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1966-05-26 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月二十六日(木曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員異動  五月十四日     辞任         補欠選任      小柳  勇君     杉山善太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         千葉千代世君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 藤田藤太郎君     委 員                 亀井  光君                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 土屋 義彦君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    国務大臣        労 働 大 臣  小平 久雄君    政府委員        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業政務次        官        堀本 宜実君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        通商産業省化学        工業局長     吉光  久君        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査   (不当労働行為に関する件)   (ILO問題に関する件) ○失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  委員異動についてお知らせいたします。五月十四日、小柳勇君が委員を辞任され、その補欠として杉山善太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  まず、不当労働行為に関する件について調査を行ないます。前回に引き続き、小野田セメント株式会社争議に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、小野田セメント首切り問題について、この前の委員会に引き続いて質問をしたいと思います。  一番最初に、この前ここで論議をいたしましたし、その争議は相当経過を経ておりますから、この前の委員会以後、小野田の労使間争議の問題はどう動いているか、これは労働省からひとつ承りたい、こう思います。
  5. 三治重信

    政府委員三治重信君) この前の御質疑について御答弁申し上げた以後の経過についての御質問でございますが、昨日会社側に問い合わせて最終的に調べましたところ、この前申し上げましたように、労働委員会その他公式の場で審査されるのは、それはそれとして、労使でさらに協議を進めようという申し合わせをして、その後春闘の賃上げ交渉で、それがまた済んでからやるというふうなことだったのですが、賃上げ交渉も済んだあと会社側から、さらにこの三月期の決算の総会が五月三十一日にあるから、さらにその以後に延ばしてほしいということで、そのままこの解雇問題については、労使の話し合いや、また、実際上の動きはございませんと、こういうことでございまして、労働組合に確かめても、どうもそうのようであります。したがって、この前の御審議あと労使双方とも実際上具体的な動きは何らなかった、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この争議要因、要するにこの争議会社経営上の問題になって、そして首切りの問題まで発展をしたわけでありますが、私は、このような経済全体からして経営の失敗をしたものは労働者犠牲によって処理をする、こういう傾向というものは私は許せないことだと思うのであります。で、最近における繊維業界で、二つの合併で千人以上の首切り——私は首切りと言いたいのでありまするが、それも三十五歳以上、十年勤続男子、四十歳以上、十五年勤続男子、こういうものを指定して希望退職を募ってきた。私は、経済不況生産消費アンバランスを起こして不況になっている要因は何か。そこで経営者側がその最終的な犠牲労働者首切りによって処理をする。口では希望退職ではありますけれども、実際はもうそこの職場にとどまれないという条件であります。たとえば退職金にプラスアルファをつけると言ったって、五年間に貨幣価値が四割も下がっているわけであり、そういう深刻な状態経済国民生活を持っていって、最終的な犠牲の締めくくりは労働者首切り処理をする。私は、こういうやり方というものは世界にも例がないでしょうし、われわれとしては許すことができないのでございます。ですから、この小野田セメントの問題は、小野田セメント一つの問題ではなしに、今日のような不況生産消費バランスがとれてないアンバランス状態では、こういう状態を見のがしておれば、各所の各産業労働者はこういう犠牲の対象になる。たちまちにして繊維業界にも出てきている。  そこで、私は、経済企画庁通産省に、企画庁計画をお立てになることでしょうし、通産省は憂際の行政をおやりになることでありまするが、その最終段階では労働者犠牲によって処理をする、こういう現実が出てきて、その犠牲になったものは、労働省がこれを拾って、どうしたらいいかといって頭を悩ますようなかっこうで、私は政府の一貫をした経済社会政治やり方というものは納得ができないと思う。ですから、先日からだいぶ私もセメント業界について勉強いたしましたけれども、昭和四十年は五千三百九十六万トンの生産能力がありながら、三千三百三十六万トンしか生産をしていない。六一・二%だ。四十一年度は、見通しでありますけれども、五千七百三十万トンで、生産見通しは三千五百五十万トンだと、こういうことであります。こういう状態で六二%という操業度の問題がそこに出てくるわけであります。私はセメントばかりではない、あらゆる日本産業においてそういうことが起きているのではないか。政府の主として発表されるのは、昭和三十五年を一〇〇にした生産指数だけしか発表をおやりにならぬ。実際に膨大な設備投資をして、そしてことしや去年は調整に幾らか手をつけたではありましょうけれども、しかし、その前までに自由主義自由経済のもとでかってに膨大な設備拡大をやって、その償却と申しますか、設備資金と申しますか、そういうものは不況カルテルという法律を適用して、不況カルテルを、公正取引委員会がやるばかりでなしに、通産省はみずから生産調整というかっこうで、管理価格や、そしてカルテルを事前にやって、企業が大事だからということだけで進めてきている。私は、それじゃ日本労働者はこの生産に対して何の用もなしていないのかどうか。いかに設備があっても、労働者労働力なしに生産にはならないのであります。この労働者生産の第一の柱である労働者を、国の経済全体の中で、不況というバランスがくずれたら労働者首切りで採算の帳じりを合わすというようなやり方は、私は断固として承知ができないのであります。  私はそういう意味から第一にお尋ねしたいのは、企画庁調整局長にお尋ねをしたいのであります。見えていませんか。
  7. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) いらっしゃいます。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 倍増計画があり、中期経済計画があり、今度ことしから新しい経済計画をお立てになるということでありますけれども、この方向というものはどういうことになっているのかどうかということを私は概略お聞かせをいただきたい。
  9. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 近年の高度成長過程で非常に活発な設備投資が行なわれたわけでございまして、その結果、いい面ももちろんあったわけでございまして、日本産業国際競争力が相当ついたとか、あるいは輸出の大幅な伸長が行なわれ、また、その間、雇用機会も相当ふえてきたのであります。しかし、一面におきまして、一部の業種において行き過ぎたシェア競争から設備過剰を招いたこともはっきり事実でございます。このため、一部の企業におきましては、一時帰休制だとか、あるいは希望退職者の募集だとか、あるいは採用中止だとか、いろいろな形の雇用調整が行なわれたわけでございまして、その後景気が漸次立ち直るに伴いまして、生産も徐々に回復過程を歩みつつあるわけでございまして、労働事情も次第に改善のきざしを見つつあると思います。で、今後だんだんよくなっていくというふうにわれわれは考えておるわけでございます。しかしながら、いままでの動きを見ます場合に、いままで幾たびか、所得倍増計画であるとか、あるいは中期経済計画であるとか、いわゆる長期的な見通し立てて、いろいろ指導的な指針を与えてきたわけですが、まあわれわれの意図に反して、とかくやはり行き過ぎた経済動きが見られまして、その結果、先生指摘のようないろいろな面でぐあいの悪い点もあったわけであります。で、今度われわれのほうでは新しい長期経済計画というものをつくろうということで、先般総理大臣から経済審議会にその諮問をしたわけでございますが、いままでの所得倍増計画も、よくよく考えてみれば、高い成長さえすれば、あとはどうでもいいやというようなことではなかったと思うのでございますけれども、実際問題といたしましては、そういう指針が与えられた結果、民間企業が相当走りまして、そして、たとえば民間経済といわゆる社会資本との間の不均衡であるとか、個々の産業についていえば、非常な過剰設備であるとか、そういうことが起こってきたわけであります。今度新しく計画をつくるに際しましては、今回の不況の経験にかんがみまして、景気の波動をやはり最小限にとどめるということを頭に置きまして、そして均衡がとれ、かつ、充実した経済社会発展をはかるように十分注意しなければならない、そういうふうに考えておりまして、そういう趣旨を十分生かしまして計画立案に当たりたいというのが経済企画庁の現在の考え方でございます。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いま調整局長のおっしゃったことは、こうもやりたい、ああもやりたいと思ってやってきたけれども、実際はできなかった、今度は倍増計画から中期経済計画に移って、今度は新しい経済計画をやると思うのですけれども、どういうニュアンスでそれに労働問題というものを取り上げていこうとしているのか、そのことをお聞きしたい。私は、一昨年の六月に労働省地域別産業別雇用計画というものを出した、そして太平洋ベルト地帯に集中している工場殺到率の高いところへ分散をして、就職の条件をつくりながら、日本地域的な発展とあわせて労働者完全雇用の道を開きたいという計画を出した。十三の新産都市で、動いているのは水島だけだといわれている。コンビナートをそんなところへ持っていったってどうにも発展をしない、発展をさそうとしたら、第一にかかってくるのは地方自治体の膨大な負担なんです。この地域別産業別雇用計画を出すのはいいことだ、私は、だから、それには受け入れ態勢地方自治体、その工場分散する地域地方自治体保護をやる、それから、太平洋ベルト地帯からその地域分散をするそれにも保護を与える、援助を与えるということでなければどうにもならぬのじゃないか。このことは予算委員会通産大臣企画庁長官大蔵大臣も、予算をつけてやりますということを約束をしているわけです。だから、新しい経済計画というものの労働者保護政策労働者産業の柱ですよ、そういうものを具体的にどういうぐあいに計画の中に入れようとしているのか。それから、生産力が、機械化とあわせて、膨大な設備投資拡大していくわけでありますから、この生産国民所得購買力バランスをどう立てていこうとしているのか、計画的な設備拡大規制を加えながら全体の経済が繁栄していくという、今日ヨーロッパの各国がとっている道をとろうとしているのかしていないのか、そこらあたりをはっきりしていただきたい。そうでなければ、今日のきょう私は操業度発表を見ましたけれども、これを見てみても、こんなどえらい経済政策を続けるというのは、私は政治をやる立場として国民に済まぬと思う、この一言に私は尽きやせぬかと思う。調整局長もそうお考えになっているのではないか、違うお考えがあるならばお聞かせいただきたい。この三点をお聞かせいただきたい。
  11. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 新しくつくります長期経済計画の中で具体的にどういうことを考えているかという御質問に対しましては、実はその辺は経済審議会皆さん方意見を十分集めまして、そして先ほど申しましたような趣旨に沿った計画にするにはどうしたらいいか、どういう点に焦点を合わせて考えたらいいかというようなことを、すべてその議論にまかせたいというのがいまの考え方でございますけれども、ただ、先ほど申しましたように、やはりねらいは、経済の安定というほかに、今度の答申では経済社会発展をはかるようにというようなことが書いてありますように、当然その場合には、いままでとかく量的に経済動きを把握されておったわけですけれども、どちらかといえば質的な面に十分意を用い、かつ、量的な数字にこだわらずに、質的ないわゆる政策展開をどういうふうにしたらいいかというようなことに重点を置いて計画立てたいというようなふうに一応は抽象的に考えておるわけでございます。なお、そのこまかい計画内容の盛り込み方等については、実は所管局が私のほうではございませんで、総合計画局というところでやっておりますので、いま私の申しました以上の特に詳しい計画内容につきましての御説明ということになりますると、やはり所管局長から話を聞いていただきたいと思います。ただ、私も経済企画庁の一員でございますので、抽象的ではございますが、いま申し上げた程度のことを常識としてお答え申し上げたということでございます。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、調整局というのはどういう仕事をやるところですか。
  13. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 毎年予算をつくります際に、翌年度経済見通し、それから翌年度経済政策展開のしかた、そういうものをいわゆる経済見通しと、非常に簡単に申しますと言っておりますけれども、それをやるのが私たち仕事一つになっております。そのほか、当面のいろいろの各省の間の意見調整等につきましてわれわれが介入する場合がある。たとえば今度国会物価対策の一環といたしまして、流通業務市街地の整備に関する法律案というのがこの間出たわけでございますけれども、これは実は、たとえば東京とか大阪とか、そういう周辺に大規模な流通センターをつくって、そうして流通近代化と交通の緩和、そうして物価問題の解決に資そうということでございますが、これをめぐりまして建設省、運輸省、通産省、農林省、この方面みな関係するわけでございます。この方面意見調整して法案をまとめたということも私たち仕事でございます。それから、たとえば経済協力関係を申しますと、外務省は外交的見地から、大藤省は主として財政的見地から、あるいは通産省は主として貿易の見地からそれぞれ経済協力に関しての意見があるわけでございますが、そういう場合の意見総合調整ということも現在われわれのほうで行なっておる仕事でございます。主として経済企画庁の中で、こういう経済問題をめぐりまして過去のいろいろな経済分析をするのが調査局。現在の問題につきまして各省間の意見調整をしたり見通し立てたりというのが調整局。それから、少し長い目で見て長期計画をつくりますのが総合計画局というふうに一応分担をきめておるわけでございます。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、いまあなたがお逃げになりましたけれども、今日までの行政がどうなっているのか、国民生活がどうなっているのか、経済がどうなっているのか、各省行政がどうなっているのかということを調整するところはあなたのところではないですか。あなたのところで調整して、こういうワク内で総合的な今後の長期経済計画立てるというのは、調整局意見を聞いて計画立てるのが計画局じゃないですか。私は、今日まで行なわれている行政上の欠陥を今後どう補正していくか、直していくか、このことは調整局でやるわけでしょう。だから私は三つほどの点をあげた。そうしたら、それは計画局の問題で、私たち調整局のほうの関係じゃありませんというのは少しおかしいじゃないですか。倍増計画があって、十年倍増計画がまだ五年しかたっていないのです。それで途中で中期経済計画立てて、これはいかぬといって、今度長期計画立てるというのはどこが判断したのか、調整局が中心になって判断したのではないですか、それしかするところがないじゃないですか。だから、具体的な問題として私は三つの問題をあげた。たとえば投資の問題でも、私はこの前の予算委員会企画庁長官通産大臣に特に質問をいたしましたけれども、鉄鋼の業界における過剰投資砂糖業界なんか十日間しか操業していないのに近代工場をどんどん建てるというのは、国民がこれだけ困っているのにそれだけ金をつぎ込むというのがほんとうの生きた政治かどうか、私は質問したけれども的確な答えがなかった。佐藤総理は、できるだけ規制をしながら国民生活を守りますと、こう言った。言いながら、いま何をしている、調整局あたりが根元だと思うから聞いたら、それは計画局だという。肝心な具体的なことを逃げられたら、国民は、どのポストから国民発表されるか、物価があなたのほうの発表でも四十年度は七・四%上がったということをおっしゃっているのです。その七・四%の物価が上がったら、これは所得がふえたときにどうなるかという問題は、肝心のその根元をさわらないで、出先のところだけで物価対策を何ぼ立ててみても直りっこないじゃないですか、私はこの前の予算委員会のときに、外国がGNPで大体十二・三%の拡大日本は二〇%以上もやっている。外国の十二・三%より二、三%多くても一五%。三十五年から四十年までの間に九兆六千億という過剰投資があったのではないか。その間に国民生活はどうなったか、所得は上がりました。しかし、物価が三割五分も七分も上がって、それだけ貨幣価値が下がってしまったのではないか、これは購買力が低下したからアンバランス経済に出てきたのか、これはそんな専門家じゃなくてもわかることだと私は思う。直します直しますと言ったところで、去年七・四%物価上がっていった、そういうことを踏まえて調整をして新しい経済計画立てようという具体的な計画をつくるところは計画局かわかりませんけれども、実際を調整するのは調整局じゃないんですか。これはどうなんです。
  15. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 新しい長期計画立てる必要があるかどうかとか、それから、いま持っております計画実情に即さなくなったからこれはやめるべきだとか、そういう判断は調整局でするのではなくて、むしろ計画局でするのでございます。ただ、先ほど先生も御指摘になりましたように、新しく計画立てる際にも、結局いままでどう動いてきたかとか、そこでどういう問題があったかとか、そういうことは当然新しい計画立てる場合に十分頭に置いて考えなきゃならない問題でございますので、それはもう計画局自身でも十分考えることでございますが、日常のこういう現在の問題を扱っているわれわれのほうでも、計画をつくります際にはいろいろ意見も言うということになっておるわけでございまして、主管局はあくまでも総合計画局でございます。
  16. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は思い出すわけでありますけれども、所得倍増計画をお立てになったときに、当時、大来さんが調整局長だったと記憶するのですが、どうですか。間違いですか。
  17. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 大来さんは調整局長をやったことはございません。計画局長でございます。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、これ以上その行政分野については私は申し上げませんが、調整局というのは、さっきおっしゃたように、国民生活との関係というものとはどういう立場においでになるのか、私はそういう気がする。現状経済分析して、それを計画局計画立てさせるという重要な、かなめな役割りじゃないんですか。そうすると、調整局というのは、ただ現業庁現業庁と言うたら何ですけれども、通産省とか建設省とか、そういうもののただ調整をして——いまのお話ですと調整も具体的にしない、計画局がみなやるんじゃということになってくると、どうせ計画局長に来てもらって質問をしたいと思いますけれども、どうも何のために企図庁の中で調整局というものが——調査調査局がやる。その全体の調整をやって、今度は計画立てるのが計画局、これはわかりました、そこのところは。調整局というのは具体的に何をやるのですか。いまどういうことをおやりになっておりますか。これ以上聞きませんから、お答え願います。
  19. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 先ほども申し上げましたけれども、結局調整局でいまやっておりますのは、現在の経済についての現状把握並びにそれについての経済をどういうふうに運営したらいいかというような問題、それから、その他なかなか各省の間で意見のまとまらない問題の調整ということでございまして、端的に申しますと、過去の分析調査局、それから、長期的ないわゆる長期計画、それの立案計画局、その間にはさまりました現在の問題の処理というのが調整局、こうなるわけでございます。  そこで、具体的に何をやっているかというお話でございますが、たとえば今度は予算を出します場合には、昭和四十一年度経済見通し経済運営基本的態度をどういうふうに政府として考えるか、そういうようなものをとりまとめますのは私のほうの仕事でございます。いま申しましたような資料は、予算編成の際に資料として国会にもお出ししてあると思います。これをめぐりまして予算委員会では常に活発な議論展開されていることは先生承知のとおりでございます。そのほかは具体的ないろいろな問題の処理でございまして、先ほど申しましたような各省意見調整の問題、特に最近は経済協力の問題が非常に大きな問題となっておりまして、経済協力をめぐる各省意見調整がわり仕事の上では大きなウエートを占めているというのが最近の実情でございます。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、わかりました。だから計画局長にここへ来てもらったら、長期計画をやる。現状調整局ですと、こうおっしゃるのだと思いますが、そんなものはこだわりません。そうすれば、あなたの分野におけるいまの鉄や砂糖のあの投資現状というものはどういうぐあいに調整局としては調整して変えていこうとお考えになるのか。いまのセメント業界が六〇%しか操業していないという現状が去年もことしも続いておるわけですけれども、それじゃどうすればせっかくっくった工場をほこりをかぶらないで社会に貢献するように生産上昇が生まれてくるか、こういう点については私は調整局仕事だと思う、いまの話を聞いて。これは間違いなら間違いでけっこうです。  それから、労働問題にしても、地域別産業別労働力配置計画というようなものが労働省から出てくる。その工場配置がえをする予算の裏づけは国または地方自治体が裏づけをして、そこで就職の場をつくる、全体の殺到率が七とか八とかなっておる率を勘案をして、地域発展とあわせて雇用の確立をしていくという方針なんかに取り組まれるのが調整局のように私は感じるわけでありますが、そういう点はどういうことなんですか。間違いなら間違いでけっこうです。
  21. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 先ほど具体的にセメントとか鉄とか、ああいうものについての過剰設備が相当あるじゃないか、こうおっしゃられますと、まさにそのとおりであります。この状態を放置しておくことはもちろん好ましくございませんし、これからの成長過程において過剰能力を吸収していくということが必要だと考えます。それで、いままでとかく経済全体の伸び以上に過剰設備が生まれたということにつきましては、やはり通産省とそういう行政指導の面でなお今後も検討していただかなければならないというふうに考えております。で、具体的なそれぞれの業種につきましての行政指導は、これは通産省分野であると思います。全体的なものの考え方として、こういう過剰設備が一体このままにしていいのかということは、これはぐあいが悪いというふうに私は考えております。  それで、もう一つ労働力のいろいろ問題のお話がございましたけれども、これは一応労働省のほうでそういう計画立てておられるわけでありまして、そういう資料をいただき、そういうものも参考にして、先ほど申しましたように、年々の経済見通しの際の就業者数というのは一体どのぐらいになるのか、その場合の雇用者というのは大体どういう程度の数になるのかという数字をもらいましてその検討をし、そうしていわゆる先ほど申しましたような経済見通しの中に組み入れて、そうして全体の経済バランスをとった姿というものが一体どんな姿になるのが好ましいかということ、そのためにまたどういうふうに予算をつけなければいけないかということを資料として、先ほど申し上げましたような、いわゆる経済見通し資料をつくっておるのでございます。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 単に遺憾であるということだけでは、これは説明がつかぬのじゃないですか。だから、そういう国民生活を圧迫しているような行き過ぎの問題はかくかくのように是正していくということのお答えをいただかなければ、単に遺憾である、そうして自由主義自由経済だからそんなことは知らぬのだということだけでは、私は、今日社会における国民生活産業発展のためには幾ら犠牲になってもしようがない、工場さえできれば、工場生産機関が操業していようとしていまいと、そんなことはおかまいなし、そうして会社自身の経営が悪くなってきたら不況カルテルを適用いたしましょう、主権者は国民なんですよ。主権者国民が、国家体系のやり方として、これは国民は納得しませんよ。それを聞いているのです。単に遺憾でありましたくらいじゃ、これはなかなか私は了解しません。
  23. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) いまの設備投資の問題につきまして、非常に過剰設備があるわけでございまして、これをどういうふうに考えていったらいいのか、また、将来過剰設備を起こさないようにするにはどうしたらいいかという問題については、ただそういうぐあいが悪いというだけでは困るじゃないかというお話でございますが、まさに先生の御指摘のとおりだと思います。われわれのほうは、設備投資の問題につきましては、国全体で、たとえば投資の規模というのは大体どの程度のものであるか、これは経済見通しの中に組み入れてあるのでございます。それをその場合に、当然各産業部門は大体どのくらいかということを見当をつけておるわけであります。それから、国全体の方向としましてのバランスの中で、それを翌年度大体どのくらいの設備投資が必要であるか、または適当と考えるか、それに合わせて予算面におきましては財投でいろいろそれを政府機関で金をつけておるわけでございます。で、さらにそれをブレイク・ダウンいたしまして、各産業政府系の金融機関、たとえば開銀でありますとか、あるいは中小企業金融公庫とか、いろいろあるわけであります。そういうものがそれぞれどういう産業設備、どういう業種にどのくらいの重点を置いて金をつけていくのが適当と考えるかということにつきましては、これは関係各省意見も聞きまして、毎年政府系金融機関の産業設備に関する資金運用方針というものをきめまして、これを閣議にかけて、一応閣議決定の形をとりまして各金融機関に流しておりまして、そういう線に沿って、中小企業のむだな設備投資が行なわれないように、政府資金が非常に有効に使われるようにという配慮をしておるわけであります。しかし、政府系の金融機関から流れる金だけではなしに、むしろ民間のベースでもって流れている金が非常に大きいのでございまして、そういう面で要するに政府の金をたよらずに、どんどん民間ベースでいわゆる異常な設備投資も行なわれてきたわけであります。そういう面の調整ということにつきましては、これは各所管官庁がそれぞれの業種につきましてやっておるのでございまして、具体的には通産省あたりでは産業構造審議会の中で部会をつくりまして、そうしてそれぞれ所管業種について、今年度は一体どの程度の設備をやるのが適当かというようなことにつきましていろいろ意見を聞いて調整をする、そうしてそれを公表する、関係金融機関にも流すというようなことをやっておるわけであります。そういう形で、いわゆる過剰な設備投資が行なわれないように、また、金が非常に有効に使われるようにという面の行政指導はしておると思います。そういう面でいままでとにかく十分でなかったことは確かと思いますが、そういう形の調整機構ができておりますので、これを活用して、再びいままで起こりましたような過剰設備問題が顕著にならないようにわれわれは期待しておるわけでございます。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 宮沢さんね、この前の予算委員会であなたと長官、また、通産大臣大蔵大臣も、たとえば具体的な例をとりますけれども、地域別産業別労働力配置計画、これに国、それから地方自治体予算もつけてやりますと、こうおっしゃる。三人がおっしゃったから確かな方針だと私は思いますけれども、いまの話を聞いていると、労働者がこのような条件の中にどういうぐあいになってくるかというようなことは企画庁では全然私は考慮されてないような気がする。予算委員会で答えられることは政治的発言、放送向けの発言にすぎない。根元である企画庁はそんな考えはさらにないと、私はそういう感じを受けるわけでございます。ですから、私はこれ以上あなたとはもう議論をしません。あらためて計画局長や大臣に来てもらって私は議論をしたいと思う。あまりにもそういうかっこうでは、主権在民の国家における経済計画経済調整経済発展と繁栄という道には私はなかなかなりにくい。特に企画庁は、今日外国経済のOECDに加盟されて理事国にもおなりになって、OECDの加盟国がいかなる経済をやっているか。購買力の足しには、いま社会保障でも、慈善や恩恵でなしに、これが生産消費バランス一つの環として社会保障、所得保障があり、明らかに経済景気変動というばかげたことをやらぬように、生産力をフルに回転して国民生活を守るように経済がいまヨーロッパを中心にして発展しているじゃないですか。日本のように、ここに通産省が今日お出しになっております操業率を見ても、こんな低い状態であって遺憾でありますということで、一歩もお答えが出ない。経済の面だけを議論していたらそういう議論で済むのです。しかし、その最終的な犠牲はどこへいく、労働者犠牲であります。小野田セメントのこともそうであります。過剰投資して、国民購買力が低いから操業度が上がらない。そこへ金もうけをするために傍系に金を注ぎ込んで、この傍系がうまいこといかない、両方の面から会社がちょっと都合が悪くなってきたら、その過剰の分だけは労働者犠牲によってやろう、経営方針として一番やさしい方法であります。一番やさしい方法でありましょうけれども、それでは日本国民はどうなってもいいという考え方、あなたはそういう考え方ですと仰せになりませんけれども、そういうことが関連をしているということを私はお考えになっていないじゃないか、そういう気がする。たとえばILOというふうなものをどういうぐあいにお考えになっておりますか、ちょっとお聞きしておきたい。
  25. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 経済企画庁がこの経済見通し立てる際に、その労働の問題というのは全然眠っておるじゃないかというような御質問であったようにちょっと伺ったのでございますが、いろいろな数字にあらわれるところでは、この労働関係の指標というのは、いろいろ就業者の数であるとか、あるいは雇用者の数であるとかいうことのほかに、いわゆる勤労所得を大体どの程度に伸びるものと見るかという数字が出てくるわけでありますが、そういう数字の問題を離れまして、各年度の「経済運営基本的態度」の中に特に重点的に推進しなければならない幾つかの項目を書いてあるわけであります。この重点的に取り上げなければならない項目として指摘されたものにつきましては、予算をつけます際にも、大蔵省はこれは重点的に配慮するということになっておるわけでございます。この項目が大きく分けまして五つくらいありまして、その中に社会開発の推進という項目があるわけでございます。ここにあげられております項目はあまり長いものではないわけでありますが、たとえば労働力の問題につきましては、「労働力の有効な活用を図るため、長期的視点に立って地域別、産業別に労働力需給の計画的な調整を進めることとし、労働力の適正な流動化、職業訓練の強化等積極的な雇用対策の推進を図る。」というような文句もあるわけであります。これに即応いたしまして労働省のほうでいろいろ考えられるということにつきまして重点的に金をつけるということになっております。また、労働省だけでなしに、いわゆる生活困窮者、身体障害者等につきましても特に項目を起こして、「国民生活の安定向上を図るため、社会保障施策を充実強化する。」特に生活困窮者に対する生活保護であるとか、身体障害者の更生福祉等について配慮する、こういうようなこともある。あるいは人的能力の開発に関連しましては、教育訓練の充実によって人的能力の開発をする。それから、地域問題も、先生が先ほどお話になったと思いますが、都市と農村、あるいは先進地域と後進地域との格差の是正をはかるために、農山漁村開発を含む地域開発の推進というような問題は非常に重点的に取り上げておりますので、非常にわずかな、ページ数にいたしましても、いまの項目は二ぺ−ジ半くらいのところでございますが、その中にいまのようなことは全部盛り込んでおるわけでございます。考え方として、労働者の問題はどうでもいいというようなことは毛頭考えません。結局経済発展というのは、しいて言えば直接国民生活の充実向上、完全雇用というのが現在の経済政策の基本になっておると私は考えておるのでございます。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、宮沢さんね、私の考えが間違いなら間違いと指摘していただきたいのでありますけれども、昭和三十五年から設備拡大が算術計算で大体二〇〇%ですね。それから他は企業努力や合理化で七〇%から八〇%ぐらいというのが去年の十月現在の数字であります。そうすると、五年間に生産力に転化する条件は二七〇から八〇になっておる。そして、それではそこで働いている日本産業労働力のいま六割何分まで雇用労働者がきているわけでありますけれども、雇用労働者の実質賃金はその五年間にどれだけ上がったか。三十人以上の企業でも一一〇幾つであります。一般の労働者の全体を見てみたら一〇〇幾つからほとんどあまり上がっていないという、このような生産条件に対して事実問題を私は言うわけでありますが、私は、生産力が上がれば上がったに応じて国民購売力、要するに消費の面を高めて、むろんそうしなければ賢易も伸びませんが、この生産消費バランスをとっていくという経済計画ですね、むろんこれは人権尊重、主権在民の経済計画にも通ずると思いますけれども、裏を返せば。しかし、そういうことを具体的にやっていくことが今日の主権在民の経済政策と私は思うのでありますけれども、いまのお題目だけ並べて、これもやりますやりますと言うけれども、具体的にはこういう現状にあるということで、考え方はどこにあるのか知らぬけれども、幾らいい文句を並べてみても、現実はこういう状態である。この私の言うことが間違いでしょうかどうか、ひとつお聞かせいただきたい。企画庁経済計画をお立てになるときには、とにかく産業生産設備生産力だけふやしたらいいと、これを中心にやっていく、そして国民はその間しんぼうしなさいという中で、ひとつも楽になることなしにどんどん進んでいって、つくった工場は、もったいない話が四割も五割も、少ないところで三割もほこりをかぶってとまっているという経済状態、それが企画庁経済計画なんですから、遺憾でありましたという一言で尽きるのでありましょうか。具体的にそれを実施するということが政治じゃございませんか。経済計画じゃございませんか。その私の言うのは間違いかどうか、聞かせていただきたい。私ももう少し勉強してみたいと思います。
  27. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 実質賃金につきましては、昭和三十五年度を一〇〇といたしまして、四十年が、私が持っている資料では一二〇・五ということで、毎年着実に上がっておるわけでございます。ただ、これまでの経済をふり返って見ましたときに、先生指摘のような、経済にむだがあったということは、これは確かだろうと思います。これは設備の面につきましても、非常な過剰設備が一部の産業に出たことは確かでございますし、それから、また、民間産業設備と、それから、いわゆる社会資本と申しますか、企業を取り巻くいわゆる間接資本との間に非常なギャップを生じまして、そのためにいろいろいわゆるひずみ現象というのが現在あらわれてきていることは、これは事実であります。  そこで、経済企画庁におきまして、先ほども申しましたが、新しい経済計画立てる場合、その辺の反省をいたしまして、バランスのとれた経済発展、それから、いわゆる経済発展さえあればいいわけでありませんで、経済社会と申しますか、国民生活の充実向上、それから完全雇用というようなことを実現できるような、そういう経済の姿を描きたい。結局民間経済活動を規制しますのも、目先のことだけではしようがありませんので、やはりここで五年ぐらい先を見通して、いままでのそういう経済の面に起きましたぐあいの悪いところ、こういう点を是正して、そうしてバランスのとれた措置、そういう経済を実現できるような計画をつくろうというのがわれわれのねらいでございまして、先生がいろいろ御指摘になりましたような現在の経済現状に見られるひずみ、その他、一つには非常にぐあいの悪いいろいろな姿というものを、企画庁がそれでいいのだというふうには決して思っているわけではございません。
  28. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ちょっと局長に伺いますが、答弁を求めておりますのは、藤田委員質問が間違っているのかどうか、それを答えてもらいたいと、こういうわけです。ですから、具体的に、間違っているならいる、いないならいないと、ここであなたのおっしゃった点の最後のほうでそういう点もあるように言われていますけれども、そこをはっきり答弁してやっていきませんと、時間がたちますばかりですので、ちょっと。
  29. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 先生のおっしゃいますことが間違いであるというふうに私は申し上げているわけじゃございませんのです。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういうイメージというか、いま現実にヨーロッパのOECDがみんなやっていることを言っているので、間違っているとは思いませんと言うが、その立場というものは、主権在民と国家の経済計画というものは、それに努力して実現していこうというかまえでなければいかぬ、そうじゃないですかね。私はそれを言いたいわけです。いろいろ意見があったら、またいずれ場をあらためて聞かしていただきます。  私は、これは通産省にお尋ねをしたわけでありますが、同じような質問通産省企業局長にしたいわけであります。これは企画庁調整局長にお尋ねしたのは、全体の経済をお立てになっている立場ですから、その立場をお聞きしたのでありますけれども、具体的な通産省という行政庁の中で、総合的な経済計画——企画庁立て経済計画によってこの計画をお立てになる。私はどうもよくわからぬのは、そういうことが続いていって、あとは公取委員会不況カルテル、人員が少ないとか何とかいって、通産省生産調整をおやりになった、不況カルテルと同じようなことをおやりになっているということになってくると、私は、どこもかもあげて、どうも国民が納得しないような条件産業だけはどんどん大きくなっていく。大きくなるのはけっこうですが、これが国民全体の生活の向上と、それから、経済がノーマルな状態経済的、社会発展をしていくというなら私は文句を言いたくないわけであります。しかし、いまのようなアンバランスがずっと続いているわけであります。このアンバランスが長年続いているこれに対して、企画庁自身が的確なメスを加えようとしておいでにならない。これを受けて通産省企画庁の方針でおやりになっている。そうなってくると、私はまた言いたいのでありますけれども、ILOなんというものは何のためにできたのだろうか、通産省はどんなお感じでさられるだろうかということ、これが一つです。  それから、小野田セメントに始まる繊維業のあの鐘紡の武藤社長が、五十五歳の定年を六十歳まで延長をして適職を与える。厚年が六十歳から発効だから、これまでの生活をみながら生活不安を解消したいと、こうおっしゃる。おっしゃったけれども、今度東邦レーヨンとの合併において、どちらが条件を出したのか知らぬけれども、人員の削減なしには合併しませんというかっこうで、そして首切りの問題がここに起きている。だから、これは鐘紡と東邦レーヨンとが一緒になって経営をやるのに首切りだと言う。首切りの処置はどうするのだ。貨幣価値の下がっているこの条件の中で、退職金をふやしますというだけでは、私はていさいのいい首切り労働者が最終的には政治の失敗、政府がやる経済政策の失敗、その次には経営者のやる経営の失敗、そのしわ寄せを全部労働者の責任で処理しようということにならざるを得ないと私は思う。産業発展だとか生産設備拡大といいながらこういうことが行なわれていくということは、私はこれでいいのかどうかということになるわけであります。  それから、もう一つ通産省に付け加えて、一度に聞きますけれども、この表を見ましても、セメントが六〇%を初めといたしまして、非常に操業度が低うございます。たとえば私はこの前の質問をもう一ぺん繰り返すわけですが、企画庁調整局長がお答えになりませんから私はお聞きしたいのですが、鉄鋼の川崎製鉄が水島で一千万トン計画、要するに、いわゆる世間で言っている五千五百万トン粗鋼計画等は入っているのか入っていなかったのかと言ったら、通産大臣は入っていないと、こうおっしゃった。そうなると、また鉄鋼にも問題が起きてくる。それで国民購買力を、賃金所得や勤労所得や、それから、また、営業の個々の所得社会保障の所得保障というもの全体で購買力を上げてバランスをとらない限り、そんなものを貿易をやろうといったって、フィフティ・フィフティの原則を動かして貿易をやろうという国は今日ありませんよ。日本とアメリカだけですよ、そういう条件のもとで。そういうことは自由主義自由経済だから知らぬということでお答えが出てくるということになるとたいへんだと私は思います。そこらあたり、企画庁がああいう状態ですけれども、通産省としては、経済見通しについて、発展のために生産消費バランスをとって経済発展をしていくのだ、だから行き過ぎたものには規制をしながらやっていくというかまえがあるのかどうか、そこらあたりの、同じような質問でありますけれども、局長の御意見を承りたい。
  31. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) いろいろ御質問がございましたので、端的にお答えいたします。まず、どういう気持ちで今後の産業行政を運営をするかという全体を通じての御質問であろうと思いますが、御承知のように、従来の経済運営といいますのは、ややともいたしますと、日本経済力を急速に発展さすというところに三十六、七年までは主眼があったわけでございます。ところが、その結果、日本経済も相当大きくなりまして、対外的に見ましても、ようやく一人前になりつつあるわけでございます。ところが、最近の情勢をふり返って見ますと、これがいわゆる安定成長といわれているところでございますが、やはり産業社会環境、購買問題、あるいはいろいろな社会環境の問題等と調和をとらなければならないという問題が一つと、それから、もう一つは、先生指摘のように、やはり需給の調整をはからなければならないという問題が出てまいっておるわけでございます。お手元の資料にもございますように、また、御指摘もございましたように、非常に操業度が悪い、こういうお話でございますが、これは事実でございまして、大体全産業なべて言いますと、悪いところが七〇%を切る、いいところでも八〇%というのが現状でございます。好ましい姿といたしましては、やはりものによって違いますが、八五%ないし九〇%ぐらいがやはり望ましい姿である。そういう姿からいいますと、やはりまだ操業度といたしましては一〇%ないし一五%程度足らない、こういうことでございます。  それで、しからばこれをどういうふうにして今後調整していくかという御質問だろうと思いますが、私は、御指摘のように、二つの問題があると思います。一つは、供給面につきましてむだな設備投資をしないように、これを相当強力にやる必要があると考えております。それから、もう一つの面は、何といいましても輸出の問題があるわけでございますが、やはり国内の需要という問題がございますので、これに関連いたします需要を造成いたします場合は、やはり国民所得というものが問題になろうかと思います。その場合に、できるだけ均衡のとれた国民所得をつくっていくということが一つの大きなポイントだろうと思います。私どもといたしましては、そういう両面から考えてまいりたいと思います。特に通産省サイドといたしましても、産業界の設備が過大過ぎるということは、国民経済的に見ましても申しわけないわけでございますので、先生承知のように、産業構造審議会のもとに資金部会というのを設けまして調整をいたしておるわけでございます。  先ほど御質問の中に鉄鋼関係の御質問がございました。五千五百万トンの粗鋼のベースの中に水島が入っておるかどうかという御質問でございましたが、この粗鋼の数量をどの程度にするかというのは、現在、将来の経済見通し考えましていろいろ議論しておる最中でございますが、昨年度は四十三年でたぶん粗鋼が五千二百万トンになるだろうという見込みで設備調整をしたはずでございます。そのときには、水島の第一号炉をいま着工いたしておりますが、これはその中の数字に入っております。今後さらに水島につきまして二号炉を認める、三号炉を認めるとかいう問題は、今後の経済動きによってきまってまいろうかと思います。なお、どの程度の調整をしておるかという御質問があろうかと思いますが、本年度について申し上げますと、鉄鋼につきましては、御指摘のように、設備が少し過剰ではないかというお話もございますので、われわれといたしましては、能力増になるような設備につきましては、先般の産業資金部会におきまして全部保留にいたしまして、今後の経済の推移を見ながら、もし必要があればこれを認めるという措置をとったのでございます。ほかの業種につきましても業界お話を申し上げて、設備が過剰になるという面につきましては御遠慮願った部面が相当あるわけでございまして、通産省といたしましては、御指摘のような趣旨は、あるいはまだ十分ではないかと思いますが、体しまして努力をしているのが現状でございます。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この間の暮れに水島は入っていないとおっしゃったが、いま局長は入って粗鋼調整をして努力をしているという非常に力強いお話があったわけであります。そこで、先ほどからの繰り返しをあまり申したくはありませんけれども、どうも私はいまのお話を聞いていると、経済企画庁通産省と変わったような感じをいま持ったわけです。そこで、まあひとつよく大臣にも教えてもらって、実際に大臣が指揮棒を振るように行政についてはしてもらいたい。事を明らかにしていただきたいし、私はそういう資料をこの際もらいたいと思います。具体的な各産業ごとの資料をいただきたいと私は思うわけであります。  そこで、今度は労働問題なんですが、小野田の今度の問題について、これは企業局長立場になるのかどうか知りませんけれども、企業局長は、いまの話を私が理解するなら、正常な経済運営、正常な経済発展企業発展というか、企業発展といわぬけれども、生産発展というカッコの中でものごとをやろうとしておいでになると理解ができるような御発言がありました。そうすると、これは水島とか繊維とか、経営者の考えといいましょうか、独自で最終の赤字、一つは、理由は経済アンバランスだ、不況だ、一つは自分がやったいまの結果を全部労働者に押しかけようとしている。このやり方について通産省はどう考えていますか。
  33. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 具体的な問題につきましてはいろいろ特殊な事情もあろうかと思います。私の一般的な考え方を申し上げますと、やはり先ほど申し上げましたように、今後の経済の円滑なる成長という面から見ますと、やはり資本も労働も協調してまいりませんと、とても諸外国にも対抗できないと思います。また、日本経済の伸びもないと思います。そういう面におきまして、たとえばお話がございましたように、合併したから、そのしわを全部労働者にかぶせるようなことは、これは厳に慎しむべき問題である。もちろんその会社をよくするためにはこういう形にしたほうがいいという計画もいろいろ個々の問題ではあろうかと思います。しかし、それはあくまでも労使が話し合って円満にやる。それと同時に、ある面でどうしてもやはり手に職を与えなければならぬという場合には、会社としても十分就職先まであっせんして、そこに遺憾のないようにするということが私は今後の運営の方針であろう、こういうように考えております。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこが非常に大事なところなんですね。やむを得ないときにはどうのという意見が出てくる。だけれども、問題は、安かろう悪かろうじゃなしに、今日の労働者をいかにして生産につけるか、いかにして社会全体が今後の生産発展のために勤労国民というものをどう守っていくかという、一本骨がない限りは、いまあなたの後段で言われたところへみないってしまう。やむを得ないときには就職とか何とか、退職金のアルファをつけたらいい、それで整理したらいい、全くそこのところの問題は重要な問題だろうと思う。だから私は、そういうことは、一つ生産調整という、いまおやりになっていることじゃなしに、設備規制をやって生産消費バランスをとる措置として、国民が主権者なんですから、そこのところの意義づけを経営者自身に十分ひとつ教育をしてもらわない限りは、このことを二度も三度も繰り返す以外に何もないんじゃないか。だから、むしろ繊維業界なんかに出ている問題、セメントなんかに出ている問題は、それは監督官庁は労働省でありましょうけれども、経済省としてのあなたのほうもそういうところに手をつけるべきではないか。うちは経済の問題だから、そんなことは労働省の問題だということじゃなしに、根元から手をつけない限り、労働省労働者向けの話をすればいい、われわれ通産省経済省で、こういうぐあいにやりますと届け出さえすればいいんだということでは私は世の中は発展しないと思う。このことをあなたは考えていただかなければならぬ。この小野田セメントに対してこういうものが出ているのに対して、企業局長はどういう指導をされたか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  35. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 企業局と申しますのは、やはり全般的な考え方、あるいは立地の問題、そういう横割りの行政をやっておりまして、具体的な問題につきましては各原局の局長が責任を持ってやっておるわけでございます。もちろん全般論としてこういうようにすべきだとかという意見は申し上げますと同時に、御相談にも応ずるわけでございますが、小野田セメント自体の問題につきましては、私申しわけないわけでありますが、新任早々でもございますので、まだ化学局長から具体的な話を詳細に聞いておりません。化学局長も参っておりますので、化学局長からお答えさせていただきたいと思います。
  36. 吉光久

    政府委員(吉光久君) 実は個別的な会社に対しますところの指導と申しますか、非常にむずかしい問題がございまして、特にセメント工業の場合におきましては、お互いの会社同士が利潤獲得と申しますか、相当しのぎを削っておる場面が多いわけであります。ことに昨今のセメント工業全体が三十九年度からずっと業績が落ちております。同時に、また、過剰設備問題も小野田セメントだけにとどまらないで、セメント業界全体が持っております問題でございまして、したがいまして、あくまでも業界相互の協調精神と申しましょうか、この問題を解決いたしませんと、どうしても個別的に企業に入っていくということはむずかしいわけでございます。特に私が申し上げるまでもなく、先生御存じのとおり、三十九年度の下期からセメント関係各社とも、二社を除きまして、軒並みに減配あるいは無配、こういう状況に相なっておるわけであります。そういう業界全体の苦しい中で、小野田セメントもその例外でないわけでございますが、今回のような事態が起こったわけでございます。これは小野田セメント個々の会社に対して申し上げますよりも、むしろセメント業界全体に対する設備調整と申しますか、あるいは、また、古い設備のスクラップ・ダウンと申しますか、そういうふうなことを全体的に通じてやっていくということが現在最も必要じゃないだろうかというふうな意味で、そういう角度から全体のセメント業界に対する指導を強化いたしておるというのが現状でございます。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ長くなりますから、私は通産省に、次官もおいでになっておりますから申し上げておきたいのでありますが、いまの企業局長の前段のお話がどう実現していくか、実現をさせていくかという問題が非常に大きな重要なポイントだと私は思う。しかし、私は、長年続けてきた不況カルテル生産調整、こういうものが、労働者の生活というもの、労働者保護、その家庭の保護、生活を保護するという立場を配慮してやっておるかどうかというと、私はなかなか納得できない。結局生産コストはものすごく下がっておるのに、その不況カルテル生産調整で価格を維持して新しく建設した工場の償却に充てておる、それが私は物価値上げの根本だと思っておるわけであります。だから、物価の問題に入るとなかなか時間がかかりますから私は申し上げませんけれども、私は、やはり一番しっかり労働問題と取り組まなければならぬのは通産省だと思う。むろん労働省が柱でありますから何ですけれども、労働省に負けないつもりで労働問題と取り組んで、そうしてその配慮のうちに労働省意見やその他とよく調整をして通産行政というものをぼくはやっていただかない限り、極端な話をしますと、ILOというのは通産行政とどう関連がありまるかという極論をはいた通産省のお役人がおいでになるわけであります。そんなことはないと思うが、そんな考え方で通産行政をおやりになろうとしたら、いまのような問題は幾らでも出てくると思います。そういう点はいずれあらためてまた御意見を承る機会があると思いますけれども、そういう点はもっともっと私は真剣に労働問題というものに取り組んでいただかなければならないのではないかということを申し上げておきたいと思います。  そこで、私は、労働大臣に、これはお願いですけれども、実際労働省としての私は行政上の立場というのはお気の毒だと思うのです。いま通産省ではだいぶ決意のあるところのお話がありましたけれども、そういう産業犠牲となる要するに失業者、不守全就労だとか、または生活苦というような問題を労働省が一手に引き受けてやる。しかし、労働大臣としては、経済企画庁経済計画立てたり、長期も短期もそうでありますけれども、立てるときには労働省というものはいまの労働者保護する立場経済発展させていく。保護ということばを私はここで使うのは適当であるかどうか知りませんけれども、主権者が国民なんですから、その国民の主体になっているのは労働者、農民なんですから、この方々のためにこの経済計画立てたり、労働条件はどうなるんだと、こういうことを閣議で私は経済計画立てるときにはしっかりがんばっていただきたい。そのことを、たとえば完全雇用をするのにはどうしたらいいか。これは働くところがあって、そこで働いて、労働力を通じ、生産を通じて社会に貢献するということを含めて社会発展していくわけでありますから、そういう問題も考えてみたら、私は、労働大臣という重要な役割りは、むしろ通産省企画庁と違う立場で、労働者保護、勤労国民保護立場から、私はやはり労働省自身がこの経済計画はこうだと、こういうかっこうでなければ困るということをきしつとして閣議で経済計画については言ってもらわなければいまのようなことが起きてきて、労働大臣とうするか、労働大臣が意見をおっしゃる。しかし、肝心のところはそこのところと関係なしにどんどん進んでいっているということになっているのが今日の状態であります。私は、いまの小野田セメントから始まって、繊維に火がついたこのような状況というのは、今後ないとは私は言えない。自動車産業にも出てきているわけであります。だから争議自身がとにかくおさまったらいいということでなしに、首を切られた人が外に出たらどうなるか、これは救う道がないわけであります。だから、そういう点は決意を持って労働大臣は、日本経済政策経済計画について、労働者を守る立場からはっきりとものを言って、そういう方向で、今度新しい経済計画立てられるようでありますが、そのことも明確にひとつがんばっていただきたい、こう思うわけでありますが、所見を承っておきたい。
  38. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先ほど来の先生の御所見を拝聴いたしておりまして、私はその大筋におきまして共鳴いたしておるのであります。具体的にただいまのお話の、経済計画立てる際等においては、労働者立場を守ると申しましょうか、そういう見地から労働大臣としては積極的に発言をいたしてまいるべきであるということでございますが、このことも私は当然の責任であろう、かように承知をいたしておるわけでございます。今回局長を中心にいたしまして経済計画立てられるという予定でございまして、この件につきましても、先般の閣議におきましてもこれが話題になりまして、今回の経済計画の策定にあたりましては、労働省を含めました各省が持っておるところの考えなり計画なりというものを、これを十分今回立案さるべき経済計画に織り込んでいきたい、こういうこれは局長、長官のお話にもございましたし、総理も同じ趣旨のことを申しておりましたので、私といたしましても、労働省考え、あるいは今後どういうふうに労働の立場から日本経済というものを持っていくべきかというようなことにつきましては十分反映をいたしてまいりたい、かように存じておるのでございます。この点につきましては、また逆に、逆な面から申すことになるかと思いますが、今国会で、御承知のとおり、御審議をわずらわしております雇用対策法案におきましても、雇用に関する基本計画というものと経済計画というものが相講和して当然いくべきものであるということを明文をもって記しておりまするし、また、この計画は閣議において決定をすべきもの、したがって、また、政府全体として責任を持って計画の遂行に当たるべきもの、こういうたてまえを今回は明文をもって決定をいたすことに相なっておりますので、そういう面から申しましても、従来ややともすれば、確かに私は経済が主であって、何か労働の問題はその従たる存在であるがごとき感も全然否定し得なかったと思うのでありますが、少なくとも今後におきましては、この労働というものが、いわば経済と対等の立場と申しますか、そういう立場において国策の上においても十分尊重さるべき姿が今回の雇用対策法案等通じて明らかにされていく、こういうふうに私は確信し、また、さような立場において今後の労働行政を進めてまいりたいと決意をいたしておる次第でございます。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ですから、いまのお話に少し雇用の問題が出ましたけれども、前提条件をみな企画庁通産省はつぶしてしまっているようなかっこうなんです。これはきょうの論議ではありませんけれども、私はそれがどうも気に入らないわけでありますが、今度のように、たとえばセメントの問題にしても繊維の問題にしても、私は、労働大臣としては最終犠牲労働者にやるような処理のしかたはけしからぬということを発言されて、そして「通産省企画庁も、政府自身が深くあらゆる行政関係分野から入って、労働者犠牲にして、大衆を犠牲にして企業を維持するようなかっこうのものは食いとめるように労働大臣としてしていただくのが今日の事態ではないか、こう思いますので、その点もひとつ労働大臣の御意見を承っておきたい。
  40. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 私の心がまえとしては、ただいま先生がおっしゃったとおりの心がまえでおるわけでございますが、率直に申しまして、従来、少なくとも、個々の会社が、何と申しますか、いわゆる企業の合理化と申しますか、整理と申しますか、そういうことをやる場合において、どうもこの労働省関係においては、少なくともその実態をキャッチすることが私はおそかったと申しますか、どうもこれはいろいろ事情がございましょうが、私は確かにそういううらみがあると思うのです。ですから、こういう面についても、労働省のほうにおいても十分これは労働省自体が注意をしなければなりませんが、同時に、それぞれの所管劣等においても、そういう問題が起きた際においては、できるだけすみやかに私は労働省のほうにもひとつ連絡もしていただいて、両者が一体となってそれぞれの立場というものについてよく協議をし、もちろん労働省労働者立場というものを十分われわれは問題の解決には反映していく、こういうことに、より一そう注意をいたしながら労働行政を進めていきたいものだ、かように考えておるわけです。
  41. 堀本宜実

    政府委員(堀本宜実君) ただいま藤田委員より御要望がございました点について、通産省といたしましても、今後の考え方について反省もし、なお、かつ、強力にこの問題を取り上げなければならぬと思うのでございますが、特に最近強く主張されておりまする産業構造の改善という問題を取り上げてまいりまする中で、お説のように、労働者の問題をどのように考慮の中に入れていくべきかということについての御指摘がございましたが、これらの問題は、今後の産業構造の体質の改善という立場に立って、企業の運営管理をいたしてまいりまする場合に、やはり労働問題というものを考慮しないということは絶対よくないことでもありまするし、いままでの反省をすべき問題が多々あると私は思うのであります。そこで、経営者としては、特に労働者の利益の保護についての配慮というものをする必要がありますることは申し上げるまでもございませんが、政府としても、個々のケースについて労働者に影響がどのように及ぶかということを十分に考えまして、関係官庁とも緊密な連絡をとって、やむを得ない場合には離職、あるいは就職のあっせん、あるいは転業指導等についての万全な処置を関係官庁とも懇切にとり合う、緊密にその連絡をとり合って、そして不当な労働者に悪影響を及ぼさないような配慮が必要なのではないかと存じておりますので、今後特にそういう方面についての雇用の調整処置というものについて注意をしてまいりたい、かように考えるわけでございます。
  42. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 速記を起こしてください。  他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     —————————————
  44. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 次に、ILO問題に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  45. 山崎昇

    ○山崎昇君 労働大臣に対して、ILOに関して若干質問したいと思うのです。  ことしの三月十七日の本委員会において労働大臣から所信の表明がございました。私もそれ以降、ずっと所信表明とにらめっこしながらいろいろ検討しておるのですが、それ以来、胸にどうもつかえているものが一つある。あるいは、また、気持ちとしては、労働行政で一本抜けているのではないか、こう感じておりますのが実はILOの問題であります。これは所信表明を聞きましても、一言も国際的な労働基準等の問題については触れられておらない。あるいは、また、四十一年度労働省予算を見ましても、国際的な労働基準についての拡充強化という項がございますけれども、これもレーバー・アタッシェを一名ふやしただけであって、予算的にもたいして進んでおらない。こういうことを考えますというと、労働省においては、このILOの問題について熱心じゃないのじゃないか、あまり積極的な姿勢をとっておらないのじゃないだろうか、こう私は疑問を持っているのですが、このILOの問題について、まず基本的な考え方を大臣からお聞きをしたい、こう思うのです。
  46. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) ILO条約の関係でございますが、これは基本的には、あらためて申し上げるまでもなく、ILO自体が、労働条件の改善ということを通じて社会正義を実現していこう、こういうことがねらいでございまして、そのために国際条約を締結して、国際的な労働の基準をつくろう、こういうことでございますから、私は、わが国におきましてもできる限りこの条約を批准をいたして、国際的な基準にわが国の労働条件というものを持っていくよう、努力は絶えずしなければならないものである、かように私ども心得ているわけでございます。  そこで、具体的に本年度の施策として、どうもILOに対する熱意が少ないのじゃないかという御指摘でございます。特にまた予算等の関係から見てもふえてもいないじゃないかという御指摘でございます。予算関係は、これは特にILO関係予算の増加を必要とするという関係も、さしあたりでは、ないかと思うのでありますが、条約の批准の関係におきましても、実はすでに御存じのとおり、わが国が批准をいたしました条約の数等も、大体各国の平均の程度に及んでいるわけです。幾らか下回っておりますが、大体平均のところまではいっている。さらに昨年、私があちらにまいりました際に、ILOの事務当局者から、二、三の条約について、ぜひ日本でも批准をひとつ考えてくれぬかという趣旨の話が、これは正式ではございませんが、会食の席上でそういう話を受けたことも事実ございます。したがいまして、私は帰りましてから事務当局にも命じまして、これらの条約について関係各省とも協議をすみやかに進めまして、できるだけ早く批准のできるように努力を促してまいっているのでございます。中には大体問題はないと思われるものもございますし、また、中には他省の所管の関係で、どうも若干不十分であるという点もございます。あるいは、中には、また条約の解釈等についてどうもまだ疑義がある、こういったようなこともあるものもございまして、具体的に、確かに私の就任以来、どの条約を新たに批准したというものもないことも事実でございますが、内部的には、いま申しましたような各般の問題の所在を明らかにしながら、また、関係各省とも十分連絡をとりながら、鋭意批准に進み得るように努力をいまいたしているところでございます。
  47. 山崎昇

    ○山崎昇君 大臣から、いまILOの問題についてはずいぶんやっておられるというような趣旨の答弁なんですが、日本がILOに復帰いたしましたのは、御存じのとおり、一九五一年なんですね。一九五一年から今日まで、大体もう十五、六年たっているわけですけれども、その間に、私の調査に誤りがあれば御指摘いただきたいが、すでに条約では二十一ぐらい、勧告についても三十一ぐらいのものがILOの総会で通過をして、それぞれの国に批准方をやってもらいたいという要望になっておるわけですが、今日まで十五、六年の間、ただの一本も日本では批准されておらない。それは古いもののうちで、八十七号条約だとかそういうものはございますけれども、一九五一年に復帰して以来以後に採択されたものについては、ほとんど日本では批准されておらない。ですから、幾ら大臣から、重要視をしておりますとか、あるいは積極的に考えておりますという答弁をいただいたとしても、現実的には何も進んでいないのじゃないか、こう私どもやはり判断をしなければならないと思うのです。そういう意味で、どうして今日まで一本も批准ということができないのか、また、どういうふうに労働省では進められておるのか、もう少しひとつ聞きたいと思う。
  48. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先生すでに御承知のとおり、ILOが採択しました条約は百二十四、採択いたしました勧告は百二十五でございまして、条約の一国当たりの平均の批准数はただいま二六・九と、こういうことに相なっております。そこで、日本はどうかと申しますと、日本におきましては、戦前に十四、戦後において十一、合計二十五の条約を批准いたしておるわけでございますが、ただいま先生が、少なくとも近年非常に批准が進まぬじゃないかというお話、また、どうしてそうなるのかというお話でありますが、大要は先ほど私が申しましたとおりでございますが、詳細につきまして官房長から答弁をいたさせます。
  49. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいま大臣から申し上げましたが、先生の御質問の中で、戦後できた条約で批准したものはないかと、こういうお話でございましたが、戦後日本が再加盟以前にできました重要な条約につきまして、五つ戦後再加盟以降批准をいたしております。なお、内部的な検討の点につきましては、一々申し上げますと多くなりますので、二、三の例をとりまして申し上げますと、昨年お願いをいたしまして成立いたしました労働者災害補償保険法の改正に際しましては、百一百万条約の中の業務上災害に関する部分というものを模範といたしまして、それに即するという方向で、法律改正に際しましては十分その辺を含めて検討さしていただいて原案をつくったというような次第もございまするし、さらに、たとえば一号条約の労働時間の問題等につきましては、ただいま中央労働基準審議会で労働時間問題一般について御検討願っておりますが、その中ででも、この問題も含めて御検討いただくというような事務的な進め方をいたしておるわけでございます。
  50. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま数字的にあげられてお答えになったのですが、私のさっき言ったのは、日本が復帰した以降に採択されたもので一つも批准したものはないじゃないか。それは復帰する以前に採択されたもので、いま説明ありましたように、批准されたものは私も知っています。しかし、日本が戦後、経済が復興して、そうして世界の五大強国とやら、あるいは工業の水準ではかなりの資本主義の国としても発展した国といわれながら、この発展した日本で、労働基準に関する国際的な取りきめがあまり進んでいない。それから、内部的にはずいぶん検討されていると言うが、一体それはいつどういう結論が出て、いつごろまでにどうされるのかということも何も明らかにされていない。ですから、大臣の所信表明をずっと私は去年もことしも見ておりますが、このILOの問題について一言半句も触れていない、公式の場面においては。そういう点について私は遺憾に思っておりますが、もう少しあなた方の決意を聞きたいと思う。
  51. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ただいま先生の御質問を取り違えまして、たいへん失礼なお答えをいたしましたが、お話のように、日本が再加盟しましてからあとからできましたものにつきまして批准した件数はございません。戦後でも、それ以前のものでございます。考え方といたしましては、いずれも重要な条約ではございまするけれども、まあそれなりに基本的なものから取り上げてきたという経過がございまして、古いものが先になったというような事情であったかと存じます。考え方といたしましては、お話のように、大臣からまた申し上げましたように、ILOが労働条件の改善を通じて社会主義を実現するという基本精神に即して、わが国もこれに当初以来協力し、戦後早く再加盟しておるわけであります。われわれといたしましても積極的に批准ができますように、事務的な努力を今後とも進めてまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  52. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま積極的に進めたい、こういう御返事なんですが、これは皆さんにILO憲章の前文その他言うことは、あるいは釈迦に説法かと思うのですが、私も少し読んでみると、ILOの前文におきましても、「人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となる」と、こうあるのですね。そうすると、日本がILOの常任理事国になってみたり、あるいは世界でも有数な経済発展した国という観点から考えても、このILOの条約というものを批准をしないというととは他の国の障害になるのではないか。そうすると、日本が一九五一年に復帰をして、このILOの前文、その他憲章を詳細にあなた方もお調べになったと思うのだが、こういう前文に違反を私はするのではないかと思うのだが、その点どうですか。
  53. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) ILOの目的等につきましては、ただいま先生からお話がございましたが、その目的を達成するための重要な手段といたしまして、具体的には先生おっしゃるように、一カ国だけがいい条件を採用しようと思っても、ほかがしないとできないという観点から、ILOが一九一九年に創立されて以来、条約をつくって、これを最低基準として各国の労働条件を引き上げていくというのがILOの仕事の中のきわめて重要なものと思っているという点は、私どもも十分理解をしているつもりであります。したがいまして、それに対しまする方法といたしましては、この批准をするというのは、その結果はもとより望ましいことでございますけれども、国内の実態なり法律制度を機会あるごとにそれに近づけていくということも一つの重要な努力であろうかと存じます。もちろんそのことがまた批准を可能にするわけでございます。そういう趣旨で先ほど一、二の例を申し上げましたけれども、従来とも努力してまいったつもりでございますが、今後とも一そう努力をすべきものだと心得ております。
  54. 山崎昇

    ○山崎昇君 ILO憲章の十九条の五号の解釈について労働省の見解をお聞きしたいと思うのです。   それは、条約が採択をされますとILOから各国に通知がくるわけです。それから少くも一年以内にこの権限ある機関にかけなさいということに憲章ではなっているのですが、この十九条の五号の(b)にいう「権限のある機関」というのは、あなた方どういうふうにお考えになりますか。
  55. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) わが国においては国会であると考えております。
  56. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、この十九条の五号の(b)によりますというと、「各加盟国は、立法又は他の措置のために、総会の会期の終了後おそくとも一年以内に、又は例外的な事情のために一年以内に不可能であるときはその後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にも総会の会期の終了後十八箇月以内に、条約を当該事項について権限のある機関に提出することを約束する。」と、こうなっていますね。そうすると、あなたのほうに通知が来たら批准をいたしましょうか、しませんかということについて国会にはからなければならぬのですね。そういう処理のしかたはどうされておるのか、まずお聞きしたい。
  57. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) お話のように、ILOで条約が採択されました場合には、政府といたしましては、権限ある機関、すなわち、日本の場合には国会にその条約について報告をする、かようになっておりまして、日本の場合には、通常、御承知のように、ILO総会は六月に行なわれますので、これの翻訳その他手続をとりまして、次の通常国会に提出をさしていただいております。ただ、この解釈といたしまして、これはILOの文章の中にも明らかにされておるわけでございますが、提出をするというのは、批准の承認を受けるとか受けないとかということは全く関係がないので、かような条約が採択されましたということを御報告申し上げるという趣旨に従来とも解釈をされて、各国ともさように取り扱っておるわけでございますので、私どもとしても御報告を申し上げさしていただいておるということでございます。
  58. 山崎昇

    ○山崎昇君 それはしかし、少しおかしいのじゃないのですか。それなら、なぜこれだけの規定、条文というものを設けて、権限ある機関に提出をしなさい、提出するというのは御報告をしなさいということにあなたのほうは解釈しておるというのだね。それは少し私は国会軽視でありゃせぬかと思うのですね。なお、そのあとの条文を見ますと、国会で判断をして、これは採択されなかった、批准されなかったその旨については、これまたILOの本部に報告しなきゃならないのですね。そして、その後はILO本部の希望する方向に従って報告をするということになっているわけだ。そうすると、ずっとこの条文をながめてみると、単にILOでは総会で採択をいたしました、そしてそれを各国に通知いたしました。受けた各国は、ただ、こういうものが総会で採択されましたということだけで国会に報告し、済んでしまう。これではせっかくのILO憲章で設けたこの批准その他の手続というものが無にひとしいと私ども思うのですね。そこで、権限ある機関に出すということは、政府が判断をして、そしてどうしても国会でまだ批准すべき段階ではないとか、あるいはもっとあとで批准すべきだとか、そういう結論が出た場合にはそれでやむを得ないと思うのですが、ただ報告だけにとどめるというのは、どうも私はこの解釈は納得いかないのですよ、そのあとの条文との関連から。もう少しひとつ聞きたいと思います。
  59. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) これは先生のような御解釈もあるいはあり得るかとも存じまするけれども、ILOの条約及び勧告の適用に関する専門家委員会というのがございまして、そこでILO憲章、条約の一応の解釈をいたすわけでございます。そこで出しております文書の中で、条約及び勧告を権限ある機関に提出する義務は、条約を批准し、または勧告を受諾すべきであると提案する義務を含むものではない、こういうことになっておるわけでございます。わが国の場合、諸外国もいろいろ手続がございましょうが、考え方といたしましては、ILOの条約の解釈に関しまする限りは、ただいま私が申し上げましたように、国会で御報告を申し上げたものをどのように御判断になるか、またこれは国会の主体的な御判断の問題でございまして、行政府としては御報告をするということが義務づけられておるということに従来とも、あるいはILOもそういう解釈をいたしておりますということでございます。
  60. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、重ねてお尋ねしますが、この十九条の五項の(e)はどういうことになりますか。「加盟国は、当該事項について権限のある機関の同意を得なかったときは、条約で取り扱われている事項に関する自国の法律及び慣行の現況を、理事会が要請する適当な」云々と、こうなるのですね。そうすると、同意を得なかったときにはというように限定をされておるのだが、ただ報告であれば、ただ報告を聞きました、こういうことにしかならないのですね。そこで(b)項と(e)項との関連について労働省の見解をお聞きしておきたいと思います。
  61. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) お話の(e)項でございますが、(e)項の取り扱いは、毎年これを出すとか、あるいは条約が採決されてから一定期間に出すとか、あるいは権限ある機関に提出してから一定期間以内に出すということではないのでございまして、この取り扱いは、毎年一定の条約をILO事務当局がきめまして、この条約については批准されてないのはおまえの国の制度と条約とどう違っているんだ、おまえの国の制度を提出してこい、こういうことを指定して言ってきましたときに出すわけでございまして、先ほど先生の御議論になっております採択された条約ということとは直接関係がないわけでございます。したがいまして、両項の間に私は矛盾は存在しないと考えております。
  62. 山崎昇

    ○山崎昇君 どうも私にはわからないのですね。この(b)項では、先ほど申し上げたように、権限ある機関に提出しなさい、そして(e)項では当該事項について権限ある機関の同意を得なかったときなんですね。あなたのほうで国会にはからなければ当然同意がないわけです。だから、そうすればその国の慣習なり、あるいは現存する慣行等について報告しなければならぬ、こういうことになると思うのですね。私はやはり(b)項と(e)項とを関連して言えば、当然一年以内、おそくとも一年六カ月以内に批准についての手続を求めるのが権限ある機関に対する提出ということばじゃないか、どうしてもこう思わざるを得ないのですが、もう一ぺんお聞きしておきたい。
  63. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) お話でございますが、私の御説明があるいはへたなせいかと思いますが、採択されました条約につきましては権限ある機関に提出するということと、いま御指摘の(e)項との間に論理的な因果関係を持って置いているというようにはILO自体が解釈をいたしておらないわけでございまして、先生のような御見解もあるいはあり得るかと思いますけれども、従来のILOの扱いといたしましては、採択されたものを提出する義務というものと、この(e)項によりまして未批准条約について現行法制がどうなっておるかということを各国に問い合わせるということは全然別々に取り扱っている。採択のほうは、お話のように、おそくとも一年半以内に出しなさいということで、期限がついておりまして、これはそのようにはっきりいたしておる。(e)項のほうは、ILOから言ってきたときに、この条約ということで前に採択されたのが何年前に採択されたということと関係なしに取り扱うようにILOで行なっておるわけでございまして、その意味では、現在のILOの解釈は、(b)項と(e)項との間に因果関係をつけて扱っていない。先ほど申し上げましたように、専門家委員会の文書の中でも、提出することとこれを受諾することとは別問題であるというふうに明らかに書かれておるわけでございます。
  64. 山崎昇

    ○山崎昇君 解釈論は、きょうはあまり時間がないようですから、これ以上やろうとは思いませんが、機会をあらためてまた全般的な文章についてお尋ねしたいと思うのですが、そこで、当面、来月の十四日にこのILO八十七号条約に基づく政令の施行をめぐって、いろいろ組合とあるいは政府との間にも動きがあるようなんです。そこで、私は、この機会にお聞きしたいのは、昨年ILOの特別委員会で修正案が出されておるわけなんですが、なぜそういう修正案が出されて、そしてこの内容について私も印刷物を持っておりますが、どう労働省としては判断されたのか、まずお聞きをしたいと思います。
  65. 三治重信

    政府委員三治重信君) なぜ修正案が出されたかということでございますが、あるいは的確な答えにならぬかもわかりませんが、経過的には、結局ILO特別委員会で強行採決が行なわれて、そしてそのあとの結局事態収拾のために議長あっせん案が出された。それに従いまして、いわゆる何と申しますか、一部のものについて施行延期のためのただし書きの修正が行なわれた。そのただし書きの修正が行なわれたのは、公務員制度審議会で問題になった点を審議してもらおう、こういうことで施行延期のただし書きがつく修正が行なわれた、こういうことでございます。
  66. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、修正案が出た意思というのは、あのまま法律を施行するにはILOの条約との関連から問題がある。そこで、そういう問題については解明をしてから当然国内法等は施行すべきだ、こういう理解のもとに三党修正が出たんだと、こう理解していいんですね。
  67. 三治重信

    政府委員三治重信君) これは各党の申し合わせでございますので、あるいは各党によって理解のしかたがあるいは違うことがあるかもわかりませんが、政府としては、当時の国会修正によって、その意見に従って、公務員制度審議会をできるだけ早く発足させるように努力をし、その発足したときには、まず最初にこのことについて、法に定める労働基本権の諮問と同時に、いわゆる施行を延期した部分についてはできるだけ早く答申をほしいというふうに諮問をしているわけでございますので、政府としては、大体その修正の趣旨国会審議経過は十分尊重して今日まで処置をしてきていると、こういうふうに思っております。
  68. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうするとあれですね、さっきも申し上げたように、条約と法律との間に問題点がある。だから、その問題を解明をしてから国内法等は全面的に施行すべきである、こういう見解になるわけですね。そうすると、その問題がいまだ解明がなされておらない。それはどういう事情か別にしましても、条約を批准をして、それに関連する法律を施行するにはまだ問題としては残っておる、こういうことに私はなると思うのです。したがって、その問題が公務員制度審議会等で十分解明をされて、その後でなければ私は政令等の施行というのは無理なんじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  69. 三治重信

    政府委員三治重信君) 当時の改正案についての施行は延期されたのですが、問題があるということで施行延期になったと政府は解釈しておりまして、先生がおっしゃるように、ILO条約にあの改正案でもなお違反があるというふうには考えていない。政府としては、ILO条約の八十七号を承認してもらうからには、それに抵触しないように国内法を整備する、こういうたてまえで出しておるわけですから、政府としては、改正案が八十七号条約に抵触し、あるいは精神にもとるということは、最少限いかなる部分においてもないという確信のもとに提出して御審議願った。しかし、国会においての取り扱いとしては、問題点があるので、審議会で審議した上でと、こういうふうになったので、政府は今日そうしている。こういうことで、政府にお尋ねになりますと、政府としてはあのいま施行延期になっている部分についても八十七号条約に違反しているとは決して思っていない、あれで十分合致しているものと考えている。ただ、問題点があるという点についての国会の御意思でございますので、審議会で審議していただいておる、こういうことでございます。
  70. 山崎昇

    ○山崎昇君 いまの答弁から、私はやっぱり結論的にものを言えば、政府では何も矛盾をしていないというふうにお考えだと。しかし、国会では審議過程を通じて問題があるという判断をして、政府に対してこういう機関で議論をして、その結論が出るまでは政令等の施行は延ばしなさい、こういう意思が固まって、いま公務員制度審議会でやっておるわけですね。したがって、私ども国会立場で言えば、まだそれらの問題は解明されておらないのに、政府は、何か新聞によると、来月の十四日に政令を出す、こういうものの考え方は、これはもう国会軽視になってくるのじゃないか、国会の意思に反してくるのじゃないか、こう私どもは思うのですが、大臣いかがですか。
  71. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 結局この問題は、公務員制度審議会でいついかなる内容の答申をくだされるかという問題であろうと思います。このことは、あらためて申し上げるまでもなく、審議会の関係は総理府の所管でございまして、私ども直接タッチしておるわけじゃございませんが、われわれが聞き及んでおるところでは、審議会におかれましても非常に御熱心に御審議をいただいておるそうでありまして、なるほど来月十四日というのですから、あまりこの批准施行の日まで時日のないことも事実でございますが、しかし、それにいたしましても、まだ若干の期間もあることですし、せっかく一生懸命審議をしていただいたことですから、それらがいまおっしゃるとおり、どういう時期にどういう内容のことがされるかわからぬ現時点において政府考えというものを申し上げることも、これはまた不適当だろうと思いますし、実はそういう点については、まだ政府部内におきましても、いままでのところ別段御相談もいたしておりませんし、これが現況でございます。
  72. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうするとあれですか、労働大臣としては、まだ若干日にちがあって、公務員制度審議会で検討されておるから、どういう結論が出るかわからないので、いまここで直ちに政府の態度としてどうこうということは言われない。しかし、少なくとも国会で三党修正で出たこの決議だけは尊重していくというふうに私は理解をしたのですが、それでよろしゅうございますか。
  73. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) あの際修正案を提案されたこの提案者の議員の皆さんの御説明等の速記もございますが、それを見ましても、この施行をたな上げされた部分の施行期日というものは、形においては政令にゆだねられておるわけですが、しかし、両院における審議過程等を十分に政府はしんしゃくすべきものと期待している、まあ簡単に申すとそういう趣旨のことを申されております。したがって、政府といたしましても、この提案者の申されておるところを十分くみ取って、すなわち、この審議会における答申というものを十分尊重して善処するという心がまえではもちろんあるわけであります。
  74. 山崎昇

    ○山崎昇君 肝心なところになるとわかったようでわからぬことになるのですが、私がさらに聞きたいのは、この三党修正で栗山礼行さんが提案している内容を見ますと、第三者機関たる公務員制度審議会で慎重に御審議願い、その答申を得るまでの間、それらの諸条項につきましてはその施行を延期するとともに、答申が行なわれた場合はこれを尊重して所要の改正を行なおう、これが公式場面における文章なんですね。そうすると、私どもはこれをすなおに見るというと、公務員制度審議会から答申が出なければ政令の施行はできない、なおかつ、答申が出たらそれに従って改正をして、その後に政令を出すのだ、こういうふうに私は解釈するのですが、それに間違いありませんか。
  75. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) その点が、先ほども申しますとおり、われわれは国会のこの審議経過、特にこの提案者の国会で説明されておるところ、これは十分尊重してやる。したがって、この審議会の御意見は十分尊重するつもりでおりますと、この点ははっきりいたしておるのです。ただ、その審議会の答申というものが、今日まだ若干の時日の余っておる際に、しかも、また御熱心に御審議をいただいておる今日この時点において、もし出なかったらどうするとか、そういうこと、その早まったことをこの席で私が申し上げるということは適当でない。しかも、冒頭申しましたとおり、私は全然関係ないとは決して申しませんが、審議会の運営と申しますか、審議会は、御承知のとおり、独自の立場でやっておられるのですが、総理府の所管でやっておるわけですから、私の立場からこの審議会の答申が出なかったときはどうだというようなことにどうも私がここで答弁するということは適当でない、そういうところから先ほど来申したようなことを申し上げたわけであります。
  76. 山崎昇

    ○山崎昇君 ほんとうは総務長官にこれはお尋ねすべきことかもしれませんが、これは何といっても、ILOの問題については労働省が総元締めですから労働大臣に聞いているのですが、そうすると、新聞紙上等で、何か答申が出なくても、六月十四日がきたら政令を出すんだという報道がありますが、あれはそうすると誤りですね。
  77. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 新聞記者の諸君がどういうところからそういう記事を出したか、私は存じませんが、先ほど申しますとおり、政府部内において、まだ答申が出なかった場合どうするなどということを前提とした相談をしておらないということは事実でございます。
  78. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、労働大臣としては、ああいう新聞の記事については、それは関知しないことであるということが一つと、それから、答申が出るまでは、三党の修正案どおり、それは施行するなんということは考えておりませんと、こういうふうに私は理解をするのですが、それでいいですか。
  79. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) そこがちょっと微妙なんですが、もうこれははなはだ失礼ですが、何回お尋ねを受けても、今日の段階においてそのことを私の立場から、いま政府も現に相談していないのですから、私が先走ってこうするああするというようなことを申し上げかねるわけでございますので、御了承願います。
  80. 山崎昇

    ○山崎昇君 私がしつこいようなんですが、私どもいろいろ政府動き等を見るのは、いまのところ新聞しかないのですね、こういう公式場面で政府の見解を聞くというのはなかなかできないわけです。ですから、先ほど申し上げたように、総務長官の所管事項かもしれませんが、何といっても労働省労働者の味方だということになっているわけですから、そういう意味からいって、労働者の諸君にとって問題のある個所をそのままにして、そうしてこの政令を施行するということは、私はたいへんなことになるのじゃないか、こう考えるので、せめてひとつ労働大臣の決意だけでも聞きたい。そして閣議においては、ああいう新聞報道がなされているが、あれは違う、三党の修正案どおり、政府としては答申が出た後でなければ意思表示はしないのだ、こういうことをひとつ閣僚の一人である労働大臣から明確にこの委員会にしてほしい、これが私どもの考えなんです。(「審議会に失礼だよ。」と呼ぶ者あり)
  81. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) もう少し時期が切迫して、政府としてもどういう方針で進むかということをきめなければならぬ段階に至れば、私は私なりの考えもありますから、これは十分言うつもりでございますが、しかし、今日の時点でいまから私が先回りをしてそういうことを言うことは、ある意味では審議会の運営にもこれは影響しますでしょうし、いまお話のありましたように、あるいは、ある意味では失礼にもなりましょうと思いますので、私は御遠慮させていただきたい、かように思います。
  82. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  暫時休憩いたします。再開は午後一時四十分といたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  83. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  失業保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続き、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  84. 森勝治

    ○森勝治君 先日私の質問の途中でありましたが、労働省側の答弁をめぐりまして、先輩の皆さんと労働省側でやりとりがあったわけでありますが、そういう関係上、お約束の時間がきまして、私の質疑を途中で先般はやめたわけでありますが、きょう残りの問題について質問をしたいと思うのであります。  この前も申し上げたわけでありますが、今度の改正案というものは、一般失業保険金の改正があったので、それにならって改正をするということで出されてきたわけでありますが、私は、先般は全般論としての質問をしたわけであります。したがって、きょうも全般論の問題から具体的なこの提案の問題に入っていきたいと思うのであります。たとえばこの前の話で出ました掛金の問題でありますけれども、どうもこの前の御答弁だと納得がいかない。私は昭和二十四年の線に戻るべきではないかという意味のことの質問をしたわけでありますが、このままでまいりますとだんだん後退をしてしまう。むしろこの辺については労働者側三ということで、政府経営者側が七という、むしろ二十四年のこの制度の実施当初の線にさかのぼってやっていく、そういうふうな前向きの姿が望まれるのではないかと思うのでありますが、この点について御答弁をわずらわしたい。
  85. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇失業保険の場合について見ますと、国の負担割合は三分の一でこの制度が始まって以来、その負担割合が踏襲されておりますので、その辺の関係は別段後退はしていないと私どもは考えております。
  86. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、こまかい失業保険の問題に移りますが、二十四年の創設当初は、五円の保険料は六〇%、すなわち三円事業主が負担をし、労働者側は二円を負担して、その比率は六対四であったわけですね。そうすると、三十二年の改正から比率が五対五という、折半ということになったわけでありますから、当然これはもう労働者側にとっては、比率の面では負担過重になっているのではないですか。
  87. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 確かに御指摘のように、二十四年当初には保険料が五円で、使用者が三円、労働者が二円というような負担割合であった時代がございます。これは私どもとしましては、五円を折半負担して二円五十銭という端数をつけるわけにいきませんので三円、二円というふうにいたしたわけでありますが、考え方としては折半負担という考え方が大体原則的に貫かれておるというふうに考えて今日までやっておるわけでございまして、当初の六、四という比率は、たまたま端数整理の関係でこうなっておったというふうに理解いたしておるわけでございます。
  88. 森勝治

    ○森勝治君 重ねて質問したいのですが、働く者、労働者が病気あるいはけが、出産、死亡、老齢、失業等に対しては、経営者または政府等が全額を負担してこれらの方々の生活を保障するのが当然のたてまえだと思うのでありますが、その点についてはどう考えておられますか。
  89. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 国の負担割合の問題は、これは各国それぞれ事情が異なっておりまするが、大体先進国の事例を見ますと、労使の負担割合は折半の場合が非常に多いわけでございます。たとえばイギリスを見ても、ドイツ、カナダを見ても折半負担、国庫負担もいろいろなケースがございますが、大体四分の一の国庫負担というふうなケースが多いわけでございまして、全額国庫負担というのはほかの国の場合にも例を見ないように私ども理解いたしております。
  90. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、さらにお伺いしたいのですが、アメリカとイタリアは全額負担をしておるように承っておりますが、どうですか。
  91. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘の二国については全額使用者が負担をいたしまして、国庫負担はゼロでございます。そのかわり、任意退職については給付をしない、合理化解雇その他の非任意的な解雇について支給をしておる、こういう制度をとっております。いろいろと負担の問題と給付内容と相関関係があるように私どもは考えておるわけでございます。
  92. 森勝治

    ○森勝治君 フランス等は失業手当ですか、失業手当制度ということで全額国庫が負担しておりますね。相違ありませんか。
  93. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) フランスにおいては保険制度でなくて、手当制度をとっておりますが、この場合には国が全額を負担しておる。これはあくまで失業手当制度をとっておって、保険制度ではない、こういうふうに解されるわけでございます。
  94. 森勝治

    ○森勝治君 いずれにいたしましても、アメリカやイタリアやフランスというのは、使用者もしくは国が労働者の失業に対しては、そういういまお話が出たような措置をとられておるわけであります。ところが、イギリスやドイツや日本労使が折半ということになっておりますね。どうしてこのように、それぞれのまあ国情がもちろん違うのでありましょうけれども、この失業保険、失業者に対する国の態度、措置、方針というものが各国まちまちなのか、ひとつお伺いをしたいと思うのです。
  95. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これは国情によって、また、その国の歴史的な事情によっていろいろ失業保険制度については労使並びに国庫の負担の割合が違っております。アメリカ、イタリアのように使用者負担の国があるかと思いますれば、スイスとかスエーデン、デンマークのように、労働者負担で、国がさらに五分の二程度の負担をしておるというような国もございまして、各国の失業保険制度は非常に国情によって違っておる。どの国の例が一番わが国の実情に適するかどうか、これも比較検討をしてみなければ、そう簡単に結論が出ない問題ではないかと思いますが、私どもとしましては、現在の制度はわが国の実情に大体マッチしているのではなかろうかというふうに考えております。
  96. 森勝治

    ○森勝治君 この比率の問題については、この前の私の質問に対しましては、現行の制度でまずまず十分対処していけるのではないかという局長の答弁があったのですが、そもそも失業というものは、本人の任意退職の場合は別として、一般的にはその当時の経済界の動向や、午前の部で出されました小野田セメントの例に見られるごとく、経営者の放漫政策や失敗等によって労働者がちまたにほうり出されるわけであります。したがって、そういう面から見ますならば、国や経営者というものは、その国の産業を興隆させる最も重要な人的資源であります労働者に対して生活の保障を与えることは、国並びに経営者として当然の責務であると思うのであります。ところが、昭和二十四年度に始まったこの制度というものは、この保険料率につきましては、いま国が四分の一、労使が四分の三でありますから、そうなりますと、しかも、この場合におきましては、日雇いの場合においては五対五の比率でありますから、そういう面から見ますならば、必ずしもこの労働者の生活を守るという国のあるべき姿、経営者のあるべき姿というものがあらわれていないような気がしてならぬのであります。したがって、アメリカやイタリアで見られるごとく、あるいはもちろん制度は違うでありましょうけれども、フランスの国庫負担というような問題に見られるごとく、先進国の例をとりましても、いまや世界のいずれの国におきましても、働くものが尊重され、働くものの発言力が非常に強まってきた、これはもういなめない事実であります。したがいまして、私どもといたしましても、当然一人の飢えたる国民のなからしむるための社会保障政策の推進をはかってしかるべきで、しかも、これは強力に展開すべきであろうと思うのであります。したがって、保険等の料率につきましても、国や経営者がもっともっと負担してしかるべきだと思うのでありますけれども、私は、いま冒頭に触れました先日の私の答弁については、現行このままで十分ということであるならば、私はその点について、重ねて労働者側の負担の過重にならざるようにということで質問をしておるわけでありますので、この点については、あらためてもう一度そういう御検討を願えるかどうか、御答弁をわずらわしたい。
  97. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一般の場合と日雇いの場合と多少ニュアンスが違うのでございますが、日雇いの場合には、御承知のように、三分の一の国庫負担ということでございまして、労使は折半負担という原則を今日まで貫いておりますが、この負担割合については、御承知のように、社会保障制度審議会におきましても、私どものほうの中央職業安定審議会におきましても、負担のあり方については再検討をすべしというふうな希望意見がついておりますので、この点は私どもも率直に今後こういった基本的な問題について再検討を加えてまいりたいと思っております。ただ、この前先生から御指摘がありました国庫負担の問題について、これはまあいろいろな経緯がございまして、今日のようなことで一般保険については四分の一国庫負担に切り下げられた経緯がございますが、この点は、私どもとしても、この前も答弁いたしましたように、必ずしも賛成しかねる面がございまするけれども、現状においても、なおかつ保険制度を運用する場合に現在の負担割合で十分対処していけるというふうな見通しを持っておりますので、この点については、せっかく御指摘があり、私どももそれに同感な点もございますけれども、いましばらくこういった現行の負担割合で何とかやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  98. 森勝治

    ○森勝治君 保険の給付額の問題について聞きたいのですが、退職当時の賃金の六〇%保障ということでありますが、現行の物価等からやっぱり勘案いたしますと、少なくても八〇%程度保障しなければやっていけないのじゃないかと思うのであります。さらにこの失業保険の給付対象というものに中高年層の問題を当てはめてみますと、もちろん国が中高年層の雇用ということで重点的におやりになるそうでありますから、所期の目的に到達しておるやに錯覚が起こりがちでありますけれども、いずれの安定所におきましても中高年層の就職というのは頭痛の種でございます。これは政府が若年者、青年は大企業に、中高年層は小企業にという安定紹介の方法をとるということをいつか聞いたことがありますけれども、そういうことはさることながら、なかなか中高年層の場合には、再生産の場に立つのにもろもろの条件があって、思うようにまいりません。したがって、なかなかそのわずかの期間で再就職はむずかしくなる。これが偽らざる現状の姿ではなかろうかと思うのであります。したがって、現行の給与期間が一年ということでありまするけれども、当然これはもう一年延長して、二年程度にしてやらなければ、せっかく仏つくって魂入れず、国の社会保障の施策というものがそういう面で中途で挫折する、あるいは、また、効果が薄れるおそれがあるのではないかと思うのであります。したがって、私は重ねてこの問題について申し上げますけれども、現行の六〇%の給付率というものを八〇%に引き上げ、その期間一年を最小二カ年間にしなければならぬと思うのでありますが、その点についての御答弁をいただきたい。
  99. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 現在の制度では、御指摘のように、前職賃金の六〇%保障という考え方でできておりまするけれども、低所得層に対しまする生活保障という観点からいたしまするならば、六〇%原則を徹底するというやり方は矛盾があるじゃないかという御指摘のようでございますが、この点は衆議院においても御指摘がございまして、私どもとしましては、この低所得層対策といたしましてその点について検討をいたしたいというふうに衆議院でも答弁をいたしております。ただ、いまの六〇%水準をそういう低所得層の生活保障という問題に限って考えるのでなしに、全般的に八〇%に上げろということになりますと、これはたいへん問題がございますし、国際的な水準からいっても、六〇%水準というのは大体先進国の最高水準というふうに私ども理解いたしておりますので、ただ、賃金事情が諸外国と違いますから、低所得層についてだけそういった考え方で再検討をすべきではないかというふうなことは強く考えておるわけでございます。  さらに、給付の期間について御指摘がございましたが、これはまあ現行の給付期間は大体最高二百七十日という期間でございますので、この間で再就職の問題は片づけていきたい。さらに、この期間を過ぎても再就職ができないような中高年の場合におきましては、これから御審議願いまする雇用対策法に基づきまして、新たに雇用率の設定という問題も創設されますし、それから、転換給付制度も一そう充実されますので、これでもってその後の問題は積極的に対処してまいりたい、かように考えるわけでございます。
  100. 森勝治

    ○森勝治君 この「失業保険制度の現状と問題点」というので労働省が端的に問題点を指摘しておりますが、この中身を読みますと、季節労務者については悪い措置をとられるようなおそれを私は抱いてどうもしようがないのでありまするが、それはどういうことかというと、どうもこういう文章、たとえば季節的受給者増加の傾向云々とかありますけれども、こういう文章上からの表現を私流に推察いたしますと、どうも失業保険の受給要件というものですね、いわゆるここにさかんに「通年雇用」ということばが飛び出しておりますが、こういう問題から見ますと、この受給要作というものを一年にしてしまって、事実上取り上げてしまうような、そういう潜在意識が働いているような、これは私の受け取り方が邪推した受け取り方かもしれませんけれども、そういう文章上の表現を、逆に裏側から見ますとそういうようなおそれを抱くのであります。したがって、季節労務者についても、現行の受給要件というものを上回って苛酷な扱いにすることはよもやないと思うのでありまするが、その点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  101. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 季節労務者の保険の扱いについては非常に問題がございまして、各国とも、この問題では、相当悩んでおるわけでございます。といいますのは、失業保険の保険事故というのは不測の事態に対処するためにできておるわけでございまして、季節季節で解雇をされる、退職するというふうに予定されておる場合には保険事故に該当しないというのが保険の一般的な考え方でございます。にもかかわらず、わが国の実情から申しますと、出かせぎその他の季節労働者が多数おりまして、現状においては六十万近い方々がこの種の利用をしているわけでございます。したがって、保険の理屈からいけば非常におかしいわけでございますが、一面においては、やはりこれらの季節労働者が失業保険を適用されているということによってこの失業者の生活の安定をはかっているという実態がございますので、私どもとしましては、この生活安定ということを考えまして、季節労働者に対する保険の適用を除外するというふうな法律改正は、これは理屈は理屈としても、現実はやるべきではないというふうな結論で、この法律改正については非常に消極的に考えている次第でございます。
  102. 森勝治

    ○森勝治君 それでは違った問題を聞きますが、四十一年度の事務費は幾らですか。
  103. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 八十四億でございます。
  104. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、一般会計からの事務費に振り向けられる額は幾らですか。
  105. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一般会計の国庫負担分が四千百万円でございます。
  106. 森勝治

    ○森勝治君 いまの話ですと、八十四億二千八百万円ですね、事務費は。そうすると、一般会計からわずかに四千百万円ということでありますね。
  107. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) そうです。
  108. 森勝治

    ○森勝治君 そうすると、そのほとんど残りは積み立て金の運用利子によってまかなわれているわけですね。そうなりますと、運用利子でありますから、当然これはもとをただせば保険金ということになりますと、こういう運用のあり方が正しいとお考えであるかどうか、お伺いしたい。
  109. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) この国庫負担金が非常に少ないという点につきましては、私どもも必ずしもこれで満足しているわけではございませんけれども、失業保険特別会計、あるいは一般会計の双方の事情から、今日やむを得ずこの程度の国庫負担でがまんしているわけでございますが、御指摘のように、業務取り扱い費については国庫がもつく負担すべきだという御意見は私どもも十分わかりますし、その趣旨で今後国庫負担金の増額を予算編成を通じてはかってまいりたいというふうに考えております。
  110. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、さらにお伺いしたいのですが、二十九条によれば、保険料は、失業保険事業に要する費用に充てるために徴収をするとありますね。さらに三十条では、保険料率を変更する場合には、「保険給付総額と福祉施設に要した費用との合計額」云々、こういうふうにあります。さらにその前段の二十八条ですと、国庫は、予算の範囲内において事務の執行に要する経費を負担する、こういうのが二十八条の定めであります。そうなりますと、このいま私が申し上げました二十八条、二十九条、三十条、こういうものを総合推定いたしますと、事務費というのは、本来は保険料でまかなうというのは当然なくなるわけで、その運営主体たる国が一般会計から当然この事務費は支出すべきものだというのが、前三条を総合勘案した考え方がそういうことに相なります。ところが、いま御答弁がありましたように、八十四億二千八百万円の事務費の中で、一般会計から投入はわずかに四千百万円、そのほとんどの八十三億八千七百万はこの保険料の運用利子でまかなっているというのは、一体これは正しい本保険の運用のあり方であろうかどうか、私は多くの疑問を持つのであります。したがって、そういうことであってよいのか、一つ明快にお答えを願いたい。
  111. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先ほど来、森先生指摘の、事業費に対しまする一般会計からの受け入れ、これが四千百万、これは昨年度も本年度もさようでございますが、これをもっと一般会計から受け入れるべきであって、剰余金等の利子でまかなうのは不当ではないか、こういう御主張でございますが、現在のような運営のしかたも、法律的に申しますならば、これがあながち違法であるとか、あるいは不当であるとか、こう必ずしもきめ得ないと思うのでございます。しかし、確かにこの種の社会保険の性格自体から申しましても、私は、現行のような、現行の程度の一般会計の負担でやっていくということにつきましては、私自身が、率直に申して、むしろまあ不満と申しますか、必ずしもこれは妥当だと、こう言い切れないと、かように私も思うのであります。でございますので、今年度予算の編成等にあたってこれが改善ができなかったことは、はなはだ恐縮でございますが、自今、いま申しましたような考え方に立って財政当局とも十分話し合いをいたしまして、この一般会計の負担というものを今後できるだけひとつ増額をしていただくと、こういう方向で最善の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  112. 森勝治

    ○森勝治君 大臣からただいま前向きの答弁をいただいたわけでありまするが、いずれにしても、事務費八十四億二千八百万のうち、わずか四千百万円しか支出していないというのはこれはおかしい話で、運用利子でそれをまかなっているなんということは、これは考えただけでも、だれが見てもおかしなわけであります。そうして、そういうことをやっておきながら、片一方で保険料を値上げしていく、これは本来あるべき姿ではございません。しかし、大臣が、いまそういうことで、とにかく事務費というものは国庫からもっと出すというお話でありまするから、これはひとつしかとお約束願って、今後こういう運営のないようにひとつやっていただきたいと思うのであります。  そこで、次の問題に移りますが、日雇い労働者のうち、この改正案によって一級になる方々は何万おられるのか、二級は何方か、ひとつお伺いしておきます。
  113. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 改正後の一級の適用を受ける者が、比率において三四%というふうに組んでおります。
  114. 森勝治

    ○森勝治君 私の申し上げたのは率じゃなくて、員数でお伺いしたわけですから、そういう御答弁をいただきたい。何万ですかということです。
  115. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 受給者約二十万と想定しておりますが、そうしますと、約七万という見当でございます。
  116. 森勝治

    ○森勝治君 私の質問で申し上げたのは、一級と二級それぞれ該当者は何名かという質問であります。
  117. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一級を差し引きますと二級になるわけでございまして、二十万から七万引いた士二万程度が二級になるわけでございます。
  118. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、それらの方々で八百四十円をこえる賃金を受けている方々はどのくらいおりますか。
  119. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) ちょっといま計算させておりますので、その点の御猶予をいただきたいと思います。
  120. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、いま二十万というような御答弁をいただいたのでありますが、日雇労働者健康保険、いいですか、失業保険ではございません。健康保険の該当者ははるかに数倍にのぼるわけでありますけれども、日雇労働者健康保険の適用該当者と、いま御答弁いただいた日雇い労働者のこの失業保険該当者の数があまりにも隔たりがありますけれども、それはどうしてそんなに大きな何十万という差が出てくるのか、ひとつ対照をして御説明をいただきたい。
  121. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇健保の被保険者数は約七十万でございますが、失保の被保険者の数は約四十六万。そこで、御指摘のように、大きな開きがあるわけでございますが、これは御承知のように、被保険者のとらえ方が両保険で違っておるわけでございますが、その第一点は、失保の場合には、日雇い労働者でありましても、二カ月間の各月において十八日以上同一事業主に雇用された者は一般の保険の被保険者として扱うというふうになっておりますので、そこで一つ差が出てくる。それから、適用事業主でないもの、すなわち五人未満とか、あるいは農林水産業等に雇用されておる場合には日雇い労働者に適用がございませんので、ここが食い違ってくる場合が相当ございます。それから、適用区域について、失保の場合は、安定所から一定の距離といいますか、近い地域に限定されておりますので、その点は失保の場合が適用地域の制限を受ける、こういうことになりますのでいま言ったような開きが結果として出てきておる、こういうふうに理解いたしております。
  122. 森勝治

    ○森勝治君 いま日雇健康保険の被保険者は七十万というふうにお請いただいたのですが、私のほうの調査ですから、私のほうが間違っているのかもしれませんが、四十年末で九十四万二千人という数字が出ますので、ひとつまことに恐縮ですが、私の不勉強を直す意味からいいましても、ひとつもう一度日雇健康保険の被保険者の数をお調べいただきたい。そのことが一点で、もう一点は、いまのお話ですと、日雇失業保険は四十六万人とおっしゃったけれども、私のほうの調査では四十八万七千人。ところが、ただいまの説明ですと、私がこの改正案によって一級、二級の該当者それぞれ何名ですかと聞いたら、合計二十万、したがって、一級にないものが二級だというようなしゃれた御答弁をいただいたわけです。そうすると、二十万、いまの答弁では四十六万、またここで二十六万人も差ができる。私の調査だけでも、もう二万七千人も差ができているところに、また二十六万人も隔りがある。これも私の不勉強がなせるしわざか、そちらの御答弁がさか立ちになっているのか、ひとつお調べ願いたい。
  123. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 数字の食い違いで恐縮でございますが、日雇健保の被保険者九十四万というふうに御指摘になって、私が約七十万と申し上げて、約二十万食い違うわけでございますが、これは主として一人親方の関係がこの中に含まれておりまして、これが約二十万近くございます。そういった食い違いが一つあると思います。それから、失保の被保険者四十六万と申し上げましたが、先生資料によりますと四十八万という資料のようでございますが、これは時点が三十九年時点だとやはり四十八万二千人あった時代がございます。被保険者が若干減っておりますのは、日雇い労働者の雇用は大体ここ数年横ばいでございまして、増勢にないということと、それから、来年度の問題に限って見ますと、港湾労働法ができまして、日雇い労働者層三万人というものがそちらのほうへはずれるという関係もございまして、若干従前の水準よりも減るということは当然予定いたしております。それから、二十万という数字は、これは保険の受給者でございまして、被保険者ではない。現実に被保険者の中から保険をもらいにくる受給者の数が約二十万、こういうふうに申し上げた次第でございました。まあその辺の数の食い違いは大体おわかりじゃないかと思います。
  124. 森勝治

    ○森勝治君 ですから、もらいにくるのは二十万でしょう。だけれども、あなたのほうの発表で失業保険の該当者四十六万ですから、四十六万は一級、二級といずれにしても分けられるわけですよ。ですから、もらいにくる数というよりも、やはり四十六万人もおるわけですから、やがてそれらの方々が全部もらいにこないとも限らぬわけであります。したがって、一級と二級に区分したらどのくらいの数字になるかという質問を先ほど私は申し上げておるわけであります。ところが、それが合計二十万ということであるならば、あなた方の発表じゃ四十六万ですから、二十六万人も隔りがあるのではないか。二万か三万ならいざ知らず、倍以上の隔りがあるのはひど過ぎるから、ですから一級と二級の数はどうなるのかという質問を申し上げているのですから、ひとつお答えいただきたい。
  125. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 被保険者であります四十六万の方の内訳いかんという問題だと思いますが、これはちょっと計算がやっかいでございまして、受給者としては、いま申しましたように、約三分の一が一級受給者として立ちあらわれますけれども、被保険者全体としましてはもう少し一級該当者が多いと思います。と申しますのは、端的に言って一般失対労働者の場合を想定いたしますと、被保険者の中に占める割合は半数以上ございますけれども、保険の受給者として窓口にあらわれる割合はもっと七割から八割近い比率を占めております。こういった関係で、四十六万のほうの内訳は、先ほどとちょっと——いまの数字は計算させておりますので、ちょっと御猶予いただきたいと思いますが、必ずしも受給者の比率がそのまま被保険者の比率につながってはいないのじゃないかというふうに私はいま考えていますが、計算させた結果御報告申し上げます。
  126. 森勝治

    ○森勝治君 いまの問題ですね、たとえば四十六万人とすれば、一級が少なくとも三十五万人程度、二級が十万程度になりゃせぬかと思うのだけれども、あなたのほうは合計して二十万と言われるから、あまりに違い過ぎるので、私は重ねてその点の数字をひとつ明らかにしていただきたい。  それから、保険金の引き上げ率を見ましても、一級は五一%の引き上げであります。二級は三八%の引き上げであります。こうなりますと、なるほど本件についてはささやかな額だと言われてしまえばそれまででありますけれども、報酬を受ける額の少ない人々でありますから、たとい六円、あるいは、また、十円というような少額だとわれわれが思っても、当事者にとっては非常に貴重な金であります。ところが、いまのように一級が五一%、二級が三八%ということになりますと、物価上昇による生活の困難度というものは下の者ほど大きいはずであります。ところが、その引き上げ率が逆になっているのでありますが、この引き上げ率算出の一体根拠というものは何に求められたのか、御返答をいただきたい。
  127. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇保険の日額の改定は、これまでの慣行がございまして、大体いままでの改正前の一級の二倍の金額を賃金区分といたしまして、さらにその上に一級を積み上げる、こういうふうな考え方で従来やってきております。それがまた同時に平均賃金の六割という思想にも大体一致してきておりますので、今回もそういった考え方で一級と二級の賃金区分並びに給付日額を決定いたした次第でございます。とれによりますと、六百六十円の賃金区分を境にいたしまして、一級に該当する受給者の平均賃金は六百六十円以上の者の平均賃金でございますが、これは八百二十一円に相なります。この八百二十一円の六割という計算で五百円、こういう算定をいたしておるわけでございまして、その結果、引き上げ率だけから見ますと御指摘のような率に相なるわけでございますが、考え方はいま申しましたとおりでございます。  それから、先ほど御猶予いただきました四十六万の一級、二級の区分でございますが、四十六万のうちに一級が十七万六千、二級が二十八万八千、率にいたしまして一級が三八%ということで、先ほどの二十万に対する三四%よりも若干高くなっております。
  128. 森勝治

    ○森勝治君 一級と二級とを区分する基準の根拠というものはどういうところから出発されておるのか、ひとつお伺いしたい。
  129. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これは先ほど申し上げましたように、従来からの慣行で、従来の一級の上に新しく上積みをするという考え方で、従来の一級を二倍をしたところで賃金区分を考える。そして平均賃金を求めて、その六割方の金額をはじきまして一級にする、こういう考え方で従来やっておりますが、今回もそういった考え方でこの改正案をお願いいたしたわけでございます。ただ、との前も申し上げましたように、この算定の基準について従来からやっておる慣習をそのまま今後も引き継いでいくのが合理的であるかどうかという点については非常に問題がございまして、社会保障制度審議会においてもこの点は指摘をされておりますので、今後はこの点もあらためて再検討をしたいというふうに考えておりますが、今回までは従来の算定方式をそのまま踏襲して今回の改正をお願いした、こういうことでございます。
  130. 森勝治

    ○森勝治君 日雇い労働者の平均賃金は六百二十何円かでありましたかね。幾らですかね。
  131. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 失対賃金の平均は六百二十九円二十八銭でございます。
  132. 森勝治

    ○森勝治君 六百二十九円ですか。先般は紅露先生が私の質問に関連して発言されたときには六百二十九円じゃないほかの数字をおっしゃられたのですが、あれからそんなに日がたっていないのですがね。もう一ぺんはっきりさせてくれませんか。
  133. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 紅露先生のこの前御指摘の場合に、私もちょっと覚えておりませんが、もし違った数字を言ったとすれば、昨年までの平均賃金が五百六十一円七十銭でございますので、その数字を言ったか、あるいは紅露先生の御出身地の徳島県の具体的な賃金を申し上げたか、どっちかだと思います。
  134. 森勝治

    ○森勝治君 これは大臣あてに出されました社会保障制度審議会の本件についての答申でありますけれども、この中で、前段を省きますが、こういうことを言っているわけですが、「しかしながら、保険金日額算定の方法、保険料負担のあり方等の基本的諸問題については、特に失業者に対するこの制度の理念を考慮しつつ根本的な再検討を行なうべきである。なお、級別保険金の支給は、納付された保険料との関連を考慮し、日雇労働者に特有の不利を軽減するよう努められたい。」と、こういう答申がなされておりますけれども、この答申をどのように受け取っておられるのか、ひとつお伺いしたい。
  135. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これは御指摘のとおりの答申でございまして、私どもは改正原案を社会保障制度審議会におはかりいたしまして、数度の審議の結果こういう結論をいただきましたので、将来こういった基本的な問題については、先ほどから繰り返し申し上げておりますとおり、再検討をいたしたいと思っております。
  136. 森勝治

    ○森勝治君 再検討はわかるのですが、どういうふうに検討されるのか。たとえば私が先ほども申し上げたように、労働者側の経済的な負担をどうするかという問題もあるわけであります。さらには、反対給付をどうするかという問題もあります。ですから、そういう問題をただ考えるわけにはまいりませんので、この答申の趣旨を生かすために具体的にどういう作業をするのか、どういう方針で進まれるのか、具体的な答えをひとつわずらわしたいと思います。
  137. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 第一点は負担割合の問題でございますが、この点は他の社会保険との関連もございますので、そういった関連も十分考えながら負担割合については再検討をしてまいりたい。  それから、先ほども御指摘がありました給付の水準の問題でございますが、これも低所得層に対しましては、やはり生活保障の十全を期するという観点から、六割保障一本やりでは不十分ではないかというふうな観点から日額の算定も行なってまいりたい、かように考えております。
  138. 森勝治

    ○森勝治君 恐縮でありますが、前段のほうをもう一度ひとつおっしゃっていただけませんか、前段のほうを。
  139. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 労使の負担割合について、今日まで折半負担の原則を貫いてきておりますが、ここに御指摘もありますので、他の社会保険負担割合等とも関連をいたしまして、それらを勘案をいたしまして再検討をしてまいりたい、かように考えます。
  140. 森勝治

    ○森勝治君 この点については三度御答弁をわずらわして恐縮であります。先般は、ここにも速記録を持ってきていますが、五月の十二日の私の質問に対しては、私もさっきちょっと読み上げましたが、現行のこの制度で十分対処していけますという御答弁でありましたので、先ほど重ねて再考をわずらわしましたが、なかなかよい御答弁をいただけなかった。ところが、私がいま申し上げました社会保障制度審議会の答申案をどう受け取るかという質問につきましては、いまおっしゃたように、従来は労使折半であるけれども、前向きの姿勢で検討をしていただくという御答弁を、いま私は繰り返し御答弁をいただいたわけでありまするから、そうなれば、先般の五月十二日の私の質問に対しての、この問題については現行の制度でよろしいということを撤回されて、いまの再度の御答弁というふうに理解をいたしますが、さよう心得てよろしいですね。
  141. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) この負担の問題は二つありまして、いま申し上げたのは、労使の負担割合をどうするかという点について、今後、社会保障制度審議会の御指摘もございましたので、他の社会保険との関連を考えながら再検討します、こういうふうにお答えしたのでございます。で、十二日の日に、現行の制度でまずまず対処できるというふうに是認をいたしましたのは国庫の負担割合の問題でございまして、これはかつて一般保険について三分の一であったものが四分の一に切り下げられた、この経緯は先生も御承知のとおりだと思いまするが、私どもも必ずしも、これに賛成できない面もございますけれども、まずまず現行の保険制度全般の運営という点から見まするならば、現行の負担割合で十分対処していきたい、こういうふうに申し上げたので、国庫負担の問題と労使の折半負担の問題と、二つ問題があるので、その点多少こんがらがったのじゃないかと思いますが、私の答弁がちょっとまずかった点もありますが、二つ問題があると思います。
  142. 森勝治

    ○森勝治君 だんだん運転がおじょうずになるらしいのですけれども、明らかにこの社会保障制度審議会の答申をもっていかんとなすという質問に対しては、いいですか、労使折半、いわゆる労働者の負担の過重にならざるようにというのが答申の趣旨でありますので、この答申の趣旨を十分尊重して前向きの姿勢で検討するということですから、私がただいまのあなたの御答弁を素朴に私なりに理解をいたしますならば、労働者側の負担が軽減される、労働者側の負担の軽減という中には経営者側の分担もあり得るでありましょう、国庫の負担もあり得るでありましょう、そういうことはいずれといたしまして、労働者側の負担軽減に努力するという御答弁を明らかにいただいたものと理解してよろしいですね。重ねてくどいようですが、よろしいですね。
  143. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 私どもがお答え申し上げましたのは、この社会保障制度審議会の御指摘のありました負担のあり方という問題についてお答え申し上げたので、この審議会において問題になりましたのは、労使の折半負担を変更すべきではないかという意見が非常に強かったわけでございます。しかしながら、これは将来の問題として検討すべしという答申をいただいて今日の改正案を提出した次第でございますので、ここで言っている問題はそういう経緯を計算に入れてといいますか、含めて私は答弁したつもりでございます。
  144. 森勝治

    ○森勝治君 ですから、どうもそれじゃ私も合点がいかないですね。この答申の意味も含めてとおっしゃるけれども、答申の、労働省が諮問した点については認めると、こういうことでしょう。私はこの文章を読み上げたのは、後段で「しかしながら」という以降を読み上げたのですよ。将来にわたって善処するかいなかという問題についての質問をしたら、そういう話も皆さんの御意見でありますので、労使折半ということは再検討していきたい、こういうことを言われたのでしょう。だから私が念を押したわけですから、いずれといたしましても、じゃ重ねて私は先ほど申し上げたこともう一ぺん反すういたしますと、いいですか、経営者の負担が多くなるか国の負担が多くなるか、そのいかんを問わず、少なくとも労働者の現行負担の比率というものは軽減する方向で検討する、こういうお答えだというふうに理解してよろしいかという私の質問であります。よろしいですね、それで。そういうことでしょう、はっきりしてください。速記録に出ているのだから。
  145. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 私も速記録を持っておりますので、あえて議論をしようと思いませんが、この労使の負担割合の問題は、確かにこの社会保障制度審議会が御指摘になっておりますように、今後の問題として再検討をいたしたいと思いますが、ただ、十二日に問題になりましたのは、一般保険の国庫負担割合が四分の一に下げられたのはけしからぬじゃないかというような御指摘がございまして、その点に対する回答として私申し上げたのでございまして、日雇保険に関しましては、現行も三分の一の国庫負担割合になっているので、この点については社会保障制度審議会において特別の論議はなかったというふうに私どもは理解しておりますので、この点の問題は、一にかかって労使の折半負担を再検討すべしというふうに理解いたしておるわけでございます。
  146. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連。非常に重要なところでいま有馬さん何回も繰り返しておっしゃいますけれどもね、いま千五百億も金がたまっているから、政府の出し分は少しでもいいという考え方だと私は思うのです。しかし、この三分の一ずつやっていこうという法律のたてまえで、それが保険財政がよくなったから、だから四分の一にした、そして積み立てられた金の利子はみな一般行政に使っている。その積み立てられたおもなものは労使が積み立てたものなんです。その先の議論があったから私はあまり触れないでおくわけです。そんなものをいまいけますとかいけぬとかいうこと自身が間違っているんじゃないですか。その正規のたてまえに立って失業保険会計を確立して、給付を拡大するとか何とかするというために努力をしますとここで答えるのが当然じゃないですか。あなたがお答えになったからということと、何もあなた、法律できめたものを三分の一を四分の一にしているわけでしょう。社会保障制度審議会だって、そんなことは常識じゃないですか、あなた。その保険経済がよくなってきたら、その金をもって給付を拡大する、もっと先には失業者をなくすることが先でしょうけれども、出てきている失業者の給付をよくしていくというのが筋道じゃないですか。それをそれは知らぬのじゃ、社会保障制度審議会のきめた労使の負担割合の部分だけは検討するなんということは筋が通りませんよ。私は何回も聞いているけれども、これは大臣、ひとつもとに返すという約束を法律のたてまえからしても考えてもらわなければ、こんな私は何回も同じ議論を繰り返しては困る。法律のたてまえからいって、失業者を出さないということが一番先でしょう。努力されているが、出た失業者の救済をよりよくしていくというのはあたりまえじゃないですか。一般会計からたった四千百万円の金を出して、その利子で全部行政をまかなっていくなんというようなことは、世間で通りませんよ。そのことがあるにもかかわらず、いまだに同じことを、それはこれでいいんじゃなんということを突っ張るのは、少し私はたてまえをくずしはしませんか、これは大臣からもお答えを願いたいと思いますよ。
  147. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 今回のこの改正に関して、先ほども御指摘がございました社会保障制度審議会からも、また、中央職業安定審議会からも答申をいただいておるわけでございます。どちらも大体同じようなことを御答申いただいておるのでありまして、社会保障制度審議会でも今回のこの改定はやむを得ない、こう申して、「しかしながら」と続けて、「保険金日額算定の方法、保険料負担のあり方等の基本的諸問題については」云々と、こううたっておるわけです。それから、中央職業安定審議会のほうも、今回の改定は適当と認める。「なお、」として、これまた同じ文句ですが、「保険金日額算定の方法、保険料負担のあり方等日雇失業保険制度の基本的諸問題については、他の社会保険との関連をも考慮しつつ、根本的な再検討を行なうべきである。」と、こううたっておるわけです。両者の精神は私は同じだろうと思うのです。そこで、御議論の対象でございます労働者の保険料負担の問題ですが、これもここでこういった基本的な問題の一つとしてこれをいずれもあげておられるのだろうと思いまするし、これは当委員会でも再三御指摘をちょうだいしているところでありますし、さらには衆議院の社労でも給付の改善ということを行なえ、こういう御決議もちょうだいしております。したがって、この給付の改善と申しますれば、現行の保険料の負担のままで保険金をふやすのも、これも改善かもしれませんし、あるいは保険料を下げて現行の保険金を維持するなり、あるいはさらにふやすなり、こういういろいろな場合が実は考えられると思うのです。ですから、いずれにいたしましても、この基本的問題については根本的な再検討を行なうべきだ、こう両審議会とも言っておることでもありますし、国会の御意思もそういうところにあるようでございますから、いろいろな問題を含めて私は再検討をする時期にきているのだろうと思います。そういう方向で事務当局にも再検討さしていきたい、かように思います。
  148. 森勝治

    ○森勝治君 それでは角度を変えまして、出かせぎの問題をひとつお伺いしてみたいのです。  御承知のように、農業基本法ができてから——これは自民党政府やり方が悪かったのでありましょう。農家の子弟は自分の故郷を捨てて、みんな他郷に出てしまった。昭和二十九年以来三十九年ぐらいの約十一年の間には、かつて学校卒業生が四十数万、四十二万程度でありますが、家業の農業に従事したこれらの子弟が、三十九年にはわずかに七万名に減ってしまった。これは農業が専業ではやっていけなくなった。その反対的な現象として、一家の七人公たる人々が、農閑期を利用すると申しましょうか、いわゆる社会問題になりました出かせぎを始めたわけであります。私どもも当委員会の命を受けて、昨秋東北に視察に参りまして、すでに当委員会に報告文書を出しておるわけで、皆さん御承知のとおりでありますけれども、一体この出かせぎの失業保険というものの適用はどうなっておるのか、特に建設関係に働く雇用状況というのはどうなっておるのか、ひとつお伺いしてみたいと思います。
  149. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 出かせぎには夏型、冬型、いろいろございますが、両方合わせて私どもは、六十万を下らないという推定をいたしております。この点、農林省の調査と数が食い違っておりますが、これは定義のしかたで食い違っているのだろうと思いますが、そういった膨大な出かせぎ者が現におるわけでございますが、これらの出かせぎ者の就労先が、その六割までが建設産業でございます。残りが食品加工業その他でございまして、純然たる狭義の製造業には、そうたいして今日までのところ出ておりませんが、とにかく出かせぎ先の業種が強制適用になっておる業種でございますので、失業保険はこの出かせぎ者の大部分が適用を受けておる、そうして、また、一定といいますか、最低の資格要件を備えて現実に失業保険をもらっておる、こういう状態でございます。
  150. 森勝治

    ○森勝治君 昨年までは、出かせぎ者の皆さんは受け入れ側がこぞって受け入れたということで、東北の山形、秋田でもだいぶ出たわけでありますが、昨年の十月、十一月ごろの様子でありますと、受け入れ側が不景気の余波を受けて多くを求めなかったというふうに聞いておるわけです。したがって、昨年秋から今日にかけての出かせぎの全国的な趨勢はどうなっておるのか、ひとつお聞きしたいと思います。
  151. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 昨年の十月、十一月、いわゆる冬型出かせぎの最も出る時期でございますが、この時期に経済の一般的な不況のあおりといいますか、影響を受けまして、従来よりも出かせぎの需要が減ってまいってきております。これがまだ全国的に集計ができておりませんので、数字的にはっきり一昨年との比較を出すわけにはいきませんけれども、御指摘のような傾向が現実に出てまいっております。いま手元にあります数字で申し上げますると、安定所の紹介の分についてだけ出ておりますので申し上げますと、他県への出かせぎが昭和三十七年には十三万、八年には同じく十三万、九年にも同じく十三万というふうに、十三万程度をピークにいたしておりましたけれども、四十年に入りますと、これが若干十二万程度に落ち込んでおります。そのほかに、もちろん安定所の紹介以外の出かせぎ者が七、八割おるわけでございますので、この総数を把握してみないと、不況の影響が現実にどの程度出かせぎ就労者に影響しておるかというような点ははっきり申し上げられませんけれども、いま申し上げましたような数字で見ましても若干低下をしておる、こういう状況でございます。
  152. 森勝治

    ○森勝治君 建設現場に働く皆さんの状況はどうなっておりますか。
  153. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 建設業の雇用者の状況でございますが、最近の労調の結果を見ますと、製造業に先んじて建設業は微増を続けておる、こういうふうな一般的な状態でございますが、出かせぎ者の六割近いものが建設業に出かせぎに出ておるという状態で、こまかい点は、また御指摘があれば御答弁いたしたいと思いますが、そういう状態でございます。
  154. 森勝治

    ○森勝治君 建設業に働く出かせぎの皆さんの就職先というのは、たとえば道路、港湾、あるいはダム等の建設の現場がほとんどでありましょう。しかも、それらの事業主というのは、ほとんどいわゆる国の事業の一環を受け持ってこれらの日雇いの諸君が努力されておるわけでありますけれども、この国の事業の一環を受け持つ、おそらくそうなりますと、これはもう信用の面からいっても日本で一流、二流と下らない建設会社だろうと私は推定をするものでありますけれども、ダムあるいは道路工事、そういうところで働く諸君の待遇、いま申し上げる失業保険の問題、日雇健康保険の問題については的確な指導をされているというふうに私は考えておりますけれども、なかなか問題点が多い。けがしてもなかなかみてくれない状態。したがって、郷里にも帰れない。ここで、「とうちゃんいずこ」という社会問題が出てくるわけであります。なぜこういうふうに国の事業の推進の一端をになう建設業界の中でこういう忌まわしい問題が次から次へと起こって、今日なおかつ解決ができないものであるのか、私はまことにふしぎにたえないわけであります。したがって、一体労働省としてはどういう対策を立てておられるのか、先般も三、四回前の当委員会において私どもが質問いたしましたら、まことに恐縮だが、それは安定所の門をくぐらないから把握が困難でございます、こういう答弁があったわけでありますけれども、そういう答弁では、今日的段階におきましては、もう国がそれぞれの業界にも自粛を促し、その対策を要望している現段階においては、安定所の門をくぐらないから知らないなんということはできないはずであります。したがって、建設現場におけるこの雇用状況というものは一体どうなっておるのか、依然としてタコ部屋的な内容を内蔵するものもあるやに聞くわけであります。現に私も過去において山の中に入りまして、半年間もその中で籠城させられ、賃金未払いの諸君とその対策を練ったことをいまなまなましく記憶として呼び起こすのでありますけれども、依然として今日の段階でこういう問題があとを断たない。繰り返して申し上げるけれども、国の事業の先端の場においてこういう問題があとを断たないということは一体どういうことなのか、労働省はどうされておられるのか、そういう点についてひとつお話を聞いてみたいと思います。
  155. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 出かせぎ者の問題は、御指摘のようないろいろ労働者保護に欠ける面が、かつてございましたので、昨年来出かせぎ対策要項というものを農林省とタイアップいたしまして樹立いたしました。  まず、第一に、出かせぎ者の就労の経路を正常化する。これは直接間接、安定所の手を通して就労さしていくという体制をまず確立をする。そうして第二には、基準監督を厳正に行なって、賃金の不払い、あるいは災害の防止、宿舎の改善、こういった点を重点に置いて監督を厳重に行なう、こういう二方面から出かせぎ労働対策を労働省としては確立いたしていきたいということで、目下昨年に引き続いて努力をいたしておるわけでございます。
  156. 森勝治

    ○森勝治君 さらにうがった質問をして恐縮でありますが、こうした建設現場に働く雇用形態というものは一体どういうふうになっているのか、聞いてみたいと思うのであります。一例として具体的に申し上げますが、たとえば建設省の出先の道路、国道を開さくする、こういう場合に〇〇組または〇〇会社というものがまず請負となります。ところが、それから先はどうか、下請に次ぐ下請ということであります。世上、この現場は何々組が請負ということで看板が出ておりますから、われわれといたしましては、なるほど〇〇組の、あるいは、または〇〇会社の事業か、国から請け負ってやっているんだと、こういうように素朴な頭で理解をするのでありますけれども、さて労働問題から入ってまいりますと、さらにまたその下に何々組というのがあって、その雇用形体というものは、飯場頭などということばを使うことは妥当でないかもしれませんけれども、そういう形でいわゆる飯場の頭と雇用契約を結ぶ。したがって、国とその事業の契約を結んだ〇〇会社の従業員でなくして、さらにその下の飯場頭とか何々組とかいう、小頭とかいろいろ申しましょうけれども、私もしろうとですから、その点はつまびらかにいたしませんが、いずれにいたしましても、国から引き受けた会社の従業員でないようにこの安定所関係は相なっておるわけであります。もちろん常用の職員もおるでありましょう、作業員もおるでありましょうけれども、その大半というのは、いわゆるきょうはあちら、あしたはあちらという形になっておるわけであります。そうなりますと、一体労働省労働者保護をもって監督行政に当たる場合に、そういう点は従来放任をしておったのではないかと思うのであります。したがって、その点について今後どうされるのか。過去のことは問いません、終わってしまったことですから。しかし、今日的段階においては、これはこのままでほうっておくわけにはまいりません。したがって、安定所の承認のないものは使ってはならぬということに相なっておるわけであります。その辺の指導はどうなのか。山の中だから予算が足りない、予算が足りないというなら、りっぱな労働大臣がおるのですから、栃木県と群馬県ということで、大蔵大臣が群馬県から出ておるわけですから、隣のくにのよしみで小平大臣はとってくれるぐらいの、予算がないということであってはならないと思うのであります。余談はさておきまして、いずれにいたしましても、当然これはこういう山の中の作業現場であっても、この目の届かないところにおける労働者の悩みこそ、固定せる職場で働く諸君の労働問題のもろもろの不満もさることながら、こういう山の中、辺境の地にある労働者のこういう人々こそほんとうに恵まれない労働環境の中で働いておるわけですから、さらに労働省が的確な指導助成をしなければならぬと思うのであります。したがって、今後どうそれらの問題について対処されるのか、従来どおり予算がないということでほうっておくのか、あくまでも労働者保護見地から、積極果敢、勇敢に取り組んでくださるのか、お伺いをいたしたい。
  157. 小平久雄

    ○国務大樹(小平久雄君) この出かせぎ労務者、特に建設業に従事する出かせぎ者につきまして多くの問題を現にかかえておると、こういうことで、本国会におきましても、これは衆参両院を通じて、社労委の皆さんからたいへん御指摘なり御激励なり出ましたので、私もだんだん事情を調べましたところ、どうもこのままに放置することは労働省立場としても許されないことだと、こういう考えのもとに、実はすでに先刻申し上げたかと思いますが、去る三月二日にこの建設労働問題の懇談会というものを持ちまして、おもだった建設業界の代表、これは大会社ももちろんでございますが、中小、あるいは下請等を主とする業界の代表、要するに業界全体の代表というようなものに集まってもらいまして、役所側といたしましても、建設省、それから自治省等にも御参加を願ってこの懇談会を持ったのであります。そこで、問題は、いま局長からもお話を申し上げ、先生からも御指摘のございましたとおり、就労問題、労働条件の問題、特に賃金の不払いの問題、安全の問題、あるいは宿舎の問題等々、幾つかございます。そこで、出かせぎ労働者の場合には、特に建設業の場合を申しておるわけですが、労働省が今日まで捨て置いたわけでもなく、労働省といたしましてもできる限りそれぞれの努力を払ってまいったには違いないのでございますが、何と申しましても、建設業の場合には、先生指摘のように、国をはじめとして、公共団体が発注する場合もございましょうし、民間の場合もございましょうが、いずれにしても、最初の受注者が仕事の全部を責任を持ってやるという場合がきわめてむしろまれなくらいでありまして、下請から下請へと力の弱いものに仕事が分制されて請け負わされておる、こういう事態もあります。さらに、また、作業場自体が常に移動しておる。時には山間僻地に及ぶことが非常に多い。こういったような非常な複雑な様相を含んでおりますので、一般の工場、事業場のごとく、働く場所が固定し、あるいは、また、従業員も大体変化がないというところと違いまして、非常に同じ監督をいたすにいたしましても、なかなか困難な問題をたくさん含んでおることは先生にも御了解をいただけると思うわけでございます。  そこで、私は、役所が一そう努力いたしますことは当然でございますが、何と申しましても、これは業界自体の要するに自覚に待つということが一番私は基本的な問題であろう。そういう見地から、まずもって業界自体の自覚を促し、みずから遊んでの労働条件なり環境なりについての改善ということに努力を促す、そういうことが一番やはり大切であろう、こういう気持ちからこのような懇談会を持ちまして、先ほど申しあげたような問題について、具体的にいろいろ当局の見ておるところを率直に伝えまして改善方を促したのであります。  そこで、その際、私もいま申しましたような気持ちで業界の積極的な、あるいは自発的な改善策を要望したわけでございますから、まず業界自体が今日の実情に即してどの面をどう改善するかという一つの案をつくってほしい、こういうことを私から要望いたしまして、これもあまり漫々的では困りますよということを強く要望いたしました結果、去る四月の二十八日に全国建設業協会から、労働、建設両大臣あてに、建設労働問題に対する改善策についてこういうものを出してまいりました。これにつきましては、業界としても、まあ一々申し上げませんが、問題になっておる点についてそれぞれ今後こういう点で改善いたしたいということやら、あるいは、また、それについては役所のほうでこういう点にも協力してほしいということやら、相当の長文の改善策をよこしております。ここにございますから、何でしたら御参考に差し上げてもけっこうでございますが、いずれにしてもそういうことでございますので、特に先生の御指摘のありました政府の発注の仕事等に関しましても、これは建設省でも非常に関心を持っていただいておりまして、私は再三、建設大臣とも本問題についても話し合っておるのでありますが、建設大臣も非常に熱意を持っておられまして、特に賃金不払いの問題等については、これはもういわば人道問題でもあるからということから、事務当局を非常に督励してくださいました。そこで、建設次官通牒が建設省の事務次官から昨年の十二月二十七日付で出ました。これは私のほうの労働基準局長からも、大体同趣旨のことを関係の私のほうの出先にも通知したのでありまするが、要するに賃金不払いの問題につきましては、中にはこれはもう当然下請が賃金不払いを起こしたならば元請が責任を持つべきである、こういうことを法律できめろという実は御主張もあるのでありまするが、一挙にそこまでいくということは、なかなかそこまではたして一挙に割り切れるものかどうかということについては疑問があるようであります。そこで、そういう点も勘案しまして、建設事務次官の通牒では、この入札者を選ぶ際においては、労働者に対する福祉ということを非常に重く見られて、福祉という中には賃金の不払いの問題等も当然入るべきだ、こういう解釈から、この福祉に問題の欠くるところあるものは、入札資格を検討する際にはもう減点の要素にするぞ、こういう通牒をまず出してくれておるわけであります。そういう関係もございまして、業界においてもたいへん私は熱意を示してきているように承知をいたしておるのであります。しかしながら、もちろん今日の状況をもって満足しているわけじゃございませんから、監督の面においても、まあ基準監督署にも、先般、たとえば関東一円について一斉に監督をやらせました。逐次各地域にそういうことをやってまいるつもりであります。監督の面も十分今後とも努力をいたすつもりでございますが、業界の自粛と監督指導と相まって私は改善をぜひいたしたい、こういうことでやっているわけであります。
  158. 紅露みつ

    紅露みつ君 ちょっと関連させてください。森委員から雇用経理の問題について、たいへん掘り下げた御質問があり、また、大臣からもたいへん業界のほうの自粛も促してくださるということで、これが一本化してまいりますれば留守家族というようなものはできないと思うのでございますが、ほんとうに、おとうさんはどこにいるだろうというような状態がたくさんできているわけでございますね。で、これは私はこう思うのでございますけれども、労働省には婦人少年局がございますね、そして全国に協助員もたくさん持っていることでございますから、たしかそれをやっていていただくのではなかったかという気持ちがいたしますのでございますけれども、留守家族を見つけていただくということもこれはできることでございますが、その状況等によって、そしてこちらでまたそれをさがすということが、たしか私は婦人少年局の、まあ局長が見えておりませんけれども、たしかその問題は仕事の中にあったと思うのでございますが、一体それは留守家族になってしまった人たち、これはたいへん末梢的な問題になりますがね、いま御答弁になっている根本問題から見ると。しかし、当面の問題としては、これは捨てておけない問題でございますので、どういうふうにして留守家族を見つけ出し、そうして居所不明になっている人たちをさがしていてくださるか。それにも御努力願っておりますはずでございますのですが、そこのところちょっと関連事項として伺っておきたいと思います。
  159. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 留守家族の問題につきましても、先生お示しのとおり、労働省関係といたしましては、婦人少年室の協助員、これらの方方にお願いをして、極力御相談に応じたり、その他出かせぎ先との連絡等についても十分意を配っているところでございます。現在農村だけにしても約千人の協助員が配置されております。ところが、先ほどもお話が出ましたとおり、これが全部安定所の機関を経て出かせぎをしてくださるならば、早い話が非常に留守家族もわかりいいのですが、まだ安定所を経由して出かせぎをされるという方は、まあおそらく二割ちょっとしかないのじゃないか、全体の出かせぎ者の。そういう関係ですから、どうも実態もなかなかとらえにくい。そこで、労働省としましても、町村等なり、あるいは農業委員会なりと連絡をとりながら、極力出かせぎ人のリストと申しますか、これをぜひつくっていこう。それから出かせぎ先、工場、いわゆる業者これのリストもひとつつくっていこう、こういうことで両々相まって、まずもって基本的には出かせぎの実態というものをとらえ、それによって初めて協助員の方々にも御活動を願いやすくなるわけですから、そういうことで努力をいたしておるのでありまして、今後におきましても、もちろん協助員も少なければふやしてお願いしてもいいのでありますから、実態に即しながら留守家族のことについても十分意を配っていきたい、かように思うわけでございます。
  160. 紅露みつ

    紅露みつ君 局長が見えたようでございますが、いまお尋ねいたしましている問題は出かせぎの留守家族ですね、出かせぎの留守家族を協助員等の御努力で見つけた場合といいますか、見つけていただいて、そうして中央のほうで何らかの手が打てるような御努力をたしか願っていると思うのでございますが、事実がどうなっておりますか。いま大臣からも、そのようにしていきたいという御答弁をいただいたのでございますが、幸い局長がいらっしゃるのでございますから、局長からもひとつ伺っておきたいと思います。
  161. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お答えいたします。  農村の出かせぎ留守家族の対策につきましては、かねてからいろいろと意を用いてまいったわけでございますが、おかげさまをもちまして、前年度協助員一千名の配置をお願いすることができまして、四十一年度におきましてはこれらの協助員の方の活動費が計上されましたので、これを十分に活用いたしまして、出かせぎ家庭の福祉のためにお役に立ちたいと思っているわけでございます。現在までに行ないましたことといたしましては、先般農村の三十九府県であったと思いますが、その出かせぎのたいへんに多い村におきまして出かせぎの留守家族の実態の認否をいたしました。特に出かせぎ先の夫との連絡状況につきまして調査をいたしたところでございます。また、この第一次調査に引き続きまして、第二次調査といたしまして、農村から出ている夫のほう、すなわち、大都市に出て働いている夫のほうの追跡調査をいたしまして、たずねて行きまして面接調査をいたしまして、その双方合わせて一つ調査にまとめ上げるということで、いまその第二次の調査の結果を取りまとめ中という、このような段階でございますが、第一次の調査でおよそ判明いたしましたことは、出かせぎの家庭と夫との連絡状況というものが必ずしも全部悪いというわけではございませんで、大多数の夫の方たちはできるだけ連絡をとっておられるというような状況がわかりましたが、それでも、なおかつ、やはり夫の居所がわからないというような例も出ているわけでございます。そのような例につきましては、これは調査とは切り離しまして、別途の相談業務というような機能に乗せまして御相談に応じておさがしするというようなこともお手伝いしているわけでございますが、ただ、連絡がないという場合に、これは農村の方の特徴であるかと思いますが、たいへんに気にしていらっしゃらない向きもございましたようでございます。たいへん筆ぶしょうのようなことがございましたり、また、出かせぎが半ば慢性的になっておりまして、毎年のように出かせぎに出られる。したがって、心配はないというような気分のところがあったかと思いますが、ただいまちょっと急でございましたのでデータを持ってまいりませんでしたので、正確なお答えはできませんが、そのようでございまして、いろいろな実態が見られております。で、今年度におきましてはその相談業務を組織的に行ないたい。で、カード等を作成いたしまして、家族と夫との間の連絡ということの側面的な援助をしてまいりたい。また、家庭のほうから御相談があったような場合にいろいろと各般の御援助をしたい、このように考えて目下進めているところでございます。
  162. 紅露みつ

    紅露みつ君 たしかその役割りを覚えていらっしゃったと思ったのでございますが、まず調査に一年かかったわけでございましょうが、これは大臣もおっしゃったのでございますが、町村に連絡をしてそういうところは知らせてもらってというようなおことばでございましたが、まあそれはもちろんそういう考えもよろしいのでしょうけれども、実はやっぱり出かせぎという労働に関するものでございますので、やっぱり協助員の働く場所としてぜひ——まあ心配していないで毎年出かせぎで無事に帰っているというような習慣のついているところはよろしゅうございますけれども、居所不明だ、どうなってしまったのかわからないというような不安を与えることはたいへんに悲惨だと思うのでございます。で、私も用意をしてきておりませんし、局長さんも不意のことでございます。いま簡便なものでございますからその質問が出たのでございますが、ことしはひとつそういうところはしっかり協助員の手で、協助員が市町村役場にお問い合わせになってもそれはけっこうでございましょうけれども、やっぱり直接はこちらの中央において、たいがい中央に集まっているものでしょうから、東京でなくても、大都会中心でございましょうから、だから、これは留守家族がやっぱり町村なんかで聞かれるといいかげんなことをいっていても、協助員の婦人同士で、たいがいそれは御主人の場合ですから、だからいろいろ話をするうちに足跡もつかみ得るだろうと思うのですよ。ぜひこれは協助員の仕事として進めていただきたいと思います。
  163. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 先ほどちょっとことばが足りなかったと思いますが、私ども出かせぎの留守家族の対策は、先生がただいま御指摘のような方法で進めてまいったわけでございますし、今後も協助員がじかにその家庭に行きまして、もちろんその家庭に行きます前に、町村など関係機関からどこに留守家族があるかということは調べなくてはなりませんが、そのあとは直接にお目にかかって、面接して具体的なお話にのると、このようにいたしております。先ほど申し上げた調査もそのような方法で、現実に家庭に上がって、そこの主婦の方にお目にかかって調べる……。
  164. 紅露みつ

    紅露みつ君 女同士ですから……。
  165. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) そうでございます。そのように今後もつとめてまいりたいと思います。
  166. 森勝治

    ○森勝治君 先ほど大臣から建設業界に対する適切な指導についての報告をいただきました。その中で業界から大臣あてに対して何か書類が届いておるそうでありますので、ひとつそれをあと資料としていただきたいと思います。  そこで、お話にもありましたように、建設業界といなとにかかわらず、日本企業形態というものがメーカーの下請、あるいは、また、元請の次に下請というような形に企業形態がなっております。私は、この辺の解明がなされない限り、低賃金労働者の解消はあり得ないのではなかろうかと考えております。したがって、もちろん元請というものが国の出先の仕事を請け負った場合には、国に対して責任を持つことは当然でありますけれども、大臣も先ほどの話の中で、いみじくも、下請が責任を持ってやるということはなかなかまれであるというようなことばを、これはあげ足取りで恐縮でありますが、そういうことばを言われたのであります。これは善意な立場における大臣の発言だろうと思うのでありますが、少なくとも国の下請、これは国と民間といなとにかかわらず、責任を持って仕事に当たることは当然であります。責任を全うし得ない業者というものは、当然それは排除されてしかるべきだと私は考えております。ところが、建設業界の中では、元請、その下に下請、さらに何々組とか小頭ということが、いわゆる無登録の方々がこの日雇い労働者を使う傾向があります。したがって、これは全般とは申しませんが、特徴的な問題についてのみ私は申し上げてみたいと思うのでありますが、この日雇い労働者が元請や登録された下請業者との雇用契約ではなくして、何々組という小さいいわゆる無登録業者との雇用契約がなされておるわけであります。ですから、先ほど私が若干触れましたが、外見上では、国の下請の何々組というのを、あたかもそこの従業員のごとく一般の人は思い込むのでありますが、その内情をたぐってみますならば、その元請の会社の契約ではなくして、下請のその下の無登録の業者との下請契約というものが比較的多い。ここに賃金不払いや、その安全衛生の面に欠けるところが出てきやせぬかと思うのでありますので、こういう点については今後とも的確な指導をひとつやっていただきたいと思うのであります。このことはまあ要望ということで、時間がありませんので、次に移ります。  昭和四十年の二月に失業保険課が安定所の窓口から消えてなくなったわけであります。これは一体どういうことなのか。率直にひとつお聞かせ願いたい。一千八百万、一千九百万も失業保険をかけておる。したがって、この失業保険の問題についても、たくさん先般来この受給問題についてはもめておるわけでありますけれども、従来あった失業保険課を解消して他部門に振り向けた。だから庶務課とか、あるいは他の部門に隷属した失業保険事業というものが非常に片すみに追いやられた。さらに、私が先ほど申し上げたように、そういう姿が、若者を大工場に、中高年層を中小企業にという姿に追いやり、権力によってこの失業保険金の受給というものに対する制約を加えている、こういう気がしてならぬわけであります。ですから、安定所というのは、人々に職業を与えるところであります。職業のない人には、当分のしのぎということで生活の最低保障の保険金を支給するわけでありまするけれども、保険金の六割の額よりもちょっとでも上の雇用条件が出るならば、そこへ行きなさい、行かなけりゃ打ち切りますよということが、ややもするとやられるということを私どもは漏れ承っている。そういうことであるならば、いかにあなたたちが、失業保険をかける被保険者は多くなったけれども、反対給付の保険金を受け取る方々は少なくなりました、雇用が安定いたしました、失業者が少なくなりましたなどとよくおっしゃるけれども、それは権力によって失業者の受給資格というものを制限している、こういう例が顕著であります。時間がございませんから申し上げません。先日もこの点については若干触れておりまするから申し上げませんけれども、そういう姿が、失業保険課という課の窓口を廃止した背景になるのではないかというふうに私は邪推をするわけであります。幸いにしこの私の邪推が単なる杞憂にすぎないことを私は希望するものでありますけれども、なぜ失業保険課というものを廃止したのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  167. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のように、昨年の二月に安定所の内部組織の編成がえをいたしまして、従来あった失業保険課と職業課ないしは職業紹介課という立て方を、事業所課と職業紹介課というふうに原則的には編成がえをいたしたわけでございますが、この考え方は、失業保険の適用範囲が、失業保険制度創設以来、逐次広がってまいりまして、今日千八百万という被保険者をかかえておるわけでございますが、なお今後五人未満その他の適用拡大をはかっていきまして、学校を出れば、人に雇われれば必ず被保険者になるという時代が近くくることが予想されます。したがって、私どもとしましては、失業保険の受給者、すなわち、安定所の側から見れば求職者となって安定所の窓口にあらわれるわけでありますが、この被保険者であった受給者が求職者の大半を占めるという時代がもう近々くるわけでございます。そういう観点から、失業保険の受給者即求職者という者を主たる対象として職業紹介業務を展開をしていく、これの例外をなすものは、新規に学校を出るいわゆる学卒者でございまして、それを除くと、ほとんど大半の者が失業保険の受給者である、こういうたてまえで安定所の内部組織の編成がえをいたしたのでございます。ドイツの例を見ましても、失業保険公社という看板のもとに職業紹介を展開をいたしております。これから保険が充実されればされるほど、失業保険を土台としながら職業紹介を展開をしていく、こういう体制が必要だと思いまして、昨年の二月に安短所の内部組織の改編をいたした次第でございます。
  168. 小平芳平

    小平芳平君 先ほど来いろいろ御質問がありまして、御答弁の過程で私またお尋ねしたいと思いますことは、第一に、失業保険の被保険者数を昭和三十五年以降くらいでお願いしたいと思います。
  169. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) いま問題になっておりまする日雇いから先に申し上げますと、三十五年が五十九万、三十六年が五十五万、三十七年が四十九万、三十八年が四十六万、三十九年が四十八万と、かようになっております。それから、一般一のほうは、三十五年が千二百七十三万、三十六年が千四百二十四万、三十七年が千五百五十二万、三十八年が千六百五十万、三十九年が千七百五十九万という状態でございます。
  170. 小平芳平

    小平芳平君 予算上でけっこうだと思いますが、四十年、四十一年についてもおわかりでしたら。
  171. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇いのほうは四十一年一月というのが一番新しい数字でございますが、これによりますと四十三万になっております。それから、一般のほうが同じくことしの一月において千七百八十二万になっております。
  172. 小平芳平

    小平芳平君 結局、森委員からもいろいろ御指一摘があった点は、こうした失業保険、特に日雇い労働者並びにその日雇いの失業保険を受ける人たちの労働条件というものが非常に悪い、また、雇用も不安定であるということが、言えるわけです。したがって、経済成長に件って、経済成長と雇用問題についても午前中もいろいろお話があったのでありますが、経済成長に伴って、このような労働条件の悪い人たも、あるいは雇用の不安定な人たちが、どれだけ経済成長の中で労働条件がよくなり、雇用が安定してきたか、あるいは、また、日雇い労働という不安定な職場から安定した職場へどのように移動していったか、そういうような点についての分析なりお考えはありませんか。
  173. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 労働力調査によりますと、非農林の常用雇用者の数は、三十四年が千三百二十九万でございましたが、三十九年は千六百七十二万というふうに、相当大幅に伸びておりますが、日雇い並びに臨時の雇用形態の雇用労働者を見てみますと、日雇いは三十四年が六十七万、三十九年が六十六万というふうに、大体横ばいの状態でございます。臨時も、同じく三十四年が七十二万で、三十九年が七十万というふうに、むしろ若干下回っておるというふうな傾向が出てまいっておりますので、雇用量の伸びに伴って常用雇用の形態が伸びて、日雇い、臨時の形態は横ばいの状態であるということを見ましても、雇用の形態は著しく改善をしておるのではないか、かように考えるわけでございます。
  174. 小平芳平

    小平芳平君 常用は伸びたが、日雇いは横ばいだからあまり安定はしていない、そういうことじゃないですか。
  175. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 雇用形態から見たら、先生の御指摘とは逆に、不安定な雇用形態でありまする臨時、日雇いの形態が横ばいで、常用雇用の形態が伸びておるという関係からしますと、やはり雇用形態としても安定した雇用形態に移行しつつあるというふうに言えるんじゃないかと思います。
  176. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、日雇いの形態が減っていけば安定する傾向になってきたということが言えると思うのですが、減っていないように思うのですがね。それから、また、先ほど昭和四十一年一月は四十一万というふうに御答弁されましたが、ずっと三十八年四十六万、三十九年が四十八万、そこで四十年が四十四万、四十一年が四十六万というふうな数字になっておりませんですか。
  177. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 先ほど日雇いの被保険者が一月で四十三万と申しましたが、これは例年一月は数が非常に下がる月でございますので、その前の月は四十五万とか六万とか七万というふうに、各月ごとに被保険者の数は若干動いております。例年一、二月というものは一番少ない月になっております。  それから、先ほど私たいへん失礼いたしましたが、常用雇用と臨時、日雇いの数字を申し上げまして、ちょっと少ないなと思っておったのですが、これは先ほど申しました数字は、男女別のうちの男子の雇用労働者だけの数字でございますので、女子の労働者を合わせますともっと多くなります。傾向は、大体日雇い、臨時は横ばいで、常用の形で伸びておる。したがって、相対関係において雇用形態が安定化しつつあるのじゃないか、こういうことを申し上げたわけであります。
  178. 小平芳平

    小平芳平君 結局四十一年、また、四十二年、四十三年と、労働省見通しとしては、失業保険の日雇いの失保を受ける人たちは減る傾向にあるということが言えるわけですか。
  179. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇い形態の雇用労働者は横ばいでかりにありましても、失業者の被保険者としての数は横ばいに推移するか、あるいはもう少し減るか、この辺はことしの特殊事情としましては、先ほど申し上げましたように、港湾労働法の施行に伴なって、日雇い登録労働者約三万人がそちらに移行して、こちらからはずれますのでそういう変動はございますが、全体の趨勢からいたしましては、まあ横ばい程度じゃないかというふうな感じがいたしております。
  180. 小平芳平

    小平芳平君 先ほどの出かせぎの労働者の問題等も若干関係するのですが、農村に下請工場ができる、その下請工場にちょっとした内職程度で働きに行くその人たちがやはりその日雇いという形態で、仕事は同じようにやりながらも、そうした日雇いという不安定な労働者でしかあり得ないというような問題をしばしば聞くわけです。ですから、私もこの総合的な調査や統計をとって見たわけじゃありませんので、一がいに言えないと思いますが、まだまだこの日雇いに関する問題点が非常に多い。それで、もとより労働省としても、失業保険金日額を五百円と三百三十円に引き上げたことによって非常にこの問題が一歩前進したというふうにも言えないと思うのですが、この点だけは改善されるわけですが、まだまだいろいろな問題をはらんでおる、このように思うわけです。  そこで、もう一つお尋ねしたい点は、この昭和三十九年で四十八万人という被保険者の中で、失対事業の人たちは何人で何%ぐらいか、その点についてはいかかがでしょうか。あるいはもっと新しい数字でもけっこうですが、この被保険者の中で失対華美の人たちがどのくらいになるかということについて。
  181. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 失対事業に就労しておる方々は、全員日雇保険の適用を受けておりますが、大体被保険者の中に占める割合は六五%程度でございます。大体三十万から二十五万という線でずっと推移しておりますので、比率は六五%程度じゃないかと思います。
  182. 小平芳平

    小平芳平君 それでは、この失対事業の方々がここ数年にわたって減る傾向かふえる傾向か、どのような傾向をたどっているかというような点についてはいかがですか。
  183. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 失対事業の適格者の数字は三十五、六年がピークでございまして、このときが約三十五万ございました。これが今日では漸次減少いたしまして、二十五万程度に縮小をいたしております。
  184. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、先ほどの被保険者が三十五、六年に比べて今日では相当減ってきているということは、この失対事業をやめてほかへ行った人たちですね、それが大きな原因になっているのじゃないでしょうか。
  185. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のとおりでございます。
  186. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、そのほかの失対事業の問題は、昭和二十八年の失対二法の改正、あれも相当強硬な強引な改正が国会で成立してしまったわけですが、このことが原因で日雇い労働者が減ったということは、そのほかの大多数の日雇い労働者は横ばいできている、また、全体として見た場合は、横ばいだということは、失対事業で減った人だけほかがふえているということにもなりませんか。
  187. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 失対対象者以外の方々も三十五、六年が十二万という数字でございましたが、最近は八方、七万程度に減少を見ております。
  188. 小平芳平

    小平芳平君 それは、その被保険者は失対事業で減った人たち以上にほかの人たちも減っているように数字がありますが、先ほどの昭和三十四年と三十九年と比べて横ばいだということは、失対で減った分はほかでふえていることになりませんか。
  189. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) ちょっとこの事情が複雑なんですが、日雇保険の被保険者の数字にあらわれておりまする四十何万という数字の中には、まず第一に、六五%程度が失対労務者であるということはそのとおりでございますが、そのほかに、安定所には日雇いの登録制度がございます。この関係の登録日雇い労働者の数が、いま申し上げましたように、三十五、六年の十二万人を頂点といたしまして、漸次八万、七万台に減っております。この関係だけから見ますると全体がもっと減るべきなんでございますが、そのほかに一般の日雇い労働者の保険の適用拡大という問題がございまして、全体の対象者としてはそう大きな激減を来たしていない、こういう状態でございます。現に先ほど申しましたように、適用地域というのが、安定所を中心として、一定の通勤地域、距離の近いところに限定されておりますが、これを漸次拡大をいたしまして、遠隔地にあるダム建設工事というようなところも集団的に拡大適用をはかっていくというような関係で、一般の日雇い労働者については漸次拡大をしているという傾向でございます。
  190. 小平芳平

    小平芳平君 この問題はこのくらいにいたしますが、私の申し上げたいことは、一方では日雇い労働者が減る、減るというよりも、むしろ法律上減らされたというような面もあるし、また、一方では、かえって日雇い労働者がふえるような企業の形態も起きつつあるのではないかというような点、それから、もっと私の申し上げたいことは、こうした日雇失業者保険のこの保険を受ける人たちの非常に困難な生活環境、不安定な雇用という、この点については先ほど来もいろいろ指摘されたとおりであると思います。第一、幾ら失業保険をありがたくいただいたからといって、五百円でどうその五百円を使っていったらいいか、あるいは三百三十円をいただいたからといってどうそれを使っていったらいいか、もっともっと国の政策全体として、この労働者の生活安定、労働者の生活をもっと質かにする全体の政策の中でこの日雇い失業者問題が初めて解決されるのではないかということを申し上げたいわけです。今後の問題としていろいろ指摘されておりますから、全体として私がこまかく一々取り上げることはいたしませんですけれども、今後の保険財政のあり方としてはいかがでしょう。先ほど労使折半についてはいろいろありましたが、今後の保険のあり方としては、赤字あるいは黒字というような見通し、それから、また、財政の基本的なお考えについてお伺いしたい。
  191. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 日雇保険につきましては三十五年以来赤字になっておりまして、来年度見通しといたしましても六億、五千万ほどの赤字に相なります。しかし、一般保険とプールをいたしまして収支をやっておりますので、この程度の赤字はやむを得ない。若干今後対象者がふえればふえるほどこの赤字はふえてくるわけでございますが、この程度はやむを得ないというふうに考えております。
  192. 小平芳平

    小平芳平君 それで、もう一つ、スライド制を実施すべきだということについても労働省からもいろいろお考えが出されておりますが、要は、物価が上がる、生活が苦しくなるということは労働者個人の責任じゃないわけですが、これは多分に政府政策によって生活が苦しくなるわけです、物価が上がるから。ですから、いろいろ前回の御答弁でも、事務的に、技術的にスライド制は困難だというようなこともおっしゃっておられましたが、はたしてそれじゃスライド制はとらなくても、政府政策によって生活が苦しくならぬようなどれだけの配慮を労働省としてお考えか、その点についてはいかがですか。
  193. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) スライド制の問題は、森先生にずいぶん私も苦しい答弁をいたしたわけでございますが、技術的に非常に困難があるので、現在の二段階定額制でやむを得ないのじゃないかというお答えをしたと思います。しかし、その考え方は確かに尊重すべきじゃないかと思いますので、この点の問題はさらに検討をしてみたいと思います。たとえば法律改正という手続を経る仕組みに現在なっておりますけれども、これをある程度政令に委任するということも、新しい賃金事情、あるいは経済情勢に対応して改正が容易になるというようなこともございますので、そういった問題も含めまして今後検討をしてまいりたいと思います。
  194. 小平芳平

    小平芳平君 それは今後検討する点はよくわかりますが、私のお尋ねしている点は、労働者個人の責任で物価が上がるわけではない。大部分は政府の施策によって物価が上がる、生活が苦しくなる。そこで、その生活が苦しくならぬための配慮ですね、そういうようなことも、物価が上がった、生活が苦しくなった、昭和三十五年以来ですが、昭和三十五年以来、五年、六年にわたってそのままの基準で据え撒かれる。そうすると、それだけ生活が芳しい、そういうふうにまるまる生活を切り詰めなければならないという結果にならぬための労働省の配慮というものが必要ではないか、それができないものかどうかということをお尋ねしている。
  195. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先生の御指摘の点は、結局は物価と賃金がどういう関係であるべきかという基本的な問題につながっておると思いますが、もちろん政府全体としては、物価も極力安定すべく諸般の努力を払っておるわけでございます。しこうして、そうは申しながら、最近物価が、特に消費物価が相当値上がりしていることも事実でありますし、また、それが労働者個人の責任ということでないことも、これまたお説のとおりであります。そこで、しからば常に物価の上昇を相当上回るような賃金上昇というものをやるべきかと、こうなりますと、これはなかなか功罪相半ばするというか、そういう面も出てくると思います。あまり急激に賃金が上がりましても、これまたいわゆる物価にはね返って悪循環を起こす、こういうことにどうしてもならざるを得ないと思います。ですから、労働省立場からいたしましても、極力まずもって物価の安定を進めるための施策を強力に政府としてやることを推進し、あるいはそれに協力する心がけが必要だと思います。しかしながら、現実の問題として、物価が相当上がったというときに貨金を抑えておくというようなことは、これはもちろんできませんから、やはりそれに応じて賃金も適当な上昇をはかるというと何かちょっと語弊があるかもしれませんが、少なくとも政府関係する賃金というものについては、御承知のとおり、失対の賃金などにつきましても今回も上げることにいたしております。そういうことでやってまいりますし、まあ民間のことは、もう申すまでもなく、政府が直接は賃金にタッチしませんが、しかし、まあ公務員の給与、あるいは三公社五現業につきましても、御承知のとおり、先般公労委の仲裁裁定が出たわけですが、こういうことによって要するに物価バランスをとりながら賃金はやはり上昇をはかっていく、こういう方向で現にやっておるわけであります。ただ、この失業保険にせよ、あるいは先ほど申しました失対の賃金にせよ、たてまえが物価と直接少なくも現行法ではいわゆるスライドするというたてまえになっておらないわけでありまして、他の同種の大体労働者の賃金と見合っている。間接的にはやはり物価と関連してくるわけですが、直接物価と賃金はスライドしてというたてまえにはいまのところなっていないわけでありまして、こういう点も大いに研究は必要でございましょうが、現行法のもとにおいては直接というところまではまだいっていない。これは御承知のとおりでございます。
  196. 小平芳平

    小平芳平君 大臣から賃金についてお話がございましたが、私がいま直接は保険金のことで申し上げているわけですが、それで、賃金についても、先ほど来指摘されているように、日雇い、あるいは不安定な雇用労働者、こうした面について特に労働省として、配慮していかなくちゃならない。これはもうそれぞれの各省分野もあることですが、幾ら高度経済成長といっても、経済成長だけでは、労働者の生活が豊かになり、しあわせになるというものがなくては何にもならないのであって、したがって、労働省としてはそうした個々の労働者の生活がどれだけ豊かになるか、また、どれだけ生活が安定していくかということ、特に労働省として配慮していただきたいと思うことは、労働者の中でも恵まれない日雇い労働者、失対労働者、その他恵まれない人たちに対する配慮がなされなくちゃならないと思うのです。それで、したがって、この確かに失対の賃金は上がったと、けれども、この日雇いの保険金は上がらないというような場合も出てきたわけですね。ですから、たとえば法律を改正しなければ保険金は上がらないというわけですが、まあ局長は前向きで検討しますというふうに言われているわけですが、たとえば今回の改正でも保険金を上げる、すぐ保険料を上げるというようなことになっているわけです。ですから、かりに言えば、保険金は上がったと、けれども、実際の保険料は上がらないというならそれだけプラスになるわけですね、実際の労働者の生活にはプラスになるわけです。まあとにかく政府の施策、政策で、法律が伴わないから生活が年々苦しくなる。消費物価が七%上がれば、もろに七%、あるいはそれ以上に生活が苦しくなるというような、そういうことのないような配慮が必要じゃないかということを申し上げたわけです。いかがでしょうか。
  197. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先生の御指摘のような心がまえで労働行政を進めなければならないということは当然だと私も心得ております。今回御審議をわずらわしております雇用対策法案等におきましても、全体として完全雇用に資していこうということでございますが、とりわけ、不安定な雇用については特別の考慮を払いまして、雇用形態等を改めることによって逐次安定した方向に政府が努力しなきゃならぬということに向かっておるわけでございまして、あるいは、また、先ほどちょっと触れましたが、政府関係いたしておりますもろもろの賃金、先ほどは失対の賃金を申しましたが、最低賃金につきましても、これまた改定をいたしたわけでありまして、これももちろん御満足いったというわけにはまいらぬと思いますが、しかし、これにつきましても、法の規定するところに従ってすでに改定をいたしたわけでありまするし、最低賃金についてもいろいろ御議論がございますが、これにつきましても、御承知のとおり、審議会において目下御審議をいただいておるわけでありまして、逐次御指摘のような方向に向かって労働行政が進展しますように、私どもも及ばずながら努力をいたしたい考えでございます。
  198. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間がありませんから、私は意見を含めて質問をしたいと思います。  どうも大臣のお話を聞いていますと、労働省としては出てきたものと勝負しようというようなお考えのほうが非常に大きいように思うのですよ。私は、労働行政はそうであってはならぬと思うのです。出かせぎ労働者六十万人を下らないだろうという局長お話ですが、これらも的確な数字じゃないと思うのです。私はなかなかつかみにくいと思うのですね。けれども、事実家庭悲劇、あるいはこれのために身投げをするとかいうような事態が起こっておる。この悲劇ですね、これは何としても見のがすことのできない大きな社会問題だと私は思うのですよ。それで、大臣としては建設業界を呼んで、ひとつ業界自体が案をつくって、もっと建設的な行き方で、そういう賃金不払いだとか、あるいは、また、雇用の安定の方法、その他災害も十分考えなくちゃいかぬ、これでは私は積極的でないと思うのです。なぜかなら、皆さんも御承知だと思いますが、たとえば入札で、ある一つの建設工事をやるといいますと、大体百億の請負をします。そうすると、第二次請負は七五%で請け負うのですよ。第三次の請負が六五%なんですよ。これはよく建設業で言っていますが、ひ孫請負というようなことを言っていますが、これが大体五五%ですよ。これが手や足のごとく、至るところで、先ほど森委員も言われたように、飯場と申しますか、そういう表現がいいか悪いかは別といたしましても、これが手足のごとく農村の出かせぎ労働者を雇うわけですよ。それで、大体百億のうちの二十五億も入札者が天引きしておいて、そうして完全な下請、ひ孫までの請負者に対して責任を持たないという理由がわからないのですね。そうして百億のうちの二十五億天引きしておるのですよ。こういう問題を根本的に解決をつけなくては、私は出かせぎ労働者の問題は解決がつかないと思うのです。もちろん出かせぎ労働者に対する就労の確立をするという局長お話は建設的だ、私は前向きだと思っておりますけれども、就労をさせるということよりも、私は、現在の出かせぎ労働者はどこから起こっておるのか、これは政府の責任なんですよ。と申しますのは、農業改善事業が非常におくれたということですね。一つの法案をつくって、至るところの農地に対するある程度の改造はやっておりますけれども、それは部分的でありまして、それよりも高度成長のほうが早かったために、第一種、第二種の兼業農家が七五%までもふえて、そうして出かせぎに出なければ年収六十万円にならないというこの事態ですね。したがって、農業収入よりも、いわゆる農業外収入のほうが多いのでしょう。それのために、佐藤内閣にしても、できるだけ中小企業と農業問題については真剣に取り組んでやりたい、そうしなければいかぬのだということを言っておるのですね。それなら、私は、この出かせぎ者の問題はその大きな一つのポイントだと思うのですね。たとえば今日の出かせぎを局長のほうでは調べておられるでしょうが、東北六県、北海道、新潟、山陰では鳥取、島根、四国では愛媛、高知、九州では宮崎、鹿児島、佐賀、熊本ですね、大体もうきまっておるのですよ。そういう地域の人はこれだけ出かせぎをやらなくちゃならないのだ、農業では食えない。しかも、高度の成長の陰には、政府としては現在の農業五百七十万戸を三分の一にしようという考えじゃありませんか。二百万戸にしようという考え方ですよ。その過程の出かせぎというのは現在は六十万ですけれども、これはもっとふえると思うのですが、局長は六十万を下らないだろうと言っておられますけれども、的確な数字じゃない、もっともっとこれは大きなものだと私たちは見ておるわけです。それに業界に依存した改善をされるというようなことでは、この問題は私は解決がつくはずがないと見ておるのです。あまりにも後向きじゃないか。  そこで、一つの例を申し上げますならば、先ほど森委員から言われましたが、公共事業の道路、たとえば東北六県は縦貫道路、九州にも縦貫道路、もうすでに中部においては東京−名古屋間が貫通するというような事態になっております。そういう国の施設の大きな事業があるわけですね。そういう事業と結びつけて中間搾取をなくするような方法の雇用安定方式をとらなくちゃ解決がつかないのじゃないかと思うのです。そこで、農業のおくれておる選択的拡大で今日肉牛は足らない、こういうものの研究を農村でやらせて、これには農協から補給金を出して、そこで家庭の婦人に冬場で研究させて肉牛の飼育方法をやる、あるいは酪農をやる、養鶏をやる、こういうこれから十年間の公共事業をやろうとおっしゃっておるのだから、それの十年の間に出かせぎ労働者の生活の安定をはかりながら、一方では婦人によるその他協合作業と、農業の選択的拡大による酪農なり、あるいは牛、あるいは養鶏なり養豚なり、そういうものを研究させてやる、そのために牧場の改革をやる、こういう高度な私は計画のもとにこの問題を解決つけなければ、いつまでたっても、この答弁を聞いておりますと、絵に描いたもちだと私は思うのですよ。これでは前向きの姿の問題でないと思うのですが、この点どうですか、大臣。まず、縦貫道路に対する就労は出かせぎ労働者をそこに集約する、このくらいの程度のことは、私は、大臣としても一つの強い意見をもって建設省とも交渉してやってもらうということが賢明じゃないか。そうすればそうした家庭の悲劇も、あるいは、また、農民の生活もある程度安定、向上するのじゃないかという考えを持っておりますが、大臣、これはどうですか。
  199. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 先生お話の全般的な考え方というものについては私も大体同感ですが、ただ、現実の問題として、出かせぎでいろいろな不都合な問題が起きているのは、いわば元請をはじめとして、逐次いわゆるピンはね等をやっているからであるから、どうも業界自体に積極的な、あるいは自発的な改善を求めても、これはむしろうしろ向きの施策じゃないかという点でございますが、私は、もちろんこの出かせぎの問題というものも、出かせぎをせざるを得ない状況と申しますか、そういうことになったということは、これは国政全般の問題でございまして、出かせぎをしないで、農業をやることによって十分所得も得られる、こういう方途がありますならば、むしろそのほうがベターなことだと思います。しかし、少なくとも現実の姿においてはそういかないで出かせぎをしているということでございましょうし、したがって、私どもとしては、いま現時点で私どもに与えられておる仕事、役目というものは、こういう人がいかに適切な労働条件のもとで、また、適切な収入が得られるかということにまず私どもはどうしても全力を注がなければならないのでありまして、時に労働省立場からいたしますならば、私が先ほど申しましたように、労働省が単に指導監督をするというだけでこれを改善するということは、言うべくしてなかなか私は困難であろうと思いますし、そのことを決して怠るわけではございませんが、私はまずもって、やはりそういう指導なり監督なりを待たずに、業界自体がみずからの自覚に立って改善をしてもらう、それを誘導すると申しますか、そういうことに努力することがやはり私は前提ではなかろうか。監督をされるからよくするという、そんなけちな考えじゃなくて、業界みずからが進んでよくしていく、こういうたてまえにぜひ立ってほしい、こういうことを申しておるわけでありまして、まあその間、もちろん基本的には請負制度自体の問題もございましょう。しかし、これはおことばを返すようでありますが、請負制度自体の問題になりますと、もちろんこれはわれわれが閣僚の一人としてそういうことの改善を求めるのは当然ですが、当面の責任者は何と申しましても建設大臣でありまして、いまの請負制度をどうするかこうするかということは建設省の主として問題ではなかろうかと思います。もちろんいま言うとおり、私も閣僚の一人ですから、そういう基本的な問題についても、これはもちろん改善方を建設当局に求めてはまいりますが、そのほうは、いわば少なくとも労働大臣としては従たる仕事になると思います。なお、しかし、そういう事情でございますが、雇対法にばかり関係して恐縮ですが、いずれにしても、いままで労働行政全般というものが、一口に申せばあと始末的な色彩というものがどうしてもぬぐいさることのできないのは事実だと思います。ですから、もう少しやはりこの雇用策対というものを積極的にやっていく必要がある。少なくとも他の経済政策産業政策と同等の立場で、また、お互いに相連絡し、調和し、国の行政全般がこの雇用政策というものを重視していくようにしなければならない、こういう見地に立って今度の対策法は御審議をお願いしているわけであります。この法律が成立いたしますれば、従来より増して、そういう先生の御指摘のような労働行政の消極性と申しますか、そういう面もよほど払拭されて、ずっと積極的にやっていくことができる、政府全体として責任を持つ、こういうことになるわけですから、そういう点もよほど改善されていくであろう、かように期待しているわけであります。
  200. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、このやっておられることがうしろ向きとは言わないのです。業界を説得されただけでもいいとは思っていますよ。しかし、出かせぎ労働者の解決にはならないのです。もっと高度のものを大臣が持って主張される場があってもいいのじゃないか。それは建設大臣ですよ、あるいは政府に対してです。政府の一員ですから、閣僚としてやってもらったらどうかと私は思うのですがね。たとえて申しますと中間搾取、私はいま直ちになくせなんていうことを言っているのじゃない。大企業関係、建設業がかりに百億で請け負った、それが第二次では七十五億だ、第三次では六十五億だ、いわゆる飯場と称しますところでは五十五億で請け負っているわけです。そこで千二百円ないし千五百円の給料を払っているのでしょう。ところが、請け負わす責任はだれかというと、入札者です。その責任ぐらいは追及できるじゃありませんかということを私は言うのです。これが一つ。その責任ぐらいは肝心の請負者に責任を持たせて、賃金の不払いなんていうようなものは、これは絶対もうやめなくちゃいかん。大臣は御承知か知りませんけれども、宮城県から私のほうにそういう注意があって、私は労働省にもある人を通じて解決つけてもらって、すぐ九人分の給料を払うようにしてもらったのです。やればできるのです。こういうことはやればすぐできるのです。できるのですから、責任はやはり入札のときに、そのいわゆる元請をしている者の責任だということに、これは労働省としてその確約をして入札せよ、それでない限りはだめだというような一つの方針があってもいいのじゃないか。これが前向きだ。  なお、また、先ほど私は縦貫道路を申し上げましたが、もうすでにこれも来年度あたりから始まるのでしょうが、十年計画じゃありませんか。それで、よそに出かせぎに出ないで、県下の出かせぎ者をそこで使用していく。それがためには地域の自治体もそれに協力をしてやる、こういう姿の行き方が閣僚会議で十分な御相談もでき、また、そうすることが今日の出かせぎ労働者一つの大きな救済の事業ではないか。それをいつまでも、縦貫道路が過ぎたら今度はどうするのだということもありますから、その間に私は農業の近代化、いかにしていわゆる専業農家として自営のできるような方向にいくのか、これは地方自治体が研究し、かつ、また、それには政府としても助成するものは助成する、こういう指導が大臣にあってもいいのではないか、こういうふうに私は申し上げているわけです。  一つのしからば繊維の問題を例に申し上げますが、いまのは出かせぎですけれども、午前中、藤田先生のほうから、いろいろ繊維にもある程度関連して質問がございました。これは私は詳しく予算委員会が開かれればそこでやりたいとも考えているのですけれども、一端だけ大臣に私は申し上げたいのは、これは四月二十一日に鐘紡と若林氏との、東邦レーヨンとの社長会談において話が出てきたわけです。家際の問題はどうかというと、この三月に十五条までの協定書を結んで、人員整理の問題は十四条ですか、十四条にわたる契約書というものができておりまして、人員整理の問題はこの契約書の中には一つも触れておりません。それがいつかと申しますと、これがこの三月の上旬ですね。今度四月の二十七日になると、一カ月半くらいの間にこういう条件が出てきている。男子一千二百十八名、女子千名の人員整理をしてもらいたい、その相談を若林社長が鐘紡から受けておるわけです。それはとんでもないということで社長もあったでしょうが、組合が質問したときには、人員の問題については全然整理をしない、現行のまま、労働条件もそうだ、こう言っておるわけです。それが四月二十七日にはそういう条件をつけて東邦レーヨンに持ってきた。六千七、八百人しかいないのにこれだけの人員を整理しようというのですよ。そこでこれだけの人員を整理しなければその統合をしないということでありますから、組合としてはこれの反対闘争を現在やっておるのですが、合併をするときには社長同士の相談で、契約書が結ばれたあとに組合に報告にきて、労働条件現状と変わらない、しかも人員整理もない、こういう言い渡しをしているわけですね。そうすると、一カ月半もたたないうちに約二千二百人の人員を整理したらどうか、こう出てきている。大臣、こういうことは世の中通りますか。労働省はこれをまだ調べてもおられぬと思いますが、こういう日本経営者団体があるという事実の上に立ってどういう一体指導をされますのか、私は出かせぎ労働者もその一つだと思うから、これは一つの参考の例にいま申し上げた。それ以上の詳しいことは私は別に質問いたしますから、こういうことで日本労使関係というものが一体成り立ちますか。また、労働省はこういうことを黙認しておるということであるなら、通産行政に対して話し合いもしないで、依然としてこういうことで放任してあるということは、一体労働行政の基本的な考え方というものに疑いを持たざるを得ない。だから、いまの出ておる点だけをお考えになるということも、その整理も必要かと思いますけれども、現在出ておることを整理されるということも一つでございましょうけれども、未然に防ぐということも労働省行政の大きなポイントでなければならない。こういうポイントが抜けておるということは私は労働行政でないと、こう断定せざるを得ない。大臣、これは一つの例を申し上げたのですが、したがって、この出かせぎ労働者の問題も、もっと出ておる者の処理じゃなくて、これからやっていくのについては、幸いに東北には縦貫道路、九州にも縦貫道路があり、さらに、また、肋骨道路というものもできましょう。こういうものを中心としてどういうふうに出かせぎ労働者をここに集約していくかという点は基本的に私は考えておいてもらいたい。これは大臣だけじゃできません。建設大臣も説いてもらいたい、さらに地方の自治体も説いてもらって、政府もそれに対する金をある程度出して対策を立てていくという、き然たる態度をもって私は交渉してもらいたい、政府を納得さしてもらいたいということを要望を申し上げて、大臣のひとつ回答をお願いしたい。
  201. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) まず、第一番の、現在の請負の実態から見て、下請の賃金支払いについて元請に責任を持たせるくらいのことは当然じゃないか、こういう御趣旨でございますが、この点は先ほどもちょっと触れましたが、実は私も全くそういうふうに考えておるのです。ただ、しかしながら、しからばそれを法的に義務づけるかと、こうなりますと、先ほどもちょっと申しましたが、この出かせぎの人が下請の人に雇われた、つまり雇用関係からいえば下請者と出かせぎ者の雇用関係でございまして、元請と出かせぎ者の間には雇用関係が法的にはないと、こういう関係でございます。したがって、この雇用関係のない元請者にこの下請の雇った出かせぎ者の賃金を支払う義務を課すると、こういうことについては、どうも法律的にいろいろ検討をさしたのでありますが、少なくも今日までの検討では、どうもそこまで法的に割り切るということは、至難であるという状況でございますので、私は法的にはなるほどそうかもしれぬが、しかし、少なくともいわば道義的責任とでも申しますか、それは元請にある。したがって、先般この業界の人たちとの懇談会でも申し上げましたことは、われわれとしては、できれば法的にも割り切って、元請に責任が法的にもあるんだぞと、そこまでいきたいが、これはいろいろ問題もあるようだ、しかし、まずそういった法的措置をする前に、皆さん御自身が、というととは、業界御自身がそういうふうなことに進むような体制をつくってほしい。どうしても業界の自発的な処置ではだめなんだということならば、われわれはさらに検討をして、法的にもこれは無理もありましょうが、さらにさらに検討をして、もう万やむを得ざる措置としての法的措置も考えざるを得ないかもしれませんよと、こういうことも実は私は申し上げておるのです。実際問題としては先生にも御心配いただいたようでありますが、今日下請の賃金不払いの問題等が起きました場合には、御相談を受けた場合には監督署等で十分心配をいたしまして、元請のほうに不払い分を払わしておるという例もこれは相当あるのでございます、現実の問題としては。しかし、これはあくまでも形式論と申しますか、法律論と申しますか、そういう点から申せば、これはいわば元請が道義的に支払っておるというだけのことでございまして、法律的に義務があってそれを払っておると、こういうことでも現にないわけですね。また、そういうことに法律をつくるということも、なかなか現実の上ではいろいろ問題がある、こういう実情を先ほど申し上げたようなわけでございます。しかし、この点はもちろんわれわれとしては引き続いて検討していくつもりです。  それから、第二の、出かせぎの人にそれぞれ縦貫道路なり、あるいはその他の地域開発なりを考慮して、比較的近いところで、地元で働けるようにやっていくべきだということ、これも全く私は同感なんでありまして、この点につきましても、実は建設大臣とももう何回も話し合いをいたしておるのであります。特に今回の雇対法等におきましても、そういった公共事業と雇用とのかみ合わせということにつきましても十分これは考慮して計画立てていくと、こういう予定でおりますから、先生のお示しのような方向に私どもも努力をいたしていく考えでございます。まあその間、もちろん建設当局なり農林当局なり、そういった事業官庁とも十分連携をとってまいる考えでございます。  それから、第三の、この会社合併に伴う人員整理の問題でございますが、この点につきましても先ほども申し上げたわけでございますが、どうもこういう場合における労働行政のあり方というものは、私自身が実はどうももの足らぬというか、非常に不満を私自身が実は気持ちとして持っておるのであります。と申しますのは、これはこの種の問題が起きてからしばらくたって、こういう問題が起きているぞということが耳に人って、それからまあ何こいいますか、実情を聴取すると、こういったようなことなんでありまして、先ほど通産省企業局長なりが申しておりますが、こういう事態があるような場合は、やはり関係各省間でもっとすみやかに、いわば事前に連携をとってもらって、少なくともこの人を二千人以上も整理しなければならぬというような問題が起きます以上は、これは単なる、何と申しますか、会社の合併ができればいいと、それによって合理性が貫かれればいいという問題ではないと私ども考えるわけでありまして、そういう点からいっても、もっと労働省がその間の事情を早くキャッチする必要があるし、それから、ただ、問題は、先生も万事御承知のとおり、本件の場合にいまどの程度にいわゆる労使間の問題が進んでおるのか、私自身、実ははなはだ申しわけありませんが、よく知りません。そこで、どうもこの労使間の問題となると、これは役所は不介入なんだと、うかつにと申しますか、たまたま役所が何らかの形で関係を持つことも、どうも労使間に介入してけしからぬと、こういう問題も御承知のとおり出てくるわけでありまして、どうもその紛争にいく前に、一体役所がどういう形でこの種の問題にタッチするのが適当であるかということは、私はこれはデリケートな問題であるし、重要な問題であると、こう思うのです。しかし、やはり世間一般がこの労使間にあえて介入だと解せられぬ程度においてでも、もう少しやはり役所が積極的にこの種の問題にタッチする余地というものが私はあるのじゃなかろうか、どうもそういう気持ちを私は持っておるのです。ですから、事前に、いわゆる紛争に至らぬ前に経営者側にしかるべき助言をするとか、そのくらいのことは私は許されてしかるべきじゃないかという気がするのですが、その辺のところもこれはなかなか法的にもいろいろむずかしいようですから、よく当局にも私の気持ちを伝えて、今後ひとつできるだけこういう問題の、もちろん問題が起きないのが一番いいのですし、起きました際に、これをひとつ円満に処理していく方向に努力をしてまいりたい。とりあえずこの問題につきましてはよく事情を調査させていただきたいと思います。
  202. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、大臣ね、そのいま整理の問題を主体にやろうとは考えていないのです。先ほど申した一つの例ですね、労使関係というものの見方ですね、もう前回から続きにやっておられるように、小野田だってそうでしょう。ここで質問が出て初めて調査されるのでしょう。それではちょっと労働省としての私は使命を疑いたいのですがね。この繊維の問題でも、私がここで発表するまでまだ御承知ないのでしょう、それじゃおそいと言うのですね。どういう経過になったのかということを調査されて、大臣の声明を出されるのも一つの方法だろうし、労働省をだまして合併をしようという考え方ですからね。そういうことが私は労働行政の中に大きなポイントとして抜けておるのではないか。それは何もむずかしいことではないじゃないか。むろんその企業介入ということは労働省としてはできぬにしても、大臣の見解ぐらいは堂々と発表されても何もふしぎはないと私は思うのです。また、それが社会に世論的にも呼ぶのではないかという気がするのです。私がここで質問するまでは御承知なかったでしょう。そういう労働行政というものはおかしいと言うのです。どうかひとつ建設的に一歩進んだ形の労働行政の方法をお考え願って、私は希望意見を述べて終わりたいと思うのです。
  203. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 先ほど森委員質問に対して、労働省のほうで答弁漏れがあるという申し出がございますので、発言を許可します。
  204. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一つは、四十六万人中に一級の労働者が幾らか、これは十七万六千人でございます。それから二級は二十八万八千人でございます。  それから、第二番目は、賃金八百四十円以上の者の占める比率でございますが、被保険者に対しまして四万六千人、比率が九・九%、それから受給者に対しましては一万八千人で、八・八%、以上でございます。
  205. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、この失業保険の審議にあたりまして、労働大臣、労働省が私たちにお約束をいただきましたのは、保険料の問題や、それから政府の失業保険会計の問題、これについては真剣に取り組むというお話でありましたし、それから、労働の意思と能力云々というようなものから出てくる定年退職者や婦人労働者の問題の処理、これも再検討するということでありました。今日まで述べられてまいりました昭和四十一年から五人未満の社会保険実施と歩調を合わせて実現するというのが約束されてまいったのが、どうも事務的におくれているようで、来年にはこれが実現をされるようであります。衆議院では四十二年度から失業保険の給付の改善について云々という附帯決議がありますけれども、私たちは附帯決議をここで書く必要もなかろうと私は思う。現職の労働大臣の意思が明らかであれば、われわれはそういうかまえでこの問題の処理をしたいと、こう思う。ただ、つけ加えておきたいのは、たとえば一般失保が百八十円という最低が、いまだに日雇いで三百三十円存在しておったり、事務費が本来国の一般会計から出さなければならぬ問題が、これができておらなかったり、または職安の事務所がないところは日雇保険も失業保険もかけられないという状態なのであります。これは市町村に委託すればできることであろうと私は思うのでございます。まあそういういろいろもろもろの問題をあわせて、私は政府のお約束をされる四十二年度からこの根本的なこのような要件を含んだ改善をされるというぐあいに、この失業保険を通じて労働省は約束されたとわれわれは理解をして、この法案をひとつあげようというかまえになっているわけでありますが、よろしゅうございますか。それだけをお答えいただきたい。
  206. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 藤田先生指摘の問題につきましては、極力御意見に沿うように私どもは最善の努力をいたしたいと思います。その間でこの基本的な検討を要する問題が幾つかあるわけでありますが、これらについても、極力まあ私どもとしては御趣旨に沿うようにやりたいと思っております。   もう一つは、一般失業保険の低い保険金額ですね、これなども私はやはり廃止の方向でぜひやりたいと、こういうつもりでおります。
  207. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと私は、そういういろいろの労働大臣の御意思はわかりました。ただ、四十一年度から実施するというやつが、いろいろの関係で四十二年度からこの改善を家施するということにわれわれは最大譲ってそこまで理解してきたのでありますけれども、どうもこの間から答弁を聞いているとあいまいなんで、私は、やはり四十二年度から実施するように最大の努力をするということを明確にここにしておいてもらわぬと、去年は四十二年度だとこう言う、今年になったら四十三年度だ、来年になったら四十四年度ということでは、これは私は食言問題にまで関係してくると思うのです。そこのところを私はあいまいでないように、衆議院の社労委員会も、こういうことに対して明確にこの問題を提起しているのでありますから、その点については社会労働委員会の全員の希望といって私はいいと思います。そこのところだけは最大の努力をするということだけを明確にしておいていただきたい。
  208. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) よく委員会の御意向も承知をいたしておりますので、もうわれわれとしても最大限のもちろん努力をいたす所存でおります。
  209. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認めます。  鹿島局俊雄君から委員長の手元に修正案が提出されておりますので、この際、本修正案を議題といたします。鹿島俊雄君より、修正案の趣旨説明を願います。
  211. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 自民、社会、公明及び民社の四派共同提出にかかる修正案について、私からその提案理由を申し上げます。  修正案はお手元にお届けしてありますので、朗読を省略いたします。  修正の要旨は、原案が定めている施行期日を一カ月おくらせることであります。したがって、改定される保険料を六月一日から徴収し、七月一日から改定される保険金を支給することと相なります。これに伴って、経過措置を定めている各項に規定された月日についてもそれぞれ一カ月ずつおくらせる手当てをいたすものであります。委員各位の御賛同をお願いいたします。
  212. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) それでは、ただいまの修正案に対し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。——別に御発言もなければ、質疑はないものと認めて、これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認めて、これから討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより失業保険法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、鹿島俊雄君提出の修正案を問題に供します。鹿島俊雄君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  215. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 全会一致と認めます。よって鹿島俊雄君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  216. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 全会一致と認めます。よって修正部分を除いた原案は全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回の委員会は五月三十一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会      —————・—————