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参考人(
伊藤正夫君) 私は
スチール家具、と申しましても、特に
役所でお使いになる机とロッカー、いす、そういった
事務器関係の販売をいたしておるものでございます。少々私事になって恐縮ですが、私は
昭和十六年に学校を出まして、
役所に九年ほどおりまして、その後他社におり、この業界に入ってからやっと十年ぐらいでございます。この間、特に
役所の
関係に
出入りをさせていただくべく、
中央官庁、
公共企業体、その他
政府機関と名のつくところはくまなく歩きまして、現在のところ
中央官庁及び
政府機関等に対する、いわゆるこの
法律でいっております
国等の
窓口を開いて
登録をしているところが二百四十カ所ばかりございまして、約十年間、雨の日も風の日も、暑くても寒くても霞ヶ関はもちろん、その
企業体の存在する
都内近県をきょうまで歩いておりますが、今回この
法律が制定されるにあたって、何か私
たちに
精神的なバックボーンができたと、非常に力強く考えておる次第であります。
私は、前お二方の
参考人からいろいろと大所高所からの御
意見の発表がございまして、また、重複するようなことを申し述べてもどうかと思いますので、この
法律は、やはり私
たちの実際の体験から申しますと、
会計法といいますか、
予算決算令の一部でも何か改正をして、もっと具体的に何とかならぬものか、そうしてこれが
実施になりますと、なかなか具体的に困難な
——実際私
たちが
窓口を歩き、
受注を受けるにあたって、この
法案の
精神はよくわかりますが、さて、具体的にどのように運営されるかということを非常に懸念するものでございます。それから、この
官公需の
受注を受けるのに対して、私
たちはやはり
役所に
出入りをさせていただくのに、まず
登録の申請の
事務がございます。現在のところ
審査の等級は三段階のABCに分かれておりますが、私
たちのような
企業はどうしても
Cクラスということになります。と申しますと、したがって、大きな
入札というのは
Aクラス、その次が
Bクラス、そうして
Cクラスというのは三十万以下とか、そういうような
ランク制になっておりまして、
窓口を開いても、一、二年一生懸命苦労して歩いても、なかなか
見積りに参加さしていただけない。あるケースになりますと、
登録をして三年も通っておりますけれ
ども、まだ一度も
入札は
おろか、
指名入札は
おろか、
見積りにも参加できないというような
現状でございます。
第三条は、私
たちに非常に
関係が深いと思いますが、これは非常に具体的にむずかしい問題と思われますが、
運用については、各省各庁において特に御留意をしていただきたいことをお願いします。そして、本
法案が絵にかいたおもちにならないように、特にお願いをしておきたいと思います。
それから第四条の、「
中小企業者に関する
国等の
契約の
方針の
作成等」ということになりますと、私
たちのいう
窓口の
係官の
義務とか
努力の
規定のみでは、何かこうたよりにならない、
信頼度が薄いようにこれは思われてなりません。これの
予算の実行にあたっては、
事務手続——事業の
目的等から購入の目標をつくっていただいて、国として一本化し、これを達成するための
施策の
方向を基礎づけていただきたい。現行の
官公需の
発注の
現状をよく把握して、これに即した
方針を樹立しないと
効果があがらないように思われます。たとえば
デパート等に
発注をいたしますと、電話一本で何でも間に合う、そうして経費の節約にもなりますし、
事務の
簡素化、
能率化にもなると思いますが、それとまた
工事関係におきましては、大
企業に
発注をいたしますと、まあ
安心感もある、納期その他の点についても心配がないということになっているようですが、それを幾つかに、あるいは何社かにやらせるというような
係官の
事務手続になりますと、非常に繁雑となり、不
能率になることはよくわかります。わかりますが、これではこの法の
精神に沿わないのではないかと思います。そこで、やっかいでも、少しは
官庁事務が繁雑になっても、一部は
地元業者に加わらせるというようなことをお考え願いたいと思います。特に私
たちのスチール
関係の業界では、
入札、見積もり参加に、私
たちの専門の商品であっても、デパートのみしか呼んでいただけないというふうなケースもつい最近ございました。
それから次に五条、六条は、別に私
たちにあまり
関係はないと思いますが、第七条については、私
たちは近在の県市のほうも担当しておりますが、やはり先ほ
どもどなたか申し上げましたように、
地方公共団体に対しても国が何とか、
運用面で国と同じように強力な行政
指導をしていただきたいということをお願いたします。
それから
官公需の
受注の
現状と
問題点ということになりますと、先ほ
どもお話に出ましたように、この一、二年間は経済界の非常な
不況によって、私
どものような小さな業界はその影響を特にひどく受けまして、各メーカーには在庫が非常にたくさんございます。それで資金繰りにも困って、ここ三年くらいの間に約五、六十社同
業者が
倒産をしております。それでこの民間需要を何とか
官公需でカバーしようということで、各メーカーあるいは大
企業あるいは小
企業が、官庁、
企業体に押しかけたために非常な過当競争となりまして、利益率がだんだん年とともに低下をいたしまして、最近では
官公需受注は五、六%くらいの利益しか見れないような
現状となっております。
最後に、これは
国会、
政府に特に
要望する
事項と言いましても、お二方のほうでいろいろと申し上げておりますので、私が実際身をもって体験していることを
一つ二つお願いして終わりたいと思いますが、先ほ
ども申しましたように、大
企業とかデパートに
発注すると、官庁の
事務は
簡素化されますが、この
中小企業保護育成の見地からこのようなことを、要するに
役所の
事務は少し繁雑になってもまあ少しは犠牲にして、私
たちが汗みどろになって、くつの裏打ちもしながら歩き回っておるその誠意と
努力を認めていただいて、本法のこの施行にあたっては、特に
窓口の
係官の
指導と情熱によって、ぜひ何とか私
たちのような小さな会社にもその
努力と情熱の分け前をいただきたいと、このように思っております。
それから、この官庁
関係に
出入りするのについて特にぜひお願いしたいと思って、まあ行った先の
役所あるいは総理府、防衛庁
関係の
係官、課長にもときどきは
お話をしておりますが、まず
官公需を受けようといたしますと、
窓口を開く、それには
登録申請書というものを毎年一回書きかえをして出す、新規
登録あるいは更新と二つに分れておりますが、これがまた非常にやっかいでございまして、人手不足と、それから経費の
関係でなかなか見落としをしたり、時間に間に合わなかったりして、せっかくの
仕事の糸口をむだにしてしまうようなことも多いのです。この一番
合理化されておるのは、総理府の官房会計課長に一通の申請書と付属書類を出しますと、それが行管、科学技術庁、あるいは
委員会、内閣、宮内庁といったように十七カ所に一カ所で通用するのです。ところが、防衛庁となりますと、調達
実施本部
——調本にあり、また海にあり、陸にあり、空にあり、防衛施設庁にありといったように、防衛庁だけでも練馬にあり、松戸にあり、大宮にあり、あるいは富士学校にあるということになりますと、防衛庁だけでも三十カ所ぐらいになってきます。それと同時にその提出期日と
内容の様式
——フォームです。これが各官庁、総理府、防衛庁を除いて全部個々ばらばらで勝手なんです。そうして、またあるところでは二月十五日が締め切り、あるところでは二月二十日が締め切り、あるところでは三月末日が締め切り、あるひどいところになると、六月十五日なんという切りかえもございますので、それと同時に、ここに資料をお持ちしておりますが、
役所に
登録するのには、大体自分の会社でやって一件七百円前後、それは申請書と付属書類のお金だけなんです。ですから、作成する労力、電車賃を入れますと、一件千円ぐらいかかります。私のところで大体二百カ所やっておりますから、毎年二十万ぐらいの
登録更新に費用がかかるわけなんです。ですから、これをやはり経済官庁は経済官庁、労働省、文部省その他とか、これを官庁を四つぐらいに分けていただいて、ブロックにしていただいて、そうしてその出先、大蔵省の
事務局は大蔵省本省に
登録すれば、国税庁も関信も東京国税局も全部通用するというような、何かそういった面の
合理化ができれば、
中小企業者にとって非常に経費も節約できて、その労力と経費を営業に向けられるというようなことがございますので、ぜひこれをひとつブロック別の
登録審査ということを御考慮願いたいと思います。
それからもう
一つ、これはどうかと思いますが、調達
係官が半年か一年でかわってしまいますので、大
企業でマスコミに乗せてPRをしているところは、ああそうかということはわかりますが、私
たちのような二十人くらいでやっている会社では、会社の状況から、過去の実績から、いろいろと
係官にお願いをして、ようやく認識を得て理解をいただいて、まあ次には見積もりに呼んでいただけるだろうという一るの
希望を持っておりますと、ポット
係官がかわってしまう。しかも四人おる
係官が半年くらいでみなかわってしまう。そうするとまた振り出しに戻って最初からやり直す、そういうことがやはり
ランク制を
実施しております官庁の
発注に対しては、いつまでたっても小さい会社はCであるということで、なかなかBになりません。私のところも約十年でAにもしていただき、Bにもしていただきましたが、五、六年から約七、八年かかるような
状態でございます。これは実際の
事務のことでございますが、こういう
係官の異動を、できればベテランを一人くらいは残していただく、三、四年は残していただいておくという人事異動も、やはり考慮に入れていただければ、この
法案の具体的な
実施についても、何とかその
係官が長くおれば、情熱と
指導力も自然とできてくるのじゃないかと、このように思います。
長くなりますが、続きまして、終わりにこんなことを申し上げると先生方にしかられるかもしれませんが、
法律をつくるときは非常な
努力と情熱とを、そして惜しみない時間を投入して、そして
国会を通過して成文化されるのですが、私
たち末端の
仕事をしている者には、この
法律が
あとはどのようにどこから
実施をされて、たとえばこの本法におきましても、どこから
実施をされて、まず具体的にどんな段階からどんなふうになっておるのだろうということは、さっぱりわかりません。ですから前にも申し上げましたように、どうか立法化されて以後も、先生方、所属長官、衝に当たる方は、よくこれを監督、叱咤督励していただきまして、そしてこの
法律がよちよち歩きでなく、地にどっしりついて前進をされるように特にお願いをして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)