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公述人(
浦島喜久衛君) ただいま御指名いただきました浦島でございます。
私の
意見を申し上げます前に、私の
立場をちょっと御弁解申し上げたいと思います。
私は以前
郵政省におりまして、
郵便の仕事に携わっておりましたが、もうすでにやめまして十数年たっております。したがいまして、私の
郵便に対する知識は非常に古くて役に立たないと思いますが、幸いにしまして、郵政
審議会の
委員の末席を汚しておりまして、一昨年郵政大臣から
郵便の
近代化ということに対する御諮問があり、また、昨年、
郵便事業の財政の
改善策につきまして大臣から御諮問がありましたので、私、
委員の末席におりまして、勉強する機会を得たのですが、そういう
観点から、私
個人としての
意見を申し述べさしていただきたいと思います。もちろん、
審議会を代表するとか、あるいは、いま私がやっております会社の、いわゆる業界を代表する、そういう
意味でなくして、最近私が勉強いたしましたその結果による私の
意見を述べさせていただきたいと思います。
結論を申しますと、私は、目下審議中の
郵便料金値上げに関する
郵便法の改正については賛成でございます。
その
理由としまして、二、三申し上げたいと思いますが、まず第一は、
郵便事業の財政の
観点から申し上げますと、これは省側の資料、または御説明によりますと、昭和二十六年に一種、二種、その他大きな改正が行なわれまして、三十六年に一部の改正が行なわれたのでありますが、ほとんど十五年間
料金は改正されておりません。しかるに、昨年までは大体現行
料金で収支がまかなえておった。ところが、四十年度の
予算におきまして、すでに当初
予算において五十数億の
赤字を計上しておるような状態でございますが、これが二十六年の
料金値上げ以後、
郵便の伸びが大体七%から一〇%の伸びになっておるのでありまするが、最近は非常にこの伸びが少なくなっている。したがいまして、現行の
料金による
事業の必要な運営に要する
経費がまかなえないという状態になっておるわけであります。しからば、今後四十一年度以降どういう見通しになるかということでございますが、これも資料で拝見してみますると、四十一年から三年までの三カ年において約千百億、四十一年から四十五年度までの五ヵ年において約二千億円
程度の
赤字になるという見込みであります。これはやはりこの
郵便事業は公益性があり、また、
国営事業でありましてもやはり
事業である以上は、
独立採算——特別会計のたてまえから
独立採算を堅持していくということは、これは当然のことであると私は考えます。したがいまして、今後予想されるこれこれの
赤字をどうして
解決していくかということが重要な問題であるわけでありますが、これについては、やはりまず第一義的には、
郵便を利用される、
サービスの提供を受ける
利用者がまずこれを
負担していくということが、これが経済の原則
——私は学者でありませんが、経済の原則から言って当然なことであると思います。もちろん、
経営者においては
経費の節約その他
事業の
合理化をはかられることは必要でありますが、しかし、かくのごとく一千億円ないしは二千億円の
赤字を単に
経営の
合理化、節約等ではなかなかまかない得ないと思うのであります。したがいまして、私は、
郵便事業の
事業会計の現状及び今後の見通しからいたしまして、やはり第一義的には、これは
利用者に
負担していただく。したがって、それをまかなうだけの
料金の
値上げはやむを得ないのではないか、かように感じておる次第でございます。
第二の点は、これは最も私は重要な点であると思うのでありますが、ただ単に財政の基礎を確立するばかりでは、これは
事業の発展というものはあり得ないと思います。やはり
事業の時勢に応じた
近代化をはかられ、また、
サービスの
改善をしていかれるということが最も大切なわけでありまして、この点につきましても、一昨年郵政大臣が郵政
審議会に諮問せられまして、郵政
審議会から、るるその
近代化の方策が
答申せられておるわけでありまするが、私、見ますところ、この現在の
郵便事業は、約九十年前に
前島密翁が創業された
郵便事業のたてまえと少しも変わってない、一歩も前進してない。要するに、
郵便がポストに入れられて、それを区分して送達して配達する。それには、すべてが人力によって行なわれているのが原則であります。しかし、近代の経済界においては、いわゆる作業の機械化というものが非常に進歩をいたしてきておるわけでありますので、この
郵便事業の作業においても、やはり機械を有効に使って作業を機械化していく、そして、できるだけ人員の節約をはかっていく、そして
経費の高騰を押える、こういうことが必要であるわけでありますので、そういう
意味におきまして、この作業の機械化を進めていかれる。これにはどういうことかというと、一番
郵便の作業で問題になるのは、
郵便の区分であります。要するに、あて先ごとに区分を正確にするということでありますが、これが今日ほとんど人力で行なわれている、これを機械化すれば、
郵便事業の大半がもっと
近代化される、
事業の正確、迅速が期せられると思うのであります。この点につきましては、すでに
郵政省におかれましても、着々と区分機械の機械化の研究をされ、これらがだんだんと実用化に向かわんとしているわけであります。この作業の機械化ということであります。
もう
一つは、
郵便の送達の迅速をはかるということであります。これはもちろん、現在、直接
郵政省の手で行なわれておりませんが、あらゆる輸送機関を使って
郵便の送達を行なっておるわけでありますが、この輸送機関で最もスピードアップするものは、航空機であるわけであります。あらゆる輸送機関において最も早いものは、航空機であります。これは現在特別な
料金を払って、いわゆる速達だけを輸送しておられるのでありますが、しかし
郵便の本来の性質からいたしますと、その時点においてできるだけ早い、最も迅速な輸送機関を使うということが、本来の私は
事業のたてまえであると思います。したがいまして、今回これは郵政、
審議会でも
答申せられたのでありますが、
郵政省当局におかれましても、いわゆる特別
料金を取らずに、第一種、二種、いわゆる高等通信を、少なくとも現在の航空機の飛んでおる可能な範囲において、この航空機を利用していこうという考えであります。これは非常に私は最も
近代化した行き方であると思うのであります。
それからもう
一つは、一番問題でありますのは、
郵便が一体どうしたらいつ着くのだろうか、あるいは遅配欠配等が多くて、結局
国民の信頼を得ていない状態であるわけであります。でありますから、やはり
郵便というものは差し出し人の期待に沿うように、いわゆる送達所要日数というものを確実に、しかも定期的にやるということが、最も必要であるわけであります。この点につきましては、すでに省側におきましても、要するに東京、大阪から全国主要都市にわたって翌日配達を確実にやるという
一つの目標を立てられまして、そういう方法を実施していこう、こういうふうに考えておられるのであります。
もう
一つは、現在の
郵便種類の
種別の
体系でございますが、これは
郵便事業創業以来、一部改正せられた点はあるのでございますが、やはり創業以来の大体の原則を守っておる。要するに公衆から差し出されたものを受け取って、その内容いかんによって種類をきめて、これを送達していく、こういうたてまえになっておるわけでありますが、今回は種類
体系を根本的に改正せられて、いわゆる外形によって
種別をまず原則的にきめていく。ことに高等通信である一種、二種につきましては、定形と不定形を区別し、しかもその定形については規格をきめていく、そういう
体系になります。これは要するに作業の能率を最も進歩
改善するたてまえであるわけでありまして、したがって、これは私は創業以来の
郵便種別の大改革であると、私は信じておる次第でございます。こういう
観点から、この
郵便の
近代化を推進する、こういう
意味におきまして、非常に私は今回の
郵便法の改正は、意義あるものと思うのであります。ただ単に
事業の財政が
赤字であるから、それをただ埋めるということでなくして、もっと積極的に
事業の
改善、
サービスの
改善、また
郵便事業の根本的な
改善をはかって、時勢におくれないように進んでいこう、こういうところに私はねらいがあると思うのでありますので、この今回の改正には賛成する次第であります。ただ懸念せられますのは、先ほども御
意見がございましたが、いわゆる
公共料金であり、これが
値上げすると
物価に
影響し、また
国民生活に大きな
影響を及ぼすのではないか、こういう点でございますが、この点につきましては、統計等から拝見しますと、
家計費に占めるところの
郵便のパーセンテージは〇・一四であります。年額にいたしまして一世帯当たり六十四円であり、わずかな金であると私は思うのであります。しかるに一方においては、ただいま申し上げましたように、
郵便事業の
近代化をはかり、そうして
郵便事業の財政の基礎を確立して、そうして
近代化をはかっていく大きな一歩前進の
体制でございますので、私はこれが確立せられますると、より以上に
郵便というものが正確に、しかも迅速に早く着くことになれば、わずか年間六十円の
負担というものは消えてなくなるものと信ずる次第であります。こういう点からいたしましても、たいした問題ではないわけでございまするので、私はそういう
理由からいたしまして本案には賛成する次第であります。