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参考人(
今井廣君) きょうこの
特別委員会にお招きをいただきまして
参考意見を申し述べさせていただくことを、衷心から感謝申し上げる次第でございます。
すでに御
承知のことではございまするけれ
ども、一がいに
常磐炭田と申しますが、これは福島、
茨城両県にまたがっているのでありまして、私は、その中の
茨城県の
北茨城市に
市会議員という
立場で籍を置いて、今日まで
石炭産業の
変遷に伴って、そのつど
石炭問題が
自治体の
議会の中において取り上げられ、何回となくたび重なるこの問題についての
議会の
決議等を経まして、いろいろとそれぞれの
要路に対する陳情やら
対策を進めたその中に携わった一人でございますので、そういう意味で、いろいろとその
立場から申し上げたいと思うのであります。
特に今日のごとく、
石炭問題が重大な時期を迎えるにあたりまして、
産炭地自治体、
地域住民ともに、今後の
石炭対策の
安定策の
実施方について、これを強力に推進していただきたい、そういうことを強く求めている
実情について、これから率直に申し上げたいと思うのであります。
私がただいまから申し上げますことは、あるいは諸
先生方につきましては、すでに何回となくお聞きになっていることでありまして、あるいは、また、現地における
調査等に際しましても目に触れていることでございましょうけれ
ども、これは私が先ほど申し上げましたように、
産炭地区の
住民の訴えとして申し上げたいと思うのでございますので、その点をよろしく御
理解を願ってお聞き届けを願いたいと思います。
常磐地区は、
石炭の
合理化法が実施される前は、約八十に近い
炭鉱の数を数えたわけでありますけれ
ども、今日では十六
炭鉱に激減をいたしております。それも常磐
炭鉱という、大体地方大手といわれておりますが、これを除いたほとんどが中小
炭鉱でございます。中小
炭鉱の特徴として、資金の調達にしても、あるいは
政府資金の借り入れ等につきましては限られた範囲になっておりまして、聞くところによりますと、市中銀行からの借り入れには個人の財産担保等を差し入れるなど、かなり無理をした資金繰りを経なければ経営がやっていけない、こういう
実情にあるわけであります。また、中小
炭鉱の
労働賃金、あるいは福利厚生施設等の再生産に欠くべからざる諸条件におきましても、大手
炭鉱とは大きな格差が生じているのが事実であります。先ほど
小笠原参考人からも御指摘がありましたように、他
産業と
炭鉱との
賃金の格差は大きくなっております。それに加えて、なおさら中小の場合は格差が生じているということをあらためて御認識を願いたいと思うのであります。加えて、中小の場合は同じように多額の異常未払いが出ております。その結果は、
賃金あるいは期末手当、退職手当、その他あらゆる面にわたって
労働者の上にこれがいろいろな形でしわ寄せになってきているのも事実であります。ある
炭鉱では数年来退職金が凍結されておるところもあります。あるいは退職金の制定されていない
炭鉱もあるわけであります。長い間からだをすり減らして定年退職という時期を迎えた、これから老後の
生活設計をするという時期にあたって退職金がもらえない。もちろん
労働組合が強力なら会社と交渉しておりますが、それでもかろうじて月に米代
程度の月割りでこれがなしくずしにされるという、そういう
炭鉱も数多いわけであります。中小
炭鉱は、
私企業という限界の中で、この異常な状態の中で生き抜くというために、
労働組合が無関心でいるわけではありませんけれ
ども、そういう苦しみも耐えしのんでいるということもひとつ十二分に御認識を願っておきたいと思います。したがって、中小
炭鉱の異常債務の解消につきましては、ここで何らかの特別の
措置をとっていただくことが必要なのであります。そして正常な経営の姿に戻してもらいたいという強い要求が出ております。
次に、生産
保安体制の
確保につきましても、今後における中小
炭鉱の設備の近代化、機械化、そういうものを促進していくためには、現行の近代化資金、あるいは中小向けの資金のワクの問題等、こういう点につきましても、これを拡大してもらうということもあるいは考えの中に入れていただく必要があるのではないか、あるいは機械の貸与等につきましても、その基準ワクを強化してもらうという必要もあろうかと思います。特に
炭鉱の特別年金の問題でありますが、お聞きするところによりますと、これは制定をするという方向に動いておるということでございますが、これはぜひ早急に実施するような処置をしていただきたい。特に、御
承知とは思いますけれ
ども、
炭鉱労働者は筋肉
労働でございます。特に坑内
労働者の場合は、若いうちはそれほどでもありませんが、年をとるに従って収得
賃金は低下するのでありますが、そういったものを基本にして退職金の支払いというものがなされるのであります。よその
産業の
労働者とは違って、長くつとめれば収得がふえるという状態ではありません。したがって、老後の問題、さらにいま問題になっております適正
労働力を
確保するという点を十二分にお考え願いまして、この点は特に早い機会に実現をはかられるようにお願いをしたいと思います。常磐地区のほとんどの
炭鉱が中小であるということは特異的な現象であろうかと思いますけれ
ども、今日までにおいていわゆるスクラップ・アンド・ビルド政策によりまして、弱小非能率
炭鉱はもう消滅してしまいました。現在残っている
炭鉱は能率も
比較的上昇線にありまして、生産の計画、あるいは自立体制に対する意欲はきわめて強い状態にあることがいわれております。従来は、常磐地区は消費地に近いために地の利がよいということで、あるいはこういった実際の窮状がそれほど深く御認識願えなかった点があるのではないかと私
どもも考えるわけでありますけれ
ども、今日における中小
炭鉱の苦境というものが、そのまま
労働者の
生活の上にのしかかっているという、この
現実を十二分におくみ取りくださいまして、今後の
対策の上に何とぞ御
配慮くださいますよう御要請申し上げる次第であります。
このような
実情にある中小
炭鉱でございますけれ
ども、
産炭地自治体の多くは、
石炭産業を唯一の基盤として発展しているのであります。私の住んでおります
北茨城市に例をとってみましても、ここは以前は三十以上の
炭鉱があったわけであります。現在はわずかに四
炭鉱に減っております。
人口も五千五百と、十年前に
比較しますと減っております。それでも市の
人口五万五千人のうち、
炭鉱の
労働者と
家族で一万八千人であります。
炭鉱を対象として
生活している商工業者を加えますれば二万に近い
人口となるのでありまして、市の
財政的な面でも、鉱山税、あるいは固定資産税、
住民税、そういったものの税収の約三二%がこの
石炭関係に依存しているというのであります。いまだにもって
炭鉱の
影響が大きく、したがって、一たん
炭鉱に重大な
危機が訪れるということになりますと、町は直ちにこのことが大きく響きまして、いわゆる町の
経済的な支柱を失うということになるわけでありますから、いま
住民の率直な気持ちは、これ以上首切りによる
合理化はやらないでほしい、もうこれ以上山をつぶすのはたくさんだからつぶさないでほしい、
産炭地住民のこの叫びは、これまでの長い間数多い
炭鉱の
閉山というものに味わった苦しい、にがいこういう不安な
体験からにじみ出たので、何としても
炭鉱の存続を守っていく、そういうことについて、現在
炭鉱の
労働者と
産炭地住民は、同じような
考え方の強い決意になっておるのであります。こうした点は、各
産炭地の
自治体、
住民の共通した気持ちであり、姿であろうと思います。
次に、
産炭地域振興事業の点につきましてちょっと触れておきたいと思います。
北茨城市におきましては、現在、本年から
産炭地域振興事業団の手によりまして工業団地が開発されようとしております。約工業団地として二十一万坪、住宅団地が約七万坪であります。この工事は着々進んでおりますけれ
ども、その土地の買収やら造成費、あるいは道路、上下水、工業施設等、そういったものの経費を合わせると約十億をこえるわけでありますけれ
ども、もちろんこの内容は、国、県、市、あるいは
産炭地域事業団というふうに分かれておりますけれ
ども、これとても、いままで数多く
炭鉱がつぶれた上に起こった町のさびれを盛り返そうとするために計画されたものでありますから、市では、団地造成と並行して、優良
企業誘致に一生懸命奔走しておるわけでありますが、なかなか思うようにこれまで話にのってこない。他の地方では、団地ができ上がっても依然として企業の
誘致がない、ペンペン草が生えているということをよく聞かされます。まことにもったいない話だと思います。また、かりに
企業誘致の話が軌道に乗ったといたしましても、そのほとんどが弱小企業では、地域
住民の希望にこたえたいわゆる
効果というものはないわけであります。先ほ
ども御指摘にありましたように、地域で強く望んでいるのは、それはあくまでもその地域の
産業基盤を確立した上で、中核的なものとなる企業であってほしいということを望んでおるわけであります。せっかく巨題の経費を投じたものでありますから、こうした
産炭地域振興の事業に一貫した
施策の指導があってほしいと考えます。したがって、企業の張りつけなどについては、
政府の責任ある
立場でこれを推進していただくよりしかたがないというふうに、強く期待をしておるのであります。お聞きしたところによりますと、ただいま参議院では産
炭地域振興事業団法、産
炭地域振興臨時措置法等の二法案が審議されているということでありますが、内容については、まだ十分な点が欠けておるということを聞いておりますが、せっかくこういう時期でありますので、あるいは従来より前進的なものとも考えますから、ぜひこの点につきましては、諸先生のお力で早く成立させていただいたらけっこうなのではないかと思います。
次に、ついででありますから、鉱害の問題をちょっと述べさしていただきます。
石炭の問題がいろいろ表面的な社会問題になっておりますとともに、並行して、やはり鉱害の問題が農民から大きな問題点として突き上げられて出てきております。
北茨城市の例で申しますと、その鉱害量は約十億といわれております。出炭の規模が進行してくるにつれて鉱害の地域も広がってまいります。しかし、現在の
炭鉱の
実情においては、農民のこういった要望にこたえて、これを完全に消化するということは困難であります。当然そこで農民と
炭鉱の間に
幾多の大きなトラブルが発生しております。農民は、問題を解決するために、全市内の被害地の農民を結集して組織をつくって、そして
炭鉱に迫っております。あるいは
自治体にその問題を持ち込んでおります。
自治体ではどうにもこうにもしようがない状態であります。勢い、そのことのほこ先は
政府に向かっていろいろな行動を起こすわけでありますけれ
ども、悲しいかな、現在の予算ではどうにもこうにもなりません。したがって、こういう点につきましては、農民の希望は、こういう鉱害問題についても、当面は現在の予算をふやすなりするとしても、これはやはり国の
立場で施業案その他を認可しておるわけでありますから、国の
立場でもこれらの問題を解してほしいという血のような叫びを訴えているのであります。
以上、概略的なことを申し上げましたが、いずれにいたしましても、いまの
炭鉱をつぶさないでほしいということ。そのためには、やはりいま問題になっております
総合エネルギーの中における
石炭の位置づけ、特に
昭和四十五年度においては五千五百万トンというものを確立して、その需要を必ず
確保していただくということを基本として、
炭鉱の
労働者、また、それをかかえている
産炭地自治体住民の
生活をこれ以上苦しめないように、今後
先生方のより強い
施策の面における御援助、御協力をお願い申し上げまして、簡単でございますけれ
ども、
意見を申し上げたいと思います。