○宮崎正義君 私は、公明党を代表いたしまして、
佐藤総理ほか
関係閣僚に対して若干の
質問をいたします。
まず、外交についてでありますが、
総理は、その基本姿勢として、「平和に徹する」と強調しておられます。今日のアジアの諸情勢から見れば、それが全人類の希望であり、当然過ぎる方向でありますが、問題は、
政府の具体的外交方針にかかっていると言わなければならないのであります。善隣友好を看板に掲げた日韓諸条約の強行採決といい、対中国、対ベトナム政策のあいまいさといい、これまでの外交を見ると、一貫して対米追随外交に尽きるものであります。将来の日本の方向を誤らせるものと私は思うのであります。この点について、ライシャワー大使は、「日本が、その外交政策を、米国の占領から派生したものであり、米国の政策に順応するものだと
考える限り、そして日本の政策が自国の理想や目標から生まれない限り、日米両国の
関係は、いつまでも、ある
程度ゆがんだものになろう、日本の外交が日本の理想と目標に基づいて推進されるなら、国際政治における日米両国の協力は一段と成果をあげる」と、米国大使でさえ述べているのであります。この発言は、一面から見れば、今日、日本の
国民大衆に根ざす対米感情に対する米国自身の弁明でもあり、また一面では、そうした不安感を
国民大衆に与えた
政府の外交姿勢に対する米国の警告とも見られるのであります。
総理は、この発言をどのように理解し、かつ、対米追随外交という非難に対してどのように対処するのか、具体的にお
伺いするとともに、以下主要な点につき
政府の所信を承りたいのであります。
その第一は、ベトナム問題であります。
米国の北爆再開によって、全人類が希望した和平工作は、むなしく消え去った感さえあります。
政府が対米追随に終始してきたあまり、かつては米空軍の北爆を支持する態度を表明したり、LSTの日本人乗り組み員の増員や艦艇修理などは、かえって日本の
立場を窮地におとしいれているものではないかという
批判があるのであります。
総理が平和外交を推進するというのであるならば、ベトナム和平に対して日本は積極的に呼びかけ、さらには、米中戦争の防止ないしは米中冷戦の平和のかけ橋となろうという心がまえが、その根底になくてはならないと思うのであります。さらに、安保理事会の
議長国となった日本は、即時停戦を呼びかけるなど、
関係国による平和維持
会議を
東京で開催する等々の基本線に立って、積極的に行動すべきであると思いますが、
総理の所見をお
伺いいたしたいのであります。
第二は、中国問題であります。
総理は、中国問題を、政経分離の原則、あるいは重要事項という使い古されたことばと態度で、当面を取りつくろおうとしているのでありますが、
事態はすでに、あいまいな
経済外交よりも、明確な政治外交に転換すべきであるというのが、
国民大衆の声であります。具体的には、第二十一回国連総会においては、進んで米国を説得して、中国の国連加盟への推進国となるべきであります。
総理は、どのように
考えておられますか。さらに、中国の国連加盟を重要事項としておくことが、
総理の言う「平和に徹する外交」となるかどうか、そのほうが平和に役立つという
考え方の根拠を明らかにしていただきたいのであります。
第三は、日韓問題であります。
最近の新聞報道によれば、韓国は、日本の
経済援助を第二
年度に集中して受け入れたいと申し入れているようであります。
政府の所見を
お尋ねいたします。また、有償無償あるいは民間借款を含め、現に契約が成立したもの、さらには、契約中の
経済協力について、その進捗状況を具体的にお
伺いいたします。さきに、日韓諸条約批准にあたって、われわれは、時期尚早であるとの
立場から、
政府の反省を促したのでありますが、ソウルにおける日本人商社告発事件など、まだまだ善隣友好の原則にほど遠いものがあります。
政府の
見解をこの点についても
お尋ねいたします。
この機会に、日韓漁業協定において専管水域を十二海里と取りきめたことに端を発し、世界の沿岸諸国が、日本の漁船取り締まりのため、専管水域について検討を始めたようでありますが、
政府がこれまで把握した
事態について、御
報告を願いたいのであります。同時に、ニュージーランド
政府の
見解に対して、
政府は今後どう対処するか、そのお
考えを
お答え願いたいのであります。
第四は、核兵器問題であります。
総理は、「戦後の世界情勢のもとにおいて、一国の安全を一国のみで確保できないことは明らかである」と言っておられます。そこで、日米安保条約を締結し、米国の核傘下に入っていることが、
わが国の安全を守り、平和を維持していくことになるとの
見解をとっておられますが、これでは、国内に核兵器を絶対に持ち込まないという
総理の言明は、米国が日本の国内に持ち込むことば認めるということになりますが、この点、明確に御
答弁願いたいのであります。原爆に対する世界唯一の、しかも最初の被爆国である
わが国は、核武装の脅威からの解放、ひいては、核兵器の禁止にまで持ち込むことがその使命であります。特に安保非常任理事国としての
わが国の
立場を
考えると、確かに、核拡散防止、核兵器禁止問題に格段の努力を払うべきであると思いますが、
総理自身、どのような
見解に立っていられるか、具体的にその所信を
伺いたいのであります。
さらに、アジア外交についてでありますが、アジア開銀本部のマニラ設置、あるいは国連安全保障理事会において、二度目の投票で、かろうじて非常任理事国に当選することを得たという
事態を、
総理はどう理解されているのか。結論として、日本が、いや佐藤外交が、予想外にAA諸国に信頼されていないことを如実に示したものであると私は思うのであります。アジア外交を積極的に展開するという
総理は、対AA諸国との
関係をどのように反省し、かつ、
経済協力を含めて、今後いかに対処しようとするか、率直なお
考えを
伺いたいのであります。
その具体策の
一つとして、技術移住の問題があります。協力と言い、あるいは友好親善と言うも、しょせんは、民衆と民衆に根ざす理解と信頼がなければ、とうてい成立しないものであります。わが党が、かねて一千万人の技術移住を提唱し、文化交流、相互扶助の精神に基づくアジア外交の推進を主張したゆえんも、ここにあるのであります。
総理の所信を
伺いたいのでございます。
次に、
経済問題でありますが、まず、
物価問題についてであります。
国民大衆は、この五カ
年間、
物価の値上げに苦しめられてきました。しかも、ことしは、さらに米価、そして地下鉄、私鉄の値上げをはじめとして、国鉄運賃、健康保険料、また郵便料金など、
公共料金の値上げがメジロ押しに続き、四十一
年度は九%以上の
物価騰貴は避けられないとさえいわれ、
国民生活を不安におとしいれております。しかも
政府は、
物価安定を確保すると言いながら、
予算から見れば、
物価対策費はわずか百五十七億円、
予算総額の〇・三%という、まことに貧弱な金額であります。
政府は五・五%
程度の
物価上昇にとどめたいと言いますが、それさえも
国民生活には耐えがたい値上げであるにもかかわらず、この
程度に押えられるということは大きな疑問とせざるを得ないのであります。そこで、私は、
予算の節約をはかることを第一に、防衛費の圧縮、さらに、圧力団体に左右された一部の
財源等をもって、積極的な
物価対策を講じ、さらに反面では、
公共料金の値上げをストップさせると同時に、大
企業が生産する製品について価格を引き下げさせるなどが、
物価安定策として最も時宜に適していると主張するものであります。例を
外国にとってみれば、フランスにしても、イタリアにしても、
消費者物価が四%も上がれば、主要工業生産品など何十種目にわたって
物価ストップを法律で行なっております。
国民大衆の
福祉のためには、このような措置をとることも必要であると思うのであります。
政府は、こうした
物価値上げをストップするための措置を行なう意思がありますか、お
伺いいたします。
さらに、国債政策について
質問いたします。
政府は、かねてから、不況克服の見通しがついたと、いたずらに
国民をまどわすような発言をしておりますが、現実は、不況の進行につれて、
税収入などの大幅減収のために深刻な
財政難に追い込まれております。この解決のきめ手として、従来の
均衡財政を放てきし、有効
需要の造出を理由として、
国債発行へと大幅な転換を行なおうとしているのであります。特に
赤字公債の発行については、戦前の状況を見ましても、年を追うごとにその額は増大となり、必ずインフレを招いております。
政府は、
建設公債であるからインフレの心配はないと、たびたび言明していますが、四十
年度国債の一月分七百億円が二十八日に国庫に払い込まれました際、引き受け
金融機関は、この資金調達のためコール市場に殺到し、そのため、日銀は六百億の貸し出しを行なったのであります。このことは、
国債発行の当初から、その市中消化の原則がくずれ、事実上、日銀引き受け分の増大、ひいてはインフレへの危険が強まるとの見方を裏書きするものであると思うのであります。この現実に対しても、
総理は、まだインフレにならないと言明なさるのか、
お答えを願いたいのであります。
現在の状況からすれば、特に国債を発行し、いたずらに
国民を不安におとしいれる必要はないと思われるのであります。
財源不足をカバーするためならば、大
企業における交際費に課税することによっても、千二百億円以上の増収がはかられるわけであります。
政府は、それもしないで、金がないから国債を発行するというのでは、あまりにも無策であります。
総理は、この点、考慮する意思があるかどうか。また、現今の深刻な不況を打開するために、
福田大蔵大臣は、新
年度の歳出を四、五、六月に重点を置くと提案されていますが、その具体策を
伺いたいと思います。
次に、強く
批判したい点は、
国民の
税負担の問題であります。
総理は、三千億
減税の公約を果たすべく、二百億円の物品税
減税を含めて、平
年度三千三百億円の
減税を打ち出し、史上最大の
減税であると主張しています。しかし、その内容を見ると、結局は大
企業擁護を目的とするものであって、
中小企業や勤労者の
福祉向上をはかった
減税ではなかったと言えるのであります。すなわち、三千億
減税といっても、
国民生活から見れば、初
年度減税がどれほどであるかが問題であり、その初
年度が
国税で二千五十八億円にとどまっております。この点を含めて、
政府は、どこを
減税の目標に
考えているのか、
お尋ねいたします。たとえば、
所得税の
課税最低限を見ますと、夫婦子供三人の
標準世帯で六十三万一千円と、約六万七千円
引き上げられるだけで、それも、
物価が上がれば簡単に帳消しとなってしまいます。わが党が主張し続けている
年収百万円までを
課税最低限としなければ、
国民はほんとうの
意味での
減税の恩恵に浴することはできないし、
国民の
税負担の
軽減とはならないのであります。
総理のお
考えを
お尋ねします。
また、納税人員から見ても、四十
年度は二千百万人であるのに対し、四十一
年度は二千六十七万人が見込まれております。
減税といっても、実質的には横ばいの状況から、
国民の
税負担が軽くなるとは言えないのであります。まして、低
所得者層に対する特別の考慮がはかられているわけではありません。さらに
政府は、
企業減税に全体の三四%を占めているほど力を入れ、法人税率の二%引き下げや、物品税の面でも大
企業に
減税の恩恵を与え、有利にしています。このように、
政府の
減税政策が
中小企業や
国民の期待を裏切っていることをどう
考えるか、
お答え願います。
次にお
伺いいたしますが、社会の繁栄と
個人の幸福を一致させることに最大の努力を払うことこそ、真実の政治の
あり方であります。ところが、これらの問題の
一つ一つを見ても、
個人の幸福の実現にはほど遠く、
国民大衆の願いに反しております。一体、
政府は、
国民大衆の
福祉を実現することに真剣になっているのかと疑いたくなるのであります。この点につきまして、疑問点をあげて
質問を続けてまいります。
その第一は、社会保障
関係費についてお
伺いいたします。本
年度の
予算から、その内容を見ると、例年の既定経費の当然の増額をまかなうにとどまり、特に社会保障の
充実がはかられていないのであります。たとえば、
生活扶助費を見ても、大都市の場合、
標準世帯(夫婦と子供二人)で現行の一万八千二百円から二万六百六十二円に
引き上げられたが、これは一三・五%の伸び率で、総
予算一七・九%の伸び率を下回るだけでなく、もともと
生活困窮なのですから、一三・五%の伸び率では、あたたかく手を差し伸べられたとは言えないのであります。こうした現状にどう対処されていこうとされますか。また、
国民健康保険などの各種社会保険費の値上げは、
国民生活をさらに苦しくしております。
国民年金や厚生年金についても同じでありますが、保険料の
引き上げは、低
所得者の
生活をますます圧迫するので、われわれは、大衆
福祉の実現の
立場から、その抜本的な
対策を強く要望いたすものであります。
第二に、
国民が最も関心を持ち、
国民生活に
関係の深い住宅
対策についてであります。
政府は、一世帯一住宅の実現をスローガンに、
昭和四十五年までに七百六十万戸の建設をめどとして推進してきたようでありますが、今回発表された新五カ年計画は六百七十万戸と、前の計画より九十万戸も縮小されてしまい、
国民の願望である一世帯一住宅の実現は、完全に裏切られたのでございます。これでは、いつになったら一世帯一住宅の実現ができるか、
政府の熱意を疑うとともに、その
見解をお
伺いいたしたいのであります。われわれが
政府に要望したいのは、住宅
対策は、単に建設戸数をふやすだけでなく、地価
対策を含めた、住宅政策全般として取り上げていかなければならないものであります。この点、
政府の
施策の中に、この地価
対策が盛られていないことは、はなはだ不満を持つものであります。従来の用地費単価は、実際の地価の三分の一にも達しないと言われておるのであります。新市街地に建設しなければならない三百四十万戸に必要な宅地は、一億七千坪と言われていますが、これに対する
対策はどのようになっているのか、住宅費が土地代金に吸収されていくことを憂うるものであります。宅地
対策として、国有地の利用をどのように振り向けられるか、
国民の納得のいく具体案を示してもらいたいのであります。
次に、農業問題についてお
伺いいたします。
農業基本法制定以来、構造
改善は、
政府のかけ声にもかかわらず、計画どおりに進捗せず、農民は、過去五カ
年間に二一%、三百三万人も減少したが、経営
規模は一向拡大せず、農村に残る労働力は年々質の
低下を来たし、生産の停滞となって、
所得格差はますます増大し、いまや兼業農家は四二%にも及び、出かせぎの悲劇が深刻な社会問題ともなっていることは、いまさら申し上げるまでもありません。また、農
産物の国内自給率は減少して輸入の
増加率が増大し、特に飼料の輸入は年々累増しております。米も、長期見通しに反し、自給率八〇%を割ってしまい、販売額百万円以上の大
規模の農家は、わずか二十万戸にすぎないなど、農業の
体質改善はおくれるばかりであります。
総理並びに農林大臣は、今後の農政の
あり方をいかに
考えられて進もうとするか、
お答えを願いたいと思うのであります。さらに一農業構造を
改善するために最も重要である経営
規模の拡大には、農地の流動化を促進することが急務であると思います。しかし、純農村地帯における農地の積極的な流動化は、今日までの歴史から見ても困難であります。そこで、流動化を阻害している農地法の
改正をはじめとして、離農者のための離農年金制度、その他、職業紹介、職業訓練所等の計画は、どのように
考えているか、お
伺いいたします。
また、東北並びに北海道、北関東等々の開拓農民は、私がいまさら申し上げるまでもなく、入植当時の借財を背負ったまま、二重格差の
生活苦の中で農営に取り組んでおりますが、これらの開拓農民に対しては、貸し付け金の返済期間の長期化及び利率の引き下げ等の
改正がどうしても必要であります。
総理並びに農林大臣はどう
考えておられるか、
お答え願いたいと思うのであります。
最後に、政治姿勢について
総理にお
伺いいたします。昨年末の日韓
国会において、
政府・与党は、数度にわたり強行採決という
民主主義を破壊する暴挙をおかし、しかも、一切の責任を正副
議長に負わせ、平然としていることは、断じて許せないと思うのであります。そもそも
政府・与党の強行採決の暴挙は、野党の抵抗とは全く質的に異なるものであり、一党独裁、ファッショ的行動と断ぜざるを得ません。このような暴挙をあえてした
総理は、与党の最高責任者として、今後の
国会運営に対する所信を明確に
お答え願いたいと思うのでございます。
次に、小選挙区制推進論者を九割以上も集めてつくられた第四次選挙制度
審議会の
答申の時期、並びに
総理の小選挙区制に対する方針を
お尋ねしたいのであります。一党独裁、憲法改悪の道を進むものとして、
国民の大多数が小選挙区制に反対している。
総理のこの点についての所見をお
伺いいたしたいと思うのであります。
また、
総理は、本年の重点
施策として青少年
対策をあげ、
施政方針の中にも美辞麗句を並べて青少年に呼びかけておられますが、
総理が
考えている青少年
対策を具体的に、はっきりと述べていただきたいのであります。
国民は、
政府の官製の押しつけがましい青少年
対策に対して、大いなる不満を感じております。しかも、青少年
対策を口にするそばから、
政府・与党の腐敗堕落を象徴するかのように、
国会内におけるピストル売買事件が発生し、
国民に大きな不信と失望を与えております。
政府が本気になって青少年
対策に臨むならば、まず、
総理並びに
政府・与党自身の身の回りを清潔にするとともに、その政治姿勢を正すべきであると思うのであります。
総理は、いかなる理念と思想とを根底にして、青少年
対策を
考えておられるのか、明確な
見解を承りたいのであります。
以上をもちまして、私の
質問を終了さしていただきます。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕