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政府委員(新谷正夫君) 買取引受の問題でございますけれ
ども、これは
昭和二十五、六年ごろから新株の発行が盛んに行なわれるようになりまして以来、発行会社といたしましては、新株の発行に非常に手数と経費がかかることになりますために、一般に公募いたします
一つの方式といたしまして証券会社に依頼いたしまして株主の募集にかかったというのがこのそもそもの始まりのようでございます。したがいまして、買取引受と申しましても、これは株式公募の
一つの形態であるというふうに観念してこういう新しい方式がだんだん慣行的に行なわれるに至ったという経緯をたどっているわけであります。買取引受につきましては、資料を差し上げてございますが、これをごらんになればわかると思いますけれ
ども、発行会社の発行価額と証券会社の分譲価額、これは全く同一になっております。ただ証券会社は発行会社から手数料だけもらってこの仕事を引き受けているという契約
内容になっているわけであります。いわば証券会社は新株発行についての中間のトンネル機関のような形になっておるわけであります。ところが、証券会社から新しい株主に対して株式を分売するという形をとっておりますために、証券会社が一応株主になる形になるわけであります。そこに問題が生じてきたわけでありまして、もしもそうだといたしますと、あらかじめ買取引受契約をいたします際に証券会社に対して新株の引受権を与えたことになるのではないか、これが問題の中心でございます。現行の二百八十条ノ三の第二項の規定によりますと、この場合には株主総会の特別決議が必要であるということになっておるわけでありますけれ
ども、実質は、先ほど申し上げますように、株式を公募する
一つの手段としてこういう形態がとられてきてまいったわけでございまして、発行会社も証券会社も、証券会社そのものが株主になるという意図はないということになっておるわけであります。したがいまして、証券会社に新株引受権を与えるというものではないというふうに観念されておったわけであります。ところが、いろいろこれが問題になりまして、訴えが起こされ、
裁判所の
判断といたしましても少なくとも商法の二百八十条ノ二の第二項の規定に抵触する面がある、新株の引受権を付与するにもかかわらず株主総会の特別決議を経ていないというところが法律違反だ、こういうことでございます。そこで、実際界におきましては、そういう判決が出ました以上は買取引受という方法は差し控えるべきであるというので、現在まで控えてきたような事情になっておるわけであります。
そこで、この二百八十条ノ二の第二項の規定の趣旨でございます。これが単純に新株引受権を株主以外の者に与えます場合にいかなる場合にもすべて株主総会の決議が必要という
意味なのか、あるいはまた、別にこの規定を設けられた趣旨があるのかというところが問題なわけなんでございます。しかし、ともかく、横浜地方
裁判所の判決から最近の最高
裁判所の判決に至りますまで、この点はやはり新株の引受権を付与するものであるから、商法二百八十条ノ二の第二項の規定に違反するという考え方には変わりはないわけでございます。そういたしますと、少なくともそういう解釈、ことに
裁判所においてそういう解釈が行なわれるということになりますと、実際の行なわれておる買取引受の当事者の
気持ち、また、現在行なわれておる慣行にも、非常に影響いたすわけであります。
ただ、これをどう見るかというところが問題点でございまして、なぜこういうふうに株主総会の特別決議を必要としたかということをよく考えてみますと、単に株主以外の者に新株の引受権を与えるというところに
意味があるのではなくて、これはそういったものに対しまして特別に有利な発行価額で新株を発行するというところに特別決議を持ってくる
意味があるということに
理解されましたために、今回の改正によってその間の趣旨を明確にしよう、こういうことになった次第でございます。