○須藤
五郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になった
所得税法の一部
改正法案、
法人税法の一部
改正法案、
租税特別措置法の
改正法案の三案に対し反対するものであります。
三法案の中で最も悪質なものは
租税特別措置法であり、この根底には企業に対する
政府、自民党の誤った
考え方があると言わなければなりません。
わが党は、資本を資本市場で集める大企業は、自然人に解消され得ない独自の経済主体だと
考えています。この立場から、当然、配当、利子所得者に対する特別措置は全廃すべきであり、また、わが党が従来から主張をしてきた
所得税中心の高度累進
課税と並列して、大企業に対し高度累進の法人税率を課すべきであると
考えます。さらにまた、独占大企業の原料、燃料、動力費について現在とられている非
課税、免税も廃止すべきものであると主張するものであります。このようなわが党の主張こそが租税民主主義に沿うものであり、人民大衆が現在切実に望んでいる点もここにあると信ずるものであります。
しかるに、
政府、自民党は、法人となっておる零細企業、中小企業に対し、法人実在説の立場をとって重税をぶっかけていながら、大企業に対しては、あるときは法人擬制説の立場から利子、配当所得者を優遇し、あるときは法人実在説の立場からの内部留保等の企業
減税をしているのであります。全く矛盾撞着に満ち満ちており、全くの御都合主義だと言わなければなりません。結局、
政府の立場は、独占資本が望むなら、どんな名目をつけてもくれてやり、一方、零細企業、中小企業には、名目が立たなくともしぼり取るのだと断言しても過言ではありません。
四十一年度の
租税特別措置法、
法人税法は、まさに以上のような
政府、自民党のかって気ままな独占本位の税政策が行きつくところまで来た全くの悪法であります。
たとえば、
租税特別措置法では、企業合併助成による特別控除、さらに償却済みの資産のスクラップ化だけで取得価額の一定率を控除し、しかも両方とも税額控除までしてやるのであります。最近、日産とプリンスが合併いたしますが、この合併による特別控除額は半期だけで七千三百四十七万円となるのであります。資本が増加するならば、むしろ増税とすべきではないでしょうか。まさに悪税もその頂点に達したと言わなければなりません。
政府は、企業
部分の特別措置は大
部分が中小企業のためのものであり、大企業の
部分はわずか三百八十億にすぎないと言っておりますが、これもまたペテンだと言わねばなりません。ここで取り上げられている中小企業は、大企業の下請会社か中小Aクラスであり、これらの中小企業の倒産が直ちに大企業や銀行に波及するからこそ、
政府は税の面でもてこ入れしようとしているのにほかならないのであって、中身は中小企業救済という名の大企業強化策であります。
政府の言い分は、現在苦境に落とし込まれている広範な中小企業家を悔辱するものだと言わなければなりません。
また、法人税についても、税制
調査会にあらわれた多段階税率の主張は踏みにじられ、ますます比例税に移行し、大企業に有利な税率に切りかえられており、さらに
所得税についても高度累進
課税は修正され、年
課税所得十万以下の低所得者の税率は八%から八・五%に逆に引き上げられたのに、年二百万から四百万の中堅所得者の税率は
引き下げられており、全般的に公平の原則の破壊、税制民主主義に逆行する措置が、三税ともはっきり出ているのであります。
このような内容の法案についてわが党が賛成するわけにいかないのは当然ではないでしょうか。
第二の反対理由は、今回の
減税政策の性格と
減税額が問題だからであります。
政府、自民党は、史上最大の
減税と大宣伝しておりますが、実態は、昨日私が大蔵大臣に対して
質問したように、人民大衆に対しては史上最大の増税であり、独占資本に対しては史上最大の
減税であります。すなわち、大企業に対しては、租税特別措置によらざる免税、非
課税、具体的にはガソリン税、
物品税、電気ガス税、固定資産税などの免税、非
課税五千億、さらに租税特別措置による実際の
減税約一兆円、交際費の免税約五千億、その上に工場誘致条例による固定資産税免税相当額の補助金を加えると、驚くなかれ二兆円をこえる大
減税を独占資本にやっているのであります。ところが、人民大衆に対しては、一種の消費税ともいうべき公共料金の値上げを行ない、公債発行によるインフレーション政策で人民を収奪し、他方では外形標準による推計
課税と脅迫によって徴税を強化し、ありとあらゆる責め道具で人民を収奪し尽くそうとしています。そういうことをやっていて何が
減税でしょうか、何が豊かな
家計でありましょうか。
政府の
所得税減税の大宣伝はまっかなうそ偽りであると断ぜざるを得ません。
わが党は、いまこそ、
政府、自民党がとり続けてきたが独占資本本位の租税政策、財政政策を、真に人民の立場に立ち人民の利益になるよう大転換すべきであると
考えます。そのためには、憲法三十条の租税法定主義、憲法二十五条の
国民は健康で文化的な最低限度の
生活を営なむ権利を有し、国はその義務を負うの規定に基づき、人民
生活の擁護向上と租税民主主義の原則に従って、当面、現在の
物価で標準家族の
所得税百万円まで非
課税にし、酒、たばこ、入場税など人民
生活に深い
影響があり逆進性の強い消費税は即刻廃止すべきであることを要求します。同時に、
租税特別措置法を廃止し、
所得税の高度累進
課税と並列して高度累進の法人税を課すことを要求して、私の反対討論を終わります。