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1966-02-17 第51回国会 参議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十七日(木曜日)    午前十時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林田 正治君     理 事                 小林 武治君                 加瀬  完君                 原田  立君     委 員                 小柳 牧衞君                 高橋文五郎君                 津島 文治君                 天坊 裕彦君                 占部 秀男君                 鈴木  壽君                 林  虎雄君                 松澤 兼人君                 松本 賢一君                 二宮 文造君                 市川 房枝君    政府委員        警察庁警備局長  秦野  章君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        自治省行政局長  佐久間 彊君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        法務省刑事局公        安課長      蒲原 大輔君        法務省人権擁護        局調査課長    辻本 隆一君     ————————————— 本日の会議に付した案件 ○地方行政の改革に関する調査  (地方事務官制度に関する件)  (警察行政に関する件)     —————————————
  2. 林田正治

    委員長林田正治君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方事務官制度に関する件を議題といたします。  質疑のお方は順次発言を願います。
  3. 占部秀男

    占部秀男君 きょう質問する前に、委員長お願いがあるんですが、それはこの地方事務官制度の問題は、御存じのように、ずいぶん長い問題になっておるので、相当内容的にもむずかしい点がたくさんあるわけでありまして、したがって当面、まず関係自治省、それから行政管理庁、この関係の方々にひとつ質問をしたいし、同時に問題の関連労働省あるいは厚生省等にもあるので、ここら辺のほうについても質問したいというふうに考えお願いをしたわけなんでありますが、きょうは予算委員会が衆議院にあるために、大臣連中向こうへ優先的にくぎづけになってしまう。しかも、自治省のほうの側は、当面の責任者である佐久間行政局長はお見えになっておりますけれども調査関係である監察局長さんですか、来られておるが、性格的ないろいろな問題についての中心である管理局長も、何か向こうくぎづけにされておる、こういうようなことなんですね。したがって、おそらく私の質問は中途はんぱに終わるんじゃなかろうかということを心配するわけです。そこで、やはり議事の進行上の問題もありますから、きょうは一応行政局長監察局長中心質問をして、お答えのできないところはこの次にひとつ——まあ次といっても次の次になるか、これはあと加瀬理事ともお話をして、理事会お話し合いの上、引き続いてひとつ質問ができるように取り計らっていただきたい、こういうことをひとつお願いをして私質問したいと思いますが、この点よろしゅうございますね。  これは佐久間行政局長にお伺いをしたいのでありますが、また監察局長にもお伺いしたいと思うのですけれども、この事務事業の再配分の問題を中心として、一昨年の秋でありましたか、臨時行政調査会答申も出ておりますし、また地方制度調査会でも同じような趣旨答申が出ておるわけであります。その後あまりこの問題については具体的なはっきりした動きが、法改正その他の問題として大きくはないように私たちは見受けておるわけでありますが、今度の国会で総理施政方針の演説の中で、特に私もこの問題を取り上げて、どうするのかということをお尋ねしたときに、佐藤総理は、これはもう、もちろん臨調答申というものは尊重して、自分の在任中でもできるだけひとつ着手をする意気込みで、気持ちでいるんだと、こういう点を明らかにされたわけであります。  そこで佐久間さんにお伺いをしたいんですが、この臨調関係答申の問題について、特に自治省、いわゆる地方関係問題点については、これを尊重して実行してもらわないと困ると思うのですが、そういう点についてお考えをひとつ率直に述べていただきたいと思うわけです。
  4. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) お尋ねの点につきましては、御指摘のとおり臨時行政調査会答申の中にも明記されておりまするし、また地方制度調査会答申の中にも述べられておるところでございます。そこで私ども自治省当局といたしましては、この両調査会答申趣旨はできるだけ早く実現されるということを希望もいたし、また期待もいたしておる次第でございます。ただ問題が各省にわたる問題でもございまするし、かつまた、行政管理庁当局においては、臨調答申全体をノう受けて実施の段取りをつけていくかという御計画もおありのようでもございまするし、そういう関係もにらみ合わせて、私ども立場からもこれが実現努力をしてまいりたい、かような考え方をいたしておるところでございます。
  5. 占部秀男

    占部秀男君 行政管理庁関係はいかがでございますか。
  6. 稲木進

    政府委員稲木進君) ただいまのお話の問題につきましては、行政管理庁としましては——政府臨時行政調査会答申を尊重するという御方針を立てておられます。行政管理庁としては、その線に沿ってこの実現を推進するというような考え方をとっております。そういう意味合いにおきまして、これは私の所管ではございませんけれども行政管理局のほうで、臨時行政調査会答申事項について、それぞれ関係各省の意見といいますか、あるいはこれを実現に移す問題についての考え方等各省に聞き合わせ、そうしてそれについては、実現する場合にどういうふうなスケジュールを考えておるのかというようなことをやっておるわけでございます。  ところが、この地方事務官制度の問題につきましては、各省意向を徴しました結果は、厚生省労働省も運輸省も、それはどうも困るというような、いわば反対意向を表明しておるわけであります。そういうことでありますので、この問題についてどういうように行政管理庁として考えておるかということを、いろいろ内部的には検討しておるわけであります。  特に問題になっております地方事務官制度につきましては、現在行政管理庁にあります行政監理委員会でも、この問題に非常に関心を持っておられるわけでございます。行政監理委員会としても、この問題についてもう少し問題点所在、そういうものを突き詰めて調査してもらいたい、こういうような要望もあり、われわれとしてもそのことは確かに必要である、こういうように考えましたので、現在この地方事務官制度実態について調査をやっておる段階でございます。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、この尊重して努力するというたてまえ、これはもちろんそうであると思うのですが、ことに答申の中には、ここまで十五、六年、二十年に近い問題点があるわけですね。それは自治法施行以来の問題にもなっているのですが、いわゆる地方事務官制度の問題ですね。国費職員身分移管についての問題があるわけでございます。私は、きょうは特に行政事務事業の再配分の問題は、一応また大臣その他来られたときに聞くとして、国費職員身分移管問題点にしぼってお伺いをしたいと思うのですが、聞くところによると、行政管理庁として実態調査をいまこのことに関連をしてやっておると、こういう話なんですが、これは何のためにこういう調査をしておるのか、監察局長にお伺いしたい。
  8. 稲木進

    政府委員稲木進君) どういう点を調査しているかというお尋ねでございますが、実は、先ほど申し上げましたように、身分移管については関係各省とも反対意向を表明しておるわけであります。それにつきまして、反対理由としていろいろと述べておる事柄があるわけであります。こういう理由でもって、これは地方事務官を、たとえば地方公務員に切りかえるということでは仕事をやる上において困る、こういうようないろいろな反対理由があがっておるわけでございます。そこで、それらの私ども調査角度は、そうした各省反対理由につきまして、現地実情調査をして、その反対理由をもう一ぺんわれわれの立場でもって洗ってみたい。なるほど、その反対理由ほんとうに、何といいますか、もっともなことであるのか、あるいはその反対理由はそれほど理由にならないんじゃないかと、こういう見方もできると思うのであります。そういう点を実証的な資料に基づいて検討したいというのが、われわれの調査のねらいでございます。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 また、その点についてあとでもう少し詳しくお尋ねしたいと思うのですが、いつごろ始まって、いつごろ終わるわけになりますか。
  10. 稲木進

    政府委員稲木進君) 調査を始めましたのは、ことしの一月に入ってから調査を始めかかったのでありますが、実質的に多少準備の時間が必要でありましたので、現地の、たとえば府県職安課だとか、あるいは職業安定所、あるいは陸運事務所、その他保険課、そういうような関係のところに実際に出向きましたのは、おそらく一月の中旬以降じゃないかと思います。われわれとしましては、できれば二月一ぱい、あるいは三月上旬ごろまでにはそういうような現地調査を終わりたい。その上で、その調査の結果得られたいろいろなデータを検討して、そしてさらに要すれば、もう少し掘り下げた調査を必要とするかもしれないと思います。同時に、そういうような現地実態から出たいろいろな問題点につきまして、関係各省の、本省のほうの調査も三月以降進めていきたい、こういうふうに考えております。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 そうして、この出されたデータというものは、一応公式な機関に何か公表をしたり、あるいは報告をしたりという形をとるわけですか。
  12. 稲木進

    政府委員稲木進君) われわれのほうで調査しました結果は、私どもの、これは確定的に申し上げることがいいのかどうか知りませんが、私の心がまえとしましては、いろいろなデータを十分整理した上で、行政監理委員会のほうに報告して、ひとつ行政監理委員会のほうで検討をしてもらいたいというふうに考えております。それからそれについての結論は、行政管理庁としての所掌からいいますと、行政管理局所掌で、答えを出すことはそういうことになろうと思います。私どものほうでは、調査した結果を整理分析して、行政監理委員会、それから行政管理局のほうに回したい、こういうふうに考えております。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 これは調査の方法は、都道府県全体にわたって行なわれたのですか、それともそうではなくて、一部的に行なったわけですか。
  14. 稲木進

    政府委員稲木進君) 府県段階調査は、全国的にはやっておりません。大体抽出した県だけについてやっているわけでございますが、まあ大体こういうような地方事務官制度でやっております業務は、各県ともやっているわけでありますし、そして、その府県によって特殊事情というものが、これは全然ないわけではございませんけれども、比較的少ないような情勢でありますので、全面的に全府県についてやる必要はないのじゃないか、こういう角度で、若干の抽出した県、特に私ども出先として管区行政監察局というのがございます。管区行政監察局所在府県についてやっている、こういうことでございます。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 そうして調査する対象は、職員のある程度個々にまでわたってやっているわけですか、あるいは機関長の者だけを対象にしているわけですか。機関長というか、責任のある、たとえば課長であるとか何とかいうような、それとも一般職員にまで一応及んでいるわけですか。
  16. 稲木進

    政府委員稲木進君) 管区監察局所在地の県についてやっておりますけれども、これもまだもう一つしぼりまして、たとえば東北管区については、主として職安行政の問題を調査してもらう。あるいは中部管区行政監察局には保険関係の問題と陸運行政関係をやってもらっている。そういうようなことで、それぞれ分担をきめてやっております。それから調査のしかたにつきましては、問題がこういうことでございますので、いろいろとあろうと思いますが、やはりいろいろな資料を集める、こういうことがございますので、いまお話しになりましたように、課長だけを相手にして調べるとか何とかいうことでは、ほんとうに十分な資料がとれないのじゃないか、こういうことも考えられますので、それぞれ担当者についていろいろな資料を出してもらう、こういうようなやり方をとっているわけでございます。もちろん責任のある課長、部長、そういうような人たちとの接触もやっているわけでございます。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 そこで佐久間さんにお尋ねをしたいのですが、いわゆる地方官制度に包含されている国家公務員で、知事の指揮監督下にある者は、一体全国でどのくらい人数がいるのでありますかということが一つと、もう一つは、聞くところによると、地方事務官という名前と、一部ではありますが、労働事務官という名前とがある。たとえば保険関係地方事務官、それから陸運関係地方事務官、ところが労働関係では、本課関係は主として地方事務官らしいのですが、出先のほうになると、いわゆる労働事務官という形になる。これは一体今度の地方官制度という概念の中には、地方官というものと、そしてその意味労働官ですね、労働事務官、それも入っての地方官制度という取り扱いになっておるのかどうか、この点について、この二つ佐久間さんに、あるいは監察局長でもけっこうでありますが、お伺いしたいと思います。
  18. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 地方自治法の附則八条によりまする地方事務官でございますが、これは地方自治法施行規程定員がきまっております。厚生年金国民年金等社会保険関係につきましては一万四千五百六十六人、職業安定、失業保険関係事務につきましては二千三百九人、陸運関係につきましては千八百八名ということでございます。実人員はこの定員と多少の相違があるようでございます。  次に、同じくこれらの事務に従事しておる者の中で地方事務官労働事務官があるではないかというお尋ねでございますが、ただいま私の申し上げましたのは、いずれも地方事務官でございます。労働省関係地方機関の中で労働事務官になっておりますものもございまするが、これは身分労働本省職員という考え方になっておりまするので、かようなことになっておるものと思うのでございます。ただ、私ども地方事務官の問題を考えます場合には、そういうものもひっくるめてこれは考えていってよいのではなかろうかというふうに考えております。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 初めの数の問題は別でありますが、次の労働事務官を、やはり地方事務官の問題としては、地方事務官制度の問題の扱いの中で含めて考えるべきであるというこの自治省考え方、これと行管のほうの考え方は同じでありますかどうか。
  20. 稲木進

    政府委員稲木進君) 私どものほうでも、労働省関係地方事務官は、主として県の職業安定課に勤務している職員であります。それからいまおっしゃった労働事務官は、職業安定所に勤務しておるわけでございます。仕事関係が当然にこれはつながっておるわけでございます。したがって、私ども今回調査します場合におきましては、地方事務官に関する調査でございますけれども、あえてこれを地方事務官等に関する調査ということにしまして、職業安定所に勤務しておる労働事務官仕事実態、こういうものも調査対象に入れてございます。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、これはどういうふうになるかはわかりませんが、問題はいずれにしても、解決をつける場合には、いま言った労働事務官地方事務官制度の中の一環として含めて問題の決着をつけておる、こういう考え方であるというふうにとってよろしゅうございますか。
  22. 稲木進

    政府委員稲木進君) 結論がどういうことになりますか、いまのところ申し上げることができませんけれども考え方としてはそういうふうに考えていく必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 どうもその点、あるいは長官に聞くべきかとも思うが、そうあるべきではないかと思うということでは困る。というのは、かりに身分を移譲しないということならこれは別ですけれども身分を移譲するということにかりになった場合には、本課的な身分地方公務員になって、そうして使われる出先国家公務員である。これではまるっきり現状より悪くなる。したがって、臨時行政調査会答申趣旨からいっても、かりに答申趣旨を無視したなら無視しても、それはそのときの問題でどういうふうになるかわかりませんけれども、無視したなら無視したとしても、無視したということで、これは筋は通るかもしれませんけれども、無視したということが、つまり現状よりさらに悪くなるということ、そういう扱い方は、これはやるべきではない。これははっきりとそのときにはこうなります、こうなるようにわれわれもさせます、させるように努力をしますと、何とかその点明確に言ってもらわないと困る。この点は微妙な点だけに困ると思うのです。
  24. 稲木進

    政府委員稲木進君) 御趣旨はわれわれ全く同感に考えておりますが、そういう意味から、先ほど申し上げましたように、調査対象に取り入れていきたい。それは同一の関係の問題であると、こういう認識で、当然結論もそういう方向に向いていくものだと思います。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、聞くところによるというと、保険なり、あるいは労働なりのこの職場では、実際は国家公務員、いわゆる地方公務員、あるいは地方事務官、あるいは労働事務官のほかに、それぞれ都の職員、県の職員がやはり何か混在して、そうしてやっているというように聞いているのですが、その点はどういう実態になっておりますか、佐久間局長にお伺いをしたいと思います。
  26. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) その実態につきましては、私どもも数字的に正確な資料は持ち合わせておりませんけれども、御指摘のように、県のそれぞれ国民年金なり、あるいはこの職業安定の関係の課におきまして、先ほど申し上げました定員だけで足らない場合におきましては、若干、県の採用の地方公務員を応援させておるというような実情もあるように聞いておりますけれども、私ども正確な数字はただいま持ち合わせておりませんので、御了承願いたいと思います。
  27. 占部秀男

    占部秀男君 結局国家公務員だけでは事務事業の遂行が間に合わないので、都あるいは府県職員を手伝わせておるというのが、率直に言えば私は実情と思うのです。そこで、さっき私は監察局長に言ったように、今度の地方事務官制度の中では、はっきりと地方事務官職安関係労働事務官を、これはもう一本で、どっちになるかわからぬけれども解決をするんだということを明示してもらいたいと言ったのは、そこに一つは原因がある。現在でさえ混在しておるのですから、これがかりに移譲になるというような場合には、これはもう国家公務員地方公務員と、さらに今度はまたこれが二つになってくるということになるので、その点はいま局長のほうから必ずそうしますというお考えを聞いたので、私は安心いたしましたが、どうかそういうふうにひとつ取り扱いお願いいたしたいと思います。  そこで、この問題は、これはまあ言うまでもなく、昭和二十二年に地方自治法が施行されて以来もう引き続いた問題点なんですね。しかし、いずれにしても、臨調答申が出た、そしてこれに基づいていまあなたのほうで実態調査が行なわれておる、これは何と言っても、この問題に対するいわば一つの一歩前進というような形の、条件の、今度非常に変化された事態になると思うんです。そこで、私はこの際機関委任の問題に関連をして、基本的な点を佐久間さんと、それから行政監察局長にもお伺いしておきたいと思うんですが、ただ、内容の点が管理局長部面にわたる、あるいは長官部面にわたる点が相当あると思いますけれども、できるだけひとつ御答弁を願い、もし願えないところは願えないというふうにはっきりしていただきたい。今度は予算委員会が終わったらまたひとつ呼んでもらうことにしますから。  そこで佐久間局長にお伺いしたいんですが、地方自治法によりますと、総括して、地方団体処理する事務というものは、いわゆる公共事務委任事務行政事務と、この三種類が認められておると思うんですが、何かそれ以外の種類のものはございますか。
  28. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 現在はそのいずれかに該当するということで解釈をいたしておりまするので、それ以外のものはございません。
  29. 占部秀男

    占部秀男君 まことに初歩的なことでおそれ入るんですけれども、問題を私基本的に少し究明したいと思いますので、御答弁をひとつ願いたいと思いますが、佐久間さんが自治省として考えておられる公共事務というのは、従来のいわゆる固有事務のことであるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  30. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) まあ学者によりまして多少こまかい議論の相違はあるようでありますが、常識的に考えまして、従来固有事務と言われておったものが公共事務というふうにお考えいただいて差しつかえなかろうと思います。
  31. 占部秀男

    占部秀男君 委任事務性格はどういうふうになりますか。
  32. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 委任事務は、本来国の事務でございまするが、地方関係の深い事務でございまするので、地方公共団体委任してやらせるという事務でございます。しかし、委任を受けました以上は、その事務処理につきましては、地方公共団体責任をもって処理をしていくということでございます。
  33. 占部秀男

    占部秀男君 次に、行政事務についてはどういうふうになりますか。
  34. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 行政事務は、御承知のとおりに、戦後の地方自治法改正におきまして新しく加えられました概念でございまして、端的な例をあげますると、警察の取り締まりの事務のように、権力をもって住民の自由を拘束をする、あるいは義務を課するというたような性格事務でございまして、これは、その中で国の事務としてすでに留保されておりますものを除きまして、地方公共団体がその区域内で、そのような必要のある権力的な事務を行なうことができるとされたものでございまして、そういう性格のものを行政事務と呼んでおるわけでございます。
  35. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、この三つの事務の中で、これはまあ私しろうと考えでありますが、はっきりしておることは、本来国の仕事であるというようなものを法律または政令でもってはっきりと委任したものが、これがいわゆる委任事務であると、こういうふうに、実定法上の基準といいますか、それがとれるわけでありますね。
  36. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 正確に申しますと、公共事務委任事務行政事務と、同じ面に並べまして区別をいたしますことには問題があろうかと思います。公共事務行政事務とは、公共事務は、原則的に申しますと、非権力的な作用でございまするし、行政事務は権力的な作用ということで、これは仕事の中身、性質をとらえまして区別をいたしますし、委任事務か、公共事務行政事務かという区別は、本来国の事務であるものを委任してやらせるかどうかという、そういう面からとらえておりまするので、若干とらえ方が違っておりまする点が、理論的には少しすっきりせん点があろうかと思いますが、委任事務は、いまお話しのように、国の法律なり、法律に基づく政令によりまして、明確に委任するとされております事務でございます。
  37. 占部秀男

    占部秀男君 そこでいま局長は、地方関係の深いものであって、したがって、事務委任された以上は、これはまあ地方のいわば事務と同じように責任を負うべきものであると、こういうふうに言われたのですが、同じ委任にも、団体委任機関委任があるわけですね。そこで団体委任は、これはもういま局長の言われたように、委任された以上は、国の事務であったとしても、地方団体処理させることが、事務性格からいっても、地方団体仕事をする目的からいっても、これはもう明らかに何と申しますか、地方団体事務として処理できる範囲のものであり、したがって、そういう範囲で、管理執行の責任は明らかに地方団体にあるのだと、かように考えていいわけでありますな。
  38. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) いわゆる団体委任事務につきましては、仰せのとおりでございます。
  39. 占部秀男

    占部秀男君 ところで機関委任の場合なんでありますが、機関委任は、御存じのように、団体委任の場合と違って、委任された事務は、一応国の事務性格はある程度失ってはいないようにわれわれは伺っておるのですが、同時に地方団体にも無縁のものではないというような形にもなるのでありますけれども、一体その性格は、これはどっちの事務といえばいいんでありますか。この点ひとつ、まことにしろうとの聞くような話で申しわけないのですが、あとあとの問題に関連しますから、お答えを願いたいと思います。
  40. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 先ほど私申しましたのは、いわゆる団体委任事務について申し上げたわけでございますが、お尋ね機関委任事務は、地方公共団体委任をするというのではなくて、地方公共団体機関である知事、あるいは市町村長に委任をするということでございまするので、その事務は国の事務で、ただ地方公共団体機関機関として使って仕事をやらせると、こういうような考え方に立っております。したがいまして、機関委任事務処理につきましては、通常国の法令によりまして、相当必要によりましては、こまかい点まで規制が加えられておりまするし、またその機関委任事務処理につきましては、国の指揮監督を受けるという形になっておるのでございます。
  41. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、確かにいま局長が言われましたように、機関の長、知事や市町村長が委任されるわけでありますから、国の監督のあり方であるとか、あるいはまた管理執行に対する地方議会のチェックというか、関与、あるいは監察機関の関与についての有無、あるいは制限、こういうようなことについては差異は確かにあるわけであります。差異はあるけれども委任されている事務の管理と執行の責任は、これは当然、委任された市長なり知事なりが、国の機関としての立場もあるわけでありますから、これは負うべきものである。そういう意味では、団体委任の場合の市町村が管理執行の責任を負うと同じように、これはやはり市長なり知事なりが、そうした意味の同じ、共通したというよりは、同じような意味合いの性格といいますか、そういうような責任を負うものである、かように考えてよろしゅうございますか。
  42. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) そのとおり、この委任を受けました知事なり市町村長といたしましては、自分の仕事として、責任を持って管理執行しなければならぬということは、そのとおりでございます。
  43. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、この機関委任事務処理については、これはもう、私が言うまでもなく、局長はその点の大家であるから、言うのもおかしいのですが、機関の長によって管理執行の点についての、何といいますか、規則等がきめられることになっておりますね。結局、それはいま言った管理執行についての機関の長の、何と申しますか、責任をいわば、担保として規定づけられているのだ、こういうようにはっきり考えていいわけでございますな。
  44. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) お尋ね意味は、必ずしも私、正確にお聞き取りできませんでしたけれども機関委任事務でございましても、委任を受けて、義務づけられてやります以上、実際の、事務処理につきましては、知事がそれぞれ補助の職員を使って、本来の団体の事務と同様に処理をしていくという点につきましては、全く変わりはない。
  45. 占部秀男

    占部秀男君 いま局長の触れた国の監督権の問題なんです。機関委任についての国の監督権の問題なんでありますが、この監督権というのは、われわれの了承している限りでは、一般的な意味における監督権であって、通俗のことばで言えば、最終責任は一応国にあるのだ、こういうような意味の監督権であって、直接その事務の、機関委任された事務の管理執行について、国または国の機関である大臣が知事を使うとか、あるいは知事にかわって直接の管理執行の責めを負うのか、そういうようなものではないと私は考えるのですが、その点は佐久間局長はどういうようにお考えになりますか。また行政管理庁として、どういうようにお考えになりますか。
  46. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 地方自治法の百五十条に、「地方公共団体の長が国の機関として処理する行政事務については、」「都道府県にあっては主務大臣、市町村にあっては都道府県知事及び主務大臣の指揮監督を受ける。」、こういう規定がございまするので、機関委任事務につきましては、国の指揮監督を受けるたてまえになっておりまするが、具体的にどのような指揮監督を受けるかということにつきましては、個々の関係の法令によって明らかにされておるわけでございまして、それぞれの法令の規定によりまして、相当国のコントロールの強いものもございまするし、それほど強くないものもございます。  なお、再々お尋ねの点でございまするが、この事務処理の実際におきましては、全く同様に、知事なり市町村長が責任を持って部下を使って処理をさせるという点については、何ら異なるところはございません。
  47. 稲木進

    政府委員稲木進君) ただいま行政局長お話のあったとおりであろうというふうに、私ども考えております。
  48. 占部秀男

    占部秀男君 そこで機関委任事務については知事が何といっても——まあ知事、市長というわけですが、今度の具体的にいまの地方事務官制度の問題については、これは都道府県の知事ですから、地方機関の長と言わずに、今後知事とはっきり言いますけれども、知事が相当管理、運営の執行の面については責任を持たなくちゃならぬわけです。ところが、現状はどうなっておるかというと、遺憾ながら、労働関係保険関係等については相当問題があるように、私は現実に各地を回って考えておるのですが、そこで具体的にまずお伺いしたいことは、人事権の問題なんです。一体この人事権は知事にあるのか、あるいは本省側にあるのか。私がちょっと調べたところでは、保険関係については、東京都のような場合は全部国の任命された保険部長、いわゆる国家公務員に人事権がある。そうしてこれはどっちでしたか知りませんが、六級職以下の職員の任免、これについて、労働関係だと思いましたが、都の職員である労働局の総務部長、これが官公吏併任の形で、国家公務員立場から任免しておると、こういうようなことを聞いて、だいぶん任免関係がややこしいのですが、人事権については、これはもう知事にはほとんどないというように聞いておるのですけれども、この点はいかがでございますか。
  49. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) この附則八条の地方事務官につきましては、これは国家公務員でございまするので、任免権は国にあるわけでございます。ただ、実際問題といたしましては、下級職員につきましては、一々本省で任免の関係事務を扱うことができませんので、府県の部長なり課長なりに委任をしておるという形がとられておるわけでございまして、しかし任免権そのものは、あくまでも主務大臣にあるという形でございます。
  50. 占部秀男

    占部秀男君 その場合にはやはり、事務吏員も技術吏員も区別もなく主務大臣であると、こういう形になっておりますか。
  51. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) この附則八条の職員地方中務、あるいは正確に申しますと、地方技官もございまするが、事務官にいたしましても技官にいたしましても、身分国家公務員でございまするから、ひとしく国に任免権があるということになっております。
  52. 占部秀男

    占部秀男君 御存じのように、地方公務員法では、これはもうもちろん知事がこの人出権の破局の責任者になっておるわけですが、この附則八条の問題だけについては、同じ知事の指揮権の中にありながら、人事権は本省関係にある、こういうことになっておるわけなんですね。
  53. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) この附則八条の職員につきましては、御指摘のように、人事権と、それから職務上の指揮監督権というものが分かれておるということで、非常にまあ変則的な状態でございます。問題がそこにいろいろ介在しておるのじゃなかろうかと思っております。
  54. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、一般職員の場合には、一般職は一般職なんですが、普通の職員の場合にはいいのですが、同じ地方事務官の中でも、いわゆる課長その他の責任のある立場にある者、この者についてはやはり同じように、知事は全くの権限はないのでありますか。
  55. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) これは厚生省労働省、運輸省、それぞれの関係で多少違いがあろうかと思いますが、お話しのような府県で申しますると、課長は、これはもう例外なく直接国において任免をいたしておるのでございます。
  56. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、人事権がないということになると、結局この知事の監督指揮権といいますか、監督権というものも、いわば何というか、包括的なもので指揮監督権という形に、形式的という言い方は少し酷かもしれぬけれども、実質のあまり伴わない、包括的な指揮監督権という形にならざるを符ないと思うのですが、その点はいかがなものですか。
  57. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) この行政調査会答申なり、臨調答申で、地方事務官制度を改善しろと言うております御趣旨も、いま先生の御指摘になったような、任免権と職務上の指揮監督とが分かれて別々になっておるというところから、いろいろな問題が起こってくるということに着目されたものというふうに考えられるのでございます。
  58. 占部秀男

    占部秀男君 次に、服務といいますか、執務体制の、結局は勤務条件の中の一部にも入るわけでありますが、服務、執務体制の状況についてもお伺いをしたいのでありますが、御存じのように、国家公務員地方公務員とはいいながら、同じ職場でほとんど同じような事務仕事をしておるわけですが、そうすると、一方では都の職員なり府県職員は、地方公務員法によっていろいろ規定されておる。ところが、その第八条の職員に限っては、これは国家公務員法で規定されるということになっていくのじゃないかと思うのですが、その点はいかがなものですか。
  59. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) そのとおりでございます。
  60. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、相当問題点が、同じ職場の人の中でも格差が出てくるのじゃないか。たとえば、これはいやな例ですけれども、政治行為のような場合に、地方公務員法によれば、懲戒の罰則の対象になっておる。ところが、国家公務員の場合は、あれはつまり刑事といいますか、何というのですか、刑罰規定になっておるわけですね。同じところで同じように知事の指揮下にありながら、扱い方が違うのじゃないか。また、たとえば給与、勤務条件についても、地方公務員では、御存じのように、これはもう佐久間さんその点の責任者なんだからよく御存じのように、団体交渉をして給与の問題、諸手当の問題、諸手当も給与ですが、あるいは勤務時間や勤務のいろいろな体制の問題、こういう問題については、団体交渉をして、文書協定で話し合いをすることができるわけですね。ところが、国家公務員にはそういう条項は私はなかったと思うのです。何か上に通ずる話を、不服を申し述べる自由があるとか何とかというところで、だいぶその間のあれが違うわけですね。これはもう同じ知事の指揮下にありながら、同じ仕事をしていながら、服務の条件が相当違ってくる基礎的な差別がここに置かれておると、こういうふうにわれわれはどうも考えざるを得ないのですが、その点はいかがでございますか。
  61. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 国、家公務員法と地方公務員法と、適用されます法律が異なってまいりますので、おっしゃいますような差異が出てまいります。
  62. 林虎雄

    ○林虎雄君 関連。いま占部さんの質問関連しますが、まあ保険関係職員とか、労務関係あるいは運輸関係の、国家公務員であって、知事の監督下にある者が若干あるわけですけれども、その人事権と監督権というものがそれぞれ分かれておる。これはいまお答えいただいたとおりでありますが、ただ困ることは、あまり例になるかどうかは別問題として、問題が起こった場合ですね、当該国家公務員が何か問題を起こしたと、問題にもいろいろありますけれども、そういう場合に、その責任というものは、地方首長は回避するわけにいかないのじゃないかと、これは道義的といいますか、そういう問題がたまにはあるわけですけれども、この点どう解釈なさいますか。
  63. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 知事に委任をされておりまして、知事が指揮監督の責任を持っておるわけでございまするから、それによって起こりまする責任は、当然知事が負わなければならないと思います。ただ、その場合に、それでは職員に対して今度さらに知事が処罰をするというようなことは、これは国家公務員になって、身分上は知事に権限がございませんので、これは任命権者に連絡をして、任命権者のほうで処分をするというような筋道になると思います。
  64. 林虎雄

    ○林虎雄君 その点がどうもすっきりしないので、たとえば例もあったわけですけれども、陸連事務所あたりで汚職事件を起こしたと、社会的には、世間一般では、知事の責任ではないかというふうに指摘されると、ところが、知事としては処分する権能がないと、こんなばかなことはないと思うのだが、これを何かすっきりする方法というか、今後に対処するお考えというようなものはありませんか。これは実際問題として困ると思うのですね。世間ではごうごうと知事に向かって攻撃されると、知事はやりようがないのだと、権限がないのだと言い切るわけにいかないですね。何かうまい方法ありませんか。
  65. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 自治省といたしましては、冒頭に申し上げましたように、両調査会答申のとおりに、地方事務官身分地方公務員に切りかえて、身分上も知事が任免権を持つという形にすっきりされることが、その解決としては一番望ましいのじゃなかろうかと、かような考えを持っておる次第でございます。
  66. 占部秀男

    占部秀男君 次に、給与の問題ですがね、給与も札当格差があるというふうに聞いておるのですが、これはつい四、五年前にこの問題が衆議院で問題になったときに、その当時、現在もそうでありますが、東京都の鈴木副知事、それから自治体の労働関係を代表して、渡辺君という都のやはり職員の組合の書記長が、これはまあ参考人として、衆議院の社会労働委員会の中で問題になった点ですが、だいぶ——そう大きくはないと思うのですけれども、副知事の言うには、やはり民間給与との関係等もあって、東京都には火京都の特殊心情もあると、そういうことで、幾らか給与が一号伴ないし二号俸なりの開きがある。あるいはまたその他でも幾らかの附きがあるということで、給与自体についても格差があるということから、だいぶ地方事務の側から不満があるということを聞いておるのですが、こういう点は何か自治省として調べられた点はございますか。
  67. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 調べた資料につきましては、ちょっと私いまございますかどうか、役所へ帰ってから調べてみたいと思いますが、一般に地方公務員のほうが給与が高い実情でございまするので、同じ職場におりながら給与の上で格差ができるということで、職員の間でいろいろ不満もあるということは聞いております。
  68. 占部秀男

    占部秀男君 これは非常に重大なことだと思うのですが、私が大阪へ行ったときに、大阪の公務員のアパートの中でそれを聞いた話なんですが、同じような大阪府につとめた人で、初めから同じに大阪府につとめた。一人は何かの事情でいま言ったほうへ行って、一人は府の職員に残った。ところが今日では給与が違ってくるし、かりに退職した場合でも退職金が違う、諸手当も違うということで、ところが、それが間の悪いことに、隣同士に住まっていたのです。奥さんが月給の問題を話し合ったところが、一緒の学校出て、一緒に行った連中で違うというので、うちの主人はほかに女をつくっているのじゃないかというので大騒ぎをやって、そこへちょうどぼくがアパートへ行って、これは余談ですけれども、いや、そういうわけじゃないのでということで、説明するのに骨折れたのですが、そういうようなことがたびたび全国的に行なわれていては、これは地方事務官をしている人たち仕事の意欲というものは、これは率直に言って欠けてきますよ。こういう点はもう少し積極的な、早く何か改善する方法をとらなくちゃならぬと思うのですが、これはいま余談ですからこのくらいにしておきます。  次に、人事の問題なんですが、何か厚生省労働省の話を聞くと、地方専務官の制度をなくしてしまうと人事交流ができないと、こういうことをだいぶ主張しているようですが、私の調べたところでは逆なんであって、課長級以上は確かに各県のそれぞれの保険関係あるいは労働関係のほうに人事交流が行なわれておる。ところが一般職員ですね、大部分は一般職員なんです。この一般職員というものは、他へ転出するなんということはもうほとんど、よほど運がよければ、いい場合はとにかくとして、それぞれの県下の職安なり、あるいは社会保険事務所になり、そういう職務にくぎづけされておる。ただその中でたらい回しが行なわれているにすぎない。したがって、上がっていこうにも、もう上がっていく頭がつかえてしまっているのですね。むしろそれよりも、東京都なら東京都、あるいは府県なら府県という大きなワクの中へ入って、保険へも行ける、建設へも行ける、衛生へも行ける、総務局へも行けるというぐあいに、広い中でやられたほうが、人事の交流としてもむしろいいし、仕事もマンネリにおちいらないと、こういうことは、実態も調べてきたのですが、そういう点は率直に言って佐久間さん、どちらのほうが正しいと思いますか。正しいというよりも、あなたの立場からどういうふうにお考えになりますか。
  69. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 私も実情は先生の御指摘のとおりだろうと思います。私も直接聞きましたところでは、たとえば、この中で一番新しい制度というのは、国民年金関係事務でございますが、府県で国民年金課を編成いたします場合に、課長本省から任命になってまいりますけれども、係長以下の職員を充足いたしますときに、府県のほかの課からみな希望者がなくて、人事当局が困ったという話を当時たびたび聞いたことがございますが、係長以下の職員の人事交流という観点からいたしますると、御指摘のとおりだと思います。
  70. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、私は、知事が機関委任の問題については管理執行の直接の責任者であるというこの一つのファクトと、にもかかわらず、地方事務官制度のもとでは、こういうような状態であるという事実の中から、この二つの大きな問題が生れてくるのじゃないかと思います。一つは、執行に当たっておる知事の責任がとれないのじゃないか。つまり最終の責任は国にあるのだけれども、知事が実際の責任を持たなければならない。ところが、この知事には、いま言ったように人事権はない。あるいはまた、規則はつくっているけれども、それを実際にどういうふうにやっているかということについても、実際はほとんどタッチできないような状態に置かれておるわけです。いろいろなそうした人事の問題あるいは給与の問題、服務条件の問題で格差がある。これでは知事が幾ら管理執行について直接責任を持ってやろうと思っても、事実上はできませんよ。これは無責任な制度ですよ。この点が一つ。  もう一つの点は、いま林さんがはしなくも触れた点ですが、東京都の場合でも、これは御存じのように、四、五年前に林天皇事件ということが起こって、東京都の保険関係には、保険部長でしたか課長でしたかの林君が天皇で、当時の知事は、これはまず大臣以下だと、こういうことで、林君はもう大きな汚職事件を起こしたけれども、知事は手のつけようがない。しかも外からは知事は無責任じゃないかと責められたので、あの当時の知事は安井さんだったと思いますが、泣きの涙でおったということがあるのです。  こういうように、仕事自体においても責任が持てないし、仕事の結果悪いことが起きても、これを規制するだけの権能がない。これでは幾ら知事がやろうと思ってもできないことであって、したがって、今日はどうしてもこの現状は、このままの中途はんぱな形ではならないので、どうにかこれを打開しなければならない、そういう時期にもうきているのじゃないか、こう思うのですが、この点についてはいかがですか。また、行政局長監察局長もお答えが願えたら願いたい。もしもお答え願えなければ、あと大臣なり管理局長からお答え願います。
  71. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 御指摘の点につきましては、冒頭にも申し上げましたように、私どもといたしましては、答申趣旨実現努力すべきものと考えております。
  72. 稲木進

    政府委員稲木進君) ただいまいろいろと御指摘のありましたようなことが、臨時行政調査会答申あるいは地方制度調査会答申の非常に大きな論拠になっておるというふうに思います。やはりそういうような、いろいろな御指摘になったような弊害が現行制度のもとにあるということがございますので、非常に具体的な事例もお示しいただいたわけでございますが、私ども調査する場合にも、いまお話しになりましたような具体的な立証的な資料をできるだけ整えて結論を出すという方向にいきたいと思います。
  73. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、この際監察局長にお伺いしておきたいんですが、この昭和三十九年九月の臨調行政事務配分に関する改革意見、いわゆる答申ですね、これにはこう書いてあるのです。「地方事務官制度の改善については、人事権がいまなお本省に属しておるということは、地方事務官を当分の間」——これは附則八条の問題ですが、「存置するということの地方自治法の規定の趣旨に違反している」と、こういうふうに書いてあるのですね。この点についてはどういうふうな見解を持たれているのですか。
  74. 稲木進

    政府委員稲木進君) 附則八条に書いてある趣旨は、当分の間地方事務官にするというような表現だったとたしか記憶するわけであります。つまりその条文ができてから十数年たって、「当分の間」というふうに書いてあるにかかわらず、十数年後の現在においても、なおかつ本来の姿になってないのはけしからぬじゃないか、こういうようなことが臨調の論旨だろうと思います。
  75. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、一体「当分の間」というのは、どういうふうな時間的な——非常に意地の悪い聞きようですけれども、 これ必要なんですから、まあひとつ、かんにんしてもらいたいと思うのですが、「当分の間」ということばは、これ常識ですと、せいぜい一、二年ということなんですけれども法律用語としてはどういうふうに時間的な経過を考えるのですか。これ、ぼくは法律はあまりよくわからないので、佐久間さんにも、それから監察局長にもお伺いしたい。
  76. 稲木進

    政府委員稲木進君) 附則の関係は、地方自治法関連でございますので、行政局長からお答え願いたいと思います。
  77. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) 私も法制局の専門家ではありませんので、正確には申し上げかねますが、その規定の趣旨、立法の趣旨によりまして、「当分の間」が一、二年という場合もございましょうし、相当長期間にわたるという場合もあろうかと存じます。
  78. 占部秀男

    占部秀男君 この点について、実はさっき申しました、四、五年前に衆議院の社会労働委員会で参考人として呼ばれたときに、東京都の副知事の鈴木さんが——その当時地方自治法のあれは立案の中で、作成者の一人としての立て役者であった。あれをつくったときのことについて陳述をしておるのですね。その陳述を私ちょっと調べてみたんですが、鈴木さんの陳述はこういうことを言っておるのですね。  当時、「当分の閥」ということを入れたのには二つ理由があった。一つは、率直に言えば、各省間のなわ張り、セクト、自分のほうの仕事をやりたくないと、これが一つあったと思う。それからもう一つは、その当時は国家公務員法、地方公務員法というものはできてなかった。まだ官公吏服務紀律の時代ですね。官公吏併用時代であった。そこであの中にも「官吏」という字を附則第八条に使っておって、あの当時そういうような時代であったので、一応各省間のセクトがあったから「当分」ということを入れたのであるけれども、その「当分」というのは、必ず国家公務員地方公務員というふうに、同じ公務員でも、法体系の違ったものが出てくる。そのときははっきりさせるべき問題であるとしてあれはやったのだと、したがって、今日はもうこの制度、体系がはっきりしているのだから、これはもう当然国家公務員ではなくて地方公務員にすべき問題なんだ。それをいましてないということは、これは率直にいえば、各省間のセクトの問題なんだということを言われているのです。さらに、それにふえんして、特に地方自治法施行規程という経過規定の政令の中に書き上げている。あの規程の中にこまかく出ていますね。三十八条に規定しているということは、全くこれは単なる暫定措置であるということの趣旨であると、こういう点も法律技術の立場からはっきりしているのだということを言われているのですね。こういう点は、もう少しひとつ、ぼくは、佐久間局長ね、鈴木名次官のあなた後継者であるところの佐久間局長は、もう少しはっきりとこういう点も主張してもらいたいし、行管としても、そういう立法当時の事情というものは、すなおにひとつ受け取って、この点を処理してもらいたいと思うのですがね。お二人の御見解はいかがでございますか。
  79. 佐久間彊

    政府委員佐久間彊君) まあ「当分の間」がどのくらいの期間にわたるかということは申し上げかねますけれども、「当分の間」というのは、暫定措置であるということは、これは御指摘のとおりでございます。私も当時この立法に若干の関係もいたしましたが、その当時この「当分の間」がこんな長くなろうとはもちろん予想もいたしておりませんでした。暫定措置でございまするので、なるべくすみやかにすっきりした形にすることが当然であろうと思いまして、その方向で私ども努力をしたいと思います。
  80. 占部秀男

    占部秀男君 実はこの問題については、自治法の別表の第三、第四の知事あるいは市長に対する機関委任の内容の問題と、なぜこれがかようにこの三つの陸運、労働保険関係だけが残されているのかという、その大きな問題点があるのですがね、やはり管理局長なり大臣なり、まあ佐久間さんも一緒にいてもらわなければ、結局質問してもこれはどうにもならぬ問題——まあ監察局長に御迷惑かけるだけの問題だと思うので、これはひとつ、きょうは保留しておいて、最後に今度の調査の問題だけ、これは監察局長のもう当該管轄の問題ですから、この問題だけ一つして、ぼくは質問を終わりたいと思います。  そこで飛ばして申しますが、先ほど私が今度のこの監察実態調査に対して、どういう目的でこれをやったのかと、こういうお尋ねをしたわけでありますが、あなたは、各省反対していると、そこで反対理由があるのかないのか、ほんとうにその理由があるのかないのか、実地にひとつ調査したいと、こういうふうに考えていると、こういうふうに言われたのですがね。これはぼくはけしからぬと思うのですよ。というのは、もう臨調関係答申その他の答申もあり、しかも地方自治法の、ほんとうに「当分の間」というふうに暫定措置ということになっておって、この問題がどちらかへ行くということは、これはもうはっきりした問題である、きわめてはっきりした問題である。労働省がいやだから、厚生省がいやだから、それじゃこれを手心を加えようかというふうな、そんな問題では私はないと思うのですよ、問題の筋が。そういう点、あなたのいま言われた、今度の実態調査の目的ということでは、私は解せないのですが、そういう点いかがでしょうか。
  81. 稲木進

    政府委員稲木進君) 先ほど申し上げたことが、あるいは私の言い方が不十分だった点もあったかと思いますが、関係各省反対しているということは事実でございます。そこで反対理由はしからばどういうことかということになりますと、こうこうだというようなことを何方条かあげておるわけです。私どもはもちろんこの反対理由に、何といいますか、相当な納得できるような点があるかどうかということを見るということを申し上げたのでありますけれども、そのことは、なぜそういうことを考えるかと申しますと、地方事務官制度をやめて、これを全部地方公務員に切りかえるということによってその業務が将来円滑に動いていくことの担保としてどういう手をしからば新たに考えていかなければならぬのか、こういうことをやはりひとつ考えていく必要があるのではないか。それには、各省反対しているのは、地方公務員にしてしまうとこういうことが起こるから困るのだ、こういうことかと思うのであります。しからば、それに対しては次にこの地方公務員に切りかえる場合において現状のままただ身分を切りかえただけで仕事がうまくいくというものであるのか、あるいはそのほかに何らかプラス・アルファとして新しい手を打つということも考えていかなければいかぬのじゃないか、そういう点も考えていかなければならない。まあ、そういう考え方でやはり各省反対理由というものは、これはわれわれとしては行政管理庁としては詰めていく必要があるのではないか。そこで、いろいろなデータを整備し集めてそれを整理して、そういうものを究明していきたい、こういう趣旨でございます。
  82. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、結論的に言えば、臨時行政調査会答申が出ておる、その答申を受けて立って実態調査をしておるのだから、一口に言えば、今度の調査というものは身分移管の方向、身分移管をするんだという方向でそれをやるためにはどうふうな障害があるか、またどういうふうにやったらいいか、こういうような形で調査をしておる、かように考えてよろしゅうございますな。
  83. 稲木進

    政府委員稲木進君) 大体そういう趣旨でこの問題の調査に取りかかったというふうに御了解願いたいと思います。
  84. 占部秀男

    占部秀男君 これはあとあと影響がありますから、ことばじりを取っつかまえるわけではありませんが、はっきりしておきたいんですが、大体そういう趣旨だというのでなくて、「大体」ということばは、いや、これはあとで「大体」なんだから、どうもあれだったと言われたら困るので、その点もう一ぺんひとつはっきり速記録に残して……。
  85. 稲木進

    政府委員稲木進君) 特にこの問題につきましては、たとえば例を申し上げるとどうかと思いまするけれども、運輸省あたりの陸連事務所の業務というものは、現在の地方事務官制度ではいけないんだ、これは全部国家公務員に切りかえて運輸省の直轄の仕事としてやっていくべきである、こういうような議論があるわけでございます。われわれの調査は、一応先ほど申し上げましたような趣旨でやっておりますけれども、しかし、今後の調査の結果で地方事務官制度に切りかえることが非常に、かりに運輸省のほうの言うような問題が出るか出ないか、私どもいまの段階ではちょっと予測しかねますので、そこで大体、こういうふうに申し上げたわけです。
  86. 占部秀男

    占部秀男君 じゃあ、逃げるために「大体」ということばを使ったのじゃないんだ、こういうふうにひとつ了解しておきます。  そこで調査の内応を、これ、どういうふうな結果が出ているのだということは、これはまだ仮定の問題でありますから、私はきょうは一切触れません。この次にまたその機会があると思いますが、ただ念を入れておきたいのは、いやみに聞こえたらばひとつかんべんしてもらいたいと思うんですが、ぼくはすなおな人間だからいやみを言う人間じゃないのだけれども、そういうふうにあるいは聞こえたらかんべんしてもらいたいと思うんですけれども、この調査事項、質問事項なるものをぼくもぼくなりにある方面から手に入れたわけです。その中で、なるほどもっともであるという事項がほとんどでございました。その点は私も了承するんですが、ただひっかかる点があるんですね。というのは、調査対象を、一般職員調査をしたと先ほどおっしゃられましたな。私はその調査することは必要であると思うんですが、その前に、労働省なり厚生省なりからいわゆる怪文書と覆うわけにはいかないな、機密文書的なものが——あるいは機密文書と言うのも速記の上だから惑いから、指導書といいますかな、そういうものが流れて、それで課長なり、いわゆる直接本省の息がかかって、あちらこちらへ栄転していくクラスの人たちを通じて職員に、むしろ身分移管反対である、そういうようなサゼッションというか、圧力をかけたという事実がある。ぼくはこの問題を問題にしたくありませんから問題にしませんけれども、もし厚生省なり労働省なり何か言ってくれば、具体的にどこで、いつ、こういう人間がこういう人にこう言われたということまで、われわれは三つ四つつかんでいる。それを証人に出してもらうときには出してもらうということをはっきり言っておる。こういうはっきりした点をつかんでいるのです。これは別ですけれども、そういうような中で今度の調査事項の中は、あなたは一体身分移管をされたほうがいいのか悪いのかという附き方があるのですね。もしも、そういうことが行なわれているのでしたら、これはどうも監察局長がさっき言われたこととはちょっと離れた、中立というよりは、むしろ身分移管を抑えるための職員からの、何といいますか、口実を集めるような結果になる、こう思うのですが、私はこの問題については問題にはしません。ただ、かりにそういうような結果があがった場合に、職員がいいのか悪いのか聞かれた場合に、相当そういう事情があるのだということを私はもう計算の前提に置いて、ひとつ行管としてこの問題を扱ってもらいませんと困るのですよ。その点ひとつお約束願いたい。
  87. 稲木進

    政府委員稲木進君) いまお話しのような点は、私もうわさとして実は聞いております。そういう意味合いで、そうした単なる担当職員の希望といいますか、意見を聞くというようなものは、なるべくわれわれの調査資料としてはそんなに重要に考えないようにしたいというふうに思っております。
  88. 占部秀男

    占部秀男君 もう一点だけ。この調査の内容で何かILO条約の問題について関連して聞いているというので覇が、これはILO条約の問題はわれわれのほうのいわゆる職員関連ということになると、業務上の問題でなくして、職員の給与、勤務条件の問題に関連してくる。それは即、いま公務員制度審議会で論議になっておる国公法、地公法、これに労働基本権を盛るか盛らないかという問題にも関連してくる。これは特に調査の内容としては行き過ぎじゃないかというかうな感じを持つのですが、この点はどういうふうな調査のやり方をしたのですか。
  89. 稲木進

    政府委員稲木進君) ちょっと私らも理解できないのですが、おそらくこういうことじゃないかと思うのですが、職業安定関係行政につきまして、ILOのあれは施行以前だったと思いますけれども、つまり全国組織を持った職業安定の機構をつくれ、しかも、職業安定の機構については政府の管理下といいますか、ちょっとことばはしっかり正確に言えませんけれども、そういうようななにがあったわけでございます。その関係の問題じゃないだろうかというふうに私思うのでございますけれども
  90. 占部秀男

    占部秀男君 それじゃ私は一応きょうはそういうことで終わって、そしてあとでひとつ両大臣管理局長に来ていただいて、監察局長にももう一度ひとつお願いしてやりたいと思います。  そこで最後に、自治省は弱いと思うのですよ。佐久間さん、あなたは非常に努力してくれているのだけれども自治省は弱過ぎる。「当分の間」というのに、いまさら行管実態調査段階じゃないと、ぼくは思うのですよ。むしろ、あなたのほうで積極的に附則八条の改正の問題を中心とした地方自治法改正関係法規は各省に頼んで、もう今国会は出さなくちゃならぬ時期じゃないかと思うのです。ひとつ、大臣にもあなたからもハッパをかけてもらいたい。今度、大尉が来たときにその点よく、じっくり質問いたしますから、法律を出す、出さないの問題ですから、局長のあなたにそれを言えと言ったって無理な話ですから、その点は言いませんけれども、その点だけ一つ、要望してきょうは質問は終わりたいと思います。
  91. 林田正治

    委員長林田正治君) 本件に関する調査は、この程度にいたします。     —————————————
  92. 林田正治

    委員長林田正治君) 次に、弊、一案行政に関する件を議、題といたします。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 千葉県警が二月七日の富里空港反対派の県庁陳情について、昨日十六日、三名の逮捕をしておりますが、御存じですか。
  94. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 昨日の件については報告を受けております。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 これは、県の告発または要請によるものですか。
  96. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 御質、附の点は、たぶん玉名の逮捕について告訴があったかどうかという御質問だと思いますが、これは告訴とか告発はございません。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 では、被害者の県と打ち合わせをした上で警察が措置をなさったのでございましょうか。それとも警察独自の一方的な手段で逮捕するということになったのでしょうか。
  98. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 逮捕そのもの、つまりこの犯罪捜査そのものは警察独自の判断だと考えます。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 いや、この事案そのものについて、そうすると、県当局との打ち合わせなり話し合いなりというのは全然持たれないで、警察だけでおやりになった、こう考えてよろしいですね。
  100. 秦野章

    政府委員(秦野章君) この事案の背景と申しますか、その経過から御説明申し上げたほうがおわかりいいと思いますので。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 それはいいです、それはあと私のほうで聞きますから。
  102. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 警備実施と申しますか、警察官の出動そのものについては、県庁側の要請があって制服部隊が出動したのでございますが、それに関連して発生いたしました事件そのものを逮捕そのものをするとかしないとかいう問題は、警察独自の判断でございます。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 逮捕者の容疑は何ですか。また、逮捕者の容疑に間違いはございませんか。
  104. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 逮捕者の容疑は、建造物侵入罪でございます。間違いがあるかどうかという問題については、実は、私も、けさとりあえずの報告を受けておるわけでございますけれども、なお十分慎重に調べてみたいと考えております。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 その中に加藤良作という逮捕者がおりますね、これは誤認逮捕であるから釈放をするということで、昨晩釈放をされております。誤認逮捕だから釈放をするから迎えに来てくれと、こういう県警からの御連絡を私ども受けたわけであります。誤認の内容は何ですか。
  106. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 私どもがけさとりあえず受けた報告によりますというと、二月七日の二千名ばかりの千葉市内におけるデモが県庁わきの公園を到達点として行進をしている途上、県庁に押しかけて知事に面会を求めた。二千人ぐらいの行進だったようですけれども、そのうちの二百人ぐらいが県庁の玄関のところへ来て面会を求めた。それで県庁側としては、約三十人の職員を玄関前に配列して、知事は三十名以内の代表と会うということであったようであります。しかし、そのことは十分納得できないので、まあ入れろ、入れないということで玄関でもみ合った。で、ガラス戸を締めて小さい入口だけをあけておったという状況のようでございますけれども、そこでもみ合ってガラスを三枚ぐらい破損させて、そういうもみ合いの中で結局中へ二百人ぐらい入っちまった。その間、警察といたしましては、もちろんそういうデモ隊の計画もわかっておったし、県庁に来るという状況もある程度わかっておったようでありますけれども、事の性質上そんなに十分警戒をするというような必要もない。県庁側の意向も、あまり刺激的なことはしないほうがいいという考えもおありであったし、警察もその考えは同感でありますので、制服隊の配備というような問題については、そこへ出しておらなかった。まあ、若干の私服は出しておったというような状況のもとで、その玄関のトラブルが起きたわけでございます。そこで警察としては、写真はとっておったようでございます。まあ、ガラスをこわして中へ入っちゃったのですから、これは法律上は建造物侵入罪に入った者はなるわけでございます。しかし、建造物侵入罪になるからといって、ことごとくこれを検挙するなんということが適当でないことは当然でございますので、当然そのおもな者を、やはりこれは事件でございますので、捜査をしなくちゃならぬということで、結局逮捕令状を三名についてとったことになるわけでございますが、ただいま御質問の加藤という人の容疑につきましては——結局その三名を選んだというのは、まあ、全部入ったのだけれども、おもな者、先頭を切ったおもな者ということでしぼったというのが実際のようでございます。で、そのしぼったしぼり方は、率直に申し上げますと、写真の面割り——写真でもって人を特定するというやり方。で、警察官がこの人はこういう人だということを、よくこの人を知っている警察官の証言と、それからまた参考人、二人ばかりございまして、これは結局合計三人の証言で写真で特定をして、そして令状請求をしたというのが経過のようでございます。ところが、昨日の朝、この玉名の者を逮捕して調べておる中で、この加藤という人の供述からして、まあ入ることは入ったが、先願切って入ったという状況ではないというような感じがその供述の中から出てきたという、そういう状況。それから、供述のみならず諸般の状況から見て、少なくとも先頭を切った、そういう状況のものではないというような感じを持って、これは釈放してさらに捜査を再確認——調べるということが適当であるということで釈放したと、こういう報告を私ども受けておるわけでございます。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 その報告が千葉県警から正式に出たものとすれば、これは千葉県警を私どもあらためて告訴して問題にいたします。事実は全く違います。  そこで、念を押しておきますが、いわゆるその警察の言う住居侵入乱入事件というものには、同じように入ったわけでございますが、時間的に、いわゆる制止している中で入ったという時限と、それから、制止した点はまずかったので、中へ代表者を入れますという許可の上で入った時限と二つある。二つあるわけです。加藤良作は——その曲に伺いますが、入ってよろしいというときになって県庁の中に入ったことが、これが住居侵入になりますか。
  108. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 管理者がその立場で、入っていいと言ったものは、侵入になることは当然ないわけでございます。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 加藤良作は三回入っている。県庁の中に三回入っている。ところが、ガラスが割れて、大ぜいの者が入ったときには、県庁の玄関の相当距離の芝生の上に腰をおろして、ガラスが割れて入るのを見ておって、その中には入っておらない。そこで今度は県庁の人が来て、代表者に会うから代表者を出してくださいと言われたので、自分の部落の代表者をさがしに入ってよろしゅうございますか、中にさがす人がおるんですけれども——けっこうですというので入った。ところが、参りましても部落の代表者がいませんので、しかも自分は旗を持っておりますから、旗を持って県庁の中をうろつくというのはまずいだろうというので、外に旗を置きにいきまして、ほかの者に族を渡しまして、それでは代表者がいないのならば私がその代表になろうというので入った。ところが、お前のほうの代表は来ているよと言われて、代表にならずに出てきた。そこで部落の者と一緒に食事をして、県庁の中でお湯を飲ませるということだったんで、お湯を飲みに入った。入りましたのはこの三回でございますけれども、この三回は、制止している声を聞かないで入った、あるいは器物を破損して入ったという、そういう状況の中ではありませんで、正常な状態になってから許可を受けて入っているわけです。これは警察でも認めているわけです。はっきり認めておるのであります。誤認したということを認めておる。誤認だという一札を書けということに対しましては、ちゅうちょをして書きませんでしたけれども、誤認逮捕だということを明らかに認めておる。これを認めない、いまのようなことをおっしゃるとするならば、私もはっきりと黒白をつけざるを得ない。事実はそうです。で、いま局長は、刑事が結局証拠として何でとったか、写真でとった。写真には場所はわかりますけれども、時間の明示は写真の上には出てきませんよ。そこで加藤に写真をとられたかと言ったら、その部落の代表をさがしに許可を受けて県庁の中に入ったときに、盛んにパチパチ写真をとっておったので、その中に私が入れられたんでしょう。そこで加藤は、その証拠と言う写真を見せてください、そのいわゆるあなた方の不法侵入だと言うときにはいなかったんです、いるはずがないが、いると言うならばその写真を見せてくださいと言いましたけれども、これは警察は加藤に見せませんで、本人が言うのに、その写真は正常な状態になってからの写真である。それで非常にそのいわゆる器物を破損して入ったときには、警察の写真をとる人たちは一人もいなかったんです。平静になってしまってから盛んに写真を写しておる。こういう状況で写真がとられておる。これはもう加藤良作は、取り調べの警察側も明らかにいわゆる容疑の内容は具備しておらないというので釈放をされたわけでございます。こういう明らかな誤認逮捕ということを軽率に行なっておるわけです。  そこで、私は法律的な点を法務省関係伺いたいわけでございますが、その前に、当時の状況というものを局長は御存じないようでございますから、ただいま御報告だけのようでございますので、当時の状況は、二百人程度の者が中に入ったということでございますが、ここに参りましたのは、結局、県庁を終点に流れ解散をするというので、二千人がそのまま来たわけでございます。その中には五百人程度の女の方がいる。そこでこの女の人たちは県庁に参りまして、県庁で便所を使わせてもらおうということで参った。すると、全部戸を締めてしまいまして、便所を使わせてくれと言う者まで全部これを退けたわけでございます。しかたがなくて女の人たちは自動車のかげや何かで用を足すというような、全く人権じゅうりんに等しいような仕打ちをいたしましたので、何だ、女の人が外で便所ができるか、便所だけ使わせろということで、戸を開けろ、開けないということが始まった。そのときに警備部長は、こういうデモを今後するならば、警視庁の応援を受けて天変地異同様の取り扱いで徹底的な検束をするという放言をしているわけです。こういう一つの政治問題の行為ですよ。それに対しまして天変地異同様の取り扱いで検束をする、警視庁の応援を待って検束をするなどというようなことを警備部長は放言をしている。こういうばかなことをするから、結局誤解をする一つの原因にもなるわけでございます。ところが、県の責任者は、一応全部締めましたけれども、いまの措置は間違っておったので、全部戸を開けますから、代表者の方に会いますからお入りくださいということで、戸を締めたということに対しましては、出納長も、知事も陳謝をしているわけです。しかし事件は事件だと言ってこれを取り上げたことになるわけでありますが、とにかくそういうふうに便所を使わせてもらいたいというような要求から、戸はどこも開けておかないので、挑発もあって大ぜいが県庁の中に飛び込んだということで、群衆心理による突発事件であって、県庁に乱入しようとか、県庁へ行って器物を破損しようとかいうような計画的な犯意のもとに行なわれたことではないと私どもは思うわけでございますが、警察では群衆心理による突発事件だとはお考えになっておりませんか。計画的な犯行だという御見解ですか。
  110. 秦野章

    政府委員(秦野章君) このデモがそもそもそういう破壊的なものだというふうに、これはおそらく現地警察もそうは思っていないと思っておりますけれども、県庁に入る、入らぬのもみ合いはきわめて偶発的なものであるというふうに考えております。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 そこで法務省に伺いますが、住居侵入の要件というのはどういうことですか。
  112. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) ゆえなく人の看守する住居あるいは建造物——本件の場合は建造物ですが——建造物に侵入するということが構成要件でございます。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 個人の家に侵入した、あるいはその侵入された被害者が全然問題にしないような場合ですね、通例住居侵入として取り上げておりますか。
  114. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 問題にしないというのも、いろいろあると思いますが、ごめんくださいと言って、どうぞお入りくださいという意味で入ったのであれば、これはもうもともと犯罪構成要件に該当しないということが言い得ると思いますが、まあ、何らかの事情がありまして、無理に入った、そこで一たん住居侵入罪が成立した後にまあいろいろ話がついて、さっきの侵入行為はもういいということもあり得ると思いますが、その場合、理論的に言えば、一たん住居侵入は成立したものと、こういうふうに考えていいだろうと思います。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 私は具体的な判例を聞いているのですよ。個人の家の場合、被害者が、問題にしない場合、検察当局がこれを取り上げて住居侵入たる犯罪を構成した例がございますか。
  116. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) ことごとくの例をいま存じませんが、さようなことはきわめてまれであろうと思います。
  117. 加瀬完

    加瀬完君 まれじゃないのです。通例、個人の場合、個人の被害者のほうから届け出のない場合取り上げておらないのが通例でございますね。これはお認めになりますね。
  118. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 通例としては、そういうのは取り上げておりません。
  119. 加瀬完

    加瀬完君 許可なく侵入したが、許可しなかったことは当方の手落ちであったということで、被害者があらためて立ち入りを認めたような場合は、個人のうちならばこれは当然問題になりませんが、県庁のような建造物であった場合でも、いまの立ち入り禁止をしたことは私どものあやまちであったからそれは取り消します、あらためてお入りくださいというような条件になりました場合どういうことになります。
  120. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) はなはだ問題が微妙でございますが、一般的に言いまして、建造物の管理者の正当な阻止の意思に反して侵入すれば、これは理論上は侵入罪になると思いますが、ただその場合、侵入を、入ってくることをとめるということが正当でない場合もあり得るわけです。そういうときには、また別の問題が起こってくると思います。
  121. 加瀬完

    加瀬完君 私はそんなことは聞いていない。いわゆる不法侵入という形式で入ってきたのだが、後刻、不法侵入のような形をとったのはこちらの手落ちがあるから、とびらを閉じていましたのを取り消して、全部あけます、さあ全部中にお入りくださいという状態になった場合、最初の、形式的には不法侵入のような形がとられておりますが、これが一般の住居侵入のような形で同等に扱われる性格のものですかどうですか。
  122. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 構成要件は、ゆえなく他人の看守する建造物に入ってはいかぬということでございまして、「ゆえなく」ということの解釈になるわけです。そこで、形式的に入ってはいかぬと言っておっても、それが不法であり不当である、それを排して入るということが許される行為であるというような場合には、かりにたとえ形式的に管理者の意思に反して入っても、それは「ゆえなく」には当たらない。したがって、建造物侵入にはならぬという場合があるということであります。
  123. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問と違いますが、それならば、県民が知事に陳情をしたい、抗議をしたいということで面会を申し入れた場合、ゆえがあることになりますか、ないことになりますか。
  124. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 県民が県知事に対していろいろ県政について陳情をするとか、あるいは要求をするために面会を求めるということは、多く非常に広く正当な理由がある場合があろうと思います。
  125. 加瀬完

    加瀬完君 不穏な形勢で、知事に被害を加えるとか、県庁の建造物の器物を破損するとかという意図を持って来た場合は別ですが、そうでなければ、人数が多いならば、多いものを制限するという方法はとり縛るということなんで、請願陳情の権限というものは住民にあるわけですから、それを全部のとびらを締めて、しかも、女の人が便所に行くのまでシャットアウトするというような形は、これは正当な行為と認められますか。
  126. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 本件の具体的な事実は、私、必ずしもつまびらかにしておりませんので、本件についてとやかく申すことは、私、現在の立場から差し控えたいと思いますが、一般的に言いまして、県民が県庁に行って平穏に県知事に対して面会を申し入れる、陳情のために面会をしたいということは正当な行為として認められると思います。
  127. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、時間もございませんので次に進みますが、刑法の百三十条に言う単なる住居侵入と刑法の二百六十一条による器物損壊の罪とは、どちらが重いんですか。
  128. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) いま条文がないのであれですが、住居侵入のほうが重かったと思います。
  129. 加瀬完

    加瀬完君 住居侵入は、三年以下の懲役または二千五百円以下の罰金であります。器物損壊のほうは、「三年以下ノ懲役又八二万五千円以下ノ罰金若クハ科料二処ス」とありますね。器物損壊のほうが重いじゃないですか。
  130. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 間違いました。器物損壊のほうが重くなります。
  131. 加瀬完

    加瀬完君 器物損壊は、これは親告罪でございましょう。被害者が器物損壊については全然問題にしておりませんし、建造物侵入もみずからの手落ちだとしてあらためて立ち入りを認めている場合、この状況は、住居侵入の罪として警察なり検察庁なりが行為をする場合でも考慮さるべき条件とはなりませんか。
  132. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) その間のあらゆる事情はすべてこれは考慮して適切な処置をすると思います。
  133. 加瀬完

    加瀬完君 もう一回申します。器物損壊のほうが重いでしょう。いまの事案に当てはめてみれば、大きなガラスを何枚もこわされましたけれども、これは、私どものほうに手落ちがありますから、器物損壊ではわれわれのほうは告訴をしたりなんかいだしません、住居侵入ということだけれども、これも、私どもの手落ちで、一枚残らず全部とびらを閉じて県庁の職員がスクラムを組んで、来ればけ倒すぞという態勢を示すことは、これはわれわれのほうにも行き過ぎがあるので改めます、全部戸をあけて皆さんを入れますからと、こういう意思表示があったわけですから、住居侵入にいたしましても——住居侵入が成立するような方法は間違いであったという取り消しをしておるわけですから、それで犯罪がすぐ消えるか消えないかは問題にしても、十分情状の上ではこれは考慮さるべき要件と認めてよろしゅうございますね。
  134. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 住居侵入あるいは建造物侵入というような犯罪におきましては、被害者の意志というものは十分尊重すべき要素であると思います。
  135. 加瀬完

    加瀬完君 刑法百三十条の住居侵入は、この住居侵入と立ちのき要求に対して退去をしない、この二つのことが犯罪の要件になっておりますね。
  136. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) ただいまおっしゃったとおり、不法侵入の罪と、それから要求を受けて退去しない不退去の罪と、何方が一緒に規定されております。
  137. 加瀬完

    加瀬完君 それで、立ちのき要求は取り消します、住居侵入は認めますと、建造物の責任者が言いました場合は、それでも住居侵入が成立しますか。
  138. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 最初申し上げたとおり、被害者の気持ちというものは十分尊重すべきでありますが、一たん不法に侵入した場合を仮定しますと、あとで宥恕の気持ちがあったとしても、理論上はそこに一たん不法侵入の罪が成立すると言わざるを得ないと思います。
  139. 加瀬完

    加瀬完君 立ちのき要求をしましたが、あの立ちのき要求は取り消しますと、取り消したのですよ。住居侵入は防ぎましたけれども、これは取り消しまして、どうぞお入りくださいということになったのですよ。そうすると、一体この建造物の責任者の意思というものは、お入りなさい、立ちのき要求はいたしませんということに確認されたわけですね。初めからそうであったというのですよ。下僚の、心配しなくてもいい心配の非常な行き過ぎがああいう形になったので、あれは初めから責任者の意思ではございません。ですから、立ちのき要求はいたしません。戸も全部締めません。あけますということになったのですよ。これで住居侵入が成立しますか。あれは間違いだと言っているのですよ。
  140. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) 問題は、不退去の場合と侵入の場合とちょっと違うと思うのですが、不退去の場合ですと、立ちのき、要求をしても立ちのくまでに、直ちにさっと出るわけにはいきませんし、おのずからそこに歩いて出ていく幾らかの時間がありましょう。その間に、いや、まあ立ちのけと言ったけれどもいいわ、まあおりなさい、あるいは取り消すというようなことであれば、大体不退去罪は全然成立する余地はない場合もあろうかと思います。侵入の場合はまたやや違うと思いますが、入ってきては曲ると言うのを、ゆえなく立ち入ったというふうな場合には、一応そこで成立することが考えられるわけでありまして、あとは情状の問題と申しますか、そういうことになると思います。
  141. 加瀬完

    加瀬完君 課長さんの御説明によりますと、住居侵入といっても、ゆえなく住居に入ることをとめるわけにいかない。県庁に県民が陳情、請願をするような場合は、これは当然そういう権利が保有されていると認めるべきだ、それならば、県民は県庁の中に入る当然の権利というものがあるわけですよ。しかも、県側ではあれをとめたのは間違いであったということであれば、とめて入れなかったということを取り消しているわけですよ。それで一体住居侵入が成立しますか。
  142. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) まあ、本件の具体的なことを離れまして、県民としては県庁に出頭して、県知事に面会していろいろ県政について陳情するということは、県民として正当にやれることでありまして、平穏にやる分には、それをゆえなくとめるとすれば、とめるほうが悪いという場合が相当多いだろうと思います。ただ、それは整斉秩序立ててやるべきであって、その辺のことは私はよくわかりませんから本件については何とも申しかねますが、一般論としては、そういう場合、とめるということはむしろいかがかと思われるような場合があると思います。
  143. 加瀬完

    加瀬完君 そこでさらに伺いますが、この陳情デモは、関係住民の八〇%が反対関係七ヵ町村か反対決議をしている新東京国際空港について、反対住民が県に対しまして住民の立場を尊重してくれという一つの政治問題の解決として行なったことなんです。それで、それに対しまして、いまのように、まあ県庁が全部戸締めを食わせましたか、それはまずいというので、やがてこれを取り消して、全部開放して、代表者と会った、こういう内容でございますが、さらに知事は、この問題はわれわれのほうにも手落ちがあったので、警察としても穏便な取り扱いをしてもらいたい、こういう意思表示を七日に言っておるわけです。さらに昨晩も、全部のとびらを締め切って県庁内に一人も入れないような措置をとったことはまずかった。今後は地元との折衝を円滑にするためにも、事件にしないように善処を望むというように希望してきたんだが、今度の問題でも処罰をなるべく寛大にしてもらいたいという要請をしているわけです。こういう状況の中で強制逮捕をするということが、はたして行政的に妥当だと言われますか。
  144. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) どうも具体的な事情が的確にわかりませんが、強制捜査に踏み切ることもやむを得ない場合もあり得ると思います。
  145. 加瀬完

    加瀬完君 いまのような状態の中で強制逮捕をすることが妥当ですか。政治問題ですよ、これは。被害者は、自分のほうにも手落ちがあったんだから、これで住居侵入とかそういったことはやらないでもらいたいという意思表示をしておるわけですよ。しかも、いま言ったように、これは個人の家ではなくて、県民が当然正当な状態の中では自由に出入りのできるはずの県庁ですよ。それを、県に何も相談もなく、警察が一方的に逮捕をする、強制捜査をするということが妥当ですか。
  146. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) まあ県庁に出頭して知事に陳情するということは、一般論として、多くの場合正当視されるということを申し上げましたが、それはあくまでも秩序立った平穏な方法でやるべきでありまして、目的がよければすべていいというわけにもまいりません。やはりガラスを打ち破って入るというようなことは、目的がいいからといって、それですべて正当視されるというわけにもいかんと思います。もちろん、それでも被害者として必ずしも厳罰を望まぬということは、十分これは考慮すべきことではあります。それだからすべて強制捜査は妥当を欠くというまでに私は言うだけの材料もないわけであります。
  147. 加瀬完

    加瀬完君 私の言うのは、何も器物を破損してもいいとか、大衆で乱入してもいいということを認めろということを言っているのではない。器物破損というのは、結局、シャット・アウトして、女の人を便所にも行かせないというような中で、突発的に群衆心理で生じたことなんです。しかし、それは問題に全然被害者のほうでしていない。おらない。それから住居侵入のことについても、あれは私どもで戸を締め切ったのは間違いだから、あけまして皆さんを入れますということになっておるわけです。そういう被害者の意思にもかかわらずですね、しかも警察に、この問題は穏便に取り計らっていただきたいという知事の要請もあるにもかかわらず、警察が強制逮捕に訴えた。しかも、その強制逮捕は誤認ですよ。そういう確証もない中で強制逮捕をしておるというようなことまでしなければならない妥当性というのはどこにもないだろうということなんです。この点は私は警備局長に聞きます。  もう一度申し上げますと、先ほどから申し上げているような状況の中で、被害者が、重いほうのはずの器物破損なんぞも全然問題にしないで、これはわれわれのほうにも手落ちがあったんだから、ああいう状況の中ではガラスを割るというような刺激をわれわれのほうでも与えた、反省をしなければならない点もある、住居侵入についても、女の人を便所に入れるところまで一人も入れないというような防ぎ方をしたことがまずかったんで、これはあらためて取り消して中へ入れます、あとでお茶も出すというような状況で、この問題はひとつ空港反対という政治的な問題だから、これにさらに犯罪者を出すようなトラブルは起こしたくないというような要望は、警察当局に知事のほうから出されておるわけです。それにもかかわらず、誤認逮捕まで含めて強制な逮捕をするというやり方が、そうしなきゃならない理由というのがございますか。いかなる地域においてもこういう問題が起こりましたならば直ちに強制逮捕に踏み切る、強制捜査をおやりになるというようには私ども考えられませんが、千葉県警のおとりになったことは妥当な方法だとこの状況の中でお考えになりますか。
  148. 秦野章

    政府委員(秦野章君) ただいまのお話の中で、婦人の方が便所に行く問題についてこれはまずかったということと、それから、三十人の県庁職員を玄関に立てて阻止したということ、そのことはちょっと性質か違うと思うんですけれども、われわれが問題にしているのはあとの問題でございますけれども、入ってもらっちゃ困るということで三十人の県庁職員を立てたんだろうと思うんです。これはもう事後の調べでもはっきりそう言っているわけですから。その時点において強引に入ろうということは、どう考えてもこれは住居侵入罪になるというふうに千葉県警が判断したことは私は当然だと思います。問題はそのあとの、事後において知事、管理者のほうが事件にしてくれるなとか、いろいろ取り消すとかいうお話があったということですけれども、私どものほうは、まあ何ぶんきのうのことで、そういった状況を詳しく聞いておらぬわけです。かりに聞いた場合にそれならどうかということなんですけれども、取り消すと言った意味が、将来に向かってのことだけなのか、まあ、大体そういう事実というものは、過去にさかのぼって取り消すということは不可能なわけなんです。つまり三十人並べて阻止したということを、そのことを取り消すといったって、その事実はもうすでにあったことなんですから。問題は先ほど法務省のお話にもございましたように、不退去のような場合に、将来に向かってもういいんだと言ってしまえば、その前に侵入しておっても、それが不退去にならないということはあり得ると思いますけれども、玄関のトラブルの問題を考えますというと、私どもも、これから調査をする上にあたってよく県庁側の意向調査したいと思いますけれども、確かに一般論として被害者の意思を無視するということはございません。むしろ尊重するということは捜査を進めていく上に当然だと思います。したがって、それはあるんですけれども、それだからといって、玄関前の不法侵入罪が成り立たないということは、私はないと思う。しからば、仰せのように、強制逮捕に踏み切ったことが妥当かというお話でございますけれども、これらのことにつきましては、被害者の意思も十分しんしゃくしてやるべきことであろうと思いますけれども、これも一がいに強行捜査に出たことが不適当であるというふうに判断する材料を私どもはここへ持っておらぬのでございます。なお、誤逮捕云々のお話がございましたけれども、いろいろお話、御意見、状況のお話と私どもの聞いていることと食い迷うこともありますし、さらに、昨日のことでございまして、十分詳細なことを実は聞いておらぬのでございます。そういうようなことでございまして、私としては問題は、やはり警察も逮捕権その他権力の運用という問題については慎重を期さなければならぬということは当然でございます。ふだんもそういう問題については指導、教育の上で力をいたしているわけでございますけれども、そういう点にかんがみても、今後十分調査をして明らかにしたいと、こう考えております。
  149. 加瀬完

    加瀬完君 きのう弁護士を通じて被疑者の取り調べられた内容を私ども聞きましたところでは、やっぱり住居侵入ということで逮捕をしておりますが、不退去の問題で、制止を聞いておまえは立ちのかなかっただろう、とめられても入っただろうということをやはりいろいろ聞いております。他の二人も群集の中にまじって入ってしまっただけで、これは役員でもなければ、そのときの扇動者でもなければ、何か器物破損をした人でもなければ、ただわっと入ってしまったので、制止も何も全然聞いておらないと本人は言っておるそうです。それで調べられておる項目は、やはり不退去罪ということで一番聞かれておるようでございます。で、先ほども申しましたように、これはその時点で取り消しをしまして代表を入れるし、それから一般の者も便所にも行かせるし、お湯も飲みに入らせるし、自由な状態にしたわけです。知事は、全部戸を締めて並んで威嚇したみたいな形にしたのも遺憾であったと、これは公式の場でもお話しをなさっているわけです。ですから、そういう状態を勘案いたしますときに、一体三名を逮捕する理由がはたして妥当と認められるかどうかということが一点。  それから、逮捕をするならば、逮捕をする者の容疑というものががっちりと固まったものでなければならないと思うのです。これも弁護士が接見をいたしましたときに、私はあの中にはいないのだ、聞かれたけれども、そのときにはだれとだれとこちらのほうにいたのだ、それで代表が会うということだからということで代表をさがしに入って行ったのだ、以下先ほど申し上げましたようにお湯を飲むまでに三回入ったけれども、それは全然制止を——阻止されたり、侵入を拒否されておったような状態の中ではないんだということがはっきりしておりまして、これらは明らかに誤認の逮捕ですよということでございましたから、本部長に、三人それぞれ逮捕する理由は私どもないと思うけれども、特にその中の一人はよく調べてくださいよと、全然いない者を逮捕しておりますわけですよ、誤認ですよと申し上げましたら、よく調べて、そういう事実がございましたら直ちに釈放いたしますということでこの加藤良作という者がすぐ釈放されたわけです。ですから、警察のほうでも、これが誤認だということは、これは誤認でございますから一筆書きますとは要求しても申しませんでしたが、誤認であることは認めておるわけです。そういう証拠不十分な状態で逮捕をして、しかも、それは取り扱いの問題としてまあ法務省にお伺いしたいのですが、子供の見ている前で寝巻きのまま手錠をかけて連行しようとしたのですね。それで、着物を着て顔を洗いたいと言ったら、顔は向こうへ行っても洗えるから顔を洗う必要はない、もちろん食事は向こうでやるんだから食事も必要ない。私は朝便所に行くくせがあるんですけれども——便所も向こうにあるから向こうで行けという形で連行をされておりますね。これは被疑者であろうとも人権は尊重さるべきたてまえでございますので、しかも、これが誤認逮捕ですよ。人権擁護の立場から問題が残りませんか。法務省いかがですか。
  150. 蒲原大輔

    説明員(蒲原大輔君) まあ逮捕ということは人身に対する強制力を用いることで、十分人権を尊重してやるべきものであると思います。寝巻きのまま引っ張っていくということはあまり妥当ではないと思いますが、その他のいろいろなことは当然そのときの具体的な事情によりましていろいろニュアンスがあると思いますので、一がいに何とも申しかねるのでございます。
  151. 加瀬完

    加瀬完君 こういうことを何とも申しかねておっては、何のために一体人権擁護局というのがあるんです。顔も洗わせない、めしも食わせない、便所も行かせない、逃げも隠れもできる人じゃないんですよ。何の何がしという、そこに一戸をかまえて、健全な農業経営をしているりっぱな主人です。それを、子供の目の前で両手に手錠をかけて連れて行かなければならないことが、これが妥当だと言われますか。
  152. 辻本隆一

    説明員(辻本隆一君) 人権擁護局の調査課長でございますが、本件事案はまだ新聞情報のみでございまして、実は今朝知ったわけでございます。さっそく現地の法務局へ連絡をとったのでございますが、現地でもテレビ及び新聞情報で知ったわけで、直ちに情報収集に入る、こう申しております。事案はいかが真相相なりますか、これは調査してみなければわかりませんが、現在の情報に基づきますと、誤認逮捕及び連行に関しまして人権侵犯の疑いがあるようにも思え、人権上問題点があるかとも存じますので、人権擁護局としましては、本件につきまして、至急情報収集の上、慎重に検討をしてみたいと考えております。
  153. 加瀬完

    加瀬完君 私はこれを人権擁護局で取り上げていろいろ措置をしてくれということを言っているわけじゃない。これは人権擁護の立場から人権侵害の疑いがないかどうか疑いがあるなら、そういうことを今後警察行政としてはしてもらいたくないというだけのことですよ。だから、いまのような、これは本人の申し立てですから事実そのとおりかどうかは確証の限りじゃありませんよ、私も。本人の言うとおりだとすれば、これはちょっと考慮してもらわなければならない問題じゃないか、どうだと、こう聞いている。誤認は明らかに誤認です。しかも、連行等の点も十分本人の立場を配慮してということは、考慮がはなはだしく欠けている。これは相当譲歩しても、そういうことは言われます。少なくも、逮捕その他の問題でも人権を尊重するというたてまえは十分にこれは守らるべき問題でしょう。その点はお認めになりますね。いかがですか。
  154. 辻本隆一

    説明員(辻本隆一君) さようでございます。
  155. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、実際警備局長伺いましても、警備局長は当面の責任者でないわけですから、御迷惑な点もあろうかと思いますので、これは結論だけを申し上げますがね、希望でもあり、あるいはお約束をいただかなければならない問題でもございますので、ただいまのように逮捕者の取り扱いにおいても、人権無視のそしりを受けないように十分注意をしていただくということはよろしゅうございますね。
  156. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 具体的な状況は私も、先ほど申しますように、よくまだ調べをしておりませんからわかりませんが、御趣旨の点、人権尊重という問題に関連して、特に逮捕とかそういうときには一番注意しなければならぬことでございますので、十分努力したいと思います。
  157. 加瀬完

    加瀬完君 誤認逮捕が明らかになった場合は、本人に対して十分な慰謝といいますか、補償が行なわれると認めてよろしゅうございますね。
  158. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 先ほど申し上げますように、誤認かどうかという問題については、実はおことばを返して恐縮なんですが、われわれとしてはやっぱりもう少し調べてしなければなりません。そして、そこにあやまちがあればこれを正すことは当然でございます。正すことについての方法というものはまたいろいろあろうと思いますけれども、これは十分善処したいと考えます。
  159. 加瀬完

    加瀬完君 ですから、私も加藤良作の逮捕は誤認だと、こういまも申し上げておりません。誤認逮捕であるということが調査の結果明らかになった場合は、それぞれの責任を明らかにしていただきたい、こういうことです。  次に、今度の事案のように、政治抗議のような場合には、一般の住居侵入等より慎重に扱われることが望ましいと思いますが、これは御同意いただけますか。
  160. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 具体的な犯罪事件は、それぞれ全部事情が違うのでございまして、したがって、いわゆる社会的悪性と申しますか、そういう性質は千差万別でございます。今回のようなこういったような事件は、私も治安上非常に重大な事件だ、非常に悪質なものだということは全然思いません。これはおそらく、本庁前の会わせる会わせないのところで偶発的に起きた事件だ、そういうふうに評価をいたします。
  161. 加瀬完

    加瀬完君 ですから私は、順序を経て、任意捜査をやりまして、証拠隠滅の挙動が激しい、あるいは逃亡のおそれがあるというような事態になったので、大体内容がわかったから逮捕をするということなら、うなずけない点もございませんが、本人たちは、いま農家が非常に忙しいときで、逃亡したくても逃亡できるような状態ではないのですよ。うそをつくにしては、いままでの生活が全く純朴そのもので四十年も、三十何年も生活をしてきたわけですから、もうこれは取り調べを受ければ、正直に言うほか、ほかに方法を持たない人たちですよ。そういう人たちを特に検束、拘禁という状態に置かなければ取り調べができないわけではないはずですのに、なぜ一体一段階下のところがら方法をおとりいただけなかったか、あるいはまた、ほんとうのところわからないと言っているのですよ、県警の当局人たちも。わあっと入っちゃったときは、だれも、警察も、直接見ておった者はいない。あとになって、入っていいというような状態になってから、急いで、入ったのはだれかということで写真をとったような状態で、だれがこわし、だれがどう入って、だれが指導してどうだというようなことは、ほんとうのところは明確につかめないのが実情です。警察担当者もそう言っている。そういう事案ですから、もう少し慎重に取り扱っていただかなければと思うわけです。そこで、これは幾らおやりになりましても、十分な証拠というのは出てきません。誤認とあなた方のほうでは言わないにしても、すぐ釈放しなければならないような状態のものを逮捕するということは、もう少し慎重な事前調査というものが行なわれなければ困ると思うのですけれども、この点は、先ほどもお話がございましたが、十分御注意をいただけることと考えてよろしゅうございますね。
  162. 秦野章

    政府委員(秦野章君) 御意見のとおりと考えております。
  163. 加瀬完

    加瀬完君 これは誤認であるか誤認でないか、その他当時の状況等についても、本庁のほうに送られております内容は、必ずしも具体的に内容を尽くしているとは私ども思われません。そこで、御調査をいただくとともに、この措置をどうお取り扱いいただいたかということを後ほど口頭でも文書でもけっこうですから、御報告をいただきたいと思います。
  164. 林田正治

    委員長林田正治君) 本件に関する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じます。  なお、次回は、二月二十二日午前十時開会の予定でございます。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会