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1966-04-21 第51回国会 参議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十一日(木曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————    委員の異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      野溝  勝君     秋山 長造君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長     理 事         徳永 正利君                 青柳 秀夫君                 日高 広為君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君     委 員                 大谷 贇雄君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 西郷吉之助君                 西田 信一君                 木村禧八郎君                 柴谷  要君                 戸田 菊雄君                 北條  浩君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君                 小林  章君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局次        長        岩尾  一君        大蔵省銀行局保        険部長      上林 英男君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省銀行局保        険部保険第二課        長        田辺 博通君        建設省住宅局住        宅建設課長    後藤 典夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地震保険に関する法律案内閣送付予備審  査) ○地震保険特別会計法案内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  それでは、地震保険に関する法律案及び地震保険特別会計法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣、きょうは五十分くらいいるそうで、証券大会で……。そこで証券のことにからんで一言伺っておきたいのです。日銀特融というのは、対象は確かに山一大井にされております。しかし、ただ単にこれは山一大井を救うということではなくて、そこに大きく融資しておる銀行というようなことも当然お考えになってされておるものとわれわれは理解しておった。そうではなくて、これはあくまでも山一の問題であり大井の問題であるから特融をしたということなのか、関連があるのかないのか。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のとおり、これは山一大井ということを考えておるわけではありません。融資の最終の対象山一大井になりますが、しかしこれは証券界金融界全体を対象といたしまして政策的に考えた、こういうことでございます。
  5. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私どもそういうふうに理解をしておるわけです。そういう中で、こういう非常に日銀特融というようなことはあまりやって好ましいことではなく、ほんとうに緊急的な措置がとられた、そういうことで、今度受けた側のほうの山一にしろ大井はどうしておるかといえば、当然責任者人たち引責辞職というような形になり、私財を提供して穴埋めしている。これは非常にいいことだと思う。当然なことだと思うのです。ところが、それでは山一に大口融資しておるたとえば富士、三菱、興銀ですね、こういうようなところに対しては何ら責任がないものだろうか、あるものだろうか。そのことについて私は責任があるんじゃないか。なるほどそういうことについていろいろな言いわけはあるかもしれないけれども、私は金融問題として当然責任を感ぜられておってしかるべきだと思うのですが、どうですか。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) たとえば山一融資に関連した金融機関、これはたくさんありますが、特に大きなものは三銀行ですね。こういう銀行につきましても、事態の収拾につきましては大きな責任も感じ、また努力もいたしておると思います。私どもも、山一に例をとれば、これらの三銀行がそのままでこれを傍観しているということであってはならない。山一の再建につきましては、まず第一に、特融の回収、これを考えなければならない。それから第二には、山一の株主の責任、これを考えなければいけない。第三には、これらに融資をいたしました三銀行犠牲分担、こういうことも考えなければならない。こういうふうに考えており、おそらく三銀行におきましてもそのような考え方を持っておる、かように確信をいたしております。
  7. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ぼくは、金融の全体の問題について、あなたは基調緩和のことをおっしゃっておる。それから、融資ルールの問題がいま金融制度調査会特別委員会でいろいろ検討されており、あるいはこの間は同友会のほうでは構造金融はないというようなそういうようなことも提唱されておる。とにかく民間企業の問題にからんで、いろいろ資金問題が出てくるわけです。そういうときに、少なくとも山一あるいは大井経営者責任をとって、私財を提供してその責任を明らかにしようとしておるそのときに、三行は、あなたのいまのお話を聞きますと、当然責任があるから三行でも何とか考えておるだろうということでありますが、これだけでは私は済まされない。三行の責任者というのは当然責任が明確にされないと、今後の融資の全体の問題はこういうところでぼやけてしまうと思う。どんなりっぱなルールをおつくりになっても意味がないと思う。したがって、三行の責任は明らかにすべきであるのだ。大蔵省としてはそういう行政指導をやる、こういうふうに明確に御答弁を願えないものですか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三行は山一に対して融資はしておったわけでありますが、その融資対象である山一が、証券界全体の不振、しかもこれは急激なる悪化ということに関連して経営が行き詰まる、こういうことになってきておる。もちろん、その間に証券界経済界ばかりでなく、山一独特の経営上の問題もあるかもしれませんけれども、そういう経済の動き、また証券界の急変、こういうようなことが誘因になりまして、ああいう事態になってきたわけであります。でありますから、山一経営者責任とこの三銀行責任、これは私は区別して考えなければならぬというふうに考えます。しかし、私は、三銀行もとにかく何らかの犠牲分担をしなければならぬという立場にある、そういうふうに考えまして、そういう方向での行政指導をいたしていきたい、かように考えておるわけであります。
  9. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私どものほうも、大臣の御答弁を聞いて反論するわけじゃございません。確かに区別があるんじゃないかということもわからぬわけじゃない。しかし、証券界があすこまできたということについては銀行も大きな役割りを買っておると思う。一翼をになうというか、半分以上片棒をかついじゃっているでしょう、完全に。ですから、その区分はいいですよ。区分はいいが、その区分のしかたというものは、責任山一は大いに、十あれば銀行は一だなんというふうには私は考えない。もっと銀行が大きな役割りを果たしておるというふうに評価しておるわけです。だから、私は、そう簡単な軽々しい責任ではなくて、重大な銀行はそこに反省をしてもらわなくちゃならぬし、それとともに責任を明らかにしてもらわなければならぬ、こういうふうに考えております。まあこの点については御答弁は要りませんけれども、そういうふうに大臣行政指導するというお話ですから、そのあれをお待ちしたいと思います。  まだ時間があれば、ほかの問題も少し聞きたいと思いますが、以上でやめます。
  10. 柴谷要

    柴谷要君 私は、地震保険の問題で、内容につては同僚議員から詳しく質問があるようですから、私は現在起きております松代地震でございますね、この松代地区に対して、現在の地震保険法適用されるのはどういう姿になっていったらば適用されるのか、それとも適用はだめなのか、これをひとつ明確にしてもらいたいと思う。できれば、私ども希望としては、できるだけ早くこの法律案が通れば、松代のいま悩んでおります住民のためにこの法律が生きるのだ、こういうことになら、これはやはりわれわれ国会議員としてすみやかに考えなければならぬ、こう思いますので、この経緯についてひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。
  11. 上林英男

    政府委員上林英男君) この法案は、もちろん松代地震にも適用があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、できるだけすみやかにこの法案を御審議をいただきまして、可決をしていただきたいと思っているわけでございます。また、こういうものが松代の場合にお役に立てれば、私どもとしては、それはある意味では不幸な事態でございますが、この法案を提出をした意味があると思っているわけでございます。
  12. 柴谷要

    柴谷要君 そんな簡単な答弁でなしに、一体いま審議している、これから審議する——衆議院から上がってくるわけですね。で、参議院審議をする。そうしてこれがまあ四月中に可決をした、そうなった場合に、一体この保険の取り扱いをどういうふうにするのか。そうすれば、松代人たちはすぐその加入ができて、そうして損害に対する支払いがすぐにできるのだと、こういうような順序をもっと説明をしてもらわないと、いまの通り一ぺんのことは知っているわけです。それは知っているわけです。そんなのは聞かなくてもいいのです。そうでなくて、いま衆議院審議をされている。きょう衆議院を通って参議院に来れば、参議院審議がこういうぐあいで、早急に参議院可決をしてもらえばすぐにこういうような結果になるから、松代人たちにはあしたからでも加入してもらえるのだ、そうして事故発生に伴って損害が生じた場合には保険金支払いができるのだ、それについては、短時日のことであるから、特に国会附帯決議かなんかつければ効果がより一そう出るのか出ないのか、そういう点までひとつ聞きたいから、私は質問を、同僚議員がいまこまかい質問をしようとする前段において私は提起をしたわけですから、そういう気持ちで親切に御答弁いただきたいと思います。
  13. 上林英男

    政府委員上林英男君) この法案を通過していただきますれば、できるだけすみやかに私どもこの法案施行いたしまして、直ちに役に立てたいと考えております。この法案自体につきましては、法案審議をいただいておりますと同時に、保険会社におきましても各般の準備を並行して進めております。したがいまして、通過、公布を見ました暁には、できるだけすみやかに、私どもといたししましては、もし今月中に通過していただければ、少なくとも六月一日には施行できる、できますれば、それよりも早い時期にこの地震保険の発売ができるようにということで、私どもはこの国会の御審議と並行いたしまして、保険会社を指導いたしまして、諸般の準備をできるだけ進めておる、こういう状況でございまするので、いま申しましたように、この法案が成立いたしますれば、すみやかにこれを実施いたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  14. 須藤五郎

    須藤五郎君 大臣のいらっしゃる間にちょっと聞いておきたいのですが、きのうかおとといの新聞に、今度政府松代地震対策協議会というものをつくって、それで具体的なことをやるという記事が出ていたわけです。ところが、どういうことをやるということは具体的に示されていない。私の聞くところによりますと、今度の地震について、地震計を五台ほど買ってほしいという要求が出ているそうですね。ところが、政府が金を出さないので、その地震計すらも買うことができない、こういうお粗末な状態なんですね。こういうことで、政府はこの松代地震ほんとうに取っ組んでいるのかどうかということを私たち疑惑を持つわけです。それで、新聞にはああいうふうにでかでかと書いて、いかにも松代地震政府が関心があるごとく装いながら、どうもそうじゃない。そこで、一体どういうふうな具体的な考えを持っていらっしゃるのか、予算措置をどういうふうにしようとしていらっしゃるのか、大臣からひとつ責任ある答弁をいただきたい。
  15. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 松代の問題でございますが、先生もいま御発言いただきましたように、政府といたしましては、できるだけ現在の状況、民心の不安その他を除去いたしまして、対策を講じたいということで、従来からいろいろと各省連絡会を持ちましたり、あるいは各省協議会等におきまして審議をいたしております。いま大体きょうぐらいにいろいろお話し合いを進めまして、ここ二、三日中には建設大臣現地においでになりまして、状況を御視察の上、適切な対策を講ずる。それに対して各省できるだけ協力していこう、こういう態勢でございます。  それから、お話いただきました予算措置の問題でございますが、先生も御承知のように、松代につきましては昨年来種々問題であったわけでございます。そこで、十二月に予算を編成いたします際に、いま申しました地震計等につきましても当然運輸省気象庁におきましていろいろと御判断があり、そういうものを予算折衝の問題としてわれわれは取り上げて検討したわけでございます。それで、気象庁の御了承を得て、それでは松代でこういうこともあるけれども、この程度でいこうかということで、予算をセットしたわでございます。ところが、新聞を見ますると、あれは一部の技術屋の方の御発言のようでございますけれども、まあ非常に足らぬから困るというようなお話をしているようでございます。予算を編成しておるものといたしましては、そういう事態考え予算を編成した。これが、そうじゃなくて、十二月には全然地震がなくて、いま急に起きてきた、そういう状態なら問題は別でございますけれども、その十二月にあったような状態でわれわれは予算をきめたわけでございますから、したがって、その意味で、急にまたこういうふうに要るのだというふうにおっしゃられるのは、予算当局としてはあまりいい気持ちはしないわけでございます。しかし、事態はそういうことを言っておる状況ではないのでございますから、ほんとうに必要ならば、予備費なり何なり出しても手当てしたいということで、そういう対策を全部含めまして検討していきたいと考えております。
  16. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、地震計の、とにかくそんなメンツの問題とかそんなものにこだわっている問題ではなしに、やはり重大な問題ですから、技術者技術者立場で、これだけないと困るというせっぱ詰まったところだと思うのです。ですから、そういう人たち要望を入れて、十分な設備をするということは重要だと思う。そういう方向にひとつ大蔵大臣、取り計らっていただきたいと思います。
  17. 柴谷要

    柴谷要君 私のお尋ねいたしました松代地震の問題については、この法案が四月中に本院を通過し、可決をしますというと、六月一日から施行ができる、こういうことの御答弁のようなんです。そこで、六月一日から加入をするということになるのですが、松代全体に今日まで被害を受けたもの、こういうものに対しても該当させることができるかどうか、これについての見解をひとつ明らかにしておいてもらいたいと思います。
  18. 上林英男

    政府委員上林英男君) 保険契約は、保険契約を締結いたしましたときからの危険を担保するわけでございますから、過去にさかのぼりまして担保するということはないわけでございます。したがいまして、保険契約を締結しました以前のものにつきましては、この法律のもちろん適用がないということに相なっております。
  19. 柴谷要

    柴谷要君 この保険が、地震保険というものが国会提示をされた。それで、審議をずっと続けてきた。その提示をされたときから松代地震が起き始めたと仮定をするのです。そうしてこの保険無事国会を通った、しかし、これまでの間に被害が出ておる、そういうことになれば、この保険の効力を適用さしてもいいのじゃないですか。そういう要望をわれわれ国会としてはつけたいと思う。つけたら、そういう松代地震については特段の措置ができるかできないか、ひとつその点も伺っておきたいと思います。それ以前のことは言いませんよ。あなた方がこの法案国会に出さない以前に起きた地震の問題については言わない。ただ、国会に提案をしたそれ以後の松代において発生した事故、これに対しては保険が該当するかしないか、させられるかどうか、理屈の上で。これはできるのじゃないかと、こう私は思う。そのように考えてもらえないかどうか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  20. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御案内のとおり、保険契約と申しますのは、将来におきまする未知の危険につきまして、一方におきましては契約者保険料を払う、これに対してもし不幸にして事故があった場合には保険金を支払うという性質のものでございまするので、したがいまして、いま御質問のような点につきましては、保険という性質には乗らないと、こう考えるわけでございます。したがいまして、御質問の点につきましては、この保険によって処置ができるというものではないと考えるわけでございます。
  21. 柴谷要

    柴谷要君 そうなると、将来の問題だからということになると、これはじっくりこの法案については審議をしてもいいと思う。ところが、松代という問題が起きているから、私は一日も早く上げて、そうして該当さしたほうが、国会としても非常に熱心にわれわれのことを実情考えてやってくれたと、こう考えると思うのです、国民として。また、震災地にある皆さんもそう考えると思う。だから、そのくらいのことをわれわれは付帯として取りつけてやってもいいのじゃないかと思う。これは真剣にこの問題に取り組んでいきたいと思う。将来の問題にも確かに効果があることは事実なんです。当面あのような何万回となく起きていて、政府の手が今日十分でないというときに、そのくらいの処置をしてやっても決して悪いとは思わない。そのくらいの処置ができてこそ、初めて私は生きた政治だと思うのです。そのくらいのことはやらせる気があれば、大蔵省として保険会社にやらせられるのじゃないですか、どうですか。これに対して反対の議員はないと思う、おそらく。やる意思があるかないか、それだけひとつ聞かしてもらいたい。
  22. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいま申し上げましたように、保険性質から申しますと、すでに確定した損害につきまして担保をするということは、これは保険として成り立たないわけでございます。すでに確定しました損害につきましての措置につきましては、保険以外の措置を講ぜざるを得ない、こういうふうに考えるわけでございます。そのような、ただいま地震が起こっておりますことでもございますので、できるだけすみやかにこの法案を御審議いただき、成立を見まして、私ども施行を早めてやりたい、こういうことで解決をさせていただきたい、こういうふうに考えているわけでございまして、ただいまの点につきましては、保険に乗らないということを御了承いただきたいのであります。
  23. 柴谷要

    柴谷要君 その程度しか言えぬと思うのです。気持ちは私と変わらないと思うのです。これは私はのぼせ上がっているかもしれませんが、私と変わらないと思うのです。  実際上できないとするならば、あと二、三分しかありませんから、大臣に伺いたいのですが、一体この対策はどう考えるのですか。これはたいへんなことだと思う。それで、実は運輸省気象庁予報課に聞いてみた。なかなか予断を許さないというのです。それで、いままでのゆれ方によって、かなりがっちりした家がもう四割方ぐずぐずになっている。ですから、大きいのが来れば一ぺんにやられる危険性なしとしない、こういう実情にあるようです。こういうことを考えますと、他人ごとには考えられない。ですから、実際われわれが、ささいなことであるけれども、こういう気持ちをもって審議に臨んでいるわけですから、政府としてはどういうふうな対策をお立てになって、これからやっていこうとされるか、大臣としての見解をお示しいただいて御退席願いたい、こう思うのです。
  24. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いま柴谷君が言ったごとく、われわれもこの法律が通ったから云々ということは思わない。すでに災害が発生しているわけです。災害のいろいろな立法がございますね、そういうものがすでに適用されておってしかるべきです。もっといえば、激甚地として指定されて、いろいろと手が打たれていなくちゃならない。そういうことが今日やられておらないというところた問題があると思うのです。ですから、大臣としては、これは切り離して、激甚地として、その災害立法があるのですから、それを活用してどうやるかということをお示し願いたい。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 松代につきましては、昨年の秋ごろでしたか、事態が容易でない、こういうので、政府のほうでも、当面公共施設中心とするということで、すでにいろいろな対策をとってきているのですよ。たとえば学校で脆弱なものの建てかえをいたしますとか、そういうようなことを中心とする施策、これはずいぶんとってきているわけです。  ただ、最近の状況からいいますと、どうもまだまだ非常に安心がならぬ状態である、こういうので、特に先般の閣議で、閣僚協議会をつくって、そうして建設大臣委員長になって、至急今後あり得べき事態に対応するあらゆる施策をとろう。その閣議なんかでは、疎開でもさせなければならぬというような話もありましたが、それはなかなかむずかしいことじゃないか、こういうふうな説も多かったわけですが、とにかく建設大臣責任を持って、現地にも乗り込んで実情も見て、そうしててきぱきした対策をとろう、こういうことになっております。万全の諸施策をとる考えであります。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 激甚地指定ぐらいやってもいいのじゃないかと思うのです。
  27. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、大臣、お引き取りを願います。
  28. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは悪いですが、岩尾さん、これから建設大臣によってそういうものが展開されるということについては、私らはいいと思う。それに何もけちをつけるわけではない。だけれども、現に一年、二年なんですね。災害立法はもうあるわけなんです。それがなぜいままで活用されなかったか。なるほど水なんか出たときには、激甚地です。雪が降ったとか、台風があったとかいうときには、すぐ激甚地指定がある。いままでのお話を聞くと、公共関係の人はいいわけですけれども、個人もたいへんなことなんです。ですから、なぜそういうことが、いまのあの法律の活用をなぜされないのか。これは大蔵省責任ではないから、ぼくらもあまりあなたに云々というわけにいかないが、大臣国務大臣として答弁ができると思う。なぜそういうものがいままで行なわれていなかったのか、そういうような点について、もし御存じなら説明願いたい。
  29. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 松代の問題でございますが、これは基本的には、まだ現在災害が起きておらないという法制上は立場でございます。先ほど来大臣が申されました十二月ごろにいろいろ公共施設の補強をやったというのは、災害に対する予防としての措置であるという意味で、災害が起きたあと措置ということではなくて、予防という意味でいろいろな措置を講じたわけでございます。それから、現在の災害立法中心をなしますものは災害救助法でございます。災害が起きますと災害救助法が発動され、また、災害救助法が発動される要件といたしましては、災害が起きた場合と災害が起きるおそれがある場合にも発動されるわけでございます。ところが、現状におきましては、長野県におきましては、この災害救助法を発動することを非常にいやがっておられまして、われわれのほうといたしましては、災害救助法のたてまえからいきましても、おそれのある場合も発動できるのであるから、災害救助法を発動したらどうかという意見をわれわれとしては持っておりますが、現状では、県当局はどうも、そういうことをやるとかえって人心不安が大きくなるというようなことも御心配になり、範囲もなかなか指定できないということで、なかなか御発動にならないような状況でございます。建設大臣が今度現地においでになりまして、その辺の状況もよく御検討いただきました上で、適切な御判断があると思いますが、いまのところは、どうも災害立法のほうに持っていくにはむずかしい状態だと、こう御了承願いたいと思います。
  30. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その災害が起きたか起きないかの認定の問題について、地元等の人心不安というものに問題もあってやれないんだというふうなことも私は重大な問題だと思うのです。しかし、今度建設大臣が地元にも調査に行かれることが新聞に出ております。非常にいいことです。そうとなれば、今度は災害が発生をしたと、時期として、そこからどこかで区切って、大きな問題があったわけじゃなくて、だらだら続いているわけですから、どこかで、たとえば四月三十日とかあるいは五月一日とか区切ってやられるような方向になりましょうか。
  31. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 災害が起きたというふうには現状では判断をしにくいかと思います。もし災害救助法を発動するとすれば、現状では災害のおそれがあるということを要件に発動するということになるかと思います。そこで、実際上の災害基本法の災害といたしましては、たとえば風水害その他によっていろいろな事故が起きて、流失した家屋がどれくらい、あるいは全壊したのはどれくらい、あるいは浸水したのはどれくらいというような被害としてのある程度のものがございませんと、これは災害があったというふうには法制上はなりませんので、災害があったというふうには、建設大臣おいでになりましても、法制上はならないかと思います。  しかし、先ほど申したように、災害のおそれがある場合でも災害救助法は発動できるわけでございますから、そういう意味で、建設大臣が、これはもう災害のおそれがあるんだと、全体の人心をむしろ安定さすためにも、あるいはいろいろな災害救助をやるためにも、災害救助法を県知事は発動したほうがいいじゃないかという御判断をされれば、救助法が発動されて諸般の措置がとられるということになると思います。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと。おそれがある場合の措置というのは、具体的にどういうのですか。
  33. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 災害救助法考えております。たとえば仮設住宅をつくりますとか、あるいは避難所をつくりますとか、あるいはたき出しをやりますとか、諸般の措置は全部同じように適用されるわけでございます。
  34. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いまの問題と関連して、最初に聞きたいのですけれども、次長がいまおっしゃられたその災害ということに対する解釈で、私少し疑問があるのですけれども、現に松代の場合は、数回にわたって震度五という相当強い地震に見舞われた。ですから、道路に亀裂ができたり、あるいは壁が落ちたり、そういった被害がもうすでに出ているのですね。ですから、そういう問題に対して、われわれとしては明らかに災害と一応見るわけですがね。そういうものに災害救助法適用して、そういうことと取り組むという姿勢がなくちゃならないと思うのです。こういった点についてお伺いしたい。
  35. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) まず、災害救助法とそれ以外の災害のいろいろな基本法に基づきます立法がございますので、これに分けてお話をいたしますと、災害救助法の場合には実際上は、災害が起きて流失した家屋、倒壊した家屋が何戸あるか、あるいは行くえ不明の人がどれくらいおるかというようなことが基準になって、災害を判定することになっておりますので、いわば地震がありましても、それによって道路に亀裂が起きたという状況だけでは、災害救助法は、おそれじゃなくて災害があったという判断で発動することにはなかなかならないと思います。おそれの場合は、これは別でございます。  それから、ほかの災害立法につきましては、それぞれの内容におきまして、どういうものを災害というかというふうに規定がございますので、その場合にも、地震はありましても、その地震によってある程度被害がございませんと、すぐに災害だというふうにはしにくいと、こういう状況でございます。
  36. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それじゃ、地震保険に関する法律案について疑問な点、数点についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一は、この地震法案の成立の経過その他については提案の内容によって理解できるのでありますが、直接法案作成の根拠になったのは、一体何が根拠なのか。具体的に条文が制定をされていま法案が提案をされておるのですけれども、たとえば保険料率、あるいは保険支払い額、あるいはそういう被害に対する対象物件、そういうものは何を根拠にして法案がつくられているか、そういう点についてお伺いしたい。
  37. 上林英男

    政府委員上林英男君) この地震保険法案におきまして、ただいま御質問の点がいろいろと規定をされておるわけでございます。この地震保険を創設いたしますにつきまして、特に私どもが配慮をしなければなりませなかったことは、わが国が有数の地震国でございますにもかかわらず、いままで地震保険ができなかったという理由につきましては、提案理由その他で申し述べておりまするように、地震被害の性格がきわめて、一たん起こりますと、非常に損害が大きい。かつ、これは非常に長い期間かかりませんと、その周期なども非常に長うございまして、その統計的な把握ができない。あるいはやはり地震につきましては、逆選択というおそれが相当あるというようないろいろな問題がございまするので、そういう問題を頭に置きながら解決をせざるを得なかったわけでございます。  したがいまして、まず第一に、この地震保険対象として考えましたものは、まず国民生活の安定ということを頭に置きまして、住宅及び家財というものに限定をいたしましたわけでございます。  それから、第二に、その事故は、地震、噴火またはこれらによる津波を原因といたします火災、損壊、埋没または流失による全損、ただし経済的な全損、ただし経済的な全損も含むというものをてん補するにとどめたわけでございます。  第三に、ただいま申しました逆選択を防止するという意味合いから、単独の地震保険というものを設けませんで、特定の損害保険契約に付帯をして今度の地震保険契約をつくるということにいたしております。具体的には、ただいま総合保険というものがございます。これは単に火災のみならず、落雷、盗難その他いろいろないわゆるオールリスク保険と称せられているものでございますが、これがわが国のみならず世界的にも漸次普及を見ておるものでございます。この総合保険に自動的に付帯することを原則として考えております。また、場合によりましては、火災保険にも任意に付帯し得る道も開きたい、こう考えておるわけでございます。  次に、この保険金額、保険金支払いでございますが、先ほど申しましたように、一時に過大な集積を避けるという意味におきまして、保険金額は、ただいま申しました付帯されまする主契約の百分の三十に相当する金額、ただし、建物につきましては九十万円、家財につきましては六十万円、合計百五十万円を限度とするというふうにいたしておるわけでございます。  なお、このような保険を先ほど申しましたような長期的な観点から、国がこれに関与いたしませんと円滑な運営ができませんので、国がこの民間保険会社が引き受けました地震保険契約につきまして、超過損害のてん補の再保険契約を結ぶことにいたしております。具体的に申しますと、いま考えておりますのは、一回の地震におきまして百億円未満の被害が起きたときは民間保険会社が全額これを負担いたします。百億以上五百億……
  38. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ちょっと、申しわけありませんけれども、私が聞いているのは、そういった経過内容については、たとえば答申案の内容にもありますし、だから、法案制定の動機といいますか、そういう経過措置についてはいいんですけれども、この法案を具体的にいまあなたがいろいろと説明をされた中にあらわれているわけですから。損害の場合は幾ら払うとか、そういう言ってみれば具体的な内容が載っているわけです。しかし、そういうものが直接根拠になったのは一体どういうことが参考になったのか、私はこういうことを聞いている。私は答申案の内容をいろいろ聞きますると、関東大震災というものを土台にして被害状況損害の度合い、こういうものを参考にして具体的にそういう内容を作成していったと聞くわけでありますけれども、その辺はどうですか、それを聞いておる。
  39. 上林英男

    政府委員上林英男君) この地震保険の設定にあたりましては、もちろん関東大震災の過去の事例もよく勉強をいたしまして考えたわけでございまするが、さらに、たとえば料率その他の点におきましては、過去四百七十六年間に起きました代表的な地震、三百二十ほど地震がございますが、そういうものを地震学者が研究いたしまして、地震の規模というようなものが算定をされておりますが、そういうものから、いろいろの地震学者が研究をいたしましたデータに基づきまして、との地震被害程度損害率というようなものを研究をいたしました結果、そういうような制度をつくり上げたわけでございます。
  40. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうしますと、かつて発生しました地震三百二十ですか、そういうものと関東大震災、こういう被害損害の度合い、こういうものを土台にして具体的に考案をされたと、こういうことでいいんですか。  それでは、ひとつお伺いするのは、関東大震災での損害総額は一体どのくらいになっておりますか。損害総額、約でけっこうです。
  41. 上林英男

    政府委員上林英男君) 関東大震災につきましての被害額と申しますのは、相当何といいますか、とり方によりまして、いろいろ数字があるわけでございます。よくいわれておりますことを一つ申し上げますと、関東大震災のいわゆる普通物件と称します住宅、それから店舗、それからアパートなどのああいうようなものでございますが、それの被害額が約二兆円であると、こういわれております。
  42. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 二兆円というのは現時点に換算をしたんですか、当時の状態ですか。
  43. 上林英男

    政府委員上林英男君) ことばが足りませんで恐縮でございましたが、私どもいろいろの計算をいたしまして、現在時点に関東大震災と同じような規模の地震が起こったらどうなるであろうか、こういう計算をいたしておりますが、いま申しました二兆円と申しますのは、三十九年度に関東大震災が起こった場合、現在のような家屋の密集度その他を勘案してどのくらいの被害が起こるであろうか、こういう数字でございます。
  44. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それじゃ、いま損害保険や生命保険全体の資産はどのくらいありますか。
  45. 上林英男

    政府委員上林英男君) 損保会社の総資産は現在約四千七百億円程度かと考えております。
  46. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 生命保険は……。
  47. 上林英男

    政府委員上林英男君) 生命保険会社は、昨年の三月末で一兆八千億でございます。
  48. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうしますと、今回の地震保険ですね、政府は二千七百億、それから民間が三百億、合計三千億となるわけでございますが、その三千億という金額査定の根拠ですね、それから今後の経済の動向、そういうものと見合わせて、この資産で一体間に合うのか、間に合わないのか、そういうものについてひとつ。
  49. 上林英男

    政府委員上林英男君) ただいまお答えいたしましたのは損害の全体を申し上げたわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、非常に大きな被害でございますので、先ほどから申し上げておりますようないろいろな制限を設けているわけでございます。  なおかつ、このただいま申しました二兆円と申しまするのは、保険に付保されているものもされていないものも含まれました数字でございます。それから、普通物件でございますから、今回の対象からは事務室その他のものが除かれるわけでございます。さらに繰り返すようでございますが、保険金額、一たん事故がありました場合の支払い金額は、主契約の保険金額の百分の三十、百五十万円という限度がございます。したがいまして、そういう計算をいたしてまいりますと、関東大震災が四十一年度に起こりましたと仮定いたしました場合、現在の付保状況におきましては、大体二千億程度保険金支払いが行なわれるものと考えているわけでございます。ただいまおっしゃいました三千億というのは、私どもは一応予算におきまして国庫債務負担行為を行なっております限度が二千七百億円でございますので、民間の負担分三百億円と合わせますと三千億でございますが、大体これを設定いたしましたのは、関東大震災並みの地震が起きましても、この法律に基づく削減は要しないであろうという予定のもとにそういう限度額を設けたわけでございます。
  50. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、いろいろ考えるんですけれども、大正十二年の九月一日当時、あの関東大震災が起きて、当時の被害総額が二兆円、こういうんですね。あの程度のものを考慮してああいうものをつくられているとすれば、当然いまの物価高やあるいは経済動向、これからさらに拡大していくであろうこういう情勢の中で、三千億ではとても間に合わないんじゃないかと思うんですがね。このいわゆる基本になる査定の問題、はたして妥当か、適当かどうかという点について聞いておきたい。
  51. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連して。いま戸田議員質問していますがね、関東大震災、この答申書にも出ていますが、二兆円ということになっているんですね。そうすると、三千億の弁償で足りないのはもちろんですね。ところが、二兆円というやはり膨大な損害になるとね、三千億までは大体九十万、六十万という金がもらえるんですね。それでどうにかほっとできるかもしらぬが、それが二兆円となると、三千億に対する二兆円ですから、何分の一ですか、何でしょう、十分の一ぐらいになっちゃうわけですね。その比率でもらうと、九十万円が九万円になっちゃう、そういう計算にならないですか。そこの点をちょっと説明しておいてください。
  52. 上林英男

    政府委員上林英男君) どうも説明がまずうございまして恐縮でございますが、二兆円と申しますのは、いろいろの被害の総額でございます。そこで、この地震保険でお払いをすることになりますのは、先ほど申しておりますように、まず住宅と家財に限っております。したがいまして、その二兆のうちから住宅と家財に限られることによりまして金額が減るわけでございます。さらに、この二兆と申しますのは、保険に入っておる方も入っておられない方の被害も全部入っております。したがいまして、その分がまた引かれるわけでございます。さらに、入っておられる方におきましても、保険契約、たとえば普通の火災保険契約を百万円お入りになっておっても、地震によりまする被害の場合には三〇%というふうに限度を設けておるわけでございます。三〇%、百五十万円に限度を設けておりますので、普通の火事の被害の場合には百万円が保険金として支払われますけれども地震による被害の場合には、いま申しました限度で頭打ちになるわけでございますから、それだけまた削減をされると。こういうような削減を加えてまいりますと、関東大震災程度の規模の被害が起こりました場合でも、二千億あれば大体四十一年度におきましては支払いが足りるという計算をいたしておるわけでございます。
  53. 須藤五郎

    須藤五郎君 これはぼくも仮定の上に立つ話だが、かりに住宅、家財で東京都民が全部かけたとしましょうか、そうすると、二兆になるかわからぬですよ。その場合には一体どれだけもらうことになるかということなんですよ。  それから、先ほど戸田さんが質問した生命保険、これは震災で死んだ人、地震で死んだ人、生命保険の中にそのまま入るんですか。
  54. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 二兆円の中には公共施設も入るんでしょう、道路とか港湾は。
  55. 上林英男

    政府委員上林英男君) 入っておりません。  それから、もちろんただいま申し上げました二千億円というのを一応めどに置いておりますが、これは現在の保険に入っております世帯を前提にいたしております。したがいまして、今後付保状況がさらに進んでまいりますと、この三千億という数字は再検討を要する問題であろうかと思っております。しかし、ただいまの保険の普及率というようなものから勘案いたしますと、かりに四十一年度におきまして関東震災程度のものが起こりました場合には、この法案によりまするような制限を加えますれば、三千億であれば削減の必要はない、こういうふうに考えておるわけでございます。かりにだんだんともっと保険が普及をいたしてまいりまして、さらにこの限度を上げねばならぬ、こういう問題が起こってまいりましょうが、その点につきましては、今後の財政力の問題その他を勘案して、その普及状況に応じて措置していかなければならない、こういう問題であろうかと思うわけでございます。  それから、生命保険につきましては、地震によりまして死亡をいしました場合におきましても、免責になっておりませんので、これは保険金がそのまま支払われるということになるわけでございます。
  56. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうもいまの部長の話を聞いておると、私は非常に自信のないようなお話のように聞こえるんですよ。いまあなたがおっしゃったように、確かにそれは総体被害総額が二兆円だと、それはわかりました。で、その中には今回の対象が住宅と家財だと、こういうことに制限をし限定をしておるということもわかります。しかし、逆にいまの家財の一つの例をとれば、相当高価なものを家庭では持っていると思う。冷蔵庫を持っておったり、いろいろな電気器具を持っておるということで、生活様式が変わってきておるわけなんですから、だから、そういうことになれば、私は具体的に当時関東震災一つとっても、一体どのくらい火災家屋があって、倒壊戸数があって、その被害は一体どのくらいかと、そういう科学的に基づく具体的な資料というものを土台にしてこの法案というものを制定されたのかどうか、その辺どうですか。
  57. 上林英男

    政府委員上林英男君) かりに関東大震災が現在起こったらどういう被害が起こるかというのは、先ほど申しました三百二十地震と同じように、地震学者等の研究によります成果に基づきまして計算をいたしておるわけでございます。その計算方式を簡単に口で申し上げますと、過去の地震におきましてのいろいろな古文書その他から、ただいまの科学的知識をもちましてその地震の規模というものを測定いたしております。その地震の規模、震源、そういうようなものが算出されますと、その地域の震度、地震の強さというものが出てまいるわけでございますが、そういう一定の大きさの地震が起こりましたときに、住宅がどの程度損壊をするか、その地震の大きさと損壊率につきましては、これは地震学者がいろいろ研究をいたしました方程式がございまして、そういう地震の大きさから各戸数の損壊率というものを導き出します。さらに、その一定の損壊率が立ちますと、その損壊に基づきまして火事が起こる率というものも経験的に方程式が成り立っておるわけでございます。そういうようなことから、出火数というものをはじき出すわけでございます。また、一定の出火数が求められますと、地震火災の特質といたしまして、その規模が大きくなりますと、通常の消防力をもっては消し切れない、燃やしぱなっしにしておかなければならないというような事態が生じてまいりますわけで、延焼率がまた出てくる、こういう計算になります。そういうような、いろいろな統計、方程式というものを使いまして、現在の家屋の密集度、あるいは消防力、あるいは道路の問題、いろいろなものを考えまして、かりにこの地震が現在起こったらどの程度被害を生ずるであろうかというのを一々計算をいたしまして、そういうものをもとにいたしましてこの地震保険の設定をいたしたわけでございます。
  58. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも抽象的でわかりませんけれども、ここに「震災と保険」という本があります。この中に、弁護士の林貞夫さんという方が書いたんですが、この第四節に関東大震災における当時の焼失家屋の戸数が出ておる。これによりますと、倒壊家屋が三万六千百四十八戸である、それから焼失家屋が二十九万八千四百六十五戸となっている。これをかりに、いまの時価で平均百万の家屋として認めた場合に、これはもう資産の三千億をはるかにこえるということは明らかでしょう。で、かりに関東大震災の例を一つとってみても、それはとても三千億の資産などでは、ああいう一つの震災があった場合にはとてもまかない切れないという事態が必ずやってくると思うのです。ですから、私は、きわめて試算においても多くの制限を皆さんはやっているということになるんだけれども、それはいま部長の話を聞くと、その中で無理無理何とかうまい運用をするように措置をしていこう、こういう答弁に聞こえる、どうなんですか。
  59. 上林英男

    政府委員上林英男君) 関東大震災がもし起こりましたときの被害額というものは、まあいろいろ議論がございますように非常に大きいものでございます。これを全額保険金においてカバーをしていくということは理想ではございまするが、ただいまの財政力なりあるいは保険会社の担保力から申しまして、非常にむずかしい問題でございます。地震保険がなかなか成り立たなかったゆえんの一つもここにあるわけでございます。そこで、私どもがこの地震保険の発足当初に考えましたのは、やはりそれらに応じました、発足の当初におきましては若干不十分ではございましょうが、それらを勘案いたしまして、ある程度の制限を付していかざるを得ない、こう考えたわけでございます。そういう観点からただいま申し上げておりますような住宅、家屋に限りましたり、付保金額につきまして一定の制限を設けたわけでございます。したがいまして、何度も申し上げるわけでございますが、関東震災程度被害が現在起こりましても、この法律に基づきまする支払い保険金の金額は三千億で十分足りるものと私ども考えておるわけでございます。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この一つの例ですけれども、いまそういうことでちょっと目算で計算してもそういう考えを持つわけであります。ですから、いま提案をされている資産が三千億ということに限定をし、制限をする、これでもってすべてを運用していくということになれば、私はこれから皆さん自体が苦労してくると思う。ことに請け負う民間会社についてもそうだと思う。これは同じ宣伝をして勧誘していかなくちゃならないわけでしょう。ですから、それにはどうしても入る人の不安感があったり、動揺があったんじゃいけないんですね。そういう意味からいっても、やはり資産において私は三千億という資産は非常に少ないと思うのです。ですから、これをやはりいまの経済情勢、そういうものを現時点で総合した場合に見合うような、もう少し資産をふやしていくというような希望はないですか、そういう点で。この点についてどうですか。
  61. 上林英男

    政府委員上林英男君) 何度も申し上げておりますように、わが国で想定されます一番大きな被害でございます関東大震災におきましても、削減をする必要がない金額であると私ども考えておるわけでございます。また、今後、先ほど申しておりますように、付保状況その他が進んでまいりますと同時に、あるいは財政力も、保険財政の担保力も増加してまいりますので、そういう今後の問題につきましては、この限度額というものはそういうものの勘案をしながら検討はしていくべきものであると私ども考えておるわけでございます。
  62. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 非常に私はあらゆる部面でそういう制限の結果が、その保険の内容、適用、こういう問題について無理があるという考えを持つのです。ですから、この点についてはもう少し検討していただきたいと思うのですが、   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕 同様に、もう一つは、支払い額の制限の問題、これは住宅で九十万、家財で六十万、こういうことになるんですね。これらについても、今後の経済動向を考えるときに非常に、これはまあいろいろの方にいろいろと意見を聞いたんでありまするが、抽象的で、ばくとしてそれはわからない。ですから、この際、はっきりお伺いしておきたいのでありまするけれども、この支払い額の限度九十万ないし六十万、こういうものははたして妥当かどうかということですね。この点についてひとつ明確にお答えをいただきたい。
  63. 上林英男

    政府委員上林英男君) この地震保険の付保限度というものをどこに設けるかという点につきましては、なかなかむずかしい問題でございまして、保険審議会でもいろいろと議論があったところでございます。これは一方におきまして、先ほどから申し上げております財政力なりその他の担保力のことも考えなければなりませんし、また、逆選択を防止するという意味におきまして、できるだけ広い範囲にこの保険を普及をいたしまして、保険集団を安定をさせ、それによってまたひいては地震保険料率を低くするということを考えておるわけでございます。したがいまして、ある意味では総合保険に自動付帯ということになりまするので、一種の強制的な性格も、総合保険にお入りになるかどうかは自由でございますが、総合保険に入られますと必然的に地震保険がついてまいるというような性格を持っておりまするので、できるだけ保険料を安くしてまいらねばならぬ、こういう要請もあるわけでございます。  そこらを勘案いたしまして、この付保割合というものを幾らにしたらよろしいかという問題があったわけでございまするが、そういうような観点からいいますと、付保限度割合というものはなるべく低いほうがいいというような議論も出ないわけではございません。しかし、やはりある程度被害の復旧に役立つものでなければなるまい、したがって初めは一割がよかろうかというような議論もあったわけでございますが、それではそういうような需要を満たし得ないであろうということで、まず三割ということにめどを置いたわけでございます。一方におきまして、現在におきまする損害保険契約の分布状況というものを見てまいりますと、大体住宅につきましては三百万、家財につきましては二百万以上を保険契約に付しておられる方は一〇%に満たない程度のものでございます。おおむね三百万、二百万以下の方が九〇%を占めておるわけでございまするし、当面考えております総合保険の一件当たりの平均金額は、三十九年度におきまして百十六万、建物が九十六万、家財五十六万ということでございます。そういうような数字も勘案いたしまして、大体建物については三百万、家財については二百万というところまでを救うことにいたしますれば、大体大部分の方はこの対象になり得る、こういうふうに考える次第でございます。
  64. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 建設省の住宅局住宅建設課長にちょっとお伺いをしたいのでありますが、いまいろいろと基準等があるでありましょうけれども、普通の木造建築、一つの家を建てるのに経費は平均どのくらいかかりますか。
  65. 後藤典夫

    説明員(後藤典夫君) 住宅の規模によって相当違うと思いますが、現在持ち家で建っておりますのが、平均二十四、五坪のものが建っております。大体木造でありますと、それも建設する場所によって異なりますが、六万円から九万円、もっと安ければ五万円から九万円ぐらいまでの坪当たりの単価になるかと思っております。それで計算いたしますと、かりに五万円といたしますと百二十万という計算になるわけでございます。
  66. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それぞれ建て方によってそれは違うでしょうけれども、いま建設課長が話をされましたように、百二十万見当と、こういうことになるのですね。そういうことになると、焼失をした、倒壊をした、そういう家を建て直していくと、こういうことになれば、とてもいまの支払い額では、これは経済的にもそういう家を建てて住むというぐあいまでにはいかないのじゃないかと思いますが、この辺はどうですか。
  67. 上林英男

    政府委員上林英男君) 確かにそういう御議論はごもっともだと思います。ただ、申し上げておりまするように、この地震保険の発足の当初におきましては、いろいろなことを総合勘案いたしまして限度を設けざるを得なかったわけでございます。一方におきまして保険料率の問題もございまするし、またこれに耐えていくための担保力の問題もあるわけでございます。今度の保険金につきましては、これで全部復旧できるというよりも、むしろ復旧の糸口になるように、まあその最低限という程度のものにとどまっておるということもよくわかるわけでございまするけれども、まあ立ち上がり資金といたしましてはこの程度の資金があれば何とかやっていただけるのではないか、こういうような考え方をいたしておるわけでございます。
  68. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それで、法案の運用について若干お伺いしたいのですけれども、たとえば民間が百億ということになりますね。こういって、五百億まではそれぞれ政府と民間が分担で、民間が三百億と、こういうことになりますね。それで、二千七百億まで出資ができると、こういうことになるわけです。これに対してどうしても私たちは危惧の念を持つのは、民間が百億ということになれば、前に申し上げたように三千億の総資産しかないわけであります。そういう中で何とかしてこの運用というものをとどめていこうという意思が働くのじゃないかという心配がある。民間は民間で百億をこえない、そういう運用態勢というものが出てくるのじゃないか。したがって、災害補償という具体的な事実に当面をした場合に、一つ一つ認定調査をやっていくわけであります。そういうものについて百億限度内ならば、非常に緩和された運用がその中に出てきやしないか。しかし、百億をこえたりあるいは政府がまた出資をしなければならぬようなそういうことに遭遇した場合には、非常に査定、認定というものは強い押えつけ方をやってくるんじゃないか、こういう運用面について非常に心配をされるのですけれども、そういう点はどうですか。
  69. 上林英男

    政府委員上林英男君) この運用につきまして、査定を公正、的確にいたしますることが一番大切でございます。それにつきましては十分私どもも配慮をいたすつもりでおります。また、保険会社におきましても、いま申されましたような、自分の負担の部分はゆるやかにして、政府が再保険をいたしまするようなものについてはきつくというようなことはいたさないと私は考えております。  なお、地震が起きました場合におきましては、被害が非常に大きい場合に、この査定をいたしますことが非常に技術的にも困難な問題でございまするので、これに対処いたしまするために、私どもは一たん大きな被害が起こりましたときは、全損害保険会社の共同査定というようなことを考えて、それによりまして査定の統一化、円滑化をはかるというようなこと、あるいは査定の基準というようなものを合理的なものの作成をあらかじめしておきまして、そういうような準備も十分あらかじめ整えておきまして、一たん不幸にして災害が起こりましたときには、保険金支払いが十分円滑にこれを行なうように努力をいたしたいと考えております。
  70. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 災害の度合いに対する認定、査定ですね、これは何によってきめられるか。いまの法案の中には出てきていない。政令できめていくのか、約款できめていくのか、内規できめていくのか、この辺についてはどういうお考えをお持ちですか。
  71. 上林英男

    政府委員上林英男君) 住宅、家財等の損害の査定につきましては、もちろん地震は別といたしまして、火災その他いろいろな場合につきまして保険会社におきましては経験があるわけでございます。また、地震災害につきましても、ただいまと申しますよりは、過去におきましても相当研究をいたしておりまして、そういう査定基準などにつきましても、目下建築学者その他も入れまして相当の研究を進めておるわけでございます。これらを集大成いたしまして、統一的な査定基準というものをつくってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  72. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そういう内容の作業をやっておることはわかるのです。何によってきめていくかというのが私の質問です。  もう一つは、この法案自体の中に、二条二項四号で、保険金額については明確に「百分の三十に相当する額」ということを明らかにきめている。これは政令として入るような部分ではないかと思うわけでありますけれども、こういう一面では明確なうたい方をして、そしていまの認定、査定のそういう対象の問題はこれから検討の上、こういうことで明確になっていないということでは、どうもわれわれ理解できないのですが、その辺、はっきりしてくれませんか。
  73. 上林英男

    政府委員上林英男君) 付保限度につきましては、これは非常に基本的な問題でございまするので、法律で明示をいたしておるわけでございます。いまの査定の問題につきましては、これは本来この損害の査定につきましては、先ほども申し上げましたように、保険会社は各種の損害査定につきまして十分な経験を持っておるわけでございます。ただ、この法案の性格上、経済的全損というようなものも問題でございまするし、それから、地震によりまする被害というものが、火災の場合には比較的明瞭でございまするけれども、火災ではなく、柱が相当痛んで、外形的には曲ったにとどまっておるけれども、これを建てかえねばならない、どの程度柱が痛んでおれば建てかえねばならないかというようないろいろな問題があるわけでございます。そういう点につきましては、過去の経験に基づきまして、この程度に柱が痛んでおれば建てかえねばならないだろう、したがって全損と考えざるを得ない、そういうような点を、過去の経験を積み上げましていろいろと計算をし、統一的なそういう基準を——と申しまするのは、一たん起こりますと被害が各地に起こる。各地と申しますか、非常にたくさんの戸数がそういう被害を受けるという事態も予想されるわけでございまするので、できるだけ簡易に円滑に、かつ、統一的に査定ができる、そういう心がまえと申しますかも含めまして、そういう統一的な査定基準をつくっていきたい、こう考えているわけでございます。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕
  74. 藤田正明

    ○藤田正明君 関連。ただいまの戸田委員からの御質問で住宅課長お答えになりましたが、坪当たり五万円から九万円で住宅が建つというお話です。私はそうは思わない。坪当たり五万円の住宅はどんなものができるか、これは掘っ立て小屋でありバラックであろう。特に風水害時は、そういう災害地において建築基準の単価が高くなるのは当然だろうと思う。そういうときに五万円、六万円で家が建つわけがない。それで、百二十万円で家が建つなんということは、ちょっと私には理解できない。  それから、先ほど来の話から、わが国として今回の制度は初めてだろうと思うのです、地震保険は。ですから、完ぺきなものがここでできるとは思えない。どうせ漸次改善していくとかそういうことになるだろうと思うのでありますが、それであるならば、現在すでに松代においてああいうような危険状態がある。そうすると、この法案をなるたけ早く通して早くこれを施行する。たとえば今月中に通るならば、法案審議と並行的に保険会社その他といろいろ折衝なさって、五月一日からでも施行できるというふうなことはできないですか、暫定的にでも。これはいずれ改善していくのですから。それで、先ほどのお話ですと六月一日ですか、これを十五日でも二週間でも早めるということはできないのか。どうせ暫定的ならばそういうことが可能であるかどうか、保険部長にお答え願いたい。
  75. 上林英男

    政府委員上林英男君) 気持ちといたしましては、全くそのとおり考えておるわけでございます。ただ、これを、私どももただいまこの法案審議と並行しましていろいろの準備を進めておりまするし、保険会社におきましても、同様各般の準備を進めておるわけでございます。ただ、何ぶんにも法案が確定をいたしませんと、たとえば約款等につきましても、原稿などができてはおりますが、その印刷その他の手続も要るわけでございまするし、そういうものを並行して準備はいたしておりまするけれども法案の成立を見ました暁からスタートいたすというかっこうになりまするものでございまするので、若干の御猶予をいただきたいと申し上げておるわけでございますが、気持ちといたしましては、一日でも早くこれを実施したいと、こう考えておるわけでございます。
  76. 柴谷要

    柴谷要君 関連して。もう少し歯切れのいい答弁をしてもらいたい。それで、いまぼくらが耳打ちをしておるのは、この法律案は通そう、四月中に通そう。しかし、六月一日から実施なんというなまぬるいものじゃなくて、附帯決議として五月一日からでも松代に限って実施せい、こういう附帯決議をつけようとして考えておる。それをつけられた場合に、あなたはそれをやる意思があるかどうか。それにはいまから準備をしていかなければならぬ。これだけの法案を出したのだから、そのくらいの、附帯決議までつけられたらできるくらいの保険部長は手腕を持っていると思う。それができた場合には、松代に限っては五月一日に実施する、やりますと、こういうひとつ明確な答弁をしてみなさい。そうすれば、たいへん、大蔵委員会としては真剣になって四月中に解決してやりますよ。
  77. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ぼくからも一言申し上げたいのだが、これは予算関係法案だから三月三十一日までに上げてくださいと、そういう意気込みで大蔵省はおられたはずだし、いまでもおられるだろうと思う。いろいろな関係で、それは三月三十一日には成立しなかった。しかし、諸般の準備は四月一日からでも施行できるように、三月三十一日に法律が上がるという態勢であなた方はやっておられなければならぬ。だから、いま柴谷委員が言ったように、もう少し歯切れのいい——これはすぐ翌日からというわけにもいかぬだろうが、歯切れのいい答弁をひとつやってもらいたい。
  78. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御趣旨はほんとうにごもっともでございますので、できるだけ努力をいたしまして、早くやるようにいたしたいと思います。
  79. 柴谷要

    柴谷要君 保険部長気持ちはわかったけれども、次長のほう、局長、大臣になりかわって、あなた将来の大ものだから、ひとつあなたから明快に……。
  80. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 私は特別会計のほうでございますので、保険のほうとは関係がないのでございますが、将来の問題といたしまして、できるだけ早くやりたいということで実は私らも準備をしておったわけでございます。実行上の問題としてどういう障害があるかという点は、保険部長のほうでいろいろ御検討されておると思いますが、まあ四月中に通って五月一日にすぐと、こうおっしゃられますと、その辺の技術上の問題もございますので、なかなかお答えしにくいのではないかと思いますが、一日も早くということでやりたいと思います。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、岩尾君、特別会計のほう、これは毎会計年度あれですね、政府の再保険金の総額は国会の議決を必要とするわけですね。さしあたり二千七百億というわけですね。そうしますと、さっき保険部長からいろいろお話ありましたが、かりに関東大震災級の災害が起こった場合は、とうてい補償し切れないわけですね、とても実際問題は。だから、いろんな限度を設けて、実際にコマーシャルベースに乗せる程度にいろいろな制限条件をつけたのだけれども、そうすると、政府の再保険の金額を多くすればその補てんし得る範囲は拡大できるわけですよ。そうすると、それはやっぱり財政の関係、国力の関係、そういうものと関連してくるでしょう。それから、毎会計年度限度を一応きめるわけなんです。そうすると、これは固定したものじゃない、二千七百億は。そうでしょう。ですから、それをどういうふうに考えていくか、今後。
  82. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 特別会計におきます繰り入れの問題でございますが、結論的に申し上げますと、われわれも三千億というのは固定していくものであるとは考えておりません。  ただ、全体の保険の仕組みでございますが、いま国会で御承認をいただいております二千七百億という限度は、これは特別会計が支払います保険金の総額の限度でございます。そこで、再保険特別会計は、実際上は、ことしかりに、損害保険に入っておられる方が自動負担になりまして、地震保険加入するわけでございますが、加入いたしますと保険料が入ってまいります。そういたしますと、その再保険料が収入となってくるわけでございますが、かりに四十一年度に関東並みの損害が起きたと想定をいたしますと、まあ大体入ってくる保険料が十一、二億でございましょうか。そうすると足らない、こういう状況になるわけでございます。そういたしますと、まあそういうときには、たとえば借り入れ金をやりますとか、政府にもし一般会計に予備金があればその予備金を出すとか、そういうことをいたしまして、特別会計として再保険金の三千億を支払うということをやりたいと、こういうことになるわけでございます。  これがかりに今度はあと五十年ぐらいたちまして、そうして関東大震災のようなものが来たといたしますと、毎年毎年入っております再保険料というものがずっとたまってくるわけでございます。そのたまってきた金を取りくずせば払える、こういう状況になるわけでございます。  そうして今度は、三千億という限度自体が、とても払えないものになるんじゃないかというお話でございますが、これは先ほど保険部長から御説明いたしましたように、実際上関東大震災のような震災が起きた場合に、そういう震度のものが東京で起きたときの被害額は、これは実際に関東大震災が起きたときの被害額とは違うわけでございます。いろいろ補強的なものもございますし、建物もよくなっておりますし、被害額は違ってくる。それから、それに対して、さらにその被害の中で住宅と家財だけに限定してみていくと、また減ってまいります。それから、それに対してさらに今度は現在の損害保険を付保されておる方に自動負担されるわけでありますから、今度地震が入るなら損害保険に入ろうという方もおられますけれども、そういう状況考えて、保険にかかる方がどれくらいおるかということを考えると、そこでまた制限が加わる。そうしてさらにこれは、御質問がございましたように、一番大きな制限といたしましては、そういう住宅、家財の被害の際に、その限度は、住宅については九十万、家財については六十万しか払わないという限度があるわけでございます。これが問題で、これを野放しに、先ほどありましたように、住宅の被害があれば住宅については全部とか、あるいは家財については全部というふうになりますと、被害が大きくなるわけでございますが、そこに制限がございますので、また金額が減ってまいります。そういう状況で判断いたしますと、かりにことし関東大震災並みの震度のものが東京に起きましても、三千億あれば、二千億ぐらいの支払いで十分済むということでございます。
  83. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう少しお伺いしたいのですが、全損とあるのです。この全損の度合いをどこで一体認めるのか。そういう決定は何によってきめるのか。たとえば津波で流失してしまったとか、火災で全く焼失してしまった、そういう場合であれば一番わかる。もちろん震災であればそういうものも入るでしょう。柱一本残っておるとか、あるいは上だけちょっとこわれたけれども、下のほうは土台がしっかりしているとか、いろいろな条件が出てくると思うのですけれども、そういう全損の認定ですね、それと、そういうものをどこで一体きめられるのか、そういう面について教えていただきたい。
  84. 上林英男

    政府委員上林英男君) 全損と申しますのは、その保険の目的物が破損いたしました場合に、本来の種類のものでなくなる程度までに損害が生じた場合を申すわけでございます。しかし、今回の地震保険におきましては、その物理的全損のほか、経済的全損をもてん補いたすことになっております。その経済的全損と申しますのは、たとえていいますと、物理的には全損ではないけれども、修理費用が高くついて、たとえば損害額、その修理費用が、そのものの価値以上に及んでしまうとか、あるいはもう修理不可能であるとか、建て直さなければならない、こういうような場合には、すべて経済的全損として処理するということでございます。  この経済的全損の査定というものは、いろいろむずかしい問題があるわけでございますので、先ほども申しましたように、過去の経験等を積み重ねまして、いろいろな算定基準を目下作成をいたしておるわけでございます。たとえて申しますと、過去の例におきまして、十五坪程度の家の柱が約三十五本入っているようでありますが、そのうち五本の取りかえを要し、九本は補修を要するというような例があったようでございます。合わせまして十四本、約八〇%だけの柱が損壊しておる、そういうものにつきましては、もちろんそれに応じまして、基礎その他につきましても被害を受けております。これを、建築学者その他が集まりまして、修理費用がどのくらいかかるかということを計算いたしましたりいたしておりますけれども、その結果は、大体損害割合が八〇%程度の金が要るということでございますが、これは経済的全損として処理すべきであろう、こういうような結論が出ております。したがいまして、そういうような一々の過去の経験を積み重ねました結果、できるだけ統一的に、わかりやすい査定基準をつくってまいりたい、そういうような一つの勉強の過程といたしまして、いろいろこういうような写真もつくっておりまして、目で見ても大体全損かどうかというような算定にも資するというような準備をいたしておるわけでございます。
  85. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうすると、その認定についてはあくまでも基準というものを作成をして、それを土台にして今後の運用をはかる、こういうことですね。  それで、問題は家財の場合ですけれども、いろいろと種類あるんだろうと思うのですが、さっきもちょっと指摘したのですが、六十万というわずかなものなんですけれども、いまの家財の——いろいろと生活向上されているようなそういう状況の中で、主としてどういうものを家財のおもなるものとしてその対象にしていくのか、その辺をひとつお聞かせを願いたい。  それから、もう一つは、非常にこれは生命保険でもそうですけれども、あるいは火災保険でもそうなんですが、勧誘にきた人は家財なんか見ないで、もう額が何ぼになるから入れという、額だけでつっていくというやり方をやっているわけですね。そういう場合に、六十万ですから、非常に今後の推奨ないし拡大のために苦労するのじゃないかと思うのです。そういう点についてはどういう今後の指導方法というものを持っておられるか、その辺について少し聞かしてもらいたい。
  86. 上林英男

    政府委員上林英男君) この地震法案におきましては、家財ということばでなく、生活用動産ということばを用いておりますが、中身は同じでございます。この生活用動産というのは所得税法の規定にもあるわけでございます。実際の中身は、生活の用に供する家具、什器、衣服その他、生活に通常必要な動産でございまして、ただし貴金属、骨とう、書画というようなものは、一組みまたは一個の価格が五万円をこえるものについてはこれを除くことにいたしておりますが、大体これと同じような運営をいたしていくつもりでございます。  なお、保険をとりますときに評価財一式というようなやり方をしておるという問題でございまするけれども、契約をとりますときに、契約者の方がこまかい家財の中身をおっしゃるのをなかなか渋っておられるというような場合もあるわけでございまするけれども、なるべくそういう問題につきましては、後日トラブルが起こらないように私どもも十分監督をし、指導してまいりたいと思っております。
  87. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 七十二時間というのがあるんですがね、この根拠を簡単にお知らせいただきたいということが一つ。  それから、総合保険は企業財産まで拡大していると思うのですけれども、これは将来そういうものまで拡大する意思があるのかどうか、この辺についてお知らせいただきたい。
  88. 上林英男

    政府委員上林英男君) この法案におきましては、非常に大災害が起こりましたときに国が再保するというようなことにもなっておりまするので、国庫債務負担行為との関係その他から申しまして、負担限度額をきめていくという必要があるわけでございます。したがいまして、一回の地震というものをどこで区切るかということをきめざるを得ないわけでございまするが、その一回の地震につきましては、一回の地震というものが学問的にどこで切れるのか、要するに余震というものがどこまでであるかという点につきましては、地震学者の間でもなかなか定説がないわけでございます。しかし、地震学者の御意見を伺いますと、大体七十二時間以内に余震がおさまっておるのが多くの通例の場合である、もちろんこれをこえる場合もございますという御説がありましたことと、それから外国におきましても、アメリカ、カナダ、メキシコ等におきましても、これは約款上七十二時間以内に起こった一回以上の地震は一回の地震とするというようなことが規定されております。このような観点から、一回の地震をどこで切るかということにつきましては、七十二時間以内に起こった地震を一回の地震考えてこの法律適用していくというふうにいたしておるわけでございます。
  89. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 拡大のほうはどうですか、企業関係の財産……。
  90. 上林英男

    政府委員上林英男君) 企業物件については、現在でも若干のものにつきまして、火災保険の特約といたしまして地震までその担保範囲を拡張をいたしておるものがございます。現在の残高で約二千億円程度保険金額でございまするが、しかし、その大部分、九〇%はロンドンに再保険に出しておるわけでございます。もっとも、このロンドンの再保市場自体も、日本の地震保険損害率が高いということで、なかなか円滑に消化をされないという状況でございます。しかし、いずれにいたしましても、企業物件につきましては、ただいま一般の保険会社におきまして、いま申し上げましたように、部分的に担保をしておる例があるわけでございます。  なお、この地震保険法案につきましては、先ほどから申しておりまするように、まず国民の生活安定に資する、こういう意味で、住宅、家財に限っておるわけでございまするが、企業物件にこれを及ぼしていくということになりますと、これは一たん起こりました損害の額の集積がきわめて大きくなるわけでございまするので、また、企業の場合におきましては、いま申しましたような百五十万というような金額では企業の再建にあまり役に立たないというような状態にもなるわけでございまするので、この点につきましては、なかなかむずかしい将来の問題ではあろうかと考えておるわけでございます。
  91. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 次長にちょっとお伺いをいたしますけれども、積み立て金の運用ということになると総体的な問題になりますので、これもしょっちゅう地震があるわけじゃない、そういう事態は必ず出てくるのですね。そういう場合に、当然資金運用部に積み立てられる、それを流用するという形になると思うのですけれども、でき得れば、希望としてわれわれは、そういう資金運用をやる場合に、民主化というか、もう少し具体的に実は考えていただきたいと思うのですけれども、その辺に対する何かお考えがあるかどうか。  それから、もう一つは、大蔵委員会の調査室で発行した資料の中に、損害保険会社の配当のあれがあるわけですね。「利息配当収入」、これがあるわけでありますが、二百六十三億幾らですか、この配当があるわけですがね。こういういわば相互会社のもうけがどんどん出ていって、利子、配当まで持っていくという事態があるわけです。必ずこういった事態が、将来地震回数が少なければ当然そういう事態もあるいは出てくるのじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、この辺に対する一つの考え方、この辺ひとつお答えいただきたいと思います。
  92. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 特別会計におきます再保険料の運用の問題と、あと実際上保険会社がいろいろこの保険によりましてもうけが出てくるのではないかという御質問でございますが、後段のほうは詳しくは保険部長のほうからお話をしていただきたいと思いますが、前段の積み立て金の問題でございますが、これは先生も御指摘いただきましたように、毎年毎年再保険料が特別会計に入ってまいります。その再保険料のうち、実際地震が起きなかった場合には、その部分が全部繰り越されていくわけでございます。これをその後の震災のための、地震のための一種の危険準備金のような形でずっと積み立てていくわけでございます。これは資金運用部に預けるということになっております。そこで、資金運用部へ預けた金がどういうふうに運用されるかということでございますが、これは先生も御承知の財政投融資の金といたしまして、全般の政府の資金に充てられるわけでございます。  で、いまもお話がございました民主化ということで、たとえば厚生年金とか、あるいは国民年金とか、あるいは健康保険の金であるとか、そういうようなものはそういうところへ還元すべきではないかという御主張があるかと思いますが、この地震についてはそういう意味でだれに還元するかというと、やはり自動付帯をされました全体の国民の方に還元をさるべきものでございますので、そういう意味合いで、国全体から見た財政投融資に運用していくということで私は十分民主化の役割りが果たせているのではないかと、かように考えております。  それから、後段のほうは、これは各保険会社におきましても、地震保険によって入ってまいりました保険料は全部危険準備金として積み立てていくという形をとっておりますので、この保険によってもうけるということにはならないと思います。  なお、詳しくは保険部長のほうからお答えいたします。
  93. 上林英男

    政府委員上林英男君) 岩尾政府委員からお話がありましたように、この保険の性格にもかんがみまして、また、この保険は御存じのとおり百年、何百年というような長い周期の話でございます。したがいまして、準備率につきまする収支差額は全部異常危険準備金として積み立てる。これも無税で積み立てるという道を今回の税法改正で改正をいたしておりますが、そういうことにいたしております。また、法律にも、この料率につきましては適正な合理的な金で、かつ、できるだけ低い額を定める、こういうことになっております。これによって利益を期待するということは考えておらないわけでございます。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連。あれですか、ほかの損害保険みたいに、もうかった場合には割り戻しで保険料を下げるでしょう。配当というか、ああいうことはやらないわけですね、この保険に限っては。
  95. 上林英男

    政府委員上林英男君) まず、契約者配当のウエートが高うございますのは生命保険の場合でございます。損害保険の場合におきましては、御存じのように二社が相互会社でございまして、若干の配当をいたしております。これは一%程度であったかと思っておりますが、大部分が株式会社でございまして、損害保険会社の場合、十八社が株式会社でございます。本件につきましては、先ほどから申し上げておりますように、非常に長い期間にわたりまして損害率が確定してまいる。地震というものの特質から申しまして、ない年には全然地震被害がない。そのかわり、一たん起こりますと、一回の地震で関東震災が起こる。また、ある年によりましては、一年の間に四回、五回破壊的地震が起こったこともございます。この統計的確率というものが全く、何といいますか、保険的な統計に乗らないというところに地震保険のむずかしさがあるわけでございまして、そういう意味におきまして、短期的に勝負のできない問題でございますので、先ほど申し上げましたように準備率につきます収支差額というものは、長い間積み立て、将来の準備金に積んでおくと、こういう方針でやるつもりでございますので、いまのような契約者配当というような問題は起こらないというかっこうになるわけでございますが、それは長い期間を見まして、もちろん、われわれが考えますと、四百六十七年間のような確率以下の地震ということになってまいりますと、これは保険料率も高まってまいるわけでございまして、そういう場合におきまする措置といたしましては、ただいまからいろいろ議論になっておりますような諸制限、不十分な点の改善なり、あるいは保険ができますれば、保険料率の低下なり、そういうようなことで内容の改善をはかっていきたい、こう考えております。
  96. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最後に、保険料率の問題ですが、これは結局千分の四ということになるわけですね。一円割り高ということになるわけですか。いまの総合保険の場合は、千円当たり三円ですか、これに対して一円高ということになるのですね。いま言ったように、何といいますか、地震がなくて金がだんだんたまってきて、それを本来ならば、何といいますか、還元するといいますか、そういう一つの方法を考えていく場合に、掛け金率を下げていくという、そういうことは将来考えているのかどうか。現状ですね、これはしかし、一定の率でそのまま押し通す、あるいは経済変動によっては上げていくという、こういう変動によってどういうふうに考えておられるか、それをひとつお伺いしておきたいと思います。私の計算でいきますと、大体三百万円の場合ですと、百万に対して九百円ぐらいの掛け金になりますね。総体、年間四千円か、そのぐらいになると思いますが、当然震災がないということになれば、それだけ積み立てになっていくわけですから、資金は潤沢になっていくわけですけれども、そういう場合に、一体掛け金率について再検討されるのか、もしもそういう変動があってよくなっていったような場合に、考慮されるのかどうか、その辺ひとつお伺いしたいと思います。
  97. 上林英男

    政府委員上林英男君) この地震保険料率は、大体主たる契約の千円につきまして大体一円程度考えております。いま御指摘がありましたように、総合保険の住宅の全国の平均率は三円二十四銭でございますが、したがいまして、今回この地震保険が自動付帯になりますと、約一円程度上がる、こういうことになるわけでございます。なお、保険料率の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、何ぶんにも長い期間の収支を見なければならないと思いますので、被害が予想よりも少ないということがはっきりしてまいりました場合には、もちろん、先ほども申しましたように、不十分な点を改めるなり、あるいは場合によりましては保険料率を下げる、そういうような内容の改善には十分努力いたしたいと、こう考えているわけでございます。
  98. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いろいろと疑問な点はありますが、初めてのケースですから、保険部長のほうとしてもたいへんでありましょうけれども、いまいろいろと質問した内容等について、取り入れるところは十分勘案していただきまして、運用の妙というものを発揮していただきたいと思いますし、各先生方の出されましたように、現在起きている松代地震等については、これが実施の運びになれば、やはり遡及実施をしていくとか、とにかくそういう面については十分検討の上に立って運用をはかっていただきたい、このことを要望して終わります。
  99. 須藤五郎

    須藤五郎君 社会党の同僚諸君が相当質問しましたから、私はできるだけ簡潔に質問をしたいと思います。  この間、参考人を呼んだわけです。そのときに来たのは、保険審議会のメンバーが三人見えました。河野さんと鈴木さんと高木さんと。私はそのとき鈴木教授にこういう質問をしたのです。この保険を見まして、二法を見て、あなたはこれで完全なものと思うかどうだといって質問したら、完全なものとは思えないというわけですね。まだ不備な点がたくさんあるように思う、しかし、やむを得ないというところでこういう答申をしました、こういうことであったのですが、それで、政府当局の考え方、まず基本的な問題、それを伺っておきたいと思います。
  100. 上林英男

    政府委員上林英男君) この制度全体として、まだもの足りない点が多々あるということは、私どもも十分感じているところでございます。しかし、何ぶんにも地震保険という制度は初めての制度でもございまするし、また、それに一たん起こりました被害の救済という面を完ぺきにいたすということになりますと、ただいまの財政力なり損保会社の負担力なり、それを改善すればするだけ、保険料率も高くなるわけでございますので、そういうような面も勘案いたしまして、まず、発足の当初といたしましてはこの程度の案が最もやむを得ない現状におきましては最善の案ではなかろうかと、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、将来経験を積みまして、また各般の担保力がふえるに従いまして、これを十分改善をしていく、そういう努力を傾けていきたい、こう考えておるわけでございます。     —————————————
  101. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 委員の異動について報告いたします。  本日、野溝勝君が委員を辞任され、その補欠として秋山長造君が選任されました。     —————————————
  102. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、保険審議会のメンバーも完全なものと思っていない。政府当局も完全なものと思っていない。政府当局が完全でないと思う点を少し述べてもらいたい。
  103. 上林英男

    政府委員上林英男君) 先ほどから皆さまからかなり手きびしい御質問を受けたわけでありますが、その中にいろいろ問題点があったかと思っております。たとえて申しますと、付保割合の限度の問題、てん補範囲の問題、そういうようないろいろな点にありまするように、地震被害が起きましたときに、その救済を十分完全に果たしていく、こういう観点になりますと、確かにいろいろな問題があろうかと思います。しかし、その点につきましては、できるだけそういう方向に近づく努力はすべきであろうと思いますが、一方におきまして、いろいろなまた諸情勢によりまする制約も考えざるを得ないというのが現状ではなかろうかと思うわけでございます。そういうような意味におきまして、そういう諸情勢を勘案しながら、被害者を、一たん被害が起こりました場合に、そういう被害ができるだけ理想的に救済ができるように努力を傾けたい、こういうことでございます。
  104. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府は、具体的にここが不備だ、ここが不完全だということを、実はもう今日すでにつかんでいるというわけなんですね。つかんでいるなら、具体的にそういう問題が出ているならば、なぜそこを完全にしようとして努力しないか。その不完全のしわ寄せはだれが受けるかというと、被保険者です。被保険者が政府の不完全だと思っている案のために被害を受けるというのは、これはおかしい。それも具体的にわかっていなければいいけれども、あなたのいまの答弁では、具体的にこことここが不完全だともうわかっている。それなら、なぜその不完全さを完全なものにしようとしないのか。
  105. 上林英男

    政府委員上林英男君) 現在において不完全かどうかという問題があろうかと思います。これはいろいろな観点からきめてまいらなければならない問題であろうと思います。たとえば付保限度の三〇%を一〇〇%にしようということになりますと、それだけ保険料も高くなってくるわけでございます。また、ただいまの方向といたしましては、できるだけ保険集団を大きくいたしまして、大ぜいの方々の一種の助け合いと申しますか、そういうようなかっこうで保険集団を安定させることによって保険料率も安定をさせたいというようなかっこうになっておるわけでございます。かりに、これをそうでない全く単独の地震保険をつくれということになりますと、おのずから保険料率自体も高くなってまいるということでございます。もっとも、地震学者の意見では、全く地震が起こらないという地域は日本国土の中にもほとんどないということでございます。しかし、もし単独の地震保険をつくるということになりますと、外国の例にもありまするように、事故率の高騰と保険料率の高騰が悪循環を起こすというような場合もなきにしもあらずでございます。そういうようないろいろな観点を考えますと、一方をよくすれば一方にまた負担がかかってくる、そういういろいろの状況がございまするので、現在の状況におきましては、確かに理想の姿としてはこれはいろいろ問題もあろうかと思いますけれども、現在の時点におきましては、この程度の案が、完全であるとは言いがたいまでも、最善と申しますか、やむを得ない案である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは、やっぱし政府の心がまえからそういうことになってくると思うのですよ。この地震のようなこんな不慮の災害を、人民の、いわゆる被保険者の力によってこれを処理しようというものの考え方からそういうことが出てくるのです。ぼくら、こういう不慮の大災害に対しては、もっと国家が補償すべきものだと思うのですよ。その腹がまえができれば、もっと完全なものになると思うのですよ。ところが、それが完全なものにならない原因は何かというと、やっぱし政府の心がまえにあると思うのですよ。政府の負担を少なくし、そして被災者の負担によってこういうことをやっていこうという、そういう、ぼくらと考え方が非常に根本的な違いがあると思う。そこからこうした問題が起こってくると思う。だから、あなたたちはやむを得ないというようなことばでこれをやっていこうとするが、やむを得ないというようなそんな中途はんぽなようなことより、もっともっと人民の立場に立って、どうしたら国民が迷惑をしないで済むか、そういうときにはどう政府はすべきかという、もう少しぼくは積極的な考え方に立ってもらいたいと思うのです。この間、鈴木教授もやむを得ないと、こういうことばも使いました。私もそのとき同じようなことを言ったのですが、そういうことばかり長くやっていると時間がなくなるから、私は次に進みます。  先ほども物理的全損、経済的全損という問題が起こりましたね。それで、物理的全損の定義、経済的全損の定義というものが示されていないのです。まず、その定義から伺いたい。
  107. 上林英男

    政府委員上林英男君) 先ほども申し上げましたように、経済的全損と申しまするのは、たとえて申しますと、修理費用が高くつくような損害、あるいは修理不可能なような損害が生じまして、経済的にはその使用価値というようなものがなくなったと、こういうように認められる場合を経済的全損というわけであります。
  108. 須藤五郎

    須藤五郎君 物理的全損というのは、全部倒壊して、柱一本も残らぬように倒壊してしまったのは物理的全損という、そういうことですか。
  109. 上林英男

    政府委員上林英男君) 御質問の場合はもちろん全損でございますし、柱が一本残りましても、本来の家という形態をとどめないようになってまいりますと、これは物理的全損でございます。
  110. 須藤五郎

    須藤五郎君 この間も、参考人との間にもこれが問題になったのですが、要するに新潟地震でアパートがひっかたいだ。これは形はそのまま残っておるけれども、このアパートそのものは使いものにならぬ。だから、こわして建てかえなければならぬ。これは経済的全損、こういうことですね。ところが、日本の家屋というものはわりと木造が多いのですね。それで、ひん曲がったりなんかするのが多いので、ぺしゃんこになったりするのは比較的少ないのです。東京の大地震でも、ぺしゃんこになったものはないわけです。みんな火災で焼えちゃったということになるわけですね。そうすると、物理的全損という問題に当てはまらないし、経済的全損にも当てはまらぬ場合が多いのですね。それを一体認定するのはだれかということになったのです。そうしたら、鈴木教授の言うのには、それはなかなかむずかしい問題ですと、認定の場合。普通の火災保険でも、かけるときはうまいことを言ってかけさしておいて、加入さしておいて、さあ火事になったというと、とやかく言ってなかなか全額払おうとしないわけですね。そうすると、地震の場合は火災のときよりもよけいむずかしい場合が実際的に起こってくるわけですね。だから、この際、全損とはどういうものか。ただ、物理的全損、経済的全損ということばを使われて、どういう程度が全損なのかということが少しも示されていないわけです。そうすると、おそらく将来問題が起こったときに保険会社と被保険者の間に問題が起こるだろう。そういう場合、裁判所がきめる以外には道はありませんと、鈴木教授はこう言っているわけです。これは問題だと思うのですよ。こんなこと一々、地震が起こったときに住む家がなくなった場合、裁判所に持ち込んで裁判所決定を仰がなければ金がもらえない、裁判なんか何カ月かかるかわからない、それじゃたまったものじゃないと思います。やはりこういうばくとしたことばを使わないで、やはりぼくは全損というものはこういうものだ、経済的全損というのはこういうものだということをやはりこの法文の中に明記しておく必要があると思うのですね。  それで、ここへきょうはぼくは建設省の人にも来てもらっているんです。建設省の住宅金融公庫法では全損ということばは使ってありませんよ。滅失ということばを使っていると思うのです。滅失という中には二つあるようにぼくは聞いているんです。滅失とは、当該家屋の被害額が原則として当該家屋の罹災直前における価額の二分の一以上である場合をいい、家屋の損傷とは当該家屋の被害額が原則として当該家屋の罹災直前における価額の五分の一以上二分の一未満である場合をいう、こういうことが建設省の建設省住発第一〇三号、それに出ております。建設省の住発の第六四号の一の住宅局長の通達として、滅失とは損害のことだ、それから滅失とは全壊、全流失、全焼のことである、こういうことになっておりますね。それから、損傷とは半壊、半流失、半焼のことである、その他は上欄の比率が二〇%未満のもの、こういうふうになっております。それから、もう一つ、災害救助法の場合を見ますると、災害救助法の第二十三条の「救助の種類は、左のとおりとする。」という条項の第六の「災害にかかった住宅の応急修理」という条項があるわけです。災害救助法では、損壊は家屋の七割がこわれた場合、こういうふうになっておるわけです。こういうふうに建設省関係は、こういうものについてこういうふうに具体的に示めされているわけです。  ところが、この地震保険法には、全損といい、物理的全損、経済的全損というようなこんなあやふやなことばだけで発表されて、何も具体的に示めされていないんですよ、かけるものは迷いますよ。わからないですよ。そうして参考人に、審議会でこれは問題にならなかったのかと言ったんです。そうしたら、ならないというんですね。それじゃあなた方どういうふうに理解するんだというと、裁判所が決定しますと。それは無責任じゃないかと鈴木さんにぼくは言ったんですよ。おかしいじゃないか。それで、建設省なんかの判断と大蔵省の判断、どうなんですか。そこら一ぺん建設省の意見を聞いておきたいと思うんです。建設省というのは全損というのはどういうふうに理解するんですか。
  111. 後藤典夫

    説明員(後藤典夫君) 建設省では、いろいろこういった全壊、半壊という定義を一応きめております。ただ、それはそれぞれの目的によっていろいろのきめ方をしておるわけでございますが、基本的には大体同じ考えでございまして、須藤委員がおっしゃいましたような全壊、全流失というふうなものは、主要構造部が五〇%以上の被害を受けたもの、こういうふうな考え方、それから半壊、半流失と申しますのは二〇%から五〇%までの被害を受けたものという考え方でいたしております。ただ、これは建築物の動態統計調査の場合とか、住宅金融公庫あるいは災害公営住宅を建設する場合のいろいろの認定の基準でございまして、これは保険の場合はどういうふうになるものか、その辺は私どもは関知しておらない、よくわからないところでございますが、建設省としてはそういうふうないま基準になっております。
  112. 須藤五郎

    須藤五郎君 建設省の意見はああいう意見ですね。そうすると、大蔵省の意見は、保険に関して全損というのは建設省と同じ意見なんですか、違う意見なんですか。
  113. 上林英男

    政府委員上林英男君) 私、建設省のほうをよく存じませんが……。
  114. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほどから私が言うているじゃないか。
  115. 上林英男

    政府委員上林英男君) おそらくいまのあれは統計その他の目的のための分類ではないかと思いますが、保険会社の場合におきましては、すでに先ほども申しましたように、各般の保険契約におきまして、全損ということばによりまして、これは文字どおり、物理的にその本来の目的の形体をとどめなくなった、こういうものをさしておって、いろいろな保険におきましても運用されているわけでございます。こういう過去何十年間にわたります保険の運用として運営をしてきているものでございます。さらに、経済的全損と申しますのを、今回の地震保険契約の特質にかんがみまして、そこまで含めたわけでございますが、この経済的全損と申しますのは、物理的に全く形体をとどめなくなった、過去の形体をとどめなくなったばかりでなくして、先生が先ほど御指摘ございましたように、家が傾いてしまって、もう家としての役をなさない、かりにこれが家としての役をなさしめるためには建てかえなければならない、そういうような場合、あるいは修復する費用が本来の形よりも高い、こういうような場合には、物理的全損でなくても、経済的の全損である、こういうふうに考えまして、全損としての扱いをしていく、こういうわけでございます。
  116. 須藤五郎

    須藤五郎君 くどいようですけれどもね、ここはこの法案の一番私は不備な点であって、問題が一番起こる点だし、いざというときには、コンクリート建てのようなああいう建物ならわりとはっきりすると思うんですが、木造は全損か半壊かという認定は非常にむずかしいですよ。ぺちゃんこにならないんです。ひん曲がっているんです。住むのには家がひん曲がっておっては住めないわけです。それをやはり倒して、建てかえるにしても一ぺん倒さなければならない。倒すのに金がかかっちゃう。思い切りやってしまえば簡単だけれども、そうでない場合は、これは一ぺんまた建て直さなくちゃならない。そうすると、全損の場合よりも高くつく場合が起こってくる。しかし、そうなると、保険会社のほうの認定は、これは全損じゃないという認定をすると思うんです。必ずするんですよ。そうすると、裁判ということになってくるわけですね。そうすればいろいろ事がめんどうになって、なかなか金がもらえない、急場の間に合わぬというようなことになってきて、非常に困るということが起こってくる。これは将来必ず起こる問題だと思うんですよ。ここは明らかにしておかなければいかぬと思うんですよ。だから、そういう審議会の鈴木君すらはっきりしないんですね、そこが。裁判所の認定を仰ぐ以外に道はありませんというようなことを言っている。  もう一つ、希望条項として、分損でも、全損の幅を広げて、見た目では分損であっても、それは倒してしまって建てなくちゃならぬというような場合は全損というように理解するようにつとめたい——つとめたいと言ったか何と言ったか、そういうふうに扱いたいということを言っているんですよ。しかし、それはあなたはそう言うけれども、あなたが責任を持つわけじゃない、それは鈴木個人の意見じゃないか、なぜもっと法案を完備した法案にして、将来そういうトラブルが起こらないような法案になぜしておかぬか、そこが一番問題じゃないかと私は言ったんです。  あなたたちも、おそらく不備という点は認めるだろうと思うんです。そうでしょう。審議会のメンバーだって、不備だといって認めているんですよ。あなたたちだって、不備な点があると思っているんでしょう。それならば、なぜ将来そういう問題が起こらぬようにきちんとしておかぬかということです。建設省ですらちゃんとあれだけの見解を持ってるんです。全壊とはこうこうだ、半壊とはこうこうだということを言ってるんですよ。だから、少なくともこの保険法の中にはそういう定義を明らかにしておく必要があるんじゃないですか、どうですか。日本家屋は特にやっかいですよ。
  117. 上林英男

    政府委員上林英男君) 繰り返して申し上げることになるかと思いますけれども、全損の運用につきましては、過去におきまして保険会社におきましても十分経験を積んできておるわけでございます。今回の地震保険につきましても、御指摘のような問題が起こって不円滑な実施になっては困ると、こう考えておりますので、先ほどから申し上げておりますように、私どもは、目下この経済的全損というものにつきましては、建築学者等もまじえまして、過去の実例等からいろいろな基準を引っぱり出しまして、統一基準によりにくいことが起こりました場合には、またおそらく各保険会社も共同査定体制に入らざるを得ないと思います。そういう配慮を十分いたしまして円滑に処理ができるように準備を進めておるわけでございます。
  118. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) ただいま全損についての御質問がございましたが、たとえば建設省でお話しになりましたような住宅金融公庫の融資についての判断の問題、あるいは先生御指摘の救助法におきます全壊の規定の問題、こういうものはそれぞれ、先ほどお話もありましたように、融資の場合の限度、どれくらいを貸していくかということをきめるために、そのときには、全壊はこれぐらい、半壊はこれぐらいというふうに、ほかのものとの関係もございますので、規定をいたしておるわけでございます。それから、災害救助法のほうも、これは全壊戸数が幾らで、半壊戸数が幾らでというようなことで、全体の被害額を算定する資料に使うために、その場合に七割以下は今度は半壊になるんだということを言うために書いておるわけでございます。  そこで、いまお話のありましたような今回の法律について、全損だけを被害対象にする、こういたしまして、分損は全然見ておりません、対象に。そこで、分損を全然見ないということは、これは問題になるかと思いますけれども、全損自体について判定が困るんではないかというお話に対しましては、おことばを返すようでございますけれども、従来の住宅金融公庫なりあるいは災害救助法のように、ほかのいろいろな分損なり何なりと比べて全損をどういうように見るかという意味の——全損じゃなくて、全損しか見ないということでやっているものについては、むしろ解釈としては非常に広い目に見られていく、分損はないわけでございますから。そういう意味で、特に経済的全損を見るということは、先ほどお話のございました使いものにならないというものは、これは全部見るということでございます。そういう意味で判定をしていただければ、判定は非常にはっきりする。むしろ、私らは分損については、先生御指摘のように、これはどれぐらいの分損であろうというのはなかなか判定しにくいと、そういう意味でこれは除きましょうと。しかし、全損なら非常にはっきりしているから、これは全損ということでいこうじゃないかということで判定をいたしましたので、そういう意味合いで、もちろん神さまではございませんから、あるいは微妙な点でむずかしい点ができるかもわかりませんけれども、全体といたしましてはむしろはっきりしておるんではないかと、こういうふうに解釈をいたしております。
  119. 須藤五郎

    須藤五郎君 将来のために念を押しますが、そうすると、何ですか、日本の木造家屋が地震にあって、壁が落ち、屋根がわらが落ち、それで家が傾く、柱は残っておると、しかしかたいでおると、しかし住むにたえないと、こういう具体的な場合ですね、これは住むにたえないから全損と認めて保険金払うと、こういうことですか。
  120. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 住居として使いものにならない場合には、経済的全損として適用されるわけでございます。
  121. 須藤五郎

    須藤五郎君 それをもう一ぺん解きほぐして、そうしてもう一ぺん建てかえる、壁も塗りかえ、屋根もふきかえて、柱もこわれたところは直す、しかし、それは一部分の柱を使うことはできると。そうすれば全損でなく分損になるのか。そういう場合でも相当金がかかる、このごろ。屋根をおろして何かすると、建てかえるよりも金がかかるぐらいなんです。片ずけるのに金がかかる。その場合は全損と認めるのか。ここらをはっきりしておかぬといけない点なんですよ。だから、ぼくはくどく言うわけで、責任のある答弁をしておいてほしいんです。  それと、もう一つ、分損にはなぜ保険適用しないのかということ。分損のほうが金がかかる場合が多いんです、実際はいま申しましたように。みなぺちゃんこになって焼けてしまえば一番簡単で、また新しいのをつくるんですが、ところが、かたいだりしているのを分損という判断になると、分損の認定のいかんに関係してくる問題ですけれども、そうすると、それを直してやる、そのときは、分損だから一文ももらえないということになると、これは困っちゃうわけです。分損はなぜこれを扱わないか、そういうこと。二つの点をはっきりしてください。
  122. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 先生お話しいただきました例、これはなかなか実際にそういうのを見ませんと、こうだというふうには返事はできないわけでございますが、気持ちは、先ほど申しましたとおり、使いものにならないというのは全部全損に見るということで法案をつくっておるわけでございます。  それから、分損を見ないという理由は、これも先ほど来お話しいたしましたように、分損というのは実際上の査定が非常に困難である、なかなかわかりにくい。そういう意味合いで、とにかくすべり出していこうという保険に採用するには、そういった査定問題としてむずかしいんじゃないかということで除いたということと、先生のおっしゃいますように、中には分損のほうが損害の大きいものもございますけれども、大半は分損のほうが損害が非常に小さい、そういう意味合いから、小損害不担保という主義からこれを除くということにしたわけでございます。
  123. 須藤五郎

    須藤五郎君 分損を認めないと、これはおかしな話だけれども、ひん曲がってしまう、これを建てるのには金がかかる、いっそのことひっくり返してしまえというので、柱へ縄をつけて引き倒すことが起こってきますよ。それで全損にするんですよ、それでないと保険金もらえないから。そういうことが起こりますよ。それから、まる焼けにならなければ、半焼けではもらえない、むしろまる焼けにしてしまえと火をつけて燃やす人が出てくるかもわからぬ。そういうことはあり得ることです。あり得ることをぼくは想定して質問している。ぼくがやるというわけではない。ぼくがやるわけじゃないけれども、そういうことだって、やっぱり世間にはなかなか知恵者がおりますから、起こり得ることも考えておく必要があるんですよ。だから、むしろ分損は分損として、せっかく建設省で、全壊とはこうだ、半壊とはこうだという規定までやっているんだから、やはり全壊に対してはこうこう、半壊に対してはこうこう、そういう分損に対する補償をやはりつくったほうがぼくはよくはないかということなんです、ぼくの考え方は。あなたたちは大体、どうして分損を入れないんです、この中に。
  124. 上林英男

    政府委員上林英男君) 分損をてん補しないということにいたしました理由は、主計局次長からもお話がありましたように、分損の損壊の査定が技術的にきわめて困難であるという問題もございます。ことに過去の例、経験によりますると、地震の起こった後にある損害といいますか、雨漏りがあったということで、その損害は過去の地震損害であったとかなかったとかいうような争いもあったように聞いておるわけでございます。一時にたくさん査定をしなければなりませんときに、そういう実務上の観点から、分損ということを含めるというのは非常にむずかしいというような議論も保険審議会ではあったわけでございます。そのほかに分損をてん補いたしますということになりますと、保険料率も高くなるというようなこと、あるいはいま申しましたような付保限度をつくっております観点から申しまして、あまりに小さな金額を担保するということも、小損害不担保というような観点から、いたずらに事務費のみがかかって、かえって不円滑になるんではなかろうかというような問題もございました。いろいろ問題がございまして、当面この地震保険を発足いたしますにつきましては、当面住む家がなくなってしまった方々の救済というところに焦点をしぼってやったほうがよかろうという結論になったわけでございます。  お説の点につきましては、もちろんこれをできるだけ、今後の状況の推移に応じまして、完全なものにしていくという意味合いからいきましても、将来の一つの大きな研究の課題である。改善の方向といたしまして、分損てん補というようなことにつきましても、十分今後改善の努力を傾けていきたい、こういうふうには考えておりますけれども、発足の当初におきましては、いま申しましたような理由から、てん補の範囲を限らざるを得なかったというふうに御了承いただきたいと思うわけでございます。
  125. 須藤五郎

    須藤五郎君 建設省は、今度のこの地震保険における全損という条項に対して建設省としての見解はどうなのか。この法案をつくる前に建設省は意見を求められたのかどうか。
  126. 後藤典夫

    説明員(後藤典夫君) この法案をつくる前には、正式な意見を求められてはおりません。  それからなお、ふえんいたしますが、建設省では一応基準をきめておりますのは、それぞれ統計の目的なり、住宅金融公庫融資の、新築融資なりあるいは改築、修繕融資なりの区分の目的のためにやっておるものでございまして、ここで正式な建設省としての意見を求められましても、ちょっと御返事できかねますが、私個人の意見でございますと、一つの事業として考えました場合に、たとえば公営住宅などが被害を受けました場合に、これを修理するのがよいか建て直すのがよいかという判断をいたします場合には、やはり経済的全損というふうな観念を入れまして、これを修理いたしますと新築と同じような金がかかるというふうな場合には、これを公営住宅の被害を受けましたものを滅失として建て直すというふうなやり方をやっておりますので、そういった経済的全損という観念が入りましたことは非常によろしいことではないかと考える次第でございます。
  127. 須藤五郎

    須藤五郎君 大蔵省、こういう法案をつくるとき、何で建設省の意見を聞かなかったのですか。建設省などの意見を聞く必要がないという見解ですか。
  128. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) この保険の設定にあたりまして、過去の保険経験者の知識を十分に求めたのは確かでございます。過去の保険経験者と申しますのは、現実には、建築の工学博士、建築の専門家もおります。また、常に建設省とは連絡をいたしております。ただ、大蔵省といたしまして、正式に、この保険の仕組みをつくるに際して、これでよろしいであろうかというようなことは聞きはいたしませんでした。現在の状態では、いろいろ先ほどから答弁いたしましたように、分損をてん補するということにつきましては、いろいろな問題が多過ぎて不可能である、こういうふうに考えます。
  129. 須藤五郎

    須藤五郎君 やはりぼくらとしては、こういう将来問題の起こりがちな問題を決定する場合には、やはり関係当局とよく打ち合わして万全を期するという、そういうことであってほしいと思うのですよ。大蔵省はこう考える、建設省はこう考える、建設省の全損はこういう形だし、大蔵省の全損はこういう形だということで、まちまちで、政府の意思が一致しないようなことであってはいかぬから、その点やはり打ち合わして、相談して慎重に決定すべきだと、こう私は思います。  それじゃ、損害査定はいつの時点で、どういう物的証拠に基づいて査定するのかということですね。
  130. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 損害の査定は、災害が生じました直後と申しますか、できるだけ早くこの査定を行なうべきであります。ただ、延焼等の状態がございますると、それは損害がまだ継続中でございますから、延焼がおさまって、その状態で査定をする、このように考えております。
  131. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はこれは質問しても、いま答弁してもらえばけっこうですがね、四百何十年昔にさかのぼれということは私は言いませんがね、少なくとも関東大震災ね、関東大震災からこの間の新潟地震に至るまで、その全損はどのくらいのパーセントがあったのか、そしてそれを現在の貨幣価値に直してどのくらいあったか。この答申書に、関東大震災のことは出ておりますよ。二兆円というのは出ておりますから、それはわかるのですが、それから後のいろいろ地震があったでしょう。それに対して全損の占めるパーセント、それから金額にしてどのくらいの損失があったかということを、いま答えられなかったら、資料でいいですから、参考に出してください。  それと、もう一つ、松代地震ですね、今日まで全損に値するもの、全損に該当するものがあるのかなかったのかという点ですね。
  132. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連。いまの課長の答えで、何か調査を土台にして損害補償をしていくという印象を受けたんですがね。そうではなくて、これは損害を受けた人から申告といいますか、そういうことがあって、それに偽りがあるかどうかということで調査ということが出てくるんじゃないですか。それが土台じゃないですか。どっちが土台ですか。被害があったところを必ず全部こっちから調査してやっていくということで、損害を査定する、こういうぐあいにいま聞こえたんですが、その点どうですか。
  133. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 最近の大火の例が、大島の元町であるとか八戸でございますとかございました。大火処理の損保業界の要領といたしましては、そのような大火災が生じますると、契約者からの請求があるなしにかかわらず、現地に共同査定事務所と申しますか、かりの名前でございますが、査定員が集結をいたしまして、そして契約物件に対しまして現実に査定を行なう。別に請求をのんべんだらりと待っておる、こういう状態ではございません。  それから、過去の地震の例から、全損と分損の比率という御要求でございますが、私ども実はいろいろな方法でもって試算をしております。もっとも四百六十七年間にさかのぼることは、ちょっと現在でも数字はございませんが、これは推定をいたしますれば、いろいろな計算方法がございます。非常にむずかしゅうございます。できる範囲内で、たとえば分損額を一々一〇%の損害であるとか、三〇%の損害であるとか、そういう判定でなくて、大まかに半損というようなぐあいのものを考えた場合にはどうであるか、そういう数字は目下計算中でございます。後ほど御説明をしたいと思います。  それから、松代付近におきます現在の連続地震によって全損に値するものがあったかということでございますが、残念ながら私ども具体的にそのことを調べておりません。全損に相当するものが住家であったかなかったか、まだ調べておりません。
  134. 須藤五郎

    須藤五郎君 大体、ここに政府から出された写真があるんですよ。この程度は全損として扱うという写真が出ているんですね。私もこの程度を全損と扱うのが当然じゃないかと思っているのです。これはたなも残っている、柱も残っているけれども、全損だ、住むにたえないといって全損と認めているが、やはりぼくは全損ははっきりと住んでいる人たち立場を尊重して解釈すべきではないかと思うのですが、この写真などは将来の証拠になりますよ、問題が起こるときに。けれども松代でもこの程度の何ですよ、コンクリート建てにはひびが入っておるのですね。これは全損と認めるのは、ブロック建てにひびが入った程度なら、松代だってあるんじゃないですか。
  135. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 私も専門家ではございませんので、その写真を見ただけで、どうしてこれが全損になるかということは、ちょっと御説明しかねますけれども、建築のほうの専門家、査定の経験者がいま寄り集まって、いろいろとそういった事例でもってやっている。その内部構造——構造的に相当破壊されていると。ブロック建ての場合に、外からでも大きな亀裂が多数あるという場合は、これは建物の構造上からの当然の性質なんでしょうが、内部はほとんどいたまない。したがって、そのブロック構造の場合は建て直しをしないと、完全に住める家になかなかならない。そういう何と申しますか、判定の基準があるようでございます。
  136. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、そういってあんたたちは安心しちゃいけない。ここの全損ですが、これは全損と半壊の紙一重というようなところですね。もし将来こういう状態を認定する人があって、これは全損じゃないと言ったら、たいへんなぼくはトラブルが起こると思うのです。だから、写真見ればちょっと、わからぬではないですよ、この程度を全損と扱うのは。しかし、実物を、地震が起こったあとこの実物に立ち会った保険会社がどういう認定をするかとなると、やはり不安なんですね。おそらくこのものを見たとき、全損と保険会社は認定しないで、これは半損だというかもしれぬ。だから、トラブルを引き起こしたら済まぬじゃないかというような意見が出てくるんだが、そこらがこの今度の地震保険法では一番むずかしい点ではなかろうかと思うのです。これはいつまで論議しても尽きないですから、私はこれでやめますけれども、その点、政府はやっぱしこの法案を出す以上、やはり責任を持って人民の立場に立って、被保険者の立場に立ってものを判断するようにしていってもらいたい、こういうことを言っておきます。  それから、四十一年度の地震保険会計の再保険料収入は十二億、これは数字に出ていますね。こういうふうに数字が出ると、そうすると、保険料の収入と再保険料収入の積算方法があるだろうと思うのです。どのようにして計算したのか、その家屋別、火災別にひとつ示してもらいたい。
  137. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 実は、家屋別、火災別の内訳の数字がございませんが、四十一年度再保険料収入見込み額十一億八千九百万と、こういう出しましたもとから御説明をいたしますと、一応私どもは総合保険に自動付帯するというたてまえでございますので、三十九年度までの総合保険の実績、この上昇率といいますか、普及率、これを押し伸ばしまして、四十一年度の総合保険の契約件数を推定いたしました。その推定件数に対しまして平均付保金額をこれまた推定いたしたわけであります。三十九年の付保金額より若干ふえる、こういう見込みを持っております。それからさらに、それに対しまして住宅、併用住宅に限る、つまり一般の総合保険全部ではございません。これに対する割合を推定をして、そうしてさらに三百万円、二百万円でもって限度とするという要素を入れまして、結果といたしましては、さらに三割がこの保険金額になる、こういうような結果といたしましては、保険料の全体の収入金、これが約五十五億というぐあいに考えております。それに対しまして政府の再保険料、これは一回の災害によりますところの支払い金額が百億円をオーバーする場合に政府に入ってくる。五百億円までは半々、五百億円をオーバーすると全部、こういった負担割合になりますので、過去の地震による災害推定額を出しましたものを国の負担部分で割るわけであります。そうすると、国の負担割合と民間の負担割合が計算できます。その割合が四十一年度におきましては約三〇%、三〇・八%という数字になります。したがいまして、そのもとの元受け保険料収入に対しまして三〇・八%かけたものが再保険料収入になります。こういう点については、もちろん今後この地震保険契約の普及が実施を開始いたしまして現実にどのようになるかということは、いまは総合保険の伸び率を単純に伸ばしまして計算をいたしておりますけれども、あるいは保険料が追加になるから高いということで、いやだという人があるかもしれません。逆には、いままで総合保険にかかっていなかったけれども地震なら入ろうという人があるかもしれません。そういったいろいろな予想でもって、この推定額は必ずしもこのとおりいくかどうかわかりませんが、この点を御了承願います。
  138. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう時間がありませんので、いま理事から耳打ちがあったのですが、この残りの分は二十七日の委員会の劈頭にやれということですから、理事諸君の意見を尊重して、私はきょうはこの程度で打ち切って、それで二十七日の劈頭に質問を続けたいと思います。実は原稿用紙で十四枚ほど用意している。まだ五枚済んだばかりです。まだ相当残っておりますので、二十七日の劈頭にひとつやらしてください。これを条件にします。
  139. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  140. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  両案の審査につきましては、本日はこの程度といたします。  なお、次回の委員会は四月二十七日(水曜日)午前十時とし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十九分散会