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1966-04-12 第51回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十二日(火曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 木島 義夫君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 山田 徹一君     委 員                 岡村文四郎君                 鈴木 万平君                 中野 文門君                 亀田 得治君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君    政府委員        法務政務次官   山本 利壽君        法務大臣官房司        法法制調査部長  塩野 宜慶君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○最高裁判所裁判官退職手当特例法案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  最高裁判所裁判官退職手当特例法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。  速記をとめて。   〔速記中止
  3. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をつけて。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 臨時司法制度調査会の中でいろんな意見が出ているわけですね。それを具体的にどういうような形で最高裁なりあるいは法案提出のほうの法務省なりが実現をしていこうとしているのかという点についてお聞きしたいわけなんですけれども、これはそれじゃ十四日にいたしたいと思います。  その中で、最高裁判所裁判官退職手当の問題については、どういうふうな意見が出されているわけですか。
  5. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 御承知のとおり、臨時司法制度調査会におきましては司法制度につきましていろいろな提案が出されているわけでございますが、その中で、裁判官及び検察官給与制度につきましての提案をしているわけでございます。その給与制度に関する提案のうちで、弁護士から裁判官あるいは検察官になられた方の退職後の処遇につきまして、退職手当あるいは退職年金につきましてそれぞれしかるべき措置をとるべきことを考慮することという提案をいたしているわけでございます。この提案の御趣旨に従いまして今回の特例法提案するに至ったわけでございます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 弁護士から裁判官検察官になった者ですね、これは、最高裁判事になったという場合だけではなくて、その他の高裁であるとかあるいは最高検だとか高検だとか地裁だとかあろうと思うのですが、その人たち退職手当年金の問題についてはどういうふうな意見が出されているわけですか。
  7. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 御指摘のとおり、臨時司法制度調査会意見は、弁護士から裁判官または検察官になった者についての措置提案しているわけでございまして、必ずしも最高裁判所裁判官というふうに限定はいたしていないわけでございます。したがいまして、問題は、裁判官になった者、検察官になった者全体の問題でございます。臨司審議の過程におきまして特に強調されましたのは、最高裁判所裁判官になった者を取り上げているわけでございます。それは、御承知のとおり、最高裁判所裁判官の従来の任命の実情というようなものから最高裁判所裁判官について強調されたものと推定されるわけでございます。そこで、今回は、その一番強調されました最高裁判所裁判官というものを中心にいたしましてこの特例法構成いたしたわけでございまして、その他の裁判官ないしは検察官につきましては、今回の特例法は含んでいないのは御承知のとおりでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 臨司では、具体的にはどういうふうに意見を述べているわけですか。
  9. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 臨司の御意見は、いろいろ御審議内容が「意見書」に盛られてございます。それを集約いたしまして要目として掲げられておりますが、当該部分につきましては、退職手当退職年金と二つの項目になっておりまして、1は、「弁護士から裁判官最高裁判所裁判官を含む。)又は検察官となった者が退職した場合に支給する、手当について何らかの優遇措置を講ずることを考慮すること。」、2は、「弁護士から裁判官最高裁判所裁判官を含む。)又は検察官となり、一定期間在職した後退職した者についての共済組合年金制度特例を設ける等の措置を講ずることを考慮すること。」、この二項目になっているわけでございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、具体的にどの程度のものにしたらいいかという、そういう数字的なといいますか、そういう点までは含んでいないわけですか。
  11. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 弁護士から裁判官検察官になられる方の退職後の処遇につきましていろいろ御審議されたようでございますが、御審議経過におきましても、現在の退職手当制度あるいは退職年金制度に、弁護士から裁判官検察官おなりになった者について特例を設けるということは、いろいろの点で多くの問題があるのだということがあらわれてきたようでございます。そこで、臨時司法制度調査会で、具体的にこういう方法がいいんだとか、あるいは具体的にこういう金額ないしは率がいいんだというところまでは至らなかったようでございまして、ただいま申し上げました要目におきましても、「優遇措置を講ずることを考慮すること。」というふうな状況で御意見が提出されたというふうに承っているわけでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なぜ退職手当というのは出さな毒やならないんでしょうか。
  13. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 退職手当制度本質と申しますか、性格と申しますか、これは非常にむずかしい問題のようでございまして、私もそれらの給与面専門家ではないのでございますが、従来言われておりますところをまとめて申し上げますと、いろいろな考え方があるようでございますが、退職手当につきましては、一つには給与あと払いであるというふうな考え方もあるようでございます。それから老後の生活の保障であるとか、あるいはまた、長年勤続した者に対する勤続報償であるとか、あるいは、在職中の功績に対する功績報償であるとか、大体そういうふうな考え方退職手当本質であるというふうに言われているようでございますが、現在の一般国家公務員退職手当法は、いま申しました中で、主として勤続報償ないしは功績報償というものが中心になって組み上げられているものであるというふうに了解しております。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外国最高裁判所判事──外国といっても、英米法系だと思いますが、それは制度はもちろん違いますが、経過が違うから、一がいにそのまま言えないと思うんですが、そこでは、待遇なりあるいは退職手当というのはどういうふうになっているわけですか。
  15. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 私どものほうも全体についてそれを調査いたしたわけではないのでございますけれども、ただいま判明しておりますところによりますと、たとえば、アメリカにおきましては、最高裁判所長官判事は、いわゆるリタイア・ジャッジといたしまして、死亡するに至るまで在職中の俸給、すなわち言いかえますと、長官では四万ドル、日本の円に換算いたしますと千四百四十万円、それから判事は三万九千五百ドル、日本の円に換算いたしますと千四百二十二万円、これは年俸でございますが、この年俸退職後も死亡するに至るまで国から受けるということに相なっております。西独のほうの法制は、必ずしもつまびらかにしないのでございますけれども、私どもただいままで調べたところによりますと、退職した裁判官は、在職中の俸給とは違いますけれども在職中の俸給基準にいたしまして非常に高率の年金を受けるというような制度に相なっているようでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これは退職金だけで、年金という関係はどういうふうになるんですか。
  17. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 御指摘のとおり、今回の特例法は、退職手当につきましての特例でございます。したがいまして、最高裁判所裁判官につきましては、年金関係は、従来どおり共済組合年金が支給されるということになるわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今度最高裁判事退職手当特例を設けようと。これはいままで約二十年近くある特例というものを設けようとしなかったんですか。その必要はいままではなかったんですか。
  19. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 裁判所のほうといたしましては、その必要性を早くから感じまして、実は三十六年度の予算から最高裁判所裁判官退職手当につきまして予算要求を繰り返しいたしていたわけでございますけれども、いずれも認められなくてまいったというのが現状でございます。臨時司法制度調査会意見が出ましたのを機会に、ここに提案になっております金額につきまして初めて予算が認められたというような経過に相なっているわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三十六年から予算要求していたというそれは、どの程度内容というか、勤続期間一年について今度は百分の六百五十ですね、それは具体的にはどういう形で要求したわけですか。
  21. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 三十六年からの要求は、いずれも百分の七百八十、言いかえますと、一年について七・八カ月分の退職手当の支給が適当であるという線で大蔵省に要求をいたしてまいったわけでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、最高裁で百分の七百八十ということをずっと請求していた具体的な理論的な根拠はあるわけですか。理論的根拠といってもなかなかむずかしいでしょうけれども
  23. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 特に理論的な根拠とまで申し上げることができるかどうか、これは疑問があるとは思うのですけれども、従来の最高裁判所裁判官がつとめておられました平均在職年数を出しますと、七年──六年、七年というところが基準に相なるわけでございます。一方、退職手当最高を六十倍に押えようという線があるわけでございます。まあその程度──多ければ多いにこしたことはございませんけれども、六十で押えるのが適当であろうと。それからこれは一般公務員につきましても六十倍という制限がありますので、それで最高裁判所裁判官についても退職手当最高限を押えたらよかろうという考えがあるわけでございます。そういたしますと、ちょうど七年で六十倍もらえるということになりますと、七百八十というところで七年に達すると、こういうことに相なるわけでございます。ところが、今回の六・五は、そうではございませんで、十年で最高の六十倍に達するという線で六・五倍というのが出ているわけでございまして、三十六年からの要求平均年数の七年で六十倍に達するということを基準にして予算要求をいたしてまいったわけでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、今後、最高裁判事は、前よりも年齢的に若いというか、そういう層の人が最高裁判事になるのだという一つの含みがあるわけですか。必ずしもそこまではいかないわけですか。
  25. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 最高裁裁判官任命は、もう御承知のように、内閣の専管でなされることでございまして、私どものほうといたしましては、ただいま御質疑のあったようなそういう点までは考えないで予算要求をいたしてまいったわけでございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで弁護士から最高裁判事になって退職された方と、それから弁護士から、別の高裁なり地裁なりの裁判官、あるいは高検なり地検なりのあれになって退職されたというふうな方ですね。どのくらいおられるわけですか。特に弁護士から最高裁に入られて本年の前に退職された方は何人ぐらいおられて、その方は、たいへん失礼ですけれども、どの程度退職金をもらわれたわけですか。
  27. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 弁護士から最高裁判事になられたお方は、現地まで通算いたしますと、十四名おいでになるわけでございます。そこで、おやめになられました方につきましては、いわゆる一般公務員退職手当しか支給されておりませんので、したがいまして、非常に少ない、何と申しますか、少しお気の毒と言っていいくらいの金額しか出されていなかったわけでございます。たとえて申し上げますと、最近の例から順次拾ってまいりますと、河村大助裁判官は、六年間おつとめになったわけでございますけれども、その支給された金額は百十六万円程度でございました。それから池田克裁判官は、やはり一応弁護士からおなりになったわけでございますけれども、八年間おつとめになって百五十五万円というふうな程度金額でございます。それから高木常七裁判官は、やはり弁護士からおなりになったのでございますけれども一、四年間おつとめになりまして七十七万円でございます。高橋潔裁判官は、五年間おつとめになって、この裁判官在職中に死亡なすったのでございますけれども、おなくなりになった場合は若干率が上がるわけでございますが、それでも百六十万円という程度でございます。真野裁判官は、十年十一カ月もおつとめになったのでございますけれども退職金はわずかに百三十二万円。小林俊三裁判官も同じく百三十万。こういうようなことでございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それらの方と、今後弁護士からなられてやめられる方との間には、相当大きな開きがあるわけですね。それは、具体的な開きとなると、どの程度開きになるんでしょうか。
  29. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) いまの開きの点でございますが、簡単に申し上げますと、現在までの計算方法でまいりますと、五年間おつとめになりました方が約百五十万円でございます。それが、今回の特例法による計算をいたしますと、約千万円になるわけでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そういうふうな不公平というか、差が出るんですが、それはどうするんですか。いたしかたないんですか。まあ泣き寝入りと言うことばは悪いですが。
  31. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 特例法を新しく設けますので、従来の方にはあるいはお気の毒かと存じますけれども、やむを得ないと、かように考えております。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、そういう段階においても、弁護士から最高裁判事になる希望者の方はおられたわけなんでしょう。だから、給与がというか、退職金がこういうふうになるから弁護士から特に希望者がふえるとか、こういうものじゃないんじゃないですか。その点はどういうふうに考えておられるわけですか。
  33. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 弁護士から最高裁判所裁判官おなりになる方々につきましては、必ずしも給与がいいから悪いからということだけで左右されるものではないと存じます。しかしながら、現実の姿を見ますと、最高裁にお入りになるような弁護士方々の収入というものは非常に大きいことは、すでに御承知のとおりでございます。それが、最高裁にお入りになることによって、報酬の月額は御承知のとおり三十万円、それ からかりに五年おつとめになりまして御退官になるという場合には、先ほど申し上げましたように五年間この重要な仕事におつきになりました結果の退職手当が百五十万円程度にしかすぎない、こういうことでございます。百五十万円程度のものだから自分は最高裁判所に入るのはいやだというふうにはお考えにならないと存じますけれども、しかしながら、民間におられた方が最高裁判所にお入りになるというにつきましては、やはりできるだけの待遇をして差し上げる、しかも、退職後  の処遇につきましてもできるだけの配慮をすると  いうことはきわめて望ましい、また、あるいは当然のことであろうかと存じます。そういう観点から、今回、このような特例法を設けようというふうに考えた次第でございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 変な話で恐縮なんですけれども、まあ弁護士からなって最高裁判事をやられると、おやめになった後において、非常に俗なことばで恐縮なんですけれども最高裁判事をやられたという肩書きからして、いわばいい事件と言うとことばは悪いのですけれども、非常にいい事件、いわゆるいい事件といいますか、そういうのがあれしてきてというふうなことも事実上あるようにも考えられるわけなんですけれども、これはお答え願わなくてもけっこうですけれども、そういうようなことで、ことに非常に名誉ですし、希望者が多いのではないかと思うのです、弁護士会からの。弁護士会から選ぶ場合に、希望者がどの程度あるのか、こういうようなことについては、あれですか、はっきりしたことはわからないのですか。
  35. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) おっしゃるとおり、私どものほうにはほんとうにはっきりしたことはわからないのが現状でございますけれども、私どもが承っておりますところによりますると、やはり最高裁判所裁判官にふさわしいような弁護士お方は、相当大きな年収をお持ちになっていらっしゃるそうでございます。したがいまして、その年収を放てきして最高裁判所裁判官──栄誉のある地位ではございますけれども、そこにおなりになるのはむしろそれほど希望はしておられないのじゃなかろうかというような話を私どもは耳にいたしておるわけでございますけれども、しかしながら、創設以来いままでおつきになりました弁護士出身裁判官は、いずれもごりっぱなお方でございまして、幸いにしていままでは非常にりっぱな方に弁護士会からお入りになっていただいているというふうに私ども考えているわけでございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実弁護士会から最高裁判所判事になるというのは、どういうプロセスを経て最高裁判事になられるわけですか。これはもちろん内閣で推選するということになるのはわかりますけれども、その間の経過ですね。たとえば、日弁連へ話をして、日弁連から推薦をしてもらうのだとか、あるいは、東京弁護士会だとか、大阪弁護士会だとか、今度は山田裁判官がおやめになったあと大阪弁護士会からお入りになるのだということがきまっているとかきまっていないとかいうことで、その人の名前まであがっておるわけですが、名前はここで申し上げませんが、そういうようなことで、どういうふうな形で弁護士から最高裁判所判事になられるのか、そのプロセスは、これは当然最高裁としてある程度の関与といいますか、それをされるのじゃないですか。全然ノータッチですか。
  37. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 私どもいわゆる事務の者といたしましては、この最高裁裁判官任命につきましては、おっしゃるとおり完全にノータッチでございまして、内閣のほうにおかれて御選任なさるという原則がそのまま実行されているのじゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁判所判事を選ぶのに最高裁判所ノータッチだということで、最高裁判所の中にそれに対する批判というか、そういうものは全然ないのですか。それとも、けっこうでございますと、こういう考え方なんですか。最高裁判所判事の中で、裁判官会議なら裁判官会議の承認を得るとかなんとかという方法をとるのではないですか。
  39. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 従来私が聞いております範囲では、新たに最高裁判所裁判官任命前におきまして最高裁判所裁判官会議が開かれて、そうして、この方ならばいいのじゃないか、あるいはこの方がいいのじゃなかろうかというようなお話があったということは、全然聞知いたしていないわけでございます。かつて、内閣官房長官が、やはり委員会で、神に祈るような気持ちで最高裁判所裁判官任命はしているのだということをお答えになったというように聞きましたのですけれども最高裁判所裁判官個人個人はあるいはお考えをお持ちかもしれませんけれども、しかし、ただいまお話しになったような会議とかそういうものは全然ございませんで適任者任命されているというように私どもは伺っているわけでございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、その内閣がやるというのはわかりますが、法務省としてはどの程度タッチするのですか。
  41. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 御承知のとおり、最高裁判所長官につきましては、内閣の指名に基づいて天皇任命するということでございますし、その他の裁判官につきましては、内閣任命して天皇が認証する、こういうことになっております。いずれも内閣の重要な人事でございます。したがいまして、内閣任命事項でございますので、補佐機関としては内閣官房補佐機関になるわけでございまして、したがいまして、いま矢崎人事局長お話のように、官房長官委員会でもその点の御説明をしたという経緯もあったというように承っております。そこで、内閣任命でございますので、法務大臣内閣の一員としてその任命に関与するということはあるわけでございまして、法務大臣は、御承知のとおり、司法制度には最も関連の深い大臣でございますから、その知識、経験に基づいてそのつどしかるべき意見を述べることと存じますが、それは法務省の必ずしも所管でございませんので、法務省事務当局としてはそれに関与いたしていない次第でございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この点は、次回に官房長官法務大臣に来ていただいて、その点の問題をもう少し聞きたいと、こう思うのですが、この前も、最高裁事務総長に、最高裁判所長官が八月ですかに定年退職される、それについてどういうふうな形で最高裁判所長官が選ばれるのだろうか、こういうことをお聞きしたことがあるのですが、それは秘中の秘だと、こう言われる。秘中の秘は秘中の秘としても、その裁判官を選ぶことについて内閣が全面的な権限を持っているという選び方、これがはたして正しい選び方かどうかが、三権分立というものの理解のしかたにもよるのですけれども、どうなるのかという点はなかなかむずかしい問題点ではないかと、こう思うのですが最初のころは、最高裁の中に選考委員会みたいなものができておって選んだことがあるんじゃないですか、戦後しばらくの間ですが。それが廃止された経過なんかどうなんですか。設けられた経過と廃止された経過はどうなんですか。
  43. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 当初は、ただいま稲葉委員から仰せのとおり、裁判官任命諮問委員会がつくられておりました。これは裁判所法三十九条に基づきまして制定されました委員会でございまして、昭和二十二年政令第八十三号によってこの委員会構成がきまっていたわけでございます。歴史的な事実を申し上げますと、昭和二十二年七月中に三回にわたって会議が開かれまして、二十八日に適当と認める者三十人がこの委員会で決定されまして、氏名の答申がございまして、八月四日任命式認証式が行なわれたのが歴史的な経過でございます。  この委員会構成は、当時の政令によりますと、衆参両院議長、それから裁判官の中で互選された者、それから検察官行政裁判所長官評定官等の中から一名、そのほかまぜまして全体で十五名ということになっていたわけでございます。しかしながら、ちょうど昭和二十三年の一月一日の法律第一号、これはたしか片山さんの内閣の当時ではなかったかと思うのでございますけれども、これによりまして裁判所法の一部改正が行なわれまして、最高裁判所裁判官任命長官任命内閣の全責任でするのが適当であるというような御趣旨のもとに、ただいま申し上げました裁判所法三十九条の改正が行なわれまして、裁判官任命諮問委員会という制度が廃止されたというような経緯に承っております。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 廃止されたのはわかりますが、どういう理由でそういう選考委員会を設けることは弊害があるということなんですか。そこはどうなんですか。
  45. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) これが廃止されました提案理由の一部を読み上げますと、「実績に徴すると、この方式は形式的に流れ過ぎて、所期の効果を得られないといううらみがあり、且つ指名及び任命に対する責任の所在を不明確ならしめるおそれがある」、これが廃止の提案理由となっておるように伺っております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはおそらくアメリカの行き方をまねして選考委員会制度ができたんじゃないかと、こう思うんですが、アメリカでは最高裁判所判事任命というのは具体的にはどういう形で行なわれているのですか。アメリカでは、裁判官任命諮問委員会はないので、大統領の責任において行なわれるというように聞いておるわけでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、古いことで恐縮でございますけれども、なぜ選考委員会というような制度を設けたんでしょうね。
  48. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) これは、当時の記録を見ないと、私もそこまで現在は明白にしていないのでございますけれども、要するに、私が聞いておりますところによりますと、こういう諮問委員会をつくって、その答申に基づいてそれを補佐として内閣で決すると、それがいいのじゃないかというような考え方に基づいて新たな制度が制定されたというように私としては聞いているわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三権分立ということから──まあ三権分立ということをどういうふうに理解するかいろいろ議論があるし、それを昔のままの形でいっていいか、あるいは、厳格に解するか、ゆるやかに解するか、いろいろな解釈のしかたがあると思って、私も実は迷うのですけれども内閣がそういうふうなものを選任するというような行き方に対してはどうなんですか。それに対する考え方は、そういう行き方がやっぱり正しいのだというふうな考え方なんですか。どこにそういう納得できるような理論的な根拠というかそういうようなものがあるのでしょうか。裁判官が、自律の原則というかそういうものからいっても、最高裁判所の中でみずからの責任において裁判官会議で選ぶという行き方も当然考えられていいのじゃないかと、こう思うのですが、そういう考え方をとらないのはどういうところに原因があるのでしょうか。考え方によると、内閣のそのときの政治というか、あるいは内閣の政治の姿勢というか、政策というか、そういうようなものにマッチするような人を結局選ぶのだという形になってくるような感じを受けるのですが、行政権と司法権との関係でむずかしい問題だと思うのですけれども、そこはどうなんですかね。これは官房長官なりあるいは法務大臣なり何なりに尋ねるべき筋合いかもわからないのですけれども
  50. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) これも、ただいままで私が理解いたしておるところによりますと、先ほど塩野調査部長のほうから答弁がありましたように、長官は、憲法六条第二項に基づきまして内閣が指名して天皇任命する。それから最高裁判所の通常の裁判官は、憲法七十九条第一項に基づいて内閣任命するというように、憲法そのものに任命の方式が規定してあるわけでございまして、したがいまして、この憲法の精神からすれば、内閣の全責任において、内閣の自由裁量と申しますか、しかしながらほんとうの全責任において任命するのが憲法の趣旨に合うのじゃないかという考えから、片山さんの時代に、昭和二十三年法律第一号をもって廃止されたのだというふうに聞いてはいるわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法の条文で憲法の趣旨、精神はわかるのですが、もう一つ掘り下げると、どうして内閣の責任において最高裁判所長官なり判事任命するのですかね。どうもそこのところがはっきりしないのですが。最高裁判所自身がそれを任命するという形になってくると、何らかの場合に最高裁判所が責任をかぶるようなことができてくると、非常にそれは司法権の運用上まずいという意味なんですか。そこら辺のところが、なせ内閣の責任においてやらなければならないのかという基本的なところが、どうもはっきりのみ込めないわけですよ。これはもちろん憲法の解釈になってくるところなんですが、これはここでこれ以上あれするのはどうかと思いますけれども、どうもそこら辺のところがはっきりしない。勘ぐってみますと、時の政府に都合のいい方が最高裁判所長官なり判事に出てくるという傾向がそこに生まれてくると思うのですが、結局、それは、行政府の司法権に対する一つの、何といいますか、支配ではございませんけれども、何らかの形のそういうようにコントロールに近いものがそこで生まれてくるのじゃないかと思うのです。そうすると、司法権というものが、行政というか、そういうようなふうなものに従属はしませんけれども、そういうやはり一種のコントロールを受けるというようなにおいといいますか、そういうようなものが出てくるように感じられるのですがね。本来の司法権の独立という点からいけば、その辺はもっと別な形でいいと思うんですが、もとは、大審院長なり大審院判事は、政府が任命したのでしょうか。前からそうなんですか。
  52. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 稲葉委員の御趣旨のようなお考え、司法権の独立というものをうんと突き詰めて徹底していけば、そういうような御議論もまことにごもっともだと思うのでございますけれども、私どもの聞いておるところによりますと、三権分立の精神、いわゆるチェック・アンド・バランスの精神に基づいて裁判官任命内閣においてするものであるというように従来は理解されたと思うのでございます。外国におきましても、最高裁判所自体が任命するということはないようでございます。旧大審院時代にお送ましても、やはり政府の任命ということになっていたと理解いたしております。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大審院の院長は別として、大審院の判事まで政府の任命ですか、もとは。
  54. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) ただいま古い資料を持っておりませんので、正確にはお答えいたしかねますが、御承知のとおり、当時は、裁判所も司法省の管轄下にあったわけでございますので、大審院の判事でございましても、内閣かあるいは司法大臣の任命ということになっておったと存ずるのでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 司法省の任命であっても、司法省のいわは直轄的な、もとの検事局というものが裁判所に附置されておったわけですね。その辺のところはちょっと疑問がありますけれども、古いことですから抜きにいたします。  そうすると、検察官の給料というのは、裁判官に準ずるということになっておるわけですけれども弁護士から最高検の検事になったという場合は、これはどうなんですか。弁護士から最高検の検事になった人は稲川さんなんかそうじゃないですか。そういう場合はどうなるのですか。
  56. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 弁護士から検事になりました者につきましては、検事になりまして初めて公務員になりますので、前職歴は、ただいま御審議いただいております退職手当とかあるいは年金というようなものについては、そういう考慮はされないということになっております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかりますけれども弁護士から最高検の検察官になった場合に、最高検の検察官を何年かつとめてやめたという場合には、退職手当特例ということはないでしょう。それは、検察官給与裁判官に準ずる、こういうことになっているのじゃないですか。臨司意見でもそういうようになっているようですね。そういうようになった場合にはどうなるのですか。これは、裁判官優位の原則から、一がいには言えないといたしましても、弁護士から最高裁判所判事になった場合と、弁護士から最高検の検事になった場合と、非常に違いが出てくることはないわけですか。弁護士から最高検の検事になることは考えられないという意味なら話は別ですけれども現実にすぐ最高検に入る、そういうルートの人もおられるのじゃないですか。
  58. 塩野宜慶

    政府委員塩野宜慶君) 前の御質問の趣旨をちょっと取り違えておりまして、たいへん失礼いたしました。  御指摘の問題は、確かに臨司意見におきましてもそういう趣旨提案がされているわけでございまして、弁護士から裁判官になった者、特に最高裁判所裁判官になった者、そのほかに検察官になった者についても何らかの優遇措置を講ずることを考慮するという提案がされていることは御指摘のとおりでございます。そこで、私どもといたしましては、この臨司の御意見に従いましてこれをだんだんに実現していきたいというふうに考えているわけでございますが、臨司審議経過を見ましても、そこにはいろいろな問題を腹蔵しているわけでございまして、今回は臨司の御意見のうちの最高裁判所裁判官というものだけを抜き出しまして、その地位の重要性、特殊性ないしは従来の任用の実情ということにかんがみまして退職手当特例法を制定いたそうというふうに考えたわけでございまして、検察官につきましてはこの最高裁判所裁判官についての特例考え方を理論的にそのまま引き写してくるというわけにはいかないわけでございます。検察官につきましては、今後検察官給与のあり方というものを検討してまいります際、その重要な一環としてその問題を取り上げて検討を進めたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうは、一応序の口ですから、この程度で終わらしていただいて、十四日にまた継続を質問したいと、こう思います。
  60. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 ちょっとお伺いいたしますが、裁判というものは、もう人間の一番大事なことなんですが、高裁まで行く件数の割合はどのくらいですか。高裁まで何本ぐらいいままでに行っているのですか。
  61. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) ただいま御質疑がございましたのは、第一審事件についてどの程度の上訴率があるかという趣旨の御質疑だと思います。これにつきまして、刑事事件について申し上げますと、地裁の第一審事件につきまして、昭和三十八年には一九・七%、三十九年におきましては一九%の控訴率があったわけでございます。それから簡易裁判所を第一審といたします刑事事件につきましては、三十八年には一〇%の控訴率、三十九年には九二二%の控訴率があったわけでございます。  大体の傾向を申し上げますと、第一審事件の刑事につきましては、地裁事件については二〇%くらい、それから簡裁事件につきましては一〇%くらいの控訴率ということに相なっております。
  62. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 それで、いまお聞きした理由は、最高裁判所というものを最高の地位に置かれるのは当然なことで、退職手当にせよ、給与にせよ、そうなくちゃならぬと思う。ところが、一番肝心なところは、ここではございません。ですから、そこに下級な者を置いて、ただ勝手に罪名をつけておくようなかっこうになっているものですから、そこで私が一番心配なのは、二年ばかりの間に、死刑の宣告を受けたものが最高裁で無罪になった。これはたいへんなことですよ。人間として死刑と無罪の差というものはちょっと口では言えぬと思う。これは間違いじゃないと思う。ですから、先ほどもお話がございましたが、最高裁の一方はほとんどもう神のような気持ちになっておられると。それはそのとおりだと思う。ところが、私がいままで考えていたのは、一番大事なのは検察庁なんです。そこで、いままでの検察庁というものは、無理に罪人をつくろうとしておるというのではないが、そういう事件をつかまえて罪人をつくれば、何人つくったというようなことで成績があがるのかどうかわかりませんが、最高裁だけが給料が高いのではなくて、最高裁でかためられるような人を置くべきだと思う。これは間違いございません。だから、あなたにお聞きしてもわからないかもしれませんが、私の一番残念なのは、大事なことでありながら非常にやり方が粗末になっておって、国のことを考える人から見ればあきらめきれませんよ。死刑の宣告を受けた人が無罪になったのはどういうわけかということがおわかりならお伺いしたいと思う。
  63. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) ただいまの御質疑は、最近二年の間に死刑になったものが無罪になった事件があるではなかろうかというようなことでございましたけれども、私ども承知しております限りでは、統計上は、終戦後最高裁判所が発足いたしましてから最近に至るまでの間、死刑の事件が無罪になりましたのは三件でございます。そうして、その事件は、いわゆる二俣事件と申しますものが一件、それから幸浦事件と申しますものが一件、これはいずれも第一審の裁判所が静岡地方裁判所浜松支部で行なわれた事件でございます。それからもう一つ事件は、御承知の松川事件でございます。この三件だけが最高裁判所において破棄差し戻しになりまして、そうして破棄差し戻しを受けました高等裁判所で事実審理が遂げられました上で無罪になったということに相なるわけでございます。  ちょうど、これらの事件は、昭和二十五年、二十三年二十四年というような時期に発生いたしました事件でございまして、通常、第一審事件の無罪率等を調査いたしますと、昭和二十三年、二十四年、二十五年という時期は非常に無罪の判決が多かった時代に当たっているわけですが、御承知のように、第一審の裁判所事件を審理いたしますときは、現在の刑事訴訟法によりますと、職権主義というものが背後にはございますけれども、当事者主義が原則になっておりまして、検察官の立証それから弁護人の立証というそれぞれの立証に基づきまして裁判官が公平な判断をいたすということになるわけでございまして、裁判官といたしましては、このような事件につきましても、第一審におきましてもほんとうに一生懸命、いわば神にかけてほんとうにまじめに法廷に出ました証拠に基づいて判決を下したものと思うのでございますけれども最高裁に参りましてから破棄差し戻しになったことは御指摘のとおりでございます。  原因としては、いろいろそこにあると思いますが、要するに、いままでわれわれの中で破棄差し決しを受ける事由として言われております事柄は、訴訟というものは、元来、第一審から第二番、第三審までずっと時間的に経過があるものでございまして、第一審で判決があった後に第二審に行ったあとからまた新たな主張がなされたり、また新たな証拠が提出されて、したがって、第一番の裁判をした当時とは異なった主張と証拠がそこに出てくる。したがって、その判決が異なった結論を示すことになるのだというような考え方がわれわれが調査いたしましたところでは一般的には言われている事柄になっているわけでございます。
  64. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 私は、死刑の宣告を受けた者が、たとえば無期になり有期になるというのなら話はわかります。ところが、地と天の差ですから、比較にならない。だから、裁判というものは安心ができないということを盛んに言われておる。だから、神の気持ちになって──最高裁でなくても、神の気持ちになって犯人をということでなければごめんこうむりたい。ですから、給料はうんと出してかまうことないですから、給料が安いから、裁判のほうをろくにしないと困ってしまうから、給料はもっと十分やって、そうしてほんとうに公平な神の気持ちになって裁判のできる人をきめてもらわなければなりません。迷惑をこうむるのは国民です。  私も、実は、言われたことをいまも覚えております。こうなんです。大正元年に北海道に参りまして、大正十一年に大盗伐があった。そのときに、四十四人の被告ができた。そうすると、その中に私も入った。そうして、裁判所から窃盗被告として召喚状を受けた。持って行って、しょっぱなから言ってやった。「裁判長の話では、窃盗被告ということを書いて四十四人をやられたようだが、そんなばかな話はないじゃないか。用件があれば、被告などと言わないで、出て来いと言えば、いくらでも出て来る」と。私の知人たちは、「岡村何をしたんだ、だめじゃないか」と着ったが、四十三人の人が有罪になって、私一人は無罪でした。私はいま現在も不服に思っております。  だから、そういうことのないようにしてもらうことが念願であって、実は、大臣に、これからの裁判でごく大事なことは、いままでもそうだが、念には念を入れてやってもらいたいと頼もうと思っておったところが、出て来ないから次官に申し上げますと、私がいま一番残念なのは、そういう司法上無理に無実の罪を受けている者がないかということを調べていただきたいのです。  そこで、そういうことをやっているのは、その中でも一番不公平な扱いをしているのは選挙違反なんです、不公平きわまる。目の前にあるのは、小林君がそのとおりです。小林君がやられて、いままだやっているようだが、小林君も事前運動でやられたようです。今度の被告もどうかしりませんが、やられた被告はほとんど事前運動です。事前運動というものは、市町村会議員から国会議員まで、事前運動せぬ人は一人もおりません。そこで、運の悪い人が見つかって迷惑をしているということで、はなはだこれは残念でございますが、大臣に願うことは、法律を改正して、不公平な扱をしてはいけない。私は北海道にもありますが、全然事前運動なんて考えておりません。注意はしました、私も。東京は事前運動を盛んにつかまえている。そういうことはいけないことなんで、不公平な扱いは絶対だめだ。これは法務省の責任だと思う。ですから、一刻も早く法を直して、そうしてそういうことのないようにしなければ迷惑だと思うのです。新聞その他は別ですが、最近見ますと、今度の小林さんの不遇な点で全部事前運動が入っている。だれもやられるなら別ですよ。北海道でもやっておるのですよ。それをつかまえるのはいけないですよ。はなはだ私に言わせるといまの検察官は不都合であって、威厳がありません。一番いけぬのは検事局に行かぬうちに、検察庁の中で何とか罪人をつくりたいと一生懸命になって考えている。だから、一人でも多くつくりたがる。そういうことはまかりならぬので、大事な人間ですよ、検挙をやっているが。私は、貧乏大学に入って貧乏大学を卒業したものだからここまで来たのであって、あなた方と違う。苦労しないとわかりませんが、苦労なら人一倍やっているわけです。ですから、不都合なことは見のがすことは私もできないのですけれども、いまの裁判のしかたははなはだふに落ちない。特に選挙違反が特別そうです。ですから、そういうことのないように法律をつくられて、ひとつ次官頼みます。いま、あなただまっておりますけれども、事前運動なんてみんなやっておるのだから。ただ、やっておっても、戸別訪問でやっておるので、だまっておるのです。それは、そうじゃなくて、ほっておけばいいんです。ぼくは実は今度もございます。私の市の市会議員の選挙がこの前実はあったのですが、今度もあるのですが、たいしたものです。どうしようもないのです、みんなやっているのですから。そういうわけで、それでも全部やればいいのです。やらないのです。そういうことなんです。ですから、選挙違反くらい不公平なことはございませんよ。それをあなたそうして知らぬ顔して見ておってはだめですから、そういうことのないように、やってもいいように、そういうことを当然抜けられるようなことにやるべきとしてやらなければいかぬと思いますから、ひとつ法務大臣かだれか選挙法をつくって、そうしてりっぱな選挙ができるように、事前運動なんということはこれはわからぬのです。事前運動をしない人はほんとうにおりませんよ。市町村会議員から国会議員に至るまでおりません。それをつかまえて、つかまえられた者だけ迷惑する。こんなばかなことはありませんよ。今後そういうことのないようにも不公平なことのないようにこれはやってください。それだけ頼みます。
  65. 山本利壽

    政府委員(山本利壽君) 裁判の問題でありまして、法務省関係の問題とはまた別個でございますが、いまの起訴いたしますまでのいろいろの手続が検察庁のほうでやりますから、検察庁のほうの方針としてはあくまで厳正公平にというたてまえで、御承知のように、いままで、大臣でも次官でも、選挙の際に違反した者はみな残念ながらやられておるわけでございまして、これは国会でおつくりいただいた法律に基づいて各検察官というものはその法律に触れておる者は必ず調べなければならぬたてまえでございますから、手の及ぶ限り法務省関係の係官及び警察官が一生懸命で調べておるわけでございまして、今日の日本の選挙法そのものが適当であるかどうかということについてはこれはまたそれぞれの立場から疑問があるかと考えます。各国の選挙法というものがそれぞれ違っている点から見ても、その点はうかがわれるわけでございますが、検察庁関係及び警察関係の者は現在の法に照らして一生懸命それに触れた者はこれは当然調査することが任務ございますからやっておるわけでございますが、いまおっしゃったように、現在の法そのものに不備があるといたしますれば、これは選挙制度調査会等もございますが、そうしてまた、議員立法ということもございますので、わが国に最も適したような法をつくることに、いま私政務次官でございますけれども、またそのうちに普通の議員に返るわけでございますから、お互いに努力いたしまして、そうしてだれが見ても一不公平な扱いのないように努力したいと思います。大臣にも、お説のとおり、よく伝えたいと思います。
  66. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 ちょっともう一つ。あなたの言うところでいい。ところが、私が見たところ、ぼくも選挙違反でやられておるのだから。何とかして罪人を出そうということに努力されておるようですが、要らぬことです、これは。調べることはけっこうですよ、みんなやっているのですから。調べるだけだったら、そういうことは申し上げません。そうではないのです。迷惑は候補者だけなんです。こういうことではいけないことです。だから、私の言っているのは、あなたのおっしゃるのと違うのです。あなたも出ておるからあれでしょうが、これは何ぼもあります。それをやらぬでおいて、こっちばかりやっている。小林君──小林君という男は知りませんよ。けど、迷惑を一つ考えてない。事前運動が主でおやりになって、そうして迷惑をこうむっている。それを、今度不起訴にならぬものですから、まだやっているわけです。かわいそうですよ。悪いことはいけないですよ。ところが、全部がやっている。あたりまえのことです、これは。そんなことを言うことがおかしいのです。ですから、ひとつ大臣に岡村がこんなことを言っているとお伝え願って、一刻も早く──私は今度は選挙をやらぬからけっこうなんですけれども、皆さん迷惑することのないように、ひとつお願いいたします。
  67. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午前十一時四十分散会