○
衆議院議員(
田中武夫君)
社会党提出の二
法案について
提案説明を行ないます。
まず、
中小企業者の
事業分野の
確保に関する
法律案について申し上げます。
今日、
中小企業の
経営がきわめて困難な状態におかれている原因の主たるものは、対大
企業との
関係であります。大
企業がその
資本力にものをいわせて、従来の
中小企業の
分野にまでどんどん進出し、
弱小中小企業を駆逐しつつあるのが今日の実情であります。大
企業が
中小企業分野に進出するやり方には、大
企業自身が直接行なうもののほか、既存の
中小企業に
資本や役員を投入して、実質上の
支配権を確立する
方法があります。このような傾向を放置しますならば、
中小企業は近き将来、その存立の基盤までも奪われること必至であります。
わが党は、この
事態を深く憂慮し、かねて
中小企業者に適切な
事業分野を
確保して、その
経営の基礎をまず安定させなければならないと繰り返し強調し続けてまいったのであります。これに対して、
政府自民党は、
事業分野を定めてこれを
中小企業者に
確保することは、憲法に違反するといって反対してきたのであります。しかしながら、
事態の悪化は、
違憲論をもって放置することを許さず、最近ではようやく
政府自身でさえ、大
企業と
中小企業との間の
事業分野について、何らかの調整の必要を認めざるを得なくなっているようにうかがえるのであります。この際、
中小企業に適切な
事業分野を明確にし、その
分野への大
企業者の進出を規制することによって、
中小企業者に存立の基盤を
確保することが何よりも緊急必要なことと存ずる次第であります。これが本
法律案を
提出する
理由であります。
次に、その
内容の
概要を御
説明申し上げます。まず第一に、本
法律案は、
中小企業者の
事業分野として
確保すべき適切な業種を次の
基準に基づいて政令で指定することにいたしております。すなわち、
製造業、
建設業またはサービス業に属する業種のうち、その業種に属する事業を営むものの総数のおおむね五分の四以上が
中小企業者であり、かつその業種の過去一年間の生産
実績なり取り扱い量のおおむね三分の二以上が
中小企業者によって占められ、
経済的にも中小規模の
企業形態が適切であって、もしこの
分野に大
企業者が進出する場合においては、
中小企業者を著しく圧迫すると認められるものを
中小企業の
事業分野として
確保しようとするものであります。
第二に、指定業種を営むものはすべてこれを届け出させ、大
企業者が指定業種の
分野に新たに進出し、拡張することを制限し、これに違反するものには罰則をもって臨むことといたしたのであります。
第三に、大
企業者がみずから行なわなくとも、
資本的または人的
関係において支配力を持つ
中小企業者をして行なわしめる場合も、同様に規制の
対象とし、主務
大臣が大
企業者に対しその違反行為を排除するための命令を出すことができるようにして、予想される脱法行為を未然に防止することとしたのであります。
第四に、かかる業種の指定並びに大
企業者の進出制限、脱法行為の禁止等に関する政令を制定、改廃する場合、大
企業者に対する命令を行なう場合は、特に公正を期すため
中小企業審議会に諮問することにいたしたのであります。
以上が本
法律案提出の
理由並びにその
内容の
概要であります。何とぞ、御
審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。
次に、
中小企業組織法案の
提案理由を御
説明申し上げます。
今日、
中小企業に関する組織は、現在
中小企業団体組織法、
中小企業等協同組合法、環境衛生
関係営業の適正化に関する
法律等各種あります。私
どもが現存する組合の実態を見ます場合、どれだけ活発に活動しているかはなはだ疑問な組合がきわめて多いのであります。さらにまた、未組織の
中小企業者がいかに多いか、およそ
中小企業に関するもののひとしく痛感するところであります。
この
理由は一体どこにあるのか、それは
一つには、現行
法律の規定が
中小企業者の
現状に適応しておらないというところからきておるのであります。第二には、一般に「仏つくって、魂入れず」ということばがありますように、
法律はつくっても、肝心の組織化推進の助成を積極的に行なわない、予算の裏づけがほとんどなされていないということのためであります。
最近、
中小企業者は組織化の必要、協同事業の必要について切実に目ざめつつあります。そして、現に何らかの組織、任意団体に参加するものが多くなってまいりました。ところが、一歩進んでこれらの
法律に基づく組合をつくったり、それに加入したりすることには必ずしも積極的ではありません。むしろ魅力がなく、かえってわずらわしいとさえ感じているのであります。今日、技術革新に伴なう
経済情勢の著しい変化の中で、
中小企業の
経営を安定させ、その近代的な発展をはかるには、
中小企業者の団結の強化、協同化の促進をはかることが最も急務とされているのであります。しかるに、以上のように
中小企業の当面する課題と
現状とは、不幸にも相離反した姿を示しているのであります。そして、この離反をもたらした最大の原因が、
政府の
施策の不備、怠慢にあるということは、何としても遺憾きわまりないことであります。わが党が、ここに
中小企業組織法案を
提出するゆえんも、実にこの
現状を打開せんがためであります。そして
中小企業者の協同化への切実な要望にこたえ、たれもが、みずからの自由意思に基づいて、その業種業態に適応した組合に簡易に参加でき、協同
事業活動のもたらす恩恵に浴することができるよう、国に積極的な
施策の実行を義務づけんとするものであります。さらにまた、これらの組織に強力な団結権、団体交渉権を保障することによって、従来の大
企業からの不当な圧迫に対し、それに動じない
中小企業者の強固な、安定した地位を確立してまいろうとするものであります。これが、いままでの
中小企業者の組織に
関係する諸
法律を一本化し、
中小企業組織法案として
提案する
理由であります。
次に、本
法律案の
概要を御
説明申し上げます。まず、第一に、本
法律案の定める
中小企業の
基本組織は協同組合であります。この協同組合は加入・脱退の自由、組合員の権利の平等を原則とし、設立の要件、手続を簡易にし、
経済事業、調整事業、団体協約の締結をあわせ行ない得る組織として考えられておるのであります。また、あくまで自主的な、
中小企業者が喜んで入る組織を原則とし、強制加入はいかなる場合にもこれを認めていないのであります。なお、ここに
中小企業者とは
資本金五千万円以下、かつ従業員三百人以下のものをいい、商業、サービス業にあっては従業員三十人以下のものをさしておりますが、同時にまた業種業態に応じた適切な定義決定の余地を残しておるのであります。
第二に、組合の種類といたしましては、事業協同組合、勤労事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、信用協同組合、
企業協同組合、協同組合連合会を考えております。これによって従来の事業協同小組合を勤労事業協同組合に発展させ、また商工組合を廃止して、新たに下請並びに商店街の両協同組合を設けることといたしました。またいままでの事業協同小組合、環境衛生同業組合、火災共済協同組合、
企業組合は、それぞれ勤労事業協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、
企業協同組合に組織がえすることといたしております。
勤労事業協同組合は、地区内の勤労事
業者、すなわち従業員おおむね十人以下にして、かつ
資本金百万円以下のもの、ただし商業、サービス業にあってはおおむね三人以下のものによって、下請協同組合は、主として地区内の下請
業者によって、商店街協同組合は、主として地区内の小売業またはサービス
業者五十人以上によって、共済協同組合は、一または二以上の都道府県の区域の全部または全国の区域内の
中小企業によって組織され、他の組織は大体従前どおりであります。
第三に、その事業の
内容につきましては、事業協同組合、勤労事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合の名組合は、
経済事業、調整事業、団体協約の締結をあわせ行なうものであります。そして事業協同組合、下請協同組合、環境衛生協同組合が調整事業を行なう場合には、同一業種について地区の重複を認めないことといたしておるのであります。また共済協同組合は、火災だけでなく、風水害、地震、盗難、交通事故、爆発等による損害をも共済事業の
対象に加えております。信用協同組合、
企業協同組合の事業につきましては、従来のとおりであります。
第四は、調整事業に関する事項についてであります。すなわち、調整事業を行なう場合は、不出に差別的でないこと、一般
消費者及び関連事業の利益を不当に害するおそれがないことを一般的な必需要件としております。
さらに、それに加えて、不況カルテルの場合は不況要件を、合理化カルテルの場合は価格等に不当な影響を及ぼさないことを要件といたしております。
また調整規程については、
中小企業者のみが加入している組合の場合は届け出制で足り、
中小企業者以外のものが加入できる組合の場合は、認可制をとることにし、特に価格協定については公正取引
委員会の同意を必要としたのであります。なお調整事業を効果あらしめるために、不況カルテルの場合について、アウトサイダー規制命令を出し得ることとしておりますが、事業停止命令や加入命令は認めておりません。
第五は、団体協約についてであります。協同組合は取引条件並びに調整事業について団体協約を締結することができ、相手方はこの団体交渉に対し応諾する義務があります。そして団体協約のうち、取引条件に関するもの、
中小企業者のみが加入している組合の締結したものについては、届け出制で足りることといたしました。なおまた系列別の下請協同組合が、親事
業者との間に取引条件に関して締結した団体協約については、その四分の三以上が適用を受ける場合、その親事
業者と取引
関係のある組合員以外の下請
業者に対し、一般的拘束力を持つことといたしておるのであります。
第六に、中央会の機構、運営につきまして、従来の天下り方式を改め、真に民主的な
中小企業者の組織とするよう配慮いたしました。すなわち、中央会に正規の
理事会を置き、
理事会は業務の執行を決し、会長は
理事会の定めるところに従って業務を行ない、会長事故あるときは理事がその職務を代理する、といたしたのであります。
第七といたしましては、特に
政府の助成義務を明記しておるのであります。これは初めに申し上げましたように、せっかくの組織に関するりっぱな
法律ができても、協同化を促進する
政府の助成
措置に欠けるところがあっては、法の効果的な運用を期すことができませんので、共同施設、福祉厚生施設に要する経費、組合の事務に要する経費について、国がその一部を補助することを義務づけたのであります。
また商店街など協同組合の設置する街灯の公共性を考え、その電気料金について特別の軽減
措置をとることといたしておるのであります。その他細目の規定につきましては、おおむね従来の
法律の規定を準用しております。
以上が本
法律案の
提案理由とその
概要であります。何とぞ、御
審議の上、すみやかに御
賛成あらんことをお願い申し上げます。