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1966-06-09 第51回国会 参議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月九日(木曜日)    午前十一時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  斉君     理 事                 園田 清充君                 野知 浩之君                 武内 五郎君                 渡辺 勘吉君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 任田 新治君                 仲原 善一君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 大河原一次君                 川村 清一君                 中村 波男君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 矢山 有作君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  坂田 英一君    政府委員        農林政務次官   後藤 義隆君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農地局長  大和田啓気君        農林省園芸局長  小林 誠一君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林省畜産局参        事官       太田 康二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農地管理事業団法案内閣提出衆議院送付) ○果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十一年六月の降ひょうによる被害に関  する件)     —————————————
  2. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農地管理事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 武内五郎

    武内五郎君 農地管理事業団法案質疑にあたりまして、私は先般本会議で大体のお伺いしたいという筋だけを申し上げたのでありますが、きょうはいささかそれを掘り下げまして、若干御質疑を申し上げたいと考える次第であります。それで、もっともきょうの私の質問あとに、私の同僚の人たちが各項目別にわたってお尋ねすることになっておりまするので、これも幾らか本会議当時の質問から掘り下げる形にはなりますけれども、総括的な形で質問を申し上げて、お答えをいただきたいと考えておるわけでございます。  今回、私は、日本農政構造政策を取り上げるに至りましたことは、非常な重大な日本農政のポイントだと考えます。戦後、私は、日本農政に二つの転機があったと考えます。一つは、御承知のとおり農地改革推進の問題であります。一つは、今回の構造政策農業政策の上で柱として取り上げるに至ったことと考えます。それで、この前この法案衆議院においてすでに審議されて、こちらへ回ってまいりまして、しかもその前に、四十八回国会における審議過程考えてみますると、その審議の中でおおむね次のような点が指摘されておったわけであります。それは、今日のような日本農業のあり方から考えて、農地流動化を促進しようとしましても、農地価格が非常に高いので、農民自立自営化しようといたしましても、その多額な資本を寝かせなければならぬ、こういうような関係からいたしまして、しかも農業という経営のテンポのおそい仕事でありますので、利回りが非常におそい、悪い形から高い固定資産に対する投資が困難であり、やったとしても負担に耐え切れないという形が出てきた。したがって、まず第一に、農地流動化によって自立経営を促進しようとする一つの大きな阻害要因農地価格の非常に高いという点に立ち至ってまいらざるを得なくなる。そういうようなことから、この農地価格をいかにして抑制するか、こういう点がまず第一に衆議院における論議の第一だと考えます。  第二は、かりに自立自営政策現実に遂行されてまいりましたとすれば、まず第一に、人間の問題になってまいります。すなわち自立自営農家として立っていける農民自立自営が不可能だという状態ワク外にはみ出された農民、そこに一つ分かれ道がある。この分かれ道における農政上の対策というものが必要ではないか。すなわちこれにはAとBとの差別政策がとられるのではないかということが一つと、もう一つは、かりにBの側になってまいりますと、それが農業から離脱し他の産業または他の職業につこうとする場合、全くそこには何らの保障もなく五里霧中な状態にほうり出されるおそれがある。すなわち離農対策がそこにとられていないではないか、これが第二の問題であります。こういうようなことから、さらにこの自立自営政策を遂行いたしまするにあたって、農民に対して農地あっせん融資あっせんというような形で農地事業団農民とタッチしていくわけであります。えてして、かつてわれわれが多くの農村において経験がありまするように、わずかな補助金やわずかな融資によって農民を操縦支配する悪い政治形態が出てくるおそれがある。こういう点に対する正しい農地政策を遂行するための農林省農政当局の確固たる対策考え方をお伺いしたい。こういうのが衆議院における質問のほんの概略の要旨であったと考えます。で、私は、本会議におきまして、これらの点を重点にしてさらに私質問申し上げたのでありますが、ここで再び大臣から明快なお答えをいただいて、漸次質問に入っていきたいと考える次第であります。どうかよろしくお願いいたします。
  4. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) これは非常に重要な問題であると思います。  まず、一つ土地価格の問題でございます。これは、土地価格の問題という点については、やはり経営が成り立ってくるものでなければならぬことは言うまでもないのであります。しかし、一面においては、やはりこれらの土地を取得した者が年々支払う負担が、これらの収益と均衡のとれることを考えてまいらなければならぬことは言うまでもないのでございます。したがいまして、この場合においては、都市付近の非常に他の経済関係から上がってくるような、そういう高い農地を取得せしめるということはこれは私は無理だと思います。したがって、私どものねらいとするのは、そういう特別の市街地になるような、そういう土地というものでなしに、一般のいわゆる農業を主として将来ともずっと続けてまいるというものを原則として土台にしていかなければならぬことは言うまでもございません。そういうふうにいたしますと、大体現在の情勢からいたしますると、大体二十万円程度、あるいは畑地の場合は平均において十二万程度、それは地帯によっていろいろ違いはございます。もちろん。そういうのです。しかし、これを取得する側から申しますと、直ちに現金でそれを取得するということのできる農家もございましょうが、そうはいきませんのでありますので、そういう点からいきますというと、三分で三十年賦という、そういう程度のものにしてまいる。そうすれば、この土地取得関係からくる負担というものがそう高くない。さらにまた、一般の場合においては、登録税あるいは移転に土地取得税金等がございまするので、それらの税金を今回は著しく低くしていこうということでございます。したがいまして、大体それならば、かれこれ進めてまいりましても、これを取得した農家が年々の土地支払い負担に困るということはないと、こういうふうに見ているわけでございますし、また、そういう方向に進めてまいりたいと思います。私どもずっと以前の自作農創設をやりました当時を考えますというと、やはり大体その当時の小作料は非常に高いものでございましたけれども、大体年賦金その他、あるいは税金あとから負担すべき税金というものを加えたものが小作料よりも高くならないという土地に限ってあっせんいたしたときもあるわけでございます。そういうわけでございますので、特別の将来農地として存続しない、他の方面にこれが使われるというような、そういう土地というものをねらうわけではございませんので、十分これらによって事業団あっせんをいたしてまいるということでございますので、その心配はないと、かように考えておるわけでございます。また、そういう方向事業団あっせん等が進まなければならぬと思います。  それから二番目の点といたしましては、自立経営で立っていける人と、そうでない人との間に非常な差別政策が出てくるじゃないかという御質問でございます。もちろん農地事業団の面といたしましては、小さい農家であるからこの事業団においてはあっせんをしないというのじゃない、それは均等に考えていくわけでございますけれども、一応農業として現在の主人公あるいはそのあと継ぎが熱心に農業を営む人、そういう者を選びあげたいというのでありまして、それらについては、その地域のそれぞれの階層の人々の、いわゆる農業委員会あるいは町村長あるいはそれらの人々によってよくそういう人を選んでいただくわけでございますが、大体さようなことで自立経営でやってまいるという、そういう人を選ぶつもりでございます。その点から言うと、別に区別をしようというわけではございません。しかし、現実問題としますると、やはりどうしてもいまお話しのように、経営のそう小さいものにこれが選ばれるということはなかろうかと思いますので、その点から申しますと、もちろん事実問題としてはやはりその地方の熱心な、そして相当経営としても、別に大きいものを選ぶわけでもないのでありますけれども、やはり現実問題としては、その部落としては大きなものか、あるいは中等かしらぬが、そう小さなものは事実上として選ばれることがないのではないかとは思われます。しかし、法の精神としてはそれを別に区別するつもりはないのであって、全く自立経営としてりっぱに進むという、そういうものを選んでまいりたいということで進んでまいりたいと思うのでございます。しかし、それにしても、事実問題としてはそういう差は出るのじゃないかというお話があろうかと思います。あるいはその点はそうかもしれません。しかし、一般農政としては、これらの問題は少しもそのために差別をつけていくという考えはもっておりませんので、一つ経営にいたしましても、協業その他によっていくということもございます。いろいろそれらの点については、農政全般についての何らの特別に差別をつけてまいるという考えをもって進むという考えではないのでございます。差別をつけてまいるという、そういう農政をやるわけではございません。その点を御了承願いたいと思うのでございます。  それから離農問題についてでございますが、現在の農地事業管理制度の出発をいたします際において、特別に現在農業をやっている人を、いわゆる以前小農切り捨て論とかいわれたように、特に現在農業をやっている者の土地を強制したり、あるいはそれを強く放棄させるということを主張するものではございませんので、現実には、常に申し上げておりますとおり、現在すでに七万五千町歩か八万町歩ぐらいの移動があるのでございまするから、その現実移動されるもの、これはふえていく傾向はありますが、その現実をとらえて、そのうちの大部分の、自作農たらんとする、自立経営のいわゆる熱心な農業者にそれを持たして、生かし得るようにしたい、こういうことが念願でございますので、別に離農対策をやって、そうして農村から出して、その部分を分配する、そういう考えではございません。それには現在行なわれているその土地移動というものの機会をそのまま利用して、それをいわゆる熱心な農業者に渡たして、いわゆる譲渡させる、あるいは小作せしめる、こういう方向にもっていこうというものでございますので、離農対策というものとこれが結びつかなければならないというものではないし、もしそれを結びつけるということでありますならば、かえってそれは離農を奨励して、そうして小農首切り論をやるということになるのでありますが、そういうつもりはございません。現実に行なわれる土地移動というもの、その機会を利用して、そうしてでき得る限りいわゆる農業自立経営ができ上がっていく方向にその土地をつくってまいるということが本旨でございますので、離農対策とは特別に結びつく必要はないわけなんでございます。しかし、現実問題としては、やはり農業をやめて、そしてほかへ移っていくということが現実問題としてあり得るのでございますから、この事業団事業と離れるべからざる関係ではありませんけれども、これはやはり離農対策というものは別の意味においてこれは考えていく。いわゆる中高年齢層の就職の問題、そういうことは、これは別にこれらの問題については十分検討を加えて、それが成り立っていく、中高年齢層職業の問題、それらの問題は労働省あるいは厚生省その他と十分関連をいたしまして、これらの問題を解決してまいりたいと、こう考えております。  なおまた、農林省といたしましても、離農についての調査というものを的確につかむ必要がございますので、四十一年度から六百万円ぐらいの予算で、この離農の姿を十分調査いたしたいというので、これを始めているようなわけでございます。さように御了承を願いたいと思うのでございます。  それから、最後の御質問のありました点は、融資等によりまして、村の悪い政治と結びつくようなことはないかといったような御質問であったように思うのでございます。これらについては、事業団を設立することにし、農林大臣も十分これを監督いたしまして、そういうことのないように進めていくことは、これは言うまでもございません。さような意味で、独立の機関を認めて、そうして農林省においても十分監督を進め、そうしてこれらの事業を適正に運行されることを十分つとめてまいりたいと、かように考えているわけでございます。
  5. 武内五郎

    武内五郎君 おおむね話の糸口がつかめたと考えられますが、さらに掘り下げて伺いますが、農地価格の問題であります。これは非常に高くなる。年々一般に高くなる、ことに都市周辺農村は、昭和三十年以降、特に三十六年以降というものは、工場誘致、また、住宅団地増設等のために、農地決壊が人為的に行なわれると同時に、その周辺農地価格がおのずと上がってまいります。農民は、そういうことのくるのをその周辺農民は待っている。農業を第二として、そこに行なわれているのは期待農業です。土地を耕作して、その収穫によって立っていこうとする考えではなくて、土地の上に工場団地が造成されることを期待している。期待農業が行なわれているのであります。こういうようなことで、場合によっては農地転用許可をもとらない、もう既成事実をつくってどんどん団地または工場敷地の造成に入るものもかなり出てまいりました。最近における地方農業委員会では、もう転用許可なんていうものはわずらわしくなってきて、もう書類だけでいいんだというようなことも、それもいいほうで、中にはそういうふうな手続すら全然とらないで、農地決壊していくものが相当おるようだ。したがって、もう今日農業委員会権限自分たちの意思を決議の上にあらわす問題というものは農地の問題だけでありまして、その自分たちの大事なそういう権限もほとんど放棄されて顧みられないような状態になっているほど、とにかく農地行政というものが混乱してきてしまった。こういうようなことで、行政は混乱する、価格騰貴する、農地決壊されて、その団地周辺はだんだん劣悪化されてきた、いろんな条件が悪くなってきた。こういうことで、私は農業の大きなそこに欠陥が出てきておる。農業決壊農業の崩壊、ところが、やはりそれに対して、それではならぬという考え方も私は農林省にあろうと考えます。あるから今度おそらく農地管理事業団というようなものの形をつくっていこうとする努力もあろうと考えます。しかし、同時に、農地管理事業団がその地域に入ってまいりますと、指定された地域に入ってまいりますると、いきおいまたそういう過去の仕事に対する上ぬりによって農地もまた騰貴が見られるんじゃないかと考えるんですが、その点に対する考えはどうですか、農地局長
  6. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) だんだんのお話、私もそのとおりだと思います。ただ農地管理事業団が活動することによって、その地帯の地価を高めるかどうかということは、私も非常に心配していることの一つでございまして、最初の年度では農地管理事業団農地で買うことをやらないで、まずあっせんで、当事者同士話し合い農地価格をきめるというふうにいたしておるわけでございますが、その場合でも、村にはそれぞれ昔から農地委員会の書記なり、あるいは役場の人なり、その他農地買売について経験の深い、あるいは情報を豊かに持っている専門家がございますからそういう人たちによって農地管理協議会というものを農業委員会に設けて、そこで事業団が活動する場合の方針をいろいろきめるわけでございますが、そこで大体議論をして、村の標準的な価格というものをきめて、それからあまり離れないような形であっせんもいたしますし、また、来年以降の、農地管理事業団土地を買います場合に、農地価格をきめていきたい。農地管理事業団が入ることによって農地価格を押えたり、あるいは低めたりすることは、これはできないわけでございますけれども事業団が入ることによって農地価格を逆に上げるということは、これは非常にまずい事態でございますから、そういうことがないように十分注意してまいりたいというふうに考えております。
  7. 武内五郎

    武内五郎君 農地管理事業団の今回の農地あっせんを中心とした業務では、たとえば前にこういう構想が組み立てられる途中であったと思いまするが、いまになって考えるとそうだろうと思いますが、赤城さんが農林大臣の当時、農地価格騰貴を抑制するためにも価格対策というものを考えなければならぬし、それには二重価格制、買い上げは時価で買い上げる、農民への売り渡しは適正価格を設定して、それに基づいてやるのだ、こういう構想をしばしば発表されておったと記憶しております。その新聞の切り抜きをあちこち探したがわからない。しかし、確かに記憶にはありまするが、それが今日後退している。時価で買って時価で売り渡すというようであります。それがどうしてそこにそういう後退関係が出てきたのか。これは大蔵省との関係なのか。私は、農地に対する、農業に対する責任官庁である農林省、その主管大臣である農林大臣に確固たるやはり確信と対策を持っていただかなければならぬと思う。その点の後退に対する私は大きな疑問を抱いた。その点を明らかにしていただきたい。
  8. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この農地管理事業団時価で買って、それを安く売るという問題については、赤城農林大臣の当時の案といまとは別に違ってはおりません。全くその点は同じわけでございます。ただ、事務的ないろいろ話し合いのときにそれらの問題についての甲論乙駁は若干あったように了承いたしております。国会に出ましたときにはそういうことでなしに、現在とその点については同じわけでございます。この点についてのいろいろの事務的な、あるいはそういう問題を進める際においても非常に困難な問題等については、農地局長からお話を申し上げることにいたします。
  9. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) いま大臣も言われましたように、私ども事務的に、農地管理事業団構想議論をいたします過程で、二重価格制度をつくったらどうかという意見が出たわけでございます。私どもの中ばかりでなしに、学者その他でも二重価格論をとなえる人がおることも事実でございます。ただ私ども内部議論をいたしますときに、一体二重価格ということでやる場合に、幾ら農地を買って幾らで売るかという算定が実は非常にむずかしい問題で、相手を、相手というのは、私たち自身を含めて、説得力のある十分の価格水準というものがなかなか出がたいわけであります。時価で買い、時価で売るならば、それは時価というのは、多少のフレはありましても、客観的な事実でありますから、それで処理することができますけれども時価から離れて、いわば計算上つくりました価格で買い、また、計算上つくりました価格で売るということは、農地価格水準をきめる場合に技術的に非常にむずかしい問題がありますとともに、それはまた財政問題として非常にやっかいな問題が起こるのではないか。したがいまして、私ども議論過程では二重価格論議論したことは事実でございますけれども、むしろ二重価格でやるよりは、いままでの一般農業金融よりは、もっときわめて有利な条件で、低利、長期の融資でいくほうが本筋ではないかということに決着をいたしたわけでございます。
  10. 武内五郎

    武内五郎君 二重価格制をとらないで、低利融資に基づいた農地あっせんを進めようという形は、私はかえって何か責任を回避した感じが強い。融資でいくなら、これはだれでも私はできると思います。そうむずかしいことではない。それを、そこに非常に価格対策というものを持たない。事実私は、土地価格というものは非常にむずかしいものだと思うのですが、しかしながらいずれにしたって、私はやはりこの問題の解決がされなければならぬと考える。私は今回のこの契機に、土地価格に対する確かな政策というものができ上がってもよかったのじゃないかと、こう考えるのですが、残念なことには、そういう対策をとられないで、回避することを考えておる。おそらく農民もそういうふうに考えてくるのではないかと思うのであります。残念でたえない、この点は。基本的なメスを、土地の有機的な価格構成に対するメスを加えることができなかったことは実に残念です。おそらく今後検討します。それは学問的に今後検討されるかもしれません。政策的におそらくやりますなんといったってこれはたぶん見送りになってくるのではないかと思います。残念です。それで、先ほどの農地の問題でありますが、いま自然にほったらかしておいても七万五千ヘクタールから八万ヘクタールまでの移動が行なわれている。これはそのとおりのようでありますが、しかし、その内訳は、自立農家として立っていこうとする方向をとっていない。むしろ零細な兼業農家への流れが出ているのじゃないかと考えるのですが、その点はどうですか、農地局長
  11. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 現実に七万五千町歩前後の既作地有償移動があるわけでございます。そのうちで大部分経営規模の小さい農家あるいは中くらいの農家同士移動でございまして、相当経営規模の大きい農家移動される土地は、そんなに多くないわけでございます。  ただ、大観して申し上げますれば、この五カ年ほどの農家戸数というものは大体年々八万戸程度減っておりますし、離農する人たちの大部分は二種兼農家でございますから、大勢としては経営規模が少しずつ大きくなっていっているということは間違いございません。これはたとえば都府県で一町五反以上の農家の数が、一町五反未満の農家の数は減りながらと、一町五反以上の農家の数が、年々着実にふえていっているということによっても示されるとおりでございます。  ただ、私ども心配しておりますのは、せっかく七、八万町歩土地が動きながら、しかも自立経営といいますか、あるいは自立経営候補といいますか、農業を一生懸命やって、農業で生活しようという農家土地が案外渡っていないということは、これは日本農業の将来にとってはなはだ重大なことではないかという認識が、今度の農地管理事業団法案を御審議願う本旨であるわけでございます。  数字で、私が申し上げましたことを多少こまかく申し上げますと、資料としてすでにお出ししてございますけれども農地の売買のうちで七反歩以上の層の経営拡大に振り向けられておりますものは、全体で動く面積の中で八、九%程度、面積にして三千町歩ないし四千町歩ということでございます。  さらに一町五反以上の農家について見ますと、経営規模一町五反以上の農家に、差っ引きして移動しております面積は、全体の動く面積の三、四%です。面積の絶対値にいたしまして、千町歩ないし千五百町歩程度という状態でございます。これをもう少し上のほうの農家といいますか、要するに農業で食おうとする人たちの手に農地ができるだけ渡りやすいようにしたいということが、私どもの念願であります。
  12. 武内五郎

    武内五郎君 農地がそういうような実は非常に困った形で移動しつつある。ことにその移動を最近はもうひんぱんに行なわれるような形がとられてきておりますが、ところが、その零細な一町未満の兼業農家に集中する形が出てまいりまして、そのほうがきわめて回復する。自立経営なんかという農業経営で頭を悩ますよりも、兼業農家で飯米を取りつつ、農外収入で生活しておったほうがいいという形が最近非常に多くなっております。これは特に私の周辺にも、農村におけるそういう形が出てきております。非常にいままでの農地移動に対する放慢というよりも、何らの対策を持たなかったことにあると思うのです。だから農地に対する価格はどんどん上がっていく、ことに細分された農地価格というものが上がる傾向が非常に大きい。したがって、それを取得いたしました農家、いずれもとうてい農業にそれ以上の投資ができないというのが今日の状態であると思う。しかも特に兼業をやっていこうとすると、わずか四、五反の耕作をやっておりながら農業機械を入れねばならないというばかな経営状態に陥っておるのが今日の農地を中心とした日本農業の実態であります。私はそういうような農地関係考えると、いままで放棄されていた農地政策というものを改めてもらわなければならない。そういうことが私はこの機会にできるかもしれないと考えたのです。それが回避されたのは実に残念である。  その次に、そういうような日本農村状態に対して、今回の事業団がタッチしていく場合、先ほど農林大臣は決して差別的な政策はとらないと言われておりますけれども、私は事実そうなってくるのじゃないかと考えます。これは農民を選別しなければならないとか、ここに差別されてくる状態がきているのじゃないか。なるほど農業政策は決して農民の甲乙を差別することはいたしませんと、これは言うに違いないと思う。事実、自営農家としての能力を持ち、自営農家として立っていこうとする希望、意思を持っている農家、意思は持っておるのだが、もうこれ以上の経営能力がないという農民とのそこに選択の手が入っていくということは避けられないんじゃないか。そうなってまいりますると、どうしても甲の農民、乙の農民というふうなことが隣り合わせで起こってくるのじゃないかと考えます。現に私は本会議でも取り上げたのでありまするが、秋田県の北秋田郡の比内町で、構造改善事業の指定を受けて構造改善計画を立てたが、隣りと自分の家とのそこにはっきり区別ができている。いままで仲よくしておったものが相反目するという状態なんです。町内は大さわぎになったわけでございます。ついに町長はこれを返上せざるを得ないということになった。せっかく一生懸命に陳情等をやって指定を受けたところが、せっかく指定を受けながら返上せざるを得ない。その隣りの町の合川というのだが、隣りの比内町でそういう騒動が起きたものだから、とてもああいううるさいことが起こってはたいへんだというので、合川は指定を受けることをちゅうちょしたということがある、私はそこに差別ができるのだ。比内町は町長が精密な設計書をもって、どこそこが何反歩手に入れると自立農家になる、だれが農業から離脱するという、その離脱する農民をどこにやる、小坂鉱山にあっせんするという、こういうような計画まで立てた。それが発表されたものだから大騒ぎになった、こういうようなことが出てくるのじゃないかといまから心配するわけです。それらに対して、そういうことはやりません、こういうことがないようにいたしますと言うが、どういうふうにしてあらかじめそういうことがないようにやっていくのか、差別農政というものがとられないような形でやっていけるのかどうかお伺いいたします。
  13. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この問題は非常に重要な問題であると思います。しかし、現在のこの農地事業団仕事といたしましては、これは繰り返すようですが、やはり農業を熱心に、また能力のある熱心な人にできるだけ農地を持たしていきたいということでございまして、それを強制的にもちろんやるわけではないので、現実に行なわれておるその機会にそういう方向に持ってまいっていこうということを念願いたしておるのであります。たとえばここに八万町歩なら八万町歩あるが、全部そのほうへ持っていくというものではなかろうと思います。御承知のとおりその村の平和ということもあり、いろいろでございますが、しかし、できる限りその方向に持っていくという努力を払ってまいりたい、そういうことであります。さようなことでございますので、小さい農家をどうだとか、そういう区別でなしに、ほんとうに自立経営として立っていけるという方向にそれを持っていくのでございます。さようなことでございまするので、そのために大きな問題はなかろうかと、こう思うのですが、なお、農地局長のほうからそれらの点について詳細に御答弁申し上げたいと存じます。
  14. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 武内先生よく御承知のことでございますけれでも、現在五百六十万戸の農家は実に多種多様な要素を持っておりまして、戦前の農家のように質の同じ——地主、小作があり、あるいは大経営、小経営の区別はございますけれども農家として比較的均一な、あるいは同質な存在でありましたものと、現在非常に違っておることは御承知のとおりでございます。たとえば、農業をいわば片手間、副業的に考えている二種兼業が四割二分ございますし、私ども農家経営に対する意向調査ということを去年やりまして、経営規模を大きくしたいか小さくしたいか、あるいはそのままかというような質問をいたしましたところ、農家のうちで大体三割七分ほどが経営を拡大したいという趣旨の答えをいたしておるわけでございます。五割以上も少し経営を小さくしたいというふうにいわれておるわけでございます。農家は必ずしも同質ではございませんで、きわめて異質のものを数多く含んでおるわけでございます。したがいまして、私ども先ほど申し上げましたように、農地管理事業団でとにかく、いま全体としての農業が非常に兼業化に向いて、産業としての農業がうっかりすると確立されないまま日本農業の生産力というものが非常に落ちてしまいはしないかということをおそれて、とにかくこの際農業を一生懸命やって農業で身を立てようとする農家を力づけることが、具体的には土地をできるだけ手に入りやすいような条件をつくって、そういう農業自立しようとする農家をできるだけ数多くつくりたいということから出発いたしておるわけでございますから、そういう農家に五百六十万戸の農家が全体なるというふうには私は実は考えておりません。そういう意味差別農政ということばは適当でなく、私もいやなことばだと思いますけれども、五百六十万戸の中である程度区分けをするということは、これは農地管理事業団のたてまえからいって当然であろうと思います。しかし、だれを農地管理事業団事業対象として選ぶかという場合の最後の決断は、さっき大臣も言われましたように、必ずしも経営の大小ということではやれない、あるいは専業家、兼業家ということだけではやれない、現在の農業経営の事情ももとよりでございますけれども、将来、農業を一生懸命やろうとして世帯主なり、あるいはあと継ぎなりが農業を一生懸命やっている、あるいは技術なり経営能力なりも十分備わっておるという農家を選んで、相当幅広く対象として選ぶつもりでございますから、そう形式的に何町歩以上でなければ自立経営の候補とは考えない、あるいは農地管理事業団農地の売買のあっせんをしないというふうには私ども狭く考えない、そうしてどういう農家を目標としてつくるか、あるいはどういう農家がそういう自立経営なり自立経営の候補者としてふさわしいかということは、私ども全国一律の一応の基準はありますけれども、村の問題として村で、先ほども申し上げましたけれども農業委員会農地管理協議会というものをつくりまして、そこで農家を含めて村の人たちが集まってわが村の農地管理の方針をきめるわけでございます。そうして先生が御心配になりましたようなことを防ぐ意味で、私ども今回は農地管理事業団仕事をするのも、末端で仕事をいたしますのも、農地管理事業団の職員ではなくて農業委員会なり、あるいは農協なりに大体の仕事をまかすというふうにいたしたわけでございます。また農地管理事業団事業の対象として考えない農家といたしましては、これは別に農業をやめろとか、あるいは土地を売れということを強制したり、あるいは強く干渉したりすることもありませんから、そういう点で先生の御心配はまずないように私どもも十分努力をし、また御心配のないようにいたすことができるというふうに確信をいたしております。
  15. 武内五郎

    武内五郎君 先ほど農林大臣から離農対策について四十一年度まず六百万円を見込んで対策を研究するという発言があったのでありますが、この農地のまず流動化が阻害されて、自立経営農家に入らずにそれが途中で零細な兼業農家の手に細分化されていく。ことにそれはいま農地局長の答弁の中にもありましたが、あと継ぎ者についても細分化されていく。ことにあと継ぎに対する細分化を、まあおまえはたんぼに入ることをがまんせい、そのかわりこうしてやるのだから、こういうような形が出てくると、そこに補償問題が起こる。次三男に対する補償問題が出てくる。あるいは長場でも農業をやっていけない長男に対する補償問題が出てくると考えなければならない。さらに農地から離れていかなければならない農民に対する補償問題。この離農対策というものについて今日まで私ははっきりした政策が明示されていないのではないか。大臣は、そのまま自然に流るるごとくとこれは言わぬけれども、流るるごとくに農地が落ち着いていけると考えるような話をしておりますが、そういうものじゃない。ことにその農地から離れていかなければならない農民に対し安心した形で、かりに離農していくとするなら、私は、そこにおのずとそれこそ流るるがごとくに農地の流動が期待できると考えます。その対策というものが今日までないということは、この農地管理事業団構想が持たれてからすでに四年です。農業基本法が制定されて、いずれこういう形が出てくるのだということはみんなの人が考えていた。しかもそれが農地管理事業団として構想されてまいりましてからすでに私は三年以上たっていると思います。そこに、そういう年月がたっておりながら今日までにまだ離農対策というものがとられない。農民に対する、おまえは自然に流るるがごとくにと、こういうことで、そこに政策としての責任がなかったのではないか。私はそういうところに今日の日本農業を苦しい立場に追い込み、農地行政というものを混乱させた一つの大きな原因があるのではないかと思います。西欧のどこの国を見ましても、ドイツにしたってフランスにしたって、ベルギー、オランダ、デンマークなんかにしたって、離農者に対するあたたかい保障がとられておる。私は三年前にデンマークへ行って、デンマークの農民の農作業を見ようとして農民の家へ三日泊った。そして晩にはいろいろ話し合ったところによると、私の子供は農業から離れていま全然農業にタッチしていない、私だけで農業やめければならぬ、私は農業をやめるが、この農業経営というものは新しい有能な経営能力を持っている別な農民に移っていきます。経営が移っていく、農地も移っていく、施設も移っていく、借金も移っていく、一切をあげて私が持っている農業形態というものが新しい農家に移っていく、そのかわり私は老後を安んじて生活ができる、離農年金制がある、また施設の価格補償がちゃんとしてありますので何ら心配なく農業から離れていくことができる、デンマークの農業は何ら心配なくこれからもできる状態にある、こう農民が言っておる。農地管理事業団法案構想ができ上がってすでに年がたっております。私は今日までその離農対策というものが立てられなかった、もたなかった、明確に明示できなかったというところに農業の混乱、農地行政の混乱があったと思う。農林大臣、どう考えます。
  16. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この農地事業団をやりまする問題は、これは繰り返して申しまするように、現状において売買されておるものをでき得る限り、いわゆる売買されておるそのものを、先ほど申し上げましたように自立経営方向にでき得る限り持ってまいりたいということをいたしたい。これは将来の非常な大きな準備行動であるとも思われまするが、とにかくそういう方向に持ってまいりたい、こういうのでございまするので、離農対策をやらなければこれが始められないということはないと思います。しかし、これは別として、やはり離農に対するいろいろの問題ということは十分考えていかなければなりませんのでございます。その実態に応じて——もし実態に応じ得ずして離農対策をあまりやりますと、それはまた非常な神経を刺激することもありまするのでございまするが、私はいま、少し長くなりますが、戦後開拓いたしました土地に対するいわゆる開拓農民の中に、土地によっては非常にこれは離農しなければ成り立たないというところが、これははっきりした地帯がございます。そういうのに対しては、武内委員も御存じのとおりに、そういう地帯に対するいわゆる離農対策というか、離農に対する方策を十分立てつつあるし、また現に立てておることは御了承のとおりでございます。そういう点が日本の内地の農村に対してもあり得ると思います。しかし、やはり十分実態に応じてこれを行なってまいりませんというと、かえってどうも政府は離農対策をいわゆる小農首切り論をやるのだという、そういう問題を惹起したりして非常にそこは問題が紛糾するおそれがあるのでございます。そういうのでなしに実態をやはり——それからまた開拓地でないところにおいてはそれらの点が非常にまちまちな状態であろうと思う。私はしょっちゅう申しましておりますとおり、北海道の北のほうなら二十町歩ぐらいに将来しなければ、とても三町や五町ではだめです。水田は別です。それと同時に瀬戸内海ならば、これは現在平均が御存じのとおり、これは申すまでもない、よく武内委員も御存じのことで恐縮ではございまするが、そういう九州あるいは中国の沿岸地帯になりますと、平均はやはりいまでも五反でしょう。こういうところもございまするし、いま都市近郊でありますると、武内委員が言われたとおりに、ほんとうに農業をやっているのじゃなしに、土地の上がるのをみている、そういう地帯もございます。そういういろいろの地帯がございますときに、これらの問題をよく検討を加える必要がある、こう思いまするので、先ほど申しましたように、離農に対する調査ということで、本年からこれらを十分ひとつ調査をしていく。十分といっても年数長くかけるという意味でなしに、できるだけ早くこれらの問題を検討を加えていきたいというので、いま現にそれをやっている最中でございます。なお、たとえばヨーロッパ等に行なわれる農業年金、いわゆる現在の農業者を年寄りまでやらせずに世帯を早く交代させるという必要があるのじゃないかといういろいろの問題がございます。農業年金、そういう点については農林省においてそういう年金制度を立てるのがいいか、あるいは国民年金の増額をいたし、今年それの提案がされているように、それにプラスアルファーをして、これらの問題をさらに検討する必要があるのではないか、独立でいくよりもそのほうが全般としていきやすいというので、いわゆるフランスの農業年金、ドイツでしたか、農業年金でいっているような方向を今度第一歩を踏み、さらにまたそれに対してプラスアルファーを加えるという点について検討を加えているというようなこと等、これらの問題を引き続き熱心に検討を加えてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  17. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  18. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 速記をおこして。  暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩     —————————————    午後二時十九分開会
  19. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農地管理事業団法案について質疑を行ないます。武内君。
  20. 武内五郎

    武内五郎君 午前の質問に続いて、私は角度をちょっと変えまして、次の点について聞いていきたいと思います。  今年の三月に経済同友会が、農政に関する提言と称する、明日の農業への展望、農業近代化への第三次提言と称するものを発表しているわけなんですが、これはかなり各方面に強い影響を与えておるように承っておりますので、いささかこれに関連してお伺いしたいと思うのです。  これによりますると、かなり露骨に日本農業に対する大きな転換を要求しておるようであります。特に私はこの中で考えなければならないことは、日本農業を食糧生産の面で自給体制から離れて、輸入食糧に依存する形をとろうとすることを言っているようであります。しかもそのことは、これは農産食品の総合的な自給率を論ずるのが実は無意味だと、こういうような表現を使って、そのことはかえって決して農家にとっては不利益ではないんだと、しかも、いまの米不足は一時的現象であって、国際協調の立場から見れば、東南アジアの米の輸入は不合理ではないんだ、こういうような表現で、これは大きく日本農業政策の転換を要求していると私は考えます。なるほど、最近における日本の食糧生産というものはだんだん下降線をたどってきておる、しかも輸入食糧がこれは上昇線をたどっていってることは否定できません。そういうようなときに資本家団体の、経済団体の中からこういう意見が出されてまいりますると、いままでとってまいりました日本農業政策というものを頭からこれはだめだ、転換しろという大きな要求だと考えざるを得ないのであります。同時に、私は、農業構造問題研究会で検討しておりまする農家減少率を是認するがごとき態度をとっているのと実は非常に相符合するような感じもいたします。しかし、今日まで曲がりなりにも食糧は自給体制をくずさないように努力していこうじゃないかという農民考え方、しかもそれに踏んまえた日本農業政策というものには、ここで大きく転換することを要求されていると言わざるを得ないのであります。これについて農林大臣のお考えは、やはりこの農業政策の転換を要求する、こういう考え方に同調するのかどうか、これはいけないのだ、われわれは自給体制を保って、農地の問題を解決し、農業の近代化をはかっていこうという努力を持っているのかどうか、お伺いしたい。
  21. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 現在の日本農業の問題について、いろいろ議論はあることは事実でございます。しかし、それは議論であります。現在の日本としては、全般的に申しますと、現在のところ農業基本法によりまして全政策を実行に移してまいるというたてまえをとっているわけでございます。したがいまして、食糧生産の面におきましても食糧の総生産を増加するという問題それからして需要の大きいものについては特別に生産をまたふやす、こういう問題、これらについては先ほどお話のあったことでありますが、さような方向に向かって農業基本法の示すとおり進めてまいりたい、かように考えております。したがって、現在としては、米のごときはできる限り自給に向かってまいりたい。これは言うまでもございません。  それから、蔬菜とか、いわゆる生鮮食料に関する面は、やはり輸入といってもなかなか困難かもしれません。どうしても、これは自給の方向に力強く進むべきである。なお、酪農の関係でも同様でございます。ただ、飼料の問題になりますと、国内だけでは十分でない。これはやはり畜産の増強いかんにもよるわけでございますが、いまのところ相当増強すべきものでありまするので、この点については、国内で自給するほかに輸入も必要となる。ただし、いわゆる草資源はできる限り自給すべきものであることは言うまでもございません。かようなことでございまして、この点はいま申しましたようなことでございます。なお、現在の日本農政の問題について、したがって、農業基本法によって当分進んでまいりたいと思うのでございまするので、農業構造改善についても同様、これはでき得る限りの改善を進めてまいりたい。こう考えております。ただし、これの行き方次第によっては弊害もあります。現実に行なわれておることは、相当無理なものが、実情に沿わないものが行なわるれ場合もあります。そういう点がありまするので、昨年の暮れ以来構造改善についての調査をいたしました。そして、どこに欠点があり、どこに長所があるかということでございますが、大体においてその線に沿って動いてはおることを調査の結果見たわけでございまするが、なお実情に沿わない点も、これらについては十分検討を加えて、そしてまっすぐ実情に即応して構造改善の面についても十分これらの点を反省してまいりまするように努力を払ってまいる、かような考え方でございます。
  22. 武内五郎

    武内五郎君 農業基本法の十五条を見れば、国は、その責任において農業近代化をはかり、農業生産の発展をはかるということをうたっておるのであります。そうなってまいりますると、 ここで、私は農業構造改善ないし農地管理事業団の業務を考えて見まするときに、勤労所帯の生活水準と相マッチする農業所得を保障できる農業経営をしていかなければならぬというのが今後の農地管理事業団の目的なんです。ある学者の説によりますると、勤労所得者の生活水準農家の生活水準と相等しい分というものは、農家のわずか一〇%に過ぎない。そうなるとすれば、そこまで日本農家を切り下げなければならぬことに相なるか。下のものをそこまで引き上げようとするものであるか、そのどっちをとるのか。さような農家らしい農家農村らしい農村建設を期待するということが事業団の目的であるとすれば、その低い水準がずっと大きく広がっている今日の農業家計を勤労世帯の線までもっていくことが、今日はたしてできるものか、その見通しと、それからそれのやり方ととり方をお伺いいたします。
  23. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 農業基本法の十五条にあります自立経営を具体的な行政の課題としてどういうふうにつかまえるかということは、所得倍増計画以来一つの課題でございましたが、所得倍増計画、そのアフターケアーあるいは中期経済計画等を通じまして、いま私ども考えておりますことは、先生も申されましたが、地元の農村にいる勤労者と生活水準が等しくなる程度農業所得をあげられる家族経営農家というふうに規定いたすことが適当であろうという結論になっておるわけでございます。これは三十七年ぐらいの数字で申し上げますと、大体農業所得六十万円ぐらいの農家、現在のところは大体七十万円ぐらいの農家、さらに中期経済計画でも取り上げましたが、中期経済計画の終わります昭和四十三年では八十万円程度農家、これは自立経営が比較される勤労者の勤労所得も年々五%程度上昇するというふうに考えますと、そういう計算になるわけでございますが、現在農業所得七十万円の農家はどの程度あるかと申しますと、全国的な、全体の農家を対象にした数字ではございませんけれども農林省がやっております農家経済調査によりますと、最近の数字で、調査農家のうち一割程度農家農業所得七十万円以上の農家ということになるわけでございます。七十万円以上の農業所得の農家というのは、最近農産物の価格が総体として上がっております関係もありますし、また畜産、果樹等の生産が伸張しているということもございまして、年々相当な幅で増加しておることも事実でございます。それで、私ども農地管理事業団の運営によりまして、そういう自立経営農家をできるだけ数多くつくることに努力いたすわけでございますが、一ぺんに自立経営農家をつくるということもなかなか容易でございませんし、一ぺんにあるいは急激にそれをつくろうとすると相当摩擦が起こるわけでございますから、そういう方向に沿うて、まあ漸次ステップ・バイ・ステップでそういう農家をつくっていきたいというふうに考えるわけでございます。当然私ども経済調査によりましても一割程度農家自立経営農家と言える程度農家でございますから、その一割の数を漸次ふやしていって、そうして相当程度農家農村において農業自立し得るような農家となり、また、こういう農家が生産する生産物が市場に出回る生産物の相当部分を占めるようになれば、これは日本農業が産業としてほぼ確立されるというふうに申し上げてよいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  24. 武内五郎

    武内五郎君 実はそれをお伺いしたのは、食糧自給対策の転換をしろという経済団体の議論がありましたので、それに伴って、要するに農業生産性の低下することは私は農民の生活の不安定が大きくまず原因しているものであることを見のがすことはできないと考えるのであります。給与生活の平均以下の農民が九〇%を占める今日の日本農業構成というものは非常に憂うべき状態にあることを考えなければならぬと思っておるのであります。それで先ほど大臣が明確なお答えをしませんでしたが、あくまでやはり食糧自給体制を堅持していく考え農業政策をとっていくのかどうか明確にしていただきたい。
  25. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 先ほど明確に申したつもりでありますが、なお繰り返して申しますが、食糧のうちで特に重要な米の面のごときは、また日本の国でいわゆる技術的にも非常に発展せしめたそういう米、また気候状態から見ても非常に適しておる米、こういうものはでき得る限り自給に持っていく努力はこれは惜しんではならないと確信いたしております。
  26. 武内五郎

    武内五郎君 そうすると、今年発表しました農業白書が、農業政策の基本は食糧自給体制を保持することにあることはもう言うまでもないことである、日本の食糧輸入が大きく外国の貿易の上におけるシェアを高くさせておるといっている項があります。これで読みますると、白書をわれわれも読んでどっちをとってよいのかはっきりわかりませんが、その白書があいまいなものであるかどうか、大臣のいまの考えでいくものか、白書が間違っておるものかどうかはっきりさしていただきたい。
  27. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 白書におきましては農産物の輸入がふえておるという事実を述べておるのであります。それはそのとおりであります。ただし、ちょっと御考慮を願いたいのは、米についてという問題と、それから食糧全体の問題がございます。現在輸入の非常に増加しておる多くの部面は、それはいろいろございまするが、日本の国で生産されないものも多量に包合されている、これは一つ一つについては申しませんが、かようなことでございます。米についてはさようなことですが、ただここ二、三年災害等のために減収をいたしておるということのために、若干輸入も増加しておることでございます。要するに、これは事実を白書は述べておるわけでございます。
  28. 武内五郎

    武内五郎君 食糧自給体制を堅持していくために日本農地をどれくらいの程度に、その中には飯米農家もあるだろうし供出農家にも大小あるのでありますが、どれくらいの程度の全耕地の確保が必要なものか。それと、主として米麦の点で生産量の確保がどの程度までできればいいのか一応それをお伺いしたい。
  29. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 食糧の自給を相当程度維持あるいは向上させるために、農地の面積をどの程度確保すればいいかという問題でございますが、現在相当程度農地の壊廃があることは先生がおっしゃるとおりであります。私どもこの一、二年ということでなくて、多少長期的に展望をいたしまして、最近も土地改良の長期計画を策定いたしたわけでございますが、昭和四十年から四十九年までの十年間で、大体三十五万町歩程度農地の壊廃が行なわれるのではないかというふうに考えております。そうしてこの壊廃をする面積だけを確保すればいいというふうにも必ずしも思いませんけれども、現在やっております農地の開拓あるいは干拓等々に相当なスピードをかけまして、また事業計画も大きくいたしまして、四十年ないし四十九年の十年間で田畑含めて三十五万町歩程度農地の造成をやりたい、さらに、先ほども大臣からお話がございましたが、乳牛あるいは肉牛等々の増産ということで草地の造成も必要でございますし、これを大体四十万町歩程度十年間で造成をして、農用地全体としては現在よりも相当程度の拡張をすることが必要である、それだけの農地あるいは草地を土台にして反収増ということを加えますと、米その他の物によりましては完全自給、あるいは物によりましては完全とまでいかなくても相当程度の自給ということになるのではないか、そういう判断をいたしておるわけでございます。
  30. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) ただいま尋ねの自給農地の面積の問題について、ただいま農地局長から答弁がありましたが、私ども食糧の中の最も重要である米について、たとえば十年後くらいにどういう形になるであろうかということをいろいろな角度で目下検討いたしておりますが、今後の米の需要というのは、食生活の構造が高度化するに伴いまして、食糧用の一人当たりの消費量は今後微減をしていくのではないかというふうに思いますが、他方、加工用の需要並びに人口増加等を考えますと、米全体の需要量としては、やはり今後も微増を続けるのではないかというふうに考えておるのでございます。  他方、生産量のほうでございますが、これは最近二、三年来、米の反収がやや停滞傾向にあることは、農林省からいろいろ国会に御報告しております資料にも述べておりまするし、すでに御承知のとおりでありまするが、かりに面積が大体同じ面積を確保できるといたしまして、今後の農業技術の進歩並びにいろいろな米の生産対策等を適切に講ずることによりまして、大体、今後微増を続けていく程度の米の生産量を、正常なる現行のもとにおいては、国内において自給することはさほどに困難ではないのではないかというふうに考えておりまするが、これもやはりいろいろな条件に左右されまするので、まだいろいろの数字をもとに目下検討をいたしておる段階でございます。  先ほど武内先生は米麦とおっしゃいましたが、御案内のように麦は現在の総消費量の中に占める輸入量が非常に大きくなっておりまするので、麦を全部国内自給するということは、ちょっといまのところ不可能に近いのではないかと思っております。最も重要な米の問題につきましては、ただいま申し上げましたような概略の考え方を持って、目下検討いたしておる次第でございます。
  31. 武内五郎

    武内五郎君 そうしますると、欠壊農地が十年間におうむね三十五万ヘクタール、そこへもってきて、造成農地が三十五万ヘクタール、それに草地の造成の四十万ヘクタールを加えると、大体、七十五万ヘクタール、ところが今日、年間七万五千ないし八万ヘクタールの欠壊があるといわれる。そうすると十年間に同じ率でいったとしましても、七十五万ないし八十万ヘクタールの欠壊が避けられないということになってまいりますると、そこにおのずからシーソーゲームの形が出てくるのではないか、さいの川原の石積みのような状態になるのではないかと思うのですが、一体どうなんでしょう。
  32. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 農地の壊廃の面積でございますが、統計調査部の作物統計によりますと、三十九年あるいは四十年ごろは、私が十年間で三十五万町歩——予測した数字に比べれば、相当面積が大きくなっております。たとえば三十九年は四万七千町歩、四十年は六万九千町歩という調子でございます。しかし、これはどうも高度成長、いわゆる経済の高度成長というものがもたらした私はひとつの時期の特異な現象ではないかというふうに考えております。たとえば四、五年前の昭和三十五年を見ますと二万四千町歩でございます。三十六年が二万七千町歩、三十七年が二万九千町歩ということで、三十八年以降急に二、三年ほど壊廃面積が急増いたしましたわけで、四十一年度のただいままでの壊廃の動きを見ますと、四十年度に比べますと、多少沈静と申しますか、いままでの勢いは多少衰えたというふうに感じております。したがいまして、なおこれは予測でございますから多少の動きはあるかもしれませんが、三十九年あるいは四十年度の一年分の壊廃面積を十年分引き伸ばすというふうにお考えいただかなくてもいいのではないかと思います。いずれにいたしましても、私ども農地あるいは農用地として造成するいわば経済的な条件と申しますか、農家がそこで耕作し、また家畜を飼うことが絶対に必要でございますから、そういうことが生かされまする場合は、農用地あるいは農地の造成をふやすことも決してやぶさかではございません。現に四十一年度の予算におきましても、国営開拓事業については相当な新規採択をいたしておるわけでございます。
  33. 武内五郎

    武内五郎君 話を多少変えまするが、従来行なわれておりまする構造改善事業、午前中もちょっと申し上げましたが、なかなか困難な状態にあるようであります。しかもああいう何らかの形において不平がある、何らかの形において停滞し、あるいは混乱している。構造改善事業の指定地域でその七〇%というものがそういう状態になっているといわれておる。私は新潟県の中頸城郡頸城村、ここの大瀁第一ライスセンター、この事業が今日持っていけば持っていくほど赤字が増大していく、一万俵の米の処理ができまするのに、処理をする施設があるそこへ持ってきてようやく四千俵ないし四千五百俵より年間処理していないという状態なんです。しかもそのためには、機械施設の管理費と、それからばく大な資本を寝かせるというようなことで、経営がますます苦しい状態になってきておる。こういう実態を見ておるわけなんであります。そういうようなことを考えてまいりますると、今日やはりこの農地管理事業団も二千カ所ですか指定する予定のようでありまするが、やはり同じような経路を踏んでいくのではないかと考えるのであります。どうせやるならば、そういうことにならぬようなことを希望したいのであります。何かここにいい対策を持っておるのか、いろいろな過去のにがい経験は、新しい道を間違いなく踏んでいかなければならぬものであることを教えるので、それを考えておるかどうか、はっきりひとつ伺いたい。
  34. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 農地管理事業団が幸いに動き出す場合には、私ども事業団を八月の初旬につくりまして、十月以降、村の指定というふうに考えておりますが、この仕事は、いま先生おっしゃいましたように、農業構造の改善といいますか、自立経営の育成といいますか、なかなかむずかしい仕事でございます。政府が補助金を出して農機具を買ったり、あるいはライス・センターをつくったり、土地改良を行なったりすることよりも、私は、さらに実質的にむずかしい仕事であろうと思います。そこで今度は、事業団の職員を各村に置くというシステムを改めまして、村の農業委員会なり、あるいは農協なりの職員を全面的に活用してもらうというふうに考えておりますが、とにかくその村でこれから長いこと農業で立っていこう、農業地帯として今後も農業を守っていこうということが確実に見通されて、しかも、それで相当な数の農家がとにかく農業を一生懸命やって、農業で身を立てようというふうに覚悟をきめた村、そういう村を漸次指定していきたいというふうに考えております。法律でも、農林大臣が頭からいきなり指定するというシステムではございませんで、都道府県知事が農林大臣に申し出て、農林大臣がきめる。都道府県知事が申し出る場合には、市町村に協議する、あるいは都道府県農業会議に知事が意見を聞くというふうに、とにかく下のほうからやる気になったところで指定をするというふうに考えております。  で、昨年御審議をわずらわしましたときは、百の町村をパイロット的に指定するということでございましたが、今回は四十一年度にさしあたり四百の市町村を指定する。今後、市町村あるいは農家の希望に従って、漸次、数年間のうちに農村らしい農村といいますか、将来も農業地域として残るような地帯のすべてにわたって、これも農家からの希望があり、市町村からの申し出がなければ、私のほうも、上のほうから機械的に指定するということは絶対いたしませんけれども、そういうことで全国的に及ぼしていこうと思うわけでございます。したがいまして、よく村で納得をしてもらったところで指定をする。それで、指定をしてからも、その村で一体どういう目標で自立経営的な農家をつくるか、あるいはどういう段取りでつくるか、どういう農家を対象として事業をするかということを村の協議会で十分練って、それを都道府県なり、あるいは事業団が当然相談にあずかるわけでありますけれども、そういう村の事情に従って事業団事業を進めるということで、私は、いま先生が御心配になっておられますことは、十分防ぎたいというふうに考えております。
  35. 中村波男

    ○中村波男君 ちょっと、いまの局長の御答弁に関連しまして……。  出たり入ったりですでに御質問があったかとも思うのでありますが、いまの御答弁の中にも、法案の中にありますところの農村らしい農村というこの定義をどのようにおつけになっておるのか。具体的にはどういう地域を指すのか。また、その農村らしい農村というのが、これは市町村の数だけではばく然としておりましてつかみにくいのではないかと思いますが、該当面積あるいは市町村等でどれくらいあるのか。そういうものが調査済みだと思いますので、この際、ひとつお聞きしておきたい、こう思うわけです。
  36. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども農村らしい農村と申しましても、それを非常にこまかに限定して、こういうものでなければ事業をやらないというふうには考えておりません。農地管理事業団が動くことが適当でないと思いますのは、すなわち、農村らしくない農村と私たちが考えておりますのは、都市近郊の農村でございます。都市近郊の農村で、農地価格が反当たり百万円も百五十万円もするというようなところで、ほんとうにそれを買って農業を一生懸命やるということはまず考えられませんから、そういう地帯事業団の活動範囲からは除きたいというふうに考えております。そうして、農村らしい農村というのは、要するに、現在、農地面積が相当あって、しかも、将来宅地化されたり、あるいは工場敷地にならない、また都市化されないで農業地域として維持されると思われる地帯、さらに相当数の農家がとにかく、農業を一生懸命やって、単に農業を片手間の兼業あるいは副業と考え農家ばかりではない、そういう地帯でございます。農村らしい農村というのは、事業を排除するために、あるいは地域を指定しないために非常に厳格にきめるということではございませんで、むしろ農地管理事業団が動かすに値するような地帯というふうにお考えいただいていいのではないかと思います。
  37. 中村波男

    ○中村波男君 いまの御説明で概念的には理解いたしますが、実態としてこれをどう当てはめるかということになると、なかなかむずかしい問題だというふうに思うわけであります。  そこで、もう一つお尋ねをしたいと思いますのは、しからば、山村で耕地面積が二反なり三反しか平均してないというような地帯、そこでは今後、そういうのをどう政府として考えておゆきになるのか。そういうところについては自営農家の育成というのは全く考えないのかどうか。そういうところも方針として、また将来の指導方向としては自営農家をつくるのだ、そういうことになれば、そういうところにおける自営農家に対してはどういう対策考えていかれるのか。これはまた管理事業団とは別に対策というものがあるのかどうか、この点ひとつ明らかにしていただきたい、こう思うわけです。
  38. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほどの御質問にも関連するわけでございますが、私ども去年の秋に大体の農地管理事業団構想を県に示しまして、まだこれは法案としても出しておりませんから、そう詳しいものではございませんけれども、大体の構想を示して、村で、四十一年度に農地管理事業団法が成立した場合に、事業地域として指定を受けるつもりがどの程度あるだろうかということで、内々に意見を取り寄せたことがございます。その結果は、昨年のたしか十一月だったと思いますが、全国で六百五十六くらいの町村から、もし、管理事業団が設立されるならば事業をやらしてほしいという話があったわけです。その町村は各県別に見ますと、非常に特徴的なことは、東京都とか、あるいは大阪府からは一つも申し出がございません。愛知県からはたしか一つか二つでございます。それで、地図でこの六百五十六の町村をロットいたしますと、地図の上に乗せますと、北海道の上川、空知の水田地帯、あるいは畑作地帯、根釧の畑作地帯、内地の東北、北陸、近畿はわりあい少ないわけでございますけれども、それから九州というふうに、地図でその六百五十六の町村を点で落としますと、大体、農業を中心とした地帯でございまして、都市近郊は全然ございません。それから、いまお話しの山村地帯も非常に少ないようでございます。まだ法案も成立しているわけでも何でもございませんから、私どもまだそう詳しいことを言ってやるわけにもいきませんし、また県なり町村なりの受け取り方も、地帯によってまじめさといいますか、真剣さの度合いが違いますから、一がいに六百五十六で論評するわけにはいきませんけれども、比較的全国にわたって都市近郊を除いて、いわゆる農業地帯考えられるところから手が上がったというふうに考えます。まあ、そういう意味農地管理事業団の趣旨というのはわりあいよくわかってもらっているんではないかというふうにも思うわけです。  さらに山村の問題でございます。これは非常に山奥で、道路もなく、また生活環境も非常に悪い地帯の山村をどうするかということは、これは非常にむずかしい問題で、私は農地管理事業団だけの手に負える問題ではないと思いますけれども、山村でありましても将来の問題として、それで未墾地を取得して、草地改良ということも考えられますし、あるいは場合によりましては開拓改良ということも考えられますし、面積が乏しくても、とにかく多少の山林を含みながら、農業を一生懸命やろう、あるいは農業で身を立てようという人たちがおるといたしますれば、私は山村だからといって農地管理事業団事業はないというふうに考えておりません。私がいま申し上げましたような条件があれば、山村にも御希望によって当然事業実施地域として指定してまいりたいというふうに考えております。
  39. 中村波男

    ○中村波男君 関連でありますから、いろいろまだ御質問したいのでありますが、それで、六百五十六の町村の一応の希望があった、その希望の内容を検討すると、大阪、東京等は全然ない。愛知県等は一つか二つだった。こういうお話でありますが、愛知県といいましても、純農村地帯というのはたくさんあるわけでありまして、そこで問題は、申し込みがないと、そういう意欲のないところには事業団は進んでその事業を開始したり、自営農家をつくるための何といいますか、事業団としての活動、指導は行なわない。こういうことで、事業団というのはどこまでも町村なり農民の希望意欲にこたえて仕事を開始し、それを達成していくのだ、こういうふうに理解していいのかどうか。したがって、自営農家を育成するという大原則の上に立つならば、やはり私はこれは行政指導、政策としてそういう方向にいろいろな方法があると思いますが、仕向けるというものがなければこれは政治でもないし、行政でもないというふうに思うわけです。その点をどうお考えになっておるのかどうか、この点だけを御質問して終わりたいと思います。
  40. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほども申し上げましたように、六百五十六は、県なり町村なりの受け方が非常にまちまちでありますから、私ども四百の町村を指定する場合に、六百五十六の中に入っているから指定するとか、そのときに言ってこないから指定しないというふうには考えておりません。また愛知県でたしか十一月には一つでありましたが、その後、愛知県としてはこれだけの村がさらに指定をしてほしいというように県から幾つか追加して言ってきておりますから、その当時の、最初の手を上げたのだけにこだわって私はものを処理するつもりはございません。  それから、私は先ほど、町村でとにかく気分が熟さなければ、事業地域として指定をしないというふうに申し上げた。それは事実そのとおりであろうと思います。ただ農地管理事業団をつくって、とにかく農業自立しよういう農家といいますか、農業を一生懸命やろうとする農家を数多くつくりたいということは、これは国の政策として私は大いに普及宣伝をしなければいけない。これはそういう完全に受け身で、そういう普及宣伝といいますか、趣旨の徹底もしないで、ただ町村が手を上げるのを待つという態度ではございません。ただ現実仕事を進めるには、私は押し付けはしたくないというふうに考えております。趣旨の宣伝は大いにやりますけれども、実際の地域の指定にあたっては、とにかく下のほうから手が上がってこなければ、上のほうから押し付けないということだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  41. 武内五郎

    武内五郎君 先ほどの農家の生活水準の問題の中で、今年あらためて七十万以上という水準農家にしたという考え方のようでありますが、たとえば去年の計画の中で五人世帯六十万の場合に、経営面積が、田が二・三ヘクタール、果樹等で一・五ヘクタール、酪農等で一・四ヘクタール、養豚等で一・四ヘクタール、野菜であれば一・二ヘクタール、養鶏であれば一・一ヘクタール、平均一・八ヘクタールという計算のようであります。これでいきますると、たとえば二・五ヘクタール以上の農家を育成するのだという計画とだいぶ違っておるようですが、どういう計画ですか、それは……。
  42. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 二・五ヘクタールという数字は、実は所得倍増計画のとき、自立経営農家の定義として、耕作面積平均二・五ヘクタール、家族労力二、三人、粗収入百万円というものを自立経営農家としてそれを育成したいということを所得倍増計画で取り上げたわけです。私どもその後の検討によりますと、いま先生が言われましたように、同じ農業所得をあげる農家でも田と畑と、あるいは畑といっても果樹とか養蚕とか、あるいは畜産等々によって経営規模が非常に違いますから、平均耕作面積二町五反というように、耕作規模で自立経営農家をつかまえることが非常に不適当である。むしろ所得水準自立経営農家をつかまえて、地元農村における勤労者と同じ生活ができるような農業所得をあげる農家というふうに定義することが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私ども現在は平均二町五反以上の農家をつくるというふうには言っておらないわけであります。それで、いま先生が言われました面積も、たしか昭和三十八年の農家経済調査を足がかりにして、農業所得六十万円以上あげる農業経営はどういう農家かということを逆に想定をした数字でございますし、また、その後三十九年の農家経済調査にありました数字は、この間ちょっと御説明いたしました農地管理事業団運営の考え方という、私どもの差し上げた資料にもございますが、都府県で平均一町九反、田では二町五反、果樹で一町五反、酪農が一町四反、野菜で一町三反、養豚が一町一反、養鶏一町一反というふうに、六十万円の場合と七十万円の場合とやや経営面積としてはふえておるわけでありますし、また農家経済調査からこういう作業をいたしました関係で、いまのように耕作規模が平均一町九反あればそれですぐ自立経営になれるというふうにもまた機械的には言えないわけであります。一応経営面積というのは、もちろん農業所得に相当大きな影響を持っておりますし、経営を改善するためには耕作規模をふやすことが大切であることは間違いございませんけれども、機械的に平均二町五反というふうには現在自立経営の定義を考えておらないわけでございます。
  43. 武内五郎

    武内五郎君 私は、この事業団でやや可能性の持っている仕事というのは、草地造成、改良の仕事じゃないか。これはやや希望が持てるのであります。先ほど、草地造成の場合に四十万ヘクタールを考えておるというお話ですが、そうなってまいりますると、現在約十万ヘクタールがあるんですよ。そうすると、五十万ヘクタールが実現できるとんだ、こういうことに相なるのですが、大体草地、放牧地、これは普通の田畑農業から考えると約十倍ぐらい土地を要することになってくるのじゃないかと思うのです。そうすると、五十万ヘクタールでいくとすれば、一体これでやっていけるものなのか。おそらく要請は百万ヘクタールぐらいあるのじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  44. 太田康二

    説明員(太田康二君) 今回の土地改良の長期計画を立てますときに、昭和五十年度の家畜頭数というものをわれわれ想定いたしまして、大体五十年度ではこのくらいの頭数、五十一年度ではこのくらいの頭数、これはあくまで畜産局限りの試算でございますが、それで計算をいたしたわけでございます。そしてその際、いま先生のお尋ねの草地改良でどのくらい粗飼料を給与するか。しかも、その粗飼料も、乳牛の場合に良質粗飼料を草地改良の面から供給していく。そのためには草地がどのくらい要り、既耕地における飼料作物がどのくらい要り、さらに農場残渣、いわゆる農場の副産物でございます。それと野草飼料という面から全部はじいたわけでございますが、それによりますと、一応TDN換算で二千九百万トンという数字が出ております。そのうち粗飼料で供給するもの、それは主としていま申し上げた草食性家畜が中心になるわけですが、約千百万トン、残りの千八百万トンが農厚飼料、こういうことに相なっておるわけでございまして、その際、今回の計画いたしております草地改良事業で供給されるものは、先ほど先生のお話にございましたように、昭和三十九年までできておる草地の面積が十二万三千ヘクタールございます。四十年から四十九年度の十カ年に四十万ヘクタール。したがいまして昭和五十年度に草地として利用できる面積が五十二万三千ヘクタール。そこから供給される粗飼料がTDN換算で二百四十九万。それから、飼料作物でございますが、既耕地における飼料作物は、昭和四十年末で五十万四千ヘクタール現に作付をされております。これをやはり昭和五十年までに百十万四千ヘクタールまで持ってまいりたい。これから供給される飼料がTDN換算六百六十万一千トン、したがいまして、九百九万一千トンに両者合わせてなるわけでございまして、これ以外の、先ほど申し上げました野草地の利用、それから稲わらとかカンショのつるとか白菜の残渣、そういったいわゆる農場副産物、これから供給されるものがございまして、これが二百二十四万五千で、合わせて約千百万トンがいま申し上げた粗飼料の供給になるわけでございまして、これによりまして各家畜別に良質の飼料が、いま申し上げた草地改良と既耕地における飼料作物によりまして、一応われわれが考えておる理想的な給与と考えたものが、これによって供給される、こういうふうに見ておるわけでございます。
  45. 武内五郎

    武内五郎君 選択拡大の方式で最もその中心となって奨励されたのが酪農です。これは御承知のとおり。私がいまお伺いしたいと考えるのは、日本で世界銀行から融資を受けてジャージー種の乳牛を輸入いたしました。これは東北地方、特に上北開墾地、それから長野県の八ケ岳開拓地、それから岩手県等にジャージー種を入れて、そこに繁殖させようとした。ところがそれが入ってくるときは、そのジャージー種は体質強健で粗飼料に耐えて、乳量はホルスタインよりはやや落ちるが、脂肪率において高い、乳量は少なくても脂肪比率で間に合う、こういう宣伝でそれらの地方に入れたんです。ところがジャージー種が——私は二年ばかり前行って八ケ岳を見ますると、大体パーセントからいってジャージーが六でホルスタインが四である。ところが、最近は逆にホルスタインが一〇近くになっておって、ジャージーがほとんど全滅の状態になっておる。上北、これは私関係がありまするので、上北の開拓地を見ておりますが、やはりジャージーがだんだん漸減する。受胎率が非常に悪い。それからやはり何か日本の気候に合わぬ。それは牛の質の選択等が間違ったものかもしらぬが、日本に入ってきてはほとんど全滅の形。芝浦の屠殺場にはよくしばしばジャージー種を見受けるのであります。こういうようなことで、せっかく選択拡大方式で良質の牛乳を出すといわれるジャージー種を入れ、高い金で、しかも世界銀行からの相当これは高い利子で借りてやっていながら、みすみす農民負担をかけ、国に損をかける状態になっておる。こういうようなことを見ますると、全く、まあ構造改善事業でもパイロット事業でも、こういう設計でやっていけばもうそれで終わりなんだ、もう自然に水が高いところから低いところに流れてたまるように、農業構造の改善、農業生産の前進ということもおのずからできるんだというふうに考えているのか、私は疑わざるを得ない。どうなんですか、その点について。ことに私は上北の開墾地、あそこへ最初三百二十七戸かなんか入って、今日百戸減って二百二十七戸ぐらいより残っておりません。それももうよたよたです。その形というものは、草地を中心とした開拓地であります。今度ももしやるとするならば、この事業団の一番やりいい仕事は草地改良であり草地造成の仕事だと思うんですが、これは一番わりあい障害なくやっていけるのであります。それですら、今日最もやりやすいと考えられる状態がそのようになっておる。まことに困ったものだと思うのであります。ことに上北開拓地では、私はもう少しわずかの国の援助があれば、少なくとも酸性土壌を中和するわずかの国の助成があれば、私はあの開拓地がもっていけたのではないかと思う。その親切が、私は親切と注意が欠けているのではないかと思う。それらについてのひとつ考え方、これからどうするかということを伺いたい。
  46. 太田康二

    説明員(太田康二君) 草地造成事業につきましては、御承知のとおり四十八国会土地改良法を改正いたしまして、土地改良法によって進めてまいるということにいたしたわけでございますが、御承知のとおり乳牛用の草地造成もありますし、肉牛用の草地造成もあるわけでございまして、その草地の助成の内容といたしましては、実はわれわれとしては最善の努力を払ったつもりでございますが、牧草種子等も実は補助対象にいたしておりますし、土壌改良資材等も現在補助対象にいたしておるわけでございます。それから周年の育成牧野面積が百ヘクタールを越えるものにつきましては、国営事業に限りまして御承知のとおり今回数少ない公共事業の補助率の引き上げを行ないまして、現行、内地六五%を七〇%、北海道七〇%を七五%というふうに既存施設につきましては補助率の引き上げを行なったような次第でございます。それから肉牛につきましては、従来のように機械開墾による耕法のみならず、蹄耕法という簡単な方法でやる単価の安い方法も耕法の一つとして取り入れるというような改善も今回いたしましたし、それから野草地に対する利用施設の設置助成ということで、牧さくとか隔障物の設置というようなことについても補助することとし、今回野草地の利用というような面でこれも取り上げることにいたしたのでありまして、さらに山村等におきましては、一団地の面積が従来が十ヘクタールというのが基準になっておりましたが、五ヘクタール以上あれば、やはり小規模の草地改良事業として取り上げるというふうな採択基準の引き下げも行ないまして、それぞれ各家畜の畜種に応じた草地改良事業というものに積極的に取り組んでまいりたいというような姿勢を今回の四十一年度予算の編成にあたりましては行なったような次第でございます。
  47. 武内五郎

    武内五郎君 食糧自給体制について先ほど来質問を続けてまいりましたが、ことに畜産関係でもう一つ聞いておきたいと思う。これも輸入畜産物の中に入るのです。去年以来青い目の鶏がアメリカから大量に日本へ飛行機に乗ってくるという、しかも世男最高水準でいくひな、それからその卵、それからバイライン、ハイスドルフ・ネルソンその他何種類かあるようであります。こういうような鶏が日本へ入る。日本のひなでありますると百八十日たたなければ卵を産めない。アメリカのバイラインやネルソンは百六十日で卵を産む。しかも成長率は九〇%をこえる。日本のやつはようよう八〇%ぐらいだ。非常なそこに差がある。こういうような強じんにして優秀な鶏が襲ってきている。アメリカの会社の計画では、一億羽を入れて日本農村をこの青い目の鶏でおおいつくそうという。しかもこれは飼料まで売る。この飼料でなければこの鶏が卵を三百産みません。こういうようなことで飼料まで売られて、そう言われている。かなり事実らしい。こういうふうなことで鶏で日本を征服されようとする状態が出てくる。今度はまたわれわれは鶏でやられてしまうと言わざるを得ないのであります。こういうふうな形でまいりまするところに、いい品種を持ってくることは、これはもうこれ以上のことはない。けれども、そのために日本農村養鶏家が圧倒されてしまうということになるのじゃないかと考えざるを得ないのであります。それらのことやらいろいろありまするが、またそういうことを考えると、農業構造改善事業やパイロット事業等もそう手放しにのめないという状態になってまいりますので、これはわれわれのようなものにもよくのみ込め、納得できるような制度の樹立が必要ではないかと思うのであります。それはひとつどういうふうにこれからやっていくか、そういう鶏を入れて日本の鶏をそれで品種を改造する、またはどうするのか伺っておきたい。
  48. 太田康二

    説明員(太田康二君) ここ数年来、先生がおっしゃられましたように、外国系の優良な種鶏ないしコマーシャルびなが輸入されていることは御指摘のとおりでございます。ただわれわれ、国のほうの鶏の改良増殖という仕事がおくれておったということは率直に今日認めざるを得ないわけでございまして、農家にとりましては一種の生産資材でもございますので、優秀なものが安く供給されればいいというようなことでもあったわけでございますが、今後国におきましてもやはりこういった状態をいつまでも続けることはよろしくないということで、昭和三十九年度から御承知のとおり三ヵ年の計画をもちまして採卵養鶏につきましては、白河の種畜牧場、これは従来大宮にあったわけですが、白河種畜牧場と岡崎種畜牧場、この二ヵ所の種畜牧場を中心牧場といたしまして、経済形質の高い優秀な鶏をつくっていこうという仕事に着手をいたしておりまして、完御の暁におきましては、白河牧場で一万一千羽、岡崎牧場で一万羽というような羽数が係養されまして、優良なひなを岡崎で造出しまして、これの検定を白河の種畜牧場で実施して、さらにこれを県の施設に移しまして後代検定あるいは組み合わせ検定等を行ないまして、品質の優良な種鶏を国内で供給するようにつとめてまいりたい、かようなことで、すでに三十九年以来着手をいたしておるわけでございまして、今年度が整備の最後の年になっておりますので、これが完成の暁には、いま申し上げたように、国及び民間を通ずる改良増殖体制というものの整備によりまして、数年ならずして外国系に負けない鶏を国内で造出してまいりたい、かような方向で現在仕事を続けておるのでございます。  それからブロイラー養鶏につきましては、やはりこれまた昭和四十一年度に、これも三カ年間くらいかかるわけでございますが、兵庫の種畜牧場を中心牧場として整備に着手をいたしておりまして、この完成を待ちまして、採卵養鶏と同様に経済形質の高い種鶏というものをつくってまいるという仕事に着手をしておるという段階でございます。
  49. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  50. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 速記を始めて。
  51. 武内五郎

    武内五郎君 この前、本会議でお伺いしました際に、請負耕作について政府側、それは大臣であったと思いますが、よい意味における請負耕作と悪い意味における請負耕作とあり、よい意味における耕作は育成したいというようなことを言われているのでありますが、請負耕作について私は基本的なものの考え方をお伺いしたいのです。私は、これがこういう形が出てまいりましたことは、大体次のようなことであろうと考えます。それは農基法が制定された当時、農協に対して信託制度の委託事業を行なわせることにしたんでありますが、ほとんど今日これを利用する農家がありません。これはいずれその資料としてもらいたいのでありますが、全然ないと言っても差しつかえない、これはなぜこうなったかというと、農民がそういう制度そのものを信頼しない。それと、一つは非常にわずらわしいこういう関係がある。だから信用できる者同士がお互いに委託し合って、受託したり、委託したりしたほうがいいんじゃないかという形が出てきている。こういう形でおのずとそこに請負の制度が生まれ、形が生まれ、請負耕作の制度のようになって発達してきている。耕作には団体あるいは法人等を相手にした形、個人と個人との相対のものと、まず大きく二つがある。どっちかというと、個人と個人との関係のものが非常に多い。ほとんどこれは全く蔓延していると考えて差しつかえない、こういう請負制度が今日発達するに至りましたことは、私は農地改革の後における自作化した農民がだんだん生活が苦しくなって、あるいは長期出かせぎに出なければならない、あるいはいろいろな関係で耕作を一時放棄しなければならなかった、そういうようなことからどうしてもどこかにこれを預けなければならないという状態になったのでありますが、そこにこれを最も合理的に育てていく方法はあった。それば何かというと、共同経営の耕作へ入っていくならば、私はそういう形が、請負的な耕作の形がなくなっていくんじゃないか。そういうようなことで、今日まことに農地改革以来持ってまいりました自作制度というものがだんだん崩壊していく状態になってきている。しかも個人対個人の小作料請負料というものはかっての小作料よりも高い。かりに反当たり一万五千円から二万円、米、現物にしますと、一石以上になる。こういうようなことは、私はあの地主制下における小作料よりもさらに高いものが今日行なわれておると考える。こういうようなことについてひとつどういうふうに対処していくか、農地管理事業団はさらにこれをどういうふうに考えて、これをどういうふうにもっていくつもりか、できるだけ御親切にお願いしたいと思います。
  52. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 請負耕作の問題は、私は農地制度の基本に触れる非常に重要な面を含んでおる問題であろうと思います。請負耕作がどの程度普及しているかということは、なかなか農林省の成規の調査でもつかまえにくいものでございますが、三十九年の農林省農業調査によりますと、請負に出しておる農家の戸数というのは大体二万二千戸程度ということになっております。この数字は別途農業会議所が三十九年に百三十ほどの町村で調査をいたしました請負耕作関係で、請負耕作に出しておる農家の数が全体の〇・四%という数字におおむね見合っておる数字でございます。まあ二万戸と少しのものが請負耕作に出しておるというのがどうやら大体の実態であるようでございます。その請負耕作の発生の事情については、いま御意見がございましたが、戦前でも小作争議の強いところで、小作に出すと問題があるから請負という形で問題を処理するということがあったことは御承知のとおりでございます。昭和三十年に小作料を統制いたしまして、それ以後小作料反当千百円程度という形で押えておりますことと、それから農地改革前後のいろいろな動きの帰結として、耕作権が非常に強く法律上も守られているということで、一たん小作に出しますと、相手が承知しない限りはこんりんざい返ってこないというように農地法が運用されておる経過もございまして、小さな兼業農家等で五、六反歩耕している人が、主人公がサラリーその他で相当所得が上がって、五、六反歩耕す必要がないけれども、成規の賃貸借にのせると小作料が低いし、耕作権も強くてあぶないということから、無理に五、六反歩の土地を耕すというふうに、いわばあらしづくりの方法になっておるか、あるいは請負耕作にそれを出すというふうに現在なっておることが、私は、現在農地制度をどうするかということを議論する場合の一つのポイントであろうというふうに思っております。そうして、請負耕作に出しますと、事実上の小作料は、御説明にもございましたけれども、私ども調査でも大体反一万円ないし一万五千円ということで、しかも来年耕すことができるかどうか、全然耕作権の保証がないわけでございます。耕作者にとっては非常に不利な形で請負耕作が行なわれているのが現実であろうと思います。したがいまして、そういう意味の請負耕作は、私は、いわば農地制度に関連した一つのあだ花といいますか、それはどうしても農地法上成規の手続きによってそういうものをなくすべき筋合いのものであろうと思います。しかし、現在、通称請負耕作という形で呼ばれておりますものの中には、いま私が申し上げました、事業上やみ小作のもの以外に、農事実行組合でありますとか、あるいは農協でありますとか、あるいは生産法人的なもの、数個の農家の寄り集まりが、正式な意味の共同経営ではございませんけれども地方によっていろいろな呼び方で、技術信託とか、相当高い技術を持っている人のレベル全体をあわせるという形で、一種の共同化という形で請負耕作的なものが行なわれていることも事実でございます。過日農林大臣が、望ましい請負耕作は伸ばしたい、そうでないものは困るというふうに申し上げましたのは、私が、いま請負耕作に二つのものがあって、一つは相対のやみ小作的なもの、これは絶対困る、しかし技術信託その他の名前で呼ばれている共同耕作的なものは、これは一つ兼業農家等の生産力を伸ばすための有力の手段でもあるから、それはあまり農地法をやかましくたてにとって、こういうものの存立を脅かすようなまねはしないというふうに申し上げた趣旨であろうと思います。
  53. 武内五郎

    武内五郎君 実は、請負耕作制度については、私はまことにこれは納得しないのであります。これはいずれまた機会を見てもう少しお伺いしたいと思います。  時間の関係もありまするので、最後に一つ残っている問題でお伺いしたいのは、今度の農地管理事業団の全く心臓部であるとも考えられる融資の問題です。この金利が三分で三十年年賦というふうなことになっておりますが、われわれは最初二分の四十年という計画をお伺いしておったわけであります。それがわれわれの審議の爼上にのぼるときには、三分の三十年ということになってまいりました。そこに大きな私は後退があると思う。全くこの後退はこの法案の大きな致命的なものだと思う。この後退の経過、どうしてこういうふうなことにしなければならなかったのか。なぜもっと安い利子で、農民に楽な自立経営ができるような形がとれなかったのか。私は、全く日本農業融資については、残酷なほど利子が高いと考えるのであります。外国のどこへ行ったってもう全く日本の三分の利子なんというようなものはほとんどないくらい、しかも長期六十年、九十年。私はデンマークでお伺いしたときに、デンマークの農民が、日本はどうですかと言って聞かれて、日本では六分の十五年、二十年年賦が普通です。こう言ったら、日本農民はそれでは金持ちで楽な農業経営ができるでしょうね、こう言われて実は参ったことがあります。どうしてそういうふうな二分から三分、四十年から三十年へ後退したか、その経過をお伺いしたい。
  54. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どもの原案でも二分、四十年ということで出発したわけでございますから、三分、三十年より二分、四十年のほうが自立経営の育成、あるいは農家経営改善にとってプラスであることは申し上げるまでもないことであろうと思います。ただ、現在の日本の金利体系あるいは農業金融の体系からいたしますと、農家にとって最も有利な融資が三分五厘、二十五年ということでございますから、それから一気に二分、四十年にとぶことが非常にむずかしかったわけでございます。ひるがえりまして三分、三十年で考えますと、農家にとってどの程度負担になりますか検討いたしますと、反当二十万円の水田を三分、三十年で償還いたしますと、元利合計年の償還額が一万二百円でございます。この一万二百円という数字は自立経営を目ざす農業に専念して農業で生活しようとする農家にとっては、私は償還不可能な数字ではなかろうと思います。一万二百円という、これは元利償還でございますから、それより安いものがよいことはもちろんでございますけれども、三分、三十年、毎年一万二百円という償還額で、まず農家経営としてやっていけるのではないか。諸外国のお話がございました。そのとおりでございますが、たとえば三分、三十年というようなものが外国にこういう性質のものとしてないかといいますと、そうではございませんで、西ドイツのごときは日本より利子が安いわけでございますが、フランスではやはり三分、三十年、しかも土地、資金の八割程度しか貸さないという制度になっております。さらにオランダでは三分よりちょっと安い二カ八分の七%ということでありまするから、おおむね三%といってよろしいわけでございますが、その三十年の年賦でございまして、ヨーロッパ諸国の水準に比べてまずまず三分、三十年は当面適当なのではないかというふうに判断いたすわけでございます。
  55. 武内五郎

    武内五郎君 とにかく非常に安いです。外国のやつは。日本は非常に高い。特に農業経営をほかの人に移す場合に、そういう借金までみんな移して行っても、受けるほうが何らの苦痛なくそれを受ける状態なんです。それほど安い、日本だけがべらぼうに高い。これはもうアジア的な金利なんです。こういうような形をまだわれわれが持っていなければならぬというところに大きな不幸がある。これはひとつ今後も努力して直さなければいかぬ、同時に私はそのことについて大臣のお考えを伺いたい。私はこの管理事業団の金利の後退に対する考え方、それから今後ほかの金利との、いろいろな系統金融その他の金融がありまするが、これらの金融の金利が非常に高い、農民は借金農民です。これをどういうように今後持っていくかくらいの考えをひとつ明らかにしていただきたい。それで私は一応本日の質問を終わって、概略の質問でありまするが、今後また機会をみつけて、もう少しくわしく個別にやっていきます。
  56. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 農地管理事業団の金利については、三分三十年と申しますとまあこれで一番低いものでございまするので、まず当分これで進めてまいりたいと、かように存じます。もちろん全体の金利と関連いたしまする際において、これはやはりもちろん金利の引き下げの方向に努力することは言うまでもないわけでございます。
  57. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 農地管理事業団法案についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  58. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 次に、果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、まず農林大臣から提案理由の説明を聴取し、続いて政府委員から補足説明及び資料説明を聴取することにいたします。坂田農林大臣
  59. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  近年の果実の生産は、国民生活の高度化による需要の増大と農業者の生産意欲にささえられて、一応順調な伸びを示してまいっております。  しかしながら、最近のような果樹の植栽の動向が今後も続くならば、種類によっては、将来需給関係に問題が生ずるものも出てくることが懸念されるに至っております。  しかも果樹は、永年性作物であり、短期間に果実の生産を調整することは困難であるという問題があり、長期的観点に立った適切な措置をとることが必要と考えられます。  また、近年農業労働力の流出等により果実の生産費は上昇傾向にあり、他方わが国の果実及び果実製品は、国内のみならず海外においても外国の果実及び果実製品との競争に直面しており、果樹農業の近代化のための対策の強化が要請されるに至っております。  以上のような状況の中で、税行の果樹農業振興特別措置法による果樹園経営計画の認定請求期間が昭和四十一年三月三十一日に切れることになっておりますので、この際この制度の延長のための措置のほか、新たに果実の需要の長期的動向に即応した果樹の植栽及び果実の生産の計画的かつ安定的な拡大と果実の生産、流通及び加工の合理化をはかるための措置を積極的に推進することとし、ここにこの法律案を提出することとした次第であります。  以下この法律案のおもな内容について御説明申し上げます。  第一は、果樹農業振興基本方針に関する規定を設けたことであります。すなわち、農林大臣は、主要な種類の果樹につき、果実の需要の長期見通しに即した植栽及び果実の生産の目標、果樹園経営の近代化、果実の流通及び加工の合理化等に関する基本方針を定めることといたしました。  第二は、都道府県の果樹農業振興計画に関する規定を設けたことであります。すなわち、都道府県知事は、国の基本方針に即して、果樹の植栽及びその果実の生産の目標、近代的な果樹園経営の指標、生産基盤の整備、果実の流通及び加工の合理化等に関する計画を定めることができるものとし、この計画においては必要な果樹についての広域の濃密生産団地の形成に関する方針を明らかにするものとしております。  第三は、現行の果樹園経営計画の認定の請求期間を昭和五十一年三月三十一日まで延長いたしますとともに、その計画に基づく未墾地等の取得資金についての農林漁業金融公庫の貸し付け金の据え置き期間について、現行の三年以内を十年以内に改めることとしております。  第四は、加工原料用果実の流通の合理化をはかるため、農協等の果実加工業者のそれぞれが共同して加工原料用果実の売買に関する取りきめを締結することができるものとし、その取りきめ及びこれに基づいてする行為には、独占禁止法の規定は適用しないものとしたことであります。  このほか、果樹農業振興のための施策について所要の規定の整備を行なうこととしております。  以上がこの法律案の提案理由とおもな内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  60. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 園芸局長。
  61. 小林誠一

    政府委員小林誠一君) 果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして補足して御説明申し上げます。  この法律案を提案する理由につきましては、すでに提案理由説明において申し上げましたので、ここでは省略することといたし、以下この法律案の主要な内容を御説明申し上げます。  内容の第一は、果樹農業振興基本方針に関する規定を新たに設けたことであります。  すなわち、現行法では、農林大臣は、果実の需要と生産の長期見通しに即して主要な果樹の植栽及びその果実の生産についての長期見通しを立て、公表することといたしておりますが、提案理由で申し上げましたような事態に対処いたすためには、需要に即応する果樹の植栽及びその果実の生産の目標を示し、その生産の安定的かつ計画的な増大をはかりますとともに、果実の生産、流通及び加工の合理化についての基本的な方向を明らかにすることが必要と考え農林大臣は、主要な種類の果樹について、果実の需要の長期見通しに即した植栽及び果実の生産の目標、植栽に適する自然的条件、近代的な果樹園経営の基本的指標、果実の流通及び加工の合理化等を内容とする果樹農業振興基本方針を定め、これを公表することといたしたのであります。  第二に、国の基本方針に即し、かつ、地域の特性に応じたきめのこまかい施策を進めるため、都道府県知事は、その都道府県における主要な種類の果樹につき、植栽及びその果実の生産の目標、近代的な果樹園経営の指標、生産基盤の整備、果実の流通及び加工の合理化等を内容とする果樹農業振興計画を定めることといたしました。また、この計画には、特に必要と認められる果樹については、広域の濃密生産団地の形成に関する方針を示すこととし、主産地における果実の生産及び流通の合理化をはかることといたしております。  第三は、現行の果樹園経営計画についての規定を整備したことであります。  現行法は、果樹農業者が共同して作成した果樹園経営計画につき、都道府県知事が認定を行なうこととし、認定を受けた計画の達成に必要な資金について農林漁業金融公庫から長期低利融資を行なうことといたしておりますが、果樹園経営計画の認定の請求期間は、昭和四十一年三月三十一日までとなっております。しかし、果樹農業をめぐる諸情勢の動向から見て、果樹園経営の改善をはかる必要性はますます強まっておりますので、この際、その期間を昭和五十一年三月三十一日まで延長することといたしております。  また、新たに国の基本方針及び都道府県の計画に関する規定を設けることとしたことに伴い、果樹園経営計画の認定の要件として、その計画の内容は、都道府県の果樹農業振興計画の内容に照らし適当と認められるものであることを加え、今後の動向に即応した果樹園経営の育成をはかることといたしております。  さらに、果樹園経営計画に基づく未墾地等の取得資金についての農林漁業金融公庫の貸し付け金の据え置き期間についての特例を規定することといたしております。すなわち、公庫の未墾地等の取得資金の据え置き期間は、一般に三年以内となっておりますが、果樹が永年性作物であり、収益があがるまでに時日を要するものであることにかんがみ、果樹園経営計画に基づく未墾地等の取得資金については、特例として据え置き期間を十年以内とすることとしたのであります。  改正点の第四は、加工原料用果実の取引についての取りきめに関する規定を設けたことであります。  果実の流通及び加工の合理化に関しましては、国の基本方針及び都道府県の計画において取り上げることといたしておりますが、特に加工原料用の果実につきましては、生食用の果実と異なり、その流通形態は、農協等と果実加工業者との取引という形をとっており、しかも、その取引関係は、きわめて不安定な状況にあり、合理的な取引を進める基礎を固めるためには特別の措置が必要となっております。  そこで、加工原料用果実について農協その他果実の販売事業を行なう者と果実加工業者は、その双方またはいずれか一方が共同して、農林大臣に届け出たうえ、果実の売買数量、価格または取引方法に関する取りきめを締結することができることとし、この取りきめ及びこれに基づいてする行為には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定は、適用しないことといたしております。  なお、取りきめの内容についての公正を確保するため、取りきめが一定の要件を満たさない場合には、農林大臣は、その取りきめの締結を禁止し、その変更または廃止または廃止を命ずることができることとするほか、農林大臣と公正取引委員会等との関係を規定することといたしております。  第五は、果樹農業振興基本方針等と果樹農業の振興に関する施策との関係についての規定を設けたことであります。  すなわち、国及び都道府県は、果樹農業の振興に関する各種の施策を実施するにあたっては、果樹農業振興基本方針及び果樹農業振興計画に即して行なうべき旨を規定し、施策の総合的かつ効率的な推進をはかることといたしております。  このほか、国は、果実および果実製品の消費の拡大及び輸出の振興に関する施策を積極的に推進する旨を規定し、果樹農業の健全な発展に資することといたしております。  最後に経過措置について御説明申し上げます。  先に述べましたように、今回の改正によりまして、果樹園経営計画につきしまては、都道府県の果樹農業振興計画と関連を持たせることといたしましたが、国の基本方針が定められますのは昭和四十一年度であり、これに即して都道府県の計画が定められますのは昭和四十二年度になるものと考えられますので、改正後の果樹園経営計画についての規定は、昭和四十三年四月一日から適用し、それまでの間は、改正前の規定によることといたしております。  以上をもってこの法律案の提案理由の補足説明といたします。  引き続きまして、お手元の法律案関係資料について概略御説明申し上げます。  まず、その第一ページでございますが、農業総産出額の中に占めます果実の生産額の表でございます。昭和三十九年におきまして果実の生産額は千八百十五億になっておりまして、農業総産出額の中において占めますパーセントは六・七%でございます。最近四十年の数字が発表になりまして、農業総産出額が三兆五百十六億というふうに出ておりますが、その中で果実は二千億を突破いたしまして二千六十五億ということでございます。パーセントは六・八%ということで、ほとんど変わっておりません。  その次の、二ページの表について御説明を申し上げます。二ページの表は、主要果樹の栽培面積、昭和三十年から四十年までの十一年間を列記してございます。昭和三十年の果樹の総面積は約十八万ヘクタールでございますが、昭和四十年では三十五万ヘクタール、その伸び率は一九四%となっております。四十年の欄で見ていただきますとおわかりのように、そのうちでミカンは十一万五千町歩ということで、二九〇%になっております。それからブドウが二七二%、西洋ナシが二五一%というところが非常に大きな伸びを示しておるのでございます。そういうことで面積の増の中でもいろいろ樹種によりましてその違いがあるという表でございます。  それから、第三ページでございますが、主要果樹の新植による増加面積でございます。毎年大体二万ヘクタール以上増加しております。三十九年、四十年、二万ヘクタール以上増加しておりますが、四十年は二万二千五百六十六ヘクタールでございますが、その増加面積の中で一番大きいのは、ミカンでございまして、一万一千七百ヘクタールということで、半分以上はミカンの新植による増加でございます。  その次の四ページでございますが、四ページは、今度は主要果実の生産数量を見たわけでございまして、同じく昭和三十年から四十年までの数字でございます。四十年の生産量は三百九十九万四千トンということで、三十年に比較いたしまして二四%になっております。その中でも大きいのは、ミカンが二八二%、それからリンゴが二九〇%、ブドウが三一三%、日本ナシが二八四%、桃が二九〇%というのが平均以上の数字でございますが、先ほどの新植面積とこの違いは、生産量の伸びの違いは、最近新植されたものはまだ生産量としてあがっておりませんので、そのように書いてございます。  それから、五ページ以下は、主要果実の生産費及び収益性でございますが、これで見ていただきますと、右の欄から二欄目のところにございますが、一日当たりの家族労働報酬、ミカンでは三十九年度では二千六百七十四円、それから夏ミカンは三千九百五十三円ということになっておりまして、リンゴは千二百三十四円ということで、最近若干低下ぎみになっております。夏ミカンを除きまして若干低下ぎみになっておるのでございます。で、労働時間は、これは反当の労働時間でございますが、ミカンは三百時間以上ということで、米に比較しまして非常に反当の労働時間は長いということが言えると思います。そのほか日本ナシ、西洋ナシ、桃、桜桃、ビワ、カキというのが次のページにございます。  それから、その次の七ページの表でございますが、これは経営耕地規模別、果樹園面積規模別の農家数の割合でございまして、最初の上の欄でございますけれども、果樹園面積は大体ほとんどの農家が三反歩以下ということになっております。これは昭和三十八年の果樹の基本統計調査報告によるものでございまして、六五%は三反歩以下でございます。その下の表は、これを三十五年と三十八年の広狭別の農家数を調べてみたのでございますけれども、これで見ていただきますとわかりますように、三十五年を一〇〇といたしました場合には、一反歩未満の経営はパーセントとして減少しておりまして、その他の一反歩以上の経営は増加いたしておるわけでございまして、そういうことで非常に零細ではございますけれども、やはり相当経営規模は伸びつつあるということが読み取れるかと思います。  それから、次は八ページの表でございます。これは昭和二十五年から四十年までの間の果実栽培農家戸数でございまして、昭和二十五年には都府県で四十六万九千戸、全国で四十七万五千戸でありましたものが、それぞれ四十年には八十八万六千戸、八十九万六千戸ということで、非常に栽培農家戸数はふえておるわけでございます。  八ページの右の9の果樹園の現況でございますが、それでは果樹園はどういう地帯に植えられておるかということを見た表でございまして、傾斜度十五度以上の急傾斜、あるいは五度から十五度未満の緩傾斜、五度未満の平坦というふうに分けて、パーセントを書いてございます。これも同じく三十八年の果樹基本統計調査の報告でございます。それによりますと、ミカンにつきましては急傾斜が四六%ということで、非常に急傾斜のところに植わっておる。リンゴはわりあいに平坦部に植わっておる。ブドウもそうでございます。日本ナシもそうでございます。大体ミカンを除きましてはわりあいに平坦部のパーセントが多くなっておるのでございます。  それから、九ページの表は、これは果樹園の集団化状況でございまして、同じく三十八年の調査でございますが、最初の表にございますように集団化しております個所の面積が、五町歩未満というのが四七%ということで、四七%は五町歩未満の集団であるということでございまして、五町歩から十町歩が一三%、十町歩から二十町歩が一二%、二十町歩から五十町歩が一二%ということで、五十町歩以上の集団というのはほとんどないということでございます。  それから、農家経営します果樹園の分散状況でございますが、これは一、二カ所というのが大部分でございまして、三カ所は一五%、それから四カ所は八%ということで、果樹園の一戸当たりの面積が少ないことから、一般の田のように分散はしておりませんけれども、それでも比較的分散しておるということは言えるかと思います。  それから、果樹園の団地の大きさ別の個所数でございます。これで見ますと、大体二反未満というのが七〇%を占めておりまして、団地の大きさはほとんど二反歩未満であるということが言えるかと思います。  それから、一〇ページの表でございますが、これは現行法に基づきまして、果樹園経営計画を三十六年度から認定いたしておりますが、その状況でございまして、大体毎年七百件程度のものを認定しております。三十九年度は五百八十二件と若干下がっておりますけれども、大体七百件程度の認定になっておりまして、その融資額が下欄にございますように三十九年度では公庫からの融資が二十七億一千百万円ということになっておるわけでございます。  それから、一一ページでございますが、これは主要果実の入荷量と卸売価格でございまして、三十九年まで出ております。これは一般の歴年の統計ではございませんで、ミカンにつきましては八月から七月までということで、その前年にとれましたミカンについて、七月までに売れたということで、歴年の計算をとっておりません。それのほうがより実態に合うのではないかということでございます。  リンゴにつきましては七月から翌年の六月というふうにとっております。その他は全部歴年でとっておりますけれども、入荷量で見ていただきまして、さらに価格を見ていただきますとおわかりのように、最近は大体横ばい、ないし軟調ぎみであるというのが、ミカンあるいはリンゴにおいて言えると思います。ことしはまだその八——七ではとっていないのでございますけれども、歴年で計算いたしますと大体ミカンでキロ当たり八十円ということで、昨年の台風によりまして若干強含みになっております。リンゴも若干横ばいということになっております。そういうことで、これは三十九年までの数字でございます。  それからその次の一二ページでございますが、これはかん詰め企業の現状でございまして、資本金階層別の企業数、非常に資本金も少ないのが多いということを三百三十四企業の実態を調査いたしましてそれを出してあるわけでございます。工場の従業員数も非常に少なくて、百人以下というのがほとんど大部分であるということがいえると思います。日産処理能力も、ここにございますように、大体千五百箱以下というのが過半を占めるということでございます。  それから、その次の一三ページでございますが、主要果実かん詰めの生産数量でございます。これは果実のかん詰めの合計で、三十九年度では、これは二十一・六キログラム換算でございますが、千百十二万二千ケースということになっております。そのうちで一番大きいものは、温州ミカンのかん詰めでございまして、五百二十二万一千ケースということになっております。それから白桃が多くなっておりまして、百九十八万一千ケースということでございます。  それから、14の表でございますが、これは主要果実加工原料の供給地と購入地でございまして、左のほうが供給地でございます。その購入地は各県にまたがっているということを出したわけでございまして、神奈川県のミカンは神奈川、静岡、福島、山形、三重、長野、山梨、広島、宮城、東京、千葉というような各県に供給されているということでございまして、その他各県産のミカン等についてそれぞれ購入地を列記してあるわけでございます。  それから一四ページでございます。これは主要果実の用途別消費でございまして、まあ加工されますおもなるミカン、ブドウ、リンゴ、桃等についてそれをあらわしたわけでございまして、加工に回りますものはミカンについて約二割が加工に回っております。桃については、生食が十四万トンでございますが、加工用が六万六千二百トンということで相当ウエートが高くなっております。その他ブドウ、リンゴ等は、それに比べましては加工の度合いが低いという表でございます。  それから、一五ページでございます。これは、おもなる果実及び果実加工品の輸出でございます。計が出してございませんが、昭和三十九年の計でまいりますと、金額といたしまして百三十七億円になります。そのおもなものは、温州ミカン、これが九十六億五千万円というのと、なまのミカン十五億一千百万円というのが大きいのでございまして、リンゴのなまで出ておりますのは八億一千四百万円、ナシが三億六千百万円ということになっております。右のほうにそのおもな輸出先が書いてございます。御参考に供していただけると存じます。  以上で、法律案、関係資料の説明を終わります。     —————————————
  62. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 次に、昭和四十一年六月の降ひょうによる被害に関する件を議題といたします。  北條君から発言を求められておりますので、これを許します。北條君。
  63. 北條雋八

    ○北條雋八君 一昨七日、東京にも降りましたけれども、関東、特に埼玉県は非常に大きなひょう害をこうむったことでございます。これに対しまして、完全にまだ調べておられないと思いますが、その他の各県にわたっての被害状況並びに現在考えられております災害対策ですね、一応説明していただきたいと思います。
  64. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) お手元にごく簡単な速報を印刷をしてお配りをいたしましたが、ただいまおっしゃいましたように、六月の七日、つまり一昨日夕方の十七時から二十一時にかけまして、関東地方に激しい雷雨を伴いました大粒の降ひょうを見まして、そのために各地で農作物に相当大きな被害が発生をいたしたのでございます。農林省といたしましては、目下被害の実情を統計調査部を通じて調査に着手をいたしておるわけでございまするが、本日の段階では各県から電話その他の形で被害の速報をとりあえずまとめまして、とりまとめたものがお手元にお配りをしてあるものでございます。なお、六月の七日の降ひょうのほかに、その前日の六月六日に青森、鳥取の諸県で同じくひょう害がありましたので、それをも含めて速報としては印刷をしてお配りをいたした次第でございます。  そこにございますように、被害のありました県は関東の茨城、栃木、群馬、埼玉並びに青森、鳥取ということで速報の数字を載せておりまするが、金額を単純に合計をいたしますると、四十五億にものぼる被害になっておるようでございます。なお、その中で、ことに金額的に非常に大きな被害を見ておりまするのは埼玉県の北部でございますが、畑作地帯を中心に集中的な降ひょうを見まして、被害額も、県の報告によりますると、三十四億、中でも野菜の二十四億というのが被害として非常に大きな金額になっておるわけでございます。  何ぶんにも、まだ一昨日のことでございまするので、ただいまの状況はいまお手元にお配りをしましたような県の報告しかまとまっておりませんが、農林省といたしましては、被害後直ちに統計調査部による被害の実態調査に着手をいたしておりまするので、その調査の結果がまとまり次第もろもろの対策を講ずる覚悟でございます。昨年も実はこの時期に同じくやはり関東地方にも降ひょうを見まして、いろいろな農作物に対する被害に対しましていろいろな災害対策を講じた次第でございまするが、本年もできるだけ早く被害の実態を調査いたしまして、しかるべき措置を講じたいと思っておりますので、とりあえず中間的に御報告いたした次第でございます。
  65. 北條雋八

    ○北條雋八君 この埼玉のことは、私、前に関係がありますのでよく聞くのでございます。他の県はよくまだわかりませんけれども、毎年常襲的にひょう害をこうむっておる。春になければ秋あるといったようなことで、非常に農家は困っておりますが、まあひとつできるだけこの対策において、被害農家に援助の手を差し伸べてやっていただきたいと思います。なお、今度の野菜の被害は非常に多いようでございますから、これはやはり生鮮食料、野菜の価格騰貴なんかもするのじゃないかというふうに思いますが、なお詳細わかりましたら、その上でまたお願いしたいと思いますが、このほかの県はたいしたことはないのですか、現在のところは群馬と茨城、埼玉、栃木……。
  66. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 私どものほうで被害があったということを承知をいたしておりまする県は、この表に載せております県のほかに、関東地方——関東地方と申しますか、福島県にも若干被害があったようでありまするし、それから千葉県、東京都にも若干の降ひょうを見たようでございます。  それから、六月六日のほうは、そこに青森と鳥取しか載っておりませんが、岐阜県にも若干の軽微な被害があったようでありますが、とりあえず今日の段階で県から被害の金額の報告がありましたのがここに取りまとめた数字でございまして、ここにない県としまして被害があったであろうと思われる県は、いま私が申し上げました岐阜と千葉と東京と福島が追加されるだけで、それ以外のところはひょうは降らなかったようでございます。
  67. 北條雋八

    ○北條雋八君 もう一点伺いたいのですが、このひょう害は天災融資法が適用できると思いますが、いままでこれを適用したのは、例はございますか。
  68. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 昨年も降ひょうの被害に対しまして天災融資法を発動した例がございます。天災融資法の発動は、降ったものが雨だとか、ひょうだとかということで区別があるわけではございませんで、一応、被害の総額が大体どのくらいであるかということによって発動がきまるわけでございまして、その金額は統計調査部の調査がまとまらなければわかりませんが、ひょうの被害で天災融資法を発動した実例はございます。
  69. 北條雋八

    ○北條雋八君 その金額は三十億とかというふうに聞いておりますが、その前例はどのくらいですか。
  70. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) いまおっしゃった数字が大体の一応のめどになっております。
  71. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 本件についての調査は、本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後四時四十三分散会      —————・—————