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1966-06-02 第51回国会 参議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二日(木曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      西川甚五郎君     吉武 恵市君  六月二日     辞任          補欠選任      林屋亀次郎君     塩見 俊二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 青柳 秀夫君                 日高 広為君                 藤田 正明君                 柴谷  要君     委 員                 伊藤 五郎君                 植木 光教君                 大竹平八郎君                 大谷 贇雄君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 西郷吉之助君                 西田 信一君                 吉武 恵市君                 田中寿美子君                 戸田 菊雄君                 成瀬 幡治君                 野溝  勝君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君                 小林  章君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省証券局長  加治木俊道君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        日本銀行総裁   宇佐美 洵君        東京証券取引所        理事長      井上 敏夫君        東光証券株式会        社社長      唐沢 繁雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の金融政策等に関する件)  (証券業現状に関する件)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  昨六月一日、西川甚五郎君が委員辞任され、その補欠として吉武恵市君が選任されました。以上でございます。     —————————————
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 本日は、租税及び金融等に関する調査のうち、第一として、当面の金融政策等に関する件を議題といたします。  宇佐美日銀総裁には、本日、まことに御多忙の中をまげて参考人として御出席いただきまして、まことにありがとうございました。定刻前からおいでいただきましたけれども、若干開会がおくれまして、まことに恐縮に存じます。  なお、宇佐美総裁には、御就任後、本日第二回目の本委員会に御出席をいただいたわけでございますが、本日は、まず当面の金融政策等に関する諸問題に関しまして、総裁としての御所見を承りたいと思います。  委員会の議事は、総裁から所信を承りまして、その後、先ほど申し上げました委員の順序によりまして質問に入るということにいたしたいと思います。  それでは、宇佐美総裁から御発言をお願いいたします。
  4. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ただいま御紹介を受けました日本銀行総裁宇佐美でございます。御丁重なごあいさつをいただき、まことに恐縮に存ずる次第でございます。御指示によりまして、最近の金融経済情勢に関しまして、私ども考えておるところを申し上げて御参考にしていただきたいと思うのであります。  わが国経済は、一年以上にわたりまして停滞を続けておりましたが、最近では景気もようやく帳をつきまして、回復へのきざしがようやく顕著になってまいったと考えております。商品市況も概して底固めができたようでございまして、しかも、それが従来はもっぱら生産調整という供給面の抑制に依存しておったのでございますが、最近ではこのほかに、むろん生産調整は続いておりますが、そのほかに官公需を中心とする需要の持ち直しということも出てまいっておるわけでございます。また、そうした動きを反映いたしまして、昨年中一進一退動きを続けておりました鉱工業生産も、このところ回復基調に転じてきた、かように見ておるわけでございます。  過般、私どもでは恒例の支店長会議を開催いたしまして、各地情勢を聞きました。また、今月に入りましてから、私、関西及び名古屋を訪問いたしまして、いろいろと現地の様子を見聞してまいったのでございますが、こうした経済の大勢につきましては、各地とも、大観しますと、一致しておるように申しておったのでございます。  この間、国際収支動向を見ますると、貿易収支は、輸出の好調にささえられまして、依然相当の黒字を続けております。貿易外収支資本収支の赤字にもかかわらず、国際収支動向はまずまず安定しておるようでございまして、この点は心強く思っておるのでございます。今後につきましても、内外情勢推移いかんによるところが大きいのでございますが、現在の見通しといたしましては、輸入国内景気回復に伴いまして多少増加するのではないかと思いますが、国際収支基調には当面格別の変調はなかろうかと思っておるのでございます。  このところ海外金利が上昇しておりまして、一部には輸入金融の面におきまして従来の外貨金融から円金融へのシフトが生じ、これによって外貨準備が大幅に減少するのではないかという懸念もされておりますが、現在までのところ、こういう現象、つまり日立ってシフトが起こっておるということは見受けられないのであります。  このように経済動きは一応順調と申せますが、むろん今後に残された問題も多々あるわけでございます。産業界にとって、供給力の過剰、そのための企業収益の不振という面は依然残されておりますし、今後本格的な経済立ち直りには、なお生産投資調整であるとか、あるいは企業経営合理化を進め、企業体質経済基盤独化をはかっていく必要があることは申すまでもございません。また、消費者物価の騰勢が続いておりますが、これは国民生活の安定という面からも、また前に述べましたような経済基盤の強化という点からいいましても、大きな問題でございまして、この問題を、政府がせっかく努力されておりますが、われわれの立場からいいましても重視しておるところでございます。  景気回復に向かっているとは申しながら、設備投資あるいは在庫投資などの状況から見ますれば、今後の回復はかなりゆるやかなものとならざるを得ないと思われますが、私どもといたしましては、これからは以上のようないろいろな根本的な問題もございますので、これを解決しながら進んでまいらなければならないわけでございまして、それにはいたずらに先を急ぐというよりも、足元を固めながら堅実に着実に回復することがむしろ望ましい、かように考えておるのでございます。  次に、金融情勢でございますが、金融市場は引き続き全般的に緩和基調にありまして、コールレートも低い水準で推移いたしております。企業投資停滞から資金需要は落ちついており、金融機関貸し出しも落ちついております。貸し出し金利も引き続き低下をたどっておりまして、すでにその低下の幅は、三十九年の引き締めの際に引き上げました幅よりも、今回の引き下げの幅のほうが上回っておるという状態に達しております。  日本銀行といたしましては、経済情勢にかんがみ、当面この緩和基調を維持する方針で金融政策を運営いたしておるのでございますが、当分はその基調を変える必要はないと、かように考えております。このような緩和基調を持続するという考え方に立ちまして、具体的には市場相場による政府保証債の買いオペレーション、また政府短期証券の売買及び短資業者銀行に対する貸し出しなどのいろいろの手段を適宜組み合わせまして、金融調節に遺憾なきを期してまいるつもりでございます。  なお、本年一月以降四十年度の国債発行されまして、さらに四月以降は四十一年度の国債発行されておりますが、以上のような金融情勢を背景といたしまして、現在までのところ発行された国債消化はまずまず順調でございまして、これがため特に金融が逼迫するといったような事態は生じておりません。市中消化状況がこのようである限り、現在の国債発行には格別の無理はないと判断いたし、また国債発行国民経済的に有効な機能を発揮し始めておると考えております。ただ、国債発行はあくまでも経済情勢金融情勢に即応して行なわれるべきものでございまして、情勢に応じ発行額あるいは発行条件については弾力的に常に配慮していくという心がまえも必要だと思っております。  最後に、証券界の問題について一言触れますと、最近は相場も相当回復してまいりまして、また出来高も御承知のようにふえております。そのため証券会社の内容も若干改善されてきており、この点はけっこうなことだと思っておりますが、現在の証券界においては、御承知のとおりいろいろな形で日本銀行信用供与が行なわれているわけでございまして、現在の相場がこのような異例の措置によってささえられているという点も無視してはいけないと、かように考えております。日本銀行といたしましては、証券市場立ち直りに伴ってこういった特別の措置情勢に応じ漸次撤廃していきたいと考えておりますが、証券会社としても、このような事情を十分認識した上で、その体質改善に一そう努力し、再び過去のごとき事態を引き起こさないようにと常に注意しておるところでございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、当面の金融経済情勢に関し所感を申し述べさせていただいた次第でございます。
  5. 徳永正利

    委員長徳永正利君) どうもありがとうございました。  引き続きまして、参考人に対する質疑に入ります。なお、宇佐美総裁の本委員会出席のお約束の予定時間は正午までとなっておりますので、先ほど申し上げましたように、理事会で打ち合わせました質問者の時間はどうかお守りをいただきたいと思います。  それでは、質疑に入ります。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 三十分の予定でございますから、簡潔にお伺いしたいと思いますが、先ほどのお話で、経済見通しは大体底を入れたんだと、簡単にわれわれも了承するわけです。しかし、資金需要の特徴と申しますか、そういうようなものから見てまいりますと、日銀政保債も含めての国債手持ちは大体ふえてきておる、それから日銀貸し出し残も、一進一退はございますが、昨年に比べて同月比などをやっていけばやはり増をしておる、ふえておる、こういうようなことについて総裁はどういうふうにお考えになっているかという点をお尋ねしたいわけです。  たとえば、先ほども短資業者あるいは政府大蔵証券での発行額が引き上げられてまいりました。あるいは国債が出ておる。とにかくいろいろなことをやって景気底入れをしようという努力のあらわれ方も、われわれは了承できるわけです。しかし、他面、銀行もそういうオーバーローンは解消されておらぬ、あなたも御指摘になったような生産調整下である、あるいは操短をやっておる、そういう中で日銀のいま言ったようなそういうものが増をしておる、ふえておるということですね、結局そういうものの金融調整というのですか、こういうときにおける国債発行下における金融調整といいましょうか、そういうふうなことについてどういうふうにお考えになっておるのか。私はふえておるということは、何かあるいは消費物価は上がってきた、そのぐらいじゃなくて、このごろは卸売り物価まで上がってきておる、やはり通貨の問題についても、若干インフレなんではないか、われわれ党はそういうことを指摘しておるのです。そういう傾向にあるのではないかということを指摘しているのです。そういうふうな資金需要情勢の中で、そういうものがふえておるそういう中で、どういうふうな調整をとられようとしているのか、そのことがひいてわれわれ心配しておるインフレ傾向のほうにきざしが出ておるのではないかというようなことについては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  7. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) お答えいたします。  ただいま申し上げましたとおり、われわれの金融調節でございますが、これはただいま申し上げたような方向によってやっておるわけでございますが、まあ端的に申し上げますと、日本銀行貸し出しは、昨年度中に二千九百七十五億円増加いたしております。本来この日本銀行信用供与は、銀行券発行と、それから財政資金収支じりとの関係によって、これはきまってくるものと考えておるわけでございます。この信用供与方法といたしましては二つございまして、すなわちオペレーション貸し出しということでございまして、この信用供与オペレーション貸し出しをどういうふうに組み合わせていくかということについては、そのときの情勢いかんによるわけでございます。それで、その関係を昨年度について申し上げてみますると、銀行券は二千五百八十億の発行増加となっておるのでございますが、財政資金は二千五百三十一億の払い超となっております。その他の市場資金の引き上げを含めまして、年間では推定いたしまして千百二十億の資金不足ということになっておるのでございますが、この間日本銀行としては、千八百五十五億の売りオペレーション、すなわちそれだけ資金を、千八百五十五億の売りオペレーションによりまして資金を吸い上げておりましたが、その結果貸し出しは二千九百七十五億円増加となったのでございます。  この間の日銀券増発をどう見るかということでございますが、この日銀券につきましては御質問ございませんでしたけれども、若干申し上げさせていただきたいと思うのでございますが、この日銀券は、申すまでもなく、国民経済が伸びますと、これに伴って増加していくということは当然でございますが、この日銀券は申すまでもなく、日本におきましては日本銀行だけが発行しておるものでございますので、これの増発あるいは還流ということについては日々注意しておるところでございます。しかし、その日銀券増発につきましては、やはりその中において個人所得あるいは消費活動との関連が非常に多いように思うのでございます。現在一般に資金需要が鎮静しておると、こういわれておるわけでございまして、事実またそうでございますが、にもかかわらず、なぜ日銀券のほうは、おととしあたりに比較しますとやや高くなっておりますが、どういうわけかという御質問は当然出てくるわけでございますが、しかし、資金需要が鎮静しておるのは、企業投資活動のほうでは確かに鎮静いたしておりますけれども、しかし、個人所得あるいは個人消費という面ではやはりかなり伸びておるのでございまして、総括的に申しますと、これらはまあステディーに伸びておるといって差しつかえないのでございまして、日銀券はある程度増加すると、企業活動が鎮静しておるにもかかわらず、日銀券がある程度増加しておるということは、やはり大きな原因個人所得個人消費が一貫して伸びておるということだろうと考えておるのでございます。むろん、この日本銀行券が異常なテンポで伸びていくということは、これはゆゆしいことだろうと思っております。世間で言いますようにインフレが進むということの第一の現象はやはり日銀券増発にあらわれてくると思うのでございますが、現在のところそういう個人所得消費というものが伸びておりますので、国民の総生産といいますか、それは相当伸びておりますので、私どもは現在の程度では、日銀券はこれくらい伸びてもそう異常ではない。ただ、やはり大いに注意していかなければならぬということは痛感いたしておるわけでございます。  そういう関係で、日本銀行の、ただいま御質問がございましたように、日銀券もふえていくということでございますので、われわれとしては、まあ、いまの程度日銀券増加は、やはり根本的には私どもオーバーローンの解消はしなければならぬという考えは常に持っておりますけれども、現在のところこの程度増加はそう異常ではないと、かように考えておるところでございます。
  8. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ここで意見を私はどうこうと言うわけにもいきませんですが、総裁は、これでいいともいうわけじゃない、非常に心配をしておる、そのことばは私は普通の心配じゃなくて、非常に心配をしておられるというような点に理解をいたしまして、この問題は打ち切ります。  次に、国際収支の問題とからんで金利政策の問題ですが、先ほど金利の問題に触れられまして、緩和基調を維持するのだと、こうおっしゃる。しかし、アメリカ等金利を引き上げた、そのことが国際収支、特に資本収支のほうにはね返ってまいりまして、御案内のとおり、短期のものは相当出ておるということは、しばしばいろいろなものから出ておりまして、こういうようなところから景気短命論というようなものも出ておることは御案内のとおりでございますが、そこで、あなたがおっしゃるように、国内基調としては、いまの景気底入れをしなくちゃならぬから、あなたは低金利政策を続けなくちゃならぬと、そういうところにある。しかし、国際情勢は、特にアメリカとの関係でいえば、上げなければちょっとおかしいですね。そういうところにあって、非常に私はむずかしいところに来ておると。それに対しまして、あなたの御説明を聞きますと、まだそうこれに対して特別な手は打たなくてもいいじゃないか——こういうような特別な外貨事情に対してまだ変化は出ておらぬと。ということは、手を打たぬでもいいということなのか、いやいや、もうたとえばユーザンスの問題で外貨先売りをしなければならぬ、あるいはスワップ協定問題等、いろいろなことがあると思いますけれども、それらの対策をどうお立てになっているのかということを私は、非常に心配をしております。けれども、ここではあまり心配とはおっしゃらないが、ほかではちょいちょい御意見を発表されておるのを新聞等を通して聞いておりますと、非常に心配をしておいでになるようでございますが、実は私も心配して対策を練っておいでになると思いますから、もしあるとするならば、その対策はどんなものであるかということをお尋ねするとともに、国内ではやはり低金利政策を続けていかなくちゃならぬというそういう立場に立ったときに、やはりもう少し資金コストを下げなくちゃならぬじゃないかというようなところから、銀行合理化と申しましょうか、合併と申しましょうか、いろいろな問題が出てくると思うのです。たとえば資金需要が片っ方じゃ集中融資をやってこっちに資金が偏在しておる、いろいろな問題が出てきますから、私はその方向としては銀行合併合理化ということも考えおいでになるのじゃないか、こういうような気がするのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  9. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) まず海外金利につきまして、先ほど、それほど円シフトが起こっていないと、こう申し上げましたが、しかし、実際はこの五月中でございましたか、アメリカのいわゆるBAレートが三回も引き上げられておるというようなこともございますし、またドイツも公定歩合を一%も上げている、これは前例はあるのでございますが、かなり大幅ということは、ことに日本のように小刻みに上げておるようなところから見ますと、大幅といって差しつかえない。そういう状態でございますので、日本の置かれておるいまの金融緩和基調に持っていかなくちゃならぬということは、海外のこういう情勢につきまして、いままではもう日本金利国際水準から見て非常に高い高いといわれて、これの対策考えてきたわけでございますが、今度はやや情勢が変わってきたわけでございます。しかし、この情勢に対処いたしまして、こういう——方法を当然考えておるだろうという御質問に対して、これは私どももいろいろ考えてはおるわけでございますが、やはりこういうものは、情勢をよく見まして、はたしていまのこの海外の高金利がどういう今後足取りをとっていくのか、もっとどんどん上がっていくのか、あるいはまたこれを頂上にしてまた下がっていくのか、先の見通しも、これはなかなかむずかしいのでございますが、考えていかなければいかぬし、海外が上がったからといって日本もすぐ上げるとか、そう単純にもいきませんが、しかし、また一方、開放経済のもとにおきましては、海外情勢も無視できないことも事実でございます。日本だけの単独にはいかないわけでございます。  それで、いまどういう方法ということを、私はこういう場所で仮定に基づいて申し上げることはお許し願いたいと思うのでございますが、しかし、いまの現状では、まあ幸いにも国際収支が、貿易収支がよろしゅうございますので、その範囲内においてある程度シフトがかりに起こったといたしましても、資本収支シフトが起こるということは、一方からいいますと日本借金がそれだけ減るということになりますので、これは非常な変化が起こって外貨準備が非常に減るということになっては困るわけでございますが、日本外貨準備は決して多い状態ではございませんが、したがってその非常に異常な範囲でない限りにおいて、若干ずつシフトが起こると、これはすなわち日本の国全体から考えまして、外国からの借金がそれだけ減るのだという考えでございますと、少々ずつ減ってそれ以上に資本収支の上でカバーできれば、そんなに心配しないでもいいのじゃないか。そこのところが問題でございまして、どういうふうに減っていくのか、あるいはまた肝心の一番大事な貿易収支がどういうふうに、いまの調子でいけるのかどうかという点が問題なんでございます。したがって、これに対しましては私どもも非常なる責任をもって対処しなければならぬと思っておりますが、何ぶんにも一カ月に三度も変えてくるというような情勢でございますので、これをもう少し原因あるいはその効果を考えて進めたいと、いまかように考えておるところでございます。貿易の将来につきましてもいろいろ問題がございますが、これはやはり日本銀行だけではいかないのでございまして、政府にもいろいろ申し上げておるようなところでございます。  そういうことで、この金利という問題はなかなかむずかしい段階に来ておるということは確かでございますが、しかし、私の気持ちといたしましては、一方において、何とかしていまのこの不況からようやく抜け出してきた日本景気をもう少しよくしないといけない、それにはやはりいまの緩和基調を何とかして続けたいと、かように考えておる次第でございます。
  10. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 銀行合併はどうですか。
  11. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) その問題も、銀行だけにかかわらず金融制度というものにつきましては、やはりいろいろの問題があることは確かでございます。これにつきましては、私の立場から申し上げられないのでございますが、ただ、こういうことは、銀行も含めましていまの金融制度をどうして、いまのままでいいのかどうかという問題については、ぜひ例の金融制度調査会でひとつ十分御検討を願いたい。こんなことを申し上げるのは何でございますが、日本銀行としましたら、議論過程でいろいろ申し上げにくい立場にございますので、そういう議論を片方において自由にしていただいて、そしてわれわれはわれわれとしてこれを検討してまいりまして、そうしてむろん大蔵省ともよく連絡をとりましてこの問題を進めてまいりたい。議論過程日本銀行がいろいろ申し上げますと非常にぐあいが悪い立場にありますことを、御了承願いたいと思っております。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 アメリカドル防衛ですね、たとえばガリオア、エロアを早く返してくれというようなこともありますし、あなたの指摘したように、景気回復すれば輸入がふえる、そういう中で、日本の置かれておる立場は、低金利国債発行をするのですから、これをやらなくてはならない。しかし、一歩誤りますと、外貨準備が、あなたも言われるとおり、それほど多いほうじゃない。適正とはどのくらいか。これは一歩誤りますと、ほんとうにせっかく努力をされて、いまあなたがおっしゃるように底入れをしたか、底からはい上がって一歩、二歩のぼりかけたところで、またもとへ戻るようなことになりますから、そういう点は私じゃなくて総裁のほうがより御心配になっておると思いますから、これ以上国際収支の問題には触れずに、次に移ります。  この間木川田さんがああいう構造金融論というものを出された、この間。あなたが三菱においでになったときに、体制金融論にどうも反対されたようです。今度見ると賛成だ、じゃ、構造金融論とはどういうものかということは、一つのビジョンてすから、具体的なことは容易にわかるわけじゃございませんが、しかし、今度は若干違うのは、ワンセットで垂直融資というようなところにウエートがあるようてす。しかし、そのねらっておられるところは、私たちの心配するところは、いろんなことを言うが、やはり寡少独占に行くのじゃないか。それは美名は、国際競争力に打ち勝つということもありますが、そこにはどう見ても、今度は垂直融資だから、中小企業のほうにも行くよということもあるかもしれませんけれども、やはり大きなところに行くのじゃないかというような心配もありますか、こういうような点に関しまして、御所見を簡単にひとつお教え願いたいと思う。
  13. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) あの構造金融論というのは、同友会の代表幹事の木川田さんが発表されまして、実は私もその発表を読みまして、まだこういう点が——木川日さんにお日にかかって詳しくお話しする機会もないのでありますが、ちょっと伺いましたら、まだまだこれから研究するのだということでございますので、これについて細部にわたって批判するのはむしろ差し控えたいと思うのでございます。  ただいま御指摘のとおり、特振法のことだろうと思うのですが、おまえはあのときは反対して、今度は賛成しているのはどうかという御質問だと承ったんでございますが、私はいまの木川田さんの打ち出した構造金融というものは、たてまえは、やはりいまの日本経済のうちで、一つは、いろいろの企業が過当競争をする、そして金融機関がまたその過当競争を激化するような応援といいますか、支援をするということがおかしいということと、これからはやはり世界の競争において、国際競争に役立てなくちゃならぬと、そういうためにはやはり企業の合同だとか合併、提携ということも必要じゃないか、それに対しまして資金を、特にそういう国家のためにいいというならば資金を出すべきではないか、そうしてまたそれは合同についてはうしろ向きの資金も要るだろうし、あるいは前向きの資金も要りますが、そういうものは一般金融と別にしまして、そしてひとつ出したらどうだろうか、これが構造金融の主体のように考えております。それで、企業の過当競争あるいはこれに伴う銀行の過当競争、あるいはまた系列中心の金融という問題につきまして、やはり銀行も反省をしなくちゃいかぬという木川田さんの考え、また企業も同様だという考えについて、私はこれはやはりいまの段階においては非常に必要だとかように考えております。  ただいまの、前に反対して、そして今度賛成しているというのは、この前は、これは私どもは官僚統制につながるのではないか。ところが、今度の場合は、木川田氏は自主的にやるのだという点を打ち出しておられますので、それで私はこの前は、官僚統制ということも確かに利点もございましょうけれども、被害のほうが非常に大きい、マイナス面が大きいというので反対をしたのでございますが、今度は自主的にやろう、法律によらずにお互いにひとつ業界でも話をしていこうと、こういう考え方、私は賛成でございます。しかし、そういうたてまえ、前提はけっこうなんでございますが、いろいろの実行面になりますと、これはなかなかむずかしい問題だと思っております。また、実行のむずかしさにつきましては、木川田氏自身も認めておるようでございます。そこで、こういういい構想を出されましたので、今後われわれもこういう——確かに過去における高度成長下において、これも私どもはマイナスばかりではないと、かように考えておりますけれども、最近のこの不況というものを考えますと、やはり高度成長のうちでも非常に過当競争をやり、そして役にも立たぬような設備をしまして、そしてそれで悩んでおる現状考えますと、やはり木川田さんのような考えをこの際取り入れて、ただ実行面ではむずかしい問題があるが研究していったらいいじゃないか、こういうふうにいま考えておるところでございます。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あと与えられた時間が二分ぐらいでありますので、そこで、簡単に私は二つ問題をお聞きしたい。  一つは、日銀の特融にささえられて共同証券、保有組合は利潤が出た。これは何といったって国家の庇護と申しますか、特別待遇で得た益金なんですね。これは何か分けて、その半分をいろいろな中小証券の金融資金源にしたらどうだというようないろいろな構想があると思います。他面、これらのもうかったものはおれたちで全部もらっちゃうんだという乱暴な意見も出ておると思いますが、これは何といったって日銀の特融です。国が保護して得られた利潤なんですから、これは有効に私は使われるべきだと思うのです。それに対してあなたはどういうふうにお考えになるかというのが一つ。  それから、もう一つは国債の問題なんです。国債の上場が近々のうちにあるといわれておりますが、心配される点は、何といったって銀行の手数料が私は高過ぎたのだと思います。だから、結果的には、九十八円六十銭、銀行は五十銭取っているから、九十八円十銭だというのは、そこで二重価格のようなかっこうになっているから、これがもし売り出されたら額面割れをしゃしないかというようなことを心配する。ですから、そういうようなときには、やはり私はあなたのほうが買いに出なくちゃならぬのじゃないか。こういうような買いささえをどういうかっこうでしなければならないかというようなことが大きな問題になってくると思う。しかし、これはもちろん大蔵省のほうへもいろいろなことをお尋ねしなければならないと思いますが、総裁としてはこの二つについてどういうふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  15. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いま冒頭にも申し上げましたが、日本銀行がいろいろの形で証券界に金を出しておることは事実でございます。これは私ども考えは、一応国の場合も含めまして、やはり国家的の見地から、一つの会社を保護するとか、そういうことでなく、あるいはこれをやらぬと証券界はむろんですが、ひいては金融界全体の信用秩序に問題を起こすという見地でやっておりましたことは、御承知のとおりでございます。したがって、これを今度どういうふうに処理するかということにつきましては、私はやはりなるべく早く常態に復すという姿がいいと思っております。そこで利益が出たらどうするかという御質問でございますが、これは私どもも検討しなくちゃならぬと思っておるわけでございますが、いまのところ、何といいますか、仮定的にいまの相場でやったらどうかというので利益をはじき出してやるのも、われわれの立場からいうとできないわけです。それで、事後処理といいますか、これにつきましては、やはりおっしゃるとおり、国民に納得のいく方法でやらなければならぬと、かように考えておりますが、しかし、まだ幾ら幾ら出るのか、また今後どういうふうになりますかにつきましては、ここで利益処分案まで入ることはお許しを願いたいと思うのでございます。  それから、もう一つ、国債発行につきましてのいろいろの問題でございますが、これは何ぶん私ども国債発行につきまして大蔵省から御相談があり、そうして市中消化ということでぜひやっていただきたい、これは日本銀行の直接引き受けということは厳にひとつやめていただきたいということで、大蔵省も同じ考えで現在のように進んできました。したがって、今後情勢を見まして、当然に国債も上場されるというふうに私は考えております。ただ、その場合にどういうふうに銀行の手数料をするかという……。
  16. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 手数料はきまっております。
  17. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いまはきまっておりますけれども、これをさらにいま御提案として問題を出されておるわけでございますが、こういう問題につきましては私ここで何とも御返事できないわけでございますが、しかし、やはり手数料というものは、仕事をするのに私は手数料というものは、多い少ないは別にしまして、やはりある程度の仕事に対する当然の何といいますか、報いがなければいけないと、かように考えております。しかし、現実にいまの手数料につきましてはさらに検討して、そういう御注意があったということを記憶さしておいていただきたいと思います。
  18. 藤田正明

    ○藤田正明君 先ほど総裁のお話の中で、日銀の方針として金融緩和基調の維持ということをおっしゃいました。その具体策としましては、買いオペとか、政府短期証券の売買あるいは短資業者の弾力的な運用ということを申されたと思いますが、この買いオペと公社債市場というものが深い関連にあることは御承知のとおりでございますが、公社債市場に対する日銀の役割りが非常に影響力が大きいと思うんでありますが、現在までは理論価格として日銀債券の買い上げをやられておったかと思うのでありますが、今度は二月からの公社債市場の再開にあたりまして市場価格にするというようなお話も伺っております。オープン・マーケット・オペレーションを行なうと言われておりますが、現状といたしましては実際の出来高は一億円内外、しかし、その底を探ってみれば、一千万ぐらいが実際に動いておる、一億というのは表面の数字であるというふうにも聞いております。このような状態の未熟な公社債市場に対して、今後オープン・マーケット・オペレーションを育成、成長といいますか、そういうことになっていかなければならぬと思うんでありますが、その点につきましてどのようなお考えで進めていかれるつもりであるか、そうしてまた、ほぼ完全なオープン・マーケット・オペレーションというものができ上がる時期をどの辺でお考えになっておるか、その点をちょっとお伺いしたい。
  19. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 従来やっておりました、いまお話しの理論価格あるいは売り戻し条件つきのオペレーションというようなことは、まあ率直に申しますと、これは貸し出しの変形にすぎなかったわけでございます。したがって、今度幸いにも取引所において取引をいたすことになりましたんで、この機会にそういう理論価格というのでなくて、マーケットが立っておりますこのマーケットによって、そうして無条件でもうすべての——有価証券というものは本格的にいいますと無条件であるべきで、無条件で、しかも、われわれがいまやっておりますオペレーションは、希望者から買い取るというんで、一応各銀行——生保債なら生保債を持っておる大きいすべての銀行に対しまして幾らで何日に買うという通知を出しまして、それぞれの銀行から、まあ自分の金繰りといいますか、そういう条件でばらばらに取っておるわけでございます。それからまた、証券会社からも。そういうことでございまして、まあ従来の変形的貸し出しということから非常に前進してきておるのでございます。しかし、何ぶんにも公社債市場の育成は、長年いわれておったにもかかわらず、まあできなかったんであります。で、この公社債市場というものが、ことにこれから国債が出てまいりますと、ぜひともこれは健全に、大規模のものにしなけりゃならぬ。ということは、公社債市場ができますと、やはりその消化の面もむろんございますけれども、しかし、これで金利機能が、まあ日本金利は非常に固定的であり、管理金利みたいなもんだといわれておりますが、これが自由化へ転ずるということ、さらに大事なことは、換金性がいままでなかったという点が、市場ができますと換金性が出ます。国債市中消化といいましても、持ったら最後どうにもならぬというのではいけないわけでございます。そういう意味において、私どもはこの公社債市場、国債はまだ上場されておりませんけれども、まあ近い将来において上場されるということになりますので、何とかしてこの公社債市場を育成していかなければならぬ。それにはやはりこの投資層というものを広げなければいけない。まあ、かように考えておるわけでございます。  それで、政府短期証券にしましても、あるいは一般の公社債にしましても、あるいはまた国債にいたしましても、持ってる人が限定されておったり、あるいは一般の人が持っても、持ったが最後どうにもならぬというんでは、これは発達いたしません。ですから、そういう意味におきまして、この層を広げる、層を広げるためには、やはりある程度発行額がふえていかないといけないんではないか。国債にいたしましても、ことしの一月から出したとはいいながら、本格的にはこの四月から出たわけでございます。こういうふうに毎月——月によって、金融情勢によって大小ございますが、毎月出していくということ自体が、一つのやはり公社債市場の育成に役立っているんではないか、かように考えております。それから、同時に、これを扱う証券会社の健全、信用というものを何とかして保持しなければいけないと、かように考えておる次第でございます。そうして証券会社が信用を十分回復し、そうして一方においてそういうふうにだんだんふえていくと育成されますが、さらに根本的の問題としては、経済の全体の安定ということが最も必要だろうと思っておるのでございます。  で、経済が非常に不安定で、そうして常に波を打っておるということでは、公社債市場の発達ということはなかなか望み得ない、信用できないということを思いまして、私どもはまず根本的には経済全体の安定成長ということを考えて、むろん経済ですから若干の波を打つことはいいんですが、そういう根本的に不安を起こさないような安定、これが根本でございます。そうして一方においては量をふやし、層をふやす。それから、これを扱う証券会社の基盤を強化する、こういうようなことで、そうしてあとはいろいろ資金繰りにつきましては、私どもはじめ金融機関もこれを応援するという姿が、まあはなはだ抽象的でございますけれども、そういうことでまいりたいと、かように考えておるのでございます。
  20. 藤田正明

    ○藤田正明君 いまその時期の問題を一つお忘れになった。まあ、あとでよろしゅうございます。  そこで、投資層の拡大とか、発行額の増大とか、証券会社の健全経営とか、経済全体の安定とか、よくわかりますが、現実に四千八百銘柄が現在発行されておると思うのですが、その上場されてるものは三十銘柄しかない。しかも、日銀のオペの対象になるものは政府保証債だけであって、その中で上場されておるものは電電債と鉄道債しかないということになりますと、これをどのように拡大されていくのか、現実にですね、具体的に。  それから、もう一つの問題は、現在日銀のほうは市中銀行と相対でやるというふうなたてまえになっておるそうでございます。これはいわばバイカイじゃないかと私は思うのですがね。これを、やはり公社債市場ができた以上は、その育成のために市場を通すべきである、かように思うのです。  この二点と、先ほどの時期、これをちょっと。
  21. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 先ほどもちょっと成瀬さんの御質問のときも申し上げたのでございますが、日本銀行がある時期を申し上げるということは非常に困難な問題で、実行を決定しませんと。そこが少し御了承を願わないと困るわけでございますが、まあその点でつとめてそういうふうに運びたいということを申し上げるにとどめさせていただきたいと思います。  それから、さらに、確かにいま取り扱っておる銘柄は少ないのでございますが、しかし、これも今年から始まった市場でございますので、第一はやはり証券会社のほうも慣れてこないと私はいけないんじゃないか、かように思っておるわけでございます。で、慣れるということは、たとえば国債にしましても、このごろはたいぶ国債を民間消化する、市中消化をするという点で、だんだん整備されていきましたように、そうたくさんのものを一挙にこれは上場すると、かえって混乱を来たすんではないか。徐々に当然ふやしていく。  それから、日本銀行の扱いについてまあ相対でやっているんじゃないかという点ですね、これを市場を通したらどうかというお話でございますが、これもついこの間から始めたばかりで、それもいままでは完全なる割り当て制でございました。ところが、これを先ほどちょっと申し上げたとおり、希望者から希望を取るというような制度にいま改めておりまして、ここで内容は申し上げかねますけれども、各銀行が相当ばらばらに——銀行というのはとかく振り合いを考えるのですが、これについてはかなりそれぞれ自主的にお考えになって申し込んでおられるという点で、いままでの割り当て制よりはだいぶ進歩をしたんではないかと、まあかように考えております。  何ぶんにも金融のこういう問題は、一挙に解決することもいかがかと思って、慣らしながら漸進的に進んでまいりたい、かように考えております。
  22. 藤田正明

    ○藤田正明君 おっしゃることはよくわかるのでございますが、現在のように、市場価格と申しましてもあってなきがごとき市場価格であろうと思うのです。そこに買いオペを日銀からぽっと出されますと、市場が非常に混乱する。ですから、徐々に早くそのような完全なオープン・マーケットというふうなことにしていただきたい。希望なんでございます。  それから、先ほど成瀬理事から凍結株についての質問がございましたが、これは利潤についての質問でございまして、私は共同証券の六百三十億、保有組合の千八百億というふうなものについて、日銀総裁はときどき、けさほども実は東京新聞で御意見の発表、談話を読んだのでございます。非常に株価に対する影響が大きいと思うのです。これはある意味では、千二百円を買いささえるために共同証券ができ、ダウ千六百円以上になることを冷やすために共同証券がある、株価を規制しておるのではないかというふうな感じすら持つわけでございまして、このような発言に関しましては心理的影響が甚大であるということをお考えいただきまして、それとともにこの共同証券の六百三十億、保有組合の千八百億をどのように引き揚げていくおつもりであるか、お伺いさしていただきたいと思います。
  23. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 私のいままでの共同証券に対する態度あるいは発言について御注意をいただきまして、恐縮なんですが……
  24. 藤田正明

    ○藤田正明君 はなはだ僣越ですが……。
  25. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) この新聞についてはもう皆さんよく御承知と思いますが、質問がございませんで、答えだけが出ておりますので、あれ、質問を出して答えを出してくれると、ニュアンスが非常に違うのでございますが、それだけのことをちょっと申し上げておきます。  それから、非常にそういう点で影響するところが多いということ、私も、ことに株式相場については絶対に発表しないつもりでおりますし、幾らがいいかという点をよく承るのでございますし、また、ただいまの共同証券というものは下をささえ上を押えるものじゃないかという御発言につきましては、私どもは何もそういう相場を維持しあるいは抑制するというつもりはもう一つもございません。ただ、私ども心配いたしておりますことは、これが投機、思惑等によりまして、相場が非常な変動を起こすということは、これは厳に慎んでいただきたい。思惑や投機によって、せっかくだんだんよくなっておる市場がまたつぶされるということは耐えられないことでございますが、その点は十分注意してもらいたいと思っております。千五百円を割ったらどうするのかということをよく聞かれるのですが、そういう相場をささえるとかなんとかでなくて、私どもの日々関係者から聞いておりますことは、思惑がないか、投機がないかというような、一般傾向だけを聞いておりまして、そういう相場にとらわれたことは私とも決して考えていないのであります。しかし、大衆の側から申しますと、やはり相場というものは株式である以上非常に大事なものでございますが、しかし、これはある程度常に動くということは、これは本質的にいたし方ないものでございまして、ただ、ただいま申したような激動が起こらないように、やはりこれも経済が安定し、あるいは非常に思惑の余地のないように、各企業が収益をあげて本来のいい姿になっていくということが根本だろうと考えておりますが、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  26. 藤田正明

    ○藤田正明君 持ち時間が切れましたので、私はこれで終わらしていただきます。
  27. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ありがとうございました。
  28. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は、二点について、総裁からこの際御意見をお聞きしたいと思います。  一つは、金融政策の点でございますが、この中で当面問題になっておりまする金利動向について、第二は、もちろんこれも金融の中に入りますが、その中で証券金融の問題について、総裁からお聞きしたいと思います。もちろん相当範囲は広いのでございますから、とてもいまの時間では許されません。でありますから、あるいはまあ表面的な問題にのみ限って申し上げますから、さような意味でお答えを願いたいと思います。  特に金利政友の問題については、先ほど来いろいろのお話がございましたが、私もさきに本委員会におきまして大蔵大臣に、BAレートとわが国貿易金融関係について質疑し、あわせて強く警告を申し七げた次第でございます。これは非常に重大な問題であるし、また関心を持たなければならない問題である。政治界も、財界も、金融界も、この問題を軽視しておるのではないかということを、私は国際収支と関連いたしまして申し上げておきました。特に総裁からただいまお話がありましたとおり、とにかくアメリカとしてはBAレートを三回も引き上げたですね。御承知のごとく、アメリカはベトナム問題以来総合して三十億ドル近くの赤字があるわけです。ですから、国内経済では金融の引き締めや増税が問題になってきているようです。この点は外電にいろいろ伝わっております。また、雑誌にもいろいろ出ております。もちろん、中央銀行総裁としては、こうした国際、特にアメリカとの関係におきましては、十分検討されていると思うのですが、先ほど来総裁は、貿易収支が大幅黒字で非常に好調であるから、資本収支の問題はたいして、心配ないとは申しませんけれども、まあまあというふうに考えておると言っておられた。私も、わが国の国際収支構造から見て第一の問題は、貿易収支の黒字維持、貿易の拡大だと思っております。しかし、現在のように、こういうふうに資本収支の問題が複雑になってきて、微妙な動きをしてくると、この貿易の問題は十分貿意する必要があり、本委員会でさきに強く警告したわけです。私は貿易収支の問題もこのままでいつまでも続くと思わぬです。そうなってくると、資本収支の赤字、短資流出はこれとうらはらの問題で、十分注意しなければならないと思うのです。もちろん、貿易収支を重点に今後も考えられることはいいけれども、このことを過小評価しては相ならぬと思うのです。私はこの点を心配いたしまして、福田君にも強く要望しておいたのです。  特に最近の動きを見ると、非常に微妙な動きを示してまいっておるのでございますが、日銀総裁はいまのままで大体やっていこうというような方針を示されました。新聞なとても貿易金融について二重金利の問題を発表しておるのです。この二重金利の問題は、ただいまのところでは具体的にお答えがなかったですが、これは検討中なのでございますか、これに対応する方針としてまだこれは固まったものではないのでありますか、その点を私は承っておきたいと思うのでございます。特に産業界においても非常にこれに関心を持っておりますから、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  29. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 先ほど幸いにも貿易収支のほうはいいということを申し上げて、そうして資本収支のほうは確かに赤字にはなっておるけれども、これをカバーしておるので、当面まあいまの情勢がいいというふうに申し上げたのでございますが、私もやはり貿易自体につきましても、これは現在において日本の輸出が非常に伸びておりますけれども、そのパーセンテージは別でございますが、絶対額としてはやはりアメリカ向けの輸出が非常に伸びておることはもう数字のあらわしておるとおりでございます。それからまた、そういう状態でございますので、アメリカが今後どういう情勢になるかということがまあ日本貿易について非常に注意していかなければならぬことはおっしゃるとおりでございます。  そういう仮定のもとにいま私がどうこうと申し上げるわけじゃございませんが、しかし、アメリカ国際収支がいまお話しのとおり非常に悪うございます。これの改善のためにアメリカ銀行の対外融資を制限したり、あるいはまた企業の対外投資を非常に制限しております。そういうことをやって、またこれ、アメリカ貿易の赤字というものについては各国も非常に注意しているわけでございます。まあそういう面からいいますと、やはりそういういろいろなアメリカの制限が日本貿易の上において影響を及ぼしておるという一とも確かでございます。この資本収支が非常に悪くなったのもアメリカのそういういろいろの影響だろうということも確かに無視できない、かように考えておりますが、しかし、これは相手さんのほうでございますので、日本といたしましては、決してこのいまの外国の金利日本金利との関係を無視しているわけではございません。今後の成り行きを十分考えながらひとつ進んでいかなければならぬと思っております。具体的な方法を示せというお話でございますが、これはやはり私どもでなおいま検討中てございますので、具体的に申し上げることはお許しを願いたいと思いますが、私どももこの外国の金利日本金利との関係を非常に重視しておることだけを申し上げて、お許しを得たいと思うのでございます。国際収支全体として順調だからといって、私どもは決して手放しにこれを安心しておるのではないんでございまして、ただいまの御発言のとおりいろいろの点を考えておるということを申し上げておきたいと思うのでございます。
  30. 野溝勝

    ○野溝勝君 これに関連して、もう一つ聞いておきたいと思います。ただいま総裁国際収支のことを非常に心配されているということですが、こういう動きに対しては政府日銀だけが真剣に考えてもなかなかうまくいかない。日本の産業資本というのは高度経済成長の恩恵に浴したんでございますから、このことをなかなか忘れないんだね。ちょうど朝鮮戦争当時のことが依然として頭にあるのですね。この微妙な際でございますから、この点について一応産業人に対して、十分理解、留意するよう、協力を要請したり警告したり、そういうのをやったことがありますか、またやろうといたしておりますか。こういう点は、これは国のために重大でございますから、ひとつ総裁から、私見でよろしゅうございますから。決してこれはイデオロギー的にやるのじゃないのですから、真剣にあなたのほうもざっくばらんにひとつお話し願いたい。
  31. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ただいま非常にざっくばらんなお話をいただいて、私もたいへんにうれしく思う次第でございます。御承知のように、私は長年民間におりまして、そうして日本銀行に突然参ったような次第でございます。したがって、自分といたしましては、常に民間の方とも接触いたしており、現にこの間も関西に十日ばかり行って参りましたが、全部民間の方といろいろお話し合いをして、問題を認識さしていただくと。私は東京におきましても同様にやっておるつもりでございますが、しかし、御注意を受けますと、一そう努力しなければならぬと、かように考えております。政府のことは差しおきまして、日本銀行として、決して独善的にはやるべき問題じゃないと、これは国家的のいろいろの面の方の御意見も承り、さらに海外事情もよく調査いたしまして、善処しなければならぬ、かように考えておる次第でございます。御注意まことにありがとうございます。
  32. 野溝勝

    ○野溝勝君 それと関連しておるのですがね、私はこの間長野県の中小企業団体の総会がございまして、それに出席いたしましたが、そこに日銀支店長が出てまいりまして、非常によい話をされました。しかし、最近の機微に触れた問題の取り上げ方がちょっと少ない感じがしました。と申すのは、決定しなくても、大体の方向ぐらいは示したほうがいいと思うのです。やっぱり支店長会議をやられるでしょうから、そういう点は、微妙な動きの際でございますから、中小企業についても——総裁が関西へ行って会われた方々は大体巨大企業の代表でしょうね。やはり中小企業について目を向けてほしい。そうするには、やっぱり支店長あたりを通して、この動きなどについての大体考え方、そういうことを徹底されることが非常に必要じゃないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  33. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) なかなか検討中の問題を、皆さん、いろいろな方々に申し上げることはなかなかむずかしいのでございますが、しかし、私も支店長会議のつどやかましく申しておることは、支店長というものはもっと民間の方と接触して、いろいろなことを御相談に応ずると同時に、民間の御意見をよく聞いて、そうして本部に連絡をするようにということを言っておりまして、まだ完全とは申しませんが、このごろ支店長も会合に出て相当努力しているように思うのでございますが、しかし、まだまだ足りないことは御注意のとおりでありますので、一そうつとめてまいりたいと思います。  それから、関西に行って上のものとばかり話してきたのじゃないかということでございますが、半分ぐらいは、何でございます、中小企業の問題が今度非常に多うございまして、中小企業はもう各地において問題になっておりますし、私はやはりこれからのいろいろな問題、物価の問題とかいろいろございますが、そのうちでも中小企業の問題を非常に重視していかなければならぬと、かように考えております。日本銀行もかなり中小企業の問題の研究はやっておりますので、私どもの最近出したのを野溝さんにお届けしますから、ひとつごらんください。
  34. 野溝勝

    ○野溝勝君 これはお答え願わぬでもいいのですが、まあ私が非常に関心を持っておることは、日銀総裁は法王庁の法王になってはいかぬから、そういうことのないように、中央銀行ではありますが、今日ではいろいろとなかなかに複雑微妙であり、中央銀行は上層の銀行を監督するものとだけ考えられては困るのでありますから、銀行などについても、日本銀行の代理店の問題などについても、もっと範囲を広げてただいまの御趣旨を普遍化しなければならぬと思う。これは参考までにあなたに申しておきます。  次に、私がお聞きするのは証券金融のことですが、今日の証券金融については制度的なものはない。私は前にも大蔵大臣に聞いたことがあるのですが、運用預かりとか保護預かりで不祥事を起こしたのではないかと思う。これは昨年の国会でも問題になりました。それで、一応証取法の第一次の改正が行なわれたのですが、その際、当面整備さるべきところの取引所とかあるいは金融面などですね、そういうような問題が第二段の問題として残されておるわけですね。この点を総裁のほうではどういうふうに考えられておられるか、この点ははっきりしたお答えは願えなければ、お考えのあらましだけでもよろしゅうございますから、この際お伺いしておきたいと思います。それから、日証金を通じる金融ルートの問題などについても、ひとつこの際お話し願いたいと思います。
  35. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 証券のいろいろの組織の問題は、むしろこれはここに証券局長も見えていますが、大蔵省がむしろ主として考えられるべきだと思っておりますが、証券金融につきましてはいろいろの方法をやっておるわけであります。第一は、御承知のとおり、ただいま日証金を通じて出しております。あるいはまた、本格的のものとして市中銀行も担保を取りましていろいろやっておるわけでございます。また、証券会社としてはコール市場からも資金を取っておる。こういうような日証金とか、コール市場とか、市中銀行を主とした銀行借り入れ、これが本格的のまあ健全なルートだと、かように考えておるわけでございます。  ところで、これはお触れになりましたが、いい機会でございますので、ちょっと申し上げますと、証券につきましては、従来これが問題の種でもあったわけでございますが、運用預かりという制度がございまして、この運用預かりという制度は、これはいろいろ考えようがありますが、私どもから見ていると、非常に預金に似ておる問題でございます。やはりこういう制度によって証券会社が金を集め、そうしてそれを株式操作といっては悪いかもしれませんが、そういうものに使っておる、あるいは保有しておるということが、やはり今度の山一事件のようなのが起きた原因だろうと考えております。したがって、私はいまの証券会社が、これは根本の大きい証券会社に対する問題でございますが、こういういわゆるディーラー業務をなるべく、全然しないというわけにはまいりませんが、しかしそれは所要の流通在庫というようなものにしまして、そうしてこれはなるべく圧縮して、ブローカー業務のほうにいって、そうして手数料をやはり経営の収入の本体としまして、そうしてやっていくというのがいいのではないか。ブローカー業務が主体になりますと、いままでのような大きな資金が要らなくなる。むろん過渡的に時間的にある程度資金は要りましょうけれども、そういうものはもう通常のいわゆる金融ルートに乗ってくるのではないか、そのように考えておるのであります。したがって、この証券金融の問題は、やはりそういう変則的なことでなくて、そうして一方においてはブローカーを主にした健全な経営をやってもらう。それから、もし証券を保有するならば、自己資本でやれるような限度がやはり必要ではないか、こういうふうに考えております。よく、運用預かりをやめればまた新しい金融ルートが必要だ、こういうことを言われる方がありますが、私はそういう特別の制度をしなくても、そういう趣旨にいけば経営も健全化するし、それからまた、さらに今後は公社債市場という新しい、いままであまり活躍しなかった場面もございますので、そういうようにやって、証券会社金融につきましては特別のことは制度的に考えないで済むようになることが一番大事ではないか、かように考えておるのであります。
  36. 野溝勝

    ○野溝勝君 これはお答えはなくてもよろしゅうございますが、ただいまの総裁のお話、非常に私はけっこうだと思うのです。だけれども、これは証券界だけの責任じゃないのですね、山一問題だって、これは山一の経営のしかたも悪いのでございます。しかし、これは銀行にも責任があるのですね。政府にもやはり責任がある。ですから、これはどうもつながりがあるのだね、政府金融、産業。ですから、この点は、あなたは中央銀行総裁として堂々とこの点に対する見解は大いに述べてもらいたいと思うのですね、大蔵当局に対しても。そういうことを特に希望いたしまして、私の質問を終わります。
  37. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私は証券関係のことをお聞きしたいと思うわけであります。日本銀行法の第一条には「日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策二即シ通貨ノ調節、金融調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス」、二条にも「日本銀行八専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」とし、政府においては大蔵大臣、民間と申しますか、そのほうでは日本銀行総裁、そのお二人が日本金融・財政・経済を一番中心になっておやりになる。そういう立場から、私は一番の本論である金融問題を伺うわけでございますが、証券だけを簡単に伺いたいと思う。  きわめて要点だけお伺い申し上げますが、山一証券とかあるいは大井でございますか、こういうものが問題を起こしておるというのは、日本経済の発展あるいは景気の動静等によったことはよろしゅうございますけれど、何か証券業界自体に問題があるのじゃないかと思いまして、その点に対する総裁の御見解を伺いたい。  それから、第二は、ただいま野溝さんに対するお答えの中にございましたから、重ねるわけでございますが、証券会社の本格的の経営というものは手数料主義でいくべきであって、いわゆる自己売買というようなものはやめるほうがいいというふうに拝聴いたしましたが、その証券会社の本格的な問題を伺っておきたい。これは第一の問題にもあるるいは関係があるからと思って、お伺いをするわけでございます。  次は、投資信託の問題でございますが、これは日本の株式というものが非常に大衆化してまいりまして、一般の人がこれを持つ、しかし、それにはなかなか知識が要りますので、投資信託のようなものは非常に私は必要であると思っております。しかし、それが現在の証券会社そのものによって兼営といいますか、ともにやっておるというのは適当でない、かように思っておるのでございますが、この点に対する総裁の御意見、まあそういうところをひとつ根本問題と思いましてお伺いするわけでございます。私は、大蔵省でも証券局というものに相当力を入れて、銀行とともに証券行政の正しい行き方をしていく政府の方針に対応して、日本銀行でもぜひひとつこのほうにお力添えを願いたい、かような考えのもとにお伺いするわけでございます。
  38. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 私は先ほど証券の今後の仕事について申し上げましたが、決して絶対的にもう株を持っちゃいかぬとかなんとかということを申したのではないのです。また、仕事をする上において、ある程度のやはり手持ちというものも必要ではないか、かように考えておるのでございますが、ただ、いままでのように、いわゆるディーラー業務が主体になっているということは、非常に危険ではないか、かように考えております。また、ディーラー業務をやれば、何かそこに資金がよけいに要る、大量に要るということになると思うのであります。そういうふうな点をよく証券会社が自覚して、やはり健全なる——私もアメリカ証券会社等のバランスシートを見てみましたが、日本のように非常な大量の資金を借り入れておらないようでございます。その点は、いま急にこれを絶対的に至急やめろということはできないでございましょうが、方向としては、やはりブローカー業務を主体にするように進んでもらいたい、かように考えておるわけでございます。  それから、投資信託についてのお話がございました。私も、これもやはり一つの日本の産業資金としてのあり方として、これがうまくまいれば非常にいいのではないか、かように考えておりますが、しかし、御指摘のとおり、これが証券会社の一部のようなかっこうにあるということは、やはり健全な姿ではないと、かように考えておりますので、私の記憶が間違っておらなければ、投資信託をつくったときから、証券会社とは別個のものだという方針で、当面急につくるのだから、専門家も必要だろうという意味において、ある程度つながりはできてきておる、しかしそのつながりは、次第にこれは分離していくというふうにやっていくんだという方針のように承っておったのでございますが、やはり当初持たれた方針をあくまでも続けていっていただきたいということは、私どもも痛感しておる次第でございます。
  39. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 ただいま私がお伺いしたことに対して、初めにお答えいただきました点が、何かちょっと行き違いのように思いますので、いま一回申し上げますが、私はむしろ総裁よりもきびしく、証券会社はいわゆる手数料だけでやっていく経営にすべきではないか、自分でいろいろのことを、ほかのことをやるということは、むしろ問題を起こすもとになる、かように思っておりまして、何かただいまお答えをいただきましたのは、私の申し上げたことに対して違うような気がしたものですから、かように再び申し上げておくわけでございますが、もちろん、政治でございますし、経済の問題でございますから、弾力性を持って一歩一歩改善するのが当然でございます。しかし、目標ははっきりしまして、できるだけ努力をして、いいことにはあらゆる刷新をしていくという点からいけば、証券会社というもの、あるいは証券取引というものの使命は、やはり手数料主義でいくのが正しいので、それ以外の、自分でだれを相手にするか、他のことによって利益をはかっていくというようなことは問題を起こすのではないか、かように思いまして、先ほど総裁に御質問を申し上げたわけでございますが、総裁のお答えは、私が考えておりますことと同様でございますけれども、しかし、やや私のほうがきびしいといいますか、はっきりその点をやっていただきたいということを申し上げているわけでございます。できれば、いま一度お答え願いたいと思います。
  40. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いまの御意見につきまして、方向は同じだということをお認め願ったわけでございますが、これにつきまして、実際面ではどういうことになるか、絶対にブローカーだけでいいのか、あるいはブローカー業務をやる上においても、ある程度の手持ちが必要なのか、そういう点はやはり実際家によく研究してもらわないといけないのではないか。一切右から左にやれといっても、はたしてそれが健全な姿かどうか。むろんたてまえはそういうことでやっていくわけですが、方向は同じでございますが、具体的に発言が違っておったので御注意をいただいたようなわけでございますが、そういう方向に向かっているので、しばらくその実績をごらん願いたいということをお願いします。
  41. 植木光教

    ○植木光教君 時間がありませんので、一点だけお伺いします。先日のこの委員会で福田大蔵大臣が、日銀法の改正について前向きの検討をしていくという御答弁があったのですが、その数日後、これは新聞で拝見したのですが、銀行局長は少し何か消極的な発言をしておられたようでありますけれども、これはまた私どもあらためて大蔵省にただすことにいたしまして、日銀総裁として、いままで民間にもおられたわけでありますので、この際私どもがこの法改正について参考になりますような御所見を伺っておきたいと思います。非常に広範にわたりますから、御答弁もなかなか微妙だろうと思いますけれども、御所見を承っておきたいと思います。
  42. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) この間新聞で、私もこの委員会日銀法の問題が出たことを承知しておりますが、その後大臣にお目にかかって、この問題についての真意をお確かめする時間がございませんので、私は新聞程度しか存じません。御承知のように、いまの日本銀行法というのは、いわば戦争中にできたもので、これは直さなくちゃならぬことは当然でございます。したがって、昨年の国会でございますか、大蔵省でこれをひとつ国会の御審議に出そうということで、私どももこれについて相当研究いたしました。それで、まだこまかい点にいろいろ問題がございますけれども、大筋としては、いままだ国会のほうには出ておりませんけれども、大体あそこらが適当じゃなかろうか。これは御承知のように、金融制度調査会において相当議論がございまして、しかも、その議論の中には、結論が出ないままで出ておるというほどむずかしい問題でございます。したがって、その議論を私ども参考にいたし、大蔵省に対してもいろいろ私ども意見を申し上げて、一応案ができておるわけでございます。  それで、新聞によりますと、大臣は再検討するとおっしゃったか、しないとおっしゃったか、その辺よくわからないのでございますが、その後新しい事態も出ておりますので、やはりこの一年間非常に変わってまいりましたので、そういう点からもう一度私どももひとつ見直してみよう。で、これでいいということならば、そういうふうに大蔵省に申し上げよう。  ただ、ここで、あの議論の中で、制度調査会でもそうでございますし、私ども大蔵省と話し合った中においても、じゃ国債発行というものを全然頭になかったのかといいますと、そうではございません。いろいろそういう場合も、あらゆる点を相当研究しまして、そうしてまずこれでよかろうという点が——まあ開放経済になりましたし、それからまたその後の経験からいって、私は見直すのがいいと思いますが、大筋はあれでいまのところいいんではないか、かように考えて、国債発行というものは全然頭になかったからこれは必要じゃないかということではなくて、相当そういう点も考えておることだけをちょっと申し上げておきます。
  43. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で質疑は終わりました。  宇佐美総裁には、御多忙中御出席いただきまして、有益なる御所見を承ることができましたことを、当委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  午前の委員会はこの程度にとどめ、午後は一時二十分に再開することとし、これにて暫時休憩することといたします。   午後零時四分休憩      —————・—————   午後一時三十五分開会
  44. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  ただいま林屋亀次郎君が委員辞任され、その補欠として塩見俊二君が選任されました。以上でございます。     —————————————
  45. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 午前に引き続き、租税及び金融等に関する調査のうち、第二として、証券業現状に関する件を議題といたします。  本日は、本問題のために東京証券取引所理事長井上敏夫君、東光証券株式会社社長唐沢繁雄君の両氏を参考人として御出席をいただき、御意見を承ることといたしております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会のために参考人として御出席いただきましたことを厚く御礼を申し上げます。昨年本委員会におきまして審査いたしました証券取引法の一部を改正する法律が施行されましてから一年を迎えるわけでございますが、その後の証券業界等におきます諸問題につきまして、参考人各位より御意見を承りますれば、今後の当委員会の審査の上に多大の参考となることと存じておる次第でございます。つきましては、参考人各位におかれましては忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げる次第でございます。  それでは、議事の順序について申し上げます。初めに参考人からそれぞれ二十分程度意見を述べていただきまして、その後各委員から御質疑を申し上げるという順序で進めてまいりたいと存じます。参考人の方の御発言は私より指名さしていただきます。  それでは、まず井上参考人から御意見をお述べ願います。
  46. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 私、東京証券取引所の井上でございます。本日は、本委員会から証券市場現状について述べるようにとの御要請がございましたので、以下簡単に私の所見を申し述べせていただきたいと存じます。  戦後のわが国経済は急速な復興と発展を遂げてまいりましたが、証券市場におきましても、証券民主化運動の促進と、それに伴う諸制度の導入などがございまして、その機能を充実させるとともに、その規模におきましても著しい拡大を遂げてまいりました。戦前の証券市場に比べて、全く面目を一新いたしたのであります。しかし、この間経済の激動期に際会いたしまして、証券業界もまことにきびしい試練を経てまいったのであります。特に昨年は、景気調整過程におきまするところのわが国経済のひずみがいわば集中的にあらわれまして、株式流通市場は、諸施策が講ぜられましたにもかかわらず、低迷の一途をたどりまして、一部の証券会社に対する投資者の不安から、いわゆる運用預かりの引き出しや投資信託の解約が増大いたしました。また、株価も大幅な下落を示し、証券界は最悪の事態に立ち至ったのであります。  幸いにして、政府並びに日本銀行など関係諸機関の御理解と御協力によりまして、適切果敢なる措置がとられ、その危機を回避し得たのであります。昨年の後半に至り、株式市場は、政府国債発行など積極的な財政施策の方針決定を契機に、ようやく立ち直りを見せまして、その後の景気回復のきざしと相まちまして、順調なる足取りで、漸次売買高も増大し、株価指数も本年二月には旧東証株価平均指数千五百ポイントを上回るに至ったのであります。  この間、発行市場におきましては、流通市場の異常な状況から増資の全面的規制のための措置が行なわれてまいりました。最近に至りまして、増資の量的規制を取り払いまして、証券界の自主的な取り扱いにまかされることとなりましたが、もちろん証券界といたしましては、今後におきましても投資者保護の立場から増資内容の充実をはかるために、その質的な検討は続けてまいる所存でございます。  増資についての量的規制を撤廃できましたことは、資本市場の機能回復を念願するものといたしましてまことに喜ばしいと存じます。しかしながら、一方、流通市場におきましては、依然日本証券保有組合及び日本共同証券による株式のたな上げがありまして、そのたな上げ株式の一部を解消いたしたもかお、いまだに簿価にして約三千六百億円の株式が練結されておる状況であります。この凍結株式につきましては、いわば日本銀行の信用に基づき保有されているものであり、また証券市場は本来的にいえば自由市場であらねばならないという観点からいたしましても、このような状態はできる限り早急に解消することが適当であると考えるところであります。しかしながら、株式市場の現況からいたしまして、その放出の時期と方法につきましては、きわめて慎重に考慮されなければならないと存じます。  一方、公社債市場につきましては、資本市場の重大な一翼をになうにもかかわらず、わが国におきましては金融構造の特殊性からいたしまして株式市場の発達に比べて著しいおくれを見ておりますことは、皆さま御承知のとおりであります。昭和三十一年開設された公社債の流通市場は、その後の金融政策の転換に伴いまして、公社債の実勢相場が起債条件と著しくかけ離れるに至りまして、三十七年四月以降、公社債の売買取引は事実上停止されていました。しかし、このたびの国債発行を契機といたしまして、東京証券取引所は、公社債の流通の円滑化をはかりますとともに、その公正な価格を形成し、ひいては国民経済に寄与いたすべく、この二月、公社債の流通市場を再開いたしました。ここに証券界多年の念願でありましたところの公社債流通市場確立への第一歩を進めたのであります。また、近く国債上場も予定されておるのでありますが、公社債流通市場の確立には、私ども証券界の努力はもちろんでありますけれども、市場のメカニズムが十分発揮できますところの起債環境の整備に一段の配慮が望まれるのであります。  昨年改正証券取引法が公布施行されまして、証券業の免許制が採用されることとなったのでありますが、現在、証券会社は、この免許制への移行を目前に控えまして、財務体質の改善強化と営業体制の刷新整備を中心に、わが国経済の発展に寄与し得る証券会社としての機能充実に全力を傾注いたしておるのであります。  一方、証券取引所につきましては、証券取引法改正法案の審議に際しまして、「資本市場育成強化のため、今後とも証券取引法の改正が必要であるが、このため政府においては、証券業協会及び証券取引所のあり方、証券の発行流通に関する制度、さらに証券金融の制度について十分検討を加えるべきである」との附帯決議がございましたが、私ども取引所のほうにおきましても、証券市場管理の担当機関といたしましていかにあらねばならぬか、またいかにして社会の負託にこたえ得るかという観点から、そのあり方に意を注いでいるところであります。  ここで本取引所の組織について見てみますと、御高承のとおり、戦後会員組織の取引所として再開されたのでありますが、この組織が採用されましたのは、統制的な性格の強い日本証券取引所を解体して民主的な制度を採用するねらいがありましたことはもとよりでございますけれども、証券取引はきわめて専門的で、しかも大量の証券を正確迅速に処理することが要請されるところから、取引所を能率的に運営するには取引の主体をなす証券業者の自治的な運営形態が最も適当なものとされたからにほかならないのであります。この意味におきまして、取引所の組織としては、今後も会員組織でいくべきものと私は考えるのであります。  ただ、その運営におきましては、投資者の保護並びに国民経済の適切な運営に寄与するという証券取引所の公共的使命が十分に確保されることが強く要請されるところであります。かかる要請にこたえるべく、私どもの取引所におきましては、すでに昨年七月、証券取引所のあり方に関する特別委員会を設置し、取引所はいかにあるべきかについて、総力を結集しまして鋭意検討を行なっております。  同特別委員会におきましては、会員組織に基づく取引所機構のあり方、公正な価格形成と流通の円滑化のための売買管理のあり方、投資家保護と産業資金の調達という二面の観点からの上場基準と上場後の証券管理のあり方などにつきまして、根本的な検討を加えております。  このうち、いわゆるバイカイ問題につきましては、昨年未以来鋭意検討を加えてまいりましたが、最近、市場における価格形成の一そうの公正化をはかるために、上場有価証券の注文は、売り買い別に市場に集中し、競争売買により価格優先及び時間優先の原則に従って執行するものとするとの大綱により、今後具体的な実施細目を検討するということが、取引所の理事会において了承されているところであります。  これまでにおきましても、本取引所は、流通市場の健全性保持並びに投資者保護という観点から、売買管理の強化をはかり、株価の変動に異常が認められた場合あるいはそのおそれがある場合には、委託保証金率の増徴等の弾力的規制措置を講ずるなど、公正な価格の形成につとめてまいりました。また、上場会社の決算に関する監査意見を公表して、上場会社の財務内容のディスクロージャーを強化してまいりましたが、今後ますますこうした制度を充実することによりまして、真に投資者保護に徹した企業のあり方が確立されることが期待されるのであります。  また、取引所業務につきましては、流通の円滑化をはかるため、かねてから大型電子計算機などを導入し、計算事務の機械化を行なうなど、その合理化を進めてまいったのであります。今後におきましても、長期的視野に立ち、可能な限り業務の合理化を推し進めていく所存であります。また、将来においてますます増加が予想されますところの株券及び債券の取引決済面の合理化をはかる必要があると考えられ、これに対処していくために、広く業界、学界、産業界金融界の方々から御参加を求めまして、いわゆる振りかえ決済制度の検討を行なっております。  以上、述べてまいりましたように、証券界においては解決しなければならない問題が多々あるのでございます。もちろんこれらは私どもに課せられた大きな課題でございますけれども国民経済と密接な関連を有する証券市場であることにかんがみまして、基本的な施策につきましては、証券界のみならず、各界、特に国会並びに政府の御理解が必要なわけでありますからして、今後ともよろしくお願いする次第でございます。  特に証券税制につきましては、国会並びに政府の御理解と御協力によりまして、昨年配当所得に対する源泉選択課税制が実現されたのでありますけれども、なお利子所得と配当所得の課税上の均衡が十分はかられたとは言いがたい状態でありますので、明年度以降の税制改正におきましては、企業には蓄積、家庭にはゆとりという要請からいたしましても、利子所得と配当所得を税制上均衡のとれたものに扱われますよう特に要望する次第でございます。  また、証券金融につきましては、その現状はきわめて狭隘かつ不安定でありまして、このため証券市場の重要な機能であるところの有価証券の市場性の付与が不完全なものになっております。金融緩和基調にあるこの機会に、正常な証券業務を営む上で必要とされる資金は、証券担保金融の形で供給される制度の確立が望まれるのであります。  最後に、業者の免許制への移行につきましては、業者自身の努力はもちろんでありますが、それに関する一連の証券政策につきましては、証券界の育成という見地から、大局的総合的視野に立って、円滑かつ効果的に行なわれますよう格段の御配慮をお願いいたす次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わりますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。
  47. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ありがとうございました。  次に、唐沢参考人にお願いいたします。
  48. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) 東光証券の唐沢でございます。本日は、当委員会からお呼び出しにあずかりまして、証券業現状について申し述べよと、こういうことでございますので、中小証券の立場からいささか御意見を申し上げまして、御参考に供したいと存じます。  まず、最近の証券市場の現況につきましては、委員の皆さまがすでに御高承のところでございますが、昨年の七月の政府の積極政策への転換を契機といたしまして、その後順調に市況は回復してまいっております。昨今は、東証ダウで見まして、ただいま井上参考人が申し上げましたとおり、千五百ポイント台に達しておる次第でございます。また、売買高におきましても、最近二、三カ月の状況を東京市場において見ますと、一日の平均出来高は一億六、七千万株ということになっておりまして、これを昨年中の一日平均出来高に比べて見ますと、約六割の増加を示しておる状態でございます。  この間、私ども証券会社といたしましては、不況に対処いたしまして、懸命に経営の合理化につとめてまいりました。また、体質の改善をはかってまいったわけでございます。経営面で申し上げますと、今回この四月のベースアップという点を除きまして、大体二割強の節減という状態合理化をいたしてまいったわけでございます。また、人員につきましても、店舗につきましても、相当な合理化をいたしまして、たとえば一証券会社の営業所数を全国的に見てまいりましても、昨年末には二千百十九店舗と、二年前の三十八年に比較いたしましておよそ三割の減少を来たしておるわけであります。また、従業員の状態を見ましても、同一期間をとりまして同じように三割の減少を来たしておるわけでございます。  このような証券会社合理化を行なってまいったと同時に、また一方におきまして、市場の好転ということと相まちまして、証券会社の内容もおかげさまをもちまして大幅に改善をいたしてまいりました。私の知る限りにおきまして申し上げるならば、大方の証券会社は過去の赤字の大半を埋めることができたのではないかと、かように考えられるわけでございます。  このような好転を見ましたということは、もとより産業界の業績が逐次回復に向かいつつあるということは申し上げるまでもないことでございますが、特に国会、政府をはじめといたしまして関係各方面の絶大なる御支援によるものと、私ども深く感謝を申し上げる次第でございます。  また、私ども業者といたしましても、証券市場国民経済的使命、社会的責任の重要性ということを深く認識いたしておりまして、なお一そうの経営の合理化の推進もしますし、企業の体質の改善強化に努力するということも当然でございます。一方、投資勧誘態度の改善等につきましても、私ども証券会社の社会的信用の向上に一段の努力をいたしております。また、これからもなお  一そうの努力をいたす所存でございます。  業界全体といたしましても、証券業協会、証券取引所におきましても、いろいろな特別な委員会をつくりまして、それぞれの基本的なあり方あるいは売買仕法の問題など、また協会といたしまして業界の自主規制の問題など、懸命に検討を重ねているのが現状でございます。  しかしながら、証券市場は本来経済全般の動向と密着をいたしておるものでございまして、証券政策ないしは証券行政につきましても、あくまで総合的に、かつ弾力的に運営をされるようにお願いをいたすわけでございます。同時に、特にこれから申し上げます諸点につきましては、本委員会の先生方皆さまに一そうの御理解と御協力をお願い申し上げたいと思うのでございます。  その第一は、免許制への移行の問題についてでございますが、免許制への移行につきましては、そのこと自体証券会社の社会的信用向上に大いに役立つものとして私どもみな賛意を表するところでございます。また、その精神を体しまして、営業態度の改善、経営の合理化等、その体質の強化のため鋭意努力を重ねている次第でございます。しかし、何ぶんにも約四年間にわたる不況の傷あとはいろいろな面に深いのでございます。簡単にこれを一掃するには思うにまかせぬ実情があるわけでございます。たまたま伝えられるところによりますと、大蔵当局では免許制への移行の適否の判断をこの九月未現在の状態で行なわれるというように伺っておるわけでありますが、法律上の免許制への移行は四十三年の三月末でありますので、それ以前、ましてこの九月末までの状態でその適否を判断するということは、私どもといたしましては時期尚早ではないかと思うわけでございます。  また、先ほど申し上げました大方の証券会社の黒字が、何と申し上げましても、その内容をよく見ますと、経常収支のみで相当大幅な黒字計上ができているとは私は考えられないのでございます。相当この状態は割り引きせねばならない。こういう実情に照らしましても、その実施の時期につきましては十分検討をお願いしたいと思うわけでございます。特に中小業者でございますが、この市況の好転と相まちまして懸命に希望を持って努力いたしております。そうした状態にありますので、その判断の時期はできるだけ猶予期間を置いていただいて、改善の努力の実を結ぶように、どうか現実に即して弾力的に行なっていただきたいと、かように考えるわけでございまして、格段の御配慮をわずらわしたいと思うわけでございます。  なお、この趣旨につきましては、昨年の証取法の改正の時期におきまして、衆参両院の附帯決議にもこの趣旨が盛り込まれておるのではないかと存じます。  次に、職能分化の問題でありますが、ブローカーとディーラーを完全に分離する、このことは、わが国の現状から見まして市場の機能を阻害する面が多いのではないかと存じます。むしろ日本的な風習に即した環境の整備を行なっていただいて、そうして自然に分離していくということが望ましいのではないかと思うのでございます。  また、将来の中小業者の姿はどう考えられるべきか、こうした観点に立って見ますときに、証券会社の機能につきましては、資本の多寡によって左右されるべき筋合いのものではございません。大中小それぞれの業者が、対等の立場に立ちまして多数が市場に参加する、そこではじめて適正な価格形成が行なわれるものであります。つまり、私ども中小業者も含めまして、それぞれの証券会社が健全に育ちますれば、証券市場は当然健全に育つものと考えております。大中小それぞれところを得さしめて、そうして証券市場全体の適正な発展へのビジョンが置かれまして、今後の証券行政が運営されることが望ましいと考えておるわけでございます。  なお、現在におきましては、中小証券の育成策を特に講じていただきたい、かように考えております。  なお、この際特にお願い申し上げたいと思いますことは、証券業者の安定した収支構造を持つため、われわれといたしましてはもちろん徹底した合理化を推進はいたしてまいりますけれども、委託手数料を含めまして収支の安定化をはかる方策を十分御考慮をお願いしたいと思う次第でございます。  次に、証券金融の問題でございます。大証券に比べまして中小証券の証券金融の道は至って狭いのでございます。せめて日証金に対する資金量の増加という程度くらいは、中小証券に対する証券金融の強化という点から、ぜひお願いを申し上げたいと思うのでございます。  また、信用取引制度につきまして、これが改善策を現在業界あげて検討をいたしております。信用取引は、申し上げるまでもなく、仮需給の導入方法として証券市場の形成に大きな意義を持っておるものでございます。この制度のより適正な機能を発揮させて、それが投資家側にも有利であり、かつ証券市場の発展につながる方策をわれわれも検討しているわけでございます。このためにも、この証券金融の量の拡大はぜひ必要なのでございます。何ぶんの御配慮をお願いいたしたいと存じます。  最後に、最近の株式市場におきまして、日本共同証券並びに証券保有組合の凍結株の放出の問題が新聞でいろいろ報道されております。そうして株価の圧迫を来たしておりますし、売買高に至りましては激減をいたしております。凍結株はもともと、証券市場の機能を保持しよう、一般投資家を保護しよう、こうした点で設けられたものと考えますので、凍結株の放出にあたりましては、何とぞこの趣旨が全うされるよう関係当局の格段の御配慮をお願いしたいのでございます。  簡単ですが、以上をもちまして私の意見の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  49. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ありがとうございました。  以上で参考人の方の御意見は全部述べていただきました。   速記をとめて。    〔速記中止〕
  50. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  それでは、ただいまの参考人の御意見に対し御質疑がございましたら、順次御発言を願います。
  51. 野溝勝

    ○野溝勝君 参考人の皆さんに、簡単にお伺いしたいと思います。  大体、私の聞かんとする点は、こまかい点もありますが、時間の関係でそれは省略いたしまして、午前中証券金融につきまして日銀総裁から大筋を伺いましたから、私はそれに基づいて少しくお伺いしたいと思います。  日証金の問題、担保銘柄を限定しておるのでありますが、限定することはこれは当然だとは思います。しかし、担保銘柄の適格基準について疑問を持っておるのでございますが、この点をひとつお伺いしたい。  それから、一般的な証券金融についてですが、大証券の方は大体、先ほど唐沢さんからもお話がございましたが、運用預かりやコール等の利用がきくのでございますが、中小証券には銀行との一般取引のほか特に道はないようであります。これはいま唐沢さんからもお話がありましたが、大体資金量は同率くらいに、日証金のワクなど同じくらいに何とか考えてもらえぬか、こういう御要望があるようでありますが、これは私どもも同感でありまして、この点についてもひとつもう少し具体的にお話を願いたいと思います。これは今後当局にわれわれが主張する上におきましても参考になりますから、その点をお伺いしたい。  それから、日証金の担保銘柄の範囲を広げる。現在は一部が六百五十銘柄中、日証金適格担保銘柄というのは四百五十程度であります。二部は全部だめ。こういう状況ですね。これら日証金の問題について、ひとつお伺いしたいと思います。  それからなお、ついでに、せっかくのことでございますから、理事長にお伺いするのでございますが、この点はあなたの個人的の見解でもよろしゅうございますから、お聞かせを願いたい。大体私は二部銘柄というのに対して非常に疑問を持っているものですから、これは前々から二部銘柄の上場が決定されるときから私は一つのあれを持っておりました。というのは、粉飾決算というのが最近問題になってきておるのでございますが、これは前からあったのですが、最近は経済界の不況から、より一そうこの問題が表へ出てきたんですが、こういう黒い決算をされるということは、投資者の保護にも育成にもなりはしないと思います。この点は非常な問題でございまして、二部銘柄の点についてどういうふうに考えておるか、この点をひとつお伺いをしたいと思います。  それから、昨年の証取法の改正に対して、業界は健全化対策に非常にあなたたちが努力しておることも承っております。きびしい業務規程なども設けた、また最近では自粛のために、これは証券局長らの努力もありますが、バイカイの問題について非常に自粛の傾向が見えておる、先ほどの日銀総裁の要するに運用預かりの問題とうらはらになっおりますが、こういう点。そこで、先ほど来お二人の意見を聞くと、証券の民主化のために努力しておる、こういうお話ごでざいますが、こういう点をもう少し明らかにしてもらわないと、ことばの上では非常に投資家保護、育成、あるいは民間資金の何といいますか、努力というようなことを言われておるのですが、これはよくわかるのでございますが、いま申したような点を明らかにしていただきたい。  参考にこれを私は聞いておくのでありますが、大体以上でございますが、これはあまり型にはまらないでざっくばらんにひとつお答えを願えれば幸いだと思っております。
  52. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答え申し上げます。  第一に御質問が出ました証券金融についての問題でございます。これは私個人の見解でございますけれども、どこへどういう金融をするということよりも、むしろ戦前日本銀行においてやっておりましたように、株式を含む証券担保の金融ということを、これは日本銀行としてなかなか難色もあるようでございますけれども、これをぜひ復活していただきたい。この証券担保の金融ということが解決がつきますると、これは金融でございまするから、相手の何と申しますか、信用とか業容とかいろいろな点を考慮されて金融がつくのは当然でございますけれども、ただいまのように株券はどうも添え担保になっているとか裏担保になっておるということでは、株式投資家の保護にも欠けるところがあるんじゃないか。また、証券会社立場からいいますると、これはやはり株式担保の金融が公然と認められますことによって非常に金融の疎通がついてまいる。もっとも、その担保価格の掛け目なり何なりというものは、これはときによってあるいはふやしあるいは減らすことがあってもいいと思うのでございますが、基本的には私個人としてそういう願望を持っておりますけれども、これはなかなか関係方面もいろいろおありのことで、容易に実現するものとは実は思えないのでありますが、これらの点につきまして皆さん方の御理解をもし得られるならば、われわれも御協力を得たいと考えておるところでございます。  ただいま日証金の問題がございまして、これは私がお答えするのが適当であるかどうか存じませんが、ただいま承知いたしておりますところでは、日証金が担保として取っておる株式の範囲、日証金がコール市場に対して差し入れる担保との間に、銘柄の間に、何というんですか、数の上でも開きがございます。それが若干日証金の資金繰り等を窮屈にしておるとも考えられますので、これらの点につきましては、できる限りまあ銘柄等、これもコール担保にするものについては日本銀行の了解が要るわけでございますけれども、できるだけ接近させていただき、また日証金が業者から取る担保につきましても、優良なものは逐次加えるように配慮してまいりたいと存じておるのであります。  それから、その次の御質問の二部銘柄についてでございますが、二部は、御承知のように店頭取引、これが集団的に行なわれまして、現在の証券取引法の精神とにらみ合わせて考えまするとどうかという点がございまして、組織化をはかったのでございます。それで、やはり中型企業と申しますか、中小企業と申しますか、そのうちで相当発行株式が取引されておるものにつきましては、やはり市場へそれを集中したほうが、資金調達の面からいっても便利になるのではなかろうかとして二部ができたことは、大体皆さま御承知のとおりでございます。ただ、これは相当急いでと申しまするか、第一のねらいが集団的な店頭取引を集中しようということでありましたために、まあ率直に申し上げますると、いろいろな銘柄が、世間では玉石混淆と言っておりますけれども、あったことはいなめない事実であろうと思います。また、これらの上場につきまして、いわゆる幹事会社というものがございまして、そこに、その当時としてはやはり私の考えとしては過当競争のきらいもあったのではないか、このように考えるのでございます。その後二部市場の健全化につきましては鋭意意を配っておるのでございまするが、たとえば二部銘柄につきましては信用取引を禁止するとか、あるいはつけ出しバイカイを禁止するとか、そのほかちょっと専門的なことばになりますが、大引けの成り行き注文の禁止とか、その他かなりきめのこまかい管理を取引所としては行なっておるのでございます。ただ、今後上場につきまして、やはり機械的といいますか、数字的な上場のみならず、相当こまかい検討を行ないまして、投資者の保護に資するようにひとつやってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。  それから、先ほどバイカイということばをお使いになって、市場の健全化ということでどういうことをやっておるかということで、まあ証券会社としてやっておられるところはこれはいろいろございますが、取引所としましては、売買管理のたてまえからして、できるだけ上場銘柄につきましては市場のメカニズム、すなわち競争売買、競争売買の裏をなすものは時間優先であり価格優先であるのでございますから、これへさらしてもらう。そして従来いわゆる弊害もあり、とかく批判のありましたつけ出しバイカイというものは、いま申し上げたような原則に照らしてさらしていくと。そうすると、大体つけ出しバイカイというものはなくなると私は思うのでございます。これが価格の形成にも、あるいは流通の円滑化にも十分役に立っていくのではないかと、かように考えておる次第でございます。ただ、いわゆるバイカイと一口に申しましても、その中に弊害もほとんどないし、まあ良質と申しましょうか、質のいいものもあるのでございまして、こういうものについてまで一挙に規制することはどうかと考えております。  なお、こういうことをやるにつきまして、流通の円滑化という面からいきまして、大量売買をどうするか、すなわち大きな買い注文なり売り注文をどうするか。これは市場の価格形成に及ぼす大きな影響を考えまして、市場の秩序を維持する、あるいはまた価格の比較的な安定性を所期する目的からいたしまして、別途十分に検討してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。  御質問の的にはずれたところもあったかと思いますけれども、一応私のお答えを終わらしていただきます。
  53. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) 私から申し上げますことは、最初に伺いました担保銘柄の状態の問題と運用預かりの問題かと存じます。  中小証券の立場から申しまして、日常は一般市中銀行を対象にしての小さな金融の道は開いておりますけれども投資家の依頼を受け、一般の状態の大部は日証金を通じての金融に依存しているわけでごいます。したがいまして、この金融の道を拡大をしていただきたいということから、当然それについても担保繰りの問題から担保の拡大、こういう状態になることは当然かと存じます。先ほど数字を申されましたように、現在、一部上場のものの中に約三割の不適格銘柄が入っておる、かつまた二部銘柄は全然通用をしないという担保の取り扱いになっているわけでございますが、二部の銘柄につきましては、やはり流通性が一部のものと違いましてだいぶ落ちております。したがいまして、二部のものを大幅にこの日証金の担保対象ということは私ども考えてはおりませんけれども、少なくとも同一条件で、上場されております一部銘柄と——若干流通性に大小がありましても、同一の取り扱いで日証金にはしてもらいたい、かような要望をしておるわけでございますけれども、また、二部の銘柄につきましても、中にはいいものがございます。いいと申しますことは、流通性が一部にも匹敵するがごときものもあるかと思います。したがいまして、そうした適格性のあるものは一部と同様に使えるような方向をお願いをしておるわけでございます。  なお、担保に対する条件、この条件は幾つかあるかと思いますけれども、ちょっと私ここで申し上げる段階にまて——段階と申しますか、材料を持っておりませんので、御必要がありますれば後ほど提出させていただきたい、かように考えております。  もちろん、これはふえんして申し上げまして、信用取引の制度ということの拡大ということも加わるわけでございますけれども、ぜひ中小の立場から皆さまに御認識願いたいことは、信用取引の制度は、ただ害のみという点だけを御指摘願って制度の是非ということを論ぜられるということは、御訂正願ってしかるべきかということでございます。実需のみで円滑な流通もできませんし、かつまた、より多くの需給を入れて初めてよりよい価格が形成されるという観点に立ちましても、いい面も相当あるわけでございまして、この制度を認めていただき、なお付随して、それを拡大していくためには担保の面も、相当担保面の状況考えていただかなければならない、かように中小といたしましては、私といたしましても考えているわけでございます。  運用預かりについてでございますけれども、これは現在東京におきましても十九社の方々しかやっておりません。われわれにはこの制度は適用はされていない状態でございまして、いままでの十九社対中小の格差、これに影響するところのものもあるわけでございます。最近運用預かりにつきましては順次減少の方向にありますし、免許時までには相当減ってまいるかと思います。私どもといたしましては、そういう制度のあったこと自体、証券金融という正常なルートができないからそういうものが出ておったということは了承できますけれども、漸次廃止の方向に行くことには賛成します。  以上申し上げます。
  54. 野溝勝

    ○野溝勝君 これはお答えを願わぬでもけっこうですけれども、一言申し上げて、あとは同僚である成瀬さん、戸田さん等の質問に譲りたいと思います。私もあまり外国のことは調べておりませんが、アメリカ動きをある程度調べたのですが、流通面の機能が向こうのほうは充実しておりますね。スペシャリストというのがありますね。これに対して日本は充実しておりませんね。私も、先ほどのお話のブローカー、ディーラーの問題ともにらみ合わせて、やはりそう画一にはいかぬものがあると思うのです。その点はよくわかるのです。それから、申し上げておきたいことは、先ほどお話がありました上場会社に対する幹事会社についてですが、その幹事会社というものに従来とかくの問題がありました。問題の粉飾を故意にあるいは誤って見過ごして問題を起し、投資家が迷惑したということになっているのです。この点はどうなんですか。それをひとつお聞きして、私は質問を終わりたい。  なお、最後に、これは希望ですが、これから上場基準を厳格にされる、こういうのですが、この点については取引所は真剣になってやっているそうですけれども、井上さんね、これを機会にほんとうに取引所もしっかりしてもらわぬと困るね。政府とか国会とかに対してということだけでなくて、取引所自体においても十分反省し検討されぬといかぬと思うのです。これは希望いたしておきますから、先の点だけをひとつ簡単にお答えを願って、私の質問は打ち切りたいと思います。
  55. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答えいたします。  最後の御希望の条項につきましては、今後も鋭意その方向へ進めたいと存じております。  幹事会社と申しますのは、やはり各事業会社には、増資の場合であるとか、社債発行の場合であるとか、その他上場の場合であるとか、それぞれ肝いりをする証券会社があるのでございます。それは命令とかなんかでできているわけではなくて、お互いの話し合いでできておると思います。そういう幹事会社が、その幹事をやっておる事業会社の点につきましては、十分調べもし、検討もしなければならないのですが、その点が、二部上場に対しては、私、率直に申し上げまして、いささか欠けるところがあったように思います。幹事会社は現に存在しております。この点につきましては、現実にお仕事をやっておられる唐沢参考人からも、何か補足がございましたら、お願いしたいと思うのでございます。
  56. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  58. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) ちょっと、私はポイントがつかめないのでございますけれども、各銘柄が上場される場合には、どの銘柄においても幹事会社ができまして、それから上場いたしております。その上場の幹事をやった限りは、当然その会社の新しい監査と申しますか、方向については見守っていかなければならない責任が幹事会社にはあるべきだと思います。ところが、先ほどの御発言がございましたように、いままでのように粉飾された考課状の発表、また新しいニュースと、その会社の状態を知るといいましても、そうした粉飾された考課状を作成する方がスポークスマンになっておわけでございますので、この面の調整をしなければ、幹事会社のみの責任として追及するということもできないのではないかと、かよう考えております。したがいまして、上場されておる事業会社の内容が完全に正しいもので発表されると、いまいろいろと直していただいております方向になりましたときは、幹事会社も十分最大の責任をもって処する方向になるかと考えております。以上申し上げます。
  59. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは証券取引法の改正、いろいろなことがございまして、証券界は今日ビジョンがあるとかないとかといわれておりますけれども、まああるといえばあるし、ないといえばない。どちらでもいいと思います。しかし、いまの方向はいろいろなことがあると思いますけれども、とにかく委託料を中心とするもの、別なことばでいうとブローカー中心だということになる。そういうことになってきたときに、取引所のあり方としては、まあ会員組織はいいと、こういうふうにいま井上参考人が割り切ったわけなんですが、そこの辺のところについて、どういうものなのか、もう少し私は御意見を承りたいと思います。  それから、唐沢参考人の御意見を聞いておりますと、どうもそうなんだけれども、まあ日本のいままでやってきたいろいろな習慣等があるから、まあちっと一緒にやっておらぬといかぬというようなことになると思いますけれども、やはり私たちは大衆の投資を擁護するということになるならば、証券界はばっちりと委託料中心でいくべきだという、ふうに割り切って、その方向に努力するということになるならそういう中で努力をしていくと。しかし、そのときにはこういうネックがあるんだからやっていけぬというのならば、その点を率直にひとつ承りたいと思います。その場合には、たとえば委託料は、三十五年のときから下げておる委託料を上げなくちゃならぬとか、あるいはそういうような場合には、たとえばいま日証金の残はおよそ二千五百億ですかあるわけですが、そのワクを広げよというなら、どのくらいまで日銀に対してやっていく、そのときにそのワクの中をそれでは中小証券に対してどういうふうに割り振りをやっていくとか、いろいろな問題があると思いますが、これらの点について具体的に、こういうところですからていさいのいい話になるかと思いますが、そうでなくて、ざっくばらんなひとつお話を承りたいと思います。
  60. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答えいたします。  会員組織が望ましいと私は申し上げたのでございますが、会員組織であることの利点といたしまして、取引の実情に即したやり方ができるということ、それからまた、証券市場動きに即した機動的と申しましょうか、弾力的な措置がとれるということ、それから、会員組織による自主的な規制をとるとしますると、その規制は法的規制によってなし得ないような、より高度と申しましょうか、高次と申しましょうか、商業道徳の規範、これを期待し得るのではないか、かような考えからいたしまして、会員組織でよろしいと。これはアメリカでも、カナダでも、イギリスでもとっておるところでございます。だだ、その反面、これはあくまで会員が良識をもっていま申し上げたような高い商業道徳によって運営していただく必要があることはもろんであります。自分の利益、私的な利益を中心とするような運営、これは脱却していかなければならない。また、証券取引所というものがどういう公共的な使命を持っているか、これを認識自覚してもらうことが必要である。それは今後ますますそういう自覚も高まり、また運営も妙味を発揮していくのではないかと私は期待しておる次第でございます。  次の質問は、唐渋参考人でよろしゅうございますか。
  61. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたについでに。取引所は九カ所ですか、幾つあるのですか。
  62. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 全国に九つです。
  63. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それは多過ぎるとか、どうですか、これはこのままでいいとか。
  64. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) その点については、出来高とか、算術的に割り切ると、いろいろな私は結論が出ようかと思いますけれども、しかし、これは地方の企業の育成であるとか、あるいはまた地方の政治的といっては先生方の前で何でございますけれども、その土地の事情とか、ムードとか、そういうものもやはり考えもせんと、幾つがいいということは私からはちょっと申し上げかねるところなんでございます。
  65. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) ブローカーに徹するのはいまの方向として当然であるはずでございます。また、そのように私どもも心がけております。一例を申し上げて御参考に供したいと思いますけれども、毎日市場でごらん願いますように、初めの値段がどの銘柄にもつくわけでございますけれども、もし全然このディーラー業務ということができないということになりますと、まず一割程度しか値がつかない状態になるだろうと思います。どうしても価格形成という面からいきまして、また投資家の時間的なものを処理する意味におきましても、若干のディーラー業務はどうしてもこれは付随していきませんと、円滑な流通とか公正な価格形成とかいう点は円満にいかないのではないかと、かように考えますので、分離はまだまだ早いのだと申し上げたわけでございまして、方向といたしましては、もちろん私どももブローカーに徹した状態にやっていきたいと、かように考えております。
  66. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 この実態ですがね、実態は、バイカイがあって、そうして相当、何というのですか、実際バイカイやっているのじゃないですか。いまの値段というのは、こういうところで言ってあまり新聞等にも出ちまってもまずいですが、出やしないと思うから安心して言うのですが、あまりころがしておるから、バイカイでやっておるから、千五百円を割っておると思っておるのです。これはほんとうの姿じゃないと思うのです、正直なこといって。だから、まだ大衆は飛びついてこないと思う。ですから、この際、理事長はじめ業界の人たちは相当きつい声で姿勢を正すということを私は主張すべきだと思う。そうでないと、信用回復できないんじゃないかとこういう立場に立っているわけです。いい悪いということなら、いかぬということになるにきまっているんですから。ですから、バイカイの問題は、実情としてそうじゃないと、一割程度じゃないかとおっしゃるなら、それがほんとうだと思うのですよ。そこで、バイカイ禁止の問題とからんで、先ほど日銀総裁は、自己資金でおやりになったらどうだ、運用預かりや保護預かりでこれをころがしたというような悪いのがおりますけれども、こんなことは論外だと思うのです。あなたの話を聞いていると、競争優先、時間優先でやるんだと、こういうようなことについても、若干そういうようなことをきめられたが、これに対して疑いがあるというようなことならば、どっかでチェックして、こういうことはいかぬということを一、二回指摘されて、その自主性をもって会員内部で、取引所内部で規制されるというようなことは、そういうことはできぬのでしょうか。信用回復というんですか、それを今後期待していく上において、そういうことをおやりになることは不可能な話でしょうか。たいへん荷が重くてできないという実情なんでしょうか。
  67. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) できないと申しますよりは、ちょっと私そこの意味がはっきり受け取れないんですが……。
  68. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたのほうで、これはバイカイなんだと、だからいかぬよというはね返しはできませんかということです。
  69. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) ああそうですか、承りました。ただいままでともかくバイカイということは認められておったわけでございます。ただ、そのやり方については、みだりな値段とかあるいは価格操作をしたあとの値段とかでやってはいけない、バイカイをふる場合は直近の相場でやりなさい、こうなっていたわけであります。しかし、今回取引所における取引所のあり方の特別委員会で、また理事会で了承した案では、もういままでバイカイといわれたもののうち、ディーラー業務がブローカー業務へ向かうといいますか、つまり自分の店のお客に、そういうものの商いは市場の競争売買にさらしてもらいたい、そしてほかの投資家並びに証券業者が委託を受けているものが出てくるわけですが、そういうものと一たん組み合わせた上で価格優先、時間優先で商いができた場合においては、これはもし自店に対する注文があった場合に、それはもう競争売買にさらしたあとのものだから、これは売買はやってもよかろうじゃないか、こういう方向で、ただいまいこうと。ただ、これは明日から、明後日からやれる問題ではございませんんので、大体来年の十月から全面的にそういう行き方にするという目途をもちまして、段階的にやっていくと、こういうことに相なっておるわけでございます。  しかし、先生のおっしゃるところを詰めてまいりますと、自己売買と申しましょうか。これをどうするかという問題がまだ残っておるわけであります。その点については、いまだ結論に到達していないと思いますけれども、おそらく証券取引審議会等においても審議もありましょうし、また業界としても十分に検討を進めてまいりたい、かように存じております。  それから、これはバイカイだからどうかという、それは価格形成に問題がありましたりなんかした場合には、これは取引所はぼんやり見ているわけじゃございません。注意もしておりますし、措置も講じております。ただ、相手が金融機関と似て信用を大事にするものであるためにその一々を公表するというようなことはいたしておりませんが、売買管理面においていま許された権限に基づく措置はすでにとってやっておるつもりでございます。
  70. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと唐沢参考人にお伺いしたいと思いますが、いま日銀から日証金に出ておる金は二千五百億、そこで先ほども日銀総裁にお尋ねしたんですが、まだそういう利益が出ておらぬから、その諸般の問題は云々ということでございました。ですが、少なくとも日証金を通しての日銀のお金で、共同証券なり保有組合で凍結しておった株、これを処分すればもうかるということははっきりしている。そこで、その出てきた利潤をどうするかというようなことも、もう議論したって差しつかえないと思うんです。新聞にも出たり、いろいろ意見も出ているんですから。そのとき当然そういう国家の保護のもとにおいて生まれた利潤なんですから、これは半分にしても、出資した者がみな頭分けして自分のふところに入れてしかるべきものじゃないと思う。やはり趣旨が趣旨でございますから、趣旨に沿うたような融資が行なわれたんですから、それに沿うたような使われ方がされなくちゃならぬ。半分ぐらい何とかしようじゃないかといういろいろな意見もあるんですが、そういうのとからんで、中小証券に対する融資の問題、いまのお話なんで、たとえば日銀の日証金に対するワクを広げるという努力をしたら、それはやはり大きいほうへ流れてしまうのか、それとも、いまおっしゃるような中小一証券のほうへ若干流れてくるようになるのか、実態はどうか。  それから、日証金の担保で四百九十九銘柄、これが日銀担保になってくると三百四十八銘柄に減ってくる。そこの差が百五十一あるのだ。これは一体、私は勉強不足でよくわかりませんが、だれがきめてどうやっているのか。こういうようなことが直せるとすれば、どうやって直すものか。それとも全部みな——日銀の適格銘柄になっている三百四十八の中でも、悪いやつがあったら、これは減っていかなければならぬ、これは少々動いてもしかるべきだと思うんですが、こういうようなことはだれがどこできめていかれるものか、どうやっているのか。どうもいま話を聞いておってのみ込みが悪かったのですが、少なくとも日証金担保にしているようなものは日銀担保になってしかるべきじゃないか。あるいは第二市場に上げていいものがあるとするならば、もちろん日銀の適格担保、適格銘柄になるし、日証金適格銘柄に引き上げてもいいじゃないかというような、こういうことについてどうなるのかということをお知らせ願いたい。
  71. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) どこできめるかという問題は、日証金は債権者になるわけであります。それが取る担保なりその範囲なりについては、日証金が主体となってきめております。もちろん、その場合にはわれわれの意見も聞いておりますし、日本銀行にも打ち合わせている実情であります。ただ、コール担保になっている三百五十銘柄弱のもの、これはやはりコール市場というものを把握している日本銀行が、これこれのものにしろ、しないかというようなことをやっていると私は承知しております。
  72. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) 共同証券、保有組合のものは、今回これで放出をいたしますと、そこに相当な利益が出てくるのではないか、その利益はおっしゃられたとおりの状態で、全部参加会社が配分するようになっておりません。いまのところは、半分は業界の公共性のある方向で処理するということになっておりますので、半分だけでなしにあと全部やったらいいじゃないか、こうおっしゃられることにつきましては、よく帰りまして仲間にも御意見を伝えるということでごかんべん願いたいと思うわけでございます。  それから、先ほど手数料値上げという問題を言われたわけでございますけれども、いままでディーラー業務、いわゆる委託手数料と売買益が若干加わって収支を合わせてきたということが多かったわけでございますが、そこで、ディーラー部門は縮小する、いわゆる自己売買については、これは責任準備金の方向で処理いたしまして、経常収支で決算をしなければならぬということになってまいりますと、何らかの収入源を付加しなければならない、こういう状態をしばらく考えなければならぬことになるかと思います。私ども状態から、いわゆる中小の立場から考えますると、金融益を生むといいましても、先ほど申し上げた資金的な面から、狭いパイプでありまして、なかなか思うようにはまいっておりません。手数料の値上げなどによってその穴を埋めるという方向はまことにありがたいことでございますけれども、業者といたしまして、また投資家保護という観点に立ちますと、引き上げるということについては、私どももあまり前何きに考えたくないわけであります。しかしながら、非常に経営は合理化合理化といいましても、中小の浅いふところの中の合理化は大体これ以上できないところまで来ているのではないかと思いますし、かつまた、公共料金をはじめ相当の値上がりを来たし、人件費は向上するという状況になってまいりますと、あるいは引き上げという点も、好みませんけれども、お願いをしなければならない状況になるかとも考えておる次第でございます。  それから、証券金融の量をふやせと言うけれども、具体的の数字をという御指摘でございますけれども、現在の状況が、時価総額でまいりますと約八兆八千億程度かと思います。四、五年、あるいは五、六年かと思いますけれども、その当時の四兆程度の時価総額の投資より考えてみますると、その当時の日証金で使えるワクの数字よりは八十億ないし百億程度しか増加していないのではないかと思います。現在三百八十億がワクになっておりますが。八兆八千億に対して三百八十億、三%程度資金がわれわれの金融に流れてきておる、こういうまことに小さなものでございます。市場におけるところの信用取引と実物取引との比率から考えてみましても、少なくとも一割程度までの状態、一割以上のものがほしい、かように考えますと、大体九百億から千億円程度のものにしていただきたい、こういうことになるわけでございますけれども、現在、先ほど井上参考人から申し上げましたとおり、取引所におきまして委員会の中に信用の取引の部会をつくって目下検討をいたしております仕法の改善でございます。その方法ありやいなや、こういうことでございますけれども、その結果と付随してこの数字も検討に入らなければならないことと存じておりますので、一応の私の推定いたしました数字はそういう状態でございます。失礼しました。
  73. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ぼくは、共同証券ないし保有組合の処理をした場合に、どのくらい利潤ができるかということなんですが、半分ということを言いましたけれども、これは遠慮しておることで、ほんとうなら、趣旨は、ほんとうはやっちゃいかぬこと、元来ならやっていいことじゃないのです。そのことで保護されて、これは大衆を保護するというそういう大義名分のもとに凍結をして、そうして出てきた利潤なんですから、それを出資者だけで分けてしまうなんという、半分というのは非常に遠慮したことで、元来ならこういうことについてはほんとうに投資家にそれが戻るような、還元をされるというような方向に使ってもらいたいということですが、まあこれにはいろいろな意見があると思います。またその折は申し上げたいと思いますけれども、現時点においては半分はそれじゃ出資参加者で分けて取ってもいいというふうに私が言ったというふうには、ひとつ了解をしてもらいたくはない。  それから、次に、これは質問をせずに意見だけ申し上げておきますが、私はこういうふうに受け取っているのです。たとえば職能分化でいろいろなことを言うておるけれども、資本金だけでいろいろなことをやっておりますけれども、この間も冗談言ったのですが、目方でいくならお相撲さんが一番偉いということになってくるが、そうじゃなくて、財務内容がやはり重点に、非常に重要に考えられなければならないということになってまいります。そこに加治木証券局長がおられますから、私はあまり資本金にこだわってとやかく言ってくる問題でなくて、財務内容というものがどうだということをしっかり見て、ひとついく。資本金だけで事を処理されては非常に失敗する。財務内容というものをどう見るかという点と、それからおっしゃるような地域の問題なりあるいは時期というような問題についても、何も算術計算的なことじゃなくて、四十三年の四月一日から施行されるというなら、やはり施行期日があるわけですから、そういうものについて業界のほうとしてもいろいろと、唐沢さんなりあるいは井上理事長等を通して、いろいろと大蔵省と折衝されると思うが、そういうことについてはざっくばらんにおやりになっていいんじゃないか。うんとおやりなさい。そうしてどうにもいかぬ問題があったら、それは国会のほうにも御連絡をいただきたい。承りますと、なかなか証券局長は鼻っ柱が強いそうでありますから、なかなか折れないそうでございますから、そういう問題については遠慮なく御連絡をとって、何といたしましても、証券界がいいぐあいにいくというところにポイントがあると思うから、そういう点でひとつお互いに努力してまいりたいじゃないかと思っております。  まあ、以上のようなことを意見として申し上げて、私の質問を終わります。
  74. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 承ります。
  75. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もありませんから、一点について大蔵省の証券局長に、それから井上さんにひとつお伺いをしたい。それは投信対策についてでありますが、証券経済研究所の高橋亀吉氏が四月十三日に投資信託のあり方ということで投信改善案を発表いたしたのでありますが、これは証券界から委託されて、昨年の九月に発足して、六カ月間程度いろいろと検討されてまいったわけでありますが、その結論によりますと、第一は、投信の必要は失われておらない、で、育成強化をむしろすべきだということを主張しておる。第二の問題としては、現行の投信制度に致命的な欠陥はない、現行制度の改正というものはしたがって時期尚早である、こういうことを指摘をされておる。第三の問題としては、不振の原因はもっぱら募集態度あるいは運用技術と大蔵省の行政指導の欠陥た、こう指摘をしておる。こういう点で、結論的に主張しているのは、利益第一主義といいますか、これに結論が行っているようです。  こういう結論が一応発表されておるわけですけれども、そこで、私は、高橋委員会で出されたそれぞれの見解というものについて、大蔵省の縮小という基本的な考え方とはっきり対立しているんではないか、こういうふうに考えるんでありますけれども、この辺に対する証券局長の見解をひとつ聞きたい。  それから、井上さんのほうにも、先ほどちょっとお話を聞いた中にも、そういったことがちょっと触れられておったようでありますけれども大蔵省とこれからいろいろと問題になってくる問題でありまするから、これらに対して井上さんのほうとしてどういうような見解を持っておられるか、この所見について明確にひとつお答えを願いたい。
  76. 加治木俊道

    政府委員加治木俊道君) 投資信託の将来のあり方をどういうふうにするか。業界はですね、御指摘の高橋先生の委員会の結論が出ておりますので、これを参考にして業界としての案をいままとめつつありますし、われわれはわれわれで現在作業を進めております。問題の所在については、業界とわれわれの間に意見の相違はないと思うのでありますけれども、まだいずれも結論は出しておりませんので、はっきりどういう結論になるかということを申し述べられる段階に達しておりませんことを、あらかじめ御了解願いたいと思います。  一番初めに御指摘になりました、育成強化という方針に対して大蔵省はむしろ縮小すべきではないかという方針を持っていやしないか、この点は明らかに対立するのではないかというようなお話でございますけれども、われわれの考えておりますのは、投資信託の内容、仕組み、運営、そういう意味での質的な内容というものを向上させたい、こういうことでございます。まあいろいろ問題があったわけでありますけれども、単にそれぞれの関係者の心がまえだけでもっては必ずしも解決できないではないかと。もちろんりっぱな心がまえでやってもらわなくちゃなりませんけれども、仕組みそのものに従来とかく問題となりましたような問題を未然に防止できるような仕組み、そういうものに切りかえていく必要があるのではないか、こういうことでございまして、量的に投信が現在のボリュームより減るかふえるかということはわれわれの関心事ではございません。りっぱな内容のものであれば、投資信託というものが少なくとも日本の市場で持っている意義はあるわけでございますから、評価さるべき点は私はあると思います。したがって、そういうりっぱな内容になれば、そういう評価される方向で伸びていくことはむしろけっこうなことではないかと、かように考えております。
  77. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答えいたします。  私も加治木局長と大体同じ考えでございます。高橋委員会の何といいますか、結論の内容も存じておりますが、要は、投信の質的の向上をはかって、投信というものに対する投資者の信頼を現在の段階で回復し、それから維持して、それから機関投資家として市場安定要因になってもらうことを私は希望しておるわけでございます。ただ、それならどうしたらいいかと、具体的なことにつきましては、ただいま証券界投資信託協会で、高橋報告をも参考にしながら、鋭意研究中でございまして、私からはこれこれをこうこうするということはいま申し上げられる段階ではないと思います。その点、御了承順いたいと思います。
  78. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 証券局長にもう一度、井上さんにもちょっとお願いしたいと思うんですが、聞くところによると、大蔵省としては大体五月中旬ごろまで、いわばいまの投信法の改正といいますか、そういうことを進めるために、一つは投信応募者に対して個別アンケートなどを取って、それで具体的に世論の方向を探り出す、こういういろいろな作業を実際に進めておるようであります。もちろん、これは六月からですか開かれるところの証券取引審議会のいろんな対策であろうとは思うんでありますが、そういう面をいった場合に、いま投信は額面を実は割っているわけだと思うんですね。ですから、そういうままで進めていくのか、それともまた投信法というものを改正をしていま言われたような方向で抜本的に改善策を加えるのか、こういう方向についてもう一度明確にひとつお聞かせを願いたい。井上さんについても、そういうことに対する所見というものをひとつお聞かせを願いたいと思います。
  79. 加治木俊道

    政府委員加治木俊道君) 投資家がどういうふうに現在の投資信託というものに対して評価しているか、また意見があるかということは、ぜひやってみたい。協会にお願いして、一応六月中旬ごろまでにまとめるということで、いまアンケートを作業してもらっております。  額面割れの問題でございますが、まあ、この投資対象が株式でございますから、必ずこの額面——まあこの額面というふうに考えること自体おかしいのでありますけれども、一定額当初投下した価値というものが必ず確保されるという制度ではこれはあり得ないわけであります。問題は、はたしてその額面割れというものが、専門家の運用と称しながら、良識をもって専門家として当然尽くすべき努力をしてなおかつ避けられなかったかどうかという点が私は問題だと思います。これは個々にいういろいろな問題があると思いますが、そういう意味ではいろいろわれわれも反省してみなくちゃならない点がある。しかし、それは先ほど申し上げましたとおりに、単純にそれぞれの関係者の個々の心がまえだけでなく、どうも仕組み自体にも、何か資金的にきわめて不安定な基礎の上に立つ現在の仕組み、ここにも問題があるのではないか。もちろん環境の問題もあるわけでございますけれども、そういう意味で、この点についても、まあ特に当初申し上げましたように、真に投資家の保護に、受益者の立場考えて運用に全力を尽くしたかどうか、またそういう体制にするためには本業と投資信託の実質分離をもっと強力に進めなくちゃならぬじゃないかという問題になってくると思うのであります。しかし、まあ一年延期しましたけれども、はたして延期したものがすべて額面を回復するかどうかわかりませんが、約款上は一年だけ猶予して、投資家の利益であると思うならば延ばせるというたてまえになっているわけであります。その約款を改正しない限りは、これを再延長ということはできないようになっております。また、あくまでも額面回復されるまではいろいろな措置を講じてでも、その時期を待つというような体制がいいかどうか。むしろ本来の投資信託というものの性格というものを理解してもらうためにも、投資家側にも理解していただくためにも、あくまでそういう額面は回復すべきだという前提でこの措置をとることは必ずしも適当ではないのではないか。しかし、過去に生じました責任についてはこの際反省して、将来の改正の基盤を固めるべきだ、かように考えておりますが、それを投資信託法の改正にまで結びつけるかどうか。必要があれば、法改正してまで私はやりたい。制度面なり何なりが必ずしも法改正を必要としない面もあると思うのでありますが、たぶん私は法改正にまで広げて考えなければ理想とするこの解決案は実行できないのではないか、かように考えております。
  80. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 額面割れの問題につきましては、いま加治木局長がお答えになったとおりでありまして、また、これに対して取引所が投資信託の額面割れをどうするかということを最終的にきめるわけでもございませんので、ちょっと私のお答えする範囲を越えておるかと思うのでございますが、投資信託も一時は証券民主化に非常に役に立ったこと皆さん御承知のとおりであります。そうして反面におきましてその当時の売り出し方法についても反省をしなければなるまいと思いますが、どうも額面は保証されておるんだというようなばくたる考え投資信託受益者の中にもあったのではないかと思います。いかに専門家が鋭意投資者のことを考えて運用しましても、これはやっぱり株式を大部分の組み入れ有価証券とする限りにおきましては、株式市場の消長というものに影響を受けるのは当然でございまして、その点につきましてやっぱり投資家がそういうものは場合によってはマイナスの場合もあるんだと、こういうことは考えていただかないと、株券そのものがもうすでに上がったり下がったり、買った値段よりも下がる場合も十分あるんでございます。ただ、専門家が運営するということで非常に信頼感を持たれておったものが、今日解約等が相次ぎ、買い越しになっておるというようなことを考えますると、投資信託の質的な向上というものについて十分に研究をしてもらわなくちゃならぬ。それで、先ほど申し上げましたように、投資信託協会におきましてもその点を十分考えまして鋭意検討中である、こう申し上げるよりいまの段階ではお答えできないのであります。
  81. 藤田正明

    ○藤田正明君 それでは、いまのに関連しまして、投資信託のことをもう少しお尋ねするというより、もうお答えが出ておるんですから、答えられないというお答えが。むだのような気もするんですが……。  私は、額面割れの問題ですけれども、条件つきの、元本保証つきというものが出ておったというふうに聞いておるのですが、これはあるいは保証書を出して、あるいは口頭で、約束をしているというふうな事実があったということを聞いておるのです。そして去年の三月でありますか、三千六百五十円という値段で、ことしの三月には五千円を上回ったと。その味つけですね、しっぽに味つけをして、資生堂その他の銘柄を買いつけてしっぽに味つけて、そうして胴や頭が細っていくというのが私は投資信託の実情じゃないかと思うのです。ですから、胴も細っている、頭も細っている、しっぽだけに味つけしている。自転車操業であるというふうなことがあるのではないか、かように思うのでございます。その中には、本業によって投資信託というものが利用し尽くされたといいますか、幹事会社になろうとか、バーターでお互いに持ち合おうとか、いろいろなことで利用し尽くされたというふうな感じを私は持つのです、投資信託についてですね。それからまた、キャピタルゲインとインカムゲインとがすりかえられてきておる、銘柄のためにすりかえられてきておる。ですから、投資信託の銘柄を実は発表していただきたいと思うのですが、きょうは参考人をお呼びしておることですから、そこまではお伺いいたしませんけれども、先ほど来戸田先生の御質問によって、投資信託につきましては現在研究中であるのでお答えはできないということでございますから、それでけっこうでございますが、はなはだその点ではわれわれとしては注目をいたしております。  それから、これは所沢参考人にお伺いしたいのですが、先ほど職能分離ということをおっしゃいましたのですが、全くそのとおりでありまして、ディーラー、ブローカー、それからアンダーライター、それから投資信託というものは分離していくべきであろうと思いますが、中小証券の場合、ディーラーとブローカーを分離するとディーラー業務がない限り妙味がないじゃないかというふうなおことばであったかと思いますけれども、原則的には分離すべきであるが、日本現状に照らして一挙に分離することはできないというふうなお答えがあったと思うのです。実際には、中小証券の場合には、ディーラー業務に対するファンドというものをいかにお考えになっているか。先ほどのお話では、日証金のワクをふやしたらいいのではないか、現在では三%、これを一割ぐらいにしたらいいんじゃないかと。約九百億とか千億というふうなお話がございましたが、しかし、各社がこういうディーラー業務をやった場合には、それくらいのものではとうてい足りない。やはりファンドというものが必要であろうと思うのです。私は、去年の田中証券の実例を見まして、投資家の名義の株を信用金庫その他の銀行に入れて金融をしておった。で、裁判ざたになった事実があるわけです。中小証券におかれましても、現在そういうことがまだあり得るんじゃないか。そういうことで運営されておる。だから、そういう中小証券に対する金融が必要であるということになるわけではございますが、その辺のことについてひとつ御意見を承りたいと思います。
  82. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) お答えいたします。  私が先ほど三%とか、あるいは九百億なり千億の状態にしてほしいという日証金の資金量の拡大という問題は、ディーラー業務をやるために必要だと申し上げておるわけではございません。あくまでもブローカー業務の中の信用取引の背景、あるいは一般投資家にわれわれが仲介をやるわけでございますが、まん中に立って担保金融を行なうという場合にも、日証金を利用して投資家にそれを仲介しておるわけでございます。ディーラー業務はもとより、先ほどから私は申し上げておりますように、できるだけブローカー専業という形で進みたい、かように考えている点は変わってはおりません。  田中証券云々という御指摘がございましたけれども、あれはまことは業界としまして申しわけないということは十分認識しておりますが、保護預かりの関係でございます。ディーラー業務も若干それに加わっておったかということもあるかと思いますけれども、現在私がたまたま協会のいま役員をやっておりますけれども、二度とそういうものが出るというようには——出ないだろうという考え方でおりますし、また大蔵省の御指導もまことに厳格でございます。その御心配は、特別の状態が起きれば別でございますけれども、いまのときに御心配願わなくてもけっこうではないかと、かように考えております。
  83. 藤田正明

    ○藤田正明君 いま本預かりと申されたのですか。保護預かりですね。
  84. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) 保護でございます。
  85. 藤田正明

    ○藤田正明君 保護預かりですね。そういう保護預かりというふうなものによっていままで金融されてきておったと、そういうことはもう現在はなくなってきたと、その厳重なる監督によってとおっしゃるわけですね。
  86. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) ええ。保護預かりは担保に使いません。これはただ預かっておるというだけでございまして、これは使える品物ではないのでございます。たまたま先ほど御指摘の田中証券の場合には、違法にこれを利用した、こういうことでございます。ただ寄託をされて預かっておると、こういうことでございます。
  87. 藤田正明

    ○藤田正明君 そこで、話は変わりますが、これは唐沢参考人にお聞きをしたいのでありますが、先ほど成瀬委員から保有組合の利益をどうするんだというふうなお話がございました。これは四百億とか五百億とかいわれておるわけでございますが、これはまた半分は業界に還元して公共的に使うのだということですが、実際に保有組合の保有しておる株を、これは投資信託から本業に移って、それから本業から保有組合がそれを預かったということだと思うんですが、そうすればこれは投資信託のほうに還元されるべきだと、かように思いますけれども、それはそれとしまして、保有組合が全部それを放出して終わった場合に、保有組合というのは一体どうたるんでしょうか。かりに五百億の利益があるなら、二百五十億は業界の公共的なものに使われる、あとの二百五十億は取っておく分だというふうなお話がありますけれども、何か約束があるようであるけれども、保有組合は残るのでしょうか、残らないのでしょうか、ちょっとその点をお聞きしたい、井上理事長に。
  88. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 保有組合が全部保有株式を放出し終わった場合にどうなるかということについては、これは私、保有組合の当事者ではありませんから、こうするのだとは申し上げかまねすけれども、元来、株式市場における需給の調節、それを通じて取引秩序の維持、また最終的には投資者の保護ということを目標として業界でこさえた組合でありますので、目的達成後に解散してしかるべきものではないか。これは私だけの考えでございます。そのつもりでお聞き取りを願いたいと思います。
  89. 藤田正明

    ○藤田正明君 目的達成後は解散するとしますと、その利益の半分は業界に還元しても、その半分は残っておるわけですね。まあかりに五百億としますと、その半分の二百五十億。そうしますと、その二百五十億、それがどこに行くんだろうかというまあ心配をするわけでございますが、私が申し上げたいことは、やはりここで中小証券の金融のために、あわせて全部ひとつそれをファンドとして、それに日銀なり日証金を通して水増しをした基金をつくっていただけるならばという希望的意見を申し上げたいわけでございます。  その次にお尋ねしたいのは、けさほど実は日銀総裁にもちょっと申し上げたのですが、その保有組合は別にしまして、例のもう一つの共同証券。共同証券がああいうふうに株を凍結しておるわけでありますが、それによって千二百円をささえ千六百円を現出したというようなことが結果的に現在行なわれておるのです。私はここで実は大蔵省に資料を請求したんですが、もらえないものですからよくわからないのですが、そういうことが株価を非常に操作しておる。そうしてもって、それは四大証券に利益しておるのではないか。私は、ことしの一月、二月の四大証券の株の保有高と現在の保有高はうんと違ってきているのではないかという推察をするんです。ということは、うまく売り抜けている。こういうふうなことが、政府なり日銀見通し意見を先々に発表するとか、あるいは大蔵省証券会社に対して規制するとはいいませんけれども、売買を報告させるとかいろいろな方法をとって、ある程度の報告を強制していくというふうなことによってプライス・メカニズムというものがゆがめられてきておるのではないか、もっと自由なるプライス・メカニズムの活用があっていいのではないかというふうに感ずるのでありますが、この点について井上理事長の御意見を伺いたい。
  90. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答えいたします。  保有組合にしましても、また共同証券会社にしましても、これは設立の時期が共同証券のほうが一年早かったわけでございますが、共同証券は最初金融界あるいは証券界、これが合同いたしまして、やはり市場秩序を維持したい、それが終局的には投資者の保護につながり、また国民経済の円滑なる運営にも寄与するんだという見解でやられたものでありまして、初めから価格操作を、価格維持と申しますか、その面をやろうということでできたものではないと私は承知しておるのでございます。たまたまやはり需給面を、要するに供給面を非常に少なくしたわけですから、それが価格に影響があったことは、これは申すまでもありません。また、価格のその後の形成にも、あれがたな上げされているということ自体が影響がないとは申し上げませんけれども、しかし、あくまで当初の目的は資本市場のにない手であるところの証券界というものの取引をひとつあまり乱れないようにやろうということで需給調節をはかったわけでございますので、これを逐次放出していくにあたりしましても、当初の方針は、やはり方針と申しましょうか精神と申しましょうか、趣旨と申しましょうか、これは守りながら、その放出自体によって市場に混乱が起こるようなことは、これは避けてまいりたい。要するに、自由な価格形成ということが最もわれわれの希望するところでございます。不幸にしてここ数年間はそれが完全には望み得なくて、しかし、われわれは前向きにそういう時点も想定しながら、しかも市場秩序を維持しながらこれを解決していかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  91. 藤田正明

    ○藤田正明君 自由なる価格の形成ということでございますが、井上理事長にお聞きしたいのでありますが、信用銘柄も一部にはあるわけですが、この信用銘柄の決定にあたってはいろいろな資格要件というものがあるのだろうと思うんですが、信用銘柄になることによって価格がぽっとはね上がるわけですね。そうすると、一部へ上場されたものは全部信用銘柄にしたらいいじゃないか、ただし一部に上場される資格要件を厳重にするというふうならば、公正なる価格確保になるわけです。しかし、なるとならぬじゃだいぶ違うというふうなのが現況じゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。
  92. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 信用銘柄につきましては、場合によって信用銘柄の取引、信用取引というものが市場の過熱であるとかあるいは極度のまた沈静であるとかということに大きく作用するわけでございまして、その意味合いにおきまして、当初信用銘柄を選定しましたのは、まあこの辺ならということであったのであると思います。  ただ、ただいま御指摘の一部全銘柄に広げたらいいではないかという点は、これは実は私も同感でございまして、その方向へ向かっておったところが、たまたま昨年の十一月、十二月に信用銘柄の中のあるものを中心に御承知証券界過熱といってもいいような状態を呈しましたので、ただいまそういうことも考えまして、宿題といたしている次第でございます。
  93. 藤田正明

    ○藤田正明君 いまの信用銘柄の話とは逆になるかもしれませんが、私は、信用取引の実情にかんがみまして、大体、口銭といいますか、手数料といいますか、これが年に計算してみますと三割ぐらいになる計算になると思うのですよ。これはまあ金利も入れましてですよ。三カ月ごとに引き延ばしていって、そういう計算になってくると思う、三割ぐらい。しかし、これは現在は投資家にとっては非常につらい、もうからない制度だと思う。もうかるのではブローカーをやっている方たちがもうかる、切りかえていけばもうかっていくわけですから。この信用取引制度について、まあ先ほど唐沢参考人から、投資家保護のために投資家に有利のようにいろいろ考えているということもおっしゃっておりました。これについて少し具体的にお話を伺わしていただきたいと思うのですが、唐沢参考人に。
  94. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) 先ほど申し上げましたように、信用取引の制度につきましては、御指摘のようにたいへん高いコストにつくという点につきましてま、私ども考えております。何とかもう少し投資家の有利な方向で利用できる方法考えなければならぬ。これが一つと、いまのそれをやると同時に、全面的にいままでのことを考え直そうじゃないか、こういうことから現在特別委員会をつくりまして、そこで目下検討をしているわけでございます。まだ審議会のほうでも、これを仮需給の関係でこの問題を取り上げているようでもございまするので、私どもの業界といたしましても急いでこの作業をやっている状態でございます。そう期間を置かずに、ある程度御満足のいける案ができるかと思いますので、いましばらくお時間をちょうだいしたい、かように考える次第でございます。
  95. 藤田正明

    ○藤田正明君 私は多少証券界のことをかじってみまして、とても半年一年では中身はわからないと思います。いろいろお話を伺っても、その裏の裏がまたあるというふうなことの連続でございまして、われわれしろうとがわかるのにはなかなかたいへんなことだと思うのです。それだけに世間から証券界全体がいろいろな不信の目をもって見られているということも、これまた事実でございます。ひとつ今後ガラス張りに、証券界の信用を早く取り戻していただきたい。資本市場としての働きを十分になされることを期待いたしまして、私の参考人に対する質問を終わります。
  96. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 証券取引所が、経済界といいますか、証券業界における信用というものはきわめて重大でございまして、いろいろお骨折りを願っておることは感謝にたえませんが、景気がいいと悪いでは非常に業界も影響があるようでありまして、先ほどのお話にも、会社がいろいろ合理化といいますか、整理をやられて、人員等も減らして、健全に業務がいくようになっているということを伺ったのでございますが、私がお伺いしたいのは、この証券会社というものの経理、収入支出というものはどんなふうになっているか。支出のほうは別でございますけれど、収入というものは、いわゆる手数料というものの収入がどの程度のパーセンテージを占めているか、それ以外の収入というものはどんなものが収入になっているか、その点をお知らせを願いたいのでございます。もしできれば、理事長が御存じなら、理事長にやっていただければけっこうでございます。
  97. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 御存じならということで立ち上がりますと、存じていることになりまして、恐縮でございますけれども、そういう意味合いではございません。ただ、手数料収入及び自店収入と申しましょうか、ディーラー業務による収入というものを、私、各会社によって違いますので、それを全部、どこは幾ら幾らの比率、どのくらい、ここではこうだということは実は承知いたしておりません。おりませんが、まあ、ある会社によってはディーラー業務のものによる収入が——収入と申しましても、これは損失の場合もあるわけでございますが、ある時点をとっていえば、やはり五割をこえているところもございます。また、それよりうんと少ないところもございます。まあ会社によっていろいろ違うと思うのでございます。ディーラー業務のやり方、その規模、これで全体つっくるめてこうであるということは実は計数的にはお答えできないのでございます。まあまちまちでございます。
  98. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 それでは、証券局長にお伺いしますけれども大蔵省ではわかっておりますですか。全体の割合です。個々でなくてけっこうでございます。
  99. 加治木俊道

    政府委員加治木俊道君) その年によって違いますけれども、大体総収入をベースにしまして、手数料収入——手数料収入の中には単純な株式売買の手数料ばかりではございません。社債の引き受けに伴う手数料もございますので、そうい意味の手数料収入のトータルと総収入のトータルと比較しますと、大体六〇%から七〇%、年によって違いますけれども、大体そういう状況になっております。
  100. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 ちょっと話が別になるかもしれませんが、山一証券が非常な問題を起こしたというその原因は、いろいろ複雑だと思うのでございますが、こういうことは何がもとで起こったのであるか。結局収入が少なくて負債が多いということになったのだと思いますけれど、この赤字が出たというのはどういうために起こったのであるか。  と申しますのは、続けてお伺いいたしますけれど、私は、この手数料以外の収入に経理を依存しているといいますか、そういうことがあると、手数料では足りないから、ほかの利益をあげていこう。その利益があがってくればけっこうでございますけれど、手数料のほうはもうパーセンテージが、手数料のパーセンテージというものは、何と申しますか、割合がきまっているから、必ず入ってくる。ところが、それ以外のほうは危険負担が伴う。危険負担が伴っていることを証券取引所のメンバーである会員の方がおやりになるということは、ひいては証券取引所そのものの基礎を危うくしてくる。できれば、その会員である方はできるだけひとつ堅実な手数料というものを基礎にした上に立って、危険か伴う収入には依存しないような姿のほうが正しいのじゃないか。それのみに走るというために、まあ山一証券のことよく知りませんけれど、そういう問題も起こってきたのじゃないか、かように考えますので、どちらがいいかというか、いまのままのようなそういう他の収入に、何といいますか、その証券会社の経理をまかしておくのがいいか、その点についての井上さんの御意見をいま一度お伺いしておきたい。
  101. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) 山一がああなりました原因については、これはもろもろの原因があったと思いまして、私ども原因がはっきりしていれば事前にいろいろとああいうことを防ぎ得たかと思うのですが、実は複雑で、どれがどうと重点を置いてはっきり申し上げることは差し控えたいと思いますが、やはり問題は、私は私なりに、二部にいろいろの銘柄を上場します場合に、その選択といいますか、推薦といいますか、そのときに相当無理があったかとも考えます。また、そういうことをもたらした、やり得たことというものは、問題はやはり自己売買というところに求められるのが常識的だろうと思います。したがいまして、やはりおっしゃるように、証券会社として最も健全な方向を指向する以上は、やはり重点はブローカー業務に、そうしてそれを補完する意味合いにおいてディーラー業務をやっていくという方針が、それをすぐやることについてはいろいろ実際上の問題がありましょうけれども、将来の方向としてはその方向へ行くのが至当ではないかと思うのであります。
  102. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私は、証券取引所の構成メンバーであるこの証券会社も株式会社でございますから一定の利益をあげていくということは必要だと思います。しかし、その間何となし割り切れないのは、それがむやみに利益をあげていくということは、少し本質的にも間違っているのじゃないか。利益をあげず、なまけていくというのはいけませんけれど、しかし、あまりに証券会社が利益本位になるというところに私は問題が出てくるのじゃないか。それゆえにそういう危険をおかさせないためには、むしろ健全なる発達を、証券界を明朗にしていく正しい、努力のしがいのある行き方を証券界としてする。それには私は無理二つを切り離せということは申し上げるわけではございませんけれども、しかし、やはり手数料主義に徹底するほうがいいのじゃないか。そうすれば、その率は合理的に経営するところにあがるのは当然なのでございますから。ことに最近は取引高もふえてきている。また、公社債の市場も再開されて、これが政府の方針では、福田さんも言っておりますけれど、公債は相当出てくる。こういうときになれば、そのほうの利益と両方合わせていけば、その会社も相当やっていけるのじゃないか。で、ほかのほうは別のほうでおやりになる、そういう行き方でなければ、私は何だかこう矛盾しているような気がするわけでございまして、その間の何といいますか、割り振りというような点が非常にむずかしいのだと思いますけれど、しかし、いまのままのような姿では中途はんぱで、私は明朗化し得ないと思いますので、この点は理事長さんと同時に唐沢さんに、御経営になっている業界のお立場から、こうやればやっていけるのだというところを、何か御希望、御意見等があったらお述べになってお答えを願いたいと思います。
  103. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  104. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  105. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) ただいまの営業中の会社はいろいろといまの状態でやっておるわけでありまして、それには現在の規模その他人員、いろいろございますが、それと見合ってただいまの営業というものに対応しているわけでございまして、ただ、今後、おっしゃるように、国民経済的、あるいはもっと大きく申しますと、国際的な信用も回復するためには、その意味合いで先ほど申し上げましたバイカイの不純なものをできるだけ早く取り除いていこう、終局的にはこれをやめていこうという方向を打ち出したのでありますが、これのみで決して足りるわけではございません。自己売買の問題、いろいろございまして、信用がないどころか、疑惑を持たれては非常に困るのでございまして、その辺明朗な公正な運営に徹してもらうように、今後十分業界の方々及び大蔵省の指導も仰ぎながらやっていきたいと存じております。そういう姿にいつなりますか、なりましたときにおいては姿勢を正してする、あるいはまた内容をよくするということで、結局それでまたその会社が参ってしまっては困るのでありまして、どうしたら健全な姿で、しかも健全な収入ベースで立ち行くかということはこれはわれわれ全体として考えてまいらなければならないと思います。  先ほど唐沢参考人からお話がございましたたとえば手数料の問題、手数料もブローカー業務の手数料、あるいは引き受け業務の手数料、売りさばき業務の手数料、いろいろございましょうが、これ中心の経営に移るといたしまして、しかも成り立たないようなことがあってはならないと思うのでございまして、その場合には投資家の負担その他もからみ合わせて、やはり手数料も考えていく、こういうことも、あたたかい気持ちというと何だか偉そうでございますけれども、十分考えながら、もろともにひとつ証券界の信用向上、同時に発展ということを考えてまいりたいと、かように存じております。
  106. 唐沢繁雄

    参考人(唐沢繁雄君) よく注意して安定収入で経営をはかるようにというありがたいお話を承りまして、感謝する次第でございますが、もちろん、私どもといたしましても、あくまで、先ほどから申し上げているとおりに、危険の多い売買益に依存する、いわゆるあえてディーラー業務をしようという方向はもはやないと思います。あくまで安定収入である手数料収入に依存していく、この方向はもはや変え得られない方向でございます。同時に、現在の、先ほど申し上げた数字で億六、七千万出ておる背景を見まして、この三月においては経常収支でそれぞれの会社が黒であり、また配当もできる状況方向にあったわけでございますが、過去の不振な状況の中でいわば試練を受けまして、先ほど申し上げましたように、二割なり三割なりの経費の削減もやってまいりましたし、人員も減りまして、ある程度収支の償う状態、いまのようによくなくても、収支の償う経営の考え方をもってやっております。  私どもが収入の拡大をはかりますためには、もちろん投資家の側に立った、そうして許される範囲の手数料収入ということはもちろんでございますけれども、よりふやしてまいりたい状況のものは、公社債を中心にした引き受け業務、これが現在中小証券は弱いのでございます。弱いと申しましても、これは大証券のウエートが高過ぎまして、何とかこれはいずれ指導上でひとつ方向づけをしていただくつもりでおりますけれども現状では公社債によるところの収入は、安定収入でございますけれども、些少であるわけです。  もう一つの安定収入化の方向は、金融収益をどうしてあげるか、金融差を安定収入にしていくという方向でございます。いわゆるアメリカ証券会社方向をまねていこう、こういうことでございます。これも資金的な面が非常に細いので、パイプが細いので、先ほどから申すように太くしていただければ、この面もわれわれも安定収入化の方向にあるのだと申し上げ、御協力をお願いしたい、こういうことでございます。  あえて繰り返しますと、手数料収入が重点でございます。もちろん、委託、引き受けによるところのものも、これも手数料でございますけれども、こうしたもののほかに、何とか安定的な収入と申しますと、金融益を求める。あるいは預かり証券——先ほどもありました保護預かりという面におきましても、預かり証券につきましては預かり賃をいただいても、これは何も投資者からしかられるものではないと思います。そういうようなもので保借料をいただくとかというような面から、安定収入化の方向をはかっていきたい。これからの経営に関してはかような見解を持っております。よろしくお願いをいたします。
  107. 植木光教

    ○植木光教君 この間、私ども同僚議員と一緒に、ある証券業界の方の投信に対する御見解を承ったのてありますが、いまの投信の欠陥として、運営の責任者が明確でない、もう一つは、毎月投信の設定をやっている、たとえば市況がよかろうが悪かろうがやっている、こういうところも問題があるというような御意見を承ったのです。この点について、もしこれが一つの欠陥であるとするならば、直ちにでもこの二つの問題については、大蔵省としては指導をするなり、あるいは業界内においても直ちにそのための努力がしていただけると思うのでありますが、この点についての御見解を、証券局長と井上理事長からお伺いをいたしたいと思います。
  108. 加治木俊道

    政府委員加治木俊道君) 仰せのとおりに私も存じております。いろいろ問題はありますけれども、御指摘の点は最大の問題の一つである、私はかように考えております。これは証券業界においても同様に考えております。  ただ、このユニットの毎月設定というのはユニットの制度でございますけれども、現実に現在投資信託は元本が減少しており、設定額と償還及び解約額が逆算になっているという状況でございますので、ユニット・システムを毎月募集あるいは毎月設定の制度をやめられるかどうかとなりますと、客観情勢の上で市場に及ぼす影響等も考えますと、簡単に踏み切れない問題があります。しかし、一方、ユニットは貯蓄の流れといいますか、所得の流れの中に直接足を突っ込む、そのためには月々所得にアプローチできるような制度でなければ、うまく資本市場に資金を集めることができないのじゃないかというようなことが評価されて、世界に例のないユニット・システムという制度になっているわけでございますが、もしその評価をそのまま評価するというならば、一体そこで集められる資金は何であるか、非常に貯蓄性の高い資金であります。貯蓄性の高い資金というものはかなり元本というものが確保できるというか、かなり安定的に価値維持ができるようなことを当然願っておるような資金であろうと思うのです。しからば、そういう意味の資金であるという前提で、現在のユニットの性格というものが、そういう性格的に集める資金というものと運用されている内容というものがマッチしているかどうか、この点を考えていかなくちゃならぬと、かように考えております。
  109. 井上敏夫

    参考人(井上敏夫君) お答えいたします。  投信がどうあるべきかということにつきましては、先刻来お答えいたしておるとおりでございますが、運営上の人の問題、これは投信分離のまだ年月も浅いことでございますので、もう少し時間をかしていただければ、やはり人的にも完全分離の方向にだんだん移行していくのではないかと思います。また、その方向が正しいのではないか、かよう考えます。  また、毎月設定の問題ですが、これは加治木局長からお答えになったとおりでございまして、現実にある資金的の面、またそういう資金がもし得られるならば、そういうことをやっていかなければ投信としてはなはだ困るんじゃないか、かように考えております。
  110. 藤田正明

    ○藤田正明君 最後に一言お尋ねしたいのですが、先ほど唐沢参考人が、免許制の移行に関しまして、本年の九月に適否を判断することは時期尚早であるというふうにおっしゃったと思うのですが、私の聞いておる範囲ではそのようなことになっていないと思うのですが、大蔵省証券局長、ひとつどうですか。
  111. 加治木俊道

    政府委員加治木俊道君) 問題の点は、来年九月に免許申請がされるわけでございます。したがって、申請を受け付けた時点で適否というものを、六カ月余裕はありますけれども、六カ月の間にきめるということになるわけであります。さて、その時点でわれわれが判定し得るためには、少なくともいままで問題となったいろんな問題、これは財務面の問題ももちろんでございます。過去の赤字を背負ったままで免許を受けるということは必ずしも適当でない。それからまた、投資家保護の観点から申し上げますと、単純に財務内容がいいかどうかではなくて、営業態度が正しいかどうかという、こういうまた正しい営業態度を前提にした、しかもいまのような状況は必ずしも常に期待することはできませんので、かつてのような、去年おととし等は九千万株程度投資を、一部でいいますと出来高でございますが、そういった事態でいいますと、少なくとも赤字が出ないような体質ができておるかどうかということを、少なくとも一年間の実績を出してもらいたい。そのためには、その新しい体制というものはこの九月までにつくり上げておいておらいたい。まあそれはあと二年くらいあるわけでございますけれども、その間にゆっくりうしろ向きの問題考えてもいいということは、一応これは議論としてわからないわけではございませんけれども、はたして、少なくとも今後市況が上がり続けていくという何らの保証がない、したがってそれはぜひともこの九月まではこの体制をつくって、その上で来年九月に免許申請を受け付けたときに判定できるというような、そういう体制にしていただきたい。また、経営者としても、そのくらいの気がまえを持って責任ある処置をとるべきではないか、こういうふうに考えておるのでございます。
  112. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 参考人の御意見に対する質疑は、これをもって終わります。  参考人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず、貴重な時間をおさきいただきまして、当委員会のために参考人として御出席いただきまして、長時間にわたり御意見をお述べいただくとともに、委員質疑にもお答えいただきましたことを、深く感謝申し上げます。お述べいただきました御意見は、今後の委員会の審査の際参考にいたしたいと存じます。まことにありがとうございました。  それでは、本日はこの程度にとどめ、次回の委員会は六月七日(火曜日)午前十時からとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会