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1966-04-19 第51回国会 参議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 船田  譲君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 山本伊三郎君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        総理府人事局長  増子 正宏君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        外務政務次官   正示啓次郎君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        労働省労働基準        局労災防止対策        部長       石黒 拓爾君        労働省労働基準        局労災補償部長  中村  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○行政相談委員法案内閣提出) ○国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  行政相談委員法案議題といたします。  本案は、去る十六日、本院先議として提出され、本委員会に付託されました。それでは提案理由説明を聴取いたします。
  3. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) ただいま議題となりました行政相談委員法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  行政管理庁は、昭和三十六年から民間有識者行政相談委員を委嘱し、全国各地において行政機関等業務に関する苦情の受付をお願いし、少しでも多くの苦情をあっせん解決するようつとめてまいりました。  しかし、現在の行政相談委員は、人権擁護委員民生委員等法律で置かれた委員に比べて何かと活動の上に不便をかけておるのが実情でありました。したがって、このたび、行政相談委員を名誉職的な、権威の高いものとし、その社会的地位を明確にし、苦情相談の事案についてみずから助言をし、及び通知する等の道を開いて苦情解決促進をはかるなどの点を法律をもって定め、行政相談委員制度のより効果的な発展をはかることとするため、この法案提案いたした次第であります。  次に、本法案概要について御説明いたします。  行政相談委員は、国の行政機関及び一部の特殊法人業務に関する苦情相談に応じて、必要な助言をし、及びこれを関係行政機関等に通知し、その解決促進に資することをその主たる業務とし、これを行政管理庁長官から民間有識者に委嘱することにいたしました。  このように、行政相談業務民間有識者に委嘱することといたしましたのは、その業務性質から見て、行政管理庁の組織の一員がこれに当たるよりも、国民の身近にいる有識者が役所と国民の間に立って、双方の信頼と尊敬を受けながら、みずからの責任でその解決に奉仕するものといたすことが適当であると考えたからであります。  行政相談委員は、個々の苦情解決促進に努力することにとどまらず、苦情相談を受けた体験に基づいて、行政運営改善に関する意見があれば、行政管理庁長官にこれを述べることができることとし、国は行政相談委員からも、すぐれた改善意見提出を期待することにいたしました。  行政相談委員は、その扱う業務性質から、業務上知り得た秘密を他に漏らすこと及びその地位を政党または政治的目的に利用することを禁止する等の規定を設けました。  行政相談委員は、名誉職的な性格であることを明らかにするため、国からの報酬は一切これを受けないことを規定するとともに、業務を遂行するに要する費用は、予算の範囲内で支給を受けることといたしました。  現在、行政管理庁長官の委嘱を受けている行政相談委員について必要な経過規定を設けるとともに、本法案施行期日は、昭和四十一年七月一日といたしました。  以上が、この法律案提案いたしました理由及びその概要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 以上で、提案理由説明は終わりました。  本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  速記をとめて。   〔速記中止
  5. 熊谷太三郎

  6. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。前回に引き続き本案質疑を行ないます。  なお関係当局の御出席は、安井総理府総務長官増子人事局長山本人事局参事官佐藤人事院総裁大塚人事院職員局長森林野庁職員部長、以上の方々でございます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三お伺いいたします。  保険法平均賃金の二〇%の変動があった場合には、この給付額を改定するということになっておるわけです。そうだとすると、補償法についても公務員賃金が二〇%変動があった場合には、年金額の改定を行なうべきであるということが理の当然であろうと思うのです。そこで人事院にまずお伺いいたしますが、今後年金スライド制について、どのように対処されようとしておられるのか、まずこの点からお伺いいたします。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お示しのように、労働基準法には給与関係で二〇%というパーセンテージをあげております。私のほうではパーセンテージははっきりしておりませんが、諸般のいろいろな条件と並べて公務員給与の上昇ということをうたっておるわけでありますから、われわれがこの運用に今後当たりますについては、やはり基準法の場合の二〇%というようなことも一つのめどとして考えていくべき実態であろうというふうに考えております。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このことについて総理府立場ではどのようにお考えですか。
  10. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 前回も御答弁申し上げたかと思いますが、まあ恩給等につきましても、いまこの原則的に人事院総裁の言われましたような態度で臨んでおりますが、これを機械的なスライドとするにはもう少し検討する余地があると思います。いまの人事院総裁お話のような精神で、運営はできるだけやっていきたいと思いますが、いまのところ規定化をしていないわけであります。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この恩給法などのスライド制は、言うなればまだ精神規定限度を越えてないと思うのです。ほんの精神規定にすぎない限度があるわけであります。具体的にどのようにスライドさせるかということについては、今後の課題となっておると思うのです。そこで補償法規定についても恩給などと同様に扱うということであるならば、将来ですよ、将来恩給などのスライド制が行なわれるようになった場合には、当然これと同様な措置をしてしかるべきだと思うのです。これはまあ当然なことだと思うのですが、このことをまず確認しておきたいと思うのです。
  12. 安井謙

    国務大臣安井謙君) お話のように、恩給のほうでそういうふうな制度をとります場合は、当然これは並行してやるようになると思っております。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この補償法が準拠をすべき保険法、この保険法におけるスライド規定との関連、そこから見て、年金額スライド制について、将来どのような形に持っていくお考えか、人事院としてはどういうふうにお考えですか。
  14. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 前回たしか申し述べたと存じますが、私どもの意見の中でも、やはり同様にその二〇%ということははっきりしておりませんのでありましたが、要するに、これはいまの恩給その他公務関係部内の、今度は面のバランスを考えて、そういう大まかな表現をとったということでございます。したがいまして、この運用にあたっては、もちろん労災関係の二〇%というものがあるということは十分意識しながら、それに臨んでいくことは当然だと思いますけれども、いま申しましたように、他の公務関係恩給その他の問題もありますので、その辺を両方勘案しながら適切な措置をとってまいりたいというふうなことになると思います。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますのは、公務上の災害を受けた職員福祉についてですね。これを見ますると、外科処置に関する施設等をすることになっておるわけです。これは具体的にはどのようなことをやっておられるのか、このことについてお伺いしたい。
  16. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 大体実施具体化につきましては、人事院にそれぞれ御検討願ってやっていくというたてまえにいたしております。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、人事院としてはどういうふうに考えておられますか。
  18. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 御質問は、福祉施設に関する問題ですか。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ええ、そうです。
  20. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 福祉施設に関しましては、現行法法律上の規定がございまして、まあ公務上の負傷または疾病のために身体に障害を残した場合に、たとえば義肢とか義眼とか、あるいは補聴器その他いろいろな補装具があるわけでございますが、それらの補装具支給、それから補装具の装着をやるために外科の上でのいろいろな多少手術のようなことが必要な場合もございます。そういう外科処置をとった場合の費用支給、それから非常に重度障害であって、たとえばなおったあとで障害そのものは、治療そのものは必要がなくなったのですけれども、なお温泉で療養するという必要があるという場合もございます。それらの費用というものも支給できる。それから職業教育のために職業教育をやっております訓練所等のそういう施設に通うというような場合の費用等支給できるということになっております。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案がもし通りますと、その他必要な施設を加えることになっておるわけですね。
  22. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) はい。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これはこれを加えることになる理由は、一体どういうことですか。それからもう一つお伺いしたいのは、その他必要な施設というのは具体的にはどのようなことをさすのか。この二点です。
  24. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 実は国家公務員災害補償法のほうでは、その他必要な施設というのが現行法にございませんでして、先生のおっしゃるとおり、今回加えるものでございます。しかし、労災法のほうでは三十五年から入っておりまして、福利施設のいろいろな具体的な施設以外に福祉施設といったようなものは、特に労災の場合は保険運用しておりますので、その保険運用いかんによっては望ましい福利施設のようなものをいろいろ運用できるわけでございます。ただ現在の労災法でもってその他必要な施設という項目を動かしておりますのは、実は重度障害者に対しまする生業援護金と申しておりますが、これは実は新たな生業をやるために融資を受けた、その融資を受けた場合の利子の補給をやっております。これらの点は、国家公務員災害補償法では同様な施策をまあ現在までは、現行法ではなし得ないわけでございますが、今度の改正によりましてこれらの点についても労災法に見合うような施設を施したいということでございます。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次には、最近における公務災害発生状況は一体どうなっておるか。特にここでお伺いしたいのは、ここ数年間における傾向は一体どうか。さらにまた、この際資料提出をお願いしておきたいと思いますが、最近五カ年間における年次別発生数、そういうものを御提出いただきたいと思います。ここではその数年間傾向だけでも概要を御説明いただけばけっこうです。
  26. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 五カ年間の正確な数字は後刻提出いたしますが、この数年間を見ますと、たとえば三十九年度の場合は一万五千件ほどの件数でございます。補償金額にいたしますと約六億円でございます。私のいまの記憶では、最近数年の傾向としては補償件数が漸次減っております。千ないし千四百件程度減少しておりますので、これは災害補償を起こさないような安全衛生の問題の措置とからむだろうと思いますが、その点はたいへん喜ばしい傾向ではないかと思っております。  念のために、一言よけいなことを付加いたしますと、公務員の場合はいま申し上げたように、一万五千件の災害に対して約六億円として、一件当たりの費用としては約四百円くらい、これは民間と比べると非常に低い、労災の場合と比べますと非常に低い費用になっております。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、公務災害認定についてお伺いいたしますが、現在この認定実施機関でそれぞれ行なっておるのでありますが、その認定について、実施機関によっては異なるような事態が起こり得ると思うのです。そういうことについてはどうなっておるかということと、人事院はその基準についてどのように定めておられるのか。それと、さらに認定については人事院において統一的に行なうことが妥当だと思うのですが、そのことについては現状はどうなっておるか。また、将来はどういうふうにお考えか、こういう点について御説明いただきたい。
  28. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) まず、公務上の傷病であるかどうか、あるいは障害であるかどうかという認定に関しましては、通達でもって認定基準を出しております。かなり具体的に指示しておるわけでございます。したがいまして、通達によって判断できる場合は問題ないわけでございますが、それ以外にこの通達によりがたいような場合に関しましては、人事院協議をいたしまして、その承認を求めるような手続をとっておるわけでございます。この承認を求める件数年間三、四百件ございますので、実施機関において認定がむずかしいという場合には、われわれのほうでこれを専門委員にお伺いいたして認定上の基準を示しておりますので、その点では決してばらばらにならない、統一がとれるというふうに思っております。  それからもう一つ実施機関担当官を集めまして、年間四回くらいの会議を開きまして、ないしは数日にわたる研究会のようなものもやっております。これらの研究会なり担当官会議におきましては、もちろんおっしゃるような認定基準統一の問題というものはいつも中心の議題になっておるわけでございまして、各省庁間と実施機関間の意思の疏通がはかられるというようになっております。そのほかに、最近ここ三、四年でございますが、一種の監査のような——実施機関でおやりになっていらっしゃる扱いに対する監査のようなことをやっておりまして、昨年度の場合ですと、約対象人員の二割に当たる程度監査を各省庁、地方中央あわせまして行なっております。これらの監査でもっていまお話に出ましたような認定基準のアンバランスと思われるような事態が発見されましたときには、適切な指導なりあるいは訂正なりということを行なっております。ただ幸いにしてここ三、四年間監査においてはそれほど著しい過誤といいますか、そういうものはほとんど発見されないが、ごく事務的なケース、あるいは多少認定時期を間違えたとかなんとかいう、比較的事務的なささいな指摘事項しか発見できていない、そう思っております。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体以上のことでわかりますが、外傷の場合は比較的容易だと思うのですが、これが内部疾患の場合を見ると、はたしてこれが公務であるかどうかということの認定は容易じゃないと思うのですね。そこで、内部疾患の場合には、一体どういうような基準でやっておるのか、どういう扱いをしておるのか、そういう内部疾患の場合について御説明いただきたいと思います。
  30. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) おっしゃるとおり、確かに事故による外傷の場合は、これは業務上に基因するということ、あるいは業務遂行中というようなことが、非常に明らかな場合が多いわけですが、いわゆる病気となりますと、業務上に基因するのか、あるいは業務遂行性があるのかという点ではむずかしい場合がしばしばございます。しかし、いろいろな業務に関しまして起こる疾病であって、いわゆる業務上明白だと、それからかなり多発するというようなものに関しましては、職業病として扱いまして、災害補償法の場合は、職業病に関しましては、附則の別表をもって指定しているわけでございます。したがいまして、内部疾患であっても職業病認定できるものに関しては、これは職業病にそのまま扱えるという仕組みになっております。それ以外の、職業病以外の場合になりますと、おっしゃるとおり、たいへんむずかしい場合も出てくるわけでございますが、これらの点に関しましては、先ほどお答えいたしましたように、各実施機関人事院協議する場合が多うございまして、これらの協議のあったものに対しましては、十分の資料提出いただいて、かつ人事院としては医者その他の専門家専門委員に委嘱しておりまして、これらの先生方の御判断をいただいて、職業病であるかどうかの認定を行なっております。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次には、災害認定等についてもし不服があった場合、そういう場合には人事院に対して審査申し立てができることになっているのですが、いままでそういう事例があったかどうか。もしあったとすれば、どの程度あったか、こういうことについて御説明いただきたい。
  32. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 公務災害認定に関する審査請求件数そのものは、はっきり記憶しておりませんが、審査をいたしましたのは、九十一件いままでございます。この九十一件のうち実は三十二件が申請者主張が、全部でなくても一応通ったという形になっておりますので、三分の一程度が、審査請求申し立てによってその申し立てした方々主張通りの、ほぼ主張通り解決を見たという現況でございます。
  33. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、実施機関公務認定されないために人事院審査申し立てを行なった、これに対して人事院はこれを公務認定した事例はあるかどうか、もしあるとすればどの程度あったか、こういうことについて。
  34. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) ただいま申し上げましたように、九十一件中三十二件は大体申し立て者主張が通っておりますので、これらのうちにはかなりの数が、いま先生がおっしゃいましたような、公務外認定されたものが公務上の傷病になった数が含んでおると思います。ただし、私ただいまは正確な数字を持ち合わせておりませんが……。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお伺いしたように、実施機関では公務認定しなかったが人事院公務認定したと、こういう事例がもしありとすれば、それはどの程度あったのですか。そういう前提に立つと、人事院審査実施機関のこの認定は違うわけですね。結論的に言うと、それは一体どういうところに原因するのか、こういうことをお伺いしたい。
  36. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) もちろん、前の御質問のときには、統一的な見解で運用しているためにいろいろなことをやっていると申し上げたわけでございますが、ただいま申し上げました九十一件中三十二件と申しますのは、実はこの制度始まって以来の数字でございまして、先ほど申しましたように、最近で一万五千件ぐらいの件数がございます。過去、二十六年以降としますと、これはもう膨大な数字、しかも二十年代、三十年の初めごろは、非常に件数も多かったわけでございまして、したがいまして、この件数そのものが私はそう大きな件数にはならない。また、各省庁それだけの件数実施機関において扱っております場合には、やはり下部機関においていろいろな事実の報告その他に関しまして、あるいは場合によると医者認定その他に関しても、まれには不備な場合があるということが、こういう件数として一応出てきたのであろうと思われます。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、出勤途上における災害については、現在どのように扱われておられるか。これを公務とみなすかみなさないか、こういうことについてはいろいろ問題もあろうかと思いますが、人事院は一体この点についてどういうふうにお考えか、その点について。
  38. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 通勤途上災害に関しましては、災害補償法及び労災法とも、原則的にはこれは業務上とは考えておりません。業務遂行中というような点から考えますと、通勤途上災害というのは、業務上とは考えられないわけでございますが、ただ、労災におきましても、国家公務員災害補償法の場合におきましても、特殊な場合だけを業務遂行性が高いという意味で拾い上げておるわけでございます。その拾い上げておりますのは、突発事故その他これに類する緊急要務のために、直ちに勤務することを命ぜられた場合に、その通勤途上において事故発生した場合、こういう通達——われわれのほうもこういう通達認定基準にいたしておるわけでございますが、ただ、最近のように、非常に交通災害が多い、それで場合によるといわゆる通常の勤務、ごく一般的な通勤状況じゃない特殊な通勤だってあり得るのだ、そういう場合には、まことにお気の毒ではないかというような実施機関の御要望が、これを「上」と認めてほしいという御要望が強かったわけでございますが、それで、われわれといたしましても、非常に特殊な場合、たとえば深夜勤務で帰らなければならない、深夜に出勤を命ぜられた、あるいは何らかの公務のために非常に早朝に出勤を命ぜられた、あるいは休日のようなときに休日出勤を命ぜられたというような場合、こういう場合は、ただいまの通牒にあります認定基準に、この程度まではあるいは含めて考え得るのではなかろうかということにいたしまして、実は昨年から研究しておるわけでございます。ただ、これをかりに若干解釈を広げますにいたしましても、非常にこういう表現からいえば、しぼって解するよりほかありませんので、一応こういう特殊な通勤途上災害に関しましては、人事院協議をしていただきたいということで扱っております。しかし、原則的には通勤途上災害業務上とは認定されないわけでございます。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、労働省の方にお伺いいたしますが、まず労災保険法改正について、障害補償については七級までを年金化しておるわけですが、その理由は一体どういうことか。それから八級以下については、年金化についてどういうふうに考えるか、この点についてひとつ。
  40. 中村博

    説明員中村博君) 先般の改正によりまして、七級まで年金化したわけでございます。これはほかのほうの各種保険の、ことに厚生年金保険その他との調整をとったわけでございまして、八級以下につきましては、現在一時金でございますが、これは全般的な業務災害による災害補償制度の今後の推移を見て、その推移に応じていろいろ考えていきたい、かような立場をとっているわけでございます。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年保険法改正が行なわれたと思いますが、そこで、業務災害に対する年金による補償については、他の社会保険制度との関係を考慮しながら引き続いて検討を加えると、こういうことであったと思うのです。そこで、お伺いするわけですが、労働省はどのような検討を現在加えておられるのかということと、いつごろまでに結論を出されるのか。それからまた、検討の対象となる問題はどのような点か、こういう点について御説明いただきたい。
  42. 中村博

    説明員中村博君) ただいまの御質問につきましては、全般的にどの程度年金化すべきかという点につきましては、現在他の制度との、障害等級表の問題その他いろいろな問題があるわけでございます。したがいまして、他の諸制度との調和、関連を統一的にいたしますために、現在厚生省でも障害等級について検討をお進めになっておられるわけでございます。私どもといたしましても、障害等級につきまして、専門委員会を今後設置いたしまして、慎重な検討を行なっていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、災害補償について、長期傷病補償給付である年金支給されることになっておりますが、これはいかなる場合に支給されるのかということと、補償法については、この点についてはどうなっておるのか、この点についてお伺いします。これは労働省並びに人事院にもお伺いしたい。
  44. 中村博

    説明員中村博君) 長期傷病補償につきましては、療養開始後三年たちましても、当該疾病がなおらない場合、この場合には、政府の認定によりまして、長期傷病補償に切りかえる、こういうことになります。
  45. 大塚基弘

    政府委員大塚基弘君) 災害補償法の場合は、療養に必要のある限りは、ずっと療養補償で見ていくという制度になっておりますので、この点は労災と違っております。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、保険法において、保険施設について一体具体的にどういうことをしておるのか、こういうことをお伺いしたい。
  47. 中村博

    説明員中村博君) 保険施設につきましては、労災法の二十三条に規定がございまして、先ほど人事院からもちょっと触れられたところでございますが、外科処置その他の施設に至るまでいろいろ書いてございますが、そこで私どもとしまして、保険施設として一番重視いたしておりますのは労災病院でございまして、これが全国で三十四カ所ございます。それからいま一つは社会復帰、一日も早く社会に復帰していただくための、リハビリテーション施設、これは各労災病院に機能回復のために施設する、これを相当数つけ加えて設置しております。と同時に、特に社会復帰をはかりますために、働きながら収入を得、同時に社会へ復帰される最短距離の道をつくろうということでリハビリテーション作業施設というものを昨年長野につくりましたわけでございます。これから本年度もさらにつくるということで、この職能回復施設、この点に重点を注いで今後保険施設運用してまいりたい、かように考えております。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 以下若干の問題は労働省関係になりますが、まず、労働災害についてお伺いしたいと思うのですが、政府なりあるいは経営者が、労働災害の原因については、従来はすべて労働者の責任であったというふうに労働者に転嫁しておったという傾向がいままであったわけです。ところが、最近数年間にこの労働災害が非常にひんぱんに起きておる、こういう事実から、これはただ単に労働者の責任に帰すべき問題ではなくして、政府なり経営者が労働者の責任だというふうな見方をしてきたことについては大きな誤りがあるということを指摘しなければならぬと思います。こういう観点からお伺いするわけですが、まずこのことについて、現在労働省としてはどういうふうにお考えになっておるか、労働災害について。
  49. 中村博

    説明員中村博君) 災害防止につきまして直接担当ではございませんが、労働災害の防止につきましては、特に基準行政におきましては、一番の重点施策として災害防止対策を進めておるわけでございます。そのための機構といたしましても、災害防止対策部が昨年新設されまして、鋭意努力いたしておる段階でございます。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 かつて三井三池の事故発生したとき、私どもとしては、高度成長政策と、それと相次ぐ合理化政策、ここに根本的な原因があるのだという観点から政府を追及してきたわけですが、こういうわれわれの観点からすれば、現在の労働災害はいわゆる資本主義の中における合理化、ここに根本的な原因があろうかと思うのです。こういう点についてはどういう見解を持っておられますか。
  51. 中村博

    説明員中村博君) 直接担当ではございませんので、後日に留保さしていただたきいと存じます。
  52. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  53. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、担当外でおわかりにならない問題は保留にしておいて、後ほど重ねてお伺いしますから、一応問題を提起しておきたいと思います。  次に、考えられることは、日本の低賃金体制は、もう世界的に有名ですが、そういうことと低位な労働条件、労働条件も悪い、それから弾圧的な労使の慣行、こういう基本的な問題がわれわれの前に横たわっておる、こういうことは確認されると思うのです。特に日本の労働者は、低賃金のために、いまもお話ししたように、どうしても正規の時間だけでは生活できないので、つい残業をやらざるを得ない。ということになると、これは過労になる、こういうところにこの労働災害といわゆる低賃金、労働条件、こういうことは密接な関係を持ってくると思うのです。労働行政担当の労働省としては、このことをどういうふうにお考えか。それからこのことは、給与に関する権威ある人事院総裁もお見えになっておるので、このことに対する御見解をこの際承っておきたいと思う。幸い安井総務長官即給与担当大臣が本日はお見えになっておるので、このことに対する御見解をひとつお聞かせ願いたい。
  55. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 日本の私は国の公務員関係のほうを担当いたしておりますので、公労協でありますとか、民間につきましては、私のお答えの権限外でありますので、御了承願いたいと思います。  したがいまして、公務員につきましては、御承知のとおり、毎年四月末あるいは五月一日の時点をもちまして、民間の給与とのバランスを人事院考えてもらいまして、そしてこういう程度ならよかろうという人事院勧告をいただきまして、私どもは公務員の給与の均衡維持というものに相つとめてきておるわけでございます。ただ、さいふのかげんがございまして、支給の期間等というものが人事院の勧告どおりになかなか行なわれないという点は、私どももはなはだ遺憾に思っております。少しでもそれに近いものに今後も実現をするように努力をしていきたいと思っておるわけでございます。  なお、労使ということばが当たりますかどうですか、職員側と使用者側との関係、あるいは労働組合的な運動という面につきましても、これは従来の人事院のいろんな解釈というものを十分打ち合わせておりまして、いま現在の法律人事院規則の解釈、その範囲を越して逸脱したものについては、これは適正な注意をするなり処置をとるということをいたしておりますが、それ以上進んで特別のいま労使関係で特に弾圧をすると、格別の作業をするといったようなことは考えておらぬ次第でございます。
  56. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど私にも御指名があったように思いますのですが、公務員の場合に賃金と申しますか、給与と災害との関係を見ますと、まず第一に申し上げられるのは、民間の場合はもう企業体によって非常に賃金のアンバランスがございますけれども、公務員は大体これは統一的にいっております。しかもわれわれとしては大きな声では言えませんけれども、一応適正な水準を保障していただいていると、こう思うわけです。そういう点から、一般の民間企業のような場合と同じような条件とは申し上げられませんけれども、要するに、いずれにいたしましても、先ほど職員局長が申しましたように、幸いにしてこの公務災害のほうは減っておる、年々千件ぐらい減っておるということは非常にわれわれとしてはうれしいことで、これはこの勢いでどんどんゼロのほうに持っていきたいと思います。それにつきましては、公務部内における安全衛生の面、これは規則も御承知のようにできておりますが、この法の手当て、あるいはその実現のほうに非常に力を入れなければなりませんわけで、実は、せんだってもこの安全衛生規則というものを大幅に改正いたしまして、さらに周到なものとしております。その意気込みでゼロに持っていきたい、そういうつもりでおります。まあ給与のほうは給与として今後ともまたよろしくお願いしたい、こういうことでございます。
  57. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 労働省まだですかな。
  58. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  59. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 たとえば、オートメ化とか技術の進展の中で日本の労働者は、いまも申し上げたように、神経をすり減らし、過労を積み重ねておって、こういう現実の中でどうしても労働災害が起きやすいというふうに私どもは考えるわけですね。そこで、いま春闘の話が出ましたが、大幅賃上げといっても、目ざすところはヨーロッパ並みの賃金までというきわめて当然な要求を春闘では出しておるわけです。それと、全国一律の最低賃金制、あるいは労働時間の短縮とか、労働基本権の確立、こういう点を柱としていま春闘は戦われておるわけですが、こういう点について、やはり、人事院は国家公務員賃金民間の給与を検討をしながらということで、春闘には無関心であり得ないわけです。そういう立場から、こういうことに対する人事院としてのお考え、それと、先ほど、安井総務長官は、国家公務員賃金担当大臣であって、民間とか公労協とか全然関係がないからとおっしゃいましたけれども、人事院が勧告する場合には、いわゆる民間の給与の実態を調査して、そういうことを参考にして政府に、国会に勧告すると、そういうことになりますから、やはり緊密な関連があると思うのです。したがって、給与担当大臣である総務長官は、国家公務員の給与だけを考えておればいいということではなくして、民間、公労協みんな密接な関係を持っておるから、そういうところの賃金問題を十分検討の必要があるし、おそらく、給与担当大臣として総務長官はもう深く御検討をなさっておると思うわけです。そういう立場から、いま申し上げたようなことに対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  61. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ただいまおことばにもございましたように、私どものほうは、民間給与を調査いたしました結果に基づいてその較差を発見いたしまして、公務員給与をそれに合わせていくという立場をとっておるわけであります。したがいまして、また、民間給与がどういうふうになりつつあるかという意味でのいわゆる春闘と申しますか、そういうものの動きについても重大な関心を払っておることは、これはもう申し上げるまでもございません。ただし、結果は、いずれも厳正な数字の形で出た結果に基づいてのいろいろの作業であるということになりますので、非常に強い関心を持って民間の賃上げの状況を注視しつつあるという事実だけを申し上げるほかはないわけであります。
  62. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 仰せのとおり、私のほうは国家公務員の給与でございますが、関連いたしまして、むろん公労協関係、あるいは民間給与、これはおのずから実質上つながりを持っておることは、お説のとおりだと思い、十分関心を持っております。民間給与につきましては、これはまあ団体交渉という方法でそれぞれに結論が出るんだと思いますが、それをさらに専門的な立場人事院がこれをお考えになり、まあ公労協につきましても、これは政府側としても一半の責任がある問題です。十分な関心を持ち、でき得る限りのこの対策を講ずべきものであるというふうに考え、私どもできるだけ関係閣僚の間でもそういった問題については協議をいたしつつあるわけでございます。
  63. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  64. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  65. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、労働省にお伺いいたしますが、もう労働災害防止のためには、幅広い、いろいろな施策が行なわれておると思うのです。大体現内閣は人命尊重ということを表看板にしてやってきておるわけです。そのためには人命尊重のスローガンだけでは意味がないわけで、人命尊重のための施策を具体的に進めなければならない。そういうことと労働災害の防止ということは、一連の密接な関係があろうかと思うのですね。そういう視野から労働災害防止について、労働省としては現在どういう対策を講じておられるのか、こういうことについて具体的に御説明いただきたいと思います。
  66. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) ただいまの御質問につきましてお答え申し上げます。労働災害の防止につきましては、もちろん災害の態様が非常に多岐広範にわたっておりますので、私どもの災害対策も非常にいろいろなことをやっておるわけでございますが、御指摘のごとく、災害の防止、労働災害は経済的な損害も非常に大きゅうございますけれども、それよりも大きな問題は、とうとい人命を失うということでございまして、人命尊重ということが災害防止対策の基本でございます。それに対して、最近におきまして特に力を入れております新しい対策を苦干申し上げたいと存じますが、一つは、災害防止は事業主の責任でございますけれども、それに対しまして労働者の協力ということを確保する必要があるということで、ことしの初めに安全衛生規則を改正いたしまして、事業主側の安全管理者、衛生管理者設置義務の範囲を拡大すると同時に、一定の事業所につきましては、労使合同の安全衛生委員会を設置することを義務づけており、また、民間方々に、監督署を補助して災害防止の指導に当たる指導員が、従来いわば第三者的な方、あるいは事業主側のエキスパートにお願いをする場合が多うございましたが、これに労働者側の現場で働いておる経験を積んだ人も指導員にお願いするというような方法で、労働者側の御協力をできるだけ確保いたしたいと思っております。それから災害が起こりました場合に、従来災害の原因につきまして事業主側に安全御生規則の違反がございました場合には、これを検察庁に送り、司法処分に付する、これは当然のことでございますが、従来はとかくそのあとから送検をするという、追っかける処分に片寄っておりましたのを、昨年から方針を改めまして、安全衛生規則に定める安全装置を具備しない機械等を使用していることを発見した場合には、その場において使用停止処分を出しまして、機械に封印をして、危険な機械の使用を禁止するというようなことを積極的にいたしまして、数年前に比べますと十数倍の件数のそういった予防処分をいたしております。ただ、中小企業なんかにつきましては、安全装置を具備したいけれども金がない。借りようと思っても借りられないというような実情もございますので、本年度から安全衛生融資というものを、中小企業金融公庫を利用いたしまして大幅に拡大いたしまして、約十五億の資金をもちまして、低利の有利なる融資を与える。また、その場合の信用保証料の補給をするないしは固定資産税、法人税等の減税をはかるというようなことで、安全装置を具備しやすいようにして、監督の強化と相まちまちして安全対策を推進いたしたい。さらに基本的な問題についての研究その他につきましても、労働省の附属機関であります産業安全研究所、労働衛生研究所につきまして、数カ年の計画をもちまして、飛躍的な拡充をはかるというようなことを種々考えてやっておる次第でございます。
  67. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いろいろ具体的な対策を承ったわけですが、一つ問題があるのは、労働災害を強力に防止する一つの策として、いま関係省庁でなわ張り争い的にいろいろ管轄の問題であちこちの省庁にこれが分割されている。たとえば鉱山関係では、通産省の鉱山保安局が鉱山に対しての災害を管掌しておる、たとえば例をあげるとそういうことであって、これをやはり統一した行政を進めるようにすることも、基本的な考え方の一つだと思うのですが、こういうことについて労働省としてはどういうふうにお考えになっているのか。また、行政の統一ということについては、将来どういうふうにいこうとされておるのか。そういうことについてお伺いいたしたい。
  68. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 災害防止関係につきまして、御指摘のごとく関係省庁がかなり多岐にわたっておりまして、従来その間の協力調整が必ずしも十分でなかった点は、私どもも痛感しておる次第でございます。特に大きな問題は、鉱山保安と炭鉱労働者の安全問題を通産省が所管しておるということでございます。これにつきましては、労働省労働省なりに見解をもっておりますが、何ぶん終戦直後以来の非常に長い間議論をしながら、あるいは議論をされながら、いまだに最終的に皆さんの納得するような形で固まっておらない問題でございまして、これを私どもがすぐに労働省によこせというようなことを申しましても、これは官庁間の紛争を巻き起こすだけで、早急な解決ははなはだ困難であろうかと、したがいまして、これは公正な第三者の御意見によってきめるのがよろしかろうということで、総理府に設けられております産業災害防止対策審議会でもその問題を大きな問題としてお取り上げいただいておりまして、その結論を待つということでございまして、去る三月二十九日に、総理大臣あての産業災害防止対策審議会の非常に広範かつ有力な答申が出まして、その中で、行政官庁相互間の協力ということがいろいろ具体的な形で指示されております。私どもといたしましては、当面この答申に沿いまして、基本的な所管問題はともかくとして、現実、関係各省ができるだけ協力をして、一件でも災害を少なくするようにいたしたいということで、すでに通産省とも、あるいはそのほか建設省とか厚生省とか、いろいろな関係省に御相談申し上げまして、なわ張り争いをやめて、むしろ相協力して災害防止につとめるというように努力をいたしている次第でございます。
  69. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もありますから、あと一点だけお伺いしてこの質問を終わりたいと思いますが、労働大臣はお見えにならぬので、お伺いするほうが無理かもしれませんが、ただ、労働省としてのお考えをお伺いしたいわけですが、労働災害対策の一環として、関係閣僚会議といいますか、そういうものはいままでもたれてはいなかったと思いますが、そういうことをやはり関係閣僚が集まって、労働災害に対していろいろそれぞれの立場から話し合いを進めていくということは非常に有効であろうと思います。たとえば公務員給与の問題について、給与相当大臣を中心に委員会が設けられて、寄り寄り集まってあらゆる視野から検討する、労働災害についても同様なことがいえると思うのです。これは当然大臣にお伺いする問題ですが、大臣お見えにならぬから、労働省としてはそういう問題が話題に出たことがあるのかないのか、こういうことをも含めて、もしおわかりでしたらお聞かせ願いたい。
  70. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) ただいまの御質問につきまして、事務当局として承知している限りにつきまして申し上げますが、先ほど申し上げました産業災害防止対策審議会の答申の中に、関係行政庁の協力を確保するために、一つは学識経験者より成る連絡推進組織を設けるという項目がございます。それとともに、関係行政庁の協力連絡を確保するための組織をつくれという答申がございます。この関係行政庁の連絡協力組織というものが、大臣レベルであるのか、あるいは次官なり局長レベルであるのか、その辺は答申の中では具体的に触れられておりません。ただいまこれをどう具体化するかということを総理府におきまして早急に何とか結論を出すべく御検討中と承知しております。
  71. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  72. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。  本案につきましては、本日はこの程度にいたします。暫時休憩いたします。   午後零時九分休憩      —————・—————   午後一時二十三分開会
  73. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る四月八日衆議院から送付せられ本委員会に付託されました。なお、衆議院におきましては修正議決されております。その修正点は、お手元にお配りいたしましたように、附則の施行期日の「この法律は、昭和四十一年四月一日から施行する。」を、「この法律は、公布の日から施行し、昭和四十一年四月一日から適用する。」と修正されております。  本案提案理由説明は、去る二月十七日聴取いたしました。  それではこれより本案質疑に入ります。  関係当局の御出席は、椎名外務大臣、正示外務政務次官、高野官房長、安川北米局長、星国際連合局長。  以上の方々であります。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  74. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この設置法に関連して、大臣を中心に以下お伺いしたいと思いますが、まず順序として、この外務省設置法改正関係の面で、在外公館の名称及び位置の変更、これとの関係があるわけでありますから、まずこの面からお伺いいたします。  そこで最初にお伺いいたしたいのは、昭和四十一年度において新たに設置される在外公館について、それから、今回昇格される公館について、それから、兼館から実館になるものもあろうかと思います。こういうものについてそれぞれ国別に、それから位置別、それから設置等の理由、こういうものについて具体的に御説明いただきたいと思います。
  75. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 今回の在外公館の名称及び位置に関する法律におきまして新しく実館として設置いたしますのは六館でございまして、大使館といたしまして、中米のグァテマラ大使館、それからヨーロッパにおきまするブルガリア大使館、それから総領事館といたしまして、ナホトカの総領事館、それから高雄の総領事館、それから豪州のパースの総領事館、それから領事館といたしましてエドモントン、計六館でございます。  それから、昇格いたしますのは、シンガポールの総領事館を、シンガポールが昨年独立いたしましたので、これを大使館にいたしたい。それから釜山、ポートランドは現在領事館でございますが、これを総領事館に昇格いたしたいという点でございます。  それから、これの定員関係は、新しく六館につきまして四名ないし三名ずつ配置いたしまして二十二名となっております。  それからこの理由でございますが、グァテマラ大使館は、向こうからすでに大使館が開かれております。ブルガリアにおきましても大使館が数年前からありますので、貿易の関係を増進するという意味合い及び相手の国の要請に基づきまして、現在、いままで兼館しておりましたが、これに実館を置くという次第でございます。それからナホトカは、これは、現在御承知のとおり、日ソ間に領事条約を交渉中でございまして、これに基づきましてナホトカに総領事館、これは現在非常に日本の船が入っておりまして、交通の要地でございます。ここに総領事館を置きたい。それから、高雄におきましては邦人もおりますが、現在経済関係が非常に南のほうの台湾で密接になった次第でございまして、これに総領事館を置きたい。これも貿易上及び経済協力上の理由でございます。それからパース——豪州、これも最近あそこから鉄鉱石等々の輸入関係で非常に貿易上の密接な関係が出てきまして、商社も入るということで、豪州政府から前から、西のほうには——東のほうには御承知のとおりシドニー、メルボルン等、領事館がございますが、西のほうにはございませんので、あそこを中心に一つ置きたいということでございます。それからエドモントン、これはカナダの西のほうでございますが、今後あそこに経済協力と申しますか、ジョイント・ベンチャーをいたしたいということで、これも貿易上の理由で、これは領事館を置きたいということでございます。  それから昇格、先ほど申しましたシンガポール、これは独立いたしましたので大使館を置く。それから釜山、これも韓国との交通の要地及びあそこは今後経済的に非常に発展いたしまして、日本人も経済協力及び商業上の理由で駐在が多くなるということで、総領事館にして人員をふやしたいというのがおもなものでございます。
  76. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただいま御説明のあった在外公館について、それぞれどのような定員配置をなさるのか、その大要でけっこうです、御説明いただきたい。
  77. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) グァテマラ大使館におきましては四名、ブルガリア大使館におきましても四名、ナホトカ、高雄これは四名でございます。あとパースエドモントン、これは三名ずつ、新館といたしましては合計二十二名予定しております。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 四十一年度において他省庁から外務省に移しがえになって在外公館に派遣される職員の数はどうなっておるか、各省別に人員及び派遣先国名、こういう点について御説明いただきたい。
  79. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 今回八十六名の増員のうち、他省関係は十六名でございまして、それを省別にいたしますと、大蔵省が二名でございます。それから通産省が三名、農林省が二名、労働省が二名、運輸省が二名、防衛庁が一名、郵政省が一名、警察が二名、法務省が一名、合計十六名になっております。
  80. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、昭和四十年度までに在外公館に派遣されている各省庁職員ですね、いわゆる外務省に移しがえになった方方の総数はどのくらいか、これを各省別に分けるとどういうことになりますか。
  81. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 現在までに各省は百五十六名でございます。各省別にいたしますと、通産省が四十五名、それから大蔵省が三十一名、農林省が十九名、労働省が五名、運輸省が十一名、郵政省が二名、文部省が二名、法務省が二名、建設省が四名、防衛庁が十五名、警察庁が六名、それから国鉄が一名、科学技術庁が八名、経済企画庁が三名、あと厚生、自治が各一名でございます。
  82. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近、各省派遣の在外公館職員の数が増加する傾向にあると思うんです。その実情についてお伺いしたいわけですが、いわゆるキャリアの外交官の増加する傾向に比較して一体どうなっておるか。各省派遣の公館員のいわゆる伸び率ですね、こういうものはどういう傾向にあるか。また、こういうような傾向に対して外務省としてはどのようにお考えになっておるか。こういうことについて御説明いただきたい。
  83. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 例年各省から大体二、三十名の要求がございまして、各省と個別的に交渉いたしまして、普通は五、六名でございますが、ことしは十六名、これは韓国関係が含まって十六名でございます。それで、まあ外交事務と申しますか、在外公館における外交事務が非常に専門化かつ複雑多岐にわたっておりますので、各省の専門知識をぜひとも必要とする面がふえている次第でございます。しかし、各省の御要望は全部満足はいろいろな関係でできませんので、重要度に従いましてこれを選択していくわけでございまして、それに伴いまして、外務省といたしましても、他省の人が参りますと、いろいろと官房事務とか、まあ庶務関係、総務的な関係の事務がふえますので、これに即応して外務省の定員も外にふやしていきたい。両々相まって、逐次外交事務の増大に伴って各省もふえている次第でございます。最近の数といたしまして、昭和三十六年五名、昭和三十七年五名、昭和三十八年が十六名、昭和三十九年が三名、昨年が七名、各省関係ふえている次第でございます。
  84. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 外務省に出向するところの定員について、特に法務省、大蔵省、それから労働省、警察庁、こういう関係については、この外務省設置法案の附則において関係法律改正をしようとしているわけです。このやり方は、いわゆる法制上から見てどうも便宜的に過ぎて好ましくないと思うのですが、こういうことはどういう理由でこういう変則的なことをやられたのか。何か理由はあろうかと思いますが。
  85. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 御指摘のとおり、的と申しますか、できれば各省庁の設置法で改正して定員の改正が望ましいわけでございますが、本年度と申しますか、今回は、いま御指摘の法務省、大蔵省、労働省、警察庁におきまして、ほかに設置法を全然改正するあれがないわけでございまして、定員一名の増減で設置法をいじるよりも、便宜上、外務省の設置法でいじってくれということで便宜上やったわけで、法律的には可能なことと考えた次第でございます。
  86. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの官房長の御答弁については了解しがたいのですがね。わずか一名の振りかえ定員の問題だから、わざわざほかに改正の必要もないので便宜上ということの御説明ですが、しかし、前年度自治省の例を引いてみると、そういう、いま官房長の言われたことは御答弁にならぬと思うのです。自治省でも、前年度一名の定員を外務省に振りかえるというこのことだけで、自治省設置法を国会へ提案しているわけです。他に何もないのですよ。ただ一名の外務省への定員振りかえ、これがただ一つの内容なんですね。こういうことで、自治省はそれだけの内容で設置法改正案を国会に提案されている。そういうことになると——自治省でまあ実際にそういうことが前年あったわけですね。ことしの場合、法務以下四省庁がほかに設置法改正の必要もないので便宜上ということですが、これはどうも統一がなくて、各省庁のまちまちな見解によってそういうことが行なわれると、同じ内閣の各省庁の統制上まことに芳しからざる現象だと思うのです。このことについて大臣としてはどういうふうにお考えですか。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 昨年は技術的な理由で入らなかったものですから。詳細は官房長からお答えいたします。
  88. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 伊藤先生の御指摘のとおり、昨年は自治省一名の定員減のために設置法単独法改正を出したわけでございます。それは、外務省関係の設置法を全部つくりまして、部内手続を経て国会に提出まぎわに、自治省のほうから、それに入れてくれというので、手続上全部外務省は終わってしまったもので間に合わなかった、そういう技術的な理由で自治省は単独法で出たわけで、そういう定員の一、二名の増減、外務省に入ってくるときには、各省とも話し合いで、法制局とも相談の上、外務省の設置法でいじるというふうに今回はいたしたわけでございます。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いしておる筋は、事実は官房長の説明されたとおり、事実はそうでしょうけれども、どうも便宜に失しはしないかということをいまお伺いしておるわけです。たとえ一名の定員関係のことであっても、たとえば前年の自治省においては、いま官房長も指摘されたように、一名の定員を外務省に振りかえるだけ、他に理由ないですね、それでも自治省は自治省設置法一部改正案を国会に出しておる。ところが、いま私が御指摘申し上げた法務、大蔵、労働、警察庁、この四つの省庁については、ほかに定員関係以外には別に設置法改正の必要もないので、便宜上外務省の、しかも附則にこれを付したということはどうも同じ内閣の行政上の筋から見て芳ばしくない、どうも便宜に失しはしないか、こういうことをお伺いしておるわけです。それから、大臣にも、そういうことについてどういうふうにお考えかどうかということをお伺いしたわけですが、大臣は聞いていなかったのですが、そのことについて大臣の、一体今後そういう便宜主義でいいのかどうか、かってにそういうことをやると行政上乱れが出てくるのではないか。何でも便宜上各省庁の任意にまかせるということになりますからね。やはり、これはひとつ行管にお伺いしたいと思うのですけれども、行管来ておりませんから、外務省でこういう形を便宜上とってはおりますけれども、これは筋からいうとどうも芳ばしくないのじゃないか、こういうことをお伺いしておるわけです。
  90. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり自治省のやり方は、どっちかといえば、異例ではないかと私は考えます。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、前年度における自治省の例を申し上げたのですが、この国会でも、法務とか大蔵、労働、警察庁等の行き方とは相反して、農林、通産、運輸、防衛、この各省庁ではそれぞれ設置法の改正案で振りかえ定員措置を行なっておるわけですね。これは率直にいって、ほかにも内容一部変更があることは認めますけれども、こうやって、同じ内閣の省庁で、法制上はそういう煩をいとわないで、附則などの便宜手段をとらないで、合法的にやはり統一ある行き方をすべきではなかろうかと、こういう事例から推して、私ども考えるわけです。この点はいかがですか。
  92. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 先生の御意見もごもっともかと存じますが、いままで、関連する法律案につきましては一本にしぼってやるほうが多かったのではないかと思います。しかし、先生の御意見は御意見として承っておきます。
  93. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、四十一年度の在外公館職員については、大臣折衝に持ち込まれて最終的にようやく増員がきまったということを聞いておるわけです。どういう理由で大臣折衝までに持ち込まねばならなかったのか。それには何か理由があろうかと思うのです。その理由と経緯について概要をお聞かせいただきたい。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いままでなかなか増員が認められなかったのでございます。しかし、最近外交事情の業務が非常に加わりまして、非常に繁劇になりましたので、この状況は普通の事務折衝にまかせるわけにいかぬというので、特に大臣折衝でわれわれの主張をようやく貫徹さした、貫徹というか、一部目的を達することができたと、こういうわけでございます。
  95. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、核兵器の軍縮問題について二、三要点だけをお伺いしておきたいと思うのですが、去る二月、下田外務次官が「核のかさ」等について見解を述べられてから、その後、核兵器の軍縮についていろいろ論ぜられてきておるようです。このことはわが国の安全保障にも大きな関係があり、ジュネーブの軍縮委員会等の論議にも関連して国際的な働きかけもいろいろあったようでありますけれども、結論的にいえば、そういう問題こそ日本は積極的にイニシアチブをとって諸外国に働きかけてしかるべきだと思うのです。また、国民もそういうことを願っておるわけです。従来、日本の政府としては、唯一の核被災国として核実験には反対だと、こういう意思表示はしてまいりましたけれども、なかなか具体的に働きかけがあったとは考えられなかったわけです。そこで、そういう意味からいうと、下田次官の発言は一歩前進した面とも考えられるわけですね。そういう意味合いからひとつこの問題に関連して、外務省としては今後どういうふうに取り組むお考えなのか、そういうことについてお伺いします。
  96. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本といたしましては、核軍縮につきましては国連の場において従来から大いに積極的に提唱してまいったわけであります。ジュネーブの十八カ国委員会、これにもかつてチャンスがありましたので加入を希望したのでありますけれども、日本の希望が実現せずに今日に至っております。この十八カ国委員会に対しましても、日本はチャンスを見てその加盟国となりたいと、こういう希望を持っておるわけでございます。いろいろの場において核軍縮問題については日本はあらゆる努力をして発言力を強化してまいりたい、こう考えております。
  97. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ジュネーブの軍縮委員会は、たしか本年一月下旬から開かれておると思うのです。そこで、このことについてお伺いいたしますが、審議の状況は一体現在どうなっておるかということと、議題となっているのはどのようなことなのか、こういうことについて御説明いただきたい。
  98. 星文七

    政府委員(星文七君) 御指摘のとおり、ことしの一月の末からずっと十八カ国軍縮委員会が開かれております。昨年の第二十回総会の決議に基づきまして、今回のジュネーブ軍縮委員会では核兵器拡散防止条約、これを第一義的に取り上げるようにという総会の決議がございましたが、いままでのところ、これを中心に論議を進めているという段階でございます。もちろん、そのほかにも、全面的核実験の停止問題とかあるいは一般完全軍縮というふうな問題についても議論はしておりますけれども、主たる焦点は核拡散防止条約であるということが言えるんじゃないかというふうに考えております。
  99. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この核兵器の拡散防止について米ソの案が出されており、また、それ以外の案も出されておるというふうに聞いておるわけでございます。そこでお伺いするわけですが、米ソの案のそれぞれの内容の違いですね、おもな点についてお聞きしておきたいということと、それから外務省としては米ソ案に対して一体どのような評価をなさっているのか、この二つの点についてお伺いしておきたい。
  100. 星文七

    政府委員(星文七君) いままで提案をしておりますアメリカとソ連の両国の案の相違でございますが、こまかいことは抜きにいたしまして、大きなところを申し上げますと、アメリカの案では、核兵器の拡散ということは、核兵器の管理権を核を持っていない国——非核保有国に与えないんだということを主としておるわけでございまして、そのために、アメリカ側の案では、全体の核保有国の数というものが変動なければ、その中でどういうふうに管理が行なわれようとも、管理の移動が行なわれようともそれは問題はないという点を非常にポイントにしているんだと思います。これに反してソ連案のほうは、厳密に、たとえば西独の核への接近というふうなことも反対するということで、そこにソ連案とアメリカの大きな差異があるんじゃないか。いわゆる核兵器のコントロールという問題について、核兵器の引き金を与えるかどうかという、そういう問題についてソ連とアメリカとの間に大きな相違があるんじゃないかというふうに考えております。  それから、いままでの案に対する十八カ国委員会の軍縮審議に対するわれわれの考え方でございますけれども、日本といたしましても、できるだけ拡散防止条約というものが、米ソの間に早きにわたって合意が見られるということは非常に望ましいというふうに考えております。何とならば、現在のところ、核保有国というものは英米を含めて五つの国が持っておりますけれども、最近におきましては、技術の進歩によりまして非常に核兵器の開発というものが昔に比べて容易になってきた。こういう状態を続けておりますと、いろんな国が核兵器を持つようになり、これは、核兵器というものが局地戦争に使われるようになり、それがまた世界的規模の戦争にまで広がるという危険があるわけでございます。そういう意味から、拡散防止条約というものが一日も早く締結されるということをわれわれは考えておるわけでございますけれども、われわれといたしましては、この条約の中で、核を保有しない国であってしかも核を製造しようと思えばできる、こういう国の意見というものを、非常にこの条約案に反映していかなければならないんじゃないかというふうに思います。それからまた、拡散防止条約によって各国の安全保障というものが害されるという点は、これは何らかの形でこれを防いでいかなくちゃならぬ、各国の軍事的な保障、安全というものが保たれていかなければならないというふうに考えております。それからまた、この拡散防止条約というものを契機にいたしまして、全面完全軍縮への道が開かれるということが望ましい、そういう考え方を政府としては持っておるわけでございます。
  101. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前にチャルフォント——英国のいわゆる軍縮担当相ですか、この軍縮担当相が日本に来て椎名外相とも会見されたことがあったと思います。その後コスイギン提案についてもいろいろ論議がなされたと思いますが、その後下田発言があった、こういうかっこうになっておるかと思うんですが、そこで二月の下旬に下田次官が、核拡散防止問題で最も重要なことは非核保有国に核を持たせまいとするのではなく、核保有国がみずから核軍縮を進め、終局的には核兵器を全廃すべきであると、こういうことと、それと合わせて、日本は他国の「核のかさ」に入って安全保障をはかるなどということは考えるべきでない、現在の日本は米国の「核のかさ」に入っていないという趣旨を述べておる。こういうことですが、この後者については、意気込みはまことにけっこうなわけですけれども、このことは日本の実情とどうも離れておる。いい悪いは別として、日本の実情から離れておる。やはり、その後いろいろ国会の審議を通じて椎名外相からなしくずし的に取り消されたというように承知しておるわけですが、このことについての椎名外相の御見解をこの際明確にしておきたいと思うのです。
  102. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「核のかさ」というのは、どうも非常にあいまいな表現でございますので、こういう表現を用いないで、日本が今日アメリカの戦力というものによって国の安全をはかりつつある、その戦力の中にはもちろん核戦力も入っておるのであります、こういう意味に「核のかさ」ということをもしとるならば、現在においてすでにアメリカの「核のかさ」のもとにあるということが言えるわけでございますが、そうでなしに、もっと狭義に、「核のかさ」ということは、日本の提供しておる基地が核戦力の基地になることであるとか、あるいはまた、北大西洋条約内部において論議されておる多角的核戦力というようなものに参加するという意味であるならば、日本は今日においては「核のかさ」に入っておらない、また、将来ともそういう意味における「核のかさ」には入らないんだ、こういうことになるわけでございますけれども、下田次官の言ったのは、この狭義の意味における核戦力、それを言ったのでありまして、広義において日本が米国の核による戦争抑止力というものに依存しておるという考え方をとらなかったわけでございます。「核のかさ」といいますと非常にまぎらわしいので、そういう意味において何ら外務省内において意見が分れておるわけではない。ただ、「核のかさ」という定義が非常にあいまいなものですから、世間に誤解を生んだわけであります。これは私はあとで訂正をして、今日においては何も問題はない、かように思っております。
  103. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まだよく了解ができませんけれども、さらに質問を進める中でお伺いをしていきたいと思います。  そこで、引き続いてお伺いいたしますが、下田次管の発言の前段についてお伺いいたしますが、私が申し上げた前段についてですが、こういう下田次官の見解について、米・英・ソ、こういう国国ではどのように見解を受けとめておるのかということと、それから、非核保有国、こういう国々はどういう評価をされておるのか。私の言う意味がおわかりでなければ、下田次官が言ったその前段というのは、核拡散防止問題が最も重要な問題であるということ、非核保有国に核を持たせまいとするのではなく、核保有国がみずから核軍縮を進め、終局的に核兵器を全廃すべきである、これをここで便宜上前段と申し上げたわけです。このことについての米・英・ソのいわゆる反響はどうなのか。それから、非核保有国はどういうふうにこの下田発言を受けとめておるか。いわゆる反響について承っておきたい。
  104. 星文七

    政府委員(星文七君) 下田次官の発言に対する米・英・ソの反響というものは、私よく知っておりません。おそらくそれに対してリアクションといいますか、それに対する見解というものは、いままで、私の承知している限り、ないというふうに思っております。ただ、非核保有国についてはどうだという御質問でございますが、ジュネーブの軍縮委員会を構成しております八つの中立国がございます。これらの国は、もともと拡散防止という問題と核軍縮あるいは全体の軍縮というものについての関連性というものを非常に重く見ておるわけです。そういう意味では、下田次官の言っていることと平仄を一にしているということが言えるのではないかというふうに思います。
  105. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今後の日本の立場で、いろいろ核軍縮に対する名言卓論をどんどん世界に向かって発表するということもけっこうですが、ただ、ここで考えなければならぬのは、どのような名論卓説を主張したところで、やはり正式な国際機関に入ってその場で主張しなければ効果はないと思うのです。そういう意味で、今後残された問題は、日本でも、いわゆるジュネーブ軍縮委員会という正式の機関があるわけですから、そういう機関にどんどん入っていって、その正式な国際機関の場で主張することは当然必要であって、そこで初めて日本の、平和に前提を置いた核軍縮の主張が入れられる、そういうことになろうかと思うのです。どんな名論でもどんな卓論でも、やはりただ主張しただけでは効果はないと思うのです。やはり正式な国際機関に堂々と入っていって、そこでどんどん主張すべきではないか。こういうことについて、外務省としてはどういうふうにお考えか。こういうことをお伺いしたい。
  106. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど申し上げましたが、国連の委員会は日本はメンバーになっております。しかし、ジュネーブの十八カ国委員会には不幸にして日本はまだ入ることができないという状況でございますが、できるだけ機会を得てこれに加入をするようにいたしたいと、こう考えております。
  107. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 一昨年の国会でも佐藤総理は、機会があれば積極的にそういう場を求める、こういう意味のいわゆる答弁をなさっているわけですが、そういうことにも関連がありますので、ひとつ今後積極的に働きかけられて、いま大臣から御説明があった十八カ国の委員会にも近い将来ぜひ入って、そういう場で主張をしてもらいたいと思うのですが、そこで、この十八カ国委員会にはどうして入れないのですか。いわゆる日本の立場は世界で唯一の被災国である。こういうことは世界で認めておると思うのです。そこで、そういう特殊な立場にある日本が熱心に働きかければ、入れられないということはないと思うのですね。どうして参加できないのですか。いままで外務省はあまり参加しようという意思表示をしなかったのではないですか。参加を盛んに働きかけたけれども、入れられなかったのか、あまり働きかけていなかったのか、その二者いずれかであろうと思うのですが。
  108. 星文七

    政府委員(星文七君) このジュネーブの十八カ国軍縮委員会が国連で認められましたのは第十六総会でございますから、一九六一年でございます。そのときの構成といたしまして、西側のほうから自由主義陣営、資本主義陣営と申しますか、それから五カ国五名、社会主義国から五名、それから中立国から八名ということになったわけです。もともと自由主義陣営側に日本も加わっておった。リストに載っておったのでありますが、全体の構成からいたしまして、どうも日本を落とさざるを得なかった。カナダとイタリアが入ってしまったというわけでございます。その以後、いろいろ大臣からも御発言になりましたように、われわれとしては十八カ国軍縮委員会の中に入りたいと思いましても、まず第一には軍縮委員会それ自身の決定も必要でございましょうし、また、これを大きくしようと思えば、当然にいわゆる社会主義国の数もふやさなければならない、また、中立国も数をふやさなければならないというふうな、非常なむずかしいような状況にありまして、いままでわれわれの希望が達成せられていないというふうな状況でございます。
  109. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこでなおお伺いいたしますが、この参加についてそういう外務省のお考えはわかりましたが、いままで、たとえば国連に働きかけるとかあるいは有力な国に打診をしてみるとか、そういう具体的な働きかけを外務省としてやったことはあるかどうか。
  110. 星文七

    政府委員(星文七君) たとえば英国の軍縮担当の大臣チャルフォント卿が日本に参りましたときにも、大臣からその旨を大臣にお話になったことがございます。
  111. 北村暢

    ○北村暢君 いま伊藤さんの質問が下田発言からそれていくようですから、下田発言について関連してお尋ねいたしたいと思うのですが、先ほどの伊藤委員質問に対して、アメリカの「核のかさ」の問題について、大臣は広義の「核のかさ」という点と狭義の「核のかさ」ということで、広義の場合はアメリカの核の抑止力にはたよるけれども、これは「核のかさ」とは言わない。狭義の「核のかさ」というのは、国内に核の機器を持ち込んだりなんなりする、こういうのを狭義の「核のかさ」と言って、その場合においては、狭義の「核のかさ」の中には入らないんだ、こういうような御答弁のようでありましたが、この点は、いま申したことの私の理解で間違いございませんか。
  112. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうふうに、私は区別しております。
  113. 北村暢

    ○北村暢君 そこでお伺いしますが、いま国連局長も申しましたように、国連における核拡散防止条約のすみやかな成立を願う。その場合に、日本としては、核装備をする能力を持っておるが、これをやらないという立場で、強力に、拡散防止条約をすみやかに成立させ、さらにこれを核の全面軍縮に発展をさせていく、こういう強い態度で核の軍縮に対して国連の場でもって主張をする、こういうことですね。その場合に、一面において、外務省の最近の統一見解ではないというのですが、国会の答弁等を取りまとめたものだと、こういうのでありますけれども、アメリカの核の抑止力に依存をするために安保条約は長期にわたって維持をしていくんだ、このこととは私は明らかに矛盾をすると思うのですがね。アメリカなり、ソ連なり、いま持っている、核保有国の核の完全軍縮へ強力に主張するということと、一面、アメリカの核に、抑止力に依存をしていくということとが、これは明らかに矛盾した論理だと思うのです。それを矛盾をしないということで、下田次官は、きのう、記者会見で発表しているようですけれども、これは、ひとつ大臣、明らかに矛盾していると思うのですが、どのように御説明になりますか。
  114. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の主張は、核の拡散をこのままにしておくと、だんだん容易に開発ができるように、技術的に非常に発達してまいりまして、費用も安く、それからわりあいに容易に開発ができるという状況にだんだんなる。将来もそういう傾向をたどるわけであります。これをこのままにしておきますと、あっちでもこっちでも核開発をやるというようなことになりまして、もう局地的ないろいろな紛争にもすぐ核兵器を持ち出すというようなことになりますと、今度はもう手がつけられないようになってしまう。どんどん核戦争が拡大をして、人類全体に非常な災害をもたらすというようなことになるので、これはいまのうちに拡散をしないように条約によって秩序をはっきりとりきめなきゃいかぬ、こういうのが核拡散防止条約の構想であろうと思うのであります。日本はこれに対してもちろん賛成をいたします。ただしかし、所有しておるところが、それだけがもう固定してしまって、そしてまだ開発しないところの国がもうこのまま開発ができない、それから譲り受けもできない、そういうふうになると、何かこう不公平じゃないか。核を開発をしておる国も、やはり自分も犠牲を払って、そしてだんだん核軍縮をやり、最後には全面核軍縮に到達するのだと、そういうかまえを見せないことには、この核拡散防止条約というものは説得力が弱い。核保有国でそういう自粛をして全面軍縮にだんだん向かうのだというかまえをすることによって条約というものも成立するだろう。こういうことで、日本はこの問題に対して積極的な姿勢をとっておることは御承知のとおりでございます。ただ、一面において、日本の安全保障、この体制ができておりますが、これは核の問題も含め、一般的に日本の国家の安全を保障するという意味において集団安全保障条約というものを日米の間で取りきめておる、こういうことでございまして、国の安全をあくまで現状において守っていくということと、それから、これ以上核兵器の拡散をしないように防止するのだという国際的な取りきめをやるということに何ら私は矛盾はないと、こう考えております。
  115. 北村暢

    ○北村暢君 現在核を保有していない国に核が拡散していく、保有される、こういうものについて核拡散を防止するような条約、これはそれでいいと思うのです。しかし、そうでなしに、下田発言は、日本は「核のかさ」に入るべきじゃないのだ、日本はまた核装備をする能力を持っている国なのだ、しかし、核を持たないということを代償にして、大国の現在核を保有している国の核軍縮を積極的に呼びかけていくというのでしょう。そして反面、アメリカのアジアにおける核戦略体制の中において、日本の安全というものを、アメリカの核の抑止力によって日本の安全を期待する。これは大国の核保有というものを完全核軍縮の方向に持っていくということと、アメリカの核抑止力に依存をしていくということと明らかに矛盾して、いるじゃないですか。それも相当長期にわたってアメリカの核抑止力に依存をしていく。現実にいま国際舞台で論議になっているのは、日本は、核保有国の大国に対して、核の完全軍縮に向かっていけ、向かうべきだということを主張するということですよ。主張するということ。それは、主張は、現在いまやろうというわけです。相当長期にわたって核の抑止力に国内は依存をするという、これは明らかに論理の矛盾だろうと思うんですけれどもね。そこのところは、どうも大臣、はっきり御答弁ないですね。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核拡散防止条約というのは、それ自身、核全面の禁止条約ではないですね。
  117. 北村暢

    ○北村暢君 核拡散防止条約はそうですね。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ですから、ただ拡散防止条約というものができ上がるためには、持っている国は、自分は持っているのだからこれはいい、持たないやつは今後持っちゃいかぬ、こういう少し均衡を欠いた条約ではないか。であるからして、持っている国もだんだん自分で核軍縮をやって、最後には全面軍縮というものにだんだん向かっていくんだ。これはまあ理想図でございます。そういう姿勢をとらなければ、核を所有しない国に対してこの条約に入れと言うのは少し虫がよ過ぎる。いわんや、能力があって自分で開発しないという、がまんをしておる日本その他の二、三の国、そういうところに対しては少しわがままかってじゃないか、こういうことをまあ言っているわけなんです。それで、最後には、もうお互い全面軍縮、これはしかしまあ一種の理想図であります。現実はなかなかそうはいかない。そこで、現実問題として、日本は日米安全保障条約というものを結んで、そしてアメリカの戦争抑止力というものによって国の安全をはかっていく、これは現実と理想の違いがそこに出てくるので、それをいきなり同じレベルで比べると、あなたのおっしゃるように、何だか矛盾するような気がいたしますけれども、これはまあ一体できるかできないかと言っちゃえば、少し語弊がありますが、理想なんですね。理想です。ですから、決して現実問題として矛盾をするものじゃない、こう考えております。
  119. 北村暢

    ○北村暢君 これはまあ論議の繰り返しをやっていてもしようがないですが、そこで、先ほど大臣は、抑止力と「核のかさ」というものとを区別しているということのようですけれども、これはソビエトは、非核武装の国に対しては核攻撃はしない、こういう提案をしておりますがね。この場合に私は、現実に核を持っておらない、またアメリカの核兵器も日本にない、核保有国であろうとなかろうと、核装備をしていない国、これは攻撃しない、こういうのがソビエトの提案で出たようですね。その場合に、私はこの「核のかさ」のいまの解釈の問題が非常に重要になってくるのではないかと思うんです。で、大臣は「核のかさ」というものについて広義と狭義がある、こう言われたのだけれども、しかし、現実に沖繩が核武装、核の基地があると、こういわれておる。その場合に、日本は核基地がない、日本には核基地がない、こういうことは国際的に言い通せるのかどうなのか。ソビエトの解釈からいえば、沖繩に核基地があることを、日本には核基地があると、こういうふうに解釈するのじゃないか。あるいは、西ドイツがアメリカの核兵器の基地となる、核を持ち込むということについて非常にソビエトは神経質でありますけれども、それと同じように、日本に対しても、ソビエトばかりではないでしょうけれども、国際的に論議になる場合に、日本には核基地がない、こういうことが言い通せるものかどうか、ここの見解をひとつはっきりしていただきたい。  最初の、アメリカの核戦力というものの「かさ」の中にあるということは、抑止力と「核のかさ」というものを区別してみても、それは大臣だけの区別であって、国際的に通用しないのではないか、私はそう思うのですが、どうでしょうか。この二点についてひとつお伺いします。
  120. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「かさ」と言うことは、大体私はきらいなんですが、そんな考え方がどういうことを意味しているのかわかりませんが、とにかく「かさ」ということを忘れてしまって、そうして核戦力というものにたよる場合に、二通りある。核の基地を持っておって核戦力にたよっている場合と、核基地を国内にもう認めない、持ち込みも認めない、しかも核戦力というものによって国の安全が保護されるという場合と、二つある。それで下田発言が、「核のかさ」に入るべきじゃないということを言ったのは、狭義の、核基地を認めるとか、持ち込みを認めるとかいう場合をさして考えておったようであります。そういうものを認めなくても、核戦力というものに依存しておるのが現状なんです、日米安保体制は。これを、ソ連のこの間の提案に照らして、一体これは核兵器を持たない国に対しては核攻撃をしない、こういうことを言っておりますが、それでは、他国の核戦力によって保護されている日本は、核を実際は持っているのと同じじゃないかというようなことになるのか、それとも、ことばのとおり、日本は核兵器を持っていないのだから、やはり持っていない国だから、日本は、これは先制攻撃はしないという範疇に属するかどうか、ここらのソ連のほんとうの腹はどこにあるのか。これはどうも提案の詳細がまだ明確にされておりませんから、そこまでどうも詮議ができないような状況にあるのでございまして、まあ、ことばどおりに解釈して、日本は核兵器を持っていないことは事実なんだから、これはソ連流に解釈して、日本は先制攻撃をされる側に入っておらない、こういうことになるのではないかと一般には信じられております。
  121. 北村暢

    ○北村暢君 いま、そこで、自国領土内に核兵器を持たない条約締結国というふうにソ連は提案しているのです。したがって、先ほど私が質問した、沖繩に核の基地があるといわれておる、それは、自国領土内に核兵器を持たないということで国際的に通用するのか、しないのか、この点は先ほどお伺いしたですけれでも、どうですか、御答弁がないようですから。
  122. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これもどうもよくソ連の提案というものの内容が明確ではございませんからわかりませんけれども、沖繩は日本の潜在主権がありますから日本の領土であると、ただ、それが十分に効力を発揮しない、アメリカの施政権のために効力が発揮されていないという意味の形でありますから、これは領土であります。しかし、持っているのは日本でなくてアメリカなんです。でありますから、やっぱりこれは、たとえ沖繩の場合をとっても、日本は核兵器を持たない国であるということになるんじゃないかと、私は考えます。
  123. 北村暢

    ○北村暢君 それはね、大臣、違うんじゃないですか。自国の領土内に、日本が持っていようとアメリカが持っていようと、あれば、これは自国の領土内に核兵器を持っている、こう解釈されてもやむを得ないんじゃないですか。先ほどあなたは下田発言との関連で、沖繩は別に考えて、「核のかさ」でないと言うのは、日本の、沖繩を除いての領土内にアメリカの基地を持たないのだ、核の基地を持たない——これは日本はいま現在持っておりませんよ。だけれども、アメリカが持っておっても、基地を日本の領土内に持ったということになるというと、これはソビエトの解釈からいえば、攻撃をする対象になる、そう理解するべきじゃないですか。そうすると、どうも先ほどの沖繩の説明のときの大臣の説明と矛盾すると思いますがね、どうでしょう。
  124. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いろいろ考える余地はございますから、一体コスイギンの提案というものがどういうものであるかはだんだんにはっきりするだろうと思っておりますが、いまあの問題をいかに詮議してみたって、これはどうも平行線をたどっているにすぎないのでありますから、沖繩は一体領土であるかどうかということすらまた論議の種になると思います。解釈上は、領土である、領土であるけれども、領土としての完全な効果を発生しておらない領土だということになる。その場合に、一体コスイギンの解釈がどっちにころんでくるか、これはわからない。それから、自分が持ってないんですから、管理権がない、引き金なんかもとても引けない、のぞいても見られないというようなものでありますから、所有しておる所有してないという点からいうと、これはどうも所有しているということは言えないと、こういうことになるんですね。これはいずれはそういったような問題がはっきりするような時期が来ると思うわけでありますが、ただいまのところは、これ以上はお互い論議してもむだじゃないかと、こう考えております。
  125. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの問題はたいへん大事な問題だと思うんですがね、それで、こういうことが言えると思うんです。沖繩は日本の領土の一部であることは間違いない。これは厳然たる事実。ただ、施政権がないわけです。ただ、ここでは施政権云々は言う必要がないわけです。そこで、沖繩は日本の領土の一部で、その沖繩にはいま北村委員からも御指摘になったように、日本のではないけれども、米軍の核兵器の基地がある、これも事実です。現実であるわけです。そうすると、結局、日本の軍事基地内に核兵器の基地があるということもはっきりしているわけです。そこで、これは日本が持ってないのだから、施政権がないからということで心配ないのだということは、日本の外務省の見解であって、ここで問題になることは、国際的に、外国はそういう日本の外務省と同じような、なお極言するならば、椎名外務大臣と同じような見解を持ってくれれば初めて問題ないわけでしょうけれども、これは外国では沖繩が日本の領土であることは確認しているわけです。そこヘアメリカの核兵器の基地があれば——日本のでなくても、アメリカの核兵器の基地があれば——と言いますのは現実にあるわけです、したがって、いざ、状態によってはまずアメリカの軍事基地をたたくというのは、これは兵の常道、戦略上の常識になっている。したがって、そういう危険にさらされるということははっきりしているわけです。ただ、日本の外務省の見解は、繰り返し大臣が言われているとおりです。いまのところ、これはいい、悪いは別ですよ、いい、悪いは別として、日本の外務省はそういう見解をとっている。繰り返し申し上げるように、こういう日本の外務省と同じ見解を、国際的に各国が持つかどうかということなんです。それは持ちませんという、そういう見解の相違になってくるわけです。ここに問題があろうと思います。日本の外務省と同じような見解を、国際的にみな持ってくれれば問題ない。そうはいかぬ。ここに問題があろうと思う、重大な問題が。そういう安易な解釈はできぬと思うのですね。各国に、一国ずつ当たって、沖繩にあるアメリカの軍事基地に対して、どういう見解を持っているかと、一々外務省は聞いたわけじゃないでしょう。だから、日本の外務省の見解と同じだということは言えないわけでしょう。一国一国確かめたわけじゃないでしょう。この点はどうなんです。
  126. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだこの正式の提案があるわけでもありませんし、ただそういうアイデアをソ連として述べているというだけでありまして、これがいよいよ拡散防止条約が形を整えて、そしてその場合にあらためてソ連の提案というものがそこに乗ってくるわけでありまして、だいぶ先のことであります。いまこの問題を右左に論議するということは、どうも少し時間としては早過ぎると思います。
  127. 北村暢

    ○北村暢君 その点、私、関連質問だから、ここら辺でやめますけれども、大体そういう提案になれば、やはり外務省としては、その真意なりなんなりについて、やはり外交折衝というものはあってしかるべきだと思うのですね。国際ひのき舞台以外に論議する場がないというわけじゃない。ソ連のその提案というものの真意がどこにあるかくらいは——いや、どこにあるか聞いてみなければわかりませんでは、これはお粗末もはなはだしいと思うのですがね。私はやはりそういう問題が出たら、一体真意がどこにあるかどうかということを——それはそのために外交官も派遣して、大使も置いてある、なにも置いてある。その真意というものを確かめるということはあってしかるべきだと思う。それがまだ正式提案してないのだから、論議の価値のない問題でというふうにはいかない。これは日本の国内においても、各新聞の論説なんかも見ましても、このソビエトの提案といいますか、この発表されたものについては、相当関心を持ち、しかも好感を持って迎えておるわけですよね。そういう点について外務省が何だかわからないでほうっておくということは、大体おかしいんじゃないかと思うんですよね。どうなんですか、そこら辺は。外務省というのは、そういう直接の論議がなければ一切外交交渉なり折衝なりというものはやらない習慣になっているのかどうなのか。どうなんですか、これは。
  128. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは十八カ国軍縮委員会に対する一つのまあ意見提案までいかないが、意見の内容……そこで、これがいよいよ提案となってはっきりした場合に問題になると思います。まだ意見の発表でございますから、そうこまかく問い詰めていくというのもおのずから限界があるわけでありまして、正式の提案がある場合をつかまえて、そこでその真意をただすということは、これは可能であると思います。ただいまのところは、どうもそこまで立ち入ってこれを問いただすということはいかがなものでしょうか。しかし、あらゆる機会をとらえて、そしてコスイギンのメッセージの意味をいろいろ分析、研究するということは、これは当然外交官としてはやるべきことであろうと思います。それはやっておると思いますが、まだ、それに対するはっきりした情報を得ておりません。
  129. 北村暢

    ○北村暢君 最後に一つ。  核拡散防止条約なりあるいは核の完全軍縮に向かって強力な外交を展開をするという際に、核開発の能力を持ちながらということを強く主張する立場に立って非核武装宣言をする意思はないか。こういう非核武装宣言をして外交交渉を進めるということは、これは一つの大きな国際的なアピールになる。そういう点について、そういうような積極的な非核武装宣言をやるような意思はないかどうか。この際、この点をここでお伺いしておきます。
  130. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはたびたび国会において御質問をちょうだいしておるわけでありますが、日本はもう宣言どころではない、実際問題として能力ありといわれておるけれども、これはみずから開発をしない。それから、日米安保条約体制をとっておるけれども核の持ち込みも許さない、核基地を設定しないことはもちろんのこと、持ち込みもこれは認めないという方針でやっておるのでありまして、いまさら突如として非核武装宣言をするということは、まあほとんど何らの意味がないのでありまして、それ以上のことを日本が事実をもって世界に示しておるのでありますから、その宣言の必要は認めない、こういう考えでございます。
  131. 北村暢

    ○北村暢君 この核開発の能力があるという問題については、これはしばしば科学技術特別委員会においても私も質問しているんですけれども、現在核武装の能力ありという点については、日本の原子力科学者は、それはわからないのであって、能力があるともないとも言えないと、こういうことをはっきり言っております。ところが、予算委員会では、防衛庁長官なり外務大臣は、能力あると、こう発言しておる。この点についてね、明らかに科学技術庁長官と食い違っておるのですよ。これはまあ速記録いろいろ調べてみればわかるのですけれども、食い違っておる。まあ、政治的な発言としてはいいかしらぬけれどもね。この問題は私はまた後ほど論議したいと思いますから、まあ関連質問だから、あまり長くなりますから、このくらいでやめておきます。あまり納得しない、この点、実は。まあ、その点政治的な発言で、核能力ありというのであればあれですけれども、日本の原子力科学者は能力あるともないとも言えない、そういうことはわからないのであって、そういうことの研究として取り上げたこともないし、原子力の平和利用ということだけはやっておるけれども、考えたことがないというのでわからないというのが答弁です。こう言っておりますわね。この点について若干食い違いがあるわけですけれども、この際その食い違いの点についてどういう意図で外務大臣はそういう発言をされるのかを伺っておきましょう。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは能力の問題は問題ないと思います。ただ、開発する意思があるかどうかという問題なんで、日本の今日の工業力、科学技術の発達した段階において、日本がその能力がないなんということは、ほとんど世界のこれはどこへ行って聞いたって私は能力ありと判定すると思います。問題は、その意思があるかないかということが問題だと思います。
  133. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお核軍縮について二、三さらにお伺いいたしますが、いまも御指摘のあったように、一口に核軍縮と言っても、それは多岐にわたっておるわけですね。核保有国あり、非核保有国あり、いまも論議になった、能力あるけれども持たない、それらの国々のまた軍事上、政治上の科学技術、あるいは外交こういう問題がさらにこれはからみ合っておるわけですね。したがって、一口に核軍縮と言っても、なかなかもってたんたんとしてはいかないわけです。  そこでお伺いするわけですが、こういう個々の具体策についてですね、よほど外務省としては掘り下げた論議を固めておかないと、幸いに、たとえばですよ、十八カ国の軍縮委員会に正式メンバーになられたとしても、そういう国際場裏でそういう主張はできないわけですね。そこでお伺いするわけですが、そういう個々の問題について相当論議が行なわれておるとは思いますが、こういうことについて一体現状はどうなっておるのか、こういう問題についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  134. 星文七

    政府委員(星文七君) 仰せのとおり、核軍縮と申しましても、非常にその内容が私は複雑で、また単純なものではないというふうに思います。で、一例を申し上げましても、核軍縮の中にはですね、全面的核兵器の実験禁止条約ということも核軍縮の一つであることは間違いございません。それからまた、先ほど来の御質問の核兵器拡散防止条約の問題というのも核軍縮の一つだと思います。それから、核兵器及び核兵器運搬手段の削減ということも核軍縮の大きな一つの課題であろうかと思います。なお、兵器用の核分裂物資の生産削減、その平和利用への転換というふうなことも核軍縮への大きな一つの材料であろうと思います。私ども、国連の場を通ずるこの核軍縮についての世界の趨勢、あるいは十八カ国委員会における趨勢というものをよく把握するようにつとめているわけでございますけれども、何しろ、いま申し上げましたように、非常に軍縮といいましても、そういうふうに問題は多岐なのでございますので、そのおのおのについてよく掘り下げていかなくちゃいけないというふうに思っております。
  135. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 スエーデンあるいはエール——あまり大きな国ではありませんけれども、核軍縮とか核探知、こういうことについて堂々と国際場裏で建設的な提案をしておるわけです。こういう提案に対して日本の外務省としてはどういうふうに受けとめておるわけですか。
  136. 星文七

    政府委員(星文七君) エールのことは私存じませんが、スエーデンは、御承知のように、いわゆる核探知クラブの結成というものに非常に熱意を示しておりまして、二月初めに、スエーデンから外務省の者と、それから地震の、何といいますか、専門家、地震学の専門家を合計二名よこしまして、われわれと打ち合わせをいたしまして、来たる来月の五月の二十三日から二十七日まで、スエーデンのストックホルムで核探知クラブの第一回の会合を開くことになっております。この会合の趣旨は、非常に技術的な専門的な点でございまして、一切政治的な含みを持たないということでございます。わがほうといたしましても、それに対応して専門家を派遣するという所存でおります。
  137. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この冬でしたか、日本に参りましたチャルフォント英国の軍縮担当相、このチャルフォントが日本でこういうふうに発言されておるわけですね。日本は核問題で世界の道義心に訴える重要な資格を持っておる。日本が核保有能力を持った最も進んだ工業国の一つでありながら核を持たぬ政策を堅持しておることこそ、核拡散防止への最も大きな貢献であり、他国へのよい手本だと考える、こういう意味の発言をされておるわけです。この英国の国務大臣が発言されたこと、このこと自体は日本国民の願いでもあるわけです。そういう意味で、このチャルフォントの発言に対して、日本の外務省としてはどういうふうにお考えですか。
  138. 星文七

    政府委員(星文七君) 主として核兵器の拡散防止の問題についての日本の態度ということでお話ししていいんじゃないかと思いますが、いまお話しになりましたとおり、日本が核兵器の製造能力を持ちながらそれを開発しないという立場から、私は核兵器拡散防止条約についての日本の見解というものを強く主張できる立場にあるのじゃないかというふうに思います。ただ、この核兵器拡散防止条約の締結にあたってはいろいろ配慮すべき点があるのではないか。第一は、非核保有国が恒久的に核兵器を入手しない、核兵器の保有を断念する、そういう主権国として大きな犠牲を払う以上は、核保有国も何らかの犠牲を払うべきである。したがって、この条約案には、核保有国と非核保有国がともに犠牲を分かち合うというふうな精神をもって作成されねばならないという点がまず第一点にあげられるかと思います。  第二点は、核保有国は非核保有国、特に核兵器製造能力を有する非核保有国の意見を尊重しなければならないということが二点。  第三点といたしましては、条約は、各国が自国の安全保障のため、その欲する集団的または個別的な安全保障措置を講ずることを妨げるものであってはならない。つまり、この条約の中には、いままでのところ米案、ソ連案を見ましても、非核保有国の安全を保障するような状況にはないわけでございます。したがって、最小限度非核保有国は、こういった拡散防止条約に入るにしても、その個別的な、あるいはまた集団的な安全保障措置というものを講ずることを妨げるものであってはならない。こういう三点が特に強調してしかるべきじゃないかというふうに考えております。これがはたして条約の条件にしなければならないかどうかというような点は、もう少しジュネーブの軍縮委員会でのこの問題に対する論議の発展を見て態度を決定したらいいんじゃないかというふうに考えます。
  139. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本年度から外務省では、国連局にいわゆる軍縮室ですか、軍縮室を設けて、核軍縮に対する検討を始めると、こういうふうに聞いておるわけです。そこで、これはたいへんおそまきではありますけれども、そういう方向に行ったということは一つの前進であろうと思うのです。一体この軍縮室というのはどういう構成になっておるのか、人員とか予算とか、あるいは研究のテーマは一体当面どういうことをとらえておるのか、こういうことについて御説明いただきたいと思います。
  140. 星文七

    政府委員(星文七君) 私どもが最初軍縮課というものを要求したわけでございますけれども、その要求が達成できませんで、室といういわゆる事実上の、法制上じゃなくて、事実上外務省に軍縮室というものを置くことにいたしました。いまの考えでは、従来国際連合局の政治課が、国際連合あるいは十八カ国委員会における軍縮のいろいろな論議をフォローしておりまして、その仕事を政治課から切り離して一つの室というものを設けようという考えで出発したわけでございます。できるだけ早くこの室を発足せしめたいというふうに考えております。しかし、室の単位でございますので、あまり初めから大ぶろしきを広げるわけにもいきませんので、当面は主として国際連合及びジュネーブの十八カ国軍縮委員会の軍縮の論議というものを以前よりもより注意してフォローするということを主たるねらいとしておるというふうに御了解を願いたいと思います。
  141. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 アメリカの大統領の下にはいわゆる軍縮局というのがあるわけです。そこで、英国には、先ほど来から引用しておる軍縮担当国務大臣がおると、こういうふうに諸外国には相当この軍縮管理の面で厳然たる組織を持っておるわけで、日本には初めてこういう軍縮室ができた。たいへんおくれておるわけですけれども、こういう世界の情勢に対応して、核軍縮の方向へ積極的に今後外務省が働きかけるには、現在のこういう機構ではあまりにも問題にならぬと思いますね。そこで、今後この問題に真剣に取り組む意図があるなら、形なんかどうでもいい、実際にやるのだといえばそれまでですけれども、やはり必要があるからこそ、大統領の下に軍縮局があって、あるいは英国のように専任の国務大臣を置いておる。やはり機構はそれに伴う必要があろうかと思います。そういう意味からいうと、いま御説明程度の軍縮室ではあまりにも問題にならなさすぎると思うのです。こういう意図でほんとうに外務省が前向きの姿勢で核軍縮に取り組む必要があるとそう自覚されるなら、将来これをもっと大きなものに組み立てていく、そういう必要性が出てくるわけですが、こういうことに対するお考えはどうですか。
  142. 星文七

    政府委員(星文七君) 先ほども申し上げましたように、最初は軍縮課ということで要求したわけでございますけれども、その希望が達成されなかった。また、来年度の予算においても昨年と同様にまずとにかく軍縮課というものを発足したいというふうに考えております。いま伊藤先生の仰せになりましたように、世界各国を見てみますと、この軍縮問題を取り扱っておる機構でございますけれども、国防省に付属しておるものあるいは外務省に付属しておるもの、それから単独にアメリカのように軍縮局というものを持っておる国、この三つに分かれるようでございます。まあ外務省にそういう軍縮室とか軍縮課というものを持っておるのが大体多いようにわれわれ承知しております。来年度は、軍縮室から一歩踏み出して軍縮課へ進めるように努力いたしたい、そういうふうに考えております。
  143. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、国連の軍縮委員会では、全世界が核戦争の脅威から免れるために、中国を含めた核軍縮国際会議を早急に開くことをもうすでに決議をされておるわけです。そのためにはまず順序として、中国を国連に加盟さして国際社会に引き入れることが前提でなければならぬわけです。そうだとするならば、いたずらに中国封じ込めの政策に日本が加担するということはこれはとるべき道でないと思うのです。現にアメリカですら、新聞の報道によってもわかるように、最近非常に中国に対する政策に弾力性を持たしてきておるわけですね。こういうことで日本が自主外交を打ち出すならば、やはり中国封じ込めなどというそういうものはかなぐり捨てて本道に進むべきではないか、中国国連加盟の問題も控えておるわけですから、やはりこの際、外務省としては、き然たる自主外交の立場から判断して、いたずらに追随の外交は避くべきではないか、こういう論が当然出てくるだろうと思うのですが、このことについて、日本の外務大臣として一体どういうふうに現在お考えですか。
  144. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題は結局、中国代表権問題を今日の国府から剥奪して中共に与えるという問題であります。これは毎々申し上げるとおり、きわめてアジアの平和に関して慎重に取扱われなければならない問題でございまして、結局国際世論、それの背景のもとにこの問題を処理しなければなかなかそう簡単には片づかない問題である、こう考えまして、日本といたしましては、中国を封じ込めるというような政策ではなしに、事実上の問題として、中国大陸の七億になんなんとする人民との間に事実上の交流を行なって、いわゆる政経分離の原則のもとにその交流をだんだん高めていくという現在政策をとっておるのでありまして、これ以上日本として政策を転換して、ただひとり問題の解決のために何らかの行動に出るということは、まだまだその機には熟しておらない段階である、こう考えます。
  145. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体大臣のお考えわかりましたけれども、いま申し上げたいわゆる国連軍縮委員会の決議に基づいて、まず中国の国連加盟が先決だという、そういう前提に立って各国が外交を進めておる。しかもアメリカでさえ中共に対して弾力性を持たした柔軟政策にいま移りつつある、こういう時の流れの中で、日本がいたずらに煮え切らぬ態度で中国を拒否しておることは、日本の将来に大きな一つの失敗になりやせぬか、そういうことをわれわれは危惧するわけです。われわれはこういう考え方から、この趣旨に沿った日中友好政策を進めてきたわけです。そこで、具体的には中共の代表団の入国を先般申請したわけです。にもかかわらず、政府は、これを一顧もしないで入国を拒否してしまった、こういう現実があるわけです。こういうことでは、これは世界の時の流れに逆流することにもなるし、また、国際感覚の欠除を暴露することになって悔いを将来に残すことになる。こういうことでわれわれは非常に苦慮しているわけです。やはり外務省としては、こういう大筋をとらえて、どこまでも追随外交でなく、自主的に考えて、中国とそういう友好を結ぶ方向へ行く、いわゆる政経分離なんと言っていないで、いつまでもそんなことを言っていると世界の流れにおくれてしまう。大所高所から見て、もっとおおらかな気持ちで積極外交を進めるべきではないか、そういうふうに思うわけです。そういう見地から言うと、この中共の代表団の拒否なんという問題はきわめて遺憾だと指摘せざるを得ないわけです。この点に対して外務大臣としては、どういうふうにお考えですか。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すでに政府の意思が固まって入国を認めないという方針をとったわけであります。たびたび御質問によって総理からも答弁があったようであります。結局、互恵平等、内政不干渉、これが日本の外交の基調でございまして、それがはっきり日本の国策の方向に反するという姿勢をとって入国を求めてきておるのでございますから、これはどうもこのままお入れするわけにはいかないということになりまして、ただいまその方針を堅持しておるような次第でございます。
  147. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  148. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  149. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、まず初めに、二月の古い話からお尋ねしたいのでございます。この前の予算委員会でお尋ねしましたときに、総理並びに外務大臣は、佐藤内閣は絶対にアメリカ追随主義はとっていない、ただアメリカと日本の外交上、防衛上の問題について意見が一致するだけであると、そのように申されました。しかし、私どもには、その意見の一致ということが、アメリカ側から提案されてそして日本側がそれに対して意見を一致するという姿がいつもとられている、結局そればアメリカ追従の姿ではないかと疑わざるを得ないわけであります。で、その一つの証拠としまして、松井国連大使が今度の安保理事会の議長に就任いたしまして、二月一日の夜に、さっそく政府はニューヨークにいるところの松井国連大使に、米国決議案の趣旨を支持し、その実現に努力するようにというような訓令を出したというようなことが報道されましたけれども、これは事実でございますか。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕
  150. 星文七

    政府委員(星文七君) 御指摘のとおり、アメリカの決議案の大筋が示されましたので、それに対して賛成するという態度を松井大使に電報したことは事実であります。
  151. 多田省吾

    ○多田省吾君 そのことに対して、二つの疑義が私はあると思うんです。一つは、議長国というものはあくまでも公正な第三者でなければならない、それなのに、本国政府が直ちに当事国の一方の決議案を支持するように、その実現に努力するようにというような訓令を発すること自体が公正を欠いているところではないか。もう一つは、米国決議案によりますと、初めに、国連安全保障理事会はベトナムにおける戦闘行為の継続を深く憂慮し、国際の平和及び安全の維持に対する責任を銘記し、一九五四年及び一九六二年のジュネーブ協定の条項が履行されていないことに留意し云々とございます。しかし、一九五四年のジュネーブ協定では、一九五六年じゅうに南北ベトナムの統一選挙を実施すべきだ、そして両地域を非軍事化することを規定しているわけでございますが、それを破ったのが米国であることは事実でございますが、そのアメリカがジュネーブ協定を決議案の中において云々すること自体が非常に理屈に合わないことだと思うのです。その理屈に合わない米国決議案を一方的に支持し実現に努力するようにというような訓令を、議長国に当選したばかりの二月一日の夕べに政府として松井大使に発するということは、どう見てもこれは公正を欠いており、理屈に合わないし、アメリカ追従の姿ではないかと、そのように疑われるのでございますけれども、そのことに関して外務大臣はいかがにお考えでございますか。
  152. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 松井大使は、御承知のとおり国連の代表でございます。同時に、二月一カ月間安保理事会の議長になった、二重の資格を持っておったわけであります。で、二月一日の訓令は、日本代表団としての松井大使に対する訓令でございまして、議長の職権を行なう意味における訓令ではない、こういうふうに御了解を願います。
  153. 多田省吾

    ○多田省吾君 その日本政府の訓令の内容はどういう内容でございましたか、お答え願いたいと思います。
  154. 星文七

    政府委員(星文七君) 私も的確には全部覚えているわけじゃございませんが、ともかく、安全保障理事会が開催されるに至ったこのことを契機として、ベトナム問題が平和的に解決されるようにと、そういう意味での松井大使の活動に非常に大きな裁量権といいますか、行動の範囲の広い訓令を与えたというふうに御了解願ったらいいのではないかというふうに思います。
  155. 多田省吾

    ○多田省吾君 その訓令の中に、アメリカの決議案の趣旨を支持してその実現に努力するようにというような意味の内容はありませんでしたでしょうか。
  156. 星文七

    政府委員(星文七君) 先ほど申し上げましたように、アメリカが出された決議案の大筋でございます、これに対して支持するようにという訓令を出したことは事実でございます。
  157. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま大臣は、国連大使としての松井大使に訓令を発したのだとおっしゃいましたけれども、大臣もおっしゃったように、安保理の議長としての松井大使もあるわけです。そうして、議長国に決定したばかりのときにこういったアメリカの決議案の趣旨を支持して実現に努力するようにという意味の訓令を発したとなりますと、第三者が見れば、だれだってこれは議長国としての一つの資格を持った松井大使に対して訓令を発したということにとりますから、これは政府としてそのような訓令の出し方は公正を欠く、そのように思うのが当然であると思います。その点に関しては大臣はどう思われますか。
  158. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 議長としての行動に対しての訓令ではないのです、これは。あくまでも議長としては公正な立場会議を統裁していくという立場をとるべきである。ただ、日本の代表として、実質上この問題に対して、どういう一体日本がこれに対して見解を持っているか、政府の見解はどこにあるか、そのことをまず松井大使に伝えたと、こういうのが真相でございます。議長としてどういうふうにその会議を統裁し、どういうふうにまとめていくかというようなことは、これはもうその後の問題でございますが、この問題につきましても、別にいま御質問があったわけじゃないけれども、きわめて広い権限を与えまして、現地の情勢によってしかるべく善処して平和的な事態の収拾をはかるようにというごく大まかな訓令はその後に出しておりますが、それは議長としての松井大使に対する訓令、二月一日のやつは、これは日本の政府がアメリカの決議案上程というものに対してどういう基本的な態度をとっているかということを明確に示したというのでございます。
  159. 多田省吾

    ○多田省吾君 議長国というものは、あくまでも公正な第三者であるべきはずでございます。それで、大臣も、公正であるべきだとおっしゃっている。ところが、議長国に当選したばかりなのに、そういった訓令を出すということは、非常に誤解を招くおそれがある。国際的な信用にもかかわる問題だと思うのですが、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 こういう議長国に当選したばかりのときに、米国の決議案に対してその決議案を支持するようにという訓令を出したのは非常に不用意だと思いますが、大臣は、不用意だと思われるような、誤解を招くような訓令を出したことについては、そのように感じておられないのかどうか、お答え願いたいと思います。
  160. 星文七

    政府委員(星文七君) 御承知のように、あのときの安全保障理事会は、緊急招集という非常に短いノーティスでもって開かれたということでございまして、あとの議事をよくごらんになればおわかりになるように、三回会議を開いただけでございまして、それも議題の採決だけに終わりまして実質的な議論に至らなかった。こういうことから見ましても、別に松井大使が議長として非常にその行動において公正を欠いたとか、そういうことは私は一つもないということを事実が証明しているのではないかというふうに考えます。
  161. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもは、あくまでもそういった訓令を二月一日の夕方に出したこと自体については、非常に国際的な信用を失うような、また誤解を招くような訓令であったということを感じておりますし、また、諸外国あるいはマスコミにおいても、そのことに対して、いろいろ不用意であるということを言ってるような記事も見受けるわけでございます。  次にお尋ねしたいのは、前にもいろいろ答弁もありましたけれども、モンゴル人民共和国の承認の問題でございますが、ラスク・アメリカ国務長官が、三月二十五日の記者会見で、アメリカはモンゴルの承認を考慮している、ところが、その時期は言えない、というような発表をしたわけでございます。ところが、三月二十六日の日本の各紙は、外務省がいまモンゴル人民共和国との外交関係の樹立を検討中だということを報道しておりますが、もし、それが事実であるならば、また、アメリカ追随の姿ではないかという疑いが生ずるわけでございますが、モンゴル承認の問題については、外務省当局はどういうお考えを持っておられますか。また、三月二十六日付の各紙の報道に対しては、どういうお考えをお持ちでございますか。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカと事前に何も相談しておったわけではございません。モンゴルの問題は、国連に加入したときが大体日本としても承認を与えたようなことになっておるのであります。ただ、外交関係を樹立しておらない、こういうのがそれ以後の状況でございます。それでモンゴルの承認についてはいろんな角度からたえず検討をしておるのでありまして、今回のラスク国務長官の発言によってこの問題を取り上げたというような事実は全然ございません。
  163. 多田省吾

    ○多田省吾君 そのほかにも二つの中国問題につきましても、アメリカの報道とともに、日本の外務省も二つの中国を承認するようなことを発表したということが新聞紙上をにぎわしておりましたけれども、このように何かにつけてアメリカの発表と日本の外務省当局との発表が偶然かもしれませんけれども、時期と動機があまりにも符合し過ぎている。そういうことからアメリカ追随ではないかということが国民に非常に疑惑をもってながめられ、懸念されているわけでございます。アメリカと日本の外交政策が一致したのだといえばそれまででありますが、それが何かアメリカ追随だということをよくいわれますけれども、いつもアメリカの主張が先に発表されて、日本の外務省当局の意向が、それと同じような意向が数時間置いてあるいは一日を置いて発表されるということがたび重なりますと、非常に疑惑を持たれまして、事実アメリカ追随の姿ではないかということを私たちは考えるわけです。ベトナム問題につきましても、あるいはそのほかの外交、防衛問題につきましても、やはり日本の外交筋がき然たる態度をもって自主外交を貫いて、ある場合には、アメリカ当局に対しても、日本の主張を認めさせる、そういう外交の本筋を貫いてこそほんとうの自主外交であると思いますけれども、その点に関して、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  164. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 最近アメリカの一般の論議が、ベトナムに関する論議が少し盛んになってきたように思われます。そして、もう十六、七年の間、中国大陸と台湾の政権との関係がほとんど固定化してきつつあるというように事実関係はなっている。したがって、アメリカも、中国に関する論議もこの二十年に近い固定化しつつある事実に立脚する論議がかなり目立ってきておるということは、これはどうも否定することのできない事柄であると考えるわけです。アメリカの政府自身は、これに関して従来の考え方をまだ少しも変えていないというふうに見られます。日本はこの台湾政府に対する考え方、中共に対する考え方、これは従来と少しもいままでのところは変わっていない。でありますから、これに関してアメリカ追随というふうにお考えになるのはこれはどうかと思います。追随であるとか追随でないということはたいした意味がないのでありまして、何が日本の国益に合致するかということが一番重要な問題であると、こう考えます。この問題についてはちょっとお答えになるかどうかわかりませんけれども、さような考え方でおります。
  165. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもは、あくまでも国連の安全保障機能を強化して、むしろ国連憲章五十一条ですか、にかかわる集団安保体制というものは弱体化すべきであるという考えを持っておりますけれども、いま外務省当局は、その反対に集団安全保障体制をますます強化しようというような動きが見られますけれども、その真意はいずこにございますか。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連がほんとうに世界の平和維持機構としての実力を発揮してくれば、集団安全保障体制も不要になるわけでございますが、遺憾ながら現実はほど遠い状況でございますので、具体的に日本の国の安全を保持して、国民が安心してそれぞれの生業に専念するがためには、どうしても次善の策として集団安全保障体制をとらざるを得ない、こういう状況でございますので、われわれは、この方針に従って国の安全を保持していくという以外にただいまのところはほかに賢明な策はないと、こう考えております。
  167. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、私は、いま大臣がおっしゃったように、国連の安全保障機能がいま十分ではないということであるならば、国連の安全保障機能を日本が強化する方向に向かって働きかけて、それでむしろ集団安保体制というものはだんだん弱体化する方向に向かってこそほんとうの国連安全保障機能の強化が十分にはかられるのではないか。国連の安全保障機能を強化していくけれども、集団安保体制を強化していくというのは一つの矛盾じゃないか。むしろ国連の安全保障機能を強化しながら集団安保体制、日本でいえば日米安保体制というものをだんだん解消する方向に向かっていくべきではないかと、このように思うわけでございますが、外務大臣の見解を承りたいと思います。
  168. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 集団安全保障体制というものが必要でなくなるほど国連が強化されるということは、まことにどうもこれは御指摘のとおりけっこうなことでございます。今度安保非常任理事国に当選いたしまして、国連の平和維持機能の中心部に日本も席を連ねるということになったのでございますから、御指摘のように、どこまでも国連の機能を強化するということに全力を注いでいかなければいかぬと思います。ただ、これはまあ非常に道遠しと申しますか、理想ではございますけれども、その理想の達成がなかなか至難である。まあ至難ではあるけれどもこれはぜひそうしなければならぬと。日本も全力を尽くしてその方向に進んでまいりたいと、力を出してまいりたいと、こう考えます。
  169. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもは、中国の国連加盟問題につきましては、あくまでも重要事項指定方式を排除して、そして中国を国連に加盟さすべきである。その方向に向かって努力すべきである。しかも中国に対しては世界軍縮会議とか、あるいは核実験禁止協定とか、あるいは核拡散防止条約とか、あるいは非核国への第一撃の禁止協定、そういったものに対する参加を強く呼びかけていくのが世界の平和に寄与することではないかということを感ずるわけでございますが、外務大臣の見解を承りたいと思います。
  170. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連への中国の加盟という問題は、同時に、国府を国連から追放する問題なんですね。ここにその問題があるのでありまして、それならば中国も加盟し、国府も国連に席をとどめて置くと、両方やったらいいじゃないかというふうな意見もございますけれども、これはどうも中国も台湾はおれのものだ、台湾の政府は中国大陸はおれのものだ、だから二つの中国というものは両方とも認めない、こういうことでございまして、非常にむずかしいのであります。国府を追放して中国を国連に引き入れるということになりますと、これまた極東の勢力均衡を著しく破ることになりまして、アジアの平和に非常な混乱を来たしてくることになる。いずれにしてもこれは非常にむずかしい問題で、やっぱりこれは国連の場において、多数の世論というものが確立して、そうしてこの問題の処理のまず前提になるということが肝心なのでございまして、日本一国でどうにもならぬというのが、この問題のむずかしさであると考えるのであります。そういう意味におきまして、いま直ちにこの問題を解決するということはきわめて至難であり、情勢の推移をしばらく待つという以外に手はない、こう考えております。
  171. 多田省吾

    ○多田省吾君 外務省は十六日に、「日米安全保障条約の問題点について」という統一見解を発表されたそうでございますが、その中で、安保条約の期限については、今後十分に検討すべき問題である。いま直ちに結論を下す必要のある問題ではないと、そういう意味のことをおっしゃっておりますけれども、どうもこの前からの総理大臣あるいは外務大臣等の答弁をお聞きしておりますと、総理大臣の見解としては、安保条約はでき得る限り長期にわたるべきであるというような見解を発表して、あたかも長期固定化のような、そうして一部でいわれているような双務的なものも強化して安保を改定すべきであるというような意見が自民党の一部に強いようでございますが、そういった意見のように思われるのに反しまして、外務大臣の答弁は、あくまでいま現在結論を下すべきではないけれども、自動延長が望ましいというようなニュアンスも感ぜられるわけでございます。政府としての真の統一的な見解はどういう方向にあるのか、見解を承りたいと思います。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまだ四、五年、間があるものでございまして、いまからこれをこうでなければいかぬというふうに意見をきめて、そして一九七〇年の満了の機会を漫然として待っておるというようなことは得策でないと思います。その間にいろいろ世界の情勢も変わるだろうし、あるいはまた、この情勢に処して条約の問題についてこのままでいいのか、あるいはそれとも非常な大きな転換を要するのか、あるいは部分的に改定をする必要があるのか、いろいろその考え方があると思うのです、期間の問題のみならず。そういったような問題を、やはり情勢の推移をしばらく見詰めながら問題を慎重に検討してまいりたい。いまのうちから自動延長がいいとか、あるいは長期固定化がいいとかいうようなことをきめるのは早計であると私は考えております。
  173. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもは、あくまでもそういう安保の長期固定化とか、あるいは双務的な関係を強くするような改定には強く反対しておりますけれども、いま外務大臣がおっしゃったように、現在の時点で、長期固定化とか、あるいは自動延長がいいというようなことも、やはり政府としてそういうことを発表するのは、一つには不用意であり、早計だということを感じとっておる。しかしながら、実際に総理大臣等の答弁を聞いておりますと、安保はあくまでも長期的なものが望ましいということは、あたかも長期固定化を示唆しているようなふうにとられやすい。だから、大臣のおっしゃるように、それは不用意な発言ではないかと、政府当局においてもどうも総理大臣と外務大臣、あるいは外務当局との意見が合わない、不一致なように感ぜられるということが言われておりますけれども、私もそういうニュアンスを十分に感じるわけです。総理大臣等の発言が誤解されないか、あるいは不用意ではないかということについて、外務大臣はどう考えておられるか、その点をお聞きしたいと思います。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理の考え方は、別に長期固定の説ではないと私は考えております。  たまたま、安保条約でございますから、日本の安全をはかる、いわゆる日本でいうと、防衛体制と申しますか、防衛計画といいますか、その問題に関連するもんだから、たまたま話が触れて、防衛計画なんというものは半年や一年の小きざみな計画なんというものでやるべきものではない。やっぱりこれは非常に長期の見通しを立てて防衛計画を立てるべきものであるということをたまたま言及したもんだから、それで安保条約についても長期固定化のほうがいい、こう言ったのじゃないかというふうにとられたのでありまするが、どうもその点は、聞くほうに誤解があったのではないかと私は考えております。その後の総理の発言を見ましても、私どもと同じように、これは十分に検討して、自動延長がいいか、それとも十年とかいった期限をさらにつけて、そうして長期固定と、こういうことにするがいいか、これはよほど慎重に考えなければいかぬということをその後しばしば発言しておりますから、総理の考え方は長期固定化に固まったというふうに考えられると、それは私は考え過ぎだと、こう考えます。
  175. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあきょうの新聞にも、下田事務次官が、きのうの記者会見で、核軍縮が成功しても日米安保条約が必要であるというようなことを発言されたそうでありますが、そのことに関して外務大臣はどのようなお考えをお持ちでございますか。
  176. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核軍縮は、これはけっこうなことであって、これは核のみならず、一般軍縮もあわせて国際紛争を力で解決しようなんという考え方は、だんだんやはり全面的に是正するのがほんとうだ。しかし、全面的に、核及び一般軍備というものが全面的に禁止、縮小されるという事態はなかなかそう簡単には来ないと思う、それは。現実問題としては、どうしてもやっぱりまだ手放しで国の安全が期せられるものではない。やはりみずから自分を守るという必要がある。それから、しかも今日においては一国ではなかなか国家の安全を守り切れるものじゃない。集団安全保障という体制をとって、そして国の安全をとにかく保持していく。それは現実の今日の世界情勢からいってやむを得ない方向でありますから、考え方は矛盾するようでありますけれども、一方は高い理想図である。しかし、その高い理想図にたよって現実を忘れるわけにはいかない。現実は現実でやはり安全保障体制というものをはっきりと確立しておくということが必要である、こう考えます。
  177. 多田省吾

    ○多田省吾君 理想論と現実論というお話でございますけれども、先ほども申しましたけれども、結局国連の安全保障機能が非常に強化される。また核軍縮、全面軍縮というものがだんだん成功してくるとしますと、当然私どもは集団安全保障体制を弱体化して、たとえば日米安保条約はだんだん解消に向かわせて、そして国連の安全保障機能、あるいは核軍縮の方向に向かって大いに力を注いでいくべきである。そして集団安全保障の体制は、お互いにそういうものが強くなれば、やはり戦争の危機はますます強まるばかりでございますから、そういうものは弱体化すべきである、そのように考えるわけです。ところが、下田次官がもしこういうことをおっしゃったとすれば、核軍縮が成功する、あるいはそういう完全軍縮の方向に進んでいく、そうしてそれが成功したとしても、どうしても日米安全保障条約は必要だということは、いつまでも存続させるということはむしろ矛盾じゃないかと思うのですが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  178. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 下田次官の発言も私の言うことと同じでございまして、もう世界が全部武力闘争のかまえなんていうものはどこへ行ったってその影も見えないというふうになれば、集団安全保障体制なんていうものは必要がないのです。しかし、そういう理想図がいつ達成されるか、なかなかこれはむずかしい問題である。だからして、その理想を一方においては追いつつも、現実はやはり集団安全保障体制というものをとらざるを得ない、こういうことを言っているだけの話であります。やはり理想と現実というものをちゃんと割り切って、そしてあの発言になっておると、こう考えております。
  179. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  180. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  181. 多田省吾

    ○多田省吾君 前にも外務次官は核のかさ問題でだいぶ物議をかもしたような発言をなさいましたが、今回も同じような姿であろうと思うのです。ここに下田次官に来てもらえればはっきりするのでありますけれども、新聞の報道だけでは詳しいことをおっしゃったかどうかはっきりしないことですから、これは次回に譲りますけれども、もう一つお尋ねしたいのは、外務大臣はこの前、東南アジア、低開発諸国の経済援助を国民所得の一%を昭和四十三年度あたりから援助したいという話をされたそうでございますが、また一面においては、防衛庁長官あたりが三次防の終わる昭和四十五年ごろまでに国防費として国民所得の二%に増額していきたい、そのように述べておられます。そうしますと、その両方がもし達成されたとしたら、昭和四十三年あるいは四十五年度においてもう国民所得の三%、すなわち国家予算の二〇%近くがアジア諸国の経済援助にあるいは日本の防衛に用いられるとすれば、これはたへんい金額であると思うんです。事実そういうことができるのかどうか、そして外務大臣御自身も外交等の見地から考えて日本の自衛力を国民所得の二%まで三次防の終わりにおいて増額する必要があるのかどうか、その辺の見解を承りたいと思います。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 防衛のことは、これはよくわかりませんから、ひとつ防衛庁のほうからお答えしたほうがよかろうと思いますが、国民総生産のいまたしか〇・五%税度でございますが、四十一年度の予算及び財政投融資計画というものがあのとおり実施されますと、六%以上になるはずです、〇・六%、GNPの。でありますから、三、四年の間に国民生産も伸びていくであろうし、それの一%ということになりますと、まあ三年先か四年先かわかりませんが、大体八億ドルぐらいの見当になると思います。これは長期的に見れば、やっぱり日本のほうに返ってくる利益でありまして、経済協力が実って、そして東南アジアをはじめとして低開発国が繁栄すればそれがまた日本にはね返ってくるというのでありまして、そうおそろしい数では私はないと考えております。
  183. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  184. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  185. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在防衛費は、国民所得の一・二四%ですか、新しい計算では、二四%だといわれておりますが、経済援助は〇・五%だといわれております。両方合わせれば一.七%でありますけれども、昭和四十三年度以降になりますと、それじゃ東南アジアの援助の額のほうは〇・五%から一%に増加していく。で、いま外務大臣は触れられませんでしたけれども、防衛庁長官ははっきり三次防の終わりにおいては国防費を国民所得の二%にしたいということを言っておるわけです。私たちは、それはいまのアジア援助に対するやり方は非常に一方的で納得することはできませんけれども、経済援助を一%ということはまあけっこうだとは考えております。だけれども、他方、防衛費をいまの一・二%から二%までに増加するということになりますと、これは国家予算の使い方としては、非常にもう国民生活が庄迫されるような姿になると思うんですよ。だから私が申し上げたいのは、そういう政府の各大臣の意向というものが非常にばらばらであって、はっきりした統一をされたものが何もない。で、経済援助を一%にこれするんでしたならば、やはりいまの国民生活の現状から見て、防衛費は、やはり国際的な、責任は低開発国の援助で相当果たすことになりますから、防衛費のほうはいまの一・二%、現状でやむを得ずいくとかどうとかそういったことをもう少し真剣に考えるべきではないか、そういうことを申し上げておるのです。それに対する外務大臣の見解を最後に承りたいと思います。
  186. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) GNPの、国民総生産の一%というのは、将来総生産が伸びると予想して、まあ一%が八億ドルと、これは決してびっくりするような数字ではない。防衛費の問題についてはこれは所管外でございますから、これが適当であるとか適当でないという批判は私は申し上げる立場にございませんから、これは差し控えさしていただきますが、しかし、日本の防衛費は各国を通じて見て最も最低でございます。国民総生産に比較して最低である。防衛当局はこれで十分に日本のアメリカとの集団安全保障体制を維持する上において現状でいいのか、それとも現状で悪いのか、この点は防衛当局からの見解を待たなければ明らかにされないと私は考えております。しかし、ただいまの現状では、世界の先進国のうちで最も最低であるということははっきり出ております。
  187. 多田省吾

    ○多田省吾君 以上をもって終わります。
  188. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御発言もないようでございますから、本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後三時五十五分散会      —————・—————