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政府委員(
新谷正夫君) 商法の一部を改正する
法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。
ただいま
法務大臣から
提案理由の御説明がございましたように、商法の
改正点を大別いたしますと七項目に分かれるわけでございますけれども、それぞれの項目が商法の規定の面から申し上げますとお互いに相前後することになっておりますので、これを規定の順序で御説明申し上げますと、かえって混乱するとも考えられますので、それぞれの
事項別に条文をまとめまして御説明申し上げることにいたします。
まず、第一は、
株式の
譲渡制限でございまして、商法の第二百四条第一項の改正でございますが、
現行法は、定款をもっていたしましても
株式の譲渡を制限することはできないものとされておるのでございますが、
同族会社その他につきましては、
会社運営の安定をはかりますために
株式の譲渡を制限することを必要とするものがございます。そこで、本項の改正によりまして、定款をもって
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨を定めることができるものといたしたのでございます。
しかし、他面におきまして、このような譲渡の制限を認めますと、株主が
投下資本の回収を妨げられるおそれもございますので、第二百四条ノ二から第二百四条ノ四までの規定を設けまして、
投下資本の回収を保障する措置を講じました。
第二百四条ノ二以下三条の規定でございますが、
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨の定めがあります場合に、株主が
株式譲渡につきまして
取締役会の承認を得ることができないときの
投資回収の方法を規定いたしたものであります。
第一項は、右の定款の定めがあります場合には、
株式を譲渡しようとする株主は、会社に対しまして、その譲渡を
取締役会が承認しないときは、他に譲渡の
相手方を指定すべきことを請求できるものといたしたのであります。この請求は、書面をもってすることを要することとしたのでありますが、その書面には、譲渡の
相手方、譲渡しようとする
株式の種類及び数をも記載いたしまして、譲渡の内容を明らかにすることといたしました。
第二項は、第二項の請求がありました場合に、その
請求書に記載されている譲渡を承認しないときには、取
取締役会は他に譲渡の
相手方を指定することを要するものといたしたものであります。この場合には、その旨を第一項の請求の日から二週間内に同項の請求をした株主に対しまして通知しなければならないものといたしました。
第三項は、第二項の通知が同項の期間内にされない場合におきましては、第一項の請求にかかる
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認があったものとみなすことといたしたのであります。これによりまして、第一項の請求をいたしました株主は、第一項の書面に記載した譲渡の
相手方に
株式を譲渡することができることとなるわけでございます。
第二百四条ノ三でございますが、前条第二項の規定によりまして
取締役会が譲渡の
相手方を指定した場合における手続を規定したものでございます。
第一項は、譲渡の
相手方として指定された者は、前条第二項の通知のありました日から十日以内に、株主に対しまして、書面をもって、その
株式を自己に売り渡すべきことを請求することができるものとしたのであります。この請求によりまして、請求をいたしました者と株主との間に
株式の
売買契約が成立した場合と同一の効果を生ずるわけでございます。
第二項は、第一項の請求により生じまする
買い主側の義務の履行を担保いたしますための規定でありまして、第一項の請求をいたしますには、会社の最終の
貸借対照表により会社に現存する
純資産額を
発行済株式の総数をもって除した額、すなわち一株当たりの
純資産額に譲渡の目的たる
株式の数を乗じた額を会社の本店の
所在地の
供託所に供託いたしまして、かつ、供託したことを証する書面を第一項の書面に添付することを要するものといたしたのであります。
第三項は、
取締役会が譲渡の
相手方として指定いたしました者が第一項の期間内に同項の請求をしないときには、前条第一項の
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認があったものとみなしまして、株主が当初予定しておりました
相手方に譲渡し得ることといたしたのであります。
第四項は、第一項の請求により生ずる株主の義務の履行を担保するための規定でありまして、第一項の請求がありましたときは、株主は、一週間内に会社の本店の
所在地の
供託所に株券を供託することを要するものとしたのであります。この場合には、遅滞なく第一項の請求をした者に対しまして供託の通知をしなければならないものといたしました。
第五項は、株主が前項の期間内に株券の供託をしないときは、第一項の請求をいたしました者は、売買の解除をすることができる旨を明らかにいたしたものであります。
第二百四条ノ四でありますが、第二百四条ノ三第一項の請求によりまして成立した
株式の売買につきまして、その
売買価格の
決定方法等について規定したものであります。
第一項は、前条第一項の請求がありました場合の
株式の
売買価格につきまして協議がととのわないときには、売買の
当事者は、同項の請求の日から二十日以内に
裁判所に対しまして
売買価格の決定を請求することができるものといたしたのであります。
第二項は、
裁判所が右の
売買価格を決定する際にしんしゃくすべき事情を規定したものであります。
第三項は、第一項の期間内に
裁判所に対しまして
売買価格の決定の請求もなく、
当事者の協議もととのわないときには、前条第二項の規定によりまして供託した額をもって
売買価格とみなすことといたしまして、
法律関係の
簡明化をはかったものであります。
第四項は、
株式の移転の
効力発生は、代金の
支払いのときに生ずるものといたしまして、
株式の移転の時期を明らかにいたしたものであります。
第五項は、前条第二項の規定による供託と代金の
支払いとの関係を明確にしたものでありまして、
株式の
売買価格が
供託額をこえないときには、
売買価格確定のときに代金の
支払いがあったものとみなし、
売買価格が
供託額をこえますときには、
供託額に相当する部分について
支払いがあったものとみなしたものであります。
第六項は、
売買価格が
供託額をこえる場合におきまして、その差額を
買い主が支払わないために株主が売買を解除いたしましたときには、第二百四条ノ二第一項の
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認があったものとみなし、株主が当初予定しておりました
相手方に譲渡し得ることといたしたのであります。
第二百四条ノ五でありますが、
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあります場合に、
株式が競買または公売された後の手続を規定したものでありまして、競売または公売により
株式を取得した者は、会社に対しまして、書面をもって、競売または公売による取得を承認しないときは
株式を買い受けるべき者を指定すべきことを請求することができるものといたしまして、その後の
手続等につきまして、譲渡に関する規定中所要の規定を準用したものであります。
第百七十五条第二項第四号ノ二でございますが、
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨を定款をもって定めることができることにいたしましたのに伴いまして、その定めを
株式申し込証の
記載事項としたものであります。
第百八十七条は、
創立総会におきまして定款を変更して
株式の譲渡につき
取締役会の承認を要します旨の定めを設ける場合の要件を定めたものであります。
第三項は、右の場合には、その決議につきましては、
会社設立後にその定めを設ける場合と同数の賛成を必要としたものであります。
第四項は、右の決議に反対しました
株式引受人の保護のため、その者に
株式引き受けの
取消権を与えたものであります。
第百八十八条第一項は、前条第四項の新設に伴いまして、
設立登記の期間の
起算日を明確にいたしたものであります。
第二百二十五条第八号は、
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨を定款をもって定めることができることにしたことに伴いまして、その定めを株券の
記載事項としたものであります。
第三百四十一条ノ三第五号は、
株式の譲渡につぎまし
取締役会の承認を要する旨定款で定めることができるとしたことに伴いまして、その定めを
転換社債の
社債申込証、債券及び社債原簿の
記載事項としたものであります。
第三百四十八条は、
株式の
譲渡制限に関する定めのない会社が定款を変更して
株式の譲渡について
取締役会の承認を要する旨の定めを設けますと、株主の利害に重大な影響を及ぼしますために、決議の要件等につきまして特別の規定を設けたものであります。
第一項は、右の定款変更決議には、総株主の過半数の賛成と
発行済株式の総数の三分の二以上の賛成を必要として、決議の要件を厳格にいたしたものであります。
第二項は、
議決権のない株主も、右の決議によって重大な影響を受けますので、その決議について
議決権を有するものといたしたものであります。
第三項は、
株式の
譲渡制限に関する定めのない会社が
転換社債を発行しております場合には、転換請求期間内に右の定款変更を行ないますと、
転換社債権者の利益を害することになりますので、右期間内は右の定款変更はできないものといたしたものであります。
第三百四十九条は、定款を変更いたしまして
株式の譲渡について
取締役会の承認を要する旨の定めを設ける決議に反対する株主を保護いたしますために、
株式の買取請求権を認めたものでございます。
第一項は、右の買取請求権の行使の要件を定めたものでありまして、右の決議をなすべき
株主総会に先立ちまして、会社に対し、書面をもって、その定めの設定に反対の意思を通知し、かつ、総会におきましてこれに反対しました株主は、会社に対して、自己の有する
株式を、決議がなかったとすればその
株式の有すべかりし公正な価格をもって買い取るべき旨を請求することができるとしたのであります。
第二項は、右の買取請求につきまして、営業譲渡の場合の買取請求に関します規定中所要の規定を準用いたしましたものでございます。
第三百五十条は、定款に
譲渡制限に関する定めのない会社が定款を変更して
株式の譲渡について
取締役会の承認を要する旨の定めを設けました場合には、従来の株券をそのままにしておきますと、第三者に不測の損害を与えるおそれがありますので、株券を回収する手続を定めたものであります。
第一項は、右の決議をいたしましたときは、会社は、その決議をした旨、一月を下らない一定の期間内に株券を会社に提出すべき旨、及びその期間内に提出されない株券は無効となる旨を公告し、かつ、株主及び株主名簿に記載のある質権者には各別に通知しなければならないものとしたのであります。
第二項は、右の定款変更は、前項の期間満了の時にその効力を生ずるものとしたのであります。
第三項は、旧株券を提出することができない者に対する新株券交付の手続を定めますために、第三百七十八条の規定を準用いたしたものであります。
第四百八条第四項及び第五項でありますが、
株式会社が合併します場合に、合併により消滅する会社に
株式の
譲渡制限に関する定めがなく、合併後存続する会社の定款に
株式の譲渡について
取締役会の承認を要する旨の定めがあり、または合併により新設する会社の定款にその定めを設けます場合には、消滅会社の株主を保護しますため、合併承認決議の要件等を規定したものでございます。
第四項は、右の場合に、消滅会社における合併承認決議につきましては、第三百四十八条第一項の規定によることといたしたのであります。
第五項は、吸収合併の場合におきまして消滅会社が右の決議をしますのには、存続会社の定款に
株式の譲渡について
取締役会の決議を要する旨の定めがあることを株主に知らせるため、そのことを
株主総会招集の通知及び公告の
記載事項といたしたものであります。
第四百十条第一号は、新設合併の場合におきまして、新設会社の
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨を定めますことは、合併当事会社の株主に重大な影響がございますので、その定めを合併契約書の
記載事項といたしたものであります。
第四百十二条第一項及び第四百十三条第一項は、第四百十六条の改正に伴いまして、報告総会または
創立総会を招集すべき日を明確にいたしたものであります。
第四百十六条は、消滅会社の定款に
株式譲渡の制限に関する定めがなく、存続会社の定款に株主の譲渡について
取締役会の承認を要する旨の定めがあり、または新設会社の定款にその定めを設けます場合には、その消滅会社の株券を回収する必要がございますので、株券の提供に関する第三百五十条第一項及び第三項の規定を準用することといたしたのであります。
第二百十条第四号は、第三百四十九条第一項に株主の買取請求権を規定したことに伴う条文の整理であります。
第三百四十一条ノ四第二項第四号は、第三百四十一条ノ三の改正に伴う条文の整理でございます。
第三百五十一条ないし第三百七十四条は、第三百四十八条から第三百五十条までの改正に伴う条文の整理でございます。
次に、第二の
額面株式と無
額面株式との変更に関するものであります。
第二百十三条でございますが、
現行法には、
額面株式と無
額面株式との相互の変更を認める規定はございませんが、
額面株式と無
額面株式とを有する株主は、その双方の
株式の株券を併合することができませんという不便がございますので、その変更に関し規定したものであります。
第一項は、株主は、このような変更を請求することができることといたしたものであります。ただし、会社の事務上の便宜を考慮しまして、この請求は、会社が
額面株式と無
額面株式とを発行している場合に限るものといたしましたほか、定款で別段の定めをすることもできることといたしました。
第二項は、株主が無
額面株式を
額面株式にすることを請求する場合には、
額面株式の額面未満の発行が行なわれたのと同様の結果になることを防止するため、会社の資本が
額面株式一株の金額に
発行済株式の総数を乗じた額以上であることを要するものといたしたのであります。
第百八十八条第二項第五号でありますが、
現行法では
発行済株式の額面・無額面の別が登記事項とされておりますが、第二百十三条の改正によりまして、
額面株式と無
額面株式との変更ができることとなったことと、
発行済株式の額面・無額面の別は、登記する実益に乏しいことにかんがみまして、これを登記事項から除くものといたしました。
第二百八十四条ノ二でありますが、第二百十三条の新設規定によりまして
額面株式を無額蔵
株式とし、または無
額面株式を
額面株式としました場合に、資本に変更を生じないことといたしまして、資本の額を明確にしたものであります。
第二百十四条ないし第二百二十一条は、第二百十三条の規定の新設に伴う整理でございます。
次に、第三点の
株式の譲渡方式等に関するものであります。
第二百五条は、
現行法では、
記名株式の譲渡は、株券の裏書または株券及び
譲渡証書の交付によってすることとされているのでありますが、近時における大量の
株式の流通にかんがみまして、譲渡の手続を合理化しますため、本条を改めたものであります。
第一項は、
株式の譲渡につきましては、株券の交付を要することとし、株券の裏書または
譲渡証書の交付を要しないことといたしたものであります。
第一項は、前項による譲渡方式の改正に伴いまして、株券の占有者を適法な所持人と推定することといたしたのであります。
第二百二十六条ノ二でありますが、第二百五条の改正によりまして、
記名株式の移転も株券の交付によることとなりますために、
記名株式の流通は容易になりますが、その反面、株主が一たん株券を失いますと、その株券について善意取得者が生じて、その株主は株主としての権利を失うおそれがあります。そこで、本条において、
株式の流通よりもむしろ
株式を安全に保持することを望む株主のために、株主が株券の所持を欲しない旨を会社に申し出たときは、会社は、株券の発行を停止し、または株券を銀行または
信託会社に寄託しなければならないものといたしまして、株券の喪失による危険から株主を保護することといたしました。
第一項は、株主はその
記名株式について会社に右の申し出をすることができる旨を定めたもので、この場合すでに発行された株券があるときは、これを会社に提出しなければならないことといたしました。なお、会社の事務上の便宜を考慮しまして、定款で別段の定めをすることができるものといたしました。
第二項は、第一項の請求がありました場合には、会社は、遅滞なく、株券を発行しない旨を株主名簿に記載するか、または株券を銀行または
信託会社に寄託し、いずれの措置をとったかを株主に通知することを要することといたしたのであります。
第三項は、会社が株券を発行しない旨を株主名簿に記載しましたときは、会社は株券を発行することができず、また、第一項後段の規定により会社に提出された株券は無効になる旨を規定したものであります。
第四項は、株券の所持を欲しない旨の申し出をした株主も、後に
株式の譲渡を欲する場合があるので、そのような場合には、株主は株券の交付または返還を請求することができるといたしたのであります。また、会社が株券を銀行または
信託会社に寄託した場合には、株主は会社に対してのみ株券の返還を請求することができるものといたしまして、
法律関係の明確化をはかったわけであります。
第五項は、株主の申し出によりまして、会社が銀行または
信託会社に株券を寄託したときは、その費用は会社の負担として、株主の利益の保護をはかったものであります。しかし、会社が株券の発行を停止した場合、株主の請求によって株券を発行するときは、その発行費用を株主に負担させることができますので、その場合との均衡を考慮して、その費用に相当する額につきましては、会社が銀行または
信託会社に株券を寄託したときも、会社は株主にその
支払いを請求することができるものといたしました。
第四百九十八条第一項第十六号でございますが、株券の所持を欲しない旨の株主の申し出に関する規定を設けたのに伴いまして、罰則について所要の改正を加えたものであります。
第二百二十三条第一項は、第二百二十六条ノ二の新設に伴う条文の整理であります。第二百二十九条は、第二百五条の改正に伴う条文の整理であります。次に、第四点は、
議決権の不
統一行使に関するものであります。第二百三十九条ノ二でありますが、株主が二個一以上の
議決権を有する場合に、これを統一しないで行使することができるか否かについては、
現行法上疑問がございます。信託の引き受け等が行なわれまして、法律上の株主とその
株式により実質上の利益を受ける者とが異なる場合におきましては、法律上の株主が実質上の利益を受ける者の指図に従って
議決権を行使することを可能にするために、
議決権の不
統一行使を認める必要があります。その他の場合には、
議決権の不
統一行使を許さなければならないとする必要は必ずしもありませんが、
議決権の不
統一行使を全く許さないことにいたしますと、かえって
株主総会の円滑な運営を阻害する場合も生じ得るわけであります。本条は、右のような見地から、
議決権の不
統一行使について規定したものであります。
第一項は、株主が二個以上の
議決権を有しますときは、
議決権を統一しないで行使することができるものとし、この場合には、
株主総会の会日から三日前に、書面をもって、
議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならないものといたしました。
第二項は、株主が
株式の信託を引き受けたこと、その他他人のために
株式を有することを理由とする場合を除きまして、会社は
議決権の不
統一行使を拒むことができるものといたしたものであります。
第二百三十九条第六項でございますが、株主が二人以上の代理人を
株主総会に出席させることができるか否かにつきましては、
現行法上疑問がありますが、第二百三十九条ノ二の新設によりまして
議決権の不
統一行使が認められるに従いまして、二人以上の代理人の出席ができると解される可能性がありますが、
株主総会の円滑な運営をはかりますために、会社は株主が二人以上の代理人を総会に出席させることを拒むことができるものといたしたものであります。第百八十条第三項は、第二百三十九条第六項及び第二百三十九条ノ二の新設に伴う条文の整理でございます。第五は、
新株発行の手続に関するものであります。第二百八十条ノ二の第二項でございますが、現打法におきましては、
新株引受権者に対しまして新株を発行する場合に限って有利な条件で新株を発行することができるものとし、また、株主以外の者に
新株引受権を与えますには、
株主総会の
特別決議を要するものとして株主の保護をはかることといたしております。そのため、
新株引受権が付与されたか否かにつきまして疑問が生じ、争いとなる事例があります。しかし、株主にとって重要なことは、株主以外の者に対して有利な価額で新株が発行されて株主の経済的利益が害されることでありまして、株主以外の者に対し
新株引受権が付与されることではございません。したがいまして、本項を改正して、株主以外の者に対して特に有利な
発行価額をもって新株を発行するには
株主総会の
特別決議を要することを明らかにいたしたものでございます。
第二百八十条ノ三ノ二でありますが、株主に
新株発行差止請求権の行使の機会を与えますために、会社は、払込期間の二週間前に、新株の発行に関する事項を公告し、または株主に通知しなければならないものといたしたのであります。
第二百八十条ノ三ノ三でありますが、第一項は、株主の新株の引受権の目的たる
株式及び
有利発行について
株主総会の
特別決議のあった
株式につきましては、株主に
新株発行差止の請求をする機会を与えることを要しませんので、前条による公告または通知をすることを要しないものといたしたのであります。なお、これらの
株式につきまして第二百八十条ノ三の規定を適用しないことといたしましたのは、
現行法における同条但し書の規定と同趣旨でございます。
第二項は、株主に
新株引受権が与えられました場合には、端株の合計数に相当する
株式及び失権株につきまして株主を募集することがありますが、これらの
株式は通常少数でありますので、この場合には、前条による公告または通知をすることを要しないものといたしたのであります。
第二百八十条ノ二第一項第五号及び第八号でありますが、これは二百八十条ノ二第二項の改正に伴う条文の整理でございます。
第二百八十条ノ三は、第二百八十条ノ三ノ三第一項の新設に伴う条文の整理であります。
第二百八十条ノ十は、第二百八十条ノ二第二項の改正に伴う条文の整理でございます。
次に、第六の
新株引受権の譲渡に関するものでございます。
第二百八十条ノ二第一項第六号、第七号でございますが、
現行法におきましては、
新株引受権の譲渡は、会社に対してその効力を生じないと解されております。その結果、株主が
新株引受権が与えられました場合に、その株金の払い込みのための資金を有しませんときは、旧株の譲渡等によって資金を調達するほかはないという不便がございます。そこで、本条におきまして、定款または
新株発行に関する
取締役会もしくは
株主総会の決議におきまして、株主に与える
新株引受権の譲渡ができることを定めることができるものといたしました。なお、この場合には、会社は
新株引受権証書を発行しなければならないこととなりますが、会社の事務上の便宜を考慮いたしまして、株主の請求があるときに限って
新株引受権証書を発行する旨を定めることができるものといたしました。
第二百八十条ノ四第二項でありますが、新株の引受権を譲渡することができる旨を定めましたときは、これを公示する必要がありますので、その旨を本条第二項の規定による公告に際しましてあわせて公告することといたしました。
第二百八十条ノ五でありますが、新株の引受権を譲渡することができる旨並びに株主の請求がありますときに限って
新株引受権証書を発行すること及びその請求をすることができる期間を定めましたときは、これを株主に知らせる必要がございますので、その内容を本条第一項の株主に対する通知及び第二項の公告に記載しなければならないことといたしました。
第二百八十条ノ六ノ二でありますが、株主の
新株引受権を譲渡することができる旨を定めましたときは、その譲渡は、有価証券である
新株引受権証書によってする必要がありますので、これについて規定したものであります。
第一項は、会社は、申込期日の二週間前に
新株引受権証書を発行しなければならないこととしたものであります。ただし、株主の請求がありますときに限って
新株引受権証書を発行すべき旨及びその請求をすることができる期間を定めたときは、その定めに従うことといたしました。
第二項は、
新株引受権証書により新株の申し込みに必要な事項を知ることができるように
新株引受権証書の
記載事項を定めたものであります。
第二百八十条ノ六ノ三でありますが、第一項は、株主の有する新株の引受権の譲渡ができることとする場合に、その譲渡が円滑に行なわれますように、
新株引受権の譲渡は、
新株引受権証書の交付によってすることといたしたのであります。
第二項は、
新株引受権証書について、株券と同様その占有者を適法な所持人と推定するとともに、その善意取得者を保護するために、所要の規定を準用したものであります。
第二百八十条ノ六ノ四でありますが、第一項は、
新株引受権証書を発行した場合には、
新株引受権の譲渡は
新株引受権証書の交付によってされることとなりますので、この場合の
株式の申し込みも
新株引受権証書によってすることとし、
株式申込証による
株式の申し込みに関する規定中所要の規定を準用いたしたものであります。
第二項は、
新株引受権を有する者が
新株引受権証書を喪失した場合には、除権判決を得る期間がないと考えられますので、
新株引受権証書によらず、
株式申込証によって
株式の申し込みをすることができることといたしたのであります。しかし、
新株引受権証書を取得した者がありまして、その者がその
新株引受権証書によって
株式の申し込みをしましたときは、
株式申込証による申し込みは効力を失うことといたしまして、その間の
法律関係を明確にいたしました。
第二百八十条ノ十四でありますが、
新株引受権証書を発行する場合につきまして、株金の払い込みの取扱場所に関する所要の規定を準用いたしたものであります。
第四百九十八条第一項第九号は、
新株引受権証書に関する規定を設けたのに伴いまして、罰則について所要の改正を加えたものでございます。
第二百二十二条ノ四、第二百六十六条ノ三第一項、第二百八十条ノ十二は、いずれも
新株引受権証書の制度の新設に伴う条文の整理でございます。
第七は、
転換社債の転換請求に関する点でございます。
第三百四十一条ノ六の第一項は、
株主名簿閉鎖期間内の転換請求によりまして
株式が発行される場合に、このような
株式の株主もその期間内に開かれる
株主総会におきまして
議決権を有することといたしますと、その者に対する総会招集通知が必要となる等、会社の事務上の負担を増加し、また、
転換社債権者にとりましてもその総会で
議決権を行使する必要性は少ないと考えられますので、このような株主は、
株主名簿閉鎖期間内は
議決権を有しないものといたしたのであります。
第二項は、会社が総会におきまして
議決権を行使すべき株主を定めますため基準日を定めた場合におきまして、その日後の転換請求により
株式が発行されましたときは、その
株式の株主も、
株主名簿閉鎖期間内の転換請求により発行された
株式の株主と同様に、その総会におきましては
議決権を有しないものといたしたのであります。
第三百四十一条ノ七でございますが、
現行法におきましては、
株主名簿閉鎖期間内は、
転換社債の請求をすることができないことといたしておりますので、
転換社債権者にとりましてはその期間内に
転換社債の転換を請求して
株式として売却することができないという不便があり、このため外国において
転換社債を発行するについて支障が生じておるわけでございます。そこで、本条の改正によりまして、
株主名簿閉鎖期間内も転換の請求をすることができることといたしまして、条文を一条繰り下げたものでございます。
次に、附則でございます。
第一項は、施行期日を定めたものであります。
第二項は、新法の適用に関する原則を定めたものであります。
第三項は、この法律の施行前に行なわれました
株式の移転または取得につきましては、この法律の施行後もなお旧法第二百五条及び第二百二十九条の規定を適用することにいたしますが、この法律の施行前に株券を取得した者がこの法律施行後株券を占有するときには、適法な所持人と推定されることとしたものであります。
第四項は、この法律の施行前に発行されました株券をこの法律の施行後取得するにつきましては、株券の裏書または
株式の譲渡を証する書面の整否について調査をしなくとも善意取得の妨げにはならない旨を規定したものであります。
第五項は、この法律の施行の日から二週間以内の日を会日とする
株主総会または
創立総会における
議決権の行使につきましては、二人以上の代理人の出席の拒否及び
議決権の不
統一行使に関する新法の規定を適用しないものといたしたのであります。
第六項は、この法律の施行前に新株の発行の決議または株主以外の者に
新株引受権を与える旨の決議がありました場合には、その新株の発行についてはなお従前の例によることといたしたものであります。
第七項は、商法第二百二十四条ノ三第一項の規定による基準日がこの法律の公布の日前でありますときは、新法第三百四十一条ノ六第二項の規定は適用しないものといたしたのであります。
第八項は、新法第二百四条ノ四第一項及びその準用規定並びに第三百四十九条第二項において準用する第二百四十五条ノ三第三項の規定による
株式の価格の決定に関する裁判
手続等を定めますため、非訟事件手続法に所要の改正を加えたものであります。
第九項は、新法第二百四条ノ二から第二百四条ノ五までの規定を設けましたことに伴い、有限会社の社員の持ち分の譲渡について社員総会が承認しない場合等に関する規定を整備する等のため、有限会社法に所要の改正を加えたものであります。
第十項は、有限会社法の改正に伴ないまして、経過措置を定めたものでございます。
第十一項は、新法及び附則第七項による改正後の再評価積立金の資本組入に関する法律の規定によりまして株主の
新株引受権が
新株引受権証書によって譲渡できる道が開かれたのに伴いまして、外資に関する法律の規定を整理したものでございます。
第十二項は、
株式会社の再評価積立金の資本組み入れに伴い新株を発行する場合も、商法の規定により新株を発行する場合と同様、株主の
新株引受権を
新株引受権証書によって譲渡する道を開きますため、
株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律に所要の改正を加えたものでございます。
第十三項は、新法第二百四条第一項の改正及び第二百四条ノ二から第二百四条ノ五までの規定の新設に伴いまして、日刊新聞紙の発行を目的とする
株式会社及び有限会社の
株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律を整理いたしますとともに、その不備を補うため、所要の改正を加えたものであります。
第十四項は、商法の改正に伴いまして、会社更生法の規定を整理したものでございます。
第十五項は、新法により
株式の譲渡につきまして
取締役会の承認を要する旨の定めが登記事項となったこと及び第四百十六条の改正に伴いまして、商業登記の手続を定めますため、商業登記法の所要の改正を加えたものでございます。
以上が商法の一部を改正する
法律案につきましての
逐条説明でございます。