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1966-04-19 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十一時五分開会     —————————————   委員異動  四月十三日     辞任         補欠選任      重宗雄三君      山下 春江君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 竹松君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 亀井  光君                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    衆議院議員        修正案提出者   竹内 黎一君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省医務局次        長        渥美 節夫君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ただいまより社会労働委員会開会いたします。  まず、委員異動についてお知らせいたします。四月十三日、重宗雄三君が委員を辞任され、その補欠として山下春江君が選任されました。
  3. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 健康保険法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より本案に対する提案理由説明を聴取いたします。鈴木厚生大臣
  4. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  政府管掌健康保険船員保険等医療保険につきましては、近年受診率上昇給付内容改善等により、多額の赤字を生じ、保険財政はきわめて逼迫した事態に立ち至っております。政府は、このような事態に対処すべく健康保険制度等改正案要綱策定し、社会保障制度審議会及び社会保険審議会に諮問したのでありますが、両審議会からは、保険財政が逼迫している現状にかんがみ、とりあえず応急対策として保険料改定及び国庫負担の増額を行なうべきであるとの答申を受けたのであります。政府といたしましては、限られた国の財政事情の中で、これらの答申趣旨を極力尊重することといたしまして、当面、応急対策として、昭和四十一年度において政府管掌健康保険に対し百五十億円、船員保険について四億円の国庫補助を行なうこととし、あわせて標準報酬等級区分改定及び保険料率引き上げを行なうこととした次第であります。なお、これらの審議会答申にも述べられておりますように、医療保険財政を将来にわたって健全化するためには、医療保険制度の基本的な問題について検討する必要がありますので、政府といたしましても今後早急に抜本的な検討を行なう所存であります。  また、この際、さきに行なわれました労働者災害補償保険法等改正に見合って、船員保険職務上の事由による年金給付につき、また、さきに行なわれた厚生年金保険法船員保険法との改正に伴い、厚生年金保険及び船員保険交渉法について、それぞれ所要の改正を行なう必要がありますので、今回あわせてこれを改正することといたした次第であります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由でありますが、次に、この法律案の概要を御説明いたします。  まず、健康保険関係につきましては、第一に、標準報酬月額最高額現行五万二千円を十万四千円に改め、等級区分現行二十五等級を三十六等級とすることといたしております。  第二に、政府管掌健康保険保険料率現行千分の六十三を千分の七十に改めることといたしております。  次に、船員保険関係につきましては、第一に、標準報酬月額最高額現行七万六千円を十万四千円に改め、等級区分現行二十五等級を三十等級とすることといたしております。  第二に、疾病部門にかかる保険料率について、一般給付分現行千分の五十一を千分の五十四に、災害補償分現行千分の四十を千分の四十六に引き上げることといたしております。  第三に、職務年令部門に関しましては、さきに行なわれました労働者災害補償保険法等改正に見合って、職務上の障害年金及び遺族年金の額を引き上げる等の改正を行なうことといたしております。  次に、厚生年金保険及び船員保険交渉法関係につきましては、さき厚生年金保険法及び船員保険法改正における老齢年金等年金額引き上げ高齢者在職老齢年金の支給、厚生年金差金創設等に伴い、老齢年金高齢受給権者または厚生年金基金加入員であって、両制度に加入したことがあるものの取り扱い等について必要な調整を行なうことといたしております。  以上がこの法律案を提案いたしました理由及び政府提出法律案要旨でありますが、なお、衆議院において、政府管掌健康保険保険料率に関する改正規定健康保険及び船員保険標準報酬等級及び保険料率改正についての施行期日等について修正がなされました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 次に、本案に対する衆議院における修正点について、修正案提出者衆議院議員竹内黎一君より説明を聴取いたします。竹内衆議院議員
  6. 竹内黎一

    衆議院議員竹内黎一君) 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正の第一は、保険料率の引き下げについてであります。政府管掌健康保険保険料率は、改正案では「千分の七十」となっておりましたが、それを「千分の六十五」に改めたことであります。  第二は、施行期日についてであります。健康保険法の一部改正及び船員保険法の一部改正施行期日は、改正案では「昭和四十一年二月一日」となっておりましたが、これを「公布の日」に改めたことであります。  なお、健康保険及び船員保険保険料率及び標準報酬に関する部分は四月一日から適用することとし、船員保険職務年金部門につきましては二月一日から適用することといたしたことであります。  以上が修正要旨でありますが、何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  7. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止
  8. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記を起こして。  午前中の審査はこの程度とし、暫時休憩いたします。    午前十一時十四分休憩    午後零時四十五分開会
  9. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 午前に引き続き、ただいまより社会労働委員会開会いたします。  これより健康保険法等の一部を改正する法律案に対して質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、大臣にまずお伺いをしたいのでありますが、健康保険の問題については、昨年から非常に議論のあったところでございます。私たちが感ずることは、政府社会保障に対する考え方自身が、どうも国民の感情とちぐはぐではないか、これが一つであります。  それから、いま社会保障の果たしている役割りというのは、単に慈善恩恵という段階を過ぎて、経済繁栄と申しましょうか、経済の一要因として社会保障、特に所得保障の問題が中心でありますが、医療保障の問題もそうでありますが、そういうとらえ方をするようになってきたと私は思うのであります。そういう観点からまいりますと、一番最初出された健康保険法改正に対するものの考え方というものは、少し国民とちぐはぐでなかったかという感じを私は持つわけであります。たとえば薬価の半分とか総収入、まあ二千円を限度とするということは書いてありましたけれども、しかし、医療制度赤字は全部被保険者にゆだねるというところから健康保険法改正というものが行なわれようとしておる。これは社会保障制度審議会社会保険審議会の批判、反発があって、その考え方は一応うしろずさりしたようなかっこうで進んできたのであります。しかし、この主点になるものは、私は、その考え方というものが、厚生白書にも出ていましたように、労使負担社会保障を進めるのだというものの考え方が抜け切っていないところに私はやはり問題があるのではないか。私が冒頭に申し上げましたように、単に慈善恩恵の対象として社会保障考えていいのかどうかというところがやはり問題ではなかろうかと私は思うわけです。だから第一に聞きたいことは、厚生大臣は、いま社会保障、特に所得保障中心とした社会保障近代社会に果たす役割りというものはどうお考えになっているのか。  それから、二番目に、私は、全体の経済の中で、主権在民国家体系における主権者国民の位置というものはこれでいいのか、そういう二つの問題についてまず私はお聞かせを願いたいと思います。
  11. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 社会保障近代国家におきまして特に重視をされ、その中におきましても医療保障所得保障というものが二つの大きな柱になりまして、国民の健康を守り、また、国民の最低の生活を保障すると、こういうような制度のもとに社会保障の政策を行なっておりますことは御指摘のとおりでございます。わが国におきましても、欧米先進国に比べまして、いまだ十分これに追いついていないのでありますけれども医療保障の面におきましては、おおむね欧米先進国水準に達しつつあると考えております。所得保障の面におきましては、この制度が発足をいたしましてからまだ日も浅い。すでに欧米先進国等におきましては、長い間の積み立て制度のもとに給付段階に入っておるのでありますが、わが国におきましては、福祉年金や、あるいは遺族給付というような面は別といたしまして、拠出制による本格的な給付段階にまだ入っておりません。さらに、また、すでに北欧等におきまして行なわれております児童手当、この制度はいまわが国におきましては検討を進めつつある段階でありまして、実施に移っておらないのでございます。そういうような関係からいたしまして、確かに日本は立ちおくれをいたしております。しかし、私どもは、経済成長国民所得上昇に見合いまして、近年社会開発、特に社会保障ということに力を入れるように政府としても努力をいたしておるところでございます。これを数字で申し上げますならば、欧米先進国におきましては国民所得の一〇数%という水準にあるのでありますが、わが国におきましては、一九六三年の時点で国民総所縁の中に占める社会保障給付費の割合は六・四%程度に相なっております。おそらく四十一年度におきましては七%をこえるというような状況にまで相なっておるのであります。私は、こういうような社会保障、特に医療保障所得保障というものが充実をしてまいりましてはじめて国民が憲法で保障された文化的な健康な生活を保障されると、こういうことになるわけでございますから、その理想の実現にできるだけ早く到達いたしますように、政府としてもあらゆる努力を払ってまいりたい、かように考えておるのであります。  また、所得保障の面につきまして、私は、これは単なる国の恩恵というような考え方社会保障はやられるべきものではないという御指摘の点は全く同感でございます。これはむしろ国の責任において国民生活を守るために私はこれが必要である。また、このことは決して国費をただ支出をするというだけでなしに、当面の景気の不況を脱却する観点からいたしましても、有効需要の喚起というような観点からいたしましても、私は大きな役割りを持っておるものである、かように考えておるのでありまして、今後も一そうこの面に努力を払っていきたいと考えております。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今年中に新しい経済計画をお立てになるようでありますから、私は、いままでの所得倍増計画中期経済計画をお出しになって、あれが一応白紙になったということでありますから、新しい経済計画那辺に力を入れてくるか、私はよく存じません。しかし、少くともことしの経済成長の見通しに出てくる国民所得の一人平均は二十五万円をこえる段階です。しかし、その二十五万円の今度分配になってきたら、労働者農民は、五人世帯として百二十五万円でありますけれども国民の一世帯当たり収入というものは那辺にあるかということは、農民なんかでは三分の一にも達しないところが多い。平均値の三分の一にも達しないというところが多いと私は思うわけであります。労働者が五〇%に達するかというと、とても五〇%には達しない状態でございます。私が前段お尋ねしたのは、医療問題が国会に出てくるたびに、政府はどうも被保険者に荷をかぶして運営をしていこうという考え方がずっと続いているのではないか。たとえば昭和三十二年から三年に行なわれたと思いますけれども、たしか三年だと思いますけれども健康保険赤字政府管掌に出たから、毎年三十億ずつ出して黒字にしていくのだとおっしゃったけれども、少しよくなったら、もうあくる年から五億で打ち切ってしまう。国会で約束されたことが、もうそれから五億で打ち切ってしまわれたという歴史があるわけでございます。今度三十九年から四十年、四十一年度に赤字が出てくると薬価半額をとる。期末手当を含めて、総収入制からとって赤字を全部埋めるというものの考え方がここへ出てくるわけでございます。それと相マッチしまして、厚生白書には、今後の社会保障労使負担でやるのだと、健康保険議題になってくると、健康保険経済というものを忘れてと申しましょうか、意識的に触れないで、一部負担の問題だけをさらっと並べるというようなことが厚生白書に出ておるわけであります。私は、白書というものは、だれに聞いても、厚生省の皆さんに聞いても、あれは特定の立場から出すのではなしに、実態を客観的に出すのだと、こうおっしゃるのでありますけれども、事実はそうでない状態厚生白書が出てくる。ここらのものの考え方というものを改めていただかなければ社会保障前進というものはあり得ないのじゃないか、私はそう思うわけであります。で、いま大臣が、外国の社会保障が非常に進んでいる、日本は六・三%か四%ですよ、統計に出ているわけですから。西ドイツを頂点にして、大体国民所得の二〇%水準にいま近づきつつある。いまのヨーロッパが特に進んでいるわけですけれどもヨーロッパ経済繁栄していくというのも、私は、やっぱり生産と消費のバランスがとられて、その大きなウエートを社会保障でまかなっているといいますか、経済繁栄の一要件として、重大な要件として社会保障考えられている、それが購買力に転嫁して生産発展をしていく、繁栄発展をしていくというものの考え方がここにあるわけです。ですから、私は、そういうところを政府各国に書記官とか参事官を派遣されて、特に調査機関を持っておいでになることですから、そういうところはもっと的確に把握しておやりになるというのが主権在民国家政府のやるべきことだと、私はそう思う。ところが、出てくるもの出てくるものは、何となしにそういうものを忘れてしまって、方針が出てくる。いま大臣は、社会保障はいま緒についたところだから、どんどんこれから進めていくんだと、こうおっしゃる。まことにけっこうな話であります。けっこうな話でありますけれども、いまのようなテンポで基本的に社会保障をとらえる考え方というものがいまのような状態から進まないとしたら、私は、いまの住民主権国家における役割りを果たしていないことになるのではないか、こういう気がするわけでございます。この前の社会保障制度審議会で非常に長く議論をされましたそのときに、医療半額負担や総報酬制云々という議論が出て、私はこういうことを申し上げたと記憶しているわけであります。大体ヨーロッパ各国日本各国との一人当たり国民所得平均というのは、日本が二十三万円から五万、各国が三十九年当時で四十五万から五十万と、大体倍であろうと思います。そういう中において所得保障も進み、医療保障も進んでいるわけでありますけれども、そういうところがひとつも考えられてないような感じを受けるわけです。それじゃ国民所得は低いから云々ということになるわけですが、問題は生活なんであります。それじゃその被保険者生活保険料負担または年金負担、単に労使だけに社会保障前進をゆだねていこうというものの考え方をもっともっと私は追及していかなければならぬのではないか。たとえばイギリスは医療保険の八〇%を国が負担をしているわけであります。そこで多少の一部負担はございます。しかし、政府管掌としてもフィフティー・フィフティーでございます。日本労使フィフティー・フィフティーであって、そして一部患者にその負担をかぶせていこうということになると、非常に低い収入でどうにもならぬという問題が出てくるのではないか。フランスは被保険者が六%で、それから使用者が一四・二五%負担をして経済をまかなっている。イタリアは被保険者が五・二%で、使用者が一〇・五%という比率でございます。こういうことが日本フィフティー・フィフティーでございます。ドイツフィフティー・フィフティーであります。しかし、ドイツには一部負担というものはかかっていないわけです。将来の関係として、社会負担をして国民の健康を守っていくというところに進むでありましょう。私はよそのことはそれ以上はわかりませんが、しかし、今度自己負担の問題になってくると、これは日本のように薬価半額とか総報酬制とか、その額はともかくといたしまして、被保険者に一切のものをかぶせて社会保障を進めていこうというものの考え方というものは、今日の近代国家の中では少ないんではないかと、私はそう思うわけでございます。で、ほかにもいろいろな要件があるのでしょうけれども、そういうことを一番よく知っているはずの政府当局がそのことにあまり触れないで、とにかく赤字が出たら労使にかぶせていけばいいんじゃないかと、私が一番気にさわるのは、厚生白書保険経済というものの仕組みというものを一切出さずに、一部負担のところだけをだらだら並べて厚生白書に出したというところが一番私はかんにさわるわけであります。だから、そういうものの考え方をやっぱり少し変えていかなければならぬのじゃないかというぐあいに私は思っているわけです。三十七年に社会保障制度勧告答申案が出まして、あの当時の日本勧告案を出す資料というのは、三十三年か四年くらいの当時のことであります。それから昭和三十五年、六年から所得倍増計画が仕組まれて、そうして十年たてば所得を倍にする、生産力を倍にすると政府は約束したのでありますけれども、昨年十月現在の通産省の統計資料を見ますと、二・六倍から七倍に生産力が上がっている。設備だけは拡大される。それには物価の値上げで資金調達が行なわれるでしょうし、国内の金融が全部大企業中心にいくでしょう。金をうんと持った、株式の配当で食べている人には高い免税点であります。利子もしかりであります。そういうぐあいにして、いまの日本生産機関は、購買力がないから六〇%しか上がらないという今日の日本の現実の中で、私は、いまこそ社会保障というものが日本経済のひずみを直す一番大きな要件であろう。それを被保険者にかぶせて、そうして社会保障を進めるなんというようなことは、私は、全く主権在民国家体系におけるものの考え方というものが間違っていはしないか、私はそう思うわけでございます。ですから、その根本を、大臣は閣議の中で一番大きな役割りをお持ちになっているのではないか、社会保障というものに対して。だから、そこらあたりをどういうぐあいに今後進めていっていただくのか、もう少し今度新期経済計画も出るわけですから、その中で社会保障全体をどう持っていこうとしているのか、そこらあたり鈴木大臣から意見を承っておきたい、私はそう思う。
  13. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 経済発展と見合って社会保障充実してまいる、このことを私ども常に考え努力をいたしておるのでありますが、池田内閣当時に所得倍増計画があり、また、中期経済計画策定をされまして、その際に、これに見合った社会保障計画というものの長期計画厚生省におきまして一応考えておったのであります。しかし、先般中期経済計画が、経済情勢の大きな変動によりまして、これを破棄する、白紙に戻しまして、新たに新しい長期経済計画策定をするということをきめて、着々いまその立案策定に当たっておるのであります。私は、この新しい長期経済計画に即応するところの長期社会保障計画というものをぜひ確立をしたい、こう考えておりまして、事務当局に命じてその策定の仕事を進めておるのであります。いずれ経済企画庁あるいは大蔵省等々と連係をとりながら、長期経済計画に見合った社会保障計画というものを確立をいたしまして、そうして国民生活を守り、また、国民の健康を保障する、こういう長期的な一つのビジョンを持って社会保障充実努力をしてまいりたいと、このように考えておるのであります。  また、藤田さんから、社会保障を実施するにあたって、政府保険主義をとっておって、社会保障という観点医療保障等をやっていないではないか、保険財政が悪化すればすぐこれを労使負担によって穴埋めをする、そういうことでは真の意味の医療保障というものにはならないと、こういう御指摘であるのでありますが、私は必ずしも藤田さんが御指摘のようなことではないと考えておるのであります。国保の例をかりにとりました場合におきましては、昭和四十一年度に国の負担は千四百五十億、これを家族七割給付を達成いたしますところの市町村に対しましては定率四割を国庫負担をする。また、事務費につきましても一人当たり二百五十円を国が補助する、こういうことで、医療保険に対しまして国も相当の国費を入れておりますことはすでに御承知のところでございます。また、今回ただいま御審議をいただいておりますところの政府管掌健康保険に対しましても、昨年三十億でございましたが、昭和四十一年度には百五十億、こういう国庫負担をいたしておるのであります。また、今回の審議を通じまして、衆議院におきましては、附帯決議として、国庫負担定率化の問題、制度の根本的な検討の際にこの定率化の問題を取り上ぐべきである、こういう御趣旨附帯決議もついております。私どもは、この国庫負担のあり方ということにつきましても、医療保険制度抜本的改正をいたします際に重要なる課題として検討してまいる、こういう考えでおるわけでありまして、決して保険財政赤字を被保険者なり、あるいは事業主だけで御負担を願う、そういうような考え方は持っておりません。応分の御負担を願うと同時に、国の財政の許す限り、政府におきましてもこの負担をやってまいる、こういう考え方であるわけであります。  医療保険の問題につきましては、大体西独の制度日本一つの手本としまして今日までその充実努力をしてきておるのでありまして、私は、医療保険全体を通じて平均値を出しますならば、大体西独並みの水準に達しておる。国庫負担の面におきましても、ドイツにおきましても二四、五%の国庫負担をいたしておりますが、わが国におきましても、全体としては国がやはりそれぐらいの負担をいたしております。労使におきまして残りを折半負担をしておる、こういうことに相なっておるのでありまして、藤田委員の御指摘趣旨と私ども考えておりまする方向とは、決して背馳いたすものではございません。藤田さんの御指摘のような方向で私どもも今後努力してまいる、このように考えております。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 国保の問題は私はきょうは触れまいと思っておったのですが、大臣がお触れになったから、一言だけ私も申し上げておきたいと思うのです。  国保の財政、国保の現状というものは、健保の残ったあとを国保がまかなっていく。いま大臣が、国保は今度は五〇%、あとで五〇%補給ということに体制を立てたいとおっしゃる、これは前進でけっこうだと私は思います。しかし、国保の現状というものはどうなんだ。四十年度の保険料負担が八百億、それが三十九年と四十年とで保険料の値上げが六割、六割で八百億になっている。で、一般会計から市町村、要するに地方自治体の一般会計からその負担をせなければ国保の財政が持たぬ、経済が持たぬというこの状態の中で、そうして保険料としても二年間で六割上がって、総計が八百億という状態になってきた。私は、大都市になれば大都市になるほど国保の赤字はたくさん出る。むしろ国が皆保険で主体としてやらなければならぬ国保を一般会計でまかないなさいというような方向でこの皆保険をお進めになるようなことでは、これは少し間違っていやせぬかと、私はそう感ずるわけであります。  もう一つ、これに背中合わせですけれども、地方自治体が自分の便利のために、たとえば交通をする、水道をするというようなときには地方公営企業法という法律で独算制で押える。それは料金で全部まかなえという法律で網を上からかぶせて、国保の赤字は一般会計でまかないなさいというのは、地方自治体の住民の希望によってやった事業は住民の負担で、それで社会住民が利益を受けるというのなら、負担がそういうところにいくなら私は幾らかまた話のつじつまも合ってくると思うのであります。しかし、そうでなしに、国保は一般会計でまかないなさいというかっこうで四十年度も膨大な百億も一般会計から国保に捻出をしておる追い込められた状態の中でようやく政府が今度の負担というものを上げられたことについては、私は努力は多としますけれども、私は、佐藤内閣全体の中でここらの問題をどうしていくか。特に水道なんかにおいては国が負担をしてやっていかなければならぬという段階が世界の例でございます。そういうものをほうっておいて、私は厚生大臣ばかりに言うわけじゃありませんけれども、ここらの関連を住民はどうそれじゃにらんでおるかというと、なかなかにらみ切れないと私は思う。そういうことが平気で行なわれる。東京都が十八億、大阪は十一億も年度に国保に金を入れなければならぬ。それを入れないところは十何億も膨大な赤字をかかえて国保が四苦八苦しているというのがまあ現状であるわけでございます。ですから、私は、やはりそこらの点は、厚生省の管轄、他の行政の管轄という問題も考えながら、皆保険として出発した国保については、もっと熱心に私は取り組んでいただきたいと、これだけ一音言っておきます。  それから、いま健保が、決して被保険者だけに、または事業主だけにするのでない、政府はめんどうをみていくのだとおっしゃいました。で、むしろ国が旗を立てて社会保障を進める、先頭を切っていくというのが私は今日の近代国家の筋道だと思うのであります。それなら、私は、政府管掌健康保険は、むしろ中小零細企業の労働者が入っておる政府管掌である。で、組合管掌を見てみても、千分の三十から八十の中で、非常に組合管掌でも保険料を帯くしなければいかぬというところまでだんだん追い込まれてきておることも事実であります。それじゃ付加給付のない政府管掌労働者健康保険がこれだけ困難になってくるというなら、政府負担するというのなら、いま大臣の言われたような計画で社会保障を進めるとするなら、なぜ定率でバランスをとって国庫負担をやっていくというこのことをおやりにならないか、私はそれを聞きたいのであります。たな上げはけっこうであります。財政が持たないので、たな上げけっこうでありますけれども、今度根本的改革をしていくというのは那辺にあるか、いまの大臣のことばをそのまま聞けば、私はだいぶんよい話を聞いたと思いますけれども、しかし、今度ことし一ぱいかかって医療制度検討するというなら、このたな上げ資金も、結局被保険者保険者にかぶせて経済を維持していこうということになりはせぬかという心配は、私ばかりじゃなしに、国民みんな持つと思うのです。だから、今日、昭和三十三年の健保改正からしかりであり、定額のそのときに三十億出すといって、あくる年から五億に減ってしまって知らぬ顔をしてきた。そうして今度赤字が出てきたら、去年は三十億出して、ことし百五十億出します、いままでの赤字はどうにもならぬからたな上げしますと、こうおっしゃるが、大体保険医療制度の方向、医療の今日の現状というものは、われわれ以上に政府はよく把握しておいでになることでありますから、来年は一ぺんにこの赤字がなくなるということは考えられないのであります。そんなら、なぜ計画的に定率国庫負担というものによって政府管掌健康保険経済を守っていくというところで政府としては方針をお出しにならないのか。そこらあたりも、大臣はいまおっしゃいましたけれども、われわれはなかなかそう簡単に、はい、よろしゅうございますと納得しない条件を持っているのじゃないでしょうか。そこらあたりはどういうかっこうでそのことができないのか。いまの大臣がおっしゃったことをほんとうに事実問題としてそれを実施するなら、なぜそういうことにならないのか。単に政府管掌ばかりじゃありません。組合管掌しかりであります。共済の短期もしかりであります。そういうぐあいにしてそういう定率の国庫の負担を上げてやって、そして保険経済を守っていく趨勢の見通しというのは、私は厚生省にはよくわかり過ぎるほどわかっていると思うのですけれども、そこのところを踏み切れない、そこを三十億、ことしは百五十億ということでとめておいでになる、それで片方はたな上げしているという、こういう状態那辺なところから出てきたのか、それも聞いておきたいと思います。
  15. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 医療保険財政が近年急激に悪化をいたしましたのは、すでに御承知のとおり、医療費が増高しておるのに対しまして保険収入がこれに追いつかない。一方においては受診率が相当上昇をいたしております。また、医学、医術の進歩によりまして給付内容もよくなっております。そういうこと等からいたしまして医療保険医療費が非常に増高をしておるのであります。大体この二、三年の間に医療費は二〇%ぐらいふえております。これに対しまして保険収入は一〇%しか伸びていない。この収支のアンバランスが今日の保険財政の悪化を来たしておるのであります。そこで、神田大臣当時、その対策といたしまして、御指摘もありましたが、政府管掌健康保険等におきましては、国保と同じように総報酬制を採用し、また、薬価の一部負担をやる、こういうことを骨子としたところの諮問案を社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に諮問をいたしたのであります。しかるところ、私が就任いたしましてから、両審議会からは、この総報酬制薬価の一部負担制度の根本に触れる問題であるから、今回はこの財政対策として応急の措置を講ずべきである、そういう観点からいたしまして、御承知のように、標準報酬制をとることとし、その標準報酬等級区分の上限五万二千円を十万四千円にする、頭打ち五万二千円を十万四千円まで収入に応じて御負担を願うということに御答申がありました。また、保険料率につきましては千分の六十三を千分の六十五、さらに大幅な国庫負担をやるべきである、そしてその国庫負担はおおむね二百億程度、その足らざるところは借り入れ金でまかなっておくべきである、また四十年度の年度末におきましては約七百億円の累積赤字が出ております。四十一年度このままでまいりますれば、さらに七百二十億の赤字がその上に生まれる、一千四百億の大きな赤字がここに生ずることになるわけでございます。そこで、答申におきましては、過去の累積赤字はこれをたな上げをして、引き続き行なわれる制度の抜本的な改正をする際にこの累積赤字の処理をあわせて検討すべきである、こういう答申になっておるのであります。この累積赤字をどうするかというのが藤田先生の御質問の第一点であるのでありますが、この累積赤字につきましては政府中心になってこれを処理せざるを得ない、私はかように考えておるのでありまして、こういう膨大な累積赤字、これを被保険者事業主だけに負担をさせるというようなことは、今日の保険料負担が相当ふえてきておる現状からいたしまして、これは無理なことでございまして、何といっても政府中心になってこれを処理せざるを得ない、このように私は考えておるのでございます。  また、これに関連いたしまして、国庫負担定率化の問題のお話がありましたが、なぜこれを今回やらなかったかということがお尋ねの第二点であります。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、社会保障制度審議会社会保険審議会のほうでも、今回は暫定対策である、そういう観点から国庫負担を大幅──その額はおおむね二百億という金額でお示しになっておるのでありまして、国の財政がきわめて困難な際でございますけれども、この答申趣旨を体しまして百五十億円国庫で負担をする、こういうことにいたしたのでありまして、私は、この定率化の問題は、来たるべき抜本的な制度の改善をいたします際の有力な検討の課題になるものである、かように考えておるわけであります。
  16. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  17. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) じゃ速記を起こして。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、いまの大臣定率化の問題についても、まだわれわれとして不安は解消したと思っておりません。だからその定率化をして、もうわかっているわけですから、三十九年で百七十億ですか、それから修正をして四十年度で五百何億かの赤字が出て七百二十億、まあ行政努力云々でだいぶ初めの予想より下がってきたのでありますが、これから先どれだけ行政努力をやるかわかりませんけれども、いずれにしたってそういう赤字が出てきている。私は、医療費がかさんだということは、一面からいえばそれだけ国民の健康が保持されている、金も十分にないからお医者さんにも見てもらえない人が、順次やっぱしお医者さんに見てもらって、自分の健康を最高度に保ちながら再生帝についていこうというのがこの労働者保険なのでありますから、だからそういう意味で、単に医療費がかさんだから云々ということだけで私は問題を処理されるということはなかなか納得がいかないのであります。私は、竹内さんにも、この際、お急ぎだそうですから、ちょっと聞いておきたいのでありますけれども衆議院の中ではどういうそこらあたり議論がされたか。附帯決議には定率化の問題を云々という附帯決議が出ていますけれども衆議院の中では、これだけ医療費の趨勢というものが政府にもわかっているし、衆議院のほうでも長く審議されたのですから、そういう見通しはお互いに私はついていると思うのです。その中で定率化の問題についてどういう議論がされたかということをひとつ聞いておきたいと私は思うのです。
  19. 竹内黎一

    衆議院議員竹内黎一君) お答えを申し上げます。  ただいま藤田委員指摘定率化の問題は、衆議院審議段階において最も集中的に熱心に議論されたところでございます。特に社会委員の方々からは、健保組合二割、政府管掌組合に三割という具体的な主張でもって政府に対してその実現を迫るというかっこうの御質疑があったわけでございますが、これに対しまして政府側におきましては、ただいま鈴木厚生大臣が述べられましたように、その問題の重要性、必要性を否定するものではないが、これは抜本対策の際に十分に考究したいという、こういう質疑応答が繰り返されたわけでございます。特に最終段階審議段階におきまして、社会委員から締めくくりの質問として、さらにこの定率化の問題につきまして質問があり、これに対して鈴木大臣から、十分熱意を持って抜本対策検討の際に考慮するという答弁があった次第でございます。
  20. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 この政府管掌保険の保険料の料率ですが、これに対してはいろいろ論議がなされたところでもありましょうし、最後には、どうも委員会でも結論が出ないで、各党の代表によって解決がついたという経過まで私ども報告を聞いております。そこで、この健保に見合う船員保険ですね、この問題について、かりに答申案どおりに千分の六十五に引き下げるということになれば、これは答申船員保険のほうも健保に見合うものは五十三で出ていると思うのです。この点について非常に片手落ちの点があるのですが、その委員会では論争の対象にならなかったのかどうか、この点ひとつお聞きしたい。
  21. 竹内黎一

    衆議院議員竹内黎一君) お答えを申し上げます。  御案内のように、今回衆議院におきます修正内容というのは、自民、民社、社会三党の合意に基づいた事項が修正されたわけでございます。その三党の首脳間における折衝に私も参画しておるわけじゃございませんので、詳しいいきさつは知っているわけじゃございませんが、私どもが聞き及んだ範囲におきましては、この三党折衝間におきましても、この船員保険法関係の点については論議がなかったように伺っておるわけです。さらに、衆議院審議段階におきましても、私が聞いている範囲では、この辺の問題指摘はなかったように記憶しております。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は先ほど少し触れましたけれども日本社会保障というものが日本経済の今日のアンバランスの中でどういう役割りを占めるか、昭和三十七年の社会保障制度の建議の段階より以上に、今日の日本経済の実態について社会保障制度審議会が建議、答申とか現状分析の中に、どうあるべきかということにいま深く入る段階社会保障制度審議会自身があると私は思います。ですから、私は、真に経済計画をお立てになるときには、その意見を聞いて、ただおざなりに数字を並べた三十三年当時からの政府管掌の建保や、それからその他のことを並べたことだけでなしに、十分にひとつ取り組んでいただかなければ問題が残るのではないか。だから、昨年の初めから出た両方の社会保障制度審議会社会保険審議会に対する諮問が一年春かかって変遷をきわめてきたということになるのではないか、私はそういう感じを持っているわけでございます。ですから、私は、大臣としても、この問題にはもっと経済日本が進める中で、いまの世間並みですよ、日本だけ特典なことを主張をしているわけではない。世間並みの社会保障のあり方というか、いまの先進工業国の世間並みのあり方について、もっと真剣に取り組んでいただきたいと思うわけであります。大臣の先ほど非常に熱心な御意見がございました。私は鈴木大臣に敬意を表しますけれども、募れの国会で私が議論をして、これから医療制度の問題に入ろうとしたら時間切れになったわけでありますが、あの前段の議論鈴木大臣はお聞きとりになったと私は思うわけでございます。だから、鉄の産業にしても、二千万トンの粗鋼計画を五千五百万トン計画に変更して、それが四十一年度で五千五百万トン、鉄鋼小メーカーが大手国賊論まで週刊誌に載せるような次第で、国の資金をそこに集中していく。それにおいても、私が水鳥に行ったら、川崎製鉄が一千万トン計画でどんどん第一次予算二千五百億円でやっている。ですから、砂糖の会社が十日操業したら日本の砂糖の需要は余り返るのに新工場をどんどん建てている、こういうことを私は議論したことを覚えております。そのときに通産大臣は何と答えたか、通産省としてはそういう規制はいたしません。国民が犠牲になって困っているにもかかわらず、そういう設備投資の規制はいたしませんといってのうのうとしているのが日本の通産行政なんです。私は、厚生大臣がいまおっしゃられたことを地で行くとしたら、よほどはらをきめておやりになっていただかなければ、社会保障というものは、結局最後の答えは労使負担で進めましょうという結論以外にはなくなるのではないか。だから閣議の中における厚生大臣役割りというものはいかに重大であるか、私はここで鈴木大臣から誠意のあるおことばを聞きましたが、はい、さようでございますかと簡単にわれわれは引き下がれない。これは私たち個人や党ばかりの問題ではない、国民になりかわって、国民がそれを知らされないで、それで国民が痛められているという現実は、私はあらゆる政治的立場を乗りこえてこれはやらなければならないのではないか、私はそう思うわけであります。だから、そういう意味では、やはり私は佐藤内閣の中における新経済計画の将来のあり方という問題、今日の日本経済、政治のあり方という問題については、産業だけが優先して、主権者国民が犠牲になりっぱなしということでは、これは厚生省だけでは解決しない問題でありますけれども、労働省も関係がありますけれども、九千八百万の国民生活をどう守っていくかということ、この観点に立ったら、これはむしろいまのような日本の政治経済においては、生産機関は六〇%しか操業してない、宝の持ちぐされ経済の中でいまひずみを直すのは何か。それは第一に主権者国民生活を上げて人権を守る、そして生産と消費のバランスをとるというなら、ここに最大限の力をいたさなければ私はならないのではないか、このことを私は注文をしておきます、新経済計画に対して。国会でこの質疑があっても、多数は自民党であるから、そんなむちゃなことをやっておっても何ら規制はいたしません、国民がどうなろうと、自立経済が破壊されようと、そんなことおかまいなしに通産行政が行なわれるということではどうにもならぬのではないかと、私はそう思う。だから、そういう点はよっぽど鈴木大臣は力を入れてやっていただかない限り、厚生省の皆さんも力を入れて、ほんとうに真剣になって社会保障国民生活を守る点に取り組んでいただかない限り、この問題は解決しないのではないか。私はいま審議している問題も大事でございます。衆議院修正されてここへきたのでございますから大事でございますけれども、ものの考え方自身を改めてもらわない限り、社会保障前進というものはあり得ないと私は思うわけであります。  そこで、私が引き続きましてお尋ねしたいのは、先ほど私はフランスやイギリスやイタリアの一例を申し上げました。例を申し上げましたけれども、これだけ国民が物価値上げで困っておって、物の生産設備が二・六倍にも七倍にもなっているのに、実質の国民所得というのはゼロに近いわけであります。これでは物がはけないのはあたりまえです。いま日本経済のひずみは何であるか、それはやっぱり何といっても国民生活購買力を上げる以外にないと私は思うのです。そうなってくると、住む家も十分にない日本労働者負担をかぶせるということは私は酷だと思うのです。ですから、私は、日本の国よりもイタリアのほうが幾らか所得は高うございます。実質的には二〇%ほど商いと私は判断しております。それから、フランスやドイツになると大体倍ぐらいと私は国民所得の判断をしております。フランスはちょっと低うございますが、そういう国でも、労働者負担を軽くするために、使用者労働者関係というものが、イタリアは被保険者収入の五・二五%、使用者一〇・五%、フランスは労働者収入の六で、使用者が一四・二五%でございます。ですから、私は、日本のように国民所得の低い国ほど労使関係は資本が優先するというて、何でもかんでも労働者の自由を縛っていこうというようなものの考え方、これは政府が扇動しているとは私は言いません。言いませんけれども、それが日本経済中心の権力につながっているわけでありますから、労使負担割合をやっぱり変えていくということが大事なことではないか、私はそう思う。そこらあたりについてひとつ御意見を聞かせていただきたい。
  23. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この労使負担区分のフィフティー・フィフティーを六、四に変えるとか、あるいは七、三に変えるとか、いろいろ御意見がありますことを私も承知いたしておるのであります。ただ、藤田さんも御存じのことだと思うのでありますが、かつて社会保障制度審議会から政府に対しまして御答申がありまして、その中にはっきりと次のように述べております。「労使折半負担の原則を貫くべきであり、事業主の超過負担分は付加的な給付の財源として役立てればいいと考えられる。」と、こういうぐあいに言っておるのでございまして、私どもはこの御趣旨の線で労使の折半ということを現在実施をいたしておるのでありますが、御指摘のように、欧米先進国でもいろいろの形がございます。私どもは、したがいまして、これは絶対にいかぬということを申し上げておるのではありません。今後社会保障制度審議会等の御意見も伺いながら、制度抜本的改正をいたします際の課題として研究を進めたいと、こう考えます。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はそこでお尋ねしたいわけでございます。たとえば病気というものは何が原因で病気になっていると厚生省は判断しておられるか、このことをまずお聞きしたいのです。病気というのは個人の責任なのか、またはやむを得ない社会の条件や環境、それから、生活条件から出てくるのかどうか。われわれは、社会保障をするというたてまえに立って病気というものをどう見ているか、これの厚生大臣の意見を聞きたいと思う。
  25. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 病気ということにつきましていろいろの考え方があると思います。私は、病気は健康の破綻だという観点考えてみたらどうか。この健康の破綻ということにつきましては、大気の汚染でありますとか、あるいは水質汚濁でありますとか、あるいは騒音等々、生活環境が悪化いたしまして、そのために起こる健康の破綻──病気もあるわけであります。私は、そういう意味におきまして、公衆衛生なり環境衛生なり、また、環境整備の問題ということは、国におきましても重大なこれは責任があり、役割りを持っておるものである、このように考えるのでありますが、しかし、また、一面、健康を保持することにつきましては、われわれ個人個人がやはり細心の注意をもって健康をそこなわないように、こういう努力をいたすということが私は必要であると思うのであります。すべて病気は国なり地方団体の責任であるということで、不健康、不健全な生活態度でおりますれば、これは私は保険財政はとうていやっていけない、また、社会保障もなかなかこれは追いつかない、こういうことになると思うのでありまして、そういう点を十分私は国民一般にも御認識を願わなければいけない、こう考えます。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ鈴木大臣が非常にまじめな人ですから、まじめに答えていただいたと私は思う。私は、厚生行政についてこのことをひとつ十分に検討していただきたいと思うのです。昭和三十三年の健康保険審議のときに、日本で有名な社会保障学者が、病気というものは個人の責任なんだ、だから一応の保険料によって財政を立てて、そうして赤字になることは病気になった者の責任だ、病気は個人の責任なんだ、だからお医者さんに手を握ってもらうことは利益を受けているんだから受益負担なんだ、患者負担というのは受益負担だ、こういう議論を吐かれた人がございます。そのときに、とんでもないことを言うなと私はおこったことを記憶しているのであります。隣の人と同じように働いている労働者が病気になっても、お医者さんに健保で無料でみてもらえるでしょう。しかし、傷病手当六割もらっても家の中がまっくらになって、そしてお医者さんにみてもらっているのは受益負担で、一般の人より得をしているというものの考え方が、社会保障の原則、基本のどこから出てくるかということをものすごく議論したことが、議事録を見ていただければわかりますように、あるのです。しかし、今日の状態はどうなんです。同じような議論が出てくる。私も社会保障制度審議会の一員であります。薬価半額よろしい、総報酬制よろしいという議論が出てくるわけなんです。そして端々に出てくるのは、いま大臣は、いろいろな社会環境や立地条件や、そういうものを直していくことにも病気を防ぐ重要な要素がある、一部は個人がその健康を保持するための努力の問題もある、こうおっしゃる。私もそう思う。ところが、出てくるときには、病気は個人の責任で、病気になる個人が負担をするのは、これは受益負担だ、それでいいんだという議論なんです。厚生省薬価半額と総報酬制を出して保険料でまかなおうとしたら、それに応じてそういう議論が出てくるんです。そういう議論が出てきている中で社会保障制度審議会というのは議論をされている。そのこともやっぱり十分に厚生大臣は知っておいてもらわなければいかぬ。私の言っているのは、国民所得日本が二十五万円で、外国が五十万円だとすれば、低い所得のところほど、下のほうを何とかして守ってやらなければ主権者国民社会生活の維持というものはできないのじゃないですか。だから、高いと申し上げてなんでしょうけれども、たとえば先ほども申し上げたように、イギリスの例、フランスやドイツ、イタリアの例、こういうぐあいにして労働をして文化的な生活をするために一歩を踏み出そうとしても、あらゆる負担がかかってやれない。病気になってもふところぐあいを心配しなければお医者さんにみてもらえないような状態日本が置かれていることを考えてみれば、外国はともかくとして、労使のいまの経済状態社会状態じゃ、労使負担というものも、負担能力のある使用者のほうからもうちょっと取って労働者負担を軽くしてやらなければならぬということが出てきてこそ、私は厚生行政だと思う。社会保障制度審議会がそういう議論をいたしましたけれども、なかなかの状態もあるでしょう。しかし、厚生行政、厚生大臣というのは、もっと目を開いてこの問題と取り組む、単に社会保障制度審議会勧告がありましたからそのとおりでございますということでいいのですか、私はそういう議論をいたしました。しかし、ものの見方というものはそれでいいのかどうかということを私は申し上げているわけであります。社会保障制度審議会答申がこうだったから云々ということだけでは、私は済まされないのじゃないか。先ほど保険経済の問題も言いました。厚生省が見通しは一番よくわかっておりながら、一時金で間に合わせておいて、あとの特別の金は今度の根本対策のときに厚生大臣政府中心になってやるのだとおっしゃいましたけれども、まだまだ十分に解消しないという不安が個人みんなの中に出てくるというのもそれなんであります。だから、七百二十億ですか、今度の改正でもう少しふえたと思う。そういうものは国家財政の中でまかなっていくんだという方針が明確になって、そうして労使負担能力からくる負担区分というものをどうするかということを私は考えていただかなければならぬのじゃないか。そうでなければ、私はなかなか──いま審議会を通じて国民の世論というものが上に上がっていくようなかっこうになっていますけれども、しかし、保険料のうんと上がるときに困るような状態になる労働者はどうなるのだということになる。労働者はもうたいへんであります。だから、そこらあたりはひとつ十分に今度の何には考えていただかなければならぬのじゃないか。  それじゃ、つけ加えてもう一つ言っておきますが、たとえば炭鉱で労働者が非常に少なくなる、健康保険で千分の八十取ってもまだいけない、こういう組合管掌の保険、これは炭鉱ばかりではなく、たくさんあります。そういうところの手当てをどうするのかという問題も出てまいります。それから、零細な労働者ほど──日本の雇用関係を見ると、一番健康で条件のいいところは大企業であります。その次に少し落ちるものは中小企業で、一番下が零細企業で働く者だ。初めから健康の条件というものがちゃんと三段階ぐらいに区分されて入ってくる。そういう政府管掌労働者社会的条件というものを無視して、金を出すのは困るのだ、赤字が出たら両方におっかぶせたらいいのだというものの考え方では、私はなかなか問題は解決しないのじゃないか、まあこう思うのです。そこらについて御意見を聞かせておいてもらいたい。
  27. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私は、医療保険というのは労使でこれを全部負担をすべきものだというぐあいに私は認識はいたしておりません。おのずからそこに負担の限度という点もあるわけでございますから、過去におきましても、政府としてできるだけのこれに対しまして国庫の負担、助成をやってまいったところであります。今後これを国保のように政府管掌健康保険におきましても定率化して、制度的に国の負担を増していくべきである、こういうような御意見の強く出ておりますことも十分承知をいたしておるのでありまして、この点につきましては、今後当委員会並びに衆議院附帯決議の御趣旨等を十分体しま、して、制度の根本的改正の重要な課題として検討を進めてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私は、やっぱり政府側に徹底しておいてもらいたいと思うのです、先ほど申し上げたことは。病気は個人の責任なんだから、個人負担するのはあたりまえなんだ、だから、その思想がだんだん発展して、そうしてまあ医療費が高くなったら保険料でみんな取ればいいじゃないか、そういう御幣をかつぐような人があるとするなら、いま鈴木大臣の気持ちとはだいぶ違うのだ。だから、やっぱりそこらあたり関係の深い学者もたくさんおいでになることだし、与党の方もおいでになるのですから、ひとつものの考え方というものを徹底しておいてもらいたい。そんな議論を今日会議でやっても私はつまらぬと思うのです。  それから、もう一つ言っておきますけれども、これはやっぱりほとんど負担能力の問題、生活を維持するための負担能力の問題なんですね。だから、おのずから限界というものがあって、生活程度の低い労働者保険者にかぶせるというようなことは、やっぱり十分に生活がこれで維持できるかできないか、今日の物価情勢の中で国民生活が維持できるかできないかという、そこらあたりのことも十分に追及して、その医療制度保険料をきめるにしたって私は考えてもらわなければ困るんじゃないか。国保にもいろいろ問題がありますけれども、国保の法案がありますからそのときに申し上げますけれども、私はそういう点を十分に取り組んでいただいておかなければいかんのじゃないか。それから、たとえば家族は五割でとどまっているわけです。単に健康保険組合や共済保険の短期が付加給付をしているからといって、そのままでみずからの努力によってやっているからといって、政府管掌の問題については家族は五割でそのままと、もう来年になったら国民健康保険が七割給付になって、それから被用者健康保険の健保が家族は五割でとまっているということになるわけでございます。だから、そのときに、それじゃ全体の均衡保持という観点から見ればどう見るのかということは、私は厚生大臣は真剣に考えてもらわなきゃならん問題ではないか。で、今度の法案にはそれがつけ加わっておりませんけれども、私はこの問題はどう考えられておるのか、これもひとつ聞いておきたいし、真剣に取り組んでもらいたいと思うのです。
  29. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま藤田さんが御指摘になりましたように、わが国医療保険制度間には、給付内容におきましても、また、保険料負担の面におきましても非常な格差があり、アンバランスがあるわけでございます。私は、当面の対策としての今回の保険三法が成立をいたしますれば、政府として引き続き医療保険制度の抜本的な改正、つまりいま御指摘になりましたように、各制度間に非常な不均衡がそこにあるわけであります。私は、各医療保険制度──具体的に申し上げますと、国民健康保険、組合健保、政府管掌健康保険、日雇健保あるいは船員保険、さらに国家公務員、地方公務員の共済保険の短期給付、こういうようなあらゆる医療保険制度を全体としてこれを再検討を加えまして、そして国民皆保険でございますから、各制度が均衡のとれた形で、しかも、長期的に安定をし、発展をしていくような方向で制度抜本的改正がなされなければいかん、こういうふうに考えるわけでありまして、家族給付に対する現在の各制度間の不均衡という問題なんかをどう一体是正するか、また、一方において、国保の場合には、家族七割給付のほうは進んでおりますけれども世帯主は七割であり、他の健康保険等は十割である、こういう面もございます。私は、制度全体として均衡のとれた形でやっていくのが皆保険の趣旨に沿うものである等の観点で抜本策を考えたい、こう思います。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 非常に大事な発言をされたわけです。今度何か新聞を見ると、臨時医療保険審議会ですか、そういうものが出る、いま大臣の言われたような構想で出るわけですか。私は、これはいつも問題を起こしているわけであります。ただ、五つであるか十であるか知らんけれども、それを全部並べてみてぴしっと平均をとって、そしてやろうという考え方がちょこちょこっと、さっきの病気は個人の責任だというのと同じように、出先だけがひょこひょこっと出てくる。そうすると、高い給付水準を下げて低いのに合わすんだとか何とかかんとかいう問題が出てくるわけであります。だから、私は、厚生大臣がそのことを発言されるときには、きちっとやはり外国が行なっておる一〇〇%給付に準じて底上げをしていくのだというやはり基本的なかまえなしに、ただ総合的に格差のないようにと言うたら、これは並べてぴしゃっとやって、高いところは下げて、低いところはちょっぴり上げるか上げぬかどうか知らぬけれども、そういう平均式にならざるを得ない。こういうことをいまの臨時医療保険審議会で、話に聞くと、その被保険者もだれも一般の意見を聞かずに、学識経験者という高い人だけでそれをやろうという話が盛んに出ておるわけであります。私は、やはり今日までやってきたその審議会方式──行政委員会でも、特別なものをのければ、三者構成の国民の意見が出てきてそういう問題を議論しておる。これは政府が決定を下す諮問委員会ですから建議、答申の機関ですけれども、しかし、そういうやはり民主主義が後退するようなかっこうで、大臣の先ほどのことばのようなかっこうでいくとすれば、われわれは理解ができない。だから、やはり大臣が発言されるときには、一般国民の願っていることに合うような形できちっとしてもらわなければ、私たちは何か新聞を見ると、この国会に出すとか出さぬとかというお話がちょろちょろ出てきおるわけだけれども、私は、やはり根本的に日本の民主主義を育てていく世界共通の三者構成であらゆる人の意見を聞いて問題を処していくという考え方の線を絶対はずしてもらったら困る、私はそう思うのです。まあきょうはいま審議を始めたところですから、あまり私一人でやるといけませんから、これくらいできょうのところはやめますけれども、しかし、私は、最後に、いま厚生大臣は非常に気楽に発言されているようだけれども、それは気楽に発言してもらっちゃ困る。私は、やはりぴしっと国民の感情や国民の置かれておる立場というものを考えてひとつ問題を進めていただきたい。あの話に出てくるものは、これは社会保険審議会はもう通り抜けるのだとか、どこの審議会は通り抜けると、これがみんな一切やるのだというような話になってくると、なおさら私は問題が残る。だから、その点は十分にひとつ国会でも意見を聞いていただきたいし、その他の審議会の意見も聞いていただきたいし、そして十分に聞いて、国民感情に沿うような形で臨時医療保険審議会ですか、そういうもので熱心に勉強するということはいいですけれども、みな主観を持っておるわけですから、単に特定の人だけの主観で、さあこの審議会答申が出たからこれでいいのだというかっこうでおやりになっても、なかなか問題は解決しないのじゃないか。私はそれを一言あなたに申し上げて、そして所感があれば聞いて、きょうのところはこれで終わります。
  31. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 臨時医療保険審議会の構想につきましては、いずれこれを具体的に案にまとめまして、できれば今国会で御審議をお願いいたしたいと、こう考えておるのでありますが、この考え方は、先ほど来申し上げておりますように、現在のわが国の各種医療保険制度、これが生まれましてから今日に発展するまでの沿革なり歴史なり、諸般の事情等からいたしまして、各医療保険制度が、給付内容におきましても、あるいは被保険者負担の面におきましても、また、各制度保険財政内容を見ましても、そこに非常な不均衡がありますことは御承知のとおりでございます。しかも、国民皆保険のもとに医療を保障していかなければならないと、こういうことになってまいりますと、そこに不均衡があっては私はならない、こう思うのであります。この点につきましては社会党の皆さんも、この各種医療保険制度の総合調整なり、さらに進んでは統合ということを抜本政策としてやるべきであるという御趣旨の発言を私も十分傾聴いたしておるところでございます。しからば、今日いろいろの医療保険制度を全体としてこれを取り上げて審議検討するという審議会は遺憾ながらございません。現在あります社会保険審議会政府管掌健康保険と船保と日雇健保と三つだけでございまして、医療保険の大きな柱である国民健康保険というものは審議の対象にはなっていない。また、国家公務員なり地方公務員なりの共済保険の短期給付につきましてもこれは対象になっておりません。で、私はそういう観点からいたしまして、どうしても、この際、全体のわが国医療保険制度はどうあるべきか、均衡のとれた姿で、しかも長期的に安短をし、前進をするような姿の医療保険制度を打ち立てるためには、そういう全体を審議検討できる審議機関が必要ではないか、かように私は考えておるのであります。したがって、すでに抜本的な改正をする、そういう段階に当面しておりますことは皆さんのよく御承知の点であります。そこで、臨時医療保険審議会といたしまして、明年三月三十一日までの時限的な審議会として、その間は、社会保険審議会等は国民年金等を所管しておりますから、しばらくこの医療保険の問題は全体の一環として検討願うように臨時医療保険審議会のほうに検討をゆだねる、こういうことでいかがかと、また、昨日、社会保障制度審議会の大内会長にもお目にかかっていろいろ御意見を伺ったのでありますが、現在の内閣にあります社会保障制度審議会は、わが国社会保障制度全般をこれは検討する機関であって、医療保険のことにつきましては、どうあるべきかという基本的な考え方、方針等を審議するにはふさわしいけれども、具体的な医療保険内容検討するような、そういう仕事は困難である、だから、どうしてもやはり臨時医療保険審議会のようなものをつくってそこでやるということは、これはそれ以外に方法はないのではないか、大内さんもそういうお考えであるようであります。私は、さらにこれは国民全体が大きな関心を持っておる重大な問題でございますから、その審議会は個々の利益を代表するという、非常に利益代表のような形で、うしろから制約を受ける形でなしに、国民医療という商い観点に立ちまして、このわが国医療保険はどうあるべきか、しかも、その委員の方は国民全体からほんとうに信頼をされ、権威あるものとして見られ、また、その得た成案は国民的な立場で権威あるものとして尊重される、世論もこれを支持する、そういうような形において初めて私は抜本的な改正がなされるのではないか。ただ利害関係者だけでそこで議論をしても、なかなか私は過去の経験からいたしまして、利害関係者だけが中心になっての審議機関というものは、こういう制度抜本的改正をいたします場合には私はふさわしくない、こういう信念を持っておるのでありますが、いずれこの問題につきましては、成案を得次第、国会の御審議をわずらわしたいと、かように考えておるのであります。
  32. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 だいぶ根本的なことは藤田委員から御意見がありましたので、私は、時にはこまか過ぎることにも触れると思いますけれども、一、二質問さしていただきたいと思います。  先ほどの御説明の中で、この赤字の七百二十億についてのいろいろお話がございましたが、私はもう一ぺんここでちょっとお尋ねしたいのは、これは一体どういうふうな根拠でこの七百二十億が計算されておるのか、同時に、また、これを解消するのにはどういうふうにされるのかということについて、ちょっと大まかにお尋ねいたしたい。
  33. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 最初に、七百二十億の赤字がどういうふうにして計算されたかということについて簡単に御説明申し上げます。  申すまでもなく、厚生保険の特別会計におきましては、保険の保険料収入というのが一方にございます。他方に保険の給付というのがございまして、その収支の結果が昭和四十一年度においては七百二十億の赤字になる、こういう計算をいたしたわけでございますが、しからば、その収入のほうの保険料収入はどういう計算をしたかということになるわけでございますが、保険料収入は、予算におきましては保険収入といたしまして三千百六十四億でございますが、その計算の基礎は、大体これは毎年同じことをやっておりますけれども、結局保険料収入は、被保険者がどのくらいおるかということと、それから平均標準報酬月額がどうなるかということと、それから料率をどうかけるかということと、それから最後に収納率をどう見るか、そういう要素がからみ合って保険料収入が計算されるわけでございます。被保険者の数は、これは過去二年間の被保険者の伸びを計算いたしまして、大体四十一年度には前年に比べまして四%の増という、この四%というものは過去二年間の伸び率の平均をとりまして大体四%という数字を出したわけでございます。四十年度に比べて約四%伸びるであろう、こういうことで被保険者の数を計算いたしたわけでございます。一千二百二十二万。  それから、平均標準報酬月額でございますが、これも大体過去二年、三十九年、四十年の平均標準報酬の伸び率を見まして、これが九・三%でございます。四十一年度は前年に比べまして九・三%伸びるであろう、こういうこと、それにさらにまあ行政努力をやろうということで一%加えまして、大体一〇・四%という、四十年度の見通しよりもそのくらいの平均標準報酬の伸びが出るであろう。さらにその平均標準報酬の天井がアップされますので、そういうものを計算いたしまして、四十一年度におきましては二万九千四百十二円という平均標準報酬を出したわけでございます。  それから、料率は、これは予算のときには千分の七十でございましたので、政管といたしましては千分の七十で計算をいたしたわけでございます。  それから、収納率につきましては、これは四十年度の見通しは、現年度と過年度に分けますと、現年度分については九七%収納率があるというのを、四十一年度は一%増しまして九八%にする。相当苦労が要ると思いますけれども、第一線の社会保険事務所を督励いたしまして一%引き上げてもらうということ、それから、過年度分については四六・二%、これは前年度同様でございまするけれども、過年度分というのは、とかく焦げついて取りにくいものでございます。現年度分に重点を置いて、現年度分を一%アップして九八%でやる、そういうことで、いま申し上げた要素をそれぞれかけ合わせまして保険料収入が出たわけでございます。さっき三千百六十四億と申し上げましたけれども、これは過年度の赤字分も全部ひっくるめておりますので、一応とりあえず、現年度分に限りますと、現年度分の保険収入が二千五百十億でございます。二千五百十億でいま申し上げましたような計算をいたしまして、四十一年度単年度の保険収入は二千五百十億という計算をいたしたわけでございます。  保険給付費のほうにつきましては、これは医療給付費と現金給付費があるわけでございます。で、現金給付費のほうは全体の一割ぐらいでございまして、問題は医療給付費でございます。医療給付費につきましては、まあこれもどういう計算をいたしますかといいますと、医療給付費の根本になるのは、結局被保険者一人当たりどれくらい医療費がかかるであろうか、こういう見通しの問題になるわけであります。その医療費の積算といたしましては、一日当たりの金額がどうなるか、それから一件当たりの日数、一度病院に参りますと、大体何日ぐらい病院に通うか、あるいは入院するかという、一件当たりの日数をどう見るか、それから受診率、一人の被保険者が年間平均して何回ぐらいお医者さんにかかるか、その受診率と、この三つの要素をかけ合わせまして医療給付費が出るわけであります。それぞれ一日当たり金額、あるいは一件当たり日数、受診率をどう見るかという見方でございますが、これも毎年の予算で大体の方向はきまっております。四十一年度におきましては、一日当たり金額につきましては三十九分の四十ということで、要するに四十年度の一日当たり金額が三十九年度よりどのくらい伸びているかという、その伸び率を出しまして、それで一日当たり金額を計算いたしたわけでございます。それから、受診率と一件当たり日数につきましては、過去三年間どういうぐあいにそれぞれ受診率が伸びているか、前年度に比べてどういう伸びを示しているか、それから一件当たり日数がどういう伸びであるか、三年間の平均をとりまして、そうして受診率と一件当たり日数を計算いたしたわけであります。その結果といたしまして、四十一年度の一人当たり医療給付費は、四十年度に比べまして一〇・一%の伸びというぐあいに計算をいたしたわけでございます。ちなみに、四十年度は三十九年度に比べてどういうぐあいに伸びるであろうか、どういうぐあいに見ておるかと申しますと、これは一九・四%でございます。で、だいぶその差があるようでございますが、これは御承知のように、四十年度には、四十年の一月から九・五%の医療費のアップがあったわけでございます。そういう関係で三十九年度に比べまして一九・四%のアップというぐあいに見たわけでございます。したがって、四十一年度はその九・五%が現在のところはない、将来どうなるかわかりませんけれども、一応ないという前提で計算をいたしております。したがって、大体九・五%ぐらい減ります。結局自然増的な見方をすれば、四十一年度と大体同じぐらいの伸びを見た。四十年度は九・五%という特別のことがございましたので一九・五%になっておりますが、根っこにある伸び率といたしましては大体四十年度と同じぐらいの伸びを示すだろう、こういう計算をいたしたわけでございます。そういうことで支出のほうを計算いたしました。そのほかに、保険施設への繰り入れとか、いろいろこまかいものがございますけれども、根本は、支出におきましては医療給付費でございます。これをただいまのような計算をいたしまして、支出のほうが三千二百三十二億ということでございまして、差し引き七百二十億の赤字が出る、こういうことになったわけでございます。  その対策といたしましては、簡単に申し上げますと、標準報酬の天井を上げることによりまして百三十八億出す、それから保険料率を千分の六十三から七十に上げることによりまして二百九十億、国庫補助が百五十億、薬価基準の改正によりまして四十四億、それから行政努力で九十八億、合計いたしまして七百二十億で一応四十一年度は収支のつじつまを合わせる、こういう対策を考えたわけでございます。
  34. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 このようにして内訳を見せていただきますと、まだまだ赤字というものも非常に不安定だ、それから、また、医療費も上げるのも考えておられないという状態で、まだ赤字についての不安定さも非常に私は感ずるわけでございます。  そこで、私は、この赤字を解消する方法として、このようにして料率やら標準報酬引き上げ、こういうものが主体となっているわけでありまして、この問題についてはいろいろいままで藤田先生からもお話があったわけでありますから、重複しない部分だけを聞かしていただきたいと思うわけでありますが、その考え方においては、やはり藤田先生のおっしゃるような、非常に料率とか、あるいは、また、標準報酬引き上げが主体であって、もっとほかの抜本的なものが考えられていない。特にこの中で私が感じますのは行政努力の問題でありますが、行政努力というものに対して九十八億を考えられておりますが、四十年の二月のときなんかは、その行政努力を五十八億といって報告を聞いているように思うわけであります。この九十八億の根底は、前にもそういうことが言われておったにかかわらず、九十八億とされている理由はよくぼくはわからないわけでありますが、その点ちょっと簡単でいいですから、説明してください。
  35. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 行政努力の内訳といたしましては、標準報酬の的確な把握によって二十四億、それから保険料収納率の向上によりまして三十億、それからレセプトの点検調査を励行いたしますことによって三十五億、それから現金給付の支給の適正化によって九億、合計九十八億、こういうことになっております。
  36. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 そこの中で、標準報酬の把握を行政努力で把握する、あるいは、また、保険料の収納率を把握する、いま九十八プロと聞いておるわけでありますが、それ以上まだ把握する見込みは、これだけの金額は出てくるわけでありますか。それから、同時に、長くなるといけませんから、質問全部一緒にさせていただきますが、その行政努力の方向で、これは具体的にどういうふうな報告をされるのか。それから、同時に、レセプトの点検ということが一番私はくるわけでありますけれども、前年に比較してどのくらいやられるのか、あるいは、また、その点検に対しての要員はどういうふうにされているのか。特に私が申し上げたいのは、京都あたりでは、これは市でもやっているわけでありますが、非常に大きな費用をかけて非常に人員をふやして、そこで片っ端からレセプトの点検をしている。それは一ついいことではあろうと思うが、実際考えてみると、人件費とその浮かんでくる費用、これらあたりはわずか三十五億になっているわけでありますが、これを押えるためのいわゆる費用との差し引きで考えますと、非常にむだな費用が使われているように私は思うわけでありますが、その辺の点はどういうふうに厚生省のほうでは把握しておられるか。
  37. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) まず、標準報酬の行政とか、あるいは保険収納率の努力が無理じゃないかという御質問が第一点だったと思います。これは最初の先生の御質問に対して私がお答え申し上げました中にありますように、標準報酬の的確な把握ということにつきましては、従来の計算のしかたで標準報酬の伸び率を出しまして、その伸び率が先ほど申しましたように、通常の標準報酬の伸び率は九・三%でございますが、それを一%ばかり上げて、一%程度標準報酬のアップと、こう見たわけでございます。ですから、したがいまして、先ほど申し上げましたこの予算の積算の基礎の中にすでに織り込まれた数字でございます。これはまあ無理であるかどうかということは、これは絶対に無理だとも申し上げられませんし、必ずやれるということ、絶対に間違いないとまでは、これは将来のことでございますから、申し上げかねますけれども、しかし、私どもとしては、第一線の社会保険事務所の諸君の努力によってある程度のものは達成できるという一応の見通しを持っておるわけでございます。  それから、収納率の向上にいたしましても、これも先ほど申し上げましたが、一応九七%というのが大体前年度の収納率、現年度につきましては。それを一%上げて九八%ということで保険の収入を計算いたしております。これも予算の中にすでにそういう一%アップした収納率で計数をはじいておりますので、これも行政努力でございますので、そういう努力をして収納の額を上げたい、これは全然不可能ということではございませんので、第一線が努力いたしましてこの程度のものはやっていきたい、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  それから、レセプトの点検でございまするけれども、これは別に監査とかそういうものを強化するということではございませんで、結局診療報酬の請求書がお医者さんから基金のほうに回りまして、基金のほうで支払いをしました後に社会保険事務所のほうに参ります。社会保険事務所でそれを点検いたしまして、たとえば健保組合のものがまざつていたり、あるいはすでに資格を喪失した被保険者の請求書が入っているというようなもの、あるいは、また、計算が間違っているというような場合があるわけでございます。そういう事務的なミスをチェックいたしまして、そして節約をはかろう、こういうことでございます。で、これにつきましては、一応レセプト点検調査の要員といたしまして、四十年度は約五千万程度事務費をもらっておりましたけれども、それを一億二、三千万だったと思いまするけれども、増額いたしてもらいましてこれをやっていこう、こういうことでございます。
  38. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまのレセプトのために人員を増加するというお話でありましたけれども、これはどこの部門に増加されるのか、これは前にも衆議院で問題になったと思いますが、審査委員に無資格の人が非常におられる云々という問題があったわけでありますが、やはりそういうところに問題を持っていくのか、あるいは各保険出張所のほうでやらすのか、あるいは、また、いままでの標準報酬の把握だとか、あるいは保険料の収納率あたりのそういうところに持っていって増員をさすのかどうか、あるいは、また、その予算措置の配分なんかをちょっと。
  39. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) レセプトの点検調査の強化でございますが、このための定員の増加ということではございませんで、むしろ臨時職員的な事務的なもので、医療内容ではございませんので、要するにその診療を受けた被保険者が、はたして政管の被保険者であるかどうかというようなこと、それが非常に重点でございます。それから、かつては被保険者であったけれども、すでに資格を喪失しているのではないか、そういう医療内容ではございませんで、全く事務的な問題のミスのチェックでございます。そういう意味におきまして臨時職員的なものを頼みまして、そうしてやろう、こういうことでございます。
  40. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 先ほどちょっとお尋ねしたのでありますが、このレセプトの行政努力の中には、レセプトばかりではなしに、最近では非常に何といいますか、監査、審査を強化するという面、いわゆる医療内容にまで立ち入ったいわゆる審査の強化、あるいはそれに伴う監査の強化というものが考えられているのかどうか、あるいは、また、前年度に比べて今年度は九十八億にするためには、どのようなそういうことに対しての考え方を持っておられるのか、その点をちょっと聞かしていただきたい。
  41. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先ほど医療保険部長から御説明がありましたように、行政努力の中身としましては、支払い基金の審査を強化するとか、あるいは指導監査の徹底を期するとかというようなことによって財源を浮かすような根拠のある数字は全然入っておりません。これはただ事務的な手続のミスを直すということでございまして、御質問の支払い基金の審査の強化、あるいは指導監査の強化といった点につきましては、私どもとしましては、これはこういうふうな赤字になったからどうこうするというふうなたてまえのものではないと考えております。つまり指導監査なり、あるいは支払い基金におきまする審査という問題は、やはり保険医の方々の良識に訴えまして、少なくとも皆さん方正しい診療、正しい医療内容をやっておられるという判断のもとに、もしそこに不正があるとすれば、この不正は直していただくということで、私どもは従来どおりの方針であくまでも通したいという考え方でございまして、これが赤字対策に関連して云々されるべき性質のものではないというふうに私ども考えております。
  42. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 じゃあその問題はそれで了解いたします。  それから、赤字を解消する中に、政府の百五十億の国庫負担が見込まれておるわけでありますが、私は、これはあまりにも過小ではないかと思うのであります。特に私はここでちょっとお伺いしたいと思いますことは、赤字補てんをする意味においては、先ほどから定率の問題がありましたから、これは論議されましたからやめて、労使の折半の問題でありますけれども、これは私は諸外国ではかなり行なわれているように聞いておるのでありますが、厚生省ではそのようなことも十分御調査の上でのことであろうと思います。たとえばEECの方面ではどのようにして労使の折半ということを取り扱っているのですか。先ほどの話によりますと、労使折半は答申の中にもあるからという厚生大臣のお話でありましたが、外国の例も一ぺんこの際聞きながら、もう一度労使折半でやる方式についても御意見を尋ねたいと思いますが、前段階として、一ぺん外国あたりではどうなっているか、お調べの点を聞かしていただきたい。
  43. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 主要諸国におきまする医療保険に限りまして、医療保険の保険給付に対する折半の割合の御質問でございますが、大体わが国医療保険制度は、御承知のように、ドイツ健康保険制度を導入いたしておりまして、ドイツは現在におきましても折半の原則を貫いているわけでございます。ただ、たとえばベルギーとか、あるいはデンマーク、オランダ等におきましては折半の原則が必ずしも守られていないところもあるわけでございまして、一番はなはだしく折半の原則が守られておらないのは、先ほど藤田先生の御質問にありましたように、イタリーでございまして、イタリーの場合には被保険者負担はきわめて少ないわけでございます。しかし、御承知のように、イタリーにおきましては、医療保険制度は歯科につきましてのみやっておるわけでございまして、ちょっと性質が違うわけでございますが、その他ベルギーにおきましては、率を申し上げますと、被保険者負担のほうが事業主より多く、三一・一と二六・六というふうに、被保険者のほうが多い国でございます。また、デンマーク等では被保険者負担が多くて、事業主のかわりに国が持っているというふうな例もございますし、オランダにおきましても大体ドイツに準じた折半の負担の原則をとっております。非常に各国まちまちでございまして、必ずしも統一された考え方はないわけでございますが、フランスの場合には被保険者のほうが二六程度、それから事業主のほうが六九ということになっておりまして、必ずしも統一された考え方にはなっておりません。それぞれの特殊事情があると思うわけでございます。
  44. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまのお話の中にもありましたように、私もその点承知はしてるのでありますけれども、特に私はここで、先ほど貫くという行き方でなくして、やはり先ほどからも議論のありましたように、この利益の再配分の考え方からいけば、やはりこの保険料のあり方にも一歩前進さして、そういう方向にいこうという意欲を持っていただきたいということをここで要望しておきたいと思います。  次に、薬価基準で四十四億程度入っているわけでございますが、この薬価基準の問題につきましてはいろいろ議論もされておりますので、私は重ねて申したくはありませんが、非常に大きなウエートを示しておる、特に前年度からの推移をパーセントで考えてみるならば、急激に最近は増加しておる。これはことに甲表とか乙表とか二本立てになっておりますが、甲表の中にそれが非常に多いわけでありまして、こういうことなんかも私はちょっと了解に苦しむわけでありますが、一面からいえば、非常によい薬を使って医療内容がよくなっているわけでありますから、非常にいいことであると思いますけれども、こういうことについて行政当局で四十四億を見込まれておることは、実際問題としてここに疑義を感じておるわけでありますが、この点について御説明を願っておきたいと思います。
  45. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 薬価基準の改正に伴います四十四億といいますのは、御承知のように、昨年の十一月一日に総医療費につきまして四・五%の影響のある薬価基準の改定をいたしたわけでございます。それが四・五%のうち、三%分は医師の技術料のほうに振りかえる、残りの一・五%は技術料には振りかえられないということになりまして、総医療費につきまして一・五の影響のある薬価基準の改定をいたしたわけでございます。これが四十一年度の医療費に対してそのまま一・五%の影響があるというふうに、ただ簡単にかけまして、それでもうすでに四十年度から四十一年度にかけてその薬価基準の効果があるというふうに簡単に考えてスライドしただけの数字でございまして、新たに薬価基準の改定を見込んで計算したという数字ではないわけでございます。
  46. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 続きまして、私、医療費の問題についてちょっとお伺いしたいわけでありますが、医療費が非常に増加をしているわけでありまして、ことにいろいろそれが問題になってるわけでありますが、その医療費の計算の中が非常にいろいろと問題があるのではなかろうか、医療費の中に入れてならないものまで医療費の中に加えられておるというのが現状ではないかと思うわけでございますが、厚生省医療費というものをどういうふうに考えておられるのか、ちょっと医療費の内訳を聞かしていただきたい。
  47. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 保険経済を論ずる場合の医療費といいますのは、これは現在診療報酬の点数表に基づきまして算定をいたしました医療費でございまして、これは毎年毎年というより、毎月毎月それぞれの管掌別に報告が出てまいりますので、現実に保険のほうで支払われた医療費と診療報酬点数表に基づいて支払われた医療費というふうにお考えいただきたいと思いますが、ただ、医療費の概念の中にいろいろと考え方がまざって理解しておられる一般の方もいます。たとえばその中に一部負担をどういうふうに考えているか、これを全部入れて考えるのか考えられないのか、あるいは、また、総医療費といった場合に、売薬等の医師の手を経ない医療費もこれは総医療費の計算の中には、たとえば一兆一千億といった場合には売薬の経費も入っておりますが、保険経済を論ずる場合の医療費は、これは厳密に保険のほうで支払われた医療費と、こういうふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  48. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 特にこの医療費の中で問題にしたいのは、たとえば結核、精神の問題で精神衛生法あるいは結核予防法ができてあの中に取り入れて、もちろん国で特にそちらのほうへ支出しなければならぬものが、特に健康保険の中に食い込んできておりますのは、私は大きな問題があると思う。こういうふうなことは厚生省のほうで案外たやすく健康保険経済の中に組み入れながらこれが取り扱われておって、これがまた赤字の対象になっていくということになるので、こういうことに対する方針、見解はどういうふうにされているのか、あるいはこれがまたどれくらいの比重を示しておるかということをこの際ちょっと示しておいていただきたい。
  49. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 御承知のように、結核の医療費で結核予防法のほうで払われております経費は、命令入所をやる場合の強制命令入所の措置費分としては、これは国が八割、県が二割ということで、保険とは関係なしに公費から支出されておるわけでございます。それ以外に、いわゆる三十四条の経費ということで公費負担になっておる。これが患者負担がある場合に保険のほうで一部みておるということで、昨年の健康保険法等の三法の改正につきまして社会保険審議会で御論議をいただいたときに、各界の方々から非常に問題になったわけでございます。どうしても地方公共団体の負担が伴いますために、各都道府県におきましては、予算の都合上なかなか公費支出ができないということで、一部保険のほうに肩がわりされるというふうな点もございますが、金額的には、私ども当時推算をいたしましたけれども、そうたいした金額にはなりません。これはまあせいぜい全部で十五億程度ということでございます。ただ、政府管掌健康保険の中で、いわゆる結核予防法、精神衛生法の対象にならない疾病につきまして、結核、精神の給付総額というものが別個にあるわけでございますが、これが四十年度大体二千八百億中、結核は二百三十九億、精神が六十億という私ども推算をいたしておりまして、これは別に命令入所、あるいは公費負担以外に、結核で保険にかかり、あるいは精神で保険にかかるという経費はそのくらいというふうに推算をいたしております。
  50. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、ここでひとつ厚生大臣のお話から、本年度までには抜本的な改正をするという中で今度の赤字もみておられるわけでありますので、この医療費に関連をして、このようにしてやっぱり国で法律をこしらえて、その法律でみるべきものが、われわれ現場において見ておりますと、公費がないために、公費負担にたえかねるために予算の措置として健康保険でこれをみようというのはたくさんあったわけでありますが、こういうようなことでこの経済の中に組み込まれているにもかかわらず、私は、もう一つ将来の展望として、この予防的診療、こういうようなものが保険には全然タッチされないで、しかも、一面、治療の面ではそういうルーズなことが行なわれておるということは、保険経済の面からいいましても医療費の面からいいましても、非常に不合理性のものができたと見られるのであります。これはむしろ先進国のように、こういうような予防的行為を公費でみるということは、病気を進行させない意味においても、また、医療費を安くする上においてもこれは重大なことだと思うわけであります。こういう点を少しも考えないで、そうして一方において医療費の中にはそうした別の法律のもとに国がしなければならないものを入れていくという不合理性が非常にあちらこちらに見られるわけであります。そういう観点から、これは将来根本的な改正をされる場合において、私は、一、二その予防的な問題もそうでありますけれども、やはり低所得者に対しての保険料の問題も一応考慮しなければならないのではないかと考えるわけであります。国民健康保険におきましては低所得者に対する減免措置がありますが、政府管掌においてはこの減免措置がない。特にいまの所得階層を見ますと、政管被保険者の中には所得の低い人が多い、しかも、その中には生活保護すれすれの人が含まれておるのであります。中小企業従業員といたしましても、そういう観点から見ますならば、別な面においてこうした低所得者に対する保険料の減免ということも考えなければならないのではなかろうか。また、この政管の中には五人未満は自由加入になっておるのでありますが、こうした問題につきましても、もっと積極的な姿勢を示す必要があるのではないか、あるいは、また、家族の給付なんかも、そういう低所得者を考えた場合に、やはり五割五割ではとても病気のときに公平な、あるいは、また、非常に診療を受けにくいという形で病気を悪化させる現状にあるのでありますから、この改正の問題につきましては、もっとそういうこまかいところにも将来のあれを含みながら私はやってもらう性質のものがあるのではないか、その点についてちょっとお伺いしておきます。
  51. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま御指摘がございましたように、当然国なりあるいは公共団体で負担すべきものが保険医療でなされておる。こういう問題につきましては、根本的な制度改正をいたします際に厳密にこれの区分をいたしましてその点を明確にいたしたい、このように考えておるのでございます。その他非常に高額な医療であるとか、あるいは不採算医療であるとか、そういうような問題につきましても、これもやはり国なり地方団体等で十分負担の面を明確にしなければならない。それから、さらに国民の健康を守るという観点からいたしまして、先ほども申し上げましたように、予防、管理、治療、こういうことをぜひ考えなければならぬわけでありますが、そういう予防的な面に対しましては、これを保険医療でまかなうということは私は適当でない、かように考えておりますので、そういう面につきましても適正な改善を加えたい、こう存ずるわけであります。いずれこれらの問題につきましては、政府の抜本的な改正をいたします際の課題として研究を進めたいと存じます。
  52. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 最後に一つだけ。たいへんまあ大臣の気持ちは了解させていただきますが、この臨時医療保険審議会ですか、先ほどこの構想を聞きまして、非常に利益代表を含まないで真剣に考えるというお話でありましたけれども、ここでもう今年中にと時限を切っての審議会だという話を聞いたのでありますが、それくらいにお考えになっておるとすれば、この審議会にどのような内容を大体付託されるのか。また、抜本的改正というものも、大体大臣考えておられることは想像されますが、この諮問機関を通じてどのように発展をさしていくというのか、いまの御構想をちょっと聞いておきたい。
  53. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) まず、第一は、従来の利害関係者の代表をもって構成しておりまする委員の選任方式を、もっと高い国民的な視野で医療の抜本対策に当たっていただくために、そういう角度から学識経験者を中心にお願いをいたしたい、こう思うのでありますが、しかし、私は、かと申しまして、全然診療側だとか支払い側だとか、そういう立場の方々の御意向というものを無視して人選がなされては実態に即した抜本策は生まれてこない、かように考えるのでありまして、この委員の選任にあたりましては、十分それらのお考え、また、御意見というものが反映できるような人選にあたって配慮をいたしたい、このように考えておるわけでございます。  それから、この抜本的な改正をいたします場合の主要な課題は何か、こういうお尋ねでございますが、これは健康保険収支両面にわたるところの財政基盤の安定策というものがその一つであります。また、これに関連いたしまして、国庫負担のあり方、系列化の問題、これも抜本策を検討する場合の一つの大きな課題であると考えるのであります。それから、医療保険における給付水準の問題、給付水準はどの程度であるべきか、こういう問題につきましても、欧米先進国その他の制度ともにらみ合わせ、また、国民所得、国の財政、そういう各般のことを考えまして適正な給付水準をここで御検討を願う。また、診療報酬体系につきましては、技術を尊重するという立場に立ちまして診療報酬の適正化をはかってまいらなければならぬと考えるので為ります。その際における技術と物の関係、こういう点も根本的に再検討を要すると思うのでございます。また、医療保険、これは先ほど来申し上げておるところでありますが、医療保険制度間におけるところの給付内容の問題、あるいは被保険者負担、そういうような格差の是正、負担の均衡、こういう問題も重要な課題であります。私はそういう点を十分検討いたしまして、長期的に安定をし、さらに前進をしていくような医療保険制度を打ち立てたい、かように考えておるのであります。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、健康保険法の一部改正について、衆議院で長く審議されて参議院にきたのでありますけれども、私は、政府側は少し不親切じゃないか、こう思う。ここに書いてある資料だけで法律を早く通せということだけで、全くもって日本医療行政がどう動いているか、特に国保とかそういう一般の保険は別として、少なくとも政府管掌、それから組合管掌、共済の短期、こういうものの推移がどこにあるかということの年度ごとの資料ぐらい出して、そうして全体の医療の方向がどう動いているかというぐらいのことをぴしゃっと出して審議してくださいというのが私はほんとうじゃないかと思う。ところが、ここにテキストとしてちょこっと書いてあるけれども、私はもっと親切にやるべきだと思うのですが、そういう資料は、一年かかって社会保障制度審議会議論された中に出された資料は、非常に全般の資料が出ていたんだが、これは非常に私は不親切なように思います。ですから、やっぱりそういう資料を、ここはいまは健康保険ですけれども、被用者健康保険の三つの柱ですが、たとえば農林漁業の職員組合とか私学とか、被用者保険の趨勢ぐらいはやっぱりきちっと出して、そうして船員保険も含めますが、審議をしてくださいといわれるのが私はどうもほんとうのような気がするわけですが、どうもそこらあたりは、きょうからようやく始まったのですから、その資料を出してもらいたいと思うのです。一つは、標準報酬についてどう動いてきたか、四十年、四十一年、四十一年は見通しになりますが、組合管掌、共組済合の短期、特に共済の中でも、いま低いといわれている農林漁業とか私学共済とか、そういうものの資料を、これは厚生省が直接担当されておらないけれども、取ってきてお出しになるのがいいのではないか。  それから、二番目は、国庫負担について、昭和三十三年が非常に赤字でもめて、四年、五年、六年は黒字になってきたわけですが、当時からの国庫負担について、負担総額を年度ごとに、保険料収入の比較とか、被保険者当たり負担額とか、そういうものをひとつ出してもらう。  それから、医療費が原因別にどうなっているかというようなことも厚生省としては出して、どこに問題点があるのだ、国家予算との関係は予算書がありますから見られますけれども医療の問題については、これはもう少し詳しいものを出してもらいたい。この議題じゃありませんけれども、国保についてもいまから注文しておきますが、詳しい地方財政負担、全国の市町村、地方自治体の負担、それから被用者保険と国民健康保険に加入されている比率とか、そこらの標準とか、収入の標準とか、そういうものをいまから注文しておきます。これはまたそのときになって間に合わぬということになるといけませんから、しておきますけれども、そういうやはり一覧してどう動いているかということをやはりきちっと出して、そして審議に出発、用意どんと始まるときには、そういう資料をみんな頭の中に入れて議論をするということでなければ、私はなかなか質問がしにくいというか、またわかっていることを二度聞かなければならぬということになって、審議がおくれるわけです。これはやはり国民経済の趨勢の中で医療問題がどうなって、赤字赤字だといってみても、行政努力ということをおっしゃったり、ここの表示にこんなものが出ておりますけれども、この基本的な、いま大橋先生が質問されたその母体というものがわからぬわけです。だから、そういう問題も詳しく書いてこの次の委員会までには出してもらうようにお願いしておきます。
  55. 佐野芳雄

    ○佐野芳雄君 関連。いま藤田委員から資料要求があったのですが、この際、ついでに、私たち計算すればわかるのですが、政府は今度の予算で大幅減税を行なったとやかましく言っておるのですが、そこで、各被保険者標準報酬の月額の等級ごとに今度の減税で幾ら減税になったか、それから健康保険料率の引き上げによって、これは六十五と七十と両方出してもらいたいのですが、幾ら上がる予定であったのか、現実に今度幾ら上がったかというものもあわせて資料として出していただきたい。
  56. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私も資料要求ですが、政管の都道府県の格差ですね、格差の問題について、先ほど大臣は、その格差の是正も考えておるということですが、現状がどうなっておるか、それから給付一人当たりこれが一体各県の均衡というものはどういうふうになっておるか、とれが一つ。もう一つは、一人当たりの一件当たりは一体どういう単価になっておるか、こういう問題をもっと詳しく私は資料で出していただくということを要求しておきます。
  57. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 藤田委員及びほかの委員の方の資料要求ですね、担当局長の熊崎局長、いかがですか。
  58. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 私ども手持ちの資料を動員いたしまして、できるだけ努力いたして御満足のいくような資料をつくりたいと思いますが、何しろ短時日で、持っていない資料もあります、いまお聞きしますと。しかし、できるだけ御要望に沿うような資料を取りそろえたいと思います。
  59. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記をとめて。   〔速記中止
  60. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記をつけて。  他に御発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめておきまして、次回は二十一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時九分散会