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国務大臣(
藤山愛一郎君) いま御
指摘のようにいろいろな問題がございますが、私これからしょっちゅうお伺いすることになりますから、全般的な問題につきまして、私の考えを申し上げたいと思います。
いま御
指摘の点は、私
ども自由民主党は
自由主義経済の上に立っております。したがって、自由な公正な競争をやって、そして
価格形成をしていくのが一番望ましいことだと思っております。そこで、ただ今日の、私も実は財界出身でございますが、財界をながめてみますと、
高度成長の中におきまして、私は財界自身が姿勢を正さなければならぬところがたくさんあると思います。過去における
高度成長の際に、お互いに不必要と申しますか、必要以上の前途を楽観したシェア競争をやったということは、これはもうおおいがたい
現実の問題として今日残っております。ですから、
生産性、
工業規模を拡大するにいたしましても、おのずから財界自身が秩序を立てて、そしてやっていかなければならぬ。それはやはり財界人自身が相当の自己
責任において、あるいは個々の
企業者ばかりでなく、財界全体としての自己
責任において、そういう問題については今後取り組んでいかなければ私はならぬ問題であって、ただ好景気のときには
政府は介入するな、不景気のときには介入してくれと、こういう財界人の態度は、私は適正な財界人の態度とはこれ思いません。ただ今日、こういう状態になっちゃった
現実を、ここでどう直していくかとなりますと、設備過大がけしからぬといって、現状にあります非常な設備過大をたくさんかかえております困難な
企業を、そのままつぶしてしまうということは、あとあとの日本
経済の発展にも害がございますし、あるいはそれがあまりにもそういうことを機会にして、寡占体制におちいってしまうということも適当ではないと思います。したがって、ある
程度緊急避難的なカルテをつくりまして、そうして景気が回復するまでそれによって維持していくということによって、
不況を通じて極端な寡占体制ができ上がるということも、これは将来の問題として私はやはり避けていかなければならない。ですから、緊急避難的なカルテル行為というものは、ある時限を限ってやってしかるべきだと思います。ただ、その間に、やはり財界人がいま申し上げたような精神でもってお互いに協調をして、今後の
経済発展の中でお互いに協調した、正しき競争の中で生きていけるような体制をつくる心がまえを持っていってもらわなければ、
政府が緊急避難的なカルテルをつくった効果があらわれてこないと思います。ですから、そういう意味において、私は財界出身でありながら、財界人に対しても反省を求めるような次第なんでございます。
そこで、
自由主義経済の中における
政府の指導性というもの、これが重要な問題になってくると思います。むろん今後の社会において、昔のフランス革命の当時のレッセ・フェール式の自由主義思想というものは今日ないことは、ルーズベルトの新
政策以来、
自由主義経済というものが新しい段階に向かっておりますから、そういうような完全な自由ということはあり得ない。
国民、公共の利益のためには、ある
程度制限もやむを得ないというような状態も考えられるわけでございまして、
自由主義経済といえ
どもある
程度の国家介入というものは必要ではないか。しかし、国家がそういうものを指導し、あるいはやむを得ない場合には法的措置をとっていくということは最小限にとどめて、やはり財界自身の自覚と反省の上に立っていくべきがほんとうだと思います。ただ私はいまの
経済を見てみまして、たとえば今後
成長率七・五%というものを当分の目標として、安定的な
経済発展をやっていこうという場合に、設備投資が四兆五千五百億と五百億ふやしております。ただ景気が回復してくれば、民間設備投資もその点についてはあるいは五兆円に近く、来年にしても、今年はならぬとしても、来年なっていくような場合がございます。その場合に、やはりそういうような
増加した民間設備投資が行なわれるような際には、過去の例にかんがみて、大
企業だけがその設備投資を非常にやるのだということでなしに、同じ五千億の設備投資がふえるにしても、その多くが今日困っておる、
生産性の
向上をやっておらぬような
中小企業に振り向けていかれることが大事じゃないかと思う。そういう意味からいって、
政府が
中小企業に金が回っていくというような基盤をつくっていく、あるいは金融業者と懇談の上でそういう指導をしていくと、そういう点は、私は
政府がある
程度はっきりした指導原理を持って、そして金融界に対しても
経済界に対しても、あなた方は、とにかく設備投資に対して七〇%ぐらいな稼働率しかないんだと、それ一ぱいになって、将来なるまでの間に金を使って、みんなが八〇%ぐらいになったときにどんどんまた競争するんだということでなしに、
中小企業のほうの
近代化ということをやれば、下請のほうも
近代化をしてくれば、親
企業のほうだってよくなってくることなんでございますから、そういう意味での指導というものが、私はこれはやらなければ、今日の
自由主義経済の中においてもいけないと思う。ですから、
価格の公定をするとか、あるいは極端な統制的な
仕事をする必要はございませんけれ
ども、それだけの
政府がやはり指導性を持って財界に立ち向かっていく、そうして財界が良識ある経営者の態度を持っていれば、両々相まっていくと思います。この点は今後の、日本の
経済が復興という波に乗って、とにかく復興すればいいんだといってきた。もう二十年後の今日では、ここでそういうような良識に合う運営のもとに日本
経済全体を運営していかなければならぬと思う。非常にむずかしいことではございますが、
自由主義経済の中における、あるいは自由民主主義の中における
政府の指導性というものについて、われわれも率直にどうしたらいいかということを考えながら政治をやっていかなければならぬと思いますが、そういう線に沿って各方面も考えていただかなければならぬ、こういうふうに私考えております。