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1966-04-27 第51回国会 参議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十七日(水曜日)   午前十時三十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 山田 徹一君     委 員                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 中野 文門君                 中山 福藏君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君    政府委員        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        厚生省社会局長  今村  譲君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        警察庁保安局防        犯少年課長    今野 耿介君        大蔵省大臣官房        財務調査官    加治木俊道君        国税庁次長    中嶋 晴雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (売春対策に関する件)  (近江絹糸事件に関する件)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  理事会において協議いたしました結果、商法の一部を改正する法律案の審査のため、来たる五月十二日に参考人出席を求め、その意見を聴取することに決定いたしました。右理事会決定どおりとすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないと認めます。  なお、参考人人選等委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ舌あり〕
  4. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、まず、売春対策に関する件について調査を行ないます。藤原君。
  6. 藤原道子

    藤原道子君 私は、まず、売春防止法が制定されましてことしで十年になるわけです。したがいまして、この法の取り締まり現状と、いま行なわれておりますいろいろな批判がございます、これらに対してどういうお考え取り締まりに当たっておられるか、あるいは、これらの女性の更生に対してどういう指導をなさっておられるか、これについてそれぞれの関係官庁から御答弁をお願いいたしたいと思います。
  7. 津田實

    政府委員津田實君) 昭和三十三年以後、売春事犯につきまして検察庁の受理いたしました人員は、昭和三十四年が約二万五千人でありまして、それを最高といたしましてその後漸減の傾向を示しておりまして、昨昭和四十年におきましては約一万五千人となっているのであります。しかしながら、最近、この種の事犯も、次第にいろいろ形を変えてまいりまして、種々新しい形態をとるものが見受けられますとともに、その手段方法におきましても巧妙化あるいは潜行化するという傾向を見せていることを考え合わせますと、単に人員の減少したことがそのまま事犯実態をあらわしているということは申せないと思うのであります。  なお、売春助長事犯検挙人員は、ほぼ横ばいでございまして、これは減少をいたしておりません。  大体、概況はただいま申し上げましたとおりでありますが、全体といたしまして、昭和三十三年の四月から三十四年の三月まで(勧誘等)の五条違反は六三%でありますが、これは昭和四十年度には六七%ということで、まあその間昭和三十五年には七三%まで上がっております。なお、(周旋等)の六条関係は、昭和三十一二年が一八%であり、昨年が一六%というように、いずれの事犯につきましても表面にあらわれたところは大きな開きはございません。  今後の問題といたしまして、ただいまお話しのように本年がそのような年に当たることは十分承知いたしておりますが、最近の手段巧妙化潜行化ということに対する問題といたしまして、法務省といたしましては、その実態の把握つっとめるということを第一にいたしまして、警察と緊密な連絡のもとに一段とくふうをしていくということをいたしておるわけで、のみならず、悪質な助長事犯に対しましては、十分関係法規を活用いたしまして、かなり厳正な科刑の実現がはかられておるわけでございます。  それから婦人補導院補導関係でございますが、これは補導内容をますます充実するということでございまして、これは比較的現在その入院者が少ないわけでございますので、かなり手のほうは十分足りていると思うのであります。ただ、問題は、在院期間関係をいかに考えるかという問題があるわけでございます。そこで、現在この五条違反で受理いたしております売春婦の数は年間約七千名程度でありますが、そのうち起訴された者が約四千三百名で、六四%であります。しかし、そのうち公判に付す前の略式請求された者がございまして、公判に付される者は各年ほぼ一定して千二百人前後であります。そこで、それに対して補導処分に付される売春婦は最近は減少しておりまして、二百七十名前後にとどまっておるわけであります。  そこで、その原因が那辺にありやという問題でありますけれども検察官の公判における活動によりまして補導処分が適切な者については十分その補導処分が受けられるように実効を期しておるわけでございますが、とにかく補導院そのもの入院著というものは必ずしも現在としては多くないということが考えられます。  なお、在院者につきましては、精神障害者あるいは精神薄弱者というものが相当見られまして、ことに精神薄弱者障害者を含めますと、入院者の大部分をこれが占めているというようなことになっておりますので、それに対する医療関係と、それからその退院後の生活指導職業指導ということをやっておるわけでございます。そこで、そういうような病人あるいは精神薄弱者が多いということにつきましては、これはやはり期間の問題としても完全治療ができるものかどうかという問題もございます。それらの点にやはり問題があると思うのでありまするけれども、何ぶんこの五条関係懲役そのものの最局限が低うございますので、補導処分というような処分だけを長くするということにつきましては、これはその性質自体懲役でも何でもありません、補導なんでありまするけれども、やはりいろいろ人権上の問題等もありまするし、それらの入院者に対する管理面でもいろいろ問題があるようでございますので、その期間の問題はかなりいろいろの面からさらに実績を検討する必要があるというふうに考えておる次第でございます。  なお、現在、たとえば昨年五条違反懲役刑の実刑を受けました者の総数は二百五十五人で、それから懲役刑総数は九百二十八人でありますが、補導処分言い渡しのあった者が先ほど申しました数字の二百七十一人、保証観察言い渡しのあった者が二百二十人、それから執行猶予のみの言い渡しのあった者が二百三十二人というふうな状態でございます。  なお、昭和四十年の婦人補導院入院者の新収容者中の心身障害者の数は、精神病質者及びその傾向の者が二百五十三人中二十六人、それから精神病者が三人、精神薄弱者が九十人ということで、全体のほぼ五〇%がかような問題を含んでいる人々でございます。  大体、以上が現況並びに将来の問題を御説明申し上げました。
  8. 今村譲

    政府委員今村譲君) 婦人保証関係概況を申し上げます。  三十三年以来、逐次機構なども整備してまいりましたが、婦人相談所──これは都道府県の必置でありますが、四十六カ所につきましては、大体約三百人、厳密には二百九十六名の職員がおります。  最近、件数が逐次だんだんふえてまいりまして、年間に約一万九千件、これは三十九年度の精密な数字でありますが、一万八千九百三十六件になっております。  その中の相談内容につきましては、経済問題、家庭の問題にからんでおりますけれども、経済問題が約二四%、家庭問題が二一%、それから職業、就職その他のそういう職業関係のものが一四・五%、それから何かどっかの母子寮なり何なりの施設にでも入れてもらわなければ困るというのが一三%というような区分でございます。  婦人相談員につきましては、定員が四百七十五名でありますが、現状は少しオーバーしておりまして、四百八十三名ということでございます。都道府県設置が二百二十七名、市とか特別区の設置が二百五十六名、こういうふうな姿に相なっております。  その活動状況としましては、三十九年度の年度間の受付が四万九十六件、約四万件ということでありまして、当初の三十三年あたりの一万七千件とかあるいは二万件とんとんというものから逐次ふえてきて、ちょうど倍ぐらいのかっこうになっている、こういうふうな状況でございます。  それから婦人保護施設につきましては、全部で六十四施設定員としては二千三百三十二名ということでございますが、現実はなかなか入り手がだんだん減ってきているというので、年間平均しましてその定員の五五、六%、したがって、ある瞬間を平均してとりますと、千二百人あるいは千三百人ぐらい入っている、こういうふうな状況でございます。  先ほど法務省のほうからお話がありましたように、この施設収容の者につきましては、やはり、IQと申しますか、精神薄弱程度相当高い者が逐次たまってくる、こういうふうなかっこうであります。その辺の生活指導なりあるいは就職なり、いわゆる更生という問題がなかなかむずかしい問題でございますが、逐次ふえつつある、こういうふうな状況でございます。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 IQが非常に低い人が多い。ところが、六カ月でそのままお出しになる。そのあとの適切な指導がなされていないから、結局出てくるとヒモが待っている。そのままヒモの自由になっている。これが繰り返されて、結局廃人になっていくというのが現状だと思うのでございます。したがって、六カ月の補導を終えましても、IQの低い者が高くなるわけじゃない。それならば、これらが繰り返し売春をし、しかもヒモの自由にあやつられているということになりますると、真剣に売春防止法精神を生かそうとなさいますならば、これに対しまして、その出てきた精薄子供たちをどう処遇しておいでになるか、これが問題だと思う。補導院においては、分類収容といいましょうか、そういうものも必要だと思うけれども、それもしばしば問題になりましても、一向にやろうとはなさらない。これで適切な法の執行をやっているとお考えでございましょうか。精薄は死ぬまで精薄なんです。その精薄なるがゆえに、あるいは性格異常なるがゆえに、いろいろ社会問題を起こしているんです。これに対してどういうお考えを持っておいでになるか、それをまずお伺いしたい。
  10. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまの仰せは、まことにごもっともな点であると私ども考えております。さような資質の人々につきましてどうするかという問題があるわけであります。いわゆる施設外補導援護と申しますか、そういう者についていろいろ考えており、また、手も打つわけですけれども、これは、御承知のように、施設を退院いたしたも著につきましては一応の法律的な手段方法というものがないわけであります。したがいまして、その人をある形においてこれを拘束と申しますか、身体的拘束じゃありませんけれども、そういう意味の拘束を与えるということができないという問題があるわけであります。そこで、どうしてもこの問題はやはり一つ一般社会援護活動としてやらなければならぬというふうに私ども考えている次第でございます。  そこで、それのつまり橋渡しがどういうふうになされるべきかということが一番問題であると思うのであります。一般犯罪者につきましても同じ問題が現在やはりありまして、保証活動というものがかなり行き渡ってはおりまするけれども、これが完全という面から見れば非常に程度の低いものであると言わざるを得ないわけでございまして、その辺がやはりいまの一つ社会生活における問題ということになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  11. 今村譲

    政府委員今村譲君) 施設のほうにつきましては、ここに統計資料ございますが、昨年のお調べでありますが、六カ月未満在寮者が三七・四%、それから六カ月から一年までが一六%、一年から二年までが一九・一%、それから二年から三年が九・一%、三年以上が一七・八%。これで見ますと、一年未満が全部で五四%、したがって、その残り半分は大体一年から二年、三年というふうに相当期間置いております。それは、先生仰せになりましたように、生活訓練をいろいろな訓練施設の中でやりますが、やはり十分ではない。したがって、一応の目安は六カ月ということでありますけれども現実は六カ月以上というものが全部で七〇%近くある、こういうような状況で、それで、施設状況によりましては、ほんとうの精薄訓練というふうなかっこうならば、これは社会局から児童家庭局の問題に移してやっておりますけれども精神薄弱者福祉法によってそういう施設に移すという場合もございますし、そうでなければ多少なりとも社会生活に適応できるような方向になるまで一年でも二年でも三年でも置いたらどうかということでああいう施設については指導しております。
  12. 藤原道子

    藤原道子君 私は、いまの御答弁ではまことに納得がいかないのです。補導処分に付せられた者、これらに対してはどういう補導をしておいでになるかをまず刑事局長に伺いたい。  それから精薄に対して身分の拘束とかその他ができないものだからとおっしゃるけれども法律実効があがらなければその精神が生かされないならば、法律の改正ということもお考えになってしかるべきじゃないか。いまの法律ではだめだからということで、社会的害毒を及ぼしているにもかかわらず、それを法の規制がないからといってそのままずるずるやっておいでになることは納得いかない。一体、売春防止法をどういうふうに考えていらっしゃるのかを疑わざるを得ないわけです。  それから厚生省のほうでいろいろおっしゃいましたけれども精薄援護施設ですか、幾つあるのですか。ほとんど野放しじゃありませんか。それからこれは週刊誌に載っておりましたけれども、そうした施設が実にぼろっちくて、あんなところには人間はいられないというふうなこともだいぶ批判されている。とにかく怠惰な習慣がついている者を更生さしていこうというには、それだけのあたたかい指導と思いやりがなければ実効をあげることはできない。まず、この点から真剣に精薄問題には取っ組んでいただかなければならないと思う。  それからもう一つ、これら精神のおくれた者を幸いとしてヒモが自由に操作している。このヒモに対しては法改正しなくても現在の法律で十分に取り締まりができるのだというようなことを言っていらっしゃいますが、どういう方法ヒモに対しての取り締まりをしておいでになるか、これもぜひとも伺わなければならないと思う。
  13. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまお尋ねの補導院内の処遇の実際につきましては、これは実は法務省でございますが矯正局所管でございますので、ただいま矯正局関係者を呼びまして直接御説明させることにいたします。  それから婦人補導院在院期間が六カ月でいいかどうかという問題、これにつきましては、確かに問題がございますことは、ただいま御指摘の中でもわかるわけでございます。御承知のように、婦人補導院と申しますのは、懲役あるいは禁錮というようなことではありませんで、補導をすることでありまするけれども、これは身体拘束を伴っておるわけでございます。そこで、現在の五条そのもの懲役を科しておりまするけれども、これは懲役最高限が比較的短い。そこで、五条による刑として現在の懲役刑が適当かどうかという問題は一つございますけれども、しかしながら、売春婦を対象にいたしました場合、そのこと自体にはいろいろ原因があるわけでありまして、これについて処罰をするということはすでにこの立法によって行なわれたわけでありまするけれども、重罰を科するということが適当かどうかという問題は当然あるわけでございまして、これはむしろ適当でないということになると思います。そういたしますると、やはり五条関係売春婦に対する懲役限度というのはおのずからきまってくるのではないかということになりますと、次に、それでは補導院在院期間をどう考えるかということであります。補導院そのものにつきましては、なるほどこれは本人保護をすることでありますので、それは長ければ長いほど保護は手厚いではないかという議論が当然あり得ると思うのでありまするけれども、一面から申しますると、補導院にいたしましても、これは身体拘束を受けておるわけでありまして、自由にどうするということは許されていない。そういう問題がありますので、こういう処分と申しまするものは、やはりその本来の刑の懲役限度というものとのバランスということが当然考えられなければならぬということになってまいりまして、現在の六ヶ月そのものが直ちに適当かどうかということにはもちろん問題はございまするけれども、これをさらに延長して一年あるいは一年半ということにするのが懲役との関係において適当かどうかという問題になると、これはやはり拘束を受ける者のほうのことも考えなければならぬ。少なくとも拘束を受ける者の人権というようなものの面からもものを考えなければならぬということになりますると、その辺は非常に踏み切りがたい問題があるということでございます。  そこで、問題は、要するに、六カ月の補導処分そのものとしての期間現状としてはどうも延長することが適当ではないのではないか、むしろその補導処分を終わった者の措置についてさらに検討を要すべき問題があると、こういうことに私どもとしては考えておるのであります。これはあるいは法務省関係として責任のがれであるという御批判もあるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、そういう拘束の中でいくら尽くしても、これは社会復帰というものに対してはかなり何と申しますか温室の中育ちということになるわけであります。ほかの誘惑その他の要素に対して対抗するだけの本人の力というものは、そういう施設内処分のみによってはつけにくい問題であるというようなことがございますと、やはり社会内処分ということで本人更生をはかっていくというほうに最終的には重点を向けていかなければならぬ問題だというふうに考えておる次第でございまして、これは法務省あるいは厚生省その他の所管の問題ということになればいろいろ問題がございますが、これは政府全体として当然十分考えていかなければならぬ問題だというふうに私は考えておる次第でございます。
  14. 藤原道子

    藤原道子君 ヒモは……。
  15. 津田實

    政府委員津田實君) それからヒモ売春の問題につきましては、先ほど、巧妙化潜行化したというようなことにつきましてまあ概略そういう抽象的なことを申し上げたわけでございますが、現在、各地から集まっておる事例といたしましては、いろいろな形、たとえば管理売春のいろいろな形態がございます。俗称をいろいろ言われているような形態というものがあり、また、暴力団による管理売春という例もあり、あるいはトルコぶろ営業者による管理売春の例がある。あるいはヒモ管理売春、これは一定の関係のある婦女をいろいろな形で売春に追いやるというようなことでございまして、その形態そのものといたしましては、やはり典型的なのは管理売春になるわけでございまして、かような事件につきましては、事例としては一々ここに持っておりまするけれども相当の刑がやはり現在盛られておると私ども考えております。したがいまして、これは見つけることが困難である、つまり発見が困難であるまということはもちろんございますけれども、そういうことに警察においても十分努力をいたしておると私ども考えておりまして、その結果につきましては、ただいま申し上げましたように、種々な形のものを種々な形のまあ十二条違反というようなことで処罰をしておるという実例はここに相当数あるわけでございます。
  16. 今村譲

    政府委員今村譲君) 第一点の精薄施設とは言いながら数が少ないではないかというお話でございますが、ちょっと資料を忘れて来ましたので、いま電話で問い合わしておりますが、仰せのように、三十五年に法律ができまして、それまで若干精薄施設でそういうものがあったのでございますが、少ないことは事実でございます。したがいまして、現在、厚生省社会福祉施設へのいろいろな補助の場合には、そっちのほうに相当重点を置いていま建設中であります。しかし、全国のおそらく相当数字になるものについてはまだまだ足らぬ、仰せのとおりだと思います。  それから第二点の、たとえば立川の新生寮とか、まあ終戦直後に急いで施設をつくらざるを得なかった、したがって、昔の工場、作業場のようなものをつくり直したというふうなものが非常に多うございますので、社会事業全般をひっくるめまして老朽建物の建てかえ整備というので、それは国庫補助金を出しまして自己負担分は全部利子一般会計で無利子にするというふうな制度もできておりますので、この線にのせて早急に直していきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから所外のいわゆるそういう婦人方補導ばり訓練なりというようなものは、たとえば一つり例を申し上げますと、婦人長期収容施設の「かにた婦人村」というような百名定員というようなこころでは、生活指導員というものが六名、それぐら作業指導員──いろいろな手内職のようなもりを教えるわけでございますが、これが四名といりことで、合計十名の指導員がおります。もちろんこれでは定員は足らぬと思います。定員は足らぬと思いますけれども、たとえば少しでもそういうものを配慮してふやすというようなかっこうでやっておりますけれども、なかなか普通法人のようにさっさというかっこうには仰せのようにいきにくい。さっきも申し上げましたが、私のほうでは別に六カ月とか一年というふうにきめているわけではございません。できるだけ早くそういうものを身につけてもらいたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 私はこれは大臣にお伺いしたいのですが、ヒモの問題につきまして、一番悪らつなヒモが見のがされている。結局、売防法ができたときにはまず赤線をなくするということが主眼でございましたから、赤線対策重点が置かれているわけです。ところが、だんだんこれが巧妙化してきたということは、刑事局長の言われるとおりです。したがって、いまはヒモのあり方も、何といいますか、千変万化というのですか、あらゆる方法でやっているわけなんです。ところが、これに対して、この間も判例集等を見ましたけれども、一カ所に女がいる、電話で呼び寄せてそれで売春さしていたということになったら、それは、売春のあっせんはしていたけれども、自分の管理下に置いていたのじゃないということで無罪になっている例があるんですね。いまは売春が非常に巧妙化しておりますから、これに対して一体どういうような方法で今後取り締まっておいでになるか。諸外国の例を見ましても、いかなる方法を問わず売春の収益によって生計を立てている者、こういう者はきびしく罰せられているのですが、日本ではこれが直接管理下に置かれていなかった、住所を指定したわけではないというようなことでのがれるとするならば、いまのヒモの、存在はほとんどのがれてしまう。これでは売春防止の実効はあがらないと考える。これらについてどうしてやっておいでになるか。いま御答弁によりますと、あらゆる努力をしておるとおっしゃいますけれども、このごろはもう目に余るものがある。一部にはむしろ売防法を撤回したほうがいい、中には国立のそういうところをつくったほうがいいというばかなことを言う人さえ出ている。この間も私は大阪その他に行きましたけれども、実に露骨に堂々とやっているのだけれども取り締まりが及んでいないわけです。ですから、大臣自身がこの売春というものに対してどう考えるか、必要悪でやむを得ないというお考えであるのか、こういう点についての大臣のまず御所見を伺っておきたいと思います。
  18. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) ただいまの御質問にお答えいたします。  私どもは、この売春禁止の法律ができましてから十年になります。この取り締まりがだんだんと実効があがって、皆さんから実効があがったと言われなければならぬのでありますが、いまおっしゃるように、表立ってはそう目立たなくなった。だんだん潜行化してきて非常に巧妙化してきたと申しまするか、非常に目立たないようなことでやっている。目立っても、言いのがれのできるような方法で、いろいろ仲介者というのですか、売春を手伝うというような人物の行動がいろいろと広がってきているという話を最近よく聞くのでありますが、この問題は一番いけないのは、婦女子をそういう状態に追い込んでいくヒモなり業者が一番いけないと思います。これを取り締まることが一番大事だと思います。一番力を入れなければならぬ点はその点だと思っております。それがいまおっしゃるような状態でありますことは、はなはだ私どもとしましては申しわけないことだと思っております。この点は、先ほどからもいろいろお話がありましたが、法実施十年目というようなことからも相当この問題が取り上げられるようになってまいりました。ぜひひとついまおっしゃったような点に特に力を入れまして、それだけでないと思うのでございますが、いろいろな点において改めなければならぬ問題がたくさんあるだろうと思います。十年のあとを振り返りましてわれわれはやってきたつもりでございますけれども、どうやらするとマンネリズムに陥るということも考えなくちゃなりませんので、今後とももう一ぺん気を新たにいたしましてしっかりと取り締まるように、気持ちを新たにしてやりたいと思っております。
  19. 藤原道子

    藤原道子君 潜行化したという一面、半ば公然とやっている。半ば公然とやっている者にも手をつけていらっしゃらない。すぐそばに交番がありながら、そこで客引きをしているということが明らかであるにもかかわらず、見て見ぬふりをして過ごしているんじゃなかろうかというような例がたくさんございます。ヒモ処罰に対しましても、いまでは補導院を出るときにほとんどヒモが迎えに行っている。ヒモは女を離したら食えませんから、補導院に入ると、差し入れをする、面会に行く。帰るときにはヒモが迎えに行って、そのまままた同じ道に落ちていくという傾向がひどいと思う。これがわかっていないはずはないと思うのです、法務省では。けれども、それはそのままに見過ごされている。同じことを繰り返えしているんです。  それからまた、一面、やろうと思えばできることをやっていらっしゃらないと言いたいのは、トルコぶろだってそうです。これだけ話題になって世論がきびしくなっておりましても、トルコぶろに大して手入れをしたようには思わない。ただ、最近の新聞が報ずるところによりますと、無免許あんまのことが出ておりますけれども、これだって、私、社会労働委員会でこういう傾向があるということはもう七、八年前から指摘してきましたけれども、それがほとんど見過ごされてきている。これではあんま業法はあってもなきにひとしい。売春防止法もあってもなきにひとしい。それでやむを得ないんだというようなことで見過ごされているようなことは非常に残念なんですが、警察庁もおいでになりましたので、これをそれぞれの立場からどういうふうにしたらいいかということをどうぞお考えを聞きたい。  それから刑事局長が、先ほど、長きにわたるがいいとは言わない、刑の関係上があるから、ということをおっしゃいました。ところが、補導院は、身柄を拘束するというけれども保護でしょう、更生指導でしょう。あそこへ行って見ますと、性病をなおすだけだって半年くらいかかるのがあるんです。半年でなおり切らないのがある。けれども、いま一つということになっても、半年たったら出さなきゃならない。そういうものが徹底的治療すればよろしゅうございますが、そのままそうした状態になっていけば、いわゆる薬に耐える菌、耐性菌というものになりまして、さらに強い病毒を他に感染していくということになっていることは、もう御案内のとおりだと思うのです。それからあそこでいろいろ内職補導をしていらっしゃいますが、社会復帰に必要なようにと思ってあらゆる努力をしていらっしゃることは、私は視察いたしましてよく承知いたしております。けれども、病気をなおしたり、怠惰な生活に流れている者を社会に適応するように指導するということが、半年やそこらでできるはずはないと思う。ですから、私どもは、不定期刑と言っちゃおかしいのですが、二回に限ってこれを更新することができると同時に、本人から不服の申し立てをすることもできるというふうにして、ぜひとも愛情を持って──私たち、売春婦を憎んじゃおりりません。売春に落ちていった経路から非常にかわいそうだと思う。それを私たちはぜひ社会復帰させ、更生さしていきたいというのがねらいなんです。と同時に、弱い女性の肉体を搾取して、そうして自分たちの生計にのうのうと当てているというこのヒモを憎みます。ところが、これに対する処分が、非常にゆるやかだというのでしょうか、見のがしにされている。ヒモをつかむのは困難だとおっしゃいましたけれども、やり方によれば私は効果はあげ得ると、こう考えておりますが、刑事局長はどう考えておられますか。
  20. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまのお話ヒモに対する問題といたしましては、私どもといたしましても、警察庁にいたしましても、ヒモの問題というのは非常にこれを重要視いたしておるわけでございます。ことに、管理売春は、あるいはヒモの問題は、暴力団等々と非常につながりやすい問題であります。したがいまして、暴力団撲滅の一環といたしましてもこの問題は非常に力を入れておるわけでございますし、ことに売春の管理をすることによる資金源というような問題についても十分配慮をいたしておるつもりでございます。しかしながら、いろいろな事件におきまして、立証等の関係から、あるいは無罪になるという例、あるいは執行猶予しかつかなかったというような例もそれはあることはあるのでございまして、これらの点につきましてはまたそういう問題をさらに研究いたしまして、適切な刑が行なわれるように裁判所にいろいろの措置を望みたいというふうに考えておる次第でございます。  それからもう一つお尋ねの補導処分期間延長の問題でございますが、確かにお話のように、現在の六カ月は短過ぎて、これを長くすることが補導なりあるいはその後の治療等の面からプラスであるということは、私どももこれは認め得るところでございます。しかしながら、補導処分につきましては、やはり在院義務つまり補導院にいる義務というものは当然課せられておりまして、これは性質から言えばやはり身柄の拘束になるわけであります。そこで、本人に対する保証は重要であるからということのみをもって身柄の拘束期間を長くするということにやはり人権上の問題があるというふうに私ども考えておるわけであります。そこで、どうしてもこの問題は、ある程度延ばすということも一つ方法でありましょうが、やはりこれを橋渡しした社会内処遇でさらに解決すべき問題ではなかろうか。そのほうのことをもう少しもっと検討しなければならぬというふうに私は現在のところ考えておる次第でございます。
  21. 藤原道子

    藤原道子君 六カ月の補導処分で明らかに不足である、これでは実効があがっていないということは、局長もお認めになっているのでしょう。ということになれば、六カ月で十分な社会復帰指導が不完全である、いま少しやったら何とかなるというような場合には、ただ人権問題だけでお考えになるのはおかしい。やはりあなたの頭には刑罰ということが先入観としてあると思う。私は補導院を刑罰とは考えていない。確かに身柄は拘束いたします。けれども、その人の社会復帰、その人の更生に役立つ施設だ、こう思っている。中途はんぱで補導院に置くならば、置かないほうがいい。私は、いまのところは、ほんとうに中途はんぱだと思う。技術を覚えさせようとしたって、半一年で覚えられるものじゃない。あるいはまた、病気をなおすったって、ひどい病気でございましたら半年じゃなおりません。こういう点からいくならば、法の精神は、結局、これらの人に人らしき社会生活ができるように更生さしていくというのがねらいだと思うんですよ。その点についてはどうでしょうか。それは、本人の抗告の自由も認めていくということになれば、このほうがむしろ愛情のある処置ではなかろうかと、私はそう考える。
  22. 津田實

    政府委員津田實君) これは、要しまするに社会的に一つの非難を加える尺度としての刑罰ということではもちろんないことは確かでございます。婦人補導院は、まさに保護内容でございます。そこで、それでは保護内容であればとにかく本人のためになることであるから本人の自由を拘束することがいいか、こういう問題になりますと、これはやはり非常にむずかしい問題でありまして、これはやはり本人の側のことも考えなければならぬ、本人の主観というものも相当考えなければならぬということにやはりなるのではないかと思うのであります。世の中でいろいろな公的施設がございますが、この公的施設につきましては、これをつくります動機その他は、その関係者の保護なり関係者の更生なり福祉を増進しようということにあることはもちろん間違いはないことでありまして、運用さえ誤らなければそれがいけるわけでございまするけれども、しかしながら、それじゃそれで本人はそういうことだから、本人を身柄を拘束しておいてやったほうがますます効果があがるからよろしいかということになりますと、結局これはやはり問題が出てくるのでありまして、少なくとも婦人補導院補導処分と申しますのは、執行猶予言い渡したという罪責のある者についてやるわけでございます。したがって、やはり一定のそういう罪という要件が加わっておるという前提になっておりますために、どうしてもそれに対する保護とは言いながら、保穫であればどこまでもやれるのであって本人のその当時の意思というものはある程度無視されてもやむを得ないということをどこまで言えるかということがやはり問題であるというふうに考えるわけであります。その意味におきまして、あるいは補導期間はある程度長いほうがいいという議論もまさに一つの議論でありますけれども、そこと本人の主観を認めて人権問題というものとどこに接点を設けるかということがまあ問題であろうというふうに考えるわけでございまして、それはやはりいろいろ見方によりまして一年ぐらいは差しつかえないんだという見方もございましょうし、やはり本体の懲役が六カ月であるから、六カ月をこえるのは相当ではないんじゃないか、執行猶予になった者はそのまま何らの拘束なくして外部にいるのに、というような問題もございますし、また、軽い懲役を受けた者はすぐ出られるのに、婦人補導院に六カ月いるというようなことを問題にするとすればやはり一つの問題であろうというようなことが考えられるのでありまするから、やはり問題点はどの程度まで本人のそういう保護をしてやり、また、どの程度まで本人の自由意思というものを認めてやらなきゃならぬかということに対する考え方の問題でこの問題はきまる問題であるというふうに私ども考えておりまして、現在のところこれを直ちに一年なり一年半にまで延長を認めることが相当かどうかという点につきましては、まだ私ども踏み切れないというのが率直な考え方でございます。
  23. 藤原道子

    藤原道子君 この問題につきましては、きょうは、あとの質問者も控えておりますから、追及は次に延ばしておきます。  そこで、私先ほども申し上げましたけれども警察庁がいろいろ御苦労していらっしゃることはわかるのでございますけれども、いまの実態、これについてどういうふうに考えていらっしゃるか、どういうことをしていらっしゃるか。私、関西方面あるいは吉原方面、新宿、これら行ってみますと、明らかに私たちしろうと目にもわかるような方法で、それでそういうことが行なわれていると思うのでございます。それからヒモ問題等につきましてはどの程度までを踏み切っておやりになっているのか、この点についてお伺いしたい。
  24. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) ただいまの御質問でございますけれども、最近週刊誌とかその他いろいろの縦結等で、赤線が復活しているというような記事が非常に目につくようでございます。われわれももちろんそういう事態が相当あるということは一応了解しておるのでございますけれども警察としては、現在、そういう事態をできるだけ浄化すると申しますか、そういった立場から第一線のほうで有効な活動をしてもらいたいというふうなことで、いまわれわれのほうからも連絡をいたしております。なお、今回、売春防止法制定十周年記念というような時期でもございますので、五月を期して特にこういった取り締まりを強くやってもらいたいというような企画通達をわれわれのほうからも府県のほうに出したいというふうに考えております。  それからヒモの問題でございますけれども、われわれといたしましては、まず普通検挙をしていく段取りといたしまして、男のほうをまず調べて、男から大体これはいわゆる勧誘であるとかあるいは周旋であるとかというふうな確証を得まして、それから今度は女のほうにいく、それから次にそのヒモなりあるいは管理売春といったほうに進んでいくわけでございますけれども、なかなか男の努力を得るということも必ずしも思っているほどスムーズにはまいらないのでありまして、それから女の供述を得る、それからヒモということになりますには、非常にたくさんの人について当たりましてそれからしぼっていくようなことがあるわけでございまして、たとえて申しますと、トルコぶろの者の売春違反容疑の捜査というようなことになりますと、ふろから出てきた男に聞くとか、あるいはその家までつけて行って一応調べておく、そういうようなものを四、五十人もやりましてそしてそのあとからいろいろ供述をとるわけでございますけれども、その中で売春というようなことでこちらに心証の得られるような自供がとれるのは、五、六十人調べても四、五人というような歩どまりでございまして、なかなかやるべく一生懸命決意いたしているのでございますけれども、そういった点にいろいろ技術上の困難があることもまた事実でございます。われわれといたしましては、捜査技術をもう少し何とか合理的なこういったものの追及にまで及び得るように、中ではもちろん検討いたしているのでありますが、一応そういったような事情もまたございまして、必ずしも満足すべきような状況にいっていないことは遺憾に存ずる次第でございます。
  25. 藤原道子

    藤原道子君 私たちが最も憎むヒモに、内縁の夫と称してそして女を搾取しているのが多いんですね。ところが、内縁の夫というようなことでのがれている例が多いというように聞くのでございますが、内縁の夫と称した場合には、どういうふうな方法でこのヒモを縛ってまいりますか。
  26. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 内縁の夫であるということは大体わかりましても、現実に女のほう及び男のほうを調べました場合に、現在の「困惑させて」云々したとか、あるいは「親族関係によると影響力を」云々してどうこうしたというふうなことが法律的には違反の構成要件をなすわけでございますけれども、そういった場合に追及してまいりますと、結局、女のほうでも、自分は別に困らされたとか暴力をふるわれたとかというようなことではないというふうに言い張る。そして、男のほうはもちろんそういうふうなことを言います。そうなりますと、現在の法律の構成要件というようなことから考えた場合に、結局、こういうケースは、追及してまいりますと、いや、女のほうが自分の自発的な意思でやったのだとか、あるいは、別に暴行されていやいや出されたわけじゃないというふうにくずれてしまうことが非常に多いわけでございまして、そういうようなところからもなかなか構成要件を満たすという意味では捜査が困難なところがあるわけでございます。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、最近のあんま、少女マッサージ師というのが、週刊誌にも出ているし、あるいは新聞にも出ている。この内容を見ますと、ほとんど内縁の夫が搾取しているんです。しかも、児童福祉法の対象になる十九歳以下の子供が、百二十人ばかりのうちに五十人いる。しかも、これらの人が、五時から朝の何時までだかはほとんど自由が与えられていない。一つ部屋で待機をさせておいて、そして住み込みの者は昼間外出にも許可を得なければそこへ行けない、こういうことが常々と行なわれているんですね。それで、その女の子のいろいろ意見を聞いてみますと、やはりヒモに搾取されている、業者がむしろ暴力団と連携をとって、これらの人一人一人をヒモに仕立てている、こういうような記事になっているんですね。ということになって、女が好んでみずからささげたんだというようなことで言いのがれをさせている限りは、悪質なヒモ処罰はできないと思います。外国の例を見ましても、いかなる方法を問わず、売春の収益で生計を立てている者、主たる生計をこれに依存している者、これらをヒモとして処罰している例はございますが、もしも法律を改正して、いまの「親族関係」だけというふうに限らないで、「いかなる方法を問わず、売春の収益で生計を立てる者」というふうに改めた場合には、取り締まりは容易にできると思いますが、それに対してはどうお考えでございますか。
  28. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) ごもっともな点も確かにあるのでございますけれども、ただ、ちょっと現在でも問題になっておりますのは、「親族関係」等の「影響力を利用して」というふうになっておりますけれども、現在でもその「影響力を利用して」ということを立証することはなかなか困難でございます。で、これがかりに「雇用」とかあるいはそういったような関係が入りましても、「その他特殊な影響力を利用して」というふうな規定になっておりますと、現在もございますところの「影響力を利用して」ということを立証するための困難性というものは、かりにそのワクが「雇用」というふうな方面にまで及びましても、相変わらず残るのではないかというふうに技術的には一応考えておるのでございます。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 それは、ヒモをやりたくないから言うんです。外国でやっているように、一定の職業もなく、財産もなく、他に収入の道のない者が社会的生活を堂々と悦んでおる、そういう点からさぐっていけば、明らかに出るじゃありませんか。また、それをやっている国だってあるじゃございませんか。私はやってやれないことはないと思いますが、重ねて御答弁を願います。
  30. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) いや、もちろん、何と申しますか、全体的な法律の──私どもよりむしろ法務省の御関係だと思いますけれども──立て方の問題も関係してくるかと思うのでございます。いまのように単純売春処罰しないというような原則と申しますか、一つのあれがございまして、そしてそれに伴う派生的な管理売春であるとか悪質なものを取り締まろうというふうな体制でおりますと、何かその辺から来る不徹底さというふうなものが出てくるのじゃなかろうかと、私あまり深いことはよくわからないのでございますけれども、そういうような感じもいたしまして、たとえば困惑売春のところに掲げてある条文を若干修正するというようなことがございましても、先ほど申しましたように、「影響力を利用して」というふうな構成要件にとらわれる限りは、技術的な難点は相変わらず残るのじゃなかろうか。ヒモ処罰したいという気持ちは十分あるのでございますけれども、構成要件を満たすためにはどういう技術的な捜査を行なわなければならないかというようなことがわれわれの課題でもあると存じますけれども、現在はそういうふうに感じておるわけでございます。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 じゃ、法務省にお伺いしますが、売春とは悪であるということは、大前提として法律に規定してございます。それから、売春の収益によって生計を営む者とか、売春の対価を受け取るようなことは、きびしく規定してあるわけです。それが「親族関係」あるいは「困惑」というようなことが響いてあるということで売春は悪であるということの前提をくつがえしてはいないと思う。ところが、最近のヒモ実態は、ほとんどが内縁関係の者が多いわけなんです。ということになると、私どもといたしましては、やはり「親族関係」等とのみ規定しないで、やはり内縁の夫となっておるものを対象にしなければ実効はあがらない。その内縁の夫と称している者が、一人で三人も五人も女を持って、それでぜいたくな暮らしをしている。それで、それがいつかも新聞にございましたが、三角関係になって、トルコ嬢の上がりを男が取って、それで他に女を養っていたというので、殺人事件さえ起こっている。こういう点をいろいろ考慮いたしますと、やはりヒモの規定はもっときびしくしなきゃならない。この前、竹内さん当寺だと思います、私が委員会で質問いたしましたら、ヒモにもいろいろ種類がある、夫が病気のために妻が売春をして夫の療養を支えている、こういうかわいそうなヒモもございます、だからヒモを何でもやるというふうなことはちょっと日本の場合は考えものでございますと、こういう答弁をしたことがある。私はおかしいと思う。ほんとうの夫婦ならば、妻が売春してそれで療養を続けるなんということは、男としてたえられないことだろうと思うのです、人間的に。したがいまして、夫が病気であるときには、生活保護で医療給付があるはずです。食えなければ、生活保護法があるはずなんです。この法律を十分に生かさないで、夫が病気だから、親が病気だから、というようなことで売春を許しておくというような考えなら、こんな法律は要らないわけだ。これに対してヒモに対するあなたのお考え方を伺いたい。
  32. 津田實

    政府委員津田實君) 先ほど来申し上げておりますように、ヒモ関係はこれは極力摘発をして処罰すべきものであるということでございまして、その点につきましては私どもは何らの問題点を持っておるとは思っておりません。先ほど申し上げました従来の管理売春ヒモ関係が暴力団と結びつくということもしばしばありますので、さような意味におきましても、この撲滅につきましては力をいたしておるわけでありますが、ただ、一番問題になりますのは、やはり現在の訴訟手続のもとにおける立証関係の問題でございます。かりに、その新しい構成要件といたしまして「売春婦の収入によって生活をしておる」というふうなことになりますと、これは立証は非常に困難であります。一体、ある人の日常の収入全部をどういう方法で立証するかということになるわけです。これは、御承知のとおり、犯人そのものは何も立証する必要がないわけでございますから、結局、これを検挙した側において、この者は全然収入がないということを立証しなければならないというようなことは、きわめて現在の立証技術としては困難な問題であります。そこにやはり問題がございまして、かりに規定を置いても、実効があがらないということはかなり予想しなきゃならぬ問題でございます。そこで、現在の売春防止法で、売春が悪であることはもう当然でありますが、そのうちにおいて処罰されるものはかくかくというふうに売春防止法で掲げておるわけでございます。  そこで、いまのヒモの問題も、いろいろヒモがのがれておるという御指摘がありまして、あるいはそういうものがあるかもしれぬということは私も想像されるのでありまするけれども、これはやはり検挙なり立証技術の問題であるということに帰心するように私は考えております。したがいまして、この面の研究なり検討ということは十分いたさなきゃならぬことでありまするけれども、現在の訴訟法のもとにおきまして、かようないわば隠密の間に行なわれる行為であって、しかも当事者の意思というものがかなり影響を持つ、たとえば自分は管理されているつもりはないとかいうようなことになれば、一瞬にしてくずれていくというような事件になりますと、なかなか有罪の認定を受けるだけにまで持ち込むということが困難であるというような事情があるという上に立ってこの法律をいかにして厳格に執行していくかということに大きな問題があるように思いまして、私どもはその点については不断の研究は続けておる次第でございます。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 私は、やろうと思えばやれるものを、何だか文句をつけてやらないようにしているような気がしてならないんです。  そこで、私は、厚生省に伺いたい。私は厚生省は非常に弱いと思うのです。この新聞記事に出ております。あんま、マッサージ師ですか、これは温泉場で明らかにやっているからといって私たち再三注意をしたんです。あんまでなければあんまはできないはずです。マッサージ師でなければできないはずです。ところが、議員宿舎なんかへ派遣されるあんまさんの中で免状をとってないのは幾人もいますよ。そこで正規の規定の料金をとっておりますよ。こういうようなのを調べてくださいということをたびたび言っているはずなんです。温泉地がそうであったと同町に、各所にこのもぐりマッサージ師がふえている、目に余るものがあるということを指摘してまいりましたが、今度たまたま新聞にこれが大きく取り上げられておる。これは、一県で百何十人も検挙した中で、正規な免許を持っている者はたった二十五人だったというんですね。児童福祉法の対象者が五十人もいたというんですね。一体、厚生省はどういう考えであの法律を運営しているんでしょうか。保健所が取り締まることになっているけれども、一体保健所が何をやっているんでしょうか。出張してきて、一時間ぐらいで五百五十円ですからね。しかも、これで六割から七割ぐらいを業者が取っているんですね。その女の子たちは暴力団のヒモがついてそれでやっていることは明らかなんですけれども、これに対していままで厚生省はどういうふうに指導し、どういうふうに取り締まりをしていたのか。やはり売春は必要悪であるという考え方が根底をなしておると同時に──これは二年間も学校へ行って試験を受けて免状をとっているんです。このごろ私たちのところへ投書が来ていますよ、ほんとうのあんまさんたちから。若くてきれいなあんまさんで、しかも夜のおとぎまでするようになれば、われわれ業者はお手上げですと。日本の心身障害者の問題が比較的解決がついているのは、あんまという特殊な職業があるからだ。請願者は、しかも売春を付随してやられるようになっては私たちは生きる道を断たれたようなものでございます、一体国はこうしたことを取り締まる気があるんでしょうかというふうな投書が参っております。一体どういうふうな取り締まりをしておいでになるのか。きょうは時間もございませんから、まだこの問題は引き続いて質疑を展開したいと思いますが、私一人で時間をとりましたので、この点についてのきょうの厚生省の御答弁を願いたい。  それから最後に、法務大臣から、まことにいまのような状態でございますので、これを一体どうするのか。自民党の多くの議員の中には、売春なんてのは防止法をやめたらいいというようなことを常々と演説会で言っている人もある。これに対する大臣の御所見を向いたい。
  34. 今村譲

    政府委員今村譲君) お答え申し上げます。  この問題は、社労でもしばしば先生からお話がありまして、それで、省の中で、あんま、はり、きゅうを所管する医務局、公衆衛生局、保健所──末端機関は保健所でございますが、それから児童の例の十八歳未満の問題だというので、しばしば連絡いたしまして、児童相談所に、そういう部面に目を光らせろ、それから保健所につきましては、いろいろな業務がありますけれども、そちらのほうに気をつけろというような指導は十分していると思いますけれども、大都会地におきましてはなかなか手が回らないということで、しかも隠密裏にそういうことをされるので非常にきめ手がむずかしいというかっこうじゃないかと思いますけれども、これにつきましてはまた帰りましてそれぞれの関係各局に十分連絡をしたいと思います。
  35. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 私どもは、売春防止法をやめるなどというようなことは一つ考えておりません。考えていないばかりでなく、それをただこう空文に終わらすことのないように、ぜひこれをしっかりと力強く用いまして、そうしていろいろな点においてまた行政の面においてこれを補っていかなければならぬ点がたくさんあるだろうと思います。そういうふうに各省と話し合って力を入れまして、実効をあげるように努力したいと考えております。
  36. 藤原道子

    藤原道子君 私はきょうはこれで……。
  37. 山高しげり

    ○山高しげり君 法務大臣一つお尋ねをしたいと思います。  売春防止法制定十周年の本年にあたって、大臣は、先ほど藤原議員に対する御答弁として、本問題に対する法務大臣としての御注意というようなものをお述べになったように拝聴いたしましたけれども、これから大いにやりたいというような意味におっしゃったように思いますけれども、十年間の実績があまりあがっておらない実情もお認めになっていらっしゃったように聞いておりましたけれども、このあがらなかった原因というものがどこにあったかということについては御答弁中に含まれておらなかったようでございますが、かりに法が不備でございましたならば、改正を必要とするのではないかと思う。その点、改正の御意思ありや否や、伺いたいと思います。ただいまも、しっかりと力強くこの法を用いましてというふうな表現でお述べになりましたけれども、先ほどから藤原議員の御質問に対する津田局長の御答弁の中にも、現行法では非常に無理があるとか、やりにくいとかというような点がこまかに述べられたわけでございますが、現行法で無理ならば、どうすればいいかということについて、法改正に触れた御意見は津田局長の御答弁の中にもなかったようでございます。売春実態があり、管理売春巧妙化をしているとか、潜行化が強化をされているとか、こういうような事実が述べられておりまして、そうして現行法では非常にやりにくいというところまでお話が来ておりますのに、なぜ進んでこの法を改正をしてもっとやりやすい方法でやりたいというような具体的な御決意というものが出てこないのか。たとえばヒモの問題にいたしましても、補導院の問題にいたしましても、検討の必要ということを非常に述べられているんですが、十年もの間にその問題についてこのように検討をしたけれども問題はここにまだとどまっているというような事実の御報告というものがほとんどなかったように聞いたわけでございます。これはまた別の機会に津田局長にもっとこまかく承りたいと思っておりますが、大臣にお伺いしたいことは、先ほど伺いました現行法の改正の御意思ありや否や。それから売春対策審議会というものが内閣に置かれているわけでございますが、十年間に現行法に対するあるいは売春問題に対する諮問というようなものが法務大臣から一体何回ぐらい売春対策審議会に行なわれたのでございましょうか。私の聞いておりますところに誤りがなければ、当審議会に対してはいまだ一回の御諮問もなかったと聞いておりますが、間違っておってはならぬと思いますので、大臣みずからの御答弁を願いたいと思います。  以上でございます。
  38. 津田實

    政府委員津田實君) 最初に御説明申し上げますが、法改正の問題につきましてはいろいろ問題点があるということは、先ほど私が申し上げました。具体的な案を持たないではないかということでございますが、問題は、むしろ売春防止法の問題ではなくて、刑事訴訟法なり刑事訴訟における技術の問題ということが難点でございます。これがすべての犯罪事実に通じる問題ではございますが、特にこの種の事件については、そこの問題、ことにお互いのいろいろと隠密下に行なわれるいろいろな対話、あるいはそれをあとから告白をするというような形のところに、これを証拠化し、法廷において有罪の判決を得るためにむずかしい問題があるということを申し上げたわけでございます。そこで、売春防止法の実体規定そのものについては、ただいまいろいろ検討いたしておりますし、いろいろ御提案もあることは十分承知いたしておりますが、これらの問題につきましては、私どもは、いま直ちにこの実体規定を改正しなければならぬというふうに考える段階には至っておりませんので、むしろ、現行法のいま申しました技術面のくふうということを一そう強化する必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから婦人補導院在院期間の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、これはやはり本人の自由意思なり人権ということについてどこにバランスをとるかということが問題でありまして、これはやはりいろいろこの十年の結果、それから一般の大方の御意見というものについて十分検討する必要がある問題であるというふうに私ども考えている次第でございます。
  39. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) いま局長から大体のこれを申し上げましたのでございますが、私はさっき申し上げましたように、十年間やってみまして、実効があがらないとまで言うわけではございません。やってみますると、これはすっきりとどんどん取り締まれたわけではなくて、なかなか上手に向こうのほうが犯罪をする者が追い込まれて、そんな連中が巧妙な犯罪方法を用いるというような、さっきから藤原さんからいろいろお話があったように、いろいろな手を用いるというようなことがあって、そういうふうな者に対してわれわれもそれ以上の手を用いてやっていかなくちゃならない。それは、法規の問題よりも、実際の行政上の措置の問題だと私は思うのですが、そういうふうなことをやってこいつをこの法のもとでもっと力を入れていけば、より効果をあげるのだと私は信じておるわけでございます。そのほうに力を入れていきたいと思っております。しかし、私、いろいろ直すべき問題も、だんだん話をし、聞き、また、いろいろな問題にぶっつかって、こういう点もああいう点もあるということで皆さん方からの御意見がいろいろあることも承知いたしております。私どものほうでも、そういう問題を取り上げながら研究はしておるわけでございます。ただ、いますぐにそれではこの機会に法そのものを改正しようというところまでの段階には至っておらないのでございます。だんだんそういうふうな必要、そこまで行かなければどうにもいかんということになりましたら、何もこれにこだわるわけではないのでございますから、喜んで法の改正も考えるというつもりでおります。
  40. 山高しげり

    ○山高しげり君 売春対策審議会の諮問の件はいかがでございますか。
  41. 津田實

    政府委員津田實君) 売春対策審議会に対する諮問という問題でございますが、この点につきましては、こういう会議でいろいろ御議論をいただいて改正を考えるというのも一つ考え方であると私は思います。しかしながら、現段階におきまして、私どものほうにおいて、一体こういう問題があってこういう方向に行かなければならないといういわゆる改正点の把握ということについては、まだ相当の疑問を持っております。先ほど申し上げましたように、訴訟法なり訴訟技術、あるいは検挙その他の技術の問題が相当この問題を支配する問題であることは、これは関係者のひとしく認めるところでございまして、そういう意味におきまして、現行法の活用といいますか、もっと能率的な運営ができないものかという点にもっぱら重点考えておるわけでございます。そこでどうしてもいけないという問題についてはさらに改正の方法ということを考えざるを得ませんわけでございますが、現段階におきましては、まだ私どもの検討の結果がそこまで至っていないことは、ただいま大臣が申し上げたとおりでございます。
  42. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうしますと、津田局長の御説明では、諮問という形を売春対策審議会にとる必要はなかったと、こういうことになるわけでございますか。御議論を願うことはあってもよいけれども関係者としては、改正点の把握といったようなことは、現場をなさる側でまだすることがあるので、諮問という形にまで打ち出す段階には来ていなかった、十年かかってもその段階には到達しなかった、こういうふうに解釈して聞き取ってよろしゅうございますか。
  43. 津田實

    政府委員津田實君) この問題は、売春対策審議会の運営そのものは私ども所管ではございませんので、必ずしも的確にさように申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、少なくとも売春防止法を提案いたしました私の省といたしましては、いまそういう考え方を持っておるわけであります。そこで、やはり改正の問題点を浮き彫りにしてから改正問題の御諮問を申し上げるというのがやはり妥当な方法であると私ども考えておる次第でございまして、そういう意味におきまして、法務省自体としては、現在ただいま、るる申し上げました点を検討いたしておるという、こういうことになっておるわけでございます。
  44. 山高しげり

    ○山高しげり君 私が伺ったのは、法改正についての諮問というふうには申し上げておらなかったつもりでございます。法務大臣からの御諮問が一回もなかったというようなことを当審議会の委員の方から聞いたものですから、その事実が誤りがないかどうかということを伺ったわけでございます。
  45. 津田實

    政府委員津田實君) これは、御承知のように、総理府の所管でございまして、総理府全体の問題として考えなければならぬ問題で、私ども一つの総理府の調整に従ってやっておるところでございます。現在のほかの関係におきましてどういう問題があるかということにつきましては、私が申し上げるのは適当でないと思いますが、売春防止法が前回法務省の立案によって提案されましたという点から考えまして、少なくとも売春防止法の刑罰規定あるいは婦人補導院の規定につきましては、法務省が将来ともにこれを考えていく直接の役所であるというふうに考えておりますから、その意味におきまして私どもはそういうことを考えておるわけであります。  御承知のように、この問題についての法務省所管関係は、主として立法関係検察庁の取り締まり関係になるわけでございますが、検察庁の取り締まりの方面の点につきましては、これは主として第一線の警察のほうの御協力といいますか、自主的な捜査と、それに対する検察庁の協力という形、その後の事件の法廷における処理は検察庁がいたそう、そういう形の問題でございますが、その点につきましては売春対策審議会でいろいろふだんの御意見は伺っておりますが、面接検察技術の問題について御意見を伺わなければならぬということには私どもはいまの段階ではならないと思うので、私ども考え方としては、やるとすれば改正問題だということになるわけでございますが、改正問題につきましては、いま申し上げましたとおりの状況になっておるわけでございます。
  46. 山高しげり

    ○山高しげり君 売春対策審議会については、また別な機会に聞きたいと思います。  伺いまして、改正の御意思が現段階にはないというふうに拝聴をしたように思います。そのことについて繰り返す気持ちはございませんが、いろいろやりたいことがあるけれども検討の段階だというように津田局長のお話は聞いておりますけれども、何かやりたいけれども、やれなかったというようなことはございませんのでしょうね。これは問題を大臣もすっきりしたいとおっしゃいましたので、私どももすっきりさせたいという強い意欲を持っておりますので、私が伺う気持ちがおわかりいただけるかどうかと思いますけれどもあえてお尋ねいたします。
  47. 津田實

    政府委員津田實君) この問題に関しましては、先ほども申し上げましたように、まあ売春五条関係の問題につきましては、これは個々の婦人の方につきましてはいろいろ同情すべき問題も多々あると思うので、その点につきましてはこれは五条の額面どおりの問題として処理するほかはないと思うのでありますけれども管理売春、その他の周旋、こういうような問題になりますと、これは許せないと私ども考えております。したがいまして、管理売春その他の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、暴力団退治の一環としても重要な項目として取り上げておりまして、これは全国の検事の集まりではしょっちゅう議論になっておりまして、その面の資金源のシャット、アウトといいますか、そういうことにも十分各検察庁では考えておるわけであります。  そこで、そういうようなことを考え、あるいはさような悪質な者に対する適正な刑罰を受けるための訴訟技術という面については、十分検討を要する、また、研究すべきだということになっておりまして、その面の研究は十分いたしているわけでございます。したがいまして、その面の研究をするというようなことにつきましては、何ら障害はもちろんございませんし、その面の研究からさらに法改正を要するかどうかということについては、私どもは少なくとも事務当局において自主的な判断をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 山高しげり

    ○山高しげり君 法務大臣、それでは私の質問はこれで終わりますけれど、いま大臣が向こうの力ということばをお使いになりましたが、わかるように思いますけれど、その向こうの力が非常に日に増し強まっておるように私ども感じております。どうぞ、ひとつ御所見のとおりに積極的に前向きに御行動を願いたいと要望いたしまして、本日の私の質問を終わらしていただきます。
  49. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 次に、近江絹糸事件に関する件について調査を行ないます。亀田君。
  50. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は近江絹綜の問題につきまして質問をいたすわけでありますが、本件につきましては、衆議院の法務委員会等で相当論議等もあったわけですが、参議院の法務委員会としては本日が初めての質疑のように思います。そういう事情がございますので、出発は少し古いことになるわけでありますが、最初のころのことにつきましてお尋ねをまずいたしたいと思います。  それは、最初の告発問題が起きましたのは、昭和三十七年、当時の社長の丹波氏に対して出ているわけであります。引き続いて高見社長に対しても告発が出るといったようなことであったわけでありますが、それらのものが、三十九年の十月末に、起訴しない、こういうことに一応検察庁の扱いがなったわけでありますが、その間の経過を一応御説明願いたいと思います。
  51. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまお尋ねの点は、昭和三十七年十月五日、境野清雄という者から告発がありました丹波秀伯、西村貞蔵に対する業務上横領事件、それから三十八年十一月四日同じく境野告発人から告発されました高見重雄に対する商法違反事件をさすものと思うのであります。  この事件につきましては、その告発事実の要旨は、第一に、近江絹綿紡績株式会社の元社長でありました丹波秀伯が、その元取締役であります西村貞蔵と共謀の上、昭和三十二年六月二十九日から昭和三十六年花月三十日ごろまでの間に、右両名が業務上保管中の同社資金中より合計一億二千万円を横領したというのが業務横領の事実であります。それから商法違反の事実は、同社の前社長高見重雄が、同社の昭和三十六年十一月一日から三十七年四月三十日に至る第八十四期の決算に際して、買掛金等の勘定科目を粉飾して二億四千五百万円の架空利益を計上した上、これに基づく利益処分案を作成して株主総会にこれを承認させ、会社財産の一部を利益配当した、こういう事実であります。  これに対しまして、大阪地方検察庁で捜査いたしました結果、第一の業務横領につきましては、丹波らが右告発状記載程度の金員を同社の資金から引き出したことは認められまするけれども、その使途につきまして捜査を尽くしましたが、使途は多方面にわたっていることがわかっております。しかも、その一々について捜査いたしました結果、丹波個人の利益のために費消したと認め得るものがなく、丹波自身も会社のために使用したという弁解をしておりまして、これをくつがえすに足る証拠がなかったので、三十九年十月二十三日、犯罪の嫌疑不十分として不起訴処分にしたのであります。  それから題二の商法違法事件につきましては、一応の嫌疑があるものと認められましたが、近江絹糸におきましては、各期において計上された架空利益をカバーして余りある含み資産が存在いたします上に、その後の事業年度では、すでに正常決算に復し、会社経理も漸次健全化の方向に向かいつつある等の諸般の事情、情状を考慮いたしまして、先ほど申し上げましたように、同じ日に同じくこれは起訴猶予として不起訴処分にいたしておる次題でございます。
  52. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、問題が二つありまして、業務上横領に関する部分は嫌疑不十分、それから八十四期の配当に関する商法違反の件に関しては起訴猶予と、これはさい然と区別して処分されておるわけでしょうか、もう一ぺん……。
  53. 津田實

    政府委員津田實君) そのとおりでございます。
  54. 亀田得治

    ○亀田得治君 この問題につきましてもう少しお聞きしておきたいのですが、第一の約一億二千万円の業務上横領の問題でありますが、会社のために使ったのであって、丹波個人のために使ったのではないというふうに言われますが、会社のために使ったというその使途は明確になっておるのでしょうか。明確にならないものがあるのでしょうか。明確になっていて、したがって、個人のために使っていないというふうな言い分を一応認めておられるのか。その点はどうなんでしょうか。あまりはっきりはせぬけれども本人がそう言うているし、それに対する反証もないので、しかたなくそのような処理をしておるということになるのでしょうか。その辺をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  55. 津田實

    政府委員津田實君) これは、この間の八人社資金を引き出した事実、その引き出した使途につきましては、逐一捜査をいたしております。これは相当約二年近くの日時を要しましたが、逐一捜査をいたしております。それと、本人の弁解と申しますか本人の主張等をいろいろ彼此照合いたしますと、先ほど申し上げましたような結論になっておるわけでありまして、金の出入りはこれは逐一明らかにするという前提で捜査をいたしたわけでございます。
  56. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえば、最終的に現実に受け取った人──そんな書類上のこと聞いているのじゃなしに、最終的に現実に受け取った人のたとえば領収証といったようなものは全部そろったんですか、検察庁に。あるいは、領収証にかわる供述といったようなものは全部そろったのですか。
  57. 津田實

    政府委員津田實君) 検察庁におきましては、領収証はもちろんのことでありますが、不明なものについてはその使った相手方、全員を交付した相下方についても取り調べをいたしております。
  58. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、相手方について調べて、その相子方が、ちゃんとこれだけのものはもらった、受け取ったということをその供述の上で明らかにしておるのでしょうか。
  59. 津田實

    政府委員津田實君) 明らかにしております。
  60. 亀田得治

    ○亀田得治君 その中には政治家に現実に渡っている金が相当あるはずなんですが、その点は調べの結果はどのようになっておりますか。
  61. 津田實

    政府委員津田實君) 交付したものにつきまして、政治献金らしきものというものはございます。
  62. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、だからそこを聞くわけですわ。現実に最終的に渡った人の領収証なり供述がそろっていると言われるから聞くわけですが、政治献金らしきものというのは一体どういう意味なんですか。
  63. 津田實

    政府委員津田實君) 政治献金という定義はもちろん法律上はございません。これは私どもとしては政治家あるいは政治家の集団に対して寄附される金員だというふうに理解して政治献金らしきものと申し上げたので、政治献金そのものにいろいろな社会的な定義があるとすれば、それは誤っておってはいけませんので、らしきものということを言ったわけであります。
  64. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、政治家または政治家集団に渡ったものがあると。それはどの程度の金額になっているのですか。
  65. 津田實

    政府委員津田實君) これは前回衆議院でもお尋ねがありましたが、その具体的内容につきましては、将来の検察運営に影響がありますので、お答えを差し控えさせていただきたいということで参っておるわけでありまして、当委員会におきましてもその点はさようにさせていただきたいと思います。
  66. 亀田得治

    ○亀田得治君 一体、それは何口くらいになっているのでしょうか、渡った回数といいますか、口数は。具体的な名前とか金額まで聞くのが無理とすれば、それくらいのことはひとつ明らかにしてほしいと思います。といいますのは、私たちはそういう強制的な捜査権というものは持たないわけでして、はたしてこういう処分が妥当かどうかということを判断するこれはもう最小限度の事柄として聞いているわけでしてね。それはどうなんでしょう。
  67. 津田實

    政府委員津田實君) 政治家あるいは政治家の集団の相手方の数あるいは回数というものは、これはかなりの年数になっておりますから、それぞれ知り合い関係をたどっての回数ということは、たとえば時節的な問題の回数というものは……
  68. 亀田得治

    ○亀田得治君 時節的というのは……。
  69. 津田實

    政府委員津田實君) たとえば盆とか暮れとかいう意味における回数等を考えることはできます。相当年数がたっておるわけでございまして、具体的に何回ということはいま私も知りませんが、その点につきましても従来まあ申し上げることは差し控えておる次第でございます。
  70. 亀田得治

    ○亀田得治君 一人に一千万円をこえる金額が行っておるというような事実はないのですかあるのですか。
  71. 津田實

    政府委員津田實君) その内容になるわけでございまして、その点は申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  72. 亀田得治

    ○亀田得治君 検察庁は、そのようなものまで含めて、これは会社のために使われたものだ、こういう認定をされておるのですか。
  73. 津田實

    政府委員津田實君) そのとおりでございます。
  74. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうなりますと、これはなかなか事重大になるわけでありまして、自分個人でさえ使わなければいいんだ、会社とは非常に縁の遠いようなところにそれが使われておっても、社長個人が使わなければ、広く会社のためというふうに検察庁が理解するといたしますと、いろんな問題に私は波及するおそれがあると思うんですが、そのような解釈は少し穏当を欠くんじゃないでしょうか、どうなんでしょう。その具体的なケースを明らかにされぬから、論議が抽象論になるわけですが、どうなんです。
  75. 津田實

    政府委員津田實君) 重役と申しますか、社長と申しますか、それが個人が個人の趣味で政治献金をするということになれば、これはおのずから会社と迷ったものでありますから、その金が横領になる場合もあり得ると思います。しかしながら、会社のために政治献金を行なうということは、これはあり得るわけであります。世上、会社の政治献金というのは相当あるわけであります。そういう意味におきまして、その内容自体についても、政治献金はもういかような形でも差しつかえないんだというふうに検察庁が判断しているわけではございません。もちろん、内容について趣旨について検討をいたしました結果であります。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 その基準はどの辺にあるんです、横領と認めるか認めないかの基準は。
  77. 津田實

    政府委員津田實君) これは非常にむずかしい問題で、それは具体的なケースによってきめるほかはないと思うのでございます。今日、一般的に会社が各方面に政治献金らしきものをしているという事例を私どもは聞いておりますが、それは会社の具体的の業務とどれだけの関係があるかということを立証せよということになると、これは非常に問題がある。しかし、おのずからそれには範囲がありまして、やはり、会社のため、会社の営業のため、会社の将来のためということを前提に置いた場合には、かなり広い意味において政治献金が行なわれても、それはそれをもって直ちに重役個人の横領だということには私はできないというふうに考えますが、とにかくそれは具体的のケース・バイ・ケースということよりほか方法がないと思います。
  78. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあケース・バイ・ケースというような言い方は、はなはだこれは便利なことで、まあ出たとこ勝負、場合によってはそれはでたらめということにも通ずるわけでしてね。やはり一定の基準がおのずからなきゃならぬと私は思うんです、いろんな案件を検察庁ではいままで取り扱っておられるわけですからね。それを取り扱っておる過程においておのずからその基準というものが出ているんじゃないかと思いましたのでお聞きしておるわけなんです。それは、そういう重要な問題になれば、最高検あたりにも意見を聞く場合もあるでしょうし、そうなれば当然一定の尺度が生まれてくるはずのものなんです。それがないというのは、はなはだ私は妥当を欠くと思うんですが、たとえば、ある社長が非常にある政治家と仲がいい、個人的に何とかしたいと思って、それを政治献金の名前で出したと、両方へまたがったようなケースですね。そういう場合にはどう判断するのですか。
  79. 津田實

    政府委員津田實君) これは非常にむずかしいお尋ねでございまして、実は私自身がそれについてどうお答えしていいかということに迷うわけであります。要は、業務横領なり横領という観点からものを見た場合の問題の中に入るか入らないかということに帰着するのじゃないかと私は思います。そこで、政治献金の形が千差万別であり、その趣旨自体もいろいろあるということは当然でございますので、結局は具体的の事件によって判断をするしかないと思うのであります。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、私も、具体的にどのようにそれが渡されたのかということをあなたのほうで明らかに実はしてほしい。それをなかなかされぬわけなんです。それをされれば、なるほど検察庁はこのような基準で考えているのかというようなことも推測できるわけなんです。推測して、それに対してまたわれわれとしても論議のしょうがあるわけなんです。それをいつもされないわけでして、はなはだ遺憾でございますが、しかし、きょうはまあこのことが中心の議題で質問を通告したわけでもありません。ただ、衆議院段階で非常にそれが論議の対象になったのに、不明確なままで終わっているのは、私も速記録等を読んで、はなはだこれはまずいことだというふうに実は考えているわけなんです。そのうち何らかの機会にわれわれ自身のほうでその明細等がきちんとはっきりしたら、逆にそれらの材料を示してそして法務当局の見解を聞くようになるかと思うのですが、だから、一応、本日のところは、この程度にその問題はとどめておきたいと思います。  そこで、次の第二の商法違反の問題に移るわけでありますが、先ほどの御説明からいたしますと、結局、近江絹糸の八十四期の決算についてのいわゆるタコ配当の事実、これはまあ検察庁でも事実としては確認をすることができた、こういうわけですね。
  81. 津田實

    政府委員津田實君) そのとおりであります。
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 検察庁では、告発のあった八十四期だけじゃなしに、八十五期、八十六期といったような、つながっている部分等につきましてもいろいろお調べになったことを聞いております。その結果、八十五期、八十六期につきましてもタコ配当になるというふうな事実関係を一応お認めになったことを関係者から聞いているのですが、その点の事実はどうなんでございましょうか。
  83. 津田實

    政府委員津田實君) その点は、現在私は承知いたしておりません。もちろん、ある期についての問題は、その前後についても取り調べることは当然でありますから、取り調べたと思いますが、その前後の期の決算関係がどういうことになっているかということについては、私はいま承知しておりません。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、大阪地検の本件の担当者が、告発をしている代理人等に、はっきりその点を言われたように聞いておるんです、私としては。その起訴猶予にした事由の説明をされたときに言われたのだと思いますが、そういうことは全然まだ報告等の中には入っておらぬのでしょうか。
  85. 津田實

    政府委員津田實君) 先ほども申し上げましたように、その後の決算におきまして漸次健全化に会社経理が向かったということ等の理由を考慮いたしまして起訴猶予にしております。したがいまして、その次の決算期において大きな粉飾決算があるというようには私どもは聞いておりません。若干の点について前とのいきさつといいますか経過から問題はあったかと、それは想像されますけれども、しかしながら、逐次健全化に向かっておるということをもって起訴猶予の一つの理由にしたわけでありますから、その後にはなはだしいものが行なわれておるということは私は否定されておると思うのであります。現実にはその点については私は報告は受けておりません。
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、あなたのおっしゃるのはきわめて抽象的な言い方でありまして、起訴猶予にしょうと思えば、抽象的に刑事局長がいま言われたような程度のことが言えなきゃなかなか起訴猶予にしにくいと思うんです、これだけ世間を騒がした問題ですから。だから、その点の具体的な報告を得ておらないのであれば、これはひとつお調べを願いたいと思うんです、お調べを。八十四については明確ですが、八十五、八十六期ですね。これは私たちに問題を提供しておる諸君からはそのようにはっきりと聞いておるわけなんです。それは次回までにお調べいただけますね。
  87. 津田實

    政府委員津田實君) 調査いたしてみます。
  88. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、刑事局長は私がいまからお尋ねしようということもあるいは聞いておられないかもしれぬと思うんですが、検察庁が告発の代理をされた弁護士に説明されておるのは、八十四期、八十五期、八十六期とタコ配の事実はなるほどあった、あったけれども、八十七期において穴埋めを相当した、それで起訴猶予にしたんだ、こういうふうに聞いているんです。だから、局長の言われるいわゆる逐次健全化に向かってといいますのは、実際はそれ以後のことなんですよ。で、八十四期、八十五期、八十六期、これはみんなまだなんですね。起訴猶予処分にするまでに経過してきておる決算期なんですね。その点が、報告が、八十四期だけの告発状になっておるものだから、法務省への報告には詳しくその間のことが書いてないのかもしれません。  そこで、お聞きするのは、八十七期において相当な穴埋めをやっていることは事実なんです。どういうふうにその穴埋めをしたか。たとえば、その一つとして、近江絹糸が持っている土地を公正企業という、これはまあ子会社に当たるわけですが、大部分が近江絹糸がその株を持っておる会社でありますが、その会社にその土地を処分して、そうして土地の処分の利益を約三億八千百万円計上されておるわけなんです。といいますのは、その処分された土地の帳簿価額は七百万なんですね。三億八千八百万で公正企業に売って、その差額三億八千百万円というものを計上されておるわけなんです。まあそういったようなことを検察庁がおそらく理由にされたんでしょう、正常化が軌道に乗りつつあるという意味のことを言われるのは。そういうことの報告は刑事局長は受け取っておられぬでしょうか。
  89. 津田實

    政府委員津田實君) その点は承知いたしておりません。ただいま御指摘のような事実が起訴猶予の上に考慮されたかどうかということは、報告を受けておりませんから知りませんが、ただいまのような公正企業関係のものにつきましては、官本勝太郎という人から法人税法違反で告発されているという事実がございます。これはつい最近のことでございます。そういうような事実の中に掲げられている事実というふうに思われますが、この事件については、いま受理したばかりでございますけれども捜査をしている、こういうことでございます。
  90. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、そういたしますと、八十五期、八十六期というものが中に入っているわけですね。そして、いま問題になっている土地の処分というのは、これは八十七期に関連しているわけなんです。したがって、先ほど申し上げたように、五期と六期の事態を次回でもいいですからはっきり御報告を願いたいと思うんです、検察庁の認識を。そういたしませんと、八十七期におけるそのような処理が正しいのかどうか、そういうふうな判断にこれは結びついていくわけでございまして、だから、この点、ひとつあわせて次回に検察庁の扱いがどういうふうになっておるのか、できるだけ詳しく報告してほしいと思います。  なるほど土地の処分の問題については、これはあらためて告発関係が出ておるわけですから、したがって、捜査中ということになるのかもしれませんが、まあ捜査中であっても、外形的にちゃんとしたことは、外形的にもうだれでも認められることは、これはやはり報告してもらいませんと論議がなかなかしにくくなるわけでして、ひとつその点を要請しておきます。よろしいですね。
  91. 津田實

    政府委員津田實君) ただいま御指摘の点は、調査をいたします。
  92. 亀田得治

    ○亀田得治君 それらの点がもう少し刑事局長から明らかにされた上で、いろいろ法律的にもまたお答えを願うようにいたしたいと思います。  そこで、次に、国税庁、きょうは次長が見えていますね。国税庁のほうも、こうなりますと、本格的な質問は次になるかもしれませんが、一応その輪郭だけお尋ねしておきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、会社が自分の土地を帳簿価額以上に処分して、まあ今回の場合は帳簿価額七百万のものを三億八千八百万で売っておるわけですが、会社の法人税の関係というものは、そういう場合にどのように扱うことになるんでしょうか。
  93. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 一般論といたしまして、法人が不動産を売却いたしまして、その場合に、経費を上回る部分、つまり益が出てきた場合には、これに対しては法人税を課税するというたてまえになっております。ただいま亀田委員がお尋ねの個別の問題につきましては、七百万円の簿価の土地を三億八千八百万円で売却した場合の法人税の取り扱いはどうかという具体的な問題もあろうかと准ずるのでございますが、この点につきましては、当時、会社のほうからは、その差額の三億八千百万円につきましては、これを評価益ということで申告調整をいたしまして、税務申告の上ではそれだけ減算をして申告しておるわけでございます。そこで、いろいろ根拠がございます。ただいま詳しく申し上げませんが、そういう根拠に基づきまして、この部分は評価益であるというふうに当時認めまして、この点は申告を是認した処理をいたしております。
  94. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、この点についての申告は出ているんですか。
  95. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 当該不動産につきましては、税務計算上は当時は貸付金という形で経理が行なわれておりました。そこで、税務申告上は、これを減算いたしましたその申告を是認した処理をしておるわけでございます。したがいまして、初めに一般論として申し上げました譲渡益の課税はいたさなかったわけでございます。
  96. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、課税の対象にならぬというのですか、どういう意味なんですか、もう少しそこらをはっきりわかりやすく説明してください。
  97. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 会社の経理、企業会計の立て方とそれから税務会計の立て方とは、これはある程度相違があることは、もう旭田委員御承知のとおりだと思います。その中で、ただいまの不動産の問題につきましては、これは税務申告のほうにおきましては貸付金の形で経理をして申告をしてまいりました。したがいまして、これはいわゆる譲渡によります益がそこに出ないというふうに考えまして、当時はこれを是認いたしました。この部分について課税関係を起こしていないということでございます。
  98. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、売買の差益というものを貸付金の形にすれば、税金を免れるわけですね。その売買の差益であるということを知らなかったというんですか、知っているけれどもそのことを認めたというんですか、どういう意味なんです。そうなるとすると、ずいぶん税金をのがれる結果になることがほかの場合でも予想できるのじゃないですか。どうなんです。
  99. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 亀田委員仰せのとおりでございまして、事実認定の問題になるわけでございますが、そうすると、その場合に不動産の売却が事実上あったかどうかという税務上の認否の問題になるわけでございます。当時の問題を申し上げますと、ただいま申し上げましたように、土地の売却益を貸付金として振り替え経理をしておったというような事情、それから、その土地の固定資産税につきましてはこれは依然として近江絹糸がその後も納税しておるというような事情、あるいは、その土地を賃貸しておるわけでございますが、それらの地代を近江絹糸が依然として徴収しているというような事情、いろいろほかの事情も加えまして、この土地についてはこれは申告どおり税務上は減算してしかるべきものというふうに当時考えまして処理をいたしたわけでございます。ただ、その後、この点につきまして修正申告が出てまいりました。ただいまこれにつきまして調査をしようという段階になっております。
  100. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、当初は、貸付金という形で出てきたので、売り渡し契約のあったことは国税庁も知っておられるようですが、そのような売り渡しの事実というものを認めないんだと。いま固定資産税なりそういうことについてもお触れになりましたが、そういう立場から、認めないんだと、単なる貸し付けというふうに認めたんだと言われるのでしょうか。そういうことができますかね。
  101. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 当時の課税処理は、いま仰せのとおりでございます。
  102. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、現にお金を三億八千幾ら貸したわけでもないのでしょう。事の起こりは土地から出ておるのでしょう、土地から。一体、そういう売買等のことがあったということを国税庁は知らなかったから、一応貸し付けということをそのまま認めていたと、それはうかつだつだというのなら、それは一つの言い方かもしれませんがね。事実関係を知って、しかも、諸般の事情からすると、どうもこの売買自身がおかしいというような立場なんだろうと思いますが、それで貸し付けというふうに書いてあるのを認めているというのですが、ちょっと矛盾するのじゃないですか、そういうことは。筋の通った説明をしてください。
  103. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 八十七期すなわち三十八年十月期の法人税の処理につきましては、当事さような処理をしたわけでございますが、その後会社側からいわゆる修正申告をいたしてまいりました。この内容は、ただいまお尋ねになっております不動産売却益の問題でございます。三億八千万余の金、額を加算して八十七期について修正申告してきているわけでございます。したがいまして、私ども、当初の処理と現在におきます処理といささか割り切れないものは感じますけれども、しかし、法人税の課税上の問題といたしましては、その修正申告に基づきましてこれから新たに調査をいたしたい、ただいまそういう感じを持っております。
  104. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、その修正申告はいつ出てきたのでしょうか、いまおっしゃった修正申告は。
  105. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 本年四月に入ってからでございます。
  106. 亀田得治

    ○亀田得治君 本年の四月。最初の貸付金としての会社側の書類を国税庁に出したのは、これはいつなんですか。
  107. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 八十七期は、昭和三十八年の十月二十五日に終わる事業年度でございますので、それから二カ月以内に申告書を出すことになっております。したがいまして、はっきりした日は私調べておりませんが、三十八年末ごろではなかったかと、かように推測をいたします。
  108. 亀田得治

    ○亀田得治君 法人が資産を売却した場合には、その期の決算の日から二カ月内に申告すると、こういうことにあなたのほうの通達等でなっておりますね、これは代金が入ろうが入るまいが。そうすると、このような時期になってそのような修正申告をしてきたということは、その通達にすでに違反しておるということは、これはもう明らかですね。それはどうなんです。
  109. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 一般論として申し上げますと、会社が修正申告を出してまいります時期は、これは当初の申告と違いましてさまざまでございます。これは修正申告をいたしますいろいろな理由がさまざまであるためでございまして、相当おくれて修正申告をするという場合もかなりございます。数年たってから修正申告するという場合もないわけではございません。
  110. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、普通の場合は、たとえば、三億にすべきものを少なくしておったとか、それをもっとふやさんきゃならぬとか、いろいろありますけれども、今度の場合は、これはそうじゃないでしょう。私は逆だと思うんですよ。今度のような修正というのはおかしいと思うんですよ。初め土地の売買から発展しているのでしょう。その先買代金が途中で貸し付けに変わったというのなら、またこれは一つの──まあそこら辺もなかなか問題がありますけれども、変わってくるということがあっても、初めが売買でしょうが。初めにそのことを申告しなかったのでしょうが。それでは、当然、申告しないで、そうして貸し付けだというような、これはごまかしですね。というようなことで、それを見過ごしたのも私は国税のほうとしてちょっとおかしいと思うんです。土地に関連しているということは知らぬのじゃなかったようです、さっきの答弁からすると。だから、見過ごしたのもおかしいのですが、それはまた別個にもう少し事態全体がはっきりしてからお尋ねしたいと思うが、近江絹糸自体としては、三十八年の十二月の下旬の段階において、すでに通達違反、結局それは税法違反ですよ、そういうことになるんじゃありませんか。どうなんですか。いまあなた修正申告をしたって、おかしいじゃないですか。金額の問題でなく、質的な問題についての修正申告なんて一体認められるんですか、こんなことは。
  111. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) この近江絹糸の法人税調査につきましては、当時これは不動産の売却益ではないというふうに課税当局で考えたわけでございまして、これがその後の情勢でどうも当時国税当局に対する税務申告が間違いであったのではないかというような感じを持っておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、最近になって修正申告を出してくるということはいささか割り切れない点もございます。しかし、これが売却益であるということがはっきり税務上いたしますれば、これに対して課税処理をするかどうか至急に調査を開始したい、かように考えておる次第でございます。
  112. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、初めからこの売却には無理があるんですよ。これは全貌がもう少し明らかになってはっきり私意見を申し上げますけれども、ともかくこれは単なる帳簿上利益を出したいと。実際は土地を売る腹も何もないんですよ。売れるものかどうかは、この土地がどこにあって、どういうふうにいまだれが使っておるのかといったようなことを検討すれば、これはもうすぐわかることなんです。これはもう単なる仮装の売買なんですよ。もう少しあとでこれははっきりしますがね。ただ、それを追及されて困ってきたものだから、いや、仮装じゃない、これはほんとうなんだ、こういう態度をとるために、最近になって所有権の移転登記をしたり、いろんなことをしているんですよ。そうなんですよ。ところが、所有権の移転登記をした、それじゃ、一体、三億八千幾らというような莫大な金が公正企業から出たかというんですよ。そんなものは出てやせぬのですよ。形式の上だけを追及されて、やむなく所有権の移転登記をした。しかたなく今度はじゃ税務関係の更正の申告もしたと、そういういきさつなんです、これは。どっちしたってこれは大きな矛盾を持っておる売買なんです。これは税務当局でもよく検討してもらわんきゃいかん。だから、この問題がどのように理解されるかによって、八十七期における利益の補てんですね、それまでのいろいろな損失をカバーしたという最初の刑事局長との質疑の関係、この関係に大きく影響してくるんですよ、この売買をどう見るのかということによって。検察庁は、これによって相当近江絹糸の経理は改善されたと。検察庁はだまされているんですよ、言うてみたら。だから、そういうところへ響いていきますし、三億八千幾らというものが決してこれは改善でなかったんだということになれば、八十七期以降の決算にもこれは大きく響いてくるんですよ。だから、そういうわけですから、これを一体どう見るのか、これは刑事局長、国税庁ともにひとつ真剣に検討してもらわぬといかん。私の申し上げておる意味は御了承になっていると思いますので、その上で次回にひとつ答えてもらいたい。これはここで答えたからその問題の法的性格がきまるというものではありませんけれども、その答えが出てきませんと、次の論議ができないわけです、関連しておりますから。そうしてまた、昭和三十九年の十月に大阪地方検察庁がなしたところの起訴猶予処分関係者が非常な不満と不信を持っておる、その不信を持っておるのは理由があるのかないのかということにもこれは大きく響くんですね。そういう関係になっておるので、これはひとつ検討願っておきます。よろしいな、両方とも。いいですね、国税庁。
  113. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 検討いたします。
  114. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこで、それじゃ国税庁も基本的なことは検討してもらうことにして、かりに修正申告のように扱うとした場合に、これは税金はどれくらいになるのですか。法人税から登録税から、公正企業のほうにしてみたら不動産の取得税もあるし、また、法人税に見合う地方税、いろいろなものがあるわけですが、それらのものをざっと計算すると、一体どれくらいになるのです。
  115. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 実は、税額を計算しておりません。まあ法人税だけですと一億円をこす程度であろうと考えますけれども、それぞれ非常にこまかい問題が付随いたしておりますので、そういう税額の計算はいたしておりません。  なお、子会社のほうにつきましてそれがどういう形になるかの問題もございますので、あわせて検討しなければいけないと、かように考えております。
  116. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ子会社のほうはその取得税がどうしたってかかるわけでして、これも次回までに、このきちんとした数字は出ぬだろうが、おおよそどれくらいの見当になるのかということを明らかにしてはしいと思います。いいですな。
  117. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 計算の問題として検討してみたいと思います。
  118. 亀田得治

    ○亀田得治君 証券局のほうは加治木さんですね。ちょっとあなたにこれは専門的なことになるのでお聞きしたいわけですが、証券取引法の二十四条に基づく報告ですね、大体この報告というものは守られておるのですか。
  119. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) その報告をされておるかどうかという意味でございましたら、この所定のものは報告されております、別に近江絹糸ばかりの問題でなくですね。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、それらの報告を受け取りまして、大蔵省のほうではどういうふうにその書類を扱うわけですか。
  121. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) この財務報告の趣旨は、御承知のとおり、投資家の保護の問題につながるわけであります。会社の内容の真実というものが財務面で明らかにされておると、それによって、新たに株を取得する、あるいはすでに取得された株をどう処分するかという問題に当然に重大な影響があるわけであります。したがって、会社の内容というものが常に財務的に明らかになるということでこの報告の趣旨が法律上定められておるわけでありまして、したがって、報告を受け取りました場合には、内容が真実であるかどうかということはわれわれのほうで一応審査するたてまえになっております。
  122. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、年間、その報告書というのはどの程度になるのですか、おおよそでいいですが。
  123. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 約三千八百件、会社数で言いますと約二千四百でございます。決算ごとの報告でございますので、一年一回決算のところと、二回決算のところがありますので、数字が食い違っておりますが、そういう関係で、会社数で約二千四百、報告件数で約三千八百でございます。
  124. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、大蔵省では何人ぐらいでその書類の検討をされるのですか。
  125. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 本省は、御承知のとおり企業財務課という担当課がございまして、ここでやっておるわけでございますが、まあ財務局の職員も使うわけでございます。大蔵省の出先機関でございます財務局ですね。ところが、財務局で課の編成が証券課のあるところとないところがございます。したがって、この専担者を何名と見るか、なかなかむずかしい計算になるわけですが、本省だけですと十七名であります。
  126. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、抽出的な調査じゃなしに、一件ずつ検討されるわけですか。
  127. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 本来ならば、それぞれ一件ずつ調査しなくちゃなりませんけれども、行政の効率をあげるためには、われわれとしては決して十分なスタッフを持っておりませんので、最近の審査のやり方は、いろいろな風評とか、それからいろいろな情報等、あるいはデータ等が得られまして、どうも粉飾の疑いが濃いと、しかも相当額であるというようなものに重点的に念の入った審査をする、そのほかのものは形式的な審査で終えるということになっておりますが、われわれとしては決してこれで十分な審査態勢とは思いませんけれども、経費、人員等の関係がございますので、実際のやり方はそういう重点審査をやっております。
  128. 亀田得治

    ○亀田得治君 近江絹糸というのは、その重点一つに入っているわけですか、どうなんです。
  129. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 具体的にどの会社を重点審査の対象にしているかということをここで申し上げますのは御容赦願いたいと思いますが、近江絹糸の先ほど来問題となっておりました諸点については、会社側からの申し出がありましたので、一応調べております。
  130. 亀田得治

    ○亀田得治君 会社側から申し出があったというのは、その土地の売買に関する部分のことですか。
  131. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) さようでございます。それが問題にされておるという意味で……。
  132. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはいつ申し出があったわけですか、証券局のほうには。
  133. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 二、三カ月前のころのようであります。ちょっといまはっきりした旧時は覚えておりません。
  134. 亀田得治

    ○亀田得治君 国税庁のほうは四月だというお話でしたが、同じ政府に書類を出すのに何でそんなに違うのですか。
  135. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 書類で参っておるわけではございません。この点が特定の関係者の間で問題にされておるということで私のほうへ申し出があったわけでございます。
  136. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは、書類で受け取らなきゃ、責任のある申し出ということにならぬのじゃないですかね。むしろ何かこういうことが問題になっているようだがということで了解を求めてきていったような感じを受けるんですが、それは一体どこへそんなことを言うてきたんです。
  137. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 正規の報告書はすでに提出されておるわけでございます。会社側の申し立てによりますと、その正規の報告書の内容に間違いないということでありますから、会社側は修正する必要を認めていないわけであります。しかし、こういう点が問題となっているということで私のほうに参ったわけであります。お調べ願いたいということでございます。
  138. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、国税庁には四月に修正申告を出したようですが、この会社の意見がまた違ってきたということになるんですか、四月に入ってから。
  139. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) ちょっといま……。
  140. 亀田得治

    ○亀田得治君 国税庁には四月に修正申告が出てきたわけですね。ところが、先ほどあなたのお答えを聞くと、会社側は二、三カ月前に従来どおりのことで間違いがないという意味のことを言うてきたというところからみると、四月に入って会社の意見がまた違ってきたと、こう理解していいのかというんです。
  141. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 国税庁との関係を私のほうで十分調べておりませんけれども、私のほうの八十七期の報告によりますと、不動産を売却していることになっているわけでございます。
  142. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたのほうは。
  143. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) はい。  その前提での書類が出ているわけでございます、この証取法に基づく報告書でございますね。その売却の事実に間違いがないということを申し出てきたわけでございますが、売却されておらないじゃないか、架空ではないかということで言われておるのでお調べ願いたいということで参ったので、一応私のほうは会社側から事情を聞きましたところ、売却の事実はないという心証は得ておりません。
  144. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたのほうには売却したことになっているのですか。
  145. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) はい。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、代金などはどういうふうに考えているのですか。
  147. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) ちょっと具体的にその経理をどういうふうにやっておりますか、私いまここに資料を持ち合わせておりませんが、いままでの御議論を聞いておりますと、貸付金という形で処理しておったようでございますので、たぶんおそらく売却して売却代金を貸付金という形で処理しておったという報告になっておると思います。ちょっといまその報告書が手元にありませんが、たぶんそうなっていると思います。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、この貸付金は、実際に回収できる見込みのあるものですか、ないものですか。公正企業という会社の実体等から見ても、回収できるものではない。利息も入っておらぬ、現実に。ですから、その辺の中身に入っての調査というものはあなたの局のほうではする──せんでもいいのですか、するのですか。どうなんですか。
  149. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) しなくてもいいということにならないと思いますけれども、一応公認会計士の監査報告書が出ております。公認会計士の意見を聞いて非常に問題があれば直接調べなければならないわけでございますけれども、このときの決算の数字は売却の認否いかんにかかってくるわけでございます。仰せのように、かりに売却の事実があったとしても、貸付金という形で処理されている以上は、代金は確実に入らないかもしれない。そうすれば、その貸付金に対する償却をある程度見なくちゃならぬではないかという問題になるのじゃないかと思うのでありますけれども、そのような見方はただいまのところいたしておりません。
  150. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは社長が同一人ですね、近江絹糸と、公正企業と。全く帳簿上のからくりです、これは。そういうことを大蔵省がゆるく見るようなことをしておりますと、いくらでもそういう粉飾決算というものをやれるわけですね。だから、もっと実質に触れたことをやってもらわなければ、これはあなた公認会計士なり法律家等もついてやっているわけですから、形の上から矛盾のあるようなことはしようとせぬですよ。しかし、それは、現実にこう比べて見ると、はなはだもっておかしいわけですね。第一、三億八千幾らでこの土地を売ったと。私は初めそれはどこか一カ所にかたまっている土地かと思ったら、そうではない、あっちこっちに散らばっている土地なんです。しかも、いろいろな建物がすでに建っているわけなんです。そんなものを赤字の公正企業が買ってどうするんですか。公正企業自体が無配で欠損続きの会社でしょうが。きょうは、事実を刑事局長もよく知っておられぬようですから、突っ込んだ検討はしないのですけれども、この問題になっておる会社について、書類だけ受け取って、一応つじつまが合っていればそれでいいということでは私は済まぬと思う。現実にこの会社が倒れてごらんなさい。そうしたら、やはり貸付金にしろ何にしろ、それだけのものを取らなければいかぬわけでしょう。取らなかったら、それだけ株主なり債権者なりあるいは下請に対してまた山陽特殊鋼みたいに大きな迷惑をかけるわけでしょう。例れない先にしっかりしておくというのが証券局の任務なんでしょう。任務なんだから、こういう問題になっておる取引については、法律的な一応の説明さえつけばそれで認めていくんだと、そんなことではだめですよ。まだ検討の途中のようですが、そういう立場じゃなしに、実際に合っておるかどうかという立場で皆さんのほうは検討するつもりがあるのかどうか、それを聞いておきましょう。
  151. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) この財務報告は、事実を正確に記録した書類であるかどうかということがねらいであります。かりに赤字であれば、赤字であるという報告を出してもらうべきでありまして、赤字を直せとかなんとかいうことはわれわれの立場でないわけであります。それは経営責任の問題になるわけでありますが、したがって、この場合、売却というものが事実であるかどうかということでございます。まあいろいろ疑問の持たれるようないろんな諸情勢があるようでございますけれども、その後移転登録も行なわれておる。そんな、関連会社であるけれども、関連会社には売却することはできないというふうなきめつけ方は、われわれとしてはできないわけであります。もう一つ問題は、価額が一般の時価に比べて適当なところであれば、これを仮装売買であるときめつけるわけにもまいらないと思うのであります。まあ諸般の情勢を検討しました結果、私のほうとしては、現在の段階では、一応売却の不実を否定することはできないということでございます。
  152. 亀田得治

    ○亀田得治君 固定資産税もずっと近江絹糸が払っておるんですよ。ともかく、あなた、書類だけ見て一応数字が合っていればそれを認めていく、そんなことじゃ、なにも証券局なんて用がないですよ。出してきている書類が形式的には合っているけれども、事実に違反しやせぬか、そういうところで疑問が起きている問題について、いまのところ売却有効だと見て扱っている、そんななまぬるいことじゃだめですよ。私がいま二、三指摘したのは、ほんの二、三ですよ。もっと本格的にこういう問題についてこういう条件についてもなおかつ有効と認めるのかということをあなたにそのうち聞きたいと思っておりますが、ちっとも検討していやせぬじゃないですか。そんな真剣な検討はないでしょう。第一が、その公正企業という会社がこの土地を必要とするのかせぬのか、それが第一でしょう、売却という以上は、普通は。そうでしょう。しかも、まとまっておる土地なら別ですが、ほうぼうに飛んでおる土地です。他人が使用している。そんな赤字会社が、何億というそんなものを買い込んで、どうするんですか。時価でやっていればいいんだ、こうおっしゃるんでしょう。そんなものじゃないんじゃないですか。この金の窮屈なときに、そんな赤字会社が、どうしてその三億幾らという土地を買い込んだりしていいんですか。その土地が分散して建物が建っているということをあなたは知っているんですか。いま聞いたんでしょう。どうなんです。
  153. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 私、直接この仕事の担当というか、責任はありますけれども、直接取り調べに当たったわけじゃございません。私の課の者がやりましたことを報告を受けて御返事申し上げておるわけでありますけれども、確かに、おっしゃるような問題あると思うのでありますが、われわれのほうの問題は、一定の事実を会計上あるいは財務上表現していることが正しいかどうかというだけの認定問題、また、そういった意味の審査の責任があるわけであります。不要の不動産を買っておるのはけしからぬじゃないかというような問題は、証券局あるいは証券取引法の立場で議論できない角度の経常上のいろいろ問題が当然あると思うのでありますが、それで、売却の事実があったかどうかということ、売却の事実があったとすれば、それがこの報告の財務諸表に正確に表現されているかどうかというところまででございます。
  154. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃ、ないのにそういう事実があったと書いてあれば、それは証券取引法違反でしよう。
  155. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 売却事実がないのに、売却の事実があった前提で財務諸表が作製されておれば、これは間違いでございます。
  156. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうでしょう。したがって、その事実に大きな疑問が持たれてきたら、これは検討する義務があるわけでしょう。
  157. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) その点は、先ほど申し上げましたように、その後移転登録も行なわれておる。したがって、その八十七期の当時に、売却の意思があったなかったか、その契約が有効に成立しておるかどうかという問題になるわけでありますが、その当時においては売却の契約は成立していないというきめつけ方はわれわれのほうではできなかったのであります。
  158. 亀田得治

    ○亀田得治君 その当時、そんなことはまだ浮かび上がってこなくて、知らなかったんでしょう。最近になって知ったんでしょう。
  159. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) そのとおりであります。その当時われわれは承知いたしておりません。
  160. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうしたら、その当時は知らなかったのであって、何かその当時すでに一応の検討をして認めておるようなことを言われる。そういうような意味です、さっきのお話は。私が注意したら、知らなかったというんですが、知らなかったのなら、それは知らなかったのであって、そんなこと何もあなたその当時の申請が正しいんだというような弁護をする必要はないですよ。これだけの疑問を持たれてきて、ことしになって会社からもそういう連絡があったんですから、あなたのほうじゃ真剣に調べなければならぬことですよ。第一、あなた、そんな必要がないんだし、そんな金を払えるまた立場でもないんだし、払えないから貸付金にしておくんだ、そういうばかげたことじゃ、それはたいへんじゃないですか、その影響は、そんなことを簡単に認めるのでは。だから、それはよく検討しなさい。私のほうが、どうもさっきから質疑しておりますと、この問題についてはもっと具体的にいろいろ知っているんだ。だから言うんです。それをただ出た書類を弁護するのが役目のような考え方じゃ、それはよくないですよ。そういうことで、これは検討してください。その上で聞きます、もっと突っ込んだ質問を。  それから、これは一般論として聞くわけですが、証券局へ出る書類、国税庁へ出る書類、それから株主総会に出る書類、これは一つのものでなければいかぬのでしょう。その形式はいろいろまた違いますけれども、実体は一つのものでなければいかぬでしょう。両方からこれは答えてください。
  161. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 申告の数字等はまた違ってまいりますけれども、申告の前提となる確定された決算の数字は、われわれのほうへ出てまいるものと当然同じであるべきものであります。
  162. 亀田得治

    ○亀田得治君 そっちはどうです。
  163. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) ただいま加治木調査官から答弁したとおりでございます。
  164. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃ、まあきょうは、そういう意味で、刑事局長のほうにも地検のほうの関係をよくお調べ願って、考え方を相当練って次は出てもらいたい。それから大蔵省の両方にも、その点、いやしくも自分たちがいままで一応やっておるからというようなとらわれた立場で皆さんが──専門の立場にあり、また監督していかなければならぬ立場の者が答えられますと、これは波及するところが大きいですから、粉飾決算というのは非常に問題になっているものですから、大蔵省がそれに対して何か間接的弁護をしているような、そういう考え方はもうみじんもあっては私はいかぬと思うんです。  それで、証券のほうにもう一つ聞いておきますが、八十四期、五期、六期のうちの八十四期ですね、これは、大阪の地検でもタコ配であることは事実は認めているのですが、あなたのほうの調査ではどうなっておりますか。
  165. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) はっきりした数字の確定はいたしかねておりますけれども、実質は赤字であったのにかかわらず、公表利益がこのときは千二百九十六万二千円の公表利益になっておるようであります。税引き前の公表利益でございます。
  166. 亀田得治

    ○亀田得治君 五期、六期については、特に検討されましたか。
  167. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 数字の確定までは至っておりませんけれども、八十七期で締めて粉飾を整理したことになっております。したがって、その関連で、この期中の分配をどうするかというのはなかなかむずかしい問題はあるのでございますが、一応調べました結果、八十五期についても同様の事例があるようでございます。
  168. 亀田得治

    ○亀田得治君 同様の事例というのは、結論的にはタコ配になるわけでしょう。配当しているんでしょう。
  169. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) もし配当いたしておるとすれば、そういうことになると思います。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、約六千万円配当しているでしょう。配当するためにやっているんですよ、あなた。
  171. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 配当は、その期の利益だけが配当原資になるわけでございませんので、その期までに内部留保に相当するものがあるかどうか、この辺の数字を確定しないと、その期の利益による配当ではなくても、はたしてこれをタコ配という形できめつけることができるかどうかはちょっと問題だと思います。
  172. 亀田得治

    ○亀田得治君 八十六期は。
  173. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 八十六期は、その期の収益状況はかなり好転いたしておるようでございます。八十六期は公表利益以上の利益があがっているようであります。
  174. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなた、現実に当たって調べた結果を言うておるのですか、書類で説明を受けただけのことなんですか、どっちなんです。
  175. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 実は、書類で審査した段階での報告に基づいてお答えいたしておるわけでございまして、私が直接当たっているわけではございません。
  176. 亀田得治

    ○亀田得治君 それでは、その点も含めてもっと検討してください。八十七期でそれまでのものを相当カバーしたと、こうなっているわけですわね。これは検察庁の扱いがそうなんです。八十四期のことは、これははっきりしている。これははっきりしている。五期、六期は、五期も大体疑わしいようにいまあなた言われますが、六期についてはどうも逆のことを言われておる。これは違うんです。検察庁へ行って書類を見せてもらいなさい。大阪ですわ。だから、そういう点も次回までに明らかにしてもらって、そうなると、証券取引法の罰則の関係等についてもいろいろ再検討をしなければならぬ問題が出てくるわけです、当然。だから、それも含めてひとつ検討を求めておきますから。  まあ以上です。
  177. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会