○森中守義君 私は、ただいま農林大臣から説明されました
野菜生産出荷安定法案につきまして、
日本社会党を
代表し、疑問とする諸点を、
総理、農林大臣、大蔵大臣、通産大臣、経済企画庁長官にたださんとするものであります。
経済
政策には至って弱いと評されている
佐藤内閣緊急の課題は、不況克服及び物価の安定であると思います。それは、池田内閣によってつくられた高度成長
政策のため、農業と中小企業には、大企業との間に収益の格差を強要され、他面、広く
国民大衆には、物価の驚くべき高騰を押しつけられたままの状態を、
国民に信を問うこともなく、
佐藤内閣がバトンをタッチしたからであります。かかる角度より佐藤
政策を観察すれば、まことに残念なことながら、
国民に与えた答えは、一言にして言えば、すべてが
国民の
期待を裏切ったことであります。なぜなれば、大資本擁護の不況対策が優先され、物価対策は、財政法の禁を犯した公債の発行をはじめとするインフレの激増をもって答えているからであります。
そこで私は、この法案が果たさんとする物価安定の実質的
効果について、
総理、農相及び経企長官にただしたいと思います。
すでに農基法制定より六年を経過し、その法の
目的と目標は、農業所得の引き上げ、ひいては格差の是正であったはずであります。しかるに、農業所得は、依然として他産業所得の三分の一の壁を破ることができないではありませんか。農業
生産性の
向上、農産物の
生産者
価格の安定の
政策は、まことに不徹底をきわめているではありませんか。農外所得による若干の増加が、かろうじて農家所得の増加であるにすぎないではありませんか。農基法の
目的と目標は、いまやその面目を失い、六百万戸農家の失望は、
政府への激しい怨嗟に変わっていることを御承知願いたいのであります。のみならず、農産物の流通改善と
価格安定の
政策はとられず、ために、消費者
価格は、鉄道運賃をはじめとする公共料金の値上げと相まって、
国民は生活の重圧に慨嘆し、各新聞による世論調査の結果が佐藤政権より急激に去りつつあることが、何よりも実証であります。
国民生活安定の今日的急務は、何をおいても物価の安定にあることは前述のとおりであります。しかるに、消費者物価は、
昭和三十五年に対する
昭和四十年十二月の比は一三七となっておりまして、その上昇比重が、生鮮食料品、中でも
野菜の値上がりが最も顕著であることは、各種統計が示すところであります。
しからば、本法案と物価騰貴抑制との
関係でありますが、本法案は
生産者対策としても、もとより不十分でありますし、物価安定に寄与せんとする実質的
効果は、何ほどの
期待が持たれるでありましょうか。それは、本法案は、
野菜の
生産計画及び供給安定により、間接的に消費者物価の安定を
期待しているようでありますが、
野菜の
価格は、複雑な流通機構のために、
生産者には安く、消費者には高い実情よりいたしまして、いかに
生産を計画化しても、流通機構の改善がない限り、
生産者には安く、消費者には高いとする
価格の構成は、少しも改善されないのであります。
政府はたび重なる失敗にもかかわらず、今回なお、流通機構の改善に取り組む姿勢をとっておりません。要するに、本法案によって、
生産の
向上、
生産者の
価格維持、流通機構の改善、消費者
価格の安定等の
責任ある保障が約束されるかどうか。
以上のことにつきまして、
総理、農林大臣、経済企画庁長官より、それぞれ
お答えを願いたいと思うのであります。
次に、具体的内容について若干
お尋ねいたします。農林大臣、大蔵、通産各大臣及び経済企画庁長官より
お答えいただきたいと存じます。
その第一は、かかる重要な法案に対する国の財政
措置があまりにも少なく、法制
効果は、はなはだ疑問であります。本法がかりに
政府の希望どおり制定をされ、かつ、運用に至るならば、集団産地の育成、
価格補てん制、市場等の流通合理化等々を強力に充実していかねばなりませんし、その推進には、具体的財政計画の裏づけこそが成否のかぎとなるのであります。この点についてほどうでありましょう。また、本年度予算全体に対する物価対策
関係予算との比率、及び、農林予算全体に対する
野菜対策
関係予算との比率を
お答え願いたいと思います。同時に、それらの予算が、物価対策、
野菜対策に完璧であるとすることであるかどうかも、
お答え願いたいのであります。
第二に、
野菜の
生産基本対策についてであります。昨年十二月、農林省より発表されました「
野菜の需要量と
生産量の長期見通し」にも指摘をされておりますように、
野菜の需給規模は、
昭和三十年以降、毎年、かなりのテンポで
増大しているのに対し、季節的、短期的変動は少しも是正されておりません。のみならず、常に暴騰暴落を繰り返しているのであります。したがって、
政府の
生産出荷安定計画は、もっと、きめをこまかく、季節的品目別の計画化が必要であると思うのであります。今回のこの法案の提出は、おそらく、その反省の一端として
提案されたものと思うのでありますが、いままでのようなことを惰性的に法制化したにすぎないのではないとするならば、
政府は当然、この点に対する基本的対策をお持ちであると思います。それがないと、その
効果は全く
期待できません。
野菜農業の振興に対し、将来の確固たる長期計画を樹立するとともに、どの程度きめのこまかい対策を準備されておられるか、お伺いをいたします。
第三に、
政府は
昭和三十七年及び八年から、タマネギ、カンランについて、
生産者
価格の補てんを行なってきたのでございますが、現行制度は、両品目について二つの資金協会をつくり、
政府、地方公共団体及び
生産者から出資をさせ、これを積み立て、
価格低落の際に補てんをする、いわば一種の保険制度をとってまいったのであります。この協会の資金は、三十八年から三十九年にかけてのカンランの暴落時に資金の枯渇を招き、すでに難破波をした経験を持っております。今回も
政府は、この種の協会を、白菜を加えた三品目を対象として、一体化した計画でつくるというのでございますが、そのためには、大規模な市場操作を行なう資金の用意が必要であります。はたして、この程度の規模で、うまく運営できるとする確信をお持ちであるかどうか。
わが国の主要農産物である米に
代表されるような、思い切った国の
施策によって、何らかの形で
価格保障制度が実施されていなければ、結局、不徹底な、一時的保険的な制度に終わる危険があります。この程度の
措置で、
生産の安定確保ができるかどうか、自信のほどをお聞かせ願いたいのであります。
第四は、市場制度等の流通改善や共同出荷、または出荷調整についてであります。中央卸売市場、地方市場の
現状は、非近代性、施設規模の狭隘さ、取引方法、卸、仲買い等のあり方をめぐる問題が重なり、公正なる
価格の形成や、集荷、分荷にも大きな支障を来たしていることは、周知の事実であります。また、広く、
生産出荷から小売りに至る、複雑きわまりない流通機構と流通コスト高は、従来のおざなりな対策では、これが改善合理化は、百年河清を待つにひとしい
状況であります。一方、
生産者出荷の実情を見ますると、農協団体、商人団体、個人販売業者も加わり、この法案で言っているような共同出荷の調整合理化が、はたしてスムーズにできるかどうか、はなはだ疑問であります。
生産者の
立場から見た農協共販を育成する
意味からも、農協の一元的な共同出荷の拡充が必要となりますが、これら流通・出時面に対する
考えを明示してほしいのであります。また、法案作成の段階で、出荷協定の締結を独禁法の適用除外とする内容のものが、農林省の当初案であったように聞き及んでおりますが、なぜそれを公取からの注文で引っ込め、単なる勧告ということになったのか、
理解に苦しむのであります。はたして、勧告だけで計画出荷が完全にできるという自信があるかどうか、
お答えを願いたいのであります。
次は、指定産地は、農林省の計画によりますと、四十二年度までに、全国五百二十六産地に増加させるとのことでございますが、指定産地に対する指導
方針、助成
措置は、どのように講ぜられるのか、お伺いいたします。
また、法案に盛り込まれている
生産出荷近代化計画は、予算を裏づけとした、季節的品目別の、きめのこまかい具体的実行方策が必要でありますのに、単に空虚な飾り文句にすぎません。
野菜年産の根幹は、
野菜農業の構造改善による
生産性の
向上と、
生産者
価格の安定にありますが、その実効がどの程度
期待できるのか、
お尋ねをいたします。
なお、指定産地
生産野菜の、指定
消費地域の市場に対する計画出荷、特に中央卸売市場における荷受けの
関係はどうなるのでありましょうか。その場合、アウトサイダーの
関係も起こると
考えるのでございますが、営利団体たる卸売り人が、はたして、そのまま計画出荷を受け入れるかどうか、その指導調整
方針を御披露願い、今後の市場支配力、
価格形成への影響をも、あわせて明らかにしていただきたいのであります。
次に、
総理大臣、農林大臣、通産大臣及び経済企画庁長官に伺います。
物価対策の
責任官庁である経済企画庁は、調整官庁であるのか、実施機関なのか、まことに疑問にすら思われます。作文官庁といわれても、しかたがないとも思います。そこで
政府は、官僚の
価格安定の作文で終わるようなことではなく、実効力のある物価引き下げ対策を
国民の前に示す義務があると思うのでありますが、
野菜についてどのような具体策をお持ちであるか、お聞かせを願いたいのであります。
次に、物価安定に対し、小売り段階の対策がきわめて重要であります。ボランタリー・チェーンなど、近代的なものから、一般小売り商対策などの構想があるやに聞き及んでおりますが、
野菜について具体的に
政府はこの問題をどのように進め、また、指導や金融
措置をいかように進める
考えであるか、所信を明らかにしてほしいのであります。
また、国内青果物の保護助長の見地か
らいたしまして、外国から多量の果実、
野菜等が輸入される傾向が強くなっている今日、せっかく安定対策が打ち立てられても、それによって計画
生産体制がくずされる危険が多分にあると思います。農基法十三条による輸入の制限の規定によって、必要な調整ができると思われるがどうか、見解をお漏らしください。
次にお伺いしたいことは、先般、国鉄貨物輸送運賃の改定が
国民大衆のごうごうたる非難の中で実施されましたが、まさしく物価上昇に拍車をかけた感のそしりを免れません。このようなときに、青果物
関係の運賃だけでも据え置いて、
価格の安定に真剣に対処する腹がまえがあったのかどうか。さらに、この改定による運賃の上昇で
野菜価格にどのく
らいはね返ると見込まれているのか、また、運賃は一体どれだけ増収されるか、明確なデータによって
お答えを願いたいのであります。
次に、御存じのように、最近の生鮮食料品の運送の分野にトラック輸送が大きく進出をしてまいっております。しかるに、中央卸売市場はもちろんのこと、他の市場においても、トラック・ターミナルなどの運送あるいは荷役施設が貧弱で、運搬分荷機能が麻痺しており、生鮮食料品の生命ともいうべき鮮度の低下を招いているのであります。これについての主務官庁は一体どこであり、流通センターの構想などの具体的方策はどういうふうに進められているのか、明快なる
お答えを求めたいと思います。
また最近、物価問題とも関連をいたしまして脚光を浴びてまいったものに、コールド・チェーンの構想があります。今後の生鮮食料品の流通方法として注目に値するものがあろうかと思いますが、現在
政府では、欧米等の実情を調べ、試験実施をするやに聞いておりますが、
野菜についてのコールド・チェーンの一連の構想と、その将来の実用性についてお
考えをお漏らし願いたいと思います。
以上、私は、本法案それ自体に存在する問題点、及び、本法案制定に伴って解決または充実すべき問題点を提起したのでございますが、いずれも、
国民の深い関心と、一日も早く
施策の完全なる確立が
期待さるべき事柄でございますし、しかもまた、そのためには、ひとり農林省のみでは実効をあげ得ないものでございますので、
関係閣僚の率直なる御所見とともに、
総理の
責任ある
お答えを強く望みまして、私の
質問を終わる次第でございます。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕