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1966-02-03 第51回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月三日(木曜日)    午前十時三十三分開議     —————————————議事日程 第十号   昭和四十一年二月三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  第二 参議院予備金支出の件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、新議員の紹介  一、請暇の件  一、日程第一 国務大臣演説に関するする件(第   三日)  一、日程第二 参議院予備金支出の件     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。  議席第五十六番、地方選出議員、広島県選出中津井真君。    〔中津井真君起立、拍手〕     —————————————
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 議長は、本院規則第三十条により、中津井真君を法務委員に指名いたします。      ——————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。  和泉覚君、鈴木一弘君、田代富士男君から、いずれも海外旅行のため明四日から十三日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ——————————
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)。  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。占部秀男君。    〔占部秀男登壇拍手
  8. 占部秀男

    占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、政府施政方針に関し、基本的な三つの問題点にしぼって、佐藤総理や各閣僚にただしたいと思います。  質問の第一は、減税についてであります。  まず最初に、公債財源とした点についてお尋ねをいたします。  政府は、建設公債赤字公債は別だと言われますが、今回の減税は、公債を発行してようやく実現できたことは明らかであります。従来、均衡財政のもとに、たびたびの減税が行なわれましたが、今回は、公債財源とすることによって、減税の持つ意味が従来とは異なっております。シャウプ税制以来、わが国税体系は、きわめて資本優先であり、また、勤労課税には重いのでございます。しかも、低所得階層を広く対象として捕捉をいたしております。たとえば、所得税を見ましても、納税義務者は二千万をこえ、年収百万円以下の働く階層負担が、税総額のほぼ半ば近くを占めておるのであります。かように低所得階層によってささえられた税体系のもとで、将来税金で返さなければならない公債財源とした減税でございますから、税を負担する国民立場からいえば、その九割以上を占める低所得階層から見れば、減税とはいうものの、実際の内容は、将来の税負担担保として、その一部を先食いしたにすぎないのであります。特に、今回の企業減税に至っては、中小企業減税分は別といたしましても、大企業減税分まで、国民は、公債という証文を入れて、いやでも税金負担していかなければならないわけでありまして、租税が持つ所得配分の機能から見ましても、時代に逆行した減税あり方であると断ぜざるを得ないのであります。佐藤総理見解を承りたいと思いますが、建設公債だから減税財源にはならないというような形だけの答弁では、国民は納得できません。率直に、端的に御答弁を願いたいと思います。  一体、公債財源としなければ減税の道はないのか、問題はここにあると思います。福田大蔵大臣は、昨年のこの本会議で、「今日、税負担の重いのは、従来から均衡財政のもとに、ほとんどの歳出を税金だけでまかなってきた結果である。だから、減税のためには、その財政の一部を公債発行でまかなうべきである」と言われておるのであります。しかし、税の負担が重いか軽いかは、税の取り方によるのでありまして、均衡財政だから当然重くなるというわけではございません。したがって、税負担を軽くするために均衡財政をこわしても公債を発行すべきだという理由も、またおかしいのであります。今日、負担の重いのは低所得階層でありまして、大企業高額所得有産階級は、むしろ税の減免措置によりまして、諸外国よりは軽いのであります。租税特別措置一つをとりましても、昭和二十五年以降の非課税分は二兆四千億をこえておるのであります。かような特典を検討整理しただけで、公債は出さなくとも、減税の道は十分開かれてくるのであります。ただ、佐藤内閣の資本家的な性格が、それをしないだけであります。われわれは、減税にはもちろん賛成でございますが、今回の公債発行には、それ自体反対であるとともに、この公債財源とした減税あり方につきましては、納得することができないのであります。そこで、総理にお伺いをいたしますが、この際、資本優先減免措置を整理して、公債財源としない減税に切りかえる考え方はないか、お答えを願いたいと思います。  減税に関する第二の質問は、国税、特に所得減税企業減税あり方についてであります。  四十一年度所得減税は、千二百五十五億円でありますが、政府見込みによりますと、これからの国民生活負担増加は、米価をはじめ、諸料金の引き上げで、二千八百八十二億円と見積もられております。この負担増加は、払わなくては生活ができない一種の間接税でありますが、所得減税をはるかに上回っておるのであります。この事情を個人別に見ますと、年収百万円の標準世帯は、今度所得税が一万一千二百五十五円安くなると言われております。しかし、政府の四十一年度消費者物価値上がり見込みは五・五%でございますから、かりに年所得の八割を家計費と見ましても、実質低下は四万四千円となりまして、減税分だけでは物価値上がりに追いつかないのでございます。福田大蔵大臣藤山国務大臣は、物価値上がり減税でカバーすると言われておりますが、一体、どこの国での話でありますか。福田さんにお伺いをしたいと思います。  これに反して、企業減税は、平年度一千五十五億円で、所得減税とほぼ拮抗をいたしております。言うまでもなく、わが国企業課税は、諸外国に比べて、はるかに軽いのであります。今日、企業は、税負担に問題があるのではなく、高度成長政策の誤りから来た設備過剰、金利負担の過重、減価償却費の利潤への食い込み、こうした課題に苦しんでおるわけであります。今回の企業減税は、企業のかような問題点を、税金として政府が肩がわりすることによって、結局、国民税負担に転嫁しようとするものであります。中小企業減税分は別といたしましても、依然一割前後の配当を続ける大企業に、国が借金してまで減税する必要がどこにございますか。福田大蔵大臣が言う税負担の公平とは、およそ逆でありますし、景気対策としても疑問があるのであります。いま、景気対策として一番重大なことは、個人消費需要が減っておることであります。政府の四十年度経済実績見込みによりますと、国民需要に占める個人消費の比率は、近年になく、五三%に落ちております。したがって、中小企業分は別としましても、この際、企業減税はやめて、低所得階層対象とする所得税住民税減税にこれを振り向けて、負担軽減をはかるとともに、下からの消費需要を起こすべき、その時期であると私どもは考えるのでありますが、福田大蔵大臣の所見を承りたいと思います。特に、佐藤総理には、去る二十五日の記者会見で、所得減税について、標準世帯八十万円程度まで、二、三年後には無税にしたいと言われておりましたが、国民大衆は、いま困っておるのであります。二、三年後では、物価も上がり、その程度減税は、あなたでなくとも、だれでもできることになります。この際、勇気をもって実行する考え方はないか、お伺いをいたします。  減税についての第三の質問は、地方税についてであります。  今回は、住民税のわずかな諸控除の引き上げだけで、減税は見送られたと同じ形であります。地方税は、国税に比べまして時代おくれの応益原則のもとに、三千百万人に及ぶ低所得階層を捕捉いたしております。しかも、非課税の範囲も、住民税個人分は、今回の改正分を入れましても、国の所得税の場合よりも、標準世帯で十万二千六百二十八円低いのであります。人頭割りにもひとしい戸数割りさえ残っており、電気ガス税大衆飲食税固定資産税など、大衆課税の傾向が強いのでございます。したがって、負担軽減をはかるとともに、下からの大衆消費を起こして早期の景気回復をはかるためにも、この機会に、まず第一に地方税大幅減税に踏み切るべきでありますが、今回は全くこれを無視したのであります。逆に、固定資産税のごときは、国会の修正を破ってまで増税しようとしておりますし、国の非課税措置の拡大により、住民税法人割りへのはね返りは、平年度百四十三億円の減税となっておりまして、ここにも資本優先の姿があらわれておるのであります。地方財政に穴があくから減税は見送ったと言われますが、財政問題は、減税措置とは別に、財源の再配分の問題として検討すべき問題であり、また、検討でき得る余地があるのであります。しかも、地方団体には年間七百億円にのぼる大企業に対する優遇措置があるのでございます。地方財政に籍口して大衆減税を意識的にサボったものと断ぜざるを得ません。永山自治大臣見解、特に、なぜ地方減税を見送ったか、明らかにしていただきたいと思います。  また、多年批判の的となっております住民税個人分課税最低限については、国の所得税と同じ水準に引き上げ考え方はないか、お伺いをいたします。さらに、固定資産税暫定措置の改悪は、あなたの言明についての国民の信頼を裏切るばかりでなく、国会の決定を軽視する結果ともなります。あなたは何と言いわけされますか、念のためにお伺いいたしたいと思います。  質問の第二は、今度の予算編成にあたり焦点の一つでありました地方財政赤字、裏を返せば、自治体行政危機について、政府の基本的な見解と、当面の対策をただしたいのであります。  佐藤総理は、組閣以来、福祉国家にふさわしい社会開発の促進、社会資本充実を、重点公約として打ち出しをしました。今度の施政方針でも柱の一つとして強調されておるのであります。言うまでもなく、社会開発には、産業基盤開発と、国民生活基盤開発との、大きく分けて二つ問題点がございますが、その仕事の多くは、国の施策だけで実現するのではなく、いわば、国と府県市町村との合作でございます。したがって、地方財政充実自治体行政確立がない限り、総理の言う社会開発も、国民にとっては空手形にすぎないのであります。政府は、池田内閣高度成長政策以来、大企業への奉仕中心として、産業基盤開発には重点的に国と地方施策を集中したのでありますが、生活基盤開発にはきわめて冷淡でございました。その結果、今日、東京都をはじめ、全国の都市生活の場、地方生活の場は、きわめて立ちおくれておるのであります。水飢饉住宅不足下水放置と、ごみの山、交通難学校不足など、国民は諸外国と比べて問題にならぬお粗末な生活環境に置かれております。総理は、施政方針の中で、「社会開発のうち、第一の急務は、経済の発展に著しく立ちおくれている生活の場の改善である」と、あたかも人ごとのように言われましたが、この立ちおくれこそ、歴代自民党内閣がつくり出した産物でございます。ただそれだけでなく、いま府県市町村は、独占奉仕事業にかり立てられて、地方負担激増に悩んでおります。ここ十年間で、地方財政の規模は三倍にふくれ上がりましたが、そのうち、建設事業費増加は実に五倍以上でございます。その財源構成を見ましても、十年前には、国が四〇、地方が六〇の割合でございましたが、今日は、国が二八、地方が七二と、地方団体負担は非常に重くなっております。国の無理押しから来る地方超過負担分も、三十九年度千百四十億、四十年度千五百三十二億円と、年ごとにふえる一方でございます。地方税収の低下と、物価値上がりによる経費の膨張もございますけれども、今日地方財政危機を招いた最大の原因は、ここにあると思うのであります。したがって、地方財政危機と、社会開発のうち生活基盤の立ちおくれは、政府地方対策が変わらない限り、国と地方を結ぶ現行制度が生んだいわゆる構造的な産物でありまして、景気の波がつくり出す一時的な現象ではないのであります。したがって、いま、府県市町村は、三十七年度以来引き続いて赤字団体はふえる一方であります。三十九年度決算で赤字の総額は千二百三十二億円にのぼり、富裕団体といわれる東京、大阪などの工場地帯の都府県や大都市まで、財政収支の悪化が目立っておるのであります。このままの状態では、総理の言われる「生活の場の改善」も声だけに終わりますし、「民主主義の基礎」と、あなたが今度の施政方針演説の中で強調された地方自治も、形だけのものに終わろうとしておるのであります。  そこで、佐藤総理にお伺いをいたしますが、総理は、一体この事態をどうお考えになりますか。政府施策現行制度が生んだ構造的な危機として見られるか、あるいは、一時的なものとして対処されようとしておられるか、基本的な考え方を、まずお尋ねを申し上げたいと思います。同時に、このような地方財政危機と、府県市町村行政の立ちおくれの中で、国民生活の場を改善するためには、何よりもまず、地方団体自主財源確立させることが先決でございます。事務事業の再配分とともに、財源の移譲を断行して、根本的な改革に当たる考えはないか。すでに臨時行政調査会答申も出ております。総理は、これを尊重して、あなたの在職中に具体的に解決する用意があるか、お伺いをいたしたいと思います。  次に、地方財政についての当面の対策についてお伺いをいたします。四十一年度地方財政は、前に述べた悪条件のほかに、今度の公債発行に伴う二割近い公共事業増加で、地方負担分はいま激増をしようとしております。自治省の計算によりましても、三千三百六十億円の歳入不足が見込まれているのであります。政府は、これに対して、今度の予算などで二千三百億円手当てをいたしておりますが、地方財政の実態に即さない、数数の問題点を含んでおるのであります。総理は昨日の答弁で、地方財政に対処して交付税率を二・五%引き上げたといわれておりましたが、予定されていた臨時交付金の一部を振りかえたにすぎないのであります。現に自治省が力を入れた交付税率五・九%の引き上げや、超過負担の解消など、何一つとして取り上げられてはいないのであります。また、この二千三百億円の対策費数字自体が、地方税収の伸びを六百三十四億円と過大に見積もっての計算でありますし、財源のうちの縁故債七百億円は、今度の国債発行と競合をして、完全市中消化はきわめて困難であると地方団体では言っております。たとえ政府が、早期景気対策のために、公共事業を上半期に繰り上げ集中させようといたしましても、地方負担分のやりくりに追われまして、実際的な効果は疑問でございます。逆に、公共事業の返上や補助金の辞退など、非常な事態が続出する公算が大きいのであります。また、地方住民奉仕する固有の事務事業も引き続き停滞するでございましょう。福田大蔵大臣にお伺いをいたしますが、かような事態の起こらないように当面の対策を強化して、知事会市長会町村会などの要請にこたえて、地方交付税を三七%に引き上げをする用意はございませんか。また、永山自治大臣には、地方超過負担分について、当然これは国の無理じいが生んだものでありますから、早急に解決が困難であるとしたならば、国が補償すべきものであると考えるのでありますが、いかがでございますか。お答えを願いたいと存じます。  質問の最後は、中小企業問題と労働関係についてであります。不振をきわめる中小企業は、政府報告によりますと、年間倒産六千件をこえるであろうと言われております。いま、中小企業の当面した問題は、もちろん何よりも仕事がほしいということではありますが、売り掛け代金早期回収下請代金の切り下げや大企業の進出の防止など、当面の課題中心となっております。したがって、従来のような単なる金融緩和だけでは解決できない段階におかれているわけであります。三木通産大臣は昨日の質問に答えて、中小企業体質改善、すなわち近代化をはかるために、今度の予算中小企業対策費を三六%ふやしたと言われておりますが、それでも三百億円には満たない。もともと予算が少な過ぎるのであります。工場アパート制度の創設など、こまかい対策も二、三は確かに見られますけれども貸し付け規模増加や金利の引き下げなど、依然、金融重点主義を脱却せず、消費面につながる中小企業生産性の向上についてはほとんど見るべきものがない、かようにわれわれは考えるのであります。この際、思い切った予算を組んで、中小企業体質近代化をはかるとともに、下請代金問題及び共済問題、大企業の食い込みなど、従来ザル法的あるいは形だけの対策に終わっておりました点を再検討して、中小企業の組織、金融、税制、企業環境にわたる積極的な総合対策を実行すべき段階ではなかろうかと思うのでありますが、三木通産大臣の具体的な御意見を伺いたいと思います。  最後に、労働関係としては、佐藤総理公務員の新給与労働基本権についてお尋ねをいたしたいと思います。  四十年度物価値上がりは七・七%、四十一年度見込みは五・五%であり、海員争議に見られますように、民間給与も今度の春闘を前後として引き上げられてきておるのであります。当然、法の定めるところに従って公務員給与引き上げが行なわれるものと思うのでありますが、政府にその用意がございますか。特に人事院勧告が出されましたときに、昨年十月十九日の橋本官房長官声明にもありますように、今度こそ完全実施に踏み切ると思うのでありますが、いかがでございますか。地方公務員給与財源は、地方財政法上、地方交付税法上、新規需要でありますから、不足財源は当然国が措置すべきものである、かように考えるのでありますが、総理の腹がまえを教えていただきたいと思います。  また、公務員労働基本権は、いま公務員制度審議会審議をされておりますが、なかなか結論が出そうもない状態であります。この審議会前田会長は、新聞記者との会見の中で、「人には生きる権利があるから、公務員にも当然労働基本権を認めるべきであると思う。問題は、なまのまま認めるか、多少コントロールする場を置くか、どちらかであります」と言われておるのであります。総理も御存じのように、世界的にも、公務員労働基本権を認めていない国はほとんど少ないのであります。もともと、わが国公務員は、戦後、労働組合法が施行されて以来、労働三権が認められておったのでありますが、公共の福祉のためその運動を制限せよというマッカーサー書簡に便乗して、当時の政府は、書簡の意味を曲げて解釈をし、労働基本権そのものまで奪い去ったのであります。今日は占領下ではございません。民主的な近代国家におきましては、公務員労働基本権あり方が、その国の労働関係のバロメーターであるとさえいわれております。総理は、今度の施政方針の中でも、労働関係確立開発を指摘されているのでありますが、この際、公務員労働基本権を認めることによって、近代的な雇用関係のもとに公共奉仕の実をあげることができますように、積極的に総理は進むべきではなかろうかと思うのであります。佐藤総理大臣の誠意ある御見解をいただきたいと思います。  以上をもちまして、日本社会党を代表しての私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府は、このたび公債を発行し、また、自然増収にかかわりなく、減税をすることにいたしました。これは、申すまでもなく、この二つを柱にいたしまして、経済安定成長をはかろうとするものであります。御承知のように、私ども施策効果をあげれば、これによりまして経済安定成長し、国民所得もふえ、そして税収もふえる、こういう形になってまいるのであります。そこまでいくと、公債も償還ができ、また、その公債も減らすこともできる、かようになるわけであります。ただいま、減税は将来の税金の一部の先食いではないか、こういうお話でありますから、ただいまのような経済論を一応申し上げたのであります。私は今日、経済安定成長、これをはかることが最も大事だ。全力をあげて、この問題と取り組んでまいるつもりでございます。そういう意味で、ただいまの公債政策減税政策をとっておるのであります。いわば、将来の国民所得増加担保にしたようなものである、かように御理解をいただきたいと思います。  そこで、公債関係のない減税をすることはできないかというお話でありますが、私は、現在の経済状態から申しましては、いまの政府のとりました処置が最善のものだ、かように考えております。  次に、八十万円まで云々のことを申しました、それについてのお尋ねでありますが、御承知のように、今日まで、標準家庭において五十六万四千円までは税がかからない。それを今回の改正では標準家庭で六十三万二千円まで、かようになっているのであります。将来、もちろん所得もふえてまいりますし、そういう意味から申しまして、国民減税をさらにもっと大幅にする、こういう意味で八十万円ということを申しました。いわば、これは将来の減税の目標だ、かように御了承いただきたいと思います。  社会開発の大事なことは、私が申し上げるまでもございません。そうして、その社会開発は、御指摘のとおり、国と地方、これが合体いたしまして進めるべきものであります。この国と地方の働きは、ちょうど車の両輪のような形で進むものだと思います。かように考えますと、国も財源に非常に困っておりますが、地方財源も同じように経済不況から困っておりますので、これに対します対策を立て、そうして地方財源を豊富にしてやる、こういう、くふうをすることは、これは当然であります。今回の改正措置も、交付税率改正その他も、ただいま申し上げるような基本的な考え方地方財政の強化をはかったつもりであります。基本的には、御指摘になりますように、臨時行政調査会答申ども出ておりますが、当然、行政事務の分配の問題がありますし、それに対応する財源、これを同時に分配していくということで、今後とも地方財源の確保に万全を期してまいるつもりであります。同時にまた、行政組織そのものも、一そう効果をあげるように、地方への委譲等も計画すべきだと、かように考えております。  公務員の問題についてのお尋ねでありますが、この公務員給与あり方は、人事院制度がございますから、人事院勧告政府はもちろん尊重してまいらなければならない。過去におきまして、この点についてのいろいろの御批判を受けておりますが、政府は一そう努力いたしまして、この尊重の実をあげるように今後とも努力してまいるつもりであります。  また、公務員労働基本権の問題についてのお尋ねがありました。公務員自身公共奉仕立場にあることも御承知のとおりであります。私は、公務員制度審議会におきましても、公務員公共奉仕のその責務を十分果たし得るように、そういう身分を公務員制度審議会におきまして十分検討していただきたいと、かように思っておるのであります。この答申を待って処置をいたしたいと、かように思います。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の公債発行が、建設公債とは言うものの、結局これが減税財源になっておるんじゃないか、こういうお尋ねでございますが、実質的にはさようなふうであります。つまり、今回建設費を対象といたしまして公債を発行いたしますが、その結果、これが回り回って減税を可能にいたしている、そういうことはそのとおりであります。そういう前提に立ちまして、いま占部さんは、ただいま公債を発行して減税をする必要がどこにあるかと、こういうようにお尋ねでございまするが、私は、しばしば申し上げておりまするとおり、経済の安定が経済政策の目標と考えております。その経済の安定というのは、ただ単に、国の財政が均衡である、つじつまが合っておるという状態ではない。国の背景、基盤でありまするところの企業と家庭の安定こそが、国の経済の安定である、これを実現するんだ、こういう考えであります。いま企業状態を見ておりますると、わが国企業内容というものが非常に悪化しているということは、御承知のとおりかと思います。自己資本の比率が二〇%を割るというような状態である。これがまた、景気循環に対する企業の抵抗力を悪化せしめまして、今日の不況のごときは、まさにこれを端的に表現していると、こういうような状態であります。これを改善しなければならぬ。同時に、家計といいますか、個々の家庭の状況を見てみると、最も大事な資産であるべき住宅が、まだ御承知のような状態であります。家庭の蓄積、これも先進諸外国に比ベまして非常におくれておるような状態であります。そういうような状態におきましては、国の財政の手段を租税にばかり求める、これは私はその時宜に適していない。いま、そういう企業や家庭の赤字にかわって政府が借金をする。また、借金をいたしましても、これが国の信用にかかわるというような状態でない今日の日本の経済情勢であります。そういうようなことを考えますときに、企業、家庭の蓄積を刺激する、そういう意味において減税を行ない、また、そのために公債が出ていくということに相なることは、私は当然の考え方であると、かように考えておるのであります。  なお、減税をするにあたりましては、所得減税中心を置くべきである。また、今日政府考えておる所得税企業課税、両方の減税計画を、この際、所得税一本の減税計画にしたらどうかと、こういう御意見でございまするが、今日ただいま私どもが当面している問題は、物価の安定を中心とした安定経済政策、これを推し進める、こういうことはもとよりでありまするが、同時に、その家庭の蓄積、所得をふやすためにどういうふうにしなければならぬかというと、今日の不況を打開しなければならぬ。不況の打開と経済の安定政策、この二つの問題に当面をいたしておるわけであります。所得税におきましては、もとよりそれに中心を置き、大体六の割合を所得税減税に置いているのであります。企業減税は四の割合でございまするが、この際、所得の源泉であるこの企業の発展を助成する、そういうことを通じまして今日の不況をすみやかに打開する。これは私は、広く経済考えた場合におきまして、これまた当然の考え方と相なるのではないか、さように考えております。  地方財政の問題につきましては、昨日も申し上げたのでありまするが、私といたしましては、特に配意をいたしたつもりなんであります。従来、どうも地方財政が、何か予算編成の過程におきまして取り残されているという傾向があったように、私は実感を持ってこれを見ております。中央、地方は、これは一体でなければならない、そういうような反省のもとに、今回は特に、予算編成にあたりましては、地方財政先議の方針をとりまして、大体の地方財政の見当をつけました後に、個個の各省の予算の編成に取り組むという方法さえもとったくらいでございます。お話のように、当初、自治省、また地方自治団体におきましては、四十一年度地方自治団体の財源不足は三千三百億円になるというようなお話がありましたが、これは予算の折衝の過程におきましては、いつの場合におきましても、そういう大きな数字が要求省から提示されるのであります。最後段階におきましては、その不足額は二千五、六百億ということに相なった次第であります。それに対しまして、国が乏しい財源の中から、ともかく一千億円を地方財政に提供する、また千二百億円の融資についてこれを確保するという措置をとる、残りが三百億円ばかりであります。ありますが、これは地方財政の自己努力ということもあります。また、ただいまおしかりがありましたが、固定資産税等の問題もあるわけなのであります。そういうようなことで、私は、今回ぐらい地方財政対策が完ぺきに尽くされておるということはない。かように確信をいたしております。自治団体においても、そういう感じを持って今回の予算をながめておるというふうに確信をいたしておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣永山忠則君登壇拍手
  11. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 住民税減税は、今年度約三百億前後であります。また平年度約三百十五億でございます。ところが、これを減税いたします余地がないのでございますから、減税した場合は、国の財源でこれを補てんしていただく以外はないという実情にございますので、したがいまして、大幅に減税をいたしたい希望はございますけれども、本年は国も経済の苦しいときでございますので、この程度まででいく以外はなかったのでございます。したがいまして、やはりこの財源の補てんは、二百四十億を、たばこの本数配分にいたして、来年度は、たばこの消費税の改定によりまして、恒久的にやはり補てんをしてもらう道がついておるのでございます。そういうような関係で、この税の最低限の関係におきましても、できるだけ所得税に見合うようにしたい希望はごさいますけれども、しかし、必ずしも同一でなければならぬというものでもございませんので、この程度でやむを得なかったことを御了承を願いたいと存ずるのでございます。なお、将来にわたりましては、さらに努力を続ける考えでございます。  なお、固定資産税は、農地を除外いたして新評価価格によって調整をいたすということは、これもやむを得ざる措置としてやったのでございます。と申しますことは、三十九年度固定資産税財政措置によりますと、新市街地の地価が非常に暴騰しておるにもかかわらず、課税が安いという不均衡がはなはだしく残されておる。しかるに、地方開発、ことに都市再開発が緊急を要する事態に直面をいたしたのでございます。ちょうどその際、国も地方も大幅な減税をするということになりましたので、このときに負担の合理化をはかるということが妥当と考えまして、ことに激変緩和の処置を大幅に取り入れましたので、きわめてわずかずつ、段階的に課税の均衡をとるということに調整をいたしたような次第でございます。  次に、超過負担の解消につきましては、鋭意努力を続けましたが、いまだ不十分でございますけれども、金額的には二百五十億を解消分に充てることになりました。すなわち、国の補助職員の関係の解消が四十億、建設事業等の単価の是正で二百十億でございます。まだ今後、さらに努力をいたしますが、とりあえず、またこの関係に見合いまして、地方債の充当率を上げまして、実質的に地方負担軽減するようにいたしたのでございます。その充当率にいたしましても、一般補助事業や直轄事業に対しましては、千二百億の地方債のうちで八百八十四億でございまして、やはり旧来の充当率が約四〇%内外を九五%まで引き上げておるのであります。災害復旧事業関係では四十三億でございまして、土木事業はおおむね旧来の七〇%を一〇〇%、過年度分の充当率でございます。前年並みにいたしております。農林関係においても、五〇%を七〇%に引き上げております。義務教育の施設事業に対しまして約百億、充当率は、旧来の七五%を九〇%に引き上げる。公営住宅建設事業等に対しましても、旧来の充当率四五%を九五%に引き上げまして、金額は百五十五億でございます。義務教育は百億でございます。下水道関係におきましても充当率を六〇%を六五%に引き上げて、これが十八億でございます。こうして、超過負担に見合う非常な地方財政の困難を是正するということに鋭意努力を続けておるのでございます。さらに今後も一そう努力をいたして、超過負担解消には最善を尽くしたいと存じておる次第でございます。  なお、三千三百六十億が二千三百億ぐらいで、後退しているではないか、すなわち、本年度赤字が——それだけ大蔵省に譲ったのではないかというような意味の御意見がございますけれども、これは一千億を一般財源で補てんし、さらに、千二百八十億がこの地方債の増加分でございます。そうして自己努力、すなわち行政費の節約等が百五十億でございます。いまの固定資産税、都市計画税が百億で、二百五十億でございます。次に、超過負担が二百五十億でございますから、結局二千七百億というものが充当されたので、そうすると、三千三百から二千七百を引いたあとの六百億というものは、どういうわけであるかと言えば、これは、いわゆる国の経済の成長率の見方、減税規模公債規模等が、最初自治省が想定して出したよりは、これは見込みが違ったのであります。すなわち、政府税収見込みの違い。こういうような関係におきまして、これが違ったのでありまして、決してこれを譲ったということではないことを御了承を願いたいと存じます。要するに、赤字は埋めまして、そして完全に地方行政ができ、事業ができまして、景気調整に役立つことができると信じておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  12. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中小企業対策金融緩和だけではだめではないか、——われわれも同じ意見で、中小企業対策は、政府施策の中においても、最も総合的に、きめこまかくやっておる施策一つだと信じておる次第でございます。したがって、まあ金融面も、より大事でございますから、資金のワクも、前年度に比べて政府関係の三金融機関が二千五百三億円の財政投融資を行なって、二〇%増であります。そればかりでなしに、中小企業金利負担軽減したい。大企業ばかりが低金利政策の恩恵にあずかることはよくない。こういうことで、去年の九月に引き続いて、また今度三厘の金利の引き下げを断行したと言ってよろしかろうと思います。これをいたしたのでございます。  また、税制の面においては、中小企業に直接の、プロパーの減税だけで約三百五十億円程度減税を行なっておるのであります。これは従来の減税規模に比べては、非常に大幅な減税でございます。また、構造改善のための準備金制度というのを新しく創設したのも、単に金融の緩和だけでは、中小企業問題は解決できないという態度のあらわれでもあるわけでございます。  また、企業自体の体質改善については、合理化資金、あるいは高度化資金——まあ近代化資金、高度化資金に対して、ワクを拡大したり、貸し出しの条件を緩和したり、あるいは貸し付けの単価を引き上げたりして、できるだけこの資金がみなに喜ばれて、中小企業近代化のために使われるような配慮を加えてあるわけでございます。しかし、零細企業の人たちには、なかなか担保力がないわけでありますから、こちらのほうから、機械や工場を建ててこれを貸すという、機械類の貸与制度、共同工場の貸与制度、こういうまことに行き届いた施策も、今度創設することにいたした次第でございます。  そればかりでなしに、中小企業は、とにかくいろいろ相談相手になってあげなければいけないわけでありますので、都道府県にばらばらになっておる中小企業の指導機関を、これを一元化して、総合指導所というものにいたしまして、中小企業対策の総合的な指導をやりたいということで、占部さん御指摘のように、総合的に中小企業体質改善をはかり、中小企業問題の解決に当たりたいということで、鋭意努力をいたしておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 宮崎正義君。    〔宮崎正義君登壇拍手
  14. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は、公明党を代表いたしまして、佐藤総理ほか関係閣僚に対して若干の質問をいたします。  まず、外交についてでありますが、総理は、その基本姿勢として、「平和に徹する」と強調しておられます。今日のアジアの諸情勢から見れば、それが全人類の希望であり、当然過ぎる方向でありますが、問題は、政府の具体的外交方針にかかっていると言わなければならないのであります。善隣友好を看板に掲げた日韓諸条約の強行採決といい、対中国、対ベトナム政策のあいまいさといい、これまでの外交を見ると、一貫して対米追随外交に尽きるものであります。将来の日本の方向を誤らせるものと私は思うのであります。この点について、ライシャワー大使は、「日本が、その外交政策を、米国の占領から派生したものであり、米国の政策に順応するものだと考える限り、そして日本の政策が自国の理想や目標から生まれない限り、日米両国の関係は、いつまでも、ある程度ゆがんだものになろう、日本の外交が日本の理想と目標に基づいて推進されるなら、国際政治における日米両国の協力は一段と成果をあげる」と、米国大使でさえ述べているのであります。この発言は、一面から見れば、今日、日本の国民大衆に根ざす対米感情に対する米国自身の弁明でもあり、また一面では、そうした不安感を国民大衆に与えた政府の外交姿勢に対する米国の警告とも見られるのであります。総理は、この発言をどのように理解し、かつ、対米追随外交という非難に対してどのように対処するのか、具体的にお伺いするとともに、以下主要な点につき政府の所信を承りたいのであります。  その第一は、ベトナム問題であります。  米国の北爆再開によって、全人類が希望した和平工作は、むなしく消え去った感さえあります。政府が対米追随に終始してきたあまり、かつては米空軍の北爆を支持する態度を表明したり、LSTの日本人乗り組み員の増員や艦艇修理などは、かえって日本の立場を窮地におとしいれているものではないかという批判があるのであります。総理が平和外交を推進するというのであるならば、ベトナム和平に対して日本は積極的に呼びかけ、さらには、米中戦争の防止ないしは米中冷戦の平和のかけ橋となろうという心がまえが、その根底になくてはならないと思うのであります。さらに、安保理事会の議長国となった日本は、即時停戦を呼びかけるなど、関係国による平和維持会議東京で開催する等々の基本線に立って、積極的に行動すべきであると思いますが、総理の所見をお伺いいたしたいのであります。  第二は、中国問題であります。  総理は、中国問題を、政経分離の原則、あるいは重要事項という使い古されたことばと態度で、当面を取りつくろおうとしているのでありますが、事態はすでに、あいまいな経済外交よりも、明確な政治外交に転換すべきであるというのが、国民大衆の声であります。具体的には、第二十一回国連総会においては、進んで米国を説得して、中国の国連加盟への推進国となるべきであります。総理は、どのように考えておられますか。さらに、中国の国連加盟を重要事項としておくことが、総理の言う「平和に徹する外交」となるかどうか、そのほうが平和に役立つという考え方の根拠を明らかにしていただきたいのであります。  第三は、日韓問題であります。  最近の新聞報道によれば、韓国は、日本の経済援助を第二年度に集中して受け入れたいと申し入れているようであります。政府の所見をお尋ねいたします。また、有償無償あるいは民間借款を含め、現に契約が成立したもの、さらには、契約中の経済協力について、その進捗状況を具体的にお伺いいたします。さきに、日韓諸条約批准にあたって、われわれは、時期尚早であるとの立場から、政府の反省を促したのでありますが、ソウルにおける日本人商社告発事件など、まだまだ善隣友好の原則にほど遠いものがあります。政府見解をこの点についてもお尋ねいたします。  この機会に、日韓漁業協定において専管水域を十二海里と取りきめたことに端を発し、世界の沿岸諸国が、日本の漁船取り締まりのため、専管水域について検討を始めたようでありますが、政府がこれまで把握した事態について、御報告を願いたいのであります。同時に、ニュージーランド政府見解に対して、政府は今後どう対処するか、そのお考えお答え願いたいのであります。  第四は、核兵器問題であります。  総理は、「戦後の世界情勢のもとにおいて、一国の安全を一国のみで確保できないことは明らかである」と言っておられます。そこで、日米安保条約を締結し、米国の核傘下に入っていることが、わが国の安全を守り、平和を維持していくことになるとの見解をとっておられますが、これでは、国内に核兵器を絶対に持ち込まないという総理の言明は、米国が日本の国内に持ち込むことば認めるということになりますが、この点、明確に御答弁願いたいのであります。原爆に対する世界唯一の、しかも最初の被爆国であるわが国は、核武装の脅威からの解放、ひいては、核兵器の禁止にまで持ち込むことがその使命であります。特に安保非常任理事国としてのわが国立場考えると、確かに、核拡散防止、核兵器禁止問題に格段の努力を払うべきであると思いますが、総理自身、どのような見解に立っていられるか、具体的にその所信を伺いたいのであります。  さらに、アジア外交についてでありますが、アジア開銀本部のマニラ設置、あるいは国連安全保障理事会において、二度目の投票で、かろうじて非常任理事国に当選することを得たという事態を、総理はどう理解されているのか。結論として、日本が、いや佐藤外交が、予想外にAA諸国に信頼されていないことを如実に示したものであると私は思うのであります。アジア外交を積極的に展開するという総理は、対AA諸国との関係をどのように反省し、かつ、経済協力を含めて、今後いかに対処しようとするか、率直なお考え伺いたいのであります。  その具体策の一つとして、技術移住の問題があります。協力と言い、あるいは友好親善と言うも、しょせんは、民衆と民衆に根ざす理解と信頼がなければ、とうてい成立しないものであります。わが党が、かねて一千万人の技術移住を提唱し、文化交流、相互扶助の精神に基づくアジア外交の推進を主張したゆえんも、ここにあるのであります。総理の所信を伺いたいのでございます。  次に、経済問題でありますが、まず、物価問題についてであります。  国民大衆は、この五カ年間物価の値上げに苦しめられてきました。しかも、ことしは、さらに米価、そして地下鉄、私鉄の値上げをはじめとして、国鉄運賃、健康保険料、また郵便料金など、公共料金の値上げがメジロ押しに続き、四十一年度は九%以上の物価騰貴は避けられないとさえいわれ、国民生活を不安におとしいれております。しかも政府は、物価安定を確保すると言いながら、予算から見れば、物価対策費はわずか百五十七億円、予算総額の〇・三%という、まことに貧弱な金額であります。政府は五・五%程度物価上昇にとどめたいと言いますが、それさえも国民生活には耐えがたい値上げであるにもかかわらず、この程度に押えられるということは大きな疑問とせざるを得ないのであります。そこで、私は、予算の節約をはかることを第一に、防衛費の圧縮、さらに、圧力団体に左右された一部の財源等をもって、積極的な物価対策を講じ、さらに反面では、公共料金の値上げをストップさせると同時に、大企業が生産する製品について価格を引き下げさせるなどが、物価安定策として最も時宜に適していると主張するものであります。例を外国にとってみれば、フランスにしても、イタリアにしても、消費者物価が四%も上がれば、主要工業生産品など何十種目にわたって物価ストップを法律で行なっております。国民大衆福祉のためには、このような措置をとることも必要であると思うのであります。政府は、こうした物価値上げをストップするための措置を行なう意思がありますか、お伺いいたします。  さらに、国債政策について質問いたします。  政府は、かねてから、不況克服の見通しがついたと、いたずらに国民をまどわすような発言をしておりますが、現実は、不況の進行につれて、税収入などの大幅減収のために深刻な財政難に追い込まれております。この解決のきめ手として、従来の均衡財政を放てきし、有効需要の造出を理由として、国債発行へと大幅な転換を行なおうとしているのであります。特に赤字公債の発行については、戦前の状況を見ましても、年を追うごとにその額は増大となり、必ずインフレを招いております。政府は、建設公債であるからインフレの心配はないと、たびたび言明していますが、四十年度国債の一月分七百億円が二十八日に国庫に払い込まれました際、引き受け金融機関は、この資金調達のためコール市場に殺到し、そのため、日銀は六百億の貸し出しを行なったのであります。このことは、国債発行の当初から、その市中消化の原則がくずれ、事実上、日銀引き受け分の増大、ひいてはインフレへの危険が強まるとの見方を裏書きするものであると思うのであります。この現実に対しても、総理は、まだインフレにならないと言明なさるのか、お答えを願いたいのであります。  現在の状況からすれば、特に国債を発行し、いたずらに国民を不安におとしいれる必要はないと思われるのであります。財源不足をカバーするためならば、大企業における交際費に課税することによっても、千二百億円以上の増収がはかられるわけであります。政府は、それもしないで、金がないから国債を発行するというのでは、あまりにも無策であります。総理は、この点、考慮する意思があるかどうか。また、現今の深刻な不況を打開するために、福田大蔵大臣は、新年度の歳出を四、五、六月に重点を置くと提案されていますが、その具体策を伺いたいと思います。  次に、強く批判したい点は、国民税負担の問題であります。  総理は、三千億減税の公約を果たすべく、二百億円の物品税減税を含めて、平年度三千三百億円の減税を打ち出し、史上最大の減税であると主張しています。しかし、その内容を見ると、結局は大企業擁護を目的とするものであって、中小企業や勤労者の福祉向上をはかった減税ではなかったと言えるのであります。すなわち、三千億減税といっても、国民生活から見れば、初年度減税がどれほどであるかが問題であり、その初年度国税で二千五十八億円にとどまっております。この点を含めて、政府は、どこを減税の目標に考えているのか、お尋ねいたします。たとえば、所得税課税最低限を見ますと、夫婦子供三人の標準世帯で六十三万一千円と、約六万七千円引き上げられるだけで、それも、物価が上がれば簡単に帳消しとなってしまいます。わが党が主張し続けている年収百万円までを課税最低限としなければ、国民はほんとうの意味での減税の恩恵に浴することはできないし、国民税負担軽減とはならないのであります。総理のお考えお尋ねします。  また、納税人員から見ても、四十年度は二千百万人であるのに対し、四十一年度は二千六十七万人が見込まれております。減税といっても、実質的には横ばいの状況から、国民税負担が軽くなるとは言えないのであります。まして、低所得者層に対する特別の考慮がはかられているわけではありません。さらに政府は、企業減税に全体の三四%を占めているほど力を入れ、法人税率の二%引き下げや、物品税の面でも大企業減税の恩恵を与え、有利にしています。このように、政府減税政策中小企業国民の期待を裏切っていることをどう考えるか、お答え願います。  次にお伺いいたしますが、社会の繁栄と個人の幸福を一致させることに最大の努力を払うことこそ、真実の政治のあり方であります。ところが、これらの問題の一つ一つを見ても、個人の幸福の実現にはほど遠く、国民大衆の願いに反しております。一体、政府は、国民大衆福祉を実現することに真剣になっているのかと疑いたくなるのであります。この点につきまして、疑問点をあげて質問を続けてまいります。  その第一は、社会保障関係費についてお伺いいたします。本年度予算から、その内容を見ると、例年の既定経費の当然の増額をまかなうにとどまり、特に社会保障の充実がはかられていないのであります。たとえば、生活扶助費を見ても、大都市の場合、標準世帯(夫婦と子供二人)で現行の一万八千二百円から二万六百六十二円に引き上げられたが、これは一三・五%の伸び率で、総予算一七・九%の伸び率を下回るだけでなく、もともと生活困窮なのですから、一三・五%の伸び率では、あたたかく手を差し伸べられたとは言えないのであります。こうした現状にどう対処されていこうとされますか。また、国民健康保険などの各種社会保険費の値上げは、国民生活をさらに苦しくしております。国民年金や厚生年金についても同じでありますが、保険料の引き上げは、低所得者の生活をますます圧迫するので、われわれは、大衆福祉の実現の立場から、その抜本的な対策を強く要望いたすものであります。  第二に、国民が最も関心を持ち、国民生活関係の深い住宅対策についてであります。  政府は、一世帯一住宅の実現をスローガンに、昭和四十五年までに七百六十万戸の建設をめどとして推進してきたようでありますが、今回発表された新五カ年計画は六百七十万戸と、前の計画より九十万戸も縮小されてしまい、国民の願望である一世帯一住宅の実現は、完全に裏切られたのでございます。これでは、いつになったら一世帯一住宅の実現ができるか、政府の熱意を疑うとともに、その見解をお伺いいたしたいのであります。われわれが政府に要望したいのは、住宅対策は、単に建設戸数をふやすだけでなく、地価対策を含めた、住宅政策全般として取り上げていかなければならないものであります。この点、政府施策の中に、この地価対策が盛られていないことは、はなはだ不満を持つものであります。従来の用地費単価は、実際の地価の三分の一にも達しないと言われておるのであります。新市街地に建設しなければならない三百四十万戸に必要な宅地は、一億七千坪と言われていますが、これに対する対策はどのようになっているのか、住宅費が土地代金に吸収されていくことを憂うるものであります。宅地対策として、国有地の利用をどのように振り向けられるか、国民の納得のいく具体案を示してもらいたいのであります。  次に、農業問題についてお伺いいたします。  農業基本法制定以来、構造改善は、政府のかけ声にもかかわらず、計画どおりに進捗せず、農民は、過去五カ年間に二一%、三百三万人も減少したが、経営規模は一向拡大せず、農村に残る労働力は年々質の低下を来たし、生産の停滞となって、所得格差はますます増大し、いまや兼業農家は四二%にも及び、出かせぎの悲劇が深刻な社会問題ともなっていることは、いまさら申し上げるまでもありません。また、農産物の国内自給率は減少して輸入の増加率が増大し、特に飼料の輸入は年々累増しております。米も、長期見通しに反し、自給率八〇%を割ってしまい、販売額百万円以上の大規模の農家は、わずか二十万戸にすぎないなど、農業の体質改善はおくれるばかりであります。総理並びに農林大臣は、今後の農政のあり方をいかに考えられて進もうとするか、お答えを願いたいと思うのであります。さらに一農業構造を改善するために最も重要である経営規模の拡大には、農地の流動化を促進することが急務であると思います。しかし、純農村地帯における農地の積極的な流動化は、今日までの歴史から見ても困難であります。そこで、流動化を阻害している農地法の改正をはじめとして、離農者のための離農年金制度、その他、職業紹介、職業訓練所等の計画は、どのように考えているか、お伺いいたします。  また、東北並びに北海道、北関東等々の開拓農民は、私がいまさら申し上げるまでもなく、入植当時の借財を背負ったまま、二重格差の生活苦の中で農営に取り組んでおりますが、これらの開拓農民に対しては、貸し付け金の返済期間の長期化及び利率の引き下げ等の改正がどうしても必要であります。総理並びに農林大臣はどう考えておられるか、お答え願いたいと思うのであります。  最後に、政治姿勢について総理にお伺いいたします。昨年末の日韓国会において、政府・与党は、数度にわたり強行採決という民主主義を破壊する暴挙をおかし、しかも、一切の責任を正副議長に負わせ、平然としていることは、断じて許せないと思うのであります。そもそも政府・与党の強行採決の暴挙は、野党の抵抗とは全く質的に異なるものであり、一党独裁、ファッショ的行動と断ぜざるを得ません。このような暴挙をあえてした総理は、与党の最高責任者として、今後の国会運営に対する所信を明確にお答え願いたいと思うのでございます。  次に、小選挙区制推進論者を九割以上も集めてつくられた第四次選挙制度審議会答申の時期、並びに総理の小選挙区制に対する方針をお尋ねしたいのであります。一党独裁、憲法改悪の道を進むものとして、国民の大多数が小選挙区制に反対している。総理のこの点についての所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  また、総理は、本年の重点施策として青少年対策をあげ、施政方針の中にも美辞麗句を並べて青少年に呼びかけておられますが、総理考えている青少年対策を具体的に、はっきりと述べていただきたいのであります。国民は、政府の官製の押しつけがましい青少年対策に対して、大いなる不満を感じております。しかも、青少年対策を口にするそばから、政府・与党の腐敗堕落を象徴するかのように、国会内におけるピストル売買事件が発生し、国民に大きな不信と失望を与えております。政府が本気になって青少年対策に臨むならば、まず、総理並びに政府・与党自身の身の回りを清潔にするとともに、その政治姿勢を正すべきであると思うのであります。総理は、いかなる理念と思想とを根底にして、青少年対策考えておられるのか、明確な見解を承りたいのであります。  以上をもちまして、私の質問を終了さしていただきます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ライシャワー大使の発言を引用されまして、これを一体どう考えるかということでございますが、一国の総理は、こういう大使の発言など、実は批判するものでないように私は思っております。また、内容も私は知りません。だから、そういう意味で、それはあずからしていただきます。そして、わが国の外交が、対米追随、米国追随だと、かように御批判なさいますが、私は、さようなつもりで外交を展開しておりません。御承知のように、しばしば申し上げますように、日本の外交は、日本の政府が日本の国益を守る、その立場においてこれを展開するのでありまして、一国の追随外交ということは、これは私は返上いたします。かようなお話はとんでもない間違いだと思います。  次に、ベトナム問題につきまして、るるお話がございました。私どももベトナム問題は一日も早く和平ができ上がる、これを心から願っております。そういう意味合いにおきまして、今日、議長国にもなりましたので、安保理事会におきまして、ただいませっかく審議しておる最中でございます。各国を招集し、また、平和への道をこの安保理事会において求める、かような立場でただいまやっておりますから、これもしばらく時期をかしていただきたい、かように思います。  次は、中国問題についてのお話でありますが、中国問題につきましてはしばしば私が申し上げておりますから、重ねて申し上げませんけれども、在来の基本的な方針に今日も変わりはございません。また、中国の国連加盟を重要問題として扱ったことはどうも理解できないというお話でありますが、申すまでもなく、中国問題は、わが国にとりましても、また今日の世界の平和にとりましても、たいへん重大なる問題でございます。かような意味を持つ中共の国連加盟の問題でありますから、これが重要問題として扱われるのは当然である、かように私は思います。  次に、核兵器の問題についてお触れになりました。御承知のように、日米安保条約はございますが、この核兵器の持ち込みというものは、これは事前協議の対象になるのであります。したがいまして、わが国自身が核兵器を持たない、わが国自身が核武装をしない、かような考え方をしばしば申し述べましたが、米国が日本に核兵器を持ち込む、こういう場合には、わが国が同意しなければこれは実現しないのであります。持ち込むわけにいかない、ただいまの事前協議の問題である、かように御理解をいただきたいのであります。また、核兵器を含む全体の軍縮の問題につきましても、わが国は敢然と核兵器を含む完全軍縮への努力をしておること、これも御承知のとおりだと思います。  次に、アジア外交についてのお話でありますが、アジア開銀がマニラに本店を取られましたことは、私ども、まことに遺憾でございます。当時、私ども政府考え方を率直に申し上げたのでございます。しかしながら、アジアの諸国におきましては、開発銀行の総裁を日本が取ることは適当だと、かような意味を持ち、本店はマニラだと、かようなことを考えたようでございますので、一がいに日本が不信だと、かように申すのは当たらない、かように思いますから、これまた私どもが、さらに積極的に、日本のあり方、また外交の進め方等について理解を求める、かような処置をとりたい、かように思います。  次に、AA諸国との問題であります。技術移民にお触れになりましたが、私は、たいへん時宜を得た具体的な御提案だと思います。私どもも、技術移民あるいは経済上の積極的な開発援助等々を、開発途上にあるこれらの国々に対しまして進めてまいりたい、かように思います。今日、川島自民党副総裁を特使として派遣いたしましたのも、AA諸国、特に非同盟諸国等との友好親善を深める、かような意味でございますので、ただいまお述べになりましたようなAA諸国とも一そう親密を増すことだと、かようにこの効果を期待いたしております。  次に、経済問題につきましてお話がありましたが、私が申し上げるまでもく、公債発行あるいは大減税をいたしましたことは、経済安定成長に乗せることと、不況を克服するために、私どもがとったのであります。同時にまた、これがインフレにならないように最善の努力を尽くすつもりであります。御指摘になりました、一月において公債発行をした同日、日銀はそれにほとんど見合うような貸し出しをした、これはインフレへの危険ではないか、かような御指摘でございますが、私は、日銀の調整機能というものは、やっぱり長期的な観点で十分判断していく必要があるのではないか。一月のその日その一日でかような処置をとったというだけでは、これは判断をするのには材料として不足だ、かように私は考えておりますが、なお詳細は大蔵大臣等からお聞き取りをいただきたいと思います。  また減税目標は、私どもが申しますのは、もちろん平年度であります。一年間を通じての減税、その額が問題であります。初年度が大事だと、かように言われますが、初年度では四月からこれを実施するのでありますので、年間を通じての十二カ月の減税、かようなことではございませんから、やはり平年度三千六十七億円、これをひとつ十分御理解をいただきたいし、また、御指摘のように、初年度といたしましては二千五十八億円であります。この数字は間違いございません。また、私が申すまでもないことですが、税金を納めるのは、地方税だろうが、国税だろうが、同一の人でありますので、そういう意味で、減税の場合には、地方税も含めて税負担が軽くなったと、かように申すのが適当だと思います。今回は地方税を通じて三千六百億の減税をいたしたのでありますから、たいへん大幅な減税でございます。そうして、この点について、標準家庭において百万円までを税を取らないようにしろ、かようなお話でございます。もちろん五十六万円が今度は六十三万円と、税のかかる課税限度が変わってまいりましたが、そうすると、今度は、八十万にしたい、さらに百万にもしたい、さらに減税の目標をだんだん上げることは、それぞれの立場において適当かと思いますけれども、ただいま直ちに百万にやれと、かようにおっしゃられても、さようには政府はできません。このことをはっきり申し上げておきます。  また、大企業中心ではないかということでありますが、今回は特に中小企業に対しまして——この当面しておる経済苦況を打開する意味におきましても、中小企業減税を特に留意をいたしたつもりでありますので、これは中身についてさらによく御検討を願いたいと思います。次に、住宅問題は、これは建設大臣からお答えいたしたいと思います。  社会保障の問題について、その充実についてのお尋ねがありましたが、もちろん経済開発、これに相応する社会開発をいたすつもりでおりますので、年金、保険、その他、社会保障の充実について最善を尽くしてまいるつもりであります。  次に、農業の問題についてお触れになりました。詳しくは農林大臣からお答えをいたしますが、申すまでもなく、農業の生産性を高めて格差をなくすということが第一のねらいであります。その意味におきまして専業農家もふやしていく、かような政策をとりますが、実際には兼業農家がどんどんふえております。この実情にもかんがみまして、農業所得増加をはかると同時に、いわゆる農家所得がふえるようなそういう諸施策をとってまいりたい、かように思います。そうして、いわゆる出かせぎ問題とか、あるいは食糧の輸入問題とか、こういうものに立ち向かっていきたいし、また、御指摘になりました開拓農民、ことに北海道の開拓農民の実情についてはさらに積極的に、これが救済処置その他を考えろというお話でございますから、これも農林大臣からお答えいたしますが、政府も一そう注意いたしたいと、かように思います。  政治姿勢についてのお尋ねであります。申すまでもなく、前国会におきましては、私どもまことに遺憾に思っております。今国会においては必ずこの国会の正常化に努力し、そうして国民の信頼をかちうるようなそういう国会をぜひともつくり出したい、かように思いまして、各党の御協力を心からお願いする次第であります。  小選挙区制についてのお話がありましたが、小選挙区の問題はただいま選挙制度審議会におきましてせっかく研究中であります。この答申を得た上で私が政府の態度をはっきりいたすのでありますが、ただいま答申の出る前に私自身の考えを明確にすることは、何かと誤解を受ける心配がありますので、さようなことはいたさないつもりであります。ただいまお尋ねがありましたが、さような意味で、ただいま審議会から答申の出ることを待っておる段階だ、かように御了承いただきたいと思います。  また、最後に、青少年対策についておしかりも受けましたが、青少年対策はこれは大事な問題であります。私が今後の取り組んでまいる政府の態度等については、施政方針において申し述べたのであります。御指摘になりましたように、まず、みずからの身を清くし、そして青少年に呼びかける、そうすれば必ず効果がある、かような仰せも、私はもちろんりっぱな御意見だと思いますので、この上とも、私どもが将来を託す青少年、これがすこやかに、りっぱに成長するように、最善を尽くしてまいるつもりであります。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) お尋ねのうち、総理お答えにならない部分についてお答えを申し上げます。  まず第一に、韓国に対する経済協力の問題であります。第一年度に集中しておる云々というようなことは、まだ具体的には私どもには交渉はございません。無償及び有償につきましては、毎年、実施計画を両政府で協議して決定することになっておりますが、韓国がまずその原案をつくって、そして日本にこれを提示する、こういうことになっておりますが、まだ、この協議が行なわれる段階に達しておりません。それから、民間信用供与につきましては、一月二十日現在で十一件、契約総額が約八千五十万ドルの契約が成立しております。  それから、両国の間にいろいろ告訴事件であるとか、あるいは向こうの検察当局の取り締まり等に触れた問題等がございまして、とやかく、さい先があまりおもしろくないのではないかというような評判が立ちましたが、この問題は誤解も相当ございまして、告訴事件は取り下げられ、また、検察当局から追及された問題は不起訴になって、全く平静な状況に返っておりますので、この点も御了解願います。  それから、専管水域の問題について御質問がございましたが、大体、国際情勢の状況を見ますというと、英国と北欧諸国において十二海里の専管水域の取りきめが行なわれる、その他各国においてさような状況が進んでおるような形勢になっております。しかし、これは御承知のとおり、国際間の、二国以上の国際協定として合意されて初めて専管水域というものがその両国の間において設定されるという、こういう状況になっておるのでございまして、日韓条約にあたりましても、この最近の国際情勢にかんがみて、その必要を認めまして、日本と韓国の間において協定の結果、お互いに十二海里の専管水域を認めるということに相なった次第でありまして、これが最初の例ではございません。ニュージーランドはこれに反して、単独で十二海里の専管水域を設定するということを取りきめたのでありますけれども、わが日本はこれに対して、従来の日本の正当な利益に抵触するものであるというので、抗議を申し込んでいろいろ折衝いたしました結果、両国の間で話がつきまして、これを国際司法裁判所に提訴するということに合意が成立いたしまして、その細目の問題をただいま審議している状況であります。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 来年度予算の中における物価対策の費用が百五十七億くらいでは少ないじゃないかというお話でございます。この百五十七億は、直接の、新しい物価に対する施策でございまして、御承知のように、今日物価を解決いたしますには、あらゆる構造上の面から来ておる点もございます。したがって、中小企業対策、農業の対策、あるいは流通機構の改善等に力を入れてまいらなければ、基本的には、ならぬのでございまして、それらの点につきましては、先ほど通産大臣が言われ、あるいは農林大臣が言われるように、今日それぞれの予算の中において根本的な対策を立てられておるのでございます。なお、税金に関しましても、物価対策の見地から、物品税の減税その他が行なわれておるのでございます。したがいまして、これらの総合的な面が予算上にあることを御承知いただくと同時に、今日これらの物価政策を十分に浸透させてまいりますためには、独禁法の運用なり、あるいは関税、輸入政策等について、今後適切な手を打ってまいる必要がございます。また、住宅、土地制度等につきましても、建設大臣がすでに案をもって、収用制度あるいは土地に関する税法上の改善等について、近く国会審議されると思うのでございまして、これらの問題を総合してお考えいただくならば、物価の安定は将来必ず私は実現し得るものだと、確信を持ちながらやっている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債とインフレの関係について、たいへん御心配のお話でありまして、特に一月二十八日、日本銀行が六百億円の貸し出しを行なったことが気になるというようなお話でございまするが、これは、日本銀行は常に金融の操作をいたしておるのでありまして、ことに国庫収支の状況とにらみ合わせながら、貸し出しをやりましたり、オペレーションをいたしたりいたしております。一月二十八日の貸し出しは、そういう恒例のものでありまして、何ら心配する理由はないものであります。  また、戦前がそうであったというようなことをあげられておりますが、戦前、戦争の場合には、ほとんど公債が毎回発行されております。この際にはインフレにつながり、非常な混乱を起こしておる場合が多いわけでございます。しかし、今回発行いたそうとする公債は、そういう性格のものじゃないのであります。つまり、公債発行によって景気を調整し、社会資本充実減税を行なおうという、こういうような性格のものでありまして、経済に対して財政が主導的な役割りを持っていくための公債政策。こういうことは、戦前では高橋是清さんのとられた日本銀行引き受けによる公債政策、これに相当するものであります。あのとき、一体どうなったのか。決してインフレになっておりません。昭和七年でございまするが、歳出の三割くらいに相当する大幅な公債発行が行なわれた。そうして、それが八年、九年と続き、九年ころになりますると、非常に経済界は転換をしてまいりました。非常にしつこくつきまとっておった、あの浜口内閣下のデフレというものが完全に解決されました。今日、われわれが戦前基準と申しております戦前の基準に比べて、物価が幾らになっておるか、あるいは国民総生産がどうだ——その戦前水準というのは、昭和九年、十年、十一年の平均をさしている。わが戦前の昭和経済において最も安定しましたのは、高橋財政のこの貢献の結果である、こういうように考えておるわけであります。決して、インフレと公債がつながっておる歴史ではないということを申し上げておきたいのであります。  それから、減税が大企業中心になっておるではないかというが、いま総理からお話のとおり、中小企業に非常に重点を置いておるのであります。減税の目標は何かというようなお話でございまするが、これは、一言で申し上げますれば、「企業にも蓄積を、家庭にもゆとりを」、こういうことを粘り強く実現いたしてまいりたい、こういう考えの第一歩であります。  交際費減税を再検討すべしというお話でございまするが、交際費は、御承知のとおり、これは会社の経済活動費でございまして、ほうっておけば、これは損金の性格になるわけであります。そうしますと、会社のほうで、どうせ税金にとられるのだから交際費で使っちゃえというような傾向もなしとしない。そうあってはならないというので、損金として認めないという制度が十二、三年前からとられております。昭和四十年度、本年度も、さらにこれを改正いたしまして、損金不算入割合を五〇%、半分にまでいたしたわけであります。今年度そういう改正をしたばかりでございまするが、なお、これはその結果の推移を見て再検討するというふうに御了承願いたいのであります。  それから、上期に支出を集中するというが、その具体的なプログラムはどうかというお話でございますが、契約べースにおきまして上半期に六〇%のものを実現していきたい、こういう計画のもとに、いま関係各省との間に話を進めておるわけであります。また、その計画がきまりますれば、もとより地方公共団体、政府関係諸機関と緊密なる連絡をとります。また、政府、内閣には、その実施を促進する、また、その促進を監査するという機能を持ちました実施推進本部というものもつくっていきたいという考えでございます。  以上お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣坂田英一君登壇拍手
  19. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 農業における最近の事態、いわゆる就業人口の著減とか、自給率の低下による農産物特に飼料輸入の増加の問題、あるいは構造改善がうまく進捗していないではないかという問題、農業の近代化への進捗状態が悪い、なお、開拓農民の苦痛といったような点についての御質問に対して、先ほど総理から、簡潔にして全部を尽くした御答弁があったわけでございますが、しかし、私も担当大臣として御説明を申し上げておきたいと思います。  最近、御承知のとおり、農家戸数よりも農業就業者数が著しく減少しておることは、お説のとおりでございます。これらにつきましては、近く、農業基本法によりまする年次報告を御報告申すことに相なっておりますが、やはり非常に減少いたしております。また、増大する食糧の需要に対して、農業生産が必ずしも十分に対応できないという事態であることも、お説のとおりでございます。しかし、この狭い農用地に一億近い人口の食糧の八〇%以上自給し得ることは、世界に比類のないほどの生産力であるということは間違いがないのでございます。ただ、最近これが減少しつつあります。特に飼料など、農産物の輸入が増加しておるという実態でございます。これも、食糧一〇〇を自給する場合に、畜産物をもって自給するときには六〇〇のエネルギーが要るわけでございます。そういういろいろの事情があるのでありまして、狭い国土においては、やはり非常に困難なのであります。しかし、困難であっても、私どもは、うんとこれに力を入れるつもりでおります。  それから、かような状況において、まず農業就業者の減少について、いかに考えるかということでございますが、生産力の少ない一部開拓地、あるいは貧弱な生産力の農村では、人口の減少は必要なことであって、あるいは考えようによっては幸いである所も少なくないと思います。かつて分村計画すらやった所もあるくらいでございます。しかしながら、このことは、地方地方の実情によって異なることでございます。(発言する者あり)
  20. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御静粛に願います。
  21. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君)(続) しかし、農業就業者の著しい減少が、多くの農村に不安を残しております。したがって、農業就業者減少の影響は、地方により、いろいろであり、その良否は別として、原因を見ますと、一つは、農村の住宅、道路、生活条件、その他の社会環境の不備ということであります。一つは、学校、家庭をはじめ、その他一般社会における農業を実質以上に劣悪視するムード等、幾多の原因があるのでありまするが、何と申しましても、経済成長に伴う他産業との所得格差、他産業による雇用機会の増大、及び、農業の過重労働によることが、おもな原因であると考えられると思います。したがって、政府といたしましては、農業労働力の減少に対処しながら、農業生産性の向上、総生産の増大をはかることにつとめ、これがため、農用地基盤整備——今年度は特に十カ年計画を樹立することになっておることは、先ほども報告申しておるとおりであります。それから、技術各般にわたる研究と普及、資本装備の高度化をはかり、また、小農には必要でありまする共同をすすめる。また、農業構造の改善については、(「そんなこと質問していないじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、これは御質問があるのです。地方の実情に即応して非常にうまくいってないという御質問に対して申すのでありますが、地方の実情に即応せしめ、順序、手段をたがえることなく、弾力的に施策を講じ、特に畑地振興につとめてまいるということが重要であり、また、そのために草地の造成につとめること。しかも、農業の近代化は急がなければなりませんが、農業の本質上、おのずから限度があるのでありますから、現実の問題としては、農産物の価格の安定、流通対策もまた重視し、並行して施策すべきである。以上の施策を今後も一そう拡充強化する所存でございます。  一面、幸いにして農業に情熱を持つ青壮年もまた少なくないのでありますから、農村の社会環境を改善し、後継者養成、生活改善施策、社会保障を進め、行き過ぎのムードを是正して、充実した農村建設に立ち向かわしめたいと考えております。可及的に数多くの自立農家の創立につとめるとともに、先ほど総理から言われたとおり、兼業農家も多くなる必然性がありますから、これらに対しまして、共同して営農の生産性をあげるということ、所得の増大の機会を与え、全農家の所得向上に努力すべきことはもちろんであります。また、一つ一つの農業経営が近代化したということだけでは意味がないのでありまして、充実した農村こそ、人類社会の構成上きわめて重要であるということを付言いたします次第であります。(拍手)  次に、離職者の問題でございますが、これらにつきましては昨日もお答えいたしておりまするが、中高年齢失業者等を対象とするところの就業促進措置の一環とされまして、労働省においてやっておられますることは御存じでありまするわけでありまするが、これを実施するとともに、職業訓練手当等の支給がされておるわけでございまするし、四十一年度はさらにこれらの問題が充実されておるのでありますが、農林省といたしましても、農業委員会を活用いたしまして、この間にわたって離農転職希望者の就業円滑化のための相談活動等を内容とする事業を行なわしめているのでありまするが、これらのことをさらに拡充いたしてまいりたいと存ずる次第でございます。  それから北海道等における——これは北海道に限りませんけれども、開拓農民は入植時からの負債をかかえまして難渋しておりまするが、開拓農民に対する貸し付け金については、返済期限の大幅な延長、利率の引き下げ等の措置をとるべきではないかという御質問でございまするが、開拓農家の負担軽減に関しては、開拓農家に関しましては、政府資金の追加投入を中心といたしまする新振興対策を三十八年以来実施いたしまして、開拓営農の充実改善につとめておる次第でございます。これとともに、延滞負債が多く、償還困難なものに対しましては、負債の重圧を緩和するため、関係金融機関の協力を得まして、償還金の支払い方法の変更等の措置を講ずるとともに、必要に応じ低利長期の自作農資金に借りかえさせて、負担軽減をはかっておるというわけでございます。なおこれらについては十分注意をいたしまして、でき得る限りのことをやりたいという念願でございます。(拍手)    〔国務大臣瀬戸山三男君登壇拍手
  22. 瀬戸山三男

    国務大臣(瀬戸山三男君) 住宅対策、建設計画が当初七百六十万戸の五カ年計画だったのに、最終的には六百七十万戸と、九十万戸の減をした、これではいわゆる一世帯一住宅というものは達せられないのじゃないか、こういうのが主点だったと思います。そういうお感じを持たれることは私も無理はないと思います。ただ、御理解願いたいことは、私どもは、この住宅計画を立てます場合、いま現に、しからば、家の中におらない人がたくさんおるかというと、そういうわけじゃございません。ただ私どもは、今後は少なくとも三寝室以上の家を建てたい、これがいわゆる生活の安定を来たす基礎である。政府が住宅建設と申しますか、対策に最重点を置いているのはそういう意味でありますが、その際の推計が、これは実際上きわめて困難であります。また、従来の実績あるいは人口増加、あるいは老朽住宅——御承知の、今日たくさん大都市にありますいわゆる民間アパート、こういうものもいろいろ計算するわけでありますが、今後も同じようにこの産業経済の構造変化があって、いわゆる世帯の分離が同じような趨勢で行なわれるかどうか、そういう非常に複雑な推計をいたします。その際に、簡単に申し上げますと、一戸に入る一世帯を三・八人と計算するか、三・七人と計算するかというところに、これは学問的にもいろいろ意見があります。そこで、三・八人といたしますと六百七十万戸ぐらいになる。私どもは、住宅はできるだけ充足したほうがよろしいわけでありますから、最初三・七人の計画で推計いたしますと七百六十万戸ぐらい不足するのでありますが、それをいろいろ検討いたしまして、三・八人と、こういうことで最終決定をしたのが六百七十万戸と、こういう事態でありますから、これは今後も検討していきますが、一応こういう推計で計画は立てたということをぜひ御理解願いたいのであります。  それから、この計画を実行するには、これはきわめて重大な、むずかしい問題でありますから、安易には考えておりません。しかも住宅は、私ども人間の安住の場で、そういつまでも、のんびりやる仕事ではないという決意をいたしております。お話のとおりに、これの前提となります土地の問題、いわゆる住宅地をどうするかという問題は、これはまことに深刻な問題であります。私どもが苦労をし、また非常な努力をしなければならないのは、ここにあるわけであります。最終の推計の一億七千坪をどうするのかというお話がございましたが、同じような心配をいたしております。そこで、こまかく申し上げませんけれども、ただ率直に申して、私は、人間と土地との関係を全国的に再検討してまいりたい。そうして、この関係では、これは土地というものは、もうけ仕事に使うべきものでない。この原則に従って、法律、税制その他を総合的にいたしまして、あるいは法律の制定等をぜひ国会にお願いいたしますから、これは国民的な大事業ということで御協力を願いたいと思います。(拍手)    〔議長退席、副議長着席〕     —————————————
  23. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 高山恒雄君。    〔高山恒雄君登壇拍手
  24. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、民主社会党を代表して、政府の施政演説に対しまして御質問を申し上げたいと思うのであります。主として内政問題についてお伺いしたいのであります。  総理は、施政方針演説において、国民経済安定成長を続けるためには、有効需要と供給能力とが均衡を保ちながら拡大していく必要があり、さらに、農業、中小企業等の生産性の低い部門の近代化を促進するために不況の克服と物価の安定を最優先とする予算を編成することを主張されております。この主張によりますと、需給の不均衡の是正、産業の生産性向上の不均衡の是正そのものが、不況克服と物価安定の双方に通ずる基本であることを、総理は当然に確認されていると思うのでありますが、この点について、まず総理見解伺いたいのであります。  昨年のわが国経済は、企業倒産が激増し、大会社の決算は、三期にわたって減収決算を続け、企業の自己資本比率が二〇%台に低下するということで、企業基盤が弱体化するなど、民間企業活動にとっては、安定恐慌ともいうべき年でありました。不況克服とは、今回の政府施策のように、企業活動に対して財政面から需要をつけてやるだけで、はたして万全と申されましょうか。現在の不況原因を企業活動の面から見ますならば、過当競争による過剰生産の招来、稼働率の低下からくるコスト高の招来が、企業の利潤率を低下させ、ますます不況と物価高騰に拍車をかけているのであります。一方、政府は、さらに物価高をあおるがごとき公共料金の値上げを断行して、ついに庶民の暮らしは、昨年四月以来、収入の面でも、家計支出の面でも、物価の上昇のテンポに追いつけなくなっておるのであります。このように、国内消費は横ばいとなり、個人購買力が低下して、企業活動は意欲を失っているのであります。したがって、経済成長を押し上げる力が弱まって、個々の企業も生産の拡大の「めど」もつかないというのが現状であります。こういう不況の悪循環が現在も進行しているのであります。政府は、このような不況の実態に対して、企業の過当競争をいかに調整し、国内消費の拡大をいかに促進するのか、その具体策が何ら提案されていないのであります。これでは、不況経済はやるが、不況解消はやらないという、かたわな方針と言わざるを得ないのであります。  また現在、政府は、過当競争の抑制のために、各産業にわたる不況カルテル、ないしは行政指導による減産措置を継続中であります。政府は、これらの施策を、単に、いずれも短期間の緊急避難的な調整にすぎない、必要があれば若干の期間を延長すればよい、というような安易な方針でおられるのではないか。いまや、半ば恒久的なものに化しつつある減産と生産調整を、今後どのように立てていく方針であるのか。また、その調整の過程でむざんな赤字経営に陥っている企業体質を、いかにして指導改善しようとするのか。それとも、企業の自由な経営方針にまかせて、倒産いたし方なしという安易な方針でおられるのか。この解決こそが、不況克服の根底となるのではないかと私は思うのであります。  なおまた、最近、鉄鋼、石油、繊維の各業界で、必ずしも、行政指導に納得しない有力な企業が目立って出てきております。これは政府に抜本的な指導方針がないので、勢い企業防衛に走らざるを得ない政府不信のあらわれではないのか。このような現状を放置すれば、有力企業本位の弱肉強食が、社会問題すら起こすおそれがあります。国が責任を持って、産業ごとの各般の企業活動面にわたって、強力な調整措置を講ずべきであると確信いたします。かかる意味から、わが党は、この趣旨に基づきまして、重要産業基本法の立法を提唱しておるのでありますが、この点について総理並びに通産大臣の所見をお伺いいたします。  次に、過当競争抑制に関連する当面の問題として、中小企業活動は二つの両極からの圧力に迫られております。その第一は、過酷な大企業の圧迫であります。これを繊維産業の例にとりますならば、北陸地方における織物中小企業の多くは、大メーカーの賃織り下請、または完全系列、一部自家生産の三つに区分ができます。それが、現在の生産調整下にあって、原糸の供給を削減され、稼働率はわずかに七〇%以下に落ちておるのであります。さらに滞貨は増大する、大メーカーの下請は打ち切られる、まことに企業活動の糧道を断絶するいわゆる系列化の再編成が強行されておるのであります。これと並行して加工賃の切り下げ等は、企業の経営権、労働権そのものが脅かされつつあるのであります。政府は、この深刻な事態に対し、いかなる施策用意しておられますか。  また、最近激増しつつある中小企業の関連倒産を予防するために、政府は、昨年の十二月、中小企業信用保険臨時措置案を提出し、これは成立いたしましたが、関連倒産の危機に備える施策として、このような信用補完の間接金融だけでは、十分なる措置とは言えないと思います。私は、かつての山一証券に対する日銀融資の実例にならって、むしろこの際、中小企業金融公庫の中に中小企業関連倒産の融資基金の別ワクを設定して、関連倒産の危機にある中小企業に対する敏速なる直接融資の道を開くべきではないか。これがためには、日銀がこの基金に対しての特別の融資を行なうべきではないかと思うが、この点についての大蔵、通産両大臣の所見をお伺いしたい。  次に、中小企業を圧迫する第二の問題は、農業政策の不手ぎわからくる兼業農家の激増に伴うものであります。これら兼業農家は、生活を守るために零細家内工業に転化しつつあります。したがって、在来の中小企業経営が下から突き上げられている事実であります。これらはいずれも家内労働中心であって、制限なしの長時間労働も横行し、生産秩序は撹乱され、基準法はじゅうりんされております。かくして、地域の既存の中小企業を圧迫する結果を招いているのであります。中小企業近代化に逆行しており、いまや在来の中小企業との競合が随所に発生いたしております。私は、このように産業秩序が乱れている現状をいかに調整指導するのか、ここに不況対策の基本があり、中小企業近代化を阻害する最大の原因があると確信します。私は、中小企業経営の社会的責任を確立するためにも、産業別、業種別の全国一律最賃制と、中小企業経営の協業参加を義務づける必要があると思うが、総理大臣、通産大臣の所見がお伺いしたい。  次に、外交問題についてお伺いいたします。  その第一は、今日のアジアの危機に対するわが国外交の基本路線についてであります。戦後二十年を迎えましたいま、世界政治は大きな転換期に直面しております。特にアジアにおける米ソ中仏の主導権争いの激化は、アジアを必然的に紛争のちまたと化し、今日のアジアの悲劇と危機を招来するところとなっております。現在の深刻なるベトナム紛争は、まさに、その集中的なあらわれにほかなりません。一時平和のきざしを見せた休戦も、再度北爆という憂うべき事態となりました。同じアジアに位置する日本が、このアジアの悲劇の傍観者になるのか、それとも、その危機を各国との協調を通じて積極的に打開し、アジアにおける平和の創造者になるのか、まさに、日本の外交の真価を世界に問う重大な時点に立っていると考えるのであります。遺憾ながら、これまでのわが国のアジア外交は、その自主性を全く喪失し、アメリカの路線に追随してきたのではないか。ここに今日の日本外交の混迷と行き詰まりがあると確信いたします。アジア外交を口にする佐藤総理は、この事態に処して、わが国外交の基本をどこに置き、アジア外交の推進をはからんとするのか、アメリカとの全面協調か、それとも、中共との協調をも含む共存路線か、佐藤内閣のアジア外交に対する基本路線を明確にしていただきたいのであります。  さらに、世界の注視の的となっているアメリカの北爆再開は、まことに残念しごくと断ぜざるを得ません。戦火はさらに、ラオス、カンボジアにも波及のおそれありと言われるが、前回の外相訪ソによるベトナム問題の話し合いは効を奏せず、目下の緊急安保理事会における日本の態度は、まさに重大であります。昨日の椿議員質問に対して、総理は、理事会の状況を見て、北爆停止要求も考えてよいとの答弁でしたが、理事会の結論が、遺憾ながら平和への解決を見出すことができない場合は、日本独自の平和解決のため、北爆停止を要求すべきだと考えるが、その意思ありやなしや、総理考え方を具体的にお聞かせ願いたいのであります。  第二の問題は、日米関係の根本的是正についてであります。そこには多くの問題が山積しておりますが、この際、日米関係の基軸である安保条約の改定問題と沖縄問題の二点に限定してお尋ねいたします。  米ソ冷戦のさなかにあって、安保条約が一定の機能を持ったことは、否定しがたい事実であります。しかし、今日、国際情勢は大きく変化し、戦略並びに兵器の変化、また著しいものがあるのであります。安保条約のあり方も、その当然の帰結として、今日再検討の段階に入ったと考えます。特に、長期にわたる米軍の常時駐留がもたらしている日米間の各種のひずみと緊張、在日基地からの米軍の海外出動に伴う国際紛争への介入の危惧は、今日、わが国に、対米コンプレックスと対米不信という大きな弊害をもたらすところとなっております。したがって、日米安保、特に駐留と基地問題の基本的解決、日本の自主外交の回復と日米両国の真の友好のために、放置できない今日の重大な課題考えます。特に、最近のアジア情勢の急迫化、中でも、米中対決の激化は、日米安保条約に数々の批判と危惧を生ぜしめ、これが、わが国の思想と政治の混乱に直結する事態を迎えております。この見地から、私は、政府がこの際、英断をもって安保条約の改定に取り組み、特に、常時駐留の排除と基地の原則的撤廃をアメリカに要求し、これを日米関係是正の出発点とすべきであると思うが、佐藤総理の所信をお伺いしたい。  次に、日米関係の是正は、この安保条約の改定とともに、沖縄の施政権返還を実行に移すべきときだと考えます。佐藤総理は、「沖縄返還が実現しない限りは日本の戦後は終わらない」と述べられましたが、施政権返還問題はその後何らの進展を見ておりません。沖縄の今日の課題は、そのような願望を披瀝することではなく、その悲願を、いかに具体的なスケジュールをもって実行に移すかということであります。この点に対する政府の努力は、全く無気力そのものであります。  いま一部には、きわめてまじめな立場から、基地と施政権の分離によって施政権の早期返還を実現せんとする考察が、真剣に行なわれております。われわれは、これらの主張についても慎重な討議を尽くし、施政権返還の具体的スケジュールを一刻も早く確立すべきだと考えます。はたして政府は、この際、沖縄住民の総意を体して、米国に対し、基地を含む施政権の全面的返還を要求するのか、それとも、基地と施政権の分離によって、不完全ではあっても、とりあえず施政権の返還実現に努力する用意があるのか、あるいはまた、当面は施政権返還の行動は一切起こさないというのか、この点に対する政府の基本的態度、並びに、将来における施政権返還の具体的な方策を、佐藤総理からお示し願いたいと思います。  私は、内政外交にわたる質問点を、きわめて重点のみにしぼって述べてまいりましたが、いずれも、当面するわが国の政治の焦点となる問題でありますので、政府側が誠意をもって御答弁されんことを強く要望して、私の質問を終わりたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 高山君にお答えいたします。  ことしは、不況克服と、物価の問題を解決する、物価の安定をはかるのが、わが内閣に課せられた課題である、こういうことでスタートいたしております。ただいまその点で御指摘になりましたように、需給のアンバランス、また、生産性の向上が各業種間において不均衡だと、こういうものが、ただいまの不況を現出した大きな原因だろうから、まず、これらと真剣に取り組んでいくということが施策中心をなすのであります。これは、御指摘になりましたとおりでありますから、今後の具体的施策あり方について、こういう点に、はたして効果を生ずるかどうか、十分御批判をいただきたいと、かように思います。  また、しばしば言われますように、今日の不況は、設備投資が過大だ、その結果もたらしたものだ、かようにも言われております。その意味では、各業種間、各企業間に非常な競争が行なわれている、いわゆる過当競争に悩んでおる、この過当競争を鎮静さす、これも一つの行き方だと、かように思いますが、ただ、いずれにいたしましても、私どもは自由経済のたてまえで経済の発展を期しておるのでありますので、政府自身がかような問題に直接関与する、これがはたして適当なりやいなやという問題があります。公正取引委員会が、この競争による価格形成ということについての立場から、いろいろな取り締まりもしておりますが、業界間の自主的な規制、あるいは自主的な話し合い、また政府自身が行政運営をすること、これ自身が実は大事なことではないだろうか、かように思います。また、御指摘になりましたように、過当競争と同時に、産業秩序の破壊の問題が起きております。これまた十分われわれが注意しなければならないのでありますので、行政の運営の主点、重心と申しますか、この産業秩序の破壊、こういうことが起こらないように、いわゆる幾ら自由経済といっても、弱いものがいじめられる、あるいは食われると、かような状態を起こさないように、行政で十分注意してまいりたいと考えております。  次に、外交路線についてのお尋ねでありますが、外交路線は私がしばしば申し上げておるのでありますから、もうよく御記憶をいただいておると思いますが、われわれは、国益を守り、そうして平和外交を積極的に推進する、この立場でございます。また、具体的な問題といたしまして、アジアの外交で、韓国問題は片づいた、今度は中共の問題はどうだということでありますが、これは、しばしば申し上げますように、在来からの対中共の政策は何らの変化を来たしておりません。在来どおりの政策を進めていく。また、ベトナム外交につきましては、お尋ねのありましたように、ただいま安保理事会におきまして、この問題が積極的に取り扱われておる。今後の成り行きによりまして、この和平ができるかどうかという問題だと思います。  そこで、御提案は、北爆を停止しろと、こういう提案はできないかというお話でありますが、私はやはり、北爆と北からの浸透、その二つが同時にやまないと、これは和平への道ということにはならないと思います。そういう意味で、とにかく話し合いに入るのだ、双方が話し合いに入るのだ、また中立国もその話し合いに入りまして、いわゆる国際正義の立場から両者のあっせんもする、かような扱い方であるべきではないだろうか、かように思うのでありますが、いずれにいたしましても、安保理事会もようやく議題もきまったようでありますので、そういう意味で、この安保理事会の発展に私どもは非常な期待をかけておるという状況であります。  次に、日米安保条約の改正についてのお話がございました。私はしばしば申しておりますが、わが国の安全は、自衛力の増強をしながらも、同時にまた、日米安全保障体制のもとで安全を確保しておるのだ、国際情勢の変化がない限り——今日までわが国に繁栄をもたらしたのも、この安保体制のもとにして初めてできたことだ、かように考えます。今日の国際情勢に、これを締結いたしましたときから、さしたる変化がない、かように考えますので、ただいまこれを改正する考えは持っておりません。しかしながら、この時期が参りますまでに、なお期間もあることでありますし、その間に国際情勢はいかに変わるか、またわが国の国内情勢にも変化があることでありましょうから、今日結論を出すということでなしに、なおこの問題等は真剣に考えていくべき問題だ、かように思います。ただいま御提案になりました駐留の問題、常時駐留を有事駐留に変えたらどうか、あるいはまた軍事基地をどんどん整理するようなことはできないか——これなども検討すべき問題だと思いますが、私は、ただいまの情勢におきましては、積極的な変更の意図を持っていない、このように申し上げておきます。  次に、沖縄の問題でありますが、これは、施政権の返還、いわゆる祖国復帰の実現の一日も早からんことを願っておるわけであります。そういう意味で、あらゆる努力をいたしておりますが、基本的には、この沖縄問題は、日米の相互理解と相互協力によりまして実現すべきものだと、かように考えますので、いたずらに、反米あるいは排撃運動を展開したり、あるいは基地反対の闘争によりまして、これを実現しようといたしましても、かようなことでは、時期を延ばすだけでありまして、決して早期解決への方向のものではない、かように私は思っております。  また、お話がありました、沖縄についての軍事基地と施政権の返還というものを、軍事基地を分離してそういうことは考えられないか、もし、そういうことが考えられるなら、その方向も一つの行き方ではないかというお話でありますが、これらの問題は、先ほど申しましたように、相互理解と信頼によって解決すべき問題でありますので、ただいま具体的な御提案がありましたが、この問題については、なお慎重に扱うべき問題だと、かように考えます。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  26. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 高山議員の御質問、単なる不況カルテルの結成による生産調整だけではだめではないかという御指摘は、そのとおりだと、われわれは考えておるわけであります。不況カルテルによる生産調整は、コストを割るような状態になってきて、そのままで置いておけば企業が共倒れになる、こういう場合に、正常な状態に返すための緊急避難的な処置である。したがって、不況カルテルの結成は、これを長く続けていくべきものではない。その事態改善されれば、できるだけすみやかにやめるべき性質のものであります。そこで、根本の問題は、脆弱な企業が乱立している日本のこの企業の体質、体制、これをどのように改善をして国際的な競争力をつけていくかということと、共倒れになるような、こういう過当な競争、公正な競争とは言えないような過当な競争に対して、競争原理を認めながらも、秩序というものをどうして打ち立てていくかということが、今後の産業行政の根本の方向だと思うのであります。そこで、高山議員から、全般的な企業に対する秩序づけの立法をしたらどうかというような御提案がございましたが、やはり、われわれは、自由経済というものを原則にしていくほうがいい、企業の良識、自主性、これを尊重するほうが、日本の国情にも合うし、企業の能率もあがるのだという考えで、統制経済的な考え方はとらない。そういうことにいたしますと、どうしても企業自身が自主的に、そういうばかな競争はやめる、あるいはまた、単に自分の、そのときそのときのことをやっても、結局企業の体質が強くなければだめだ、こういうことで、体質の改善や、過当競争をやめるということに、企業自体が自主的に努力するという機運が起こらなければ、これだけ企業の数が多いのに、政府が、ああせよ、こうせよと言うことだけでは、目的は達成できない。それでもいかぬという場合には単行法をつくります。企業に秩序を維持させなければ国民経済全般に悪影響を及ぼすというときには単行法をつくる。——できるだけそういう事態に持っていかないで、自主的な企業の判断と、われわれが行政指導というような名目のもとに、官民の協調方式、こういうことで、企業体質改善、あるいはまた過当競争の防止につとめていきたい。そのかわりに、税制あるいは財政金融の面を通じて、そういうような環境をつくりやすい条件を政府がつくることに努力をいたしていく、そういう方針でございます。  次に、倒産関連企業に対して融資の基金を設けたらどうかという御提案でございますが、昨年の十二月に、皆さんの御賛成を得て、倒産関連保証の臨時措置法というのができて、すでに、この法律の適用をいたしまして、連鎖倒産の防止に役立っておるわけでございます。しかし、これだけではむろん十分でないので、地方の通産局に対しては、不況の相談室を設けて、主として金融のあっせん、困っておる企業あるいは連鎖倒産が起こりやすいような企業に対しては、金融のあっせんをして、——私が常に言っていることは、健全な企業をつぶしてはいけない、どれだけの努力をしても金融のあっせんはするようにという強い指示を、各地方の通産局に与えておるのでございます。そこで、また、政府関係の三金融機関も、そういう場合においては、既往の貸し付けに対しては条件を緩和する、期限を延ばす、あるいは貸し付け条件を緩和したり、いろいろこういう経済の不況、非常な不況という非常事態であるから、倒産が激増するようなことのないように、連鎖倒産というものをできるだけ最小限度に防ぐような努力を、政府関係の三機関においてもいたしておるのでございます。  次に、北陸の繊維の下請業者の実情をいろいろお話になって、これに対して、大企業に圧迫されておるのではないかというお話でございます。確かに下請企業というものが立場の上においては弱い面がある。われわれもこれを組織化そうと考えておるわけであります。組織化をやる、そうして大企業と対等な形において、自主的に取引条件を話し合いのできるような、そういう条件のもとに下請を置きたいということで指導をいたしておるのでございます。ただ、言えることは、大企業と下請というものが敵対関係にあるものではない。お互いに信頼関係の上に立たなければ、大企業というものも、企業というものは発展していかなければ、下請というものはやっていけないのですから、そう対等といっても、敵対関係に立たないで、よく話し合いをしながら、大企業も下請も、ともに生きていくことのできるような行政指導をしていくことが、私は、産業、この下請に対しての対策としては、一番現実的だと考えて、さような指導をいたしておる次第でございます。  また、兼業農家が、いろいろその中小企業の方面に進出してくるような事態、いろいろおあげになりましたが、これは、このことに対しては、兼業農家が中小企業の面に進出してきて、それが中小企業の経営を不安定にしないように、これに対しては商工会などを通じてこれは非常な指導もいたしておりますが、もし弊害があるような場合には、中小企業団体法の規定を適用して、自主調整、あるいはアウトサイダーの規制、規制命令、あるいは設備の新設の制限命令等によって、この法的な措置も講じて、企業の秩序というものに対しては、今後も確立していくために努力をいたしたい所存でございます。  以上、お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私に対するお尋ねは、中小企業の関連倒産対策でありますが、ただいま通産大臣からお答えをいたしたとおりに考えておりますので、これにつけ加えることはございません。(拍手)     —————————————
  28. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 春日正一君    〔春日正一君登壇拍手
  29. 春日正一

    ○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、佐藤内閣財政経済政策について質問します。  政府は、膨大な予算を組み、不況を克服して、「経済の均衡ある発展と国民生活の安定向上」をはかると言っているが、これは人民を欺瞞するものであります。政府は、この膨大な予算財源をまかなうために、国債その他、合わせて一兆八千億円にのぼる赤字公債を発行し、消費者米価、国鉄運賃をはじめ、四千億円をこえる公共料金の値上げを行なおうとしている。公共料金の値上げは、人民に対する直接の収奪であり、公債税金の先取りであります。しかも、これがインフレを高進させ、人民生活を一そう困難にすることは明白であります。他方、歳出の中心をなす二兆円をこす公共事業費の大部分は、道路、港湾、国鉄、新産都市などの建設費であって、これは、重化学工業や建設産業などの独占資本に大規模な市場を提供し、独占資本のための産業基盤の整備と、軍国主義復活の経済的基礎の強化を、あわせて行なおうとするものであります。これは、人民から収奪して独占資本につぎ込むことであります。  そこが、私は具体的に質問します。  第一に、物価引き下げは、いまや全人民の痛切な要求であるにもかかわらず、政府は何らの対策を講じないばかりか、国鉄運賃をはじめ各種の公共料金を値上げし、物価値上げの先頭に立っています。今日の物価上昇の根本的原因は、独占価格、公共料金の引き上げ、通貨増発によるインフレ政策にあります。佐藤内閣が本気で国民生活を守ると言うなら、このアメリカと日本の独占資本を擁護する政策をやめて、独占物価公共料金を引き下げるべきであります。この根本問題について、首相の所見を明確にされたい。  第二に、政府が最も重点を置いたと言う住宅建設は、公営住宅わずか七万二千戸、公庫・公団住宅二十三万戸、しかも七割は分譲住宅であります。これは、政府が独占資本につくらせた住宅を人民に買わせるということであって、独占資本に大もうけを保証するものであり、住宅難に最も苦しんでいる低所得の人々は、いつまでも放置されるではありませんか。政府は、四十五年までに一世帯一住宅を実現すると言っているが、このためのどういう財政的な裏づけや宅地計画があるのか。東京だけでも五十万以上の世帯が、低家賃公営住宅を切実に求めています。これらの人たちの住宅難をどうして解決するのか、具体的な答弁を求めます。  第三に、いわゆる大幅減税なるものも、全くのごまかしであります。所得減税は、初年度わずか千二百五十五億円で、逆に人民にはその三倍の公共料金値上げを押しつけています。総理が強調している企業減税も、中小零細企業にはほんの名目だけで、おもに独占資本を潤すものです。しかも、国税庁は、中小法人や自営業者、農民に対して、昨年より四割から五割の所得増という推定のもとに、徴税強化を督励しています。これでは、減税どころか、実質的な増税になるではありませんか。  第四に、政府・独占資本は、不況を労働者の犠牲で切り抜けるために、企業再編合併による新たな合理化攻勢を一段と強めて、労働者の生活を耐えがたいものにしています。厚生省のある職場では、独立した生計を営む職員で、本人給だけでは生活保護基準以下のものが一三%、内職で生活を補ってもなお収入が生活基準に達しないものが四・二%もいるという。総理は、この事実を知っていますか。政府は、これら労働者の賃金を大幅に引き上げるべきであります。総理は、これをやる気があるかどうか、明確に答弁されたい。  第五に、政府は、構造改善対策の強化、農業近代化資金、中小企業高度化資金の拡大、共同工場化、連鎖店化の促進など、農民と中小零細企業の多数を整理し、没落させる、いわゆる近代化政策の強化に重点を置いています。しかし、政府・自民党の農業改善政策によって、この五年間に専業農家は四一%も減らされ、農民の八割が何らかの農業外収入にたよらなければ生活できなくなっています。また、自由化による農産物輸入の圧迫で、米麦はもちろん、政府の奨励する酪農、養鶏、くだもの、野菜なども、一部の農家を除いてはほとんど赤字経営となり、農民の借金はふえ、もはやどうにもならないというのが農民の悲痛な叫びであります。また、中小零細企業も、不況のもとで、仕事を減らされる、単価は下げられる、支払いは延ばされる、ということで、経営が非常に困難になり、大量の倒産が起こっています。政府近代化政策の強行は、このような農民、中小零細企業者の生活と経営を、一そうの危機におとしいれるものであります。かかる政治のもとで、多数の農民や下積みの中小零細企業者はどのようにして生きていくのか、これが国民の聞きたいところであります。総理の具体的な答弁を求めます。  第六に、総理は、社会保障の充実をはかると言うが、これまでも政府・自民党は、健康保険の初診料や、厚生年金、国民健康保険の掛け金の引き上げなど、一貫して社会保障の改悪をはかってきました。今回も、健保、国保の料金値上げ、国民年金の改悪を企てています。国民年金・夫婦一万円と言うが、これは、掛け金の七割ないし十割の引き上げでまかなわれるものであって、引き上げでふえた基金は財政投融資として独占資本のために使われるのであります。生活保護基準の一三・五%引き上げも、東京の保護世帯で一日一人わずか二十円の値上げにすぎません。これでは、焼け石に水です。しかも、政府は、保護家庭の数を減らす方針をとり、保護の打ち切りを督励しています。そのために、少なからぬ人々を自殺に追い込んでおります。この責任をどうおとりになるか。総理は、この物価高の東京で、四人家族月二万円の収入で、まともに生きていけると本気で考えているのですか。  以上に明らかなように、佐藤内閣財政経済政策は、日米安保条約の経済的な側面をなす高度成長政策の必然の結果として生じた、生産と消費の矛盾、過剰生産による不況を、人民の犠牲において乗り切ろうとするものであります。これによって一時的に景気のテコ入れはできるとしても、人民に対する搾取と収奪は一そう激しくなり、日本経済をさらに深刻な矛盾におとしいれ、それを打開するため、アメリカに従属しながら、軍国主義を復活し、侵略の道に進むことは、経済の法則に照らして明らかであります。現に政府は、日米安保条約の義務を誠実に守ると言い、アメリカのベトナム侵略に進んで協力し、日韓条約を不法に批准するなど、アメリカ帝国主義のアジア侵略体制に、わが国を一そう深く引き入れています。総額三兆円をこえる第三次防衛計画を繰り上げ、本年度三千四百億円の予算を計上し、また、対韓経済援助、東南アジア特別援助、その他、政治的経済的な対外進出費を二千二百億円も計上している。これは、対米従属、軍国主義復活と対外侵略の政策を、新たな段階引き上げるものであります。このような政策は、独立と平和、民主主義生活の向上を望む日本人民の断じて容認できないものであります。  わが党は、公債政策をやめ、租税特別措置による独占資本への特権的減免税の取りやめ、徹底した高度累進課税などによって、独占資本と大金持ちから税金を取り立て、人民弾圧と侵略のための軍事費や警察費を削減して、財源を確保し、それによって、物価の引き下げ、年所得百万円以下の免税、公営住宅の大量建設、社会保障の真に大幅な拡充、その他、人民の切実な要求にこたえることを主張します。また、経済の対米従属を断ち切り、すべての国と平等互恵の貿易を発展させることを要求します。  このような政策によってこそ、今日の不況を克服し、日本経済の自主的平和的発展の道を切り開くことができるものであります。この立場から、わが党は、人民大衆とともに、佐藤内閣打倒、国会解散を目ざして戦うことを、ここに表明して、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいま春日君の質問は、共産主義あるいは共産党の理論の展開であり、要求であり、また、批判に終わったようであります。しかし、冒頭に数点をあげて、とにかく質問らしいものを並べられましたので、私もそれにお答えをいたしたいと思います。  ことし、私どもが取り組んでおりますのは、経済の不況克服と同時に、物価の安定でございます。この点は経済問題として、それがお互いの生活の向上に役立つ。かような意味において、公債の発行も大幅減税もいたしまして、ただいま物価安定への努力をしているのであります。これは、ただいま御主張になりましたように、いわゆる軍国主義的なものでは絶対にございません。また、日米独占資本に奉仕するものでもありません。さような共産主義ばりの議論ではなしに、もっと、今日当面している不況はどうして克服するのか、物価はいかにしてこれを安定さすのか、その方向で考えていただきたいと思います。私は、公共料金の値上げ等をいたしまして——これについての御批判がありましたが、この点は、公共企業体そのものの分野において経営の健全化をはかりたい。かような意味で、もちろん合理化はいたし、また、その時期等につきましても、くふうはいたしますが、とにかく最終的には料金を引き上げざるを得ない。かような状態で、不本意ながらもかような処置をとったわけでございます。この点は、国民によく理解していただいておると思います。  次に、減税は、これまた共産党の御議論で、結局大資本に協力し、最後には増税になるんだ、かように言われますが、これは絶対に増税ではありませんで、文字どおり減税を計画し、平年度におきまして、国税地方税を通じて三千六百億円の減税を計画しておるのであります。これは増税ではございませんから、間違いのないようにお願いをいたします。  独占資本の合理化によって、いわゆる首切りその他、労働強化等が行なわれるということであります、そういう御批判でございますが、事業の合理化、これは近代的な傾向といたしましてぜひとも考えなければならないのであります。これは機械化の問題であったり、あるいは消費の問題であったり、いろいろ各方面から、いかにすれば合理化するかということがまじめに考えられるのであります。労働者の首切りや、あるいは労働強化、そういうことはいたさなくても済むような合理化が真の合理化でありますので、私どもも真剣にこの問題と取り組んでまいるつもりであります。  また、住宅問題についてのお話がありましたが、これも先ほど来、もうすでに説明をいたしましたので、他の質問者に対しての答弁で、これも御了承いただきたいと思いますが、私どもは、一世帯一住宅、これをモットーにいたしまして、ぜひとも住宅を安く提供するように最善の努力をいたします。同時に、持ち家——勤労階級の方々が住宅を所有する、こういう方向への協力もいたすつもりでおりますし、また、宅地造成等につきましても、宅地の問題も並行してこれを考えていくつもりでございます。どうかこの辺も、あまりかたくなに考えられないで、もっと事態を正当適正に見ていただきたいと思います。  農業問題についてのお話でありましたが、農業や中小企業生産性が低いということ、この格差を上げること、これが政府の今日取り組んでいる問題でもありますし、また、この格差をなくする、その努力をしない限りにおいて、経済安定成長は期せられないのであります。そういう意味で、積極的に近代化等をはかってまいります。これも、言われるような考え方で、非難するだけではいけませんし、また、私は、現在の農村、農民のあり方、あるいは中小企業の業者のあり方などを見ましたときに、これらの方々がほんとうに救われるには、これは共産党の理論で救われるだろうか、これは絶対に救われないと、私はかように信じておりますので、自由経済のもとにおいて繁栄を来たすように最善の努力をしているのであります。真剣に取り組んでいるのであります。この点も十分御理解をいただきたい。  最後の問題は、私がかねてから申しておりますように、経済開発に相応した社会開発をするのだ、これが私の考え方であります。経済開発に力を入れる、これは同時に、住みよい社会をつくるのでありますから、これに相応した社会開発をする、こういうことで御了承いただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  31. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 林塩君。    〔林塩君登壇拍手
  32. 林塩

    ○林塩君 私は、質問の要点を医療対策にしぼって、政府の御見解伺いたいと存じます。  佐藤総理は、常に社会開発の構想を強調され、今回の施政方針演説の中でも、社会開発に関する施策を強力に推進すると述べられております。特に疾病と貧乏は追放すると強調されております。ところで、社会開発の概念の意味するところは、経済成長の成果がひとしく国民生活の向上と福祉の増進に直結するということでございます。しかるに、社会開発の名のもとにいろいろの項目が列挙されておりますが、健康の保持増進がその中の重点項目となっておらないことは、いささか遺憾に思うところであります。私は、健康の保持増進こそは、福祉向上の基盤となる最も重要なものであると思うのでございます。そこで、健康を保持増進するためには何が大切かと申しますと、それはまず医療であろうと思います。でございますから、医療は社会開発一つの大きな柱であると言ってよいと存じます。  ところで、近年における社会の進展、医学の進歩に伴いまして、医療のあり方もまた変化してまいりました。すなわち、医療の領域は、もはや単なる疾病に対する治療のみにとどまらず、健康の保持増進から、さらに更生医療を中心としたリハビリテーションまでに拡大され、医療の概念は治療から予防へと拡充されてまいりました。したがいまして、医療の推進は、社会開発の趣旨に合致するばかりでなく、日本国憲法第二十五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」との規定に基づく、国に課せられた重要な任務であると言わなければなりません。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、治療方面の医療についてであります。現在の医療行政は、保険財政に大幅な赤字をかかえながら、しかも一方では、診療報酬が適正を欠いておりますために、医療の形そのものがゆがめられている現状であります。現行の保険制度の方式では乱診乱療の弊におちいりやすく、そのために治療が不確実となり、薬剤の過剰消費が助長され、その結果、傷病者の薬剤への過信あるいは不信を招き、医療そのものが間違った方向をたどりつつある様相を呈しております。事実、国立、公立の病院においても、人々が買物かごをさげて病院へ薬をもらいに行くといったような傾向さえ生じておりまして、医療そのものに対して安易な考え方を抱かせる結果を招いております。医療費が年々に累増して、保険財政危機に直面しており、国民医療はまさに曲りかどに来ているといわれておりますが、医療のあり方がこの上ゆがんでいったのでは、生命と健康の上に直接その影響を受ける国民としては、まことに迷惑しごくな話でございます。緊急な対策が必要だと思いますが、政府としてはこれに対してどのような構想を用意されておりましょうか。現在の矛盾に満ちた診療報酬については抜本的な改正が必要であると思われますが、これについての政府の御用意のほどをお伺いいたします。総理並びに厚生大臣の御答弁をお願い申し上げます。  次に、予防的医療についてお尋ねいたしたいと存じます。前段でも申し述べましたように、今日の医療の進歩は、その領域を健康の増進からさらに更生医療にまで拡大いたしておりますのでございますが、このような先進国の医療の現状にかんがみまして、わが国もこの方面への施策を一そう推進することが望まれる次第でございます。そこで、いま主要諸国における治療と予防の割合を、社会保障給付費の事項別構成の一つのデータからあげてみますと、健康水準の高いスウェーデンでは、疾病及び出産、すなわち治療部門が一六・九であるのに対しまして、公共保健サービス、すなわち予防部門が二六・三、これが英国では、前者が八・一、後者が四一・七であります。これに対しまして、わが国では、治療部門が六二・七であるのに対し、予防が七・二で、スウェーデンや英国に比べて数字が逆転をしており、両者の格差はきわめて大きいと言わなければなりません。これらの数字によって見ましても、わが国の医療施策の重点が従来治療のための医療に置かれてきたことは明白であります。もとより、このような傾向は、疾病の治療が生命と健康の維持にとって不可欠なものであり、同時にまた、疾病は貧困の最大の原因であることからいたしましても、貧困からのがれるためにも、また貧困へ転落することを防ぐためにも、まず何よりも治療部門を充実させることが必要であったことは、私もこれを否定するものではございません。当然やむを得なかった施策であったと存じます。しかしながら、今日の時点におきましては、もはや医療は治療を主としてのみとどまるべきではなく、医療概念の拡大に伴って、健康の増進、さらに更生医療方面の充実を積極的に推進すべき段階であると考えます。  過日、私はアフリカに参りました際、ナイジェリア、ガーナ両国を訪れまして、かの地の医療行政についてつぶさに見学をいたしましたが、結論的に言えますことは、これらの新興国では医療施設の充実に非常な力を入れているということでございます。特に予防方策を強力に推進しようとしていて、新たに設立した医科大学や看護大学では、予防医学に重点を置いた教育を熱心に行なっているのには、まことに驚きました。ナイジェリアで保健大臣に会いましたとき、大臣は、「予防は治療より安い、この国の政府の方針として予防医療を積極的に推進する」と言っておられたのには、まことに敬服いたしました。  そこで私は、総理並びに厚生大臣にお伺いしたいと存じます。政府は、今後医療行政の重点を予防医療方面にも置かれる御所存でございましょうか。もし、そのようにお考えでございましたならば、どうか、その構想を明らかにしていただきたいと存じます。  第三に、医療関係者の問題についてお尋ねいたします。医療は国民福祉にとってきわめて重要な分野であり、この分野を改善向上させていく上に最も必要なものは、医療専門職業者であります。医療専門職が医療問題を改善する上に重要な存在であることは、いまさら論ずるまでもないことでございます。人間の生命と健康を守る医療、その医療を受け持つ医療専門職業者の実際的活動がなくては、医療の向上は期すべくもなく、したがって、国民福祉の向上はなく、社会開発の進展はあり得ないと信ずるのでございます。しかしながら、今日の社会では、医療関係者は、専門職としてその重要な仕事にふさわしい社会的評価と地位と待遇を与えられておらないために、仕事に対する意欲を失わせ、そのため、質量両面にわたって医療陣営の弱体化を招来しております。ひいては、国民医療の前進をはばむ結果となっております。現に、保健所医師の充足率は五〇%にとどまり、助産婦、保健婦も全国的にその必要数を満たすことができません。看護婦の不足は病院の閉鎖を招く結果となっていることは、その現実を雄弁に物語るものでございます。そこで、真に国民医療を向上させて、社会開発の実をあげるためには、すべての医療関係者の待遇について十分な考慮を払い、職業にふさわしい社会的、経済的処遇を与えて、安んじてその業務に専念できるようにすべきであると思いますが、これについての厚生大臣の御見解と御構想を明らかにしていただきたいと存じます。  最後に、医療の改善と向上のために、予算の確保並びに施策の実施には、総理並びに関係大臣の格段の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  他の質問者にもお答えいたしましたように、経済開発を進めてまいりまして、これにふさわしい社会開発をする。かようなことを申しております。そういう意味で、社会開発の中に、社会保障その他の充実をはかってまいりますが、もちろん、医療問題もこれに含まれるのであります。ことに、御指摘になりましたように、国民の健康、この健康の増進、これは最も大事なことでありますから、そういう意味で、積極的に社会開発の問題として取り組むばかりでなく、具体的な医療問題として、これの解決に当たってまいりたい、かように思います。  詳細については厚生大臣からお聞き取りをいただきたいと思いますが、林君が、今日問題になっております点についてお触れになりましたのでありますから、それらについてもお答えいたしたいと思います。  医療報酬の適正化、これは、中央医療協議会でただいま検討されておるのだと思います。この関係の諸君が案をまとめ、そうして信頼のできる新医療報酬制度を確立することがこの際必要だと、かように私は思います。また、最近の医学、薬学の進歩等から見まして、両者が均衡のとれた方向で医療の万全を期すべきだと思いますが、一部におきまして、薬剤偏重だと、かような批判もあるようでありますのは、たいへん遺憾に思います。今後とも、医学、薬学のその進歩に応じた対策を立てるべきだ、かように思います。  また、予防の措置について、大事な点にお触れになりましたが、申すまでもなく、治療も大事だが、病気にならないようにする予防、これこそは先行する問題で、これはぜひとも力をいたさなければならないと思います。最近、母子保健の問題について、この予防がしばしば言われる。あるいはまた、ガンが最近の問題として取り上げられておりますが、早期発見あるいは予防、そういうような意味で、さらに経済開発が進めば、これらの点についても、それにふさわしい対策を立てることが私ども考え方でもあります。  医療関係者の待遇、ことに医師、看護婦等の待遇につきましては、今日までいろいろ論議もされておりますが、この上とも努力いたしまして、待遇の向上につとめていく考えでございます。  なお、他の点につきましては、厚生大臣からお聞きとりをいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣鈴木善幸君登壇拍手
  34. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 第一のお尋ねは、社会保険制度におきまする診療報酬体系の適正化の問題でございます。私どもは、国民の健康の保持増進をはかりますために、医療制度全体の整備拡充に特に意を用いてまいったのでありますが、その中におきまして、医療にあたっての診療報酬体系を適正化する、合理化するという問題は、今日の医療保険制度のもとにおきましては、きわめて重要な問題であるわけでございます。診療報酬体系の適正化につきましては、物と技術の分離、特に技術の尊重、それから、問題になります甲乙二表の調整等、いろいろ問題があるわけでございまして、ただいま中医協におきまして専門的な立場からいろいろ御検討を願っております。その御答申を待って具体的な措置を講じてまいりたいと考えておるのであります。  また、薬剤偏重、薬剤乱用という御指摘がございましたが、この点につきましては、先般、中央医療協議会の御答申を得まして、昭和三十五年度以来いろいろな事情で放置されておりました薬価基準の改定をいたしました。最近、薬剤の価格は、実勢は非常に安くなっておりますから、その薬の現在の値段と保険に収載されておりまする薬価とを一致させるように、四・五%の値下げをいたしておるのであります。従来は、この値幅がありますためにいろいろ弊害がございましたが、そういう点が是正されますから、薬の乱用等の点につきましても、大きな改善が見られるものと確信をいたしておるのであります。  第二の御質問は、予防医療に対して、もっと政府は力を入れるべきである、そして、疾病をなおすと、こういうことよりも、さらに積極的に国民の健康の保持増進をはかるべきであるという御趣旨は、私ども全く同感でございまして、疾病の発生や感染の防止、あるいは生活環境の整備、栄養の改善、こういう点につきまして、私どもはいろいろ施策を進めてまいっておるのであります。昭和四十一年度予算におきましても、御承知のように、ガン対策につきまして、思い切った措置を講ずることにいたしました。早期発見・早期治療対策を推進いたします。また、性病対策につきましても抜本的な措置を講ずることにいたしたいと考えております。また、各種疾病の予防ワクチンの開発あるいは増産、確保という面につきましても力を入れてまいる所存でございます。また、国民の体位の向上、体育の面につきましても、政府は、体力づくり国民会議というものをつくりまして、そうして体育の振興や遊び場の建設、特に河川敷等を青少年の運動場に確保する、こういう面につきましても特段の力を入れてまいる所存でございます。  第三のお尋ねは、病院あるいは保健所等で働いておられますところの看護職員の確保の問題、処遇改善の問題についてでございますが、この点につきましては、最近、御指摘のように、病床の数も非常にふえてきておる、また、医療も向上し、設備も近代化してくる、そういう関係から看護職員等が非常に不足を告げておりますことは、御指摘のとおりでございます。そのうちで、この処遇の改善ということが、何といっても大切でありますことは、いまお話のとおりでございますが、今度の四十一年度予算におきましては、保健所の医師につきましては七〇%、それから看護婦等につきましては三〇%の思い切った処遇の改善向上をはかることにいたしておりますし、今後、看護職員の給与改善等につきましては、引き続き努力をしていきたいと考えております。また、これらの養成——不足を充足いたしますための養成機関の設置等につきましても意を用いておりまして、文部省関係におきましては、高等学校の看護学科を、四十一年度におきましては四十校ふやすことにしていただいておりますし、厚生省自体といたしましても、養成所の増設その他につきまして、十分努力をいたしてまいる所存でございます。(拍手
  35. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ─────・─────
  36. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 日程第二、参議院予備金支出の件を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。議院運営委員長田中茂穂君。    〔田中茂穂君登壇拍手
  37. 田中茂穂

    ○田中茂穂君 ただいま議題となりました参議院予備金支出の件について御報告申し上げます。  今回御報告いたします予備金の支出額は、昭和三十九年度分二百八十四万円、昭和四十年度分四百三十二万円、合計七百十六万円であります。  この支出は、すべて在職中死亡された議員の遺族に対する弔慰金であります。すなわち、昭和三十九年度分につきましては、故議員小西英雄君及び原島宏治君、昭和四十年度分につきましては、故議員北口龍徳君及び田浦直蔵君の遺族に対し支給いたしました弔慰金であります。いずれも、そのつど議院運営委員会の承認を経て支出したものでありますが、ここに、国会予備金に関する法律第三条の規定によりまして、以上御報告申し上げますとともに、本院の承諾をお願いする次第でございます。(拍手
  38. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本件を問題に供します。本件は、委員長報告のとおり承諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって本件は承諾することに決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十八分散会