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1966-06-07 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月七日(火曜日)   午前十一時九分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         千葉千代世君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 土屋 義彦君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    衆議院議員        修正案提出者   伊藤よし子君        修正案提出者   竹内 黎一君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        厚生政務次官   佐々木義武君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省医務局次        長        渥美 節夫君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省年金局長  伊部 英男君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君    説明員        法務省訟務局第        二課長      河津 圭一君        厚生大臣官房企        画室長      首尾 木一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○社会保障制度に関する調査  (厚生行政に関する件) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  児童扶養手当法の一部を改正する法律案重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案の三案を議題といたします。  まず、政府から三案に対する提案理由説明を聴取いたします。
  3. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま議題となりました児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  児童扶養手当制度は、発足後四年余りを経過し、今日まで手当額引き上げ支給制限緩和等改善が行なわれてまいりましたが、今回さらに内容の充実をはかるため、手当額引き上げ所得による支給制限緩和等を行なうことによりまして、制度改正をはかることといたしたものであります。  以下、改正案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、手当額引き上げでございますが、その月額を、児童一人の場合には現行千二百円であるのを千四百円に、児童二人の場合には現行の千九百円を二千百円に、児童三人以上の場合には、現行では、千九百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算することとなっているのを、二千百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算することといたしたのであります。  第二に、支給制限緩和でございますが、受給資格者本人所得による手当支給制限限度額を二十二万円から二十四万円に引き上げるとともに、受給資格者扶養義務者所得による支給制限基準額を七十一万六千円から八十一万八千円に引き上げ配偶者所得による支給制限をこれに吸収することといたしたものでございます。  最後に、実施の時期につきましては、手当額引き上げに関する事項昭和四十二年一月分から、支給制限緩和に関する事項昭和四十一年五月分から、それぞれ施行することといたしております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを望みます。     ―――――――――――――  ただいま議題となりました重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  重度精神薄弱児扶養手当制度は、一昨年に発足し、昨年の改正によりその内容改善をみたところでありますが、重度精神薄弱児と同様の状態にある身体重度障害のある児童の現状を考慮するとき、これらの児童にも手当支給する必要が痛感される次第であります。したがいまして、今回の改正案は、身体重度障害を有する児童に新たに手当支給することとし、なお、所得による支給制限緩和を行なうことにより、制度改正をはかることとしたものであります。  以下、改正案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、法律の題名でございますが、今回新たに身体重度障害を有する児童につきましても手当支給することとしておりますことを勘案いたしまして、従来の重度精神薄弱児扶養手当法特別児童扶養手当法に改めることといたしたものでございます。  第二に、支給対象となる児童につきまして、従来の重度精神薄弱児に加えて、新たに、身体重度障害を有する児童に対しましても、児童一人につき月額千二百円の手当支給することとし、手当の名称を特別児童扶養手当に改めたのでございます。  第三に、支給制限緩和でございますが、受給資格者本人所得による手当支給制限限度額を二十二万円から二十四万円に引き上げるとともに、受給資格者扶養義務者所得による支給制限基準額を七十一万六千円から八十一万八千円に引き上げ配偶者所得による支給制限をこれに吸収することといたしたものでございます。  最後に、実施の時期につきましては、身体重度障害を有する児童に対する手当支給に関する事項昭和四十一年九月分から、支給制限緩和に関する事項は同年五月分から、それぞれ施行することといたしております。  以上がこの法律案提案いたしました理由及び政府提出法律案要旨でありますが、なお、衆議院において手当の額について、手当支給対象となる児童一人につき月額千二百円を千四百円に引き上げ昭和四十二年一月分から施行することとする修正がなされました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました国民年金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  国民年金制度昭和三十四年に創設され、同年十一月から福祉年令支給を開始し、昭和三十六年から本制度中心である拠出制年金実施に入り、現在では被保険者数約二千万人、拠出年金受給者約六万人、福祉年金受給者約三百万人を擁する規模に成長しており、被用者を対象とする厚生年金保険と相並んで、わが国公的年金の二大支柱を形成する制度であります。しかしながら、現行の体系につきましては、昭和三十六年及び昭和三十七年の両年にわたって拠出制年金実施を軌道に乗せるための改正が行なわれた後は、逐年福祉年金を主体とした改正が行なわれたのみでありまして、拠出年金給付水準は、この数年間の著しい経済成長に伴う生活水準の大幅な上昇に取り残され、老後生活を保障するものとしては不十分な状態に置かれているのであります。  一方、最近の人口構造の著しい老齢化現象生活水準向上などの事態に際して、老後生活保障施策はますますその重要性を増しているのでありまして、このため昨年の厚生年金保険大幅改正に引き続き、国民年金につきましても、本年が財政再計算期であるところから、これを機会に、今日までの生活水準向上に即し、その大幅な改正提案することとした次第であります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして、順次御説明申し上げます。  まず、拠出制年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてであります。老齢年金の額につきましては、現行保険料納付済期間一年につき、拠出期間二十年までは九百円、二十年をこえる期間は一千二百円で計算しておりますのを、一年につき二千四百円に、現行保険料免除期間一年につき三百五十円で計算しておりますのを八百円に引き上げ計算することといたしております。この結果、二十五年拠出の標準的な老齢年金の額は、現行の二万四千円から六万円に、月額にして二千円から五千円に引き上げられることになり、全期間四十年拠出の場合は現行の四万二千円から九万六千円に、月額にして三千五百円から八千円に引き上げられることになるのであります。月額五千円という水準は、従前二十五年拠出老齢年金額が、厚生年金基本年金額のうち、定額部分に一致していたように、今回の改正により、改正後の厚生年金保険定額部分と適合することとなり、これによって夫婦月額一万円の年金を実現しようというものであります。  通算老齢年金につきましても、その年金額老齢年金と同様に計算いたすこととしております。  障害年金の額につきましても、老齢年金と同様の計算により算出することといたしております。また、二級障害年金及び子二人を扶養する場合の母子年金と準母子年金については、現行最低保障額二万四千円を六万円に、月額にして二千円を五千円に引き上げるとともに、一級障害年金加算額現行の六千円から一万二千円に、月額にして五百円から一千円に引き上げをはかっているのであります。これらの最低保障額は、従前から二十五年拠出老齢年金の額に最低保障額を合わせていた経緯にかんがみ、今回も老齢年金が六万円、月額にして五千円に引き上げられるので、これに合わせたものであります。  遺児年金の額も、同様の計算により、最低保障額現行の一万二千円から三万円に、月額にして一千円から二千五百円に改めることといたしております。  第二に、給付支給要件緩和でございますが、これには二点ありまして、第一点としましては、障害範囲の拡大であります。現行法におきましては、循環器系障害等につきましては障害年金支給されないのでありますが、この障害範囲を拡大しまして、すべての障害について障害年金受給機会を与えようとするものであります。母子年金、準母子年金及び遺児年金対象なる子等につきましては、通常は十八歳まで、障害児に限り二十歳まで年金支給されるのでありますが、この障害児範囲につきましても、障害年金と同様に、すべての障害対象とすることといたしております。  第二点といたしましては、障害年金資格要件緩和であります。現行法では、病気にかかり三年目において障害の軽度である者には、その後いかに重症となっても障害年金支給されません。今後は、このように事後重症となった者にも年金支給しようというものであります。  第三に、保険料の額の改定について申し上げます。今回のように給付水準を大幅に引き上げますと、これをまかなう保険料についても、当然相当額引き上げの必要があるわけでありますが、今回はさしあたり百円の引き上げにとどめ、三十五歳以上の者の保険料月額二百五十円、三十五歳未満の者は二百円とし、以後段階的に引き上げ昭和四十四年一月分からは五十円の増額としているのであります。  次に、福祉年金に関する事項について御説明申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてでありますが、昨年の引き上げに引き続き、本年度も老齢福祉年金現行の一万五千六百円を一万八千円に、障害福祉年金は二万四千円を二万六千四百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金は一万八千円を二万四百円に、それぞれ二千四百円、月額にして二百円の引き上げをはかることといたしております。  第二に、支給要件緩和について二点申し上げます。  第一点は、障害福祉年金対象となる障害範囲母子福祉年金及び準母子福祉年金支給対象なる子等障害範囲は、拠出年金の場合と同様に、循環器系障害等のすべての障害にまで拡大いたしております。  第二点として、障害福祉年金事後重症者についても、障害年金の場合と同様に支給対象といたしております。  第三に支給制限緩和について四点申し上げます。  第一点といたしましては、福祉年金受給者本人所得による支給制限緩和であります。市町村民税老齢者障害者及び寡婦についての非課税限度額引き上げられますので、これにあわせて現行限度額二十二万円を二十四万円に引き上げることといたしております。  第二点といたしましては、障害福祉年金について、その受給者配偶者所得による支給制限を廃止し、扶養義務者所得による支給制限に吸収させる緩和措置を講じております。  第三点に、福祉年金受給者を扶養している扶養義務者所得による支給制限でありますが、標準世帯(六人)の場合を例にとりますと、現行限度額約七十二万円を約八十二万円に緩和をはかることといたしております。  第四点としては、夫婦の一方が障害福祉年金を受け、他方が老齢福祉年金を受ける場合の老齢福祉年金の三千円停止の措置を廃止することといたしております。  次に、経過措置について申し上げます。  第一に、現に年金受給中の既裁定年金の額についても、本則の改正と同様に引き上げることといたしております。これによって、老齢年金受給者がまだ出ない現段階においても、障害年金及び母子年金等について大幅な引き上げが実現することとなるわけであります。  第二に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間国民年金老齢年金資格期間に算入いたしております。  最後に、実施の時期につきましては、諸般の準備等もあり、主たる部分については、昭和四十二年一月分からといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び政府提出法律案要旨でありますが、なお、衆議院において老齢福祉年金配偶者所得による支給制限を、障害福祉年金の場合と同様、扶養義務者所得による支給制限に吸収させる修正がなされました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 次に、重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案に対する、衆議院における修正点について、修正案提出者衆議院議員伊藤よし子君及び竹内黎一君より説明を聴取いたします。衆議院議員伊藤よし子君。
  5. 伊藤よし子

    衆議院議員伊藤よし子君) 重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  その要旨は、手当支給額月額二百円引き上げ重度障害児一人につき月額千二百円から千四百円に改めたことでございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  6. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 次に、衆議院議員竹内黎一君。
  7. 竹内黎一

    衆議院議員竹内黎一君) 国民年金法の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  その要旨は、福祉年金支給制限緩和であります。改正案では、障害福祉年金配偶者所得による支給制限を廃止することになっておりましたが、それを老齢福祉年金配偶者所得による支給制限をも廃止し、扶養義務者所得による支給制限に統合したことであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  8. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 右三案に対する審査は一応この程度にとどめておきます。
  9. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 社会保障制度に関する調査議題とし、厚生行政に関する件について調査を行ないます。  本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 昨年の十月の時点新潟県の阿賀野川流域に発生いたしました有機水銀中毒事件原因調査究明追及並びにこれに関連するところのいわゆる補償問題について、若干の質問を、昨年の十月でありましたか、主として厚生大臣並びに所管局長である環境衛生局長質問いたしたわけでありますが、それからかれこれ半年という日月が経過をいたしておるわけであります。そういう中で、その時点でこの問題はかなり精密な調査も必要とするし、したがって、時間もかかるのだ、そうして相当額予算が要るのだというようなお話もあったわけでありますので、その後、言うならば、その汚染源原因究明追及状態というものがどのように進展をしておるかといったような問題について、現況の概要をひとつこれは御説明をこの時点で願いたい、かように考えるわけでありますが、これは大臣でなくとも、きょうの環境衝生局長が来ておられますか。――大臣はけっこうだと思いますけれども。
  11. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ちょっといま他の委員会環境衛生局長が入っておりまして、間もなく見えるはずでございますので、内容の詳細につきましては環境衛生局長から御報告させることにいたしたいと思います。  ただいま杉山さんから御質問がありました新潟阿賀野川流域におけるいわゆる有機水銀による中毒の問題につきましては、厚生省におきましては、地元の新潟医大並びに県当局等と緊密な連携をとりまして、鋭意原因究明に当たってまいったところであります。その原因といたしましては、おおむね有機水銀による中毒であるというようなことがわかっておるのでありますが、この有機水銀が、一体その汚染源はどこか、こういう点につきましてさらに詳細な調査糾明が必要であるということで今日に至っておるわけでありますが、その調査の結果につきましては、ただいま環境衛生局長から御報告をさせることにいたしたいと思います。  なお、補償の問題につきましてお触れになりましたが、この補償の問題につきましては、汚染源並びにその加害者たる責任の者が明確になりました上で、この補償の問題につきましては、話し合い、折衝が進められることになると思うのでありますが、これらの点につきましても、今後の調査の結果を待って補償の問題を取り上げたい、かように考えておる次第であります。
  12. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ちょっとお伺いしますけれども、大臣はほかの関係のほうへ中座されるのでしょうか。
  13. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) おります、もう済んできましたから。
  14. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) それでは、先ほど杉山君から御質問のありました件について、舘林環境衛生局長がいまお見えになりましたので、質問要旨をもう一ぺん、おそれ入りますが、杉山君のほうからお願いします。
  15. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 昨年の十月の時点で、この委員会では、主としてやはり厚生大臣、それから環境衛生局長のあなたに、新潟県の有機水銀中毒事件関連をして若干の質問をいたしたわけでありますが、その質問のねらいというものは、言うならば、そういう現象が起きた限りについては、何か原因があるだろう、その原因調査糾明について、その時点で、一応原因と、それから当面に起きた真犯人といいますか、汚染源は何であるか、したがって、それに関連して、当然補償問題というのが起きてくるのであるというような点について触れてお尋ねをしておいたのですが、それが昨年十月でありますので、その時点では、やはり四十一年度の予算を踏んまえて、公害問題に関連をして相当にやはり厚生省所管省として予算面においても、たとえば公害部を設けられ、調査課を設けて鋭意研究するが、相当の時間がかかるんだと、もっともだと思ったわけですが、その後非常にブランクが置かれましたのですが、その後調査研究のいわゆる真犯人が、一体農薬であるか、あるいは工場廃液であるか、その後かなり大がかりな調査があったはずでありますので、その進展状況概要について、また、できるなら国民が、あるいは新潟県民が納得する程度にひとつ局長から御説明を願えばけっこうだと、こういうことをいま大臣にお願いしているわけなんです。
  16. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま大臣から大要の御説明があったところでございますが、この新潟事件解明のために、科学技術庁におきまして特別の研究調整費というものを支出いたしまして、関係各省相寄りまして、その研究調整費に基づいてこの事件解明に当たったわけでございまして、その大きな部分を担当いたします厚生省側といたしましては、新潟大学新潟県を中心といたしまして、厚生省衛生試験所並びに大学の先生、あるいは国立公衆衛生院先生というような権威を集めまして特別調査班をつくりまして、昨年来、鋭意その原因の探究につとめてまいったわけでございまして、今日の段階ではかなり大詰めに近い状況でございます。今日まで判明いたしましたところでは、まず、この症状を起こした患者の原因メチル水銀で、有機水銀の中でもメチル水銀原因である、しばしば使われております、水銀としては最も多量に使われておりますいもち病の薬であるフェニル水銀ではないメチル水銀であろう、かような結論がまず第一に出てまいりました。しからば、そのメチル水銀は何から入ったかということでございますが、これは阿賀野川に住んでおる魚を食べたためである、これも明確化されたわけであります。そこで、阿賀野川の魚にメチル水銀が入ります原因が何であろうかというところで実はやや明確を欠いた状況にあったわけであります。と申しますのは、このメチル水銀を出す根源が大きく分けて二種類ありまして、一つは、ごく少量でございますけれども、農薬としまして、もみ消毒に使っておる。これは新潟県に限らないことでございますが、もみ消毒に使っておる。第二点といたしましては、工場水銀を使っておる。ただし、これはメチル水銀として使っておるわけでもなければ、使った結果メチル水銀を生産するということをやっておるわけでもないが、もしかしたら誤ってといいますか、あるいは予測しない原因で、途中でメチル水銀に変化しておるかもしれない、かような想定がなされたわけでありまして、その魚の原因となっております川の水、あるいは川の泥等を調べて、どの方面にあるかというととをかなり詳しく探索いたしたのでございますが、これは数カ月の探索によっても明確でなかったわけでございます。ただ、工場無機水銀を触媒に使っておりましたけれども、その反応塔の中で微量ながらもメチル水銀が出ておる気配がある。反応塔の中からメチル水銀を検出したわけでございます。そのようなわけでありまして、工場で予測しない原因無機水銀メチル水銀に変化をしまして、それがはたして確かに川の中に流れ込んだかどうかということで、工場廃液排出口、あるいはその付近の泥の中等を詳しく調べたわけでございますが、泥の分析は非常に困難でございまして、長いこと検索を続けましたが、なかなか原因として判明しなかったのでございます。ただ、最近に至りまして、ある工場排出口付近から、新潟県、新潟大学等メチル水銀を検出したという事実が判明いたしまして、研究班においてあらためて再調査をいたしておる段階でございます。したがいまして、このようなことが明白になりますれば、今回の原因はかなり明らかになるということを予測しておるわけでございまして、そのためにはそう長い時日が必要ではない、もうだいぶ大詰めにきておる、かように私どもは考えております。  それから、補償問題は、大臣が仰せられましたとおり、原因が明確になり次第に当然起こってくることでございまして、御承知の患者の治療等に関しましては、現在県がめんどうをみておるという段階でございますが、この補償は、もちろん患者の治療という精神、身体上の問題以外に、漁業というような関係もあるいは出てこようかと思っておる次第でございます。
  17. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ついこの間ですが、五月二十六日の時点で、関係市町村である新潟市と、それから新潟県の中蒲原郡の横越村、それから北蒲原郡の豊栄村の理事者代表が打ちそろって厚生省、通産省、企画庁、科学技術庁、農林省、そういったような、いわゆる予測される関係の省庁に対して、とにかく困っておるから、早く原因汚染源糾明してはっきりしてくれ、それと、これに関連して、補償問題に対しても大所高所から配慮してもらいたいといったような趣旨のそれなりの陳情をした事実があるわけでありますが、その陳情を、もちろんそれぞれ窓口を通して受けとめておられると思いますが、今日の時点で、環境衛生局長はむろんのことですが、大臣は、過去の経緯もありますので、それをどのように受けとめ、これをどのように処理されようとされているのか。まだ大臣の手元にそれが届いていなければ別として、その問題について一応若干の見解を伺いたい、こう思うわけであります。
  18. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) このような事故、もちろん故意による事故ではなくて、どのような原因であるにいたしましても、予測しない原因によりまして起こりました事故というものに対して、各種の補償的な取り扱いが過去においても行なわれておりますし、当然それらの事例を勘案して今回の新潟事件に対処する、かようなことが必要でございまして、私どもとしても、できるだけ被害を受けられた方々がお困りにならないような努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 それをひとつ確認しておきますけれども、当然課長クラスのところであったか、窓口はどこか知りませんが、三者が帯同して陳情に来ておられるでしょう、五月二十六日の時点で。その点も未確認ですか、どうですか。――はなはだたよりないな。重大な問題ですよ。
  20. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 速記を起こしてけっこうです。
  22. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) まことに恐縮でございますが、私なお調査をいたしましてお答えいたしたいと思います。
  23. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大臣もおられますから率直に申し上げておきますけれども、本来は地元では非常にこの問題が問題になってきておる。時間がたっておりますし、原因汚染源糾明されたかのごとくされざるかのごとく、したがって、その被災者は、患者の立場でも死亡者の遺族の立場でも、阿賀野川内面水域の漁業者についても、魚はとれないし食えないし、といって転廃業もできないのだといったかっこうで、県も市も町も村も理事者が突き上げられ、せっぱ詰まって、中央へお願いするよりほかに方法はないのだというかっこうでいわゆる陳情にやってきておるのでしょうから、それはむろんいろいろな御事情はわかっております、どこでも家庭の事情はおのおのあるわけですから。けれども、そういう重大な様相を呈しておりますので、十分それは受けとめた形で、その内容はもちろん陳情書にもうたってあると思いますから、十分大所高所から配慮してもらう必要があるし、現にどのようにそれを受けとめ、どう処置されているかというようなことを、実は先月の二十六日からだいぶ日数もたっておりますので、そういうことでもって確認をしていくわけでありますが、さらに質問を続けますが、御承知のように、新潟の場合は、死者五人を含めて、患者三十一人に及んでおるわけでありますが、さらに今日的な時点でも、二百PPM以上の有機水銀の保有者が九人ないし十人出ておる。さらに阿賀野川流域には、内面水域のいわゆる川魚や貝類をとって生活をしている七つの漁業組合がありますが、関連の漁民は二千名近くあるわけであります。県の行政命令で、サケ、マス以外は魚をとっちゃいかぬということになっておりますので、魚はもちろんとれない。しかし、食わないわけにはいかないから、だから魚を仕入れて行商をやっているが、あすこの魚はあぶないんだという形で買ってくれないということで、これらの被災者はいろいろその生活にあえぎながら、やはり県や市町村におすがりする。それにしても、かなり大がかりな調査団が入ってきておられる。だから、一体いつになったら汚染源、言うならば、犯人が捕えられるだろうかというかっこうで、しびれを切らしながら、かつ、生活苦とてんびんにかけて、県議会でも市議会でも理事者を突き上げておる、こういうような現状であります。いま環境衛生局長の御答弁の中には、どうやら犯人らしいもののにおいがしてきたから、そのうちに汚染源が突きとめられるらしいということでありますけれども、そのうちにといっても、一体どの辺だか、いま言ったような経緯もありますし、陳情もなされているというような関係もありますのは、この辺のところをもう少し確認の意味で、そのうちといっても、昨年の十月の時点では、相当に時間もかかる、金もかかる、調査も必要だと思いましたけれども、今日では半年以上もたっておりますし、いま申し上げたように、被災者も、お互いが立場を変えてみれば、非常に早く急いでもらわなければいかぬというふうに考えておりますので、そういう点についてひとつ。
  24. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) これは先ほど申しましたように、各方面の学者が集まって調査をしておることでございますので、私の独断で断定はできませんけれども、私の観測によりますれば、厚生省に関しまする分野の調査は一、二カ月でおおむね終了する。これは厚生省だけの調査でございませんで、各省共同調査をいたしておりますので、これが相寄りまして科学技術庁で最終的に取りまとめるという段階になりますが、そのようなことで、大部分調査は私どもの調査でございますので、その程度でおおむね調査は終了する、このような見通しでございます。
  25. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題につきましては、政府におきましても重大な実は関心を持っておるわけでございます。そこで、ただいま杉山さんから、被害を受けられた方々並びに地元の関係者の各位が、一日も早くこの問題を明らかにし、そうして補償等の措置を一日も早く措置してもらいたい、こういう御要望なり陳情なり、そのことは私どもも十分理解をいたしておるところでございます。ただ、ここで申し上げておきたいことは、事柄が非常に科学的、学問的な調査を必要とすることと、その点が明確に究明をされていないと、あとで補償。問題等が起こりました際に、またいろいろな学問上の争いになるということでございまして、この事件の決着につきましては急がなければなりませんけれども、また、一面において、科学的、学問的にその原因等の争いが起こらぬような程度にまで明確にこれをしておく必要がある、こういうことが事態を早く解決するゆえんにもつながることでございますので、ただいま環境衛生局長から申し上げましたように、厚生省におきましても関係者との間でお互いに力を合わせまして、一日も早くその結論が出ますように努力をしている段階でありますので、この点を御了承いただきたいと、こう思うわけであります。
  26. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いま大臣から一応の御答弁はいただきましたが、私は、どうしてもこれは大臣にお尋ねをして、大臣からひとつ政府を代表するというような立場で、むろんそれは通産省だとか農林省だとか科学技術庁、いろいろ関係がありますけれども、公害に関連をして、この問題はほんとうの意味の中核になる所管大臣厚生大臣だと思いますので、いまの御解明については、それはそれなりに納得はできますが、具体的な問題として、いまの御答弁に関連をして申し上げますが、三月の二十四日に、日比谷公園の松本楼だと思いますが、新潟県水俣病特別研究班合同会議というものが開かれておりますね。各省の専門家の方々や大学の教授、先生などを含めて、私どもの了承する限りにおいては、やはり新潟県水俣病特別研究班合同会議だというふうに考えておりますが、その中の、主として新潟大学とか神戸大学だとか、そういったような権威ある大学の疫学班ですね、疫学班の先生たちが、これは工場の廃液と断定をしているという事実があるわけであります。ところが、厚生省や科学技術庁は、工場廃液の可能性は強いけれども、それを断定的に結論づけるわけにまいらぬといういきさつがあって、しかも、その関連の中で、科学技術庁や厚生省は国費を九百数十万円、一千万くらい投じて調査をやっているけれども、この行政調査特別調査班にタッチされた単者、先生たちは、学会に軽々にこれを公表しないでほしいのだと、言うならば箝口令を敷いているのだというようなふうに実はわれわれ外から聞いているわけです。また、そういうことが新聞にも出たわけであります。でありますから、そうであればそうであるだけに、むろんこれは大所高所から大臣がおっしゃるとおりに、慎重に慎重を期すことが必要でありましょう。したがって、汚染源究明するということについては、被害者と、それから加害者との関係も補償の問題で当然浮かび上がってくるわけでありますから、慎重に慎重を要するわけでありますけれども、私どものうかがい知る範囲では、たとえば九州の水俣におけるこの問題の取り扱いが、新日本窒素の工場がどうも九〇%がそうである。この場合、新潟では阿賀野川の上流にある、今日的の時点では名前を言ったほうがいいと思いますが、昭和電工鹿瀬工場が、たとえば水ゴケの調査からいって、先ほどのお話があったメチル水銀かが出ておるという科学的な事実からいっても、九九%が、まあ一〇〇%とは断定しがたいが、比較的水俣の九〇%という評価に対して、新潟の場合は九九%立証の余地がある、学者はそういうふうに断定をしているのだ。ですけれども、それを行政調査に名をかりて学会で発表して云々ということは、これは新聞で知ったわけでありますから、真偽の程度は別でありますが、少なくとも、こういうような問題こそ、これは厚生省がお出しになっても科学技術庁がお出しになっても、国民の税金としての国費が調査の背景として支出されておるというのは間違いないわけで、これはきれいにひとつ公表すべきでありますし、私が一つ遺憾に思いますのは、昨年の十月の時点で、少なくともこういうような九州で水俣病が起き、また新潟で第二の水俣病が起きているけれども、第三の水俣病が起きないためには原因を科学的に究明調査する必要がある、汚染源追及するのだというふうな、やはり新産都市であるとか、産業をいたずらに拡大をして、そして産業を誘致するということで公害というものが軽視されておるだけに、こういうやはり汚染源が放置されまして第三、第四のつまり水俣病が起きる原因があるのだというようなことをいったことが記録にも載っていることを覚えているのであります。そういう観念からいきますと、慎重な調査をすることはいいでありましょうけれども、すでに三月の二十四日の時点で、おおむね大体そういう学者グループ、疫学班からそういう断定が出ておるわけでありますけれども、それが今日まで伏せられておるということでありますが、ここに、たとえばこれは新潟の新聞でありますけれども、四十一年の四月八日の新聞でありますが、こういうことをいっております。「新潟水俣病、学会で相次ぎ資料を発表」と大きな見出しで書いてあるのですが、「国の”カンロ”令に反発、業者グループ「学問の自由」を守ると」といっておる。中身については、そういうひもつきの研究費であるならば、ひとつ学者グループが結束して返そうじゃないかという形で、最近次から次へと学会で学問の自由を守るのだという形で、この新潟有機水銀汚染源は、やはり工場廃液だと、しかも、どろの中からということがやはり載っておるわけでありますから、私は、いまの大臣の見解についてはわかりますけれども、これははっきりしておいてもらわぬと困るということで、もう一度大臣の所信といいまするか、この問題に対する見解をひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  27. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 厚生省といたしましては、国民の健康と生命を守るということが一番大切な役所の使命であると、かように考えておるわけでありまして、したがいまして、このような事件が今後絶対に起こらないようにいたしますためにも、今回の事件を科学的に、学問的にあくまで究明をしたい。また、国費を使ってこの調査をやっておるわけでありますから、確信のある結論が出ました際におきましてはこれを公表いたしまして、そうして国民の前に明らかにすると同時に、こういうような事態が今後繰り返されないように万全の措置を講じたい、このように考えておるわけでございます。
  28. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 蛇足ではありますけれども、この種の問題について、水俣に起き、新潟に起きておりますが、第三、第四が起きないためには、さらに起きる場合には、この種の処理については、企業よりも人命を尊重、重視するという立場で問題に厳に取り組んでいただきたいということを強く要望申し上げておきます。  それから、これは環境衛生局長でたくさんだと思いまするが、これも一つの事例でありますが、六月の三日で、ついこの間ですが、新潟県の有機水銀中毒対策本部というものが新潟県庁に設置をされておるわけでありますが、とれが対策会議を今月の三日に開きまして、そうしてこれは具体的な問題として、阿賀野川の上流にあるところの昭和電工の排水口から採集した水ゴケ、これを新潟大学に、一つのその問題を専門に研究する調査研究室があるわけでありますが、そこでやはり水ゴケからメチル水銀が検出されたので、新大公衆衛生学教室といいますか、この報告に基づいて、汚染源はやはり当工場であるということに全く間違いないのだという判断の上に立って、厚生省からはまだ何らの結論は出されてないけれども、この時点で被災者の代表、言うならば新潟市であるとか、先ほど申し上げました関係町村の代表や、それから患者代表や、それから漁業組合関係の代表者に集まってもらって、ひとつ昭電鹿瀬工場の本社との間に立って、補償問題についてひとつ話し合おうか、話し合ってみようか、いまそういう動きがあるわけでありまするが、この点について何らか新潟県から報告があっておられましょうか、どうですか。六月の三日のことでありますので、つい二、三日前のことであります。
  29. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先ほど申しましたように、新潟県におきまして、工場の排水口の水ゴケの中からメチル水銀を検出したという連絡を受けまして、分析の専門家であり、かつ、今回の研究班の班員にそれの再検査を命じておるところでありまして、調査班としましていまそれを検査しておる。その結果、答えが出るのは比較的早いのではあるまいかと私どもは考えておる次第であります。で、報告によりますと、新潟市の局長が、五月十日に、被害を受けた漁民の生活扶助の関係で陳情に来ておりますので、新潟県が中心になりまして、ただいまお話のありました工場との間の補償問題の話し合いというようなことは、最近に至りまして新潟県がそのような努力をしておるというお話を聞いております。ただ、先ほど来、大臣からお話をしておりますように、このようなことは、国としての調査が終わり、国としてはっきりした結論が出ましてから補償という問題が起こると、かように存じておるわけでございます。で、御承知のとおり、水俣のときには、九〇%以上の学者が一様の答えを出し、一部の学者は必ずしもそれに一致しないという答えで、今日に至るまで、その当時五年間も連続して慎重な調査をしても、とうとう明確な結論が得られなかったというように、学問的に完全な詰めがございませんと、必ずしも最後の断定が明確に行なわれ、それに基く正確な補償という扱いができかねるということも考慮いたしまして、今回は私どもとしては十分慎重を期してやっておるわけでございますが、そうかといって、被災者の現状は十分にこれは考えまして、できるだけ急いでまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  30. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一、二点で終わりますが、大臣に強い要望を申し上げておきます。  いまの話のやりとりで、大体のつぼと勘どころは踏まえておっていただくと思いますが、要するに、被災者の立場から言うならば、死者が、かりに五人や六人であり、あるいはその有機水銀の保有者がたといわずかであっても、漁民関係がありましても、その立場に立てば、これは非常にしびれを切らして生活にあえいでいる重大な問題であります。さらに、具体的にこの水銀中毒患者を守る会というのが、自主的に患者だけでできているわけであります。さらに、それを取り巻いて、民間団体の水俣病対策会議というものもできているわけであります。もちろんその地域の町村会なり市会なり県会なりもこの問題を非常に重視をして、いま大臣局長の言っておられる程度は、もちろんこれが竜頭蛇尾に終わってはいかぬのだ、しり切れトンボに終わってもいかぬのだ、したがって、現地の水俣病の場合には非常に遺憾な事態があるのだ。しかし、それからくるところの新潟の場合には、この災害の場合には、だからといって、これを調査追及して、原因の追求でこれが滅んでしまってはいかぬのだ。したがって、何を信頼するのかとなれば、この調査なり研究というものを、十分に行政指導の面では、各関係局長さんなどが、たとえば厚生省だとか科学技術庁だとか、農林省だとか水産庁だとか、そういった関係者が早く集まりまして、やはり真犯人といいますか、その汚染源究明をしてもらいたい。いずれにしても、新潟県は、具体的に申し上げておきますが、いま新潟有機水銀中毒対策本部は副知事がその長であって、それから衛生部長がその事務局を担当しておる。これはひとつの官製のものでありますが、それでもその時点で、その立場においては、何とかこれを処理しなければならぬという突き上げの状態に置かれておるわけであります。でありまするから、当然ものの条理からいっても、厚生省からこれこれの具体的な結論が出た、犯人はこれだと言われないまでも、追及をしなければ、この地域の行政処置としてはなかなかスムーズにいかないという態勢の前夜にあるということでありますし、前段申し上げた患者の会も、それから水俣病対策会議という民主団体の会合というものは、でき得べくんば、これはほんとうの原因究明された上に立って問題の処置をしないというと、ちっとやそっとの見舞い金でいわゆる被災補償がすりかえられてしまうおそれがあるので、若干時間はかかっても――若干でありまするけれども、それを長くということは非常におそれるのだというふうな形で非常に心配をしておるという実情でありますので、以上のことを申し上げまして、きょうの時点では一応私の質問は終わりますわけであります。  それから、ついでに九州水俣の問題の処理に対する、たとえば医療補償の問題であるとか、それから患者に対する生活補償の問題であるとか、関係漁民に対する損害補償の問題のデータを、時間は若干かかってもいいのでありますけれども、ひとつお出しいただきたいということを衛生局長にお願いしておくわけでありますが、大臣においても、若干のひとつ決意を、この問題に関連して、一応きょうはこれで問題のお尋ねを打ち切っておきますけれども、非常に急いでひとつお答えを出してもらわなければならぬ問題であると、かように考えますので、大臣からもひとつお答えをいただきたい。
  31. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、厚生省は、国民の健康、生命を守ってあげなければならない行政庁でございます。したがいまして、今回の事件につきましては科学的な究明を徹底的に行ないまして、そして、その結果が判明いたしますれば、それに基づきまして関係者の納得するような措置を、政府としても中に入りまして解決をしなければいけない、かように考えておるわけであります。また、関係者並びに地元の方々が、一日も早くこの問題を解決したいと、こういう心情は私ども十分推察いたしておるのでございますから、一日も早くこの科学的な確信の持てる結論が得られますように関係者を督励をいたしたい、かように考えておる次第であります。  なお、水俣の場合における医療その他の措置につきまして、とられました過去の資料につきましては、あとう限りこれをととのえまして御報告するようにいたしたいと思います。     ―――――――――――――
  32. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 だいぶ時間も迫ってまいりましたので、ごく簡単にひとつ要点を質問させていただきます。  一週間前に、実は名古屋の准看護婦学校の問題についていろいろお尋ねをしたわけでありますが、一週間の間に何とかしよう、あるいは、また、大体その実習の病院も九九%まで何とかなるであろうというお話でもって、私は非常に期待をしておったわけでありますが、その後の経過について、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  33. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 先般の当委員会で、名古屋における保険医協会の設置しようとしております准看護婦養成所の認可に関しまして御質問がございました。これがかなり長い間紛争の中にございまして、なかなか解決しないという問題から、これを厚生省としても監督官庁の立場から適切な指導を行なって早急に解決しようというお話でございました。これにつきまして、当時この数カ月間の紛争経過の中で、比較的話し合いがついて何とかまとまりそうな段階にきたというふうに私どもも解釈いたしまして、できるだけ早急に、およそ一週間程度で何とかなるであろうということを申し上げたわけでございまして、その後現地に参りまして、市の衛生局長並びに県の衛生部長等に面接いたしまして、いろいろな事情を聴取しておりましたが、先般の委員会のときに申し上げましたような解決策の方途がまたいささかぐらついてきたということで、非常に困惑を感じておりまして、それならばどういう方法をもっていくかということを協議をいたしまして、なかなか名案というようなものもなくて、実は一週間以内の解決ということは、まことに申しわけないけれども、困難かと感じておったわけでございます。しかし、衛生部長が非常に骨を折っておりまして、何とかこの問題を両者の円満な話し合いといいますか、少なくとも表面立って筋道立った解決ということはなかなか困難な状況でございます。御承知のように、非常に根の深いバックグラウンドもございますので困難でございましたが、昨日夕刻、保険医協会のほうから一つの提案もございまして、現在養成人員は約百二十名を予定しておりますけれども、さしあたり養成訓練実習施設の関係から、さしあたって半分の六十床程度でも早急にこれを解決したいという申し入れもございまして、その点につきまして、現在衛生部で法令的な立場等を、法律官等も入れまして、検討中でございまして、大体暫定的な方法ででも解決がつくのではないか、そうして第三段の準備をしていくということが妥当ではないかということで、現在現地でそのような折衝をいたしておるわけでございます。
  34. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いろいろとうまくまとまるように御配慮を願っていることはいまの答弁でもうかがえるわけでありますが、まあ看護婦の非常に少ないときでもあり、あるいは、また、求人困難なときでもあり、いろいろ方向から考えて、私は一そう力を入れて指導をしていただいて、こういう問題がスムーズにいくことをひとつ特に要望しておきたいと思います。これはまだあとに引きまして、もしやこれがうまくいかない場合には、もっともっと私のほうからいろいろな方向に向かって御質問申し上げたいと思うわけでありますが、きょうはこの辺でとめておきますから、大臣はじめ、局長のほうにおかれても、特にそういうことを配慮して、そして円満にこのことが解決するような方向にひとつ強力なアドバイスをしていただきたい、これをひとつ心から要望いたしておきます。  それから、もう一つ私は名古屋の問題でお尋ねしたいのは、これはいつでしたか、まだ間がないわけでありますが、ジフテリアの予防注射のときに腸チフスの注射と間違えて、大ぜいの子供さんたちに熱を出さして入院をさしたという問題があるわけであります。こういうことについては、非常に現地のほうにおいても大きな、何と申しますか、そういうふうな予防対策に対しての不安感、非常に大きなものを巻き起こしておるというわけでありますが、これについてひとつ要約した経過説明していただきたい。  それから、私は、その中で、今度は名古屋の地区で予防注射をするにあたって、個別方式とか集団方式とかいわれているようでありますが、いわゆる開業の先生方のところへ予防注射を委託していくという方式と、あるいは、また、いままでのように、何と申しますか、学校あたりに集団的に集まってもらって、そして予防注射をするという方式、あるいは、また、定期的に予防注射が行なわれておりますから、これは法律できめられているように、ジフテリアとか百日ぜきとか、あるいはチフスの予防注射とか、あるいは、また、そのほかに種痘とか、いろいろなものがあるわけでございますが、また、臨時の不定期の予防注射としては日脳、あるいはインフルエンザの予防注射とか、いろいろあるわけでありますが、こういうようなことがどういうふうに行なわれているのか。ある程度時期的に重なったりしたのが今度のようなこうした間違いを起こした原因ではないかと推察するわけでございますが、そういう関係も含めて、時間もないですから、要領を得た経過説明していただきたい。
  35. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) このたび名古屋の港保健所管内で、ジフテリアと百日ぜきの混合ワクチンの接種を腸パラのワクチンと間違えて行なったという事故がございまして、これは五月三十一日に起こったものでございます。実施いたしましたのは、そのときに百五十七名接種いたしましたのですけれども、あやまって接種いたしました点は、最初の八十四名について腸パラ混合ワクチンをあやまって接種した。その後気がつきまして、途中でジフテリア、百日ぜき混合ワクチンに切りかえたというようなことでございます。で、この八十四名の者につきましては、実は接種量が、規定におきましては、腸パラワクチンであるならば一回が〇・二五ccであるものが、たまたまジフテリア、百日ぜき混合ワクチンの接種量をさした。したがって、ジフテリア混合ワクチンの接種量でございますと、第一回目でございますと〇・五四、二回目でございますと一・〇ccというふうな接種量でございますので、〇・二五ccのものが、〇・五なり、あるいは一・〇なりというものを二倍ないし四倍の量を接種されたというようなことでございます。で、そういう事故が起きましたので、気がつきまして、直ちにその接種をした者たちに呼びかけまして病院に収容をし、発熱、その他副作用の著しいと思われる者につきまして病院に収容いたしまして、そうしてこれの治療をいたしました。幸いにいたしまして全員なおりまして、そうしてこれは退院をいたしたわけでございます。その後の事故もございませんようで、この点につきまして、事故があった者の生命に別状がなかったことは不幸中の幸いではございますけれども、しかし、これはやはり予防接種といたしましては非常に重大な事故であります。で、この事故の経過につきまして調べてみましたところ、ワクチンはその保健所の冷蔵庫の中に保管をしておりました。その保管をしておりましたのを、会場に持っていくために、そこでワクチンを取り出す。その取り出す際に腸パラと百日ぜき混合ワクチンを間違えて会場に持って行った。そうして、それは保健所の業務員でございます。看護婦の資格のある業務員でございます。それを会場に持って行きまして、その会場におきましてそのまま、臨時にそこに雇い上げた看護婦さんが注射器に詰めて、そうしてそれを医師に渡して、医師がそれをあやまってそのまま注射してしまったということでございます。過失があったということははっきりいたしておる問題でございます。  この過失の責任につきましては、名古屋市といたしましては、市の局長、それから保健所長、それから予防課長、その保健所の当人につきましては処罰をいたしているわけでございます。  なお、他の問題については、あとでいろいろ問題もございますが、現在はそのような状態に至っております。
  36. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その中で一、二点だけ質問さしていただきたいと思うわけです。  第一点は、最近は医師会との間の交渉の中で、個人のお医者さんの診療所でこういう予防注射をさせようという話し合いができているということになっているようでありますが、この問題については厚生省としてどういうふうに考えているか。特に個人の病院でありますから、ほかの患者も来ている、あるいは予防注射には、やはり診断をして、そしてその健康状態、体温をはかってというようないろいろな制約がついているはずだと思うのでありますが、そういうことを各大ぜいの患者をみている個人の医者で十分にできるかどうか。あるいは、また、そのほかいろいろな開業をしておる科によっては、たとえば産婦人科の医者にそういうことがあったという場合であれば、婦人科の方のところへ子供さんたちが行って、これはまた青年のいろいろな素行の問題も考えられるでありましょうし、いろいろ個人の開業医でそういうことをやることがいまの状態で可能であろうかどうかということも考えられると思うのでありますが、こういうことがいま話になって、そして予防接種をやるのは一カ月くらいもおくれて、そして何と申しますか、いまのジフテリアあるいは百日ぜきの混合ワクチンと、もう一つ腸チフスのワクチンとを間違えたということも一つの遠因にはなっているんじゃないかと考えられるわけです。こういう点からいっても、厚生省の考えとしては、こういうふうな予防接種をどういうふうにさせるか。いままでどおりの集団的にやるのがいいのか、そういうことについてのひとつ見解を聞かしていただきたい。
  37. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 予防接種の問題につきまして、いま一般の医師と、それからその実施の責任であるところのいわゆる市町村がどういうふうな形になっておるかというお話でございますけれども、個人として医師に行って予防接種をやるということは、これは一向に差しつかえないことで、けっこうでございます。ただ、それを予防接種の上において市が費用を負担してどうするかという問題になってきた場合にいろいろ問題になってまいります。その場合になりますと、一部のところにおきましては、医師会がその市町村なり何なりと契約をいたしまして、医師会で実施をする契約をして、委託契約ですか、というような形でやるというような方法をとっておるところもございます。その場合に、医師会が委託された場合におきましても、多数の人をある時期にやるということになりますと自宅だけでできない。したがって、ある一定の場所に集めてもらうというよろなやり方をやるところもございまして、やり方の実情は、人員その他いろいろによってそれに即応したやり方をやるというような形になっております。
  38. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 まだそういうことについてはいろいろあろうと思いますが、こういうふうな災いがあるということを考えてみると、特に私はこういう問題に対しては慎重に考えてもらいたい。これはみんななおったからいいというものの、非常にこれは大きな一般の市民の人たちには不安感を持たすわけです。  それから、もう一点ここで伺いたいことは、今度の問題で、医者は過失という意味か、書類送検されておるようであります。塩路何とかいう医者でありましたが、そういうようになっているようでありますし、また、そこに行って、おりました看護婦さんは、やはり同じようにいろいろ書類を送られているようであります。ところが、その看護婦さんも、聞いてみるとパートの看護婦さんだということであります。それは資格を持っているかもしれぬけれども、このパートの人がひょっこり予防注射のときにだけ来て、そしてこれがやるんだからそうした間違いが起こるわけだと私は思うわけでありますが、これは保健行政としては非常に重大な問題を取り扱うときに、そういうふうなパート的な看護婦を使って、そうしていままでの経過、いわゆる薬の保存からすべてのことに対して教育が十分徹底していない、あるいは、また、その前後の状態を知らない状態でこういうのを使うというのは、私は非常に大きな問題がある。特に、いま局長説明になりましたように、こういう看護婦さんが注射器の中に薬を入れて医者に渡す、医者はそれで正しいものだと考えて打っておって、八十四人目に間違っていることを発見したんだ。医者が発見してそれをやめたということらしいのでありますが、こういうようなことが行なわれているということは、やはり結論的には医者がすべてのことに責任があるわけだと私は思うわけであります。だが、しかし、その間の取り扱いについては、そういうところに大きな粗漏があるのじゃないか。特にそういうような重大な予防注射をするときに、特に子供を対象として予防注射をするときに、パートの人がそのときひょっこり出てきて、冷蔵庫から薬を取り出して入れて渡すというようなことであっては、保健所の運営において大きな間違いが起こりやすい条件があるわけだ、私はそういうように思います。同時に、また、私は、その保健所の任務の中を考えてみましたら、非常に無理があるのじゃないか。たとえば医者も少ない、用務員も少ない。そういうふうな状態でたくさんな予防注射をしなければならぬという、そこに大きなあれもありましょうし、あるいは、また、書類調査なんかもそこらの人がやる、看護婦は看護婦の業務だけじゃなくて、そういうふうな業務まで手伝っておるというのが実態のようであります。そういう点から考えて保健所の業務が整理されていない、そういうところに大きなあれがあるのじゃないかと思います。そういうことになると、やっぱりこの問題のどこに責任があるかということにもなるわけでありますが、そういう点については、もう少し厚生省のほうとしては十分な指導、あるいは、また、そういうことが絶対起こらないようにするためには、もっともっと積極的な指導がなければこういうことがまた繰り返されるのじゃないかという心配があるわけであります。そういう観点から、ひとつ局長あたりのほうとうの前向きの御意見、また、大臣のほうからもこれについてのひとつ御意見を伺って、私は質問を終わります。
  39. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいま先生から保健所の業務に関連しての御質問がございましたのですけれども、この保健所の予防接種の問題でありますが、本来の保健所の業務の中には予防接種というのはあまりないわけなんです。というのは、予防接種の実施の主体というものは市町村にある。で、普通の保健所というものは、これは県の保健所でございまして、したがって、保健所長がいろいろの予防接種につきまして、実施の時期とかいうことの指示はいたしますが、その実施は市町村がやる。市町村が普通やる場合においては、その市町村が医師なり看護婦なり雇い上げてやるというようなのが普通のやり方でございます。ただ、名古屋市におきましては、これは保健所を持っておる市でございます。市という性格と保健所の問題が一緒になっておるものですから、そこでいわゆるほかの保健所の考え方とちょっと違ったような運営がそこに出てくるということでございますので、ただ、保健所の業務という観点からいいますと、この名古屋の場合におきましては一般の他の保健所と違う点がある。しかし、いずれにいたしましても、こういうような事故が起こるというようなことは、どういう組織であれ、これは防止しなければならない、これはもう重要なことであります。いわゆる予防接種の事故の防止につきましては、かねがね再三再四実施の際の注意、そういうものについての注意を府県当局に、あるいは市町村に促しておるところでありまして、一そうこれについては、また、事務局におきましても万全を期していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  40. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 今度の問題、名古屋の問題を言っておるのですから、当然私は名古屋の保健所はそうなっておるということを承知の上で申し上げておる。郡部の問題だったら郡部の問題をやるわけだ。そういうつまらぬことを言ってもらうと、私も少し問題から離れるわけです。それから、ぼくが言っておるのは、もっと正確にやれということを言っておるのだから、正確にやれやれというのを考える考えると言っていたら、こういう問題は何ぼでも起こってくるのじゃないか、こう考えるわけです。したがって、指導に当たる衛生局長としてそんなことを言っておるからして何べんでも繰り返すのじゃないかと私は思うわけです。そういうようないまの答弁に対しては非常に不満であります。したがって、もっともっと積極的にその衝に当たる人が指導しなかったらだれがやるんだ。こんなことが起きて、死ななかったらいい――三千円ずつ出したそうでありますけれども、見舞金か何か知らぬが。その金だって、それはみな市民の税金じゃないか。だから、そういうことでやっておって市民の税金を使うということになるわけです。知らぬ顔していいかげんなことですましておるというのは、私は非常にけしからぬことじゃないかと、こう思うのです。ことにあなたのおっしゃるように、つまらぬことを言うけれども、当然六大市は市に保健所を持っておるわけです。そういう保健所に間違いが起きる、そういうことを指摘しておるわけです。そういうふうなわかりきったことを何かへんに答弁の中に入れて、しかも根本的なことをいいかげんなことにしておったのでは、私は非常に間違っておると思うのです。少なくとも三千円出しておる金は市民の金なんです。税金なんですよ。そういうことでそういう間違った機構のものに金を使って知らぬ顔をしてるわけなんでありますから、これは非常に私は問題だと思う。そういう点から考えても、こういうことが絶対に起こらないように、もう少し根本的な方法を考えるべきじゃなかろうか、私はこう思います。再考を促します。
  41. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回の事件は、全く保健所並びにこれに従事いたします者のミスによる事件でございました。その責任はきわめて明確であると、こう思うわけでありまして、名古屋におきましても、規定にのっとって厳正なこれに対する行政処分等をいたしておるわけであります。また、このワクチンの保管及び持ち出し等につきましては、防疫係長が責任を持ってこれに当たると、こういうことになっておるようでありますが、そういうことが厳正に的確に行なわれていなかった、こういう点に大きな原因があるように思われるわけでございます。名古屋におきましてはこういう点を十分踏んまえまして、再びこのようなことのないようにということで、管下の保健所に対し、数項目にわたって改善策を強く指示をしておるという報告を私は聞いておるわけであります。まあ厚生省といたしましても、今後保健所の運営並びにこういう事態が起こりませんように、十分関係者を督励いたしましてやってまいりたいと、こう考えております。
  42. 森勝治

    ○森勝治君 関連して一点だけ質問したいと思うのですが、ただいまも大橋委員からるる専門的な立場から質問がなされたわけでありますが、私は監督行政という厚生省の立場について質問をしてみたいと思うのであります。いまも正規な医師、正規な看護婦の公開の席における失態という問題がいま論議されたわけでありますが、私は、医療行政の高度な指導というものが、ややもすれば厚生省当局においてなおざりにされてる傾向がありはせぬかと思うのであります。そこで、関連質問でありまするから、具体的な問題を一つだけ取り上げて、大臣の見解、局長の今後の善処をただしたいと思うのでありますが、これからエックス線技師法の審議が後日されることになっておりますが、集団検診のエックス線の扱いにいたしましても、この関係法令の第二十六条ですと、エックス線技師がエックス線を照射する場合には医師の立ち会いがなければならぬということが第二十六条で明らかになっておりますけれども、それでは集団検診の際に、はたして医師がその場に立ち会った具体的な事例があるか、ほとんど医師が立ち会ってないではないか。厚生省はそれを明らかに知っておりながら、指導もしない、善処もしない、改善もしようとしない。私は、こういうところに厚生省の積極的な指導、法律が厳として存在しておるけれども、それを具体的なそういう集団検診の場に実施されてないということを知っておってもほうっておく、こういう問題が積もり積もって大橋委員が質問したような不祥事件が起こされた。私はあえて直接的な原因とは申しませんが、遠き縁をたずねるならば、そういう問題に源を発してやせぬかと思うのであります。したがいまして、今後とも法の定むるところによって、特に人間の一生を左右する、人命を損傷するような重大事件でありますので、こういう法規典例その他の問題については、ひとつ具体的な医療の場におきましては、法を守るように積極的な指導があってしかるべきであります。したがって、いまの関連といたしまして、エックス線の問題について現に医師が立ち会っておらないんだ、そういう問題をどうされるのか、高度な立場からで大臣から、具体的な指導の面から担当局長から、ひとつ御答弁をいただきたい。
  43. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいまのお話は、医療行為、あるいは医療従事者全般の問題になりますので、医務局長の私からお答えを申し上げます。  お話のように、レントゲン技師が集団検診等を行ないます場合は医師の立ち会いのもとにやるべき規定がございます。にもかかわらず、お話のように、現実には医師の手がどうしても足りないところから、立ち会いなしで、包括的な指示のもとに行なうというのが慣例になっておるのでございます。この点は、法律制定の当時の時点における事情と比べて、医療需要がきわめて膨大になりまして、これに対して、いわゆるパラメディカル・スタッフというような職種の業務との関連、指示監督の関係が必ずしも時代に即応していなかった、法律規定等が必ずしもそれに順応できなかったという点にも問題があろうかと思います。しかし、全般的に見まして、私はこの膨大になってまいります医療行為、あるいは医療に対する補助、あるいは介助という問題が、看護婦、保健婦、助産婦を初めといたしまして、エックス線技師、あるいは衛生検査技師、PT、OT、あるいは、さらに将来において予定されておりますような各種の衛生関係の。パラメディカルの職員というものは、それぞれの仕事をだんだん分化、分業してやっていかなければならないという状態になってまいっておりますことを考えまして、これをすべて医師の直接指導のもとで、直接立ち会いのもとですべてをやるというようなことがなかなか困難になってきておる実情も、これまた承認せざるを得ない状態でございます。しかし、どこまでも医療に関しての最終責任は医師がとるという態度も、またこれは厳密に保持しなければならぬということでございまして、したがって、一次的には医師がパラメディカルのスタッフに対しては適切な指導を与え、少なくとも当初においては直接指揮下にそういうことをやらせる。だんだんこれが熟練してまいりました場合には、ある程度、まことに残念ではございますが、やむを得ず包括的な指示のもとに行なわざるを得ないということもあろうかと思います。そういうような点も考慮いたしまして、医療全般についての医師の責任というものと、それの指導監督の具体的な方法、あり方というようなものについて私どもも検討をしてまいり、あるいは法律、規則等の規定が時代に即応しないというものであれば、逐次そういうものの改変等も行ない、同時に、いわゆる医療補助者、医療技術者というものの資質の向上改善をはかって、その欠点を補っていくという方向でまいりたいと存じておる次第でございます。
  44. 森勝治

    ○森勝治君 もっと積極的な御答弁がいただけるものと期待して、私はあえて関連質問をしたわけでありますが、いまの御答弁を聞くと、非常に残念な御答弁であります。法律というものが現存しておる、法というものが明らかに示しておるにもかかわらず、この現行法令を無視して、ほとんどの医師が、集団検診の場合に、私がいまことあけしたような問題については立ち会っていない。それを善導、指導、通達の一本も出さずして――いいですか、医師が少ないから、それなら規則を取りかえる。看護婦やレントゲン技師やそういう技工士、そういう関係の従業員の質的な向上をはかって当面を糊塗したいなどという、そんなばかげた答弁でわれわれは納得できない。現にいま大橋委員が多くの人命が損傷されたと言っている。ほかにも問題があるでしょう。千葉のチフス事件だってあるでしょう。たくさんおおありでしょう。一般民衆がモルモットにされたらどうなるんですか、一体。佐藤総理は、人命尊重をもって現内閣の重要な政策の柱としておるじゃありませんか。にもかかわらず、法律がいま現存しておる。集団検診で医師が立ち会わなければレントゲンの照射はできないとなっているにもかかわらず、やってない。実行不可能ならば法律改正しなさい。法律が厳としてあり、しかも、罰則適用、懲役とか罰金などといっている。しかし、厚生省は明らかにこの集団検診のときに医者が立ち会っていないのを知っている。知っていて一つも通達しない、そして法律がこうありますよと言っている。医者のような、あるいは、また、良識を持っておる人はそういう問題を起こさないかもしれぬ。しかし、どうです。一般のお菓子屋さんが、ささやかな資金で場末の片すみにお菓子屋を開業するときにはたいへんでしょう、あなた。書類を幾つも出して、保健所へ行ってお百度参りをしてたいへんでしょう。弱い人々はいつもそうやっていじめられるんだ、厚生省から。おふろ屋さんだってそうでしょう。みんなそうじゃないですか。医者が間違いを起こし、法律がこのように現存しておるならば、立ち会わないのをなぜ黙認しているんですか。直さなければならぬでしょう、尊い人命を扱うんですから。総理大臣の趣旨にも反する、人命尊重という考え方にも反するじゃないですか。どうなんです一体、間違っている。質の向上じゃ間に合わぬですよ、集団検診は年々歳々全国至るところでやっているのですから。私は関連質問ですから、多くを語りません。ただ一点についての具体的な事例をことあげして大臣局長の所感をただしたのです。ところが、そういう答弁ではまことにお話にならぬ。したがって、もっと責任のある、法を守り、行政を指導する厚生省という、大きな、高度なひとつ行政指導の立場の、前向きの、しかも、積極的な御答弁をいただきたい。そうでなければ納得できない。
  45. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 医療にあたりまして、医療法等の法の定めるところによって医療従事者が医療行為を行なう、これは当然のことでありまして、政府として法に基づく正しい医療が確保されるように十分な監督と指導をしなければいけないということは、森さん御指摘のとおりでございます。ただいま医務局長が御答弁申し上げておりますことも、決してそのことを無視したり、ないがしろにしたりしようというような考え方で申したのではごうまつもないのでありまして、政府といたしましては、現在の医師はじめ、医療従事者の不足、こういう面は遺憾ながら現実の事態でありまして、こういう問題をまず解決をするということが、森さんが御指摘になりました正しい医療、これを確保するという前提にもなるわけでありますので、私どもそういう医師はじめ、医療従事者の確保、また、その研修、訓練、教育という面につきましても十分意を用いますと同時に、一日も早くそういうような事態が解消できまするように十分今後意を用い、指導してまいりたい、こう考えておる次第であります。
  46. 森勝治

    ○森勝治君 最後に要望をつけ加えます。  いま大臣からそういう真摯な御答弁があったので、これはもう前向きの姿勢で解決くださるものと私は期待して、一点要望をしておきたいと思うのでありますが、法律を守れなければ法律はつくらぬほうがよろしい。国が指導して、こうしなきゃだめですよと言って医師に厚生省が指示し、しかし、それをどこの医師もさっぱり守らない、守らなきゃほうっておく、これであってはならぬと思うのです。それは、なるほど種々の問題があって、時には直ちに法が完全実施というぐあいにいかない場合もあり得るでしょう。しかし、行政を指導し、庶民の上に立つ者は、すべからくそういう問題については法を守るように適切な指導、措置があってしかるべきであります。私が具体的な事例で質問いたしました本件については、一体厚生省は放任をしておった事実、それを事実認識の上に立っているけれどもほうっておいた。私はここに人命がないがしろにされたという、それがすべての原因だと、結果だということはあえて申し上げません。しかし、法を守らせようとする努力をしない。特に人命に関する重要な部門について、医者が立ち会わなければ診療ができない、エックス線の場合には照射ができない。それにもかかわらず、医者が立ち会わないでどんどんやってしまった。こういうように、人命をややもすれば軽んずる風潮というものが、大橋委員が指摘したような、そういう不祥事件の遠い源になったのではないか、私が先ほどそう申し上げたのであります。したがって、これはなかなかたいへんな問題かもしれませんけれども、ひとつ人命を尊重する立場、こういう立場から国民を守ってくださる、そういう立場で医療行政をひとつやっていただきたい。したがって、私が具体的に指摘いたしました問題についても、可及的すみやかにひとつ善処、解決方をお願いをして、私の質問は終わります。
  47. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 午前中の質疑はこの程度にとどめて、これにて休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ―――――・―――――    午後二時十八分開会
  48. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、厚生行政に関する件について調査を行ないます。  本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  49. 小平芳平

    ○小平芳平君 午前中もだいぶお話が出ておりました、名古屋市で注射液を間違って予防注射したというこの点について、防疫行政の問題点について若干お尋ねしたいと思います。  初めにお尋ねしたい点は、こうしたワクチンの保管の義務はどのようになっているかということであります。国民は強制的にワクチンの接種をさせられるのです。そうした強制される国民の側から見れば、安全を確保するための十分なる処置があらかじめきめられていなければ、国民の不安は増大し、節一に予防接種を積極的にしようということ自体がなくなってきはしないかということを感ずるわけです。確かにそうした注射液は冷蔵庫に保管されていた、看護婦さんが出す場合は十分注意して出さなければいけない、お医者さんが注射する場合は、十分注意して注射しなければならない。このことは当然わかりますが、ただ、そういうように注意すべきだという以外に、法律上もっとはっきりした保管の基準とか、あるいはこれとれしかじかの人でなければ取り扱ってはならないとか、たとえば薬剤師が扱うべきであるとか、先ほどの厚生大臣のお話の中には、名古屋市としては防疫係長が取り扱うことにきめたというふうなお話がございましたが、それは名古屋だけの話なのかどうか。一般的に、たとえば防疫係長以上の人がその保管の責任を持つということになさるのか、あるいは正規の薬剤師がこれは扱うべきだというような規制をすべきではないかというような点も問題になると思いますが、いかがでしょうか。
  50. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ワクチン類は、これは薬事法によって定められて、劇薬になっております。したがいまして、劇薬は、薬事法に従いまして貯蔵、取り扱いもやるということになっておりますので、たとえば人に交付する場合につきましては、薬事法第四十七条によりまして、「十四歳未満の者その他安全な取扱いをすることについて不安があると認められる者には、交付してはならない。」、あるいは第四十八条の「貯蔵及び陳列」につきましては、「業務上毒薬又は剤薬を扱う者は、これを他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列しなければならない。」、こういうふうになっております。で、ワクチンそれ自体の、また、個々のものにつきまして貯蔵の温度なり何なりというものが一定にきめられております。したがいまして、その温度を守るようにして、品質の変質を来たさないような形において貯蔵しなければならないわけで、通常順守すべき温度というものは守るように、冷蔵庫に入れて、そして一定の温度を守って貯蔵するようにいたしております。
  51. 小平芳平

    ○小平芳平君 全然私のお尋ねした点について答えていないのですが、私のお尋ねしている点は、薬事法上の劇薬である、したがって、保管上のそういう注意も必要であるが、私がいまここでお尋ねしている問題点は、たとえば薬剤師でなければ扱ってはならないとか、あるいは厚生大臣が午前中におっしゃったように、防疫係長ですかが確認しなければ扱ってはならないとか、何かそういうような規制が必要ではなかろうか。予防接種法では強制的に予防接種をさせられるわけですから、したがって、その劇薬であるところのワクチンの扱いというものは、法律上、規則上こういう慎重な扱いがきめられているから、したがって、国民は安心して予防接種を受けられるのだということにならなければおかしいんじゃなかろうか、こういうお尋ねをしているわけです。
  52. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お尋ねの件につきまして、ワクチンの取り扱い者についてであろうと存じますけれども、ワクチンの取り扱い者につきましては、特別の資格は法律上は定められておりませんです。しかし、ものがものでございますので、今回の場合、貯蔵、交付等につきましては薬事法等の規定どおりなされておりますし、また、冷蔵庫からワクチンを取り出した者も、医薬品について相当の知識、経験を有している看護婦でございますので、ワクチンの取り扱い者としては特に問題はないかと存じますが、ただし、一体制度としてどのように実際上ワクチンを取り扱う責任者をきめておるかというお尋ねでございます。名古屋の場合は防疫係長にきめられておったように伺っております。
  53. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも法律どおり扱ったから問題はないのだとすると、なおさら問題があるわけですよ。ということは、法律どおりに扱っていながら現に事故が起きているわけです。ですから、あらかじめその事故を防ぐような取り扱い基準がなくちゃならない。あらかじめその事故を防ぐような責任のある取り扱いということがなされなければおかしいじゃないか、予防接種を強制的にやるのですから、そうじゃありませんか。確かに看護婦さんは間違った薬を出して渡した。それは責任があるからというて減俸二十分の一ということになったというふうに新聞に出ておりますけれども、その人が減俸二十分の一になったからといって、全国の防疫行政が安心して行なわれるかどうか、予防接種が安心して行なわれるかどうか、全国の予防接種が安心して行なわれるためにはどういう基準が必要か、そういう点をさっそく検討するなり研究するなり指示するなりしなくちゃならないじゃありませんか、こういうふうにお尋ねしているわけです。
  54. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 先生のおことばにつきましては、なお一そうその考え方で検討をいたしてまいりたいと存じております。で、従来とも、ワクチンにつきましては、あやまちがないようにという注意は繰り返しておりまして、それぞれやはり間違いを起こさないようなくふうもそれぞれのところでいろいろやってはおります。今回同じ冷蔵庫の中にワクチンがやはり温度が同じような形で保存されておりましたものにつきまして間違ったということでございます。この間違いをなくすようなやり方、これは具体的な注意というものが必要であろうと思いますので、そういう面につきまして一そう厳重にいたしたいと、こう考えております。
  55. 小平芳平

    ○小平芳平君 もちろん具体的な注意をしなければなりませんが、それをもう少しはっきりと――いかがでしょうか大臣。私の言う意味は、もちろん注意しなければならない、看護婦さんもお医者さんも注意しなければならない。ところが、いまの局長の御答弁のように、法律どおりやっているんですよ、こう言うわけです。法律どおりやっておりながら現に事故が起きてしまった、その事故を今後防いでいくための具体的な措置、ワクチンの取り扱いについての、あるいは保管についての保健所の責任なり、あるいは市の責任なり国の責任なりというものを明確にすべきときではないかというふうにお尋ねしているわけです。
  56. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 予防接種は市町村の責任において行なうわけでありますが、これを行ないます場合には、予防接種施行心得というものがはっきりあるわけでございまして、この施行心得に基づいて適正に予防接種が行なわれなければならない。名古屋市の場合におきましては、名古屋市の定めによりまして、防疫係長がその保管とか、あるいは出し入れとか、そういうものにつきましては責任を持たされておったのでありますが、この防疫係長の指示どおりこれが行なわれていなかった、一看護婦がその取り扱いをした、こういうようなところにも問題があったと思うわけでありますが、これは各市町村におきまして、先ほど申し上げましたように、予防接種施行心得というきめに基づいて適正に行なわれるべきものだ、かように考えております。
  57. 小平芳平

    ○小平芳平君 予防接種実施規則というものがありますが、その点について御説明願いたい。また、予防接種の実施規則には、そのような確認をしなければならない義務が定められているかどうか、その点についてお伺いしたい。
  58. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 実施規則の中には、いわゆるそのワクチンを特に確認しろという規定は入っておりませんです。これはすでに局長通牒で、「予防接種の実施方法について」ということで通牒を出しまして、そういうものについては必ず確認をするとか、あるいはその予防接種に使ったワクチンの入った容器はほかのものには使ってはならないというような細部にわたる注意が指示されているわけでございます。
  59. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、お聞きのように、実施規則には確認しろというのが定められてないというわけです。
  60. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 実施規則の中には、これを使用する場合、接種する場合の注意といたしまして、接種液は均質にして使用するようにする、あるいはバイヤルびん入りの接種液はこのように消毒してやれとか、それから、接種液の入っているアンプルを開口するときは消毒しろとか、そういうようないろいろ注意は書いてございますけれども、ワクチンをそのものずばり、これが何々であるかということを確認しろというような規定はここには入っておりません。
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうして入っていないのですか。現に間違っちゃっているのですがね。
  62. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) その現に間違いましたこと、この点につきましてはまことに申しわけないと思うのであります。当然にそのワクチンが使われるものという考え方のもとに、こういう実際のそのもののワクチンを使用するという形におきまして全般的な注意がなされているわけでございます。それを補足する意味におきまして、局長通牒におきまして、特にそういうような他のもののワクチンとの間違いを起こさないようにとか、あるいはワクチン以外のほかのものとの間違いを起こさないようにとかいう細部の注意が示されているわけでございます。
  63. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、大臣が先ほどおっしゃったのは、各市町村で実施の注意をきめてやっているんだと、だから心配ないんだというふうにおっしゃいますけれども、実際上、厚生省のほうで出しているところの実施規則には注意しろと書いてない。しかし、現にそういう事故が起きている。そこで、私が先ほどから再三申し上げていることは、一つには、ワクチンの取り扱いを名古屋市では係長がやることになってきめてあるそうだからというふうにおっしゃいますが、それではほかはどうかというのです。ですから、名古屋市の場合は係長ときめてあるにしても、全体的に全国どこで予防接種を受けても、まさかワクチンを間違えて注射するなんというばかなことはないのだ、それには看護婦も医者ももちろん注意するし、法律上、規則上こういうふうにきめられているのだし、こういう責任のある人が扱っているのだからだいじょうぶなんだというふうなものをこの際つくっていかなくちゃならないんじゃなかろうか、全国的に。さっき大臣がおっしゃるように、市町村にまかせてあるから注意してやっているのだという以上は、全国的にそれを厚生省としての責任ある指示なり、そういう注意というものがなされなくちゃならないじゃなかろうかということが一つ。  それから、もう一つは、局長がおっしゃるように、予防接種の実施規則には確認しろということがない。せめて抵抗力の少ない子供ですね、乳幼児に対してくらいは確認しなければならないとか、もう少し慎重な配慮がなされなくちゃならないじゃないかということを申し上げているわけです。いままでどおりで十分だ十分だと言って、現に起きた事故、また、こういうように聞いてみると、規則にもそういうことはきめていない。市町村では注意をきめているけれども、厚生省の規則にはきまっていないのだというようなことで、安心して予防接種を受けなさい、強制的に予防接種を受けなさいというのは少しおかしくないかということです。
  64. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回の名古屋市で起きました事件はまことに遺憾なことでございまして、私ども、当然確認をして間違いのないようにこの予防接種を施行すると、こういうぐあいに考えておるのでありますが、しかし、御指摘のように、現実にこういう遺憾な事態が発生をいたしたのでございますから、今後再びかかる事件が再発をしないように、予防接種施行規則に基づきまして、さらに取り扱いの責任者でありますとか、確認の面でありますとか、規則の各条項全体を通じて、趣旨として確認等のことも十分あると考えておりますけれども、このような事態が再び起こらないように、そういう意味合いで通牒を厚生省からできるだけ早くこれを各府県にいたしまして、さらに各府県から各市町村に十分この趣旨が徹底するように措置いたしたい、かように考えております。
  65. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの大臣の御趣旨を早く実現していただきたいと思うのです。そうでないと、現に名古屋市の人たち、この被害者自体も、もう次のまた接種を受けに行くという日もくるわけですから。  それで、次にお尋ねしたい点は、まあそういうように予防接種を受けた、そうしたら熱が出た、あるいはふるえがきた、それで入院した、そういうような事故が起きた。ところが、どこが責任を持って対処してくれるのかという点なんです。それは実施団体は名古屋市だと、市町村だというふうに午前中もお話がありましたが、実際問題でそれじゃ一つお尋ねしますが、八十四人がそういう被害を受けたと、これは間違いありませんか。
  66. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 八十四人が間違った注射を受けたという報告を聞いております。
  67. 小平芳平

    ○小平芳平君 ところが、新聞では、初め八十四人が間違った注射を受けたといって名古屋市議会でもすぐ問題にしまして、名古屋市からは三千円の見舞い金を差し上げた。ところが、それから二、三日して保健所から係がその家に来まして、実は少し八十四人という勘定が変わっているらしいと、順番からいろいろ勘定して、おたくはどうもその中には入らないらしいと、だから三千円は返してもらわなければならないようになるかもしれない。ところが、現に同じ一緒に注射を受けて、同じ症状で一晩入院した家なんです。そこの家に来て、保健所から来たといってそういうことを言って行く、そういう場合どこに責任があるかというのですね。
  68. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) いわゆるあやまって注射を受けた者が副作用を起こしまして、それに対して医療を受けるということにつきましては、市が責任を負いまして全部処置しております。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあ保健所は責任はありませんか。あるいは直接打ったお医者さんはどうですか。
  70. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ちょっと意味がよく受け取れませんので、まことに申しわけございませんのですけれども、この副作用を早くなおして、症状があったものを治療してやるというような問題になりまして、たとえば接種した医師が責任があるかという問題よりも、この予防接種法による予防接種でございますので、今回のものにつきましては、いわゆる国から委任を受けて、そして実施の責任がある市町村が一番最初のいろいろの措置というものをとることは、私は当然であると思います。個人の医師がそれを全部というわけにはちょっとまいらないだろうというふうに考えます。
  71. 小平芳平

    ○小平芳平君 とにかく時間がかかりますので、大臣からそれでは総括的にお答え願いたいと思うのですが、まあ保健所から職員が相当数来て、一軒一軒相談にのっているのです、現に。ところが、その保健所から来ている人が、おたくは八十四人は間違いだから、おたくは漏れるらしいとか、あるいはその保健所の職員が一言も注射を間違ったから申しわけないとか、そんなことを言ったわけじゃない。とにかく入院をしましたあくる朝になってから町の新聞を入院している人に配って、実情は新聞に出ているとおりです、お読みください、これだけなのです。あるいは保健所から三十八度以上の熱が出たらどこの病院に行ってください、こういうように保健所の人が指示をしている。してみますと、一体保健所は責任があるのかないのか。保健所に責任があるとすれば、いかにも言っていることが迷惑千万のことを言ってくるわけなのですよ。ですから、たとえば保健所なら保健所が責任を持ってやる、名古屋市なら名古屋市が責任を持ってやる、厚生省なら厚生省がここで責任を持ってやるというものを打ち出していただかないと、非常に二倍、三倍、五倍の苦痛を被害者に与える結果になる、不安を与える結果になる、こういう実情にあるのですが、いかがでしょうか。
  72. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) まことに申しわけないのですけれども、私、先生のお話しを伺いまして、誤解があるかもわかりませんけれども、このように感じましたのは、保健所の責任で市がどうという問題でございますけれども、実は名古屋市は、保健所というものは県でございませんで、市の一つの機関になっているわけでありますから、実態はまあ一つのものと考えて、これは市と考えてあるいは間違いはないのではないか。実際にいろいろの仕事、接種の計画を立て実施をやっていくという問題になって、突き詰めていけば、実際の実施の問題は保健所になっていくということになってまいります。
  73. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうではないですよ。午前中もこちらでちゃんと指摘したじゃないですか。そういう名古屋市と保健所の関係の法律的な説明なんか言っているのではないですよ。現に被害を受けた家族を含めて、何百人の人がいる。この被害を受けた人たちに対して、保健所なら保健所、名古屋市なら名古屋市、厚生大臣なら厚生大臣、警察なら警察、それはこれから最後にお尋ねする賠償の問題ともからみますけれども、ここで責任を持って扱いますから、皆さん安心です安心ですというわけにはいかないけれども、責任はここですよというものがなくちゃおかしいのじゃないか。これだけの不安を巻き起こし、これだけの被害があった。それに対して保健所の職員という人がこういうことを言ってきている。それでは一体どこへ相談に行ったらいいのか、どこへ行ったら責任ある返事をくれるのか、そういう点がはっきりしませんかとお尋ねしているのです。
  74. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この事件が起きましてから、名古屋市の衛生局におきましては非常な責任を痛感をしまして、そうして港区の当該保健所、過失を起こしました当該保健所を督励をいたしまして、そうして間違って注射を受けた児童のその後における入院措置その他のことにつきまして全力を尽くすようにということで、衛生局が陣頭に立って保健所を督励して実施をしたと、事後の措置に任じたと、こういうことに私ども聞いているわけでありまして、したがいまして、そういう事故等に対する慰謝料といいますか、損害補償といいますか、三千円の問題につきましても、市が責任を持ってその支出をやり、これらの措置をいたしたと、こういうことに報告を受けている次第でございます。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣は大体想像なさって、それでここに事故が起きた、市の衛生局からすぐ行って、それで保健所へ乗り込んで、それで一切不安のないようにあと始末をやったというように報告もしたでしょうし、そういうような想像もつきます。つきますが、実際問題として、いま私が指摘するような不安ですね、市民に対しては、注射を間違えてやったから責任者として申しわけないとか、あるいはそういう説明なんか一つもなされていないわけです。新聞を配って、実情はこのとおりですよ、お読みなさい、三十八度以上熱が出たらいらっしゃい、それじゃ不安に思う。一体、将来後遺症なんか残った場合、どこがめんどうみてくれるのか。ところが、また別個の団体が、まあ近所の団体からいろいろな呼びかけがあって、さあきょうは集まりがあるから来てくださいといっては集まる。そうすると、何十人の被害者が、一体何の話だろうかといって集まっていくと、そこには別に市から来ているわけでも、厚生省から来ているわけでもないのです。私たちの力で補償を取りましょうというような話しかないわけです。ですから、もっと責任のある市なり厚生省なり、責任のある人が責任のある窓口をつくり、措置をとり、お答えもするという、こういう態勢ができませんかと、これをお尋ねしているのです。
  76. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、たまたま去る三日、金曜日でございますが、名古屋市に別の用件がございまして出張いたしたのでありますが、その際、新聞記者会見の際にその問題も質問がございました。したがいまして、名古屋市の衛生部長等から当時の模様をいろいろ報告を受けたわけでございますが、その際におきましては、あやまって注射を受けた子供たちも、入院その他の措置、その後の医療の面の十分な監視を行ないました結果、全部何らの後遺症もなく平常に復した、こういうことの段階で私参ったわけでありますが、市の衛生部長からは、その事後にとりました措置につきまして、市衛生部が、この善後措置につきましては責任を持って十分な措置を講じたと、こういう報告を受けておるのであります。ただ、いま小平さんから御指摘がありましたように、その過程におきましていろいろ手違いなり、あるいは措置において十分でなかった点があるいはあったのかもしれませんが、市としては非常な責任を感じて、保健所を督励してできるだけのことをやった、こういうことを私は報告を受けておった次第でございます。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、私としては、とにかく過去にはそういう行き違いもあった、それで今後責任のある行動をとってもらいたいということを御要望いたしまして、次に、一切これでけりがついたものかどうかが問題なんですが、この問題がちょうど法務省からもおいでくださったので、国家賠償法に該当するかどうか。それから、その場合に市が賠償すべきなのか、あるいは機関委任をしている国のほうが責任を持つべきか、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
  78. 河津圭一

    説明員(河津圭一君) それでは説明を申し上げます。この予防注射の行為が、これが国家賠償法に、いわゆる公権力の行使に当たるかどうかという点につきましては、簡単にいい切れない問題があるように思われるのであります。予防接種をするということは、法律によって強制的に行なわれることでありまするし、また、その予防接種を具体的にするということに定めたという市長の行為というものもその公権力の行使だと思うのでありますけれども、実際に注射をするという段になりますと、この注射は本来お医者さんでなければできない行為、そのお医者さんが行なうべき医療行為を行ないますので、そこまでを一貫いたしまして、そして国の公権力の行使だと、こういうふうに見られるかどうか、ちょっと疑問があると思うのであります。ただし、国家賠償法に当たると仮定して考えますれば、これは国の業務ということで、国家賠償法の関係では、国がその損害賠償の責に任ずるということになると思います。  なお、国家賠償法三条におきましては、その行為につきまして、その事業につきまして費用を分担する公共団体もそれぞれ責任を負うということになっておりますので、この場合、三条の関係から見ますると、国、県、市、いずれも費用分担者ということで、損害賠償の責めに任ずるというふうに考え得ると思います。国家賠償法に該当しない場合、それではどうなるかというふうに考えますると、その場合に、そのお医者さんは名古屋市で雇い上げられたという形になっておるようでございますので、それは結局名古屋市で雇っておる者が間違いを起こした、こういう筋合いから、民法七百十五条によりまして、市がその損害賠償の責めに任ずるべきではないかと、こういうふうに考えます。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 その点はよくわかりました。  もう一つお尋ねをいたしたいのは、その賠償責任ですけれども、一つには、当面入院した医療費ですね、これは入ると思うのですが、それから、次に考えられることは、いわゆる慰謝料といいますか、心配料といいますか、要は、おかあさん方が非常にそれは金で勘定できない、物質勘定で勘定できないもので被害を受けたというものとしての賠償ということが考えられるかどうか。  それから、もう一つは、実際御主人が勤務先から呼び返されて、あくる日も仕事を休んだという、そういうものが対象として考えられるかどうか。それから、後遺症がないといま大臣はおっしゃっておられましたが、現状としてははっきりした後遺症というものは認めていないそうですが、これももう半年から一年の赤ちゃんのことで、今後かりに後遺症だというようなものが残った場合に対象になるかどうか、以上の点についてはいかがでしょうか。
  80. 河津圭一

    説明員(河津圭一君) 順序は逆になりまするけれども、後遺症の点から先に申し上げますと、後遺症がこの注射によって生じた病症の残りであるということになれば、当然損害賠償の対象にはなるかと思います。  それから、おかあさんやおとうさんが心配なさったこと、及び、そのために仕事に差しつかえたというようなこと、これが真にやむを得ない範囲のものであるということになりますれば、これも理論的には損害賠償の対象になり得るのではないかと思いますが、その範囲につきましては、ちょっとここでは申し上げられないと思うのです。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 当面の医療費は。
  82. 河津圭一

    説明員(河津圭一君) 医療費につきましては、先ほどおっしゃいましたように、当然損害賠償の範囲内であると思います。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、大臣にお尋ねいたしますが、そういうような国家賠償法に該当するかどうかの問題点はある。しかし、いずれにしても、市だけの責任としていまここで厚生省としてはほうっておいていいものかどうか、政治的に考えた場合にですね。  それから、将来そういう賠償の問題が起きたときに、厚生大臣としてどういうようなお考えで処置をなされるか、それについてお尋ねしたいと思います。
  84. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題は非常にむずかしい問題でございまして、ただいま法務省のほうから御説明がありましたように、第一次的にはやはり名古屋市で責任を持って損害賠償なり慰謝料の支払いなり、そういうものに当たるべきであり、私は、誠意を持ってこれを措置することによって円満に解決するものと、こう期待をいたしておるわけであります。しかし、どうしても事態が円満に処理できません場合におきましては、国といたしましても名古屋市と一体になりまして、十分納得のいくような処置を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、最後に、いまの問題については、賠償といいましても、午前中もおっしゃっておられましたが、なくなったとか、現にまだ重体であるというような現状にないのが不幸中の幸いだったと思いますが、いずれにしても、賠償というような問題になった場合には、とにかく無用の不安を与えないように、いままでの例は、先ほど何回も申し上げたように、どこかはっきりした責任者、窓口がはっきりしないものだから非常に市民が右往左往する。現に、賠償をとってあげるから、さあきょうも集まりましょう、あしたも集まりましょうというような呼びかけがある。住民は一体どこへ行っていいかというので困るわけです。ですから、そういう点について、特に厚生大臣として責任を持った善後処置をお願いしたいのです。  それから、もう一つは、お医者さんは、午前中もお話が出ましたが、書数送検するんじゃないかというような、近く書類送検ですか、そういうような段階だそうですが、このお医者さん個人も問題があるのと、それから、第一、予防接種をやっているいまのやり方自体に非常に欠陥がある。第一に単価が安い、それじゃもうとても安全を期すのが無理じゃないか、こういうふうな実情にあるんじゃありませんか。ですから、私がいまお尋ねしたい点は、一つは、お医者さんとしての責任をどうなさるか。厚生省としては、うっかりして間違って別のお薬を注射したというお医者さんに対するその責任は厚生省としてはどうお考えか。もう一つは、労働過重とか、その他予防接種のやり方自体の、単価が安いとかという点に対する今後の処置をどうなさるのか、この二つの点についてお尋ねしたい。
  86. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) この過失の問題でございますけれども、やはり過失の問題は、ワクチンを間違えた者、それから、そのまま注射筒に入れた者、それから接種した者というふうな三人に分かれております。それぞれにやはり過失なり何なりがあろうかと思います。いろいろそれの軽重の問題もあろうかと思います。したがって、この問題は、そうしますと、一つの傷害ということになりますと刑事的な一つの問題になりますので、よく検討をしてみませんと、それがどうなるということについてここでは一がいに申し上げられないのであります。それぞれやはり責任があることは私は確かであると思います。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ、予防接種の現在やっているやり方。
  88. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 予防接種を現在やっているやり方がはたして適当であるかどうかという問題につきましては、確かに御批判がございまして、多数の人間を一つの会場に集めて、そうすると、どうしてもそこにいろいろの混雑を起こしやすい。したがいまして、それを、たとえば医師のところへいろいろ分散してやったらどうかというような問題につきまして、予防接種の実際の実施方法につきまして医師会あたりと話し合う、そうして医師会のほうで、そこで引き受けるというところは委託契約を結んだり、そうしていろいろくふうをこらして改善の努力をしているわけでございます。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあこれで終わりにしますが、どうもものごとがはっきりしないから、結局大臣にお尋ねするんですが、私がお尋ねしておる点はもうわかり切っていることだと思うのですが、一つは、逆に言いますと、予防接種のやり方が現在のままで安全を期することができるかどうか、これを言っているわけです。現在のやり方では、御批判があるどころか、たいへんなやり方をしているのが現状じゃないか。これは御説明するまでもないと思うのです。ですから、できる限り厚生省として、予防接種の安全を期する上からいっても、改善すべき点はさっそくにも改善しなきゃならないのではなかろうか、これが一つです。  それから、もう一つは、お医者さんとしての責任というものを、医師の責任なりモラルの上からいっても、こういうことは非常に困る問題だと。もう一つは、診療所の所長さんですか、この方はお医者さん、その所長さんから予防注射を受けて、途中でこれは間違ったということがわかったわけです、このお医者さんは。ところが、家へ帰った人はわからないものだから、熱が出たから、あわてて診療所へ連れて行ったら、同じそのお医者さんが診察をして、熱が出るなんてことは、それは体質上あることなんだと、あるいは調子が悪ければ熱が出ることもあるんだと、そう言っただけだというのですね。あるいは所長さんが、夜中にこんなように熱が出てふるえ出したから困るが、どうしたらいいかと言ったら、八時半以後はもう締めちゃうからだめだというふうに言ったと、自分が間違って注射をして、それで患者として来た人にそういう扱いをするなんというのは少しおかしいと思うのですがね。まあしかし、そういうふうに私は一々具体的に申し上げるつもりじゃなかったのですが、もう少し診療所の経営について、あるいは医師の責任なり、そうしたモラルについての監督官庁としての厚生省の基本的なお考えをお尋ねしたいのです。
  90. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 予防接種につきましては、御承知のように、国、都道府県、市町村、それぞれの負担で公費で実施をいたしておるわけでありますが、この経費をもう少しふやしてもらいたいという、要望も出ておるのであります。また、この経費等が少ないために完全な管理のもとに実施ができないとか、いろいろのそこに御意見が出ておることも私ども承知をいたしておるのでありますが、こういう予算面の点につきましても、さらに私ども改善をする要があるのではないか、また、実際の末端の市町村で予防接種を実施いたします際におきまして、もっとそれに当たります医師はもとより、関係者の十分な注意、また、それを監督実施をいたします体制につきまして再検討を要する点があるのではないか。これらの問題につきましては、今回の事例を十分反省の資といたしまして十分検討を加え、改善策をすみやかに講じたい、かように考えておる次第であります。
  91. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 実施を担当いたしました医師が、その後の処理に関しまして患者側に非常に不親切であったという点は、まことに遺憾であると思います。ただし、詳しい事情、いまお話のありましたような具体的な例について私よく存じておりませんが、医師が間違えたという患者についてであったのか、あるいは医師が間違えたことを知らなかったのか、そこの点が非常に問題があると思います。もちろんこのたびの腸チフスの予防接種を間違えてやって、しかも、量が非常に多かった、したがって、発熱等の例が非常に多かったということは事実でございますが、普通の適切な量を注射いたしましても発熱その他が起こることはしばしばございますし、腸チフスの場合は特に多いわけでございます。ジフテリア等でございますと比較的発熱は少ないわけでございます。そういう意味で、発熱があったということは、すなわち間違いであったということは直接関係がございませんので、そういう意味で、間違えなかった患者についてならば、予防注射というものは熱の起こることもあるのだという注意を与えるのは、これはしごく当然であったろうと思います。ただ、それが間違いで非常に多量に注射した患者について、そのように間違えておきながらつっけんどんにしたということになりますと、これはやはりモラルの上で適切でないということになろうかと思います。  なお、八時半以降はお断わりだというような問題につきましても、とかく医師の応需の義務、求めに応ずる義務というものがございますけれども、これは夜間の場合は当直制をきめるなり云々というような手だてがしてあればこれは問題ないと思いますが、そのような事故で特別な事態があったというような場合には、できるだけサービスといいますか、時間の問題等も特例的にいろいろ扱ってあげるほうがよかったであろうという意味で、医師としてもできるだけそういう患者というものに対しては懇切に扱ってやる努力をしていただきたいというふうに思います。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ、ちょっと時間がありますので、私は医務局長にお尋ねをしたい。看護婦不足がいま問題なんですけれども、正看護婦と准看護婦の資格、それから作業内容の区別はどうなっておるのかということをお聞きしたい。
  93. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 正看護婦と准看護婦の資格でございますが、正看護婦ということばは現在使っておりませんで、看護婦というのが正しい呼称でございます。看護婦は、高校卒の資格を持っている者が、看護婦養成所、あるいは文部省の看護婦の学校に三年間勉強いたしまして、厚生大臣の行なう国家試験を合格して登録された者が看護婦でございます。准看護婦は、中学を卒業いたしまして、それから厚生大臣の指定する養成所、あるいは職業高校、あるいは高校の看護課程を二年間、高校の看護課程では実際は三年間になりますが、通常二年の養成課程を経て都道府県知事の実施いたします試験に合格し、都道府県に登録された者が准看護婦でございます。看護婦は、医師の行ないます診療の介助を行ない、また、患者の看護を行なうのが任務でございますが、准看護婦は、看護婦の指示を受けてその業務を行なう、つまり看護の業務を看護婦の指示を受けて行なう、あるいはその補助的な業務を担当するというのが准看護婦になるわけでございます。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 看護婦の補助的地位にあるのが准看護婦だ、こうおっしゃる。そうすると、婦、私は正看護婦と呼んでいるわけですが、看護婦さんが一つの病院で三十人なら三十人、四十人なら四十人、正看護婦だけがおるところと、それから、正看護婦が一人で、准看が三十人、四十人おるというようなことで、いわゆる作業任務というものはそれでいいのですか。看護婦一人に対して准看護婦何人というような規定はないのですか。そこらあたりのことをお聞きしたい。
  95. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 実は、これは医療法の立場と保険の診療費の立場と両方の面がございまして、医療法の立場から見ますと、看護婦は病院のベッドについては大体四ベッドに一人の割合を標準にするというたてまえになっております。その場合の看護婦というものは、いわゆる正看護婦、准看護婦の区別をいたしておりません。しかし、もう一面の健康保険等における医療報酬の支払いの面から見ますと、大体看護婦を四ベットに一人ということになりますと、大体四十ベッドについて十人という看護婦が要るわけでございます。その看護婦は、全部いわゆる正看護婦であるか、准看護婦でもいいかという問題が起こってまいります。この場合に、たとえば正看護婦五、准看護婦五、あるいは四、四、二というようなことばを使いまして、正看護婦四人、准看護婦四人、それにいわゆる看護助手二人を入れた四、四、二という形でもいいというようないろいろな規定がございます。そういう意味で、医療法の立場と保険の診療報酬から見ます場合の看護の類別というようなものを見る場合とでは、若干立場が異っているわけでございます。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも異っているということがよくわからぬのですが、医療法ではこうだ、医療法では四ベッドに一人という看護婦、これは准看護婦でも看護婦でもいいという、そういうきめはないということですね。それから、そうでない場合には正看が五で準看が五だ、保険のときには四、四、二、補助看護婦というようなものはどういう資格であるのですか。
  97. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 補助看護婦というのは全く資格を問うておりません。事実上看護婦の助手をいたすものを言っているわけでございまして、最初に御指摘がありましたように、昔は准看護婦の制度ができるまでは甲種看護婦、乙種看護婦ということを言った時代もございます。乙種看護婦というものがやめになりまして准看護婦というものができたわけでございますが、医療法はむしろそれ以前からの制度でございますので、正看護婦、准看護婦というようなものの区別をせずに、大体四ベッドに一人の割合で看護婦を置くという定めになっております。しかし、現実には、昔は大部分がいわゆる看護婦でございましたが、さらに乙種看護婦ができたり、あるいは准看ができてまいりまして、現在では准看のほうが正看よりもはるかに多くなってきている状態でございまして、その間に幾多のいろいろな変遷がございますので、一律に十人の看護婦の中で、正看護婦幾ら、准看護婦幾らというような割合を固定的にいたしますことは実情にきわめて合わないわけでございます。また、現在におきましては、たとえば国立のがんセンター等については、これは特別に患者の心理的な面、あるいは介護の面等を非常に重視いたしまして、できるだけ教養の高い看護婦を置きたいということで、全部正看護婦をもって充てまして、また、国立病院等におきましても、正看護婦の比率のほうが准看護婦の比率よりも多いのであります。国立療養所における看護婦の養成施設は、主として准看護婦の養成を行なっております。そんな関係で、国立療養所におきましては正看護婦よりも准看護婦の比率が多いというようなことになっておりますし、また、日赤、済生会、あるいはその他の比較的古い病院は正看のほうが多い、比較的新しい病院は看護婦が得にくいために准看の比率が高いというように、現実としては非常にアンバランスがございます。そういう意味で、医療法は非常に古い形のまま四ベッドに一人、結核、精神については六ベッドに一人というような定めをいたしておりまして、その構成については規定がないわけでございます。ただ、現実についての問題として、そのように看護婦と准看護婦の比率が皆からいまにかけてずいぶん変わってまいっております。また、看護婦不足の事情も深刻になってまいりまして、看護婦の一部をいわゆる補助者というもので代用することを認める保険の支払いの方法でございますが、そういうような意味で、補助者までも看護婦の中に一部勘定して差しつかえないというようなやり方が行なわれるわけでございます。それと申しますのは、看護婦だけで看護業務をやっておりましても、たとえば薬の袋を薬局から運んでくるとか、あるいは病床日誌を運搬するとか、あるいは食事の運搬をするというような、いわゆる単純業務がございまして、これは正規の教育を受け、資格を持った看護婦でなくてもやっていける業務内容がある。そう面は必ずしも看護婦がこれを担当しなくても、そういう補助者でやっていいじゃないかという意味から、補助者というものを一部看護婦の数の中に勘定してもいいという便法が行なわれているわけでございます。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その原則は、看護婦があって、看護婦の指揮に従って准看護婦が看護業務をやるという原則だとおっしゃった。いまのお話を聞いていると、看護婦であっても准看護婦であってもいいんだという、その基本理念がくずれてしまうなら、准看護婦で病院なんて間に合うじゃないんですか、それはどうなんですか。間に合わない面があるのですか。間に合わない面があるというならば、どっちでもいいというような議論は出てこないと思う。そこらあたりはどうなんですか。  それから、補助者というような名前は、親族の者がおっても、それは看護といえば理屈は通るかもしれぬけれども、いまの医療制度の中の看護婦、看護行政というものは、資格を持った者が、生命に関する問題ですから、看護業務に当たる。だから看護婦の補助者でなしに、それはむしろまかないとか運搬とか、そういうかっこうの看護ではなしに、もっと違った名前がつかなければ、これは補助者だからということでだんだんしていくと、まず看護婦と准看護婦との間がくずれて、准看護婦と補助者との間が看護業務においてくずれるということにはなりませんか、いまのお話を聞いておって。  それから、もう一つ私は言いたいのは、いま看護婦の養成はどういうぐあいにして、不足不足といわれておるけれども、しておられるのか。いまのお話を聞くと、准看護婦の養成がほとんどとおっしゃるが、そんなことなら准看護婦一本にしておやりになって看護ができるという自信の上に立って医務行政というものはやられていると思うなら、そんなら看護婦の不足という問題は出てこないのではないかと私は思う。そこらあたりのことがよくわからぬのですよ。だから、看護婦が現在どれだけ養成されて、どういう目標で計画がされて、現在何人不足したからどういうぐあいにそれを満たしていこうとしておるかという話もまず先に聞いて、そしていまの話に戻りたいと思うのですが、どうですか。
  99. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) お話の進め方を、先に看護婦の不足と養成計画から話せということでございますが、看護婦問題につきましては、当国会におきましても大臣が申しておりますように、大体私ども現在のところ、約四万人くらいの看護婦が不足ではないかというふうに存じております。これは医療法の基準等によります理論的な計算をいたしますとそのようになります。それに対して現在の養成の計画はどうかといいますと、これも大体四十五年度を一応目標といたしまして、四十五年度までに現在のこの医療機関のベッド数等がどのように伸びていくかという目標を立てております。その増加の目標を考慮した上で四十五年度にどの程度の看護婦数が必要になるであろうかという計算をいたしまして、それに対して、それならば養成をどの程度やっていけばいいかという計算をいたしているわけでございますが、ただ、その際に、養成をするということは養成施設をつくらなければなりません。また、それに必要な教育指導者が必要でございます。そういう意味で、これは国立で全部まかなうということでありますと、国がそれに沿った計画をいたしますればいいわけでありますが、国の養成施設、あるいは公的医療機関の養成施設、都道府県、市町村、あるいは准看におきましては医師会等の養成施設が大部分でございます。そういう意味で、計画をいたしましても、私どもの計画がそのとおりいくかどうかということは必ずしも保証がないわけでございます。しかし、この数年間、大体の傾向を見ておりますと、大体まあ四十五年までに不足を解消したいという計画が若干ずれて、若干不足しているという程度でございまして、そういう意味では、四十五年ごろまでには、いま現在の不足状況に比べるとかなり緩和する、しかし、絶対的な不足は解消しないというのが現在の見通しでございます。  なお、続きまして、看護婦の業務の区分の問題でございますが、看護業務といいましてもいろいろ内容がございますので、私どもとしては、いわゆるチーム・ナーシングということばを使っておりまして、十人の看護婦が一つの病棟を受け持つという形が通常でございます。その際に、一つの病棟を十人の看護婦が受け持つ場合に、一人の婦長というものがあって、そこに婦長あるいは主任という場合もございますが、そういう責任者が一人ございます。そういう責任者は、通常いわゆる正規の看護婦でございます。そのほかに幹部的な看護婦が二、三名ないし数名、さらにその下に看護婦の指示を受けて働く看護婦、いわゆる准看護婦が数名、そうして、さらに、先ほど申しましたように、看護と一般に申しますものの中にも、いわゆる掃除とかいうような雑役というもの以外に、いわゆる看護と広くいわれているものの中には、そういうような病床日誌の運搬であるとか薬の受領であるとか、あるいは患者の手紙の授受であるとか食事の運搬であるとか、あるいは汚物の処理であるとかと、いろいろな業務がございます。これも広い意味では看護業務の中に入っておりますので、それらの業務は比較的単純業務であるために看護助手というようなものでやらしてもできる。そういう意味で、看護というものはチームとして行なうべき業務であり、その中にいわゆる指導的な立場に立つ、あるいは管理的な立場に立つ看護婦、それから、その助手で指示を受けて看護業務をやる准看というようなものがあるわけでございまして、しかし、一看護婦と准看は全く別の業務を行なうというものではございません。指導的な立場に立ち、指示をしながら准看がやると同じような内容の業務を看護婦がやる場合もございます。したがって、全くそれぞれが別種のものではない。全体としては一つの職務をつくってやるという考えで看護というものを行なっております。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこのところがどうもはっきりしないから、その四万人不足ということで、国立ばかりじゃなしに、医師会だとか市町村だとか私立の病院でやるとかといって看護婦の養成をしていただいているけれども、四十五年には少しは緩和するけれども、完全とは言えないというところが少しあいまいなんだけれども、まあそれはよく私もわかるわけです。いま看護婦の免状を持っている人がたくさんおいでになるけれども、看護業務に働かぬという、そういう者を計算に入れていくと、いまのような状態に看護婦というものが置かれておったらもっと不足するかもわからぬ、生活上の問題ですから。だから、そこらの問題と待遇の問題とあわせて養成業務という問題が計算されて、ある程度社会に対して本人が義務づいて、そうして看護業務にかかる。それには、やはり生活の保障をみてあげなければいかぬということになってくると私は思う。そんなら計画が立つと思う。だけれども、それがない限りはいまおっしゃったような答えになるんだと私は思うのですけれども、それじゃ准看が補助者だと、指示に従ってやるんだということを一方でいいながら、四ベッドに一人という看護婦は准看でも正看でもどっちでもいいんだということになれば、そんなのなら、私は専門家じゃありませんからよくわかりませんけれども、その准看だけを養成して、正看を養成する必要はないんじゃないか、そういうことならまた違った話になってくるのじゃないかと思うが、その基礎がくずれているというのはどういうことなんです。正看一人に対して准看何人というような一つのワクで指示指導体制にあるのかどうかということがはっきりしないとこの問題の解決がどうもしにくいように思うのですけれども、そこらあたりのけじめというのは何もないのですか。
  101. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦と准看の業務の差別ということは、これは専門家の間でもしばしば問題になっております。どこまでが正看が行ない得る業務であり、どこまでが准看が受け持つ業務であるかということは、お話のように、必ずしも明確になっておりません。指導要領としては准看はこうこういうような業務を行ない、正看はこういうような業務を行なう。正看だけが担当し、准看には行なわせない業務はこういう業務というようなものは、看護業務の指導要領としては定めてございます。しかし、これはどこまでも指導要領でございまして、法律的な意味で看護婦と准看護婦の業務を明確に区別するのは、同じ看護業務を行なうにいたしましても、准看は看護婦の指示を受けてやるのだということだけが法律上の違いでございます。しかし、実態としては、そのように高度なといいますか、技術的に程度の商いものは看護婦がやるし、比較的程度の軽いものは、原則的にいたしましても、軽いものは准看護婦ということになるわけでございます。実際上の問題といたしましては、たとえばただいまお話しいたしましたようながんセンターのような場合におきましては、患者というもの自体が、ある意味では死の宣告を受けたような患者である場合も多いわけでございます。そういうような場合は、患者の生活の中で人間関係というものが非常に重大でございます。したがって、まだ十八歳にもならないような准看――若い人でそういうような非常にむずかしい人間関係のある看護を行なうということはきわめて困難であるということと、そうして、やはり社会的な一般的な教養が、高等学校卒という程度と、中学を出て幾らもたたないということでは、社会的な教養も違いますために、どうしてもそういう対人関係の伴う看護というものの中には、准看だけで済ませ得るものではないという考え方があるわけでございまして、そういう意味では、できるだけ資格は高いほうがいいというのが看護専門家の一般的な意見でございます。
  102. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  103. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 速記を始めて。
  104. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護業務につきましては、看護婦と准看護婦とございますが、准看護婦は正看護婦にいろいろと指示を受けてするのでなければ看護業務を行なうことはできないという立場で、責任がないということもできないかもしれませんが、非常に責任の軽い立場で、看護婦が看護に対する責任をとるという形になる。准看護婦なり、そういう補助者というもののチームの総合力で看護婦が責任を持ってチームを運営していくということになろうかと思います。
  105. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもなおわからぬのだけれども、四ベッドで一人、これは正看護婦でも准看護婦でもいいのだということになると、基本が全部くずれちゃっていくわけでしょう、私はこのことを何もあなたを責めているわけではない。このことを解決しなければ看護婦問題は解決しないのじゃないか。いま正看護婦の養成人員と准看護婦の養成人員は何人ですか。
  106. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 四十年四月の養成施設の学生の定員で申し上げますと、正看護婦の定員が六千百四十四名、准看護婦の学生定員が二万一千四百三十名、これが四十年四月の定員でございます。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういたしますると、正看護婦は三年だし、准看護婦は二年ですから、その比率でいくと准看のほうは五倍ぐらいの比率で養成されているということになるわけですね、一年に。そこで、いまのように、とにかく看護婦が足らぬからといって正理論が運営上くずれてきていると思うのですけれども、准看護婦で何もかも病院において間に合うというならば、何も家庭の負担で正規の高校へ三年入れて、それからまた看護婦学校へ三年入れて、六年かかる。准看は中学を卒業して二年で准看護婦になれる。これで間に合って使えるというなら、その六年と二年との違いなんですね、そこらあたりが、二年では不足するという理由は、看護業務に対する知識その他が不足するという理由かどうなのか。中学を出てから六年の看護婦と、中学を出てから二年の看護婦は、それはむろん六年勉強した人と二年勉強した人と違うでしょう。しかし、六年も中学を出てから個人の負担で勉強した人が、社会的な給与その他の地位というものがあまりにも低いから、看護婦業務の免許を持ちながらよそに流れていくということになるのじゃないですか。このこと自身は一つも解剖されないで、そして准看が五倍も、もっと多く養成されていて、看護業務については、四ベッド一人はどちらでもいいという概念で、どちらでもいいというなら、国家的には二年間で准看護婦がそれでできるというなら、そのことにむしろ方針を変えれば、看護婦不足なんというのは一ぺんに飛んでしまうのじゃないですか。これはぼくはお医者さんじゃないですからよくわからぬから、これ以上言わぬけれども、どうもそこら辺があいまいなんです。正看護婦一人で五人なら五人の指導の一つのグループを組んで、それで医療法による四人とか五人とか指揮監督して、看護業務に当たるなら当たるということが、正規の医療法のたてまえによる看護業務というならともかく、どちらでもいいというなら、何も親たちが苦しい生活の中から六年間も看護業務をやらして、そして准看の人と看護婦の人との給料の差は、あまり知りませんが、それは普通の大学と一緒ですよ、一年足らぬだけですよ。看護婦というのはそんな安い給料では働けませんと言って、看護婦の免許を持った人がみんなやめていくわけです。それで看護婦が不足しているという原因がそこに出てくる。それで、実際の業務の運営の上からいったら准看護婦で間に合うというなら、間に合う准看護婦一本でするとか、もう一つ、少しその業務が足らぬから、中学と高校出だけれども、三年終わらせなければいかぬというなら三年終わらせて、そし看護婦が実際に満たされるというような計画を計画しないで、そこらあたりが一つもさわられないで、そして看護婦の養成をします養成をしますと言うてみたところで、どうにも看護婦不足の解決はせぬのじゃないですか、私はそんな気がするのです。そこらあたりのかまえを医務局はどう考えておられるか、私は一度聞きたいと思っておったのだけれども、どうもきょうは時間がこんな時間になってから聞けというわけですから聞くわけですけれども、どうもそこら辺がはっきりしなければ、看護婦不足をなんぼ言ったところでこれは解決しませんよ。そんなものは五倍も六倍も准看護婦を養成しているから、実際上准看護婦でやれるというなら、それ一本にしぼって看護業務をしたらいいですよ。どういう点とどういう点とがやれないというなら、それでは中学を出てから二年で足らぬなら足らぬで、三年なり四年なりで看護専門に教えて、一人前にする方法を講じたらいい。中途半端に両方とも、正看護婦は中学を出てから六年たって一人前の看護婦という名前はもらうけれども、生活できぬからといって、自分で職業選択して皆よそに出て行ってしまう。また、准看護婦も二年間で半端で――半端者といってはしかられるかもしれぬけれども、あなたからいえばそうなる。知識が低いとおっしゃるのですから、一人前じゃないけれども、間に合わせで使っている。さしあたって看護婦不足だから、四ベッドに一人は、これはだれがついても、正看護婦がついても准看護婦ついても、それを使うときには同じ人格で認めているじゃないですか。そこらあたりがすっきりしない限り、看護婦不足は解消しないと私は思う。そこらあたりをはっきりと医務局でどういう考えをもっておられるのか、私は知りたい。
  108. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦も准看護婦も全く同じ内容の業務をやっているのだとは決して申し上げておりません。また、当然違った内容の業務をやるべきものと私どもも心得ております。ちょうど一つの例で申しますと、同じ医療業務で、内科の医者が五人いて内科医局をつくります場合に、内科医長があり、内科医長がいろいろ指導をし、その次に主任的な医師もあり、そうしていわゆるレジデントといわれるような若い医者もおります。そういう五人なら五人の内科医が一つのチームをつくって内科の医局というものを担当しているわけであります。看護婦についても同じことでありまして、看護婦長なり主任というものが大きな指導なり任務を持ち、その下に正規の資格を持った看護婦があり、さらにその下に比較的能力も教育程度も低い准看護婦というものもあり、場合によってはさらに看護助手というものも含めて、いわゆる看護の業務というものの中身をまた分担しているわけであります。そういう意味で、看護婦であれば何でもいいのだということにはならないはずであります。ただ、医療法が看護婦と准看護婦の比率区分を分けていないといいますのは、医療法は非常に古い法律でありまして、そのような事態に即応する以前の問題でございます。したがって、医療法を適切に変えていけばよかったわけでございますが、そういう医療法の改正その他がなかなか行なわれていない。したがって、いかにも医療法の面から見ますと、看護婦も准看護婦も区別がないように見えますけれども、実態としては、先ほど申しましたように区別がある。したがって、実態を重く見ております。保険の支払いの側から見ますと、一類看護、二類看護云々というような場合に、それぞれ看護婦の内訳を、正看護婦はある程度なければならんという指導をいたしているわけでございます。また、総体として、看護婦というものの業務の性格から見まして、決して中学を出て二年程度の教育で看護という業務が完全に行なわれるとは思っておりません。やはり一般のいわゆるパラメジカル・スタッフといわれるものも、近年はますます教育程度が高くなってまいりまして、諸外国でも、指導的な看護婦は大学教育をもってするという傾向になっております。また、看護婦会、助産婦会等におきましても、当然そういう看護婦、助産婦等の資格は、すべて高等学校卒という基礎的な教養のある者でなければこういう看護業務を遂行していくのに適切でないというような意向が強いのでございます。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 なおだんだんおかしくなってきたですね。高校を卒業して教養をつけた者に看護業務を三年仕込まなければ医療を推進するためにはいかぬのだという原則があるとおっしゃるが、にもかかわらず、五倍から六倍の准看護婦を養成されているというのは、これは何事なんですか。看護婦の業務というものは御婦人でなければできぬと私は思うのですが、それくらい重要な役割を看護婦さんが持って、高校三年と三年、大学は四年ですけれども、三年やったらその看護婦さんには特別の給与を与える、生活保障するのはあたりまえじゃないですか。いま准看護婦と正看護婦の給与はどんなぐあいですか。
  110. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 手元にある資料で申しますと、看護婦の初任給が一万九千七百円、護婦が一万六千五百円、ちなみに、エックス線技師の初任給が一万七千九百円でございます。そういう意味で、実はエックス線技師が看護婦より俸給が低いというようなことが問題になるわけでございますが、エックス線技師のほうは看護婦よりも教育課程が短いわけでございまして、教育課程に応じてそれ相応の格差が設けられているわけでございます。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 局長さんね、正看護婦が一万九千七百円というのは公務員給与でしょう、これは。それから、准看護婦が中学を出て二年行って一万六千五百円、三千円の差ですね、そうですね。片一方は六年行って、そうして片一方は二年で済んだ人との差が三千円だ。生活給というのはこれは別ですけれども、たとえば国立はの一つの規定で、どんな仕組みになっているのか私は知りませんけれども、六倍も養成しているのだから、その配分で入ってくる人だと思います。これは一般に。だけれども、民間なら、それなら正看護婦を雇う人はない。看板として一人置いておいて、准看護婦を三十人とか四十人おいて雇っても業務が同じようにできるという、その価値判断はお医者さんがすることですから、私よくわからぬけれども、しかし、法律のたてまえからいいということになれば正看護婦を雇う人はないですよ。これはアクセサリーと言ったらいかぬけれども、一人か二人置いておいて、准看護婦でみんな済ましたって法律違反にも何にもならない、そうでしょう、どっちでもいいのだから。そういうかっこうで実際の看護業務が行なわれている。それで二年間ではどうしてもまだ資格や力がないということであるならば、もっとつける方法をなぜお考えにならないか。実際上、二年間養成した人が十分に看護業務をやっている。病院の夜なんかになりますと、当直ということで、四十人ぐらいのベッドをかかえて一人当直しているということを、私は国立病院でそういうことが行なわれているということを聞いている。それはちょっと大きい病院では、耐えられぬから寝かしてくれ、完全看護だから寝かせませんという争いがあったということを聞いております。それくらい看護婦が不足しているというのであります。何かここらあたりをはっきりしないと、こっちの人は親が三年間高校へやって、同じ看護婦になるのにあと三年間。こっちは中学を出て、義務教育を出て二年やったらそれで生活ができるという、そんなところあたりから正規の免許を受けた看護婦さんが逃げていくという、看護業務から離れていくということになっているのではないでしょうか。あなたのような理想は私たちも願いたいと思う。生命に関する問題は、りっぱなお医者さん、りっぱな看護婦さんによって病気をなおしてもらうというのなら、この人には特別の給与を与えて、大学の四年よりも、より資格は高いんだぐらいにして看護婦さんを守っていく。そういう指導者をおいて、そして准看護婦を養成して、足らぬところは規律に応じて准看護婦の皆さんを指導していくというかっこうにするならするで、一対十でも私はいいと思う、養成は。何かそこのところをはっきり割り切らないと、上のほうの正看の人は、養成を受けたけれども給与が足らぬし、生活ができないから、もう看護業務につきませんと、こういうことになる。そうして出てきた、今度は看護婦としてたくさん養成した人は、あれははんぱなんだということで、准看護婦をいつまでたっても見ているかっこう。これじゃあ私はせっかくお医者さんがよい医療、治療をしようとしたって、そういう観念が私は医療の中にあっちゃいかぬと思うのです。そこらあたりの問題は相当けじめをつけないと、看護婦不足という問題の解消は、あなたがさっきおっしゃったけれども、国立もやれば県もやれば、市町村もやれば医師会もやるというぐあいに養成をどんどんやっているといいながら、まだ四十五年で多少緩和することなんだという答えしかできないということは、その裏側の面が一つも解消しないから確信が持てないのだろうと思う、医務局長は。だから、そういうことをきちっとすれば私は確信が持てると思うのですがね。だから、そこらあたりをもう少し考えるわけにはいかぬのですか。前段の医療法の、その看護婦の指示を受けて准看護婦の皆さんが看護婦に当たるという、この方針というものを何らかの形で貫くのか、そうでなければ、いまの四ベット一人ということはどちらでもいいのだということを貫くのか、どちらかはっきりして身分保障しない限り、看護婦の不足という問題は解消しないのではないかという、こういう感じを私は持っておる。  もうあまり時間がありませんから、きょうはこれ以上言いませんけれども、ちょっと私はもう一つついでにそれに関連して聞いておきたいのですが、この間テレビで、山村の診療所にお医者さんがおらなくなって、そして保健婦さんが一人おって戸別訪問をしてやっているという。これは何をやっているのでしょう。どの程度のものまで保健婦さんで健康管理がやれるのか。どうせ病気になったらお医者さんに来てもらって、そして治療してもらわなければいかぬ。来てもらえなければ病院に連れていかなければならぬということになると思うのですけれども、厚生省としては、お医者さんがおられない診療所で保健婦を一人置いて、苦労の点だけは、テレビで出るように、わかります。わかりますけれども、その地域の国民の健康管理というものはそれではどういうふうになっておるか。これも私は、どうもさっきの看護婦の問題とは違いますけれども、それくらい重要な認識を持って、保健婦さんがリュックを背中にして山を次から次に歩いているテレビがありました。非常に御苦労だと思いましたけれども、この人は何ができるか、資格をあげて、お医者さんのれとどれとどの程度お医者さんの代替ができるのか。いまの医師法からいったらお医者さんの代替は看護婦さんはできないと私は思っている。しかし、注射や何かは病院や診療所ではおやりになっておる。これは指示、指導によっておやりになっておるからこれは私はいいと思う。しかし、そういう一人になったときにどうなるか、何をそれでは任務としてやっておるのかということも医療行政については私は疑問を持っておるわけです。それから、看護婦さんの不足の問題も、先ほど来申し上げたように、非常に疑問を持っているわけです。ちょっと聞いてみたけれども、いまの局長のお話で一つも最後のけじめというものがどうもよくわからぬので、これはひとつ宿題にしておいてもらって、もうちょっと詳しい話を次にしてもらいたいと思うのです。そうでないと、尋ねないとどうも説明が、いまのことなら私立病院、私立診療所なら正看護婦を雇うところはありませんよ、高いから。これはこのままで、まだこれで公務員ですから差が小さいけれども、地域に何年か勤続してもらえば、勤続してもらうに応じて上げていかなければならぬ。二年で出てきた准看護婦で間に合うということなら、特別な手術とか何とかは別だといたしますれば、けっこう准看護婦で法律にも触れないでやれるということなら、これはそれでやられるのは当然の道だと私は思う。それでいてやりながら、政府のほうでは、あれはまともじゃない――まともじゃないということではないけれども、あれは足らぬのであれでやっておるというような見方で准看護婦を見て、養成は六倍もしていく。ほんとうは一生懸命に高校を出てきた人も、三年たったら、大半とは私は申しませんけれども、さっさと網の目から漏れるようにみんなよそへ行ってしまう。何年たってもそんなことでは看護婦の不足というものは、その経済自体に合わせて、一般の給料が二万円で、看護婦のほうが二万五千円という条件を整えない限りは、それは看護婦さんはとどまりませんよ。病人の苦しんでいるのを朝から晩まで接触して、徹夜して看護しなければならぬのに、その人が給料が安くて何の恩恵もない。ところが、心は病人から二十四時間神経がはずれたことはないというのが私は医者は看護婦の心境だと思う。そういう問題を根本的に解決しなければこの問題は解決しない。そこらあたりを一つ宿題にしておきますから、ひとつこの次によく方向を議論をして、結論がつかなくても、議論の方向ぐらいはここで説明をしてもらいたい、こう思うのです。
  112. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ちょっと関連して一言だけお尋ねしておきたいと思います。いまやはり非常に衛生状態が進歩して、医療内容向上しておるというところで、准看護婦よりも看護婦のほうがよりいいということでありますが、私は、いまの業務の状態、准看護婦になった人はいつまでも准看護婦でいるということがよくないじゃないか。やはりこれももうひとつ何か勉強して、そしてもっと内容を充実して、そして正規の看護婦と同じような勉強をする道をつける。また、その上に勉強して保健婦にもなり、また、助産婦にもなっていく。これはやはり中学を出て、振り出しで准看護婦になったものはいつまでも准看護婦に置いておくということ自身が、やはり実際の教育の面では少し差がある、まずいじゃないか、これをいま何か措置の方法でとられておるようでありますが、その点ちょっと触れてお聞きしてみたいと思います。
  113. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 先ほどの藤田先生の御意見を蒸し返すつもりはございません。勉強せよということでございますから、勉強することにいたしておりますが、看護婦と准看護婦というものは、明らかにその資格、養成とも違いますし、現実に准看護婦のほうの養成がそんなに多いのだから、看護婦はもう要らぬじゃないかということも、これも必ずしも当たらないことだと思います。現実に、同じ医療機関といいましても、病院というところと診療所とでは、看護婦の業務に対する要請がかなり違っております。したがって、診療所においては大体准看程度の教育で間に合うことが多いだろうと思います。それに対して、病院になりますと、少なくとも看護婦の資格を持った者が相当いなければならない。また、高度の診療をやります場合には、さらにまた高度の看護婦なり、あるいは看護婦の比率を高めるということも必要になるわけでございまして、両方が必要である。ただ、その割合については、これはいろいろ議論が分かれるところだろうと思います。そういう意味で、准看護婦と看護婦の両方が必要であると私どもは考えております。しかし、いま大橋先生のお話のように、准看護婦はいつまでも准看護婦でいいということも必ずしも合理的でないと思う。ある程度の経験を積んできますと、まあ見よう見まねといいますか、ある程度の看護婦に近いものになっていく。そういう意味で、准看護婦が看護婦になる道を開いてやるべきだということはごもっともなことでございまして、私ども現在の制度でも、准看護婦から看護婦になる課程がございまして、それは現在、先ほども申しました看護婦、准看護婦の定員で申しますと、千九百十八というのが准看護婦から看護婦になる課程の昨年四月の入学定員でございます。この准看護婦から看護婦になる道をどのようにするかということが従来からずいぶん議論があるところでございまして、現在では定時制高校でも、あるいは夜間高校でも、あるいは通信教育でも、とにかく看護婦が高校卒三年という養成規定である以上、准看護婦から看護婦になる場合は高校卒の資格はとってくれということを申しております。しかし、何かの事情によって高校へ通えない者に対しては、准看護婦として三年以上経験を有しておれば入学の資格があるわけでございます。なお、看護婦については、通常昼間の課程でございますが、準看護婦からの進学課程については夜間のコースも認めているというぐあいに、いろいろできるだけの便宜をはかっているわけでございます。
  114. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ぼくはもう一ぺん伺いたいことは、ことしの看護婦学校、いわゆる正規の看護婦学校の入学試験を受けますと、何倍でしたか、七倍か八倍かのものすごい難関です。特に高校を卒業して受けられる人たちが何とかして入りたいというのを、あちらこちらに、たとえば日赤から大学から、ぱっと受けてみなはねられておる。しかも、その人は卒業の成績がかなりいい人だというのが現状なんであります。そういった点からして、正規の看護婦の方は四十名とか三十名でなければなかなか教育はむずかしいといわれておるけれども、私はもっと高級なと言っちゃぐあいが悪いけれども、看護婦を養成するための機関を拡充すべきじゃないか。私は、これは若い女の人たちの要望にこたえる道じゃないかと思うのですが、そういう点をもう少し厚生省としては考えていただくことはどうだろうか、こう思うわけでありますが、御意見をちょっと拝聴しておきたいと思います。
  115. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 実は午前中は、その正看護婦の本年度の志望の資料等も持ってきておったのでございますが、午後にこの問題が出ると思わなかったので、実は置いてまいりました。  正看護婦の養成につきましても、本年度は非常に志望者が例年になく多かったことは事実でございます。当然高等学校卒業者が、いわゆるベビーブームの影響もございまして、多い時期でございますので、私どもといたしましても事前にこの事態を予想いたしまして、看護婦の養成については、教育に支障を来たさない限度で、いわゆる従来の定員等をオーバーしてもできるだけ採るように、ただ、教育が非常に乱れては困りますので、教育効果を著しく減殺しない限り、できるだけ定員を超過しても採用するようにという通知をいたしておりまして、現実は本年度は全国的にもいわゆる定数をかなりオーバーして採っております。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は一つだけお願いしておきます、局長に。大臣にもお願いしておきますが、それはやっぱり保健業務というものの、お医者さんはきびしい。五年の学校を経てインターンをやって、それから国家試験というきびしい状態です。それが国民保健に一心に取り組む、また、看護婦さんも、全くすぐ医者の補助者といいますか、そういうぐあいにしてきびしい。業務に入っていけば、単に朝八時から晩の四時、五時で終わるのではなしに、二十四時間病人に神経を使う仕事なんです。その辺完全な看護をしていただくために、私は純粋な面から、き然たる態度で、医療法ではこうだけれども、事実はこうだと、こういうぐあいにはっきりしないということではなしに、どちらにしておくか。足らない面は足らない面でどうして補強していくか。そして看護業務がどう上がるか。あまり高い理想ばかり言うから看護婦さんはできやせぬと思う。そういう点は、き然たる態度で取り組んでもらいたい。そうでなければ看護婦さんの四万人不足というものは、いつまでたっても現実の面からは解決しないと私は思いますから、その面をひとつ、あなたに勉強してこいなんという失礼なことは私は考えておりませんから、お互いによく考えて、この問題はもうちょっと明らかにしましょうということを言ったのですから、失礼なことは言っておりませんので、き然たる態度でひとつ取り組んでもらいたい。このことがはっきりしないと、これは私は看護婦の不足というものは解決しないというふうに思う。いま大橋さんのように、入るには一生懸命入る、医療業務についたらこれだけ苦労しているが、これはちょっとやめておくということになっているのが通例なんで、そこらあたりもきちっと私はあらゆる面からひとつき然たる態度で取り組んでいただきたい。いずれこの国会中にもう一度詳しいことをやりたい。きょうは次の議題が控えておりますからやめますけれども、お願いをしたいと思います。それじゃあこの辺で。
  117. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  118. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 午前中に議題といたしました三案のうち、重度精神薄弱児扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案につきましては、本日は提案理由説明及び衆議院における修正点説明聴取にとどめ、これより児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対し、質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  119. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 児童扶養手当法改正案について二、三きょうは質問をしておきたいと私は思うのです。  世間でいわれている、日本の国も政府も、要するに、もっと具体的に言えば厚生省もですけれども、この児童手当と取り組むときにきているのではないか。この社労委員会で、前に、大戦争後の世界の児童手当が非常に進みました、二年前に六十二カ国でしたか、いまどんなになっているか、これも説明を聞きたいし、政府はこの児童手当というものはどういう概念とつかんでおられるか、このことを私はお聞きしたいのであります。  それから、もう一つは、二つ一緒に質問しますが、児童扶養手当というのがいまあって、この法律改正が出ているわけでありますけれども、手当というのは、生活維持、児童育成という概念、むしろ社会保障を基礎にして世界では大体発展をしていると思う。ところが、そうなれば、概念は生活維持、育成ということになっていくと思うのです。ところが、児童扶養手当の概念というのは全然うらはらで違うわけですね、違う感じなんです。一人より二人、二人よりか三人というぐあいに生活費がかかるのは当然のことなんだが、ちょうどいまの労働者の賃金の労務対策のような考え方が、第一人目にはやるけれども、第二人目、第三人目くらいになったら影が薄くなってしまって、つけ足しでやっているというものの考え方、これが児童育成につながっていくかどうかということについてこの前も非常に私も議論をしたのでございますけれども、そういうかっこうのものがどんどんふえて、それが順番にふえていく。下のほうからふえていくというのなら、まだ私は話は幾らかわからぬことはないけれども、上のほうからふえていって、あとは知らぬ――知らぬとは言わぬけれども、知らぬと同じようなものでこの児童扶養手当というものが存続しているわけであります。ですから、児童手当法の概念と、それから、いま児童扶養手当法の概念をあわせ考えて、厚生省がどういう考えをお持ちになっているのか、少し聞いておきたいと思います。
  120. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 本日提案になっております児童扶養手当制度につきましては、所得保障を中心としました国民年金法母子福祉年金のいわば補完的な立場に立っておるわけでありまして、母子福祉年金は、所得保障の立場から、死別の母子世帯に対しまして支給されるものでありますが、児童扶養手当はこれと違いまして、生別の母子世帯を中心としまして、それと同じような立場にあります、たとえば夫に遺棄された世帯、あるいは刑務所等に長期に入っておる、こういうような世帯につきまして対象といたしておるわけでございます。そういった面から見ますると、先生のいまお話がございました、現在世界で行なわれております児童手当とは必ずしもこの趣旨を一にするものではございません。しかしながら、児童手当制度は、厚生省といたしましても、これを実施するための準備を進めておるわけでございまして、児童手当が実際の段階になりました現在、児童扶養手当制度は当然その中に含まれる、そういうようになろうかと考えておる次第でございます。
  121. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、児童手当というものはどういう概念でつかんでおられるのですか。
  122. 首尾木一

    説明員(首尾木一君) 児童手当の創設目的につきましてはいろいろ意見があるわけでございますが、大体目的といたしましては、児童を健全に社会の責任において育てる義務がある、そのような考え方から児童手当を創設しようという考え方であります。それから、さらに社会保障制度の中におきまして、多子というものが一つの大きな貧困の原因といいますか、こういうような角度から児童手当の創設が必要である、こういうような考え方でございます。そういったようなものが基礎でございまして、このような面から、社会保障制度の一環といたしまして所得保障を行なっていこうというのが児童手当であると私ども考えておる次第でございます。  それから、先ほど藤田先生からお尋ねがございました、児童手当を現在実施している国の数でございますが、先生のおっしゃいました六十二カ国というのは一九六四年現在の数でございまして、いま私どもが正確につかんでおりますのはこの数字が最終のものでございまして、その後の各国の動勢というものを明確につかんでおりませんので、現在のところは一九六四年の六十二カ国であるということを申し上げます。
  123. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、あなたはいま企画室長さんですから、最もこういう問題について学問的に検討されている方だと理解をします。そこで、いまの社会保障制度というものが、世界の傾向として、特に所得保障というものが、国民経済、世界経済の中でどういう役割をしていくか。年金をはじめ、児童手当もそうであります。そのことが一つ大きな筋としてございます。もう一つの筋は貧困、国民が主権者という、主権在民の国家体系の国が世界じゅうほとんどだと私は思う。日本も同じであります。だから、その方々の生活というものを、まず主権者なんですから、それを中心にしながら政治経済をやっていくというのが近代政治の姿だと、私はそう思うわけでございます。そうすると、その中の一つの要因として社会保障というのが生まれてくる。病気になっても、その病気を社会全体でなおしていただく。病気は個人の責任ではない。個人の責任というとらえ方というのはいま世界にはないわけです。私たちもそう思いたくない。病気になりたくてなる人はないわけですから、社会全体で医療保障していこう、これが一つである。  もう一つは、いずれの職業をしておろうと、公務員や政府機関だけが国家に貢献したのでなしに、あらゆるところで働いておっても、社会に貢献をしてきたこの人の老後を保障しよう、または身体障害者になったり、働き主がなくなったときの母子家族の生活、これも社会が保障していこうという、所得保障の概念というものが近代国家の政治の重要な要件として生まれてきた。これをいままで社会保障といっていた。しかし、いまいみじくもことばに出ましたように、それじゃ同じ所得で多子家族の生活はどうなんです、三番目の貧乏になる原因は多子家族、その貧困を救済することなんだというぐあいにして社会保障の児童手当というものは発展をしてきたと私は理解をしておる。だから、児童には児童憲章というものがございます。すべからく児童を守っていこうという児童憲章がございますけれども、いま発展をしているのは、児童憲章の要件もむろんのことでございますけれども、いまの生活を守っていこう、貧困にならないように防波堤を築いていこうということで発展をしてきたというのが児童手当法だと、私はそういうふうに理解をしておる。一時べたで出てきた児童手当法が、自然にそういうふうに生活を守っていこうというかっこうで出てきている。そこにはエンゲル係数とかケトレー指数というものがいみじくも使われながら、私はやっぱり生活の問題が、使っている国も使っていない国もありますけれども、自然そういうことまで検討を深めていかなければならぬ要件をもって児童手当というものがぼくは発展をしてきていると、こう思うわけであります。そうなることが、私は新聞でちょろちょろ見るのですけれども、四十三年になったら児童手当法をやるのだというようなことをちょろちょろ聞くのでありますけれども、それはどうなんでしょうか、大臣。四十二年からは児童手当をやるということを厚生省ではっきり政府、要するに省議や内閣できめておられるでしょうか。きめておられるというなら、どういう方向できめていくのだという構想の議論がされているだろうか、その議論の内容もあわせて聞かしていただきたい。
  124. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来御意見が出ておりますように、社会保障のうちで、わが国でおくれておりますのは、何と申しましても、医療保障の面よりは、所得保障の面で欧米先進国におくれておるということが事実でございます。その所得保障のおくれております原因につきましては、一つは、厚生年金なり国民年金なり、そういう老齢年金制度の発足が欧米先進国に非常におくれておる。したがって、その給付は今後相当後でなければこれが全体に及んでいかない、こういう点が一つあります。  それから、もう一つの点は、いま問題になっておりますところの児童手当制度というものが、欧米先進国ではすでに六十二カ国以上に及んでおるというのに、まだ日本でこれが実施されていない、こういう点にあろうかと思うわけであります。  さらに、今回政府は、経済情勢の大きな変動に対応いたしますために、今日までございました中期経済計画を破棄いたしまして、新たに、新しい経済情勢に対応する長期の経済計画を立案をしようということで作業を進めておるのでありますが、その新しい長期経済計画の中には、長期の展望に立つところの長期の社会保障計画をぜひその中に織り込んでいきたい、こういう考えでございまして、中期経済計画におきましては、最終年度の昭和四十三年には振替所得七%を達成するのだ、こういうことになっておったのでありますが、新しい長期経済計画のもとにおける長期の社会保障計画におきましては、この中期経済計画の七%を絶対に下回ってはいけない、これを上回るという線で社会保障の計画を策定したいということで、ただいま事務当局に命じまして、その立案に当たっておるところであります。この点につきましては、すでに総理からも国会でお話があり、私の発言に対しまして、藤山経済企画庁長官も、国会におきましてはっきり裏づけの発言もいたしておるような次第でございます。そこで、この新しい経済計画に見合った社会保障の計画の中には、この児童手当というのが一つの大きな新しい制度として計画の中に織り込んで実行してまいる、こういう考えを持っておるのでありまして、昭和四十三年度からこの制度を発足させる、そういう目途でただいま準備を進めておるところでございます。
  125. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣の御意見はわかりました。四十三年から児童手当を発足さそうということでありますから、その内容についてはまだ御意見を伺えなかったのですが、しかし、いま振替所得を七%にしていこうというお話があったわけです。振替所得を今度の経済計画で七%にしていこうということでしょう、それはいつの年次ですか。
  126. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほどお話をしたつもりでありましたが、不明確であったと思うのでありますが、中期経済計画では昭和四十三年度、これは最終年次であるわけでありますが、その際における振替所得は七%、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、今度の新しい経済計画に見合ったところの長期社会保障計画は、昭和四十三年におきましてこの中期経済計画の七%を上回る線で、それを基調として今後の社会保障計画を策定したい、こういう意味でございます。
  127. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今度の新しい経済計画は、ちょっとそのことに触れられたから質問しておきたいのだが、新経済計画をおつくりになるというのだが、何年計画になりましょう。たとえば五年なら五年目の四十五年度には振替所得は何%にするという計画でしょう、ちょっとそれを。
  128. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、欧米先進国が、先ほど来藤田さんからもお話がありましたように、大体一〇数%以上、西独等におきましても一七%程度ではないか、こう私記憶いたしておるのでありますが、したがいまして、わが国の今後立てます第一次の長期社会保障計画、これは五年程度を一応考えておるわけでありますが、一〇%を下回らない線で策定をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  129. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも振替所得になってくると、ちょっとおことばを返すようでありますけれども、今日のヨーロッパの振替所得というのは、ドイツの二一%が一番高うございますけれども、フランスにしてもイタリアにしても一七、八%という水準にあるわけですね。それから、国民所得の分配所得を見てみますと、日本の倍ちょっとです。大体国民所得の倍ちょっとであって、賃金から見ると二倍半から三倍というところにあるわけです。そういうところの一七、八%から二〇%という振替所得がここ一、二年の間に二〇%みなこえると私は思う、スライディング・システムでみんな進んでいます。そういうときに五年後の一〇%というのは少し低過ぎやしませんか。まあ七%から一〇%二年間で上げるとおっしゃるのだから、そこらあたりのところは了としても、七%という振替所得は四十三年低過ぎやしませんかということが言いたくなる。しかし、ここであまりその議論は、経済の問題ですから、私はしませんけれども、いずれにいたしましても、児童手当法の本質、概念というものをもっと明らかにして、先ほどの企画室長のお話し程度じゃなしに、もっと概念を明らかにしてこの問題と取り組んでもらいたいという私は念願をいたしておるわけであります。で、そのことが明らかになってこないと、他の所得保障の問題も何かもの足らずというかっこうで進んでいくのではないか。だから、そのことが基礎になって振替所得、それからいまの経済との関係、生産と消費のバランスの関係、そういうものも含めて、所得保障、それから社会保障、全体の振替所得を含めて、どういう位置に上がるのが日本の経済繁栄の道なのかどうかというところまで私はやはり突っ込んで考えていただかないと、つかみ金ということにおちいるような気がするわけであります。最近の傾向は、EECが先頭を切っているわけでありますけれども、ドイツあたりは、三人目以後やっていた児童手当を二人目に切りかえました。二人目以上というフランス方式に大体ヨーロッパの各国がならって児童手当というものが発展していくというのが今日の現状だと私は思うのです。だから、そういう点を四十三年に実施されるなら、これから議論をするところですから、あまり深く言いませんけれども、そこらあたりの新経済計画の中で厚生省の役割りというものを私は期待をしたいと思います。それには、いまのような、外国もやっているから、うちもちょっとやらなきゃいかぬなということではない、そういうかまえでは私はつかみ金になってしまうということの懸念を持つわけでありますから、いずれまたこの問題についてあらためて議論する機会もたくさんあることだと思いますから、大いにひとつ、あまり世界に恥ずかしくないかっこうをこれから創設されるには検討してやってもらいたいということをお願いをしておきたいと思うわけであります。  そこで、この本案に返るわけでありますが、私はなぜそういうどうも皮肉のようなものの言い方をしたかというと、この法律――生別家族ができて、これは児童福祉年金の関係の書きかえたものだと、とうおっしゃるわけです。年金法律が出て、身体障害者年金母子年金というものがあって、片一方では法律でしてなかったからといって、福祉年金で半分以下のところがあって、それを移行して今度は児童手当の生別家族だ、こういう理屈で、そして第一人目のときは千円何がしとなって、しまいには三人目になると四百円ぐらいになってしまうということがいまの所得保障の概念ですね、つながっていっているのだろうかどうかということを疑問を持つ。ことしも去年から二百円ですか、お上げになった。それもさか落としで、家族の多い困っている人ほど――一人や二人の人はいいけれども、三人、四人の人は非常に苦しいという状態をそのまま機械的にすらっと字を書かれたようなかっこうで法案が出てきているわけですね。だから、こういう思想で児童手当というものをお考えになっているというなら、私は大いに議論をここでしておかなきゃいかぬ。この児童扶養手当法のほうで大いにここで議論をしておかないと、とんでもない世界に恥ずかしい児童手当というものが二年先に出てくる。児童手当というものが恥ずかしいというか、理屈に合わぬかっこうのものが出てくるのじゃないかということを私はおもんぱかって少しお尋ねをしているわけですよ。ここらあたりをどうお考えになって児童局長お出しになっておるのかということが一つですね。  それから、この福祉年金との関係で、生別家族だけだ、これは児童手当でありませんよ、これは児童扶養手当なんですからということに非常に力を入れて説明をされるわけなんです。そうなると、何やかやとよくわからぬようなことを平気でおっしゃるわけですね。あれは法律が出たときからの人だから出ている、前の人はそれは出ませんのですよ、こういう言い方をおっしゃる。しかし、だんなさんがなくなられても生別されても、母親と子供というものは厳然としてこの荒波の中で生活をしていかなければならぬ。このことをやはり中心に考えていかなければ問題は解決しないと思う。そこら辺の点も、先ほど竹下局長は、これは母子福祉年金の延長として云々というようなお話があったわけなんですが、どうも私はその説明を聞けば聞くほど、そこらあたりがよくわからぬようになってくる。これは生別だから、まるで罪悪を犯したような感じに受け取られて、説明だけを聞いていると、そこらあたりはどういうお考えで児童扶養手当と将来の児童手当の関係を児童局、または企画室はお考えになっているのか、そこらあたりがどうもよくわからぬから説明をしてもらいたい。
  130. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 現在の児童扶養手当におきましては、先生の御指摘のように、第一子は改正後におきましては千四百円でありまして、二人目で二千百円、三人目が二千五百円、こういうふうになっております。むしろ逓減をしていくというような形でございますが、三人以降は四百円ずつを加算するわけでございます。そういう面で、将来の児童手当の関係から申し上げますと、この児童扶養手当の考え方が新しい児童手当の様式とともに入る、こういうことは考えられないのじゃないか、かように思うわけであります。と申しますのは、御承知のように、児童手当につきましては、大体子供に対しましてそれぞれ均一の手当を出していく、こういうところが非常に多いわけでございます。あるいは先生の御指摘のように、むしろ子供が多くなるにしたがって手当の額をふやす、こういうところもあるわけでありますから、そういう面から見ますると、現在の児童扶養手当法のやり方というものが児童手当のやり方をそのままやるというふうには考えられないというふうに思っております。それから、児童扶養手当、あるいは母子福祉年金もそうでございますが、現在のやり方としましては、無拠出年金、あるいは手当につきましても拠出しているわけではないわけでございまして、そういう面は福祉年金という名前の示されておりまするように、いわば権利という色彩よりは、むしろ社会福祉的な面が強いわけでございます。そういう意味合いにおきまして、児童手当は全体の子供に与えるというのが原則としておるようでございますから、そういう面から見ましても、形としても、また、性格としても違う面が多分にあるというように考えております。したがいまして、児童手当が出されます際には、当然こういう児童扶養手当といったようなものは吸収されるということを考えておるわけでございまして、そういったいわば過渡的な問題として最も困る母子家庭について社会福祉の立場から支給がなされておる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  131. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ぼくはそこがどうもよくわからぬ。というのは、たとえば児童手当児童を守っておるのでしょう。児童扶養手当についても児童を守っておるのでしょう。母子福祉年金も子供を守るんでしょう。ということは、児童手当も子供を守る、一般的には児童憲章がありますけれども、いわゆる手当方式で行なわれている児童手当法とか、それから母子福祉手当というのは子供がなければ出さないわけです。それから、今度の児童扶養手当も子供がなければ出さない。生別であろうと死亡であろうと、子供を守る手当なんですね。そうすると、大体いって、子供が一人前に生活できるというところまでいかない。いかないにしても、第一人目は母親の収入で何とか少しはカバーできても、二人、三人になってきたら世帯主の収入ではどうにもならぬということが世界共通の理念じゃございませんかね、私はそうだと思うのです。だから、いまは二人目以上のフランス方式をとってみると、その最低賃金が二万五千円くらいですよ。一九六二年で二万三千五百円でしたから、いまは自動的ですから二万五千円をこえていると私は思うけれども、それに対して二人目は二二%、三人目は三三%、それから十歳以上十八歳未満の子供は五%増しというこの方式は、EECがほとんど中心になって実行し、他の国がこれに見習って児童手当というものを出している。何が目的かというと、やっぱり子供の生活と、子供を成育さすというところが肝心かなめな目的なんですから、私はそうならざるを得ない。フランスにしたって、三人目ぐらいからは八千何百円か九千円くらいになりますけれども、これで生活ができるかというと、それはまた問題がありましょうけれども、それぐらいのことをやっぱり全体の必要の八〇%か七〇%をまかなっていこうというのが私は児童保護のたてまえの筋だと思う。ところが、日本のほうは、一人は千四百円で、あとは二千百円、二千百円というのは、次は七百円ですよね、二番目は。その次が四百円。あとはみな四百円。私は、どうもひがみか知らぬけれども、戦後労務対策で家族手当千円、奥さんの手当は千円、子供が第一子は七百円、第二、第三子が四百円、三百円、第四番目以下は知らぬというのがいまの家族手当なんですよね。だから私は、そういう方式で社会保障の概念が生まれるだろうかどうかということを、これが出たときもだいぶ議論をしたのです。児童手当は、いま大臣がおっしゃったように、振替所得をふやしてやっていこうという考えを片っ方で発表されながら、今度の場合には機械的にすらっと並べられてやっていくということでいいのかどうか、そういう気持ちが児童手当を世界の流れにあまりさからうことはできないと思うのですよ、児童手当というのは。片っ方に大きな構想を二年後にやりますということを掲げながら、現実にやっていることは、こういうさか落としみたいなことを平気でおやりになっているということは、どうも私は法案を見て、もうちょっと何とか考え方がなかったんかいなと。だんだん児童手当法を二年後にやらなければならぬと追い迫られながらこういうことでいいのかどうかということを疑問に思ったから、疑問の点をいまここのところで尋ねているわけですよ。だから、そういうことは、企画室長さん、どうでしょうかね。お気づきになったのでしょうかならなかったのでしょうかね。そういう全体的な流れの中でことしの児童扶養手当はどうなるということについて、あなたのほうは専門的に研究をされているのですから、あなたのほうではどうですか。
  132. 首尾木一

    説明員(首尾木一君) 先生のおっしゃいましたような問題が、児童手当を今後創設する際にどういうふうに考えていくかというのは、基本的な問題として問題であるということは十分承知をいたしております。先ほど児童局長のほうから御説明をいたしましたように、児童手当の場合、世界各国の流れといたしまして、均一の給付額を行なう、あるいは場合によって第二子以降のほう、あるいは三子以降のほうが大きな金額をさらに給付するというようなかっこうになっておるということでございました。今後本格的に児童手当制度というのを創設いたします際には、そういうようなことにつきまして十分検討を進めまして、わが国の最も実情に合うような児童手当を考えてまいりたい、まあかように考えておるわけでございます。現在ございます児童扶養手当の問題は、これは児童局長から御説明いたしましたように、母子福祉年金との関係がございましてこういう形のものになっておると承知をいたしております。
  133. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 藤田さんからいろいろ基本的な問題につきまして、御質問というよりも、御意見の御披露があったわけでありますが、私も先ほど来拝聴しておりまして、欧米先進国、まあ世界の大勢といってもいいと思うのでありますが、給付の面における児童手当制度を見ました場合には、均一、均等の給付をやっておる。第一子、第二子、第三子、均等の給付をやっておるのが非常に多いようでありまして、約半数の国々がそういう制度をとっておる。また、ただいま一つの理論として御意見の開陳がありましたように、第二子、第三子に及ぶほど給付引き上げていくというような、そういう制度をとっておりますのが約三〇%、それから、逆に第二子、第三子、あとのほうになるに従って下げていっているのがごくわずか、こういう世界の趨勢であるということにつきましては御指摘のとおりでございます。そこで、私どもが今後わが国の児童手当制度を創設するにあたりましてどういう基本的な考え方でやるかという問題につきましては、ただいま国の財政の状況、また、わが国の社会経済的な事情等をも考え、また、各労使の間で支給されております家族手当との関係、まあいろいろなファクターを考慮に入れながら、しかも、ただいま御意見の開陳がありましたような先進国等の制度等も十分研究をいたしまして、そして実情に即した制度としてこれを発足させたい。これは財政の事情もありますから、一ぺんにはなかなか理想の姿のものが実現できないと思いますけれども、制度の発足にあたって、長期計画としてやはり つの理想図を描いてこの制度を今後発展させていくようにしなければいけない、このように考えておるわけであります。いずれにいたしましても、この児童手当制度は、子供をたくさん生めば生むほど、やはりこれが家庭の経済の圧迫になりますことは、洋の東西を問わないこれは現実の問題でございます。そこで、そういうように子供をたくさん持つことによって所得との不均衡を生じて、それが家庭の貧困をもたらす、これを防止をしたい、そして生活水準の確保をはかるようにしたいというのが一つである。また、もう一つは、児童の福祉の向上、子供の生活向上させる、こうこうことが家庭を含めての子供の対策である、こういうぐあいに児童手当制度を私ども理解をいたしておるのでありますが、そういう観点でまいりますれば、先ほど申し上げましたように、制度の発足にあたりましては、十分将来に対するところのこの制度のあり方というものを検討いたしまして、りっぱな制度としてやっていきたい、かように考えるわけであります。  ただ、しからば、現在ありますところの母子年金なり、あるいは児童扶養手当制度は、どうもその理念から言うと、ちょっとさか立ちしているではないかというような御指摘もあるわけでありますけれども、これは母子年金制度が発足をいたしました当時の事情等もありまして、一挙にこれを変えるわけにまいりません。そこで、児童手当制度を私ども今後やります場合に、このいままでやってまいりました母子年金とか、あるいは児童扶養手当制度とはとらわれない、そしてりっぱな児童手当制度を創設をしたい、こう考えておるわけでございます。
  134. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 きょうは何ですから、あまり長くやりませんが、もう一つだけ私は聞いておきたいんですけれども、私は、児童福祉、児童扶養手当というのも子供中心である。それから、きょうの議論としてはおそいかわかりませんけれども、児童福祉、母子福祉年金児童を保護するためにやっている。それで、母子福祉年金は、主人が死んだから母子福祉年金なんで、同じようなことをやって、生別したから児童扶養手当なんだというぐあいに分けられた。これは古いことですけれども、ちょっとこの思想を私は聞いておきたいと思う。どうもそこのところが、子供にしてみたら、いずれにしても主人はおらぬ、父親はおらぬわけですね。それが名前が違って、何か議論ばかり聞いていると、どうも片一方はよくて片方が悪いような、悪いけれども出してやっているんだというような感じを受けるわけですが、何でこの法律改正のときにこういうことで分けられたのか、そこのところを一ぺん聞いておきたいと思う。
  135. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) この制度の問題につきましては、むしろ藤田先生のほうが私どもよりよく御存じかと思いますけれども、所得保障という観点から考えてみました際に、働き手の死亡という問題につきましては、これは保険事故として考えられるわけでありまして、そういう面から国民年金母子年金という制度があるわけでございますけれども、母子年金ができましても保険料拠出していない方々がたくさんあるし、また、そういう資格がない方もあるわけでございますから、そういう面から保険事故としての死別というものを取り上げて、母子福祉年金経過的に、暫定的にというふうに考えていいかと思いますけれども、設けられたと思います。しかしながら、先生御指摘のように、児童福祉という観点から見ますると、死別のみならず、生別の家庭についても同様な問題が直ちに起こるわけでございますから、そういう点から均衡を失するということが問題になりまして、児童扶養手当というものが補完的に設けられたというように私ども承知いたしておる次第であります。
  136. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもよくわからぬのだけれども、母子福祉年金は千七百円だ、生別は千四百円だ、これはやっぱり生別のほうは懲罰を受けたようなかっこうになっている。これはちょっとうがった見方ですけれども、それで似たような手当を出しているというここらなんかも、私はいま直ちにとは言いませんけれども、整理すべき問題ではなかろうかと思うのです。奥さんをはじめ、子供にしたって、働き手がなくなった。それはなくなられた方は不幸でありますが、しかし、それは子供にしてみたら同じことなんですね。そうでしょう。だから、そこらあたりがいろいろ理念があって私は続いているんだと、いま直ちに変えろということを言うわけじゃありませんけれども、どうも的確な説明が何回聞いても聞けないわけですがね。だからそういう問題を提起しているわけですから、きょうは私は児童手当の問題との関連を聞きました。児童手当はひとつ企画室で真剣に取り上げていただきたい。最近の私の調べた状態を申し上げますと、だんだんと均等割りのところがやはり社会保障的な配分にイタリアもイギリスも変わるようでありますし、やはり生活を守っていく、著しい家族の貧困を防ぐというところにどうも変わっているようでありますが、私は、それは社会保障のいわば筋だと思うのであります。EECが音頭をとっておるようでありますが、だから、そういう面でも、実際に生活ということと、もう一つは、経済の中における生産、機械化生産――生産力の中における働かない人にあげるということは人はあまり好むものじゃありませんけれども、消費、購買力と生産とバランスをとって経済が正常な発展をしていくという要件というものを抜きにして所得保障なんということはなかなか考えられない問題と、いまの世界の趨勢はそうきておる。そういう観点も十分ひとつ検討していただいて、児童手当年金所得保障でありますけれども、そういう取り組み方をしていただかないと、いまのような五年間に二・七倍も生産力がふえて、実質所得は一一%ぐらいなんということのアンバランス経済が続いておる。それは一人一人の抵抗や努力というものでやってもいまのようなアンバランスで、政府はやってこれた。しかし、そういうことに関係のところが力を入れていないと、いまのような状態というものを継続する以外に何ものもないのじゃないか、経済の面からそう考えておる。だから、そういう点を大臣は、来年、再来年は七%、それからあと二年たてば一〇%に振替所得をとおっしゃるのですから、一ぺんに私はせいとは言いませんけれども、そのことはぜひ実現をしてもらう。その実現するような仕組みを、厚生省が、単に賃金所得、勤労賃金所得、購買力だけじゃなしに、やはり働くことのできない老人を含めたこの所得保障というものに、やはりその大きな経済の正常な繁栄の役割りを持たしていくのだということも考えてこの問題と取り組んでいただかなければ、私はいまのような経済状態というものが続く以外にない、それは皆さん方の努力ではないかと、私はそういうぐあいに念願する一人でありますから、十分にそこを考えて児童手当問題の腹固めをしていただきたいとお願いをしておきます。そうでないと、これまたこっちに参っております重大なやつは別ですけれども、国民年金の問題も、どうも先ほどちょっと私言わないでもいいことを言いましたけれども、生別家族と死別した家族とはまた違う。年金が発足したのと発足する前とでは、同じように国民生活しておるけれども、それは違うのだというようなところに強調されてくると、これは政治というものは飛んでいってしまうし、ただきめられたものを守っていったらいいというかっこうで政治や行政を進めてはいかぬ。矛盾のあるところはみんな直していこうということでなければ問題は解決しないのじゃないかというぐあいに考えておりますのですが、きょうのところはこの程度にしておきます。
  137. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  138. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔一異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回の委員会は六月九日午前十時から開会することにし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会     ―――――――――――――