○川村清一君 私も関連して一言
お尋ねしたいのですが、大臣がいないので、政務次官に
お尋ねしたいと思います。
ただいまの質疑応答を聞いておりますと、北海道の石狩川や常呂川が例に出されておりますので、それに関連して
お尋ねしたいわけですが、森中委員が
指摘されまして強く要望されておりますように、問題は、各省庁の行政所管に関連してまいっておるわけです。したがって、端的に私に言わしていただくならば、やはり総合的に、前向きにこれを調整いたしまして、きちっと責任を持って行政を施行する
機構がなければまずいのではないかと思うのです。そこで、北海道庁におきましても、これは北海道議会やなんかにおきましても非常に問題になりまして、ただいま公害課という
一つの課を設けて、総合的な行政を施行しております。そこで、地方官庁の問題に進めて
考えてみますならば、私は、まず第一に、
農林省の内部が
機構的にきちっと意思統一されるような形にならなければならないのではないかと思うわけであります。ただいまも
質問がありましたが、いわゆるでん粉工場をつくるということは、これは農民のやはり生活安定、向上、農民の所得をふやす、こういう
立場において、やはりそういう農政のもとにでん粉工場をやる。たまたま常呂川の話が出ましたが、あそこのでん粉工場はいわゆるホクレン、北海道における農業協同組合の連合会ががやる工場であります。これは農民自体の農民の資本によって農民自体によって経営していく。そして網走のあの地帯に、バレイショのこれは主要な産地でございますので、そのバレイショを
原料としてでん粉をつくっている。ところが、その廃液は常呂川に流れるわけであります。常呂川は御
承知のようにこれはサケ・マスの漁をするこれは河川なんであります。このサケ・マスに依存しておる漁民はたくさんおりますし、漁民自身が、サケ・マスの資源を永続的に漁業を継続できるように、漁民の手によって採卵し、そして稚魚を養殖して川に放流しておる。完全に、こういう中で漁民と農民との利害が相対する、一致しないわけであります。で、ホクレンのほうでは工場をぜひつくらしてくれという、これは政治問題にまで発展しておる。これに対して、今度は漁民のほうは、絶対これを阻止するという
立場で反対運動を展開する。そうしますと、今度議会の中ではどうかといいますと、農民の
立場でいろいろ行政を施行しようとする農務委員会は、これは農民組織によってつくられる工場ですから賛成するわけです。ところが、漁民の生活権を守るという
立場からは、水産委員会は反対するというようなことで、議会もなかなか意見は一致されないし、知事のもとにある行政
機関もなかなか一致しないという問題があるわけであります。これがずっと進んでまいりますというと、
農林省の中にも当然あるのではないか。先ほど
水産庁長官は、われわれは何がなんでも漁業を守る
立場からこれは反対する、これは当然だと思う。それは、そういうふうな気がまえのない水産庁の長官なら、これはとても話にならない。全国の漁民がとてもこれは信頼できないわけですね。ところが、農民の
立場からいろんなことを
考える行政というものは、それは賛成するでしょう。そこで、行政的にも一致しない問題が出てくるのではないかと思うわけであります。この点はどういうふうに調整していくのか。同じ農林大臣のもとに行なわれている行政の
機構の中においてそういうふうに相反するいき方があるわけでございます。それが今度もっと発展してまいりますと、石狩川へまいります。御
承知のように石狩川というのは、これは北海道における昔はもうサケの大産地でございますね。政務次官も石狩なべという
ことばをお聞きになったと思いますが、石狩なべというものは、石狩川にのぼってくるサケを川口でつかまえて、それを北海道流に言うとサケの三平をつくる。それが北海道の名物になっておる。いまは石狩なべという名物になっておるけれども、石狩川にサケなんて一尾ものぼってきません。ところが秋になりますと、札幌あたりから石狩川に石狩なべを食べに行きますけれども、そのなべに入っているサケは大体どこのサケかというと、石狩川にのぼってきたサケでなくて、それは食わせる料理屋が札幌あたりからサケを買っていって、よそでとれたサケを買っていって、そのサケを石狩川で石狩なべを食わせる。全然石狩川にはサケなんてのぼってこなくなっております。のぼってこない原因は何か、河川がずっと汚濁してしまった。なぜかというと、とにかくその同じ百里以上も流れている川の上流には、旭川のあそこにはパルプ工場がある。あるいは合同のしょうちゅう工場がある。各地に工場ができたり、また炭鉱地帯がありますから、炭じんが流れてくる。もう
一つ、あそこは北海道における一番の水田もありましょう。北海道の穀倉地帯です。農薬がどんどん流れてくる。農薬の被害もあるわけです。そうしますと、工場の被害なら
通産省ですか、経済企画庁ですか、農薬は
農林省でしょう。いろんなものが総合的にきて、そうして一番迷惑を受けるのはだれかというとこれは漁民なんです。その川で、いわゆる川の沿岸において、あるいは河口においてささやかなる漁業を営んでおる漁民がその集中的な被害を全部受けている。先ほど被害総額わからないなんて言っておりましたけれども、あすこはもう石狩川の漁民の計算したところによりますと、百二、三十億の被害があるわけです。それは昔とれたものがとれなくなったのですから、それを全部計算して、いまの貨幣価値に換算すればサケは一尾幾ら、昔はどのくらいとれたが、いまは一尾もとれない。当時とれたサケをいまの
価格に換算しても百何十億の損害が出てくる。ですからこういう被害があります。損害がこれだけありますということをもし責任官庁がそれを発表してごらんなさい。たちまち漁民から損害補償の要求運動が起きてくる。そんなふうになってきたらたいへんだから、川岸にある炭鉱会社も工場経営をしておる企業家もそんなことを発表させないように押えるでしょう。発表させたらたいへんですから発表させないように押える。ですからあなた方がないないと言っているが、これはわれわれ北海道で、道議会の中でさんざん知事にかみついて何年間かやってきたのですからよくわかるのです。こういう非常に複雑なんです。そうして一番困っておるのは漁民である。一番損害を受けてどうしようかというほんとうに情けない
状態になってきておる。有名な石狩なべのサケは一尾もいない。よそから買ってきたサケを入れてなべをつくって、これが石狩なべになっている。これが現実の姿なんです。こういう点から
考えていくと
農林省の中に問題があるのです。これはいわゆる水産庁と、それから農業をやっているほうの行政をきちんと大臣のもとに調整しないと、
農林省ができないでもって経済企画庁がどうだ、
通産省がどうだといっても私はできないのじゃないか。こういうことでやってもらわなければたいへんなんです。先ほど
水産庁長官は、何がなんでもという非常に強い意思表示をされましたので、私は心の中で敬服しておるのです。水産庁はぜひそういうひとつ気がまえで漁民を守る
立場でがんばってもらわなければ困る。たくさんの金を使って、この構造改善
事業をやっているのです、一生懸命。浅海増殖や魚巣の設置をやっているのです。そうやっているところが、今度は廃液が流れてきて、あるいは油が流れてきてだめになってしまう。せっかく魚巣をつくっても魚が死んでしまう。コンブとか海藻類もみんな死滅してしまう。それから、今度少しでも、資源をとる漁業から育てる漁業に、水産行政のいき方を変えるのだということで、とにかく資源の培養のできるところはあらゆる河川をこれでもってやる。いわゆる内水面漁業を発展させる、内水面漁業を設定するというようなことでやられている。相当金をかけてやられても、そうしてせっかく金をかけてそういう行政を施行しながら、逆に今度は、そういう資源をみな死滅させていってしまうような片っ方では行政が行なわれておる。ですから、これはよく古人が、百年河清を待つということを言われましたが、いまのようなやり方でいったら川がきれいになるのは百年どころか二百年たってますますきたなくなって、どろ水ばかりになってしまう。私はそう
考えるのです。こういう点で八方やっていただかなければたいへんだと思うのです。これはぜひ大臣に聞かなければならないことでございますが、ひとつ政務次官、大臣にかわって、元気のいい先ほどの
水産庁長官のようなこういうかまえで御答弁いただきたいと思います。