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1966-06-07 第51回国会 参議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月七日(火曜日)    午前十一時六分開会     —————————————    委員異動  六月七日     辞任         補欠選任      岡村文四郎君     井川 伊平君      柳岡 秋夫君     瀬谷 英行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 木島 義夫君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 山田 徹一君     委 員                 井川 伊平君                 後藤 義隆君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 田中 茂穂君                 中野 文門君                 中山 福藏君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 瀬谷 英行君                 野坂 参三君                 市川 房枝君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君    政府委員        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        警察庁警備局公        安第一課長    山本 鎮彦君        大蔵省証券局企        業財務課長    安井  誠君        大蔵省証券局証        券業務課課長補        佐        西村 正義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (米軍基地における米人犯罪及び刑事特別法に  関する件) ○商法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、柳岡秋夫君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、米軍基地における米人犯罪及び刑事特別法に関する件について調査を行ないます。稲葉君。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま委員長が読まれた件について質問するわけですが、それに関連して、過日の横須賀原潜が入ったときの行動、これに関連する警察当局の取り締まりの体制といいますか、そうした問題について聞きます。  その前に、ちょっと聞いておきたいことは、その日に何か中国から来た記者の人二人ですかが何か行動をとったからということで伝えられておるのですが、それは具体的に政府当局が確認しているのはどういうことなんですか、そこから始めたいと思います。
  5. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ただいまの御質問についてお答えいたしたいと思います。  その中共の記者といわれる方は、陳泊微、高地という二人の記者でございまして、この両名の六月一日における横敦賀行動について御説明したいと思いますが、六月一日午前九時三十五分ごろ、陳記者濃紺レインコートを着て黒の洋がさをさし、高話者は同じく濃紺レインコートを着て黒のベレー帽をかぶって、左腕に白地に赤文字で「Press」と書いた腕章をつけて、横須賀駅前臨海公園内の、原潜寄港阻止実行委員会中央現場本部小屋から、十五、六名の阻止闘争参加者と認められる男とともに出てきたところを警官二名が現認をいたしました。  そして、小屋から出てきた二人の記者は、ちょうどそのとき海上抗議船団九隻——この船に三十六名が乗っておりましたが、この船団臨海公園船着き場方面に進行してきたので、その状況を約五分間くらい見ておりました。九時四十分ごろ抗議船団船着き場に到着したので、陳記者の持っていた洋がさに高記者が入って、二人で船着き場まで行ってその状況を見ておりました。  九時四十五分ころ、海上デモ参加者船着き場で出迎えた抗議代表団約四十名が、船着き場上がり口の近くの広場に抗議団代表と思われる男を囲むようにして、半円形に集合いたしました。このとき、記者二名は、陳記者かさに入りながら、集合した抗議団後方中ほどに位置して、集会現場を見聞しておりました。間もなく抗議団の一人が演説を始めましたが、そのころは参集者が約百名ぐらいになったため、記者位置を移動していないようであったが、あとから来た者が記者後方に集まったので、両名の位置は同集会中央よりやや後方になっていました。  九時五十五分ごろ演説が終わって、代表者が音頭をとって、「原潜帰れ、アメリカ日本から出ていけ」と、こういうシュプレヒコールを行ないまして、それに参集者全員が一斉に唱和して、洋がさを持っていた者十数名は一斉に洋がさを差し上げ、洋がさを持っていない者は一斉にこぶしを上げました。このシュプレヒコール全員が三、四回繰り返し唱和いたしましたが、この両記者行動に注目していた警察官は、記者かさを差し上げた状況を確認いたしております。  両名の記者は、集会が終わったあと、この集団の中から上気した顔で出てきまして、臨海公園入り口付近抗議団の中にいた男と一緒になって、公園入り口前まで来て、その男と二、三分間話し合ったあと、あいさつして別れて、横須賀駅構内に入って、十時半の東京行きの電車に乗車して帰った、というのが当日における事実でございます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、中国から来た記者だからというので、警察官は絶えずその人の行動をマークして、くっついて、何といいますか、注視して歩いているわけですか。そうでなければ、そういう何分何分だとか、こまかいことがわかりっこないわけですね。そういうふうな行動をとっているんですか。
  7. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 別に注視を絶えずしているわけではありませんが、一応身辺保護という形で、まあこれまでもいろいろとケースがあったようなこともございまして、本人に迷惑を及ぼさない範囲内で保護の任に当たるという状況になっております。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、写真でもちゃんととって、何か確認されているんですか。このときの状況というものはその写真によってわかるんですか、いま言ったような、この人がかさを上げたとか上げないとかいうことが。
  9. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 当日は写真はとってございません。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察官は何人の人が現認したんですかな。
  11. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 二名でございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことを、あれですか、神奈川県警本部かあるいは警察庁か知りませんけれども、特段に取り上げてどこかへ報告したのですか。
  13. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 原潜のいろいろな状況報告の中に、一つ事案としてわれわれのほうに連絡が参っております。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務大臣にお伺いするんですけれども、いま、言ったようなことがかりに事実だとしたところで、一体それを特に取り上げなきゃならないほど大きな問題なんでしょうか。あるいは、別に取り上げないんだ、取り上げないんだけれども、ただ自然と取り上げられたようなかっこうになってしまったんで、政府当局としては別に取り上げるつもりはなかったんだと、こういうふうなことなんですか。
  15. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は、この問題は、報告で初めて聞いた程度でございまして、警察のほうも、いまお話のありましたように、ただ行ったんだというくらいに扱っておられた問題だと思います。したがいまして、この問題を大きく取り上げましてどうしようというつもりで意欲的に取り上げるということは考えておりません。いまもそのとおりでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結論として、まあ大局的に見て、この問題は、まあ問題と言うのもおかしいですが、別に問題でもないと思いますけれども、いま大臣が言われた最後のことで私どももこれ以上追及はいたしません。そのほうが問題の取り上げ方として妥当ではないかと、こう思いますので、この点について私はいまの関係質問はこれで打ち切ります。別のことに入ります。
  17. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いまのに関連して。  大臣最後的な答弁で尽きるということであればけっこうでありますけれども新聞発表になった限りでは、中国人記者一緒デモを行なってシュプレヒコールをやったと、このように報道されておると思います。そうなると、この新聞記事を見た人が抱く疑問は、日本政府中国人記者に対して終始監視をしておったと、こういうことになる。シュプレヒコールをやったということになると、声を出すことなんですよね。黙っていたのじゃシュプレヒコールにならない。声を出すということになると、隣にでもいないとこれはわからぬわけでしょう。それを、かさを持ち上げたのを見たというだけでシュプレヒコールに参加したという認定を下して発表するということは、少しこれは大げさに問題を扱い過ぎたというきらいがするわけです。かさを上げたと言いますけれども、雨が降っているときにみんなかさをさしている。一緒かさをさしている人間がみんなかさを持ち上げれば、一人だけかさを持ち上げなかったらどういうことになる。これはぐあいが悪いのじゃないですか。まわりに並んでいる人がかさを持ち上げるときに、自分もかさを持ち上げなければ、ぐあいが悪いことになる。そういうことでシュプレヒコールをやったということを認定したり、あるいは、抗議行動記者任務を越えて参画をしているというふうな報告をしたりするということは、これは何か特定の意図があるのではないかという疑問を持たれてもしかたがないと思う。だから、むしろ、この種の問題については、政府のほうで、何らこれは意欲的に取り上げる気はないし、シュプレヒコールをやったかどうかということも確認したわけじゃないと、あるいはまた写真もあるわけではないというようなことをはっきりさせるべきじゃないでしょうか。中国人記者が何か反論の声明を出したようなんでありますけれども、ああいう声明を出されると、それに対して日本政府が黙っているということになれば、これまたおかしなことになる。だから、その点、問題を提起したのは日本政府なんです。ああいう声明を出されたということも事実です。それに対する処置としては、大臣気持ちはわかったけれども政府としての処置は一体どのようにしてつけるつもりなのか、その点を伺いたいと思います。
  18. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府といたしましてこれを特別に取り上げて——問題が報告があったといいましても、これがそのとおりであるという報告であったわけではありませんし、いま警察庁からの報告のとおりでありますが、それはそれ以上取り上げないというだけでございます。そいつを、さらに取り上げて、こう言っておったが、こうだああだというのをいまさららしく私どもがまたこれに対して発表すると、これはかえって何だかどうも事を仰々しくするもので、かえっておかしくありませんでしょうか。
  19. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ、かえっておかしくないかというふうにおっしゃるならば、この問題が閣議報告をされたりあるいは新聞発表されたりしたという事実、つまり、シュプレヒコール中国人が参加したとか、あるいは抗議行動記者任務を逸脱した行動があったかのような発表をしたということは、これはもう事実と違うというふうに認められることなのかどうか。かさを持ち上げようと足を持ち上げようと、そんなことはたいしたことじゃないと思うんですが、なお閣議の問題とするほどの問題じゃないと私は思う。しかし、事実は、閣議の問題となり、新聞にも公に報道されたかのような印象を国民には与えておる。だから、あなたがそういうふうに言われるならば、政府として特別にこの問題を取り上げる気もないし新聞発表する気もない、それだけのことであるというふうに言われるなら言われるんでいいんですよ。それだけのことであるというふうにここでお認めになるならば、われわれも何もこれ以上申し上げるつもりはないんです。その点はどうですか。
  20. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は、初めからこの問題を、話を聞いたそのときに私はこの報告を受けてないくらいでございまから、ただ報告の中で何かあったんだろうというくらいに軽く聞いておったのでございます。まあその後の報告を見ましても、いまの程度でございますので、何かあれば、もし違反的な行動があれば、それは罰するというのはこれは当然のことであります。なければ、そんなものは問題にすべきものじゃないということでございます。問題にすべきものではない程度のものだと。まあこのくらいのことは、どういうことであったかわからないが、私どもが特別に取り上げて、これを罰するとか罰しないとか、あるいはわれわれのほうでどうするとかこうするとかというような仰々しい扱いにする問題にはしたくないというのが私の心持ちだということを申し上げておるわけでございます。
  21. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ、新聞発表になったのが、どういう機関を通じたか知らぬが、誇大に発表されただけで、それほどの問題として閣議で取り上げられたこともなければ、報告されたこともないし、問題になったこともない、政府としても問題にしていないと、こういうことになるわけですね。
  22. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 閣議の席で話の出たことは事実でございます。しかし、私どもがどんなに実は軽くこの問題を聞いておったかというと、私も関係者の閣僚になるわけでございますが、私、その日に帰って新聞記者会見したときに、その話を一つもしてないんです。あと新聞記者の諸君が、こういう話があったそうであるがと。しかし、それはまああったといえばあったんだが、まだぼくのところに報告がないくらいのものだから大した問題じゃないと思うんだが、それは君らに知らせなくて悪かったなというような、これぐらいに私はこの問題は思っておったわけでございます。まあそういうわけでございますから、新聞記者がどう扱ったか、それに対してまた政府が取り消すとか取り消さぬとかというのは少し仰々しいんじゃないかと、こういうふうに私は思っておるようなわけでございます。
  23. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は政府が取り消せとかなんとかということを言っているわけじゃない。その問題がいままで報道されたような内容のものであるとすれば、これは何とかしなきゃならぬということですが、大臣がそのことを全面的に否定をして、あれは勝手に新聞が誇張して書いたんだと、政府としては特に取り上げるほどの問題でもなかったし、報告事項でもなかった、話題になった程度であるけれども内容はいまの程度であるということならば、なるほどそれならばこれは特別に取り消すとかなんとかという必要はない。あなたが国会でもって言明されたことによってすべてが尽きると思うから、私は念を押しただけです。私が念を押したのは、ただ新聞に出た限りではそうじゃないですからね。これはあなたも御存じでしょう。新聞に出た限りではそうじゃない。だから私どもはここで聞いておるわけです。だから、これは、いまの大臣の言明の程度であって特に問題にするに足ることじゃないというふうにいまでも思っておられれば、それでいいことです。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 結論は、稲葉瀬谷両君質問にお答えいただいたので、まあ私もそれでけっこうだと思うのですけれども、ちょっと質疑の過程で多少気になる問題が出ておりますので、確かめておきたいと思います。  それは、二人の方が警察のほうから二人の記者行動を見ていたと、こうなっているんですが、この二人というのは、本庁からつけてあるわけですか、あるいは地元の神奈川県警なんですか。
  25. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) それは、警視庁警察官でございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 その方は、常時このお二人の方の、まあ身辺保護という立場のようですが、常時ついておられる方でしょうか。
  27. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 必ずしも常時ついているものではございません。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 私、常時と申し上げたのは、これは二十四時間ぶっ通しという意味ではなしに、これは、当然交代しなければいかぬわけでして、またほかに二人の班とかもう一つの班とかそういうふうなものもあることは当然わかるのですが、大体そういう任務をもってまああなたのほうでいえば身辺保護に当たっている、こういう理解でいいわけですね。
  29. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) もし身辺保護の必要がある場合には、そういう任務に当たっているわけでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、お二人の方は二人の記者を十分知っておるということになるわけですね。
  31. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そうでございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 それから、これは横須賀だけじゃなしに、ほかの場合でも、警察の方がついた場合に、やはりちゃんと前後の行動というものはメモなどをとってあるわけですね。
  33. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 身辺保護その他の必要がある場合には、そのような形で状況の視察をしている場合がございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 そういうメモなどは、ちゃんと上層部報告されるわけですか。
  35. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 上層部というわけでもございませんが、その上司に対して報告が出る場合がございます。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 それで、そういう身辺保護を、本人が、そんなことは断わると、こういうような場合はどうなるんでしょうか。
  37. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) しかし、断わられた場合でも、いろいろな情報から身辺保護の必要があるとわれわれが判定した場合は、断わられた場合でも、御本人の迷惑にならない範囲内で身辺保護の任に当たらせます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、本人承諾いかんにかかわらず、警察判断でつけるんだ、こういう理解でいいわけですね。
  39. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 必要な場合はそのようにいたします。これは警察の責務上当然だと思います。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 事前に、本人に、つきますからということは言うわけでしょうか。われわれがまあ国会等でいろいろな問題があった場合に、言うてきますね。
  41. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) それは、本人に言う場合もあります。言わない場合もございます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 それは本人のためにやるんですから、全部言うたほうがいいんじゃないですか。言わない場合もあるとおっしゃるんだが、そんな必要はないじゃないですか。
  43. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 言わない場合というのは、本人がその必要はないというふうに判断されてわれわれに言われた場合でも、やはりわれわれの判断からして非常に情報上危険であるというような場合に、独自で保護の任に当たるという意味でございます。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 いま記者の方は何名いらっしゃいますか。
  45. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 九名でございます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 その人たちが各種の取材活動で歩かれるわけですが、身辺保護のために必要な人として警視庁のほうでつけておられるのは合計何名になるんですか。
  47. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 十数名になります。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 取材活動は毎日あるわけでしょうが、そうすると、十数名が、まあ休む日がもちろん交代してあるでしょうが、常時半数ぐらいはやはりついて歩いているという結果になるわけでしょうか。
  49. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) まあその日その日によって違うわけでございまして、半数というふうにはっきり言えるかどうかわかりませんが、ある程度の数は常に保護の任に当たっていると言って差しつかえございません。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 これは、関連して一般的なことを聞いたわけですから、この程度にして、横須賀のことについて一つだけお聞きしておきますが、お二人の記者が立っておる所から何メートルぐらい離れてその二人の警察官が立っていたんですか。
  51. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その会場の——前後の時間帯によって違いますが、最後状況は、大体二十数メートルぐらい離れておったところでございます。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 その問題になっておる、かさを上げたとか上げぬとかいうときには、二十数メートル……。
  53. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) さようでございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 雨は降っていなかったんですか。——かさをさしておるんだから、降っておったわけですな。そうすると、それはあなた、二十数メートル離れていて、雨が降っている、もちろん声が聞こえるわけじゃないということは、これはもう状況からはっきりする。みんなのかさが上がると、人間の自然な気持ちとして多少動くものですね。みんな左へ揺れたら多少左へ揺れると、これは自然の反応ですよ。だから、そういうことを神奈川県警からあなたのほうへまず報告が来たんでしょうが、それを公安委員長報告をして、公安委員長から閣議報告をさせるというようなことをなさるというのは、ちょっと大げさだ。これは、あなた、石井法務大臣でも、軽う聞いておったと、言うてみれば。そういうことを本省の皆さんが自治大臣にさせるというのは、これはやっぱり多少行き過ぎだと思うんですがね。どうなんですか。
  55. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほどちょっと申し上げましたとおり、原潜寄港に伴ういろいろな警備事案、そういう問題についての報告の中のまあほんのちょっとした一部に、こういうこともありましたという意味合いで大臣に対して報告申し上げたわけでございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、この問題があの報告の主体ではなかったという理解でいいですね。
  57. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) さようでございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、まあその程度にいたしましよう。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの話は何か伝えられているのは、デモに参加して、ずっとデモに行進したというふうに一部伝えられていますね。その話はどこから出てきたのですか。
  60. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私は先ほど申し上げた事実だけを大臣のほうの報告の中に入れておいただけでございまして、稲葉委員の御質問のことは私は存じません。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのほうで軽く報告したのを、国家公安委員長が、あの人の性格かもわかりませんけれども、何だか誇大にあちらこちらしゃべったんですかね。あの人——あの人と言っちゃ悪いけれども、少しオーバーにしゃべるのじゃないかという気がするんですけれども、まあいいです。そういうふうなことはあなたのほうで報告してないんだと。そうすると、それと違ったような形のものが一部伝えられているような気がするものですから疑問に思っているわけですが、その点はここでかれこれ言っても始まらないでしょう。  そうすると、身辺保護ということだと、あれですか、かさを上げたの下げたのまで見てないと身辺保護できないわけですか。
  62. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) まあその状況を見ておったところ、そういうような現象があったというだけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この程度にしておきます。これは国家公安委員長が何か少しオーバーというか、ものごとを脚色して話したのかどうなのかわかりませんけれども、あなたのほうからもあの国家公安委員長にもう少し慎重にすべてものごとを取り扱うようによく言っておいてください。どうも少し軽いですからね。答えなくていいです。  話は本論に入りますが、横須賀におけるアメリカ人犯罪状況はいままでどういうふうになっていますか。これは、警察で立件したものと、立件したものを受けた検察庁での受理の問題とですね。アメリカ人でも、軍人もあり、軍属もあり、家族もあるわけですが、この一連の関係はどういうふうになっているのか、統計的な説明をある程度お願いしたいと思います。
  64. 津田實

    政府委員津田實君) 横須賀におけるということでありますが、横須賀におけるということで統計がとれておりませんので、横浜地方検察庁管内という前提で申し上げますと、昭和四十年におきましては、横浜地検管内におきましては六百四十九人が検察庁で受理されております。そのうち、起訴されたものが九十六人、起訴猶予のものが二百四十三人、そのほかでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題はこの中に相当あると思うんですがね、前段階で。これはきょう警察のほうにうまく連絡が私のほうでしてなかったのですが、この次でもいいと思いますが、送検した六百四十九人というもの以外に、警察で取り調べをしたというものが相当あるわけですよ。相当あって、検察庁へ送らないのがいっぱいあるわけです。これを絶対警察では発表しないわけですよ。これはこの送検したものの十倍以上にのぼるはずです。これをよく調べてくれませんか。これは警察ではなかなか明らかにしないわけです。事件があっても、それを送らないんです、警察で。アメリカ人の場合には、警察だけで押えちゃって、捨てちゃうものが非常に多いわけです。何件扱かったのか、そのうち何件検察庁へ送検したのか、これを明らかにしてもらいたい。きょうわからなければ、この次でいいです。それから東京の場合も同じです。立川とか府中の場合に、これはほとんど立件しないでしょう。立件しないで全部事件を不問にしちゃうでしょう。これは日本人の場合と極端に違うんです。警察のやり方が、これはどこの管轄ですか。刑事局の管轄ですか。きょうは連絡がとれておりませんから、あとで明らかにしてもらいたいと思います。  いまの刑事局長の言われた六百四十九人というものの内容をもっと明らかにしてもらいたいですね。軍人の場合、軍属の場合、家族の場合、あるいは犯罪別の内容もあると思うんですが、それから起訴というのは起訴の内容はどういう犯罪がどれくらいだということですれ。それからよく聞きとれなかったんですが、不起訴二百何人ですか、そのあとのものでその他というのは、よくわからないですが、どういうふうになっているんですか。
  66. 津田實

    政府委員津田實君) 起訴いたしました者が九十六人で、二百四十三人が起訴猶予であります。その他、嫌疑不十分等があるわけです。  それから具体的にどういう事件があってということは、実はこれは一々事件報告をとっておりませんので、そのこと自体はちょっとわからないのです。統計としてそれだけのものをとっておるということになっているわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公務員の犯罪などは、小さな犯罪でも事件報告をしているでしょう、一々。それから選挙違反だってやっているわけですよね。そういうようなことで、アメリカの軍人なり何なりが相当大きな事件を起こしておるのに、一々事件報告がなくてその内容がわからないなんて、そんなばかな話はないですよ。それは当然とるべきです。逆に日本人——あとで聞きますけれども、刑特法でやられた場合は、全部事件報告をしているのじゃないですか。それはおかしいんじゃないですか。
  68. 津田實

    政府委員津田實君) これは、事件そのものとしては、たとえば特異な事件という意味においての報告を受けているものはありますが、統計の内訳にはならないわけです。したがいまして、特異な事件がどうであったかということになれば、これは事件報告を全然とってないわけではありませんが、一般標準としてとられていないというわけであります。  あとの道路交通とか単純な暴行というものは、一々事件報告は来ておりませんので、それを統計に仕分けして内容ということはわかりません。  刑事特別法刑事特別法で特段の立法上の問題を考えまして、刑事特別法報告は受けておりますけれども、これもこまがいものは一々とっておりません。特異な事件だけとるということになっております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 六百四十九人が送検されて、九十六人の起訴という、その起訴率というのは極端に低いですね。普通の日本人の場合は、五割とか六割でしょう。あるいは、七割くらいまでいっているのじゃないですか。極端に起訴率が低いですね。これはどういうわけですか。
  70. 津田實

    政府委員津田實君) 駐留軍の事件は、非常に重大な事件も従来はありましたけれども、最近はほとんど少なくなってきております。そこで、大体は暴行であるとか簡単な傷害であるとかそういうようなこと、それから大多数のものは道路交通法違反という業務上過失傷害致死、こういうことになっております。そこで、現在、起訴率は、いま仰せのとおりの六百四十九人のうち九十六人、この一つの例からいいましても大体そういう率になっておりますけれども、そのほかの事件につきましては、非常に軽微な事件が多いから起訴猶予になるという問題と、もう一つは、その起こった原因が言語、風俗、習慣の違い等から起こる誤解等に基因しているという意味において起訴猶予にすべき事案というのがあります。さらに、この事件につきましては、アメリカ軍も裁判権を持っておりますので、日本側が裁判権を行使するよりもアメリカ側に裁判権を行使させるほうが刑事政策上有利である。すなわち、再犯の防止その他に適当であるというものは、日本側で起訴猶予にして、アメリカ側の裁判権を行使させるということもやっております。そういう関係から、いわば二重の裁判権を行使しておるというかっこうになっておりますので、日本人の場合と比べまして起訴率は違うことは当然であろうと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、アメリカの軍人なり軍属の犯罪ということについて、非常にかばった、ある意味において理解があり過ぎる意見ですよ。具体的に非常に問題があって違うところがたくさんあると思います。  では、日本人の事件の場合、通常の道路交通法なんかを入れた場合の起訴率はどれくらいになっておりますか。
  72. 津田實

    政府委員津田實君) 大体八〇%ぐらいだろうと思います、道交を入れますと。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 道交を入れてアメリカの場合はどの程度になるんですか。
  74. 津田實

    政府委員津田實君) 大体二〇%ぐらいであります。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、道交を入れて、日本人の場合は八〇%、あるいは八〇%をもっとこえるかもしれませんが、これは統計のとり方として、片一方は道交を入れてアメリカ人の起訴率は二〇%なんていうことは、そんなばかなことは絶対あり得ないわけです。ぼくは絶対承服できないんですが、あなたの言われた起訴猶予二百四十三があって、そのうち、米軍裁判権のほうに回したほうがいいというので米軍に回したというのはどのくらいあるんですか。
  76. 津田實

    政府委員津田實君) これは回すという行動はとれません。日本側から犯罪通告をしておりますから、アメリカ側にこの分はそちらにやらせる——やらせるといいますか、やるべきだということを言っておるわけであります。それに対して向こうが処理をいたしますと報告を受けておる、こういうことになっておるわけであります。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、起訴猶予のものを通告しているんでしょう、アメリカのほうに。じゃ、アメリカはその起訴猶予のものを受けてどういうふうにしたのかということはわからないんですか。
  78. 津田實

    政府委員津田實君) それは、統計的にはいま数字はわかっておりません。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 統計的にわかってないということじゃなくて、アメリカから報告がないんでしょう。
  80. 津田實

    政府委員津田實君) 報告はあります。いろいろ兵隊が転属したりいたしますから、非常におくれて来るものもありますが、報告はあります。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、二百四十三名の起訴猶予をアメリカのほうでどういうふうに裁判したのかということは、報告があるんだから、横浜地検に命すればわかるわけでしょう。何件ぐらい報告があって、その結果どうなったか報告があれば、これはわかるでしょう。
  82. 津田實

    政府委員津田實君) それは調査をすればわかります。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは調査をして、これは二週間もあればわかりますから、調査をして報告をしてくれませんか。六百四十九名の内容別のものは全部わかるわけです。起訴の九十六人の内容はわかるわけです。かわらないはずはないわけです。そのために地検のほうでたくさん人数がいるわけですから、そういうものを全部明らかにしてもらいたいし、それから問題になってくるのは、九十六人プラス二百四十三人、それ以外のものについては、またあなたのほうでことばを濁して、こっちから聞くまで言わないわけでしょう。こっちから聞いてもなかなか言わないと思うんですが、嫌疑なしというのはどの程度あって、その他とは一体何ですか。
  84. 津田實

    政府委員津田實君) これは詳細わかっておりますが、大して多くなかったので申し上げなかったのでありますが、犯罪の嫌疑なし三十二、百三十九件は第一次裁判権なし、それからあと二十五は少年の事件、その他十五。その他の内訳はわかっておりません。——ちょっとさらに補充いたしますが、そのほかに、他の検察庁に移送したものが八十七、家庭裁判所へ送致したものが八、こういう数字で、合計六百四十五になりますが、したがいまして、あとは未済である、こういうことであります。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 第一次裁判権なしというのはどういうわけですか。第一次裁判権のないものを送検しておるのはおかしいんじゃないですか。
  86. 津田實

    政府委員津田實君) これは公務執行中の犯罪については第一次裁判権はありませんから、それでも警察が捜査したものは送致してきておりますから、これは裁判権なしという処分を検察庁でするわけであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 第一次裁判権なしということは、公務執行中のものですわね。これははっきりしていますね。それを一々やっぱり送るんですか。送っていくのが公正なやり方だという見方がありますから、送るのはいいと思いますけれども、一々送ってきて、それじゃそこですぐはねちゃうわけですか。はねたあとどうするんですか、これは現実に。
  88. 津田實

    政府委員津田實君) 第一次裁判権のないものは日本側にとって刑事訴訟法上裁判権なしということになるわけですから、これはただ法律的判断検察官がするという意味において必要であるということになるわけですが、結局、刑事訴訟法によれば警察官は捜査したものは送致しなければならないのですから、それによってやっておるわけであります。第一次裁判権なきものにつきましては、こちら側としてはそういう事実があったということだけを通知しているだけでありまして、向こう側がどういう処置をしたということについては、これは特段にあと報告は、そのつど問題のやつは受けておりますが、それ以外は受けていないと思います。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、調べておる間に、ほかの部隊に転属になるとか、それから帰っちゃうのも相当あるんじゃないですか。
  90. 津田實

    政府委員津田實君) それはありません。それは厳重に処置をしておりまして、帰した場合は引き返すようにいたしておりますから、それはありません。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ他の地検へ移送が八十七件もあるというのは、この具体的内容は何ですか。
  92. 津田實

    政府委員津田實君) これは個別に調べてみないとわかりませんが、たとえば東京居住の者が横浜管内で事件を起こしたというものについては東京地検に移送する、こういうことになっておる、おそらくそういうことだろうと思います。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 内容をよく調べてくれませんか。調べ中に帰っちゃうんじゃないですか。帰ったり、どこかほかに行ゃちゃったり、国外へ出ちゃったり——国外に出た場合に他の地検へ移送というのもおかしいけれども、ほかへ行っちゃうという例、アメリカに帰っちゃうのも相当あるんじゃないですか。それはないという保障ができているのですか、何か。
  94. 津田實

    政府委員津田實君) 絶対ありません。これは、アメリカへ帰したものは、やはり引き返させておりますから、そういう者はない。誤って帰すことはありますけれども、その者について必要があれば何どきでも日本側に引き渡すなり日本側に連行してきておりますから、さようなことは絶対ありません。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 身柄が勾留されておる場合にはないでしょうが、ほとんど在宅でしょう。あとで、六百四十九人の送検が、勾留逮捕されて来たのか、在宅で来たのか、この内容を調べてもらいますけれども、非常にこれは在宅が多いわけですよね。在宅の事件で日本検察庁に被疑者としてかかっておる段階においてはアメリカ側は外国へ帰さないとか自分の国に帰さないという特別の取りきめでもあるわけですか。
  96. 津田實

    政府委員津田實君) これは、地位協定の趣旨がそういうことになっておりますから、絶対にそれは守っております。日本側もそういうことをうやむやにすることを認めてはおりません。それから、なお、内容につきましては、これはかりに逐一横浜なら横浜について一年間のを調べてみないと正確にわかりませんし、大体のこともわかりかねます。  なお、日本側で勾留しておる数につきましては、これはもちろん調査すればわかりますが、このうちで、日本側で勾留をしないで、アメリカの基地内の禁足処分に付しておって、何どきでも日本側に出頭させるというような処分のものもあります。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 検察庁に行ってみれば、高検なりあるいは本省なりに対する統計というのは、こまかい統計をとっていますね。これはどういう統計を高検なり本省に要求しておるかということは、あなたのほうで刑事局関係だけでも何があるか、一覧表で出していただければわかりますが、そういうような実にこまかい統計をとっていながら、なぜ米軍の軍人の犯罪というか、そういうような問題については統計はとってないのですか。統計をとっておれば、横浜の地検に六百四十九人送検を受けたものの犯罪がどういう内容のものであるか、去年のことですから、その結果がどうなったのか、全部統計ができていなければならぬわけでしょう。絶対発表したがらないでしょう。隠そう隠そうとしているんじゃないですか。どういう統計を刑事局関係検察庁から求めていますか。これは、法規に従って求めるものと、法規に従わないけれども任意に求めているものと、いろいろあるでしょうけれども、一覧表をあとで出してもらいたいと思うんですがね。実にこまかいものまで統計をとっておりますよ。刑事局だけでなくて、法務省全体なり、高検全体なりね。総務部もあるし、刑事部もあるし、公安部もあるんですから、そういう方向でどういう統計をとって出しているのか。そういうこまかい統計をとっていながら、米軍の軍人なり軍属の犯罪となると、全く統計をとらない。実に遺憾ですよ、こういうやり方は。
  98. 津田實

    政府委員津田實君) これは日本側に裁判権をとりまして平和条約発効後数年間は詳細なものをとっておりましたが、だんだんその必要がないので、検察庁の事務を簡素化する、とにかく検察庁の人員はそんなにふえませんから、統計事務ばかりに検察庁の事務をやらせるわけにまいりませんので、統計は非常に簡素化いたしております。ただし、お手元等にお配りしてある法務省の統計、つまり検察統計というのは、長年とらないと統計的な判断ができないものですから、これはかなりこまかいのをとっておりまするけれども、かような個別の事件統計、そのときどきに必要な統計につきましては、これはできるだけ簡素化をしておるわけでありまして、御必要であれば特定の年度について具体的に調査するよりしかたがないというふうに私どもは考えております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題を分けて、四十年度にそれでは高検なりあるいは法務省なりへ横浜地検からいろいろな統計が出ているでしょう。たとえば、高検では、総務部もあるし刑事部もあり公安部もあり公判部もある、そういういろいろな部があるし、法務省の中にもあるでしょうけれども、そこへどういう種類の統計を出しておるか、これをあとで調べてくれませんか。実にこまかい統計をとっておりますよ。こういうポイントの問題になると、ぼかしてしまって出さないようにして発表していないわけです。警察発表しない。警察は、きょう長官なり刑事局長が来ていないので、きょう来ておる方の管轄ではないのであれですけれども警察で一番のポイントは、署であげてきて検察庁へ送らない事件がある、アメリカの軍人なり軍属の場合には。何件アメリカのそういう事件があったかということを絶対に発表しないでしょう。送検する部分はほんの一部分なんです。特定のたとえば横須賀警察、あるいは立川の警察、府中の警察、ここでアメリカの軍人なり軍属がどういう事件を犯したとして一応扱った事件が何件ぐらいある、そのうち送検したものは何件ぐらいだと、これを一週間ぐらいに統計をとって発表してくれませんか。委員会へ出してください。これはきょうの公安一課長のかかりじゃないかもしれませんけれども、よく帰って刑事局長に話して出してもらいたいと思うんです。それはどうですか。
  100. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) いまのお話、刑事局のほうへ伝えます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 伝えるのはあれですけれども、何とかして隠そう隠そうとして出さないんじゃないですか。それでは困るから、現実に明らかにしてもらいたいと思います。  それから横浜地検で扱った起訴猶予の二百四十三件ですね、これは本来日本人がやったならば当然公判へ回って実刑を食うようなものが起訴猶予になっているというものが非常に多いと思うんですよ。強盗傷人が相当あるでしょう。強盗傷人にもいろいろありますよ、内容が。バーへ入って品物を注文した、非常に高いからといっておこって、ボーイさんかあるいはホステスですか、ああいう人をぶんなぐってけがをさしたというと、強盗傷人になるわけですわね。日本の法律では懲役七年です、最低。それが起訴猶予になっているのが非常に多いんですよ。バーで高いからといってけんかしてぶんなぐったぐらいだからということで起訴猶予にしておるのもあるかもしれませんが、日本人だったら懲役七年食っちゃう。酌量減軽したって三年半ですから、絶対執行猶予にならぬという事件ですね。それがほとんどと言っていいくらい起訴猶予になっている。暴行だとか傷害だとかというのは非常に軽いようなことを言われるわけですね、いまの話を聞くと。日本人だったら、暴行傷害だったら、暴力行為で徹底的に処罰するのだといってガンガンやられるわけです。アメリカ人がやると、みんな起訴猶予になっちゃう。みんなというのは語弊があるかもしれないが、みんな起訴猶予になっている。それは言語の違いだとか習慣の違いとかなんとかいって起訴猶予になってしまう。そんなばかな話はない。日本は天国だと言っているんでしょう、アメリカ人に言わせれば。日本警察なり検察庁は天国だ、こんな寛大なところはないと言っている。こんなばかな話はないですね。だから、起訴猶予の二百四十三件の内容を、きょうは無理だと思うから、この次までに一週間くらいまでの間にしっかりその内容を明らかにしてもらいたいと思います。これは相当強盗傷人なんか多いでしょう。
  102. 津田實

    政府委員津田實君) 日本人の間でも、いろいろバーにおける争いの場合、一々強盗傷人等でやっているという例はありませんですから、その点は一般標準と少しも違わない。ただ、起訴猶予にする場合に、アメリカ側において裁判をしたりするということによって、日本人に本来起訴猶予にすべき率よりもそういうような率が高くなる、こういうことがあり得るという前提で、起訴猶予たる事実についての見方は全然変えておりません。  なお、ただいま、日本は天国だとおっしゃいましたけれども、フランスにおきます駐留軍に対する起訴猶予率は八五%でございまして、日本は八〇%でございますから、ですから、その面から申しましても、必ずしも世界的に日本が天国であるということは私は言えないと思います。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あるいは珍問であって、それは珍問に対する珍答があったのかもしれませんが、日本人の起訴率というのは八〇%ですよ。いいですか。アメリカ人の起訴率は二〇%ですよ。引っくり返っているんですよ。そんなばかなことはあり得ないのじゃないかと私は思うんです。こんなにまでしてアメリカ人のごきげんをとらなきゃならないかということですよ。そんなことを言われたって、法務省へそんなしりを持って来られたって困るんだ、それは日本の政治全体の問題だからと言われるかもわかりませんが、フランスの起訴率が十何%で日本より低いからといってフランスのほうが天国だと、そんなことを聞いているのじゃないんですがね。それは質問のしかたによって答えが変わってきたのですから、多くのことは言いませんけれども、とにかくぼくは納得できないのは、アメリカ人犯罪の起訴率というのは極端に低いですよ。スピード違反とかなんとかいったって、道交法違反で起訴猶予になっているのが相当あるんですか。スピード違反をやって起訴猶予になり、業務上過失傷害であっても起訴猶予になるものは相当あるのじゃないですか。
  104. 津田實

    政府委員津田實君) それは起訴猶予になるものもあります。日本人でも起訴猶予になるものもありますから、それは具体的な事件を見なければ適当かどうかは申し上げにくいわけであります。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本人では、スピード違反をやって起訴猶予になるのはありますか。——ないとは言いませんよ。いわゆる通例の場合のそういうのがありますか。業務上過失傷害をやって起訴猶予になるのはどのくらいあるか。罰金刑も含めて起訴として換算した場合に、スピード違反をやって起訴猶予になるなんというのはないでしょう。警察官がスピード違反やったものは、業務の執行でスピード違反をやって起訴猶予になる場合はあるかもしれませんが、一般の日本人はそういうことはないんです。おかしいんですよ、やり方全体が、とにかく、アメリカ人全体に対して軽過ぎますよ。日本人ばかり重くしている。納得できないですよ、これは。だから具体的な資料を出せと言うと、出さない、統計がない、ないと言って。ないことはないんです。聞いていけばあるんだから。私整理しますから、横浜地検へ行って、四十年度の送検の六百四十九人の具体的な内容犯罪内容、それから起訴別の内容、起訴猶予の内容、そういうのを全部明らかにしてもらいたい。それから起訴されたものがどういう裁判の結果を受けたか、これは最高裁の管轄かもしれませんが、これも明らかにしてもらいたい。それから、警察が六百四十九人しか送検してないけれども、事件として扱ったものはおそらく五千人以上あるんです、もっとあるかもわかりません。送ったのはきわめて少ししか送ってないということですね。そこに問題点があるわけですから、こういう統計ははっきり出してもらってぼくは実態を糾明しなければいかぬと思います。長くかかるわけじゃありませんから、一週間ぐらいの間に出してくれませんか。法務省、どうですか。
  106. 津田實

    政府委員津田實君) できるだけ努力いたしますが、個々の事件に当たらないとおそらく出ないと思いますので、横浜地検のほうにそれを調査するようにいたしますが、できるだけ早くいたします。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十四日にもう一ぺん質問しますから、十四日にできる範囲内で最大限の努力をして出してください。  それから、前に関連して、法務省なり高検が横浜地検なら横浜地検からとっている諸種の統計ですね。どういう統計がある、どういう統計があるという、こういうのを全部出してください。統計の内容じゃないですよ、こういう統計だというのでいいです。  逆に今度は聞きますけれども、日本人刑事特別法にひっかかった場合は、全国でどのくらいあるんですか。
  108. 津田實

    政府委員津田實君) 昭和三十九年におきましては七十七人であります。検察庁が受理したものは七十七人。昭和三十八年は五十三人、大体そういう数であります。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 このこまかい内訳はわかっているでしょう。
  110. 津田實

    政府委員津田實君) これは、他の事件等の併合罪の関係に立っているものもありますので、そこは非常にとりにくいわけですが、大体におきましては、そのほとんどが刑事特別法第二条違反、つまり施設、区域侵入あるいは不退という分でありまして、四十年度ではたしか一人だけ軍用物損壊というのがありますが、これは少年でありまして、おそらく何か基地内のそのようなものを損壊したというのではないかと思っております。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その検察庁で受理されたものの内容別に、その処理はどういうふうになっているのですか。
  112. 津田實

    政府委員津田實君) 先ほど申しました、昭和三十九年におきましては七十七人を受理しております。前年度から受理しておるものと合計いたしますと八十人になります、昭和三十九年度の処理対象は。それに対しまして、公判請求したものが一人、略式命令が十人、合計十一人であります。起訴猶予が四十人、それから嫌疑不十分が六人、それから移送が八人、家庭裁判所へ送致が十五人、大体そういう数であります。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 起訴猶予は四十人あるということですね。約半分あるわけですね。これは、見方によっては、問題にもならない事件を事件として立件しているということじゃないですか。ちょっと施設に入ったとか何かのことで、あるいは遊びに行ったとか、何かしらぬけれども、そういうものもみんな刑特法にひっかけて立件しているのじゃないですか。だから起訴猶予も多いのじゃないですか、逆に言って。起訴猶予というのは内容はどういうものですか。
  114. 津田實

    政府委員津田實君) この起訴猶予の内容はわかっておりません。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのほうで大体想像できるでしょう。刑特法の二条ならば、施設の立ち入りでしょう。大体どの程度のものが起訴猶予になったのか、大体想像できるのじゃないですか。
  116. 津田實

    政府委員津田實君) これは、最近のは具体的にどういうのがあって起訴猶予になっているというのかわかりませんが、おそらく演習地等の軽微なものではないかというふうに想像されるわけであります。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 刑特法の場合には——刑特法はいろいろな法律上の議論はありますよ。現在これはできて公布されているわけですから、その議論をここでしようとは思いませんが、まるで事件にもならないような、ちょっと施設に足を踏み入れたとか、遊びに行ってちょっと入ったとか、そのようなものまでみんな立件しているのじゃないか。だから起訴猶予が半分ぐらいあるんですよ。逆に、アメリカ人の場合には、日本犯罪で強盗傷人に当たるようなものまでも立件しないのが多いんですよ。この実態というものを警察検察庁も隠そう隠そうとしているわけです。東大の潮見さんが、ある警察へ行って内容を聞いたわけですよ。絶対警察の名前だけは出してくれるなといって——立川と府中ですが、警察署長が、かんべんしてくれ、名前だけは出してくれるなといって出したものがあるんです。その数字なんか見ますと、非常に多い。立件したのが実に少ないんです。こういう行き方をとっておるんです。こんなふうにアメリカの軍人なんかに対して卑屈になる必要はないと思う。だから、アメリカ人から、日本は天国だなんていわれる。まあフランスのほうが天国かもしれない。天国の次だから何の天国だかしりませんがね。とにかく、日本アメリカ人犯罪については、実に優遇しているという声が聞かれるわけです。  いずれにいたしましても、いま育った統計をいただいて——ぼくの考えている基本点はおわかり願えたと、こう思うわけです。その統計の中で、アメリカ人の道交法違反、業務上過失致死傷害、これについて起訴猶予にしているものが相当あります。この起訴猶予の内容について、あとで統計の中で説明してもらいたいわけです。  一応私はこの関係は終わりまして、あとから原潜寄港地における警察官行動を中心としたものは瀬谷さんのほうから聞いていただくということにいたします。
  118. 大森創造

    ○大森創造君 一言関連して御質問しますが、いま稲葉さんと刑事局長の問答で、いまから統計の数字が出てくるだろうと思いますけれども、差別していることは間違いないように私は受け取れる。相当確信を持って稲葉さんやっておられる。差別の根拠というのは法的にどういうことなのか、もしくは政治的配慮があるのか、端的にお伺いしたい。
  119. 津田實

    政府委員津田實君) 差というと、実際的に結論的に数字的なパーセンテージに差があるということは、先ほど来申し上げました。しかしながら、検察庁におきまして起訴するか不起訴にするかという問題は、個々の事件について違うわけでありますから、個々の事件についてどうかという問題に結局帰着するわけであります。しかしながら、全体としてパーセンテージが低いのではないかということに対しても、やはり一応の問題点であることは当然であります。そこで、私どもがなぜこれが起訴率が低いかという問題を考えます場合には、先ほども申し上げましたように、その犯罪自体がすでにもう限られた性質のものなんですね。詐欺とか横領とか、そのほか日本人にありがちの知能犯というものはほとんどありません。大体が窃盗かあるいは暴行傷害という程度なんです。これは日本人の窃盗、暴行傷害についての起訴猶予率というようなものを考えますと、これは起訴率というものは全体の数から見れば必ずしも高くない。そういうような問題を考えなければならぬのと、それから、これにつきましてはアメリカ側においても第二次裁判権を行使して裁判をし得る、裁判をしておるという事態があります。そこで、日本側において起訴猶予にしてアメリカ側の裁判にまかせるほうが本人の再犯防止のためあるいは刑事政策上適当であるという場合には、そういうふうにしておる。そういう意味におきまして、対象となる裁判が二つあるわけですから、その意味で適当に本人のためになり、一般的刑事政策上最も適切だと思われる処理をしておる、こういう意味において日本人の場合と違ってくる、こういうことでありまして、先ほどフランスの例を申し上げましたが、フランスにおきましても八五%の起訴猶予率だということは、やはりそういうことを加味して考えられておる世界的の傾向なんです。日本だけがアメリカの軍人に対して寛大にしているということではございません。世界的な傾向というものは、それはやはりそのこととして見なければならないわけです。日本人と米軍人との差ということも考えなければならぬけれども、同時に、世界的な水準ということも考えなければならぬということでありまして、私どもは何もアメリカ軍人に対して特に遠慮をしているとか、そういうことは全然考えておりませんし、そういう態度は全然とっておりません。
  120. 大森創造

    ○大森創造君 あとで資料ができてからひとつ私勉強さしていただきます。
  121. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  122. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。瀬谷君。
  123. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 先般横須賀に原子力潜水艦が入港して、その入港に反対するデモが相当あったわけであります。あの当時の警察官の動員数はどのくらい動員をされて、主としてどういうことを目的として警官を派遣をし、また、この間において逮捕あるいはいろいろなトラブルがあったとすればどういうことがあったのか、その対象となるものはどんなものであったのか、御報告をいただきたいと思います。——じゃ、地方行政のほうでこまかい問題を相当やっておるそうでありますけれども、しからば、ここで答えられることとして、どういう目的で、何を取り締まりの対象にして警官のほうは出ておるのか、その点についてお答えを願いたいと思うのですが……
  124. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  125. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。
  126. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いまの問題、地方行政でやっておって、こまかい問題について該当の当事者がおらないというような話なのでありますが、じゃ稲葉委員質問に関連をして私も聞いてみたいのですが、先般の横須賀にいろいろ問題がありましたが、私が行って直接見聞をしたことからこの際大臣にお伺いしてみたいと思うのですが、表通りで学生がデモをやっておる。そこで、表通りを交通の規制をして警官がつじつじに立っておって、一般の通行者は、たとえばデモの終わった人間でも何でも、表通りを歩かせないようにする。地理のわからない者は、しかたがないから裏通りに入る。裏通りはバーやキャバレーがたくさん並んでおるわけです。   〔委員長退席、理事木島義夫君着席〕 至るところアメリカの水兵がいっぱい入っておって、憲兵のような者がおって、なるべく表へ出さないように、中へ逆に押し込めるようにしているわけです。しかも、私が直接見たのは、バーのわきで水兵が三人並んで立ち小便をしておる。ヨーロッパ人は立ち小便はしないものだというふうに聞いておりましたが、「何とかの連れ小便」というのは、これは日本だけじゃないということを私ははしなくも見聞をしたわけなんですが、そういう状態があっても、警官のほうは全然もう知らん顔をしている。もっとも、英語で小便するなということを何て言っていいかわからないから黙っていたのかもしれませんが、そういう状態があった。  しかも、その種の店では、女がもう大っぴらに軍人をキャッチをしておる。売春についてはまさに野放しの状態であるという印象を受けたわけなんです。もつれながら出てきた者が、ある所に消えていく。われわれにしろうとが見ただけでも、まさに売春の無法地帯である、こういう印象を受けたわけなんです。それで、現地で聞くところによると、あの種の女は店のそれこそ一夜にして数万の金を巻き上げる、こういう話も聞いたわけなんです。デモやそういった大衆運動の取り締まりにあれだけの警察力を動員をできるにもかかわらず、あの売春の極端な現状に対して全然ほおかぶりをしておるという印象を受けたわけなんですが、一体、その点は、まあ安保条約の義理があるから大目に見ておくということなのか、外貨獲得ということに役に立つんだからしらばくれているということなのか、どうも解せない点があるわけです。基地における売春問題に対して、取り締まりははたしてどの程度に行なわれておるのか、その取り締まりの強化という必要はないのかどうか、そういう問題について大臣にお伺いしたいと思います。
  127. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は、横須賀がどういう状態か一向存じませんので、いまの点についてはお答えはできません。警察の方がおられますけれども、そのほうでお答え願いたいと思うのであります。方針といたしましては、私がいつも申し上げておりますとおりでございます。法によって守られるべきものは必ず守らなくちゃならぬという方向は私がいつも示しておるとおりでございます。それが守られない場合があれば、はなはだ遺憾でございますので、それはみんな力を合わして守っていくという方向にみんな絶えず話し合いをしておるわけでございます。あなたがどういうところをごらんになったか知りませんけれども、そういう疑いがあるということであれば、十分気をつけなければならぬ問題でありますし、十分問題として私ども研究をいたしたいと思っております。
  128. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ただいまお話がございましたが、私担当でありませんので、いずれ機会をあらためて担当の課長から御説明をいたしたいと思います。
  129. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 当日は、自民党の議員の方も横須賀へどういう目的だか存じませんけれども相当数来ておられたわけです。それで、裏町に意識的に入られたことはないと思いますけれども、いやおうなしに私どももそういう店の前を通らざるを得なくなる。そうすると、しろうとが見たってまさに売春の無法地帯であるということを感ぜざるを得ないんですよ。だから、専門の取り締まりの当事者がああいう事実を私は知らぬことはないと思うんです。知っておってもやむを得ないということで大目に見ておくものなのか、今後取り締まりを強化しなければならないと考えておるのかどうか、このくらいのことはやはり明らかにできることじゃないかと思うのですね、むずかしいこまかい問題じゃないですから。こういう問題については、やはりはっきりと方針を示していただいたほうがいいのじゃないかという気がするんです。まあわれわれ、ねらいは、必ずしも売春の現状を視察するということがねらいじゃなかったわけです。はしなくもそういう状態を見聞をいたしましたから、この際お伺いをしたわけなんです。これは横須賀だけではないと思います。佐世保とか、あるいは空軍基地のあるところでも、大同小異じゃないかと思いますが、日本人としてそういう現状を目撃をいたしますと、はなはだどうも不愉快な感じを持つわけですよ。それはいかに金のためとはいいながら、「降るアメリカに袖はぬらさじ」なんという風情は全然ないわけですからね。この点の取り締まりの強化ということがお約束できるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  130. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 横須賀だけの問題ではないと思います。ほうぼうにあるのではないかと思っておるのであります。この問題は、非常に問題になっておる点が各地にあるようでございます。とくとひとつ関係の向き向きと相談をいたしまして、法がある以上は、法が守られなければならぬということは当然のことでありますから、よく相談をいたしたいと思っております。
  131. 大森創造

    ○大森創造君 ちょっと関連。私も実はそういう場面を見たんです、瀬谷さんと同じような場面を。それはスヌーク号が入港する前のことなんですよ。私はそういう場面を見ておるんです。そうすると、ここで、今後の対策の問題もございますから、刑事局長でもどなたでもけっこうですからお答えいただきたいと思うことは、なぜそういうことが現実に行なわれておるかということですね。心理的なあるいは客観的な条件の変化だとか、あるいはアメリカ日本との関係とか、あるいは第一線の警察官がどういう心情でおるのか、これはやっぱり科学的にひとつお述べいただきたいと思うのです。対策は今後ありますよ。しかし、現状は、いま瀬谷さんのおっしゃるとおりに、あの原潜が入ってくる前から私はそのことを見ておるんですよ。その場合に、なぜそういうことが行なわれておるのか。法務省で指示しておるのか。まさか指示はしないと思うけれども、手心を加えるとか、どういうところにあるのか。安保条約か協定か、それを受けている第一線の警察官アメリカに対して一目置くような妙なコンプレックスが昔から伝統的にあるのかどうか。そういうものをひとつ分析して、法務省なりあるいは警察のほうで、なぜそういう事態であるのかということを列挙していただいて、それに対する対策をお立ていただきたいと思います。
  132. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) よく承っておきます。
  133. 大森創造

    ○大森創造君 それはどういうことなんです、法務大臣。あなたの感じでもいいから、いや、これは法務当局と米軍の間にこういう約束があるんだとか、どういうふうに御解釈ですか。第一線の警官がみずからの判断で手心を加えておるのか。あるいは、政治的にさっきの米軍に対して立件の割合が少ないとかということとも必然的に私関連するような気がするんですよ。それをどう分析されておられるのか、どなたかお答えいただきたい。
  134. 津田實

    政府委員津田實君) この問題は、事売春に関する限りにおきましては、これはいま全国的な問題でございます。で、しばしば当委員会その他の委員会で売春問題としてお取り上げになっておるわけでございますが、売春のつまり防止——まあことしは十年ということでありまして、事件そのものは減っておりまするけれども、売春の防止そのものは、私どもといたしましては、これは暴力団とのつながりその他風紀上の問題、衛生上の問題からいっても非常に問題なんで、これは事あることにその売春の取り締まりについて厳重にやるように全国的に指示いたしておるわけです。ただ、一番問題は、非常にこれはあげにくい問題である、検挙しにくい問題であるということは、これは一番考えなければならぬ問題でございまして、要するに、隠密の間に行なわれる問題、それから相手側を特定しなければならぬ問題、いろいろな問題で具体的に公判においてたえ得る証拠を獲得するということは非常に困難で、御承知のように単純な売春は処罰されていないというようなこともございまして、やはり売春防止法の五条にいうような要件に当てはまらない限り売春婦自体すらつかまえることができないという事態、これは検挙あるいは公訴維持上、訴訟法上、あるいは捜査技術上、非常に問題があるということをしばしば申し上げてきたわけであります。その点は、私は、横須賀であろうが、佐世保であろうが、ほかのそういう関係のない土地であっても、全然変わりはないと思うのです。ただ、まあ私はこの問題についていま調査をいたしたわけではございませんけれども、大体、基地というところには、そういう種類の婦人が集まりやすいということになる。それはまあそういうことによっていろいろと自分の金銭欲といいますか、そういうものを満たされるという意味において集まりやすいという状態は出てまいりますが、これは、かりにその上陸する軍人が少なくなれば、それは散ってしまってまたほかの日本人地区に行くというような事態を繰り返しているのが通常であります。そこに集まることをいかにして防止するかということになりますと、これはいろいろ政策的な手を打つということは別問題といたしまして、取り締まりの面から申しますと、取り締まりを厳重にする以外には方法はないということになるわけであります。そこで、取り締まりを厳重にする必要があることは当然のことなんで、その意味において取り締まりを必要とするということについてはだれも異存は私はないと思います。現地の警察署、あるいはその他におきましても、その点は十分心得ておるわけですが、具体的にそれでは検挙をいたして処罰するまで持っていける事件がどれだけあるかということになると、なかなかむずかしい問題だということに帰着するだろうと思うので、私の印象といたしましては、そういう印象を持っております。
  135. 大森創造

    ○大森創造君 もう一つ。いまの刑事局長のお答えも私わかりますよ、一般論としては。なかなか捕捉しがたいということもわかるんですけれども、私の言っているのはそうでない。日本国じゅう歩いてみて、横須賀あたりであんなことが許されていいかということです。私も原潜寄港する前からわかっておるんです。第一線の警官が手心を加えていることははっきりしているのです、これは。そういうものについていこじになって、米軍ならあげるという必要もございませんけれども、よそではあんなことは絶対にあり得ないことが白昼公然と行なわれているということについて、そいつを取り締まらないということは、私は警官の姿勢としていかがなものかと思うのです。そういうものをパチンとチェックする必要があるだろうと思うのですが、今度はそれについていかがですか。
  136. 津田實

    政府委員津田實君) これは米国軍人が相手になるということはあり得るわけですが、米国軍人が犯罪の対象になる場合は、御承知のとおり、売春防止法でおそらくないと思うのです。したがいまして、女を検挙するという問題に帰着するわけです。そこで、女を検挙することがどの程度のむずかしさがあるかということは、ただいま申し上げたとおりであります。さらにその相手方が外国人であるということになると、これはなかなか証拠獲得の面で非常に困難だということが出てきます。そういう意味におきまして、何か具体的に事件とすることは困難であるというふうに考えているのですが、故意に横須賀警察当局が大目に見たり慫慂したりしているということはないと思います。これは全国的に厳重に取り締まるべきものであるという建前論については、おそらく私は異論はないと思います。具体的な検挙のむずかしさということが、この問題にやはりかかってくるのではないかと思いますが、これは主として警察当局の問題でありまして、私どもはある程度の推測を交えて申し上げたわけですから、確実に当たっているとは申し上げられないわけですが、大体私どもはそういうふうに判断をしております。
  137. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ、最後にお聞きしますけれども、いまのお答えを聞いていると、結局は売春の取り締まりそのものは非常に技術上むずかしいということになっちゃうわけです。ひとり横須賀に限らずということになるわけです。ところが、私どもの見聞した範囲では、特にちょっとひどいわけですね。日本人だってそれは売春行為がないわけじゃない。今日、法律はあっても、その種の問題は全国至るところに存在すると思う。ただ、日本人の場合は、あまりおおっぴらじゃないわけですよ。陰にこもっているわけですよね。ところが、横須賀あたりのは、まことにどうも派手で、しろうとが初めて行ったって、これはこれはと思うような状態であるわけです。ですから、ああいうはっきりした状態すら取り締まれないということになると、売春の取り締まりなんていうことは事実上法律なんかつくったって意味がないということになってしまう。そうなれば、法そのものから改めていかなければ、取り締まりをする場合にはどうしたらいいかという根本的な問題にさかのぼって検討をしてみないことには問題はもう解決の方法がないということになっちゃうと思うんですね。それでは、根本策として一体どうしたらよろしいか。このまま無策でああいう醜を天下にさらすような状態をそのまま黙認をするというようなことが続けられていいものかどうか、根本策としていかにすべきかというんですね、これを考えなければいかんと思うんですね。その点についてどうしたらよろしいというふうにお考えになっているか。現状をまさか全然御存じないことはないと思うんですよ。中国記者かさを持ち上げたことまでわかっているのだから。そういう点からいうと、こういう大きな点についての根本的な考え方というものをこの際やはり打ち出していただいたほうがいいのではないかと思いますので、その点をお伺いしたいと思います。
  138. 津田實

    政府委員津田實君) これはしばしば当委員会でも御議論になりましたが、私どもの考えといたしましては、現在の売春防止法そのものが必ずしも法そのものとして欠陥があるというふうには考えられないのです。もっとも、それは、単純売春を処罰すべきだとか、あるいは相手方を処罰すべきだとか、そういう思想を盛り込むかどうかということには、問題はございます。しかしながら、そういうことをいたしますと、今度はかえって検挙がむずかしくなるという問題に移っていくというような点を私どもは心配しているわけです。そこで、私どもの現段階においての考え方は、しばしば申し上げておりますが、検挙技術それから立証技術についてもっとくふうをすべきである。その点については私どもも十分検討をいたして研究をしているわけですが、そういう点が一番問題になるということだと私どもは考えている次第でございまして、そういう意味の研究を怠っているわけではございません。少なくとも、現在、管理売春等を検挙するには、非常に多数の警察官の努力が必要で、それによってわずか一件の事件があげられるというような結果になるわけですね。要するに、管理売春の場合、出入りしたお客をまずきめなければならぬ、女をきめなければならぬ、それから女と管理者との関係をきめなければならぬというような、いろいろのむずかしい証拠の把握の問題があるので、その辺をもっと能率的にできないものかということを十分検討いたしているのが現段階で、それが私どものいまの対策であります。
  139. 木島義夫

    ○理事(木島義夫君) それでは、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      —————・—————    午後一時五十二分開会   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  140. 山田徹一

    ○理事(山田徹一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  商法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この前から資料として要求しておいた損害保険協会から民事局に対して照会があったその資料が出ているわけですけれども、これは、法務省のほうで実体をよく御存じなのが、あるいは大蔵省が御存じなのか、どちらかだと思いますが、「損害保険会社では」「株主への交付前に発行した株券の物的損害につき、填補責任をおっております」と、こういうことになっておりますね。だから、一たん株券が発行されて交付され株券になった後のものはこれは別問題ですが、この趣旨はそういう趣旨ではなくて、交付時説をとっているから、それとの関連で聞いているように思うんですが、損害保険の会社は株主へ交付する前にまだ株券となっておらないものについてその物的損害を填補する責任を負っておるとういふうになっているのですが、具体的にはどういうような形で保険をつけているわけですか。で、保険料の定めなんかどうやっているのですか。この前ちょっとお聞きしたわけですけれども……。
  142. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 郵送中の株券につきまして発行会社が保険契約者になりまして保険に付するという取り扱いが実際に行なわれておるようでございますが、昭和三十六年の日本損害保険協会からの照会の趣旨は、先ほど稲葉委員がお話しのような趣旨において、交付時説というものをいまだに支持しておるかどうかということを聞いてまいったものと思うわけでございます。  現実の問題といたしましてこの保険契約がどのようになされているかという点でございますが、これは法務省のほうではちょっとはっきりした点がわかりかねるのでございますが、いろいろ議論されておるところによりましても、いろいろとこれが解釈されておるようでございます。やはり、問題は、株券の交付前でございますと株券として有効に成立していないのではないか、そうすれば、その間にその株券について付される保険契約というものはどういう意味を持つかというところに問題の中心があるわけでございます。聞くところによりますと、この株券の保険契約というものは、大量に株券を発行いたします際に、たとえば輸送機関の手元に一括してそれがとどまっているというふうな場合に、火事によってそれが全部焼けてしまうというふうな大きな事故をねらっているようにもうかがえるわけでございますけれども、必ずしもその目的とするところが明確でない面もあるわけでございます。  もちろん、保険契約者は発行会社になっておりまして、その保険金の額も、業界の約款があるようでございますが、それによりますと、五億円を限度にいたしており、その範囲内で保険契約を締結しておるということになっております。  それから被保険者でございますが、これが必ずしも明確でございません。場合によれば被保険者が定まっておるというふうに見ている向きもありますし、また、被保険者は保険契約者と同一であるというふうに見ている向きもあるわけでございます。これは個々の保険契約について検討しなければわからない問題であろうと思うわけでございます。  そこで、一体この保険契約というものが何を被保険者利益として契約が締結されるかというところに問題が帰着してまいるわけでございます。もしも株券が郵送中であるといえども株券として有効に成立しておるとすれば、株券そのものの滅失に対する損害を補てんするということが、破局裁判所の判決の示しますように交付時説をとりますと、その間においては、株券ではなくて、単なる紙片に過ぎない。それならばなぜそれについて保険をかけるかということになるわけでございます。われわれの理解するところでは、これは一種の責任保険と見ざるを得ない。また、そういうふうに見ておる学者もあるわけでございまして、輸送中の株券が事故によって滅失することによって生ずる発行会社あるいは株主の損害賠償請求権を担保する、こういう趣旨の保険契約と見るべきであるという考えががあるわけであります。株券が株券として有効に成立していないということになりますれば、やはりそういう意味でその保険契約を理解するのが最も合理的な解釈であろうというふうにただいまのところ考えておるわけでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 五億円を限度ととするというその五億円というのは、何ですか。よくわからないのですが、一つの会社がですか。五億円を限度とするということは、損害保険協会全体として五億円限度ということですか。何ですか、この五億円というのは。
  144. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一つの事故につきまして五億円を限度ということにしておるようでございます。また、現実にその損害が発生いたしました場合に、保険契約者であります発行会社のほうに現実にその保険金を給付しているということになっておるようでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あれですね、もし事故があった場合に、発行会社は、五億円もらって、そしてまたあらためて株券を発行すればいいわけでしょう。そうすると、非常なばく大な利益を得ちゃうわけですね。
  146. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは最高限度を五億円と、こうきめておるわけでございますので、個々のケースによりまして金額の少ない場合もむろんございます。したがいまして、株券の発行、さらにそれに続きます株券の輸送、この度合いによりましてそれぞれの保険金がきまることはこれは当然でございます。ただ、保険業界としては、最高五億円というところを一応の基準としておるというふうに承知いたしております。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、私の聞いているのは、それじゃ事故があったほうが発行会社はもうかるんじゃないですか。保険金が入ってくるわけでしょう。保険金が入ってきて、そして結局またあらためて株券を発行すればいいわけでしょう。
  148. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 保険金は契約によってきまりますけれども、損害賠償請求権が発生いたしまして、現実にその損害が幾らということがきまりますと、その限度で支払えばよろしいわけでございますので、保険契約者である発行会社がぬれ手でアワのように五億円そのまままるもうけにするということは起きないわけでございます。現実の損害を補てんするわけであります。
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現実の損害というのは、何なんですか。紙代じゃないですか、印刷代も入るけれども
  150. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一般の物的損害の場合でございますと、株券を喪失したことによって生ずる損害ということになるわけでございますけれども、それは交付時説をとります以上は考えられないわけでございます。そういたしますと、まあ考えられますのは、株券が輸送の途中で喪失することによって、株主の手元にわたる時期に若干ズレが出てまいります。早く株券を取得しておれば、それを株券として有効に利用できたにもかかわらず、途中の事故がありましたために、その株主が株券を利用できなくなった、その間にたとえば株価の変動でもございますと、株主としては当然それを高く売却できるものをできなかったという損害も起きるわけでございます。極端な場合には、株価がゼロになるということ、これは理屈の問題でございますが、そういう場合も考えられるわけでございまして、それが輸送中の事故によって生じたということになりますと、その責任の帰属がどこにあるかという問題になっていくわけであります。そこで、発行会社のほうに対してそれを賠償責任を認めるということになりますと、株主のほうから発行会社に対してその請求をするわけであります。それを填補いたしますれば、発行会社がその限度において保険によって救済される、こういうことになろうと思うわけであります。  さらに、それに加えまして、新しく株券を発行いたしますいろいろの手数料がかかります。また、経費もかかります。そういったものもまたそれに新しく含まれるというふうに考えられるわけであります。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その保険契約は、何を目的として保険契約したというふうに保険契約書に書いてあるわけですか。何々会社発行の株券というものを被保険利益としているというか、それを対象として保険契約を結ぶというふうに保険契約書には書いてあるでしょう。株券という形で書いてあるわけでしょう。そこはどうなんですか。
  152. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株券の輸送中の事故によって生ずる損害を担保する、こういうことになっております。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、株券じゃないわけでしょう、まだ。株券ではないんだけれども、株券という形で契約を結ぶんですか。それが、作成時説をとると、理論的にはどういう説明になるんですか。変わってくるんですか、説明が。
  154. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 発行時説をとりますと、株券を調製いたしましたときにそれが有効な株券となる、こういうことになりますので、これが何びとの手にありましょうとも株券として有効に認められるということになるわけであります。したがいまして、もしもその説に従いますと、株主の手に渡ります前におきましても、これは株券として有効なものでございますので、それが滅失した場合には、その株券の価格に相当する損害が出てくる、こういうことになると思います。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 保険料はどういうふうにして計算しておるわけですか。
  156. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは、個々の案件によってそれぞれ保険会社と保険契約者との間で取りきめるわけでございます。具体的にこういう場合には幾らという取りきめがあるかどうか、ちょっと私どもの手元ではその点はわかりませんが、一般の損害保険の場合と同じように個々のケースによってこれがきまるということはわかります。
  157. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、額面に従って、それからそれに対して保険料率をかけて保険料をきめておるのですか、額面の合計……。
  158. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 保険金なりあるいは保険料をきめます基準は、その株券の時価を基準にしておるようでございます。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 交付持説によると、交付を受けたときに株券として効力を発効するわけですからね。そうすると、その交付を受けてから株券の効力を発生するわけですから、交付がおくれたからといって株券の転売利益というようなものが損害賠償の要求になり得るわけですか。交付を受けてはじめて株券になるわけですからね。交付を受けない前に、いつ幾日に交付を受けると仮定して、そしてそのときに非常に値上がりしたんだという形の転売利益みたいなものを理論上考慮できるわけですか。
  160. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株券は交付してございませんでも、払い込みが完了いたしますと、株主たる地位を取得いたします。したがいまして、あとはその株券という株主の地位を表象する紙片が到達するかどうかという問題になるわけでございます。そこで、株券を交付いたしますのは、新株の発行の場合でございますと、払込期日後遅滞なく発行会社が交付しなければならないわけでございますので、通常の過程でございますれば、株主は遅滞なくその株券を入手してこれを転売その他の処分ができる立場にあるわけでございます。それが事故によりまして相当期間入手できなかったということになりますれば、当然その間の値下がりによる損害を受けたということになろうと思うわけでございます。これはもちろん発行会社の責任があるかないかということが前提でございますけれども、発行会社に損害賠償責任があるということになりますれば、当然株主としてはその損害の賠償請求権を所持するというふうに考えられると思います。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 新株の場合に新株引受請求権というような形で権利がはっきりしておるならそれでいいと思いますけれども、株主といったって、株券の交付によって株主になるというなら、その前の段階でその株券に対して新株引受請求権に類似したような何か権利が現実に発生しておるわけですか。
  162. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株主でございますれば、当然に株券を取得する権利がございます。したがいまして、発行会社に対しましては株券の交付請求権があるというふうに考えられるわけでございます。発行会社も払込期日後遅滞なく株券を株主に交付する責任があるわけでございますので、通常の過程でございますれば、払込期日が参りますと、遅滞なく株券が株主に渡るという手順になる筋合いのものでございます。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも、損害保険の関係は、理論的に言うのとそれから実際的な関係との間でズレがあって、何か問題点が十分に解決してないというふうな感じを受けるんですが、ちょっとよく納得できませんけれども、これは直接法務省関係というか商法の改正の問題とは離れますから、保険の問題になりますから、これはこの程度にしておきます。  株式の譲渡制限の問題について残っているわけですが、結局、総会荒らしとかあるいは会社の乗っ取りとかいうことを避ける目的が株式の譲渡制限にあるということは、これは言えるんだと思うんです、それが主目的であるかどうかは別として。会社が堅実な経営をして法規どおりの運営をしておれば、総会荒らしというようなことによって被害を受けるというようなことはあり得ないんじゃないですか。それを総会荒らしということをやけにこわがってきて、だから株式をそういう連中に与えることは困るというので譲渡制限するということは、何か本筋が逆になっているんじゃないかと、こう思いますが、総会荒らしということによって、善良な会社、きちんとちゃんと商法どおり健全な経営をしている会社が、何か被害を受けたりすることがあるわけですか。そんなことはないわけじゃないですか。
  164. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) この譲渡制限の規定を設けました趣旨は、前回にも申し上げましたように、会社の経営の安定をはかるというところにあるわけであります。ことに中小規模の閉鎖的な会社の場合におきましては、株式が何ぴとに渡ってもいいというふうな譲渡の絶対自由を保障するたてまえのもとにおきましては、会社の乗っ取り等の危険にさらされておるわけでございますけれども、それを防止いたしますためにこの譲渡制限の規定を設けようというわけでございます。譲渡制限の規定がなければ総会荒らしに利用されるということも考えられるわけでありますが、この規定の趣旨そのものは、総会荒らしというよりは、むしろ他の資本によって支配されるということを防止するところにこの改正のねらいはあるわけでございます。  また、健全な会社について総会荒らしというものがはたしてあり得るかという御質問でございますけれども、株主が何ぴとでもいいということになりますれば、あるいは何かちょっとした理由によって株主総会で一言吐いてみようというふうな株主も出てくるわけでございまして、特別に総会荒らしのために株式を譲渡するとかなんとかいうことじゃなくても、総会荒らしというものはこれは一般の会社について起こり得る事柄でございます。譲渡制限をしましてもしなくても、総会荒らしという問題はこれは必ずしもなくなるものではあるまいと、かように考えておるわけであります。
  165. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 会社の乗っ取りというふうなことを懸念することになれば、こういう形のものはこれとして、また別に外国資本が日本に入ってきて外国資本が日本の産業なり会社を支配するということを避けなきゃならぬわけですね。外資が入ってきて株式を譲り受けることについての制限というのは、外資に関する法律もありますけれども、その関係はどういうふうになっているんですか。実際の運用はどうなのか、これは大蔵省のほうが詳しいんじゃないかと思いますが、そこまで質問するということを言っておかなかったから、すぐおわかりにならないかもしれませんが、これはどうなんですか、現実の姿としては。
  166. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 外資に関する法律のほうは、これは大蔵省のほうでお答えがあると思いますが、商法の関係では、現在のところそれを防止する道はございません、商法自体の規定からは。今回のような譲渡制限の規定が設けられますと、これによってそういった外資によって支配されるということも商法の立場からも防止できるようになろうと思います。
  167. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは直接大蔵省の証券局の管轄になるかどうかわかりませんが、外資が入ってきて日本の産業を支配するというようなことを商法なり何なりで妨げようとするのは、実際にはどういうふうに行われているわけですか。それはわかりませんか。——あなたの管轄ですか。
  168. 安井誠

    説明員(安井誠君) 私、証券局の企業財務課長でございますが、外資法関係の問題は国際金融局のほうが担当しておると思います。
  169. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その株式の譲渡制限にからんで問題となっておるのは、小規模な会社と大規模な会社と分けたらいいんじゃないかと、こういう議論がありますね。上場関係は一億円以上で分けているわけですか。それを基準として一応分けて、公共的色彩なり大経営のものについては商法をしっかり守らせるようにする、小規模のものについては有限会社的なものにするとか、あるいは、商法の規定が現実に守られてないわけですからその点を別なものにするとか、いろいろなあれがあるわけですね。これは西ドイツではその点をはっきり分けるような立法があったわけですか。
  170. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) いま詳細なことはわかりませんが、たしか西ドイツにおきましては十万マルク以上の会社につきましては株式会社の形態をとり得るわけでございますが、それ以下のものにつきましては株式会社になれないというふうになっておるようでございます、一般的に。ただいまの問題は、現在の株式会社法というものが規模の大小を問わずすべてに一律に適用されることによって生ずる弊害を除くべきではないかという御意見でございまして、確かにこれはごもっともな御意見でございます。実際に詳細な株式会社法の規定を一から十まで順守するということはなかなかむずかしい場合もあり得るわけでございまして、そういった面で今後の株式会社法の株式会社になり得る会社というものの規模はどの程度のものが相当かということは十分検討に値する問題でございます。過去におきましてもこの点はしばしば問題になったわけでございまして、法制審議会におきましても何回もこの問題は取り上げられたわけでございます。しかしながら、一億円以上の会社と申しましても、中には同族的な会社も、ございますし、また、一億円を切れる資本金の会社ということになりましても株式会社の形態をとって十分にやっていける会社もあろうと思うわけであります。小規模の会社をすべて法律の規定によって有限会社その他の会社に組織を変えてしまうということもこれはなかなか重大な問題でございまして、現在の株式会社の実態に即して考えました場合に、そう容易に資本金のみによって株式会社法を適用するかしないかということを画然ときめるということも困難な問題であります。   〔理事山田徹一君退席、委員長着席〕 いろいろこれは問題のあるところでございますので、私どもといたしましても今後の株式会社法というものをどう考えるべきかということにつきまして重要な一つのポインとして検討はいたしてみたいと思っております。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式の譲渡制限というけれども、株券を発行していない会社が相当あるわけでしょう。これは商法では遅滞なく発行することになっておるのだけれども、現実には発行してないわけですね。それで、株券を発行しなくて、これにかえて株式を登録するという制度をとれという考え方もあるわけですか。
  172. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株券を発行しないで、そのかわりに株式であるということを別に登録しておくということも一つの考え方としてはあり得るわけでございます。ただ、現実問題といたしまして小さな株式会社におきましては株券を発行していないものがあるやに聞いておるわけでございますが、これはやはり株式会社である以上は、商法の規定を順守して株券を発行すべき筋合いのものでございます。いろいろ実際問題としてその辺が適正に行なわれていないというものもありますことは、これは非常に残念なことでございますけれども、実態は実態といたしまして、株式会社である以上は株券をやはり発行しなければならないというたてまえになっていることは申し上げるまでもないことであります。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 取締役会の承認に関連するわけですが、これは、ある株未満は取締役会の承認が必要なくて、ある株以上は取締役会の承認が必要だとか、こういう形に分けることができるのですか。定款で一律に株式譲渡制限ということじゃなくて、ある株数以下は譲渡は自由だと、ある株数以上は譲渡は困るとか、いろんな分け方がありますね、そういうふうな分け方もいいんですか。
  174. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一定の株数以上持っているものについては取締役会の承認を要すると、しかし、それ以下のものであれば、同じ株式であっても承認を要らないというふうにいたしますことは、若干問題があると思います。ただいま私どもの考えておりますところでは、平等の扱いになりませんので、そういう定款の定めはできないのではないだろうかというふうに考えております。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ある非常に大きな会社があって、一定株数以下の譲渡は取締役会の承認を得ると、こういう形のきめ方はいけないわけですか。ということは、たとえば総会荒らしを防ぐために、非常に少ない株の譲渡の場合には取締役会の承認を得るんだと、それ以上の株の場合にはいいというふうな規定のしかたは、これはできないのですか。
  176. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株式譲渡を認めるかどうかということが、今回の改正によりまして取締役会の自由になし得るようにいたしたわけであります。ただ、定款で一定の株数以下のものは譲渡を制限するというふうにいたしますことは、これはできないと思います。ただ、その会社の方針としまして一定の株数以下のものは認めないことにするとかということを内部的にきめることは、これは差しつかえないと思うのでございますけれども、それはあくまでも取締役会が承認するかしないかという形においてきめられるべき問題でございまして、定款の規定でそのような定めをすることはできないものというふうに考えておるわけであります。
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 小さな会社の場合には、あれですか、株主総会の決議ですね、それは、現在のような商法の規定はやっぱり残しておかれるのですか。そうでなくて、非常に決議を簡易化していこうと、たとえば書面によってそれを認めてもいいじゃないかと、これは二百三十九条の特例になるわけですか、そういうようなものを認めようという動きもあるのですか。現実的には株主総会をやってないんでしょう。だから、現実にやってないんなら、現実にマッチするように、やはり一部の会社なら会社の会社法を改正するという行き方も考えられていいんじゃないかとい思うのですがね。
  178. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 今後の問題になりますが、確かに仰せのような御意見も考えられるわけでございます。たとえば書面によって総会の決議にかわるものを認めていくとかいうふうなことも、これは不可能じゃないと思うわけでございますけれども、はたしてそれをどの程度のものは認めてよろしいか、先ほどの問題にこれは返ってまいるわけでございます。また、それを株式会社として維持するのがいいかどうかというふうな問題にもなるわけでございまして、非常にむずかしい問題でございますので、今後の研究課題にさしていただきたいと思います。
  179. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 貸借対照表の公告の義務というのが、これは二百八十三条の二項ですか、これはあらゆる会社にあるわけですか。現実にはどのような公告がこれに対してされているのですか。これは大蔵省がお詳しいのですか。
  180. 安井誠

    説明員(安井誠君) 義務についてですか。
  181. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実際にどういうふうに行なわれているかですね。
  182. 安井誠

    説明員(安井誠君) 私どものほうでも直接全部の株式会社について調べたわけではございませんが、先日、官報または時事に関する事項を掲載した日刊紙というものをごく大ざっぱに調べてみたのですが、二千ないし三千の会社が公告をしているのじゃないかというふうに考えております。
  183. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 全体の会社は幾つぐらいあるのですか。
  184. 安井誠

    説明員(安井誠君) 現在、株式会社数につきましては、私どもの統計はちょっと古いのでありますが、国税庁の法人統計——三、四年前ので、法人の種類別の統計をとっておりませんので、その推計をいたしますと、約四十万前後が株式会社ではないかというふうに考えております。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、貸借対照表を公告する義務があるというのは、これは債権者の保護のためが中心だと思いますが、さっぱりそれは守られていないわけでしょう。ことに中小の会社というのは、いま言ったように、総会の問題でも、貸借対照表の公告の義務の問題でも、取締役会でも、現実にその法律はほとんど守られていないわけですね。守られていないのがいいという意味じゃなくて、だから、株式会社法というのがそういう中小の会社には必ずしもマッチしない部面が多いのじゃないかと考えられるわけですね。マッチしないものですから、そこで脱法行為が行なわれ脱税が行なわれてまいるわけだと思うんですね。会社の設立のときからもうすでに法律が守られてないのじゃないですか。発起人会をやったとか、株主総会をやったとか、さっぱりやってないんですね。どんどん委任状を持ってきて判子を押してつくっちゃっているわけでしょう。法務局に届けるのだが、法務局はそこまで審査権はないから、形式的な審査だから、内容まで調べないのでしょうが、現実に守られてないものを守ったようなふりをしてやっていくところに問題があるので、やはり中小規模のものを株式上場の一億円なら一億円ということを中心にして分けて考えていくことも一つの手ではないかと、こう思うのですが、これは一つの将来の研究課題ですから、いまここでそれをどうということではないので、この程度にしておきます。  新株引受権の譲渡の問題ですね。これは、どういう趣旨から、どういう現実的な必要から、新株引受権の譲渡の問題の改正が行なわれるようになったのですか。法律的なあれは別として、的にはどういう現実的な理由なり要請があったのですか。
  186. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 御承知と思いますけれども、株式会社が新株を発行いたします場合に、多くの場合におきましては、従前の株主、これを旧株主と申しますと、この旧株主に対しまして新株の引き受権を与えるのが大部分でございます。もちろん、その発行すべき株式全部を与えるわけではございません。しかし、大部分は新株引受権といたしまして株主にこれが与えられるわけでございます。ところが、株主といたしましては、せっかく与えられた新株引受権があるにもかかわりませず、資金の関係でこれを全部みずから引き受けることができない場合がかなりあるわけであります。そういう場合に、旧株を売却いたしまして新株引受のための資金を調達するとか、あるいは、他から金融を受けましてその資金を調達するというふうなことが多く行なわれておるわけであります。したがいまして、株主の立場といたしますれば、そういう煩瑣な手数を経なくても、新株引受権そのものを譲渡できますならば、必要な部分だけ残して他を譲渡することによって自分の引き受けるべき株式数に応じた資金が調達できるわけであります。そういう意味から、株主に新株引受権を与えました場合に、その引受権を譲渡し得る道を開こうというふうにいたしたわけでございます。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうことなら、何もいまごろになってそういう道を開くのはおかしいのであって、もっとずっと前からその道が開けてなければならないわけじゃないですか。いまになって特にこれが問題になってきたというのは、どういうところにあるのですか。いまの答弁では、背からそのことが問題となっていて、当然もっと前にそういう商法の改正がされてなきゃならぬわけですよ。いま言われたようなことは前から問題になっているのですから、いまになって問題になってきたのではないのでしょうから、いまになって必要となってきたというのは別の理由があるのじゃないんですか。いま局長が言われたような要件というのは前からあったんでしょう。そうでしょう。あなたの言われたようなことなら、もっと前からこの点は改正になっていなきゃおかしいんじゃないかと思うんですがね。前からそういう必要性はあったわけでしょう。そうじゃないですか。
  188. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 確かに、前からその必要性はあったと言えば、あったと言わざるを得ないわけでございます。  この改正がいま行なわれるのはむしろおそきに過ぎると、当然もっと前にこれは考えるべきであったという御意見もごもっともであろうと思うわけでございますが、おそいという御非難はございましょうけれども、株主の立場を考えますならば、いまからでもこれは引受権の譲渡を認めるのが適当であろうというふうに考えておるわけでございます。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おそいというのは、そういう意味じゃなくて、これはたとえば経団連なりその他のいろいろな要請が出ていますね。ここに資料がありますが、この資料の中で、関西経済連合会から、「株式会社法改正に関する意見」というのが昭和三十八年二月十一日に出ているわけです。そこの三三ページを見ますと、「最近のA・D・Rの発行、将来の外資導入の問題とも関連し、外人株主が新株引受権を譲渡してプレミアムを確保し得る道を開く必要がある。」と、こういうことを一番先にうたっていますね。これはどういうことなんですか。こういう現実的な必要性がいま発生しているから、新株引受権の譲渡の場合について改正、をしようという動きが出てきたんではないのですか。これはどういう意味ですか、ここに書いてあることは。
  190. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 関西経済連合会からの商法改正に関する意見の中に、確かにそのように書いてございます。しかし、国内の株主にとりましても同じように……
  191. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、それはわかります。
  192. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株引受権の譲渡を認めるべきであるということが並列的に書いてあるわけでございますので——もちろん、関経連の言っておりますように、外資導入の問題ともこれは関連し得る問題ではございます。しかし、私どもの立場といたしましては、株主の利益を確保するという観点に立って考えるべき筋合いのものであろうと思いまして今回の改正を考えたわけでございます。関連する問題といたしまして外資心入にも当然これは響いて左いることは間違いないと思いますけれども、それを目的にして今回の引受権の譲渡をやろうというわけではないわけでございます。
  193. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国内の株主の問題は、これは前から問題になっておったわけです、いま説明があったように。それなら、当然前から改正されるべき筋合いのものであって、これは新株払込資金を狩るために——新株を引き受ければうんともうかるわけですから、それで旧株を処分する必要がないようにすると言いますけれども、その場合には、ほかから金を借りてくるとか、いろいろ方法があるし、新株を引き受ければ、これだけ利益があるということですから、担保にしてあれできるわけですからね。ですから、そのことだけでは理由にならないように思うんです。その関西の経済連合会が言っていることが一つの経済界の要請であることは間違いないように考えられるわけですが、そうすると、「外人株主が新株引受権を譲渡してプレミアムを確保し得る道を開く必要がある。」と、こうはっきり言っているわけですね。これはあとで買取引受のときにも出てくるわけですけれども、買取引受の場合は、これはアメリカのやり方と日本のやり方は違うわけですね。これはあとで問題になると思うのですけれども、「最近のA・D・Rの発行、将来の外資導入の問題とも関連し、」云々とあるわけですから、どうもこれが中心となってこの条文が出てきたように考えられるわけですが、国内株主の問題は前からあるわけですから、これにプラスアルファという形で外資導入の問題が出たというふうにも考えられるわけですが、A・D・Rというのは何ですか。具体的にどういうふうなものですか。
  194. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) A・D・Rと申しますのは、たとえば日本の会社がアメリカにおきまして資金を調達しようという場合に行なわれます一つの資金調達の形態でございます。具体的に申し上げますと、日本の発行会社がアメリカの経済界から資金を調達しようといたします場合に、アメリカの証券会社に募集を委託し、株主を募集するわけでございます。そういたしますと、募集に応じた株主は、同じくアメリカの銀行に対しましてさらに株式を預託するわけでございます。銀行が、A D R——これはアメリカン・デポジタリー・レシート、こう申しますけれども、この預託証券を預託者に発行いたしまして、預託者はこれを投資家に売ることができるわけでございます。それを持っている者がA・D・Rの所持人として実質的には株主としての権利を保有する。これがその間の契約によりましてそういうふうに株主の利益を享受し得るようになっておるようでございますが、そういう形式によりましてアメリカで資金を調達するということが行なわれているわけでございます。
  195. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それと、「外人株主が新株引受権を譲渡してプレミアムを確保し得る道を開く必要がある。」ということとは、どういうふうに関連があるのですか。
  196. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) A・D・Rと新株引受権とは直接関係はございません。全然別個の形態をとっております。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 A・D・Rの発行というのも一つの例だし、それが盛んになってきて、将来外資導入はだんだん盛んになってくるというわけでしょう。将来の外資導入の問題と関連して、外人株主が新株引受権を譲渡してプレミアムを確保し得る道を開くためなんだ、そういう必要があるんだという言い方でしょう。A・D・Rの発行が直ちに外人株と結びつくという言い方じゃなくて、A・D・Rを含める将来の外資導入の一環として新株引受権の譲渡容認という形にしたほうが都合がいいんだという関西経済連の考え方ではないですか。そういうふうにとれるわけですね。国内の問題は、並列というか、あとのほうで書いてありますが、並列でもどうでもいいですけれども。  そうなってくると、よくわからないのは、なぜ「外人株主」云々ということがこの新株引受権の譲渡の問題と関連してくるのかということなんですよ。何もこんなことを書く必要はないんじゃないかと思うんですよ。これは法務省が書いたんじゃないけれども、実際に経済界に関連している人はそういう意向のようなんですが、何らかの外資導入との結びつきが——むろん国内株主の保護の問題もあるとしても、外資算入との結びつきというものが本件の中に出てきているというふうに考えざるを得ないわけです。  それから日本商工会議所連合会ですか、これがこの法案を早く通してくれという陳情が去年だかおととしあったときにも、これはとにかく外資導入と関連するんだと、外資導入を円滑ならしめるためにこの商法の一部改正をぜひやってくれという陳情があったわけですよ。これは少し何といいますか筋が違うのじゃないかということを考えたこともありますけれども、いずれにしても、とにかく外資導入を円滑化するのだということをまっ先に経済団体が掲げて、だから商法を改正してくれと、こう言ってきまずからね。だから、外資導入を容易ならしめるために、商法の改正の全部というんじゃないけれども、七項目の中で一つか二つか特にそれと密接に結びついているのじゃないか、こう考えられるその一つにこの問題があるのじゃないか、こういう意向も出てくるのですがね。いまの新株引受権の護渡の道を開いたということが、外資導入とどういう関係があるのですか。
  198. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 外資導入の問題は、ただいま特に強く叫ばれておるわけでもございません。かつてこの問題が非常に大きく取り上げられた時期もございましたけれども、現在は情勢がだいぶ変わっておるわけでございます。過去にそういうことが言われたかもしれませんけれども、現時点において私ども考えておりますことは、これは株主の利益を守るためだという観点に立って改正を考えておるわけでございます。その株主といいますのが、国内の株主の場合もむろんございますが、外国の株主の場合もまたあり得るわけであります。そうい意味におきまして、広く資金を調達する道を確保するという利便のために新株の引受権の譲渡を認めたほうが株主にとっては利益でございますので、資金調達にもこれが稗益するという結果になることは、これは当然のことであろうと思うわけであります。とは申しましても、特に外資導入の問題を何とかしなければならないというふうな差し迫った必要性があるものとは現存考えられないわけでありまして、現在の問題といたしまして私ども考えておりますのは、すべて株主がそういう利便を受けるようにということに尽きるわけであります。その中に内国人も外国人ももちろん含まれるわけでございますけれども、特に外資導入を強調すれば御意見のようになるかとも思いますけれども、現存の経済情勢におきまして、往年言われましたような外資導入を大いにやるというふうなことは、現在はないわけでございます。そういうふうな一般的な意味におきまして株主が新株引受権を譲渡し得るようにすることが株主のために利益であるという観点に立って今川の改正を考えておるわけであります。
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 新株引受権の譲渡というのは、法作で特に認めないとできないものですか。そんなことはないのじゃないですか。
  200. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 特に完全な効力を認めますためには、法律に規定を置かなければならないものと考えます。新株の引受権を取得した者がこれを他人に譲渡するという契約をいたしました場合、それが当然に無効であるとはこれは言えないと思います。しかし、譲り受けた者が、それでは新株引受権を自分が持っているからといって発行会社に対しまして割当の請求をいたしましても、発行会社としてはこれは割り当てる必要はないわけであります。当事者間の契約関係ば別といたしまして、発行会社は何らの拘束を受けるものではないわけであります。譲受人が発行会社に対しまして新株の割当を請求して、それに優先的に判り当てる義務を会社に与えますためには、やはり規定を設けませんとそれができないものと考えます。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 新株引受権というのは、元来、あれでしょう、一身専属的なものでは決してないわけでしょう。だから、移転し得る性質を持っているものではないのですか、本来的に。
  202. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株引受権は移転できる性質のものでございます。引受権を与えられた者は、特別に有利に株式の発行を受け得る立場にもあるわけであります。会社の立場といたしますれば、どういう人に新株引受権を与えるかということを法律の定めに従ってきめていくわけであります。何ぴとでも差しつかえないというわけにはこれはいかないだろうと思うわけでありまして、当事者の間では引受権藤波契約そのものはそれは差しつかえないわけでありますが、会社に対しまして自分が引受権を取得したということを有効に主張することは、これは許されないものと思います。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式といいますか株主という地位に付随して発生して、そうしてそれが新株引受権というものになってくれば、その地位から離れてそのもの独自で流通し得る性質を当然持っているわけだと、こう思うんですが、流通の自由というか移転の自由があるべきものなんだから、何も法律の規定がなくたって、当然第三者に移って、それからただその人が新株引受権を持っているということが証明さえされれば、会社としてはそれを否定し得ないのじゃないですか。それが理論的な帰結ではないわけですか。
  204. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株の引受権と申しますのは、引受権を持っております者が、発行会社に対しまして、自分にこの引受権の範囲内で一定の株式を割当をしてもらいたいという権利でございます。この権利を持っておりますと、優先的に割当を受け得る。会社にしてみれば、逆に、その引受権者に対しまして優先的に割り当てる義務があるわけでございます。しかし、引受権そのものは、株主であることによって当然取得するものではございません。特別に定款の定め、あるいは取締役会の決議、こういったものによって引受権を与えませんと当然にはないわけであります。そういうものを与えられた者が、これは一種の権利でございますので、譲渡し得ることはこれは当然なのでございますけれども、会社といたしましては、たとえば株主に新株引受権を与えます場合に、その株主に対しては特に発行価額も有利に定めることができるわけでありまして、何ぴ人がこれを取得してもいいというわけには会社の立場からすればいかないわけでございます。  そういう意味において、法律の規定によって特に新株引受権の譲渡を認めることにいたしませんと、有効な引受人の新しい立場においての権利の行使というものはできないものと考えております。
  205. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 抽象的な権限の場合は確かにそうだと、こう思うんですが、具体的な権利として発生してしまえば、この株券ならこの株券の新株を引き受けるという権限がその株主に与えられれば、具体的に権利になってくるわけですから、これは移転も自由なわけなんじゃないですか、債権ですから。何も会社に対抗要件は要らないで、通知があればいいのじゃないでしょうか。
  206. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 商法の百九十条に、「株式ノ引受二四ル権利ノ譲渡ハ会社に対シ共ノ効力ヲ生ゼズ」と、こうございます。これは株式の引受権そのものではございませんで、「引受二因ル権利ノ譲渡」でございますので、引受権の譲渡そのものではございませんけれども、この規定の類推解釈と申しますか、そういった趣旨から申しましても、新株の引受権そのものを譲渡しても、これは会社に対しては対抗できないというふうに解釈されておるわけであります。
  207. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、百九十条がどういうふうに変わるんですか。これは変わらないんですか。
  208. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 百九十条そのものは今回は改正いたしません。これは、引受ということが行なわれまして引受人たる地位が発生いたします。その引受人たる地位と申しますか、引受人の権利、これは譲渡できないという規定なんでございます。新株の引受権と申しますのは、まだそこに至る前の問題でございます。割当前でごございます。百九十条で言っております「引受ニ因ル権利」と申しますのは、株式の割当が行なわれまして引受人がきまります。その段階で引受人としての権利でございます。ところが、新株の引受権と申しますのは、まだそこまで至っておりません、割当の段階にもまだ至っていないわけでございます。この権利を一応与えられまして割当を求めますと、発行会社のほうでそこではじめて株式の割当を行なうわけでございます。割当を行なえば、引受人が生ずるということになるわけでございます。  したがいまして、百九十条によりまして、引受人の権利が譲渡されても、これは会社に対抗できないということになっておりますれば、新株の引受権そのものの譲渡の場合にも、もちろんこれは会社には対抗できないと、こういうことになるわけであります。
  209. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、具体的な権利として発生したものについては、いま、百九十条の改正がないから、譲渡しても対抗できないんですか。ちょっといまはっきりしなかったんですが。百九十条による権利の移転は会社に対して対抗力を持たない、それ以前のものは今度の改正によって会社に対して対抗力を持つという形になるわけですか。より具体的な権利となったものの百九十条のほうを今度改正しないで、前の段階のものを改正するというのはどういうわけなんですか。当然百九十条もそれならば改正してしかるべき筋合いのものになってくるのじゃないですか。
  210. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 確かに、そういう議論は起きると思います。今回の引受権の譲渡は、引受人たる地位の譲渡より前の段階でございますの交これについて譲渡を認めるくらいならば、引受人の地位の譲渡も当然認められていいじゃないかということが一応考えられるわけでございますけれども、引受人の地位の譲渡をやりますと、何びとが引受人になっておるかということが発行会社の側にとってはわからない場合が出てまいるわけでございます。そこで、百九十条の規定については現行のままにいたしておるわけでありまして、新株の引受権の譲渡とはその辺が若干違うわけであります。
  211. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは関西経済連合会が出しているのは、百九十条も引用していますね、いまの資料で。これは二百八十条ノ十四をひっぱってくる前段として引用しているのかもわかりませんけれどもね。独立して引用していると言えないかもわかりませんが、百九十条を改正してくれという趣旨ではないですか。そういう意味にはとれないわけですか。ただ条文の関係で二百八十条ノ十四が百九十条を援用しているから、だから百九十条を援用したというだけの問題ですか。
  212. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 百九十条を改正してもらいたいという趣旨でこれは書かれたものとは理解しておりません。
  213. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 買取引受の問題になるわけですが、これはいままでいろいろな訴訟がありましたね。もっとも、訴訟があったのは、特定の人が起こした訴訟がいっぱいあったから、たくさんあったというふうにとれますがね。それは別として、その訴訟とこれをめぐる判決がいろいろあるわけですが、その判決は、横浜のものもあり、東京のものもあり、八王子のものもあり、大阪のものもあり、いろいろありますが、これは、判決があったので、あれですか、この点はやはり改正しなくちゃならぬという形になってきたわけですか。元来現実に行なわれておったものが、横浜の判決ですか、それで商慣習を否定したようなかっこうになってきたので、業界が驚いて、何とかこれをはっきりして改正してくれと、こういう動きになってきたわけですか。
  214. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 買取引受の問題でございますけれども、これは昭和二十五、六年ごろから新株の発行が盛んに行なわれるようになりまして以来、発行会社といたしましては、新株の発行に非常に手数と経費がかかることになりますために、一般に公募いたします一つの方式といたしまして証券会社に依頼いたしまして株主の募集にかかったというのがこのそもそもの始まりのようでございます。したがいまして、買取引受と申しましても、これは株式公募の一つの形態であるというふうに観念してこういう新しい方式がだんだん慣行的に行なわれるに至ったという経緯をたどっているわけであります。買取引受につきましては、資料を差し上げてございますが、これをごらんになればわかると思いますけれども、発行会社の発行価額と証券会社の分譲価額、これは全く同一になっております。ただ証券会社は発行会社から手数料だけもらってこの仕事を引き受けているという契約内容になっているわけであります。いわば証券会社は新株発行についての中間のトンネル機関のような形になっておるわけであります。ところが、証券会社から新しい株主に対して株式を分売するという形をとっておりますために、証券会社が一応株主になる形になるわけであります。そこに問題が生じてきたわけでありまして、もしもそうだといたしますと、あらかじめ買取引受契約をいたします際に証券会社に対して新株の引受権を与えたことになるのではないか、これが問題の中心でございます。現行の二百八十条ノ三の第二項の規定によりますと、この場合には株主総会の特別決議が必要であるということになっておるわけでありますけれども、実質は、先ほど申し上げますように、株式を公募する一つの手段としてこういう形態がとられてきてまいったわけでございまして、発行会社も証券会社も、証券会社そのものが株主になるという意図はないということになっておるわけであります。したがいまして、証券会社に新株引受権を与えるというものではないというふうに観念されておったわけであります。ところが、いろいろこれが問題になりまして、訴えが起こされ、裁判所の判断といたしましても少なくとも商法の二百八十条ノ二の第二項の規定に抵触する面がある、新株の引受権を付与するにもかかわらず株主総会の特別決議を経ていないというところが法律違反だ、こういうことでございます。そこで、実際界におきましては、そういう判決が出ました以上は買取引受という方法は差し控えるべきであるというので、現在まで控えてきたような事情になっておるわけであります。  そこで、この二百八十条ノ二の第二項の規定の趣旨でございます。これが単純に新株引受権を株主以外の者に与えます場合にいかなる場合にもすべて株主総会の決議が必要という意味なのか、あるいはまた、別にこの規定を設けられた趣旨があるのかというところが問題なわけなんでございます。しかし、ともかく、横浜地方裁判所の判決から最近の最高裁判所の判決に至りますまで、この点はやはり新株の引受権を付与するものであるから、商法二百八十条ノ二の第二項の規定に違反するという考え方には変わりはないわけでございます。そういたしますと、少なくともそういう解釈、ことに裁判所においてそういう解釈が行なわれるということになりますと、実際の行なわれておる買取引受の当事者の気持ち、また、現在行なわれておる慣行にも、非常に影響いたすわけであります。  ただ、これをどう見るかというところが問題点でございまして、なぜこういうふうに株主総会の特別決議を必要としたかということをよく考えてみますと、単に株主以外の者に新株の引受権を与えるというところに意味があるのではなくて、これはそういったものに対しまして特別に有利な発行価額で新株を発行するというところに特別決議を持ってくる意味があるということに理解されましたために、今回の改正によってその間の趣旨を明確にしよう、こういうことになった次第でございます。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証券会社に買取引受させる場合に、証券会社が商法でいうところの株主以外の第三者になると、こういうことは、あれですか、最高裁としては確定した考え方なんですか。
  216. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 最高裁判所の判決もそのように考えておるわけであります。
  217. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなってくると、株主総会の決議を必要とするわけですね。それをいままでしなかったのは非常に多かったわけですが、それはまた取引の安全からそういうふうな瑕疵があっても現実に流通してしまえば有効だ、こういう形で救っているわけですね。救っているというか、現実に妥協したというか、そういう形がとられておるわけですが、日本では買取引受という形がとられていて、あれですか、アメリカではこういう形がとられないのですか。それは、発行が、いわゆる時価発行という形でやっておるわけですね。日本では額面発行するわけでしょう。アメリカの新株の発行のしかたと日本の発行のしかたと非常に違うわけですね。どういうふうになっておるわけですか。
  218. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株主に新株を与えます場合には、これは額面でやっている場合が多いのであります。これは株主に新株引受権を与えておる場合でございます。一般に公募いたします場合には、これは時価で発行するというのが原則でございます。
  219. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカでは株主に対しても時価で新株を買い取らせるんでしょう。その点、日本と非常に違うのじゃないですか。
  220. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 法律的にはおそらく株主に対しまして額面で発行することも可能ではないかと思うのでございますけれども、実際問題としては、あるいは時価で発行しておる場合もあり得ると考えます。これは、日本の商法におきましても、株主に対して時価で発行することを禁止しておるわけではございません。特に新株の引受権を与えました場合には、均等条件を守る必要はないという規定がございますために、それによりまして額面で株主には発行しておるのが実情でございます。
  221. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主が新株引受権を持っているということは、株主たるの地位から当然発生するのではないですか。株主総会なりあるいは取締役会で議決があってはじめて与えられる権限になるわけですか。
  222. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) そのとおりでございます。
  223. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主に新株を与えないで、証券会社から証券会社で全部買取引受させる、こういうことも取締役会なり株主の総会なりできめることは違法ではないわけですか。
  224. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 違法ではございません。
  225. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、どうして株主に新株の引受権というものは当然の権利として認められないのですか。
  226. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは、株式を募集いたします場合には公募が原則になっております。一般に公募いたしまして株主を募集いたすわけでありまして、これが原則であります。ただ、株主につきましては、従来のわが国の経済界の実情といたしましては、特別に新株引受権を付与しておるのが大多数でございます。これは当然の権利として株主に与えておるとは言えないわけでございますけれども、実際の慣行といたしまして株主の利益のために新株の引受権を与えておるというのが実情でございます。
  227. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主以外の者に対して特に有利な発行価額を定めて新株を発行するということは、この場合の「株主以外」というのは、概念的に言えば、株主以外ですから、いろいろなものがありますけれども、現実には証券会社をさしておることになるのですか。現実にはですよ、いまの商取引の現状から言って。
  228. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) いや、そうとは断言できません。たとえば、発行会社の取引先とか、あるいは技術提携先、そういったものに対しまして特別に有利な価額でもって新株の発行をする必要がある場合もあるわけでございます。買取引受の場合のみがこの二百八十条ノ二の新設の八号に該当するものではございません。
  229. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれども、現実には、あれでしょう、証券会社が買取引受するために、ここにいう株主総会の特別決議があったのではいろいろ困るということが中心となってこの判例が出てきたので、証券会社から非常に運動があってこの条文が入ることになったのじゃないのですか。
  230. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) この過去の経緯は、証券会社からの運動というのではございませんで、発行会社そのものにいたしましても、そういう違法だという判決を受けますことは、非常に資金調達上困るわけでございます。これは、証券会社のみがこれによって利益しておるのを今回のような判決によってその道をふさがれたというのでございますれば、これは問題でございましょうけれども、そうではなくて、むしろ買取引受といいますのは、発行会社がみずから株式発行の手続をとることが非常に困難でありますために、証券会社に委託するに至ったという経緯もございますし、また、現実にこうせざるを得ないというのは、発行会社の側の事情によるのでございます。したがいまして、株主以外の者に対しまして新株を発行いたします手続を改正するというのも、証券会社の利益のためというのではございません。新株発行の手続そのものを円滑に遂行できるようにいたしますために、また、どういう点に株主総会の決議を要する理由があるかということも考えまして、今回の改正に踏み切っておる次第でございます。
  231. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証券会社の利益だけを考えてやったというと、これは語弊があるかもしれませんけれども、いずれにしても、一括買取引受というならば株主総会の議決を経なきゃならないということに判例がなってきて、それでは困る、商慣習と違うという議論が出てきて、それでは証券会社も発行する会社も非常に困るというところから、何とか改正をしてくれということでこの改正が出てきた、それは間違いないわけでしょう。証券会社の利益だけと言うと、これはことばが違うかもわからぬけれども、証券会社プラス発行会社というか、それが判例によって非常に困ってきたから、何とか改正してくれという要求になってあらわれてきたことは事実なんでしょう。
  232. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 過去におきまして株式公募の一つの手段といたしまして買取引受が行なわれるようになったということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、この場合に証券会社を株主にしようという意思はどちらにもないわけでございます。ただ中間の機関として証券会社の手を経て一般の株主を募集する目的でこういう形態が考え出されたということになっておるわけでありますが、ただ形式的にものを考えました場合には、現行の二百八十条ノ二の第二項にありますように株主総会の決議が必要だと、こう書いてありますので、いかなる場合にも、少なくとも現行法について申しますれば、新株の引受権を株主以外の者に与える場合にはすべての場合に株主総会の決議が必要であるというふうに考えられることが一つと、さらにまた、先ほど申し上げたことでございますが、実質的に新株の引受権を証券会社に与えるものじゃございませんで、単なるトンネル機関だといたしますと、形式的には新株引受権を与えておりましても、みずから証券会社が株主になる意図で行なわれておるものじゃないわけでございますので、こういう場合に、はたして新株引受権が与えられたと見るのが適当かどうかというふうに考えられる点が第二点でございます。さらにまた、なぜ第二項の規定があるかということは、特別に有利な価額をもって新株の引受権を与えるような場合には、これは株主にとりましても影響いたしますし、また、会社の資金調達の面にも影響がございますために、その場合を規制するために株主総会の特別決議にかけてあるというふうにも見られるわけであります。いろいろこの点は考えられるわけでございますが、実質的に考えました場合には、特に有利な発行価額をもって新株引受権を与える場合にこの二項の規定が働くというふうに見るのが妥当であると、また、それによって第二百八十条ノ二の第二項の規定の趣旨が明確にされるという理由によりまして今回の改正をしようというわけでございます。もちろん、従来の買取引受の手続の過程におきまして違法な段階が一つ介在しておるということになりますと、これは発行会社にとりましても証券会社にとりましても非常に困ることでございます。この規定の趣旨を曲げないようにして、しかも手続が円滑に行なえるようにしたいということは、確かに実業界においても希望しておるわけでございます。
  233. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 トンネル的にただ通るだけだと、こういうんですけれども、それでは証券会社はちっとももうけにならぬわけですよ、手数料は入るかもしれませんけれどもね。実体は違うんじゃないですか。手数料の問題でも、あれですか、普週の証券取引の手数料とこの新株の引受の場合の手数料は違うんですか。  〔委員長退席、理事山田徹一君着席〕 証券会社が何か三倍くらいもらうんだという説がありますね。手数料も違うんですか。一括引受の場合の手数料と普通の場合の手数料と、証券会社に入るものが違うわけですか。
  234. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一般に株式の売買を委託されましてそれを取り扱う場合の手数料と、それからこの買取引受の場合に証券会社が手数料として受けますものとは、相違があるようでございます。公募手数料の実例につきまして、先般亀田委員からの御要望がございまして、資料を差し上げておきましたが、それぞれの発行価額によりまして手数料に差異がございます。発行価額が安ければ手数料額も安くなりますし、発行価額が高くなりますれば手数料もいきおい高くなるということにはなっておるわけでございます。
  235. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証券会社が買取引受する価額が時価よりも一〇%から二〇%安いというのが慣例になっているのじゃないですか。そしてそれを売り出す。初めから差額があるわけでしょう。それが証券会社の利益になっているのじゃないですか。そういうふうに業界の人が言っているようですがね。
  236. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株の発行価額をきめます場合に、発行会社といたしましては、いろいろの資料に基づきまして幾らにすれば新株発行が成功するかという観点から発行価額をきめるわけでございまして、必ずしもそれが時価と一致するものではございません。刻々に株価も変動しておりますので、株価を決定いたしますときのその株式の価額と全く同額で新株を発行するということはまずないわけであります。大体一〇%から一五%ぐらい安くなっておるというのが実情でございます。しかし、安くして証券会社に引き受けさせますが、その引き受けた証券会社が高い値段でこれを分売するということはできないようになっております。これはもちろん当事者の契約によるわけでございますけれども、実例を一つ「参考資料」にあげておきましたが、三六二ページに実例が載っておるわけであります。これは、株式会社丸井が新株を発行いたします際に、山一証券と大和証券、野村証券にこれを委託した場合の契約書であります。これによりますと、一株につきまして二百六十円で証券会社が買い取るわけであります。これを売り出します価額も一株につき二百六十円というふうにはっきり定められておりまして、同じ価額で分売するという契約になっております。引受の手数料は、一株について七円五十銭というふうに別にきめてございます。発行会社と証券会社の間で、証券会社が自由な価額でこれを分売し得るというふうにはなっていないのでございます。
  237. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この契約によったって、変動がある場合がありますね、時価が。株の相場が変動するわけで、相場が変動すれば、これで二百六十円なら二百六十円で必ず売らなければならないとなったら、証券会社が損しちゃう場合も出てくるのじゃないですか。
  238. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株価の変動は確かにございますけれども、新株を発行いたします場合の価額というものは、一般の時価よりは先ほど申し上げましたように若干安くしてございます。大体二週間くらい先が払込期日になっておりますので、その間の株価の変動の見通しということも立てまして、払込期日における株価と比べまして発行価額が高いということになりますと、これは新株の募集が成功しない結果になるわけであります。そういう関係で、一般に時価よりはある程度安くしないとこれが発行できないというのは、これはもう実情としてやむを得ないことでございます。そういう趣旨におきましてこの発行価額そのものが定められておりますので、特にこの値段によってやった場合に新株の発行が不成功に終わったということは従来までの実例によりますとあまりないように聞いておるわけであります。特に株価が上がったからといって、証券会社がその上がった値段で他に分売することはできません。そういう意味での証券会社の利得ということは考えられないわけでございます。
  239. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうわけで証券会社の利得が考えられなければ、証券会社の利得は一体どこから出てくるんです。単なる手数料だけでこんなに利益があるわけがないですよ。そこは商法の規定は別ですよ。実際には、公募公募というけれども、」実際には公募しないのが現実に行なわれているのじゃないですか。これは法務省に聞いてもわからないといえばわからないでしょうけれども。  八王子支部の判決ですね、三一五ぺ−ジですか、一株時価が三百七十円であったものを新株発行価額を三百二十円ときめられた、これは五十円安いから、一割ちょっとですね、一割五分くらいですか、これは結局公正価額によるものとすることができないから、「特別決議を要しない場合にあたるとすることはできない。」と。結局、公正価額によるものとすることができないんだと、こういう判決ではないですか。その判決がどれだけ実情をよく理解したかどうか私はわかりませんが、三百七十円のものを三百二十円で発行したからということが不公正なんだということになってくれば、いま言ったように一割から二割下がって発行したら、これは不公正だということの認定になってくるのではないですか。——この判決がいいということを言っているわけじゃないですよ。
  240. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 八王子の判決で問題になっております案件でございますが、時価三百七十円の株を三百二十円と定めて発行したということでありまして、この株式については新株引受権の付与を時価によるものという意味において公正な価額で発行したという趣旨にはこれはとれないという趣旨でございます。先ほども申し上げましたように、公正な価額でございますれば株主総会の決議も要らないという考え方もあるわけでございます。今回の改正の趣旨もやはりそこに中心を置いておるわけでありまして、発行価額は当然公正でなければならないわけであります。三百七十円のものが三百二十円と定められたことになりますと公正価額ではないということになりますと、これは当然特別決議が必要であるという結論に導くわけであります。そういうことをこの判決では言っているものと考えます。
  241. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、いまの発行価額が一〇%から二〇%時価より低いというのが通例だと言われるわけです、株価の変動なんかを見込んだりなんかしてですね。それが通例だと言われると、この八王子判決と比べれば、全部不公正だということになってしまうでしょう。そうなりませんか。
  242. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま一〇%から一五%ぐらいの差がある、こう申しましたが、これより少ないものもございます。また、それより多いものもむろんあるわけでございます。それはそれぞれの発行会社の特殊事情によってこの辺の発行価額がきめられるわけでございまして、収益率の多い会社とそうでないもの、あるいは、株主の数が多いものとそうでないもの、また、その株式の市場における一般の傾向がどういうことになっているかというような、もろもろの要素が勘案されましてこれがきめられるわけでございます。したがいまして、多くの場合は一〇%から一五%の差はあるというのが実態でございますけれども、すべてそれでは一五%以内なら公正価額と言えるかということになりますと、それは必ずしもそうは言えないわけでございまして、ごく一般論として申せば、その程度の差はやむを得ないだろうということが言えるということを申し上げたわけでございます。  したがいまして、八王子の判決の例にあがっております具体的な案件がこうなっておるから、一五%なら公正価額とは必ずしも言えないんじゃないかという問題もそれは出てまいるわけでございますけれども、これはこの会社の具体的な事案についてこういうふうな判断がなされたわけでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、ごく一般的に帯し上げればこういうのが実態であるということを申し上げたわけでございます。
  243. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時価より一〇%から一五%というのではなくて、むしろ二〇%ぐらいまで差があって発行されているのが実情で、それによって買取引受をしておるというのが実情だという業界の説もあるわけですよ。私は株のことはわかりませんから、株も持っていないしあまり興味がないからわかりませんが、どうも証券会社がなぜ買取引受、買取引受といって騒ぐか、どこかにそれは利益の根源がなければならぬと思うんですね。手数料だけで一株九円ですか、普通の三倍ぐらいとるんですか、よくわかりませんが、買取引受の場合は。
  244. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは発行価額によって差異があるようでございます。一定の基準があるわけでもないようでございますが、実際の例を大蔵省で調べてもらいましたところによりますと、たとえば発行価額が六十三円の場合には手数料が三円になっております。百四十円の場合には五円、二百四十二円の場合には七円、三百二十円の場合には十円、こういうように、発行価額が多くなるに従って手数料も多くなっているのが実情でございます。必ずしも一がいに手数料は幾らというぐあいにはきまっていないようでございます。発行会社と証券会社の個々の契約によってこの手数料が定まるというように承知いたしております。
  245. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの発行価額の三百何円といったのは、額面は幾らですか、額面五十円のものですか。
  246. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 額面はおそらく五十円だと思います。
  247. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 額面五十円で十円ぐらいの手数料がとれるわけですから、買取引受をやれば、料だけでも非常にばく大な利益があるわけですね。普通の手数料と違うんですか。ぼくは株のことはよくわからないから聞いておるんですが、普通の手数料の三倍ぐらいの手数料をとっているんだと業界のほうで言っておりますから聞いておるんですが、大蔵省のほうが詳しければ、大蔵省のほうから答えてもらってもけっこうですが、実情はどうなんですか。
  248. 安井誠

    説明員(安井誠君) 証券業務課の所管でございますけれども、私ども存じております限りでは、普通の手数料でございますと二%ないし三%程度でございますが、引受ということになりますと、もし売れ残りが出ましたときにはみずからそのリスクを負わなきゃいかぬ、また、そのあとでそれをさばかなきゃならぬと、この点を考えまして、三%ないし四%という引受手数料が別にその意味でつくということでございます。
  249. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、一般の手数料のほかに引受手数料というものが加わってくるわけですか。
  250. 安井誠

    説明員(安井誠君) 通常の株式の売買の場合の手数料とは別個に引受の場合の手数料というものがきまっている、こういうことでございまして、株式の売買の手数料に比べると引受手数料というのは高くなっておる、こういうことでございます。
  251. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけど、買取引受の行なわれるというのは一般に好況時に行なわれるのであって、不況時には行なわれない。不況のときには買取引受をやってくれといっても、証券会社は引き受けちゃつまらないからやらないんだ、好況時にだけそれを引き受けるんだということを言われておるんですけれども、ぼくは株のことはわからぬのですが、好況時にやるんですか。そうすると、どんどん上がるわけですからね。
  252. 安井誠

    説明員(安井誠君) 一般的には、好況時に多いとか不況時に少ないとかいう議論じゃございませんで、公募ということになりますので、むしろ株式の価格が額面価額を上回っているという場合に多く行なわれるということのようでございます。
  253. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、結局、あれでしょう、不景気のときにあまり行なわれないわけでしょう。増資の場合でしょう。だから、不景気のときに増資するあれもないから、景気のいいときに、株がどんどん上がる見込みのときに買取引受が行なわれるんでしょうけれども、これはまあ常識でしょう。その場合に、だから、なにも買取引受しなくたって、事業が好況のときだから、いわゆる一般公募、純粋に一般公募をやっても、当然に引き受けられるんじゃないですか。そういうときに買取引受という制度が現実に行なわれているんではないですか。ぼくはよくわからないんですよ、率直な話。
  254. 安井誠

    説明員(安井誠君) 一般的にはいま先生のおっしゃることが言えるかと思うのでございますけれども、好況のときに多いと申しますのは、株価が一般的に高いからというのでございまして、不況のときであっても個々の銘柄によりましては株価の高いものもあるわけでございまして、そういうものについても行なわれ得るわけでございます。で、買取引受の問題につきましては、先ほど民事局長のお話もございましたように、そういうことができることによってむしろ発行会社のほうが資金の手当てが十分つくという利点があるということのようでございます。
  255. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 発行会社のほうは、一括してやってもらったほうが、それは手数とかいろんな点で便利なことは、これはもう言うまでもないわけですよ。証券会社が損をしてやるわけないわけですから。これを引き受けるんですから、利益があるからやることなんであって、もっとも、それが一定の会社と特殊な系列にある証券会社なら別かもわかりませんがその利益というのは、いまの手数料だけでなくて、買取引受をやることによって特殊な利益がそこに好況時に生まれてくるんではないんですか。  それで、一つの方法として親引けという方法があるわけでしょう。これは秘密契約みたいになって、現実に裏契約みたいになって、親引けというのが行なわれているんじゃないですか。現実はどうなんですか。
  256. 安井誠

    説明員(安井誠君) 私どもも、実はその親引けという概念そのものもよくわからないのでございますけれども、私どもといたしましてはそのような不公正な取引が行なわれているとは考えていないわけでございますが。
  257. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時価より一〇%から一五%か二〇%か低く発行価額を決定して出すわけですね。出して、そしてそのうちのある株数を証券会社が持っていて、発行会社の取締役に売り戻すという方法が親引けというんでしょう。それが現実にとられているんではないですか。取締役会なら取締役会がその株をほかへ売って利益を得ておるというのが現実に行なわれているんではないですか。それを親引けと言って、盛んにそれが行なわれておって、買取引受の現実の面として、証券会社へ行ったものがまた発行会社へ戻って、取締役会でそれを処分してうんと利益を得ているという行き方がとられているんだということを言う人もあるんですね。ぼくは、取締役がその株を取得できるというのは法律的にちょっと疑問なんですが、それはできないんじゃないかと思うんですけれどもね。しかし、いずれにしても、親引けとはそういうもんで、そういうものが市場で行なわれていると、そういうことを言う人があるもんですからね。  問題点は、証券会社が一括買取引受したと。そのうちのある部数、何分の一かをまた取締役が買い戻すという、そういうことが行なわれているんだというのですけれども、まず、商法の規定からいって、一たん証券会社が引き受けたものをその会社の取締役が買い戻すことができるんですか。できないわけでしょう、これは。
  258. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいまの親引けの問題でございますが、これは昭和三十八年の五月でございますか、私どものほうでこの改正につきまして準備を進めております過程におきまして、はその点がちょっと疑問になったようでございます。そういう事実があるのかないのかということを確かめた事実がございます。照会いたしましたのは、東京の証券業協会に照会いたしております。それによりますと、照会の趣旨は、発行会社の指定により割り当てた相手方及び株式数、こういうものがあるかないかということを照会いたしました。これに対する答えといたしまして、「発行会社の指定により割当をした例はない。発行会社に対し希望した者について発行会社から引受証券会社に連絡があった場合は、一般の申込人と同様の条件で申込を受けている。」と、こういう回答を得ております。御承知のように、親引けということがはたして行なわれているかどうかということを正確には私ども把握できませんけれども、少なくとも昭和三十八年の立案過程におきましてそこまで調査いたしましたところでは、一般の申込人と同様の扱いではやっているけれども、特別にそういった特定の人に有利に株式を譲渡しているという事実はないと、こういうふうに結果的には相なっておるわけでございます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、正式に照会すれば、それはそういう答えが出てくるはずですね。それ以外の答えが出たら問題だと、こう思うんですが、ぼくの言うのは、それはそれとして、証券会社が買取引受した場合に、一体所有権はどこへ移るんですか。まあそれが一つと、それをまた取締役へ戻す——売れなかったからという場合もあるでしょうし、あるいは、ほかへ売られちゃ困るといって取締役が買う場合もあると思うんですね。それは自己株式の取得の問題なんか起きてきて——起きてこないですか。そこのところはどういう関係になるんですか。
  260. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 発行会社の取締役が株式を取得いたしますことは、これは商法上差しつかえございません。
  261. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ないわけですね、持っておるわけだから。
  262. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいまの場合、特に親引けというかっこうでやっておるのかどうか、その辺が実は明確でないわけでございます。一般の売買で発行会社の取締役が株式を取得するのでございますれば、これは自由なんでございますから、そこらはちょっと規制はできないと思います。ただ、そういう親引けというふうな形のものが行なわれているかいないか、この点が実は私どものほうも明確でございませんで、そういう趣旨でやっているというふうにはちょっと自信をもって申し上げるわけにはむろんまいらないわけでございます。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 親引けの定義にもよるんですけれども、ぼくの言うのは、証券会社に買取引受さしておいて、そしてそれは株価が上昇機運にある好況時に多い。だから、その株を持っておれば将来上がっていくということがわかるんですね。会社の取締役は非常に利益を得るわけですから、一括買取引受のときに何か裏契約をして、ある株のたとえば一割でも二割でもそれを取締役のほうへ回してもらうという契約をしておいて、それは秘密にするとかいうことらしいですが、そして買って、取締役がそれを他に売却してさらにもうけるという形のものも現実にとられているんだ、こういうことが業界の一つの実際の姿だと言う人が相当いるわけですね。これはぼくもよくわかりませんし、大蔵省でも法務省でも実体となるとなかなかむずかしくてわからないかとも思いますが、どうもそういうのが非常に行なわれておって、だから、公募公募というけれども、形は公募だけれども、実際は、そういうふうな親引けとか、あともう一つ出てきますけれども、そういうものを引いてしまうと、なるほど公募はするけれども、形は公募なんだけれども、実際にはそうでない場合が非常に多いんだ、非常に不公正に買取引受というのが行なわれておるんだと、こういうふうなことを言っている人が相当いるんですね。だから聞いているわけなんです。秘密に契約する、そしてそれによって取締役が非常に利益を得る、あるいは第三者の名前を使うかもわかりませんけれども利益を得ておる、それをいろいろ交際費に使ったり会社の費用に使ったりしている、こういうんですけれども、これは実体がはっきりしませんけれども。  もう一つあるのは、あれですか、証券会社は単独で引き受ける場合もあるし、共同引受にする場合もあるわけですね。証券会社にはいわゆる幹事会社みたいなものがあるわけですね、幹事みたいなものが。それが、非常に上がってくる株だというと、その株を同業者に分けるんだというわけですね。これを協会提供と言うんだということです。そういう形で証券会社がもうけているというんですね。  親引けで発行会社の取締役がもうけ、今度は協会提供という形で同業の証券会社が分売を受けてもうける。だから、買取引受というのは、名前だけだ、実際は公募の現実を備えていないんだと、こういう考え方があるんですよ。これは大蔵省のほうではどうなんですか、協会提供というのはどんなものですか。
  264. 安井誠

    説明員(安井誠君) 非常に恐縮でございますが、証券業務課の西村事務官が来ておりますので、一番詳しいので、答えさしてよろしゅうございますか。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いいですよ。
  266. 西村正義

    説明員(西村正義君) 協会で、何というのでございますか、共栄といいますか、安定株主をつくるといいますか、一つの銘柄を引き受けますと、その一つの売買単位でございますね、千株なら千株というものをほかの協会員に配るという習慣が行なわれておるようでございます。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどの程度行なわれているのですか、公募の場合に。
  268. 西村正義

    説明員(西村正義君) 公募がありますごとに最低単位を配っておるようでございます。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最低単位というと、具体的に例をあげて言うと、どの程度の単位になりますか。
  270. 西村正義

    説明員(西村正義君) たとえば、額面五十円株でございますと五百株、それから五百円株でございますと五十株ということになります。つまり、取引所の売買単位ということでございます。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それを先に引いちゃって、その残りを公募するわけですか。
  272. 西村正義

    説明員(西村正義君) 引受のシンジケートというものがあります。それをもらいますと、その中の幹事という親玉がおるわけでして、それが自分が引き受けた中から分けてやっているわけであります。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自分の引き受けたといったって、全部引き受けたんじゃないですか、買取引受だから。買取引受のまた引受があるわけですか、その証券会社が現実に引き受けるやつが。どうもそういうふうに聞こえますね。
  274. 西村正義

    説明員(西村正義君) 引受という行為は、シンジケート団が引き受けるのでございます。ですから、その場合は売り出しになります。引き受けたものの分売という形で提供します。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的な例を引いてちょっと説明していただけませんか、何株なら何株の買取引受の場合にそれが現実にはどういうふうに行なわれているんだということを。
  276. 西村正義

    説明員(西村正義君) たとえば五千万円というような一銘柄は普通ないと思いますが、三千万円というところで山一と野村が幹事になっておるとします。千五百万円ずつを引き受ける。そうしますと、いま東京の証券業協会員がかりに二百社といたしますと、二百掛ける五百ですか、ですから十万株、十万株を野村と山一が五万株ずつ折半しまして協会に出す。それを公募価額をもって東京証券業協会傘下の証券業者が五百株ずつもらう。つまり、協会員の資格は、一般のお客さんと同じような立場であります。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうにやったほうが、証券業者同士の信義ということもあるし、共存共栄かもわからんのですが、利益があるわけでしょう。そういうふうに引き受けて分けてやれば証券業者が利益があるからこそやるんでしょう。損ならやらないでしょう。
  278. 西村正義

    説明員(西村正義君) これはですね、そういう五百株単位の小さい株をもらった証券業者はおもに非会員といいまして取引所に出入りできないような小さな会社でございます。それは、いろいろお客がございますけれども、非常に大口のお客さんにサービスとして提供するというような慣行になっておるというふうに聞いております。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから前に話があった親引けというやつですね、これは現実にどういうふうに行なわれておるんですか。
  280. 西村正義

    説明員(西村正義君) 実は、私も、親引けというのは、アメリカで社債の発行なんかの場合に、幹事会社は申込者に対して無条件で割当ができる、それからその他のシンジケートメンバーは幹事会社がとった残りをもらうものですから、結局条件つきの買取しかできないということで、会社のやった行為を親引けというふうに了解しておったんですが、日本でそういう習慣があるかどうか聞いておりませんです。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本で言われておる、そしていま問題となっているのは、あれじゃないですか、取締役が一たん買取引受で証券会社に行ったもののある一定の割合というものを最初から引受契約のときに裏契約で別に契約しておいて、そうしてもらうわけですね。取締役がそれにプレミアムをつけるかどうかは別として、それをほかに処分をして金もうけをするというのが親引けという定義なんでしょうね。それは業界のある人が言っておるわけですね。ぼくは詳しいことはわからないですが、そういうことが現、実に行なわれておって、買取引受の中の一定部分がそこでなくなってしまう。また、いまの協会提供はこれはあなたに言わせると大したものではないかもしれませんが、どの程度になるのか、何割になるのか、何割までいかないのか、場合によって違うと思うんですが、そういうのを引いた残りが現実に公募になるんだと、こういうことなんで、そういう公募のしかたというものはおかしいのじゃないか。結局、発行会社と証券会社が随意契約によっていろいろやっていることがおかしいから、株式の公募方法というものを改善しなくちゃいけないんじゃないか、こういうことが大蔵省で問題になっておるんだと、こういうことを言う人もあるわけですね。ぼくは株のことは前から断わっているようによくわからないんですが、大蔵省として株式の公募方法を改善しなければいけないとか、そういうような行き方が考えられておるんですか。
  282. 西村正義

    説明員(西村正義君) パブリック・オッファーといいますと、これはたとえば抽せんでもやればいいのか、それとも早い着順に並ばせたほうがいいのか、これをやらせる証券会社があるように聞いておりますけれども、結局技術的にはどうしてもある限界があると思うのです。完全なパブリック・オッファーというのは、何というのですか、書面により申し出をさせるということにでもすればいいと思うのですが、現実の問題として、大口顧客員とか優良な顧客員に優先的に割り当てるということも、これはその範囲内ならば公募の範囲に入るのじゃないかと思うのです。それからもう一つ、かりに発行値段が公正であるならば、これはコマーシャル・ベースの問題でありますから、買って損することもあるし、現に買って損をした人もたくさんいるわけでございますから、それらの点も考えまして、非常に目に余るような事態が起こっておるとは思っておりません。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証券会社が現実に利益を得ているのは、何で利益を得ているわけですか。いろいろあるでしょうけれども、これは一がいに言えませんか、ちょっと質問も荒っぽい質問ですから。
  284. 安井誠

    説明員(安井誠君) 私、手元にいまあります証券会社の収支状況というものでお話し申し上げますと、収入金額全体一〇〇に対しまして、その中で一番大きな割合を占めておりますのが手数料収入でございまして、大体六割から七割近くになっております。その次がその他収入、中には例の金融収入の関係が入るわけでございますが、これがやはり二割ないし三割、年度によって多少違っております。売り上げは、つまり自分が自己売買と申しますか、みずから株式を買い取りましてそれを自分みずからのリスクにおいて売るというものの占める割合は、三十七年、八年、九年とずっと非常に少なくなってきておりまして、売り上げの利益が、三十九年九月期でわずかに二・一%というような数字になっておるようでございます。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判例で言うのは、特に有利な発行価額というきめ方をしないで、これは立法上のテクニックだと思いますからこれでいいかもわかりませんが、何か公正でないという意味のことばを使っているというのが多いのじゃないですか。必ずしもそうではないですか。公正な価額で発行しないような場合には株主総会の議決が必要だという言い方をしているのじゃないですか。これは公正か公正でないかというのは結果から出てくることですからあれですが、八王子の場合は公正という形を使っていますね。
  286. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株を発行いたします場合の発行価額というのは、これは当然公正にきめられなければならないわけでございます。ただ、法律で定められました場合には有利な価額で発行もこれはできるわけですが、いずれにしても公正な価額であることが必要なわけであります。もしも不公正な価額によりまして株式を発行いたしますと、株主がその新株の発行を差止請求権が認められるわけであります。そういう意味におきまして、新株の発行価額が不公正であってはならないということは言えるわけでございます。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、公正な価額で発行される云々というふうに判決でいっているのが多いようにとれる。そのことと、特に有利な発行価額をきめて云々というようなこととはどういう関係になるのかと、こういう意味なんですがね。これはうらはらだと、公正かどうかということはあとから見て最終的にきまることなんで、発行するときには特に有利な発行価額というような形をとっていくというか、そういう考え方のほうが正しいという見方も出てくるのじゃないかと、こう思いますが、そのことばは、両者はどういう関係になるのですか。
  288. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 原則的には、株式の発行価額は、これは公正に定める必要があるわけでございます。何が公正かということは、その会社のいろいろの事情、あるいは経済界の状況を勘案いたしまして発行価額というものがきめられるべきものでございます。ただ、「特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ」と申しますのは、これは原則的には公正な発行価額でなければなりませんけれども、特別の事情があって特定の株主以外の者に対しまして特別に発行価額を安くして有利に発行するという場合に、有利な発行価額と、こういう表現を用いておるわけであります。この場合には、もちろん株主にも会社にも影響がございますので、株主総会の特別決議にかけていくということになるわけであります。
  289. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特に右利な発行価額というものの考え方というか、それは、株主平等の原則ですね。株主総会で承認されたとしても、基本的な株主平等の原則というものに反するのではないですか、特定の株主に対してそういうような発行のしかたをするということは。
  290. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株主平等の原則とは必ずしも結びつかないのじゃないかと思います。株主に対して差等を設けて新株を発行いたしますならば、これは平等の原則に反するわけでございますけれども、ここで申します株主以外の者に対して有利なる発行価額をもって発行するといいますのは、株主でない者に対して発行するわけでございます。したがいまして、現在の株主を不平等に取り扱うということにはならないと思うわけであります。
  291. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主以外の者に発行するのですけれども、発行してそれを受ける場合には株主になるわけでしょう。そういうわけじゃないですか。そうなれば特定の株主に有利な発行価額で交付されたということになるのではないですか。
  292. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 発行された株式を取得いたしました株主以外の者、むろんこれは株主平等の原則に服するわけでございますけれども、発行するかどうかという段階においては、まだそれは株主でないわけでございます。したがいまして、その段階における株主平等の原則という問題は出てまいらないと思うわけでございます。
  293. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、特に有利な発行価額というのは、具体的にはどういうふうなことをさして言っているということになるのですか。これが抽象的にはある程度きまりましても、実際にそのときの具体的な状況なり何なりによって違ってくるわけですから、非常にこれがあとでまた争いになってくることは考えられるわけですね。具体的に例をもって言うと、どういう場合がこれに当たるわけですか。
  294. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 「特ニ有利ナル発行価額」と申しますのは、ごく一般的に申し上げますと、通常の場合に発行すべき場合の発行価額と比べて特に右利な発行価額という意味でございます。さらに具体的に申しますと、先ほども質問ございましたけれども、かりにその株式の時価が百円といたしまして、一割五分ぐらい安い価額で発行するということがかりに許されるといたしますと、八十五円であればこれは差しつかえないわけでございます。その範囲であれば価額も公正だ、こう見てよろしいと思うわけであります。ところが、技術提携先とか特別な関係のある株主以外の者に対しまして特に株式を有利に与えようという場合に、二割安く、あるいは三割安くというふうにして発行価額をきめるわけでございます。もちろん、株式の種類、数とも同時に定めるわけでございますけれども、そういう場合に、特に有利なる発行価額ということになるわけでございます。  繰り返しますと、一割五分の範囲であればこれは特に有利でも不利でもない。しかし、それがかりに限界だとしますと、二割安くする、あるいは三割安くするという場合に、特に有利ということになろうと思うわけでございます。
  295. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一割五分とかいうあれは、まあそれはいま正確な統計から出てきたかどうかわかりませんけれども、どこから出てくるのですか。
  296. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは実際の新株の発行の実情を見まして、これはお手元の資料三七七ぺ−ジの表にございますが、三七七ページの表の右側の(2)の欄に「公募価額の決定は決定前日の株価の何%以下に定めたか」というところに、一〇%以下が二十五、一五%以下が二十五、十六%以上が九と、こういうふうになっております。現在の実情といたしまして一〇%ないし一五%ぐらいのところが一番多いわけでございますので、もしもこれが適正な公正な価額だと認められますならば、一応従来の実情から申しましてもこの程度のものは差しつかえないというふうに考えてよろしいのじゃないかと思うわけでございます。
  297. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一五%、安く発行して、そして証券会社は公募するときには一五%安く自分のところで引き受けて、その価額で売っているのですか、時価で売るのですか。
  298. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一五%安く引き受けますと、その同じ値段で分売するわけでございます。先ほどの契約書にございましたあの二百六十円という額がかりに一割五分安い値段だといたしますと、その同じ値段で分売するように契約をいたしております。したがいまして、証券会社といたしましては、引き受けた値段でさらにそれを第三者に分譲する、こういう形になると思います。
  299. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、証券会社というのは、変な話だけれども、ちっともおもしろみがないわけですね。
  300. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 先ほども大蔵省のほうからお答えがございましたが、六〇%ぐらいが手数料収入であるというその中に買取引受の収入も入っておると思うわけでございます。おもしろみがないと言えばないかもしれませんけれども、実際こうやって証券会社が手数料収入が上がる、採算がとれるということになりますれば、これも証券会社の一つの営業でございますし、これは引き受けて収益を上げるということは当然考えられることでございます。
  301. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一五%低く引き受けていて、そのままの価額で一般公募に売り出すわけですね。ところが、公募でなくて、自分の同列の会社みたいな、第二会社みたいのものをつくっていく、そこに買わせて、それが値段が上がってきますから、これでもうけるという行き方をとっているのじゃないですか。山一の場合はそれをやったのじゃないですか。これはどうなんですか。山一が大成建設との間で引き受けたのは三百二十万株です。そのうちの四十八万株を山一第二オープンというのに時価で組み入れて、買取価格と時価との差額をもうけたのじゃないですか。そういう形で証券会社はもうけるのじゃないですか。単に手数料だけでやっているのでは、資本主義の世の中ではそんなつまらないことをやっているところは私はないと思うんですね。正面切って聞かれればそれはそのとおりと言われますけれども、それでは証券会社なんかやる気がしないでしょう、ちっともおもしろくないから。ぼくはどうもそこが納得できない。
  302. 安井誠

    説明員(安井誠君) 先生御指摘のような事案があるのかないのか、私ども実態をよく存じませんけれども、証券会社のほうがもしあまりそういうことをやるようでございますと、証券市場というのは非常におかしな形になるわけでございまして、今回証券取引法の改正をいたしましたのも、そういうことを防止いたしたいという趣旨に考えているわけでございます。
  303. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証券取引法の改正のことはぼくはよく知りませんけれども、そういうことを防止したいという趣旨で改正したのですか、するのですか、あれですけれども、ということは、そういう事実が相当あったからこそ改正したいということになるのじゃないですか、これは変な質問ですけれども
  304. 安井誠

    説明員(安井誠君) あるいは私の申し上げ方が足りなかったかとも思いますが、証券取引法の第三章の証券会社というものの改正をいたしまして、大蔵省の監督上の命令権限を設けましたり、あるいは証券会社に禁止行為というものを設けたりしているわけでございます。それに基づきまして証券会社の健全性の準則等に関する省令というような省令まで設けまして、このたとえば三条にあるわけでございますが、「引受けに関する自己の取引上の地位を維持し又は有利ならしめるため、著しく不適当と認められる数量、価格その他の条件により、有価証券の引受けを行なっている場合」、こういう場合には、大蔵省のほうが監督上必要な事項を命ずることができるというような規定を設けているわけでございます。したがって、そのような事態が起きないように、現にあったかどうかということではなしに、そういうことが起きたのでは証券市場の発展に非常に悪い影響を及ぼすということから定められたものだと、かように了解しているわけでございます。
  305. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その一五%ぐらい、あるいは二〇%か知りませんけれども、時価より低い価額で発行するというのは、日本独特のものじゃないですか。どうなんですか。アメリカでは時価で発行しているのじゃないですか。それはヨーロッパでもあるかもわからぬけれども、特にアメリカとの比較はどうなっているか、アメリカではこういう行き方をとっていないでしょう。
  306. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) アメリカにおきましても、やり時価より安い価額で新株を発行いたしておるようでございます。アメリカで言われておりますところでは、大体十三%ぐらい、平均してでございますが、その程度の安い価額で発行されるのが通常の状態であるというふうに言われているようでございます。
  307. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカでは時価で引き受けさせるんだという説を、どこの資料で見たのか、だれが言ったのか、ちょっと忘れましたが、いずれにいたしましても、証券会社が手数料だけでやっているとすれば、それが全体の収入の六割ぐらいということになれば、証券会社はそんなにばたばたつぶれたりするわけはない。おもしろみはないかもわからぬけれども、非常に堅実だし、ある程度固定した改入になってくるわけですから、取引が減ったり多かったり、ある程度のことはあるけれども、どうもそこら辺のところはわからないですね。何か買取引受に関連をして、ことに一五%低く発行するというようなこと、親引けの問題、あるいは協会提供の問題、これらをめぐってそこに利益というか何かがなければ、どうもこの制度がこんなに維持されていくのがちょっと私には理解できないんですけれども、どうもいまここで議論しても始まりませんから……。  それはそれとして、いま幾つぐらいこれに関連して訴訟が起きているわけですか。まあ中島という人がよく起こしていますね。よくと言ってはたいへん失礼だけれども、たくさん出ていますね。いろんな種類のあれがあるでしょう。発行が公正でなかったというので取締役の責任だといって取締役にその差額の損失を支払えというような請求なんかもありますね。これは横河電機ですかどこですか忘れましたが、こういうような訴訟全体が、この法律は遡及しないにしても、一審から控訴、上告まで行く間に、あるいは口頭弁論終結当時のあれで判断をすることになってくると、影響を受けてくるということになるのですか。
  308. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これはこの商法の改正がございましても、過去の事実につきまして遡及して買取引受の新しい規定が適用になるというものではございません。過去において違法なものであれば、やはり改正後においても違法であるということになるわけでございます。
  309. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは当然ですわね。それでなかったら経済界は大混乱におちいるわけですから、まああたりまえですけれども、特に有利な発行価額というのは、いまの一五%、まあ一つの例としてそこら辺のところを基準にしてやるということに承っておいてよろしいのですか。八王子の場合は一五%まで——まあパーセントでいくわけにいきませんでしょうけれども、いかなかったんではないですか、十三%幾ら、一三・五%くらい低いのが不公正発行だというふうに認定していますね。
  310. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 先ほども申し上げましたように、現在のわが国の新株発行の実情から考えまして、ごく一般的に申し上げますならば、一〇%ないし一五%安くして発行することは許されるであろう。ただ、しかし、これはそれぞれの会社の事情も考えなければなりませんし、一般の経済事情も考えて、個々の新株発行の場合の株価は幾らが公正であるかということをきめるべき問題でございます。したがいまして、ごく一般論として申し上げれば、その程度は差しつかえないだろうということは言えると思いますけれども、個々の問題につきまして、はたしてそれでは一五%ならだいじょうぶか、こういうことになりますと、必ずしもそれはそうは言えないわけでございます。ごく一般的なことを・申し上げたわけでございまして、これは個別的にそれぞれ判定してきめなければならない問題でございます。
  311. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの一五%とか何%とか発行価額が低いということですね、この合理的な根拠はどこにあるわけですか。一五%低いということ  は、証券会社の経営と何か関係するのですか。どういうことでこれは慣習か何か知りませんけれどもできているわけですか。
  312. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは、新株発行を決定いたしまして手続が全部終了いたしますまでの間に、かなりの日数がかかるわけでございます。その間に株価は常に上下いたしておる、そういうことも考慮いたしまして、最終の払込期日におきまして引受人が喜んでこれを引き受けられるような発行価額にいたしませんと、安心して引き受けるわけにいかないわけでございます。そこで、まあ将来の見通しということも考え、また、引受人にも容易に引き受けてもらうというふうにいたしますためには、時価より若干安くしないとこれは成功しないわけでございます。その過去の実情が、先ほど申し上げましたように一〇%ないし一五%くらいのところが一番多い。しかも、それが問題なく従来新株の発行を成功させてきておるということでございますれば、実際問題としてはその辺のところが一応の目安になるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  313. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかりましたがね。そうすると、証券会社が買取引受した、そうして売り出しまでどのくらいですか、普通は。ものによって違うでしょうが。
  314. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) いろいろございますが、平均いたしますと大体十四日となっております。
  315. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうでしょう。まあ一カ月くらいのものもあるでしょうけれども、大体二週間でしょう。二週間の間にもちろんある程度の株価の変動があるわけですけれども、株が非常に上がってきたので、証券会社がそれを公募したら、それを受けた人がもうかるわけですね。——もうかるというわけでもないか。証券会社としては、そこでその株が上がってくるという見通しがあれば、一般の人に公募するよりは、自分の関係会社なり何なりへ引き受けさしたほうがお互いに有利だということになるわけですね。それで現実にそういうことが行なわれているんじゃないですか。よく公募の立て看板なんか出ておりますが、行ったときにはその株式はなかった、ほかへいろいろな関係のところに行ってしまっておるというようなことが現実にあるのじゃないかと思いますが、ぼくはよくわかりませんがね、そういう点は。  まだいろいろな問題があると、こう思うんですが、いずれにしても、法務省なり大蔵省なりが知っておる実情と、世間でいわれる実情とが、何か違うように思うんですがね。世間で言っておるのもそれはためにして言っておる人もあるし、一がいに言えませんがね。ことに衆議院の法務委員会で参考人が出ておりますね。あの議事録を読んでみますと、全く迷うんですね、ここで言われておることと。   〔理事山田徹一君退席、委員長着席〕 どうも何かぼくはその点で納得できないような気がしておるんですが、ぼくは何も証券会社が悪いことをするんだという前提で言っておるのじゃないのですがね。どうせ株を取得して——あまり口が悪いからやめますけれども、とにかく、それがまともな形で公正に運営していてそんなに利益があがるわけはない。どうもその辺は疑問がありますけれども、この程度にしておきます。  それから議決権の不統一行使の問題ですが、これはどうもよくわかりませんが、外国人に日本の株式が取得されておる。その場合、外国人が株を持っていない、どこかへやっぱり預けておくのですか。そういう関係やなんかとの関係なんですか。預けてある、そういう場合だけでもないんですか。——ちょっと待ってください。外国人が取得しておる場合に、株券を持ってなくて、どこかへ預けておくということが一つと、それが直ちに議決権の不統一行使の問題に結びつくかどうかは問題だと思うのですが、そういうことの必要性からこれが出てきたという考え方と、それから投資信託のような制度で、株券は信託会社の名前になっておるけれども、実際の株式の所有者は別にある、名前が出ておるところしか議決権の行使ができないというのはおかしいので、それで分割して行使できる方法を認めよう、こういうことから議決権の不統一行使の問題が出てきたんだと、こういう意見があるんですね。これは衆議院で参考人の阿部という人、証券団体協議会の常任委員長日本証券業協会連合会専務理事の人がそういう意見を述べておられるのですがね。これもちょっと私よくわからないのですが、どこから議決権の不統一行使の制度が出てきたんですか。
  316. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 議決権の不統一行使を認める必要があるかどうかということは、まず投資信託の場合に発生したわけでございます。同時にまた、先ほどお話しのA・D・R契約の場合、これがまた投資信託に似かよった形態をとっております。その場合に必要である。さらに、将来の問題でございますけれども、株式の集中決済のために振替決済制度というものがいま試みに行なわれておるやに聞いておりますが、こういったものが制度化されてまいりますと、やはり同じような問題が出てくるわけでございます。要は、実質的に株主である者と形式的に株主名簿に登録されておる株主というものがあります場合に、形式上の株主が議決権を行使いたしますについて、実質上の株主の意向を十分それに反映させよう、その必要があるために議決権の不統一行使を認める必要がある、こういうことになったわけでございます。たとえば、名義人が一人でございましても、それに信託しております実質上の株主が三名おるといたしますと、その三名の意向を反映いたしまして、一人の形式上の株主が議決権を行使するということになるわけでございます。たとえば、三名の中の二人がある議案について賛成である、しかし他の一人が反対であるという場合に、その持ち株に応じまして法律上の株主が賛成の議決権行使と反対の議決権行使と両方行使するようにしよう、こういうわけでございます。
  317. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 A・D・RとE・D・Rというのがあるんですか。こういう形で外国人に所有されておるんだと。その場合に、日本の株券を直接持っておるわけじゃないので、ある機関に保管されておる。実際の所有者はほかにいることになってきて、名前の出ておる人しか議決権の行使はできない。名前の出ておらない人はできないと。これと、あれですか、不統一行使とどういうふうにからむのですか、いまの説明をよく聞いてなかったのでわかりにくいんですが、A・D・RとE・D・Rと違うのですか。
  318. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) A・D・Rは、これはアメリカで行なわれておりますものでございます。E・D・Rはヨーロッパで行なわれておるものでございます。その違いでございます。実質は大体同じようなものでございます。たとえばA・D・Rの例で申し上げますと、アメリカの銀行が名義上の株主になっております。ところが、預託証券を交付を受けておる株主が別におるわけであります。契約によりまして利益配当なんかは預託証券の所持人のほうへ回っていくわけであります。したがいまして、実質的に株主としての利益を受けているのは預託証券の所持人でございます。したがって、銀行が議決権を行使いたしますときに、預託証券の所持人、A・D・Rの所持人がその議案に賛成か反対かということを言わせる必要があるのではないか。そこで、A・D・R所持人の意向を受けまして賛成か、反対かということを議決権の形であらわしていくわけであります。その場合に、A・D・Rの所持人というのは複数でございます。二人以上ございますので、そこに賛否の意見が分かれてまいります。従来の考え方でございますと、株主は一人でございますので、賛成か反対か、どちらかの議決権の行使をするほかはなかったわけでございますけれども、実質的に株主の意向を十分反映さして議決権を行使させるといたしますと、反対のものもあれば賛成のものもある。それをそれぞれの株数に応じまして法律上の株主が議決権を行使しよう、こういうわけでございます。
  319. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外国の場合はわかりましたが、そうすると、投資信託の場合はどういうふうになるのですか。
  320. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 投資信託の場合には、日本の信託銀行が株主になっております。法律上の株主でございます。ところが、金を信託いたしておりますのは周囲の証券会社でございます。その証券会社が実質的には配当を受けておるわけでございまして、それがさらに一般の投資家に還元していくわけでございます。そこで、その発行会社の議案につきまして、実質上にその利益を受けておる証券会社、これが一般の大衆投資家の意向を受けておるという立場にあるわけでございますから、その証券会社の意向を銀行を通じて議決権の行使に反映させよう、こういうことになるわけでございます。
  321. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いままで議決権の不統一行使が認められておらない段階においては、投資信託の場合は銀行はどうやって意思表示しておったのですか。
  322. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは、証券会社が全部白紙委任いたしておりまして、銀行に一任しておるというかっこうになっております。したがいまして、もう賛成か反対かどちらかの議決権を行使するということになるわけでございます。これは法律上当然銀行が議決権を行使する立場にあるわけでございまして、外部の支配を受けるわけじゃございませんけれども、実質的には信託関係にあるわけでございます。それは形式的にはそういうふうにいたしましてすべて銀行にまかしておるというふうになっておるのが従来の実情でございます。
  323. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、議決権の不統一行使というのは、いま言ったような考え方からすると、国内の投資信託の場合ももちろんでありますけれども、A・D・Rのようなものが、あれですか、そういう形で外国人に所有されておるのが日本の株式にも相当あるわけですか。その便宜をはかるということも一つ意味になっておるわけですか。
  324. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 数はそう多くはございません、A・D・Rで発行いたしております会社は。しかし、これも法律的には同じような形でございますので、実質上の株主と形式上の株主とこう分かれておりまして、こういう制度ができますれば当然にその適用は受けるということになるわけでございます。先ほども申し上げました株式の振替決済の場合にも、一つの機関に株式が集中して保管されることになりますと、この場合にもやはり実質上の株主と形式上の預託機関と分かれるわけでございまして、同じような問題が将来出てくる可能性があるわけでございます。それが実施される段階になりますと、やはり議決権の不統一行使が行なわれるようになるだろうというふうに考えるわけでございます。
  325. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もうさっき、ちょっと戻っちゃって恐縮なんですけれども、新株引受権の譲渡の問題ですが、これはいま外資に関する法律では認められているのですか。
  326. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 外資に関する法律によりますと、発行会社の書面による承諾があれば新株の引受権を譲渡できるようになっております。
  327. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本の株式会社法で認められていなくて、外資に関する法律で外国人だけにそれを認めるというのは、何か変ですね。おかしなことなんですが、それはそれとして、それで外資の場合に新株引受権の譲渡が認められていながら、そういう市場が十分に育成されておらない。だから、今度商法を改正して新株引受権の譲渡を引受証書によってやるようにしようということが中心のようですね、新株引受権の譲渡の問題は。それをはっきり言っていますよ、証券業協会の専務理事の人も。「現在外資法については新株引き受け権の譲渡を認めておるのでございます。」——これは四十一年四月二十一日の衆議院の法務委員会の参考人の意見ですが、「しかし、認められておっても、その新株引き受け権のマーケットがございませんために、実は円滑に動かないわけです。したがって、今度は、一般的に新株引き受け権のマーケットができるように、」——一般的にと言っておりますけれども、新株引き受け権の譲渡を認めたことは非常に妥当だと思います。」と、こういう形ですね。だから、いま外資法で認めている、認めてはいるけれども、現在のような段階だけでは十分でないから、商法を改正してそれも十分にいくようにしよう、それに付随的に国内的な株主の問題も起きてくるということで来ているのじゃないですか。どうもそういうふうに考えられるのですがね、経過なり何なりからいうと。ですから、前に言った国内の株主が新株の払込資金を得るために旧株を処分する必要がないようにしようなんで——新株の払込資金を得るために旧株を処分するということもこれはあるでしょうけれども、ほかでいくらでもできるわけですからね、そういうふうなあれは。この外資に関する法律で認められているから、それに相応するように商法を改正しようという動きが出てきたというのが筋ではないのですか。
  328. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 現在におきましては、外資に関する法律によりまして外国人が新株引受権を譲渡できる仕組みになっております。ただ、その場合にも不便があるということはお説のとおりだと思います。しかしながら、株式の発行の実情を見ますと、発行総株数の約二%くらいが外国人の株式の数のようでございます。そういたしますと、ごくわずかな、二%そこそこの株式のためにこういう法律を改正するというのはわれわれは考えていないわけでありまして、むしろ国内の圧倒的多数の株主が新株引受権を譲渡できるようになれば非常に益するところがある、そういう意味で今回の新株引受権の譲渡を認めようというわけでございます。これに関連して、従来窮屈であった外資の場合にも新株引受権の譲渡が楽になるということは、当然これは言えるわけでございますけれども、わずかな二%くらいの外国人株主のためにこういう改正をするという考えではございません。むしろ国内の株主を保護しようというのがこの改正のねらいでございます。
  329. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「新株引き受け証書、つまりワラント」——ワラントというのは何ですか。聞いていなかったですか、衆議院の参考人のときに。
  330. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株引受権証書のことのようでございます。
  331. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その「売買をどうしてやるかということが、早急に解決を迫られている問題」だと、こう言っているのですが、その売買をどうしてやるかということがどうして問題なんですかね。「新株引き受け権証書の売買をどうしてやるかということが、早急に解決を迫られている問題でございます。」と。これは、これが認められるようになれば売買が行なわれるのでしょうけれども、それを具体的にどこでどういうふうにして、売買をするということなんですか。
  332. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新株引受権の譲渡は、新株引受権証書の交付によってやることになるわけでございまして、現在の株式の譲渡が株券の裏書き、譲渡証書の交付、今度の改正によりますと株券の交付によって行なわれるのと相対応して考えられるわけでございます。新株引受権証書によりまして引受権を譲渡することは、これは譲渡人と譲受人との任意の契約によって自由にできるわけでございますが、急に新株引受権を譲渡しようとしてもその相手方が見つからないというふうな場合には、現在の株式市場のようなものがございますれば、それが楽に取引ができるということになるわけでございます。したがいまして、将来の問題でございますが、新株引受権の譲渡が活発に行なわれるようになりますと、自然そういった市場が形成されていくのではあるまいか、また、それが新株引受権の譲渡を円滑にする上において必要であろうという趣旨に理解されるわけでございます。
  333. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その新株引受権の譲渡というのは、株主に認められて株主から次の者が受け取りますね、その人はもう認めないのですか。
  334. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 株主から新株引受権証書によりまして譲渡を受けますと、その引受権証書によってさらに譲渡ができます。要するに、新株引受権は新株引受権証書によって行なわれるわけでございますので、最初は株主にそれが与えられますが、株主が譲渡いたしますと、あとはその証書を持っている者が自由に譲渡できるということになるわけでございます。
  335. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いつまでできるのですか。——いつまでという意味は、ある一定の期間に限定しないと不都合が生ずるのではないですか。
  336. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 申込期日の最終日までに申し込みませんと、新株引受権はなくなってしまう。したがいまして、短期間でございますけれども、その期間内でなければ譲渡はできません。
  337. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 新株引受権証書というものについても善意取得の適用があるのですか。
  338. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ございます。
  339. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどこに出てきているんですか。
  340. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 新設の二百八十条ノ六ノ三の第二項でございます。
  341. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あと残っておるのは転換社債の問題が残っておるわけですが、これも、あれですか、日本ではあまりなかったんですか。アメリカで非常に多かったわけですか。
  342. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) そのとおりでございます。
  343. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、転換社債の転換請求というのは、日本では相当これが行なわれる可能性があるわけですか。
  344. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 現在外国で発行されております転換社債が多いわけでございますけれども、この転換社債の転換請求につきまして隘路がございますために、国内ではこれがなかなか行ないがたいということになっております。隘路と申しますのは、現行の三百四十一条ノ六によりまして簡法の三百二十二条ノ五第三項を準用いたしております。これが閉鎖期間内には転換の請求ができないという趣旨でございます。そういたしますと、株主名簿の閉鎖期間内に株価がどんどん上がってまいりますときに、社債を株式に転換してそれを処分しようというふうに考えましても、これが許されないわけでございます。そこで、今回その二百二十二条ノ五の三項を削除することによりまして株主名簿の閉鎖期間内でも転換請求ができるようにしようということでございます。これが行なわれますと、国内におきましても転換社債がおそらく発行されるようになるだろうというふうに考えておるわけでございます。
  345. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何か、時価転換社債というものがあるんですか。日通が発行しようとしているんですか、発行するんですか。あれが違法であるとか違法でないとかいうのはどういうことですか。
  346. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 最近、時価転換社債ということが言われておりますが、これは具体的にどういう方向にきまりましたか、私、存じませんけれども、従来は額面で転換しておる、それを時価で転換しよう、こういうことでございます。
  347. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは別に商法上の制限には関係ないわけですか。
  348. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) それは商法上の問題ではございません。
  349. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 額面株式と無額面株式との変更の問題ですが、これは相互変更をはかろうとするのは、具体的にどういう必要性があるんですか。これもやっぱり外資というか、外国の関係が中心なんですか。
  350. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 額面株式と無額面株式の変更の問題は、これは外資には関係ございません。国内において若干無額面株式が発行されているわけでございますけれども、株券の併合をしようというような場合にも、額面株式、無額面株式がございますと、それができないわけでございます。無額面株式には無額面株式の利点があるわけでございますけれども、そういった場合に不都合が生ずるということになりますことと、発行会社の側にいたしましても、場合によりますと、額面株式、無額面株式と二つの株式を発行しておくことは事務を繁雑にするということもこれは消極的な理由でございますけれどもあるわけでございます。そこで、株主の請求によりまして額面株式を無額面株式に、あるいはその逆に、どちらかに変更できるようにしまして、ただいまの不便を補おうというのがこの改正の趣旨でございます。
  351. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本で無額面株式を発行しているのは三社ですか。それは外国では非常に多いのですか。
  352. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) わが国におきましては三社でございますけれどもアメリカにおきましては相当発行されておるやに聞いております。
  353. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本では三社しかないわけですね、無額面は。そうすると、そういう会社については、この条文は必要かもしれないけれども、現在の状況から、ほかの会社は無額面のものをどんどん発行するとも慣習上の差異なんかがあると思いますが考えられないわけですね。特にこの条文を改正しなければならないといういまさしあたっての理由はあるんですか。あまりないんじゃないですか。やっぱり外国の資本が入ってきて、日本にも無額面のものが出てくる可能性がある、そのときのことを考慮してやろうというんですか。特に何か差し迫った必要性はないように考えられるんですがね、特にやらなければならないほどの。
  354. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 外国資本を入れるために特に無額面株と額面株の変更を容易にしておくほうがいいのではないかということは考えていないわけでございます。先ほど申し上げましたように、無額面株式を発行いたしております会社は、三菱倉庫、富士観光、住友金属工業の三社でございます。しかし、会社の数は三つでございますれども、発行いたしております株式数は六億株くらいでごいます。したがって、株主の数は相当あるわけでございます。その株主が額面株式あるいは無額面株式というふうにいろいろの株式を持っておりますと、先ほど申し上げましたような不便がございますので、まずそこを解消していこうということでございます。これが便利になりますれば、あるいは将来無額面株式を発行することも多くなる場合もあるかと思いますけれども、外国資本を入れるために特にこれをやるということは全然考えていないわけでございます。
  355. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この三社が無額面の株式を発行しているというのは、何か特別な、そのほうがプラスがあるからという、こういう意味なんですか。
  356. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 三社いずれもそれぞれの会社の都合によって無額面株式を発行したと思いますけれども、特に住友金属工業の場合におきましては、これを発行いたします当時におきまして、株の値段が額面を割っていたようでございます、額面以下に下がっていたようでございます。そういたしますと、額面株式を発行することができなくなるわけでございまして、無額面株式にいたしまして額面以下の発行価額で株主を募集したと、こういう経緯があるようでございます。
  357. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、それは特殊な例ですけれども日本ではほとんどないわけですね。日本ではあまりなじんでないわけでしょう。これがふえていくという可能性はあるんですか。それは業界のほうで——そこまで法務省に言えといったって無理でしょうけれどもね。
  358. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 今回の法律の改正をいたしますれば、先ほど申し上げましたような不便が除かれるという利点は出てくるわけでございまして、そういう意味からいたしまして、将来利用される場合も多くなるであろうということは申し上げられると思いますけれども、改正によりまして目に見えるように直ちに無額面株式の発行がどんどんふえていくかということになりますと、これは何とも申し上げかねるわけでございます。
  359. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株の額面額はいま五十円が圧倒的に多いんですが、何か、あれですか、それを改めるという行き方はとっているわけですか。現行商法では五百円なんですか。
  360. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 現行商法では五百円になっております。しかし、従前五十円の額面の株式を発行しておったものが圧倒的に多かったわけでございまして、これをどうするかという問題があるわけでございますが、二十五年の改正のときに、商法施行法でございますか、これによりまして株主総会の特別決議によって額面を五百円に引き上げることができるという措置が講じてあるわけでございます。しかし、現在の株式界の実情といたしましては、五十円株がやはり依然として多いというのが実情でございます。
  361. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、将来どういうふうにしたいというふうに考えているわけなんですか。
  362. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは株式事務にも非常に影響のある問題でございまして、五十円の額面の株式というものがはたして株式として相当であるかどうかという問題でございます。確かに、現在の経済事情から申しまして、一株五十円というのはいかにもおかしい感じはいたすわけでございますけれども、さりとてこれを法律によってすべて強制的に額面金額を引き上げてしまうということにいたしますと、端株を持っておる株主の保護をどうするかというような問題も出てまいりまして、なかなか容易でないわけでございます。のみならず、どういうわけか存じませんが、たとえば五百円の株式を一株持っているよりは五十円の株式を十株持っているほうがいいというふうな感じもあるそうでございます。そういうことから、実情といたしましては五十円株を引き上げて五百円株にすることも困難なような事情があるわけであります。行く行くこれは株券の併合とかいろんなことをやりましてもう少し株式事務が簡素化するようにすることも考えなきゃならないわけでございますが、ともかく、現在におきましては、必ずしも五百円に引き上げるということが直ちに実施できるかどうかということにつきましてかなりの困難があると思います。
  363. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この法律全体を見てみて、どうもやっぱり外国資本を導入させるためにそちらにウエートを置いて本法の改正が行なわれたというふうな感じが非常に強いわけです。それは明らかに出ておらないかもしれませんけれども、各経済団体からの要請はどうもそういう点が中心になっておるし、同時に国内の会社の利益ということももちろん出てくるわけですが、そういう点において、ことに証券取引市場の実態、ことに買取引受の問題をめぐって、証券会社がなぜこれに非常に執着を持っているかということなんか、証券業協会の人は、それは誤解なんだ、それは決してうまみがあるものでない、それによって利益が与えられるものでもないなんて言っておりますけれども、どうもそういう点がはっきりしないわけですけれども日本の株式会社法の全体の傾向として、株主総会というものの権限がどんどん弱められていって、ことに授権資本制度が採用になってから取締役会の権限が非常に強くなってきている、こういうことが考えられると思うのですが、将来とも、あれですか、現実問題として株主総会というものの権限をだんだん弱めていって、業務執行機関である取締役会のほうに重点を置いていこうというように簡法並びに全体をもっていこうということを考ているわけなんですか。
  364. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま、そのような考えは持っておりません。もちろん、株式会社でございますので、株式会社法というものを考えますときには、やはり株主の立場ということをまず考えるべきでございます。そのためには、すべて取締役会の権限に委任してしまって、株主総会を有名無実のものにするということは、これはとうていできないことでございます。いろいろ問題がございますれば、逆に株主保護の厚くなるように考えなければなりませんし、また、会社の企業経営のための取締役会にもう少し働く場面を与えたほうがいいということになれば、そういった観点からの検討もこれは必要でございましょう。したがいまして、いまどちらの方向に向くべきであるというふうなことは申し上げかねますけれども、少なくとも、株主総会というものは、会社の中軸をなします株主の総体の意思決定機関でございまして、何と申しましても株式会社の一番重要な最高機関でございます。この権限を弱めていくということを故意に考えたりすることは現在いたしておりません。
  365. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  366. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をつけて。  ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  367. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないものと認めます。     —————————————
  368. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 委員異動について御報告いたします。  本日、岡村文四郎君が委員を辞任され、その補欠として井川伊平君が委員に選任されました。     —————————————
  369. 和泉覚

    委員長和泉覚君) それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  ——別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  370. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないと認めます。   それでは、これより採決に入ります。  商法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  371. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 多数と認めます。  よって、本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  372. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時五十五分散会      —————・—————