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1966-04-22 第51回国会 参議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十二日(金曜日)    午後一時二十八分開会     —————————————    委員の異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      田村 賢作君     上原 正吉君      青田源太郎君     八田 一朗君      北條 雋八君     二宮 文造君  四月二十二日     辞任         補欠選任      上原 正吉君     田村 賢作君      八田 一朗君     青田源太郎君      二宮 文造君     北條 雋八君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  斉君     理 事                 野知 浩之君                 和田 鶴一君                 渡辺 勘吉君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 梶原 茂嘉君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 高橋雄之助君                 任田 新治君                 仲原 善一君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 川村 清一君                 鶴園 哲夫君                 中村 波男君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  坂田 英一君    政府委員        外務省条約局長  藤崎 萬里君        農林政務次官   後藤 義隆君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査北洋漁業等に関す  る件)(農業の所得格差に関する件)     —————————————
  2. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査を議題とし、まず、北洋漁業等に関する件について、質疑を行なうことにいたします。川村君。
  3. 川村清一

    川村清一君 私は、本日この機会を得まして、北洋漁業の問題について、特にサケマス漁業や、安全操業の問題、さらに底びき船の北洋転換等の問題を中心として、若干の質問を申し上げたいと思います。  まず、最初にお尋ねいたしたいことは、本年度日ソ漁業委員会は、きわめてきびしい情勢のもとにあったわけでありますけれども日ソ両国の友好的なムードと、両国代表の真摯な努力によって、お互いに歩み寄るものは歩み寄って、円満に過般妥結をみましたことは、まことに慶賀にたえないところだと思っているわけであります。  そこで、この本年度日ソ漁業委員会において、いろいろ紆余曲折があったわけでありますが、時間がありませんので、そういう交渉の経過は別といたしまして、特に両国の間において妥結調印された内容、特に昨年度と変わった点、たとえば漁獲量であるとか、あるいは規制措置等について、まず簡単に要点の御説明を願いたいと、こう思うわけであります。特に、これは北洋漁業でございますので、日ソ漁業委員会においては、カニであるとか、ニシンであるとかも入りますけれどもカニニシンは省略してけっこうでございますから、サケマスの問題についてのみひとつ御説明を願いたいと思います。
  4. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 日ソ双方科学者を初めサケマスについての資源状態について相談をいたしましたわけでございまするが、今年は、先ほどお話しのとおり、非常にマス不漁の年に当たっておりまするわけでございます。さようなことからいたしまして、サケマスにつきましては大体四月の十二日まで会議が続きまして、十二日に妥結を見たわけでございます。こうして、四月の十四日に調印をいたしたようなことでございます。全体としてサケマスにつきましては、年間総漁業量を九万六千トン。これはいわゆるA区域B区域それぞれ四万八千トンということでございまして、B区域におきましては一〇%のアローアンスがあるわけでございます。不漁年における資源保護等のために今年限り最小限度措置をとるということにいたしましたわけでございます。操業期間は、A区域操業終期を昨年よりも十六日繰り上げて、いわゆる七月二十五日ということ。昨年は八月十日でございます。B区域におきましては、日本国内措置によって実質的に数日間短縮することにいたしたわけでございます。また、四十八度以南流し網漁業及び母船式漁業につきましては一部の区域において漁期を若干制限する、十四日間制限するということにいたしたわけでございます。  なお、申しますのに、カニにつきましては、例年実施してきた漁区の交換以外はすべて例年どおりということにいたしたわけでございます。大体かようなことで終結いたしましたわけでございます。
  5. 川村清一

    川村清一君 ただいま大臣の御答弁の中でちょっとふに落ちない点がありますので、そこの点再度お答えを願いたいわけでありますが、この規制措置の中で、四十八度以南流し網母船式流し網について十四日程度制限するということは、これはどういうことなのか。  それからB区域については、国内措置によって数日間制限するというようなお答えがあったと思うのでありますが、この国内措置によって数日間制限するということは、これはいまもっと具体的にいえば何日制限されるお考えなのか。その期日等も明らかにしてもらいたい。
  6. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 操業期間についての問題でございますが、まず条約上の始期終期に関しましては、A区域におきまして終期を在来の八月の十日を七月の二十五日にする。これはA区域だけでございます。それからB区域につきましては、条約上の始期終期は昨年と同様で条約はいじくりません。ただB区域基地独航船は一定の時期から四十六度の線をこえまして、いわゆるA区域に入りまして操業いたします。そのためにA区域に入りまず許可証を港で渡すわけでございます。その許可証を渡す日を五日程度、八月の二十八日まで、昨年は七月の三日に渡しておりますが、八月の二十八日までに渡すということに運用上いたします結果、B区域におきます操業が一日縮まるわけでございます。ただ、それはB区域操業をやめてA区域に入ってやるという意味でございまして、条約上の変更ではございません。以上でございます。
  7. 川村清一

    川村清一君 日ソ漁業委員会というのは、これは申すまでもなく一九五六年に締結された日ソ漁業条約に基づいて毎年持たれる委員会であり、そして、この委員会はモスクワと東京において交互に開催されておるのであります。そこで、この漁業委員会の持たれる、いわゆるもとをなす日ソ漁業条約、この条約の問題についてお尋ねしたいのですが、条約の条文をお聞きするわけではありませんが、条約が締結された目的であります。いかなる目的をもっていかなる趣旨をもってその日ソ漁業条約というものは締結されておるのか、いわゆる条約の本質といいますか、その条約の基本的な考え方といいますか、それをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  8. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 日ソ漁業条約本旨は、公海におきますサケマス漁獲資源保護立場から合理的な漁獲にするという、資源保護もとにおきます漁獲をするということが本旨であります。その方法といたしまして、両国構成する委員会をつくりまして、資源評価漁獲高相談をして、これによって適正な漁獲量を、公海におきます漁獲量をきめて、とっていく。そうして鮭鱒資源を枯渇せしめない、また合理的にとる、そういうための条約でございます。したがいまして、資源の問題から漁獲量問題等一切が両国構成される委員会決定にゆだねる、こういう仕組みであり趣旨でございます。
  9. 川村清一

    川村清一君 ただいま水産庁長官からお答えがありましたように、この条約は一九五六年六月の十四日に締結された条約でございますが、やはり本旨は、漁業の最大の持続的生産性を維持するために両条約国科学的研究を推進するということ、その論理の上に立って必要な資源保護措置並びに調整を施す、これがまあこの条約本旨だろうと思うわけであります。明らかにうたってあるわけでありますから。そうしますと、この条約もと構成され、作業するいわゆる科学技術小委員会も、また科学技術小委員会報告に基づいて行なわれるいわゆる日ソ漁業委員会も、この本旨をやはりもととしていろいろな議論がなされなければならないと思うわけでありますが、この点ひとつどうですか。
  10. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お説のとおりでございます。
  11. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、本年は、先ほど大臣の御報告によって、日本漁獲量A区域において四万八千トン、B区域において四万八千トン、合計九万六千トンという漁獲量決定をみたわけでありますけれども、この決定をする根拠は、やはり科学的な資源論の上に立脚した資源評価もととしてこの数字は出てこなければならないと私は思うわけであります。そこで、毎年毎年ここが問題になっておるわけでありますが、この資源評価は、何を要素として、何を問題としてこの資源評価がされるのか、これはまあ十回この委員会をやってきているわけですね。毎年毎年これが問題になるわけでありますが、一体ことしの資源評価というものは何を根拠にしてなされているのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  12. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 日ソ漁業委員会におきまして、最初の年に資源評価方法論についてということで合意を見たわけでございます。  で、合意内容を簡単に申し上げますと、結局、公海上におきまするところの捕獲されましたサケマス中心にして資源量評価するという一つ科学的評価、それから申すまでもないことでございますが、鮭鱒は川に上がり川から下りますので、遡上量及び降下量、これを評価一つの大きなメルクマールにする、こういう形で理論がセットされました。それに基づきまして、わが国におきましても、たとえば北洋のうちの北のほうの部分におきましては、八つの調査船を出しまして、調査官がみんな乗っております。そのほかに母船調査官を乗せております。それから会社に対しまして調査資料の要求をして提出させております。提出義務を課しております。それによって何をやるかということでございますが、一つは魚の体長、それからうろこから見ますところの魚の年齢組成、それから何年魚であるという問題、それからソ連側データのほうは、降下量と遡上量でございます。そういたしまして、結局何年産のたとえばマスならマスがどういう年齢組成に相なっているか。たとえば非常に若くなっているか、あるいは非常に年とったのがなくなったのか、あるいは取れます魚の年齢構成分布がゆがんでまいっているか、そういうような問題の有無、その他から、科学者間におきまして資料を出し合いまして、科学小委員会でそれぞれの、同じマスにつきましても、西カム系マスからオホーツク海系のマスをあげまして、詳細な資料提出の上、議論が各ストップといいますか、魚群ごと資料突き合わせが行なわれまして、たとえば本年度マスは一九六四年に比べてどう評価するかというのは、最終的に両国で意見を一致させるわけでございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 ただいまの長官の御説明は、まあいろいろありましたが、要すればこういうことなんでしょう。いわゆる公海における漁獲されたサケマス漁獲量、それからソ連沿岸における、これは日本沿岸もとっておりますが、いわゆる沿岸における漁獲量、それからソ連の河川に遡上する新魚の量ですね、まあそれでしょう。結局それをその量の中において、まあ日本調査船が海上においていろいろ研究しておるというそのとらえた魚群のいわゆる年齢組成であるとか、これが何年魚であるとかいったようなことから推定いたしまして、そして今年度資源はこの程度である、またこれは西暦紀元にして奇数年はこれはマス不漁年である、偶数年マス豊漁年である。これは過去の統計からそういうものを推定していって、そしてことしはこの程度である。この資源評価というものに、私は非常に疑問を持つわけです。この条約長官が言われましたように、条約にははっきりその両条約国科学的研究を推進するということ、科学的合理性の上に立った論理、その論理の上に立ってこの資源評価されなければならないわけでしょう。ところが、幾らとれたという漁獲量をもってこれが資源論中心の主体をなすものとするならば、私はこれは科学的でない。少なくとも合理的ではないと思うわけです。一体この点は、漁業白書に対する代表質問でも私ちょっと申し上げたのでありますが、あの漁業白書によれば昨年はサンマが非常に不漁であった、これは海況変化によるものだと、簡単にそういうふうにきめてしまっているわけですね、ほんとうにそれは海況変化なのか。あるいはその他の原因ですね、いわゆる乱獲であるとか、あるいはまた何かの自然的な変化ですね、こういったようなものか。この海流変化であるとか、あるいは魚群のいわゆる魚道の変化ですね、こういったようなものがサンマ不漁をもたらした原因ではないかといったところの究明がない。簡単に海況変化ということでこれをやっているわけです。そこで、サケマスでございますけれども、当然これは海況変化であるとか気象条件変化であるとか、あるいは食害もあるでありましょう。こういう自然的な条件変化、さらにまあこれはあまり申し上げることもできないと思いますが、あとにも出てくる問題ですからちょっと触れますけれども、たとえばA区域における母船式漁業におきましてはなるべくマスをとらないようなやはり努力をする。というのは価格の問題があるわけですね、こういったようなものは総合的にこれは究明されていないのではないか。したがって、こういうものをもっと綿密に分析、究明していかなければこれは納得する資源論にはならないでしょう。単に幾らとれたからという漁獲量だけでもって、これを柱にして資源評価をするということは、少なくとも科学的な論理というものをここに打ち出すことにはならないのではないかと思うのでありますが、この点ひとついかがですか。
  14. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) ことしの交渉にいたしましても、一日から始まりまして科学小委員会が十七日までかかりました。約半月以上これをやっております。それで、ただ両国で幾らとったから資源どうこうということではやっておらないのでございまして、とった中からサケマスを一定数とりまして、そのサケマス年齢が非常に若返っているとか、それから御承知のとおり、釈迦に説法でございますが、マスは二年後に帰るのだから、帰ってきて卵を生む。川を泳いでくるわけでございますから、その親魚状態がどのように川に上がったかという立場から二年後を推定するということで、先生のおっしゃいましたように、トータルでとれなかったから直ちに資源どうこうというだけではございませんで、サケマスそのものにつきましておなかの中、成長の度合い、生殖腺——まあ私どもしろうとでございますけれども相当データを持ち寄りまして詰めておるわけでございます。したがいまして、もちろんとれた量も参考にはなっておるとは存じますけれども、むしろマスならマス紅ザケなら紅ザケの生態、構成、とれたものの構成、そういうところを中心学者間の応酬、検討が行なわれております点を申し添えさせていただきたいと思います。
  15. 川村清一

    川村清一君 いや、その点はわかるのですよ。だから、とれた量だけでもってもしも議論するとすれば、科学技術小委員会があんなに時間をかける必要はないと思う。とれたといういわゆる客観的な事実ですから、それだけを問題にして議論をするならそんなに時間はかからないと思うんです。ですから、そのとれた量を、さらにやはりいま長官の言われるように、いわゆる科学的な立場から分析していって、そうしてそれは出てくると思うのでありますけれども先ほどからの長官資源評価要素として、私が申し上げましたような海況変化であるとか、そういったような、あるいはまた食害というようなものもあるわけでしょう。いわゆる稚魚のうちにオットセイに食われるとか、他の力のある動物によって食われてしまいますね。こういう点もあるでありましょう。いろんなやっぱり要素があるのではないかと思うのですよ。たとえば、私ここにまあデータを持ってきておりますが、こんなことはいま時間がありませんからここで申し上げませんけれども日本内地において、瀬戸内海なら瀬戸内海のどの地帯において、タイの不漁の年と豊漁の年がある、不漁の年はどういう年かというと、どっちかの風が多く吹くときは不漁である。これは北海道では、またニシンもそうですよ。南西の風が吹くというと、ニシン不漁である。やっぱり風の方向、それから今度海流、潮の流れですね、そういった自然的な条件、そういうものが全部その漁獲影響を与えているわけなんですよ。こういうものをやはり綿密に研究し、分析して、それをも含めて要素として資源論を出さなければ、これは納得させるいわゆる議論にならないのではないかと私は思うわけなんです。そこで長官、私ぜひこれは聞きたいんですけれどもね。これは漁業白書質問のときも申し上げたのですが、毎年十回やっておるのですが、日本科学者が持っていったデータ日本科学者研究によってソ連を納得せしめたというふうに受け取られることが、そういうことがあったのが新聞には出ておらないのかもしれないですけれども、これは私は寡聞にして知らないのですよ。毎年毎年ソ連のほうに押しまくられているわけですね。この科学技術小委員会において資源評価する場合においてですね。したがって、もう十年たったんですから、国が相当力を入れてこういう資源研究をやってきたならば、もうそろそろ私がいま申し上げた要素を全部取り入れた、そしてソ連をも十分納得せしめる資源論というものは打ち立ててもよろしいのではないか、こう思うのですが、この点、長官いかがなんですか、そういう点の研究はしておらないのですか。
  16. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いずれ機会をあらためて、専門の者から御説明をさせていただきたいと存じますが、一般的にサケマスにつきましては、アメリカ、カナダも非常に長い間かかって研究をいたしておりますし、それから日本も、日ソが始まる前からサケマスは非常に力を入れておりまして、先般、十年来の向こうでの漁業条約委員会の活動についてのレビューも行なわれたわけでございますが、この過程におきましてサケマス科学調査というものが非常に進歩したということは、日ソ漁業条約におきます委員会としては非常に高くお互い評価した事実があるのであります。私どものほうも非常に膨大な調査員調査船を派遣して、他に見ざるような形におきまして調査をいたしておるわけでございます。したがいまして、資源論の水準といたしましては、私は日本のあらゆる魚種の中で最も進んでいるものと、かように確信はいたしております。  そこで、先生のおっしゃいますように、いま第一回の委員会できめた方式で十分なのかどうか、他に資源調査方法論において誤りがないかどうかという点でございます。この点についてはなお研究をさしていただきたいと思うわけでございますが、一般浮き魚と違いまして、何といたしましても、川に上がり卵を生み、何年後に帰る、非常に特性を持った魚種でございますので、その意味におきまして、海況魚況変化ではマイナスに作用することはあっても、降下量よりふえるということは考えられない魚種でございます。やはりその降下といいますか、川に上がる量、川からおりる量を中心に一評価をしていこうという方法そのものは、サケマスに関しましては正しいのではないか。出ました魚がさらに食害及び海況等影響を受ける、あるいは減るという因子は、マイナスの問題としてはあるかとも思いますけれども、ふえる因子にはどうもこの魚は働かないようである。したがいまして、御注意も尊重いたしまして、この調査報告についてはなお十分含めてまいる必要を感じておりますが、一般論といたしましては、決してソ連側の言い分だけに資源論でも負けているというふうには私ども感じないのでございます。十分出し合いまして、これは相当フェアな土俵で行なわれておる、かように感じております。
  17. 宮崎正義

    宮崎正義君 関連。いまの川村さんの質問に関連してでございますが、北洋資源を永続的に利用するために、両国学識経験者を含めての北洋資源科学的調査両国間で約束しておるはずでございます。それをまだ実現していないということも一つあるのですが、大体専門家とそれから学者が、五、六年間は続けたことがあると思うのですが、それが一昨年から中止されているように思えるのですが、この点はどうなんでしょうか。  それからもう一つ。いま、ソ連では潜水器とあるいは潜水艇等使っておりますが、日本ではどんなふうな調査のしかたをしているのか、ちょっとお伺いしておきたいんでずが。
  18. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 一昨昨年だと存じますが、赤城・イシコフ間で、お互いにもう少し研究及び技術交流をやろうではないかという話が一つございました。それから、それより先に専門家交流という話はございました。ただ、専門家交流は、専門家お互いに行って、向こう研究施設その他を視察するということでございます。で、技術交換といいますか、技術協力の問題、技術相互交換するということを本格的にやる必要があろうということで、専門家相互視察というのは実は昨年ソ連側の希望でやめたい——一昨年はやったわけでございますが、昨年はやめました。本年度はこれからの相談です。しかし、それとは別にお互い技術を公開、交換し合おうじゃないか。で、わがほうとしては、たとえばソ連サンマなりソ連の底びきの技術なり、試験研究の結果をもらいたい。ソ連のほうとしては、わがほうの加工とか、あるいはマグロとか、そういうものについての研究成果技術、そういうものを学びたいという話がございます。で、この問題につきましてはお互いに進んでいる——いま先生御指摘の潜水艇といいますか、吸い上げるバキューム方式によって魚をとるという技術は、ソ連のほうが進んでおるようでございます。そういう問題については、私どものほうとしてはソ連からもらいたい。底びき漁業というようなものもソ連は非常に発達いたしておるようでございますので、もらいたいというか、できるだけ資料向こうからもらいたい。それからこちらのほうでも、いままでサンマ等については非常にやってきている面もございますので、それはそれなりにソ連のほうでも利用価値があるし、向こうサンマ資料ももらいたい、こういう技術協力という立場の問題を今後取り進めてまいりたい、単なる専門家相互視察というよりも、こちらを重視してまいりたい、こういう線で進んでおりまして、今年度も具体的にさらに話を進めてまいる所存でございます。  最後に御質問のございました潜水器による漁法というお話でございますが、これは海底開発等の関係で一部少し試験場等で手をつけておりますけれども日本の現段階は見るべきものがまだございません。ソ連潜水器による漁法という点は、私寡聞でございますが特に進んでいると聞いておりません。むしろ何というのですか、バキューム方式とか、大型船による漁法という点が非常に進んでおる、かように理解をいたしております。  ソ連調査器具として潜水艇潜水器を使っておるかどうかにつきましては、私存じませんので、後刻調べて御返事いたします。
  19. 川村清一

    川村清一君 長官の御説明によると、日本資源研究はちっともソ連に劣っておらないと自信を持ってお答えになっておられるわけでありますが、だとすれば、たしか今年度日本側が要求した漁獲量というものは、これはことしはマス不漁年である、一九六四年、おととしですか、これは十一万トンの割り当て量に対しまして、実績は九万九千トンであった、そういうようなことから日本側としては一九六四年の資源よりも減っているとは認められない。したがって、少なくともことしの漁獲量はまあ一昨年どおりの十一万トンか、少なくとも十万トンは割らない、こういうようなことを主張しておった。その主張の裏づけは、やはり進んだ日本科学者資源論によってそういう主張をしたものと思うわけであります。ところが、最終的にはやはり減って、九万六千トンになった、こういう事実。それから一九五六年から今年までの十年間の日ソ漁業委員会の経過をずっと記録をたどってみますというと、あくまでも科学的な資源論に立脚して議論が交され、そこから漁獲量がきめられていくべきはずなのに、資源論ではなくして、いわゆる配分論といいますか、最終的には政治力によってこれが決定されていく、これは事実であります。日本から赤城農林大臣ソ連に飛んで行ったり、あるいは河野農林大臣ソ連に飛んで行ったりして、そうして向こうのイシコフ漁業大臣日本の農林大臣とが話し合って、政治的に漁獲量が取りきめられていっている、これは過去の事実でありますね。だとすれば、私は納得いかないわけであります。やはり日ソ漁業条約本旨もとるし、また、日本資源論というものがソ連側をして納得せしめるいわゆる根拠がないのではないか、長官は、決して日本資源研究というものはソ連にひけをとらないと、非常な御自信でありますが、それだけの自信がおありになる資源研究ならば、ソ連学者をして納得せしめることができるのではないか、いわゆる学問はもう国境を越えて純客観性のものでありますから、政治から離れて学問的には一致されなければならないと思うわけであります。この点どうですか。やはり、私は今後の問題もあるので、心配して御質問を申し上げておるので、大臣のお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  20. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 先ほど水産庁長官からお答えを申しておるのでございますが、今度の場合におきましても、学者間の、三月一日以後、長らくの検討の結果は、ことしの資源という問題については意見が大体一致しておりましたことは、その他のいろいろの報告によって御了承であろうと思うのでございます。  そこで、ことしの場合はそういうわけでございまするので、全く資源保護という問題に非常に重点を置かれましたのでありますが、そういう点について、数量ももちろんのことでありますが、この規制の行き方等について、非常な問題が双方において論議されたことも御存じであろうかと思いまするが、それらについても慎重な検討をいま加えておるわけでございます。その結果として、結局ソ連におきましても、六万五千トンというものを五万トンにこれは減らすという話し合いであり、わが国においても、同様、A区域B区域において四万八千トン、合わせて九万六千トン。しかし、B区域については一〇%のアローアンスをみるということでございまするので、結局、さようなことで、双方とも資源の保護のために漁獲量を制限いたしたということで、最後、協定をいたしておるわけでございます。  なお、本年は特別のそういう関係でございまするので、一昨年の九万九千トンというものしかもちろん日本の場合においてとれたかったわけでございまするが、今回においては九万六千トン、しかし、一〇%のアローアンスを加えて考えますると、十万トンこすわけでございます。一昨年の不作よりもさらに不作であろうということは、両方ともこの資源論としては認めたわけでございまするが、大体一昨年よりも若干の数量的にそのアローアンスを加えますと、その数量まで到達し得ることに相なったわけでございます。しこうして、規制その他については、双方とも十分の審議をいたしまして、後、その間大体四十三日間審議を続けたようなわけでございます。別に日本が政治的にどうということでなしに、理解の上に立っての努力を各委員がつとめてくれたということを非常に私も喜んでおるような次第でございます。
  21. 川村清一

    川村清一君 資源論については、いずれまた機会をひとつ得さしてもらいます。そういう学者先生のおいでをいただいて、十分ひとつ勉強させていただきたいと、こう思います。  それで、これから私は国内の九万六千トンのサケマスの配分の問題についていろいろ御質問を申し上げたいと思うわけでありますが、実は外務省の条約局長においでを願っておるわけでありまして、条約局長においでを願いましたのは、実は北洋安全操業の問題についてひとつお尋ねをしたいと、安全操業の前提になる問題についてお尋ねしたいと思いまして、まあおいでを願ったわけであります。  それで、若干サケマスの問題をあとにずらしまして、安全操業の問題で条約局長にお尋ねをいたしたいと、こう思います。  先般の、日韓共同規制水域で、第五十三海洋丸が拿捕された事件が起こりまして、国会の中で大いに論議されたわけであります。当然当農林水産委員会においてもこれが論議をされました。このときに、もしこの第五十三海洋丸が共同規制水域でなくて、いわゆる日韓漁業協定にある専管水域を侵犯しておった、専管水域に入っておったものと假定した場合——これは入っておらなかったんですが、入っておったとした場合には、一体この日本の漁船に対して韓国は追跡権があるのかどうか。それから裁判管轄権はいずれの国にあるのかということが問題になったわけであります。この追跡権の問題につきましては、当委員会においては、追跡権はないという御答弁をいただいた。それから私はその他の委員会会議録を読んだり、また予算委員会等も傍聴した次第でありますが、最初は、どうも外務大臣も追跡権はないというような御答弁をされておったように聞いておったわけであります。ところが条約局長は、予算委員会のときに、たしか、もし専管水域に入っておるならば、国際法上韓国に追跡権はある、こういう御答弁をされておったように私は聞き取ったわけでありますが、これは非常に日韓漁業協定そのものが内容がきわめてあいまいである。これは日韓条約審議の国会で、わが党はあらゆる角度からこれは追及しておるわけでありますが、そういうあいまいな協定であるというようなことからはっきりしないのであります。そこで、本日条約局長においでをいただいたことは、一体第五十三海洋丸が専管水域に入っておった場合は、韓国に追跡権があるのかないのか。裁判管轄権は韓国にあるのかどうか。この点を国際法の上からひとつぜひ明らかにしていただきたい、こういうようなことでおいでを願ったわけであります。ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  22. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 追跡権の問題につきましては、いろいろな委員会でたびたび御答弁をいたしておりますが、私はいまの御設問のような場合に、韓国に追跡権があるという趣旨お答えしたはずはないつもりでございます。この追跡権がないということは、この協定にそういう規定が設けられていないのであるから、しかも国際法上そういう場合に追跡権があるということもないのだから、韓国に追跡権がないことは明瞭であるという趣旨で、いつもお答えいたしておるつもりでございます。それから、かりにいままた別の問題といたしまして、専管水域を侵犯しておりまして、専管水域内でつかまった場合、そのあとの処分はどうなるかという点につきましては、この漁業協定の専管水域を規定しました第一条に、それぞれの沿岸国が専管水域内では排他的管轄権を行使する。排他的ということはつまり沿岸国だけが管轄権を持って、ほかのものは管轄権を行使し得ないということでございます。管轄権の中には裁判管轄権も当然入りますので、先ほど申し上げましたように、専管水域内を侵犯し、専管水域内でつかまった場合の裁判は韓国で行なわれることになる、こういうことでございます。
  23. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、専管水域の中においてつかまっても、専管水域の中においても、専管水域に入っておったのが共同規制水域のほうに逃げていきますね。この場合において韓国は追跡権がないということでございますね。それから、専管水域の中でつかまっても、これを処分することは韓国政府にその権利はないということでありますか、裁判は韓国政府がやるのであるということでありますか。この点をちょっと……、はっきりしませんから。
  24. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) かりに専管水域内で操業しておったとしまして、専管水域内ではもちろん韓国側に取り締まりの権能がございますから追跡を始めるわけでございます。そして追跡中に日本の漁船が専管水域外に逃げてしまった場合には、その専管水域外にまで追跡を継続することはできない、韓国の船は。そういうことを追跡権がないという言い方で申し上げておるわけであります。それから、かりに専管水域を侵犯しておって専管水域内でつかまりました場合には、すべての取り締まりの権能を向こうで持っておるわけでございます。裁判管轄権も韓国側にあるわけでございます。よろしゅうございますか。
  25. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、専管水域というのは沿岸十二海里でございますね。そうしますと、その十二海里の中には、専管水域の中には当然領海もありますね、韓国の領海もありますね。この領海もまことに不明確なんでありますが、その領海の中に入っておった場合はどうなりますか。領海もやっぱり専管水域の中にあるわけでしょう。ですから、もしその領海の中におった場合にはどうなりますか。
  26. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 専管水域の一番内側のほうの三海里は領海であるわけでありますが、まあ、ここまで入り込むということは非常に仮定としてもあり得べからざる仮定であると思いますが、全く理論上の問題といたしますれば、領海を侵犯して、そしてその領海内に施行されておる沿岸国の法令を犯した、法域を害したような場合、その領海から追跡を開始した場合には、公海にまで追跡を継続することができるというのが国際法の原則でございます。協定にはそういう規定は何もないわけでございますが、一般国際法の規定によればそういう場合は追跡権がある。つまり公海にまで追跡を及ぼすことができるということになると思います。
  27. 川村清一

    川村清一君 私がお忙しい条約局長にわざわざおいでを願ったのはどういうことかと申しますと、その理由は、どうも韓国の領海がわからないのですよ。領海がわからないからいろいろな疑問点がわいてくるわけなんです。そこで、実は先般あの事件のあったときに、世界では領海三海里を主張する国、六海里を言っている国、十二海里を言っている国、いろいろあるわけです。それをひとつ調べて資料を出してくれということを資料要求をしたのです。そうしたら、農林省から出てきた、外務省と相当話し合ってつくった資料だ、こういうわけでありますが、その資料を見ますというと、三海里のところにも、六海里のところにも、十二海里のところにも韓国がないわけなんです。そこで、一番問題の起きるこの韓国の領海は一体何海里なんだということをお尋ねしておるわけです。これもどうも日韓国会のとき聞いておりますと、最終的には、先ほど坂田農林大臣もはっきり三海里でございますと、こうおっしゃっております。いま条約局長も三海里だとおっしゃっている。それではなぜこれに、三海里のところに韓国という名前を入れないのか。これをいただいておればわかるのです。これがないからお尋ねしている。ですから、追跡権があるのかないのか、裁判権はどうだといったような疑問も私は出てくるわけです。それでそれをはっきりしていただきたいと思う。三海里なんですね、韓国の領海というのは三海里、間違いないんですね。
  28. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) まず原則の点を申し上げなくちゃなりませんが、こういうぐあいに、この資料にありますように、領海三海里国とか、領海六海里国、領海十二海里国といいますと、いかにも、たとえばアルゼンチンの領海は三海里であり、セイロンの領海は六海里であり、ブルガリアの領海は十二海里であるというように見えますけれども、これはそういう意味じゃないのでございまして、つまりアルゼンチンという国は領海は三海里であるという立場をとっておる、セイロンは領海六海里であるという立場をとっておる、そういう意味でございますから、その点、誤解いただかないようにお願いいたしたいと思います。  韓国政府は、従来、領海の幅員につきまして幾らであるという明確な態度を一ぺんも明らかにしておりません。そこで、その点ははっきりいたしませんと申しておるわけでございます。ただ、日本政府といたしましては、そのそれぞれの国がどういう主張をしていようが、領海というものは国際法上すべて三海里であるという立場をとっておるわけでございます。これは日本の領海が三海里であるという意味だけじゃなくて、世界じゅうの国の領海はすべて国際法上は三海里である、そういう立場でございます。したがって、大韓民国の領海も、日本政府の立場といたしましては、三海里である、そういうことでございます。
  29. 川村清一

    川村清一君 法律にあまり明るいほうではないんですから、間違いがあったら専門家の局長から御指摘をしていただきたいと思うわけであります。  われわれ常識的に考えて、領海というと、その領空も考えるわけです。領海、領空、領海は海の底の地下までその国の主権が及ぶものである、そういうふうに判断して理解しているわけです。そこで、領海が、これはその国はそう言っているけれども、わがほうとしてはこういうふうに考えているんだといったようなあいまいなことで、国際のいろんな関係を、いろんなことをやっていくことができるんですか。たとえば領空だと、もちろんこれは、飛行機が領空を飛ぶなら、その国との間に協定を結ばなきゃ飛んでいけないと思うわけですがね。そこで、領海、領空と、こうなってきますと、領海がまちまちであると、それはその国はそう言っているけれども、わがほうでは領海はこう解釈しているといった程度で、一体国際のいろいろな問題を、たとえば紛争なんかできたときに、それを処理することができるものなんですか。
  30. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 仰せのとおり、国際法というものが完全なものであるとすれば、当然領海の幅員についてもはっきりした定めがなくちゃならぬはずのものでございますが、まあ慣習的には領海は三海里である。これが日本政府としては、慣習国際法であるという立場をとっておるわけでありますけれども、国際法というものはどこにも書いたものがあるわけじゃございませんで、そうしますと、だんだん最近は、いや三海里じゃない、四海里だ、六海里だ、いや十二海里だと主張する国がふえてまいったわけであります。そこで、非常に混乱が起こりまして、一九五八年、六〇年に開かれました、海洋法に関する国際会議でも、どうにかしてそこに結着をつけようとして努力したわけでございますが、とうとう、各国の三分の二の多数を得られるような案がまとまらなかったわけでございまして、今日に至っておるわけでありますが、そういういわば一種の国際法の無政府状態みたいなことが、この領海の幅員についてはあるわけでございます。したがって、それぞれ各国が主張を堅持していくよりほかないわけでございますが、その間に、それじゃ摩擦の可能性が非常にあるじゃないかという点も仰せのとおりでございまして、まあそこで、普通の場合にはいろいろな事件を起こしたくなければ、相手側が主張しておるところがかりに十二海里であるとしますというと、そこの範囲までは飛行機を飛ばさない、多少遠慮して哨戒なんかもするということに、実際問題としてはなると思います。それはしかし、何も法律上相手方の領海が十二海里であり、したがって、その上空はすべて領空であると認めた意味じゃなくて、実際問題としてそこで遠慮する、問題を起こしたくなければそうするということであろうと思います。
  31. 川村清一

    川村清一君 まあ私はこのあとで水産庁のほう、農林大臣のほうに、北洋安全操業の問題をお聞きしたいと思いますので、それでまあいろいろお尋ねしているわけでありますけれども、どうもこの日韓の専管水域十二海里というのは、これはまあ私の頭で判断しますと、これは確かに専管水域という漁業においてのみ排他的な権限を行使するという区域であるというふうに見てますけれども、いわゆる韓国はおそらくですよ、十二海里ということを主張しているのじゃないかと思う、領海を。ところが、それを日本は、はい認めました十二海里と、あなたの国は十二海里認めるということは、いろいろ問題がまたほかに発生するので言えない。そこで、名目は専管水域という名前をとっているけれども、実質的には、韓国に対しては十二海里を認めたのではないか、こういうふうに私は判断せざるを得ないのであります。というのは、たとえば、日本漁船が韓国の専管水域を航行する場合において、漁具、漁網を格納して航行するならばこれを認める、これは漁業協定の中にあるわけですね。これは国際法にいうところのいわゆる無害航行権と同じに、私はそういうふうに解釈するわけであります。それから、専管水域の中において、もしも日本漁船が入っておったならば、それは韓国はつかまえることができる。先ほど局長の言明であります。そして、それを押えて韓国の裁判官がこれを裁判することができるという、こういうお説であります。とすれば、明らかにこれはもう領海であると解釈しても差しつかえない。そうすると、いま局長は、それは漁業協定による漁業に関してのみなんだ、だから、それは国際法上領海ではないというふうにお答えになるかもしれませんけれども、明らかに漁船のいわゆる無害航行権という、そういう概念がここに入ってきておる。あるいはまた、いまの追跡権といったような問題を考えてみるならば、いわゆる沿岸三海里がこれが領海、これはもう常識でわかるわけです。そうすると、十二海里のうち九海里はこれは明らかに公海であります。で、公海はすべて自由であるというのがこれは原則であります。日本政府は常に公海の自由をあらゆる国にいたって主張しているわけでしょう。公海の自由というその主張によって、いわゆる遠洋漁業とか、そういうものをずっとやってきているわけでしょう。いわゆる日ソ漁業なんかの問題も、いわゆる公海漁業の自由というものから発展してきているのに、ところが、韓国においては公海の自由がないわけですよ。ですから、私は十二海里というものをもう明らかに領海として日本は認めておるのだ、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、相違ございませんか。
  32. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 公海でないものはもう領海であるという前提でお考えになると、そういうふうにまあ突き進んでいかれることになると思うのでありますが、領海でない漁業水域の部分というのは、これはやはり公海なんでございまして、ただ、その公海における自由というものが、この日韓間の協定によりまして制限されておるにすぎない。その制限というのは、日韓間の関係においてのみ、しかも漁業についてのみ、合意によって定められておるということでございまして、もしこれが大韓民国がかりに十二海里までは自分の領海だという立場をとっているものだとすれば、こんな協定でわざわざ日本に認めてもらうというのはおかしいことになるわけです。この協定が、かりに将来効力を失なえば当然に公海もともとどおり完全な自由な公海になるわけでございまして、領海三海里以内の領海と全くいまの漁業水域とが同じものになってしまったということは、法律論としてはないわけでございます。
  33. 川村清一

    川村清一君 それではソ連の領海は、これはソ連は十二海里ということを主張しているようであります。これはソ連が一方的に十二海里を主張しているのであって、日本はこれを認めず、日本はやはりソ連の領海は三海里である、こういうふうに解釈しているわけでございますか。
  34. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) さようでございます。
  35. 川村清一

    川村清一君 そうすると、この事件はどういうことになるのですかね。これは北海道の新聞に出ておったので、私は現地をよく調べていないのでわかりませんが、こういう事件があった。十月に、根室の漁船第八北島丸という船がソ連の領海内で無許可でホタテ貝を採取していた。それを道漁業取り締まり船石狩丸が漁業法違反の疑いでこれを検挙した。ところが釧路地検は、ソ連領海内で国内法を適用することはむずかしいことだということで不起訴の態度をとった。そこで地元漁民は、ソ連監視船につかまらなければソ連領海内で無許可で操業してもよいのかということで問題になっている。それで、もちろん北海道ではこのために北海道漁業調整規則を改正しなければならないとか何とかというわけで、相当騒いでおりまして、中央のほうにも上がってきたと思うわけでありますが、これはまさか私もソ連の、いわゆる日本流の三海里、すぐそこまでいったものでは私はないのではないかと思うのですが、三海里を離れた所で、もしこれをやったとすると、日本政府は領海三海里だというふうに認めておるならば、当然これは日本の国内法によって処罰することができるのではないかと思うわけでありますが、この点、どうもこの辺も非常にあいまいだと思う。こういう問題が起きて現地で困っておるようですが、どうですか、水産庁長官
  36. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御指摘の問題がございまして、地検その他で問題があるという立場で法務省に照会がきていることは承知をいたしております。で、現在、法務省の内部におきまして見解を統一する。近く統一して通達をする段階にあります。内容はまだ決定いたしておりませんので、差し控えさしていただきたいと思います。
  37. 川村清一

    川村清一君 条約局長にお尋ねしたいんですが、韓国の問題は納得がいかないのですが、そのことで一応わかりました。外務省の見解もはっきりしました。そのことは私が納得したということとは違いますけれども、その点において了解いたしました。  そこで、いまのこういう問題ですね。いわゆるソ連は領海十二海里だといっており、日本政府はそれを認めていないんだ、三海里だ、こういっておったとしたならば、一体こういう問題はどういうふうに解釈しますか。
  38. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いまの問題点は、領海の中あるいはわが国で認めない、いわゆる領海の中にわが国の漁業法が適用になるかどうかという問題でございますが、非常にいろいろの問題を含んでおりまして、漁業法は日本人を属人的に拘束し得る面を含んでおるわけでございますので、単に領海であるとか領海でないとかいう問題から問題をただ片づけるだけの問題ではないわけでございまして、漁業法の適用範囲内の問題として検討が行なわれておるわけであります。領海であるからどうだということに直ちにつながっておる問題ではないわけでございます。目下法務省とわれわれとの間の検討中の問題でございます。
  39. 川村清一

    川村清一君 いまの長官の御答弁では私ちっともわからないのです。はっきりソ連の領海内に起きた事件であるから、日本の国内法でもってこれを処理することはできない、国内法を適用することはできないという、そういう考えで不起訴処分をとったという。そこで北海道水産部といたしましては、こういう違法漁船に対してどういう措置をとるかという問題が発生してきておるわけです。ところが、領海の問題であるとかないとかが問題ではないということは、一体どういうことなんですか。領海の問題が問題でないならば、安全操業の問題は簡単に片づくと思うのです。これから私は安全操業の問題をお聞きしますけれども、まずソ連の領海は何海里であるということは問題でないのですか。いろいろ漁業に関する問題を検討していくのに問題じゃないのですか。
  40. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) ソ連が十二海里を主張いたしております関係上、安全操業その他の面において十二海里の中に入りますと拿捕の問題その他が起きます。そういう意味におきまして、漁業ソ連の十二海里の問題は非常に大きな問題でございますし、安全操業上大きな問題であることは申すまでもございません。それで、それとは別に、領海及びわが国が認めがたいと見ておるが、向こうが主張しておる領海の範囲に、今度は日本人が漁業をやります場合、日本国の漁業法が適用をされてしかるべきではないか。それは領海だから適用されないのだという理論構成は成り立つかどうか、そこに問題があるという意味におきまして法務省内部でいま検討中だという意味でございます。
  41. 川村清一

    川村清一君 それなら一応わかりました。  それで大臣にお伺いします。いまの条約局長のいろいろのお話を大臣も承っておったと思うわけでありますが、ソ連は十二海里を主張しておる、日本政府は認めておらない、こういうことなんです。ところが、樺太の能登呂半島から宗谷海峡のほうに出たところに二丈岩という岩があるのです。全くの岩礁です、それは。ところがソ連は、これをソ連の領土だといっておるわけです。したがって、ソ連はその岩から半経十二海里を領海だといって主張しておるのです。そこで北海道の漁民たちは、この二丈岩の十二海里の外ですよ、十二海里の外におけるタコのから釣りなわとか、こういった漁業を安全にやらしてくれという主張と、十二海里以内の無害通行権を何とかソ連に認めさしてもらうように政府の御努力を願いたいと、こういうことを真剣になって陳情されておるわけであります。ところが日本政府は、領海は三海りだといって、十二海里などというものは日本ば認めておらないんだ、認めておらないならば、十二海里内における無害通行権、このくらいは認めさせるように最大の努力を払ってもいいじゃないですか。みんなつかまってしまう。漁をするんじゃないんですよ。ただ、そこを通行するだけなんです。かりに一歩譲って十二海里は領海としても、向こうがそう言うのだから、そこで漁民は十二海里の外におけるところの安全操業をやらせてくれということを願っているのです。これさえもなかなか容認できないというのが実態ではありませんか。外務省がはっきりそういうような言明をしているならば、もっとソ連当局に対して強腰になって、そうして要求すべきものは要求する努力を払ってしかるべきじゃないかと私は思うのでありますが、大臣どうですか、大臣のひとつ御見解をお尋ねしたい。
  42. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 私どもといたしましてもそういう方向で努力したいと思っております。特に近く五月、まだ日は確定いたしませんが、イシコフ漁業大臣も参りますのでございますので、それらの問題その他について要求すべき、また相談すべき、あるいは話し合いをすべき事柄が相当ありまするので、その機会にもまた特にわがほうとしても十分の了解を得べく努力を進めていきたい、かように存じておる次第でございます。
  43. 川村清一

    川村清一君 時間もございませんので、この問題についてはこれ以上御質問申し上げませんが、条約局長がおいでになっておられますので、ただいま大臣が言われましたように、近くソ連外務大臣もおいでになり、あるいはイシコフ漁業大臣もおいでになるといったようなことも新聞に出ておるわけでありますが、この場合において、ひとつぜひ北洋における安全操業の問題を解決していただくように努力をしていただきたい。条約局長はひとつ外務省代表という形でお聞きになっていただいて、外務大臣のほうにもよくお話ししていただいて、外務省それから農林省、ひとつ全力をあげて——私はいろいろなチーターがありますから、具体的な問題をここで披瀝してお話し申し上げたいのですが、たとえば歯舞、色丹、国後、択捉、南千島、この近海における安全操業、樺太近海における安全操業、それから最近は沿海州沖ですよ。これはもう向こうの船だって相当大きい、沿海州あたりへ行く船は相当大きい船ですから、第五十三海洋丸と同じようにみなレーダーや何か持っているわけです。したがって、十二海里ではない、日本政府が三海里と言っても漁民はきかない、みんなつかまるのですから。外務省ではそんなのんきなことを言ったって、みんな本気になって行ってつかまってしまうのですから、十二海里以内に入りませんよ、十二海里の外におってみんなつかまるのですよ、全然操業できないのです。こういうような問題はもっとやはり筋道を通して強腰になってひとつ交渉してもらわなければ私はいけないと思うのですが、向こうのほうの漁民の声を代表して私ここに強く申し上げますから、ソ連の外務大臣漁業大臣がお見えになったときに、外務省、農林省、ひとつ大いに力を合わせてこの問題の解決のために努力を払っていただきたいということを強く御要望申し上げておきたいと思います。  条約局長これで、どうもありがとうございました。  それでは、先ほどに続いてサケマスの問題についてお尋ねしたいと思います。A区域四万八千トン、B区域四万八千トン、九万六千トンの漁獲量がきまりましたが、これを一体どういうふうな配分をなさるのか。すなわち四十八度、このA区域の問題をまず一つ聞きたいと思うのですが、A区域というのは四十五度以北でありますから、したがって、四十八度以南流し網漁業もこの中に入るわけですね。この四十五度から四十八度以南の中においては、以南流し網漁業もここに入っていくわけですね。それから四十五度以北はA区域母船式の流し網は全部ここで操業するわけですね。そこで、この四十五度以北におけるA区域におけるいわゆる母船式流し網漁獲量配分、同じくA区域における以南流し網における漁獲量配分、次のB区域B区域となると非常に複雑多岐でありまして、以南流し網操業する、それからはえなわ漁業もここでやっております。それから七トン未満の沿岸の小型漁船も操業しております。それから日本マス流しも操業しておりますが、これらの階層別の業種の配分ですね、これはどういうふうに配分されるお考えか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  44. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) この問題についてはまだせっかく検討中でございます。なお、水産庁長官からひとつ。
  45. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先生十分御承知のとおり全体の漁獲量、地域としてA区域B区域に分かれております。それを営む漁業の態様はいまあげられたとおりでございます。毎年これはやっている仕事でございますので、代表団も一昨日帰りましたわけでございますので、私どもとしてはこれからその検討に入る段階でございます。基本的には不漁年でございまして、魚は先ほど来お話のように減っておるわけでございますから、皆さんの御協力を得たいという姿勢でやっておる次第でございます。
  46. 川村清一

    川村清一君 検討中であってまだ案ができておらないという御答弁でございます。それは昨年に比べてどうですか、昨年と同じお考えですか、昨年と変えるお考えですか。
  47. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まず総数が昨年より、昨年は豊漁年でございますから、大きく減っておるわけでございます、不漁年。したがって、昨年と同じという御趣旨でございますが、量的には昨年と同じというわけには全体としてとうていまいらぬわけでございます。方法が同じかという御趣旨でございますれば、その問題も含めて検討中……。
  48. 川村清一

    川村清一君 いや、それは昨年と同じかということは、それはもちろん総体が昨年より減っているのに、昨年と同じに配分されるわけがないのであって、そういうことを考えて言ったのではなくて、昨年と同じかということは配分率です。配分率が昨年と同じお考えかということをお尋ねしておる、この点はどうですか。
  49. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほどお答えしたつもりでございますが、目下検討中でございます。
  50. 川村清一

    川村清一君 検討中ではしかたないですが、それじゃ昨年の配分率というのは、たしか、昨年は六五年ですね。六三年か六四年からずっと同じ配分率で配分しておるような気がするのですが、そうじゃございませんか。
  51. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) A区域におきますものを母船グループに分けます。分け方は何年かからはちょっと記憶忘れましたが、ここ数カ年同じ率を使いまして、母船団ですか、母船サケマス漁業のワクをきめておりましたことは御指摘のとおりでございます。
  52. 川村清一

    川村清一君 ことしのお考えが発表されないとちょっとそれを批判することもできないのですが、昨年の配分の率を調べてみますというと、私の調べではこういうことになっておりますが、これが間違いであったら御訂正願いたいと思うのですが、A区域における母船式、これは十一船団で三百六十九隻、これの配分率は八一・二一%、それから四八以南、これは三百三十二隻、四十五度から四十八度までA区域において一八・七九%、それからB区域において五九・八三%、合計七八・六二%、それからB区域において、はえなわ三百六十九隻、これは二六・六一%、それから小型約千三百隻、これが七・六%、それから日本海流し、これが五・九%、これが昨年の配分率であるというふうに、私が調べたところではこうなっておりますが、これに間違いございませんか。
  53. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) A区域におきます母船式と、あとから四十五度に入ります四八流しとの間には率を使っております。たしか八二に近いと——いま先生八一・幾らとおっしゃいましたが、私の記憶では八二・幾らだと思いますが、いまちょっと探しておるのですが、見当たりません。が、大体一定の率でございます。それからその他のものの率は、実は率をはじいたものを本日持参いたしませんでしたので、そのとおりであるとちょっと申し上げかねるわけでございます。
  54. 川村清一

    川村清一君 たいした間違いがないと思いますが、間違いがあったらあとでひとつ確かな資料をいただくことにいたしまして、昨年の反省の上に立って私の意見を申し上げてひとつ御見解をお尋ねしたいと思うのですが、どうもこの配分を見ますというと、これはあらゆるものがそうなんでありますが、上のほうに厚くて下々のほうには非常に薄い。端的に言えば母船式のほうは非常に厚い。それから中小、沿岸、小型とだんだん薄くなってきておる。母船式のしわ寄せは中小にかかり、その合わさったしわ寄せは今度は沿岸にかかってくる。日本のいわゆる漁業政策の端的なあらわれをここにも現出していると思うわけでありますが、この母船式独航船三百六十九隻に対して、A区域の八〇——いま私は一と言ったら八二かもしれないというようなお話でしたが、そうすると、八割以上を母船式の独航船、母船式の漁業にこれを配分しておる。それからその次に今度は四八であります。これはA区域において約一九%、それからB区域においては約六〇%、そうしますと、B区域のことしの総漁獲量は、許容漁獲量は四万八千トン、この四万八千トンのうちの六割というものは、これは四八がこれを漁獲することができる、あと四割をはえなわと小型と日本海流しで漁獲するということ。そうしてはえなわというのは、これはもう全く内地府県の船です。北海道はたった一隻しかいない、三百六十九のうち。これが約二六・六%ですから、三割近く。で、小型は七・六%、沿岸、小型七トン未満、これは御承知のように約千三百隻あるのですよ。千三百隻に近いこの船がわずか七・六%、一割に満たないのですよ。これだけしかとれない。もっとも沖へ行けないのですから、きめてもとれないこともあるわけですが、満度にとったって一割とれないのですよ。昨年なんかまだ割り当て量を取らないうちに、もうよそのほうが全体的に満度になったからといって、まだ漁期が三日か四日あるうちに打ち切られた、これが実態なんです。このように全部下にしわ寄せされてくる、こういう点はもう少し考えてもらわなければ私はいかぬではないかと思うのです。母船には厚く、そうしてその次には四八、一番数が多くて経済的に一番困っておる零細漁民、わずか七トン未満、七トン未満といったってほとんどが五トン未満ですよ。この多数の沿岸漁民に対する漁獲量というものは一割に満たない。これはノルマなんですから、これ以上とれないのですからね。こういうところに矛盾がありませんか。こういう点をもう少し考えて、ことしの漁獲配分をきめてもらいたいと思うのでありますが、これに対する御見解を大臣からお聞きしたい。
  55. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 先ほど申しましたとおり、ソ連に行ってきた委員も帰ってきて二日目でございますので、いろいろの点もございます。もう少し検討の時期を与えていただきたいのでありますが、いま仰せられた点については、できる限り、さような問題について考慮いたしたいとは存じております。
  56. 川村清一

    川村清一君 次に、規制措置についてお尋ねいたします。時間の関係がありますので大急ぎてやりたいと思いますが、今年度取りきめられた規制措置の中に、以南流し網は七月一日から十四日まで、北緯四十八度から四十六度の間、東経百六十度から百六十五度の間、休漁措置をとられたわけであります。一体ここに入る許可証は六月二十一日以降与えられるわけであります。かりに六月二十一日ここに入ったといたしましても、この二週間の休漁は、この以南流し網漁民にとっては相当の手痛い規制措置であろうと私は思うわけであります。したがって、この規制でここへ入れませんから、この期間に——以南は三百三十二隻あるわけでありますから、三百三十二隻の船がここへ入れないから、この狭いところに全部なだれ込みますから、したがって、漁場が相当混乱するのではないか、大臣、その点は十分御承知ないかと思いますけれども流し網はくっついておるので、一隻は相当の網を持っておるわけですから、一隻の船が網をずっと張ったら、また間を置いてその次の船が網を張らなければならぬから、相当の距離をとる。この三百三十二隻の船がこの狭い漁場に殺到したならば混乱が起きるのではないかと、この点が心配されるわけであります。したがって、まず全鮭連あたりではこの漁場を、これは国内措置でできるわけでありますから、四八以南でありますと。そこで母船式が操業しておる。ここをもっと東のほうにも漁場を与えてくれと、そういう強い要望があるようでございますが、私も当然の要求だろうと考えるわけですが、長官どうですか。
  57. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) カムチャッカ半島寄りにA地区、B地区、ソ連の膨大な禁漁区の要請がありますが、だいぶ詰めまして十五日間の禁漁区をつくりましたのは、B地区にもありますし、A地区にもございます。で、全鮭連の方々はそれができたから、狭いから、他人——他人というと語弊がありますが、母船のほうから一部よこせとおっしゃっておることは、先生のおっしゃったとおりであります。全体が詰まっておりますから、どうしてもほかのほうに目がうつる気持ちもわからないでもないわけでございます。それから操業が、船が錯綜して網が云々のお話も、私のほうからは、毎年大ぜいの人が行って監督をしておる経験を多々持っておるわけでございますので、そこら辺は十分合理的に判断をいたしたい。先ほど、現在検討中でございますと申しましたのは、いろいろの方々が、きまったワク内で御主張をいっぱいされておるわけでございます。それらは、相矛盾する内容をみんな持っておるわけでございますので、よく各方面の御意見を聞いた上で決定をいたしたいという趣旨で、目下検討中と申し上げたわけであります。基本的には、冒頭に申し上げましたとおり、ことしの措置であり、マス不漁措置として、共通の財産でございますマスを保護するわけでございますから、それぞれ協力をしていただきたい、こういう気持ちを冒頭に申し上げたのも、さような趣旨でございます。
  58. 川村清一

    川村清一君 ことしはマス不漁年であり、共通の資源であるマス資源でありますので、これはもうみんなが協力して大事にしなければならないことは理の当然であって、その長官のお考えには私も全面的に賛意を表するわけであります。しかしながら、いま申し上げたような事情がございますので、各般のいわゆる当事者と十分協議をされて、先ほど私が申し上げたように、上には厚く、だんだんしわ寄せが下にきて、一番下には一番重圧をかけるという、そういうことになることだけは、ぜひやめていただきたいということを考えるわけであります。これはもう地図を見れば一番わかるわけでありまして、これは母船式のほうはこんな広い海を持っているわけですから。こんな広い海をね。その次には、以南はこの辺だけでしょう。それで今度は、小型なんというのは、ここだけですよ。だから、この母船のこの広い海、ここはもう四八は行けないのですから、四十八度以北は行けないのですから、ここでは四十八度以南において、東経百六十五度ですか、この中においてひとつ十分その点は配慮してしかるべきではないかと思うわけでございます。その次に、私がお尋ねをしたいことは、これは漁業白書のときにもお尋ねをしたのでありますが、いわゆる母船——大資本会社と、それに付属する独航船——これは中小漁業でありますね。そこで、母船と独航船との間においては、まず買魚価格において、独占は、大資本は中資本を収奪しているということを申し上げたい。そこで、母船が独航船から買う、買魚価格です。これは昨年はどうですか、長官、どのくらいの値段ですか。
  59. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答え申し上げます。四十年の漁種別買魚価格でございますが、ベニザケがキロ二百四十三円、シロザケが百三十一円八十銭、マスが百六円、ギンザケが百四十三円八十九銭、マスノスケが百四十三円八十一銭、前年度の一二%アップをやったように、資料としては持っております。
  60. 川村清一

    川村清一君 それは昨年の母船が独航船から買うキロ当たりの価格でございますが、今度、中小が、以南流し網あたりが釧路や花咲に水揚げする市場価格は一体幾らですか。
  61. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 手元の資料に入っておりませんので後刻調べさせていただきます。
  62. 川村清一

    川村清一君 どうもきょうは長官だけがおいでになって、大臣と次官と偉い人ばかりそこにおって、それを補佐するのがだれも来ていないというのはどういうことなんですか。いつも委員会のときには補佐官が一ぱい来ているのに、きょうは来ておらぬが、どうも長官のような、あまり偉い人に聞くのは恐縮なんで、こういうようなのは、すぐいつもなら、うしろのほうからひょっとメモを持ってくる人がいるのに、きょうはさっぱりいないですね。政府の調査によると、昨年の市場価格はベニで六百十四円です。シロで三百七十三円です。マスで二百四十二円です。ところが、この四八が釧路やあるいは花咲に揚げるのは、腹切りですから、腹を切っているわけですから。それから独航船が母船に揚げる母船の価格は、キロ当たりといっても腹があるわけです。ですから、腹の入った一匹と、腹を切った一匹じゃ全然重さが違うわけですね。ですから、量から言うならば市場価格のほうがずっと多いわけです。市場に揚げるのは、一キロといっても肉の量が多いです。ところが母船のほうは、一キロといってもはらわたが入っているのですから、これは肉の、使いものになるところは少ないわけです。それで、ベニ一つ例にとるならば、二百四十三円二十六銭、これが母船が独航船から海上で買う価格であります。それからその他の中小は、陸へきて、陸へ揚げる価格はキロ六百十四円であります。マス母船は百六円、それから市場は二百四十二円、このように、いわゆる母船が独航船から買う価格というのは非常に安いのです。だから、私はこれを収奪している、こういうことを申し上げている。そのほか、金融面、経営面、今度は市場価格を形成する過程において、流通の過程において、独占は、いわゆる大資本は、はっきり名前をいえば、大洋であるとか、日魯であるとか、日水であるとか、北洋であるとかいったものは、これは非常に収益をあげているわけであります。しかも彼らは、これを決して鮮魚で売るのじゃないのです。ほとんどかん詰めです。こんな安い価格で買って、かん詰めでまたもうけるわけです。  そこで、大臣にお尋ねしたいのですが、先般、この委員会では、乳価、畜産物の価格問題がいろいろ議論になって、その結果、乳業メーカーのいわゆる収益率といいますか、経営内容といいますか、いわゆる資料を出せという要求が矢山委員から出ました。これは行政の秘密になるとかということで、それじゃ名前をあげなくてもいいから、たとえばABCといったようなことをつけてもいいからといったら、それは出しますという御答弁であったわけです。いま、かりに私がここで、大洋であるとか、日魯であるとか、日水であるとかといった、そういう会社のサケマスによる利益がはっきりわかるような、経理内容が明らかになるようなものを出していただきたいという資料要求をした場合に、これは出していただけますか、どうですか。
  63. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 私、結論から申しますと、困難だろうと存じます。御承知のとおり漁労部門は多角経営をやっておりますし、それから陸上部門、いろいろございまして、結局非常に複雑な割り掛け論の問題に相なろうと思います。いまサケマスに限定しての収支ということになると非常に困難な問題になるだろうと考えますし、かつ、企業内部の問題でございますので、公開の資料から推定する以外には手はない。推定としては困難だろうと、かように思っております。
  64. 川村清一

    川村清一君 困難だろうということで、出されないだろうということを予想してちょっと聞いてみただけです。それほど複雑な、乳業会社のときも、あれも相当複雑でしたが、それの何倍も複雑なんですから、これはとても出てこないだろうと思う。しかし、それでいいかということなんです。またそれを出してくれというのは、私もそれが出てきたって私自身でわからないかもしれないのですが、ただ、もう少し納得のいくような価格でもって母船がこの独航船から魚を買う、こういうことになってもらわなければ私はいけない。こう思うわけです。そこで、大臣にお尋ねしたいのですが、毎年母船と独航船との間に、いわゆる買魚価格でもって交渉が始まるわけです。もうことしもこれから始まると思いますが、なかなかこれはきまらないのです。最終的にはこれはもう泣き寝入りさせられるのであります。その最大のものは金融面、経営面に基づいて相当押されておりますから、もう母船側からそれは資金とか何か金を借りていますから。それともう一つは、名目は個人の名前になって経営している独航船だって、実質経営は母船が持っているのがたくさんある。経営者は川村清一だろうけれども、ほんとうの経営者は大洋漁業だという、日魯漁業だという、これがたくさんある。ですから、そういう関係の中で、これは最後は母船側に非常に押さえられてしまって、泣き泣きこういう価格でもって取りきめられていくが、これがいままでの経過なんです。ことしは、特に申し上げたいのは、昨年よりも漁獲量が減ったということなんであります。それから一番魚のとれるその期間において、魚動があるその区域、これが二週間休漁されるということです。こういうようなことから、昨年は一隻当たりの割り当ては百二十四トン、ところが、ことしは総体量が減りましたから、独航船一隻当たりの割り当ては百六トンであります。これはノルマ、いわゆる量が減っているわけでありますから、価格において相当上げてもらわなければ、これは母船の利益に比例して独航船方の利益はずっと下がると、こういう結果になるわけであります。したがって、いままでの魚価交渉というものは、一体農林省は何らかタッチするのですか、長官。全然これは自由経済なんだから売り手と買い手の中で話し合ってきめろということですか、何らかやはり指導するわけですか、いままではどうなんですか。
  65. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 両方が一番よくわかっている人たちでありますから、団体交渉が一番いいと思って特に指導はいたしておりません。
  66. 川村清一

    川村清一君 団体交渉でやれれば一番いいわけです、労使、それがいわゆる対々の力であるならば。対々の力で、その同じ力でもって団体交渉するのなら一番いいわけでありますけれども先ほど申し上げましたように、独航船側は弱いのです。ですから団体交渉にしましても、使用者のほうが強くて一方は全然問題にならぬのが実態なんだから、だから、ただ傍観ということでなくて、そうかといって、これに行政庁が干渉することも、それはできないと私も思います。思いますけれども、こういう実情を少しでも緩和して、そうしてただ母船側にばかりもうけさせるような措置にならないように配慮し、陰ながらのやはり指導、助言が必要じゃないかと、私はかように考えるわけですが、大臣いかがですか。
  67. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 水産庁長官お答えしたとおりでありますが、私も気持ちにおいては、またできればいまお説のようなことに進みたいと、こう考えてはおります。
  68. 川村清一

    川村清一君 できればということではなくて、ぜひそういうふうにやっていただきたいと私は思います。  次に、最後にお尋ねいたしますが、オホーツク海のサケマス漁業の開放の問題についてお尋ねしたいと思います。これは大臣も先刻御承知のように、一九五九年から全面的にオホーツク海におけるサケマス漁業というものは禁止されたわけであります。その経過は、一九五八年までは、これはここで操業しておったんですよ。ところがソ連側のいわゆるサケマス資源の減少というものを根拠にしての強い主張、そしてそのとき日本政府は、一九五八年に、一万トンを全体量でふやすという引きかえで、一九五九年からオホーツク海を全面的に禁漁区域にしてしまった。これはわれわれとしては何といっても納得できないのであります。これは大臣、地図をひとつごらんください。領海もへちまもこれはないですよ。これは日本の国の基地から定置以外はサケマスはとれないですから、この基地にサケマスがきても、沿岸の漁民はこれをとったらこれは違反でもってつかまってしまうのです。建て網定置だけはとれますけれどもね。いわゆる共同漁業権以外はだめだとか、領海はいわゆる三海里ではだめだというなら、これは話はわかるといたしましても、まさか基地まではサケ・マケはこないのですけれどもね。とにかく基地から前面禁漁と、こういうことになってしまったわけですよ。しかもこのオホーツク海沿岸の漁民たちは年間二億三千粒くらいのいわゆる養殖、増殖事業に協力しておるわけですよ。そうして協力して、それが結局産卵し、ふ化して稚魚になって川から出ていく。そうすると、サケは四年たつと帰ってくる。その帰ってきたものをとれない。定置漁業だけはとれるけれども沿岸漁業はとれない。こういうようなことから、しかも大臣も御承知のように、オホーツク海というのは、一年間の約半分近くは結氷してしまうのです。氷が張ってしまうのです。全然操業ができないのですね。非常に貧乏な漁民が多いのです、オホーツク海を開放していただいても。そこで、この沿岸漁民だけでも小型漁船によってサケマスをとらしてもらいたいという強い要望があるわけです。水産庁のほうにも何回も陳情にこられるので、もう先刻大臣長官も御承知だと思うのです。しかし、これは日本ソ連との約束で一九五九年以降やめたということでできないわけですが、この条約もことしでもっていわゆる条約期限十年が切れるわけですよ。来年から新しい条約期を迎えるわけです。当然、条約改定上いろいろ議論が起きてくると思うわけです。この際にぜひひとつオホーツク海の開放問題を取り上げてもらって、沿岸漁民の要望を実現するように御努力を願いたい、また、そうすることが当然でなはいか。それが大きく資源量影響するとか何とかいうことならばこれは別としましても、この点は先ほど水産庁長官が冒頭、日本資源研究というものは、決してソ連に負けておらぬ。世界一流の研究をしておるというのですから、そういう研究の結果、そんなことをやったらオホーツク海の資源は全然死滅してしまうといったような確かなデータでもあるならいざ知らず、こういうような状態でございますので、ぜひひとつこのために御努力をしていただきたいと、こう考えるわけでありますが、これに対する大臣の責任ある御回答をいただきたい。
  69. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いまのこのオホーツク海の問題については、ずっと経過を、大きな経過をたどってまいりましたことでもありまするし、また資源問題等もございまするので、私どもとしてはでき得る限りこれらの問題の解決にかかってまいりたいと思いますが、以上のようなものでございまするので、いますぐというわけにもなかなか困難であろうかと思います。これらの点については、十分各種の問題から検討を加えて、その方向に向かって努力を払うということで御了承願いたいと思います。
  70. 川村清一

    川村清一君 サケマスに関する問題は、以上で打ち切りたいと思いますが、日ソ漁業条約の改定期を迎えるわけでございますから、この中でいま申し上げましたこのことも、ぜひひとつ問題点として取り上げられて、日ソとの間に十分話し合ってもらいたい。私は何も昔やっておったから、またこの中に母船を入れろとか、母船式の漁業を入れろとか、あるいは中部の以南流し網漁業を入れろとか、こういうことを申しておるのではないのであって、太平洋の小型漁船のような、ほんとうに零細漁民のいわゆる漁場を与えるという意味において、この実現のためにぜひ御努力を願いたいと、こういうことを要望しておるわけでありますから、この点を十分お含みの上、御善処方を要望しておきたいと存じます。  それから日ソ漁業条約改定に関して、いろいろ考えを申し上げてお聞きしたいこともございますけれども、これはまたの機会に譲って、本日はこれでこのサケマスのほうは打ち切らせていただいて、最後にちょっと時間をお借りして、底びき漁業の問題について二、三お聞きしたいと思います。  この沿岸漁業を振興するため、沿岸構造改善事業をいろいろ推進しております。そして、とる漁業から育てる漁業漁業構造を改善されていることは、これは予算不足のために事業が遅々として進まないで、所期の成果をなかなかあげ得ないことば遺憾に思いますけれども、基本的にはその方針はけっこうなことだと私は思っているわけであります。しかし、考えてみると、一方には育てる漁業に相反する漁業、すなわち資源を乱獲する、特にまだ経済価値を持たない稚魚を野方図に漁獲し、あるいは零細漁民の魚具、魚網に多大な損害を与える中型機船底びき網漁業沿岸漁業と漁場を競合して存在していることは、これはまことに矛盾した形でないかと私は思うわけです。政府の沿岸振興の政策に相反した漁業ではないかと私は思うのであります。したがって、政府がほんとうに沿岸漁業を振興して、沿岸漁民の生活向上をしようとして考えておるならば、沿岸から一隻でも多くのこの底びき漁船を減らして、そして底びき漁業操業しておったその漁場を沿岸漁民に与えてやるべきではないかと思うわけであります。そこで、この底びき漁業をふやすためには一つには禁止区域の拡大があり、一つには底びきの北洋転換があるわけであります。このことは農林省もいろいろ力を入れてやっていることは、先般、国会に提出されました漁業白書にも明らかに書かれているわけであります。そこで、北海道における現行の底びき禁止区域は昭和三十三年に改正実施されたものであります。しかし、その後構造改善事業が非常に進んでまいってきた。こういったようなことから、沿岸漁民の中から再度底びき禁止区域を拡大してもらいたい、拡大すべきである、こういう要求運動が強力に全道的に起きているわけであります。水産庁も当然この動きは御承知だと思うわけでありますが、私はやはり水産庁としては沿岸漁民を守る立場からできるだけ底びきの禁止区域を拡大していく。   〔委員長退席、理事和田鶴一君着席〕 しかしそうかといって底びき漁民もこれは中小企業でありますから、これは皆死んでしまえということではないのであります。中小企業としての底びきも生かさなければならないけれども、それよりも第一義的に多数の零細な沿岸漁民をどうするか。こういう立場から底びきの生きる道を考えながら底びきの禁止ラインというものを拡大していくべきではないか。こういう作業をやはり誠意をもってすべきではないかと私は思うのでありますが、これに対して大臣の御見解を承りたい。
  71. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いまお話の点でありますが、その一つの大きな柱として、北洋海域の底びき網漁業の問題を述べられておるわけでありますが、これは初期の試験操業期を経まして最近やや安定の兆を見せているように思われます。したがって、資源の確保や大型化に伴う負担の増加等、経営採算の問題等もありまして、検討すべき点も少なくないので、いま直ちに許可件数をふやすということはどうかと考えておるのでありますが、底びき網漁業北洋転換については、許可の一斉更新の時期、来年になると思いますが、その時期までには当方といたしましても検討を進めるようにいたしたい。かように考えておるわけでございます。
  72. 川村清一

    川村清一君 いまは禁止区域の拡大の問題と北洋転換の問題とまぜて大臣お答えになりましたが、私は北洋転換のことは聞いてないのであって、禁止区域拡大の問題を聞いているので、メモにそう書いてあったからお答えになったと思いますが、それは私の質問をよく聞いてないということになって、はなはだ、私はまじめに質問しているのですから、やっぱりよく聞いてお答えいただかないと私は困ると思います。それで禁止区域拡大の問題でございますが、まあ時間がないですから答弁はいいですが、いろいろ問題があると私承知している。私がこう言うと、今度はまた北海道の底びき団体からやんさやんさと反対の運動が水産庁になされてくることもよく知っているわけです。これは私は昭和三十三年に体験して全くよく知っているわけです。私ども沿岸代表がわんわんやってくると、底びきのほうは金がたくさんありますから、当時三百隻の底びき船があって、一隻から十万円ずつ運動費を出したって三千万円ですよ。そしてその三千万円の金をもって一カ月くらい、農林省の八階の水産庁にいくと、毎日北海道の底びき団体がきて、われわれの反対運動をまた反対しておったからよくわかるのですけれども、しかし、沿岸のほうの漁師のほうが数が多くて、そして彼らは東京に陳情にくるといってもこられないのですよ、その金がないから。たまたま一人何ぼかずつ出し合ってきたって、三日もたてば宿賃もなくなってみんな帰ってしまう。こういう沿岸漁民の代表の運動と底びきの代表の運動と、これは一緒にやらしたらとっても話にならぬわけですよ。農林省のほうは底びきのほうの言うことばかり聞いてやられたらかなわぬですよ。私は少なくとも沿岸の数多い漁民の代表として申し上げておるのですから、ぜひこの点はひとつまじめに考えていただきたいということを心から御要望申し上げる次第です。  それから、次に北洋転換の話が出ましたが、これは北洋転換は、実は長官よくお聞きしておいていただきたいのですが、北海道は沿岸振興のために約二百九十隻あった底びき船を、昭和三十八年から実施されました第二期総合開発計画の中で、完成年度の昭和四十五年度までの間に百隻を北洋に転換するということをちゃんと盛り込んでおるわけです。その第二期総合開発計画というものは、御承知のように閣議で決定されておるわけであります。したがって、政府は責任があるのです、その実現のために。ところが、その百隻のうち、この前期三カ年の間に六十隻を北洋に転換する、こういう計画なんですよ。もっともこの計画を立てる前には、北海道が北洋の底魚資源調査を一年かかって十分やって、その北海道の漁船による——もちろんこれは水産庁と話し合って、水産庁の許可を得て水産庁の援助も受けるのですが、そして底魚資源研究をやって、その調査の上に積み上げてこの計画を立てたわけであります。ところが現在に至るも六十隻出なくて、五十二隻、この間一隻行ったそうですから五十三隻転換したそうです。まだ前期の六十隻のうちで七隻残っているのですよ。北海道では転換するという希望者があるのです。ところが聞くところによると、水産庁は、もう北洋底びきは北海道には許さないのだ、これで打ち切るんだ、こういうような方針で行政を指向されておるやに私は聞いておるのでありますが、もしもそれが事実であるとするならば、これはゆゆしき問題なんであります。閣議の決定を見ておる計画の実施なんでありますから、これはまさかそういうことはないと思うのでありますが、北海道から北洋に転換ずるというのはなまやさしいことではないのです。三百トン型の船を一隻つくれば約一億五千万要るのです。この一億五千万円の金をかけて、投資して、そうして三百トン型の底びき船をつくって北洋に転換していく。そのことは、一つには北洋底びき転換が企業採算がとれる、とれるという見通しがあるから行くわけであります。そのことによって、この二百九十隻も沿岸にいる底びきを百隻やっちゃうわけですから、それだけ底びき船が沿岸からいなくなっちゃうわけです。それは先ほど言ったように、一つには沿岸の禁止区域を拡大する、一つには底びきを一隻でも減らず、そのことによって底びきの漁場を沿岸漁民に開放する、そのことによって沿岸漁民が非常に助かるんです。沿岸漁業も振興する、こういうことになるわけです。  そこで長官にお尋ねしたいことは、北洋転換は北海道に許さないのだ、許可しないのだといったような、そういううわさをちょっと耳にしたのでありますが、それは事実ですか。
  73. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三十五年に転換計画を立てまして、逐次北海道から三陸転換を実行してまいったわけであります。三十七年に漁業法が施行になりまして、そしてその過程におきまして北海道の転換のテンポと内地の転換のテンポ等調整いたしまして、一応第一次が終わったわけでございます。そこで、今後におきましては、当然、新漁業法によりまして北洋転換をする場合には一定数を公示して、それから転換をさせるというのが法律上要るわけでございます。そこで、私どもは北海道に転換を認めないとか、北洋転換を認めないとかということをいっているわけではございませんで、新しく北洋の転換について公示をして立候補するとすれば、この段階におきまして数はいをやるというわけにはまいらない。かつ北洋の転換出先き漁場におきます資源の問題、あるいは採算の問題等を総合的に見まして、そして一定の量の公示をして、それから各県からそこに行っていただく、こういうステップがどうしても要るということでございます。そこで、北海道からの転換を認めないという意味ではございませんで、北洋転換をあらためて法の手続に従ってやる以上は、どの程度のものをまず入れるか、そして、どういう形においてそれを条件で入れていくか。その場合に、どこの県は入れないとか何は入れないという問題ではございません。そういう手続を要する。一方、北洋の転換先漁業の経営の態様につきましては、先ほど大臣がちょっと触れましたように、ようやく安定をした段階でございますから、またやみくもに北洋転換船を大幅に投入をいたしますと、共倒れの問題その他が起っては申しわけないという立場で、慎重に考えていまの計画で進みたい。繰り返し申し上げますが、北海道の転換を認めないというようなことは全然考えておりません。
  74. 川村清一

    川村清一君 それじゃ簡単に、重ねてそこのところをもう一度お尋ねしますが、前期計画の六十隻を北洋に転換するという北海道の計画は、水産庁は認めていらっしゃったわけでしょう、どうですか、それは。
  75. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 認めておりましたから、その段階において直ちにこれが出ておりましたら無条件で進行したはずなのでございます。ところが北海道の底びきの問題は、やはり先生おっしゃいましたとおり、北海道底びきの特殊性の問題がありまして、現実の問題としてスムーズにいかないという時期がございました。一定数はすぐ出てきたわけですが、一定数はそこまで達しない。その間に漁業法の改正がございました。そして一方、片方では北海道底びきほど漁場の有利でない内地府県の方が自分のほうに行かしてくれという問題もございました。そこで経過的には振りかえが行なわれた面もあるわけでございます。そこで、ともかく第一次の三十五年の計画につきましては一応のピリオドを打ってあるわけでございますが、このことはくどいようでございますが、新漁業法によって新しく公示して北海道からも出すことを指定する。前の残りだけを全然別扱いにするというわけにはまいらないだろう、こういう趣旨でございます。
  76. 川村清一

    川村清一君 その点はその話としてわかりました。そこで、ちょっと、長官も御承知かと思うのですが、六十隻のうち五十二隻行って八隻残った。その八隻がなぜなかなかスムーズに行かなかったかということを、一体どういうものが残ったかということを、これはまあ北海道水産部からの御報告で御承知だと思うわけでありますが、これは大手ですよ。一般の底びきはやみくものようなところをやはり強い行政指導によって相当無理して行ったんですよ。その大手だけが——大手というのは実にわがまま者であって、そうしてはっきりもうかるということがわからぬというと腰を上げないわけですよ。そうして下のほうのものはやみくもなところに、一億五千万も借金をして船をつくって、転換をして、やっぱり一つには北海道の沿岸漁業の振興のために、道の要請に従っていった、水産庁の指導にやっぱり従っていったといういきさつをひとつ考えてもらわなければならぬと思う。それから、もう一つの期間が終わったんだから残りをいまやるということはできないということは一応わかりましたが、来年度の許可の更新期、この許可更新についてはまたいずれ機会を見て私は十分ひとつお尋ねしたいと思いますが、この点について、十分ひとつ考えていただきたいと思う。  最後に一つお聞きして、これで終わりますが、ともかくにも底びき漁業というのは農林大臣が許可しているわけですからね。したがって、底びきのやることに対しては、やっぱり農林大臣が責任を持って行なってもらいたい。許可権者である農林大臣が責任を持っていただかなければできないと思うのですよ。底びきの漁船がもし不法違反行為等をした場合においては、農林大臣の責任においてこれを厳重に取り締まってもらわなければならぬ。また取り締まる私は義務が当然あると思うわけであります。ところが、これは北海道において沿岸を荒す底びきの中には、北海道だけの底びき船でなくて、内地の底びき船がいわゆる入り会いをしてきて、これはもう全く無責任な不法行為をやるわけです。これは船は大きいですし、沿岸の船なんかが追いかけたところでとても……、へたするというと保安庁の小さな巡視船なんかが追っかけたって底びき船のほうが早い。どろぼうのほうが巡査より早いわけだからどんどん逃げてしまう。それから無線から何から全部装備しているから、いま保安庁の船が行ったとか、監視船が行ったとかいう陸のほうからちゃんと無線で連絡してちゃっちゃっと逃げてしまいますよ。こういうしかけで実に沿岸を荒らしている。沿岸の漁民は泣かされているわけですよ。ですから、こういう点はひとつぜひ責任を持って厳重に取り締まっていただきたい。漁業白書にも書いてあるのですから、書いてあるとおりにひとつやっていただきたいということを強く要望します。ひとつ大臣の御決意を承って、私の質問を終わります。
  77. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) お説のとおり取り締まりについては厳正にやりたい、かように存じます。
  78. 和田鶴一

    ○理事(和田鶴一君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  79. 和田鶴一

    ○理事(和田鶴一君) 次に、農業の所得格差に関する件について質疑を行ないます。
  80. 仲原善一

    ○仲原善一君 私は、農業の所得の格差と申しますか、いわゆる他産業と農業と比較して所得が非常に格差がある。この格差論について若干の疑問があるものでございますので、その点をただしたいと思います。これは農業基本法の第一条に農業の生産性ということがうたわれて以来、非常に農業政策の上で基本に流れる問題としてずいぶんあちらこちらで格差論が喧伝されております。農業のほうの所得が工業生産に比べて三分の一、四分の一だということがずいぶん言われて回っております。これは一つのムードになっておりまして、農林省をはじめ、地方の県庁に行っても、町村に行っても、農業は非常に格差があってもうからぬものだということで、いろいろ指導者が指導している。これはある意味におきまして、農業自身に対する警告であったり、あるいは激励であったり、あるいは農業構造改善を推進していくための一つの反省材料であったり、そういうことに本来ならば使わるべき一つ議論であろうと思いますけれども、これが逆に、農業はもうからぬものだということに立ちまして、各方面からいろいろな影響が出てまいっております。たとえば農業を軽視する思想もそこから生まれております。日本の財界関係のほうから見ましても、そういう生産性の低い、コストの高い農産物は日本で生産しなくても、これは外国から買い入れて、安い食糧を入れたほうがいいんじゃないかと、いわゆる日本の農業はそういう期待しなくてもいいというような思想にまで展開しまするし、それから農業の内部でもそういうもうからぬ農業に従事して回ってはつまらぬので、これからもうかる工業なり、都会に出ていったらいいんじゃないかということで、ますます都会への流出に拍車をかけているというようなことにもなります。   〔理事和田鶴一君退席、委員長着席〕 それから、一例でございますけれども、地方の中学を卒業して、これから高等学校に進学しようという場合に、学校の先生相談にいくと、お前は非常に成績がいいからひとつ普通科にいけ、お前はなかなかうまくいっていないようだから農業方向にでもいけというような指導をしている向きもございます。こういうことがだんだん農業を衰微させる一つの大きな原因になっております。農民自身のほうから言いますと、また非常に劣等感も出てまいります。そして悪い意味の依頼心も出てくる。ここ数年間農業の格差論というものの影響は各方面にあらわれてきていると考えます。ところが、いわゆる工業と農業の生産性の比較ということについて、はたして農林省のあげておる数字が正しいかどうか、そんなに格差があるかどうかということを反省してみる必要があると思います。ことしの白書にも出ておりますが、一人当たりの農業所得は十三万七千円、製造業者、いわゆる工業のほうは四十七万四千円、そのくらいの格差があるという数字が白書にはっきりと出ておるわけです。この数字はどういうふうにして出たかと申しますと、日本全体の農業の総所得を、それに就業している農業の総人口で割るというかっこうでやっております。たとえば、農業の総所得は一兆八千三百二十二億円、これは三十九年であります。これを農業に従事している人口千百四十八万人というもので割ってそういう数字を出す。同様のことを工業の総所得について、工業に従事している人で割って、その開きが十三万七千円と四十七万四千円という数字になるわけです。これをある意味での錯覚に陥って、これはたいへんなことだということを農民自身も考え、また指導者もそういうふうに考えている。この数字をはじいたいわゆる農林省の人たち、あるいは学者の中では、これが即いわゆる比較する数字でないということはよく承知していると思いますけれども、農民の受ける感じは、こんなに開きがあるのだというふうに感じは受け取るわけであります。そこで、どういうふうな理解をここにするべき必要があるかということを考えますと、いわゆる分子になっている、割られるほうの一兆八千三百二十二億というものは、これはいわゆる農業の純生産額であって、付加価値の量であるというものでございます。どういうふうにして計算するかと申しますと、農業の総生産額から、肥料だとか、えさだとか、農薬だとか、そういう物財の消耗部分と、それからいわゆる固定資産の償却分、そういうものを全部差し引いたものがいわゆる付加価値の量であって、いわゆる農業所得ということになっておるわけでございます。これをいまの就業人口一千百四十八万というもので割ったのが十三万七千円という数になるわけでございます。同様にして工業のほうも、いわゆる消耗する物財を全部引いて就業する人口で割ってみる、これが四十七万四千円。ところが出た四十七万四千円そのものが全部これは工業に従事している人のふところにそっくり入るものじゃないわけでございます。農業のほうだとこれは全部入る。なぜかと申しますと、分配論で皆さんも御存じのとおりでありますが、土地については地代、資本については利子、労働については賃金、企業については利潤、こういう分配がございますが、農業のほうは、御承知のとおりに大部分が自作農でございます。したがって、企業利潤の分も、資本利子の分も、労賃の分も、地代の分もそっくり自分のものに入ってきます。そうみて差しつかえないと思います。十三万七千円そっくり入る。ところが工業のほうは、これは御存じのとおり膨大な設備資金の投資をやっております。ちょっと調べたわけでございますが、三十九年度で工業だけでも、新しく設備投資に加わったものが一兆三千二百七十五億円という数が三十九年一年だけで、それだけの投資がしてあるわけでございます。これに対しては、当然投資した利子というものが差し引かれなければならぬ。これが一年間でございますから、かりに十年とすれば、これはその算術平均どおりに累積しておるわけでもありますまいけれども、おそらく十兆から二十兆くらいの設備投資資金というものが工業にあるわけです。それに対する利子というものを全部その所得の中から払わなければならぬわけです。それから企業利潤、これもやはり株主に対する配当というもので全部引かれています。そういう引かれるべきものが、地代、利子、利潤、そういうものを差し引いたものを、いわゆる比較せなければならぬということになります。これをかりに引いて計算してみますと、おそらくこれは農業と工業とのほんとうにふところに入る、就業している人たちのふところぐあいに影響する金額についてはそんなに開きがないということが想像されます。これはもっとくわしく計算してみれば出ると思いますけれども、十三万と四十七万という開きには絶対になりません。おそらく二十万ちょっとと十三万という数になるだろうと私は考えております。そういう点をただ無批判に三倍も四倍もの開きがあるということをあまりに喧伝しすぎて、オーバーに言い過ぎておるという点が、どうも私はふに落ちませんので、その点についてもう少し検討してもらったらどうだろうか。どういう検討をするかと申しますと、同じこういうものを使う場合にしても、実働時間と申しますか、労働をやる場合に農業従事者は三時間なり五時間で終わるようなこともございます。工業労働者のほうはこれは八時間労働というようなこともございますので、単なる就業人口だけでなしに、それに働いた実働した時間というものをあわせて考えてやるようなことをやってみたらどうか。同時に差し引くべきもの、ふところに入らぬものは全部差し引いて計算したらどうか。そういうようなことを一ぺん試算としてでもやってもらえば、そんなに農業と工業との所得の開きがあるものじゃないということを感じますので、まず第一に、その点の御意見を承りたいと思います。
  81. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) 仲原委員の言われる問題でございますが、非常に御研究になっておりまするので、私もこの問題について悩みを持たないじゃございません。実はやはり相当悩みを持っておる。しかし、御存じであろうと思います、これは申し上げるまでもないと思いますが、格差の問題にいたしましても、二八・八%が三〇%に上がった、こういう問題をやっております。そうすると、都会のほうと工業との関係においてまるで三分の一、それが二八・八%から三〇%に上がったというところを示しておるように見る点について、いま仲原委員が申されたような点については、私もその点について同様の煩悶を持っておるわけでございます。しかし、これがほとんど多数の説として述べられておるという問題でもありまするのでありますが、私どもとしてはこれはパーセントというよりも二八・八%が三〇%に上がったというところに重点を置いて見ていきたい、こう考えておるようなわけでございます。それからまたいま言われたような問題につきましては、生産性の問題ということにいたしまして、これはアメリカにおいては生産性の問題は、仲原委員も十分御存じであろうと思いますが、非常に研究いたしております。その研究内容を見ましても、この前、私も五年前にまいりましたのでありますが、サンフランシスコの近辺でありますが、あすこの大学に非常な研究室がございます。それからもう一つ、ちょっといま度忘れしておりますが、たくさん研究をやっておりまして、ただ単に生産性といっても、それに対するいろいろな分類をし、非常に広範な研究でございますが、日本の場合は労働生産性と簡単にそれを述べていろいろの結論を出しておるということがあるように思われます。しかし、現在さような問題からいろいろ論議されておるという問題がございまするが、われわれとしてはその際に二八・八%から三〇%に上がったその努力、そういう変遷の面を十分見ていきたいと、こう考えております。これらについて、的確に何か出す方法がもっとありそうなものじゃないか、もっと研究、検討すべきであるのじゃないかという点については御同感でありまして、何かこれらの根本的な一つの施策をいたさなければならないように思うのでございまするが、なかなか、いろいろそれをやりまする側におきましても的確なものが出てこないというようなことでありまするので、この変遷の面を十分見ていただこう、こういうふうに考えておるわけでございます、一つは。それから一つは、いま仰せのとおりに、この労働時間から見ていったらどうかというような問題もありまするので、本年の農業白書の中にも、時間で見た場合はどうなるか、いわゆる労働時間ですね、作業時間から見たらどうなるかといったような点もつけ加えてこれらを記載いたしておりまするし、その他補充すべき点についてはこれらの点を補充して、考える資料となるべきものをできる限り白書の中にも取り入れておるようなわけでございます。ただ、それを十分それらの問題をこなして、そして全体の了承、いわゆる賛成を得るところまでまだいっていないわけでございます。農政審議会におきましても、一つの問題を出しましてもたいへんなそこに議論がありまするようなわけでございまして、そういういろいろな点がございまするので、これらの問題についてはさらに一段と努力を払ってまいりたい、こう考えておりますが、現在のところ、どうもこれを別のものにかえるだけの結論を得られないということでございます。したがいまして、繰り返して申すようでございまするが、変遷、いわゆる動きをよくこれによって見ていくということにひとつ御了承を願えればいいと、かように考えておるようなわけでございます。
  82. 仲原善一

    ○仲原善一君 大臣御自身も悩んでおるということでございまして、また修正の考えも多少いろいろ研究しておられるようなお話でございますので、十分にその点は御参考にしていただいて何か研究していただきたいと思います。  それからその次に、いわゆる生産性の問題、いまお話のありましたアメリカなんかでやっておる生産性の研究の問題でございますが、この生産性の持つ意義というものをもう少しこれも分析していただきたいと思います。現在の生産性の出し方は、先ほどお話したとおりに純生産額と投下労働力との対比という形で工業と農業が比較されております。これはしかし、工業と農業とは比較すべき材料にふさわしくないものだ、比較してもナンセンスだということをこれから申し上げたいと思うわけでございますが、生産性の純生産額と投下労働力との対比のこの数字そのものは、裏のほうから見ると機械化の度合いを示すということになろうかと考えます。したがって、機械などに資本、施設を投下した度合いという、いわゆる機械化がどれくらいできているかという裏から見れば数字でございまして、これはその同じ業種の、たとえば工業なら工業の中でも造船なら造船という一つの業種について、たとえば西ドイツの造船業と日本の造船業、そういったものを比較する場合には非常に意義のある数字になってきます。しかし、同じ工業生産でも、石油の関係の産業と造船業と比較してもこれは何らそこに意味がないわけでございまして、まして、これが農業とそれから全く性格を異にする工業との生産性、そういう労働力との対比において見るということ自身が全くこれはナンセンスだ。たとえは悪いかもしれませんけれども、牛と馬とを比較して、どっちが早く走るかというようなことを比較するのと同じような結果になると考えるわけでございます。だから、いま計算しておられまする労働生産性の比較と工業との対比ということになりますと、これは比較すべからざるものを比較している。当然、工業のほうが膨大な投下資本もありまするし、有機生産じゃありませんから、どんどん回転もするということで、それに対する分配が多くなる。したがって、格差がふえるということは当然のことで、こういうことは比較すべきものじゃない。いま大臣がお話しになりましたとおりに、歴史的な変遷の一つの尺度として見る。これは非常に有意義になろうかと考えます。たとえば日本の農業生産性の向上が、昭和三十一年から三十九年の間に年率六・二%伸びている。この数字は非常に有意義な数字であろうと思います。これは白書の三十九ページにも出ていますが、日本が世界一でございまして、こういう点を農民なりあるいは農業指導者によく宣伝してもらいたいと思うんです。これは日本が世界一の進歩でありまして、その次はイギリスでこれが約六%、それからフランス、アメリカ、カナダ、西ドイツ、イタリア、イタリアなんか四%をちょっとオーバーしている程度でございまして、ともかくそれだけの、日本は生産性というものの意味をよく徹して比較してみますと、世界一の伸び率を持っていると、こういう明るい面もよくこれからは宣伝してもらって、所得格差が三分の一か、四分の一しかないというような暗い面だけを宣伝することなしに、生産性というものを取り扱われる場合には、その歴史的な変遷、数字の変化というようなことの比較になる、ほんとうの意味の比較になるそういう数字を使われて、そうしてもう少し農業というものは、日本の農業は駸駸乎として進歩しつつあるんだ、世界一の進歩の過程にあるんだということもよく周知徹底してもらいたいというのが私の意見でございます。この生産性、工業と農業とのただいまのやり方の生産性の比較というものはナンセンスであるという意味についての農林大臣のもし御感想があれば、ちょっと承っておきたいと思います。
  83. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) いまの生産性の問題にいたしましても、私が非常に、実際率直に申しますが、非常に煩悶しておる問題を仲原委員からえぐられたような気がいたすのでございます。これらの問題については十分ひとつ検討を加えていかなけりゃならないと思いまするが、なおその全体としての思想と申しますか、非常に少数、いわば少数説であるように思われるのでございます。しかし、農林省といたしましては、いま仲原さんが言われるように、変遷の意味において、生産性も非常に上がっておる側面を、いまできる限りの努力は、この白書の中にあらわしておるつもりではありまするけれども、それらの全体の問題としてはいま申されましたように、非常にこの生産性が小さいという問題がありのままに出ておるのか、あるいはそれらの問題が違った産業間において同じような形式で見られたところの誤りであるか、いろいろの問題が、これは申し上げますと非常に長い時間に相なりまするので遠慮させていただきたいと思いますが、ほんとうにこれらの問題は十分検討と、また研究を進めてまいりたいと思いまするので、仲原委員におかれましても、ひとつこの点については十分の検討を加えていただくことを、この際特にお願い申し上げまして御返事といたしたいと思います。
  84. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあ生産性の問題はその程度にいたしまして、やはりこの所得を比較する場合には、個人単位の農業者一人ということでなしに、あるいは工業者一人という、そういう比較でなしに、私はもっと農家の所得、いわゆる世帯単位、農村でやはり経済活動をやっているのは農家でありますので、個人ではないわけでありますが、やはり農家の所得というものをふやす、そういう立場資料なんかも、あるいは白書なんかにも、そういう問題をもう少し取り入れていただきたいと思うわけでございますが、まあこれは工業との比較もできるわけでございます。たとえば農家の家計調査等にもございますが、農外の収入と、それから農業の収入と二つあるわけでございまして、大体半々ぐらいになっております。現在では、白書によりますと、一戸当たりの農業外所得は、農外、それから農業、両方含めて六十六万六千円ということに大体なっております。これは一月に直しますと、大体五万五千円程度の収入になります。これと対比すべきのが、やはり工業労働者の一戸当たりの収入ということでございますが、これはどういう計算をやればいいかと申しますと、全工業所得の中から地代と、先ほど申しました利子と利潤とを差っ引いたものを工業労働者の戸数で割って見る、そういう比較をやればよかろうと思います。ところで、農業の関係から見ますと、月五万五千円の収入ということに一応なりますので、五万五千円といえば、都会でも中堅のこれはサラリーマンということになろうかと考えます。こういう構想をもとにして考えますと、兼業農家そのものをまるで罪人扱いにするような従来の農政から、多少考え方が変わってくるではなかろうか。やはり健全な兼業農家、農外、農内、農業の内部、外部からの収入を得て、堅実に経済生活をやっている、そういう家というものを健全につくっていくという考えに変わっていけば、もう少し農政の考え方が変わってくるのじゃないかというふうにも考えます。したがって、月給五万五千円程度の農家ということは、さほど工業に比べて所得が少ないということにはならないかと思いますので、抽象的な農業、農業ということだけに終始することなしに、やはり実態は兼業農家、外部からの月給ももらってきて暮らすという、そういう生きた社会の農村をもとにしてひとつ政策も考えてもらいたいということでございます。  まああわせて、もう時間があまりせんからやめますが、かりに家計費の点から計算してみますと、これも四十三ページに出ておりますが、一人当たり農家のほうは十万一千円、勤労者のほうは十二万八千円というふうに、非常にこの家計費の面から見ると、両者の比率が接近しております。こういう点から見ましても、一番最初申しました、三倍も、四倍も格差があるというようなことがどうもうなずけないわけでございまして、実際生活している農村から見ますと、家計費から見ましても、あるいはまた一戸当たり五万五千円平均の収入があるという点から見ましても、農業というものが必ずしも斜陽だけであって、滅びていくものだ、望みのないものだと、暗い面ばかりを従来見詰めておったようでございますので、その点をひとつ是正してもらって、明るい農村もあるのだと、見通しもできるのだということで農政をひとつ担当してもらいたいというのが私の希望でございます。
  85. 坂田英一

    国務大臣坂田英一君) たいへんけっこうな御説を拝聴しまして、ますます検討していただきたいものでございます。私どもも十分努力をいたしたい、かように思います。
  86. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 本件についての質疑は本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後四時十一分散会      —————・—————