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鈴木市藏君 われわれが想像していた以上にあなたの権力というのは強いものですね、驚きましたよ。やっぱり
NHKに法皇といわれておるだけあって、あなたはこの
委員会でも、そういう一つの思い切った発言をなさっておると思いますけれ
ども、私はそのいき方に非常な危惧を感ずるのですよ。これはおそらく将来
NHKが何らかのときに、問題になったときに必ず出てくる要素の一つじゃないかと思います。先ほどに戻るようですが、やはり
経営委員会をもっとやっぱり民主的にして、少なくともあなたの指示ではなくて、集団の指示で問題が運営されていくようにしないと、私は将来禍根を残す危険が非常にあると思いますが、ここはそこでおきます。
そこで私
どもは、いま世の中というものがどういうものであるかということを自分の手のひらに乗せて見るということが非常にできにくい。むしろそういう世の中なんですよ。言論は一見して自由のごとくで、あらゆる報道機関は羽を伸ばしているようでありながら、何といいますか、集団の中の孤独といいますか、つまり世の中がどうであろうかということを手にとって見れないような
状態にたくさん置かれているわけです。そこで私は、先ほど言ったように、
経営委員会に組織の代表を入れろということで、一見矛盾しているようなことなんですけれ
ども、
番組の
編成について、しかも一番視聴率の高いときに、時期になされる、いわゆる俗なことばで言う昔物でなくて、生きた現実の日本をひとつやれないものかどうかということを
考えておるわけです。それは、たとえば世間に起きてきているいろんなニュース、ニュース的な事件があります、たくさん。こういう次元についてどう
考えたらいいのか、どう受けとめたらいいのかということについて多くの市民は迷う場合がある。共通の、つまりいまたとえばある集会を持っても、おそらく、つまり私は市民だという形で、この集会に参加するということはほとんどないでしょう。あるいは
委員会へ行ったって、おそらくそうだろうと思います。御承知のごとく、それはやはり組織された集団の集会であり、
委員会である場合が非常に多い。そうして起きた社会的事件について、組織を異にした、あるいは組織を持たない
人たちが、自分たちの意見というものを交流する場というようなものが日本にないのです、いま。要するに、市民社会の中において市民同士が交流する場というものがほとんど限られている。ごく非常に限られているというか、皆無にひとしい
状態。別言をして言うならば、そういう意味では自分の意見、住民としての自分の意見を述べる場というものがないのですよ。これがつまり集団の中の孤独といわれている表現でおかれていると思う。これをどうしたら
NHKが引き出すことができるかというのが大きな使命だと思うのですよ。だから一つのイメージを申し上げますが、それは必ずしもあなた方が
番組編成のときに具体化するのにどうのこうのという意味じゃございません。つまりこの日本には市民の意見というものを聞く場所がないということを、どうしたらこれを救うことができるか。その場所を与えることができるかということを、おそらくみんな私は
考えているだろうと思うのです。組織の意見は聞くことができます。しかし、横につなぐ意見というものが構成されない日本、これが日本の民主主義にとっては
かなりな意味でやっぱり危険な要素だと思う。それじゃどうしたら横につなぐ意見を引き出すことができるか、その場をどうしたら保証することができるかということだと思うのです。私は、思いつきでたいへん申しわけありませんけれ
ども、
NHKはむしろ
NHKにあるスタジオではなくて、非常に手軽にそういうことが市民同士の中で、ある一つの問題について甲論乙駁しながら次第に形成されていく、市民の民主的な意見というものが次第に構成されていくような、そういう場をどうしてもつくる必要があるのじゃないか。どこでつくったらいいかということをわれわれいろいろ
考えてみたけれ
ども、われわれはいまのところ
NHKが最も適切な場の一つだと
考えるのです。だから、昔は市民の酒場といいますかがあったが、いまはそれさえもほとんどないというような
状況ですから、ここはひとつ
NHKのスタジオではなくて、
NHKが独自のくふうをこらして、あるいは、たとえばベトナムの問題、あるいは早稲田大学の問題が起きたときに、こういう問題について市民はどういう意見を持っているかということが率直に交換できるような、一週間に一度ずつテーマを出して、そこで交流できるような場を積極的に広げていく、あるいはまた、中小企業の問題もさっき出ましたが、そういうような問題についてもすぐ意見が聞けるような、そこへいけば必ず自分の意見が述べられるということを保証する、スタジオではだめですよ、行くのにめんどうくさくてしょうがないから。もっとスタジオではない場所でそれができるようなことをひとつ考慮していただいて、現代の日本を現代のわれわれがよく知るという立場で、もっと積極的に
番組を
編成してみる必要があるのじゃないか。私は、復古調の問題もけっこうですけれ
ども、そういうつまり生きている自分たちの世の中が十分につかみにくくなっているいまの
状況を、どうやはり切り開いていくかということが大きな一つの
仕事ではあるまいかということを
考えまして言うので、しかも、一番聴視率の高い時間を一部復古調のものにとられてしまっているということでは、 ほんとうに市民が、共通の場としての
NHKが一番大切な時間をとられてしまうためにその
番組が保証されないということでは、正しいあり方とは言えないのじゃないか、こういうことを
考えているわけなんです。まあ御答弁をすぐいただかなくてもけっこうですが、ぜひひとつその
番組編成のときに、これをひとつお
考え願いたい。
次に、
放送内容の問題で、国際
放送について若干
お尋ねしたいと思う。
ずいぶん私たちも
NHKのあれも調べてみましたが、なるほど国際
放送については、特別に問題を起こしているようなところもないかと思いますけれ
ども、一番私がここで聞きたいのは、私たち自身がつかみにくいので聞くのですが、約十八カ国にわたって、三十六時間にわたる国外
放送をやっておるわけですが、つまり相手国からはどう受け取られているか、これなんです。これがわからない。
NHKでもおそらくお調べになっておると思うから、
NHKの海外
放送は相手側からどう受け取られているかということをひとつお答え願いたいと思う。