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永岡光治君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま御
報告になりました
中小企業に関する
年次報告について、若干の質問をいたしたいと思います。
今回の
白書は、第三回目の
白書で、前二回のそれに比較いたしますと、多少の進歩のあとを認めることにやぶさかではありませんが、昨年が、いまだかつて例を見ない
不況深刻の年でありまして、この
不況のあらしの中の
中小企業を描く
白書としては、はなはだもの足りなさを感ずるものであります。
第一回の
白書は
近代化白書で、第二回は
構造白書、第三回は
倒産白書になるのではないだろうかと心配をいたしておりましたが、はたしてそれは
倒産白書になってしまい、
中小企業にとってまことに嘆かわしい
事態になったのであります。一昨年の
日本特殊鋼やサンウェーブの
倒産に次ぎまして、昨年は五百億円以上の
負債金額を持った
山陽特殊鋼の
倒産などが相次いで起こりました。これらに関連する幾百幾千の
関連中小企業は、甚大な迷惑をこうむりました。これがために
連鎖倒産のうき目を見た
中小企業の数も、おびただしい数にのぼったのであります。わが党はこの点をあらかじめ察知いたしまして、一昨年の十二月に各
会派共同で「
中小企業の
危機打開に関する
決議案」、これを
提出いたしまして、
政府に警告を発するとともに、この憂うべき
事態を打開するため、積極的に遺漏なき
措置をとるように注意したのでありました。しかるに、
政府のある
閣僚は、昨年のことでありますが、夏ごろ
景気が
回復に向かうと言ってみたり、これがはずれますと、次には、秋ごろには
回復に向かうだろう、こう発表するなど、
楽観に終始していましたが、いずれもその
希望観測どおりにはいかなかったのであります。三月
決算に続いて九月
決算はさらに
悪化の一途をたどりました。
政府のとった、
金融上の
措置や
財政支出の繰り上げなど一連の
対策が、いずれも手おくれで、
期待どおりの
効果を示しませんでした。
企業倒産もまれに見る高
水準の
持続となりまして、ついに
信用保険臨時措置法を制定するというような
事態に立ち至りましたことは、まことに遺憾とするところであります。
本年に入りましても
倒産旋風は衰えません。一月小康を得たかに見えましたものの、二月には
倒産数が五百件をこえるに至り、
負債金額は小口化して、いよいよ
中小企業の
倒産が激増するの様相を呈しているのであります。
通産大臣も、この
不況白書とも言うべき今回の
白書を閣議で了承したときに、今度の
白書はこれまでにない暗い
白書となった、こう率直に述懐したのですが、それでもなお、四十一年度は、昨年末の
中小企業対策並びに
財政金融政策を通ずる
需要喚起策で、
景気の基調は上向きだ、したがって
中小企業に明るさを増すことが期待できる。このように、依然として
自己弁護の言明をされたと報道されているのであります。ことに
総理は、
不況を克服して
景気が
早期に
回復すると、しばしば
楽観的観測をしておりますが、それは、はたしてほんとうであるかどうか、また、したがって、
中小企業もその
影響を受けて、現在の苦境から脱出できるかどうか、私ども、はなはだ疑問とせざるを得ないのでありますが、
政府の言う
景気の
早期回復の
理由とその根拠とを、まず、
総理及び
経済企画庁長官にお伺いいたしたいのであります。
次に
白書は、三十九年の終わりから四十年にかけて、
わが国の
中小企業が大きな
経営困難に直面したのは、
景気変動によるものよりも、
構造上の
もろもろの
要因に基づくものが大きいと述べておりますが、どれが
景気変動要因によるものであるのか、また、どの
部分が
構造上の
要因に基づくものであると言われているのか、それは必ずしも明瞭とは言えないと思います。しかも、
構造上の
もろもろの
要因と、この
響影による
中小企業の弱点が浮き彫りにされたとしているのであります。しかし、
中小企業の
不況の最も根本的な原因は、前
内閣以来多年とられてきた、いわゆる
所得倍増計画に基づく
わが国経済の
高度成長政策そのものにあると考えますし、そのひずみのあらわれと思うのでありますが、この点に関し、
白書はほとんど触れることを避けておられるのは、どういう
理由でありましょうか。これも
総理及び
経済企画庁長官の御
見解をお聞かせ願いたいのであります。
第三に、
倒産対策の問題に関してお尋ねしたいのであります。
白書は、
不況の
深刻化に伴う
企業倒産の高い
水準の
持続について述べ、四十年の
全国企業倒産は、
件数では三十九年の四千二百十二件から四五・八%増の六千百四十一件、
負債金額では五千六百億円と、前年の四千六百三十一億円から二一・四%も上回る著しい
増加を示していることをあげています。
金額の
増加が
件数の
増加ほどでないのは、
負債金額は少ないけれども
倒産するものが多い。したがって、
規模の小さい
企業が多くなったことを示すもので、それだけ
倒産は深刻になったことを物語っているのであります。しかも、この資料は、
商工興信所の調査によるもので、
負債金額一千万円以上のものだけに限られています。一千万円未満の
負債金額で
倒産したものはさらに多いと想像されるのでありますが、この
中小企業の下積み
部分の調査については全く不明で、
中小企業庁もその実態は何らつかんでおらないのであります。
これら
倒産の激増に対し、
政府はようやく昨年の年末に、信用保険に無担保保険並びに
倒産関連保険の臨時制度を導入いたしましたことは、さきに申し上げましたとおりであります。しかし、その実施
状況はどうでしょうか。ことに気の毒なのは関連
倒産でありますが、その
対策は、御承知のとおり、その
内容はきわめて不十分で、各種の制約を設けております。しかも、担当大臣の指定する
倒産にいたしましても、その指定はなかなか行なわれず、当初一件を指定しただけで、つい先月、
国会の追及があってからようやく兵庫県及び北九州等の数件の指定を行ない、関連
倒産対策を講じたような始末であります。
政府は、現在のような
企業倒産状況にかんがみ、まず第一に、
政府みずからがその実態の調査を行なうべきものと信じますが、
政府のお考えはいかがでしょうか。また、
倒産関連保険にしても、シビアな制約
条件等を緩和して、できるだけ多く
関連中小企業の立ち直りに
努力すべきであると存じますが、いかがでありましょうか。そして、これ以上の
倒産を回避するようにして、せめて第四回目の
白書がまたも
倒産白書になることを避けるためにも、第二、第三の
倒産対策を講ずべきであると考えますが、
通産大臣の御所信をお聞かせ願いたいのであります。
第四に、
下請企業に関する問題についてお伺いいたします。
下請企業は、
白書にも指摘しておりますとおり、
不況の
深刻化に伴い、
下請代金支払い遅延、単価の引き下げ、手形期間の長期化などの
条件の
悪化に加えまして、
下請企業への選別発注の
強化などのため、その受注量の減少がはなはだしくなっており、「
金融よりも受注先を」と叫んでいるのが実情であります。
下請対策に関し、
政府の
施策としては、受注のあっせん等を行なう
下請振興協会の
設置が誇らしげに述べられておりますが、これも現在は、
大阪、愛知の二カ所にすぎません。来年度に五カ所の増設を予定するというだけで、これでは受注不足の解決はとうていできないと思うのであります。
政府はまた、
下請代金支払遅延等防止法を厳正に運用すると申しておりまするが、このざる法が、はたして
効果を発揮できるかどうか、これも多くを期待し得ないと憂えるものであります。思うに、これは、
政府の政策全体の姿勢に基本的な欠陥があるのでありまして、
政府が常に大
企業偏重主義をとり、大
企業があえて弱肉強食を
経営方針としていることを、しいてとがめないからであります。親
企業が当然支払うべき
下請代金を支払わず、遅延し、あるいは、あまりにも長期の手形で決済するごときは、大
企業として恥ずべきことで、支払遅延防止法などという、世界に類例のない
法律が存在しなければならぬこと自体が、
経済的先進国になろうとしている日本の恥辱であるということに、思いをいたさなければならぬのであります。いまや、重工業、重化学工業の発展に伴いまして、
下請取引はますます
増加し、売買取引と並んで
中小企業の最も重要な取引関係になっております。かかる際には、私は、佐藤
総理みずからが経団連その他大
企業の首脳部と懇談し、これを説得をして、
経済的道義を没却した支払い遅延等を根絶するよう、
政府全体として大奮発をすべきだと思うのでありますが、
総理の御決意を承りたいのであります。
それとともに、
下請企業の立場を
強化するために、遅延防止法のごときものではなく、
下請組合を
強化いたしまして、組合に名実ともに備わった
下請協約の締結権を付与し、組合員以外に対しましても協約を適用するようにし、親
企業には発注義務を、
下請企業には契約履行の義務を課する等のことを、法制化したらどうかと思うのでありますが、
通産大臣のお考えはいかがでありましょうか。
下請代金を遅延させながら、大
企業が
金融機関からばく大な融資を受けていることは、
経済道義の上からも許しがたいものがあります。支払い遅延り親
企業に対しましては
金融的に制約を加えるとか、あるいは支払い促進のためのひもつきの融資をするとか、大蔵大臣の
指導があってしかるべきだと思うでありますが、いかがでありましょうか。
次に、第五の問題といたしまして、
下請取引と並んで、大
企業の
中小企業圧迫があります。大
企業は、ただ資本力と宣伝力にものを言わせまして、単なるもうけ主義から
中小企業の仕事を奪い、
中小企業を
下請化し、あるいは吸収合併し、あるいは
倒産をさせるなど、その事例は
白書も指摘しているところであります。官公需について、大
企業が小さな工事までも引き受けて、これを
中小業者に
下請させる例など、目に余るものがあります。
政府も、わが党の多年の主張に耳を傾けまして、不十分ながら、この点に関して、受注の
確保に関する
法律案を、この
国会に
提出いたしましたので、この問題は、それら法案の
審議を通じまして、あらためて論ずることといたしますが、大
企業は大
規模でなければできない業種業態に限定することとし、小
規模であるほうが能率的なものについては、
中小企業の分野として、これを侵さないだけの節度を持ちたいと思うのであります。その意味で、わが党は「
中小企業者の
事業分野の
確保に関する
法律案」を今
国会に
提出しておりますが、これに対しても、官公需の場合と同様、
政府は賛意を表することはできないか、
総理の御
見解を伺いたいと思うのであります。第六の問題として、
小規模企業対策についてお尋ねいたしたいのであります。
白書は、
小規模企業実態調査によって、
事業の将来に多少の不安を見えるもの、見込みなしとするものが、回答者の四三%に達しており、また、自分一代でやめるとか、あるいは将来どうしたらよいかわからないとするものが二三%と、かなり大きな比率を示していると述べております。この
小規模企業者、しかも圧倒的に数の多い小
規模業者に対しまして、
政府の
施策はどうなっているか、はなはだ心もとないのであります。
政府は、新年度予算は特に
小規模企業対策に意を用いたと言っておりますが、新規
施策としての共同貸与工場はわずか三十工場、機械貸与制度はわずか八府県が予定されているだけで、その
施策はわずかに芽を出しただけであります。これをいかに
拡充していくつもりか。また、昨年十二月に発足いたしました
小規模企業共材
事業団について言うならば、加入者が長年一定の掛け金をかけ、これに若干の利息をつけたものを転廃業のときに共済金として受け取るということになったのでありますが、この程度では、はなはだ魅力に乏しいのでありまして、加入者もなかなかふえないという状態で、
政府は
事業団の育成発展にいかなる構想を持っているか。
通産大臣にこの点についてお伺いいたしたいのであります。
問題点の第七は、
中小企業に対する
金融政策についてであります。昨年の暮に実施いたしました信用保険における新制度の実施と、この四月からの三公庫の金利引き下げは一応時宜を得た
措置であったことを率直に認めましょう。しかし、
中小企業の
金融の九〇%というものは市中
金融機関によるものでありますから、この市中
金融機関の金利の引き下げが行なわれなければならぬと思うのであります。それも名目的な金利ではなく、実質的な金利の引き下げが必要とされるわけでありまして、歩積み・両建てが主として
中小企業に対して課せられている実情は、
中小企業の実質金利をいやが上にも高くしているわけであります。大蔵省は、四十一年五月までに、過当な歩積み・両建てを全廃するという
指導方針を立ててきましたが、はたして、それが実現できるかどうか。
金融機関はあらゆる遁辞を弄しまして、実際には、歩積み・両建てを行なっている模様なので、
政府の監督はよほど厳正であることを必要とするのでありますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
最後に、私は、
中小企業に関し、
通産大臣はいかなるビジョンを持っているかということを、あわせて、お伺いしたいのであります。
三木
通産大臣は、ある雑誌の座談会で、
中小企業予算を顧みて、「あれこれいったら全部料理はあるけれども、これだけは徹底しておるというものが少ない」と話しております。まさに名批判だと私は思うのでありますが、これが、予算要求をした当の
通産大臣のことばだと思うと、実は情けなくなるのであります。
通産大臣はもう少し太い線でやれないかと言っております。三木大臣のいう徹底した料理、太い線とは、一体、何を考えておいでになるのか。大臣は、
中小企業について、ばく然とした何らかのビジョンを持っているようであります。しかし、御本人は、それを的確に表現できず、また、それを具体化できず、あるもどかしさを持っているようでありますが、大臣の持つビジョン、太い線、こういうものについて御説明をいただきたいと思うのであります。
なお、この
中小企業の
年次報告は、五百七十八ページ、前年度よりも五二%増で、まさにページのインフレであります。そして、その分析の
内容は精緻をきわめておりますけれども、同時に、きわめて難解であって、一般に読ませるためのものであるかどうか、疑問に思う次第でありますが、今後の
白書作成にあたりましては、読みやすい、わかりやすい
白書にしていただくように注意して、私の質問を終わりたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕