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1966-06-02 第51回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二日(木曜日)    午前十時五十八分開会     —————————————    委員の異動  六月一日     辞任         補欠選任      安井  謙君     平井 太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 木島 義夫君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君     委 員                 後藤 義隆君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 中野 文門君                 中山 福藏君                 亀田 得治君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君                 市川 房枝君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        通商産業大臣   三木 武夫君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        小川平四郎君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        大蔵省主税局税        制第一課長    中橋敬次郎君        通商産業省通商        局次長      原田  明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○商法の一部を改正する法律案内閣提出、  院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (出入国管理に関する件)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、商法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松野孝一

    松野孝一君 私は、他の質問者との重複を避けまして若干質問いたしたいと思います。 この商法改正案がだいぶ経済界要望に基づくということであるが、今日までどの方面から要望があったのですか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  4. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 今回の商法改正につきましては、昭和三十六、七年ころからいろいろ経済界からの強い要望が出てまいりまして、ことに、経済団体連合会、あるいは東京商工会議所、あるいは関西経済連合会、さらに日本証券業協会連合会全国株式懇話会連合会、そういった方面から要望がなされたわけでございます。
  5. 松野孝一

    松野孝一君 この商法改正法案については、自民党の法務部会でも何回かやりましたが、問題の中心は、この改正案の最も重点となるところは、経済が非常に成長しておると、その成長しているのに即応して商法取引法としてあるいは技術法として改正しなければいかぬというような点に重点が置かれておるように思ったのであります。したがって、大会社とかあるいは大株主とか、そういう方面には非常に好都合というようにも思うのですが、一面、小株主とかあるいはそういう種類の者の利益というものは十分保護されていないんじゃないかというような意見が相当出たのであります。その点についてこの改正法案はいろいろ考えておられるようでありますけれども、株主利益保護ということについては大体相当考えてやっておると思いますが、どういうふうに特に考えたかということについて総体論的に話していただきたいと思います。
  6. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 今回の商法改正案に盛られております項目が大体七項目になっております。いずれも、最近の経済情勢変遷に伴いまして、それに即応するように商法必要部分最小限度改正していこうという趣旨でございます。とりわけ、商法改正ということになりますと、特に株式会社でございますと、何と申しましても株主利益保護ということを忘れてはならないわけでございます。当面の改正事項といたしましては、直接株主保護を目的といたしたものもございますし、また、直接にはそうでないものもあるわけでございますが、しかし、いずれの改正点をとりましても、株主保護ということを考えないで改正を行なうということは、これはできないわけでございます。すべての項目にわたりまして株主立場利益保護ということを考えながら今回の改正案をつくったわけでございます。  簡単に申し上げますと、たとえば株式譲渡制限でございますが、これは中小規模の閉鎖的な会社のために譲渡制限規定を新たに設けようとするものでございますけれども、これも株主意向を十分反映できるようにする必要がございますので、定款変更いたしまして譲渡制限定めを設けるにつきましても、従来の株主総会特別決議よりもさらに要件を厳重にいたしまして、小株主意向が十分反映できるように措置いたしてまいりますと同時に、さらにこの譲渡制限につきまして反対株主株式買取請求権を認めるというふうなことを考えたわけでございます。  それから額面株式と無額面株式変更でございますが、これも主として株主利益を考えて双互の変更ができるようにいたしたわけでございます。  さらに、株式譲渡方式でございますが、これは最近の株式譲渡の実際に即しますように、株式譲渡が円滑になし得るように措置いたしたわけでございますが、それにいたしましても、株主側にとりましては、従来の裏書き制度を廃止するということに伴う一まつの不安が残るやにうかがえますために、特に株券の保管という観点から、株主の希望によりまして株券発行しないとか、あるいは発行会社におきまして株券を銀行なり信託会社に寄託するという方法を講じまして、株主利益保護を考えたわけでございます。  さらに、議決権の不統一行使でございますが、これは実質上の株主が二名以上ございますときに、法律上の形式的な株主議決権を行使いたします場合、その実質上の株主意向を十分反映できるようにいたそうというものでございまして、これももちろん株主利益保護のためのものでございます。  さらに、新株発行手続でございますが、これは現行新株発行手続につきまして若干疑義がございますために、この点を明らかにいたしまして、新株発行を円滑に行なうようにいたしたわけでございますが、これも株主保護ということを考えまして、特に株主の利害に影響のあります場合を明らかにして、新株発行手続を明確に定めようという趣旨のものでございます。  次に、新株引受権譲渡を認めることにいたしておりますが、これも新株引受権を与えられました従前株主利益のために改正しようというものでございます。  さらに、転換社債転換請求でございますが、これはさしあたりは社債権者利益のためということでございますが、社債権者転換請求によりまして株主になりますときの措置を講じましたわけでございます。  したがいまして、すべて株主立場、その利益という面を考えながら今回の改正をいたそうというふうに考えているわけでございます。
  7. 松野孝一

    松野孝一君 そのほか各条文についてごく簡単にお伺いしたいと思います。  株式譲渡制限についてでありますが、これは今度の改正案におきまして定款をもって取締役会承認があればできるというふうに定めるようになっておまりすが、この場合に、その定めあることを知らないで株主取締役会承認がないのにその会社株式譲渡したと。その場合には、その相手方株主となることはできないのでしょうね。この点はどうですか。
  8. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 商法の第二百四条の改正案によりまして、株式譲渡につきまして定款をもって取締役会承認を要する旨を定めることができるようになるわけでございますが、この定めがありました場合に、取締役会承認を得ないで株式譲渡いたしますと、これはかりに譲渡いたします者あるいは譲り受けようとする者が取締役会承認がないということを知らないでやったといたしましても、これは株式譲渡をすることはできないわけでございます。取締役会承認がなければ株主にはなれないということになるわけであります。
  9. 松野孝一

    松野孝一君 わかりました。  その次にお伺いしますが、株式譲渡するには取締役会承認があればできるというふうになっておりますが、もしこれを株主総会または代表取締役承認が必要であるというふうに定款定めた場合はこれはどうなるのですか、定款定めることはできるのですか。
  10. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 二百四条のただし書きにもございますように、取締役会承認を要する旨を定めることができるという趣旨でございますので、株主総会承認あるいは代表取締役承認というふうに定款をもって定めることはできないものと考えます。ことに、株式譲渡につきまして一々株主総会承認を得るということは、実際問題といたしましてこれは困難でございます。事実上できないだろうと思います。また、代表取締役のみの承認にかけるということも、いささか事柄の性質上適当でない。むしろ取締役会承認が必要であるということが適当であろうというのでこのようなことにいたしたわけであります。したがいまして、この法律規定趣旨から申しますと、株主総会承認あるいは代表取締役承認というふうに定款定めることはできないというふうに解釈いたしております。
  11. 松野孝一

    松野孝一君 もう一つ取締役会が指定した者が、商法第二百四条ノ三の第一項の規定によってその株式自分に売り渡せという請求をしたが、同条第二項の供託をしていないときは、その請求は有効でないと思いますが、この点をちょっと確かめておきたいと思います。
  12. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式譲渡制限がございます場合に、取締役会承認を求めます際に、取締役会におきましてその譲渡相手方を指定できるように二百四条ノ二の規定がございまして、それを受けましてそれ以下にこまかい手続規定が設けてございます。二百四条ノ三の第一項によりまして、指定されました者が自分株式売り渡しをしてもらいたいということを請求できるようになっておりますがこれには、同条の第二項の規定によりまして、一定の金額を供託所供託することを要する、このように規定されております。この趣旨は、売り渡しを受ける者がその代金の支払いを確実にできるように、逆に言いますれば、売り渡すほうにいたしますれば譲渡代金が確実に確保できるように担保しようとする趣旨でございます。したがいまして、もしも売渡請求にあたりまして二百四条ノ三第二項の供託がございませんと、売渡請求効力を生じない、このように解しております。
  13. 松野孝一

    松野孝一君 わかりました。  それからもう一つ額面株式と無額面株式との間の変更についてお伺いしたいのですが、日本には額面株式と無額面株式発行している会社というのは非常に少ないというふうに聞いておりますが、額面株式と無額面株式の間の変更が認められないとどういう不都合が生ずるのですか。
  14. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 無額面株式発行することができるようになりましたのは、昭和二十五年の改正によるものでございます。これはアメリカの制度を導入いたしましてこのようなことが認められることになったわけでございますけれども、まあわが国株式界の実際といたしましては無額面株式というものに十分なれていないというふうな面もあったためと思われますけれども、実際問題といたしましては無額面株式発行しておる会社は数が少ないわけでございます。しかし、発行いたしております会社につきましては、相当多くの無額面株式発行いたしておるわけであります。  そこで、株主立場に立って考えますと、たとえば株券を併合しようというふうな場合に、額面株式と無額面株式がございますと、併合ができないわけでございます。また、発行会社立場に立ってみましても、二つの種類株式があるということが株式事務にかなり複雑な手続をわずらわすということになるわけでございますので、そういった観点から額面株式と無額面株式との相互の変更を認め縁るようにいたしまして、たとえば、額面株式、無額面株式の双方を持っておる株主が、これを額面株式に統一して株券を併合したいというふうな場合に、無額面株式額面株式変更し得る道を開こう、こういう趣旨でございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 関連といいますか、前に戻って株式譲渡制限のところでちょっとお聞きしたいのですが、現行法では株式譲渡制限というのはできないわけですか。どういうふうになっているんですか。
  16. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現行法ではできません。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういう理論的な根拠なんですか。
  18. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、昭和二十五年に、昔時占領下でございましたが、株式民主化ということが強く言われまして、株式というものは一般投資家に、大衆に開放されるべきものであるという考え方から、従前株式譲渡禁止あるいは制限をすべきでないというので、従前譲渡制限規定を改めたということでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは歴史的な変遷ですけれども、その理論的根拠というか、それが現在の場合に特に変更しなきゃならぬというファクターはどこにあるわけですか。
  20. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 二十五年に株式譲渡制限を撤廃いたしました当時に、これは株式会社実態の問題にもなってまいるわけでございますけれども、当時の株式会社のうちで約八四%以上の会社株式譲渡制限定めをいたしておったわけでございます。これは、昭和二十五年当時の調査を昨年末私どものほうでいたしたわけでございますが、これは全部にわたってすることはできませんでしたけれども、日本橋の商業登記所におきまして調べられる範囲のものを調べてみましたら、約三百八十社の実態調査いたしましたところ、八四%余りが譲渡制限規定定めておったということがわかったわけでございます。二十五年に改正されましても、そういう実情下において譲渡制限を撤廃いたしましたために、経済界におきましては改正後間もなくやはりこれはもとに復すべきであるという要望があらわれてまいりまして、譲渡制限規定はやはり従前のようにすべきである、こういう声が高まってきたわけでございます。これは、株式会社の中に、大会社は別といたしまして、小規模の同族的な会社、閉鎖的な会社が非常に多くを占めておるわけでありまして、このような会社につきまして完全に株式譲渡を自由にしておくということは会社業務運営上いろいろ支障を生ずるというととからそのような要望がなされたものと考えられるわけでございます。ことに、二十五年以前の実情がただいま申し上げたような状況にございましたために、この改正がはたしてわが国株式会社実態に即するものであるかどうかということについての批判が行なわれるに至ったわけでございます。そこで、実際界の実情に合うように譲渡制限定めをする必要があるということにいたしたわけでございます。  それにいたしましても、二十五年の改正以前におきましては、株式譲渡を完全に禁止することもできたわけでございます。しかし、それは現下の情勢にかんがみますと行き過ぎであろう、少なくとも資本を投下しております株主にはその投下資本を何らかの方法で回収する道を保障する必要があろうということを考えまして、若干規定がこまかくなりましたけれども、一応譲渡制限定めがある会社につきまして必ず株主がその投下資本の回収をできる道を講じたわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 二十五年の前に株式譲渡制限をしていたというのは、どういう形でしていたわけですか。取締役会決議だとか、そういう形でやっていたわけですか。
  22. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 二十五年の改正以前におきましては、株式譲渡禁止あるいは制限の形態というものはいろいろあったわけでございます。定款ではっきりと譲渡することができないというふうに定めたものもございますし、あるいは、会社承認を要するというふうにしたものもあるようでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、今度の改正法でも、定款株式譲渡制限をできるとかできないとか、こういうことをはっきり書かなくちゃいけないわけですか。
  24. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 原則的には株式譲渡できるわけでございます。したがいまして、定款に特に規定がございませんとすれば、譲渡自由Hである、こういうことになります。特に譲渡について制限を加える必要があるという場合にのみ定款によりましてその旨を定める、こういうことになるわけでございます。したがいまして、すべての株式会社につきまして必ず定款譲渡承認するようなことをするかしないかということを書く必要はないわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式譲渡は自由なわけですから、なんにも書いてなければできるわけですが、そうすると、それを制限するのは取締役会決議でできるということになれば、そういう新法ができれば、特に制限をすることができるとかできないとかということは定款に善く必要がなくなってきて、新法規定で、定款定款として、いつでも取締役会決議譲渡制限ができると、こういう形になるわけですか。取締役会譲渡制限をきめたときには定款変更になるわけですか。
  26. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 取締役会決議のみによって譲渡制限をするということにはならないわけであります。必ず定款変更いたしまして、取締役会承認がなければ株式譲渡はできないというふうに定款で明らかにするわけでございます。したがいまして、株主総会特別決議によりまして定款変更手続を踏まなければなりません。ことに、この定款変更につきましては、先ほど申し上げましたごとく、株主立場も十分考える必要がございますので、今回の三百四十八条の新設規定によりまして、この場合の定款変更のための株主総会特別決議につきましては、要件一般特別決議以上に厳重にいたしまして、株主意向を十分反映できるようにいたしたのでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、結局、取締役会決議でできるということになっておりますけれども、定款変更ということになれば、株主総会の同意がなければだめだということになるんですか。
  28. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式譲渡制限をするかしないかという基本の問題につきましては、定款変更によって定めるわけでございます。それが定まりますと、個々株式譲渡につきまして取締役会承認を得ると、こういうことになるわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこら辺のところの関係が私の考え方だとちょっと違っていたのかもしれませんが、それならば、何も取締役会ということの必要はなくて、代表取締役業務執行機関なんだから、代表取締役ならできると——株主総会一般的に譲渡制限ができるということになっておれば、あと業務執行の問題ですから、代表取締役ができるということでいいんじゃないですか。
  30. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 理屈といたしましては、代表取締役業務執行権限を委任されておる範囲におきましては、それができるようにすることも可能であろうと思うのでございます。しかし、株式譲渡制限、ことに個々株式譲渡につきましてそれがいいか悪いかということを判断する必要があるわけでございますので、代表取締役だけの専権的な措置にゆだねるというよりは、取締役会という多数の理事者会議体における決議によってこれをきめたほうが公正を担保できる、こういうふうに考えたわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれども、代表取締役業務執行機関であって代表取締機関なんですから、株主総会ですでに一般的に株式譲渡制限ができるということをきめてあれば、それに基づいて取締役会を経ないで代表取締役がそれをきめても無効でないわけでしょう。
  32. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 先ほど松野委員からも御町川間があった点でございますが、取締役会承認を要するという方式によって譲渡制限を可能ならしめよう、こういうわけでございます。したがいまして、代表取締役承認によって譲渡制限をできるようにするというふうに定めることはできないと、このように解釈しております。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 できないといっても、場合が二つあると思うんです。取締役会株式個々譲渡制限代表取締役権限を委任するという場合ならできるかどうかということが一つの問題と、そういう形でなくて、代表取締役業務執行機関としてある特定の株式譲渡制限して外部に発表した場合、そうしたことが一体無効になるかどうかと聞いているわけです。無効ではないでしょう。買取引受の場合にもそれが問題になってくるわけですね。これは七日か九日にゆっくり質問しますけれども、判例があって、あれでしょう、買取引受のときだって、株主総会議決を要するという意見もあるけれども、そうでなくて、取締役会議決でいいんだという意見もあり、取締役会議決がなくても有効なんだ、代表取締役取締役会議決なくして買取引受のことをやってもこれは有効なんだという判例もあるわけでしょう。だんだんこう下がってきちゃっているわけですね。だから、本件の株式譲渡制限の場合でも、代表取締役がやった場合に有効か無効かということを聞いているわけです。裏を返せば、いまの新法改正強行法規かということにも関連してくると、こう思うんですがね。
  34. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 先ほどの買取引受の場合におきましては、これは株券発行してしまいますと、前の手続会社業務執行に関する内部の意思決定であるという理屈から、その株式発行は有効であると、こういうふうに見ているわけであります。こちらの株式譲渡制限に関するものは、二百四条のただし書きにございますように、定款をもって取締役会承認を要するという方式のみを定めてございます。したがいまして、取締役会承認という形で承認がなされませんと、これは承認の効果を生じない。したがいまして、ほかの形式によりますのはこれは無効である、こういうふうに考えております。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 取締役会承認を経ないものは絶対的に無効だ、これは強行法規だ、無効なんだと、こういうふうに確定的な見解だと承ってよろしいのでしょうか。
  36. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そのように御理解いただいてけっこうだと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれども、取締役会現実にやっていないんじゃないですか。やっているのですか。
  38. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現実にすべての会社取締役会というものをやっておるかどうかということは別問題といたしまして、法律のたてまえといたしましては、やはり取締役会承認、これが必要であろうと考えるわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 取締役会承認は、それでは代表取締役がやってしまったことに対してあとから追認した場合はどうなんですか。絶対無効ならば、追認したって無効が活癒されることはないですか。そういう考え方でいいわけですか。取引の安全との関係でどうなんですか、それは。
  40. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 追認という形をとりますかどうか別問題といたしまして、あと取締役会承認するという形がございますれば、それは差しつかえないと思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、取締役会承認すれば差しつかえないというのは、承認した瞬間からそのあとのものは効力があるけれども、その前のことは、代表取締役が単独でやってしまったという場合には、それは効力がないと承ってよろしいですか。だからぼくは追認ということばを使っているわけですが。
  42. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 追認したときからやはりその効力は生ずるわけでございます。したがいまして、追認というからには、その前にやりました代表取締役承認行為が是認されることになりますけれども、しかし、追認の効果が生じますのは取締役会承認のあった時点からであります。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、取締役会承認があった時点から追認の効果は生ずるとなると、前へさかのぼらないわけですし、ただその取締役会承認代表取締役の責任が免除されるということになるのですか。
  44. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 代表取締役承認いたしておりましても、これは先ほど申し上げましたように無効であるというふうに私ども解釈いたしております。したがいまして、その行為を追認するという形をとりましょうとも、あるいはそれとは別個に取締役会の単純な承認という形をとりまし、ようとも、ともかく取締役会承認がございますれば、その時点から株式譲渡は有効になる、こういうふうに考えるわけであります。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかりましたけれども、だから、その取締役会承認がある以前に代表取締役株式譲渡制限をした、それによって第三者が不測の損害をこうむったということもあり得るわけですね、例によっては。ないですか。これは観念的かもわからぬけれども。そうした場合の損害賠償の責任というものは、取締役会あとからの承認によってこの代表取締役の責任あるいは損害賠償の責任というふうなものはなくなるのですか、あるいはなくならないのですか。
  46. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 当事者間におきまして株式譲渡をしようという場合に、取締役会承認がなければこれは効力を生じないわけでございます。したがいまして、そういう株式譲渡契約というものが行なわれましても、取締役会承認がない限りにおきましては、その契約当事者の間の問題としてこれは一般の原則に従って解決されなければならないわけであります。特に代表取締役が第三者に損害を加えたという事実がございますればこれは別問題でございますけれども、原則には当事者間の契約の問題で解決されなければならないというふうに考えます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくの質問じゃありませんから、松野委員の質問をとっちゃって悪いから、なんですけれども、株式譲渡制限権限取締役会にあるけれども、それを代表取締役に委任するというか権限を移すというか、そういうことを定款できめるのは違法なんですか。
  48. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 権限代表取締役に移すということはできないというふうに考えております。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどうしてできないのかということは、この新改正法でそうはっきり規定してあるからできないという意味にとってよろしいですか。
  50. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 定款をもって取締役会承認を要するというふうに定めることができると、こう法律に書いてございます。したがいまして、取締役会承認がなければ譲渡についての会社承認はなかったものと、こういうふうに言わざるを得ないわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、条文の書き方は、取締役会承認を経ることを要すと書いてあるけれども、その反面のことは書いてないのじゃないですか。取締役会承認を経なければ絶対無効だという書き方じゃないですね。だから、反面の解釈としてその裏の問題も出てくるし、取締役会がその権限を委任するということも当然——実際問題としてほとんど取締役会をやっていないのじゃないですか、取締役会を一々開くことはないんですから。だから、権限を委任しても有効なんだという考え方が反面に出てくるのじゃないですか、その条文の書き方から言うと。それは出てこないというふうにとっていいわけですか。
  52. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 一応事務のほうは代表取締役がやる場合があるかもしれませんけれども、これは実質的には取締役会承認というものを前提にいたしまして行なわれるわけでございます。取締役会承認権限というものを代表取締役に委譲してしまうということは、私はこの改正趣旨からはずれるというふうに解しております。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、もう一点だけ聞きますが、この譲渡制限ということは、株式会社の本質から見るとどうなんですか、おかしいですか。
  54. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 本質と申しましても、考え方によると思うのでございます。本来譲渡制限というものをなすべきでないということでございますれば、現行法のように自由に譲渡できるようにしなければならぬわけでございますが、しかし、外国の立法例によりましても、株式会社株式譲渡制限をできるように定めておる例がかなりあるわけでございまして、いずれが本か質ということは必ずしも一がいに言い切れないのでございまして、これは政策的にその辺は考えていっても差しつかえないだろうというふうに考えます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株式会社の本質といってもいろいろあるのですけれども、株式会社の本質として必要欠くべからざるものは、これは何と何なんでしょうか。
  56. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) もちろん株主がなければ株式会社というものは成り立たないわけでございまして、株主の地位を割合的な単位で表象するものが株式でございます。しかも、その株式譲渡できるというたてまえに立っておるわけでございます。これが株式会社の特色ということが言えると思うのでございます。しかし、譲渡できるといっても、これを無制限譲渡を認めるようにしていいか、それともある程度の規制を加えることにしていいか、それとも全くこれを場合によればその会社の自主的な決定によって禁止することができるようにするのがいいのか、これはそれぞれの社会事情、経済事情に応じてきめられるべき筋合のものだろうと思うわけでございます。本来株式というのは譲渡し得るものであるという前提に立っておることは、もう御承知のとおりでございます。ただ、いろいろの経済事情、社会事情に応じまして、無制限譲渡を認めるということがかえって不都合な結果を生ずるという場合もございますので、その必要に応じて会社が自主的にこれを制限し得るようにするというのが今回の改正趣旨なのでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 有限会社の場合は、持ち分ですか、これはどうなっておりますか、流通は。
  58. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 持ち分の譲渡はできるわけでございますけれども、社員総会の承認が必要でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 有限会社の場合は社員総会の承認が必要であって、株式会社の場合は取締役会承認というのは、これはどういうわけですか。
  60. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 有限会社の場合は、規模も非常に小そうございまして、また、人的に結合する色彩が非常に強いわけでございます。ところが、株式会社の場合には、これを構成しております株主の数というのは非常に多くなるのが通常でございます。有限会社の社員総会というものと株式会社株主総会というものは、その数におきまして非常な開きがあるわけであります。実際の運営上、株主総会決議にこれをかけるというふうになりますと、手続的に非常にめんどうになりますのみならず、株式譲渡を行なおうという場合に、急場の間に合わない結果にもなるわけでございます。したがいまして、できるだけ公正に譲渡を認めるか認めないかという判断をする機関といたしましては、取締役会が最も適当であろうと、こういうふうに考えたわけであります。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式譲渡制限をするということは、株式一般に流れていって、そしていわゆる一票株主のような形になって総会屋があらわれてきて株主総会や何かでいろいろ問題を起こしてまいるということから、総会屋対策という意味も含めてこの株式譲渡制限ということが考えられているんですか。それはまあ中心でないとしても、そういう意味があるんですか。
  62. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) それを直接の改正のねらいにしておるわけではございません。むしろこれは同族的な会社、閉鎖的な会社の運営の円滑を期するという趣旨でございまして、株主総会における総会荒らしを防ぐためという効果もそれは付随的には出てくるかとも思いますけれども、それが目的で今回の改正をお願いしておるのではないわけであります。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 同族的な閉鎖的な会社というものは、現実株券発行していないのが非常に多いのじゃないかと思うんですね。ですから、こういうふうな会社については株券発行しなくてもいいのだということを法律できめれば、それで済んじゃうのじゃないんですか、わざわざこういうことをやらなくても。それはできないわけですか。
  64. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式会社といたしましては、本来株主に対して株券発行するということがたてまえでございます。したがいまして、ある会社について株券発行しなくてもいいというふうに定めることは適当でございませんのみならず、また、どの程度の会社についてそういうことができるかということも、実際問題として非常に判定に困難でございますので、法律規定によりましてそういうことを書くことも実際問題としては困難であろうと思うわけであります。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式会社の設立は、いまは登記によって設置されるわけですね。そうすると、設立の場合には、すぐそのときに設立と同時に株式譲渡制限ということはできないことになるんですか。観念的に言うと、まあ取締役会がすぐできないからというようなことで、時間的な差があるわけですか、そこに。
  66. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 設立に際しまして当初の定款においてそれを定めておくことも可能でございます。また、創立総会に際しまして定款変更して定めることができるようにもなっております。
  67. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  68. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をつけて。
  69. 亀田得治

    ○亀田得治君 国税庁にわざわざ来てもらった意味は、個人会社といいますか、個人企業と大して変わらないものが会社の形態を持っておる、そういうふうなことからして会社の数が非常に多いわけなんですね。こういうことが、株式会社法という一つ法律の中で、大きなものから小さなものまでいろいろこう扱わなきゃならない、こういう事態を生んでおるわけです。現にそういう状態があるわけだから、株式会社法律としては何とかそれに合わすように努力しなきゃならぬわけなんですが、まあそれは別問題として、そのような現象が起こる一つの大きな理由は、税法上の問題がやはりからんでおるというふうに私たちは見ておるわけなんです。  これは、われわれしょっちゅうそういう立場からよく陳情等も聞くわけです。そこで、本来同じ仕事をしておるものが、会社だから税金が安い、個人だから重い。全く同じ、たとえば人数にしても取り扱い量にしても同じとしてその結果が違ってくる、こういう事態に不自然さがあるのじゃないかというふうに考えるわけなんですね。そういう立場から、税方面というものをもっときちんとすれば、税務対策としてどうしても個人企業を会社企業に改めなきゃならぬというふうなことは出てこぬわけだし、それだけ実体に即さない会社ということであれば、これはもう派生していろんな問題が起こるわけです。起きているわけです。現に、もめたりした場合に、実体は会社じゃないんだから、たとえば総会などもやっていない。何事もないときにはそれで済んでいるけれども、しかし、もめたときには、取締役はちっとも法規を守っておらぬ、こんな決議は無効じゃといったようなことで、やはり紛糾になる。紛糾になれば、平素は善意でやっておったって、やはり法に従って結論を出すということにならざるを得ない。その結果は、非常に善良な経営者がいじめられたり、まあいろいろするわけですね。だから、そこは私は税法が一つの問題だと思うんです。そういうことを皆さん一体検討されておるのかどうか、基本的な事柄につきまして少し確かめたい。どうなんですか。
  70. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 税金面からただいま御指摘のように個人企業が法人成りの傾向が非常に強いという点は、確かに戦後非常に強く見られた傾向でございます。また、そういう傾向は依然としていまも続いておることも確かだろうと思いますけれども、それを抜本的に解決いたします方法としましては、一つには、全く個人企業類似のような法人企業につきまして、個人と同じように課税をする、すなわち、法人形態で稼得しました利益につきまして、それを法人におきまして課税するということを一切放てきいたしまして、個人の段階にたとえ分配せられないでも、個人に分配せられたかのごとく課税するという方策をとりますれば、仰せのように、個人企業に類似しました法人企業とそれから法人企業の税金の問題というのは相当解決されると思います。しかしながら、どういう程度のものにつきまして一応形式的には法人の形態をとっておりますものをそういうふうに留保、分配のいかんにかかわりませず個人と同様に課税していいのかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、むしろ、私どもといたしましては、そういう企業形態を規制する根本法でも、個人類似の法人企業を分別するそういう基準ができますれば、またそれに対応しました税制をとり得るというふうに考えております。  それで、私どももそういう個人企業と法人形態の企業との税負担のアンバランスにつきましては、実はこれは非常に長年議論になっておるところでございますが、その両者の形態の差異によりますところの税負担の差異というのが、一つは税率の問題がございます。法人でございますれば、ただいまは二段階でございますけれども、大体フラットの税率をかけております。そこで、一たん法人の段階でとるということにいたしております。個人の所得税につきましては、これは相当幅の広い累進税率でもって、個人に帰属しました所得につきまして課税をするということになっております。したがいまして、法人形態の企業が利益を受けましてそれが留保されれば、そこでフラットの税率が一たんかかるわけでございますが、それが個人に分配されますれば、そこで個人の所得税の累進的な税率がかかる。したがって、法人の段階で稼得しました利益を個人に分配する割合が非常に高ければ、ほとんどその点からの差異はないわけでございます。  その次の問題といたしましては、個人企業については、現在の所得税法では、生計を一にしております個人企業主とその家族との間におきまして、ある一定限度の制限のもとに、企業主から生計を一にしております親族に対する給与についての課税の規定を持っております。今年度改正になりましたたとえば青色申告者におきましては、生計を一にしております家族専従者については、一人年二十四万円までというような給与の支払いを個人の段階で個人企業主から家族専従者へ認めるわけでございます。ところが、法人におきましては、法人から個人に支出します給与というのは、事業主でありますところの社長、それからその家旅専従者でありますところの役員その他の従業員に対します給与というのは、全部それぞれの個人に支給されるものとして、法人の段階では全額損金に落ちるわけでございます。そこで、いわば給与につきまして、法人の段階では相当分割が行なわれるに対しまして、個人企業の形態では、少なくとも企業主の部分、それはそういう分割が行なわれないわけでございます。  それから次には、生計を一にしております家族専従者に対しましては、ある一定の限度までしか給与というものは認められない。そこに一つの差異が出てくるわけでございます。それぞれ分割して給与が認められますれば、そこに各種の基礎控除以下の控除が認められることになりまして、そこで税負担の違いが出てくるというわけでございます。  そういう差異に対応しまして、私ども、一つは、同族的な法人について、法人が稼得しました利益の中で留保しました部分につきましては、これは一般の法人と違いまして、特別の留保所得課税というものを行なっておるわけでございます。これは、全く同族的な法人形態をとっております個人企業類似の企業の税負担と、全くの個人形態の企業との税負担のアンバランスをそこでひとつもとに戻すというための措置をとっておるわけでございます。  そういうふうに、先ほど申しましたように、税率の問題、それから給与として支払える部分、それに対応しまして法人で留保所得課税を行なっておるというような、いろいろそれがからみ合って、実は、法人形態の企業の税負担と、それから個人形態の企業の税負担というものが違っておるわけでございます。  そとで、私どもといたしましては、その第二の問題、個人形態におきますところで、企業主から生計を一にします親族に対する専従者給与の問題、こういうものにつきまして逐次限度を上げてまいりまして、もちろんこれも限度を撤廃しろというお話もございますけれども、これに対しまして、私どもは、一つには生計を一にしておる企業主と親族間の給与支払いであるという問題、それからさらには多数の個人経営者を処理いたします所得税におきましてどの金額までが適正なものであるかどうかという認定が非常にむずかしいものでございますから、いたずらな紛争を避ける意味におきまして限度を設けております。ただ、その限度を逐年上げてまいりまして、先ほど申しましたように、本年度の改正では二十四万円というところまでまいったわけでございます。  そういうところで、従来に比べましては、法人形態をとっております企業の税負担とそれから個人形態の企業の税負担というものは、法人、個人総合しまして比較しました場合の差異というものは相当軽減しておるというふうに考えております。
  71. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ大きな違いが出てくるのは、やはり経費のとり方ですね。人件費のことはいま説明がありましたが、その他の。そういう面はどうですか。一緒ですか。
  72. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) その点につきましては、制度といたしまして差異はないと思っております。
  73. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、実際の扱いとしては、やはり相当差が出ているのじゃないですか。
  74. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) たとえば、個人形態の企業におきましても、青色申告をやっていただきまして、家計とそれから企業というものの経理を分別して、きちんと帳簿を備えて申告していただいておりますれば、当然その企業に関します部分については法人形態におきますところの企業と同じでございまするから、それにつきましての経理の問題、これは両者において同じでございます。
  75. 亀田得治

    ○亀田得治君 主として両者の差異の出てくることについての大まかな御説明がありましたが、そうしてまた、両者がなるべく近づくようにならなければならぬという点も認めておられるわけですね、先ほどのお答えだと。そうですね。
  76. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 基本的には仰せのとおりでございますが、ただ、先ほど申しましたように、法人と個人の場合には、留保の部分と配当の部分が違っておりますから、いつ配当するかということによりまして受け取る個人の段階における課税がおくれるという場合がございますので、両者の負担がそういう意味におきましては短期間的に見れば違っておる場合がやむを得ず出てくるということは考えられます。  それからもう一つ制度的にちょっと申し落としましたけれども、あと事業税の問題がありまして、事業税も、先ほど触れましたような家族給与の問題に関連いたしましてそれが両者の間で違ってくるという問題がございますから、制度的に完全に一致するというためには、冒頭に申し上げましたように、ある種の法人につきましては全く個人と同じように留保、配当の別なく課税するという方法をとりません限りは、ちょっと完全に一致するということは無理でございますけれども、私どもといたしましては、個人類似で、個人企業としておおむねやっておられる所得の高さ、あまり高くないところ、そのような階層の事業者がわざわざ法人形態をとらなくても税負担の間では差がないように、常にそういう方向で検討しておることは事実でございます。
  77. 亀田得治

    ○亀田得治君 原則はわかりましたが、そこで、もう一つ大事な点は、会社経営と個人企業がある場合に、その両者の幅を狭めるために、会社関係の経理内容について、これを実体を個人と見るような立場でまあいわば不利にその点を計算していく、会社に不利なようにね、そういうことによって近づけるというふうな意味にとれるのですけれども、そういうことでは、やはり税金をよけいとろうという立場からの観点しか働いてこないわけでして、そうじゃないんで、やはり個人企業でありましても、経営は近代化し、科学的になっていかなくてはいかぬのですよ。会社でなくたって、やはり国としてそういう立場からも経営指導をしていかなければいかぬわけですよ。そうすれば、個人経営というものはちゃんと科学的に経営しておれば会社経営の場合の税負担と似たり寄ったりの負担で済んでいくんだというふうに、個人経営のほうを会社経営の結論に近づけるようにしてやらなければ、これは私は前向きの姿勢じゃないと思うんですよ。一緒にする、しなければならぬという原則は了解しておるけれども、しかたが、税金をとにかくとりあえずよけいとりさえすればいいんじゃと、個人会社だからこんなものは認めるとか認めぬというようなことでやることは、これは後向きの考え方だと思う。みんな、税金対策でありましても、やはり会社にする以上は、会社らしく近代化しようと考えておる。だから、それにやはり個人経営を合わせていく。これが一緒になれば、今度は、その結論としては、急いで会社でないものを会社にする必要はないという考えになっていくわけですね。政府の手間もだいぶ省ける、登記書一つにしたって。それから先ほど私が最初に指摘したような、実際は会社でないものを会社にしておる、そのために起こる紛糾といったようなことは避けられる。裁判所もそれだけ手間が省ける。これはあなたずいぶんいろんな方面に影響があるわけです。個人をこっちに近づけなければだめですよ。それはどうなんですか。
  78. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私が、ある種の小規模な法人につきまして、個人的な課税をすることによりまして法人・個人の税の負担の均衡をはかり得る道があると申しましたのは、いずれが高くなるか安くなるかということについて、そういうことを意識して申し上げたわけではございません。すでに、現在でも、私どもは、ある種の仮定を入れました計算では、たとえば年間所得二百万円程度のものでございますれば、個人企業のほうが法人形態をとりますよりも税負担が総合的に安いような計算もしておるわけでございますが、そういういずれの形態をとれば税負担がふえるということをなくすためにおきましては、たとえば小規模な法人につきましては全く個人と同じように企業の法律的な形態を別にいたしまして課税すればそういう方法もあるということを申し上げたわけでございまして、常にいずれかの高いほうにしわ寄せしましてそういう課税方法をどうしてもとらなければならぬという気持ちで申し上げたわけではございません。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから家族労働の問題につきましては二十四万円まで認めるというふうに今度なったようですが、こういう点なんかも、まだまだ法人の場合に比較すると不利なんじゃないですか。ともかく夫婦、子供一人の三人でやっておる。会社にしようが、個人であろうが、同じことでしょう。それが、個人経営であれば二十四万円しか認められない。会社になると急に三万円なら三万円認められる。給料として払う。個人の場合でも、現実に個人企業としてきちんと近代的に合理的に経営しているところは、このごろ農家だって給料を渡すところがあるくらいですから、そういうふうにやっているところは、ちゃんと認めていいのではないですか、うそじゃないんですから。個人経営だからどうもうそだというような考え方がまだまだあるのではないですか。そんなうそだというようなことを言い出したら、そういう小さい会社の場合は、はたして会社として給料をこれだけ出していると言っても、どれだけそれが真相に合うておるか、それ自体がなかなか問題があるわけでしょう。だから、個人経営の場合であっても、二十四万円で切ってしまうということが私はおかしいと思う、おやじさんにしてもちゃんと働いておるんですからね。まあこの点が一番大きな矛盾です。  税率だっておかしいですよ。同じものが、ともかく形式が変わったからといって適用する税率が急に変わってくる。これは税法のたてまえから言うたら一応わかるんです。わかるんだけれども、納税するほうからいったらおかしいですよ。その辺の研究をほんとうにすべきだと思うんです。私も確定的な案を持っているわけではないですが、非常に矛盾を感ずるわけです。  だから、会社法全体にしても、そういう小さいところに対しての法制をどうするかということが非常におくれておるんですよ。大会社がやったところの株の一括引受等が裁判所で問題になったということになると、すぐぽかっと改正案が出てくるわけだ、打てば響くように。もう中小企業はがちゃがちゃ困っているけれども、なかなか進まない。税金だってそうです。ここら辺のところで非常に悩んでおるんですよ。あなた、さっき、経理面は一緒だと、こう言うんですが、これは理論的にはそうあるべきなんですよ。会社であろうが、個人であろうが、経費は経費ですよ。ところが、個人の場合には、なかなか、いやそれはそんなことを言うたってごまかしておるのだろうということで——ごまかしというようなことを言い出したら、なぜ個人の場合だけやるか。このごろ新聞で問題になる粉飾決算なんというのは大会社でしょう。しかも、何億というような億台の粉飾をやっておるわけでしょう。だから、ともかく個人企業に対して税務署が非常に偏見を持って考える。あの立場が改まらぬと、どうしても会社にしよう、会社にしようと、せんでもいいものまでなるんですよ。これは課長を責めてもしようがない。これは大蔵大臣あたりがもっと真剣にどうするのかということを考えるべき問題ですよ。  人に疑われるなんというのは一番いやですわね。だから、個人企業者というのは、税務署が大嫌いなんです。それは皆さんには税金を安くしてもらおうと思ってうまいことを言うておるかもしれんけれども、なかなか真実が認めてもらえないというところで非常にしゃくにさわる。それから会社にしたってもそうだ。さっきあなたから説明があったように、会社にしておっても、いやこれは実体は個人じゃろうというようなことを言うていじめるでしょう。個人にしていると疑われるでしょう。どっちへ行ったってこれは立つ瀬がない。そういうことじゃなしに、ともかく会社であろうが個人であろうが実体の同じものが違った税金を負担しなければならぬということは本来おかしいのだという立場で、しかも個人であろうが会社であろうが経理というものはちゃんと科学的にやらるべきものだ。青色申告などでだいぶその点は改まっていると思いますが、そういう考え方をもっと前進させていく必要が私は非常にあると思う。どういうふうに考えますか。
  80. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 亀田委員からの御指摘の点、特に執行面におきます個人企業、あるいは法人企業に対します差異がかりにあるということであれば、なお私どもとしては努力してそういうことがないようにしていかなければならぬわけでございますが、基本的に大企業、中小企業、特に中小法人と個人企業におきます執行面のトラブルを避けるためには、どうしましても、いくら小さな企業でも、たといそれが個人でありましても、まず帳簿をつくっていただきまして、その帳簿によって税務の調査にも対応していただくという方向をとっていただかない限り、なかなかこの両者の間の水かけは直らないと思うのであります。私どものほうでも、できるだけ青色申告になっていただくための要件でありますところの帳簿の簡素化と    いうことをいま真剣に検討いたしております。まず帳簿をつけていただきまして、それによって真実の収入、支出というものをもとにして税務についての調査に対応していただくということが基本的な解決の問題ではないかと考えます。  なお、そのほかに、法人形態と個人形態の税負担の問題、特にその中でもいま御指摘の青色専従者の給与の問題、これも、私どものほうでは、大体個人企業と同等のような法人形態の企業、これを平均的に見まして、そこに出されておりますような給与金額を参考といたしまして二十四万円というのを出したのでございます。  なお、法人につきましては、それに対応しまして、たとえば同族会社であって、先ほど御指摘のような同族会社であるからその行為計算というものを自由に勝手にやっておるという場合には、これに対する否認規定もございますが、そういうふうに両者の間の違いというものについての制度的な点はなお検討してまいりたいと思います。  最後に御指摘の税率が両者で違うという問題、これはまさに法人形態と個人形態に対する税制をいかにすべきかという基本問題でございまして、いま御指摘のような法人についても個人と同じような税率であるべきだとおっしゃいますと、私が冒頭に申しましたように、法人でもうけました所得も、個人と同じように割りまして個々に課税するというような方向に行かざるを得ないのでございますが、そこに非常にむずかしい問題がございます。私どももなお今後とも法人形態と個人形態の両者の課税のバランスということは真剣に検討してまいりたいと思っております。
  81. 亀田得治

    ○亀田得治君 税率の問題は、これは確かにいろいろ問題はあるんです。それはまあ私も承知の上で、ただ皆が悩んでいる点を端的に申し上げておるわけだ。これは大事な問題ですからね。ともかく、大きな企業の問題になると、ずいぶん各役所ともよく研究するんですけれども、どうもこういう点はあと回しになる。それで、たとえば二十四万円というと、これは月にして二万円だ。ところが、現に三万円ずつおやじがむすこに渡しておる、むすこのほうも別に世帯を持って生活をしておるというような場合には、これはちゃんと認められるんでしょう。どうなんです。
  82. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私が御説明いたしました青色専従者の控除の問題は、生計を一にしております親族の問題でございまするから、いまお話しのようにちゃんと世帯も別にしましてやっておれば、これは二十四万円という限度には関係ございません。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、生計を一にしておる場合になぜそれが認められんかということになる。別になっておる場合に認められるのに、その一にしておっても三万円渡しているのは間違いない。それは便宜上の関係で一緒になっておるわけですね。家が広いとかなんとかという場合に。それはおかしいじゃないですか。
  84. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 生計を一にしておりますということは、結局、家計を一緒にしておるということでございます。それで、個人企業でもって得ました利益というものをどのように企業主と家族専従者が一にしております共通の家計に持ってまいるかということが一つ家族給与の問題として考えなければならんと思いますので、そこで、企業主と家族専従者とが生計を一にしておる場合に、全く家計を別個にしております親族との間と同じように律していいかどうかということは、これはまた基本的には問題があると思います。ただ、その生計を一にしております家族専従者に対しましての給与額の限度額の問題、これはやはり一般の同種同等の企業におきますところの支払われておるそういう給与を参考にしてまいらなければなりません。ですから、そういうものは常に近傍同種同規模、そういうものについての検討を加えてまいらなければなりませんけれども、ただ、このときにも、やはり所得税のそういう大量処理の問題でございますので、平均的な見方はどうしても避けざるを得ませんので、そのときに非常に高い給与を家族専従者に払っておるからということで、それを全部認めろといわれましても、その家族専従者の制度自体がそういうふうに平均的な見方をせざるを得ないということに出ておりますので、その点はやはりある種の非常に商い家族給与を生計を一にしておる者にまで払っておるものについては、限度超過という事態がやはり避けられないと思います。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 生計を一にしておるといいましても、結婚してそうして夫婦がちゃんとおる場合に、これは原則としては別なんですよ。便宜上一にしておるというふうなことがよくあるわけですね。だから、なるほどそれは一になっておる形をとっておりましても、それは本人同士が消費面でうまくやっておるというふうに見ていくべきなんで、私はそういうふうな考え方がだんだん伸びていかなきゃいかぬと思うんですよ。それを税金のとりいい立場からそんなものは認めないんだというふうなことは、どうもおかしいと思うんですよ。別であれば認められる、一緒なら認められぬというのは、どうもそれは筋が通らぬわけですね。だから、そういう点もだんだん問題になって、少しずつ専従者に対する金額が上がってきておると思いますが、これは中途はんぱですね、われわれから言えば。たとえば、最近は、個人経営者であっても、自分の給与はこうだと自分自分に給与を払う、そういうふうなやり方すらやはり考えている人もあるわけです。それは可能なわけですよ。そのほうが非常に会社形態に近づいていくわけです。こういうふうにやれば、個人であっても非常にさっぱりしていい。毎月毎月自分の使う限度もはっきりしてきますしね。個人が個人に払ってもいいわけでしょう。だから、もっとそういうことを研究してほしいわけですよ。ああいういままでの習慣がなかなかとれておりませんで、税務署はどこへ行っても個人をいじめる。帳簿なんかあったって、頭から相手にしない。それで、もうそれならそんな帳簿なんか全部やめておこうといって、交渉で心臓の強いのが得するというような結果になっておるのもまだまだたくさんあるんですよ。それには、私がいま指摘したようなことをほんとうに税務署が合理的に考えぬといかぬですね。税金の問題が主体でやったわけじゃないのですが、ともかくこれほど膨大な数の株式会社ができておる理由というものは、税制上のそういう制度並びに運営上の不利というものが一つ大きくからんでいる。ここからきておるので、研究をひとつ要望しておきます。いずれまたそういうものを聞かせてもらいたいと思います。   一応国税庁はこのくらいにしておきます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの税の関係で、株式会社と有限会社との間では税制上の差異は全然ないわけですか。
  87. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ございません。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国税徴収法で、いわゆる法人成りというのですか、形は法人だけれども実際は個人なんだという場合には、個人としてみなして課税なり何なりできるようになっているわけですか。それはどういうようになっていますか。
  89. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 法人形態をとっておりますれば、やはり私どもとしては法人税をまずかけるわけでございます。それからそれが法人におきまして得られた利益が個人の段階に帰属いたしますれば、そこでまた所得税がかかるという二段構えでございます。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかるのですけれども、形は法人だけれども実質は個人だというので、その法人形態を否認して税金をかけることはできるのじゃないですか。できませんか。
  91. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 通則法におきましてもそういう規定はございません。——ちょっと補足さしていただきます。個人形態の事業所がたくさん合同いたしまして、たとえば企業組合というふうな形でもってやっておることがございますけれども、その場合に、法人の実質を備えていないということが判断できますれば、そこでそういう税金上の計算は個人と同じように否認して、更正するという規定はございます。その点は、ちょっと誤りがございましたので、補足さしていただきます。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、いま言った企業組合のような場合だけですか。有限会社のような形をとっておるけれども実質は個人企業なんだというので、これは法律的には有限会社なんだけれども、それを否認して個人企業と同じように税金をかけるというようなことはないわけですか。
  93. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) その条件といたしましては、別に企業組合であるとか有限会社であるとかいう法人の形態に着目しておりませんで、たとえば事業所が幾らありますとか、あるいはその事業所の長が前はそれぞれの個人事業主としてそこの事業を主宰しておった者であるとか、そういうような条件、それから実際にその法人として取引をしておるものが実質的には個人形態でそれぞれがやっておると同じようなものであるというふうな要件だけで縛っておりますので、法人の形態として区分はいたしておりません。
  94. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  95. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後一時二十九分開会
  96. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、出入国管理に関する件について調査を行ないます。亀田君。
  97. 亀田得治

    ○亀田得治君 懸案の北朝鮮からの貿易関係の技術者の入国問題につきまして若干御質問をいたしたいと思います。問題が非常に多岐にわたっておるわけでありますが、要点だけしぼって各関係大臣にお聞きすることにいたします。  まず、最初に官房長官にお尋ねをいたしますが、これは二年越しの問題でありまして、私たちも数次にわたって直接お願いしたこともあり、いろんな経過をたどってきたわけでありますが、最終的には入国を認めざるを得ない、こういうことで政府も腹をきめたとわれわれは理解いたしておるわけであります。そのことに関連して、今年の四月二十七日に官房長官が記者会見をなされまして、その際にもいま申し上げたような趣旨で対外的に言明されたわけでありますが、その記者会見における詳明につきまして確認をする意味でお聞きするわけですが、いかなる立場考え方で二十七日の談話というものをなされたか、明確にしていただきたいと思います。
  98. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) いま亀田さんがおっしゃるとおり、北朝鮮の技術者の入国の問題は、長い間の懸案の一つではあります。ただ、御承知のように、従来、歴代内閣ともに未承認国に対する入国に対しての考え方があるわけであります。これは当然のことながら、日本の国の利益の上から見て、かつまた、広い意味ではそうでありまするが、狭い意味では日本の政治体制等にもかんがみて、いわゆる内政不干渉という原則、そういう点から事務的にも考えるし、また、事務的に処理できないものは政治的に判断してこれを処理する。佐藤総理は、国会においていろいろの機会に申し上げておりますが、日本は平和を愛好する国であり、また、いかなる国とも親善関係を結んでいきたい、一般的に申し上げてそういう原則を持っておられる。ただ、承認国と未承認国との間にその扱い方に異ならざるを得ない場合がありまして、したがって、未承認国に対しては先ほど申しましたような国の利益の上から考えて、これが利益である、かような場合においてはケース・バイ・ケースでこれを処理する、こういうような原則を明らかにいたしております。  北朝鮮の技術者の問題は、もちろん政治的なものを意図したものではないのでありますからして、それらが直接に日本利益に反する行為ではないとも考えられますけれども、また、一面、国家生活というものは国際的な国家社会の生活というものがありまして、かような面で、基本的方針として政府は、未承認国に対しては、純粋の意味での経済あるいはスポーツあるいは文化という面についてはそれぞれの場合を考慮してそうしてケース・バイ・ケースできめていく、かような方針に立っておりますので、その基本的姿勢に立って公式に私がさようなことを申し上げたわけであります。この方針は、今日なお変ってはおりません。ただ、具体的に、いわば北朝鮮の技術者はいつどうするんだという御質問があれば、それは目下事務当局において検討中であると申し上げる以外には道はない、かように御了承願いたいのであります。
  99. 亀田得治

    ○亀田得治君 四月二十七日の記者会見で官房長官が言われたことを大体いまお認めになっておられました。そこで、その当時の記者会見の中身をいまちょっと申し上げますが、このとおり間違いないということをはっきりとひとつおっしゃってもらいたい。大体ぼやっとお認めになったようですが、「北朝鮮からの入国は中共に対すると同様、政府は政経分離の建て前で臨んでいるが、国家利益にそうものはケース・バイ・ケースで認める方針である。」と、そのあとですね、「北朝鮮訪日技術調査団は特に国家利益に反するものとは認められないので、同調査団の入国は方向としては認めることになろう。残された問題は入国を認める時期だけと思う。」と、こういうふうに言明されているわけです。これは間違いございませんね。
  100. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) その談話は、どの新聞かよくわかりませんが、もしそのようでいいかといえば、間違っております。  まず、第一段階のほうの政経分離のたてまえということは、私は言ったはずがありません。中共に関しては政経分離の方針においてこれを処理する、北朝鮮の場合はケース・バイ・ケースにおいてこれを考えていく、こういう点を明らかに従来ともに言っておりますから、第一段階のほうは多少誤りがある。その点ははっきり訂正しておきます。もしそういうことであれば、訂正しておきます。  第二の段階のほうですが、これが国家利益に反しない場合、またそれがおそれがない場合、これは当然先ほども申したとおりでありますが、そういう先ほど来から申しました方針でこれを検討する方向では、いわゆる国内並びに国際的環境がこれを迎える状態であれば、これはもう当然考えなければならぬ、こういう意味で言うたものでありますからして、大体それに近いと御了承願ってもいいでしょうが、実際問題としていろいろな問題がありますからして、いつどうするかということはまだその段階に至っておらない、かように御了承を願いたいと思います。
  101. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、先ほど読み上げました四月二十七日の新聞に発表された談話の中で、政経分離という点は述べておらない、そのほかは大体そのとおりだ、こう理解していいですね。
  102. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 先ほど来申し上げたように、方針としてはさような考えを持っている。ただ、現実問題として種々の処理すべき問題もあるので、また考慮されなければならぬ問題もありますからして、これをいつどういうときにどうするかという問題はまだ決定をしておらない、こう御了承を願いたいと思います。
  103. 亀田得治

    ○亀田得治君 五月十日に官房長官は韓国の在日大使の金大使にお会いになられましたね。そのとおりですね。
  104. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) はい。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、どういう内容で会ったわけでしょうか。
  106. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) これはまあ外交事項でありますからして、内容を具体的に申し上げることもできませんが、一つは、佐藤総理ができるだけ早く韓国を訪問してもらいたい、これはかねての約束であるからという話だった。その他一、二の点についての話がありましたが、特にここで内容を申し上げるようなことはございません、こう御了承を願います。
  107. 亀田得治

    ○亀田得治君 この日の会談は、こちらからの申し込みで来てもらったのじゃないのでしょうか。
  108. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) これは私どもから特にということはありませんが、かねてからといいますか、しばらく前に金大使が韓国に臨時に帰任する——というのは、正式に大使に任命されてから私のところに来たことがありませんので、前もって連絡がありまして、一度就任後初めてであるから表敬をいたしたい、かような話があり、その後において何日にお伺いしたいから、こういうことで、特に私のほうから呼んだのでもなく、向こうから特別の用件を持って来たのでもない、表敬である、こう御了承を願いたいと思います。
  109. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあその会われるきっかけはそういうことであったかもしれませんが、その会談の際に、北朝鮮の貿易技術者の入国問題について話題になり、官房長官のほうでは金大使に日本側の立場というものを相当熱心に説得されたのではないのでしょうか。
  110. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 問題は渉外事項に入りますので、この間の事情はこの際説明することを遠慮させていただきたいと思います。
  111. 亀田得治

    ○亀田得治君 北朝鮮の貿易技術者の入国問題に触れたことは、これは間違いないんでしょう。
  112. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) その問題も話には出ております。しかし、どうしゃべったか、どう向こうの話があったかという内容の点については御容赦を願いたいと思います。
  113. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは「東亜日報」の五月十一日付でありますが、金大使が本国に伝えてきたとして相当詳細にこのときの内容が出ておるわけであります。こういうことが新聞に出ておりまして、それをわれわれがこういう場合に確かめることができないというのは、はなはだこれは遺憾だと思うのですが、その「東亜日報」の五月十一日の記事によりますと、日本政府側は形式的には慎重に処理すると語ったが、以下三つのことについてその指摘があったと、こう金大使から伝えてきたとなっております。  その以下三つのことというのは、第一は、問題のプラント商談はすでに三年前から進められており、現在まで韓国の政治的圧力のためにおくれてきた、こう金大使が伝えておる、皆さんがおっしゃったとして。  それから二は、技術者の入国は、政治的なことでなく、民間の技術者が機械を買うためにしばらく来たいというものである、こういうことで日本側の考え方を向こうに説明しておるわけですね。  それから第三として、韓国側はそのことをあまりに政治的に重大に考えているようだ、これは思い過ぎじゃないか、こういうふうな以上三つのことを強調された。  これは、まさに官房長官が四月二十七日の記者会見で発表された考え方を砕いて先方に説得しておることがありありとわかるわけでありまして、これははなはだわれわれとしては力強く感ずるわけなんですが、まあこういうことは大いにやってもらっていいわけですね。何も隠してもらう必要がない。もっとはっきり御説明願いたいと思います。向こうの新聞では出ておるのですから。どうなんでしょうか。
  114. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) いまお読みになった「東亜日報」の内容等については、渉外事項に関することで、それがそうであったかなかったか、あるいはそういうことを言ったかどうかということは、この際は言明することを控えたいと思います。
  115. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、先方に対して日本側の立場を相当説得的に話をしたということは間違いないのでしょう。
  116. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 最初は大局的な政府の見解を申し述べましたが、その大局的な方針というものは今後ももちろん変わりはない。ただ、具体的な問題についてあるいは大使とあるいは外務大臣と渉外的な内容の意味においてどういうことを申し上げたかということは、決してお互いのために有益であるとも考えませんので、私としてはこれを申し上げる自由を持っておらない。したがって、政府のこれら問題に対する対処の考え方のもとに常に努力をしておるといいますか、あるいは十分なる慎重なる態度をとって行動しておるということを御理解願えれば、亀田さんの質問の趣旨も大体それで了とせられるのではないかと思いますので、内容等については特別にこの際発表することはお許しを願いたいと思います。
  117. 亀田得治

    ○亀田得治君 五月十三日に金大使が丁総理の親書を佐藤総理に渡されまして、新聞ではその内容が若干出ておるわけでありますが、これは官房長官もお立ち合いになられたことと思いますが、このことについて御説明願えませんでしょうか。
  118. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 親書が寄せられたことは承知しておりますが、実はそのときどういう事情でしたか私立ち会いませんので、その後もその点は具体的に承知しておりません。かつまた、特に発表すべき性質のものでもありませんので、内容等については十分に承知しておらない、この点をひとつ御了承願いたいと思います。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 五月十六日に佐藤総理が張副総理に約一時間ほど会っておられます。また、五月二十六日に丁総理がこちらに来られて佐藤総理にお会いになっております。これらは、官房長官はお立ち会いになったわけでしょう。
  120. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 張氏の総理との会談の際は私も同席をいたしております。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはどういう中身の会談であったわけでしょう。
  122. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 張副総理は、日韓の貿易関係の協議会で参りまして、総理に表敬をしたいということで、二十分間程度の会談だったと思っておるわけでございます。  丁国務総理は、これは蒋介石総統の就任式に列席のために参りました際に、帰り道に日本に立ち寄られた。これは十五、六分、飛行機の立つまででありましたから、やはりこれも顔合わせ程度で、特に内容はなかったように記憶しております。
  123. 亀田得治

    ○亀田得治君 いずれも、主たる目的でなかったかもしれませんが、北朝鮮の貿易技術者の入国の問題についてはやはり話題になったでしょう。
  124. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 丁総理の場合は、北朝鮮の問題は一切話が出ておりません。その他の内容等については、ここで返答ができないというような意味の話もなく、全く久しぶりに会って、そうしてお互いに元気な顔を見て帰りました。  、張さんの場合は、これは二、三十分おりましたからして、この間にはその問題も出てはおります。しかし、これは直接担当の大臣でもありませんし、深入りの話はなかった。しかし、どういう程度の話が出たかと申されると、これも外交上の問題でもありますので、総理がどう言ったか、あるいはどう答えたかということは、この際申し上げる自由を持っておらない、こう御了承願いたい。
  125. 亀田得治

    ○亀田得治君 丁総理から前に親書がわざわざ来ておるわけでしてね。その親書は北朝鮮の技術者の問題ということは、これはもう公知の事実であるわけですが、親書自体を長官はお触れにならぬわけですが、一般にはもうこれははっきりしておることで、わざわざ親書までよこしておきながらそういう問題に丁総理がお触れにならぬというようなことは、これはちょっと常識的には想像できないことなんですが、どういうことなんでしょう。
  126. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 私ども同席しておった時間の範囲内においてはさような話はなかった。これは事実を申し上げているのであります。話があれば、あったけれども答弁をすることはできないと申し上げます。事実なかったもんですから、これはなかったと、こう申し上げておるのであります。
  127. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃ、官房長官はこの程度にしておきます。  次に、通産大臣に、貿易担当の大臣でありますので、若干一、二点一般的なことをお聞きして、それからこの問題をお聞きしたいと思います。  北朝鮮を含めて、国交未回復の国であろうが、共産圏いずれの国とも貿易量をふやしていくと、こういうことは通産行政としてははっきり肯定的に考えておられることと、これはあたりまえのことですが、はっきりひとつお考えを聞いておきたい。
  128. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そのとおりに考えております。
  129. 亀田得治

    ○亀田得治君 北朝鮮と韓国ですね、将来、貿易という面だけから考えて、いわゆる政治的な障害というものがどちらも平等になってしまったというような場合に、どちらのほうが日本との間の貿易量がふえるというふうにお考えでしょうか。
  130. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) ちょっとその仮定は非常にむずかしい。国際関係で何年も真空管のような状態はありませんから、いろんな関係がありますから、そういう一切の過去の経緯を捨てて真空管の中でものを考えるというその仮定は、ちょっと私は無理なように思います。したがって、そういう状態というものはやはりなかなか考えられにくい。それは、すでに日韓の関係がいろんな協定があるわけですから、全然除いてといっても、実際問題として貿易という具体的な問題を考える場合には、ちょっとそういう問題についてはどちらとも、しかも数量的にそれを考えることは私は困難であると思います、経緯がありますから。
  131. 亀田得治

    ○亀田得治君 韓国と北朝鮮の現在の貿易量はどうなっておりますか。日本との間じゃなしに、韓国、北朝鮮自体の外国貿易量は。北朝鮮がはるかに多いでしょう。
  132. 原田明

    説明員(原田明君) そのように存じております。ただし、正確な数字はまだはっきりわかっておりませんが、北朝鮮自体の貿易の数字と韓国がとっております。ポテンシャルの数字を比べることはやはり相当困難があるのではないかと思います。
  133. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ一応世間に出ておる数字としては、はるかに韓国よりも貿易量が大きいわけです。そうして、その中身を検討すれば、当然私はそれにマッチしておると思うんです。だから、数字の比較ですから、必ずしも同じ基準でとられておらない点もあろうかと思いますが、大まかに見て私はお聞きしているわけです。  そこで、北朝鮮の国際貿促では、日本との間の政治的な関係というものが、平常になれば——通産大臣も完全に平常化というようなことは考えられぬというようなことを言っておりましたが、それは完全でなくてもいい、取引、貿易という面から見てまあまあというところまでそういう関係になればいいわけなんでして、そういうふうな状態になれば、全朝鮮貿易の二〇%ぐらいはやれるんじゃなかろうかと、こういうことをもちろんこれは概算でしょうが言っておりますが、通産当局はそういうことはどういうふうにお考えになりますか。
  134. 原田明

    説明員(原田明君) 北朝鮮は、韓国のすぐ北側にある日本の隣国でありまして、人口その他もかなりございますし、また生産もある程度上がっておるように聞いております。そういう意味で、先ほど大臣のおっしゃいましたような真空状態みたいな状態にもしなったということになりますと、かなりのポテンシャルはあるかと思います。ただ、共産圏の諸国では、どの国との貿易がシェアが二〇%になるか一〇%になるかというような点はなかなか予測しがたい点でございますので、二〇%になりそうであるというようなふうに数字的にはっきり申し上げることはたいへん困難かと存じております。
  135. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあきょうはそういうことが主体でありませんので、この程度にしておきますが、通産大臣は、ことしの二月十九日の衆議院の予算委員会で、石野代議士の質問に答えて、北朝鮮貿易についても輸出入銀行の利用といったようなことをできるだけ前向きで考えたい、まあすぐ実行するとは申されませんが、そういう趣旨のことをお答えになっておりますが、延べ払い等の問題もあるわけですが、その辺の問題についての考え方を簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  136. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 中共にもやはり輸銀を使った延べ払いをやった歴史もあるわけです。したがって、共産圏に輸銀を使った延べ払いを絶対にやらぬというそういう理屈は成り立たぬと思っております。したがって、そういうケースが起こってきたときに、いろいろなことを勘案して自主的な判断を政府が下すべきであって、初めからだめだと、こういう断定は私はそれは理屈に合わない。そのときどきで政府がいろいろな要素を頭に入れて自主的な判断を加えてしかるべきだ、こういう考え方は変わっておりません。
  137. 亀田得治

    ○亀田得治君 いよいよ本件に入りますが、通産大臣はかねてこの問題については非常な積極的な姿勢をとっておられるわけですが、五月十二日に金大使にこの問題でお会いになったでしょうか。
  138. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 金大使が見えまして、一つは、私に韓国へ来てほしいという招待でございます。一つは、北鮮貿易に触れたお話があったことは事実でございます。
  139. 亀田得治

    ○亀田得治君 その際、金大使は、日本が入国を許可するような場合には、問題となる会社はもちろん、関係の銀行、背後の系列財閥に対してまで韓国との取引を一切拒否する方針である、こういうことをお伝えになったようでありますが、間違いございませんか。
  140. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 会談の内容を一々こうだああだということは申し上げられませんが、その会談——私自身はこういう考えを持っているのです。あんまり日本の貿易について韓国があれはいかぬこれはいかぬと言うようなことは好ましくないと私は思っている。したがって、やはり、金大使との会談にも、私自身はこの問題について深入った話をしなかった。一々、あれはいかぬ、これはいかぬ、そう言うことはよくないと私は思っておりますので、この問題が大きな話し合いの中心題目とならなかった、私との会談では。これは事実であります。したがって、この問題でいろいろ私と話し合って、意見が一致したり、あるいはなにした、そういうふうな会談ではなかったのです、私との会談は。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 それほどこの問題についてのみまつ正面から取り組んだ会談ではなかったかもしれませんが、しかし、事非常に政治問題化している問題でございますから、話題になれば、当然こちら側の立場というものも説得してもらわなければいかぬわけでありますが、そういう点は、おそらく、三木さんのことですから、ぬかりなくやっておられると思いますが、その点はどうだったのでしょうか。
  142. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私は私としての意見を述べたことは事実であります。しかし、いま言ったように、この問題が私との会見の非常に主たるものではなかったのです、私自身がこの問題に対して最初言ったような考えを持っておりますから。そう深入った話は向こうもそうなかったわけでありますので、これは非常にことばのやりとりがあったというものではないわけであります。しかし、私は、私の考えておることは、これは金さんに限らず、だれの場合でも言っておくことがいいということで、いつも、それは金大使に限らず、あらゆる場合に私の考えは申し述べておるわけでございます。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 外務大臣にちょっと次にお尋ねします。  外務大臣は、五月の十日に院内の大臣室で社会党の山木国際局長と本件につきまして会談をされたはずでありますが、間違いございませんか。
  144. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 間違いございません。たしか五月十日であったかどうか、日にちははっきりいたしませんが、お約束をして院内で会いましたことは間違いございません。
  145. 亀田得治

    ○亀田得治君 五月十日とそれから五月十七日と二回ありますね。二回ということは御存じですね。あとの場合は、山本国際局長と、横山代議士、それから、石野代議士……。
  146. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) そうです、二回です。
  147. 亀田得治

    ○亀田得治君 その最初の会談につきましてまずお聞きしたいのですが、ちょっと通産大臣にもその分だけ関係がありますので、その分が済んだら通産大臣退席されてけっこうです。この際はどういう会談であったわけでしょうか、御説明願いたいと思います。北朝鮮の技術者の入国問題について、もちろん早く処理をしてほしいという趣旨で山木国際局長があなたにお会いになっておるわけですが、どういう結末にこれはなりましたでしょうか。
  148. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) まあ二人でございましたから、きわめて懇談的な話し合いであって、これは大平前大臣以来の懸案であって、これこれしかじかの経過を経ておるというようなことを詳しく聞いたように思います。でありますから、できるだけ早くこれをケリをつけてほしいという趣旨であったと思います。
  149. 亀田得治

    ○亀田得治君 それに対して外務大臣はもうちょっと待ってくれという意味のことを言われ、山木国際局長のほうは、それはもうずいぶん待ったんだ、もうちょっとというのは一体いつのことかというふうに大臣に言われたところ、大臣のほうでは、何か経済協力に関する話し合いが日韓の間で——経済協力のまあ実行面の話し合いでしょう、その話し合いがまとまると処理しやすいのでというようなお話があり、ところが、山木国際局長は、それは一体いつごろにそういう決着がつくのかと言ったら、一カ月半か二カ月くらいというふうなことを言われ、それじゃまたいままでと同じことで延び延びになるんだということで、山本国際局長がだいぶそこで激怒されたというふうにわれわれ報告を聞いておる。その際に、三木通産大臣が助言をされて、それは山本君の言うほうが筋が通っておるじゃないかというふうにとりなされて、(笑声)その結果、外務大臣も態度をまた改められて、それじゃもうちょっと考えさしてくれ、これはほんとうのもうちょっとやというような意味で、それじゃまた近いうちに会いましょう、こういうことになって第一回の会合というものは終わっておる。そのとおりでしょう。ぼくらこれは非常に大事な問題ですから、ちゃんとその当時会談の直後報告を受けてメモをしておるんですから、間違いないと思うのですが、どうでしょうか。
  150. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) それは、三木通産大臣がそばにおられたかどうか、私も記憶がしっかりしませんが、通産大臣が記憶しておられるか、それはまあどっちでもいいが……
  151. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、それは大事な問題だ、あなた証人だから。
  152. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 激怒したかどうかは私は一向感じませんでしたが、とにかくまあ大体いまお話しのような筋だったと思います。
  153. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 激怒したというより、非常になごやかな会談でありました。激怒というような場面は——私も二人の会談の中に入ったわけではないので、たまたま二人のやりとりの中に居合わせたということで、そうして山本君の言うことは筋道は通っておるというそういうふうな助言をいたしたことはないんで、二人の話しておるのとだいぶ離れておりましたが、全体の雰囲気はそう激怒という場面ではなかった。しかし、そのときは、外務大臣も、もうこれはほんとうに検討してみましょうというような答えをして、何かけんか別れしたというようなことではなかった。そうではなしに……
  154. 亀田得治

    ○亀田得治君 結末はちゃんとしておる……。
  155. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) そういうことであったと記憶しております。
  156. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、われわれのメモが大体合うておる。  そこで、十七日に、やはり院内の大臣室で、山本、石野、横山三代議士が外務大臣に先ほどの話の続きとしてお会いになった。これは外務大臣とだけ合われたようです。いろいろ話のやりとりがございまして、外務大臣のほうでは、それじゃわるかった。事務的に具体的な名前ですね、リストを北朝鮮から申請しておるほうは取り寄せる。それもけっこうだ。それが来たら政府に正式に出す。出されたらそれはひとつ受けて立ちましょう。こういうふうにそのときの話の結末はなったようでありますが、これは間違いございませんか。
  157. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) まだ事務的に申請書を出しておらないですから、もういよいよそれじゃ出すと、こういうお話でございました。それで、それは提出のことは了承いたしました。
  158. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ普通は、前向きで考えておらなければ、提出自体を待ってくれといとのが通常の慣習でありまして、提出自体を御了承願ったということであれば、大体まあその辺の意味というものはわれわれとしても理解できるわけであります。  それに関連して法務大臣にお聞きしたいんですが、外務大臣がお急ぎでありまするから、ちょっと法務大臣の関係あとにいたしまして、さらに外務大臣に若干お聞きいたします。それは、金大使が日本の業者に直接働きかけをして、そうして北朝鮮との懸案になっておる取引を断念させようと、こういうことを公然とやっておるわけですね。外務大臣はお聞きですか。
  159. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 北鮮と取引する商社とは韓国としては取引をしないという方針であるということを明らかにしたということを聞いております。どういうぐあい、そしてどういう表現を使ったか私は存じませんが、とにかくそういう趣旨のことは耳にしております。
  160. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、方針を私は聞いているのじゃなしに、そういう方針に基づいて具体的に日本の業者に対して金大使が会って、そうしてこういう取引を中止させるようにしてくれと、こういう働きかけをあちこちにやっておるわけです。私はこれは外交官として異例な活動だと思う。公的には異例な活動、私的にはこれはもう営業の妨害ですよ。だから、こまかい一つ一つの問題をさらに私追及したいと思っておりますが、一体大使としてこのような活動をやっておることを放置しておいてこれはいいのですか。向こうさんのやることだから勝手だ、こういう見解になるのでしょうか。私は、今後の日本の外交ということを考えますると、いかなる国の大使がそのようなことをやりましても、これは相当重大な問題だと考えておる。朝鮮だからいい、アメリカだからいいというのじゃ絶対に私はないと思う。どういうふうにお考えでしょうか。大臣も個々的なことは聞いておられると思うんです。
  161. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) とにかく、一般的な、特におまえのところはけしからぬとかそういうことじゃなしに、北鮮と取引する商社とは韓国は取引をしないと、こういう方針であるからその点を考えてくれという程度のことならば、どういう口調でしゃべったのかしりませんけれども、元来取引の自由という範疇を逸脱するものではないのではないかと、こう考えますが、それ以上の干渉がましい事柄がもしあったとすれば、その点はやはりできるだけ控えてもらいたいと、こう私は思うのでございまして、事務当局から注意を喚起さしておいたのであります。
  162. 亀田得治

    ○亀田得治君 この当事者の一人である東工物産から、外務省のアジア局ですか、こちらのほうに本件について話し込んで、ぜひこういうことはやめてもらうようにという注意をするように要請をしたようです。で、外務省のほうとしても、それはもっともだという考えで大使館側に当たったようであります。いま外務大臣も何か注意をしたという意味のことを言われたのがそれかと思いますが、その間の事情をもう少し明確にお答え願いたいと思います。外務大臣としては、こんなことはもういいんだというふうにはどうも考えておられぬようですが、考えていないからこそ外務省の人が大使館側に注意もされたのだと思います。だれが一体注意に行かれたのですか。
  163. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 東工物産の話がございましたので、主管であります北東アジア課長が大使館の書記官と面会いたしまして、誤解を招くような行動は差し控えてもらいたいということを申し上げたのであります。
  164. 亀田得治

    ○亀田得治君 大使館の何という人ですか、書記官というのは。
  165. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 大使館の書記官でございますが、ただいま名前を失念しております。
  166. 亀田得治

    ○亀田得治君 皆さんが平素外交交渉等で会われるようなクラスの人と違うんでしょうか。名前を忘れてしまうような人に会ってそんなことを言うたって、なんにもならぬじゃないですか。どうなんですか。
  167. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 常時折衝しております相手でございまして、呉書記官でございます。
  168. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう少し具体的にその間の事情を説明してください。いまのお答えは非常にかいつまんだ簡単なことなんですが。
  169. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 外国の大使館との折衝でございますので、詳しく申し上げることは差し控えたいと思いますが、趣旨は、ただいま申し上げますような、誤解のあるような行動は差し控えてもらいたいということでございます。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 先方の回答はどういうことですか。
  171. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 承っておくということでございます。
  172. 亀田得治

    ○亀田得治君 承っておくというのでは、これは依然として続けるという意味にもとれるし、これは一体五月何日に行かれたわけですか。
  173. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) ただいますぐ調べまして御返事いたします。
  174. 亀田得治

    ○亀田得治君 アジア局長の手元には、そういう注意をしに大使館に行く以上は、具体的な資料というものを東工物産からもらって行ったわけでしょう。その点はどうなんですか。
  175. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 資料の提出はございませんで、一般的な話として北東アジア課長のところへ参りまして、資料はございませんけれども、あまり誤解を招くような行動があっては困るという趣旨で話したわけでございます。
  176. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、金大使が何月の何日にはこういうことをした、何日にはこういうことをしたといったようなことの指摘はしないで、抽象的な言い方しかしておらぬわけですか。
  177. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 具体的なお話は伺っておりません。
  178. 亀田得治

    ○亀田得治君 それでは、向こうのほうも抽象的に答えるしかこれはないわけでして、いやしくもあなたのほうが東工物産の陳情を受けて、そうだと思って行く以上は、具体的なものを一、二やはりつかんで行かなければ、それはほんとうの注意にはなりませんわね。だから、私はそういう意味で若干ここで明らかにしますから、私の明らかにしたことがあなたのほうで調べてもし事実だということになったら、あらためて韓国大使館に今度は具体的に注意されますか、どうですか。
  179. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 具体的なお話を承ってから御返事いたしたいと思います。
  180. 亀田得治

    ○亀田得治君 抽象的な陳情ですら行っておりながら、具体的に問題を出されてくれば、これは当然行くべき筋合いのものだ。それは一応話を聞いてからということも、慎重を期する意味でよろしいかもしれぬが、しかし、おかしいですよ。普通は、われわれにしたって、どこかに行ってくれと言われれば、そんな抽象的なことで使いに行けるわけではないわけでして、当然その際に東工物産に聞いたらいいわけでしょう。そうすれば、具体的なものが出てくる。非常に適切な折衝ということになるわけです。  で、外務大臣、時間を私守りますが、どうですか。これが新聞にも出、業界でもいろいろなことが言われております。行き過ぎた干渉というふうなことがあった節は、これはアジア局だけにまかして置くのじゃなしに、そういうときこそ外務大臣が、日本の外交の自主性という立場から、よけいなことをするなという注意を堂々と私は呼びつけてすべきものだと思う。その点についての外務大臣の考え方を聞いておきたい、最後に。
  181. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 元来、取引はこれは自由が原則でございまして、それで北と南と比較してもし北と取引するならば南の取引はあきらめろというようなことを言われて、その場合に自分利益の点からどっちを選ぶかというようなことに結局帰着するものと私は考えます。それに対して日本政府が介入するという立場にないと思います。ただ、あまり立ち入って、これに外国の大使が取引の細部まで立ち入っていろいろ干渉するということはどうも配当でない、こういう意味で注意を喚起しておるものと、こういうように了解いたしております。これを外国の大使が強制するというような別に法律上の権限を持っておるわけでも何でもない。ただ、北と取引をするなら南はごめんこうむると、こういうことをまあもし言ったとすればこれをどっちを日本の業者が選ぶかというだけの話だと、私は大筋はそれに尽きるのではないかと、こう考えております。
  182. 亀田得治

    ○亀田得治君 北と取引をすれば南の取引はやらさぬと、そういう問題だけじゃないんです。外務大臣ね、そういう問題だけじゃないんです。言い方は相手によっていろいろあるわけなんです。ある場合には大使館に呼びつける、関係者を、影響力のあると思う人を。まあ出て行くほうも出て行くほうだと私は思いますがね。それはいろいろなことがつながっておるからでしょう。だから、それには、あなた一つだけのことを私が例としてあげたものをそれだけを言われますが、いろいろなケースがあるわけなんです。アジア局長に残ってもらってその点を私が具体的に指摘しておきますから、これは検討してほしい。ほんとう、前例になりますよ。日本の北朝鮮に対する技術者の問題については一つの方向が出ているわけですからね。公の立場からいえば、その方針に対するこれは干渉なんですよ。単なる商売の問題だけじゃないんです。公的にはこれは外交方針に対する干渉ですよ。明らかに世間はそう見ておる。世間は、なんだ、日本政府はおかしいなって。それから個人的には、これは明らかなあなた営業妨害ですよ。私がいまいろいろ指摘します。だから、自由な選択じゃないでしょう。脅迫ですな。場合によっては、刑法でいえば威力業務妨害、そういうことばを使うと非常にとっぴなようですけれども、法律的に構成していけばそういうことにもなりますよ。そういうことを大使があなた堂々とやっているんですよ、特権をかさに着て。まあ約束の時間でありますので、外務大臣にその点のひとつ検討を要求しておきます。  アジア局長、ちょっとメモしておいてください。  五月十六日に、石川島播磨の首脳部に対して金大使から電話をして、そうして呉造船の——まあ今度のアクリル・プラントは、呉造船と東邦ベスロンと日本技術輸出株式会社、これが製造会社として三社が関係があるわけですね。東工物産は輸出商社になるわけですが、この呉造船の親会社に当たるのが石島川播磨ですね。その親会社のほうに、呉造船に中止するようにしてくれえという電話をやっているわけなんです。これは、韓国の取引の停止とか、そんなことじゃない。親会社の威力を利用しているんです。  それから五月二十日には、東芝の土光社長を——これは前の石川島播磨の社長です。金大使が大使館に呼んで、そうして直接土光社長にかっての子会社である呉造船に話をしてくれえと、こういうことをやっておる。  それからさらに五月二十日、同じ日に、東京銀行の原頭取——前の大蔵官僚、これを大使館に呼んで、金大使から、輸出商社である東工物産の取引中止を働きかけてくれと、こういうことを要望しております。聞くところによると、東京銀行は東工物産の取引銀行であり、現在ソウルに支店を設置するという問題が起きておるわけです。そういうふうな関係というものを背景にして東銀の頭取を使っておるわけですね。  それからさらに五月十一日、金大使が足立日商会頭に会って、同じような努力を要請しております。  それから五月十二日に、同じく金大使が植村経団連副会長に会って、同じ要請をしております。植村さんから東工物産の社長に実際に話もあったようであります。それからまた、さっき申し上げた東京銀行の原頭取からの話も、東工物産にあったようであります。  それから東邦ベスロンに対しては、親会社の東邦レーヨンを使って同じような工作を、東邦レーヨンに対する圧力をかけて、そうして東邦ベスロンにあきらめさせようというふうなこともやっております。  この一番最後のやつの具体的な日時なりどこを通じてという点はちょっと控えておきますが、こういうわけで非常に具体的な動きを大使みずからがやっているわけなんですよ。これは、あなた、北と取引したら南はやらぬぞというようなことは、韓国の方針がそれならそれとしてちゃんと発表だけしておけばいいのでね。いやしくもいま私が指摘したようなことを具体的にみずから先頭に立ってやるなんというようなととは、もってのほかですよ。しかも、日本の外交方針と矛盾しておるでしょう。そうして、個人的には営業を妨害するという関係になるのでしてね。これは具体的にひとつ調べてほしい。私がいま指摘した関係者にあなたのほうで役所に来てもらってお聞きになれば、みんなわかりますよ。よろしいな。調査の結果を報告してください。
  183. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 調査いたします。
  184. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ、最後に、たいへんお待たせいたしましたが、法務大臣に若干お聞きします。  本件については、法務省としては、ことに石井さんとしては、だいぶ前からいいじゃないかというふうに言われておりながら、今日までこのような未解決の状態にあるわけですが、しかし、政府の方針は別に変わっておるわけじゃない。韓国側の妨害等があったりしたために若干時日的に延びておるという程度に私たちは考えております。いずれにいたしましても、近く北朝鮮側からのリスト、来る人の名前というものがこちらへ届くようになっておることをわれわれは聞いております。それが来れば外務大臣も手続自体は受けて立ちましょう、こう言っておるわけでありまして、直接手続をするのは法務大臣のほうになるわけでありまして、そういうものが来れば、直ちにそのような手続をとることに当然なろうと思いますが、法務大臣の従来からの考え等もあわせてこの際ひとつ承っておきたいと思います。
  185. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 政府の方針と私どもの方針は同じわけでございますが、これは前から申し上げておることでございます。さっき橋本君が申し上げたとおりのことを考えております。で、これが具体的の問題になりますと、一個一個の場合、ケース・バイ・ケースということでぶつかるわけでございます。これが出てまいりまして——正式には出てきていないわけでありますが、お話のように長い間問題になりまして前からの問題だということも聞いておりまして、いろいろな事情で延び延びになっておりまして、片づけ得るものなら片づけたいというようなことはだれでも考えているところだと思います。しかし、事情がいろいろあることは当然でございますし、どこの省は承知したけれども、どこの省が承知せんとかいうようなことで、自分のところはいいけれどもほかの省がいかぬからというようなことでなくて、これは政府全体として考えなくちゃならぬ問題でございますから、私どもは、書類が出ましたらば、これを政府全体の問題として関係の各省と打ち合わせをいたしまして、そうして処理するという段階になっております。当面出てさましたら、それをどう処理するかということになるわけでございます。私は、それを許すか許さぬかという問題は、出た書面に対して各省と相談いたしました結果、いつも申すことでございますが、慎重に処理する、慎重は長いものでありますが、私もそういうことばを使って恐縮しておるわけでありますが、出てまいりましたら、ほったらかさないでよく相談いたします。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 前のほうを向いておる姿勢でしょうね。
  187. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) これは、政府全体が一体とならなくちゃならない問題であります。その話し合いを十分いたします。
  188. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは韓国政府の内諾みたいなものをとらなければならぬというふうなことはいやしくも私は不見識なことで、そんなことは考えておられぬと思いますが、どうなんでしょう。
  189. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 法務省としては少なくとも考えておりません。政府としてもそういう不見識なことを考えておるとは思っておりません。
  190. 亀田得治

    ○亀田得治君 五月十二日に、大臣は金大使とお会いになられたようですね、法務省のほうで。先月の十二日午前に。そういうことはございましたですか。
  191. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 日は忘れましたが、五月のうちに、一度、朝、金大使が法務省にたずねて見えて、会いました。
  192. 亀田得治

    ○亀田得治君 そのときの記事が「朝鮮日報」の五月十三日付で出ているのですが、これは、私ははなはだ不愉快といいますか、石井さんともあろう者がそんなはずがないというふうに思われるようなことが書いてあるんです。それは、そのときの模様についていろいろ書いて、石井法相は、日本政府がこの問題を事前通告をしないでこっそり決定することはないと述べた……。
  193. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 何ですか、ちょっと聞こえなかったんですが。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 事前通告……韓国へ事前通告をしないでこっそり決定することはないと述べた、こういう意味のことが「朝鮮日報」の五月十三日号にあなたの金大使への回答として載っておるわけなんです。金大使はおそらく何か取り違えておるのではなかろうかと思うのですが、こういうことは、はなはだ日本の自主性という立場から見て誤解を与えるわけでありまして、この点だけちょっと確かめておきたい。
  195. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 金大使から、まあ内容は申し上げられませんが、こう言うこともいかにもみんなしり馬に乗ったようでありますが、お聞きにならないから申し上げないほうがいいかと思いますが、北鮮の問題、北鮮からの入国問題についての話もありました。そのときに、そういうふうな意味のことは私は言うた覚えはないと思っております。ということは、まるで向こうのお許しを受けなければ私のほうが入国を許さない、これはさっき申し上げたことと逆になるわけであります。日本は、日本独自の立場でこれを解釈すべきものだ。これはどんな場合でもどこの国に対してもそうであるべきだ。私は外交そのものがそうであるべきものだと思っております。
  196. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  197. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をつけて。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、本件は、日本の外交の自主性という立場から見てきわめて重大だと考えております。そこで、外務省にも調査方を依頼したわけです。外務省のほうでは調べてみよう、こう言っておりますが、できますればそれらの関係者を若干でもいいですから呼んでいただいて、いかなる妨害行為なり働きかけがあったのか、そういう点を委員会としてひとつ明らかにしてほしいと思います。いろいろ関係者があるわけですが、代表的に東工物産の社長がまず一番適当ではなかうかと考えております。この点もひとつ理事会等で、御検討を願いたい。  それからきょうは官房長官にも御出席願ったわけでありますが、事きわめて日本の外交の自主性が守られるかどうかというふうなことに関連した問題でもありまするので、総理に適当な機会に御出席を願って、そうしてこの問題についての見解を直接明らかにしてほしいと思います。総理も、この問題については、たとえば四月一日の予算委員会の席上で、私の質問に対して、「これは、ずいぶん前からそういう話が出ております。私も、これには同情的な見方をしております。同情的というのは、こういうのをいつまでも入れないのは、いかがであろうか、こういうことでございます。」と、こういうことを総理までが四月一日に答えておる問題なんです。だから、本来ならば、その筋でいけば、もう四月末くらいには片がついていなければならぬ。それが事実上ついておらぬというのは、韓国の新聞等に書いてあるように、韓国の抗議によって長引いておるんだということになるわけでありまして、こんな前例をつくられたんでは実に重大なんです。そういう意味で、ひとつ総理の御出席を適当なときにお願いしてさらにこの問題についての真相を明らかにしてほしいというふうに要求をしておきます。  以上で終わります。
  199. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまの亀田君のお申し出の件につきましては、理事会において協議することにいたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  200. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。     —————————————
  201. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 次に、再び商法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 前回に局長に検討してほしいと申し上げました点についてだけしぼってお尋ねしたいと思います。  その第一は、昭和二十五年の改正のときに、問題になっておる株式譲渡制限を全部撤廃した。私の見解では、これははなはだまずい改正だというように確信しておるわけでありまして、なぜそういうことになったのか、法改正をした直後から批判が出るようなことを関係者が寄っていていかに占領下とはいえおかしいではないかという点に大きな疑問があるわけなんです。局長のほうで調べてみると言われておりましたが、調べて、まだ調べがついておらぬということならいたし方ありませんが、どういうことだったのか、御説明上願えたら幸いだと思いますが。
  203. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 昭和二十五年に改正いたしまして、従前株式譲渡制限定めをすることができるということを撤廃いたしたわけでございますが、その当時なぜ株式譲渡を絶対的に自由にしなければならなかったかということでございます。これは、先ほども稲葉委員からも御質問がございましたのでございますが、当事特殊な事情下に置かれておりましたということと、戦後の株式ブームというものによりまして株式の大衆化とか民主化とかいうふうなことが非常に強く叫ばれた時代でございました。そういう関係で、本来譲渡し得る性質の株式であれば、これを制限しないで、もう自由に譲渡できるようにするほうが当時の情勢に合うのではあるまいかというふうに考えられたのであろうと思うわけでございます。情勢といたしましては客観的に特殊な情勢下に置かれておったということと、一般株式界のそういった情勢、これがたまたま一致したと申しますか、理論的に株式なるものは本来譲渡性を有するものであるという考えを突き詰めてまいりますれば、現行法のようにその譲渡制限すべきものじゃなくて、全く自由にすべきであるということも一応の理屈も成り立つということになるわけであります。まあそういう事情から譲渡制限の撤廃ということになったものと考えられるわけであります。   しかし、亀田委員も仰せのように、こういう措置をとりましたことがわが国株式会社実情にはたして合っていたかどうかということは、確かに疑問であったわけでございます。改正いたしまして間もなく再度株式譲渡制限をすべきであるという意見が台頭してまいりましたのも、そういった事情を反映しておるものにほかならないわけでありまして、わが国株式会社実情に即しますように、ある程度の株式譲渡制限をする必要があるということで今回の改正案ということになったわけでございます。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 二十五年当時、友対意見というのは関係者から全然なかったわけですか。当時は、法制審議会のようなものを通ずるというようなことは全然なかったのですか。あったでしょう。
  205. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 法制審議会は、これは戦前からございまして、二十五年の商法改正のときにも法制審議会の審議は経たわけでございます。もちろん、従来の商法におきまして株式譲渡制限定めができるようになっておりましたので、その際にもこの点については十分論議はされたかと思うわけでございますが、当時の一般的な情勢が先ほど申し上げましたような状況にございましたために、むしろ株式の民主化という線に沿っていくには譲渡制限定めはしないほうがよろしかろう、こういうことになったと了解いたしておるわけでございます。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 法制審議会等に集まっている専門家が、単なるそういう理論倒れで、現実を無視して立法に走るというようなことでは、はなはだ心もとないですね。その当時八割までが株式譲渡制限をしているものについて、ただ民主化というような一片の立場で押し切っていくというふうなことは、何としてもこれは腑に落ちないわけです。そういう点について反対の態度をとったって、別に占領軍との関係はないわけでしょう、こんな商法の問題ですから。それがそうなっておらないというのは、はなはだおかしいわけでしょう。法制審議会の記録では、これは全会一致ですか。
  207. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 二十五年の商法改正は、株式会社法全般にわたっておりまして、御承知のように株式会社の根本的な改正が行なわれたわけでございます。したがいまして、すべての項目にわたりまして完全に意見が一致したということは必ずしも言えないだろうと思うわけでありまして、法制審議会の過程におきましてもいろいろの意見が出ておることは間違いないと思うわけであります。ただ理屈一点ばりで法律改正を行なうのは適当でないというのは御意見どおりでございまして、ことに商法の場合におきましては、経済界実情に即しますような商法改正というものの行なわれなければならないことは当然でございます。ほかの法律におきましても同様のことが言えるわけでありますけれども、特に商法の場合におきましては、経済界実態に即するように、単なる理論のみの問題ではなくて、そういった面を十分考慮に入れて改正が行なわれるべきものであると考えます。お説のように、単に理論のみに走って改正を考えるということは、私どもといたしましても十分に留意してまいる必要があるというふうに考えておるわけであります。
  208. 亀田得治

    ○亀田得治君 その点、法制審議会の記録をちょっと調べてみてください、これは委員会外でけっこうですから。一人も反対者がなく全会一致でその部分が通っておるというようなことだったら、これはちょっと、法制審議会を通ってきたからというて安心するわけにいかない、そういう気がするわけです。これから刑法なりいろいろたくさんあるわけでして、参考までに調べてみてください、お願いしておきます。  それから次に移りますが、「会社関係民事訴訟事件の種類別件数調べ」という資料をここにいただきましたが、昭和四十年度をとりますと、新受で、全国で株主総会決議無効取消というのが百五十九件と、こうなっております。この中身はわからぬでしょうか。
  209. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 前回の御質疑のときに御要望がございましたので、私どものほうで最高裁判所に依頼いたしまして件数がどういうふうになっておるかということを調べていただいたのが、いま亀田委員のお読み上げになりました数字でございます。最高裁判所のほうにおきましてもその内容を一々区分していないようでございまして、ただ、株主総会決議無効取消の件数が幾ら、あるいは株券に関するものが幾ら、株式名義の書換に関するものが幾らという統計しかないようでございまして、内容につきましてどのようなものであったかということは、遺憾ながらこまかく分類することはできませんでした。件数だけをとりあえず最高裁判所のほうからいただきましてお手元に差し上げたような次第でございます。
  210. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、たとえば総会を開いておらないのに総会を開いたとして議事録ができておるといったようなものなどが多いんじゃないかと思いますが、そういう大まかな区別もわからないでしょうか。
  211. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) さらに最高裁判所のほうに照会してみたいと思いますが、それぞれの事案の内容に応じたこまかい分類というものは、おそらく最高裁判所におきましてもいたしていないのではないかと思うわけでございます。ごく大まかな統計しかないだろうと思われるのでございますけれども、一応、最高裁判所のほうにもそういうことができるかどうか照会いたしてみたいと思います。
  212. 亀田得治

    ○亀田得治君 百五十九とこれは結局おもての争いとし出てきたものであるわけですが、これから推定して、どの程度こういう株主総会決議がだめだというふうな争いというものがあるか、そういうふうなことは考えてみたことはありますか。
  213. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、訴訟になる争訟事件と、訴訟に至らない紛争事件というものを常にわれわれも頭には考えてはみるわけでございますけれども、訴訟事件として具体的にあらわれました数字から逆に実質的な紛争事件がどのくらいあるかということを推定することは、非常にこれは困難な事柄でございまして、ちょっと株式会社株主総会の運営に関連してこういった争いがどのくらいあるかということは、はっきりつかみがたいと申し上げるほかないわけでございます。
  214. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ法案が通ったあとでもいいですが、この四十年度の百五十九件に限って、大まかでもいいですが、傾向がわかるようなことを参考にひとつ一ぺん整理さしてみてほしいと思うんです。で、私の申し上げるのは、まあ四十年度にあることは三十九年度、三十八年度にもあるわけでして、また今年もあり、来年もあるわけでして、そうすると、そのような無用な紛争を防止するにはどことどこだということがやっぱり実証的に明らかになってくるわけですわ。私も中小企業関係の法の整備というものを非常に関心を持っておるわけですから、本来は自分自身がもっと具体的な案を持って言わなきゃならぬわけですが、そういうことのひとつ参考にもしていきたいと思いますので、できますれば中身をですね、ずっと関係条文などを当てはめてもらいますと、実態をつかむのに便宜だと思いますので、これもひとつ要請しておきます。  それからもう一ついただきました資料は、「公募手数料の実例」というのでありますが、これを見ますると、発行価額に応じて一株当たりの手数料がずっと高くなっておるようですね。したがって、何か慣行的といいますか、基準等が、業界として設けられているのかどうか、その辺のところはどうしてこうきまっているのか、もしわかっておればお答え願いたいと思います。
  215. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株を発行いたします場合の公募手数料の額でございますが、発行価額に応じましてその手数料の額も変わっておるわけであります。これは、先般御要求がございましたので、大蔵省のほうに照会してみまして、各証券会社から大蔵大臣に届け出がございましたものの中のまあ一部でございましょうけれども、参考になるものを出してもらいたいということで、これだけ資料をいただいたわけでございます。したがいまして、この発行価額と手数料の関係がどういうふうになっているかということはちょっとつかめないわけでございますが、業界に何かそういう申し合わせとかなんとかというものがあるようには承知していないわけであります。大体のほかの例から考えて、また、証券会社立場といたしましても、ほかの場合にこうであったからこの場合は幾らが相当であるというふうにおそらく個々の案件ごとに双方の話し合いによりまして手数料の額がきまっておるだろうというふうに考えられるわけでありまして、一定の申し合わせとか基準とかいうものは承知いたしておりません。
  216. 亀田得治

    ○亀田得治君 買取引受というと、結局はまあ資金の調達ですわね。その世話をするということになるわけですが、普通、金の世話をすれば、それに対する謝礼というものは幾らというふうなものがありますね。何かそういうものがやはりこの際にも基準になるというか準用されてこういうものがきまっておるのでしょうか。
  217. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株発行の場合におきまする手数料につきましては、根拠法も別にございませんし、単なる業界の事実上の取りきめによって行なわれておるというふうに理解をいたしているわけでございます。
  218. 亀田得治

    ○亀田得治君 証券会社がお客さんからの委託により株の売買をやる、その場合の手数料、あれは何によってきまっているのですか。あれは何か根拠規定があるはずですね。
  219. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 証券取引法の百三十一条に委託手数料の徴収に関する規定がございまして、これに基づいて手数料の額がきまっておるものと考えられます。
  220. 亀田得治

    ○亀田得治君 いま御指摘の条文に基づいてもう少しこまかい規定が何かあるでしょう。一番最後のところまでちょっと説明してください。
  221. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 証券取引法の第百三十一条には、次のように規定してございます。すなわち、「会員は、有価証券市場における売買取引の受託について、委託者から証券取引所の定める委託手数料を徴しなければならない。」と、こうございますので、証券取引所におきましてこの手数料の額を定めておるわけでございます。
  222. 亀田得治

    ○亀田得治君 証券取引所でこれを自由にきめるということじゃおそらくないでしょう。大蔵省あたりで何か基準を設けているんじゃないですか。
  223. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 特段に証券取引所におきまして委託手数料を定めるにつきまして大蔵大臣が関与するというような規定はないようでございますので、証券取引所におきまして合理的な額を定めておるものと考えられます。
  224. 亀田得治

    ○亀田得治君 実際には、東京なり大阪なり、同一ですか、取引所によって違っていますか。
  225. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) さらにこまかく申し上げますと、百三十条にこういう規定がございます。ただいまの委託手数料につきまして、その他の事項とともに、受託契約準則というものを証券取引所が定めることになっております。その細目の中に「委託手数料の料率及び徴収の方法」というのがございますので、これに基づいて委託手数料が定められておるようでございます。
  226. 亀田得治

    ○亀田得治君 その受託契約準則というのは、大蔵省の監督には服していないのですか。
  227. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 同じく証券取引法の百五十六条に、定款、規則、取引慣行の変更命令というのがございまして、これによりますと、「大蔵大臣は、証券取引所の定款、業務規程、受託契約準則その他の規則及び取引の慣行について、証券取引所に対し通知して当該職員をして審問を行わせた後、理由を示し有価証券市場における売買取引の公正を確保し、又は投資者を保護するため必要且つ適当であると認める変更その他の処分を命ずることができる。」という規定がございます。この規定に基づいて、受託契約準則に定められました委託手数料が適当でないということになりますれば、大蔵大臣から変更命令を発することもできようかと思うわけであります。
  228. 亀田得治

    ○亀田得治君 それがはなはだしく高過ぎるという場合は指示ができるわけですわね。それで、実際は何%ぐらいになっていますか。
  229. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 詳細はわかりかねますが、大体百円について二円前後ではあるまいかと思われます。正確なことはちょっとわかりかねます。
  230. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、公募手数料のほうがだいぶ高いわけですね。だいぶ違う。それで均衡がとれるのかしら。公募手数料はそういう監督に服していないのでしょう。だから、どうしてもこう高くなっておる。監督に服しておるほうは低い。だいぶ違いますね、百円に対して二円とでは。小野田セメントの例をとってみますと、六十三円に対して三円ですから、非常に高いわけですね。だから、こういうところは何かもう少し検討する必要があるように思いますがね。どうしてこんなに違うのでしょうか。結局、なんでしょう、同じ株を発行会社から引き受けてそれをお客さんに売るだけのことでしょう。それは多少めんどうでしょうが、そんなに違った、それほど何倍と違わさなきゃならぬようなものじゃ私はなかろうと思うんですがね。
  231. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 一般の証券取引の場合と違いまして、株式を公募いたします関係で手数、経費が証券取引の場合以上にかかることは想像できるわけでございます。それに加えまして、先ほども申し上げましたように、受託手数料の場合には証券取引法規定がございますが、公募の手数料につきましてはそういう大蔵大臣の規制がないわけでございますので、若干高くなるというふうな結果になっておると思うわけでございますが、これもこの表をごらんになりますればおのずから理解できるわけでございますが、金額が少ないほうが比較的割り高になっておるようでございます。六十三円の場合で三円でございますから、大体二十分の一でございます。四百二十円の場合には、十一円でございますので、四十分の一程度のことになっております。その間に若干の差等はございますけれども、おそらく従来の慣行に従って大体こういった見当で公募手数料というものがきめられておるように考えられるわけであります。
  232. 亀田得治

    ○亀田得治君 証券会社の主たる仕事は、結局、応募者を集めるということなんでしょう。事務自体はそんなにめんどうなことはないわけでしょう、ことに大口の応募者がみつかれば。そういう点はどういうふうに考えていますか。応募者の数が非常に多いという場合はずいぶん手間もかかるのだと思いますが。
  233. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 確かに、応募者いかんによりましては、大多数の株式をまとめて引き受けるというようなことも考えられるわけでございますが、これは公募の一つの手段として買取引受というような形式を踏んでおるわけでございます。一応やってみませんと、応募者がどういうふうな形で応募してくるかということも判然とわかりかねる場合もあろうと思うわけでございます。そういたしますと、引き受けました証券会社にいたしましても、将来どういう形で出てくるかということに伴って手数もあるいは多くかかる場合もございましょうし、その辺の危険を考えますと、ある程度高く手数料が定められるということも考えられるわけであります。簡単に公募が完了いたしますような場合には、そんなに手数料は要らないのだろうと思うわけであります。
  234. 亀田得治

    ○亀田得治君 非常に大量に扱うところの証券会社ですね、大きな発行会社のものを扱うような証券会社、そういうところは、今度新株の発行があったらどことどこへひとつお得意さんに回そうというようなことは、大体見当がぱっとつくのじゃないですか、頭の中で。ただ、発行会社にしてみれば、これは筋が違うものだから、発行会社としてはちょっと皆目わからぬけれども、そこが専門家としろうとの違いであって、専門の証券会社にしたら、それが何十万株であろうが、こことこことここだともう簡単にいくのじゃないですか。部外者にしたら、それはたいへんなことですよ。どういうふうにしたらいいかということは皆目わからぬ。だから、そういうわけで、極端に言えば、それは十万株ぐらいだったらもう一口で済んでしまうというふうなことなどもあるのが実情じゃないですか。にもかかわらず、一株づつ手数料幾ら、こうなっているわけですね。それはまた一株づつばらまいたら、一株について何円というものをもらっておったらとても話にならぬだろうけれども、そんなことは絶対にないわけで、大証券会社などはちゃんと大体わかっていますよ。その辺の実情はどうなんですか。
  235. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 証券会社のそういった面の実態というものは、残念ながら私は詳細存じませんけれども、同じく新株の公募を引き受けるにいたしましても、人気株の場合とあるいはそうでない場合といろいろの差異はあるのじゃないかと思うわけであります。大会社の非常に評判になっている花形株のようなものでございますれば、引き受けてもすぐ売れましょうし、証券会社がこれを分売する方法も比較的容易であろうと思いますけれども、すべてがそのような株式ばかりだとは限らないわけでありまして、いろいろなものが出てまいりましょうから、そういたしますと、一律にすべての公募の手数が簡単に行なわれるというわけにはまいらないようにも思うわけであります。一般的な場合の例がだんだん積み重なりましてこのような手数料が受容されるようになったのではないかと考えられるわけでございます。
  236. 亀田得治

    ○亀田得治君 人気株の場合には手数料が割り安になっておりますか。
  237. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 必ずしもそうはなっていないだろうと思います。一々その手数料を調べたわけではございませんけれども、おそらくこれは発行会社のほうでおのずから公募する場合に手数を考え、証券会社に委託すればそれだけ手数、経費が省けるわけでございますから、その上の採算に立って発行会社のほうでもこの手数料の相談をいたしているわけでございます。特に人気株の場合に手数料が安くなっているということは私は申し上げかねるわけでございます。
  238. 亀田得治

    ○亀田得治君 証券会社としては、この手数料というのは、それほどの事務を会社としてはしないけれども、一株幾らということで、これはもう数ですから、まとまって金が入る。この一価の利益がある。それからもう一つは、自分の引き受けた株をどのお得意さんに渡してやろうか、これはもう公募とはいいながらこちらからのやはり誘い水、話し方によっていろいろ違うわけで、そういう点の利益が第二にはあるのじゃないですか。大事にしなければならないお得意さんには、いい株の新株をちゃんと早目に、今度はこういうふうになるからあなたのほうで金を用意しなさいとかなんとか——それはもちろんそのリベートをとるとかそういう意味で言うのじゃないんですよ。そういうようなことをすること自体が証券会社としてそのお客さんとの今後のまた結びつきも強くなるし、いろいろなことで非常に会社としての有利性というものがあるのじゃないでしょうか、これを扱っているというと。ほんとうは、だから、ただというわけにもいかぬでしょうが、ほんとうに実費程度で処理をしても、ちっとも証券会社としては損をしない問題なんではなかろうかと思うんですがね。まあ、あくどく想像すれば、さらにその上に第三の利益として、いつごろどういう新株が幾らで出るかはっきりする、それを一応お客さんに渡す、渡したあとさらにどういうふうに操作するとかいうようなことを専門家がやれば、私はずいぶん莫大な利益になってくると思うんですよ。そのあとのほうのことなどはわれわれはちょっとわかりませんけれども、これはもういくらでも想像つくことですが、そんなものに一体手数料というものが、これは私は相当高い率の手数料だと思いますが、要るものかどうかということがどうも納得いかぬのですが、六十三円売りの三円といえばずいぶん高いですね。単なる手数料としては、何万株と一緒に処理するのですから、こんな楽な商売はないように思いますな。だから、こういう点について、委託手数料についてのそういう感じがあるのであれば、当然私はもう少し検討してしかるべきものじゃなかろうかというふうに思うのですがね。そんなことまでする必要はないですか。どうですか。大体、新株引受のこの仕事は、みな証券会社はやりたがるのでしょう。やりたがっているのでしょう。
  239. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 確かに、公募を引き受けますと、証券会社といたしましても手数料が入るわけでございますので、不利益になるわけじゃむろんございません。したがいまして、買取引受その他の方法によりましてこの取り扱いを委託されますと、証券会社としては喜んでこれを引き受けるだろうと思うわけでございます。  ただ、亀田委員のおっしゃいますように、すべてがすべて簡単に新株の募集が完了するもののみとは限らないと思うわけでございます。私ども町を歩いておりましてもよく証券会社の広告の立て看板を見受けるわけでございまして、「何々会社の新株ただいま募集中」というふうな立て看板が三枚も四枚も並んで立っているという状況をよく目にいたすわけであります。したがいまして、そういう場合には、おそらく個々にそういう申し込みが参るわけでございまして、これはかなりの手数もかかるわけでございます。すべていまおっしゃいますように人気株ばかりとは限りませんので、その間に証券会社といたしましてもかなりのサービスをする面もあるいは出てくるのじゃなかろうかということも考えられるわけでございます。したがいまして、いまお手元に差し上げましたこの手数料の額が、はたして高いか、あるいはこれでいいのか、ちょっと私どもも判断いたしかねるわけでございまして、将来これをどうしたらよろしいかということについてただいまお答えするだけの十分な材料を持ち合わせていないわけでございます。
  240. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体、新株を発行する状態というのは、例外もあるでしょうが、調子のいい状態でしょう。だから、私はこれはいい商売だと、こう思っているんです。しかし、部外者にはできないんですよ、筋がわかっておらぬから。だから、そういうものなら、もう少し——ちょうどこれは株の委託売買だって同じことですわ、実質は。委託売買のほうでちゃんとした監督規定を置きながら、公募手数料を野放しにしておくというのは筋が通らぬ。実際考えると、手数料はそっちのけでももっと大きな利益をあげているのかもしれぬ。これはグルになってやろうとすればできますわね。証券会社関係者が、だれかお客さんのようなかっこうをしてそれを買い取ればいいわけでしょう。非常に有利な発行条件だということが事前にわかっておれば、金を準備して、あすこを適当に操作したら、これはあなたずいぶんもうかりますよ。それはそんなもうけるのまで監視はできないわけだが、だから、一番の妙味というのはあとのほうにあるように思うんですね。  それからもう一つは、立て看板などを見る場合もありますが、公募の方法は、証券会社がこれとこれだとねらいをつけた以外の人からもどんどん来て上回った場合には、これはどういう処理になるのですか、お客さんが上回った場合は。
  241. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 証券会社のほうで分売いたします株式の数というのは、当初の発行会社との契約できまっております。それを上回った需要がありましても、上回った分については証券会社としては責任を負えないわけでございます。したがいまして、発行会社との間で契約されました範囲のものだけを処理すれば証券会社としての支任は果たせるわけでございまして、それ以上のものは公募の際の証券会社の責任の範囲外になろうと思います。
  242. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこで、一万株に対して、証券会社としてはまあ大体めどをつけたのが五、六人、その人々から五人で二千くらい申し込んできて一万になった。しかし、このほかからもたくさん来たという場合には、これは先着順になるのですか、どうなんですか。それは証券会社の自由なんですか。
  243. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そこの段階になりますと、これは一般の売買でございますので、特に順位をつけるとかなんとかいうことはおそらくしていないだろうと思います。したがいまして、実際は早く申し込みをした者が早く株式を取得するという結果になるのじゃないかと思います。
  244. 亀田得治

    ○亀田得治君 その辺が私は監督規定としてもう一つ何か要るように思うんですね。それがありませんと、公募とは名ばかりで、証券会社の好きな者だけに買わす。公募だったらそんなことはおかしいんで、だから、そういう期日までに来た場合にはみんな平等と考えて申し込み数に応じた按分をするということになるとか、何かそういうものがなければ、なんでしょう、公募の実体から多少はずれるように思うんですね。これは、公募じゃなしに、単なる証券会社に金の調達を頼んだというだけのことになってしまう。そうして、そういうことが証券会社の自由にできるとしたら、今度はまた結託できるのがありますね、引き受けさした後の株の処理について。そういうことにもなるわけです。こうたくさん来たときには証券会社の思うとおりにならぬのだということでなければ私は不公正だと思うのですがね。何かそういう点についての監督指導規定というものが要るように思うのですが、どうでしょうか。
  245. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 非常にむずかしい問題でございますが、要するに、発行会社のほうの立場といたしますれば、自分会社の資産状況、収益状況、今後の事業計画、そういうものを考えまして新株の発行をいたすわけでありまして、それに要する資金が幾ら必要かという計算に立って新株を発行いたすわけであります。そういたしますと、みずから発行すれば、これを一括して引き受ける者が出ますればそれでもむろん差しつかえないわけでありまして、発行会社立場からしますれば、何ぴとがこの株式を取得しようと、要するに予定した資金だけが調達できればいいということになるわけであります。その間に証券会社が介在して証券会社の意のままにされるということになると、証券会社を不当にもうけさせる結果にならないかというふうな懸念も確かにあることはありますけれども、そうかといいまして、証券会社の得意先がかりにあるといたしまして、そちらのほうに一括して引き取ってもらえば調達が非常にスムーズにいくというふうな場合でございますれば、これもいたし方ないんじゃあるまいかというふうに考えるわけでございます。まあ資金調達という面からのみ考えますれば、特に新株を分売する方法まで規制するのがはたしていいかどうかという問題になろうかと思うわけでありまして、これは商法の問題というよりもむしろ証券取引の問題になるわけでございまして、大蔵省のほうにもそういう御意見があるということを十分伝えて今後検討してみたいと思います。
  246. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  247. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。
  248. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株券が——これは善意取得の問題とも関連するのですが、株券としての効力を発生するのは、どういう段階から株券としての効力を発生するわけですか。小切手法の二十一条の適用を受けるのはどういう段階からなわけですか。
  249. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株券株券として効力を発生をいたします時期は、発行会社株主にその株券を交付した時点というふうに解釈いたします。
  250. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうして、株券株券としての効力が発生するのが、株主に対する交付のときをもって株券効力を発生する、こういうふうにしたのですか。株券というのは、株式というか株主権というか、そういうふうなものを化体しているのですから、何も交付されなくても、会社にあって会社株券として認めれば、そこから株券としての効力を認めて、善意取得の場合の保護に当てはめてもいいんじゃないですか。交付をもって株券としての効力が発生する、交付する前においては株券としての効力が発生しないというのは、具体的にどういうことになるのですか。——ちょっと問題の意味が、株券を交付してはじめて株券効力が発生するんだと。株券を交付するまでの間、時間がかかるわけですね。その間の盗難なり紛失なり、いろいろ問題が起きてくるわけですね。その場合に、善意取得の適用がないという考え方になるわけですね。それでは現実に静的安全は保護されるが動的安全は保護されないという、いろいろな問題が起きてくるのじゃないか、こういう考え方が疑問として出てくるわけですね。それでお聞きをするわけです。
  251. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株券株主に交付いたしましたときに株券としての効力を発生するという考え方は、これは古くから裁判所で公権的にきめられた考え方でございます。つい最近も、最高裁判所におきまして同様の趣旨の判決が出されております。これは株券株主の地位を表象するものであるということから来るわけでございまして、特定の株主たる地位を取得した者が、その者の株券として株券の交付行為がなければ当該の株主の地位を表象する株券たるものがまだ発生してない、こういうふうに見たわけだろうと思います。  ただいま御質問の問題は、そこまで至ります前に、言いかえますならば、株券の形式は備えているけれども、まだ株券としての効力を持っていたい紙片が転々譲渡された場合、形式的には株券でありますから、それを善意取得した者が株式を善意取得することができなくなるというのは動的安全の見地から見て不当ではあるまいかという御意見だと思います。これは、株券が失効してしまった場合にも同じような問題が起きるわけでございます。除権判決で株券効力を失ってしまったということになりますと、その後いくら株券そのものを善意取得いたしましても株式を取得できないと同様でございまして、やはりそこにはある一定の形式的なポイントを置いて、その時点以後これが正式の有効な株券であるということにせざるを得ないと思うわけでございます。また、さらに考えますと、株券が交付されていない、したがって、株主がまだ自分株券は出されていないという状況下におきまして、まだ株券自分が取得していないのだから譲渡もできないと考えておりますときに、その前におきまして、つまり発行前の株券が転々されて、いつの間にか株主の地位が失われてしまうというような結果になるのも、これは株主立場からすれば非常に困るわけでございます。そういう意味におきまして、ただいまの裁判所で考えておりますように、株主に交付したときから株券としての効力を持たせてその限界を明確にしておくことは必要であろうと思います。
  252. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 除権判決で失効した、それが流通しておった、その場合に善意取得の保護はないというのは、これは、一応除権判決が出て、それが官報に載るわけですね。官報を見ているか見ていないかは別として、一応擬制的には官報を見ているというふうにとるわけです。そこで、見ない者が悪かったんだという形で善意取得者を保護しないという理由は、これはわかるわけです。これは全部官報を見ているはずなんだからというわけで、善意でない、あるいは過失があったんだという理屈は立つし、その前提としてもう株券でないんだという理屈も立ちますけれども、これは別として、その場合と、株券が交付されない段階で盗難なり紛失したという場合とでは、第三者がそういう事実を認識する過程において相当違いがあるのではないか、こういうふうに考えられるわけです。これは現実に違いがあるようですが、それはそれとして、そうすると、株式が有効に成立している、これが前提ですわね、それで株券をつくるわけですから。すると、会社で持っている間は株券株券なんですか、株主に渡らなくても。
  253. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株主に交付いたしますまでは、会社が持っておりましても、それは株券としての効果は持たないわけでございます。株券の形態を備えたものを会社がつくりましても、それはまだ株券と言うわけにいかないわけでありまして、それを株主に交付することによってはじめて株券としての効果を生ずる、こういうことになるわけであります。
  254. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主に交付しない段階で会社が預かっていますね、それは株券を預かっていることにならないわけですか。会社としては単なる紙片を預かっていることになるわけですか。
  255. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株券が有効に成立する過程にあるものでございまして、株主にまだ交付する前の段階でございますれば、形式的には株券の体裁を備えておりましても、これは株券と言うわけにいかないと思います。
  256. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主に交付しない場合の株券もありますわね。会社が持っている場合だってあるわけでしょう。一ぺんに全部株券を交付するとは限らない場合もあるのじゃないですか。そういう場合はどうなんですか。そういうことはあり得ないですか。自己株式の取得は認められないんだから、そういうことはないわけですか。
  257. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株を発行いたしまして、株主たる地位を取得した者に株券を交付しなければなりません。それ以前の段階におきまして会社がまだ渡さないで自分で持っておる、保有しておる段階におきましては、これは株券ではないわけであります。ただ、株主に交付いたしまして有効に株券として効果が付与されました後に、何らかの事由によりまして株主会社にちょっと預かってもらいたいといって預ける場合、これはあると思いますが、そういう場合には会社が持っておりましても株券であることには変わりございません。形式的に株券要件を備えておる紙片であるか、あるいは株券として転々譲渡され得るものかということは、要するに株主にそれを交付した時点によって画されるというふうに考えるわけでございます。
  258. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式が有効に成立しその上に株券が成立しているということとその株券とは、別個の考え方じゃないんですかね。どうもその点が二つに分けて考えるのはおかしいように考えのですが、でき上がった株券というものは、交付前においては株主のために株券として会社が保管をしていく、こういうことでないという判例考え方なんですがね。そうすると、その株式を盗み出して使っても、あるいは横領して使っても、それで金にかえたとかなんとかいう形が起こってきても、それは単なる紙片の横領なり窃盗なりという形になるわけですね。そういう考え方でいいのですかね。鈴木竹雄さんの考え方などを見てみますと、株式が有効に成立しているならば、それについて作成された株券は当然有効なものなんだ、こういう考え方があるわけですね。ぼくはこのほうが正しいような感じがするんで、交付することによって株券が有効性を取得するという考え方とは別なものじゃないかと、こう思うのですが、判例がずっと引き続いておるから、有権的な解釈としては最高裁の判例に従わざるを得ないということになれば、それでもいいと思いますけれども、どうも少し疑問だと、こう思うんですがね。  そうすると、株券発行したときには、全部株主に最初からこれを渡さなければならないわけですか。
  259. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そのとおりでございます。
  260. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ある程度のものは会社が保存をするとかということはできないわけですか。これは自己株式の取得になっちゃって全面的にできないわけです。
  261. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 自己株式の取得とは若干違うように思います。
  262. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 発行されたものだからね。
  263. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 要するに、株券だけの保管の問題になろうかと思います。
  264. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、印刷所で印刷する場合には、それはどういうふうになるのですかね。会社が印刷したことになるのですか。会社の名前で印刷したら、会社機関として印刷したという、そういう見方をするのですか。印刷所で印刷したというわけですね。そうして、一たん印刷所から会社に持ってくるんですか。会社に持ってきて、そうしてそれから一般に交付しなくちゃいけないわけですか。印刷所で盗まれて転々した場合、これはどうなるのですか。
  265. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 印刷所ででき上がった株券がございますときに、それが盗難にかかって転々とするという場合も、これは株券ではない。したがいまして、株式の善意取得ということはその段階では起こり得ないというふうに考えております。
  266. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その株券会社株主に発送するわけですね。どういうふうにして発送するのかよくわかりませんけれども、その間保険をかけておるわけですか。これは何のために保険をかけるのですか。交付してはじめて有効なら、その間に盗まれたって株券じゃないのだから、保険をかけるのはおかしいことになってくるのじゃないですか。これはどういうわけで保険をかけるのですか。
  267. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 実は、その点が稲葉委員の御質問の一番問題になる点だろうと私思うわけでございます。実際、株券を輸送いたします際に保険にかけておるようでございますが、なぜその紙きれに保険をかけるかということになるわけでございます。最高裁判所の判決のように考えますれば、一片の紙きれにすぎないのでございますが、それを再度印刷に付するための損害をカバーするために保険にかけるというふうに考えられるわけであります。印刷ができ上がってしまえば当然にそれが株券として効力を持っておるといたしますと、これは株式を表象するいわゆる株券でございますので、株券としての価値あるものとして保険の対象になる、そういうふうに考えられるわけであります。しかし、最高裁判所が判断しておりますような考え方に立ちますと、その株式の価格そのものが保険の対象になるものかどうかということが理論上ちょっと疑問になるわけでございます。ただ、ただいまお話しのように、その過程において紛失して、これが善意取得の問題——これは法律的に善意取得にならないという結論になりますけれども、そういった問題が起きるという危険を防止する意味も確かにあろうと思うわけでございまして、会社側にとってみれば、そういった事故が起きますと若干の損害が生ずることは、これは考えられるわけであります。そういったものも含めて、保険によってそれをカバーするということも考え得るわけであります。この問題は、ただいまの保険の問題に関連いたしましてどうするかということによって非常に結論が異なってくる一つの重要な問題ではございます。
  268. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 保険会社に対して保険をつける被保険利益は、どうもわかったようなわからないようなことなんですが、じゃ何を基準にして保険料を保険会社はとっておるわけですか。具体的にどの程度とっておるのですか。
  269. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 保険料を何を基準としてとっておるか、ちょっとはっきりわかりませんが、おそらく株金額を基準にしておるのじゃないかと思います、実際の取り扱いは。
  270. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株金額は被保険利益とは関係ないのじゃないですか。株金額を標準として保険料をとっているとすれば、これは法律上の大きな問題ですね。これは刑事上にはならないだろうけれども、何かなるのじゃないですか。おかしいですね、これは。
  271. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) それだけの被保険利益があるという判断に立って保険契約者と保険会社の間で契約いたしますれば、これは別に差しつかえないわけでございます。特にそのために違法だということも言えないだろうと思うわけでございます。
  272. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、保険契約者がよく事実を知らないからじゃないですか。事実を知っていれば、そんなものに保険金額を標準にして保険料をとられてはかないませんので——ばく大なものじゃないですか。これは民事局で回答している損そのときに具体的な事実関係を調べたのじゃないですか。
  273. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) はっきり記憶いたしませんが、昭和三十五、六年ごろにそういう回答が出ておるようでございます。これは確かに株金額を基準にするという解釈に立っておるようでございます。
  274. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 昭和三十六年七月十三日付の民事局の回答ですね。これはあとで向こうからの照会と回答と両方資料として出してほしいと、こう思うんですが、どうもここら辺はおかしいと思うんです。保険は必ずしも株主のところへ交付されるそれまでの間だけの保険とは限りませんから、一がいにそうとは言えませんけれども、それを主としてやっていると思いますから、どうもここら辺のところがはっきりしないですね。どうもいまの点は何かはっきりしない点があるので、資料を出していただきたいと、こう思います。  さっきの質問に戻るわけですが、株式譲渡が自由で、それを制限するということですが、そのあれは定款の必要的記載事項になるのですか。
  275. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式譲渡制限しようとする会社について定款にその旨を定めればよろしいわけでございまして、必ず譲渡制限をするかしないかということを定款に記載しなければならないものではございません。
  276. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株券譲渡制限をしたときには、そのことを株券に記載するのですか。
  277. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株券に記載することになります。
  278. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その株券の記載のしかたが、条文を見ますと、どういうふうに記載をするのですか。現実にあるその株券譲渡制限になっておるんだという記載のしかたをするのですか。あるいは、その会社株式譲渡制限になっておるという場合には、全部が譲渡制限になっておるとは限らないんでしょう。なっていることによってすることもあるし、株式譲渡制限がきまっておってもしなくてもいいんでしょう。どういうことになるんですか。
  279. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 定款定めまして、株式譲渡制限が行なわれる旨が定まりますと、その会社発行しております株式については全部譲渡制限規定に服するわけでございます。したがいまして、株券に記載いたしますときにも、その株券譲渡制限の対象になっておるということではなくて、当会社株式譲渡制限に服するという趣旨のことが書かれるわけでございます。同時に、これは登記事項にもいたしております。によって一般に周知させるように措置いたしております。
  280. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株式譲渡制限というのは、可分的に全体の中のある部分は譲渡してもいい、ある部分は譲渡してはいけない、こういう形はとれないのですか。
  281. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式によって差異を設けることになりますので、それはできないというふうに考えます。
  282. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうしてですか。差異を設けていることはいくらでもあるじゃないですか。議決権のある株式もあるし、議決権のないものもあるし、いろいろあるわけじゃないですか。一定の株数のうちのある株数は譲渡制限をして、ある株数は譲渡してもいいんだということは、当然あっていいのじゃないですか。議決権のある株もあるし、議決権のないものもあるし、額面株もあるし、無額面株もあるんですから。
  283. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 特殊の株式発行することはむろんできるわけでございますが、同種類株式について、ある者が持っている株式については譲渡制限をするけれども、その他の者が持っている株式についてはこれをしないということはできないと、こういうふうに考えるわけであります。たとえば議決権のない株式議決権のある通常の株式発行たいしておりますと、これは株式種類が全然違うわけでございます。したがいまして、その議決権のない株式についてだけ、あるいは議決権のある株式についてだけ譲渡制限をするということは、これは差しつかえないと思いますけれども、同一種類のものについて差等を設けますことはできない、このように考えているわけでございます。
  284. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのことはどこに書いてあるのですか。
  285. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株主平等の原則から当然そういう結論になると思います。
  286. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主平等の原則といっても、株主がそれを承知していればいいのじゃないですか。議決権のある株と議決権のない株とを発行することは、株主平等の原則とは別個の考え方だというわけですね。それなら、譲渡制限のある株と譲渡制限のない株とを発行するということは、これは同種類の中で二つに分けるというのじゃなくて、初めから譲渡制限のあるものと譲渡制限のないものという分け方をすれば、その二つのものは同一種類の中の二つというのじゃなく、別個の種類のものだという考え方が当然できてきて、決して株主平等の原則に反しないということになってくるのじゃないですか。考え方の相違じゃないですか。
  287. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 譲渡制限のある株式とそうでない株式は、株式種類が違うというふうには考えていないわけでございます。同じ株式であってもその譲渡性が自由であるかどうかという差異だけでございます。これがもしも同一種類のものにつきましてそういう差等が生じますと、先ほど申し上げましたように、株主平等の原則に反するのではあるまいか、こういうわけでございます。
  288. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主が、譲渡制限のあるものとないものと承知して買えばいいのじゃないですか。それで、たとえば譲渡制限のあるものは少し安いとか高いとか、どっちか知りませんけれども、こういうことを承知して買えば、別に株主平等の原則に反さないのじゃないですか。
  289. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新しく株主になる者がそういうふうに承知して買う分においてはちっとも弊害がないという御趣旨であろうと思いますけれども、株主平等の原則といいますのは、現在の株主に差等があってはならないということでございます。したがいまして、同一種類株式については同じ条件でなければならないわけでありまして、その間に譲渡が許されるものと許されないものがあるということはできないわけでございまして、これは単に株式譲渡性のみに関する問題でございまして、株式種類の差異ではないわけでございます。
  290. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、議決権のある株式ですね、それを持っている人が、ある株以上持っていると議決権制限されるという定款があったとしたら、それは株主平等の原則に反する——そういう定款はないですか。
  291. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そのような定款定めはできないと思います。
  292. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ある程度の株式を持っておる場合には、一つ株式議決権でなくて、ある程度まとまったもので何議決権という形のきめ方は絶対できないですか。
  293. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) それも現行法ではできません。
  294. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうのはしかし現実にやっておるところがあるように聞いているのですが、あるいは私の間違いかもしれません。そうですが、議決権のあるものと議決権のないものとの差別がある以上は、たくさん一まとめに持っている場合に議決権というものをある程度数で制限するということも株主平等の原則に反してできないことになるわけですか。あるいはそれが正しいかもしれませんが。いまの現行法では、議決権あるものの制限ということは全然できないですか、何らかの形の制限はありますか。
  295. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 一般的に株式についてそのような措置はできません。ただ、優先株についてだけ議決権のない株式というものができるわけでございまして、それ以外には議決権を奪うことはできないわけでございます。
  296. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 優先株の場合に議決権を奪うことができるとすれば、それは株主平等の原則には反しないのですか。それはどういうわけですか。優先株だからというのですか。優先株の内容にもよるのじゃないでしょうか。
  297. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 優先株か後配株かというふうなことは、その株式発行いたします際の株式そのものの性格なんでございまして、その範囲内で株主は平等に取り扱われなければならない。その種類株式を持っておる者がその範囲内で平等であるべきであるというわけでございます。したがいまして、一般株式の場合に、議決権をあるものについては奪い、あるものについては与えるということは、これはできないわけでございます。
  298. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株式譲渡制限のところで取締役会承認を要するという形にしているわけですね。代表取締役がやったのはもうさっきの話じゃ無効だというわけでしたね。代表取締役業務執行としてやったのはだめなんだと、こういうわけでしょう。ところが、新株発行の場合に取締役会決議なしに新株を発行した場合、どうなんですか。代表権は取締役がある。
  299. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株発行の場合に、取締役会株主総会決議がなくて発行してしまう。これは代表取締役が単独で権限なくしてやったということになるわけでございます。それ自体は違法でございます。違法でございますけれども、株券発行してしまえば、これはその発行自体は有効である。手続の過程において違法な点はありますけれども、株券発行という段階まで行ってしまえば、これは有効であるというのが最高裁判所の考え方でございます。これは、新株発行の過程におきましてそういう株主総会決議がないという瑕疵はございますけれども、これは会社内部の意思決定が欠けたというだけでございますので、株券発行の段階まで行ってしまえば、これは有効と見るべきであるというのが最高裁判所の態度でございます。
  300. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、取締役会決議というのは会社機関の内部の意思決定なんだという考え方でしょう。有効な代表権のある取締役が新株の発行をなす以上、新株の発行自体の効力には影響がないという考え方でしたね、最高裁の判例以下の考え方は。これに対して反対意見もありますけれども、いずれにいたしましても、そういう考え方ですね。そうすると、株式譲渡制限ということをきめた取締役会決議というのも、会社機関の内部の意思決定にすぎないのであって、この考え方でいけば。だから、有効な代表権がある取締役の株式譲渡制限があるのだというふうに株券に記載してそれをあれしてしまえば、それは取締役会決議がなくても、代表権のある取締役のやった行為が効力を持ってくるのじゃないですか。その点との関係は多少ぼくは違うと思うんですよ。株の発行の場合と株式譲渡制限の場合には内容が非常に違いますから、新株発行の場合は取締役会決議がなしでやった場合でも有効なんだというものを直ちに株式譲渡制限の場合に持ってくるのは、ちょっと内容的な差があることは私も認めるんですよ。認めるんですけれども、取締役会決議会社機関の内部の意思決定にすぎないんだということは、これは一貫した最高裁の判例でしょう。そうじゃないですか。そこから来れば、それを絶対なものとすれば、代表取締役の行為が外部に対して効力を持たなくちゃおかしいでしょう。いまぼくの言った議論が株式譲渡制限の場合にどれだけの実益があるかはぼくも疑問なんですよ。ちょっと観念的な議論なんですよ。それはそうですけれども、取締役会決議というのは会社機関の内部の意思決定にすぎないんだということは、これは一貫した議論ではないのですか。
  301. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株発行の場合におきまする株主総会決議と、今回の改正によりまして設けたれます株式譲渡制限の場合の取締役会承認というものを同列に見るべきではないかという御意見だと思いますが、まあそこに多少の違いはあるということでございますが、株主総会の場合には、これは確かに株式会社意思決定機関意思決定として決議が行なわれるわけであります。取締役会決議と申しますのは、これは業務執行のための意思決定でございまして、株主総会あるいは定款定めるところに従って取締役会業務執行をまかしてあるというのがいまの商法のたてまえでございます。したがいまして、この譲渡制限の場合でも、新株発行の場合と同じように、株主総会決議によって譲渡制限をここに行なっていくということも技術的には考えられるわけであります。その場合には、会社そのものの意思決定に従ってやるということになるわけでありまして、こういう形をとりますと、新株発行の場合と同じような理屈になろうかと思うわけであります。しかし、株式譲渡といいますのは、非常にひんぱんに行なわれますのと、それを一々株主総会決議にかけるということは、実際問題としてこれは不可能でございます。また、そういう措置をとることが妥当であるかどうかということも問題でございますので、業務執行機関である取締役会承認が必要である、かようにいたしたわけであります。  したがいまして、株主総会決議の場合と取締役会承認の場合とでは、その性質上の違いもございますし、株式譲渡制限するには定款取締役会承認を要するということを定める以外に方法はないわけでありますので、取締役会承認がもしないといたしますれば、これはまあ譲渡承認がなかったと、こういうふうに見ざるを得ないと思います、取締役会承認というものが譲渡を許す一つの条件でございますから。
  302. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、取締役会決議なり承認といったって、前提として決議があるわけですからね。それは会社機関の内部の意思決定にすぎないじゃないかということになってくると、それに反して業務執行機関代表取締役がやった行為というのが第三者との関係が生じた場合に、取締役会決議というのは内部の機関決定だというならば、外部の者はそれはわからないわけですから、それよりも代表取締役の執行のほうが優先して、そのほうが効力を第三者に対しては持つようになるのではないか、こういう問題がそこにあるんじゃないか、こういうんですけれどもね。ただ、株式譲渡制限の場合にはそれでは具体的にどういう事例があるかと、こうなってくると、おかしいんですよ、率直に言うと。具体的な例としてはどうもはっきりしないと思うんですけれどもね。新株発行の場合にははっきりしてきますけれども、だから、株式譲渡制限というものはむしろ消極的なものですから、積極的に第三者に対する関係がそのこと自身から出てくるものではないように考えられるんですね。ですから、取締役会決議に反した代表取締役の行為というものが現実にあり得るのかどうか、ぼくもちょっと疑問には思うのですがね。どうもそこら辺のところがはっきりしないような印象を与えるのでお聞きするわけです。代表取締役取締役会承認を得ないでいまの譲渡制限に反してやった場合を無効としなければならない理由はどこにあるのですか。また、そういうことで第三者との間に何か紛争が起きることはありませんか。ぼくはちょっと例が考えつかないんですがね。
  303. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 御承知のように、取締役会というのは、監査役のかつての業務執行に対する監督権をなくしてしまいまして、取締役会というボードにおきまして相互牽制組織をつくって株式会社業務執行の適正を期していこう、こういうところにこの取締役会制度が生まれた理由があるわけであります。したがいまして、こういった重要なことは、取締役会がその方針をきめて業務を執行していくというのが現在のたてまえでございます。譲渡制限の場合には、代表取締役にのみこれを一任いたしてしまいますと、かえって代表取締役一人の意見のみによって左右されるという危険性も出てまいるわけでありまして、会社立場を考えて譲渡制限するかどうかということを考えます場合には、やはり取締役会のこういったボードの意思決定に従うというのが最も適正なやり方になるのであろうというふうに考えられるのでございます。したがいまして、代表取締役のみに一任してしまうということは、かえって結果的に適正あるいは妥当な結果にならないというふうに考えているわけでございます。
  304. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が心配というか考えるのは、株式会社会社の役員間で非常に争いがあって、それで株主総会で役員の改選なんかをするとかいろいろな場合に、どちらが多く株式を持っておるかということによって決するんですね。そのときに、前に取締役会承認をして株式譲渡制限したと、だから、株式譲渡制限されておるんだというのが普通のルートなんだけれども、それを逆用して、どういうふうに言ったらいいですか、代表取締役が一まあどういうふうに言ったらいいですかね、何かそれを逆用して、あとから——実際には株式はずっと流れちゃったんだと、それをあとから取締役会を開いたようなかっこうにした、そうして取締役会承認でこれは株式譲渡制限があったんだという形をとってくることが何か争いの中で考えられてくるのじゃないか、こういうふうにちょっと考えたものですから、その点をちょっと聞いているわけなんですけれども、それは登記によって効力を発生するということになってくると、株式譲渡制限会社の紛争に何か利用されて拡大されていくというような危険性はないですか。そういう点は考えられませんか。ちょっと私も思いついたんで、何か整理ができないんですがね。
  305. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 新株の発行にからまって会社の勢力争いが起きる、あるいはそれに利用されるというふうなことが起きないかということになりますと、これは、譲渡制限がありましても、現在の法制下におきましても、同じ問題が起きるわけでございます。新株発行権限は原則として取締役会にございます。したがいまして、取締役会できめたところに従って自由に株主を割り当て得るわけでございますので、譲渡制限規定がありましょうとも、あるいは現在のようにない場合におきましても、そういう問題が起き得る可能性があるかないかという問題になりますと、これは同じことになるのじゃないだろうかというふうに考えるわけでありまして、特に譲渡制限規定を設けることによってそういった問題が多くなるとは考えておりません。
  306. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省で考えておるのは、この商法が通った場合に、おおよそのめどとして、どれほどの会社、どのような層の会社といいますか、それが株式譲渡制限というものを設けるだろうかという見通しはどの程度なんですか。これはまあ大ざっぱな話になりますけれども。
  307. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) はっきり株式会社につきまして一々調べたわけでございませんので、的確なことは申し上げられませんが、少なくとも昭和二十五年の改正当時におきまして八〇%以上のものが譲渡制限定めをいたしておったといたしますと、大体それに近いものが今回の改正によって譲渡制限定めを設けることになるのじゃないかというふうに——これは想像でございます、正確なことは申し上げられませんけれども、おおむねその程度のものは行なわれるだろうというふうに考えております。
  308. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現在の法律株式譲渡制限がないというわけですね。そうすると、それは具体的にこれこれこれというように弊害を生んでいるわけですか。その点はどうなんですか。だから譲渡制限しなくちゃならないということになるわけですか。あるいは、別に弊害はないんだと、けれども、譲渡制限したほうが同族会社みたいなものには適していると、こういう程度の意味なんですか。
  309. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現在のように株式譲渡が全く自由でございますと、同族的な会社、閉鎖的な会社におきましては、無関係の第三者がその経営に入り込んでくるということがその会社の経営の円滑を害する結果になるわけでございます。一々そういったトラブルの起きている件数がどのくらいあるかということは、これはわからないわけでございますけれども、経済界要望も、そういう紛争をなくするためには、やはりその会社の自主的な決定によって株式譲渡制限定められるようにしてもらいたい、これによってその会社の経営の安全円滑をはかりたいというのが経済界の希望のようでございます。そこで、この譲渡制限規定を設けようと、こういうことにいたしたわけであります。
  310. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう見方も確かにあるかもしれませんけれども、元来、同族的だとか閉鎖的ということが株式会社の本質からいっておかしいと私は思うんですがね。株式会社制度というものが資本主義の精髄ですから、そういう制度がいいとか悪いとかということはこれは別個の問題として、第三者が株式を取得してそして経営の内容を明らかにしていくということによって、はじめて経営というものの実態が明るみに出て、悪いところが直されて、経営が健全化していくということが当然考えられてくるわけです。それはたくさんの株式を取得したいという特定の意図をもってするというのは別ですけれども、同族的、閉鎖的な会社ならば、何も株式譲渡が自由に行なわれるということはあり得ないわけです、どんどん流通するということは。そういう特殊な会社が、自分たちの経営の不健全化というものを世の中に明らかにしたり何かすることを避けるために譲渡制限をするという意図が非常に多いと思うんです。ことに、利益がどのくらいあるとか、営業収益の問題ですね、そういう面を第三者が入ってくることによって明らかにされると、それはいろんな面で困るからといって、いわゆる企業の自己防衛的な、正しい意味ではない自己防衛的なものが株式譲渡制限をしようという動きになってきたんではないんですか。どうも、お聞きしていて、株式譲渡制限をなぜこんなふうにやるようになったのか、どうもポイントがつかめなんですがね。
  311. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式会社に同族的なものがあるとかあるいは閉鎖的なものがあるというのは、おかしいといえばおかしいとも言えるわけでございまして、そうかといって、会社の経理内容を明らかにするためにはこういった譲渡制限を認めるべきでないということもあるいは一つ考え方かもしれません。しかし、小さな会社が大資本に結局支配されてしまうというふうなことも出てくるわけでございまして、そういうところをおそらく小さな同族会社が心配しているのであろうと思うわけであります。外部の資本によって自由にされてしまうということも、これは株式会社である以上は、現行法のたてまえから申しますれば、これは株式の取得によって当然そうなるべき筋合いのものではございますけれども、気心の合った者同士で株式会社を組織している場合に、譲渡が自由な場合に、何らかの理由をもってそれが第三者に乗っ取られてしまうというような心配も確かにあるわけでございます。本質的には株式会社にそのような小さなものを認めるのがいいのかどうかという前回の御質問に返ってくるわけでございますけれども、現状としてそういうものがあります以上、やはりそういった会社の経営の安全をはかっていくということも考えてみる必要が十分にあるというふうに思います。
  312. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 確かにそれはいろいろな議論があると思うんですけれども、経営の実態というものを明るみに出したくないのだということが中心なんで、だから、そういう会社に限って、現実株主総会も開かない、取締役会ない、たとえば決算もまともにやっていないということになってきているので、そういう実態というものを明らかにしたくないということが中心なんじゃないですかね。それはなるほど大会社が入ってきて株式取得をして乗っ取られる危険性があるということ、それはあり得ましょうけれども、それは何も株式の取得だけの問題じゃないんです。金融の問題で入ってきて経営参加がいくらでもできるわけです。それは商法の問題とも直接関係しないようにも考えられるんですが、いずれにいたしましても、この点はもう少し実態などをよく調べてみたい、こう考えます。
  313. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  314. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をつけて。  本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会