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鈴木壽君 私は、日本
社会党を代表しまして、ただいま議題となっております
地方公営企業法の一部を
改正する
法律案に対して反対の
意見を申し述べるものでございます。
この
改正案に対しましては、
衆議院段階におきまして、いわゆる三党修正ということが行なわれておりまして、この三党修正の修正された部分につきましては、私
どもももちろん異議を唱えるわけではございませんが、しかし、全体としてこの法案の一部
改正というものを見た場合に、なお
賛成しかねる点が幾つかございますので、その点につきまして一、二反対の理由として申し上げたいと思うのであります。
第一は、この
改正案そのもの全体の条文の立て方、これに対して私は
賛成することのできないということをまず申し上げたいと思うのであります。
で、
地方公営企業法は、企業の組織なり、あるいは財務、職員あるいは経営の基本になるべきところ、こういういわば公営企業としての制度の基本的なものについての
規定法であるべきなのであります。現行法もそのようになっておるのであります。したがって、
改正案は、こういう基本的なその線に沿いながら、この制度の基本的な問題について、いわゆる
改正の必要な部面を盛り込まなければならないのにもかかわらず、今回はそれに加えるのに、企業の財政再建という、いわば特殊的なこういう事項についての
規定措置というものを大きくこの中に付け加えまして、本来のあるべき
地方公営企業法という、こういうものからははみ出した形における条文の立て方、こういうふうになっておるのであります。もちろん現在の地方公営企業におきます赤字の問題、したがって、財政再建の問題は、これは急を要することではございますが、しかし、それはかつて一般の地方団体の財政再建促進特別措置法のあれにとられたように、別個に私は
立法されるべきであって、今回の
地方公営企業法そのものの中にこういうものを含ませて、しかも、その含ませる意図が私はどうも理解できないものがあるように思うわけであります。本来の地方公営企業というものは、一体どうあるべきであるのか、繰り返して申し上げますが、基本的なむしろ永久的な、そういうたてまえに立っての法の
規定であるべきであって、財政再建という、いわば暫定的な時限的なものに対するそれは別個に扱われるべきであったと思うのであります。こういう点から、第一点としましては、いま申しましたように、
改正案の条文の立て方そのものに私
どもはにわかに
賛成することができないということをまず申し上げておきたいと思います。
次に、この
改正案におきましては、地方公営企業というもの、その本質、性格、こういうものが明らかにされるべきであるにもかかわらず、依然としてそれがあいまいな形に
規定されてしまっている、こういうことであります。あいまいに
規定されたということよりも、むしろその公共性というものが失われかけるような、そうして企業性というものが優位に立つような、そういう
規定が随所に出ておるわけでございまして、こういうことに対して、本来の地方公営企業のあり方からして私
どもはこういう
考え方、こういう思想でもって法
改正が組み立てられるということについては
賛成できないのであります。確かに地方公営企業は、いわゆる企業でもありますけれ
ども、それはあくまで地方自治行政そのものであって、住民の福祉、住民の生活向上を目ざす公共的な事務であります。生産活動であり、経済活動ではありますけれ
ども、それはとりもなおさず、いま言ったように地方の住民の自治の立場から、それらが組織せられ、管理せられ、住民への
サービスを満たす、こういう
仕事でなければならぬのでありますが、そういうことがずっと影をひそめまして、 いま言ったように、企業の優位性と申しますか、企業性の優位性というものが出て、したがって、ここからよく言われるように、独算制がまたさらに新たな形で出てきたのではないかといわれるような、そういうものがうかがい知れるのでございまして、われわれはこういう点では
賛成できないのであります。ここでは当然公共性が優先すべきであるということ、これらの明確な
規定が今回の
改正によってなされるべきであったと思うのでありますが、それらのなくなったことに対しまして、まことに遺憾だと言わなければならないのであります。
このようなことから、第三に問題にしなければならぬことは、長とこれら地方公営企業の管理者との
関係であります。地方自治行政の公共的な事務の当然なすべき、地方公共団体として住民福祉の立場から当然なさなければならぬ、こういうたてまえからするならば、今回の
改正によって行なわれましたように、現行第七条あるいは第十六条にありますところの長の指揮監督、総括的な責任の所在というものが法
改正によって削除せられたということは、何としても私は遺憾なものであり、この公営企業法の根本的な問題に対する誤まった私は
解釈のもとにこの法の
改正が行なわれたといわざるを得ないと思うのであります。企業の事務のうちの一部委任の問題についても、長の同意を必要としないというふうに改められたこと。確かに公営企業の管理者の権限の拡張といいますか、あるいは大きな権限を持って、相当大幅に自主的に運営するということの必要性は認めます。しかしながら、だから最終的に地方公共団体の長との
関係が打ち切られるような、こういう形においては地方公共企業の存立そのものをも私は危うくするものであるということを、ここに強く指摘をせざるを得ないと思うのであります。
大きな問題につきましては、以上三点でございますが、なお、私はこの
法律の
改正案によって幾多の心配な点も持たざるを得ないのであります。さきにもちょっと触れましたように、ここにこの
改正案によって見られることは、依然として独立採算ということが強く打ち出されておる。もちろん、私
どもは企業の経済性なりあるいは能率的な運営なり、あるいは採算を度外視したそういう経営をやれという、こういうことではございませんけれ
ども、さっき言いましたような観点から、それはあくまでも公共事業としての地方自治行政の一環としての公営企業である観点からするならば、こういうものをはっきり前面に出すことが、これは大きな問題であろうと思うのであります。したがって、あるいは経費の負担区分の問題におきましても、いろいろ
政令にゆだねるようなことがありますけれ
ども、
考えておることはまだ徹底を欠くというふうに、われわれは判断をせざるを得ないのでありまして、今後の運営において、われわれはこういう点についても大きな心配を持つものであります。また、料金決定の際のいわゆる適正な原価というような問題につきましても、まだ明確にわれわれを納得せしめるような
説明がなされないこと等をも加えまして、この問題は今後の私
どもの大きな心配の問題として残っていくであろうということを、ここに指摘をしておきたいと思います。
なお、これも先ほどの
質問の段階にも申し上げましたが、
地方財政再建促進特別措置法の陣容の問題等につきましても、この再建計画の樹立、あるいはその遂行というような段階において、いろいろ締めつけが行なわれるのではないかという心配を依然として持たざるを得ないのでございまして、こういう点からいって、そういうおそれのある——単なるおそれじゃなくて、強い規制からくるそういう問題が十分解決をされておらない、こういう
改正案に対しては遺憾ながら
賛成をいたすことができないのであります。
以上、二、三を申し上げまして、党の立場において反対をする理由といたしたいのでございます。(拍手)