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1965-12-25 第51回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十五日(土曜日)    午前十一時七分開会     —————————————    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      藤田  進君     北村  暢君      光村 甚助君     鈴木  強君  十二月二十四日     辞任         補欠選任      瓜生  清君     高山 恒雄君  十二月二十五日     辞任         補欠選任      笹森 順造君     大谷 贇雄君      前田佳都男君     北畠 教真君      小平 芳平君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 二木 謙吾君                 吉江 勝保君                 米田 正文君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 小山邦太郎君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 林田 正治君                 日高 広為君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 横山 フク君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中 寿美君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 藤田藤太郎君                 村田 秀三君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 春日 正一君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  上原 正吉君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     瀧本 忠男君        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省証券局長  松井 直行君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        文部政務次官   中野 文門君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省初等中等  齋藤  正君        教育局長        文部省大学学術        局長       杉江  清君        通商産業省通商  渡邊彌榮司君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        中小企業庁長官  山本 重信君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        自治省行政局長  佐久間 彊君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)(内閣  提出衆議院送付) ○昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)(内  閣提出衆議院送付) ○昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2号)  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  十二月二十二日、藤田進君、光村甚助君が辞任され、その補欠として北村暢君、鈴木強君が選任され、昨日、瓜生清君が辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任され、本日、小平芳平君が辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、理事補欠互選についておはかりいたします。  ただいまの委員異動に伴い、理事が欠員になっておりますので、その補欠互選を行ないます。互選は投票の方法によらずして、委員長にその指名を御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。それでは理事小林武君を指名いたします。     —————————————
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)、昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2号)  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行質疑に入ります前に、議事進行に関連しまして、委員長にこの際要望をいたしておきたいと思います。それは、今回の補正は御承知のとおりたいへん重要な内容を持っておるものでありまして、われわれとしても十分この問題について審議をしなきゃならないというふうに考えておるわけです。ただ、審議を十分するといいましても、無限にやるわけにはもちろんいかないわけでありますが、従来の慣例からいいましても、衆議院でかけた日数は、参議院も使うという慣例になっておるわけであります。それからもう一つは、今回の補正を扱うにつきまして、与野党の理事の間におきまして、衆議院と同じ日数をとる、こういう事前の約束も私たちはいたしておるわけであります。そういう立場から言いますと、どうしてもわれわれとしては三日半この審議のためにひとつ全力を尽くしてやりたいというふうに考えておるわけですが、しかし、なかなかその点についての自民党側の別な意見等も出まして、残念ながら日程というものがきまらないままでこの審議を始めなければならぬ。私たいへん重要な補正予算であるだけに、遺憾であると考えております。中身をこまかくは一々言いませんが、そういう日程のきまらないままの予算審議ということになりますと、ともするといろいろ紛糾等も起こりかねないわけでありまするが、委員長としては、あくまでも自民党委員長じゃなしに、国会委員長だという立場に立って、公平なひとつ議事進行を要請しておきたいと思います。そういう立場でこの際委員長から、どういう一体気持でこれからの補正審議を進めるか、一言ひとつ決意のほどを明らかにしておいてもらいたいと思うわけです。
  7. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) お答えいたします。  予算案参議院に非常に押し詰まって参りましたことは、まことに私も遺憾に存じております。本補正予算につきましては、十分審議をすべきものと私も考えております。なおいままでのところ理事打合会におきまして日程が決定していないことは、私自身としては非常に残念に思っております。どうか、私としてはでき得る限り公平に運んでいきたいと存じまするので、皆様方、特に理事の方々は、円満な打開策を講じていただくように御希望申し上げまして、私のお答えといたします。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 いまおっしゃったような気持ちで、ひとつ委員長としては公平に進めてもらいたいと思います。あくまでもこれは政府あるいは衆議院の事情から参議院審議日程の制約と、こういう問題が出てきておるわけでありまして、参議院自体立場から考えますと、絶対にこれは遠慮する必要のない問題である、こういうふうに私たち考えておるわけです。皆さんもおそらく自民党立場を離れて考えれば、私の御意見に御同意願えると思う。どうか再度お答えは要りませんが、いま委員長お答えになったような気持ちでひとつ公平な審議を要請いたしまして、私の議事進行に関する発言は、これで一応とめておきます。
  9. 平島敏夫

  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、質問に入る前に、委員長要求いたしたい点があるわけです。それはこの本予算案提出形式手続が不備であるという点であります。したがって委員長からまず政府に、この正式な手続形式を整えてこの予算提出するように注意をうながしていただきたい。すなわち具体的に申しますれば、この予算の中で一番重要な点は、二千五百九十億の歳入欠陥を補てんする、そのための赤字公債発行の問題が一番大きな問題であると思います。この赤字公債は、政府がやはり今国会提出しております特例法に基づいて提出しているわけなんです。ところが、この特例法によりますと、償還計画政府が出さなければならないことになっています。償還計画は出ておりません。すなわち、この特例法の第二条の第二項によりますれば、「政府は、前項の議決を経ようとするときは、同項の公債償還計画国会提出しなければならない。」となっております。ところが、償還計画は、赤字公債償還計画は出ておりませんので、償還計画政府が出すように、至急出すように、そうしてその提出が行なわれましたならば、直ちにまあ審議に入ると思います。われわれはですね、この財政法あるいは憲法で定められたこの財政予算制度、いわゆる民主主義的な制度、こういうものを、またその手続を無視して審議するわけにいきませんし、最近ややもすればその財政民主主義の原則、手続が無視される傾向にありますので、特にこの際ですね、この赤字公債発行財政法四条特例措置に関連しまして、政府自身がですね、この特例措置に基づいて償還計画出してない。そういうことはこの予算の案を提出するにあたりまして、重大なこれは私は手続の不備であると思いますので、委員長からいつまでにこの償還計画を出されるのか、要求をしていただきたいと思います。
  11. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまの木村君の御意見に対して、政府当局からの御意見を伺います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債発行するにあたって、償還計画を明らかにすることは、これはお話しのとおり財政法にきめられておるわけです。そこで、この予算書の五十五ページごらん願いたいと思います。そこに償還計画表というものを添付いたしておるわけであります。実際上の償還に関しましては二千五百九十億円という臨時的な、またそう多額なものではないので、実際問題はそうないと思うのですが、形式といたしましては、御説のとおりのものを整えてありますので、ごらん願いたいと思います。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も、政府がこの第三次の四十年度一般会計補正予算、この中で四十年度一般会計補正予算参照書添附とございますが、その中で、昭和四十年度公債を、予定する公債償還計画表というのが出ていることは承知しておるのです。これは表でありまして、これはたった一行ですよ。この中身昭和四十七年度に二千五百九十億ですね、この償還するその額がただ掲げてあるだけであります。これが一体償還計画と言えますか。財政法四条によりますと、公共事業費その他財政法四条で認められている公債発行するときには、その償還計画を定めて国会承認を得なければならないということになっております。で、今回のこの赤字公債は、財政法四条にいうところのその公共事業費のための公債発行ではないわけです。したがって四十一年度からの財政法四条に基づく公債償還計画、こういうものを出し国会承認を得なければなりません。今回の場合は特例措置ですね。特例措置、すなわち赤字公債発行についての公債償還計画です。そこでこの特例法を設けまして、それで赤字公債発行できるようにするわけであります。その特例法にもちゃんと、この財政法四条にのっとりまして、赤字公債についてもその赤字公債の二千五百九十億の償還計画国会出し承認を求めなければならないということになっているわけですよ。これがどうして償還計画と言えますか。償還の表でしょう。昭和四十七年に二千五百九十億償還する額であります。額を掲げただけで、どうして償還計画と言えますか。昭和四十七年まで期限が七カ年、四十七年なら当然二千五百九十億返すのはあたりまえじゃありませんか。償還の時期がもうきまっている。そのときに二千五百九十億返す。どうして返すか。そのときに一ぺんに返せませんから、財政上の都合であるいは借りかえという問題も起きるでしょう。あるいは本年度からあるいは歳出の一部で積み立てていくのか。あるいは減債基金的にやっていくのか。現在特別会計あるいは一般会計に、公債償還についての積み立ての制度はあります。一般会計については前々年度剰余金の五分の一、これは前に二分の一であったのを五分の一にこれを減らしてしまった。朝令暮改でまたこれはふやさなければならなくなってくると思います。また特別会計におきましても、これは一万分の百十六の三分の一ですか、そういう、前年度公債の額の一万分の百十六の三分の一、これを国債整理基金特別会計に繰り入れるということになっております。しかし、これは公債一般についての全体の償還基金であります。ところが財政法によれば、またこの特例法によれば、今回発行する赤字公債についての償還計画を出さなければならないのですよ。この銘柄についての償還計画を出さなければならないのです。これは大蔵大臣御存じでしょう。そのとおりですよ。その銘柄についてですよ。一般的な償還計画ではありません。それをどうして償還していくか、その財源はどういうようにするか。あるいは借りかえの問題も起こらないとも限りません。ところが総理大臣は、前に衆議院で、赤字公債は絶対にもう今後出さないと言われているのですから、借りかえはできないことになると思うのです。おそらく借りかえはできないのじゃないかと思います、そうしたらまた赤字公債を出すことになりますから。では借りかえはしないと、そう了解していいのですか。借りかえをしない。そうしたらどうやってこれを償還していくのか。その計画を示さなければ審議に入れませんよ。こんなものは計画じゃありませんよ。これは国会を侮辱するものですよ、こんなものを計画と言って。こんなものは常識からいって、これはただ昭和四十七年に償還期限が来たときに二千五百九十億償還する、その金額を掲げるだけでどうして償還計画と言えますか。そんなばかな話はないですよ、絶対に。したがって、この償還計画について政府は十分にですよ、昭和二十七年か八年かに赤字公債出したことがありますね。減税公債、そのときもやはりこういう形式ですよ。そのときにも問題になったはずですよ。これについてはどういう方針でいくのか、はっきりして、そうしてこの国会償還計画承認を求めなければ発行できないのですから、それは財政特例法自体違反になってしまう。特例法がかりに通っても、まあ通らなければ問題にならぬわけですからね、これ。通った場合にもこれは違反ですよ。ですから至急、至急政府——もう私はここで待っていてもよろしいんですから、おそらくそういうことは相談された、相談されなければならぬはずであります。お出しになって、そうしてお出しになれば、ここでいわゆる形式手続としては財政法違反しないことになりますから、私は直ちに本論の質疑に入るにやぶさかではございません。これは、けじめははっきりすべきですから。こういうことをいいかげんにしてはいけないと思う。ことに今後巨額の公債発行されるのであります。そういう際に、政府としたってこの公債に対する国民信頼感、そういうものをやはり高めなければならないんでしょう。そういう場合に償還計画をいうものがはっきりしていなければいけないんですよ。ですから私は最初に、一番最初に、どうしてもしっかりこの形式手続を整えて予算を出す。そうして審議に入らなければいけないのだ。そういう考えから、むしろ逆に政府を擁護するような形になるかもしれませんよ、公債信頼度を高める——われわれ赤字公債は反対でありますけれども。そういう意味からも至急お出しを願いたい。委員長も私の発言をお聞きになりまして、これは私はむちゃな要求じゃないと思うのですよ。良識に基づいて委員長は判断され、委員長予算委員長としましてこの予算制度形式手続、こういうものはこれは正しくしなければなりませんね。守らなければなりませんよ。そういう意味で、委員長からも、至急政府に出すように御要求願いたいと思う。私、いまここで待っておりますから、お取り計らい願います。
  14. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 大臣からのお話でありまするが、私から法律等のことでございますからお答え申し上げます。  お説のとおり、償還計画国会提出するよう財政法四条第二項は定めてございます。今回の歳入補てん公債財政特例法につきましても、同様の規定を置いたわけでございます。先ほど木村委員がおっしゃいましたように、過去の例、またその他の特別会計等において借り入れ金等をいたしておりますにつきましても、償還計画表というものを国会に当初予算の際に出しております。第四条第二項ないしは今回の財政特別措置法、こういうものにおける償還計画国会提出するという規定をどう読むかという問題でございまして、これは何か一定の減債制度なり、たとえば三年前からこれだけずつ積んで返すというふうなことを、はっきりそこに書いて出すという内容であるか、それともそういうのはさっき御指摘になりましたように財政法六条の剰余金処理あるいはまた国債整理基金特別会計法規定による処理のしかた、あるいはさらに別途そのときの財政情勢に応じてしかるべく繰り入れて、償還に遺憾なきを期さなければならないというふうな規定、そういうもの全体としてその償還のあり方を考えるということを、それを裏に置いて償還の見通しというものを何年にはこういう償還がくる、何年にはこういう償還がくると、こういうようなことを国会の御審議の参考にするというので出すか、いろいろ率直に言って、財政法四条の二項の読み方については論議もあったわけであります。それでどうもやはり個別的な、一つ一つ発行公債について個別的に減債計画と申しますか、償還計画というものを立てる考え方ではなくて、公債発行限度について国会議決を求める場合に、償還も大体こういうときに償還が来る、そういうときにこれは償還されるべきものだと、そういう考え方で見ていって全体ではいいんではないか、そういうことで今回の財政法特例をお願いしております第二項の書き方も、いまの財政法四条と同じ書き方をいたしましたが、過去の例にならいまして、個々にその償還計画を書くということでなしに、こういう形で償還計画表をお出しし、詳細はまた、償還計画内容の御審議をお願いするという形にしたわけでございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはだいぶ苦しい説明ですが、財政法二十八条によりましても、この公債の現在高、状況、それから、前々年度、前年度当該年度状況につきまして、また、この償還計画についてこれを国会提出しなきゃならないことになっております。これはもう発行してしまいました公債についてであろうと思うんですね、そうでしょう。ところが、財政法四条の二項、それから、特に、さっき不用意に赤字公債と言われましたが、実際赤字公債です。  二千五百九十億の特例措置ですよ。それの第二条の二項にいう償還計画出し国会承認を求めなければならないというのは、財政法二十八条にいうところの償還計画というものと違うと思うんですよ。まず、この公債発行承認国会に求めるときに、それと同時に償還計画承認を求めなきゃならぬということなんですよ。そうなんですよ。ですから、償還計画がこの赤字公債発行予算案と同時に出てこなければ、赤字公債発行だけわれわれが予算委員会で認めても、それは財政法違反するんであって、われわれは認めちゃいけないんだ。そんなことをしたら、われわれがこの財政法をないがしろにし、国会としてはとてもできませんよ。ですから、どうしてもこれは、この手続はちゃんとして、そのけじめをつけて審議要求されにゃいけません。ですから、至急ですよ、至急、この償還計画をお出しになったらどうですか。いま主計局長言われましたが、この読み方について問題であったと言われるんですよ、いろいろ議論されたんだと思うんですよ、当然されなきゃならぬはずです。それならば、どういう結論になって——われわれが賛成するかしないかはわかりませんが、一応、政府としてあいまいでなく、公債は今後の信用問題にも関するんであります。国内の信頼感ばかりでなく、国際的な信用の問題にも関係するんであります。ですから、償還計画というものは、これは大切なものですよ、公債発行する場合ですね。これに対してあいまいじゃいけないんだ、だからその読み方が問題になったというんだけれども、その結果、結論つけないであいまいのままで出しちゃったんです。もっと煮詰めて十分に研究をし、専門の学者もおったでありましょう、学識経験者にも十分意見を徴し、そうして、政府としてはっきりとした結論出して、そうしてこの償還計画国会承認を求めるために出してくるならば、そこで賛成、反対の意見の違いがあっても、それは手続としては正しいから、そのこと自体をわれわれは非難することはできない。それは正しいんです。その前段の一番大切な点が欠けてるんですよ。読み方が問題になってるんじゃありませんか。当然、常識的に考えたって問題になるんですよ。こんな、ただ最後の償還期間が来る、その日に償還するなんという、そんなことでですね、小学校の子供だって、償還計画ではないということになると思う。こんなことを——学校の先生が償還計画についてしるせとそういう問題出したときに、償還する最後の期日、償還するその期日を掲げるのが償還計画だなんて答案書いて、それで及第点与えますか。私なら落第です。おかしいと思うんだ。もっとけじめをはっきりしていただきたい。とにかく償還計画を出すのか、出さないのか。出さなければ、これは審議に入れませんよ。
  16. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 償還計画の最終的なただいまの段階における政府としての考え方は、現在の財政法あるいはまた、今回お願いしております特別措置法に基づいて、国会提出いたします形式としては、こういう形ということで決定いたしております。そこで、お説のように私は率直に申し上げましたので、財政法四条二項の読み方というものについての議論があるということは申し上げました。財政制度審議会におきましても、いま先生御指摘のように、いろいろな先生方の御意見も伺いました。で、目下、減債基金制度でありますとか、あるいは剰余金処理の問題でありますとか、それに関連する、その他国債発行に伴う財政法上の問題というものは、別途われわれとしても時間をいただいて検討しているわけでございますが、ただいまの段階における法律の解釈並びに国会に対する扱いといたしましては、今回提出いたしました償還計画表をもって御了承をいただけるという考えでおります。  それから、なお具体的に、ある金をいつ、どう積むのだというふうな問題もございますが、たとえばわれわれといたしましては、先ほど御指摘になりましたような剰余金の問題あるいは国債整理基金規定の問題、特に国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律の第二項におきましては、「国債整理基金状況一般会計の負担に属する国債の償還見込みその他の事情を勘案し、将来における同基金による国債の償還に支障を生じないようにしなければならない。」という一般的な規定もございますが、やはりそのときどきの財政状況並びに経済の状況、そういうものに応じてしかるべき国債償還の措置をとるようにしろということも書いてございます。そういう全体としての現存の法律の上に踏まえまして、今後の償還計画というものは具体的に考えられるものだというふうに考えられます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ついでに伺っておきますが、昭和四十一年度以降発行される六千億ないし七千億ですか、また、昭和四十二年、三年、ずっとかなり巨額の公債が長期に発行されるような方針になっておるようでありますが、そういう場合にも、やはりこういう償還計画というものは、こういう簡単な償還計画表、こういうものでまかなっていくつもりなんですか。
  18. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 償還計画表書き方といたしましては、具体的に、たとえば五年据え置き、あと十年間に均等償還するというふうな考え方をとった場合には、そんなような書き方になりますし、別にそういうことを具体的にきめずに、十年なら十年先に期限が来るような内容のものを出すようなときは、いままでの例に従いましてこういう書き方になっている。それでは、具体的な個々の状況によってどういう問題になるのかということは、国会における後日の御審議に待つことになると思います。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはね、私は形式論を言っているのではなくて、償還計画というものがなぜ国会承認を求めなければならないと規定したかですね、その精神は一体どこにあるか。それは、結局、減債基金制度をやれば、一番はっきりするでしょう。毎年これだけのものを積み立てておく、だから公債を待っている国民が、なるほどこうやって償還のお金を政府はこう積み立てていくんだから心配ないんだと、結局その償還についての不安感をなくすことなんでしょう。やはり、信頼性を高めるために、そういうことを、償還計画というものを必要としているわけです。これはもう常識から言ってそうでしょう。それならば、それに合うようなやはり償還計画というものをつくって、国会承認を求めるべきではないか。これにはいろいろ読み方に問題があると思いますけれども、その結論として、このこうした簡単な一行の表を出せばいいという結論になっていますけれども、それはそうじゃないのですよ。われわれから見れば、いろいろ研究したけれどもいい知恵はなかったからしょうがないからこういう形にしたのだ。それは前例がいままで前にあったからですよ。それは実際しょうがないからこうやって出しておこうと、国会でもどうせわからないやつもいるだろうから黙って問題にならないかもしれないと、それではカンニングでもしてやっちゃえばいいというような気持ちで出されたとは思いませんけれども、しかし問題が煮詰まらなかった、正直なところ煮詰まらなかったと思うのです。いろいろ学者の御意見聞いたら、いい知恵がない、どうしたらいいかと、それで出した。これじゃいけないのであって、やっぱり煮詰めた、はっきりした——これでは理屈にならぬですよ。さっきの御説明では、納得性がないと思うのです。だから本来ならば、現在国債整理基金特別会計があるのです。この積み立て金によって償還するということになれば、一つの案ですよ。しかし、これは全体の公債償還計画でございますから、今度出す赤字公債のその銘柄についての償還計画ではないから、これではまかなえないということになったんでしょう。たとえば、これでまかなうという、こういう計画があった場合、それはおかしいじゃないかと、それは全体の公債償還計画であって、今度出す赤字公債というその銘柄償還計画ではないではないかと言われたときに困るから、それでそういう形の償還計画を出すことができなかった。それでは減債基金というものをはっきりこの償還計画として出そうとしたけれども、それはまだできていない。それならはっきりと減債基金制度をつくって、この赤字公債、この銘柄についての償還計画ですよ、これを一応出したらどうなんですか。さっき大蔵大臣がたいした金額ではないと言われましたが、しかしこれからまだたくさん出るのです。そういうこともありますから、そこではっきり減債基金制度をとるならとると、何かどっちかに踏み切るべきであったのですよ。一応この二千五百九十億ぐらいだからというので、軽く見ているのじゃないですか。しかしあと六千億、七千億とずっとあるのですから、本来ならそれらを含めてはっきりここで減債基金制度に踏み切るのか、あるいは四条二項で——これは過去の銘柄についての償還計画ですよ。そう読むべきだと思うのです、そうでしょう。ですから、そこのところをいままでそういうことしていないのですよ、していないのだ。だから、ここで新しくその償還計画をつくって出すべきであったんですよ、あったんです。それをしなかった。手抜かりです。ですから、そういう悪いくせつけちゃいけないのであります。そこで、はっきり今度、今後のこともありますから、ここで償還計画を至急出してください。そうしませんと、これは審議できませんよ。審議すれば、国会みずから財政法違反をするということになるのです。われわれはそういうことできませんよ。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 償還は、実際は、これはその時点の財政、これがどうなるかということなんだろうと思うのです。それで、財政計画を将来にわたって示すということになると思うのですが、これを活字にして御審議をいただくという程度のものは、とうていこれはもうできるものじゃありません。そういうようなことで、財政法四条の、この解釈といたしましては、国会に御承認を願う資料としてはただいま御審議を願っておるようなもの以外にはできない。それを説明するあるいは内容等について御理解を願う上において財政の状態等将来の考え方を御説明する、これはいたしたいと存ずるわけでございまするが、その一つ一つ銘柄についてどういうふうな財源からどういうふうに償還していくのだということは、これは活字にいたすことはできないということはよく御理解を願えるのじゃないか、こういうふうに存じます。そういうようなことから、過去における国債におきましてもすべて財政計画を添付しているわけじゃないのでありまして、ただいまごらんいただいておるような資料をもって御審議をいただいておる、こういうことに相なっておるわけでございます。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。問題は二つあると思うのです。一つはいま木村委員の指摘された原則上の問題、それからもう一つは、二千五百九十億を借り入れるのですから、普通個人が借金する場合にも、どうして返すかという方法を持たなければ借金もできないと思います。だから、表にあらわすあらわさぬという具体的な問題とともに、原則的な問題とともに、具体的には、いま表にはできないけれども、どうしてこの二千五百九十億円を四十七年度までに返すか、政府としてはいますぐ何年度にどうという計画は立たぬけれども、おおよそこういう返済計画を持っておるというものを示すことなしに、ただ漫然と二千五百九十億借りたのですか。そんなむちゃな話はない。ですから、原則上いまの計画を具体的に示すかどうかという問題と、内容的にそれを表にあらわすことはできないけれども、しかしこういう計画をもって返済しようという構想を持っておる、それによって二千五百九十億を借り入れることにして、公債発行することにした。これがなかったら、これは全くめちゃだと思います。これはどうか。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回公債発行の御審議をお願いしているのですが、来年度以降は、これと違った意味におきまして、経済活動を活発化させる、安定的成長を遂げしめるために積極的な意味財政運営をやっていく、そういう財源としての公債発行することになるわけであります。そういう考え方の裏には、それによって日本の経済を安定的に発展をさしていく、日本経済のスケールは大きくなるわけであります。したがいまして、税の自然増収等は相当期待し得るような状態になる。そういうふうに考えますので、まあ二千五百九十億ぐらいの償還につきましてはいささかも心配もしておらぬ、こういうわけでありまするが、しかし、来年度以降は相当多額に発行します。この償還についてどういうふうに考えるかということにつきましては、その節またよく御審議をいただきたい、かように考える次第でございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 これきわめて重要な問題が出されておるわけですが、私も、償還計画表というものにつきまして、若干こういう問題を扱う人にも聞いてみましたが、こういうものを計画というわけにはまいらぬというのは、これはもう一致した結論であります。前例があるようなことを言われますが、これは私はそういう悪い例はやめてもらわなきゃならないということで、委員長におかれまして、この問題についてひとつ善処をしてほしい。いままではそういう悪例があったかもしれませんが、今回の赤字公債という問題については、これからも建設公債という名目で相当ふえていくということで、非常な関心が高まっておるときなんですね。だから、いつ幾日こういう前例があるからそれによってやっていくのだというような理屈とは、だいぶん情勢が私は違うと思う。そういう立場で、この償還計画の問題は、ひとつ厳重に扱ってもらいたい。で、この特例法の二条からいけば、公債発行について議決をただいまわれわれにこう求めておるわけですが、この議決を経ようとするときは計画国会提出しなきゃならない、こう書いてあるわけなんです。これは同時に出てこなければだめなんです。いずれの機会にまた何か適当な説明をするといったようなことを大臣なり主計局長が言われますが、それはあとではだめなんです。現在説明されなきゃいかんわけです、現在。で、先ほどからいろいろ質疑を聞いておりまして疑問に思いましたのは、結論としては、現在そういう償還計画はないんだと、こういう意味に理解していいんですか。主計局長は二つに分けてどうも説明をされたようです。具体的なものはないと、しかし減債基金なりあるいはこれらいろいろな制度を活用して、そうして何とかなるだろうというような意味のものは、これはだれが考えたってあるにきまっておる。そういうものしかないのであって、具体的なものはないんだと、こういうふうに受け取れた。そういう理解でよろしいのかどうか、その点まずはっきりしてもらいたいと思う。
  24. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 特別会計等におきまして、たとえば年賦償還で資金運用部から借りているような例がございます。かようなときは、償還は元利均等償還というような条件で借りました際には、そのような償還計画として国会にも提出いたしております。今回のような金額のものを一般会計において歳入補てんのための公債として出します際に、たとえばちょうど特例法でもお願いしておりますが、地方交付税特別会計が七年間にわたって借りている、そして毎年幾らかずつ返していくというようなやり方をしておれば、具体的にそれと同じような書き方ができるわけでございますけれども、今回の二千五百九十億につきましては、年賦償還というような考え方をとるわけではなくて、今後における経済の、先ほど大臣が言われましたような状況によって、国庫の中から必要な償還資源を、諸般の規定に基づき、あるいは規定をこえてでも積み立てて、その償還に遺憾なきを期していくと、こういう考え方のものでありまして、それを私どもとしては、率直に申しまして、その表の中にそういうふうに書けばそういう文句が書けるかもしれないのでありますが、そういうことを書いても、それはさっきの大臣のおっしゃった、まあ財政見込み表と申しますか、今後の財政はとにかくしっかりやりますといったような表になりますので、そこでこの問題については、現在の時点においては、いま提出いたしておりますような考え方でやっていこうと考えたわけでございます。なお、この点については、先ほど木村委員からもお話がございましたが、財政法の六条との関連もございまして、あれは二年間御猶予をいただいて、あと一年残っているわけでありますが、もう少し財政法全体として今後検討をいたしたいと考えているところでございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの説明を聞きまして、政府考え方はだんだんはっきりしてまいりました。そうしますと、返す年度だけしかわからないので、どういう財源で返すかはわからないのだと、どうもそういう結論になるようです。しかし、その点が実は非常に重要な問題のはずです。大臣意見も、どうもそういうふうに聞こえるわけですがね。それは単なる財政計画を説明するにすぎないようなお話をされるわけですが、そうじゃなしに、やはり国債問題について関心を持っておる人から見れば、そういう単なる財政計画というふうな見方でそのことを考えるわけじゃないわけなんです。たとえば、必ず税の増収があって、それによって、この程度になって、四十七年度には確実に税収から返せるというふうなこと、ほんとにそうなっているなら、それはりっぱな計画じゃありませんか。そのかわり、その過程と見通しをはっきりしてもらわなければいかぬですがね。しかし、もちろん四十七年度になってそのとおりいかないことも、これはあるかもしれません。あるかもしれませんが、しかし、それはその際に変えたらいいわけなんです。変えたらいいと思う、おわびをしてね。しかし、やはり最大限確実な見通しというものをつけて、そうしてこういうふうに返していくのだということでなければいかぬじゃありませんか。そういう税収の増加から確実に返していくというのと対照的なのは、これはどうも税収が思うようにいかぬから再度公債発行してそれで切りかえていく、こういう行き方もあるわけですね。だから、そういうことはしない、しないならしないとはっきり……。その中間にまたいろいろなものが考えられるわけでしょう。その考え方自身は、ここへちゃんとつけて出さなければいかぬじゃないですか。どちらでもいいですから、それを単なる財政計画のそれは説明だと、そんな軽くあしらうということは、それはもってのほかだと思うのですよ。どうなるんですか、もう少しその点をはっきりしてほしい。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 七年後の国の財政が一体どうなるのか——いまおそらく四兆相当こえる予算が四十一年度には組まれるわけですね、これが倍ぐらいな規模になるか、まあ相当の大きな規模が七年後には想定されるわけであります。そういう大きな規模の中で、二千五百九十億円の国債償還、その償還のための財源に何を充てるかと、こういうことになりますると、これは二千五百九十億円というとごくわずかな支出項目ですね。これは国のそれだけの歳出をまかなうための財源というものは、租税を中心としてたくさんあるわけであります。そのどれをどういうふうに二千五百九十億円に充てるか、そのときのこれは財政のやりくりのいわば技術的のような問題かと思うのです。でありまするから 結局財政計画問題なんです。それを活字にしてお示しできるかというと、これはなかなかむずかしいのだということはよく御理解願えると思うのです。また、それをもう少しやや抽象的に二千五百九十億円だけはこれこれの財源だと言っても、これも無意味なことになるのじゃないか。まあそういうようなおそらく論議があったのだと思いまするが、公債発行した前例におきましては、その償還計画表というものは、財政計画じゃなくて、またこれを抽象化したものでもなくて、ただいまごらん願っておるような形になってきておる、こういうふうに思いますので、実態の説明はまた格別といたしまして、形式としてはこれで御理解を願いたい、かように存ずる次第でございます。
  27. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけて。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣並びに主計局長から御説明がございましたが、納得できません。大蔵大臣、主計局長は、どうも表現が悪いですが、とてもわれわれから見ると官僚ですね。やっぱり官僚的ですよ。財政民主主義というものに対しての旧憲法時代と非常に違っている点ですね、この点についての私は反省、自覚がないと思うのです。この読み方自体がおざなりですよ。大蔵大臣の説明を伺いますと、実際問題として四十八年に巨額な公債になると思う。その中で二千五百九十億はたいした金じゃないから、償還に弱ることはないじゃないか、常識から考えてもそういうことは心配はないではないか、あるいはまた、個々の銘柄についての計画を出せといっても、実際問題として無理ではないか、計数的にはじいても無意味ではないかということを言われている。しかし、なぜ財政法四条で、このように公債発行するときは「その償還計画国会提出しなければならない。」と、こう規定したか、その精神ですよ。この四条は非常にきびしい公債発行に対する制限の規定あるいは禁止の規定なんですよ。原則として公債発行を認めない。しかし、公共事業あるいは出資金及び貸し付け金の財源については、国会議決を経た金額の範囲内で発行してよろしい。しかし、その場合に、さらにまたきつい条件を設けている。「その償還計画国会提出しなければならない。」、こうなっているのですよ。もう二重になっている。なぜこんなにきびしい制限を設けたかということ、そうしてこれは都合が悪いなら政府は改正すればいいのです。しかし、改正しないでこれがある以上は、この財政法を守らなければなりません。そうでしょう。しかし、いまお話を聞きますと、この財政法四条二項がじゃまになるような、こういうことが問題になるからというお考えかもしれませんが、私はそういう考え方自体がいけないのだと思うのですよ。財政民主主義というのは手続の問題ですよ。民主主義はめんどうくさいものだ。なぜめんどうくさいか、めんどうくさくするかということですよ。それはファッショ独裁にすれば都合がいいでしょう。しかし、めんどうくさいけれども、そのめんどうくささ、手続が非常に迂回的になるのですよ。それこそが民主主義なんですよ。それをやはり守らなければいけないですね。ですから、困難かもしれませんが、この規定がある以上は、この規定に基づいて償還計画を出さなければいけない。それを私はこれまで怠っていたものと思う。いまごろになって四条二項の読み方について学者の意見を聞くというのはおかしいです。話を聞きますと、大蔵大臣は前から公債発行については研究してきたということですが、それならこういう点についてもやはりちゃんと読みをして——ここでこんなに、国会償還計画出していない、これでは手続が不備ではないか、こんな質問を受けるようなだらしのないようなことをなぜしてきたか。それは結局、いままでの大蔵省の官僚的な予算なりあるいは財政なりに対しての考え方が、長い間の伝統にかんがみて旧憲法時代の考えに染まっているんじゃないか。われわれはそれは染まっておりませんから、われわれは民間人ですから、官僚ではないのですから、この憲法なり財政法の考えというものは率直にそのまま読むわけです。率直に読めば、償還計画としてはこんなものでないということは明らかでしょう。ですから、ここで行きがかりとかメンツにとらわれないで、今後六、七千億実際問題として発行されて、四十七年には巨額になるだろうということは、大蔵大臣が言われるとおりです、いまの政府の方針をやっていけば。ですから、この際はっきりさしておく必要があります、実際問題として。われわれはこれに反対しても、発行されてしまうでしょう。それに対しては、初めにけじめということをはっきりしておかなければならない。財政法四条の二項、これをはっきりさしておく必要がある。これがある以上は、どうしても政府はこの銘柄についての償還計画を出さなければなりません。いまの政府国債整理基金特別会計ではまかなえないですよ。だから、どうしてやるかということをはっきりやはり検討をしなければいけない。非常に固った規定かもしれませんけれども、いまになってみれば。しかし、そういう規定なんです。ですから、この規定は困った、そのとおりできないというならば、これを改正したらよろしい。われわれはそんなに簡単に改正してはいけない。なぜこのようにめんどうくさい規定をしたかということをよく考えなければならない。その精神こそが重要なんです。ただ漫然とそのときに償還できる財源があるだろう、そんなことじゃいけないというのがこの規定です。そんなことではいけない。ことに新憲法下新しい財政法のもとではそうです。そんなことではいけないのだ、いままでのような考え方ではいけないのだ、そこでこんなきびしい規定を設けたと思うのです。ですから、そういう点で出してください。出なければわれわれは納得できないのですから、こんなあれであったら小学校の生徒に笑われます。小学校の先生も教育上非常に困ると言って……。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどから申し上げておりますとおり、結局これを皆さんのおっしゃるようにいたしますと、財政計画を出せと、こういうことの一点に尽きると思う。いまの予算の規模の倍にもなる予算の規模の中で二千五百九十億の財源を抜き出してみたところが、これは私は意味がないんじゃないかと思う。結局財政計画の全貌がその時点でどういうふうになっているだろうかということに尽きると思うのでありますが、それは不可能であるということは私は御理解できると思うのでありますが、そういったことで、過去の前例等におきましても、国会の御審議をお願いする資料としてはこういうものである。しかし、これは七年後に一気に償還するというたてまえでございますものですから、ばかに簡単なようでございますが、これが据え置きが何年で、またどういうふうにその後やっていくのだというふうな複雑な場合もあるわけでございまして、ともかく御審議の対象としてはこういうものを掲げますが、それによっていろいろ将来のことを御論議願うという手がかりというか、そういう意味において私は重要な資料であると、かように考えるわけでございます。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点がもうすでにわれわれと考え方が違うのです。これは資料じゃないのです。法律でちゃんとはっきり1審議の参考資料じゃないのですよ。大蔵大臣そんな軽く考えているからいけないのです。財政法二十八条の場合は、あれは資料として提出しなければならない。二十八条のあれは資料的なものですよ。しかし、これは資料じゃないですよ。前項の議決を経ようとするときは、同項の公債償還計画国会提出しなければならないのです。これは参考資料じゃない。はっきりと法律で規定されているものなんです。資料的に考えちゃいけないのです。だから、問題は二つあると思うのですよ。この財政計画の問題との関係が一つあります。それはまた資料でいいでしょう。しかし、これは法律ではっきり、単なる資料として出さなければならないとなっているのじゃないのですよ。計画それ自体が法律に規定されているのですから、資料的なものじゃないのですよ。ぼくは、その扱いに対する認識ですね、ここにひとつ懸隔が、開きがあると思うのです。この点いかがですか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 資料と申し上げましたのは、俗な意味で申し上げましたので、正確に法律的に言いますれば、これは計画表であります。
  33. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  34. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけてください。  この問題は、委員長理事打合会において検討することにいたしたいと思います。  木村君、どうか質問を続行していただきたいと思います。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま委員長から、この問題については、委員長理事打合会で検討されるということでございましたので、その打合会での取り扱いにこの点はおまかせいたしまして、その結果によりまして、また質疑をいたすことにいたしまして、それは除いた質疑にこれから入ってまいりたいと思います。  総理大臣に伺いますが、これは本会議でも質問したわけなんですよ。総理大臣はその点について御答弁がなかった。すなわち、第二次補正予算が不成立に終わった点なんです。これはあまりくどく言い過ぎるように思うかもしれませんが、私がこの第二次補正予算不成立に対する責任追及、これに対する総理大臣の御所見を伺ったときに御答弁がなかったのですよ。成瀬委員が重ねて質問したときに、遺憾である、こういう御答弁があったのです。で、私がこの点を繰り返し総理大臣あるいは大蔵大臣に御質問するのは、やはり財政とか予算というものの民主主義的な政治における重み、それはいいかげんに扱っちゃいけないのだ、軽く扱っちゃいけないのだ、そういうことをやはり十分にみんなが認識しなければなりませんし、また、国会でもそういうことについては十分尊重していかなければならない、こういう点を私は強調したい意味で、その責任を追及し、また、その反省を私は求めているわけなんです。私は、予算の不成立に終わった例として今回が初めてとは思わないんですね。いままでやはり例があるのです。大体戦前におきましては、御承知のように、前年度予算を踏襲することができましたから、かなりひんぱんにあったんですよ、旧憲法では、前年度予算の踏襲ができましたからね。しかし、新憲法になりましてから、これで四回目なんです、ばかやろう解散を除いて。しかし、今回のように、予算出して提案理由もしないで、質疑もしないで、そのままずっと二十日間も塩づけになって、そうして、これが不成立になったという例はないのです。そんなことはありませんよ。そうして、しかも、その予算内容は、補正といえども非常に重要な内容を持っていることは、御承知のとおりですね。初めて今度公債発行すると、しかも、赤字公債財政法四条特例法を設けてまでも公債発行しなければならない、いままで公債なき財政経済から、公債をかかえた財政経済に転換するんです。その契機となる補正予算でありますから、その重要さというものは、いままでの補正予算に比べて、あるいは本予算に劣らない非常な重要性を持っておる、そういう予算が不成立になったんですよ。それは社会党が審議しなかったからというわけにいかないと思う。社会党は、だからこそ、この予算を早く審議すべきである、七十日間会期があったんですからね、その中で一ぺんも提案理由もされない、質疑もされない、そうして不成立になった、これは総辞職ものですよ、政治的責任からいきましたら。なぜ、 こうなったか。それは、日韓の問題に全力を傾注して全力投球された、自民党政府も。そうして、この予算審議をおろそかにしたと思うんです。この予算というものの重みについては、もう私が言うまでもないです。前に憲法の規定を持ち出しました。法律案と違う点、条約と違う点、法律より、条約よりも予算のほうが重いわけです。重いんです。そうした重みのある予算が不成立に終わって何らの責任がとられない、とられないどころか、何ら責任が感じられていないんですよ。大蔵大臣財政演説も、一言でも触れておりますか、遺憾であったとか。かりに、いずれに不成立にせしめた責任があるとしましても、不成立になったこと自体については、大蔵大臣が一言くらい財政演説で触れるべきであったと思うんですよ、財政当局としては異例な事態であった、まことに遺憾であると。予算とか財政というものは、民主主義の政治のもとで、一番の基本で尊重しなければならない非常に重みのあるものであるにもかかわらず、これが不成立になったことは、ことに今回のような不成立になったことは、前古未曽有なんです。こういうことは繰り返すべきではない、はなはだ遺憾であったとなぜ言わなかったのです。ですから、成瀬委員が重ねて追及して、総理大臣は遺憾の意を表されましたが、ほんとうに、まことに遺憾であったと感じられておるのか、ほんとうに責任を痛感されておるのか、予算あるいは財政というものの民主主義政治のもとにおける重み、憲法の規定から見ましても、条約、法律よりもさらに重要な性質を持っているものであるということについてのほんとうの認識を持っておられるのかどうか、また、責任を感じられるとするならば、どういう責任のとり方をされるのか、この点について、まず総理に御意見を伺い、さらに、財政の担当者である大蔵大臣にも質問したいと思うのです。なぜ——大体いい機会だったんですから、あの財政演説をされたとき、なぜ触れなかったか、その触れないこと自体が、もうそこに財政民主主義というものに対しての関心が薄い、旧官僚的なそうした財政に対する考え方が残存しているのじゃないかということを私は思ったわけなんです。ですから、大蔵大臣にも、この機会に、この点について御所見を伺っておきたいと思います。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま木村君からお尋ねのうちに、御意見を交えて述べられましたこの御意見同様のことを私も感じております。私が申し上げるまでもなく、議会制度の歴史をごらんになれば、予算審議というものはいかに大事か、これはよくもうだれしもわかっておることでありますし、ことに、今回提案いたしました補正予算、これは年末差し迫ってはおりましたが、この臨時国会に御審議をいただこうとしたものが、いわゆる給与の改善であったり、あるいは災害復旧の予算であったり、さらにまた、それより以上に、不況克服の予算である、こういう意味におきまして、私どもはほんとうにこの審議をお願いしたがったのでございます。ただいま御指摘になりましたとおり、私重ねて申しませんが、提案もしない、一日の審議も受けない、そうして七十日間の間に審議を経なかった、そうして、これが不成立になったということであります。この間における日韓の交渉等のこともございます。いろいろございますが、私は、何ら審議を見なかった、こういう意味で、ほんとうに遺憾に思うのであります。何よりも不成立であったこと、これは遺憾にたえないことですが、さらにその上にも、審議も経なかった、このことを私はたいへん残念に思っておる次第であります。したがいまして、成瀬君の質問に対しまして私も率直に答えたように、ことば自身はたいへんやさしいことばであったが、その責任を追及されておる、そのことは私も十分感じますということを実は申し上げたのであります。しかし、こういう事柄を経まして、この臨時国会における審議の経過等を十分考えまして、ただいま、この通常国会においてこうして審議をしておりますのも、これは国会正常化への歩みがようやく開始された、かように思っておるのでありまして、その意味では、私は希望を持ち、同時にまた、さような意味で、これをぜひとも正常化の一そうの努力を払いたい、実はかように思っておるのであります。いままでもないことだと思いますが、年末差し迫り、これもほんとうにぎりぎり一ぱいまで年末に差し迫って審議する、これはほんとうに、このことも異例だと思います。これなどは、臨時国会における反省の結果が今日の正常化の審議をもたらした、かように思いますので、一そう努力してまいるつもりでございます。ただいま御指摘になりました点は、私も別に他の考え方を持っておりません。全く同感でございます。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま総理の申し上げました所見と全く同じでございます。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点については、総理からも、大蔵大臣からも、率直に遺憾の意を表されましたから、くどくは申しません。ただ、社会党の立場として残念であったのは、日本の財政は火の車です。二千五百九十億という歳入欠陥が生じた、こんなことはいままでありませんよ。百億、二百億でないのですよ、火の車、赤字公債を出さなければならない、そういう状況のもとで、なぜ日韓を急がなければならないのですか。日韓の問題だって、これは日本の財政と無関係ではないのです。この補正にも六十何億出ております。そのうち、経済協力が十八億であります。総予算とも関連があるのです。したがって、十四年間交渉を重ねてきたので、半年、一年どうして待てない、待てない事情がどこにあるのですか。これは国民が納得できない。かりに妥結されるとしましても、なぜ、火の車になっている予算のほうを、いま総理大臣言われました国内のこの国民生活に直結した重要な問題が山積しているのですよ、そっちのほうをなぜ重点的に考えないか。日本の国民の民生安定があってこそ、初めて日韓の問題です。善隣友好だって、自分の家計のやりくりがもう火の車になっている、まずそちらのほうを処理するということが先決じゃなかったですか。そして、どういう事情か、どうしてあんなに急ぐのか、日韓を。あれで国民にも反対があり、私は、これに仄聞ですから、確証はないのでありますが、総理大臣に伺いたいのですが、内閣で世論調査をした、日韓の問題で、国会であのように強行採決したことに対してアンケートをとった、ある通信社を通じて、これは内閣がよくやるのです。いつもアンケートをとって世論調査をしております。その結果、社会党が悪かった、自民党も社会党も悪かった、わからないという回答が九%、残りの九十何%は、自民党が悪かったという世論調査の結論が、アンケートが出てきたので、せっかく内閣で通信社に調査を依頼したけれども、それは発表しないで、しまつとくことにした、こういうことを聞いたのでありますが、しかし、私は、その調査自体、現物を見たわけではございませんから、これは内閣でそのほうの御担当の方もあろうと思いますから、その真偽のほども承りたい。どうですか、このように世論は、日韓の国交正常化に賛成している人でさえも、あのような自民党のこのむちゃな暴挙に対して、これはひんしゅくをしていると言われておる、その結果、そういう世論調査が出たんではないかと私は思うのです。しかし、それは事実であるかどうか、その点も承りたい。  ですから、そのことの軽重ですよ、その軽重について、補正予算が不成立になったについては、そうした日本の国民の民生安定がまっ先に考えられなければならなかったのに、一年や半年延びても差しつかえないと常識から考えて思われるのに、なぜ、あんなに強硬にやられたか、この点についても、国民は割り切れない点だと思う。したがって、責任は自民党、あるいはいま政府にあるのではないか、そうしたことに対する反省なり、責任をとられるということが私は必要ではないかと思うのです。この点についての総理の御所見を承りたいのであります。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、木村君のたいへんきらわれる官僚の出身です。しかし、ただいま言われるように、世論の動向につきましては、たいへん気をつけております。特に、私の調査室その他にも命じて、いいことばかりを耳に入れるのではなくて、悪いことも遠慮なしに入れてくれ、そうでなくしてはほんとうのことがわからない、こう言ってございまするので、悪いこともどんどん耳に入れます。しかしながら、ただいま言われたようなことは全然ございません。これは特に総理が気に食わぬだろうからというので遠慮はしておらない、かように思いまするが、ただいま冒頭に申しましたように、どんなことでも遠慮なしに申し出ろ、また、世論は正確に正しく報告してくれ、こういうことが言ってありますから、そういうことはないのであります。この場で世論をつくろうという木村さんのお考えでもないだろうと私思いますけれども、ただいままでのところ、さような事実のないことを重ねて申し上げておきます。  私は、実は、この前、臨時国会において予算審議を受けなかった、また不成立になったこと、そのことについては、先ほど申しましたように、率直に、まことに遺憾に思っております。それについて重ねてのお尋ねでありますから、その当時の経過ももう少しはっきり申し上げて、国民に御理解をいただきたいと思います。  実は、日韓の問題は、これは長い交渉の結果でありますから、これは私ども、そう隣の国と仲よくすることに反対の方がこうあろうとは実は思わなかった。また、非常に執拗な反対があろうとは実は思わなかった。同時にまた、社会党の方は、今回の臨時国会はぜひ予算審議しろ、かような意味で、そう七十日も要らない、わずかな日数でいいじゃないか、こういうようなお話も事前にあったのであります。そういう意味でございますから、むずかしい日韓の問題も、予算の問題も、これはともどもに並行して審議が願えるじゃないか、社会党の方は非常に予算を大事に考えていらっしゃる、私どもも、予算も必要だし、日韓も大事だと、かように言っておるので、この二つの審議が同時にできるんじゃないかと実は考えたのが、私が国会に対する認識を誤った、かような意味でおしかりを受けるのは、これは私も甘んじて受けます。ただいま申し上げますように、七十日の日数、これは、社会党で当初申し出られた四十日のほとんど倍に近い日数でありますから、その日数ならば、この程度の二つの問題、しかも緊急な問題、これは必ず御審議がいただける、かように実は考えてスタートした、これが私の率直な考え方であります。ただいま申し上げるように、国会、また政治は生きものでありますから、その政治自身が予定どおりいかない——もちろん、私どもがまだ政治家として未熟で、こういう意味について十分理解を持っておらなかった、認識しておらなかったということを、ただいま反省しておるような次第でございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 重ねて総理大臣から、第二次補正予算不成立に至った経過のお話もあり、また、その事実に対して遺憾の意を表されまして、また、よく反省もされているということもございましたから、とにかく、予算とか財政につきましては、今後軽々しく取り扱うものではない、その重みについて、政府としても、国会としても、これは十分に——私をも含めて、十分にこれは考えておかなきゃならない、そういう点、私は一応私どもの考えを述べておきます。  次に伺いたいのは、この補正予算の中で一番中心的な課題になっております二千五百九十億の歳入欠陥の問題につきまして、なぜ、このような歳入欠陥が生じたのか、また生ぜしめたのか、その原因というか、責任について、まず総理大臣に伺いたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  木村君はたいへん財政の通であられますから、この事情はよくおわかりだと思う。問題は、たいへんな税収の落ち込みだ、そういうことのお答えでは御満足はいかない。ことに、何がゆえにもつと正確な判断ができなかったのか、そういう点についてその精度を欠いたことについて、非常な見誤りがあったのではないか、認識を欠いたのではないか、かような意味のおしかりだろうと思います。私どもは多年の経験、そういう意味から、前年の税収その他の動向、あるいは経済成長率等々を勘案して一応のカーブを考えて、そうして、そのカーブによって予算を編成したわけでありますが、しかし、今回のこの不況の状態は、いわゆる事前に考えられたような、なまやさしいものでなくて、これが病根と言ってはなんですが、ほんとうに病がその根幹に入っていった、かような点についての十分な認識がなかった、かように私は思います。そういう意味で、たいへんな多額の赤が出ましたことについて、私もわずかな期間ではありますが、大蔵大臣をした経験から言って、こういうような間違いはまず考えられないからということを実は申したのでありますが、しかし、過去におきましても、相当の予想違いはあった。しかし、それらのものは、多くの場合に全部落ち込みではなくて、予想より成長がより大である、こういう意味で、予算の面では増収でありましたので、これは比較的に傷が浅く済んだ、かように私は思います。しかし、それにいたしましても、当時、私も閣僚であり、また、社会党の諸君から、こういうような見積もりは粗漏ではないかと言って御指摘になったことも記憶いたしております。ことに、そういう際に申し上げた答弁は、とにかくうれしいほうの間違いだからお許しを得たい、実はこういう言い方をしたように記憶いたしております。ところが、今回は税収の落ち込みである、税収減である、こういう意味におきまして、年度の途中においてたいへんその苦労をすることになったのであります。この点は私どもまことに遺憾に思いますが、しかし、ただいま申し上げますように、いわゆる厳格な意味計画経済をやっておるわけではございませんので、違いが生ずることは、どうも自由経済のもとではやむを得ないのかと思います。それにいたしましても、非常な多額のものじゃないか、このことが指摘されるのでありまして、ただいまの経済の規模そのものから見ましても非常に大きいし、また、予算そのものにいたしましても、かつての一兆円の予算の時期ではございません。もう三兆、あるいは四兆、そういうような予算の時期でありますから、そういうことも考えてみて、今回の赤字は非常な大きいものになる。やっぱり一つ狂うとたいへんな大きな狂いが生ずる。このことを今後の戒めに十分していきたい、かように私は思います。これはもう、より詳しい実情にあられるのですから、あまり多くを申し上げなくても、当面しておることでございます。  また、これらの処置を——これはお尋ねでこざいませんけれども、ついでに申し上げますが、赤字公債、こういう公債発行しないで済む方法はないか、かように考えますと、これはもう申すまでもなく、支出を減額するよりほか方法がございませんので、支出予算を削るということになるか、あるいは途中で税の増収をはかるかということでありますが、しかし、ただいまの経済の実情は、そのいずれをも許さない、かように考えます。むしろ、積極的に刺激を必要とする、そういうように考えますので、不況克服のためにやむを得ざる処置だ、かように私は思います。  ただいまの見込み違いといいますか、見込みに狂いを生じたことについての反省、並びに、これに対する対策がただいまのような事情であることを申し上げた次第であります。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、自由資本主義経済でございますから、計画経済、社会主義的な計画経済とは違いますので、そんなむちゃな酷評をしようとしているわけではないのです。一応の見込み違いというもののあることはやむを得ないのじゃないかと私は見ております。しかし、百億や二百億、千億ではないのであります。もちろん、高度成長のもとでは、毎年自然増収につきましての過小見積もりがあります。これもかなりの大きな見積もりであったわけでありますが、しかし、今回の過大見積もりですね、結果からいって過大見積もりをしたわけですから、歳入欠陥になったのです。これについては、すでにこの前に十分われわれが政府に警告を発したわけです。いま卒然とその責任を追及しているわけじゃないのですよ。ですから、なおさら私は、なぜ政府がもっと真剣にこの赤字をなくすように努力しなかったか。もちろん全然赤字をなくすことが困難であったでしょう。この不況の落ち込みも、正直にいって私もこんなに落ち込むとは思っておりませんでしたね。しかし、落ち込むとは思っていました。もちろん、その程度については、政府はまだ甘いと思うのです。あとでこれは質問いたしたいと思うのですけれども、また、この赤字処理につきましても、総理からお話がございましたが、もしこれを増税とか、あるいは歳出の削減によるならば、逆に不景気をもっとひどくする。景気を刺激しなきゃならぬ。だから、どうしても公債発行によって財源をまかなわなければならなくなっているのだと、こういうお話がありましたが、これはあとで質問いたします。  私はことしの三月六日の予算委員会で、佐藤総理大臣に対しまして、こういう質問をいたしたわけです。「この四十年度予算は、御承知のように、三兆六千五百八十億八千万円、「年じゅうハレバレ予算」と言われていますが、その財源として税金収入を三兆二千八百七十七億円と見積もっておりますが、この歳入見積もりは、最近の税収実績から見まして過大見積もりであると思うのでございますが、はたしてこれだけの税収を確保できるとお考えかどうか、まずこの点伺いたい。」、こういう質問をいたしたわけであります。これに対し総理大臣は、「四十年度の経済成長の見通しを立て、そうして各税目別にこれを計算して、そうしてそれを集計したものであります。ただいま、これは過大ではないかと、かように言われまするが、まあこの点は、私どもは確信を持って、これはだいじょうぶだと、かように考えておるのでございます。」と、「確信を持って」と答えている。それですから問題にするわけですよ。あの当時、なぜ私がこういう質問をしたかと申しますと、御承知のように、すでに昭和三十九年度歳入欠陥が生じていたわけであります。この歳入欠陥についても私は質問いたしましたが、当時の田中大蔵大臣が、これに対してきわめて甘かったのであります。ですから、私はこの点について追及したわけです。当時の質問応答がございますが、要するに、三十九年度で六百五十億の補正を組んだのです。その補正を組むような予算ではないじゃありませんか、財源が十分ないではないか。ところが、田中大蔵大臣が、だいじょうぶだと言うのですよ。ところが、補正を組んでからどんどん税収が減って、結局三十九年度は八百億円の歳入欠陥になったんです。三十九年度すでにですよ。これに対して泉主税局長は、私がどんなに大臣に、それは過大見積もりですと、補正六百五十億を組むだけの税収はないでしょうと、ずいぶん言ったんですけれども、大蔵大臣が十分にこれを認識されないと、こういう認識だったんです、政府は。ですから、私は、もう三十九年度でそうであったんだから、日本の財政はここで大きく転換したと、三十九年に。歳出は高度成長が長く続くという前提で道路五カ年計画、あるいは国鉄、電電その他治山治水、高度経済成長がかなり長期に続いている前提で長期計画を立てた。そういうことで歳出を計上しておったのであります。ところが、歳入のほうは、高度成長が破綻しまして、多額の自然増収を期待できない、逆に歳入欠陥を生ずることになって、ここで一大変化を来たしておったのです。それをわれわれは指摘したのですよ。そうして四十年度予算、歳入見積もりは過大である、こういう警告を発したのですよ。それにもかかわらず総理は、確信を持って、だいじょうぶだと言われた。神さまでございませんから、結果論で批判しては、これはあまり酷であると思うのです。それにしても、われわれはそういう点を指摘したのですから、四十年度予算編成にあたっては、たとえば農地報償みたいなことはやるべきじゃなかったのです。かりにやるとしても、農地報償だって今年度の、二年度分出てくるのですよ。四十一年度も出てきますよ。毎年あれは出てくるのです。あれなんか、かりにやるとしても急ぐべきじゃなかったでしょう、もう歳入欠陥が生ずることはわかっておったのですから。あるいは歳入面で利子配当の分離課税なんかやって、減収をもたらすようなことをする必要はなかったのです。かりに必要があったとしても、あとに延ばしてもよかったのです。政府はそういう努力はしなかった。逆に歳入欠陥が生ずるような、逆にそういうような、税制面なり歳出面なり、政策をとったのでしょう。ですから、二千五百九十億の歳入欠陥を生じたことについては、不況の落ち込みもさることながら、政府がこれに対して当然善処すべき措置をとらなかった責任があるのですよ。これについてどう思いますか。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの点について、当時、ここでしばしば議論したことがあると思います。ただいまは歳入についてお話ございましたが、支出の面においても、同じような意見がしばしばあったのであります。過大な支出じゃないか、財政を切りかえるべき方向ではないか、こういうような御意見もあったのであります。それに対しまして、私ども、また政府が一致して、統一見解として申しましたことは、ただいままでの成長経済、これを安定成長へのせるにしても、急激なブレーキはこれはかけかねる、かようなことで、しばらく時間をかしていただきたい、徐々に摩擦を少なくして、徐々に推移していくことを考うべきだ、これが当時の論争の大なる面であったと、私はかように記憶しておるのであります。この席でありましたか、あるいはその他の席であったか、必ずそれが出ていたと思います。私自身は、政局を担当するようになりまして、この高度経済成長、これについての十分反省をしていくことが望ましいのだ、かように考えておりましたので、ただいまのような点に触れたわけであります。また、ただいま御指摘でございますが、当時の事情から申しまして、支出の面で拡大の方向でなお続いておる、まだ直ちにさめない、かようなことだと、どうしてもその意味から、経済成長も相当高いところにあるのだ、そこで税収なども一応見積もるわけでありますから、これが予想がはずれたということの御指摘ではありますけれども、一応私ども予想を立てたことには無理はなかったと、かように私は思います。しかし、御指摘のとおり年度末において、もうすでにそういう赤字破綻になっている、そういうことであります。しかし、この四十年度の経済に対する対策がそれぞれ実を結んでくれば、必ずこの成長は維持できる、三十九年非常は不況だ、その不況を克服し、四十年は上向いてくるのだ、こういうような見方のもとに実は予算をつくったと思います。私がお伊勢さんにお参りをして、そのときに楽観をしたような発言をしたということで、しばしば非難をされますが、私もそれは忘れてはおりません。私は、こういうようなことでも産業界に景気をつけるというか、活気をつける手伝いになればたいへんしあわせだと、かように思ったのでございますが、しかし、なかなか二つの行き方、いわゆる経済の基礎固めをするということ、また同時に、経済を成長の方向で持続していく、こういうことがなかなか二つができかねるように思います。しばしば、佐藤内閣の経済の対策が迷っておるのではないか、こういうことで御指摘を受けるのは、その点であります。ただ、片一方で経済の基礎を強固にしょう、こういうような政策をとっていく。それと同時に、経済に絶えず活気をもたらすような刺激政策をとっていこうということで、二つの政策がそのときどきに出てきて、そのために一貫性が欠けておるというような批判を受けますが、これは現在の経済の事情から見てやむを得ない仕儀ではないか、かように私は思います。まあ産業界の方々の協力が、これが積極的にだんだん伸びてまいっております。また、九月以降とりました対策なども、それぞれ実を結びつつある、かように考えますので、十二月末の支払い状況はだいぶ活発になっておるようですが、こういう事がらが、積み重ねをいたしまして今後の経済にどういう結果を招来するか。もちろん楽観が許せる状況ではない。しかし、同時に悲観はしておらない、かように私はお答えをいたします。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、歳入欠陥についてはやむを得ない面もあったというお話しですが、私は、さっきも指摘しましたとおりに、もう巨額の歳入欠陥が生ずるであろうということは、はっきりしておったのでありますから、その歳入欠陥が生ずるにしましても、二千五百九十億という大きな歳入欠陥が生じたことに対しては、政府も重大な責任があるということなのです。やむを得なかったじゃありません。これは総理が責任を負うべきです。田中大蔵大臣のときでありました。あのときに、なぜもっと歳出の不用面について、これを切り捨てなかったか。逆に農地報償みたいな不当不急なものを、なぜああいうものを計上するようになったのですか。あのときは選挙がありました。参議院選挙対策じゃないですか。そのために放漫財政をつくりまして、総花的に予算をばらまいたのではないか。いまから検討すればそういう点はたくさんあります。そういう放漫財政、不当な歳入見積もりに基づいて選挙対策、自民党の政略的な放漫な予算を編成したという責任、もう一つは、歳入面で当然歳入を確保しなければならなかったのに、税制調査会の答申も無視して、そうして配当の分離課税なんかやったではありませんか。政府の責任がないとどうして言えますか。赤字の出ること自体について、やむを得なかった点は、これは私もある程度、景気の落ち込みについては、私もまあこんなに予想以上に深刻に落ち込むとは思っていませんでしたから、その点についてはいたし方ない面もあったにいたしましても、しかし、二千五百九十億という、こういう前古未曽有の大幅な歳入欠陥、赤字が生じたことに対しては、政府に責任があるのです。田中大蔵大臣にうんと責任がある。それは総理は共同責任です。戦後最悪の大蔵大臣ですよ、田中さんは、そういうことに対して、責任を何ら感じていない。総理もその責任があるのでございます。これはほんとうに率直に、その点については反省をされていかなければ——今後公債をかかえる日本の財政経済になる。公債なき経済でさえそうだった。公債のない財政経済でさえいまお話しのように歳入を過大に見積もり、そうして当然徴収しなければならない税収を減税してしまいました。このような巨額な赤字をもたらしたことに対しては、重大な責任があるのですよ。この点をここで深刻に反省せずして、公債をかかえた財政になったら、ますます放漫になることは明らかであります。福田大蔵大臣は、公債発行の最後の歯どめは財政規模にあると言いました。そのとおりですよ。財政規模をきめるのは政治なんです。政治のあり方なんです。その政治の体質が放漫財政をもたらすような体質なんですよ、いままで。この二千五百九十億の歳入欠陥を生ぜしめている体質それ自身がそうなんです。ここで深刻に反省しなければこれはたいへんなことになりますよ、公債発行に踏み切った今後の日本財政は。そういう点で二千五百九十億の巨額な赤字を生ぜしめた責任について、私は、総理大臣に御質問いたします。率直に——この場だけの御答弁だけではなく、今後の日本の財政経済というものも踏まえてひとつ御答弁を願いたい。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことしの歳入欠陥についての私の率直な、また正直なお答えはただいまいたしましたので、今後の処置について、いかにあるべきかということについて、私の感じておる点を御披露いたします。  過去の問題にいたしましても、先ほど参議院選挙のために特別な選挙対策政策をとったのじゃないかというおしかりを受けましたが、さようなことはございません。この点は国民の皆さんも御存じだと思います。大体農地報償の問題は、きのうきょう始まった問題ではないのです。これは実に古い問題でございます。私は、こういうような問題を、やはりそれぞれいつまでも未解決のままにおくことは望ましいことじゃないと、やはりこれを踏み越えていくということが必要だと思いますので、次々に解決していきたいと、かように思っておりますが、それにいたしましても、ただいまの問題が、時期的に誤解を受けるようなことになったということは、私たいへん残念に思います。  また、分離課税の問題につきましては、ただいま御批判がございましたが、これは収入減を来たすようなことをどうしてしたのか。実はそういうこともしなければならないような産業界の実情であった。このことを私どもは強く考えておるのであります。すでに不況は深刻さをだんだん増してくる。かような手も講ずれば産業界が活気を持つのじゃないか。こういうような意味で、減収と知りつつもかような状態をいたしたわけであります。こういう点が、ただいまは政治として考えられるが、やや活気をもたらすその原因にもなっているのじゃないかと思います。いわゆる株式の先見性というようなものは、こういうようなところ、あるいは国際収支がよほど改善された、こういうようなところにも出てきているのじゃないか、かように思いますので、政策そのものとして、ただいま御指摘になりましたことが、私は必ずしも失敗だとは実は思いません。しかし、とにかくただいま不況克服、これが私どもの内閣の使命であり、これをぜひとも克服したい、かように思っていろいろ考えておるその途中において、ただいまのような非常な多額の税の落ち込みを来たしたと、こういうことはまことに残念であり、これについても、私ども真剣に考えなければならないと思いますから、これもしばしばお答えいたしましたように、今後はその精度について一そう注意すること、これは財政的な要求だけから予算など、税収などを見積もらした覚えはございませんけれども、さらにその精度を高めていくことに一そう努力するつもりであります。  ところで、今度はいよいよ公債発行するのだ、しかも、ことしの公債は今後の、来年度以降の公債とは性質も違う、こういうような意味でたいへん心配をしているわけであります。この公債発行そのもの、ことし、あるいは内容は違うにいたしましても、来年度以降の公債というものについて考えてみると、公債そのものが持つものは、積極政策であることにはこれは間違いございません。同時にしかし、借金であるということも、これは忘れてはならないことだと思います。いわば公債は償金、と同時に、借金までして積極的な態度を保つ、こういうことだと思います。そこに二つの意味があるように思いますので、借金である以上、それが将来の負担になる。先ほど冒頭に、償還計画についてもやかましく言われましたが、この借金が負担になるということは当然のことでありますから、借金が多いということは望まれないといいますか、いいわけではない。これは慎まなければならない。放漫な財政はそこで許せない。借金である本質からいって、放漫な政策は許されない。このことは私どもがまず心がけなければならないことだと思います。そうして、しばしば言われますように、公債発行に踏み切るとどうしても放漫に流れやすい。ただいまの政治的圧力団体というものが各方面にあるじゃないか。また、総裁自身が十分のおもしがきかなければ、必ず放漫に流れるだろう。その心配をしばしば言われるのでありますが、しかし、ただいま私が公言するごとく、これが借金であるということを百も承知している私として、放漫に流れ、いやしくもインフレになるというようなことは絶対にする考えはございません。ただいま産業界自身も、すでに借金でどんどん設備を拡充した、その結果が非常に困った状況を現出している現在であります。私は、この産業界が示しているその轍は、政府自身が踏むべきではない、かように実は考えておりますので、この点は十分注意するのであります。  特に、私が今回公債政策を踏み切るその基本といたしまして、しばしば申し上げておるのでございますが、いままでは、政府自身が健全財政、いわゆる超均衡予算を編成することによって、政府自身の借金というものはほとんどなくてそうして済んできた。政府が借金しないのだから、国民自身は非常に豊かな状態になったのかというと、必ずしもそうはなっておらない。企業自体が十分余裕があるような状態になっておらない。そこで今後、われわれの考えることは、チープガバメント、政府国民あるいは企業の影だという、そういう形において政府をまかなうべきじゃないだろうか。このことをみんなは要望しておるのじゃないのか。そういうことを考えると、政府は一時的に借金することがあっても、国民が富み、また産業の基礎が強固になれば、そのことが望ましいのではないか。こういう意味で片一方で大幅減税も一応実施しよう。同時にまた、政府自身は借金すること、それについてはあまりこわがらない。しかし、借金であるというその本質だけは忘れない。借金であるということを知っておる限りにおいては、放漫に流れないのだ、こういうことを実は注意しておるのであります。私どもが、今回の非常な考え方の相違をいたす、大転換をするのは、ただいま申し上げまするように、在来のいわゆる超均衡予算、それを今度は変えまして、実体は国民だ、実体は産業自体だ、実体は企業自体だ、その影が政府なんだ、こういう形で政府財政予算を編成していくことにひとつ切りかえようじゃないか、こういうことでただいま踏み出したわけであります。御指摘のとおり、これらの問題も幾多の問題を包蔵しておりますから、これは十分論議を尽くしていくべきだと思いますが、ただいままで、私は、あるいは一部において反対もされ、また、その借金をするような状態になっておるかどうか等々の御意見もあると思いますが、私は、大かたの方向としては御理解がいただけるのじゃないだろうか、かように私は思っておる次第であります。
  46. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時五分休憩      —————・—————    午後二時四十分開会
  47. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)外二案を一括して議題とし、質疑を行ないます。木村禧八郎君。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 午前中の財政法四条の特別法の二項の問題、償還計画の問題、あれはどういうふうになりましたか。
  49. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) まだ検討中であります。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 検討中——結論は出ない——ちょっと大蔵大臣に伺いますが、今度の補正国債整理基金特別会計剰余金のうち百十二億、これを一般会計の財源不足に充てることになっておりますか。これは、補正前のことなんですか。国債整理基金特別会計です。これは雑収入の中に入っておった。これは資料として出されておるのですが。
  51. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) ただいまのお尋ねは、国債整理基金特別会計において、今般歳入として剰余金と百十二億受け入れていると、こういう点だと思います。それは、従来、国債整理基金特別会計におきまして本来なさるべき利払い、あるいは償還等が予定どおり行なわれなかったために生じておりました残余のものが運用益を生んだものがあるわけでございます。それが従来はそのままとなっておりましたのを、今般あらためてその運用益を受け入れるという形で歳入に立てたわけでございます。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはこの補正で歳入に立てたわけですか。
  53. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 百十二億を歳入に立てたわけでございます。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、いま主計局長が答弁されたように、いままでは運用益はやっぱり国債整理基金特別会計の資金として積み立て、それはふえていったわけですよね。今度は歳入が減ったので、それを国債整理基金特別会計から一般会計に百十二億繰り入れたんでしょう、こういうような状態なんですよ。ですから、なおさらそういう状態のもとで公債発行するという場合には、償還計画というものは、この特例法の二項にちゃんとあるようにはっきりこれをさせなきゃならない、ますますその必要が出てくるわけです。私は、この国債整理基金特別会計基金の繰り入れを一般会計の繰り入れに回して、ますますその必要を感じたわけです。しかし、いま理事会で、その点については、まだどういう償還計画を出すかについて相談中であるというので、この点については、それが出てくるのを待ってまた質問するとしまして、次に質問を続けたいと思います。  先ほど総理大臣から、私の四十年度歳入予算について二千五百九十億ですか、赤字不足を生ぜしめた責任について質問いたしました。それに対して、るる御答弁がございましたが、これについては十分に私は納得できないのであります。前にも具体的にその事例をあげて、残入歳出面についてあげて私は質問したわけです。特に一番のその責任者である田中大蔵大臣がこれはもうやめられて、大蔵大臣がかわっておるものですから、その点については、これは総理が責任を負うべきでありますが、当の責任者である田中前大蔵大臣がおりませんので、どうも納得できるような答弁を得られないわけです。特に配当の分離課税につきましては、何か不況対策の一環になるような御答弁がありましたので、総理から。もう何回もこれは本論でございませんから申しませんが、総理は、少し大蔵当局あたりに意見を聞いてみるといいのですね。利子とか配当の租税特別措置が一体資本蓄積に役立つかどうかということは疑問なんですよ、疑問なんです。ことに最近のように、企業の財務比率が、他人資本と自己資本との比率が、大蔵省の法人統計によりましても、自己資本比率は二〇%以下なんです、一九・九%、こういうような状態なんですね。そういうときに、まあ企業減税をやったり、資本蓄積のための減税をやってどれだけ効果があるか、問題なんですよ。そんなことよりは、ほんとうの資本の蓄積に役立つならば、可処分所得を多くするということが資本蓄積に一番役立つということは大蔵省の結論なんですから——結論なんですよ。いろいろ上研究した結果そういうことになっているのです。大蔵事務当局によくお聞きになってみればわかるのです。これは税制調査会でも、答申に、一部の階層に優遇を与えるような、そういう利子、配当の特別措置は廃止すべきである。それはどれだけ資本蓄積に役立つか、これは確証がないのです、実証がないのですよ。むしろ大蔵省のいろいろ長い間ずっと調査やってあります。やれば、逆に利子課税をふやしたときに貯蓄がふえたり、減らしたときに減ったりしているのですよ。ですから、ちっとも実証されてないのですね。そういう点でも、もう財源が非常に逼迫し、租税収入が非常に少なくなっているときに配当分離課税なんて、一体何のためにやるか。もう一部のそうした、特にこれは銀行からの要求が強かったと思うのですけれどもね、利子とか配当分離課税の要求は。そういう財界の要求に屈したと思うのです。それから、民間の企業、あるいは個人が借金をした、国が超均衡予算、あるいは健全財政でいいわけじゃないのです。企業とか国民が豊かになることがほんとうの国が豊かになることなんだと言われました。これについてもあとでまた御質問いたしますが、企業の借金というのは一体どうしてできたのかということがひとつ問題なんです。企業の借金を国が肩がわりすることが今度の公債発行ということになるのですよ。そういうことになる、そうでしょう。公債発行する余裕ができたら企業減税してやる、企業減税して借金の負担を軽くしてやるということになるのですね。だから企業の借金を国が肩がわりしてやる、個人の借金を、これは所得税をまけて国が肩がわりするということになるかもしれません。しかし物価が上がってしまえば何にもならないのですよ。だから物価対策との関係で考えなければならぬ。ただ個人の借金を国が肩がわりしてやる、こういったって、これはつじつまが合わない。もっと実際的に見なければ一この点はあとで具体的にこの物価の問題、それから減税の問題と関連して御質問いたします。  続いて、この赤字の二千五百九十億という歳入欠陥ですね、これがどういう計算でこういう二千五百九十億と見積もられたのか。どうも私の見るところでは、これはこの計算した時点が問題でございましょう。その後のこの情勢から見ると、どうも私はさらに歳入欠陥はこれより多くなるのではないか、決算の場合ですね。十月の租税の収入歩合ですね、これが資料として出されました。大体四八・何%ですね、それで計算しますと二千五百九十億では済まないのじゃないかという気がするのです。そこで、二千五百九十億の歳入欠陥を、これを算出した根拠、それといまの収入歩合から見まして、また、今後の経済情勢から見まして、はたして二千五百九十億で済むのか済まないのか、この点をひとつ明らかに御説明願いたいと思うのです。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 二千五百九十億円は、法人税につきましては九月期の決算を見て推計いたしたわけであります。九月期の決算が大体十一月初めになると判明するわけでありまするが、それを根拠とし、なお将来の推移、それから九月期の決算を、出ないものなんかを考慮いたしましてやったと、それから、その他のものにつきまして、は、いままでのいまお話のパーセンテージ、そういうものを考慮し、なお今後の推移を考えまして、一つ一つ検討した結果が二千五百九十億になる。で、それがはたしてそういうふうにいくかどうか、これは政府といたしましては、この三月、一度ひどい目にあっておるわけです。また今回こういうことになったので、三たびそうこいうとがあってはならないというので、かなり確度を高めまして、まあ余裕を見ておるというわけではございませんけれども、万間違いがないようにという見通しを持っております。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、三十九年度のこの歳入欠陥ですか、税収不足を計算するときに、あれは省令ですかね、を改正いたしまして、三月をこえて四月に入ってくる分も歳入に見込むと、こういうふうにしましたですね。この四十年度の場合も、これは三月をこえて四月に入ってくる分も含めての歳入欠陥ですか。
  57. 塩崎潤

    政府委員(塩崎潤君) お答え申し上げます。  ことしの三月、おっしゃるとおり、間接税、それから所得税、法人税につきまして調定の年度区分を改めまして、先ほどお話がございました五百八十億円ばかりの繰り上げ調定をいたしました。しかし、これは恒久的な制度といたしまして会計したものでございます。ところが、いろいろな見方がございますが、発生主義の考え方をとりますれば、たとえば二月蔵出しの分を三月末までに納めなければなりません。一カ月の徴収猶予が担保提供すれば認められる。これは担保提供しないものとの間の関係を考えますれば、三月に収入すべきものというふうに考えて、企業会計の原理から申しましてもさようになると存ずるのでございます。そんなような関係で、恒久的な会計といたしますと、今年度におきましても同じような計算が行なわれるという前提で歳入も見込んでおる次第でございます。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは年度をこえた分も入っているわけです、入っていることですね、結論としては。——わかりました。これはあとでまたわかってくると思うのですが、どうも私は、今回われわれの資料として出されました十月分の税収入の収入歩合が出ています、四八・何%と、それから見ると、どうも決算ではもっと多くなるのじゃないかと思うのですね。だから、まだその場合に、これは公債発行してまかなうというわけにいかないでしょう、どういう処理をするかわかりません。これは問題として私は残ると思うのです。しかし、それは水かけ論になりますから、次に伺います。  この異常な歳入不足を生ぜしめた原因についてお伺いいたします。何がこういう歳入欠陥を生ぜしめたか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年度の歳入の見積もりは、これはいろいろの方法はありますけれども、主としてその根拠となりますものは四十年度経済見通しなんです。これが七・五%ということで、それを基礎といたしまして見積もりをいたしたわけでございます。ところが、実際にはそううまいわけにはいきませんで、二%を幾らか上回ると、こういうような実績になりそうな傾向だ、そこに税収で狂ってきた根本原因がある、かように考えております。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、その根本は、四十年度の本予算、当初予算を編成するにあたりまして、政府が四十年度の経済見通しと、その運営の基本的態度というものを出しましたその見通しと実績との間に非常に大きな狂いが生じた、実質七・五%の見通しが二%何がしに落ちた。そうしますと、見通しに非常な狂いがあったことですね。私は、これはあとでもまた物価の問題でも伺いたいのですが、一体この経済見通しというものは、予算編成にあたっていつもやりますが、何のためにこういう見通というものはできるのですか。これは努力目標と言われております。自由主義経済でありますから、税会主義のような計画経済でないから、きちんとそこまでいかないことは、これは認めます。しかし、努力目標である以上は、実績をその目標に近づける努力をするのがあたりまえじゃないですか。そうじゃなければ意味ないと思うのです。何のために成長率とか、あるいは物価——卸売物価、消費者物価の値上がりというものを何のためにこれを作業をして、そして公表するのだ、われわれの予算審議を助ける参考資料にどうして出すのですか。目標を出したら、どうして目標に近づけようと努力しないか。ただ見通しがはずれたというだけでは済まされないと思うのです。  そこで、重ねて伺います。これは経済企画庁にまず伺いますが、これは七月ごろ経済見通しの修正の作業をやったはずであります。それは新聞に出ておりました。もし政府が七月二十七日のこの不況対策を講じなければ、大体実質七・五%の成長率は二%、二・六%ぐらいこれがダウンしてしまう、そこで一連の公共事業費二千百億を中心とする総需要を一兆円増加する景気対策を打ち出した。それによって大体目標に近づけようという努力をされたんだと思うのです、七・五%。ところが、いま福田大蔵大臣は、大体実績は二・三%とか四%ということなんでしょう。ですから、あの七月二十七日の不況対策は、その七・五%の見通し目標に近づけようと努力したにもかかわらず、何ら効果がなかったということなんですね、何ら効果がなかった。それなら、この経済、景気の見通しを誤った。それであの不況対策は甘かったということになると思うのです。あの程度の不況対策ではいまの七・五%にとうてい達し得なかった。いまから考えるとそうでしょう。そこに政府の責任があるわけです。政府は二千五百九十億の赤字を出さないために、七・五%のあの成長率でいけば出ないという計算であったわけです。ところが、落ち込みがひどかった。そこで七月二十七日に不況対策を出した。だから、あの不況対策で成長率が二・六%にダウンするのを押えて、そして七・五%にはかりにならなくても、七%なり、あるいは六%なりに回復させればこんなに大きな歳入欠陥は生じなくて済んだと思うのです。そこに政府の私は政策の誤り、それから、景気の見通しに対する甘さ、また、この不況対策に対する対策の的はずれ、そういうことがあったと思うのです。そこで、経済企画庁があのときに、七月です、修正作業を行なった。あのときにどういう修正作業をやって、そうしてそれによってどの程度まで、最初の見通しに近づけるようにこの作業をやったのかどうか。そういう作業に基づいて七月二十七日の不況対策というものは出たと思うのです。で、結果から見まして、全然これは効果がなかったと思う。そこに大きな欠陥があったはずです。その欠陥は一体どこにあったか。その欠陥をはっきりすることによりまして、今後不況対策の手をどこへ打てばいいかということがはっきりしてくるわけです。その点について企画庁長官に伺います。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 七月二十七日に不況対策二千百億を決定いたしまして、そうしてやったわけで、当時の状況から言えば、まああの程度のことで相当に浮揚力がついてくるんじゃないかと、こうわれわれ考えておりまして、七・五%というような当初見通しにはどうかと思いますけれども、しかし、いまお話のように、近いものにいくんじゃないかと思ったのですが、ただ、若干私どものその錯覚と申しますか、あったのは、七月二十七日ではすでにおそかったということが考えられます。したがって、九月期決算になかなかこれは間に合いかねた。したがって、税収の上では、やはり九月期決算に影響するような問題であれば、やっぱり半年ぐらい先から始まらんと、なかなか期に影響するような景気対策ということにはならぬと思います。  それから、もう一つは、やはり地方財政の関係もございまして、例の六月にやりました一割削減というか、その結果として、地方における公共事業費等が非常におくれてまいりました。したがって、二千百億円のあのときにきめました緊急措置による需要というものは、順調に九月から十月に出ております。したがって、その面の支払いというのは、相当九月、十月、十一月と進んできておりますが、しかし、普通予算におきます支払いが十月まで昨年度よりも少なかったという実情にございます。したがって、両方合わせましてもそれほどの需要の刺激にならなかったというようなことがございまして、そこいらがわれわれ見違えたといえば見違え。正直に申し上げて、この六月一割削減があすこまでひどく影響するというふうに思いませんでした。一ぺんああいうことを地方に出しますと、相当地方各公共企業団体等が事業に対する組みかえをやる、またもとのとおりになる。その間、県会、あるいは市会、あるいは地方議会との関係がございまして、最終的決定がおくれてきました。ですから、四十年度予算に認められ、また、実行するような地方における公共事業、そうして中央から補助金を出すというものがいま申し上げたようにおくれておる。私どもは、その辺が、七月にやりましたときに考えましたよりも、予期したように出てこなかったという感じがいたします。これらの点については、今後そうした景気対策をやる場合に非常に参考になると思いますので、われわれとしても十分に考えていかなければならぬと思います。  それから、やはり一般的に予測いたしますときに、統計数字をとりまして予想を出してまいりますけれども、根本的には統計数字の整備というものが日本はとかくおくれがちでございまして、まだ十分そこまでいっておりません。したがって過去の、相当古いとは申し上げませんが、距離を置いた期間の統計である。その上で私はやはり統計で予想することは、これは過去のトレンドで、大きな流れの上からいって適当でございますけれども、そんなような大きな変化の場合には、心理的作用が相当強気に響く場合、弱気に響く場合、もういけないということになると、日本人はとかくしおれがちになり、いいとなれば景気が出てくる。これは日本人のある程度民族性であって、いいところもあり、悪いところもあるでしょう。そういうものが相当経済の運営に作用していくのではないかという感じがいたします。したがって、十分な統計を整備して、統計をきちんと材料にして判断すると同時に、その時点におきまして、やはりそうした経済界の人が非常に意欲的に働くのか、非常に意欲を失っておるのか、そういうような判断の上に立って、やはり現実の産業の動きというものを見なければならぬのじゃないか。これはなかなかむずかしいということでございますけれども、そういうような今度の異常な事態に対処してやってみまして、感ずるところが多かったのでございます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あの見通しは何のために立てるのか、この点について御答弁を……。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん自由主義の経済ですから、統制経済と違いまして、しっかりくくりつけてしまうために計画を出すということではありません。したがって、見通しということになろうと思います。したがって、それですから、見通しとては、可能な範囲内において、正しくこれからいま現時点におけるような状況が今後動いていった場合に、各般の外部的事情の影響を受けて動いていった場合にどういうふうに動いていくだろうかというところを、ある程度過去のトレンドと、そうしていま申し上げましたものを加えて将来の傾向を察知していく、そうして、そういうふうにいくのであるならば、やはり財政計画にしても、あるいはその他の計画にしてもそういうふうに進めていくべきじゃないだろうか。それに対応して考えていくべきじゃないだろうかという、これは私は現在の見通しを出す考え方だと思います。むろん自由主義経済をやっておりましても、経済計画と申しますか、もっと大きな意味における見通しを出す。たとえば所得倍増計画というような一つ考え方のもとに見通しを出すという場合もございますけれども、年度における見通しというものは、いま言ったようなことで誤りなきを期していく、こういう考え方で見通しを出していくと、こういうことだと思います。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。  いまの経済見通しの問題ですが、実は木村委員とともども、われわれ過去何回も、もう二、三年前から、いまお話の所得倍増計画、この達成の過程で、今日までの高度成長というものが民間設備投資中心の経済であった。したがって、これは必ず将来不均衡が生じて、格差も拡大をして、それから経済の伸びもにぶって、したがって、税の自然増収は必ず減少していく。一方、歳出の硬直性はいよいよ強まって、予算編成はほとんど不可能になるのではないか。これはもう二、三年前から指摘してきているので、御記憶があると思う。何回も指摘いたしました。ところが、当時、田中大蔵大臣は、何も御心配は要りません、経済は安定成長路線に乗って、必ず予定の税収は確保できます、こういつも答えてきた。また、ことしになりましても同じことを承りました。速記録にも載っております。ここにも持ってきておりますけれども、同じことを答えた。ですから、私は、木村さんは専門家ですが、しろうとの私どもですらわかることが、専門家の政府財政当局にわからぬはずはない。私は、わかっておったのではないかと思う。わかっておったが、急に修正することもできないし、この程度の見通しがわからぬということで財政当局がつとまるはずがない。だから、わかっておったが、しかし、そこまで言うのはどうかと思うけれども、田中さんとしては、あとは野となれ山となれ——これは極端な言い方かもしれません。また、福田さんには、はなはだお気の毒なときに大蔵大臣になられたと思いますが、それが私は問題ではないか。そういう意味の私は政治的な責任は相当あると思う。しかし、もう去った人にかれこれ言ってもしかたがありませんけれども、これは決して単なる経済の見通しの誤りだけではなしに、そういう事情も相当伏在しておったのではないか。もしそれでなかったというならば、こんなしろうとのわれわれにすらわかることが、しかも、過去二、三年前から繰り返し繰り返し指摘してきたことがわからないでどうして財政当局がつとまるか、こう言わざるを得ない。  これはちょっと答弁の筋ではないかもしらぬけれども、一応承っておきます。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) おそらく、いままでの経済発展の段階については、あるいは戦後経済の運営については二つの見方があったと思います。これは学問的にというような立場の根拠の上に立っても、非常に、何と申しますか、私もそう学術的なものの言い方はできませんからあれですけれども、非常にとにかく膨張さしていって、それを回転さしていけばそのままでいけるのだという行き方、それは一時は苦しい状態があっても。  それから、もう一つは、やはり健全な財政運営のもとに立っていかなければならぬ。そうして、民間においても、いたずらな競争だけでなしに、均衡ある成長を遂げるようにしていかなければならぬのだと、こういう二つの議論が、おそらく学界でも財界でも、私はあったと思います、そのいずれがよかったかということは別といたしまして。そういうことでございますから、経済の前途に対する見方等についても、あるいはその運営についても、若干のそれぞれ責任する立場に立っておられる方々のやり方が違っていたそのこと自体は、あとは野となれ山となれという意味ではなくして、それ自身が、ほんとうにりっぱな経済を立てるのだというそれぞれの信念のもとに出て、そうして運営されたことだと、私はそう信じております。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど企画庁長官は、この見通しについては、このままの状態ではかくかくになるだろう、そこで、政府はこういう政策をやることによって、ある方向を与える、こういうような見通しだというのですね。現に出てくる予算の編成の前提となる見通しには政府の政策というものは加味されていると思うのですね。加味されて、たとえば今度四十一年度の経済見通し、予算編成の前提としての見通しをやるときには、たとえば公債発行が七千億くらいあるだろう、あるいは減税が三千億くらいじゃないか、物価の値上がりが、大体藤山長官は五%くらいと言っていますが、これは五%上がったらたいへんなものだと思うのですけれでも、そういう政府のある政策が加味され、そうして客観的にほうっておけばこうなるだろう、それに政策が加味されるからこういう程度になるだろう、こういうことなんですよ、見通しは。それならば、そこに政府の政策的意図が含まれているのですから、ある段階にきて、たとえばことしでも、七月二十七日に緊急対策を打ち出したのです。政府の見通しの七・五%にはとてもならない。だから緊急対策で七・五%に近づけようとする努力をされたわけなんですよ。だから、その目標というものは、そういう努力目標であるべきだと思うのです。そうかどうかということを聞いているのです。いや、努力目標じゃないのだというなら、何のためにそれをおつくりになるのか。努力目標なら、物価でも成長率でも、あるいは設備投資にしましても、あるいは税制、金融政策等を通じて、大体努力目標に近づくような政策を行なうというようなことにならなければならぬでしょう。きちんと七・五%にせよというのじゃないのですよ。だから、努力目標であれば、その目標に近づくような努力をしなきゃならないと思うのですが、そういうものであると私は思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 予算編成のときに大体予算をきめていく、そうすると、減税でありますとか、政府投資、そういうものの数字が大体きまってきて、これならばこの程度にいくだろうということは一つの政策的な目標でございます。したがって、そういうものがそういう見通しができますれば、それが努力目標として、その目標が誤りないようにやっていかなければならない。しかし、いろいろな情勢がございますから、その間、それが変化する場合があれば、それはそれに対応して政策そのものも変えていかなければならぬと思いますし、目標自身も、場合によれば変えなければならぬかもしらぬ。ですから、やはりそういうものをつくりましたときには、私は、事こまかく、やはりこういう線でことしの経済というものは運営するのがいいのだ、政府としてはこういう形で政府投資をするのだ、あるいは政府需要を喚起する、あるいは減税というものはこういう扱いをするのだという目標をきめましたら、その目標に沿ってそれが間違いなく運営されていくように心がけていかなければ、その間にいろいろな他の事情でそのいろいろな条件が変わってくれば、その変わったものに対して対応するように政策を柔軟性を持ってやっていって、その目標が大きく誤りなきを期していく、こういうのがやはり政策になってくると思います。ですから、努力目標では当然あるわけでございますが、努力目標だから、非常に場合によると過大に見積もっていく場合も政治的にはあると思います。あるいは努力目標だから、できるだけ内輪に目標をきめて、そうしてその目標以上に成績が出たということを考えるというような考え方もあります。あるいはいまのところ政府の考えを少し強調しておいて、これくらいいくのだ、若干それはおくれても、このくらいの勢いをつけるのだという点で、若干の政治的な意味で数字をいじらないことはないのでございます。また、そういうことで、いろいろああいうものをつくります間に、それぞれ担当者の間にも議論がございます。そういうものだと思います。     —————————————
  68. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、笹森順造君が辞任され、その補欠として大谷贇雄君が選任されました。     —————————————
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど羽生委員も指摘されましたように、これは何回ももうここで論争したのですが、政府のほうはちょっともこれに対してわれわれを納得せしめるような答弁がないのですが、抽象論はさておきまして、七月二十七日の不況対策を打ち出した時点に、すでに政府部内で、こんな程度の不況対策では効果がないと、はっきりと批判しているのですよ、政府内部で、そうでしょう。まず建設省です。建設省の、これは志村計画局長が八月の七日に発表しています。こう言っています。二千百億円の財投の追加投資は鋼材部門の操業度二%程度、セメントの操業度四%程度の引き上げにすぎない。セメント、鋼材は六〇%程度の通常操業率なのでほとんどたいした効果なし。景気回復にはほど遠い。だから、この資料を基礎に建設公債などによりさらに大幅に政府投資の拡大を要求する方針であると、こういうふうに言っているのですよ。この程度ではたいした効果がないということを、まず建設省が言っている。第二は、経済企画庁です。この修正の見通し作業によりますれば、てこ入れの第一と、てこ入れの第二と二つ出しているのです。そのてこ入れの第一というのが七月二十七日の不況対策だと思うのです。これを打ち出しても結局名目成長率は八・六%、実質成長率は四・一%程度だ。第二次てこ入れをやっても名目は九・九、実質は五・六、当初見通しにとうてい及ばない。こういう作業が出ているわけですね。ですから七月二十七日の不況対策を打ち出したときに、すでに経済企画庁なり建設省は、この程度の不況対策で景気浮揚力なんかになりっこないと、ちゃんと批判しているのですよ。政府部内ですらそうなんです。ですから、この不況対策は、政府は、いやこれは最初千億——これもおかしなことなんですけれども、留保するなんというようなことを出して、あとでそれを訂正して、八百五十億ですね、これは留保を解除するとか、あるいは二千百億財投をふやすとか、あるいは建設省とか農林省あたりの支出を繰り上げるとか、いろいろして一兆円の購買力をつけるといって、ああいう方針を出したのです。しかし、それも政府は、いやいまは効果がないけれども、だんだんにこれは浸透してくるのだ、そこで、ことしの秋ごろ、もう秋は過ぎて初冬になっていますが、つま先上がりに景気はよくなると大蔵大臣は言ったのですが、ならないです。それはもう最初からこの不況の実態に対する認識が、欠けておって、それで七月の二十七日のあの程度の不況対策でこの不況が打開できるはずがないということはわかっているのに、政府出している。そうして第一、政府の大きな見込み違いとしては、この不況は不況ムードなんだと、心理的に先行きを心配しておって実際以上に深刻ならしめる、だから長期減税、長期公債発行すればこの不況ムードはすぐになおるのじゃないか、この程度の認識だったのです。ところが実際はどうですか、そのとおりにならない。したがって、あのときにあの時点において効果ある景気対策を立てておるならば、成長率は七・五%には回復しなかったでしょう。しかし、二・三%まで落ち込むような、ここまで落ち込ませるようなことはなかったのじゃないか。そうすれば、二千五百九十億の歳入欠陥は生じないで済んだのではないか。この点に、政府のこの不況の原因に対する分析の誤り、それに対する対策の的はずれ、そうした政策上の責任があるのじゃないか。総理大臣はどういうふうにお考えですか。これは重大な責任である。この二千五百九十億の赤字をもたらした直接の責任であるとともに、このために赤字公債までも出す、また非常に中小企業の戦後最高の記録をずっと持続せしめて不況を深刻ならしめ、倒産を続出さしているそういう原因にもなっておるのです。これは政府の政策上の大きな失敗であると思うのですが、総理大臣の所見を伺いたい。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ちょっと私から。  先ほど企画庁で七月に何かそういう作業をして、四・五%でございますか、四・五%かそれくらいにしかならぬということは、それは企画庁自身の作業じゃございません。われわれそういう作業をしたことはございませんから、その点だけはひとつ御理解をいただきたいと思います。同時に私は、さっき木村さんも言われましたように、木村さん自身もこんなに不景気、ひどい状況になろうとは思わなかった、これは今度の場合は非常に特殊なケースであって、実はあまり歴史的にもないのじゃないか。したがって、われわれ景気の判断、現実の事態を見誤ったということについて、決して責任を免れるものじゃございません。しかし、非常に判断がむずかしかったということだけは、私はそう思わざるを得ない。ですから、やはり今後そういう意味においての注意はしていかなければならぬと思いますけれども、ただ事態が非常にむずかしくって判断しにくい情勢である。木村さんのような方でも、こんなにまで落ち込むとは思わなかったと言われるような事態でございますから、その点はひとつ御理解を願いたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、木村君の責任があるというわけじゃございません。ただ私どもが特に気をつけなければならないことは、政府が処置をとったその処置が一体どのくらいしたら出てくるか、たとえばいわゆるカンフル注射ということばを使いますが、この注射は事実打てばすぐ心臓に響いてくる、私どもの経済の措置としていわゆるカンフル注射をしたが、それは相当の期間を要する、このことはわかっていただけるだろうと、かように私は思います。ことに最近の事務能率その他も、必ずしも私どもが期待するように事務能率があがっておるとは思いません。たとえばいまの財政投融資をふやすということをきめましても、それが具体化していくまでに実際に相当の時日を要する、それではじめて効果があがるのでありますから、そういう意味の問題もひとつ御理解がいただきたい。  それからもう一つは、やはり何といいましても、政府はこの際に不況を克服することも努力はいたしますが、物価に対しての注意も絶えず怠らないようにいたさなければならない、そういう意味では物価に対する影響、ことに力、財政的な力といいますか政府が持っておる力、そういうものも勘案してやるわけでありまするので、ただいまのように時期的に間違った、あるいは量的に非常に少なかった、かように言われることは、そういう非難もあるだろうと思いますが、その効果というものが、私が申し上げるようにすぐ右から左にいくものじゃない。そういう意味でしばらく時間をかしていただきたい。ただいままた物価等の影響もありますから、いわゆる波及率の高いもの、そういうところに目をつけてこの限られた資金を流していくということにまあ努力したわけであります。まあもっと具体的に申せば、たとえば造船などこの造船資金をふやす、そうすればこれは造船、同時に関連中小企業の分野ができる、かように思いますが、この造船資金をふやすこと自身にいたしましても、計画をとり、そうして個々の会社に船の建造を許すまでに相当の時間がかかっておる。あるいはまた鉄道の車両をつくる、これを許すことによりまして波及率なかなか高いものがある。あるいは電気関係のものにいたしましても電電公社が注文をする、これなども波及効率の高いものだと、また道路をつくるよりも、やはり住宅を建設することのほうが波及率が高い、これなぞも十分考えて計画を実施しつつあるのでありますから、とにかく私どもも御指摘のようにもっと早い機会に効果が上がるだろうと思った、それが時期的にだいぶおくれてきていると、まあ最近この十二月になりまして、十一月、十二月になってこの予算の繰り上げ使用や、あるいは財政投融資等もまとまってその効果を発揮しつつある、かようなことが見受けられないかと、こういうことでいまの事態を見ておるのでありますが、ややそういうものも出てきておるように私は思っておる次第でございます。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど企画庁長官がですね、私が指摘しました経済企画庁の試算した経済見通しですね、第一次てこ入れの場合、第二次てこ入れの場合、これは新聞に発表されておりました。日本経済新聞に発表されていました。企画庁試算としてありました。詳細にですよ、詳細に個人消費、民間設備投資、民間在庫投資、個人住宅あるいは政府財貨サービス購入等詳細に出ているんです。ですからこれは公式にきめたものでないかもしれませんが、まあ試算となって試みの算定となっております。しかし、こういう作業をやったことは、これは私は事実だと思うんです、これほど詳細に新聞に載るんですからね。ですから、これから見ましてもどうも経済企画庁では七月二十七日程度の不況対策ではとてもこれは七・五%、当初見通しまで成長率を浮揚させることはもちろん困難である。第二段の不況対策を打ち出してもなおかつ七・五%までなかなか浮揚しないと、回復しないという見通し、作業があったことは、これは決して否定できないんだと思うんですよ。ところで、いま総理からその不況の対策の効果がなかった、これについていろいろ言いわけするわけではないがという前置きで、まあ御答弁がありました。私はここで抽象論を戦わしていたんではいたずらに時間がたちますから、具体的に問題を提起しまして、政府の不況の原因に対する分析の誤まり、対策の的はずれを指摘いたしまして、私は質問してまいりたいと思うんです。  まず不況ですが、資本主義の経済のもとで不況ということは、これは御承知のように資本の利潤率の低下です。これがもう総合的にこの不況をあらわしているんだと思うんです。つまり企業がもうからなくなってきている、利潤率が低下してきているということだと思うんです。これが不況の実態だと思うんです。そこで、利潤率の低下をもたらす原因には、大きく分けて二つあると思うんです。一つは、現実に見まして、いま設備過剰、生産過剰から操業率が非常に落ちていることです。この点については通産大臣からも実情承りたいんです。最近のこの時点における主要商品の操業率、前にも伺いましたが、現在どの程度であるか。これは事務当局でもけっこうです。どの程度までに操業率が落ちているのか。これから見ますと、非常な操業率が落ちておる。そこでコストが高くなるんですね。このコストが高くなるということが利潤率が下がる一つの大きな原因だと思うんです。つまり生産と消費が不均衡であるということにもなろうと思うんです。そこで、政府はこの生産と消費の不均衡につきまして認識が甘いのじゃないかと思うんです。それで二つの点で私は政府が甘いと思うんです。  一つは、現在、あとで通産省からも操業率につきまして具体的に主要備品について御答弁願いたいと思うんですが、まだ操短の最中ですよね、ですから現在はまだ操短による有効需要の減少過程が続いていると思うんです、現在は。親会社が操短すればその子会社の仕事が少なくなる。その下請の仕事が少なくなる。そういうところで従事している人の所得が少なくなる。このマイナス的波及効果ですね、これがいま続いている過程ですよ。景気が底をつかないということは、そういうマイナス有効需要の波及効果が進行中であるということだと思うんです。これの有効需要の減退というものは相当大きいものだと思うんですね。これに対して政府は過小評価しているのじゃないか。  それからもう一つは、物価値上がりですよ。物価値上がりによる大衆購買力の相対的な減退ですよ。これは福田大蔵大臣と私は根本的に見解が違うんです。あなたは不況対策と物価対策が矛盾するように思っている。それで現状は不況対策に重点を置くと、物価対策は二次的に考えているように言われておりますけれども、そうじゃないですよ。生産と消費の不均衡を直すためには、物価が上がったんでは大衆購買力は減退するんですよ。消費者米価を上げる、鉄道運賃を上げる、医療費を上げる、郵便料金を上げる。これについてどのぐらい国民の所得が吸い上げられるか。これは担当大臣に私は具体的にまず伺います。農林省は八・六%消費者物価を上げて、これはどのぐらい国民の所得を吸収することになるか。    〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕 それから運輸大臣ですね、国鉄運賃、あれ平均二五%上げるんですか。これによってどのぐらい国民の購買力を吸い上げるか。医療費の引き上げによってどのぐらい吸い上げになるか。郵便料金の引き上げでどのぐらい吸い上げになるか、これを各担当大臣にそれぞれ御答弁を願いたいと思うのです。  そうして、そういう物価値上がりといっても公共料金が主なんですね、最近では。大衆購買力を吸収しておいて、そうしてこの景気の浮揚力をつける、有効需要を増やそうといったって、これは矛盾していると思うんですよ。  それからもう一つ、いまの設備過剰の過剰の状態について認識が甘いと思うんです。というのは、大企業が銀行から金を借り、日本銀行から金を借りて設備を拡張するということはだれにもわかっている。ところがそのほかに、企業間信用によって二十兆以上の掛け売りをしているわけです、企業間信用で。本来ならばそれは運転資金として持つべきものなんですよ。その逆転資金として持つべきものまでも企業間信用としてこれを掛け売りにして、その金までも設備投資に投じたというのが実態ですよ。そうなると、この設備過剰の実態というものは、日銀のこのオーバーローンの状態、あるいは市中銀行が貸し出しを多くしたこと、そのことだけから測定したのでは私は過小評価だと思う。企業間信用というものを含めてものすごく信用膨張になっている。それによって設備が拡大された。まず私は政府の認識の甘さがある。設備過剰の状態についての甘さが一つあったんじゃないか。  それから有効需要を一兆円つけるというけれども、他方において生産性を、操短することによって有効需要がマイナスになる面、またマイナスになりつつある。中小企業がどんどんつぶれているじゃありませんか、ですから景気が底をつかない。そういう面と、物価値上がりによる有効需要の減退、こういう面について甘さがあったんじゃないか。ですからその不況の実態の認識に欠けるところがあり、だからその対策が的はずれにな  る。これは一つの原因ですよ。もう一つありますが、これは御答弁願ってから、もう一つの原因に  ついて私は質問いたしたいと思います。
  73. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私に対する御質問は稼動率に対しての御質問であります。これは昭和四十年七月の稼動率ですが、粗鋼七二・一%、石油(精製)六八・六%、セメント六〇%、合成繊維八六・三%、塩化ビニール八一%、洋紙八二・三%、板紙八一・五%、工作機械五六・九%、カメラ五八・四%、テレビ受信機五三・一%、電気冷蔵庫四八・五%、こういう資料が……
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何月現在ですか。
  75. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 昭和四十年七月です。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 七月ですか、それ以後は……。
  77. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 以後は資料として出します。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 新聞には九月まで出ているんです。私はもっと十月ごろの数字の御答弁があることを期待していたのですが、七月ですと、七月から九月決算を経てさらに落ち込んでいるんですよ。ですからその数字が大切なんですね。不況対策を講じてなおかつ操業率が落ちているというところに問題がある。
  79. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 十一月ですが、いまのは全部そろっていないですが、粗鋼六八・五%、電気銅八八・八%、石油(精製)八二・七%、セメント六九・一%、塩化ビニール六八・四%、洋紙八二・六%、板紙七九・六%、これは十一月です。九月のはほかに……。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 カメラとか電気……。
  81. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) カメラはここに九月がございますが、九月が六〇・八%、それから何ですか。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 工作機械です。
  83. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 工作機械の九月は五九・四%。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それからテレビとか家庭用電気製品ですね。
  85. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) テレビは五〇・六%それから電気冷蔵庫五〇・五%、卓上扇風機三四%、電気洗濯機六六%。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連。ただいまの通産大臣の部分的にお読みになった資料、全部一括して配付していただきたい。
  87. 大谷藤之助

    理事大谷藤之助君) 通産大臣、よろしゅうございますか。
  88. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 承知いたしました。
  89. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 消費者米価の問題でございますが、ちょうど物価指数にしますと、その当時の一カ年のうち三カ月だけ上がるわけですが、そうしますと〇・二%、〇・二%程度の影響でございますから、消費者米価としては影響はあまりないつもりでおるわけです。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことを聞いているのじゃないのです。質問の趣旨がおわかりにならなかったと思いますからもう一度申し上げます。  前に昭和三十九年に一四・八%上げましたね。あのときにこういう質問をして御答弁を得ているのです。三十九年度分として、全体であれは千五百億ぐらい国民が消費者米価引き上げによって負担することになる、もし米価を上げなければ、食管会計に繰り入れなければならない金が千五百幾らということなんです。もし四十年度で、今度来年一月から消費者米価を上げなければ食管会計にどの程度繰り入れなければならないか、それで政府がどれだけ繰り入れるから、残りどのくらい国民が負担するのか、その金額を伺っている。
  91. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 今度は消費者米価を上げなければ千七、八百億ちょっとになります、千七百億。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで政府はどのくらい繰り入れなんですか、そのうち。
  93. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 現在それが千二百幾らを負担することになります。現在消費者米価を上げたために今度政府の負担が千二百億ぐらいになる。(「勘定が合わぬぞ」と呼ぶ者あり)
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 要するに八・六%消費者米価を上げますと、そうしますと、それだけ消費者がよけい負担することになるんですよ、その分が幾らかというのです。だから上げなければ食管会計に繰り入れなければならない分が幾らあり、それで政府が今度繰り入れるものは、ほんとうなら全部赤字をなくすためにはもっと上げなければならないことになるでしょう、計算では。
  95. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 全体として千七百億負担するはずの、政府の負担しなければならないはずのものが、今度は消費者米価を上げたために千二百億、いま正確な数字をここで持っておりませんが、千二百億程度になるわけでございます。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。ちょうど差し引き五百億が国民の負担になるということですね、農林大臣それでよろしいですか、そういうことで。
  97. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 私、食糧特別会計の全体を申しましたわけでございますが、それで昨日のあれでいきますと、大体六百億になります。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですが、わかりました。
  99. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 第一は、政府管掌の健康保険についてであります。保険三法の財政対策を中心とした改正法案を御審議をお願いすることになるわけでありますが、それによりますと、標準報酬の上限の引き上げ、五万二千円を十万四千円に引き上げることによりまして百三十八億円、保険料率を千分の六十三現在取っておるわけでありますが、法律の面では六十五でございます。それを料率を千分の七十に改訂をいたしました場合に二百九十億円、計四百二十八億円、これが政府管掌の健康保険でございます。  それから国保につきましては、市町村団体ごとにやっておりますので、的確なことは把握できないわけでありますが、推定といたしまして百五十億円、それから国民年金の改正をいたしたいと考えておりますが、これが昭和四十二年の一月一日から実施する考えでございまして、四十四億円、ただし、この国年のほうは申し上げるまでもなく貯蓄になるわけでございますから、御了承いただきたいと思います。
  100. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 郵便料金の引き上げにつきましては、まだ政府として的確に料金をきめておるわけではございませんけれども、郵政審議会の答申によりますると、四十一年度で約二百九十億料金の引き上げをいたす、御承知のように、家計調査によりましても年間、この数年間、〇・一四の程度、そういたしますと収入をどういうぐあいに全体を見てまいりますか、四十一年度、的確にはわかりませんけれども、それにいたしましても〇・〇二程度上がる度合い、従来も月六十四円、年八百円の程度でございますが、それが〇・〇二の程度響くことに相なろうかと思います。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 運賃、国鉄があるのです。
  102. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) ちょっとはっきり……。忘れておりましたのですが、国鉄関係の国民負担でございましょうか、——質問の要点は、国鉄関係の値上げによって国民負担率が上がると……。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ。国鉄の運賃引き上げによりまして、どのくらいの国民負担になるか、また私鉄等もわかれば、もちろんそれも承りたいわけです。
  104. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 国鉄関係は、予定どおり二月十五日から上げたと仮定いたしますと千六百五十億、私鉄のほうも、大体まだ私鉄のほうはいま引き上げる時期がはっきりいたしておりませんが、大まかに見まして三百億ぐらい……。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 航空等はどうですか。
  106. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 航空のほうは、いまのところ、ちょっと資料持ちませんが、それは大したことないと思っております。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま伺いましたところだけでもたいへんな購買力の、大衆購買力の引き上げになるわけですよ。しかもそれは普通の課税と違いまして、所得税等の税金と違って、これは貧乏人も金持ちも、同じに負担するものですね。そこに、ことにまあ低所得層のほうの購買力ですね、そういう人たちは消費性向が強いわけですから、そういう人たちの購買力を吸い上げれば、それだけ有効需要は減少する。それだけでなく、これの他物価へのはね返りがあるわけです。これを考えれば、経済企画庁長官も来年五%ぐらい見ているのですね。来年諸物価五%あるいは五・五%ですね。五%の値上がりというのはたいへんなものですよ。それで物価を押えるなんということはとても言えたものではない、これは異常です。大体いままでの政府の答弁ですと、正常なる物価、つまり経済成長率の大体三分の一くらいはこの摩擦的騰貴としてやむを得ないだろうといわれていた。だから、名目一〇%なら三%ぐらいに押える、これに対してもわれわれ賛成しておるわけじゃないのですけれども、いままで自由主義経済のもとでは成長率の三%ぐらいは摩擦的騰貴でしょうがないだろう、それが安定成長のもとにおける物価のあり方ですよ。ところが、すでに来年は安定成長の段階に入るのだといいながら五%見通していることは、これはもう安定成長じゃありませんよ。それはまあとにかくとして、いまお話ししたように、これでは不景気を政府が促進していることになるじゃありませんか。また今後促進することになる、有効需要のほうからいって。これまでだって、今年一月から消費者米価を上げて、そうしてそれによってほかの諸物価に波及しまして、とにかく佐藤内閣になってから、戦後、昭和三十五年以後最高の消費者物価の値上かりですね。七%、七・五%というのは最高ですよ。佐藤総理大臣になってから、物価対策にこれは国の重要な政策だから取り組むといわれておりながら、最高の値上がりを佐藤政府のもとで示しているわけですね。こんなに物価が上がっちゃったんですね。有効需要が相対的に減退する。これは不況を促進して、つまり生産と消費のアンバランスをもっと促進するのであって、その点は、大蔵大臣、どうも私はわからないのです。物価値上がり、特に消費者物価値上がりと不況対策と何か矛盾して、不況対策をやれば支出が多くなる、そこで物価が上がるように思うのですね。だからこれはやむを得ないのだ、それでまあ、いまの不況の落ち込みを回復させてから何か物価を安定のほうに今度全力を上げるというふうな印象なんです。第二義的に考える。だから矛盾するといわれているのだろうと思うのです。ところが矛盾じゃないのですよ。これは同時達成しなければ不況対策にならぬのですよ。物価をどんどん上げて、鉄道運賃、私鉄運賃、消費者米価、このように、ことに消費性向の強い低所得層の購買力を吸い上げる。減税やったってそういう人たち減税届かない人がたくさんいるのですから、社会保障によって補うといいますけれども、社会保障も受けられない、所得税減税の恩典も受けられない人はたくさんいるのです。ボーダーライン層を含んでたくさんいます。そういう人たちは、物価値上がりによって有効需要吸い上げられっぱなしですよ。それは家計としても問題でありますが、景気対策としても問題だと思う。その点について、どういうふうにお考えですか、まず総理はじめ大蔵大臣に伺いまして、それから第二の、不況対策の問題の的はずれについて御質問したいと思います。
  108. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、当面問題が二つあるの、だが、一つは、日本経済を不況から脱出させなければいかぬ、同時に、日本経済を安定成長路線に乗せなければいかぬ、こういうふうに思う。しかし、この二つは矛盾する面があるのです。つまり景気をつけよう、経済に刺激を与えよう、こういうのですから、どうしても安定成長、その第一の課題は物価の安定でございます。これは私は明らかに矛盾する面をはらんでおると思います。それを矛盾なくやっていくということが、この苦心の要るところなんです。しかし、今日の時点で何が一番ウエートを置いて考えなきゃならぬ問題であるかといえば、これは経済の不況を脱出する、こういう問題だということを申し上げておるのであります。しかし、それが物価に著しい影響がある、こういうのじゃ困る。そこが苦心の存するところである、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは不満足です。これは今後の経済の実際の推移を見ればわかります。私は、これは単に攻撃するために攻撃しているのではないのです。いまこの実際の不景気の見方について間違っている点を指摘しているのですよ。ですから、なるほど矛盾した面もあるように思うのです。あります。だけれども、それは大蔵大臣観念的にそう思っているので、実際いまの物価問題がいかに大衆の購買力を多く吸い上げて——大蔵大臣、勤労者の家計をお聞きになってごらんなさいよ。いまの賃金でこれだけ物価が上がって、きのうも衆議院で、あれは大原委員の質問に対して企画庁長官お答えになっていますが、実質収入減っているんでしょう。名目賃金はふえて、減っているんですよ。減っているのなら、有効需要は減るのがあたりまえじゃないですか。そこで、不況対策として景気を浮揚させようさせようといったって、実質所得を減らしておいてどうして不況対策になりますか。なぜ実質所得が減るかといえば、それの大きな原因は、名目的にはふえているのだけれども、それ以上物価が上がっているのですよ。そこに問題があるのですよ。その点ですよ。その点を、これは税制の面からも、それから賃金政策の面からも、公務員の給与、これは六・七%でしたね、今度ベースアップでしょう。消費者物価は七%上がるのですよ。政府の御答弁でも七%なり七・五%、あるいは八%になるかもしれない。それで、六・七%公務員の給与を引き上げて、それでは実質購買力は減るわけなんです。そうでしょう。実質購買力は減るんですよ。そういう政策をとって、どうして消費と生産のアンバランスを直すことができるでしょうか。そういうところに根本の間違いがある。これは検討されるべきであると思うのです。  で、私は不況がいいということは言っていないのです。それは不況はインフレよりさらに悪い、デフレになって。インフレは私は賛成しているわけではないが、これは失業という問題が起こります。重大な問題ですよ。ですから、この不況を放置してよろしいというのではなく、何とかこの不況を打開しなければならぬ、健全な経済基調に持っていかなければならない、これは社会党の立場です。そういう点からも社会党は真剣に取り組んでいるのですよ。だから、不況の原因は一体どこにあるか。資本主義経済のもとでは、不況は利潤の低下ですから、その低下の一つの原因は、いまお話ししたように消費と生産のアンバランスです。そのためにものすごい操短をやる。これはうしろ向きの不況対策であります。そのためにコストが高くなるのです。その点についての対策が十分でない。  その次に伺いますが、もう一つの不況の原因は、資本費が非常に大きくなっているということですよ。この資本費の中には、御承知のように銀行に対する利払いと減価償却の二つあるわけです。これは十分に調査を行なっていると思うのです。いかに資本費が多くなっているか、総理も本会議の答弁で、金利負担が二兆円になっているというようなことに驚いたと言われている。この金利の負担が、これが企業の利潤率を低下させる大きな原因になっていることは御承知のとおりです。ですから、日本銀行が公定歩合三厘下げましたけれども、実勢金利がなかなか下がってこないのです。両建て・歩積みだって、まだ直っておりません。だから、実勢金利を下げる。公定歩合も下げることは、アメリカも利上げしましたから、すぐにいかないでしょう。下げにくくなってきているでしょう。いま五分四厘七毛五糸です。これをさらに下げることは問題かもしれませんが、実勢金利をもっと下げるべきですよ。そうして企業の負担をその面から軽くすることが、企業が賃上げの余裕ができましょう。その企業の販売価格を下げることによって、もっとそれが売れるようなことができるでありましょう。なぜこの点にもっと手を打たないのですか。これが不況対策で重要な面なんですよ。何も財政規模ばかりを、公債発行して大きくするばかりが能じゃありません。この高企利、企業のデットデフレーション、すなわち負債過剰による金利負担が大きいのですよ。  もう一つは減価償却でしょう。その減価償却も、昭和三十八年に商法を改正しまして、これが強制になっているのです。強制です、減価償却は。そのように三十九年に法人税法を改正しまして、企業の耐用年数を、従末の平均十四年から十一・九年、ざっと十二年に短縮したのですよ。そこで、この短縮したことによってどのくらい減価償却費がふえているか、これは大蔵省あるいは通産省、どちらでもいいのですが、どのくらいふえているか、かなり大きいものであると思うのですよ。だから、もちろんいま技術革新がどんどん行なわれていまして、陳腐化がひどくなっていますから、ある企業においては耐用年数を短縮することがあるかもしれません。全部一律に十四年を十二年に短縮する必要はどこにありますか。私は、もっとこまかく検討しまして、そうしてこんな不景気になったのですから、前の十四年でなぜ悪いのです。十四年にすれば、それは法人税は負担はふえるかもしれません。ですけれども、余裕はぐっと楽になってくると思うのです。その余裕によって賃上げあるいはその製品の価格を下げることによってそれで操短率を緩和していく、これも一つの手ですよ。  この資本費の非常に大きくなっている点について、政府はこの不況の一因として、一つの大きな原因として、この認識が足らないじゃないか、そっちのほうに努力されていないじゃないか。この二つの点について、どう考えるか。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 減価償却の年限が短くなった、これを延ばしたらどうかという話ですが、私はそれは相当問題があるのじゃないかと思います。つまり、結局利益金がふえて、税がふえて、大蔵省はけっこうでございますがね。しかし、結局社外流出のチャンスが多くなる、こういうことで、さなきだに内部蓄積の乏しい企業に対して非常に悪い傾向があると思う。そういうようなことを考えますと、ちょっと問題だと思います。  しかし、もう一つの問題の利子負担、これは私はこの際なるべく軽いことを期待します。そういうような見地から、公定歩合の引き下げに伴いまして、そして貸し出しの金利が低くなるように誘導の政策をとっております。また、これと直接関係はありませんけれども、長期金利も下げるべきである、こういうふうに考えまして、そしてまず政府が率先しなければいかぬ、こういうので、開発銀行、あるいは北海道東北公庫、そういうものの利下げを行ない、さらにそれと関連いたしまして長期信用銀行とか、あるいは不動産銀行でありますとか、日本興業銀行、生命保険、信託、そういうものの利下げが行なわれるように、いま行政指導をしてきたわけなんです。それはこの間政府、民間を通じまして実行されておるわけでございます。金利はこれを人為的に統制するというわけにまいりませんけれども、なるべく私は低いほうがいいと思うのであります。しかし、その低いことが客観的な四囲の金融事情、つまり環境によってそういうものが実現されるというふうにいたしたいというので、その環境づくりに努力をいたしておるわけなんです。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 関連。先ほど木村さんからたいへん重要な問題に触れられたのですが、総理のその点に対する見解をひとつ承っておきたいと思うんです。それは物価と賃金との関係において、物価のほうが進み過ぎているじゃないかと、数字を示して御指摘があったわけです。それではほんとうの不況対策にならぬではないか、その点を無視しておることは不況対策と矛盾するではないか、この御指摘がなされておるわけなんです。木村さんは、時間の都合等をお考えになりまして、先を急がれたようでありますが、総理のその点に対する見解をひとつ明らかにしてほしいと思います。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 特に求められたので発言をいたしますが、実は私もやや議論が長くなりゃしないかと思って差し控えていたのです。木村さんはその道の専門家ですから、オーソドックスの議論で、ただいまのインフレーションをいかにしたらいいかという問題が一つ当面しておる。しばしばインフレ的な傾向だ、こういうことが言われますが、そういう場合に、オーソドックスの考え方ならば、これは増税だと、かように実は言っておる。これは学者の一致した議論。これもかつてシャウプが私どもにそういうサゼスチョンもした。しかしながら、われわれも政治家として考えたときに、そういうように簡単に割り切れるものじゃない。どうしても生活自身を守る、その立場に立って別な方向を考えざるを得ない。それかただいまくふうした、いわゆる減税を一方でし、また一方で公債政策に踏み出す、こういう実は政策をとり、この公債政策が健全性を維持する、こういうところに歯どめを求めておるのでございます。ただいま言われますごとく、物価が高い、したがって賃金を上げる、かような状況でまいりますと、おそらく賃金と物価との悪循環が必ず出てくるだろう、かように私思います。だから、こういう点についていろんな学者的な議論もある。だから、欧州等において先例はそういうので、あるいは賃金ストップをしたところもある。  しかし、私はさような政策はとりたくないので、上げるべき賃金、上げ得る賃金、これはあるはずだ。だから、そういうことはひとつ進められたらいい。しかし、上げるべからざる賃金は上げてはいけない。それがいわゆる賃金の平準化ということばに迷わされて、そうして生産性をこしての賃金のアップは、これはしばしば問題を引き起こすから、そういうことは慎んでいただきたい。これは別に社会党の皆さんがいわゆる形の上の平準化を唱えていらっしゃらないこともよく私は知っておりますから、ただいまのような率直な意見を申し述べておるのであります。また、内閣調査室や統計局の調べによりましても、九月は遺憾ながら残念な数字が出ているようですが、十月はやっぱりまた変わっております。したがいまして、この月々の動向を見るよりも、総体として、一年ぐらいにどういうような動向をたどっているか、こういう数字を見ていくことが適当ではないか、かように思います。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも答弁は不満足です。亀田委員は二つ問題があることを指摘したのです。一つは個々の家計の問題と、もう一つは景気対策の問題です。つまり生産と消費の不均衡をなくすということが一つの重要な景気対策です。そういう場合に、物価が上がり、ことに公共料金類が上がったのでは、景気対策にならぬではないかということと、もう一つは、賃金が上がってもそれ以上に物価が上がっては、これはもう家計も苦しくなり、問題ですね。その景気対策について、総理は——矛盾するのですよ。矛盾するのに、まあ福田大蔵大臣は、不況対策に重点を置く場合に、物価対策は第二義的だというように考えている。で、矛盾する矛盾すると言われている。矛盾する面もあるけれども、これはここではっきりしておかなければならぬ問題です。どっちにウエートを置くかということ、これは重要な問題です。いま政策論争のポイントになるのです。ポイントになりますよ。物価に重点を置くのか、不況対策に重点を置くのか。われわれは物価に重点を置くことが不況対策になるのだ。そうでなくては、物価を上げたのでは、不況対策とも矛盾するのだ、こういう主張なんです。この点について伺います。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお話のとおり、また先ほど福田大蔵大臣からお答えいたしましたように、一方だけの政策に徹することができない。お互いにその両方を片づけようとすると、相反するものがある。この点は御理解をいただいたと思いますので、大蔵大臣が言っているように、二つのものが必ずしも同一の道を歩んでおらない。これだけは確かです。私は、この内閣に課せられた課題が、しばしば申しますように、不況を克服することだと、こういうことを申しております。と同時に、またただいまの物価を中心にして国民生活を圧迫しないようなそういう対策を立てることだ、こういうことも実は言っておるわけであります。  大体経済そのものが、簡単に表現すれば、正常化し、安定成長に乗っていけば、おそらく物価も二、三%の上昇でとどまるでしょう。これは適切な行き方だと、かように考えられると思います。しかし、経済企画庁長官も言っているように、現在はさような正常な物価状態ではない、それを現出するような経済状態ではない、こういうところに悩みがある。それならば一体どうすればいいのか。先ほど来公共料金が問題になっておりますか、その公共料金の扱い方にしても、時期、あるいは上げる率、それなどをいろいろくふういたしまして、できるだけ国民生活を圧迫しないように、重圧を加えないようにくふうをこらすことがこの際は必要だと、かように考えております。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題ばかりにこだわってはおられないのですが、しかし、これは一番重要な点ですから……。先ほど各関係大臣から、公共料金あるいは医療費、米価等の引き上げによってどのくらい国民負担がふえるかということを、具体的にそれぞれ御答弁がありました。政府は減税をやると言っているのです。ところが、来年度かりに三千億円減税する。しかし、これは企業減税も入っています。地方の税の減税も入っています。所得税の減税かどのくらいか。これは三千億のうち二千億程度平年度、しかも初年度はもっと少ない。そうすればああいう料金類の引き上げによる国民負担のほうがはるかに大きくなってしまう。目の子計算だってはじけますよ。だから、その減税は見せかけの減税である。名目的な減税。いつでもそうなんですよ。ですから、それが実際に景気対策としても重要であるばかりでなく、国民生活としても重要なんです。ですから、この点はもっとはっきりさせなければならないと思います。  しかし、どうもこの点につきましては、政府はどうもわれわれを納得せしめる御答弁が、幾ら質問してもないようでありますから、いよいよこの一番補正の問題点である公債発行の問題について質問をいたしたいと思います。  政府は、この四十年度補正から公債発行に踏み切りました。そうして四十一年度以降も六、七千億の公債を長期にわたって発行するという政策を打ち出しておる。そしてこの公債によって社会開発費をまかなう、と同時に、長期に減税をやると、その余裕をもって。減税のための公債発行とは言わないのです。言ったらこれはまた財政法違反ですから、そう言わないのですけれども、とにかく日本の財政経済の大転換を示すことになるわけです。ところで、この四十年度補正公債と四十一年以降の公債とに分けて政府はわれわれに説明しております。ところが、四十年度補正の場合は赤字公債だから、四条違反であるから特例法を設けてそうしてこれをやる。四十一年以後は、これは財政法四条に基づいて、堂々と、公共事業費として建設公債として発行する。佐藤総理大臣は、赤字公債は四十年のこの補正だけである、今後は絶対に赤字公債を出さないと言われております。そこではっきりさしておきたいのは、赤字公債というのは何をもって赤字公債というか。建設公債とはどういうものであるか。これははっきりこれについての規定をお伺いいたしたい。これははっきり伺わないと、今後非常に混同を起こしてくる。何か建設公債という名前を使うと、健全なる公債政策とよく言うのです、健全なる。建設公債発行して、実質は赤字であっても、そういう公債発行すると何か財政が健全であるかのごとき錯覚を起こし、そうして財政が放漫になる。こういう危険もあります。そこで、赤字公債とは一体何をさすのか、建設公債とは何をさすのか、そこをはっきり承っておきたい。
  116. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんは赤字公債赤字公債とおっしゃいますが、私は赤字公債と一ぺんも言ったことはございません。あなたがおっしゃるのであります。あなたの言う赤字公債、四十年度公債財政法四条によらざる特例法による公債であり、四十一年度以降発行してみようという公債財政法四条による公債である、こういうことであります。それだけの違いがあります。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃあ私の見解をはっきりしておきます。赤字公債、私はいかに建設公債という名前を使おうと、その支出が収益性がないという場合が一つと、もう一つは、回収性がないという場合は、これは一般の家計と同じような概念です。常識からいって、それは赤字的な支出であり、赤字的支出に対して発行する公債赤字公債である。ですから政府は、かりに公共事業費として、支出すると、道路、港湾。しかし、それが有料道路に支出する場合は、これは回収性があります、有料道路の場合は。しかし、大蔵大臣は本会議で、何か国の資産として残るものについてはその支出はこれは建設的な支出であると言われましたが、これは一般の通念と私は違うと思うのです。国の資産として残っても会計上これが回収性と収益性がない場合は、通念としてこれは赤字と呼ばなければなりません。経理上回収性がない、そうでしょう。ですから、名前は建設であっても、これはそういう支出は赤字公債であります。だから、これまで一般会計においてそういう道路等の公共事業費国民の税金でまかなってきているのです。ただ、不況対策として一時的に出す場合もありますね。しかし、それは赤字公債ですよ。赤字と言ってなぜ悪いのですか。ですから、会計上の、財政上の通念として回収性と収益性のないもの、これは赤字である。いかに建設と呼ぼうが、名前は呼ぼうが回収性と収益性がないのは、これは赤字であります。したがって、四十一年度以降、大量に発行するその公債は、たとえ公共事業と呼んで財政法に認められておっても赤字公債であることは否定できないと思うのです。そういうふうに考えなければいけないのであって、これは何も論理の争いではないのです。建設公債というと回収性のないものでも、収益性のないものでも、それをそういう形で出せば財政は健全であるかのごとく錯覚を起こす。先ほど総理は、あくまでこれは借金なんだと言われたでしょう。借金というものは原則としてはいいものではないですよ、原則としては。借金なくしてやっていけば一番いいんです。しかし、この投資的なものを、たとえば会社なんか投資する、これを収益でばかりやっておったら、長期的投資を収益でやって、その年度の利益でやったら、こんなばかな経営はないのです。そうした経営者は無能です。長期的な投資についてはこれは借金でいいのです。しかし、それは収益性と回収性がなければだめです。そうでしょう。その点の区別ですよ、これははっきりさせるべきです。大蔵大臣は、赤字と一ぺんも言ったことはないと言うのですか、それは言いたくないのであって、言ったことがないといってそれが合理化するものではない。口で出したことがないからといって合理性があるというものではない。もっと実態に即してお考えになって——赤字公債となぜ言って悪いのです。赤字公債になると、もうすでに赤字公債では財政法で認められていないから特例法出したのじゃないですか。この点もっとはっきりさせていただきたい。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そもそも第四条特例によることしの公債と来年度以降発行しようというものは主観的に非常に違う、生い立ちが非常に違うのです。私どもは本会議でも申し上げましたように、いままで均衡財政をやってきました。やってきたが、もう均衡財政の使命は十分果されて、今日、日本の経済力もついてきたこの時点に立ってみますと、政府は幾らか借金しても国の信用には支障ない。それよりは企業や家庭の蓄積を考えて、国が幾らか借金をするということを考えていい時期だ、こういうこと。それからもう一つは、何といっても社会資本が非常に立ちおくれておるわけです。これを取り戻すということはこれは国に与えられておる大きな課題である。こういうことを考えますときに、積極的に追い詰められた形でなくて、積極的な意味において公債政策を外国がとっておるように、わが日本もとってどこが悪いのだ、こういう考え方です。そういう考え方を進めておる過程におきまして昭和四十年度予算というものは大きく狂ってくる、こういう問題が出てきたわけであります。これを一体四十年度増税をするかというと、これはもうできる状況ではない。歳出を減らすかというと、これは景気対策として非常にまた問題が起こる、そこで財源の落ち込み部分については公債を出すというふうに結論出したわけですが、その出す公債の性格は、これはいままで考えておったも一のとはだいぶ違う、これは追い詰められて、結局税収欠陥補てん、こういう意味において出す公債である。それならば率直に法的にもそういうふうに理解をしようじゃないか、こういうことで財政法四条によるというへ理屈も立つのです。つまり、ことしの予算にも公共事業費はうんとあります。その見合いだというような意味も持つわけでございますが、そういう考え方じゃこれはいかぬ。率直にこれは財源補てんだと、こういうことを認めて、財政法四条特例を設ける、こういうふうにしようじゃないか、そういうので非常に民主的な考え方特例法をお願いするという最後の結論になったわけなんです。そういう違いがあるのです。
  119. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの木村さんの御質問は、ことしの八月十日のこの当委員会で、赤字公債の定義を何回も私お聞きしました。五、六回お聞きしたけれども、大蔵大臣は、赤字公債は断じて出しませんという御答弁で、私のほうは根気負けしてほかの質問に転じたわけです。いまも赤字公債ではないとおっしゃる。そこで、あの際お聞きしたことは、それでは赤字公債であるないは別として、大蔵大臣赤字公債の定義とは一体何なのか。追い詰められてというようなことは、追い詰められて出すものが赤字公債なんだということは、そんな抽象的なことでは、いまの論議にはちょっと合わないと思うし、具体的にいってどういう場合が赤字公債になるのか。財政上の不如意から出すものは赤字公債じゃないのか。言ったっていいでしょう。前に大蔵大臣はああいうことを、あまり強いことを言ってしまわれたので、いまさら赤字公債とも言えないからというようにも受け取れる。赤字公債なら赤字公債とはっきり言ったっていいじゃないですか、その上で必要なる処置をとれば。それが一点。二つ三つ伺いますが、それが一点。  もう一つは、いままでの予算編成の場合には、歳出の場合に税収に見合う歳出というもので、この均衡の予算をとってきたわけです。ところが、今後それが不足して公債を出す場合、公債を出す基準というものは何が基準になるのか、つまり税収に見合うものはそもそも何になるのか、収入に見合うものは一体そもそも何になるか。それに対して市中消化の限度、これがおおよそどの程度かということで公債発行の額を想定するということはわかりますが、そういうことだけでなしに、本来、財政収入に見合っていままで予算編成ができた。プレッシャー・グループからいろいろな圧力があっても何でも、いろいろな要求があっても、一応、財政収入というものがめどになって、これで予算を組んだわけです。今後のめどは一体何になるのか、財政収入が不足した場合に。だから、それを規定するものは、いま言う単なる公債の市中消化というものだけなのかどうか。つまり歯どめ論というものがいろいろ言われておりますけれども、具体的に何がその基準たり得るのか。この点が明白にならぬと、いろいろ議論するにも重天な障害があると思うのです。この二点をひとつ明らかにしていただきたい。特に赤字公債の定義の点、はっきりその点は承認されたって別にどうということはないじゃないですか、必要な措置を講ずれば。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどから申し上げておりますが、私は私自身赤字公債赤字公債と言っているわけじゃないのです。木村さんやあなた方がそういうことをおっしゃるわけなんです。しかし、想像いたしますと、皆さまがおっしゃられる赤字公債という意味には二つの場合があるようであります。つまり、一つは一般の財源として使う公債財源、その場合の公債と、こういうことであります。それからもう一つは、日銀引き受け、つまり消化し切れないような公債を出す場合と、この二つの場合があるようで、まぎらわしいものですから、私は赤字公債ということばを使わないのですが、昭和四十年度発行する公債は税収の落ち込みを補てんする公債である、正確にいえばそういうことであります。これを俗称としてどういうふうに呼称するか、これはいろいろ呼び方があるんじゃないかと、かように考えます。それから公債財源を使うようになって予算の規模を一体どういうようにきめるか、これは非常に重夫な問題でございます。私は当該年度におきまして、つまり昭和四十一年度なら四十一年度においてどのくらいの経済の成長を達成するか。それには民間経済活動の要因としての国民消費がどういうふうに働くか。設備投資がどういう動きをするか。在庫投資がどうだ、あるいは輸出入がどういう動きになると、そういう要因を検討いたしまして、それが七%なら七%、あるいは七・五%なら七・五%の成長が達成できるように財政の規模をきめる、これが規模をきめる基本になる、かように考えております。
  121. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ。その第一段の点で、いまの現段階の公債赤字公債であるかどうか、歳入補てん公債であるか、それはいいですよ。あなたの言う赤字公債は一体どういうものか、それをひとつ聞かせてください。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は赤字公債ということばは使ったことはないということをしばしば言っておるわけでありまして、皆さんが言っておられる。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 いやいや、だから、一般的に言って赤字公債というのはどういうように理解されているのか。
  124. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、一般的に皆さんが言われておる赤字公債というのは、まあ世間で赤字公債というときには二つある。一つは一般財源のために発行する公債、それから一つの場合は、日銀というか、市中消化ができない、通貨の増発にすぐ直結するような公債、こういう意味かと思います。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大蔵大臣、あなた方——あなた方というけれど、財政学上大体きまっているんですよ、通念として。そうでしょう。あなたが財政の担当者として、日本の財政学界でも、世界の財政学界でも、大体通念として赤字財政というのはきまっているんじゃないですか。こんな常識的なことを、あなた方がかってに考えているという、そんなばかな話はございませんよ。ですから、普通財政上の赤字というのは租税などの経常収入を超過する経常支出、これは異論がないと思うんですよ。であって、この経常勘定の支払い超過分をまかなう公債赤字公債である。そうでしょう、これは通念ですよ。ですから資本勘定上の借り入れとは明確に区別しているわけですね。これが赤字公債じゃないですか。そうでしょう。ですから、今度は四十年度補正で出すこの公債は、いわゆる経常勘定の一般会計における税収以上の経費をまかなうための公債でしょう。つまり赤字が出たら、歳出のほうはけずらないのでありますから歳入のほうは足らなくなる。赤字が出たんですよ。経常勘定の赤字が出た。その赤字を埋めるための公債赤字公債でしょう。あたりまえじゃありませんか。こんなわかりきったことをなぜこだわる必要があるのでしょうか。それからわれわれ日銀引き受けであるから、これは赤字公債、そんなこと言っていませんよ。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕 それはかってに大蔵大臣が言っている、今度は。あなたが言う日銀引き受けの公債赤字公債だと、こう言っている。そんなことはないですよね。日銀引き受けになるかならないか、市中消化だって赤字公債の場合もあるんですよ。結局、四十一年度以降出す公債、これは私は回収性がない、あるいは収益性がない公共事業費であるとすれば、これは赤字公債と私は言わざるを得ない。そういう借金です。ですから赤字公債として観念して出すのと、そうでない何だか建設的公債であると観念して出すのとたいへん違うんですよ。何か赤字公債であるのに建設的なごとく考えて出す場合は、建設的だからいいんだ、いいんだというんで非常に膨張する危険性があるんですよ。これは今後の公債政策の実際問題として、また財政上の実際問題として重大な問題です。この観念のしかた——大蔵大臣も、四十年の補正の場合とおい立ちが違うと言われました、四十一年度以降の公債発行はですね。確かにそういう点は厳密にはっきりさせる必要があるんですよね。で、私は、四十年度補正の赤字の場合と四十一年度の場合と違います。違いますけれども、本質において赤字公債である面においては、これは私は同じであると思う。大蔵大臣は、木村君は公債を罪悪視しているということをよく言う。罪悪視しておりません。公債は広義に解すと、地方債もあります、政府保証債もあります。われわれ、政府保証債、地方債、否定をしておらないんです。一般会計における経常歳出をまかなう場合の公債発行について問題にしているのであります。しかも、私も必ずしも公債発行反対でないのです。社会党が政権とった場合公債発行しないか、する場合もある。公債発行がいいか悪いかは抽象論じゃないのであります。現在の時点において政治的な体質あるいは経済の体質、そういうものから、ここで認めれば、これが放漫財政になり、そうしてインフレをもたらす。そうして租税の負担のしかたを非民主的にしちゃうんですね。それから防衛費を放漫にまかなう危険がある。そういうことから財政法でこれはきびしく制限したんですよね。だから、その精神というものをいまの時点こそ守らなけばならない。しかも赤字公債ですよ。あなたは、特例法を出すから民主的だと言うんですよ。決してそうじゃないんです。そういう歳入欠陥が生じたときに公債でまかなってはいけないというのが四条規定なんですよ、公共事業費以外は。だから、これを歳出を削るなり、あるいは増税するなりしてまかなうべきですよ。公債発行でまかなっちゃいけないんです。  いや、景気対策との関係はどうか。何も景気というものは、財政の規模が大きくなったから景気対策なんというものじゃない。財政規模が小さくなっても景気対策、有効需要を増進することができるならば、これは矛盾しないんですよ。そうですよ。さっき言ったように、金融政策の問題、金利の問題もあるんです。減価償却の問題もあるんですよ。その他歳出面でもっと所得の波及効果の大きい歳出をやるとか、減税でもですね。所得の増加の波及効果の大きいほうの減税をするとかすれば、何も赤字公債発行しなくても、このいまの景気対策と矛盾しないで、財政法四条を守りながらこの赤字の問題処理することができるんですよ。そういうふうにしろというのが財政法四条のたてまえなんです。それを四条特例法出してまかなうから民主的だと言うんですよ。特例法出さないではもってのほかですよね。しかし、出す前に、そういうことをしちゃいけないという規定なんです。せっかく財政法四条を守らなきゃならない時点にきたんです、とうとう日本の財政は。いままで毎年自然増収がたくさんあったから、この四条規定は眠っておったんですね。ところが四十年度歳入欠陥、いよいよ四条が大切になってきたんです。いまこそ四条を守らなければならないときにきて特例法を設けた。そうして赤字公債発行できるようにしてしまうんです。これでは何のために財政法四条を設けたのか、意味なさないじゃありませんか。四十一年以後の公債発行についてはまた別の議論が立つわけです。しかし、少なくともこれに、四十年度補正については、私は、これは特例法を設けたこと自体も、財政法四条の精神をじゅうりんしているんです。そんなことできるなら、これは今度は日韓の案件と同じことなんです。多数を頼んで何でもできるということになる。財政法規定は何のために設けたのか。多数でですね、そうして特例法を設けて、四条で禁止していることをどんどんできるということになれば、何のための財政法規定ですか。守らなければ何にもならないんです。  ドイツだってワイマール憲法ありました。ヒットラー出てきて破っちゃったんですね。いかにりっぱな憲法があったって、いかにりっぱな財政法があったって、守らなきゃ何にもなりませんよ、そうでしょう。特例法出し四条の精神をじゅうりんしてしまうこと、これは絶対私はまあ許されないと思うんですね。ですからそこのところは、もうこの四十年度補正の財源としての公債は、赤字公債であることははっきりしているのですから、赤字公債というのは非常にいやな印象を受けるなら、いっそ、はっきり赤字公債なんだと、だから今後そういうものはもう出さないという決意を新たにするためにもはっきりさしたらどうですか、その点について重ねて伺います。これは通念です。総理について伺いたい。というのは、総理は赤字公債は今後絶対出さぬと、総理が赤字公債ということばを使っているんです、あなた自身がそうでしょう。これはいかがですか。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、ただいま予算委員会も、実は討論聞いているような感じがいたしまして、社会党の組みかえ案でなきゃいかぬようなお話のように聞いたのですが、そうじゃなくて、ただいまお尋ねございますが、私が先ほど申しましたように、公債は、何と言おうが、借金であることには間違いがないのです。赤字と言おうが、あるいは建設公債と言おうが、何と言おうが借金である。その本質だけは、私先ほどお答えしたようにはっきりしておりますから。ただいま、まあ赤字なりや、あるいは建設公債なりやというお尋ねがありますけれども、私、まあ別のことでお答えするようでまことに恐縮ですが、公債が借金であるということは、私、十分このことをもう頭に銘記しておる。このことを申し上げておきます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃね、あまりことばじりをとらえるようで恐縮ですが、衆議院でですよ、総理は、赤字公債は今後絶対に出さないと言われた、その赤字公債の定義、これは。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは大体、あるいは食い違っていたかわかりません。お尋ねになった方が、赤字公債また出すかと、こういうようなお話であったか、それに対してあるいは私が、積極的にそういうものは出しませんと、かように言ったのか、あるいは積極的に赤字公債と言ったのか、その辺はわかりませんが、私は、まあ先ほど来大蔵大臣がいろいろ申しておりましたが、市中消化のできないような、いわゆる日銀引き受け、そういうものは、いわゆる赤字といううちに入るんじゃないかと、また通常の経費をまかなっていく、あるいは人件費等をも支払うような、そういうような使途のための公債発行はいわゆる赤字と、かように実は考えておる次第でございます。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ははあ、わかりましたよね。今度のこの四十年度歳入欠陥公債は、市中消化をするから赤字公債じゃない、そういう考えでしょう。大体資金運用部で半分、市中で半分消化すると、だから赤字公債じゃない。こんな理屈はないと思うんです。四十年度の赤字を埋めるための公債なんです。これは幼稚園の子供に言ったってわかると思うんです、そうでしょう。なぜ、そんなに市中消化にとらわれて、市中消化するから赤字公債じゃない——まず前提としてですよ、すでにもう日銀引き受けが赤字公債だと断定してしまう、それから論理構想が出てきて、日銀引き受けじゃないから、すなわち市中消化だから赤字公債じゃない。そんな私は論理の立て方はないと思う。それじゃ逆の両から伺います。建設公債ということばお使いになっています、福田大蔵大臣も。じゃあ建設公債というのはどういうのですか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) はっきりした意味で建設公債とは言っておりませんがですね、財政法四条による公債はですね、建設的経費に充てられるものでありまするから、そういうふうな呼称が流行しておるわけであります。これをどういうふうに呼びますか、まだ結論を得ておりませんが、木村さんと私少し違いますのは、木村さんは、収益をあげなければぐあいが悪いじゃないか、こう言うのですが、私のほうはそうじゃない……。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ回収。
  132. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 回収ができるというようなものですね。しかし国家のやる公共投資ですね。それは道路公団のやる事業とか、そういうものは格別でございますが、一般的にいいまして、公共事業に、すぐそれが目に見えて回収できるというような性格のものは、これは少なかろうと思います。国民経済全体に裨益し、回り回って経済の建設に役に立つ、こういう性格のものだろうと思いますが、私どもは、四十一年度以降発行する公債の対象となるのは、公共的投資ですね、それから出資、貸し付け金、そういうようなものであって、国の資産として残るもの、つまり、金は使うが、見合いがちゃんとあとに残っている、こういうものを考えておるわけなんです。その中で貸し付け金なんというのは、金利が入ってくるものもありますが、一般の公共事業などにつきましては、これがどういうふうに収益性があるかという、会社のようなわけには計算ができないのであります。見合いがちゃんとあとに残る、これは公債の対象になり得る、こういうふうに考えております。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これは拡大解釈が可能になってきて、それでインフレを起こす危険が出てくるのですよ。それは建設公債、道路あるいは港湾ですね。国の資産として残るものでも、それがすぐにこの生産性を上げるわけじゃないのですね。国定投資になるのですね。だからそれが経済効果があがるまでにはタイム・ラグがあるのです。だからいかに建設公債だから、どんどん出してごらんなさい。そこでタイム・ラグがありますから、通貨のほうは多く出てくる。そうして経済的効果がおくれてくるのですよ。タイム・ラグを無視しますと、建設公債だからいいからということで出してごらんなさい。市中消化だからいいのだ。そうはいきません。それと、これはまた、市中消化だといっても、それが回り回って日銀のほうに回ってくれば、これは間接的に日銀引き受けと同じことになってくるのですよ、経済的影響としましては。公債発行がすぐにインフレにつながるからいかぬとか、そういう議論はおかしいとか、あるいは公債をすぐ罪悪視しているとか言いますけれども、そういうことになるから財政法四条みたいなのがあるのですよ。何のために財政法四条を設けたか。公債発行についてきびしい制限を四条、五条で設けたのは何のためか。過去の経験からいって、インフレになる可能性があるからこそ設けたのじゃないか。しかも政府も心配がある心配があると言っているでしょう。総理は、インフレにならない保証は必ずしもないかもしれませんと言われておる。しかし、ならないように努力するということですね。可能性はあるのですから、可能性はあるものとして観念して出す場合と、絶対にないと言っているのですよ、福田大蔵大臣は。そんなこと言い切れますか、そうして出す場合と違いますよ。絶対にないと言ったやつを出してごらんなさい。幾らでも放漫になりますから。  そこで私、その限界について伺いたいのです。これは公債発行する場合ですね、来年度いわゆる公共事業費として出す場合、その範囲については、これは毎会計年度国会議決を経なければならぬことになっています。おそらく、これは財政法二十二条、予算総則に規定されている。だからこれはもうはっきり出るわけです。ですから、もうわかっているはずでしょう。予算総則にこれははっきりと、何と何に限定しなければなりません。国会承認を得なければならぬ。その内容は何であるか、もうわかっていなければならぬはずです。  それから、この出資と貸し付け金の場合、出資、貸し付け金は、これは予算総則に書かなくてよろしいのです。よろしいようになっているのですね。入っていないのですよ。そうしますと、この赤字的なものについても、出資やこの貸し付け金ですよ、これを公債発行することができるようになっているのです。その場合、これについても、出資や貸し付け金について、予算総則でやっぱりはっきりさせる必要があるのじゃないか、大蔵大臣どうですか。そうしないと、出資だ、貸し付け金だからといって、非生産的なものに対しても公債発行し得る可能性が出てくるのですよ。この公債発行することについては、今度各省から公債発行についてうんと要求が出てくるわけですね。それで非生産的なものも、いや貸し付け金だ、出資だから財政法違反じゃないじゃないか、財政法四条で常々と発行できるじゃないかとなったらどうします。ですから、公共事業費については、予算総則ではっきりさせなければならぬことになっている、財政法上。出資、貸し付け金はそうなっていないのですよ。そうなると、ここからこの放漫な出資とかあるいは貸し付けについて、財政危機が起こる可能性がある。この点についてどうお考えですか。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公共事業費の範囲につきましては、木村さんがおっしゃるように流動的じゃないのです。これはもう固定したものであります。これを、伸び縮みをそう自由にできるものじゃない。そういう趣旨が財政法四条に書いてあるわけなんですね。「国会議決を経なければならない。」、これはその点を書いておるわけなんです。  それから、その範囲につきましては、四十一年度予算と関連いたしまして、いま調べておるわけでありまするが、まだ最終的な結論まできておりません。しかし大体その方向だけでもというのならば、ここで申し上げることができますが、よろしゅうございましょうか……。  それから出資、貸し付け金、これはそういうそれをさらに砕くという必要はもうないので、出資、貸し付け金と、こういうふうになっておりますので、それが最終的な分類じゃないかと思うのですがね。それをさらにどこどこに対する貸し付け金とか、そういうものにして国会に明らかにせいと、こういうことですか。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは予算総則にはっきり規定しないと、出資、貸し付け金は、財政法四条公債発行の対象になり得るのですよ。
  136. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうです。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうでしょう。公共事業費のほうは……。
  138. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、公共事業のほうは、公共事業費でありますとか、あるいは何何建築費だとか、あるいは住宅建設費だとか、こういうふうに対象を限定するわけですね。それと並べて貸し付け金、それから出資と、こういうふうにあるわけです。しかし出資、貸し付け金は、もうそれで公共的事業というようにばく然としたものじゃありませんから、特にこれを砕く必要はない、こういうふうに考えております。  なお主計局長から……。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 福田さん、今後の方針だけでもよろしいと言ったでしょう。大蔵大臣
  140. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何ですか。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公共事業の範囲についての方針。
  142. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 範囲は主計局長からいま申し上げます。
  143. 谷村裕

    政府委員谷村裕君) 補足して説明いたします。  内容の問題と形式の問題とがあると思います。先に形式の問題を申し上げます。仰せのとおり、財政法四条規定では、第三項で公共事業費の範囲をまあ予算総則に規定するような書き方になっておって、貸し付け金と出資金については特にその規定を欠いております。形式的に申し上げれば、国会予算総則として御議決を願う分は公共事業費のみに限るわけでありますが、それはおそらく立案者の考え方によれば、公共事業費の範囲はきわめて、まあいろいろな考え方があって広いであろうから、その中から具体的に限定して、これこれしかじかのものが今回公債発行の対象になるということを国会できめていただこうという考え方であると思います。そこで、出資及び貸し付け金について、なぜこういう規定がなかったかという点については、おそらく出資と貸し付け金については、いま大臣がおっしゃったように、わりとはっきりしているということであるのかとも思ってみたんです。ところが、最近においては、出資——まあ貸し付けはわりとはっきりしておりますが、出資というものの中には、その本来出資として、いわば企業的に考え得るか、あるいはそうでない、いわば交付金的なものもあり得るのじゃないかというふうなこともございますので、それを形式的には本件として国会に提案するという必要はないと思いますけれども、しかし精神としましては、やはり出資の範囲というものはこういうものを考えておるということを明らかにしたほうが、先ほど大臣もおっしゃいました財政民主主義の線にかなうのではないかと、かように考えております。  それから、第二の点、内容の点でございますが、大臣にかわっていまの大体のところを申し上げますと、現在私どもが公共事業費等として考えておりますものは、国会に提案いたしております予算の主要経費別分類において、公共事業関係費というふうにして出ているものがございます。これは御承知の治山治水、道路整備——道路、港湾、漁港、空港等々の項目でございます。それから、第二に考えておりますのは住宅対策費というようなものでございます。それから第三以下——第二、第三と言っておりますとあれですから略しますが、環境衛生対策、それから文教施設、それからその他の施設費として、たとえば航路標識と申しますか、灯台のようなものとか、それからまだいろんな、厚生省所管でいえば社会福祉施設といったようなものまで含み得るとすれば含み得るものとして考えておりますし、さらに進んでは官庁営繕、公務員宿舎、これは住宅対策みたいなものでございますが、あるいは裁判所の庁舎といったような官公衛の建物まで含み得るものとして考えております。しかし、具体的にどこまでどうするかということは、また別の問題でございます。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま伺いますと、どうせこれは予算総則に出てくるんですから——しかし非常に広範ですね。文教、それから営繕関係までも入っておりまして、これは解釈のしようによってはずいぶん大きくなり得る可能性があると思うんです。これは非常に問題だと思いますね。  それから、出資と貸し付け金については、今後、この財政法の改正問題をいろいろ研究しているようですが、交付金みたいなもので非生産的なものもあるわけですから、そういうものを今度各省から要求してくると、貸し付け金とか出資は公債発行の対象になり得るということで押されてきた場合、そういうことはやはりはっきり限定して、予算総則を規定した財政法二十二条において規定すべき項目の中に、今後公債発行がひんぱんに行なわれるようになる場合は、公債発行の対象となる出資、貸し付け金についても、予算総則で国会承認を得るようにすべきじゃないかと私は思うんです。公共事業費だけでも、いま伺ってたいへんな広範囲、また出資、貸し付け金でも今後——従来はそんなに、大蔵大臣言われるように、まあはっきりしていたかもしれませんよ。今後だんだん公債発行の対象になり得るとなると、だんだんそういうものもふえてくる可能性もあります。ですから、ふやしちゃいかぬとは言えないかもしれないが、国会承認は必要である。承認を受け付けることにすれば、範囲も限定されてくると思うんです。これは必要だと思うんです。  その点ともう一つ、いま伺いますと、公共事業費、大部分入るんですが、これまで道路整備につきましては、実質的にガソリン税が目的税みたいになっておりましたね。このガソリン税はどうなんです。この目的税的になっておりましたガソリン税は、今後公債発行によって大部分道路費をまかなうということになると、これはどうなるんですかね。目的税的であるもの、この二点について伺いたい。
  145. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一点につきましては、ごもっともな御意見でありますので、なお考えてみます。これは法とどういうふうに調整すべきかという問題がありますので、検討さしていただきます。  それから第二点のガソリン税、これはガソリン税ばかりじゃございませんので、かりに公共事業費のために特定財源を充てるという考え方をとりました場合には、その全体の公共事業から特定財源充当分はこれを、取り除く、こういうふうに考えております。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのあとのほうですね、このガソリン税についての御説明、ちょっと納得できないのです。
  147. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和四十年度で見ますと、ガソリン税収入が二千何百億かありますがね、全体の公共事業費が八千何百億があるわけです。しかし、公債発行の対象となる額は、そのガソリン税で特定財源として道路のために留保されておる、充当されておる額はこれはのいて考えると、こういう趣旨でございます。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 のいてということは、上積みにしないわけですね。
  149. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) しないわけです。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 上積みにしない……。まだ重要な質問が残っておるのですが、公債発行とインフレの問題につきまして、まあ歯どめ論等ですね。それから大蔵大臣は、財政規模というものを非常に重要視しておりましたが、これに対する具体的な内容ですね。それから来年公債発行七千億とか、減税三千億とかいわれておりますが、一体何を基準にしてそういう七千億とかいうものをはじき出したのか、減税三千億を出したのか。あるいはまた物価対策、来年特に多額の公債発行、社会開発費を非常に多くするという場合、地方財政に与える影響は非常に重大であると思うのです。そういう点ですね。あるいはこの補正の中に日韓の経費があります。特に十八億の経済協力の無償のですね、これもありますが、そういう点については、まだ質問いたしたい点も残っておりますが、留保しまして、きょうはこの程度に質問をとどめておきたいと思います。(拍手)
  151. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと委員長、最後に一つ。総理に一間だけお聞きしておきたいと思います。  それは木村委員の主として公債発行に関する論議がいま終わるときでありまして、しかも、近く四十一年度予算編成が年が明けると間もなく始まるでありましょう。そこで基本的な問題を最後にひとつ念を押しておきます。というのは、先ほどお尋ねしたように、税収に見合うべき今後の公債発行する場合の基準は何かといった場合に、これは翌年度の経済成長がおよそそれに見合う一つの基準になる、そういうお答えがありました。しかしながら、いまお話しのように、来年度七千億あるいは七千五百億という大蔵省の想定、これに対して財界当局は一兆円を要請しておるようであります。そういうようにいよいよ公債発行が具体的な日程にのぼる場合に、基準は一応お示しになったけれども、必ずしも明確でない。余談になりますが、実は昨日私、来年度予算編成について百人近い人から陳情を受けました。ところが野党である私がこんなたくさんの陳情を受けても、この予算の実情ではなかなか困難ですと私は言っている。与党の方は、できるだけ御希望に沿いましょう………。これが実際でしょう。一体歯どめとか何とか言われましても、そういう圧力がどんどんと加わってきた場合、各省からそれぞれの予算要求が出てきた場合、よほどの強い決意がなければ、私はこの問題を消化していくことは困難だと思う。これは単なる公債発行がいいとか悪いとかいう議論ではありません。非常な決意を持たなければ、歯どめ論にはいろいろなあれがあるでしょうが、基本的には根本精神、総理大臣あるいは大蔵当局の政治姿勢の問題だと思う。どうしてこれをコントロールしていくのか、非常な決意を要すると思いますので、明年度予算編成を間近に控えて公債発行する場合に、特に総理の決意のほどを承らせていただきたい。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も過去におきまして、大蔵大臣予算を二回編成いたしました。また、総理として、今回で二度目の予算編成に取りかかるわけであります。ただいま御指摘のように、今回の予算編成にあたりましては、大転換をした考え方で取り組むのでありますし、また、先ほど来しばしばお尋ねがありましたように、公債発行するとなると、これは借金である。借金は、本来望ましいものではない。このことはよく肝に銘じておりますので、ただいま言われるような、圧力団体その他に左右されるようなことのないように、もちろん私、決意を持って予算を編成するつもりでございます。ただいままで羽生君のところにもいろいろ陳情があるでしょうが、私のところにもいろいろ陳情があります。しかし、私は、ただいま一切さような話は受けないことにいたしておりまして、最後に私自身がその規模等も十分勘案して予算と取り組むつもりでおります。
  153. 羽生三七

    ○羽生三七君 正当なものは区別してくださいよ、正当な要求として。
  154. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 木村君の質疑は、本日は終了いたしました。     —————————————
  155. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、赤間文三君。(拍手)
  156. 赤間文三

    ○赤間文三君 私は、自由民主党参議院議員を代表いたしまして御質問を申し上げる次第でございます。  まず第一にお伺いを申し上げたいことは、政府がこのたび財政政策の一大転換をやった、公債発行に踏み切ったということでございます。今日まで長い間健全財政、均衡財政という方針をとってきておったので、公債発行は、これはもう大きな財政上の一大転換である、こういう大転換については、よほどこれは慎重にやらないといけないと、私は信じておる次第でございます。そういう点からいたしまして、政府はこの大転換をするにあたって、私はもうこれ転換をしなければならぬという理由をぎょうさん持っておられると思う。私はまず、政府でこういう思い切った転換をしないで、支出を抑制する方策を講ずる、あるいは相当思い切った人員の整理等をやってこれに対処するというようなことはできないのかどうか。普通のときであると、支出の抑制、人員の削減ということで対処するような場合が非常に多いと思う。こういう点にあまり手を触れぬで、思い切った政策転換をやられる理由を具体的にひとつ御説明を願いたいと考えておる次第でございます。
  157. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 普通の場合ですと、お話はまことにごもっともなことかと思うのです。しかし、今日の経済状況は、御承知のように非常な事態でありまして、税収がこれだけ落ち込むその背景をなす経済のことを考えますと、この際歳出を節減するとか、人件費を節約するとか、あるいは増税をするとか、まあ、景気対策上支障がないという面におきましては、それでもしたんです。したのでありますが、どうも当面の景気情勢と矛盾する面が多々ありますのでこれを差し控え公債政策を採用すると、こういうことにいたしたのであります。
  158. 赤間文三

    ○赤間文三君 要するに御説明は、今日のこの急激な変化に対して、こういう支出の抑制とか人員の削減等では間に合わない、いろいろなこの日本の経済事情の目まぐるしい変転に向かって、どうしても政策を転換して公債発行しなければやっていけないと、こういう大蔵大臣の御説明のように拝聴をいたしましたが、私はやはり公債発行せられるなら、これとあわせて、でき得る限り冗費の節約をやる、あるいは人間につきましても、やはりこの採用を抑制していくと、露骨に言うならば、不補充の原則をとると、その他これに類するような、やはり景気対策に関係が薄いような費目を思い切って削っていかれる、そうして足らない分を思い切って公債発行せられる、必要なだけの公債発行していかれることが非常に大事なことと思うのですが、冗費の節約とかあるいは人間不補充の方策というようなものは、当然大転換せられるときには、そういうあらゆる政策をとってなお足らぬから思い切ってやる、これのほうが非常にわれわれにはわかりがいいと思います。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  159. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 定員で余りがあるわけでございますが、その余りのある定員は、一つ計画を立てまして、そうして補充をしないと、こういう方針を進めております。全部補充しないというわけにはまいりませんが、一部は補充をしない。それから冗費につきましては、まあ冗費というほどの1語弊があるかもしれませんが、この際国としても公債を出すんだと、そういう際であるからには、特に経費の使用には気をつけたいと、かように存じまして、それも二百何十億でありましたか、今回の補正の財源といたしております。なお、昭和四十一年度予算を目下編成中でありまするが、そういう趣旨を徹底させまして、まあ、公債発行一つの大きな前提であるというふうにしたいと思っております。
  160. 赤間文三

    ○赤間文三君 次に私お伺いいたしたいと思うことは、これは、もうすべての国民がやはり過去に経験がありましたので、一応心配をしている向きが多いと思う。いわゆる公債発行をやるとインフレとつながるのではないか。これはもう過去の、戦時、戦後の公債発行、そのときわが国の経済規模が今のようになくて、工業力などが発達せず、まだ非常に小規模のときに公債発行して、御承知のような非常なインフレになった。その頭がいまだに一部の国民の中にはある。ここに非常に雲泥の差が起こってきたというようなことはあまり考えないで、過去の公債発行とインフレのおそろしかったことが、国民の頭に、一部には、私は残っていると考えている。こういう、公債発行をせられてもインフレになりはしないかというようなことを、私は国民の中で非常に心配しているものがある。そこでひとつ政府の、絶対にこれはインフレにつながらないということの明確な御答弁を私は願いたいと思うのであります。その点、過去においてそういう経験がなければ、私はそういうおそれがないと思うのでありますが、ただ過去に苦い経験があるために、非常におそれている。なおまた、英国の例とかあるいはアメリカの例とかいうようなものまで、一般にはだれも知りませんので、このインフレにつながりはせぬかという心配があるということは、公債発行について害がある、これは政府国民が一体となってこの公債発行についての理解を持ち、それについての努力をしていってこの効果があがると私は考える。この機会においても、このたびの公債発行——四十一年度から公債を相当大きく発行していくが、これはインフレには絶対つながらないということを、ひとつ明確にお教えを願いたい。
  161. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債がインフレにどうしてつながってくるか、こういう問題は、公債がつながるんじゃなくて、公債を財源として財政が膨張する、その財政活動の結果、政府が物資や労働力や資金あるいは国際収支、そういう面において政府のシェアが過大になって全体の需給を圧迫する、そこで、そういういろんな経済要素にアンバランスが生ずる、そこにインフレの原因があるのであります。したがいまして、政府といたしましては、そういう現象が起こってはならない。一番大事な問題は、財政の規模を——財政というのは一般会計ばかりじゃありません、政府諸機関、財政投融資、また地方財政、これらを通じまして政府、公共団体の財政の規模を適正にする、その結果、物やあるいは労働力、国際収支、資金の需給、こういうものに不均衡を生ぜしめないようにしていく、これがかなめであろうと思うんです。そういうことから、先ほど総理からもお話しありましたが、そのときどきの経済の状況に見合って財政の規模はきめますが、したがって、公債発行の額もきまりまするが、一たびきめた以上は、いかなることがあってもこれは動かさない、これはやっぱりそういう政治の姿勢が国民の不安を取り除く上において最も大事である、かように考えております。
  162. 赤間文三

    ○赤間文三君 承りますれば政府は、そういう危険を防止するために二つの大きな柱をつくる。いわゆる建設的な公債に限る。二つ目の柱は、日銀にはやらなくて市中公募をやる。大体この二つの柱でもって公債が目的を達するようにやるというように、われわれはこの点はたびたび承って了解しておるのであります。そこで私は、私の考えるところによると、この建設公債内容といいましょうか、これが非常にインフレその他の危険とやや関係があるんじゃないか。いろいろな公共事業でも非常に多いんでありまするが、よほど公共事業の、公債の目的に合うものを選べば、相当思い切った公債を募集しても何も危険がない。にもかかわらず、建設公債ということで、この公債の種類がどうも公債に不向きなもの、あるいは将来の生産を高めることに役立たないようなものに公債をつぎ込まれたならば、私はおもしろくない結果が起こってくる。要するに、今度の公債発行がうまくいくかいかぬかということは、一つは建設公債、いわゆる公共事業、これに合う、筋のいいものをいかに苦心して選ぶかということに努力をして成功されるならば、私はその危険がないのじゃないか。選び方いかんによっては私は一がいに安心ができぬと思うんですが、この点について先ほどもいろいろ聞きましたが、私の考えから見ると非常に広過ぎる、あるいはまた公共事業で、まだこれから御詮議になるんだから、公共事業という範囲が非常に広いように思う。特にこれに合う公共事業を選ばなければ好ましくないと思うんだが、この点についてのお考えはいかがでございましょう。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お説のとおり、財政はその幅の問題ばかりでなく、その質の問題、内容の問題があるわけであります。内容国民経済にとって生産的であり、また、その他の面において有効であるというものを特に選択するように、当然心がけていくべき問題だと考えます。
  164. 赤間文三

    ○赤間文三君 それから私が老婆心から心配しますのは、民間公募ということでいいのでありまするが、少し景気が上回ってきて資金需要が多くなれば、これはもう容易に考えられることは、公債を日銀に売る、日銀がこれを買うというようなことは、これは容易に予想をせられる。日銀は、ために通貨を発行するというような結果になってくると、第二の柱というのは、わりあいに結果においては、日銀に初めから行ったのと、市中銀行に行って、ようやく景気が来ると日銀のほうに回ってくるというのと、どうも結果的にはそれが似ているような状況になりはせぬかということを心配しているのです。これは、いかなる力をもってしても、自由経済のもとにおいてそれをとめるというわけにはいかない。そうすると、せっかく市中公募という大きな柱であるにかかわらず、結果においては日銀に出したのと似た結果になりはせぬかということをおそれますが、この点についてはどういうふうな見解を持っておられますか。
  165. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことがあっては困るのです。そこで、そういうことがないように、来年は一体民間の経済活動はどういう状況であろうかということを考えて、もし民間活動が非常に旺盛活発である、民間で資金や物や労働力をずいぶん使いそうだという際には、これは政府のほうの公共事業など、これを消極的な扱いをせざるを得ない。そういうことによって、民間と政府の経済活動が、合わせてこれがいつも大体でこぼこなしに成長していく、こういうことをねらっているわけです。したがって、日本銀行の通貨量というものは、常に経済の成長と見合って増加するならば格別でございまするが、公債を出すがゆえにこれが膨張するというようなことは極力避けてまいりたい、こういう方針であります。
  166. 赤間文三

    ○赤間文三君 次にお伺いしたいのは、これは多くの人が心配することでございまするが、国の財政需要というものは、ますますこれは年とともに増加するように考えられます。そうすると、公債発行額も自然に雪だるま式に大きくなっていくのじゃなかろうか、これが私は一つの大きな心配に考えている。これについて、そういうおそれはない、絶対に圧力団体にも押されることや、国の需要がふえるからといって、厳然としてそういう危険におちいらぬという確信のほどをひとつ承りたい。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、まず予算の規模はこれを適正にきめなければならぬ。その適正規模というのは、民間の経済活動と見合いをとるわけであります。つまり、民間の経済活動が活発の際には財政規模は低目にする、しかし、民間が落ち込んでいるときにはこれを積極化して民間の活動を補う、こういうふうにして安定成長をはかっていきたい、こういうのでありますから、そういう見地から一たび公債発行量、予算の規模というものを合理的にきめて決断した以上は、いかなることがありましてもこれを動かさない、これが私は公債の信用を維持する最大のかなめである、かように考えております。
  168. 赤間文三

    ○赤間文三君 ある評論家の意見でありまするが、国債の発行額は最大限GNP、いわゆる国民総生産額のまあ状況から、三分の一くらいまではだいじょうぶだという意見を私は聞いたことがあるような気がします。国民生産の総額の三分の一くらいまでは心配要らない、条件さえあれば。これについてどういうお考えを持っているか承りたい。
  169. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民総生産に対しまして公債はどこまで累積してもよかろうかと、こういう御議論のようでございますが、これはどこまでということもなかなかむずかしいわけでございますが、かりにアメリカあたりこれをとってみますと、四十何%、五〇%近い状態だと思う。また、イギリスではこれが九〇%近くになっておるわけであります。わが日本は今日、戦後のことでございますので、わずかに二%くらいでございます。これはその累積のパーセンテージがなるべく高くならないように、財政を利子や償還が圧迫しないように心がけていきたいと思いまするが、どこまでということになりますというと、ここで私はまだはっきりして、そういう学問的な問題を申し上げるまでの確信を持っておりません。
  170. 赤間文三

    ○赤間文三君 この公債発行ということは、十八年ぶりですかの大転換でございます。政府が研究をせられ、柱を設け、絶対にインフレにならぬという方策を講じられておる、こういうふうに考えるのでありまするが、これは政府だけのお考え並びにその努力だけでは目的が達しにくいのじゃないか。私はさきに尋ねましたように、国家としてはこの際いろいろな景気回復のために思い切った公債政策をやるのだ、やらなければならぬ。あるいは大減税をやるためには公債政策をやらなければならぬ。あるいは総理の言われる社会開発など、おくれておるものを思い切ってやるためには、こういう方法を講じなければならぬ。なおまた、減税などにあずからぬ人間の社会保障等についても思い切ったことをやらなければならぬ。このためには、思い切って公債発行することが日本の国情に合うているから、国民が全部これを理解して、財界といわず、みんながこれに協力をする。私は、公債発行国民の協力なくしてはやりにくい、かように考える。そういう点からいたしまして、公債発行をしなければならん理由、並びにこれは賢明な政府、賢明な国会、賢明な国民の間には、インフレのごときは心配ないのだということの徹底的な宣伝をやられることが大事だと思うのですが、その点についての政府の見解を承りたいと思います。
  171. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まことにごもっともなお説と存じます。政府におきましても、こういう財政転換をしますこの際、国民が不安を抱かないように、なおまた、さらには希望を持ってこの政策の遂行に協力してくださるように、PRにつきましては最善の努力をいたしたいと存じます。
  172. 赤間文三

    ○赤間文三君 次に、現下の問題で佐藤内閣が非常に力を入れられている景気の問題についてお伺いをしたいと思うのです。景気の対策につきましては、昨年からあるいは予算の一割天引きをやっておられたが、景気対策として、これは二カ月ぐらいでたしか景気を回復するためにやめられた。あるいはまた、二千百億の財政投融資のワクを広げられ、あるいは政府の事業を繰り上げてやられる。その他、政府においてもあらゆる手を講じられたことは、われわれはよく承知をいたしておるのでありますが、どうもその効果が、われわれの期待しておったほどまだあがっていないような気がする。大蔵大臣の話によると、これからぼつぼつ効果があがってくるんじゃなかろうか、こういうふうなことも承っておるのでございますが、私は、今後政府は景気回復の対策としてどういうことをやっていかれるのか、なかなかこれは困難な点もあると思います。私は、おそらく思い切ってこの対策を講じられ、今度のいわゆる公債発行などもその大きなものだと思いますが、今後の景気対策について、こういう手を打つんだ、そうして、まあこの変転きわまりない経済でございまするから、だれが見積もりをしてもはっきりしたものができないが、少なくとも、来年の下期までには景気は相当回復ができる見込みであるとかいうような、景気回復の時期等についても、ひとつ政府の見通しというものを私は承りたい。今後の景気回復の対策並びに来年のいつごろ大体景気が回復するのか。事実ともし合わなくても、見込みでけっこうですから、ひとつ。
  173. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、今後の経済を考える上におきまして、今後の財政対策というものは非常に重要な要素を占めるものである。いままでは金融政策、これがどういうふうになるかということが大きな作用をしたのですが、金融対策ではどうにもならぬというような異常な経済状態であるように思うのであります。そういう観点からも公債政策の採用というふうになっておるのですが、特に来年度予算、これがどういう性格のものであり、どういう影響力を持つであろうかということが、一番景気観測上は重大であるというふうに考えます。来年度予算につきましては、大体七%ないし八%実質において日本経済が成長をする。これを実現をする。つまり、国民消費はことしの伸びに比べてそう変化はないように思うのですが、もう一つの大きな要因、それから輸出は鈍化するが一割ぐらいな増加は見込めるというのが大体大方の見方であります。一割増加ですね。重大な問題は、設備投資がどうなるか。過去数カ年間にわたって日本の経済を押し上げてきた設備投資は、ことしは非常な停滞状態である。その停滞がなお横ばい状態を続けるのじゃないか、その停滞を補って、なおかつ、七、八%の経済成長をせしむるに足る政府財政活動、こういうことを考えているわけなんであります。したがって、予算は相当積極型になるわけであります。大体七、八%といいますが、四十一年度、その四十一年度は四月から始まるわけですが、その四月になったら断層的に七、八%ずっと上がるというわけではない。なだらかに成長しまして、そして平均が七、八%になる、こういう形になると思うのであります。一体それまでのつながりがどうなるのだろうか、お話しのように、これまでとられた景気対策のための諸施策は、まだ十分な効果をあげておりません。特に、公共事業費が、一つは地方財政の問題、いま御審議を願っている補正予算、それから特例法、これで解決いたしますが、それまで非常な困窮状態であった。そういう問題があるのです。それからもう一つは、一割留保して、それをまた解除したというようなことに端を発した手戻りの問題がある。そういうので、財政投融資の二千百億円の拡大のほうは非常に順調に進んだのですが、一般の公共事業が、国、地方を合わせましてたいへんおくれちゃった。十一月からやっと挽回しているような状態でございます。そういうようなこともあって、支出が下半期に片寄ってきている。ことに年末から一‐三月に集中するようなかっこうになります。さらに昭和四十一年度予算の中の公共事業の一部を今度補正予算において御承認を願って繰り上げ契約をするようにというような措置も講じておりますので、私は財政の影響というものが一‐三月の間には相当強く出てくる。それがいま申し上げました四十一年度の見通しにつながっていると、こういうふうに考えますので、国民にはそういう御期待を持っていただいていいのじゃあるまいかと、こういうふうに確信をいたしているわけであります。
  174. 赤間文三

    ○赤間文三君 まあ四十一年度財政等にも景気回復の問題を十分織り込まれる、非常にごもっともに考えておるわけであります。四十一年度予算につきましては、大体四兆二千三百億から七、八百億の間、四兆二、三千億くらいだろうということが想像をされておる。まだこれはおきまりになっておらぬと思うが、大体その辺で……。なおまた、公債は七千億くらい発行になるんじゃなかろうかということを想像をしておる。そういうふうに思っておりますが、そういう来年度予算に七千億の公債発行をする。初めは六千億くらいお考えになっておったようであるが、だんだんとふえて七千億であろう。減税は所得税、企業減税、地方税等を合わせて大体平年度に三千億くらいであろうということの想像をいたしておるのでありますが、大体この予算の規模あるいは減税の三千億、公債の七千億、こういうものについてもしお考えになっておられるならば、その根拠というものをひとつ承ると非常にぐあいがいいと思うのです。しかしながら、まだ何も、そういうものはこれから研究をするのだから、まだ具体的なことは考えておらないというならば答弁は要りませんが、われわれはもう常識的に大体三千億と七千億くらいのところへいくんじゃないかということを想像しておる。その点についてひとつその根拠を話してもらうと、来年の景気回復についても非常にまたいろいろと考えが出てくるのじゃないでしょうか。どうぞひとつ……。
  175. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) だいぶん煮詰まってはきておりますが、まだこういう公式の場で申し上げる段階に立ち至っていないのです。しかし、それらの数字の根拠は、先ほど申し上げましたような経済見通しに基づいてきまると、こういうことであります。
  176. 赤間文三

    ○赤間文三君 景気の回復につきましては、政府としては減税をやる、あるいは公債発行をやる、あるいは金融の緩和をやる、あるいは金利の引き下げをやる、あるいは財政金融両政策をこれをあわせ行なって景気対策に全力を尽くされるように拝承をしておりますが、これはもう非常に重大な問題でございます。この間も大阪に帰ってまいりましたが、なかなか景気回復が思うようにできないので、みな困っておるように思う。もうだいぶん長いのでありますが、これが来年の下半期までこの不況が続くということになると、私は非常なこれはもうあらゆる面に好ましからざる影響を与えるというふうに思うのです。もう大体だいぶん不景気になって時間もたっておりますが、政府はいつごろまでには大体この景気の回復が見えてくるかということについての見通しがあるならば、ひとつこの際承りたいと思うのであります。
  177. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 不景気と申し上げましても、これが夜が昼間になるというように、まるきり変わった状態にいくわけではないので、なだらかに変わっていくということだと思うのであります。そのなだらかに変わっていく方向にこれから動き出すんだ、こういうふうに考えておるんですが、つまり、来年のことを先ほど申し上げたのですが、実質七、八%の成長だと、これは初めのうちは七、八%というわけにはいきません。まあどのくらいのパーセンテージで始まりますか、もっと低い数字で始まりまして、終わりは七、八%よりか高い、こういうようなところにきて、初めて平均がそういうことになるんだと思いますが、それで、大体私どもの見方をひとつ御推想願いたいのであります。
  178. 赤間文三

    ○赤間文三君 次にお尋ねしたいのは、これはもう非常に重要な問題の物価の問題でございます。この物価の問題が、数年間政府の非常な努力にもかかわらず、大体五%から七%、本年度は承りますると、七、八%くらいまで上がるのではないかというような想像をいたしておるのであります。こういうような物価の値上がりというものが国民のうち、特に所得の低い階層には非常な私は脅威を与えておると思うんです。所得が年々歳々相当上がっておる階級も相当ありますが、こういう階級にとっての物価の値上がりというものは、これまた私は別な意味を持っておると思いますが、所得があまり上がらない階層、そういう階層も相当多い、ボーダーラインと申しまするか、八百万から一千万くらいはそういうボーダーラインの人間がいる。こういう低所得の人間に対しまして、物価が年々五%から六%、七%近く上がるということは、非常に私は気の毒なことと考えておる。こういう点からいたしましてやはり物価対策は、いつも承りまするように、やはりそのひずみになっておる中小企業とかあるいは農業の、何としても生産性を上げるということがやはり物価対策の一つの要点じゃと、これについていろいろと努力を願っておることもよく知っておりまするが、とにかく物価の値上がりをとめるということが、これはもう政治として非常に私は大事なことに考えておるんであります。この物価をあまり上げないような具体的な方策というものを承りたい、かように私は考えておるのであります。企画庁の長官に、物価を将来上げぬような、具体的な方策を承りたい。  なおまた、先ほど来年は大体五%から五・五%ぐらいはまあまあ過渡期じゃからやむを得ず上がりゃしないかと思われる、理想としては二%から三%、このぐらいにとどめたいけれども、来年はやはり過渡期だから、やむを得ず五%から五・五%ぐらいは上がりゃしないかという見解を承ったような気がする。私の考えから見ますると、五%も来年引き続いて上がって、景気の回復が一方においておくれたなんということになると、これはまた好ましくない条件が重なってくるような気がするので、この際ひとつ物価はこういう方法によって一まあ自由主義の経済のときであまり統制的なことはできないと思いまするが、何とかひとつ物価ができるだけ上がらぬような、具体的な方策があるならば承りたい。
  179. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価をできるだけ安定させていくことは、個人の消費生活におきましても、また、国民経済全体の上からいいましても、毎年六%くらい続いて上がっていくということは好ましいことではございません。したがって、これに対して取り組んでまいらなければならぬ。  そこで、現状の物価の問題、これは、私は、当面の時々の対策と、それから根本的対策と、二つ考えていかなければならぬと思います。たとえば、生鮮食料品のような問題で需給関係が悪い、円滑を欠くというような問題については、当面の問題として需給の対策を考えていかなければならぬわけでございまして、また、そういう点について欠けるところがございますれば、若干、長期の対策として考えていかなければならぬ、たとえば、農産物の価格を平準化し、なるべく安定的な線に維持していくということが農民の生産意欲をかき立て、かつ、常時一定量を供出すると、農民の、農村の経済も成り立ちますし、同時に物価も安定してくるという形なんですから、そういう方面にも力を入れていかなければならぬと思います。これらの点については、農林省も相当積極的に対策を考えていただいておりますし、また実行していただいております。  物価全体をあずかってみまして、いまの物価の中で、たとえばどういうものが、ことにことしあたり高騰しているかというと、第一は、生鮮食料品であるとか一これは季節的な影響もございます。いまの需給関係の円滑を欠くということもございます。それから第二は、やはり住宅費の関係が上がっております。それから第三は、やはり教育費の関係が上がっております。で、そういう点について、やはり根本的に対策を考えてまいらなければならぬのでありまして、今後、国民の生活水準を上げていきます場合に、給与がある程度平準化してくることは、これは当然なことだと思う。それに対して、どうしてこれらのいわゆる合理化によって吸収するか、生産性を上げて吸収するか、サービス業のごとき生産性を上げられないものに対しては、どうやって考えていくかというような問題を、相当これは根本的に考えていかなければならぬ。ですから、外国で二%ないし三%、前年対比でもって経済が拡大していくときにはやむを得ないといわれるが、そういうサービス的なものにおける合理化もしくは生産性の向上で吸収できない部面の値上がりは、これは経済の拡大発展していくときにはやむを得ぬ。それをどういうふうな範囲に押し縮めていくか。つまり、中小企業の場合には、やはり近代化、合理化が進んでないとすれば、それを進めていく、そうして生産性の向上をはかっていく。流通過程でも同じことが言えると思うのでありまして、流通自体の、生産性と申しますか、流通性ということばがいいかもしれないけれども、生産性を向上していくということを考えていかなければ、私は、根本的な解決はできぬと思います。  ですから、毎年毎年同じような問題に今後ぶつかっていかなければならぬ。たとえば、生産者米価と消費者米価の関係を考えてみましても、これは必ず毎年起こる問題、あるいは二年か三年に一ぺん起こる問題だと思います。こういう問題は、広くやはり良識ある方々の考えの上に立って、みんな国民が、どういう扱いをするんだかということを了解し合っていくことが大切な問題であって、その理解の上に立っていけば、上げる場合にも上げない場合にも、国民の皆さん方が、ほんとうに問題を理解して、そうして把握していただけると思うのです。  そういう意味からいいまして、やはり基本的な問題として、当面の諸般の問題以外に、そういう問題に取り組んでいきまして、そうして数年のうちに、できるだけ安定の方向に持っていく、そうして、それはまた、大蔵大臣も言われております、われわれも言っております、安定成長の上に大きく役立っていく、経済安定成長の上に役立たしていかなければならぬところなんです。そういう意味において取り組んでおるつもりでございます。
  180. 赤間文三

    ○赤間文三君 この物価の問題で特に承りたいことは、生産性の上がっておるものと、生産性のわりあい低い、上がりにくいものと私はあると思う。それで、この生産性に見合う賃金の上昇というものは望ましいと思うのですが、生産性に見合わぬ賃金の値上げについては、これは何らかの方法で、お互いに話し合いで賃金を少なく上げるとか、あるいは遠慮するとか、そういう方策を講ずることが望ましいのじゃないかと、私はかねがね考えておるのですが、その点については、どういうふうにお考えですか。
  181. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 生産性を上げることができるのに、まだ上げていない、上げるだけの設備がない、あるいは近代化ができていない、こういうものに対しては、できるだけ生産性を上げる方途ができますように将来企業体自身も考える必要がありましょうし、また、低生産性部門の能率化をするために政府が何らかの措置をとる、指導援助をするということがありますれば、そういうことで上げていくことが必要だと思います。ただ、私はよく申すのですが、散髪屋さんのようなもので、これはもう生産性を上げるといっても、別に非常な画期的な上げ方というのはないと思います。ですから、それじゃ、そういう業種に働いている人がほかの業種と非常に差のある賃金をとっていいかというと、やはり、その分の値上がりは認めてあげる、つまり、そういうもの全部が生産性がよく上がっていけば、そういう部門の前年に対して二%ないし三%の値上がりというものは、国民各層が許容する消費者物価の値上がりの幅だと言うところは、そこにあると思うのです、経済の拡大発展していくときに。ですから、そういうようなことで、できるだけ生産性を上げる、あるいは流通性を上げるということによって、その問題を解決していくということが、私は望ましいことだと思います。
  182. 赤間文三

    ○赤間文三君 なお、国鉄運賃の値上げとか、郵便料金の値上げとか、あるいは公共料金に準ずるような消費者米価の値上げ、これがまた、一般の国民から見ると、物価がこれで上がるんじゃないかということで心配しておる向きが多い。政府のほうにおいても、どうしても合理化ができない、どうしても合理化をやった上に幾ぶんか上げなければ、おさまらぬというようなものにつきましては、ひとつ値上げの幅を極力小幅にとどめてもらって、また、総理大臣がたびたびおっしゃられるように、値上げの時期なども慎重に時を考えてやる、こういうふうなことに、ひとつさらに慎重に御考慮を願いたいと私は考えておるのであります。物価につきまして、これも非常にむずかしい問題でありますが、これがうまくいかないと、やっぱり公債消化にも影響がある、外国の貿易にも影響する、なおまた、国民にいろいろなあれをかけまするので、こういう問題については、十分ひとつ今後においても慎重に考慮してもらいたいということをお願い申し上げる次第でございます。たびたびこういうものについて政府の所見を承っておりまするから、あらためて私は承りませんが、特にひとつ、物価問題には全力を尽くして、国民が困らぬような方法をやっていただきたい。  次に承りたいのは、減税の問題でございます。今度の大蔵大臣も、かねてから「ゆとりのある家計」、あるいは「蓄積のある企業」を大いにやるんだ……。ゆとりある家計、蓄積ある企業、これは非常に賛成でございます。こういう点からして、おそらく明年度は大幅な減税が行なわれるであろうということを国民が非常に期待をいたしておるのであります。この公債発行とあわせて、大幅な減税があるものと非常に期待をしておる。それで承りたいのは、どの程度の規模の減税を来年は行なわれるつもりか、これをひとつ承わりたい。大体三千億なら三千億……。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 減税の規模につきましては、総理は三千億減税というのを、かねて言明をしておるわけであります。ぜひ、四十一年度においては、それを実現をしたい、こういうふうに言っておられますので、いま私も、そういう財源をどうやって調達するか、せっかく努力中であるということを申し上げておきます。
  184. 赤間文三

    ○赤間文三君 特に、現下の経済事情からかんがみまして、来年度は、個人所得税の減税を相当思い切ってやってもらいたい。なおまた、企業減税のほうも、できるだけ多くやってもらいたい。なお、私はかねがねから考えておるのでありますが、中小企業の税負担ということを、ひとつさらにこの機会に思い切ってやってもらいたい。こういう考え方を持っております。  それで、この企業減税の点でございまするが、御承知のように、わが国も、戦前と申しまするか、あの前においては、欧米並みに、自己資本は大体五〇%から六〇%ぐらいあったと私は記憶しております。戦後になりまして——戦後と申しますか、今日になりますると、非常に何か、自己資本が、先般の調査を見ても、大企業で二三%、前は六〇%くらいあったものが二三%ぐらいに減って、掛金で仕事をやっておられるように見受ける。また、中小企業のようなものを調べてみると、中小企業の法人で、たしか一四%ぐらいが自己資本で、他は措りている。こういうふうな、今日この経済の大発展にかかわらず、自己資本というものが、戦前なり、欧州各国に比べても少ない。これは私は、やはり今回の不況なども、不況回復に政府が努力を非常にされているにもかかわらず、その効果があがりにくい一つの大きな原因じゃないのかということを考えているんです。なかなかこれは重要な問題でございますが、少なくとも、戦前の五〇%−六〇%までに大企業といわず、特に中小企業等については、自己資本が蓄積のできるようなことを目あてに、一度にいきませんが、計画的に減税をやってもらいたいということを私は考えている。それで安定的な経済をやり、安定成長という、そこのところに、自己資本のいまのようなわずかのところから上げていく、そうして自己資本をふやすための税制その他については、政府が格別の考慮をしていくということが、安定経済、安定成長の根幹をなすんじゃないかとまで、私は考えているんです。それで、政府は、こういう減税について、個人所得税あるいは企業減税、あるいは中小企業者の減税等において、どういう基本的な考えを持っておられるか、ひとつ詳細承りたいと考える。  それからもう一つは、減税をその年その年で幾らやるというようなことは、これは、経済が非常に流動的でありまするから、私は、ある点まではやむを得ないと思うが、一年平均三千億なら三千億の減税を五カ年ぐらいやって、一兆何千億をやる、これについては大体こういうめどのもとにやる、という、計画減税というようなことはできないのかどうか。これができるならば、一般の産業人も、その計画にのっとって、またいろいろと自分のあれができるんじゃなかろうか。どうも、その年その年に減税を、時の財政のあれによって、やるということはやむを得ぬかもしれぬが、できれば五カ年なり十カ年くらいの間における減税計画、あるいは公債をお出しになれば公債計画、あるいはいろいろなそういう根幹に属するものは、おつくりになったほうがいいのじゃないか。ただ、事態が変わりますので、それを墨守するとか、それにとらわれるということは、これはもう問題にならないのですが、一通りの計画、見通しというものをおつくりになって、民間にもそれをお示しになり、民間もそれを基本として各自が奮励努力して、なるべく政府に世話にならぬようなぐあいに、計画に従って努力していくというふうになると、非常にやり方が明るくなってくるのではないか。それで、政府の減税に対する基本的な考え方、いま言ったような計画的な減税という点について所見を承りたいと考えます。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 赤間議員の、法人でも個人でも蓄積が非常に大事だという点は全く同感でございます。今後の経済の政策の根幹の一つだろうと思います。  減税につきましては、ただいま税制調査会のほうに立案をお願いをいたしておりまして、審議の最中でございます。その答申が近く行なわれると思いますが、それを見て政府の最後的な結論を出すと、こういう運びになりますが、私ども政府といたしまして、税制調査会に私どもの意見として申し上げておりますことを、この際申し上げさしていただきますと、所得税におきましては、最低限の引き上げ、つまり各種控除の引き上げ等によりまして、課税最低限を六十万円以上、これはプラスアルファ幾つになりますか1引き上げるように。それからさらに、中堅所得階層の負担が重いという問題があるわけでありますが、これをぜひ今度の機会に実現をいたしたい、こういうふうに考えておるわけなんです。それから法人税につきましては、一般の法人税率の引き下げはもとよりでございますが、この機会に、いまお話しのように、まあ今日非常に不況である、不況であるという原因は、設備過剰という問題もありますが、同時に蓄積が薄いと、抵抗力が弱いと、こういう問題もあるわけであります。そういうようなことを考えて、この今回の不況という災いを転じて幸いとなすというような考え方によりまして、体質改善強化のために企業が合同をするというような際における法人税の特別措置でありますとか、あるいはスクラップ・アンド・ビルド、これも必要なことかと思いますが、これを助成する措置でありますとか、あるいは直接的に内部資本の比率を改善をするという法人につきまして特別のボーナス的な意味における減税を行ないまして、これを刺激助長いたしますとか、そういうようなこと。  それからもう一つ、重点の項目として考えておりますのは、これは中小企業であります。中小企業は、今日の経済不況が長引くにつれまして、非常な困窮な状態にある。大企業は抵抗力はあるけれども、中小企業は抵抗力が少ない。この中小企業のことをよく考えなければならぬというような見地から、中小企業に対する軽減税率を相当引き下げをいたしますとか、あるいは専従者控除、これを大幅に拡大をいたしますとか、あるいは貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を引き上げますとか、あるいは中小企業者の輸出のための海外市場開拓を助成する意味におきましての特別軽減を行ないますとか、中小企業には相当力を入れていきたいと、かように考えておるわけであります。その他、相続税、こういうようなものを手直しすることにつきましても意見を述べておるわけでありまするが、いずれも、税制調査会の結論を得た上で最終的な結論を出す、政府側ではそう考えておる次第でございます。
  186. 赤間文三

    ○赤間文三君 次に、時間がだいぶなくなりましたので、取り急いで、総理にも尋ねたいと思うのであります。  日韓の問題は、これはもう十四年間……。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま一つ、答弁漏れがありますから。  赤間議員の最後の御質問でありました、長期的に計画的に考えろと、こういうお話でございますが、どうも、計画をきめまして、第一年度は何千億、第二年度は何千億というようなことになりますると、財政運営の弾力性に欠けるところがあると思うんです。しかし、これは、どの程度の税率か、今後当分の間日本財政としてやっていくのに適正な税率であるかということは、これは考えたほうがよかろうと、こういうような意味におきまして、たとえば課税最低限は何年後にはどのくらいにしたいとか、あるいは法人税率をどうするとか、そういう、ここ数年後に努力して達成しようという目標ですね。これにつきましては、ただいま検討中でございます。これもあわせて国民に大体の見当をお持ち願ったほうが、国民がいろいろ事業をされる上において、あるいは生活をされる上において適当であろうと、かように考えておるわけであります。そういう目標に従いますが、しかし、その年次年次の実行をどうするかという点は、これは、そのときの財政事情等を勘案して弾力的にきめていきたい、かような考えでございます。
  188. 赤間文三

    ○赤間文三君 日ソ外交につきまして、ごく簡単に承ります。  その前に、日韓の条約が批准ができまして、十四年間の大懸案であったこの問題が正常化したということは、これはもう非常にわが国民にとりまして喜びにたえない次第でございます。日韓問題は、一番大事な問題で、とにかく、一衣帯水の韓国との間に正式な交渉を持たぬというようなことは、非常に不自然なものである。佐藤内閣の非常な努力によって、このむずかしい問題がりっぱに正常化したということは、これはもう非常な私は佐藤内閣の大きな功績であると考えて敬意を表しておる次第でございます。なおまた、先般日本が国連の安全保障非常任理事国に当選をしまして、この一月一日から二カ年の期間で非常任理事国になりまして、世界の平和と紛争処理の問題についても努力するようになりましたことも、非常に私、日本の外交の上にけっこうなことだと、こう考えております。  それで、日ソ関係につきましては、私の承知しておるところによりますると、日ソの領事条約の問題も、おかげで非常に順調に進んでいるように、また、北方水域における安全操業問題等も比較的推移がいいようになっております。また、何か一月には、外務大臣は航空協定でソビエトに行かれるようだし、通商協定等もわりあいに順調に進む、日ソの関係がおかげでだんだんよくなってきておるように私は拝承して、非常に喜んでおる次第であります。こういう日ソの関係がよくなってきつつあるときにおきまして、私は、外務大臣に特にお願いしたいことは、もう戦争が済みましてから二十年、いま言いましたように、もう日ソの関係がよくなっておる今日、わが国の固有の領土である国後とか択捉という、この両島がまだソ連に占領をせられておるということは、これは非常に私は遺憾に考えておる。これの返還が実現するように十分ひとつ御努力を願いたい、かように私は考えておるのでございまするが、この問題について政府はいかなる御所見を持っておられるか。  この問題につきましては、私の調べたところによると、この国後、択捉は、安政元年に締結した日露和親条約から見ましても、明治八年に締結した樺太・千島の交換条約等を調べてみましても、これはもう日本固有の領土のように私は承知しておる。それからまた、一九五六年、一九五七年においても、アメリカ国務省がソ連に覚え書きを送っている。国後島、択捉島、色丹、それから歯舞というものは、あれは日本の主権のもとにあるものである、こういう覚え書きを送っているように承知をしておるのです。やはりこれはわが国古来の領土で、しかも千島列島にはこれは入っていない。千島列島と樺太はもう失ったが、古来の領土というものがいつまでも占領されておるということは、私は好ましくないと考えております。私は、これはすみやかにわが国に返してもらって、そうして明るい気持ちで日ソの平和条約が締結されることを、ほんとうに心から念願をいたしておるのであります。この点につきまして、外務大臣の所見を承りたいと考えます。
  189. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり、日ソの関係は、日ソ航空協定、あるいは領事条約、それから通商貿易の協定、これらは、ただいま進行中でございまして、近く妥結の運びに至る見込みでございます。なお、安全操業でありますとか、あるいは東部シベリア——主として東部シベリアと思いますが、シベリア開発の問題につきましても、ソ連に非常に意欲的な希望があるのでありまして、特に政府間のみならず、両国の——もちろん向こうは国家機関でございますが、こちらは民間経済人、その両国の経済人の間においていろいろな交流が最近しげく行なわれておる。来年の三月早々には、先方の経済関係の首脳者が日本に参りまして、そうして日本の経済人と親しく会談をするというようなことになって、両国の関係が非常に濃密になっておることは御指摘のとおりであります。しかし、依然として両国の間に、いわゆる正常な国交が回復しておらない、平和条約ができておらない、その大きな阻害原因は何かといえば、いま御指摘のとおりであります。これらの問題の解決が結局日ソ国交の上において終結的なものでなければならぬのでありますが、これを直ちに最終目的に突進していくことがまたして可能であるかどうか。これらはやはり除々に、しかもそうゆっくりせずに、また、あわてないで、歩一歩今日の懸案を解決していくことによって、両国の間に漸次そういう空気をつくり上げていくということがきわめて必要ではないか、こう考えておるわけであります。
  190. 赤間文三

    ○赤間文三君 時間があまりありませんので、最後に、万国博覧会のことについてひとつお願いしたいと思います。  昨年のオリンピックは、これは非常に成功をおさめまして、日本のいいところが外国に知れ渡って、非常に成功であった。今度の博覧会は、昨年のオリンピックにもまさる大じかけなものであって、東洋でも初めてのものでございます。日本の国の海外におけるあらゆる面について非常に影響が深いと考えます。にかかわらず、一部の人によると、ややもすると、博覧会というものは少しこれは時代におくれたものであるとか、あるいは、これは単に大阪のものだとかいうようなことを何か言うた人があるようで、非常に遺憾であります。そういうことは問題になりませんが、とにかく徹底的にこの博覧会は成功をおさめなければ、日本の国のためにならぬ。こういう意味からいたしまして、オリンピックと同じように特別措置法をひとつ、もうできるだけ早く制定をしてもらいたいと、私希望をしております。地元は全部——だいぶ日時も迫ってきて、四年、五年はすぐたちますので、特別措置法を早くつくってもらいたい。なおまた、担当大臣も、オリンピックのときと同じように、これをつくってもらわないと、各省にまたがる仕事が多いのでありまするから、こういう問題をうまく処理するためには担当大臣をできるだけすみやかに設定をしてもらいたい。なおまた、これはオリンピックのときもそうでありまするが、今度はもうたいへんな、百万人ぐらい外国人が来る、日本人を合わせると約二、三十万ぐらいは、この博覧会に来るのじゃないかと想像いたしておるのであります。ところが、いまの大阪の実情から見ますと、あのままでやっておると恥をかくようなぐあいで、交通その他もたいへんな行き詰まりを生ずるのでございますので、相当思い切って、関連の公共事業というものを、ひとつ早く整備をしてもらわないと間に合わないのじゃないか。この公共事業でございますが、ちょうどまあ、不況のときでもございまするし、不況克服のために公共事業を繰り上げてやるというようなことには非常にぐあいがいいのじゃないかと、こう考えております。汽車にいたしましても、大阪——東京の新幹線を岡山までにする御計画があるようでありまするが、やるならば博覧会までに広島ぐらいまでひとつ何とかやってもらいたい。あるいは中国縦貫道路のようなものも、もとつこの博覧会目当てにやってもらいたい。なおまた、明石と四国との間を結ぶ橋につきましても、ひとつできるだけ能率をあげてもらう、その他日本国じゅうの重要な関連公共事業の整備をしてもらうのには、もう非常にいいときであると考えておるので、思い切ってひとつこの公共事業の整備促進をやってもらいたい。なおまた、博覧会はこれは非常に全国的なものであり、国際的なものでございますので、会場の建設等については——地方庁はこのごろ非常に貧乏いたしておりますので、できるだけひとつ国のほうで補助金等も出してもらう、こういうふうにお願いしたいと考えておる。以上申し述べましたことは、もう非常にこれは急いでおりまして、いまこれを、どんどん始めるなりしないと、時期を失しやしないかということで、地元が非常に心配をしておりまするので、この促進について、政府はどういうお考えを持っておられるのか、これをひとつぜひお答えを願いたい、かように考えます。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 赤間さんの御指摘のように、万国博覧会は、単に一大阪の産業博覧会ではなく、一大国家的な事業でありまして、産業に限らず、社会全般のその時代における人類の文化を紹介し、また、将来の展望をしようという、まことに大きな意図を持ったのが万国博覧会でございます。したがって、これを成功さすことは、単に大阪というだけではなくて、国家的な責任であると考えておる次第であります。また、いろいろな特別立法というものが必要であります。現に役所から出向する者あるいは関税の問題、いろいろとこれは近く御審議を願って——オリンピックのときにも、三年前に特別立法ができた。これはそういう問題が起こる前に、特別の立法をいたしたいと思っております。  また、専任大臣は、総理も早く置いたらという御意向でありますが、今年度予算でも済みますれば——年度になれば置くことが適当だと考えておる次第でございます。  また、これを機会に、立ちおくれておる関西の地域開発——万国博覧会と直接の関係はないかもしれませんが、こういうことをきっかけに地域開発が進むことは好ましいと考えております。したがって、近畿を中心として——東京が相当いろいろ開発されたわけですから、次は関西の番である、全力を尽くすべきだと思っております。
  192. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと一問だけ関連して、総理にひとつ、めったにこういう問題でお聞きすることもないと思いますので、簡単にお聞きしておきいたと思います。  まあ、博覧会の関係でいろいろテーマというものが基本的に問題になっておるわけですが、私たちはいまの世界の情勢から見て、世界の平和というものをこの中に強くひとつ浮き彫りにしてもらいたい、こういう念願を一つ持っておるわけであります。これは専門の各委員等が任命されて検討されておられるわけですが、全国の仕事として盛り上げるという態勢を政府もとっておるわけでありますから、ひとつ総理のその点に対する考え方をはっきりさしてほしいと思います。  それからもう一つは、その点はことばの上だけではいけないわけでありまして、したがって、この参加国ですね——当然私たちはそういう立場に立つ以上は、全世界のどの国でも参加できる態勢というものを主催国が用意すべきだ、政治的にいろいろ複雑な情勢等もあるだけに、私はそのことが大事なことではないか、具体的にオリンピック等の場合にも若干問題があったわけですが、しかしオリンピックの場合には適切にその点が処理されたわけでありまして、ひとつ今回はそういう問題についてそれ以上の配慮を願いたい、これが第二。具体的に答えてほしい、考えるとか何とかいうんではなしに。それから第三は、こういう事業がやられますと、やはり、ややもすると結果として、現在の経済界の支配層、そういう方々には直接間接いろいろな意味でやはりはね返りの利益等もあるわけであります。しかし私は、そうなったのでは、これは一部の者の仕事ということになるわけでありまして、何と言っても日本の全産業、なかんづく中小企業者あるいは住民の福祉と、こういったようなことが全体の仕事を進める上の一つの大きなねらいどころになっていかなきゃならぬと思うのであります。つくり上げた施設のあとからの利用といったような面で、そういうどこをねらうかということによって、直ちにこれが関係してくるわけなのです、そういう点が一部の上層だけに奉仕するというふうなものであっては、これは協力も得られない。たとえば現在、地元の土地の買収ということも問題にすでになっておるわけです。スムーズにいくかいかぬかということは、そういうところからもやはり大きく影響してくると私は思う。以上三点につきまして、再質問はいたしませんから、総理からひとつ、はっきりとお答えを願いたい。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま三木通産大臣からお答えをいたしましたように、大阪で開かれる万国博はわが国における一大事業である。これはただいま申したとおりであります。私も、さような意味におきまして、ひとり関西あるいは大阪というだけでなく、また党派的にも超党派的な立場におきまして、いわゆるわが国の一大事業だ、そしてまあ画期的な事業だ、この問題を成功させたい、かように思いますので、まずその点の十分御協力を得ることをお願いしておきます。  その次に、テーマでございますが、ただいまの世界の平和ということももちろん大事なことでありますが、ただいままで考えられたものは人類の進歩と調和、かような標語ができておるようでありますが、この人類の進歩と調和を表現する、かような意味におきましてこの諸計画が進められる。しかも、これは国際的に、ただいまの調和の和を特に強く押し出しておるようでありますので、これらもお考えの上、ただいまの世界の平和に通ずるものじゃないか。私かように考えますので、この点も御了承願いたいと思います。  第三の問題ですが、このことはただいま申しますように、人類の進歩、これを表現するという意味におきまして、各国の特殊性はもちろんあるのだと思いますが、中小企業その他すべてのものがこれに参画し、そうしてその長所を十分発揮するようにつとめたいと思います。  先ほど赤間君から、主管大臣を早くつくれ、こういう御要望が出ておりますが、それなども十分考えまするし、また特別立法もしよう、こういうことであります。私がこの機会にお願いするのは、超党派で、わが国の一大事業だ、このことに十分徹して、これを成功させていただきたい、かように思う次第でございます。
  194. 亀田得治

    亀田得治君 一つ抜けている……(「各国」と呼ぶ者あり)
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その各国の問題は、ただいまの調和の和で私は表現したつもりでございます。どうか土地の買収その他におきましても十分御協力願うようにお願いいたします。
  196. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 赤間君の質疑は終了いたしました。  午後七時十五分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後六時三十五分休憩      —————・—————    午後七時四十七分開会
  197. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。本日、前田佳都男君が辞任され、その補欠として北畠教真君が選任されました。     —————————————
  198. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)外二案を一括して議題とし、質疑を行ないます。小林武
  199. 小林武

    小林武君 私が質問いたします事項は、一つの項目として、公務員給与に関係することであります。もう一点は、防衛に関する問題であります。  そこで、私は、公務員給与の問題を考える場合に、これは単に公務員だけの範囲内でものを考えるということは、妥当ではないように考えるわけであります。どこまでも、日本の国の労働運動、労働問題全般の中でどう考えるかということが一つであります。そうしますというと、私はやはり最初に、労働問題全体がどうなっているかということに触れなければならないわけであります。  来年の労働運動のことを、労働問題のことを考えますときに、とにかく首切りの問題が、相当心配される一つの事項である。あるいはそれらの問題にかかわった経営者側の労働対策というものがあって、その間に激しい激突が起こるのではないかというようなことを私自身いま心配をするわけであります。と申しますのは、単なるこれは想像でないわけであります。予算委員会において、皆さんから非常な熱心な討論があったわけでありますけれども、その中にも再々出てまいっておりますところの景気の問題が一体どうなるのかということであります。労働の問題として景気の問題が議論される場合には、私はこれは労働省のような観点からは労働者も経営者もやらないわけであります。はなはだどうも労働大臣のことを例に出して悪いのでございますけれども、労働大臣は何か労働関係の新聞の中に、新年のあいさつを述べている。これは新年のあいさつでありますから大体おめでたい調子の出るのは当然だと、私はそれは了解するわけであります。しかしながら、これは年頭のあいさつだけではなくて、まあ労働省におけるところのいろいろなものを見ますと、若干これは政府立場として当然でしょうけれども、景気が回復するという前提に立って楽観ムードが非常に多過ぎる。昨年は長期的な成長過程における調整の年であった。経済の停滞が続いて雇用面にも新規求人の減少、雇用の停滞等の影響があらわれて、それに加えて中小企業などの倒産が見られた。で、一部の企業では一時帰休などの雇用調整措置が行なわれたと、こういっておりますけれども、本年は、政府の景気対策と産業界における生産調整等の努力が次第にその効果をあらわし、景気は回復に向かうものと期待されると、こう書いておられる。そうして雇用対策の推進の問題が取り上げられて、さらには労働条件の向上と労働者の福祉の問題を取り上げておる。私はこういう程度のいまの状況ではないように思うのであります。たとえば日経連で、一体どういう態度をもって労働者の労働対策に臨んでおるか。日経連の前田専務は、十月二十二日の日経連の総会において、不況は思いのほか深刻である、企業はいまやその体質改善に全力を尽くすべきである、ということを言っている。そうして、体質改善のためにすることの幾つかの問題点をあげて、その中で企業合理化の推進ということを強調し、企業内におけるところの労使関係というものに言及しているのであります。さらに、この労使間の問題で、企業合理化の推進の具体的方策としてレイ・オフを実施するということもこの中で取り上げられておる。あるいはイギリスのまねをしてペイ・ポーズ政策をやろう、賃金凍結政策を大いに検討してみる必要があると、こういうようなことも言っておる。この点はどうも日経連としてはすばらしく激しい態度で労働の問題に対処しているということをよくあらわしていると思うのであります。まあ与党の皆さんには耳が痛いかもしれませんけれども、櫻田という日経連の代表常任理事は、政府はたよりにならないと、こうきめつけている。われわれは政治家を責める前に、二十年間かかってこの程度の政治家しか育てられなかったことを反省し、自分の足で自主的な経営をしなければならないというようなことを言ったと、新聞の社説は取り上げておる。こういう状態の中で、労働者の側としては、当然、首切りをやられてはたいへんだ、組織を守るためにがんばらなければならぬと、こう言っている。でありますから、まあ私は、景気回復というような——不況をとにかく一日も早くなくさなければならないというような状況の中において、来年はそれにはあんまり立ち入らない。労働対策の誤りから、争議が頻発するというようなことが 心配として出てくるわけであります。でありますから、こういう情勢について、労働大臣は一体どういう分析をなさっているのか。私は、先ほど申し上げましたが、労働者の問題、労働者と使用者の問題を取り上げる場合には、一番やっぱり不安定なところに焦点を置いてものを見なければならないと私は考えるわけであります。そこから出発するわけであります。それがさらに各方面に波及するわけでありますから、そういう意味で、まあ一番の問題点のある製造業等の雇用関係というようなものが、労働省の立場からどのように調査して、傾向はどうなっているかというようなことをまずお尋ねをしたいわけであります。
  200. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 現在の景気の状況下における雇用関係でございますが、あらためて申し上げるまでもなく、こういう景気の状況でございますから、まあ中小企業等において相当の倒産等も出、したがって、また相当数の、大体月間七、八千程度ではないかとまあ推定されるのでありますが、その程度の失業者も出ておるということも事実でございます。しかし、実は従来、御承知のとおり、中小企業等においては、特に人手不足と、こういう傾向もありましたので、あまりこれが表面に出ておらない。総体的に見まするならば、雇用の増勢が鈍化をいたしておると、まあこういうような状況でございます。しかし、この間にあって、ただいま御指摘のとおり、今後この景気の状況がさらに続くということになりますならば、使用者側におきまして、企業の体質改善というような見地から賃上げ等に対して相当きびしい態度で出てくるとか、さらに進んで人員整理をも計画するとか、まあそういったような状況が出てくるのではないかということにつきましては、私どもも十分心配をいたしておるのでございます。ただ、このような状況下にありまして、争議なり、あるいはさらに進んでストライキのこの件数と申しますか、そういうものが非常にふえておるかと申しますと、今日までのところでは、そうふえておるという状況ではございません。試みに数字をちょっと申し上げますと、争議の件数でございますが、これは三十九年の上期におきましては千八百二十四件、下期においては千七十六件、それから四十年の上期においては千八百八十六件、まあこういうことで、若干三十九年上期と四十年上期を比較しますと、四十年の上期のほうがふえております。さらに争議行為の件数を見てみますと、三十九年の上期におきましては千五百一件、下期においては五百八十六件、四十年の上期におきましては千五百六十六件、こういうぐあいで若干ふえてはおりまするが、しかし、非常に激しい争議というようなものももちろん若干ございますが、そうはなはだしくふえておるというような状況には目下のところないのであります。したがって、この労使の関係につきましては、もちろん景気全体の状況にかかわるところが非常に大きいわけでございまするので、それは政府全体の施策として、私の立場からいたしますならば、一日も早く景気の立ち直りということを期待をいたしておるわけでございます。この間、もちろん相当の離職者等も出ることも予想されますので、それらに対しましては再就職のあっせんを極力やる、あるいはその間、現在もございますところの就職の援護措置等を十分機動的にひとつやって対応をいたしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  201. 小林武

    小林武君 いろいろと御説明をいただきましたが、私が一番聞きたいのは、製造業等の常用雇用指数というようなものが一体どういう数字的な動きをしているか。三十六年にはどうであったか、あるいは三十八年から九年、それから、先ほども総理大臣の話にありましたが、四十年度の数の動きは一体どうなっておるのか、そういう点について数字的なひとつ調査をお聞かせを願いたい。
  202. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 常用雇用者につきましての指数でございますが、対前年比を見まするときに、ごく最近の指数をとりますというと、全体では〇・八ふえております。それから建設業等におきましては四・三増加、ただし、製造業につきましては〇・六減少、卸、小売り業等においては二・三増加、こういった傾向を示しておりますので、一般的に申しますと、製造業においてむしろ苦干減りつつある、そのかわり卸売り業等においてはむしろふえつつある、こういう傾向であります。
  203. 小林武

    小林武君 三十六年には前年度の伸び率が一二・四%増になっている。三十八年から三十九年にかけてはこれがずっと減って三%増になっている。四十年の数字を見ると二月から四月までは一%増、七月にはゼロ、八月には〇・二%減。このころに、八月のころに入るというと、人員整理の基調に移ってきている、製造業の場合は。こういうふうに私は承知をしておるのですが、これらの数字は誤りですか、どうでしょうか。
  204. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ただいま御指摘の数字で間違いないようであります。
  205. 小林武

    小林武君 そうすると、製造業の場合においては、四十年度に入りましてからはだんだんそういう人員整理の基調に移ってきた。ところが、このことは当然賃金に影響してくるわけだと思うのです。したがって、これの実質賃金というようなものが一体どういうふうに対前年度と比較して移っていっているのか、この点について数字をあげてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  206. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 賃金につきましては、三十五年を一〇〇としまして、名目賃金におきましては、三十五年が一〇〇、三十六年が一一一・三、三十七年が一二二・七、三十八年が二二五・八、三十九年が一五〇、四十年の一月から十月の平均をとりますと一四九・三、こういうことに相なっております。  これを実質賃金について見ますると、同じく三十五年を一〇〇といたしまして、三十六年が一〇五・七、三十七年が一〇九・一、三十八年が一一二・二、三十九年が一一九・四、本年の一月‐十月の平均が一一〇・六と、こういうことに相なっておりますが、本年の一月‐十月の前年同期に対しまする名目賃金のアップ率は九・九%、実質賃金のアップ率は一・八%、こういうことに相なっております。
  207. 小林武

    小林武君 前年度の数字は、私のお尋ねしようと思ったこととはまたちょっと違った角度から御説明をいただいたわけでありますが、全然違っているということもないのですが、これはどんなものでしょうか。前年度の実質賃金との伸び率を見た場合には、四月の場合には〇・二%減であります。七月から八月というのは一%というわずかの増をやっておる。このように、賃金の面においても、いわゆる雇用関係の停滞の影響があらわれている、このように私は判断しているわけであります。これは、一つは、先ほどの御説明の中にもございましたが、名目賃金と実質賃金の話が出てきたのでありますが、物価の上昇の問題、それから生産水準の切り下げによる時間外勤務の手当の大幅の削減というようなことがこのような事態になっていると私は判断しているんですが、この点は間違いでしょうか。
  208. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 実質賃金の伸び率でございますが、本年に入りましてから、一月におきまして六・四%、二月が四・一%、三月が四・四%、四月がこれは〇・二%のマイナスであります。それから五月が〇・九%の上昇、六月が二・五%の上昇、七月が一・三%の上昇、八月が二・八%の上昇、九月がこれは三・七%のマイナスでございます。ただし、十月に入りまして二・五%の上昇、こういうことになっていますが、この間、九月のマイナスでございますが、これは、御承知のとおり、公労協の関係におきまして、国鉄、電電あるいは専売等の追加払いがおくれておりますが、去年はこのころすでに行なわれたのでありますが、本年は行なわれなかった。そういう関係やら、あるいは、ちょうど台風等の被害によってたまたまその月の消費者物価が非常に上がった、こういったような関係でこのマイナスが出てきたわけでございます。  それから、実質賃金が伸びない——伸びが少なくなっておると申しますか、そういうのが就業時間の関係ではないかというお尋ねであったと思いますが、その点は、御指摘のように、相当影響しておるようであります。
  209. 小林武

    小林武君 で、結局、こういうことになりますというと、経営者側としてはいわゆる縮小均衡の経営に徹するというふうなことになると思うのであります。三菱重工では、合理化をやれるものはすべてやってしまった、あとは問題が残っているのは人事面だけだ、こう三菱の責任者の人たちが言っている。あるいは、日経連の前田専務の問題については先ほど話しましたが、どの企業も、七・八%ないし二〇%、平均で一五%の余剰人員を現在の企業はかかえておる。そうして、人減らしの目標というものが企業の中で大きな問題の一つだということを示していると、こう言っている。でありますから、企業の労働対策としては、先ほど申し上げたような人減らしというところに重点を置いて、いまややれるのはもう人減らしだけだ、ここに焦点を合わしていると私は見ているのです。こういう角度から言うと、いままで申し述べました三点の問題をからみ合わして、一番落ち込んでいるといわれる製造業がなかなか深刻な状態にあるということは、これはお認めになりますか。
  210. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 御指摘のように、特に製造業の部門におきまして就労者に対する経営者側の考え方というものは相当シビアーであろう、かように考えております。
  211. 小林武

    小林武君 そこで、文部大臣にお尋ねいたしますが、文部省は、新卒の求人が思わしくないので、これについていろいろ対策を立ててまいったのでありますが、特に大学卒の問題はいまでも就職の率というものはきわめて低い、こう承知いたしておるわけであります。で、大学だけではなくて、中学卒業生、高校卒業、大学卒業でも四年制の大学と短大、そういうものが、男女というようなものの別もありましょうが、ひとつ詳細に一体求人が前年に比べてふえているのか減っているのか、その点をお答え願いたい。
  212. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 就職の決定率並びに求人ということになりますと、概して申しますと、大企業のほうは減っております。それから中小企業のほうは、むしろ従来より拡大をいたしております。
  213. 小林武

    小林武君 どうもそういう簡単な話ならばわざわざお聞きしなくてもいいんですが、私は、そういうんじゃなくて、中学卒は求人が前年より何%減っているのか、高等学校の卒業生は何%減っているのかふえているのか、大学卒は、四年制の大学、短大においてはどうなのか、こういう点を少なくとも文部省はその面についての調査を相当長時間にわたってやったわけでありますから、もう少し何といいますか、詳細にといいますか、数字をあげてお答えを願いたい。これは、文部大臣があれだったら、政府委員でいいんですよ。
  214. 杉江清

    政府委員(杉江清君) 最初に、大学の求人状況並びに就職決定の状況について申し上げたいと思います。  求人状況につきましては、四年制大学につきましては、求人倍率は、九月十五日現在では四・五倍でしたが、十一月十五日現在では五・九倍になっております。短期大学におきましては、やや求人倍率は下がりまして、十一月十五日現在で一・五倍、こういう状況になっております。  就職決定率で申し上げますと、四年制大学については……
  215. 小林武

    小林武君 求人が前年度より減っていると、何%減っているかと、こういうんです。
  216. 杉江清

    政府委員(杉江清君) 前年同期と比較した数字は、ただいま持ち合わせておりません。現在の状況におきます求人の倍率は、いま申し上げたとおりでございます。
  217. 小林武

    小林武君 やっぱり四・五倍とか、一・何倍とかいうようなことを言うと、これは誤りですよ。去年から一体求人がどのぐらい減っておってということをよく調べないというと、単に四・五倍あったとかなんとかいうことではだめなんです。これは求人が四年制の大学で四・五倍も、たいへんなことになるじゃないですか。これは全然だめだ、この数字はね。全然だめだけれども、もうだめついでに言っておくというと、こういうのはまずい。  それからやはりいま一番大事なのは、中学卒それから高校卒というものは、これはやはり求人者の側から言えばかなり……(「労働大臣だな」と呼ぶ者あり)これは文部省が調べたからぼくは言うんでね。まあこれは労働省でもよろしい。あのね、もう一回言うからね。中学、高校、大学です、それが、求人が一体前年度に比べて何%減っているかということを聞いているんです。
  218. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 大学の求人につきましては、先ほど文部省からお答え申し上げたとおりでございますが、この求人が、大学ともなりますと、いろいろダブっておりますので、ここで単純に倍率だけを出しましても、実感が実は出ないのでございます。中学、高校につきましては、例年十月現在で実施しておりまする毎年の比較がございますので、これは安定機関を通じて調査しておりまする限りにおきましては、大体、見込み調査としては実態に合った調査が出てきておりますが、それによりますと、来年三月の卒業予定の中学卒業者につきましては、求人が、昨年は百七十万ございましたが、ことしは百三万、約四〇%の減でございます。ただし、卒業者のうち、就職を希望する者の数も、総数におきまして十万程度の減を見込んでおりますので、倍率といたしましては、昨年四・四倍であったものが、来年の見通しとしましては三・一倍に減ることになっております。  それから高校につきましては、同じ時点について比較いたしますと、昨年は求人が百六万ございましたが、ことしは十月時点で七十九万、約二〇%の減になっております。高校は、御承知のように、総数において三十万ほどの就職希望者数が来年はことしと比較いたしまして増加いたしますので、倍率は、昨年は二・九倍ございましたが、来年三月の見込みでは一・七倍と相当緩和する見込みでございます。
  219. 小林武

    小林武君 大学はどうだって、もう一ぺん言ってちょうだい。大学のやつがよくわからぬ。
  220. 杉江清

    政府委員(杉江清君) 十一月十五日現在の状況を申し上げますと、四年制大学におきまして、ただいま、十一月十五日現在の就職の決定されました率は七二%になっております。ところで、昨年同期の就職決定率は七五%でございまして、三%減になっております。で、短期大学におきまして本年度の十一月十五日現在の決定率は三五%でございますが、昨年度においては四一%の決定率を示しております。このように、昨年度と比べましては、ややその決定率は下がっておる状況でございます。
  221. 小林武

    小林武君 まあはっきりこれでわかったわけでありませんけれども、この新卒といいますか、新しく学校を出た者に対する求人というものに不況の問題がどう影響しているかということなどについては、これは文部省がもっぱらやらなければならないことではございませんけれども、労働省その他職安関係との調査もあることでありますから、もう少しやはり正確にしてもらいたいと思う。そうしなければほんとうにこれはつかめないのじゃないかと思うわけであります。その点は、しかし、先ほど申しておるような不況の問題というのは本年度のこの新しい学卒にもだんだん影響がきているということがこれはわかればまあそれでいいですから、次に進みましょう。  さらに労働大臣にお尋ねしたいわけでありますが、一時帰休制の問題です。日立、東芝、三菱電機というようなところ、最近は東洋レーヨンというようなものも、ずいぶん二万八千人ぐらいいる従業員が十月から三日以上六カ月にわたって帰休制を実施しておるというようなことを伝えられている。それから三菱電機の管理職の待命休職制度というものが二千八百人を対象として出てきて、これが就業規則に織り込まれておると、こういう問題。それから東芝が社外出向制度を就業規則に規定しておるというようなこと。三菱重工が三千人に近い社外出向をやっている、五千人の配転を行ったと。しかし、今後これが直ちに首切りにつながるかどうかという問題は、にわかに断定はできないとしても、これはそういうおそれがあることは十分だと私は判断するのですが、その点については労働大臣はどんな一体お考えをお持ちでしょうか。
  222. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 一時帰休の問題でございますが、ただいま役所のほうでわかっておる状況を申し上げますと、十月末現在におきまして実施中のものが三十三社、七十七事業所、それから実施予定のものが二社、二事業所、合わせまして三十五社の七十九事業所と、こういうことに相なっております。その人員から申しますと、約十二万と、こういうことでございます。  社外出向につきましては、目下のところその件数なり人員なりは遺憾ながらまだ把握をいたしておりません。  ただし、この一時帰休でございますが、大体のところは来年三月末までというようなことでやっておるものが多いようでありますので、これが直ちにいわゆる首切りというものにつながるとはまだ即断いたしかねるのではないかと、かように考えておるのでございます。  それから社外出向等につきまして就業規則にうたっておるのはどうかというお尋ねかと思いますが、これは就業規則は労使の了解のもとにつくっておるものであろうと、かように存じますので、それをこういう規定を入れることがいいとか悪いとかと、さように批判めくことを申し上げるのはいかがかと、さように存じます。
  223. 小林武

    小林武君 きょうは、これ一つでもってきょうの分は打ち切りたいと思います。それで一言だけ申しておきますが、私はそういうのが就業規則に盛られたことをここで批判を始めようというのじゃない。実態をつかんでその上に立っての話になるわけですが、そういうふうにお考えいただきたい。  なお、明日この問題をやっておられませんので、ここで、御答弁は要りませんけれども、この一時帰休制というものは、たとえば首切りにつながるというようなことがあらわれておるところもある。八幡の系列の会社の中にもあることは、もう労働大臣も先刻御承知だと思う。あるいは、これがさらには中小企業にも大きく波及しているという事実もある。しかもこれは臨時工に第一にこれが押し寄せてきておるという問題。長崎造船所では二千人の臨時工が整理されたというようなことがある。まあこういうことから、私は、労働問題の中にはかなりの問題点が起こっているということを考えて、先ほど申し上げましたように、その日本の労働問題の中で公務員の問題も取り扱っていかなければならない、こう考えておるわけであります。そのことについてはまた明日続行させていただきます。
  224. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 小林君の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十二分散会