運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-06-02 第51回国会 参議院 内閣委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二日(木曜日)    午前十時四十三分開会     —————————————    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      河野 謙三君     館  哲二君  六月二日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     林屋亀次郎君      船田  譲君     古池 信三君      山本伊三郎君     大河原一次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 石原幹市郎君                 船田  譲君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 中村 英男君                 鬼木 勝利君    国務大臣        労 働 大 臣  小平 久雄君    政府委員        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。昨六月一日、河野謙三君が辞任せられ、その補欠として館哲二君が、また本日、山本伊三郎君が辞任され、その補欠として大河原一次君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 労働省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続き、本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、小平労働大臣村上労働基準局長高橋婦人少年局長、以上の方々でございます。  それでは、御質疑のおありになる方は順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法律案関連して、以下問題点についてお伺いしたいと思います。  最初に、順序としてお伺いしたいのは、この法律案は一時提出見合わせというふうに承っておったのであります。ところが、だんだん国会が進展して、会期も残り少なになってから、急にこの法律案提出されておるわけです。こういうふうに提案が遅延された理由は一体那辺にあるのか、まずこのことからお伺いいたします。
  5. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 本法案提出が若干おくれましたことははなはだ遺憾なことでございますが、労働省立場といたしましては、実は終始一貫本審議会設置法案提出いたしたい、こういうことで関係機関と絶えず折衝をいたしておったわけでございます。その間、先生も御承知のとおり、一方におきましては、審議会調査会等につきまして、一般論としていろいろ御議論がありまして、なるべく審議会調査会等はいままで必ずしも十分その役目を果たしておらぬというようなものについては極力これを整理すべきである、こういったような考えがあり、また、現に整理統合等に関する法案国会提出をいたしたというようなこともございますし、そういった空気もありました関係上、政府においても原則としては審議会等はふやさない、なるべくふやさないという方針をとってまいりました関係上、行政管理庁等においても、そういった考え方を受けて審議会設置については慎重な態度をとっておられた。こういう事情からいたしまして、関係機関意見の一致というものが相当おくれざるを得なかった。こういう事情から本法案提出がおくれたわけでございますが、私どものほうで熱心に推進をいたしました結果、関係当局におきましても、問題の重要性にかんがみまして、この家内労働審議会だけはいわば特例として国会提出しよう、こういうことに相なったわけでございまして、以上申し上げますような事情提出が若干おくれたわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣から御指摘の中にございましたが、行管としては、従来から審議会等新設は一切認めない、こういう方針を堅持してきたわけであります。ところが、この審議会だけについて、いま大臣はこれは特例だとおっしゃっておられますが、与党の間でも審議会等整理する必要があるということで、まだ審議はいたしておりませんが、今国会、当委員会審議会等整理に関する法律案提出された、そういう事態であるわけですね。そういう中で、特にこの審議会だけは特例だからということになると——このことについては行管に実はお伺いしたいところですけれども行管がいまお見えになっていないと思いますが、実は行管にお尋ねする問題で、行管としてなぜこういう特例を認めたかということを、これは裏を返せばなぜ特例が認められたかということはこれは労働省にお伺いできる問題だと思うのですね。まあ重要だから特例としてということですけれども、まあいずれの審議会等調査会にしろ、そういうものを設けるときには、どうでもいいからというので設置するのではなかろうと思います。各省庁それぞれ重要だからというような点も、みんな各省庁当然そういう態度をとっていると思いますね。いま簡単に、これだけは重要だから特例でということだけではどうも理解しがたいんですが、その点いかがですか。
  7. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 基本的には大臣がお答え申し上げたとおりでございますが、この家内労働審議会政府案としてお認めいただく過程におきましては、審議会調査会等整理という基本方針に照らしまして、いろいろ検討が重ねられたわけであります。その筋道といたしましては、家内労働問題について、審議するということ、その事柄重要性はわかるけれども審議会調査会等整理したいという基本方針に照らして、既存審議会でこれを扱い得ないかどうかといったような角度から、労働省に置かれております各種審議会との関係等をもしさいに検討されたわけであります。しかるところ、たとえば労働基準審議会であるとか、あるいは最低賃金審議会等がございますけれども家内労働という分野について、これを既存審議会で扱うべきかいなかという点については、いろいろ議論がございまして、実は昨年末、予算編成の当時から家内労働審議会新設について検討が始められたわけでありますがいま申し上げましたように、審議会等整理基本原則からいたしまして、まず非常に大きな制約があったわけでございまして、必要性を認めるとしても、既存審議会で扱い得ないかという角度から、相当長い間の検討を経たわけであります。しかし、機械的に既存審議会を活用するといたしましても、家内労働という特殊な分野をこれに含ましめるというのは適当でないというようなお考えがだんだん強くなりまして、一方においては各省の審議会整理等作業が進行してまいります、そういった作業進行状況と見合いまして、新設やむなしというような判断をいただきました。三月中におおむねそのような結論を得、四月になりまして早々に法案提出いたしたというような次第でございます。このようなことで、行政管理庁といたしましても、審議会整理という基本原則に照らしまして、必要性は認めるとしても、既存審議会で扱い得ないかといったような立場からもいろいろ御検討いただいたということだけ申し上げまして、御了承いただきたいと存じます。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この審議会関連して、臨時家内労働調査会、非常に関係が深いと思いますから、その点について以下お伺いいたします。  家内労働審議会の母体となった臨時家内労働調査会、これをよく検討してみますると、この調査会は何ら法的根拠がないわけですね。いうなれば、私的機関であったということができるわけです。しかし、そうでありながら、ちゃんと意思決定はしておると思う。そこで、この意思に基づいて家内労働審議会設置されたということであると、どうも法的根拠を有するいわゆる第八条機関と何ら選ぶところがないわけですね。しかしながら、八条によって設置されたものでないことはいま指摘申し上げたわけです。いうなれば法によらない私的な機関であったと思うのです。にもかかわらず、その決定は八条機関と同じような役目を果たしておるわけですね。この臨時家内労働調査会意思決定に基づいて家内労働審議会設置されたということになると、どうも法によらないそういう私的なものが行き過ぎではないか、そういう感じがするわけです。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  9. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 確かに先生の御指摘のような考え方もあるわけでございますが、私どもといたしまして、また臨時家内労働調査会といたしましても、そういった点にかんがみまして、たとえば結論をまとめるにいたしましても、いわゆる答申という形をとらず、「わが国家内労働現状に関する報告」という報告にとどめた。また、答申という形式をとらずに、一つ見解労働大臣に提示するという形で今後の家内労働対策進め方に関する見解、こういう、まあいわば控め目な形で措置がなされたわけでございます。御指摘のように、労働大臣から委嘱されて個々の委員という形で調査会のメンバーが構成されておった。一方、予算的にはその必要経費予算上はお認めいただいておった。しかるところ、特に本内閣委員会におかれましては、従来しばしばこういった調査会の存在について御指摘をいただいておったわけであります。かれこれそのような事情もございまして、ただいま申し上げましたように、大臣の諮問に対する答申といった通常の審議会答申形式をとらずに、報告書提出、その際一つ見解労働大臣提出するという控え目な形で行なわれたわけであります。そのような配慮をいたしておるという点については御了承いただきたいのでありますが、事柄自体家内労働問題について対策を講じなければならないという非常にその点の重要性に対する認識が基本にございまして、労働省といたしましても審議会設置したい、このような熱意を持っておりましたところが、ただいま申しました報告にあわせて見解が示された。答申ではございませんが、見解が示された。その中にたまたま労働省がかねて熱望いたしておりましたような家内労働審議会設置という考え方に合致しますところの見解が示されたという経過をたどってきたというふうに私どもは理解いたしておるような次第であります。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この臨時家内労働調査会は必要でないとか、意味がないとか、そういうことを言っておるのではなくして、そういう大事な目的を持ったものであるならば、いわゆる八条機関として法によって設くべきではないか。いま局長も御指摘になったように、当委員会でずいぶん繰り返し、法によらない審議会等については直ちに整理するよう長年にわたって指摘してきたところです。ところが、にもかかわらず、法によらないで、いわゆる私的機関を設けた。そのこと自体においては、どうもいまの御説明では納得しがたいわけであります。なるほど答申という形をとらないで報告という形をとった。これはもう論議にならぬ、何らの釈明にはならぬと思います。これは答申報告にしようが、報告を逆に今度は答申にしようが、そんな文字にとらわれる問題ではないと思いますね。結局その臨時家内労働調査会報告に基づいて家内労働審議会というものが生まれておるわけですね。これは法によった審議会と何ら選ぶところはないわけです。これはいずれにしてもいまここで深く追及する時間的余裕を持ちませんから、これは別途行管を中心にして掘り下げることにして、一応おきますけれども、そこでこの問題については、きわめて遺憾の意を表さざるを得ないわけですが、この調査会はいかなる目的設置されて何を一体調査したのか、それからどのような結論を得たのか、これは家内労働審議会を設くべきこと、ただそれだけではないと思いますね、いろいろ目的もあり、いろいろ調査事項もあり、結論もあったと思うのです。具体的に御説明をいただきたい。
  11. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 臨時家内労働調査会昭和三十四年十一月十二日に設置されたものでございます。厳密に申しますと、調査のための委員を委嘱したその委員のグループを調査会と称しておったということでございますが、設置いたしました趣旨目的は、家内労働実態把握するために必要な調査家内労働対策樹立のための根本的検討を行なうという趣旨で、学識経験者二十名の方々を御委嘱申し上げたわけであります。このいわゆる調査会におきましては、昭和三十五年九月二十九日にさしあたり総合的家内労働対策実施のための基盤整備及び具体的、実際的問題点把握のために所要の行政措置を講ずべきであるという中間報告決定されたのであります。自来所要行政措置を講ずるという観点に立ちまして、労働省といたしましては家内労働普及標準工賃制度の設定といったような内容指導行政措置として講じてきたわけであります。しかるところ、この行政措置を講ずるにつきましても家内労働対策実施のための基盤整備及び具体的、実際的問題点把握のためにそのような行政措置をしつつ、さらに調査を推し進める、こういう態度をとられまして、その後具体的調査昭和三十五年以来数次にわたって実地に行なわれたわけであります。そのような過程におきまして、ようやくわが国の家内労働全貌把握し得るような資料の収集と分析が進みまして、昭和三十八年に至りまして、一応の報告書の案を取りまとめたわけであります。しかしながら、家内労働実態がある程度把握できたといたしましても、その家内労働ことば使い方とか、いろいろな表現につきまして、かなり学術、専門的な立場から、ことば使い方等についても、かなり詳細にわたっての検討を行ないましたために、直ちにその報告案決定するということには至らず、修正をさらに行ないまして、昨年の四、五、六、数カ月にわたりまして最終的な検討をし、そうして昨年の十二月に報告書提出したと、こういうような経過をたどっております。この調査会委員各位におかれましては、資料が部分的な資料しか見当たらないということで、家内労働実態全貌を鳥瞰図的に考えるという点につきまして非常に苦心を払われたのでありますが、御承知のような報告書を出しまして、いわば総合的な角度からの分析をいたした報告書を出したわけでございます簡単でございますが、以上のような経過でございます。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、家内労働審議会設置目的についてお伺いしたいのですが、この提案理由説明によりますと、家内労働にかかわる重要事項調査審議することを目的とする、こういうふうにあるわけですが、これを具体的に言うとどういうことですか。
  13. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 家内労働についての現状分析についてはかなり詳細な報告書が提示されたわけでありますけれども、その調査の上に立って対策検討するにいたしましても幾つかの問題があるわけでございます。たとえば家内労働対策進め方自身についてどのような基本的態度をとるべきか、また、家内労働対策を講ずる対象の範囲についてはどのように考えるべきか、また、家内労働問題は雇用対策中小企業対策など他の諸施策との関連を持っておるわけでありますが、そのような問題についてどのような検討を加えるかということになりますと、単なる調査の域を越えまして非常に重要な問題が多々あるわけであります。法律文字表現といたしましては、重要事項を云々と、こうなっておりますけれども、その重要事項とは何かということにつきましては、ただいま二、三申し上げましたような点をとらえましても非常に広範囲な問題を含んでおるわけでありまして、そういった問題をもこの重要事項ということの中に予定されておるわけであります。しこうして、さらには技術的な問題としては、委託者仲介人の問題をどうするか、工賃の問題をどうするか、作業時間をどうするかといったような具体的な内容の問題があるわけでありまして、いわば基本的な問題、他の基本的な諸施策との関連に関する問題という幅広い基本的な問題と家内労働対策の技術的な具体的な問題の二種類があろうかと存ずるわけでありますが、法文といたしましては重要事項というような形で表現しておるわけでございます。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この審議会がいよいよ調査審議を進める段階で最終的には答申するわけですが、その答申を受けとめた場合、労働省としては一体どのように措置するお考えなのか。その大綱について承っておきたい。
  15. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいま申し上げましたような内容事柄を含んでおりますので、具体的な対策としましては法的な措置を行なう、行政指導をする、その他いろいろな内容が含まれてくると存じます。したがいまして、家内労働対策についての総合的な考え方を前提としつつ、その対策を具体化する手段として立法措置を要するもの、行政指導でなすもの、一般PR等を通じてなすものというような手段方法が明らかになってくるであろうというふうに考えるわけでございます。しこうして、その中で最も重要なのは法制的措置を講ずるということに相なろうかと存じまするが、その点についての基本的な考え方は、先日の当委員会大臣から御説明ございましたような次第でございます。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、この審議会委員構成、数、それから選任方法ですね。特に最後の選任方法についてお伺いしたいのですが、家内労働者のような未組織労働者、そういう場合の代表選任することについてはいささか困難があろうかと思いますけれども、一体どのような方法選任をせられるのか。これは、一般の組合のように、組織された労働者代表ということになれば簡単ですけれども、やはり家内労働者には組織がないわけですから、そこから代表を選ぶということになると、よほど特別の配慮がないと、よき代表者を選ぶことはできないと思うのです。そういう意味をも含めて、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  17. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 審議会委員は十五名程度を予定いたしております。その構成は、家内労働者及び一般労働者代表と、委託者及び一般使用者代表と、公益代表というような、三種類代表委員から構成されるものと予定いたしております。労働省関係各種審議会におきましては、労・使・公益という三者構成になっておりますが、先生指摘のように、家内労働者代表を選定するということについては、組織化された基盤がないだけに、非常に困難を感ずるわけでございます。従来の臨時家内労働調査会委員選任の問題につきましては、たとえば産地集団から代表を選ぶとか、あるいは内職公共職業補導所であっせんいたしております対象者の中から選ぶとか、いろいろ苦心をいたしたのでありますが、まあ最近におきましては、内職関係者の団体とか、そのようなものが漸次明確な形をとってあらわれてきておるようでございますので、三十四年当時、調査会委員を選ぶといったときよりも、比較的、家内労働者代表選任がやりやすいのではなかろうかというふうに考えておりますけれども、なおそれにいたしましても、困難があることは否定できない事実であると存じます。そういう点を十分考慮いたしまして、労働省といたしましては、代表者適任者を得るために、できるだけ広く関係方面の御意見を伺いまして、決定をいたしたいというふうに考えております。  同様な悩みは、使用者代表の、ことに委託者代表を選ぶという場合にも同様な問題がございますが、できるだけ関係方面意見を伺いまして、公正な人選をいたしたいと考えておる次第でございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、この審議会の運営の経費について、どういうふうになっておるか、伺っておきたいと思います。
  19. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 家内労働審議会関係予算といたしましては、六十五万三千円でございますが、それ以外に、家内労働実態調査費七十五万、行政措置に必要な経費百八十一万という予算が計上されておりまして、いわゆる家内労働関係予算として、労働基準局で所掌いたしておりますものは、三百二十二万円という金額でございます。  ただ、家内労働に関する予算と申しますと、婦人少年局におきます内職公共職業補導所予算等もございまして、全体としては、かなり多額になりますけれども審議会だけについて、限定して申し上げますと、先ほど申しました六十五万という予算に相なっております。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、中間報告に基づく当面の行政措置実施状況は、一体どうなっているか。このことでまずお伺いしたいのは、家内労働者手帳というのがあります。これは一体どういうものなのか。それから、その普及地域、それと数、こういうものについて、具体的に御説明いただきたい。
  21. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 昭和四十年十二月末現在の数で申し上げますと、家内労働手帳を実施いたしました業種の数に二十八、家内労働者の数は二万六千二百となっております。また、標準工賃制度を設けるためにいろいろ指導いたしたのでありますが、標準工賃を設定した業種の数は四十五、家内労働者の数は八万一千七百名になっております。  この地区分布につきましては、資料がございますが、いま一々申し上げますか……。概数としては、以上のような数になっております。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、標準工賃制度の具体的な制定状況はどうなっているかということと、最賃法における最低賃金との関連はどうなっているか、その点についてお伺いしたい。
  23. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 標準工賃を設定いたします場合に、大きく分けまして、専業的家内労働内職的象内労働の二つに分かれると存じますが、専業的家内労働につきましては、かなり専門職種的なものがございまして、比較標準工賃が高いということになっております。たとえば秋田県の漆器製造業については、丸物については千百円から千二百円、角物については千円から千二百円といったような、比較的高い工賃が設定されております。しかしながら、内職的家内労働については、たとえば兵庫県のメリヤスくつ下製造業における、かがり作様について約六百三十円、検査、包装、足合わせといったような作業は、三百三十円から三百五十円といったような金額になっております。これは一例でございますが、地区的にはかなり差がありますことは、御承知のとおりでございます。  この標準工賃最低賃金との関係がどうなっているかということでございますが、対応する職種が必ずしも直接吻合いたしませんので、比較は困難でございますが、ただ一般的に申されますことは、最低賃金の場合は、業者間協定方式最低賃金でございまして、最低賃金額目安決定して指導いたしておりますので、現在の段階におきましては、最高五百二十円という最低賃金額目安のもとに指導が行なわれておりまして、一般的にはそのような最低賃金額目安との比較において、安い、高いということを比較し得ようかと思います。ただ、産地ごと、あるいは家内労働者のおります地区ごとに、非常に標準工賃と申しましても、高低がございますので、一がいには言えないという実情でございます。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、安全衛生関係の面で、二、三お伺いしたいのですが、大体、啓蒙宣伝、これは一体どういうふうな状況になっているか。それから健康診断の実施状況、それと労災保険特別会計加入制度の今後の方針ですね、それは一体どういうことなのか。こういうことについて、要点だけをお知らせいただきたい。
  25. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 従来行政指導をしてまいりました安全衛生措置といたしましては、八業種、五千六百人につきまして安全衛生についての指導を行なった実績がございます。これらはいずれも、いわゆる危険有害業務に従事する家内労働対象にいたしておりまして、たとえば岐阜県の多治見地区のように陶磁器上絵つけ、これは鉛を含有いたしました材料を用いるということで、鉛中毒のおそれがありまして、そういった面の指導を行なう。一例でございますが、そういった危険有害な作業を重点といたしまして、安全衛生についての指導を進めてまいるという措置を講じてきたわけでありますが、しかしながら、率直に申しまして、家内労働だけの指導というのはなかなか困難でございます。ただいま申し上げました岐阜県多治見地区の指導にいたしましても、中小企業の労働者に対する安全衛生の指導は当然行なわれておる。したがって、その労働基準法上の監督指導をやっておる地区につきまして、さらに家内労働者にこれを拡大するといったような方法によりまして指導がされてきたわけであります。しかし、今後さらにこのような安全衛生の指導を拡大する必要がございますので、本年三月、労働基準局長通達を出しまして、有機溶剤、引火性塗料品、火薬類を取り扱う作業、あるいはプレス機、木工機等を使用するといったような作業のものにつきまして指導を強化するという方針をとっておるわけであります。指導方法としては、個々の家内労働者に当たるということはなかなか実際問題として困難でございますので、委託者を中心にいたしまして指導をする。それから、安全衛生に関する説明書などを配付する。それから、健康診断を指導奨励するとともに、問題はその検診機関をどう考えるかということにありますので、地方の労働基準局及び監督署におきまして検診機関のあっせんを積極的に行なうといったような措置を講じまして、できるだけ安全衛生対策を進めていきたいと考えております。また、労災保険への特別加入につきましては、昨年の労災保険法の改正によりまして、雇用労働者でない者につきましても労災保険を適用するという方式といたしまして、特別加入方式を認めたわけであります。すなわち、大工だとか左官だとかいう職種の方々、いわゆる一人親方といわれておるもの、あるいは零細漁民、あるいは個人タクシーをやっておるいわゆる自営の人といったような、労働者に準ずる職種の人にも労災の特別加入制度を適用いたしたわけであります。これは、それぞれの産業ないしは職種ごとに限定いたしまして特別加入の範囲を明らかにいたしておるわけでありますが、家内労働につきましては、家内労働一般について特別加入を認めるというのには範囲が広過ぎますので、危険有害業務などを中心にいたしまして、この特別加入制度をどのようにかみ合わせていくかといったような点を検討いたしておる次第でございます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、内職あっせんとか、あるいは授産事業こういうことについてお伺いしたいと思うのでありますが、国とかあるいは地方公共団体の内職あっせん、あるいは授産事業の現状についてお伺いしたいわけです。  そこで、これを具体的に順を追うてお伺いいたしますが、たぶん内職公共職業補導所というのがあると思いますが、これの設置数ですね、どのくらいつくられておるのか、あるいは業務内容、あるいは利用者数、こういうことについて具体的に御説明いただきたい。
  27. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 内職公共職業補導所につきまして、まずその設置の経緯から申しますと、昭和三十年度を初年度といたしまして、年次的に設置を進めているわけでございます。で、昭和三十年度に東京はじめ大府県の五カ所に設置を見ましたわけでございますが、その後漸次増設いたしまして、四十年度におきまして三十九カ所の設置を見ております。これは三十五都道府県にわたっております。  なお、この施設は、内職に関する諸般の援助を行なうためのまあいわば総合的な機関といたしまして、都道府県の機関として設置するものでございまして、これに対して国が経費の一部を補助すると、このような性格のものでございます。これは家内労働者のうち、いわゆる内職的な家内労働者というものが主として婦人であるということから、婦人少年局におきましてかなり早くからこの問題に着目いたしまして調査を重ねられた結果、このような総合的な援助機関が必要であるという考えに基づきまして設置を試みたものでございます。  で、この機関、この内職公共職業補導所の業務の内容といたしましては、まず第一には、この就業を援助するための内職の相談あっせん、技術補導をいたすのでございます。この相談あっせんは、申すまでもなく、内職を求める者に対しまして、その持っております技術、適性、あるいは家庭の環境等を勘案いたしまして、どのような内職が適当であるかということの選定等の相談を行なう。これは面接相談によって行なうのであります。そして、必要な場合には技術の補導も行なうということをいたしております。一方、内職者を求めるいわゆる委託者のほうにつきましても、この補導所におきましていわゆる求人の相談に応じているわけでございます。また、この場合は、求人の相談に応ずるとともに、その求人の条件を内職者にとって少しでもよいものとするために、その労働条件につきまして、特にその工賃等につきまして、よりよい方向へ持っていくような指導をあわせて行なっております。そして具体的には、この補導所でそのような指導を受けました求職者がまた補導所の選び紹介しました求人者のところに参りまして、そこで内職の委託契約が結ばれるわけでございまして、補導所、自体は現物の取り扱いはいたさないのが原則になっております。そのような機能を持っているのでございますが、このあっせん業務の結果、たまたま内職に関しましての苦情等が起きることもございます。工賃に関すること、あるいは納期に関すること等の苦情が起きることもございますので、その苦情の処理にも当たっているわけでございます。  また、この公共職業補導所は、先ほど申したような数でございまして、特に県庁所在地に主として設置されておりますので、遠隔の地に住む者はなかなかこれを利用することは困難でございますので、そのような者のためにも便宜を供与するために、巡回指導というようなことも行なっておりまして、補導所から巡回班を地域に出しまして、内職の相談あっせんという機能を果たしております。あるいはまた、内職を提供する事業所というものを常時開拓する必要がございますし、また、紛争の起きないようにするためには、優良な事業所というものを開拓する必要がございますし、信用調査等も行なっておく必要がございますので、調査活動にも大いに力を用いておりまして、常時管内の内職提供事業所の実態を明らかにするようにしているのでございます。あるいはまた、特に工賃等につきましては、各地における幾つかの共通の職種につきましての工賃の実情を明らかにいたしまして、補導所間でそのデータを交換することによりまして、工賃を適正なものにしていくための参考に供するというようなこともいたしておりますし、あるいはまた、一般の内職を求める方々につきましての情報の提供ということにも努力いたしておりまして、新聞その他を利用いたしまして、このような職種の内職があるということを始終周知に努めているのでございます。また、特に内職の条件の改善指導といたしましては、内職の委託内容を明確にするというようなことに意を用いているようでございまして、各補導所はそれぞれ独自の内職手帳というものを発行いたしまして、内職者にこれを交付して、また、内職者が委託を受けますときには、委託者がそれに納期、支払い方法、すべて明確に記入するようにということをいたしているのでございます。  大体以上が今日都道府県の内職公共職業補導所が行なっております業務のあらましでございまして、これは府県行政として行なうものでございますが、私どもといたしましては、この府県に対しまして補助とともにその業務内容について指導をする、このような形で進めております。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、授産施設の生活保護法、それと社会福祉事業法あるいは家庭授産制度の利用状況をごく概要でけっこうですから、簡単にひとつ。
  29. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点は、行政としては厚生省所管になっておりますが、その概要を申し上げますると、生活保護法に基づきますいわゆる保護授産施設の数は、昭和三十五年以降の傾向を見ますると、やや減少の傾向にございまして、昭和三十九年には百九十という施設数になっております。それから、社会福祉事業法によります授産施設は、これは施設数としては大体横ばいの状態でございまして、昭和三十九年は百七十という数に相なっております。その利用者の数は、ただいま申しました施設の数の減少傾向とパラレルの関係でございまして、保護授産施設につきましては昭和三十五年におきましては七千四百十六名程度でありましたが、漸減いたしまして、三十九年におきまして五千八百三十三名となっております。また、社会事業授産施設利用者の数は、これもやや減少いたしておりますが、三十九年におきましては五千四百十六名という数字になっております。  これらの施設利用者方がどのくらい働いてどれだけの収入を得ているかということにつきましては、各地域ごとにまちまちでございますが、たとえば、東京都の場合につきまして昭和三十九年の平均で見ますると、この施設の場内施設利用者は一日の労働時間が八時間、一カ月の労働日数二十三日、一カ月の工賃約一万八百円という数字になっております。しかし、この施設を利用しない家庭授産利用者は、一日の労働時間八時間、一カ月の労働日数十五日、一カ月の工賃約四千円、かなり低い額になっておるわけであります。施設の問題については、数のみならず、機械設備が老朽化しておるといったような問題もいろいろあるようでございまするが、現状はほぼ以上のとおりでございます。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、小規模企業の共済制度への加入状況、これも概要でけっこうですが。
  31. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 小規模企業共済法によりますところの制度の実施状況でございますが、これは先生承知のように、この制度に加入できる者は、常時使用する従業員数が二十人以下の個人事業主または会社等の役員で、これらのものは小規模企業共済事業団と共済契約を結んで掛け金を積み立てるという制度になっておるわけでございます。これらの制度がございますけれども、これが家内労働者とどのように結びつくかという点につきましては、この制度のたてまえからいたしまして問題があるわけであります。いま結論的なことを申し上げる段階に至っておりませんけれども、こういった問題につきましても今後十分に検討を要するものと考えておる次第でございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、家内労働全般について二、三お伺いしたいと思いますが、この家内労働者の多くの方は低工賃ですね。まず需給の不安定性、あるいは劣悪な作業環境、こういうことを百も承知の上で家内労働に従事せざるを得ない、そういう状況にあろうかと思うのですね。特にここで問題なのは、戦後日本の経済成長の陰には、日の当たらぬ者の、生活苦と戦いながら家内労働によって細々と生活を続けている人が多数あるわけですね。こういう現状大臣としては一体どう見られるか、その点が一つと、それと、その事実を確認された上で、今後どのような対策を講じようとなさるのか、その概況についてひとつ大臣のお考えを伺いたい。
  33. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生指摘のように、過去における経済一般の目ざましい発展の陰に、生計費等の上昇にも伴いまして、生計を維持するために劣悪な条件のもとに家内労働、特にまあ内職的な家内労働をやっておられる方が多数あるということも事実だと思います。また同時に、最近におきましては、まあ家庭生活というものが一般に合理化されたと申しますか、主婦の家事に使われる時間というものがある程度節減されるに至っておる、したがって、余暇ができてきた、こういった関係からいたしまして、これはもちろん全体からの割合とすれば比較的小さな割合には違いないと思いますが、必ずしも生計を維持するのに絶対必要だという立場よりも、いわば生活を向上するという、あるいは余暇の利用、こういったような立場から内職をなさる向きも最近はある程度はある。こういうことが実際問題として実情であると思います。しかし、何と申しましても、一番問題なのは生計を維持する、そのために内職的な家内労働をやらなければならない、こういう人が数多く、またそれが大部分を占めておるという事実であろうと思います。そういう状況でございますが、したがいまして、そういった作業の環境なりあるいは作業の条件なり、こういうことを改善していくということは、家内労働者それ自体にとりましてもきわめて重要なことであることは申し上げるまでもございませんが、また一面におきましては、それが雇用をされておる労働者、これの賃金、それとの関連においていわば足を引っぱるというような事情がこれまた必ずしも私はないわけではなかろうと思います。そういう関係からいたしましても、この家内労働の労働条件というものを改善していくということは、労働事情全般の改善のためにも、また、それらの方々の経済的なあるいは社会的な地位の向上のためにも、あるいはさらに大きく申せば、国の経済全般の見地からいたしましても、きわめて重要なことである、かように考えておるわけでございます。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕  そこで、今後しからばどういう策をもってこれを打開していくかという点につきましては、これも先ほど来いろいろ御指摘をちょうだいいたしているところでございますが、当面の労働省施策といたしましては、さきの調査会に示されました報告なりあるいは見解なり、これらを基盤として、先ほど来御説明申し上げておりますような諸点を一そう強力に当面は推進をいたしていく。さらに、今回御審議をいただいておりますこの審議会が発足いたしますならば、それらの意見を十分尊重いたしまして、さらに強力に法的な裏づけをもって施策を進めていくということにいたしたいと思っているわけでございます。この法的措置につきましては、先般も申し上げたのでありますが、私といたしましては、家内労働法というものがやはり必要である、私は実はさように考えておるのでありますが、まあ、さきの「見解」に示されておるところも、法的措置を含めて今後どういうことをやるべきか、総合的に検討するための審議会を設けることがよかろう、こう言っておられる。そこで、審議会ではたしてこの法的措置というものを、つまり、家内労働法といったようなものをつくるべきだという、おそらく私はざっくばらんに申して、結論が出るのだろうと思いますが、いずれにしても、その点も御検討をいただくことになると思いますが、でき得れば、私としては、法の内容等を十分御検討いただいて、その法に基づいてさらに強力に推進をしていく。もちろん、先ほど局長から申し上げましたとおり、必ずしもこの法ができたからといって、法だけで済む問題では私はないと思います。そういう点につきましても、十分行政的な配慮も配りまして十全を期してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、日本の工業製品輸出額を見ますると、軽工業製品の占める割合が大体五割ぐらいだと聞いておるわけです。そこでお伺いするわけですが、これは、やはり何といっても質よりも値段が安い点で欧米に進出しておったと思うのです。ところが、最近、後進国の進出が相当目ざましくなってきたわけです。価格の点では日本も一そう苦しい立場に追い込められておるのが実情だと思います。これを切り抜けるためには、何としても、製品のいわゆる良質化ということと、いわゆる高級品に方向を変えると、そういうことが望ましいわけです。こうした一連の変化は、やはり日本の軽工業界に重い比重を占める家内労働者の将来に大きな影響を与えるものと考えられるわけです。そうだとすれば、何らか対策を講じなければならぬと思うのです。この点はどのように考えておられますか。
  35. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) わが国の内外をめぐる産業の事情というものは、確かに先生がただいまお示しのとおりの道を歩んでおると私も思っております。わが国も、かつては軽工業のほうが輸出の大宗を占めておったわけでありますが、近年は逐次これが化学工業、そういうような方面に向かっておると、まあこういう大勢であろうと思います。そこで、特に家内労働といたしましては、むしろ軽工業との関連というものがいままでは多かったろうと思います。こういう点について、私どもが聞き込んでおりますところでも、たとえば例の造花などの関係でも、最近ではむしろホンコン・フラワーとさえいわれるように、かつては日本が非常な上位を占めておったわけでありますが、安い労働力によるホンコンでの造花の輸出というものが非常に多くなっており、そちらにむしろ本家を奪われるような事態にすらなっておると、こういうことを聞いておりますが、まあ、これは一例にすぎませんが、そういう面で、家内労働がやはり後進国の低労賃の労働に逐次影響を受けざるを得ない、こういう大勢にあると思います。でありますから、私は日本の家内労働につきましても、もちろん、日本産業全般のなにからいたしまして、必ずしも家内労働が、今日では繊維関係であるとか、そういったごくまあ軽工業のうちでも簡単なもの、こういうものばかりでなく、たとえば電気製品の関係とか、いろいろそういう方面にも及んでおるようでございますが、いずれにいたしましても、やはり家内労働についても技術の向上ということが当然これは要求されるわけでありまして、それを通じて、またより一そう高級な品物をつくっていくと、こういう方面にやはり今後どうしても進めていかなければならぬと思います。そういう関係から、家内労働についても技術の指導ということが私は将来非常に大きな問題であり、また、当然やらなければならぬことだろうと、かように考えておるわけでございます。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、専業的家内労働の多くは中小企業労働者からの転職者が多い、こういうふうに聞いておるわけです。そこでお伺いするわけですが、なぜ中小企業の労働者がそういう方向に行くのか。それは、言うなれば、中小企業のいわゆる劣悪な労働条件等のこれは何といっても弱点を示しておるのではなかろうか、そういうふうに思うわけです。この点を大臣としてはどう考えますか。
  37. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 専業的家内労働者に中小企業の従業員であった者がなる場合が多いのではないかという御指摘でございますが、私は、これにはいろいろ実はあるんじゃないかと思っております。お示しのように、中小企業等で働いておられた方が独立してやるという場合ももちろんこれは相当あると思います。このことは、中小企業の労働条件が劣悪であるから、むしろ独立してやりたい、こういう、基本的には人間の独立心と申しますか、そういう考えからやる場合、あるいは、あまりに中小企業の条件がよくないからと、両者の立場が合わせ考えられるのではないかと思います。と同時に、専業的な場合には、必ずしも中小企業その他の従業員であったというよりも、いわば特殊技能的な、ややオーバーかもしれませんが、先祖代々特殊な技能を受け継いでおるというような場合も私は相当これはあるんじゃないか。たとえば、特殊な織物のようなものであるとか、あるいは工芸品的なものをつくる場合とか、そういったぐあいに、いろいろなケースがあると思うわけでございますが、いずれにしても、従業員等を使わずに家族でやっておる、こういうものもある、しかも、あまり大量生産には向かないようなものもある、こういったようにやっておるようでありまして、問題は、家内労働のうちでは、しかし専業的にやっておられる方は、まだ私は、内職的なものなどに比べまするならば、比較的優位な立場にあられるのではないかと思っております。もちろん、それだからそれでよろしいというわけじゃございませんが、比較の問題とすれば、そういうことじゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 身体障害者とか、あるいは未亡人、あるいは長期療養者、あるいはまた失業者、こういう気の毒な方々が、やむを得ずして家内労働で生活を立てざるを得ない現実があるわけですね。こういう現実をどのように理解して、今後どのように救済されようとされるのか、こういう面も相当大きな労働政策になろうと思うんですが、その点いかがですか。
  39. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 確かに、御指摘のように、身体障害者あるいは長期療養者、未亡人、失業者といったような方々につきましては、最近の求人難にもかかわらず、就職の機会を得ないために、内職等をやらざるを得ないという傾向があるわけでございます。この点に関しましては、いわば落ち込んだ層といたしまして、生活保護の適用を受けるとか、社会福祉事業法の適用を受けるとかといったような者につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、授産施設としてかなりの数が設置されておるわけであります。ただしかし、こういった方々を、生活保護とか福祉という観点だけでとらえて施策を講ずべきか、そうではなくして、やはり残存する労働能力をいかに活用するかといった積極面からとらえるという基本的な問題があろうかと存ずるわけであります。この点につきましては、臨時家内労働調査会報告書におきましても、この問題の深刻かつ重要性指摘されまして、今後これをどのような視点に立って施策を推進していくかという点についての問題提起をいたしておるような次第でございます。問題が、労働行政のみならず、ただいま申し上げましたように、厚生行政と密接に関連する分野でございます。したがいまして、これらの方々の生活安定対策として家内労働的な角度から接近して施策を講ずべきかいなかという点について基本的な問題があるわけでございます。労働省といたしましても、こういった層の人々に対しまして施策を進めなければならないという考えを持っておりますが、家内労働問題の一環といたしまして、審議会でさらに十分御検討いただきたい、かように考えておる次第でございます。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお尋ねしたいのは、その家内労働にはほとんどいわゆる仲介者がつきもののようですが、これは仲介者と言うとていさいがいいのですが、これは現実には中間搾取とならないかというふうに考えられるわけです。中間搾取——いい悪いは別として、それなら存在を認められるわけですけれども、もし中間搾取でないとすると別に存在価値はないと思いますが、そういう点は現実はどうですか。
  41. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 内職に関する仲介人の数は約九千人というふうに臨時家内労働調査会報告では出しておるわけでありまして、この仲介人等を通ずる委託の形式につきましては、これは幾種類も型がございまして、仲介人が幾つもの層に分かれて、いわば重層的な仲介組織があるわけでございまして、また、仲介人がみずから家内労働者でもあるといったような場合もございまして、非常に複雑な形をとっております。この仲介人が手数料を取ることによって中間搾取を行なうのではないかという問題につきましては、確かにそのような可能性を内蔵しておるということは事実であるわけでありますが、臨時家内労働調査会調査におきましては、仲介人の手数料の額は、普通、家内労働者に渡す工賃の五ないし二五%程度を目安にしてきめられておるようだ、その手数料は、社会通念上から言って、仕事の中身を考慮して不当に高いと一がいに断定することはできない、しかしながら、御指摘のように、不当に高い手数料を取る可能性を内蔵しておる、したがって、このような仲介経路をただしまして、不当に高い手数料を取る中間搾取の弊害をもたらすことを厳に戒めなければならぬという見解を示されておるわけであります。この仲介人をどう扱うかということは、今後、家内労働法を考える場合に最も基本的な問題の一つになろうかと存ずるわけであります。しかし、仲介人の法的な地位をどのように考えるかという点につきましては、いろいろ問題があろうかと存じます。しかし、外国の立法例等もあるわけでございまして、家内労働法の制定の際に最重要問題の一つであるという認識をもちまして十分検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この家内労働考えた場合、どうしてもこれが多くの場合家族全員の労働ということを余儀なくされる場合が相当あるかと思うのですね。そういう場合、老人や子供が補助者的な立場でおかあさんの内職を手伝う、そういう場面がよく見受けられるわけです。こういうことになると、特に子供の場合は、教育上また新たな問題が出てくると思うのです。そういうような弊害をどういうようにお考えになっておるか、また、そうだとすれば、どういう対策考えておられるのですか、これも大きな一つ問題点になろうと思うのです。
  43. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 確かに御指摘のように、この問題、非常に重要でかつ複雑な問題でございます。一々の家庭におもむきまして、老人やあるいは児童の内職補助作業を規制するかどうかということになりますと、きわめて困難な問題があるわけでありますが、しかしながら、そのような家族総ぐるみで内職をせざるを得ないという基本的な原因はどこにあるのだろうかという点に思いをいたしますと、やはり工賃が著しく低いといったような要因もあるわけであります。したがいまして、今後家内労働審議会基本的な検討を行なっていただくわけでありますけれども、その接近のしかたを、不当に低い工賃の是正という角度から、家庭の主婦だけが中心に作業を営んでもかなりの収入が得られるといったような面でこの問題をただすべきか、あるいは児童、老人の作業について、いわゆる監督的、取り締まり的な方法で臨むべきかという点についてはいろいろ問題があろうと存じます。しかし、国が監督いたしますにつきましても、個々の家庭に入りましてこの問題をただすということにつきましては、実際上非常に問題があるわけであります。したがいまして工賃の面から接近するか、あるいは仲介人等を通じまして一つ指導としてそういった問題をただしていくか、いろいろ接近の方法があろうかと思うわけであります。したがいまして、重要性については深い認識を持ちながらこの具体的な処理の方法につきましてはさらに検討を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現在のような経済情勢の中では、中小企業のいわゆる大資本家からの圧迫等もあって倒産が相次いでおるわけです。また、倒産寸前の苦しい状況下に置かれている。そういうことになると、この中小企業と密接な関連のある家内労働者にもこれが影響してきて、工賃の支払い不能という問題も起きてきようかと思うのですね。いままでそういう事実はどうであったか、また、もしそういう問題が相当あるとすれば、ほっておくわけにはいかぬ。やはりこの対策を講じなければならないと思います。どういうふうな対策を立てておるか、そういう点をお伺いしておきたいと思います。
  45. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いわゆる工賃不払い問題等が不況に伴って家内労働にも及んでいるのではないかという点につきまして、確かにそのような事実があるように私ども承知いたしておりますが、ただ、数的にどのようなものであるかという点については明確なものを把握しておりません。ただ、たとえば内職の例にいたしましても、内職公共職業補導所において指導いたします場合には、この工賃不払いのないように、まず優良な委託者を選定するということに非常な努力を払っておるわけであります。したがいまして、内職公共職業補導所であっせんなり処理いたしておりますものにつきましては、ほとんどこの工賃不払いがないというふうに聞いております。しかし、このような機関を通さずに行ないますものにつきましては、行政上調査いたしたわけではありませんが、幾つかの陳情を私どもも受けておりまして、そういった事実があるということは承知いたしておるわけであります。ただ、法制的に、賃金不払いと同様に労働基準監督機関で処理し得ないという問題がございますので、実は、従来陳情をいただきながらも、個別的な処理につきましては、いわば事実上の指導を行なっておる。しかし、悪質な仲介人委託者になりますと、結局、家内労働者の方が泣き寝入りというような不幸な事態になるようでございまして、この点も今後どのように処置するかという点につきまして、具体的解決を要する非常に重要な問題であるというふうに私ども存じておるような次第でございます。もしこれが最低賃金法による最低工賃という形でございますと、これは法的に支払わしむる根拠もございまするから、法的に支払いを形制するということが可能になってまいります。しかし、遺憾ながら一般の不払い工賃につきましては、そういう法的な措置がないという現状でございます。繰り返し申し上げまして恐縮ですが、これも今後家内労働法制を考える場合に非常に大きな問題点であるというふうに考えまして、十分検討を進めたいと考えております。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、弱い立場にある家内労働者委託者に対して、あるいは工賃その他のいわゆる条件を特に改善の面について要求することはなかなか実際問題としては至難であろうと思います。そこで、いろいろ政策が具体的に考えられると思いますが、家内労働者の組合をつくって、組合の力によってこの工賃等の労働条件の改善を要求する、こういうことも、なかなか、その条件が違うものを一つの組合にまとめるということは、非常に至難中の至難であろうとは思いますけれども、できる面からこれを逐次組合を結成するということは可能であろうと思うのですね。こういう考え方に対して、大臣としては一体どのようにお考えになっておりますか。
  47. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生のおっしゃられる組合という意味が、あるいは現行の労働組合的なもので言われているのか、あるいはそういった労働組合的なものか、必ずしもそういうものではなくて、何か何らかの組織という意味なのか、そこのところ、はなはだ失礼ですけれどもわかりませんが、いずれにしても、私自身も、何と申しましても、特に家内労働の中の内職的なものは、個々の家庭においてとにかくやっておられる仕事ですから、これを全然組織化せずに内職の作業条件というものを改善していくということは、なかなか私は容易じゃなかろうと思います。ですから、これは実際問題としてどういう性格の組織になるかは慎重に検討を要すると思いますが、何らかのやはり組織化ということは私も必要ではなかろうか、それは、かりに法をつくって、法に基づいた指導をする、あるいは監督をするということになりましても、今日のように全然組織のない姿、個々の家庭について指導、監督するということは、これは言うべくして実際問題として至難のわざであろうと思いますので、先ほど申しましたとおり、組織のしかた、その性格等については、これは慎重な検討を要すると思いますが、何らかの姿の組織化というものは、法の円満な運用という点から考えましても、将来必要なことではないか、かように考えております。現在でもグループ的、いわゆるグループと申しますか、そういうことで補導所でそれを中心にした指導あっせんなんということをやっておるようですが、将来、この点も十分検討しなければならぬ問題だ、かように考えております。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この家内労働についての問題点はいろいろあるわけですが、ここでまとめてみますると、最も重要なものの一つとしては、いわゆる最低工賃の設定、これは最賃法に見合う、いわゆる最低工賃の設定ということがまずあげられると思うのです。それと、委託条件を明確にするということ、これも一つの大事な面だと思うのですね。それと、労働災害の防止とかあるいは労働時間の適正化、これはいわゆる家内労働だから時間おかまいなしということでは相ならぬと思うのですね。まだほかにもたくさんありましょうけれども、これらあげた四つの問題については、きわめて重要なものであろうかと思うんです。そうだとすると、やはり労働省としても、これらの問題にどのように取り組んで、そうしてどのように対策を講じようとしておるのか、ごく要点でけっこうです、この問題別にひとつ大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  49. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ただいま先生がおあげになりましたような点が家内労働の問題としてきわめて重要なポイントであるということには全く同感でございます。そこで、これらの点についてどうしていくかということでございますが、先ほども申しましたが、当面の施策としては、やはり法的な根拠はございませんが、しかし、労働問題一般、これが改善をはかっていくということは当然労働省のつとめでございますから、行政措置といたしまして、これが、先に申しましたような発注者の側、あるいは受注者側、両者について御指摘のような点についての施策をできるだけ強力に進めてまいりたい、かように考えておるわけでありますし、将来家内労働法というようなものができますならば、もちろん、その法に基づいての指導あるいは監督ということも十分これはやっていかなきゃならぬと思います。同時にまた、そのためには、これも先般申したのでありますが、行政機構としても今日の程度でよろしいかどうか、これらの面もあわせて十分検討しなければならぬと思います。ただその中で、先生の御指摘の中で、最低賃金に見合う最低工賃決定という問題がございますが、この点は、先ほど局長から申し上げましたように、作業が必ずしも賃金と家内労働でやる工賃とはかみ合わないというような事情がありまして、まだ設定はいたしておりませんが、最低賃金がどうしても低廉な家内労働工賃のために実現がむずかしい、困難におとしいれられておるというような、そういう事態が発生いたしますならば、これは法の定むるところによって、もちろん現在でも最低工賃というものをきめなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣からもお考えがあったわけですが、やはり取り組む姿勢としては、順序としては、まず家内労働実態を具体的に把握しなければ始まらぬと思うのですね。そこで労働省としては、当然に家内労働実態を、それぞれの面で具体的にまず把握するということ、そうして手がかりのつかめたところから漸次実現に移していく、姿勢としては、そういうことが必要である。具体的には、いま大臣が御指摘になったように、家内労働法の制定に向かって万全を尽くす、こういうことに尽きようかと思います。特に家内労働法の制定については、最賃法をどうしても実効あらしめるためにも、これはもう抜本的に、各般の十二分に煮詰めた、いわゆるきめこまかい態度が必要であろうかと思う、こういうふうに考えられるわけです。こういうような考え方に対して大臣としてはどういうふうにお考えですか。
  51. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) その点はもう先生指摘のとおりでございまして、御意見十分尊重いたしまして行政を進めてまいりたいと、かように考えております。
  52. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  53. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。  それでは、午前はこの程度として、午後は一時二十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。   午後零時十八分休憩      —————・—————   午後一時四十四分開会
  54. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 委員会を再会いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、矢倉恩給局長、大屋敷恩給局問題審議室長、以上の方々でございます。  それでは、御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  55. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 私、恩給法の改正案につきまして御質問申し上げたいと思うわけです。これを私は二つの面からお伺いいたしたいと思います。  それは、一つは全般にわたる問題であります。もう一つの面は、個々の問題についてお伺いいたしたいと、こう考えておるんでありますが、総務長官がお見えになりませんから、全般に関する問題は総務長官がお見えになってから後に質問いたすことにいたしまして、まず、個々の問題からお伺いいたしたい、こう思うのであります。  まず第一は、ベースアップの問題でございます。私はこの問題には二つの面があると、こう思うのであります。すなわち、一つは、現在恩給受給者が受けておる二万四千円ベースというものと、現職の公務員の受けておる俸給の三万九千円のベース、ここに一万五千円のベース上における差があるというこの一つの現実の問題。もう一つの面は、改正案第二条ノ二による調整、いわゆる調整規定の問題、この二つの面があると思います。  そこで、これをどういうようにして実行されるか。この二つの面をいかに実行されていくかということについてお伺いいたしたいと思うのであります。いままで衆議院その他におきまして、いろいろと当局の御答弁によりまして、御意図のところはよくわかりましたけれども、この両者の関係という点について、もう少し堀り下げた御意見をいただきたい、こういうように考えるのであります。言いかえますと、くどいようでありますが、この一万五千円の差というものは、六三%ぐらい上げないというと、一般公務員のベースと均衡のとれたものにならない、こういう現実があるわけであります。それで、この差というものは、これは早急に改正を要するものと考えるのでありまして、これを修正することなく、かりに第二の面であります、第二条ノ二の実施をいたしましたにしても、これは第二条ノ二をやった価値が非常に減ると思いますとともに、一方において非常な弊害が起こる、いわゆる一万五千円の差をそのまま固定をいたしまして、第二条ノ二をフルにこれを活用いたしましても、恩給受給者は永久に非常な不遇な地位に固定される、こういう問題になると思うのであります。この点につきまして、政府当局としては、この明々白々たる差額を、どういう手順によって、どういう手続によって、言いかえますと、これが審議会においての答申を待つのでありますか、答申を待たずして、このような明白なる事実を至急やるか、こういうような順序と手続につきまして、ひとつお答えをいただきたい、こう思います。第二条については、あとでお伺いいたします。
  56. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) ただいま先生指摘の、いわゆる恩給については二万四千円ベース、現在の在職公務員の給与が三万九千円、そこに一万五千円の差がある、これをどのように調整規定の運用の中で問題としていくのだろうかという御質疑でございますが、先生も御承知のように、現在の在職しております公務員給与は、実はその給与内容が、かつての給与の立て方とかなり違っておるわけでございまして、現行の公務員給与は、どちらかというと、職務給的な内容に相なっておりまして、したがって、その職務給的な内容を含みといたします公務員の給与実態というものは、かつて恩給公務員として在職された方々のそれとはかなり内容的に変化がございます。したがって、三万九千円と二万四千円というふうに比較することが適切であるのかどうかという点については、かなり問題が存するわけでございます。しかしながら、恩給受給者の立場からいたしますと、やはり三万九千円と二万四千円というのは明々白白じゃないかという印象がかなりあるであろうということは私たちも察するところでございます。したがって、こういう点について、どのように受給者の方々に理解をしてもらうかという点が、やはり恩給制度の運用をいたします政府側としては問題の存するところであるということは、十分われわれも承知いたしておるわけであります。ただ、これの理解と納得を得るということについては、現行恩給法のそれと、それから、現在の在職者の公務員給与のそれとがかなり技術的な問題を含んでおりますだけに、これらの理解を得るということについてはかなり困難があろうかと考えておるわけであります。以上のような大体給与の立て方の本質的な差異というものを含みとしつつ、今後この給与の改定が、現職の公務員給与の改正、恩給法の給与改正というような形で考えてまいります場合に、どのようなあり方が一体今後望ましいのかという点が必然的に私たちの課題になるわけでございます。これらの点が、今回設けられようといたしておりますいわゆる調整規定の運用のしかたという問題にからんでこようかと存ずるのであります。調整規定は、御承知のように、いわゆる恩給という特異の性質を考えまして、現行のいわゆる国家公務員の給与等をよりどころにするという一つの柱を立てました関係上、これらをどのように調整してまいるかという点が必然的にこの調整規定の運用の今後の課題に相なるわけでございます。そこで、そういう運用のしかたをいかにしていくかという点について、これはそれなりにやはりいろいろな社会的な、あるいは経済的な諸条件をも反映させながら、この調整規定の運用のあり方ということが問題に相なろうかと存じますので、そこで、今度設けられております審議会に、それらについての今後のありようというものについての御検討をいただこう、かように考えておるわけでございます。  以上のような事情でございますので、私たちも、直ちに三万九千円と二万四千円と申すのには、いささか問題があろうかと考えておるわけでございます。
  57. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 御丁寧なお答えをいただきましたですが、私の申し上げておるのは、観念上において区別をしていただきたいということでありまして、第二条ノ二の調整規定の運用とこの問題をからむことは、これは避け得ないと思うのです。そういう方法もあると思うのでありますけれども、しかし、現実に存しておるこの差額をいかにして修正をし、また、今度の調整規定によって今後における一般公務員との関係をどう律するかということは、観念上に区別をして実施をされないというと、非常な、調整規定そのものが歪曲をされた運用になるのじゃないか、とらえどころのないものになるのじゃなかろうか、こういうことを私申し上げておるわけであります。なお、審議会におかけになるということでありますが、私は必ずしもそうでないのじゃないか。改正する必要というものがもうはっきりしておるのでありますから、審議会答申を待っても待たなくても、私はこれはでき得る問題である、こういうふうに考えます。  それからもう一つお伺いいたしたいと思いますのは、いまの共済組合年金におきまして、その年金の基礎になりますものは、現在の退職時における俸給から、いま言いました、最近の社会生活上特異の条項というものの金額を除去したものを基礎にして計算されるのでありますか、それとも現給の俸給そのものを基礎として計算されるのでありますか、その点ひとつお聞きいたしたいと思います。
  58. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 確かに、最初の問題として先生指摘のごとく、実は恩給のベースというものをどう考えるかという点につきましては、調整規定を待たなくても、これまでも繰り返してまいりましたように、実はその増額改定というものはそれなりに措置のできる問題でございます。ただし、その増額措置をやってまいります基本の問題の考え方として何を取り上げるかという場合に、今回調整規定が、国民の生活水準、物価、国家公務員の給与という柱を立てられましたので、そこで、おのずから政府側の今後のいわゆる恩給の額の年額改正を考える場合には、必然的にこれが柱となって動いてくるであろう、かような意味で申し上げたわけでございます。  さて、その次に出ました、いわゆる共済年金というものは、確かに退職時俸給ということが基本に相なっておりますけれども、一応その年額の考え方としては、いわゆる過去三年間の平均俸給額が年金額の計算の基礎に相なっております。
  59. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 そこで、現在の恩給受給者の気持ちといたしましては、一般公務員のいまの給与というものと、その旧軍人が退職をしたときの給与というものは同額に考えて、この間に差のないもの、こういう見解をとっておるということをここに申し上げておきたいと思うのであります。理論的に言っていろいろと議論のあることはよく了解はできるのでございますが、そういう受給者の気持ちであるということはひとつ頭に置いて措置をしていただきたい、こういうように思うのです。  それから繰り返しますが、この両者の問題がただいまの御答弁でははっきりしないものが依存として残るのであります。言いかえますと、他のことばをもっていたしますと、言外の義は別といたしまして、お答えの表面だけで言いますと、いまの差額というものは正当な当然あるべき差額であって、いわゆる格差というものはあるべき格差であるから、第二条ノ二の運用というものはこの上に立ってやるのだ、こういう意味に解釈できないことはないと思うのであります。そうではないと思いますが、その点もう一度はっきりさしていただきたい。
  60. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 私のお答え申し上げましたのは、現在の恩給のいわゆる基準になっております二万四千円が、現時点において何らの問題がないという意味合いにおいて申し上げたわけでございませんのでして、確かに、この現在の一般的にいわれておる二万四千円が少なくとも恩給額として妥当するものかどうかという点については、それなりに問題もあろうかと存じます。したがって、私たちは、この恩給額というものを絶えず見直していくという政府側に責任があるということは、十分に承知をいたしておるわけでございますが、ただ、三万九千円とこれを比較をいたしましたときに、三万九千円というものは、一つのやはり国家公務員の給与という、今回立てられた柱の一本でございまして、したがって、そういうものも二万四千円を見直していくときの基本になるであろうということだけは、私たちも十分承知いたしておるわけでございます。
  61. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 次に、この改正法第二条ノ二の調整規定について関連をしてお伺いいたしたいと思うのであります。これはほかのところでお答えになっておりますように、数歩前進であるということは、私もそう感じまして、非常に御配慮についてありがたく感じておるのでございますが、しかし、この規定が実際に価値のあるものであるかどうかということは、一に運用だけにかかっておるのでありまして、今日までの衆議院その他における審議を拝聴いたしますと、この運用の面についての政府のお考えというものが明示されておらないと言っても過言ではないと、こう考えるのであります。そこで、この規定ができました後において、従来政府がおやりになっておりましたような内々の規定ではないでしょうけれども、実際的に三年に一ぺんくらいずつこの恩給の是正をされておると、こういうことが、今後この規定ができた後においても、やろうと思えば同じことができるのじゃないか、こういうように私は考えるのであります。そういう意味において、この問題をひとつほんとうにどういうように運用するのかというところのお考えをお示しいただきたい。しかし一方、政府当局といたしましては、いろいろな関係上、いまそれをお示しをしにくい事情も察し得ないではございません。しかし、大体の方向が、従来よりも数段の進歩をするのだということくらいは、私ははっきり示していただけるのじゃないか、こういうように考えるのでありまして、ひとつもう少しはっきりと政府のお考えをお示しいただきたい。これは、もとより恩給審議会答申によって左右されることは当然でございますけれども、しかし、法律としてできたこのものをどういうふうに運用するつもりでつくったかということをはっきり示していただきたい、こう思うのです。
  62. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 調整規定のいろいろな今後のあり方につきましては、先生方としても非常に御関心をお持ちであることは当然でございますし、われわれこれを運用していく立場にあるものとしても、これをどのように運用していくかということは、それなりにいろいろ考えてみなければならない内容を含んでおるわけでございます。ただ、これまでも衆議院の内閣委員会等においてもお答え申し上げました点は、実はこの調整規定は、いわゆる厚生年金の調整規定のそれによりつつ恩給についての特質を織り込んでいこうとすることで今回の法改正ということに相なっておりますので、したがって、形式的に申せば、厚年のそれに近いということに相なろうかと思いますが、しかし、私たちは、恩給法の運用という面から見ますと、この調整規定が、かりに旧来恩給調整という一つ措置が、法のいわゆる明文を待たずして、実際的に増額改定をいたしますときに、やはり物価も特段の配慮対象に相なりますし、生活水準の変動も一つの課題になります。また一方、年々国家公務員の給与改定が行なわれておりますので、必然的にそれらの内容もしんしゃくをしてまいるということが、これまでの増額改定をいたしますときの基本的な態度であったことは事実でございます。したがって、今回それが明文化されるということによって、その明文化された法の規定の効力というものは、必然的に政府側の行政運用の基本とならざるを得ませんので、したがって、この規定の運用自体が、旧来のそういう法の規定が明文化されていなかったときからすれば、はるかに実は明確な根拠が与えられた、かようなことに相なりますので、その限りにおいてのこの法的効力というものをるる申し上げてまいったわけでございますが、ただ、それをいかようにするかということに相なりますと、たとえば、現行の国家公務員給与の立て方の問題等もございまして、したがって、それらをどのように、現在のいわゆる恩給を措置するときに、過去の給与をもらっていたことを一つのよりどころとする恩給のあり方にどうつないでいくかという点については、これまた実はそう単純に答えを出しかねるというふうなところから、今回まで、恩給審議会のいろいろな御討議に待ちたい、かようにお答えを申し上げてまいったわけでございます。
  63. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 ただいまの御説明で厚生年金の精神も一つのよりどころとしてこの法案考え方一つに入っているのだ、そういう御説明でございますが、私はむずかしい理論は知りませんけれども、この恩給という性格のものから考えますというと、公務員給与のあり方というものが一つの大きな基準になってくるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。そこで、公務員給与のいわゆる行政の適用の原則に基づきまして五〇%以上の向上をやらなきゃならぬ場合には、人事院はこれを国会政府に向かって勧告をする責任を持たされている。この五%というところの一つの基礎というものが、やはり第二条の適用のときの基準に考えていいのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。また、他の外国のいわゆるスライド制をとっている国のやつを見ましても、いろいろ国によって違いますけれども、あるいはアメリカのごとく、三%というようなときには云々というような規定がありまして、そう大きな差額ができたときに限ってやるということではないと考えるわけです。その点についてのなにをもう少しはっきり説明していただくことにはまいりませんか。
  64. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 実は、お答えがそのように数字的にできれば私もまことに気が楽なんでございますが、実はこの調整規定をいろいろ考慮いたしますときに、ただいま御指摘のいわゆる一般職の国家公務員の給与の改定を人事院が勧告いたす一つの基準として五%という一つの数字、目安がつくられておりますので、そういう点についてもいろいろな検討をいたしたわけでございますが、しかし、この調整規定は、先ほども申しましたように、厚年のそれに準拠しつつということを考えましたところから明確な数字が出なかったわけでございます。また、各国のいろいろな調整規定も、先生の御指摘のとおり、国によっては直接的にスライドしていくような規定もございますし、必ずしもそうでないところもございます。そこらにこそ実はこの調整規定の運用のやり方の問題がございますので、そこで、この内容については、さらにその十分な意義のあるような内容たらしめるためには、今回設置されることになっております恩給審議会に御意見を伺う。そういうことで、一つの出されてくる御意見に従ってこれの運用の適正化をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  65. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 いまのお答えのように、恩給審議会にかけて、これを実行の一つの基準とか、あるいは気持ちというものが規定されるということは、非常に実際においてそうなるのだと、こう思うのでありますが、しかし、先ほどから言いましたように、現在の恩給そのものと一般公務員の俸給の間に大きな格差がある事実があって、しかも、この日本の経済状態から見て、これは早急に改正をしなければならぬことも、私は、感情としては当然だろうと、こう思うのであります。そういう意味におきまして、この恩給審議会答申があってもなくても、中間答申があればけっこうでございますが、あってもなくても、この問題については、来たる四十二年において必ず何らかの形においてこれを、一段の向上という点に御尽力していただきたい、こう考えておりますが、これはいかがでございますか。
  66. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 確かに先生の御指摘のように、先ほども申し上げておりますように、恩給年額の改定については、必ずしも調整規定を待たなくても、あるいは恩給審議会結論を待たなくても、可能な問題でございます。ただしかし、今回、その法律案がもし法律化されますと、必然的にその調整規定が明文として働いてまいりますので、そこで、明文として働いてまいります。その運用のしかたというものは、やはり政府側として、とれに対する将来の長期展望の中で考えていかなければならない課題でもございますから、したがって、恩給の額の改定の当面の問題は、それはそれなりに考慮されるといたしまして、調整規定の運用のしかた、それはまた、必然的に長期展望の中で考えてまいらなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  67. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 それでは次の質問に移りたいと思います。それは、加算年を恩給金額の計算に算入する問題であります。今度の改正法案によりまして、この点が、妻子に限って、最低恩給年限のその半分の扶助料を足すというふうに改正していただいたのでありますが、前もって申し上げたいと思いますが、恩給局長の衆議院における審議に際する御答弁によりますと、この点、誤解がおありになるのじゃないかという感じをいたすのであります。恩給受給者のほうの希望しておりますことは、いま質問の題目にあげましたように、加算年に対して恩給をつけていただきたいという事柄でありまして、十二年もしくは十三年以下の人に対して、これだけ見てやってくれて、入れてほしいと、こういうものではないのであります。いわゆる四十一年度の予算編成に際しまして、局長がお考えになっているように、十二年もしくは十三年というものまで加算年に恩給をつけていただきたい、こう言ったのであります。この問題は、もっと広い恩給全部、加算に対しまして恩給金額をつけていただきたい、そういう希望であります。そこに差があると思うのでありますが、これはどういうようにお考えになっておるでしょうか。
  68. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) いま先生の御指摘いただきました、加算年についてこれをすべて恩給の額として考えるようにという御希望のあることは、私たちも十分承知をいたしておるわけでございます。  そこで、本年、実は加算年についていかような解決をするかという問題を考えましたときに、ここに御指摘いただきましたような妻子に対する加算扶助料、これをどのようにしてまいるかという点につきまして、これは、それなりに妻または子についての特殊事情がございましょうと考えられ、そこに、そういった事情を考慮して、減算を行なわないとした場合の額は一体どういうふうになるということで、妻または子についての特例措置というふうな形で解決をいたしたわけでございます。
  69. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 今度の改正案が妻と子だけに限定をされているのでありますが、この精神を、先ほどから申しましたように、一般の加算年を持っている方に及ぼしていただきたい、及ぼすのが、またこの加算年を設けた元来の精神を生かすために必要である、こういうふうに私は考えるのであります。そこで、この加算年につきましては、私から申し上げるまでもなく、日本政府の持っておられます資料には、まだ不十分な点がありまして、私がお願いをいたしているような状況まで直ちに実行できないという事情にあることは承知いたしておりますが、先ほど述べましたような趣旨によりまして、政府としては、なるべく早くこの加算年に対する調査を完了していただいて、そうしてこれを金額的に実現をしていただくようにお願いをいたしたい、こういうふうに思っております。  次に、もう一つ、同じ加算問題について御質問を申し上げたいと思うのでありますが、三十六年の旧軍人の加算の復活に際しましては、旧恩給法で規定されておりました加算の種類の中で、職務加算を主体とする合計十種類の加算というものは復活をされておらないのであります。申し上げますと、戦地外戦務の問題、あるいは内地交戦、戒厳地勤務、航空勤務、潜水艦勤務、戦車勤務、不健康地勤務、不健康業務、遠洋航海、艦隊勤務、こういうような問題が除外されております関係上、これは是正をしていただきたい、これも同じく恩給法の中に入れていただきたい、こういう希望なんです。  政府は、いままで御答弁になっておりますところによると、調査が困難である、いわゆる資料が散失しているとかその他の理由によりまして調査が困難であるというような意味のことをお述べになっているのでありますが、そういうような事情にあるにいたしましても、私は、この十種類の加算関係が全部同じような程度に、資料がなかなか集まらないとか、散失している状態にあるとは考えないのであります。この十種類の中を詳細に当たりますというと、調査可能なものが相当あると私は考えるのであります。また、調査が不可能でありましても、資料の散失した責任は、私は、政府が持つべきでありまして、受給資格者、受けるべき資格があると考えられる人の責任に帰すべき問題ではないと思うのであります。そういう意味におきまして、これに対しては、またしかるべき当然の措置が伴うものだ、こういうように考えるのであります。これについて政府のお考えはどういうものかお聞かせをいただきたい、こう思います。
  70. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) ただいま先生指摘の、戦地外戦務あるいは戦務加算、これらの加算につきまして、いろいろ、かねてからこれらについての復活の問題が出ているということも十分承知をいたしているわけであります。ただ、それにつきましては、私たちもそれなりの検討をいままで加えてきてまいっているのでございますが、先生もいまちょっと御指摘いただきましたように、実はこの加算は、個人個人の勤務の内容によりつけられるものでございまして、現在、これらの勤務に関する資料の実情から見まして、加算を認否しますのに困難を来たすというふうな理由がございましたところから、これまで除外をしてまいったのでありますが、この点につきましては、御承知のように、戦地加算というふうな場合は比較的一律的に見ることができますので、したがってそれらの認定による公平、不公平の問題が生じないわけでございますが、この実は戦務加算あるいは戦地外戦務の点につきましては、かような点についても、もしこれを是認をいたしました場合に、一体どこまでそれが確実に資料の裏づけによって公正を期し得るであろうかという点について、やはり政府側としていろいろ検討しましたが、実は踏み切るになお問題がございますので、したがって、この点についてはさらに今後私たちも十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  71. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 よくわかりました。ただ、この問題につきましては、いまさような——いわゆるこの問題と言いますのは、加算に恩給をつけていただきたい、この問題でございますが、この問題が文武間において現実に差があるということであります。昔の文官には加算年について金をいただいておる。ところが、軍人に関しては、その金という問題については除外をされておる、こういう問題もありますので、あわせて、この問題は旧軍人の恩給としては特色のある基本的な大きな柱と思いますので、どうぞ、その意味においてこの上とも御検討をお願いいたしたいと、こう考えております。  次に、仮定俸給の年額の格づけの不均衡是正問題についてお願いをいたしたいと、こう思うのであります。そこで、いろいろの経緯はもうよくおわかりになっておりますから、私はそれはここに説明をいたしませんが、従来から、この号俸の問題につきましては非常な文武官の間に大きな差がありますとともに、文官の中におきましても、退職の年次によりましてまた差額がありまして、今度修正をされましたけれども、やはりこの文官の中においてさえいろいろの俸給の格差というものが出てきておるわけであります。そういう意味において、この点について十分御検討いただきたいと、こう思うのです。旧軍人について申しますというと、今度二十三年の六月以前の方の修正をされたに伴いまして、従来からありましたこの俸給の格差が非常に大きくなったという事実をひとつ頭に置いていただきたいと思うのであります。元来、二十八年に、旧軍人に対する恩給の復活がありましたとき、軍人は四号俸平均格下げを食っております。それがその後に尉官以下は修正をされましたが、まだ将官と佐官にその格差が残っておるわけであります。その後四回にわたりまして文官の俸給がいろいろと号俸を修正されております。そういう関係上、私が間違っておるかもしれませんが、私の調べによりますと、以上のような俸給の号俸において差があるということをここに申し上げたいと思うのであります。すなわち、兵の階級にある者、陸軍で言いますと伍長それから軍曹、これが大体十二号俸下がっておるわけです。それから曹長から、曹長、准士官、それから少尉、中尉までは十一号俸下がっております。それから大尉が八号俸、少佐が七号俸、中佐が五号俸、大佐が四号俸、少将が三号俸、中将が三号俸、大将が二号俸、終戦のときにおける同格におった文官との間の号俸がこれだけ下がっている。これは私は異常な状態であると考える。私ははなはだ残念でありますけれども、軍人に対する特殊待遇であると決して考えぬのであります。たださえいろんな条件が、先ほど述べましたように、不十分なる以外に、恩給の基礎になる恩給の格づけが、はなはだしきに至っては十二号俸も下がった状態において処理されるということは、これは私は非常な納得のできない問題だと、こう思うのです。これは私の検討が間違っているかもしれませんが、大局的な見地において、少なくもいま私の言った意見は間違っておらぬと考える。この点はぜひ御検討の上、是正について政府の御尽力をお願いいたしたい、こういうふうに考えるのであります。それについてひとつお考えを。
  72. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 御質問ございましたように、現在の旧軍人の仮定俸給が文官等のそれに比べまして低位にあるという感があるという御指摘でございます。この点につきましては、先生も御承知のように、戦前の旧軍人の仮定俸給がその実俸給に比べましてまあそれほど有利になっていなかった方の場合がいまの御指摘のような点ではなかろうかと思うのであります。旧軍人の実俸給は、同じ階級の方々の間におきましても、御承知のように、大体の年限、あるいは教育課程の違い、あるいは兵種というふうなものによって相当の開きがございました。御承知のように、たとえば少佐でいきますと、一号から四号というふうな開きがございます。こういった面が実は恩給の中に取り込まれるときに、一本の仮定俸給によって律するたてまえとされたことは、御承知のとおりであります。したがって、いわゆる仮定俸給に律するときの立て方、これが一つの今日われわれが恩給的に考えましたときの問題の点でございますが、同一階級の者でも実俸給の低かった旧軍人につきましては、逆の感もあり得るわけでありまして、この恩給の基礎俸給の階級ごとに統一するというたてまえをとってまいりました以上、若干の問題点が出てくるであろうということは、御指摘の点から当然うかがえる点でございますが、しかし、これをどのようにしてまいるか。考え方といたしましては、実俸給を基礎にするのか、あるいは一本の仮定俸給により律するたてまえにするのかというふうな点から、いろいろな問題がいまの旧文官との対比の点においても出てこようかと存ずるのであります。この点は非常に重要な問題でもございますので、いかなるいわゆる基本の額を恩給の基礎に考えるかというふうな点につきまして、今後恩給審議会等も設けられることでございますので、かような点についても十分な御審議をわずらわしたい、かように考えているわけでございます。
  73. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 いま言われました、軍人が階級ごとに一本の仮定俸給をつくっておると、こういう点についての御議論はごもっともだと思います。しかし、この格差というものがそれよりも超越した、もっと大きなものであるということも私は一つの事実だと、こう思うのであります。また、そのほか総合的に恩給というものは考えなければならぬと思うのでございますが、いわゆる物価の、あるいは小売り指数でありますとか、そのほか計算いたします。同時に、いま受けておる俸給が終戦時の何倍の俸給をもらっているかというような点を考えますと、ここに非常に大きな差があるように私は考えるのであります。私、終戦時の年俸というものを基礎にして計算をいたしますというと、これは権威のあるものではございませんが、兵のところにおいて最も多いところで二百十六倍になっておる程度であります。一番少ないところでは、少将の百十三倍にしかなっておりません。それから、物価はすでに三百何十倍という形になっておるわけです。そういう大きな差があるのでありまして、そういうものと号俸がさらにひっかかっているというところにいろいろ問題があると思うのであります。そのおことばのとおり、ひとつぜひ御検討いただきたい、こういうふうに思います。  次に、一時恩給年限でございますが、これは旧軍人に関しましては、今日実在職連続七年ということになっております。文官のほうは、加算を入れまして三年から一時恩給をいただくことになっておるのでありますが、この連続七年、実役連続七年ということは、これはほとんど該当者が私はないと思うのであります。旧軍人の大部分というものは、召集をされまして、二年なり三年勤務いたしますと、これが一度召集解除になりまして、それからあらためて召集をやる、何年行ってもこういう形になっておるわけです。そこで、連続七年ということは、これはほとんど該当者が、シベリア抑留者ぐらい以外にはほとんどないような有名無実な私は規定じゃないか、こういうように考えておるのであります。これを、文官と同じようにとは言いません、いろいろ経緯を考えますが、連続七年を改められまして、これを実在職連続三年ぐらいに直すのが合理的でないか、こういうふうに考えるわけであります。これについての御意見を承りたい。
  74. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) おそらく受給者の立場からいたしまして、文官が実在職三年というふうなところから考えられて、確かにそういう点について三年というふうな一つの線をお考えになるであろうことは十分わかるわけでありますが、御承知のように、終戦あるいは軍の解体というふうな特殊事態によりまして、おびただしい数のいわゆる戦没者、戦傷病者、退職者というのが一時に生じたというふうなことから、旧軍人恩給の再出発にあたりまして、戦没者、遺族あるいは傷病者、老齢長期在職者というふうな方々を重点的に考慮し、若年の短期在職者については、若干この受給者の立場からすれば問題があろうかと存じつつ、しんぼう願うというふうなことで今日まで経過いたしておるわけでございます。したがって、この点については、現今の国家財政等の実情から考えまして、御質問いただきましたように措置いたしますことは、かなりむずかしい問題かと存じますが、かねてより要望もございますので、今後の検討に待たしていただきたい、かように考えるわけでございます。
  75. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 次は、海軍特務士官の問題並びにこれと同様な陸軍関係の者の仮定俸給年額を是正していただきたい、この問題でございます。これは御当局においてもいろいろと御検討であることは承知いたしておりますが、なかなかこれが実現に至っておりません。そうして、その一つ理由として、こういうふうな例がないのだというような意見でございますが、例がないと言いますのは、この特務士官の者に限ってほかに文官そのほかの恩給関係にはそういうような不遇な処置を受けた者がないから是正した例がないのでありまして、その唯一の例外のものを、他にそういう修正の例がないという理由ということは私はおかしいと、こう考えます。また、この終戦後におきまして、一般の文官の方の号俸是正そのほかにおきまして、いわゆる中だるみを直すとかいろいろな理由によって修正をされております。これは当然直さるべき理由があって直されたんでございますが、いわゆる昔きめた仮定俸給を、他の理由によりましてこれが修正になっておるのが例でございます。ところが、この海軍特務士官のほうは、御承知のように、戦争前において受けておった実際の俸給よりも、恩給法上における仮定俸給が下がっておる。実際の俸給よりも下がった仮定俸給により計算をされておる、こういう不合理でありますから、これはもう修正をしていただいても何ら無理のない時期に入っておると、こう考えるわけであります。これについてひとつ当局の御意見を承りたいと、こう思います。
  76. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) 旧海軍特務士官、また、それと同様の状態にあった方々の扱いの問題でございますが、これは、実は恩給の措置のたてまえをどうするかということからまいっておるわけでございまして、御承知のように、旧軍人に給付される恩給の年額につきましては、軍人恩給廃止前は、同じ階級に属する者は、それが一般士官であろうと特務士官であろうと同一に取り扱うということにしておったわけでございます。したがいまして、戦前のこのような秩序、しかもそれが恩給額に影響を与えますような序列の変更を来たすような措置をいたしますことについては、それなりに慎重な考慮をしなければならないのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  77. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 いまの御答弁のような一面もあろうかと思うのでありますが、しかし、実際においてこれは戦前においてやられたところの私は間違いであると考えるのであります。そういう意味におきまして、また、今日先ほどから申しましたようないろいろな理由によって修正をされておる、同じような事項で似たものが修正をされておる、この状況においては、もう一度これを検討していただきたい、こういうふうに考えるのです。しかも、この点はだいぶ前にも内閣委員会におきましてこの問題は取り上げられまして、実行するということに一応政府との間に話がついております。そうして、それで残っておるものがこれだけじゃないかと考えるのでございます。そういう経緯から考えましても、この際修正をするのが正しいのじゃないか、私はそう考えておるわけであります。  次にもう一つ申し上げたいと思うのでありますが、いま恩給法上におきまして、下士官の恩給と将校の恩給との間に、片一方は十二年勤務、片一方は十三年勤務という差がありまして、この間の措置が法的に一応切れたとかいろいろな形になっておりますが、そんないわゆる法制上の犠牲者が私の知っておる限り相当あるわけであります。それは准士官として十三年勤務せなければ恩給権がもらえない人が、十三年にならずして終戦のためにやめた人がおるわけであります。ところが、この人が下士官の成績がよかったために、勤務年数十二年にならずして准士官になってしまった。そういう関係上、いまになりますというと、下士官の恩給権もなければ、将校としての恩給権もない、こういう形になりました。両方ともわずか足らぬために全然恩給権から見放されたという、一つの法制上の盲点が出てきておると思うのであります。これは別に本人が希望してやめたんじゃありません。終戦の特異の状況において、もっと勤務する希望があったにかかわらずやめた、こういうような事情も考慮されまして、私は、こういう人には、少なくも下士官の、曹長としての恩給でもやる必要があるんじゃないか。こういう進級さえしなければ当然恩給をもらっておるにかかわらず、進級をしたために恩給権を全部見放された、こういう人も相当あると思うのであります。こういう人もひとつ救っていただきたい、こういうように考えるわけです。この点、御見解をお示しいただきたい。
  78. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) いま先生の御指摘のとおり、現行の規定は、准士官以上は十三年、それから下士官、兵は十二年というふうな明確な一つの規定が置かれておりまして、したがって、現在の状態においては、この点について、そういうちょうど間に入られた方というのは、その意味において恩給権が発生しないというようなことに相なっておるわけでありますが、確かに先生の御指摘のとおり、問題のある点でございます。制度的にどのようにしていくかというふうな点については、われわれのほうも検討をさせていただきたい、かように考えております。
  79. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 そのほかいろいろこまかいことがありますが、時間の関係で省略をさせていただきまして、次は恩給法に直接関係ないかと思いますが、国民年金の無拠出老齢福祉年金の制限というものを拠廃していただきたいということをお願いをいたしたいと思うのであります。これは今度の改正案から見ますというと、長期在職者の最低は六万円、扶助料三万円という一つの基準の改正がいたされました。そういうような一つの趨勢にあることから考えまして、現在の二万四千円以上はこれはもらえないという、合計二万四千円という制限がついておるわけでありますから、これを撤廃をしていただきたいと、こういうわけであります。元来から言いますというと、老齢年金というものと恩給というものは別個のものでありまして、これに関連を持たしたということは、また別の特殊の理由があったのだと私は想像いたすのであります。そこでこの際、先ほどの最低の恩給額をおきめになりました趣旨、その他から考えまして、この際、制限を解いてしまって、両方の——恩給並びに年金の精神をそのまますなおに受け取って、これを関連させないという形が私はあるべき姿じゃないかと思うのであります。ただ、そのときの公務扶助料の問題で、十万何ぼという制限がまだ法制上残っております。これらもあわせて考えていただいて処置をしていただきたい、するのが私は正しいのじゃないか、こういうように考えるのであります。で、理屈になりますが、元来、恩給と社会保障とは違うということは、総務長官並びに恩給局長の御答弁でたびたび承っておるわけでございますが、こういうところで変にからめるというようなことは、私は決してすなおな行き方じゃないのじゃないか、こういうように考えます。これについて当局の考えをお聞きしたい。
  80. 矢倉一郎

    政府委員(矢倉一郎君) お示しの点は、実は、厚生省の所管の国民年金法に基づく福祉年金の給付制限に関する問題でございますので、私どもからお答えを申し上げることがいかがかと存じますけれども、福祉年金につきましては、他のいずれの公的年金制度からも年金を受けられない方々対象としているというところからして、御質問のように措置することが問題があるというふうに聞いておるわけでございますが、そういう点で、私の直接所管からはずれる問題でございますので、かような程度でお許しをいただきたいと、かように考えております。
  81. 山本茂一郎

    山本茂一郎君 いま局長のお答えになりました趣旨はよくわかります。また、これは担当の違うことも重々承知をいたしておるわけでございますが、元来、どうも生活保護法そのほかを見ましても、はるかに大きな、月二万円、年額二十五万——これは五人家族でございますが、そういうようなことが行なわれておる時期に、恩給、いわゆる国家の保障制度としてやっておる恩給が二万四千円になってくるというと、これをほかはけ飛ばすのだということは、国全体から見まして非常につり合いのとれない思想の混迷じゃないかというような感が私はいたすのであります。御担任の職権外のことであることは存じ上げておりますが、ひとつ、関連のある事項でございますので、関係政府当局ともいろいろと御検討いただきまして、こういう撤廃についての御努力をお願いいたしたいと思っております。  これをもちまして、一応私の質問を終わりたいと思います。あと、長官に対しましては保留いたします。
  82. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  83. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。     —————————————
  84. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 委員異動について御報告をいたします。本日、塩見俊二君が辞任され、その補欠として林屋亀次郎君が選任されました。  暫時休憩いたします。    午後二時四十六分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————