○矢山有作君 いまのお話で、大体酪農の場合の家族労働報酬が他の作目に比べて非常に低位にあるということは明らかになったわけです。そのことは収益性の低さということにもなろうかと思いますが、私の手元にある農産物の生産費調査で見ますと、主要作目の所得率というものがはじき出されておりますが、この所得率で見ましても、牛乳の場合には三割足らぬ。これは三十六年と三十八年の平均ですが、こういう実態が出ておりまして、他の作目に比べて非常に低い状態になっております。ところが、その低い
原因は、いまの御説明によると、一、二頭飼いのような、いわゆる低位生産性の飼養
農家が多いから、家族労働報酬が低くなるんだと、七頭以上くらいになれば相当上がってくる、こういうお話があったのですが、しかしそれは、まあ
一つの理屈としては聞けるわけです。しかしながら、現実の酪農の経営の実態は全国平均でみて、
農林省から出されたこの資料によりましても、大体一戸当たりの飼養頭数というのは三・四頭だ、こういうふうに出されているのですから、そうすれば一応、家族労働報酬等で収益性の問題を
考える場合には、この全国の平均の飼養規模くらいなところでやはりものを
考えていくのが妥当じゃないかと思うのです。そうしてみると、大体三頭ないし四頭飼育の酪
農家であって、私の手元にはそちらからいただいた資料で三十七年度のしかありませんから三十七年度で申し上げますが、三十七年度は一日当たりの家族労働報酬は三頭の場合に五百三十八円、四頭の場合は六百十一円、したがって、三十九年で言えばこれは少し上がってくるだろうと思います。しかし、いずれにしても低いということは事実だと思うわけでして、この点を無視して幾ら酪農の発展をはかろうといってもなかなかむずかしい面が出てくるのじゃないかと思うのです。先ほど多頭化の話が出ましたが、多頭化にいたしましても現在の土地による制約あるいは
資金面の制約、いろいろな要素を
考えた場合、さらに飼養管理面における制約、それらの問題を
考えた場合に、そう一挙に多頭化というものが七頭以上、十頭以上というふうに達成されるわけではありませんから、したがって、少なくとも政策的に酪農の
振興を
考えるのなら、先ほど言いましたような全国平均規模くらいなところで収益性等々についても考慮しながら酪農
振興対策というものを推進していくべきではないか。私はそう思うのです。それをことさら七頭以上だ、十頭以上だというところに水準をもってきて、七頭、十頭になれば千円以上の家族労働報酬になる。こういう言う方をするというのは少し現実無視じゃないですかね。私はそういう
感じがするわけです。これは
考え方の相違ですからあなたと議論しても始まらない。こういう点はやはり真剣にひとつ御検討願いたいと思います。実態を忘れて、幾らその先の理想ばかり掲げたところで農民がついてこなければしかたがないのですからね。理想は理想として、それに至る段階として農民のついてこれるような施策を伴いながら理想が掲げられるのならいいのです。しかし、農民がついてこられるような段階を抜きにして、理想だけ掲げて、この
程度ならいいのじゃないかという
考え方では困る。それはそれとして、先ほど来酪農
近代化基本方針の話が出ておりますので、私はこのことについて一言だけ伺いたいのですが、私の手元にも酪農
近代化基本方針というものがあります。ところがそれを見ると、なるほど
近代化基本方針で四十年度で七百八十五万トンの需要も見込まれるのだ、したがって、生産は国内生産で七百九万トンを達成するようにするのだということらしいのですが、これは一体、具体的な予ての国内生産を達成するための施策というものはどうやっていくのですか。これはただこう羅列してあります。しかし、これらの施策がいかに困難かということは、私
どもよりも実際に行政の任に当たっておられるあなたのほうがよく御存じなんで、これをやるにはよほどの
予算的な裏づけがなければできませんよ。そういう酪農
近代化基本方針を速成していくための計画を具体化する具体的な施策と、それに対する
予算的な裏づけと、これは一体あるんですか、ないんですか。