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政府委員(
新谷正夫君) お話の最高
裁判所の判決と申しますのは、
昭和四十年の六月三十日にたまたま時を同じくいたしまして二つの
事件につきまして最高
裁判所の大法廷の判決が示されております。内容的には違いますけれども、論旨は全く三つの
事件について同じことになっております。この最高
裁判所の判決は、全員一致の意見といたしまして、一応、非
訟事件の
手続によるもの、この
事件について申しますれば家庭
裁判所の審判
手続によって行なわれるものは
憲法八十二条の
裁判ではないから、したがって
憲法違反にはならないということを言っておるわけでございます。ただ、ここで関与されました
裁判官が八対七というふうに意見が分かれておりますけれども、この分かれております意見も、結論的には結局
同一に帰するわけでございます。非
訟事件手続であれば
憲法違反にはならないということにおいては、いずれの
裁判官の意見も
同一でございます。ただ、多数意見の判決
理由によりますと、非
訟事件によって判断されました事柄の前提となる
事件については、これは別に訴訟の道が残されているのであるからということも言っておりますけれども、しかし、少なくとも非
訟事件そのものは
憲法八十二条の問題とは違うということを申しております。それから少数意見といいますか七名の方の御意見も、これを二つに分けるか分けないか、つまり訴訟で争い得る前提問題というものと、
当該の審判の対象になっておる直接の
目的物と申しますかそういう
法律関係、これとを分けることが事実上できないんじゃないだろうかという御意見もありますし、また、
憲法八十二条そのものにつきましても、これは公開の法廷で行なうというふうになっておりますけれども、
事案によっては必ずしも公開の法廷でなくてもいい、
憲法八十二条そのものも例外を認めておるのではないかというふうなことも言っておられる方もあるわけでございます。いずれにいたしましても、この七名の方の御意見は、本件の
事案については、これはすべて性質上非
訟事件であるというふうに判断しておられるわけでございます。したがって、これは
憲法八十二条の問題にはならない、この点においてはもうすべての
裁判官の意見が一致しているわけであります。ただ、いまのお話のように、前提問題は別に争い得るか、あるいは、その前提問題もそれからこの審判の対象になりました事柄もこれはもう全く不可分のもので
同一視されるべきだ、したがって、もう家庭
裁判所の審判だけを
考えればいいのであって、別に訴訟によってその前提問題をどうするこうするということを
考える必要はないという意見と、二つに分かれておるわけでございます。
そこで、いずれにいたしましても、非
訟事件である限りにおきましては
憲法違反にならないということは変わりないといたしまして、それでは七名の方の
裁判官の御意見に従った場合、前提問題というふうな形で訴訟を提起された場合、これを訴訟の形で解決し得るかどうかということについては必ずしも触れておられないわけであります。ただ、非
訟事件の
裁判でございますので、これは判決そのものにも響いてございますが、形式的確定力はあるけれども
既判力はないということを言っておるわけでございます。したがって、もしもこの
事件において問題になっておりますような前提
事件について訴訟を提起された場合に、家庭
裁判所の審判によってこれが判断が示されているのであるから訴訟は許されないということには必ずしもならないのじゃないかと思うのでございます。家庭
裁判所の審判は、先ほども申し上げましたように、形成的な
裁判でございます。新しく
法律関係をそこに設定しようということでございまして、夫婦の同居義務の態様をそこで新しくきめるとか、あるいは婚姻費用の分担を新しくそこできめるということでございますので、
法律関係の形成でございます。そういった非
訟事件の問題と、それからもともとその基礎になっておりますところの婚姻そのものが有効か無効かというような問題、あるいは同居義務そのものがあるかないかというような問題は、これはまあ別問題になるわけでございます。それはそれとして、訴訟の対象として争い得るというふうに理解し得ると思うのでございます。
〔
委員長退席、理事木島義夫君着席〕