○森勝治君 重ねて申し上げたいのですが、どうもこういう対外的と申しましょうか、PR用だと非常に自画自賛的な内容が織り込まれている。内容がそのとおりならけっこうなんだが、いま私がことば足らずで、あるいは誤解された向きもあったかも知らぬけれ
ども、このようにまあまあだとか、所期の目的に達したような、そういう筆法をもってしてはどうも私
どもは合点がいかないので、やはりもう少しこの辺のところは、宣伝もけっこうか知らぬけれど、
労働省の実態をむしろえぐり出してもらったほうがすなおな姿が出るのではなかろうかと思うのです。ですから、これからは、これはそういうことでややもすれば誤解を生ずるような文書の
発表というのは、ひとつよほど慎重にしていただきたいことをお願いして、私は次の問題に移ります。
次の問題は、
労働者の
生活実態という問題について若干伺ってみたいと思います。
昭和三十三年から約五ヵ年間の
統計を見ましても、これはもう、さらにまた先ほど藤田
委員からの話もありましたように、二倍から二・七、八倍くらいまで
生産は上がっている。しかも、資本の蓄積は三倍になったが、
労働者のそれでは
賃金がどれくらい上がったかというと、せいぜい三〇%しかその五ヵ年間に上がっていないということは、
統計を見ても明らかであります。こういう
数字を見ますと、じゃ
日本の
労働者の置かれている
賃金水準というのは、これはだれでも知っているように、アメリカの七分の一、西ドイツの二分の一だ、こういわれておりますね。大蔵省が
発表した当時の
統計を見ましても、年
所得三十万以下、しかも、その家族を含めますと四千万人になんなんとする人々がそういう低い
賃金で
生活を余儀なくされている、これが
日本の
労働者の置かれている実態じゃないかと思うのです。しかも、じゃ
労働時間たるやどうかというと、先ほどこれまた藤田
委員が
指摘されましたが、
政府は四五・二何がしという
発表をしておるけれ
ども、じゃどうだろう、下部は、
中小企業のおやじさんに言わせれば、
労働基準法を守っていたら会社がつぶれてしまうということを公開の席上で豪語してはばからない。こういう姿が随所に見受けられるという現実の姿を私
どもは見るときに、
労働行政の力というものは一体那辺にあるのだろう。もちろん
政府が、特に現
大臣になりましてからたいへん力を入れられておるように思うけれ
ども、国の予算のそういう推移から見たって、だんだん予算規模に占めるパーセンテージというのは低下してきてしまうという
状態です。特に現内閣は人間尊重というたてまえをうたい文句にしておるわけですから、働く者の立場が尊重され、働く者の立場が理解され、働く者の
発言力がますます強まって、そしてしあわせになる、こういうことであってしかるべきだと私は
考えていますが、今日のように物価がどんどん上がる、ことしもまた正月から米が上がった、運賃は、先ほ
ども御
説明がありましたように、ぽいと上がってくる、こうなりますと、
日本の
労働者の置かれている
生活実態というものはますます窮迫してくる、顕在と潜在であるといなとにかかわらず、
日本のそういう低
賃金労働者は、まさに
失業者同様な立場を負わされている、むしろ強要されているといっても過言ではないだろうと思うのであります。ところが、
生活保護のほうから見ますと、これはこういうことをことあげするのが正しい例にはあるいはならぬかとも思うのでありますが、四人家族では大体二万円の扶助料が
生活扶助の場合には出る。ところが、日雇い
労働者が朝から夕方まで額に汗しても六百円何がしということ、こういうふうに、同じ
社会保障の中においてすらもアンバランスが随所に見受けられているわけであります。どうしてこうなったかと申しますと、これはここでいまさらちょうちょうするまでもなく、
所得倍増、
設備投資というものがこうなった。特に
日本銀行の発券なんというのは、
昭和三十年から三倍も上がって、三十六年はおびただしい増札、そうしてそのことによって過剰設備がなされる。しかも、先ほどの質問の答弁にありましたように、ことしは
企業が伸び悩みであるから、
事業場に包容する
労働者の数も少なくなってしまう。一体
政府は、自分たちの
政策の失敗というもの、高度成長
政策の失敗というものが今日の物価高、今日の
不況ムードを招来したのでありまするから、その辺についての謙虚な反省があってしかるべきだと思うのであります。
労働大臣は、人間尊重をうたい文句にする
佐藤内閣の働く者の立場を擁護する重要な
閣僚だと思いますので、そういうかねてからの
政策の失敗によって今日の
不況ムード、あるいは、また、物価上昇という、こうした
国民の
生活、なかんずく
労働者の
生活を危殆に頻せしめようとする現在のこの政治
情勢、あるいは
経済情勢を一体どう
考えておられるか、その点についてひとつお伺いしたい。