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1966-04-19 第51回国会 参議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      野溝  勝君     大河原一次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  斉君     理 事                 野知 浩之君                 和田 鶴一君                 武内 五郎君                 渡辺 勘吉君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 仲原 善一君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 川村 清一君                 中村 波男君                 森中 守義君                 矢山 有作君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  坂田 英一君    政府委員        農林政務次官   後藤 義隆君        農林省農林経済        局長       森本  修君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林省農政局参        事官       横尾 正之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○農業信用基金協会法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案農業信用基金協会法の一部を改正する法律案一括議題とし、質疑を行なうことといたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 森部隆輔

    森部隆輔君 最初に、近代化資金について、農業近代化資金制度はすでに実施に入っておるわけでありますが、山村においていま労力が非常に不足しております。したがって、一たん山村で樹木を伐採した場合に、さらにあとに植えつけるとか、あるいは新値をする場合とか、あるいは下草を刈るとか、いずれにしましても、いろんな場合に、相当もう山村近代化というものが必要であるし、これは林業基本法なんかもできておることはすでに御存じのとおりだと思うのであります。  それからまた、漁村において、沿岸漁業のうちには、これは沿岸で、私らの地方なんかでも、農協会員であると同時に、漁協会員に、両方入っている者がたくさんおります。でありますが、今回の農業近代化資金のいわゆる定義から言いますと、農業者と、それから貸し付け対象を見ますと、この林業関係あるいは漁業関係者は、近代化資金というものの対象にはならぬと思います。山村振興あるいは沿岸のいまの漁業者救済援助といいますか、あるいは振興といいますか、これらが非常に大事な時期でもあり、そういう際にこれらの漁業あるいは林業方面にいわゆる資金融通に対して近代化資金というようなものが考えられるのじゃないか。どういうわけでこれをやらないのか。これに対するお考えを、まず最初にお聞きしたいと思います。
  4. 森本修

    政府委員森本修君) 御指摘のように、農村ばかりでなしに、山村なり、あるいは漁村におきまして、きわめて重要な事業が、あるいは構造改善をやり、また、御指摘のありましたような造林、そういった事業において行なわれておる。したがって、それに対して近代化資金といいますか、金融的な手段を整備していくということはきわめて必要でありますし、また重要なことだと思います。ただ、いまお述べになりました近代化資金ということになりますと、お説は二つの点に受け取れるわけですが、一つは現在やっておりますところの農業近代化資金を、漁村なり、あるいは山村なり、そういうところに貸せられないかというふうなお考えにもとれますし、あるいは漁業協同組合なり、あるいは森林組合原資活用して、そういった必要な近代化資金といったような制度をつくれないかというふうにもとれるわけですが、現在の農業近代化資金を、林業なり、あるいは漁業に貸し出すという点につきましては、御案内のように、現行の近代化資金制度というのは、一つ農協原資活用して農業関係資金として貸し出す、こういう制度になっております。そういう観点からいきますと、一つは組織問題というふうな点に十分注意をしなければいかぬというふうな感じがいたします。  それから、後者の問題になりますと、たとえば漁業協同組合原資活用していくという点になりますと、御案内のように、だいぶん農業協同組合資金事情とは違うように聞いております。ある意味では預金よりも貸し出しが多いといったような資金事情になっておるように伺っております。そういう点からいきますと、農業協同組合系統機関資金事情とはだいぶ事情が違うというふうな感じもいたします。そこらを考えますと、直ちに農業近代化資金と同じような制度森林組合なり、あるいは漁業協同組合原資活用してやるというふうなことは若干実情等からみて適当じゃない、こういうふうに考えております。
  5. 森部隆輔

    森部隆輔君 私の承知しておる範囲では、わが国における山林の所有者は三ヘクタール未満のものが大体八割前後ぐらい占めているんじゃないかと思います。大林面積を持っている数百ヘクタールあるいは数十ヘクタールというような、あるいはそれ以上の山持ちというものは、数においてはごくわずかなんです。また資力もあるんですね。わずかに三ヘクタール以下のものが約八割ぐらい占めておるということになれば、これらのほとんどは山村でありますから、農外所得を得る機会も比較的少ない。また、一方においては、ただいまも申し上げるように、山村における林業にも、やはり近代化というものが必要なんです。また、あるいは漁村においても同様なことが私は言い得ると思うのです。漁具の手入れからいいましても、あるいはノリのなににいたしましても、同様、ある程度の当初の設備資金が要るのです。これらをいまの近代化資金そのもので、農業近代化資金と同様な、いわゆる原資を求めてやるということになれば、森林組合に、それだけの余裕金がない。漁協にそれだけのものがないんだ。これはお説のとおり、私もそれは大体において承知いたしております。しかし、いやしくもわが国において非常に森林面積が多く、山村振興が非常に大事な際でもあり、また沿岸の漁民というものの振興漁村振興というような方面には、私は政府としてもう少しあたたかい気持ちでそういう資金のめんどうをみることが必要じゃないかと思いますね。いまの制度では近代化資金ができないので、結局、公庫資金によるか、あるいは中金中金からは貸します。その二つ以外には、あるいは普通銀行、いわゆる都市銀行あるいは地方銀行あるいは相互銀行というような他の金融機関によるか、農業金融としては公庫資金か、あるいはただいま申し上げましたように、中金から直接貸す、これ以外に方法はないと思うのですよ、それで満足しておるのでしょうか。私はどうも繰り返して申し上げるように、山村あるいは漁村のこれらの人に対して、いわゆる近代化資金と同様な何かの形においてやはりそういうような低利しかもある程度長期資金をこれらの近代化のために融資することを考えるべきじゃないか。その方法は私はきょうは申し上げません。具体的にまだ検討されていないとするならば、将来どういう考えを持っておられるか、ひとつまずこれをお伺いいたしたいと思います。
  6. 森本修

    政府委員森本修君) 先ほど申し上げましたように、林業なり、あるいは漁業関係資金制度を充実してまいるということはきわめて重要なことだと思います。近代化資金制度といったようなものをつくるかどうかという点につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおりでございますが、大体農業関係近代化資金制度対象になっておるような、いわゆる共同利用施設あるいは個人に対する施設といったようなものは現在でもほぼ公庫資金でまかなっておるわけでございます。大体、公庫資金としましては、ほぼ林業なり、あるいは漁業関係の必要な資金種目を網羅しておるといって差しつかえないのじゃないかと思っております。また最近、両部門において始めました構造改善事業といったようなものに対しましても、三十八年度から新しく、いわゆる経営構造改善資金の中で、林業に対しても、あるいは漁業に対しても貸し出しをしておるといったような関係がございます。したがいまして、私ども感じでは、現在の公庫資金なり、あるいはまた御指摘がございました農林中金低利融資制度といったようなものでかなり資金需要に対して対応できるのじゃないかという感じは持っております。ただ事情が刻々変わってまいります。また、政策的な要請にいたしましても、そのつど変化をいたしてまいります。そういう点から考えますれば、将来林業なり漁業資金制度のあり方、また、そういったものの融資条件改善というふうな点についてはわれわれとしてもできるだけ検討を重ね、所要対策を講じていくということにはやぶさかではございません。
  7. 森部隆輔

    森部隆輔君 これから先はお尋ねしても私が満足するようなお答えは私はできぬと思うのですが、非常にまじめな気持ちで、真剣な態度で、これらの山村関係の問題あるいは漁業者ことに零細漁業者、これらに対してやはり中金といいましても、これは九州なら九州中金の支店というものは一つぐらいしかない。あるいは公庫にしたって九州には二つしかない。他のブロックにおいても同様であって各県にない。それからまた、県の段階においても信連あるいは町村の単協というようなふうに手近にないのです。ですから金を借りようとして、たとえばいろいろ申し込み手続をするにしても、非常な遠隔な地であるし、それはいまの制度そのものでは決して十分ではないのです。ただ漁協の場合においては、現在の資金量というものが千億に達しないのです。まだ全国を通じまして。約八、九百億程度だろうと思います。しかも預貸率が八割以上あると思いますので、余裕金があまりないから、原資もないかもしれません。しかし、これは政府がやろうという気になれば、真剣に山村振興あるいは沿岸漁村振興救済をやろうとすれば、まだ考える余地がぼくはあると思う。これはひとつ真剣に明年度の何としては、本年度間に合わぬなら、明年度何かの形で農業近代化資金と同じような形式で貸し出すということも一つ方法でしょう。それから、農協は、あるいは系統が違いますので、漁協あるいは漁信連というものの系統から言わせれば、あるいは反対の意見になるかもしれませんが、許すならば、あるいは末端農協員外貸し付けとして貸し付ける道もできます。山村なんかにおいても零細な山持ちというものは、同時に農協会員なんです。ですから、近代化資金貸し付け対象をふやせばできるのですよ。両方の、二足のわらじをはいているのが多いのです。ぼくのところの有明沿岸ノリ漁業者というのはほとんど全部漁協農協両方に入っている。ですから、これはいまの系統漁協漁協漁信連系統で貸すか、近代化資金と同様な方法をとるか、あるいは末端において、いま申しましたような信連なり漁信連なり、あるいは単協の場合においてそういうような貸し付け対象ができるようなことを考えるか、いずれかの方法によって、私としてはやはり山村の零細な人々、あるいは沿岸漁業者——資本のものは直接中金からでも、公庫からでも金を借りてやりましょう。いろんなそういう方面に対する知識も持っておりますけれども、したがって、もう少し実情に沿うような気持ち農林省としては当然考えるべきだ、口でやれ山村振興とか、あるいは沿岸漁村の何だといっても、そういう点について実際これやらなければ私はから念仏に終わると思う。これ以上はこの問題については申し上げませんから、ひとつまじめな気持ちで検討していただきたい。  次に、近代化資金制度が創設されまして以来、政府はどういうようにこの制度の功罪というものに対して考えておられるか、それをひとつ承りたいと思う。どういう判断をしておられるか。
  8. 森本修

    政府委員森本修君) 近代化資金は、御案内のように、農業資本装備向上ということが一つ眼目になります。それからもう一つは、いわゆる系統農協機関資金活用ということがもう一つ眼目でございます。で、近代化資金制度が発足いたしましてから五年ぐらいたちますけれども融資実績としましては、毎年相当増大をいたしております。四十年度の末では融資残高としてはおそらく千七百億ぐらいに達するであろう、こういうふうに見ております。で、そういった資本装備向上といったような観点からいたしますと、御案内のように、農業の、いわゆる固定資本投資というのが相当拡大をいたしてきております。たとえば三十五年の固定資本投資は約四千億ということでございましたが、三十九年では六千三百億ぐらいということになっております。そういうことでかなり固定資本投資増加をいたしておりますが、その固定資本投資の源泉といいますか、どういうふうな形で資金を調達して固定資本増加してきたかというのを見てまいりますと、制度資金でやってまいりましたのは、三十五年では約そのうちの一〇%ぐらいということになっております。三十九年ではそのうちの二〇%ぐらいということで、制度金融による固定資本投資割合がふえてきておる、全体もふえておりますが、その中の割合もふえておる。御案内のように、三十五年には近代化資金というものはなかったわけですが、三十九年では、先ほど言いましたように、制度資金の中で近代資金は約半分くらいというふうな形を占めております。そういう点から一例をあげて申し上げますならば、いわゆる資本装備増大というふうな面で近代化資金が果たしてきた役割りというものは相当程度に評価してしかるべきではないかと、こういうふうに思っておるわけであります。  それから、もう一つ系統原資活用といったような点から見てまいりますと、系統農協貸し出し増加してきておりますが、ことにいわゆる長期貸し出し増加程度が多いわけであります。で、たとえば三十九年では系統農協貸し出しのうちで長期貸し出し割合が約四六%といったようなふうになっております。ちなみに三十五年では三四%を占めておったわけであります。そういう関係から長期貸し出し比率増加いたしております。長期貸し出しのうち近代化資金もまたかなり割合がふえてきておるといったような計数上の推移から見ましても、農協貸し出しに対して近代化資金が促進的なかなり役割りを果たしておるというふうなことがうかがい知れると思うわけであります。両面から見まして、近代化資金制度所要の目的に対してある程度の寄与を果たしてきたというふうに評価をいたしておるわけです。
  9. 森部隆輔

    森部隆輔君 近代化資金融資ワクが、消化がどうも何と言いますか、予期のようにといいますか、芳しくない傾向があるのですよ。それに対して政府は、どこに原因があるのか、また、どういうような対策考えておられるか。また、私の知っておる範囲においてはワク消化というものが必ずしも芳しくないと思いますが、御見解を承りたい。
  10. 森本修

    政府委員森本修君) 予算上設定いたします融資予定額に対しまして、近代化資金貸し出し実績比率が低下をしてきておるということは、御指摘のとおりでございます。その原因はいろいろあると思いますが、一つは、私どもが毎年近代化資金融資ワク予算上設定いたします際に、何といいますか予算上のワクが少ないために近代化資金貸し出しが円滑を欠くということでは申しわけないというふうなことで、ある程度ざっくばらんに言いますと、ゆとりを持ったワクを設定してきたといったようなことも一つあると思います。  それからまた、融資が必ずしも目標数字に達しないという要因の中にいろいろあげられておりますけれども資金需要が、御案内のように、近代化資金の大きな貸し出し種目としましては、機械とか、施設とかいったようなものが多い。あるいは果樹とか畜産といったような関係に貸し出されておるわけですが、必ずしも資金需要が年々によってずっと趨勢的な増加をたどるというわけにもまいらないという点があると思います。たとえば機械を導入いたしますと、やはり一定の年限それを使いまして、また買いかえをするといったようなことがありますから、資金需要がある程度年次的に波を打つといったようなこともあるようでありますから、そういった関係一つあろうかと思います。  それからもう一つは、やはり農家信用力補完といったようなことで、現在の債務保証制度が行なわれておるわけですけれども、必ずしも、いろいろな点からしまして、これが機能を発揮していないといったような点がありまして、農家資金需要に対してそういった信用力補完が十分でないというふうな点から、もう一つ資金が伸びないのじゃないかというふうなことを指摘しておるわけであります。長くなりますけれども、さらに従来の金融客観情勢といったような点からいきますと、農協系統機関といたしましても、ある程度何といいますか、外部的に運用が有利だというふうな事情がありまして、知らず知らずの間に員内貸し出しに対する熱意が落ちるというふうなことも、計数には乗りませんけれども、やはりこういった近代化資金貸し出しに対する一つ制約要件になっておるといったようなことも指摘する人もあります。いろいろそういう点がございまして、融資予定額に対しまして融資貸し出し実績が必ずしもそれにつれて動かないというような実態がある。そういうふうに考えております。
  11. 森部隆輔

    森部隆輔君 これはひとり近代化資金ばかりではありませんが、貸し出しが、消化がどうも芳しくないということはいろいろ原因があると思いますが、そのうちの一つとしては、公庫資金の問題について、私は、昨年でしたか、一昨年でしたか、手続簡素化ということを強く要望したのですが、近代化資金の場合もやはり利子を県費でも補給する関係上、また、国も出す関係上、貸し出しを決定する前に、いわゆる事前行政官庁と打ち合わせなり、いわゆる承認を得なければならぬことになるのですが、実質上。ところが、その手続がですね、たとえば県の場合においては、県の開拓の問題であれば開拓課である、あるいは農地課である。それから今度植栽であれば園芸果樹関係。それからまた、県庁出先の、たとえば農林事務所にもやはりこれと同様ないわゆる課があるのですね。これらの点で公庫の場合でも、公庫貸し付けも同様でありますが、近代化資金も全く同様であると思いますが、認定とか、あるいは承認、もしくは事前打ち合わせ、いろいろ名義は違いますが、要するに債権者である県信連あるいは単協貸し付ける前に、それらの行政官庁承認事前打ち合わせか必ずやらなければならぬ。これが非常に日にちがかかるのですね。それとまた、各課関係があるのですね。たとえば未墾地を買い入れた。そいつを今度は開拓する。そうして植栽する。こういう場合に幾つかの課に書類が回っていく。場合によっちゃ幾つかの書類をつくらなくちゃならぬ。未墾地取得資金をやる。開拓資金をやる。果樹植栽資金をやる。いろいろな書類が必要になる場合がある。先ほども申しますように、県庁それから出先、そういうふうなところに、それらの階段を幾つも通る関係で、県庁内部における各課同様ですね、いろいろな関係手続を、いろいろ政府関係公庫あるいは金庫等、あるいは医療金融公庫にしましても、あるいは国民金融公庫にしましても、農業金融の場合が、ことに貸し付け決定前にいわゆる行政官庁の、いわゆる政府間あるいは府県庁、それらのつまり行政官庁事前承認というものがどうも思うようにいかないのですね。他の金融公庫あるいは公庫金庫とか、あるいは公庫貸し付けを見ますと、多くの場合において行政官庁ただ意見を参考に聞く程度のものが多い。これはお調べになればわかります。ぼくも調べたものを持っておりますが、それで、公庫貸し付けの問題は幾分か簡素化されたようですけれども、決してまだ十分じゃありません。近代化資金貸し付けにしましても、貸し付けてしまえば債権者県信連単協か、貸し付け決定権はいまの行政官庁が持っておると、こう言う。この貸し付け後の管理というものをほとんど、早くというと債権者としては何もいう立場じゃないですね。それで、これは公庫を通じての公庫資金貸し出しと合わして、私は、近代化資金の場合においてもできる限り貸し出し簡素化事務簡素化ということに一段の配慮が必要だと思うのですが、これはどうですか。ひとつ障害になっておりませんか。
  12. 森本修

    政府委員森本修君) しばしば公庫資金にしましても、あるいは近代化資金にしましても、貸し出し事務が繁雑である。しかもまた、きわめて手続に時間を要するというお小言をちょうだいいたしておりまして、私どものほうもできるだけそういう事務簡素化について努力をしたいということでせっかく努力をいたしておるつもりでございます。  近代化資金にしましても何といっても、やはり県のほうの利子補給対象になっておるというふうなことで、ある程度事務手続県庁としてもとらざるを得ないということでやってきております。しかし、御指摘がありましたように、手続がきわめて繁雑だというふうなことで、だんだんと県のほうとしても手続簡素化につとめておるようであります。たとえば、いままでは、利子補給承認県庁の本庁まで持ってきてやっておったというふうなことでかなり時間がかかる。また、各課を回すというふうなことで繁雑であるということがございまして、相当な数の県は、いわゆる府県出先機関農業事務所あるいは地方事務所とかいったようなところにそういった認定事務を移すというようなこともやっておるようでありますが、また、私どものほうの関係でも、やはり事務手続一定報告を徴収するというふうなこともございまして、農協末端の方々に御迷惑をかけておるというふうなこともございます。したがって、ここ一、二年来そういった報告徴収の様式なども簡素化する、また部数なども少なくする、回数もなるべく必要最小限度に限るというふうなことで簡素化をしてまいりました。しかし、なお簡素化をすべき点が多々残っておるというふうに思います。公庫資金も含めまして、近代化資金といわず公庫資金といわず、そういった手続簡素化についてはできるだけ今後努力をしていきたい、こういうふうに思います。  なお、公庫資金につきましては、公庫の中にそういった事務手続簡素化委員会というものをつくりまして、公庫自体としてもできるだけ節減につとめられるものはつとめるといったような体制を目下検討いたしており、すでに実施したものもございます。今後そういった点も私どものほうでできるだけ努力をして改善につとめたいと、こういうふうに思っております。
  13. 森部隆輔

    森部隆輔君 貸し付け申し込みに対する貸し付け決定のいわゆる割合というふうなものは、表によって示される場合があるのですね。ところが、それはあなた方が中央におって、しかも数字だけをごらんになった場合と、実際われわれが農村におってその事務に直接なり間接なり関係してみますと、申し込みする段階までいかずに前もって尋ねに行く。つまりこういう金を借りたいがどういうふうにしたらよかろうかと、こういうことで、めんどうくさいとか、あるいはいろいろやっかいだということでやめる者が相当ある。それならば利子が幾分安いくらいのことならば他の方面から資金の融通を仰ごうと、こういうふうな点がありますので、ただ表面の表にあらわれた申し込みの数に対する貸し付けの決定だけを、あなた方が中央におって、東京におって、府県庁からあるいは報告をとってみるというふうなことだけではいかぬ。そういう実情があることを十分ひとつ御承知の上で、思い切ってこれはやはり簡素化すべきであるということを強く希望申し上げておきます。  それから次に、やはり近代化資金の問題でありますが、これは大体の方針といいますか、考え方としては間違っていないと思うのですが、農業近代化資金系統のいわゆる余裕金活用する、資金源にして、それに国及び県がこれに利子補給をするというたてまえ。ところが、比較的農業者の多い、社会構造のいわゆる農業県とでも申しますか、農業地方とでも申しますか、そういう地方は、府県にしましても町村にしましても税収入が少ないのですね。公共団体としての財政規模が貧弱なんですね、どうしても。それからまた、農村としても農外所得を取る機会が少ないのですね、そういう農業県は。したがって、余裕金というものの割合も少ない。これは当然なんです。そこで、これは表にもありますが、ところが、一方、考えてみると、農業近代化、ことにいろいろな機械の導入というようなことをやるには私は、農業、そういう地帯こそ、被害の切実さといいますか、必要さが多いのではないかと思う。そういうところに——いま農村では労力、人が少なくなっている。機械の導入も必要である。農道の改善も必要である。そういう地帯にこそよけいやらなければならぬ。ですから、そういうところには、ただいま申しましたような、いわゆる資金としての財政力がわりあいに弱い。農協としても余裕金が比較的少ない。あっても短期の資金だ、定期的な長期資金は少ないのだ。そういううらみはありませんか。それに対するどういう御見解を持っておられますか。
  14. 森本修

    政府委員森本修君) 農村地帯における原資の問題と、それから地方財政の問題、二つ指摘がございました。原資の問題は、確かに御指摘がありましたように、農協にしましても、あるいは信連にしましても、傾向としましては農村地帯の原資貸し出し所要額に対して少ない、見返り率が高い、そういう傾向になっております。系統全体としては、御案内のように、かなり資金量がゆとりがある、こういう状況でございました。そこの点は系統内部で、あるいは信連、あるいは中金といったようなことで上部機関資金系統内部の調整をするというふうなかっこうで、私どもとしては資金手当てとしては少なくとも系統内部で十分まかない得るような状態だし、たとえば中金にしましても、近代化資金原資低利融資制度対象にするというようなことで、原資手当てに対しては十分努力をしていただいておるというふうに承知をいたしております。そういう点からいきますと、地域的な原資の偏在というようなことは、ある程度系統内部の調整機能によってカバーできるというふうに考えております。  それから地方財政の問題は、御指摘のように、現状におきましては、何といいますか、地方財政の問題は将来ある程度資金量がふえてくるというふうな場合、それから地方財政そのものの今後の推移といった点からいきますと、近代化資金の円滑なる融資という観点からいきますと、十分注意をしていかなければならぬというふうに私どもは思っております。しかし、現状におきましては、たとえば東北でありますとか、あるいは南九州といった典型的な農村地帯でも、ある程度近代化資金は伸びておる。全国平均の伸び率に比べて、そういった地帯の伸び率のほうが高いといったような状況でございます。また、それに必要な財政手当ても、各地方団体ではいろいろごくめんなさっておるというふうには思いますけれども、やっていただいておるというふうに考えておるわけでございます。そういう点からいきますと、ここ二、三年来、あるいは現在の状況では、地方財政がネックで近代化資金に悩んでいるというふうには必ずしも言えないのではないかというふうに思っておるわけでございます。ただ、将来資金量がふえてまいりますと、その点は農林省としても十分注意をし、必要があれば所要対策を講じなければいかぬのじゃないかというふうな気がいたしております。今回の保証制度改善というふうなことによりまして、たとえば地方公共団体が必要な出資の補助額というふうなものは相当軽減される見通しであります。たとえば四十一年度で申し上げますと、従来の方式でいきますと、出資をする額が地方負担としては八億ぐらいになるというふうな推定ができるわけでありますが、今回の改正によってそれが二億程度に低減するというふうなことになっております。そういう点で、私どもとしても、地方財政ことに農村地帯の地方財政に対する問題は将来とも十分その推移を注視をして、必要があれば所要対策を講じなければいかぬのじゃないかというふうには考えております。
  15. 森部隆輔

    森部隆輔君 それでは時間の関係もありますから、もうし少しこまかいことをお尋ねいたしたいと思いますが、今回の改正で、果樹その他の永年性の植物の育成に対する資金農業近代化資金貸し付けられるようになったのですね、具体的にはどういうものに貸し付けられる予定でありますか、また、どういう経費を融資対象にするつもりですか、そのお考えを伺っておきたいと思います。
  16. 森本修

    政府委員森本修君) 今回新しく対象にする予定でありますところの果樹などの永年作物の範囲でございますが、果樹のほうは樹種を問わないで、果樹ということであればすべて対象にする予定であります。
  17. 森部隆輔

    森部隆輔君 果樹は全部ですね。
  18. 森本修

    政府委員森本修君) 全部でございます。それ以外の永年作物は、従来から御案内のように、植栽資金貸し付けております。それは桑とかお茶とか、そういった植栽資金対象にしております永年性作物、そういうものを原則として対象にして育成資金貸し出していきたい、そういう考えでございます。それから対象になりますところの経費でございますが、これはいわゆる育成に要するところの、一口で言いますと直接的な現金経費ということで、たとえば肥料でございますとか、あるいは農薬であるとか、それから支柱などの何といいますか資材、それから雇用労賃というふうなもの、つまり一口に言いますと育成に必要な現金支出、そういうものを今回の資金対象にしていったらどうか、そう考えております。
  19. 森部隆輔

    森部隆輔君 そうしますと、たとえば観賞樹木の苗あるいはその他これの育成というようなのはもちろん対象になりませんですね。
  20. 森本修

    政府委員森本修君) 苗類の関係は、いま御指摘になりましたものは育成資金ではなしに植栽資金のほうの対象になります。
  21. 森部隆輔

    森部隆輔君 植栽資金としては対象になるのですね。  それでは次に、畜産関係の、乳牛その他の家畜の育成に対する資金は、やはりいまのように新たに加わるもの、どういうものを具体的に対象にされるのか、また、どういうものが経費は対象になるのか、畜産関係において。お答え願いたい。
  22. 森本修

    政府委員森本修君) 家畜のほうの関係は搾乳牛、それから繁殖用肉牛、それから種豚、こういうものを対象にいたしまして、これも資金対象経費としましては直接的な現金経費ということで、たとえばえさ代でありますとか、あるいは種付け料であるとか、それから衛生費であるとか、あるいは雇用の労賃といったようなものも、現金で支出されるようなものは大体すべて育成資金として対象にしていきたい、そういうふうに考えております。
  23. 森部隆輔

    森部隆輔君 それでは、やはり貸し付け関係ですが、環境整備関係ですね、これはどういう方面資金に貸されるのか、どういう貸し付け対象か、お考えを伺いたい。
  24. 森本修

    政府委員森本修君) 環境整備のほうは、医療施設、それから農事放送、それから簡易水道といったようなもの、それから託児所でありますとか集会所でありますとか研修施設といったようなもので、大体、全国的にいわゆる環境整備として必要と言われておりますところの共同利用施設、そういうものをひとつ対象にしていったらどうかと考えております。
  25. 森部隆輔

    森部隆輔君 それでは、時間の関係がありますから、なるべく簡単に聞きますが、金利の問題で少しお尋ねしたいと思いますが、この近代化資金法律制定当時、附帯決議で、金利は五分程度にすべきだというふうな附帯決議があったように承知いたしておりますが、現在の低金利時代で、末端で六分、あるいはものによっては七分というものは、これは決して私は安いものだとは思いません。これに対する政府の見解はどういう見解を持っておられるか。
  26. 森本修

    政府委員森本修君) 末端の金利でございますが、御指摘のように、私どもとしましても、農業経営なり、あるいは農家の負担というふうなことを考えますと、できるだけ金利を安くしたいという希望でありますことは御指摘の御意見と全く同じでございます。したがいまして、近代化資金制度としましても、御案内のように、出発当時は七分五厘ということで、二、三年前に六分五厘に下げ、また今回も六分に下げていく、こういうふうなことで、漸次金利の引き下げに努力をしてきておるわけであります。ただ、資金の性格としまして、先生もすでに御承知のように、系統原資を使っておるわけであります。そういう点からいきますと、系統の掛金金利といったようなものとやはりにらみ合わせをする必要もあろうかと思います。そういう点からいきますと、末端金利の六分ということは、そういうにらみ合わせからいきますと、かなり預金金利にも近づいてきておるというふうな関係になっております。われわれとしてもかなり金利の点については努力を払ってきておるつもりであります。しかし、見方によりますれば、やはり農業経営なり農家の負担という点からいけば、もう少し金利は引き下げるべきだというふうな点が出てくると思います。まあそういう点につきましても、将来できるだけひとつそういう方向で検討していきたい、こういうふうに考えております。
  27. 森部隆輔

    森部隆輔君 金利の問題で、この農協は御承知のように三段制をとっておりますから、大口の金はこれは当然資金量の大きい中金から貸すことが適当だと思います。また、そうでなければ資金が間に合わぬと思いますが、合併によって四十億、五十億あるいはそれ以上の貯金を持っておる単協もだんだんできてくるのですが、単協の大型化によって資金も従って多くなってきた。単協は御存じのとおり五分六厘でいま農業者から預かるわけですね。いままでは、それ以外に利用奨励金とか、いろいろな名義においても三厘とか五厘とかいうようなものをそれに加えて実際は出しておったわけです。ところが、去年から中金の、御存じのとおり奨励金の撤廃であるとか、いろいろな廃止であるとかというような問題、それから一般の金利の低下の関係をにらみ合わせまして、これらは多くの県においてそういうような公定金利以外の奨励金というようなものは金額が減るか、あるいはなくなっておると思います。したがって、単協の場合においては原資そのものが御存じのとおりわりあいにコストが低いのですね、信連に比べれば。そこで小口の金はなるべく単協からいまの近代化資金も利用すれば、末端金利が九分として三分の利子補給で六分というやつが、場合によっては八分でも出せる、あるいは八分五厘で出せる、こういうことになるのですね。そういう点についてあなた方のいわゆる何といいますか、行政指導というか、所見をひとつお尋ねしたいと思います。だんだん単協が大型化していきますから、しかもこの単協なり信連なりの定期貯金の割合というものがおよそ八割以上を占めておりますね。ですから、かなり長期資金になっておる、性格が。ですから、現在の中期資金、それから十年程度長期資金ぐらいは優に農協系統資金で間に合う。したがって、金額が許せば、なるべく単協から貸せば、あるいは末端は六分か五分五厘でも貸せる、こういうことになる。そういう方面に対する御見解をひとつどういうふうな考え方を持っておりますか。
  28. 森本修

    政府委員森本修君) 近代化資金の基準金利のお話だと思うのですが、私どもとしましても、もちろんコストとの見合いも見なければいかぬと思いますげれども、やはり単協なりそういった系統金融機関貸し出しの実勢といったようなものをにらんでいく必要もあるのじゃないかということで、従来はそういった系統機関貸し出し実勢というもので基準金利をつくっている。今回の基準金利を五厘引き下げをするということも、最近の貸し出し金利の実勢を見まして、ほぼそういうほうにきておるということで今回そういうふうな措置をとるようにいたしておるわけでございます。したがいまして、御指摘のように、単協のコスト関係を見ますならば、あるいは大きな単協そ他もう少し低い基準金利で貸し出しができるというふうなところもあろうかと思います。また現に数県におきましては、従来から基準金利を全国平均よりも勉強をして貸し出しておる県もございます。それはやはり各県における県庁なり各系統団体が御相談の上で自主的になさっておるというふうに思っておるわけであります。われわれとしましては、そういう点について、画一的にそういうふうな基準金利を全国に奨励するというのもいかがなものかというふうな感じがいたします。まあ、全国的に一つの目標としましては、やはり系統機関の実勢貸し出し利回りというふうなものをめどにして基準金利を設定していくというのが適当である。ただ、地域によりまして自主的に勉強される分は、地方地方実情でおやりになってしかるべきものだ、こういうふうに思っております。
  29. 森部隆輔

    森部隆輔君 今回の貸し付けで、法人でない任意団体にも貸し付けの道を開くことになったんですが、その団体というのはどういう性格のもの、大体どういうものを予想されておるのか、これが一つと、それからもう一つ農協病院、農協の経営している病院あるいは農協の有線放送、これは御存じのとおり公庫でもやはり同様な貸し付けをやっておりますね。その両者の間の分野の調整といいますかね、交通整理なんということをよく言っておったのですが、それらの調整というようなことについてどうお考えになっているか、あわせてひとつお尋ねしたいと思います。
  30. 森本修

    政府委員森本修君) 今回新しく融資対象にしました、融資対象といいますか、融資の相手方にきめることにしました任意団体は、主として環境整備資金を貸し出す相手として想定をしておるわけでございます。御案内のように、環境整備資金ということになりますと、部落で簡易水道を共同で敷こうといったような場合もあると思います。あるいは託児所をそういった任意の団体といいますか、組合で設けて経営していこうといったような場合があろうと思います。そういうことを想定いたしまして、任意団体を新しく貸し付けの相手方にきめる、こういうふうにしたわけでございます。それでありましても、やはり一定の内容を備えていただきませんと、何といいましても金を貸す、借りるという相手方になるわけですから、私どもとしましては、現在想定しておりますこの任意団体の内容としましては、農業者が構成員の過半数を占めるというふうな点が一つ、それから代表者なり、代表者の選任の方法等、一定の規約、そういうふうな内部の規約、それを任意団体に設けていただく、そういうふうなことを要件にしまして、そういう要件に合う任意団体であれば貸し付けの相手方にしたらどうか、こういうふうに考えておるわけであります。  それから、農協病院の貸し付けの方針といいますか、公庫との調整の問題でございますが、農協病院の中にも本館とか、そういった堅固な構築物もありますし、あるいは付帯施設とか、看護婦の宿命とか、そういったいろいろな建物があるわけです。本館のほうはかなりがっちりした建物でありますし、また、医療費もかなり低廉にしなけれればいかぬといったようなこともありますから、現在の融資条件から見ますると、公庫資金を利用していただいたほうが適当ではないか、こういうふうに思っております。ただ、付帯施設とか、あるいは看穫婦の宿舎であるとか、そういった関連の施設等につきましては、今回新しく融資対象にしたわけでありますから、近代化資金を利用していただいたほうが適当ではないか、こういうふうに思います。有線放送につきましては、大体近代化資金でやっていただいてしかるべきものじゃないか、こういうふうに思います。
  31. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は農政のあり方について、まず最初に伺いたいと思うのですが、この農業近代化は、農業構造の改善を根幹としまして、その目標は経営規模を拡大して、生産基盤の整備強化によって生産性を向上し、適地適作主義によりまして選択的な拡大などをやりまして、そうして国際競争力ある農業経営を確立するということにあるのであります。ところが、農業基本法ができましてから五年たちました今日、わが国の農政の実績を見ますと、農業近代化は当初計画しておりましたレールの上を計画どおりに走ることができない状態になっております。経営規模は期待に反しまして一向に拡大されない。むしろ場合によりますと土地が粗放に使われたりして、かえって土地の生産力が低下しているところもありますし、農業労働力の流出、兼業農家の激増、生産力の低滞、食糧自給率の低下など等、その見通しと違った事実があらわれておるのを見ましても、このままでは近代化達成というものはとうてい完遂ができないと思います。政府は、この農政の現状をどう把握し、また、どう反省しておられるか、まずもってその点を一応伺います。
  32. 森本修

    政府委員森本修君) 私からお答えするのもどうかと思いますけれども、御指摘がございましたように、選択的拡大でありますとか、あるいは農業構造改善を進めるとかといったようなことは、農業基本法の路線としてきわめて重要な路線だと思いますが、選択的拡大にいたしましても、もちろん年次報告等にございますように、その方向に沿って進んでおることは事実であろうと思います。また、経営の改葬という点につきましても、ある意味では生産性の高い、経営規模の大きい農家も出現をしてきておることは事実であります。ただ、農業の性格からいきまして客観的な要請なり、あるいはそういった条件の変化に即応して機動的になかなか動きにくいという点がございます。自然的な制約もありましょうし、あるいは社会的な制約もありましょうし、そう急激に変化がむずかしい産業であることは御存じのとおりであります。農林省としましても、しばしば申し上げておると思いますけれども、基本法なり、あるいはそういった農政の目標に向かってあらゆる手段を講じて努力はしてきておるつもりでございます。しかし、そういった進歩のテンポという点につきましては、御指摘のように、必ずしもまだ十分でないという御批判をいただくような事情もあろうかと思います。従来からも種々議論はいたしてきておりますけれども、まだまだ足りない点もあるかと思いますが、この点については将来ともできるだけ各種の手段を講じて努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  33. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうしますと、今回のこの近代化資金助成法案の改正が、いまの反省とどう有機的に結びつくかということですね。今度の改正案といまおっしゃったこの改正によってどういう利点があるか、どういうことが変えられていくかということを伺いたいと思います。
  34. 森本修

    政府委員森本修君) 今回の改正の主眼点は、御説明をいたしましたように、一つは新しい融資対象を加えると、特に果樹なり、あるいは畜産の部面における育成資金対象とするというふうな点、それから環境整備資金対象とする。それからもう一つは、農家の受信力の補完を十分にするために、保証制度を整備拡充すると、こういうふうなことになっております。御指摘のございましたように、農村から従業者がかなり移動をいたしておる。そういう状況に即して生産性を上げていくというためには、どうしても資本装備を充実していくということがきわめて重要なことであろうと思います。近代化資金は、そういった資本装備の充実整備という点が資金対象としても非常に大きな重点になってきておるわけであります。で、五年ほどの経験によりましても、従来はそういった機械なり、あるいは施設なりの新しい取得、改造というふうな資金貸し出しておりましたけれども果樹にしましても、あるいは畜産にしましても、こういったものを取得する資金だけを貸し出しておるということでは必ずしもまだ十分ではない、家畜を導入いたしまして一定の期間育成をするというふうなことによって、初めて資本装備としても効用を発揮するというふうな関係になっており、そういう点からいきまして、従来の資金制度を完備していくというために新しい融資対象を加えていくというふうに考えておるわけであります。そういう点からいきますと、従来の農政の路線に乗って改正、改善をしていく方向であるというふうに私ども考えておるわけであります。
  35. 北條雋八

    ○北條雋八君 選択的拡大にいたしましても、今度のこの委員会で審議中の肉牛の対策に見るように供給不足でありまして、肉がどんどん輸入されて、その量がふえておるといったような問題もありますし、それから養鶏対策について見ればブロイラーの問題また自立農家の育成にしましても、全体の農家数に対して専業農家の占める率が年々低下して、四十年の二月の統計を見ましても、専業農家は全農家の二一・五%というまでに低下してきておりまして、当初の自立農家の育成計画は全く画餅に帰してしまったと言っても過言ではないと思います。そのように基本農政の屋台骨がくずれておるのに農林省はなぜもっと真剣にこれに取り組んで抜本的な対策をやらなかったか、非常に手おくれになったのじゃないかと思います。今回の金融緩和の近代化資金助成法の改正でもってこの基本農政がどう影響を受け、どう改善されると思っておられるのか、一体いつになったら健全農政が確立できると思っておられるのか、その点を政務次官から伺いたいと思います。
  36. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) ただいまお尋ねがございましたが、今度の近代化資金助成法の改正によって直ちに基本的な問題が解決すると、そこまではいっておりませんけれども、しかし、それによって農家のほうがだんだん充実してまいりまして、収入も上がってくるというようなふうにやはり考えておるのでありまして、根本的にはやはり農業近代化、構造の改善、基盤の整備、そういうようなことが絶対必要だ、こういうふうに考えますが、それも何年たってどうなるかということはいま直ちにそれを申し上げる段階ではありませんけれども、やはり基盤の整備と構造改善が御承知のとおりいま大きな問題になっておりますが、それを強力に推進していくことによって、やはり経営規模を拡大していくことによって農家一戸当たりの所得というものはだんだん増していく、さような方向に向かっていくことを考えておるわけであります。
  37. 北條雋八

    ○北條雋八君 私が考えますには、基本的に農業が魅力があるものとならない限りは、単なるこの程度金融措置ぐらいでは基本法の目ざす近代化農業の実現はできないと思うのです。    〔委員長退席、理事野知浩之君着席〕  金融措置というものは農業ビジョン実現の補完役割りをするものであると思うのでありまして、そのビジョンのあとに従っていくものと考えております。政府対策は行き当たりばったり式の政策でビジョンがない、したがって、投資意欲もありませんし、また、融資の効果も十分発揮されていないと思うのです。私は単なる金融措置だけではいけない、現在この行き詰まった農村を繁栄させ、この窮状を打開するのには、これは農林省だけでもできないと思っております。これは大蔵省はもちろんのことでありますが、なお建設省、自治省、文部省、厚生省各省が一丸となって、この近代化の促進のための審議会でもつくりまして、そうして衆知を集めてこの問題に真剣に取り組む必要があるとさえ思っております。この点につきまして従来は各省の連絡というようなものはとっておられたのかどうか。予算のときにはもちろん大蔵省とは折衝されるでありましょうけれども、特に今度環境関係についても融資対象が広がってまいりましたしするので、その点を伺いたいと思います。
  38. 森本修

    政府委員森本修君) 御指摘がございましたように、農業関係もきわめて接触が多面的でございまして、農業外部の事情に大きく支配をされる、あるいはまた、施策をするにあたりましても関係各省と十分連絡をしなければうまくいかないというような政策の仕事が多くなってまいりました。従来からも関係各省とは連絡を十分しているつもりではございますけれども、いろいろ関係する部面も多いことでありますので、あるいはその点について必ずしも十分でないといったような御指摘もあろうかと思います。御指摘の環境整備資金の運用等についても、今回融資対象に加えたわけでございますので、関係方面とも十分ひとつ連絡をしまして、そちらのほうの行政と摩擦を生じないように、また、そういった関係とも円滑にいくように、できるだけひとつつとめていきたいというふうに思います。
  39. 北條雋八

    ○北條雋八君 この間は大蔵大臣もここへ来られて、いろいろ農業に対する認識を新たにされたことでありますが、どうぞやはり各省が一丸となって今後できるだけ農業近代化、基本法の目的を達成できるようにお願いしたいと思います。    〔理事野知浩之君退席、委員長着席〕  次に伺いたいのは、農民の貯蓄の運用状況、これを一応伺いたいと思うのです。昨年の三月現在の統計によりますと、農民が系統機関に貯蓄しました額が約二兆円になっております。この資金はどのような方面に利用されておるのか、たとえばコール貸し付けがどのくらい、それから農業関連産業にどのくらい貸しておるか、また、農外産業にどのくらいなどの内訳を伺いたいと思います。
  40. 森本修

    政府委員森本修君) 御指摘がございましたように、四十年の三月末で預金が二兆円牧ということになってございます。コールローンあるいは金融貸し出しというような方面に運用いたしておりますのは、これは系統全体を通じてでございます。単協だけではございませんで、単協信連中金等を合わせますと約五千四百億というような状況でございます。それから関連産業貸し出しは主として農林中金から貸し出しをされておるわけですが、それが四十年の三月末で約二千六百億ということになっております。それから系統内部といいますか、農家のほうに貸し出しをしておる、あるいは農協のいろいろな事業資金として活用しておるというようなものを合わせますと約一兆三千億というふうなかっこうになっております。
  41. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうしますと、農家の個人の面接利用しております金はどのくらい………。
  42. 森本修

    政府委員森本修君) 四十年の三月末では、いわゆる系統貸し出し農家のほうに利用していただいておりますものは一兆一千億ということになっております。
  43. 北條雋八

    ○北條雋八君 その農家の借り入れ金の内容はどのような内容になっておるんですか。それはわかりますか。
  44. 森本修

    政府委員森本修君) 貸し出しのこまかい使途別の内容ということになりますと………。
  45. 北條雋八

    ○北條雋八君 大ざっぱな………。
  46. 森本修

    政府委員森本修君) 実ははっきりしないんですが、先ほど言いましたように、長期資金と短期資金割合というふうな形にしますと、たとえば短期資金ということになりますと、肥料代でありますとか、農薬代であるとか、その年々の出来秋に回収されるといったようなものになろうと思います。長期資金ということになりますと、先ほど来のあれで、農舎とか畜舎とかいった固定投資あるいは農機具といったような長期に償還を要する資金、使途に使われる、こういうことになるわけですが、その割合で見てまいりますと、長期資金が約四五%というふうな形になっております。
  47. 北條雋八

    ○北條雋八君 ついでに、近代化資金の建物とか農機具とか、あるいは家畜、果樹、それの金額おわかりだったら……。いまのは刷り物にして出していただけばけっこうです。時間がありませんから。  次に、この近代化資金消化率のことについてちょっとお尋ねします。近代化資金融資経過を見ますと、三十六年が消化率が九三・七%、三十七年が九五%、三十八年が九三・四%、三十九年が八三・八%、だんだん消化率が悪くなってきております。最近ではどういうふうに——下がっていくんじゃないかと非常に心配しているのでありますが、これはどういう理由でありますか、その点を一応伺いたいと思います。
  48. 森本修

    政府委員森本修君) 先ほども森部先生の御質問に対しましてお答えを申し上げたのですが、一つは、融資ワク予算編成のときにはたっぷりとっておるといったような点もあるかと思います。それにしましても、融資実績ワクに対して下がってきておりますのは、一つは、資金需要が年々必ずしも一定ではないといいますか、それぞれ年次によって変動するといったような面があろうと思います。  それから農家に対する信用力補完の、現在の保証制度が必ずしも十分完備していないといったような点が一つございます。  それからさらに農協融資態度といいますか、そういう点が従来でありますと、員外にかなり高利の運用先があったわけでありますから、そういう客観的情勢のもとにおいて、知らず知らずの間に員内貸し出しに対する率が下がってきておるといったような事情もある。あるいは農協貸し出し体制そのものがまだ十分整備されていなかったといったような点もあろうかと思います。種々実はあげられておるわけですが、どういう要因がどの程度働いておるかというふうなことについては、必ずしも的確に申し上げることはできないということで、まあ一般に言われております要因というのは、ただいま申し上げましたようなことになっておると思います。
  49. 北條雋八

    ○北條雋八君 私が考えるのに、農家の負担能力がもう限界にだんだんきたのじゃないかという心配もしておるのでありますが、また、一面考えると農業基本法ができまして、構造改善で非常に意欲に燃えて当座は非常に近代化資金を利用しましたけれども、やってみてあまり構造改善に魅力がないので、それでだんだん減ってきたのじゃないかという心配も考えられるのでありますが、そういう点はないものですか。
  50. 森本修

    政府委員森本修君) 資金に対する需要は、御指摘のように、いろいろな要素で影響をされると思います。御指摘のような要因もおそらく影響しておる場合もあろう、こういうふうに思います。果樹とか、あるいは畜産とかいったようなものの、資金種目も、必ずしも思ったほど伸びていない、ここ一、二年来の畜産事情といったようなものも、こういった近代化資金貸し出しに微妙に影響しておるといったような点もあろうかと思いますが、そういった幾多の要素に影響されながら近代化資金実績がこういうふうになってきておるというふうな点は私どもも想像にかたくないわけであります。ただ、一般的に言われておりますことは、先ほど御紹介いたしましたような数項目に尽きると思います。
  51. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 関連。貸し出しの件で先ほどお話がありました農協貸し出しの体制がよくないような面もあろうというふうなお話もちょっと出ましたが、農協貸し出しをして不正貸し付け等をやって焦げついている件数並びにその額がどれぐらいあるか、この点もひとつ伺っておきたいと思います。
  52. 森本修

    政府委員森本修君) 御質問になりました不正貸し出しをして焦げついておるというのは、私のほうでも実は十分金額としてよくわからないのですが、近代化資金のほうで延滞がどのぐらいあるかというふうなことになりますと、若干調査をしたものがございます。たとえば三十七年、三十八年の年度をとりまして、その年度に償還期に達しておるものの延滞率を見てまいりますと、償還期から一年経過してなお資金が入らないというふうなものの率は、両年度平均いたしますと約三%程度ということになっております。
  53. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これは示していただきたいと思うのです。前に私が一部分の、ごく一部分の農協の不正貸し付けをやっているということを大臣にも申し上げておきましたのですが、そのときに大臣は、約百件ぐらいあるというふうなことだったのですが、私の調査したものは、それは警察のほうに摘発されているものが大体それぐらいあって、まだ摘発されてないようなものもあるように私の聞くところによるとあるのですが、そういう点からも、この際この近代化資金融資に伴って実際農民の手に渡らなければならないものが、そういうわき道に入って貸されるようなことがあっては、いかにいい制度をつくられても、その取り扱っていく人によってそれが運営されていくとすると、この監督行政等のあり方等も十分に注意していかなければならぬ。ですからこういう面から考えていっても、特にそういうことは明らかにして、そうして臨むべきじゃないか、こう思うわけです。
  54. 横尾正之

    説明員(横尾正之君) ただいま御質問のございました不正事件の発生件数の問題でございますが、私のほうの調査によりますと、不正事件発生件数は、三十七年百二十二件、三十八年八十七件、三十九年七十件ということの数字になっておりますが、これは信用事業関係のみではございません。その他諸般について、農協につきまして発生いたしました不正事件の件数でございます。したがいまして、信用事業のうち、特に近代化資金関係の件数がどうあるかということにつきましては、ただいまの調査では実態を明らかにいたしておりません。  なお、ただいま御指摘がございましたように、いずれにせよ、このような事件が出ますことはまことに遺憾であります。農林省といたしましては単協につきましては主として県が監督権を持っておりますし、連合会以上につきましては農林本省地方局でその監督をいたしておるわけでございますが、従来も監督、指導に努力を払ってきた次第でございますが、いま申し上げたような実態もございますので、さらに、今後そのための監督、指導を強化するたてまえのもとに、先般それについて関係方面に通達もいたしました。今後努力していく、こういうふうに考えておる次第でございます。
  55. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 関連ですからこれでやめますが、環境整備資金等、先ほどお話がありましたように、そういう資金の調達もたしかに必要でしょうけれども、もっとその根本的な姿勢というものからこの法案に対して臨んでいかなければならない。そういうことを先ほどから北條委員が言っているわけです。それを根幹においてのこの法律の設定がなければならない。そういう観点において、将来は間違いのないような行き方をしていかなければならないというふうに思うわけであります。この点一言私の希望を言っておきます。
  56. 北條雋八

    ○北條雋八君 次に、環境整備計画のことについて伺いたいのですが、最近農村で大きな問題になっております。都会の団地のかぎっ子、それと同じように農村では労働力の女性化によりまして、幼児たちが母親につきまとって足手まといとなる。そして仕事も思うようにできない。これはこぶっ子というんですね。このこぶっ子の問題がマスコミでも取り上げられておりますが、今回の制度改正で農村環境整備関係は、先ほど森部委員からもお話がありましたが、非常に対象がふえてけっこうだと思うのです。ぜひ農村には託児所とかあるいは保育所、幼稚園とかいうようなものをつくる必要があると思うのです。農林省はこの問題にはどういうふうに対処されるか、また、いま申しました託児所などはどういうふうに考えておられますか。農村環境整備計画と大体具体的のお考えを伺いたいと思います。
  57. 森本修

    政府委員森本修君) 御指摘がありましたように、最近の農村の状況からいきますと、託児所などいわゆる労働力がフルに活動できるといったような関係施設が非常に重要になってきていると思います。私どもの所管に限りまして申し上げますと、今回の近代化資金融資対象のうちで、環境整備資金の中にそういった託児所の施設をつくる際の資金、それについても貸し出しをしたいということで、今回の融資対象拡大の項目の中に入れてございますが、そういう資金を利用していただいたらいいと、こういうふうに思っております。
  58. 北條雋八

    ○北條雋八君 もうちょっと具体的に、何カ所ぐらいつくって、どのくらいの予算をそれがためにとってある……。
  59. 森本修

    政府委員森本修君) いまちょっと役所側として計画的にどの程度設置をしていくかというふうなものは持ち合わせておりませんけれども近代化資金としましては、先ほど来御説明いたしましたように、資金量としてはかなり用意をしておるつもりでございますので、託児所設置に必要な資金の借り入れ申し込みがあれば、十分その要望にこたえていけると、こういうふうに思っております。
  60. 北條雋八

    ○北條雋八君 この問題は非常に私は重大な問題だと思うのです。託児所と一口にいいますけれども、これは都会でも問題になっておりますが、特に農村は女性化になって、農村の所得格差を是正する上にも生産性を上げるために非常に女性が働いておるわけでありますから、このこぶっ子がいるために非常に生産性を阻害されておるので、これは全国的に考えて非常に大きなものだと思うのです。これは都会でも子供のために託児所を非常に利用されておりますが、ただ、母親が出勤するのに、八時以後では困る、もっと早く預かってもらいたいという陳情をたびたび私は聞きまして、こういうふうな事態で八時からだと自分の出勤に間に合わないといったようなことで、非常に多くの人が困っておるわけです。それと同様で、この母親が思い切って安心して仕事のできるようにするということは、ほんとうに重大なことだと思うんです。ですから、こういうようなことについては計画的にやっぱり農林省としては考えられることが必要だと思うんですが、どうぞこの点は、いま伺うと、別に計画はない、申し入れがあれば幾らでも出すというのではなしに、積極的に農林省のほうで、この計画をちょうどいい機会なんだからひとつやっていただきたいというふうに考えます。  次に、近代化計画の融資対象が今度はだいぶふえました。しかしながら、その対象の中には、乳牛、繁殖牛、それから種豚等が追加されたわけでありますが、この養豚または養鶏、特に養鶏が含まれておりませんが、その理由は、衆議院の会議録で見ましたんですが、養鶴は短期的に資本回収ができるという理由で入っていないということでありますが、その他に何か理由はあるんですか。
  61. 森本修

    政府委員森本修君) まあ主としていま言われましたような理由で、近代化資金は御案内のように、長期あるいは中期資金を貸し出すと、こういうふうなことになっておるわけであります。特にいわゆる固定資本投資を促進するというふうなねらいでできた資金ということになっております。養鶏の関係でも、あるいは養鶏のための畜舎とか、あるいは養鶏をするための機具、機械といったようなものは当然融資対象に従来もしてきております。ただ、鶏を入れます資金あるいは育成をするといいますか育てる資金という、ふうなものになりますと、先ほど言われましたように一年以内といったような、きわめて短期の資金でございます。そういう関係から、従来系統資金もそういう方面にずいぶん貸し出しをしておるといったようなこともありますし、また、近代化資金の性格からいたしまして、いわゆる中期資金まで対象にするというふうな考え方から、養鶏の導入なり、あるいは育成の資金といったようなものはこの対象には今回は加えないというふうなことで出発をしたいというふうに考えております。
  62. 北條雋八

    ○北條雋八君 近代化をする設備にはやるけれども、飼料とかというようなものに、近代化施設でもって、そこで飼う場合でも飼料に対しては全然対象外だということなんですね。めいめい、個人個人、これは非常な数ですからね。扱われないにしましても、多頭羽飼育の場合、大量になった場合のえさですね、飼料、そういうものにも貸し付けできないというわけですか。
  63. 森本修

    政府委員森本修君) 金融の、従来制度金融のたてまえとしましては、大体長期資金といったようなもの、それからまあ従来の通常の金融機関で借り入れの困難なもの等について、制度的にてこ入れをするというようなことで実は進んできておるわけであります。そういう関係からいきますと、今回の制度改正におきましても、養鶏まで融資対象にするというのはちょっといかがかということで、融資対象には加えられないということできておるわけです。ただ、御指摘がございましたように、経営全体を見まして、資金長期、中期といったような区分でなしに、経営全体が拡大していく際に、そういうふうな全体の資金に対して何らかの制度的な手当てをすべきではないかといったような意見はないわけではございませんし、われわれとしても、新しい角度から金融制度としては検討に値する問題だというようには思っております。しかし、従来の制度金融のたてまえというふうなことからいきますと、今回の改正案のようなことになっておるわけであります。御指摘のような点についても、十分今後は検討を深めていくべき課題だというふうには思っております。研究をさしていただきたいと思います。
  64. 北條雋八

    ○北條雋八君 これはもう言うまでもないことですが、いま濃厚飼料は、非常に輸入品は高いので、飼料の、えさ代で経営がうまくいかないということは申すまでもないことでありまして、それが鶏卵について考えてみまするに、畜産の生産額のうちで一番多いのは鶏卵なんですね。これは資料によって調べますと、鶏卵は、畜産の総生産額が約五千億円です。そのうちで鶏卵が最も大きく、千六百四十八億円ですね、卵の代が。それに次いで今度は豚で、千五十三億。その次が牛乳で、千三十六億ということなんで、畜産のうちの柱なんです。卵は。ですから、近代化することも非常に影響が大きいわけですから、かたがた高い飼料でもありますし、これらについてはぜひ融資対象にしていただきたいと思うんですが、一そう今後いろいろ折衝をしていただきたいと思います。特に鶏卵は、農家が昔からだれでもやれる養鶏でありますから、また、毎日現金がとれる産業でありますから、で、一方また、卵というものは、大衆がなくてならない生活必需品でありますから、そういう点もひとつ十分認識された上でひとつこの実現をはかっていただきたいと思います。  それから次に、利子の補給のこと。これまた先ほど森部委員のほうからお話がありましたが、最近、地方の財政が非常に窮乏しておることは申すまでもないことであります。近代化資金融資が、その額が拡大すればそれだけ地方財政の負担が重くなってくる。それでありますから、県によりましては近代化事業の拡大をあまり喜ばないで、場合によるとある程度で押えるところがあるという話も聞いておるんですが、もし万一この傾向が激しくなるとすれば、近代化がますますおくれてくる結果となりまして、近代化促進を逆行させることになると思うのですが、政府はどう考えておられるか。また、県によっては非常に困りまして、それで市町村が単独で、県はもちろんでございますが、県あるいは市町村が単独で利子補給の上乗せをしてやっておるということも聞きます。それらの事情に対しまして、どういう対策を今後とられるか、それもあわせて御回答願います。
  65. 森本修

    政府委員森本修君) 近代化資金地方財政の関係でございますが、私どもの調べましたところでは、全体を通じまして、近代化資金に必要な負担、県の負担を見ますと、全体の農業行政費に対して約五%程度になっておるようでございます。また、県の実情から見ますと、必ずしも近代化資金の負担がきつくて、融資をしぼっておるといったような事情はそうたくさんはない、ほとんどないのじゃないかというふうに私どもは見ております。ただ将来、融資ワクが拡大してまいりますと、それにつれて自動的に地方公共団体の負担も増加してくるというふうな関係がございますから、将来そういった資金ワクの拡大、それから地方公共団体の財政全体の推移というふうなことから考えますというと、そういう点について十分注意を払わなきゃならぬというふうな事情にあるいはなってくるのじゃないかという心配がございます。その点はまあ御指摘のとおりだと思います。先ほどもお答えいたしましたように、そういうふうな観点からいたしまして、県の出資に要する負担というのを今回制度改正でかなり軽減して、実際は先ほど申し上げましたようなことで、負担でいきますと八億円ぐらいあるものが二億程度で済む、四十一年度は、そういうふうな関係になっております。また、こういうふうな負担も、両三年もしますとほとんど要らなくなるというふうな見通しになっておるわけです。そういう点で、私どもとしましても、地方財政に対してかなり注意をし、配慮をしなくてはならないということで考えておるわけでございます。上乗せをいたしております県は数県ございます。そういうふうな、これは国できめておりますところの負担以上に各県が自主的に負担をしておるというふうな関係でございます。まあ詳細は、市町村にまで及びますので、正確には数字はわかりませんけれども、市町村のほうは。県別に見ますと、数県独自に上乗せをしておる県があります。
  66. 北條雋八

    ○北條雋八君 いまのお話を伺いますと、平均して県別の五%ですか、程度であるが、それがために近代化を分量を押えるというようなことはないと言われますけれども、それは県によって事情が違うので、一番それじゃ多いのはどのくらい、何%ぐらい使っておりますか。
  67. 森本修

    政府委員森本修君) ちょっといま具別に調べて申し上げますけれども、たとえば、先ほど森部先生から御指摘がございましたように、一再地方財政としても窮屈でありそうだ、また、近代化資金資金需要も伸びておるというふうな東北でありますとか、あるいは南九州といったような諸県を見ましても、大体農業行政費の五、六%というふうなことになっておるわけであります。あるいは県によりまして、もちろん平均でございますから県によりましてもっと割合の局い県もあろうかと思いますけれども、問題になりますような東北なり南九州といったような諸県を見ましても、ほぼそういったことになっております。
  68. 北條雋八

    ○北條雋八君 それは事実そう大したことはないと言われますが、しかし、近代化融資ばかりじゃないので、地方財政が窮乏を告げておるということはもう従前から認識しておることだし、実際に苦しいことは十分察せられるのです。ですから、国の大きな農業施策として発足したこの制度を、できるだけ強力に推進させるためには、政府としては、本来なら特に所得格差の是正を目途にしている農村でありますから、全額国庫が利子を負担するというくらいの措置をとっていいと私は思うのです。少なくともこの補助率をもっと上げて、県と国が半々でなしに、三分の二は国が負担し、三分の一を県が負担するというぐらいのところまではこの際やるべきだと思います。それに対してどういうふうに考えておられますか。
  69. 森本修

    政府委員森本修君) ここ二、三年来、あるいは現在の状況についての私どもの見ておりますところを先ほど申し上げたわけでありますが、将来のことになりますと、先ほど申し上げましたように資金量がふえてまいります。また、あるいは地方財政の状況も変化してくると思います。そういうふうな情勢の変化に応じまして、もし地方の財政近代化資金などに必要な財政負担が多くて近代化資金が伸び悩むというふうな事態になりますれば、もちろん私どもとしても地方財政に対して何らかの、全体ではございませんが、近代化資金ワク内における何らかの対策をとらなきやならぬというふうには考えます。ただ、一言つけ加えさしていただきますと、地方財政に対する負担も基準財政需要といったようなものに織り込まれておりまして、地方の交付金といったようなもので自治省から見られております。そういうふうな点もあわせ考えまして、必要な事態になりますれば、御指摘のようなことについても検討してしかるべきではないか、こういうふうに私ども考えております。
  70. 北條雋八

    ○北條雋八君 先ほどちょっとお話がございましたので二重になるかもしれませんけれども、今度この法案で金利が五分下げられたわけでありますが、この五分下げたことによって、六分なら経営が十分やっていけると思っていらっしゃるのか、外国の農業のいわゆる金融との比較がわかるなら知らせていただきたいのですが、外国と比べて日本の農業金融の金利はどの程度になっておるんですか。それを伺いたいと思います。
  71. 森本修

    政府委員森本修君) 外国の農業金融制度との比較でございますが、御案内のように諸外国におきましてもきわめて複雑な金融が行なわれておるようであります。たとえば、いわゆる財政資金といったようなもので、国の機関のようなものが貸し出しをしておるような制度もございますし、それから、まあ例はそれほど多くはございませんけれども、この近代化資金に相当するような農業系統団体の原資を使って、政府利子補給をして貸し出しをするといったようなものも、例は多くはございませんが、ある場合もございます。いわゆる財政資金を使っておりますものは、かなり低利長期のものもございます。国によっていろいろありますので、まあ、あれでありますが、ただ、系統機関を通じまして、いわゆる日本の近代化資金と同じような制度をとっておる国の金利を見ますと、ほぼ六分あるいは五分といったような関係で、それほど、今回改正をいたしました六分の金利というのは、格段と高いというふうには私ども承知をしないわけでございます。同種の制度を比較いたしますと。
  72. 北條雋八

    ○北條雋八君 フランスのはどのくらいになっておりますか、フランスは。この近代化資金に相当する……。非常に安いと思っているが……。
  73. 森本修

    政府委員森本修君) フランスの同種の制度は、農業相互信用金庫といったようなものでございますが、それの金利を見ますと、短期資金、それからこれは一般の経営資金、それから中期資金農業機械なり、あるいは家畜なりを導入する資金に貸し出されておるようですが、それは金利を見ますと六分五厘ということになってございます。
  74. 北條雋八

    ○北條雋八君 それじゃ時間も十二時半になりますから、先ほどお願いしておきましたが、近代化資金の、農民に短期、長期貸し付けたその内容と、その返済状況、この資料と、それからただいま言いましたが、外国の農業金融の利率を調べたもの、この資料を出していただきまして、また質問を保留しまして、きょうはこの程度にしておきたいと思います。
  75. 森本修

    政府委員森本修君) ただいまの御要求になりました資料でございますが、近代化資金の内容と、返済状況、これはできるだけ早く出したいと思います。  で、外国の制度でございますが、いろいろなソースを総合いたしまして調べてはおりますけれども、あるいは完全というわけにはいかないかもしれませんが、できるだけ私どものほうに集まっておりますものを総合いたしまして、早く出したいと、そういうふうに思います。
  76. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  77. 山崎斉

    委員長山崎斉君) これより委員会を再開いたします。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。矢山君。
  78. 矢山有作

    ○矢山有作君 畜産物価格安定法の一部を改正する法律案に関連をいたしまして御質問を申し上げたいと思うのですが、最近、畜産物の価格審議会を終わりまして、それぞれ加工原料乳の保証価格その他の告示がありましたが、これに関連する問題をまずお尋ねして、それから畜産振興事業団の運営なり、あるいは牛肉の輸入の問題等についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、具体的な質問に入ります前提としてお伺いしたいのは、これは農林大臣からお答え願いたいのですが、御存じのように、農業基本法によると、農業従事者と他産業従事者との所得の均衡ということが、国の農業に関する政策目標になっておりますが、これは御承知だと思うのです。この政策目標は今後ともおそらく堅持されるんだろうと思うんですが、その点、農林大臣から御見解をお伺いしたいと思います。
  79. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) お説のとおり、農業基本法による国の規定にありますとおり、生産性向上により所得の均衡をはかっていく、この目的で進むわけでございます。
  80. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは、次は御存じの、同じく農業基本法は農業従事者と他産業従事者との所得均衡を達成するために、いろいろの施策を掲げておりますが、その中心的な施策の一つというのは、農業生産の選択的拡大にあると私どもは理解しておりますが、そういう理解でよろしいか。そしてまた、よろしいとすれば、今後もその選択的拡大という政策はこれを遂行されるかどうか、この点をお伺いいたします。
  81. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) もちろん選択的拡大に向かって努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  82. 矢山有作

    ○矢山有作君 次は、その選択的拡大の政策は、これを今後も取り続けるということですが、われわれの理解するところでは、その選択的拡大の中の一つの中心の柱になっておる作目は酪農が選定されておると思いますが、この酪農をやはり選択的拡大の中心作目として推進するということも従来どおりと考えてよろしいか。
  83. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) さように御了解を願っているわけであります。
  84. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、それではお尋ねいたしますが、これは数字的な問題でありますから、農林大臣のほうでおわかりにならなければ政府委員のほうから御答弁をいただいてけっこうなんですが、最近の生乳の需給実態というものをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  85. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 最近の生乳の需給の実態は、昭和三十八年までは御承知のように、生産の伸びも順調でございまして、大体一〇%をこえる伸び率を示してまいったのでございますが、三十九年に至りまして、生産はやや鈍化をいたしまして、初めて一〇%台を割るに至ったのでございます。そして四十年度は現在まだ最終的な数字の集計は終わっておりませんが、生産の伸び率は七%前後ということになるかと推定をされております。  これに対しまして、需要の伸びは、飲用乳の伸びが、これも三十八年の夏までは比較的順調にまいりまして、その後若干、天候の関係とか、あるいは景気の動向等の影響がありましたか、消費の伸びがやや鈍化をいたしましたが、しかし、生産の鈍化ほどの消費の伸びの鈍化は見られませんで、総体的には飲用乳の比率が高まりました。結局、そのしわ寄せは乳製品の生産量の総体的な減少という形をとりまして、昭和三十八年度の実績では消費量は生乳換算で二百九十四万二千トン、それに対します生産供給量は二百八十四万三千トンということで、結局、輸入量は生乳換算九万九千トン、三十九年度は消費量が三百二十万四千トン、生産量が三百六万七千トンということで、輸入量は生乳換算十三万七千トン、四十年度の実績見込みは、消費量が三百四十八万一千トンに対しまして、生産量は三百二十八万六千トンということで、差し引き生乳として総輸入量が十九万五千トンというような数字になっておるのでございます。
  86. 矢山有作

    ○矢山有作君 大体、生乳需給実態というものを調べてみますと、いまの御答弁等ともあわせていえることは、大体審議会等で示された需要見込みよりも現実の需要のほうが上回っておる。さらにまた、審議会で示された供給見込みよりも実際の供給数量のほうが大体下問っておる、こういうことがいえるのじゃないかと思うのですが、総体としてそういうことになりませんか。
  87. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 生乳の生産量の見通しなり需要量の見通しというものは実は相当むずかしいものでございますが、通じて申し上げますと、消費量は若干の相違でございますが、畜産物価格審議会に事前に推測いたしました需要量を提出いたしましたものに比べますと、三十八、九年と現実の消費量のほうが伸びておる。四十年度は審議会に提出いたしました需要見込みより約十万トンばかり減少をしておるのでございます。供給量のほうは、これは私どもの予測いたしましたものに比べて三十八年度がわずかに実績のほうが上回っており、三十九、四十年度と供給量が予測よりも少ないという結果になっておりまして、最近の動向から見ますと、お話しのようにやや消費量は全体を通じますと、見込み量よりやや多く、生産量は見込みよりもやや低目に実績が出ておるということでございます。
  88. 矢山有作

    ○矢山有作君 したがって、大体いえることは、最近の状況としては見込みよりも消費量のほうが上回っておるし、生産のほうは見込みよりも下回っておる。大体の傾向としては供給不足という現象が固定化しておる、こういうふうに見ていいのじゃないかと思うのです。そこで、そういう現状を踏まえて今後の需給見通しというものをどういうふうに考えておいでになるか、この点をお伺いいたします。
  89. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 今後の需給見通しにつきましては、昭和三十七年の農産物の需要と生産の長期見通しにおきまして昭和四十六年度の需給見通しがあるわけでございますが、それによりますと、これは幅をもって推計をいたしておるのでございますが、昭和四十六年度の牛乳乳製品の生乳換算の需要総合計は七百五万トンないし九百五十万トン程度という大きな幅で予測をいたしておるのでございます。それに対して生産の見通しは五百九十万トンという見通しを持っておりまして、いずれにしても単純な推計をすれば、牛乳乳製品は不足状態になるという見通しをいたしたのでございます。昨年十月に改正されました酪農振興法の規定に基づきまして、私ども酪農近代化計画の基本をなします近代化基本方針というものを公表するにあたりまして、需給の見通しをいたしたのでございますが、その際の数字はすでに公表されましたとおり、牛乳、乳製品の四十六年度における総需要量は約七百八万トン、これに対して生産の目標としては七百九万トンの生産の目標を掲げて、その目標に向かって努力をいたしたいということを明らかにいたしておるのでございます。それ以後の問題になりますと、実は需給の見通しをすべき前提の諸指標が全体の経済計画の統一的な指標として与えられておりませんので非常に困難なのでございますが、需要量はおそらくといいますか、私どもの試算では、五十年度には生乳換算で約九百万トン程度の生乳需要量になるだろうというふうに推測をいたしておるわけでございます。最近の需給の状態からいたしますと、三十八年度後半から急速に酪農の生産の構造の変革が見られるのでございまして、特に牛肉といいますか、食肉の価格の高騰傾向というものをバックにいたしまして、飼養頭数の増大についても鈍化が見られるというようなことがございますので、端的に申し上げまして、ここしばらくの間は生産の回復というのはそう急速には進みにくい事情にある。ただし昭和四十年の後半から生乳生産の増大のための回復傾向が見られておりますので、今後順次生産の増大方向に向かっていくだろうというふうに見ておるのでございます。
  90. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの御答弁によると、近代化基本方針というのが示されましたね、これで四十六年度における需要総量が七百八万四千トン、それでそのときの国内生産の見込みが七百九万トン、こうおっしゃったわけですか。
  91. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) そうです。
  92. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、その国内生産で七百九万トンを達成するためには、先ほどお話がありましたように、現在の生産の実態から見て非常にむずかしい面があるというふうに私ども考えるのです。このことは、局長もそれを端的にまるで認めたようなことはおっしゃらなかったように理解できるのですが、しかし、この最近の乳牛の飼養頭数の伸びの停滞、さらに乳牛の屠殺頭数の異常な増大等の状況から考え、それを反映した生乳生産量の伸びの停滞傾向から見れば、これだけの国内生産を昭和四十六年度において達成するということはやはりむずかしい、こういうことは私はお認めになっているだろうと思うのです。ところで、そういうふうに生産が非常に停滞をしてきたその原因は一体何だというふうにお考えになっておりますか。この点のつかまえ方が的確でないというと、これからの国内生乳の生産を伸ばしていくためのいろいろな対策というものの中心がぼけてくると思いますので、その基本的な生産の停滞の原因というものをひとつ御説明願いたいと思うのです。
  93. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 昭和二十八、九年のころからわが国の乳牛の飼養頭数の増大が続き、また飼養農家戸数も増大を続けまして、三十五年に四十二万戸という戸数にまで達したのであります。同時に、それに伴いまして生乳の生産量も顕著に伸びたのでございます。三十五年ごろから飼養農家戸数が停滞をいたしまして、三十九年にはじめてやや減退をし、四十年度にはさらに農家戸数の減少が見られたということが数字の上で明らかになっておるわけでございます。最近におきます乳牛の飼養頭数の増加の鈍化傾向、あるいは生乳の生産の増加の鈍化の傾向というものは、これはいろいろな事情が重なっておると思うのでございますが、一つ農業全体の環境変化と申しますか、条件変化と申しますか、労働事情の変化に基づく理由があると思うのでございます。その点については私から特に申し上げる必要もないと思うのでございますが、農村における労働力の不足状態といいますか、そういう労働力の減少傾向が始まりますれば、当然のこととして、三十五年度まで日本の酪農が有畜農家創設的な思想で外延的に発展をしてまいりました傾向が転換をせざるを得ないようになるわけでございます。一、二頭飼いという零細飼養農家増加がとまり、さらにそれは減少に向かうという傾向を示しまして、これが一つの飼養頭数の減少の形としてあらわれておると思われるのであります。それからさらに、そういう農家戸数の減少にもかかわらず、飼養頭数なり生乳の生産量は増大をいたしておるのでございまするが、その増大は飼養農家の一戸当たり飼養頭数の増大、つまり規模拡大という形で行なわれておるのでございまして、この酪農経営の規模拡大という速度が農業の環境変化に伴う零細酪農家の脱落という問題を吸収し切れないということに一つの大きな理由があると思うのでございます。そのほかに、脱落していきます酪農家の飼養をいたしておりました乳牛というものが酪農家に引き継がれるか、あるいは肉用に屠殺をされるかといういずれかの道をとるわけでございますが、昭和三十八年の後半ごろから、肉用に屠殺をされる乳牛の数が最近まで相当顕著であった、つまり正常な屠殺頭数の比率というのは、全飼養頭数に対しておおむね一四、五%を適当とするわけでございますが、わが国の場合は一四、五%を過当とするわけでございますが、ただいま申し上げたような期間には二〇%に近いような屠殺が進んだのでございます。ただ、最近に至りましてようやく乳牛の屠殺頭数というものも従来の激しい屠殺時に比べますと安定化の傾向を見せているということは、これはまだはっきり言えないのかもしれませんが、数字としてはそういう傾向が出ております。そういうようなことが重なりまして、従前の生産の著しい増大傾向が最近に至りまして鈍化の傾向を示しているというふうに見ているのでございます。
  94. 矢山有作

    ○矢山有作君 確かにおっしゃるように、ここ数年前までは従来役牛として飼育しておった馬や牛にかわって乳牛を飼う。あるいは労働力の完全燃焼のために乳牛を飼う。そういうようなものは外延的にずっと伸びてきたと思うのです。ところが、それが先ほどおっしゃるような経済事情等を反映いたしまして、労働力の問題もからんで、外延的な発展の方向に向いたいということはおっしゃるとおりだと思います。しかしながら、私は、生乳生産が停滞しておる現象というのは、案外早急には回復できてないような要素を含んでおるのじゃないかという気がするわけです。その一つの大きな原因考えますのは、私の見方から言えば、生産が停滞するのはいろいろ原因がありましょうが、最大の問題は、酪農の収益性が非常に低いということが一つの大きな原因になっておるのではないだろうか、こういうような感じがするのですが、酪農の収益性というものが他の作目等に比べてどういう状況にあるかということをひとつ御説明願いたいと思います。
  95. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 酪農の収益性につきましてはいろいろ見方があると思うのでございますが、結局最も簡単な見方は、酪農を経営することによって得られる家族労働報酬というものがどの程度であるかということに相なるかと思うのでございます。で、その点につきましてはいろいろ——いろいろと申しますか、どのようなものをもって説明するか問題がありますが、一応、昭和三十九年の農林省の統計調査部調査による生産費調査によって見ますると、昭和三十九年の全国平均の一、二頭当たりの家族労働報酬は、酪農の場合四百三十九円ということに相なっておりまして、この家族労働報酬というものは一、二頭飼いの収益性のきわめて低い層というものが半数以上を占めておるということから、平均の家族労働報酬はこういう数字になっておるのであります。この平均的な数字をもってしますれば、酪農の収益性というものは、米、野菜、果樹等に比較しまして劣位でございまして、手元の資料だけでは正確ではございませんが、私の記憶では麦類あるいは繭の生産等とほぼ同じ水準ではないかと思われます。ただ、三十九年の調査を見ましても、飼養頭数が五頭ないし六頭になりますと七百三十五円、七頭をこしますと千円をこえるというようなことでございまして、やはり現在の酪農の動向というものが、この収益性の問題を動因といたしまして流動しつつあるということは申し上げられることができるかと存じます。
  96. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまのお話で、大体酪農の場合の家族労働報酬が他の作目に比べて非常に低位にあるということは明らかになったわけです。そのことは収益性の低さということにもなろうかと思いますが、私の手元にある農産物の生産費調査で見ますと、主要作目の所得率というものがはじき出されておりますが、この所得率で見ましても、牛乳の場合には三割足らぬ。これは三十六年と三十八年の平均ですが、こういう実態が出ておりまして、他の作目に比べて非常に低い状態になっております。ところが、その低い原因は、いまの御説明によると、一、二頭飼いのような、いわゆる低位生産性の飼養農家が多いから、家族労働報酬が低くなるんだと、七頭以上くらいになれば相当上がってくる、こういうお話があったのですが、しかしそれは、まあ一つの理屈としては聞けるわけです。しかしながら、現実の酪農の経営の実態は全国平均でみて、農林省から出されたこの資料によりましても、大体一戸当たりの飼養頭数というのは三・四頭だ、こういうふうに出されているのですから、そうすれば一応、家族労働報酬等で収益性の問題を考える場合には、この全国の平均の飼養規模くらいなところでやはりものを考えていくのが妥当じゃないかと思うのです。そうしてみると、大体三頭ないし四頭飼育の酪農家であって、私の手元にはそちらからいただいた資料で三十七年度のしかありませんから三十七年度で申し上げますが、三十七年度は一日当たりの家族労働報酬は三頭の場合に五百三十八円、四頭の場合は六百十一円、したがって、三十九年で言えばこれは少し上がってくるだろうと思います。しかし、いずれにしても低いということは事実だと思うわけでして、この点を無視して幾ら酪農の発展をはかろうといってもなかなかむずかしい面が出てくるのじゃないかと思うのです。先ほど多頭化の話が出ましたが、多頭化にいたしましても現在の土地による制約あるいは資金面の制約、いろいろな要素を考えた場合、さらに飼養管理面における制約、それらの問題を考えた場合に、そう一挙に多頭化というものが七頭以上、十頭以上というふうに達成されるわけではありませんから、したがって、少なくとも政策的に酪農の振興考えるのなら、先ほど言いましたような全国平均規模くらいなところで収益性等々についても考慮しながら酪農振興対策というものを推進していくべきではないか。私はそう思うのです。それをことさら七頭以上だ、十頭以上だというところに水準をもってきて、七頭、十頭になれば千円以上の家族労働報酬になる。こういう言う方をするというのは少し現実無視じゃないですかね。私はそういう感じがするわけです。これは考え方の相違ですからあなたと議論しても始まらない。こういう点はやはり真剣にひとつ御検討願いたいと思います。実態を忘れて、幾らその先の理想ばかり掲げたところで農民がついてこなければしかたがないのですからね。理想は理想として、それに至る段階として農民のついてこれるような施策を伴いながら理想が掲げられるのならいいのです。しかし、農民がついてこられるような段階を抜きにして、理想だけ掲げて、この程度ならいいのじゃないかという考え方では困る。それはそれとして、先ほど来酪農近代化基本方針の話が出ておりますので、私はこのことについて一言だけ伺いたいのですが、私の手元にも酪農近代化基本方針というものがあります。ところがそれを見ると、なるほど近代化基本方針で四十年度で七百八十五万トンの需要も見込まれるのだ、したがって、生産は国内生産で七百九万トンを達成するようにするのだということらしいのですが、これは一体、具体的な予ての国内生産を達成するための施策というものはどうやっていくのですか。これはただこう羅列してあります。しかし、これらの施策がいかに困難かということは、私どもよりも実際に行政の任に当たっておられるあなたのほうがよく御存じなんで、これをやるにはよほどの予算的な裏づけがなければできませんよ。そういう酪農近代化基本方針を速成していくための計画を具体化する具体的な施策と、それに対する予算的な裏づけと、これは一体あるんですか、ないんですか。
  97. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) この酪農近代化基本方針と申しますのは、申し上げるまでもなく、国あるいは地方公共団体等が行政を進めます場合における指導の指針として設けたという意味と、いま一つの面は、都道府県において、この基本方針の指標に従って、それぞれの都道府県事情に即応いたしました酪農近代化計画というものを樹立をする、また、集団的な生乳生産地域を育成するという意味からの地域的計画として集約酪農地域の振興計画を立てる、それらに即応いたしまして、市町村がさらに市町村の実情に基づいた近代化計画を立てるということのための基本的な指標を示すという二つの意味を持つものでございます。で、国といたしましても、この生産の目標を達成すべくあらゆる努力を尽くすべきことは申すまでもないわけでございますが、このために必要な財政投資の措置について計画を持っておるかということでございますが、この目標の基盤となるべき土地条件の整備、つまり粗飼料給与のための土地基盤整備という問題につきましては、土地改良長期計画の中で草地の造成、改良を計画的に進めていくということを明らかにいたしておりますが、その他の問題につきましては、財政的な支出というものをどういうふうに設定するかということはすこぶるむずかしい問題でございまして、端的に申し上げまして、私どもとしてどれだけのことをすれば、これはできるかという計画を持っておりません。今後、ただいま申し上げましたように、都道府県、市町村の近代化計画というものが樹立をされまして、その集計の上に立って将来を見通しをいたしますならば、どのような事業についてどのような規模を予定する必要があるということは、次第に明確になってくると思いますが、現段階におきましては、そこまでの財政計画というものを持っていないのでございます。
  98. 矢山有作

    ○矢山有作君 おっしゃる趣旨もわかります。しかしながら酪農問題が根本的に検討され出したのが、たしか三十八年ごろだと思いますが、そのころから基本的な検討が始められ、そして例の通称不足払い法というものがつくられてもう一年になる。しかもその不足払い法を制定するときに酪農近代化基本方針を示し、それに従って都道府県、市町村がそれぞれの計画を立てる、こういうことが明らかになっておったはずで、われわれからすれば、この近代化基本方針というのは、即座にこれを実施に移して、四十六年度には目標の国内生乳生産を確保しなきゃならぬわけですから、そうすれば当然いままでにいろいろな検討がなされ、具体的な施策と、さらにそれを裏づける予算措置等も検討が行なわれておるのがしかるべきだと思いますけれども、しかし、きょうの私の質問はこれが中心ではありませんので、それはそのくらいにします。ただし、少なくとも、これは近代化基本方針を示しっぱなしでは、とても現在の生乳生産の動向からいって目標達成はおぼつかない。需要量は、それはこれくらいいくでしょう、これより上回るかもしれません。問題は国内生産のほうですから、とてもじゃないが達成はおぼつかないので、これに対する裏づけというものは真剣にひとつ御検討願いたい。で、あなたがおっしゃるように、都道府県や市町村の計画というのができてきた暁に、おそらくそのときにきちっとした計算もでき、それに基づく予算的な措置も考えられると思いますから、この問題はそのときにお伺いをいたします。  で、収益性に関する質問が横っちょへいったんですが、話をもとへ戻しまして、私はやはり酪農の収益性の低さというものが生産低滞の一つの大きな原因であるという考え方がどうも抜け切らないんですがね。この点は当局はどう考えておられますか。いろいろな原因がありますよ。低滞原因は数え上げればあります。ありますが、もろもろの原因を総合して、その根底に横たわるものは収益性の低さであると、私はこう結論せざるを得ないのですが、これは農林大臣どうですか、あなたのほうからお伺いしたい。
  99. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) 矢山委員の申されたとおり、私もその点については同感の点がございます。さような観点からいたしまして、不足払いの問題等についてもできる範囲努力をいたしておるわけでございますし、また一面は、これはやはり日本では畜産に対する農家全般の知識が足らないというふうに思います。どうしても収益性そのものを上げることを価格のみによってこれを達成しようとすることは国際的に見てもそれも大事である、重要なことではあるが、それのみによるということは非常にあぶない問題であると思いまするし、一面においては、技術問題においては、それはどうしても畜産ということ自体がおそく発達したものでありますから、優秀な技術者は多いとは思うけれども農家自身については非常に技術上のまだ進歩がない、これは事実だろうと思います。たとえば一つの地域を見ましても、酪農の成績を見た場合に、かなり収益をあげておる農家も若干あります。その同じ地帯において非常に収益が落ちておるところもあるようなわけでございますので、そういう点については、やはり酪農に関する知識の普及ということはきわめて重要ではないかと、私はかように存じておるのでございまして、そういう点についても、今後努力を払っていくべきものではなかろうかと、かように存じておるわけでございます。
  100. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣も酪農生産の伸びないのは、基本的な原因は、収益性の低いことにあるということをお認めになったので、もうこの問題はあまりしつこくやりませんが、これはやっぱり十分認識してもらわなければ困ると思うのです。幾ら技術の普及をやってみたところで、牛を飼って損をするなら牛を飼う者はおらぬですよ。これはよほどのどうかした人間なら別ですよ。普通の人間が、牛を飼えば飼うほど損をするのに、幾ら技術の普及をやったって、幾ら生産基盤の整備をやったってやるはずがないのです。牛を飼えば他の作物に比較して決して見劣りがしないほどの収益が得られるのだ、こうなってこそ、初めて酪農に対して農民が真剣に取り組む。真剣に取り組む姿勢の中で技術研究をやれと言えばやりましょうかということになりますし、真剣に取り組む姿勢の中で草地改良をやれということになれば草地改良をやりましょうかということになりますし、基盤整備をやれということになればそれはやりましょうかということになります。収益性が低い、しかも今後においても収益性が高まってくる見込みがないというものを、幾ら太鼓をたたいて笛を吹いても酪農民はついてきません。この点だけは十分御認識をいただかなければいかぬのじゃないか、その点でいかに所得率が低いかということは、米に比較しても、麦に比較しても、カンショに比較しても、なたねに比較しても、繭に比較しても——繭はあなたはあまり変らぬと言うけれども、私が調べた数字では、三十六年から三十八年までの所得率で、繭は六四・四%、牛乳は二四%です。これは、数字の取り方にもいろいろあるでしょうけれども、まあいずれにしても低い。たばこが七一・三、リンゴ、ミカン、全部比べてみて、牛乳の所得率のほうが低いのですよ。これではやはりだめですよ。この点は、よく実態を認識していただいて、一番基本的な問題を解決するのにどうしたらいいかという方向に、施策の重点を移していただきたい。そうすると、そこで出てくる問題は、収益性を高めるということのためには、一体どうするのか、こういうことが問題なんですよ。これに対する御見解を伺いたい。
  101. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 若干、御質問でない部分に口を差しはさむようでございますが、所得率で見ます限り、畜産というものは、これは耕種に比べて、はるかに低いものであるということは、世界的常識でございます。養豚にいたしましても、養鶏にいたしましても、最も所得率の低いのが、養鶏でございます。大体、所得率が三五%ないし三〇%というのは、ほとんど世界各国の例でございまして、これは生産の態様が、飼料給与ということを中心にし、素畜という相当の投資を前提といたしました経営であります限り、避けがたいのであります。  それはそれにいたしまして、所得率を上げる、あるいは収益性を上げていくということにつきましては、一つは、御指摘にもございました、交易条件というものの改善ということが、当然なければならないだろうと思うのでございます。その点につきましては、大臣もちょっとお触れになりましたように、私どもとしても、加工原料乳地帯という交易条件の最も悪い地域の経営に着目いたしまして、加工原料乳に対する不足払い制度を打ち立てたつもりでございます。  そのほか、交易条件としては明らかに有利でございます飲用乳化を進めていくということが、また一つ方法であり、さらに政策的な、多種の目的を持っておりますが、学校給食の計画的な増大というようなことも、あずかって力あり得るのではないだろうかというふうに思うわけでございます。  そのほか、本質的には日本の酪農が、先ほど来申し上げておりますように、有畜農家創設的な形——先生からもお話がありましたように、従来の役畜から、経済家畜であります乳牛に変わる。あるいは余剰労働力の燃焼の場として、酪農を始めるという形から、より生産性の高い、主業的な、あるいは専業的な酪農経営に移行していくという、そういう努力ということ、また、それを応援、支援をすべきであろう、また生産性を高める重要な問題として、自給飼料率、飼料の自給率を高めていく、粗飼料給与を適性化していくということについて、政策的にも配慮を加えていくべきであるというふうに思われるのであります。  なお、大臣のお話にもちょっと出ました、現在の酪農経営の水準では、非常に技術的なばらつきが大きいのでございまして、同じ経営規模にしましても、耕種の部門と異なりまして、経営ごとの収益性のばらつき、生産性のばらつきというものが非常に大きい。これの技術的な指導、技術の普及ということによる平準化という問題も重要な方向であろうというふうに考えている次第でございます。
  102. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いろいろ御説明ございましたが、大事なところだけに、今後の論議の関係がありますので、しぼっておきたいと思うのです。  所得率を持ち出したばかりに、ちょっとはぐらかされた感じがするのですが、要するに、酪農の収益性が低いということは、これはお認めになりますか。これが第一点。その収益性を高めていくために、おっしゃったように、いろいろの方策があります。しかしながら、私が先ほど言いましたように、何といっても収益性を高めなければ、どんなにしても酪農の生産は伸びないのだ。この二つの点ですね。これは、一応原則的な考え方としてお認めになるかどうか。その点だけ簡単に。
  103. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 過去の経緯におきまして、酪農の収益性が、他の作目の一部と比較いたしまして相対的に低かったということ、それから収益性を離れて生産の拡大、農民の酪農振興、酪農の生産拡大意欲を伴わないという基本的な考え方につきましては、私も同感でございます。
  104. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで、その収益性を向上させるための基本的な考え方として、いろいろな条件はあります。ありますが、中心的なものとしては、やはり交易条件の改善、つまり当面の方策として価格政策というもの、所得政策というものが重要である。この点も先ほどの御答弁から出てきたと思うのですが、そういうふうに解釈してよろしいか。
  105. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 交易条件につきまして改善を加える必要がある、また、交易条件について一定のめどが酪農家に与えられるということになれば、それは酪農の振興にとって重要な役割りを果たすものであろうという点については、御指摘のとおりでございます。
  106. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまのめどというのは、何ですか。
  107. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 一般に、価格の政策といいますか、価格行政につきまして、交易条件が安定的であって、いかなる条件までは保証されているという条件が与えられることは、きわめて重大であるという趣旨で申し上げたわけでございます。
  108. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、ちょっと気にかかる考え方なんですが、それは、それじゃ具体的に言うと、どういうふうなめどと考えておられるのですか。
  109. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 私の考えておりますことは、価格の、交易条件として酪農家にとって最も不利でありますものが、いわゆる加工原料乳でございます。必ずしも加工原料乳に政策全般としては限る必要はないのかもしれませんけれども、当面、そこに問題があるという意味で申し上げているのでございますが、そういう不利な価格条件のものについては、少なくとも生産費をいかなるときにおいても保証するということが、重要であろうというように考えているのでございます。
  110. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、簡単にこう考えたらいいわけですね。要するに、交易条件の改善が必要である。そのめどは、加工原料乳について一応考えていく。その場合、加工原料乳の価格は生産費を保証することがもう一つのめどである。めどという意味は、そういうふうに解釈したらいいわけですね。
  111. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) そういう趣旨で申し上げた次第であります。
  112. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私、いただいた資料で、わからぬ点を関連して伺うのですが、屠殺の資料の中で、乳牛の屠殺が、三十七年の成牛では十万一千頭を屠殺している。それから三十八年には十五万一千頭の乳用牛の成牛を屠殺している。それから三十九年は、ほぼ二十万頭近い乳牛を屠殺している、十九万七千五百頭。それから四十年度では、推計ではあるが、もう二十三万頭近いものが屠殺すると推定されておる。逐年乳用牛の成牛が屠殺されておるその数が累加をしておる。この事実というものをやはりどう理解するかという理解のしかたが収益性の高い、低いのいまの論議にもつながる基本的な現状の認識のこれは数字だと思うのであります。で、伺う点は、老廃の乳用牛であるのか、あるいは搾乳中の盛んに能力をあげておるものも含むのか。だとすれば、その割合は一体、屠殺に回したこの乳牛の老廃と、しからざるものの割合はどういう実態になっておるか。これが質問の第一点。  それから質問の第二点は、犢の屠殺が出ております。この犢のうちで牡犢と牝犢ですかという区別があると思う。それがどういう内訳になっておるのか。そのうちでさらに乳犢——乳用牛の牝犢が屠殺に向かっておるのが過去三年のこの統計の中でどういう割合を占めておるのか。この点を伺いませんと、私はやはり収益性の低さ、日本の酪農の置かれている現状というものの認識というものが不徹底だというふうに私は思うのであります。  それから、もっぱら原料乳地帯の価格をそうやるということでありますが、しかし、二月の農林省の統計調査部の統計を見ましても、二月中に屠殺された乳用牛のは全国で九千九百一頭にのぼっておる。これはこれからどんどん種つけをして乳を出そうという乳用牛の犢が九千九百頭もつぶされておるのだが、その中で、私は原料乳地帯において、たとえば兵庫その他においては約千頭近い乳犢を屠殺しておる。もとより原料乳地帯でもこの乳牛の牝犢はつぶされておりますが、こういう実態というものはあなた方役人が東京から眺めたものとはよほど違った深刻な事態にあると思うのだ。第一、示された資料のそういう内訳はどういう内容になっておるか。これをまず伺いたいと思います。
  113. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御指摘のように、乳用牛の屠殺頭数は三十七年まではほぼ正常といいますか、むしろ屠殺数は押えぎみであった。つまり更新がややおくれぎみに使用が続いておったと見られるのでございますが、三十八年に入って屠殺数がふえ、三十九年、四十年と、屠殺頭数の増大傾向が続いておりますことは先ほど申し上げたとおりでございます。その理由は、私は端的に申し上げまして、三十八年には御承知のように、牛乳、乳製品を通じまして乳の生産供給のほうが需要をオーバーするような事態が一時的に生じたのでございます。そういう意味で、一時的な供給過剰時代を三十八年に招いたのでございますが、それが牛乳の交易の条件にも響いた点もあったと思われるのでございますが、その際に、必然的な形として、老廃牛といいますか、低能率牛の淘汰が急速に進んだと思われるのでございます。低能率牛ないしは老廃牛の淘汰と、なお搾乳牛としての能力を持っておるものが屠殺されたものの比率というものは、これは調査の方法もございませんし、私どもも実はわからないのでございます。で、これは搾乳牛としての能力をなお持ちながら屠殺されたものがないとは私は言えないと思います。事実屠場等でもそういうような事例も見受けられるようでございますので、そういうことが絶無であるというふうには申し上げられない。ただ、大部分はやはり低能率牛の屠殺という形で進んでおるのではなかろうか。と申しますことは、比較的に頭数の増加率の停滞にもかかわらず、この期間には一頭当たりの搾乳量というものは伸びておるのでございます。若干でございますが伸びておるのでございまして、そういうふうに見受けられるのでございます。それから乳用牛の犢の屠殺がどうなっておるのかということでございますが、お示ししました数字の中には、これは肉牛の犢もそれから乳牛の犢も含まれておるのでございますが、肉用牛の犢の屠殺されておりますものはきわめてわずかでありまして、たとえば三十九年の二十八万九千頭、四十年度の二十五万六千頭というものは、これはほとんど全部が乳用牛の牡犢と御理解願っていいのではないか。大体におきまして乳用牛から生まれます子牛の数が年間約五十万頭程度でございまして、牡犢の数が——牡の子牛、牡犢の数がほぼその半数あるいは半数よりもやや多いというのが実績でございまして、そういう実績から申しますと乳用牡犢がこの数字のほとんどを占めておるというふうに御理解願っていいのではなかろうか。ただ、これも雌子牛の屠殺が絶無であるというふうに言い切る勇気はございませんが、これも私は例としては非常に少ないはずであるというふうに思うのでございまして、三十九年から四十年にかけてやや犢の屠殺頭数が減っておりますのは、牡犢の育成が、別に資料として、県の報告で二万五千頭ばかりが肥育されておるようだという数字をお出ししておりますが、そういうことと見合いまして減少したのではなかろうかというふうに見ておるのでございます。御質問いただきました詳細な内訳については、私ども統計的な数字を把握しておりませんので、まことに申しわけない次第でありますが、お答えいたしかねるのでございますが、御了承をいただきたいと思います。
  114. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうも頭のいい局長にしてははなはだ迷いなきあたわざる答弁なので、重ねて伺いますが、同じ役所の中で統計調査部が出しておる統計の、ことしの二月の乳用牛の雌子牛の屠殺頭数が九千九百一頭ですね。だとすると、それが違っておればこれはひとつ明らかにしてもらえばそれでけっこうでありますが、そういう数。そうしますと、いまの答弁が大部分が牝犢である、乳用牛の牡犢である、これは常識的には私もそう理解しておったのでありますが、九千九百一頭と端数まで出しておるこの数字が乳用牛の牝犢であるということであるとすれば、いまの答弁は全体の犢の二十六万頭近いものを一年で、そのうち約半分ぐらいはまあ乳用牛の牝犢がつぶされておるということになったら、これはいまの答弁とは実態ははなはだしく相違する。これはもう大きなやはり問題を現実は投げかけているというふうに理解せざるを得ない。それから成牛については、老廃牛であるかあるいは搾乳の能力の高いものであるかの内訳はわからぬということでありますが、これも、同じような二月の統計調査部の発表によると、乳用牛の老廃牛、そういうものの一カ月につぶしたものが一万四千四百五頭と出ておる。これたけのものが統計調査部に出ていながら、その老廃牛としたはっきりした内訓で一万四千四百五頭というものが出ておるならば、しからざる部分はこれはさらにまた乳用牛として十分役に立つものと解釈せざるを得ないでしょう。そういうことになると、いまの局長の答弁は、はなはだ、この統計調査部の統計とは違った意味の答弁になっておる。常識の答弁でしょう、あなたのやつは。私の常識ではこの乳用牛の成牛も屠殺に向かっているのは、大部分は、くだびれておいさらばえたもうどうにもならぬものだと思っておったが、過般われわれが芝浦屠場を見たときには、はらみのやはり牛が出ておるという実態を見れば、この統計調査部の統計というものも私は信憑性があるような受け取り方をしたので、収益性の低さに関連して、その統計に基づいてのお尋ねをしておるわけであります。どうなんですか。
  115. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 統計調査部の速報に記載されておる数字かと思いますが、まことに申しわけないのですが手元に持ち合わせておりませんし、その他の職員も持っていないようでございますので、ただいまの御質問の点は、後刻資料に基づきましてお答えできるようにいたしたいと存じます。
  116. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは、具体的な問題に少しいままでの答弁を踏まえながら入っていきたいと思いますが、それに入る前にまず一つお伺いしたいのは、最近の乳製品市況、指定乳製品でよろしいのですが、指定乳製品市況というのがどういう実情にあるか。私が承知しておるところでは、従来の乳製品の安定上位価格よりまだ上回っておるように承知しておりますが、それで間違いはありませんか。
  117. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ごく最近の数字、私のほうで牛乳乳製品価格調査というものを毎月やっているものに基づいて見ますと、これは加糖練乳が本年の一月が二四・五キログラム当たり五千百十一円、同じく二月が五千百六十八円、三月が五千二百十円、脱脂粉乳が一二・五キログラム当たりでございますが、一月四千七百十三円、二月四千八百十二円、三月同じく四千八百十二円、脱脂練乳が二五・五キログラム当たり一月が四千六百三十一円、二月四千六百四十五円、三月が四千六百九十円、バター原料の一キログラム当たり四十一年の一月が六百六十円、同じく二月三月ともに六百六十円ということでございまして、御指摘のように、旧畜安法に基づきます安定上位価格をそれぞれわずかに上回るという水準に達しております。
  118. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまお聞きしたところでは、大体これら指定乳製品の価格というのは上がっておる傾向にあるように感ぜられるのですが、現在の市況で推移した場合には、今後の価格もやはり私どもはずっと上がっいくのではないかというふうに聞かされておるのですが、その点についての分析はどう考えておられるのですか。
  119. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 今後乳製品が価格が上昇するかどうかにつきましては、今後の主要な乳製品についての畜産振興事業団の需給調整いかんにあると私は思います。大体四月以降と申しますか、春先には夏場の乳製品を必要とします食品原料の手当て期でありまして、毎年かなりの強調を見る時期でございます。でございますので、現在の状態をそのまま放置すれば、私はやはり価格上昇ということがあり得ると思いますけれども、適切な需給の調整をはかりますならば、現在の価格水準よりは安定するはずである、また、そうさせなければならないのではないか、季節的にもそういう意味では調整し得るのではないだろうかというふうに見ておるわけであります。
  120. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、最近ですね、脱粉やバターの事業団放出をやっておられるようですが、これの単位当たりの落札価格ですね、それはどういう状況になっておりますか。できれば、そこでわかれば、脱粉については四十年の五月、十月、四十一年の一月、三月とやっておられるようですね、バターについては四十年の一月、十月、十月に二回、四十一年の一月というふうにやっておられるようですが、それぞれの入札時の最高最低の価格、平均価格、それがわかればお示し願いたい。
  121. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 最近におきまして、事業団が放出をいたしましたものは、脱脂粉乳とバターでございますが、脱脂粉乳につきましては、お話しのように、数回の売り渡しをいたしておるのでございますけれども、手元にある資料は、四十年度に放出をいたしました総平均の単価しかございませんのですが、それを申し上げますと、これはトン当たりになっておりますが、トン当たり三十四万九千八百円、バターはトン当たり六十万二千六百四十六円という数字に相なっております。必要でございますれば、後刻詳細は資料を提出することにいたしたいと存じます。なお、一応の資料としては、いままで申し上げました点は、資料として御提出を申し上げておるはずでございます。
  122. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの問題について、手元に資料がおありにならぬということですから、それでは詳細な資料をひとつ御提出願いたいんです。その資料として出していただくときに、まとめた資料を往々にして御提出いただきますので、中身がわからなくてわれわれ困りますから、したがって、脱粉、バターについて、四十年度において払い下げをした、そのときどきの輸入原価、それからそれに要した経費、それから最高、最低の落札価格等、詳細にひとつ資料を出すようにしていただきたいと思います。その場合にトン当たりで出されますというと、また計算を私どものほうでせぬとすぐ比較ができませんので、まことにおそれ入りますが、全練は二十四・五キログラム、脱粉は十二・五キログラム、脱練は二十五・五キログラム、バターは一キログラム当たりと、こういうふうに出していただければ、われわれの従来の習慣からすぐ見当がつきますから、できるだけそういうふうにして詳細な資料の御提出をいただきたいと思います。  そこで、私のほうで一つだけわかっておりますのは、四十一年の三月二十四日に脱粉の入札をやっておられますが、これが十二・五キログラム当たりで、私どもの承知しているのは落札価格が最高が五千二百八円、最低が四千九百四円、平均して四千九百七十二円と、多少の数字の出入りはあるかもしれませんが、大体そのくらいなところだと承知しているんですが、これで間違いはございませんか。
  123. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ただいま先生のおっしゃいました数字で大体の線は間違いないと存じます。
  124. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、この脱粉の落札価格は三月の市況に比べてどうですか。私、そこまでちょっとよう調べなかったのでお教え願いたいんですが。
  125. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 市況といいますものを、いわゆる当該月における平均卸売り価格というふうに見ますならば、むしろ卸売り価格よりもやや高めに落札をされているということで、実は私どもやや意外に思っておる次第でございます。
  126. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いままでのことからいたしまして、乳製品の市況は非常に高いところにある、特に従来の安定上位価格よりも高いところにあるということが一つ。それからもう一つは、事業団で入札をやった価格も、さらにその高い市況を上回るような高いところになっておると、このことだけが明らかになったと思うんです。ただ、事業団の脱粉払い下げの問題については、それ自体として問題がありますが、それはあと回しにいたしまして、いま言ったような状況にある。こういうことから考えて、安定指標価格というものについてお伺いしたいんです。が、安定指標価格というのは、もう私が申しませんでもおわかりのように、「指定乳製品の生産者の販売価格について、当該指定乳製品の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、指定乳製品の消費の安定に資することを旨として定める」と、こういうふうに規定をされております。そこで、安定指標価格を設定をされる場合の、まあどういう表現をしたらいいかと思うんですが、基本的な考え方ですね、それをどこに置いて安定指標価格というものをはじかれたか。こういう抽象的な御質問なんで、ちょっと真意を御理解いただきかねる点があるかもしれませんが、もし御答弁によって、私の聞かんとしているところと狂っているようでしたらまたお尋ねいたしますので、とりあえず御答弁願いたいと思います。
  127. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 安定指標価格というのは、お話しのございましたように、主要な乳製品の市場価格をその水準で安定をさせるということの目標となるべき中心的な価格の水準でございます。で、その価格の導き方は、これも先生のお話しにありましたように、主要乳製品、指定乳製品にありましては安定指標価格、それからその他の主要な乳製品につきましては製造業者の販売実績価格というものから製造販売経費を控除して残りました原料乳に振り向けるべき………いや、安定指標価格につきまして、ちょっと答弁がすべりましたので………。安定指標価格というのは、指定乳製品の、その水準で安定することを目標として定める価格でございまして、それの算定の方式は、過去四年間におきます実勢価格の平均を求めまして、その期間における卸売り物価指数の価格決定年次における上昇率というものをかけまして算出をいたす方法をとったのでございます。
  128. 矢山有作

    ○矢山有作君 私の聞き方があまり抽象的であったので問題だと思うんですが、私が聞きたいのは、安定指標価格というものは、御承知のように、乳製品の輸入のめどになる価格ですわね、一つは。それからもう一つは、原料向けの生乳の基準取引価格をきめるもとになる価格。したがって、このきめ方というものが高いか低いかによって国内の酪農に及ぼす影響というものは非常に大きいものがあると思う。そこで、安定指標価格をどういう基本的な考え方のもとにきめるかということが非常に重大な問題になっておりますので、それをお伺いしたのです。  で、私は、現在のように四十年一年をとってみても、非常に市況が強含みで推移している。このことは乳製品の需給逼迫というものを反映しているから強含みだと思う。しかも今後の市況の推定も、先ほど局長の答弁のような、事業団で相当大量輸入して放出すれば別だけれども、このままで推移するならば、市況はもっともっと強含みに推移するだろう、こういうことも言っておられる。さらに、脱粉の落札価格を先ほど申し上げましたが、その脱粉の落札価格も、現在の市況を上回るような高い値段で落札をしておる、こういうような要素というものを重視して、安定指標価格というものをきめないと問題が出てくるんじゃないか。したがって、過去の四年間の平均価格できめるという考え方も審議会で示された一つ考え方ですが、それよりもむしろ、現在並びに現在に基づく将来の市況というものを十分反映した価格でないと問題が出てくる、こういうふうに解釈しているわけです。そういうことで、安定指標価格のきめ方の場合に、基本的にどういう考え方でおきめになったのか、こういう御質問を申し上げたわけです。その点で御答弁願いたい。
  129. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 指定乳製品の安定指標価格を決定いたします基本的な考え方としては、乳製品の安定的な消費増大が行なわれる水準に置くべきであるという考え方が一つあるわけであります。そういう考え方に立ちます限りにおきましては、過去乳製品の価格の騰落が現実にあったわけでございまして、したがって、そういう一定期間内における騰落の平均的な価格を再現をするならば、消費の安定的な増進というものは見込まれる。また、したがって、そのことは消費者、国民にとりましても耐え得る水準のものである。ただし卸売り物価の上昇という価格の基本的な水準の動向というものはこれに反映させる必要がある、したがって、単純なる平均数字ではなくて、平均されたものを物価修正をすることによって安定線というものを求め得るのである、また、それが法律の本旨に沿うゆえんではなかろうかという考え方を持っておる次第でございます。  最近の乳製品の価格の上昇は、これは御指摘のように、最近における飲用乳を含む牛乳、乳製品の需要と、生乳の供給量とのアンバランスに基づく価格現象であることは申すまでもないことでございますが、ただ、私どもとしては過去の推移から考えます場合に、現在の乳製品の市況の強さというのは、やや異常である。先ほどもちょっと触れましたように、いまから三年前の三十八年には、需給事情がいまと全く逆でございまして、生産過剰状態を現出をいたしまして、そうして畜産振興事業団の乳製品買い上げという市場介入をいたしたわけでございます。安定指標価格は、また先ほど先生からお話がありました指標機能のほかに、事業団が市場介入をする必要があるということの判断のめどにもなるわけでございまして、そういう両面の観点から考えまするならば、高騰下落の現象二つを含む期間の、平均的な価格の再現というものをはかることが最も妥当であろうというふうに考えておるのでございます。
  130. 矢山有作

    ○矢山有作君 なるほどいまおっしゃったのも一つ考え方なんですね。だから私は、それはそれなりの一つ考え方だと思うのですが、問題は、なるほどかつて非常に乳製品が過剰になったこともあります。しかしながら、大体の傾向としては牛乳、乳製品の需要は非常に強くなってきておる。しかも生産がそれに伴わない面もまた強くなってきた。いわゆる需給アンバランスが非常に顕著になってきたということが、今日のような乳製品の市況の高値を呼んでおる根本の原因だろうと思うのです。そうすると、ただ、消費を安定させるのだということは、言いかえれば乳製品価格をできるだけ、まああまり不合理だと思われぬ程度のところで安くするのがいいのだという考え方にもつながると思うのですが、そういう考え方で安定指標価格というものを求めていくということになると、輸入の増大というものは私は避けられぬと思うのです。これは。現実の市況がもうすでに安定指標価格を上回っておるのですから、明日の日からでもどんどん輸入すればいいということに理屈としてはなるわけだ、そうすると輸入の増大ということは、現在ですら酪農の収益性は低い、それを反映して生産が停滞しておる、そこへ持ってきて乳製品が外国からどんどん輸入されてくるということになれば、その影響は、乳業者に及ぶ以前に、第一番の打撃を受けるのは生産者だと思うのです。そういうことになったら私は困ると思うので、したがって、需給情勢というものをやはり中心に置きながら、安定指標価格というものをはじき出すべきじゃないか、こういうふうに思うわけです。過去四年間の平均という取り方をやりますと、現実の状態から将来の予想される需給というものを正確に反映できないようになるだろうと思う。そこに問題が起こってくる。問題というのは、いわゆる輸入の増大という問題が起こってくる。だから的確に需給事情を反映したそういうところで安定指標価格というものが私は定められなければならぬ、こういうふうな考え方をしておるわけです。もちろん安定指標価格は基準取引価格に関連があるし、それらを算定する要素はいろいろありますから、あとでお伺いしますが、私はそういう考え方をしているんですが、どうも局長考え方でいくと、輸入促進につながるような気がしてしようがない、また、私がそれを疑うような根拠があるのですよ、現実に。だから、あなたは消費安定のために、過去四年間の平均をもとにして安定指標価格を出すんだ、そのことがいいんだとおっしゃるけれども、私はその考え方にはなかなか賛同できない。それはこういうことを言っておりますね。これは酪農の基本対策考え方と方向というの、が三十九年の八月に発表されております。私がいただいたそれの資料の一三ページを見ると、目標価格は農林大臣が乳製品ごとに国際価格及び国内価格を勘案して定める、こういう表現が使われておる。それから、酪農の考え方と方向というのが発表されておりますが、それによってみると、わが国の乳製品価格は国際的に見て割り高であるので、漸次国際価格水準に近づけることを目標としている、こういうことを言っているわけです。そのほか、農林省から出されたいろんな資料の中に同じようなことを言っているわけです。酪農の現状と対策の中の一〇六ページにも、乳製品輸入量の増大による国内乳製品の価格の国際価格への接近に対応して、こういうような表現をしておる。そうすると、安定指標価格の求め方というのは、理屈の上では消費の安定のために云々ということばが使われますけれども、基本的な考え方としては、国際価格に近づけていこうという思想が背後にあるのじゃないか、ということは輸入量増大につながる、こういうふうに私は考えているんですが、どうですかその点は。
  131. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) いま先生が取り上げてお読み上げになりました過去の私どもの検討過程における議論といたしましては、日本の乳製品の価格水準ができ得べくんば国際価格に近づけるように努力をすべきではなかろうかということを考えた時代もあったことは事実でございます。しかしながら、その後、日本の酪農の現状及び将来における見通し、あるいは国際価格と国内価格との関連の問題の検討を深めてまいりますと、とうてい日本の酪農の振興を期しつつ国際価格への接近という問題は容易に実現できる性質のものではなく、また、それを実現しようとすれば非常な無理が起こるということが明らかになってまいりましたので、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法を提案をいたします段階には、国際価格と国内の乳製品価格とは遮断をする。国際価格への接近をはかるという、そういう意味の考え方はこれを放てきをするということに方向転換をいたしたのでございます。で、現状におきまして、現在の段階におきまして、私どもとして乳製品価格を国際価格に接近をさせるという考え方は持っておりません。むしろ日本の国内における乳製品価格は、日本国内における需給の実勢というものに基づいて、国際価格と遮断をしてきめる。したがって、その遮断をするためには、主要な乳製品の輸入は政府機関によって一元的に輸入をする必要があるということで、御承知のように、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の中で、畜産振興事業団を通じて一元的に輸入をきせるということにいたしたのであります。需給実勢に従ってきめるという点については、基本的には矢山先生のお考え方と私ども考えておることに相違はないと思われるのでございますが、ただ、価格の安定を旨とする考え方をとり、価格の安定を通じて消費の増進をはかるということにいたしますと、一定の期間をとって安定水準というものを求めざるを得ない。短期的な動向によって価格の決定をいたしますと、それは非常に不安定な価格水準というものになる可能性が強いわけでございます。で、上昇傾向のときには確かに高い安定指標価格があらわれることに相なりますが、また下降傾向のときには逆のことが起こってくるわけでございます。一つのルールとしてとり得るものとしては、価格の高位の時期、相対的に低位の時期を含む一定期間の価格を再現をする、それを物価動向というものによって修正をするという形でやっていくということが私は最も適切な方法であろうというふうに思っておるのであります。で、安定指標価格を故意にといいますか、何らの根拠なく低目に押えますことは、これは基準取引価格を誘導する基礎にもなる価格水準でございますから、いろいろな弊害が起こり得るわけでございますが、そういうふうな故意に低目にするというふうな考え方はとっていないのであります。で、安定指標価格と輸入数量との関係は、安定指標価格をこえ、またはこえるおそれがある場合には事業団が輸入することができる。そして安定指標価格に政令で定める率をかけた水準に達した場合には売り出動する、逆に安定指標価格にマイナスの一定比率をかけた場合には買い出動をするという規定に相なっておりますから、したがって、売り出動、買い出動の時期をきめるということに相なるわけでございます。また、価格水準の上下が需要の充足度というものを決定をいたしますから、量にも無関係でないということも御指摘のとおりだと思うのでございます。しかし、基本的にどれだけの輸入が必要であるかということは、国内の需要の動向と生産の動向が決定をするものでございます。政府機関による一元化の機構が現存し、かつそれが法律の趣旨に基づいて運営されます限り、不必要な輸入、放出が行なわれるということは避け得られるのでございますから、今回定めました安定指標価格が輸入の増大を招くような価格水準というふうには考えていないのでございます。
  132. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは安定指標価格だけを取り上げて議論をしておりますというと、これは明らかに考え方の相違ですから、議論が堂々めぐりすると思うのです。ただ私は、いま御説明なさった考え方も理解はできないではありません。理解はできるが、しかしながら、実際に国内の酪農を保護するという立場からいえば、安定指標価格というものは現在の乳製品市況というものを十分に反映させた価格でないというと、それは何といったって、輸入という事態を招くし、そのことは、安定指標価格は、先ほど来言いました基準取引価格をきめていく基礎になるしするんだから、そういう点で酪農民に与える影響が大きくなってくる。だから私は市況というものを十分考えて、これを算定するようにすべきだ、こういう考え方を持っております。しかし、これはそのほかの問題と関連してきますので、また後ほど議論いたすことにいたしまして、この間の告示で、基準取引価格がキログラム当たり三十一円八十一銭、一升にして五十九円六十四銭、これに決定をされております。ところが、この価格というのは、私は、現在政府が主要原料乳産地帯として考えておる北海道、青森、岩手、山形、長野、鳥取、福島の現行の取引価格を下回っておるのじゃないかと思うのですが、その関係はどうですか。
  133. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お話しにございましたように、基準取引価格はキログラム当たり三十一円八十一銭、これを一・八七五キログラム、つまり一升当たりに直しますと五十九円六十四銭ということに相なるわけでございますが、北海道におきましては、地域によっていろいろ北海道内でも相違がございますけれども、一般的に申し上げまして、私どもは昨年の旧法による安定基準価格が一・八七五キログラム当たり五十七円ということでございまして、これが夏、冬の乳価で二円の夏期乳価というものが出ましたときに、五十九円をおおむね基準にして取引をされるというふうに理解をいたしておるのでございますが、現実には工場持ち込み価格は六十円をこえておるというような説明も聞くのでございます。青森、岩手等につきましては、この五十九円六十四銭以上の現在取引があるということも承知をいたしております。ただ、御理解をいただきたいと思いますのは、ただいま私が申し上げました現行の取引価格というのは、これは飲用乳向けの価格、それから加工原料乳の対象にいたしておりません調製粉乳等その他の乳製品の原料乳を含んだ混合乳価格であるわけでございまして、告示されました基準取引価格は、加工原料乳、法律上の加工原料乳に対する基準取引価格であるわけでございまして、これをもって現行の価格と直ちに比較するということは無理があるわけでございます。でございますので、私どもはこの価格が現行の取引価格より低いということを断定することは、それはやや即断にすぎるのではないだろうかというふうに考えておるわけであります。
  134. 矢山有作

    ○矢山有作君 いま混合乳価で言っておるから、これをもって一がいに基準取引価格より高く考えるというのは即断だとおっしゃったんですが、私が即断をしておるとするならば、農林省から御提出をいただいた資料にその誤りの原因があるのでありまして、これは私の即断ではございません。と申しますのは、農林省から私がいただきました資料には、飲用向けの原料乳価、加工用向けの原料乳価とちゃんと分けて昨年もことしもいただいております。で、昨年、ことし、いただいた飲用向けと加工用向けと分けた価格で比較をいたしまして、私はこの基準取引価格が現実の——北海道は別です。これは言い落としましたが、現実は青森、岩手、山形、長野、鳥取、島根の原料乳向けの価格より下回っているということを申し上げたので、農林省から御提出になった資料が誤っておるとおっしゃるならばそうおっしゃっていただいて、新たに誤っていない資料を提出していただきたい。誤っていない正しい資料であるとするならば、この資料に関する限り、基準取引価格よりも現実の取引価格は加工向けの原料乳において上回っておる、こういうことになります。
  135. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御提出をいたしております資料につきまして、加工原料乳地域の取引乳価水準が三十八円八十一銭を上回っておる数字が出ておることは御指摘のとおりでございます。私どものほうの説明が不十分であったということを認めざるを得ないのでございますが、その数字は、農林省の統計調査部が調査をいたしました乳価を御提出申し上げておるのでございまして、統計調査部の調査の分類は、主として飲用乳の原料として向けられる地域の乳価を飲用乳向け乳価として分類をし、主として加工原料乳に向けられる地域の取引乳価を加工向け乳価として扱っておるのでございます。いずれもこれは加工向け並びに飲用向けの混合乳価でございまして、その点をただいま申し上げたのでございますが、私どもの提出いたしました資料に間違いもございませんのでございますが、説明が十分でなく、ただいまのような発言をいたしましたことは、私の軽卒であったと思いますので取り消さしていただきたいと思います。
  136. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、いまの御答弁ですが、その軽卒はまだ続きますよ。私がいただいておる資料には、主として市乳に向けていかれるとか、主として加工原料乳にいくとかというような分類でなしに、私の手元には都道府県別に全部分けて、その青森県においては加工原料乳向けの乳価がなんぼ、飲用乳向けがなんぼ、岩手県においては加工原料乳向けの乳価がなんぼ、飲用乳向けがなんぼと、こう全部出ているんですよ。しかも私が基礎にしているその資料と申しますのは、ここで明かしますと、実は私はことしの資料はいただいていないんです。これは昨年の畜産物価格審議会に御提出になった資料がそうなっておる。だから私がいま言っておるのは、昨年の畜産物価格審議会当時の値段で言っているのです。その昨年の畜産物価審議会当時の値段と比べてすら、加工乳、飲用乳と分けてある。その加工向けの生乳価格が、現実の取引価格のほうが基準取引価格より上回っておる、こう申し上げておる。
  137. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 同じ県内におきましても、統計調査部の調査では、出荷組合単位に主として加工乳用向けに販売をしておるもの、それから主として飲用向けに販売をしておるものとに分けて、一件ごとに集計をしたものではなく、加工用、飲用乳というのをただいままで申し上げましたような定義で分けて扱っておるのでございます。でございますので、同じ県内で加工向け飲用向けと数字が載っておりましても、それはいままで申しましたとおり、いずれも混合乳価水準でございます。
  138. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう御説明では、あなた方も困られるし、われわれも困るわけですよ。というのは少なくとも行政を推進していく上において、現実に一年一年の取引乳価をもって、これが加工原料乳がなんぼなっておる、飲用乳がなんぼなっておると押えているんじゃないんです。統計というものを基礎にして、その上に立っていろいろの行政運営というものが行なわれているはずです。そうすると、あなた方がわざわざ私どものところに提出された資料、その資料というものを目安にしてやっておられるわけです。そうすればその資料によって、加工原料向けの乳価が現在の基準取引乳価よりも高いというならば、これはそのとおりに認めて、それからものを考えていかぬというと、あなた万も基準がなくなってしまうでしょうし、われわれもなくなってしまいますよ。だから少なくとも混合乳価でやっておられるのかどうか、そういう理屈は抜きにして、あなた方のほうで分析されたのだから、そうしてあなた方の公式資料として提出されたのだから、それによって加工向けの現行取引価格はなんぼ、飲用向けの現行取引価格はなんぼと示されておるのだから、それで判断すべきでしょう。あなたのような言い方をしたら何でもかんでもわれわれの質問ははぐらかされちゃって何にも出てこないということになる。だからその点は、あなたから提出された正式資料ですから、これは基準取引価格より加工原料乳価格が上回っておる。これを認めていかなければ始まりませんよ。
  139. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 用途別の価格取引が全国的に実施されますのは、この四月一日からでございまして、旧来はほとんどといいますか、全国ほとんどの地域が混合乳価取引でございますので、今回定めました加工原料乳の基準取引価格と対比すべきものと性質を異にいたしておりますので、その点はどうしても御了承をいただかなければ、私どももどうもお話をしようがないわけでございます。ただ、例外的と申しますか、九州の大分県では、これは一元集荷の形をとり、農協等を中心にいたしました自己工場を持っておりますので、ここでは私どもがこれから推進をしようとしております用途別取引というものをやっていたのでございます。そこでの混合乳価は、全国の一般の価格水準に比べまして、混合乳価も相対的に高いのでございますが、大分県における用途別取引におきましては、政府の定めました基準取引価格五十七円をもって取引をいたしておる。これは用途別取引としては最も明確な事例でございますが、その取引基準価格は、私は今回の告示価格と対比するのにふさわしい同一の性質を持っておるというふうに思いますので、御参考までに申し上げてみたいと思います。
  140. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう極端な答弁というのは、実際なっていないよ、それは。というのは、基準取引価格と加工原料乳向けの取引価格と、あなた方が示された資料とは性質が違うということは知っていますよ、私たち。なぜかといったら、基準取引価格というものは、これは指定乳製品の安定指標価格から標準的な製造加工経費を引いて出したものでしょう。何も生産費を基準にして積み上げて出したものじゃないのだから、それは全然もう加工原料乳向けの取引価格として示されたものとは性質が違うということは知っています。ところが性質は違うが、あなた方のほうの調査によっていろいろな私は修正や何かの手を加えられたと思うのです。なぜかというと、あなたのおっしゃるような用途別取引というのは確立していないから、だから、たとえば十石の乳を出したと、それが何ぼ飲用乳に回ったか、何ぼ原料乳に回ったかわからないのだから、その辺はいろいろな計算をやられたと思うが、いずれにしても加工向け原料乳の価格はこれであるといってあなた方の正式の、公式の資料が出されているのだから、それに対してわれわれは現在きまった基準取引価格というものを対比してものを考える以外に方法はないじゃないですか。それをなおかついろいろつべこべいわれるのは、これは全く話にならぬですよ、そういう考え方では。
  141. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) いままで私ども農林省の統計に基づいて提出いたしました資料で、用途別の取引価格として加工向けの価格水準がこうであるということをそういう形で明確に出したことはないはずでございます。で、それぞれの地域で統計的に把握をいたしました混合乳価以外には、ほとんどの地域がないのでございまして、お手元にお持ち願っております数字は、やはりその地域における混合乳価であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  142. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはあなた、そこまで答弁されるなら、これは話は尽きないです。というのは、私が持っている資料というものは四十年の三月の畜産物価格審議会に政府から提出された資料です。だから、あなたがそれをいまないなら農林省に行って取り寄せて、こういう洋半紙の横とじのやつですから、取り寄せてごらんなさい。その中には加工用原料乳向けと飲用原料乳向けが、北海道はじめ都道府県別にぴちっと仕分けしてありますから、私はそれで言ってるんです。それが、資料がなかったはずだとおっしゃるなら、あんたのほうがうそをついていることになる。
  143. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私も去年の三月の畜産物価格審議会に出た一人であります。そのときの資料には、各都道府県別の用途向けの内訳があって、ことしに至って、その都道府県別の飲用向け、加工用向けというものがない。これは一体どういうわけですか。突如として混合したんですか、頭の中で。そうじやなくして、いま矢山君も指摘したように、私はこの前にも言うたはずだ、三月二十五日。どうもこれは勘ぐるわけじゃないが、一つの政策意図が含まれておる、この取引基準価格の設定は。しかも、これは政府が出した原案を最後まで固執して譲らなかった線でしょう。五十九円六十四銭。これが現実の取引価格と開きがある。都道府県別にその資料があるはずだ。去年出して、ことしは出ないというはずはない。それを比較すれば、あまりにも政策意図が歴然とするから出さぬのでしょう。そうじやない、純粋にそういう意図ではないが、出せば出るなら、それを出してもらいましよう。
  144. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 府県別に飲用向けもしくは加工向けというふうな表示をして御提出をした記憶はございます。ございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、同じ府県内におきましても、都市近郊の生乳の取引、混合乳価としての取引価格と、乳製品工場を中心とするといいますか、都市市乳向けの比率の少ない地域の取引価格、つまり混合乳価とは相違があるわけであります。で、御提出しました数字は、それぞれの県における都市近郊の、主として飲用乳に向けられる取引価格と、それから主として加工向けに供給される原料乳価格とを御参考に出したのでございまして、用途別取引は、従来されてないのでございますから、私どもは把握のしようもございませんし、今日の段階におきましても、純然たる加工原料乳乳価というものを分離をしてお示しすることは、ほとんど——ほとんどというか、決定的に不可能でございます。
  145. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから、私の申し上げておるのはですね、たとえあなたがおっしゃるとおりだとしても、一応示されたその加工用原料乳の現実の取引価格というものは、全く実態からかけ離れたものじゃないんでしょう。全く実態からかけ離れたものを、一応混合乳価取引でわからぬけれども、何でもいい、加工乳と飲用乳とに分けて出せというから出したんだといっても、でたらめな資料じゃないんでしょう。少なくとも、出された資料である限り、それがどんぴしゃり六十二円三十銭というこまかいところまで一致しないにしても、たとえば、出された資料が六十二円であるならば、現実は六十二円十銭であるとか、あるいは六十二円五十銭であるとか、あるいは六十二円八十銭であるという相違はあるでしょう。それはわかりますよ、私ども。統計ですからね。わかりますが、少なくとも出されたその価格、数字というものは、現実と全くかけ離れたものじゃないですね。もし全くかけ離れたものを出されておるとすれば、これは出したあなた方がもってのほかだということになる。その点どうでしょうか。
  146. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ただいま私のほうが申し上げました乳価の性質の規定というものを前提にいたしますならば、それはわれわれが知る限り、現実的な数字でございます。
  147. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういうふうに最初からおっしゃっていただけば、あまりものがこんがらからぬで済むのです。ですから、私の言わんとしているのは、現実に行なわれておる加工原料向けの乳価と、それから基準取引乳価というものを平面的に比較して話をしているだけなんですから、ですから、あなた方のほうで加工用原料乳向けの乳価というものは混合乳価というものしかないのだということをおっしゃらずに、その出された資料なんですから、それはありますよ、しかし、それそのものが一銭一厘まできちっと数字が合ったものじゃありませんと、こうおっしゃるのならわかります。それはそのとおりです。しかしながら、私はあの資料で、あなたがおっしゃったように、現実の加工用向けの生乳の取引価格として、大体あの資料は同じようなものだろうと思うのです。それと比較して、この基準取引価格は低いところにきめられている。大体ならしにして二円ぐらい低いと思うのですが、一升当たりにね。そうすると、この基準取引価格の水準でメーカーは乳を買えばいいのですから、そうすると、現在加工用として六十二円で買っておっても、この基準取引価格でいう五十九円六十四銭で買えばメーカーは十分だということになるわけです。五十九円六十四銭以下で買うとこれは問題になります。しかし、五十九円六十四銭で買う限りにおいては、メーカーは文句を言われる筋はないということになりますね。そうすると、メーカーは現実の加工用原料乳に払っておる価格よりもまだ下がった価格を支払っていいということになるわけですね、これは。これはだれが一体もうかるのですか、このところで、この仕組みで。
  148. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) この価格で買い取りました原料乳を、加工品、つまり指定乳製品に製造をいたしますならば、メーカーは平均的には二・五%の利潤は取れるはずであるという計算のものでございます。で、この価格は他の用途向けのもの、つまり飲用乳に向けられる数量、あるいは調製粉乳、アイスクリーム等に向けられるものについては、この価格で取引したのでいいという基準ではございませんから、したがって、加工原料乳を、この価格をもって基準の取引をするという場合にだれがもうかるかということの御質問でございますが、多少厳密に申しますと、安定指標価格でございますので、この価格以上の乳製品市況があれば、この価格で買ったメーカーは二・五%の基準で利潤以上のものを取得をするようになることは、そういうふうに言えると思うのであります。で、安定指標価格を下回る水準になりますれば、メーカーはそれだけの利潤は確保できない。あるいは場合によっては赤字が起こり得るということに相なるわけでありまして、飲用乳その他の価格水準につきましては、これは取引当事者の間において折衝されて決定をするものでありまして、私は最小限のことを申し上げれば、現在の取引価格の水準は、それが加工原料乳の基準取引価格による約定受け取り価格と、それから相互の交渉できまりますその他用の受け取り乳価との混合乳価が現行の乳価を下回るようなことがあってはならない、そういう条件は現段階において全くないということだけは申し上げられるかと思います。
  149. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 ちょっと関連。  ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、そうするとあれですか、基準取引価格、一升当たり五十九円六十四銭というものの中には、利潤率として二・五%を見ておる、こういうことですか。そうだとすれば、現実の取引よりは一いま矢山委員のあげた数字はおそらく去年の数字だと思うのでありますが、現実よりはさらに二円も不当利得を政府が認めた、一・八七五キログラム当たり。そうすると、その不当利得を加算した総体の利潤率を何%と見ていますか。
  150. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 先ほどから申し上げておりますこと御理解をいただいておると思うのでございますが、この基準取引価格で取引をしましたほかに、飲用乳及び不足払いの対象とならない乳製品の原料乳に向けられる乳価というものの折衝乳価は別にあるわけでございます。そのそれぞれの受け取り価格を合算いたしまして、総数量で割った価格というものが、現実の取引価格より下回るということであれば、それは私は現在の乳業界を取り巻く環境のもとでは、乳業者が必要以上の利潤を得ておるということに相なると思います。思いますが、すべての乳を五十九円六十四銭で取引するということは、四月一日以降の用途別取引のたてまえに立つ限り、絶対にあり得ないことでございますので、私は御質問のような趣旨の計算をしてもおりませんし、また、すべき性質のものではないというふうに思っておるわけでございます。
  151. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いや、話を飲用乳とこんがらからせて答弁をされるからいよいよ質問したくなるんですが、大体取引基準価格というのは原料乳の取引基準価格でしょう。それなら一つの独立採算としてこれは考えなければならぬですね、私企業としても。そういう場合に、現実の取引から見て、少なくとも、二円以上の開きがある。取引基準価格より低い。それを下回ってはならないという法律の規制がある。だとすれば、当然これはメーカーとしては二・五%を含んだ五十九円六十四銭にプラスアルファとして二円であるか、二円五十銭であるか——岩手でもかなりのもっと高い値段で原料乳を引き取っておる具体的なデータもあるから、私は聞くんだが——そういうものを考えた場合には、あくまでも二・五%の適正利潤と現実の取引の価格との差というものを考えてみたこともないというのは、これは考えないだけのことで、必ず計算はあり得る。それを計算しないとすれば、それを計算したものを出してもらいたい。出すべきだ。  それから、ついでだから聞きますが、その他の乳の加工向けということだが、あるいは色もので不当な利得をしておる。これは周知の事実、メーカーは。あるいは白もので出す。それの一体政府としてはあるべき市乳の価格というものをあなた方は行政指導をやる責任があるでしょう。これは、まあ話が発展しますから私はこれまでは触れませんけれども、少なくとも取引基準価格とは、それを下回ってはならないという一つの線である限りは、それを上回って現実に取引しておるという事態からいえば、これは当然メーカーとしてはそこに予期せざるものが政府の最低保障によって保障されるということになるでしょう。それが一体どのくらいの割合になるかということは、これは計算すればすぐ出るでしょう。いまそういう準備がなければ、それは資料として出してください。
  152. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 繰り返し申し上げておるのでございますが、法律上の加工原料乳に対する取引基準価格は五十九円六十四銭で、そのほかに、農家の販売しました乳は飲用乳に向けられ、あるいは調製粉乳その他の不足払いの対象とならない乳製品にも向けられるわけでございますから、したがってわれわれが計算ができますのは、指定乳製品、主要な乳製品に向けられる乳にどれだけの乳代を支払うべきかという計算しかできないわけでございます。したがって、全部の乳を五十九円六十四銭でメーカーが引き取って、その一部は飲用乳に回し、一部は調製粉乳に回しており、一部は主要の乳製品をつくるということになれば、これは不当利得になるかということでございますが……。
  153. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 話をこんがらかすな。質問にまともに答えたらどうだ。原料乳として政府が告示した取引基準価格を上回った分は不当利得でしょう、現実にそれより高く買っておるのだから、メーカーは。
  154. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 現実に高く買っておるということは、先ほど来申し上げておりますように、混合乳価として高く実地支払いをしておるわけでございますから、したがって、この基準価格で加工原料乳そのものを買い取り、飲用乳その他の不足払いの対象とならない原料乳に対して支払う金額との総合計の単位当たり価格が現行の取引価格よりも下回るというようなことは、私はそれは許さるべきではないということを申し上げておるのでございまして、全体の原料乳価を五十九円六十四銭で買った場合の採算というものははじきようもございませんし、私は非常に誤解を受ける問題になりますので、その点はお許し願いたいというふうに思うのでございます。
  155. 矢山有作

    ○矢山有作君 畜産局長、どうも時間が長引いてきたから少し頭がおかしくなっておるのじゃないですか。私は何も飲用乳向けに回した場合と調整粉乳向けに回す場合、その乳を何ぼぐらいで買うて生産者の手取りが何ぼだからどうとかこうとか、そんな議論をしておるのじゃないのです。それはまた別な議論になります。たとえば取引基準価格が五十九円六十四銭にきめられた、いま混合乳価である。そうすれば一体この五十九円六十四銭という値段で実際に取引をした場合、原料乳の場合、飲用乳について何ぼぐらいで買ったら現行手取りよりも下がらぬでいいか、これはまた別の議論です。だからこれは分けていただかなければならぬ。少なくとも主要乳製品の加工原料乳向けとして買われる乳というものは五十九円六十四銭で買えば、メーカーにとっては何の落ち度もないわけです。これで買えばいいのです。ところが、主要原料乳に回されると考えられる加工原料乳の現行の乳価というものは、先ほど来議論したように、五十九円六十四銭より高いわけですよ、そうすれば主要乳製品で問題を考えた場合に、メーカーは現在よりも低い取引基準価格で買えばいいのだから不当な利得が出てくるのじゃないかと、こう言っておるわけです。こう整理したらわかるでしょう。
  156. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) それは矢山先生はもう御理解をいただいておると思うのでございますが、現行の取引乳価というものは加工原料乳にも確かに同じ値段しか払っていないわけです。ですから観念的には、現在のたとえば岩手六十二円という乳価があるならば、六十二円の乳で加工乳製品をつくっておるではないかということでございますが、逆に言えば、六十二円で買った乳で、たとえば東京の場合、飲用乳に向けられる比率が高いものですから、八十円以上のものを払っておる、その部分にも同じ乳を使っておるわけでございます。でございますから、これはわれわれがここで計算をし得るものは主要乳製品の価格というものの安定的な水準というものを前提にしてどれだけの価格を加工原料乳について支払い得るかという計算しか出ないわけでございます。でございますから、いまお話はそういうような乳価を支払った場合に、飲用乳に今後の、少なくとも現在の混合乳価の水準を前提にして飲用乳あるいは不足払いの対象とならない乳製品の原料乳にどれだけ支払い得るかという試算はある程度できるかもしれませんけれども、そういう混合乳価で買っておるものが、この価格で買ったらどれだけの利潤が出るのだという計算はやりようがないわけでございます。
  157. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はあなたに、現実にそういうようなむずかしい計算をやってくれといってお願いしているわけじゃないのですよ。それでまた話が逆戻りしよるのです。あなたの答弁を聞いておると、少なくとも、最初私があなたと議論したのは、現在の基準取引価格と、いま出された基準取引価格と、それから現行の加工乳向けの取引価格というものは明かになったわけでしょう。あなたのほうはいろいろ言われたけれども、要するに、あなたからの公表の資料として、岩手なら岩手、青森なら青森で、三十九年の三月の畜産物価格審議会で、青森の加工原料乳向けの乳価は何ぼです。青森の飲用乳向けの乳価は何ぼですという資料が示されたわけですから、私はその比較において基準取引価格をいままで論じてきたわけです。その落ちつくところは、基準取引価格五十九円六十四銭というのは、私が言った三十九年三月に畜産物審議会に出された青森の加工乳向け原料乳価、飲用乳向け原料乳価と仕分けした分の加工乳向け原料乳価より低いということを言った、それはあなたもそこまで了承されたわけです。答弁の中で。そうすると、この基準取引価格というものは、安定指標価格から標準的な製造加工経費を落して算出したものでしょう。そうすれば、その主要乳製品に向けられる加工用、原料乳というものが、現実の取引は、青森なら青森の加工乳向け原料乳の取引は、たとえば、六十二円とする、一升当たり。そうすると、今度示された告示価格ではこれが五十九円六十四銭となる。メーカーは五十九円六十四銭で買えばいい、こういうふうになってくるわけです。だから、その対象になる乳というものを考えて、何ぼの利得が出るのかどうかということを言っているのであって、乳業会社の企業全体として私は論じておるのではないのです。主要乳製品をつくる、牛乳をつくる、市乳ですね、あるいは調製粉乳をつくる、あるいは色ものの牛乳をつくる、それらをひっくるめて、これで基準取引価格で買った場合に、普通の利得が出るとか出ぬとかいう議論をしておるのじゃない。要するに、主要乳製品として向けられる飲用乳向け基準価格五十九円六十四銭に比較して、現行の加工乳向けの原料乳価格は、農林省の示された資料によればそれよりも下回っておる。そうするならば、その下回った基準取引価格五十九円六十四銭で買った原料乳をもって主要乳製品をつくった場合には、いまの現行価格から比べて下回った価格で買えるのですから、それだけ余分に利得が出はしませんか、こう言っているのです。ここまで整理したら、そうなってくるということになりましょう。こんがらがっちゃいけませんよ。あなたのほうの考えがこんがらがっておる。
  158. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 私なりにこんがらがってないと思っておるのでございますが、逆の計算なら可能でございます。それは現行のいわゆる主として加工原料乳に、加工原料乳として製品を販売しておる価格、それや用いて主要乳製品を製造した場合に、メーカーの採算はどうなるかということであるならば、これは計算はできます。  で、この話は若干さかのぼりまして、さかのぼったところでお話をしないとはっきりしないわけでございますが、従来の価格安定法、畜安法に基づく基準価格の設定は、自給実勢価格というものの推定を行なうことによって基準価格を設けたのでございますけれども法律上は確かに加工原料乳の基準価格ということに相なっておりますが、当時私も説明した覚えがあるのでございますが、純然たる加工原料乳の取引価格水準というものはない。したがって、主として加工原料乳地帯に設けられる混合乳価の水準を過去の実勢価格に基づいて再現することによって、再現し得るという最低限を制度的に保証することによって再生産を確保するのだということを申し上げたのでございまして、厳密に申せば、畜安法に基づいて規定をいたしました基準価格というのは、主として加工原料乳に設けられる生乳の混合乳価水準を示した、混合乳価水準の最低を示したという性質を持っておるのでございます。でございますから、その辺からお考えをいただきませんと私の御説明が御理解しにくいのかと思います。
  159. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは、局長はいろんなことが頭に一ぱい詰まって、こんがらかってしまってわからなくなってしまうんです。ですから、これは農林大臣が、その点は要らぬ要素が頭の中になくて端的におわかりいただけると思う。(笑声)農林大臣、これを考えてみてください。私がこれからお尋ねするのに、五十九円六十四銭という基準取引価格が告示になっておりますね、話の都合上端数がつくとめんどうだから、これを六十円とします。それで話をしますとね、実は昨年あたり、私は昨年の資料しかないからあれですが、昨年あたり青森、岩手その他で加工原料乳向けの取引価格として示されたものが、これは農林省からいただいた資料ですが、たとえば六十二円と仮定します。大体その程度はしておる。それから飲用乳向けは同じ資料によると上回りますよ。青森、岩手における加工原料乳向けとして示された資料によると一升六十二円。ところが、今度基準取引価格として加工乳向けの価格は六十円にきまった。そうするとメーカーは六十円で取引すればいいわけですよ、いままで六十二円で買っておったのを。そうすると二円というものはメーカーがいままでよりももうかってくるということになりませんか。この辺のところがどうも畜産局長ははっきり出てこぬのです。これは非常に簡単な算術なんですがね。
  160. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) 私もいまちょっと入ってまいったのであれですが、こういうことでございましょうか、つまり、青森、岩手の分として加工向けのやつとそれから飲用乳と合計で、たとえば六十二円で買っておると、こういうのじゃないのですか。(「そうじゃない」と呼ぶ者あり)
  161. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう一ぺん言いましょう。大臣ね、いままで実は農林省のほうは各都道府県別に去年の資料で公式に出されたものによると、加工原料乳向けの乳価と飲用乳向けの乳価というものをぴしっと出してきたわけです。いいですね、これがまず第一。それを局長はとやかく言われたんですが、そういう資料は出した覚えがありますということで認められた。そうすると、その場合の加工原料乳向けの乳の値段というものは、おそらく指定乳製品向けの乳の値段ということで加工原料乳向けの乳の値段を私は農林省は計算したのだろうと思う。それが六十二円だとしますね、それに対して今度出された乳製品向けの原料乳価格は六十円ですね。それは主要な乳製品向けの原料価格ですから、指定乳製品よりも二つほど余分の、ほかの乳製品が入ってきておりますよ。いずれにしても乳製品向けの基準価格が六十円で示された。そうすれば明らかにメーカーは二円安く買えるでしょうと、こう言っておるわけです。
  162. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) どうも御質問の趣旨が私にも実ははっきり頭に入らないのですけれども、一般の地帯からいきますと、こういうことになっておるように私は思うんです。つまり、加工原料乳とそれからして飲用乳とを突っ込んで幾ら幾ら、こういうことで購入しておる、−青森、岩手は別として、私の知っておる限りは、そういうことに相なっておると思います。そこで、加工原料としてその当時のやはり最低標準価格というのは五十九円幾ら、こういうことでいっておるので、飲用乳にいくのと加工にいくのとをそこで突っ込んで値段がきめられておるという場合が多いのじゃないかと、私はそう理解しておるのですが、間違ったらまあそれは取り消さなければいけませんが、私の見ておる状態では、さようなことになっておるように思います。
  163. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは大臣のおっしゃるとおりなんです。現在までの生乳取引というのは混合乳価です。これはおっしゃるとおりです。ところが審議会において、それでは審議の上で差しつかえがあるというので、混合乳価で取引はやっておりますが、現実にそれをどういう計算方法をとったのか知りませんが、農林省だから権威のある計算方法をとったものとして私は信頼しておりますがね、農林省が計算をして、各都道府県ごとに加工向けの現行取引乳価は何ぼ、飲用向けは何ぼと計算してはじき出したのですよ。私はその価格と現在の基準取引価格とを比較して議論をしているのです。そうした場合に、農林省が出された加工向けのその当時の青森、岩手その他一道六県における生乳の取引価格よりも、現在出された告示価格のほうが下回っておると、こういうことを言っているわけです。現実なんです。これは、私が、資料をお見せします。農林省畜産物価格審議会に出した資料があるはずですから、あなたはわからなかったらそれを見ていただきたい。そう言っておるのです。そうすると、業者は不当にもうかるのですよ。そうなりませんかと言っておるのだが、畜産局長はあれのこれのと言ってわけがわからぬ。
  164. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) あとで大臣から御見解を述べていただきたいと思いますが、確かに四十年の審議会に、加工向け、飲用向けというのを分けて提出をいたしました。その際、速記録をごらんいただきますと明白になるわけでございますが、私から説明を申し上げまして、北海道、青森、岩手等は、主として加工向け市町村と、主として飲用向け市町村のグループに分けて、グループごとに平均をいたしました、大分県だけは用途別の取引によりましたという御説明を申し上げておるのでございまして、提出いたしました加工向けというのも、飲用向けというのも、いずれも混合乳価水準の平均であるということは、速記録の上でも明白にいたしておるつもりでございます。
  165. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから、私はそのことを言っているのじゃないのですよ。先ほども言ったでしょう、混合乳価で取引はされておるが、それを、いずれにしても、加工向けは何ぼ、飲用向けは何ぼと仕分けをされたわけです。その上に立って、その数字が現行取引価格と全く相反するようなものですかと言ったら、そうじゃないとおっしゃった。そうすると、現行の加工乳向けの原料乳の取引価格というものはあなたが仕分けをなさったその加工向けの原料乳価格と大体つろくしておるということを、あなた確認なさったわけです。確認されたでしょう。そうすると、それと比べて基準取引価格のほうが低いのじゃありませんかと言っているのです。しごく簡単でしょう、問題は。あなたのほうで、混合乳価で取引しておるのを、わざわざ加工向けと飲用乳向けとの現実の取引はどうですか、分けて出しなさいと言ったら、分けて出されたのだから——それは計算方法はどうとられたか知りませんが、分けて出された。しかも分けて出されたものを、あなたのほうは、これは現実の取引とその計算とは大きく隔たったものじゃない、大体似ておることを認められた。似ておるとするならば、現実の加工乳向け生乳取引というものは、農林省が示された加工乳向けの取引と大体似ておる。大体似ておる数字というならば、基準取引価格が下回っている、こういう議論をしているのです。その下回った分はだれがもうかるかというと、これは乳業メーカーがもうかるのははっきりしている。どうしてそれが率直に認められないか。私は企業を総合してものを言っているのではない。
  166. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ただいままで申し上げましたように、昨年の審議会の資料でも、主として加工向けのものと、主として飲用向けのものと、グループごとに平均取引価格水準を県ごとに出しまして、それが現実に行なわれている取引価格水準であるというふうに私ども考えておりますということは、先ほども申し上げたとおりでございます。ただ、それにいたしましても、これがあくまでも混合乳価水準であるということから申せば、かりに六十二円という従来の混合乳価より、今度の法律による主要乳製品向けの原料乳の基準取引価格五十九円六十四銭というものが低いということにいたしましても、それが直ちに不当利潤というような問題には私は結びつかないということを申し上げているわけでございます。で、主として加工向けの混合乳価水準に比べて、現在告示をいたしております純然たる加工原料乳の基準取引価格が低位にあるということは、これは数字のことですから、低いということはこれは申し上げるまでもないと思います。
  167. 矢山有作

    ○矢山有作君 その議論だけをやっておるとさっぱり前へ進みませんが、——しかし、少なくともあなたのほうで加工向けとそれから飲用向けを分けるのに、何らの根拠もなしに分けたわけじゃないだろうと思うのです。やはり一つの根拠というものがあって、加工乳向けの生乳は大体これだけの取引価格だ、こういうそろばんをはじいておられると思う。それをあくまで、混合乳価だから現在の基準取引価格と比較できないとおっしゃるのは、あなたが、何と言うか不当利得がメーカーに出てくるのだということをカバーするための私は発言としか考えられない。もしそうでないとするならば、あなたがはじき出された、加工向けの原料乳価として示されたものに問題がある。ですから、どういう基準ではじき出されたのか。加工向けと飲用向けと仕分けをしたその計算の根拠を明確に示してほしい、これはあとで資料でよろしいから。そうしないと、話がきちっと筋道立って進みませんよ。けれども、私どもは、メーカーをことさら擁護しようという立場に立たぬ限りは、少なくとも現行の加工原料乳向けの乳価より、基準取引価格のほうが下回っているということを言わざるを得ない。そうすれば、基準取引価格で取引をした場合、乳製品を製造しているメーカーは、それだけに限定してみた場合、不当利得をあげることになる、こういうふうに私は結論をつけざるを得ないと思うのです。そういうようなことでは、この加工原料乳生産者補給金等暫定措置法というものは、一体乳業メーカーを守るための法律なのか、農民を守るための法律なのか、わけがわからなくなってくるのじゃないか。その本質は乳業メーカーを守るための法律であって、あと払いだなんだといって宣伝しているけれども、決して生産農民を守る法律にはならぬ、こういうことを私は言わざるを得ない、そういうことだけ申し上げておきます。それで資料が出てきてから、あらためて論議をしたい。これは今後の酪農の方向をきめるのに私は重要な問題だと思うのです。そういうことをあやふやにしておいては困る。  それから次の質問に移りますが、基準取引価格を算定をする場合に、主要な乳製品の安定市場価格から標準的な製造販売経費を差し引くという形で算定をされておるわけです。ところが、その際の製造販売経費というものはどういうふうな計算をやったのか、このことがお伺いをしたい。これは十分、おそらく私はメーカーの、あるいは工場の原価計算書をとって、これをしさいに検討して、そしてメーカーの独善的な利潤追求に迷わされないような、そういう厳格な販売経費を私は算定されたと信じておりますが、どういう根拠で算定されたのかということです。
  168. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 基準取引価格を誘導いたしますために、指定乳製品につきましては安定市場価格、それから主要な乳製品としてそのほかに全脂粉乳、それからバターの家庭ものを代表的に取り上げたのでございますが、それらのメーカーの販売価格から製造販売経費を差し引いた残りが乳製品の、生乳の代価として支払われるべきであるという算定をしたのでございます。製造販売経費につきましては、農林省畜産局におきまして、昭和三十九年の十月から昭和四十年の九月の間に、バターについて四十三工場、脱脂粉乳について三十二工場、全脂練乳について十七工場、脱練について二十四工場、全脂粉乳について二十四工場の工場の製造販売経費調査をいたしまして、それぞれ品目ごとに原材料費、労務費、経費の合計を加工費とし、一般管理費、販売費、支払い利子というものを調査をいたしましたものの平均を出しまして、それによってこの製造販売経費を差し引いて基準取引価格を誘導したというやり方でやったのでございます。
  169. 矢山有作

    ○矢山有作君 この標準的な製造販売経費の算定のしかたというのは、これは現実の取引乳価というものを規制していく一つの重大な要素ですから、これの算定のしかたというのは非常に重要な意味を持ってくるわけです。いま御説明になったことは、これは私も資料として持っております。ところが、問題は、その製造販売経費を算出する対象工場を選定して調査された場合に、どういうような調査の方法をとって、どういうような資料に基づいてこれを算定されたかということが一つの問題だと思うのです。私は。というのは、これは、製造販売経費というものはいつの酪農関係の審議の場合にも問題になるのでして、これは毎年毎年われわれはこの製造販売経費の資料というものを要求いたしますが、毎年毎年その数字は違っておる。違っておるのが、上がってみたり下がってみたり、相当大幅な開きをもって数字が出てくるわけです。そうすると、このとらえ方というものは、一体どうとらえていくかということが非常に問題なんです。私の見るところ、おそらく農林省でそれを的確にとらえるだけの工場の企業検査、あるいはそういうような書類の提出、分析、そういうことをやっておられるかどうかということに大きな疑問を持つわけなんですが、その点どうですか。
  170. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 工場の原価の調査というのは、私もかつてほかのポストの場合にもやったことがあるのでございますが、決して簡単なものでないことは御指摘のとおりでございます。そこで、私ども、製造販売費用の計算につきましては、かつて畜産物価格審議会の席上でもいろいろ御指摘がありました点は、われわれ、事務的にも検討、反省をいたしまして、所定の報告様式を定めまして、また費目の規定についても明確な規定を加えて指導を行ない、その報告書に基づいて製造販売費用の審査を行なったわけであります。その際、先ほど申し上げましたかなりの数の工場にわたりますので、費目ごとに疑問の生ずるものが出てまいります。費目ごとに疑問の生ずる点につきましては、工場の現地につき、工場の帳簿に従って調査をし、報告の誤り、あるいは積算の誤謬等についてはこれを訂正いたしました上で集計をいたしたのでございます。
  171. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は局長といろいろ議論しましたが、混合乳価でいま取引しているやつを加工向けに回した場合の取引乳価が何ぼか、飲用向けに回した場合の取引乳価が何ぼかということの仕分けすらなかなかうまくいかない。それであくまでもその点については不明確だから現在の取引は混合乳価でやっているのだ、だから基準取引価格とはすぐに比較できないとおっしゃるほどむずかしい。それほどむずかしいものの中で、この製追販売経費というものは、たとえばバターだけをつくっているのじゃない、脱粉だけをつくっているのじゃない、牛乳もやれば調整粉乳もつくる、チーズもつくればいろいろのものをつくっている。そういうような企業をとらえて、これが主要な乳製品の基準取引価格を算定する場合に、自信の持てる的確な製造販売経費としてつかんでおりますか。
  172. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 先ほど申しましたように、製造販売経費の原価の把握というものは相当むずかしい仕事であるということは、私どもも経験から考えましてもそういうふうに考えております。ただ、私どももこの制度が円滑に法律の趣旨に従って運ばれるためには、この問題がきわめて重要な問題になるということで、かなり以前からこれの把握の方法について検討に検討を加えまして、私どもとしてはできる限り正確な数字の把握につとめたつもりでございまして、現段階においては私どもこの計算について大きなといいますか、経費の把握としてはほぼ自信を持って臨むことのできるものであるというふうに考えておるのでございます。
  173. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連。それでいろいろ苦心してつくったものを、私たちはやっぱり適正であると確認する意味で資料の提出を求めたいと思うのであります。たとえば、バター一キロつくるのに政府が一応算定した卸売り業者のマージンは十七円二十銭に見ております。あるいは脱粉十二・五キロに対する卸売り業者のマージンを百七十二円に見ております。これはそれぞれのやはり工場別の原価計算を集約したものとして出ておると思いますので、当然その背景になる資料をやはり出してもらわぬと、この数字が出た経過がわからぬからそういうものがほしい。それから、先ほど来取り上げておるような価格決定年度の乳製品の推定製造販売費用として、バターについては一キロ当たり百四十一円七十銭というものを出しておる、あるいは脱粉については十二・五キロで千三百十六円というものを出しておる。全練、脱練、全粉、その他、以下同文であります。したがって、この価格決定年度のそれぞれの品目別の推定製造販売費用というものの農林省が掌握した個別のデータの中から出てきた経過を明らかにする資料を出してもらいたい。
  174. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御要求のございました資料の範囲がどの程度あるかでありますが、実ははっきり理解ができなかったのでございますけれども、この計算の過程を明らかにするような、必要な範囲内で、かつ私どもが提出し得ます資料については、御要求に沿いたいと思いますので、内容につきましては、御要求のございました御趣旨を後ほど伺いました上で資料を整備して提出することにいたしたいと存じます。
  175. 矢山有作

    ○矢山有作君 私ももうあと少しでやめて、次に譲りますが、製造販売経費というのは、私の記憶でも三十七年ごろからずっと資料として提出されておったと思うんです。その三十七年ごろから製造販売経費を知って調査されておるのだと思うのですが、傾向としてその製造販売経費というのはどうですか、低下傾向にありますか、それとも上昇傾向にありますか。
  176. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 物的基準をもって表示をいたします場合には、低下傾向にございます。ただ、物価の問題ございますので、そういうふうに出ないもの——たとえば、労働費のようなものは、低下傾向に出ませんが、物的な資料で求めます限り、低下の傾向でございます。
  177. 矢山有作

    ○矢山有作君 個々にわたれば上がっているものもあれば、下がっているものもありましょうが、しかし、製造販売経費全体として考えれば、あるいは常識的に考えれば、企業合理化が進んでおるという前提に立つならば、むしろ低下傾向にあることは一応常識として考えられます。したがって、先ほど渡辺委員の提出資料に合わせて、三十七年以降の製造販売経費の推移、これをその項目ごと、構成要素に分類をして提出していただきたいと思います。  それから、ここでもう一つ伺っておきたいのは、たしか九州畜産振興事業団が出資をした乳製品工場があったように思っておるのですが、どうですか。
  178. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御指摘の工場は、九州乳業でしてございます。
  179. 矢山有作

    ○矢山有作君 私の聞いておるところでは、九州乳業は、畜産振興事業団が出資をした乳業企業であり、そこが買っておる生乳価格というのは、全国的に見ても非常に一般的にいって有利なような条件にあると聞いておるのです。この九州乳業の製造販売経費というものをお調べになりましたかどうか。
  180. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 九州乳業につきましても、乳製品の加工をいたしておりますので、調査の対象になっております。
  181. 矢山有作

    ○矢山有作君 その九州乳業の製造販売経費、調査されたものを今度の主要乳製品の製造販売費用として御提出になったそれの中に計算の基礎として加味されておりますか。
  182. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 当然のことでございますが、加味されております。
  183. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは参考のために、三大乳業、おそらく三大乳業から製造販売経費の基礎になる報告がとられたんじゃないかと思うのですが、もしそうだとするならば、それと九州乳業のとられた製造販売経費の調査、これとをやはり両方出していただきたい、こちらは比較対照する必要がありますから。
  184. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 非常に実はむずかしい問題なのでございますが、畜産振興事業団が出資をしておるという関係では、確かに九州乳業は特殊な位置にあるものでございますけれども、個別の企業のコストあるいは採算というものを一般に公表するということは、行政的に私は慎しむべきものではないかというふうに考えるのでございますが、個別の企業ということを控えました範囲での資料でお許しを願いたいというふうに思うのでございます。
  185. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは私はなぜそういうような資料を要求をするかというと、九州乳業の場合には、あなたがおっしゃったような特異な存在ですから、したがって、これの製造販売経費というものを知るということが、ほんとうの意味の乳業企業の製造販売経費というものを知っていく上に非常に重要だと思う。だから、個別企業の内容を明かすということは、秘密だということは私も知っております。秘密なら秘密で、秘密の資料として出していただけばいいので、どこの国に行ったって、秘密会を開いて、そして内容の実体を調査するという議会運営、国会運営をやっているんですから、それを日本の国会においても、私はそういう意味で、秘密な資料であれば公表しないようにして出していただきたい。私は、これを審議の対象に置いていただきたい。なぜそういうことを言うかというと、私はいまの乳業、酪農というのは、全体として、一部の大乳業メーカーに牛耳られておる、このことは否定できないと思う。そういう中で、少しでもそういう利潤追及のみをこととしないそういうような企業がもし存在するならば、その企業が一体どういう経営をやっておるか、これをつかんでいくのは、将来の乳業合理化の上に対して非常に重要な問題なんです。そういう点で、私はものを考えた場合に、これはぜひひとつ提出をしてもらって、秘密会なら秘密会でもいいですから、われわれとしては審議の対象に置いていただきたいと思う。そうしない限り、いまのあの複雑な乳業企業の、いろいろなこの計算書を出してもらったところで、こんなものはとてもじゃないが実体が見抜けるものじゃないし、日本の税務署があれだけの膨大な機構を持っておって、税金を取るために調査をやっておってもなかなかできない。まして、大企業になればなるほどできないのであって、そういう点からいえば、私は企業実体を明らかにして、そうして乳業メーカーの膨大な利潤追及だけを許さないような、そういう日本の酪農政策を確立されるために、どうしてもこれだけは私は要求いたします。
  186. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 個別企業を表示をすることはお許しを願いまして、三大メーカーを含む数個の、たとえばABCD何々社というような名前で、相互の検討がなし得る程度のものを考えて、提出をいたしたいというふうに思います。
  187. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、時間がかかりますから、それでけっこうです。われわれとすれば、的確な製造販売経費が今後算定されるような、そういうことを考えてやっておるわけですから、それにできるだけ役立つような資料を御提出いただきたいと思います。  まだ質問を続ければ、これからずっと残っておるわけなんですが、あまり私が長くなってもなんですし、大臣はすでにおられぬようで、特に大臣に聞かなければならぬ問題がどうしても二、三点残っておりますから、これは論議の過程というものを大臣に承知しておいていただかないと、おらないでぽっと来て言おうといってもなかなか言えない。言えない結果が、畜産局長の思うままの答弁になっちまうので、これは困りますから、したがって、私の残余の質問を後日に譲らしていただいて、きょうはこれでやめさせていただきたいと思います。
  188. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 資料は、いま局長は数個と言いましたが、私が言うているのは、この積算の基礎になったデータを全部出していただきたい。それを、固有名詞がいかぬならば、ABCなりアイウエオなり、何でもいいから、符号をつけて出していただきたい。そうしないと、そこに至った経過がわからぬでしょう、数個抜き出していったんでは。
  189. 矢山有作

    ○矢山有作君 それと、その際、やはり九州乳業なら九州乳業の分を別に出してくださいよ、Aという符号になろうがBという符号になろうがそれはかまいませんが。
  190. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 渡辺先生の御要望わからぬでもございませんが、原価算定の資料全部出せということになりますと、これは非常にやっかいといいますか、膨大な資料でもございますし、もう少し後ほど御指導をいただきまして、集約された資料を作成するということでお許しをいただけないものかと存じます。
  191. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 指導するにやぶさかではありませんがね。ただ、その場合に、基本的な指導の方向というものは、中小メーカーは中小メーカーでやはり一つの特徴があるはずです。そういうグループに集約することならいいですよ。ただ、それを何となく任意的にやるというんじゃ背景の資料にはならない。あくまでも、こういうものになった基礎になるものであれば、一から百までを全部羅列を私は要求しません。そういう意味で、要約してそのAグループ、Bグループ、Cグループとかりにあるとすれば、そういう分け方でもいいですから、そういう程度の集約のしかたで出してほしいと思う。
  192. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 提出をいたします。  矢山先生の御要求の資料については、特別に九州乳業の分だけを提出いたしますと、これは行政上の秘密保持上非常に問題があるのでございまして、もし必要がございますなら、特別のことを御配慮願わなければ提出いたしかねると思うのでございます。ただ、ただいま渡辺先生の御要求の資料は、グループ別になっておりますので、資料の中ではグループの中へ埋没してしまうということに相なりますから、別途に、たとえば、上位十社——大きいもので上位十社をナンバーだけで出して、その中に製造、販売経費が適正なものがどっかにございますれば、それを基準にして御審議を願うというようなことでお許しをいただきたいというふうに思います。
  193. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、上位十社なら上位十社として、A、B、C、Dずっと打って、その中のどれかに九州乳業の分が入っていると、こういうことですか。
  194. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) その程度までは私どもやむを得ないのではないかと思います。
  195. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  196. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 速記を起こして。  本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後四時四十五分散会      —————・—————