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1966-05-12 第51回国会 参議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十二日(木曜日)    午前十一時五分開会     —————————————    委員の異動  五月十一日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     阿部 竹松君  五月十二日     辞任         補欠選任      小柳  勇君     杉山善太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         村上 春藏君     理 事                 赤間 文三君                 豊田 雅孝君                 柳田桃太郎君                 近藤 信一君     委 員                 井川 伊平君                 剣木 亨弘君                 近藤英一郎君                 宮崎 正雄君                 吉武 恵市君                 椿  繁夫君                 藤田  進君                 矢追 秀彦君    政府委員        通商産業政務次        官        堀本 宜実君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律 案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 村上春藏

    委員長村上春藏君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、理事会におきまして協議いたしました事項について報告いたします。  本日は、機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案の審査を行なうことにいたしましたので御了承願います。     —————————————
  3. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、委員の変更について報告いたします。昨日、鈴木強君が辞任され、その補欠として阿部竹松君が選任されました。本日、小柳勇君が辞任され、その補欠として杉山善太郎君が選任されました。     —————————————
  4. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、衆議院送付機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  5. 近藤信一

    近藤信一君 一昨日に引き続きまして若干質問いたしますが、一昨日御質疑いたしました銅の生産の問題で、だいぶ払底してきておるというふうなことで私質問したのですが、一昨日の新聞を見ますると、国際的に銅が非常に高値を呼んでまいりまして、国内の銅も一これを値上げせなければならぬというふうなことで、これが一両日中に大幅な値上げがされるであろう。さきトン当たり四万円の値上げがありまして、それを今度は、現在トン当たり四十二万円でございまするが、これを一両日中に五十二万円前後に引き上げるような見通しだ、こういうことが新聞に出ておるわけなんです。一トン当たり約十万円の値上がりということになりますると、この銅を主原料とするところの生産品に対しては、相当大きなコスト高になるのではないかというふうなことが心配されるわけでございますが、この点について、あなたのほうではどのように考えておられるのか、この点まずお尋ねいたします。
  6. 高島節男

    政府委員高島節男君) せんだって、銅の問題につきましてお答えいたしましたが、その後世界的な需給状況の逼迫がますます激しいようでございまして、現実に国内の建て値の四十二万円というのは、国内市況相場も七、八十万円になっております。海外LMEレートで当時換算いたしましたところでも六、七十万円をこすというような状態でございまして、それが実勢的に反映してきて、海外相場も固まって高い水準になってきております。したがって国内の建て値も無理に無理を重ねておるので上げざるを得ない。これは輸入鉱石などをいたしておりますから、半分くらいは輸入鉱石であったかと思いますが、海外から高い相場をベースにした鉱石輸入をやって銅製錬をやっておりますので、そちらのほうもまた採算が立たなくなってまいる形になりまして、ある程度経過的ながまんをしながら自然にこういう状態に追い込まれてまいっておるかと思います。短期的な対策がむずかしいものでありますことをこの前御説明いたしましたが、資源の絶対的不足というものに依存するだけに、まことにこれは手の打ちようがございませんで、われわれも非常に心配いたしております。それで影響の度合いということになりますと、先生の御承知のように機械全体がいよいよでき上ります際、たとえば一番銅を使いそうな電気機械あたりで見まして、大体二〇%前後というコストになるかと思います。標準品のモーターとか、あるいは変圧器とかいうものが比較的完成機械として銅の使うウエートが高いわけです。そこらで見てその程度でございます。一般工作機械とか、そのほか完成車とかいうようなものを標準にとってまいりますと、これは銅の部分が非常に小さなものにほかの要素がたくさん入ってまいりますから、鉄が入ったり合金が入ったりして、自然コストの中に占める割合は低くなってまいりますが、比較的影響のある分野でその程度コストウエートを占めてくるんではないか、こういうので私のほうも非常にこれは長期的な対策をとらないとむずかしい問題ではございますが、鉱山局長ともよく相談いたしておるという段階であります。
  7. 近藤信一

    近藤信一君 さき粗鋼勧告操短がございましたし、また特殊鋼不況カルテルが行なわれ、またここで銅が値上がりする、こういうことになりますと、二次加工製品に対するはね返りというものは相当大きく響いてくるんじゃないかと思うのですが、この点はあなたはどのような見方をしておられますか。
  8. 高島節男

    政府委員高島節男君) 機械素材でございます銅、鉄鋼、特殊鋼三つが御指摘のとおりおもなも一のになってまいります。銅の点は、ただいまのような資源上の制約という点に一番難点がございます。鉄のほうは御承知のように、ここ一年ばかりの非常な設備投資意欲が冷えましたこと等を中心にいたしまして、価格はむしろ下のほうに踏み破ったような形で、勧告操短等をやって今日に至っておるわけでございます。少し最近景況の立ち直りが見えてまいりましたので、直ちに粗鋼生産ワク等も二十五万トン程度ふやしまして、特定の品種で不足のものが出たりすることのないように万全の手配をいたしております。特殊鋼のほうは、これは痛手が非常に大きゅうございます。非常に機械と似たような状態で、多品種を少量ずつ生産しておるという形は、非常に機械工業のいまの悩みと同じような悩みをやはり繰り返しておるようでございます。したがって、これは機械工業で考えておりますと同じように、生産体制整備をはかって、生産ユニットを上げていって、コストダウンをしていく方向には大いに努力しなければならない分野でございますが、同時に最近の状況は、倒産等もだいぶ起こりまして、むずかしい状態になっておりますので、不況カルテル等品種によっては結ばせまして、業界の立て直りを期しておるのであります。したがいまして、鉄の系統機械工業素材値上がりで悪影響が出てくるということはないと思いますが、銅の点は、まことに御指摘のように頭の痛い問題であると思います。
  9. 近藤信一

    近藤信一君 先ほどの御答弁で、主として銅の原料としては電気機械関係がおもなんでございますが、一体機械関係に要する銅の割合というものはどれくらいになっておるのか、この点おわかりでありましたならば、お示しを願いたいと思います。
  10. 高島節男

    政府委員高島節男君) 機械全体を見まして、その中でのコスト的なとらえ方は非常にむずかしゅうございますが、全体の銅の需要の中で機械がどれくらい占めるかは、結局使い方のほうから押えてまいるよりしょうがないかと思いますが、全体の銅需要に対しまして機械部門で使います、機械部門がお客さんになる部分が大体四五%見当であろうかと思います。ちなみに最近の総銅消費量、これはいろいろな形態で入っておると思いますが、必ずしも電気銅一本で換算してはございませんと思いますが、それを全部洗いますと、六十万トンくらいの見当のようでございます。それに対して四五%でございますから、二十七、八万トン機械関係で消化している。ただ大きくそれに依存している、あるいはごくわずか依存している、これは千差万別に企業業態ごとに異なっていると思います。
  11. 近藤信一

    近藤信一君 国内の銅の使用率というのは、機械関係ではいま御答弁がございましたが、四五%機械工業に必要とするわけですが、しかし、これはやはり銅の生産量というものは国内的にも国際的にみましても非常に少量でございますし、特に日本の場合銅の銅鉱と言いますか、これがだんだんと減少してきた。こういう状況でございまするから、輸入銅に仰いでいる点があろうかと思いますが、一体いまどれほど銅として輸入されているのか。この点おわかりでございましたならばお示しを願いたい。
  12. 高島節男

    政府委員高島節男君) 鉱山局の直接の所管の方が見えておりませんので、ちょっと私自信ございませんが、概念だけ大体申し上げてみたいと思います。まず、非常に技術的になりますが、日本の銅で単純に電気銅としてでき上がったもの、板でございますね。そういう電気銅として輸入しているものは七万トン見当でございます。これはわずかで、できるだけこちらで鉱石なりスクラップなりをこなして銅の製錬所から生産する。こういうふうに持ち込んで、いわゆる先ほど御指摘の建て値なり何なりに比較的関連するような形でやっているわけで、電気銅は世界的に不足いたしておりますから、これは買おうにもなかなか買えない。この前御説明しましたように、関税を臨時的にゼロにしまして取り込むということを一生懸命やっておりますけれども、この辺が限界であろうかと思います。ただ、そのほかに銅のくずの形で同じく七万トン程度輸入をいたしております。これはスクラップを吹きかえて電気銅にしていくとか、あるいは物によってはそのまま使ったり、いろいろな形態で使用してまいりますが、これも銅量として相当のものが入っております。そういたしまして、国内電気銅生産は大体三十万トン程度というようにお考えいただいていいのじゃないか。これは銅の製錬所から出てくる面でございます。そういたしますと、製錬所にいっております銅分は、国内鉱石量は大体十万トンから十二万トンとよくわれわれ言われておりました。したがって残り海外鉱石、これのほうが多いと思います。十四、五万トンは海外鉱石から出る銅分でございます。大きな船にコンセントレートして精銅として運んでまいります。これはかなりの船賃がかかりますが、採算がよいようでございますから、かなり輸入がきく。それをこなしているのが十四、五万トン、残りは大体スクラップ国内の銅製錬でつくっている。そのほか銅の回収とか、その他故銅系統からつくっております銅分がやはり二十五、六万トンございます。これはやはり非常に大きいわけでございます。それで総需要の六十数万トンというところのバランスをとる。したがって輸入との関係から申しますと、電気銅及び故銅で十五万トンくらい入れており、海外鉱石からやはり十五万トンぐらい入れておるということでございまして、輸入依存は非常に高いわけでございます。これはただ買い求めようとしても、むしろ輸入しようといってもできないというところにいま悩みがある状態にますますなってきているのではないかと考えております。
  13. 近藤信一

    近藤信一君 銅を原料とする機械工業関係では、先ほど来御答弁がございましたように、主として電気関係が多い。電気関係の中で、私どものみた点からいくと、やはり電線の主として原料じゃないかとこう思うのですが、四五%の機械工業で占めるうちの電線関係は一体何%くらいを占めておるのか。これがおわかりでしたらば、お願いいたします。
  14. 高島節男

    政府委員高島節男君) 電線伸銅部分が、確かに加工度が低うございますから、半製品をつくっているようなもので、機械部分である電線をつくる、あるいはケーブルにしてそのまま電電公社に納入いたしたりします。そういう分野ですから、コスト的には大きいのでございますが、ちょっと手もとにあります資料では、電気通信関係として一括いたした分野が十三万八千トン程度ある資料がございます。それから推測いたしますと、機械関係で二十八万トンというものの、さらにまた半分くらいがそういった電気関係、あるいは通信関係という伝導を必要とする分野に比較的集中しているような感じがいたします。
  15. 近藤信一

    近藤信一君 銅の問題はこの程度にして、次に移っていきたいと思うのですが、機振法に基づく振興基本計画目標達成状況をみますると、生産輸出設備投資について、各項目とも一〇〇%以上のものが五業種あるわけなんです。八 〇%以上のものが六業種、三十九業種のうちの残る二十八業種については、目標達成率は十分でなかった。特に、鍛工品工作機械鋳造装置工業用計重機、事務用機械、熱処理、これらの六業種は五〇から六〇%台と、まことに不振であったのじゃないかと思うのです。この点は、合理化目標の策定が過大であったのでなかろうかというふうにも思うのですが、合理化努力が足りなかったようにも思うのです。この点はどうですか。
  16. 高島節男

    政府委員高島節男君) 機振法の対象になりました機械で、目標達成状況は、ただいま近藤先生から御指摘がありましたとおりでございます。一〇〇%以上といいますか、予期あるいはそれ以上にうまくいった部分というのが、ただいま御指摘のありましたような大体五業種で、ねじとか自動車部品とか、電気通信機械関係、あるいはダイキャストといった辺が、非常に目標計画を立てましたそれにほとんど即して、あるいはプラスアルファというような感じと思われるところまで、まいっております。それに続きまして、銑鉄鋳物、あるいは内燃機関、金型、風水力機械鉱山土木機械産業車両、こういった分野もまずまず目標に近いところへいっております。したがって、残りは幾つだということになると、二十八ほどあるわけでございまして、この中で問題になる業種は、まさにいま御指摘工作機械以下数業種あたりに、思うようにいっていない面が見取れるわけでございます。  それで、われわれといたしまして、反省をいたしてみますと、ごく総論的に申しますと、一つは、この前も申し上げましたように、機振法がスタートして、そのあとの五年間——その前の初期の五年間は、自由化に備えてたいへんだぞと、こう言っていたのが、国内景気が非常に設備投資中心に上昇いたしまして、これが機械工業へ、やや望外の幸いをもたらした、と同時に体制整備といいますか、業界自身がある程度苦しい条件でないと、なかなか踏み切って体制整備を整えていくということがないわけでございますが、そのあたりがからみ合いまして、進捗がどちらかというと、比較的おくれていったのじゃないか。しかも、この好景気がずっと長く続くものではなくて、御承知のように三十九年から景気は必然的に引き締め政策をとった結果、横ばいにならざるを得ない。また、今後も大きな成長度は望めない。最近ようやく上向きかかってはおりますけれども、大きな成長は望めない。特に民間設備投資中心にした大幅な伸びということはなさそうに思いますが、したがって、本番はむしろこれからかかっていく段階になるのではないかという印象に、一般論としては、とれるわけでございます。  若干ただいま御指摘のありましたような業種につきまして、具体的に問題に触れてみますと、これは端的に指摘するのは非常に大肌かと思いますが、むしろ品質、性能というような面におきましては、比較的うまくいっているのではないか。一応そういうものがつくれるという点においては、相当の成果をあげているように思いますが、コストダウンしていくということは、業界生産体制調整等の問題にも障害が景気とからんであり、かつ、経済成長をとげてまいりました現在、労務費等コスト・アップというものが、三十八、九年くらいから相当強く上がっていっていることは、いなめないかと思います。これは経済成長の結果、そういった面が上がってくることは、国全体の方向としては、これは経済目的でもあり、けっこうでございますが、日本のこの辺の機械——工作機械等中心にした分野は、やはり労働コストが比較的安かったというところがよりどころであったかと思います。それが片方で景気が急上昇して、体制整備踏み切りをつけにくかった。そうして、あと経済成長がその間に到達されて、労務費が上がってきたという形で、コスト的にははさみ打ちにどうしてもなった。今後投資をしていくのには、金利その他も相当かかってくるということになりますので、したがって、コストダウンの点には思うような効果があがっていないように、概略的に見受けられるわけでございます。  さらに、先ほどの八十点あるいは百点というような達成率をとったところも、同じような悩みが依然としてこれからあるかと思います。外国技術水準というものはぐんぐん上がっておりますので、したがって、われわれの感じといたしましては、達成状況がいいやつが、もうこれで卒業したとは必ずしもまだ言えない面が多分にございまして、そういう面から新しい技術をみずから開発するような意欲相当持ってもらわないと、今後の国際競争について同じく問題を残すのではないか。こういった観点から、機械工業競争力を、輸入に対抗するのみならず、輸出もできるようなところまで持っていくというのには、非常にいまだ課題が多い感じがしているわけでございます。
  17. 近藤信一

    近藤信一君 自由化に備えて体制強化していく。そのためには合理化をやり、近代化をはかっていく。こういうたてまえで進めてこられたと思うのです。ところが、一般工業界不況という事態に直面いたしまして、これが当初の目的どおり成功率に達していない。これは一面からいいますと、やはり合理化努力というものが足りなかったのじゃないかというふうにも見受けられるわけでございますし、やはりいま御答弁がございましたように、今後、じゃあこれについての体制強化をどうしていくか、いわゆる合理化をどのようにはかっていくか、こういうことも非常に重要なことになるのじゃなかろうかというふうにも考えますし、やはりこの目的を達成するためには、それ相当の日子もかかりましょうが、やはりこれを成功させるためには、どうしても今後の指導といいますか、そういうものが相当重要になってくるのじゃないかというふうにも考えるわけなんですが、この点の御説明を願いたいと思います。
  18. 高島節男

    政府委員高島節男君) 機械工業に残された競争力強化の必要は、ただいま御指摘のように、非常にまだ分野が広うございまして、これから課題としてやっていくものが非常に多いと思いますが、それの臨み方といたしましては、やはり三つほどの柱になってくるかと思います。  一つは、各企業が自分の中において合理化をしていくということ。これはこの前も御説明いたしましたように、現在の設備が四〇%程度は新鋭になったけれども、依然四〇%程度のものは耐用年数をこえる古いものがあるということが端的にあらわしておりますように、内部の合理化近代化ということ、これを極力推進しなければならぬことを端的にその数字が示していると思います。そこへ向かって業界自身努力をしていかねばならぬことはこれはもう当然でございます。  それから第二の点は、個々の企業合理化で必ずしもいかない分野が非常にこの機械分野には多いようでございまして、同じものを各企業がそれぞれつくることによって、AならAというものは甲なら甲という業者がっくり、BならBという機械は乙なら乙という業者がつくるというふうに仕分けをすると、それぞれの生産量が倍になっていく感じでございますから、そうすればコストが下がるのに、甲がAもBも、乙もAもBもつくっているという体制が非常に多いわけでございまして、これを整備していくためにいろいろな方式を機械工業振興法でもとっておるわけでございますけれども、この方向業界全体としてやっていかねばならぬということ。この二つが、従来からもあり、今後もやっていかねばならぬ分野かと思います。ただ、それは当然のことではないかと思う。過去においてその指導をとってきたにかかわらず、それにしてもまあ成績がどうもよくないのだと、こういうことだと思いますが、まことにその点はむずかしい問題であることを通産省の当局としても痛感いたしておりますが、言いわけめいたことにはなりますけれども、どうもやはり超高度成長時代には業界踏み切りもなかなかつきにくいことが多かったのじゃないか。これは権力に基づいてやっていくということはできません性格のものでございます。消極的な災害防止とかいう取り締まりみたいなものですと、これは最後は政府権力ということになりますが、こういったお互いが栄えていくために過当競争をしない、どうやったら秩序が立つかという話は、やはり業界自身がその気になってくれるということがすべての基礎であると思います。これを幾ら天下りに積極的にやってみましても、それは無理であるので、全体がその機運に向いてもらわないといかない。ところが、ちょうど幸いといいますか不幸といいますか、設備投資中心にした強い成長時代には、いまの体制をしいて改めないでも、あるいはコストダウンをそう急がないでも何とかしのいでいける、まあまあ注文はあるという事態がおそらく三十八年くらいまで続いてまいったと思います。ところが、これがその方向でいった結果、日本全体が設備過剰の状態に向いてしまった、国際収支もあぶなくなつた、物価の問題にも響くということで、経済方向が転換いたしてまいりまして、現在のような安定路線に乗せようという機運になってまいった。タイミングとして考えますと、どうも三十八年か九年ぐらいまでは、この問題を取り扱おうとしていきますと、非常に苦労があって、むしろ業界からは何を言っておるかという感じであしらわれていた面も多分にあるのではないか。ここで不況を経過しまして、お互いに苦しんだわけでありますが、苦しんだあと安定成長路線に乗っていけるという機会をとらえて、体制整備なり、コストダウンに全力を注ぐ時期に幸いにきたのではないか。ちょうど私は新米でここに来たのでありますが、これからえらいときにえらい仕事を仰せつかったものだと思っておりますが、このきっかけをとらえて、大きな成長はないけれど、しかしじりじり伸びる際に、体制なりあるいはコストダウンをはかっていくということをやるべきちょうどタイミングではないかという感じがいたします。  さらに最近、特に痛感いたしておりますまあ第三の柱となりますが、第三の政策として考えておりますのは、私も専門外ではございますけれども、この技術振興といいますか、技術開発ということが、機械工業においても特に求められていって、これがないとほんとうの競争力強化の柱にならないという点でございます。もちろん従来から技術開発については、いろんな面で政府としても努力はいたしてまいりましたが、機械工業輸出に可能な競争力の備わったものにしようといたしますと、従来はどちらかというと受け身で、外国技術の導入に依存をいたしてまいった。したがって、向こうの水準にキャッチ・アップしていくというか、あとから追っかけるような形で、しかもそれは大体において達成したから相当自由化もでき、ケネディラウンドでも若干つき合えるかというところまできておりますが、これが外国の市場で競争するためには、基礎的な分野から末端の完成品まで、何となくたよりにならないものが多い。それはやはり技術基礎がしっかりしていない。しかも泉が出るように日本国内技術が次々と開発されていくというような姿とはほど遠い状態になっているからではないかと思います。この問題が非常にむずかしゅうはございますが、やはりこの機会に全体の体制を進めます際には、技術開発と新しい技術日本国内でも一分野によって開発をしていって、これに集中的な政府の助成策なり何なりを講じていかないと、機械工業全体の体制競争力強化になりきれない、こういう感を特にこの際深くするものでございますから、常時、その二つの柱に加えまして新たに技術開発の問題を特に取り上げていきたい、こういう気持ちになった次第でございます。
  19. 近藤信一

    近藤信一君 機振法の功績につきましては、局長も言っておられますように、コストダウンの成果というものは一応これは認められるわけなんで、たとえばベアリングは三〇%、特殊鋼工具は三〇%、バルブは一〇%と、これらがあげられておりますが、このメーカーがせっかく設備合理化をやりまして、そうしてコストダウンをやってきたところが、その反面におきましては、材料費さらに人件費、販売経費とこういうふうなものが急騰してきておるわけでございます。そういたしますると、せっかくのコストダウンが帳消しになるというふうな結果もここに出てくるわけなんで、これはまことに皮肉な現象じゃないかと思うのです。せっかくコストダウンをやったが、その反面においてはどんどんと上がる、急騰してくる。こういうふうなことになりまして、非常に苦慮されることは事実だと思う。人件費の値上がり生産面ではある程度吸収ができると思うのですが、販売面ではそのままコスト・アップにつながると、こういうふうなことになりますると、一個当たり製品販売コスト、こういうふうなものを引き下げるにはちょっとむずかしくなってくるのじゃないかというふうにも思うのですが、しかしこれは大量生産ということで、大量販売ということでこれを切り抜けるということになると、先ほども言っておられるように、過当販売競争、こういうことにもまた結果的にはなってくる。そうすると、業界では機振法がコストダウン推進に果たしてくれた役割りというものは大きいけれども、これは生産拡大に力を入れて、流通部門に対するところの合理化に対する配慮というものがないのではないか、こういうふうな批判があるわけなんでございますが、これについてあなたのほうはどのように考えておられますか。
  20. 高島節男

    政府委員高島節男君) まさに御指摘のとおり、一生懸命コストを引き下げる努力をいたしてまいりまして、その反面、ちょうど三十九年から不況に入りましたので、一般的に販売コストも、片方でコスト的には上がりながら条件は悪くなってまいりますので、業界としてははさみ打ちになって販売条件を切り下げざるを得ない。販売条件が非常に悪くなっていくことが、業界のせっかくでき上がったコストダウンによる採算のよさということを消していく、こういう悪循環をとりましたことは事実でございます。まことに頭の痛い、対策のむずかしい問題であるかと思います。  機械工業は元来資本財でございますから、資本の供給者としてはとかく相手に信用を与えませんとこれは思うように売れない。これは景気の比較的いいときでも機械は延べ払いで買うのだというたてまえになっておりますことが端的に示しております。それが不況という影響をひとつ食いましたことと、それから海外からやはり言ってまいりますものも世界的に延べ払い条件を乗せまして、それをえさにして、やはりつってくるという面も多分にございますので、これがどうしても販売条件へしわが寄ってこざるを得なかったということが事態の分析であろうかと思います。それで生産面の話と比べまして、この販売のほうのやり方というものはなかなかむずかしゅございます。比較的販売条件を統一しやすい、たとえば自動車といったようなものでございますと、これも車種がいろいろあってその点が問題でございますが、自動車あたりでは割賦販売法によってある程度販売条件の基準をきめまして、それを守れという体制、これも取り得ると思いますが、注文生産品的な機械類になりますと、なかなかそういった処置も取りにくいわけでございます。ただ一つ、最近やっておりますのは、先般御審議いただいて通りました機械類の賦払い信用保険をやっております。賦払いの信用保険をやります趣旨は、もちろん中小企業である需要者と、それからメーカーであるまた中小企業者、その他の機械メーカーというものとの間の取引を円滑にして需要を拡大して共存共栄でやっていこうということがねらいでございますが、その際に、あまりにも割賦条件等が悪い形のもので保険を引き受けていくということはこれは問題であり、また保険にかけてくる機会にこれをとらえまして、あまり条件の悪いものは姿勢を直させるという方向をとりまして、極力割賦条件の販売条件の悪い点を直さしていくという手を打っておるわけでございます。それと同時に、外国からの競争というものがやはり相当に販売条件を撹乱しておる面がございますので、重電機械については御承知のように開発銀行の融資、重電機の需要者である電力会社を通じて、結局販売業者である、売り手である機械メーカーに余沢が及ぶような形で対抗金融になっておりますが、海外からいい条件で、よ過ぎる条件で売ってくるやつに対抗していく方法、それと似た制度といたしまして、機械類の延べ払い金融を一般工作機械等についてもやっております。これまたやはり海外から有利過ぎる条件でくるものに対する対抗金融の財政投融資で資金を調達いたしましてやっていく、こういうかっこうで、外からの攻め込みを防ぎ、自律的な調整を、保険、割賦販売等によって調整していく、こういった点に目標を置きまして、割賦条件を次第に適正化していこう、こういう形で臨んでおります。  ただ、三十九年から四十年にかけましての非常に設備投資が減っていったというくらいの条件のときと、最近ようやく財政のほうでもかなり積極的な購買力をまく姿勢になってまいりましたときとは、だいぶに一般の環境は違ってきたように見受けられますので、最近企業間信用、あるいはこういった延べ払いの条件というものには改善のきざしがそろそろ一般的な経済の基調として出てきつつあるという感じがいたします。その機会をとらえて、ささやかな努力でございますが、販売条件の改善に先ほどのような手でつとめていくというように考えております。
  21. 近藤信一

    近藤信一君 佐藤内閣は、物価の値上がりによって、流通機構の問題で非常に頭をいま痛めておるわけなんですが、機振法に基づく振興基本計画や、それから実施計画の項目で、流通部門の合理化の問題が今度は含まれていない、昨年の七月に通産省がまとめました機振法改正案には、合理化カルテルに新たに取引条件の制限に関する共同行為を加えることが考えられていたようでございますが、ところが、この改正案ではそれが断念されたということを聞いております。機振法が生産面に残しました功績というものは一応評価されておるわけでございますけれども、その反面において、流通市場における対策というものが忘れられているのじゃないか、こういうふうにも考えられるわけなんでございますが、この育成方針である機振法でございまするならば、やはり流通部門における点も、今度の改正案の中に私は含んでいくというのが当然の考えではなかろうかというふうにも考えるのですが、それが残念ながら今回の改正案には含まれていない、これは一体あなたのほうではこの点をなぜ今度の改正案の中に盛り込まなかったか、この点についての御見解をお尋ねいたします。
  22. 高島節男

    政府委員高島節男君) ただいま御指摘の点は、まことにごもっともでございます。私も着任いたしまして、ひょいと結果を見ましたときに、そういう感じがいたしたのでございますが、これはただ結果を聞いてみ、かつ法律論を整理いたしてみますと、こういうことのように見受けられます。販売条件、取引条件というのを著しくくずしていくということは、独禁法のたてまえから言いますと、これはむしろくずすことそれ自身が悪いことであるというたてまえをとっているわけでございます。独禁法は業者間が協定をやりまして値段をつり上げたりすることは、これはいかぬことだと、したがって、自由競争を制限することはいけない、こう言っておりますが、どういう自由競争を経済憲法としてとっているかというと、やはり公正な自由競争というものをあくまでも中心に進めなければいけないという思想でできておるわけでございます。したがって、お互いにある程度の話し合いをいたしまして、販売条件を不適正にしてしまうことはやめようじゃないか、要するに悪いことをしないという意味での話し合いというのは、これは独禁法にかからぬのだという説明を私も着任して受けたわけでございまして、したがって、法律の条項としまして、こういうカルテルをやるということを書いておかねばなりませんのは、生産分野の調整ということになりますと、これはある程度お互いの間で競争の制限という観念が出てくる、これがいいか悪いか、具体的に判断しなければならないということになりますが、販売条件をくずすのをやめようというものの考え方は、これはそもそも独禁法にかからない、したがって、今後業界の話し合いでそういうたてまえのことをやっていくのはこれはけっこうだ、したがって、かりにそういうことをやりましても、これは直ちに公正取引委員会から摘発されるということはないのだから、そういう立法をする必要はない、こういう説明でございます。それで私も安心いたしまして、他の生産条件と同様に、あるいはむしろ法律にはかかりませんから、その点は積極的に販売条件の適正化ということにはつとめてまいりたいと考えておる次第であります。
  23. 近藤信一

    近藤信一君 特に機械工業関係では機械耐用年数は非常に長い。こういうことになりますると、やはり販売部門の過当競争というものが非常に激しくなってくるわけなんです。そうすると流通部門関係においてますます過当競争を増大するような結果にもなるのじゃないか。こういうふうにも考えられるわけなんです。特に町工場へ行ってみますると、こんな機械が使えるのかと思うような機械を運転して生産をやっておる。やっぱり売り込みも盛んになるわけなんだが、けれども、今日の不況の折りから、やはり町工場では少しでも長く寿命を持たせようということで機械を無理してやっておるわけですね。そうすると、やはりここで何らかの販売の流通機構というものをはっきりしていかぬと、私は不況であればあるほどそういう点が激化してくるんじゃないか、こういうふうにも考えられるわけなんです。この点はどうですか。
  24. 高島節男

    政府委員高島節男君) 機械を使っております中小機械メーカー、それからそれに機械を供給いたしますほうのメーカーの立場、その両方に問題があると思います。御指摘のとおりだと思います。使っていますほうは老朽したものをいつまでも無理をして使っておる傾向がとかくある。それから供給するほうは不況影響もございまして、先ほど御指摘のように販売条件をくずすという形になってきます。したがって、この両方をうまく結びつけていくということは非常にむずかしい点でございますが、先般の割賦販売の場合の保険の制度も一つはそれを考えておるわけでございまして、合理化近代化を要する中小企業が買い手になる、その買い手のほうの態勢で、万一焦げつきになったようなときには、それは保険の形でカバーしていくという形で安心してふやせるたてまえをとると同時に、そこで安心してやたらに条件をくずされてはまことに困るという観点から、今度は売りますほうの条件について、保険の上でもあまり激しい条件で売り込みをすることは、これは保険にとらないという形でチェックする、こういったものは一つのささやかではございますが、そういう方面の努力のあらわれかと思います。ただ流通機構といたしましても、機械類の取引は、メーカーから比較的発注者へ直接につながらぬものは割合少のうございますから、直接のつながりを持つわけでございます。結局押えどころは、特殊の販売業者という形態をとらえて施策を講ずるよりは、使う人間とつくる人間間のそれぞれの経済実態というものを、妥当な合理的な形に直していくということに主力を注いでいけば、その間の取引条件はおのずから正常なものになっていくのではないか。これがたとえば繊維品とか、あるいは鉄鋼とかいうことになりますと、販売業者段階における調整、流通ということが非常にむずかしい。それ自身で取り上げて系統をフォローして検討しなければならぬ面がございますけれども、機械の場合はややそれと趣きを異にする。条件は非常にむずかしゅうございますが、買い手と売り手とのそれぞれの姿を正していくという方向に力を注いでいくことが一番効率的ではなかろうかと、こういう感じがいたします。ただ問題はきわめてむずかしゅうございますので、条件の点はこの法律には当然できるという形で落ちておるわけでございますから、その点も含めまして、今後いかなる方向に行くべきかをじっくり四つに組んで考えてみたいと思っておる次第でございます。
  25. 近藤信一

    近藤信一君 御承知のように、機械工業界は大から小まで相当たくさんあるわけなんです。これはまた後日あらためて御質疑申しますけれども、それぞれ大は大、小は小でお互いにしのぎを削ってグループをつくって過当競争をやっておる。まあこういうことから考えますると、やはり今後これらがどのようにしてじゃあ生産部面において成果をあげていくかということは非常にむずかしい問題になってくるのじゃないかと思うのです。やはりこれは何らかの方針を持ってあなたのほうで指導していくということでなければ、またたいへんなことになるんじゃないかというふうな私気持ちがするわけなんです。後日またこの点はあらためてそれぞれ御質疑をいたしまして、きょうは私はこの程度にしておきたいと思いますが、あなたのほうの御所見を若干聞かしていただきたいと思います。
  26. 高島節男

    政府委員高島節男君) ただいま近藤先生から御指摘がありましたように、非常に機械工業の態勢というのはこんとんとしている面が非常に多うございます。したがって、新法も五年を単位にして二回ほど延ばしまして、その意義はそれぞれ違ってまいりましたが、どうも残っている課題相当に多い。しかもこれを短日月にやってしまわなければいかんというところに非常な焦燥をわれわれも感じております。さればといって、目標を非常に先に置いておりますと、これまた競争力の充実ということは、おくれればおくれるほどやりにくくなってまいりますから、ある時期に集中的にやっていかねばいかぬと、こういう感じがいたしておりますが、ただどうも実態を私まだ十分よく勉強をいたしておりませんから、御質問を受けながら感じますことは、非常にこれはむずかしい相手であるということをつくづく感じます。大きいところから、しかも中小企業の占める割合が非常に大きい。そしてこれはそれぞれ一国一城のあるじという気持ちでやっておられましょうし、食うか食われるかの闘争をお互いにやっておられる。それを何らかの形で調整をしてもらい、話し合いをし、何とかまとまる形にいって、機械工業の当該業種全体としてある水準に達していこうということには非常などうも努力を要するかと思います。したがって短兵急にこういう姿でいけということをやります前に、これは業界にもよると思いますが、まず業者相互の間である程度の信頼関係と申しますか、一人々々がやっていたのではこれはたいへんであると、やはりお互いの間が協調をしてやっていかねばいかぬという形が自然発生的にある程度生まれてきて、その基礎の上にようやく政府が施策を講ずるのでないと、とてもこれは簡単に方向を打ち出し切れない部分相当あるのではないかという感じを強く受けまして、御指摘のとおり、非常にむずかしい分野でございますだけに、さらに個々の業態に即して一つ一つそれぞれにニュアンスがあると思いますが、踏み込んでいって業界体制を整えてまいりたいと考えております。
  27. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 他に御発言もなければ、本案に関する質疑は本日のところ、この程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会