ところが、公務員の場合におきましては、人事院勧告だけで、それらのその他の規定がない。これはもう皆さんが専門家だから、皆さんのほうがよく御承知のことだと思います。  で、いわゆる人事院勧告というものが、そこではそれじゃどういう性格を持つかということがただいま議論になっておる。これにつきましては、国会並びに政府がこの人事院勧告尊重しなければならないという、これは制度のたてまえからかように考えられるので、私どももしばしばそのことを申し上げてきておる。どうも政府は口先ではさように言っているが、そのとおりやっておらないじゃないかというのが、ただいま皆さま方からおしかりを受けておる点なんです。この点について、しばしば申し上げるのは、いわゆる予算上の編成の時期なり、あるいは人事院勧告の時期なり等において、非常な食い違いがある。そういうようなことで実施がなかなか困難なんだということを技術的な面からの説明をしたり、あるいは財源的に年度の途中においてそれだけのものを確保することが非常に困難だというような説明をいたしておるわけであります。したがって、これらの経緯については、よく百も御承知のことだ。今回ILO条約を批准したその結果、この人事院勧告人事院制度そのものだけではどうも労使関係において不十分なものがあるのではないだろうか、かような疑念が一方で出てきておる。かような意味で、公務員制度審議会を設けて新しくそういう点についてさらに審議をしよう、こういうことをただいま申しておるのでございます。  このこともよくおわかりだと思いますから、私は重ねて申しませんが、この公務員制度審議会もそろそろ終末というか、期間が来るような時期に来ておりますので、どうしても早くその結論を出していかなければならぬと思います。これは私ども立場と、また皆さん側の立場では、ずいぶん議論がかけ離れていると思いますが、これは必ず、しかし、お互いにりっぱな全体の奉仕者としてのその地位が保てるように私ども考えていかなければならないと思いますから、どうかこの審議会を通じまして十分の意見を述べていただきたいし、また、この審議会には中立的な委員もいることでありますから、中立的な考え方で公平妥当なものが必ず見つかるだろう、それを私どもも実は期待しておるような次第であります。  まあ先ほど来いろいろ御議論がございますが、私はわかりやすい、また百も御承知のことを重ねて申したのですが、やっぱり簡単に労使関係と一口には申しますが、まあ三とおりくらいに分けてそれぞれの救済方法なりがあることをひとつ御承知おき願い、またそれも思い起こしていただいて、新しい全体の奉仕者の公務員はいかにあるべきかというようなことについて特に考えてみたい、かように思います。
  41. 小林武

    小林武君 あまり私はいまの総理の御意見には感心しない。というのは、三つに分けられるというのは、それはわかっておる。三つに分けられて、それぞれの立場に置かれている。そこで、これはまああなたたちのほうの考え方でそうなっていると思うが、公務員でも、あるいは公共企業体の労働者であろうと、民間であろうと、労働者というものは元来差別を受けるべき性格のものでない。しかし、法的に規制を受けているから、だから法的な規制を受けたことによって一体賃金などで損をするとか、あるいは労働条件などで損をするというようなことをしないようにしてくれるのが代償機関の役目なんですよ。そうでしょう。だから、同じ政府の、あの場合でも、いま総理がおっしゃれば、たとえば公共企業体は昭和三十四年から毎年四月一日実施なんです。これは守られているでしょう。公務員の場合並びに地方公務員の場合はどうしてこの差をつけられなければならないか。これは人事院勧告というものが、いつでも公共企業体よりかも損のような勧告を受けている。しかも、勧告を受けてそれが完全に実施されないというところに問題点があるのじゃないですか。それをわれわれは言っているのです。そういうことでは困りますと、こう言っている。だから、公務員、公共企業体、民間というようなものについて差をつけられることは困ると、こう言っている。私は、ただしいまの制度を全面的にけっこうだとは思っておらない。しかしながら、いまの制度というようなものを完全実施するという点で、いま同じ土俵の上でものを言っている、ぼくは。将来のことについては公務員制度審議会のところで大いに議論する。それは当然です。  そこで、私は、先ほど来から言われているのですけれども国会の意思のことを言われているのですね。国会の意思ならば、三十九年の十二月十六日、これは参議院です。衆議院は三十九年の十三月十七日。内容は、大体まあ決議は同じものですから、参議院の場合のことを読み上げますというと、「人事院勧告実施時期が今後完全に尊重されるよう、政府は財政上の措置に最善を尽くすべきである。」、これは満場一致でやった、両院とも。国会の意思はこういうふうになっている。勧告も出ている、あと政府がどれだけの努力をしたかという問題なんです。どうして一体それが実施されなかったのか。私はその点について総理大臣の誠意が示されておらないと思うのですよ。これはどうでしょう。先ほど来言っているのは二千億です。それに、一体公労協の場合には三十四年の四月一日から実施されているという事実がある。こうなりますとね、私はまあ代償機関としての人事院というものは全く機能を果たしておらないのだと。ただし、それに対して公務員の諸君が統一的な行動をとるというと、その弾圧のほうだけはまことに手ぎわよく進んでいく。きわめて私は不合理だと思うのです。一体どうなんですか。総理お尋ねいたしますが、国会の意思もはっきりしている。勧告も出た。もう今後はどうですか、やるというような御意思がありますか、どうですか。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど北村君からも御指摘になりましたが、ことし政府が特に努力したこと、全面的に御趣旨のとおりではないにいたしましても、その誠意の努力のあと、これは一部御承認願えたんではないかと私は思うのですが、ただいま御指摘が重ねてありました。国会の意思もはっきりしておりますし、できることならさようにすべきだと、かように思っているわけです。私は、しばしばそのことが形だけの、またことばだけの誠意ではないのだ、ほんとうにこれと一真剣に取り組んで私どもも何とかしていきたいと、かように思いますが、ただいままでのところ、どうも時期的に私はたいへん問題があると、かように思います。それにいたしましても、補正予算でやればいいじゃないかという簡単な御議論もありましょうが、これなども考えてみますと、こういうことしみたいなその時期にございますから、いろいろ今後われわれの努力といいますか、誠意といいますか、それが十分実を結ぶようにこの上とも検討してまいるということにいたしたいもんだと思います。
  43. 小林武

    小林武君 さらに総理お尋ねをいたしたいのですが、先ほど来、どうも勧告の時期がおかしい――おかしいじゃなくて、時期が悪いから実施できないというような話もあった。さらに、総理の御発言で、十月の二十一日に人事院勧告の時期の変更をする方針を決定したとかなんとかというような御発言があった。これはどういうことですか。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、その人事院勧告の時期について発言したことはございません。これはただいま時期が予算編成と違っておるということを指摘しておりますが、これは中央よりも、そういう点では地方の財政、地方財政を立てる上において非常に困るということが強く要望されております。これはおそらく皆さん方も御承知のことだと思いますが、国の場合もさることですが、地方はもっとむずかしい状況に置かれていると思います。
  45. 小林武

    小林武君 まあ誠意を示して今後いろいろの努力をするというようなことを言っても、たとえば人事院勧告実施の時期について、これは総理がおっしゃらないといえばしょうがないんですけれども、十月の二十一日に公務員の賃金の九月実施と決定された際に、そういう御発言があったということをわれわれは新聞かなんかで見た。こういうことと、先ほど総理も指摘されておりますけれども、そういう点に地方の自治体がたいへんその点を言っているわけです。そうなりますと、これはもういつまでたったって、人事院勧告が完全に実施されるというようなめどが出てこないわけですよ。とにかく国会もそこまでは、とにかく完全に実施しようという決議があっても、最後は結局政府の決意がいつまでもそういうことでつかないものですから、これはもう完全実施というのは不可能なのかどうか、 いまのような状態では。このことについてどうですか。大蔵大臣は金のやりくりするほうの側として一番反対の急先鋒のようなことをときどき聞いているんだが、一体いまのような状況の中では絶対もう実施できないということを、いわゆる財政を預かるあなたのほうの側からいえばそういうことになるわけですか、どうなんです。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことしの取り扱いを審議いたしました状況では、非常にむずかしかったわけです。本国会で公債の発行まで御審議をお願いしなきゃならぬような状態のもとにおいて、これを昨年でもできなかったのを、これをさらに繰り上げるというようなことはとうていできなかった、努力をしたんだけれどもやむを得なかった、かように御了承願います
  47. 小林武

    小林武君 大蔵大臣に重ねてお尋ねいたしますが、財政上の理由でまあできなかったというようなことを言うが、六回やられているわけですから、その間においては相当財源的にも豊富な時期もあった。それでもやらなかったわけです。ただし、そのときあなた大蔵大臣でなかったから、自分は知らぬといえばそれだけですけれども政府はまあいままでの間に誠意というものを一度も見せておらないんだから。  一体勧告というものを実施しなければならないんだと、するのがこれはもう基本の態度なんだと、こういうことになりますと、これはいろいろ考える余地があると私は思うんですよ。まあわれわれからいえば、よく引き合いに出されるんだけれども、証券会社がどうかなりゃ思い切った措置もとると。しかし、労働者の問題だというと、六年間一度もこれに対して政府が決意してやったというようなことが見られないということになると、これはどうも私はおかしいと思う。そういうやり方を今後とも、いまのような状況のもとで私はとられそうな気がするんです。だから、大蔵大臣として一体今後どうなのか、勧告の時期が問題で、大蔵省としては、反対しなきゃならぬのか、あるいはそういう公務員の賃金などというようなものについてはあまり重要視しておらないから、どうしてもいつの場合でも削られていくということになるのか、そこらあたりひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど総理が申し上げましたが、勧告の時期は、私は今日の制度は非常に問題があると、こういうふうに考えます。それは年度の途中で勧告が行なわれるという財政上の問題もありますが、もう一つは、この勧告は春の一般勤労者の給与水準を参考にしてきめる、そういうような関係を持ちますが、同時に、夏勧告を受けるものですから、それが次の春のまた民間の給与につながりを持つという循環の橋渡しをするような関係を持つように思うのです。そういうようなことで、私は、この制度をもっと円滑に動かすためには時期の問題について検討してみる必要あるの、じゃあるまいか、こんなような感じを持っており、また現に何かいい方法はないかという検討も進められておるわけであります。予備費か、あるいは何か給与改善のための措置を、前の年に次の年度のために予算を取っておいたらどうだというような意見があります。しかし、現在の制度では、人事院勧告、これを尊重するというたてまえになっておりますので、その人事院勧告がどういう勧告をするのかわからないような状態において当該年度の前の年にあらかじめ措置をするということは、言われてはおりまするけれども、なかなかこれは困難である。どうも時期の問題、その検討をしてみる必要があるんじゃないか、そんな感じがしております。
  49. 小林武

    小林武君 それでは、いまの大蔵大臣の答弁を結局あれすると、人事院勧告実施というものはまあ困難だということですね、結論的に。いつまでたってもこの問題は解決しないということになりませんか。まあその次の年の民間の賃金にかかわりを持つなんというようなことは、こんなことを言ったら、それはどっちがお先かわからないですよ、人事院勧告というのはいつでも民間のあとをついていくわけですから。だから、ある意味では公務員というのはそれだけ損をしているわけですよ。一年ぐらいずっとあとになる。だから、このあとか先かというような話になれば、これはもうどっちが原因になっておるかわからないでしょう。とかく公務員の賃金がかれこれ目のかたきのようにされて、たとえば日経連においても、賃金の問題を取り上げれば、ことしの場合でも、とにかく総会で決議をして、公務員の賃金なんというまあ自分たちのあまり関係のないことまで、大いに政府に鞭撻的意思表示をやっておる。そういうことはあまり、本来なら私は大蔵大臣はお気にかけないほうがよろしいんじゃないか。そうすると疲れもよけい出るわけでありますから、あまりそんなことと関係なしに、一体これを実施するという技術的な財政的な立場からその検討をする。  そうすると、結局できないということですな、将来、これからは。困難でだめだということですか。そこのところをはっきり言ってください。これからならやれそうだというなら、そう言ってもらいたい。そうじゃなくて、だめならだめだと言ってもらわないと、また来年同じようにけんかしてもしようがない。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 少なくとも本年度の財政状態においては、これが精一ぱいであったということであります。これは財政上の見地のほかにまた問題があるかもしれませんが、しかし、財政の見地からはことしはどうもこれ以上のことはできなかった、これが精一ぱいであったと、こんなふうに考えております。
  51. 小林武

    小林武君 総理大臣にこの件についてもう一度ひとつ御見解をお聞かせいただきたいんですが、まあいままでいろいろ議論しました、関連質問もありましてですね。やはり人事院勧告というものは、人事院総裁の御答弁によるというと、代償機関として機能を果たしたいという熱意に燃えているのだが、なかなかこれが実を結ばない、そういう実情にあると思うのです。そうすれば、これはどうなるんですか。結局人事院のあれはいつでも空振り、いつでも不満が残るということになるのか。新たに公務員制度審議会で新たな道が発見されたら、それにひとつ譲って、人事院は解消するというような意図もあるのか。もうそろそろ私もね、そういう点で政府のはっきりした見解を持つべき時期が私は来ていると思うのですよ。そうしなければこれはもう陰にこもって、ますます私はこの労使双方の間の不信感が増すばかりだと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままあ公務員制度審議会が始まったということでありますし、メンバーもすでにきまっておりますし、また会合も開かれておると思います。そういう際でありますから、どういう結論が出てくるか、しばらくその結論の出てくることに待ちたいと、かように思います。私は、ただいままでのところ、人事院人事院存在の意義を十分果たしていると、かように私は考えております。ただいま御指摘になりますように、五月といいながら、その五月も実施されておらぬから、人事院はもうだめなんだ、こういうようなことも御指摘のようでありますが、しかし、私は人事院勧告は十分尊重され、また今後も政府尊重していくということを明言しておりますし、これをたよりにして、また人事院制度そのものをいま批判することは差し控えたいと思います。また、先ほど来大蔵大臣がお答えいたしました点についても、これはひとり政府ばかりではございません、各方面でいかにあるべきかということについてのいろいろな議論が出ておるのでありますから、そういう意味で完全、実施への努力はなされておるのであります。いままでいろいろの議論が出ておりますけれども、これというまとまった意見に到達しておらないというだけでありますから、私があながち皆さんの御意見を無視しておるわけじゃありません。そういう意味で、さらに検討も続けていかなければならぬ、かように思います。  ただいまとにかく公務員制度審議会が一応の方向をきめるだろう、かように私は思いますので、その結果を待っていただきたいと。また、いい御意見があれば、これはぜひともそれを進言していただきたい。ただいま言われるように、ただこういうたてまえだからこれをやらなきゃならないのだ。ただ、その一方では、実際に、小林君も御承知のように、地方財政なぞが現実に困っていることは百も御承知のことだと思います。人事院勧告が、国家公務員にしても、地方公務員も当然これに準じて扱われるのでありますから、これなぞはたいへんな問題だと思います。そういう点も実行できる案をやっぱり考えてお互いに努力していくこと、これが望ましいように思いますので、さような意味で、私は一方的な政府だけの考えをぜひとも無理やりに押しつけるというような考え方を持っていないことだけは、ひとつ御承知置き願いたいと思います。
  53. 小林武

    小林武君 まあこれ以上、この問題にばかりやっておりましては前に進みませんので、残念ながら、総理の御意見には同調できかねますが、まあここらで打ち切りたいと思います。  最後に申し上げておきたいのは、実行できるような案というようなことは、これはそう、総理、おかしいですよ。百六十万の公務員というのは生活をかかえているのですよ。その生活のできるように、公務員として十分に自分の職責を果たせるような賃金を、結局きめてもらっているのですよ。これはほかの労働者なら幾らくれということなんです。しかし、幾らくれという道が閉ざされている、いまのところ。だから、全く第三者機関、よそさまにそれを預けているようなものですよ。だから、私からいえば控え目も控え目、たいへんな大きな控え目だと思う。人事院というところにおまかせいたしますというような形になっているのです。それが実施されない、六回も実施されないということは、人事院の存在の意義というものについて、疑惑を持つのは当然です。その場合、実行できるとか、やれ政府の財政状況はどうだとか、地方自治体のあれはどうだとか、それはいろいろ問題点はあると思う。しかし、そのこともあるが、それ以上に百六十万人といわれておるところの公務員の諸君の生活の実態というものに目をやっぱり及ぼさなければならない。労働者としての当然の権利はどうするのだということ、このことをひとつお考え願わないというと、これはたいへんだと思うのです。  どうぞひとつ、これは全く対立した意見になりますけれども、私どもは、もし政府もそのことについてお約束をできないならば、労働基本権というのは何も日本の国のやっているようなことが世界の全体のあれじゃないのですから、公務員だってりっぱに労働三権をもらってやっているところがある。イギリスの教員なんというのは、委員会があって、この委員会の決定したものは賃金はぴたっとくるのです。それでも、何年間に一ぺんはストライキをやるというようなことをやっている。そういうたてまえに置かれたところが、不平不満がなくてうまくいっていると私は思う。押えておって、一体それも実施しないというようないまのやり方はお改めを願って、労働三権を返してもらいたい。そうして、その中で堂々とやるというようなことをやらなければ、私は何といっても政府は無責任だ、こう言わざるを得ないのです。その点はひとつそのくらいにしておきまして……。  次に移るのですが、今度は、はなはだ残念ですけれども、不満で不満でやりきれないが、九月実施の問題で、一体これはどういうことになるのですかな。財源は三百六十八億ぐらいが三百億しか計上されておらない。これは地方公務員の場合ですね。これはあとどういうことになるのですか。先ほど総理お話がございましたが、地方財政というものは非常に逼迫しておって、どうにもこうにもならぬということを言っておるわけであります。この点は、もうこれは県の段階においても市町村の段階においても、政府が何とかしてくれなければ困るということを言っておる。そういう際に、実際に六年間も置いてきぼりを食ったような仲間の人たちの中でも、さらに地方公務員というような諸君が一体もらえる者ともらえない者ができるということは重大な問題だと思いますが、この点はどうなりますか。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地方財政はことしは年度の途中で非常な変化があったわけであります。その変化の第一は、国の租税収入が二千五百九十億円減る、こういうことになりました結果、交付税において五百十二億円減少を来たすわけです。  それからもう一つは、国同様に地方自体の固有の税収入が減るという問題と、それからさらに、ただいま問題になっておる給与の問題、中央に準じて地方でもやるということになる結果、交付団体において三百六、七十億の欠陥を生ずる、こういうことであります。それで、この五百十二億の交付税につきましては、これは当然行かなくなるわけでありまするが、しかし、地方の財政を考慮しまして、いま予算で、法律案でお願いしておりますのは、これはそのまま交付をすると、こういうたてまえにしておる。それから、財源、税収入の減少に対しましては、国と同様に公債――地方債を発行する。これは四百億発行するわけです。そういう措置をとる。それで、そのうち百五十億円は資金運用部が引き受ける。それからさらに、給与の問題につきましては、三百億を交付税譲与税特別会計でこれを借り入れをしまして、そうして交付税として交付をする、こういうことにするわけです。  それで、三百六、七十億円の欠陥に対して三百億円というのはどういうわけだと、こういうことだと思いますが、これは国のほうでもこういう状況ですから非常に節約をしておるわけですが、地方においても一何がしかの節約をする、それは六、七十億はいいじゃないか、こういうことで、これは自治体の行政改善ということで調達をする、こういうわけなんであります。まあ大体地方財政あたりで全体としてうまく動く、こういう見通しでございます。
  55. 小林武

    小林武君 自治大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、この地方自治体というのは、いまのような節約によって不足の財源を生み出すということは可能でしょうか、可能と考えてよろしいかどうか。
  56. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) やはり政府も一般管理行政費を一割節約いたしておるのでありますから、地方もそれに準じて節約をしていただくというように考えておるのでございます。
  57. 小林武

    小林武君 自治大臣にお尋ねいたしますが、地方公務員は、それでは今度の給与問題については、十分その節約によって受けられないというようなことがないと確認してよろしいですか。なお、その根拠をひとつお示しいただきたい。
  58. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 非常に苦しい財政事情でございますので、中央におきましても一割節約をいたしております。したがいまして、県及び財政力の比較的あるところは国に準じて一割、財政力がない市町村は六%、こういうような節約をしていただくことは、国と同じようにお願いいたしたいと存じております。なお、公務員のベースにつきましては、これは三十八年でございますが、国を一〇〇といたしますと、都道府県は一〇七・九でございます、国より多いのであります。六大都市は一三四・二、三割四分多いわけであります。市はやはり一〇八でありまして、町村が八七で低いのでございます。したがいまして、低いところには交付税方式によって重点配分をいたしておる次第でございます。
  59. 小林武

    小林武君 自治大臣の御答弁はきわめて不親切な御答弁が多いようですね。もう少し親切にひとつやってもらいたい。私が聞いているのは、公務員の賃金を改定するについて、一体今度の場合、地方自治団体全体に行き渡るかどうかということなんです。そこで、いまのあなたの御説明によるとどうなんですか。全部に行き渡るということの説明の根拠にはならないような数字を並べられたのですが、私はこれについては判断がつかない。だからこの数字のことについては、また後ほど質問いたしますが、一体あれですか、だいじょうぶだとおっしゃるのですか、県の段階でも六大都市の場合でも市の場合でも一町村の場合でもだいじょうぶですと、あなたおっしゃるのですか、どうですか。
  60. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 国家公務員に準じてやる場合はだいじょうぶでございます。
  61. 小林武

    小林武君 これは確信をもってお答えになりましたから、おそらく十分の手を打っておられるものと思いますので、これはあとで間違いのないようにひとつお願いいたしたいと思います。これについての実態はどうであるかなどということは、後ほど議論する時期もございましょうから、そこに譲ります。そこであなた、県の段階はどうで、六大都市の場合は三割四分で高い、市の場合は幾ら高いというようなことをおっしゃって、町村の場合は低いということをおっしゃったが、これは何か意図があってこういうことをやられたのですか。    〔委員長退席、理事吉江勝保君着席〕
  62. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 貧弱町村への交付税方式による重点配分において、公務員ベースに準じてやるというように考えておるわけでございます。
  63. 小林武

    小林武君 これはそれでは高いところに対して文句を言うなどというようなお考えはないわけですね。
  64. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 国家公務員に準じてやるのがたてまえでございますので、著しく高いところはこれに準ずるようにやってもらいたいという考え方でございます。
  65. 小林武

    小林武君 いつでも片手落ちですな。著しく低いところにはというようなことをおっしゃらない。著しく低いところはどうなるかということをあなたはおっしゃらないのですね。低いところが困るのです。高いところに目をつけられて、何か高いところは低くせよという、そういう勧告をされるような、そういうお話は不当じゃないですか。一体地方公務員の賃金というものは、地方自治体とそこの公務員との間で交渉して決定するのでしょう。そのことをなぜ一体干渉しなければならないのですか。準じてということはそういうことじゃないですか。なぜ、そういうことの干渉する根拠は一体どこですか。
  66. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 地方公務員のベースは国家公務員に準じてやるということをたてまえにいたしておるのでございます。したがいまして、低いところに対しては高くなるように交付税方式による配分をいたしておる次第でございます。なお、一般財源の不足等によって公共事業費等がひずみを受けないように、別途財源不足に対しては公共事業費等へ回す関係を、四百億円地方債を増額いたし、あらゆる面において地方財政の困窮を防止することに努力をいたしております。
  67. 小林武

    小林武君 地方公務員の賃金のことについては、地方自治体とその労使の間においてこれは決定すべきで、低いところに、このような状況ではぐあいが悪いから、何とかして手当てをしてやるというようなことは当然だと思う。しかし、高いところにかれこれ言う筋合いはこれは一つもない。そういうことは労働政策のたてまえから言えばよけいなことをやっているということですから、そういうようなことのないように、私のほうから御勧告申し上げておきます。  以上で公務員給与に関係することは終わりまして、防衛庁長官お尋ねいたしますが、これは新聞で見たことなんですけれども、私の持っている新聞は、「自衛隊に戦陣訓」、これは、この新聞の見出し、そのまま信じていいかわかりませんが、自衛隊の戦陣訓といわれて、ぎょっとしたわけです。戦陣訓というのが出たのは、きわめて日本の重大な時期に出ましたのでね。たいへんな内容を持ったものであることは、あなたも御存じのとおりであります。しかし、新聞をたくさん比較して見ますというと、必ずしもみんなが戦陣訓と書いておらないようであります。これは一体どういうものであるか、概略の御説明をいただきたい。
  68. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私が就任以来、自衛隊が国民とともに歩み、国民に信頼される自衛隊により以上努力したい。ついては、それに対する教範材料というものを策定しろと命令をいたしました。今日それをいま策定をさせております。したがって、戦陣訓というのは、それは誤りであると私は思います。もちろん各紙おのおの同一ではないと私は思います。言うなれば、これは平和訓というものに当たるものだと思います。(「名答弁だ」と呼ぶ者あり、笑声)
  69. 小林武

    小林武君 まことにめい答弁で、ただし、そのめいの字はだいぶ違いますけれども、平和訓と、ちょっとふざけて答弁されてんじゃないかと私は思うのですけれども、このあれを見ると、そういうように平和訓とは書いてないのですね。「自衛隊の「使命感」と「国防意識」の高揚をねらった“新戦陳訓”ともいうべき教典が来年度できあがる。」そして幾つかのこういうもんだということを書いている。私はまずあなたから内容、項目等にわたって若干の概略の御説明をいただきたい。たとえばここにあるものは「国民としての自覚」「民主主義への理解」「国防に対する認識」こういうようなことが書いてある。と申しますのは、私はこれについては、かなりやはり前からどうするのだろうというような気持ちは十分持っておりました。このことは、かつて祝日法案が出たときに、祝日法案との関連において、自衛隊と天皇の関係というようなことを質問して、佐藤総理は、そのときに、そういう態度であんたは反対しているんですかというような、若干やじぎみではなかったんですけれども、そういう答弁があったように記憶している。だから私はそういう考えで質問しているのですから、大体平和訓というなら、平和訓の概略として一体どういうことを述べているのか。それから、外部の受け取り方の問題なんです。ここでは大宅壮一さんと、それから坂西志保さん、それから林房雄さんとかいう人の、これに対する談話が出ているのですけれども、これでは、大宅さんの場合は「私生子扱いに反発」とこう言われておる。私は、自衛隊の諸君が非常に日陰者のような気分でいる話はずいぶん前から聞いている。また、そういうことを自衛隊の内部の人たちも言っているということを聞いています。憲法調査会の中における議論を読んでみても、そういう意識がどうも残っていると書いてある。どうしたら一体士気を鼓舞することができるのかというようなことを、その中で議論されているわけです。そういう意味を持ったものではないのかと私は思うのですけれども、あなたのあれだというと、自衛隊の中に平和平和、平和思想を徹底すると、こういう平和ムードの注入なのか、御答弁たいへん迷いました。どうぞもう少し、戦陳訓というのは、これは新聞社の見出しでございましょうから、どういうものをいまつくろうとしているのか、内容は一体どういうものなのか、これはひとつ防衛庁長官の責任でありますから、ここで明らかにしてもらいたい。
  70. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まず、平和訓の平和は、平和と独立と、祖国に対する忠誠、国民に対する祖国愛、民族意識、防衛、これであります。いわゆる憲法、民主主義、自衛隊法に書いてあることばを解明することであります。これが使命であります。もう一つ、そのあとに徳操部門というのが出てまいります。情操徳育教育というのが実はまだできておりません。その記事には抜けております。したがって、使命が第一編であり、第二編に情操、礼儀作法というものが出てまいります。これを合わせて、日常の独立と平和を守る自衛隊の訓話といたしたい、それを簡単に私は平和訓と申したのであります。
  71. 小林武

    小林武君 そこで、「国防に関する基本方針」これは三十二年に閣議で決定したもの、「直接、間接の侵略に対応する」自衛隊員の使命感、国防意識を高める教育、こういうものは、いままでは「自衛官の心がまえ」と題したパンフレットによって、勇気、忍耐、責任、規律ということを説いている。しかし、この内容はかなり抽象的であった。そこで、今度はこれを具体化したというのでありますが、どうでしょうか、自衛隊の使命感というもの、こういうものの教育を特に必要とするようなことが自衛隊員の中に現在あるのですか、どうですか、お尋ねしたいと思います。
  72. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 自衛隊の使命感というものは、今日もちろん普及しております。ただ、より以上高いものを私は与えたい、かりに言うなら、憲法における民主主義とは何ぞやという教育はいたしております。なお、それ以上に、その信念を持ち得るような民主主義の教育をもう一度高度にしたい、こういうことであります。だれでも民主主義というものはわかっている。それをどうすれば民主主義というものの発育ができるか。長所はどうやって生かしていくかということが使命の中に生まれなければ、信念が生まれてこない。そこが今回の問題であります。
  73. 小林武

    小林武君 たいへん、何かおっしゃっていることはりっぱなことをおっしゃっているようであります。それでは、もっといまの点を具体的に教育されるという場合には、どういうことになりますか。
  74. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 具体的にこれを教えますための資料を今回つくりたいというのであります。したがって、この記事にもございますように、来年の四月ごろには各界の意見をまとめた資料を私の手元に提出する予定にしております。本日新聞に出ましたのは、その素案の素案のまたその原稿として、記者クラブに口頭で実は説明したのです。ただいまこういうものをやっております。先ほど小林委員からおあげになりました四項目しか、印刷物はございません。それについて教育局長が、これはこういう意図力持っておりますという口頭説明を記者諸君にいたしました。したがって、各社の取り扱い方は今日ばらばらであるわけであります。それくらい明らかにオープンに、この問題の各界の意見を聞くために記者説明をした。その資料が昨日新聞に出たのであります。したがって、記事の内容はおのずから違うと私は思います。基本は、先ほど小林委員がお読みになりました四項目ばかりのものを私が命じただけであります。したがって、私が今日私個人の独走で言うには、これは問題が大き過ぎますので、各界の意見を聞いて、四月ごろその原稿ができて、夏ごろにはこれを全隊員に、誇りを持って示せるものをつくりたいという、今日その状況であります。
  75. 小林武

    小林武君 そうすると、こういうことになりますかね。口頭で説明した、四項目しかないということは、あれですか、項目だけしかないのか、各項目について、素案にしろ何にしろ一つの分量を持ったものなのかどうなのか、これ。
  76. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 教育局長が記者諸君に説明するのですから、全然何にもなしで説明したと思いません。それは個人がメモをして、それに間違えないように今日の段階を説明したと思います。しかし、印刷したものは、先ほど小林委員がおあげになったあの四項目ぐらいしかございません。あれは、私は実は四項目を書いて、これを中心にやれと言っただけで、まだ私の手元には四項目だけしかきておりませんし、また命じておりません。その項目だけでも実は内容はなかなか広大なものになると私は思います。したがって、そう簡単に、事教育のことですから、私も、ことに自衛隊の教育は、これはより以上一番大事なものだと思いますので、慎重に各界の意見を聞いていきたい。しかし、基本は民主主義であり、自衛隊法であり、国民に対する忠誠心であり、祖国に対する愛国心であり、そうしてその中における独立と防衛であるということだけは、私は示しております。
  77. 小林武

    小林武君 それではお尋ねいたしますが、これは手続的にはどういうことになりますか。防衛庁長官一つの必要を感じて、そしてこれをかくかくなものをつくれと、こうなったのか。あるいは、なんですか、国防会議とか、しかるべきそういう、たとえば総理大臣の、議長の発言なりなんなりにしても、そういうような機関を通して各項目にわたってまとまったものをつくれということになったのですか。これはどういうことになっておりますか。
  78. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 先般、一昨年出しました「自衛官の心がまえ」それのもう少し高度的な、高等教育的な刊行物となると思います。したがって、防衛庁教育局長編集になりましょうか、教育局長発行というのもおかしいようでありますから、教育局長責任における教育書簡物として部内に配付するということの方向に指導したいと思います。
  79. 小林武

    小林武君 そうしますというと、平和、独立とか、先ほどあげられました項目の中の中心になる一体考え方、これについては、まさか一言や二言で言われるほどのそんな貧弱な内容じゃないと思うのです、自衛隊も相当の年数を経たものでありますから、だから、一体その教育局長が編集するとすれば、平和の問題についてはどう、祖国愛の問題についてはどうと、そういう点について概略の御説明をしていただきたい。教育局長に命じた、かくかくの線でやれというような、そういう点について。
  80. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) これはまだ素案でありますので、私が命じたときの意図としては、日本の国民に対する憲法の問題がいわゆる民主主義の私は理念の基本であろうと思います。同時に、防衛の基本は何であるというならば、平和を守る防衛であるということがいわゆる防御であろう、平和であろうと思います。また、独立国である以上、独立国としてのみずからの努力と、みずから平和を守るその精神は必要であろうと私は思います。そういうことを念頭に置いて、私だけのこれは知識やあれでは足りませんので、まず全部のひとつ有識者の意見を聞いて、指導者の手引書と実はこういう企画なんです、この方向は。そうして指導員がこれに対して、この意向をくんでみずからの教育の資料という最終的な意向でございます。
  81. 小林武

    小林武君 お話を聞いているというと、たいへん何かこの問題は、戦陣訓ではなくて、きわめて簡単な印刷物のようでございますけれども、どうなんですか。自衛隊として、軍でないとおっしゃるから、これは軍と言ったら悪いかどうかしらぬけれども、私は軍隊だと思っております。軍隊という、あなたのほうで自衛隊に望むところの、昔ならば建軍の本義ともいうようなことね、これについては相当お考えになっているでしょう。自衛隊の人たちの間にも、結局は自衛隊の諸君というのには、最終的には国防ということになると命を捨てるという教育をやらなければならない。平和だとか、独立だとかばらばらに言うようなのでなくて、もっとあなたたちが日ごろお考えになっている、自衛隊はかくあるべきだと、こういうものがありそうなんですがね、その点はどうなんですか。
  82. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 「自衛官の心がまえ」というのはまことに簡略で、約十四ページでございます。したがって、このことばだけでは、これは教育になりません。また、解釈もばらばらであります。したがって、これよりより高度なものを約十倍にしまして百四、五十ページぐらいで、もう少し信念と正しい意見と、正しい認識を指導者に与えたい、その意味が今回の実は発端であります。その基本は民主主義であり、日本の独立、平和であり、国防であります。なお、小林委員が言われましたように、昔の時代の戦陣訓とは基本的につながりはないと私は思います。それは基本的な民主主義・において大いな変化を来たしております。自衛隊法というものが今日非常な変わった姿で成長しております。昔と変わった姿で成長しておる、そういうところを基本にいたしますから、昔のつながりというものは毛頭ないことは第一に御理解いただきたい。  なお、国防論も時勢とともに変わりまして、最近の国防論は、戦争を先にすることが国防だというよりも、国防力を充実することが逆に平和の道であるという、世界の情勢も変わっております。したがって、憲法と自衛隊法の中における今回の指導要綱ですから、おのずから方向は御心配になるようなことはないと私は思います。  〔理事吉江勝保君退席、委員長着席〕
  83. 小林武

    小林武君 私はいまの防衛庁長官のおっしゃることをなるたけ信頼したいわけでありますけれども、事実は事実としてやはりお知らせをいただきたいと思うのです。と申しますのは、自衛隊の中にいる最高幹部の人たちの中に、自衛隊が出発して以来常に考えていられるところの重大な問題があると思うのであります。たとえば、前海上自衛隊自衛艦隊司令であった吉田英三という人は、憲法調査会の参考人という立場で、実際に部下を指揮した体験から「国軍の最高指揮官は、現在のごとく、実質的には総理大臣を適当と思います。ただ、実際部下を指揮してみまして、名分だけは何とか、国家の象徴であらせられる上御一人の名称を使用するようにしていただくのが最善だと思います。なんとなれば、統率の極致は結局最高指揮官のためならば身命を惜しまずという境地にまで到達せしめることであり、そうでないと本当の精強な部隊とは称しがたいと思うのであります。政変ごとにこの至高な目標が変更するのでは、そのような心境に部下を達成せしむることは困難ではないでしょうか。」と、こう言われておる。これは吉田英三という個人の発言である。これが政府の全体の意向だと、私はそこまでは即断はいたしませんけれども、実際に部下を指揮してきた体験から、彼はそう述べている。たとえば、前の空幕長であった源旧実さんは、ある雑誌に、「陛下のみの家来」という、こういう随筆を発表されている。私は、この中で、自衛隊に関係している人たちが精強な軍隊をつくるということは、これはもう責任上そう考えざるを得ないと思う。精強な軍隊、最高指揮官のためならば身命を惜しまずという境地にまで到達せしめるということでなかったら、これは国防上どうも責任が持てないと、こう考えておられる。その考え方というものは、一体自衛隊の最高の指揮官から中級あたりの指揮官、初級の指揮官でもそういう考え方が自衛隊にあるのではないですか。どうなんです。たいへん平和、民主、やれ何とかということをおっしゃると、政党だか労働組合だかわからないことになってしまうんですが、そういうことではなくて、自衛隊の問題を議論したら、もう何というか、自衛隊というのを煙幕の中に置いて、手探りみたようなことを国民がしているときじゃないと思うのです。いまの政府は、自衛隊をどうしようという気持ちならば、率直にひとつ勇気をもってかくかくの方針だということを言うべきだと思う。新聞にこういうことがでかでかと発表されてから、いや、あれはたいしたことはないのだ、まだこれからかかろうというので、そんな御心配は要りませんという、こういう言い方をするならば、むしろそうであるならば積極的にこうこうあるのだということの資料を出してわれわれに示してもらうぐらいでなければならぬと思いますが、どうなんですか。いまの問題なんかは、これはかなり自衛隊の将来を考える上に、これでなければどうにもならぬという、いわゆる精強な軍隊をつくるというのが、これはもう目標だと思うのです。そういう角度から、どうなんでしょう、これは。
  84. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) この問題で、私は、小林委員に何らみずから隠そうとか言いのがれしようなんて考えは何にもありません。進んでお答えしております。その姿は、小林委員の御質問、御疑念のようなことは、戦前と今日とを比較されるとその感じが生まれてくる。しかし、ほとんどの自衛隊員は、生まれ変わった青年が今日自衛隊のほとんどの数であります。指導者の中、指揮官の中には戦前の経験者が多少残っております。だんだんこれも減っております。したがって、今日の自衛隊を見る目も変えていただかなければならない。民主主義の国においては、どこの国の軍隊でも、どこの国の防衛でも、国民に対する防衛責務というのが軍隊の精神であると私は思います。一人の指揮官に対する盲従的な時代というものよりも、国民に対するその職務、その国防の任というのが私は戦闘力の根源になりつつあると思います。自衛隊においても、その気風から、より以上民主主義における、独立国における日本の国民に対する職務精励、この防衛の分担をするのが自衛隊であるという精神に今日ずっと脱皮前進、明らかになってきております。その時代により以上その思想を徹底させたい、その上における精強な私は防衛力であるべきだという使命を明確にすること、これが使命感を第一点として今日新聞紙上に出たわけで、私のほうの教育局長が進んで記者会見をして、進んでそれをやっておりますので、隠すどころではありません。より以上国民の理解を得、より以上いいものの使命をつくりあげたいというのであります。
  85. 小林武

    小林武君 それでは、私はまあ自衛隊の中におって経験の深い、まあ自衛隊の中には相当功労のあった人だと思うんです、古田さんにしろ源田さんにしろ。この人たちは確かに戦前のいわゆる軍人。いまのお話だというと、この戦前の軍人の持っているところの自衛隊に対する教育の考え方、あるいは自衛隊を育てていく考え方、これはいまあなたのお話だというと違うと、こうおっしゃる。これは全く古田英三個人であり、源田氏の考えで、さようなことではないと、こういうことになりますか。
  86. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう姿から、より以上民族的な国民に対する忠誠心に脱皮すべき過渡期にあると私は認めます。したがって、今日それがその方向から、私は国民に対する忠誠という方向に変わりつつある、また、そういう精強なものができつつあるという今日の段階であります。
  87. 小林武

    小林武君 それではこういうことになりますかね。国民の立場に立った、すなわち、国民の念願している理想、そういうものの上に立って自衛隊、こういうことになりますかね。そうすると、自衛隊のいわゆる軍隊というものが、一つの政治目的というものを、国民に対して持っている政治目的なり政治的の理想なり、そういうものを実現するための一つのものだとしたら、そうすると憲法というものはどこまでも尊重していく、憲法の実現、そういうことが自衛隊の精神ということになりますか。
  88. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 憲法の精神を体して自衛隊法で規律をされております。
  89. 小林武

    小林武君 そうすると、自衛隊のこの問題に対する考え方は一貫しているということになるわけでありますが、資料としてどうでしょう、自衛隊としては、憲法の教育というものを自衛隊の隊員にやったり、あるいは防衛大学においても行なっていると私は思うのでありますが、それのカリキュラムは提出できますか。
  90. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 自衛隊で決定した教科書というものは今日制定をしておりません。しかし、教育科目、教育指定としては憲法もあり、工学もあり、ある場合には相当数学もあり、科学もあります。その項目の教育規定はしております。しかし、どの本を使えとか、どれをやれとかいう規定は特別にございません。
  91. 小林武

    小林武君 どうもお話がよくわからないんですがね、教育ということについては一つの目標があるわけですから、たとえば憲法でもいろんな学問的立ち場が一つあると思うんです。だから、教育をするには、一つのこういう角度で、特に自衛隊の場合なんかはあってしかるべきだ。いろいろなものをごっちゃに教えるというような、そういうやり方にしても比較検討するということもあるでしょうから、そういうことも防衛大学でやるとすれば、当然そこには教育上の計画がなければいかぬですよ。カリキュラムなしに一体教育なんということは、私はどうも教育という問題からいったら考えられないんです。お話のように、私もこの防衛年鑑見ますというと、防御大学ではいろいろな学科をやっている。ですから、この学科をやるということについてはカリキュラムが必要であるということになる、あるいは教科書というものを特定につくらなくても、これによってやるというものがなければならぬと思うのです。それはお示しいただけるかと、こういう意味です。
  92. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛大学においてそれを決定させております。防衛庁長官が防衛大学長に委任をして、防衛大学長においてそれを決定してやっておるかと思います。
  93. 小林武

    小林武君 よくわからなかったけれども、防衛大学のことについては防衛庁長官はよう知らぬということですか。いや、あなた知らぬでもいいですよ。そんなこと一々こまかいことまで、知らないかもしれないけれども、防衛大学にはそういうものがあるべきでしょう。しかし、もし教えているとすれば、もしあなた御答弁できないならば、そのことに携っている方でけっこうです。
  94. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私によくわかりませんから、教育局長から答弁いたさせます。
  95. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) ただいまのお尋ねでございますが、われわれのほうでは、防衛大学の教授項目がこうであるということを長官の御承認を得て定めております。教材と申しますか、教科書と申しますか、そういうものは防衛大学のそれぞれの担当の教官が作製をして学生に教えていると、こういう手続を現在やっております。
  96. 小林武

    小林武君 だから、そういうものについてひとつ資料として出してもらえるかどうか。委員長においてもそれができるかどうか。
  97. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 私自身もその教材を監督しているわけではございませんけれども、御要求の趣旨につきましては、防衛大学校長と協議をいたしてみたいと思います。
  98. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。教育局長がどのような教育が具体的に行なわれておるか、よく知らないような答弁をされるのは、たいへんこれは了承できない。それが一つ。それから、もう一つは、防衛大学で使っておる教科書なり教材、これはいまのお話だと、防衛庁長官のお答えは、はっきりしなかったんですが、あることは間違いないようでございます。そういうものは何も秘密でも何でもない。協議するまでもなく、委員長から提出をはっきりと要求すべきものだと私たち考えるわけです。国の費用で、そうして秘密でも何でもない、常々と使っておる教材でありますから、これはもう即刻提出をひとつ委員長から求めてもらいたい。これは要求します。
  99. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 御要求のようにいたします。
  100. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、予算委員会もたいへん日数が少ないわけでありまして、間に合うように至急ひとつ出していただくよう要請しておきます。よろしいですな。
  101. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 資料があるいは相当膨大になるかもしれませんので、きょう一日に間に合わせろと言われても困りますので、次のときまでには必ず――資料が膨大な場合は暫時時間の御猶予を願いたい、こういうわけでございます。
  102. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあやむを得ない、ほんとうにそうなら。そのかわり出してもらう。
  103. 小林武

    小林武君 これはどうでしょうかね、自由陣営の一員を強調する「民主主義に対する理解」というところに、「自由主義陣営に組入れられている。世界の対立、警戒体制がこのまま続く限り、日本は自由主義陣営の一員として、祖国を守るための防衛努力をおこたるべきでない。」と、こういうようなことの内容は、新聞では決定されたように書いてあるんですけれどもね。だから、これに対する評価家の考え方はどういうことかというと、たとえば対米従属が深まるだろうとか、坂西志保さんのあれでは、あるいは大宅さんのあれでは、もっとなかなか表現が端的であって、「アメリカの出城の一つに過ぎないことになってしまう。」だろうというようなことが書いてある。そういうまああれですか、自由主義陣営の一員の強調、こういうことはその中にもう決定的な条項としてあるわけですか。
  104. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 民主主義、全体主義、独裁主義――民主主義を信じて、民主主義の国である。防衛問題については、日本の安保条約というものによって日本の防衛を今日現状やっておる、こういうおそらく解説をしたのでしょう。その二つがこんがらがってそうなるだろう。また、その批評された方も真意を御存じなしに、これは悪意に、悪い批評をされた方たちはまだ真意を御存じない方々だと思う。そういうふうな解説をおそらくしたと私は思います。それをくっつけますと日米に非常に近い、これは防衛体制の話であります。政治、体制、民族体制としては、民主主義ということで説明をさせておるつもりであります。
  105. 小林武

    小林武君 まあ二つの疑問があるわけですな、私はあなたのおっしゃることと違わぬですよ。悪意でないんです。あなたのおっしゃるようなことと同じようなことをぼくは受けとっている。あなたは憲法や民主主義なんということは、自由主義陣営のほうにつかなきゃだめだという考え方に立っている。それはまあ自民党の党員だからけっこうだと思う。しかし、国防という面から立った場合にですよ、それはあれですか、国防の場合には、このごろの主義の上に立った国とはもう一生仲よく、いつまでも、未来永劫仲よくしていって、これは敵だというような――そういう一体あれですか、自由主義の国だから、もう絶対けんかが起きなくて、自衛のことでは心配しなくてもいいんだなんという、そういう国防のあれがありますか。ぼくはそのことが一つ疑問なんですよ。国防の自衛権というものを認めるという、あなたたちの立ち場に立って考えた場合にそういうことがあり得るかどうか。二十年前ちょっと振り返ってごらんなさい。鬼畜米英だと、こう言った。鬼畜米英と言ったが、時代が変われば鬼畜米英じゃないわけだ。そういうふうに、国防というものはそんなもんじゃないような気がする。ぼくはそういうことが一つ疑問ですよ。それから、日本国憲法というようなものが、あなたがおっしゃるような、どこどこに味方するとか、どこどこの国を一体何何主義と見て、これをどうするとかというようなことが憲法の中の精神にありますか、日本国憲法の。私はそういう憲法ではないと思うのです。日本国憲法を守ろう守ろうというわれわれの考え方は、そんなところがないから守ろう守ろうとこう言う。そこらあたりになるというとわからぬですね、どうも。
  106. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 小林議員がそういう御疑問をお持ちならば、その記事の読み方、あるいはその記事が足らなかったと私は思います。私もそんなこと言っておりません。政治体政の説明は、民主主義の政治体政という説明をした。防衛の説明については、日本の独立と平和と、そうして今日安保体制がある、これだけで、これは別個の話を私はしたのです。これは別個の話です。それがあるいは混乱されておるんじゃなかろうか。したがって、私のほうは、どこも思想によって、あるいは政治体制によって敵味方を区別するようなことは毛頭考えておりません。また、日本の憲法にはそういうことは私もないと信じております。そんな混乱を私は一切しておるわけではございません。あるいはその記事の中にことば足らずそういうふうにお読みになったかもしれませんが、私はそんな記事は出ていないと思います。私自身も読みまして、そんな混乱を私はしておるのじゃございません。防衛の話と民主主義の話と、これは別個な中に項目というものが出てくるのです。どうぞひとつその点は誤解のないように私のことを聞いて、いただきたい。
  107. 小林武

    小林武君 誤解のないようにとおっしゃられると、ますます誤解が深まってくるので困りました。私は、別にこの記事の批判をやっておるのじゃないのです。しかし、記事が取り上げている、自由陣営の一員として強調するのだということになると、これは問題点があるのではないか。国防というものはそういうものじゃないのじゃないか。自衛権の発動ということがそういうことによって拘束されておったら、将来国を守るというようなことは不可能じゃないかという疑問が一つ。もう一つは、日本国憲法の理想をわが民族が実現するのだ、これが少なくとも自衛隊の目標でなかったら私は重大な問題だと思いますが、そうだとしたら、自由陣営の一員の強調というようなことで、そうして一体どこどこの国が悪くて、どこどこがどうだというようなことをやって、あげくの果てには、国内においては、何々党がこれは民主主義で、何々党は独裁主義だというようなことをやりかねないようなことでは、私はこれは重大だと思うのです。そういうような教育が、少なくとも今度のあなたのおっしゃる平和何とかというこのあれの中に入っておらないということになればそれでいいのです。間違いないかどうか。
  108. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう一派的な、一党的な思想と一方的なものは一切出てまいりません。憲法と民主主義というものの比較、あるいは各国の例というものぐらいは出てくるかもしれません。なお、基本的には、わが自衛隊は、日本を攻撃される場合にのみ自衛権というものをわれわれは行使すべきだという限界がございます。したがって、仮想敵国というものは、こちらから求めるものは一つもございません。その基本の上に防衛力という議論をしておるのですから、われわれはいかなる思想であろうと、いかなる国であろうと、仮想敵国という防衛は、日本には攻撃というようなことはないのですから、日本をいかなる国が攻撃しようとも、民族のために職務精励の防衛力の精強な自衛隊というものをつくっておるのだという基本から発足しておるのですから、どうぞひとつその議論というものも、自衛隊と憲法というワク内の問題ですから、議論はそこで私は御納得いただけると思います。
  109. 小林武

    小林武君 まあこの問題については、まだ内容ができておりません問題でありますから、これはひとつできてからやっぱりゆっくり国民全体討論すべき性格のものだと思います。これはでき上がりはいつごろになるわけですか。
  110. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 四月ごろは私の手元に原稿が届くと思います。したがって、発行するのは夏ごろかと私は思います。順調にまいればその予定でございます。
  111. 小林武

    小林武君 どうかひとつ妙な戦陣訓などはおつくりにならないように、ひとつ私からも御忠告申し上げておきます。  それから、はなはだ最後一つだけあれでありますが、先ほど実はついに忘れて質問できなかったのですが、総務長官目下睡眠中ですが、ちょっとお尋ねいたしますが、あなたはこの定年制の問題について何か衆議院で御答弁なさったそうですが、定年制です。定年制を実施するということになりますと、まず、今度の通常国会にそれを出すのかどうか、それからどういう意図で出さなきゃならぬということをお考えになっているのか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  112. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 定年制につきましては、私その制度があったほうがいいというふうに考えて、前向きでこれを検討したいというふうに御返事をしておる次第でありまして、まだ通常国会に出すというふうにきめておるわけじゃございません。
  113. 小林武

    小林武君 そのところが聞きたいのですね、必要であるというところ。どういう理由で必要であるか。
  114. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いまこれがその一定の時期に新陳代謝が行なわれるほうが役所の事務能率からいってもよろしかろうと思いますし、また、現実において実際上相当程度の定年制に近い実施は行なわれておりまするから、むしろそういうものを制度化して合理化するほうがよりいいんじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。まだこれを確定したものとして扱っておるわけじゃございません。
  115. 小林武

    小林武君 これはまあいまは寿命が延びて、相当活動する年齢というものが、以前から比べれば驚くほど延びておる。民間の業界においては、定年制を廃止することによってかえって能率をあげているというようなことも若干聞いておる。私は、そういういまの状況から判断して、定年制の必要ということになると、一体いまの実情から判断して定年制というのは高めようとするのか、少し早くやめさせ過ぎるから、もう少し上のほうに持っていって、そうしてはっきりもっと働かしてやろうという考えに立つのか、あるいはそうじゃなくて、下げておいて、もっと下げて早く首を切ってやろうというのか、そこらのあれはどうなんですか。
  116. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 私は、これはまだ個人の考えですが、役所の定年制はちょっと若過ぎると思うのです。もっとほんとうは延びたほうがいい、ことに職種によってはもっともっと延びたほうがいいと思うのですが、長い慣習で、一定の時期には大体定年制と同じような扱いになっておるというようなこともありますので、そこら考えて、何か整理統合したらいいのじゃないかというふうに思っております。
  117. 小林武

    小林武君 なかなかいいお考えだと思います。それならば定年制をしかないほうがよろしいのですけれどもね。そして活動力のある者は、年齢を問わず、うんと働かしていく、こうやるのが私は当然だと思います。ただ、私は、非常に定年制のあれが出る出るということでたいへん心配しておったところに、ちょうどああいう議論が出たものですから、心配して実はあれしたのですが、どうぞひとつ御検討なさるときには、定年制というのは、結局、結果的には、いまのように、働きのある人たちまでとにかく働かれないようにしてしまうというようなことになるし、もう一つは、やはり経済状態ということもよく考えてやらなければいけない。相当やはり大学の教授あたりでもたいへん困っておる人が相当あるのですね、国立大学の。だから、国立大学のもうわれわれが知っている知名の学者でも、何ですか、退職公務員の中にいて、連盟とかという中の役員をして、そうして何とか恩給を増加してくれというようなことで一生懸命になって努力されているのがずいぶんあるように聞いている。こういうことを配慮するとか、私は慎重にそういうことをやってもらいたいと思う。  それから、もう一つ自治大臣にお尋ねしたいのですが、何かその点では自治省あたりも相当何かその面についてのお考えがあるように聞いているんですが、大体あれですか、いまの総理府総務長官と同じようなお考えでしょうな、あなたのほうの場合は。
  118. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 総務長官と同じような考えでございます。
  119. 小林武

    小林武君 たいへんけっこうでした。   それでは私の質問は終わります。
  120. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 小林君の質疑は終了いたしました。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時二十五分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十三分開会
  121. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、日高広為君が辞任され、その補欠として徳永正利君が選任されました。     ―――――――――――――
  122. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き、昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)外二案を一括して議題とし、質疑を行ないます。多田省名君。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 公明党を代表いたしまして、若干の質問をさしていただきます。  初めに、日韓経済協力について、総理大臣にお伺いいたします。  日韓条約批准は、政府、自民党の先ごろの国会における強行突破によって批准されましたが、われわれが心配したように、韓国は、竹島にいち早く専管水域をつくって、全く不幸な事態になっております。  また、先ごろも塩安の輸出、あるいは米やノリの輸入問題をめぐってとかくのうわさがございます。  日韓経済協力につきまして、今後十年間に八億ドルの協力資金が韓国に注ぎ込まれるわけでございますが、かねて心配されましたように、すでに業者の過当競争が始まっているらしく、無節操な争いが続けられているようでございます。これは、日韓両国民にとってまことに不幸な事態でございますので、総理はこのような事態をどう思っておられるか、お伺いいたします。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 詳細は、後ほど外務大臣からお答えいたさせたいと思いますが、日韓条約ができまして、善隣友好関係ができ、今回私どもが経済協力をするということで、韓国の経済のほんとうに繁栄への道を歩むように、役立つように、この金を使っていくようにいたしたいと、かように考えております。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島の周囲に専管水域を設定いたしましたことは、かねて韓国が強くこれは自国領土であるということを主張して、一歩も引かないような、非常に強い態度を示しておった関係上、当然専管水域を設定するということになるだろうと、われわれは予測しておったのであります。わがほうといたしましても、これは古来の領土であるという主張を曲げない。韓国が専管水域を設定するという情報にあらかじめ接しておりましたので、わがほうとしても、竹島という名前はもちろん表面には出しませんけれども、出す必要はない。島根県所属の島嶼全般にわたって専管水域を設定いたした次第であります。したがって、両方の主張は、互いに拮抗して相譲らない、こういう状況にただいまでもなっている。領土の問題はもちろんのこと、専管水域の問題も、これに伴って、両者自分の権益を主張して譲らないという状態になっております。でありますから、はっきりと紛争、日韓間の最も重大な紛争ということがはっきり浮き彫りにされている次第でございます。今後、両国の紛争に関する処理に関しまして、交換公文がつくられているのであります。これに基づいて、適当な機会に話し合いに入るという考えをもっております。でありますから、特に日韓条約が有効――発効した早々、こういうことが突然もち上がったのではなくして、従来のこれは延長にすぎないということがいえるのであります。  それから御指摘のノリの問題は、長い間の懸案でございましたが、先般の貿易会議におきまして、さしあたりの問題、すなわち、二億五千万枚のノリの輸入の問題は無事解決をしております。将来の問題としては、これを自由化するかどうか、それからいまの関税があまりに高過ぎる、これを引き下げることを考えてくれということをいわれておりますが、この関税引き下げの問題が、来たる三、四月ごろの第三次貿易会議において、この問題を審議して、できれば結論を得たいと、こう考えているのであります。  日本商社による過当競争どいうことは、そういうことになるだろうというようなうさがたいへんやかましい、現実にその問題がいまもち上っているわけではございません。なお、日本の商社が韓国においてまだ十分に働けるという基盤の問題が、もちろんこれから解決するのでありますけれども、その問題は、まだはっきりきまっておらない。すなわち、出入国、あるいは事務所の設定等々、商業活動をするまず基盤の問題がこれからまだきまる、こういう状況であります。その上で、はたして過当競争になるかならぬかという問題でありますが、これらの問題につきましては、十分にそういうことの弊害に陥らないように官民ともにつとめてまいりたいと、こう考えております。
  126. 多田省吾

    ○多田省吾君 続けて外務大臣にお伺いします。まだ、過当競争のきざしが見えないというようなお話でございましたが、もう前から、条約批准の前から塩安の輸出をめぐっては非常に過当競争が激しかった。ノリの問題につきましても、衆議院の予算委員会で横路委員がやられましたので、重複を避けますけれども、いろいろ問題があるわけです。韓国側の日韓経済協力に対する方針、態度もいままでぐるぐる変わってきたように思われますけれども、ひとつここではっきり聞きたいんですが、条約が発効してから六十日以内に韓国から実施計画案を出すようになっておりますけれども、もうそれが出ましたのか、また出なかったら、いつごろ出る予定になっておりますか、それをまずお伺いします。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 無償三億ドルの問題でありますが、これは十年間に均等に日本の生産物及び役務を向こうに無償で供与するというのであります。これは条約発効の二カ月以内に実施計画を策定して、そして二カ月後にそれの実行段階に移る、こういう申し合わせでございますが、まだ始まったばかりでございまして、これから実施計画がまず韓国において原案が起草される、それを日本と協議して、そしてどういう生産物、どういう役務を提供するかということがきまっていくわけでございます。
  128. 多田省吾

    ○多田省吾君 いつごろできるのですか。
  129. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いつごろというまだ目当てはございませんが、まあ私どもとしては、初年度でもございますから、なかなかその段取りがむずかしいだろうと思いますけれども、一月いっぱいぐらいに大体きめなければと、こう考えております。
  130. 多田省吾

    ○多田省吾君 それではその問題、六十日、二カ月過ぎても出なかった場合には、どういう態度をとられるかという問題、それからもう一つ、経済協力の基盤でございますが、当然韓国の経済状態やあるいは政情、あるいは金融事情の掌握が大事になると思いますが、いま韓国における銀行の金利、それから公定歩合、それから銀行の預金利子といったようなものはどうなっておりますか。
  131. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 経済協力局長にお答えさせます。
  132. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 協定によりますと、実施計画は初年度は協定発効後六十日以内に相談してきめる、こういうことになっておりまして、現状におきましては、来年早々韓国側で初年度の原案を日本側に提示することを期待しておりますが、必ず六十日以内にできなければならない、こういうわけでございませんで、原則として六十日以内、こういうことに相なっておりますので、初年度のことでもありますので、若干ずれるかもわからないと思っております。ただし、私どもはなるべく早くそういう計画を協定の精神に沿いまして六十日以内につくりたい、こう考えております。  韓国の経済の事情につきましては、御承知のように最近アメリカの経済援助が若干減少しておりましたり、あるいは保有外貨が減少しておりましたり、また国内の資金が不足しておる、そういう関係もございます。そして物価も相当上昇しておりまして、いろいろの困難がございますが、昨年は米が豊作でありましたり、また第一次産業の生産が増加したり、それからまた韓国政府におきましては輸出に非常な努力をいたしておりまして、輸出の計画を本年は上回るようなぐあいでございまして、今後の見通しとしましては、韓国官民の非常な熱意と相まちまして、漸次改善されていくんではないかと思っております。韓国の銀行の金利につきましては、ことしの九月に改定がございました。従来よりも若干金利体系を引き上げております。この措置によりまして、銀行金利は定期預金金利が三割、普通預金が一割八分、それから市中銀行の貸し出し金利が商業手形割り引きが二割四分、その他の手形が二割六分、輸出金融は六分五厘、こう相なっております。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、一般手形の貸し付け利子が二六%程度で、それから預金利子が三割と逆ざやになっているわけですが、それは相当経済状態の混乱が見られると思います。また、銀行の貸し出しも一億五千万ウオンをオーバーしておる、そういうことを聞いております。それから貸し出しを受けるのには、銀行にそでの下一〇%入れなければ借りられない、そういう話も聞いております。そうしますと、日本の商社から設備資金の貸し出しがDAベースが年六%と聞いておりますけれども、そういったものが韓国に相当入るのではないかということも予想されますけれども、こういった韓国の金融状態に対して大蔵大臣はどのように掌握しておられるか。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま韓国では計画的に経済の再建に取り組み中でございます。今度の無償、有償の経済協力は相当その計画遂行に役立つものと思うのであります。あらゆる方法で友邦として韓国の経済の安定、成長のために協力すべきものと考えております。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、通産大臣に二、三お伺いします。経済協力につきましては、業者の進出に対して通産省が認可を与えることになっております。相当認可を受けた業者もあるようでありますけれども、認可を受けた業者を業種別に、それからその数を通産大臣からお聞きしたい。
  136. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 承認の年月は昭和三十九年十二月塩化ビニールプラント、金額三百六十万ドル、それから同月セメントプラント四百七十万ドル、四十年五月冷間圧延設備四百二十万ドル、同月ポリアクリルプラント三百八十万ドル、四十年七月尿素肥料ブラント四千三百九十万ドル、四十年八月ブルドーザー百四十万ドル、同月ブルドーザー百四十万ドル、それから塩化ビニールプラント、四十年十月、三百四十万ドル、それから同月ポリアクリルプラント四百七十万ドル、四十年十二月発電所用機材四百九十万ドル、合計十件七千六百万ドルでございます。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま聞くところによりますと、セメントあるいは塩化ビニールあるいはポリアクリル繊維、そういったものが相当認可を受けているようでございますが、先ほど外務大臣は過当競争はいま現在ないとおっしゃっておられますが、いま造船なんかでも、新聞報道によりますと、石川島播磨造船と三菱重工が大韓造船との間に非常な過当競争が始まっている、そういうことを聞いておりますが、その事情お話し願いたい。
  138. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 三菱との間に大韓造船所の技術提携のお話が進んでいるということは聞いておりますけれども、ほかのことはまだ何も聞いておりません。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ通産大臣もあまり事情をつかんでおられないようでございますが、ここで輸出秩序を立てなかったら、日本の経済界も混乱してしまいますし、また、韓国の中にも日本の経済侵略をおそれている声が非常に強い。また、金融状態もかんばしくない。また、この前のアメリカ上院外交委員会に提出をされたコンロン報告という、カリフォルニア大学の権威ある調査機関でありますが、アメリカが相当の額の援助を韓国に与えたにもかかわらず、韓国では多くの百万長者と多くの腐敗行為をもたらした、このように報告書の中でなげいております。このような中にあって、よほど日本の輸出秩序を立てなかったならば、過当競争等によってたいへんなことになろうと思いますけれども、通産省は業界に対してどのような指導に乗り出しておられるか。その内容について具体的にお話しいただきたい。
  140. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日韓の経済協力、これがどのように韓国全体の経済を助けるかということは、日韓の友好関係の将来に非常に重大な影響がある。したがって、われわれとしても、まず第一に民間のベースで経済協力を行なわれる場合には、韓国が実施計画を立てて、民間の事業と直接結びつくわけでありますから、イニシアチブは韓国がとるわけであります。しかし、延べ払いのときには、これに対して承認を与えるわけでありますから、そういう場合に、われわれとしてもその延べ払いの要件を審査する場合にチェックする方法もございますし、しかし、何よりも大事なことは、日本の民間側において、日韓経済協力の真の意義というものを理解して、自主的に過当競争などによって非常に韓国の経済に悪い影響を与えないように自粛することが一番大事なことだと、そういう点の行政指導を主として行なうことにいたしております。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまあまりはっきりした答えがありませんでしたけれども、相当の業者が韓国の政界や財界に渡りをつけようというようなどう仕合いが進められている、そういう話がずいぶん広まっております。  また、それはそれとして、しっかりと通産大臣のほうに把握していただいて、そういうことのないようにしていただきたいと思いますが、保税加工の問題で一つお聞きしたいと思います。ことしの三月に、条約及び諸協定の折衝と並行しまして、両国の外相の貿易会談の中で、これは合意議事録が署名されておりますけれども、韓国の保税加工貿易の拡大には努力する、このように署名しております。それで保税加工の実情について、通産大臣にお聞きしたいと思います。
  142. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 保税加工と委託加工、まあ日本に対してこれは相当影響もあるわけであります。原料を日本から持っていって、そして加工して日本に輸出されるわけであります。これは労働賃金が韓国のほうが安いわけでありますから、ある程度将来ふえていく傾向がある。委託加工貿易による原材料の輸出金額は、本年一-六月が九万ドルでありまして、同期間の加工製品の輸入額が十九万ドルであります。しかしながら、各国とも産業発展の過程で、やはり日本はもう少し産業の構造を高度化して、そうしてなるべくやはり工業の発展のおくれておる地域との間に競合しないように努力をしていくことが根本的に必要なんです。どうしても工業化がおくれておる国においては、軽工業の方面が発達してくるわけでありますから、そういうことで、なるべく日本との工業の産業構造の上において競合をしないで韓国の経済も助けられるような、そういう方向に持っていくことが好ましい形である。しかしながら、その過程において、非常に急激な影響を日本の産業に与える場合においては、これは対策を考えなければならぬが、日本としても、そういう経済発展の過程というものの違いを理解して、日本に悪影響を及ぼさないような場合には、韓国の経済を助けていこうという心がまえが必要であろうと考えております。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの保税加工につきましては、印刷とか縫製染物、そういった方面に相当採用されているようであります。そうして、これが韓国の安い労働力を使ってですね、日本の中小企業や労働者が非常に圧迫される、そういう懸念がずいぶんあるわけでございます。で、この前の韓国から出した韓日会談白書の中にも、次のようなことが出ております。ちょっと読み上げてみますと、「日本の労働賃金は毎年上昇し、」このため「労働力の比重が大きい軽工業分野は毎年その生産と輸出量が減って、いわゆる斜陽産業化する傾向にある」「これに引きかえ、韓国の賃金は低廉でしかも製造工業技術は相当の水準にある。従って国交正常化されれば、前述の日本の斜陽産業と同輸出市場は、自然且つ順調に韓国に移植され、」「韓国の対外収支均衡改善と国内完全雇用問題解決に大きく寄与するだろう。」、これが韓日会談白書の内容でありますけれども、まあこのような事態に対してこのまま放置しておきますと、日本の中小企業や労働界が相当圧迫される。それに対して総理並びに労働大臣から、その対策をお伺いしたいと思います。
  144. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 日韓の経済協力、特に御指摘の保税加工工場の問題につきましてのわが方の考え方というものは、ただいま通産大臣がお述べになられたとおりであろうと思います。すなわち、これを長期的に見まするならば、わが国の産業経済自体のその構造の高度化と、こういうことで対処いたしていくべきものであろうと思いますが、当面この保税加工の非常な急激なこの増加ということによりまして、わが国の雇用面その他に非常な急激な悪影響があると、まあこういう事態がもし起きるというようなことがありました場合におきましては、ただいまの輸出貿易管理令等によりましても、国民経済の健全な発展をはかるために必要な際には、貨物の輸出を認めないこともできるというような規定もあるようでございますから、通産省ともよく相談をいたしまして、雇用面その他に急激な悪い影響がないように指導をいたしてまいると、こういう考えでございます。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ先ほど労働大臣あるいは通産大臣がお答えしたので誤解はないと思いますが、この保税加工の方法があるといいましても、これにもやはり限度があります。わが国の産業に重大な影響を及ぼすような、この加工を韓国でやると、そういうようなことは韓国自身も許さない、いわゆる経済侵略というような誤解も受ける危険がございますので、おのずから保税加工にいたしましても、日韓――隣国で経営していく範囲にはおのずから限度があるだろう。また労賃の安い労働者日本国内に直接入ってくるというようなことは、これは、考えはできるかしらないが、実際問題としてはなかなか、外国人の地位協定、朝鮮人の地位協定もできたばかりでありますし、そういう点の御心配はただいまあまりないのじゃないかと、かように私は思います。いずれにいたしましても、本来の経済の繁栄に協力するという立場でありますし、また両国がこれによりまして経済の発展を期そうとする、こういうことでございますので、いわゆる過去の経済侵略等の、あるいはその誤解を受けるようなことは絶対避けなければならない、かように思いますので、十分注意してまいるつもりであります。
  146. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま総理労働大臣から答えていただいたのですが、非常に甘い考え方のように思えます。私も若干印刷のほうに関係しておりますが、どうも二分の一、三分の一の賃金で印刷ができる、そういう方面でも非常に最近混乱があるようでございます。ひとつそういうことのないように善処をお願いしたいと思います。  次に、通産大臣にお伺いしますが、ある新聞によりますと――これは全部の新聞に出ておりますが、最近自動車の契約変更の問題があった。トヨタ、日産が手を引いて、三菱重工業の三菱コルトが来年末までに準完成車が二千五百三十台、韓国商工省が輸入許可した、そのように新聞に伝えられておりますけれども、新聞によりますと、かなりの額の出資を要求されたり、あるいは出したのではないかというようなことも報道されております。通産大臣はこういった伊藤忠あるいは三井、三菱にからまるような、こういった自動車の契約変更問題について、どういう情報を得ておられるか、またどういう考えをお持ちであるか、それをお伺いしたいと思います。
  147. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私が聞いております点は、韓国が本年の四月に韓国の自動車工業確立のために一元的な法律ができた。韓国のほうでもこういう自動車工業というものに対してなるべくこれを一元化していこうという意図の立法がなされた。そうしてトヨタと韓国の法人である新進工業との間にトヨタのトヨペット・コロナの技術提携が進められておるということを聞いておるのですけれども、これはまだ申請は出ておりません。一方、標準決済によりまして――延べ払いでなしに、標準決済によって新進工業が三菱重工のコルトー五〇〇を韓国政府の認可を得て日本から買い入れようというような……
  148. 多田省吾

    ○多田省吾君 一五〇〇CCでしょう、二千五百三十台。
  149. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) コルトー五〇〇と聞いておるのですが、政府委員から少し補足させることにいたします。こういうことの契約が、日本にはまだ来ておりませんが、韓国政府の承認を得たということを聞いております。政府委員のほうから……
  150. 川出千速

    政府委員(川出千速君) お答え申し上げます。ただいま大臣が御答弁なさいました新進工業と三菱重工業の関係でございますが、これは私どもが聞いておりますのは、三菱重工業のコルトー五〇〇、これは車の名前でございますが、コルトー五〇〇を輸入するための提携について韓国政府の許可を受けたということを聞いておるわけでございます。しかしながら、三菱重工のほうからは私どものほうには何の申請も出てきていないわけでございます。これは、標準決済の中で輸出する場合は、これは輸出統制をやっておりませんので、輸出関係は自由でございますから、おそらく日本政府に許可の申請はないんであろうかと考えておりますが、現在のところそういう申し出はないわけでございます。
  151. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 委員長、関連して。この経済協力のことで、いまのに関連して二つばかり伺いたいのですが、初めに、先ほどの外務大臣の答弁ですと、金利のほうは預金金利が三割、貸し出し金利が二六%、言いかえれば、逆ざやというような現象になっております。これは非常な異常な状態であるし、しかも、異常な高金利であるということがすぐわかるわけでありますが、そういうような経済事情の中で輸出をしても、これから経済協力を進めるということになると、かなり日本側としてはやりにくいんじゃないか。日韓双方のことを考えても、民間のほうが先ほどの話で七千万ドル以上の契約がされておるということでありますから、こういう経済事情が悪化していると、こげつきが再び起きるのじゃないか。そうなると、無償三億ドルのうちから民間の契約によるものを埋めなければならぬ、こういうことになりかねない。韓国のいわゆる経済協力に対する計画も二転三転してきまらないという状態でありますので、そういうような向こうの、韓国の状態が整わないのにこれを進めていくということはかなり危険が伴う。政府としては何とかして韓国の金融事情なりそういうものを整備する必要がある。公式か非公式かわかりませんけれども、何がしかのサゼスチョンをする必要があるのではないか。そういう意思はおありでないかということ、それが一つと、それからいまの自動車の問題でありますが、標準決済の場合には通産省では全然チェックができない。すでに過当競争のことがかなりいわれておる。話に聞くところでは、韓国の政界の間に何かしらのつながりがなければ、こういうような輸出入の契約はとれないというような情報もひんぱんに伝わってきているし、そういうことを訴えてきている人もある。そうなりますと、標準決済であろうと何であろうと、チェックできないものでも通産省としては正確にこれをつかまえてチェックをして、過当競争防止ということをやらなければ、日本の国損になるばかりではないか、その点はどういうようにお考えになるか。さらに強力に、こういうすでに新聞に出たりあるいはうわさが入ってきているような問題、具体的な事実として過当競争になったらば手をつけるというのではなくて、現在は認可するしないという範囲にあろうとなかろうと、これを手につけていくというようなお考えはないか、この二つを伺いたいと思います。
  152. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 第一点についてお答え申し上げます。  金利が先ほど申し上げましたように非常に異常な状態でございますが、韓国政府が預金金利を上げました直接の動機として、私どもが聞いておりますのは、現在非常に国内資金が不足しておる。いろいろの事業計画を立てまして毛運転資金その他で非常に資金がなくて困っておる、こういう関係で、現地資金の調達に最大の努力をしておりまして、よってもって外国から資本財その他の導入をいたしまして、そういうものを合わして、現地の企業が円滑に運営できるような点に重点を置いておると聞いております。公定歩合は二一%でございます。韓国の政府は、私どもが了解しておるところによりますと、毎年外資の、外国から借りまする借金の返済計画を立てまして、国家の予算に組みまして国会の議決を経ておるわけでございますから、その規模は、大体その年の輸出の目標額の一割前後と、こういうぐあいに考えられておるようでございます。そういう意味におきまして、韓国の政府もめちゃくちゃに外国から資本を導入しまして、あるいは借金をしましてやるということではなくて、相当堅実な考えを持ってやっておるように伺っております。  それから、いろいろの経済の施策の問題につきましては、韓国政府は、最近におきましては、世銀あるいはその他の関係国、日本を含めまして、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア等の国に呼びかけまして、いろいろの協議グループというものをつくる構想を持っておりまして、現に世銀の代表者は、数週間にわたりまして、最近韓国に旅行いたしまして、つぶさに経済の事情を検討いたしました。そして、国内干渉ということでなしに、いろいろの関係国が韓国の政府と協力して、各国の援助協力というものがお互いにそごがないように、最も韓国の経済に対して能率的な方法でいろいろ協議の場をつくろう、こういう話が進んでおる状況でございます。
  153. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 第二点でございますが、標準決済は現金決済、これに準ずべきものでありますから、輸出貿易管理令等によって承認品目になってないものを政府がチェックするということは、非常にむずかしいのでございますか、しかし、過当競争が韓国の経済にも悪い影響を与えるし、日本の産業界にも好ましいことでございませんので、日本の産業界、これはできる限りそういうことのないような、自粛をするような行政指導は強化していきたいと考えております。
  154. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどの――これは外務大臣にお願いしたいのですが、向こうの金融状態、経済状態について、できるだけ早く正常化をしてもらいたいという希望は、こちらからは出せないのかどうか。
  155. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 経済協力、すなわち無償三億ドル、有償二億ドル、これはあくまで経済協力であって、韓国の国民経済に寄与するという目的のもとに経済協力をするということで、協定にも書かれておるのでありまして、向こうのただ要請に応じて物を出すというだけでなしに、それがいかに韓国の経済建設に役立つか、また役立たせるためにはどうすればいいかということを、日本としても責任を持って考えて協力するということになっておりますから、その問題に関連して、こっちの経済協力が、向こうの金融制度、その他の経済状況に左右されて、そして、所期の目的を達しないというおそれのある場合には、それに対して十分に意見を述べる機会があるのでございます。
  156. 多田省吾

    ○多田省吾君 いままでいろいろお聞きしましたが、そのように韓国の経済状態あるいは金融状態が非常に不安定である。また、いろいろ自動車の輸出問題等にからんで、韓国の業者のほうに出資をすれば、輸出協定を結ぼうじゃないかという雰囲気もあるように思われます。また、保税加工の問題あるいは過当競争の問題、そういったたくさんの問題がいまこれから出てこようとしております。そういった状況の中において、ひとつ日韓の関係のためにも、この日韓経済協力について、絶対佐藤総理が、問題を起こさない、政府としても十分監督する、また業界にも要請していく、そういう覚悟はおありかどうか、その点を最後にお聞きしたい。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多大の犠牲を国民にもお願いして、そして、日韓経済協力をしようと、こういう決意をいたしたのであります。ただいまその方向において努力中でございますから、十分成果をあげ、目的を達するように、国民とともに進んでまいりたいと思います。もちろん、関係する各省におきましても、この趣旨はよく理解しておるはずでありますし、また、その目的もよくわかっておるはずでありますし、また、わが国民のこれが負担であることもよくわかっておると思いますので、十分成果があがるように、この上とも努力してまいるつもりでございます。
  158. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、物価の値上がり問題について、その基本的な態度について総理並びに経済企画庁長官お尋ねいたしたいと思います。  最近の消費者物価の値上がりは非常に激しいものがあります。実質賃金は下がっておりますし、また不景気でもございます。四十年度の当初見込みでは四・五%の値上がりしかないという予想にもかかわらず、本年末にはもう七・五%から八%の値上がりが予想されております。ところが総理は本会議等で、物価は経済の一現象であるから、物価だけ切り離して考えることはできない。むしろ景気の刺激が佐藤内閣に課せられた政治使命なんだ、そういうお話もございまして、これは全面的にそうでないというわけではございませんけれども総理お話の中にも、どうも不況対策と物価安定というのは矛盾するようですから、なかなかうまくいかない、そう答弁もあったように思います。しかし、こういった物価値上がりの問題は、構造的な問題もずいぶん関係もありますし、供給の過剰とか、労働力の不足とか、そういった面もありますけれども、国民大衆がほんとうに要求しているのは、物価に対する政府の真剣な姿勢であり、施策であると思うのです。それに対して不況対策が先走って、物価対策が二の次である、そういう姿勢が見られるのでございます。いま生鮮食料品の高騰に対する改善策にしましても、また公共料金は政府が押えることができるにもかかわらず、一斉に値上げしようとしている、建て値制の改善も十分できていない。非常に国民は不安であり、怒っているわけです。で、物価問題につきましても、総合的な通り一ぺんの形式的な対策ではなくて、戦前の物価指数を見ますと、個々の物価がずいぶん差があります。そういった面もありますので、物価の個々の問題について相当深く考えて物価対策をはかっていく必要があるのじゃないか。また政府は、非常におそいのですけれども、十二月の十七日にやっと臨時物価対策閣僚協議会あるいは物価問題懇談会というものを設けて発足したそうでありますが、なぜそのように物価対策に対して、国民の目から見れば二の次であるような態度をとっているのか。  いま農村あるいは中小企業に携わっているような方々は、この寒空に物価の値上がりにおびえて、非常に苦しんでいるわけです。農村なんかに行ってみますと、政府のあの農業基本法というのが非常に悪い法律で、中小企業を切り捨てるような基本法でありますけれども、まあ生産者米価なんかを見ましても、その生産者米価が上がること自体は、大農、二ヘクタール以上の大農は喜んでおりますが、中小の、中から下の、一ヘクタール以下の田畑しか持っていないそういう人たちは、少しくらい生産者米価が値上がりしても、結局物価の値上がりにそれが響いてくれば、かえって苦しい、むしろ生産者米価なんか上げてもらわないほうがいいようなものだ、極端に言えば、そういうようなことを言っている始末だ。そういう物価の値上がりというのは、低所得者階層に一番響くわけでありますけれども、そうしてまた国民大衆が一番願っているものは、何とか物価を安定してもらいたいということでございます。それに対して総理並びに経済企画庁長官から、ほんとうに物価の値上がりの防止、物価安定に対しては最善の力を発揮してそれに臨もうとしているのだという、しっかりした姿勢をお聞きしたいと思うのです。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君にお答えいたします。  ただいま、いずれ企画庁長官からも実際の扱い方についてお話があるだろうと思いますが、私がしばしば本会議その他の席上において申し述べますように、私ども内閣に課せられた使命は、不況克服と同時に物価の問題、これを真剣に取り組むこと。そして、これで成果をあげることが、わが内閣に課せられた大きな課題だと、こういうことをしばしば申してまいりました。もともと、ただいまも御指摘になりました物価問題を経済の一現象と見ている、そういう意味で軽く扱っているのじゃないか、かような御非難かと思いますが、この物価問題が経済の現象であることは、これは私が申し上げるまでもなく御承知のことだと思います。そういう意味で本来物価問題は、普通の状況、普通の議論から申せば、経済の安定基調、安定成長に乗れば、これは物価が安定している、二、三%の上昇でこれがとどまる、かようなことも考えられるのだと思いますが、ただいまの経済状況は、実は非常な、異常な状況でございます。この安定基調に乗せることは、安定成長に乗せることは、たいへんな実は努力を要すると思います。もうすでに二年かかっておりましても、今日の状態がこの程度でありますから、いかにこれが深刻であるかがおわかりがいくだろうと思います。そういうこの過程におきまして、われわれは、同時に国民生活を守る、こういう立場に立ってこの経済問題と取り組まなければならない、そういう意味から、ただいま多田君の御指摘のように、この物価問題がそういう意味で国民生活に重圧を加える、あるいは非常な負担になる、かようなことが指摘されるのであります。そういう意味においてこの経済を、不況を克服すると同時に、ただいまの問題である物価問題を真剣に扱って取り組んでいかなければならない。この点は、御指摘になるその事柄と、また主張なさろうとすることと、政府考えも大体私は同じだろう、かように思います。  そこで、この物価そのものを見ますと、非常に生産性のあがっておるもの等については、これは大体いま私が申し上げるまでもなく、だんだん安くなっている、こういう事態のあることも、これも御承知だと。若い青年諸君が非常に希望しておる自動車などは現に安くなっております。これなどは非常に生産性があがっておる、こういうことに基因する。需給の関係もありますが、そうだろうと思います。しかし、国民生活を守る、かような意味から考えますと、いわゆる高級耐久消費財、そういう自動車、こういうような問題でなしに、生活に直結する、いわゆる消費物価、これは一体どうなるのか、あるいはまた公共料金の扱い方はどうするのか、こういう点は御指摘のとおり、私どもに課せられた重大な課題になってくると思います。いわゆる台所の物資につきましては季節的に、また需給の関係で、ところどころ高低まちまちな状況を来たしております。しかしながら、ただいま消費者米価の例をとられた。消費者米価は、現実に一月から上げていくとか、こういうことになりまして、これが国民生活にどんな影響を与えるだろうか、こういうことも十分考案をいたしたわけであります。また、一カ月のその負担額等についても十分の考慮を払ったつもりであります。また、公共料金が軒並みに上がる、こういうことで、これが国民生活にどういう影響を与えるか。これらの公共企業の実態等も勘案いたしまして、合理化等をいたしましても、やむを得ず上げなければならない、こういう場合に、その時期、あるいはその上げ幅等においで十分くふういたしまして、国民生活に重圧を加えないようにこれと取り組んでいく、これが現在の政府の態度であります。  いずれにいたしましても、今日経済自身、これが非常な困難な状況に立ち至っておりますし、その結果また同時に国民生活、物価の面からも非常に重圧を加えておる、かような事態ができておると思いますので、政府といたしましては、国民生活を守る、こういう観点にも立ち、同時にまた、経済全体のあり方等をも考えまして、ただいま真剣にこれらの問題と取り組んでいるような次第でございます。
  160. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価問題が重大な問題でありますことはもちろんでございまして、ただいま総理お話しになりましたように、われわれとして不況の対策と物価問題というのは、経済問題のうちでは一つの解決しなければならぬ二本の大きな柱だと思っております。むろん物価問題は各般の問題に関連いたしておりますので、不況の回復から安定成長に乗せますのと並行して、これを根本的に解決をしていかなければならぬ、こういうふうに考えて、せっかく努力をいたす心組みでおります。
  161. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、どちらかというと、物価を安定させる、公共料金の値上げを何とか押えたい、そういうことよりも、どうしても景気対策、不況対策のほうに走ってしまって、物価対策がおろそかになっている。どうもこれは産業資本の圧力が強いのではないか、このように私たちは思えるわけでありますが、先ほどお聞きしたように、物価の個々の問題について真剣に対策を立てる用意があるかどうか。それからもう一つは、物価値上がりの原因を政府はどう見ているか、総理大臣にお聞きしたい。
  162. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように物価、当面日常起こっております現象としては、個々の物価に対する対策に重点を置くことはむろんでございまして、たとえば生鮮食料品、このたん白資源、そういうものの価格の問題、あるいは国民の日常生活における諸般の問題、こういう問題については、やはり個々に対策を考えていかなければならぬのでございまして、たとえば食料の問題、野菜等の問題につきましては、農林省が都市周辺に集団野菜指定栽培地をつくる、これは六大都市近郊ですでに発足していることでございまして、政府がそれぞれ補助金を出し、あるいは援助をしてやってきた。また、たとえば、卵の供給を円滑に数年にわたって続けていくためには、やはり安定的な措置が必要である、こういうふうに個々の物価について、むろんそれぞれ対策を講じてまいらなければならぬと思います。同時に、それらの個々の物価の検討の基盤になっております経済機構の問題、あるいは経済運営の問題等について、これらの問題については、長期的観点に立って経済の安定成長の路線の中においてこれが取り扱いをやっていく、そうして基本的な立場において安定にいくように、こう二つに努力を集中いたしております。
  163. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま生鮮食料品の問題等、あるいは卵等の問題もありましたけれども、もうすでに農村においては卵をつくるのをやめています。なぜならば、あまりにも飼料が高くて、それに反して卵の価格が安定していない。もうたくさん鶏を飼っているところなんか全部やめて、倒れているようなケースもずいぶんございます。まあ生鮮食料品の問題にしましても、前から政府は流通機構を改善するといっておりながら、実際やったような姿が全然見られない。そういう物価安定に付して非常に消極的な姿が見られる。真剣じゃない、そういうことを感ずるわけです。  公共料金の値上げに関して大蔵大臣にお尋ねをしたいのですが、十一月二十六日の各新聞見ますと、大蔵大臣は、来年度は公共料金の値上げはしないと言明されましたけれども、それはほんとうでございますか。
  164. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうはっきりしたことは言っておりませんが、私は、米価また運賃、それから郵便料金、これが引き上げがきまっておりますが、その他の重要な公共料金につきましては、なるべく当分の間引き上げがないことが好ましい、なるべくそういう方向に努力したい、こういうふうに考えております。
  165. 多田省吾

    ○多田省吾君 経済企画庁長官は、同じ十一月二十六日の閣議後の記者会見で、公共料金の一年ストップ説があるが、さしあたっての懸案事項が全部値上げしてしまってからのストップなどは全く無意味であり、ごまかしである、そのようにおっしゃったということが新聞に出ておりますけれども、ちょっとそれじゃ大蔵大臣と企画庁長官の言明が食い違っておるように思いますけれども、その点はどうですか。
  166. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一年間公共料金をストップしたらいいじゃないかという議論はございます。しかし、政府としまして、公共料金のうち、米あるいは国鉄、郵便料金等々につきまして、来年度どうするかという問題をわれわれ検討いたしました。われわれとしても、物価の上からいいまして、これをできるだけ上げたくないということはむろんでございます。したがいまして、それらについて十分検討してまいりましたけれども、たとえば郵便料金のごときは十四年間そのまま据え置きになっておりまして、まあ郵便会計が非常に苦しい状態に入ってきております。国鉄も四年六カ月ぐらい前回からたっております。それぞれ今日の経済膨張の結果として、非常にこれらのものの経理内容が悪くなっておる。そのまま放置しておきますことは、将来の経済発展に対しても、またそれを基盤といたします物価問題の点につきましても、必ずしも好ましいと思いませんから、それらの問題について、できるだけ将来の問題を基本的に考えながら、あわせてそこでそうした問題について国家がどの程度の補助ができるのか、また消費者、利用者の方にどれだけるものを分担していただくのがいいのかという問題は、これは相当われわれとしても検討いたしたのであります。そうして若干のものは利用者に負担していただくことが、この段階においては必要じゃないかという結論に達しておったのでございます。したがって、そういうような結論に達して、そういう処置をとろうかというときにそのもの自体をストップするならあれでございますけれども、そういうものは上げちゃったあとに一年間ストップしても、私は無意味だ。どうせストップするなら、一度上げたものは三年ぐらいは上げないようにするのがあたりまえなんだ。ですから一年スト  ップというのは無意味じゃないか、むしろそんなものならごまかしだというふうに考えましたから、新聞記者には率直にそのとおり申したのでございまして、別段大蔵大臣と違った考え方でおるわけじゃございません。
  167. 多田省吾

    ○多田省吾君 どうも閣内不統一のようにも見られるのですが、これは藤山長官にまたお尋ねいたしますけれども、国鉄の運賃値上げに対して、藤山長官は四月説をずいぶん強く主張されていたようでございますが、党側の田中幹事長は一月説だった。とどのつまりが、二つを足して二で割って、二月十五日に決定したような印象を与えますけれども、それはどういういきさつできまったか、お話しを願います。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国鉄運賃は、できるだけ四月に持っていくのが適当だというのが私の考え方であったわけであります。しかし党と関係閣僚との間で相談いたしましたときに、やはりもう少し早くやるほうがいいんじゃないだろうかというのが大勢でございました。
  169. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま藤山長官から、今度の公共料金の値上げが一段落したら、今後二、三年は公共料金は絶対値上げしないほうがいいではないか、そういうお話しがありましたけれども総理にお聞きしますけれども、企画庁長官お話しのように、今後二、三年は公共料金の値上げは絶対しない、そういうお約束ができるかどうか、また、そういうお考えがあるかどうかお聞きします。
  170. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、ただいま藤山企画庁長官がお答えしたとおりであります。本来公共料金がしばしば変わる、そういうような経済状態では実は困る。まあ安定成長に来せれば、かような事態がそうしばしば起こるわけのものではないのでありますから、そういう意味で安定成長、そうして公共料金などはしばしば変更することのないようにしたいと思います。
  171. 多田省吾

    ○多田省吾君 企画庁長官は、消費者物価の上昇は、上昇率でございますが、本年度は七・五%に押えたい。来年度は五%、四十二年度は三%と、段階的に引き下げたい。そういう方針を述べられたようでございますが、まあそのあとすぐ米価が  一月、それからすぐその他の公共料金も値上げを発表されたようでありますが、まあ企画庁長官は国鉄運賃は四月から上げたい、ところが二月十五日にきまってしまった。そういうズレはありますけれども、本年度を七・五%の物価上昇で一体おさめるという、そういうお考えがあるかどうか。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が申したのは、本年は七・五%から七%ぐらい、いろいろ議論はございます。また非常に見方によっては八%近くいくぞという見方もございます。これらのものは、今後の情勢によって、さらにわれわれも慎重な判断をいたしまして、七・五であるか、七・七くらいにいくか、その辺は申し上げたいと思いますけれども、まあ大体その見当にいかざるを得ないと思います。そこで、これを一気にそれでは来年四月一日以降四%に下げるのだ。あるいは中期経済計画にありますように二・八%で押し通していくんだなんていう勇気は、私にはございません。そうはとてもいかないんで、そこでやはり来年は、実際的に諸般の努力をいたしまして、まあ五・五%程度に押えていく。そうしてさらにもう一年諸般の経済情勢とにらみ合わせて、またこれからやります基本的な物価対策もきいてくるとして、二年後に四%前後、三%台という希望目標を持って、そこに落ちつけていけば、まず世界各国の経済の発展段階における二%半ないし三%に近いところまでは、外国の経済よりも日本の経済のほうが発展力がございますから、少しくらい多くてもやむを得んところはあると思います。それくらいの目標で、物価の安定を三カ年計画くらいではかっていきたい、こう考えております。
  173. 多田省吾

    ○多田省吾君 本年は政府の経済見通しの失敗から三千五百九十億円の歳入欠陥が生じまして、赤字公債の発行ということになったのでありますが、一面会社企業等の交際費等が非常に増額されておる。で、大蔵大臣にお尋ねしたいんですが、租税特別措置法によって交際費等の、そのほかいろいろありますけれども、租税特別措置法によって減税になっている分の、各種目別の内容はどの程度になっておりますか、お尋ねしたいと思います。
  174. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 主税局長答弁いたさせます。
  175. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) お答え申し上げます。租税特別措置法によります減収項目は、非常に数は多いのでございます。現在私どもがすでに国会に出しておりますこの四十項目ばかりございますが、四十年度におきますところの減収見積もり額は二千百十七億円でございます。項目ごとに一々申し上げるのは非常に繁雑でございますので、政策目的から分類されました大きな項目によって申し上げますと、貯蓄の奨励にかかる部分が千三百六十三億、内部留保の充実に関するものが三百五十五億、科学の振興及び設備の近代化に関するものが二百十億、産業の助成に関するものが二百六十五億、その他米穀所得課税の特例、社会保険診療費、種々ございますか、一方、法人税法――普通のたてまえと違いまして、交際費課税につきましては制限措置が租税特別措置法でございますので、その部分で逆に七十六億円ばかり増収をはかっております。以上、差し引きまして合計いたしますと、二千百十七億と見積もられておるのでございます。
  176. 多田省吾

    ○多田省吾君 その中で配当分離課税の面で減収になっている分を、三つありますけれども、合わせてどのぐらいになるか。それからいま四月からの改定のことでおっしゃったと思いますけれども、交際費課税の特例としてどのぐらい減収になっているか、もし交際費というものを損金計算を全然認めないでやったとしたらどのぐらいの課税ができるか、交際費の額と合わせてお願いします。
  177. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) 最初の配当課税に関しますところの特例は、平年度におきまして三百三十四億と見積られております。そのうち本年実施されました配当分離課税に関するものは百六十九億円であります。一方交際費によりますところの特別措置によりまして、交際費を制限いたしまして、増収をはかっておる部分は三百八十億でございます。しかしながら、先般統計から見ました法人企業の実態という形で国税庁から発表されました交際費の総額は、五千三百億でございます。その一部だけ損金算入いたしまして、現在三百八十億の増収があがっておるのでございますが、私はこれは税法上も不可能であり、また経済的にも困難だと思いますが、かりに五千三百億を全額損金算入をするといたしますれば、五千三百億に対しますところの実効税率、約三割ちょっとでございますが千五百億ばかり、三日八十億、差し引きますと千二百億円ばかりが増収になってあがってくると思われます。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、二千五百九十億円の歳入欠陥ということは、これは政府の重大な責任だと思う。それに対してきのうも木村委員からいろいろお話もありましたけれども、片っ方においては農業報償法一千四百五十六億円ですか、その法案の強行採決をはかる、あるいは配当の分離課税を設ける、そういったふうに税収がそれによって相当減っておりますし、またそういった余分な歳出がずいぶん出ているわけでございます。特に交際費は、いまお話がありましたように、昭和三十九年度において五千三百億も見積もられている、これは前年度から見ますと、もう八百億、あるいは二〇%近くの増額でございます。で、不景気だといいながら四十年度においても交際費は三十九年度に比べるとまた相当あがるんじゃないかと、そのように見られております。ところがまあ交際費も一つの需要には違いありませんけれども、企業交際費、接待費などのいわゆる社用費というものは、国民の健全な消費生活上あまり好ましくない、そういったものを四月の改定のとき以上に交際費等の特別免税措置を認めないでですね、どこまでも税金を取っていく、それが国民感情からして強く望まれていることではないかと思われます。そういった面、それから配当分離課税もそうでございますが、そのほか、国有財産の乱脈な使い方、あるいは政治献金なんかもずいぶんございます。帳面づらに蔵ってこない政治献金等においては、国民は、ずいぶんあるのじゃないかと疑惑を持っておるわけでございます。そういった面で二千五百九十億円の赤字公債を出す、財政欠陥を生じたという大きな責任を感じたならば、そういった不用な経費を節約し、あるいは税収をはかって、そしてどこまでも国民生活の安定につとめるべきではないか、交際費等にもっと税金をかける必要はないか、そういったことを大蔵大臣にお伺いしたい。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 年度の途中で二千六百億近い赤字が出たと、まことに遺憾に存じておる次第でございます。これをどういうふうに措置するか。その二千六百億近くの減収のほかに、千四百億円の歳出需要があるわけであります。私もまあいろいろ考えたのですが、とにかく、ここで増税の形になると、現下の経済不況から見てどうだろうか。そういうことで増税の形の対策はなかなかむずかしい。さればといって今度は歳出を切って埋めると……。
  180. 多田省吾

    ○多田省吾君 交際費等の増税……。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これもなかなかむずかしい。そこでまあいろいろ努力をいたしまして、歳出の中でも、何とか官庁の経費なんかは切り詰めてみたい。そういうようなことをいたしましたり、あるいは積み立ててある基金をくずすというような措置などいたしまして、ともかく千四百億円の歳出需要のほうはまかなうことにいたしたのです。しかし減税――税の収入減に相当する二千五百九十億円については、どうもこれを補てんする道がないというので、やむを得ず公債を発行すると、こういう措置をとったわけであります。  ただいま具体的に交際費課税をどうするかというお話でありまするが、交際費という名目で国税庁では発表しておりまするが、その本質は大体において営業費なんです。その営業費ではあるけれども、またいわゆる交際費的なところもある。そこでその半分近くのものを損金に算入しないと、こういうような措置をして、ただいま主税局長から申し上げましたような税収をあげておるような次第でありまして、これもにわかに、そう軽々に変更するということはむずかしいことかと思うわけであります。  また、国有財産の問題なんかについて御指摘がありましたが、これは政府としても、ほんとうに気をつけてやっていかなければならぬことと思います。そういうようなことで、その売り払いの方法なんかにつきまして欠陥があるように見られておる指名、競争ですね。こういうものにつきましては競争入札道義、これを原則とするように改めたいと思っております。しかしこれをどんどん売り払って、二千六百億近くの財源にするということもなかなかできませんし、まあともかく、あらゆる努力をした結果、二千五百九十億円の公債発行やむを得ずと、こう判断いたした次第でございます。
  182. 多田省吾

    ○多田省吾君 来年度の予算編成に関して、来年度の財源不足はどのくらいか。また国債発行を考えておるのでありますが、それに伴う地方分担金はどのくらいか、国はどういう形でこれを補てんするか、その問題について……。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 来年度の予算の編成にあたりましては、公共事業費などの国の資産として残る経費、そういうものの見返えりといたしまして、大体七千億見当になりますか、公債を発行することにいたしております。この公債発行によりまして公共事業費は相当ふえることになります、まあ住宅がおもでありまするが。そういう場合に地方のほうと共同でやらなければならぬ仕事があるのであります。直轄にいたしましても地方で分担を願う補助事業についてはもちろんでありますが、大体国で十の仕事をしますと、地方のほうでは四割前後の負担をするということに、平均をいたしまして相なるわけであります。そこでそういう問題もあり、またもう一つは、国で大幅な減税を考えております。そのはね返りが地方の減収になるという問題が一つあるのです。それからもう一つは、経済不況の影響で国同様に地方におきましても減収になる、こういう地方財政には三つの歳入窮屈化の要因があるわけでありますが、その額につきましては、これはまだ国の財政もきまらぬ現状でありますので、ましてそのはね返りを受ける地方がどういう額のものになるか、それはまだはっきりした見当はつきかねておりますが、その見当をつけますれば、大蔵省、自治省、相談をいたしまして、その補てんの対策をきめることに相なる次第であります。総合いたしまして、地方財政が秩序正しく運行できるようにいたしたい、かように考えております。
  184. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、地方分担金がふえる場合には地方交付税率の引き上げを考えておりますか。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたように、公共事業費ばかりでないのです。税が落ち込むという、地方税が落ち込むという問題もあるし、また、国の減税の影響をこうむるという問題もありまして、総額がこれが財源措置を要する問題になるわけであります。その総額に応じまして何らかの措置を講じなければならぬ、こういうふうに考えているわけであります。まだその方法として交付税率の引き上げを行なうという固定化した考え方は持っておりません。
  186. 多田省吾

    ○多田省吾君 公務員給与のベースアップについてお伺いするのですが、先ほどだいぶお話がございましたので、重複を避ける意味におきましてただ一つだけお聞きしたいと思うのです。  公務員給与実施については、人事院勧告を十六年間いまの政府は守ってこなかった。そうして昭和三十五年から六回も実施時期を守っていない。去年はスト権禁止の代償措置が不完全であるということで、ILOの指摘によって、十月実施を一カ月早めて九月実施にしましたけれども、ことしは少しも前進が見られない。また、それに対して政府人事院勧告を全然無視していながら公務員スト等に関しては半日ストをやれば解雇、減俸などの処分を行なう、このように官房長官が述べているように聞いております。これは全く理解に苦しむことでございますが、特に昭和四十一年度、来年度において政府人事院勧告実施に対してほんとうに誠意をもって、熱意を持ってやられるかどうかということを一つだけお伺いしたいと思います。
  187. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 先ほども御質問ありましたように、人事院勧告につきましては、政府は熱意をもってその実現をはかろうと常に努力しておるわけであります。ことしは特にああいう財政事情の悪いにかかわりませず、非常な総理の決断で九月まできめたというようないきさつもあります。ただこれを完全に実施しますにはいままでも何べんも議論されておりますように、いろいろと事情もございまして、年度途中で非帯に大きな補正財源を要するというようなことで、これの方法につきましてはいま関係機関で、また、国会の御趣旨もありまして、これをどうすればよりよく完全に実施できるかという点につきましては、鋭意検討中でございますが、ただ、時期をずらすだけでなかなか完全な解決方法は生まれてこないわけであります。その間の事情につきましてさらに前向きで検討を進めたいと思っております。
  188. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、政府に熱意と誠意がありませんから、年度途中で勧告があってどうもしょうがないということをおっしゃいますけれども、まあそれはそれとしまして、それでは人事院勧告の時期について自治大臣並びに人事院総裁にお伺いしたいのですけれども、地方財政のこと等もありまして、いままではまあ四月に民間給与の実態を調査して八月に勧告が行なわれているわけでありますが、まあ見込み勧告になりますけれども、十二月に勧告があって、四月から実施と、そのような方法はとれないものかどうか、その点に関してお伺いいたします。
  189. 安井謙

    国務大臣安井謙君) そうなりますと、たいへん都合がいいのでありまするが、いまの人事院勧告は御承知のとおり、当該年度のその民間との較差を是正、その年度で是正しろというたてまえになっておりますので、これが簡単にやりかねる、しかもその勧告の内容をきめるのは人事院権限であって政府じゃないというたてまえになっておりますので、そこらに技術的な問題がありますが、しかし、そういう御意見もあわせて将来鋭意検討したいと思っておる次第でございます。
  190. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、厚生大臣に、公務員給与にからんでお尋ねしたいのですが、看護婦の夜間手当が一回について百円、八月から支給できるようになっている。また、そのほかに別途考慮するということも言っておりますが、いま非常に公立病院で看護婦が不足している、その実態はどうなのか、その対策をどのように考えておられるか。
  191. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 看護婦の不足が御指摘のとおり、相当問題になっていまして、これが確保の対策につきましては、いろいろ対策を講じておるわけであります。厚生省関係の対策といたしましては、県立病院、国立病院あるいは日赤等の養成施設に対しまして助成をいたしております。また、研修等の費用に対しましての、制度に対する助成も行なっておるのであります。現在八百三の養成施設におきまして、年間二万一千人程度の養成を行なっておるわけでありますが、現在第一線で働いておりまする看護婦の数は約二十万人、なお四万人程度の不足を告げておりますので、ただいま申し上げたような対策を講じておるわけであります。なお、文部当局とも十分協力をいたしまして、高等学校に看護学科を増設をしてもらう、現在十八校に看護学科がございます。明年度におきましても相当数の看護学科の増設をお願いいたしたいと考えておるわけであります。なお、看護婦の給与の改定につきましては、特殊な仕事でございますので、特別な配慮を必要とすると考えております。御承知と思うのでありますが、公務員給与は、相対的に申しますと、民間のほうが高い、公務員のほうが安い、民間にできるだけこれを採用させるという方法で改善策が講ぜられておるのでありますが、看護婦の場合におきましては、逆に民間のほうが安い、こういう現況でございます。しかしながら、いま申し上げましたように、看護婦の特殊な職務にかんがみまして、今回のベースアップにおきましても総体として六・四%のアップになっておりますものを、七・一%と看護婦のほうは特に重点を置きまして改善策を講じた次第であります。
  192. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連して。先ほどの見込み勧告のことで伺いたいのですが、安井長官に三年前のこの予算委員会で私が聞きましたときにも、鋭意努力をするという答弁であったわけです。できる限り自治省あるいは地方団体の要求を考えると、十二月までに勧告をしてあげなければ、地方団体の予算の組み方についても非常に困難を生ずる。だからできるだけやりたいという、努力をするということを三年前も言われた。いまもまた鋭意努力するということになれば、これは無期限に見込み勧告ということはできないんじゃないか。むしろそうなるならば地方団体のことを考えて、十二月に一応見込み勧告を出す。で、いま言われたように、どうしても年度内云々ということで国家公務員考えるというならば、もう一度これを再び四月なり三月なりの給与の平均から出して勧告をすると、こういうような作業ができるのじゃないかと思うのですけれども、これは給与担当大臣と人事院総裁と両方に伺いたい。
  193. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ただいま申し上げましたように、勧告の時期をずらせて、翌年度に見込み予算で入れるというのも確か一つの方法であろうと思うのでありますが、それをやります場合には、いまの勧告制度のたてまえとは若干内容が異なってくる。政府が見込みを出さなきゃいかぬ。一体何を基準に出すか。また、そういう予算をどういうように組むかというような問題も出てまいります。そこで、これはなかなか簡単にきまり得ない問題なんでございますが、しかし、いま御提案のような要素も合わせまして、各関係方面あるいは人事院等とも十分相談をして、前向きにこれは進めたいと、いまも努力を続けておるようなわけでございます。
  194. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 大体の骨子は、いま安井総務長官の答えられたのと、私ども考え方も同じでございます。申すまでもございません。現在の私どもの方式は、四月現在で六千数百の民間事業所をとらえまして、四十数万人の従業員に一人々々に当たりまして集めましたデータと、それから公務員側の給与水準のデータと突き合わせました結果、七%の較差がございます。したがって、公務員給与を民間の給与に追いつかせていただきたいというたてまえでまいっております。これだけのデータを精密に調べておりますから、幸いにして人事院勧告はいままでまあ私の口から申すのは何でございますが、一応信頼をいただいておりまして、組合側には御不満があってもあるいは経済界にもいろいろ御批判はあっても、まあこれだけのデータのもとに出ているならやむを得ないだろうということで御納得をいただいておるわけでございます。ただいまの見込みの問題になりますと、そういうような信頼性の面で全然なくなってまいりますので、むしろ私どもとして言わせていただきたいのは、この見込みということであるならば、これは政府当局においても一応の見込みはおできになるはずではないか。したがって、来年度の予算をお組みになるときに、その見込みを何らかの利用をしていただいて、含みとして持っておいていただいたら、非常にスムースに勧告も実現するんではないか。まあ私どもの希望としては、そういうことを強く心に持っておるわけでございます。
  195. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 自治大臣はどんな考えを……。
  196. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 中途勧告は、非常に地方財政上混乱を来たしておりますので、できる限りそういうことにならぬようにあらゆる角度で検討をお願いいたしておる次第でございます。
  197. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま人事院総裁からも要望がありましたけれども、年度途中で勧告が出るからどうのこうのと言いますけれども、予算を組むときにそれを頭に入れてやっていただければ別に問題はないわけです。そういう意味でこの前の本会議で、給与担当大臣が何とかことしは財政困難であるにもかかわらず去年どおり実施したのだと、恩着せがましい態度で言われましたけれども、それから前進させることが当然であって、去年の踏襲であったならば何の進歩も見られない。そういう点に関して来年は人事院総裁の要望もあるし、予算を組むときにその点を考慮していただきたいと思いますが、最後にその点をお伺いします。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中もお答えいたしたのでございますが、人事院制度そのものがりっぱな勧告をしておられるのでありますから、できるだけこれは尊重していかなければなりません。ことばだけの尊重じゃなくて誠心誠意これに取り組む、その態度が望ましい、さように思います。しかし、ただいま言われますように、国家財政あるいは予算編成の際にぎりぎり一ぱいの予算を組んでおる。ことに、ことしはそうですし、またここ一、二年はどうしてもさような状態になるだろうと思います。そういうような余裕のない状態のもとにおいてただいま言われるような点を加味することが非常に予算編成上困難じゃないか、かように私は思いますが、とにかく人事院勧告がなくても済むような経済状態を引き起こす、かような状態にぜひとも早くいたしたいと思っております。
  199. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、新東京国際空港問題について総理にお伺いしたいと思いますが、昭和三十八年十二月の航空審議会の答申から二年もほっておかれて、そうしてようやくことしの十一月十八日に関係閣僚懇談会で新東京国際空港の建設を千葉県の富里に内定したようでありますけれども、国民は非常にその内定に対しましても疑惑を持っておるその一つに、大橋富重という人が今度逮捕されましたけれども、裏で富里の買収でも非常に暗躍しているような行動もあります。その逮捕される直前に急に内定した。前から千葉県等に相談するという約束があったらしいのですが、千葉県当局あるいは地元住民に対して少しも相談なしに、二年もほっておきながら、相談なしに十一月十八日に内定した。そのことに対して県もまた地元住民も非常に憤激して硬化している。そうして戦後最大の土地収用と言われるこのような問題に対して将来に大きな不安を与えている。どういうわけで急に十一月十八日に閣僚懇談会で内定しなければならなかったか、その前にどうして県当局等と話し合いの余地がなかったか、そういったことに対して佐藤首相からお願いします。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだこの問題は、最終的にいわゆる閣議決定をいたしておりませんけれども、とにかくいろいろ空港の候補地を予定し、そうして調べを続けてまいりました。ただいままでのところ、どうも富里以外に適地がない、こういうような実は結論になったのであります。いわゆる閣僚懇談会におきましてそういう一応の手続をとらないと、県と相談するにいたしましても、腹案なしに相談というわけにはまいりません。これはどこまでも政府自身がきめるべき事柄でございますので、ただいまのようなあるいは事前にどうこうしたという意見もあるやに伺っておりますが、とにかく内定しない、候補地を持たなくては買収ができない事柄でございますので、それらの点についても誤解のないように、これはぜひとも御協力願うようにこの上とも折衛するつもりでおりまして、知事におきましても、これらの事情は十分承知してくれた、かように私は理解しておるような次第でございます。
  201. 多田省吾

    ○多田省吾君 これはそのように簡単におっしゃいますけれども、事実はそんな簡単なものではありません。  地元の反対が非常に強くて、それが約束しながらどうしてあらかじめ事前通告をしてくれなかったというような不満が県にも非常に強いわけです。  それから富里地区も、千五百戸の農家の立ちのき問題がからんでおりますけれども、どういう土地であるか、どういう農家の状態であるか、そのことをひとつ農林大臣からお願いしたいと思います。
  202. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 富里地区は蔬菜、落花生等の畑作に依存する農業を営む農家の多い、経営規模が相当大きな、富んだ農家の多いところと聞いております。
  203. 多田省吾

    ○多田省吾君 ちょっとわけのわからない答弁でございますが、まあ時間もありませんので、運輸大臣にお伺いしたいと思いますが、富里地区の地元の反対の状態、また、県当局の意向といったものを運輸大臣にお願いいたします。
  204. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 大体、新空港は、御承知のように、羽田の国際空港が非常に手狭になってまいりまして、昭和四十五年ごろまでもたないような状態になってまいっております。早急につくらなければならぬという一つの条件が生まれましたということが、新空港を急がなければならない理由一つでございます。もう一つは、昭和四十五、六年ごろからは超音速機が飛ぶようになってくれば、これに離着陸のできる飛行場を持っておらなければ国際空港の、拠点としての立場を失うというような事情がございますので、急がなければならない理由があるのであります。  そういうことから新空港の候補地を急いできめることになったのでございますが。そういう条件で新しい空港をきめます場合に、四つの大きな限られた、必要とする条件がございます。第一は、東京都心からおおよそ一時間くらいの距離で行き来ができるということが一つと、それから気象状況が、飛行機の離着陸に適当であるということ、それから飛行場としての土質がまた技術的に可能であるということ、それからもう一つは、御承知のように、東京近郊には羽田、それから横田基地とか、あるいは入間川とか、立川とか、そのほか百里飛行場等六つの飛行場がございまして、それぞれ空が非常にたてこんでおります。そういう観点から、空にあき地がある、あき場があるということが必要でございますので、そういう条件からいろいろ検討いたしました結果、どうしても限られた候補地は富里と霞ケ浦ということに、これは航空審議会の答申もそのようになっておりますことは御承知のとおりでございますが、私らといたしましても、いろいろ霞ケ浦のほうにも行って技術的に研究いたしたのでございますが、この点はどうしても技術的に不可能な条件が生まれてまいりまして、富里以外にないというような結論に到達いたしましたので、富里地区に内定したわけでございます。  地元のほうに対する連絡等は、公式にはいろいろ不十分な点もあったようでございますが、きめます数カ月前から、賛成者、反対者、それぞれの人たちがたくさん私らのところにも押しかけておいでになった機会等にはいろいろ事情等もつぶさに申し上げまして、それは公式の会合ではございませんが、富里に飛行場をきめていかなければならない理由等はいろいろ申し上げておったような次第でございますが、現在の状態は反対の方響の運動も相当きびしいようでございます。それは事実でございます。私らは県の御協力を得なければならないということで県当局にもいろいろ御相談をいたしまして、数回にわたりまして地元に私も出てまいりますし、そのほか関係者が全部数回出てまいりまして、地元との懇談会等を通じて御納得のいくような線で御協力願いたいというようなことで懇請しておるわけでございますが、県当局からも地元民の意向を代表されまして、いろいろかえ地の問題であるとか、補償の問題であるとか、そのほかいろいろ地元民が協力していきますに必要な態度、あるいは準備等について申し出があっておりますので、そういうことにつきまして、政府といたしましては、できる限り地元民の納得の上に立って新空港の建設を急ぎたい。かような観点からそれぞれ関係省とも相談をしながら、地元の県当局とも話をいたしながら準備を進めておるような事情でございます。
  205. 多田省吾

    ○多田省吾君 運輸大臣は担当大臣でございますから、もう一つ質問をしますけれども、千葉県の当局といたしましても、地元住民の説得のために、どうしても政府に対して事前連絡や協議を求めていた、それに対して突然の内定発表で非常に憤激しております。やはり担当大臣として、その点に関して県当局との話し合いにおいて不備があったのじゃないかこれほどまでに地元民を激高させて県当局を硬化させているということは、やはり担当大臣として責任があるのじゃないか、その点に関しては……。
  206. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 決定いたします前に県当局との連絡が十二分でなかったという点についての、県当局の意向、あるいは地元の人たちに対しましては、この間私みずから出ていきまして、事情等をお話し申し上げまして、不十分な点があったことは遺憾であったという意思を表明いたしまして、まあ地元のほうでもこういう問題をきめる場合に、隅から隅まで手の届くだけの連絡はしにくかったという事情を申し上げまして、おおよそ納得していただきたいと考えております。
  207. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど農林大臣からきわめて簡単な話がありましたけれども、地元の富里地区におきましては、明治以来、三代前から入植いたしまして営々として農場の建設につとめて、平均耕作面積が一、五ヘクタールにわたっております近代大型農業の農家が非常に多く、生活も相当安定しております。その父祖伝来の土地も一片の政令によって全部出ていかなければならない、きわめて抵抗が強いわけです。そういう姿であるならば、なおさら担当大臣が、あるいは関係閣僚が、その状況を考えて、地元民が納得できるような決定のしかたをしなければ意味がない。かつて陸軍の飛行場が戦争中に建設されたときにも、あの地区の一部の農地が強制的に取り上げられて、そのために没落した農家がたくさんございます。また、松浦前運輸相が、やめられた方でありますが、あるときに、関係農民の方は北海道へ移ればいいではないか、そのような暴言を吐きまして、そして農家の方々が、われわれを虫けらと思っているのかと非常におこったような、そういうこともあったのでありますが、そういう死んでもこの土地を守れというようなむしろ旗を立てての反対が非常に強いわけです。この前は富里村の石井村長が二十二日に、賛成、反対の板ばさみにあいまして、そして辞表を出して――撤回をいたしましたけれども、そういった事態もありました。これから相当そういう補償問題あるいは代替地の問題等考えなければならないと思います。この前、十二月十五日に県からそういう要望書が出たと思いますが、それに対してどういう回答をなさったか、運輸大臣に伺いたい。
  208. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 地元から出てまいりました要望書は、代替地は十分、国有地あるいはその他の土地を準備してもらいたいということ、それから補償の問題、立ちのきに対するいろいろの補償等、立ちのき料等の問題とか、あるいは離職者に対して就職のあっせんをするようにとか、いろいろ具体的な問題が五、六カ条出てまいりましたが、大体この問題を解決いたしてまいりますには、県当局の御協力がなければどうしてもできないことでございますので、大体県の御要望に沿うように、政府といたしましても全力をあげておる次第でございます。  新空港というような特殊のこれは国家的な施設をいたしますのでございますから、特定の人が犠牲になっていくということのないように、どこまでも地元の人たちの納得の上に立って仕事を進めてまいりたいと思っておりますが、多田委員もおっしゃるように、あの地方は農業に携わっておる人が多い地方でございます。私はかえ地で十分できるだけのことをする、あるいはそのほか土地等が不足のような場合には、いわゆる所得を補償するような一つの方途を考え合わせまして、地元の人が犠牲になっていくというようなことは絶対にないようにという心の配り方で進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  209. 多田省吾

    ○多田省吾君 こまかい問題にわたりますけれども、代替地はどの程度まかなえるか、また、足りない分はどうするか、それからどんな状態になったときに、どんな清男になったときに閣議決定をして政令を出すか、その見通し、それから隣の八街町というのがありますけれども、落花生加工業者がほとんど倒産するところもありますが、それに対する対策が何も立てられていない、それに対してどう運輸大臣はお考えになっておられるか、その三点を。
  210. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 政令を出します時期でございますが、これは政府といたしましては、できるだけ早いことを望んでおるのでございますけれども、地元の空気等との関連を持ちまして地元との調整をとりながら、できるだけ早い機会にという考えは持っておる次第でございます。  それからかえ地の点でございますが、大体飛行場用地として必要なのが七百万坪ぐらいでございまして、その中で農耕地害にかえ地として必要な土地の面積、その他につきましては、あとで政府委員から答えさせたいと思いますが、八街地区の問題の質問の要点がはっきり聞こえなかったのでございますが……。
  211. 多田省吾

    ○多田省吾君 八街の落花生加工業者の倒産の問題です。
  212. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 落花生をつくっておられる農家のあの場所が飛行場になります場合には、やはり国有地あるいは県有地等、そのほか民有地等もできるだけ政府のほうで手に入れまして、かえ地として準備いたしまして、そういう地域にいま移っていただくというようなことが考えられていくと思います。
  213. 多田省吾

    ○多田省吾君 八街はあまりないですよ、ただ落花生の加工業者が倒産する。
  214. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) それはいままだ具体的には県のほうからも出てきておりませんので、県のほうからいろいろ要求があってまいりました場合には、相談をして善処してまいりたいと考えております。
  215. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 代替地につきましては、大臣から申し上げましたように、飛行場の用地が七百万坪でございますが、その中には離農する方もおられると思いますので、現在具体的の地積を県等とも数字についてはいろいろ詰めはいたしておりますが、ここで申し上げる段階にはなっておりませんが、面積的に所要の面積について、われわれとしては、原則として一対一の割合で代替地を提供するように、将来とも努力をするようにしてまいりたいと考えております。かりに面積的に不足する場合においても、農地の質的向上によりまして希望を満たすということを考えておる次第でございます。  それから御質問の第三点にございました落花生の加工業者に対する補償の問題でございますが、この点につきまして、現地におきましてもいろいろお話が出たわけでございますが、これにつきましては大臣から申し上げましたように、実質的にその状態をよく調べまして、その事情々々に応じてわれわれとしては、実質的な処置を講ずるということにいたしたいと考えている次第でございます。
  216. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後総理お尋ねしたいのですが、このように国際空港の決定にあたっては、政府の責任だと思いますけれども、非常にことさらに紛糾を重ねております。いままでオリンピック道路や新幹線の土地買収等にからんでとかくのうわさが絶えず、今度も戦後最大の土地買収であり補償であり、また、現にいまも富里村周辺の土地買収について思惑買いをしているのじゃないか、そういう黒いうわさが絶えないわけです。そういう点に関して、十分そういう腐った事態が起こらないように政府ではっきり歯どめをし、また、政府の責任において補償、代替地等の決定あるいは政令決定の時期等についても十分考慮を払って、地元の方々の要望に沿うように親身になって考えていただきたい、そのことを念願いたします。そのことについてお伺いします。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまこまかな点にまでいろいろ御注意がございました。大体、今回の第二空港設置の問題につきましては、地元民はもちろんのこと、また、関係国民の理解ある協力を得なければこの大事業はできるわけのものではございません。また、政府もこの点に思いをいたしまして、十分理解ある協力を得るように、最善の努力を尽くすべきことはもちろんであります。その意味におきまして、知事等、またその他自治体等あるいは各種組合等の積極的協力を求めるように努力いたしておりますが、そういう際に政府のなすべき点、これはただいま多田君のそれぞれ御注意になったこれらのこまかな点にまで配慮いたしまして、そうして理解ある協力を得るように最善を尽くしていきたいと思います。もちろん、ただいままだその時期等をいつ時分にすべきか、最終的決定をするときにまだ立ち至っておりませんが、ただいままでのところ、これを除けば他に代替地がないようでございますので、ぜひとも関係地元民、またその他の方々の御協力を得るように最善を尽くしてまいりたいと、かように思います。また、御指摘になりましたように、この種の事柄には、しばしば不正あるいは疑惑等をかもしやすいのでありますから、そういう点にもあわせて注意してまいるつもりでございます。
  218. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、現在行なわれております第四次選挙制度審議会についてお尋ねしますが、総理にお伺いします。答申あるいは中間報告は、いつごろ出る予定でございましょうかまあ、内閣の諮問機関としておまかせになった立場でございますので、大体のことをお聞きしたいと思います。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この選挙制度審議会は、広範にわたっての調査をいたしております。もうすでに相当の期間も経逝いたしましたので、四月以降――四月より早くなることはないと思いますが――四月以降適当なときに答申を出したい、かようなことを言っておられるやに実は私自身洩れ聞いております。私自身には、直接さような意味の話はございません。いままで政府自身も各界の方々の意見も徴しておるのでありますので、また、それに影響を与えるような発言はしたくないと思って、自主的な調査をお願いしておる次第でありまして、ただいま申し上げるように、四月より早くなることはないでしょうが、四月以降適当なときに答申したいと、かように言っておられるやに伺っておる次第であります。
  220. 多田省吾

    ○多田省吾君 選挙制度審議会の性格についてお伺いしたいのですが、選挙制度を定める問題は、立法府を構成する法律でございますから、特に民主主義の議会政治においては非常に大事な法律でございます。立法府は立法する機関でございまして、十分慎重に国民の意思を反映して審議が行なわれなければならない、そのように思うわけです。内閣の諮問機関として隠れみの的な存在で選挙制度審議会ができておるようでございますが、第一次、第二次までは選挙法そのものを広範に調査しておりましたのに、急に第三次選挙制度審議会から第一回の選挙の区制を中心にして審議を重ねているようでございます。この前の第三次の選挙制度審議会の報告を見ましても、審議会を構成するメンバーというものが選ばれたときに、ほとんどが小選挙区制あるいは小選挙区比例代表制の推進論者のみによって構成されているようでございます。これは、この前も、鳩マンダーと言われるような鳩山内閣の選挙区制のときにも非常に問題になりましたように、そのときは調査会でございましたが、七割までは小選挙区制論者によって固められておるのじゃないか、そういうことを言われ、また、今回は九割以上小選挙区制論者によって固められておるようでございます。そのように、審議会を構成するときに幅の広い階層から選ぶべきであると思いますのに、労働界とか、あるいは一般家庭の主婦とか、あるいは少壮学者であるとか、そういった方々が一人も選ばれておらない。そのように政府がかってに選挙制度一つの目的を持って変えるために、審議会のメンバーも、ことさらにそのように小選挙区制論者を集め、また、審議会の性格も非常に疑惑を持ってながめられております。調査会とか審議会といえば、ほとんど内閣の格間機関としての隠れみの的な存在になっておりますけれども、憲法調査会もそうでありますが、その憲法調査会すら、選挙のことに触れまして、どうしても政府、与党の立場で選挙法が改正されやすい、それで、選挙の問題は公正な選挙法の制定を補償するために、国会及び内閣に対して独立つの地位にある特別の憲法上の機関を設ける必要があるかどうかという問題が論ぜられまして、その調査会の結論としまして、公正な選挙法の制度の必要がある、また、そういう機関が必要だということも述べております。その点に関して、あまりにも審議会のメンバーの選び方が不用意であり、また片寄っているのではないか、かように思いますが、どう思いますか。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この選挙制度につきましては、選挙の公正を期すると、こういう意味におきまして、非常に広範にわたっての調査をいたしておるようであります。そういう意味で、公正でありまた同時に金のかからないような方法とか、あるいはどうしたら人口に合うような選挙区が構成されるかとか等々、いろいろ各般にわたっての議論をしておられるように聞き及んでおります。しかしながら、まずこの案がもしできまして、そして政府は、その答申を尊重すると、かように申しまして国会に送りまして、最終的に国会最後の審議をいただくわけですが、それらのいろいろの段階等がございますので、いわゆる審議会自身でおきめになりましても、各般の事情を十分勘案されて、しかる上でその世論の反映ということなしには、こういうものは最後の成案にならないもんだと、実は私もかように考えております。もちろん答申された審議会の意見、これは政府においても尊重することには間違いございませんけれども、最終的にこういうものが成案になる、それには、ただいま申し上げるように、世論をバックにしたこの反映がなければ、これが十分考えられなければ、最後に成案を得るもんじゃないと、かように私も思いますので、おそらく委員の諸君もこの答申についてはたいへん慎重に取り組んでおられることではないかと、かように思います。御承知のように、人口調査などが行なわれ、国勢調査が行なわれると、それに相応いたしまして、地域的に幸、不幸がないようにまず考えられると、そういう意味で過般一部定員の増減など――減はございませんが――増など考えられた、こういうこともありますが、それも部分的であります。今回取り組んでおられるのはもっと広範なものであると、かように伺っておりますけれども、この問題については、政府自身も、ただ答申があったからそれを慎重に、それを尊重するというだけでなしに、ほんとうに真剣にそのときの実情を十分勘案して、そして成案を得るようにしたいと、かように慎重な態度で臨むこと、これは今日私が申し上げることでございます。
  222. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近与党――自民党内部にも自民党選挙調査会あるいは選挙制度改正推進懇談会、そういった機関を設けて小選挙区制の推進を進められているようでありますけれども、第一次、第二次審議会のときは、答申を尊重すると称しながら、連座制の強化とか、あるいは政治資金の規制あるいは高級公務員の地位利用の規制、そういった問題に対してほとんど骨抜きにして尊重している。で、この前も自治大臣あるいはその他の方々が、今度の区制に関しては答申を尊重してやるのだと、そういうことを何回も何回も新聞紙上に発表されましたけれども、言われておりますけれども、非常にその姿勢というものが疑惑に包まれている。やはり選挙制度を審議するのには、いま総理のおっしゃったように、十分慎重な姿でなければならないし、また、野党が全部反対しているのに、ことさらに小選挙区制を推進しようというような動きが強行されれば、これは民主政治にとって大問題であろうと思います。この前も選挙法改正の特別委員会で自治大臣に質問をしましたときに、選挙法を改正するのは政党を近代化するためである、そのようなお話もありました。しかしながら実際政党を近代化するには、どうしても選挙法改正をして政党を近代化するということはできない。イギリスの例を見ましても、一八八三年に非常にその当時のイギリスの選挙が腐敗していたときに、腐敗行為並びに違法行為防止法というものをつくりまして、連座制強化、あるいは公民権停止、あるいは当選無効、五年間の出馬停止、そういった罰則を強化しまして、大選挙区制のときに選挙の腐敗が取り除かれ、また政党が近代化されておりまして、その後において小選挙区になっている。小選挙区制そのものが政党の近代化をはかるものでは断じてない。まして、日本の原内閣のときにも二回にわたって小選挙区制が行なわれましたけれども、選挙の腐敗がはなはだしく、また金もかかり、また、政党が混乱して分離してしまうというような状況も呈して、決して選挙区制を改正したからといって政党の近代化がはかられるものではない。逆に、その反対に、政治資金の規正とか、あるいは選挙の罰則の強化とか、そういったものをはかって選挙や政治を浄化していかなければならない。また、日本においては、政党のはっきりした確立ができていない。地方組織の政党の組織が非常に貧弱である。そういったいろいろな難点がございます。そういったことを加味していかなかったならば、もし政府、自民党が小選挙区制を自党の利益のために強行するようなことがあったならば、それこそファッショの汚名もこうむらなければならない。そういった点に関して慎重に臨まれるように、また、党利党略をもってやらないように最後にお願いいたします。その点に関して総理のはっきりした見解を承りたい。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げましたように、これは慎重であることは当然でありますが、大体選挙法の改正ということにつきましては、現議員、その議員の身分に関することでありますので、その点からも慎重でなければならないと思います。先ほど選挙制度審議会委員の選び方について非常に片寄ったものがあるのではないかというお話がございましたが、実はこれは任期が切れるというので、引き続いて答申を得るまでは前の方々に重ねてお願いしようと、こういうことであんまり人事の異動はしなかったように記憶いたしております。さらにまた、自民党の中に特殊な推進団体ができたと、こういう御指摘でもありますが、これもまたいわゆる総裁が云々ではございませんので、これはどこまでも自主的な会合であるように伺っておるのであります。さらにまた、この選挙制度審議会に特別委員としていわゆる議員の方々がそれぞれ出ていろいろ意見を述べていらっしゃるようでありますが、この特別委員の方方の意見は専門委員の方々に尊重されると、こういうものだろうと思います。もともと選挙制度審議会が議員の身分に関するような問題でもあります。また、選挙の行ない方もたいへん影響するのでありますから、現議員の諸君が非常な関心を示しておる。また、それだけで選挙制度の審議会をやられても困るというので、本来は議員でない方方に委嘱するのを原則としますけれども、これではどうも、やはり経験も生かしてもらわなければならないというので、いわゆる特別委員制度を設けておるのでありますが、しかし、それらの方方がいわゆる党を代表しての意見というわけにはなかなかいかないのであります。したがいまして、選挙制度審議会の場においていろいろの発言をなさいますが、同時に、これらの方々が帰られて、そして党の意見をまとめる上にその発言が非常な有効なポイントとなるかどうかというと、必ずしもならない。したがって、国会の審議に際しましては、この選挙制度審議会において答申されたとおり別な方向とは申しませんが、その範囲等も限られると、こういうようなことに実はなっておるのであります。その点が、ただいま御指摘になりましたように、過去においてもこの答申が尊重されなかった、別な方向へ行ったと、こういうようなことを御指摘になるのであります。で、選挙制度の扱い方はかくのごとく非常にむずかしい問題であります。私どもが、政府が政策を決定することは、この選挙制度の問題よりも、実は政策決定のほうが、反対がありましてもまだ楽に政府がきめ得ると、かように実は思うような事柄であります。したがいまして、この選挙制度の改正について、ましてや、ただいま言われる点等につきましては一そう慎重な態度で臨む、これは当然政府の態度であります。したがいまして、このことを、重ねて私の考え方を申し上げておく次第であります。したがいまして、今日選挙制度審議会においてどういうような方向で審議されておるか、これは私も十分つまびらかにしておりません。しかし、区制等についていろいろの意見も出ておると、かようには承知いたしております、しかし、これについての批判は私は今日差し控えるべきだ。ちょうど委員の諸君にお願いしておる際でありますから、私はそれを差し控える。しかし、答申を得ましたその暁においては、政府は慎重にこれらの問題を勘案して、そうして国会の審議を得る成案を得るようにいたしたい、かように思います。
  224. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 多田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  225. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、林虎雄君。
  226. 林虎雄

    ○林虎雄君 私は地方自治一般につきまして、特に地方財政について若干の質問をいたしたいと存じます。  その前に、総理と自治大臣に御所見を伺いたいことが一つございます。それは、先ごろ行なわれました新潟県知事選にからむ不祥事件に関してであります。去る二十三日に衆議院の予算委員会におきましても刑事問題を中心に取り上げられたようでございますが、私は、そうした方向とは別な角度から承りたいのであります。問題は、いま新潟県政というものは知事が選挙後ずっと不在でありまして、また、議会も、逮捕されたりあるいは取り調べを受けたような議員が多数にのぼっておりまして、まあ、議会もいわば混乱の状態である、こういうふうに新聞等では報じておりますが、私は、この県の理事者も議会も空転して混乱状態であるという点を重視をいたしたいと思うわけであります。(「政府委員席やかましいぞ」と呼ぶ者あり)
  227. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 静粛に願います。
  228. 林虎雄

    ○林虎雄君 この点について、自治大臣のところへは新潟県の情報といいますか、議会の混乱状態、あるいは知事が不在であるということで新潟県政が麻痺状態にあるということについて、どの程度の情報が入っておりますか。その点を最初に承りたいと思います。
  229. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 県政の威信回復に対する対策特別委員会の設置が十二月二十三日の早晩に県会できまりまして、威信回復に対して自主的に努力をいたしておるようでございます。
  230. 林虎雄

    ○林虎雄君 だいぶ簡単な御答弁でありますので、私のほうから少しつけ加えて申し上げたいと思うのであります。  去る十一号十四日に新潟県知事選が行なわれまして、現在の塚田新潟県知事が再選をされたのでございますが、その後病気ということで県外で休養されておるようであります。議会あるいは県庁には一回も出席をされておらないのであります。しかるに、先ごろ県庁の知事室あるいは知事公舎、そして塚田さん何人の事務所までも家宅捜索を受けたというようなことが地方新聞には大きく取り上げられております。この間、二回にわたって塚田知事は取り調べを受け、任意出頭の形で取り調べを受けたというふうであります。一方、議会側も知事選挙にからんで多数の議員が取り調べを受けておるようであります。また、逮捕された議員も数名あるというような始末で、まさに新潟県は知事不在、議会不在の観を呈しておると言っても過言ではないようであります。さきに議長選挙にからんで汚職問題が表面にあらわれて都民の憤激を買いまして、ついに議会解散ということになりました東京都の例がございますが、私はこの新潟県に起こった問題というものは、むしろ東京都のあの問題よりも大きいのではないかというふうに考えざるを得ないのであります。なぜかならば、東京都のあの問題は、議会だけの問題であったのでございますが、今度の問題は、御承知のように、何か知事にもからんでおる、地方首長にも関係しておるというような問題で、首長も議会もこれに関連しておるという意味におきまして、私は、大きくは民主政治の破壊につながるものであり、そして現在も当面の問題としても新潟県政というものが麻痺状態になっておるということは、非常に遺憾にたえない問題であります。これは言うまでもなく、新潟県民、新潟県の住民はこの状態を見て非常に不安であり、また不信であり、怒りを持ってこれをながめておるようでございますが、この問題に対しまして、総理も二十三日の委員会で御承知だと思いますが、御感想があれば承りたいと存じます。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 衆議院の予算委員会でもお答えいたしたのでございますが、ただいまこの事件は捜査中にかかっております。林君は自分でも地方首長の経験もあられる方でございますので、こういうことにつきましてもいろいろの感想を持っていらっしゃることかと思います。一日も早く捜査を終了いたしまして、この種の事態が鎮静することが望ましいと思います。捜査中にあるものにつきましてとかくの意見は述べないことが一番いいんじゃないかと、かように思いますので、慎重に、私のただいまの願いだけを披露しておきます。
  232. 林虎雄

    ○林虎雄君 この刑事事件の概要は、御承知のように、塚田知事が、知事改選の直前におきまして、多数の与党議員に多額の中元を直接渡したというところが何か容疑の中心のようであります。現在、新潟県の議会の定員は六十六名でありまして、そのうちで四十七名が取り調べを受けた。四十七士ではなく四十七名でございます。これが一人当たり最低二十万円、中には数十万円の金が手渡されたということが新聞で報道されておるわけであります。政府は、最近、歳末のいわゆる歳暮等においてもこれを自粛すべきてあって、これを受け取らないようにすべきだと各省に通達されたというようなことを私承知しておりますが、この歳暮というようなものは、常識的に日本の長い慣習になっておるようであります。いい悪いは例といたしまして、歳暮というものは、ウィスキーの一本か酒の一、二本、たばことか調味料くらいを贈答する程度のものが一応常識的でありますが、こういうこともなお綱紀を正すためには自粛すべきであるというような政府の方針のようであります。これはまことにけっこうだと思っておりますが、それと今回の問題は、中元と称して二十万円からの金を配られたということは、これはどうしても常識的に考えて多過ぎはしないかというふうに私は思うのでありますが、総理はそれに対してどういう御感想を持っておられますか、承りたい。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま捜査している段階でございますから、どういうような事態であるか、私はその批評は避けて、そうしてその捜査の結果を待つ、この態度でございます。
  234. 林虎雄

    ○林虎雄君 もちろん私は、刑事的な問題でかれこれ言うわけではございません。総理に承りたいことは、二十万円というような多額の金が中元として常識的なものであるかどうか、そういう点について感じを承りたい、こう思うわけであります。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういう事柄は、やはりまた地域的なものもありましょうし、いろいろきめかねる問題だと思います。私は、最近一般に世の中がはでになって、たとえばこれは話が別でございますが、結婚費用などもずいぶんお金がかかっているようでございますので、これなどはやはり自粛すべきものだと、かように思います。ただいま言われますように、お中元とかあるいはお歳暮とか、こういうようなものも、そういう意味で一般に自粛すべきものだろう、かように私は思います。最近の行き方はなかなか私どものような古い時代の感覚ではきめかねるように思います。
  236. 林虎雄

    ○林虎雄君 中元とか歳暮というものは、別に制限があるわけではありませんから、どの程度がいいとか悪いとかいう判断は、これは総理の言われるように、できないと思います。それから地域的な慣習もありますので、一がいに言えないことはお話のとおりであります。また、最近の世相は、いろいろの贈答がはでになっていることも私はこれを認めるわけでありますが、それにしても二十万円というのは、これはおそらく地域的にもこのような例はないだろうと思います。幾らはででありましても、これは常識を逸脱しておると思うのでございますが、総理は、地域的にも慣習的にもいろいろあるということで逃げられてしまえばそれまででありますが、私は、常識的にこれはとうてい社会的に見て納得のできかねる金額であるというふうに思わざるを得ないのであります。ただ私は、この問題として取り上げましたことは、新潟県知事選にからんでおるか、あるいは単なる中元か、その点はまあいずれ司直の手で明かにされることでありましょうけれども、いやしくも一県の首長として、選挙直前に誤解を受けるようなこうしたことを行なったというととは、全国の知事あるいは市町村長というような首長の立場にある者が非常に誤解と迷惑を受けるおそれがあるのではないかと思います。すでに新潟県でもいろいろな批判がちまたに出ておるのでありまして、投書でありますけれども、若い人たちが非常に憤激をいたしておるのであります。これは毎日新聞の十二月二十四日の地方版でございますが、県民の声としての投書が三つほど出ております。その中の一つとして、『全国一に広まってしまった不名誉なことで、県民はマユをしかめているのに、自民党はそんな県民の気持をわざと無視しようとしている』、新潟市の新大生、大学生二十二歳。それから、知事がずっと不在をしておることに対しまして、『なぜ隠れるようにしなくてはならないのか』、新潟市の女池というところの女店員、二十七歳であります。それから、『すぐさま開会中の議会を通じてなにかの意思表示がないのがおかしい』と、これは会社員で五十一歳、このような投書がございます。自治大臣からお答えがありますように、調査特別委員会というものができて、そのほうはいいのでありますが、いま若い人たちが県政に対して大きな不満を持っておる。私はこのことは非常にゆゆしい問題であろうと思います。また、知事というような立場にあると多額の金が左右できるという印象を住民に与えることは、これは知事に対する不信、そうして住民は非常な不満を持つというふうに考える。これは単なる新潟県のみでなく、他府県の知事もそのような多額の金が私的に動かすことができるかという疑念を抱かせることは、私は民三政治の推進の上に、たいへんにまずいことであろうというふうに思います。言うなれば、現代の地方首長というものは、まだ事大主義もありましょうけれども、一応豊かな常識を持って、そうして人の師表に立つというくらいの心がまえが必要であろう、常識的にいかなければならないと思いますが、私がいま申し上げたように、二十万円事件というものはどうしても常識的とは考えることができません。他府県の首長もみな迷惑がっておりますだけに、この問題は政府関係の直接の問題ではありませんけれども、自治大臣としては、府県や市町村のめんどうを見ておる立場におきまして、この問題をどのように考えるか、どのようにこの問題の、刑事問題は別としまして、道義的な問題、それから政治的な問題の解決に対して、新潟県の問題をどのように処理しようと考えておられるか、大臣の御所感を承わりたい。
  237. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 今日一番大切なることは、理事者並びに指導者がえりを正して綱紀の粛正を強く推進するということが絶対に必要であると考えておるのであります。この観点において、よき助言指導をいたしたいと考えます。
  238. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと。まあ、総理にひとつお答え願いたいのですが、こういう問題についてはどうしても個人の行動を非難するようなことになって、われわれとしてもなかなか言いづらい点はあるわけです。しかし、新聞等にああいうふうに公になっておる。それを政治家が黙って見ておるということであれば、みんな同じじゃないか、私は、国民の立場から見れば、そういう気持ちを持つのは当然だと思う。このことが、私は、塚田さん一人がどうなるかよりもより根本的に大きな問題じゃないかと思う。そういう意味で、政治の最高責任者としてのやはり佐藤さんの気持ちというものを聞きたいというのはみんなの願いだと思う。林さんもそういう気持ちでお聞きになっていると思います。だから、これはいま司直のほうで取り調べをしておるから批判を差し控えたいとか、そういう問題で私はないと思う。検察庁のほうで調べておるのは、そういう金がある時点において渡ったことは大体事実だ、ただ、それはどういう意味で行ったもんだろう、その性格を法的な立場から吟味し、詰めておるという秘匿のことでありまして、これは事実関係は基本的なものはこれははっきりしておる問題なんです。それが法的に分析して罪になるかならぬか、買収になるとかならぬとか、そういうことよりも、たとえ起訴に値しないというようなことになったとしても済まされないという気持ちで国民はこれは考えておるわけなんです。だから、それに対する答えとしてあなたの気持ちが出てこなければいけない。これは少なくともこういうことは非常な遺憾な事態でありまして、それくらいのことすらも総裁として表明されてこないということは、たいへんこれは残念。私たちも林委員としても、確かにこういう問題を引き出したいという気持ちはなかろうと思う。やむにやまれずに、しかし、われわれもこう聞いていて、その答弁がどうも国民の期待とはなはだしく反しておる。そういう場合に黙っておれば、お前たちもあれで了承しているのかということになって、これはもう言わざるを得ない。これはみんなの、私は、自民党の人も含めて同じ気持ちだろうと思います。同じ党派だから直接言いにくいというだけの違いがあるにすぎないと思う、私は。参議院の場合でも、たとえば小林章君の問題がありまして、検察庁のほうは一応起訴猶予ということになっておりますが、しかし、国民の皆さんは決してそれで納得した状態にはなっておりませんね。同じ参議院として非常なわれわれとしてはやはり真剣にああいう問題でも実は悩んでおるところなんです。そういうわけですから、総理は、この前も国会が紛糾したときに、政治家がまず姿勢を正さなければならぬという意味のことを言われましたが、これはもう当然その姿勢の中の一つの大きな問題でありますので、まあ、自分の部下といいますか、仲間の者をあまり批判したくないという気持ちはわかりますけれども、もっと大きな立場に立って、質問が出た以上は、ひとつきちんとした立場でお答えを願いたいと思うのです。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もこの問題はまことに重大な意味を持つものだと、かように思いますから、ただいま、捜査中、その結論が早く出てくることを待っておるのだ、かように申しておるのであります。その前に当然意見を述べろと、こういうふうに仰せられますが、私はさようには思わない。事柄が重大であるだけに、捜査が終わったときに私も態度をきめますし、また、これについての話をするというふうに私はいたしたいと、かように申しておるのでございます。
  240. 亀田得治

    ○亀田得治君 再度私も十分われわれの気持ちも申し上げてそのお答えをお願いしたわけですが、やはり言われないわけでありますが、それじゃ、私もこういうことは言うつもりはなかったんですが、たとえば小林章君の問題、これは検察庁の処分がすでに出ておるわけであります。政治家の立場として、ああいう事態に対しましてどういうふうに総理としてはお考えでしょう、それをひとつ関連してお聞きをしておきたいと思います。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、私どもの党から公認候補で当選したわけでありまして、したがいまして、自民党の党員である限りにおいてわれわれ何か考えなきゃならぬだろうと、かように申しておりました際にちょうどこれが離党しまして、ただいまは私どもと関係のない立場にあるようでございます。こういう事柄は、本人ももちろん感ずるところもありましょうし、また、議院そのものとしてもいろいろ考えられるところがあるだろうと、かように私は思うのであります。もともと、この種の事柄は、これは自主的にきめるべき問題ではないかと、私はかように思います。
  242. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまの問題についてこれ以上総理にお聞きしましてもなんですから、文部大臣の御感想を一つだけ承りたいと思います。  現在、凶悪犯罪等が毎日のように新聞をにぎわしておりまして、まことに困ったことであります。また、非行少年等の犯罪も同じように多いのであります。文部省としては、青少年の教育補導、そういう立場の大きな責任を持っておられるわけでありますが、いま私新聞の投書をちょっと御紹介いたしましたが、そのように若い人たちが新潟県政に対して非常な不満を持っておる、こういうようなことでは、いくら青少年の指導というようなことを口をきわめても、指導者がこのようなゆがんだ状態でおったのでは、これはもう意味をなさない、効果を奏しないというふうに私は思うのであります。県民こぞって、県政に対して、理事者にも議会にもすべて不信である、不信用であるというようなこと、になりますと、これはとんだことになると思いますが、文部大臣の立場において御意見を承らしていただきたい。
  243. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 青少年の非行化防止ということは、国家的にも非常に重要な課題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、学校教育、社会教育の面を通して極力改善をはかることにつとめておる次第でございます。  なお、母親、父親等が働きに出て、家庭に親のいないような子供に対しては、現在地方自治体の一部でやっておりますようないわゆる留守家庭児童というものに対する対策を来年度から強力に進めたいというような施策を考えておる次第でございます。しかし、いま御指摘のありましたように、新潟の案件につきましては私ども事情不案内でございますが、要するに、こういう青少年の非行化を防いで、いくという上からいえば、指導階級の者はおのおの最善の注意を払うべきものであると、かように私は考えておる次第でございます。
  244. 林虎雄

    ○林虎雄君 指導的な地位、そういう立場にある者が姿勢を正さないで、口に青少年の善導なんて言っても、これはもう空念仏でありますことは、いま文部大臣がお答えになったとおりであります。まあこの問題についてはあまりこれ以上このことは申し上げませんけれども、ただ、私は、新潟県政がいま混乱しておる、地方自治が非常などろ沼に足を突っ込んでおるというような状態を心配をいたすわけであります。個人の刑事問題がどうなろうと、これは別の問題として、このような議会や理事者に不信感が高まってくれば、地方自治は一体どうなるかということを心配して総理その他の御意見を求めたわけでありますが、まあこれからさらにいろいろ問題は発展するであろうと思います。いずれにしても、地方自治が財政的にも非常に危機のときであり、非常にむずかしいときに差しかかっておりますだけに、折り目正しい地方自治を推進しなければ民主・主義はついに崩壊をせざるを得ないのではないかと、そういうことを心配いたしまして申し上げたわけであります。今後、自治大臣におかれましても、今後の推移でありますけれども、地方自治体が健全に発達するように、かかる問題が再び起こらないように、ひとつお心がけを願いたいと、このように思います。  次に伺いたいことは、明年度の予算編成にあたりまして地方財政に対処する政府考え方というものを承りたいと思うわけであります。  すでに昨日総括質問でわが党の木村委員から指摘されましたように、昭和四十一年度の国の予算は、戦後一貫してとってまいりました健全財政主義、いわゆる超均衡財政を堅持してきたのを一てきして、昭和四十年度本年度においては赤字公債二千五百九一億――これは大蔵大臣は赤字公債とは言っておらないと言いますが、とにかくまあ二千五百九十億の穴埋めの公債が発行される。明年度はさらに七千億前後に及ぶ建設公債を発行するというように、まさに画期的なわが国の財政方針の転換期に立っておると思うのであります。この大きな転換期にあたりまして、その地方財政に及ぼす影響というものは、私は予想外に大きなものがあると思います。公債政策に踏み切るにあたりまして、政府は、地方財政との関連についてどの程度検討され、考慮されたか。従来、とかく国の財政の陰に第二義的に扱われていたようなそういう感のいたします地方財政であるだけに、ひがみといいますか、そういうものもありまして懸念されるわけでありますが、大蔵大臣に承りたいことは、明年度の公債発行が地方財政にどんな関係を持ち、どんな影響を与えるかについて、政府の検討された内容といいますか、それをまず承りたい。
  245. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのように、中央、地方は一体として考えなきゃならぬというふうに考えております。昭和四十一年度の予算を編成するにあたりましても、まず第一に、経済界の落ち込みが地方の税収入に非常に消極的な影響を与えております。それから、御指摘の中央財政において公債を発行するという問題が、中央の公債の発行の結果、中央の公共事業がふえます。その結果、地方における共同負担額がふえてくるわけであります。それから、お話はございませんでしたが、中央において大幅な減税を行ないます。その減税の結果、三税の減少が行なわれますので、これに伴いまして交付税交付金が減ると、こういう三つの問題がありまして、地方におきましては相当財政が困難な状態に立ち至る。これに対しまして、中央のほうでどのくらい地方に影響が実際の額としていくのであろうか。これは、公共事業としてどういう仕事をするかということが個々具体的にきまらぬと、正確な見当は出てまいりません。それから減税につきましても、一つ一つの減税が三税においてどういうふうに行なわれるかということが出てくる必要があるわけであります。そういうのを総合いたしまして、地方財政に幾ばくの欠陥が生ずるかということを検討中であります。しかし、その検討の結果、これだけの額が出てくるということになりますれば、これは中央、地方の財政調整と、こういう問題に移るわけでありまするが、中央においてもまあいろいろ方法はあると思うのですが、地方に対して財源を補給することを考えております。しかし、同時に、国においても公債を出すというのと同じように、地方においても起債を行なうという必要が出てくると思うのであります。その起債を行なうにあたりましては、これも中央、地方を通じて一体的に考えなきゃならぬわけでございまするが、七千億前後に及ぶ国債の消化、その際におきましては、地方債、また事業債、政府保証債と、そういうものを一体として消化できるという見通しの上に立ってその地方債の額もきめていきたいと、こういう考えでございます。   〔委員長退席、理事吉江勝保君着席〕
  246. 林虎雄

    ○林虎雄君 中央の財政と地方財政とは一体として考えていきたいと、こういうお答えであります。しかし、過去のことを考えてみると、どうしてもこれは一体とは考えられない。第二義的に考えられておる。まあこれはあとで具体的に数字をもって申し上げ、政府考えをお聞きしたいと思いますが、地方債のことにつきましてもこれから承りたいと思っておるところであります。いま大臣からお答えのありましたように、明年度の予算編成方針を公債政策に踏み切ったという大きな原因として考えられることは、いま沈滞しております不況を何とか回復したい、景気に刺激をつけたい、景気回復の糸口をつかもうというような、かなり積極的ないわゆる建設公債の方針を打ち出していると思うのでありますが、いかに国が積極的な予算を組んでも、それに相呼応するところの地方財政というものが伴わなければ、せっかくの国の政策というものが、景気をよくしようという政策が空転するおそれがあるのではないかと、こういう点を私は考えざるを得ないのであります。現在、地方財政が非常な不況におちいっておる。これに対してよほど大きな活を入れない限りは、国の積極的な公債政策も十分にその力を発揮できない、こういうふうに私は思うのであります。国の政治と地方政治はいわばまあ車の両輪のように双方バランスがとれた行財政でなくてはならないと。これは当然でありますが、いまのところはどうも方に偏しておるように思いますが、中央、地方のバランスのとれた財政を立てなければいけないといういまの大蔵大臣のお答え、お考えでありますが、総理も同じと解してよろしゅうございますか。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵大臣のお答えしたとおりであります。ことに、同時に、住民の立場考えますと、国民、地方住民は同一人でございますので、そういう国民の負担から地方税あるいは国税いずれにしても軽くなければ困るのでありますが、そのもとである地方、負担あるいは地方行政のあり方、または中央負担あるいは国政のあり方、そういうことに最も関心があるのでございますから、十分調整をとる必要があると、かように思います。
  248. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまお答えのありますように、バランスのとれた中央、地方のあり方という点については、総理も御同感のようであります。ところが、現実には、地方財政は非常な窮境におちいっておりますことは、これはいろいろの機会に発表されておりまして、御承知のとおりだろうと思います。  そこで、私は具体的にお聞きいたしたいと思いますことは、去る二十一日の委員会における大臣の提案理由の説明でございますが、昭和四十年度の租税及び印紙収入が経済不況を反映して大幅な減少が明らかになったので、二千五百九十億の公債を発行することになった、そうして、その公債は資金運用部資金による引き受けと市中公募によるというふうに言われておりますが、この資金運用部資金と市中公募との割合はどのくらいでございますか。
  249. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体半々でございます。
  250. 林虎雄

    ○林虎雄君 国の予算というものは戦後ずっと租税収入を中心として公債の不発行主義をとってきたのでありますが、一方地方財政は、御承知のように、投資的経費の一部というものは地方債でまかなってまいってきたのであります。この点、地方と国との予算の組み立て方が違っておるのでありますが、現在でも地方債は相当額が残高として残っておると思います。地方債の残高はどのくらいありますか、自治省のほうで承りたいと思います。事務当局でけっこうでございます。一般会計だけでいいです。
  251. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 昭和三十九年度末現在でございますが、昭和三十九年度発行額が完全に発行されたかどうか若干疑問でありますので、推定が若干入りますことをお許し願いとうございますが、一般会計で三十九年度末現在で一兆一千億、うち、政府資金が八千億、公募が三千億でございます。
  252. 林虎雄

    ○林虎雄君 大体、地方債は、市中公募とか縁故債であると思いますが、本年度国で発行いたします資金運用部資金による引き受けと市中公募が大体半々ということですが、この市中消化という国の公債と各種の地方債との市中公募に対して競合が起こるおそれがありはしないか、この点の見通しはいかがですか。
  253. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、来年度発行いたします七千億見当の公債は、これは民間で消化するということを申し上げているのですが、それはただ単に国の立場からということじゃないのであります。つまり、政府保証債とか、あるいは地方債あるいは事業債、それらが必要とするもの全部を含めて圧迫が他に行かないように国債の消化をすると、こういうことでございます。昭和四十年度の国債二千五百九十億円、それの約半分を資金運用部に持たせるということをきめたゆえんは、地方債でも、あるいは事業債でも、政府保証債でも、それぞれ三十九年度よりは増加して発行する計画になっておるんです。そこへ突如として国の国債がはまり込んできたわけなんです。ですから、これをほうっておくと他に影響するというので、精細に検討して、これを月別にどういうふうに出していくかということまで検討して、これが二千五百九十億円じゃ他のものに圧迫を与えるおそれがあるということから、特に半額を資金運用部で引き受けるというふうにしたわけであります。そういう方式は、今後四十一年度といえども、また、それ以降といえどもとっていくと、こういう考え方であります。
  254. 林虎雄

    ○林虎雄君 自治省にもう一つ伺いますが、本年度で公債が国のほうで二千五百九十億発行されます。地方側として本年度これから発行する予定の公債というものはどのくらいありますか、承りたいと思います。
  255. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 今回修正いたしました地方債計画分八百五十五億円を含めまして、本年度の他方債計画は五千七百四億であります。そのうち、政府資金によりますものが三千三百八十億、それから公募によりますものが二千三百二十四億ということになります。
  256. 林虎雄

    ○林虎雄君 ただいま自治省のほうで発表いたしました額と、二千五百九十億のうち市中公募が千三百億前後でありますが、この競合については市中消化が心配ないと理解してよろしゅうございますか。  もう一つは、競合しないで、何か国のほうで調整をするような自信といいますか、見通しはお持ちになっておると解してよろしゅうございますか。
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全然心配はございません。
  258. 林虎雄

    ○林虎雄君 以上が、本年度公債発行に関する地方財政への影響について伺ったのでありますが、一応地方債の発行にも全然影響はないということでありますから、これはそれでけっこうだと思います。  明年度からいわゆる建設公債なるものが発行されるとともに、大臣からもさきにお話のありましたように、大幅の減税が予定されておるようであります。このことは、地方財政に及ぼす影響もお話のあったとおりでありますが、具体的に申し上げますと、明年度からは国税の減税が約三千億円程度と聞いておりますが、その規模がまだ内容が明らかになっておりません。けれども、いずれにしても、国税の減税が行なわれるということになりますと、交付税に響いてくるわけであります。自動的に減収になるわけであります。それから地方税のほうも、御指摘になったように、国税と課税の基礎を同じくする法人事業税、あるいは、国税を課税標準とする住民税等は減収になるわけでありますが、この減収額等をどの程度に見ておられるか、あるいは、これに対する措置については大蔵大臣は十分に御承知だと理解してよろしいのかどうか。
  259. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、三税が減少すれば、その二九・五%減るわけでありまして、まだ現実の問題とするとその主税がどういう形になるかが最終的にきまっておらないのであります。減ることはよく承知しております。
  260. 林虎雄

    ○林虎雄君 もう一つ承りたいことは、固定資産税でございます。これは自治省のほうでけっこうですが、この固定資産税は、改正法律案の成立が三十九年度だと記憶しておりますが、その新評価に伴うところの負担調整について検討しまして、その結果、農地の関係はそのままとして、宅地等は一・二倍としておいて、それを三カ年据え置くということに経過措置がとられておるわけでありますが、その点はそのとおり間違いがないかどうか、承りたい。
  261. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 現行法ではそのとおりになっております。
  262. 林虎雄

    ○林虎雄君 その三カ年の据え置きの経過措置が、明年の四十一年度でこれが三カ年目に当たるわけであります。最近新聞等で見まして知ったのでありますが、税制調査会の小委員会において、新評価額に近づけるために、まあ全体の地方税の勘案等もあると思いますが、何か明年度から増税をするように検討されておると。小委員会等の結論が出たのか、自治省がこれを検討するのか、この点は明らかでありませんけれども、明年度から増税をしよう、改正をしようという考え政府においてあるのかどうか、この点を承りたい。(「根本問題だから大臣やれ」と呼ぶ者あり)
  263. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 調査会の結論がまだ出ておりませんので、答申を見まして検討をせなければならぬと考えております。
  264. 林虎雄

    ○林虎雄君 検討をしなければならないというお話ですが、すでに政府は三カ年据え置きということが明らかにされておるわけです。その後三カ年の後における方針というものはまたおのずから新たに考えられるかもしれませんけれども、明年は三カ年目に当たる、三カ年の間は据え置くという政府の方針を変える場合もあるという意味のお答えのように承りましたが、そういうことは私の聞き違いですか。
  265. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) まだ結論が出ておりませんので、方針も未確定でございます。お説の点は検討をするようなことは考えております。
  266. 林虎雄

    ○林虎雄君 検討ということがよくわかりませんけれども、私の申し上げることは、三カ年据え置くということがこれはもう政府の確固たる方針で今日まできたわけです。三カ年もたたない、二年たって、三カ年目に変えることも含めて検討をしておるというようないまお答えでありますが、そうしますと、これは政府の背信といいますか、政治不信ということになろうと思います。これは、政府が二枚舌を使ったということに、もし明年度改定が行なわれるとすれば、そういうことになります。これはゆゆしい政府の政治姿勢の問題だというふうに思いますが、これはむしろ総理に承ったほうがよろしかろうと思います。固定資産税は三年間は一定の倍率をかけてこれを据え置くと、それで将来さらに検討をするということになっておりまして、明年四十一年まではこのままにおくということに明らかになっておるわけでありまして、これは佐藤内閣としても問題は決して小さな問題ではないというふうに思いまして、あえて総理のお考えを承りたい。(「大臣じゃだめだ」「重大問題をぼやかしちゃだめだ」と呼ぶ者あり)
  267. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) ほんとうに諸説ふんぷんで、(笑声)話はまとまっていないのでございます。負担調整は早めて、しかも段階を長くすることが好ましい。ことに、都市の宅地関係は非常に価値が上がっておるのに、市においては都市開発を急激にやらねばならぬ、こういう時代であるから、負担調整を早めるべきであるという議論と、お説のように、すでに方針決定して四十二年度改定の際を待つべきである、この議論がいま非常に強く論議をされている最中でございます。政府といたしましては、その調査会の答弁を待った上にいろいろ検討をする問題といたしております。
  268. 林虎雄

    ○林虎雄君 どうもお答えが……。私の申し上げることは、明年度から増税に踏み切るかどうか、客観的な情勢がいろいろ動いているから、そういうことを含めて検討しておるという大臣のお答えですけれども、私の申し上げるのは、政府が、三十九年、去年、三カ年据え置くということをきめた。きめたことを途中で変えるということは、政治的に非常な大きな、これは政府の致命的な問題ではないかと、こういうことを申し上げるわけでありますけれども総理はその点についていかかでしょう。(「来年度のことだからはっきり言いなさい、地方のほうが戸惑うじゃないか」「何も相談しているんだ」と呼ぶ者あり)
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま突然私の耳にも入ったのでございまして、それで関係のところをいろいろ聞いておるわけですが、ただいま、この固定資産税の、取り方について四十二年までは変えないというのが最初の申し合わせであったと、かように思います。その後事情かいろいろ変ってきたから、四十二年でなしに四十一年からも変えたらどうかと、こういうような意見が調査会の一部にあるそうです。そういう意味で、先ほど申すように、諸説ふんぷんとしているというのはそういうことのようです。したがいまして、まだ調査会自身も結論が出ておるわけでもございませんし、また、政府が約束したというか、この国会で約束されたことも事実でありますので、ただいまの事情の変化がどういうことにこれを取り扱うべきか、それらの点を十分に慎重にしたいと、かようにただいま関係当局、大臣は申しておるのであります。私も、いままでの経過もあまりよく知りませんし、突然お尋ねをいただいたのですが、このことはもちろん慎重に結論を出さなきゃならぬ、このことは申すまでもないことだと、かように思います。
  270. 林虎雄

    ○林虎雄君 いま総理のお答えをお聞きしたわけでありますが、いま事務当局でいろいろ検討しておると。それはいいのでありますが、少なくとも佐藤内閣としては、国民に三カ年据え置くといって約束して、国民もそのつもりでおるわけであります。それを、もしどういう事情があろうとも、明年度変えるということは、これは佐藤内閣の政治的な非常な大きな影響を持つ問題であるということを総理はよくお含みおきをいただきまして、この問題は、上げないという方針、そういうかまえで予算編成等に臨んでいただきたいものであるというふうに思います。
  271. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。自治大臣にちょっと確かめておきますが、まあ諸説ふんぷんというようなことを言われますが、いろんな意見が部内にあるということでしょうが、意見がまとまらないことであれば、やはり約束したことは、まず第一に重んじていくと、こういうことを、やはりたてまえとして考えてもらいたい。この点はどうですか。  それからもう一つは、諸説ふんぷんと言われますが、農地と農地以外の市街地の宅地なりあるいはそのほかのものとの区別というものがされていろんな議論が部内でされておるのかどうか。もし、農地と、農地以外の固定資産についての違いというものを認めて議論をしておるのであれば、その点も、現状でいいですから、明らかにしてもらいたいと思います。結論でなくていい。そういう区別をしてやられておるかどうかということ。ともかく、自治大臣、あなたの話は簡単過ぎて、どういうふうにつかんでいいのかわかりませんから、そういう結論の出ておらない問題については、それこそもっと親切に中身を、もう来年度に迫っておる問題ですから、中身を親切にひとつ解明をしてほしいと思います。結論の出ておることなら、これはまあ言いようによっては簡単に結論だけ言えばそれでいい。そうじゃない。しかし、いろんな説が地方にも流れておるわけで、それでまあ関心が、同まっておるわけだから――まあ十分そこで打ち合わせをしてひとつ……。
  272. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) これは、ことに市側の理事者から、市の再開発をやる上において税源の確立をはかりたいと。したがいまして、都市の宅地の関係の税を負担調整を一年早めていただきたいという強い申し入れがございます。それを受けまして税制調査会においても負担調整は一年早めるべきであるという議論も非常に強く出ておるのであります。しかし、農地に関しましては、これは今日農地の価格はむしろ横ばい現象程度にあるから、農地に対してはやるべきではないという意見が圧倒的に出ておるのでございまして、また、部内には林委員の言われるごとく、四十二年に負担調整をするというこのことがすでに決定しておるものを早めるということは政治の姿勢上好ましくないという議論と、非常に強くいずれも論議を生んでおるところでございますので、この調査会の答申等を相まちまして、検討を続けたいと考えておる次第でございます。
  273. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、自治大臣としては、ただいま御説明があったような問題点について、いつまでにきちんとこう結論を出す決意でございましょうか。これはいろいろ関係方面におのおの腹づもりがあるわけですね、自治体自身としても。だから、答申を待ってというのであれば、答申自身をも急がせなければならないでしょうし、成り行きにまかしているようなことでは済まぬ問題だと思うのです。そのめどをはっきりここでしてもらいたい。
  274. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) お説のように、来年度予算に関係いたしておるのでございまますから、答申はすぐあると思います。出次第、方針を決定をいたします。もう予算編成が目の前でございますから、すぐ方針を決定する考えでございます。
  275. 亀田得治

    ○亀田得治君 出次第すぐ決定するというと、大体自治大臣の腹はこうきまっておるような感じ、この答弁を聞いていてだんだん感ずるわけなんです。初めは諸説紛々と言うて、なかなか混乱しておるようであったが、そうでもないようだ。だから自治大臣としてはまあ小委員会の中の御意見等もすでに聞いておられるわけでしょうが、私としてはこう考えているのだということが言えるのであればはっきりおっしゃってもらいたいと思います。
  276. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 答申を尊重をいたしたいと考えておりますので、事前に意見を申し上げることはこの場合適当でないと考えておるのでございます。同時に、本問題は税制全般の改革に関連をいたし、国税の落ち込みとあわせて地方税の補てん問題、あらゆる問題に遭遇いたしておりますから、これだけを取り上げてということには行きかねるのでございます。
  277. 林虎雄

    ○林虎雄君 自治大臣にお聞きします。自治大臣は関連質問にはだいぶ親切にお答えをされておりますが、私に対してもう少し詳細に聞かせていただきたいと思います。  その次に、明年度の地方財政の見通しでありますけれども先ほど大蔵大臣は、地方財政も国の財政と相呼応していかなければならない、そのためには健全化をはからなければならないという意味のことを言われましたが、現状はしからずして、まあ悪化の方向にあるわけであります。地方財政の硬直化、弾力性の喪失というようなものは、決算内容で明らかにされておるわけであります。地方財政の状況報告というものが毎年自治省から発表されておりますが、その指摘、このいわゆる地方財政白書が連年指摘をいたしておるものであります。   〔理事古江勝保君退席、委員長着席〕  非常に悪くなっておるという点であります。永山自治大臣は先ごろ、関西でありますか、全国町村長大会で、地方自治はまさに瀕死の重症でございます云々の旨を演説されたと伝えられておるわけであります。そうして明年度における考え方等を発表されておるわけでありますが、この永山自治大臣の、つまり自治省のこの現状というものに対しまして政府はどのように現状を把握しておるか、自治省の発表していることをそのまま、非常な窮状であるということをそのまま肯定しておるのかどうかという点について総理並びに大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  278. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地方財政はまあ非常に窮状に立ってきておるという認識は、林さんと全く同感なんであります。これについては、いずれ私は根本的にどういうふうに再建していくかということを考えてみなければならぬ時期に来て、おる。しかし、これを来年すぐそういう方向というわけにもまいりませんで、少し時間がかかるんじゃないかというふうに考えておりまするが、地方財政の内容を見てみますと、半分近くはこれは人件費なんです。この人件費がどうやってふえてきておるんだという根源にさかのぼらなければならぬ問題が一つあります。それから同時に、人件費以外の問題につきましては、地方で独自で仕事をするという面もありまするし、また国と共同で国の直轄事業を分担する形における財政負担と国の補助によって地方でする仕事という面におきまして中央、地方の関係が出てくるのでありまするが、その両面があると思うのです。まず単独事業、この単独事業というものを、地方自治として適正にきめていかなければならぬという問題。それからもう一つは、国との関係におきましては、いわゆる超過負担ということがよく言われる。これは国の予算を編成する場合の単価に一つは問題があり、またそれを実行する場合のそのやり方一つは問題があるわけであります。単価の面におきましては、これは適正に、まあ常識的にきめられておる面もあるが、まあ少しどうも常識よりは低目にきめられておるというものもあるようでありまするが、仕事をたくさんやりたいやりたいというような関係で、単価は低くともいいからひとつ事業量をというような傾向も多々あるようにも見受けられるわけであります。そういう点の反省もしてみなければならぬ。しかし、いずれにしても超過負担問題というものは出てきておるわけでありまして、特に実行上これだけの単価で組んだものを、実際は単価をオーバーするような、少し度が過ぎたようなものができるというようなケースもある。まあだから予算と実行と両面に問題があるわけであります。そういう両面にわたって反省をしてみる必要があろうかと思います。国におきましても、そういう問題、これはすぐ全部というわけにはなかなかまいらないと思いまするが、逐次適正にこれをやっていくという方向で善処していきたい考えでございます。
  279. 林虎雄

    ○林虎雄君 四十年度の措置については、大きな転換のときでありましたから、五百億の交付税の穴埋め――落ち込み分を埋めたり、あるいは給与費に対して三百億の貸し付けをやった等の措置をされたのでありますが、すでに今日まで地方財政はかなり赤字の累積を持っておるわけであります。御承知と思いますが、昭和二十八年、九年ごろに地方財政が非常に窮境におちいったことがございます。そのときの状況と現在の赤字累積の状況というものがよく似ておるように思いますが、その点大蔵大臣はどのように解釈なさいますか。
  280. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のように、二十八年ごろずいぶん苦しかったわけですが、その後再建整借間というようなこともありまして一時よくなったが、また悪くなりかけておる、そういうふうに理解をしておるわけであります。これは特に今日の経済情勢がそうしておる面もありまするが、また、経済情勢を別といたしましても、なかなか困難な事情が出てきておる、こういうふうに考えておりますので、先ほど申し上げましたように、地方財政問題というものはもう一度根本的に考え直すべき時期に来ておるのじゃないか、さように考える次第であります。
  281. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまお話しのように、経済情勢の影響と、それから昭和二十八、九年ごろとに相似した点もあるというお答えでございますが、当時は地方財政が非常に赤字が累積して、地方財政が国のほうに強く要請したときに、政府部内ではなかなかこれに乗ってこなかったわけです。地方がかってに放漫なやり方をしておる、そのために赤字が出たんだというような見解をとっておったのでありますが、自治省においては、当時政府部内の理解につとめるために、三十年の十月に「地方財政計画とその問題点」というものを発行いたしまして、次のことを重要問題点として指摘をしております。いま大臣の言われたことも含んでおりますが、一として、財政計画算定方法の問題。二として給与費の問題。この給与費の問題は、いま大蔵大臣から言われましたが、地方が放漫で、必要以上の人員をかかえておるのではないかと、こういう意味のことであろうと思いますが、それを否定しておるのが自治省のこの給与費の問題として掲げてあるのであります。それから第三として、これも、いまお話しになりました出過負担、国庫補助負担金の問題、この三つを重要点として、これが地方財政計画と実際との間にこういう差異がある、そのために地方財政は苦しいのであると、こういう点を指摘しておったのでございますが、この「地方財政計画とその問題点」という、この発行されたものを大蔵大臣は御承知でございますか。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 記憶にありませんですが、何か開いたような気持ちがする程度であります。
  283. 林虎雄

    ○林虎雄君 二十八、九年当時は、地方財政に対して特に大蔵省においては理解に不足があったようであります。まあ私そういう記憶を持っておりますが、しかし現実は、府県の大半、地方の大半、市町村の大半がまさに破綻に瀕したことがあります。そういう事態に立ち至って初めて政府は、地方財政再建整備法というものに踏み切りまして、再建整備に乗り出したのであります。まあおりから経済好況も幸いいたしまして、三十年を大体ピークとして逐次回復をしてまいりました。三十六年までは順調に回復して、再建債も逐次償還でき、多少の財政基金の蓄積までできるような状態になったのでありますけれども、三十七年を転機として、いわゆる景気の下降状態と大体歩調を合わせて悪くなってまいったのであります。このことは、私は、地方財政再建整備法という法律で一応あの危機は切り抜けたが、これは当面を糊塗するだけの措置であって、地方財政の根本的な解決策ではなかったというところに、再び地方財政の困難な問題が起こってきたのであろうというふうに思うのであります。最近の経済不況の影響等がありまして、地方税等一般財源の伸びも鈍化してまいりましたし、あるいは落ち込みを生じたわけであります。一方国の施策、たとえば公共事業対策等に対応するところの地方財源は不足というような事態になって、今日の状態になったわけでありますが、この公共事業も地方団体によっては財源不足で返上するというケースもあると思いますが、この点に対して政府は――政府はといいますか、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  284. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 林さんは、過去の、ここ二、三年ですか――の事例を頭に置かれましていろいろ話をされておるようでありますが、今度の御審議をお願いしております法律によります措置は、相当広範な措置がとられておると思うのです。これで大体地方財政はうまく回転すると思っております。つまり、交付税が、中央の三税が落ち込む関係上、交付税自体が落ち込むのを――落ち込むべきものを、これを落ち込ませずに国からそのまま交付するという措置。また、給与改定に伴いまして三百六十億ばかり要るというのを、三百億とにかく資金運用部が回す、そうしてこれを交付税として配付するというような措置。それからさらに、地方税の税収の落ち込みに対しましては、四百億円の地方債を発行しまして、そのうち百五十億円は資金運用部が見、他はこれが完全消化できるような措置を講ずる。こういうようなことでありまして、大体私は至れり尽くせりというふうに考えておるわけでありまして、その措置が今日まだ国会で議決を経ませんものですから、まだ地方でいろいろの苦情があるというような状態なんですが、これが御審議、御可決を願いますれば、全部の公共事業が円滑に施行できるという状態に立ち至ると、こういうふうに存じております。
  285. 林虎雄

    ○林虎雄君 四十年度の予算に対しましては、いま大臣が言われたように、至れり尽くせりと言えるかどうかは別といたしまして、大体交付税の落ち込み分も、給与費の分も、あるいは公共事業費の分も、ある程度見たので、そういう心配はないということであります。それはそうでありましょう。しかし、過去の累積赤字というものが地方にはあるわけであります。これは自治省に承りたいのですが、府県の場合と市町村の場合の赤字の状況、三十八年度、三十九年度までわかりましたら承りたいと思います。
  286. 柴田護

    政府委員(柴田護君) お答えいたします。  三十九年度、府県が百二十五億、それから六大市が六十億、その他の市が百二十三億、町村が五十二億、一部事務組合十二億、合計三百七十二億円、これが三十九年度の赤字でございます。三十八年度に比べますと、百億円赤字が増加いたしておりますが、そのうち増加の大きいのは、都道府県の七十四億円、市の三十一億円、町村五億でありまして、六大市は十億円赤字が減少いたしております。大きな赤字のところは――赤字の三十八年度に対しましてふえましたところは、東京都が一番大きいのでございます。府県の百二十五億円の赤字のうちで百三億円は東京都の赤字であります。それから六大市並びに市におきましても、大体古いところが――古い市であります、新市でございませんで、古い市の赤字がふえております。なお、このほかに、国民健康保険会計と、それから公営企業会計が悪化をいたしておりまして、国民健康保険会計には、繰り出し金を赤字と計算いたしますと二百四億円、それから公営企業会計では六百六十億円――正確には六百五十五億円でありますが、これが赤字であります。赤字の増加額では、公営企業会計が、三十八年度の三百七十六億円に対しまして、ほぼ倍近い増加額となっております。
  287. 林虎雄

    ○林虎雄君 いま財政局長から報告がありましたような地方財政は赤字を背負っておることは、大蔵大臣もお認めになることであろうと思います。しかも、四十年度はかなり思い切った措置をとられたことは事実でありましょうが、三十九年度までの累積赤字、こういうものをしょっておるのが地方財政の現状であります。これも解決したり、また新年度においては、大蔵大臣言われますように、健全な地方財政を確立して、国と呼応して積極的な景気対策をやっていくということでなければならないと思いますが、そうでなければ、過去の赤字を背負って苦しんでいるような現状では、国がせっかく建設公債を発行して、仕事を大きくやろうとしても、地方財政が貧弱でこれを消化する、またこれに呼応する力がないということになりますと、これはせっかくの意図も中途で倒れるおそれがあります。過去の赤字に対しまして、かつては再建整備法という法律を暫定的に制定されて解決したことがありますが、いまの赤字問題に対しまして、政府はどのように対処するお考えか、自治大臣から最初承りたいと思います。
  288. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 一般会計におきましては、現在赤字の関係の分に対しては、その団体の申し出に基づき再建整備団体指定といたしまして、利子補給等の長期の金でこれが解消に努力をいたしておりますが、しかし、赤字が増大をいたしておりますので、一般財源の充実ということに対して、いま大蔵省と折衝を続けているのであります。すなわち、法人税減収等によってさらに地方税が減収をせないように、財源の移譲等について鋭意折衝いたして一般会計の確立をはかる、すなわち地方財源の移譲ということに対しても強く要望をいたしている。さらにまた住民税減税に対して、落ち込む処置に対しても、その落ち込みの是正に対して、大蔵当局とこれが対策をいま検討をいたしているのであります。すなわち、それらの点が、先刻話しました宅地等に対する固定資産税の調整問題ともからんできたりして、いろいろ論議を呼んでいるのでございます。いずれにしても国の財源の移譲もしくは交付税の調整、これらの点を総合的に確立をはかるということであると考えております。  国保の関係につきましては、やはり厚生省と歩調を合わせまして、医療給付費の負担増の問題、ことに事務費の増額の問題、また超過負担解消の問題に対しても、国の補助職員、適正単価の問題、あるいは学校、警察等の関係の施設整備に関する単価の是正の問題、あるいは国の委任事務に対する事務費、年金等の、あるいは国保等の事務費の適正、あらゆる角度で努力を続けている次第でございます。  なお、公営企業会計は、一年間ストップをかけました関係上、非常に困難な財政になっておりますので、これは再建整備を進めるべく予算要求をいたして、大蔵当局と折衝中でございます。
  289. 林虎雄

    ○林虎雄君 大蔵大臣、いま永山大臣の言われた、この過去の累積赤字の措置についての方針に関して、大臣の御意見は。
  290. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、地方財政全体として非常にむずかしいことになってきているわけです。それで、むずかしいことになってきている根源につきましては、先ほど総括的に申し上げたのですが、やはり国がまあ国債を出してまで財政をやっていこうと、こういうときです。ですから、国のほうでは、その前提として、思い切って不要不急の行政費につきましてはこれを整理節減していく方針でてあります。私は地方も同じ方針をとるべきものだというふうに考えています。しかし、そういうことを前提といたしまして、地方財政いろいろの要因で来年は特に苦しいことになりまするが、中央地方一体という考え方でこの調整を手を尽くしていきたいと、こういう考え方でございます。
  291. 林虎雄

    ○林虎雄君 過去の累積赤字に対しても積極的に大蔵大臣も努力するということで、ありますから、過去の赤字もまあ見通しもついたと理解いたしますし、四十年度の措置については、先ほど来大臣の述べられたとおりで、まあまあ何とかやっていけるようにも思われるのであります。  そこで、四十一年度の地方財政でございますが、先ごろ大阪においての知事会議で、自治省の金丸次官は、このままでいくならば四十一年度の地方財源不足は四千九百億程度と述べられたと聞いておりますが、一方自治省の推計によれば三千三百六十億ということのようでありますが、この三千三百六十億の内容について承りたいと思います。
  292. 柴田護

    政府委員(柴田護君) お話の三千三百六十億という数字の中には、前提がたくさんございます。国が七千億前後の国債を発行し、平年度三千億円程度の減税が行なわれるという前提のもとに、荒い試算をしたものでございまして、その中には、地方税の自然増収見積もりでございますとか、あるいは公共事業の増加細事につきましての計算でございますとかいうものが、きわめて荒っぽい計算でございます。そういう前提のもとで計算をすればそういうことになるだろうというだけのものでございますから、なお正確な計算は目下いろいろ検討いたしております。ただ、その計算で一応まいりますれば、投資的経費を除きました経常系統の経費で、千億をこえる収支が合わない。それに減税が加わりますれば、経常系統の経費で二千億前後の赤が出そうだということになっているわけであります。しかし、それは、経常経費の計算等になお精査いたします必要がございますし、また歳入につきましてもなお再計算をいたす部分がございます。そういったものを前提として目下大蔵当局と計数の積算についての打ち合わせを続けており、相互に詰めと申しますか、正確な計算に入っておる、こういうことでございます。
  293. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまの御説明で明らかなようでありますが、大体前提が国債発行とそして減税。国債発けが七千億、減税が平年慶三千億、初年度二千四百億――国税二千億、地方税四百億、こういう前提に立って自然増やいろいろの計算をした結果が三千三百六十億の赤字という、財源不足ということがはじき出されているわけであります。まあ地方財政計画上の計数は、技術的な計算方法によっておるものでありますから、これは問題ないと大蔵省も認められると思いますが、ただこれをどのようにして今後バランスを合わせるかということがこれからの予算編成にかかわっておろうと思います。自治省のほうでは、われわれもかねてから主張しておったところでありますが、どう考えてみても、思い切って国の財源を地方に移譲しなければバランスの合わないことは明らかだと思うのであります。そこで、自治省におきましては、いまの明年度の財政の見通しについて計算した結果として、四十一年度の交付税率を五%程度引き上げ要求中と伝えられておりますが、私もその税率の引き上げは当然だと思っておりますけれども、五%の引き上げを要求中ということに対しては、そのとおり考えてよろしゅうございますか、自治大臣。
  294. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) まだ、いよいよどれだけ落ち込みが来るかということに対しては、大蔵当局との間において意見の一致を見ておりません。自治省側の腰だめというものは、まだ政府の減税内容がどういうようにきまるか、それに従って地方の住民税をどう減税していくか、さらにどの財源の移譲を受けるか、それらと総合せなければ事実は決定をいたさぬものでございまして、固定的な意見では折衝いたしておりません。いずれにしても、まだ落ち込みの金額、大蔵当局と自治省との間に非常に開きがございます。したがいまして、交付税の関係をどうもっていくかということは、十分折衝を続ける過程でございます。
  295. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまのお答えは、もっともだと思います。まだいろいろ計数の関係もあり、どの程度が落ち込みになるかわからないという点でありますが、必要とあれば、地方財政の明年度の健全化のためには、交付税の総額、交付税率を引き上げるということに対しては、大蔵大臣も、率は計算の上でしょうけれども、やぶさかでないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  296. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだそこまで話がいっていないのです。先ほど林さんが言われました三千三百億という歳入不足ですね、これが、先ほど自治大臣からもお話がありましたが、腰だめだと、よくそれはおわかりだと思うのでございますが、例年各省からずいぶん多額の要求があるわけです。それが最後には相当縮まるわけなんですが、地方財政でも、こういうことをしたい、ああいうことをしたい、歳入はこう見積るのだというような、歳出歳入両面にわたりまして、大蔵省と見方がだいぶ違うのであります。それをいま調整をいたしている最中であります。それが結果においてどういう数字になりますか。なった場合に、中央、地方を通じてどう措置をするかということをきめたいと思うのですが、したがいまして、いま交付税率の変更をするという、まあ非常に歳入不足要因というものが臨時的な性格なものがありまして、交付税率の改定というような恒久的なものでやるのがいいのかどうか、私も結論を得ておりませんけれども、ともかく総合的にいろいろな要因から出る赤字に対しまして、対策を完全にとると、こういう考えでございます。
  297. 林虎雄

    ○林虎雄君 確かにいまの計数は腰だめでしょうから、これから具体的な作業に入ろうと思いますが、どっちにしても、いまの交付税率では、これはバランスの合わないことは、しろうと考えでも大体予想がつくわけであります。そこで、どの程度の率を引き上げるかということに対しては、まだはっきり計算上出てこないと思いますが、必要ということになれば、交付税率の引き上げについてやぶさかでないと理解してよろしゅうございますか。
  298. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 交付税率の引き上げでいきますか、あるいは他の財源を賦与するということになりますか、その辺まだ固定的な考え方をきめておらないのであります。
  299. 林虎雄

    ○林虎雄君 どうも、新年度の予算が出た上で、また検討されることだろうと思います。  次に、行政管理庁長官はおられますね。行政管理庁長官と自治大臣にちょっとお伺いしたい。  初めに、行政管理庁長官に承りたい。昨年でありますか、臨時行政調査会においての答申が出ておるはずでありますが、許認可ですね。いろいろ中央の大臣の許可、認可の事項で、地方へ移管したほうが能率的でもあり、適当だということで、答申が出たと思うのでありますが、その答申に基づいて、どのように許認可の方向を進めておられますか。
  300. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) お答えいたします。  昨年の九月に、臨時行政調査会から答申が出まして、いま御指摘の許認可事項を行政改善の大きな課題として提示され、三百七十九件答申に出されたわけであります。法律関係が大体、省令その他合わせまして三千五百関係がございまして、これを中心に政府といたしましては、本年の五月に閣議決定をして、基本方針をきめました。その後、行政改革本部が中心になりまして、鋭意整理をいたしてまいりまして、ただいままで九十件処理が済みました。本年度末、三月末日までにあと百十件整理の見込みがついております。合計答申の約五二%に当たるものが処理される見込みでございます。今後も、来年度も、いま御指摘の都道府県の地方に委譲して差しつかえないもの、また、適当と認めるもの、これはなるべく大幅に委譲したい。同時に、緊急性のないものは、なるべく廃止の方向にゆきたい、この二つの基本線で今後も検討してまいるつもりでございます。
  301. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ちょっと、ひとつ前のところへ戻って恐縮ですが、地方自治体の財政困窮の場合、交付税率を調整する、引き上げることですが、そういう自治省に対して、大蔵省は、それで調整をするか、他の財源でめんどう見るか、いま目下検討中というお話でしたが、そうすると、交付税率以外といいますと、各種補助金の増額になるのか、あるいは税の一部委譲をやるのか、どういうことをいうのですか、ほかの方法で補助するというのですか。
  302. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 補助金のほうは、これは、別途きまっております。それを基礎にして収入不足というものが出て計算されるわけですが、それを、一体どうするかということですが、それは、方法は、交付税率を上げるという方法もありましょう。また、特別の交付金を出すという方法もありましょう。あるいはいろいろ地方に分与している税を増額するというような方法もあるでしょう。また金融措置というような方法、これはもう当然どうしてもとらなければならぬ措置でありますが、そういう方法もあるし、いろいろあるわけです。それがいずれが適正であるかということについてまだ考え方がきまらぬ、こういう状態であります。つまり、そこまで話がいかないで、三千三百億といわれるその収入不足を一体幾らになるのかということを、今日の段階は詰めをしておるという状態でございます。
  303. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、明年度予算編成といってもあと十日ぐらいですが、その間にいまのことがきまるわけですね。
  304. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) おそらく来年度予算の概算の決定は一月中句になると思うんです。それまでにちゃんときめる、こういうことになります。
  305. 林虎雄

    ○林虎雄君 もう、行政管理庁長官に承りたいのでありますが、ただいま答申の五二%程度は処置したということでありますが、これは地方のほうへ移管したということでありますか。この点が一つと、それからあと四八%になりますが、これはどの程度に進んでおり、将来どの程度地方に移管できる見通しかという点を承りたい。
  306. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 五二%の内訳は、先ほど申し上げましたとおり九十件がすでに処理済みでございます。百十件が三月末日までに処理できる見通しであります。たとえば、精神衛生相談所の設置の認可でございますとか、あるいは有害鳥獣の駆除の認可の問題、これは知事へすでに委任済みでございます。そのあとの四八%は次年度四月一日から検討いたしたい、こういう方針であります。
  307. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと……。いま長官から御説明になったやつ、ひとつ資料にして出してくれませんか、できるだけ早い機会に。地方に委譲したものはどれとどれ、中身がわかる程度に一行書いてもらえばたいていわかりますから。それからまだ未処理の分は項目だけ明らかにしていただきます。
  308. 林虎雄

    ○林虎雄君 自治相に伺います。本年の九月に、地方制度調査会から行政事務の再配分に関しましての答申が行なわれたわけでありますが、答申を受けて、現在どのようにこれが扱われておるかという点であります。
  309. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 税源を伴う問題につきましては、まだ十分なる見通しがついておりません。しかし、その他の問題に対しては、具体的項目について案を作成をして各省で整理中でございます。その詳細は事務当局から御説明申し上げます。
  310. 林虎雄

    ○林虎雄君 この行政事務の再配分という問題は、かなり長い間もう二十年近く、十五、六年にはなると思いますが、叫ばれてきた問題で、国の各省がいわゆる中央集権的な考え方というか、割拠主義というか、そういうことで、地方へ委譲しても、移してもいいような事務まで中央で握っているというのが、これは事実でございます。そのために不必要な陳情までも非常なむだを生じているのが現状でありまして、この行政事務の再配分によりまして、できるだけ府県あるいは市町村へ中央で持っている事務を委譲しようということで、個々に検討されて、それが九月の答申となったと思うのでありますが、いまお話では、財源の伴わない軽易なものは移そうとしておるが、それ以外は検討中だということであります。どうも各省がいざとなると、なかなか抵抗をして手離さないと思いますが、そういうことで自治省はこの答申の実現に苦労しておられるようなことはございませんか。各省の割拠主義ですね、なわ張り主義がわざわいして困っておりませんか、こういうことです。
  311. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) お説のように、財源の再配分を伴う事務に対しては、折衝がなかなか困難でございますので、さらに地方制度調査会に具体的な問題をも諮問をいたして、強く折衝いたしたいと考えておる次第でございます。この場合付言をいたしませば、やはり地方自治に対しての信頼感をもっと確立せなければ、基本的に困難な問題がございます。すなわち所得が増大すれば役人も増していくというような、人がふえ、給料がふえて、そして一般行政費が高まる状態であってはいけないから、事務の効率化に対して、一段の自主的体制を確立するということと相またなければ、各省の協力を得ることが非常に困難ではないかというように考えまして、この点に対して行政事務能率、効率の徹底的な強化をはかる、特に先刻お説がありましたように、理事者はえりを正していかなけりゃいかぬ。どの会社でも自分の会社の悪いときには、重役ははだかになって再建に飛び出すのだということで、議会側の特にえりを正す、理事者のえりを正すことを中心に効率化に対して強く指導をいたし、これと相まってこの問題を強力に進めたいと考えております。
  312. 林虎雄

    ○林虎雄君 まあ質問でなくて、あとちょっと希望を自治大臣に申し上げておきたいと思います。  まあいまお話では、行政事務を地方へ委譲するということについて、一つの難点としては地方自治に対する信頼感がまだ不十分だという点があるというのが、まあ一つの各省といいますか、中央の抵抗している理由のようであります。まあ私はこれほど地方自治をばかにした考え方はないのでありまして、子供だからまだこの道具を与えられないと同じようなことでありまして、もうどんどん成長して地方自治は完全にやっていけるわけでありますから、そういう信頼感、まだ信頼ができないから事務を委譲しないということは、単なる私は言いぐさにまあすぎないと思うわけで、したがって、自治省は勇気をもってこの解決に努力していただきたい。地方自治の総元締めであります自治大臣に対しましては、地方は非常な期待を持っておるわけでございますから、一段とまあ御奮闘をお願いいたしたいと思います。  ちょっと質問がいまよそにそれて恐縮でございますが、最後に、先ほど大臣から、大蔵大臣がちょっと触れられましたこの国庫補助職員にかかわるいわゆる超過負担の問題について、もう少し承りたい。ということは、超過負担に対する考え方は、自治省と大蔵省との間でかなり食い違いがあるのでありまして、いつまでたってもその超過負担というものが解決に前進しない。これはもう長い間の問題でございます。このことは大概省の言い分もあるいはいまのところ多少あると思いますけれども総理によく聞いて承知しておいていただきたいことは、各省が地方に対して仕事を委任する、その場合に、二分の一であるとか、何分の一であるとかいうふうに補助を与えるわけでありますが、この補助の単価の計算が非常に低いために、地方はその差額というものを地方が負担をしておるわけであります。例を申し上げますと、先ほども大蔵大臣から言われましたが、保健所の医師の基本給の月額の単価は、国庫補助の単価が三万三千四百円、お医者さん一人の。ところが調査の結果は六万一千八百三十九円と、二万八千円も開きがあるわけです。これが超過負担になってあらわれるわけであります。なるほどこの国庫補助の単価は三万三千円と見れば、かりに二分の一補助とすれば一万六千何がしになります。ですから、そういう関係でいきますと、いまの例を申し上げますと、国が当然出さなければならない補助が、この医師の場合、一万四千百九十八円というものが地方に押しつけられてある。こういうことが調査で、これは自治省の調査でありますが、明らかになっております。国立病院の場合には五万三千九百九十六円という、これは参考ですが、こういう数字が出ておる。実際には、実績は六万一千八百三十九円、これに対して国庫補助の対象としての単価の見積もりは三万三千円ということであります。でありますから、厚生省関係でもこれは非常にお医者の数を加えれば大きいことになります。ただ文部省関係でもう一例を申し上げますと、小中学校校舎の新増築の場合の坪当たりの単価が、国の補助の対象となりまず見積りというものは六万六千八百六十七円であります。実績は七万五千円というように約九千円坪当たり、これは一坪当たりです。一坪当たりこれだけのものを地方はよけいな負担をしておると、こういう結果になります。でありますから二千坪の校舎を建てる場合には、坪当たり一万円近く差がある。この半分、二分の一とすれば五千円であります。五千円とすれば二千坪とすれば一千万円の地方の出し越しになる。こういうような超過負担というものが非常に大きな数字にのぼっておるのが現状であります。その結果として昭和三十九年度の調査の超過負担はどのくらいかということを、自治省の財政局で調査をいたしました結果、千百四十三億、こういうものが出ておるわけであります。この原因は、これも先ほど大蔵大臣が言われますように、補助単価の低いということに原因するもの、あるいは設置の職員数、建坪数等の補助基準が実際に合わないことによる額、あるいは補助対象とされるべきものが対象からはずされているというようなことに一応分類されております。特に大きなものはいま申し上げたように厚生省関係、文部省関係、それから住宅関係の建設省、農林省というのがその超過負担を地方に押しつけておる一番尤たるものではなかろうかと思うのであります。こういうものを解決しませんと、せっかく地方財源が与えられて、地方が独自の財源で仕事をしようといたしましても、こういう超過負担のために、ずいぶん国のほうのために失われてしまうというのが現状でございますから、これを自治省の調査が大蔵大臣として妥当だということになりますると、当然見てもらわなければならないと思いますが、この点について、いま大蔵大臣のお手元でどの程度の折衝が行なわれておりますか、承りたい。
  313. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう問題がありますことは、よく承知しております。しかし、その原因につきましては、これは国からの出し方ばかりじゃないように思います。たとえば幾らの単価できめたというのを、これが正常な単価だというものを、その正常な単価以上の、まあ建物にして言えば、つくってしまうとか、そういうような地方側にもいろいろの問題があるのであります。しかし、ただいま御指摘のような、たとえば学校の校舎の単価、実情とずいぶん離れているというようなお話ですが、そういうような問題につきましては、逐次段階的にこれを解消をしていくという考え方で、ただいまいろいろ考えております。
  314. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ひとつわからんので承りたいのですが、たとえば校舎の建築等で坪当たりという場合は、単価の査定で食い違いがあると――わかりますが、給料のような場合、これは一体どういうことになるのでしょうか。たとえば農業委員会の書記とか生活改良普及員、これは一万円から一万何千円か違うのでしょう。国の補助と違って、自治体がこれは負担している。これは前の赤城農林大臣が、答弁とらの巻というのをそのまま私にくれて、拝見しておるわけですが、それにもちゃんと出ている。給料はどうなんですか、建物の査定はわかりますが。
  315. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 給料の場合も、これは適正でない場合があると思うのです。そういうものは逐次解決していきたいと思います。しかし、適正にきめられたものでも、これをよけいに高く出すというようなケースもこれはあるわけでありますから、そういう点につきまして、これは地方においても是正していかなければならない。両々相まってこの問題を解決していかなければならない、かように考える次第でございます。
  316. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまの大蔵大臣のお答えですけれども、単価の計算等も、原因については地方側も問題が絶無とは言えない、こういう話であります。これはそのとおりだと思います。しかし、大半は国の各省の仕事を地方に委任する場合に、十分な補助、正記の補助が与えられておらないということは、これは事実であります。これは調査した結果が明らかであります。大蔵省はよく地方に問題があるということで逃げておりますけれども、かつて地方公務員の数の問題について地方財政計画に乗せる上に約十万人の差があったわけです。大蔵省では絶対に十が人は認められないということで食い違ったために、たしか大蔵省と自治省と共同でこれを調査したことがあるはずです。その調査の結果として十万人が完全に認められた。これは三十八年度でありますか、これを計上された事実がございますが、何とか言って地方を押えつけようというような傾向がどうしても見受けられるわけであります。そこで、各省が仕事をやりたいために水増しをして仕事を多く押しつけて補助単価を、補助を低めているというようなことが事実のようであります。それで超過負担の解消ということは、全国の県でも市町村でも非常に大きな問題として、まあ知事会などではことしの九月でありますか、超過負担解消という雑誌の特集号まで出して一生懸命でやっているような、努力しておるような次第でありますが、各省はこれを承知しておるわけだと思います。これは大蔵省だけに問題を持っていっても無理だと思いますが、各省はこの単価の是正に対しまして、当然積極的に地方に迷惑をかけないように予算要求を天蔵省にすべきであると、その正常な形をですね。それをどうも怠っているような感が私は見受けられるのであります。  そういうことで自治省のほうでは明年度の予算編成にあたって正常な形の補助単価を要求してもらいたい、予算要求を大蔵省に要求してもらいたいということを、各省にまあ依頼といいますか協力方を依頼しておるということを聞いておりますが、この点事実でありますか、大臣おわかりでしたら承りたいと思います。
  317. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 超過負担を解消する問題については、各省協力方を要望をいたしております。なお、地方におきましても、できるだけ数多くもらいたいというような考え方で、単価の適正よりは数というようなことも一、二考えられる筋もありますが、今回はぜひ超過負担解消ということを強く要望いたしております。しかし、国の財政も限度がございますので、一時に解消すれば、結局数が減るということになるわけであります。したがいまして、この解消は段階を経て実現をせざるを得ないかと考えておりますが、この出過負担現象をなくすることについては、非常なる熱意を持って折衝をいたしておる次第でございます。
  318. 林虎雄

    ○林虎雄君 大蔵大臣に一つ申し上げたいことは、いま申し上げた超過負担についての自治省財政局の調査がこのままうのみにできないと、数字にかなり開きがあるということにもしお考えでしたら、前に地方公務員の数を調査したようなぐあいに、大蔵省と自治省とが共同でこれを調査していただけば、おのずから明らかになるだろうと思います。  それからいま自治大臣は解消に対して各省に協力方を要請をしている、こういうお話で、しかし、これを一挙に解消することは、国の財政にも限度がある、あるいは仕事の量も減るおそれがあるということでありますが、超過負担というものは、いま申し上げましたように、当然国の出すべきものを、地方が泣く泣く負担をしている。金持ちと貧乏人が一緒にめしを食べて、そうして半々で払うというのを、貧乏人のほうに七割ぐらい払わしたというようなそういうケースだと思うのであります。でありますから、当然国の負担に属するべきものは、これは国の財政の限度というものとは別個のものであろうというふうに考えるわけであります。いま自治大臣が各省に要請しておられる大蔵省に対する超過負担の解消に対する努力ですね、どのようにされておりますか。特に関係の深いと思われます建設、農林、厚生、文部各大臣に協力の事情をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  319. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 確かに協力を求められております。協力を求められるまでもなく、私どもはこの問題では毎年大蔵省と話し合いをいたしておりますが、必ずしもこれが私ども考えているように実現されておりません。御参考までに申し上げておきますが、問題点として建設省関係、自治省から出ておりますのは、いまいろいろお話がありました住宅の問題、それから高速道路公団の中で、阪神高速道路公団の出資率が高過ぎる、こういう問題、それから河川の各工事の国の負担割合の問題、それからいわゆる下水道の補助、こういう問題であります。住宅関係以外は、これはいわゆる超過負担の問題ではなくて、もう少し国の補助金をふやしてもらいたい、こういうことでありますから、それとやや性質が違いますが、私どもとしてはこういう問題についても、地方財政の現状から申して、また私どもの仕事は、御承知のとおりに地方公共団体といろいろ細部にわたって打ち合わせをしまして、そしてやるわけでありますが、国から見ますると、地方の財政が貧乏だからそこはやらないでいいというわけにいかない場合があるわけであります。道路にいたしましても、河川にいたしましても、やはりそういうところには地方財政を補って国全体のバランスがとれるように仕事をいたしたい、こういうのが私ども立場でありますから、そういう考え方でこの問題を処理していこう、こういうことを現在大蔵省とも折衝いたしております。超過負担で最も問題になりますのは、毎年これは問題になりますが、いわゆる住宅建設、特に公営住宅でございます。これは毎年実勢の建築単価と相当の開きがあるわけであります。特に一番大きな開きは、用地費の問題であります。特に大都市においては用地費がいわゆる計画単価の五割にも満たないという状況でありますから、この問題で毎年苦しんでおりますが、三十九年度から四十年度、いわゆる本年度の予算に移りますときには、建築費で四・三%から五・二%までのアップをいたしております。それから用地費について一三・八%、これだけのアップをいたしておりますが、現状ではまだまだ実勢単価に追いつかない。こういう状況でありますから、四十一年度は建築単価にして一五%、用地費にして全国平均でありますが五四%のアップをしてもらいたい。御承知のとおり住宅建設は目下の緊急事態でありますから、国はやりたくても地方が困るということでは、住宅建設の目的が達成されない。かような考え方で現在大蔵省と極力折衝いたしておるわけであります。
  320. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘の超過負担解消につきましては、逐年努力を続けておるところでございますが、大蔵省のだんだんと理解を得まして、大体鉄筋校舎につきましては実績に近い線にきております。木造がまだ開きがございますので、明年度予算編成におきましても、何とか実績の線にいたしたいという努力を続けまして、折衝をいたしたいと思っております。
  321. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 農林省もだいぶいろいろございます。特に農民の負担が非常につらいときでございまするので、両方ではさまれまして、いわゆる府県自治体の負担が非常に重くなる、こういう現象もあり、また、仕事ができないという現象もあるわけでございます。そういう点については、先ほど建設大臣からお話のあったとおりでありまするし、また、先ほど大蔵大臣と自治大臣との間のいろいろの話し合いのところにもうかがわれるわけでありますが、特にちょっと私申し上げたいのは、改良普及員の俸給の点だけは、ちょっとこれは国のあらわしたいわゆる号俸ですか、それと合わない点がありまして非常に困っておる点はございます。
  322. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 昭和三十九年度の決算によりますと、厚生省関係におきましては、保健所の運営費、保育所の措置費、国民健康保険の事務費、国民年金の事務費等、おもなものを推算いたしますと、自治省の計算ほどではございませんが、相当の超過負担を地方団体にかけておるわけであります。厚生省といたしましては、この補助対象額と実際の支出額を近づけるように今日まで努力をしてまいりましたが、今後も、基準単価の引き上げ等、最善の努力を払いまして、超過負担の軽減をはかりたいと考えております。
  323. 林虎雄

    ○林虎雄君 厚生省と農林省が、いろいろ数においても、量においても、大きいようでありまして、まあ、これが地方の財政負担に重圧をかけておるわけであります。特にひとつ、大蔵省に対する強力な要請を期待をするわけであります。別に政治力を発揮しろというのじゃなくて、あたりまえのことをあたりまえとして主張してもらいたいと、こういう考え方でございます。  大蔵大臣いかがですか。この計算の基礎に多少のそれは問題があるのは、それが明らかになった場合には、超過負担を思い切って認めて、多年の問題をこの際、解決していただきたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
  324. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう問題がありますので、先ほども申し上げたのですが、来年度以降を期しまして、段階的にこれを解消していくようにいたしたいと考えております。
  325. 林虎雄

    ○林虎雄君 段階的ですけれども、さっき自治大臣も段階的というような意味を言われましたが、前に申し上げましたように、三十七年度における超過負担は約五百億円、三十八年度においては八百六十三億円という数字で、三十九年度が大体千百四十三億、こうであります。でありますから、過去のことはしかたないとしても、現在を解決しなければいけない、こういうふうに思うので、いままでも、ずいぶん地方財政を国のほうが食ってきたわけですね。それは全部解決しろとはいいませんけれども、ことしはひとつ解決して、将来もそうした狂いのないようにすることが、国の当然の責任であろうと思うのでございます。総理大臣はこういうこまかいことは御存じないと思いますが、これは地方側と中央とは、長い間の非常に大きな問題となっておるわけで、地方側は真剣に考えておるわけであります。これを十分に御理解をいただきまして、予算折衝の際にはかなり問題になろうと思いますが、地方自治の健全化のためにひとつ努力をお願い申し上げたいと思います。御意見を承りたいと思います。
  326. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 超過負担の問題につきまして、各省も協力する、かように申しておりますし、また、大蔵大臣も、段階的にこれの解消をはかる、かように申しております。私は、行政の分配、同時にまた、その財源の分配、これは適正でなければならぬ、かように思いますので、地方自治行政のあり方のためにも、私ども十分考えていかなければならない、かように思います。
  327. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと一つ。大蔵大臣にひとつ基本的な考えだけをお聞きしたいのですが、いままでは超過負担のことが問題になっていたわけですが、私のお聞きしたいのは、たとえば登記所ですね、登記所などの場合によくある話なんですが、これは当然国の施設なんです。それを地元の自治体で何とかしてくれ、こういう話がずいぶんあるわけなんです。それをつくらないと、負担しないと、ほかへ持っていかれる。住民が非常に不便を感ずるということでそれを負担するというふうなことが間々あるわけなんです。地方財政にゆとりのあるときは、それは無理をしてでもそういう負担をしておるところもありますが、だんだん窮屈になっておる現状で、なかなかこれは困るのだ、ところが、そういう惰性がありまして、その話がもめておるというようなところも聞くわけなんです。しかし、本来、これは国だけがちゃんと自分の責任でつくるべき施設なんです。どこそこに置くときめた以上は、国がこれはもう全責任を持って置くと、こういう私は筋合いのものだと思う。これはあたりまえのことを聞くのですが、大蔵大臣、どういうふうなお考えでしょうか。あたりまえのことなんです、自分の建物ですから。
  328. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 登記所はずいぶん地方で置きたいという要請があるのです。それで、過当競争というか、そういうような状況がありまして、うちのほうを先へやらぬかと、やるならば土地は出すというような事例になってきておるのが、いま御指摘の話じゃないかと思います。しかし、そういうことで地方団体になるべく御迷惑がかからないように処置したいと存じております。
  329. 林虎雄

    ○林虎雄君 以上で私は終わりたいと思いますが、いままで総理その他各大臣から、特に大蔵大臣から、明年度の地方財政に対する、かなり積極的に赤字解消、健全化の方向が承れましたので、期待を申上げておるわけであります。経済不況、中小企業の倒産、あるいは農家経済の不安、物価高等、政府の対処すべきところの問題は非常に多いのでありますが、そのいずれもが、その大多数のものが地方自治体を通じて行なわれるものが多いのであります。これを、相呼応するところの地方財政が非常な貧弱な状態であるならば、政府の施策というものも空転するほかはないのであります。でありますから、地方財政の強化につきまして私の申し上げたことを、御参考になりますれば、していただきまして、明年こそ、ほんとうに中央地方が健全な財政の上に進むことのできますように希望を申し上げまして、終わりたいと思います。(拍手)
  330. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 林君の質疑は終了いたしました。  午後七時十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後六時二十五分休憩      ―――――・―――――    午後七時二十九分開会
  331. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)外二案を議題とし、質疑を行ないます。藤田藤太郎君。
  332. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、いろいろの問題について総理大臣以下にお聞きしたいわけでありまするが、その前に一つお聞きしたいのであります。それは、ハンフリー・アメリカ副大統領が日本に来る。これは二十二日の夕刊に一斉に出ているわけであります。そこで、そのハンフリー副大統領が来られるという、まあ私は最初、フィリピンの大統領の就任式においでになるというように考えておったわけであります。ところが、その大統領の就任式においでになるあと先か、どうなるかわかりませんが、台湾、日本、韓国に寄って帰られる。そこで、外務省の見解として出ている記事を、これは新聞の記事であります、私は、どういうかっこうでいつ日本においでになるかわかりませんが、外務省の見解として出ている記事を読んでみますと、非常に重要な使命を持っておいでになるように感じられるわけでございます。で、あと先の事情を少し調べてみますと、どうも、たとえば毎日の大森外信部長、朝日の秦外信部長、あれをライシャワー大使が非常にひどく非難をした、こういう問題と非常に重要な関係を持っているのではないか、私はそういう感じがするわけでございます。だんだんといろいろの新聞の記事を読んでみると、日本の対中国に対する理解のしかたがどうのこうのというようなことも、このハンフリー副大統領が来るのにつけ加わって、どうもベトナムの戦争の問題、日韓条約の直後に日本にこう来るという、このものを考え合わせますと、どうも、このわれわれが心配をいたしてまいりましたNEATOの問題にどうも関係があるのではないか、こういう考えも、重要な使命や任務を持って来るということも外務省の見解として出てくるところを見ると、これは非常に重要な使命を持ってハンフリー副大統領が来るのではないかという私は感じがするわけであります。  そこで、佐藤総理や外務大臣は、この副大統領と会談をせられることだと思うのでありますけれども、私は非常に国論が、この日韓条約・協定そのものが、この双方の国が見解が違うような条約を自民党は無理に国会を通して批准をした。それに追いかけてハンフリー副大統領が追っかけて来るというのには、日韓条約・協定をめぐって重要な要素が、あの議論を通じ、あの条約・協定を通じて、日本とアメリカとに何かあるのではないかという疑いを持つわけであります。そこの問題を、議論をまずおきまして、そういうぐあいに国民が疑いを持っている状態で、日韓条約批准と即追っかけて日本を訪問するということは、私は非常にこれは関心を持たずに済ますというわけにいかない。だから、むしろ、私たちとしては、いろいろの疑いや疑念が、どうも筋書きどおりいくようなかっこうを考えますときに、ハンフリー副大統領が来ることについては、わが党の書記長は反対だということを社会に訴えましたが、私は、こういう重大なときに、このような形でハンフリー副大統領が来られるということは、非常に外務省の言うように重要な見解を持っている。だから、私は総理にお聞きしたいのでありますが、どういう使命で来るか、来たときにはどういう総理は会談をするおつもりなのか、ここをまず私はお聞きしたい。そうして、いつ来るのか。
  333. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、ただいま、外務省の重大な意義を持つという見解を発表されたということでありますが、外務大臣もいま私に耳打ちして、さような話はありませんと、総理大臣ももちろん、何ら外務省からそういうことについて報告なり相談を受けておりません。ただいま言われておりますとおり、ちょうど三十一日、フィリピンの新大統領の就任式がある、それに参列するために出てくるのであります。したがいまして、それより以上の何ものもないようであります。ただいま言われるような重大な要務を帯びて、また私どもと交渉をするということであるならば、必ず事前にそういう話し合いがあるはずです。そういう問題の提出もございませんし、だから、新聞で書かれておることと、私どもの受けておる感じは全然別であります。また、夜東京に着きまして、翌日午後出発するのであります。もちろん、私は一月に訪問したときに副大統領に会っておりますから、その儀礼的な当然の待遇はするつもりでありますけれども、それより以上何もございませんから、どうか御心配のないように、時、たまたま、日韓条約が批准をされたその後にフィリピン大統領が就任するということ、そこの間に別に関係はないように思いますので、それに出てくる副大統領でございますから、どうか御心配のないように、ただいま言われるNEATOというような問題は全然ございません。
  334. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いま総理は、フィリピンの大統領の就任式に来るので、そんなものには関係がないということですが、しかし、二十二日の各紙の夕刊は、一斉にこの記事を取り扱っておるわけであります。外務省の見解として、私は簡単にベトナム、韓国と言いましたけれども、東南アジアの極東戦略的な問題その他について話し合われるものだというような記事が、その日の夕刊に、重要な会談になるであろうというような記事が新聞に出ているわけです。あわせて二十五日の毎日新聞の記事にも出ているわけでございます。いろいろニュアンスは違いますけれども、いずれにしたって、軍事的な、それからまた経済的な面もあるでしょうが、重要な使命を持って日本に来るというのが、私は一般世間の理解のしかたでなかろうかと思う。いま総理がおっしゃったように、単にフィリピンに行かれて、そして、ちょっとお寄りになるんだというぐあいには、どうも私たちは、正確な情報として新聞を通じて知る以外にいまないわけでありますが、どうも、そういま総理がおっしゃったようには考えられないわけであります。ですから、これはひとつ外務省が、この訪日は重要な会談が行なわれるだろうというような外務省筋の見方というものが出ているわけです、新聞に。総理もお読みになっていると私は思う。だから、そういう点、外務大臣もこの記事は、お読みになっていると私は思う。だから、そのことをもう一度ひとつ明らかにしていただきたい。総理のいまおっしゃったことだけでは、私は理解ができないわけであります。
  335. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私に関する限り、ただいま申したとおりであります。おっしゃるように、また疑念を持たれるように、重大な会談を持つなら、もう少し滞在日数でも時間でもあるかと思うが、全然それがないのでありますし、また、台湾、韓国等を訪問すると言いますが、日本を訪問するのはフィリピンに行く前でありまして、これらの国々を回ってから日本に来るのではございません。ただいま申し上げるとおりでありまして、この事前に出た新聞記事等は全然どうも何か誤解しているんじゃないか。どうも事実とは違うようでございます。なお外務大臣からさらに説明させます。
  336. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま総理大臣からお答えいたしましたとおり、外務省はこれに関する新聞記事に出たようなことは何にも言明したこともございません、発表したこともございません。ただ、いつハンフリー間大統領が来日して、いつフィリピンに向かって立っていくと、大体そのスケジュールを発表しただけでございます。また、アメリカの国務省でもそのスケジュールを発表したということで、どういうことで一体そういう記事が出たのか、私ども全然見当がつかない、こういう状況であります。
  337. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。ハンフリー副大統領がお越しになったときに、総理はお会いするスケジュールはできておられるんでしょう。どうなんです。
  338. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ハンフリー副大統領が日本を訪問されまして、天皇皇后両陛下に謁見の後、私のところも訪問する、同時に私は随員一同と一緒に昼めしを食べる予定をいたしております。
  339. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ昼めしを一緒にされるとなりますと、時間的には相当かかるわけであります。で、これは単なる儀礼的なものというふうに理解していいのか。そうじゃなしに、形はそうかもしれぬが、やはり政治的な問題をその中で話すというおつもりでおられるんでしょうか。
  340. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、ただいま申し上げるように会見もいたしますから、その間にいろんな砧が出るだろう、かように思いますけれども、いわゆるNEATOの問題などについて、あるいは、そのほか重要な問題について議題をどうしても取りきめなければならないというようなものは何にも持っておりません。こういうことがある場合には事前に申し入れがあり、そうして話し合いをしていくだけの事前の準備をするものですが、今回は全然そういうことがございませんから、私はさような重大な会見ではないということを先ほど来申しておるのでございます。
  341. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっともう一つ。いろんな話もついでにされるかもしれないというふうな含みもあったようでありますが、たとえばベトナムの問題、クリスマスの休戦後はかえって激しくなるのではないかというふうな情報等も出ておるわけであります。私は、総理が政治的な問題等に積極的に触れるようなことを言われると、かえって疑惑を受けるかもしれぬと思って、何かこう消極的にお話しになっておるように思いますが、そうじゃなしに、ベトナム問題等につきましては、ほんとうにあれを早く解決したいという熱意があるのであれば、私は、あらゆる機会を利用して、そのために積極的にやはり話しかけていくということのほうが、一番大事なことじゃないかというふうにも思うわけですが、どうも、いまのおことばだけ聞いておりますと、いや、そういうことにもあまりこう触れないのだというふうな感じを受けるわけですが、どうなんでしょうか。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは会ってみなければ、どんな話が出るかわかりません。私のほうから発言する事柄についで、亀田君のただいまの御注意、十分参考にいたしておきます。
  343. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は外務大臣にお尋ねをしたいわけです。ハンフリー副大統領がおいでになる。それにはいろいろの解説がついております。その解説の主要な分は、外務省の解説ということに新聞の記事になっている。あなたがいま、そんなことは知らぬとおっしゃっても、記事にして出ておるわけですね。外務省というものは、そういうことでいいでしょうか、私はそれをお聞きしたい。外務大臣は何にも知らないのに、外務省の筋からの意見はこうだということが新聞に出ているわけですね。国民はそれしか読まないわけです。外務大臣が直接私は知らぬというようなことは、国民はここで初めて聞くようなかっこうです。そういうことで外務行政というものはいいのですか。それをまずお聞きしたい。
  344. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま北米局長がここにおりまして、あなたがハンフリー副大統領の問題について新聞記事が出たということをおっしゃったものですから、北米局長をちょっと呼んで聞いてみたのですが、北米局長はこれは責任者です。責任担当局長です。北米局長も何にも知りませんと、ただ、外務省としては責任を持って言ったことは、スケジュールを発表しただけである、私の推察のとおりであります。でありますから、もし外務省がそういう重要なことを新聞にしゃべって、それが外務大臣が知らなかったというようなことは、これはとんでもないことなんで、ほんとうのロボット大臣ということになるのであります。ほんとうにそういうことはなかったのでございますから、さよう御了承願います。
  345. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ、そこで、いま亀田君の意見もありましたが、このフィリピンの就任式においでになる、そのよき日においでになるということにしても、日韓のあの重要な混乱の国会、日韓条約・協定が、私はまあ相当の意見を持っているわけだけれども、あなた方の党が強引に押し切ったわけだ、両院で。そこで、その疑いがすっきりわれわれにも理解されないから、国民に、 不安がっているものには理解されない状態で批准が行なわれた、その直後に来るという。また、来られてフィリピンの就任式においでになるのですけれどもそこらあたりの問題は、もう少し私は、政治的には何か次の機会とかなんとかお考えになる必要がなかったかということを私は思うのです。それはいま儀礼的だとおっしゃって、こういうことでとおっしゃいましても、なかなかその疑いが晴れない、残念ながら。せっかく外国の人に来てもらうのに、疑いを持ってこれを見るというようなことは、私はあまりいいことじゃないと思う。だから、なぜ、もう少しこれは改めた時期に、そういう会談らしいものが行なわれるというのなら、日にちをおきめにならなかったかということを私は思うわけです。そういう心づかいは、総理としても、外務大臣としても、お考えにならなかったのかどうか、ちょっとお聞きしておきたい。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまいろいろ疑っていらっしゃるようですが、国民全体からの大多数の方はどういうように思いますか。副大統領、これは日本に初めてだろうと思いますが、刑大統領の立場でフィリピンに来る。まあフィリピンの大統領就任式に出てくる。たいへんいい機会だから日本を訪問してみよう、また、ただいま申すように、天皇皇后両陛下にも謁見を賜わっている。こういうようなことですから、これはまあ私はむしろ、あっさり考えてみて、日米間のいまの状態から見て、むしろ来るほうが自然で、ここを抜いて飛んでいけば、それこそ変に思える筋じゃないか、かように私思いますが、これは国民の大多数がどういう感じを持ちますか。ただいま御指摘になりますように、藤田君と同様な考え方を持つか、あるいは、私が言うように、日米間のことは、それは副大統領フィリピンまで行くなら日本に立ち寄るのは当然だと、かように考えますか、国民の判断にまかすべきことのように思います。
  347. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 外務大臣は……。
  348. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま総理がお答え申し上げたとおりでございます。とにかく、これだけ申し上げても、どうしても信じられないというのであれば、これはどうもいたしかたない。
  349. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも言い方が私は気にいらぬ。何という言い方をするんですか、一国の外務大臣が。そういう疑いがあるから、そのときお考えにならなかったかという尋ね方をしているんです。あんたはあんた、私は私だと、そういう返事のしかたをしていいんですか。もっとまじめにやりなさいよ、まじめに。あなた方は多数だからどんなことを言うてもいいというんなら、それは言いなさい、やるから。
  350. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういうふうに申し上げていいか私知りません。教えていただきたい。
  351. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どういうぐあいにものの言い方をしていいかわからぬから教えてくださいとは、これは何だ。そういうふまじめな態度で予算の審議ができるのか。委員長、こういうふまじめな態度で予算審議を政府はしょうとしているんなら、われわれにもその覚悟がある。そういう配慮をされなかったんですかと聞いたんじゃないか。失礼じゃないか、そういう言い方は。
  352. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えいたしましたように、ハンフリー別大統領が日本を訪問する、その事前に、この機会には来るなといようなことは、私のほうから申しませんでした。これはむしろ私どもは、当然日本に寄る筋のものだと、かように私ども考えておりまので、それを先ほど来申し上げておるのでございます。外務大臣の答弁も、冒頭に申しましたように、私と同じような考え方を持っておるんですから、どうか、その点は御理解をいただきたいと思います。
  353. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ、この件はいろいろ私たちの心配をしておることが杞憂に過ぎる、日本は平和憲法のもとに、たとえば、あらゆる機会を通じて、総理を先頭に日本の平和を守る、ベトナムの平和を守る、こういう世界の平和を守るために全力を尽くされんことを期待して、この問題は私は質疑を打ち切ります。  そこで本論に入りたいと思うわけであります。きのうからの木村委員質疑によって、だんだんと、今日までの二千五言九十億円の赤字公債を出す、そういう事態を年度の途中で招いたということは、総理、大蔵大臣は遺憾であるというお話がここでありました。しかし、その遺憾であるということで赤字公債を出そうとされているわけでありまするが、今日の不況というものをどうしたらそれじゃ解消の道に進めることができるかという問題については、まだまだ私たちは理解ができないわけであります。八月の十日でございました。私はこの問題を含めて、いま非常に行き過ぎた設備投資で、この日本の経済というものが生産と消費の非常なアンバランスになっている不況、ひずみとおっしゃいますが、この不況、ひずみを救うためには、何といっても、要するに有効需要、購買力を高めて、そうして、この生産と消費と申しましようか、バランスをとるような努力をせなきゃならぬということは、きのうも木村委員議論しましたが、私も八月十日に議論をしたと思っております。それを振り返ってみて、私は、総理の結論というのは、あのときの答弁の結論的なものは、行き過ぎた設備投資にメスを入れると、そしてやはり不況手当てをするんだと、こうおっしゃったと思います。そして不況対策を進める。たとえば、大蔵大臣のごときは、秋は繁栄が謳歌できると、こうおっしゃる。だんだん藤山企画庁長官お話を聞いていますと、たとえば、雇用の心配はあまりないんだと、労働大臣も、似たような御返事があったわけであります。ところが、二千五百九十億という膨大な赤字公債を発行してでも、やっていこうということをされようとしているわけであります。ですから、ことしは、この不況対策といいますか、生産と消費のアンバランスを直していこうというかまえのものは、どういうところから進めていくべきなのかということが、もう一つ安定成長、調和というお話がありますけれども、具体的にどういうところからどうしていってバランスをとっていく、この不況をもとに戻すんだということは、はっきりしたお答えが、昨日からのここの議論を聞いておりましても、出てこないわけです。ですから、その辺あたりを少し明らかにひとつしていただきたいと思うのであります。
  354. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の不況は、相当私はやはり根が深いと思っておりますし、その起こってきました原因というものは、長い間の積み重なった結果が、私ども言っておりますような経済構造の中に、いろいろなアンバランスが出てきた、こういうことにあると思います。したがって、これを、単に循環的に出てきたものでない以上は、その基礎的な問題を片づけていかなければ、なかなか立ち上がりにくいところがあるのじゃないかと思うのでありまして、それらの原因については、いろいろな角度から考えていかなければならぬと思います。たとえば非常に設備投資が行き過ぎた、まさにそのとおりでございますし、そうして設備投資が行き過ぎて、そうしてでき上がった設備が十分な稼動をしていないというところに、非常な一つの原因があると、そこで、やはりこれを直してまいりますのは、根本的には輸出を盛んにしていかなければならぬし、また、国内消費に対しても、個人消費が十分に伸びていかないならば、ある限界が来ているならば、政府の投資を盛んにしていくという、成育すべき需要を喚起していくということでなければならぬと思うのであります。  で、ここに来ました原因というのはいろいろあるので、それぞれいろいろな角度から考えられると思いますが、要するに、この戦争直後の日本の経済というのは、蓄積された資本が一つもないところから私は出発したと思います。したがって、蓄積された資本が、物的の資本もなければ、あるいは金銭的な資本もなかった。そこで、これを再建するのは何で再建してきたかといえば、信用だと思います。したがって、その信用供与によって、建築をする。機械を入れるということになれば、過去の歴史的な立場に立って信用が供与できると金融業者が見たところに、信用が非常に供与されたということだと思うのです。ですから、大きな企業が、争ってそれぞれ信用供与を受けて設備の拡張をする、あるいは合理化をやるということが可能であった。しかるに、信用供与を受けるとなれば、過去にそれほどの信用を物的に持ってない場合、単に経歴、経験その他からの信用であれば、どうしても中小企業というものは、信用供与を受ける状況が少ないと思いますから、したがって、中小企業が復活はいたしましたものの、合理化もおくれる、生産性の向上もおくれる、そこに非常に大きなアンバランスが一つ生まれてきている。また、その結果として、事業体における資本構成というものが、著しく自己資本が不足して、他人資本が多い。今日二〇%自己資本が割っているというようなことは、異常な状態でなければならぬのでございます。したがって、そういう面からいうと、非常に合理化をした仕事でありながら、金利負担が、非常に多くなってくるということが現実にあらわれている。しかも、信用供与で出てきまして、蓄積された資本が少なかったんですから、金利が高いということは、まあ一般的趨勢から見て、たとえば歩積み、両建てのごとき特殊な問題を除きまして、一般的に国際的に日本の金利が高いということでございまして、さなきだに金利が高いところに、資本構成がそういう状況ですから、自転車操業をやっている場合に、いつかは、ある消費の限界が来ればこういう状態心になって、生産の角度が鈍るということが起こりはしないか、こう思います。それですから、たとえば国民生活が向上されてくることは望ましいことですし、輸出貿易が盛んになるということは、やはり国民の生活水準が上がって、国内で使うものと輸出するものとが、同じ製品が輸出できるということで輸出貿易が盛んになってきたのではありますけれども、しかし、現状から見ますれば、たとえばテレビであるとか、あるいはラジオであるとか電気冷蔵庫であるとか、そういう種類のものが相当にここまで普及してきますと、なかなかそれをさらに倍加してそういう面の需要が出てくるということが考えられない、予想されないわけです。にもかかわらず、やはり過当競争によって設備が――金融を受ければ金を借りて設備をどんどんやるというところに過当競争も起こって、そうして設備過大ができる。そうして車が回っているうちはよろしゅうございましたけれども、一たび不況になってくると、やはりそういう面における消費需要というものが、一応一般的に、たとえばテレビが千五百万台から二千万台にもうなっている。そうすると新しいテレビを買うという人は、そう過去のように伸びてこないのはあたりまえでございまして、それが非常に伸びてくるという予想をして、競争的に設備を過大にしている。しかも、それが金融系列に乗って非常に大きな信用供与を受けていた。そこらに私は根本の原因が一つあると思うのでありまして、そういうことでございますから、この不況から脱出するというのは、やはり一方では、政府が相当な需要をつけながら、中小企業その他の設備改善をし、あるいは今日における巨額にのぼっております事業間の信用の膨張しているものをある程度整理して、改善をしていかなければ、なかなか立ち直りにくいのではないかと、こう思うのであります。ですから、若干時間がかかるのはやむを得ないと思っているのでございます。そこで、やはり政府がこの際景気を回復するためには、政府需要自体をひとつつけていかなければならぬ、こういうところにいま来ているのではないか、こう私自身は認識を持っているのでございます。
  355. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、藤山長官がいろいろおっしゃいましたけれども、なかなか的確にわれわれにわからなければ、国民にもなかなかわかりにくい。安定成長であるとか社会開発であるとかということばが、総理の口から、大臣の口から出てくるわけでございます。しかし、結局せんじ詰めればどうなるのかということになると、私は、昭和三十五年から四十年までの過剰投資が問題なのです。私の調べたところによると、各年二〇%を民間投資はこえておる。そして一番高いところでも、いや、国民総生産に対してですが、一番高いアメリカやドイツでも、一三%か一二%なんです。たとえばの話ですが、日本は外国からおくれて一五%ずつ、少し二、三%ずつふやしてやってきたとしても、四十年までに九兆一千六百億という余分な投資をしているということから、また御意見をおっしゃるか知らないけれども、消費の面をこしらえないで、そういう投資をやってきたというところに、今日の不況を生み起こしたのだと私は思う、端的に。ですから、これに応じて拡大をするなら、国民生活も引き上げて、そして需要の面を拡大しておったら、購買力の面を拡大しておったら、こういうことにはならなかったと私は思う。いまの操業度を見てみましても、稼働率も非常に低いのです。あなた、いま貿易とおっしゃいましたけれども、その貿易というものは、フィフティー・フィフティーの原則なんですよ。日本だけが外国に売って買わないで済むというような貿易はいまできないわけです。ですから、その輸出をしようとすれば、輸入をしなければいかぬ。貿易は商社がやっているわけでありますが、国内で要するに消化しない品物を輸入するわけにはいかない。ですから、そこで輸出も伸びない。輸出能力は、非常に生産能力がありながら――最近輸出が伸びたとおっしゃいましても、絶対数から見たら、ものすごく低い、五、六〇%の輸出しかしていないというのです、日本の生産能力から見れば。だから、そういうことを明らかにして、この不況の対策を立てなければ、この問題の解決というものはしないと、私はそう思っておる。この前の議論、きのうの木村議員に対する議論、きょうの引き続いた議論を私は聞いておりますと、自主規制という問題が出てきます。それから、やはり行き過ぎた投資を、これからできるだけメスを入れて抑えて、できるだけ正常に経済が運営されるようにというお話がございました。ところが、たとえば経団連の出している経済成長、きのう二十五日の新聞の発表を見てみますと、やはり民間資本形成は今年が六兆二千五百億、来年は六兆六千七百億で、実質六・五%の成長だと、こう書いているわけであります。ですから、設備投資を規制しながら、日本のいま操業の困っているものを操業さして、経済を成長させていくということが、本来の姿ではないかと私はそう思う。だから、これであれば、経団連のこの主張を見れば――こういう経団連が主張を掲げた、それを政府はうのみにしておいきになるのか。あなた方がここでおっしゃっている経済のひずみを直すということと、少し話が違うのではないかと私は思う。まあよくわれわれの耳に入ることは、自由民主党と経団連、財界との関係というものがいろいろ耳に入ってくるわけであります。そうすると、いまの操業度を見てみましても、非常に低い。ここにまた膨大な設備拡大を来年やれば、なお回転が悪くなる。物価値上がりも、去年の九月からことしの九月までをとってみますと、消費者物価総合で一〇%上がっているのですね、政府のきょう出された資料を見ても。この状態が続いているわけです。そうしたら、この消費の面はどうするか、どこでバランスをとっていくか、またまた宝の持ち腐れに上積みをするようなかっこうに経済がいくのではないかという私は心配をするわけです。ですから、そういうところとの関係をどういうぐあいに政府ほお考えになっているのか、それをはっきり聞かしてもらわないと、これは新聞に堂々と発表されている。総理や藤山さんのお話を聞いていると、具体的にどうするかということが出てこない。調整をやる、安定成長をやる、一生懸命努力するのだから、というお話なんだけれども、こういうぐあいに具体的に数字として出てきたときに、それではどうするのだということをはっきりしてもらわないと、私たちはよくわからない。
  356. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、いまお話しの点が、ある程度そうだと思います。それは設備投資が非常に多くて、操業率がいま非常に悪いのです。ですから、操業率を上げるということが、まず第一のことであって、いまの設備投資に対する操業率は、たとえば四〇%の工場があれば、それを六〇%に上げていくということであって、過剰設備を持っているところが、さらに何か競争的な立場、あるいは自由に信用の供与を受けられるから、競争的立場、シニア拡大ということだけで設備投資をやれば、同じことです。ですから、現状で設備投資が十分であって、操業率の悪いところは、少なくも政府の指導の上で、できるだけ設備投資の拡大は控えてもらう。しかし、同時に、中小企業等で、まだ設備投資が十分でない、あるいは合理化も進んでいない、近代化もできてない、そういう面には、通産行政の上で大いに力を入れていただいて、そして、その面における設備投資というようなものは、私はやっていただくことが、いわゆるゆがみ、ひずみを直していく一つの大きな原因だと思います。ですから、そういう意味において、やはりこういう事態に対して、民間の過当競争による設備競争、たとえば過去においてありますように、石油化学工業のごときは、はたで見ていてもあまりに競争が激しくて、いたずらな資本投資が行なわれたのじゃないかと、だれが見ても言われるような状態、通産行政の上でそういう点が指摘されておったわけですがそういうことが再び起こることがあっては、この回復、抜け出していくということが非常に困難になってきますし、あるいは抜け出すにしても長引いてくるし、それに対する政府の需要喚起というものは非常に大きなものに、負担になってこなければならぬ。ですから、そういう意味で、自由主義経済ではございますけれども、おのずからそれぞれの産業において節度をもって、そしてこの事態を乗り切るということでなければいけませんし、政府としても、産業行政の指導の上で、そういう立場をはっきりしながらやっていくことが私は必要なのじゃないかまた、現に通産行政の上でも、通産大臣はそういう方面に向かってこれから力を入れていかれることと思います。したがって、中小企業の金融問題その他に力を入れておられるのも、その出発点がそこにあるからだと、私ども考えておりますし、また、われわれそうして、稼働率が非常に上がってくる、そのこと自体が、産業が採算がとれて、利益を確保して、そして経営内容もよくなっていく、そのこと自体が、またさらに稼働率が上がってくることによって生産コストも下がってくるわけですし、すべてがそこに円滑な動きが出てくる。ですから、安定成長へ乗せていくという場合には、そういうような立場に立って考えていかなければならぬ。ただしかし、この不況から回復する一時のショックを何かに与えていかなければならぬということは、これはございます。しかし、それだけに、私も申しておりますように、ある程度景気が上昇に向かってくるような時期、これは過去のように急激な上昇ということは、私は望まれぬと思いますけれども、ときには安定成長に乗せるというような、そういう内容を含んだ施策が伴ってきて初めて安定成長の軌道に乗っていくのだと、こういうふうに私自身考えているのでございます。
  357. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は端的な例を一、二申し上げてみたいと思うんです。たとえば、砂糖は自由化になりました。一昨年自由化になったのですが、砂糖の日本の肝応安と精製能力の設備は二倍である。操業は調整して十二日とか十四日しか動いてない、こういう状態なんです。ところが、その砂糖精製工場が膨大な設備投資が行なわれて、新しい工場が建設されている。これは何を物語るのか。たとえば鉄鋼の問題にしましても、大阪の大谷鉄鋼が、「大手国賊論」というものを週刊誌に載せたことは、御記憶に私はあると思うんです。五千五百万トン計画をして設備拡大をやっていく。私は先日新産都市の水島へ参りました。石油コンビナートが二つできようとしている。川崎製鉄が三百二十万坪の工事をやってどんどんいま建設をしておりますが、あれは一千万トン計画。これは五千五百万トン計画に入るのか入らないのか。そういうことは、総理の言われる、行き過ぎた設備投資を規制しながら稼働率の低いのを上げながら、そして経済を成長さしていくという、いま藤山さんのおっしゃることも、同じ意味だと私は理解しているのだけれども、こういうことは、どうなるのだと私は聞きたい。鉄鋼のいまの一千方トン計画が、水島には立ちつつあります。これは五千五百万トン計画に入っているのか、この外なのか。資力のあるところはどんどんと建設をしている。政府の意図と違ったかっこうでどんどんと建設されている。そして、操業度は六〇ぐらいなんですね、鉄鋼の操業度は。そういうことで実際に腹の底から主権在民の国家ですから、日本は。国民の生活が第一に守られなければならぬ。原則なんです。物価は、私は、設備投資のための資金調達として値上がりしておると思うのでありますけれども、そういうものがどんどん行なわれているということは、国民の目にはどう映るか、このことを明らかに、一つ一つの産業についてしてもらわないと、いかにここでうまく言うてもらったって、私は理解ができないのです。
  358. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いまのお話のように、これは政府はむろん、そういう面について関心を持って行政上の指導をしていかなければなりませんが、民間の事業経営者も、やはりこの際こういう状態になったことについて反省をしてもらって、そしてやはり合併をするものは合併をする、整理をするものは整理をする、合同をするものは合同をする、そういうようなことによると同時に、スクラップ・アンド・ビルドで、古い機械というものは、それを新しいものに置きかえていく、こういうようなことを民間経営者自身がやはり考えていかなければならぬ。またそれを考え、あるいはそれを実行することのための必要な援助というものは、政府がしていかなければならぬと思います。ですから、今度大蔵大臣か考えておられ、あるいは税制調査会等でも、会社の合併その他について、税制上の措置をするという、援護措置を政府はとることが必要だと思いますが、しかし、そのこと自体は、民間自身がそういう決意を持ってやっていただかなければならぬのであって、ただ単に政府の施策にたよって、そして民間の経営者が、政府さえやってくれればもう整理も合同も、何も経費節約もしないで、そうしてそのまま現状のままで立ち直れるという感じ方は、私は、もしそういう考え方が民間の経営者にあるとすれば、これはやはり民間の経営者としては反省していただかなければならぬと思います。そういう意味において、やはり政府が率直にそういう人たちにものを言っていくということも必要だろうと思いますし、経営者の中には、松下君のように、すでにそういう面について、民間自身がやはり自分たちの事業に対して、その将来の基盤をこの際築いていかなければならぬというような考え方で進んでおられる方もあるのですけれども、こういうことを民間の人がまず考えてもらわなければならぬ。しかし同時に、政府は、そういう考え方が法制上あるいは税制上非常に困難があるとすれば、そういう面について、その整理が促進されるように援護措置をとっていかなければならぬと思います。
  359. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だからね、私はそれを具体的にお答えを願いたいんです。そうおっしゃいますけれども、それじゃ砂糖の場合はどうなんだ。二倍の設備があるのに新しい大工場をつくっているということは、これはどうなんだ。これには資本も資金も導入しなければできない。たとえば川崎製鉄が水島にいま一千万トンの建設をしているのは、これはどうなんだ。これはひとつそこのところを明らかにしていただかないと、われわれは理解ができないわけですよ。
  360. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、投資規制というものは、いまやってないわけですから、したがって、事業が将来の需要を見越していろんな準備をするわけです。水島も川崎製鉄が将来のことを考えて、いまいろいろな工場を将来の需要を見越してやっておるので、これがまだ具体的に鉄鋼の生産計画にのっとった計画ではないと私は聞いております。
  361. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三木通産大臣に重ねてお尋ねしますが、いま生産計画に乗ってないという条件のもとに一千方トン計画が進んでいるということは、これはどうなのか。佐藤総理は、この行き過ぎた設備投資にメスを入れて規制していって経済を成長さすとおっしゃっている、この前の国会で、私の質問に対して答弁されている。それにいま鉄鋼一つとってみたって、川崎一工場にしたって、五千五百万トン計画以外に一千方トン計画がいまどんどん進められている。そういうことはどうなんですか、ということを聞いているのです。総理、ひとつ御意見を聞かしてください。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も具体的な計画の実際を知らないから、あるいは、いまのお尋ねのことに直接答えるわけにいかないかわかりませんが、ただいままでのところは、製鉄はすでに大会社の間で自主的に設備投資をしばらく見合わそうと、そうして過剰設備をみな抱えておるのだと、こういう議論をするのがあるのです。そうして、それに対してですね、いや、これから先二年たち三年たちすると、需要の量は非常にふえるのだ、で、そのことをいろいろ計画を立ててですよ、いまからやらないと、需要がふえたからつくると、そうして二年もかかるようなことでは、経済の要請にこたえられないのだと、こういう問題があるわけです。どうせ工場を拡張するにしても、設備をするにいたしましても、その期間が一年半かかるとか、ものによっては二年かかるとか、こういう問題があるものですから、しばしばそういうような業界においては議論があると、で、ただいままで、いま製鉄の五千五百万トンというお話をなさいましたが、通産省では、また、この国の状態では、五千五百万トンというようなものはまだ持ってないのですよ。だから、それらの点もですね、十分御理解をいただき、ただいま申し上げますように、設備が完成するまでの期間が相当ある、そのときにはどういう需要になるだろう、こういうことをやはり対応して考えなければならないというのでございます。  それからまた、だだいまの状況で、設備が過剰だと、こういうことで非常に頭を悩ましておりますから、先ほど来言われるように、需要を喚起する、先ほど言われたように輸出をするといっても、これはフィフティー・フィフティーだと、こういうお話ですが、輸出が増加になれば、それだけ工場の作業度は上がる、こういうことも実は言えるわけでありますので、ことに日本のように、鉄鋼その他原料は外国から輸入する、こういうようなところだと、輸出もふやしていく、総需要量をふやしていく、こういうことで取り組んでいかなければならぬ、かように思います。ただ、いま最初に御指摘になりました砂糖、これなどは、砂糖の問題はたいへん、自由化いたしまして業界が非常に混乱を来たした、こういう一番の適例というか、準備なしに自由化するとこういうことになるのだと、こういう意味で、しばしば引例される事例でございます。しかしながら、将来の発展のことを考えれば、今日の設備投資の過剰は、必ず経済の飛躍的な拡大に寄与するものだと、かように考えますので、私どもはこの投資は全然むだであったとは思わない。かような意味合いにおいて、過去の経済成長も意味があるわけであります。しかし今日は、何といっても設備の過大に苦しんでおるのでありますから、そういう意味で需要を喚起する、こういう方向でいろいろ七月以来施策をとっておるわけであります。ただいま御指摘になりましたこと、大体私どものとっていることも同じような考え方でありますが、ただ事柄の性質上、わずかな期間に成果があがらない。そのために非常な批判を受ける。ことに、非常に残念に思いますのは、一連の施策が、大企業あるいは中小企業というようなところで差別をしておるのではございませんで、大企業のほうは比較的早く立ち直るが、中小企業はどうしてもなかなが立ち直らない、こういうような意味で中小企業に非常に薄いのじゃないか、こういうことがしばしばこの席でも指摘されるわけであります。したがいまして、中小企業対策が、その近代化等、生産性の向上に特にわれわれが留意する、そしてこまかな注意をすることによって、中小企業をほんとうに守り育てていかないと、これはたいへんなことになる、かようにしばしば申し上げたのでございます。  具体的な事例については、あるいは不十分であったかと思いますが、大体の考え方は、ただいま藤山君が御指摘になりますようなそれらの点について、政府もくふうしておるような次第であります。
  363. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いま総理お話を聞いておりますと、八月国会と、いまもあまり考え方はお変わりになっていないようであります。しかし、逸走大臣がいまお話しになったことは、設両投資は自由です、自由に、規制をいたしておりませんと、こうはっきり言っておられる。そうなると総理考え方と具体的な行政とは、違うということですね。そういうことになるのじゃないですか。具体的には、たとえばですよ、鉄のいまの中期経済計画の五千五百万トン計画ですか、そのぺースにも川崎製鉄はのってないという。しかし現実、土地の整備から工場建設をやっておる。それで私が申し上げたいのは、総理が言われるように、機械化、生産の近代化、これもけっこうでございます。しかし、ものにはおのずから限度がある。そういうワクばっかりこしらえられるなら、需要というものを何でもっとお進めにならないのか。物価値上がりで、こまかいことを言うたらなんですけれども、いろいろの話が出ています。私は、この前も議論したからもうこの議論はやめようと思ってきょうは来たんですけれども、言わざるを得ぬ。実質雇員金が、昭和三十五年を一〇〇にして、今年の各月のその実質賃金指数というのは九五、六、それは期末手当というものによってカバーをして幾らか上がっていますよ。一一〇ぐらいに年平均したら上がっていますけれども、そういうかっこうなんですね。たとえば、三十年を基礎にして付加価値生産性をとってみると、二三〇になる。実質賃金は一四五なんです。こんなひどい賃金と生産性――生涯性も二三〇、三十年を基礎にして。それで実質賃金は一四五という、こういう政治をやっている国は、こういう経済政策というのは、どこの国にもないと私は思うのです、こんなひどいことは。だから、その三十五年を一〇〇にしましても、その各月の収入は、倍増計画ですから、平均、算術計算なら五割上がってあたりまえなんです。それが一〇〇を切れているという状態、これは需要を喚起して、需要を高めるとおっしゃるが、私は、これをあとから聞こうと思いますけれども、まず前段の、その鉄鋼がそうだということで、自由経済だから投資は規制してないと、こうおっしゃる。それじゃもっと簡単なのは、砂糖生産というのはよく例にとるとおっしゃるけれども、私は例にあげたのはきょう初めてだ。生産能力は二〇〇%で、十二日か十四日くらいしか稼働してない、自主規制で稼働してないのに、近代工場をどんどん――いまこれだけ金がないという、赤字公債まで発行せんならぬときに、何ぼ自由経済だといったって、そんなことをしていいのかどうか。これはひとつはっきりしてもらわないと、私はいけない。藤山長官がさっき言われたように、何としても、政府にたよったらいいじゃないかという――どんどんと企業家の中に出てくるというお話がありました。事実たくさん出ているじゃありませんか。最近の繊維の綿紡、スフ、この規制の問題を見てごらんなさいよ。あの日清紡と鐘紡ががんばっている。あの言い分と通産省が押えようとしているのと、考えたら明らかだと私は思う。そういう点から考えても、私は、ここで総理は、何とか経済を立て直したい、不況を直したい、行き過ぎた点は規制しながらだんだんと経済が繁栄するように、まず操業を上げるように、需要を上げて購買力を上げて、正常な形で、経済の回転の中に各産業が、大企業から中小企業まで動かしたいということをおっしゃっているのだと思う。私はそういうように理解する。理解しますならば、その現実に動いていることがどうなんだ。設備投資は自由だということであったら、どこで規制するか、ひとつお考えいただきたい。
  364. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは先ほど来通産大臣が申しましたのも、自由経済をとっているのだから、いわゆる規制という、あるいは統制をするとか、かようなことはしない。しかしながら、行政の指導はしておるわけであります。自主的な調整をはかるような行政指導をしている。だからこそ、先ほど私が鉄鋼の例で申し上げましたように、将来の一定の時期を考え、そうして需要の伸びなどを業界で相談し合って、そうしてその設備の順序などもきめておる、こういうことを実は申したのであります。ただいままで私の設備についての考え方は、これはいわゆる統制はしないのだ、どこまでも自由経済でいくのだ、これはひとつ御了承いただきたいと思います。  で、需要喚起という方法は一体どういうことなのか。この需要喚起は、たとえば鉄なら鉄――鉄の使用はもっとふえるようにしたいものだ。したがって、その意味では、造船の資金をひとつふやしたらどうだ、こういうようなことで、造船の資金をふやす、あるいは電気機器等は、電電公社でひとつ財政投資をふやすことによって、そうして注文を積極的にやっていただく。あるいは鉄道、車両をつくる。これまた車両メーカーが鉄を使い、あるいはガラスを使い、その他木材を使い等等――これがまた関連産業で非常に波及力を持つから、これを進めていこう。また、レールなども、鉄鋼の種々の意味においてこれは役立つ。こういうような非常にわかったものがございます。またさらに、最近言っておる建設関係では、土木工事、これを進めるのはどうも土地の投資が非常に多い。だが土地の投資の多い限りにおいてはあまり波及効率は高いとはいえないから、むしろ住宅を建設すべきだ。そして、住宅を建設するならばセメントも使うだろうし、木材も使うだろうし、またいろいろなものを使うから、こういうような意味のまあ作業服等も使う。そうすると繊維にもそれが波及していく。こういう意味で、いわゆる波及率の高いものをいろいろ使うようにしたわけでございます。これが七月にとりました施策である。また、しばしばいままでも言われておりますように、また藤岡君も指摘しようとしていらっしゃるように、これは何といっても需要は国内需要が第一であります。もう輸出といいましても、それは国内需要が全体の経済を支える力、それにはなかなか及ばないのであります。かつては消費もまた美徳だというようなことばまであったほど、この国内消費というものはこれは大事なことだと思います。そういう意味で今日の不況克服には私どもも国内の需要喚起、しかもその需要喚起が各方面に波及していく。そうして効率の高いもの、また、まあお互いにぜいたくにはならないようにしたいと、かように実は考えておりますので、こういう点も国民の理解を得て、協力を得ておりますから、最近貯蓄などもたいへんふえておるようでありまして、そういう意味で私は非常に喜んでおります。ただ、まあ指摘されるいわゆるコモディティという部類が今後どういうようになるだろうか。これは弱電の電気機器数等のいわゆる家庭備品、そういうものがいろいろ使われない、消費がにぶっておる、こういうようなところでこの面がいま打撃をこうむっている。とにかく各産業別にいろいろの対策を立てていくなら、また中小企業等についても、その当面しておるその困難な状態にメスを入れてまいりますなら、必ずしも対策がないというわけのものではない。そういう意味政府は真剣に取り組んでおるというのが現状でございます。この点はあるいはお尋ねになりましたことと私の答えているのが食い違いがあるかわかりませんが、私どもがいま取り組んでいる不況克服、同時にまた中小企業対策、また物価対策、こういうものにつきましての態様、これはどこまでも自由経済のもとでこれらのむずかしい困難なものをひとつ仕上げよう、かような努力をしているのでございます。どうか御理解を願いたいと思います。
  365. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 藤田君の御質問で、こういう設備過剰に悩んでいるときに、設備が非常に自由で何も規制しないから自由にやっていいのだということは、それは誤解を生ずるおそれがありますので、申し上げておきたいと思います。それは統制経済じゃないですから、設備投資に対する統制は何もしておりません。しかしながら、事業の経営者として設備投資をやるということは最高の責任に属することだと思う。経営の責任者としてどういう程度どういう方面で設備投資をするかということは、もう経営者のいろいろ責任があるけれども、私は最高の責任だ、今日企業が不況で困っているのも設備投資が行き過ぎたという点ですから、各企業自体が深刻なやはり反省期にある、こういうことではやはりいかぬというので、自主的に調整しようという動きが産業界に起こっていることは藤田君も御承知のとおりであります。これはやはりこういうその試練を経てきて、こんなにシェア競争で設備等の競争をしても始まらない、自主的に調整しようという業界の動きがある。また通産省としては産業構造審議会の資金部会というのがあって、業界の代表者、学識経験者が寄って、そうして設備投資に対するいろいろな相談をやっているわけです。これは行政指導の窓口であります。自由かってだというわけではないのですが、そのいま言った統制はやっていないということで、業界の自主的な調整、通産省の行政指導というものが行き過ぎをチェックしようという動きは、こういう面にもあらわれておるのだということは、つけ加えて申し上げておきたいと思います。
  366. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三木さんが、あなただよりということでですね、経営者の良心といいますか、ヒューマニズムに期待をしているというお話でございます。私はそれで事が済めば非常にけっこうだと思うのです。そういうことが実際にやられているんなら非常にけっこうだと思います。たとえば労働関係を見てごらんになったらすぐわかると私は思うのです。安かろうよかろうということのものの考え方。今日の近代国家といわれているヨーロッパ諸国の、人を一人雇うのには、その人が社会で一人前の生活ができる、これだけの給料を出さなければ、その人の生活をみなければ雇う資格がないのだというヒューマニズム。それと日本は安かろうよかろうと、できるだけしぼって、労働条件も下げて、合理化の責任は全部労働者にかぶせてやっていこうというものの考え方、これが日本の経営者のものの考え方じゃございませんかですから、三木さんが非常に高度な気持ちでそういう期待をされても、実際に、力と言うたら言い過ぎかしりませんけれども、公的にか、政府機関か、そういうものが期制しなければ――私が二つ取り上げましたけれども、その道にいっているじゃないか。これは砂糖は農林大臣の管轄、農林省の管轄なんです。だから総理の言われる大方針というものに、企画庁を初め各分野がやはり行き過ぎたものは規制をして、そして正常な経済に戻そうという熱意、単にあなたまかせで、あなただよりだけではこれはできない、日本の現状では。そこがいま問題なんですよ。そうでなければ二倍の設備があるところに近代工場を建てる必要はないのです。五千五百万トン計画があるのに一千万トン計画を水鳥で鉄鋼の設備をする必要はないでしょう。それはただでできるわけではない。資金も資材も要るわけです。これだけ日本の経済全体がまあ言えば困っておるときに、そういうのは平気でやっているというこの現実は、それは私はあなたにたよっているというだけでは始末のできない問題ではなかろうか。私はこれを二つ例をあげたわけです。農林大臣ひとつ見解を聞かしてください。
  367. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 砂糖に関しましては、ちょっといろいろ複雑な点がございます。と申しますのは、国内において、てん菜糖をやはり生産をし、北海道を主にして増産をして、それである程度の自給をはかっていきたいという問題があるわけです。それからもう一つは、このカンショ、バレイショの増産ということが、これは農村の振興策というか、過去においての生産、いわゆるカンショ、バレイショ以外にはつくれない地帯があるわけですな。そういうところのカンショ、バレイショを原料としてでん粉をつくりブドウ糖をつくっていく、これも一つの甘味資源でございます。そういう意味において、その甘味資源をある程度擁護して、国内で生産を進めていくということが加わっておるわけでございます。それに加えて今度は粗糖が外国から輸入されるという問題、それを精製するというそういう精糖の問題がございますることは御存じのとおりでございます。それからなお奄美大島とか、そういうところの甘庶糖の問題もございまして、これもやはり重要な問題で、北海道のてん菜と同じくこれを保護してある程度擁護していく必要があります。それから沖繩における砂糖も同様の状態にあるわけでございます。現在沖繩の多くの産業の大部分が、いま砂糖によっておるのは事実でございます。それもございます。そういうものと全部ひっくるめての糖業という問題になるのでございまするので、私どもは自由化について多少渋っておったわけでございます。しかしながらこれはやはり時の勢いでございまして、自由化ができ上がりましたことは御存じのとおりでございまして、そのあと始末ということではありませんが、全体を包含しまして、砂糖全体の価格安定政策を立てようということで、この前の通常国会において砂糖の価格安定制度を制定して皆さんの御協力を得ましたことは御存じのとおりでございます。さような状態でございまして、何も主として統制という――多少そういう関係がありますから、統制的色彩は若干持ちまするけれども、できるだけ自由的な気持ちで価格をきめようというなかなか苦心された方法で価格を維持しておるということに相なっておるようなわけでございます。
  368. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 農林大臣、具体的に聞きましょう。いまおやりになっている粗糖とてん菜糖の関係はわかりました。しかし私の言っているのは、砂糖を精製する設備が二〇〇%あるというのです、いま。それに近代工場を建てているということを聞いている。これはてん菜糖の工場が足らぬので建てているのかどうなのか。絶対数において二倍の設備があるのですよ。そこでいまの操業をあなたに申し上げますと、八、九月は月に十二日しか操業してない、砂糖ですよ。十、十一月は十四日しか操業してない、十二月は特別で十八日操業していると、これだけ自主操業をしなければどうにもでき過ぎてしょうがない、日本の国内の需要との関係で。これは二倍も工場があるからそうなっている。それにまた近代工場を建てているという、これは設備投資の面から申し上げているのですよ。そこのところをちょっと聞かしてもらいたいのです。
  369. 北村暢

    ○北村暢君 関連。いま精糖工業界で十二月二十四日の不況カルテルでもって、一月は十日操業だということで協定をしたようですね。そういうようなことで通産大臣は、産業構造部会なり何なりで統制はしてないけれども、業者が自主的に、従来の反省の上に規制を加えていく、自主的規制を加えていく、こういうことになっているのですがね。精糖工業界は自主的規制をやる能力を持っておらないのですよ。持っておらないからできてくるのです、いま藤田君が質問しておるように。だれがいったってだれも言うこときかないのですよ。業者間の自主的調整ができない。そういうときに一体農林省は監督官庁として、この粗糖の精製による輸入砂糖の益金で、先ほど農林大臣が言っているてん菜糖なりあるいは非常に生産性の悪い奄美大島とか沖繩、これはほかから比べればうんと悪いのであります。そういう国際的に見れば競争にならない奄美大島とか沖繩の粗糖をかかえて、それを国内甘味資源の需給度を高めていくという、そういう差益金でもってそういうことをやろうというので事業団ができた。その事業団は差益金をもってやろうというのですけれども、大体この精糖工業の各企業体の企業採算は一体どうなっているのか。そういうあなたが主張している国内甘味資源の需給度を高めるという施策に各企業が出す余裕がないのです。これは赤字なんです、いまは。せっかくできた事業団はそのために今度の補正予算の中に五億円、その輸入砂糖の差益金から出さなければならないものが五億円どこかから持ってきて国の責任で出資しなければならないようになっているでしょう。そういう点を質問しているのですよ。それを何だか農林大臣らしい答弁はしたけれども、さっぱり精製糖のほうの不採算であり過剰設備であるという説明は一つもしていない。一体これはどうするのか、そういう点を質問している。
  370. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いやどうも農林大臣らしい説明に熱が入ったためにその点申し上げなかったわけでございますが、要するに、事業団によって価格をきめる、こういうことでございます。元来が皆さん御承知のとおりに、砂糖は実際どこの国でも政府の手が入っておる、価格について。このやり方については、世界的に異なっております。それを一時全く自由になったという問題が非常にいろいろの面において困難を覚えたわけであります。そこでいま申しましたように、事業団をつくり、そしてこの価格においてどの程度にやれば利益がどの程度になるか、こういうこの価格のいわゆる安定帯という――非常に固定的な安定帯でなしにでありまするが、一種の安定帯によってその収益がはっきりわかるということに相なっておるわけでございます。それがかまわずにどんどん増産してもらっても困るのでございます。したがって、私どもとしては統制――そのほうの統制ではなしに、その価格の安定帯というものを通じて、そしてみずからこの安定帯によって定められたる価格というものと見比べて、生産なりあるいは輸入なり、あるいはその精製なりというものを進めていきたいということを念願しておるわけでございます。
  371. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 過剰設備は。ちょっと委員長注意してください。
  372. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 設備が現在ありますることは、いま申しましたように、自主性でいくよりほかに方法がないと思います。あるいは合併でもできれば一番いいと思いますが、そこまでなかなかむづかしいわけでありまするので、自主規制でいくと、こういうことであります。
  373. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ佐藤総理大臣、農林大臣に聞きましたところが、よく的確な答弁が得られないわけです。しかし、まあこれは常識の問題としてですね、設備が二倍もあるのにまた新しい大工場を建設しているというようなことは、私はこれは不況対策の問題としては、これは農林大臣ばかりじゃなしに、閣議全体でこういう問題こそ取り組まなければならぬ問題ではなかろうかと、私はそう思うのです。これ以上農林大臣に言っても、どうもしょうがありませんから、私は言いません。私は砂糖の内容の問題について触れると、これはたいへん問題が日本の政界を揺り動かした歴史的な問題がたくさんある。だから私はそれにはきょうは触れまいと思っているわけです。粗糖の相場というのはロンドン相場ならロンドン相場で毎日これは相場が出ているわけですから、それから糖価の安定をつくって、いま農林大臣の言われた問題の処理の問題も国内でおやりになっているようですが、それはてん菜糖の関係で調整されてくるけれども、これもむちゃくちゃなことはできないはずでございます。ですからこの砂糖全体の問題に入れば、私はたいへんな問題が日本の歴史にはあった。しかしこれには私は触れません。しかし、いま不況の問題としてこのようなことがいいかどうか。これはひとつ佐藤内閣として、鉄の問題やら砂糖の規制問題や、総理のいままで答弁された見解とは全く違った方向に動いているということをよく理解していただいて、処置をいただくほうがいいんではないかと私は思う。  それからもう一つの問題は、私は独禁法の問題について少し御意見を伺いたいと思うのです。日本が財戦になって、連合国が日本を占領軍――占領管理対日理事会をつくって管理をした。そのときに一番先に出してきたのは何か、十財閥が富の大半を握って戦争への道が開けたんではないか、この財閥の解体であります。もう一つの問題は、これを通じての独占行為であった。だから独占行為の禁止という問題、これが第二の要求事項だったと私は記憶している。だから特株整理委員会を通じて財閥解体の道が進められた。いまじゃどうも私が疑うような結果になっていますけれども、いまはいまとして、しかし独占禁止法という法律ができたわけです。ところが、昭和二十八年から不況カルテルというかっこうのものがこの独禁法の中に入ってきた。これが活用されていく。だから日の綿紡の一〇%規制、これは通産省がおやりになっているようでありますけれども、その反対の言い分というものと、それから通産省がおやりになっているものとを見ていると、非常に重要な問題を私は含んでいると思います。住友金属の問題もこれに似たような問題であったと私は記憶をするわけでございます。ですから私は独占禁止法、この法律を守るために公正取引委員会という警察的な役割りの委員会があるわけであります。これが十分にわれわれの主権在民の国家体系の中で守っていくという筋道が立たないと、国民が犠牲になるという答えが出るわけであろうと思う。最近に至っては不況カルテルの公取の認可によって、私はそれがゆがめられていると私は理解をしている。ケース、ケースによっていろいろな理由が立つでありましょうけれども、全体としてはそういうぐあいに私は理解をしているわけです。外国で独占行為を認めているという国がどういうところがあるか、私は少し調べてみたのですけれども、アメリカは独占行為を禁止しております。フランスもやっております。ドイツは化繊――斜陽産業、危機に陥った一つの特殊ケースだけがはずされて守られるようなかっこうだと、私は承るわけでございます。ですから私は独占禁止法というもののたてまえは、それで公取委員会のたてまえというものはいかにあるべきかといえば、独占行為の禁止というものは中立的なあの人事院と同じであります。中立的な立場で厳然と守って、途中ではぼけてはならない。国民生活にとって、日本の経済にとって、民主主義日本にとって欠くことのできない官庁だ。そのために行政委員会として権限を持たしている、私はこう思う。公取委員会の委員長が見えておりますから、まず公取委員長見解を承りたい。
  374. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまお話にございましたように、独占禁止法は昭和二十二年に占領軍のもとにおいてできたのでございますが、御存じのとおり、私的の独占並びに不当な取引の制限、それと不公正な取引、この三つの大きな柱を禁止する。こういういわば当時といたしましてはまことに画期的な、日本の従来のわが国民においてはほとんど頭脳の底になかったような新しい考えがもたらされたのでございます。当時におきましては、過度経済力集中排除法とともに、日本の従来からの国土にあるいは一部沿わなかった点もあったかとも思うのでありますが、その後昭和二十四年、それから二十八年の改正を経まして、現在の姿になっております。すでに独占禁止法制定以来十八年の年月を経過いたしておるわけであります。当初におきましては、非常に厳格ないわば共同行為の禁止規定がございましたが、昭和二十八年に、御指摘のように不況カルテルの制度及び合理化カルテルの制度ができまして、これもわが独占禁止法の対象の中に入ってまいったのでございます。不況カルテルにつきましては、昨年からのこの不況期に際会いたしまして、最近認可の申請が相当出てまいっております。現在までに公正取引委員会におきまして、これを認可いたしましたのは十七件ございました。なお、現在さらに二、三の不況カルテルが予想されるのでございますが、大体これで不況カルテルの仕事は一段落かとも思うのであります。不況カルテルの認可につきましては、御存じのとおり厳格な要件がございまして、不当な取引制限に対する例外でございますから、特定の商品の需給が著しく均衡を失して、そのために業界の商品の販売価格が平均生産費を下回る、そのために当該事業者も相当部分の事業の継続が困難である、こういうような大きな条件があります。それからまた、経済部企業課といたしまして、ことに一般消費者及び開運事業者の利益を不当に害することのないように、おそれのない場合に認可する、こういうことになっております。公正取引委員会におきましては、この独禁法の規定を現在の事態に対処いたしまして、この規定に当てはめるについては、できるだけすみやかに認可をするという体制をとるとともに、いやしくもこれが安易に流れまして、いたずらに長引いて、そのために一般消費者、関連業種に非常に迷惑をかけることのないように、あるいはまたそのために業界に安易な空気をいたずらに馴致いたしまして、そのために構造的な改善を怠ることのないよう、厳に注意をいたして、認可のつど、当該業界に対し要望いたしておる次第でございます。独占禁止法の運用にあたりましては、なかなかむずかしい多くの問題を含んでおりますが、私どもは法の命ずるところに従いまして、厳正公平にこれを運用してまいるとともに、経済の実態に応じてできるだけ実情に合うように運用してまいるつもりでおります。どうぞ、そのつもりでひとつ御了承願いたいと思います。
  375. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 公取委員長としては、法律が改正になったのだから、その番人を厳密にするということを言わざるを得ないと私は思う。しかし、不況カルテルというようなかっこうで独占行為の根本がくつがえるようなことが行なわれているということ自体が問題なんだ。そのことを問題にしたい。ですから、私はだいぶ前――いまは解消しているようでありますけれども、たとえば三年ほど前だと記憶しますが、アラスカ・パルプが入ってくるようになって、そしてこれが流れるのじゃないかということで公取で二割か何かの規制をした、あくる月から紙の値段が二割上がったということを私は記憶をいたしておるわけであります。硫安も似たようなかっこうだったと思います。私はそういうことであっていいかどうかということをいまだに疑問に思っておる。最近調べてみたら、おそらく二つは一応解消したというわけでありますけれども、そういう国民に疑問を持たしたような状態でこの問題が出てきているわけでございます。たとえばここで綿紡の鐘紡と日清紡の問題をこう見てみますと、問題が起きればどこかにたよったらいい、政府にたよったら何とかしてくれるだろうというようなかっこうで、そして政府が操業規制をする、それで温存をしていく、こういうかっこうではいけないのではないか。国内的にさえ守られれば国際的な相場の関係なしに――そういうことではいけないのじゃないかという主張がここにあるわけですから、私も百七十三円のものが百六十円を切るようになった、だから困るといって通産省が規制されたようでありまするが、生産コストが下がってきて値段を下げられるならどんどん下げるのが人類の目的なんです。技術革新というものは、生産性を高めるというものはそれだけ人類が幸福になり、国民が幸福になるという道を私は踏むところに意義がある。そういうときになったら管理価格カルテルをしいて、企業だけが温存するというようなかっこうを、公取委員会が不況カルテルだといってこれを守るようなことになったら国民はどうなるかということになるわけであります。だから私は外国に例を見ないようなかっこうで、不況カルテルというかっこうで抜け道をつくっていくというところが、私は日本の経済について問題ではないか、こう思うのです。これは総理とひとつ藤山長官の御意見を聞きたいと思います。
  376. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 管理価格として見られるものについては、これは公取で相当厳重に調査してやっていただきたいし、またやっていただいていると私は思っております。不況カルテルの場合につきましては、現在のような状況では、やむを得ない緊急避難というような意味で認めなければならぬものが私はあるのじゃないかと思います。ただ、それはよほど条件にしても、あるいはその期間にしても、緊急避難という意味において厳重な審査の上で認可していただくものだし、またそういうことを公取としてはやっておられると、こう思っておりますので、その範囲内で私どもも現状においてはやむを得ないのじゃないかと、こう思っております。
  377. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま企画庁長官からお答えいたしましたからもうそれでいいかと思いますが、公取は申すまでもなく消費者保護の立場から公正な扱い方をする、こういう機関でございます。したがいまして、ただいまの不況カルテルを許すにいたしましても条件がそろわないといかない、また同時に消費者に迷惑をかけるようなことがあってはいけない。ただいまの不況カルテルをつくるのはいわゆる不況、そういう立場で過当競争をする、いかにもそれは消費者にしわを寄せるようだが、業界自身が非常な混乱を来たす、かようなことでは困るから、その事業自身が過当の競争をしない、そのことが長い目で見れば消費者を保護するゆえんでもある、かように考えてやるのでございますから、それらの条件を十分考えた上で、消費者に迷惑がいかないようにその処置をとりたい、こういうことでございます。御了承をいただきたいと思います。
  378. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 しかし、その不況カルテルをやる目的とは何かというと、利益を上げ、価格を維持するということが目的です。そうでしょうそれで操短をやる。調整をやる。そこで認可の条件というものは、価格が平均生産費を割っているという条件が一つあります。しかし、それは設備の拡大をした分も償却を含むわけであります。そうすると、膨大な行き過ぎた設備拡大をやったものの償却までこれに含んでくるわけでありますから、かってにむちゃくちゃな設備拡大をやっておいて、それは不況カルナルで守られるということになるわけです。だから、総理の言われるような前段の規制というものがきちっと行なわれたら、不況カルテルの意義というものは出てくるけれども、この公取委員会としては、法律に基づいてこの条件のもとにやる。膨大な設備拡大をやった償却をこれに含めて許可認定にするわけです。かってに膨大な設備拡大をやったものまで償却まで全部含める、これが一つ。それからもう一つは、一般国民消費者の利益を不当に害さないということがある。不当に害さないという基準はどこにあるのか。それは公取委員会が認定されると私は思うですけれども、しかし、公取委員会が不当に害さないというこの認定をほんとうに実際やれるのかどうか、ここが問題なんです。これが不況カルテルの二つの条件です。私はだから不況カルテルでうまいことをやっていると総理はいわれるけれども、うまいことやっているとはどうも考えられない今日のような状態、ものごい設備拡大をした償却をみな入れてしまって、それでその価格カルテルが行なわれている現状において、不当に害さない云々と言うたところで、生産が独占されてくれば不当か不当でないかは、その業者の独占化した、寡占化したところで判断をして市場に流れているわけですから、住民の側から立ったらどうなるのか。これはなかなか答えが出ない。こういう形で私は不況カルテルをこの独占禁止法につけ加えるというところに問題があるのじゃないか。独占行為を禁止するというたてまえが貫かれて初めて民主社会ができるのではないか。ここが問題だと私は思うのです。これはどうなんですか。
  379. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 不況カクテルは通産省が大部分、十七の中で十四は通産省関係ですから、私がお答えしたらいいかと思います。それは日本の場合は、藤田君の言われるように、いま前段のあなたの御質問は過当競争からくる弊害を説かれたわけです。日本のこの市場構造というものはきわめて競争的です、これは。なかなかだから独占とか管理価格というものは、日本の市場構造は諸外国のように私はいけない。そこで不況カルテルの場合も、きわめてやはり不況カルテルをつくる要件というものはきびしい。平均生産費を割っても企業の大半が危殆に瀕するというようなことでなければ、なかなか不況カルテルをつくらない。十四か、全部で十七しかないわけですからね、不況カルテルは。そういうことですから、これはきわめて緊急避難的な行為である。しかも期間も短期間である。長期に不況カルテルをやるべきではない。できるだけ短期間に不況カルテルは終わるべきである、内容、期間等もきわめて厳格な要件があり、しかも消費者、関連産業に対しても不当な不利益を与えないという条件もあります。そういうことですから、不況カルテルを実施した企業を見ておると、その価格が急に高騰したようなことはありません。不況カルテルを結成しても、価格が急激に上昇したというような傾向はあらわれていない。したがって、まあ今後、消費者あるいは関連産業――藤田君の言われるように、不当という認定はなかなかむずかしいということはお説のとおりです。それはやはり公取委員会の厳重な監視を必要とするし、また、われわれ通産省としても、そういう点に対しては、やはり消費者や関連産業への影響というものに対して、これは注目せざるを得ないけれども、いま御指摘のような、不況カルテルからして非常に不当に消費者を圧迫しておるというような、それほどの価格の暴騰というものはあらわれていない、しかも不況カルテルというのは、きわめて厳格な、しかも時的なものであって、いま藤田委員が御心配になっておるような事態ではないということを申し上げておきたい。
  380. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三木さん、非常にうまく言われたようでありますけれども、たとえば、粗鉱に対して一〇%の勧告操短というものを通産省のほうでおやりになっている。この場合、洋紙ですか、あれも通産省がおやりになったと聞いているわけですが、そこで、住金のようなかっこうのものが出てくる。今度は、公取がおやりになろうとする綿紡の中に日清紡と鐘紡の異議が出てくるということなんですね。企業が、それは操短で規制してもらって大企業は持つかしらぬけれども、中小企業は困難な状態でつぶれますよ。そういう中で温存することは企業自身はいいでしょう。値段が下がって……。値段が下がるといったって、そんなに競争してコストをめちゃめちゃに割って、企業が成り立たぬほど割れるわけじゃないんです。上積みの利益を守ってやるような操作というものが、私から考えたら、そうとしか考えられないようなことが通産省の勧告であったり、公取委員会の適用であったりしているわけであります。こういうことの条件は何かと言うたら、さっき私が申し上げたような条件だ。私は、先進国で例を見ない独占禁止法の中で不況カルテルを認めるなんというようなことは、これは、佐藤内閣において民主政治の姿勢を正しておやりになるなら、こういうものは至急に廃止をして、独占行為を完全に禁止していく、こういう民主政治の原則に立たれるのが至当ではなかろうかと私は思う。この二つの条件は、われわれには理解できません。どのようにでも利用できるというぐあいに考えている。だから、姿勢をひとつ正すべきではないか。私はそう思う。総理大臣に伺いたい。
  381. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君からいろいろ批判を受けておりますが、先ほど来申すように、これは不況カルテルを許す場合にも厳格でなければならない。ことに、ただいまのように不況であると、こういう意味から業界を守ることもこれは必要だが、同時にまた、物価問題で非常な悩みを持っておる際でありますから、この二つの条件を兼ね備えると、こういう意味でこれを取り扱っていかなければならぬことだ、これはもう御指摘のとおりだと思います。私は、そういう意味で、消費者保護の立場に立って、そうしてこの産業の維持、こういうことを考えて初めて不況カルテルが許せるのだから、そういう意味の条件は特に厳選をし、そしてきびしく、これを守るべきだと、かように私は思います。ただいまのように、思い切ってこれはやめてしまえ、かように言われましても、法律があってしていることでございます。この点は、何でも不況カルテルに合うからというので甘い取り扱い方をしては、ただいま当面しております物価問題、これの解決にも重大なる影響をもたらす、かように思いますので、厳重にいたしたいと、私はかように思います。
  382. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、先ほど申し上げましたように、生産性が急速度に上がっているのに、その実質賃金は低い。この不況カルテルといいますか、操短勧告といいますか、そういう形のもので業者の利益は守れるが、それがこの物価借上げの根本になっていると、私はそう判断している。今日の物価値上がりの根本は、こういうところから来ていると、私はそう思う。これは大資本ばかりではない。厚生大臣もおいでになりますが、環境衛生の中にも、各産業の中にも、独禁法違反かどうかと疑われるようなかっこうで、この行為が行なわれているわけです。独禁法に違反するかしないか、いろいろすれすれの状況で、その業界でその価格がきめられる。協定価格といいましょうか、自分で同じものを表示して料金を取るといいましょうか、こういうことが平気で行われている。上のほうがやるから、どこでもやろうじゃないかということになってきたら、これは私は始末のつかない問題になると思う。現実に、厚生大臣、どうですか、環境衛生の料金をきめるときに……。  たとえば、今度は半年二百億の環境衛生の金融公庫をおつくりになる。これはけっこうだ。これは大蔵大臣にぜひ実現してもらいたいと、あとから頼む。私も賛成です。陳情というか、私も賛成です。ところが、いまのような条件のもとにこれを実施していいかどうかと言うたら、これは問題だ。これは前提です。標準価格をきめて、そうして衛生設備をよくする、それが目的なんです。だから、この公庫をつくって、りっぱに目的を果たすという目的があるなら、私はまたそういうことは賛成だ。しかし、いまの独占禁止法を骨抜きにして、こういう理由で不況カルテルをこしらえて、上のほうも管理価格や独占価格カルテルを行なって、そしてこれが下のほうまで、また同じようなかっこうで、独占禁止決すれすれというか、こうでどんどんとやられておることが、これも物価値上げの一つの原因だ。だから、上かやっているから、日本の経済を支配している産業がやっているから、われわれもやらないと食っていけないということで、やる。このことをいいとかということを言うわけじゃありませんけれども、こういう悪循環というものが、今日、日本の社会の中に動いているということを心して総理大臣は、ひとつしっかりと見て、上の独占行為を禁止してもらいたい。そうして、あらゆる国民生活の中にある問題をやっぱりヒューマニズム、主権在民の国家体系という精神のもとに直していくということが、総理のかまえとしてなくては、この問題は私は解決しない問題ではなかろうか、私はそう思う。どうですか。
  383. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来私の所信も述べましたが、大体ただいまお話しのような立場でこの問題を取り扱うべきだ、このことは私も藤田君との間にあまり意見の相違を見ないので、たいへんけっこうな考え方だと思っております。
  384. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、いろいろな要因の問題について質問をしてまいりましたが、私はもう一つ、要因の問題で、この際お聞きしておきたいことがあるわけです。これは大蔵大臣になるのか通産大臣になるのか知りませんけれども、いまのアメリカの特需というものが、いまどいういかっこうになっているか、そしてその特需というものが、今日日本で何を製造しているか、そしてぼくは、LSTに非常に関係があると思うのです。ベトナムとの関係が非常にあると思うのですが、幾らぐらいあって、日本の工場で何と何とを製造しているか。たとえば、アメリカの要請にこたえ、このアメリカのアジアにおける物資配給先というのはどことどこか知りませんけれども、LSTは日本の港から出ているというのだから、横浜、神戸から出ているというのでありますから、これは私は、ベトナムの戦争に非常に関係があると思う。これはひとつ聞かしていただきたい。いただきたい。
  385. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 昨年度の特需は三億、内容については政府委員から申し上げます。
  386. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 特需の総額は、三十六年度で三億七千万ドル見当でございましたが、主十七年、三十八年、三十九年度と逐次減ってまいっておりまして、三億六千三百、三億四千、三十九年度は三億一千五百でございます。四十年度四-九月の数字で見ますと一億四千八百万でございまして、大体三値ドルを割りそうな気配を見せております。  内容につきましては、突然の御質問でございましたので、手元に資料を持ってまいっておりませんが、総体のトレンドはそういう傾向でございます。
  387. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 昨年度が三億ですね。そしてことしも大体三億の見当。それで、何と何と何を日本のどの工場で生産をして、どうしているかということがわからぬということですか。いま資料を持っていない……。アウトラインを言ってください。
  388. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 物資別内訳は、本日の御予定にございませんでしたので、ちょうと携帯いたしてまいっておりません。
  389. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは取り寄せていただけますか。きょうは無理ですか。
  390. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 本日は、ちょっと、日曜日でもございまして、全員おりませんので、手元にございませんが、あすでございましたら……。
  391. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは通産省の関係ですね。
  392. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 資料として出します。
  393. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三木さんにお尋ねをしたい。それじゃ資料は、いま私が急に言うたから、なんですが、主としてこの特需というものは、どういうものをやっているのですか。資料によってというのですが、主としてどういうものを、どの工場でどう生産して、どこに運んでいるのか。このくらいのことはわかるでしょう、何ぼ資料がなくても。大臣も御存じでしょう。
  394. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 詳細な内容は、ちょっと記憶いたしておりませんが、大体物資の調達を米軍がやってまいります関係と、それから米軍が駐留いたしておりまして、いろいろ消費を軍隊としてやってまいる関係、大きく申しましてその二つがあったように記憶いたします。
  395. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと待ってください。その物資と消費だと……。それは、あまり資料がないといったって、通産省の係官としては、あまりじゃないの、その返事は。
  396. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 先ほど申し上げましたのは、特需の収支としての内容ではございません。時間的にずれた契約高の内容で、およそ申し上げてまいりますと、物資といたしましては、たとえば三十九年度でございますと、二千二百万ドル程度の契約高になっておりますが、それに対しまして、役務関係が二千五百方ドル、これは一般の輸送サービスといったようなものでございます。そのほかに、駐留軍関係のいろいろな円セールと申しますか、一般に消費物資等を向こうが調達しているという内容のものになっていると思います。若干の時間がございますれば、ちょっと計数を整理いたしますと、御答弁できます。
  397. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも、皆さん御存じで、なかなかおっしゃらないのですがね。どうも私は、ふに落ちないのです。それで私は、はっきり、どういうものをつくっているということは、よく知りませんけれども、ベトナムで使う火薬をつくっているとか、何か弾薬をつくっている。そういうものも物資の中に入っていると、うわさされているわけですから、そういうものはどうなんですか。LSTの輸送で、食物だけを運ぶということは、私はなかろうと思うのです。南のほうは食物は豊富にあるのですから、ですから、それを、日本で何をつくってどうしているかということは、もう少し私はアウトラインでも明らかにしてもらいたい。役務は二千五百万ドルとおっしゃいましたが……。
  398. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま、あとで御報告できると思いますが、ベトナムに関係する武器弾薬のごときものは、この中には人っておりません。輸出はいたしておりません。ベトナム向けの武器は特需の中には入っておりません。これはやっていないのです。
  399. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あとから正確なのを聞かしてください。  そこで、不況対策として、今度、需要の関係のことについてはお尋ねをしたい、総理に。これは藤山長官になるかもわかりませんが。購買力を急速度に上げるとしたら、国民購買力を上げるというのは、私はそれが生産拡大になっていくものでなければ、ただ食って飲んでしまっては、 つまらぬと思うのです。いかに消費を高めても、たとえば高級料理屋やキャバレーに四十億も五千億も消費されているというようなつまらぬことは早う規制してもらいたい。私はそう思うのです。競輪競馬に三千億と言われています。こういうものでいいのかどうかということも疑問の一つだと思う。だから、消費を拡大する、個人消費が、中期経済計画では五〇%になっていますけれども、外国は、六〇%以上どこでも個人消費に充てています。だから、そういう面からして、消費、要するに国民の需要というものが非常に低いから、バランスがくずれているということも、さきの設備拡大との関係で私は言える問題ではなかろうかと、こう思うわけであります。そこで私は、何といっても、いま、住宅の問題、それから耐久消費財の問題ということがよく言われておるわけであります。ですから、その耐久消費財の、たとえば電気製品一つとってみると、扇風機から洗たく機、自動車というぐあいに、だんだん耐久消費財の問題が質的に拡大して上がってくる。その基礎は何かといったら、道路の問題もむろんあるでしょうけれども、私は何としても国民に購買力を持たすこと、こう思うのです。それで、個人消費を高めて、労働者の労働を通じて労働者の生活が高まっていくという、このことは賃金だと私は思います。だから、その問題が一つある。それからもう一つの問題は、この一番底をどう上げていくかという問題は、生活保護法ではないと私は思う。国民の所得保障、社会保障の所得保障だと私は思うわけであります。いま、三万円の給料を取っている人が、じいさん、ばあさんをかかえて、このじいさん、ばあさんに、たとえば所得保障として一万円なら一万円という金が出たら、扇風機から洗たく機になり、冷蔵庫になり、クーラーになり、自動車になっていく。このことの底入れというものがまずされなければ、住宅の問題も自動車の問題も、全体のそのコンビナート的性質から、ずっと一般の日本の経済の回転というものは……。私は、国民の購買力を上げるというのは、賃金の問題や所得を高める問題がありますけれども、その所得保障、働けない収入のない人をかかえているこの家庭の家庭経済を守るというところに、まず購買力を上げる基礎を置かなければならぬのじゃないか。これは、この前もちょっと議論いたしましたから、あまり深くしょうとは思いませんけれども、私は、そのことが真剣に取り組まれていないところに問題があるのではないか。たとえば、ヨーロッパの経済を、御存じのとおり、私も一昨年少し回って見てまいりましたが、生産が上がり、消費が高まって、そうして一番底入れは何かというと、最低賃金ですよ。最低賃金に年金、それから児童手当、こういうものは、どの国も、一九六二年の十二月、EECが統一をいたしました。この所得保障の問題。給料の六割を終生出す、年金として出す。児童手当をフランス方式にするということを統一いたしました。そうして、その働けない人に購買力をつけて、そうして経済の生産と消費のバランスをとっていくところのカンを入れていこう、これは、EFTAの国もその方式をEECに従ってとらざるを得ぬところに追い込まれているわけですね。そこが私は、不況対策の中で、この生産と消費のひずみとおっしゃる中で、一番方を入れなければならぬ問題ではなかろうかと思うのです、社会保障に対して。このことに一番力を入れなければならぬ問題だと思うのです。藤山さん、どうですか、このことについては。
  400. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この社会保障、ことに、いまお話のありましたような身体障害者とか、あるいは老人でありますとか、あるいはまた児童に対する問題、外国では児童手当みたいなものを相当活用しているところがございます。それが消費購買力を上げるということは、これは当然のことでございます。ただしかし、日本の場合におきますと、むろんそれは社会保障的にそういう問題についてわれわれが考えていかなければならぬ。働けない人にできるだけ生活を豊かにさして社会保障をやっていかなければならぬが、同時に、いま日本では、やはり住宅が足りないために、同一家屋の中に何人もの家族が住んでいる、あるいは結婚しても家がないとかというような人も、まだないとは言えないわけなんで、住宅問題というのは、当面の問題としては、相当にやはり消費購買力をつけることではないかと私は思います。ですから、いまの日本でもって、たとえば住宅問題というものをないがしろにしていって、ただ社会保障のほうだけやれば購買力が上がるかというと、必ずしも、それはそうはいかないんじゃないかと思います。ですから、むろん、社会保障というのは、これは当然やらなければならぬことですし、ぜひ進めていかなければならぬ。しかし、購買力という点から言えば、あるいは消費購買力、物資の動きから言えば、やはり住宅問題というものが大きいんじゃないか、こう思います。
  401. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、住宅の問題を否定しているわけじゃない。あなた方が、住宅、自動車、こうおっしゃるから、耐久消費財の……。いま、環境のいい住宅に入ろうと思えば、環境のいい生活を目標にするわけです。ところが、無収入の老人をかかえ、たくさんの子供をかかえて、その住宅、せっかくよい住宅ができたとしても、どんな生活ができるか。底じゃないですか。この底をやるということです。住宅がいま不足しているから、建ててもらわなければならぬ、大いにやってもらわなければならぬ。そういう意味で、資本流・通の中における需要の問題に関係してこれは有効であろう。しかし、その住宅に入る、その住宅もやらなければならぬし、その底にある所得保障をやらなければ、どうして生活ができるかということを考えなければいかぬのじゃないか。社会保障というと、まるで物を与えるというような感じが抜け切ってないと私は思う。それは大間違いだと思う。私はそう思います。いまヨーロッパでやっている社会保障というのは何か。住宅もそうです。耐久消費財の頂点と言われている自動車もそうだ。しかし、何といっても、経済全体のバランスをとるために、それは自動的ですよ。経済の成長が自動的にいって、この経済のバランスをとって景気変動のないカンを入れてね。それが所得保障じゃないですか。その所得保障は、単に物をやるとか、とるとかいう話じゃない。それが、いまヨーロッパでは、国民所得の二〇%も、所得保障、要するに、いわゆる医療保障を含めて社会保障に出している。これがカンなんですよ。経済が近代化していく筋道の中で、このことが行なわれていくわけですよ。幾らお金があるといったって、百着の服は一ぺんに着られぬでしょう。百ぱいの御飯は食べられない。のりをすする人が、一ぱいの御飯、二はいの御飯、三ばい――三ばいも食べられないでしょうが、とにかく豊かな生活をしていくところに、自然に社会的な購買力が出てくる。それが近代社会の姿じゃないですか。その基礎が所得保障だ。まだありますよ。まだあります。後段に話しますけれども、私は所得保障の一つの基本的な問題を言っている。住宅はまことに不足しているから大いにやってもらわなければならぬ。住宅ができた。その中で近代生活をする条件をつくるのは何かというと、所得保障です。佐藤内閣は、このことを理解して、やろうというかまえにならない限り、この経済のひずみは直らない。私はそう思う。皆さんも、私がここで外国のことを言ってみたって、おれのほうがよう知っているわい、こうおっしゃると思うんです。おっしゃるならおっしゃるで、やっぱりきちっと、どの国と日本は貿易をしていくか。世界じゅうの国と貿易しなければなりません。しかし、後進国に対しては、あの一九五〇年当時のアメリカの世論が沸騰した。アメリカのドルを百億ドル外へ出さなければ、アメリカの経済が持たねといわれた。これはともかくとして、軍事政策を通じて、ぴしゃんとアメリカは参ってしまいました、OEECからOECDに移ったのは何です。日本も加盟したじゃないですか。その加盟した主要国、OECDの加盟国の主要国が、私がい言っていることをやっているじゃありませんか。それを忘れてもらったら、いまひずみの問題を言ったって、なかなかこれは解消しない。それはどうでしょう。
  402. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、社会保障を充実していく。ことに、働きたい意思を持っているけれども働けない身体障害者とか老人とか子供とか、そういう者に対する社会保障の、的確な考え方が、まず第一だろうと思います、そういう意味から言えば。ただ、先ほど私が申したのは、消費購買力は、そういうことだけで大きく景気喚起に出るか出ないかという点だとすれば、やはり住宅のほうが出ると申し上げたので、社会保障的な問題がこれからの経済社会において必要であって、ことに、働くことのできない、また働こうと思ってもできないという身体障害者とか、あるいは老人とか児童だとか、そういう者に対する福祉的な施設というものが、まず先に行なわれなければならぬ、それは私も同感でございます。
  403. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと、私はいまこだわるようですがね、それも福祉のうちに入るか知りませんけれどもね、もっとあなたは、日本の経済の計画をされる方なんですから、たとえば経済計画というのは完全雇用であり、そうしてその中においてですよ、国民の消費購買力、生活をどう上げていくか、それに、経済計画を前へ進めていくという計画でなければですね。池田さんの――まあこれは死なれた方のことを言うて私は恐縮ですけれども、ここに三つの卵がある、これを四人で分けるのは、栄養も少ないし、分けにくい、しかしこれを六つにして四人で分けたら、分けよいし、栄養があるでしょうなと言って、あの所得倍増論の宣伝をされた。自民党の皆さん御承知のとおりであると思う。ところが、卵が六つになったら、五つまで一人が食ってしまって、あとの一つを残った三人で食うということになりはせぬかというのが、われわれの主張なんです。具体的な経済計画一つも発表せんと、卵をとにかく六つにするんじゃと、全くそのとおりやってきた。そうでしょう。毎年、国民総生産に対する二〇何%という投資をやってきてだね、そうして五年たった今日、労働者の生活が三十五年よりか、まだマイナスだ、各月の生活がマイナスだということはどうだ。六つだから、まあ半分でしょう。五年だから半分だけれども、まあ半分にして、そうなんですね。そうでしょう。それで、片っ方ではひずみだと言われて、物価値上げで国民は苦しめられて、こういう状態になっているんです。このことを心して経済の政策を立ててもらわないと、この間において、不信行為ばっかしじゃないですか。日本の経済だって、こんな状態になっておるじゃないですか。それをどうすればいいかということを、もっと真剣に経済の計画を立てないと、経済というものは、こんなかっこうになってしまう。  先ほどからも、だんだん議論が発展して、根は設備投資が行き過ぎたということだけ認められた。だけれども、そこには、あなたまかせだ、規制はいたしておりませんというなら、さっき私が二つ例をあげたような結果が、平気で白昼大道を通っている。これは結局、さっきの卵論と同じことになってしまう。だから、経済はりっぱな計画を立てても、物さえこしらえたら自然に国民の生活がついてくるなんて思ったら大間違い。物をこしらえるというなら、この物を消化する条件をつくっていくところに経済政策というものがある。そういうことをするところに、貿易が伸びる条件が出てくる。そのあとのほうの、国民生活の問題を考えないで経済が維持できるか。これはもう労働行政の根本です。社会保障というのは、慈善や恩恵で与えるものではない。だから私は、そういうものの考え方に立ってもらいたいと思うのです。たとえば、六十五以上の人に所得保障を、ここでやるとしたら、どれくらいの金が要るかというて簡単な計算を私はしてみたけれども、三千億くらいあれば六十五歳以上の人に全部その所得保障ができるわけですよね。まあ、フランス方式の児童手当まで私は行けと言いませんよ。行けと言いませんけれども、世界の国で六十二カ国児童手当を出しておる。将来発展する姿はどうかというと、本人と奥さんとが本人の月給で生活をする、それから子供は、社会で育成するという方向に私はいくと思う。いまの段階は、奥さんと子供一人は本人の月給で生活をする、二人目目から先は社会で生活をする、というかっこうになっていく。一律に出している国もありますけれども、一律に出していた国は、今一度EECが踏み切りましたから、いまのようなかっこうになっていくと思う。フランス方式に。最低賃金が一昨年で二万三千五百円。その三万三千五百円の、二人目が二二%、三人目が三三%、四人目、五人目あっても三三%、十歳以上は五%増し、という児童手当が出ているわけです。ですから、五人子供があったら、三万円から出て、児童を養う。お年寄りは、六十五歳以上は年金で生活ができる。  まあ、労働関係についても――これは藤山さんに特に言うのだけれども労働関係を見ても、日本は百八十万いま技術労働者が不足していると、労働大臣はこう言っている。ところが、百八十万不足していると言うけれども、五十五歳になったら定年で全部首切ってしまう。長い二十年三十年の技術経験を持った人を。今日、平均寿命が七十歳というときに、五十五歳ではまだ大いに働ける。それを、みんな首を切ってしまって、そして年金は、六十歳から厚生年金が、ようやく、まあかけて、一万円年金になりましたけれども、これはもっと上げなければどうにもなりませんけれども、そこまでの間はどうして生活するか。街頭にほうり出すのか。そして六十歳から年金を出す。工十五から六十の間はどうして生活するか。これは、昭和三年に労調会というのがつくった、握力とか牽引力とか、そういうものでいいところだけ取った、その人間の十五歳と五十歳。いまは十五歳と五十五歳。いいところだけ取って、そしてあとはほうり出す。残存労働力がある。なぜこれを社会で使用しないか。日本では、そういうところが犠牲になっているのですよ。労働できる人が社会にあふれている。それでいて、新しい低賃金の学卒労働者、技術労働者が百八十万不足していると言ってみたって、これは私は、日本においては、自民党は多数であるから、そういうことを言っておられるでしょうけれども、通るでしょうけれども、これは、外国、世界には通らない話で、やっぱり一つずつあげていくと、たくさん問題があるわけであります。  私は、この社会保障の所得保障というものを、まず基礎的に、児童手当を上げていく。そして三万円の生活に五千円とか一万円を注ぎ込んで、新しい住宅に入れていく。購買力はできますよ。いまの皆さんが期待される耐久消費財にも進んでいくことになります。工場が動くようになりますよ。経済成長も設備投資によって規制するんじゃなしに、いま操業短縮している、これを経済成長と見合っていくということに計画を立て直さなければ、どうにもならぬじゃないかと私は思うんです。  まあ、そういう意味で、藤山さん、私はいろいろなことを申し上げましたけれども、ひとつ見解を聞きたい。総理もひとつ御見解を承りたい。
  404. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この社会保障をやっていくことによって経済が発展する、同町に私は、経済が発展しなければ社会保障も伴っていかないと思うんですけれども、社会保障だけが飛び抜けて走り過ぎてもいけない。やっぱり、経済が発展するのとつれていかなければならぬ。ただ、経済の発展する中でそれを忘れちゃいかぬという御注意、また忘れてはいけないんだから、それを十分に守ってやりなさいということならば、私はそのとおりだと思います。ですから、いきなり、外国でこれこれやっているから、そのまま日本で、すぐその社会保障制度が全部やれるというところまでは、まだ日本の経済力はいってない。ですから、そういう発展をさせる中で、おまえたちは、ひとつ社会保障の問題の位置づけをちゃんと忘れないでやっていくんだ、そしてステップ・バイ・ステップにそれを伸ばしていく――その点については、私そうだと思いますし、また、われわれ今後経済政策をやる上において、それを考えていく。同時に、いま、いろいろとここで議論をするわけじゃないわけですけれども、私は、日本の定年制をしいているということは、年功序列型の賃金の上にやはり定年制というものは考えられているんじゃないかということがあります。ですから、日本のこれからの賃金のあり方というものは、従来のような年功序列でいくのか、あるいはそうではなくて、新しい職種別によってやるのかということは、これはみんなでもって考えていかなければならぬし、また、そういうような点について十分今後研究をして、これは現実に民間の経営者が私は考えていくべき問題だと思います。ですから、一律の定年制がいいとか悪いとか、そういうことでなしに、やはり定年的なものを採用していくことも必要である。同時に、そういうような場合に、年功序列型というものはどういうふうにしていくのだという問題も、あわせ考えながら、よりよき労働環境をつくっていく、あるいは、いわば日本式労働条件をつくっていくということが、労働者のためにも、勤労者のためにも、ほんとうに必要になってくるのじゃないか。だから、外国のものをそのまままねしていいとも思いません。そうかといって、従来のような日本の年功序列のままをやって、そうして定年――あるところの年齢が来れば退職してもらうということが適当であるかどうかということも、この時代になれば、いまのお話のように、優秀な技術を持っておるのだ、しかし年が来れば首を切らなければならぬというようなのが、定年制の一つの反省されるところだと思います。今日のような技術的な進歩が非常に産業の上において必要だ、それは、科学技術の上の発展と同時に、工作技術の上での進歩というものは、やっぱり働いておる人自身が、その訓練によって長い間つくり上げてきたものだ、それはやっぱり私は高く評価されるべきで、それが、ある年齢が来たからといって首切ってしまうということは、日本の経済の上においても、産業自体の上にも、影響があると思います。ですから、これらの問題は、ほんとうに私がそう思いますのは、やはり戦後二十年、ここまで来まして、いろいろな面について、日本のこれからの経済をやっていく上においては、みんなが、ともに考えていく、そうして一つの方向を打ち出しながら、その方向に向かって、改むべきものは改めて、あるいは、従来のいいところを伸ばしていくべきものは伸ばして、いくということで、みんなが考え、努力していかなければならぬ、こう思っております。
  405. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも、藤山さんと議論することになりますけれども、藤山さんね、いまあなたは、いまの賃金条件のもとには定年制だとおっしゃる。あなた、日本の経済の歴史を、あなたのほうが、わしよりか先輩じゃから、よく御存じだと思うのですよ。ね、そうでしょう。徳川幕府は、旗本八万騎というものが監視役として来ました。それがそのまま日本の資本主義経済に移ってきて、管理職だけが賃金が高こうて、管理職の一番下と労務者の一番上とが同じだという労働条件をつくってきているのです。そうでしょう。だから、むちの役割りを管理職にさしてきたわけですよ、日本の資本主議というものは。そういう歴史を持って、ええとこだけ取っていこうという、ものの考え方が、日本の資本主義の歴史的な考え方だ。たとえば、いま、近代化したらよろしいと、あなたおっしゃるけれども、付加価値生産性というものがヨーロッパ並みになっておって、労働分配率が五〇%から五五%、高いところは六〇%になっているのに、日本は三〇%から三二、三%なんですよ、労働分配率。そういう条件で労使関係をつくっておいてだね、それで生産をしたら、近代化するとか、せぬとか、という話が出てくるところに、もっともっと考えてもらわなければならぬ条件が私はあると思う。これは、労働大臣がきょう一緒ですから、労働大臣にも聞きたいけれども労働大臣には、また聞ける機会があると思って、いま聞かないわけですけれども、経済計画を立てる上に、ここが根本なんですよ。この根本の問題を、やっぱし経済計画を立てるときに考えてもらわなければ、日本の経済はノーマルには進まないと私は思うのです。  もう一つの要因は、潜在失業ですよ、きのうからきょうにかけて一十万の不払いがあるという議論がありました。この産業、工業が発達しているという国で、潜在失業が数百万いるということは、これはどうか。このことなんです。このことも、私はもっと明らかにしてもらわなければならぬのですね。なるほど、総理府統計による労働調査による完全失業者と称するものは、三十万か四十万ありますね。四十万人でございます。しかし四十時間労働制が問題にされている今日、世界の趨勢の中でですよ、基準法で四十八時間ときめて、農民を含めて一週間に四十八時間以上働いている人が、政府の統計を見たって、二千万人から二千五百万人おるということですよ。これは何を物語っているか。六十時間以上働いている人が千万から千二、三百万おる今日、このことがですね、問題じゃありませんか。だから、それだけ長く働いて生活を立てて、収入のない者が潜在失業におちいって生活にあえいでいる。このことが物語っているのは何ですか。これは、何といっても、近代国家と言われるなら、日本が先進国並みに工業で発達してきた国と言うなら、同じように、人にかわって機械が物を生産する、その機械をつくる能力を日本人は持っているのですよ。どんどんいい機械ができる。そんなら、労働時間を短くして、人生を楽しむという道を講じるのがあたりまえじゃないですか。働く能力のある人は工場に入れて、やはり労働力を通じて社会に貢献するという道を開いてもらわなきゃいかぬのじゃないですか。このことをやらない限り、いま、藤山さんのさっき言われたことは実現しないんじゃないですか。これもやっぱりひずみの問題ですよ。経済のひずみの問題です。これを考えてもらわなきゃいけないんじゃないですか。これはどうです。これは労働大臣にひとつ一ぺん意見を言ってくださいよ。
  406. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、いろいろ改めなければならぬことがあることは私も考えております。そして経済計画を立てる上においても、お話のように前近代性というようなものがまだ完全に必ずしも払拭されているとは思いません。ですから、そういう面からも考えていけば、今後経済計画の上にそういう問題もあわせて考えていかなきゃならぬということは、藤田君と同じ考えだろうと思います。
  407. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そう言われてみても、それは実行の起動のプランの上に乗せてもらわなければいかぬ。あなたはいま企画庁の長官ですよ。総理の全幅の、信頼によって日本の経済を立て直す、あなたが計画の中心柱なんですよ。その中心柱におられるあなたが腹をきめてやろうということでなければ、これはできない相談ですよ。総理がさつきからおっしゃっているのです。だからあなたが、それをやろうというかまえがなければ、このことは私はできない相談だ、こう思うのです。まあいろいろ議論してまいりましたが、どうです、かつて、あなたは私に労働力の問題はまあ楽観ムードと、大蔵大臣は、秋になったら繁栄をもたらすと、こうおっしゃった。これは先ほど遺憾の意を表されたんだから、大蔵大臣には言いませんけれども、企画庁長官労働大臣はだいじょうぶだと、こうおっしゃった。それがいま、あなたのほうからもらった雇用統計を見てみると、一〇六%から一〇〇%に全産業で下がり、製造業では雇用の伸びはマイナス五%か六%になってきている。これはいま、これとつけ加えて小林議員が少し議論をされました帰休制の問題、不安定な状態というものが社会に充満しているのです、あらゆるところに。これも重要な問題じゃありませんか。あなた、八月の国会でどんとまかしておけと言わぬばかりにおっしゃって、それがここへきたらこんなになってしもうた。これはどうなんですか。
  408. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) あまり胸をたたいて、まかしておけとは申さなかったつもりでございますけれども――まあ暮れがきて景気がくるというところまで私申したわけじゃない。ただ底をついて、立ち直りの傾向に進んでいくのが暮れぐらいだろうということを申したのでございますが、どんと胸をたたいて、だいじょうぶだとまでは言い切ったわけではございません。
  409. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働大臣、どうですか。
  410. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 私の記憶が間違いなければ、今年に入りましてから雇用の増加の傾向が鈍化してまいっている、そこでこのままの状況でいくならば、これは昨日も申したかと思いますが、雇用面で、あるいは賃金の面で経営者のほうが相当シビアになるのじゃなかろうか。が、政府として景気の回復策を非常にやっていることでございますから、それが相当の効果をおさめますならば、この前お尋ねを受けた時点におきましては、いまがいま、そう心配というほどの状況ではない、こういり趣旨でこの前申し上げたように記憶しておるわけであります。確かに、御指摘のように最近になりまして、特に製造業等におきましては雇用の状況が相当悪くなる傾向になってまいっております。一方サービス業等におきましては増勢でありまして、全体としてはまだ常用雇用の指数につきましては、絶対数が減るという、こういうところまでは統計上は一応なっておらぬ状況でございます。
  411. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だかは私は、もっと具体的に、雇用の配置はまたあとで聞きますが、今日の殺到率が幾らになっておるか。殺到率というのは求人と求職の比率なんですよ。それで、これが幾らになっているかというようなことが、ここに資料が出ているかと思ったら、出ていないから、これはちょっと言っておるのですけれども、地域的に非常に偏在しております。太平洋岸ベルト地帯につきましては殺到率は低うございますが、九州の鹿児島あたりは七くらい。それが中高年になってくると、ものすごく、十幾つから二十幾つになっておる、これが日本の雇用構造だと思う。そこで私は、ここのところで一言聞いておきたいのは、この前、大蔵大臣それから企画庁長官、通産大高、三人と私は約束をした。それは何かというと、その殺到率の高いところに日本の産業工場を配置する、労働省の産業別地域制労働配置計画という計画があっても予算の裏づけがないから、これができない。そこで、八月の国会で、その予算の裏づけはどうですか。――今年の十一月からいたします、これは自治省との関係もあるしいたしますとおっしゃった。それがどうなっているか。まず労働大臣から経過を聞いて、そうして、大蔵大臣、企画庁長官、通産大臣から聞きたい。
  412. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 御指摘の地域別産業別の雇用計画につきましては、御承知のとおり、さきに当省の――労働省の試案を発表したわけでございますが、これにつきましては、なお検討すべき余地も多々あるわけでございます。そこで御承知のとおり、総理府に設けられております雇用審議会におきましても先般答申がございまして、この地域別あるいは産業別の長期的な雇用計画というも野を設定する必要がある、こういう点も含みます答申をいただいたわけでございます。そこで、労働省といたしましては、これを受けて、この産業別、地域別の雇用計画というもの、それの策定も含みますところの、長期的視点に立った雇用対策法と称すべきもの――仮称でございますが、そういうものをこの国会にぜひ提出いたしまして、御審議をわずらわしたい、かように考えておるところでございます。
  413. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは、大蔵省は工場配置の予算的措置を講じたということですか。工場配置の予算的措置を大蔵省は講じたと――この前の約束なんですから、大蔵大臣からちょっと聞いておきたい。
  414. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話は、まことにごもっともですが、まだ労働大臣から具体的な相談を受ける段階に至っておりません。
  415. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはけしからぬ話で、ぼくはそういうことじゃ困る。労働省が産業別、地域別労働力配置計画というものを出して、これは配置といったって――私は、ほんとうに実際の面に立って申し上げたのです。工場配置をするのだというのだから、何ぼ紙を出したところでいかないので、これには殺到率の高いところに工場を分散する。それには国の補助、援助がなくてはできないし、自治省に対する援助がなければできない。これは予算措置が要るのだ。これをひとつできますかといったら、それじゃ十一月からやりましょうと、あなたは答え、たしか藤山さんも通産大臣も答えられた。それなのに、ここでいま時分まだ相談がないと、労働省もそんな相談をしてないとはけしからぬ話だ。ここで約束されたことがどうなるのですか。それは不況の問題であり、それから、ひずみ是正であり、それからいまの偏在していり、殺到率の高い、失業者救済の――家を持ちながら、そこで働ける状況をつくるというのが筋道じゃないのかな。そのことを労働省自身が先頭になって出しておいて、予算化の問題をここで約束しておいて、いま知らぬというのはなっておらぬ。これは、総理大臣、よく聞いておいて下さいよ。
  416. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 御指摘の計画を作成するための事務費等につきましては、四十一年度予算の概算要求においても、もちろんいたしているわけでございます。
  417. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 十一月からやると三人がお答えになったのですけれども、残念ながら来年度の予算というのだから、これはいま、もう十二月になってしまったのだから、どうにもならぬが、これを至急にひとつやってもらわなければならない。しかし、いま経済の要素、概念だけを言ったのですから、ここでひとつつけ加えて、建設大臣に――これはちょっと別な問題で恐縮ですが、あと、進まなければならぬから、建設大臣にひとつ聞いておきたい。これは運輸大臣も関係があると思うのですけれども、私は、名神の高速道路というものは何を目的につくられたか、これは総理も聞いておいてもらいたい。何を目的につくられたかということを聞きたい。一千億に近い費用を使って、百九十何キロ――二百キロに近い、神戸から名古屋までの、あのりっぱな道路をつくった、これは誇るべき、りっぱな道路だと私は思う。その道路をつくって、その道路がレジャー道路になっている。産業活動の中心になる阪神と名古屋、東海道を結ぶその交通道路、貨物輸送その他の産業道路として活躍しなければならぬ道路、その道路に貨物自動車――荷物を運ぶ自動車が一つも乗っていない。そして日曜日はバスと自家用車が満員になっている。これに一千億の金を国がかけた、これはどういうことなんです。それで、京都市内では、あの混雑した道路が整備してないところに十トントラックが詰まって、狭いところを迂回して通っている。私は、まあそれができた年や一年や二年は、それはやむを得ないと思っておったけれども、今日、もう何年たつ――これは何に原因があるか、料金が高いから。採算が合わぬとか何とかいう理屈がつくんでしょうけれども、国策としてつくった道路、産業を守るという道路なら、あれは公有、国有とも一般に開放される、アウトバーンのような道路になるわけでしょうから、なぜもっと期限を延期するとかなんとかして、産業発展のために使わないか、あれは遊覧道路じゃない。このことをひとつ建設大臣から……。
  418. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お説のとおり名神高速道路約百九十キロは千百億余りで建設いたしました。これは何のためだということは御説明を要しないと思います。これだけで道路が完成したとは、私思っておりません。これは将来の日本の道路交通の輸送網をつくりたいという第一期工事であります。ただ、御承知のとおりに有料道路でありますから、これを年六分ということで二十五年間でペイするという計画で自動車交通――トラックあるいは自家用車、あるいはバス、そういうものを想定してやっておりますが、お説のとおりに想定のとおり車が乗っておりません。そこで、これにはまあ弁解がましいですけれども、いまつくっております東京――名古屋間の道路をつなぐ、これは昭和回十二年度で完成する予定でやっておりますが、それをつなぐ。そういうことになると、長距離輸送がふえるであろう、そういう予想が立つと思います。それと同時に、初めてのやや長距離高速道路でありますから、まだ日本では高速輸送のトラックはそれに応ずる態勢ができておらないという欠点もあると思います。ところが、実情を見ますと、いまその区間区間を見てみますと、区間区間の使用台数が相当違っておる。必ずしも長距離の車だけがあれに乗っているという実情ではございません。一方において御承知のとおりいわゆる一級国道、もとの一級国道一号線などは一万五千台から二万台の車でふくそうしておる。この状況を私どもはいま検討しているわけであります。そこで、区間区間にどのくらいの、自動車が一体、動いているのかということを検討しておりますが、私はざっくばらんに申し上げて、こういう道路は将来日本全国至るところに貫通するようにならなければ本物でありませんけれども、いまお話のように一千億以上の金をかけた、しかも、りっぱな道路があいておるわけであります。あいておるわけでありますから、私は必ずしも従来の、そろばんをはじくだけの道路政策では、適当ではないのではないかと思っております。今日、経済の能率向上のために、物価問題その他がありますから、やはり、このあいている道路に相当数の車を乗せる必要がある。そのためには、自動車の通行料が、トラックにいたしまして二千数百円でありますけれども、そのためによるものであるかどうか、いろいろ検討いたしております。しかし、そればかりでもないのじゃないか、短区間でもこれを乗せる必要がある。それならば償還期限を延長する――せっかくある道路でありますから、短い区間でありますけれども、これをやはり短いなら短いなりにこれを活用する必要がある。そういうことで、これをいま検討しておりますから、もうしばらくお待ちを願いたいと思います。
  419. 羽生三七

    ○羽生三七君 開運して。いまの問題は、これは総理もぜひ聞いておいて――建設大臣は百も御承知のことです。というのは、日本のそういう道路の使用料が大体世界の平均の二倍ないし三倍であります。最も交通のふくそうするところですら、いま藤田委員の指摘したとおり。いよいよ今度、私どもに関係のある中央道とか北陸道とか、いろいろできるのですね。最もふくそうしたところすらペイしないのですから、ましてや、ふくそうしない、閑散な地点では一体どうなるか。そこで建設省は、それらの各自動車道全部を一本の法律にまとめて、そして料金はプール計算にして、それでその償還期限等をもっと延長して、実用に供する計画を立てたらどうかということをわれわれも考え、建設省も考えておると思うのです。これはまじめに考えていただかぬと、幾らつくったって自動車は大して通らないし、もとの国道をですね、一ぱい自動車が押し合いへし合い通っている、これが実情ですね。だから、この点は十分御検討をいただきたいと思う。
  420. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ聞いてから、総理考えを聞きたいのですが、いま建設大臣がおっしゃったとおりですね、鈴鹿峠でちょっと雪が降ったら千台二千台と瞬間にとまるというほど一号線を走ってそれで名神国道はあいている。これはもったいない話ですよ。だから、いま建設大臣は料金を下げるとか、ほんとうの産業道路にしたいと、こうおっしゃっている。私はそうしてもらいたい。これはひとつ総理も決断をもってですね、一千百億からの国費を使った、りっぱな道路ですから、これを産業道路として、みなが使うようにしてもらいたい。これはひとつ総理の裁断をお願いしたい。ちょっと御所見を……。
  421. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいま建設大臣のお答えしたとおり、いろいろ建設省でも検討しておるそうですから、これが出てまいりましたら私は裁断する、こういうふうに御了承願います。
  422. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、いま経済の関係についての問題点をこうあげてきたんです。これから具体的に、この社会保障の内容について御質問をしたいわけでございます。  そこで、今度の補正予算になりました国保の問題なのでありますが、この国保を見てみますと、ことしの四十年度だけを――まあこれは序の口なんでね、そうしてその国保の料金を見てみますと、去年とことしで、その料金の上がったのが――今度対策をお立てになりましたけれども、国保の料金が六割上がった。ことしの額が八百億です、六割上がったわけですから。四百五十億か五百億近く二年間で料金を上げて、それで一般会計から百億円もことしは出している。こういう現状なんです。私は、このことについてはこれは日を改めて、あすにでもひとつ続けてやらしてもらいたいと思うのです。で、これはぜひ明らかにしておかなきゃなりませんから質問しますが、きょうのところは何かこの辺であすに送れということですから、きょうはこれでやめますけれども、この根本的な問題に触れていませんからね、あした本論に入ります。そういう意味できょうの質問はこれで一応やめておきます。
  423. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 藤田君の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次会は明日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後十時三十分散会