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1966-03-30 第51回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三十日(水曜日)    午後一時四十九分開会     —————————————    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      任田 新治君     植木 光教君      瓜生  清君     高山 恒雄君     —————————————   出度者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 青柳 秀夫君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君     委 員                 伊藤 五郎君                 植木 光教君                 大竹平八郎君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 西郷吉之助君                 西川甚五郎君                 西田 信一君                 日高 広為君                 松野 孝一君                 柴谷  要君                 田中寿美子君                 野溝  勝君                 北條  浩君                 高山 恒雄君                 須藤 五郎君                 小林  章君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵大臣官房財        務調査官     川村博太郎君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        国税庁長官    泉 美之松君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省主税局税        制第一課長    吉田冨士雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○相続税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告します。  本日、任田新治君が委員を辞任され、その補欠として植木光教君が選任されました。     —————————————
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の以上の五案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 柴谷要

    柴谷要君 おもにきょうは物品税について御質問したいと思うのですが、その前に、昨年もいろいろ議論されたのですが、四十一年度税制改正基礎になった生計費は、独身者の場合一日当たり百八十六円八十七銭、一日二千五百カロリー基礎にして数字が発表されて、これがあれば生活ができるんだと、こういうことで議論はずいぶんいたしましたが、今回の減税案をめぐっては、あまりこの生計費の問題が議論されないできましたですね。これは一体どういうことなんですか。これからひとつお聞かせおき願いたいと思います。
  5. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) これは特に国会において御論議のようでございますので、私が申し上げるのがいいかどうかわかりませんが、去年に比べまして、確かにこの議論が少ないことは事実でございます。私は、やはり去年が初めての資料提出であったので、昨年度の議論は今年度に比べまして非常に活発であった、これが原因ではないかと思うのでございます。今年は、昨年度の御議論の経過にかんがみまして、私どもその点若干考慮しながら今回の資料を御提出申し上げたので、御議論が少なかったのではないか、かように思うのでございます。国立栄養研究所献立を変えなかったということも、御議論を一方に巻き起こしましたけれども、その献立に関しますところの議論が去年はよほど盛んであったようでございます。まあそんなような関係で、ことしは去年に比べまして御議論が少ないのではないか、かように見ております。
  6. 柴谷要

    柴谷要君 女子大学家計費研究会の会員の一人が、四十年度の報告の中で、消費者物価指数上昇率政府見通しの四・五%を見込んだ家計を立てたところが、二月末に三四%の赤字が出たと報告しているのだ。こういうことは四十年度に限らず、四十一年度にもあり得ると思います。そうすると、まあまじめにと言っちゃ語弊があるかもしれませんが、まじめに政府発表物価上昇率その他を勘案をしながら生計費を立てている国民の中には、最終的にはこういうばかげた赤字が生まれて困難をする、こういう結果が出てくるのじゃないか、こう思うのですが、こういうことがはたして妥当なものであるかどうか、御所見を承りたいと思います。
  7. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 四十一年度の消費者物価上昇を考慮するならば私どもが御提出申し上げました消費支出金額課税最低限との開きは逆ざやになりまして、赤字になるのではないかというような御質問のように承ったのでございます。私どもも確実を期し——個々物品価格でございます。したがいまして、これは推計というよりも、むしろ四十年度の家計調査にあらわれましたところの実際の価格、これをとるのが至当であると思ってこういう計算をしたのでございます。したがいまして、確かに四十一年度の課税最低限と比較いたします際には、四十一年度の物価上昇を見込むべきではないか、こういう御質問が出るのはまた当然かと思います。そこで、私どもは、消費者物価の伸びの予想でございます五・五%を乗じまして、この点も検算したのでございますが、消費支出に五・五%を乗じまして検算いたしましても、まだゆとりがあるような結果が出てまいりますので、この点は非難に当たらないのではないか、かように考えております。なお、たびたび申し上げておりますように、課税最低限の根拠といたしましてこれが唯一のものでないということを、念のため申し上げたいと思います。
  8. 柴谷要

    柴谷要君 夫婦・子供三人の標準世帯年間食費が二十七万八千円、こういう金額になるわけです。ところが、この金額では、栄養専門学校教師の藤巻さんの言によっても、官製の料理ではビタミンと動物性たん白が全く不足をして、とてもじゃないが、これでは生活ができるものじゃないのだ、こういうことを言っておるのですね。そうするというと、この生計費なるものは全く欺瞞したものである、こう思うのですけれども主税局長はどういうふうにお考えになっておられますか。
  9. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) まず、この基礎をなしますカロリー等の問題でございます。これはもうたびたび私どもが申し上げておりますように、成年男子一日当たり二千五百カロリーということを基礎にとりまして、国立栄養研究所でつくっていただいたわけでございます。さらにまた、いま申し上げましたカロリーだけではだめだ、たん白質、カルシウム、鉄分、食塩、これらにつきましても、私どもはしろうとでございますが、国立栄養研究所は、たとえば成年男子につきましては、男はたん白質ならば七十グラム、女ならば六十グラム、こういった基礎をもちまして計算をしてございます。この点につきましては、予算委員会でも数字を若干申し上げましたので、こういった点からもこの点は配慮されているという点は御納得いただけるのではないかと思います。  まあ問題は、値段のほうが問題かと思います。しかしながら、この値段は、たびたび申し上げておりますように、家計調査全国平均から個々商品につきまして抽出いたしましたもので、こういった特定のところ、あるいは特殊な商品等につきましては、この価格が当てはまらない場合があろうかと思いますが、全体として統計調査にあらわれましたところから見ますと、この点も御納得いただけるのではないか、かように考えております。
  10. 柴谷要

    柴谷要君 国税局のほうから来ておりますか。
  11. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記とめて。   〔速記中止
  12. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記起こして。
  13. 柴谷要

    柴谷要君 本年の減税案は最近にないたくさんの減税だと、こう政府は言っておる。納税人員は二千二百万人から二千万人に減少するのだ、こう言っておりますね。すると、この二百万人の納税人員減少ということは非常に数多いことです。そうすると、現在の税務行政の上では、たいへんいままで苦しんでおった税務職員の面から見ると、たいへん助かってくるのじゃないかと思うのですがね。どの程度税務行政影響を与えてくるものか、その概略をひとつ説明を願いたい。
  14. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 柴谷先生指摘のように、平年度におきまして約二百万人の所得税納税者が減ってまいりますことは、税務行政にとりまして非常な負担の緩和をもたらすものでございます。さらにまた、その結果、まじめな方々納税者に比べまして、しからざる納税者調査も徹底しようかと思うのでございます。このうちで、私ども数字的にはなかなか納税人員減少の効果を評価することはむずかしいわけでございますが、二百万のうち約八割は給与所得者が数が減るわけでございます。その他営業申告納税者は約三十万ばかりでございますので、そういった意味では、比較的申告納税者につきましては数の減少程度が少ないので、そんなに影響はないと思うのであります。給与所得者源泉徴税上の手間は相当省けるということが言えようかと思います。
  15. 柴谷要

    柴谷要君 少々の納税人員減少くらいでは、現行税務職場を縮小するなどできるものではない。むしろ拡張していかなければならないとわれわれは考えているんですが、そのように考えていいものかどうか。大体、源泉徴収というのは、税務職員の手にかからないで、職場職場でもって徴収ができて、全くこれはぬれ手でアワ、こういう徴税方法ですからね、そう思います。しかし、現実に二千万人の徴税業務というものは、現行税務行政の上から見るというと、非常にたいへんな苦労であろうと思う。その苦労を依然として押しつけている、こういう姿になっているんじゃないかと思うんですが、これに対してはどんな考え方をお持ちになっておられますか。
  16. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 御指摘のように、納税人員が減りますれば、税務上の手間は省け、税務行政合理化することは申すまでもないところでございまして、私どもは今度のような減税をまた将来もぜひやっていただきまして、税務上の合理化をますますはかっていきたい、能率化を進めていきたい、かように考えております。そしてまた、私どもはその省きました手数を法人調査その他のほうに向けるべきだと思うのでございます。  ただ、所得税につきまして見ますと、柴谷先生御存じのように、三十一年ごろが最も納税者の少なかったときでございます。そのときの納税人員は千百万でございまして、これが御指摘のように二千万になるわけでございます。九百万ばかりの納税者がふえておるわけでございますが、そのうちの大部分給与所得者がふえてきたということが実績でございます。営業所得者は二割ぐらいふえ、農業所得者はむしろ四分の一ぐらいになり五分の一ぐらいになり、それから資産所得者その他総合課税を受ける者が相当ふえてまいりますけれども、大宗は給与所得者でございます。九百万のうち、しかもそのうち六割までが独身者でございます。そんなようなことが現在の所得税納税人員になっているということが大きな特色でございます。これは種々の原因がございますが、若年労働者不足から来ますところの初任給の上がり、これが私は基本的に大きかったことが原因だと思います。高校を卒業して半年もすれば——半年といいますか、三年もすれば、賞与まで入れますと、なぜ税金がかかるかというような御批判があります。私どもは、担税力がどちらのほうに強いと見るのか、世帯持ちに強いと見るのか、独身者に強いと見るのか、いろいろな考え方がございますけれども、そんなような所得税がはたしてどういう意味を持っているか、これはよくひとつ研究していかなければならない。いままでのやり方は、御存じのように、扶養親族の多い者のほうを担税力少なき者と見まして、課税最低限引き上げの方向でやってまいりました。したがいまして、調査手間のかかる申告納税者のほうは比較的納税者の数が減ってまいりますけれども給与所得者のほうの数はそういった方式では減らない。したがって、納税人員は非常に多くなる。これをどういうふうに考えてまいりますか、御指摘のような税務行政合理化能率化の見地から、今後検討してまいりたい、かように考えております。
  17. 柴谷要

    柴谷要君 今次国会提出された減税案国民の最も期待をしておる減税案であるから早く国会を通さなければならない、そうして期日である四月一日から実行したい、こういう一面御意見があろうと思います。しかし、思い切った減税を行なうというのであるから、でき得る限り税の公平の原則に従って減税というものを公正に行なわせる、こういうことをわれわれは考えなければならぬ。ところが、両院にわたって審議というものが行なわれてきたわけですね。それで、一体衆議院はこの法律案提案をされて何日審議をしておるか。参議院に送られてきてわずか数日、しかも開聞以来の減税案のいいか悪いかの判断をつけろ、こういうのですから……。これは国民階属の中でもよほど優秀な人の集まりだから、賛成、反対の判断はつくのですけれども、しかし、これで一体いいのかどうか。ぼくは、提案権を持っておる政府が、こういう審議方法をもっと公正に考え国会運営というものに当たってきたかどうか、ひとつその所見をまず伺っておきたいと思います。穏やかにものを言っておると、どうも少したるんできていると思うのです。
  18. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) どうも私から御答弁申し上げる資格があるかどうか疑問でございますけれども、私どもは、柴谷先生のおっしゃるように、できる限り国会で詳細な御審議をお願いしたい、こういうつもりで提案も急ぎましたし、御審議も受けるべく努力してきたつもりでございます。前年と比較いたしましても、本年は提案の月日が早目でございますし、おしかりを受けるかもわかりませんが、前年に比べましても、所得税法法人税法措置法等衆議院の可決の時期は早くなっておる状況でございまして、このあたりひとつぜひくんでいただきまして、御理解を賜わりたいと思います。今後とも私ども提案はでき得る限り早く申し上げて、さらに予算委員会というなかなか大きな委員会がございまして、その間に大蔵委員会を開催していただきまして審議するのはなかなかむずかしい実情でございますが、できる限りひとつ早目提案し、それからまた、衆議院大蔵委員会方々にもお願いいたしまして、今後ともひとつ努力を続けてまいりたい、かように思います。
  19. 柴谷要

    柴谷要君 私の申し上げたことは別にいやみでもなんでもなくて、正当なことを申し上げたと思うのですが、確かに二院制のたてまえからいえば、予備審査ということがあって、予備審査でやればいいじゃないか、こういう言い方もあろうかと思いますけれども関係者が出席のできない予備審査というものは意味がない。そういうことから、できればもっと常識的な運営を今後できるように、提案権をお持ちになっている政府委員の各位は一そう心がける必要があるのではないか、こういうふうに考えます。そのためには、やはりわれわれ野党側にしても一面考えなければならぬ節もあるということは、率直に申し上げたいと思う。そういう意味から、お互いに反省をしながらよりよいものにしていく、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、本論に入るわけでありますが、物品税は三十七年に行なっただけで、以後行なっておりません。四年目です。初年度二百八十七億、来年度三百四十七億という物品税減税によって、過熱しておる物価上昇をどれほど冷却させる力を持つことができるのか、この点をひとつ説明を願いたいと思います。
  20. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 御指摘のように、物品税減税並びに改正は四年ぶりでございまして、大方期待は大きいところでございます。その期待一つに、柴谷先生指摘の、上昇する傾向にある物価に対しまして、減税を通じて物価引き下げをはかるということもまあ一つのねらいでございます。で、私どもは、そういった御期待にこたえる意味で、御存じのように、通産省を通じまして、物品税引き下げに伴いまして、その大方の御期待のように、減税額がそのまま値下げになるように御指導願っておるところであります。おそらく、私は四月一日から、三十七年の結果と同じく、相当減税額の大部分引き下げになる、かように期待しております。  ただ、これが消費者物価にどの程度影響を与えるかと申しますと、これは決して大きなウエートを持ったものではないことを申し上げたいと思います。御存じのように、物品税の品目五十九ございますが、消費者物価指数統計上のウエートといたしましてはきわめて少ないので、私どもが一応試算いたしましても三百四十九億円の減税になりますが、物価指数に対する低下率はきわめて少ない、こういうことが言えるかと思います。
  21. 柴谷要

    柴谷要君 国税庁長官がお見えになってくだすったので、物品税をお尋ねする前に、一、二、ひとつ聞いておきたいと思うのです。  昨年手がけた例の団体による行動、私ども国政調査四国方面に行っていろいろ調べてきたときに、あれは何という名前をつけておったか知らぬが、何とか納税組合というのがあって、だいぶ税務署に対していろいろなことをやっておった。税金未払いではありませんけれども、税が高いから払わぬということでやっておったのを、二、三見てきたのですが、最近そういうことがなくなって、そういう方が税務署方面に見えなくなってきた。というのは、私も直接自分税務署に出かけて、この間総合申告をしてきたのですが、それで不足分を払って、ようやく納税だけは義務は果たしてきたのです。あの活気のある、昭和四十年当時の税金問題に対する活気のある、戦いというと語弊がありますけれども国民の意思が盛り上がった、あのときの税務署緊張ぶりというのは非常なものだった。ところが、今度行って税務署を見ますと、それがこう、のんびりした気分が漂っている。のんびりしている気分というのは、まあ突き上げがないということかと思うと、一面、査察が強化されたり、あるいは届け出をしても、完全に届け出をした、自分で思っていることは全部書き出したのだ、ところが、まだあるのじゃないか、まだあるのじゃないかといって責めたてられて、これほど税務署に責められたのじゃたまらぬ、こういう悲鳴を上げている場面も実は見受けてきた。ところが、三十九年から四十年頃の、国民納税に対する反発というか、そういうものが盛り上がって、団体税務署に押しかけていろいろ文句を言っているときには、そういうことがなかった。ところが、そういうムードがなくなったら、今度のんびりし始めたので、いま申し上げたように、まじめな申告をしても、これじゃまだ足りない、まだあるのじゃないかというようなことで、徹底的な調べ方をし、最後には税務署ではなしに局の査察のほうに回して、何十人となく押しかけてきて徹底的な調査をしている。こういうようなことが、ことし行なわれているように聞いているのですが、これは特別な命令でやっておられるのですか。それとも、税務署自体が自発的に、ことしは徴税能力が下がっているので、成績を上げるというためにやっているのか。その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  22. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 税務署行政につきましては、私どもここ数年来、近づきやすい税務署にすること、それから適正な課税を行なうこと、それから綱紀を正しくし明るい職場をつくること、この三点を基本といたしまして仕事を進めているわけでございますが、ただいま柴谷委員から、昔と今といろいろ違っているというようなお話でございますけれども、私どもといたしましては、ここ数年来、税務行政やり方につきまして違ったことをやっていることはないのでございます。要は、先ほど申し上げました三つの柱に沿って行政をやっているわけでございます。  たまたま柴谷委員のお耳にされたのに、査察が強化されたとか、ちゃんと申告したのだけれども、なおいろいろ徹底的に調べられたといったような事例がおありになったことかと思いますけれども査察を特に強化するという考えではございませんけれども査察につきましては、実は前から政令定員が四百五十名になっておったのでございますが、その政令定員まで人が足らないということで満たしておりませんでした。それをただ、人員も充実してまいりましたので、政令定員どおり査察職員にしたというだけでございまして、特別に査察を強化するということで考えているわけではございません。まあ全体としては、近づきやすい税務署にするという努力で、税務署の雰囲気はかなり明るいものになっていると思います。柴谷委員、のんびりした空気というような御表現でございましたけれども、のんびりしているというか、親切にやるという態度でありまして、特にのんびりしたというふうには私ども受け取っておらないのでございますが……。
  23. 柴谷要

    柴谷要君 私は目黒に長らく住んで、目黒税務署にごやっかいになったのですが、歴代目黒税務署長さんには、総合所得申告にあたってはたいへん親切に導いてもらったのです。品川に移って、それで今度品川税務署では新顔なものですから、ことし届け出に行ってみたのですが、そうすると、まあ新参者ですから扱いは粗漏になろうかとは思いますけれども税務署税務署によってたいへんな空気に違いがあるのですね。これはやはり、その席にすわる責任者の動向によってたいへんな違いができるのじゃないか。私は感心しているのは、目黒税務署で、名前を申し上げるのはどうかと思うのですけれども、実によくやっているので、特に私は強調したいと思うのですが、目黒税務署長というのは歴代いいんですよ。非常に部下の信任に対してもいい。それから、いかなる団体がどういうあれで来ても、よく会って親切に指導をされておる。ところが、品川は、どういうものか、それが欠けておるような気がするのです。この点は、別にあなたのほうから文句を言えと、こういうことで申し上げるわけじゃないのですが、たいへん大事なことはそこにあるのじゃないか。  納税者というのは、たとえ一銭のものでも、汗水たらして働いたものから取られる税金ですから、それは真剣ですわね。ですから、そういう者に接するのに、簡単に、職務上のことだから、簡単に計算どおり、法律どおり取り上げればそれでいいのだ、こういうことでは、やはり血の通った行政にはならぬじゃないかというふうに思うものですから、極端から極端な例を申し上げたようですけれども、まあそういう場所のあることもひとつ、長官の人柄からいって、知っておく必要があるのじゃないか。まあこれから明るい税務行政をとりたいという長官の御心境は、確かに下部に伝わって、そういうことになろうかと思いますが、より一そうそういう御努力をいただきたいと思う。これは質問じゃありません、要望で終わっておきたいと思う。きょうはほかの方でよかったのですけれども長官がわざわざおいでいただいたものですから、つい話がここまで行ってしまったわけです。  それでは、物品税の大体前身は、昭和十二年、戦費調達のために創設されたのですが、その名前は北支事変特別税法ということで、ダイヤモンドや写真機など、当時十品目ぐらいしか課税されておらなかったのですね。ところが、年を経るに従って、品物が消費者の手に渡れば、黙ってがっぶり税金が取れるものですから、戦争末期の十九年には百余品目にふえた。戦後多少整理されて、大きく分類をすると五十品目ぐらいにはなったけれども、まあ減少はしてきたけれども、一体、簡単に取れるものですから、この物品税というものは依然として、減少をたどるのじゃなくて、むしろ現行維持そのままが前進をしていくと、こういう姿のようなんだ。課税対象の商品は第一種が宝石、装飾用品、調度品、これらは物品税の対象にごくいいと思う、第一種は。それから、第二種の乗用車であるとか写真機とか、家具でも特別なぜいたく品、それから化粧品の特別な輸入したぜいたく化粧品、このくらいまでは物品税の対象で私はいいと思う。ところがですよ、第三種になってくると、マッチのようなものにも、千本に一円の税金がかかっておる。こういう第三種物品税なるものは、どうもわれわれは納得がいかない物品税のように思うのです。で、依然としてやっぱりこういうことを続けていかれるのか。この点をひとつお聞かせをいただきたいと思うわけです。
  24. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 御指摘のように、物品税につきましては、消費税のうちで最も批判の多いものでございます。しかし、一方また、所得税、法人税という直接税だけでも、どうも大方の御意見は、もの足りない、やはり、消費に対して課税を相当重視してもいいではないか、まあこんなような意見もあるのでございます。このあたり非常にむずかしい点でございまして、私どもといたしましてこれをどう考えるか。今後ひとつ税制調査会等にはかりまして、さらにまた研究しなければならぬと思っております。  まあしかしながら、個々商品を取り出して議論を始めますと、各種の意見も出てまいりますし、ただいま柴谷委員のおっしゃったような、極度のぜいたくなものにだけ課税していくということも、これは一つの消費税の行き方だと思います。今回の減税の趣旨は、できる限り国民生活の向上に伴いますところの消費水準等と見合ったような減税をはかってきたつもりでございます。今後も、おっしゃったような方向で物品税改正考えていくべきであろう、かように考えております。  しかしながら、財政事情、さらにはまた消費税の体系としての物品税の位置と申しますのは、酒税、たばこ益金というような特殊な消費に対しまする課税だけで消費税を考えるということでは、どうも不十分であり、財政上もその要求を満たさない、こんなような御意見もございます。このあたり加味いたしまして、今後ともひとつ慎重に検討いたしてまいりたいという——おっしゃっている方向は、私は一つの方向であると思います。しかしながら、消費に対しましては、所得や財産に対しまする直接税の課税よりも進めるべきであるという意見もございますので、このあたりひとつ根本的に検討してまいりたい、かように考えております。
  25. 柴谷要

    柴谷要君 政府がなかなか、検討をして、物品税の分類減少をはかろうとしない理由の一つは、国税の中でも第五位を占めているのですね。年間千四百二十二億、まあ千五百億近い税収があがってきますから、これはたいへん徴税の上においても楽なのですね。品物を売りさえすれば金が入ってくる。これは税務署の手を経ないで、源泉徴収と同じようなものですから、たいへん楽だ。しかも、五位を占めるという税収の徴税額。だから、これを簡単にやめてというと、ほかに財源を求めるのはなかなか困難だから、これはわかりますよ。わかるけれども、マッチのようなものにまで税金をかけておきながら、実は新聞に出たことなんですが、孫の初節句に三万円のおひなさまを買ったというのです。さぞかし三万円のおひなさまだから物品税が相当かかっておるのかと思って調べてみたところが、これは五万円までは無税だと、こういう。おひなさまのような、まああってもなくてもいいようなものを、三万円のものを買って、お孫さんに与えた。それに物品税相当高くかかっているかと思ったら、一銭もかかっていない。調べてみたら、五万円までは無税だと、こういう。こういうものと比較して、日常必要品であるところのマッチというものに課税をしておる。これは全く納得がいかないという新聞記事が出ておりました。これはなるほど国民感情だと思う。  その原因をなしているのは何かというと、大蔵省の用語に便益品というのがある。便益品というのがあるのだそうですね、大蔵省には。便益品という用語が、それは便利な品物に税金をかけるという、こういうのが便益品という用語になっている。便益品というのは便利な品物だということになるから、電気製品は便利な品物だから税金をうんとかける、こういうことになって、家庭必需品であるものに過大な税金を課しているというのは全く困ったものだというのが、国民感情のようであります。一体、便益品に課税をするということをきめたのは、いつごろの時代の局長さんですかね。
  26. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 二つの品目を例示されての御質問でございますので、まあ物品税の性格をあらわすものといたしまして、若干御説明申し上げたいと思います。  確かに物品税は、先ほど来御指摘のように、非常に問題が多い。さらにまた、これも当委員会で私がたびたび御説明申し上げましたように、究極的には物品税は消費者の負担だと思いまするけれども、その間の商品の自由なる価格形成を通じての転嫁の過程におきまして、企業——製造する方々の規模が小さければ小さいほど、その物品税価格転嫁に伴いますところの苦痛は大きい、こういうことを申し上げましたが、まさしくそのことが私は玩具の免税点にあらわれておると思うのであります。  おっしゃるように、個々の品目をとりまして、ダイヤモンドが一万五千円の免税点、玩具が組で四万五千円、こんなことになることをつかまえられておっしゃられますと、確かに多分に問題があり、客観的な基準は何かということが疑問が出てまいるのでございます。しかし、私どもの気がつきますことは、やはりマッチの業者に比べまして玩具の業者はより零細であり、さらにまた裏長屋で家庭内職を使いながら製造を続けていくような方もないわけでもないわけでございます。こんなように考えまして、免税点は消費者の負担だけの見地じゃなくて、企業の物品税価格転嫁に伴いますところの苦痛を緩和する意味が含まれております。さらにまた、その金額につきましては、多分に過去に定められました沿革に基づいておる面もございます。そんなような観点でできておることをひとつ申し上げ、さらにマッチにつきましては、半分以上はこれは広告マッチでございます。  過去にはこれもマッチの課税は私ども、私も古くから物品税やっておりまして、もう私は御批判を受けておりましたが、過去におきまして、その課税の根拠は、たばこに対して消費税を課税する。しからばたばこを吸う場合にマッチを幾ら使うか。したがいまして、たばこ消費税と物品税とを一体として考えまして、課税の根拠を御説明したような時代もございます。そういう時代にはライターも普及しておりませんので、大体課税の根拠もある程度そのあたりにも求められたのでございますが、現在ライターが普及してまいりますと、なかなかむずかしい。現在ではそういった意味で、私どもはこれは過当競争の結果であったかと思いますが、広告用のマッチがこれは半分以上ある。広告税をこんな形で起こす気持ちもございませんけれども、これは一つ担税力のあらわれと見てもいいではないか、こんなようなことを御説明申し上げている次第でございます。  便益品というのも、これは一つの根拠でございますが、これをいつからきめたと申しますか、これは税制調査会で審議の、物品税を検討する際に、どういう基準で物品の性格を分けるかといった際に一つ設けられた基準で、一つ考え方を示すにとどまるだけでございます。そういった意味では、私どもは絶対的な課税の根拠ではないと思いますが、先ほど申し上げましたように、消費に対して課税することが一つの税制といたしまして考えられる根拠でございます。それからまた、所得税、法人税のような直接税はあまり高いと勤労意欲を害するとか、資本蓄積を阻害するとかというようなお話があり、さらにまた税務上のトラブルも最も多いものでございます。まあそんなようなことを考えますと、ある程度生活必需品ではないにいたしましても、生活の便宜を向上さすもの、生活水準の向上を示すようなものにつきましては、課税の根拠を求めてもいいんではなかろうか、こういったことが考えられると思うのでございます。  日本の税制の消費に対します課税、現在の間接消費税の形は私は決して十分とは申しませんけれども、外国に比べまして、やはりこういった酒、たばこのような特殊な商品以外の一般的な商品についての消費、しかもそれが生活水準の向上に関係するものにつきましては、ある程度課税を求めることが現在の税制上の欠陥を補うものではないか。外国に比べましても、わが国の消費税は、当時税制調査会で指摘されましたように、酒、たばこ、ガソリンとか砂糖に片寄り過ぎておる。消費に対して課税いたしますれば、こういった耐久消費財のような、おっしゃるように便益品と言ってもよいかもわかりませんが、そういったものを課税の中に取り込むことも一つの消費に対する課税を完全にする意味では考えられるのではないか、こんなようなことが指摘されましたので、現在でもそういったことが言われておるのではないか、かように考えております。
  27. 柴谷要

    柴谷要君 ちょっと都合のいいところに来るというと税制調査会を出すんですよね、説明の中に。税制調査会がかくかく言いましたと言う。それじゃその税制調査会が答申した内容の都合の悪いところを切り捨てたような場合には、これは黙っている。そういうきらいがなきにしもあらずであります。だから、税制調査会の委員の中にも、ずいぶん、ほんとうにこの答申をした場合に実行するのかしないのか、実行しないならもう税制調査会なんというものに諮問してもらっても困る、こういう意見の持ち主もいるのですね。これは税制調査会の委員じゃありませんから、強いことを申し上げるわけじゃありませんけれども、これから税制調査会に諮問として出されたら、まあ日石灯油じゃありませんけれども、九九・九九%ぐらい実施をするのかしないのか、一〇〇%とは言わないけれども、そんなくらいは実施をする意思があるのかないのか、それもついでに聞いておきたい。
  28. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 政府が諮問いたしました税制調査会の答申でございます。私どもは九九・九九%と申しますか、これはもう極力尊重してまいりたい。今回の答申もほとんど私は尊重された、かように考えております。
  29. 柴谷要

    柴谷要君 マッチ棒というのは便益品でしょうかね、これは。
  30. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) このあたりの定義となりますと、いろいろの考え方が出ましょうが、過去におきましては、おっしゃったような便益的な色彩が強かったかと思いますけれども、いまではまあ便益品という要素は少ないかと思います。しかし、これはもう笑い話になって恐縮でございますが、過去におきましてはもう火打ち石に比べれば便益的なものであることは、これはもう間違いのないところでございますが、現代においてそういうことを言いますと笑われますので申しませんが、一つの便益品的なものであり、しかし、これをもって唯一の課税の根拠というようなことは決して申さないつもりでございます。
  31. 柴谷要

    柴谷要君 それから、写真用フィルムが二〇%であったのが今度は一五%に下がりましたね。それから、レジャー用のボートが四〇%から一挙に一〇%に下がっておる。これは一体どうしたことなんですか。
  32. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) まず、写真用フィルムの一五%は、これは現在まで二〇%でございましたのを、同じカテゴリーに属するような商品につきまして一五%に下げたのでございます。この点は御納得いただけると思います。  一方、御指摘のモーターボートのうち特殊なものを四割から一割に下げましたのは、モーターボートのうちスカールが入っておったのでございます。このスカールの四割という税率というのは少しバランスも悪い。これは一つの比較的健全な、しかもまた特殊な階級の方々でないような方でも利用できるようなスポーツの遊戯だ、スポーツ道具だと考えられますので、これを引き下げた次第でございます。
  33. 柴谷要

    柴谷要君 マッチ棒は全然下げておりませんね。千本に対する一円程度というのは、下げませんね。これはどういうわけなんです。
  34. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) これはいろいろな理由が私は考えられると思います。課税の根拠につきましては、もう先ほど申し上げたところでございますが、一つの広告マッチであるというところに課税の根拠を求めますと、はたして下げること自体がいいかどうかという点が第一点でございます。さらにまた、千本一円という税率、これは古くから長く据え置かれております。私は、従量税というものは、基本的には国民所得が上昇しあるいは物価水準が上がってまいりますような際には、結果的に自動的に減税となっているものだと考えるのでございます。もう古い時代につくられました千本一円、おそらく昭和三十四年くらいだと思いますが、五円から一円に引き下げられたと思います。その当時から見ればいまの所得水準はおそらく倍くらいになっておりますが、そういった所得水準から見ますと、この千本一円というのはむしろ実質的には減税、さらにまた消費者物価上昇から見ましても、減税という結果があらわれておりますので、今回はそういった理由から、マッチにつきましては従量税唯一のものになりまして、清涼飲料は今回は従価税になったのであります。従量税の唯一のものでございます。従量税のものにつきましては、いま申しましたような考えから特に引き下げなくてもよかろう。もちろん、これは根本的に今後マッチの税率のあり方、物品税のあり方につきまして検討の必要はあろうかと思いますが、今回はそういった意味減税を見送った次第でございます。
  35. 柴谷要

    柴谷要君 私はそこに流れる理想がまずいと思うのです。というのは、レジャー用のスカールあたりは四〇%から一挙に一〇%に引き下げる。これらの所有者というのはごく小部分国民なんです。しかも、生活程度は高度な生活水準の人なんです。ところが、マッチというのは、ライターも買えないような、零細な勤労階級あたりはライターも買えないからマッチでたばこを吸う。こういうような、ささいなようだけれども、こういうところに今回の物品税なら物品税減税の措置が多少でも及ぶと考えられると、こういうところに私は血の通ったつまり減税案がここに生まれてくるのじゃないか。ところが、まあ何といいますか、金があり余って使い道に困っているような人がボートをつくって乗り回している、こういう人が買い込む場合に四〇%もかけていたものを一〇%に下げる。これは国民感情からいって決していい感情を持たないですよ。  で、正直のことをいって、ほんとうに日雇い労務で零細な賃金をもらって働いているような人々は、ライターすら買えない。マッチでもってたばこを吸う。そのマッチもいま言ったように、広告マッチをもらえば無料で、これはいい。そういう人に限って無料広告のマッチなんてもらえないのです。やはりたばこ屋に行って、たばこを買うときに一緒に一円でも二円でも金を出して買うのですよ。私はこういうところに減税の恩恵というものが向けられて初めて血の通ったあたたかい、何と申しますか、減税案が生まれてくると、こういうふうに考えるわけです。なかなか当局者になってみれば、数多くの品物の吟味をして減税をすることですから、それはわれわれの考えているようなわけにぴったりいくものじゃないと思いますけれども、ひとつ考え方をそういう点に及ぶように御配慮願いたい、こういうふうに思うものですが……。
  36. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) マッチのお話が出ましたので、少しふえんさせていただきたいと思います。私どももおっしゃる点は十分うなずけるところでございまして、過去私も税制二課長をしております際に、家庭用マッチだけでも廃止したいということで案を考えたこともございます。しかしながら、そのことがなかなか技術的にむずかしい点がございます。そしてそのこと自体が業界の取引の混乱的な要素になるということで、マッチのうちで家庭用マッチだけを抜き出して非課税とするということは、かえって業界にとってはマイナスであり、税務にとってもいろいろな面でマイナスがくる、こんなようなことで、私どもは現在のところその案が採用できない状態になっておるのでございます。  なお、千本一円のマッチの税負担は、小買り価格に対して丁三%でございます。スカールの一〇%は製造価格でございますから、まあ小売り価格では五%か七%くらいになろうかと思いますが、こんなことで弁解する気持ちもございませんけれども、負担の面から見ますと、広告用マッチまで合わせて考えていただけますれば、ある程度の御理解は得られるのではないか。しかし、家庭用マッチについてだけこれは無税が、消費の考え方からいたしまして一つ考えられるところでございますが、先ほども申し上げましたような難点もございまして、今後の検討問題になっているということを一つ念のために申し上げさせていただきたいと思います。
  37. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記とめて。   〔速記中止
  38. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  39. 柴谷要

    柴谷要君 この物品税減税は値下げになるように、物品の値下げになるように業界の指導をする、こう政府は言っているわけですね。つまり、減税をする、そのかわり品物は安くしなければいかぬぞ、減税した分は安くしなければいかぬぞ、それに近いものをしなければいかぬぞ、こういうふうに指導をしているようですけれども、はたしてその成果が出るのか出ないのか。どのようにごらんになりますか。
  40. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 三十七年のときも御心配の方がございましたが、私どもは相当な効果をおさめたと考えております。今回も相当な効果をおさめるべく着々努力中であります。まず第一に、閣議了解を二月八日にいたしまして、強力に通産省を中心にいたしまして行政指導しよう、こういうふうにいたしております。通産省は、この閣議了解に基づきまして、現在業界を強力に指導中でございます。そしてその効果を見る意味におきまして、通産局にございますところの消費生活改善モニターを活用して価格引き下げ状況を調査する、こういったことまで考えておりますし、この点につきましては、三月二十四日通産省から発表されております。さらに第二には、私どもも税の面からこれを応援する意味におきまして、これは三十七年にとりましたようなのと同じ方法でございますが、現在蔵出しするものにつきまして、四月一日以後売れるようなものにつきましては、税金をペンディングのような形で蔵出しして、蔵出ししたところを製造場に入れまして、四月一日以後売れたものを初めて蔵出しと見まして、軽減された税率を適用しよう。いわゆる未納税移出制度を活用することによりまして、価格引き下げを応援しよう。現在蔵出しいたしますと、四月一日以後滞貨になりますと、価格引き下げはむずかしくなりますので、こんなような未納税移出制度まで考えているようなところでございます。このような努力によりまして、私どもは相当な効果がおさめられるものと期待しております。
  41. 柴谷要

    柴谷要君 私は物品税について要望を最後にして、質問を終わっておきたいと思うのですが、生活必需品ですね、生活必需品、便益品などと言わずに生活必需品については今後できるだけ、もちろん税制調査会に諮問をするのは当然のことでありましょうけれども、大蔵省自体がひとつお考えをいただいて、それでこの面における物品税等については最大の考慮を払う、こういう約束を本委員会のこの席でしてもらいたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  42. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 消費に対する課税全般の問題を含めまして、御趣旨の点は税制調査会にもはかりまして、十分検討したいと思います。
  43. 柴谷要

    柴谷要君 よく税制調査会が出るのだけれども、その前に大蔵省自体が腹をきめて、こうかかる、その大蔵省の腹のきめ方をひとつのぞかしてくれないかと、こういうのです。私は、税制調査会にはかるというけれども、はかることははかってもらいたいのだけれども、その前の腹がまえ。それは主税局長がいつまでもおられればいいですよ。五年も十年も大蔵省の主税局長としておられるなら、その答弁でいいですよ。それは毎年われわれも当選してきちゃあなたを責めていくから、かまわない。そうはいかない。だから、とにかく腹をきめてひとつやろう、そういう気持ちを持っているということだけでいいから、ひとつ約束をしてください。
  44. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 私は柴谷先生の御主張の点は十分理解できるのでございます。そういった点も努力することもしなければならぬと思いますが、何ぶん政府のつくりました調査会があり、そこに税制改正案はすべて諮問しなければならないことになっておりますし、その前に大蔵省と申しますか、大蔵省に私はならぬと思いまするけれども、私どもがまず意見を申し上げることはできる限り控えるといったことが一つのルールになっているように思いますので、この点はこの程度の答弁でぜひごかんべん願いたいと、かように思います。
  45. 柴谷要

    柴谷要君 私も、実は浪人をしておりますときに、国鉄の諮問委員という委員をやったことがある。それはちょうど税制調査会の委員のようなものですけれども、当時十河総裁の諮問機関なんです。そこへ毛色の変わった私が入っていろいろ検討したのですが、一体やるほうの側が腹があるのかないのか、その腹がないのに、ただわれわれの意見だけ聞いて、答申をしてやっても、それは世間を偽る一つの方便じゃないか、一体腹があるのかないのか、こういう質問をしたら、答申案を出されて皆さんの多くの意見を聞いた上でいいと思えば私は実行いたしますと、こういう腹を割った話が出た。私は、税制調査会の委員の皆さんも、答申をされるときには、ひとつ大蔵大臣にもちろん言われると思うのですが、その下準備をするのはやはり皆さんなんですね。その皆さんから出される案が、その左するか右するかということによって税制調査会の委員考え方もそこに多少右左にふれる場合がある。だから、大事なのは皆さんの態度なんだな、私はかつての経験から推して。そこで、いまあなたの御見解を聞いておきたい。  そうすると、税制調査会だって右のほうに向かったり左のほうに向かったりはできるのですね。あれ、ほんとうの税制調査会独自の見解じゃ私はないと思う。ある程度こう出てきている。だから、その証拠には、全部一〇〇%実行しなくたって怒った顔見たことありませんよ、税制調査会の委員の顔を。もしあれが諮問されて、何も大蔵省の意向なしに委員の見解だけであれをまとめて、真剣に審議してまとめて、それでこれが絶対なものだとして答申したら、あれを実行しなかったら、大蔵省にそれは食ってかかるぐらいの委員があってしかるべきなんです。ところが、ないのです。そういう点から考えても、それは一つ国民の手前、目をごまかすとは言いませんけれども国民を納得させる一つの方便の委員会のようになってしまっちゃいけないから、腹がまえというものをあなたに聞いておきたいと、こういうことなんです。だけれども、大体近寄ったことを言われたからこれでやめましょう、これ以上責めることは御気の毒だと思いますから。  委員長、私は以上で質問を終わります。
  46. 中尾辰義

    中尾辰義君 大体これは業界でいろいろと違うんじゃないかと思いますが、事情によって。自動車業界は大体通産省の言うとおり下げると、そういうことを言っているのでしょう。ところが、電機業界におきましては、いろいろな電気料とかその他の原料も上がっているし、人件費も上がるのだから、下げるどころか私のほうじゃ値上げをしたいのだと、こういうようなことも聞いているのだが、そうすると、大体減税額の半分ぐらい下がったらいいほうじゃないか、こういうふうにも考えるのですね。その点どうですか。
  47. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 中尾先生御指摘のような問題が現在通産省の指導過程においてもあることは事実でございますが、自動車はまさしくそりまま下げるということが公約されておりますし、ただ、家庭電気器具につきまして、おっしゃるように減税額そのまま下げにくい。その理由といたしまして、私どもが通産省を通じて伺い、また新聞を通じて知っておりますことは、非常に滞貨が多い。その滞貨は過去の高い税を負担したものではないか。したがって、四月一日から下げるということはなかなかむずかしい。せいぜい、したがって減税額の七〇%だけ引き下げたいというのが業界の希望でございます。  私どもは、これは値段というものよりも、まず物品税減税はここ当分とか何ヵ月という減税ではなく、法律によって保障された減税でございますし、滞貨があるということは一時のことでございますから、できるだけ減税額そのままを実現してもらいたい。電気料の値上がりというものがありましても、これは別の理由であり、別の時期に考えるべきじゃないかと考えておりますので、希望はいたしております。業界の主張は、いま申し上げました滞貨がきわめて多い、これもまた事実のようでございますが、したがって七〇%にとどめたい。私どもはこれは全部引き下げてもらいたいと、かように主張しておる状況でございます。
  48. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、減税額だけ下がらぬということになるのですね。あなたのほうは通産省の行政指導でやる、業界がそれに従わなかった場合にはどうなるのですか。別に処罰されるというわけでもないでしょう。これは。
  49. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) これも昨日来るる御説明申し上げておりますように、消費税は間接消費税といたしまして業者の自由なる価格形成を通じての転嫁を期待しておりますので、税法で引き下げなければならぬとか、減税があった場合に引き下げなければならぬとか、あるいは逆に増税がありましても引き上げなければならぬということができない性格のものでございます。そのあたり隔靴掻痒の感がするわけでございまするが、これはひとつ消費者の監視あるいは監督官庁の行政指導、これを通じてひとつ実現したい、かように思いまして、なお強力なる指導を続けてまいりたいと、かように考えております。
  50. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、相続税ですがね。物品税はそれでよろしい。大体それで減税の額だけ必ずしも下がるとは私も思えないように感ずる。  それでは、今度は相続税について。今度の相続税の改正は何年ぶりですか、これは。
  51. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 若干の課税最低限の改善は、三十九年、三十七年にございましたが、体系的に改正いたしましたのは三十三年でございます。これだけの大幅な根本的な改定をいたしますのは三十三年以来といってもいいんじゃないかと思います。
  52. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうすると、その内容は、今度は標準的な五人家族で現行の五百万が一千万円に上がった。ですから、一千万円までは税金がかからないと、こういうわけですね。そうしますと、あなたのほうのこの税金の積算のほうだ。相続税のほうの改正で、初年度は四十二億円減税額を見積もってあるわけですが、これは何ですか、昭和四十一年度に相続すると見込んであるわけですな。どういうふうにこれはいまから、相続するかせぬかわからぬものを四十二億と書いてあるが、これはどういうふうに……。
  53. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 御提出申し上げました資料の一六ページから一七ページを見ていただきますと、その関係が示されております。相続税におきましては、御存じのように、延納がございますので、これは百五十億円ばかりの平年度の減税額になりますが、四十一年に相続が起こりました分につきましては、延納の関係で、それは将来に繰り越される分が五年あるいは十年の延納制度のものがございますので、減税影響はそれほどでもないわけでございます。さらにまた、過去の相続に基づく延納分が四十一年度にも相当入ってまいります。その結果、初年度の減収額は、いま中尾先生御指摘のように四十九億八千九百万、こんなふうになるわけでございます。
  54. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、個人の場合、一千万円まで。この内容をもう少し具体的に詳しくおっしゃってください。五百万が一千万に上がった。
  55. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) これも一六ページに現行改正との関係につきましては比較対照が出ておりますので、ごらんになっていただきたいと思いますが、現在御存じのように、遺産取得につきまして基礎控除が二百五十万円でございます。そして相続人によりまする相続取得課税の制度を税額計算上とっておりますので、現在の法定相続人一人については五十万の控除がございます。そういたしますと、五人法定相続人がおりますと、二百五十万になりますので、合計五百万になります。そこで相続人が五人というのはおかしいではないか、夫婦・子三人ならば、夫が死ぬならば四人だという御疑問が持たれて御質問になっておられると思うのですが、私どもの相続の実績を見ますと、これは私は代襲相続の結果が相当入っているかと思います。長男の方が早く死なれますと、孫の方が二人も三人もおれば相続人になってまいりますから、それが入ってくる結果だと思いますが、四・五人が標準的な相続の平均的な実績になっておりますので、それを五人と見ますと、二百五十万と二百五十万の合計で五百万になります。そこで、今回は遺産に対します基礎控除を四百万にいたします。そして、法定相続人一人につきましては八十万でございますので、本来ならば、五人ならば四百万で八百万というふうになるのでございます。しかしながら、標準的な相続のうちには必ず配偶者がいるということが見受けられますので、そうなると配偶者につきましては、今回の御提案申し上げておりますように、相続につきまして、配偶者控除の制度を遺産について追加いたしました。それは二百万でございます。で、八百万に二百万足しますと千万。こういったことから、千万が課税最低限というわけでございます。
  56. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうすると、一人の場合は、子供が一人おって相続をする、そういう場合四百八十万、こういうことになりますか。
  57. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) さようでございます。
  58. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、統計的な面といいますか、件数で私聞いていますが、最近における相続の件数ですね、それで一人につきまして四、五百万程度、さらに三百万程度の額の相続をしたものはどの程度あるのか。全体の相続の何%ぐらいあるのか、そこら辺のところをちょっと。それから、できればそれ以上のものも……。
  59. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 現在までわかっております数字で一番新しいものが昭和三十九年の相続の実績でございます。これはまず遺産の数と申しますか、被相続人の数で一万三百六十五でございます。今回は私どもは一万一千か六千ちょっとと、大体半分ぐらいに件数といたしましてはいけるというふうに見ております。三十九年度の実績は一万三百六十五でございます。そこで、そのうち五百万以下の遺産の数は全体の一三・二%でございます。数で申しますと千三百七十二という数になっております。
  60. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうすると、五百万以下で大体一割という、こういう勘定ですね。その上のほうはどうなりましょう。額で示したら、どういうところになっておりますか。
  61. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) そこで、どの程度で申し上げますか、千万以下のところで切りますと、絶対数ではその上になお四千四百二十六という数字を足していただきます、絶対数で。割合では四三・七%でございます。
  62. 中尾辰義

    中尾辰義君 何が……。
  63. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) そこの全体を一〇〇といたしまして、五百万と千万との間がいま申しましたように四千四百二十六ということになりまして、その割合が四三・七であって、下からの累積は五六・九%とかようになります。簡単に申し上げますと、千万円以下の遺産の数が全体の五六・九%あるということでございます。
  64. 中尾辰義

    中尾辰義君 いまのは一人の場合ですね。
  65. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 私が申し上げておりますのは被相続人の数でございます。遺産の数でございますので、その下に——その相続する相続人の数を申し上げておるものではございません。遺産の金額で区分したほうが全体の富の傾向をあらわす。相続人の数を入れますと、どの程度金額になりますか、実際の取得金額がなかなかわかりませんでむずかしいので、私どもは遺産で計算いたしておるわけであります。
  66. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、外国の例はどうなっておりますか。
  67. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 現在も、本来ならば遺産で見ること自体が問題かと思います。これはシャウプ勧告によりまして昭和二十五年以来取得課税を実施したのでございます。この取得課税というのは外国にもないような制度でございまして、相続人が何人おろうが、実際に取得した相続財産に課税する。したがいまして、十人子供さんがおられましても、一人だけ相続いたしますと、   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕 それに対しまして累進税率を適用する。で、十人の子供で分ければ、分けるだけ税金が安いというシステムであったわけでございますが、そういったシステムは、わが国のような貧乏のところ、特に農業のように単独相続という形でいかないと農地が細分するような場合には酷ではないかというようなことが言われまして、現在のようなシステムに改められたものでございます。現在のシステムは、税率構成は取得者課税のたてまえはとるけれども、これは税額計算上利用する。したがいまして、実際に分けようが分けまいが、法定相続分で、相続人がおりますれば、それに基づきますところの民法の法定相続人で税額計算いたしまして、実際に取得いたしましたところに応じまして相続税を納めていただく。だれが何人どの程度放棄しようが、全く税額には影響しないようなやり方でございます。独特でございます。  外国では大体遺産課税のところが多いようでございまして、私の記憶では、西ドイツが遺産取得税のような系統をとっております。しかし、外国のような、弁護士の前で遺言によって財産をがっちり分けるようなシステムではこういったことが可能でございましょうが、わが国ではそういったようなことができないというので、三十三年以来、いま申し上げました、   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕 いわば取得者課税と遺産課税との中間みたいな形態をとっておりまして、これは外国にも例が見られないところでございます。
  68. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうすると、相続税みたいなものは外国にはないんですな。
  69. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 遺産に対します課税は、たいていの国はございます。相続税という名前は、もうそういった遺産税のことばの意味もありますし、シャウプの勧告にありました取得者課税意味もございますが、人が死亡し相続が起こる際に課税する財産税的なものは、これは資本主義国家ならばどこの国にも見られるところでございます。
  70. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、そういう税率はどうなる、税率。遺産税率、それを聞きたいわけです。
  71. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) これはもう各国によりまして税率構成も違っております。
  72. 中尾辰義

    中尾辰義君 大体二、三ヵ所。
  73. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 単純にまた比較することが非常にむずかしい。と申しますのは、たとえば遺産税でありますと、遺産税の場合も、わが国のように税率計算が取得者課税の場合では、税率を比較することも困難でございますし、さらにまた、直系親族や夫婦間では税率が安くしてあり、他人みたいな方が入ってきますと税率を高くしてきたり、非常な複雑なシステムができ上がっておりますので、単純には比較できませんが、英米は少し日本より高目であり、ドイツ、フランスは日本より安目であるといったことが、これは非常な前提を置かなければなりませんが、大ざっぱな姿ではないかと思います。
  74. 中尾辰義

    中尾辰義君 大ざっぱと言ったって、聞いててあまりはっきりしないでしょう。ですから、課税最低限みたいなものがあるのかね。大ざっぱというのは、大体どういうふうになってるのか、日本と比べたらどうか、そこら辺を聞いたわけなんだから。大ざっぱと言ったって、私らわからぬよ。
  75. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 課税最低限も、税率ももちろんあることは御存じのとおりでございます。たとえばアメリカでは遺産税でございまするけれども基礎控除は六万ドル、したがいまして、二千百六十万円の基礎控除があるわけでございます。しかしながら、このアメリカでは、夫婦間の財産関係をわが国よりもはっきりさすような相続制度になっておったり、これもまあ単純に比較することは困難でございます。が、六万ドルの基礎控除。それから、イギリスでは、免税点が五千ポンド、まあ五百万円、これは低目でございます。こういった免税点がございます。ドイツでは、これはもう五階級に分けまして、それぞれ課税最低限が違っておりますが、これらにつきましても、一番近い階級で、配偶者の場合には二十五万マルク、その他の場合は三方マルク、こういった形の基礎控除はございます。
  76. 中尾辰義

    中尾辰義君 ええ、けっこうです。
  77. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 相続税の問題、ちょっと聞いておきますがね。この相続税の税率を見ますると、六十万円以下の金額が一〇%というところから、ずっと百五十万、三百万、五百万円と続いていくにつれて税率がずっと上がっているのですね。ところが、一億五千万円以上ですね、七〇%という税率で、そのあとは十億になろうと二十億になろうと、税率が上がっていないのですね。これは何のためにここで打ち切ったのですか。
  78. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 私どもは最高税率は七〇%が適当であるということで、二十五年以来これは七〇%となっております。で、その刻みの限度をどこに置くか。確かにおっしゃったように問題であると思いますが、現在の遺産の構成等から見まして、一億五千万が適当であろうということで、一億五千万をこえますと七〇%にいたしてございます。七〇%というのは私は相当高率の税率であろう、かように考えております。
  79. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 しかし、六十万円以下金額が一〇%かかるというならば、私はもっと下のほうは税率を下げて、上のほうはもっと税率を上げるということが、これが私はほんとうじゃないかと思うのですよ。ところが、六十万円以下に一〇%税率をかけておいて、それで一億五千円以上は一切、それが二億になろうと、十億になろうと、税率を変えないという考え方ね、これはちょっと私たちは納得できませんがね。何で七〇%というものが適当だということに、どこに根拠があるか。
  80. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) まあおっしゃるように、税率構成につきましては、世界観とかあるいは経済観によりまして、各種の考え方ができ上がることはもうもちろんでございます。累進税をもう少し強くしなさいという考え方ももちろん出てくるわけでございます。ただ、一〇%の税率のあたりの刻みがこんなふうに小さな、六十万とか百五十万というふうになっておりますのは、このあたりの階層は千万という課税最低限影響が相当きいてまいりまして、このあたりは刻みが少額でありましても負担が高くならないようになるわけでございます。だんだん大きな金額になってまいりますと、課税最低限千万と申しましてもほとんど影響がないようになってくることは、もう所得税と同様でございます。
  81. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ありがたいことじゃないですか、それは。
  82. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) しかし、七〇%がどういう根拠かと申しますと、これは昨日も申し上げましたように、所得税率の最高税率との関係等から、いろいろな考え方が出るわけでございます。昨日も申し上げましたように、所得税の最高税率が現在七五でございます。これは住民税を入れますと八〇%になっております。
  83. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それだっておかしいんですね。
  84. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 所得税のほうが高いがいいか、相続税のほうが高いがいいか、このあたりは世界観の差異みたいな感じがいたすところでございますが、過去におきましては所得税の最高税率よりも相続税は高目でございましたが、現在の状況から見ますと、七〇%というのは私は相当高目のほうではないか。ことに一億円というところで——現行では一億円、改正の案でも一億五千万でございますので、所得税の税率等から見ましても、これは決して低いものではない。  さらにまた、もう一つは、徴税と申しますが、なかなかこの相続税というのは、きのうも申し上げましたように、申告だけにたよって税金を納めていただくわけにもいかない、ある程度調査をしていかなければいかぬわけでございます。ところが、所得税のように常時記録をつけていただいておる方々の営業者のようなところと違いまして、多分に資産家であり、その財産形態はきわめて複雑でございます。昨日も申し上げましたように、課税財産の大部分は残念なるかな不動産関係でございます。その他の現金とか有価券類はなかなか見つからない。そんなことを考えますと、あまりにも高い税率は所得税以上にこれは徴税の困難を招き、不公平の感が出てまいります。こんなことを考えまして、将来の方向といたしましてどの程度の累進率を強化いたしますか検討の問題だと思いますが、現在では七〇%ぐらいが適当ではないか、かように考えております。
  85. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 世界観の違いだと言ってしまえばしょうがないけれども、あなたの話を聞いていると、全く日本の大資本家、大金持ちの代弁者のような感じがしてしょうがないんだ、ぼくは。あなたは、低所得者たちが一千万円差し引きます比率は大きいと言う、低所得者が一千万円引かれて非常にありがたいと言うが、ありがたくない階級こそ非常にこれはうらやましい階級じゃないですか。一億五千万とか十億とか財産のある人たち、それは一千万円引いたってあまりこたえない、何らありがたみがないと言うけれども、そういうありがたみのないことならまことにけっこうなことで、そういう考え方自体がぼくはどうしてもおかしいと思う。やはりこれも高度累進課税にすべきもんだと思います。世界観が違うと言ってしまえばもうそれで話は御破算で、もうそれ以上ぼくも言う気持ちもありませんけれども、そういうものじゃないかと思う。  それから、もう一つ聞きたいのは、租税特別措置法で、会社が合併するでしょう、そのときに何というのですか、いわゆる合併によって税金が控除されるという点がありますね。ぼくが考えると、会社が合併したらそれだけ資本がふえるのでしょう、そうしたら税金をかけるべきだと思うのですよ、逆に取るべきだと。ところが、これを減らすというのですよ。  ひとつぼくはあなたに計算してもらいたい例があるのですが、最近聞くところによると、日産がプリンスと合併するわけですね、そうすると、日産の資本金は三百五十億です、それからプリンスが百二十億だ。三百五十億と百二十億と合併したら、三百五十億の日産が百二十億合併するのだから、百二十億資本がふえるということだと思うのですよ。そうしたら税金をむしろよけい取らなければならないはずなのが、控除するというのですね、合併に対して。そこらの点がどうもぼくはわからないのですよ。何のためかということね、そのわからぬということが一つ。それであなたのほうでひとつ計算してもらいたいのです。この日産三百五十億とプリンス百二十億を合併したときに、その合併による特別措置の軽減額ね、それは一体幾らになるか、ちょっと計算してみてください。
  86. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) まず最初の相続税の問題でございますが、私は世界観の相違というわけで議論をしないという封殺するというような意味を全く持っておりません。表で出しておりますように、現在の相続税は累進度が激しいものですから、これはもう考え方の相違といえば別でございますが、たとえば五千万円の遺産額で配偶者及び子四人の場合、今回の改正後でも二千四百六十三万一千円の税額が徴収される、約半分は持っていかれる。このあたりにまだまだ相続税のもう少し免税——須藤先生の言われたようにもう少し上のほうにきつくということになるかもしれません。しかしながら、まだまだわが国では一億円をこえますところの相続財産は少ないような状況でございますし、これはひとつ今後のわが国の富の蓄積の程度等に応じまして、また世の中の累進度に対します期待等を考慮いたしまして、確かに考えていかなければならない問題であり、所得税よりもむしろ相続税を強化しろという声のほうが強いかと思いますので、このあたりからひとつ検討してまいらなければならないと思います。
  87. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それから、もう一つ計算できましたか。
  88. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) まず第二の、合併に対します助成措置でございます。資本がふえるからむしろ税を増徴しなければならぬというお話でございますが、その御趣旨は担税力が強化されたからその部分だけよけい取ったらいいだろう、こういうお話かと思います。現在法人税は資本には関係なく、利益に対して課税することにいたしますので、利益がふえれば確かに利益に対して税はふえることは申すまでもないところでございます。ただ、なぜ合併措置を講ずるかという点は、これはたびたび通産大臣と大蔵大臣も申しておりますように、わが国の企業規模は、全く世界的なレベルで見ますと中小企業の段階のように見受けられるものが多い、これはひとつ国際競争力強化の見地から合併を進めたい。しかし、合併は御承知のようになかなかむずかしい。人的関係、特にお得意の関係がむずかしいわけでございます。そんなような社会的な要請がありながら合併がむずかしい。さらに、合併をした際には先生のおっしゃるようにコストが自然に下がるような場合もありまして、利益がふえてまいります。こんなような場合には社会的な要請に基づいて相当な犠牲を払いながら合併したということを考えますと、やはりひとつ税の面からもインセンティブを与えたほうがいいのではないか、こういった見地から合併助成のために税額控除の制度を設けたわけでございます。しかし、これも時限的な問題でございます。私は、こういうような要請がございますれば、できる限り早目に合併をしていただいて国際競争力を強化していただく、こういう気持ちを持っておりますし、そういった意味でのほんとうの助成措置であるというふうに御理解願いたいと思います。  ただ、利益等によりまして計算が繁雑でございますので、いま少し資料を整えまして計算さしていただければ、提出できるかと思います。     —————————————
  89. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま瓜生清君が委員を辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  90. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 非常に大きい遺産を持っている人たちは、うまく税をのがれる道を知っておるわけですよ。大体個人で相続するのではなしに、合名会社とか法人をつくって、そうしてうまく税をのがれてしまうのですよ、その人たちは。ところが、一千万円くらいの人たちはそういうことをするがほどのこともないし、またしないのですよ、大体。だから、その人たちは非常に税負担が重い感じがするのです。うんと持っている人たちはなかなか巧妙にのがれるのですよ。だから、そこはやはり考えていかぬと、全くあなたたちは大資本、大金持ちの立場に立ってものを考えているような感じがして、どうもわれわれには納得できない。だから、やはりくどいように言うけれども、これも世界観の違いだなんと言ってしまったら終わりだけれども、やはりもっと高度累進課税をすべきだというのが私たちの意見です。   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕  だから、きょうの御意見を聞いていると、まだまだうんと多額の財産者、高額財産を持っている人たちに対して、こんななまちょろいことではいかぬとぼくは思うのですね。  それから、できましたか、日産とプリンスの。
  91. 徳永正利

    徳永正利君 この審議の過程を通じまして、いろいろ減税案等についても質問があり、お答えがあったわけですが、私は減税の対象になるのはまだいいと思うのです。対象にならない零細な所得者、あるいはまたボーダーラインといいますか、その方々に対して、片方では減税をやって非常にけっこうだといって喜ぶ人もあると思いますが、税金も納められぬ人がたくさんおるわけです。これは減税案をいつもわが自民党の中でいろいろと審議するときに一番問題になることなんで、しかも、それに対して一体どういう政策をもって臨むかということがいつでも問題になって、大蔵省に行くけれども、なかなか金も出してくれぬし、思うような手が打てない。まあ、国会に出てきますと、野党の皆さんからおしかりを受けますけれども、私どもこれが一番つらいわけなんです。これはまた、主税局長にいまここで答えを出せと言っても、立場が違うから、出ぬだろうと思います。しかし、大蔵省の幹部の一員として、この点は十分やはり御配慮あってしかるべきじゃないか、かように考えるわけなんです。この点は、まああなたもやがて主計局長になり次官になられるのでしょうから、十分ひとつお考えをいただきたい。  それから、寡婦の問題には一応私は触れざるを得ねわけです。この間いろいろ質問があり、またお答えがあったわけですが、そのとき確かに、速記録を調べてみないとわかりませんけれども、大蔵大臣から、これはもう優先的に検討する、善処するという意味の私はお答えがあったというふうに耳に残っているわけなんです。私の耳に聞こえているわけです。これはいずれ速記録を調べて、はっきり明確にしておきたいと思いますが、後家ということばがあるが、後家は、男も後家だし、女も後家だろうと思う。寡婦というと、これは女だけ。しかも、女の中でどういうものを税の対象として税法の中で寡婦と言っておられるのですか。
  92. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 所得税法の二条に定義されております。二条の三十二号に「寡婦」とは次に掲げる者で、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有し、かつ、老年者に該当しないものをいう。」、イといたしまして、「夫と死別し、又は夫と離婚した後婚姻をしていない者」、ロとして、「夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもの」、こういうふうに定義してございます。
  93. 徳永正利

    徳永正利君 そうすると、子供がいる。子供が成年に達した。しかし、主人のおらぬ、いまの定義におっしゃいましたその未亡人は、寡婦であるわけですか。
  94. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) その前提条件といたしましては、いわゆる課税最低限以下の者ならば扶養親族に該当する、こういうふうに政令の十一条に規定されております。
  95. 徳永正利

    徳永正利君 こんなこまかいことを大局長に質問してお答えいただくのは、まことに恐縮でございますが、そこで、いままで寡婦控除というのがいろいろな変遷をたどってきているのです。あるいはまた、戦争で主人がなくなった者に対しては特別な措置が、寡婦控除がとられた時代もあるわけですが、いまは一律でございますが、この前の御説明によりますと、何か配偶者控除と肩を並べる程度までひとつ考えなければならぬのじゃないかというようなお話もあったようでございますが、先ほど柴谷委員からの御質問のように、やはりこれは税制調査会にまかせ切りで、よしなにお取り計らいいただきたいでは、私は答えは出てこぬと思う。やはり何といっても税制調査会の事務局は主税局でやっておられるわけでございますから、主税局では大体の、こういうようなものに対してはこうあるべきではないかと思いますというような意見は、調査会に答申を求める場合に、原案として必ずお出しになると思うのです。そこで、いろいろくどくど申し上げませんが、そういうような原案を今後研究し、お出しになるお覚悟があるかどうか、この点をひとつお伺いいたします。
  96. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 先般、配偶者控除につきまして、徳永委員指摘のような質疑応答が、木村委員と私どもの大臣との間にあったのでございます。その際に、配偶者控除につきましては、御希望の線に沿って十分検討してみるというお話でございました。そのときに、委員長みずから、寡婦もというお話もございましたことを、私も記憶しております。ともかく課税最低限について、基礎控除、配偶者控除、さらにまた扶養控除、いずれにいたしましても非常な注文が多いし、もう少し引き上げろということがあることは、御承知のとおりであります。  寡婦につきましては、もう御指摘のように、古くから担税力と申しますか、やはり現在のわが国の社会におきまして、男が働いているのと寡婦が働いているのと、全くその費用も苦痛も違うであろうというようなことで、しんしゃく的な要素といたしまして寡婦控除が設けられたのでございます。それが税額控除の形で行なわれております。税額控除、現在六千円でございますが、これがなかなかどうも理解できないような感じを皆さん方に与えているのではないか。やはり所得控除ならば、所得に応じまして、たとえば課税最低限が一万上がる際に、その他の所得について引き上げるというようなことになるのでございますが、税額控除では、税額控除でございますから、むしろ所得控除が引き上げられ税率が緩和されまして減税になりますと、むしろ減税割合は高くなるという説明を立てて御納得いただいておりますが、またなかなか御納得いただけない。やはりもう少し簡単に御納得いただける方法はないものか、ひとつぜひ検討していきたい。そうしてまた、おっしゃるように、同じ扶養親族を、夫が一人配偶者を持ち子供三人の場合と、寡婦が四人の扶養親族を持つ場合でどうなるかという、確かに考えさせられるような御質問がかつて徳永委員長に提起されたことを記憶しております。このあたりも、税額控除になりますと、下のほうは得でございますが、ある程度の上へ行きますと、所得控除のほうが得であるというような、欠陥と申しますか、長短がございまして、このあたりもひとつぜひ検討してみたい。  現在の税額控除の制度は、源泉徴収とか申告とか、そういった便利を考えてできておりますが、いま申しましたような御批判もございます。税額控除といたしますと、簡単に引き上げにくい面もございます。所得控除のほうがむしろわかりがいいかというような面もありますので、このあたりを含めまして、いまおっしゃったような低額所得者に対して恩恵の行くようなことをひとつ念頭に置きまして、ぜひ検討してみたい、かように考えております。
  97. 徳永正利

    徳永正利君 いまの御説明の中にもございましたように、だんだん、この八十万円か九十万円か収入のある者が、逆に寡婦のほうがよけい所得控除に変わっていきますから、税金を納めなければならぬということが出てくるわけなんですが、その寡婦控除なるものをつくった、税法の中に一項目入れた趣旨というものは、私は前段に局長が御説明になった趣旨でできていると思うのです。それならば、逆に、寡婦控除を受けられない、所得控除に移行していく場合、そのときによけいな税額を納めなければならぬという逆の結果になるということは、何かそこに割り切れぬものがあるわけです。お答え要りませんが、今後ひとつ十分御検討をいただきたいと思います。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕
  98. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 先ほど須藤先生から御質問がございました、日産とプリンスの合併によりますところの税額控除の金額は幾らかという御質問がございました。計算でございますので答えが留保されておりましたが、非常に大ざっぱな計算でひとつぜひ御理解願いたいと思います。  合併条件等によりまして、資本金が幾らになりますか、まだ詳細には出ていないように思います。ある程度減資するというようなことを言っております。それが一点。第二は、これは合併後の利益を一つ想定しなければなりません。そこで、合併後の利益はどうなるかわかりませんから、いまの合併前の日産、プリンスがあげておる利益がそのまま横すべりするという前提を置くというようなことを考えまして、一応計算いたしますと、七千三百万円の税額控除が行なわれる、かようになります。
  99. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼくのほうでも計算してみたのですよね。そうすると、七千三百四十七万円という数が出ている。それじゃ、こちらの計算が正しかったということになります。わかりました。
  100. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 時間がありませんから、端的にひとつお答えいただきたいわけですが、スクラップ化の問題ですがね、スクラップ化の減税、これはよくわからないので、少しスクラップ化の問題でこういうところのものを減税するのだということを、大略の説明をお願いできませんか。
  101. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 現在租税特別措置法におきまして特別償却が終わりになることは御存じのとおりでございます。これは昭和二十七年に設けられたのでございますが、日本の産業の近代化、合理化を進めるというわけで初めて進められたものでございます。設けられたわけでございます。そのときの考え方は、新しい近代的な機械を取得するならば、その取得金額の半分を所得控除するという形で設けられたことは御存じのとおりでございます。これは新規機械取得の奨励でございますが、今回とろうと申しますのは、むしろ陳腐化した機械の廃棄を、陳腐化、老朽化した機械の廃棄を奨励したい、そして日本の産業の近代化、合理化をはかりたい、こういう趣旨でございます。  御存じのように、一例を工作機械にとりますと、大企業が使いました工作機械は、依然といたしまして中小企業が中古機械といたしまして取得いたしまして、機械工業界の中に残っていることは御承知のとおりでございます。四〇%はもう昭和二十年前の取得とかというようなことをよくいわれております。それほど機械産業の中には工作機械が滞留いたしておりまして、古い機械を使っておる。まあそのために中小企業の近代化がおくれていることは、よくいわれることでございます。しかし、なかなかこれは安く買ったものであるからというような理由で廃棄いたしません。やはり古いものでも使っていこう、こういったことが実情でございます。  そこで、今回は、ひとつ設備過剰の状況もこれあり、さらにまた、いま申しました近代化の要請を加味しますと、税金の面からひとつ刺激を与えて、思い切って廃棄さそう。これがまた中古機械として、その次の段階になりますと、どこか次の産業の中に滞留するのではつまりませんので、ひとつ思い切って税の面からインセンティブを与えよう。そのインセンティブと申しますのは、その取得機械の一〇%を税額控除にしよう。しかし、その限度は、財政上の見地もございますので、その企業の納める税額の一〇%を限度とするといった形で、スクラップ化の助成措置を設けている次第でございます。
  102. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますとね、一定の産業と、こう一つのワクがかかるのですね。ですから、その産業とは何になるのかというのが一つと、それから、あなた老朽化ということを言いましたから、そうすると、工作機械は少なくとも何年使ったということになってこなければいかぬと思うのですよ。もしそれが二年だったとか、五年だったとかでもいいのであるというようなことを考えておられるのか。少なくとも政令でいろいろなことが定まってくる。たとえばそれは資産償却をやっても、なおかつ残っておるものをいうとするならば、十七年とか十八年ということにならなければならない。そういうふうなことをもう少し、どういうふうな大体政令の内容が出てくるのか、どういう機械か、どういう産業がまず指定されて、その中ではどんなことをいうのか、そういうようなことをもう少し説明してください。
  103. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 二つ御質問がございました。第一の、どういった産業がこのスクラップ化の助成措置の対象になるかという御質問でございます。現在、私どもは各省と相談いたしまして、まあ一番典型的な例は機械製造業でございますが、まあその他相当な数の業種を指定しようといたしまして、現在政令で準備中でございます。たとえば紙パルプ製造業、それから紡績業とか、数はたくさんございます。それから、通産省関係だけでございません。農林省関係にもいつも問題になります製糖業、これもまた過剰設備であり、陳腐化した設備をもとにしてつくっておりますが、こんなような業種を現在政令で準備中でございます。  この指定の基準が問題でございますが、これは多分に企業合理化促進法の規定によりまして、企業合理化促進法の規制のもとに、産業ごとにスクラップ化計画をひとつつくっていただきたい、かように考えております。そういった、しかもそれを主務大臣の承認を受けたもの、こういうことにいたしますので、すべての産業がこれに該当するわけではございません。  第二には、いま申されました二年や何年使ったぐらいでは意味がないではないかというお話、これはごもっともでございます。この制度は実施も非常にむずかしいのでございまして、あまりまあ古くなりまして、当然落とすべきものを落とすというのでは、これはまた税のメリットを与える必要はないと思うのでございます。しかしながら、また全く新しい機械を落とすということも考えておりません。考えの基準は、なかなか各産業によって、ケース・バイ・ケースによって判断されるべきだと思いますけれども、インセンティブを与えて落とさせたならば、除却させたならば、スクラップ化させたならば、その産業が設備過剰の状況がなくなる、さらにまた近代化が促進されるといったものを考えております。したがいまして、もう当然耐用年数が尽きたからこれを落とすというものは考えておりませんし、また一、二年使ったものを落とすということももちろん考えておらない。これは各産業産業によってスクラップ化計画をつくっていただきまして、承認をしていただいたものに対して適用しよう、かような案でございます。
  104. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは一つは不況カルテルの問題とからんでくる。カルテル行為をやっているようなことになる。ところが、あなたの説明によると、過剰設備ということをウエートに置けば、大企業が大体中心のスクラップ化です。そうじゃなくて、あなたが言うように老朽化のほうにウエートを置いてくれば、いろんな産業に全部やってもらって、中小企業の大体合理化を促進していくんだというようなところにウエートがあれば、私は年限というものが中心になってくると思います。どちらにしておくのか、それは各産業の自主性におまかせしますといって、いいかげんな話だよ、これでは。実際どちらにウエートがあるのか。だから、私は過剰設備をやったんだといえば、これをすべてあおってきた政府の責任があるのだから、それの罪滅ぼしにこういうことに対してはスクラップ化するのだということも一つ考え方だと思うわけですよ。しかし、それなら、いま言ったように大資本の恩典だけの問題なんです。中小企業の人たちはその業種に入らなくなってしまうのですよ。だれを対象に考えたのか、そこのところを明確にしてもらいたい。
  105. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 過剰設備問題ももちろん考えておりますが、おっしゃったように、産業の近代化が中心でございます。典型的な事例は、最初申し上げましたように機械工業でございます。機械工業の中の工作機械が中心となりますことは、成瀬委員も御指摘のように、中小企業にメリットが相当いくだろう、かように考えられます。
  106. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、これはまだ通産省あるいは関係があるところの農林省等ともあなたのほうは政令の打ち合わせもしていないんですか。これからやるんだ、こういうことなんですか。
  107. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 法律の御審議もだんだん進んでまいりましたし、私どももその準備はもうどんどん進めております。しかし、最終の業種を完全に政令によって指定していこうという段階までは至っていない。まだまだ話のつかない業種もたくさん残っておりますし、現在のところは一応きまったものはございます。しかし、これが最終のものではない。業種の中にはこういったものを追加してもらいたいということが、まだまだ各省から来ておりますし、何ぶんまだ法律の審議過程でございます。十分私も煮詰まった議論に参加するまでに至っておりませんので、そういった意味で申し上げておるつもりでございます。
  108. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 とにかく心配することは、法律は通ってしまった、政令にまかされたということになると、国会では議論する場がなくなってしまう。そこで、私は主張しておきたいんですが、少なくとも過剰設備、いわゆる不況カルテルにからんで、不況カルテルをやったところは完全な過剰設備ですね。そちらにウエートを置いてやるのか、それとも中小企業の合理化、近代化にウエートを置いてやるのか、並列だというのか、そこの辺のところを明確にしてもらいたいわけなんです。
  109. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 趣旨はもう、先ど申し上げましたように、産業の近代化がねらいでございます。しかしながら、過剰設備の除去ということも私は一つの大きな要素だと思っております。
  110. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、私が主張したいのは、いま中小企業、零細企業、ほんとうに輸出等に貢献しているのは中小企業の人が多いのですよ。しかし、いろいろ税法上からいうと、恩典に浴しない人が多いのですよ、中小企業の人たちは。今度はひとつ工作機械で償却年限の越えたものは、これはスクラップ化しておけばいいんだというような、年限をウエートに置いてもらいたいと思うのです、年限にウエートを。そうすればある程度中小企業の人たちも助かると思うのですよ。それをそうじゃなくて、業種で機械を指定してしまうと、同じ旋盤を使っておっても、六尺旋盤でなければいかぬということになると、どうにもならなくなっちゃう。ターレットでも同じになってしまう、ミーリングでもそういうことになると思います、フォーミングでも。おそらくあなたのほうで言う高い大きなものをやれ、こういうことになる。そうでなくて、がたがた小さいものまで使っている人たちのめんどうまで見るということがここで約束できるかどうか。
  111. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) ただいまの御主張も十分うなずけるのであります。しかし、この運用は非常にむずかしい点がございますし、さらにまた、やはり全体といたしまして、産業の近代化をねらっておったわけでございます。したがいまして、どんな小さいものでも除いていいじゃないか、税金さえまかったらいいじゃないかというようなことは、ちょっと申し上げにくいと思います。各産業によりまして、ひとつぜひ近代化できるような合理化計画をつくっていただきまして、主務大臣の認可を得たものに対して適用する、こういったことをいま申し上げるほかないかと思います。  しかしながら、御指摘のように近代化設備の特別償却と違いまして、あの設備は確かに合理化機械で相当大きな合理化するものを指定いたしましたが、それとは私は違っております。特別償却は、それでも中小企業につきましては近代化、合理化機械と言えるけれども、大企業にとってはそれほどでもない。近代化、合理化機械と言わないまでも、中小企業では特に近代化のメリットが認められるならば、合理化の対象として指定し、特に中小機械の特別償却を設けたような私は気持ちを持っております。しかも、先ほど申し上げましたように、特別償却とはこの制度は違った趣旨を持っております。御希望の点は十分加味いたしまして運用してまいりたいと、かように思っております。
  112. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 また、私は政令が出たときに、あなたがそういうことに対して文字どおり約束したかどうかということを国会に報告していただいて、十分ぼくらにもこういうふうにりっぱにやったのだ、ほんとうにスクラップ化なんだ、いいものをスクラップにするのじゃなくて、スクラップに適するものをやっぱりスクラップ化したのだ、そうして中小企業等にも恩典が行ったのだと報告して、大企業偏重にならぬようにしてもらいたい。これは十分注文をしておきたいのです。  次に、お尋ねしたい点は、一億以上の資本構成改善の問題についていろいろなことがございまして、須藤君が先ほど資本の合併のことについていろいろのことがあるのじゃないかと。資本構成改善の促進のために九十六億減税を予定されておる。それが中小企業のほうへ行くと、貸し倒れ引き当て金に大体相当するだろう。額も比べてみると九十四億だ。大企業、一億以上、一億以下とバランスがとれておるというような説明になったと思います。事業所の数でいうとどのぐらいの比率になるのですか。
  113. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 一億以上の法人の数は私どもは約四千と見ております。一億円以下の法人の数が納六十五万でございますか、その程度と見ております。
  114. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、算術計算だけでいきますと、大ざっぱにいうと、四千の事業所で九十六億の減税の恩典を受けて、片一方は六十五万の事業所で九十四億の恩典を受けて、えらい違うのです、思典が。片一方が一〇%というけれども、片一方は二〇%、税率から見ると、何か中小企業にもあったかいようにも見えるけれども、ほんとうに体質改善を要求されるのは、ぼくは中小企業のいわゆる一億未満の人たちにウエートというものがあってしかるべきじゃないかと思うのです。なるほどいま申しましたように一〇%と二〇%というのがあるから、これでいいじゃないかというのじゃ、少しもの足りないと思うが、政府は、中小企業の振興とか、いろいろなことをしょっちゅううたわれるけれども、実際出てくるものになると、どうももの足りぬと申しますか、そでにされておるように思われてしようがないのです。いやいや、そうじゃない、十分これでできておるんだというふうに考えておられるのかどうか。租税特別措置法の中でやられることが、どうも中小企業に対しては申しわけにめんどうを見ておりますね。租税特別措置法で見ておりますのは、どうも付録的な、申しわけ的なだけに受け取れてならぬのです。私の納得が、おまえの受け取り方が違うというなら、ここで納得のいく説明が承りたい。
  115. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 成瀬先生のおっしゃるように、確かに数におきまして四千と六十五万ということでは、一社当たりのメリットの行き方が違うではないかということが言えようかと思います。このような考え方につきまして、私は種々申し上げましたが、今回の特別措置の中のみならず、法人税の基本税率を通じましても、中小企業に配意したことを申し上げました。中小法人と大法人とを先ほど申し上げましたように一億円超でやり方を変えておりますことがそのあらわれでございます。前回も申し上げましたが、法人税収約九千億のうち六〇%は、成瀬先生御存じのように四千の法人が納めておるのでございます。四〇%が六十五万の法人が納めておる。もちろん、欠損が十五万ばかりございまして、五十万ばかりが利益会社でございますけれども、資本金階層別に見ますと、そういうふうな姿が見られるのでございます。過去のような減税のしかたでは、単純にいきますと、やはり四千の法人に六割の減税が行き、六十五万の法人に四割の減税しか行かないということになるのでございますが、今回は、その立場を変えまして、むしろ六割近い減税を六十五万の法人に持っていき、四〇%程度減税を大法人に持っていった、こういうことをぜひひとつ御理解願いたい、かように思うのでございます。  第二には、資本構成の改善の促進の問題も、確かに中小法人に適用することも考えられない面ではないのでございますが、しかし、これは非常に大法人と違いまして、資本市場には遠い中小法人でございます。社債にもまさしくほど遠い法人でございます。そんなような関係から申しますと、私は中小法人あるいは中小企業はそんなにむずかしい減税のしかたよりも、端的な減税のほうがいいではないか。税務署とのトラブルがないような減税のほうがいいのじゃないか。そんなような意味で、繰り返しておりますように、軽減税率の制度は今度は中小法人だけにする。しかもまた、軽減の幅は大法人が二%であるのに三百万円以下のものは三%にするというような簡単な方法で、さらにまた貸し倒れ引き当て金もひとつ簡単な繰り入れだけで足りるといったほうが、より中小法人の税制としては向いておるのではないか。しかし、一方大法人はある程度努力しないと、これは自己資本の充実のためにはたいへん努力が要ると思います。一%改善するにも相当な努力が要る。そんなようなことから見ますと、大法人のほうは少し努力したものに初めて減税が行くというような税制をとったほうがいいのではないか、こういう気持ちで始めたのでございます。その他種々ございますが、いま申しましたことから、ぜひひとつこの点は御理解願えれば、かように思う次第でございます。
  116. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 どこでも、切ったときは、境が一番問題だと思う。そこで、一億と切りますと、普通七、八千万の会社というものが相当あるわけです。あなたのほうでいろいろと計算をされて、中身がどうなってくるかということがあると思いますが、大体今回の貸し倒れ準備金の片一方は引き当て金をやっておるということで、大体ここで資本金八千万ぐらいのところと一億のところと、どっちが得になっているかという計算をされたことがありますか。
  117. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 具体的に資本金額の八千万というのをつかんで計算をいたしたことはございません。
  118. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  119. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  120. 植木光教

    植木光教君 物品税改正に関連してお聞きしますが、身体障害者に対する物品税の免税措置について、まあ今回盲人用のテープレコーダー及び時計について免税、課税を廃止しようということのようで、非常にもう身体障害者は喜んでいるわけですが、さらに肢体不自由者の乗用自動車ですね、最近はまあだいぶ肢体不自由者も自動車免許を取っているわけですが、その乗用車取得の際の課税免税についていろいろ従来お願いをしてきたわけですが、今回どういう措置をとろうとされているか、お聞きをいたしたいと思います。
  121. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 現在、物品税法はその委任を受けまして政令以下の段階におきまして特殊用途免税という制度がございます。御要望の線はその制度の活用によりまして、これはまあぜいたくなというふうに考えられるものでございませんから、身障者が活動するに不可欠なものといたしまして考えられますので、免税の方向に考えたい、免税の方向の措置をとりたい、かように考えております。
  122. 植木光教

    植木光教君 手元に配られました政令案の要項の中には、さっき申しました盲人用のテープレコーダー及び時計が課税の廃止の中に入っておりますが、いまの肢体不自由者の自動車については入っていないのですけれども、そういう方向に向かおうとしているということですが、もっと具体的におっしゃっていただきたい。
  123. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 現在、先ほど申し上げましたように、物品税法の免税の方法は政令にも免税点が主としてございますが、政令のまた委任を受けまして、省令の段階におきまして免税の方法が規定されておりますので、おっしゃいました身障者の自動車につきましては、大蔵省令におきましてこの物品を指定いたしまして、特殊用途免税の形で実現したい、かように考えております。
  124. 植木光教

    植木光教君 盲人用のテープレコーダー、時計は政令に書く、いまの自動車の問題は省令に書くのだということはどういうことですか。
  125. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 盲人用のほうは、御承知のように、一般的な製造する段階におきまして盲人用としてのはっきりしたものがつくれるということが政令において規定できる理由でございます。一方、身障者のほうは、用途という形で区切ったほうが、自動車の型が根本的に変わったものでもございませんので、省令で規定して特殊な用途に規定される。そしてまた、わずかな例外の方でございますので、免税証明書を交付するといった形で免税したほうがより適切ではないか、こういうまあ物品税の体系から来ておるものでございます。
  126. 植木光教

    植木光教君 いま検討されている範囲内でどういうような省令になるか、一応案でけっこうでございますから……。
  127. 吉田冨士雄

    説明員吉田冨士雄君) 省令のこまかい技術的な問題でございますので、私から御説明申し上げたいと思います。  現在、先ほど局長のお話のように、特殊用途免税で、たとえば音楽学校の生徒がピアノを買うような場合には、やはり省令で規定してございます。ちょうど基本的な考え方としてはそれと同じような一定の条件の場合に、こういう場合には自動車につきましてまけましょうということで、現在厚生省の担当局と折衝中でございます。  その内容として現在やっておりますのは、まず第一に、身体障害者の手帳を持っておられる方で一定の級以上の人、いま六級がいいかどうかということを検討しておりますが、それが第一でございます。それから、自動車の運転の免許を持っておられる方。それでその免許に条件がついてございます。こういうような自動車の場合には運転免許をしていい、その運転免許の条件に沿って、車の規格を改造した場合。車の大きさは千五百CC以下、大体コロナとかブルーバード級まではよろしい。もう一つは、そういう身体障害者の免税の車であるということを表示した車であること。この条件によりまして、担当の厚生省と現在交渉中でございまして、大体その線でまとまる予定でございます。
  128. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 局長、先ほどの続きの問題ですが、これはまたいろいろなことでお伺いをすることにして、今度の法人税なり、あるいは租税特別措置法と、いろいろと減税をやられて、その恩典が、一つは、産業政策的に見て、これがいい悪いの批判もあると思いますが、そういう色彩を帯びているものだと思います。こうやってやられると、倒産をしかけたような人に対して非常に私はありがいことだと思うのです。ところが、もうすでに、自己の責任ではなくて、実際、手形等で倒産してしまった気の毒な人が相当数あるわけなんです。たとえば、月に何千件というように非常にあるわけです。そういう人に対しては、何か特別なあたたかい手が今度の税制上差し伸べられておらないように思うんですが、これは何か特別な考えがあるのですか。
  129. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 法人税は利益があがった場合の課税でございます。倒産してしまってどうにもならないものに法人税でどうだといっても、なかなかむずかしいような気がいたしますが、成瀬委員、何かお考えがあって言っておられるのか、ちょっと私も理解しがたいのでありますが、お伺いしたいと思いますが。
  130. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣のまねしてはいかぬです。私が特別のものがあるとかないとかというのじゃなく、たとえば所得税のほうは翌年に納めるようになりますね。ですから、そういうような手も考えようとすれば考えられると思うのです。問題は、私のほうでどうこうというのじゃなくて、政府としてこの資本構成の問題なり、あるいは引き当て金等を今度いろいろとやられる。そういう点はいろいろな意味で私は意義があると思うのです、いい悪いは別として。額が多い少ないは別としてあると思うのです。それだけせっかくいろいろとお考えになるならば、私は、自己の責任で過剰設備をやってしまって倒産してしまったというのはやむを得ないと思う。しかし、そういうのじゃなくて、全く自己の責任じゃなくて——まあ自己の責任になるかもしれませんが、手形をそんなところで取引したのが悪いから。何がなし、自分が良心的に一生懸命やったのに、不渡りのために金が……。たとえば山陽特殊鋼の倒産のはね返りで倒産してしまったというものに対しては、これは相当、いまも所得税でいろいろなことがありますよ。あると思いますけれども、延納する形があったと思いますけれども、何かそういうようなことで、私は大蔵当局として当然お考えになっていることがありはしないか。それがこうこうで今度はできなかったんだ、こんなような結論がでるかと思って実は期待したのです。率直にいって、私は特別な問題があるわけじゃありません。何かお考えになってしかるべきじゃないかと思うんです。
  131. 塩崎潤

    政府委員塩崎潤君) 御指摘の点は、私どもも、いま申し上げましたような法人税が利益課税の見地でございますので、あまりそういった角度からの検討は今度はいたしませんでした。しかし、現在、国税徴収法等におきまして、徴収の猶予、あるいはそういった場合の税の減免とか、担税資産がなくなったような場合には、過去に納めるべき税のたな上げ、あるいは徴収猶予という形があることは御存じのとおりでございます。私どもはそんなようなことがあるからと思ったわけではございませんけれども、現在の段階ではそういったことで処理されるべきではなかろうか、かように思っております。  なお、そういった苦しい企業に対しまして、たとえば繰り越し欠損期間をどうするかとか、あるいは貸し倒れの基準をそういったことにならないようにどう考えていくか、このあたりはひとつ研究問題であろう。たとえば債権償却引き当て金の、会社更生法を適用の場合には半分ということになっておりますし、国税局の承認を受ければそれ以上でもいいことになっておりますが、そんなような考え方をどういうふうにしてまいりますか。倒産という事例に限らず、倒産前の企業について支払い能力に合った法人税をどういうふうに組み立てるか。なるほど難問は残っておるかと思いますので、今後とも検討してまいりたい、かように存じます。
  132. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 会社更生法の適用ができるような会社はしあわせだということを普通いわれるわけです。ですから、そういうような点について私は法律でどうこうしなければならぬというような問題もあるかと思いますけれども、緊急にそういうことがもしできるとすれば、政令等で何かそういう人にも若干あたたかい手が差し伸べられるようなことをぜひ早急にやっていただきたい。これは現に倒れようとしておるものが何千件もあるわけでありますから、ひとつお願いします。  大臣がお見えになりましたから、私は輸出振興の問題についていろいろお尋ねしようと思ったが、時間がありませんから、大臣に大づかみな話として伺いたいと思いますが、この間中尾委員質問かなにかに量の問題よりも質の問題、こういうようなお話がありましたが、そういうようなことも、私はいろいろなことをいえば、結局輸出がいいことになると思います。結局、借款でやってくることになっていくと思います。これは何といったって低開発国と日本との関係になってしまうが、やはり私は先進国のスタイルに、いわゆる水平貿易——先進国同士でやっていくというようなふうになってこなければならぬと思うのです。そういう立場に立って日本の輸出をどういうふうに今後伸ばしていくかということが、国策上私は非常に必要だろうと思います。もちろん、この問題は通帳省の仕事だと言われればそれまでかもしれませんけれども、実際、政府として今後とられようとする、あるいはいままだやっておられないけれども、こういうようなことをしたら、そういう先進国家に対する関係の輸出が振興されていくのだというものがなければならぬと思うのですが、こういうようなことには大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  133. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 成瀬さんのお話、私はまことにごもっともなことだと思います。つまり、いまの日本の貿易構造を考えてみますと、アジア諸国が三〇%ぐらいのシェアになっております。アメリカが三〇%から三五%ぐらいのシェアになります。ところが、アメリカよりは人口も多く、国民総所得も多く、また経済活動、消費力も大きいEEC、これが非常に少なく十何%ぐらいになりますか、一〇%台のパーセンテージにとどまるわけです。ここのところに日本の貿易の今後の市場拡大の余地というものが非常に私はあると思うのです。  ところが、EECというのは、EEC諸国の域内繁栄ということを考えておる。そういう状況もあって、日本に対しまして、いろいろな輸入制限措置が加えられておるわけであります。日本では相当努力をしまして、ドイツにつきましては、これが相当撤廃することに成功したわけです。残っているおもな国がフランス、イタリア、これによほど努力をしなければならぬ。とにかくあそこは日本の貿易の市場として非常に今後重大な地域である、そこに着目をする必要があると思います。  同時に、低開発国、これは低開発国の購買力が増強されるということが、また日本の輸出の一つの市場となるわけです。これは私は日本の立場からいうと、援助、つまり経済協力、こればかりを頭に置いてはいかぬと思います。つまり、向こうから物を買ってやる、これが何よりの一番の協力である、こういうように考えるわけであります。そういうようなことで、あるいは品物によりますが、長期的な買い付けの契約をしてやりますとか、そういうようなことで、経済協力をするにいたしましても、常にわが国の貿易を伸長させる、そのためには向こうから物を適当に買うのだというところを機軸に考えていかなければならない、こういうように思っております。  お話の大筋はまことに同感でありまして、そのとおりに努力いたしたいと思います。
  134. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実際にどういうふうになっているか、政府努力しているのでなくして、実際は商社なりあるいはメーカーがヨーロッパ等に行って、いろいろ努力するわけですね。そうしまして、努力をしてやってくると、それではおまえはそこまで行って調査をしてきた、そういうようなものはぜいたくな旅費であったとかなんとかいって、交際費がチェックされてくるわけですね、実際問題として。あるいは社長が行かないから、今度は二人くらい社員を行かせる、そういうようなことでいろいろ努力するときに、今度は片一方のほうでは、そういうものは認められないというようなことがあるんだが、実際は相当外貨をかせいでいる役割りを果たしている。しかし、LCが来たということになると、大商社にまかせなければならない。日銀の保証がないために、大商社にやる。そうすると、大商社はそれで行くことになるのですが、実際陰で見えないそういう努力をしている人たちがあるのですから、これは税務行政上、そういうものについては交際費なら交際費を認める、あるいはそういうことは必要経費を見てやるというようなことを、ここに国税庁長官もお見えになりますから、私はぜひそういうことをしてもらいたいと思います。  そうしませんと、ほんとうに、何というのですか、死にものぐるいで、それは自分の会社も大事だ、しかしそのことが非常に外貨かせぎになっているのでありますから、あまりそういうことに対してきびしく追及されて、おまえ、そこまで行かなくともいい、旅費が高過ぎる、何でおまえファーストで行くか、セカンドでいい、ファーストに乗る必要はないじゃないかということで、そういうきびしいことをやられるわけです。そういうことは私は行政指導として心得てひとつやっていただきたい、これは要望でございます。  それから、次に、新聞を見ますと、盛んにインドネシアに対して経済援助、いや慈善事業ですか、いろいろなことをやるやると言って、相当気前のいいことを言っておいでになるわけですが、そういうことも私は頭から否定するものではございません。いま何か話は、もうすでに外務省なり大蔵省とできているものなら、一応お聞かせ願いたい。
  135. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) インドネシアでは、新しく内閣の改造が行なわれたことは御承知のとおりです。改造後の新内閣から日本に対して援助の要請がある。どういうことかというと、あそこは非常な食糧不足である。それから、水害があったわけであります。その災害対策、そういうようなことで、ほうっておくとたいへん社会混乱になる、こういうので、日本に対して何がしかの援助をしてもらいたい、こういう要請があるわけであります。それに対しまして、きのうでありますか、関係者が集まりまして相談したのですが、その結果、日本としては、米を一万トン、それから綿布を五千コリ、どれくらいになりますか、二百四、五十万ドルになるんじゃないかというふうに言っておりますが、現物をもって援助する、こういうふうにいたしたいということをきめて、向こうに通報してやろう、こういうことになったわけです。  それで、なぜ急ぐか、急いでやったかといいますと、配船の関係があるわけです。米の問題なんですが、米がきのうの時点できめて手配をせぬと、次の船便が六、七月ごろになる。三カ月近くおくれると、こういうのです。そうすると、向こうの端境期に間に合わない、こういうようなことがありまして、急速米一万トン、それから綿布、前から言っておるのでありますが、非常にこれも困窮しているからというので、ついでと申しては誤弊があるかもしれませんが、これも一緒に援助しようと、こういうことになったわけであります。  その金は昭和四十一年度の予備金から支出する、こういうことになろうかと思います。
  136. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 改造後といって、何か向こうの政変に関係があっては私はおかしいことになると思うのです。ほんとうに向こうの、ジャワ島に水害があってたいへんであるから、そういうものの援助であるからやるんだというように、大臣、受け取りたいのですが、何か政変と関係があるようなことになると、ちょっとつかえるものがある。その辺はどうでしょうか。
  137. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 政変とは別に直接の関係はないのですが、政変があるなしにかかわらず、非常にインドネシアは困っていることは御承知のとおりだと思いますが、何か政府が二つあるような形がいままであったわけです。どっちを相手にしていいのか、ちょっとよくわからないのですが、それが今度統一されまして、スカルノ大統領が依然として大統領の権限を行なう、その大統領のもとにおける内閣の反スカルノ勢力というものが、そういう人々も更迭されるということで、実質上インドネシアとして交渉すべき相手が一本化されたと、こういうことなんであります。そういう意味におきましては、政変がこの援助とは関係があるのですが、その他の意味においての関係というものはないわけなんです。もっぱら人道上の見地からやっておるのであります。
  138. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 前にもいろいろなことがあったと思いますけれども、こういうことをやられた例からいって、おおよそ額なんかも大体見合っていることになるのでしょうか。前例を踏襲されると思いますが。
  139. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これと類似した事例はインドであります。インドに対して、先般二百万ドルに相当する各種の物資、医療品とかそういうものでありますが、それを送ったわけであります。それと大体の権衡をとったわけであります。
  140. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 他に御発言がなければ、五案につきましては質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  それでは、まず所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の以上三案について討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  142. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 簡単に、三法一括して反対でございますから、反対の理由を申し上げます。  第一は、所得税関係で申しますならば、たとえば税率緩和と言われますけれども、八%であった現行法を八・五%に引き上げられたということは、やはり税収のほうに重きを置かれて、こういう低所得層に対するある意味におけるところの徴税化というふうに事実なっておるわけです。こういうような点は私たちとしては納得ができない点でございます。  それから、他にたくさんございますけれども、おもなものだけ申し上げますならば、何といっても所得税は捕捉率が非常に高いということは、しばしばどなたからも指摘されておることであって、そういうものであるならだ、もっともっと減税をすべきである。もっと所得税というものは減税をしていくというのがあたりまえです。なるほど納税人員はあまり動かないけれども、比率は年々下がっておるんじゃないか。たとえば八六%前後になっておるというようなことを言われるかもしれませんけれども、もっともっと私たちはこの比率というものが、納税人員というものが少なくなっていくという方向に政府努力していただかなくちゃならぬと思います。  次に、法人税の問題でございますが、これはどう見たって、あるいは租税特別措置法も一括して申しますならば、何といってもこの恩典を受ける人たちは、どちらが多いかというと、やはり持てる人が多いと思います。その最たるものは配当所得なりあるいは利子の分離課税のようなものでございまして、何といっても大きい人です。個人的にいうならば大きい人と小さい人、それから企業でいえば大企業と中小企業、こういうようなものも減税として政府が思典を差し伸べるべきものは、大きい企業あるいはたくさんの資産のあるような人たちは自力でいろいろとやっていけると思いますので、そういう人に対しましては、自力でやっていけるわけですから、ほんとうに政府の施策としてあたたかい手を差し伸べるべき人たちは、何といったって法人でいえば中小企業の人たちであり、低所得者の人たちだと思います。こういう人たちに対してどうも大きいほうに重点があって、小さい人たちに恩典の手が差し伸べられるところが少ないという点を非常に遺憾に思うのでございます。  なお、さっきもお話に出ましたけれども、税を納められない人たちでもやはり恩典に浴せなくちゃならない。それならば、間接税等の問題だって、たとえばマッチのようなものはだれもがみんな使っておる。しかも、こういう人たちは、ガスをつけるにいたしましても、これは資産あるいは所得がかりに一千万ある人でも、所得年間六十万円の人でも、つけるマッチは一本は一本で同じように税を負担していることになる。したがって、こういう大衆課税に類するようなものは残しておいてとっておく。これは物品税のほうの問題に触れるわけですけれども、とにかくそういうふうに間接税等の問題については、もう少し私たちは減税等をそういうところではやっていただかなくちゃならないのに、租税特別措置法等をつくってやっている。これは何といったって政策的にわれわれも、頭からこれを否定する議論もあると思いますけれども、現時点で頭からなくせよとは言いませんけれども、少なくとも租税特別措置法というのはいままでもしばしば税制調査会等で答申がありまして、そしてこういうものはなるべく整理して統合をしていく、拡大をするということであれば、よほどそれは国の施策というものが明確になって、国民はみんな納得ができてやっていくというような、そういうものこそは租税特別措置法でやるべきであるけれども、そうでなくて、何かこう思惑的なというようなかっこうで、これはおれのほうに大企業が政治献金等も一生懸命やってくれるようだから、ひとっここらあたりを大事にしなきゃならぬというような政治的な配慮がもしこういうところにあるとするならば、非常に問題だと思います。そうではなくて、こういうようなものは国策として万人が認める、納得のいくよようなそういう形でとられるのがしかるべきものだと思うけれども、そういうような点についても、どうも私たちは納得がいかない点でございます。  以上のような点を申し上げまして、私の反対の討論にいたします。
  143. 藤田正明

    ○藤田正明君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題になっております所得税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、賛成の意を表するものであります。  これら三法案は、昭和四十一年度税制改正として、税制調査会の答申を受けたものに、さらに政府、与党が検討を加えたものでありまして、国民生活の安定をはかるとともに、有効需要の拡大等を通じて経済の安定的成長に資することを目的に、平年度三千六十九億円の減税を行なうものであります。  その減税総額につきましては税制調査会の答申額をこえていますことはもとより、自然増収額との対比を見ましても、目的税を除きまして計算したもので、二〇四%にも達するものであります。史上最大とかいわれますが、相当大規模の減税であることは確かであります。  次いで、各三案について一つ一つを見てみますと、所得税法案につきましては、この改正により、夫婦及び子三人の標準家族で所得税を課せられない限度額は、給与所得者の場合現在の約五十六万円から約六十三万円に引き上げられ、物価値上がり分の調整は十分に配慮されております。さらには、多年要望せられておりました中小所得層の税率緩和をもはかっております。ここで政府物価抑制策の着実なる施策を要望いたしまして、その効果によって所得減税の輝きはさらに増すものと信じております。  法人税法案では、中小法人を中心とする税率の引き下げ、同族会社の留保課税の軽減につきましては、企業の体質改善、経営基盤の強化のため、つとに要望されておったものでありまして、この法案に対しまして反対があるのがふしぎに思っているくらいであります。  租税特別措置法案は、開放経済体制下における企業の体質強化という観点から、企業の資本構成の改善等当面の政策要請に合わせた諸措置、中小企業の不況に対する抵抗力を強化するための貸し倒れ引き当て金の繰り入れ限度額の引き上げ等、中小企業に対する諸施策を講じ、企業の自主的努力を助長せんとするものでありまして、まことに時宜を得たものであると考えます。その他輸出振興のための割り増し償却の範囲拡大、農業近代化のための諸対策等、きめこまかな配慮がなされております。  もちろん、租税特別措置については、税制調査会の答申の趣旨にも沿い、政策目的の効果を終了したものについては積極的に整理合理化を進め、租税負担公平の原則との調整をいつも配慮し、制度の固定化を避けるようつとめなければならないことは言うまでもありません。  以上、簡単に理由を申し述べましたが、三法案はともに国民減税の要望と現在の経済情勢の要請に呼応した改正案であると信じて、賛成の討論を終わるものであります。
  144. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題になりました所得税法外二法案に対しまして反対の意を表明いたすものであります。  政府は、三十九年以来みずから招いた経済不況の克服対策といたしまして、四十一年度は七千三百億円の公債発行と三千億円の減税により有効需要を造出し、景気の回復をはかろうといたしておるのであります。したがって、新年度の減税対策にいたしましても、課税負担の公平の原則を考慮しながら不況の克服にその焦点を合わせるべきであると思います。  しかるに、新年度の三千億円の減税といいましても、歳入予算のわずか七%にすぎないのでありまして、その内容は、所得減税が千五百五億円、企業減税が千七十七億円、その比率は六対四の比重になり、昨年に比べまして企業減税はかなり重視されております。そこで、所得税は初年度におきましては千二百五十五億円、年収百万円から三百万円の所得層を中心といたしまして税率が緩和されております。年収百万円の親子五人でその減税額は年間一万一千三百円、一ヵ月に千円、一日にピース一個分の減税であります。また一方、物価の値上がりは、政府の予想は五・五%となっておりますが、最近における消費者米価、国鉄の値上がりから諸物価に対する影響を考慮するならば、七、八%の上昇が予想されるのであります。したがって、この程度減税ではとうてい物価上昇の調整減税にもならないのではないか。むしろ課税最低限を大幅に引き上げるべきであると、このように思うのであります。  また、法人税につきましても、若干の税率の緩和がありますが、わが国の法人税はその実効税率におきましては諸外国に比べまして低いのであります。もちろん、開放経済に入り企業の体質改善の必要も認めますが、税制調査会が将来の整理を勧告いたしておりますにもかかわらず、大法人に対する減税の特別措置を講ずることは税負担の公平の原則を著しく阻害するものでありまして、大企業優先の政府の意図のあらわれであると考えられるのであります。  したがって、不況克服という予算編成の方針から考えますならば、むしろ消費性向の強い低所得層に対する大幅減税を断行することが景気刺激のためにも最も適切と思われるのであります。  以上の理由をもちまして、三法案に反対をいたします。
  145. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は、民主社会党を代表し、ただいま議題とされております所得税法法人税法並びに租税特別措置法のそれぞれ一部を改正する法律案に対し、一括して反対討論を行なわんとするものであります。  まず、私はこれら諸税法の現行体系そのものに大きな疑問を持っているのであります。現在、これら諸税法は、所得税法においても法人税法においても、なかんずく租税特別措置法は大企業優遇、高額所得者優遇の税法であることは明らかであります。これを裏返せば、大衆課税に不当な負担をしいる不公平かつ不平等な税体系であります。これが私が基本的に反対する第一の点であります。  次に、今回政府所得税課税最低限を初年度六十一万三千四百二十一円に引き上げたのでありますが、これはあまりにも少な過ぎる引き上げであるという点であります。この引き上げの基礎になったサラリーマンの一日の食費の計算にも全く同意できないのであります。一体、大のおとなが一日百八十六円八十七銭でどうして生活ができるのでありましょうか。私は少なくとも課税最低限は八十五万円まで引き上げるべきだと思うのであります。また、今回政府は、所得税の最低税率を下げるどころか、八%を八・五%に引き上げたのでありますが、これこそまさに大衆重課以外の何ものでもなく、私はこれには絶対に反対をするものであります。  第三点は、大企業の法人税率の引き下げについてであります。政府は、国際競争力の強化を表面上の目的にして、従来の三七%を三五%に引き下げました。私は引き下げそのものには反対するものではありませんが、現在の過当競争を引き起こし、みずから不況を招いた民間経済の構造改善には政府は何ら規制を加えず、いたずらに法人税の引き下げによって大企業を救済するやり方には、私は断固として反対するものであります。これでは幾ら法人税率を下げても、真の国際競争力の強化は望み得ず、また何ら国民経済の均衡ある発展に寄与するものではありません。  最後に、租税特別措置法についてであります。これはあくまでも特別措置であって、臨時的かつ短期的なものであるはずであります。ところが、この数年、毎年いろいろな名目のもとに次々と新しい特別措置が設けられて、それが恒久化しつつあります。特に大企業に対する特別措置が数多くとられ、法人税のしり抜けの役目を果たしていることは全く許しがたいところであります。  私は、以上の理由により、三法のそれぞれ一部を改正する法律案に対して反対するものであります。  これで私の反対討論を終わります。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になった所得税法の一部改正法案、法人税法の一部改正法案、租税特別措置法改正法案の三案に対し反対するものであります。  三法案の中で最も悪質なものは租税特別措置法であり、この根底には企業に対する政府、自民党の誤った考え方があると言わなければなりません。  わが党は、資本を資本市場で集める大企業は、自然人に解消され得ない独自の経済主体だと考えています。この立場から、当然、配当、利子所得者に対する特別措置は全廃すべきであり、また、わが党が従来から主張をしてきた所得税中心の高度累進課税と並列して、大企業に対し高度累進の法人税率を課すべきであると考えます。さらにまた、独占大企業の原料、燃料、動力費について現在とられている非課税、免税も廃止すべきものであると主張するものであります。このようなわが党の主張こそが租税民主主義に沿うものであり、人民大衆が現在切実に望んでいる点もここにあると信ずるものであります。  しかるに、政府、自民党は、法人となっておる零細企業、中小企業に対し、法人実在説の立場をとって重税をぶっかけていながら、大企業に対しては、あるときは法人擬制説の立場から利子、配当所得者を優遇し、あるときは法人実在説の立場からの内部留保等の企業減税をしているのであります。全く矛盾撞着に満ち満ちており、全くの御都合主義だと言わなければなりません。結局、政府の立場は、独占資本が望むなら、どんな名目をつけてもくれてやり、一方、零細企業、中小企業には、名目が立たなくともしぼり取るのだと断言しても過言ではありません。  四十一年度の租税特別措置法法人税法は、まさに以上のような政府、自民党のかって気ままな独占本位の税政策が行きつくところまで来た全くの悪法であります。  たとえば、租税特別措置法では、企業合併助成による特別控除、さらに償却済みの資産のスクラップ化だけで取得価額の一定率を控除し、しかも両方とも税額控除までしてやるのであります。最近、日産とプリンスが合併いたしますが、この合併による特別控除額は半期だけで七千三百四十七万円となるのであります。資本が増加するならば、むしろ増税とすべきではないでしょうか。まさに悪税もその頂点に達したと言わなければなりません。  政府は、企業部分の特別措置は大部分が中小企業のためのものであり、大企業の部分はわずか三百八十億にすぎないと言っておりますが、これもまたペテンだと言わねばなりません。ここで取り上げられている中小企業は、大企業の下請会社か中小Aクラスであり、これらの中小企業の倒産が直ちに大企業や銀行に波及するからこそ、政府は税の面でもてこ入れしようとしているのにほかならないのであって、中身は中小企業救済という名の大企業強化策であります。政府の言い分は、現在苦境に落とし込まれている広範な中小企業家を悔辱するものだと言わなければなりません。  また、法人税についても、税制調査会にあらわれた多段階税率の主張は踏みにじられ、ますます比例税に移行し、大企業に有利な税率に切りかえられており、さらに所得税についても高度累進課税は修正され、年課税所得十万以下の低所得者の税率は八%から八・五%に逆に引き上げられたのに、年二百万から四百万の中堅所得者の税率は引き下げられており、全般的に公平の原則の破壊、税制民主主義に逆行する措置が、三税ともはっきり出ているのであります。  このような内容の法案についてわが党が賛成するわけにいかないのは当然ではないでしょうか。  第二の反対理由は、今回の減税政策の性格と減税額が問題だからであります。  政府、自民党は、史上最大の減税と大宣伝しておりますが、実態は、昨日私が大蔵大臣に対して質問したように、人民大衆に対しては史上最大の増税であり、独占資本に対しては史上最大の減税であります。すなわち、大企業に対しては、租税特別措置によらざる免税、非課税、具体的にはガソリン税、物品税、電気ガス税、固定資産税などの免税、非課税五千億、さらに租税特別措置による実際の減税約一兆円、交際費の免税約五千億、その上に工場誘致条例による固定資産税免税相当額の補助金を加えると、驚くなかれ二兆円をこえる大減税を独占資本にやっているのであります。ところが、人民大衆に対しては、一種の消費税ともいうべき公共料金の値上げを行ない、公債発行によるインフレーション政策で人民を収奪し、他方では外形標準による推計課税と脅迫によって徴税を強化し、ありとあらゆる責め道具で人民を収奪し尽くそうとしています。そういうことをやっていて何が減税でしょうか、何が豊かな家計でありましょうか。政府所得税減税の大宣伝はまっかなうそ偽りであると断ぜざるを得ません。  わが党は、いまこそ、政府、自民党がとり続けてきたが独占資本本位の租税政策、財政政策を、真に人民の立場に立ち人民の利益になるよう大転換すべきであると考えます。そのためには、憲法三十条の租税法定主義、憲法二十五条の国民は健康で文化的な最低限度の生活を営なむ権利を有し、国はその義務を負うの規定に基づき、人民生活の擁護向上と租税民主主義の原則に従って、当面、現在の物価で標準家族の所得税百万円まで非課税にし、酒、たばこ、入場税など人民生活に深い影響があり逆進性の強い消費税は即刻廃止すべきであることを要求します。同時に、租税特別措置法を廃止し、所得税の高度累進課税と並列して高度累進の法人税を課すことを要求して、私の反対討論を終わります。
  147. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 他に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  それでは、三案につきまして採決に入ります。所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案の以上三案を問題に供します。三案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  149. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、相続税法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案の両案につきまして、一括して討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  150. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 二案に対して社会党は反対でございます。  反対の理由の第一でございます。相続税の問題につきましては、何と申しましてもこれは資産のある人のみに関係のある法律で、減税もしたがって資産のある人のみの減税ということになります。方向として、なるほど日本の家族制度を守っていかなければならないという一つ考え方もあるかもしれませんけれども、日本の将来の展望として、福祉国家と申しましょうか、大臣が言われる楽しい家庭というんですか、豊かな暮らしというようなことにもいくというようなことは、別のことばでいえば、やはり福祉国家、社会保障制度が完備されているそういう国になる、そういう国を実現していく上においては、何といわれても資産のある人たちの思い切った協力がなければ、これは容易じゃないと思います。そういう意味で、そういう空気をつくっていくということも政府の大きな任務であろうと思います。したがって、この相続税法の中にそういう将来の展望、方向というものが見出だされてこなければならぬと思います。そういう立場に立てば、おのずから相続税法の基本的な立場というものがわかってくると思います。  そういう尺度から見たときに、今回は何といったって減税だということは間違いございませんけれども、やはりその恩恵はいま申しましたように持てる人たちが受けておる。税率は累進的になっておるじゃないかと言われるかもしれませんけれども、もっと累進的なものにさせても差しつかえないんじゃないか。そういう大きい立場に立ってながめると、非常に今度の相続税法改正等は不十分と申しましょうか、一つのイメージというもの、私たちの持っているイメージという点から見ると、こういうものに対しては賛成することができません。  次に、物品税についてでありますが、物品税がしばしば問題になっているが、御案内のとおり戦費調達のためにできた戦時立法というたてまえでございます。したがって、戦争がなくなり、終わったというようなことになれば、当然廃止されてしかるべきものでございましょう。しかし、そうはいうけれども、奢侈品というようなものは、国民感情からいっても、物品税としてやはり取られるのも意味のあることだと思います。大臣等の御答弁を承りましても、そういうものは直すけれども、他のものははずしていくと、こういう大きな方向を確認されるとするならば、やはり大衆課税はいかぬという前提に立っておるというそういう立場に立てば、先ほどもちょっと触れましたけれども、マッチのごとき所得の大小にかかわらず平等に使っていかなくちゃならぬというようなものは、当然今回の減税の中に入れてあってしかるべきだと思います。そういうようなものが入っておらぬということは非常に残念だと思います。結論的に申しますならば、大衆課税の立場からながめると、物品税の今回の減税はわれわれとしては当然納得のいかないものでございます。  以上の点によりまして反対でございます。
  151. 植木光教

    植木光教君 自由民主党を代表いたしまして、相続税法の一部を改正する法律案外一法律案につきまして賛成の意を表します。  これら二案は、今次税制改正の一環として提案せられたもので、国民の適正な財産形成と有効需要の拡大等をはかったものであります。  相続税法案につきましては、夫婦間贈与の課税問題等について、従来からその当否がいろいろと話題となり、その解決が望まれていたものでありますが、今回の改正案は、税制調査会答申にもなかった新たな控除を設ける等、わが自由民主党として大いに国民の声を反映したものであります。その上、課税最低限は、相続人五人の標準的な相続の場合、従来の五百万円より一千万円に引き上げられ、大部分国民課税されないことになります。加うるに、税率の改正をも行なっており、国民の資産形成に寄与することまことに多大であり、現状においてはこれ以上の最善の案は考えられないのであります。  次に、物品税法案でありますが、今回課税の廃止されるものは、零細企業の製造する物品で、一般的にその生産コストが高く、税の転嫁が困難であったものであり、しかもいわゆる高級品は除かれており、従来から軽減の要望が強かったものであります。また、小型乗用自動車等税率の引き下げ、暫定軽減税率の適用を見ているトランジスター式テレビジョン等七品目の期限延長も、現在の経済情勢を考えまして、価格引き下げによりさらに国内需要を喚起し、また生産量の拡大を通じてコストの軽減をはかり、国際競争力の強化に役立ち、輸出振興に資するものと考えます。以上のほか、政令において免税点の引き上げ、課税の廃止、納税手続の簡素化等を予定しているとのことでありますが、国民生活水準も年々向上していることを考えまして、全く時宜に適したものと考えます。  以上、簡単に理由を申し述べまして、二法案の賛成討論といたします。(拍手)
  152. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、公明党を代表いたしまして、物品税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案に対しまして反対をいたします。  物品税減税額は初年度で二百八十七億円が見込まれておりますが、その内容は自動車、電気製品等五十九品目が選ばれております。免税点の引き上げ、あるいは税率の緩和がなされておりますが、物価引き下げという面からいうならば、必ずしも反対するものではありませんけれども、従来の経験から見まして、人件費や原材料の値上がりを理由に、減税額だけ製品価格の値下げになっていないで、しかもメーカーの利益に吸収されるような難点があるのであります。しかも、今回の物品税減税の対象になっているのは、宝石製品、毛皮製品、寝台等の奢侈的高級品がかなり含まれているのであります。したがって、むしろ国民大衆の消費支出の増加をねらって、物品税減税額二百八十七億円を低所得層の大幅減税に回したほうが、景気対策の面からも、より効果的と思われるのであります。  また、相続税法案につきましては、婚姻期間二十五年以上の夫婦間における居住用の不動産の贈与税について、その課税最低限を二百万円に引き上げる案、さらに標準的な相続税、すなわち配偶者を含めて相続人五人の場合、課税の最低限を現行の五百万円から一千万円に引き上げる案も、物価高の今日必ずしも反対するものではありませんが、租税の全体観に立ち、また大衆福祉の立場から考慮するならば、最も重税になっている所得税を優先して減税したほうが、より適切であると考えるのであります。  以上の理由をもちまして、二法案に反対をいたします。
  153. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となった相続税法の一部改正法案、物品税法の一部改正法案の二案に対し反対するものであります。  まず、相続税でありますが、勤労人民の圧倒的多数は、子孫に残すものは借金こそあれ、財産は何一つないのであり、勤労人民にとっては相続税は最初から無縁の存在と言わなければなりません。だからこそ、高額財産家の相続財産に対しては高率の累進課税率をかけるべきであります。しかるに、政府は、今度の相続税法改正案で、中小財産家の相続税負担の軽減に重点を置くと称しながら、実際には高額財産家に最大の恩恵を与えるものであり、またここに主たるねらいがあると言わなければなりません。だからこそ、累進税率を全般的に緩和したのであり、かかる措置は租税民主主義に逆行するものであって、わが党が賛成するわけにはいかないことは当然であります。  次に、物品税法の一部改正法案でありますが、これもまた、勤労人民の大多数には無縁なルームクーラー、カークーラー、大型電気・ガス冷蔵庫など高級品や重化学工業製品の税率を軽減してやるものであり、これら産業の不況対策とするものと言わなければなりません。  また、政府は、減税分に見合った価格引き下げの指導をすると言っておりますが、これが信用できないことは入場税の経験からも明らかであります。そもそも、物品税改正は、昨年の税制調査会の答申になかったものであり、後に自民党の要求によってつけ加わったものでありますが、自民党に対するこれら業者の陳情書の中に、物品税を消費者に転嫁できないから税率を軽減してもらいたいという趣旨があったと聞きますが、これを見ても、価格引き下げをするという政府の言明が信用できないことは明らかであります。  かかる法案に対しわが党が賛成できないことは明らかであり、ここに反対をするものであります。
  154. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 他に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認めます。   それでは、両案につきまして採決に移ります。相続税法の一部を改正する法律案及び物品税法の  一部を改正する法律案の両案を問題に供します。両案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  156. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 多数と認めます。よっ  て、両案は多数をもって原案どおり可決すべきも  のと決定いたしました。   なお、これら五法案につきまして議長に提出す  べき報告書の作成につきましては、これを委員長  に御一任願いたいと存じますが、御異議ございま  せんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて散会いたします。   午後五時四分散会