運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-05-31 第51回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月三十一日(火曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大河原一次君     理 事                 剱木 亨弘君                 小林 篤一君                 鬼木 勝利君     委 員                 石原幹市郎君                 沢田 一精君                 高橋雄之助君                 豊田 雅孝君                 吉武 恵市君                 阿部 竹松君                 大矢  正君                 小柳  勇君                 宮崎 正義君    政府委員        通商産業政務次        官        堀本 宜実君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     森  五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞壽君    参考人        夕張市議会議長  本間 良孝君        常磐炭礦磐城礦        業所長      木山 茂彦君        株式会社九州廣        栄堂代表取締役  稲田 善栄君        福岡教職員組        合嘉穂支部長   古賀 藤久君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 大河原一次

    委員長大河原一次君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案の二法案議題といたします。  本二法案審議のため、本日は参考人といたしまして、夕張市議会議長本間良孝君、常磐炭礦磐城礦業所長木山茂彦君、株式会社九州廣栄堂代表取締役稲田善栄君、福岡教職員組合嘉穂支部長古賀藤久君の御出席を求めております。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会のため、遠路わざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  当委員会は、ただいま議題といたしました産炭地域法案審査を行なっておるのでありますが、これらの法案に関してそれぞれ関係をお持ちになる参考人各位の御意見を拝聴し、もって審査参考にいたしたいと存じますので、各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。参考人各位には、当初十分程度の御意見をお述べいただき、その後委員各位の質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは、これからお願い申し上げます。本日はほんとう御苦労さまでございました。  では、順序は、夕張市の市議会議長さんであります本間良孝さんにお願いしたいと思います。
  3. 本間良孝

    参考人本間良孝君) このたび参議院石炭対策特別委員会参考人といたしまして御下命くださいましたことに対しまして、その栄誉を深く感謝申し上げる次第であります。  私、たまたま全国市議長会の中におきます石炭鉱業関係を持っておる都市で組織しているものの機関の長をしておりますので、特に今回当委員会におきまして取り扱われております産炭地域振興事業団法、もう一つは、産炭地域振興臨時措置法の二点につきまして、これらの法の制定の当時から、私ども産炭地を持つ立場からいたしまして、何とか疲弊する石炭産業の問題を解決していただきたいという中で、これらの法の制定をいろいろ関係先陳情要望を続けてまいったところであります。幸いにいたしまして、いろいろな配慮によって現在の法律が施行をみまして、疲弊している産炭地域が、これらの二法によりまして、それなりにその後の態勢の盛り上がりを続けてまいっておるところでありましたが、いよいよこれらの法律具体化によって、さらにもう一段法の改正によって産炭地域進展を期していただきたいという、新しい要望としてこれまた陳情申し上げてまいったところであります。結果的に申し上げますると、私どもお願い申し上げました法の改正の一部が、今回これらの具体的な法制定法改正の問題として取り上げていただくことに相なったわけでありまして、このことに対しまして、関係者一同衷心から感謝を申し上げているところであります。  一つには、疲弊する産炭地域工業用地を造成するという問題でありまするし、これらの用地の造成がある程度進んだ状態におきましては、もう一段高い開発ということからいたしますると、それに必要な工業用水開発、さらには供給等を含めた広大な事業化を法制化していただくということに対しましては、衷心から期待申し上げ、感謝申し上げているところでありまするし、また、一つには、ボタ山処理の問題につきましても、すでにいろいろな配慮をいただきまして、その処理事業を継続していただいておるところでありまするが、これらの骨材を利用いたしまして、さらに一歩突き進んだ軽量骨材製造企業化しようというものに対しまして、出資、あるいは長期運転資金というものまでも加えて改正していただくということに対しましても、衷心から感謝申し上げているところであります。また、すでに進出されました相当数企業に対して設備資金等をいろいろ御配慮いただいておりましたところでありますけれども、なかなか地域地域なものでありますから、せっかく進出していただきましたその企業に対しましても、長期、低利にその運転資金等をさらにこれに加えていただきたいものだというような考え方をもちまして、各関係先に御要望申し上げたところでありまするが、すでにこれらが政府の方針として、ただいま参議院において特別委員会審議いただくという段階でありまするからして、私ども関係者といたしましては、これらに対しましても衷心感謝を申し上げているところであります。これらの法制定によりまして、今後一歩進んだ具体的な施策が各地域地域進展せられるところでありますから、現在以上にその地域進展というものは期して余りあるものがあるのではないかと思うのでありますけれども、さらに私ども立場からして、もう三百お願いを申し上げるという立場に立たせていただきますならば、まず、第一点に、これらの事業を推進する事業団の組織の強化をもう少しおはかりしていただけないものであろうか。と申し上げますことは、現段階では、事業団は、すべからくその事業団本部のいろいろな機関の手を通らなければ、ささいな問題、現地で解決できるような問題でも、常に中央にまで持ってこなければその大事な問題が解決でき得ないという面に多少の隘路があるのではないかと私ども思慮いたしまして、できますれば全国にすでに支所として設定されておりますこれらの支所を、名前だけ支部と申し上げても語弊があろうかと思いますけれども名実共に備わった事業団が直接もっと現地仕事のでき得る、また、受けるほうの立場といたしましては、それらがわざわざ中央にまで足を運ばなくても現地処理のできるように、問題が解決できるように機構の強化をはかっていただきたいものだということが一点であります。  さらに、二番目の問題でありまするが、融資制度の充実ということを申し上げますると、まことになまいきだと思われるのではないかと思いますが、現在の融資の比率からいきまして、お願いする者の立場でありまするから、もう少しこれらを引き上げていただけないものであろうかということと、さらに、金利の引き下げを、これももう一つお願いできないものであろうかということなんであります。今回さらに運転資金がそれぞれ高額な予算化を見ておるところでありますけれども、私ども現地関係者といたしましては、その上に、さらに運転資金増額措置要望申し上げたいものだと考えておるわけであります。  三番目でありまするが、事業団用地の払い下げにつきましてであります。これもいろいろ事業団といたしましては、コストその他の厳正なものから割り出す坪当たりの価格だと思われますが、それを入れて企業化を一歩推進しようという立場から申し上げますると、もう少し時価より低廉な価格で提供していただくわけにはいかないものであろうかというような問題であります。  四番目でありますけれども事業団における出資制度の中で、工業用水の問題が今回とられておりまするが、予算関係の中から拝見させていただきますと、今回は特に九州筑豊鞍手地域に限られているように見受けられるわけでありますが、これらは当然造成されつつある団地に対しましては、これらの工業用水開発供給というものは当然必要な問題だと思いますので、何とかこれらが予算の中で普遍化できるようにお願い申し上げたいということなんであります。  最後に申し上げたいのは、いろいろ法律中心にして、産炭地域振興促進のために御配慮をいただいているところでありますが、私どもお願いをする者の側から申し上げますると、もう一歩すべての点で援助の手を強代していただけないものであろうかということなんでありまするが、と申し上げますのは、現在石炭総合エネルギーの中での位置づけ等中心にし、また、抜本政策中心にして、この六月に石炭の抜本的な政策答申がなされ、その答申を受けて政府が具体的に政策を実施する段階なのでありますけれども、仄聞するところによりますと、私ども調査団資料に基づく五千五百万トンという数字によって現状を維持できているというように考えているところでありますが、これが最低では三千五百万トンというような数字が流されまして、いろいろ新聞等で私ども散見しているところでありますが、こういう状態になりますると、この疲弊している産炭地がさらにその速度を早められまして、現状以上の疲弊におちいるのではないかと考えられるわけでありまして、まず、第一には、これらのエネルギーの中に占める位置づけをはっきりとより多い数字で確立していただきながら、五千五百万トンからもし割れて落ちる部分があったといたしますると、当然これらの二法によって守られなければならない部分がまた新しくここに出てくるのではないかと思われますので、それらを勘案いたしますると、この法律改正というものは今後に向かって相当大きな使命を持っている法律改正だと私ども思考しているところであります。そういう石炭産業中心にする大事な法律だと思いますので、今回のこの改正に対しましては、心から感謝を申し上げまするし、また、今後想定される石炭産業中心にする問題の政策の中では、この部分でまた多くの私ども期待を寄せなければならない結論に立たせられるやもしれないということを考えますると、これらの法律を今後もさらに充実していただきたいと思いまして、まことに措辞でありますけれども一言参考人としての発言にかえさしていただいた次第であります(拍手
  4. 大河原一次

    委員長大河原一次君) どうもありがとうございました。  次に、木山参考人お願い申し上げます。
  5. 木山茂彦

    参考人木山茂彦君) 常磐炭礦の、福島県にあります磐城礦業所所長であります木山でございます。  石炭対策の問題につきましては、本委員会の皆々さまが常日ごろ絶大な御努力をいただいておりますことを、常磐炭田経営者一同を代表いたしまして、この席上から厚く御礼を申し上げます。なお、本委員会出席機会を与えていただきまして、かつ、産炭地域振興関係法案の一部改正意見を述べさしていただきまする機会を与えていただきましたことを感謝いたしております。委員長からおおよそ十分ということでございますので、つとめて、抽象的に相なりますけれども実情を申し上げながら十分で後わりたいと考えます。  私は結論から申し上げたいと思うのでありますが、今回の関係法案の一部改正につきましては、全面的に賛成をいたしております。むしろ賛成と申し上げますよりも、もっと拡大強化していただくのが実情に沿うのではなかろうか、かように考えます。今回の改正は、むしろ微温的に過ぎるのではなかろうかと、はなはだ僭越ではございまするが、実情から勘案をいたしましてさように考えられます。と申しまするのは、この法律では、主として産炭地域振興事業団の任務とするところは二つあると思うのでありまするが、一は経済開発であり、一は社会開発であったと思うのであります。で、従来まではこの経済開発重点が置かれて、私ども常磐炭田では、私は全国産炭地域を親しく調査をしたことはございませんけれども全国まれに見る成功している一例の地帯ではなかろうかと存じております。しかし、もはやこの経済開発重点にする産炭地のあり方は頭打ちではなかろうかと、かように考えております。むしろ今後は、この法律改正を転機として、社会開発公共投資重点を置く産炭地域振興事業団でありたい、していただきたいと念願をいたします。  実情を申し上げますると、私ども常磐炭田、特に常磐炭鉱は、石炭エネルギー革命に即応しまして数年前より準備をいたしまして、福島県を中心に、十七社ほどいわゆる子会社をつくりました。これに投資をいたしました金額が四十億でございまするが、十七社のうち、三社がこれに対して産炭地から計三億の融資をいただいております。産炭地より御融資をいただいておりまする三社、ほか十四社も、おかげをもちましてそれぞれ順調な足取りをもって進展をいたしておりますること、これまた皆さまの御指導のたまものと、厚く感謝をいたしておるわけであります。時しも、私どもの地区、特に福島県でございまするが、新産業都市に指定をされまして、五市十三市町村が合併をいたしまして一つの市と相なりますることに決定をいたしまして、十月にこれが発足をいたします。私ども石炭鉱業の鉱区は、ほとんどこの新産業都市中心に向かって採掘を開始しておるわけでございます。したがいまして、石炭鉱業と新産業都市の、本来ならば相協調、協力をしなければならないものが、ややもすればうらはらの関係に相なりがちでございます。幸い、御出身の諸先生の御指導よろしきを得まして、いまだ見るべきほどのトラブルはございませんけれども、言うならば、はなはだ抽象的でございまするが、ここに政策のひずみがあらわれんとしておるのでございまして、そこに産炭地事業団の大きな役割り公共投資的役割りが強調、実施されねばならぬと、かたく信じてお願いをいたしたいと考えるのであります。一々具体的な例を申し上げまして御説明を申し上げればよくおわかりでございまするけれども、幸いにして、本委員会委員長でありまする大河原先生は私どもの御出身でもございますし、とくと御承知のことでございまするので、重複を避けまして、以上お願いを申し上げます。  最後に、重ねてお願いを申し上げまするが、経済開発よりも、むしろ公共投資的な社会開発重点を置いて、今後ともひとつよろしく産炭地振興中心的役割りを果たさせるよう御配慮を願いたいと、意見を申し上げまして終わらしていただく次第であります。(拍手
  6. 大河原一次

    委員長大河原一次君) 御苦労さまでした。  次に、稲田参考人お願い申し上げます。
  7. 稲田善栄

    参考人稲田善栄君) 日夜国政の審議に取り組み、御努力なさっておられまする諸先生おかげで、われわれは安心して企業に従事できることを深く感謝いたしております。私は一医薬品製造販売業者ですが、このような晴れの場所で諸先生方の御参考になるような適切な意見が申し述べ得るかどうかはわかりませんが、お聞き苦しい点はどうぞお許しくださいませ。  産炭地振興育成国策にいささかの貢献をすべく産炭地進出した企業全国何百社、また、私ども福岡誘致を受けた企業は数十社あると聞いております。これら事業主とはおりに触れ懇談をした中から御参考になると思われる点を申し述べる所存ですが、多かれ少なかれ、私ども誘致事業として、かかる問題は共通でございますので、私の実態を申し述べるのが真実であろうかと思い、陳述したいと存じます。  私は、昭和九年、富山医薬品家庭薬配置業者といたしまして、単身田川に参りましたが、人間だれしも自分ほどかわいいものはない。自分をかわいがることはお得意さまをほんとうに考えることだという信念を持って昭和二十三年まで引き続き商売に来ておりましたが、いつしか三、四十人の外交員がおるようになりました。時に病を得て休み、昭和三十八年に再び田川に来たときは三井閉山のうわさがされているときで、当時の町はさびれきって、他の市町村に比べて全然活気がなく、あまりのことに私の胸にじんとしみるものがありました。たまたま田川市役所にあいさつに参りまして、市長はじめ、皆さんの熱心なお誘いを受け、国策に沿い、田川皆さんにも喜んでいただけることならと思い、さっそく技術、経理、営業の幹部を派遣いたしまして調査いたしました。そのとき十カ所余りの敷地を見せていただき、幹部意見の一致を見て進出がきまりました。仕事の内容は、ちょうどそのとき富山で計画しておりましたかぜアンプル田川製造することにきめました。市場も、富山他社製品を取り扱い、販売には確信を持っておりました。実施にあたり、当初事業団に、アンプル製造工場として計画した五千五百万円の融資お願いいたしましたが、時節柄千六百万円も削減され、事業団より千三百万、事業団銀行協調で千三百万、中小公庫より一千三百万となり、どうにか製造を開始いたしました。業績は日増しに上昇し、予約注文に応じ切れない状態となりましたので、融資削減も問題なく解決し、当時十四社、二十品種の契約ができていましたので、前途に希望を持ち、全員張り切っていました。このような状態で、昨年アンプル製造中止という事態になり、急遽ドリンク剤に切りかえ、再出発という最悪の状態になりましたので、現在まで私の私有財産全額担保に入れて現在まで運転資金に充ててきました。このような状態融資を受けようとしましても、当地では操業日数も浅く、まだ実績のなさ等によって、事情を説明しても当地金融機関には理解していただけませんし、直ちに保証協会保証担保を持ち出します。また、運転資金借り入れにいたしましても割引にいたしましても、歩積み両建てを取られます。その上、両建ての分につきましても、金利は普通の借り入れと同じです。したがいまして、当産炭地進出企業といたしましては、保証協会保証特例制度、それから拘束資金の緩和、両建て借り入れ金利低減等委員会で御検討をいただきたいと存じます。このたび事業団運転資金融資につきましても大体五億円決定したと聞き及んで、非常に感謝しております。したがいまして、この点につきましても、現在ある企業育成のためにも、早急、かつ、簡単な手続により融資を受け得るよう、切にお願いいたします。誘致事業振興のためには低いところに水が流れるようにいま来ておる企業育成することが最大の急務かと存じます。五億円の運転資金では非常に少な過ぎるので、いま少し何とかならないものでしょうか。また、誘致資金をすでに来ている企業に新たに回していただくわけにはいかないものでしょうか。いま来ている企業の栄えることは優秀なる企業が自然に来ることだと思います。産炭地誘致企業には諸種の業種がありますが、企業育成誘致目的のために、行政機関の十二分なる縦横の連絡の了解が手続簡素化及び迅速、かつ、弾力性ある行政指導となって実現され、私たちに対し、国の政策に不安なく協力できますよう願ってやみません。私たち誘致企業の名に甘えてその責めを他に転嫁するような考えは毛頭なく、各社の責任において事業を推進することを前提としまして前述の報告をかねて、強くお願いいたす次第でございます。私の報告が諸先生方の御賢察を賜わり、国及び私たち目的達成の一助となることをお願いしてやみません。  以上をもちまして私の陳情を終わらしていただきます。(拍手
  8. 大河原一次

    委員長大河原一次君) ありがとうございました。速記とめて。   〔速記中止
  9. 大河原一次

    委員長大河原一次君) 速記をつけて。古賀参考人
  10. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 福岡県の教職員組合嘉穂支部長古賀でございます。  まず、第一に、産炭地教育関係者といたしまして、四月二十七日の本院のこの石炭対策特別委員会において、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案審議のときの附帯決議の中で、「産炭地域における教育現状は憂慮すべきものがあるので、教育振興のため、一層財政上行政上の特別措置を講ずること。」という決議を加えていただきました件につきまして、心からお礼申し上げます。私どもは、この決議がちょうど大干ばつのときに農民が慈雨を待っているような気持ちで承り、喜びと期待で一ぱいでございます。よろしくお願いします。  資料を配っておりますので、これを中心にお話を申し上げます。  産炭地教育実情は、一口に申しますと、失業  の増大による崩壊家庭子供教育の問題であるということが言えましょう。提出しています資料の一ページ、二ページによって明らかなように、再就職した人々の多くは他の地方に去って行きましたが、一方、再就職の機会に恵まれない多くの失業者が出ております。三ページ、四ページに出ておる生活保護家庭の問題は、子供たち作文に次のように書かれております。  「炭坑閉山、六年K・T男」というので、「炭坑閉山は私の家庭に大きな被害を与えた。炭坑閉山からの生活は苦しかった。そのころ小さかった私は今でもそのころのことがかすかながらも頭の中に残っている。それからの私たちの家族は貧乏のどんぞこに苦しみ、毎日の食事も米のごはんにありつけず、さつまいものゆでたのが三つか四つ食べればよい方だった。今四年の弟なども病人になった。それを見かねた母はどかたに出だした。毎日へとへとになって帰って来た母を見た私はふとんの中で泣いたこともあった。今考えれば、石油などが、世の中に現れなかったら私たちの苦しい生活はなかっただろう。」と書いております。そのほか作文がございますが、時間の関係上省略いたします。  こうして失業者家庭から崩壊が始まりました。親と死別した子供のほかに、生別、出かせぎなどが目立っております。また、失業の中から生活に絶望し、家出する父、あるいは母、または仕事を求めて出かせぎに行って別居、そのまま行くえ不明になった父母が多く報告されております。また、両親がいても、失業の中でいらいらしたり、不満、それが夫婦げんかとなり、時にそばにいた子供がなぐられたり、教科書が破られたり、母が住み込みで旅館やバーに働きに出ているため、父がおこりっぽくなり、子供が必要以上になぐられたりしております。こうした家庭子供たち非行に走るのも無理からぬ点がございます。資料の五ページ、六ページ、七ページ、八ページ、九ページ、一〇ページは、そうした背景の中から非行の増大していったことをあらわしております。  産炭地では、炭鉱の盛んなときでも非行児が多く、これは戦前からも見られた傾向でしたが、石炭合理化、閉廃山による失業者大量増加の中からこの非行が大きくなっております。ミカン山ミカンを盗むとかカキを盗むということは、私の少年時代も見られましたが、私は産炭地で育っております。今日のそれは質が変わっております。K中学報告によると、ミカンを盗むのに大きなふろしきやリュックサックを持って、小学生を見張りに立てて集団で盗み、それを売って金を得ているという事件がありました。非行は集団化し、組織化し、年齢も低下しております。子供たち家庭がおもしろくないので、家庭から遠ざかろうとして家出したり、学校でおそくまで遊んだり、また、学校の養護室に寝てホテルのようだと喜んでいる。そんな姿の中から非行に入っていくのではないでしょうか。  教師たちは、非行対策に、補導とともに、クラブ活動の重視をあげています。教師が夕方まで土曜も日曜も夏休みもクラブに熱中し、自分家庭すら放棄して子供たち指導をし、そのために夫婦げんかも起こったりしていますが、この非行防止の悲願がクラブ活動に教師を熱中させています。  次に、資料二ページ、それから別冊稲築町の補導主事会のパンフレットがございますが、これを見ていただけば御理解いただけるように、各学校はいま補導専任の教師を置いて対策に大わらわでございますが、解決の抜本的な見込みはありません。非行の拡大を食いとめようとしておるのに精一ぱいです。ここに私たち現場教師が実際に行なっている補導日誌、巡回記録、カウンセリングカードの一部を持参しておりますが、このカードの一つ一つを読みますと、非行子供一人一人を私たちは責めることができません。本来的に子供の素質がそうさしたのではなくて、崩壊家庭がこの非行を生んでいるからでございます。今日カギッ子が世間で問題にされているそうですが、私たちの地帯ではカギッ子はいいほうでございます。かぎをかけるのは、盗まれるものがあるからかぎをかけるので、親たちが出て行ってあき家になっても家にかぎをかけていない、盗まれるものがないといった家庭でございます。ある女教師の報告ですが、家庭訪問をすると、父親は近所の人と花札賭博をしていて、教師の顔を見ても知らぬ顔をして花札を繰っているので、女教師もその場で何も話せずに帰って来たという報告をしております。また、日雇いに働きに出ている母親は夜おそくなり、子供の世話もできません。毎日よごれたシャツを着ているので、その子供を夏は教師も裸にしてやって洗ったりしてやりますが、あまり破れたシャツ、よごれたシャツなので、夜おそく家庭訪問してそのことを母に話すと、母親は、食べることが精一ぱいです、子供のことは先生に頼みます。見れば、その母親は三十五、六歳なのに、ぜんそくでも悪いのか、老婆のように口をぜいぜいいわせ、老人のように疲れ果てた表情で、教師は何も言えないで帰ったと言っております。二二ページ、一四ページにありますように、平恒小学校の清潔検査の例ですが、他の地方だったら、新一年の子供は、母親の愛のしるしに、胸にハンカチを安全ピンでとめて、新しい服と帽子、ランドセルで意気揚々と校門に入りますが、ここでは四月の第一回検査、第二回検査では一七、八%の子供がハンカチすら持って来ていないのでございます。学校は、学習よりも、家庭でやれなかった、やってもらえなかったしつけを家庭にかわってやることから始めなければなりません。家庭崩壊は学習面でもあらわれています。一八ページに、三井山野鉱業所の閉山の影響を直接に受けた稲築町鴨生、平の両小学校の児童の知能、学力の低下の現象が記述してあります。ここで見られるように、成績の上位の生徒が転出して、中位、下位が残り、それから、第二会社になってさらに悪化しております。幼児から栄養が悪く、それが知能の発達をおくらせ、家庭では全く放任され、しかも、家庭に学習する雰囲気もない、机もない家庭でどうして学習させられましょうか。学習不振児が多くあらわれております。学習不振児を中心に授業をしようとすれば進度がおくれて、文部省の示すとおりに進度を進めると劣等生を増加させてまいります。劣等生の生まれるのは教師の罪でしょうか、また子供の責任でしょうか。こうした生活指導、学習指導上の障害に加えて、教師たちは多数の保護児童のために教育扶助事務を行なっております。一六ページから一七ページまではそれを報告していますが、二〇ページは、Tという子供に教師が町からの教育扶助料を預かって、親にかわって学用品を買い与え、最後に親の領収印をもらって会計監査を受けているときの写しでございます。この原本はここに用意しております。教師たちは、当然福祉事務所や親のすることを代行しております。申し上げることはたくさんございますが、時間が切られておりますので、最後一つだけ申し上げます。  嘉穂郡の平恒小学校の校長や教師たちが、崩壊家庭子供たちを次のように話しております。四年前に子供たちのために花壇をつくった。初めのうちは子供たちは花壇の垣のブロックを持ち出したり花をつみ取っていた。しかし、四年間子供たちと努力して花を育てた結果、いまでは花壇をこわす者も花をつむ者もない。子供たち自分から水を注ぐようになってきた。私たち教師は子供を信じている。子供がゆがみ、むしばまれているように見えても、その奥の心のけだかさを信じていると申しております。これは産炭地教師、教育関係者の共通の考えです。この産炭地子供たちを救うための応急の対策としては次のように考えます。  家庭教育、社会教育崩壊した現状の中で、学校がその代行をせねばならぬため、一学級の規模を少なくして、学級担任が真の親がわりになれるよう、一人一人に行き届いた教育がやれるように措置するとともに、教師の受け持ち時間を少なくしてクラブ活動ができるように配慮する。そして教師を事務や養護から解放して、子供の直接指導に専念できるようにすること。  非行対策のために補助教師を最低各学校一名以上配置すること。  精神薄弱児童のための特殊教育に格段の措置を行なうとともに、産炭地教育施設、設備の充実によって教育効果をあげるようにすべきことなどであります。しかし、これは抜本的な対策ではありません。抜本的な対策は、まず、親が就職し、毎日の生活に安定と希望を持っていくことです。ある失業者はこう語っています。昔のごつ、働けばそれだけ金になったり、盆、正月には女房子供に晴れ着の一つも買えたころはよかった、もうつまりまっせん。先生、せめて子供だけは一生働ける仕事につかしたいが、むずかしゅうございますか。私のまねだけは子供にはもうこりごりです。この親が毎日働き、子供の世話をし、子供を励ますとき、家庭に笑いと希望が生まれるとき、産炭地教育の危機は解消します。要は、産炭地の父母を失業の荒廃から救うことです。父母の生活の安定と希望ある生活、労働をする生活、張りのある生活の中にこそ、子供は美しく強く正しく育つことができます。(拍手
  11. 大河原一次

    委員長大河原一次君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見を拝聴いたしましたが、これより質疑を行ないたいと思います。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  12. 小柳勇

    ○小柳勇君 各参考人とも、貴重なる御意見を述べていただきまして、心から感謝いたすところであります。けさも社会党は石炭国有化法案などを中心に、きょうの危機突破大会に備えまして、成田書記長以下、関係者関係大臣にいろいろ陳情しておりまして、そのために、二、三まだ出席しておりませんが、石炭問題が大詰めにまいりまして、私どもとして真剣にどうしてこの危機を突破するかということを検討いたしておるところであります。いま四人の参考人意見、それぞれ問題が若干ずつありますが、まず、古賀さんから質問してまいりたいと思いますが、いま私たちが論議している法律、議長からお手紙がまいりましたように、産炭地域振興事業団法の一部改正、それから、産炭地域振興臨時措置法の一部改正、これを中心に論議しているのでありますが、産炭地誘致されました事業で、古賀参考人現地地域住民として、あるいは教師として、誘致された事業をどういうふうに見ておられるか、また、教師として、子供が将来仕事をしていかなければならぬ。いまおっしゃいましたように、失業者をなくすることが教育もよくすることだとおっしゃいましたが、産炭地誘致事業についてどういうふうな見解をお持ちであるか、お聞かせ願いたい。
  13. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 一つの実例を申し上げますと、嘉穂郡のある町にある工場が参りました。名前はちょっとぐあいが悪うございますが、きました。中学卒業者の就職者を募集にきたわけでございます。そのときに関西方面よりも二千円ほど安いということで、職業指導担当の教師が、賃金が安いということを考えて頭をひねりながらも、一応生徒に希望を募りました。生徒は全部拒否している。ところが、その社長さんが町長のところに行きまして、この町の子供やあるいは教師は愛郷心がないとしかられた。町長さんから教育委員会、学校へきましてしかられたわけですが、賃金を安く働かそうとさせられて、言いかえますと、産炭地には失業者が多いから安い賃金で働かそうというようなかっこうでこられた工場が子供たちの就職を要請されましても、子供たちはそれはちょっと困るわけでございまして、学校としては子供たちの希望がないということでお断わり申し上げて、結局学校の担当教師がしかられて済みましたが、安い賃金で工場を持ってこられるということは、現地の労働者を雇われるとしても、現地の労働者はこれは応じがたいわけでございます。  二番目に、最近、私は家が飯塚でございますが、周辺にできた工場が倒れたりします。そうすると、誘致工場に働いておって、また倒れるということだったら安心して働けないじゃないか、それじゃ生活保護のほうがよろしいじゃないか、こういうふうなことがささやかれております。  三番目に、じゃあどういうことを希望しているのかということでございますが、私がもとつとめていた飯塚炭鉱、あの楽市学校につとめておりましたが、その近くの飯塚炭鉱に行って見ますと、子供たちと遊んでいたところが何にもなくなっている。ただ敷地だけでございます。そのときにも話し合ったのですが、三菱が何かこの広場のあき地に工場を持ってきてつくってくれないだろうかということをそこで働いている者は言っておりました。三井のあき地、日鉄のあき地があります。そこにどうかして工場を持ってきてもらいたい。言いかえましたら、大きな工場、子供が一生涯働ける工場、一生涯そこで自分の生涯を預けてもよろしいというような基幹産業を持ってきていただけないだろうか、こういうふうに思います。その点につきましての地元住民側の意見として申し上げますと、現在道路の開発が進んでおりますし、篠栗線の沿線も大体進んでおりますが、もっと道路の開発が進めば、北九州、福岡とは間近なところでございます。したがって、北九州、福岡開発とともに、この中に筑豊の開発問題も含めていただくならば、この工場のあき地、それらのものの利用なるものもいろいろくふうせられる問題があるのではないかと思います。
  14. 小柳勇

    ○小柳勇君 第二の問題は、陳述の中にありましたが、生活保護家庭教育扶助の事務を先生が担当しておられる、ここに資料がありますが、一人の子供にすらこれだけの記録をして、これを家庭の承認を得て会計検査を受ける。また、この生活保護の、これを役場へ行って承認してもらわなければならぬというような事務を先生がやっておられるのだが、これを担任教師がするために相当教育効果を減退しておる。厚生省の事務官を配置すべきようなものではないか。  先般私は文教委員会に入りまして、先生が厚生省の事務をやっておるのだ、したがって、教員の予算がとれなければ、厚生省の予算で事務員をふやしたらどうかと言ったが、まだ結論が出ておらないのですが、古賀参考人の御意見をお聞きしたい。
  15. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) いまおっしゃった問題について、なるほどそういう点はあるわけでございますが、生活扶助の事務のうちの教育扶助については、これは機械的にきまりますけれども、準要保護の場合に教師たちがいろいろ判断して資料をつくってあげなければならない点が、言いかえたら、教育上の配慮をしなければならない点が学級担任にあることは事実でございます。それがあるからすべて教師がしなければならないということはないはずでございまして、ここに原簿がございますので、あとで先生に見ていただけたらたいへんありがたいのでございますが、学級担任以外に学校で係の事務をやっておる人がございますが、私の家内が二年ほど前、飯塚市の教員としてこの学校の事務をさせられておりましたが、昼、学級担任がカードをつくったものを家に持って帰って学校じゅうの整理をしなければならない。学校じゅうの整理は、学級担任でなくてもできるわけです。事務官ができる仕事なんでございます。それから、品物を一々買うもの、あるいはその原票をそろえるものにしても、すべて学級担任がしなければならないというものでもないわけでございます。これについては、くふうしていけばもっと簡便になりますけれども、同僚同士でございます。教員の中に係がおって、学校の整理をする者がおるとすれば、その組にすべて何もかも持たせることは気の毒ですから、その組は授業をしておりますから、それに重荷にならないように学級担任がやっておってお互いに苦労しておる。事務職員を配置していただければ、それに専門に当たっていただければ、学級担任が教師の教育上の配慮ということだけにとどまるならば、すべてこのことは簡素化されるわけでございます。それらについては各学校いろいろくふうすべき点があろうかと思いますが、具体的な問題は省略いたします。
  16. 小柳勇

    ○小柳勇君 第三の問題は、非行少年の問題、あるいは校外補導の問題、家庭訪問の問題がございます。いまのお話を聞いておりますと、普通の私どもが考えておる学級編制ではとても無理だという気がいたしますが、専門的には文教委員会の問題でございますが、せっかくの機会でございますから、学級規模の問題などお聞かせ願っておきますと、これまた文教委員会に持ち込みまして、将来参考にして論議していきたいと思いますが、その問題についてもう少し御意見をお聞かせ願いたい。
  17. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 学級規模の問題はいろいろな考え方があると思いますが、現地の教師、あるいは教育委員会、校長会といろいろ話し合いましたときの規模は、三十人が大体めどになっております。三十五人をこえれば無理である。といいますのは、非行児童の学級における、あるいは非行を誘発しそうな傾向のある子供、それから、もう一つは、生活保護の家庭子供、これが三分の一から四分の一をこえるというような状況になっております。そうしてくると、その子供たちに手をとられると、ほかの伸びていく子供たちに手がつかない。伸びていく子供を伸ばすとすれば、困る子供のお世話ができなくなってくる。三十人ないし三十五人ですと、三分の一いましても、そういう十人内外困る子供がいるとすれば、その子供たちについて毎日話をしたり世話をしたりすることも可能である、こういうふうに考えられます。なお、この場合には事務職員は必ず置いていただくということが前提になり、それから、補導教師は五百人に一人、生徒五百人に一人は要る。ある方面の県会では、中学は要るが、小学校は要らないという見解なんでございますが、筑豊地方では、すでに小学校の生徒の非行が露骨に出てきて、県警本部も強くこの点を指摘しておりますので、どうしても小学校にもこの係が必要になってまいります。それで、これは一般学級でありまして、特殊学級につきまして、精薄児童を受け持っておる学級については、これは別でございます。特にこの際、養護教育、特殊教育に当たっている者がやっておりますのは進路指導、就職をさせるときの指導、就職をさせたあとの指導に非常に心配しております。で、就職した後にどんなふうに子供が働いていくかということについて、事業場を回って事業主といろいろ話し合っていくような教師が必要である。したがって、そういうようなことを考えまして、特殊学級については一学級が二名、養護学校は進路指導、就職あっせん指導を配置するというようなことが必要な条件になっておりました。
  18. 小柳勇

    ○小柳勇君 第四の問題は、先般の予算委員会で、総理大臣が、産炭地教育の充実のために充て指導主事など置いて、産炭地教育の足りない点を補っていきたいという御発言がございましたが、充て指導主事を教育委員会に置くか現場に置くかということで、いままで相当紛糾いたしておりますが、古賀参考人意見を聞いておきたいと思います。
  19. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 実例で申し上げますと一番御理解いただけると思いますが、この稲築町補導主事会で出したものの中の一番終いの三〇ページの中に委員名が出ております。この中で、鴨生小学校の実吉君というのは文部省から指定されました充て指導主事であります。それから、中学校の二名は県が特別配置いたしました補導担当教師であります。稲築町は、山野鉱業所のガス爆発によって、鴨生小学校を中心とした子供たちが非常に打撃を受けましたので、教育委員会のほうが鴨生小学校に配属を命じまして、その中で四十年の補導を各学校一名ずつ力をあわせてやっております。ここに実吉君の補導日誌がございますので見ていただきたいと思いますが、私どもは、教育委員会において世話をするのでなくて、すぐれた教師ほどこのたいへん困難な補導の第一線に立って子供たち指導すべきであると考えております。したがって、いま一人でも多く現場の第一線に立てるいろいろな仕事をやらせるべき課題があるというように考えております。
  20. 小柳勇

    ○小柳勇君 古賀参考人に対する最後の問題は、もう閉山が相次いでまいりました昭和三十七、八年ごろをピークにして、一応落ちついたのではないかという印象はわれわれ持っているわけです。ただいまの話を聞いておりますと、まだとめどもなく産炭地教育が低下しつつあるように思う。非常に危機が、もうこれからよくなるのではなく、なお続いておるような気がするのですが、現状での認識を、将来についてのお考えについて若干お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 産炭地教育は、いまそのまま放置するならば、深刻さは加速度的に加わるだろうと思います。それはどういうことから類推しておるかと申しますと、昭和二十七、八年ごろ一時危機がございました。で、特に参議院においては非常に御心配いただき、現地調査もいただき、その結果が応急給食などの措置が行なわれて子供たちが救われた事件がございましたが、あのころの失業者がまだ部落として残っておる地方がございます。言いかえますと、廃山十年もたったところの父兄たち、その子供たちと、最近閉廃山になり、失業者になった子供たちとを比較するとわかってくるわけでございます。初め閉廃山が間近、閉廃山というときには、学校の廊下はばたばた激しく音がし、けんかが起こり、非常に子供たちに落ちつきがございません。ところが、閉廃山して七、八年たちますと学校は落ちついております。というのは、子供たちがよどんで暗くなっているわけでございます。この問題を、釜ヶ崎のキャラバンをやって私どもの嘉穂郡頴田町に入りました関西の学生の諸君と座談会をいたしましたときに指摘しておりましたが、西成の子供たちは、貧乏であっても生き生きしている、何とか金の使い方も計画的に使う。ところが、この筑豊の子供たちは一時に金を使ってしまって、なかったらじっとしている、朗らかに見えるけれども、心の底は実に暗い、これは親の影響ではないだろうか、こういうふうに話しております。それから、こういう報告も出ております。勉強のことを、あまり子供が勉強しない、素質はIQ一〇〇をこえておるという子供でございますので、何とかしたいと教師が話しておりますけれども、親のほうはあまり取り合わない。しまいにはおかあさんからこう言われたと頭をかかえておりました教師がおりましたけれども、それは勉強はできぬでもいい、学校はできぬでもいい、印鑑があったら暮らせますよと言っている。印鑑があったら役場に持っていけば生活保護で暮らせるじゃないかという。生活保護の親、働かないで暮らせたらそれでいいんだという家庭になってしまうと、子供たちは抜け出すことが非常に困難になってまいります。したがって、いまから先この大量の失業者に職を与えないならば、言いかえますと、委員会でも御検討いただいておりますような産炭地振興についての抜本的な施設が講じられて、この失業者たちに希望と力を与えるような職業がお世話いただけないならば、ますます教育は深刻な問題になってきて、いま何とかしようと歯をくいしばっている教師たちもお手あげになるような時期がくるのではないか、これが一番私たちがおそれている点でございます。
  22. 小柳勇

    ○小柳勇君 次は、稲田参考人にお聞きいたします。  一つは、アンプルのかぜ薬を製造するために工場をつくられた。ところが、それが四カ月でストップになった。これは相当の被害額があるんでしょうが、同じように誘致された事業で、仕事を始めたけれども売れない、あるいは何かストップがあったというようなときには、誘致した県とか市は親切に指導してくれているのかどうか。そうしないと、なれない土地に誘致された事業が戸惑うようなこと、まあ大企業全国的な連鎖のある事業はそうでもありませんが、小さい中小企業が主体でありますから戸惑っておるのではないかと考えますが、あなたの実態と、あなたが聞いておる誘致企業の実態をお話し願いたいと思います。
  23. 稲田善栄

    参考人稲田善栄君) ただいまの仰せですが、私ども初めての土地で何もわかりませんので、実はやはり一番そのことに苦慮するのですが、まず、どこへこのことをお願いすればいいかというようなことが非常にわかりにくいわけです。また、非常にそういう物を売るなんという競争場裡ですから、誘致の何には、官庁が誘致工場でできたものは優先的に買ってやるというような条項もあったように思うのですが、この点については、まず、どこへ行ってそれをお願いすればいいのか、このことからわかりませんし、そういうことで非常に戸惑っております。ただし、わかって何したときは非常に懇切丁寧にやっていただけるところもあるのですが、さて、大企業なり何かがやはり会員制だとかいろんなことがありまして、なかなかこういう点にも苦慮いたしております。
  24. 小柳勇

    ○小柳勇君 それから、誘致されたあなたの会社で産炭地失業者が何割くらい入っているのか。もちろんこれは法律によって入れなければ金も貸してくれないのですが、あなたが知っている誘致企業産炭地失業者は大体何割くらい入っておって、その産炭地失業者は、勤労意欲と申しますか、あなたはほかでも仕事をしておられるのですが、失業者は勤労意欲はあるのかないのか、そういう点を簡単に御報告願います。
  25. 稲田善栄

    参考人稲田善栄君) 私の感じたところでは、まず、働く意欲は非常にあるのだと思います。非常に仕事を持っていくと喜ばれるのですが、ただいまのように、働き過ぎると結局いまの補助が削られてしまうというので、そのため休むというようなことが非常に多いのでございます。
  26. 小柳勇

    ○小柳勇君 生活保護の指定の労働者を雇うと、その人たちは賃金をよけいやると差し引かれるから、生活保護の限度までしか働かないということだったのですけれども、その他のほかの人でも、産炭地失業者は勤労意欲あるということですね。それから、最後に、誘致企業、将来も、福岡県も、あるいは北海道も常磐もそうですが、中小企業、基幹産業も誘致しなければならぬが、誘致いたしますときに、われわれとして、一体どういうことを国会なり、あるいは県なり市が考えておったらいいか、誘致された業者の立場から御意見を聞かせていただきたい。
  27. 稲田善栄

    参考人稲田善栄君) 私ども誘致されまして、  一番まず銀行の問題について困ったわけなんですが、事業団、それから、政府機関である中小公庫も非常に懇切丁寧にやっていただけるのですが、やはり営利を目的とする銀行は信用度だ、そういうことにおいて非常にまず困りました。まず、工場として参りますと、何か求めようと思ってもどこにあるのかわからない。しかし、そういうことはすでに覚悟して入るのですが、実際なかなか一つ企業をやっていこうとしますと、金だけではなくて、教育、それからいろんな問題が山積みされております。それから、現在特にそういう信用度が問題になりますので、われわれ、特に私の場合は、すでに個人の担保も使い尽くしておりますし、何かここに政府の、あるいは保証協会の、あるいは今度まあ運転資金を出していただけるのは非常にありがたいのですが、これなんかも一時間も早いことを現在期待しております。何とかこういう点をやっていただけますなら、非常に産炭地の人たちほんとうは働く意欲もあり、私は非常に悪くはない。だから、ほんとうにみなと一緒にやっていけるのだ、かように考えているのであります。
  28. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 夕張市の本間議長さんはじめ、四人の参考人の方に若干お尋ねしたいわけですが、いままで国会があるたびに、産炭地域から、自治体なり、それぞれ経営者の方、あるいは組合の方においでを願って御意見を聞き、今回も衆参両院、参考人の方々は別ですが、お招きしてお話を承っているわけです。しかし、毎回参考人の方々から適切な御意見、あるいは現実に悩んでいる点をお聞きしても政策にあらわれない。したがって、責任は政府にあるわけですが、たとい野党の一員であっても、議員として参画しておるわけですから、非常に参考人の方々にお尋ねするのは苦しさを感ずるわけです。しかしながら、せっかくの機会ですから、四人の御参考人の方にお教えをいただきたいわけですが、私ども国会でいろいろ論議しておるわけですが、今日の産炭地はもうあすの産炭地でなくなって、石炭産業が安定しても産炭地域が安定するとは限らぬわけです。ですから、石炭産業の安定ということと産炭地域の安定ということは、同じ場所もありましょうし、全く違う場合もある。  そこで、一番先に夕張市の本間議長さんにお尋ねしたいことは、私はよく存じませんけれども、九州から北海道、常磐、山口までの炭鉱の中で、もう夕張とか大牟田の三井三池炭鉱、これは日本で一、二の炭鉱なんですが、新鉱を開発しなければならぬというところで一昨年二億円の予算をつけ、今年は四億円の予算をつけた。ここで何度も通産大臣、あるいはここにおられる井上石炭局長から、これは一体どこに使うのですか、こういうようなことでいろいろとお話を承ったときに、九州へ一カ所、北海道へ一カ所でございます。北海道はどこですかというように詰めてお尋ねしたところが、局長、あるいは大臣から、北海道は本間議長さんの夕張市ということを私どもは承っておる。その後論議したことがございませんけれども夕張市は、その受け入れ態勢として、非常に市自身として苦労なさって、産炭地域振興、あるいは石炭産業安定のための努力をして受け入れ態勢を整えた。にもかかわらず、中央のほうでもやもやしておる、まあこういうととでお困りになっておるというお話を承っておりますが、その実態をもしできればお教えいただきたい。これがまず一点です。
  29. 本間良孝

    参考人本間良孝君) ただいま御質問がありまして、御指名でありますが、私ども全国市議長会石炭関係におきましては、すでに第一次調査団、第二次調査団、あるいは今回抜本政策というような面でいろいろ専門の方々が勉強されているわけでありますから、より大きい期待を持って待機しておるわけでありますが、特にいま阿部先生が申されましたとおり、私どもは、スクラップの中にもビルドを組み合せながら石炭の絶対量というものを守るという方針に貫かれた調査団の勧告だと考えておるわけでありますが、その中に多くの終閉山の山があり、また、その中には限られた新鉱開発地域があるということで申されるように、九州三井三池炭鉱、さらに北海道は石狩炭田の南部ということで発表されておりまするが、これが特に私どもの市において具体化いたしましたのは昨年の九月ごろからでありまして、企業化、あるいは産炭地域行政を通じて住民の生活の安定をはかるという立場からも、何といっても新鉱を開発することがその地域の中核的な経済の確立に直接結びつくものであるという考え方で、私どもが聞いている範囲の隘路を打開していただきたいという考え方で、いろいろ中央に再三にわたってお願いしておりましたことは、新鉱を開発する場合に、政府の力による無利子の長期融資のワクをもっと拡大していただかなければいけないのだという面、あるいはそのほかに開銀その他の残る資金を低利でもって融資してもらわなければいけないという点等があげられておりましたから、もちろん石炭局長さんも見えておりますけれども、私どももこれらの案件を携えまして、何とか企業がいっている条件を確立していただきたいし、私どもがこれらを開発していただくために必要な問題の解決に御協力を願いたいということで、昨年来、それなりに御協力をいただきまして、無利子、長期融資部分につきましては四〇%から一〇%アップの五〇%というような問題の解決を見ながら現在進んでおるわけでありますが、これらの基礎に立って企業家が地方自治体にじきじき要望、請願されることは、これらの新鉱開発資金を用立ていたしましても、なおかつ現実に地方自治体から徴収されるところの、固定資産税等を、ある一定の期間、新鉱開発がその緒につくまでめんどうをみていただきたいというような請願をいただいておる状態であります。私ども地方自治体の財政から申し上げますると、すでに御承知のように、あまりにも疲弊しきっている地域でありますから、各年度に納められる税金がだんだん限定していきまして、自己の行政を遂行するにしてもとうてい及ばないということから、大きな起債を仰いでどうやら一年の総計を締めくくっていかなければならないという立場なんでありますけれども、こういう企業家が実際の新鉱開発の中における固定資産のウェート等を示して、この部分でも何とかしていただくことによって新鉱開発という大きな事業化が具現することができるのだという切なる要望がありまするが、私ども議会を守り、理事者を擁立しながら地方自治を守るという立場の者といたしましても、耳をかさないわけにいかないということで、昭和四十年の最後の私どもの市議会におきまして甲論乙駁のあったところでありますけれども、やはり地域の産業を確立して、それから地域の住民の生活の安定に直結でき得る問題だという割り切り方に立ちまして、自治省その他からは大きくおしかりを受けたところでありましたけれども、やはり地元産業の振興発展のためにはやむを得ないものがあるということで、五年間固定資産税の一部の免税をすることを条例化いたしまして、昭和四十一年度におきましては、すみやかにそれらの新鉱開発ができるという計画でありましたからして、大いなる期待を持ってこれらの条例を制定しておるところでありますが、それらの要望陳情をいただいた当時に企業家側から言われております、すみやかなる新鉱開発というものは、現実にまだその緒にもつかないというような状態に立たせられている実態なんであります。私も、きょう午後から石炭危機の大会がありまして、各関係の専門家の方々もお見えになりましょうし、また、明日はそれらの陳情を通じてお願いする機会も与えられると思いますので、専門の方々からこの辺の実情を勉強していきまして、帰りまして住民に直接この事情等を御報告申し上げなければ、条例を制定した手前、特に反対なされている住民の側に対しましても、直接この事情等を御報告しなければならぬという立場に立たせられておりますので、この点ともども勉強してまいりたいと思っておったところでありまするが、ただいま先生の質問によりまして、私の意のあるところの実情を吐露した次第であります。
  30. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 堀本政務次官、あるいは井上石炭局長でもけっこうですが、有沢調査団長の答申がいつ出るかわかりませんけれども、とにかく今月の末に五千五百万トンという数字、あるいは五千六百万トンという数字になるか、それは幾らかわかりませんが、しかし、石炭局長も御承知のとおり、A、B、Cの山がいま幾つかあって、そうしてAの山がなくなってB、Cになるかもわからぬ、あるいはCがなくなってA、BとDという新しい山ができるかわからぬ、こういうお話で、スクラップ・アンド・ビルドですから、そういう区別は、私どもは話は承ってきたわけですが、少なくとも、いま出たような話は、一昨年計画して予算を組んだわけですね、昨年。そうすると、ことしあれだけ組んで、いまさら、平易なことばで言うと、何をもたもたしているか原因がわからぬ、つぶすほうは御熱心であるけれども、新鉱開発のほうは御熱心でない、口を開けば産炭地振興とか石炭産業安定とおっしゃるが、どうしてネックがあってできないのか、その辺をひとつ明快に御答弁いただきたい。
  31. 井上亮

    政府委員(井上亮君) ただいま阿部先生並びに夕張本間さんからいろいろお話があったわけでありますが、特に阿部先生から、当委員会におきまして、かつて新鉱開発の問題が議論されましたときに、先ほどお話がありましたように、確かに私から新鉱開発については、ただいま政府といたしまして九州一カ所、北海道一カ所、これを考えておるという考え方を申し上げたわけであります。北海道におきましては、ただいま夕張市の議長さんからお話がありましたように、私どもが想定いたしておりますのは三菱鉱業の南大夕張炭鉱でございました。ここを新鉱開発したいというふうに考えておるわけでございます。この構想は、つとに昨年の初めぐらいからあったわけでございまして、私どもはこの新鉱開発に対しまして、なかなか私企業のみの力では新鉱開発はむずかしい、そういった見地から、国の資金を相当多額に投入いたしまして、これは融資でございますが、開発するということで、予算も一応とれておるということも事実でございます。しかし、御承知のように、ただいま政府におきましては、石炭の抜本対策の確立に関しまして石炭鉱業審議会にこの検討を要請している段階でございまして、ただいま審議会におきましてもこの抜本策について鋭意検討中でございまして、おそくも六月中には答申が出るだろうというふうに考えております。この審議会の過程におきまして、やはり一番大きな問題は、何と申しましても需要確保の問題、この需要確保の問題がいわゆる石炭位置づけの問題につながり、そのことが終閉山規模の問題等にも関連がございます。非常に深刻な問題をはらんでおるわけでございまして、ただいま審議会におきましても、鋭意こういった関係を検討中でございます。特にこの需要確保の問題につきまして、原料炭の将来の需要の見通しということが非常に大きな問題になっておるわけでございまして、原料炭の問題につきましては、鉄鋼業界におきましては国内炭を優先使用してあげたいという気持ちは今日でも変わらないわけでございます。しかしながら、鉄鋼業自体にとりまして、非常に何といいますか、溶鉱炉の形態を見ましても、今後逐次大型化していく、そのためには、やはりどうしても大型化されますと強弱比の関係とか、あるいは石炭比の関係、いろいろ技術革新の問題が起こってくるわけでありまして、その過程で原料炭の将来の需要確保につきましても、これは鉄鋼業の伸びにも関連いたしますけれども、必ずしも楽観を許さないというような見通しもあるわけでありまして、そういった角度から新鉱開発につきましても真剣に議論が現在なされておるわけであります。したがいまして、私どもとしましては、この審議会の答申とか結論とかというようなものが近く出されますので、それを見ました上で、何も政府といたしましては審議会どおり実行しなければいかぬというわけではないのでありますが、一応いま審議を依頼しておる段階でございまして、この検討過程を見まして、答申を受けた後に政府としての態度を明らかにしたいというような次第で、これは昨年の初めくらいから本件につきましては問題にしている問題でございます。そういった事情で、ただいま結論を出すのはおくれている次第でございます。なお、私個人の考え方としましては、およそ資源産業である石炭産業を再建していく、位置づけのいかんを問わず、いずれにしましても、優秀な鉱区がある、それを開発したい場合には、既存の山よりも、より良質の石炭が産出され、よりコストも低廉に産出できるというような有望な地点につきましては、やはり今後とも開発していく、老朽した山は、遺憾ではありますけれども、かり閉山していくというようなスクラップ・アンド・ビルド政策が、やはり何と申しましても、位置づけのいかんにかかわらず、石炭対策、資源産業の本来のあり方というふうに私自身は確信いたしております。先ほど来申し上げましたような事情で決定がおくれているわけでございます。その点を御了承いただきたいというふうに考えております。
  32. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 石炭局長のお気持ちはわかるわけですが、しかし、局長のお気持ちだけではこれはなかなか了解できない。そこで、むずかしい理屈は抜きにして、一体事務的にはどうなるのですか。一昨年から二億の予算を組んで、そしてことしは四億組んでいる。九州と北海道でやりましょうということで、われわれも賛成した。ところが、いま御答弁を四角四面に受け取ると、六月答申が出て、八月になるか九月になるかわかりませんけれども、臨時国会で論議して、それからでなかったらできぬというように承れる御答弁。そうすると、いままで何のためにわれわれが新鉱開発とか、有沢さんの意見賛成したり反対したりしてやってきたか、全部御破算になってしまう。いまこれから論議する法案は、それは抜本対策でも、産炭地事業団でも促進事業団でもやりましょう、こういうふうに通ずるのです。このあたり了解できがたいわけです。そうすると、いまのお話でいきますと、抜本案ができるまではだめですか。こういうことですか。一つの町の企業であればいざ知らず、石炭産業は、坑口を開坑し始めてから四年ないし五年かかる。それをいま北海道はもう三カ月すると秋風が吹く、もちろん立て坑を掘るわけですから、冬もできるでしょう。しかし、能率はあがらぬことは御承知のとおり。それをいまもたもた夏中やって、冬になってさあやりなさいということになると、やるほうでもたいへん、受け入れるほうも、さいぜん本間議長のお話の中にもるる申されているとおり、踏みにじるというかっこうになる、この点どうですか。事務的処理の問題と関連してお伺いいたしたい。
  33. 井上亮

    政府委員(井上亮君) 南大夕張開発問題につきましては、ただいま開発の具体的な計画、これは三菱が中心になって検討しておりますが、私どもといたしましても詳細な検討をいたしております。将来の開発後の採算可能性とかいうような点についても深く研究いたしております。ただ、先ほど申しましたように、ただいま原料炭の将来の需要確保の見通しの問題と、それから、新鉱開発をしない既存のビルド炭鉱の将来の産出の見通しというような需給の関係一つあるわけでございまして、そういった点ともにらみ合わせて、需給の将来の見通しにかかわらず、やはり南大夕張のほうが優秀な山でもあり、かつまた、将来の石炭産業の安定供給——ビルド山と申しましても、相当老朽化した山もあるわけでございます。したがって、長い将来の原料炭の安定というような角度からこの開発をどう考えるかという点をただいま検討中でございますので、何も秋を待たずして、私は、位置づけがきまりますれば、その直後に政府としての結論を出したいというふうに考えております。
  34. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 あわせて、局長から九州の有明海の点もお尋ねしたいのですが、その前に、いま論議されている三菱の南大夕張のそばに北炭の鉱区がある。常に局長も鉱区の整理統合ということを何年も前から言っておるのですが、それに関連して、木山さん、たいへん恐縮ですが、常磐炭鉱には木山さんのところ以外に鉱区があるわけですが、そこで、私どもいろいろ石炭政策研究ということで皆で勉強しているわけですが、鉱区を整理統合しなければ、こういう時代になってくると、ここはこう、ここは何がし、ここは何がしと鉱区がばらばらになっておる。そこで立て坑をおろすとか、各社ばらばらに選炭機を使ってやっていくために、きわめて鉱区が日本中にちらばっておって、持ち主が違うためにコストが高くなる。したがいまして、空知炭田とか、あるいは木山さんのところの常磐炭田、あるいは釧路炭田、いま論議されておる三菱と北炭の炭田などは合併してはいかがなものかということをいろいろと勉強しているわけです。たいへん恐縮ですが、いつも常磐はどうだろうかといって、木山さんのところが私どもの論議の俎上にのぼるところなんですが、こういう点についてはいかがお考えでございましょうか。
  35. 木山茂彦

    参考人木山茂彦君) お尋ねでございますので、率直にお答えをしたいと思います。  常磐炭田、なかんづく、福島県側はほとんど私どもの鉱区でございまして、古河、好間炭鉱が一部操業しておられる程度でございますが、茨城県鉱区は、いま阿部先生から御質問のように、鉱区鉱業権者が相錯綜しておる現状でございます。井上局長からも、昨年暮れでございますか、示唆という程度でございまするけれども、統合をすべきであるという御意見、勧奨等もございました。各社社長これに向かって鋭意努力をしておるのでございますが、私ども常磐炭礦は双手をあげて賛成をいたしておりまするけれども、各社それぞれ伝統、歴史、利害、必ずしも一致しないという現状でございまして、現在までその結論を見出し得ないでおりますことをきわめて遺憾に考えております。  以上であります。
  36. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 あまり突っ込んだお尋ねをするのは恐縮なんですが、常磐炭礦木山さんのところでは賛成で、付近の炭鉱はあまり賛成しておらないということは、あなたのところの山以外、私全部承知しておりませんけれども、あまり茨城地方でそう有力な企業力を持っている炭鉱経営者がないと思うのです。また、採鉱をやっておらんで、鉱区だけを持っておる人もあるやに承っておりますが、しかし、どういうわけで賛成しないのですか。その点もし答弁できればお尋ねしておきたいのですが。
  37. 木山茂彦

    参考人木山茂彦君) これは関係はいたしておりまするが、あくまでも相手さまのことでございますから、こうであると断定的には申せませんけれども、ある鉱業権者については、自分のところがもう掘るところがなくなってきたので、自分のところが中心で統合をしたい、こういうようなこと、また、ある権者については、ざっくばらんに申しますと、いわゆる葬式料を有利にしたいというようないろいろな思惑、かけ引き等があろうかと、これは私の想像でございますので……。
  38. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 石炭局長、さいぜんの九州における新鉱開発のお答えをいただきます。
  39. 井上亮

    政府委員(井上亮君) 九州につきましては、阿部先生も御承知のように、日鉄鉱業の有明炭鉱、これはもうすでに何年も前から新鉱開発に着手しておるわけでございまして、今日では相当海底深く坑道もある程度進んでおるわけでございます。したがいまして、先ほど申しました三菱の南大夕張炭鉱とは違います。南大夕張のほうは今後着工するわけでございますが、九州のほうはすでに数年前から相当巨額の自己資本を投じまして開発を進めているわけでございます。これにつきましても、私は、やはり将来の鉄鋼需給の関係等もありますけれども、しかし、やはりこの鉱区が非常に有望な炭田で、採掘条件も非常に他の既存の山に比べまして優秀であるというような関係で、私どもとしてはこの新鉱開発を進めてまいりたいというふうに考えております。ただ、しかし、これはもうすでに着工しているのですから、いいも悪いもほんとうはない、本来は。しかしながら、先ほど来申しましたような関係で、六月答申を待って、最終的にさらにこれを促進するかどうか、これは促進せざるを得ない、着工しておりますから。そういうふうに考えておる次第でございます。  それから、なお、ただ一部有明につきましては、鉱区の新鉱開発地域指定の関係で少し迷惑をかけている点もありますが、これももう一カ月くらいで解消されるものと考えております。
  40. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、九州のほうはまだ融資を始めておらないというわけですか。
  41. 井上亮

    政府委員(井上亮君) これは一部はやっております。一部はもうすでに着工中でございますから、一部はやっております。本年度の資金は、私の記憶では、たしかまだであると思います。しかし、これは遠からず解決したい。これはほぼ先ほども申しましたように、数年前からの自費投資で進めております。これはうしろに引き返すわけにはいかない。これは何が何でもやり抜いていくということでございます。
  42. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 予算措置がきまっているわけですから、答申が出ればやれることになるでしょうけれども、現実の問題として、なかなか六月の末までに答申が出ないというようにも承っている。審議会のメンバーに局長さんが入っておらないわけですが、実際事務局長というか、企画立案のほとんど九九・九%まではあなたがおやりになるのでしょうから、いつごろ出てくるのですか。
  43. 井上亮

    政府委員(井上亮君) 阿部さんのおことば、大体事実でございますが、そのおことばだけはちょっと一ほんとうに私は事務局ではありますけれども事務局としてやはり審議会の中で討論に参加していることは事実でございますが、しかし、この新鉱開発ばかりは私どもの思うようにならぬで、実はなかなか苦労しているというのが実情でございます。しかしながら、私は先ほども申しましたように、私としての資源産業のあり方の問題、あるいは石炭鉱業のスクラップ・アンド・ビルド政策のあり方というような点から、やはり少なくとも、この問題になりました二山の新鉱開発についてはやるべきであるという見解を私は持っておりますが、しかし、やはり衆議を尽くして議論いたしておりますので、その結論を見た上で政府としての結論を出したいというふうに考えております。
  44. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 古賀さんにお尋ねしますが、さいぜんお話の中に、三井の第二会社になった山野炭鉱のお話がございましたが、この山野炭鉱という第二会社は、あの山野炭鉱はもと三井鉱山で借金して、三井鉱山として掘っておったわけですが、負債は三井鉱山の本社に譲ってしまって、五千万円の独立会社で、本社から十億円の金を借りて融資してもらっているわけですが、昔と違って、山野炭鉱は黒字であって赤字がない。だから三井という鉱山会社を離れて、看板は小さくなったけれども、会社の経理内容はいいわけです。しかし、第二会社という暗いイメージがあるかもしれませんが、そういう経理内容ですから、第二会社になったほうがかえりて悪いというようなことはあり得ないわけです。ただ、お話の中にもありましたが、爆発がありましたので、生徒に与える心理的影響、こういうものは非常にあると思うわけですが、そのあたりちょっとお聞かせを願いたいのですが。
  45. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 私は会社企業の事情については存じませんので、子供のほうなり教師がどういうふうにこの問題を受け取っているかについて申し上げたいと思います。  三井山野鉱業所時代は、これは労働組合のたてまえもそういうところをとっておりましたが、社会教育の問題について会社側としては積極的に仕事をお進めになっておりました。たとえば子供会の指導、あるいは遠足だ野球だ水泳だという施設、そういうものの中で子供たちの問題について非常に積極的にお世話をいただいておったと報告されておるし、私が岩崎尋常高等小学校につとめていた時代の、これは戦前でございますが、三井の子供たちはそうしたことについて非常に会社側の教育施設を受けておりました。それが三井山野鉱業所が山野炭鉱に変わりましてからは、そうした教育上の施策については行なわれておることはぐっと減っております。これは会社の経営はどのようになっておるか存じませんが、そのような子供の問題については手が及ばなくなっているようでございます。  それから、もう一つの問題は、三井山野鉱業所時代、労働組合の方々も、家庭教育の問題については積極的にお取り入れになっておりました。組合から教育委員に出たり、PTAの役員をしておる。こういう方々もおられると、当然労使一緒になって子供の問題を取り上げておりました。それが今日の姿は、そういう教育上、家庭としても一緒になって取り組もうという姿も消えております。  それから、二番目の問題でございますが、構成人員のほうで申しますと、山野鉱が第二会社に移りまして、私の聞いたところでは、再就職、転出が非常に多くなったということを聞いております。私の教えた生徒も朝霞のほうに転出してきておりますが、中年の者はこの会社の系列会社その他に転出して行って、後に山野鉱業所のほうで人不足が起こったと聞いております。したがって、これは社宅はもとの三井三鉱地帯といっております。との地方に下請の組夫が入っております。この下請の組夫の入ってきた方々を中心に、よそからの転入の子供が入っている。この子供たち出身は佐賀県または長崎県の転出が多い、あるいは東京から来たものもある。住民登録を持たないで来た者、向こうの学校から転出証明なり学習指導要録を持たないで来た生徒という者もおるわけなんです。この子供たちは、前からおった子供たちと一緒にさせますと手のつかないように悪い。したがって、学級指導、あるいは子供会というようなものは教師が出てきてやるわけですが、そこでは話し合いができないでけんかが始まるというような問題が起こってきております。したがって、三井山野時代と山野炭鉱になってからでは、働いている人たちの構成要素も変わっているのじゃないかと思います。  それから、もう一つは、炭鉱予算では、何といいますか、福利関係費ですか、厚生関係費といいますか、こういう予算の問題がどういうふうになっているか、会社側のこういう問題に対する取り組み方がどういうふうになっているか、三つの問題から考えますと、私どもは、山野の場合には現在非常に大きな教育上の困難に突き当たっているというのが平小学校、鴨生小学校、稲築東中学校の一致した結論でございます。
  46. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 爆発によって何百名という子供がおとうさんがなくなったものですから、いかに明るくしなさいといっても、なかなか明るく勉強するというのは不可能でしょう。そういう面で、山野になり、第二会社になって悪いというのなら話はわかる。ただ、いままで三井鉱山の時代は、十年、十五年前は別として、賃金はなかなか払ってくれない、たまにやめていく人の退職金も払ってくれない、あるいは期末手当等、よその炭鉱では二万円もらっても三井は一万円だ、そういうようなわけで、家庭が暗ければそれが子供に影響するということは理の当然であります。そういうことから、安くても今度は全額払うということになったのですから、爆発の面では暗くなっても、そちらの面では明るくなると考えるのがぼくらの一般論です。しかし、いまの古賀参考人の話をお聞きしますと、組夫がたくさん入って、組夫の子供がおって、全部でなくても、相当前におった人がおらぬということになれば当然そういうことかもしれませんが、そういう点は私らにはよく理解できぬ。
  47. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) 三井山野が山野炭鉱に変わったから、とたんに悪くなったというのではございません。三井山野鉱業所時代に、もうすでに子供たち非行は次第に起こっておる。これはここにもカードがございますが、いま先生が御指摘になりますように、不況の中で子供たちの間に動揺があって、近所のだれがどこに転出するとか、だれが大阪にかわるとか福岡にかわるというような子供たちの動揺というものが、すでに教室の中ではけんかが起こりやすくなったり、あるいは子供たちが動揺しやすくなったという報告は出ております。したがって、三十五年、六年ごろからこの学校の教育はむずかしくなっております。私がいま申し上げましたように、会社が変わりまして質が変わりまして、それから構成人員が変わった。それから、もう一つ、私は、山野のガス爆発が子供に影響を与えなかったとは考えておりません。この問題はきわめて深刻に与えておりますし、なお、遺族の方は非常に困難な問題がございます。非行を惹起しておる子供たちの中に、この山野の遺族の方が入っております。これは生活が苦しくなって、おかあさんが働きに出ている、そのために子供がやはり同じように放置される。去年の初めガス爆発の起こったその夏休みごろまでは、みな山野の遺児だといって大事にしてくれ、いろいろ気を使ってくれたが、日がたつにつれて忘れられて、あとは罹災者だけが生活が苦しくなっている、その中で非行が始まっているということで、山野の非行案件も私の持ってきたカードに入っておりますので、あとで見ていただけば、このガス爆発の打撃が大きかったということがよくわかるだろうと思います。
  48. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 夕張本間さんにちょっとお尋ねしますが、事業団の折衝の過程において、現地で解決をなるべくできるようにしていただきたい、こういう御要望でございましたが、まことにごもっともな御要望と思いますが、御参考までに過去にどういうことでお困りになりましたか、具体的に例を一つでもお聞かせいただけるとけつこうでございますが、その点はどうですか。
  49. 本間良孝

    参考人本間良孝君) 私も不勉強でございまして、大方のことにつきましてはその時点で御説明できるわけでありますけれども、特に事業団支所支部に昇格していただきたいという点につきましては、いろいろな問題が中央でのみ解決されていることについて、各支所関係する方々の意見等が集約されての要望になってあらわれているものだと思いまするが、私どもの地元で耳にいたしますことは、やはりこの事業団融資関係であります。ささいなというと語弊がありますが、額面としてはわりあい僅少なものが、このくらいのものであれば、支所で決裁権があって、簡単に時宜に適した救援、あるいは融資措置ができるのではないかと思ったものでありましても、これらの問題が中央関係機関を経て、相当日数を経てこなければこれらの許諾、よしあしということがきまらない。それであっては、非常に経済その他というものは動いているものでありますからして、せっかく僅少であっても、事業としては大事な仕事でありますから、これらの大事な問題はできる限り地元で解決さしていただきたいというようなことが一番大きな問題としてあらわれているようでありますし、あと、工場誘致用地の造成その他の大きな問題については、もう当然それらは大事な問題でありますから、多くの期間をかけて御決定いただかなければならない問題だと思いますが、特に問題になっておるのは融資の問題、金融措置の問題だというふうに考えております。
  50. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そこで、石炭局長にちょっとお尋ねしたい。  政務次官もお見えになっておるが、そういうような事情は現地においてはどういうふうに解決しておりますか。一々やはり中央にお伺いを立てて解決しなければそういうささいなことでも解決できない、常識的に現地で解決でき得ることだと、われわれはそのように考えておる、こう参考人はおっしゃっておる。そういうことでも中央にお伺いを立てなければできない、しかも、日数が非常によけいかかる、これでは産炭地振興に対して非常に困ると、こういう参考人の陳述ですが、その間の事情はどういうふうになっておりますか。
  51. 井上亮

    政府委員(井上亮君) ごもっともな御質問でございまして、私どもとしましても、北海道はまだ支所という名前になっておりまして、九州は御承知のように支部というふうになっておりまして、格が九州と北海道を比べると違うわけであります。北海道につきましては、かねてから支所強化して支部にしてもらいたいというような陳情がありまして、私どもといたしましても、近い将来にはこの支所強化してまいりたい。  それから、同時にお尋ねにありましたように、融資等につきましては、それは巨額な投資とか何とかということになれば別でございますが、一定金額程度の融資の問題であれば、できるだけ権限を地方に委譲するというような措置も指導してまいりたいというふうに考えております。
  52. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 その点については、またあとで私は委員会でやります。  それから、稲田社長さんにお尋ねしたいと思いますが、田川においでいただいてまだ日も浅いし、融資の面において金融関係のほうにも信用がないと、まことに御謙遜のおことばでございましたが、そこで非常にそういう点において困っておる、今回運転資金が出されるようになって非常に幸いしているがというようなお話でございますが、過去におきまして、あるいは市とか県とか、いわゆる地方公共団体の十分なる応援を得られたかどうか、その点をひとつ。十分これは土地に企業誘致した以上は、市、県が強力な私は応援をすべきである、その点についてお漏らしいただければけっこうであります。
  53. 稲田善栄

    参考人稲田善栄君) その点につきまして、先ほど申し上げましたとおり、私はかぜアンプル製造事業で当時計画しておったのが全くひっくり返り、それから、また、予算を組んでおったのも自己の財産を担保にいたしましてやってきたものでございます。そういうことで、いよいよほんとうに動こうと思いますと担保もありませんし、それから、もちろんいろいろの施策は講じていただけるのですが、いよいよ最後になるとそういう面が非常に困っておるわけでございます。
  54. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がありませんので、次に古賀先生にちょっとお尋ねしますが、カウンセラーの点につきましてここにいろいろお書きになっておるようでございますが、その名称すら、呼び名すらはっきりしない、こうおっしゃっておるようでございますが、一体どういうふうな、いま指導主事とか充て指導主事とか、いろいろあるようですが、大体どういうふうな名前で呼んでいらしゃるか。  それから、行動費や旅費などの補償が全然ない。これは私は非常におかしいと思うのですが、その点の事情はどういうふうになっておりますか。及ばずながら、私どももそういう点につきましては先生方の御希望に沿うよう努力したいと思いますので、その点の事情を……。これは当然指導主事の方は校外で十分活躍なさらなければならない。それに対する行動費、旅費などが全然ないということになれば動かれないということになりますので、こういうことになれば仏つくって魂入れず、最も私はこれはいけないことだと思います。そういう点をこれはいろいろお伺いしたいのです。  それから、また、大体実態は五百人以上に一名ということを御希望なさっておるようでありますが、現在福岡県のほうの産炭地においてどういうふうな率になっておりますか。その点、二点ばかり——まだいろいろお尋ねしたいのですが、時間の点で、そういう点をお尋ねしたいと思います。
  55. 古賀藤久

    参考人古賀藤久君) まず、名称と仕事の問題についてお尋ねでございますが、実はこの名称が混乱いたしておりまして、嘉穂郡に六人配当になりました。文部省からの者は充て指導主事という名前が正式でございます。それから、県から中学校に十人配当されました。補導教諭というのが県から純県費で配当されたのが県の正式の名前でございます。それから、学校の中でいろいろな操作をやったり何かしてしぼり出してきたのがもう一つあります。これは名前がありません、正式には。私どもは、結局現地では、産炭地非行が悪化したので、庶子と私生児と嫡出子と出たが、どれが嫡出子かわからぬということを言っております。これでは困りますので、役所でも私どもでも補導教官と呼んだり補導主事と呼んだりして一括まとめております。これはなぜそういうことに混乱したのか、あるいはカウンセラーが正しいのか補導教諭が正しいのかということについても混乱しております。なぜそういうことになったのかという由来がございまして、これは普通のそういうものがなかった時代に、簡単な事件でも警察のほうから学校の生徒の事件については呼び出しがまいります。それで授業を休んで先生がときどき行っておったのです。ときどきでしたら授業を休んでもいいのですけれども、しょっちゅう行かなければならなくなってきた。しまいには生徒をもらい下げによく行くようになった。ですから、もらい下げの係が必要になってきた。こういうところから、子供たちの補導というものが中心でありますので、起こりは青少年問題協議会と警察の少年係、それから地域のいろいろな民生委員とか、そういう方々の間で、どうしてもこの仕事を学校でやる者が必要になってきたというわけであります。そういう仕事の必要が生まれてきましたが、それでもおまえたちは一体何をするのかということを討論いたしますと、私の郡だけでもなかなかまとまっておらない。いいますのは、教師というものは、非行が起こったときに警察からもらい下げに行ったり、あるいは盗みをやったときに、盗まれた被害者のところに断わりに行ったり親のところに届けに行ったりする事後措置だけが教師の仕事なのかということが私たちの間で問題になっております。非行を起こさないようにし、非行を起こす子供非行を起こしやすい子供を、それ以前に非行を起こさせないように、それ以前に具体的な教育措置を学級担任とともにやる専門家が必要じゃないか、こういうふうな議論をいまやっておるわけであります。したがって、カウンセリングを中心にやるべきか補導を中心にやるべきか、こういう議論をいまやっているわけであります。そういう全体のところでひとつ具体的に申し上げますと、名称がはっきりきめられないのは、役所の管轄のために名前が統一されておらないわけであります。文部省から県地教委の間まで、役所関係で名称が統一していただければそれで名前がすっきりいたします。  旅費について申しますと、充て指導主事が、文部省の説明では、地方教育委員会に配当しておるのだから、回る必要はないから旅費は必要ないというふうに言っております。ところが、さっき申しましたように、私のととろでは第一線に必要だ、役所におるよりもすぐれている者ほど第一線に配当すべしという主張で、嘉穂郡に配当された六人とも、各町教育委員会のほうから学校で仕事をするということを命じておるわけですから、教育委員会の配当になった者が学校で仕事をやらせる、第一線に立つことを指導しております。こういうわけでございますから、この人たちには公式に旅費がない。県からきた者、補導教諭だけは旅費がございます。これは自分の町村内を回りましたときに、一定時間たったら旅費がある。ちょっと行って帰るぐらいでは旅費がないわけでございまして、これも計算基礎を持ってきておりませんけれども、あとでお送りしますが、これには旅費があります。それから、学校のほうで出しました人間については旅費はございません。したがって、この稲築町のパンフレットを例に御報告申し上げますと、一番しまいに書いております。三〇ページの中の岩崎小学校、平小学校は、これは名前のない補導担当でございます、正式には。それから、鴨生小学校の実吉君が文部省の充て指導主事でございます。それから、中学校の二名が県教委が特別に配置いたしました補導教諭でございます。こういうふうに名称が分かれて、旅費の出し方が違っていましてはこれは困りますので、率直に言いまして、勤務の問題からして困りますから、この稲築町におきましては、県からくる旅費相当額を町教育委員会から支払っていただいております。そして皆同じように力を合わせて、ここに書いております教育委員会の向井君が中心になって、各学校の補導担当教師と力を合わせた補導を稲築町ではやっております。これが嘉穂郡ではまだ他のところではできておりませんので、この前の郡の地教委連絡協議会では、少なくとも町内においては、先生方が同じ仕事をする場合には同じようなふうに努力しようではないかという申し合わせが行なわれた。稲築町のようにやろうではないかということが申し合わされたと聞いておりますが、現段階ではそれだけ分かれております。  それから、五百人に一人お願いしたいといいますのは、したがって、もらい下げやら、それから部落懇談会に出て行くだけなら何人に一人おってもいいわけでございますが、たとえば桂川中学のように、二千人からの中学生を擁しておっても一人だというのでは、これは困難でございまして、さっき申します——これはあとで先生に見ていただけるとたいへんありがたいのですが、ここに出しているカウンセリングの記録がありますが、こういうもの一人一人つくっていって、一人一人前もって非行に入らないように、この子にはどんな教育をしたらいいのか、この子はどんなふうにすれば非行に入らないかという診断を行ない、具体的指導をやっていただくためには、せいぜい五百人に一人ずつ配当していただかないと行き届いた教育ができない、こういうふうな立場から申し上げたわけでございます。
  56. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 最後石炭局長にお尋ねしますが、さいぜん本間夕張市議会の議長さんのお話の中に出てまいりました産炭地事業団の北海道の支所、これはいま池田さんという人がお一人いるのですよ。ところが、あの法律が三十六年にできるときに、初め北海道へ置かぬという方針だった。それで委員会ですったもんだやりまして、北海道へ連絡員ですね、一人置くということになった。衆議院のほうでは九州出身先生方ばかりなもので、北海道のことにさっぱり関心を持ってくれない。ですから参議院で北海道のことをやらなければなりませんが、お一人では全然仕事ができぬで、単なる取り次ぎ機関ですよ。したがって、いま鬼木委員の質問を、石炭局長強化しますと言って軽く流してしまったのですが、三十六年にできた法律の全文を私承知しておりませんので、この次に論議する参考までにお聞かせ願いたいのです。あれはその法文修正とか何かが必要ですか、単なる事業団の中でやれますか。
  57. 井上亮

    政府委員(井上亮君) 法律改正は要りません。事業団内部の規程でございますから、これの改正は、方針さえきめればできる問題でございます。ただ、やはり人間の問題でございますと予算関係いたしますから、増員するとかいうことになりますと予算関係いたしますが、これも与えられた事業団予算のワクでどういうふうに配分するかというようなことで、これもきわめて困難ではないと思います。ですから、私ども、先ほど鬼木先生にお答えしましたように、確かに阿部先生のおっしゃるように、一人では何もできませんので、そういう意味で強化してまいりたいというふうに考えております。強化の方法を支所から支部にするかどうかというところまではいまここの席でにわかにお約束できませんが、できますればそういう方向で検討をいたしたいと思っております。
  58. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 鬼木先生が張り切っていなさるから、自後は鬼木先生におまかせするが、次回に事業団の新海理事長を呼んでいただいて、強化できるかどうかということをいろいろとお尋ねしなければなりませんが、ひとつそれまでに相談しておいていただけませんか。北海道一人しかおりませんから。
  59. 大河原一次

    委員長大河原一次君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑は終了したものと認めます。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、北海道、九州、常磐という遠隔の地より当委員会のためにわざわざ御出席を賜わり、長時間にわたって貴重な御意見を述べていただきまして、まことに感謝にたえないところであります。厚く御礼申し上げますとともに、今後の法案審議の上に十分に参考にさしていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十七分散会