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1966-05-10 第51回国会 参議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十日(火曜日)    午前十一時四十八分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     野々山一三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 船田  譲君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 塩見 俊二君                 八田 一朗君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 中村 英男君                 野々山一三君                 山本伊三郎君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        運 輸 大 臣  中村 寅太君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省医務局次        長        渥美 節夫君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君        運輸大臣官房長  深草 克巳君        運輸省海運局長  亀山 信郎君        運輸省船員局長  岡田 良一君        運輸省港湾局長  佐藤  肇君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        運輸省航空局長  佐藤 光夫君        海上保安庁次長  岡田京四郎君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        厚生省環境衛生        局長事務取扱   若松 栄一君        厚生省大臣官房        統計調査部統計        調査官      角田れい作君        気象庁予報部通        信参事官     北岡 龍海君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。昨九日、杉山善太郎君が辞任され、その補欠として野々山一三君が選任されました。     —————————————
  3. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続き、本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、中村運輸大臣深草官房長亀山海運局長岡田船員局長佐藤港湾局長坪井自動車局長佐藤航空局長、以上の方々でございます。  それでは質疑のおありになります方は、順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて若干御質問申し上げたいと存じます。  まずお伺いしたいことは、今回航空交通管制区域三つ分化したようです。札幌東京福岡管制部設置することになっておるようですが、そこでこのことについてお伺いしたいわけですが、管制区域の三分化ということ、これは一体どういうことか、それとその必要性は一体那辺にあるのか、こういうことについてまず御説明いただきたいと思います。
  5. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 航空交通管制本部を三分化する理由について御説明申し上げます。  昭和三十四年七月に若干の米軍基地内における進入管制及び飛行場管制を除きまして、航空交通管制業務米軍から日本に移管され、運輸省航空交通管制本部わが国全土及びその周辺における航空交通管制業務を行なってまいってきたわけでございます。その後航空交通量が増加する一方、交通量分布状態は次第に北海道東北を一団とした交通本州中央部中心とした交通等、三分される傾向を示してまいりました。すなわち民間航空では航空交通量の多い本州中央部は別といたしまして、北海道及び東北間の路線網拡充が著しく、離島を含めた九州周辺路線は、中国、四国間の路線を結合して次第に活況を呈してまいりました次第でございます。また、防衛庁及び米軍関係航空機飛行は、大多数が特定の飛行場基地とする局地飛行でございまして、その態様は大きく北部、中央部、西部とやはり三つに分かれているわけでございます。航空交通分布状態に対処する航空路管制業務は一カ所の管制機関において集中して行なうよりも、交通分布に対応したブロックごとにこれを行なうほうが航空交通安全性を高めかつ管制能率を向上させることになるわけでございます。  その理由は、第一に、航空機管制航空機管制機関との直接通信によりて行なうことが理想でございまして、直接通信によって、中継方式による各種の通報、指示の伝達の遅延や誤りを防止することができるのであります。  第二に、航空交通の増大、高速化に伴いまして航空路管制機関におけるレーダー管制施設整備が必須のものとなりまして、わが国の全空域をカバーするためには数個の航空路監視レーダー設置する必要がございますが、これらのレーダー一つ管制機関によって遠隔操作することが技術的または経済的に著しく困難である。したがいまして、これは三つに分けまして管制をするほうが適当であるということで、今回この三管制部をお願いした次第でございます。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこでお伺いいたしますが、今回の管制区域の三分化が行なわれることになったわけですが、航空路管制はこれで十分であるのかないのか、あるいは将来さらに検討を要する点があるのかどうか、こういう点についてもさらに御説明いただきたい。
  7. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 組織といたしましては、この三つに分けることによりまして、ただいま御説明したような組織としては、一応現在の航空輸送状態に応じた体制であると考えますが、ただ、いま申し上げましたように、これを行なうためには航空路監視レーダーの完備その他施設を将来逐次整備をしていく必要があるわけでございまして、これらのものの整備をなお逐次整備増強することをわれわれとしてはやってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この三つ管制部の機構とか定員、この点についてはどうなっておるのかということ。それから、このことについては昨年度において充実はできたと表明しておるようですが、これで業務遂行上遺憾はないかどうか、そういう点をあわせてお答えいただきたい。
  9. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 管制関係組織及び要員充足状態でございますが、四十一年度の予算の成立によりまして管制関係定員といたしましては運用、通信、技術合わせまして六百八十名という定員に相なっておるわけでございます。  なお、いまお導ねの、各組織別のこれを内訳をいたしますと、東京が百七十、札幌が三十七、福岡が五十七というような定員配置を予定しておるわけでございます。で、全般的に申しまして一応新しい施設整備その他に伴う要員配置はいたしておりますが、さらに施設整備あるいは業務複雑化に伴う対処というような観点からいたしますと、率直に申し上げまして、まだこれでは十分でございませんので、将来さらにこれらの要員充足に、われわれとしては努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近の航空事故発生から見ても、航空安全性ということが痛感されるわけです。そのためには航空管制施設充実、こういうことがまずもって考えられなければならないわけです。その整備状況は一体どうなっておるか、具体的に要点だけを御説明いただきたい。  なお、このことに関連して、資料提出をお願いしたいと思うのですが、一つは、国内飛行場の所属別主要な施設あるいは滑走路の長さ、管制官等職員数、それから設立年月日、これらの一覧表をひとつ御提出いただきたい。  それからいま一つについては、最近五カ年間の航空事故について、これはもちろん国内について。国別機種名死傷者別人員、死者何名、負傷者何名、それから事故原因等一覧表、この二つの資料について、当委員会へひとつ御提出いただきたい。合わせてお願いしておきます。
  11. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御要求資料は、早急に作成をいたしまして提出をいたします。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの資料提出の前に、いわゆる航空管制施設充実は必要ではないかと、そこでその整備状況はどうかと、そのことにお答えいただきたい。
  13. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) かいつまんで申し上げますと、御承知のように、航空を行なうための必要な飛行場施設が、国内における二国際空港、その他第二種空港、第三種空港の一応の空港設置は終わりましたが、この内容自体は、あるいは滑走路の延長あるいは舗装の厚さの新機材に対応する増強というようなものを行なう必要がありますほかに、航空の安全に直接必要な航空保安施設整備、特に飛行場につきましてILSのようないわゆる計器着陸装置整備、それから空港管制自動化というようなものを行なおうかと思います。航空路につきましては、先ほど申し上げましたような航空路監視レーダー整備すること、同時にVORと称しておりますが、超短波全方向式無線標識整備というようなものを行なうことというようなことを緊急に行なう必要があるというふうにわれわれは考えておりまして、これらの計画を全部現在進めておる状況でございます。なお、御要求資料によりまして、その詳細を御説明さしていただきたいと思います。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 四十一年度の予算要求で、運輸省としては、航空関係定員増をどの程度要求されたか。また、どの程度増員が認められたのか、この点について御説明いただきたい。
  15. 深草克巳

    政府委員深草克巳君) 航空関係では、要求は四百十七名でございます。それに対しまして実際につきましたのは百三十四名でございます。要求に対しての査定割合は三二%。まあ御参考までに省全体の数字を申しますと、千六百八十二名に対して三百六十七名、全体の割合は二二%、したがって、航空関係につきましては、一般の平均よりも要求に対するあれは大幅に上回るということは申し上げられると思います。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、四十一年度の増員について見ますると、四十一年度におけるまず空港新設があるわけです。また、その他の施設整備があるわけですね。これらに伴う必要最小限度の増にすぎないと考えられるわけです。これではなかなか航空事故発生防止には、あまり役立たぬではなかろうかとそういう憂慮がされるわけです。この点はいかがですか。
  17. 深草克巳

    政府委員深草克巳君) 御説のとおりでございまして、特に今回の数度の事故にかんがみまして、特に管制官並び管制通信、そういった関連の要員充足、これは勤務が非常に御承知のようなきつい勤務でございますので、勤務条件の緩和というようなものも含めましての増員でございますが、現在大蔵省並び行政管理庁に私どもは申し入れておりますのは、航空関係航空局本局で三十四名、それから航空管制で百九名でございます。合計百四十三名で、そのほかに航空気象関係気象庁関係でございます、これが十九名、合計百六十二名でございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 航空事故発生防止観点から、航空管制施設充実、特にこの施設近代化整備がいろいろな配慮から実施されたとしても、これに伴う要員が確保されない限りは、いわゆる増強施設を有効に運用することはできないと思いますね。現状はいま説明によってわかったが、はなはだ遺憾にたえない状態ですが、さてこれを克服するための要員計画はどのように立てられておるのか、こういうことをお聞きしたい。
  19. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) いま官房長から全体の御説明を申し上げましたが、われわれとしては、伊藤委員指摘のように、何としても緊急に要員充足する。特に保安に直接関係のあります要員充足するということを計画をしておるわけでございまして、これらの点について早急に政府部内で話をつけまして、凍結欠員解除等の方法によりまして、実員の充足につとめてまいりたいと考えておる次第でございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このことに関連して、いわゆる保安要員としての管制官については、いま具体的にどのように努力を払われておるのか、結局欠員凍結は百三十六名、これを解除することによってこういう問題は一応解決されると思うのです。そのために運輸大臣としては、どのような努力を払われてきたのか、そうして今後の見通しは一体どうなのか、これはきわめて重要なことであるので、大臣からお答えいただきたい。
  21. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 航空施設要員につきましては、ただいま局長のほうからお答えしたとおりでありますが、先般引き続いて起こりました航空事故等にかんがみまして、安全運航を確保するための施設並びに要員必要性はきわめて緊急を要する問題になりましたので、あの事故直後、閣議にはかりまして、航空の安全に必要な施設要員については、政府のほうで適切な措置をとる、要員の確保につきましては、さしあたり航空局のほうでいろいろ検討しておりますが、その際明確な数字はまだ出ておりませんような事情でございましたので、さしあたり運輸省の中に凍結人員としてあります百数十名をもってあてる、さらにそれでも不足の場合には特別の措置をしてでも要員は確保するという閣議了解を取りつけておるわけでありまして、いま伊藤委員指摘なさるようないろいろな施設等に必要な要員を、急を要する人員につきましては大蔵当局とも逐次相談を進めておる途中でございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣から御答弁があったように、閣議としても最近のたび重なる航空事故の安全を期するために、施設とか組織あるいは要員等について今後努力する、そういう意味の閣議決定がなされたと思うのです。いまそのことの御説明があったと思うのですが、ただ問題は、凍結欠員というものがあるわけですね。で、当面この凍結欠員百三十六名の管制官を解除することによって保安要員としての凍結欠員、これは具体的にどの程度——いま問題は大蔵省だと思うのです、問題は。もちろん定員増については行管大蔵省関係になりますが、聞くところによると、行管のほうでは大体了解方向にいっておる。問題は大蔵当局にあろうと思うのです。これは具体的にはどの程度了解までこぎつけたのか、ただ抽象論ではわからぬと思うのです。百三十六名を何とか凍結を解除してほしいという声が非常に強いわけです。われわれの検討いたしました結果、この百三十六名という欠員凍結が解除されることによって、ある程度明るい展望が持てるのではないか、こういう確信が見えたわけです。そこであえてこの問題を重ねてお伺いしておるわけであります。どうも具体的にお答えいただかぬと、抽象論では見当がつかぬわけです。
  23. 深草克巳

    政府委員深草克巳君) 先ほど大臣からお答えしましたような閣議了解の前に、実は私は、大蔵省主計局次長並びに行管管理局長に、こういう閣議了解をするということで快く事前了解をしていただいたいきさつもございまして、その後、航空局あるいは航空気象関係気象庁というようなところで、若干どの程度人間要求するかということの作業に手間取った点もございますが、行政管理庁のほうの関係はまだ数字は幾らということははっきりは示しません。と申しますのは、政府部内の事情もございますが、大蔵省観測参考にしながらやっていっておるというように私ども感じておるわけでございます。大蔵省のほうは、実はこの増員の中には施設整備に伴うものも入っておりますので、一方で施設整備を四十一年度の予備費でやってもらうという問題もございまして、そちらのほうがきまらないと人間のほうもきまらないという関係もあるわけであります。そのほか一番大きな問題は、実は部内事情でございますけれども大蔵省予算が通りますと、大体ひまなところでありますけれども、特に今回航空再編成の問題それから内航海運業法、本日閣議決定いたしましたそれらのことで、非常に事務当局が、むしろ運輸省の都合で、多忙をきわめておったわけで、一、二回要員問題並びに施設の問題につきましても説明はいたしておりますが、じっくり取り組んで数字をはじくという段階まで実はまだ向こうの時間的余裕がなくてできておらないということでございまして、昨日の連絡では、ほかの問題終わったから、さっそくこれに取り組むというような確答も得ておりますし、ただ、抽象的で非常に恐縮でございますが、閣議了解の線もございまして、行政管理庁並び大蔵省とも非常にこれにつきましては従来以上に理解のある態度で対処していただいておると私ども信じております。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この管制業務、それと管制官勤務体制、こういうところから見て、現在の定員ではきわめて不十分であるというふうに私どもは考えるわけです。そういう観点から御質問申し上げておるわけです。  そこで、このことに関連して、管制官勤続年数平均、一体どのくらいになっておるか。
  25. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御承知のように、管制官——先ほど申し上げましたわがほうが直接やりましてからでございますが、一番古いのは十年、で、十年ないし最近入った者というような状態でございます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この管制官の職務というのは非常に重要なものであるということについてはもう言うまでもないわけですね。それに伴って高度の技術を要することも事実だと思う。そこでお伺いするわけですが、この管制官養成訓練は一体どのようにして行なわれておるかということ、それから養成機関が一体あるのか、こういうことについて御説明いただきたい。
  27. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 管制官の現在訓練をする体制でございますが、東京国際空港にございます保安職員訓練センターというものにおきまして、これで六カ月の基礎研修を行ないました上で、さらに六カ月間の飛行場管制業務中心とする専門研修を行ないまして、飛行場管制業務のいわゆる免状を取らせるようにいたしてございます。毎年、管制職中級試験合格者五十名ないし六十名をこれによって訓練をいたしておる現状でございます。なお、センターを卒業しまして飛行場管制業務以外の業務を行なう者、管制施設配置された者につきましては、当該業務技能証明を取得するためにさらに半年から一年間の実地訓練を受けさしてその免状を取らしておるというようなことが現在の養成体制でございます。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、航空事業の発展と、それから航空機高性能化、こういうことに伴ってパイロット養成が当然に重要性を増してきたわけです。そこでお伺いするわけですが、その養成計画はどうなっておるのか。それから、養成機関として航空大学校を増設する計画があるやに伺っておるわけです。具体的にはどのように進んでおるか、こういうことについてお伺いしたい。
  29. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御指摘のように、パイロットの需要は航空事業の伸展に伴いまして増大してまいっておりますので、現在宮崎にございます航空大学校におきまして、毎年三十名を二カ年で訓練をいたしてございます。これによりましていわゆるプロペラ機程度訓練をいたしているわけでございますが、航空機材の進展に伴いまして、この程度を上げる必要があるということで、四十一年度からの計画でさらにYSH、いわゆるターボプロップ機を購入いたしまして、この教育課程を練習をいたしまして、ターボプロップを直ちに操縦できる技能を与えているというようなのが現状でございます。そのほかに、防衛庁委託養成を年々計画的にいたしておりますのが四十名、さらに部外の転職、その他を入れまして、例年百十名程度新規増をいたしまして、これが航空事業の増と、あるいは減耗補充に充てているというのが現在の定員養成補充状況でございます。  なお、御質問の航空大学校の増設でございますが、部外委託その他よりもむしろ航空大学校拡充をして、これをもって基礎教育をここに集中するほうがいいという考え方がございますので、将来の考え方としては、別個にもう一つ、いわゆる第二航空大学というようなものを建設すべきではないかという考え方がございますので、その点も部内において検討を進めている段階でございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、航空自衛隊パイロット民間転用について、防衛庁との何か協定でもあるのかないのか、もしあるとすれば、その内容はどのようになっているか、そういう点についてお伺いします。
  31. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 先ほど申し上げましたように、一応計画といたしましては、毎年部外者から約四十名程度ということでございますが、これを基礎的に防衛庁運輸省協定ということでございませんで、毎年それぞれ防衛庁、各航空会社等が具体的に打ち合わせをして、減耗補充等を受けているというようなのが現状でございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 航空交通の安全のために、的確な航空気象観測が重要であるということは言うまでもないようでありますが、航空気象観測の概要についてこの際承っておきたい。要点だけをお教えいただきたい。
  33. 北岡龍海

    説明員北岡龍海君) お答えいたします。総部部長がお答えするために資料を持っておったのでございますが、ちょっといま外出しましたので、あるいは資料に若干誤りがあるかと思いますけれども現状をちょっと申し上げます。  航空気象サービスといたしまして、羽田の国際空港東京航空気象台がありますが、そのほかに、地方国際空港といたしまして、名古屋の小牧及び大阪の伊丹それから札幌の千歳にそれぞれ航空測候所、それから福岡板付にも航空測候所がございます。そのほかに仙台それから広島、鹿児島等航空測候所をつくっておりますが、そのほかに国内の二種、三種の空港にも空港分室をそれぞれ設置いたしまして、航空気象サービスをいたしております。現在、空港分室といたしましては、四十五所が設置されておる状況でございます。以上でございます。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 気象庁では、新設空港気象台空港分室を置いているようですが、四十一年度の定員を見ますると、大体新設空港分室職員が三人程度しか配置されていないと思うのですが、このような程度気象業務を行なって遺憾はないのかどうか。どうもこの程度では気象態勢はとれないのではないかと憂慮されるわけですが、この辺の事情はどうですか。
  35. 北岡龍海

    説明員北岡龍海君) 御指摘のとおりでございまして、空港分室にもいろいろ種類がございまして、一日一回程度あるいは二回程度しか飛んでいない閑散空港と、非常に朝からかなり回数が飛んでいる空港分室とございますが、この相当回数飛んでおります後者の空港分室におきましては、全体的に空港分室はそうでございますけれども、特にひんぱんに飛んでいる空港分室におきましては、飛行機が飛んでくる場合に、そこの空港分室において気象の数時間後の予報、これから飛んでいくけれども、その二、三時間後にはどのように気象状況が変化しているだろうかということ、これをトレンド・タイプ予報と申しておりますけれども、その予報要求されるというのが非常に多くなってまいります。また、これが非常に重要な業務だと思っておりますが、それに対応いたしまして、現在の空港分室における予報業務というものを実はまだ規定化されていないわけでございます。しかし、それでいながら実際上は要求されているというところに空港分室において非常に困っている問題がございますので、これをやるためには若干の施設、若干の人員空港分室には増強しなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近の相次ぐ航空事故にかんがみて、航空安全の対策を立てることは急務中の急務とされているわけです。そこでお伺いするわけですが、政府としてはいかなる具体策を立てておるのか、これをどのように実施していくつもりなのか。これはきわめて重要な基本的な問題であるので、大臣からお答えいただきたい。
  37. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 現在の伊丹の測候所と千歳と名古屋と福岡板付、これの基準を羽田の空港並みに引き上げるという方針を立てまして、それに沿って機械の設備を整えて、さらに人員配置等を整備していく方針でございます。
  38. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) ちょっと大臣の答弁に補足させていただきたいと思います。  今回の相次ぐ航空事故にかんがみまして、三月十一日の閣議運輸大臣から「航空事故の防止対策について」というものについて報告をして、了承いただきましたことは、先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、この概要を申し上げましてただいまの大臣の答弁の補足並びに御質疑のお答えにさしていただきたいと思います。  措置といたしまして「空港および航空保安関係施設整備」ということで、大臣申し上げました国内空港における計器着陸装置その他でございますが、そのほかに、先ほど申し上げました航空路関係施設整備その他いわゆる航空保安施設、これにはいわゆる無線関係、照明関係その他も入るわけでございますが、そういうものをいたします。それから空港管制における自動化というようなもので管制業務の的確な運営をはかるということを考えてまいりたい。  次に「航空関係技術職員の研修、訓練充実等」でございますが、管制、乗員試験等の業務に従事する技術職員の研修、訓練充実をはかる、あるいは管制官の待遇、操縦士の医学心理学的適性基準の設定等についてもなお検討を進めていくということでございます。  三番目が、安全体制を強化するために航空管制航空機事故調査、航空従事者試験及び航空機検査等について、いわゆる直接安全につながるものについて、所要の人員の確保をはかるということでございます。  四番目が「航空気象業務整備」ということで、「航空気象観測予報精度の向上を図るため、必要な施設整備する。」それから「航空気象情報伝達の迅速・正確化を図るため、必要な施設整備する。」  「上記諸施策の実施および勤務体制整備のため、所要人員の確保を図る。」というようなことをきめて、報告、了承をいただき、この推進をはかっておる状況でございます。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま私が大臣にお伺いしたいのは、航空安全の対策は急務中の急務である、そのことについての政府の具体策はどうなっておるかということをお伺いしたのであって、伊丹の空港を今後どうするかということをお伺いしたわけじゃない。  そこで、そういう細部の点についてはむろん航空局長がおられるから、航空局長でいいわけですけれども航空安全対策の大綱を大臣から当然御説明あってしかるべきだと思うので、大綱について、その点はいかがですか。
  40. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 安全対策といたしましては、具体的にはいま航空局長がいろいろと説明いたしたのが一つの方針で、対策でございますが、伊藤委員からの質問の中に、気象情報の問題について設備を考えておるかというであったと思いましたので、気象のほうはいま羽田の空港に持っております一つ気象体制というもの、これは一応国際水準に沿った線でございまして、この線に沿った羽田と同じ程度に先ほど申しました空港整備をする、そうして国際的な水準の気象情報を確保する体制をつくる、こういうことでございます。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大臣は、閣議で安全保障の意味合いから提案された点は先ほど御指摘があったわけで、施設とか組織あるいは要員、こういう問題について具体的にやると、たとえば伊丹空港については、羽田空港程度整備したい、こういうことであろうと思うのです。そこで施設組織要員と、こういう一応大別すると三つになると思うのですけれども、特に大事なのは、先ほど御指摘申し上げたいわゆる要員ですね。その要員のまた重要な一環として、管制官定員増、こういうことが当然考えられなければならぬと思うんですね。いかにその施設が近代的に整備されても、それを活用するのは人間にあるわけですね。したがって、いわゆる保安要員、特に管制官定員増、強化ということが急務中の急務ではなかろうかと思うのですが、この点については大臣はどのようにお考えですか。
  42. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 保安につながる施設を急いで整備するというたてまえをとっておりますが、やはりいろいろ設備を整えます機械等を購入して、それを備えるに至りましても一定の時間を要することでございますので、そういうことは全力をあげて努力を続けておるわけでございますし、さらに管制塔の施設につきましては、世界の中で進んだ飛行場施設等も、現地に管制官の代表的な人たちを派遣しまして、そして先進地の実態を見学させ、さらにそれの訓練を一定の期間受けてくるというようなことを考えまして、管制施設等にはいまそういう順序を踏んで、管制の安全につながる空港の確保に努力中でございます。  それから定員等の問題につきましては、先ほど申しますように、そういう施設と関連がございますので、逐次これは増強してまいりたい。それからさらに現在の管制官、あるいは通信等に携わっておる人たちの労働条件等をもっとできるだけよくしまして、過剰労働におちいることのないようにいろいろ配慮していきたい。さらにそういう業務に携わっております人たちの仕事は特殊の仕事でございまして、特殊技術を要するし、さらに身分等につきましても、普通の場所におります人のように順次上階の段階に上がっていくというようなことがあまりできないような特殊性がございますので、そういう点につきましても何かくふうをいたしまして処遇を改善していく。こういうこと等をあわせ考えまして、そうして機械の設備の増強並びに人員整備、それから労働環境等の整備等に気を配りまして、安全の確保につとめてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして、午前の私の質問を終わっておきたいと思いますが、関係行政機関との間に航空機の捜索救難に関する協定、こういうものが成立しているやに承るわけです。この協定内容はどういうものか、ごくその概要でけっこうです。それからなおお伺いしたいのは、この協定によって救難調整本部は設置されることになっておるようですが、これは常置機関であるのかどうか。さらにお伺いしたいのは、この本部の組織、機能はどうなっておるか。それから今回の事故等にかんがみて本部のあり方について検討を要すべき点があるのではなかろうかと考えられるわけです。この点はどうなのか。以上五つの点についてお伺いしておきたいと思います。
  44. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 航空機の捜索救難につきましては、昭和四十年三月十八日から施行するということで、関係行政機関の間に航空機の捜索救難に関する協定が成立いたしてございます。関係機関といたしましては、警察庁、海上保安庁、運輸省航空局及び防衛庁でございまして、相互に、密接に連絡をして、それぞれの捜索機能を通じて航空機の捜索救難に万全を期するということでございます。で、この事項を実施するために東京捜索救難本部というものがいわゆるICAOの基準できめられておるわけでございますが、このICAOの規定によりまして定められておるわが国が担当する捜索救難を中心として、運輸省東京航空保安事務所にこの救難調整本部を常置いたしてございます。で、救難の実施の方法その他については、一応その状態に応じて、いわゆる不確実の段階、それから警戒の段階、遭難の段階と、それぞれの段階に応じてそれぞれの機関がいかなる活動をするかということを定めておるわけでございまして、なお、羽田に常置をいたしておりますが、わが国の他の地区における捜索救難の必要な事態の発生その他を考えまして、千歳、大阪、福岡、鹿児島には救難調整本部の業務を分けて、これを分担させるということを計画しておるわけでございます。これらの実施の細目その他については、一応お互いに資料を交換する、あるいは通報、連絡を密にして行なう。その他情報の連絡、発表についても協定をいたしておるということでございます。それから、ただこの組織を定めたわけでございますが、何といたしましても、いわゆる航空機事故についての日常の調査体制その他を整備いたしませんと、現実に問題が起こったときに、これを十分働かせることは不可能でございますので、われわれとしては、航空機事故調査、同時に日常におきましては、各社の航空事故防止対策、あるいは捜索救難活動に日常から備える体制をさらに整備をしていく必要がある。先ほど申し上げておりますように、凍結定員の解除というようなものの中にもこういうような事項を含めて、さらに協議を進めておる段階でございます。
  45. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。  それでは午前は、この程度とし、午後は一時三十分に再開いたします。暫時休憩いたします。    午後一零時四十分休憩      —————・—————    午後一時五十七分開会
  47. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それでは委員会を再開いたします。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、鈴木厚生大臣、梅本官房長若松医務局長、渥美医務局次長、熊崎保険局長、伊部年金局長山本社会保険庁長官、加藤医療保険部長、網野年金保険部長、以上の方々でございます。  それでは御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の制約もございますから、ごく問題を一つにしぼって簡単にお伺いしたいと思いますが、まずお伺いしたいのは、社会保険研修所の名称を社会保険大学校に改称することについての質問をいたしたいと思います。その社会保険研修所で行なわれている研修の実態についてお伺いしたいわけです。昭和四十年度において研修を受けた者の人員と、研修の内容、さらには研修施設の概要、こういう問題について、まずお伺いしたいと思います。
  49. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 社会保険研修所におきましての四十年の研修実績でございますが、現在研修の科目といたしましては、普通科、研究科、専科、別科と、こういう大ざっぱに四種類に分かれておりまして、普通科というのが主体になっております。この普通科の研修は二カ月研修、そういたしまして社会保険の中堅職員の研修ということに重点を置いておりまして、昭和四十年の研修対象実績は、七百二十二名となっております。  それから研究科というのがございまして、これはクラスといたしましては、県の課長補佐並びに社会保険事務所の所長、この研修でございまして、期間は約一週間、そうしてこの実績は、百六十二名と相なっております。  それから専科というのがございまして、これは社会保険の地方の技官、社会保険審査官、調査官といった幹部クラスの専門職員でございまして、そうしてこの専門に応じまして一週間の研修で、これの実績は六百七十九名となっております。  それから別科というのがございまして、これは社会保険の研修所として独立いたしておりますので、それを活用いたしまして、健康保険組合の職員、あるいは国保の職員、国年の市町村職員、かようなクラスを一週間ないし十日間それぞれの専門的な講習をやっております。これの実績が六百十一名。かようなことに相なっております。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回社会保険大学校に改称されることについて研修内容等についての充実をはかる。そういう提案理由説明があるわけです。このことは具体的にはどのような改正が行なわれるのか、その点について。
  51. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 先ほど申し上げましたように、研修の主体を中堅職員に置きまして、普通科二カ月の研修でございますが、これを今回大学校に昇格いたしまして、そうして各種の各省の大学校の研修の実態というものともにらみ合わせまして、本科の——いま申しました普通科というのは本科でございますが、その本科を二種類に分けまして、高等科と普通科と分けたい。そして高等科の研修につきましては、六カ月のコースを設けまして、これは各種の大学校の実情を見ましても六カ月コースというのが中心に相なっておりまして、社会保険大学校におきましても、高等科という六カ月のコースを設けまして、このコースにつきましては、経験年数十年以上の職員を対象といたしまして研修をする。これが新しく新設する科の高等科でございます。普通科は従来どおり二カ月の研修を続けていきたい。これは大体社会保険の経験が三年以上十年までのクラスを中心として研修をいたしたい。かように考えております。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 研修内容充実をはかるとのことでありますが、そうなると当然に事務量も増大してくると思います。そういうことになると、現在のままの教職員組織では相当大学校の運営に支障を来たすのではないか。その問題はどういうふうになっておりますか。
  53. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 現在研修所の職員は所長以下二十二名でございます。そこで高等科を設けますと、御指摘のように、研修の科目等も範囲が広がるわけでございますが、現状におきましては、社会保険の各種の法規並びにそれに関連いたします行政法その他の諸法規の講義は教官が担当してやっておるわけでございますが、憲法、あるいはまた一般的な高度の経済関係その他の講義につきましては、大学教授、その他の外部講師を招聘して実施いたしておるのでございまして、今回高等科を設けますと、研修の範囲、講義の範囲というものが広がりますし、したがいまして、外部の大学の教授、助教授クラスからの外部講師を多く招聘して講義の充実を期すると、こういう結果に相なると考えております。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その他の問題でも、施設とかあるいは運営面で、予算の配慮は、四十一年度においてはどのようになさるつもりなのか、その点は遺憾なく実施されることになっておるのかどうか、そういう実態について。
  55. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 現在研修所は独立の庁舎を持っておりまして、なおこれには寄宿舎を完備いたしておりまして、全員収容して寄宿舎生活を続けながら研修を受けております。そうして今回大学校になりまして、高等科を設けましてもその研修の場所並びに宿泊設備につきましては、十分収容して研究を続けることができるように相なっております。  なお、予算措置といたしましては、前年度三千九百万円の予算が、ことしは五千万円を若干オーバーするというふうな増額の予算措置を講じております。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 従来から各省庁の職員のいわゆる研修機関として、研修所から大学校へ改称された場合が相当数多くあるのですが、結局こちらのあちらのというふうに両方を追うておるような感がするわけです。そういうことについては一体どういうふうに基本的に考えておるのか。
  57. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) ただいま御指摘のように、各省の研修機関が大学校という名前に名称を変えまして、内容的にも充実してきておるわけでございますが、現在、たとえば自治大学校、消防大学校、税務大学校、警察大学校、建設大学校というようなものがございますし、また、従来の名称のままで研修を続けておる機関を持っておる省庁もあるわけでございます。社会保険につきましては、現在国民年金の制度ができましてから、急速に従業職員もふえてまいりまして、今日、一万五千人の政府の機関としての職員を持っております。そういたしまして、社会保険の分野が、現在は、従来は社会保険法規の適用ということ、これがもちろん中心でございますが、経済情勢の推移等によりまして、やはり業務を行なうにつきましては、従来の知識以上の高度の知識を得るということが行政の能率的な運営のために非常に役立つわけでございます。そういう意味からいたしまして、やはり大学校ということに昇格いたしまして、研修内容充実し、かつ職員の資質の向上ということを期するのが行政目的を達する上においてより有意義である。かような観点から大学校にいたそうという所存であるわけでございます。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この実態とか程度から見て、研修所から大学校へ改称したのだが、どうも理解に苦しむようなものも相当見受けられるわけです、過去の改称の中で。先ほども指摘申し上げたように、どうも他省がやったからこれに追従するのではないか、そういう意味に考えざるを得ないものもあるわけです。中にはうなずけるものもあるわけです。そういうことを問題として当委員会でもしばしば問題になっているわけです。こういうことについて大臣としては一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  59. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 厚生省が所管をいたしております社会保険関係の運営に当たります職員養成は、近年医療保険の問題にいたしましても、また、所得保障としての年金の問題にいたしましても、社会保障の最も重要な柱として国民生活に重要な意義を持つようになってまいったと思うのであります。近年医療保険の問題につきましても、給付の内容の改善、また、医学医術の進歩に伴います医療費の増高、そういうような面からいたしまして保険財政の問題も重要な時期になってきます。診療報酬の支払い関係の適正な事務の運営、こういう問題もきわめて複雑で、かつ運営が非常にむずかしい時期に来ていると思うのであります。年金の問題につきましても、累次の改正によりまして、だんだん制度の内容充実をいたしておるのでありますが、これらの国の社会保障の重要な柱としての年金制度あるいは医療保険制度を事務的にミスのないように、かつ効率的に国民の信頼にこたえるようにやってまいりますためには、何といっても職員の資質の向上ということが大切であり、また、これを指導いたします幹部職員養成ということが、特に心要が迫られているような状況にあるわけであります。そういうような諸般の事情からいたしまして、私は今回、これを社会保険大学校に昇格をいたしますと同時に、その内容充実をして、りっぱな資質の職員養成をいたしたい、こういう意味合いで、国会の御承認をお願いを申し上げておるのでありまして、他省でこういう機関が、研修機関が大学になったのだからそれにまねるのだ、そういうようなことで御提案申し上げておるのではございません。いまの年金保険なりあるいは医療保険の社会保障に占める重要性、また、最近におけるこれら制度に対する国民の重要な関心、この制度のりっぱな運営を要請されておる客観情勢にこたえるためにも、そういう必要がある、かように考えておる次第であります。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣から御答弁があったので、それなら差しつかえないのですが、問題は名称ではなくていま御指摘にあったように、教育訓練のやり方とか内容にあろうと思うのです。そういう点に重点を置いて、大学校への改称に踏み切ったのであれば理解できるわけです。今後その期待にそむかぬように、教育訓練のやり方、内容の向上等については、特段の御努力をお願いいたしたいということを御要望申し上げて、最後に一点だけ無給医局員の問題につきましてお伺いしておきたいと思うのであります。  これは当委員会で、文部省、特に文部大臣中心に数年間この問題を私は取り組んできたわけであります。今国会の文部省設置法の際に、無給医局員の問題については、あらゆる角度から当然にこれは解消すべきであるという点で追及してきたわけです。しかしながら、なかなか具体策を確約するに至らなかったわけです。ところが、不幸中の幸いに、千葉医大の附属病院の局員の医師の問題から急速に発展して、この無給医局員は文部省と厚生省と相協力して解消をはかりたい。無給医局員といっても、世間一般ではあまりよく理解してないわけです。普通の大学のコースを終わって、それでいわゆるインターンを済まして、医師の資格をとって、それからさらに大学院なり四年行かなければならぬわけですね。そして四年を済んでさて博士号もとったと、それで附属病院につとめた、まだ数年間は無給医局員でおる、そういうのもおるし、いろいろコースはあろうかと思うのでありますが、それで、国家公務員でないから、その附属病院の医師ではないわけです。文部大臣にもお伺いしましたが、一つ大きな問題があるわけです。ある家庭でむすこの治療を受けさしたその担当がたまたま無給医局員であった。ところが、不幸にしてその方が死亡せられた。そこで家族はなかなかあきらめ切らぬわけです。私の子供は無資格のお医者さんに見てもらったので、死なぬでもいいところを死んでしまった。これは一体どうするのかという一つの問題が提起されたわけです。これは医師としての資格がない方が患者を見られるはずがない。これは大学院出た博士号をとった人ですから当然医師の資格はある。ただ、無給医局員だからその病院の医師としての資格はないわけですね。そこで死亡診断書も書けないわけです。死亡診断書も書けないようなお医者さんに見せたからうちの子供は死んでしまったと、そういう問題も私は出てくると思うのです。これは一つの例ですが、そこで一点だけお伺いしておきたいのは、幸い文部省と厚生省で相協力して、早急にこの無給医局員の問題を解決して、ひとつあらゆる矛盾を解決したい、そういう方向に取り組んでこられたということであるわけです。そこでお伺いするわけですが、これは具体的にどういうお考え、構想を持っておられるのか、それからまた、どういう展望が持たれておるのか、こういうことについて具体的に大臣からひとつ御説明承りたい。
  61. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 先般来起こっておりまする千葉医大の問題、その他いろいろの問題からいたしまして、今日までの医師の養成の制度、それはインターンの制度のあり方あるいは無給医局員の制度の問題、さらに医学博士としての学位の問題あるいは専門医師の問題、これらの問題はすべて関連を持ちながら、今日のわが国の医師の養成なり医師の資格の問題が今日まで行なわれてきたわけでありますが、先般来起こりました事件を契機といたしまして、これらの問題を根本的に再検討をする時期に来ておるのではなかろうか、このように考えておるのでありまして、ただいま文部省と厚生省の間で、これらの問題を審議検討いたしますための審議会の設置なり連絡懇談会を設ける問題等につきまして、話し合いをいたしておるのでありますが、近く事務当局間の話し合いを基礎にいたしまして、文部大臣と私との間で、これらの問題につきましての取り扱いにつきまして、政府としての方針を決定したい、こう考えておるわけでございます。  そこで無給医局員の問題でございますが、無給医局員は医師の国家試験を通りましてから、さらに学位をとりますために、大学の権威ある教授のもとに指導を受けながら研究をして、そうして学位論文をそこで作成をして学位をとろう、こういうことでありますが、この無給医局員は給与が大学から支給をされておりません関係もありまして、あるいはアルバイトをしながらそういう研究をしなきゃいけない、そういうことが先般千葉医大のチフス事件になり、鈴木某という無給医局員は、三島の社会保険病院に行ったりあるいは川崎製鉄の千葉の病院でアルバイトをしたり、そういうようなことをやっておりました関係があって、はっきりしたその職場というものがきまっていない。したがって、人事の管理等につきましても十分これがなされていない、人事の掌握やその人柄等につきましても病院長なりなんなりが十分把握できなかった、こういうような問題からああいう事件等が出ておるのであります。そこで私どもは、できるだけこの研究時代におきましても手当等が十分になされるように、またできるだけ定員としてこれを採用できるものはこれを定員化していく、また、定員化できないものにつきましても、手当等を支給をしてそうして十分落ちついて研究等がなされるようにしたい。また一面、わが国のように、医学博士という学位をとらなければ一人前の医師でないというような誤った考え方、こういうものは、私は大いに反省をし是正をする必要があるのではないか。きわめて狭い範囲の専門的なことを深く研究して論文を出し学位をとったからといって、その人が臨床的にりっぱな一級の医師である、こういうぐあいにはならぬわけでございますので、学位をとれぬでも臨床の経験を五年とか十年とか積んで、そうして患者にほんとうに信頼されるような、医師としての使命が達成できるようなそういう方々に対しても、私どもは、学位はとれぬでもりっぱな医師としての社会的な処遇、また、医療制度の中におきましてもそういう処遇ができるようにすべきではなかろうか。さらにまた、専門医という制度が日本では非常におくれておるのでありますが、欧米先進国等におきましては、この専門医制度というものが相当発達をし、また、その権威が認められておる、こういう点もあるわけであります。学位にかわってそういう権威のある専門医制度というようなこともわが国におきましても十分検討をしてみる必要があるのではないか、まあこういういろいろな問題がここにあるわけであります。そういうような観点から、私はこの機会に世論も高まっておる際でございますので、医学校からインターン、さらに無給医局員、学位、専門医、また専門の病院、こういう医療制度にも関連を持ちながら、この無給医局員の制度につきましても根本的な検討を要する時期に来ておる、そういう方向に向かって文部省と厚生省は十分緊密な連携をとりながら検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その大臣考え方については具体的によくわかりましたが、ただ、問題は、たとえば附属病院の例をとると、病院によっても多少違いましようが、大よそ五分の一が附属病院の医局員でいわゆる国家公務員、あとの五分の四は無給医局員、これを順次、いま大臣のおっしゃったような考え方で無給医局員を解消しようということになると、どうしても定員増をしなければならぬ、定員増には必ず予算が伴うわけであります。したがって、どなたがやってもこれを一挙に解決するということはなかなか困難であろう。したがって、三年計画とか四年計画とか年次計画をもって、本年はこの程度、来年はこの程度、第五年目で全部解消するとか、その期間は短いほどいいわけですが、しかし、予算を伴いますから、そこで、定員増予算の問題に終局すると思うのです。そういう展望について最後にお伺いしておきたいと思います。
  63. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この問題につきましては文部大臣からもお答えがあったろうと思うのでありますが、文部省におきましては、昭和四十一年度におきましても千人くらい定員化していきたい、そして今後も年次計画をもって定員化を進めていきたい、こういう方針を持っておられるわけでありますが、私はいまお話がありましたように、現在でも八千人近い無給医局員がおりまして、その半数は病院に勤務しながら大学に研究のために通って、その教室で指導を受け、学位論文等の研究を進めておる、半分がいまの大学の教室に文字どおり無給医局員としておって、そしてアルバイトでもって一部生活の資をかせいでおる、こういう形になっておる模様であります。したがいまして、定員化は年次計画でこれを進め、すべてを定員化するわけにまいりませんでしょうから、そういう面に対しましては、研究費に対する助成であるとか、手当であるとか、そういうような形で無理なアルバイト等をやらなくとも十分医師としての研究等ができるようにしたらいかがかと、こういうことを実は考えておる次第でございます。
  64. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、厚生大臣をはじめとして各位に伺います。  厚生省設置法の一部を改正する法律案に関連して相当多量に質問をしたいのでありますが、時間もあることですから、きわめて問題のあるやつだけピックアップをしてお尋ねしたいと思います。  まず最初に、いま伊藤君も触れられましたが、一応病院の制度に触れられましたが、日本の医療制度全般の基本的な考え方について厚生大臣に聞きたいのですが、まず説明しておきますが、私は神田厚生大臣、小林厚生大臣のときも言ったのですが、日本の医療制度について、私は、厚生省ははっきりした考え方を持っておらない、持っておるのだけれども、ある勢力によってゆがめられておる、こう私は見ておる。  まず最初に、現在日本の医療制度としてわれわれ見ておるところは、自由開業主義を重点に置いて、国立、公立はこれを補完的な形に医療制度を考えておるのじゃないか。人体の、人間の医療というものは、私は最も公共性のあるものだと思っております。水道も交通も公共性があるかもしれませんが、人体の医療をやるということは、これは最も基本的な人権にもかかわる問題だと思うのですが、厚生当局としては、公立、まあ国立を含めた公立を重点に考えるのか、それとも自由開業主義をとっておるのか、その考え方をまずお聞きしたい。
  65. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 御指摘のとおり、わが国の医療制度は、開業医という制度を中心に今日まで発展をしてきた、こういう見方が成り立つのでございますが、しかし、国立その他におきまして、国立病院をはじめ都道府県立の公的医療機関あるいは日赤でありますとか済生会でありますとかいうような、そういう医療機関等もわが国の医療制度の中におきましては重要な役割りを果たしておりますことは御承知のとおりでございます。私は、今日医療保険制度のもとに、国民皆保険として国民がひとしく医療の給付を受けなければならない、また国としてはその責任があるわけでございますから、僻地あるいは離島といえども十分な医療機関を整備をし、また医師、看護要員等を確保して、そして医療給付が適正になされるようにこれをしなければならぬのでありますが、開業医の方々は何といっても自由企業でございますから、採算ということが前提になるわけであります。そういう意味合いからいたしまして、採算性のとれない、地域性も非常に条件の悪い離島であるとか僻地であるとかいうようなところには、市町村団体なりあるいは県団体なり、さらに国保の制度のもとにおきまして、そういう診療所、医療機関をつくっていかなければならない、このように考えておるのでありまして、そういう診療所等の設置につきましては、政府としても、できるだけの今後におきましても助成の措置を講じてまいりたいと思うのであります。またさらに、医療の中には、不採算医療もございます。また、非常に高度の医療をしなければならないという問題もあります。そういうようなまたあるいは災害等にあたっての公衆衛生活動、伝染病対策、そういうような一般の開業医等ではなし得ない仕事もあるわけでありまして、そういう面につきましては、何といっても公的医療機関が、国なりあるいは都道府県なりの一般会計からの財政的な助成のもとにこれをやっていかなければならない、かように考えておるのであります。したがいまして、今日におきましては、私は開業医制度を中心にするとかあるいは公的医療機関を中心にするとか、そういう片寄った考え方では今日の医療に対する国民的な要請にはこたえられないのではないか、両両相まってほんとうに国民にその医療がりっぱになされるように、そういう方向努力をしていきたい、かように考えておるのであります。
  66. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 歴代厚生大臣は、私の質問に大体そういうお答えですが、いま鈴木厚生大臣が触れられましたように、まあ次に質問しようと思っておったのですが、この離島、辺地における問題に触れられましたが、現実のいまの医療制度の分布状態を見ますと、やはり都会を中心に集まっておる。したがって、離島、辺地については小さい自治団体がせっかく診療所をつくっても医師が来ない、こういうことが各辺地等では、これは現在のところほとんどがそうなんです。したがって、相当市町村でも優遇して、特に優遇するから来てもらいたいといっても長らくとどまらない、篤志家の医師は別です。したがって、いまのような考え方でやられたらいいのですが、実際にはやられておらない、事実やられておらない。したがって、根本的に日本の医療制度、言いかえれば医師制度に対しては根本的に考え直さなくてはならぬと私は思っておるのです。しかし、医者の立場としても、これは人間でありますから基本的人権がありますから、そう拘束された生活を強制されることは、これは問題がある。したがって、基本的に日本の医療制度について、厚生省はこうだという線を出して、養成する段階から私は進まなくちゃならぬと思うのですね。私は別に医師を攻撃するわけではない。りっぱな職業と申しますか、身体を預かって、生命を預かっているのですからきわめて私尊敬しているのですが、しかし、自由開業、自由企業になると、いま言われたように、これは利潤を離れて商売できない。損しても犠牲になってやれといわれても、これは昔のように医は仁術というようなことをいっても、それは今日通らない。したがって、そうすると厚生省がどういう考えにおろうとも、やはりもうかる地域に密集してくるというのは、自由経済の自然の現象ですよ。したがって、そういう問題について、厚生省は、医師というものは、公務員以上の社会的な地位にあるもんだと、そういう考え方をもって施療すべきだと思う。公務員の場合もある程度いろいろ規制されております。転任を命ぜられたら、どんな離島でもこれは赴任しなければいけない。医者の場合は、自由開業または自由主義でありますから、かりに自治体が離島に診療所を建て、病院を建てても、本人が行かなければこれは何にもならないのです。そういうことが今日私は自覚あるお医者さんなんかに私はいつもよく言うのですが、いまの政府考え方ではわれわれはそういうことはできません、そういう医者の処遇をしておらない、こういうことを私に反駁して言うのです。したがって、その根本的な考え方をこれは変えない限り、厚生大臣がそういう公立と開業、自由企業との間にうまく調節をしてやるのだと、離島、辺地にもそういう診療所も開設して、医師も十分な配置をするのだと言われても、私はこれは言うだけであって実現しないと思う。自治体では、市町村ではもうそういう診療所をかまえて待っておるところがずいぶんあります。国保の診療所を建てて、せっかく医者は来てもらったが、すぐ逃げていってしまって、あとはがらあきである、こういうところがたくさんありますよ。そういう際に、厚生省に相談したら、何とか考えてやるというだけであって、医者も来てくれない、こういうところがたくさんあります。そういうものに対して、具体的に手を打っているかどうかということに対して私は非常に厚生省に対して不満があるのですね。したがって、厚生大臣がいま言われた御説明はそのとおりです。そうあるべきです。あるべきということとあるということとは別なんですね。したがって、私は鈴木厚生大臣は非常に熱心に厚生行政を推進されているということを聞いているのですが、まずこの医療制度の基本的な問題についてメスを入れて考えてもらわなくちゃいけない。それには制度そのものにも問題があると思うのです。今日医者が不足だと、不足かどうか知りません。大体十万人程度、内科だけでおられるようであります。歯科とかそういうものをのけて普通医師は十万人程度と聞いておりますが、必要であればもっと学校をつくって医者を養成していいんじゃないかと思うのですね。医者が足らないから来てくれないというものもあります。したがって、自由主義、自由経営でまかせるというなら医者をもっとうんとつくって、どこでも採算とれるということにすればどうせいなかに行くのですから。ところが、それもせずに、学校の養成はある程度の限界と申しますか、つくっておいてそうしていわゆるいなかのほうに医者をやろうと思っても私は行かないと思う。時間もないから私はくどいことは言いませんけれども、こういう点、厚生省もっと勇気を出してやってもらいたいと思います。医師会は相当反対がありますよ、この問題については医師会相当反対しますけれども、私は医師会が反対するということは、医師自体に私はもう少し自覚をしてもらいたいと思うのですよ。日本の国民だけでなしに、世界の人類の生命を預かる医者でありますから、その点を理解し、また、政府もそういう点で理解していけば私この問題は解決する、こういうように私はしろうとであるけれども考えておる。現在は、政府それから医師会あるいは社会保険関係のこの三者が対立した形です。あとでも時間があれば聞きますけれども、中央医療協もりっぱな制度でありますけれども、いつもそれがけんか別れと申しますか、開店休業という形で、一つもまとまって話ができない。今度はそれがために新たに若干意味が違いますけれども、臨時医療保険審議会ですか、つくろうというような意図があるらしい。そんなもの幾らつくってもだめですよ。そういう基本的な考え方が医師、政府、保険者または被保険者国民の間に、三者が理解をし合わなければ、私は社会保険、医療保険がどれほど保険料を上げても、私はそれは解決しないと思う。どんどんもうけたいという気持ちで診療すればそれは限りないですが、また一方、このような考え方で経営しておれば、健保の財政ももたぬ。こういうことですから、その点、その基本的に私は医療制度全般に考え方をもう少し厚生省は真剣に、積極的に考えてもらいたい、こう思うのですが、この問題についてはこれでおきますけれども、その点について厚生大臣どう考えられますか。
  67. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) いま山本さんからお話がありましたように、この問題は非常にむずかしい問題であり、厚生者が一番頭を悩ましておる問題でございます。ただこの保険団体の診療所に給料を多く出すから医者が来てくれるかと、こうなりましてもなかなかそう簡単にまいりません。子供さんの教育の問題もございましょう。さらにまた、日進月歩する医学、医術の進歩にそういう僻地や離島におったのではおくれをとる。どうしてもやはり大学とか、そういうところに近いところにおって絶えず新知識を吸収し、研究等もしたい。こういう面から言ってもなかなか僻地や離島ではそういうことはできない。そこで厚生省としても、医師の養成につきましては、修学資金の貸付をやりますとか、あるいはまた、保健所等に勤務をいたします医師に対しましては、欧米先進国等に対して留学をするような特別な機会を与えるとか、いろいろなことを実はやっておるのでありますけれども、なかなかそれでもってすべてが解決できない。そこで各それぞれの地域の医師会の協力を得たり、あるいは中心になりまする病院等の協力等を得まして、巡回診療車を配置するとか、あるいは患者輸送車を増強するとか、あるいはそういう船の配置をするとか、直ちに医師の確保ができないところにはそういう患者輸送車、あるいは巡回診療車というような補完的な役割りをいたします面を予算的にも増強いたしまして、そうして医療保険制度で保障されておる最低の医療給付だけは何とかやらなければいけない、こういうことで努力をいたしておるところであります。今後とも先ほど私が申し上げたような方向に向かってあらゆる努力をいたしていきたい、こう考えております。
  68. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これについていろいろ言いたいことがありますが、時間の関係でこの程度にしておきます。  そういう私の言ったことを裏づけするようなことが、これもわれわれの責任もありますけれども、公立病院の場合には病院建設ベッド数を制限するというような措置をとっておるのですね。こういうことはこれは具体的な例でありますけれども、これはいま厚生省ではどういう措置をとっておられますか。
  69. 若松栄一

    政府委員若松栄一君) 現在公的な病院についてはベッドの増加を、一定のワクをきめまして、それ以上は公的病院をつくらせないという制限をいたしております。といいますのは、どういう趣旨に出るかといいますと、先ほど大臣が、医療制度、医療機関の一般的な問題もお話しありましたように、日本の歴史、伝統から見まして、開業の医療機関、個人的な医療機関が基本になって医療の供給をしている。これに対して個人的な自由な医療機関の配賦活動だけでは足らない面を公的なもので補っていこう。その足らない面を補うという趣旨といたしましては、量的にどうしても足らないというものを補うという問題と、質的にいい医療、あるいは採算のとれない医療、こういうものをやっていこうという二つの面があると思います。その中の特に量的な面の補完ということになりますと、公的な病院がどんどんできますと、一般の開業医等と質の違わない意味で量的な競争をするということになりますと、一番基本的な対策である開業医、医療機関の適正な分布ということを阻害するおそれがありますので、そういう意味で量的にだけ問題になるようなものについては、公的なものは一定のワクで押えよう、質的なものはこれらの量的なものと別に高度の医療あるいは採算医療というものを行なうためには、これはそういうベッドは制限なしに行なわれるわけでありまして、ガン病院あるいは小児専門病院あるいは特殊ベッドあるいはリハビリテーションという質的な相違のあるものについては、そういうものから除外していこうという考え方であります。
  70. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生大臣、もちろんそういうことを知っておられると思いますが、やはりそこにも自由開業主義を重点的に考えておられるということは法律できめてあるのですから、われわれ責任あります。したがって、いま言われたものは一つの筋が通っておると思う。量的に都会に集中して、そういう医療機関が集まってもしかたがない。それはひいては開業医を圧迫するという趣旨はわかるが、それならばそういう医療機関が不足した方面に政府はどれほど重点を置いておるかと言えばそうではない。地方の公立病院でも都会が重点です。いなかにはあまり病院がない。これは採算の問題もある。したがって、私は国民ひとしくやはり日本の医療を受ける権利がある。これは基本的な私は条件だと思う。離島であろうとも、どこの僻地でも病気になればお医者さんに見てもらう。金があるなしは別として、見てもらう権利がある。死に瀕した者はそこに救いを求めるのには医者以外にない。そういう現実の姿を見ておると、私はやはり厚生省が口では言われるけれども、ほんとうに僻地に住んでおる日本国民に対しては非常に冷淡な措置ではなかろうか。したがって、私は具体的に言いたいのは、そういう地方の市町村から診療所、または国保なり診療所があったときには、厚生省が率先して医師を送り込む、そういう手段を具体的に考えてもらいたい、これはむずかしい問題です。なかなかそう簡単にいかない。そういう手段をしてこそ初めて解決できますけれども、診療所を建てと、補助金やるといっても医師が来なければ何にもならぬのです。そういう点に実は私は問題があると思うのです。これはこの程度にとどめておきます。答弁は要りませんけれども、そういう点をひとつ厚生大臣は基本的に考えていただきたい、かように思う次第であります。  次に、それにつけ加えて看護婦の問題です。お医者さんはもちろん重点、主役でありますけれども、それを補助する、診療を補助する看護婦さんというのは、これは重要な役割りを演じておるのですが、最近この看護婦さんになり手が、非常に希望者が少なくなったということを聞いておるのです。私は大阪市の出身ですが、市立病院でも看護婦さんを入手するには相当苦労しているのです。自分らの自己の養成所を持っております。看護婦の養成所を持っておるけれども、出てしまうと、資格を取るとやはり逃げていってしまう。逃げるということばは悪いけれども、これは看護婦制度に一つの問題が私はあると思う。したがって、これはまあ、いま補助看護婦制度の問題は出ておりませんけれども、われわれは絶対反対してきたのですが、看護婦の制度に対して、現在でも一昼夜二交代でやっておるところもある。これは実際ああいう職掌柄これは無理だと思うのですよ。普通の事務系の仕事でも一昼夜二交代ではこれはなかなかできるものじゃないのです。それを病人を扱う看護婦さんが一昼夜二交代、また三交代のところもありますけれども、三交代としても、夜の夜中にやるということも相当問題であるが、それにはやはり看護婦に対する、もちろん給与の関係もありましょうが、制度自体、そういう夜勤をする看護婦についてはどういう休憩場所を与えるとか、そういうところの配慮も私は必要だと思うのですが、これは何か厚生省ではそういう行政指導をやっておられるのですか。
  71. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 看護婦の問題に対しましては、一つは、看護婦さんの数が足らないわけでございますから、そういう養成に力を入れるということが一つであります。もう一つは、やはり看護婦さんの待遇、給与、そういう処遇関係を改善をして、喜んで看護婦さんになってもらえる、また一ぺん看護婦さんになったら長くつとめていただく、そういう養成と、処遇の改善、二つの面があるわけであります。現在、看護婦の不足はどうしても四万人ないし四万五千人程度の現在不足を来たしておると思います。しかし、最近、国立病院、療養所あるいは公的医療機関でも看護婦の養成機関を付置いたしまして、そしてその養成に当たっておりますし、文部省におきましても、高等学校に看護学科を設けまして、昭和四十一年度におきましても四十校ぐらいに看護学科を設けていただくというような御協力もいただいております。また、民間におきましても、看護婦養成機関に対しましては、厚生省としても、金融の面その他の御協力をいたしておるのでありますが、したがいまして、昭和四十年以降、大体二万人ぐらいずつ養成されていっております。ただ、一面におきまして、結婚その他家庭の事情等で一万人ぐらいの方がやめていっておる。ですから、ネットで一万人ぐらいずつはふえておるわけでありますが、今後この努力を積み重ねてまいりますれば数年の間に看護要員の確保はおおむねできるのではないか、このように考えておるのであります。また、当面は資格を持ちながら家庭に入っておりまする方に対しまして、職場に出て働いていただけるようにお子さんを預かる場所を整備するとか、いろいろなことをやりまして、パートタイムでもいいから出てひとつ看護の仕事に御協力をいただくように、そういう面にも努力をいたしておるのであります。  それから処遇の問題でありますが、医師の場合とはこれは逆でございまして、むしろ公的医療機関に働いておる看護婦さんの待遇がよくて、民間の開業医方面に働いておる看護婦さんのほうは待遇が悪い、こういう逆な現象が実はあるのであります。公務員のベースアップの場合は民間の給与に近づけるようにということでやるのでありますけれども、看護婦さんの場合には逆に公務員である看護婦さんの給与に民間の看護婦さんの給与を近づけるというようなぐあいに指導をしておる。また、この勤務体制につきましてもお話がございましたが、人事院から勧告が出されております。私どもこの勧告の趣旨を体しましていろいろな改善策を講じておるのでありまして、三交代制が大部分でありまして、二交代制というのはごくわずかになってきておると思います。変則二交代制というのでやっておるのでありますが、こういう面につきましてもさらに努力をいたします。また、妊娠あるいは分べん等のそういう特殊な事情にあります看護婦さんにつきましては、勤務の場所を楽なところに配置がえをするとかいろいろなことをやりまして、勧告の御趣旨に沿うようにやりまして、看護婦さんの待遇の面につきましても改善策を努力をしておる、こういうことでありまして、看護婦問題につきましては、私、厚生省としても十分努力を払っておるところでございます。
  72. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体はいいのですが、厚生大臣は当内閣委員会で言うことについては若干勇み足のところがある。というのは、この公立学校あるいは国立学校の看護婦さんの給与は民間よりもいわゆるいいのだ、それはもうあらゆる機会は論争しているところなんです。そうなっているのです。ちゃんと間違いじゃない。ところが、この日本の看護婦制度の発達史を見ると、開業医、いわゆる病院以外の病院もそうです。私立の、私の病院の看護婦さんというのは実際のところはそんな待遇をいままでされてきておらない。開業医ではもうこれは何と申しますか、資格のあるかないかは別として、女中がわりに使っておるところがたくさんある。伝統的に医者と比較して看護婦の給与というものは日本が一番悪い。制度それ自体は戦後確立したのでありますけれども、悪いのですよ。したがって、民間と公立を比較してみて公立がいいということはそれは事実なんです。しかし、それが国家公務員、地方公務員の看護婦の給与はそれでいいのだという認識では私は困る。そういう意味ではないです。それだけ言うておかぬと、あなたがいいのだいいのだと言うと、今後に影響することですから、ただ民間と比較したらいいということだけであって、それは民間のほうが悪いのだという認識をしてもらいたいのです。いいですね。
  73. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) その点はただ民間よりはましだということを申し上げただけでありまして、現在の看護婦さんの公務員としての給与が十分であるという意味合いで申したのではございませんので、先般の人事院勧告におきましても、一般の公務員よりも看護婦さんの昇給率はよろしいように、そういう面につきましては十分この看護婦さんという特殊な困難な仕事に従事していただく立場を、私ども人事院のほうにも御理解を願って御協力いただいておるのであります。今後とも待遇の改善には努力をしてまいりたい、かように考えます。
  74. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 看護婦に対するいま言われました、たとえば結婚した人が引き続いて看護婦の職につくときの厚生施設ですね、いわゆる託児所とかあるいはまた、具体的に言われましたが、私は非常にいいと思うのですよ。病院の付近にそういう看護婦さんの住宅といいますか、そういうものを建てまして、看護婦の仕事をするのには非常に便利なような形にしてやる、私はそこまでいくとということは、私は厚生省まじめに考えておるのなら、大いに賞揚してあげたいと思うのです、その点についてはですよ。言うだけじゃだめですよ。現実にやってもらわなければ困るので、そういうことをやってもらえれば、私は結婚してもやりたいという希望者ありますし、看護婦さんが、ああいうふうに教育をされた人が、やはり職場を離れてもそういう仕事をしたいという希望者が相当あります。いま二万人ほどおるという話聞きましたけれども、やはりそういうことによって、自分が望むならば、相当年齢がいっても、結婚してもやれるのだという希望を持たすということは、非常にいいことだと思う。給与はもちろんでありますけれども、厚生大臣言われたことについては、私はその点においては賛成するから、言われたことをぜひ実現するように今後ともやっていただきたいということを希望しておきます。  時間が延びますから、たくさんあるのですが、重点的に聞いておきますが、木通常国会で、政府管掌の健保の保険料率を答申どおり千分の六十五に引き上げられたのですが、これはこのいきさつは今日言いません。そういうことは言う必要ございませんが、それによって、政府管掌では相当私は赤字が生ずる。それでなくったって百五十億の大体保険料だけでは足らないということを出されておるのですが、それは大体幾らになりますか。
  75. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 大体昭和四十年度末までの累積赤字が七百億でございます。さらに先般の保険三法の国会審議の段階で修正を受けたのでありますし、また実施がおくれました。そういう関係で二百二十四億さらに赤字が出ることになったわけでありまして、四十一年度末までの累積赤字は九百二十四億、こういうことになろうかと、こう思うわけであります。
  76. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 七百億の赤字は、これは昨年度四十年度の累積赤字ですね、四十一年度、新年度から保険料率を千分の六十五に引き上げて、なおかつ二百二十四億の赤字が生ずる、累積赤字はこれは一応別にしておきましょう、これは政府は何かの手を打たれますが、今後このままでいくと、最小限あの保険料率でいくと二百二十四億の赤字が生ずることは明らかです、これが一番最低ですね。この措置について、今後四十一年度は何とかしよう、しかし、四十二年度、四十三年度引き続いてくるが、これについて厚生省の対策はどう考えますか。
  77. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 昭和四十一年度の二百二十四億の赤字の処理につきましては、四十年までの累積赤字七百億と合わせまして、これは制度の抜本的な改善をいたします際に、政府中心になって、この取り扱い解消策を講じよう、こういう方針でございます。先般の保険三法の改正は、当面応急の臨時的な財政対策でございまして、政府としては引き続いて制度の抜本的な改善に乗り出そう、これはただに政府管掌の健康保険と三制度だけではございませんで、国保を含め、また国家公務員、地方公務員等の共済保険、全部の医療保険制度につきまして、この際総合調整なり、あるいは統合できるものは統合するということで、抜本的な改正をしたい。また、その際に国としての国庫負担の定率化という問題等も重要な検討の課題になるわけでございます。そのためにまた御審議をお願いせにゃいかぬと思うのでありますが、臨時医療保険審議会を設置いたしまして、あらゆる医療保険制度をここで再検討を加えたい、かように考えている次第でございます。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 現在日本の国民が一年間に支払う医療費総額はどれくらい出ておりますか。
  79. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 昭和四十年度で総医療費一兆一千七百十三億、四十一年度ではこれが一兆三千百十七億になるであろうという推定をいたしております。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これの計算といいますか、推計といいますか、これはどういう方法でやるのですか。
  81. 角田れい作

    説明員角田れい作君) この推計につきましては、こういう考え方でやっております。国民側の立場に立ちまして一年間に傷病の治療のために要りました直接の費用として計算しております。傷病の治療のためには、医師、歯科医師等で治療を受けるほかに、あんま、はり、きゅう、あるいは売薬等の治療があるわけでございます。その支払い方法は公費で負担するものもございますし、保険の場合には保険者で負担する場合もあるわけでございます。患者が一部負担するものもございますし、患者自身が全額負担するものもあるわけでございます。したがいまして、これは傷病の範囲に限定しておりますので、正常な妊娠、分べん、産じょく等については入っておりませんし、疾病予防のための保険給付のようなものも入っておりません。また、計算が困難なために、医療保険の場合の差額徴収分のようなものも入っておりません。推計の方法といたしましては、結核予防法であるとか、精神衛生法とか、生活保護法等による公費部分のものは、大体決算額をもってこれに充てております。それから、保険者負担につきましては、当年度の診療に対する確定額を用いております。で、患者負担の部分につきましては、推定が非常に困難でございますが、およそ事業報告等から保険者負担に対する患者負担の割合をつかみますとか、あるいは実は国民健康調査という指定統計の調査がございます。これは毎年十月に一定の地域を限りまして、全国サンプルで調査した結果でございますが、それからこれを推計いたします。それからあんま、はり、きゅう等による費用であるとか、それから全額自費の医師、歯科医師にかかったものというのは、おのずからそれによりまして推計雷を出しております。  以上簡単でございますが、考え方を申し上げました。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ大体総診療、医療費というものは、それはなかなか出ないと思います。これはもう諸外国も大体そういう方法で国民の総医療費というものは計算出しておるのですか。簡単にそうだというのは。
  83. 角田れい作

    説明員角田れい作君) 諸外国はおのずから制度も違いますし、持っております統計資料も違うと思いますので、このような形では計算していられないんじゃないかと、こういうふうに考えられます。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、これの中には自由診療、いわゆる社会保険でなくて、医療保険でなくても、いわゆる推定の額の中に入っておるんですね。
  85. 角田れい作

    説明員角田れい作君) そうでございます。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは何%ぐらいになりますか。
  87. 角田れい作

    説明員角田れい作君) 全額自費につきましては、非常にわずかな額でございまして、一・三%にしかすぎません。しかし、公費の部分の一部負担であるとか、あるいは保険による一部負担がございます。これは約二〇%を占めております。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一兆一千億とすると、四十年度国民総所得が二十五兆でしたか、すると、その医療費の占めるウエートは諸外国と比較して高いか低いか、その点だけちょっと。
  89. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 四十年度で大体総所得に対しまして医療費のわが国の比率は五%程度というふうに見ておりますが、外国に比べますと、一番私どもが多く負担しておるのではないかというふうに見ておりますのがアメリカでございまして、大体六%ぐらい、それから欧米先進国、社会保障の発達しておる国で大体四%ないし五%前後ということで、医療費につきましては、社会保障の発達しておる国ぐらいの費用を占めておるのではないかというふうに考えております。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体三十九年では四・七%ですか、四・四%——四・八ですか、と聞いておったんですが、私まあ五%、国民所得のウエートが五%へ上がるということは必ずしも悪いとは言わないんです。ただその内容ですね、まあ欧米各国——私は医療制度調査にも行っておりませんが、ただその医療費が乱費されておらないかどうかという問題がやはりそこにあると思うんですね。そういう点についていろいろとお尋ねしたいのですが、きょうは時間の関係で、また個人的に聞きたいと思いますから、おきますけれども、五%というのは必ずしも私は低くないと思う。わが国のいまの制度からいって。この点は問題は相当あると思うんです。したがって、これ以上触れませんけれども、一番いま言われましたように、全額負担の自由診療と申しますか、そういうものはほんのわずかですから、ほとんどは社会保険、医療保険によって支払われていると私は思うんです、公費も入れて。したがって、社会保険に要する医療費というものが妥当であるかどうかということも、これは検討をする余地があると思います。この点が、私相当これで突っ込んだことがありますが、医師会はだいぶ新聞で私たたいたことがあるんですが、私は決して医師の収入を減らすとか言わないんです。適当な診療と申しますか、乱診。乱療というものはやはり避けなくちゃならない。私は全体として見て、日本人が医薬に消費する出費というものは相当多額だと思う。いまここで言われたのは、これは医薬、医療関係一つの出費であって、いわゆる現在はやっておる保健剤ですか、名前等を言うと差しつかえがありますから、言いませんが、何百種類という、まるでサイダーのかわりみたいに飲んでおるのがたくさんあるんですね。そういうものがはたして国民の健康なりそういうものにどれだけの貢献をしておるかということを厚生省はどう考えておる。ちょっと質問はむずかしいんですが。
  91. 若松栄一

    政府委員若松栄一君) 保健薬というものがどの程度健康に、保健増進に寄与しているかという問題は非常にむずかしい問題でございまして、健康が破綻された場合にこれを修復されるための医療というものは結果が出てきますのでわかるわけでございますが、健康が損なわれるべきものが損なわれないで済んだかということはこれはわかりません。また、健康がよりよく増進したかということもなかなかむずかしい問題でございます。そういう意味で、これを数字的に把握するということはきわめて困難であろうと思います。また、ある意味では、保健薬というものは非常に、何といいますか、精神的な要素も多うございまして、保健薬を飲んでいるということによる安心感といいますか、精神的な安定というものもございまして、したがって、保健薬というものが薬であるのか嗜好品であるのかというような点もなかなかむずかしい。そういう意味で、これはある意味では嗜好品的な性格がかなり日本の場合には強くはないだろうか、精神的な面を持ったものが強くはないだろうか。しかし、そういう意味においても、ものによってはかなりむだなものがこの保健薬として使われておるであろうということは予想できることではないかと思います。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 むずかしい質問ですからね。あまり具体的に言うと差しさわりある人がありますからあまり言いませんがね。私は製薬会社ですね、もうこの保健薬というものはですね、非常にこの経営上のウエートを占めておるのですね。それが国民にもうあの実際の会社の収支バランス表を見ますると、大きい収入源になる。それと国民がこれに要する費用というものは、私は相当費やしておると思うのですね。そういうものがですね、少なくとも身体健康とかそういう医療に若干関係あるものについては厚生省は手放しでまあいろいろやっておられるらしいのですが、手放しでやっているかどうかという私は疑問を持っておる。ここで厚生大臣にずばり言うということはむずかしいと思いますから言いませんけれどもね。しかし、そういうものを、私はいいならね、いいでいいのですよ。私は少々金が要ってもそれは大いに奨励してもいいと思う。非常に物価が上がって困っておるというのに、これは金のない人はそんなものあまり飲みませんけれども、ああいうテレビとか新聞とかなんとかに高い広告料を出してですよ、宣伝をして、国民がそれを飲んで精神的に慰めになるのだということで、厚生省いいんだという考え方でおるなら、私は厚生省もう少し積極的にこの点については、取り締まれとは言いません。これはいまの自由経済のときでありますから、需要に応じて供給するのですから、これはもう個人対個人の契約であるから、これはいかぬとは言わないのですけれども、少なくとも日本人の生活状態から見て、ある程度これに対して考えを入れる必要があるのじゃないかと思うのですがね。むずかしい質問ですから、大臣どう思うかと聞きたいのですが、言えたらひとつ言ってください。
  93. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 薬に対する誇大広告、誇大宣伝、この面につきましては、薬事法で定められております点につきましては、厳正にその励行を指導し、また勧告等もいたしておるのであります。そうでない面の、大衆薬等に対しましては、これは業界の自粛に期待をするということでしばしば厚生省薬務局長あるいは事務次官等が業界に呼びかけ、懇談の機会等を持ちまして自粛を要請をしておるところであります。最近、だいぶその効果が私はあらわれてきておると、こう思うわけでありますが、今後とも、そういう面につきましてはなお努力をしていきたいと、こう考えております。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、次に移りますが、これは簡単に質問しますから要点だけでけっこうです。  国保の法律案がいま出ておるわけですが、これについて、今度政府は国保法の七十条の改正で、医療負担を四〇%ですか、引き上げられますですね。そのかわり、調整交付金を若干下げられる。この趣旨も大体聞いておるのですが、聞いておることは私はただしませんが、これによって市町村の一般財源から持ち出しの財政負担というものは解消するという見通しですか。
  95. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 国保の財政の問題につきましては、私も就任以来特に重視し、また心配をいたして、私なりに努力をしてまいったつもりであります。昨年の秋に臨時財政調整補助金といたしまして四十億円これに計上いたしましたし、さらに、昨年の暮れの臨時国会で補正予算を御審議願った際に二百六億円国保に予算を計上をいたした次第でございます。その結果、四十年度の決算が大体できたのでありますが、それによりますと、赤字団体はだいぶ少なくなりまして、二百二十六団体三十七億の赤字、その赤字団体の三十七億のうち、おおむね二十五億程度の額は京都とか、あるいは横浜とか神戸とかいう数市の赤字でございまして、したがいまして、その他の市町村の赤字というものはきわめて少額になってきておる。それから全体としまして百四億の黒字が今回初めて出てきたのでございます。これはもとより、各市町村におきまして、保険料、保険税等を引き上げをするとかいろいろな努力をされた結果であり、また政府といたしましても、できるだけのこれに対する措置を講じましたその結果がそういうぐあいになっておりまして、これを三十八年度、三十九年度の決算に比べますれば相当の改善になっておると思うのでございます。しかし、私はそういうようなことで十分とは考えておりませんので、今回、国民健康保険法の改正案を提案をし御審議を願っておるのであります。それは世帯主七割給付をいたします際に、その医療給付に対しまして四分の三の補助をやってきた。ところが、だんだんそれが調整交付金の中に占める比重が多くなってまいっておりまして、五四%程度になってきておるのであります。したがいまして、市町村団体に対する財政調整の機能というものが五〇%を割るような状況になっております。さらにまた、低所得者に対するところの保険税、保険料の軽減措置ということも今後さらに拡大をしていかなければいけない、そういう面に対する調整機能も少なくなってくる、まあこういうようなこと等を考えまして、今回家族七割給付を四カ年計画に基づいて、年次計画に基づいて家族七割給付を実施いたしました市町村に対しましては定率四割の国庫負担をする、そうして五%を割りそうになってきておるものを、五%調整交付金を確保いたしまして、それでもって財政調整の措置を講じてまいりたい、このことは私はいままでよりはだいぶ前進になるのではないか、また、国保財政の安定に資するのではないかと、このように期待をいたしておる次第であります。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この国保関係は、関係常任委員会で、法律案の審議で論争されると思いますから、私はそれだけ聞いておきますが、しかし、七割給付、これは必ずしも最終の目標ではない。やはり他の健保と同様なところまで持っていかなければほんとうの社会保障制度というものは完成しないのですから、したがって、いま四年計画でそれをやっていかれるというその努力については多といたしますが、それがすべてであるという考え方ではなくて、今後ともひとつこの点については前進するように配慮願いたい。ただ、市町村の負担がこれによって一応今日は解消するという見通しであればこれはけっこうですが、これは市町村の財政を非常に苦しめる原因でありますから、これは厚生大臣、私から言うまでもなく、相当陳情を受けておりますので、これ以上言いません。  次に急いで若干質問をしておきますが、厚生年金の問題です。たくさんありますから、もうしぼります。昨年、一万円年金を非常に宣伝されてつくられたのですが、これはなんですか、一万円年金の、これは計算のしかたでいろいろ違いますが、厚生年金のできたのは昭和十七年、昭和三十七年で初めて老齢年金が給付が開始された現在の時点において、平均標準報酬は幾らになるか。
  97. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 標準報酬の最高をとってみますと、現在、四十一年五月といたしまして、一万七千四百円が制度発足当初以来の平均標準報酬でございます。なお、この間ずっと平均の標準報酬でこられたという想定で考えますと、一万二千四百七十一円でございます。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた数字、最初の一万七千四百円は最高の数字ですか。
  99. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) はい。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それを全部平均した平均標準報酬は一万二千四百七十一円。
  101. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 標準報酬は、御案内のとおり、幾つかの段階に分かれておるわけでございますが、その場合、そのある時点におきまして、その当該標準報酬のいろいろな表がございますけれども、そのうちの最高をずっと取ってきたと仮定をした場合におきまして一万七千四百円であります。それからその表の中央の中央値をとってきた場合におきましては一万二千四百七十一円である、こういう意味でございます。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくの聞いているのは、そうじゃなくて、もうすでに三十七年から給付が開始されておりますね。その開始されておる実績がどうなっておるかということなんです、これは平均が。
  103. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) ちょっと……。受給者の平均でございますか、年金額の。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 年金額を出しておりますね、現在もうすでに。その出した対象者の平均標準報酬は幾らになっておるか。——それはなければいいです。ずっとここの最高をとっているから、一万七千四百円が一応最高だと見ていいのですか。
  105. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) はい。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは聞きますが、一万七千四百円の標準報酬で定額部分が六万円に引き上げられた。それから給付率が千分の十に引き上げられた。それによって一万七千四百円で計算すると、最短年限二十年としてどのくらいになりますか。
  107. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 月額一万百七十六円になります。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 二十年でどのくらいになります。一万……。そんなになりますか。
  109. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 失礼いたしました。二十年で計算をいたしますと七千四百七十六円でございます。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうでしょう。だからそれは扶養家族の加給は入っておりませんね。
  111. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 入っておりません。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 入っておりませんね。かりに家内一人いるとして八千円かその程度ではないか、月に割ると。そうすると将来——ここしばらくは、一万円年金と言われても、最短年限二十年の場合はなかなか一万円に到達するというのは相当日にちを要するでしょう、いまの平均標準報酬の方式でやると。まずそこを私は言いたいということなんですよ。一万円年金といっても、平均標準報酬のとり方によってはそうならぬですよ。最高で一万七千四百円で、その老齢年金額は七千四百七十六円になってくる。最低の年均標準額で計算するとその給付額は一万円の半分の五千円ぐらいにしかならぬ。こういう状態で私は一万円年金だということをあまり宣伝してもらっては困るということですね。ここ十年くらいでおそらく給与が上がってくるからそういうことになるという説明かもしらぬが、現時点において、あの厚生年金を改正された当時においてそれは一万円年金にならないんだということで私は言っておるのですが、いま言われたように、厚生大臣、これは標準報酬として七千円か八千円ですね。したがって、これはあまり一万円年金と言わないようにしてもらいたい。これは正式の場所のところで言っておかぬと国民は誤解しますから。一万円にならぬですよ。ならぬはずです。
  113. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 先般の厚生年金保険法の改正の際一万円と計算をいたしましたのは、被保険者期間が二十年、当時の平均標準報酬が二万五千円の方の計算でございます。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 二万五千円になっていないでしょう、現在。
  115. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 過去の昭和十七年以来を計算いたしますとそうなります。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これははっきりしているので仮定の問題ではなくて、現実に平均標準報酬の計算はいわゆるこれを昭和十七年で、特にあのときは労働者年金保険法といったのですが、労働者年金保険法に加入した人は、そのときからの標準報酬を計算してやるのだから二万五千円になるというのは、まだ遠い将来ですよ。それが厚生省認識されておったらいいですよ。認識せずにそう言われは困るということなんですよ。それだけ私は聞いているんです。何も厚生省間違っておると言っているのではない。それを認識しているかどうかということなんですね。したがって、私が言うのは、少なくとも昭和四十五年かあるいは五十年ごろ平均標準報酬が二万五千円になるだろう——これは将来の問題わかりませんけれども、まあそういう推定でおるのだ。そういう点がどうかということを聞いておるのだから、それがそうであったらそれでいいのですよ。
  117. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 四十三年の一月以降月額一万円の老齢年金が支給される見込みでございます。なお現在におきましては、坑内夫のような加算制度のある一部の長期勤続者につきましては、すでに四千人程度の一万円以上の老齢年金受給者がございます。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ時間がないから、私ここに本を持っておりますから、言えば幾らでもあるのだが、これ以上言っても皆さん退屈だから言いませんが、数字というものはこれは間違いをおかしやすいから、ここではっきり議事録にとめておきたいと思うのですね。四十三年一月と言われても、それは最高のいま一万七千円に部類するような人があるけれども、全部給付者を平均するとそうならぬと見ているのです、ここ二年ぐらいではならぬと。厚生大臣はいつまで厚生大臣やられるか、まあ失礼な話かもしれませんけれども政府委員の方おられますが、私はそのときまた尋ねますよ。私はまだ任期あるのだから、四十三年までは。おそらくそうならぬと私は見ておるのですよ。だから、そういう点は隠しだてではなしに、やはり正確に言っておいてもらわぬとこれは誤解しますから、そういう点だけひとつきょうは確かめておきます。  そのほかにもう一つ重要な問題は、あの改正、その前の改正だったか、まあスライド制をうたわれたということは、これは私は非常にいいと思う。しかし、現実に、これも私聞きたいのですが、このスライド制にして引き上げましたわね、あの改正で。少なくとも私は、いま申しました報酬比例部分について私はそう上がっていないと思う。標準報酬がああいう形ですから、千分の六を千分の十に上げられたのですね。上がっていないと見ている。ただ、定額部分は六万円に引き上げられたから相当上がっておると思う。受給者の問題ですよ。そういうことから考えて、あれに要った費用については、私はこれは私の友人から、同僚議員から聞いたのですが、私は審議に携わっておらなかった、あのときは。あの追加費用はそのとき引き上げた保険料の中から出しておると聞いておるのですが、それは間違いないですか。
  119. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 昨年の厚生年金保険法の改正に際しまして御案内のとおり、保険料の引き上げが行なわれております。と同時に、国庫負担の引き上げも一五%から二〇%に引き上げが行なわれております。
  120. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、ぼくがそれを聞いておるのは、国庫負担金の五%上げるということはわかっておるのです。上がっておるのはわかっておるが、その五%上げたというのがいわゆる現在受給者追加費用として出したというわけではないのでしょう、追加費用ということで。引き上げたものについては、もう受給者については掛け金取るわけにいかないから、もうすでにもらっておる人にあげたのですから、スライドだから、その費用を国庫で負担するという意味において、それは全部でないかもしれない。そういうものに含まれておるのですか。将来の問題になるのですよ。そういうものを含めて五%上げたのかどうかという問題、それならもう了解できる。
  121. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 御承知のように、現在厚生年金保険は修正積み立て方式になっておりまして、そうして昨年の改正によりまして千分の五十五の料率に引き上げたわけでございます。それで国庫負担が国会の修正によりまして二〇にふえましたので、そこで完全積み立て方式を基本として考えます際に、平準保険料率が幾らになるかということになるわけでございます。国庫負担が引き上がりました要素を入れまして、完全積み立て方式にしますと、平準保険料率千分の七十で収支が相償う、こういう計算になるわけでございます。その千分の七十の中で暫定的に千分の五十五の料率に引き上げたということになるわけでございまして、いま、そこで、御質問の趣旨は、これは過去のものでございます。ある時点以降の年金の発生者につきましては、掛け金にきちっと入っているわけでございますが、既裁定の年金受給者のベースアップの分の原資がどうなっているかという、かような御趣旨かと思います。その分につきましては、年金の受給者が現在まだ非常に少ないわけでございまして、五十万足らずの受給者になっておりまして、そうして、ベースアップをやりましたその財源は、数理計算によりますと、全体のたしか一%割る計算になっておりまして、これはそれを含めましても千分の七十という平準保険料率になるわけでございますので、この問題は一つとしては、考え方によっては、一%以下だからネグリジブルであるという考え方もあるわけでございますし、なお入れるにいたしましても、七〇%の中のごくわずかの部分を占めておる。しかも、これは平準保険料率であるから現実にとる保険料率でないから、将来年金制度が完全積み立て方式の方向にいくか、あるいはまた途中から賦課式方向にいくかという問題は、年金受給者がたくさん出てまいりますと、その時点において大きな検討課題になるわけでございます。そういう意味におきまして、過去の既裁定の年金受給者のベースアップをしたものの不足財源は将来の問題として残されておる、かように解釈してよろしいと思います。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だから、いまちょっと言われましたように、国庫負担が五%上がったということは、国会修正で保険料率が下げられた、そういうものの財源補てんのためにとられた措置であって、いま言われましたように、もうすでに、既裁定受給者に対する、原資としては、追加費用としてのものではない、こういうことですね。  それでひとつ大臣、私はそういう説明をするだろうと思う。間違って国庫負担の五%に追加費用が入っていると言ってくれればいいと思ったのですが、問題はそこなんです。したがって、国庫負担というものが一五%から二〇%になったのは、これは一応別の立場からの問題であって、やはり依然として財源率は今後というか、いまおる人の被保険者あるいは事業主からの保険料なり国庫負担でまかなうという方式になっている。そうすると、スライド方式をここでとられても、現実の問題としてはなかなか実現しにくいのです、やられるというけれども。文章が抽象的で、何も具体的なことが法律に載っていない。一体追加費用既裁定受給者の財源をどこが持つかということを政府がきめてもらいたい。いまのような方式であれば、これは組合員なり事業主なりが出すということですから、そういう方向でおまえら負担せよ、言いかえれば、やめた人まで負担せよということなんだ。それならそれでまた考え方がある。われわれの言っているのはそうではない。既裁定受給者については、やはり政府が負担すべきであるという恩給のような考え方でやってもらいたい。これは私のきょう主張するところです。そうでなければ、私は、保険料率を変えてそれに基づいて——いま言われた一%、千分の一ですか、千分の一くらいの要素だからいいけれども、これはだんだんだんだんふえてきます。既裁定受給者がふえますから、そうすると、その原資というものは相当多額になる。これを一体だれが持つかという問題をまず先決にきめておかぬといかぬ。法律の条文でここにスライド制があるのだから、一歩前進であるという説明をされても、しろうとはそんなもので喜ぶかもしれませんけれども、そんなものは実際やっているものから見ると気休めだ。財源率を、それをもってやるならやるような方法を厚生省は考えて、それをまず打ち出さなければ、そのときに問題になる。私らは追加費用は政府が持つものだという考え方を持っておりますので、その点はきょうは深く掘り下げませんけれども、厚生大臣も初めてでありますが、そういう点についてお考えいただきたい。今度は恩給法、国家公務員、地方公務員共済組合法関係、全部同じようなスライド制を入れておりますよ。著しく物価が上がったから、あるいは生活状態が変わったかちスライドをやるとか、抽象的なことばであって、どうしてやるかということは出ていない。そういう点は厚生大臣特に今後考えていただきたい。  たくさんありますが、もう一つにしておきましょう。  厚生大臣、その当時問題になりました調整年金ですね、企業年金を代行年金として認めるということを法律にうたった。あれは社会保険審議会で結論を出して実施するということになっておるのですが、その後の実情はどうですか。
  123. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 調整年金の問題につきましては審議会のほうで鋭意御検討を願っておるところでありますが、その経過等につきましては年金局長から。
  124. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 昨年の七月三十一日社会保険審議会におきまして、厚生年金部会におきましてこの問題を審議する了解をいただきまして、以来十数回かと記憶いたしますが、審議をいたしておりまして、本日も部会を開催しておる状況でございます。だいぶ各側の問題点が煮詰まってまいりまして大詰めに近づいておるという印象をわれわれとしては受けておるという状況であります。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この調整年金代行を認めるということについては、これはもう党は絶対反対でやったのですが、私は基本的にやはり厚生省のお考え方について問題があると思うのです。私は企業年金というものの意義については否定しない。日本のいまの年金制度、先ほど申しましたように、二十年つとめてまだ一万円にもならぬ、一万円もらっても、そんなものでは夫婦が生活できるようなものでないのがいまの状態です。したがって、企業がそれ以外に労務対策として自己の企業内に企業年金をもって退職金とか、そういうものを考えてやるということについては、私はこれはもう補完的な意味でいいと思うのですけれども、少なくとも公的年金の中に企業年金を取り入れてくるということは日本の年金制度を私は混乱させると思う。一説に聞きますと、報酬比例部分だけの代行になるけれども、それでも私は相当の資金がいくと思うのです、金融機関に。それが信託会社、生命会社に委託をしてやるということに法律のたてまえはなっておりますが、金融機関としてはそれが資金源だと思いますね。したがって、そういうものが出てきたと思うのですが、   〔委員長退席、理事船田譲君着席〕 やはりその点はぴしっと公的年金は公的年金で、私的年金は私的年金でということで区分して運用しなければ、もらうほうは——もらうというとおかしいが、給付を受けるほうから見れば、一方は基金から報酬比例部分をもらう、一方定額部分と扶養家族の加給部分については政府の金庫からもらう、こういうことですね。二重に年金を受け取らなければならぬ。そういうこと自体、受給者から見ても繁雑でもあるし、まとまってもらえないということもあると思う。私は国会の審議に参加しなかったので言えなかったのですが、企業年金調整年金を認めるという前提に、いまの法律できめられた、法定の給付以上に企業は必ず出すのだ、そういうものをいわゆる義務づけてやっておると思ったらそうではない。それは多く出したほうがいいだろうという行政措置だろう、そういうふうにぼくは聞いたと思います。そうすると、被保険者から見ると、政府からもらって、企業年金基金からもらっている、同じ額を両方からもらわなければならない、そういう繁雑なものに労働者が納得するというわけはないと思うのです。そういうものが政府が出してくること自体は、厚生年金保険法の改正案当時出された問題については党内でもいろいろ論議を尽くしておりましたが、通算年金の問題とかいろいろ問題はありますが、それは別として、一応増額されるんだからこれはまあ反対ということは言わぬが、調整年金については絶対だめだというのはその趣旨なんです。したがって、私が言うとあれだが、そういう金融機関とかそういうもののためになされたとしかわれわれは考えられないけれども、皆さんから言えば誤解かもしれませんけれども、そう見ざるを得ない。そういうものについて厚生大臣は、その当時は厚生大臣でなかったかどうかしれませんが、その点についてはどう思われるか。   〔理事船田譲君退席、委員長着席〕
  126. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この調整年金はこれは労使の間で話し合いがつきまして、そして調整年金をひとつやろう、こういう労使双方の合意によって調整年金ということが適用される、活用される、こういうことでございまして、一方の国が公的にやっておりますところの皆保険の年金、これとは本質的に違う、その上積みとして労使の合意に基づいてこの制度を活用すると、こういう趣旨のものでありますから、私はその点は御指摘のとおり、決して被用者に対して不利益を与えるものと、かようには考えていないのであります。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 国会修正で、いま言われた労使の合意によってやるという以上は、三分の一以上で組織された組合があれば、組合の同意を得るという国会修正をされたことも知っております。これはそういう修正をされても実際問題としてああいうものができたけれども、やはりみんな十分知っておる労働者大衆じゃないですよ。やはり事業主のほうがいまのところやはり上におる、力を持っておりますから。したがって、やはり合意だということでこれを勧誘された場合には、そのほうがいいんじゃないか、また会社のためじゃないか、この資金も私は厚生大臣どういうぐあいに説明されるかしれませんが、社内預金のように、やはり自分のところの出した掛け金とかそういう保険料については、信託会社、生命会社との間の契約で優先融資というものが必ず出現してくると思う。それは回り回って、直接そんなことはやらないけれども、やはりそういうものが入って信託会社、生命会社は勧誘してやると思うのですね。会社から言うと一応そういう掛金は出すけれども、いままでだったら政府が全部取っちゃって、そして財政投融資は政府が管理するんだけれども、今度はやはり自分の会社の資金にも回るのじゃないかという考え方を、これは十分持っていますよ。そういうものを厚生省は公的年金の中に、そういう雑物のあるものを入れていくこと自体に、まだ発展過程にある日本の社会保険の制度の中においては——将来については私は言いません、われわれは党内でもいろいろ論議はありますけれども、ここで私の意見を申しませんけれども、私は今日——今日と申しますか、もう済んだことでございますけれども、今日調整年金として、しかも公的年金の代行として認めたという制度自体に私は反対ですね。論議されたと思いますけれども、そういう点は厚生大臣はじめ厚生省の皆さん方も十分私はわかると思う。厚生省の人々も初めから、これはやはり調整年金を代行さすというようなものに全部賛成しておらないと思う。やはりいまの経営者の相当強い圧力があって——そんなことをやられたら、保険料上げては困るという一つの大きい、日経連なりそういう経営者団体からの圧力があったことを私は新聞でも見ておる。やっぱりそういう圧力に屈したということを厚生省としては反省してもらいたいと思う。こういう公的年金、社会保険については政府は確たる考え方で将来運営してもらわないと、そういう企業者とか、そういうものの趣旨で動かされるということだったら大きい問題がありますから、これは将来論議をされると思いますが、きょうは時間の関係で、四時もきましたのでおきますけれども、厚生大臣も、山本べらべら長くしゃべりやがって早く済んでくれたらいいという気持ちかしらぬけれども、真剣にひとつこれは聞いていただきたい。私は社労関係で、予算に出てやろうと思っていたんですが、そういう機会がなかったのでやらなかったんです。この点はひとつ厚生大臣、あなた非常にまじめだといううわさがある。そういうことで十分きょう言ったことについては、私は冗談まじりで言っておるけれども、真剣にひとつ考えていただきたいと思うんですが、最後に厚生大臣の見解をひとつ聞いておきたいと思う。
  128. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この調整年金の問題につきましては、いま山本さんからもお話がありましたように、いろいろ御意見のあるところでございます。したがいまして、社会保険審議会の年金部会等におきましても、十数回にわたって熱心にあらゆる角度から御審議を願っておるところでありまして、私どもその御答申を得た上で慎重にこの取り扱いをいたしたい、このように考えておるわけであります。なお、その積み立てられた資金の運用につきましては、年金制度のたてまえからいたしまして、国民の福祉あるいは労働者諸君の福祉の向上に寄与するように、そういう観点で運用してまいることにつきましては、これは一貫してさようにいたしたい、こう考えております。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 私ははなはだふなれではございますけれども、最初に医療問題について二、三お尋ねしたいと思うんです。  この前の千葉大のチフス事件に関連しまして、厚生大臣はインターン制度とかあるいは無給医局員の問題について、今度の国会に医師法の改正案を提出するようなことが報道されましたけれども、今回は断念されたように聞いておりますが、そういう事情はどういうわけでございますかお尋ねしたいと思います。
  130. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) インターン制度の問題は数年来各方面で相当論議されてきておる問題であり、また、学生諸君の中でもこの制度のあり方につきまして強い要望なり意見があるのであります。そこで私といたしましては、この国会にインターン制度の問題と、それから医師の国家試験、医師の免許の問題等につきまして、医師法の改正を通じてこの際改善を加えたい、このように考えておったのでございますが、その後無給医局員の問題が大きな、社会問題としてもまた医師の制度の中における大きな問題にもなってまいりました。さらにこれに関連いたしまして、学位の問題、専門医の問題、いろいろ関連する事項が出てまいりまして、そこで文部当局とも話し合いの上で、医師の養成から医師のあり方全体についてひとつ再検討をこの際しよう、こういうことに相なったのであります。さようなことでインターン制度だけを切り離して医師法の改正をしようということは、しばらくこれをやめまして、全体の立場でこれを再検討する、こういうことにいたした次第でございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 厚生大臣は、その改正案を出すかわりに懇談会というものを発足させて検討するというようなこともお伺いしておりますが、文部省でも懇談会を独自に発足させている現状です。先ほどのお話の中に、文部省とは十分検討する、話し合うというようなことも仰せられましたけれども、文部省の懇談会との調整をどの程度考えておられますか、お伺いしたいと思います。
  132. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 文部省では当初文部省独自に懇談会を持ち、それに厚生省側からも参加をしてほしい、こういうお考えがあったのでありますが、文部、厚生両方で別々にこの問題を取り上げるということでは、総合的な統一的な制度の改善の上からいかがかと、こう考えておりますので、ただいま文部当局と厚生省との間で、一つの審議会なりあるいは懇談会というような方式か、一つの機構のもとに、総合的統一的に検討しよう、そういう方向で文部省といま話し合いを進めておる段階であります。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 この間からいろいろ千葉大事件とか、日赤の産院事件であるとか、朝倉病院の事件であるとか、病院の経営管理に関しては非常に問題が大きいわけでございますが、その点に関して、医療従事者に対する技術報酬というものが非常に低い。医療従事者はどうしても勤務条件に相当特殊事情も認めなければならないし、給与体系にしましても、病院経営あるいは病院事業の特殊性に応じたような適切な給与体系をつくっていかなければならない、待遇改善もはかっていかなければならないという声も非常に強いわけです。それとともに、先ほどお話もありましたけれども、看護婦さんや保健婦さん等の不足も非常に深刻でございますが、養成期間を短くするとか、あるいはもっとインターン制度とか国家試験の制度を設けて、看護婦、保健婦などの不足を補っていくということも必要かと思うのでございますけれども、医療従事者の待遇改善の問題、あるいは看護婦、保健婦の不足に対する応急対策の問題、また、今後の恒久的な考え方についてお伺いしたいと思います。
  134. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) その問題につきましては、先ほどお尋ねがありまして、骨子は御答弁を申し上げたところでございますが、この看護婦並びに医師の養成その他医療に従事いたしますエックス線だとか放射線関係の技術者であるとか、あるいはリハビリテーション関係の技術者等々、この養成確保の問題は、医学・医術の進歩に即応いたしまして、私ども鋭意努力をいたしておるところであります。特に看護婦さんや保健婦さん等の養成につきましては、先ほども申し上げましたように、国立の病院、療養所並びに公的医療機関をはじめ、さらに文部省や民間の養成機関等の御協力を得まして、その要員の確保をはかるという見地からこれに努力を払っておるところでございますが、ちょっと先ほどお触れになりましたように、もっと短期で速成的にそういう要員養成したらどうか、こういう御意見もあったのでありますが、私はその点につきましてだけは多田さんと若干考え方を異にいたすのであります。最近は非常に医療の面に高度の科学、技術、学問というものが導入されてきておるわけでありますので、そういう観点からも看護婦さんその他の医療従事者は十分それにこたえ得るような教養なり技術を修得する必要がある、このように考えておりますし、また、国民一般もそのことを、大事な命を預かる仕事でございますから、そのことを国民の皆さんも期待しているのではないか、このように考えるわけでございます。それだけに、養成機関拡充整備ということについては特に力を入れる必要がある、こう思うわけであります。また、待遇改善の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、公的医療機関に働きます公務員諸君の、看護要員の給与の改善につきましては、その仕事の性質上からいたしまして、一般公務員よりも早急に待遇の改善をするように、また、特別の手当等の支給も実はいたして鋭意処遇の改善に努力をいたしておるところであります。また、その勤務体制につきましても、夜勤その他相当今日まで無理な面がありましたので、これも人事院の勧告の線に泊うて改善を進めておる、このようにいたしておるのであります。また、家庭に入っております有資格者の看護婦さんにつきましても、いろいろなそれを受け入れる態勢を整備をいたしまして、努力をしておりますが、現在は四四%くらいの方が職場に出て働いていただいておる。大体そういう有資格者で家庭に入っている方は十八万人ないし十九万人くらいおられると思うのでありますが、その四四%程度がいま職場に出て働いていただいておる、こういう状況にあるわけであります。今後とも努力してまいりたい。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま輸血用の保存血液が非常に不足して、売血の規制で非常に不足するようになったわけでありますが、厚生省では先月の二十六日ですか、緊急に血液対策会議というものを開いて対策を検討されたようでありますが、その対策会議の内容、また、それによって五月の中旬からどのように輸血用の保存血液の状況が好転しているかどうか、そういった面でお話し願います。
  136. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この血液問題についてでありますが、最近民間の血液銀行また売血の制度というものが人道上の観点から各方面からこれに対する批判が出ており、また、こういう業界におきましても、この世論にこたえまして自粛をいたしておるところであります。また、厚生省といたしましても、そういう世論の方向を十分考慮に入れまして、指導に乗り出してまいったのでありますが、先般来月に四百cc程度の採血をいたしておったものを、これを献血の場合と同じように月一回二百ccというぐあいに強い規制をするように指導をいたしておるのであります。また、民間の売血を中心とした血液センター等の仕事をやめる、廃業する者等も出てまいりまして、それだけに献血に依存する度合いが急速に高まってきておるのであります。政府といたしましてもこの事態に対処いたしまして、献血の推進、献血の組織整備、また、献血のための施設整備充実、また、採血車のフル稼働、いろんな面で努力をいたしておるところでありますが、大体現在のところ、輸血に必要な量の三二%程度は献血によって確保をされると、こういう段階にあるのでありますけれども、しかし、六月には——五月、六月がこの輸血、手術等で特に大量に血液が必要である、こういう状況にもありますために、先般赤十字病院その他各県の献血対策の推進協議会等に関係者のお集まりを願ってこれに対処する緊急の打ち合わせをいたした次第でございます。その具体的な協議事項、なお今後具体的にどう進めるか、こういう面につきましては薬務局長から御説明をいたします。
  137. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 最近の献血の現状は、ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございます。特に本年になりましてからそのような情勢が非常にきびしくなってまいったわけでございます。したがいまして、先般私どものほうで全国の枢要な都道府県の責任者、それから日赤の支部の責任者、それに血液センターセンター長、こういう当面する血液問題の責任者、各都道府県の責任者の方に集まっていただきまして、これからの対策をいろいろ協議いたしたわけでございます。  その中身としましては、大体三点か四点くらいございまして、第一点は、何と申しましても国民の方々が全員献血運動に参加するというような、そういうような認識と理解を持っていただくということが当然大事なことでございますので、従来からやっておりますPRの活動をさらに一そう強化する必要があるわけでございます。そこで、各県の責任者にいろいろ私どものほうで指示をいたしましたPRの方法として、たとえば成人式、二十歳になるときの成人式とか、あるいは学校の卒業式等のその行事を活用いたしまして積極的な献血をやっていただくというようなこと。それから、現在全国的に月間運動というものを九月に一カ月設けているわけでございますが、これだけではどうしてもPRとしまして足りませんので、各都道府県の実情に応じまして献血週間あるいは献血月間というようなものを別個開催をして献血の推進に当たるということが第一点でございます。  それから、第二の点としましては、献血の受け入れ態勢の整備でございますが、これにつきましては、従来からやっております血液センターなりあるいは移動採血車というものを今年度もさらに増設をするということは当然でありますが、新たに私どものほうで指示をいたしました点は、現在各都道府県に一カ所あるいは二カ所程度あります血液センターの支所あるいは出張所というようなものを、県内の枢要な地に設けていただく、そうしてそういうところでわざわざ県庁所在地の血液センターまで行かなくても、そういう支所なり、出張所で簡単に採血ができるような設備を、早急に既存の病院等を利用して設けていく、こういう点が第二の点でございます。  それから第三の点としましては、従来からやや全国的に見ますると、一部の県だけに限定されていたわけでありますが、いわゆる出張採血というものがございますが、この出張採血というものを、全国的な規模において、本年度は活発に出資をしていくということが第三の点でございます。  それから第四の点としましては、本年度の四十一年度の予算に計上してございますが、血液型の登録の予算があるわけでございます。この血液型の登録ということを通じまして、国民の献血についての理解と関心を高め、そうして献血運動に積極的に参加をしてもらうというような方向に、この血液型の登録の予算を十分活用していきたいというようなことで、そのやり方等について協議をした。大体これが先般の協議の内容でございます。
  138. 多田省吾

    ○多田省吾君 大体対策はお聞きいたしましたが、この前から四百ccの採血量を一人一回二百ccに減らした。あるいは緑十字をはじめ、買血を自主的にやめるような会社も出てまいりましたし、報道するところによりますと、四月ごろから保存血液の献血の状態が半分以下に減っているというようなこともいわれているわけでございますが、いろいろいまの対策等もあり、また、厚生大臣は五月、六月は献血の月で、上昇する月であるから心配はないというようなことを言っておられますけれども、はたしていまの対策でこの五月、六月を乗り切っていけるのかどうか、その確信のほどを大臣からお聞きしたい。
  139. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この面につきましては、私どもも各方面の御理解と御協力を得ましてあらゆる努力をいたしたい、このように考えております。  まず第一は、採血車は月間二十日ぐらいはぜひ稼働をいたしまして、そして一台の採血車でもって二千本ぐらいの確保が、献血がなされるように、そういうことにつきましても特に督励をいたしております。また、各公的医療機関をはじめ、医療機関の御協力を得まして、手術等にあたりましては、親族あるいは地域、職域の方々の御協力によって、輸血用の血液が充足できるように、特段の御援助を願う、そういうこともやってまいりますし、また、この出張所あるいは支所、そういう拡充整備も急いでおるところでありまして、あらゆる努力をいたしまして、この輸血用血液の確保をぜひはかっていきたい、万全の対策を講じたい、かように考えています。
  140. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、新しい長期経済計画にのっとった新しい社会保障の体系というものが、厚生大臣においても考えられていると思いますけれども、もちろん中期経済計画のときの社会保障計画よりもずっと上回るような案をお考えだとは思いますけれども、その新しい長期経済計画にのっとった社会保障の体系、今後の社会保障計画といったようなものをお尋ねしたいと思います。  また、その中には当然児童手当の問題なんかも含まれていると思いますけれども、もう社会保障体系は形式的には全部そろったようなかっこうにはなっておりますが、世界六十数カ国において実施されておるところの児童手当がまだ日本において行なわれていない。今度の四十一年度の予算においても全然盛り込まれておりませんし、特にその児童手当制度の準備に対して本年度はどのような準備をされようとしているか。また、児童手当の支給に関する将来の見通し、この二点についてお尋ねしたいと思います。
  141. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) まず第一は、経済の大きな変動がございまして、またさらに、政府としても公債政策の導入というような事情もありまして、中期経済計画を発表いたし、そうして新しい長期経済計画を策定をする、こういうことに相なった次第であります。  そこで、中期経済計画の際におきまして、社会保障に充てますところの振りかえ所得、これを、昭和四十三年に振りかえ所得七%、こういうことを一応中期経済計画ではきめておったのであります。現在、昭和四十一年度における振りかえ所得はどれくらいになっているかと申しますと六・三%、こういう段階にあるのであります。  そこで、新しい長期経済計画の立案にあたりましては、私は長期の社会保障計画というものをぜひ策定をしたい、その際における振りかえ所得は中期経済計画の七%を上回るものでなければならない、こういうようなことを考えまして、ただいま事務当局に命じまして、その長期経済計画に即応する長期の社会保障計画というものの策定の作業を進めておる段階であります。先般、衆議院の社会労働委員会におきまして、藤山経済企画庁長官も、私のこの構想に全面的な賛同をされまして、経済企画庁においてもこの長期経済計画の策定の際においては十分中期経済計画に上回るところの振りかえ所得を長期社会保障計画としてこれを認めていきたい、こういうことを言明いたしておるのでありまして、私は、政府全体としてそういう方向努力をいたしたい、このように考えておるのであります。  それから児童手当の問題でありますが、日本の社会保障の中でおくれておりますのは、所得保障の面であり、特に児童手当がいまだ実施されていない、こういう点だと思っております。医療保障の面におきましては、私は欧米先進国並みの水準までいっておると思うのでありますが、所得保障としての年金制度は、出発後、なお日が浅い。したがって、給付されておる範囲もまだごく一部に限られておるというようなことが、社会保障全体として欧米先進国におくれておる点であるのでありますが、特に児童手当の面につきましては、いろいろ今日まで検討を加えてきておるのでありますが、準備に相当時間がかかっております。  率直に申し上げますならば、義務教育を受けております中学の子供さん方以下の小さいお子さん方までかりに一カ月千円ずつの児童手当を出すといたしますと、三千億の原資が要るのであります。いま、今年度の厚生省予算は五千七百億でございますが、月額千円の児童手当を支給するとして、三千億の原資が要る。そこで、これはなかなか一ぺんには実施ができません。そこで、低所得の方々から段階的に年次計画をもってこれを実施をするか、また、どういうような給付の額にするか、さらにまた、いろいろこれは御意見のあるところでありますが、会社や官庁等で支給しております家族手当の中には、この児童手当的な要素も相当含まれておるのでありますが、そういうものとの関連をどうするか、いろんな角度から検討を要する問題がありますので、ただいま厚生省の中で専門の調査機関を設けまして、鋭意調査をし、準備を進めておる段階であります。まだ、これが実施までのはっきりした具体的なタイムテーブルはきまっておりませんが、おおむね、昭和四十三年度あたりを目途に実施に移せるようにということで、そこを目標にただいま準備を急いでおる、こういう段階にあるのであります。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一点だけお伺いしたいと思いますが、国民生活審議会では最近、いわゆる水銀性農薬とか中性洗剤あるいは食品添加物、そういった健康有害品の対策を早急に立てて政府に要望しようということになった、という報道がなされておりますけれども、まあ、水銀性農薬についてはいままでたびたび国会でも問題になり、また、中性洗剤についても一応、不満足ではありますけれども、回答が出ているような姿もあります。しかしながら、全般的に中性洗剤についても食品添加物につていも、業界等の関係もございましょうけれども、なかなか対策が決定しない。たとえば食品添加物についても世界保健機関とかあるいは国連食糧農業機関等から、発ガン物質という面のおそれがあるから使用しないほうがいいというような指示があるものまで、十品目もその食品添加物として厚生省の許可があり、使用が許されているという状態もあるわけでございます。そういった健康有害品の中でも、食品添加物について厚生省として、いつも対策がおくれているような面がありますけれども、国民全体の健康ということを考えて、審議会の答申なりが出ないうちに早急に対策を考えられるお考えはないものかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  143. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この食品添加物や色素等の使用につきましては、これは国民の健康に大きな影響がございますので、その使用許可にあたりましては、厳格な基準を設けて、心要やむを得ざる最小限度にとどめてこれを認めておるところであります。色素等におきましては、欧米先進国に比べましても、心ずしも日本が多く色素を使っておるというようなことは言えない、こう思うのでありまして、また、国際的に各国との情報交換等もいたしておりまして、できるだけ、少しでも有害と思われるような色素や食品添加物の使用というものは極力抑制をする、こういう方向で指導をいたしておるところであります。具体的な内容につきましては、環境衛生局のほうから御説明いたしたいと思っております。
  144. 若松栄一

    説明員若松栄一君) ただいま大臣のお話しのように、危険の非常に著しいものについてはすでに規制がされておりますが、ただいまお話に出ました水銀剤のように、危険がはっきりしていてなおかつ使用せざるを得ないというようなものもございますが、これもすでに農林省等でも、できるだけこれを水銀剤でない駆虫剤に切りかえるように指導をいたしておりまして、漸次そういう方向に向かっていることと思います。  なお、食品添加物等につきましては、現在私どもは約七十種類の添加物を使っております。そして、その中でも特に疑わしいデータがあります七種類につきましては、すでにその使用を事実上中止いたしておりまして、具体的にデータの出次第、これは完全に廃止の方向に準備を進めております。
  145. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 最後になりまして、私のしたい質問をいろいろな皆さんが言ってしまったのですが、二、三質問さしていただきたいのであります。これは、いまも多田さんから御質問がありました食品添加物、色素、そういうものを私たちは毎日七十種類くらいとっているということがいわれているわけですけれども、この間私は予算委員会のときも鈴木厚生大臣にちょっと質問いたしましたが、あれから、新聞で見ますと、七種類くらい使用中止する、こういうことを言っていただいて非常に喜んでおるわけでございます。ズルチンを何か禁止するというような話を聞きましたが、それはいかがになっておりますか。
  146. 若松栄一

    説明員若松栄一君) ズルチンにつきましては優性毒ということを非常にいわれておりますので、それらの特に注目されておる点につきまして現在実験を行なっておりまして、その結果が出次第、食品衛生調査会の審議にかけた上態度をきめたいという段階でございます。
  147. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この間、何かそういう添加物を一生懸命研究している婦人のグループがありまして、そこからパンの原料の小麦紛の漂白剤に過酸化ベンゾールという粉末と二酸化塩素、それが漂白に使われるので非常に有害だという話を聞いたのですけれども、アメリカでは二十何年間これを研究した結果、奇形児の生まれる原因の一つになっているということをこの間申してこられたのです。そういうお話を聞いたことがおありになりますか。
  148. 若松栄一

    説明員若松栄一君) アメリカ等でパンの小麦粉の漂白に使っております薬剤が有害ではないかということで、アメリカ方面ではかなりの疑いがかけられておるようでございますが、日本でこれを決定的にする学者の意見もまだ固まっておりませんので、これも現在検討中でございます。これがはたして奇形と直接関係があるかどうかについては非常にむずかしい問題でございまして、非常にいろいろな実験研究が積まれなければ、断定はむずかしいと思います。
  149. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 サリドマイドでだいぶ奇形児が出たということで問題になりましたけれども、最近そういう食品添加物をあまり使うので、やはりそれが一つの奇形児の原因になっているというようなことがいわれておりました。これは私の友人の経営している産院でございますけれども、昨年一年間に十三人の赤ん坊をとりあげた中で、四人が奇形児であった。新聞に発表もしておりません。内密にしておりますけれども、そういうことが出てまいりますと、ずいぶんゆゆしい問題だ。厚生省のほうでは、奇形児の生まれる原因を何かキャッチしておられますか。
  150. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 奇形という問題は発生学的にも非常にむずかしい問題でございますので、受精から胎生期のどの時点でどういう作用があり、どれが奇形の原因になるかということは非常にむずかしい問題でございます。常時使われておりますような非常に軽微な作用が奇形の発生にまで関係しているかどうかということは、確定はきわめて困難だろうと思います。むしろ、はっきりわかっておりますことは、胎生期で、たとえば妊娠二カ月程度の場合に風疹にかかる、あるいはインフルエンザ性のビールスの疾患にかかるというようなことが明らかな原因になる、あるいは、同じような胎生期の初めにサリドマイドというような非常に強力な副作用のある薬については、ある程度統計的に出てまいりますが、非常に軽い作用でもって、数の非常に少ない、しかも、その特定の薬というものと結び付けることが困難であるような薬剤あるいは添加物というものにつきましては、これは確認は非常に困難であると思います。なお、添加物等を許可する場合にも、慢性毒であるか、あるいは発ガン性があるかないか、あるいは、そういう胎生期に変化を及ぼす危険があるかということを着眼点として、調査をし審査をいたしているわけでございますが、なかなか的確な判断はむずかしいというのが実情でございます。
  151. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一つ伺いたいのは、そういう添加物だけでなしに、最近はプラスチックの容器とか、あるいはまた合成樹脂ですか、そういう容器が非常に使われますが、そういうものが、あちこちで使っているお酢に溶けるというようなことで、あるいはそういうものが食器を侵しているのじゃないかという感じがしておりますが、こういうことについてはどうですか。
  152. 若松栄一

    説明員若松栄一君) お話しのように、最近は非常に多種多様な合成樹脂が使われておりますので、この合成樹脂に、そういうような全般の問題といたしまして現在研究を加えているという段階でございます。
  153. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 多田さんの質問にあわせて、私も添加物だのいろいろなことを質問させていただいたのですが、国民の健康にとって、あるいは私たち母親にとって一番心配の種である奇形児の問題、そういう問題にもやはり多少関連があるのじゃないかという疑いを持っておりますので、なるべく厚生省なども早くこういうものにどれだけの毒性があるのか、ほんとうに有害であるのかということをどんどん調査をして、私はほんとうに国民の健康を守っていただきたい。その点だけ要望しておきます。  それからもう一つ、先ほどから看護婦さんの問題がだいぶ出ておりましたが、今度の設置法の一部改正法案の中では、社会保険研修所を社会保険大学校に改めるということでありますが、実は看護婦さんのほうからも、看護大学に昇格してほしいという要望がいろいろ私のところにもあるのでございますが、そういうことはお聞きになっておりませんか。
  154. 若松栄一

    政府委員若松栄一君) 現在看護婦の養成は文部省の看護学校あるいは厚生省の看護婦養成所が主でございますが、現に看護関係の大学が四カ所、それから短期大学が六カ所ございます。私どもといたしましても、将来看護婦の高度な看護技術者の中核になる、看護婦としての高度な技術を持った者を養成するために、看護大学ないしは看護短大というものを育成してまいりたいと存じております。この点は、また他の面から見ますと、現在看護婦の養成におきまして、指導者あるいは看護婦養成の先生が非常に足りないという点がございますので、それらの需給という面も考え合わせまして、看護短大ないし大学というものを育成してまいりたい。また、それのみならず、看護婦一般につきましても、いわゆる養成所というような考え方で、昔から徒弟的な養成が主になっておりましたために、正規の学校教育というものが伸びておりませんので、一般の看護婦につきましても、正規の学校教育の場を通じて養成していく、職業人として職業教育をしていくという立場で学校教育を進めてまいりたいという、そういう意味で現在看護高校というものが非常な勢いで伸びつつございますので、さらにこの看護高校の上の学校を将来育成いたしまして、通常のいわゆる正看護婦も学校教育によって育成していきたいというふうに考えております。
  155. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私は、いまのお話、非常に期待をかけていたいと思います。やっぱり看護婦さんが足りなくなったのはそういうところに一つの原因がある。徒弟教育であった看護婦というのは非常に下に見られていたわけです。そこに一つの誇りを持たせる意味においては、ちゃんとした学校をつくる。それが私は看護婦がふえてくる一つのやっぱり原因になるのじゃないか、こういうふうに考えておりますので、それを要望しておきます。  私の質問を終わります。
  156. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  157. 船田譲

    ○船田譲君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案について、次の修正案を提出いたしたいと存じます。  修正案の内容は、ただいまお手元にお配りいたしました印刷物で御承知願うこととし、朗読は省略させていただきます。  修正の趣旨は、原案の施行期日である「四月一日」がすでに経過いたしましたので、これを「公布の日」からとするものであります。  右の修正部分を除く原案に対しましては賛成いたしまして、私の討論を終わります。
  158. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより厚生省設置法の一部を改正する法律案につきまして採決に入ります。  まず、討論中にございました船田君提出の修正案を問題に供します。船田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  159. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 総員挙手と認めます。よって船田君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  160. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 総員挙手と認めます。よって修正部分を除いた原案は、全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案は、全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  162. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。     —————————————
  163. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。午前に引き続き本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、中村運輸大臣深草官房長亀山海運局長岡田般員局長佐藤港湾局長坪井自動車局長佐藤航空局長岡田海上保安庁次長、以上の方々でございます。  それでは、御質疑のおありになる方は、順次御発言願います。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 運輸省設置法について、ひとつこの際運輸大臣がせっかくお見えになっておりますので、運輸行政全般についてお尋ねしたいのですが、時間の関係もありますし、かなり同僚議員も相当重要な問題については質問されていると思いますから、重複を避けて質問したいと思います。  運輸行政は、陸、海、空ときわめて範囲が広い。まず、海運についてひとつ聞いておきたい。空の問題は運輸委員会なり各方面で、事故があったので、相当論争されましたので、それはやめておきますが、戦後わが国の海運は、非常に般腹の問題が非常に少ないところで、これが日本の貿易外収支に相当大きく影響を与えておりますが、政府は海運業界に対して大きな手術をされて合同合併をされた。その後の海運業界の実情を、そんなくわしく要りません、要点だけひとつ知らしていただきたい。
  165. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 海運の集約あるいは再建整備法の施行以来、海運事業の立ち直りは相当著しいものがございまして、昭和三十八年九月期に六百六十億円の償却不足、つまり累積欠損額が外航海運会社にはございましたけれども、この三月にはこれが百二十五億に大幅に減少を見ております。これだけよくなっておりまして、なお、昭和三十九年ごろは配当をする会社は全然ございませんでしたけれども、最近に至りまして配当をする会社も出ておる。配当には至らざるも、累積欠損を全部消してしまった会社も十数社にのぼっております。海運企業の立ち直りは、以上のように相当の成果をあげております。一方、海運の国際収支の状況につきましては、中期経済計画におきましては、従来の海運国際収支の赤字をIMF方式で見ますと、約四億二千万ドルの赤字が海運についてはございました。  そこで、これをゼロにするというのは、たいへん困難な、日本の貿易構造から見まして困難なことでございますので、この四億二千万ドルという赤字をこのまま横ばいに持っていくということで、三十九年から四年間に約七百五十万総トンの船腹を建造する必要がある、こういうことを中期経済計画でいたしました。  大体この計画に基づきまして三十九年には百二十万総トン、昨四十年は百八十万総トン、四十一年——今年度は二百万総トンの建造を計画しておるわけでございます。この計画は順調に推移いたしております。ただ、四十年度におきます海運の国際収支は、世界的な運賃が高くなってまいりましたため、日本のように輸入が非常に多い国では若干の赤字がふえざるを得ないということで、四億二千万ドルよりは約一億ドル赤字がふえております。今後の船腹の建造あるいは第三国間への日本海運の進出ということで、この赤字幅を極力減少するということにいたしたいと考えております。中期経済計画は廃止になりまして、新しい計画を準備中でございますけれども、私どもといたしましては、海運の国際収支の改善に関する基本的な考え方というものは、中期経済計画の場合と変わりはございません。従来の方針によって船腹の拡充あるいは海運企業の合理化ということを続けてまいりたい、かように考えております。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一ぺん確認しておきますが、中期経済計画は、一応まあ没になったけれども運輸省としては、貿易外収支四億二千万ドル、これを四年計画で解消するというのですか、それとも四億二千万ドルの貿易外収支は横ばいでいくということですか、どちらなんですか。
  167. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 四億二千万ドルの赤字を横ばいにしていくと申しますことは、日本の貿易構造が、多量の原材料を輸入し、これを加工して製品にして輸出する、輸入量と輸出量に大きな開きがある、そういう意味でございます。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、考え方としてはこれ以上貿易外収支はふえないようにこれを努力するということで、日本の海運だけじゃないが、貿易外収支をパーに持っていくということについては、とうてい将来まだ見込みがない、こういうことですか、端的に言えば。
  169. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 海運の面では、これを黒字にする、ないしは赤字をゼロにするということは、とうてい困難だと考えております。総合的な日本の国際収支全体は、貿易によって黒字が出てくる、こういうふうに考えております。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは運輸大臣に聞きます、政治の問題であるから。もうとうてい海運による貿易外収支というものは、戦前のような状態わが国は戻すということについては見込みがないという見通しですか。
  171. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 全然見込みがないと言い切ることはどうかと思いますが、非常に困難であるということでございます。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは大臣じゃなくてもいいのですが、大臣に答えてもらってもけっこうですが、いま申されました輸入が多いということ、その他も問題があるが、やはり現在の海運界の各国競争状態の中で、やはり何といいますか、コンテナ船といいますか、優秀船がずいぶんできております。そういうことで、他国と競争上太刀打ちできない、こういうことですか。もう構造的にも日本の海運は赤字を見ざるを得ないということなんですか。そういう点は打開の法はないというのですか。
  173. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 海運の国際収支を見ます場合に、いま申し上げました四億二千万ドルの赤字というのは、IMF方式という一つの方式によっておりまして、戦前はこういう形式の計算はいたしておりません。したがって、戦前と比較する場合に、IMF方式で比較すべきであって、IMF方式によれば、戦前も赤字を出しておったと私は考えております。それから、諸外国との競争上、日本の海運がどういう位置にあるか、構造的に弱いのではないかというお話でありますが、日本の船舶それ自体は、日本の造船技術は世界一であります。安くて非常にいい船をつくっています。日本の船員はこれもやはり世界で優秀な船員、それから商売としても日本の海運というのは非常な大きな歴史を持っておるという面から、私は国際的に見て諸国の海運に劣る点は、一つには資本費が非常に高いということでございます。これにつきましては、御承知のように、利子補給という制度によりまして、外国の安い金利によってつくっておる船と、日本の高い金利によってつくっておる船と、その金利差額を政府が補給するという方式で競争力は十分にある。いままで、ことし二百万総トン、あるいは昨年百八十万総トンの新造船をつくり、これが全部採算に乗って、そして船会社の状態は、先ほど申し上げましたように、逐次よくなっておるということから見まして、これだけの外航船腹量を建造しておる国はほかにはございません。したがって、日本の海運は競争力は十分にある。ただ今後の問題といたしましては、第三国間の輸送、日本を中心とする貿易だけでなくて、世界の海にどこの国の品物でも運んでいくという、そういう方面に活躍することが必要だというふうに考えて、これを推進するような施策を考えておるところでございます。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 たくさんあるんですがね。簡単なものから先に、簡単であり最も急を要するものから聞いていきたいと思います。  富里の問題もありますし、離島振興の問題もあり、その他いろいろありますが、これはまあ行政上の処置の問題ですけれども、自動車運送について、これはひとつ自動車局長に聞いておきたい。これは具体的な問題ですから、話は大体ぼくも個人的に坪井さんとも話しておるから御理解あると思うんですが、あまり詳しくは言いませんけれども、具体的にも言います、大臣もおりますから。大阪におけるタクシーの増車問題で非常に問題になっておるということを聞いておるんですが、なかなか運輸省なり陸運局では認めないというんです。その理由としては、陸運協議会ですか、からのいろいろ意見もあるということでやらないんですが、理解できない点があるんです。大阪は御存じのように、万国博も近づいておるし、そういう点で需要が相当伸びておると聞いておるんですが、運輸省としてはなぜ増車が認められないか。それについて私は納得しておらないんですが、この正式な場所でひとつ御答弁願いたい。
  175. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) 大阪府下におけるタクシー事業者は、昭和四十一年四月現在で二百十一業者ございます。そのうち、市の区域に属するものが百八十業者でございます。これらのうち、資本金五千万円以上の業者はわずかに九社でございまして、事業者の大半は中小の零細企業者で構成されております。こういった関係で企業基盤が非常に弱いということから、最近における不況を反映しまして、これらの事業者のうちには経営不振におちいるものもあらわれてきておる。こういったような情勢で、陸運局としましては、自動車運送協議会にいろいろ御相談をしたわけでございます。その結果、企業体質の弱きに基因する交通事故発生、あるいは利用者に対するサービスの低下、労働紛争の激化、こういったような現状から見まして、この際、まず企業の合理化あるいは近代化ということによって体質改善を優先すべきである、そういったような意味合いの御意見が出まして、現在、車をふやすということよりも、内容の改善をはかるということに陸運局としては全力をあげておるわけであります。したがいまして、新規の免許それから一般的な増車につきましてもしばらく見送って、とにかく体質改善を優先して整備さしたい、そういうことで現在のところちょっと手控えておる事情でございます。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 運輸省は一体、もちろんこの十一月二十四日付でこの大阪陸運局運送協議会から答申じゃないが意見の上申がある。しかし、この内容を読みますと、運輸省はこれを利用する国民の立場から取り上げてそういう措置を考えておるのか、それとも業者の、特に大業者の意向をいれてそういう行政をやっておるのか、私はその点がこれを見ましても理解できない。御存じのように、大阪の場合は総自動車数七十万といわれておりますが、そのうちに一万二千台ほどのタクシー、ハイヤーがあるらしい。しかも、非常に危険ないわゆるやみタクという、これが横行しておるのですね。そういう状態にあって、大企業のいわゆる企業内容がいけないから増車しない。そういうことでは、運輸省は一体大企業の業者のために自動車行政をやっておるのか、タクシー行政をやっておるのか、それとも利用する大衆のために考えておるのか、その点を私は理解できない。もう少し説明しますと、今日、大都市のタクシーというのは、いわゆるマイカーがふえて、非常に特殊な階級の人はレジャーを楽しむとか通勤に利用しておりますが、タクシーというのは大衆が利用する唯一の、地下鉄とかそういうもの以外のこれは大衆交通機関ですね。それが、業者がたまたまそういう意見を出したからといって、いまその大阪の交通事情を考えずに、そういう体質改善、体質改善と言うのはどういうことなんですか。聞くところによると、採算のとれぬ業者はその権利を売ってしまえ、また、権利を買えとか、そういうことを言っておるということを聞いて、私は大衆の意向というものを一体どういれておるかということがわからない。その基本的な考え方はどうなんですか。
  177. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) 運輸行政の目的とするところは、交通事業として安全で良質な輸送サービスを提供する。このためにいろいろ施策をしておるわけでございまして、現在の企業体が、先ほどお話ししましたように、非常に弱体である。それが交通事故の原因となり、あるいは利用者へのサービスの低下、あるいは労使の紛争のもとになる。そういったようなことから、まず体質改善をはかることによって良質のサービスを提供するということが大衆の利益に合致する、そういう考え方で体質改善を急いでおる。したがいまして、需給関係において、現在景気が好転しつつありますので、いまのままで増車をストップしていくというような必ずしも考え方ではないのでございまして、昨年の不況にからんでそういった事態が起こりましたので、その時点において、そういった体質改善を先にやる。あと需給の問題につきましては、またさらに経営の問題その他の点からいって考慮すべき問題と考えております。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは、局長が体質改善と言われれば、不況で、いわゆる何といいますか、タクシー業者がもっていかないと言うが、そうじゃない。実際は、昨年から見ると一割ほど水揚げが上がっておる数字を出されておる。その数字を出して大阪陸運局長にそれを検討してくださいと言っても、それはしない。しておらない。大業者から構成するこの協議会で出されたものを陸運局が信じて、体質改善がこれが先だということを言っておるらしい。もちろん、民主的に考えて自動車運送協議会の意見を聞くということは私はいいと思うのです。これは運輸省設置法にもあるのだからいいですが、その構成は、そういう中小企業の人々の意見というのは入らない構成になっておるのです。利用者といっても——名前は言いませんが、利用者といっても、自家用で走っておる人が利用者代表なんです。タクシーを利用している人が利用者代表じゃないのです、構成が。そういうことで、ほんとうの大阪市民が要求しておるそういうタクシーというものが充足できるかということに問題がある。そういう構成の協議会が出した答申が、体質改善が先で増車はあとだということを信じて運輸省がそういうことをやるということについては、私はそこまで言いませんけれども、一体どちらを向いて自動車行政をやっておるかということなんです。いま坪井局長が言われたように、すでに大阪は御存じのように、この前の東京オリンピックと同様に、万国博が近づいておる。したがって、やはり大阪市民がどう考えるかということをまず頭に置いて、そうして私はこの陸運行政をやってもらいたいと思うのですね。業者の体質改善、中小業者は台数をふやしても十分やっていけますと、もうすでに車庫も建てております。運転手も確保しています。政府から一銭も補助金は要りません。ただ十台ほどやってもらいたいといち申請はいかない。大業者は遊休車がある。その遊休車を走らせないで、中小企業に台数をふやすと、自分のほうに影響するから、それはいけないという意見がある。そういう矛盾した内容のものを含めて、陸運局なりまた運輸省が、増車はやらないのだと言うことについては、私は何も中小企業だけをどうこうという立場でないが、われわれの立場からして、あまり中小企業に対しては私は冷淡な措置じゃなかろうか。政府は補助金を出さなければならぬ問題であればこれは大蔵省関係の問題であるけれども、そうじゃないのです。大阪市民はやみタクで困っておる。タクシーはもう少しあってもいいという希望がある。そういう中で、中小企業のわずかな一社十台くらいはせめて増してもらいたいという、そういうものを、大業者は要りませんから中小企業者もそれはやらぬということについては、私は陸運行政がどうなっておるのか、私はどうもその点が納得いかないですから、それをひとつはっきりしてほしい。
  179. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) まあ、中小企業者が増車を非常に願っておるという声をずいぶん聞いておりますし、一般的に車が、規模が小さいとそれだけ経営が困難であるという事情もよくわかるのでございます。そういった意味で、業界全体のレベルアップということからいきましても、中小企業の増車ということについては、われわれとしても、特別に今後増車の機会には考慮すべきであると思っておるわけでございます。ただいま申しましたように、陸運局としては、自動車運送協議会の御意見もありまして、当面体質改善ということに力を注ぎ、さらに、一般増車の際にはそういった事情を考慮して増車を考えていきたい、そういうふうに申しておるわけでございます。
  180. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一体、体質の改善ってどうするんですか。大企業の方々は体質改善だが、中小企業の人の体質改善は、増車をしてもらいたいというのが体質改善だと私見ておるのですがね。体質改善できやしない。しかも、私大阪のほうばかり言うのじゃないですけれども、名古屋とか東京では五十台まで引き上げて認めているのに、大阪だけ三十台にとめておくという理由がどこにある。大阪はそんな必要ないという見通しはどこにもない。大業者がそう言うから陸運局がやらぬだけでしょう。なぜ大阪だけそういうふうにできないのか。
  181. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) タクシーの規模別の事業者数でございますが、東京におきましては、二十両から二十九両までの規模のものが七業者、三十両から五十両までの規模のものが二百二十三業者、これに対しまして大阪では、十九両から三十両までが五十五社、それから三十一両から五十両までが五十三社、こういったことで、大体三十両見当の近くには両者ともいっているということで、特別に大阪が規模が小さいということにはなっておらぬと思います。ただ、ある年次において、東京と大阪を比較しますと、免許をもらったときのベースが東京は二十両から出発したと、大阪は十五両から出発したと、そういった関係で、ある程度の違いがあるわけでございます。それらの点につきましては、今後増車の機会に十分に調整をしていきたい、そういうふうに考えております。
  182. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、そういう業者の実態がどうか。許可基準をなぜ東京は五十台であって、五十台やらないのか、これは業者のかって。大業者なんかは四百台、五百台持っておっても、それをやらずに、遊休車として回さずにやっておるところもたくさんあるのですからね。その基準を引き上げて、それだけの要望を満たしたらどうかと、こう言うのです。それをできないと言うのかね。実際、それだけあってもやらなければ、それを取り消してもいいですよ。ぼくが言いたいところは、大業者が運転手がないとか遊休車を遊ばせておいて、現実には二万四千台あるというけれども、走っているのはそれほどない。そういうことで、認可だけは大きい業者のほうはたくさんしておいて、しかも、その権利をもらおうと思ったら、買えと言うのですよ。ただ認可するという、運輸省から認可もらったときは。渡すときは、これ法律上どうなるか知らぬけれども、それを受け取ったときにそのまま金で権利を買うという、体質改善というのはそういうことをやれという——そういうことはぼくらは常識で考えられないので、とにかく申請されたものを全部やるというわけじゃない。やっぱりそういう設備なりそういうものを調査をして、交通事情も調査をして、大企業の体質改善というものは遊休車を整理してやることが体質改善だが、中小企業の方々は最低五十台に上げてもらわなければ体質改善できないと言うのだから、その体質改善というものは、増車するという以外にないじゃないかということなんです。しかも、その計算書までちゃんと陸運局長に、三十台のときにはこういう経営状態になります、五十台にしてもらったらこれだけよけいいけますと、しかし、すぐ三十台、五十台は無理でしょうから、その半分くらいでも何とかお願いしようと言って中小企業の人たちが嘆願をしておる、嘆願を。それすらも運輸省が認めぬということについては、ぼくらは、佐藤総理も施政演説で中小企業の育成をしますと言っているのだが、このタクシー界においてはそういうことは言えない。その点が私は運輸大臣に聞いてもらいたかった。知らなければ知らないでいいのですよ。これは中小企業の業者の問題じゃない、万国博が迫ってきて、この交通——タクシーの需要がふえたというのに、運輸省はどうするかということを見たいのです。オリンピックのときには、一度にあれを増車したために非常に混乱したのです。したがって、これは中小企業の問題だけでなくして、大阪の万国博を迎えてどう交通を持っていくかということは、少なくとも運輸大臣ぐらいはそういうことを考えて万国博を日本に招致したと思うのですね。そういうものを考えても、私は、ただ増車が、大業者の体質改善をやらなくちゃいかないというようなこと、まずこういうものが出たから、それを先にやらぬと増車しないということでは、私は聞けない。その理由がはっきりすれば私はいいですよ。これはもう増車を減してもいいですよ。そういうことはないのだから、やみタクも走っているし、大業者は休んだ車を走らせないで、認可もらった車を走らせずにやっている。中小企業の人は、せめてフルにやろうと思っても、十台、十五台ふやしてもらおうと思ったら、それはいかない、こういうことはどこにあります。私はわからぬ。だれもわからぬ。この点はどうですか。
  183. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) タクシーの事業規模としての適正な規模はどのくらいかという問題は、かねてからいろいろ問題になっているわけでありまして、東京でも昔は十両ぐらいから免許していたと思います。その後十五両になってみたり、それから三十六年の免許から、二十両が適正である、そういうふうに変わってまいりました。それが三十八年になりますと、三十両というふうに新規免許の場合の適正規模の考え方もだいぶ変わってまいりつつありまして、現在において何両ぐらいが規模として適正であるかということは、にわかに判定することはなかなかむずかしいと思うわけでございますが、東京、大阪を本省において比較してみまして、そう著しく不均衡であるというふうには考えておりません。しかし、規模が小さいということは、それだけ経営が困難であるということはよくわかりますので、増車の機会には、そういった中小企業の事業者に対する割り当てを十分考慮していきたいと、そういうように考えております。
  184. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あんたらのポイントは、そうそれるからいかないのですよ。実際タクシーの必要だということは、一応認められている。ところが、大企業のほうは、持ち過ぎているからそれをフルに回転できないので問題があるのですよ。それはよく知っている。大企業の犠牲に中小企業はならなくちゃならないかということを私は言っている。規模が何が適正だということになれば、それはいろいろありましょう。適正規模が五十台か百台か、いろいろありましょう。しかし、少なくとも五十台は最低必要であるというそういう見解があるならば——それは必要ないのだと、十五台、二十台でいいのだというならば別ですよ——しかし、ささいな経営試算書をつけて、陸運局長に嘆願したのを検討もせずに、大企業を中心とした運送協議会の答申だけを信じてやることについて、私は運輸省の見解は間違っているのじゃないか。利用者は要らないのだと言っておらないですよ。東京でもそれは遊んでる車は相当ありましょうけれども、まあオリンピックで相当増車したのです。大阪の場合は約二千台のやみタクがある。これが非常に社会的に問題となっているのですよ。表面に出てないが、みな泣き寝入りですよ。したがって、そういう事態の取り締まりもできない。しかも、タクシーの必要な市民の声も聞かずにやるということについては、私は運輸省は一片のそういう答申——答申じゃないのだ、これは意見書として出されたのですが、それを金科玉条のごとく考えているところに、私は無能だと思う。もっと指導性を持たなければならぬと思う。したがって、こういうものが来たときに、この中に中小の意見が入っているなら私は問題にしない。入っていないのですよ、全然。メンバーがそういうメンバーで構成されている。そういうものをもってやると、中小企業の方々というものは——政府がいつも言っているじゃないですか、一体中小企業というのはどこにすがっていったらいいか。これ以上言いませんけれども、選挙のときに自動車協議会から相当献金していますよ。全部数字を私は聞いておる。そんなこと言いませんけれども、社会党はもらってない。それでも私は、そういうことではいかぬだろうということで、きょう取り上げておる。必要でなければ別として、万国博が近づいてきて必要だということは認められておるのに、坪井局長は、やります、やりますと言うけれども、いつまでにやるのか、少なくとも三月からやるべきであるということを私はこの前電話で言ったけれども、なかなか聞かない、もう五月になっておる。一体これについてどういう考えであるかわけがわからぬ。
  185. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 大阪のタクシーの実情は、いま山本委員も言われましたし、坪井局長も申しましたように、現在の時点では増車をやるということを考えておらぬという状態でございますが、私のところにも、五十台以下のはやはり五十台くらいに増してもらわなければ経営も採算がとれないというような陳情をかなり受けておりますので、同時に、大阪は、いま山木委員も仰せられましたように、万国博が近まっておりますので、そのときには当然いまのタクシーでは不足な状態が来ることは、これは間違いないと思います。そこで私は、できるだけ三十台あるいはその程度というものを、経営の合理化によってやっていける範囲、五十台くらいまでにふやしていくように、これはやはり一気にはなかなかふやしにくいかもしれません。万国博前には五十台くらいにふやすように、そこに増車の重点を置いていきたい。たくさん持っておるようなところは、無理にやはりふやす必要はない、現在の小さい経営のところを採算の合う線まで引き上げていくという方針でふやさしていくことにするように、これは一時にはふやしにくいのでございますが、一年に少しずつふやしていって、万国博前には五十台くらいになるようにするようにということを、この間大体陸運局長には指示しております。そういう方向でいきたいと思っております。やはり現在大阪の実情は、どうも私らも行ったり——しょっちゅう行くわけではございませんが、行ったりしてタクシーを拾うといたしましても、東京よりは拾いやすいんじゃないかという気もいたしますが、やはり自動車、タクシー業の状態から見て、いろいろ問題があるのでございますので、今日は坪井局長が言いますような方針で、近い将来に一応増車する際も、いま言いましたように、中小企業を重点に取り上げて増車さしていく、かように考えておる次第でございます。
  186. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一歩前進した。運輸大臣にあとで聞こうと思ったのですが、これは橋本官房長官にも会っていろいろ意見も言っておる。万国博といっても、近づいてから一度にふやしたって、御存じのように、車庫も要る、運転手も確保しなければならぬ。いま言われたように、一度に三十台を五十台にしてくれというようことでもない。その方針はいいのですが、少なくとも本年内にやるとかいう話ですが、これは坪井局長もここまで出ておると思うのだが、それは時期の問題にしぼられておると私は見ておるのですよ。それを、何かそこに詰まっておるところがあるのが私どうもふしぎなんです。したがって、いま本年内に半分なら半分、また事情を見て六台なら六台、七台なら七台ということで、もう案を出さぬとおさまらぬですよ。運輸大臣は万国博まで徐々に上げていくと言うが、その徐々に上げる計画はいいが、まず初めの手始め、いつ考えるかという問題、それ言うたら、私この質問終わります。何かむずかしいことがあるのですか。
  187. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) 大阪市内の問題につきましては、陸運局長とわれわれと常にいろいろ内部では話し合いをしております。しかし、いま増車の時期ということを明確に私がここで申し上げる段階になっておりませんが、市外につきましては、陸運局でも近くそういった増車について考慮しているようでございます。市内については、まだはっきりとわれわれも、いつどうするというところまでは、現段階では聞いておりませんが、市外についてだけですね、そういう話は聞いております。
  188. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点がぼくは理解できない。結局ふやせないという理由はどこにあるのですか。この答申だけ言われたっていけませんよ。これは全般の意見を盛り込んでない。大体運輸省関係の審議会については、これは今後質問しますが、問題は相当ありますよ。バスの路線の問題やいろいろありますが、きょうは言いません。運輸省はぼくはどうしても納得できないというところがあるのです。こんなことは、ふやすということは大臣の方針がきまっている。橋本官房長官も、早くやらなければいけない、その上に大阪の陸運局長と相談をしなければまだ時期は言えない。一体どういうことなんですか、やはり大業者の圧迫というものがあるのですか。
  189. 坪井為次

    政府委員坪井為次君) タクシーの需給の問題は、これは陸運局長が判断するたてまえになっておりまして、本省ではいろいろ陳情もありますので、そういった陳情について十分陸運局長を指導はしておりますが、最後はやはり陸運局長の判断ということになりますので、そういった意味で、われわれとしては、ただいまお話しのような趣旨も十分陸運局のほうには行政指導としてやる。したがって、陸運局としてもこの方法についてはいろいろと考えておると思いますが、最後の責任はやはり陸運局長が負うことになっておりますので、私としてはあまり申し上げられないということでございます。
  190. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ほかの委員会ではそれを許しますが、内閣委員会はそういうことは聞きませんよ。一応の権限委任は知事にやっておりますが、こういうタクシー行政の全般のものは、やはり国会で運輸大臣が方針を出すべきですよ。具体的に、この社には何台、この社には何台、これは行政指導でいく。基本的な問題……。それなら陸運局長をここに呼んでくれますか。陸運局長に言わなければこれは解決できないと言うなら、陸運局長を呼んでください。大体行政機構というものはそういうものですよ。いまのところでは知事が権限を持っているのです、法律上は。それを知事の判を陸運局長がめくら判を押している。そういうこと自体に問題はあるのですよ。そういう事態を全然触れずに、陸運局長に権限があるから、それは陸運局長がきめるのだ。そういうことはわれわれは納得できないですね。運輸大臣がすでに、万国博の問題もあるし、それは増車しなくてはいけないということを言っておられるのだから、運輸行政の最高責任者、日本の政治をあずかる国務大臣、それが言っている。私は何日に免許を出せというようなことを言っておらない、あなたも年内にやらざるを得ないだろうというようなことも言っているらしいのですが、年内と言ったって、十二月の暮れになってもこれは年内でしょう。そういうことではもういかないということを言っているのだから、ここに何月何日にやれということは言わないが、それは早急にやるべきであるということは大臣言っているのだから、大体の私は見通しがつくと思う。だから、あなたは行政上の権限はないから、陸運局長と相談しなければできませんが、早急に夏ごろまでにひとつ話をしていこうということであれば、これはまた、われわれそれは絶対的であるかないかは別です。いろいろ問題はあるわけですけれども、やはりそういう一つの基本的な政治上の方針を持って行政指導をしなければ、陸運局長と相談して、いかないからいけないというようなことなら、一体政治というものはどこでやっているのですか。陸運局長が自動車行政全部やって、それでいいのですか、私はそうではないと思う。事務的なものについてはそうなっているが、事務的といったって、知事が許可権を持っているんでしょう。陸運局長がいまのようにああいうことになっているから、知事は全然知らないで判だけ預けている。そういう変則なこと、だから、そういう点で局長は言えないから、大臣ひとつその点明快に答弁してください。
  191. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) タクシーの実情等とにらみ合わせまして、先ほど言いましたように、万国博等の際の交通の繁雑になることも考えられますので、できるだけ早い機会に増車の計画を立てるようにということを指導しておりますが、私は、大阪の陸運局長もその方向検討していると思いますが、時期等につきましては、まだ打ち合わせたことがございません。できるだけ早くということを申し上げているわけでございます。
  192. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣がそう言って、できるだけ早くということは、万国博はまだ三、四年あとですが、できるだけ早くと言ったって、そこは私は、どうも行政官庁になると、私は何月何日ということは無理だと思います。それをここで言えぬということは私はわかりますけれども、そう言っておいて、また、地元のほうで、地元で反対している勢力があるのだから、大臣御存じかどうか知らぬけれども、猛烈に増車を反対している者があるのです。それは大企業です。そういう中で大臣がそういう説明をされても、われわれとしては不安だが、結局夏ごろまでに大体具体化しますか。
  193. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 私は、ことしのうちにどれだけかはふやすようにということを言っております。ことしのうちといいましても、さっき言われるように、十二月もことしのうちでございますが、そういうことではなく、できるだけ早くいろいろの準備を整えて、大体は早くするようにということを言っているわけであります。
  194. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはずいぶんたくさん質問があるのだが、大臣も実は腹のうちはわかっていると思う。ここで無理に押えつけて日にちまでということは言わないが、しかし、これは十分理解してもらいたいと思うのは、私も業者がどうかというのじゃなくして、大阪のことばかり言ってはいかぬ、ほかのこともあるのですが、現状は、あなた拾いやすいと言われていますが、東京は現在三万台近くタクシー、ハイヤーがあるらしいのです。大阪はその半分ぐらいです。したがって、地域の狭いところにそれだけだから拾いやすいといいますけれども、大阪の場合も、拾いやすいといっても、あなたどこで拾われたか知りませんけれども、拾いやすいところで拾われた。大阪は御存じのように、東京よりも道路の整備がおくれておりますから、交通難です。しかし、府下全体で一万二千か一万四千台では、大衆利用といってもそうはできない。しかし、私はまた、別の業者の角度がありますから、ふやすということによって料金収入が減ってくることは、これまた避けなくちゃいけない。これは中小企業、大企業が一緒だから、それを見るけれども、今度の場合にとられている措置というものは、私はそう通常な、ノーマルな場合の私は陸運局の措置であるとは思っておらない。ここに何か問題があるということで追及しました。しかし、大臣は、そういうことで、十二月三十一日も本年だということではないという言明がありますから、この問題については大臣のいわゆる善処と誠意というものを十分私ここで認めまして、この問題については質問を終わります。大臣、いいですね。
  195. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 善処いたします。
  196. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  197. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。  それでは本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  これにて散会いたします。    午後五時三十六分散会      —————・—————