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参考人(
堀坂政太郎君)
お答え申し上げます。
企業が喜んでその地に設置するということは、その
企業がそこに行けば他の
地域よりも早くもうけられるとか、あるいは早く償却ができるとかいうようなことが
相当はっきりしておる必要があると思うのでございます。この点につきまして、各それぞれいろいろな制度があるのでございますが、欧州等におきましても、いわゆる
産炭地問題というのは一般の
地域開発
政策の中で取り扱われておるけれ
ども、日本における場合と同じように、突如としてある安定しておった
地域経済というものが崩壊をする、それに対処する
政策であるということからいたしまして、そのような
産炭地に
企業等を持っていきます場合におきましては、たとえば設備補助金を上げますというようなことをやっておるわけでございます。英国の例を申し上げますならば、英国は昨年末までは、工場の建物につきましては二五%ないし三五%補助金を上げます。これは他の
地域に工場をつくる場合はないのでございます。それから、機械及び装置につきましては一〇%の補助金を上げますということをいたしますとともに、いわゆる超過償却及び償却の割り増し償却というようなことをやったのでございます。それがさらに、英国が御承知のように、ポンド危機というような情勢もあり、
経済の、特に工業の発展が諸外国に立ちおくれたというようなことを考慮いたしまして、昨年の十月において設定いたしましたナショナルプランに基づきまして、ことしの一月からはさらにその制度を改めまして、割り増し償却、あるいは超過償却という制度をほとんどやめまして、そして設備及び機械については四〇%補助金を出す、それから、建物については二五%ないし三五%補助金を出すというような制度をとっておるのでございます。そのゆえんは何かと申しますと、第一に、償却でみるということについては、これはいずれにしろ、
財政上の負担になるけれ
ども、
企業の成績とか種類によってその受ける稗益が違う、
相当の投資をした数年後においてそういう利益が出てくるとか、そういうことである。一体これではどうも
企業意欲を起こすのに十分でないということから、そういう機械等に対する補助金を大幅に上げたのでございます。なお、四〇%に上げると同時に、他の
地域におきましても機械及び装置については二〇%の補助金を出すという新しい制度をつくりましたので、差は二〇%であるということでございます。それから、建物及び装置につきましては、他の
地域で工場を興こした場合には補助金はございませんで、
産炭地等の開発
地域に行った人に対しては補助金は厚くなるわけであります。したがいまして、そういうふうにしますことは、開発
地域に人口が集まって、そこで工業が興こっていく、あるいは人口が集まったことによるところの交通障害、大気汚染というような問題が起こる、それに伴うところの国家の支出が多くなるとか、あるいは既存の
工業地帯の公共投資がむだになるとかいうようなことを考えれば、そういう補助金を出してもこういうふうな緊急なこの構造的
不況地域に
企業を興こさしたほうが得であるし、そういうふうにすれば、同じ設備に他の
地域で五億の投資であったものが、
産炭地というような構造的
不況地域でやれば三億の投資にしかならない、補助金をもらいますから。そうするならば、そこで十分に
経済的に競争し得るようになるのじゃないか、こういう
考え方であります。これは国民
経済的にもそちらのほうが有利である。失業保険を出したり生活保護をしたり、あるいは過密地帯の大気汚染防止に非常に多くの投資をしたりする都市再開発をより一そうやっていかなければならぬというようなことの趣旨から考えれば割り安であるという
考え方であるし、
企業家にとっても、いわゆる労働力の安定した空気のいいところで
産業を興こすことができるだろう、こういう
考え方に基いておるのでございまして、これは英国と同じような補助金云々の問題が日本ですぐできるとは思いませんけれ
ども、いまの日本の
地域に対するいろいろな援助制度の中において、先ほど
小柳先生がおっしゃいましたこの四〇%、六分五厘の
融資ということが特に目立つというこの制度では、なかなか
産炭地に工場を持っていらっしゃい、そちらのほうが有利ですよというふうにはなかなかいいにくいとわれわれは言っておるのでございますけれ
ども、
企業家の人はそう感じてこられないということがございますので、まあそういうようなことが第一点であろうと思うのであります。
また、実はそういうようなところで
産業を興こすのに非常に有利であるというふうにするためには、むしろ熟練した労働者等がそういうふうなところに移ることがむしろ奨励されるという実は制度がとられておるのでございまして、基幹労働者が工場密集地帯等からそういう開発
地域に行って就職をするという場合については移転手当をやる、あるいはそういうところに近代的な都市をつくる、建物は低家賃住宅といいますけれ
ども、非常にりっぱな住宅でございますが、そういったようなものをつくるということによって、そういう構造的
不況地域に行っても文化的な生活ができ、教育ができるというふうな制度の
政策の集中というものが行なわれておると思うのであります。そのようなことが
企業者にとって私は非常に大きな魅力になるのではないかと思うのであります。
これ以外に、国によりましては、進出した
企業については、損をした場合には国が補償するというような制度をとっておるところもございます。あるいは構造的
不況地域については、一定
期間は
金利一%までに利子補給をするというような制度をとっておるところもございます。いろいろな制度がございますので、それをすべて日本でやるということは非常に困難であると思うのでございますが、日本の現在の
産業の太平洋ベルト地帯への集中という
傾向ともあわせて考えますならば、かつて
相当りっぱな
経済地域であった
産炭地等に、そうしてそこには
相当多くの公共投資が行なわれておるわけでございますが、
産業を
誘致し、そういう公共投資を生かしていく、あるいは
地域住民の疲弊というものを救うということのためにも、もう一段の御援助をお願いしたい、こういうことでございます。