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鈴木市藏君 私は日本共産党(日本のこえ)を代表して、この法案に反対をします。
反対理由の
一つは、
郵便料金の値上げは、
佐藤内閣の一連の物価値上げ政策の一環としての性格を強く持っているからであります。現内閣は一月の一日に消費者米価を大幅に値上げし、続いて国鉄運賃、健康保険料等矢つぎばやに値上げしてきたのであります。
郵便料金の値上げが、家計に及ぼす影響は微々たるもので、ほとんど国民の生活には心理的影響を与えるにすぎないと強弁してまいっているのでありますが、米価値上げに際しても、国鉄運賃値上げに際しても、政府は同様のことを口にしていたのであります。これを総合してみるならば、関連物価の値上がり、便乗値上げと相まって消費者物価は大幅に値上がりし、
国民生活を圧迫しているのであります。国民はまさに政治的公害を受けて、非常な迷惑をこうむっているのであります。
郵便事業は料金値上げによってではなく、他の合理的方法によって維持発展させるべき本質的な性格を持っている
事業であるというべきであります。
反対理由の第二は、今回の
郵便料金値上げ二八・八%の政府案は、便乗値上げの性格を強く持っているということであります。たとえばその値上げの理由の基礎となったといわれる
郵便物数の推定伸び率、物数の推定実数は二転三転、伸びたり縮んだり、でたらめきわまるものであります。当初の資料と最終資料では
郵便物の推定伸び数が年間約一億通ずつ違っておる、昭和四十五年度には実に六億通の違いが生じているのであります。郵政審議会の答申の出たのは十二月九日、値上げの政府案決定が一月十一日、わずか一カ月の間に六億通もの違いが生じたのであります。しかも答申では三年間で二九・五%、五年間では三六・八%の値上げが必要とされておったにもかかわらず、二八・八%で五年間はもっと政府は説明しているのでありまするが、この数字は何らの科学的根拠のない政略的、意図的な数字だと言わざるを得ません。要するに、料金値上げの方針をまずきめておいて、
あとはそのつじつまを合わせるために数字をいじくっているにすぎなかったという事実が明らかであります。便乗値上げ的な性格の一例証がここにあるのであります。最近十年間の
郵便物数の平均伸び率は七・五%、過去五年間でも平均七・二%、これが実績であります。政府はこの事実を無視し、郵政審議会には四十一年度四・五%、四十二年度四%、四十三年度以降三・五%と極度に低い数字を示し、政府案でも四十一年度五・三%、四十二年度四%、四十三年度以降四・五%と、やはり不当に低い伸び率を採用しております。その結果推定赤字が非常に大きくなり、
郵便料金大幅値上げの根拠にされているのであります。これは不法、不当なやり方であります。
それだけではありません。
郵便物数の伸び率をきわめて低く見積もっているために、郵政
労働者の定員はそれに見合って押えられ、結局
労働者には極端な
労働強化、また
一般利用者には遅配、欠配の激増、サービスの低下となってはね返ってくることは必定であります。
反対理由の第三は、現在でも大きく黒字を出している封書と速達、書留等の特殊通常の料金を大幅に値上げし、赤字の大もとである第三種の値上げ幅を答申の約半分に押えて、負担を非
利用者大衆に転嫁しようとしていることであります。昭和三十九年度現在、封書は二十一億円の利益を上げ、特殊通常は約二十八億の黒字を出しております。はがきの赤字四十六億を穴埋めしてなお余りあるのであります。封書とはがきは最も大衆的なものであります。昭和三十六年の値上げの際に除外されたのも、ゆえなしとしないのであります。しかるに、今回の値上げでどうなるか。政府が当
委員会で明らかにしました試算によれば、三十九年度五十八億の赤字を出した第三種低料扱いが四十一年度にも約七十二億円の赤字を出す予定になっているのであります。はがきの十一億を含めて赤字総計百十五億、その約六五%が第三種であり、それを封書の九十八億、速達等特殊通常の二十三億円のそれぞれの黒字でカバーされているのであります。さらにまた、近来速達の
利用が急激にふえました。遅配の連続でやむを得ず速達に殺到したからであります。さきにも申し述べましたとおり、今後遅配が激増するおそれがあります。政府はそれを見込んでかいなか、速達料金の値上げ幅を答申よりもさらに大きくし、封書の速達で実に現行の六二・五%、はがきの速達で六三%の値上げを行なおうとしているのであります。そうして大
新聞等の圧力に屈し、大資本の利益を擁護するために、大衆課税的収奪を強行しようとすることを、絶対に認めることはできません。
理由の第四は、国の財産となるべき資本財の投資等の建設資金を料金値上げに求めることは
根本的な誤りであります。しかるに今回の政府案では、値上げによる増収分から五十九億円を建設勘定に回し、財政投融資からの繰り入れを昨年の半分、三十億に押えているのであります。
最後に
指摘しなければならないことは、郵政
事業は、法律上のたてまえから言っても、機構上からも、また運営上からも、独立採算制は本来成り立たない
事業であります。
郵便法第一条では、安い料金であまねく公平に提供するサービスを法律で規定しておりますが、あまねく公平に、しかも安くということと独立採算制が相いれないことは、一目りょう然であります。当局は総括原価主義に基づく独立採算制などというわけのわからない新語を発明してつじつまを合わせようとしておりますが、そんなことでは
解決にならないのであります。
そもそも占領下の昭和二十四年、いわゆる公共
企業体なるものが占領政策の
一つとして押しつけられたときに、今日のこの基本的矛盾が発生し拡大したのであります。たとえば、それまで一本になっていた電信電話が、そのとき郵政から切り離されたのであります。電話
事業はもうかる
事業であります。通信
事業として電信、電話、
郵便が一本のものとなっているならば、あるいは独立採算制なるものもわからぬわけではありませんが、現実にはもうかる電話
事業は切り離され、サービス部門でもうからない部門だけが残ったのでありますから、機構的にも独算制は成り立たないのであります。いまこそ占領政策の落とし子であるこの通信
事業の分割制をやめ、電信、電話、
郵便を国有
国営にして、通信
事業を一本とすることが必要 であります。
また、現在の郵政
事業の中には、
郵便業務のほか、
郵便貯金業務と保険業務がありますが、郵政
労働者は、苛酷な割当を消化するために汗水たらして働いているのであります。しかるにその果実はすべて大蔵省の資金運用部あるいは財投に持っていかれ、開銀、輸銀、その他を通じて
独占資本に奉仕させられているのであります。運営の権限は一切奪われ、
郵便貯金の運用利益金の剰余金にさえ手をつけることができない
状態であります。このような運営をしいられておって、郵政
事業特別会計の独立採算制が成り立たないのは当然であります。簡保資金や
郵便貯金を運用し、その運用利益金を郵政
事業特別会計に繰り入れる道を開くならば、
郵便料金の値上げをする必要がないばかりか、局舎の増設、サービスの向上、
労働条件の改善など、十分にまかなうことができるのであります。そのようなことを一切やらずに、法律上も、機構上も、運営上も、絶対に成り立たない独立採算制をたてにとって無理押しするところから、大衆課税的な値上げにならざるを得ないのであります。国家
独占資本主義の収奪のからくりが、そこにはっきりと示されているのであります。私は、国民がその犠牲に供されることを絶対に認めることはできません。
以上の理由で、本法案に反対するものであります。