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国務大臣(
藤山愛一郎君) ただいまお話のように、本年は不況克服という意味で大型
予算ができております。ただ、その大型
予算の使い方が、行政費はできるだけ節約するとか、あるいはむだな
補助金等は節減するということで、その
予算の重点を今日まで立ちおくれております——公債も発行したことでございますし、公債は公共投資を眼目として出しておるのですから、したがって、立ちおくれております
道路ですとか、環境設備ですとか、治山治水でありますとか、輸送
関係ですとか、そういうものにつぎ込んでいくわけです。したがって、こういう面に
予算がつぎ込まれますことは、たとえば
道路がよくなるということになりますと、輸送費が節約されてくる。ということは、物価の上には悪い
影響は与えないということになります。したがって、今回使われます
予算の
内容というものから見て、物価に悪
影響が及ぶものではないと、こう判断いたしております。それから、同時に、
政府支出によって景気を刺激してまいりますと、民間の投資は行なわれませんが、
政府支出で景気を刺激してまいりますと、やはり経済は活発になってくる。経済がなぜ不況かと申しますと、過去の設備投資が非常に過大であって、そうして今日では工場その他の稼働率が六〇%、ひどいものは四〇%しか稼働してないというようなことも行なわれております。したがって、これが一〇〇%稼働するようになることはどうかと思いますが、七〇%でも八〇%でも、それぞれの設備が稼働をしてまいりますと、それだけやはり生産性が向上してくる、コストが安くなってくるという
関係が出てくるわけでございまして、いままでのように、ただ単純に需要、供給の
関係で非常に物価が上がったというところに拍車をかけて、需要をつけますければ、なおさら、供給が足りないのですから物価は上がってまいりますけれども、むしろ需要をつけてやることによって供給できる能力が——死蔵されているものが活用されてまいりますから、その面も景気をつけたわりには物価に
影響しない。むしろあるものについてはフルに稼働するような、あるいはフルに近いような稼働をしてくれば、生産コストは下がってくるというようなこともございますので、まず本年この
程度の
予算を使いましても、本年内ではそれが著しく物価を刺激するというような
状況にはないんではないかと、こう考えております。ただしかし、今日まで、先ほど申し上げましたように、ゆがみ、ひずみから起こっている問題がたくさんございまして、しかもその中で合理化のできないような中小企業というようなものが、労働力の平準化ということのために、初任給等高いものを払わなければならない、こういうような
関係からして、ある部面においては、労働賃金が合理化によって吸収でき得ないものがございます。ですから、そういう面が今日非常に大きく拡大して出てきておりますので、その面からは、いきなり二%だの一%とかいうところには私は持っていけないと思います。がしかし、少なくとも五・五%前後までには、
政府の施策よろしきを得ればいけるんじゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。