○
政府委員(
高島節男君)
機械工業に残された
競争力強化の必要は、ただいま御
指摘のように、非常にまだ
分野が広うございまして、これから
課題としてやっていくものが非常に多いと思いますが、それの臨み方といたしましては、やはり
三つほどの柱になってくるかと思います。
一つは、各
企業が自分の中において
合理化をしていくということ。これはこの前も御説明いたしましたように、現在の
設備が四〇%
程度は新鋭になったけれども、依然四〇%
程度のものは
耐用年数をこえる古いものがあるということが端的にあらわしておりますように、内部の
合理化、
近代化ということ、これを極力推進しなければならぬことを端的にその数字が
示していると思います。そこへ向かって
業界自身が
努力をしていかねばならぬことはこれはもう当然でございます。
それから第二の点は、個々の
企業の
合理化で必ずしもいかない
分野が非常にこの
機械の
分野には多いようでございまして、同じものを各
企業がそれぞれつくることによって、AならAというものは甲なら甲という
業者がっくり、BならBという
機械は乙なら乙という
業者がつくるというふうに仕分けをすると、それぞれの
生産量が倍になっていく
感じでございますから、そうすれば
コストが下がるのに、甲がAもBも、乙もAもBもつくっているという
体制が非常に多いわけでございまして、これを
整備していくためにいろいろな方式を
機械工業振興法でもとっておるわけでございますけれども、この
方向に
業界全体としてやっていかねばならぬということ。この二つが、従来からもあり、今後もやっていかねばならぬ
分野かと思います。ただ、それは当然のことではないかと思う。過去においてその
指導をとってきたにかかわらず、それにしてもまあ成績がどうもよくないのだと、こういうことだと思いますが、まことにその点はむずかしい問題であることを通産省の当局としても痛感いたしておりますが、言いわけめいたことにはなりますけれども、どうもやはり超
高度成長の
時代には
業界の
踏み切りもなかなかつきにくいことが多かったのじゃないか。これは
権力に基づいてやっていくということはできません性格のものでございます。消極的な
災害防止とかいう取り締まりみたいなものですと、これは最後は
政府の
権力ということになりますが、こういった
お互いが栄えていくために
過当競争をしない、どうやったら秩序が立つかという話は、やはり
業界自身がその気になってくれるということがすべての
基礎であると思います。これを
幾ら天下りに積極的にやってみましても、それは無理であるので、全体がその
機運に向いてもらわないといかない。ところが、ちょうど幸いといいますか不幸といいますか、
設備投資を
中心にした強い
成長の
時代には、いまの
体制をしいて改めないでも、あるいは
コスト・
ダウンをそう急がないでも何とかしのいでいける、まあまあ注文はあるという
事態がおそらく三十八年くらいまで続いてまいったと思います。ところが、これがその
方向でいった結果、
日本全体が
設備過剰の
状態に向いてしまった、
国際収支もあぶなくなつた、物価の問題にも響くということで、
経済の
方向が転換いたしてまいりまして、現在のような
安定路線に乗せようという
機運になってまいった。
タイミングとして考えますと、どうも三十八年か九年ぐらいまでは、この問題を取り扱おうとしていきますと、非常に苦労があって、むしろ
業界からは何を言っておるかという
感じであしらわれていた面も
多分にあるのではないか。ここで
不況を経過しまして、
お互いに苦しんだわけでありますが、苦しんだ
あとで
安定成長路線に乗っていけるという機会をとらえて、
体制の
整備なり、
コスト・
ダウンに全力を注ぐ時期に幸いにきたのではないか。ちょうど私は新米でここに来たのでありますが、これからえらいときにえらい仕事を仰せつかったものだと思っておりますが、このきっかけをとらえて、大きな
成長はないけれど、しかしじりじり伸びる際に、
体制なりあるいは
コスト・
ダウンをはかっていくということをやるべきちょうど
タイミングではないかという
感じがいたします。
さらに最近、特に痛感いたしておりますまあ第三の柱となりますが、第三の
政策として考えておりますのは、私も
専門外ではございますけれども、この
技術振興といいますか、
技術の
開発ということが、
機械工業においても特に求められていって、これがないとほんとうの
競争力の
強化の柱にならないという点でございます。もちろん従来から
技術開発については、いろんな面で
政府としても
努力はいたしてまいりましたが、
機械工業を
輸出に可能な
競争力の備わったものにしようといたしますと、従来はどちらかというと受け身で、
外国の
技術の導入に
依存をいたしてまいった。したがって、向こうの
水準にキャッチ・アップしていくというか、
あとから追っかけるような形で、しかもそれは大体において達成したから
相当の
自由化もでき、
ケネディラウンドでも若干つき合えるかというところまできておりますが、これが
外国の市場で競争するためには、
基礎的な
分野から末端の
完成品まで、何となくたよりにならないものが多い。それはやはり
技術の
基礎がしっかりしていない。しかも泉が出るように
日本の
国内で
技術が次々と
開発されていくというような姿とはほど遠い
状態になっているからではないかと思います。この問題が非常にむずかしゅうはございますが、やはりこの機会に全体の
体制を進めます際には、
技術の
開発と新しい
技術を
日本の
国内でも一
分野によって
開発をしていって、これに集中的な
政府の助成策なり何なりを講じていかないと、
機械工業全体の
体制、
競争力の
強化になりきれない、こういう感を特にこの際深くするものでございますから、常時、その二つの柱に加えまして新たに
技術開発の問題を特に取り上げていきたい、こういう気持ちになった次第でございます。