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衆議院議員(芳賀貢君) ただいまの御
質問にお答えいたします。この御
質問のありました、政府にゆだねるところの
法律の政令あるいは省令の問題でありますが、これは言うまでもなく、
法律の精神である第一条の
目的に沿って、政府としても行政的に
措置運用することは言うまでもないわけであります。ただ、この
法案の成立の経過を顧みますと、川村
委員からの御指摘のありましたとおり、
昭和二十八年でありますが、これは当時衆議院において議員立法として成立したわけであります。従来私ども
内閣提案にかかわる
法律の運用と、議員提案にかかわる
法律の運用に対しての政府当局の態度を見ますと、議員提案の
法律に対してはどうしても熱意を持たない態度で政府が対処しているというふうな点が多々あるわけであります。政府提案の場合には、最初から国家国民のために積極的になるということだけを念願にしない点があるので、かってに
法律の趣旨がこうだということで運営しておるわけでありますが、少なくともわれわれが立法府においてみずから
法律を制定した場合においては、政府提案にかかわる
法律とはその根本において違う点があるわけであります。そういう
関係がありまして、過去十数年の間毎年のように現在ではなたね、あるいは大豆は本法からはずされまして、大豆、なたね交付金によることになっておったわけでありますが、毎年度この
法律を根拠にいたしまして、イモ類でん粉あるいは大豆、なたねの決定の時期等においても、もう繰り返し繰り返しこの
法律の精神というものを政府の役人に徹底して、これは両院の
委員会においても追及するのでありますが、決定の結果というものは必ずしも
法律の精神に沿ったものではないことは御承知のとおりであります。そこで、今回特に
法律の第一条の
目的を改めたわけでありますが、これは制定当時も、イモ類、でん粉等は需給
関係から見ると、国内においても、ややもするとその生産面において過剰傾向になるような、そういう現象があらわれておりましたので、これに配慮の重点を置きまして、需給
関係から生ずるいわゆる価格の低落というものを防止するためには、どうしても
法律を制定して、
法律の力で、基準になる一定の価格水準というものをあくまでも維持しなければならぬというところに
法律制定の
目的があったわけです。そういうことでありますから、積極的に、米価決定あるいは食管法による麦価の決定のような場合には、この基準年度というものを明らかに定めて、そうしてよほど経済事情の激変がない限りは、前年度の価格を下回ることは絶対ないわけでありますが、イモ類でん粉の場合は、年度によって、むしろ前年度の価格を下回るような事態が数年間続いておるわけです。そこで、今回の
目的改正に当たりましては、その
目的を消極的な、過剰傾向が生じて、政府が価格支持の発動をしなければならぬというような点を根本的に改めまして、今度は
農業基本法の趣旨に沿って——最近は国内におけるでん粉の供給力というものが非常に供給不足というような形になって、トウモロコシを輸入して、それを原料にしたコーンスターチが四十年度においても約三十万トン生産されておりますし、このままでいきますと、四十一年度は四十万トン近い外国トウモロコシを原料にしたコーンスターチに依存しなければならぬというような事態が生ずるわけでありますからして、この点は国の施策のよろしきを得れば、何も外国から原料を輸入しなければでん粉の供給ができないというわけではありませんので、この際、積極的にイモ類の生産の拡大の方向というものを基本法に根拠を求めまして、それを
目的に加える。生産の拡大確保と同時に、それが結局このイモ類生産農家の所得の向上に寄与することができる、そういうようにまず
目的を根本的に改めたわけでございます。したがって、
目的の改正に伴うて買い入れ条項あるいはそれに伴う条文等についても、この精神というものが必要な政令事項あるいは省令事項にも生かされなければならぬと考えておるわけであります。
そこで、御指摘の第二条の「買入」の条項につきましては、従来はこの発動というものは、ほとんど
農林大臣、いわゆる農林当局にまかされておったわけでありますが、まかせる限度というものを
法律の中で限定することにいたしました。その第一の点は、従来もそうでありますが、イモ類の年度というものは、これは毎年十月に始まって翌年の九月に終わるのがイモ類の年度ということになっておるわけです。ですから、こういう年度が設定されておるわけでありますからして、その年度内において特にイモ類を原料として生産したでん粉が政府の買い入れ基準価格より下回る場合においては、当然そのイモ類年度を通じて所要の買い上げ等をやるわけでありますが、これが政府の運用によりますと、政府がそのイモ類の年度内において買い上げするという時期というものがまず限定されておるわけであります。これは
法律のたてまえから見て非常に不都合なことでありますが、従来は政、省令に基づいてそういうことをやっておるわけです。ですから、この点を改めまして、「必要な時期において、必要な数量の」買い入れができるということに明らかにしたわけでありますからして、こうなると、政府としてもこれをごまかすわけにはいかないと思うのであります。したがって、買い入れ時期については、イモ類の年度を通じてその年度内に買い入れの必要ができた場合においては、時期の限定はしない。それから買い入れ数量の問題については、現行法におきましては、年度当初に「
農林大臣の定める数量の範囲内において」買い入れをすることができるということになっておりまして、これはやはり年度当初に
農林大臣が買い入れの一定数量を予定して定めるということは、これは買い上げにも支障がくるわけでありますし、価格維持のためにも非常に窮屈になるわけでありますので、この「
農林大臣の定める数量の範囲」というものを改めまして、必要な数量は
目的達成のために買い入れできる、そういうふうな趣旨に改めたわけであります。
で、今度の改正の中にも第二条においては「省令の定める」という字句が二カ所ばかり載っておりますけれども、この前段の「省令の定めるところにより」というこの「省令」は、これは格づけでして、大体カンショでん粉、バレイショでん粉を買い入れる場合の規格、こういうものは従来省令であらかじめその規格をきめて、それに適合するものを買い上げるということになっておりますので、この省令につきましては、主としてバレイショでん粉、カンショでん粉さらに切り干しイモ等の買い入れをやる場合の規格、これを省令によって定めるようにするというのが第一の点。
それから、その次に「省令で定めるものの売渡の申込により買い入れる。」というのは、これはこの
法律にもあるように、いわゆる「生産者
団体」——生産者が直接間接に
組合員になっておる農業協同
組合、その協同
組合によって結成されておる連合会等がいわゆる省令で定める生産者
団体ということになっておりますので、この保管調整を行なうところの
団体の申し込みに応じて買い入れをする、この点が省令事項になっておるわけでありまして、この点だけが省令に定めるということでありますので、これは大きく
法律の趣旨を変えるような作用というものはこの省令においては行なわれないようなことになっておるわけであります。
それから第五条の
関係でございますが、これは現行法においても非常に問題になった点でありまして、これがまあいわゆる政令附録算式というこの政令であります。したがいまして、この農安法以外の各農産物の価格支持の
法律によりましても買い入れ価格とか、あるいは基準価格を設定する場合には算定方式、それはやはり政令によりどころを置いて、そして算式の基本を政令できめて、それを受けて省令でまた詳しく明定するということになっておるわけであります。それで漠然としたことを
法律に書いておくと、また現行法のような附録算式が生まれることになりますので、今回の改正においては、基準になる価格算定方式の一番基準になる価格というものを、今度は農業パリティ指数に基づくところの価格というものを、これを基準として、従来はやはり農業パリティ指数による価格、算出したその基準的な価格と合わして、いわゆる需給事情というものをこれをパリティ指数と同列において、そうしてまあパリティの上昇率、さらにまた国内のイモ類の需給事情というものを並列的に置いて、これをまあ
一つの価格の基準的なものにして、それに、まああと経済事情、それから生産事情等を参しゃく要素とするということにしてあったわけでありますが、この需給事情なるものはどうも価格決定上にマイナスの要素を、足を引っぱる作用を強くやっておるわけでありますので、実はこれを需給事情なるものを排除すべきであるというような研究もこの改正案策定の過程において行なったわけでありますが、なかなかこの削除というものはできかねて、それにかわる物価事情ですね、生産費及び物価というこの字句を需給事情の上に加える。そこでパリティ指数に基づいて、まあ算定の方式から言いますと、過去三カ年間の、カンショでん粉、バレイショでん粉の三カ年間の平均的な販売価格に、それに三年間のパリティの平均指数と決定年の当該年度におけるパリティ指数というものを乗じて結局基準的な価格が出るわけでありますからして、それに今度は物価上昇率、それから需給事情ということになると、これは従来政府はこの価格安定のために買い入れ保管をしておった凍結したでん粉をもこれをイモにまた換算いたしまして供給数量に加えるということをやって、そして価格の引き下げ要素に使っておったわけでありますが、そういうことはとるべき方法ではありませんので、需給事情というものは、これはあくまでも国内における需要数量ですね、一カ年間にカンでん、馬でんを通じてでん粉としてどのくらいの需要があるかということをまず把握いたしまして、それに対して国内のカンでん、馬でんの供給力がどうなっているかということを、これを対応させて、結局今日においては国内の生産でん粉だけでは相当大幅に供給不足ということになるわけでありますからして、これはやはり生産確保あるいは生産拡大ということになれば、この需給事情というものは今日の情勢から言いますとやはり生産拡大のためのプラス要素に使わなければ、これは効力がないということになるので、そういう配慮は
委員会の審議の中においてもできれば政府当局に対して御
質問を通じて明らかにしておいていただきたいと思うわけでございます。そういうことでございますので、今後もこの政令によって算定方式を新たに今度はつくることになるわけでありますからして、この点は立法者の側において、単に衆議院側ということでなくて、特に参議院の
農林水産委員会においてもこの点を十分重視して政府に対する御鞭撻をお願いしたいと思うわけでございます。
それからさらに、この第五条の改正の末尾のほうに、でん粉の買い入れ価格をきめる場合には、現行法におきましてはイモの価格にでん粉を製造するに要する加工経費を一切加えた額ということになっているわけでありますが、従来はイモを生産した畑から、いわゆる農家の庭先からでん粉を生産するでん粉の製造工場までの原料イモの運賃というものは、これが明らかに計上されていないわけです。これはやはりでん粉のコストというものを計算する場合においては、当然原料の運賃というものは加算するのが至当でありますけれども、このことが実行されておりませんので、この際特に
法律の中にわかりやすく原料運賃と加工経費と合わせてここに加えたような次第でございます。
それから最後の第八条の二は、これは全くの新設でありますけれども、この点は末端における原料イモの取引価格というものが地域においては、政府がやはり決定をするわけでありますけれども、その価格さえも維持して取引がされないというような事情が、九州地域においても関東地方においてもまた北海道においてもそういう点がまだあとを断ちませんので、この際政府がきめた原料イモの基準価格というものは必ずでん粉製造業者においてもこれを尊重して取引しなければならぬということを明らかにして徹底させるためには、やはり
農林大臣並びに
地元の都道府県知事の勧告権というものをこの農安法に付与いたしまして、随時これが発動できるようにすべきであるというふうに考えまして、これは従来の経緯にかんがみましてこの点を
一つつけ加えたような次第であります。
以上が御
質問に対するおおよその趣旨であります。