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1966-04-27 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十七日(水曜日)    午後一時二十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 竹松君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 佐野 芳雄君     委 員                 亀井  光君                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  健康保険法等の一部を改正する法偉業議題と  いたします。前回に引き続き、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 この間資料をお願いいたしまして、身体障害児、特に先天性心臓疾患児調査をお願いしたのですが、その資料によりますると、先天性心臓疾患児発生頻度学者によって異なるということを前提といたしまして、出生児千人  に対して厚生省のほうでは二人ないし三人、あるいは五、六人というふうにいわれまして、この先天性心臓疾患児のうち、三分の一は出生後一カ月間でなくなり、三分の一が生後一カ月から一年以内で死亡する。残りの三分の一の者が普通の子供たち成長程度から見て劣っている者で、それがおおむね二万ないし三万、あるいは六万というふうに数字発表されておるわけです。これは推定数字でありますから、生存している心臓病疾患児が幾らあるかは、報告されました資料だけでも実はつかめないわけであります。そこで、大臣に聞きたいのですけれども、こういうふうな推定数字一体対策が立つと思われているのか、あるいはそれで対策を立てておられるのか、この点をまずお伺いしておきたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私どもこういうお子さん方実態を明確に把握をいたしまして、それに対する施策を早急に確立したい、かように考えておるのでありますが、何ぶんにも高度の検査診断技術を要する問題でございまして、現在のところ、そういう方向で私ども努力はいたしておりますが、明確な数字把握することに非常な困難を覚えておるところでございます。
  5. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いろいろ対策を立てられるのに、正確な数字と申しますか、実態把握せずに対策を立てることはできないと思うのですけれども、そういう点でいろいろ今日まで身体障害者の問題、特にそういう内部疾患を持っておる子供たちの問題をお考えになるということはけっこうなんですけれども、真剣に対策を立てるというお考えであるならば、まず真実、実情把握することが第一段に必要だと思うのです。それから、厚生省のほうのこの発表では、心臓疾患児出生した子供たちに対して千人に二人か三人、あるいは五人というふうにに推定しておるわけですが、私の聞きました専門のある学者は、やはり七名ないし八名というふうに判断すべきであるといっております。そうしますと、少なくとも厚生省がいっておる二万とか三万とか五万という数字でなしに、十万をこえる心臓疾患児全国にはおるというふうに考えざるを得ないわけです。こういう子供たちを持っておる親たちの苦しみと申しますか、悩みはまことに深刻なものがありまして、そういう状態を放置しておくことは生産性にも大きな影響があるわけです。だから私たちは、こういう子供たちを救済する立場において厚生省が真剣に取り組むことが必要であるとともに、そういうことをすることが全体としての生産性を高めることにもなるわけですが、この際、厚生大臣はそういう対策を立てるための前提として、まず心臓病に悩んでおる子供たち一体どれだけあるのかという実態把握するための調査をすみやかに実施する意思があるかどうか、まずそれをお聞きしたいと思う。
  6. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 厚生省におきましては、御承知のように、三歳児の公費による検診を一斉に実施いたしておるわけであります。そういう際にこの心臓疾患幼児実態調査把握につきまして、今後特に重点を置いた調査を行ないたい、このように考えております。ただ、診断にあたりましては、お手元に配付いたしました資料にもございまするように、エックス線検査心電図検査のほか、心臓カテーテル法などの高度の技術を要する、こういうことでございまして、三歳児の検診にあたりまして、そういう点も今後対策を立てながら、できるだけ早急にその実態把握いたしまして、これに対する適初対策確立を急ぎたい、かように考えております。
  7. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 お答えだけはけっこうなんですけれども、実際にこういうずさんなと申しますか、あるいはあいまいな報告をしなければならぬようなこの状態をまず打破することが第一番に必要だと思うのですが、厚生省のほうのこの発表によっても、同じ推定でも、私ども推定とだいぶ数字が違うのですが、そういう実情をこの際改める、そのためには実態調査をすみやかにやるという決意ができませんか。
  8. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま申し上げましたように、できるだけ早く実態把握するように、あらゆる機会をとらえまして調査を進めその対策を急ぎたいと、かように考えます。
  9. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それでは、いまの大臣のお話は、早急に実態調査をするための作業を始める、こう理解してよろしいですか、そういうふうに私は理解いたしまして話を進めます。きょうは健康保険法の改正の問題が議題になっておりますので、こまかい突き進んだお尋ねはこの次の機会に譲りたいと思いますが、ただ、ここでお聞きしておきたいことは、今年度の厚生省予算の中で、育成医療の経費が昨年より多少多く組まれておるのですけれども、ただ、この場合も、心臓病等内部疾患を持っておる子供たち育成医療の大蔵省に対しまして行なわれた要求から見ますと、相当の切り下げが行なわれておる。今度の予算によりますると、育成医療に一件当たり七万一千円余が組まれておるのですが、それが厚生省要求した場合には三十万円であったように承知しております。一体三十万円の要求をしたものが七万一千円に削られた。そうしますと、これは四分の一以下に削られておるわけです。三十万円の単価要求をして二百九十件分ということで予算要求されたのが七万一千円に削られて、件数としては二百九十件分である、こういうふうにいっておられるのですが、そうすると、三十万要る場合に、そういう想定をした厚生省が七万一千円に削られたということになりますると、二百九十件分が実際には消化できるのでなしに、その何分の一かがそれに該当することになるのですが、その点に対するお考えを聞いておきたいと思うのです。
  10. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) 育成医療給付に関しまする予算につきましては、先天性心臓疾患のみならず、肢体不自由、視覚障害聴覚障害等の各種の障害に対しましての育成医療を全部一括して行なっておるわけでございます。そういった関係で、実際に必要な額の単価要求して取れれば申し分ないわけでございますけれども、ない。実際問題としましては、この予算の総領のワク内で運営をしておるというのが実情でございますので、そういった関係希望どおり予算がもらえなかったわけでございますが、今後の運営につきましては、心臓疾患につきましては、私どもといたしましては重点的にその運営を行なっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そうしますと、結局二百九十件分の育成医療恩典を受けるものを想定したわけですけれども、実際には三十万円要ると想定されるものが七万余円にしかならなかったということになりますと、二百九十件ということは、あるいは百五十件なり百三十件になるということになりますか。
  12. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) 私が申し上げましたのは、育成医療給付予算ワクの中で運営をしたいということでございますので、実際上そういう要望があり、また、その必要があるということであれば、ほかの分野にあるいは食い込むかもしれませんけれども、そういったことで運営をしていきたいと、かように考えております。
  13. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そういうことになりますと、心臓病疾患の問題が大きく取り上げられて、積極的に大臣のほうでも実態把握してまいるという前向きの姿勢ができますと、そういう前向きの姿勢は、同時に、現在育成医療の問題についても、各府県のあるいは出先のところ、保健所等にはそういう運営のしかたもできるということにならないと困るわけですが、そういうこともだんだんよくわかってくる。しかも、そういう子供を持った親たち育成医療の恩恵と申しますか、恩典を受けようということになってきて、だんだんこの話が広がってくると、結局いままでよりもたくさんの人が育成医療を受けたいということになってくると思うのです。そこで、そういうことについては全体の予算ワクの中でやるといういまのお答えになりますと、それは結局その他の心身障害者子供たちのほうにしわ寄せしていくということになるのですが、この点どうですか。
  14. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) 確かに御指摘のような点があるかと思いますけれども、ほかの障害の場合と違いまして、生命に関する問題としては、やはり心臓問題は非常に大きな問題でございます。また、重大な問題でございますので、運営としては私ども重点的に運営していきたい、かように考えておる次第であります。
  15. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そのお答えは、心臓病に関する限り、それでよいのですけれども、そのことのために、先ほどからいいますように、その他の身体障害者保護、あるいは育成の上に影響があるということになるとこれは困るわけです。だから、そういうしわ寄せが他の者のほうにいかないように、ぜひこの際くふういたしてもらわなければいけないと思いますが、大臣、その点どうですか。
  16. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のとおり、先天性心臓疾患子供さん方に対する育成医療の問題は、今日まで十分な予算等措置が講ぜられていない、きわめて不十分であったという点につきましては、御指摘のとおりでございまして、私は、最近この問題が大きく社会問題として、また、重要な医療の問題として私どもにその解決を迫られておる問題でございますので、先ほど申し上げましたように、今後すみやかに調査を行ない、実態把握いたしまして、御趣旨に沿うような対策を早く確立をしたい。また、予算の面でも必要なる予算措置を講ずるようにしたい、かように考えております。
  17. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 積極的に大臣のほうでは予算の面でも考えたいということですから、それはそれでけっこうだと思います。今月の二十日の、これは東京新聞ですが、心臓病の小学生に愛の献血ということで記事が出て、ごらんになったかと思うのですけれども、ここでやはり手術の場合に輸血が非常に必要なんですが、平均六〇〇〇ccから、あるいは一〇〇〇〇ccの血液が要るということです。この東京新聞によりますると、九歳になる少年が手術を受けるために六〇〇〇ccの血液が必要である、そこでPTAの皆さんも御心配になって、そしておかあさんを中心に、たくさんの人たち、七十二人と出ておりますが、血液献血を申し出た。幸いこの子供手術は成功いたしておるようでありますけれども、そこで、この際、お聞きしたいのですけれども、現在の血液銀行と申しますか、あるいは日赤等状態献血に対してはまことに不十分であるというふうに私たちは承知いたしておるわけであります。特に先ほど大臣のほうでもいわれましたが、現在の心臓病疾患手術については、その専門医者が少ない、あるいはその施設、あるいは設備等が不十分であるというふうな実情があるのですが、こういうことについても、この際、積極的に医者開発と申しますか、あるいは施設設備拡充ということについて対策をお立てになる考えがおありになりますかどうか。
  18. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 血液の問題につきましては、最近売血による肝炎その他の弊害等も出ておりまして、また、大きな社会問題でもあります関係で、売血から一日も早く献血制度に移行できるように献血の運動を推進いたしておるところであります。また、新聞等で報ぜられておりますように、民間の売血業者売血をやめるような事情にもなってきておりまして、現実の問題として血液の不足という事態も憂慮せられる事情になりましたので、一両日前にも、この血液対策を強力に推進いたしますための連絡協議会を持ちまして、鋭意その献血による血液の確保につきまして努力をいたしておるところでございます。その詳しい事情につきましては薬研局長から御説明を申し上げたいと存じますが、この血液の問題と同時に、心臓疾患手術治療には高度の技術を要することでありますので、そういう専門医養成、研修、そういう面並びに専門医療機関整備、そういうことが非常に大切であると、このように考えておりまして、今後国立病院等をはじめといたしまして、そういう面の強化をはかってまいるようにいたしたいと考えております。後ほど薬務局長から……。
  19. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それでは質問あとに残します。  そこで、いま大臣がおっしゃった心臓病疾患がようやく社会問題になってきた。そこで、この際、早急に専門医養成、あるいは専門医療機関設備等拡充について本気で取り組むと、こういうふうに理解してよろしいですね。  そこで、そういうふうなお答えをいただきましたので、あと血液問題等も含めまして、問題はあとに残してお尋ねをいたしたいと存じます。上屋君のほうでも関連して質問があるようですから、これで一応は保留しておきます。
  20. 土屋義彦

    土屋義彦君 すでに子供心臓病佐野委員の御質問に対しまして、厚生大臣並びに局長から的確なる御答弁がありまして、重ねてお尋ねいたしますことはたいへん恐縮でございますが、お許しをいただきまして簡単に御質問をさしていただきたいと思います。  厚生省は、子供心臓病対策につきましては、すでに昭和三十九年からその対策を講じまして、特に昨年鈴木厚生大臣大臣に御就任なさいましてからは、日の当たらない谷間に残された心身障害児対策をはじめ、心臓病対策などに深い関心を寄せられ、心臓病関係育成医療給付額につきましても、今年度予算はかなりの増額をはかられるなど、積極的な姿勢で取り組んでおられますことは、まことに喜びにたえない次第でございます。しかしながら、個々のケースを取り上げて見ますと、まだまだ国の施策は十分とは申されないのでございます。私がしろうとなりにこの問題に大きな関心を抱きましたのは、心臓病のほとんどが先天性ということでございます。過般厚生省からいただきました資料を拝見いたしますと、先ほど佐野委員もお述べになりましたが、三割が一歳までに死亡し、さらに三割までが十歳まで、三割が二十歳までにそれぞれ死亡して、あとの一割が二十歳以上に持ち込されるような状況でございます。子供には全く罪のない病気であり、しかも、手術には数十万円もの費用がかかるといったような実態でございます。そこで、もっとヒューマニズムに立った前向きの施策が必要であろうかと存ずる次第でございます。子供心臓病に対する鈴木厚生大臣の根本的なお考えを重ねてお伺いすることは恐縮でございますが、御答弁を賜わりたいと思う次第であります。
  21. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど佐野さんの御質問にもお答えをいたしましたように、早急に実態把握いたしますための調査を進めまして、どれぐらいの子供さん方がこの先天性心臓疾患にかかっておるか、また、どういう病気の態様であるか、また、手術等を行ない得る状態にあるのかどうか、そういう詳細な実態を一日も早く把握をいたしまして、それに対する医療機関整備の問題でありますとか、あるいは高度育成医療に対する国の助成の措置、その他必要なる対策を早く確立させる必要があると、かように考えておるのでありまして、先ほども申し上げましたが、三歳児の検診等機会もありますし、あらゆる機会をとらえまして調査を鋭意進めまして、ただいま御要望がありましたような御趣旨に沿うように政府としても努力をしたいと、かように考えております。
  22. 土屋義彦

    土屋義彦君 ただいま厚生大臣から、心臓病の問題と前向きの姿勢で取り組んでいくというたいへん力強い御答弁を賜わりまして、まことにありがとうございました。時間もございませんのにたいへん恐縮でありますが、以下二、三の点につきまして、こまかい点につきまして担当の児童局長にお伺いさせていただきたいと思います。簡単に育成医療の現況につきまして御説明願いたいと思います。
  23. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) お手元の配付されました資料の三ページにございますが、この心臓病に関しましての育成医療適用は三十九年度から実施されたわけでございます。したがいまして、その実績につきましては、別紙1の三十九年度の育成医療費実績の一番最後の欄に、件数としまして八十三件、これは全部入院でございまして、費用の総額が一千二十二万四千八百十円で、一件当たり平均の額と申しますのが十二万三千百九十円と、こういった状況になっておりますが、これは四十年度につきましては詳しい数字が出ておりませんので、一応予算といたしましては、次のページにあげてございますように、百七十件ということで要求予算は組んでございます。なお、四十一年度は、先ほど指摘ございましたように、二百九十件、こういうふうに件数をふやしてございますが、実際上もう始めましてからだんだん認識が深まりまして、各県でこれを実施すると、こういうような状況になっておりますので、件数はそういった状況に応じましてふやしたような次第でございます。
  24. 土屋義彦

    土屋義彦君 次は、治療の面で一点だけお伺いさせていただきたいと思います。  これは埼玉県の例でたいへん恐縮ですが、最近川口市に住んでおりまする、ある方の三歳になる男の子供さんが心臓病疾患手術するために東大病院手術費を見積もってもらったところが、六十日の入院で五十万六千八百五十円が実費として必要であるということをいわれたそうでございます。この保護者の一年分の収入は、製本社につとめておるそうでございますが、年間所得四十六万余円ということでございまして、全部つぎ込むといったようなことに相なるわけでございます。県によってこの補助の算定基準ですね、埼玉県の場合は一件三十五万円と聞いておりますが、まちまちであって、この適用から締め出されて翌年回しになるといったような例もあるやに聞いておりますが、その点につきましてひとつ御答弁を願います。
  25. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) 先天性心臓疾患につきましては、いろいろ適用症状に応じまして違ってくるわけでございます。そういう面で必ずしも各県とも歩調をそろえてというわけにまいりませんで、その症状状況によって手術費用並びに日数等も違ってくるかと思います。三十九年度でございますと手術の場合は二十五万円というのが最高でございます。最低が八万円、こういうような状況でございますが、また、そういった育成医療適用につきましては、各保護者収入状況に応じてこれを負担してもらう、こういう考え方でやっておるわけでございますが、三十九年度の実績では、自己負担の割合と申しますのは全体の費用の一・八%程度であります。
  26. 土屋義彦

    土屋義彦君 またどうも埼玉県の例で恐縮でございますが、四十年度中に育成医療によって六人の子供手術のために入院したそうでございますが、そのうちの二人は全快し、不幸にして二人はなくなってしまったそうでございます。そのために残り二人の父兄はこわがって手術を辞退したといったような例があるようでございます。非常に危険な乳児の心臓手術に対するところの親たちの不安を除くことが大事じゃないかと思う次第でございます。承るところによると、全国心臓手術のできる病院が五、六十と聞いておりますが、その点につきましてお答えを願いたいと思います。それから、先般横浜のある方から私に手紙が参りまして、その内容は大学医療施設の不備を訴えておるのでございますが、「心臓手術は未開発であり非常に危険なものでございます。それなのにその手術をする病院設備は原始的なもので、ある医大など低温(氷水に人体をつけ、体温を下げる)するのに、つい先程まで医者が自分で造った桶を使用していたような状態です。予算がないためだそうです。万事がこんな次第で、医療施設たちおくれを痛感させられました。」と、こういう手紙が舞い込んでいる次第でございます。また、四月二十二日の読売新聞の夕刊を見ましたところが、アメリカのヒューストンのテキサス、医学センターにおきまして、六十五歳の患者さんが人工心臓挿入手術を行なった。先ほどちょっと照木先生から承るところによりますと、なくなったそうでございますが、各国とも、この心臓病対策というものに力を入れているようでございますが、わが国におきましてはどの程度進んでおるか、その点につきまして簡単にひとつ御説明願いたい。
  27. 竹下精紀

    政府委員竹下精紀君) 心臓外科につきましては、その育成医療の始まった三十九年ころでは、各ブロックのうちで二、三の大学病院が実施をいたしておる程度でございましたが、最近におきましては、全国の各医学部関係病院においてはほとんど実施されており、また、そのほかに公立、国立を含めまして、総合病院でもこれを実施するような段階にございますけれども、その技術的な問題につきましてはまだいろいろ格差があるように聞いております。そういう関係で、できるだけそういう技術並びに設備拡充をはかりまして、安心して手術を受けられるような状態に私どもも持っていきたい、かように考えている次第でございます。心臓外科日本の国際的な状況につきましては医務局長のほうからお答えいたします。
  28. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 若松医務局長に申し上げますが、さいぜん佐野委員大臣質問中、医務局長さんの御答弁が残っております。他の政府委員からお聞きの上、御答弁願いたい。もし他の政府委員から連絡がなければ、もう一度佐野委員から質問していただいてもけっこうです。もしわかれば御答弁願いたいと思います
  29. 若松栄一

    政府委員若松栄一君) 日本における心臓外科国際的水準ということになりますと、技術的には、一部の学者技術水準は世界的にも指導的な立場にあるくらいに高いものがあると思います。しかし、全般的に実用化といいますか、広く国民の多くの方々に十分に活用していただけるほどに高い技術が普及しているかどうかということになりますと、まだかなり疑問があると思います。ことに、ただいまお話のありましたような手術を低体温で行なうとか、あるいは人工心肺を用いまして、心臓を一応従来の循環系からはずした形で手術をするというようないろいろ装置につきましては、これは非常な高度の技術と非常に高価の設備等もかかりますので、現在のところ、それほど普及しているとは思っておりません。
  30. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 血液対策の問題でございますが、先ほど大臣から概括的に御説明申し上げたとおりですが、具体的な事務的な問題について私から御説明を申し上げたいと思います。  今日までわれわれがとっておりました献血対策施策につきましては特に申し上げませんが、現状を簡単に申し上げまして、その現状に対してどのような対策を今後進めていくのか、また、現在とっているのかということについて御説明申し上げたいと思います。  先生方の御承知のように、われわれのほうで献血対策を開始いたしましたのは一昨年の九月以来でございます。まだ二年足らずの現状であるわけでございます。売血の弊害、いわゆる有症病血の弊害というようなものについては、すでに御存じのとおりでございますので、申し上げませんが、献血のこのような二年間の経過を見てまいりますと、なかなか一挙には献血事業というものを飛躍的に推進することは非常に困難な面があるわけでございます。ごく最近の実績を最初に申し上げますと、当初献血運動を開始する以前は、大体日本血液の大部分はいわゆる売血というもので占められていたわけでございまして、今日生じております献血というものはわずか二%くらいの状態であったわけでございます。残りの九七、八%というものは現在いわれております売血日本血液問題を処理していたわけでございます。それが過去二年足らずの間に、大体献血の占める割合、つまり保存血液の総製造量の中で献血部門が占める割合は、ごく最近のデータによりますと三二%というふうになっているわけでございます。大体三二%くらいが献血でございまして、それから一七、八%というものが大体いわゆる今日いわれております預血というもので占めているわけでございます。それで残りの大体五〇%から五五%くらいのものを売血というものでまかなっていくというところまで最近の実績は伸びてきているわけでございます。それで、先ほど申しましたように、九七、八%くらいを占めている売血の量が、最近のデータでは、いま申しましたように、全体の五割から五割五分程度まで売血の量がだんだん減ってきているわけでございます。実情はそういうような実情になっているわけでございますが、ところが、去年の暮れぐらいから例の東京弁護士会の勧告とかいうようなものがございまして、世論がこの売血問題について非常に関心が高まってまいりましたことから、そこにいわゆる民間の血液銀行の業者と申しますか、民間の血液銀行でも最近の世論を非常に正しく理解してもらうような方向にムードが向いてまいりまして、売血の自粛をしようというような状態が起こりまして、二つの対策をとったわけでございます。その一つは、現在、最近までいわゆる民間の血液銀行では一回の採血量が四〇〇ccというものになっていたわけでありますが、これを献血の場合のように一回二〇〇ccに量を渡らしていくということが第一の措置でございます。それから、第二の措置といたしましては、いわゆる民間の血液銀行に行きまして売血をする供血者というものが非常に特定のグループに限定をされている。しかも、その特定のグループの者が数多く、いわゆる頻回採血というものをやっているというような現状からしまして、どうしても供血者自身の健康の保持、それから新鮮な血液の提供というような問題を考えまして、民間の血液銀行といたしましては、第二の措置として供血者の登録制度というものを実施したわけでございます。この第一の措置と第二の措置によりまして、民間の血液銀行によります売血事業というのは質的にも量的にも適正化されつつあるのであります。ところが、最近またもや民間の血液銀行の中には、最近いわれております世論の高まりに即応いたしまして、売血というものを逐次なくしていこう、こういうような観点からしまして、売血事業というものを廃止していくというような動きが一部の民間業者の中に起こりつつあるのでございます。そういうような情勢のもとにおいて、血液事業というのは、だんだん献血が片一方において伸びながらも、売血の量が極端に減っていくというような事態になってまいったわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、以前からもそうでございますが、最近のそのような情勢に応じまして、今後の献血推進をどのような方策で進めていくかということをいろいろ検討し、その検討を実施に移してきたわけでございます。  そこで、これから献血推進のために考えていかなければならぬ重要な施策としてあげておりますところのことについて申し上たいと思います。何と申しましても、献血事業というのは、諸外国においてもそうでございますが、一つの国民的な事業としてやっていかなければなかなかこの事業はうまく推進ができないわけでございます。そこで、何と申しましても、やはり国民の方々にこの献血事業の重要性、あるいは意義というものを強く正しく認識してもらうということが一番大事なことであるわけであります。そのような観点からしまして、第一番目に献血事業の恩義なり重要性についてPRを相当極力に展開する必要があるわけでございます。従来もやっておりますが、まだまだPRの点につきましては私ども自身不十分であろう、こういうふうに思っているわけでございますので、今後ともこういうようなPRを積極的に全国的に展開していくということが第一点でございます。このPRの方法としていまとっておりますのは、献血運動というのは、御案内のように、決して一時的なものではどうしても成果があがらないわけでございます。したがいまして、恒久的な供血源と申しますか、恒久的な献血の組織というものをつくることが第一のポイントでございます。したがいまして、職域団体とかあるいは地域団体等に呼びかけまして、献血の組織化というものを現在やっているわけでございます。全国の大部分の県では、そういう職域団体、地域団体に呼びかけまして、献血組織というものを目下早急に確立をしているという、まだ確立をしていない県においては、最近も全国会議等を開きまして、献血組織というものを早急に確立していくということを現在指導しているわけでございます。  それから第二番目には……。
  31. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  32. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記を起こして。
  33. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) いま申しましたような献血の広報活動というものが第一の施策でございます。  それから、第二番目の施策としましては、献血の受け入れ態勢というものを拡充、強化していくことが大事でございます。この献血の受け入れ態勢と申しますのは、各都道府県の日赤なり、あるいは各都道府県立で現在血液センターというものを持っておりますが、そういう血液センターなりあるいは移動採血車というようなものを、今後まだまだ整備が不十分な面がございますので、そういう受け入れ態勢というものを強化していくということ。それから、今年度から新たに私どもがいまやりかけておりますのは、日赤なら日赤の血液センターというのは、県内に大体一カ所あるのが普通でございますが、そのような血液センターの支所というものを県内枢要な地に設けていく。つまりそういうところで採血をやっていく、支所なり出、張所を県内重要な地に設けていくということが今年度新たにやりかけている事業でございます。  それから、第三番目に、出、張採血といわれるものをいままでやっておるわけでございますが、職場なら職場、あるいは学校なら学校というふうに、そういう特定の集団に対して献血をなし得るというような態勢があり得る場合に、そこに出向いて行って出張採血というのをやっているわけでございます。これをもう少し全国的な視野で考えていくということ。  それから、今年度から新たにとろうとしている対策でございますが、血液型の登録というものを予算化してございますので、この血液型の登録というものを全国民に年次計画で実施をしていく、そういうことによりまして血液型の登録をしながら全国的な供血源の確保をはかっていく、このようないろいろな対策を現在実施しているわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、いま全国の各都道府県がそういうような厚生省の方針に基づきまして鋭意努力をしているわけでございますが、ただ、残念ながら、全国のごく一部の地域において、いわゆる血液不足というような状態があらわれておりますが、逐次そういうようなところにも積極的にいろいろな手を講じて、何とかして当面のこの血液問題を乗り越えていこうということでいま努力を重ねているところでございます。  以上が概要でございます。
  34. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 現状でのお話と、将来の献血制度の強化についての希望的な意見を述べられたのですが、せっかくいまいろいろ大臣からのお話を聞きまして、大臣のほうでは、心臓病対策といたしまして、専門医養成医療機関拡充、そうして献血制度の強化、いろいろそういうことを推進するとともに、そのための前提となる実態調査をすみやかに行ないたい、こういうことでございますので、それを早急に実施に移していただきたいと思います。同時に、事務当局のほうでは、各県の末端の事務機関、保健所等につきまして育成医療の内容、あるいは趣旨等についての普及徹底をぜひやっていただきたいということで、きょうはひとつ問題の提起にとどめまして、あと健保の改正法案につきましてやりたいと思います。  そこで、あとから同僚のほうからもいろいろ御質問がありまするから、私は簡単にひとつ大臣にお聞きいたしますけれども、今度の健保の改正に対しまする政府の原案は衆議院で修正されまして、そうして政府要求しておりました保険料千分の七十が千分の六十五になったわけですが、きょう資料をいただきましたが、その資料によりますと、今度の改正案で千分の六十五になった場合に、三万九千円の月収のある人が千二百六十七円健康保険料を負担しなければなりません。この程度人たちは、今度の減税によります税金との関係は、そうたいした負担にはならないのですけれども、少なくとも六万八千円というこの資料によります月収を持っている者が、今度の保険料の千分の六十五による増額によりまして二千二百十円を負担しなければなりません。そうしますると、現行の保険料から見て五百七十二円の増額になるわけです。六万円の収入を持っている独身者が四十一年度に払いまする税金の減額されたものが四百九十七円、そうしますと、すでに六万円ないし七万円の月収の者は、保険料が上がったことによって、せっかく下がった税金がほとんど無意味になるということになります。資料によります九万八千円の月収を持っている者からいいますと、保険料が上がったことによって千五百四十七円の負担増になっているわけですが、これが資料により−ます年収百万円の給与収入を持っている者が千百三円の税金の負担が軽くなったわけですから、結局四百四十四円の負担増になるわけなんですが、一体こういうふうにせっかく政府は減税減税と大幅に減税したようにいいますけれども、保険料の政府原案よりも低く押えられた千分の六十五のこの保険料になりましても、すでに減税分は消えてしまって、むしろさらに減税以上の負担を加重されてきたということになるのですが、こういう実情一体大臣はどうお考えになっておりますか。
  35. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御承知のように、近年医療費の増高に伴いまして、つまり受診率も急速に伸びてきておりますし、また、医学技術の進歩に伴いまして給付の内容も改善をされてきているのであります。そういうような関係で、医療費が近年二〇%ぐらいずつ伸びておるのに対しまして、保険の収入は一〇%程度しか伸びておりません。その収入医療費の差額が保険財政の悪化という形で急速にあらわれてきておるわけであります。四十年度末までに約七百億、また、四十一年度中には、このままでまいりますと七百二十億と、こういうような大きな保険財政の赤字がそこに出てくることになるのであります。また、一面、保険料につきましては、昭和三十二年ごろでございましたか、改正をいたしましてから約十年間保険料の改定が行なわれておりません。そういうような事情からいたしまして、この急速に悪化してまいりまする保険財政に対しまして臨時応急の措置を講ずる必要がある、こういうことが今回の改正の中心の問題であるわけであります。そこで、神田大臣の当時、社会保険審議会と社会保障制度審議会に、総報酬制並びに薬価の一部負担、これを骨子としたところの保険三法の改正案につきまして諮問をいたしたのであります。しかるところ、私が就任をいたしましてから、社会保険審議会と社会保障制度審議会からの御答申は、この総報酬制と薬価の一部負担は制度の根本に触れる問題であるから、当面のこの臨時応急の対策としては標準報酬制をとることにして、その標準報酬の等級区分の上限五万二千円を十万四千円に引き上げる、保険料率は現行の千分の六十三を法律で認められておりまするところの六十五までこれを徴収をする、国庫負担の大幅な導入をする必要がある、おおむねその額は二百億程度政府として考えるべきである、こういうことを骨子としたところの御答申をちょうだいをいたしたのであります。私はこの答申の趣旨を体しまして財政当局とも折衝をし、二百億の額には達しませんでしたけれども昭和四十年度三十億の国庫負担でありましたものを、五倍の百五十億に増額計上をいたしまして保険三法の改正案を作成をし、国会で御審議をお願いすることになったのでありますが、保険料率の問題につきまして、御答申の千分の六十五ということに対しまして政府案は七十と、こういうことになっておったのでありますが、審議の段階におきまして自民党、あるいは社会党、民社党等の各党間のお話し合いによりまして、答申どおり千分の六十五と、こういうことに修正をいただいたのであります。そういうようなことで、今回の保険三法の改正は、衆議院における改正点を含めまして、私は、保険料負担につきましても必要最小限度のやむを得ない措置であると、このように考えておる次第であります。
  36. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いま大臣から経過の概要をお聞きしたのですが、これはわれわれも十分承知いたしておるところでありますけれども、この審議会のほうの答申の中には、すでにこれも多くいわれておることですけれども医療保険の抜本的改革に手をつけずに放置した政府に大きな責任がある。したがって、社会保険審議会が大臣のほうに答申いたしましたのは、国の責任においてこれは対処すべきであるというふうに基本的には言っておると思うのです。それを保険料にしわ寄せをしてきておる。せっかく政府原案を切り下げて千分の六十五にはしましたけれども、それでも五万、六万以上の収入を得ておる者は減税額よりも多い保険料を取られる。減税は吹き飛んでしまうというのが実情になるのですが、そういう点について国の責任をもっと答申どおり受け取る用意があるのかどうか、これをまずお伺いしたいと思うのです。
  37. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 佐野先生の御質問でございますが、お手元に差し上げました減税額と保険料増加額をごらんになっていただきますとおわかりと思いますけれども、御指摘の六万八千円、九万八千円につきましては、増加額は五百七十二円と千五百四十七円、こういうことになっておりますが、減税額のほうをごらんになっていただきますと、独身者の場合、それから配偶者及びこれこれと書いておりますが、「四十一年」と「平年」というふうに書き分けましたのは、四十一年は、これは減税が平年度化ということでなくして、四月以降ということになっておりまして、平年度になって初めて十二ヵ月になるわけでございますが、この四十一年の独身者の場合をごらん願いますと、減税額千百三円、それから平年度になりますとあと三百円ほどふえるということでありまして、今度の増加額よりも減税額のほうが多いわけでございます。それから、次の九万八千円の場合にも、千五百四十七円の増加額に比べましても、減税額は全部多いわけでございまして、平年度になった場合にはさらに減税額のほうが上回る。特に配偶者、それから子供等が多い場合には、はるかに上回っておるということでございまして、減税の分が今度の増加額で飛んでしまうということには相なっておらないわけでございます。
  38. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 あなたはいいほうばかり言うのですが、給与総額百四十七万円、この人の改正されます保険料によります増加額は千五百四十七円、百五十万円の収入のある独身の場合は、四十一年で千八百六十一円、約三百円以上の超過払いをしなければならぬことになっておりますが、この数字はどうなんですか。
  39. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) この減税額は、実際に減税されておる分は、従来とも税を払っておる分が出ておりませんからわかりませんけれども、この分、千八百六十一円だけ今度の減税によりまして税金が減るということでございまして、千八百六十一円と千五百四十七円とを比べていただかなければならないわけでございます。それで三百円だけ確かに減税のほうが多いというふうにお読みいただかなければならぬわけでございますが、これだけ減税になりますから、したがって、引き上げがなければ千八百六十一円まるまる減税になるわけです。しかし、引き上げがありますから、逆にいえば、千八百六十一円減税になりましても、保険料のほうが独身者の場合は千五百四十七円ふえるから、その分だけ差っ引かれますけれども、なお三百円程度は減税の効果はあるというふうにお読みいただかなければなりません。
  40. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 資料の出し方が不親切ですから……。
  41. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 申しわけありません。
  42. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それにしましても、百万円の収入の人は三百円しか政府が大自慢するところの減税の恩典には浴していない。その上、あるいは国鉄その他の物価の値上がりを考えますと、今日の物価高によって、勤労者と申しますか、サラリーマンと申しますか、こういう人たちは少しも政府のよい施策恩典を受けられないような結果が出てきておるわけです。そういうふうな保険料の値上げを、なぜ政府の責任において行なうべき医療機関の改正にあたってまず第一番に考えたのかという点が問題になるわけです。しかも、幸いにして今度の場合六十五に押えられましたからいいのですが、これが七十であるならばその点がもっとひどくなってくる、こういう実情にあるわけです。したがって、厚生大臣がいろいろおっしゃっておられまするけれども、将来の健康保険法、その他医療制度の抜本的改正についての基本的な姿勢をお伺いいたしたい、こういうことです。
  43. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今日わが国の医療保険制度は非常に多岐に分かれております。国民健康保険制度、また、大企業の組合健康保険、さらに政府管掌の健康保険、船員保険、あるいは日雇保険、さらに、また、国家公務員につきましては各省ごとに公務員共済保険の短期給付がなされておる。地方公務員につきましても同様でございます。このように医療保険制度が多岐に分かれておりまして、なお、それが誕生して以来今日までの歴史的、また、経過的ないろいろな諸事情からいたしまして、被保険者の負担の面におきましても、また、給付の内容におきましても、それぞれの財政の内容におきましても、そこに非常にアンバランス、格差があるわけであります。国民皆保険のもとに国民に公平な医療給付が行なわれると、こういうことが私は望ましいことでありまして、そういう意味合いからいたしまして、私は、この際、各種医療保険制度を全部ひとつ総合的な立場で根本的なメスをこれに加えて、抜本的対策を講ずる必要がある。もうすでに今日はその段階にきておるのではないか、また、そういう検討の際におきまして、国庫負担はどうあるべきか、衆議院におきましても、本法の審議にあたりまして、国庫負担の定率化ということにつきまして附帯決議をちょうだいいたしておるの、であります。また、一面、今度は医療費の面におきましても、わが国の医学、医術は日進月歩でございます。これに対応して今日の医療制度というものがこれでいいのかどうか、また、医療保険の画におけるところの診療報酬体系はこのままでいいのかどうか、もっと物と技術を分離して、そして技術が正当に評価されるように、そういう観点で診療報酬体系も再検討を要する時期にきておる、こう思うわけであります。私は、国民の医療を確保する、しかも、国民に対して不均衡な形でなしに、均衡のとれた形において医療が保障される、そして国が社会保障全体の観点からいたしまして、国庫の負担、これをどういう形でどういう割合で国庫負担をやるべきか、こういうことにつきましても十分検討をする必要がある。そしてわが国の医療保険制度が長期的に安定をし、そして前進をしていくように私はしなければならない、かように考えておる次第でございます。
  44. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 だいぶまだ質問する同僚が多いようですし、時間の制約もありますので、簡単に結論だけお尋ねをいたします。  いま大臣が仰せられましたように、衆議院で本法案が採決されまして、「政府管掌健康保険の国臨負担の定率化については、抜本対策の際検討すること。」という附帯決議が行なわれたことはいまおっしゃったとおりであります。それについて、給付の均等化、負担の公平化の見地に立って、この際、前向きに抜本対策をやっていこうというふうにお考えになっておるのかどうか。もしそうであれば、その決意を大臣にお伺いしたい。
  45. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま申し上げましたとおり、各医療保険制度間の給付の面、あるいは負担の面、あるいは国庫負担の面、そういう不均衡を是正をする、そして国民に対して皆保険のもとにりっぱな医療給付がなされるように、こういう方向で抜本的な改正と取っ組んでいきたい、かように考えておるのであります。そのために各医療保険制度全体を検討する場が実はないのでございます。そういうことで、今回それをいたしますために臨時医療保険審議会というものをぜひこの国会で皆さま方の御協力を得ましてその実現をはかって、そして昭和四十二年度を目途に制度の抜本的改正をしたい、こういう決意をいたしておる次第でございます。
  46. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そうしますと、抜本的改正をするに際して保険料の値上げを再度行なう意思がないのか、将来はわかりませんけれども、当面は大臣の決意はどうなのですか。
  47. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、保険料というような形でいくべきか、あるいは保険税という形でいくべきか、あるいは一般の国の税収の中から国庫負担という形でいくべきか、いろいろこれについては方法があると思います。そういう問題につきましても、抜本的な改正の際に、国庫貨川の定率化という問題とあわせて検討をしたい、かように考えます。
  48. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 先ほどから申し上げておりますように、せっかく納める税金が少なくなっても、保険料がふえればそれがパーになったり、物価が上がるとむしろ負担が加重されてくるというようなこの実情を、この際、改正にあたっては、ぜひ御承知の上で対処してもらいたい。したがって、どういう方法が出るか知りませんけれども、保険料再値上げというようなことはぜひやらないたてまえで御措置を願いたいと思います。  そこで、いま大臣から臨時医療保険、審議会等をつくって、そして抜本的な対策、あるいは医療行政全体について再検討をしたいということはわかるのです。そういうふうな大臣の持っておられる構想の臨時医療保険、審議会というものと現在の社会保険審議会との関係一体どうなるのか。
  49. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 現在の社会保険審議会は、御承知のように、政府管掌の健康保険、日雇健保、船員保険、それに国民年金の制度につきまして企画立案から制度の運営に対する面までこの審議会がやっておるのでございます。私は、ただいま申し上げましたように、わが国の医療保険制度全体を均衡のとれた形で、負担の面、給付の面、また、国庫定率負担の面等、総合的に検討いたしますためには、個々ばらばらの制度を個々ばらばらの分かれた形の、審議会等で検討したのでは十分その目的を達することができない、こう考えますので、現在の社会保険審議会が所掌いたしておりまするところの政府管掌健康保険、日雇健保並びに船員保険の企画立案の基本的な制度の問題につきましては、明年三月三十一日まで、全体の医療保険制度を検討する間、これのそういう面を社会保険審議会から臨時医療保険審議会にゆだねる、こういうことにしたいという考えを持っておるのでありまして、その他のそれぞれの日常の運営でありますとか、あるいは国民年金でありますとか、そういうような面につきましては社会保険審議会が従前どおりこれをやってまいる、こういうことに考えておる次第であります。
  50. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 審議会の構想は一応わかるのですが、そこで、この間お伺いすると、審議会は学識経験者を主として組織の内容としてつくりたいというふうに言われておったと思うのですが、どうですか。
  51. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今度の審議会の委員は学識経験者十二名以内というようなことで構成をしたい、このように実は考えておるのでありますが、その学識経験者を選ぶにあたりましては、各制度のそれぞれの事情が十分に反映いたしますように、また、支払い者側、診療者側、その他国民各界各層の御意見が十分反映できますように、人選にあたりまして十分慎重に取り扱ってまいりたいと存じます。そのためには、各界各層からそれぞれ学識経験者を御推薦をいただく等の措置もとりたい。また、運営にあたりましては、そういう各界各層の御意見を、参考人その他の意見聴取というようなことで十分反映させるように配慮いたしたいと考えておる次第であります。
  52. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 各界各層の意見を反映するということは、それは当然審議会としての性格上そうなければならぬと思うのです。ただいろいろ聞いておりますると、慎重にそのメンバーをそろえるために努力をされるようでありまするが、健保財政の主たる負担者であります被保険者の意思、意見というものが、これは診療者側のほうもそうですが、十分反映しないと困ると思うのですが、そういうことで被保険者の代表を締め出すという意図は全くないのですね。
  53. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、被保険者の団体、あるいは診療者団体の代表、そういう利害関係を直接持つところの団体の代表がなまの形で委員に選任されますことは、高い立場、国民的立場でこの各種医療保険制度全体を審議いたします場合におきまして、はたして適当な仕組みであるかどうか。むしろそういうなまな形になりますと、やはりそれぞれの団体の決議なり要求なりに一〇〇%拘束をされるということに私はなりかねない。また、そういう形で委員に御就任願っても、非常に委員の方にも立場上つらい立場に立たされる、こう思うのでありまして、そういうなまな形の利益代表という形でなしに、そういう団体等が学識経験者の中から自分らの意向も十分主張し、反映してもらえるし、十分理解を持ってくれるそういうような方を御推薦を願うとか、そういう形において学識経験者をもってこれを構成をするというほうが委員会の今回の目的を達成する上にベターではなかろうか、かように私は考えておる次第でございます。
  54. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 時間の関係委員長から制約がされましたから、私の質問はこれで終わりますが、次の機会に十分、いまの大臣の見解と私は違いますので、お聞きをいたしたいと思うのです。ただ、率直に申し上げておきますけれども、なまの意見を聞くことは困るというふうなことではなしに、保険財政の主たる負担者である支払い者側の意見を尊重する立場でものを考えるなら、当然そういう代表者を加えなければ意味をなさないということになるのですが、いずれこのことは次の機会に十分お尋ねをいたしたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  55. 山崎昇

    ○山崎昇君 再三委員長が時間を気にされておられまするが、それから、きょうこの健康保険法案を可決をするというようなことにもなっておりますし、また、衆議院で相当な論議があり、また、この委員会でも藤田委員から基本的な点についての二、三のお尋ねがありました。したがって、私は、かなり資料を準備したのですけれども、時間がありませんから、ごく二、三の点に限って質問をしたい、こう思うわけです。  第一点は、最近大臣から、ことしじゅうに何か社会保障についての長期的な計画を出される、こういうことを衆議院でも答弁なさったようであります。そこで、私どもも、中期経済計画に盛られている内容やら、あるいは三十七年八月に出されております社会保障のいろいろな計画やら見ておりますけれども、何といっても、政府自体に社会保障についての具体的な計画がない、これがやはり致命的だと思うわけです。厚生白書等を見ますというと、日本の社会保障というのは、制度的には一応網羅されておるけれども、中身を見るというと、かなり国際間の点等を見ましても差がありすぎる。こういうことから考えると、これらの社会保障は、まだまだ制度的に取り上げなければならぬ問題もありますけれども、何といっても中身の充実ということが急務だというふうに考えるわけです。そういう意味で、これはまだ大臣、いずれにしても具体的な内容がきまらないと思うのですが、できるだけひとつ早い機会にそういう政府としての案を出していただいて、十分ひとつ国会でも議論できるような時間をとっていただきたいということが一つと、それから、もう一つは、この社会保障というのは、ある人のことばを借りると、もうこれはビジョンではない、これは精密な科学だと理解をすべきである。あるいはもっと言えば、社会的な技術だとさえ考えるべきじゃないか、こういうことばを使う人もおるのですが、そうだとすれば、いまの政府のやり方を見ておりますと、何か浅草で老人が死ねば、それ老人対策だ、またどっかの偉い人が何か身体障害者のことで手紙を出せば、それ身体障害者の問題だというふうに、私どもから見るというと、何かそのつど行政のような感を受けるわけです。したがいまして、大臣がたいへんな決意を持っておられるようでありますけれども、ぜひともひとつ総合的な計画を出されるようにこの機会においすると同時に、それらについて多少の大臣の見解等があればこの機会に承っておきたい、こう思うわけです。
  56. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 社会保障の長期的な計画につきましては、中期経済計画が策定をきれます段階におきましてこの社会保障の長期計画をつくろうではないか、こういうことで、厚生省が経済企画庁、あるいは財政当局等といろいろ協議を遂げたことがあるのであります。そのときの中期経済計画におきましては、大体振りかえ所得は昭和四十三年までに七%にすると、こういう目標があったのでございます。昭和四十一年度は振りかえ所得は六・三%ということになっておるのでありますが、これを四十三年までに七%に引き上げるというのが中期経済計画の中における社会保障の振りかえ所得の目標であったのでございます。したがいまして、中期経済計画が経済行政の大きな変動で破棄せられまして、新たに新しい長期経済計画を政府では立てるということに方針を決定をいたしておりますので、私は、この新しい長期経済計画を策定いたします場合には、長期のこれに見合った社会保障計画を策定をしたい、こういうことで、事務当局に命じまして、いまその長期社会保障計画をいろいろ立案を進めておるのであります。その際におきまして、衆議院におきましてもいろいろ御質問がありましたが、中期経済計画を下回らない目途のもとにこの振りかえ所得を考え、社会保障計画を考える、こういうことを政府の方針として私からお答えをし、また、一昨日は藤山経済企画庁長官から、同様の政府全体の立場におきましてそのようなお答えを明らかにいたしておるのであります。  そこで、いまいろいろ山崎さんから、わが国が西欧先進国に比べて社会保障がおくれておるという御指摘がありましたが、医療保障の面におきましては、おおむね欧米先進国並みということが私は言えると思います。おくれておりますのは所得保障の面、厚生年金なり国民年金の制度の発足がおくれて、まだ二十五年、二十年の積み立て金がなされ、給付が本格的になされていない、こういう面が一つ。それから児童手当、これがなされていない、この二つの所得保障の面がおくれておりまするために、わが国の社会保障というものが欧米先進国に比べて非常に低い水準にありますけれども、きょう御審議を願っておりますところの医療保障の面におきましては、私はおおむね欧米先進国に比べてもそう劣らない水準になっているのではないか、かように考えておるのであります。
  57. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま大臣から新しい計画の概略のお話がございました。また、欧米諸国との点についても触れられたわけですが、ただ、私は、四月十九日のこの委員会で、日本の社会保障というのは、西ドイツを何か目標といいますか、参考にしてずいぶんやられておるということを大臣から答弁がありました。そこで、厚生省発表した厚生白書等を見ますというと、西ドイツを参考にしたわりあいには、ずいぶんわが国の社会保障というのは西ドイツに比べて差があるのじゃないか。たとえばたくさんの比較がありますけれども、一、二簡単に言うと、国民所得に対する社会保障給付率の割合についても、西ドイツは一九・九%だというのに、わが国はわずか五・五%だという、あるいは振りかえ所得もいま大臣からいろいろ説明がありましたが、これを見ても、西ドイツは一六・三%、わが国はこれから計画を立てて、せいぜいがんばってみても七%前後だという話でございます。こうやって見ると、何か西ドイツを参考にしているわりあいにはきわめて差があり過ぎるのではないか、こういうふうに私は感ずるわけです。そこで、できれば、これから立てられる長期計画の中では、せめて西ドイツ並みに五年なら五年たったらするのだ、そういうふうに具体的な計画を数字的にぜひあらわしてもらいたいと私は思うのですが、その点についての大臣の見解を聞きたい。
  58. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 長期経済計画がどういう年次の規模で策定されますか、五年計画でまいりますか、あるいは十年計画でまいりますか、その辺はまだ最終的に固まっていないと思うのでありますが、私は、いま御指摘のとおり、確かに振りかえ所得の面でも、また、社会保障全体の面でも、わが国の社会保障は西独に比べましてもだいぶん劣っております。しかし、それが先ほど申し上げましたように、年金部門、あるいは児童手当の部門、そういう面で立ちおくれておるのでありまして、これが昨年の国会に御承認を得た厚生年金、また、この国会で御審議をお願いいたしますところの国民年金の夫婦二万円年金、こういうものが軌道に乗ってまいり、さらに、また、児童手当が実施されるということになりますれば、これは今度の新しい経済計画に見合った長期社会保障計画の重要な部門になるわけでございますが、こういうことが計画的に実施されてまいりますれば、私は急速に西欧並みの水準に追いつくことができる、かように考えているのであります。  そこで、西独の制度を取り入れていると申しましたのは、社会保険の面で端的にそれが出ているのでありまして、特にこれから問題になるでありましょうが、労使折半の原則をとっているということ、それから、国の負担がおおむね全体の二五%程度という点が私は西独と同じような方向で進んでいる、こういうことを先般も申し上げた次第でございます。
  59. 山崎昇

    ○山崎昇君 基本的なことはまたあらためてそういう計画ができたときに私はやりたいと思いますけれども、具体的に二、三お尋ねしたいと思います。  その第一は、衆議院で実は修正されたのですが、厚生省から出されました参考資料の一五三ページを見ますというと、千分の七十でいろいろ数字が出ております。そこで、千分の六十五になった場合にその数字はどう変わるのか、ちょっとお示しを願いたい、こう思うわけです。
  60. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 赤字の点につきまして御説明申し上げたいと思うのでございますが、昭和四十一年度は七百二十億の赤字、何も対策をしなければ七百二十億の赤字が出る、こういう見込みが出たわけでございますが、それに対しまして諸般の財政対策を講じまして、四十一年度にはその赤字を消そう、こういうことで予算を組んだわけでございます。その対策といたしまして、標準報酬の上限改正を十万四千円までやるということで百三十八億の財政効果をあげる。それから、保険料率の引き上げ、これを千分の七十までしますことによって二百九十億の財政効果をあげる、そのほかに国庫補助百五十億、薬価基準の改正による給付減が四十四億、行政努力が九十八億、これで七百二十億の赤字を消そう、こういう対策を講じたわけであります。これが今度の衆議院の修正によりまして、まず、一つは、年度当初からそういう財政対策を講ずるという考えでございましたけれども、一カ月実施がおくれましたので、それによりまして標準報酬の上限改正分で十一億の減になる、百二十七億の対策にとどまる。それから、料率引き上げ千分の七十を六十五にとどめる、これも一ヵ月おくれますので、それを合わせまして六十五によりまする財政効果が七十七億ございます。したがいまして、当初の見込みよりも二百十三億ばかり減る、こういうことでございます。その結果、七百二十億の赤字をまるまる消すことができませんので、二百二十四億ばかりは昭和四十一年度におきましても赤字として残る、これは借り入れ金でまかなっていく、こういうことになると思います。
  61. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、確認をしますが、改正によっていま説明ありましたように、標準報酬の上限で百二十七億くらいにとどまってしまう、それから保険料の引き上げが千分の六十五になりましたので、これが二百十三億くらいである、合わせて当初の七百二十億の対策のうちから、さらにかなりの赤字を見込まなければならない、こういうことになるのですね、したがって、それについて借り入れ金等で何とか措置をしてやりたい、こういうことになると思うのですが、そういうふうに確認していいですか。
  62. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  63. 山崎昇

    ○山崎昇君 続いて質問したいと思うのですが、先ほども、今度の保険料の値上げと、それから所得税の減税等なんかの比較等もございましたが、私もなぜそんなに医療費が上がるのか、そういう原因は一体何なのか、こういうことでいろいろ政府の出しております資料等を見たのですが、どうしてもわかりかねるわけです。それは診療件数もあまり変わっていないし、それから、一年間における診療の日数もあまり変わっていない、また、受診率もそんなに変わっていない、それなのにこの医療興がぐんぐん上がっていく。そこでいろいろ調べてみますというと、何としてもこの一口当たりの金額がものすごくふえている。厚生省の出した資料を見ますというと、昭和三十五年に比べて三十九年でありますけれども、大体二倍くらいになっている。そういう原因をいろいろ探ってみますというと、これはやはり昭和三十六年から四十年の一月までに相次いで行なった診療単価といいますか、これの増額によってこういうことが起きてきたのではないだろうか、そういうふうに私ども考えるのですが、それに間違いありませんか。もしそのほかに原因があるというなら、ほんとうに医療費が上がった原因をお示しいただきたいと思うのです。
  64. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) お答えいたします。  いま先生御指摘の分も一つの要素に入っておりますが、しかし、その他の要素もたくさんあるわけでありまして、簡単に申しますと、まず、医療内容が向上した、医学、薬学の水準が向上した、説明は省略させていただきます。それから、医療機関整備が進んできた、これが医療内容の向上でございます。  それから、第二番目として、医療需要の変化がある、需要の面で変化がある。その中に四つくらい私ども考えておりますが、一つは、人口老齢化と、疾病構造が変化した、これは成人病あたりがふえた。二番目は、保険及び医療に関する国民の関心が変化してきた。三番目に、所得水準、生活水準が向上した。四番目に、医療機関の利用が容易化した、利用しやすくなった。  三番目に、これは大きな三番でございますが、制度の改善があったということで、その中に医療保険制度の普及と、ただいま先生言われましたように、診療報酬、あるいは薬価基準等の改定があったと、大きく分けてそういうふうな理由を私ども考えております。
  65. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま御説明がありましたが、そこで、私は具体的にお聞きしたいのですが、私もいま、のどを痛めて病院に行っておるわけですが、そこで二つ三つの病院に行っておるのですが、どうしても私にわからないのは、たとえば慈恵医大の病院に行くと、私は札幌の国民健康保険に入っておりますが、保険証を持ってきておりませんために、自費で初診料を払うのです。そうすると、慈恵医大の場合ですと、一カ月の期間で千円の初診料を取られる。同じことで慶応病院に行きますと、六カ月の有効期間で六百円の初診料を取られる。大臣からしばしば物と技術の区分けだとか、さまざまな説明があるのですけれども、第一番目に、こんなに同じ規模のような病院であってなぜこんなに初診料が違うか、まず、ささやかな疑問でありますけれども、思うのです。それらずっと調べてみると、初診料にいたしましても急に上がっておるのです。ですから、いまいろいろ局長からお話がございましたけれども、私ども医療費の値上げというか、あるいは医療費の基準というか、そういうものは一体厚生省でどうお考えになっておるか、具体的に二、三申しましたけれども、私どもしろうとにわかるように説明願いたいと思います。なぜそんなに違うか。  それから、たとえば公立病院と私の病院が違うのはまだ私も理解できると思うのです。そうではなく、同じ治療してもらっても、大体患者として同じような治療だと思うの、だが、片方は四千円くらい取られる、片方は六千円くらい取られる、これまた私どもから言うとどうも納得を得られない。薬も一週間分くらいもらうのですが、これはあとでお聞きしますが、そういうふうに、私は医療費というものについて厚生省はどうお考えになっておるのか、一患者として、つい二、三日前に行っておるのですが、わからないのでお聞きしたいのです。
  66. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 社会保険で支払われる診療費につきましては、厚生大臣が告示をいたしました社会保険診療報酬支払いのための点数表というものがございまして、その点数表で払っておるわけでございます。したがいまして、先生が大学病院におかかりになった場合は、これは保険点数外ということになって、それぞれ大学できめられた初診料によって支払われておりまして、これは私どものタッチしない範囲内のことでございます。したがいまして、国民健康保険なり、あるいは健康保健でみてもらう場合には、請求の個々の内容につきましての点数は同一、しかし、診療内容について、たとえば高貴薬を使う場合には点数はふえます。それが高貴薬を使うのがいいか、あるいは普通一般の薬を使うのがいいかということは、個々のお医者さんの判断によるわけでございます。中身は差があるのは私は当然だというふうに考えております。
  67. 山崎昇

    ○山崎昇君 社会保険を使った場合にはそれは同一点数でやるわけですから、同じですね。しかし、その基礎になるものがそんなに差があるということがわからないわけですよ。なぜ初診料という、こういうカード一つもらうのに、片方は一ヵ月の期限で千円取るけれども、片方は六ヵ月も有効期間があって、六百円である。私は、したがって、もちろん社会保険であれば同じ結果が出るけれども、分母になるものが違うのですから、だから医療費についてあなた方が行政をやるのにそういうことまで調べてやっておられるかどうか。そうでない、それは私のほうは関知いたしません、こうなってくると、それはもう病院の代金というのは取られっ放し、そこできめればきめられたとおり取られてしまう、こういうことが私は相当影響があるのじゃないか。衆議院の論議を聞いていると、かなり滝井先生なんかは、この病院の建物代も入っているのじゃないか、減価償却費も相当入っているのじゃないかと思うという質問があったようでありますけれども、もちろんそんなことは抜きにしても、患者からいえば、どうも医者の基準というのがわからない。こういう点はやはり相当厚生省で私はやってもらわないと、どんなに一点単価が何ぼきまったとしても、医療費の増高というのは変わってこないじゃないか、こういうふうに私ども考えておるわけです。これはしろうと考えですがね。したがって、これからいろいろあなた方で対策を立てる場合には、いま四点か五点にわたる答弁がございましたけれども、そういう現実面についてもう少しやはり調べて対策を願いたい、こう思うのですが、どうですか。
  68. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) おことばを返すようでございますけれども、いま先生がおっしゃいました自由診療の場合の初診につきましては、これはそれぞれの病院なり、あるいはそれぞれの個々のお医者さんなり、場合によって二万円取られる場合もあるし、二万円取るという場合もあります。これにつきましては、私どもはこれは自由でございますから、それについてどうこうするというわけにはまいらないわけでございまして、ただ、保険証を持って行って保険で診療を受ける場合の中身につきましては、一応中央医療協議会で十分議を尽くした上で、初診料は幾ら、それぞれの診療行為について幾らと点数をきめておるわけでございます。したがいまして、医療費の増高というふうな数字を申し上げましたのも、先生のいわれる自由診療の中身じゃございませんで、いわば保険ということでお医者さんが診療した場合に、支払い基金に請求を出して、支払い基金からお医者さんに払われていく、それの数字の統計に相なっておるわけであります。自由診療の分はその中には入っておりません。
  69. 山崎昇

    ○山崎昇君 それは私も理解をしておりますよ。ただ、医療費を議論する場合に、社会保険診療を使った場合と自由診療とがあまりにも違うことは私も知っております。しかし、医療費そのものがずいぶん病院によって差がある、自由診療とはいいながら、それは診療のしかたによることも私承知しておりますけれども、それにしても、患者からいうとあまりにも差があり過ぎるのではないか、一体そういうのは何に原因があるのか、こういうふうな疑問を持つからお聞きしたのであって、これ以上この点は申し上げませんけれども、いずれにしても、私は、医療費はこれは個人生活にとっては重大な問題ですから、そういう点についてぜひひとつ御配慮を願ってやってもらいたいと思うのです。  次にお聞きしたいのですが、厚生省資料を見ますというと、昭和四十一年度の政府管掌の健康保険の負掛割合が出ておりまして、これを見ますというと、保険負担が二千六百四十億で七九・八%、それから患者負担が五百二十億で一五・七%、国庫負担が百五十億、四・五%、こうある。こうやって見ますというと、政府管掌の健康保険全体に占める国庫負担の割合というのはわずか四・五%、それで大臣努力をされて、昭和四十年度から見れば五倍にもなったそうでありますけれども、どうもこうやって並べて見るというと、九割五分までは自分かあるいは使用主が払って、わずか政府で負担してくれるのは四・五%と、こういう数字になってしまうのですね。これを見ると、どうしても私は国庫負担が低いのではないか。したがって、社会保障制度審議会等でもいわれておるように、せめて二百億ぐらいは当面出しなさいと、こういうのが百五十億になって、二百億でも低いと思うですが、まだまだこの国庫負担については私は低いと思う。さっき西独の話で、二割五分ぐらいの国庫負担ぐらいがいいんじゃないかという大臣のお話もございましたが、せめて私はやはり全体の四分の一ぐらいは国庫負担とすべきではないか、こう思うのですが、もう予算がきまったあとでありますが、今後政府で検討される際に、こういう数字がもっともっと上がるようにできないものかどうか、あるいはそういうふうにするというふうにお考えになっているのかどうか、あらためてここで聞いておきたいと思う。
  70. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいまの国庫負担の百五十億、これが全体の率でまいりますと四・五%余り、こういうことに御指摘のとおりなるのであります。しかし、過去の累積赤字七百億、また、今回の衆議院の改正によりましてさらに二百二十四億、九百二十四億という相当膨大なここに赤字が累積をしてまいるのであります。この赤字の処理につきましては、制度の根本的な改正をいたします際にあわせてこの赤字対策を立てる、こういうことになっておるのでありますけれども、私は、この膨大な赤字を今後保険料負担でもってこれを解消するというようなことは、事実上私は困難な問題であって、政府が中心になってこの一千億になんなんとする赤字は解消しなければならないのではないか、かように考えておるのでありまして、そういう点を総合的にお考えをいただきました場合におきましては、被保険者だけに全部を負担さして、政府は全然手をこまねいてこれを見ておる、こういうことでは決してないのであります。政府も被保険者もともに協力し合って、この国民の健康を守る医療保険制度をどうしてもやはり長期的な安定したものにしていかなければいかぬ、こういうことでございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  71. 山崎昇

    ○山崎昇君 衆議院で料率が下がった、そういうふうにしたのは、やはりもう国民のこの医療の負担というものは限度だとやっぱり判断されたからだと思うのですね。そういう意味で、いま大臣から心強い御返事がございましたけれども、ぜひ患者負担にならぬように最大の努力を払ってもらいまして、医療の前進がはかられるように、この点を要望しておきたいと思います。  続いて御質問したいのは、きょう政府からもらいました資料を見ましても、医療費に占める薬価の位置というのはきわめて高いわけです。資料を見ますというと、公費を使っておるところでおおむね五二%ぐらいは薬価並びに注射の代金になってしまう、こういう数字になっています。そういう点から考えますと、先般薬価基準が多少下げられて、一応の改善はされたのですが、今後における薬価基準という問題については相当考慮しなければならぬ問題じゃないか、こう考えるのですが、今度のこの改正案で直接どうこうするわけではありませんけれども、この薬価の問題について今後どうされるのか、この機会にお伺いをしておきたいと思います。
  72. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま山崎さんから御指摘になりましたように、医療の中における薬価の占める割合というのが相当大きな比重を占めております。したがいまして、この保険医療におきまして薬価基準をどういうぐあいにきめるかということは、保険医療における負担の面等に大きな影響を持つのであります。そこで、先般十月、十一月の二回にわたりまして、実勢薬価にできるだけこれを近づけるようにということで薬価基準の改定をいたしまして、四・五%の引き下げを行なったところでございますが、今後におきましても、薬価基準は実勢薬価に常に一致するように、それに近い姿で薬価基準がきめられるようにと、こういうことが必要と考えるわけであります。でございますので、今後におきましては、毎年一回、またそこに大きな変動があります場合には、それに応じまして、臨時的にも、随時やはり薬価基準の改定を行なってまいる、こういうことにしたいと考えます。
  73. 山崎昇

    ○山崎昇君 それでは、次に進みたいと思います。  先ほど佐野委員と厚生当局との間に、減税と今度の保険料の問題等でいろいろ質疑がかわされました。ただ、私はこの表を見て、きわめてこの表は不親切だと思うのです。なぜかといえば、税金額そのものがほとんど載ってない。したがって、比較のしようが実はないのです。いままでの税金が幾らで、今度減税になってそれがどうなって、それがどういうふうになるということがないわけなんですが、ただ、先ほどの説明を聞いて、私もこれにはずいぶん関心があったものですから、ここに新聞の切り抜きを各社のを持ってます。どれを見ても、先ほど局長の説明とは若干違うのですね。いま私の手元にありますのは、これは二十二日の毎日新聞ですけれども、これを見ますというと、たとえば年収百万くらいの人ですと、標準家庭では逆に持ち出しになるということをいわれておる。しかし、先ほど局長のお話ですと、そうはならないような答弁でもあるわけですね。一体どっちが正しいか、私自身もこれを計算してみなければならないわけですが、いずれにせよ、今度のたとえば減税というのは、おおむね中堅サラリーマンが中心だといわれるのですね、年収八十万から百万くらいの人が減税に一番浴したといわれる。しかし、そういう方々が今度の保険料の増額によれば一番対象になってくる。何にもならなくなってしまう、こういうことになっているわけですね。そうしますと、幾ら局長が声を大にして説明されても、実際はこの減税額というものは保険料の増額でパーになってしまう。これはもう現実じゃないかと思うのですが、間違いありませんか。
  74. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) たいへん中身が詳細を欠きましたが、その点申しわけないと思いますけれども、各社でいろいろと数字を出しておりますけれども、実は私のほうとも相談の上出しておるわけでございまして、多少積算の基礎が変わっておるのでございます。簡単に御説明申し上げますが、標準報酬というのは、先生御存じのように、これはボーナスその他入っておりません。それで、給与総額というのは、注のところに書いてございますが、賞与支給率を大蔵省の三十九年の民間給与実態調査によりまして、大体三カ月分ということで、標準報酬に二五%をかけまして、それで税額のほうと対象いたしたわけでございます。それから、大蔵省の出しております所得税軽減額の三十万、六十万、百万、百五十万というのは、これは大蔵省がPR用につくった分でありまして、大蔵省の数字をそのまま使っております。したがいまして、標準報酬にこれを比べる場合には、この給与総額に該当するような標準報酬の人を大体とってこなければいかぬわけです。したがいまして、それに見合うようなものを二万円、三万九千円、六万八千円、九万八千円というふうに私のほうで抽出をいたしまして、それで大蔵省のPR用に使っております負担軽減額に対しても比べてみたわけでございます。しかも、各社で出しておりますのは、平年度分というのは考えておらずに、四十一年度、つまり期間が短かい分を考えておるところが大部分でございます。これはむしろ保険料のほうは、これは平年度に考えなければなりませんから、したがいまして、私どものほうは今年度と、それから平年度になった場合に幾ら減税になるかということを両方あわせて併記いたしまして、それでことしはこれだけです、しかし、これが来年になりますとさらに減税額はふえます。したがいまして、軽減額はさらにふえるというつもりで出したわけでございまして、基礎の税額が幾らということを出しておりませんのはまことに不始末でございまして、申しわけないと思います。
  75. 山崎昇

    ○山崎昇君 しかし、いま説明がありましたけれども、国民のほうはこの新聞で計算されると思うのですね。だから、いまの局長のお話ですと、新聞は間違いだということになると思うのですが、私も別に響き出してあるのですが、これだと年収百万くらいの標準世帯は二百三十九円くらいの持ち出しだという、こういう計算になって、新聞はまあ全国にばらまかれておるわけですね。したがって、私はいずれにしても、多少の数字の違いがあったとしても、現実に中堅サラリーマンの方々は、保険料の増額で大体もう減税の分はなくなってしまう。それはあなたは首を振っておるけれども、多少の違いはあるにしても、おおむね私はそういうことになるんじゃないか。私自身も計算しておりませんから、はっきりは申し上げかねますけれども、そういう意味で、私は、今度の保険料の増額というのは、やはり何としても被保険者にとってはきわめて多額の保険料増額になっているんじゃないか、こう思うのです。これはいまここであまり正確でない数字局長とやりとりをやってもしようがないと思いますが、いずれにせよ、私どもとしては、この保険料の増額というものは、被保険者にとってはやはり生活上かなり痛いものだ、こういうことだけひとつ局長に申し上げておきたい、こう思うのです。  時間もなくなりましたから、大急ぎであと二点ほどお尋ねします。その次に、今度の政府管掌健康保険というのは、何といっても対象者が中小企業、事業者としては中小企業、あるいは、また、被保険者もそこに働く勤労者が中心だと、こう思うわけです。そこで、これも政府の発行した資料を見ますというと、被保険者が百人未満の事業所というのが大体九割七分くらい占めておる。あるいは被保険者の数の七割くらいはそういうところに働いている人々だと、こうなっているわけです。こうやって見ますと、この政管の健康保険というのは、ほとんど対象が中小企業といってもいいのではないか。そうすると、この保険料値上げというのは、新聞のことばを借りるというと、中小企業泣かせということばを使っておるようでありますけれども、この中小企業者にとっては、事業主負担がありますから、きわめて私は痛いものであろうと思うわけです。そこで、最近の経済状況を見るというと、どうも中小企業に一切のしわ寄せがきておるところに、重ねてこういう保険料が多額なものが上がっていく、こういうことになると、中小企業はまたまた浮かばれないのじゃないか、こういう気がするのですが、健康保険料の増額と関連をして、中小企業に対してどういうふうに政府はお考えになっておるのか。あるいはこういう中小企業が対象だから、私は、やはり国庫負担というものがもっと増額をされて、中小企業を側面から応援をしなければならぬのではないか、こう思うのですが、健康保険料の増額と関連して、中小企業に対する、これは通産省が当面の省になりますけれども、関連してひとつお聞きをしておきたい。
  76. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 中小企業の対策は、本年の課題でありますところの不況の克服というような面からいたしましても非常に重要な問題でありまして、したがいまして、政府におきましても、金融上の面、あるいは税制上の面、あるいは近代化資金等、特別なこの金利のかからない融資制度、さらに設備を造成をして、これを中小企業に貸しつけて利用させる、こういうようないろいろな面から中小企業の振興対策をやっておりますことは御承知のとおりであります。ただ、中小企業が、業態におきましても数におきましても、非常に多岐に分かれておりまして、その対策はきめこまかくやっていく必要がある。また、多くの中小企業は大企業との系列関係にあるものもあるわけでございまして、そういう面からいたしましてもいろいろな私は具体的な対策が必要である、こう考えるわけであります。政府におきましては、通産省が中心でありまするけれども、各省が関連する事項につきましては、力を合わせまして中小企業の振興と安定のために力を尽くしているところでございます。そこで、この政府管掌の健康保険、これの保険財政が急速に悪化をしてまいりまして、ちょうど中小企業が経済的にも苦しい際に、このような財政対策のための保険三法の改正がなされなければならない、こういう面につきましては、私も非常に時期として苦しい時期である、しかも、十年間今日まで保険料率の改定がなされないで、ここにきてこの保険料の改定等をせざるを得ない、こういう点につきましては、山崎先生が御指摘のとおり、タイミングとして必ずしもいい時期ではない、こう思うのでございます。しかし、一面におきまして、この政府管掌の健康保険は、中小企業に働く従業員、非常に勤労者としても比較的恵まれない立場にある勤労者の健康と生命を守る大切な制度でもございますわけでありますから、財政面からこれが破綻をする、このままでまいりますれば、今回までの累積赤字七百億、それに昭和四十一年度七百二十億、千四百二十億というような膨大な赤字が累積をして、そこで診療報酬等の支払いに支障を来たす等の事態が発生いたしますれば、これも放置できない重大な問題になるわけでございます。そういうようなことから、政府といたしましては、当面の対策としまして、社会保障制度審議会、社会保険審議会に諮問をいたし、その答申の結果が、ここで国庫負担の二百億というのが百五十億ではございますけれども、昨年の改正をも合わせまして、おおむね答申の線でこの改正案が成立をするということは、これはやむを得ない最小限度の私は措置である、こういうぐあいに御理解と御協力をお願いしたい、こう思うわけでございます。
  77. 山崎昇

    ○山崎昇君 それじゃ、もう時間がなくなりまたから、最後にもう一つお聞かせ願いたいと思うわけでありますが、きょういただきました資料で、被保険者のいろいろ平均給与を書いたものがございます。これを見ますというと、政府管掌の健康保険標準方式というのですか、俸給月額が平均して二万六千百六十二円、以下ずっとございますけれども、これと匹敵するのが地方共済の市町村が二万七千五百五十四円、いずれにしても、ほかの報酬に比べますというと、大体五千円ないし六千円低いのではないか、こう思うわけです。そこで、私は、健康保険の赤字を考えた場合に、いま大臣から御説明がありましたように、この政管の健康保険というのは、おおむね中小企業並びに中小企業に働く労働者の方々がこの被保険者になっているわけです。したがって、その平均賃金が低いということは、勢い保険料が低いということになると思うのであります。だから、私は、逆にいえば平均賃金をもっと高くすれば保険料ももっと多く入ってくる、いわば政府で頭を病める赤字も多少は少なくなってくる、こういう因果関係にあると思うのですね。そういう意味で、私は、保険料を考える場合に、労働者の賃金というものをどうして高めるのだ、保険料の基礎になっている賃金というものを高める必要があるのではないか、こう考えるわけですが、そういう意味で、それらについて、まあ厚生省は労働省と違って、直接賃金をどうこうという省ではありませんけれども、関連をして、こういう低賃金をどう頂されるのか、こういうふうに私はお聞きをしたいと思うのです。この表をごらんになれば、学校の先生が一審高い、その次は公企業関係、それから地方職員、あるいは警察もかなり高い賃金水準になっておる、こう思うわけです。いずれにしても、きわめて低い状態にあるわけですから、この点についてお聞きをしたいと思うのです。特に政府の出されている白書等を見ますというと、月収が三万円以下の人が七〇%を占めておる。かりに四万、五千円以下の人でも八九%ぐらい、こういうのですね。そうすると、月収三万円以下七〇%ですから、大体まあこの表と似たり寄ったりのことが言えると思うのですが、いずれにしても、かなり低い状態にあると思うのです。そういう意味で、この健康保険の問題に関連をして、中小企業に働くこういう低賃金をどうしても政府としては対策を講じなければこの赤字の問題についても根本的に私は直ってこないのじゃないか、こう思うので関連について見解をお聞きをして私の質問を終わりたいと思います。
  78. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この政府管掌の健康保険の被保険者の所得の問題でありますが、この表でごらんになりますと二万六千円ということで、その他の制度の被保険者に比べまして確かに低位にございます。ただ、ここで御説明を申し上げておきたいことは、独身者がこの被保険者の六割を占めておる、こういう点が御理解を願わねばいかぬ点だと、こう思っております。他の制度におきましては必ずしもさようでございません。この政管の特徴はそこにあるわけであります。この中小企業で働く従業員の給与所得の改善という問題は、これは経済成長が行なわれるに伴いまして賃金の平準化ということが私は相当行なわれたのではないか、それがいろいろな中小企業における生産性がそれに見合って進まないために、サービス料金なり、物価の値上がりの大きな要因にもなっておると思いますが、今後やはりわが国の賃金体系というのも、国際的な形においてその平準化が進んでいって、中小企業も大企業のやはり勤労所得にだんだん近づいていく、また、そういう方向で私ども政府でやりますいろいろな施策考えます場合にも、そういう情勢というものを助長するように、また、それに合ったような施策をあらゆる面でやるように心がけていきたい、かように考えております。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、医療制度について全くのしろうとでありますので、また、お医者さんにもほとんどあまりかかったことがないので、非常に門外漢でありますので、質問も聞きにくいかもしれませんが、若干質問したい点がございますので、御答弁願いたいと思います。  先ほど山崎委員から、医者に行った場合にこういうふうな料金で、どうも不可解だというような質問に対して、局長からは、それは自由診療だから別なんだ、こういう答弁で終わったわけですが、確かに自由診療ならば厚生省で基準をきめるべきものじゃないだろうと思います。けれども、いまここで国民は非常に、先ほど来各委員が御指摘のように、不況下でもあり、物価高でもあり、また、中小企業の労働者も相当不況や物価高で苦しい時期に、しかも、料率が上がる、あるいは標準報酬月額が引き上げられる、そういう点に対しては、やはり国民に納得のいく説明というものが大事だと思うのです。ただ病院のあり方についての疑問が提起された場合に、それはこれとは関係がないのだということでは済まされないと思うのです。したがって、第一に私のお尋ねしたい点は、病院をはじめ、そうした医療経営の実態調査をして、そうして病院の経営はこれこれしかじかだと、だからこういう点をこういうふうに改めていかなくてはならないのだというような点も、当然これは厚生省として明らかにしなければならない点じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  80. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほどの山崎委員の御質問に関連して、前段でお尋ねがございましたが、これは大学付属の病院の場合におきまして、保険医療機関としての指定がいろいろの事情でまちまちになっております。たとえば東京大学の場合におきましては、東京都在住の被保険者であれば、国民健康保険の場合にはこの健康保険でもって診療が受けられる。しかし、その他の府県の在住の方につきましては、保険では対象にならない、こういうようなことになっておりますし、東北大学の場合では、東北六県に在住しております者であれば全部保険医療が受けられる、こういうようなことになっております。この点につきましては、大学病院等は非常にむずかしい病気等を診療し、診断をしてもらう必要がありますので、どこの地方でも、大学病院に行きました際には保険でもって診療が受けられるようにしてほしい、そういった事情を知らないで飛び込んで行った場合に、これは私のところでは保険の対象にはなりませんと、こういうようなことで非常に患者さんがお困りになるというような事情もあるのであります。そこで、先般、私は文部大臣とも協議をいたしまして、そして厚生省と文部省との問で十分これを検討して、早急に国立大学等が国民全体の保険診療ができるようなこと等について検討を加えよう、こういうことにいたしておるわけであります。いまはその点が十分確立されておりませんために自由診療というようなことにならざるを得ないという事情がそこにあることを御了承をいただきたい。その点は今後一つの研究課題として早急に対策を立てたい、こう考えております。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 実態調査について。
  82. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 病院実態調査のお話が出ましたが、これにつきましては、厚生省におきましては医務局を主体に、病院につきましては医務局のほうで全体的な動向をつかんでおりまして、特に公的医療機関、国の病院、それから公立の病院、市町村立の病院、そういったものにつきましての実態は毎年正確につかみ得るようになっておるわけでございます。ただ、医療費の中身を実際に考えていく場合に、公立病院だけの実態ということでは必ずしも全般を律するわけにはまいりませんので、広い意味でやはり全部の病院、診療所を含んだ実態調査する必要があるということは、これは御承知のように、多年の懸案でございますが、ただいま中央医療協議会のほうでも、そのような実態調査をお互いに関係団体が了解の上でやるようにしようということで議を尽くしておりますので、いずれそのような御疑問の点は解明できるような時期になると思います。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、今回のこの改正はそういう実態調査はないし、また、そういう疑問の解明もできないままでやむを得ない、こういうわけですか。
  84. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 今回の改正の分は、いわば保険のほうの収入面から見た赤字につきまして、それをいかに対処していくかということで料率の改正、標準報酬の改正並びに国庫負担ということでお願いを申し上げておるわけでございますが、やはり医療費をどういうふうにきめていくかということは、これは支出面として考えなければならない問題でございまして、支出面の対策は、またこれは医療協議会等で行なわれておるところでございまして、やはり究極的に保険のバランスをとるということになりますれば、収入、支出が適当にバランスが合っていかなければならぬわけでございますけれども、直接今回の改正が医療費の中身にわたるものではないというふうに私ども考えておりますので、その点お含みの上御審議をいただきたいということをお願いいたしておるわけでございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは医療費の中身にわたっていないことはよくわかりますが、ただ、今回の改正は、結局赤字問題から起きているわけでしょう。なぜ赤字が起こるか、これは先ほど幾つか理由をあげて説明なさいましたが、この赤字の理由については後ほどまたいろいろ私もお尋ねしたい点があるのです。ただ、いまここで先ほどの提起された問題と関連してお尋ねしておきたいことは、その経営の実態調査をして、それで国民の前に──国民の前というと大げさですが、とにかく納得してもらえるようなものについての厚生省としての努力がなくちゃならないのじゃなかろうかという点、あるいは、また、お医者さんのほうの立場から考えたら、技術がこんなに、同じ大学を出て弁護士さんとお医者さんと比べた場合に、一体弁護士さんに第一回相談した場合と、お医者さんに第一回みてもらった場合にこれだけの違いがあるじゃないかというような点も当然あると思うのです。そういうような点についても、やはりただ何となく赤字になったから赤字対策をしようというのじゃなくて、そういう根本的な問題の検討が必要だということ、そうして、たとえば同じお医者さんでも、病院を個人で開業している方と、あるいは医院へつとめている人と一体収入がどのくらいの違いがあるか、それは人によって、また、もちろん場所によって、病院によって違うと思いますけれども、そういう点を少しでも解明していこうというものがなくちゃならないと、このように思うのです。あるいは先ほどお話がありましたが、医療費の中に薬剤費がどのくらい入っておるか、その薬価基準をどうこうというような日本の国の特有の問題を、法律のたてまえでは医薬分業ということになっておりながら、実際問題としてその薬代が三〇何%というふうに占めているというようなこういう現状、これをどう問題を解決していくかというそれがなくちゃならない。ただ赤字だから保険料を上げよう、国家が金を出そうというだけじゃ済まされないじゃないかという点を申し上げているのですが、いかがですか。
  86. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 小平委員の御指摘、御所見は全くそのとおりでございます。先ほど申し上げたのはその一部でございますが、わが国の医療保険制度を根本的に見直すべき段階にきております。そこで、私は、一方におきましては診療報酬体系を適正なものにまず改善する必要がある。神田大臣当時、九・五%の緊急是正もいたしたのでありますけれども、そういう形で、そのつど、ここが足らぬからこうというようなことだけではもう済まされない。今日、医学、医術は相当長足の進歩を遂げております。そういうようなことで、私は、この診療行為の中にもいろいろなそこに均衡をとらなければいかぬ、不均衡を是正しなければいかぬ面があると思います。また、この物と技術を分離をして、そして技術を正しく評価をする必要がある、そういうことも各方面から強く指摘をされておる問題でございます。そういうようないろいろのことを考えまして、私は、診療報酬体系につきましても、医業の実態調査の上に立ったところの診療報酬体系が新たにここで確立をされなければいけない、かように考えておるのであります。それはいま中医協におきまして東畑会長が中心になりまして、このことをやるべく、ただいまいろいろ検討を願っておる段階であります。また、その前提になりますところの医業経済の実態調査の面につきましても、いま局長から申し上げましたように、厚生省におきましても、国立病院国立療養所、あるいは公的医療機関厚生省のなし得る分野におきましては実態調査を行なっておるのであります。それから、一面、日本医師会におきましては、やはりここでも相当の費用をかけまして、そして大学の統計学の教授であるとか、そういう専門家を委嘱をされて、客観的な医業経営の実態調査というものを自主的におやりになっております。いろいろ御意見がございまして、直接役所でやっぱりやらなければいかぬとか、いろいろな御議論がありますけれども実態調査をやりますためには、そういう医療機関、私的医療機関等の進んでの理解ある協力がなければなかなかこれは困難な仕事でございます。そういうようなことで、私は、国としてでき得る調査、また、医師会等がおやりになっておる調査、こういうようなものを持ち寄って、それらを活用してこれを分析をして、どういうぐあいにこれを使って、そうして今後の診療報酬体系を検討する際の資料にするか、こういうことが私は現実の問題としてなされていいのじゃないか、そうして、また、足らざるところはこれはまた補足的に調査すればよいのでございまして、その診療報酬体系の検討に入る医業経営の実態調査の問題と、その玄関口であまりにも議論を戦かわして前進しないというようなことは、私は賢明な方法ではない、できるだけこれを話し合いによって前進をさせたい、こう考えております。こういう一面、診療報酬体系の適正化をはかり、一面、この各種医療保険制度の均衡のとれた改善、こういうものが両様相まって私はこの国の医療保険制度というものがりっぱなものになるのではないか、こういう方向で臨時医療保険審議会と、それから中医協、これを車の両輪として制度の抜本的な改正に進んでまいりたい、かように考えております。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣の積極的な御意見を承りましたので、その経営の問題についてはこの程度で終わりたいと思いますが、とにかく大衆に納得してもらえるという、まあそういう一つの医療行政のあり方というものが必要だと思います。確かに大臣がいまおっしゃったように、入り口で専門家同士が議論している、そこであまり時間を費やしていても国民は何をやっているかわからないというような姿で、あまりいい姿じゃない。やはり一歩でも二歩でも前進して内容を明らかにし、問題点を解明していくという、この努力が必要だと思います。  次に、いま大臣がおっしゃった臨時医療保険、審議会でありますが、この臨時医療保険審議会についての厚生大臣としてお考えはしばしばいままでも承ってまいりましたが、ここでこれこれの項目とこれこれの項目を諮問したいのだ、非常に私ども、ちょっとこれもまたしろうと考えではありますが、これから一年足らずの間に、あるいは半年ぐらいの間に結論を得ようというこの新しい審議会に対してどのような項目をお考えなさっていらっしゃるか、また、この臨時医療保険審議会にどういう人をということは、そう具体的にはまだ御答弁願えないかもしれませんが、およそこれの項目をあげて、これこれの人たち、あるいはこれこれの審議会で半年なら半年、一年なら一年に結論を出すようにしたいのだという、その辺の御構想がもう少し具体的になっておられましたらお伺いしたいと思います。
  88. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 臨時医療保険審議会で検討をいたします、また、諮問をいたします事柄につきましては、最終的に厚生省としての案が固まっておりません。ただ、いま牛丸事務次官を中心にいたしまして、牛丸委員会で検討をいたしておるのでありますが、国会の審議等で保険局長もずっと忙殺をされておりますために、しばらくそのほうの取りまとめが渋滞をいたしておるのでありますが、国会が終わりますれば早急に厚生省としてのそれぞれの成案を取り急ぎ固めたい、かように考えておりまして、いま厚生省の具体的構想なるものを御披露する段階に至っておりませんことを残念に思うわけでありますが、いま牛丸委員会で問題として取り上げて検討を進めております点につきましては、保険局長から御報告いたします。
  89. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 制度の基本問題として論議される問題としましては、第一には、制度の体系に関する問題があると思います。これは各制度の統合をやるか、あるいは総合調整をやるか、また、国民健康保険についての経営主体をどのようにするか、あるいは現在の組合制度のあり方をどうするかという問題があるわけでございます。  それから、第二番目には、給付の基本的なあり方に関する事項がございます。これは給付水準の最終目標を幾らにするか、医療給付の範囲でカバーする範囲をどの程度にするか、患者の一部負担のあり万をどうするか等々の問題があるわけであります。  それから、第三番目には、負担の基本的なあり方に関する事項があります。これは保険料負担、国庫負担及び患者負担の負担区分のあり方をどうするか、また、保険料負担の公平をどうするか、事業主負担制度の現在の折半負担の問題もあわせて論議が出ると思いますが、最終的に国庫負担をどういうふうにするかという問題があるわけでございます。  それから、第四番目に、現在の医療保険制度たる、いわば公費負担医療制度と申しますか、結核や精神衛生、伝染病、その他この公費負担医療制度と医療保険制度をどのようにかみ合わしていくか、現在必ずしも分野は明白にはなっておりませんけれども、さらに明白にしていくというふうな問題もあるわけでございます。  以上申し上げました基本的な問題として論議すべき事項につきまして、それぞれ具体的に項目を詰めたいというのが私どもの現在の考え方でございます。
  90. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  91. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記を起こして。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの御答弁で、問題としまして、臨時医療保険審議会は、要は今国会が終わってから厚生省として結論を出そうと、こういうわけでありますね。したがって、新しいそうした法律上の制度ではなしにおやりになるのか、あるいは国会へ提案して、法律をつくった上の制度なのか、その点が一つ。よろしいですか、意味は。  それから、もう一つ、ついでにお伺いしますが、その審議会に、保険料の値上げについていま非常に局長から抽象的にお答えがありましたが、保険料を値上げするという点についての諮問ですね、結局諮問といいますか、要するに保険料値上げについて、直接保険料を値上げするようなことが検討事項に入るかどうか。以上二点について。
  93. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この制度の抜本的な改正は、国会の御承認を得れば臨時医療保険審議会を発足をさせまして、そこで各制度全部につきまして検討を進め、そして統合できるものは統合する、あるいは総合調整するものは総合調整をする。そして先ほど来申し上げましたように、バランスのとれた、そして長期的に安定をした医療保険制度を確立したい。その審議会の答申を得て立法化して次の通常国会に提案をし、国会の御審議をわずらわしたい、かように考えておるわけでございます。また、一面、診療報酬体系の問題につきましては、ただいま東畑会長を中心に、中央医療協で御検討をいただいておりますから、この面につきましても御答申を得て、そうして国会におはかりをしたい、かように考えます。  それから、なお、保険料の問題につきましては、先般来お話のように、保険料の負担は相当私は限界にきておる、このように認識をいたしておりまして、できるだけ保険料の増徴というような形でなしに、制度全体の合理化なり、あるいは総合調整、そういうようなことでむだを省いて、そうして保険財政もうまく安定していきますように、また、その間におきまして国庫負担の並立化等につきましても私ども十分考えていきたいと考えております。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 私のお尋ねした点は、この審議会から答申が出ました場合には国会に提案するということではなくて、この審議会をつくるために国会に法律を出すとか、あるいは出さないとか、そういう点、あるいは、また、したがって、審議会の発足がいつごろを見込まれていらっしゃるか、そういう点について。   〔委員長退席、理事佐野芳雄君着席〕
  95. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 臨時医療保険審議会設置法といたしましてこの国会に提案をし、御審議をいただきたい、こう考えております。そうして国会の御承認を得れば、国会終了後、できるだけ早く発足させたい、かように考えております。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、やはり今国会に出されるわけですね。
  97. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) はい。
  98. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 関連。私は、臨時医療保険、審議会の設置ですが、この国会に出すといま言われるのですが、大臣が抜本的な対策以外にはないのだとお考えになっていることもいろいろわからぬことはございません。けれども学者を中心とする、学識経験者を中心とする構成の問題だろうと私は思うのですよ。いままでの被保険者も、公益並びに医師側ですね、こういう代表の方で構成してやっているわけですね、いずれも専門家だと思うのです。そこで結論が出ない一体理由は何かということをやつ。はり疑うわけですね。それには先ほどおっしゃったように、たとえていえば各制度間の給付の水準の格差をどうするか、こういう問題は私は問題としてあまり問題ないのだと思う。水準をできるだけ統一化していこうという問題ですね、さらに、また、今度は地域的に医療機関の分布のアンバランスですね、いまだに医師の都市集中になって、無医村がたくさんあるわけですね、こういう問題も出ないんじゃないかと思う。さらに医療費の、この国民医療費としては四十一年度一兆一千億円以上ですか、したがって、国民所得の五%ですから、結果的にはなるでしょう、これは世界でもまあ最高水準にいっておるのでしょう、この問題としては。ただ、問題は、医療費の年々の急激な二〇%ふえておるその事実を、どこでふえておるのか、このふえておる事実を調査する必要があるのじゃないか。たとえていうならば、支払い基金の監査制度というものはどういうふうになっておるのか、こういう問題もあろうと思うのです。日本医療制度は、どんどんお医者さんにかかっていけ、被保険者は。それで国民皆保険だと、こうやっておるわけですね。そうすると、それを支払いした監査というものは政府は握っておるのですか、これ。握っていないのでしょう。支払い基金で監査制度は持っておりますけれども政府としては握っていないのでしょう。だからどんな委員会を設置したって、私はそういう点が問題だと思うのです。そういう一つ一つを分析していきますと、もう一つ政府は四十年度三十億出した、今度は百五十億だ。先ほどいわれるように、まあ社会党さんから希望も出ておりましたように、せめて政府がこの是正をするためには二百五十億出そう、こう腹をおきめになればこれもあまりたいした問題じゃないのじゃないか。こう詰めてきますと、一体国庫負担とそういう矛盾点の年々ふえていくこの二〇%というものが何に原因しておるのか、ここに三者の意見の統一ができないのじゃないかというような私は気がするのです。それには支払い基金の制度の監査強化というようなことも政府がもっと握る必要があるのじゃないか。それがないために、政府としては、この二〇%ずつふえていくこの事態から考えますと、いろいろ先ほど理由を五つほどあげておられました、国民が老齢化してきた、しかし、老齢化しただけではないでしょう。なお皆保険でそれだけ診療を受ける率も多くなってきた、そういうことがわかれば、先ほど二百五十億なりあるいは二百億なりの定率の国家のその補助というものは出してもいいという結論も出るのじゃないかと思うのですね。問題は、そういう疑心に思う点が多数あるところにこの現在の社会保険審議会の結論が出ないのではないかと私は考えておるのです。そういうことが明らかになれば、今度の抜本的な対策をお立てしていきたい、こういうふうに大臣がおっしゃることも反対するわけじゃありません。けれども、私は、学識経験者を中心とするこの委員会の設置をやられた場合、まあ大臣先ほど佐野委員質問に対する御答弁では、現在ある審議会の意見も何かの形で聞きたい、こうおっしゃるわけですね。しかし、そうなると、それは逆ではないかという私は感がするのです。むしろ一つ一つのネックに対する新しい審議制度で結論を出していただいて、そうして現行の審議会が公正な立場に立てる資料を出せばいいのじゃないか。意見を聞いた場合は、逆に今度は諮問機関で、いままでの、審議会制度が諮問機関になった場合ですね、これまた問題だろうと思うのですね。何としても現在の三者構成の中の委員会で消化できるような新しい審議会が一つずつ問題の提起をしていくという方法でなければ解決つかないのじゃないか。そのために、けさの新聞ではございませんけれども、三つの、承認はしないけれども、意見書として出しておる。この意見書を見ても、やつぱり私が先ほど申しましたような問題が中にたくさん含んでおるような気がするわけです。こういう点、大臣はどうお考えになるか、多少想見も含めましたが。
  99. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) けさ社会保険審議会の会長の末高さんから意見書をちょうだいをし、昨日来の社会保険、審議会の御意見を拝聴いたしたのであります。これによりましても、わが国の医療保険制度は多岐にわたっており、また、あらゆる面で不均衡がそこにある、皆保険のもとにおいては、やはり負担の血、給付の面等、国民全体が均等にやはり医療が確保できるようにすべきだ、そのためにはいまや抜本的改正を必要とする、こういう面につきましては社会保険審議会の全員の方がやはり同様の御認識を持っておる、その点においては異存がない、こういうことであります。  それから、もう一つの点は、しからば、その多岐に分かれておる医療保険制度全体を総合的に検討する場合としては、社会保険審議会は、御承知のように、政管と日雇と船員、これだけしか所管し、所掌しておりませんから、社会保険審議会では全体を見ることは審議会の権限からいってもそれはできないことだ。そういう意味合いからいたしまして、臨時医療保険審議会をつくって、そういうところで全体を検討するということも、これも認めざるを得ない、この点につきましても大体一致しておるようでございます。ただ、運営等、委員の人選については特に慎重に考慮すべきである、こういう御意見がついておるのであります。私は、その点につきましては御意見の趣旨を十分体しましてやってまいるつもりでありますが、ただ、なまな形で支払い側とか診療者側とか、あるいは保険者側とかいう代表でもって委員を構成するということにつきましては、制度の根本的な対策、あるいは一本化、総合調整というような思い切ったことをやりますためには、なまな代表ではこれはなかなか話し合いということが困難である、そういうことで、もっと高い立場から御検討を願えるような学識経験者で構成をしたい、その学識経験者を選びます際には各方面の御意見が十分、反映できるような御推薦を願うとか、あるいはいろいろなことをいたしまして、人選につきましては慎重にしたい、こういうことを私申し上げており、また、運営にあたりましても、各制度、各方面の御意見が十分反映できるような運営をやるようにしたい、こういうことを申し上げておるところでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、これで私の質問を終わりにいたしますが、要するに、この不況下の物価高というこの時期に、こういうようにいま厚生大臣がおっしゃっておるように、昭和四十二年度から抜本改正があるんだということを一方では言いながら、しかも、料率を改定する、また料率を上げる、また標準報酬月額を上げるということが非常に納得できないような感じを受けるのです。要するに、結局いま指摘されたこととも関連するのですが、医療費が増大した、受診率がふえた、一日当たり、一件当たりの金額がふえた。で、医療費がふえたことは、一面ではそれ自体はけっこうなのですが、けれども、その医療費がふえたものが、むだがあったりマイナスになるようなものがあったのでは、医療費がふえても何にもならないわけです、実際問題としてただ赤字になるだけで。したがって、その辺の分析が大事だと思うのです。ただ医療費がふえたから国民の健康が増進したか、それは国民の健康が増進するための医療費ならふえることは非常にけっこうなのだが、いま言うようなむだやマイナスがあったのでは何にもならない、そういうむだやマイナスがありはしないかどうかということこそ最も力を入れて研究しなければならない、検討しなければならない、このように思います。これに対する御意見と、それから、諸外国でもやはり一人当たり医療費はふえているというふうに聞きますが、とにかく日本のふえ方が異常なふえ方をしているというふうにいわれますが、こういう点を厚生省はどのように見ていらっしゃるか。結局、国民所得水準との関係もありますので、単純に多い少ないということはいいにくい。結論は出ないかもしれませんが、とにかく日本の最近の医療費のふえ方、それは諸外国に比べてどうかという点についての御意見、以上お願いします。
  101. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 診療報酬の問題につきましては、これはむだがあってはいけないということにつきましては私どもも全く同感でございますが、この点につきましては、先ほど来申し上げるように、医学、医術の進歩もございますし、診療報酬体系というのは再検討を要する段階にきておりますので、ただいま中央医療協議会でせっかく御検討を願っておる段階でございます。その御答申を待って政府として措置してまいりたいと考えるわけであります。  それから、わが国の医療水準、また、特に医療保険の場合において外国とどういう格差があるか、関係があるかというお尋ねでありますが、各国によって制度がそれぞれ違いますので、それを比較してどうこうということは非常にむずかしい問題でありますけれども先ほど来申し上げておりますように、わが国の医療保険制度は欧米先進国の水準におおむね達しておるものと、かように考えております。
  102. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 最後に。私もたくさん質問があったのですけれども、時間がないようですから終わりますが、先ほど大臣答弁で、まあそういう大臣のお考えもあろうかと思いますけれども、いままでの構成の、審議会は、私は、少なくとも被保険者、さらに、また、使用者側ですか、これは対等の立場におけるやっぱりそれだけの出費をしておるわけですね、国の政策に対して。たとえば保険制度がどう変わるにしても、それに対するチェックする場を失った保険制度というものが生まれてくるということは、いかに公正無比であるというようなことを口では言っても、なかなかその点は私は問題だと思うのですよ。それは国の政策にやっぱりチェックをする場があるところに三者構成の大きな意味があるのであって、しかも、三者構成で結論にならない場合の施策として、さらにその上に諮問機関として新しい審議制度というものがあるならば、これは私はまたいいと思いますけれども、いま政府がやっていかれるその方法というのは逆コースではないかという気がするわけです。これは私はそう考えるのですが、できれば今後のその運営にあたって、その逆行のコースにならない、使用者側、あるいは被保険者の政策に対するチェックする場をぜひ私は残すべきだ、こういうふうに考えていますので、その点は運営上でひとつ十分やっていただくことをお願いしておきたいと思います。  なお、私は、きょうは精神病院の問題について質問する予定、だったのですが、自民党さんが非常に御多忙のようでもありますし、それを考慮に入れて、きょうはおきたいと考えております。  以上で終わります。
  103. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) それでは、ほかに御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 御異議ないと認めます。  鹿島俊雄君から委員長手元に修正案が提出されておりますので、この際、その修正案を議題といたします。  鹿島俊雄君より修正案の趣旨説明を願います。
  105. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民主社会党を代表して、四派共同提出の修正案について御説明申し上げます。  修正案はお手元にお届けしてあるとおりでありますが、その要旨は、船員保険の保険料率を千分の一引き下げること及びこれに伴って労使の分担料率についてそれぞれ千分の〇・五ずつの引き下げを行なうことであります。  委員各位の御賛同をお上願いいたします。
  106. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) ただいまの鹿島俊雄君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、法第五十七条の三の規定により、内閣に対し、意見を述べる機会を与えなければなりません。よって、ただいまの修正案に対し、内閣から意見を聴取いたします。鈴木厚生大臣
  107. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 当委員会におきまして鹿島委員から御提案になりましたような修正がなされますことにつきましては、政府としてはやむを得ないことと了承をいたします。
  108. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) それでは、ただいまの修正案に対し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。──別に御発言もなければ、質疑はないものと認めて、これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 御異議ないものと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。──別に御意見もないようですから、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより健康保険法等の一部を改正する法律案(閣法第一七号)について採決に入ります。  まず、鹿島俊雄君提出の修正案を問題に供します。鹿島俊雄君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  111. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 全会一致と認めます。よって、鹿島俊雄君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  112. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 全会一致と認めます。よって修正部分を除いた原案は、全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたします。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回の委員会は五月十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会