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1966-06-07 第51回国会 参議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月七日(火曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岸田 幸雄君     理 事                 小林 武治君                 沢田 一精君                 加瀬  完君                 原田  立君     委 員                 小柳 牧衞君                 高橋文五郎君                 津島 文治君                 天坊 裕彦君                 中村喜四郎君                 林田悠紀夫君                 占部 秀男君                 鈴木  壽君                 林  虎雄君                 松澤 兼人君                 松本 賢一君                 二宮 文造君    政府委員        近畿圏整備本部        次長       上田  稔君        警察庁警備局長  高橋 幹夫君        首都圏整備委員        会事務局長    鮎川 幸雄君        自治政務次官   大西 正男君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        警察庁警備局警        備課長      後藤 信義君        法務省刑事局公        安課長      蒲原 大輔君        法務省人権擁護        局総務課長    辻本 隆一君        自治省財政局指        導課長      及川 謙三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政の改革に関する調査  (警備警察に関する件) ○首都圏及び近畿圏近郊整備地帯等整備のた  めの国の財政上の特別措置に関する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  警備警察に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 加瀬完

    加瀬完君 私は、先般の原潜デモについての問題で伺いたいのでありますが、百瀬現地警備本部長は、六月三日の夕刊で、「一部学生基地侵入もあったが、基地司令官は、警備警官処置が的確であったと言ってくれた。けが人が出たが、故意にやったものではなく、いずれも集団集団との間に発生したものである。常識的な範囲内におさめたと思う。」、このように語っておるのでありますが、警察庁も、これらの点は同意見でございますか。
  4. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私どもも、全般的には現地百瀬君と同意見でございます。今回の横須賀原潜寄港に関します警備につきましては、当初私どもは、いろいろな情報がございまして、一つの重点といたしましては、基地侵入をさせないということが一つと、それから平穏な大衆行動に対しましては、これを平穏なうちに終了せしめるということが一つ、もう一つは、一部学生の過激な行動があるというようなことに関連いたしまして、デモ隊警察との間の衝突等が起きて負傷者のできないようにということを、一つの原則といたしまして警備実施をいたしたわけであります。  しかし、結論的に申し上げますと、一部学生のはね上がった行動によりまして、警察との間の衝突がありまして、非常に遺憾なことでございましたが、警察あるいは学生、あるいはデモを見ておりました一般方々の中に、若干の負傷者ができたということは、私どもとして遺憾に思っておりますが、警備全体を見まして、局部的にはいろいろな点がございますけれども、大観いたしまして、一応警備目的を達し得たものと、私どもは見ております。
  5. 加瀬完

    加瀬完君 いまも申し上げましたとおり、基地司令官言明、すなわち警察官処置は的確であったということをだいぶ大きく取り上げているようでございますが、この警備目的判定基準というのはどこに置かれたわけでございますか。
  6. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) ただいま、基地司令官のいろいろな批評がありましたが、これはさておきまして、私どもといたしましては、先ほど警備方針に申し上げましたような点に基準を置きまして、その実施の結果とにらみ合わせて判定をするといいますか、その結果を検討するということでございます。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 その百瀬現地警備本部長言明の中に、「今度の警備についてはいろいろの批判もあるが」と、一方では市民批判も認めておられるようでございますが、この点の反省は、さきの言明の中には明らかにされておらないわけでございますが、こういう市民批判というものに対しましては、どう警察はお考えでございますか。
  8. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 具体的に、これらの警備の問題につきまして、警察やり方であるとか、あるいは一般市民のこれの受け方であるとか、そういうような問題につきましては、現在逐次検討をいたしまして、将来の警備実施にあたって参考にしていきたいということでございまして、いろいろな警備実施上の問題点については、ただいま現地あるいは私ども、あるいは各応援に出ました各府県等において検討中でございます。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 ではこういう市民批判も、警備としては常識的なワクの中という考え方ではないわけですね。十分資料を集めて検討をして結論を出すということでございますか。
  10. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 大衆行動に伴い、またそれに対する警備実施について、いつも警察としては世論の動向であるとか、あるいは一般国民理解というようなものについては、私ども非常に関心を払っておるわけでございます。したがって、市民のこれに対するいろいろな批判なり、あるいはいろいろな理解の点については、私ども耳を傾ける点については率直に耳を傾けますし、私どもとして理解の足りないと思われる点がありましたら、これらについては私どもとして十分な理解を求めるような方法をとるべきである、こういうふうに考えております。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 委員長お話もございましたとおり、どうぞおからだのぐあいが悪いようでございますから、お立ちいただいて御答弁いただかなくてもけっこうでございます。  それでは、けが人も出たが故意にやったものではなく、いずれも集団集団の間に発生したものだ、こうおっしゃっておるようでございますが、警察庁の御調査も、事実関係集団集団の間に発生したもので、故意にやったものではないという御見解ですか。
  12. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) それではすわったままでお答えいたします。  私どもも、もちろん集団集団、あるいはいろいろなケースで起こるわけでありますが、警察官のほうからこれに対していろいろな力をふるうということでなくて、偶発的な事件あるいは集団集団とのぶつかり合いということにおいて発生をしたというふうに私ども思っております。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 故意でなければ、けが人が出てもしかたがない、こういうお立場ですか。
  14. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私どもはそういうことを申しているわけではございませんので、先ほど御説明申し上げた警備方針の中にも、双方に負傷者を出さないということを一つの基本的な方針にいたしております。したがいまして、できるだけそういう負傷のないようにということを心がけておりまして、いま御指摘のような点はございません。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 その読売新聞の六月三日付の朝刊には、「ゲート前の他県警警官隊は強引に引き抜く。学生が抵抗すれば、けとばしてひるませ、引き出す……といった無策ぶりが目立った。」と、こう報じております。この点はどう認識をしておられますか。
  16. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 非常に技術的な点のお答えをして恐縮ですが、当時ゲート前におきます部隊配置は、他の府県の者はそれぞれゲート前以外の具体的なところの固定配置でございまして、ゲート前は神奈川県警を中心とし、さらに学生デモ等の規制については警視庁機動隊神奈川県の機動隊とを使っておるということでございまして、いま御指摘のような点は私どもないと確信をいたしております。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、「警官隊は強引に引き抜く。学生が抵抗すれば、けとばしてひるませ、引き出す」と、こういった事実はないという御確認ですか。
  18. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私どもすわり込みの排除の場合におきましては、引き抜き方について、相手が抵抗した場合においては相当の力を行使しなければなかなか引き抜きができないということで、そういう点については力を使っておりますが、相手をけ飛ばしたり、あるいは必要以上の力を加えるということは、私どもそういうことはいたしておりません。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 五月三十一日の神奈川新聞ですが、これによりますと次のように報道をされております。「警官隊はスピードを早める学生を両側からはさみつけ十数人の小グループに寸断した。「キャー」という女子学生の悲鳴、たがいに腰をつかみあい押しかさなって進む学生がつぎつぎとゴボウ抜きにされる。男の学生が小走りに歩道へ逃げる。脱落しようとする学生に四、五人の警官素手でポカポカとなぐる。」それから「学生労働者の一団三百人の中に十時すぎ、坂の上から突然警官隊が突っ込んだ。逃げ遅れ歩道上にころげ込んだ学生の上に、警官五、六人がまたがり、くつ指揮棒でなぐる、ける。顔をおさえてころがる学生。「同じ日本人じゃないか。やめろ、ひどすぎる」と市民叫び声。「やめなよう」と戸の間から泣き声主婦。そして一分後には救急車のサイレンが鳴った。このもみ合いは約三十分続いた。」、こう報道されております。  私はいろいろ現地での調査もいたしましたし、話も聞きましたが、ここでは個人の話は申しません。新聞が以上のように報道をしております。それは少なくもこういう事実がなかった根拠のない報道ではないかと思われるわけであります。もう一回申し上げますと、「脱落しようとする学生に四、五人の警官素手でポカポカとなぐる。」、「逃げ遅れ歩道上にころげ込んだ学生の上に、警官五、六人がまたがり、くつ指揮棒でなぐる、ける。顔をおさえてころがる学生。「同じ日本人じゃないか。やめろ、ひどすぎる」と市民叫び声。「やめなよう」と戸の間から泣き声主婦。」、こういう現状というものがなくてこういう報道というものが行なわれるはずはないわけであります。いま局長の言うように、すわり込んでいる抵抗しない者を力をもって引き抜くということ、これはないはずだ、こういう事実は御調査はないのですか。
  20. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私どももいろいろ現地新聞あるいは東京の某紙報道されました記事内容検討いたしまして、いろいろ具体的にも調査をし、県警に対しましてもそれぞれ新聞報道について誤りと思われる点については、相手方によく連絡をして、その記事の訂正なり、あるいはそれについての事情を聴取するように具体的に連絡をしております。いまの御指摘のような点については、常識的に考えられないことでございますし、それぞれ県警においても具体的な調査をして、各新聞社に対して具体的な連絡をしていると思いますが、私もその結果についてまだ承知いたしておりませんので、ここで申し上げることはできませんが、私の申し上げられることは、いま申し上げたようなものの見方というものについては、私ども必ずしも同意ではございません。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 それではいま申し上げたような内容記事が出たのは、この神奈川新聞という一社ですか、ほかにはございませんか。
  22. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私はそういうふうに記憶いたしております。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 それではこれは非常に重要な問題でございますし、私の質問をしたい点もここに焦点がございますので、あったかないかという水かけ論はしたくはございませんので、あとでまた他の事例で申し上げます。  そこで別の点をまず基本的な問題として伺いたいのでありますが、この原潜デモの警戒に出動をいたしました警察官の総人員、それからデモが開始されてから原潜横須賀から立ち去るまでの各間の出動人員、それから警察官所属都県、これはどういうことになっていますか。
  24. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 警察官出動でございますが、これは神奈川県を主体といたしまして、神奈川県以外からの応援は、警視庁から千二百五十九名、それから警視庁以外の各県から、県別に申しますと、茨城県が百十八名、栃木県が七十九名、群馬県八十三名、埼玉県百六十九名、千葉県百六十七名、新潟県十五名、山梨県八名、静岡県百三十三名、ほかに管区教官、これは管区学校の生徒も動員いたしましたので管区学校教官も入るわけでございますが、それらが十九名でございます。したがいまして、これらを合計いたしますと、警視庁が千二百五十九名、警視庁以外の各県、これが七百九十一名でございます。それから神奈川県の県内といたしましてば、三千五百名を動員いたしておるわけでございます。したがい出して、最大警備の場合におきましては五千五百、ないし入港第三日目の最大の場合には、それに二百名ばかり多くいたしまして、これは県内からの動員でございますが、五千七百名が最大の一日の動員でございます。延べにいたしますと二万七千名弱でございます。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 出動するまでの、神奈川県警はとにかくとして、警視庁並びに他の県警出動手続はどういうように組まれたわけでございますか。
  26. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、実は横須賀原潜が来るかもしれないという話は、昭和三十九年の米ごろからございましたので、当時からすでにそういう準備はいたしましたわけでございますが、途中は省略いたしまして、つい最近では、神奈川県におきましては、私ども承知しておりますのでは、この一月の二十一日の定例公安委員会の席上で、原潜がやがてやってくるかもしれない、横須賀に入ってくるかもしれないが、その場合には、県内警察官動員しても警備力が十分でないので、これは他県から応援を求めたい。その応援要請先はこれこれの県であって、その人員はおおむねこれこれであるということを公安委員会報告をいたしまして、その了承を得ておるわけでございます。そういたしまして、さらに、原潜が入ってくるという通告がありました場合には、直ちに、了承に従って、各県に応援要請手続をいたしたい。でその場合には、あらためて公安委員会を開くことなしに、電話その他の適宜の方法委員さんにお知らせを申し上げる、それで了承を願って、そうして各県に要請をしたいということを、あわせて委員会の承認を得ておるわけでございます。  それから、他の県におきましては、私ども警察庁がその仲介役をとりまして、神奈川横須賀原潜が入りました場合に、神奈川県警の力だけでは十分の警備をする力が困難であると思われましたので、それぞれの県に対しまして、神奈川県の要望するような線に沿って応援要請があった場合に、これに応じていただくように諸般手続を進めてもらいたいと、こういうことを要望いたしておきました。これに従いまして、神奈川県からは、あらかじめ公安委員会了承をこういうふうに得ておるから、原潜が入ってきた場合には直ちにあらためて要請をいたしますが、その場合にはしかるべくよろしくお願いいたしますという意味依頼が、各県の公安委員会あてに出されております。警視庁を含めましてでございます。そういたしまして、各県の公安委員会でも、それぞれ定例公安委員会の日などにそれを報告いたしまして、各委員さんの了承を得ておるのでございます。たしか千葉県なぞはこの五月の二十五日に定例公安委員会の席上でこのことが議題に出まして、その場合にはあらためて、入ってきたというときには神奈川県警から要請があるだろうが、そのときに適宜の方法で知らせてもらえばよろしいと、かような了解を得ていたのでございます。それに従いまして、この五月の二十九日の朝入港通告がございましたので、これに基づきまして直ちに神奈川県警では各公安委員さん方に電話報告をし、あらかじめきめられておりましたことに従いまして各県に応援要請し、各県ではそれぞれ各公安委員さんにしかるべき方法連絡をし、あらかじめきめられた方法に従って出動せしめた、こういうことでございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 一月二十一日ですか、神奈川県の公安委員会原潜が来るかもしれないから警備体制を各県本部要請をしようということをきめたのは。
  28. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは先ほど申し上げましたように、昭和三十九年の暮れ以来そういううわさがございましたので、それぞれそのつどそういうことは公安委員会議題に出ておったようでございますが、最近の公安委員会議題に供したというのは、一月の二十一日であったと聞いております。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 一月の二十一日に公安委員会で議決をしなければならないほど根拠のある報道は、どこから出されたわけですか。
  30. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) いまのいわゆる報道について、あるいは連絡について、誤解があってはいけないと思いますので、この機会に私から申し上げておきますが、私どもとしては、一般的に次は横須賀であるというような話がありまして、具体的に外務省であるとか、あるいは政府であるとか、そういうところから私ども連絡のあったことは一ぺんもございません。その点は御了承を願いたいと思います。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 はなはだ不確かなものですね。そうすると警察庁なり公安委員会なりというものは、来るであろうという、しかもですよ、公安委員会なり警察庁なりの推定によって、あらかじめ出動準備要請をするということになるのですか。
  32. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私ども警備を担当する者といたしましては、いろいろな情勢をいろいろな角度から判断をいたしまして、それが不確かなものであろうとも、確かなものであろうとも、有事即応のかまえと申しますか、平素からやはりそういう準備をいたさなければ、二十四時間前に通告されただけではなかなかむずかしいという問題がございまして、平素からそういう準備をいたしておったわけでございます。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 これは警察庁がそういうかまえをするということはおかしいのですよね。横須賀警備というのは神奈川県警ですからね。神奈川県警が、警察法のたてまえからいえば、政府なら政府、あるいはアメリカの基地司令官なら基地司令官から、はっきりと原子力潜水艦入港をするという通知を受けて、それでデモが行なわれるであろうと、こういう客観情勢もはっきりと認識をして、そこで公安委員会が開かれて、はたして神奈川県警だけではだめなのか、要請すべきであろうか、すべきでないかということを検討されて、要請すべきであるという結論になって、要請相手方の各県警要請依頼があるというたてまえでなければおかしいでしょう。確かにそれは警察法の第六十条の第二項には、「他の都道府県警察に対して援助の要求をしようとするときは、あらかじめ必要な事項を警察庁連絡しなければならない。」ということがありますから、これは警察庁のほうでこの場合は神奈川県警のそういう連絡があって、それでどうしてもこれは体制上、各都道府県警察官応援要請にこたえなければならないということで指導をされ、助言をされるということはあり得ましても、一月二十一日という日の日本じゅう新聞見たって、六月になりまして原潜が入りますよとか、いや五月の末ですよということはどこにも出ておらない。そういう確実でない事案というものを推定をして全部手配をする、こういうのなら、公安委員会判断の余地というものはどこにもないのですよ。警察庁がそう考えて、何かあったときは警察庁から連絡するから、そのときはみんな出てこい、了承しました。で、公安委員会はもう了承しておりますから、こういうことでは公安委員会自主性というものはどこにあります。
  34. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 御指摘のように、いわゆる警察庁府県警察との関係というのはそのとおりでありまして、私どもといたしましても、全国的ないろいろな情報連絡もございますし、それぞれいろいろな情報連絡があるわけであります。したがいまして、私どもとしての情報連絡というものも神奈川県警に出すということは、これは当然のことでございます。したがいまして、神奈川県といたしましては、従来の警備実施、たとえば原潜の反対のデモというものについては数次の経験があるわけでございます。したがいまして、警備実施のたてまえから見て、もしもかくかくの動員があった場合においては神奈川県警警察力をもってしては対処できないという意味において、神奈川県が主体的にそれぞれの警備実施の条件を判断をいたしまして、それぞれの警察力要請をいたしたわけでありまして、そういうものについて当然私どももそれの連絡を受けておりますが、それについて御指摘のような助言、勧告というものはいたすというたてまえになっておりまして、決して私のほうが指示して、こういうふうにやれということをいたしておる、そういう警察法の精神にもとるようなことはいたしておりませんので、御了承を願いたいと思います。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問もそういうことではないのです、しかし、時間もありませんから先に進みますが、一月二十一日に不確定な原潜寄港というものを見越して定例公安委員会できめたわけですね。じゃ、このきめ方はどう思います。
  36. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま局長からお話し申し上げたところに尽きるわけでございますが、私も事務的に申し上げますと、実は御承知のように、神奈川県には公安条例と俗に言っております条例がございまして、デモをやるような場合には七十二時間前に許可申請書公安委員会あてに出すことになっております。横須賀原潜が入るであろうといううわさがありましてから、これを阻止しようという勢力の方々は、七十二時間前に許可申請をしなければならないというので、毎日毎日七十二時間を見越して許可申請書を持ってくるといったようなやり方をしなければならぬかどうか。最初は若干そういうことをやっておったようでありますけれども、それは二十四時間前に通告があるということからいたしまして、七十二時間前に明確な動員計画を立てて、そうして許可申請をするということは、これは困難でございます。そこで、二十四時間以内でもよろしい、しかしながら、動員計画がどのようなものであるか、通告の日にはどのくらい出すのか、どこからどこまで、どのくらいの者がデモをやるのかといったようなことを、主催者の側の人々とよく打ち合わせをいたしまして、その計画に大きな変更がない限りは、これは二十四時間の通告以内に入っても、通告がありました後において成規手続をとられても差しつかえないという便宜の方法を講じたわけでございます。その段階におきまして、通告の日にはどれだけ、入港第一日目はどれだけ、こういうようなことを主催者側のほうから話がありまして……。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 質問に答えてください。そういうことを質問しておりません。
  38. 後藤信義

    説明員後藤信義君) そういたしますと、警察のほうでは、どの日にはどのくらいの人員動員されるということを推定と申しますか、そういうことができるわけでございますので、全然不確定ということではございませんで、主催者側が考えておられるような動員がおそらく行なわれるであろう、それに、ただいま局長からお話がありましたような諸般のこれまでの経験とか、あるいは情報とかを総合いたしまして、この程度ということを検討いたします。そうしました結果、これは神奈川県の警察力をもって警備できるかどうかということを判断された、こういうことでございます。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 そういうことを私は伺っておらない。一月二十一日には原潜が来るか来ないか不確定な時点ですよね。そのときの公安委員会原潜が来ると判定をして、デモがあると認知をして、それで各都道府県要請をしたということは、公安委員会のあり方として妥当かと聞いているのです。
  40. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) いまの御指摘のように、ただいま入ってきたから、一月というものがきわめてその当時から見ると離れておったような御印象を受けられるかと思いますが、当時から見れば、いつ入ってくるかわからないというふうに神奈川県警として考え、あるいは私どもとしても、いつ入るかということについては全くつかめないという状況である場合においては、早目にわれわれとしても準備をするということが当然かと思うのであります。したがって、神奈川県警なりあるいは神奈川県の公安委員会が、いま御指摘のような判断をしたということは、妥当性がないというふうには私どもは思っておりません。
  41. 加瀬完

    加瀬完君 予備行動なり準備行動なりとしてそういう打ち合わせをして、それで原潜寄港というものが確実視されたときに、再度正式な委員会を開いて、そこで確認をするというのなら筋は通りますよ。半年も前に、全然まだ、それは来るであろうということは想定されても、来るということがはなはだまだ不確定なときですよ。そのとき会議を開いて、そして全部関係都県に依頼をして、しかも課長さんのお話でありますると、事前に、来るか来ないかわからないときにきめておくという、そして最後の決定は持ち回りで各委員の承諾を受ければいい、ここにも私は法律的に疑義がある。  公安委員会というものは一つの行政機関でしょう。個々の公安委員が判こを押したって、これは行政機関の決定ということにはなりませんよ。通例そういうふうにやっておられるようだが、そういうやらせ方もおかしいんだが、これは何もこの事案とかに直接関係のある問題じゃないのですけれども、それで千葉県では五月二十五日にきめたというのです。ほかの県は、あなたのおっしゃるように、あらかじめきめておいて、公安委員の持ち回りで、あのとききめたことをこれで承認してくださいと、それできめた。そんな一体きめ方が、公安委員会のあり方として妥当ですか、局長さんどうです。公安委員会はいつもそういうふうにきめるのですか。
  42. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 公安委員会というものは、もちろんおっしゃるとおりに、正式に開いてきめるというのが常道であります。ただ、しかし緊急なときにおきましては、あらかじめ了承を得ておったことにつきましては、ただいま申し上げたような方式でやるということも、また一つ方法であり、私は法律には違反していない、こういうふうに考えております。しかし、できるならばやはり公安委員会を開いて、やはり正式に決定をするということが望ましいことであるというふうに考えます。
  43. 加瀬完

    加瀬完君 このデモというものを重大犯罪に準ずるものとして考えるような誤認があるのじゃないですかね。これはあとで問題として伺いたいと思いますけれども公安委員会というのは、やむを得ない場合は事後に承認を受けるという制度も法律的にあるわけですから、持ち回りで判こをとって、押すほうも押すほうですよ。判こをとったかどうか知らぬけれども、それで個人が判こを押したり承認したから公安委員会が成立したと思っている公安委員は無資格者だ、不適格者だ、そんなばかなことをやる公安委員がいるとしたら——しかしまあその問題は直接の問題ではございませんけれども、いずれにしても、一月の二十一日の定例会議できめて依頼をしたというわけでございますが、一体どういう内容ですか、その依頼は。依頼状なり依頼の文書というのは、どういう内容ですか。
  44. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは手元にその写しを持っておりませんけれども、近く横須賀にアメリカの原子力潜水艦入港するという情報がある。——これは情報と申しますのは、その当時は不確定でございました。ついては警備力に不足を来たすので、貴県においては何名の警察官動員装備で御派遣願いたい、追ってその具体的な日時あるいは到着してもらう場所などは後刻、これは確定したときにまたあらためてお願いすると、こういう趣旨のものであったと存じております。
  45. 加瀬完

    加瀬完君 それは警察庁連絡があって、警察庁を通していったものでしょう。
  46. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 警察庁にはそういうことがあらかじめ話がございましたが、その要請文は、直接県から都県にいったものでございます。
  47. 加瀬完

    加瀬完君 すると、各県の公安委員会は、それに対してどういう反応を示したのでしょうか。
  48. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私ども承知しておりますところでは、それは神奈川県のほうでお困りであろう、それでは要請に従って警察官を出して応援をしてあげなさいと、こういうことで各公安委員会とも異議なく了承されたようでございます。
  49. 加瀬完

    加瀬完君 それから、前に返りますが、千葉は五月の二十五日の定例公安委員会か、臨時の公安委員会か知りませんが、ここできめたというけれども、それじゃほかのですね、静岡、茨城、栃木、埼玉、群馬、新潟、山梨あるいは警視庁、東京都の公安委員会はいつきめましたか、応援出動を。
  50. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま手元にその資料を持っておりませんので、後刻調査をして、しかるべき機会にお答えをいたしたいと思います。
  51. 加瀬完

    加瀬完君 正式に公安委員会にかけないで出動したところはございませんか。
  52. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 千葉県におきまして、五月の二十五日に定例公安委員会了承を得ておりますが、それと同様手続であったと承知しております。
  53. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃ絶対に公安委員会の、正式のですよ、正式の公安委員会にかけないで横須賀出動したところはございませんね。
  54. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) そういうところはございません。
  55. 加瀬完

    加瀬完君 ありませんか。それでは、いま関係の各県はですね、いつどういう提案によりまして可決をしていますか。
  56. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) ただいま、先ほど申し上げたように、いつ何日ということの報告がきておりませんので、私どもその問題につきましては、資料をもって提出をさせていただきたいと、こう思います。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 それではね、まあ五千七百名の警察官出動したわけでございますけれども警備の対象になる人員は何名と認定したわけですか、想定したわけですか。
  58. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは先ほど申し上げましたように、あらかじめ原潜寄港反対ということを表明しておられる団体の方々は、それぞれ計画を持っておられまして、若干途中で変更があったようでございますが、入港の日には何千名、あるいは第一日の日には何万名と、こういうような計画を持っておられました。現実に阻止勢力側で動員いたしました数は、私、手元に持っておりますので、必要がございましたならば、この席で報告いたしたいと思います。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 結局デモ隊が何名、しかも、警察力をもって鎮圧をしなければならない——ことばは悪いですけれども、対象人員は何名、こういう想定があって、三千名とか五千名とかという出動人員検討をされるわけでしょう。少なくとも、そういう打ち合わせがきましたならば、それは多過ぎるとか、それは少な過ぎるとか、そういう助言、指導というのが警察庁に当然あってしかるべきですよね。一体どのくらいを想定したですか。
  60. 後藤信義

    説明員後藤信義君) だんだんに話が煮詰まりまして、最大の場合には十万名を横須賀動員するという話がございました。しかし、ただいま先生のお話のように、デモそのものが別に全部警察の取り締まりの対象になるわけではございません。ただ、しかしながら、非常に多くの集団が一定の場所に集まるということは、やはり相当にその危険性と申しますか、勢いのおもむくところ、秩序を守らない、秩序をじゅうりんするというようなことは、これは従来の経験に徴してもございますので、これに対しましては相当なかまえを必要とするわけでございます。そのほか、直接警察の取り締まりの対象になるであろうところの集団は、これは学生の一部でございますけれども、従来からの学生動員の規模をいろいろ検討いたしました結果、東京に非常に近いという地理的な環境もございますし、千五百ないし千五百ないし二千名程度の学生横須賀動員されるであろう、あるいは学生以外の青年の一部の集団でございますが、これらは五百ないし七百名程度を動員されるであろう、こういうふうに想定したわけでございます。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 この事案について、逮捕者数及び主たる容疑または逮捕理由はどんなことですか。
  62. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 逮捕されました総数は三十四名でございます。その罪種別に申し上げまと、公安条例と道路交通法の違反容疑が十四名、刑事特別法違反容疑が十一名、公務執行妨害容疑が八名、公務執行妨害と傷害容疑が一名、以上でございます。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 定時制高校の三年生が公務執行妨害現行犯で逮捕され、まもなく釈放されたと、こう新聞報道しておりますが、この事案はどんな内容ですか。
  64. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは五月二十九日の夜の、通告のあった日の夜のデモの際に、デモの一部が、公安条例によって許可をいたします場合の許可の条件に違反しまして、ジグザグ行進をやった、その場合に、これを規制しようとした部隊の警察官に対しまして暴行を加えたという容疑でございました。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 で、まもなく釈放したのは、その容疑がなくなったわけですか。
  66. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 容疑はありましたけれども、未成年のことではあり、その容疑事実について十分な証拠がそろったと、こういうことで、これ以上身柄の拘束を必要としないという判断に基づいたものでございます。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 各新聞は、「高校生がデモの巻添え」「フロの途中、大けが」という、氏名を載せて、いま申し上げたような報道をいたしておりますね。いまの公務執行妨害の高校生とはこれは違うのですね。
  68. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私たいへん失礼を申し上げました。それはいま先生御指摘の点は、惣田という名前の——これは名前を出していいかどうかわかりませんが、新聞にも出たわけでありますが、これは五月の三十日の夜、デモ隊が解散をいたしました。その際に、これは学生の一部の集団でございましたが、横須賀中央駅、これは京浜線横須賀中央駅でございますが、その付近で投石等がありまして、その際に混乱があったわけでございますが、その中に、巻き添えを食ってけがをしたという、その点でございます。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 惣田豊君は「突倒されて下敷きになったうえ、けられたり頭をなぐられたりして倒れた。あまりのひどさに通行人がタクシーに乗せ、横須賀共済病院に運んだという。」、こう朝日新聞報道しておりますが、このとおりですか。
  70. 後藤信義

    説明員後藤信義君) その点はただいま十分に調査をするようにというので、特に念を入れて調査をいたしておるのでございますが、ただいままで私どものほうに参りました報告によりますと、この少年は九時ちょっと過ぎごろに横須賀中央駅付近におったようでございますが、ただいま入院中でございます。あと一、二日で退院できるそうでございますが、その話によりますと、自分はふろの帰りに友だちと見ておった。そうしたらいきなり巻き込まれて、気がついたら病院に入っておったという、こういう状況だそうでございますが、なお、その扱いました看護婦さんの話によりますと、当日は若干そのほかにも負傷者がございましたので、デモのほうですかと、こういうことを質問したら、デモのほうですと、こういうことであって処置をしておったと、こういう話でございます。  これは一体デモに参加したという意味であるのか、あるいはデモ関係けが人であるという意味であるのか、その辺がちょっとつまびらかでないのでございますが、いずれにしましても、警察官学生側とのもみ合い、あるいは警備実施の混乱、それに巻き添えを食ってけがをしたことは間違いがございませんので、私ども、こういうことが生じましたことは非常に遺憾に存じておる次第でございます。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 同じ報道に加えて「神奈川現地警備本部は豊君をデモ隊の一人とみていたが、三十一日になって巻添えとわかったといっている。」と、こう述べておりますが、このとおりじゃないですか。あなたの話だとまだ疑問が残っておるようだけれども、どうなのか。
  72. 後藤信義

    説明員後藤信義君) その点はいま先生お読みになったようなことも、あるいはそういう話があったのかもしれませんが、私ども報告を受けておりますのでは、なおさらにもう少し調べてみる必要がある、どういう状況であったか、もう少し明らかにしたい、こういうような状況であるようでございます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 これは先ほども述べましたけれども、見ている人たちがたくさんおるわけですから、調べなくても、この報道が間違いのないということが明らかだと思います。そういう状況でございますので、私どもの党としては幾つかの抗議内容現地警察に対しまして申し入れをしておるわけです。その中で「抵抗できなくなった学年を警官が踏んだりけったりして、装甲車にたたきつけた」と、こういうことを問題にしておるわけですが、こういう事実は、先ほどの話の続きにたりますが、ございませんか。
  74. 後藤信義

    説明員後藤信義君) お話のような抗議と申しますか、お話がございました。私どものほうでもその点は調査をいたしましたが、そういう事実はないという報告に接しております。装甲車にたたきつけるというようなことは、これは打ちどころが悪いと死んでしまう場合がございますし、大ぜい人の見ているところの警備実施でございますので、どうもそういうことはないのじゃないかというふうに私ども想像をいたしておったわけでございます。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 各新聞が踏んだりけったりということはみんな報道している。目撃者もたくさんありますよ。この点は十分調査をなさってくれるのですね。
  76. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 冒頭に局長から申し上げましたように、今回の警備方針一つの中に、けが人を出さないということが一項目入っておりまして、これは必要以上に警察の力を行使しないという事柄も含まれておるのでございまして、そうした事態になることのないようにということは十分に注意しておったわけでございますが、先生おっしゃいましたように、いろいろ証人もあるとか、あるいは各新聞が書いているというようなことになりますと、これはさらにその実情がどうであったか、行き過ぎはなかったかどうかということについて調査をする必要がございますので、これはちょうど一応警備実施も終わったのでございますので、十分にその点は念を入れて調査をいたしたいと考えます。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 この警備は前半と後半でだいぶ違っているのですよ。これはみな前半に起こったのです、この問題は。後半は、だいぶ私が申し上げたような事例から見ますと、警察の取り扱いというのが変わってまいりました。しかし天下の新聞でですよ、学生が抵抗すればけ倒し、振り回し、引き倒す、こういった無策ぶりが目立ったと言われているのですから、警察が無策だと言われて、これに対してそうでないという、これは警察としてもはっきりとした論拠を示すべきです。  それじゃ無策であるかどうかという点について質問を進めたいと思いますが、抵抗できなくなった者についての扱い方というものを、事前にどう指示しておりましたか。
  78. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 抵抗できなくなった者についてどうというような、そういうことではなくて、けが人をまず出さない、必要以上に力を行使しないということは、繰り返し繰り返しこれは各所属長から徹底をし、さらに訓練の際にも言っているわけでございます。それから、さらにけが人が出た場合には、これは警察官であると、あるいはデモ行進を行なう人々であろうとを問わず、これは救急車その他の方法によって救護を加えるようにということを指示しておったわけでございます。
  79. 加瀬完

    加瀬完君 惣田豊君のように巻き添え者の出た場合の救出方法というものは、それじゃ打ち合わしておりましたか。
  80. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私ども、これは局長から申し上げましたように、まずその一般の通行人の方々、こういう方々が巻き添えを食ってけがをしたりすることのないように、十分に事前に宣伝カー等でお話をして、いわゆる広報活動と申しますか、それを徹底いたしまして、巻き添えなどの起こらぬようにということをまずやること、また不幸にしてけが人が出たような場合には、これはだれであるとを問わず、すみやかに救護をするようにと、こういうことを言っておったのでございます。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、さっき私は神奈川新聞に出ております「脱落しようとする学生に四、五人の警官素手でポカポカとなぐる。」、それから「逃げ遅れ歩道上にころげ込んだ学生の上に、警官五、六人がまたがり、くつ指揮棒でなぐる、ける、顔をおさえてころがる学生。「同じ日本人じゃないか。やめろ、ひどすぎる」と市民叫び声。」までもあったと言われるようなこの報道は、神奈川新聞だけではありませんよ。われわれ現地に参りますと、このところにおりました一般市民からも、あまりにも、この一日目ですか、三十日の夜ですか、ひどいと、しかもそれは警視庁の訓練をされた部隊よりも、各県からの応援隊の警察官がひどかったということをみな言うのです。それで警察庁としては職務執行法からいっても、あるいはその他の取り締まりといいますか、服務規律からいっても、こういうことはあり得べからざることですよね。そういうことが行なわれたという報道をされているわけですから、すでに事実関係というものは、調査が行なわれておらなければならないはずです。調査されておりますか。あったかないかということを私は言わない、こういうことが報道されたのですから、事実がどうであったかという事実調査がありましたか。
  82. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは先ほど局長からも申し上げましたように、新聞報道、これはすべての新聞を調べまして、その新聞報道の中に事実と違う点があるかどうか、そういう点を中心に調査をしろということはすでに指示してございますし、ただいま先生御指摘なさいましたような点についても調査を進めておるわけでございます。
  83. 加瀬完

    加瀬完君 そこで警察庁は、デモ隊というものを、あるいはデモというものを基本的にどう見ておられるのですか、これが私は非常に問題だと思う。あらためてひとつ御説明ください。
  84. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私どもはいわゆる大衆行動によって大衆の意思を表現するということについては、それが平穏に行なわれるということにおいては、公安条例なり所定の定めるところに従って、私どもはそれが平穏無事に終わるということを念願しておるわけでありまして、私ども初めからデモ隊を危険視するとか、あるいはこれを敵視するとか、そういうことはございません。  ただ横須賀の場合におきましては、御承知のとおり、一部学生が非常なはね上がった行動をいたしまして、その学生が前後のデモ隊を巻き込んでいこうというようなことがありまして、デモ隊と、それから学生のはね上がった行動とを分離しようということに先般の警備の重点はあったわけであります。したがいまして、私どもは、先般行なわれた横須賀のいわゆる大衆行動と、それからその中に包含されました一部学生行動とは明らかに峻別をして考えておる次第であります。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 この公安条例も問題にさるべきですが、それは一応おきまして、公安条例によって許可されたということは、少なくも公共の安寧を維持する上に直接危険を及ぼすと認められないという認定でしょうね。
  86. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) もちろんそうでございます。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、最近の取り締まりというものは、公共の安寧を維持する上に直接危険がないものに対する取り締まりですかね。
  88. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合のほかは許可しなければならないという、許可の義務制になっておるわけでございますが、許可になったものは、それでは全部、全然警察として無関心であるべきものであるということになるかというと、これは必ずしもそうではないと思います。これはやはり一応この段階におきまして、直接明白なる危険がないといたしましても、勢いのおもむくところ、これは一つ集団でございますので、群衆心理の動くところ、どのような事態が起こるかもわからぬということは一般的に言えると思います。それからまた、これが平穏に行なわれるためにいろいろな条件がつけてあるわけでございますが、この条件に従わないでデモが行なわれるというようなことは、これは間々ございますので、そういうことに対する警戒という意味警察部隊を事前に配置するというようなことは、これは許されたことであり、また警察の責務上当然のことだと考えております。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 その限界ですよね。平穏に自主的に規律が営まれる団体だという前提で許可をしてあるわけですから、あなたの言うように、その団体が突発的にどういうことを絶対にしないという保証はありませんよ。しかし、そういう心配はないだろうという前提で公安条例というものからは許可を与えてあるわけですよ。だから、そういう団体はどの程度の一体警備体制をとっておればよろしいかという、ここにも当然の限界というのがあるわけです。しかし、いまの警察庁の態度はそうじゃないですよ。必ず何かやる、だろう、だから、いかなる事態に対しても万全の措置を講じなきゃならないという体制で——この問題を起こした学生は三百五十名だ、三百五十名の学生が起こすであろうという予見をしたかどうかは知らぬ。五千七百名の警察官を事前に動員をするわけだ。しかも半年も前に打ち合わせをした。それは、それほどの危険があるなら、公安条例から言えば許可しなければいいんだよ。そんな危険が予知されるようなデモの団体は許可しなければいいんだよ。許可するならば、自主性にまかして、もっと取り締まりというものは遠くのほうから保護をするという体制をとればいいわけだ。ここにぼくらも陳情なんか受けますよ。すわり込みをしようという学生よりも、すわり込みを阻止しようという警官のほうが数が多いじゃありませんか。あれは形の上から見れば、公安条例で許可を受けた、安寧秩序には何らそれらに危険を及ぼすものではないという認定のものに対する一体警察の妥当なやり方と言えますか。
  90. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 先般の横須賀の場合の具体的な例を引いて御説明をしたいのですが、最高たとえば一万三千なり一万五千のいわゆる大衆団体、これはいわゆる平穏と見て差しつかえないものでございますが、この大衆団体が集会及び集団示威運動をやる、そこで、私どもは、その中に学生が千二百ないし千五百入っておるわけであります。私どもは事前の問題として、現地において、いわゆる主催者側神奈川県警において十分打ち合わせをいたしまして、自主的な統制をしていただきたい。ただし学生については、特に自主的な統制のもとで、これを統制をとってもらいたい。こういう申し入れをいたしまして、現地実行委員会においても、できるだけの統制をする、またできるだけの自主統制をするということになっておったわけであります。そこで、いま申し上げたように、自主統制のきく団体におきましては、私ども平素から交通整理程度の警察官でよろしいというふうに考えておりますし、現に東京等においてもそういう例は多々見受けられるわけであります。ただしかし、その中に千数百の学生が入って、それが混乱を生じた場合においては、単にその学生の混乱だけでなくて、それに参加しておりますところの大衆行動全体に影響を及ぼすという意味において、私どもは五千数百人の警察官を配置をしておったということでございます。  もう一つ、千何百人に対して五千何百人と、そういう数字的な比較をされるようでありますが、私どもは、やはりたくさんの警察官でなるべく事故のないということを念願をいたし、ともすれば、警察官が少ない場合においては、従来の例にかんがみますと、不祥の例が多かったし、あるいはトラブルが多いということがわれわれのいわゆる教訓でございますので、やはりある程度の警察力を持って、余裕のある警備をやるということが私どもの念願でございまして、決して一万三千だから五千何百というのじゃなくて、その中に包含された学生というものを考え、全体の大衆行動に対する警備という意味警察官動員したわけでありまして、私どもは決して多い数ではないと、こういうふうに考えております。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、それでは次の点を伺いますが、警棒等の使用は、どのように注意されておりましたか。
  92. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは警棒の使用の規定がございますので、この規程に従って適正に使うことになっておりますが、今回は警棒の使用は、これは生命に危険があるといったような場合を除いては、これはもう大隊長、中隊長の命令を待って初めてこれを使うということで、警棒は携行はいたさせましたけれども、その使い方については、個人の判断一般的に使うということは厳重にいましめてあったのであります。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 昭和二十三年ごろの前の警察法の制定当時のデモに対する現制のしかたと、三十七年以後の規制のしかたというのは、法令上だいぶ違ってきておりますね。これはお認めになりますか。
  94. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 警棒の使い方につきましては、規程の改正がございましたので、その使用の根拠規定が違っておりますので、それに応じて若干の違いは生じたかと思います。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 この警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範というのがございますね。これの「凶悪な罪」というものの内容に、用語の定義ですが、第二条の三項(4)に、「団体もしくは多衆の威力を示し、凶器を示し、または格闘に及ぶ程度の著しい暴行によって行なわれる公務執行妨害の罪」というのがありますけれども、正当な手続によって認められたデモ行為におきましても、多衆の威力を示して、公務執行妨害をするものという認定が成り立ちますか。
  96. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは公務執行妨害は、実際に公務員がその職務を執行するにあたり暴行、脅迫を加えたものでございますから、したがいまして、暴行、脅迫を加えないという段階において、公務執行妨害ということは成立するものではございません。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 ですから、正当な手続によって認められたデモ行為におきましては、右の規定が該当をする場合、すなわち多衆の威力を示して、公務執行妨害をするものだという想定は含まれてはおらないわけですね。
  98. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ちょっと御質問の趣旨がつかみかねるのでございますけれどもデモそのものがこの規定に該当するというふうに私ども認定してかかっておるわけではございません。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 すると、「団体もしくは多衆の威力を示し、凶器を示し、または格闘に及ぶ程度の著しい暴行によって行なわれる公務執行妨害の罪」、こういうものは一応凶悪な罪としておるわけですね。で、やはりデモ隊などはこの対象になるという御認定ですか。
  100. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 具体的にそういう事態が生じませんと、これに当てはまらないと思います。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 具体的にこういう事態が生じやすい団体行動だ、こういう御認識ですか。
  102. 後藤信義

    説明員後藤信義君) デモ全体がそうだとは思いませんけれども、先ほど局長から申し上げておりますように、一部の学生等は、これは警察部隊を突き破って基地内に侵入することを今回は考えておったようでございますから、これはこういうものにおそらく当たるかもしれぬという蓋然性は持っておると思います。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 また前の繰り返しになりますが、そう予知される団体に、公安条例からすれば、団体行動を許すということがおかしいですね、形式ばった言い方ですけれども。だから十分吟味して、デモをしてもいいという許可がおりたという場合には、いま課長さんのおっしゃるような想定はどう考えても出てこないという団体でなければならないわけですね。しかし、いまの警備体制というのはそうでないでしょう。何か起こるかもしれぬ。公安条例からすれば許可すべからざるような内容が起こることを予知しながらも、公安条例で許可しているというのは、これは矛盾じゃないですか。
  104. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはどうも私から御答弁申し上げるのはいかがかと思いますが、前段のほうを申し上げますと、これは、今回の問題につきましては、一部の学生は非常にはね上がった行動をしておると、最近見ておりますと。それで横須賀原潜寄港阻止闘争の場合に学生が出るのはどうなさるのかということを、主催者側の責任者と十分に県警の責任者が打ち合わせたのでございますが、これは趣旨に賛成をする市民としての参加を認めるのであって、自分たちの統制をきかなくなったその瞬間においては、これはわれわれの集団と思わないでくれ、こういうようなお話があったんでございますので、私どものほうといたしましては、できるだけ学生は排除する、参加させないというふうにやっていただけば一番よろしかったのでありますけれども、そういうことで学生集団もこれに参加せしめるというふうに主催者側のほうでおっしゃったのでございますので、やはりこれに対しまして、学生集団を含めておるから不許可にするというわけにはまいらなかったと存ずるのでございます。  それからまた、そういう集団があり、あるいはその何らかの危険性をはらんでおるような、そういう集団はすべて禁止すればよろしいかという問題でございます。これはやはり、先ほど局長からお話ございましたように、デモはやはりこれは一種の表現の自由に関連をする国民の権利につながるものと考えております。したがいまして、できるだけこれはやっていただくようにするのが警察のたてまえであろうと存ずるのでございます。したがいまして、よって生じまするいろいろな害悪は警察の力をもってできるだけこれを除くように努力をいたしまして、しかも、集団行動をやられたいという希望をそのとおりやっていただく、かなえていただく、その希望を達成していただくというのが筋ではなかろうかと考えておるのでございます。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 「団体もしくは多衆の威力を示し」ということを凶悪なる犯罪の内容に入れてあるわけですけれども、この内容はどういうことなんです。
  106. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはおそらく、暴力行為等処罰ニ関スル法律、第一条の規定と平仄を合わしたようなふうに私ども承知しておるのでございますが、学生集団などがスクラムを組んで警察の阻止線を突破しようとかかってくる、これはそういたしますと明瞭に公務の執行妨害でございますので、つまり公務執行妨害になるのでございます。その場合は、まさしく集団で威力を維持しながらやってくるわけでございますので、これに当たると考えておるわけでございます。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 それでは確認をしたいわけでございますけれども、これにはいわゆるデモ隊というものは含まれておらないと認めてよろしゅうございますね。
  108. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 一般的にデモ隊がこの範疇に入るということは間違いだと思います。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 「格闘に及ぶ」という程度は、どういう要件ですか。
  110. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは一部の学生のはね上がりの行動においてはしばしばそういう状態が見えるわけでございますが、警察官の職務執行に対してまあ暴力をふるう、これを押えようとして警察のほうでもある程度の力を行使する、さらにそれを上回った力を行使しておるというようなかっこうで、公務執行妨害をするという状況であろうと思います。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 この警棒等の使用について、必要とされる限度を越えないよう心がけるということは、いま生きておりますね。
  112. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 生きております。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 するとこの限度を越えたものは、これは処罰の対象にされますね、警察官は。
  114. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはこの規程に違反しておるという意味で処罰の対象にあるいはなる場合がございますし、さらにそれがまた違法性が強くなってまいりますと、これは警察官職務執行法の範囲を越えるということになりますれば、これはそれ相当の職権乱用その他の犯罪の成立する場合もあろうと思います。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 警視庁警察吏員警棒警じょう使用及び取扱規程というものの昭和二十七年五月二十五日のものによりますと、第四条に「不必要な使用によって、民衆を刺激することのないように留意すること。」、それから第八条には、「警棒及び警じょうを使用する場合は、つとめて頭上にあげることをさけ、頭部等を打撃することのないように心がけなければならない。」と、こういうことが書いてございますね。これはいま生きていますか、改正されましたか。
  116. 後藤信義

    説明員後藤信義君) いずれも現在の、昭和三十七年に改正されました警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範の中には書いてございません。
  117. 加瀬完

    加瀬完君 三十七年の警視庁警察官けん銃警棒等使用及び取扱細則というものの中には、「相手方に与える危害を最小限度にとどめるよう心がけること。」ということはありますけれども、その警じょうの使い方を、頭の上にあげてはいけないとか、頭を打ってはいけないとか、あるいは先ほど申し上げましたように、不必要な使用によって民衆を刺激してはいけないということが取り除かれておりますね。これは、どういうわけですか。
  118. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私承知しておりますのは、昭和二十三年の規程の中に……。
  119. 加瀬完

    加瀬完君 二十七年です。
  120. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生おっしゃいましたように、頭の上に振りあげたり、それから相手の頭部を打つことはいずれも禁止されておったのでございます。それが二十七年に至りまして、頭に振り上げるというのが除かれたのでございます。さらに三十七年におきまして、相手方の頭部を打つということを慎むということについて、この規定を除外をしたのでございますが、その理由は、これはこの警棒を使用する場合に、用具として使用する場合と、武器にかわるものとして使用する場合とございますが、武器にかわるものとして使用する場合におきましては、これは警察官といたしまして、持っております拳銃を使用することすら許される場合もございますので、そういう場合においてもなおかつ相手の頭を打ってはいけないというようなふうな制限を内部的に規律することはいかがなものかということで除かれたと私ども承知いたしております。  ただ、しかしながら、指導といたしましては、ちょうど拳銃を使用する場合におきましても、これは相手方に致命的な打撃を与えないように、その職務執行ができる範囲において、たとえば足などをめがけて撃つというようなことと同じような意味で、頭を打つということについては十分に注意するといいますか、それは厳にできるだけ避ける。どうしてもそれ以外に手がないという場合は別でございますけれども、意識的に頭部を打つというようなことのないようにすることは、十分にこれは教養いたしておるのでございます。
  121. 加瀬完

    加瀬完君 この昭和二十七年の規程から昭和三十七年の規程が変わる間において、多数の者に、警棒によって頭部に打撃を与えて処罰をされている事例が警視庁にございますね、御承知ですか。
  122. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 実は、私どもその間において何かあったのかということで調べてみたわけでございますけれども、まだ調べが十分でございませんで、先生御指摘のような点を私ども承知しておらないのでございます。
  123. 加瀬完

    加瀬完君 私が問題を取り上げまして処罰者が出ておる。そのときに私は、この警棒、警じょう等の使用条例ということでございまして、それに違反するという点を指摘したわけです。この改正によると、これは警察官は非常に使いやすくなっている。前ですと、頭部を打ってはいけないということが書いてあるんだから、非常に使いづらいというか、人権は十二分に擁護されておった。ところが、今度はそういう点が取り除かれておる。  これは人権擁護局に伺いたいのでございますが、人権擁護局といたしましては、もう一度申し上げますと、前の警棒、警じょう使用及び取扱規程というものの第八条には、「警棒及び警じょうを使用する場合は、つとめて頭上にあげることをさけ、頭部等を打撃することのないように心がけなければならない。」、こうあります。今度の三十七年の改正ではこれが取り除かれておる。人権擁護という立場において、この改正がより人権擁護的になったという御判定ができますか。
  124. 辻本隆一

    説明員(辻本隆一君) この規程の内容を具体的にまだ承知いたしておりませんので、その改正経過が人権擁護に反するか、あるいは人権擁護に向かっておるかということの判断は、この場で意見ば述べにくいと存じます。もし御指摘がございますれば、そういう点もあわせて研究してみたいとは存じますが、この場で、それが人権擁護になるかならぬかということは、いろいろの当時の情勢あるいは立法趣旨、そのほかを勘案してみなければ判断できないことだと思います。
  125. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことはないでしょう。いま二つ読んだでしょう。片っぽうは、はっきりと、頭の上に警棒を振り上げてはいけない、頭を打ってはいけない、こういう規定があったわけです。今度はそういう規定がなくなっちゃったわけです。あったほうが、これは人権擁護の立場からは、はっきりプラスであるということは明らかであります。私がこれを問題にした当時も、当時の人権擁護局長が御出席をなさいまして、こういう規定は人権擁護のための規定なんだから、これに違背をすることは、明らかにこれは人権擁護ということよりも、むしろ刑法の犯罪を構成するでしょうという御見解をお述べになられた。いまのおたくのほうの事務次官、当時の刑事局長も、これは刑事事案の対象として十分調査をいたしますとお答えになったほど、これは人権擁護の上からは有力な一つのきめ手であったわけです。それが取り去られてしまっている。警察官が警棒なんかを使用しやすくするということは、必ずしも国民の側からとってはプラスの面ばかりではないわけですよ。そういう点を、検討しなければ返事ができない。そんなあいまいなことをおっしゃられちゃ困りますよ。それじゃ、後日十二分に検討をして、またここに来てお述べをいただきます。  質問を先に進めます。警察庁としては、人権擁護ということは一体どう考えておるか。人権擁護に支障がない、こんなものを取ってしまっても。そういう御見解ですか。
  126. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 私も、当時取ったときの経緯についてはばく然と聞いたものですから、あるいは全文にわたって、私が責任のある答弁としてはあるいはいかがと思いますが、当時私ども聞いた範囲におきましては、警棒を用具として使用する場合においては、たとえば石等が飛んでくるという場合に、これをやはり頭上に掲げてこれを避けるという形態が非常に多かったわけであります。そこでいま申し上げたように、用具として、すべてどうもこれを上に上げるということが一般的規定になっておった場合においては、見る人が見た場合においては、全部何もかも頭上に上げた場合においては、警察官の警棒行使というものについて不当なものであるという意味においての誤解があってはならないということで、実はあの問題についてはずいぶん論議があって、これをはずせば、いま御指摘のような点について警察官が自由自在に使うのじゃないか、こういうふうな誤解を受けるのじゃないだろうか、したがって、その点についてははずさないほうがいいのじゃないか、こういう議論もあったわけでありますが、しかし、いま申し上げましたような点について、用具としての使用というものと、武器としての使用というものを明確に分けて、武器としての使用の場合においては、もちろん使用上の心がまえなり、あるいは使用上の問題としては、十分従来の精神を考えてやらなければならないし、当然人権擁護上そうあるべきでありますけれども、危急の場合においては、そういう場合もあり得るという意味において、われわれとしては、いろいろな御批判はあろうかと思いましたけれども踏み切ったというのが、当時の偽らざる事情であるというふうに私は聞いております。  したがって、もとより私どもは、警棒なりあるいは拳銃の使用について、人権じゅうりんであるとか、あるいは人権を擁護できないというような使い方ということは、厳に慎むべきであるというふうに考えておることは、従来と全く同様でございます。
  127. 加瀬完

    加瀬完君 その点は、私は御答弁にはうなずけませんけれども、時間もございますから先に進みます。その第四条に「不必要な使用によって、民衆を刺激することのないように留意すること。」、この民衆を刺激することのないよう留意することということは、何も警棒、警じょうの使用だけではないと思う。今度のようなデモの取り締まりなんかについても、民衆を刺激することないよう留意するということは非常に必要だと思う。それらの点について、何か御指示をいたしましたか。
  128. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) これらの点については、たとえば部隊の配置をする場合とか、あるいは部隊の出動する場合とか、デモが何ら何もないというときには、なるべく部隊を前面にあらわさないというような、部隊上の配置の問題であるとかいうような点、その他の一般的な点について、いたずらに民衆を刺激をするというようなことのないようにするということは、たとえば、いま申し上げましたような一つの具体的な点について、私どもといたしましては常時注意をしている次第でございます。
  129. 加瀬完

    加瀬完君 刑事局の公安課長さんにお伺いをしますが、先ほど申しました、警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範というものの中の第2条に、「団体もしくは多衆の威力を示し、凶器を示し、または格闘に及ぶ程度の著しい暴行によって行なわれる公務執行妨害の罪」というのがあるわけです。先ほどもちょっと尋ねたわけでございましたが、「格闘に及ぶ程度」と、こういう要因といいますか、条件というものはどういうことですか。どういうことと見ればよろしいのですか。
  130. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 法務省刑事局としてさしあたりその規範を解釈する立場にないものですから、はっきりわかりませんが、われわれの常識から考えまして、非常に多衆の暴行事犯が起こりまして、警察官と私人との一対一というような場合と違いまして、大規模のもみ合いになっておるというような状況を予想したものではないかと思います。
  131. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、逃げおくれ、歩道上にころんだ学生の上に警官が五、六人がまたがって、くつ指揮棒でなぐる、ける、こういう状態であったとすれば、これはここでいう公務執行妨害にあたる格闘とはみなされませんね。
  132. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 基本的事実がまさにそのとおりであるとすれば、警察官のその行為は少し行き過ぎであったと思われます。
  133. 加瀬完

    加瀬完君 この写真でも警棒が振り回されておるように見られますしね。かりに警棒は使用しなかったところで、警棒使用注意上の、けるとかなぐるとかということがあれば、これは問題ですよね。問題です。こういうことについて、先ほど言ったように、民衆を刺激しないように注意をなさるとおっしゃるのですけれども、東京都のように、いわゆるデモになれた警察官だけが警備に当たるわけではないわけですね。なれない人たちが来るわけです。そうするとデモの中には、その警察官に感情的ないろいろ刺激をするような場合もあり得るわけです。相当の準備訓練といいますか、準備教育というものが施されて現地に向かわせなければ、こういった伝えられるような問題が起こる可能性というものは十分あるわけです。これらについてはどういう準備がなされておったでしょうか。
  134. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 警備をする場合の警備員の心得として、たとえば東京の場合は非常になれておりますが、地方の場合はなれない。したがって、いま御指摘のように、相手方から挑発を受ける、学生から挑発を受けるという場合に、つべこべ相手方に口で返答しない、黙って警備をするというのが一つの心得であります。また、相手方が手を出してきても、できるだけ手を出さないということで、これを流していくというやり方をするということで、相手方から挑発を受けた場合においても、これをじっとこらえていくという訓練をするということで、いろいろな、いま申し上げたような一、二の警備員の心得とというものを、それぞれの警察官に示達をするということで常時やっておるようなことでございます。
  135. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、これはデモ隊であったか、デモ隊でなかったか、いま確認中だと言いますけれども新聞がふろの途中で大けがをしたと報じている惣田豊君、この少年に事実上暴行をいたしました警察官は、どこの警察官ですか、所属は。
  136. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生、いま警察官が暴行したと、こういうふうにおっしゃいましたのですが、私ども警察官が暴行したものであるのやらどうやら、その点をただいま調査しておるわけでございますが、その当夜、惣田君が巻き込まれましたその現場におりました警察の人たちは、警視庁機動隊神奈川県の機動隊を中心とします神奈川県の部隊でございます。
  137. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、さっき一番最初に私が提示しました神奈川新聞に出ております、その学生五、六人を素手でぽかぽかなぐったり、あるいは歩道にのがれていく学生を追いかけて、馬乗りになってけったりなぐったりしたと言われておりまする地域の警備の部隊はどこですか。
  138. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは先ほど局長からも申し上げましたように、学生の、私どもの用語で規制と申しておりますが、違反行為がございました場合に、それを正常に戻すというか、その行動いたしましたものは、警視庁から応援に来ました機動隊と、神奈川県の機動隊を中心といたします比較的訓練を積んだ部隊、この両方でございます。これは先生お話しのような事件があったといたしますならば、これは神奈川のそうした部隊ないしは警視庁機動隊であると存じます。
  139. 加瀬完

    加瀬完君 それではこれらの被害の実態、新聞報道の事実かいなか、あるいはこの地域の警備をしておったいまおっしゃったような部隊の所属、こういうものは、いずれ明らかになるわけでございますね。
  140. 後藤信義

    説明員後藤信義君) いまでも私ども資料を持っております。
  141. 加瀬完

    加瀬完君 資料を持っておりますと言うけれども、けがをさせたという者はだれか、けがをしたことはわかっていますからね。そういうものに対する資料はないのでしょう。
  142. 後藤信義

    説明員後藤信義君) その点につきましては、ただいま負傷者全般につきまして十分に調査をいたしておるわけでございます。
  143. 加瀬完

    加瀬完君 あなた方は、デモの中に巻き込まれて起こったんだから、必ずしも警察官がやったとは限らない。先ほどのあるいは説明にもありましたように、現地本部長の、集団集団との——集団の一方は警察側ですよ。デモ隊警察官のもみ合いの間で、何かどっちか責任不明な間においてけがが生まれたようであるというようなことを言っておりますが、それをお認めになるのですか、またそれでよろしいという御認定ですか。
  144. 後藤信義

    説明員後藤信義君) この惣田君の巻き込まれました場所は、五月三十日の九時過ぎごろの京浜線横須賀中央駅付近でございます。この場面は、一たん解散地に行きました学生デモ隊の一部が、さらに戻ってもう一ぺんアメリカの基地正門に突っ込もうじゃないかということで逆戻りをしようとしたのでございます。それに対しまして、これを阻止しようとしたのでございますから、これは警察官のほうの職務が正当であって、これに対して突っ込んでくるほうが、これは申し上げるまでもなく不当でございます。違法であり、不当でございますので、これはどちらかがもみ合ったというのではなく、結果的にもみ合いになったかもわかりませんけれども、職務の正当なる執行に対して、これは大ぜいでもって集団的に暴行を加えた事犯にほかならないと考えるわけであります。
  145. 加瀬完

    加瀬完君 かりにそうであっても、出発は、逃げていく者を引き倒して馬乗りになって、打ったりけったりということは一体許されることですか。
  146. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 惣田君が巻き込まれた事件につきまして申し上げたのでございますが、ただいま先生御指摘のような点は、これは先ほどからお話が出ておりますように行き過ぎでございます。
  147. 加瀬完

    加瀬完君 惣田君の場合だっておかしいじゃありませんか。警察官職務執行法の第四条にはですね、「避難等の措置」というものがございますね。これは「極端な雑踏等危険な事態」があります場合には、適宜警察官は指示をしてよろしいということなんです。裏を返せば、極端な雑踏や、または危険が生ずる場合は、警察官が適宜な措置をして、一般市民というものを危険から保護をしなけりゃならない義務とも、これは裏を返せば考えられるでしょう。それをふろに行こうとした、あるいはふろ帰りかの少年を、雑踏の中に巻き込んで、だれが直接けがをさしたかは知らないけれども、事実において何週間か入院をする事態を生じたわけだ。警察の責任は警職法によっても明らかでしょう。そういう無事の住民をそういう渦中に入れてはならない、雑踏や危険から保護しなければならない義務があるんです。それが怠られておるのではないかと私は指摘をしておるんです、さっきから。この点はどうです。
  148. 後藤信義

    説明員後藤信義君) おっしゃられるような点は、私ども十分に反省すべき事柄だと思います。  ただ、しかしながら、これは現場の状況から申しまして、非常な投石をされた、あるいは牛乳のびんなどが降ってきたようでございますので、そういう事態において群衆を整理する、端的に申し上げますとやじ馬の整理でございますが、そちらのほうの手抜かりがあったということは、これは十分反省をいたさなければなりませんけれども、当時の現場の状況では、はたしてそこまで要求することがどうであったか、これは問題があるように私ども考えております。
  149. 加瀬完

    加瀬完君 現地本部長が、けが人も出たが、故意にやったものではない。いずれも集団集団の問に発生したものだと。それでですね、常識的な範囲内にこのデモ警備はおさまったと思うと、こう言っているわけです。一人のけが人が出ても、これはけが人を出さないように注意をしたというなら、一番先に、常識的に言えば大過なくおさまったと言われるかもしれないけれども、上司から指示を受けた、けが人を出すなという注意にそむいてしまったことは申しわけないという反省が出てこなければ、あなた方の指示は一つも生きてこないじゃないですか。こういう本部長のような考え方では、デモやるたびにけが人が出ますよ。あるいは、民衆を刺激しないようにという注意も、十二分に考えられているとは思われませんよ。  そこで、伺いますがね、デモというものを、あるいはデモを許可するとか許可しないという公安条例というものをどうお考えになっていらっしゃいますか。昭和三十五年の七月の二十日の最高裁の判例があるわけですけれども、いわゆる集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例違反被告事件ということで、東京都のこれ御存じでしょう。
  150. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいまお示しの判例、よく存じております。私どもは、公安条例デモに適用いたします場合に、これも先ほど局長からお話がございましたように、これは表現の自由に関連をする大衆の行動でございますので、できるだけ平穏に、そしてその目的が達成できるように——目的と申しますのは、デモ目的が当初の計画どおり行なわれるようにということを考えながら、しかも公共の福祉という面からくる、公共の秩序維持という面からする必要最小限度の条件等によって、当初の計画どおりスムーズにいくことを期待すべきである、また、そのように公安条例というものを運用すべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  151. 加瀬完

    加瀬完君 もう御存じですから、つけ加える必要はございませんが、その判例の中に、判決理由の中に、「条例の運用にあたる公安委員会が権限を濫用し、公共の安寧の保持を口実にして、平穏で秩序ある集団行動まで抑圧することのないよう極力戒心すべきこともちろんである。」という一項がございますね。しかし、こういう態度は、やはり取り締まりも、積極的に取り締まるという面だけが強くなっちゃって、平穏な大衆行動は自由にやりなさい、束縛はいたしませんよという、取り締まるほうからすれば、これは無理かもしれぬけれども、こういう含みというのは少ないのじゃ、ないですか。ちょっと曲がれば、交通取締法の何条の違反でございますと、耳もとででかい声で叫ぶ、何々警察署長でございますと、そんなものはもう二、三回ごちゃごちゃやったってすぐまっすぐになる。民衆にいたずらなる刺激を与えて、一分で済むものが二分、三分に延びる。それは一分だって、違法行為をしてはいいということにはなりませんけれども、行政指導としては、もう少しじょうずなやり方があろうと思うのですよ。しかも、一月二十一日に、原潜がいつ来るかわからないときに、公安委員会できめて、各都県に依頼をする。こうなってくると、初めからもう大衆行動というものは何か違法性を内蔵したものと、こういうことになる。もしですよ、ほんとうに何かの暴動を起こそうというようなたくらみがある団体があるとして、一方でデモならデモを起こして、そこへいまのように多数の警察官を集約させておいて、警察官の手薄のところで暴動を起こすという逆な方法だって、これは考えられないわけではない。そういうときに、警備の手薄というのはどこで埋めるのです、どこで埋めるか。公安委員会というものはもっと都道府県自主性によって、出すべきものか、出すべからざるものか、きちんときめてもらって、それによって動くということでなければ、持ち回りで、紙をずっと回して、半年ばかり前に相談しといたものを、今度は行ってもらいますからよろしくお願いします、御苦労さまでございます、こういう安直に公安委員会というものを切り盛りされては、少なくとも自治警察という意味はございませんね。希薄になりますね。  で、これはまあ意見になりますから、お答えはいただきませんけれども、どうも私はこの横須賀の、このだれがどうしたということを問題にするわけではない。これはこういうけが人とか何とかというのはいつでもある。同じようなことばかりを繰り返されておっては、ほんとうの意味警備目的というのは達しないのじゃないか。デモというのは、多数の警察官が来るのだ。ことによると、デモとあまり違わないくらいの警察官によってデモが行なわれるのだということになりましたら、それは大衆の意思を自由に発表する、自由の限界というものは極限を狭くさせられますよ。こういう原因を私ども警備当局がつくってはいけないと思うのです。  で、結論を申し上げますが、他の公安委員会から警察官出動をしてもらう要請のときには、どういう手続をきちんと踏ませるのか、これを十分御検討の上、御回答いただきたい。少なくも、持ち回りで不特定な、事柄も時間も不特定なものを半年も前に打ち合わせておくというふうなことは、これはうなずけません。ですから、あなた方の御説明は、あくまでもこれは予備の話し合いだということで認識をいたします。今度のように横須賀原潜が来る、出動を求めるというときに、具体的にどういう公安委員会手続を踏ませるようにするのか、それをはっきりしていただきます。  それから、あなた方もおっしゃっているように、デモというのは初めから合法的なものなんですから、合法的なものに、その非合法というか、違法行為が当然あるという警戒体制をしかなきゃならないような原因は何か、それを除去する一体方法というのはないのかどうか。それから第三点は、調べてみるといったところで、調べなくてもけが人が出たことは事実だ。けが人を出さないようにしたと言っている、けが人が出てもいいとは言っていない。けが人を出したところで、けが人を最小限にということは政令の中に書いてある。しかしながらデモ隊たりといえども、けがをさせていいということはないわけです。けがをさせていいということはないわけです。けがをさせないで済ますようにする方法のほうが当然いいことなんですから、そういう具体的に人権擁護を云々されるような事態を引き起こさないような、警備体制というものは一体どうあるべきか。こういう点を、必ずしも近々のうちでなくてけっこうですから、一応警察庁として御態度を御研究いただきまして、こういうデモがありましても、こういう事態が再び生じないような指導の方針というものを明確にしていただきたい、これはお願いをいたします。質問を終わります。
  152. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 関連して、ちょっとお伺いいたしますが、この間のデモの際に警察官負傷したのは、何人ぐらいありますか。
  153. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 警察官負傷いたしました者は、重軽傷合わせて六十五名でございます。
  154. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 六十五名、で、重傷者はありますか、病院に入院その他。
  155. 後藤信義

    説明員後藤信義君) そのうち入院いたしました者八名でございます。
  156. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 どんな状況でそれはけがしたんですか。
  157. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはいわゆるデモの規制中にころびまして、これは押し倒されたと申しますか、そういうことで全身を、これはデモ隊の中に巻き込まれて全身に打撲傷を負ったというのがその入院者の中に一人ございます。それからまた頚椎を捻挫したというのがございます。これもデモ規制中のことでございます。そういうようなことでございまして、デモの規制中、つまりデモ、これは学生でございますが、一部の学生が違法な行為をやりました場合に、これを正しく直そうとするその段階に抵抗を受けて、そしてあるいはデモ隊の中に巻き込まれ、あるいはなぐられ、け飛ばされ、あるいは旗ざお等によってなぐられた、こういうようなことで負傷しておるわけでございます。
  158. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 それからもう一つ、このデモの許可の場合ですが、横須賀の場合、あの地形、海岸線、町通り、町の大きさ、こういう状況から見て、たとえば五万人、十万人というデモが行なわれたとするならば、これは町はどうにもならない状況になってしまうのではないかということを考えるのですが、こういう場合に、いわゆるデモの許容量といいますか、人数の制限とか、こういうものについては検討したことありませんか。
  159. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはこのデモが出発する前に集会をいたしますところはあそこの臨海公園でございますが、大体二、三万人程度で一ぱいになっております。したがいまして、それを起こします場合におきましては、集会に入らないでどんどん流れてデモに参加をする、こういうことになろうと思いますが、五万人、十万人ということになりますと、非常に長時間にわたりまして比較的通りの、交通量の多い通りが交通渋滞を来たすことは間違いがございません。これは過去におきまして五万人程度のデモが行なわれたことがございました。その状況からいたしましても、相当多大の交通渋滞を来たすことは明瞭でございます。
  160. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 その許可条件の中に、いろいろ人数だけでなく、さおを持っていく、棒を持っていくとか、そういうものは規制されているのですか、これは。
  161. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは長いものを持ったり、あるいは危険物を携帯することは条件で禁止してございます。ただ、いわゆるプラカードでありますとか、あるいは旗を持つことは、これは一人で持てる範囲のものにつきましては差しつかえがないということで、禁止はいたしておりません。
  162. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私はこの横須賀デモをずっと見て回り、現場を見ておりましたが、全学連と申しますか、学生の諸君が警察官に向かって棒でなぐりかかる、突いてきた現場も見ておりますし、警察官がこづき回されて、上に着た外被をずたずたに裂かれているのも現場を見ているわけです。特にその棒でなぐっておる現場等を見ますと、ああいう棒等については十分な規制措置をすべきであると思うのですが、どうですか。
  163. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは具体的にそういう例もあったわけでございますが、駅におりました学生集団が、旗ざおでもなく、プラカードでもないという、俗に申します六尺棒などを携帯しております者数名から、これは棒を預かったという例がございます。これらにつきまして、危険なる物件を持って入りますことは極力阻止するのがたてまえでございますが、やはり旗ざおを、旗のきれの部分をとって凶器に使うというような例があったようでございます。
  164. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 警察官がこのすわり込みをやっている学生のところに、学生諸君は立ち上がって整然たる行動に移しなさい、移しなさいということを何回もマイクをもって呼びかけたわけですが、あの呼びかけの状況を見ておりますと、私は、むしろ学生に対して刺激を与える感じを受けたわけです。非常に殺気立った気持ちでスピーカーを通じて、早く立ちなさい、公安条例違反、道路交通法違反ですと言っている。このことは逆に刺激を与える感じを私どもは受けたわけですが、今後こういう場合においてはむしろ冷静なことば、あるいは女性のことば等で、やわらかいことばで投げかけるのも私は一つ方法ではなかろうかと思うのです。なお警備中の警官に対して、学生の諸君及び群衆の中から、警察官の前に行ってポリ公帰れ、ポリ公帰れ、アメちゃんの犬だ、そうしてそう言いながらつばをひっかけているのを私の目でも見ているのです。こういうことに対しても警察官はずっとがまんしている、あれだけの許容があるわけですから、あれだけ訓練されておるのですから、私はやはりマイクを通じてやる場合には、もっと刺激を与えない方法で、あの人たちがもうほとんどすわっているならほうっておくというくらいの度量があってほしいものだと思うのです。  私は、日韓条約のデモの際にも四日間デモ隊の中に入って、現実にデモの人たちがどんな心境でやっておるかも、私自身体験をしておるのです。この間も私は長ぐつをはいて実態を全部調査してまいりましたが、警察官の諸君もよくぞがまんした。がまんしたが、さらにもっと一歩進めるならば、マイクを通じ、その他の場合でも、もっと冷静な立場で、群衆がその中に巻き込まれないような一つの態度も必要ではなかろうかと、こういうことを考えるわけですが、いかがですか、これは。
  165. 後藤信義

    説明員後藤信義君) いまおっしゃいましたように、広報車の使い方につきましては、私ども今後また十分に注意していきたいと存じます。何せ公安条例ないしは道交法違反ということで、それが後々検挙をいたしました場合に、十分にこの条件等を知った上で、そうしてなおかつ、すわり込んでおったというような状況を証拠としてこれは保存しておかなければならないという立場もございますので広報したという点もございます。しかしながら、私も現地に行っておったわけでございますが、あまりにもしつこいというような感じを受けたような場合もないではございませんので、今後十分にその点は注意をいたしたいと考えております。
  166. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 要望を申し上げます。これらの負傷された警察官のうち、私ら負傷する現場も見まして、まことに気の毒な状況の中でけがをしておる場合が多いわけです。どうか負傷者の諸君に対しましては、十分な措置をするよう警察当局に要望して終わります。
  167. 高橋幹夫

    政府委員高橋幹夫君) 先ほど御意見を伺ったり、あるいは御要望もあったわけですが、最後に一言だけちょっとお答えさせていただきます。  一つは、府県公安委員会の運営でございますが、私も最近府県に出ておらないので、警視庁におった最近の私どもの体験を申しますと、きわめて公安委員会の管理というものは厳重でございまして、よく外からいわれておりますように、警察の官僚どもが適当にやっているんではなかろうか、こういう御批判があるようですが、非常にそういうことはございませんので、私が警視庁警備部長で体験しておりました公安条例に基づく許可の問題にいたしましても、緊急に公安委員会を開いて、その重要な問題については、御意見を伺い、決定をしていただくということを私の在任中しばしばやっておりました。したがいまして、各府県におきましても、いろいろな問題について、私ども平素から開いておりますことは、そういう点についての府県公安委員会の行政、運営両面に対する管理はきわめて厳格であり、きわめて適切に行なわれておると私ども思っております。ただし、今回の問題については、私どもの手元に詳細な具体的な資料を持ってお答えできなかったことは、私どもの資料の準備が不十分でまことに申しわけないと思っておりますが、この点については後刻明らかにいたしたい、こういうように考えております。  第二のデモに対する私どもの見方というものは、先ほど来御指摘のように、私ども決してデモそのものを敵視したり、あるいは危険視しているということではございません。したがいまして、ごらんのとおり、平穏なデモに対しましては、ほとんど交通整理の警察官のみを配置して、これを流しているというのが実情でございます。したがいまして、私どもは、デモのそのときの状況によりまして具体的に判断をして、私どものいわゆる警備体制というものは、相当あらゆる角度から考えて、やはり不必要な警察力を使うというようなことはいたさないということをもって念願といたしております。また、いたずらに部隊を多く配置して、相手を威圧するということも、これも避くべきところであり、われわれとしては、そういう意味警備戦術的な研究というものについては十分考慮をして、また今後も十分研究をいたしたいと、こう考えております。  第三の負傷の問題に関連いたしましては、確かに警察官あるいは学生の中に負傷者の多かったことは、今回遺憾だというふうに私は思っております。また同時に、一般の通行人の中で数名の方がこれに巻き込まれたということについては、警備実施やり方等において私ども十分留意すべきことではあると思っておりますが、ただ私ども、こういう席上で申し上げているのと、警備現場の混乱というものは、必ずしも私は警備現場の混乱を許容するわけではございませんが、具体的な警備実施の場合、あるいは警備の混乱の場合においては、あとで考えるほどなかなかうまくいくものではない。したがいまして、私どもはそのつどそのつどの警備実施の教訓を生かしまして、そして同じあやまちを二度繰り返さないということをもって念願といたしております。したがいまして、先般行なわれましたような警備の問題については、負傷の問題というものについては、いま申し上げたような点がございますが、私ども双方の負傷者に対して、非常に心からお見舞を申し上げて、特に警察官については、私どもはできるだけの措置をとっておりますし、また、先ほど入院した惣田君につきましても、私どもの総務課長県警の総務課長が行って、事情聴取をしながら見舞をしたというようなこともやっておりますので、そういう点については、私どももできるだけのことはいたしておるというふうに考えております。  以上、いま私が思いつくままに加瀬委員の御要望なり御質問にお答えしたわけでありますが、後刻明らかにいたすべき点につきましては、私どもできるだけ調査をいたしまして早急に明らかにいたしたい。また、いろいろな要望事項につきましては、私ども詳細検討して、今後の警備の運営においてそういう面を生かしていきたい、こういうふうに考えております。たいへん私の最後の意見で申しわけございませんが、それだけ申し上げておきたい、こう思います。
  168. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 本件に関する本日の調査は、この程度にいたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  169. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 休憩前に引き続きまして委員会を開会いたします。  首都圏及び近畿圏近郊整備地帯等整備のための国の財政上の特別措置に関する法律案議題といたします。本日提出の資料の説明を願います。及川指導課長
  170. 及川謙三

    説明員(及川謙三君) それでは、自治省から提出をいたしました資料につきまして御説明申し上げます。  最初の資料目次のわら半紙の縦刷りのものでございますが、御要求のございました資料は六つございまして、第一には、首都圏近郊整備地帯整備事業等同種の公共事業について、関係地方公共団体の地方負担額と、関係地方団体の通常負担額の比較をしたものをつくれということでございます。第二の資料は、首都圏近畿圏と新産・工特地区にかかる現行の財政上の特別措置との対比表をつくるということでございます。第三は、全国都道府県の人口一人当たりの年間所得額の全体の比較表をつくる。第四は、太平洋ベルト地帯と称される地域と、その他地域の公共投資の実績額の比較表。第五は、三重県の四日市市の公害対策に対する市費の負担額。第六は、首都圏内の各都県の農林漁業に対する振興計画の事業費ということでございます。  資料第一から順次簡単に御説明申し上げますと、第一ページに、まず首都圏につきまして、私ども各県から徴しました資料に基づいて最近のものをここに御提出申し上げたのでございますが、都県分につきましては四十年度、市町村分につきましては、四十年度の決算が明確でございませんために、三十九年度の決算に基づいてつくってございます。都県について見ますと、近郊整備地帯のちょうどまん中辺の数字でございますが、事業の基本額が四十八億三千二百万円、これに対する都県の負担額が十三億七千三百万円、それから(B)の欄の通常負担額、これが三億八千二百万円でございますが、通常負担額と申しますのは、各事業種類ごとに、道路とか河川とか港湾とか、そういう事業種類ごとに地方財政計画上各都県に対して通常一般財源措置がされておる率を、当該都県の一般財源総額にかけ合わした数字でございます。おおむね一〇%程度が、この関係事業に伴う地方負担の通常地方財政計画上確保されている額として考えております。技術的な分野でございますが、各事業種目ごとにそれぞれこまかい率をかけ合わして出すようになっております。それらを積算をしましたものが三億八千二百万になっております。したがいまして、地方負担額の(A)と(B)との対比であります(A)/(B)の欄を見ていただきますと、計で三・五九、約三・六倍、過去の四十年度の実績では、首都圏整備事業に伴いまする事業の都県の地方負担額が、通常確保されておる通常負担額に対して三・六倍に相当しておるという表でございます。同様、都市開発区域の計では二十八億八千万、地方負担額が八億、通常負担額が二億二千万、倍率は三・六倍になっております。総合計で、都県では七十七億、地方負担額が二十一億。二十一億に対して通常負担額が六億でございますので、三・六倍の集中的な投資が四十年度には行なわれておったということでございます。  市町村部につきましては、三十九年度で総合計で約七十七億に対しまして、地方負担額が四十億。通常財政規模——この市町村部につきましては、通常財政規模は一般財源の総額でございます。これに対する一〇%をかけ合わせた額が標準負担額と考えておりますので、二十五億五千九百万が、地方財政措置上、通常措置されておる金額でございます。でございますから、市町村の総合計では、地方負担四十億に対して、通常措置されておる地方の財源は二十五億五千九百万、倍率のC/Eの欄では一・五七倍ということに相なっております。  首都圏整備それから近畿圏整備本部のほうから資料が提出されておりますが、それらの数字と若干の食い違いがございます。その食い違いの理由は、この表で掲げております事業基本額は、表題に(同種公共事業)と書いてございますように、この法律の対象になる事業のみの積算でございまして、単独事業あるいは補助のつかない公営企業あるいは土地造成のような準公営企業等の計画に伴う事業であっても対象にならない事業は除外して計算をしてございます。さらに、都県部につきましては、通常負担額に満たない事業の種類、たとえば東京の町田地区について、道路事業等がその道路についての通常負担額を越えていない場合には、それをゼロとして、加算をしておりませんので、超過した部分だけの計算を都県については行なっております。これらの点が首都圏整備委員会並びに近畿圏本部から出ております資料との食い違いのおもなる理由でございます。  二ページでは、近畿圏につきまして同様の趣旨に立ちまして計算をしております。近畿圏府県部は、この表の最下欄に掲げてありますように、事業基本額は二百八十八億、地方負担額は八十八億九千万、通常負担額が二十八億で、倍率は三・一四倍。市町村部は三百二十三億、これに対する地方負担額が百六十九億、通常財政規模に十分の一をかけましたものが八十九億で倍率は一・八九倍、約二倍になっておるのでございます。近畿圏につきましては、四十一年度の建設計画が現在県において計画策定中でございますので、それらの大体の見通しに立ちました資料をもとにしまして四十一年度の数字を掲げてございます。  次の三ページには、首都圏近畿圏及び新産・工特地区にかかる財政上の特別措置の比較をしてございます。  まず、財政措置の大要の対比をしてございますが、対象事業では、前回の委員会財政局長から御説明申し上げましたように、一部、新産・工特の場合に対象になっております事業が今回の場合に対象になっていないものがございます。三ページの表では空港、漁港等が近郊整備区域の対象になっておりませんし、海岸、砂防、森林保安、地すべりというようなものが近郊整備区域、都市開発区域ともに対象になっておらないわけでございます。ダム関係その他につきましても、それぞれの卒業の性格に応じて近郊整備区域と都市開発区域の対象に対する事業の範囲を異にしておるのでございます。  それから四ページでは、県分に対する措置としまして地方債の充当率を引き上げるという措置が講じられておりますが、これは全く新産・工特の場合と同じでございます。  それから利子補給につきましては、四ページの最後に書いてございますが、新産・工特の場合には、四十年度から五十年度までに発行した毎年度の地方債の償還額について五十五年度までの全期間について利子補給がなされますが、首都圏の場合には、それぞれ許可年度以降七カ年で打ち切りということになっております。この点が相違点の一点でございます。  それから五ページに掲げてございますように、新産・工特の場合には、財政力の違いというものを考慮に入れないで、いかなる関係県でも三分五厘をこえて年利八分に至るまで全部利子補給してございますが、首都圏近畿圏の場合には、まず交付税の不交付団体、四十年度で例をとりますと東京都、大阪府、神奈川県でございますが、この三団体には利子補給はしない。先ほどの充当率の引き上げはいたしますが、利子補給はしない。さらに関係府県財政力に応じまして——四十年度の数字で申しますと、山梨県が最低の財政力指数を持っておる県でございますが、山梨県には新産・工特並みのまるまる利子補給をいたし、財政力が一に近づくに従いまして傾斜的に割り落としをかけるという方法を採用しておる点が相違点の第二点でございます。  それから、市町村に対する対象事業は一覧で掲げてございますように、水泳プールとそれから給食設備が首都圏の場合には対象としておりません。中央卸売市場、それから中学校産業教育振興施設というものが対象になっておりませんが、それ以外については同様でございます。  それから補給率の引き上げ率でございますが、六ページに書いてあります。算式のように違っております。これは後ほど設例をして説明を加えてございますので、その資料に基づいて御説明さしていただきたいと思います。  それから七ページの措置年度は、新産・工特の場合と同様でございます。引き上げの限度も最高国庫負担割合は百分の八十を限度とするという点は同じでございます。  八ページの図表は、先ほど申し上げました利子補給の財政力補正による割り落としの関係を図示したものでございます。ごらんいただきますように、山梨県ほか十六県ほど関係県がございますが、東京、大阪、神奈川は交付税の不交付団体でございますので利子補給なし、山梨県が〇・二六の財政力指数でございますので、これにつきましては、政府債につきましては六分五厘から三分五厘の差三分を利子補給の対象にいたし、公募債分につきましては八分と三分五厘の差を全額利子補給の対象にいたします。それから千葉県は〇・五六程度の財政力指数を持っておりますが、この線を延ばしていただきまして、斜線のところまでで打ち切ると、この斜線を引きました線と三分五厘のラインの間が新産・工特の場合には利子補給の対象になっておりますけれども、今回の場合には自己負担にし、その斜線の上の部分のみに補給をするということで財政力の割り落としを財政力指数に応じてかけておる図でございます。  それから九ページでは、市町村の国庫補助率の引き上げ率を財政力による格差をつけております関係を新産・工特の場合と対比して掲げてございます。実は、国庫補助率の引き上げの方法には、事業費に伴います地方負担の量と、もう一つその団体の財政力指数と両面から傾斜をつけてございますが、この場合には、事業費によるかさ上げは、一応事業費の場合には、標準負担額の二倍をこえますと国庫負担率の引き上げを満度——二五%と考えておりますが、その場合を前提といたしまして、財政力による格差の点だけを取り上げて図示をいたしております。まず、〇・七二のポイントがございますが、〇・七二は、現在、全国市町村の財政力の平均指数でございます。これを一つの点に求めまして、そこに至るまでのその間にある市町村につきましては、一・二五、新産・工特の場合にはちょうど四分の一だけカットしております。新産・工特のラインが上のほうのラインでございますが、あと〇・七二をこえる団体につきましては傾斜をつけない。幾ら財政力が高くなりましても同様一・一八七のラインで引き上げるということにいたしておりますので、首都圏近畿圏の場合には一・四七の線までその傾斜を下げてきまして、財政力指数が一・四七までの間にある団体は、それぞれ割り落としをかけていく。一・四七をこえましたら、一・二五の引き上げ率の三分の一の一・〇七五の最低保障をしようと、そこまで下げていこうというふうな割り落としの率をつくっております。この関係を算式で示しましたものが「B=0.7+0.3×b(負数はそのまま)と、これはマイナスになる場合が〇・七がさらに減っていくわけでございますが、その場合、Bが限りなく少なくなりましても、〇・三よりも少なくなった場合には〇・三とする。先ほど三分の一最低保障と申しましたが、三割最低保障ということにいたしておるのでございます。
  171. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと、いまの正誤表がついていますね、いまの新産・工特のBイコール云々というやつ。
  172. 及川謙三

    説明員(及川謙三君) たいへんすみませんでした。九ページのちょうどまん中辺でございますが、ちょうどまん中辺に、「(新産・工特)B=0.7+0.3×b」となっておりますが、これは誤りでございまして、0.7+0.25×bでございます。訂正させていただきます。  それから、たいへん恐縮でございますが、その上の行に、「(新産・工特)引上率=1+(0.25×a)×(0.7+0.25×a)」は「0.75+0.25×b」でございます。訂正させていただきます。  次に一〇ページでございますが、一〇ページ、一一ページ、一二ページに、都府県の場合と市町村の場合の特別措置の設例を設けて御説明をいたしております。  まず一〇ページの都府県に対する特別措置の場合でございますが、この末尾の図表で説明させていただきますが、総事業費が——このワク全体の額が五億と設例した場合でございます。総事業費五億の場合に、国庫補助金が七千五百万円、二億二千五百万円の合計三億国庫補助金があります場合に、それに伴います地方負担は五千万プラス一億五千万の三億でございます。五億の総事業費、で、国庫補助金が三億、地方負担が二億でございまして、特別措置がない場合にはそのままでいくわけでございますが、これに対する措置としまして、通常の負担分が五千万円、これは計算上当該府県一般標準財政規模の一定率で積算をしました五千万部分に対しては地方債が一千五百万円充て、一般財源が三千五百万円充てる。超過負担分の一億五千万につきましては、地方債の通常充当率分を四千六百万円充てまして、地方債の引き上げ率分、これは充当率の引き上げでございますが、五千四百万円地方債を許可し、一般財源は五千万で済ませる結果、地方債措置としましては特別に措置されますのは五千四百万円でございますが、超過負担分の一億五千万円の財源として認めた四千六百万円部分ば利子補給の対象といたします。利子補給対象としますのは、結果ちょうど一億でございます。この措置がなかりせば地方債の充当が一千五百万円と四千六百万円、つまり六千百万円の地方債充当が行なわれて、残余は一般財源でまかなう一億三千九百万円になるわけでございますが、それも当該年度の一般財源を軽減しますために、まず地方債を引き上げて、引き上げた地方債と超過負担分の中の通常充当率で計算いたしました地方債部分を合わせて利子補給をいたす、利子補給につきましては、先ほどのように財政力による傾斜で割り落としをかけるという方式になっております。かりにその財政力指数が〇・五〇とした場合の傾斜は、一一ページにございますが、一年間の通常年の利子補給は三百二十九万円でございますが、これに対しまして割り戻しをかけまして二百二十二万二千円、この利子補給が、発行年度以降七年間行なわれるということになるわけでございます。昭和五十年度までは毎年度の分につきましてそれぞれ七年間行なわれて、最終年度は五十五年度で打ち切るということになっておるのでございます。  一一ページ以降には、「市町村に対する特別措置の設例」を設けてございますが、設例は、A市の対象事業の事業費総額三億、同上の国費が二億、市費負担が一億、標準財政規模が五億、標準負担額が一割でございますから五千万円、財政力指数が〇・九〇、この場合には三千六百万円かさ上げがなされます。その関係を一二ページの図に示してございます。国庫補助金の通常率によります分が二億でございますが、かさ上げされた国庫補助部分が三千六百万円、地方負担が六千四百万円、この措置なかりせば一億の地方負担部分を、三千六百万円だけ軽減しようとしておるわけでございます。  財政力による傾斜は、その次の3に掲げております。算式によりまして、財政力の度合いに応じて、財政力の高いところは引き上げ率を割り戻すという方式によっておるのでございます。  次に、資料3についてでございますが、これは全国都道府県の人口一人当たりの年間所得額につきまして、昭和三十五年と昭和三十八年の一人当たり額を掲げまして、その倍率を一応各県別に見てみました。それから次の欄には、昭和三十八年の全国平均を一〇〇といたしました各県の指数を出してございます。  それから一五ページでは、太平洋ベルト地帯とその他の地域における公共投資の実績との比較をいたしております。太平洋ベルト地帯には、一五ページの注に書いております、通常いわれておりますこのような各県の区域を掲げたのでございますが、これで見ますると、公共投資の総額が三十九年度で一兆五千百七十一億二千七百万円、その他の地域が七千五百十億でございまして、全国二兆二千六百八十一億三千万円を一〇〇としました場合には、太平洋ベルト地帯が六六・九%、その他の地域が三三・一%、このような対比になっております。参考までに、下欄に附表としまして、太平洋ベルト地帯とその他の地域の面積、人口の対比をしておりますが、面積におきましては三五対六五、人口におきましては六七対三三という比率に相なっております。  次に資料の五番目でございますが、「四日市市の公害対策費の市費負担額」につきましては、三十九年度の決算と四十年度の決算見込みについて見ますると、専務費あるいは設備費等含めまして、三十九年度では一千二百二十万一千円、四十年度では二千八百三十八万三千円の支出をしているのが実態でございます。  次に一七ページの資料の六番目でございますが、農林漁業関係首都圏内における計画額、将来計画額はいかほどか、その関係資料という御要求でございましたが、各省に照会をいたしましたが、なかなかあるものとないものがございまして、農林漁業総体についてのまとまったものがございませんでしたので、関係県につきましてさっそく照会をいたしまして、若干計画期間等まちまちでございましたが、はたして御要求に沿える資料かどうか疑問がございますが、集めました状況そのままを注を付しながら提出をいたしたのでございます。この事業の種類によりましては、関係省が自治省等を加えたものもございまするし、ものによっては各県の単独の県自体の計画のものもございまして、総事業費、農業関係では一千三百七十一億、林業関係では百八十五億、漁業で八十三億、合計で一千六百四十億程度の事業費が計画され、これに伴ないます地方負担が八百五十六億と集計されております。  以下、各都県ごとに計画の期間等が区々でございますので、御参考までに各都県ごとのそのままの数字を掲げてございます。  以上でございます。
  173. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 鮎川首都圏事務局長
  174. 鮎川幸雄

    政府委員(鮎川幸雄君) 首都圏整備委員会から提出いたしました資料について御説明申し上げます。首都圏整備委員会からは五項目の資料を提出いたしております。  第一は、「首都圏基本計画」、第二は、「首都圏近郊整備地帯及び都市開発区域整備計画事業進捗状況並に地元負担状況」、第三は、「首都圏計画図」、第四は、「首都圏近郊緑地保全法案関係資料」、第五は、「首都圏における水質の保全について」という資料でございます。これについて御説明申し上げます。  まず第一は、首都圏の基本計画でございます。首都圏の基本計画昭和三十三年の七月に作成されまして、その後若干のわずかな変更をいたしまして今日に至っておるわけでございます。この内容は、この資料にもございますように、第一は「計画期間」、それから第二番目は「首都圏の地域形態及びその整備方針」、第三は、六ページにございますように、「首都圏の人口規模とその地域的配分」、この三つが主要な項目になっております。  「計画期間」は五十年を目標として策定をいたしております。「首都圏の地域形態及びその整備方針」につきましては、次に御説明申します図面によって御説明をいたしたいと思います。と申しますのは、この基本計画に掲げております既成市街地のほかに、近郊地帯あるいはその周辺地の整備方針がございますが、この点につきましては、昨年の首都圏整備法の一部改正等によりまして、この基本計画と相当中身が変わってきているわけでございまして、そこで、ただいまその地域区分に既応した改定計画等も検討中でございますので、この中身は相当古くなっておりますので、変わった点は図面によって御説明申し上げたいと思います。  それから、六ページの「首都圏の人口規模とその地域的配分」の点でございますが、この人口規模につきましては「昭和五十年における首都圏の総人口は二千八百二十万人」、こういうふうに想定をいたしまして、この想定に基づいて、次にございますように、「既成市街地の適正収容人口は千二百二十五万人、既成市街地外の人は千五百九十五万人」、こういうふうに想定をいたしましてそれそれの地域整備をいたしているわけでございます。  なお、(3)にございますように、七ページのところでございますが、「市街地開発区域における要吸収人口量」というのがございます。これは、「昭和三十年より五十年に至る二十年間に於ける市街地開発区域における要吸収人口量を三百二十万人とする。」、こういうふうな計画がございますが、この三百二十万人の要吸収人口をもとといたしまして、このたび御審議いただいております財政援助措置法案の基礎になっております首都圏整備計画、特に市街地開発区域の整備計画ができているわけでございますが、この三百二十万人の想定から市街地開発区域の整備が出てまいっているわけでございます。  以上が基本計画関係でございまして、計画図によりまして補足をいたしたいと思いますが、次の近郊緑地保全法案の関係につきましても、図面によって見ていただいたほうがおわかりやすいと思いますので、法案に入らさせていただきまして、その図面で御説明さしていただきます。  お手元に現在の首都圏計画を掲げました図面をお配りいたしております。まず、基本計画において考えられております考え方、現行の基本計画内容について御説明いたしますと、この図面のまん中の付近の褐色の部分がございます。この既成市街地につきましては、人口、産業等の増加の原因となっております大規模な工場、学校等につきまして、特定基準以上のものを制限いたしておるわけでございます。これが既成市街地でございます。  その周辺に薄緑の地域がございますが、これは従来は近郊地帯となっておったわけでございまして、既成市街地の周辺をこういう大緑地地帯で包んで遮断緑地的な考え方で今日まできておったわけでございます。これはロンドン方式等を参考にしてこういうふうな考え方ができたわけでございます。既成市街地の周辺を大緑地地帯で包むという考え方であったわけでございますが、実際、この地域につきましては予想以上の人口集中が出てまいったということ、さらにこの地域については、法律上はこういう地域を指定することになっておりましたけれども、地元との意見が折り合わない等のこともございまして、この地域指定には至っていないわけでございます。こういう、図面で図示いたしまして、実際問題といたしましては、行政運営でこれらの地域の整備をはかるということで今日に至ってきたわけでございます。しかし、実際この地域は非常に市街化が激しくて、現在その大半が市街化をいたし、あなあけと申しまして、一定の地区につきましては、これらの地域について市街化をいたしておるというのが現状でございまして、そういう大グリーン・ベルトを維持することが困難になりましたので、この地域を廃止いたしまして、新たに首都を中心とする約五十キロ圏域でございますが、この図面で褐色で取り巻いております近郊整備地帯という制度を設けることになったわけでございます。この近郊整備地帯につきましては、いろいろな角度から検討が行なわれたわけでございまして、まあ、首都を中心とする約五十キロ圏域について、近郊地帯制度の廃止に伴って、これらの地域を、首都の既成市街地と合わせまして一定の地域を近郊整備地帯として整備する必要があるという区域でございます。この区域につきましては、学界その他学識経験者等の御意見等をこの審議会等で検討いたしまして、去る六月一日からこの近郊整備地帯の地域が指定されまして、現在はこの地域が、数日前からでございますが、効力を発しておるわけでございます。近郊整備地帯という制度を設けましてこの地域を整備をする、こういうふうなことに変わってきておるわけでございます。  それから第三番目は、この図面で各地に薄い水色のしまのような区域がございますが、これが従来は市街地開発区域、現在は都市開発区域として名称を改めておりますが、都市開発区域の図面でございます。それにつきましては、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、三百二十万の人口を計画的に分散し、吸収し、配置を指定するという計画のもとに、今日まで十八地域についてこの地域の指定が行なわれ、それぞれ地区の整備がなされてまいっておるわけでございます。ただ、この図面でおわかりのように、この十八地区については、当初は、グリーン・ベルト外についてそれぞれの地域に工業立地を中心として整備するという考え方でおったわけでございますけれども、この近郊整備地帯という制度を設けられましたために、この従来の構想とだいぶ変わってまいりまして、東京及び横浜の周辺の都市開発区域は今度近郊整備地帯に吸収されることになったわけでございます。全体で、いままで十八地域が指定され整備されてきたわけでございますが、この近郊整備地帯に含まれます地域は大体七カ所でございまして、七地区につきましてとりあえずこの近郊整備地帯の基本的な、また総合的な整備方針が確立されますまでとりあえずこの近郊整備地帯のこの地区の整備計画を近郊整備計画というふうに暫定的な措置としていたしているわけでございます。それから、残りました十一地区が現在周辺地区の行なっております整備計画の概要になるわけでございますが、この地区につきましては、後ほど申しますようなそれぞれ整備計画を設け、事業実施をしてまいってきておるわけでございますが、その地区は名前を市街地開発区域から都市開発区域に変えました以外は実際上の変更はございませんん。ただ、今度この地区をもう少しふやさなければならぬという点、あるいは、この地区をこういう小さい地区よりもまとめて整備したらどうかといういろいろな問題点は残されておりますが、現在のところ、十一地区が都市開発区域として指定され、整備されておるわけでございます。  以上が、概略の首都圏計画に関する説明を図面によって申し上げたわけでございますが、あわせて緑地の問題について簡単に御説明申し上げます。  先ほど申し上げましたように、大グリーン・ベルトの地域につきましては、いろいろな理由から現状にも即しませんし、また、これを保全することが困難な状況になってまいりました。また、あわせてこの地域につきましては緑地の荒廃というのが非常に激しくなってまいりましたので、制度の改正に伴い、この地域について、及びこの近郊整備地帯というのは健全な計画的な市街化をはかりますとともに、緑地を保全をするということが基本的な一つ内容になっておりますので、その趣旨にのっとりまして近郊整備地帯において、特に一応農地は除外いたしまして、樹林地や水辺地など市街地の健全な整備、開発に、健全な市街化のために必要な緑地地域であるということ、あるいはこの地域が健全な心身の保持、あるいは公害、災害の防止、そういうようなそれ自体の地域が自然的に良好な環境を有するために、ぜひそれは保全すべきであるという地域につきまして、これを保全地区に指定し、また、それぞれ特に必要な場所につきましても特別な保全地区というものを指定いたしまして、その地区につきましては一定の建築物の建築あるいは工作物の新設等、そういう緑地の保存に影響のある諸行為につきまして制限をするということにいたしております。また反面、この地域は非常に土地柄から申しまして大事な地区で、土地の所有者との関係もいろいろあるわけでございまして、この地区についてはそういう制限に伴って、困った場合には買い入れをする。ことしはごくわずかでございますが、予算措置も考えておるところでございます。そういう従来の緑地地帯、近郊地帯にかわりまして、これは帯状でなくて一つの細長い、あるいは丸くなる場合もありますが、切断された形にもなりますが、一定の計画的、系統的な配置を考えながらそういう緑地を保存していこうというのが緑地保全の内容になっておるわけでございます。ただいま参議院の建設委員会で御審議いただいておりますが、本日委員会のほうを通過いたした次第でございます。そういうことが緑地法案の考え方でございます。  以上で首都圏計画に関する問題、また緑地に関する問題についての説明を終わります。  それからもう一つは資料の2となっておりますが、「首都圏近郊整備地帯及び都市開発区域整備計画事業進捗状況並に地元負担状況」、これについてごく簡単に御説明申し上げます。  この一ページは、先ほど御説明いたしました近郊整備地帯と都市開発区域につきまして、それぞれの地域について整備計画を立てまして事業を進めておるわけでございます。この地域につきましての事業費総額が二千二百十七億余円、なおこの注のロにございますように、総事業費は三千七十八億でございますが、この住宅の関係では、公営住宅、改良住宅のみを掲げまして、公団・公庫融資住宅等を除いておりますので、それを除きました事業費総額が二千二百十七億余円でございます。それの三十六年度以降の事業費、国費の別を出しまして、最後に進捗の状況を掲げておるわけでございますが、計の欄でごらんいただきますように、事業費が一千五十億に対しまして、国費が百八十三億になっております。それからB/A、これはこの進捗を示すものでございますが、Aは事業費総額でございまして、この事業費総額に対しまして、四十年度までに実施した比率を出しますと、四七%ということになっております。  それから次の二ページの資料は、近郊整備地帯と都市開発区域の整備計画におきますそれぞれ三十九年度、四十年度におきます都県、市町村それから近郊整備地帯、都市開発区域別の地元負担の状況をあらわしておるわけでございまして、一番下の欄で御説明申し上げますと、昭和三十九年度におきます事業費が三百六十億、そのうちの国費が六十三億、地元負担額が二百八十五億、こういうふうになっております。それから四十年度は省略さしていただきます。  なお、このほかに詳細なこまかい資料をつけておりますが、これは、ただいま御説明いたしました各地区別、都県別、市町村別、事業別の財源内訳、地元負担を中心とする財源内訳でございます。これは省略さしていただきます。  それからもう一つ資料がございますが、これは水質保全に関する資料でございます。水質保全につきましては、経済企画庁におきまして、公共用水域の水質の保全に関する法律、この法律や、あるいはこれに関連する諸法令、また建設省関係で申しますと、河川の面からいたします汚濁対策、またしゅんせつの事業、さらに公共下水道の整備、こういういろいろの処置で行なわれているわけでございますが、首都圏内におきます特に水質保全の面から問題の河川は、ここに掲げられておりますように、江戸川、荒川、多摩川でございます。それぞれの河川につきまして水質保全法に基づく調査が行なわれまして、基準がそれぞれ決定されまして、水質の保全が進められておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、荒川、特に隅田川周辺におきましては公共下水道の整備も行なわれ、また、隅田川につきまして特に浄化対策といたしまして、水資源開発公団の事業と関連いたしまして、秋ケ瀬の取水せきから新河岸川を通じまして汚濁防止用のフラッシュ用水を出しておるわけでございます。さらにそのほか、河川のしゅんせつ等を実施して汚濁の防止につとめておるわけでございます。  以上で説明を終わります。
  175. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 次に、近畿圏整備本部の上田事務局長
  176. 上田稔

    政府委員(上田稔君) 近畿圏関係につきまして提出を御要求いただきました資料について御説明を申し上げます。その資料は、何も書いてございません封筒の中に入っておるのであります。その資料は三つでございまして、第一は、近郊整備地域と都市開発区域の府県分・市町村分別の、また区域別の昭和三十九年度と四十年度の事業基本額の調べ、それから事業別の基本額の調べ、それが一つにとじてございます。それからその次に水質保全につきましての資料、それから近畿圏の保全区域の整備についての資料、この三つでございます。  まず第一に事業別基本額の調べについて御説明を申し上げます。  この一ページに出ておりますのは、近郊整備区域と都市開発区域の中の区域別につきましてその実施いたしております公共事業につきまして調べたものでございます。昭和三十九年度におきまして、近郊整備区域等は二百二十七億円実施をいたしております。それから都市開発区域におきましては八十九億円余り、合わせまして三百十六億円余りを実施いたしております。そのうちの地方負担額といたしましては、近郊整備区域は八十九億余り、都市開発区域は二十六億余り、合わせて百十六億余りの地方負担をいたしております。昭和四十年度におきましては、近郊整備区域は二百四十五億余りの事業を実施をいたしておりまして、都市開発区域におきましては八十二億余り、合わせて三百二十七億余りの事業を実施いたしております。それに対して地方負担額は、近郊整備区域が七十九億、それから都市開発区域が二十七億、合わせて百六億の地方負担をいたしております。  市町村におきましては、近郊整備区域におきまして百六十一億余りの事業をいたしておりまして、そうして都市開発区域におきましては四十三億余り、合わせて二百五億余りの事業を実施いたしております。そうして地方負担額は、近郊整備区域八十九億、都市開発区域二十億、合計百九億余りを実施しております。四十年度におきましては、近郊整備区域が二百九億余り、都市開発区域が四十七億、合わせて二百五十六億余りを実施いたしております。そして地方負担額は近郊が百十三億、都市開発区域が二十一億、合わせて百三十四億の地方負担をいたしております。これが区域別に見た数字でございまして、そうして今度は事業別に見ましたのがその次のページでございます。  第二ページは府県分が書いてございます。補助事業として公営住宅、住宅地区改良、道路、港湾、空港、漁港、河川、海岸、砂防、森林保安、地すべり、都市公園。直轄事業といたしまして、道路、港湾、空港、河川、砂防、地すべり、そういうものの計を出しております。三十九年度におきましては全体といたしまして事業の基本額は三百十六億余りでございまして、地方負担は百十六億余り、四十年度におきましては三百二十七億余りの事業をいたしまして、百六億余りの地方負担をいたしております。市町村におきましても、市町村におきまする公共事業の補助事業名をあげております。三十九年度は全部——直轄事業の港湾も合わせまして二百五億余りの事業を行なっておりまして、地方負担は百九億余りでございます。四十年度は二百五十六億余りの事業をやっておりまして、地方負担は百三十四億余りでございます。  次に、水質保全について申し上げます。水質保全につきましては、公共用水域の水質保全に関する法律——いわゆる水質保全法でございますが、これは経済企画庁が全国的に同法を担当いたしておるのでございますが、近畿圏内における状況は次のとおりでございます。  まず第一に淀川でございます。淀川は、これは京阪神地域の大部分の都市がこの淀川を水源にいたしまして上水道をとっております。それから、しかも、なお上流には京都市の下水が入っておりまして、そういう意味において非常に問題になる川でございます。そういうことで、相当以前からこの水質につきましては検討されておったのでございますが、昭和三十四年にこの水質保全法に基づく調査を始めまして、そうして三十八年に水域の指定と水質基準の決定がなされたわけであります。そうして現在はその水質保全につとめているわけでございます。そのほか、この淀川の支川に当たります寝屋川、これは北河内平野、中河内平野を大体流れておりまして、そうして大阪の中央の安治川とか、あるいは木津川、尻無川、これに入ってくるわけであります。したがいまして、大阪の市内を流れますので、これが非常に汚濁されておりますので、非常にその浄化対策というものが問題になっているわけであります。それで、この水質基準を早く決定しようということで、目下その対策を立てつつあります。また、その下水等の整備事業の促進というものもはからないと浄化になりませんので、現在寝屋川につきましては南北に分かれて流域下水道という非常に広範にわたる下水道の工事を現在やりつつございます。そのほか維持用水の増加であるとか、あるいは河川のしゅんせつというものも行なって、そうして効果をあげていこうというように考えているところでございます。  それから次に木曽川、これは三重県の桑名とか四日市がこの方面に当たるわけでございますが、これは今度できました中部圏のほうに大部分が問題があるのでございましょうが、名古屋地方の水源として流れております川でございますので、これにつきましても昭和三十八年に水域の指定と水質保全の決定が終わったわけであります。そういうことで、水質保全につとめております。大和川につきまして、これは奈良の大部分の水を集めて、そして亀ノ瀬を通って大阪へ入る川でございますが、これは下流におきまして堺市の上水道源になっております。したがいまして、これの水質も非常に問題になっておりますので、昭和四十年度に水域の指定とそれから水質基準の決定を終わりまして水質保全につとめております。そのほかの四日市の海域とか、鈴鹿の海域であるとか、あるいは大阪港の中であるとか、宇治川であるとか加古川等につきまして水質基準を定める調査を現在実施をいたしております。  次に、近畿圏の保全区域の整備について申し上げます。近畿圏の保全区域につきましては、この区域は三つに分けて考えております。その区域といたしましては、文化財が自然的環境と一体となっておって、それを保存する必要があると認められる地域、それから第二番目が、大都市周辺の緑地を確保する必要があると認められる地域、第三番目が、自然公園等、観光であるとかあるいはレクリェーションということに対しまして、計画的に保全または開発する必要が認められる区域、こういう三つの区域を保全区域というふうに近畿圏ではいたしておるわけでございます。それでこの保全区域の整備にあたりましては、文化財の集中する区域につきましては、昨年末国会で認めていただきました、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法というものを活用をいたしました。また、自然公園等関係の地域につきましては、自然公園法等の活用をはかって、その目的達成につとめる方針でございます。大都市周辺の緑地の区域につきましては、この古都圏と同じように、大阪、阪神周辺というものも市街地がスプロールする傾向にかんがみまして、緑地保全等の措置をする必要があると考えております。したがいまして、この全体の保全区域の整備計画を策定すると同時に、この大都市周辺の緑地保全のための立法措置を現在検討をいたしておるところであります。  以上が説明でございます。
  177. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) それでは、質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  178. 原田立

    ○原田立君 いまこまごまと御説明いただいて、ある程度のものはわかったわけですけれども、今回の法改正によって、そのねらいとするところ、すなわち、近郊整備地区及び都市開発区域に対し必要な国の財政上の特別措置を規定すると、こういうふうにあるのですが、これによって一体どれだけの応援、援助等がなされるのか、その点お話し願いたいと思います。
  179. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 計画が詳細にきまっておりませんので、具体的な金額は実は試算をすることが困難でございます。しかし、いままでの事業等を基礎にいたしまして計算いたしてまいりますと、大体特別地方債——首都圏近畿圏を合わせまして特別地方債が約四十億くらい、これに伴います利子補給額が三千五百万円、初年度は三月程度になりますので約八百万円、市町村のかさ上げ額が十六億前後、それくらいに推計されるわけでございます。具体的に計画がきまってまいりますれば、この計算が明確になってまいりますが、現在、現状におきまして、諸般の資料等に基づいて概算をいたしますると、おおむねその程度になると考えます。
  180. 原田立

    ○原田立君 今回法改正で、近郊整備及び都市開発区域とこうなったわけですが、以前は既成市街地計画というものがあったわけですが、これは今回入っていないのはどういうわけですか、首都圏のほうは入らぬのですか。
  181. 鮎川幸雄

    政府委員(鮎川幸雄君) ただいまお話しのように、首都圏におきましては既成市街地の整備のほか、都市開発区域の整備によって首都圏の均衡ある発展をはかる、こういうことでやってきているわけでございます。既成市街地につきましては、先ほども申し上げましたように、原則的に工場、学校等を——特に過密化都市の過大化を防止するため、工場、学校等の制限をいたしております反面、市街地の整備につきましては、道路、宅地、その他既成市街地における地域の整備計画を定めてやっているわけでございます。このたびの措置は、この首都圏計画におきます特に都市開発区域、これは先ほど申し上げましたように、この周辺の地域になるわけでございまして、首都圏の人口をそこでできるだけ吸収定着させる、こういうことできているわけでございますが、さらに近郊整備地帯という地域は人口が急増する地域でございますので、それと若干のニュアンスの違いはございますが、そういう地域をできるだけ早く整備をいたしまして、既成市街地を含む首都圏の全般のバランスのとれた整備を行なわなければならないというのが当面の課題でございます。今回の措置としてはこの既成市街地は除いておりますが、既成市街地につきましては、たとえばこういう制度のほかに、御承知のように、道路につきましては首都高速道路公団、あるいは住宅につきましては住宅公団、その他諸般の問題におきましてそれぞれの施策が行なわれているわけでございますが、今回の措置としては、特にこの周辺地域と人口急増地区につきましてこういう財政措置をはかることが、首都圏計画、地方財政の負担から特に大事である、こういうことからそういう地区についての措置がとられたわけでございます。
  182. 上田稔

    政府委員(上田稔君) 近畿圏におきましては、現在既成市街地につきましては、人口がふえている部分と減っている部分とございます。そうして、この近郊整備区域というところは非常に人口が現在激増いたしておりまして、昭和三十五年から四十年までの人口統計を見ましても、この部分が非常な大きな人口増を来たしております。そうして工場の集中もこの部分におおむね限られてきているわけでございます。そうして、既成市街都市区域につきましては、工場につきましては、首都圏と同じように制限をいたしております。したがいまして、この近郊整備区域というのは非常に人口と工場が集中してスプロールの現象を起こしておる。したがいまして、住宅とか工場とかいうものが混在をして、その公共事業の整備のおくれとともに、非常な混雑を来たし、公害を起こしておるわけです。したがいまして、これを早く整備して、そうして規制されたものにしなければ、近畿圏整備というものの目的が達せられないというような状態でございます。この近郊整備地帯を整備するとともに、その周辺に都市開発地域というものをつくりまして、そうしてそこに今度は工場の一部分を持っていく、そうして人口の一部分を持っていくというふうにしなければ、これは近畿圏整備ができないので、この部分に対してまず現在建設計画というものを立てておるわけでございます。  ところが、この建設計画を立てるにあたりまして、その建設計画の額が非常に大きなものになるわけでございます。これは現在取りまとめつつあるわけでございますが、いま府県から出してきてもらっておりますものにつきましては、この対象事業のほかに、通勤の関係であるとか、鉄道の関係であるとか、そういうものをいろいろ入れまして、八兆に近い数が出ております。したがいまして、こういうことを考えますと、この周辺の近郊整備区域並びに都市開発区域の建設計画を立てる上において、またそれを実行していく上において、市町村あるいは公共団体の負担というものは非常に大きなものになるわけでございます。これをどうしても急いでやっていただこうということで、この法律をお願いをいたしておるわけでございます。
  183. 原田立

    ○原田立君 この法律によると、四十一年から昭和五十年までの十年間、こういうふうに期間がきめられているわけですけれども、いまのお話ですと、事業量は、どのくらいの事業量をやるかというふうなことがきまっていないようなお話なんだけれども、あなたのところはきまっているんですか。この法律の適用になる十年間の総事業量はどのくらいになるのか、あるいはどのくらいの計画を立てているのか、自治省のほうでどうですか。
  184. 柴田護

    政府委員(柴田護君) この法律は、さきに御説明を申し上げましたように、ともかく相当量の事業があるのだという前提で、その事業を円滑に処理いたしますためには、地方団体にかぶってきまする地方負担を軽減する方法を明確にする、こういうたてまえでいわば方式を立法化したものであります。具体的には明確な形のもの、明確にどのくらいの事業量を予定しておるかという点につきましては、具体的にまだ計画がきまっていないわけでございます。したがって、詳細な点を踏まえての御答弁はいたしかねまするけれども、大体首都圏だけでは、四十一年から五十一年まで三兆三千億程度のものが考えられていたわけでございまして、近畿圏につきましては、次長からお話がございましたように、いま八兆からなる要求額をどう合理化するかという作業が進められているわけでございます。その点の具体的な計算は、この法案の立案の際には明確になっていないわけでございます。ただ、具体的に計画を定めます場合におきましても、一つのそういう場合におきまする援助計画というもの、援助の方式というものが明確でありませんと、具体的な計画というものも実は明確にしかねるといったような事情もございまして、財政援助の方式だけを定めようとしたのでございます。
  185. 原田立

    ○原田立君 それは局長お話だけれども、ちょっと理解しがたいと思うのです。というのは、法律の一番最初の「趣旨」の第一条のところには、計画をつくって、その実施の円滑化をはかり、そうしてその促進をはかっていく、こういうことになっているのですから、計画がまず最初にできなければまずいのじゃないですか、こう思うのですけれどもね。いまのお話じゃ、計画はまだできていないんだ、ただお金のほうの出る方式をつくるだけだというのじゃ、ちょっと逆じゃないですか。
  186. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 普通の場合を考えますと逆でございます。しかし、計画の策定が、いろいろな事情がありまして、おくれておりまして、そうして四十一年度に入らざるを得ない。四十一年度に入りますれば、この第一・四半期と申しますか、六、七月ごろの予定であったわけでありますが、計画ができ上がる。そうすると、すぐ事業が始まるわけでございます。したがって、ことしから始まった事業ということにつきましては、ちゃんとした手当てをしなければなりません。こういう事情に置かれておったわけであります。全部計画ができ上がって、それから措置をすればいいじゃないかということも考えられるわけでありますけれども、地方の団体の立場といたしますれば、計画財政援助の措置が並行することもやむを得なかった、こういう事情でございます。
  187. 原田立

    ○原田立君 実際の運用ではそうなるのだろうとは思いますけれどもね、ちょっと納得しがたい面があります。それはそれとして、実際に事業を実施する場合に、住宅とか道路及び港湾、その他政令で定める主要な施設とか、あるいは輸送施設というようなことが「地方債の利子補給等」のところには書いてありますけれども、これを実際に実施する官庁は、建設省、厚生省、通産省、文部省というふうに各省にまたがっていると思うのですが、この法律をつくることによって、つまり予算、措置ですね、その首都圏近郊整備区域内、及び都市開発区域内の事業について、各省で行なわれる事業の予算措置というものは義務づけられるのですか。
  188. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 計画が定められまして、それに従って事業を実施してまいりますと、当然この法律が動いてくるわけでございます。したがって、それに伴いまするものは義務費になるわけでございます。補助金につきましては、補助金のかさ上げにつきましては、清算払いの方針をとるつもりでございます。これは新産、工特の場合も同じように清算払いにいたしております。  これはなぜそういたしますかと言いますと、計算技術上から、年度が迫ってまいりませんと、たとえば標準負担額とか標準財政規模とかといったようなものが計算がやりにくいのでございます。それが確定いたしますのが、どうしても年度の終わり近くになりますので、その計算が終わりまして、関係各省に通知をして、そうして清算手続に入るというわけでございますので、年度内に補助金の計算をするということは実際問題としてはむずかしい。そこで翌年払いにいたします。  利子補給につきましては、起債額は、もっと早くに起債の許可が行なわれますので、年度内に利子だけの補給はできる。そこで、利子補給につきましては予算措置をいたしております。現在二億四千九百万円の予算計上をいたしておりまするが、これは新産、工特、首都圏、近畿合わせてでございます。首都圏近畿圏のものにつきましては、事業がずれまするので、大体八百万程度でいいんじゃなかろうかというように考えておるわけでございまして、そういうような前提でこの中に含まれておるのでございます。
  189. 原田立

    ○原田立君 ですから、そうすると、清算払いになっていって、各省にまたがっているのは当然動くわけですね。要するに、この法律によって、その補助率のかさ上げとか、あるいは地方債の利子補給、まあそれはきちんとこういうふうにすると、こういうわけですね、自治省で。まあ各省で提案になっているならばわかるんだけれども、自治省のほうで提案になっているのですね。各省のほうに力というか、拘束力というものがあるのかないのかという点だけちょっとお聞きしているわけなんです。
  190. 柴田護

    政府委員(柴田護君) この法律の第五条の第四項に、自治大臣に引上率の計算の義務がございまして、計算をいたしましたものはそれぞれ関係各省各庁の長、首都圏整備委員委員長近畿圏整備長官等にそれぞれ通知することになっております。この通知に基づきまして、関係各省は清算補助金を交付すると、こういう段取りになるのでございます。
  191. 原田立

    ○原田立君 今回、首都圏にしても、及び近畿圏にしても、旧来の計画を改定して、そして今回新しくすると聞いておりますけれども、旧来の計画の総量または行なった結果ですね、どのくらい進捗したのか、その点はいかがですか。実績ですね、いままでのところの。
  192. 鮎川幸雄

    政府委員(鮎川幸雄君) 首都圏関係から申し上げますが、先ほども資料で御説明申し上げましたように、都市開発区域の関係の点について申し上げますと、事業費総額に対しまして、今日までの実施といいますか実績は、四七%でございます。
  193. 上田稔

    政府委員(上田稔君) 近畿圏につきましては、昭和三十八年にできまして、現在計画を立てておるわけでございます。この六月の末を目途にいま現在やっておるわけでございまして、この府県から出てきておるものがございますのですが、こういう法律をいま出されておりますので、各省との折衝を行なっておるわけであります。で、以前の計画というものはございません。
  194. 原田立

    ○原田立君 そうすると、今度新しくつくるのについては、新法では旧来の計画をどのような点で手直しなさるのか。
  195. 鮎川幸雄

    政府委員(鮎川幸雄君) 首都圏の基本計画につきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の法律改正等がございまして、まず地域整備についての従来の基本的な考え方が変わっております。まあいわゆる従来の地域を、既成市街地と近郊地帯、さらに都市開発区域と分けておりましたのを、今後は既成市街地、近郊整備地帯、都市開発区域と、こういうふうに変わってまいりましたので、そういう地域整備の基本的な変更に応じまして、今後その整備をはかってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。都市開発区域につきましては、それほど大きな変更はあまりないと考えておるわけでございまして、近郊整備地帯という区域につきましては、初めての制度でございますので、そういう地帯について今後すみやかにその整備方針を立ててまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、このほかに首都圏の基本計画の改定に関する大きな問題といたしましては、人口の想定がだいぶまあ当初予定よりも変わってくるべきではないかという点があるわけでございまして、先ほど申し上げましたように人口想定は、昭和五十年が二千八百二十万という想定でございましたけれども、先般の国勢調査によりますと、昭和四十年度における一都七県の人口は大体二千七百万になっておるわけでございまして、そういう点から考えまして、また最近の人口の首都圏に参ります増加の状況等から見ますと、そういう基本計画で考えております人口想定は少し甘いんじゃないかという点があるわけでございます。したがいまして、こういう人口想定に伴う改定を今後考えなければならぬという点が大きくあるわけでございます。  なお、そのほかに、首都圏の基本計画ができましてから約十年近くの歳月を経過いたしておるわけでございますが、社会事情の変遷のほかに、国鉄の新幹線あるいは高速道路の整備、あるいは水資源の開発、こういう当初予定しておった以外の諸事情がだんだん進んでまいっているわけでございます。こういう全般の地域における事業の伸展に伴う首都圏整備の考え方も、この機会にいろいろと検討しなければならぬという点が出てまいったわけでございまして、そういう点から首都圏整備委員会におきましては、昨年の秋以来、首都圏整備審議会という諮問機関がございますけれども、この諮問機関に、いかなる方向で改定をすべきかという点につきまして、十三、四項目の項目を掲げまして、その改定をただいまお願いをいたしているというのが現況でございます。ただ、先ほど財政局長からもお話がありましたように、この財政援助措置に関する点に関しましては、一応現在までやっております実績等を勘案しまして、また将来の人口増加あるいは地区の増加等を勘案して、一応想定いたしまして、首都圏における近郊整備地帯と市街地開発区域における事業の総量は大体三兆三千億程度、こういうような仮定がたくさんあるわけでございますが、試算をいたしているという状況でございます。
  196. 原田立

    ○原田立君 またこの法律の中に地元市町村とよく協議してきめると、こういうふうになっておりますけれども首都圏及び近畿圏の各委員会、本部等において、地元市町村の要望はどのくらいあったのか、また、どれくらい取り入れてやろうとなされるのか、また、いつごろまでにこの計画の策定ができるのか、そこら辺話してください。
  197. 上田稔

    政府委員(上田稔君) 近畿圏におきましては、現在市町村からの御要求と、それから府県からの立策の計画と、そういうものを持ってきていただいております。それが先ほど申しましたように、大体十年間で八兆くらいなものでございますが、これが全体でございます。これに対しまして、その同じ事業種類におきまして、昭和四十年度、四十一年度といったほうがよいかもしれませんが、四十一年度において実施されております。近畿圏内の該当地区の事業でございますが、これが大体四千億くらいございます。そうしますと、国の財政規模の伸びとかそういうものを考えましても、ちょっと八兆は大きいのではなかろうかということで、これをもう少ししぼっていくということを考えておるわけでございますが、ただ具体的に市町村から、あるいは府県から事業が出てきております。これをまた一面において具体的にそれぞれの事業について検討を地元のほうと私どものほうと調整をしておるわけでございます。この調整したものを、今度は各省と現在調整を行なっておるわけでございます。各省に持っていってお話をしていったり、府県にまた差し戻してやったりする作業を現在いたしておるわけであります。  だんだんと煮詰まってまいりまして、いま三十三の事業項目がございますのですが、そのうちの二割程度のものは大体もう話がついていっております。あとのものにつきまして、おおむね良というのが大体半分くらいございます。大きなものをあと一つ一つ片づけていっておるわけでございますが、大体八兆くらいのものはきておりますが、それが大体五兆程度になれば、普通の伸びよりもちょっと大きい、近畿圏としてふさわしい伸びではなかろうかというふうに考えておりますが、これは事業そのものにも関係をいたしますので、いまどの程度になるかということははっきりとは申し上げかねるわけであります。このまとめる目標は六月末を目標に現在やっておるわけであります。少なくとも七月初めごろまでにはきめてしまいたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  198. 原田立

    ○原田立君 先ほどの説明がありましたけれども、本法律の対象事業が、新産、工特等から見ると、だいぶ減っておりますけれども、これはやはり新産や工特などと同じような国家的な要請によって、首都圏及び近畿圏整備等をやっていくのですから、対象事業をそんなに減らさなくてもいいんじゃないか。不必要な部分はいたしかたないとしても、たとえて言えば、市街地をつくっていくためにも山を切り開いて宅地の造成をはかっていかなきゃならない。今回宅地造成等が入っておりませんけれども、これはもちろん新産のほうも土地造成については入っていなかったのですが、そういうのはこの法律の補助率のアップとか、あるいは地方債を発行するその対象事業の中に入れていいんじゃないかと、こんなふうに考えるのですけれども、なぜそういうのをはずしたか、その点をひとつ伺いたい。
  199. 柴田護

    政府委員(柴田護君) この前逐条で御説明をいたしました場合に、ちょっとつけ加えたと思うのでございますが、計画内容が全般的に明確になりました上で、検討の上、措置しようというものと、それから将来問題としてどう扱うかということを検討をしよう。大体二種数に分けてリザーブしているものの中に、たとえば近郊整備地域でございますれば下水道、海岸、それから都市開発区域でいいますれば砂防とか森林保安施設あるいは地すべり防止施設といったようなことと考えておるわけでございます。  大体の考え方は、都市開発区域というものは新産、工特の地域とよく似ておる。ちょうど首都圏におきまする鹿島地区でございまするとか、あるいは近畿圏におきまする播州地区だとか、こういうところは、新産じゃございませんが、工業整備特別地域そのものが同時に首都圏の中に入っておる、あるいは近畿圏の中に入っておるということになっておるわけでございます。したがって、都市開発区域と称せられるものについては、大体新産、工特方式を踏襲しよう。ただし、具体的な計画が明確でございませんので、具体的な計画が明らかになったときに、いま申し上げましたような事業につきましては検討の対象にしよう、こういう考え方であります。近郊整備地域におきましては、どちらかというと都市開発区域よりか、さらに進んだ区域と考えられておるわけでございまして、どちらかといいますると、この辺のところは都市的施設の整備というものが中心であろう。したがって、言うなれば港湾でございまするとか、あるいは河川の総合開発とか砂防だとかいったような問題は対象からはずした、もっと都市的な施設の整備というものに限ったのでございます。ただ問題は、卸売り市場といったような問題も考えられるわけでございまするが、こういう問題は将来の検討事項のほうに譲っております。やはり資本の蓄積状況から考えまするならば、都市開発地域というものはちょうど新産、工特と同じに考えていい、それから近郊整備というものは、もっと集積のあるところ、それのむしろ整備というところに中心を置くべきものじゃなかろうか、こういうような考え方で、近郊整備と都市開発区域とを区分けをいたしました。なお、若干のものは将来の計画と見合ってきめると、こういう態度をとったわけでございます。
  200. 原田立

    ○原田立君 全体の計画がはっきりしないので、じゃ計画が出てきてからいろいろな具体的な案を考えるというようなお話のように聞き取れますけれども財政力に応じて差をつけるというようなさっき御説明があったのですけれども、それは同じ都市づくり、町づくり、全体の計画からいっても、よくなることは、これは当然日本全体の国の富を増していくことにもなるのですし、その財政力に応じて若干の差をつけて支給するというのは、ちょっとあまり小切っているのじゃないか。あまりけちけちしないで、何%か以下は全部一律にやるというふうに、そういう考えはないですか。
  201. 柴田護

    政府委員(柴田護君) やはり基本的な筋は事業量の、われわれのことばで言えば事業量補正ということばを使うわけですが、財政力に応じてのかさ上げではございませんが、事業量補正だと、特に市町村の場合におきましては、事業量補正を中心に考えなくちゃいかぬ、こういう考え方を新産、工特の場合はとってきたわけでございます。しかし、若干財政力のあるものは補正を加味する、こういう考え方があったわけでございまするが、首都圏近畿圏の場合を考えますと、やはり新産、工特の場合に比べまして、非常に財政力が強い団体が多い。したがって、財政力補正のかけ方を新産、工特の場合よりか少し強くしてもいいじゃないか、こういうのが、市町村の場合におきまして多少財政力補正の度合いが強まっておる理由でございます。それから府県につきましては、やはり東京、大阪という、全国的に見て比較的財政力のある団体について、起伏を許可するのはいいのですけれども、利子補給をするということは一体いかがか。非常に事業量がふえるといたしましても、同じ近畿圏の中でも、あるいは首都圏の中でも、貧乏団体もございまするけれども、そういうものと東京都あるいは大阪府というものとを並列的に考えることはいかがなものかという、ごく常識的に考えてみて、やはりそこには差があっていいのじゃないか。それを利子補給の場合には、財政力補正をかけるという結論に落ちつけたわけであります。これは自治省だけで行なえるわけではありません。大蔵省との間に何回か折衝を繰り返しまして、その結果そういうことで話がついた。しかし、その話がついたつけ方というものは、私ども見ていましても、常識に合うのじゃなかろうかという気持ちを持っております。
  202. 原田立

    ○原田立君 府県の場合でのお話でしたけれども、東京、大阪、神奈川は富裕団体だから、一・〇以上だから交付しないんだというようなお話ですが、それ以下の県ですね、山梨が〇・二六ですか、財政力指数が。それから五・五とか七・八とか、いろいろありますけれども、だからそれ以下の、東京、大阪、神奈川を一応別にしても、それ以下の、一・〇以下のところは同率でいいんじゃないですか、同率で。
  203. 柴田護

    政府委員(柴田護君) そういう御議論も立とうかと思います。交付団体だけはやらない、しかしほかはやるんだ。まあ言うならば、新産、工特のような場合の考え方が立たぬことはないと思いますが、そこは話し合いでございまして、そういうような話をして、話を始めたわけでございますけれども、それだけではなかなか納得がそうもいかなかった。最後にその間に斜線を引くということに落ちついたわけであります。しかし関東近辺あるいは大阪近辺の府県の力を考えてみますると、私はこの案でもそう妙な格好じゃなかろう、これも一つの行き方だろうというように考えるのでございます。
  204. 原田立

    ○原田立君 そこのところ、こだわるようですけれども、これ、首都圏及び近畿圏のほうの委員会整備本部のそちらのほうでは、やはり仕事をやっていく上にはお金がたくさんあったほうがいいのだし、そういう面でいま自治省の案が出ているけれども、傾斜配分ですね、傾斜配分というよりか、むしろ一・〇以下のところは同率にしたほうがいいじゃないか、またそういうような要望が強いのじゃないか。財政力によって、その中でやれというよりか、そういう一律にやってもらいたいというような意見のほうが地方団体に強いのじじゃないか、こう私は思うのですが、その点どうですか。
  205. 鮎川幸雄

    政府委員(鮎川幸雄君) ただいまお話がありましたように、仕事をしていくという面からだけ考えますと、お話のように、私どもとしてはできるだけたくさん財政援助をしていただく、事業量を中心に考えていただいたほうがいいわけでございますが、経過的には、先ほど自治省の財政局長からお話があったとおりの経過で今日に至ったわけでございますが、また、従来は、首都圏整備計画に関しましては、そういう措置がなかったわけでございます。このような従来の経過から見ますと、このたびの措置が行なわれることによって、首都圏整備計画に基づく事業が一段と進展することを私どもは期待しているわけであります。理想的にはそういう点ももちろんありがたいわけですけれども、やはり財政上の面、仕事の面、いろいろな点を勘案の結果、こういうことになったわけでございまして、私どもといたしましては、従来よりは相当前進しておる、こういうふうに考えておるわけであります。
  206. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) それでは本案に対する本日の審査は、この程度にいたします。次回は、六月九日午前十時に開会の予定であります。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時六分散会      —————・—————