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1966-04-14 第51回国会 参議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十四日(木曜日)    午後一時二十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 船田  譲君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 山本伊三郎君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        通商産業大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        総理府人事局長  増子 正宏君        通商産業政務次        官        堀本 宜実君        通商産業大臣官        房長       大慈彌嘉久君        通商産業大臣官        房参事官     吉光  久君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省軽工        業局長      伊藤 三郎君        通商産業省繊維        局長       乙竹 虔三君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        通商産業省公益        事業局長     熊谷 典文君        特許庁長官    倉八  正君        中小企業庁長官  山本 重信君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        通商産業省通商        局次長      今村のぼる君        労働省労働基準        局労災補償部長  中村  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き本案の質疑を行ないます。  関係当局の御出席は、三木通商産業大臣大慈官房長吉光官房参事官伊藤軽工業局長乙竹繊維局長、倉八特許庁長官山本中小企業庁長官、以上の方々でございます。  御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  3. 北村暢

    北村暢君 時間があまりないようですから、質問を集約してお尋ねいたしますが、まず第一に、化学肥料関係の問題について御質問申し上げますが、肥料二法が廃止になりまして現在施行されている肥料新法が現在施行されておるわけでございますが、その間肥料事情における国際的な環境はまあ若干よかったわけでありますが、この化学肥料関係合理化が今日までどのような形で進んできているのか。この点について、まず概略のことでいいですから御説明を願いたい。
  4. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 化学肥料は、一昨年来輸出の好調にささえられまして、比較的順調に経過してまいっておるのは御承知のとおりでございます。最近の問題点といたしましては、従来のアンモニア設備ナフサ原料とします新しい設備にリプレイスしていくというのが最近の合理化の一番大きな問題でございます。ICIの方式によりますと、ナフサ原料といたしまして、それから大きな五百トンあるいは千トンというような能力設備をつくりますと、コストが非常に下がります。こういう設備に現在切りかえつつある。ただ、日本肥料会社全部がそういう形で大きな設備をやりますと、これはまた以前のように生産能力が過剰になるという事態になりますので、行政指導をいたしまして、設備としては五百トン以上の規模のものをつくるように、また、それについては一定のワク各社ごとにきめまして、そのワクを持ち寄るなり何なりしてやるようにということで、規模を大型化すると同時に、将来の設備過剰を来たさないようにという配慮を加えた行政指導をしておるわけでございます。
  5. 北村暢

    北村暢君 大体事情わかりましたが、肥料法廃止当時の硫安輸出会社の、赤字ということではないのですが、輸出赤字を背負ったような形になっておりました硫安輸出会社のその後の運用状況といいますか、どの程度背負った赤字解消したのか、この経過について御説明願いたいと思います。
  6. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 従来の赤字が百七十九億ございましたのが、その後償却いたしまして、現在のところ百七億まで減ってまいっております。
  7. 北村暢

    北村暢君 これの赤字解消目標は、一体どの程度において将来解消しようとされているのか、それからまた、解消方法としては、関係の各企業がどのような分担のしかたで解消する方法をとっているのか、この点見通し方法についてお尋ねしたい。
  8. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 目標といたしましては、三十七年から十年程度償却をするという目標でやってまいっているわけでございます。このいわゆる輸出赤字でございますが、これは肥料生産会社輸出会社に対する売り掛け金という形になっております。したがいまして、各社ごとにその売り掛け金の額はあるわけでございます。現在までに、数社もう償却を完了した会社がございます。いま申しましたように、各社売り掛けという形で残っております。それを先ほど言いましたように、毎年償却をしてまいるという形で進んでいくわけでございます。
  9. 北村暢

    北村暢君 この問題は、数社もう完了したところがあるようですけれども、肥料会社は非常に格差があるわけですね。したがって、売り掛け金というものを計画どおりにその企業内容によって解消できないで焦げつくような可能性というものはないのですか。いままでの状況からいって、どうでしょう。
  10. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 現在までのところ、順調にいっていると考えております。
  11. 北村暢

    北村暢君 現在の国内化学肥料価格輸出価格との差、これはどのようになっておりますか。特に、硫安と尿素だけでいいですから、ちょっと知らしていただきたい。
  12. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 最近の輸出価格国内価格とでございますが、絶対数で比べますと、輸出のほうが低くなっておりますが、運賃とかあるいは取引条件等々、全体的に考えますと、輸出価格国内価格は大体同じ程度というふうに考えております。数字を申しますと、大体硫安で申しますと、メートルトン当たりでございますが、四十九ドルから五十ドル程度になっております。国内価格のほうが四十キロのかますでございますので、これが基準価格でいきますと、七百二十円から四十円ぐらいのところにまいっております。
  13. 北村暢

    北村暢君 ちょっと比較するのに、メートルトン当たりと四十キロ当たりでは比較が、ちょっと高いのか低いのかわかりませんが、換算してどうなっているのか、ひとつあとからでいいですから、教えてください。
  14. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 換算した額は、なかなかむずかしいのでございますが、比率で申しますと、国内価格を分母にしまして、輸出価格を分子にいたしておりますが、昨年の五、六月ごろで九三、四%というようなところでございます。
  15. 北村暢

    北村暢君 そこで大臣にお伺いいたしますが、最近の新聞報道によるというと、アメリカとヨーロッパにおいて日産千トン級の生産能力を持つ工場が十一カ所ですか、アメリカが八カ所、欧州が三カ所、四月ごろから十二月ころまでに操業を開始するというようなことが報道されております。そうしますというと、これは日本の、先ほどの説明によりましても、日本肥料化学工業日産能力が大体五百トン以上千トンまでといっておりますが、千トンという工場はまだなく、七百五、六十トンという工場が、計画されている中ではそういうことのようです。そうしますと、これは先ほどの説明にありましたように、生産量によってコスト・ダウンするという点については非常に合理化されるわけです。肥料工業は特にそういう性格を持っている。それからまた、かつて西ドイツが中共に対して肥料輸出をした際に、日本と相当争って価格競争をやったわけです。そういうような点からいって、最近の一、二年は、国際情勢日本に有利であった、そうして順調な輸出がなされて、特に中国においては非常な大きな輸出増になっておるわけですね。そういうような点からいって今後の国際競争は、肥料は再び激しい国際競争が行なわれるのではないかということが想像できます。特に肥料の不足しておるのは東南アジア、インド、中国、こういう地帯が多いわけでありますから、日本と当然国際競争になる、こういう情勢であろうと思うんです。したがって、この国際競争に対して肥料化学工業方向として一体こういう国際環境の中でどのように対処されようとしておるのか、この点について最近非常に目立った情勢でございますので、方針を伺っておきたい。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 北村委員のいま御指摘のように、肥料の最大のマーケットはアジア地区であります。そういう点で立地的な条件というのは日本は有利です。それとまた、立地的ばかりではなしに、今後政府自体アジアとの経済協力というものを少しアクセントをつけようという考えですから、海外経済協力とか、そういう政策とも相まって国際競争力というものが、そういう面から相当西欧諸国よりも持っておることは事実ですが、いまも御指摘になったような日産千トンという、こういう新鋭設備が生まれつつあるということは、日本もやはり設備近代化といいますか、そういう設備を更新する場合はやっぱり日産千トンという新鋭設備に向かって設備を更新する必要がある、現在建設中で七百五十トンというのがあるわけですが、そういうふうにして、せっかく持っておる国際競争上有利な地位を、設備を更新して、その面においても国際競争力を保持できるような、今後はやはり指導をしていかなければならぬ。いま直ちに国際競争力を持たないとは考えていないんですけれども、しかし、今後の新しい設備の場合には、こういう世界の動向等も頭に入れなければならぬと考えております。
  17. 北村暢

    北村暢君 そこで、本年度硫安関係開銀融資が前年度二十億に対し本年度十億と、十億減っているわけです。それで最初私がお伺いしたのは、硫安工業合理化の問題がどのように進んでいるかということを聞いたのも、実はいまのような国際情勢の中で激しい国際競争をやらなければならないというときに、この肥料工業合理化が私はもう早晩要求せられるんではないかと思うんです。その段階で開銀融資が十億昨年よりも減っているということはちょっと不可解に思いまするので、しかも日本の現在の設備は決してアメリカなり欧州の千トン・クラスの工場に、近代設備工場が操業したということになれば、太刀打ちの問題は簡単にいかないのではないか。したがって、肥料工業合理化というものは相当強く要請せられるときが早晩来るんじゃないかと、このように思うんです。そういう点でひとついまのような、大臣のようなのんびりしたことを言っていられないんじゃないかという感じがするんですが、どうでしょうか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 去年二十億ですが、その中でまだ五億使い残りがあって、ことしは十億でも去年と同じであるわけです。しかし、こういう事情も、やはり新鋭設備が生まれてきて、相当日本アジア地域に対する輸出の品目としては重要視しなければならぬ。ですから今後この資金というものは増大していく必要があると思います。本年は特に減らしたわけですが、去年と同じであります、実質的にそういうことでございます。
  19. 北村暢

    北村暢君 この点については、そういう情勢がきびしいということだけで、またの機会に譲ります。  それから、次にお伺いしたいのは、繊維産業不況対策の問題でございますが、公取における十二日の決定で、再び綿紡不況カルテルを十二月まで延長するということが伝えられておるわけですが、これに対して国際的にイギリスアメリカ繊維産業が一時沈滞いたしましたけれども、最近非常に目ざましい進出をするということが報道せられているんですが、この点について一体どのように状況を把握されているのか、この点まずお伺いしたいと思います。
  20. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 実は詳細不明な点もございまして、本年度二千万円の調査費をお願いいたしまして、現地調査等をいたすつもりになっておりまするけれども、現在わかっております点を御報告申し上げます。  英国でございますが、日本がかつて追いつき、追い越したランカシアの綿業委員指摘のとおり、非常に一時衰退をいたしたのでございますけれども、一九五九年に綿業法というのができたようでございます。で、政府は、二千七百万ポンド資金を投下いたしまして過剰設備を買い上げる、買いつぶすと、これは政府が三分の二出し、それから民間が三分の一出すということであります。それからもう一つの柱は、英国綿紡績業は非常に過剰であるばかりでなく、老朽化しておったようでありまするが、この老朽化設備をまず買いつぶして、そのあと新鋭設備をつくるということで、新鋭設備に対しましては政府が四分の一の補助をいたすということだそうであります。で、数字でございまするが、一九五九年綿業法ができましたときに、英国綿紡績業は千五百二十六万錘で、このうち千三十二万錘が運転、したがって稼働率六七・六%ということであったそうでありまするが、約一千万錘をスクラップ化いたすとともに、先ほど申しましたように、新鋭設備をつくり、現在のところは五百八十万錘でもってこの運転比率——稼働率九一・六%という高能率なっておるそうでございます。このような繊維産業中核でございます紡績を若返らせますとともに、また一面、御承知のとおり、コートールズ等会社中核になりまして統合が進んでおりまして、現在大きなグループが四つあるということでございますが、この四グループの場合には単に綿だけではなく、合繊、染織、織布を含めまして総合的な経営グループで行なわれているということを聞いております。それから第二に米国でございまするが、米国におきましては、主としてこれは民間ベースにおきまして統合が進みましてバーリントン、それからスチーブンス、このようなグループ化が非常に進んでおる。ただし、政府におきましても、またこれを援助いたしますために税法上の援助をしているということでございまして、投資額の七%は税額控除というふうな制度によりまして米国綿業が振興されておる。しかし、かたがた例綿製品長期協定というふうなもので後進国中進国日本もその中に入っておるわけでございますが、その中から米国内に綿製品の入ることを防止しながら、このようなグループ化によりまして競争力を強化しておるということを聞いております。
  21. 北村暢

    北村暢君 どうも肝心なところで大臣が抜けちゃって、これぐあいが悪いのですけれどもね、その対策をひとつ実は大臣に聞きたかったわけですけれども、もう少し質問を続けます。  ただいまの局長説明でも、イギリスアメリカ等において最近相当保護措置を、奨励措置をとり、相当な進出が予想せられるわけであります。そこでその場合に、現在繊維製品アメリカへの輸出依存度というものは相当あるわけですね、したがって、このアメリカヘの繊維製品輸出というものが、そのために影響をこうむる、あるいは西欧諸国に対しても、イギリス紡績関係がこういうふうに伸びてまいりますと、西欧に対する従来の輸出というものが、相当競争が激しくなるということが想像できるわけです。そういう点と関連をして、現在の繊維産業不況というものを、一体どうやって克服をしていくのか、その見通しというものをどういうふうに持っておられるのか、この点を実は大臣に聞きたかったわけなんですけれども。ひとつ局長でもけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  22. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先生指摘のとおりでございまして、米国イギリス、非常に競争力を強化しておるわけでございます。ただ私たちで調べたところによりますると、米国及びイギリスが綿を中心としている繊維を、対外的に輸出しているという数字は少ないようでございます。ただ合繊につきましては、これはもう御指摘のように相当出ているということでございまして、わが国の紡績繊維産業が、依然として日本貿易中核をなしているわけでございますが、これにつきましてはもう御指摘のように、相当抜本的な手をとらざるを得ないというふうにわれわれは考えているわけであります。ただ一面、不況も深刻でございますので、先ほど先生指摘のように、一応綿糸中心にいたします糸につきましては、カルテルが本年十二月まで一割の生産制限というかっこうで延長になっておりますけれども、これは一時しのぎでございまして、問題は構造的な対策をやらなければいけないということで、業界におきましてもその機運が非常に高くなっておりますし、学識経験者においてもその必要性が叫ばれておるわけでありまするが、通産省はこの業界及び学識経験者とともに審議会をつくりまして、この審議会産業構造審議会とそれから繊維工業審議会、この二つの審議会体制小委員会を置きまして、その体制小委員会を合同いたしまして、稲葉秀三氏に合同部会委員長をお願いいたしまして、昨年の暮れから鋭意根本的な対策に取りかかっているわけであります。現在のところ、毎月二回のペースで審議を進めております。本年の七月末には答申案を得たい、それによりまして本年末の財政投融資ないしは予算、あるいは必要がありますれば立法ということに結実させたいというふうに努力をいたしておるところでございます。
  23. 北村暢

    北村暢君 いまその対策検討中ということですから、直ちに結論というわけにはいかないのでしょうけれども、この綿紡不況カルテルが年末まで延長して認められたわけですが、昨年の十月から行なわれているので、相当長期にわたる不況カルテルであります。そこで国際競争に対抗するためには、相当思い切った日本の、繊維産業全体における構造上の問題として、根本的に検討をされるということのようでありますが、しかし、この不況カルテル状況を見ておりまして、どうも構造上の根本的な問題について、この欠陥というものについての合理化というものが、不況カルテルの陰に隠れて合理化が進まないんじゃないかという感じがするわけです。したがって、構造改善のための準備金として五億五千万、今度の予算でも組んでおるようですが、これの使い道というのは一体どういうような使い方をするのか、それからまた、合理化方向が、最近東洋紡と呉羽紡との合併等が行なわれ、逐次企業の整備も行なわれているようでありますけれども、しかし、この繊維産業全体から見れば、これはまだ中小企業的な企業というのが非常にたくさんあるわけです。したがって、構造改善の問題を取り上げれば、必ずこの問題とぶつかるだろうと思うのですがね。一体どういうような方針をもってこの繊維産業構造改善というものを進めようとしておるのか、また、いま産業構造審議会、その他の審議会検討すると言いますが、その検討する場合に、政府一つの案を出して検討されるんだろうと思うのですね。したがって、もうすでに七月に結論を出したいというのであれば、その審議会に対して通産省がある程度資料を提供しているという、そのものの考え方というものはもうすでに出ているんじゃないか、それは結論はどうなるかわかりませんが、一応の考え方として通産省としては出さざるを得ない、そういうことだろうと思うんですが、そういう面についてひとつどういう方針構造改善をやろうとしておるのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  24. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 審議会方針がきまりまして、それが通産大臣によりまして採択されて正式にきまるわけでございまするので、いまこれから申し上げますることは、繊維局の現在まあ勉強しておる方向という程度にお受け取りいただきたいのでございまするが、すでにわれわれ繊維局は、審議会に対しまして現在の綿紡績業につきましてのコスト資料を提出いたしております。このコスト資料によりますると、綿糸四十番手に例をとりますると、安いところは、ポンド当たりでございますけれども、百五十六円というふうな安いコスト会社がございます。それに対しまして高いものは百八十円をこえておるというふうなコストを示しております。と申しますのは、現在の綿紡績業は約三分の二は綿代でございまして、これはどうにもならぬものでございますが、残りの三分の一で競争しておるわけでございますけれども、すでにポンド二十円の差があるということ、これはわれわれといたしましては、現在の設備ですら百六十円を割っておるコストで糸ができておるので、さらにスリー・シフト等も考慮に入れれば、当然こういうラインを目標にして現在の日本紡績業努力をしなければならないんじゃないだろうかということをわれわれとしては考えておるわけであります。  それから第二に、われわれの調査いたしましたところ及び審議会に提出いたしました資料によりますると、先生もすでに御承知のとおり、さっきまた御指摘がございましたが、日本紡績業には非常に零細な紡績屋さんが多いようでございまするが、コストの低いのは大体一企業五、六万錘にまとまったところ以上のところがコストが低い、五、六万錘以下の企業は比較的コストが高いというふうな結果が出ております。われわれの方でテストといたしまして頭の中で考えたコスト計算をいたしてみますと、やはり同じように、紡績業は一工場五、六万錘以上であるべきであるという結論が出ております。こういうことも一つの示唆ではあるまいかというふうに考えております。したがいまして、コストの面でございますとか、企業規模の面でございますとか、さらには経営規模でございますとか、この経営規模としてはやはり十五万ないし二十万錘以上ある必要があるのではなかろうかというふうな資料も出しております。こういうふうな企業内部体質改善と申しますか、企業体質改善と申しますか、これが一つ構造対策の大きな柱になるだろうと思います。それからもう一つ構造対策でございまするが、企業内部体質改善をせねばならぬと申しましても先立つものは金でございますし、その金は原則として企業収益をあげて便じなければならぬというふうに考えるわけでございまするので、企業収益力を高めるという必要性がある、当然のことでございます。収益力を高めますために、現在の過当競争状態を直す必要があると思いますので、ここに過剰設備の処理問題というものが出てくるのじゃなかろうかと思います。現在約千百万錘ございまするが、この中でまあ二百万と言い、二百五十万と言い、これはいろいろ見方によって違うようでございますけれども、相当数過剰設備があることは事実であるというふうに思うわけでございます。これがまあ構造問題につきまして、現在われわれの勉強しておりますところの中身を若干御披露申し上げることでございます。  それから次に、中小企業問題をどうするのかというお話でございまするが、これは繊維産業と申しましてもいろいろな種類があるわけでございまして、中小企業に適する業種と大企業に適する業種とあるのではなかろうか。すなわち標準の綿糸とか標準の生地綿布であるとか、それからナイロン、テトロンの綿とか原糸であるとか、こういうものはだれが考えてもやはり大企業に適しておるものである。しかし、一面私たちが繊維品を着ております、この縫製段階とかいろいろな段階になりますと、これはむしろもう大企業では手に負えない、中小企業にお願いしなければどうにもならぬというものでありまして、繊維は物質生活がだんだん豊かになればなるほど製品に対する消費者の希望は複雑になると思いますので、そういう意味におきまして、むしろ中小企業にお願いしなければならない分野がますますふえてくるというふうにわれわれは期待いたしますとともに、中小企業対策に伴って力を入れなければならぬというふうに考えております。
  25. 北村暢

    北村暢君 大体その方向はわかりましたが、この五億五千万の予算というものはどういう方向でお使いになるのですか、その内容を……。
  26. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) たいへん失礼を申し上げました。いま申し上げました基本的な方向を考えておるわけでございまするが、さしあたり本年度といたしまして五億五千万の予算をお願いしたわけでございます。さしあたりと申しますのは、こういう構造対策をやってまいります場合に、当然過剰処理の問題とは別に、転廃業問題が起こるであろうというふうに考えます。そういうふうになりますと、この転廃業を円滑に進めていくということは構造対策を進めていくためにも必要でございまするし、それから特にまあ繊維産業は、いままで日本の経済に非常に貢献のあった産業でもございまするし、特に中小企業者も多いと、こういう点を考えまして、転廃業を円滑にしていくための施策というのは、何はともあれそれは早くやる必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、構造対策全般につきましては、先ほど申し上げましたようなテンポで進んでおりますけれども、まず転廃業だけは、転廃業対策だけは本年打ち出したいということで、この五億は、政府は五億出し、それから業界が五億出しまして、この十億をもって転廃業をする中小業者の繊維設備、これの買い上げをやろうと、こういうふうな構想になっております。
  27. 北村暢

    北村暢君 その買い上げをやるとおっしゃるのですが、その買い上げをする主体はどこなんですか。
  28. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 一応予算書には公益法人をつくりましてということでお願いをしておるのでございますけれども、業界業界と申しましても、特に構造問題に真剣に早く取っ組まざるを得ない綿紡績、毛紡、化繊、それから綿機、毛機、絹、合繊機、この六業界をもちまして、この出資で公益法人をつくる。一応名前は繊維工業整備促進協会という仮称になっておりまするけれども、この協会が公益法人としてできまして、この公益法人が主体としてやる。政府はこれに補助金を出すというふうなかっこうで進めてまいりたいというふうに考えております。
  29. 北村暢

    北村暢君 そこで最後にお伺いしたいのですが、構造上の問題について検討されると、こういうふうなことでございましたが、繊維産業が斜陽産業というふうに見られているわけです。特に綿紡ですね、合繊等は非常によく伸びておる。しかし、綿紡にしても、最近の輸出量を見ても決して減っておらないという点からいって斜陽産業とは私は思わないわけですが、いずれにしても、これだけの歴史ある産業ですから、斜陽産業ということでほうっておくわけにはいかない。いま御答弁のありましたように、構造上の問題を解決して抜本的な対策をとりたい、こういうことですが、将来の見通しとして、先ほどイギリスアメリカ等においてもこの繊維産業を保護育成するという強力な措置をとっておるようですけれども、そういう面と関連をして、しかもこういう軽工業というものは、繊維産業というのはおくれた大きな市場である東南アジア等においても、みずからインド等においても、いま盛んに日本を凌駕してはるかに大企業でこれはやっているわけですね。進出がはなはだしい。そういうふうな点からいって、この国際的な環境国際競争の上からいって、この繊維産業というのは斜陽産業というような方向にならないために一体どういう見通しを持ってやっていかれようとするのか、ここら辺のところをひとつ御説明願いたいと思います。
  30. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 私たち繊維の仕事をやっておりますものにつきましては、繊維は斜陽産業ということばを聞くと非常に実はショックなんです。ショックと申しますより私はこれは非常に当たっていない。これは先生のおっしゃいますように、全然当たっていないと思うのでございます。と申しますのは、斜陽というのはどうも恐縮でございますが、やはり需要がだんだん減っていくというのが斜陽だと思います。ところが繊維は、衣食住と申しますとおり、物質生活の一番筆頭にくるものでありまして、住におきましても、これはわれわれの周辺は住について豊かになれば豊かになるほど繊維が使われるということでございますので、需要についてはこれはもう間違いなく伸びていく、したがって、この産業が需要面から斜陽だということは絶対ないと思っております。  それから第二に、ただ繊維というのは労働集約産業と、こういわれておりまして、したがって、労賃の安い国で栄えるということが言われるわけでございますけれども、これは繊維の中に、虚心たんかいに申しまして確かに安い労賃に依存しなければならない部分は若干はあると思います。若干はあると思いますが、しかし、大部分のものは労働集約産業を資本集約産業に切りかえますることによりまして、たとえて申しますと、綿紡綿糸でございますが、後進国では一コリ十人というふうな人間がかかっておりまして、日本では大体一コリ六人くらいであがっているわけでございますが、これはアメリカイギリスでは大体二人というふうな状態でございます。したがって、資本をこれに集約して投下することによりまして脱皮いたさせれば、綿紡績業といえども十分これは太刀打ちできるものであることは、先進国がすでに立証しているところでございます。したがって、コスト面からいっても、競争力は十分ある。  さらに第三に私が思いますのは、繊維というものはだんだんいわゆる復合繊維化してまいるのでございまして、綿と合繊と毛といろいろまぜてだんだんいくということになるわけでございます。そういたしますと、国内繊維原をみな大体持っている必要がある。特に申し上げたいのは、化合繊関係でございまするけれども、化合繊繊維原料というものを国内に持つためには、当然その背後に化学工業がなければいけない。これは後進国ではどうにもならぬと思います。こういう意味におきまして、私はむしろ複合繊維時代におきます繊維工業というものは先進国産業であるというふうに思うわけであります。ただ、これにつきましては、現在の日本繊維産業がこのままこれでいいかと申しますと、非常に大きな問題をはらんでおるわけでございまして、御指摘のように、先進国がやりましたように、十分に業界もその気になってもらいますとともに、政府も積極的にこれに支援をして、そして先進国の新しい産業に生まれかえさせなければいけないというふうに思っているわけでございます。
  31. 北村暢

    北村暢君 あと若干で終わりますが、繊維問題をもう少し聞きたいのですけれども、時間がございませんから、あと紙パルプ関係のことを若干御質問いたしたいと思います。  昭和三十八年に紙パルプ産業の構造分析をされたのを通産省から出されておるわけですが、その構造分析によりますというと、紙パルプも相当な成長度をもって発展をしていくということが分析されておるわけですが、この場合に、やはり問題になるのは原料でございまして、紙パルプの原料であるパルプ資材がそれに追いついていくかどうかという問題です。大体、紙パルプ産業の成長率が、この分析で見ましても約九%程度の成長率をもって伸びていく。文明の進むに従って、紙の消費量というものはこれまた衣料と同じようにふえていくわけです。そういうような点で、相当の伸び率でいくだろう。需要面においてはそういうことが想定できるわけです。したがって、それに対して資材の面からいくというと、木材関係の林業の成長率というのは、どこまで相当合理化しても所得倍増計画においても二・八%程度である。しかし、木材の用途別の内容というものは変わってまいりますから、したがって、パルプ材に向けるのは増加していってもある程度は応じ得るのだろうと思うのですけれども、しかし、それでも、なおかっこの分析において昭和四十二年度見通して二割程度の不足をするのじゃないかということが分析されているように思うのでありますが、一体、この紙パルプ産業の現状とごく近い将来の見通し、これについて若干御説明願いたいと思います。
  32. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先生の御質問が、主として原料をどうするのかという点に重点がおありと思いますので、簡単に御説明いたしますと、御指摘のように、四十二年度の需給を産業構造審議会でいたしまして、いま先生指摘数字でございます。ただ、その数字が、最近ちょっとこういうふうに景気も悪くなってまいりましたので、少し変わっておりますから御報告させていただきます。  この審議会によります見通しでございますと、四十二年度に、紙の需要量は輸出を含めまして九百四十一万トンという見通しでございましたが、現在はちょっと落ちまして九百十三万トンというふうに見込んでおります。これに必要な材料でございまするが、パルプが、化繊用を含めまして、審議会見通しでは七百十七万トン、それに対しまして現在では六百八十一万トン、まあ少し落ちておりまするけれども、これに対する原木でございますが、審議会見通しでは二千二百十八万立米、今回の見通しでは二千七十八万立米。御指摘のように、実はこの原木の確保がこれからだんだん大きな問題になってまいると思うわけでございまして、われわれは、極力この紙パルプ産業は、国内産の原木、これはもちろんチップを含んででございますけれども、これでまかなってまいりたいということで努力をし、特に農林当局にもいろいろお願いをいたしましてやってまいってきているわけでございまするが、だんだん足らなくなってきております。四十二年度審議会見通しによりますると、この二千二百十八万立米の原木に対しまして、所要原木に関しまして国内の供給可能が千八百七十四万立米、したがって三百四十四万不足する。パルプ換算だと百九万トン不足する。今回の見通しでございますと二百四十六万立米不足して、パルプ換算では七十四万トン不足するというふうな状況でございます。したがいまして、この不足分につきましては、海外から原木で持ってまいりますか、あるいはチップで入れますか、ないしはパルプでもって入れますかということにいたさねばならぬということになってまいるわけでございます。
  33. 北村暢

    北村暢君 いまのお話のように、もう不足することは明らかになっておるようですね。その場合、輸入する点について、原木にするか、チップにするか、パルプにするか、ここのところが私は将来の問題として非常にむずかしい問題だろうと思うのです。それで、大体原木で持ってくる場合は、なかなかパルプ材を原木で持ってくるということは、コストの面において、一般建築材を輸入する場合と違いまして、価格の問題でなかなか私は採算がとれないんじゃないか。したがって、チップで輸入する。現実にいまチップで相当入ってきているんですが、チップで輸入する場合に、現在の状況を御説明願いたいと思うのですが、大体チップの専用船で輸送しているようでありますが、この状況ですね。また、将来チップの専用船を建造する場合の見通し、こういうものについて御説明願いたいと思います。
  34. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 現在、本年チップで入っておりますのは、御承知のとおり、米国のチップが、約二十六万立米、米国のチップが入って、これは針葉樹材、N材でございまするが入っているわけでございます。この値段でございまするけれども、これはコストの秘密で、われわれつかみ得ないのでございますが、大体どうも原木で入れまするよりも、どうも安いということのようでございます。したがいまして、いま御指摘のように、各社チップに相当比重をかけているようでございまして、現在のところチップで持ってまいると、専用船ということになるわけでございまするが、就航中のものが四はいでございます。運搬能力は年でございますが、五十二万五千立米、それから改造中のものが一隻、これが能力十二万五千、立米でございます。そのほか計画中のものが十一あるようでございます。この中で二十二次造船にのせようというものが五隻、この能力は十一ぱい全部で百五十六万一千立米、この五隻分だけでまいりますと七十一万八千立米という一応の数字になるかと思います。  なお、海外のチップ資源でございまするが、現在米国から、もちろん米国の西海岸、これはオレゴン州のクースベイ、これを中心にして運んでまいっているようでございまして、ここのチップ資源は、米国内にある程度使われるといたしましても、まだ相当大きな数量が可能のようでございます。まだ数百万立米、これは御承知のとおりくず材でございますので、製材所のくずを持ってくるわけでございますが、大きな製材所がたくさんあるわけでございますから、相当まだくずはチップとして持ってき得ると、これが一番大きいようでございます。そのほかに南方から入れるというふうな話、あるいはアラスカからまあ持ってこようというふうな話、ないしは、最近ソ連のほうが、チップを買いませんかというふうなことで、向こうが非常にまあ乗り気になっているという話をちょっとこれは人づてに聞いておりますけれども、これはまだ正確な情報はいまわれわれつかんでおりません。
  35. 北村暢

    北村暢君 チップで入れる場合ですね、これだけの、現在の四隻、いま修理中が二隻ですか……。
  36. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 一隻でございます。
  37. 北村暢

    北村暢君 一隻ですか、それに計画中のものが十一隻ということになると、これは相当なチップが入ってくることになりますわね。そうしますと、国内のチップ工業というのが、これは通産省のほうじゃないんですが、農林省のほうで相当力を入れて、最近チップ工業はここ数年で非常な勢いで発展しているわけです。ところが、このチップ工業は、いまアメリカのオレゴン州のチップの資源と違いまして、もう圧倒的に零細な中小企業、しかもこれは年間操業稼働率どのくらいになりますか、ほとんどまあ非常な低い稼働率で、採算等もおそらく非常に悪いんじゃないかと思います。そういうところへチップの輸入というものが飛躍的に増大してくる。まあ不足の分だけならあれだけど、国内価格との関係で、なお安いものがどんどん入ってくるということになれば、私は現在の国内の零細なチップ工業というものはひとたまりもなく倒れるんじゃないかという感じがするのですがね。そこら辺のところをどのように考えておられるか。それからもう一つ、距離的にいってもアメリカから持ってくるよりソビエトから持ってきたほうが非常に近いわけです。しかも北洋のソ連材、これはいままでシベリア開発の点からいってきわめて粗放な採材しかしていない、大体山に六〇%くらい廃材として捨てられているような非常なむだな採材をやっています。最近それがソビエトでも、そういうむだなことをやっちゃいかぬというので、相当集約採材をやって、いわゆるチップまでとろうと、こういうことのようですね。したがって、チップも日本に買ってもらいたいという要請が出てくるんじゃないか。まあこれは自由化されているのですから、価格の問題で、アメリカよりソビエトのほうが安ければ、これは入ってくることになるだろうと思う。必ずしもソ連材はいま安くない、そういう面で伸び悩んでいるんでしょうね。そういう面で貿易面の折衝にあたっても、ネックは私は輸入業者にあると思うのです。それは、輸入業者がソビエトとの交渉の際に、輸出するものについて相当利潤をあげる、そして木材はある程度高くてもがまんして輸入する、そういうことが問題にあるようですね。そういうような点からいって、機械類を輸出して利潤をあげて高い木材を買う、国内でソ連材であまりもうけているのはいない、みんな損をしている、そういうような不手ぎわがあるんじゃないかと思う。そういう輸出関係のルーズさがあって、ソ連貿易の木材というものがあまり入ってこないというようなきらいがないとも限らない、そういう傾向があるということを私ども聞いているわけです。ですから、そういう面における折衝というものが、資源的にいけばアメリカもソ連も無尽蔵というくらい、かえってソ連のほうが無尽蔵くらいあるわけですから、それが近いところが高くて遠いほうが安いというのはどう考えても常識的にあり得ない。そういうことですから、私は考え方として、チップの問題もあるのですけれども、なるべく私は原木で輸入する方法を考えたら、国内産業の発展のためにも、チップ産業の保護のためにもいいのじゃないか、なるべく国内の自給度をはかっていくということは、当然のことなんでありますけれども、なおかつ不足するものは、これは輸入せざるを得ないわけで、そういうことで私はいくべきではないかという感じを非常に強く持っております。それからもう一つは、パルプで輸入する場合ですが、これは、どうもパルプの国際比価を分析したものによって見ましても、パルプの場合は、まだ国際競争がある程度できる、国内のほうが若干安いというふうに分析されておるようですが、一体これの見通しはどうなのか。国内価格というものが国際競争できるような形じゃなくて、また輸入するほうが安いのかどうか、ここら辺の見通し。そういうことになれば、これはパルプ関係の専業メーカーというものがあるわけですから、そういう点において、パルプがどんどん入ってくるということになると、これは国内の紙パルプ産業に与える影響というものは非常に大きいのではないか、このように思うのでございます。したがって、原材料について国内の自給度を高めていく、これはまあ農林省の所管ですから、もちろんそちらでやってもらわなければならないが、それと同時に紙パルプ産業全体を見て、原材料の場合の輸入のしかたについて、原木、チップ、パルプ、こういう問題について、どのような考え方で対処せられるのか、この点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  38. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) いま御指摘の紙パルプの原料確保は、紙パルプ産業として非常にこれから一番大きな問題であると思うわけであります。私たちとしましては、この紙パルプ産業の原料である木材は、極力と申しますか、とにかく国内でできるものを最優先的に使う、足らぬものを輸入するという方針で、まず国内でできますものが、なるべくやはり安く手に入りますように、農林当局にもいろいろお願いをしておって、対策もいろろとってまいっていただいておるということでございます。お答えは逆になるかもしれませんが、海外から入れます場合につきましては、これはなるべく原木ないしはチップで持ってまいるのがいいのではないか、ちょっと考えますと、パルプで持ってくると余分なものを運ばないで得であるというように考えられる向きもあるようでありますけれども、また一面にはパルプで持ってきますと一ぺんかわかさなくてはいかぬ、かわかすと、でき上がった紙の製品が悪いというお話も聞いておりますし、それからチップで持ってきますと、これがまたいい燃料になるということもございまして、私どももチップないし原木で持ってきてそろばんが合うということに聞いておりますので、それからまた御指摘のように、国内のパルプの業者の維持振興もはかってまいらなければならないということで、まず国内国内原料を最優先に使い、不足分を海外から入れる、入れます場合には、原木またはチップをまず入れる、これはいずれも先生指摘のような、そろばんの問題でございまして、業界が安いものを買っていくということになるわけでございますが、ソ連材につきましても、同じようなことになるのではなかろうか、これが御指摘のように、安く入手されるようになれば、とにかく運賃等も安くあがるわけでございますし、で、われわれとしては、極力ソ連材が安く手に入るように、これは貿易交渉等でもひとつ努力しなければならぬ、また、実績も若干上がってきておるようでございますので、ソ連材もだんだん活用をはかってまいれるというふうに思っております。それからチップ業者でございますけれども、これは非常に零細な方がたくさんあるわけでございますけれども、これは確かにこのごろ倒産しておられる方があるようでございます。これは私のほうの調べ——もっともこれは所管も違いますし、なかなか手も届かぬのでございますけれども、調べによりますと、むしろチップ業者は、製材業も兼営しておられます。製材業を本業に、チップを副業とする。本業の製材のほうで、どうも不況で倒産しておられるということではなかろうか。チップの値段は、この際の不況時におきましても、われわれ調べましたところによりますと、あまり下がっておりません。したがって、チップのほうからの原因ではあまりないのではなかろうか。ただ、相当チップ業者が毎年ふえておられまして、若干どうも過当競争ぎみである。この辺のところは、業界においてももうちょっとお考えになる必要があるのではなかろうかというふうに思っております。
  39. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それでは、議事の都合により、本案の審査を一時中断いたします。     —————————————
  40. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 次に、国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の提案理由の説明は、去る三月二十九日聴取いたしました。  それでは、これより本案の質疑に入ります。  なお、関係当局の御出席は、安井総理府総務長官、増子人事局長山本人事局参事官、佐藤人事院総裁、大塚人事院職員局長、中村労働省労災補償部長、以上の方々でございます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  41. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私はこの国家公務員災害補償法に関連して、二、三お伺いしたいと思いますが、この法案は、申し上げるまでもなく、総理府の所管であり、人事院との密接な関係のもとに行なわれておる。また、労働災害という立場から労働省にも関係があるということで、多岐にわたるわけですが、お伺いすることについてはそれぞれの立場でひとつお答えいただきたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、今回の補償法の改正の目途となるところの労働者災害補償保険法の改正については、すでに三十九年の十二月に労災保険審議会の答申によって要綱がきめられており、四十八国会でもすでに成立を見ておるわけですが、人事院の意見、申し出がそれから約一年もおくれて、本年の二月にようやく提出されておるということ、これは一体どの辺に理由があるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 労災保険関係は、これまたなかなかむずかしい法案でございまして、なかなかその経緯等も簡単にはいっておりません。本来ならば、普通の法案でありますと、それがもう向こうの法案がスタートすると同時に、こちらのほうも歩調を合わせてスタートしていっていいことだと思いますけれども、労災の場合はそういうことにもまいりませんので、つい時期的に向こうのはっきりしためどのつくのを待っておったという形になってしまいましたので、いろいろおくれてきた。なお、労災関係が主たる今回の改正の動機にはなっておりますけれども、私ども、公務部内につきましてはまた別に、たとえば懸案になっておりました船員の問題というのもこれは相当大きな問題でございます。そういうものもございますし、あるいはまた、各官庁——補償の実施に当たっておられます方々の御意見も十分承りたいというようなあれこれから、心ならずもと申し上げてよろしいと思いますが、ことしの二月になって意見の申し出をするに至りました。こういう経過でございます。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 国家公務員の災害補償が保険法の改正に対応するものである、こういう立場からお伺いすると、補償法の改正についても保険法の改正と同時に施行すべきであるということは、おのずから明らかになってくると思うのです。この補償法は非常に複雑多岐にわたっている。そういうことはわかりますけれども、それとこれとは話は別であって、やはり保険法の改正に対応すべきものであるという、そういう基本的な考え方から、一方が改正されれば即それに応じて改正があってしかるべきだ。そこで保険法においては、保険給付の改正を本年二月から施行することになっているわけですが、にもかかわらず、本法の施行は七月一日になっているわけですが、ここにもそういう食い違いがあるわけですが、このことについては総理府としては一体どういうふうにお考えなのか、また、人事院としてはどのように考えられているのか、それぞれの立場からひとつお答えいただきたいと思います。
  45. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話しのように、二月一日から労災保険法は実施になっております。それを受けて人事院からの意見の申し出がありまして、私ども国家公務員法の労災補償をいま御審議願っているわけですが、大体いまの国のほうの公務員の給与というのは、やはり民間の給与やその他の条件に合わせて若干おくれることは、私ども、いつもやむを得ない、それを例にしてできるだけそれに近づけるということでございますから、手続上若干おくれることはやむを得ないんじゃないかとも思います。できるだけひとつ御審議をいただきまして早く実施に移したい、こう考えております。
  46. 伊藤顕道

  47. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私どものほうとしては、いま申しましたような事情で、非常に手ぎれいな形で早くできておりませんから、あまり欲ばったことは申し上げられませんけれども、しかし、できるだけ労災に近い段階において実施していただきたいということは当然のことでございます。ただし、意見のほうには、いつからということは明記しておりませんけれども、心のうちは、できるだけすみやかにという趣旨であることは申すまでもございません。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、人事院にお伺いいたしますが、人事院の意見の内容について、保険法の改正の内容と異なる点があるのかないのかという点と、いまの申し出にあたって、特に問題となった点は、何かあったかどうか、もしあったとすればどういうような問題か、こういうことを明らかにしていただきたいと思います。
  49. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 人事院が申し出ました意見と、それから御審議いただいております法案とには若干——わずかですが、違う部分があるのですが、そこで御質問の労災との関係でもって、今回の改正部分に関しまして差異が生じたという点に関しましては、遺族補償の一時金に関する部分をわれわれのほうは現行のままに残しました。それから、遺族の範囲に関しましても、われわれのほうは現行法のままに残しておりますので、これらの点が違います。それから、他の年金給付、社会保障関係の恩給法あるいは共済その他いろいろな調整関係がございますが、この調整関係は、関係法令が若干労災の場合とわれわれの場合と違いますものですから、基本的な方式としては、共済年金とそれから国家公務員の災害補償法、国家公務員関係との調整がわれわれの場合は基本になります。それから、労災のほうは厚生年金だと思われますが、その他関連した年金関係との調整には若干の差異がございます。大まかな点ではそのくらいだと思います。  それから第二点の御質問の各省の意見の点でございますが、これは、意見の申し出をいたしますまでの間、実施機関である各省庁と何回も協議をいたしまして御意見を出していただいたわけでございますが、これらの御意見の中には、非常に理想的な、たとえば補償金額の算定にあたってホフマン方式を採用すべきであるとか、あるいは休業補償は百分の百にすべきであるとか、そういった点でのいろいろな理想的な御要望がございましたものですから、これらの点は、われわれとしては、検討いたした結果、まあ労災との均衡を著しくはずすような理想案を盛り込むことはできないという意味での御了解をいただいたと、こう思っております。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 社会保障制度審議会の答申において、いろいろな問題に触れられておるわけです。保険法と比較して補償法においては有利になっている点もあるわけですが、そこでお伺いいたしますが、補償法においては一般労働者の面に比較して公務員の特殊性を認めているのかいないのか、こういうような点を明らかにしてください。
  51. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 大体において、補償給付に関しましては労災との均衡がとられておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、たとえば、遺族の範囲及び遺族の一時金の千日分に当たるものを現行法のまま残しましたという点がございます。それから、調整の点でも若干の差異は労災とあるわけでございますが、これらの点につきまして、労災と国家公務員災害補償法とで、国家公務員災害補償法が特殊性があるということで、今回は改正で労災との差異が出てきたということは一応言えると思われますが、その特殊性と申しますのは、まず第一に、国家公務員の場合には、制度上一種の勤務条件であるところの災害補償に関しましては、たとえば団体協約のようなもので定めるということが不可能でございます。災害補償法はずばりそのもの適用されるものでありまして、適用されるというか、そのまま実施基準でございまして、民間の場合でしたら労働協約をもって上積みをできるというようなことがあるわけでございます。その点は一つ大きな違いであろうと思うんです。それから第二は、国家公務員の場合は公務員という特殊性によりまして、服務基準というか、服務のしばり方というものが非常に違っております。たとえば天下りの規則があるとか、あるはいもっと直接勤務条件にかかわる問題といたしますと、超過勤務というようなものが、基準法による三六協定というような形で当事者間の半ば同意みたいなものを基礎にするというものではございません。超過勤務を命ぜられればあくまで従わなければならない。その場合に災害が起きるという場合もあり得るわけでございまして、そういうふうな民間とは勤務条件におけるかなりの差異があるのではないかというようなことが一応考えられると思います。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この補償法は、保険法に定めるところのいわゆる補償の実施ですね、この間におけるつり合いの問題、つり合いを失わないようにきめなければならない、こういう規定があるわけであります。そこでお伺いするわけですが、この両者のつり合いというのは一体どのように解釈したらよろしいのか、こういう点について御説明いただきたいと思います。
  53. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 実はつり合いという問題は、一応現在の国家公務員災害補償法では、実施に関して均衡をとる、労働基準法及び労災法に均衡をとるような意味の規定がございます。しかし、広い意味で国家公務員もやはり一種の勤労者であって、かつ、国家公務員法——災害補償法の母法であるところの国家公務員法にはたとえば「情勢適応の原則」とかいうようなこともありまして、給与が民間との均衡をとっておるような意味で、当然災害補償というような勤務条件に関しても均衡がとらるべきだと思われます。したがいまして、現在では、この改正案及び労災と比べてみましても、災害補償のいろいろな給付に関しましては、まあほとんどの部分は同様な方式をもってなされていると思います。ただ、先ほど申し上げましたような一、二の点でもって今回は若干差異が残ったという形になります。で、あとはその二十三条に出てきます法令の実施についての均衡ということで、たとえば補償の認定基準とか、その他いろいろな運用面での細部というか実施面での均衡というようなことは、当然認定基準等も労災とほとんど変わりありませんし、まあ均衡がとられているものと考えられます。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、遺族の範囲についてお伺いいたしますが、この補償法では、保険法に比較して若干広くなっておるようです。この点についてお伺いしたいんですが、人事院としては将来どのように扱っていく考えなのか、改正するお考えがあるのかないのか、こういうことについてひとつ御説明いただきたいと思います。
  55. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 御承知のとおり、遺族の範囲につきましては、国家公務員法自体に九十四条第三号というのがございまして、生計維持の関係にあった者という点まで広めておるわけでございます。したがいまして、この補償法におきましてもそれを踏襲しておるわけでございますが、ただいまのお尋ねは、これを今後変えていくと、たとえば、また狭めていくというような方向についての考えがあるかというような御趣旨ではなかったかと思いますが、私どもはいままでもこのたてまえで参っておりますし、これをむしろ逆コースぎみに改めるというようなつもりは持っておりません。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、遺族の一時金の額ですね、これについてお伺いしますが、当分の間現行法の一時金の範囲内で人事院できめる、そういうことにたてまえはなっておるわけです。そこでお伺いいたしますが、人事院はどのように御決定なさろうとする方針なのかということと、ここで言う「当分の間」というのはきわめて不明確ですが、これはいつまでをさしておるのか、おおよそいつまでの期間を言っておるのか、こういうことをひとつ御説明いただきたい。
  57. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほど職員局長が申しましたように、私どもの初めの意見書では、その点には触れておらなかったのでありますけれども、法案の形において、ただいま御指摘のような形になっております。したがいまして、これは人事院で今後の検討をするということになっておりますが、私どもとしては、いままで千日分ということで来ておりましたから、千日分を目途としていろいろこれからまた各省と折衝してまいりたいという気持ちを持っておりますけれども、それにつけましても、この公務関係でのその関係の面を見ますと、労災保険法は、御承知のように、四百日分に今度なったのですが、労働基準法では千日分になっておる、船員法なり船員保険法では千八十日分になっておるというような、いろいろなまた手がかりがありますものですから、それらをも総合勘案しましてこれから至急検討する、いま現に検討を続けておりますけれども成案を得たいというふうに考えております。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま人事院にお伺いいたしましたが、遺族の範囲とかあるいは一時金の額等については、総理府としては一体どういうふうにお考えか、御説明をいただきたい。
  59. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) この遺族の範囲あるいはいまの一時金の支給の限度といったようなものにつきましては、いまの人事院総裁のお話を大体尊重して、人事院の申し出を尊重したつもりでございました。ただ、民間との振り合いもあるし、また、制度が変わったときでありまするから、一時金等の支給に対しては、従来どおりではなくて、もう少し実情に合ったものに、人事院自体でそのつどひとつきめてもらおう、こういうことです。いま範囲につきましては、これは公務員の職務の特殊性等もありまして、ある程度まで民間より広がった案を採用いたしておるわけであります。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回の改正が通るとこのスライド規定が設けられることになるわけです。そこでお伺いいたしますが、保険法では、平均賃金が二〇%以上アップした場合には給付の額は改定するということにはっきりした規定が設けられておるわけです。ところが、一方補償法では、今回国会に改正案が出されておる恩給法と同じように、ほとんど恩給法と同じような扱いになるわけで、その間に画然とこう区別があるわけですね。これはどういう根拠でこういう差別をつけておるのか、こういうととを御説明いただきたい。
  61. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お説のとおり、この労災の場合には二〇%を基準にして改定期が機械的、自動的に動くというふうになっておりまするが、いまお話しのありましたように、この公務員の労災補償、恩給、こういったものは一連のものであろうと思います。これはやはり実態上相当な変動があった場合にはこれを動かすべきものであるという、恩給法と同じような規定を同じレベルで採用しておくのが至当であろうということでこうしております。
  62. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いしておるのは、この保険法に比較して、一方はもう平均賃金二〇%増加した場合には給付額を改定すると、保険法で明確な規定があるわけですね。それとの扱いの違いは、どういうところに根拠があるかという意味でお伺いしたわけです。恩給法と同じような扱いにするということは、お伺いするまでもなく、そういうふうになっておるわけですが、恩給法と同等に扱いをするならどういう根拠かということでなくして、保険法は二〇%の増とか、給与の上がり下がりがあると給付の額を改定することになっておる。そういう規定は明確に出ているわけです。そこで、保険法とのその違いはどういうところに根拠があるのかということをお伺いしておるわけです。
  63. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) このスライドの問題は、私どもの部内で検討いたしておりました過程においても相当問題にしたのでありますが、結論は、ただいま総務長官が答えられましたように、結局、公務部内という面で見渡してみると、先ほどの、たとえば恩給その他年金制度とかいろいろありますものですから、それとのつり合いも考えなければならぬということで、ぎしぎした表現はとりませんでしたけれども、これは何ぶんその「措置を講ずるものとする」。というので、非常に幅の広い規定でございますから、われわれとしては、この措置をとるべき時期等については、あらゆる条件をやはり勘案しながら適切な措置をとることを失しないように、失わないようにしていきたいというふうに考えておるわけであります。
  64. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 人事院の御説明はいまお聞きしたとおりですが、そこで総理府にいま一回お伺いいたしますが、先ほどもお伺いしたように、大体この保険法と補償法については同一補償であってしかるべきであるわけなんです。この平均賃金が二〇%増加した場合と、こういうように、繰り返しお伺いするように、保険法では明確に給付の額は改定される。現行ではそういうことであっても、将来やはり総理府としては、同じようにある一定の賃金が上下した場合にはこれを保険法と同じように扱おうという、そういう検討をなさっていないのですか。あくまでもこういう差別をこのままこれが合法であるというふうに考えて改定しようというお考えですか。
  65. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 重ねてのお尋ねでございまして、いまの民間の労災保険と国の災害補償は、基本的には、根本的には大体できるだけ同じような歩調をとることが好ましいと思いますが、それぞれの職務の違いによりまして、一時金その他につきましても、ある程度差があるというようなことになっております。したがいまして、いまお尋ねのスライドの問題につきましても、これは従来そういうような考え方をとっておりまして、たとえば労災保険でありますれば、一般的に二〇%上がるということは、すなわち労働のそのほうの収入も上がるし、保険の料金も相当ふえていく。自然にそういう支給がやり得る状況も客観的にできると思うのであります。国の場合は、やはり一方的な支給ということにも相なりますので、といってそれをやらぬというわけじゃございませんが、やるについてはこれを自動的、機械的にやるわけにいきませんので、その間の事情を勘案してまたそのつどきめていく。恩給法でも同様なことでお願いしております。しかし、これのやり方等については、恩給法におきましても、恩給の今後の審議会等でさらに具体的なことも検討願っておる。そういうような点で、具体的な方針が打ち出されれば、私ども同じくそういったような補償あるいは給与といったような面を同じ歩調に将来直していきたいと思っております。
  66. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 三十五年に設けられましたスライド規定によって、傷害年金について一体どういうふうな調整をとってきておられるのか、労働者の労災補償部長にお伺いします。
  67. 中村博

    説明員(中村博君) 先生のお尋ねは、傷害年金につきましては、先般の改正によりまして、年金給付の範囲をいままで三十五年改正が一——三級まででございましたのを七級まで広げて、これの年金部分のスライドにつきましては、労働省でつくっております毎月勤労統計で、全産業につきまして労働者一人当たりの平均給与額が百分の二〇をこえまたは百分の八〇以上になった場合、その場合にはその上がった年の次の保険年度初めの四月からその料率に従って改定する、こういうかっこうになっております。
  68. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの問題について人事院にも関係ございますから、人事院にお伺いしたいのは、補償法による傷害年金について既裁定者について調整を行なっておられるか行なっていないか、こういうことについて御説明をいただきたい。
  69. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 現行法ではスライドの調整は全然できないということではないと思われますけれども、講じ得ると思われますので、当然に今回の改正以後のことですが、現在までは行なっておりません。
  70. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これで質問は本日のところは打ち切るわけですが、いまのお答えで、現行はこうだということは明確になりましたけれども、総裁もお見えになっておりますが、やはりこういう調整は相当検討を要する問題だと思うのです。既裁定者についても調整を行なう、これは恩給についてもそういう方向で一歩一歩進んできておるわけですから、この傷害年金についてもやはり既裁定者についてのスライドということも必要だ。将来の展望としては、人事院としてはどういうふうに取り組んでおられるか、こういう方向をお示しいただきたい。
  71. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) いま局長がお答えいたしましたように、従来は十七条の十に当たる条文がございませんでしたけれども、今度これが入りますと、幅が広い規定ではございませんけれども、いまお示しのような線を十分考慮して措置していかなければならぬじゃないかというふうに考えております。
  72. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  73. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。     —————————————
  74. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それでは、先ほど審査を中断いたしました、通商産業省設置法の一部を改正する法律案を再び議題とし質疑を続行いたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  75. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 通産大臣がお見えになると、あまり通産大臣との質疑をいままでやっておりませんので、もう通産行政全般にわたって質問したい気持ちは一ぱいですが、同僚議員がなかなか熱心に審議をされたあとでありますから、   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 できるだけ重複をしないように、大きい立場から三つの問題でひとつ質問をしたいと思います。  第一は、貿易関係。わが国の貿易は四十年度の実績、もちろんこれは認証額でありますけれども、通産省の発表によりますと、当初の計画よりも相当伸びておる。これはわれわれも非常にいいことだと思っております。昨年から見ると一八%以上も伸びて九十億ドル以上上回っておるということ、この貿易構造——貿易構造と申しますか、それについて若干ひとつお尋ねしておきたいと思うのですが、この貿易の主たる品目は重化学工業品ということですが、これについてもちろんわれわれも一応わかるんですが、専門家のひとつ通産当局に重化学工業品の輸出の現状と将来の展望、この趨勢で他の軽工業品とかあるいはそういうものとの比較がこれと同じような状態、伸びる方向行政指導されておるのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  76. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 数字振興局長が来ておりますのであとで述べますが、大きな傾向としてはこういう傾向が世界的にあらわれてきておる一つは、第二次世界大戦後新興諸国というものがみな伸びてきております。その大部分の特徴は、農業国であります。しかし、農業だけでは雇用の機会の増大、国民生活水準の向上ははかられない。どうしても工業化というものが伴ってくるわけです。工業化というものが、いきなり重化学工業という段階には、そんな一足飛びに参りませんから、軽工業というものが起こってくる。日本は先進国で、日本はOHCDにも加盟して先進国の仲間で、後進国に対する援助も国際的に義務づけられるような風潮の中に日本はあるわけです。そうなれば、一つにはやはり世界の産業分業と言わないまでも、新興諸国と競合するような産業であっては、新興諸国というものが経済的に安定していかない。だから、どうしても日本は、高度の産業構造ということが世界との協調を保っていくという上に必要であるという世界的要請が出てきておる。また、日本はもう一つはやはり労働の需給関係に大きな変化が起こってきている。だから、どうしてもいままでのような、人間がふんだんにあり余るような時代ではなくて、相当やはり資本集約的な産業に変わっていかなければならぬという国内的な大きな変化も起こっておるということで、どうしても日本産業構造というものがやっぱり重化学工業に変わっていかざるを得ない、こういうことで昨年度は重化学工業の輸出は六二%でありましたが、もっとやっぱりこの傾向はもう少し高まっていくのではないか、傾向としては、そういうことで、今後の輸出を伸ばしていく上においては、相当重化学工業というものが、輸出を伸ばしていく上の中心になっていく大きな傾向を持っておる。  数字は、振興局長から申し上げることにいたします。
  77. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 大勢は大臣お話しのとおりでございますが、いま先生おっしゃいました統計は、認証統計に基づいてとった数字だと思います。通関統計のトータルでございますと、三月末で出ておりますが、物資別等はまだ出ておりませんが、一月−十二月の数字でとらえてみますと、八十四億五千万ドルという成績をこの四十暦年において上げております。重化学工業比率というものをとらえてみるのは、品物の定義づけは非常にむずかしゅうございます。たとえば、機械と申しましても、軽機械類を入れる入れないで比率が非常に食い違ってまいりますが、一応現在のところ大まかな構成比率を見てまいりますと、化学工業品が大体五、六%程度全体で占めております。それから、鉄鋼を中心にいたしました金属が八〇%と考えていただいていいかと思います。それに対しまして機械類が大体三分の一——三三%見当で、ただ、これは軽機械等が入っておりますので、定義いかんによって違ってまいります。その他の品目の中でいろいろなものがございますが、主として雑貨それから繊維類あるいは食料品といったようなもので、重化学工業の構成に含まれないものとして一応試算してみますと、ただいま大臣がおっしゃいました六二%前後四十年度に実績としては出てきております。  特徴といたしましては、繊維、食料品といったようなものの伸びは、やや頭打ちぎみでございます。主として伸びておりますのは、金属及び機械といった分野がずっと伸びてきておりますので、それが先ほどお話のありました重化学工業の方向へ目下進んでおるのを数字的にはあらわしておるものと思います。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われました八十四億五千万ドル、これはなにですか、十二月現在ですか。この四十年度の、要するに、実績見込みの数字ですか。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕
  79. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 八十四億五千二百万ドルという数字は、一月から十二月までの通関統計の数字でございます。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 わかりました。  いま、大臣の、大体わが国の将来における貿易品目の構造については重化学工業が、趨勢ということでなくして、わが国の産業としてもそういう方向で進めるべきであるということでございますが、これについて、いまちょっと大臣も触れられましたが、あとでまたお尋ねしますけれども、低開発国に対するプラント輸出とか、そういうものが非常に需要があると聞いておりますが、南北とか東西貿易と申しますか、そういう関係の重点はあとでちょっと私聞きますけれども、どういう将来の趨勢になるか。重工業を中心にしたところの南北貿易の問題、これは一体どういうことになるのですか。
  81. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは東西貿易ですか、共産圏の貿易ですか。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、南北です。
  83. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、南北問題については、現在はプラント本位の輸出というものは、将来やはりどうしても低開発諸国というものが重化学工業のマーケットとしては非常にやはり大きなマーケットになっていく。先進諸国はみずからがやはり重化学工業の輸出国でありますから、だから、どうしてもマーケットとしては将来長い展望をすればそういう低開発国というものが大きなマーケットである。これはいきなり——いま申したように、低開発国が重化学工業の段階に入ってくるまでには相当な年限がかかるわけであります。日本でも五十年の歳月というものをかけて今日きたわけでありますから、近代のことですから、そのとおりに五十年かかるとは思いませんが、相当なやはり長期かかる。その間、日本は地理的に見ましてもアジアのマーケットというのは大きなマーケット、中共との関係というものもやがては国交が正常化される日があるに違いない。そういうことを考えると、大きなマーケットであって、そうして、これはいわゆる重化学工業といいますか、プラント類なども含めてそういうことは相当今後のやはり長期展望としてはいわゆる低開発諸国というものにかなりなやはり重点が向けられていくに違いない、こう見ておるのであります。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 質問のまだ焦点ではございませんので早く進めたいと思いますが、先ほど局長ですか、答弁の中で若干触れられましたが、軽工業関係、特に繊維なんかの伸びは非常に少ない、また非鉄金属では、鉱物に類するものについては非常に貿易の伸びが低いのですから、雑貨については若干伸びておるようでありますけれども、これも、輸出認証額も発表によると一七・六%程度くらいしかふえていないということですが、これは将来いわゆる構造的な事情であるからどうもならぬというのか。将来、わが国として、繊維なり雑貨、こういうものの貿易の伸びを相当考えて、奨励といいますか、指導していく、こういう考えであるか。それをひとつお聞きしておきます。
  85. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、ある程度のやはり貿易というものは将来においても続いていくに違いない。ことに、繊維なども今後やはり構造改革をやって、もうイギリスでもアメリカでも繊維産業というのは、山本さん御存じのように、斜陽産業ではないのですよ。だから、やはり思い切った構造改革をやって、高級な繊維製品ということになればこれはやはり輸出の品目としても持続し得るし、雑貨などは、相当低開発国ばかりでなしに先進国にも、なかなかやはり生活のゆとりができてくると、生活に対応化といいますか、いろんなバラエティーが出てくるでしょうから、やはり相当な輸出というものは持続していくと思います。しかし、どちらにウェートがあるかといえば、重化学工業で、ある程度の貿易量というものは、繊維、雑貨というものは、これは全然輸出ができぬというような状態ではないのです。相当な部分というものはやはり依然として輸出の役割りを果たしていくに違いない、こういうことで、なるべく質的に競争力を持つように、雑貨でも、繊維でもそういうふうな今後の産業政策というものが必要になってくると考えております。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 特に繊維、雑貨というものは日本の貿易の相当重要な部分がかかっていると思いますが、現在、低開発国、東南アジア、アフリカその他の実情が、だんだんと軽工業については生産の設備を拡充をして自給自足までいかないけれども、生産をあげておると思います。そうすると、われわれのしろうと考えですが、だんだんと輸出が押されてしまう。われわれしろうと考えで、そういう気がするのですが、これを伸ばす一つ可能性と申しますか、あるかどうか。私がいままでずっと商社の人にもいろいろと聞くのですが、政府はいま重化学工業に重点を置いて、軽工業製品には、しかたないのじゃないかというあきらめの感じで貿易に対して、軽工業に対しては力を入れておらないのじゃないか、こういうことを言う人もあるのですが、その点はそうではないのですか。
  87. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、一億の人口を持ったマーケットというものはたいへんなものだ、いまやはり人口一千万以下の国が多いのですね、世界の中で。これはやはり産業を維持していくマーケットとしては小さ過ぎる。今日では一億というのはとにかく大きい。これは日本のいわゆる国内の需要という面においても相当のマーケットですから、この需要を満たすだけの産業の維持というものは相当のものですよ。その上へ持って来て、繊維、雑貨でも先進国に対して高級品の市場開拓というのが行なわれつつあるわけです、高級品に対して。いままでは、そういう面では日本の物は安いということの特徴で貿易を伸ばしてきた。このごろはだんだん違ってきたので、だから、繊維、雑貨というものもやはり高級品——質的によくなっていくと、先進国に相当いままでにない市場の開拓も可能で、日本が質的に高級化していくならば、そんなに産業に携わる人が将来を悲観するに当たらないと私は思うのです。国内のマーケット、先進国に対する市場開拓の可能性もあるので、これは悲観しないで大いにやってもらいたい。われわれもそういうことで今後行政指導をやっていく必要があると思っております。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点は、国内需要というものはこれはたいしたものですが、いまの紡績関係の操短合理化カルテル、こういうものから見ると、やはり生産過剰ですね。内容だけではこれはとても消化することができないことは、これは事実です。したがって、この項目でわれわれが主張しまた要請もしたいのは、やはり日本は重化学工業に重点を置くといういまの産業構造の実態から見ても、それはそれとして、軽工業製品についても一そうのやはり努力をすべきじゃないかと思うのです。いま大臣もそう言われましたけれども、もちろん、これは競争が多うございますから、いままでのような廉売、安売りではおそらく競争できない。きりで石をもむくらいしか入っていかないのですが、やはり優秀な品物を出さなくちゃいけませんが、その点はひとつ、私はまだ十分検討もしておりませんが、特にこの点については要請をしておきたいと思うのですが、同感であれば同感でけっこうですから、返事だけひとつ。
  89. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほども申し上げましたように、やっぱり軽工業の将来というものは相当な余地はある。いまでも四〇%くらいは重化学工業品以外の——まあこれいまここで何%と言うことも適当ではないと思いますが、ある部分の輸出というものはずっと続いていくに違いない。それには、繊維などに対しても思い切って構造改革をやらなければならぬし、質的に高級品がつくれるような繊維産業に変わらなければならぬし、また、輸出秩序という面もあるのですね。これは、どうもいろいろ輸出秩序の上において問題を起こすような場合があって、これはやっぱり永続的に市場を確保していくための障害にもなっている。貿易の秩序、国内における産業構造を改革して、高級な繊維、雑貨というものに日本が移り変わっていく、転換していく、こういうことさえ前提にするならば、軽工業の輸出の将来というものはそんなに暗いものとは思わないと考えておる次第でございます。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、この輸出先、市場の問題についてちょっとお聞きしておきたいのですが、年間輸出の先ほど言われました数字と比較いたしますと、この先進国向けがいわゆる圧倒的にやはり多いのですね。これは日本の技術が非常に進歩して、私はいいことだと思うのですが、しかし、その先進国向けも特に米国との貿易、輸出が多い。四十年度は二十八億七千万ドルですか、これは認証額によるのでございますが、相当伸びが一三%以上伸びておるというような実情を聞いておるのですが、この間の実情はどういうことであるか、局長でけっこうです。
  91. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 先進国、後進国とちょっと二つにいま足した計算をいたしておりませんので、恐縮でございますが、先ほど御説明いたしました数字に基づきまして、大体どんなところへ出ているかを申し上げて、構成比率をお示ししますと、まずアジア地域、共産圏を除きましたアジア地域が二九%、それからヨーロッパ、これも同じく共産圏を別に立てまして二二%、それから北米が、カナダを入れましてアメリカだけではございませんが、三二%、それから中南米が六%、アフリカが九・五%、それから大洋州が四・八%、共産圏が五・七%。このパーセンテージは全体を八十七億ドルで見ておりますが、この四月から三月の数字を、実績ではございませんが、一応規定いたして分けた数字でございます。これは経済見通し予算委員会用に各省思想統一いたしましてつくりました際に、およその地域別を整理してみると、大体こんなものではなかろうか——必ずしも的確なものではございませんが、一応のあれでございます。そういたしますと、アジア地域が約二九でございますから、それに中南米の六を足して三五、アフリカを入れて四五、大洋州はまあ先進国へ回しまして、大体四五%見当が後進地域と一応分けられる。それに共産圏が五・七——まあ五、六%でございますが、これを合わせますと大体半分。したがって、残り、すなわち北米の三二、ヨーロッパの一三、それにまあ大洋州あたりも入れまして大体半々というのがおよその見当であるかと思います。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 時間の節約のために、具体的にちょっと聞いてみますが、その特に北米貿易は非常にかさも高いのですが、北米との貿易の主たる輸出品はどういうものなんですか。おも立ったやつでいいです。簡単でいいですよ。
  93. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 大体の傾向で正確な数字がないので恐縮でございますが、ことしは非常に鉄鋼が伸びておりまして、これが相当に大きなシェアをとったかと思います。続きまして繊維品、雑貨等は相当に相変わらず大きな市場として伸びております。そのほかに機械等が最近のところ、アメリカであるから元来あまり出ないという常識を越えまして、これも相当の伸び率を示しておるといったことでございまして、要するに、総体の品物をなべてアメリカにはバランスがとれてずっと突き出ておる、こういう感じがしようかと思います。もちろん、繊維にはいろいろ先方との間でむずかしい輸出秩序問題、あるいは実質的な輸入制限問題等ございまして、頭打ちの傾向はございますが、全体の需要が非常に強いので、わりあいにバランスがとれて総品目で出ておるかと思います。ちょっと手元に資料アメリカについてだけしかありませんので……。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それではヨーロッパ関係、特にEEC関係のやつが相当さらに伸びておるように聞いておるのですが、その輸出品目がどういうようなものが伸びておりますか、それと、ついでにオーストラリア関係、ちょっと聞いておきたい。
  95. 高島節男

    政府委員(高島節男君) これも一応の常識で恐縮でございますが、EECの関係は軽機械類の伸びが相当に出ております。それから、繊維あるいは雑貨につきましても、御承知のような対日輸入制限の動きが相当強うございますから、これは年年交渉いたしまして、ワクをふやし伸ばす方向にいっております。陶磁器等々につきましてもそうでございますが、たとえば特色のある品物は、イギリス向けの食品、かん詰め類等は、むしろこちらの資源関係からいいまして、向こうの需要にかかわらず、やや頭打ちぎみの傾向が出ておるかと思います。  オーストラリアでございますが、これも一時は繊維中心にした軽工業品のマーケットであったと存じますが、最近においては、全体に伸びがバランスがとれて出ておりまして、鉄鋼、機械等の重工業品あるいは化学品等も、豪州には、いいマーケットとして最近相当伸びてまいっております。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 問題の焦点ですがね、昨年、四十年度は韓国に対する輸出が相当顕著に伸びておるように聞いておるのですが、これはもちろん日韓条約の関係もまあ作用しておると思うのですが、韓国とのいまの——これはまあ輸出だけじゃなしに輸出入の関係はどういう状態になっていますか。輸入は主としてどういうものであって、輸出はどういうものであるか。
  97. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 暫時、資料をさがしますと正確なものが出てくるかと思いますが、大体の傾向だけ最初に申し上げます。  韓国に対して伸びておりますおもな品目は、私の記憶では、鉄鋼と肥料であったと思います。それから輸入の関係は、主として食品、一次産品と申しますか、農産物、それから鉱産物が若干——韓国にはそう鉱産物はございませんが、農産物が多うございまして、そうしてノリとかその他の水産物も含めまして、一次産品の輸入にたよっております。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ、海産物のノリの問題をなかなかやかましく言っておるのですが、まあ、そういう政治的な問題は、きょうは触れませんが、農産物と言われたが、米麦とかそういうものは相当入っているのですか。
  99. 今村のぼる

    説明員今村のぼる君) 昨年米を六万トン輸入いたしまして、本年度についてはまだ決定いたしておりませんが、米穀の需給によりましては、輸入することになるかもしれません。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その他の農産物としては、米がおもですか。ほかにありますか。
  101. 今村のぼる

    説明員今村のぼる君) ノリその他の水産物関係、それから、将来の問題としては畜産物——牛、豚等の品目が輸入されております。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは大臣にひとつ聞いておきたいのですが、日韓条約が結ばれて国交が正常化したといわれておるのですが、韓国との輸出入の関係ですね。これはやはり韓国としてもペイしなければ輸出超過ということには——韓国は輸入超過ですか、そういうことはいかないと思うのですが、通産関係でけっこうです。農林省関係は別といたしまして、通産関係で将来韓国も今後おそらく工業に転換してくる。こなければ国は立たないと思うのです。そういう関係で、通産省としては韓国に対して、外国ですから別にこちらから希望も何もできないのだが、どういう状態に韓国がなりつつあるか。日本との関係において、そういうことを言えたらひとつ見通しを。
  103. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 韓国との間には、有償、無償合わせて五億ドル、こういうことについては、韓国の経済再建に役立つような計画を立てるわけですから、それは毎年日本とも相談をすることになっておるわけです。そのときに、一応やはりこういう日本の韓国に対する有償、無償の資金の供与というものは、韓国の意思を尊重するということが前提になる。日本が軽々に主張して、こうこうせよということであっては、やはり独立国としての自分みずからのイニシアチブというものは尊重しなければならぬわけですから、今後韓国の経済再建の案というものが立案をされて日本と相談をすることになると思いますが、私は韓国というものが、やはり一番に農業の面——韓国は食糧を輸出はしておっても十分ではないのです。アメリカの余剰農産物をだいぶ受け入れているわけですから、農業の面、ことに畜産などというものになれば、日本だって食生活が改善になって、相当食肉なんか輸入しなければならぬわけです。豪州とかアルゼンチンなどから輸入しているわけであります。そういう第一次産品の中においても、日本と競合しないものというものはあり得ると思います。そしてやはり、何としても農業の面といいますか、そういう国民の生活が安定するということが政局の安定にもつながるので、農業というものに対して、これが生産性を高めて、ことに日本なども長期的な契約のできるものは長期的に契約したらいいと思います。そうして、国民的基盤をなす農業、水産も畜産も入れて、そういうふうなこともひっくるめて農業をやはり一つの生産性を高める。その次には、やはり軽工業というものは当然に興るわけです。相当労働力は余っているわけですから、これに対しては、当初のうちは日本と競合するものが相当に私はあると思います。繊維などはそうでしょう。しかし、いま言ったように、にわかにということになれば、日本が大打撃を受けるが、日本自身も構造改革を通じて、高級品をつくっていって、そうしてそういう低開発諸国が軽工業の方面で産業活動の余地が貿易の面においてもあるという配慮が要るのではないか。そういう形において、韓国の経済再建策が立てられるならば好ましいのではないかというふうに考えておりますが、要は、韓国自身の考え方というもの、これがもとになるわけでございます。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まだまだ尋ねたいことはあるのですが、これは調べればわかることですが、特に大臣に聞いておきたいのは、共産圏貿易、これは年々上がりつつある、上がりつつありますけれども、全体から見ると微々たるものだと思います。中共向けのやつは昨年度も相当上がっているのですが、ソ連向けは減少しているということが数字で出ているのですが、これはどういう関係で落ちているのですか、輸出だけです。
  105. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 中共関係は非常に大きな有効需要がありますために、交易上の障害があるにかかわらず、大きく伸びております。それに比較して、ソ連のほうが思うように伸びていないではないか、確かにそういう計数が四十年度の実績としては出てまいっております。ソ連のほうが輸出が一億六千八百万ドルということで、対前年比、若干通関ベースで減っております。これはただ、延べ払いのものが相当ございましたので、通関べースでは減っておりますが、為替べースでは大体輸入ととんとんぐらいで、赤字は正面から出ておりません。一億八千からそこらにふえて、受け取りは入っているようでございますが、その率が端的にあらわしますように、ソ連の現在の七カ年計画というものが、ちょうど終末点で切りかえどきに来ておったのが去年であるように見受けられます。したがって、プラント類あるいは船といったようなものの通関がこの年において相当大きく減っておりまして、一息ついている感じがございます。続いて来年度、すなわち、四十一年度に移ってまいります際には、現在協定等も交渉を進めて、一応の妥結を得ておりますが、相当に有望な新規の発注が新しい五カ年計画に基づいて出てくるのではないか、この可能性は十分にある状態になってきております。そういうちょっと谷間に落ち込んだというのがたまたま去年のソ連の特色であったのではないかというふうに判断いたします。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 中共向けのやつが、いわゆる政経分離で、政府はそういう方針で貿易をやっているのですが、これは政府考え方を変えれば、政経一致をしてやれば、中共向けの需要というものは相当多いのですから、何億という需要者がいるのですから、この点について、これはきわめて政治的の濃いやつでありますが、日本の将来の貿易構造から見て、中共をもっと積極的に考えなくちゃならぬかと思うのですが、なかなか政治上の問題で政府は踏み切れないのですが、どうなんですか。やはり日本の将来の発展のために、産業の発展のために、中共の貿易を戦前のような形に戻すということが日本の貿易構造としてはこれは宿命的なコースでないかと思うのですが、この点大臣どう思われますか。
  107. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはいまプラント類の延べ払いだけが輸銀を使うか使わぬかということだけが障害で、ほかには障害はないのです。だから、貿易なども中共は往復五億ドルぐらいになったのですから、数年の間に数倍になっているわけですから、非常な驚くべき伸びです。輸銀の問題は、将来これは解決しなきゃならぬ問題ですが、これだけが障害で、格別、いま貿易を拡大するのにほかに大きな障害というものはないわけです。将来は、やっぱり中共のマーケットというのは日本のために大きなマーケットでしょうね。しかし、いまは中共自身も外貨がないのですから、相当延べ払いというような形でないと、幾ら中共自身に潜在的な購買力があっても、支払い条件に困るでしょうから、むやみにいまは、戦前のような貿易量が中共にあると、人の口から割り出して幻想をいだくわけにはいかない、やっぱり中共の経済的発展とにらみ合わせて貿易を拡大しないと。それは全部長期の延べ払いでやるということになれば、貿易の拡大というものはあるでしょうけれども、それは日本の輸銀資金にも一つの限度がありますから、どうしてもあの人口があるにしても、将来大きなマーケットであるということは日本が考えなきゃならぬが、現在の段階としては、これぐらいの順序で伸びていっておるのは、まあ満足すべき状態ではないかと私は思っております。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府はそういう考え方であるがわれわれ直接、向こうの人にも聞いているんですが、肥料とか薬品その他繊維類でも、相当伸びる余地がある。ただ、外貨の保有についてそれは問題はあろうけれども、向こうも建設途上ですから、相当そういう事情もありましょうけれども、やはり政治的な関係が障害であるということは、口をそろえて言われるんですね。こちらのほうはそう思ってなくても、向こうはそういう考えですね。特に、これは外務委員会でないから、あなたに質問してもしかたがないんだが、中国代表を社会党が招請しても認めない。これは日本事情としてそう言われるのだから来られないのですが、やはりそういうものが、貿易をするという意欲の中に影響するのではないかとわれわれ見ている。政府は、そうでないんだ、将来はどうかとか言われますが、この地理的関係、いわゆる最短距離にあるんですから、こういう市場は、政治的な関係だけで、政経分離だということで自然にまかすということでなくして、まあ政治の問題については問題はあるにいたしましても、もっと意欲的にこれを伸ばすという努力が必要でないかと思うんです。先ほど軽工業の問題に触れましたけれども、そういう市場に対してやらなくちゃいかぬのです。特にフランスあたりの、外交も含んでおりますけれども、相当中共に対して積極的に進出をするという傾向があるらしいんです。もうやっておるらしいんですが、一番近い日本が、政治の問題だけでこれに一つのシャッターをおろしておるということは、私としては、これは社会党の者ということでなくして、私は大阪ですが、大阪の連中といつも会うと、大阪は紡績中心ですから、昔の夢を見ておると思います。通産大臣言われましたように、昔の貿易構造というものとは違うんだということを知りながらも、やはり中共貿易に対しては相当意欲的であることは事実ですよ。だから私は、この問題については時間がないからそう触れませんけれども、要請として、政府は、政府の都合があっても、やはり日本全体の産業の振興というところがら考えて、特に軽工業の発展ということを考えれば、中共貿易を徹底的にやらなくちゃならぬとわれわれは思っておるのですが、そういう考え方は間違いであるかどうか、この点だけひとつ聞いておきたい。
  109. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 間違いだとは私も思いません。やはり日本は、中共貿易の拡大というものは、将来日本の市場として考えた場合に、これはぜひ確保しなければならぬ市場であるという山本さんのお考えはそのとおりだと思います。ただ、それまでの間に、いま言った外貨の問題もあるし、中国から日本が買えるものが相当にあると、外貨がなくても拡大できるのですけれどもね。中共から日本が買えるものというものが、なかなかやはり適当なものが多くないわけでありますから、そこで制約を受けるわけであります。しかし、そういういろんな制約のある中にあっても、中共貿易を拡大していこうという意欲は、日本の貿易政策の中で持たなければならぬという御意見は、私もそのとおりに考えております。それ以上、政経一体で中共をいますぐ承認せよとか、社会党の外交路線になると、われわれの見解と違うところはございますが、貿易を拡大せよということについては、やはりそのとおりに考えております。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これからこれを進めると、大臣との間の論争だけで結論を得られませんし、きょうは時間もないので、いずれまたゆっくりとお話ししたいと思います。  それじゃ、次の問題に移りますが、実は日本の四十一年度の経済成長にも関係があるが、特に通産省関係設備投資の見通しですね、それを聞く前に、ひとつ四十一年度の鉱工業生産指数は、三十九年までは私まあ見ておるのですが、四十年度はまだ出ておらないのですが、四十年度は実績見込みになると思いますが、三十九年では総合で一六六・二、これは三十五年を一〇〇としてこうなっておるのですが、四十年度はどれほどの指数になっておるか。
  111. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 一七三・九ぐらいになります。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはまだ実績見込みですね。
  113. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) そうです。見込みです。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 鉱工業部門ですがね、鉱業は石炭産業のああいう不振で、これはもう伸びておらぬのですが、製造業は、三十五年からは高度経済成長の波に乗って相当上がっておるのですが、三十九年の一六九・一、これはもちろん三十五年を一〇〇としてですが、製造業の場合は、四十年度の実績見込みはどのくらいになっておりますか。
  115. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 一七六・七ぐらいの実績に見込んでおります。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっとあと質問との関係があるから参考までに聞いておるのですが、鉱工業生産指数をあなたのところから発表されているものがおもなものだと思いますが——特殊分類のですね、聞いておきたいのは、資本財が、圧倒的に経済成長の波に乗って指数が伸びておる、生産があがっておるのですが、三十九年は一九八・九、これは四十年度では二〇〇をこしていますか。
  117. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 二〇九・五だと思います。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、この点でひとつ聞いておきたいのですが、現在の経済成長の線を安定成長だと言っておられますけれども、その惰速によって、まだ高度経済成長の関係設備投資の中にうかがわれるのですが、資本財の生産の伸び、成長率と、非耐久消費財の伸びとは、雲泥とは言わないけれども、非常に開きがあるんですね、あなた方の統計数字によりますと。この点はどういう実情になっておるか、もちろん、この非耐久消費財というものについては品目を精選しておりませんが、そういうことでなくしてこの範疇に入れられておる範囲について、どういう実情になっておるか。この点をひとつ説明をいただきたいと思います。
  119. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 非耐久消費財は四十年一五〇・二の見込みであります。
  120. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 生産財と非耐久消費財との伸びの差は……。
  121. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) ただいま申し上げましたのは指数でございますが、三十九年度に対しまして四十年度がどの程度の伸び率、上昇率を示すか……。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いやいまの数字でいいんです、指数でいいんです、それは計算すれば出るんですからそれでいいんですが、いまの政府が推進している経済成長から見ると、鉱工業の生産というものはいわゆる建設資材に一応重点といいますか、結局そうならざるを得ないのだが、いわゆる消費財ですね、非耐久消費財の伸びが、三十五年を一〇〇としても非常に伸びておらない、伸びているのは伸びておりますが、しかし、資本財とか生産財から見ると、その伸びは非常に低いのだが、この関係をどう見ておられるかということです。
  123. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) ただいま私が申し上げようと思っておりました、たとえば三十九年度と四十年度の上昇の最近の状況を申し上げますと、やはり資本財のほうは二%の上昇率でございますが、非耐久消費財は七・一%の上昇、それから生産財のほうは四・二%の上昇、むしろ非耐久消費財なり生産財のほうが最近の情勢では少し伸びております。ただ、最近の状況では御承知のように、需要構造というものがやっぱり変化をしてまいりますので、やはり消費水準の上昇とともに消費内容が変わってまいりまして、やはり非耐久消費財から耐久消費財に変わっていく、こういう状況が考えられると思います。また、資本財、生産財等についても、そういう経済の構造の高度化の趨勢によりまして変わってまいる、こういうことであります。
  124. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた七%というのは三十九年の伸び率ですね。
  125. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) そうであります。
  126. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ具体的に聞きますが、通産省関係設備投資の四十一年度の一応の見通しというものは出されているんですが、昨年——四十年度よりも若干下回るという——数字が間違っておったらあと指摘してもらいたいんですが、四十年度は、通産省関係では一兆六千六百億円という大体の設備投資の実績と見ておられるんですが、四十一年度は若干その設備投資が下がってくる、下がるというより横ばい程度だというんですが、これはどういう通産省としての考え方でこういう見込み数字を出されておるのか、これをちょっと聞いておきたい。
  127. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大体四十年度が一兆五千五百億円、これは前年度の、三十九年度の実績の横ばいといいますか、少し上回る程度の横ばい状態、横ばいと申していいと思います。四十一年度は多少硫安とか石油、鉄鋼、電力などの一部の業種が前年度の水準を上回るようなものもありまして、全体としては四十年度並みの水準である。上回るものもありますけれども、また一面に、合成繊維とか電気機械、石油化学工業等は前年度の水準を下回るものもある、こういうことで四十年度並みの水準にとどまるものと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  128. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体横ばい程度通産省としては、いまの佐藤内閣の経済成長の線に乗ったいわゆる安定成長の線としてはこれが妥当だ、こういうことですが、特に鉄鋼部門では非常に、これは民間産業ですが、意欲的にこれを投資を増加しようという動きがあるんですがね、これは鉄鋼だけでもないと思いますが、石油精製においても若干そういう傾向があるんですが、そういうものは先ほど申しました貿易関係、内需関係から見て、設備過剰というような結果を起こさないのかどうか。いま通産大臣は横ばい程度でいってもなおかつそういう結果になるんじゃないかということですが、その点どうなんですか。
  129. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) いま大臣から御答弁がございましたように、全体としては横ばいか、場合によりますと、いまの見通しからいいますと、少し下がっていくんじゃなかろうかというような感じが——実績見通しを考えますと、そういう感じがいたします。ただ業種によりますと、大臣から御説明申し上げましたとおりですが、ただ鉄鋼等につきましては、ただいま業界としてはそういうビヘービアを一部示しておりますが、通産省といたしましては、やはりいま先生のお話のような、過剰投資あるいは二重投資というようなことにならないような方向で、政府業界も話し合いをし、あるいは通産省にあります産業構造審議会等で学識経験者も含めまして、十分に検討をいたし、必要があれば、行政的な指導もいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  130. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いまの自由主義経済に立脚しておる政府としては、それはまあ無理であるけれども、家庭電気産業にしても、鉄鋼もそうですが、設備過剰ということはもうどこでも言われておるんですね。それが私は資本といいますか、資金のむだ使いだ、こういうわれわれの観点におるんですね。それがやはり製品の物価に私は影響してくる。大体これは自由主義経済の原則は、これは初歩的な考え方ですが、製品を売れば値段が下がるということは当然です。品物がふえれば値段が下がるのは当然です。その値が下がらないというのは、そういうところに過剰設備をしたものを何らかの形でそれを補わなければ企業はもたないということで、いわゆる労働者の帰休制度とか、あるいは合理化ということで、昨年もいろいろ問題を起こしたんですが、こういう点は、少なくとも政府は各業界の自粛に待ってやるということでございますが、これに対していまの政府に望むことは無理であるけれども、もう少し計画的な産業構造といいますか、特に設備に限らぬでも、設備投資については計画的なものが出せないものか、非常にむずかしい問題ですが、単にこれは企業経営の問題でなくして、これは労働者にも大きい影響を来たす問題ですから、この点について通産省としてはコントロールする方法はない、業者の自粛でやらざるを得ないということであるかどうか、この点はどうですか。
  131. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 自民党政府の立場というものは、自由経済という基調でやっていきたい、計画経済というものはとらないというのですから、自由経済といっても、御承知のように、何でも自由だというようなことになれば、国の投資の面においても重複します。これはやはりある程度産業構造審議会などの資金部会などもあって、将来の需要というものを、相当長期にわたる需要の推移というものを見通して、そしてそういうところで一つの指針が出まして、そしてそういう上に乗って各企業が自主的に設備投資なんかを調整するような、そういうふうな産業の一つの慣習といいますか、ビヘービアというか、そういうものをつくり出したいとわれわれは考えておるのでございます。これは必要があれば法的規制をやってもいい。ある特殊な産業については、全般的に設備投資に対して法的な一つの制限を加えるということが経済の発展、経済の実情にも沿わないのでございますので、いま申したような形で政府民間一体になって投資を効率的に運営するという仕組みを自由経済の上においても編み出していきたいということがわれわれの考え方の基礎でございます。
  132. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣は通産行政に相当明るいということも漏れ承っておるのですが、われわれ社会党の言っておる計画経済、まあ社会党もそんな全産業において直ちに計画経済をしろとは言っておりません。しかし、少なくとも鉄鋼とか石油、電力というようなこういう基幹産業については、これは国民全般に影響するところが大きいのですよ。それに過剰投資ということで、これはおそらく国民の金でやっておると思うのですね。一応銀行に預けておるけれども、ほとんどはそこに投資して回されておるのですから。そういうむだをやはりどうしてなくしたらいいか。いままで産業構造審議会みたいな審議会があっていろいろ意見を新聞でも拝見いたしますが、それはそういう意見として出るだけであって、これは統制力という規制力は一つもない。したがって、鉄鋼産業でも昨年の暮れですか、一鉄鋼産業の会社が横になったらどうにもならぬという現実もありますね。これは会社経営自体を考えてこう言っておるけれども、日本国民の利害から考えたら私はそうはいかないと思うのです。ところが、いまの政府方針ではそれはできない。いまの政府にそこまでやれということになると、それはおそらく財界あるいはそういう産業界からの大きな問題が起こりますからできません。いまの政府としては、自由主義経済を基盤としておるけれども、やはり何かしら国民全体に非常に不利益であろうと思うのです。その点について大臣はどう考えておられるか。
  133. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 必要があればやはりわれわれは全責任を持って行政が産業に関与する必要がある。勧告操短といういま例をおあげになったが、これはいま法律的には設置法を基礎にしてできておるのですから、通産省の設置法を法的根拠にしてやったわけですから、必要があったら、われわれは国会や国民に対して全責任を負うのですから、それは大いに、大いにといって奨励することじゃないけれども、必要があったらやってよろしいという私は意見、今後も必要があったら、これは乱用はいたしませんけれども、やる必要がある、いわゆる国民経済全般のために必要があれば、一企業が横になったからといって国民経済を犠牲にすることはやはり通産省の任務を果たしておるとは思えない。それは今後も必要があったらやるつもりです。しかし、そういうふうなことは問題が起こってやるというのでなくして、鉄鋼のごときものは、山本さんがおっしゃるように、もう少しやはり秩序のある、競争の原理はいいけれども、その競争の原理の中にやはり秩序を打ち立てるということが必要なんです。明日から鉄鋼の問題について、鉄鋼に関する基本問題小委員会というものを店開きするのです。そうしてやっぱり鉄鋼企業に対してのあり方というものを根本的に検討してみる、それは鉄鋼の需要は将来伸びていくでしょう、伸びるといってもどうせ一年の伸び率というものはまあ三百万トンかそこらでしょうからね、むやみにいきなり一千万トンも伸びるわけではないし、そういうことで相当な資金を食うわけですから、そういう設備投資のあり方等も含めて、根本的に検討したい、これは鉄鋼というものが基幹産業中の基幹産業であるからであります。こういうことで相当自主的に計画性を自由経済の中にも持たせていく必要は確かに御指摘のとおりあると思います。
  134. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 話を聞いておるとそのとおりだと私も思うのだが、実態を見るとそうはいかないのですね。名前を出して非常に恐縮ですが、富士製鉄の永野さんあたりの意見を新聞で拝見すると、なかなかいいことを言っておられると思うのですが、実態はそうはいかない。そこにやはり好むと好まざるとにかかわらず、私はある程度計画経済にいかなければいつか行き詰まってしまうと思うのですね、各企業の良心にまかすといっても、まかせられる範囲においてはいいけれども、自分の会社がつぶれるかどうかという羽目になったら、大臣、何ぼ言っても聞きませんよ。そういうときの歯どめということが徐々に考えていかなくちゃ——、私は社会党の考え方を入れてくれとは言わない、日本の産業を伸ばして、国民の需要を満たす、こういうふうになることは与野党を問わず願っておるのですから、この点はこの機会に何ぼ言っても尽きませんけれども、特に基幹産業については考えてもらいたい。  それと、これは私ちょっと聞いたんでございますが、中国電力が料金を下げようという申請をしたけれども、これはまかりならぬというようなことを言われたというのは、これはうそですか、うわさですか、ちょっと……。
  135. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういううわさが流れておることを私も聞いていました、そういうことはあり得べからざることであって、調べてみましたらそういう事実はないということでございます。
  136. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうことを聞いたもので、私は証拠ないものですから言えないのですが、そういうことを盛んに言うものですから、政府はこの物価が上がっているのだから、下げるわけにいかないといったということを聞いたのですが、ないということを大臣はっきり言われればそれで解消しました。  時間過ぎましたから、この問題、各電力、硫安、自動車、石油化学、そういうものについての答申の実情を聞きたいのですが、これは調べたらわかることですから、できればお願いしておきたいのですが、通産省資料はできましたらひとつ出していただきたい、要求いたします。  次に、もう最後の問題ですが、最後というてもちょっとぼくのやつ長いのですが、資本構成と物価との関連で、これは私の意見も入りますが、お聞きしておきたいと思うのです。これは通産省は専門の省ですから、御存じのように、わが国の法人関係だけをとってみましても、資本構成いわゆる自己資本と他人資本との間のバランスが非常に悪くなっている、これについてはいろいろいわれておるのですが、その原因も聞いておりますから、私の知っていることはここで長々聞きませんが、これに対する対策ですね、この対策についてどういう考え方でおられるか、いままでの経過は知っておりますから。
  137. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは御指摘のようなことの例はないですね、二〇%、自己資本が悪くて中小企業では一四%ですからね、これを自己資本をふやしていくということが今後のやはり日本企業体質改善の上においては非常に必要です。また物価にも、山本さん御指摘のように、やはり資本費がかかりますから、金利負担が多くなるから、これは影響あります。この影響の程度は別として影響はございます。そこでこれを一体資本構成の比率を是正するためには、政府も今年度から相当法人税なんかを減税して、企業の蓄積をふやしていくよりほかないわけですから、そういうことで企業減税というものを所得減税と並行するような形でやって、そして企業の蓄積をふやしていこうという政策をとっておるわけであります。いずれにしても、やはり企業の蓄積をふやして自己資本というものを蓄積できるような条件をつくるよりほかないのですから、やっぱり中心は、ことに減税などが今後法人税のごときもの、これだけで終わらないで減税をしていくということも必要になってくるということが中心になるのではないか、企業活動が旺盛になって相当利潤をあげても、税金が高いと蓄積のいとまがないですから、そういう点で減税ということはかなり今後大きな課題だと思っております。
  138. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣はどうもニュアンスのあるような答弁をするが、企業減税を触れられましたが、それはいいといたしましても、資本金——いま言われましたように、中小企業資本金が五千万円以下のところでは、自己資本は一三%から一四%しかありません、大企業になっても二二%程度だということですから、私はこのままでいくと大企業の場合もそうだが、中小企業の場合には一つのちょっと不況の波が来ればおそらく倒れざるを得ない、中小企業をどうこう言われますけれども、年末にちょっと中小企業金融をゆるめたところで、こんなものはさしみのつまにもならない状態だと思うのですが、減税によってやるということをえらい主張されました、企業減税をやると言われるんですが、これは私の拾ってみた数字ですが、こういうものが出ておるのですが、減税もいいでしょう、ここでは所得減税か法人税の減税か企業減税かということは論争いたしませんが、二十九年から三十九年までの国民所得の推移の中で、実は法人所得のうち個人配当と内部留保、法人留保の伸び率を見ますると、個人配当が圧倒的にやはり伸び率が高いですね、これは法人所得だけを申しますと、個人配当は三十五年を一〇〇として三十九年は二〇五・四という、倍以上に個人配当が伸びておるのです。ところが、法人留保、社内留保と申しますか、いま言う自己資本の中の最も大きい要素として有利な社内留保のやつは一一九・三という、問題にならないほど伸びはない。ぼくの数字が間違いがあったら指摘してもらいたいと思うのですが、そうすると、私は配当したらいけないと言わないし、会社経営上配当は一つの大きいいまの株式会社組織の、いわゆる資本主義経済の基本になる株式組織であるから、配当をわれわれはしてはいけないと言わないのですが、伸び率を見ると、社内留保とは圧倒的な違いですね。こういう点はやはり減税においてのみ会社の自己資本をやるのだということなら、私は減税したらそれは配当のほうに回したらいいと思う。会社経営ということならば、それを何らかの規制があって減税したやつは社内留保にしようということにはなっていないと思うのですが、その点どうなんですか、数字の問題は。そういう国民所得指数できておるのですがね、これは経済企画庁ですか。
  139. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) いま先生のおっしゃったとおりだと思いますが、数字的にはそうだと思いますが、また配当性向は確かに高くなっております。ただしかし、今後はやはりできるだけ社内留保あるいは償却等に中心を置きまして、社外流出についてはできるだけ自己資本の充実という見地から、私は配当等についても考えていく必要がある、こういうふうに考えております。
  140. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは日本の国民の一つの性向も考えなくてはいけませんが、現在は、貯蓄性向は日本は一番いい伸びを見せておりますが、やはり企業に対する信頼感ということがやはりそういうところに影響しているんじゃないかと思うんです。特にこれは政府の責任だとわれわれ追及しているんですが、株の暴落というものは大きく私は影響したと思うんです。それは私は三木通産大臣に私責任を追及するわけではないんですが、長い間の政府のやったことですが、あまりにも高度経済成長を急いだために、借り入れ金というもので圧倒的に伸ばしてきました。だから私は企業経営の堅実性といいますか、そういうものは私非常に危険なところにあったと思う。したがって、不況になると、いま言ったように倒れてしまう。中小企業だけではない、大企業まで倒れるという時期があった。そういうことから見ると、しろうとの方々は、会社が大きく宣伝しておると、この会社はいいんだろうと思いますけれども、自己資本を調べてみると、これは不安で、私は大衆投資というものはこれは引っ込み思案になると思う。そういう点について先ほど局長ですか、将来そういう奨励をしようというけれども、やはりこれについて確固とした指導態勢というものが必要でないかと思う。日本企業、産業を安定するために必要であると思うのですが、具体的な考え方はないでしょうか。
  141. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは歴史的にいえば、日本が資本の蓄積がないところから今日まで持ってきたんですから、これはやっぱり信用膨張のような形で日本の高度成長政策を遂行したわけで、私はやっぱり歴史的過程としてはああいう過程をとらざるを得なかったろうと思っています。これはあれが縮小均衡というような形で日本経済が今日の開放経済を迎えておったらどういうことになっただろうか。輸出だって、これは百億ドル近く伸びていこうという趨勢ですが、これはやっぱり国際競争力もついてきたという証拠でもあるわけです。だから、何もないところから、一つの借金といいますか、信用膨張の形で日本の産業を再建したんだから、この資本の構成を一ぺんに是正するということは非常にむずかしいことだと思います。したがって、これは多少の年限をかけて、減税ばかりでなしに、あるいは配当というものもむやみに高い配当をする必要もないんですから——そうしてやっぱり蓄積をふやしていって借金を返し、自己資本との構成の比率というものを変えていくためには、長期的にやっぱりこれは計画に基づいてやらなければならぬ。しかし、企業ごとにいろいろ事情が違いますから、山本さんは、何年間にこういうことをやれと、そういう計画を立てたらどうかという御意見かもしれませんが、政府は、そういう蓄積のできやすいような客観条件をつくるために、政府の施策を通じてそういう条件をつくり出す。企業自体が不健全であることは間違いないわけですから——資本構成がそういうふうな状態というのは不健全であることは間違いないんですから、個々に事情の違う企業が、せめて——これは戦前は自己資本は少なくとも六割ぐらいは持っておったのでしょうから、そういうところに向かって、みなが努力をしていくということにしやすいような条件をつくり出すということが、政府の政策としては妥当なのではないか。事情の違う企業に何年間にどうということで、そういう計画的にはなかなかやりにくいのではないかと考えるのでございます。
  142. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いままで聞いたうちでいまの答弁については承服できない。というのは、昭和二十九年から今日まで徐々に上がりつつあるのなら、大臣の言われたことについてはある程度了解できるのですが、年々自己資本は減ってきておるのです。今日、日本の産業は金融独占だとわれわれが言うのは、どういう企業でも、大企業でも、金融機関がすべて支配していますよ。というのは、自己資本がこういう状態でありますから、借金しなければいけないのです。したがって、金融独占ということは、当たるか当たらないか知りませんが、私は、企業を支配していると思う。これは政府の金融機関に対する政策であるのかどうか知りませんが、これは日本の産業、金融界を通じても、私は一番大きい危機だと思っておる。大臣は、将来そういうことで努力するというが、だんだんと十年間でずっと低下しているこの問題を、どこでせきとめるかという問題を、私は言っている。徐々に上がりつつあるのだったら私は言いませんよ。だんだん減りつつあるのに、大臣はいま、将来は、と言うけれども、将来はどういう方法でせきとめるかという方法がわからないのですよ。その施策がどうかということで言っているわけです。そういう手がなければないということでけっこうです。
  143. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 今年度は自己資本の充実につきましては、法人税につきましても自己資本充実のための施策を講じておりますし、御承知のように、増資の促進の問題につきましても、あるいは公社債流通市場の育成の問題等も含めまして、政府は、審議会あるいは政府自身といたしましても、自己資本の充実の問題にすでに取り組みつつあるわけでございまして、ただいまお話のように、現在までは自己資本の比率が下がっておりますけれども、これを高めるためのいろんな施策を講じてまいりたいと思っております。
  144. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはいろいろ施策はあるでしょうけれども、企業減税したやつについてはそういう指導をすると言われたのですが、規制力はあるのですか。そういう指導ということは、やれやれ言っても、法的に、これだけのものはこうやらなければいかぬといったような歯どめは現在ないのでしょう。
  145. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府ばかりでなしに、企業自身もこういう状態は困っているのですよ。金利負担がコストの中で七%ぐらい占めておるのですから、資本費の中で。これはやっぱり自己資本であったらそういう負担は要らぬわけですから、だから、そういう施策を通じて企業に蓄積ができるようになればみなやりたいのですよ。だから、何も法律的に強制して、減税分は全部どうしろということにはなってないけれども、企業自体もやりたいという意欲はある。やれるように企業減税など大いにやってくれということが日本の経済界の要望なんですから、したがって、いま申したような減税とかその他の施策というものが進んでいけば、企業自体がいやなことをするのじゃないのですから、自分もやらなければ、こんなに次々に資本費の負担が重なったのでは国際競争力が非常に弱まるということは考えておるのですから、みなが好むことでありますから、そういう条件をつくれば、いま企業局長の申したように、だんだんと資本の構成の比率は是正されていく方向にいくであろう。しかし、これは相当の年月がかかるに違いない。急には解決できないと考えております。
  146. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こういう問題を論争しておってもきりがないのですが、日本と同じような環境にあった西独の場合には、すでに四〇%くらい自己資本が上がっているようでありますが、日本の場合は二〇%を割ろうとしているようでありますが、私はこの問題が物価に相当影響しているということを考えて言っているのです。私が投資をしてどうこうということではないのです。したがって、他人資本に依存しているということは、特に金融機関に依存しているということは、日本の高金利と相呼応して非常に私は物価の上昇を促進しているのではないかというので、私は物価関係のほうにも関係しておりますけれども、通産省管轄としてもぜひこの点は、総理の施政演説の中にも、物価の安定、中小企業合理化ということを盛んに言っておられましたが、こういう点で、私は基本になる問題に手をつけずに、ただ物価を押える押えるといっても私はだめだと思う。自由主義の商売ですから、商売をコストを割ってまで物価を下げるということはない。またそれは無理だと思う。したがって、そういう問題を基本的にやらなければ、私は物価は下がらないという信念のもとできょうは実は質問をしたわけです。幸い三木通産大臣は、きょうおいでになるというので、いつもは国対関係で忙しくて来られないのだが、きょう見えるというので、この点だけはぜひ通産大臣に考えてもらわなければならないというわけですが、いまの答弁では、内閣委員会は通産の所管委員会でないからこれ以上は遠慮しますけれども、いまの答弁では、三木通産大臣であっても私は承服はできないと思う。ただ産業関係は、企業関係の方々は資本蓄積のことで努力しておられますけれども、いまの金融関係の力から見ると、それはできないことだと思うのですよ。歩積み両建てにいたしましても、中小企業は非常に資金にもう枯渇をして、死ぬか生きるかにある。わずか百万円か二百万円を借りようとしても、実は六割くらいしか手に入らない、非常に商利率になっておりますよ、金利が。そういう中で日本の産業、特に中小企業を伸ばそうといったって、伸ばすにも安定保護をしようとしてもだめだと思うのですね。本会議なり、予算委員会なりで、大臣中小企業に対してどうこうと言われますけれども、それは言うだけであって、数字にあらわれたこの問題一つですら基本的に解決のめどというものをはっきりさせないで物価問題を論ずる私は資格はないと思う。また、中小企業の問題を論ずる資格はないと私はきめつけたいと思うのですが、きょうはそこまでは言いません。この点についてはぜひひとつ政府、特に通産大臣にお願いしておきますが、単に自己資本の多い少ないはその企業の健全性だけではなくて、日本の物価の問題にも、あらゆる問題にも影響してくるというように私は思っているのですが、この点について通産大臣考え方をひとつ聞いておきたいと思う。
  147. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはどうしても借金が多いとこれに対して金利負担も重なるわけですから、それが物価に対して影響がないとは言い切れない。したがって、世界的には出本さんの御承知のように、金利は上がっているわけです。日本はやはりこれを低金利政策といってもいいでしょう。金利を下げていっている。中小企業関係でも、これは九月に下げてまた四月に下げたのです。相当荒っぽい金利引き下げをやっているわけです。そういうことで、まだまだやはり金利水準というものは、日本は相当引き下げていく——これはやはり銀行経営合理化をやって、金利というものは下げていくべきだと思います。しかし、政府も相当やはり金利を引き下げていくことには努力をしているわけで、そういうことで資本費の負担というものが物価にはね返ることを少なくするという努力をしているわけですが、卸売り物価は問題はないのです。大体横ばいですから。消費者物価に日本の場合問題がある。消費者物価の場合には、これは非常に構造上の問題もあります。労働賃金というものについては、だんだん七・八〇%まで大企業との差は——大企業を一〇〇とすればそういうところまで来ている、生産性はまだ五〇%程度ですからね。ここにやっぱり中小企業というものがどうしても労働賃金が急激に上昇すれば物価に転嫁されるのですよ、それはね。生産性で労働賃金の上がったことに対してそれを吸収していかなければならぬ。吸収できないのですからね。だから、物価それ自体の、もう直接の物価抑制策というものもむろん必要でありますが、一面において農業とか中小企業とかいう低生産部門のやっぱり体質を改善して、これを生産性を高めていくという努力も伴わなければ、ただ資本構成というこの問題だけが物価問題のきめ手であるというふうには私は考えない。やはりそういうふうな生産性を高めるための施策というものを今後やっぱり強力に進めていかないと、なかなかいまのような状態では消費者物価というものを非常に低い水準に持っていくことはなかなかむずかしい。だから、いま言った農業、中小企業の近代化、生産性の向上ということは今後政府がやっぱり相当年限をかけて力を入れていかなければならぬ点であると。いま相当やっていますけれども、私もやっぱり十分だとは思わぬですよ。もっとやっぱり積極的にやらなければいけない。まあ近代化や高度化の資金というものは無理してやっていますから、利子をとらない資金を出しているのです。政府としては、まあ相当な意欲は見せておるのですけれども、まだまだこれは十分だとは思わない。そういうところからこないと、なかなかこの日本の現在のような低い生産部門が相当消費者物価に影響する面がたくさんあるような場合には、物価問題というものの根本的解決というものはできないと、そういうことで今後力を入れていきたいと考えておる次第でございます。
  148. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ消費者物価の問題を見ると、農産物、特に生鮮食料品の問題が——これは通産省じゃなくて農林省関係ですから、資料はたくさんあるから今度ひとつ農林省を呼んでやろうと思うからきょうは言いませんけれども、消費者物価の抑制策には私は資本構成だけを言っているのじゃない。しかし、その基本的なものをほっといてこう薬を張るような形では私は絶対に安定した物価というものはできない。それは一時的にあるいは押えられるかもしれませんが、基本的な産業の構造と申しますか、そういうものが解決せずには私はできないと。この間経済企画庁長官にも物価委員会で、ちょっと特別委員会で言ったのですが、四十一年度は五・五%で押えると言われるけれども、私はお手並み拝見だと。もう過去三回予算委員会で経済企画庁長官、約束したけれども守られたことはない。しかし、それは無理だという、私は。いまの自由主義経済で、政府が統制力がないからやれない。無理だけれども、しかし、正直に話をしましようじゃないかと、できないものはできないと。どこに欠陥があるかと。国民がこうすればいいじゃないかということを言ってもらいたいと言ったのですけれども、まあ今度は五・五%で押える。経済成長が七・五%だからその程度でいくだろう、こういういろいろ大きな立場から言われておりますが、私はその要素の中に自己資本の問題もこれは含まれると思う。もしそれをやらずにして中小企業の問題、それだけの問題じゃありませんけれども、少なくとも中小企業製品がコスト高になるのは金融、金利の問題のウエートが相当私はあると思う。私は実際いろいろと当たって聞いても、耳にたこができるほど聞いているのです。山本さん、そう言われるけれども、高い金利で商売をしておってどないして値段を下げていけますかといって……。ちゃんと計算しております。私はそこに、いまの銀行を攻撃するわけじゃありませんけれども、いまの金融機関ほどふところ手でもうけておるところないでしょう。大蔵省の発表の企業年鑑を見ましても、非常に収益率を上げておるのは、もう金融機関だけですよ。もうけておる金融機関は、何一つ物をつくっておらないのですよ。人の金を借りて、それを貸すというだけで、その中のさやをとって、あれだけのりっぱな大きい建物を建ててやっておるのですよ。共産国へ行ったら銀行というのは片すみなんです。物をつくる生産関係には重点を置いておりますけれどもね。ああいう物をつくらぬものについては、もう問題なく金をかけておりません。そこに私は、日本の、私は決して社会主義経済計画をやれとは言っておらないのですが、そういう事態を考えなければ、日本も行き詰まってしまう。私はこの警告は、たびたびどの機会でも言っておるのですが、通産大臣とは初めてです。自民党の政策関係の長もされておったので、政策問題の通だということを聞いて、きょうは幸いに——必要以上のことを言っておると思うのです私自身も。自民党政府としても、その点は謙虚に私は一ぺん考えてもらわなければ、物価問題、労働問題、あるいは産業問題その他も私は解決はできない。できないと言い切ることはどうかと思いますが、相当政府努力をしなければやれないという、私は見解を持っておるのですが、これで終わりますから、最後に高い立場から、通産大臣のひとつ所見を聞いて終わりたいと思う。
  149. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはいままで申し上げておるように、金利負担というものは、相当これだけの借金がふえれば、やっぱり日本の生産のコストの中に非常な大きな部門を占めてまいりつつありますから、そういう点で一つには自己資本の充実、一方においては金利をできるだけ下げていくという政策は、これは並行しなければなりません。中小企業の中には、金利の点ばかりを山本さん言われたけれども、労働黄金の急激な上昇ということを生産性で吸収できなかったということも、これは物価に対しては大きな、金利以上に大きな面があるのですよ、実際。労働賃金が上がることは私は悪いとは思っていない。労働賃金がやっぱり高能率、高賃金ということが方向だと思いますよ。しかし、やっぱり急激に労働賃金が上がって生産性で吸収できなかったということも、金利以上に大きな物価問題に対する影響を存えておる。金利もまたいま言われたように、これは無視のできない問題の一つであるということはおっしゃるとおりに考えております。
  150. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや必要以上の答弁をされて、私はちょっと反駁だけしておかぬとね。労働賃金が上がったから、いわゆるコストが上がるということは、これはしろうとの、いわば常識的にいって——しろうとというとおこられますがね。日本の労働賃金は、各国に比較して高いなら私は言わない。それが物価が上がる原因であると言われると、賃金を押えたらいいということに通ずる。そういうことでないと言われたけれども、それは私は、池田さんとも議論したことがあるのですが、だいぶ前になりますがね。通産大臣はたまたまそれを言われるけれども、これは取り消しをしてもらわぬでもいいけれども、承服できない。社会党の山本伊三郎がそれを聞いて納得したわけではないということを議事録にはっきり載せてもらいたい。
  151. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  152. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。  ほかに御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより、討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  153. 船田譲

    ○船田譲君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました通商産業省設置法の一部を改正する法律案について、次の修正案を提出いたしたいと存じます。  修正案の内容は、ただいまお手元にお配りいたしました印刷物で御承知願うこととし、朗読は省略させていただきます。  修正の趣旨は、原案の施行期日である「四月一日」がすでに経過いたしましたので、これを「公布の日から」とするとともに、定員に関する改正規定は四月一日に遡及して適用しようとするものであります。  右の修正部分を除く原案に対しましては賛成いたしまして、私の討論を終わります。
  154. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより通商産業省設置法の一部を改正する法律案の採決に入ります。  まず、討論中にございました船田君提出の修正案を問題に供します。船田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  155. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 総員挙手と認めます。よって船田君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  156. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 総員挙手と認めます。よって修正部分を除いた原案は、全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これをもちまして散会いたします。    午後四時五十二分散会      —————・—————