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1966-03-31 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三十一日(木曜日)    午前十一時十三分開会     —————————————    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      山崎  昇君     小柳  勇君  三月二十九日     辞任         補欠選任      小柳  勇君     山崎  昇君  三月三十日     辞任         補欠選任      高山 恒雄君     瓜生  清君  三月三十一日     辞任         補欠選任      瓜生  清君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 竹松君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 亀井  光君                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 山本  杉君                 森  勝治君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君    国務大臣        労 働 大 臣  小平 久雄君    政府委員        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働大臣官房会        計課長      上原誠之輔君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本方針及び昭和四十一年度労働  省関係予算に関する件)     —————————————
  2. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本方針及び昭和四十一年度労働省関係予算に関する件について調査を行ないます。本件に関して御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、二、三の点について労働大臣の所見を伺っておきたい、こう思うわけです。  第一番の問題は、雇用失業の問題でございます。昨年の暮れの国会、それから、八月の臨時国会を通じて、労働大臣は、予算委員会発言を見ましても、非常に楽観的なお話がありました。私は、この春になってそんな楽観は許せないぞという意見を吐いておりましたが、先日の国内の経済情勢報告を見ますと、雇用関係労働省が把握されるのでありますから、三十人以上の毎勤統計のべースになってくるところだと思いますけれども、非常な角度で雇用労働者は下りカーブをたどっております。私はいつも申し上げるわけでありますけれども雇用関係というのは、今日不況だと言われておる。その不況は、生産消費のアンバランスの中で不況が起きておる。全く宝の持ちぐされ経済政府はやっておるわけでございますけれども、結局それに困るのは中小企業労働者、特に中小企業倒産労働者というのは、もう目あてなしに、就職の場がないわけであります。むろん農業労働者労働力の出かせぎを初めとする、また、就職の場の減少という問題になってきていることも事実でございます。ですから、私は、労働大臣は、昨年の八月国会、十二月の国会で、雇用情勢は安心だとおっしゃったのですけれども、その今日の気持ちはどうなんだということを、お考えはどうなんだということをお聞かせをいただきたいのであります。  引き続いて申し上げますけれども、昨年の初めの殺到率と暮れの殺到率を見てみますと、大体倍になっておる。だから、私は、労働大臣や藤山さんが予算委員会でおっしゃったこととは全く逆な方向で雇用情勢は進んでいるのではないか、私はそう思うわけであります。ですから、いずれ数字的なこまかいことは職安局長説明されると思いますけれども労働大臣のひとつ所信のほどを聞かしていただきたい。
  4. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 各委員に申し上げますが、労働省側出席されておる方々は、小平労働大臣三治労政局長有馬職業安定局長辻官房長の四名であります。ほかの説明員政府委員出席を求められる方は委員長に申し出を願います。
  5. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 雇用情勢についてでございますが、私が前の国会におきまして申し上げましたところは、大体その当時においても、もちろん中小企業倒産、あるいは一部の大企業にわける合理化等による一時帰休の問題であるとが、そういう中には、もちろん若干の整理等も大正業でもありましたが、まあ全般としましては、仕来人手不足がちであった中小企業方面への雇用こいうことが相当行なわれておる事情からして、全般的に見まするならば、大体まあ停滞ぎみであるという大勢を申し上げておったと思うのであります。まあ最近における情勢でございますが、これをやはり全般的に見まするというと、雇用の面でも若干の伸びがございますが、依然として停滞、率直に言えば停滞ぎみ大勢であるというここは申せます。ただ、一面、完全失業者等が、増加傾向とまではいかぬかもしれませんけれども、ともかくそういう数字が現にあらわれてまいっておると、こういう状況でございますが、ただ、経済全般の向きから見まするならば、実は今朝も経済閣僚懇談会がございまして、これは二月分の経済月例報告審議をいたしたわけでございますが、大体いわゆる底をついたと申しますか、明るいきざしが出てまいったというか、そういう傾向全般的にはあるようでございまして、また、労働時間などの関係から申しても、時間外の勤務等が若干増加してまいった、かような現象もございますので、先ほど来申しますとおり、失業者がこの一月の統計で見ますと相当ふえたということは、これは大いに注目し、警戒をしなければなりませんが、全般的に見て、いわゆる増勢の鈍化といいますか、あるいは停滞といいますか、むしろ停滞と言うほうがやはり適切な表現かと思いますが、大体そういう傾向に今日なおあることは事実であると、かように見ておるわけでございます。  なお、数字の詳細につきましては、もし御要求がございましたらば局長から申し上げます。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働省労働行政の要するに心がまえというやつをひとつこの際聞いておきたいと思うのです。いま、鈍化であって、多少云々というお話がございました。私はそんななまやさしい状態ではないのではないか、こう思う。私は、先日も国際的な労働時間の対照表労働省にくれと言ったら、外国の一週間の労働時間に合わして、日本労働時間は四五・二時間という表をくれたのです。私は、そういうものを国際的に発表をして、政府がそういうことで事を済ましておられるというところが、どうも私は国民不在のような感じがしてしょうがない。実は、これは毎勤統計の三十人以上の企業なんですというあと説明がある。そんなことはないじゃないかと言ったらそうおっしゃる。労働経済時報といいますか、労働経済という、労働省が毎月出されている趨勢を見て労働時間の欄をとって見ますと、四十九時間以上週に働いている人が二千万、六十時間以上働いている人が千万から千二、三百万おいでになる。それにもかかわらず、その三十人以上の企業だけをベースに乗せて、日本労働時間は四五・二時間だというようなことを外国発表される。事実問題としてそんなことで済むのかどうか、五十時間どころじゃない、零細企業が多い日本においては。それを含めて、特殊なところはあるかもしれませんが、五十時間も五十二時間も労働者が一週間に働いている、もっと多いかもしれません。あの趨勢をとって見てもそういうような状態なのにそういう発表のしかたをされる。私は、だから、いま雇用労働者の家族の、見方によっていろいろ意見が違いますけれども、少なくとも雇用労働者の三〇%から五〇%は内職なしに生活ができないという状態にあるわけです。その内職生活をささえて、少し収入があると総合所得で税金でがっさり引かれる。しかし、その政府の出しておられる労働経済の表を見てみましても、私は、実質賃金がどうなっているか、毎勤統計のやつでも、五年間に一〇何%しか上がっていない、期末手当を全部入れても上がってない。そうして今度生産力のほうを見ると、私は、労働大臣経済論議はあまりやらないようにしたいと思いますけれど、通産省調査によると、大体算術計算生産設備が倍になっている。大筋の産業、そうして一台の機械当たり生産力というものは、あと五割から七割くらいは合理化によって生産をあげるようになっている。そうすると、昭和三十五年から四十年までの間には二・六、七倍の生産力増強をしている、そういうかっこうで、その資金調達不況カルテルで行なわれて、一面では、職場では合理化問題が押しつけられ、一面では物価の値上げによって労働者が押しつけられる。ですから、労働者生活というものは、自然あえぎながら、むろん賃上げでカバーしていくということになるのでありますけれども、一面においては非常に深刻な状態にあり、内職をやらなきゃ生活ができぬというところまで労働者が追い込まれておる。そういう状態というものをもっとすなおに国民に知らして、その中で雇用対策というものを私はお立てになるべきではないか、私はそう思う。経済の面からいえば、何といっても、生産力を何ぼやってみたところで、これは消費の場がなければ操業短縮以外ないわけでありますが、この経済論議は私はやめますけれども、しかし、そういうものを見計らっておやりにならないと、三十人以下の雇用労働者を全部入れたら、おそらく実質賃金昭和三十年からゼロの経過を経ておる、私はそう思うんです。三十五年から賃金が上がったというけれども期末手当をのけた各月の三十人以上の企業でも一〇〇%になるならぬというような今日の事態でございます。だから、私は、労働大臣も閣員の一人でありますから、所得倍増計画というものを発表されて、十年で所得を倍にするというなら、少なくとも実質三割やそこら国民に、五年たったのですから、上げていくという方策を心がまえの中で持って労働行政というものをやってもらわなけりゃ、私はどうにもならないのではないかと思う。物をつくる設備能力は二・七倍にもなって、そうして実質賃金というものはゼロだ、これでは経済が転覆するのはあたりまえです。私は、そういうところにむしろ力をお入れになって、労働行政──要するに雇用失業というものをお考えになるべき段階にきているのではないかと、私はそう思う。  それから、もう一つは、いま大臣お答えがありましたけれども完全失業者は、労働力調査で、これは総理府統計局でやっているわけですけれども、ここでは多少ふえたというお話がありました。私は、日本労働失業者情勢というのは、いまの近代国家といわれる産業力摩擦失業じゃないわけです。潜在失業なんです。何らか、たとい一時間でも十時間でも、働かなければ食っていけないという現状に置かれておる。だから、正規の雇用条件からはずれた人が、その日ののりをすするために、どこかの職場で、どんな低賃金でも、どんな悪い労働条件の中でも働かざるを得ない、ここで収入が出てくる、それも失業者じゃない、いまの失対労務者も失業者じゃない。事実問題というものをこの前からやかましゅう私は言っているわけですけれども、そのことをもっと労働省は把握されるべきだと私は思うのです。私は、昨年の十月一日に国勢調査があるから、そのときには明確にこの問題を調査の対象にしてお調べになって、そしてこの問題の対策をお立てにならなければいかぬのじゃないか。宙に浮いたような一万一千の抽出統計労働調査をやっているわけです。これというものが失対とどれだけ違うのかということも、五年に一度ある国勢調査を機会におやりになるのがいいんじゃないかということを私も申し上げたと思うのでありますが、その国勢調査関係あとから聞かしていただきたいと思いますが、どういうことをお調べになったのか。今日の労働大臣がおっしゃるように、緩慢であるけれども、そう悪くなっていないというような状態に私はないと思う。去年一年だけで中小企業が六千何百件も倒れているわけです。その中で働いている人は十人ずつにしたって六万人になるわけです。私はそればかりだけではないのです。いまの企業合併合理化によってだんだんとその労働者の首を切って、そうして職場からほうり出してしまう。失業統計には出てきませんとおっしゃるけれども、それは潜在失業という、のりをすするためにどこかの場で何かしなければ食っていけないという、その不安定な、非常に深刻な条件の中で労働者が働いている。そういうものを十ぱ一からげに、これは失業ではないというようなものの考え方をもうだんだん払拭していかないと、日本経済自身もおかしくなるのではないか、私はそう思うわけでございます。ですから、私は、労働省労働行政雇用失業の問題をとらえられるにしても、このポイントはどこにあるのかどうかということを私はやっぱりお考えになっておやりにならない限り、この論議をいつまでも繰り返さなければならないという結果になるのではないか。しかし、これは許されないことだということを十分に自覚していただきたい、こう思うのです。
  7. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 藤田先生指摘のように、一体生産力増強と見合って労働者賃金増加、特に実質的な賃金増加というものがあったかどうかということになれば、これはまあ生産力増加とは必ずしももちろん。パラレルにはなっておらぬと思います。しかし、まあいわゆる生産性との関係から申しますと、年によってこれはもちろん出入りがございますが、大体長期的に見まするならば、大体見合った上昇をいたしておると、かように私どもは見ておるのでございます。ただ、一番問題なのは、先生の御指摘のように、いわゆる不完全就労者というものが相当多数存在するという、この事実からは目をおおうべきではないと、私もさように考えております。一番実は問題なのは、むしろこの不完全就労者の問題であろうと思う。完全失業者のことももちろん問題でございますが、それと同様に、いわゆる不完全就労者の問題というものに労働行政が目をつぶっていっているはずはないと、私もさように心がけております。でありますので、今後御審議をわずらわす予定になっております雇用対策法案におきましてもこの点に留意をいたしまして、不完全就労者に対する施策というものを一つの柱ともいたして、これに対する対策というものを十分研究いたし、また、実施にも移してまいりたいと、ただいまかように考えておるところでございます。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それならば、私は関係の話を少ししたわけですが、もう一つ関係の話を申し上げたいと思うのです。   いま労働大臣は、労働生産性実質賃金は大体のところいっておると、こうおっしゃるわけでありますけれども実質で対比してみても、短期の一年や二年のときの問題は別として、昭和三十年を一〇〇として実質賃金を見ますると、一四三から五です。労働生産性は二三〇、付加価値生産性も二三〇になっている。三十九年度きり。そうして労働分配率になってきたら、外国労働分配率というものは、付加価値性が──大体付加価値生産性外国ヨーロッパ並みに近く、日本労働者一人当たり付加価値生産性があるのにかかわらず、労働分配率は、日本は三二、三%、外国は五〇%台である。それで、そういう私は労働者を取り巻く雇用問題とあわせてそういう問題があるわけです。たとえば技術労働者不足しているとおっしゃるわけでありますけれども技術労働者は、民間では五十五歳で技術のある人をばさばさと首を切って、そうして六十にならなければ年金をやらぬ。子供盛りの五十五歳の人を五年間それじゃどうする、多少の退職金もらったってどうにもならぬ、今度はまた失対事業に追い込まれる。失対事業は門戸を閉鎖してしまってだれも入れぬということになれば、それじゃその労働者は長年、三十年も三十五年も社会に自分の身を粉にして貢献してきた人を一体どこに持っていくか、早く野たれ死にしなさいという政策なのかどうか。こんなことすら労働省ははっきりせられない。まず、技術労働者が百八十万ことしは不足とおっしゃるならば、その技術者百八十万不足というのに、定年退職能力のある人を職場からほうり出して、そんなことでは何ら是正はされない。むろん年ばかりじゃなしに、体力や能力関係で、その中には何%か知らないが、十分にその職に間に合わない人もいるでしょう。しかし、それは適職につけてあげればいいわけで、その人をなぜ五十五歳で首切って、能力のある今日の日本国民の栄養度というか、文化度といいますか、労働に十分にたえられる、生産を通じて社会に貢献できる所帯盛りの人を外にほうり出すわけです。このことについて、もう一つ力が入ってないわけです。だから、私は、このことから一つ二つ個別的にひとつ質問をしますから、事務当局でもけっこうですから、お答えを願いたい。  私は、労働大臣というのは閣僚の中で一番力が大きい大臣だと思っている。そうでなければいかぬと思うのです。労働大臣厚生大臣というのは、要するに佐藤内閣の中で一番大きい力を持たなきゃいかぬ大臣だと、私はそう思って小平大臣に私は期待をしているわけであります。しかし、この前、大臣ごらんになって、昨年の暮れ予算委員会議論ごらんになったと私は思う。その昭和三十五年から四十年度までの設備拡大をとってみても、外国が一二、三%、日本が一五%の拡大に押えても九兆六千億からの過剰投資があるじゃないか。だから、この設備投資を規制して、とまっている機械も動かして、国民生活購買力を上げてバランスをとらなければ日本経済は持たぬじゃないか、そういう議論も私はあろうと思います。そのときに何とおっしゃったか、三木さんは、通産省としては設備規制はいたしませんと、これが佐藤内閣方針であるというなら、私は何をか言わんやであります。一つの例をあげてまいりましと、たとえば鉄とか砂糖の問題、最近の新聞をにぎわしているのは鉄鋼産業自主規制、調整は、これはもう行なわないというのが新聞をにぎわしているわけです。そういうところに労働者国民犠牲にして、日本産業政策だけが前に行って、労働省はその犠牲だけを引き受けて、何ら基本的な経済政策所得倍増計画中期経済計画をはかるのに、今度新しい経済計画をことし一ぱいにつくるんだとおっしゃるけれども、そういうところには一つも力が入ってないですよ。そうして、労働力調査完全雇用は幾らか下がりましたけれども云々ということだけで事が済ませる問題でないと、私はそう思うのであります。ですから、そこら辺は労働大臣はもっと力を入れて、ひとつ新しい経済計画の中でしっかりやってもらわなければいかぬ。だから、労働省の要するに事務官諸君は、どうにもならないから、外国発表するときには日本労働者は一週間に四五・二時間しか働いてないというような統計外国発表しなければ恥ずかしゅうておられぬというところに追い込んでいるのです。事実問題とものすごく違ったことを平気で発表していることになるわけです。だから、もっと真剣にこのこと自身と取り組まない限り、問題の解決はないんじゃないですか。ひとつ昨年の十二月の各府県の殺到率をおっしゃっていただきたいと思う。それから、いまの労働時間は、実際に何時間一週間に働いているのか。それから、家内労働法をどう、いつおつくりになろうとしているのか、三つくらい先に……。
  9. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ただいまのお話でございますが、要するに国の経済政策等雇用問題というものを重要視しなければならぬという先生の御主張は、私ども全く同感なのであります。従来の労働行政についていろいろ見方もあると思いますが、従来は、やや経済情勢、あるいは産業界の好不況といったもののあとをついて、いわば労働行政というものがそのあと始末的な部面が非常に多かったということもいなめないことは事実であると、私自身も実は考えておるのであります。これもまた、ある意味においては確かにやむを得なかった面も相当あると思いますが、しかし、現時点における雇用情勢なり、あるいは将来にわたっての大体の見通し等考えましたならば、従来どおりの労働行政でよろしい、こういうわけには私もまいらぬ段階にきていると、かように認識をいたしておるわけでございます。そこで、昨年来、いま申しましたような、今日の状況なり、あるいは見通し得る将来の状況というものにかんがみまして、この際、やはり、より積極的な労働行政というものを進めなければならぬだろう、こういうところから事務当局にもいろいろ勉強をしていただきまして、その結果が近く御審議をいただく雇用対策法案ということになったわけでありまして、この間、御承知のとおり、雇用審議会等の御意見も十分拝聴してこの案ができたわけでございますが、その中におきましては、御承知のとおり、雇用対策基本計画というものをつくりまして、これを閣議で決定をする、また、この雇用対策というものは、国の経済施策なり計画なりの単なるあと始末的なものであってはいけない、その国の経済施策とお互いに相調和したものでなければならない、こういう基本的な立場に立ってこの雇用対策基本計画というものをつくることになっておりますし、また、これができました後におきましては、これが実施について労働大臣各省大臣要請等もできる、こういうことも法案の中にもうたっているわけでございまして、こういった体制ができますならば、少なくとも従前のように、いわゆるあと始末的なことばかりでなく、積極的に国全体の経済施策雇用対策というものが影響力を及ぼし、重要な問題として当然取り扱われていく、こういうことになるわけでありまして、その点はまず私から申し上げるのも何ですが、相当前進することになるわけでありまして、先生のかねがね御主張の点から見ますならば、御満足をいただくまでには至らぬかもしれませんが、相当その線に沿うた前進がお認めいただけるのじゃないかと、かように考えておるわけでございます。  そのほかに、お話の中に定年制お話も出ました。先生のこの点に関する御主張も、大体私ども同感でございまして、定年制のことが各方面論議をされておりますが、あるいはこの委員会でもかねて申し上げたかと思いますが、私は、基本的にこの人間の寿命そのものが、とにかく御承知のとおり、延びているのですから、こういう点から申しましても、従来のように、あるいは五十五歳であるとか一まあ大体その程度のようでありますが、そこらで退かなければならぬというようなことは改められてしかるべきものであろうと私は考えております。のみならず、御指摘のとおり、一方においては中高年齢層就職難ということが非常に大きな問題にもなっている際でございますから、そういう点から考えても、あまり中途での定年制というようなことは改められてしかるべきものであろうと私は考えております。ただ、率直に申しまして、私は定年制というものがなぜしかれたかということを考えますと、基本的には、一つ日本人の寿命のこともございましたろう、あるいは全体的に労働力が余っておったというか、過剰ぎみであったということもありましょうしいたしますが、一つは、日本のやはり賃金制度というものが私は一つの大きな原因をなしておったのじゃないかというふうに思っておるわけであります。いわゆる年功序列型で、勤続年数が多く、年をとれば、もうそれだけでもどうしても賃金を上げるのだと、こういった在来の一つの慣行とでも申しますか、そういうものも私は一つやはりこの定年制を生んだ一つの大きな理由ではなかったろうかと考えるわけでありまするので、こういう面からも私はやはり検討を要する面も今後あるのじゃなかろうかと、かように考えておりますが、要するに、結論的に申しますならば、定年制というものは、これを置くにいたしましても、相当延びていいものだ、また、延ばすべきものだと、かように考えておるわけであります。その他  の点につきましては局長から申し上げます。
  10. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 地域別の求職倍率のお尋ねでございましたが、府県別に申しますと非常にこまかくなるので、もし府県別の数字ということになれば、後刻資料で出させていただきたいと思います。  大体の地域別の傾向を申し上げますと、全国の求職倍率、これは求人一に対する求職者の倍率でございますが、四十年におきましては一・六倍、昨年といいますか、三十九年は非常にこの全国倍率がよかったのですが、一・〇、その前は大体一・五くらいのところを倍率としては前後しておったわけでございます。この全国の倍率が一・六でございまするが、地域的には非常にアンバランスがございまして、たとえば中部地方では一・〇、求人一に対して求職一というふうな倍率になっておりますが、九州に行きますと四・六倍というふうに、地域的なアンバランスが非常に目立ってきております。これを年齢とかみ合わせてさらに見てみますと、三十五歳を基準に、三十四歳以下と三十五歳以上と、こういうふうに分けてみますと、全国の倍率で三十四歳以下の場合は一・三倍、三十五歳以上の場合は三・一倍、こういうふうに、非常に倍率が年齢的にアンバランスになっておる。これをさらに地域をかみ合わせて見てみますと、たとえば倍率の一番低い中部地方をとってみますと、三十四歳以下の場合には〇・七倍、三十五歳以上の場合には一・九倍、中部地方においても、なお、かつ、三十五歳以上の中高年の求職者の倍率は一・九倍というふうに、わりあいに高く出ております。これを九州に引き直しますと、三十四歳以下の場合においても倍率は三・六倍、三十五歳以上の場合におきましては八・六倍というふうに、非常に高くなっております。以上でおわかりのとおりに、地域別、あるいは年齢別に非常に倍率がアンバランスになっておる、これが実態でございます。
  11. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 労働時間等につきましてお答え申し上げます。  御承知のように、現在正確に把握しておりますのは、遺憾ながら三十人以上の分に限られておるわけでございます。三十人以上の製造業の労働時間について見ますと、昭和三十五年一月当たり、所定内外合わせまして二〇七・〇時間でございましたが、三十九年には一九五・七時間ということになっておるわけでございまして、大勢としましては短縮の方向に動いておる、かように考えております。  なお、一番重要な、むしろ三十人未満の労働時間数につきましては、これは先生承知のように、所定労働時間はともかくとしまして、所定時間外労働について目立ってまいりませんと、一応形式的の調査だけではわからない点があるわけでございます。そこで、労働省といたしましては、当面の労働時間問題の中の一つ最重点といたしまして、八時間をこえる労働、その中には法に違反するものもございまするが、あるいは三六協定によりまして、法定手続によって行なわれておるものもあるわけでございますが、法に違反するものに対しましては厳重に、厳正に取り締まるとともに、それ以外のものにつきましても、無用に常時長時間労働になるようなものにつきましては、これは行政指導によりまして、労務管理、近代化等とあわせて短縮の方向に指導をいたしておるわけでございます。  家内労働の問題につきましては、御承知のように、三十四年に、臨時家内労働調査会が設けられまして、たいへん取り組みにくい問題でございますが、委員会でたいへん御努力いただきまして、内職、専業等を通じて実態を明らかにした報告書をちょうだいいたしたわけでございます。今度は実態が明らかにされましたので、これに基づきまして法的立法措置等を含めて、総合的な施策の樹立のために審議会を設けて検討いたしたいということで努力をいたしておる次第でございます。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ、私は、きょうはこれくらいでやめておきますけれども、いま雇用対策云々というお話がありました。私は、雇用対策の法律をお出しになったようですから、そのときに議論をすることにいたしまして、いまやりませんけれども、あの前提である工場の配置とか賃金労働条件なんというのはどうも入っていないようでありますし、完全雇用していくという心がまえもないようでありますから、これはあと論議をいたしますが、何としても行政というものがおざなりにどうもなっているわけで、そういう点はもう少し真剣に取り組んでいただかなければ、困るのは労働者だけなんですから、いまの内閣、行政府がたくさんありますけれども労働者を守るというところは労働省と厚生省だけなんであります。ですから、労働省と厚生省、特に労働省は、日本産業発展の原動力である労働者労働力を守っていくということは、その人のやはり再生産生活を高めていくというところへ問題のポイントが置かれない限り、国の経済政策は全くもって初めから労働者犠牲にしてやっているという計画で前へ進んでいることではどうにもならない。私は、労働大臣は今日こそしっかりひとつがんばってもらわなければならぬときだと思うわけでありまして、そういう点は、今後の見通しについても緩漫で云々ということだけでは、大臣は済まされても、労働者は済まされないわけです。いまの経済のちんばになっている一番の基本は何かといったら、主権者である国民所得購買力が低くてバランスがとれないという、この一言に尽きるわけです。この一言に尽きることを労働行政でやれないというなら、私は何をか言わんやという答えをせざるを得ない。いずれまた具体的な法案が出てまいりましたときにもう一度具体的な方向を聞きたいと思いますけれども、ことしの予算を組まれて、そうしていろいろなことしは問題がある中でも、ずっと昨年のベースでおやりになっているのでありまして、私は非常にそういう面から言えば不満であります。しかし、きょうは議論はこれでやめますけれども、その関係資料というものをひとつ事務当局から全委員に配付していただきたいということを私はお願いをしておきたいのであります。災害の問題をとりましても、このごあいさつに、七十万人の一年間に災害があります。これは言うだけでは話にならぬことで、法律がちゃんとあるわけですから、その法律で災害を半分に減らしていくとか、何年計画で三分の一にするとかということが、これはやっぱりその行政の中でほんとうに力をいたしていかなければならない問題でありましょうし、いま官房長がお話になりましたけれども、その基準外三六協定をやるのに、一日八時間以外に、五時間も六時間も三六協定で行なわれて届け出がされているのに、労働基準監督署が知らぬ顔をしているということじゃこれは話にならぬ。一生懸命努力しているというのは、実際の労働者から見れば、どこで労働省は努力してくれているのかということを言いたくなる。そういうことが平気で行なわれている。私は非常にこまかいことを言うわけでありますけれども、そういうこまかいことまで十分に意を配って、労働行政労働者を守っていくというところに力を入れてもらわない限り、これはいかぬのじゃないか。だから、労働大臣も、ひとつそういう労働者の働いている、また、生活をして生産をあげる、この道筋の中に労働者がどういう立場に置かれているかということをもう一度ひとつ調べていただいて、そうしてこの次にお伺いしますから、施策のほどをお示しいただきたい、私はそう思います。きょうはいまのようなかっこうだけじゃなかなか納得できませんけれども、いずれ次の機会に譲りまして、きょうは質問をやめます。
  13. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 藤田委員、資料の要求の発言がありましたが、どういう資料ですか。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いまの殺到率の問題があります。それから、労働時間の問題があります。それから、雇用の見通しがどうなっているかというのがございます。それから、家内労働や最賃の調査の結果、目的を持って家内労働調査されているのですが、いま明確にいつからやるということも出なかったわけでありますが、この点もひとつ出してもらいたいというような、大体それぐらい見れば──もう一つ欲を言えば、都合のいいときだけは統計の三十年の資料が三十五年にぽっとかわっていく。今日の外国統計資料を見ても、大体基準になっているのは戦後の、たとえばヨーロッパあたりでは、一九四八年当時から生産性がどうなって、実質賃金がどうなってという資料をみな出しているわけです。政府は、先ほど何か大臣のおことばにありましたように、生産性賃金と見合っているのだということで、ぽっと三十年を三十五年にして、そのあとのやつはなくなってしまったようなことで資料がいま出てこないわけであります。私は、もっと労働行政を、日本近代国家として発展するなら、長期の日本経済全体の資料を出さなければ意味がない。しかし、これは一ぺんに言うたってなかなか無理でありましょうけれども、私は、それはやはりそういう心がまえを持ってもらいたいということを言っている、できれば。三十年からの資料もいろいろくふうして出しておりますけれども、私はさっき言ったようなことになるわけです。生産性賃金が見合っているなんということは、そんなことは夢にも思えないような状態にあるのに、都合のいいところだけ資料を出して、これをこうだと強弁を張ってみても、日本経済全体、国民生活全体からいったらそうはいかないということなんであります。このことをやるのは労働省だけしかないのです。ほかの省に何ぼ要求したって出っこないわけですから、そういう点も努力をして出していただければけっこうだと、こう思います。
  15. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ただいまの藤田委員の資料要求の発言は職安局関係だと思いますが、有馬局長、よろしゅうございますか。
  16. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 藤田先生の資料要求の点は、さっそく取りまとめて御提出いたします。
  17. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) なお、災害についても要求があったようですが、基準局長出席しておりませんので、官房長にひとつ連絡していただくようにお願いします。
  18. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 承知いたしました。
  19. 森勝治

    ○森勝治君 毎度のことだけれども、時間がないということでありますので、私もかいつまんで二、三大臣に質問してみたいと思うのです。  まず、第一点は雇用趨勢について伺ってみたいと思います。この点については、先ほど藤田委員も触れられたようでありますが、大臣は、先般私どもに所信の一端を開陳するにあたりまして、こういうことをその中で言及をされております。前段、後段を省きまして、要点のみ若干言いますと、「最近の雇用情勢は、景気の停滞を反映し、依然として増勢の鈍化が続いております。一方、長期的に見れば、」云々とありますが、「依然として増勢の鈍化」という語義は、ことばの意味はどういうものか。先ほどの話ですと、何か増勢の鈍化とは停滞かということの藤田委員の質問に対する答弁の中で、そういう増勢の鈍化と言ったほうが適切かとも思うというような意味のことを話されておりましたが、どういう意味で「増勢の鈍化」ということを言われたのか。私の乏しい頭では、「増勢の鈍化」とは、この場合は比較的雇用の量が増加しない、あるいは伸びがとまってきたと、こういう意味に受けとれるが、そのとおり受け取ってよいのかどうか、ことばの持つ意味についてひとつお伺いしたい。
  20. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 御指摘のように、増勢の鈍化が見られると、こういうことを申し上げたわけですが、まあ「増勢の鈍化」ということは、最近の数年はといいますか、影気がいわゆるよかったときには、毎年の雇用者の増加率、その増加の割合というものが非常に大幅であったわけでございますが、この不況になりましてからというものは、雇用の絶対数が減っておるわけではございませんが、その伸び方というもの、伸び率というものが非常に鈍ってまいった、少なくなった、こういうことを「増勢の鈍化」と、こういう表現で申し上げたわけであります。数字の点は局長から申し上げることにします。
  21. 森勝治

    ○森勝治君 大臣の答弁の中で、後段で、雇用の絶対数は減少しておらないという発言でありますが、それは大臣、そのとおりでよろしいですか。私のほうから逆にそれでは質問をいたします。これは労働省発表でありますから申し上げますが労働省では雇用の数は大幅に減少しているということを公的に発表しているのですよ。いいですか、これを見なさい、出しているのですよ。ですから、私は、あえてことばじりのような「増勢の鈍化」という意味はどうだと、おそらくそう言われるだろうと思った。ところが、すでに、この内容ですと、こういうことを言っているんですよ。いいですか、これは一般労働市場の問題ですよ、「昭和四〇年の新規求人は三七〇万三千人で対前年度に比べて三丁六%と大幅に減少した。」という、これは求人ですよ、笑っちゃいかぬですよ、問題はあとにあるわけですから。「月別にみると各月とも対前年同月を下回ったが、五月以降は十一月を除き各月とも二〇%以上、特に九月においては対前年同舟の約三分の一と大幅に下回ったことが注目される。雇用形態別にみると、常用求人は二八六万六千人」云々と、こうあります。さらに中間をはぶきますよ、「求人の大幅な減少に伴って就職件数は一七七万一千人と前年に比べ八・九%減少した。また県外への就職件数は一九万七千人で前年に比し二七・一%と大幅に減少した」云々というふうにして、総体的に鈍化ではなくして、著しい減少ということをいわれておる。だから、その辺の食い違いはどうなのか、ひとつはっきりお答え願いたい。
  22. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生がいまお読み上げになられたところでも私は明らかだと思うのですが、要するに雇用者の増加した数というものは前よりも減ったというのでありまして、現に雇用されている者の絶対数というものはこれは減っておらないわけであります。ですから、先ほど申し上げましたとおり、要するに増加する率というものが鈍ってまいっておりますと、こういうことを私は言っておる。数字は、何でしたらばよく局長から説明させますから、一回お聞きとりいただいたらいかがでしょう。
  23. 森勝治

    ○森勝治君 だけれども、あれでしょう、現に新規雇用が減ったということは、結局それだけ職場に隘路が生じたということになるでしょう。さらに、今度は雇用の現状と見通し、一月に出された安定局の発表によるならば、今度は失業情勢について、完全失業者は前年に比べて増加しているとまた発表されている。そうなれば鈍化ではなくして、就職が少なくなったわけですから、当然これは鈍化でなくして雇用は減少、こうやらなければおかしいじゃないですか。
  24. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) いま私どものほうから出ておりまする「職業安定公報」を引用されましていろいろと御指摘がございましたけれども、第一は、雇用失業情勢を判断する場合には、雇用の全体の量としての伸びがどうなるか、これがまず大前提になるわけです。その点は、先ほど大臣から御答弁がありましたように、最近は伸び率は横ばいに近くなっておりまするけれども、ゼロではない。現に昨年の十──十二月の時点でとりますと、雇用の伸び率は〇・七%増ということになっておりますので、伸び率としては横ばいになってきて鈍化しておる、これが第一点。  それから、二番目に、労働市場の状況がどうなっておるかという問題でございますが、これは御指摘のように、不況の影響を受けて求人が減っております。それから、求職は、逆に不況の場合にはふえるものでございますが、若干ふえておりまするけれども、前回あるいは前々回のようなふえ方ではない、こういう労働市場の需給の状況が出ております。これも一つ雇用情勢を判断する有力な手がかりでございます。  それから、第三番目に完全失業者の御指摘がございましたが、これは確かにこの四月以来若干ずつふえてまいっておりますが、先ほど大臣が冒頭に藤田委員の御質問にお答えしましたように、この一月で五十三万という数字が出まして、昨年の一月と比較いたしまして十三万の増になっておる。これはいわゆる完全失業者失業率としましては一・二%という率で、そう大きな率ではございませんけれども、この増加の減少は注目する必要があるのではないか、こういう御答弁を申し上げたと思います。これらの三点から見て現在の雇用情勢をどう判断するか、あるいは今後の動きをどういうふうに予測するかというふうないろいろな見方が出てくるわけでございますが、それぞれふえた減ったという場合には、その事項が別になっておりますので、その辺を何といいますか、別にごらんいただけたら御理解いただけるのではないか、かように考えるわけでございます。
  25. 森勝治

    ○森勝治君 それは求人と求職の比率の問題で言われていると思う、率という表現で。私の言わんとしているのは、失業者がふえている、にもかかわらず、失業保険金の受給関係では厳重なワクをはめていますから、受給者の数は少なくなっているという、そういうことでしょう。だから、したがって、雇用するのが去年よりも八・九%就職の件数が減るということになりますと、人間はふえているわけですから、失業者が前年度よりも八・九%就職する数が少なかったのですから、失業者がちまたにあふれるかどうか知らぬけれども、去年よりも就職できない人が多くなってきたということでしょう。去年というか、三十九年よりも四十年度のほうが。そうじゃないですか。
  26. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) いま御指摘失業情勢失業保険の受給の関係、これは非常にむずかしい関係がございまして、一般的には失業者がふえれば失業保険の受給者もふえていくという相関関係を御想像になると思いまするけれども、厳密にいいますと、その間に、もう一つ離職の状態がどうなっているか、いわゆる離職率というものが直接失業保険の受給率に結びついているわけでございます。昨年一年間の傾向を見ますと、離職率がだんだんと低下をいたしておりまして、たとえば昨年の一月──三月の平均で見ますと離職率が二・九%であったものが、十月──十二月になりますと二二%と、離職の率が非常に低下をいたしております。これは要するに今回の不況に際して事業主側は人手不足の心配もございますので、まあそう簡単に大量に首切るわけにはいかない。やがて景気が回復して生産が回復したときのことを予測しながら、前回あるいは前々回のような激しい首切りは行なわれなかった、合理化は行なわれなかった、こういう傾向一つ強く出ております。それから、一面、求職者の側においても、二、三年来、非常に上向運動のために離職率が高くなっておったのでございますが、これが非常に不況に際して鎮静化してきておる、こういう傾向が出ておりますので、離職率が非常に下がってきておる、これが直接的に影響いたしまして失業保険の受給率が下がってきておる、こういう相関関係になっておるわけでございます。
  27. 森勝治

    ○森勝治君 では、それはあとでやることにして、時間がありませんから次へ移りますが、予算は予算委員会ですでにおやりになっておるわけでありますが、私もこの点についてちょっと心がまえについて質問をしてみたいと思います。  労働省の見解によりますと、非常に四十一年度の予算の獲得は自画自賛された気配があるのです。たとえばこういうことを言っておるわけです。三十九年度、国は総体的に当初予算では一四・二%ふえておる。四十年度は一二・四%ふえ、四十一年度は画期的に景気刺激策として一七・九%という大型予算を組んだ。国が四十年に一二・四%増加率を示したけれども労働省は一〇・六%。四十一年度は、国が一七・九%の増加率に比して一一・八%だと、しかも、これは昨年度よりも百六億ばかりふえておる。昨年度が一〇・六%増加に比し、今年度は一一・八%だから、労働省としてはまあまあの予算である、こう言われておるのだけれども、そういうお考えで今度の予算をお組みになったのかどうか、この辺のところをちょっと聞かしていただきたい。
  28. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 労働省予算の伸び率、また、それの国の予算全体の伸び率との比較、こういう点は先生の御指摘のとおりに相なっております。そこで、今年度の予算の編成にあたりまして、私ども労働行政の各般の問題につきまして、できる限りもちろん予算をとりたい、こういうことで努力をいたしたのでございますが、国全体の予算の伸びが一七・九%、まあ約一八%であるのに対して、労働省の伸びは一一・八%、こういうことで、これから見ますと伸び率が少ない、こういう印象を受けられたと思いますが、何と申しましても、労働省の行なっております仕事というものは、言うまでもなく、建設省であるとか農林省であるとか、そういったいわゆる事業官庁と役所の性格そのものが非常に違っております。今回の予算が全体とてしは一八%弱伸びましたが、その中で大きく伸びておりますのは公共事業関係であるとか、あるいは社会保障の関係もございますが、そういった点がいわば重点でございまして、労働省関係から申しますと、大体この程度でまあやむを得なかったのではないかと考えておる次第でございます。さきに申しますとおり、ずいぶん予算の編成過程においてわれわれも努力をいたしましたが、中には、もちろん当初の要求どおりにいかなかった面もあります。ありますが、しかし、こういうことをやりたいという方向で進みたいと思いましたことにつきましては、もちろん十分とはまいらぬまでも、大体予算化することができたと私ども考えておりますので、国全体の財政の事情等々を勘案いたしますならば、まずまずの私は成績と申してよろしいのではなかろうかと、さように考えております。
  29. 森勝治

    ○森勝治君 ただいまそういう御答弁をいただいたのですが、もちろんそれは景気刺激策というのであるから、政府がそうした方面に金を使う、自民党政府方針でしょうからそういう片寄った予算の組み方をされたんだと思うのですが、たとえば事務経費についても昨年の当初予算を下回ったなどということは一体どういうことなのか、そのことが一点。これはあなた方がはっきり書いて発表された中に、残念ながら事務費については非常にきびしかった、昨年度の線まで到達するに至らなかったと書いてある、だから私は聞いておる。 さらに、もう一つ、国の予算がことしは一七・九%ふくれたとするならば、これは一一・八%で自画自賛することはおかしいのであって、少なくとも一五%程度増額にならなければ、昨年と同様の比率で労働予算を獲得したとは言えない。あるいは、また、一五%以上とらなければ、まあまあだとか所期の目的を遂げたなどというような表現を用いることはできない。昨年を下回ったということで非常に残念だと言わなければならぬのにもかかわらず、まあまあだとおっしゃる。それから、この百六億増加の中には、六十二億という職業転換対策費が入っておるわけですが、余すところ四十四億円だけでしょう。その中に何だかんだとやられる、また今度ことしは七%も八%も物価が上がるということになれば、労働省の予算は昨年度よりも実質的に窮屈になってしまった、こういうふうにしか考えられないが、この点もどうか、ひとつ聞きたい。
  30. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 予算全体の責任者でございませんが、私のところが大口でございますので申し上げますと、減ったのは、石炭離職者対策費が合理化の規模の縮小によりまして十一億四千八百万円ほど減になったのでございまして、ほかは大体順調に伸びておるというふうに私ども考えておるわけでございますが、減りましたのは石炭対策費だけ、こういうふうに考えております。
  31. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  32. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記を起こして。  午前中の、質疑はこの程度といたします。  午後一時三十分再開とし、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  33. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  34. 森勝治

    ○森勝治君 先ほどの御答弁をまずいただきたいと思います。
  35. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 旅費、出張費の来年度の予算の伸びの問題でございますが、旅費につきましては、来年度は一二四・七%で、昨年の一一〇・九%の伸び率よりも金額は伸びております。ただし、運賃の値上げ等がございますので、実質的なアップは僅少ではないかと思います。  それから、出張費の類でございますが、これは昨年は一昨年に比較いたしまして一一九・〇%、来年度は四十年度に比較いたしまして一一三・二%というふうに若干落ちておりますが、これは特会を含めた額でございまして、一般会計だけを比較いたしますと、昨年が一昨年に比較いたしまして一〇八%の伸び、来年はことしに比較いたしまして一一〇%の伸び、こういう状態に相なっております。
  36. 森勝治

    ○森勝治君 重ねて申し上げたいのですが、どうもこういう対外的と申しましょうか、PR用だと非常に自画自賛的な内容が織り込まれている。内容がそのとおりならけっこうなんだが、いま私がことば足らずで、あるいは誤解された向きもあったかも知らぬけれども、このようにまあまあだとか、所期の目的に達したような、そういう筆法をもってしてはどうも私どもは合点がいかないので、やはりもう少しこの辺のところは、宣伝もけっこうか知らぬけれど、労働省の実態をむしろえぐり出してもらったほうがすなおな姿が出るのではなかろうかと思うのです。ですから、これからは、これはそういうことでややもすれば誤解を生ずるような文書の発表というのは、ひとつよほど慎重にしていただきたいことをお願いして、私は次の問題に移ります。  次の問題は、労働者生活実態という問題について若干伺ってみたいと思います。  昭和三十三年から約五ヵ年間の統計を見ましても、これはもう、さらにまた先ほど藤田委員からの話もありましたように、二倍から二・七、八倍くらいまで生産は上がっている。しかも、資本の蓄積は三倍になったが、労働者のそれでは賃金がどれくらい上がったかというと、せいぜい三〇%しかその五ヵ年間に上がっていないということは、統計を見ても明らかであります。こういう数字を見ますと、じゃ日本労働者の置かれている賃金水準というのは、これはだれでも知っているように、アメリカの七分の一、西ドイツの二分の一だ、こういわれておりますね。大蔵省が発表した当時の統計を見ましても、年所得三十万以下、しかも、その家族を含めますと四千万人になんなんとする人々がそういう低い賃金生活を余儀なくされている、これが日本労働者の置かれている実態じゃないかと思うのです。しかも、じゃ労働時間たるやどうかというと、先ほどこれまた藤田委員指摘されましたが、政府は四五・二何がしという発表をしておるけれども、じゃどうだろう、下部は、中小企業のおやじさんに言わせれば、労働基準法を守っていたら会社がつぶれてしまうということを公開の席上で豪語してはばからない。こういう姿が随所に見受けられるという現実の姿を私どもは見るときに、労働行政の力というものは一体那辺にあるのだろう。もちろん政府が、特に現大臣になりましてからたいへん力を入れられておるように思うけれども、国の予算のそういう推移から見たって、だんだん予算規模に占めるパーセンテージというのは低下してきてしまうという状態です。特に現内閣は人間尊重というたてまえをうたい文句にしておるわけですから、働く者の立場が尊重され、働く者の立場が理解され、働く者の発言力がますます強まって、そしてしあわせになる、こういうことであってしかるべきだと私は考えていますが、今日のように物価がどんどん上がる、ことしもまた正月から米が上がった、運賃は、先ほども説明がありましたように、ぽいと上がってくる、こうなりますと、日本労働者の置かれている生活実態というものはますます窮迫してくる、顕在と潜在であるといなとにかかわらず、日本のそういう低賃金労働者は、まさに失業者同様な立場を負わされている、むしろ強要されているといっても過言ではないだろうと思うのであります。ところが、生活保護のほうから見ますと、これはこういうことをことあげするのが正しい例にはあるいはならぬかとも思うのでありますが、四人家族では大体二万円の扶助料が生活扶助の場合には出る。ところが、日雇い労働者が朝から夕方まで額に汗しても六百円何がしということ、こういうふうに、同じ社会保障の中においてすらもアンバランスが随所に見受けられているわけであります。どうしてこうなったかと申しますと、これはここでいまさらちょうちょうするまでもなく、所得倍増、設備投資というものがこうなった。特に日本銀行の発券なんというのは、昭和三十年から三倍も上がって、三十六年はおびただしい増札、そうしてそのことによって過剰設備がなされる。しかも、先ほどの質問の答弁にありましたように、ことしは企業が伸び悩みであるから、事業場に包容する労働者の数も少なくなってしまう。一体政府は、自分たちの政策の失敗というもの、高度成長政策の失敗というものが今日の物価高、今日の不況ムードを招来したのでありまするから、その辺についての謙虚な反省があってしかるべきだと思うのであります。労働大臣は、人間尊重をうたい文句にする佐藤内閣の働く者の立場を擁護する重要な閣僚だと思いますので、そういうかねてからの政策の失敗によって今日の不況ムード、あるいは、また、物価上昇という、こうした国民生活、なかんずく労働者生活を危殆に頻せしめようとする現在のこの政治情勢、あるいは経済情勢を一体どう考えておられるか、その点についてひとつお伺いしたい。
  37. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 働く者の生活実態がどうかということでございますが、まず最初に、お話では、生産力が倍にもなったのに、働く者の生活がそれほど伸びないじゃないか、こういうことでございますが、これは私先ほどちょっと申し上げましたが、生産力の伸び、拡大労働者賃金増加というもの、これを比較するということは、はたしてどういうものであろうかと思います。申し上げるまでもなく、生産力が非常に伸びたということによって、年々相当多数の国民がその職場を得た、特に就職口が非常にふえた、こういうことはこれは事実なのでありまして、   〔委員長退席、理事佐野芳雄君着席〕 そういう増加の過程において、賃金のほうは、先生よく御承知のとおり、三十年を一〇〇として、名目では四十年には一六四・八、大体一六五になっています。実質賃金ではこれが一二一・九と、大体二割二分ほど実質賃金もこの間上昇しておる。もちろんその間に若干の伸びの多かったとき、少なかったとき、それぞれございますが、全体の傾向というものはそういうことになっておるのですから、全体の労働者生活というものも、少なくも三十五年に比べれば、私はやはり相当向上しておると、こう申して差しつかえないのだろうと思います。もちろん一般国民生活の向上というものもありますし、さらに、最近は消費者物価の上昇、こういうことが、言うまでもなく、これは政治的にも社会的にも大問題になっておる際でございまして、それらから受ける生活への圧迫というものは、決して私どもは否定をいたしておりません。でありますからこそ、この消費者物価を何とか安定させたい、それにつきましても、根本的には、経済そのものがあまり急速に最近数年伸び過ぎた、その面から見れば、そのためにまた物価ももちろん刺激をいたしましたし、そういうためにいろいろ生活面にもひずみを来たしておる、こういう事実を否定するものではございません。ですから、経済全体の発展、伸びというものも、いわゆる安定成長の方向に持っていくというためにまあいろいろ施策を行なっているのでございまして、そういう経済の安定の中において、賃金も、名目的にも実質的にも、やはり国民の各層の所得の伸びなどと均衡をとりながらこれが上昇していくという姿がやはり一番望ましい姿であると、私どもはさように考えておるわけでございます。従来のこの経過にかんがみましても、経済があまりはなはだしく一挙に伸びたり、あるいは、ましてや萎縮したり、こういうことがあっては、実質的に労働者諸君の生活の向上ということはなかなか期しがたいことは言うまでもございませんから、そういう弊害をなくするようにということで、政府の全体の施策の中において、そこを一つの大きな眼目として努力をいたしておる、こういうことでございます。
  38. 森勝治

    ○森勝治君 いまそういう御答弁をいただいたのだけれども労働者生活を楽にする、労働者生活を保護する、労働者生活を向上させるという前向きの御答弁はどうもいただいておらぬような気がするのです、正直言って。しかし、時間がないからやむを得ませんから、私は次に移るわけでありますが、現在のように、労働基準法を守れないといって広言してはばからない経営者が次から次に出てくるとするならば、労働組合の組合活動の場においては、ことごとく法を守れという主張を強く組合側、労働者側に押しつけてきているのは過去の顕著な現象でありますが、片や基準法のこうした経営者としてあるべき姿、当然守らなければならぬことを怠った場合における労働省の指導監督というものは、ややもすると手ぬるいような気がするわけであります、正直申し上げれば。そういう点についてはこれからどう対処されていくのか、このことについてひとつ伺いたいのです。
  39. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) その点につきましては、前の国会の際、私は先生に御答弁申し上げたように記憶するのでありますが、私は、就任以来、役所の仕事、特にこのいわゆる監督行政等については、国民多数の中ですから、あるいはこの法をよく知らぬ、知らずして犯すという場合もこれはあり得るわけですから、まずもって親切にひとつよく教えてやる、こういう立場で臨んでほしい。しかしながら、いかに指導し教えてやっても、なおかつそれを聞かぬ、法に反した行為をあえてやるという向きに対しては、これは断固として処置すべきである。同時に、また、すべて公正にやるべきであるという考えを私は申しておるのでありまして、それぞれの機関においては、この方針で厳に法を執行しておるものと私は見ております。ただ、先生の御指摘のように、使用者側にとても労働基準法などは守れない、そういう広告をする者が多数ある、それに対する労働省の態度というものがなまぬるい、こういうただいまの御指摘でございます。率直に申しまして、数多い業者でございますから、中にはそういった不届きなことを広言す者もあるいはあるかもしれません。しかしながら、先ほど来申しますように、私どもとしては、そういった例外的なものを基準にして、行政が頭から厳格に、もう処罰一点ばりで臨むというようなことは、私は役所の仕事のやり方としてどうかという気持ちを持っておるものでありまして、ただし、そういうことを広言しながら、しかも、知っておりながら法を守らぬとか、いかに注意してもやらぬとか、こういう者に対しては遠慮することはありませんから、私は断固としてそういう者は法に照らして処罰すべきものは処罰すると、こういう方針で従来私は臨んでまいったつもりですし、今後においてもさようにいたすつもりでございます。
  40. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、そういうお考えでありますので、あるということでありますので次に移りますが、この前の委員会のときに大臣ちょうど中座されましたので、質問を保留した件が一点ありますので、この点ちょっとお伺いしてみたいと思いますが、この前私がお伺いしたいと考えておりましたのは、基準法の五十五条の件ですね、安全衛生問題、これは鉱山保安法に基づいて、本来ならばこれはもう当然労働省誕生のときに労働省が所管たるべきでありましたが、時の政治の葛藤のもとで、いずれに帰属させるか論争だったそうでありますが、そのことによって、明治以来、依然として通産省がこれを所管するということになったことは御承知のとおりでありますけれども、このときにこの問題については、私は商工担当の政府委員にも率直に聞いたのですが、もう現段階になっては労働行政の一元化をはかるのが正しいのではないか、あるべき本来の姿に返すことが労働行政を最も強力に推進し得る近道ではないか、したがって、鉱山保安法に基づく鉱山における安全衛生の監督というものは、当然労働省に帰属してしかるべきではないかという質問を通産側に発したのでありますけれども大臣でございませんので適当の御答弁ができませんといって、これはなかなか、まあ私をして言わせるならば、逃げられた答弁をせられておるわけであります。そこで、きょうは大臣お見えでありますので、先般の質問の様子は、ここに速記録を持ってきておりますから、時間の関係で私はことば足らずの質問をいたしておりますが、このいま申し上げた問題について、一体労働省は今後いかにとられるか、どういう策を用いられるのか、このまま通産省の監督のもとにほうっておいてよいのかどうか、労働行政の一元化、特にこうした監督については一元化すべきだと、私はこの際一元化すべきだと思うので、これは当然労働省帰属が素朴にして正しいあり方だと思う、私をして言わしむるならば。したがって、この点についての大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたい。
  41. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生指摘の基準法の五十五条の問題というのは、鉱山保安の所管の問題であると思いますが、この問題につきまして、各方面から、保安行政は労働省に一元化すべきであると、こういう御意見のあることも万々承知いたしておりますし、労働大臣の立場からいたしまするならば、私もかくありたいものだと、かように考えます。しかしながら、先生も御承知のとおり、なかなか役所間におけるこの所管の問題というものは、そうそう簡単に変更がむずかしいという事情もありますし、また、歴史的にも、鉱山保安というものは、長い間通産省が保安と生産とは一体だ、こういうたてまえからやってきた、こういう事実もございます。したがって、これを一挙にいま私どものほうから労働省によこせ、こう言ってみたが、なかなか現実にそう簡単にはまいらないというのがもうざっくばらんに申して実情でございます。そこで、私といたしましては、もちろんこの問題は大切な問題でありますから、今後におきましても関係方面と十分これは折衝と申しますか、打ち合わせもいたして、相なるべくは労働省のほうでこれを受け持つように努力はいたしますが、当面の施策といたしましては、御承知のとおり、鉱山保安に関して労働大臣は通産大臣に勧告をすることもできる、こういうような規定もございますので、一つはこの個条を活用してまいる。現に昨年の山野の爆発事故の後にも、間隙を置かずに労働大臣から通産大臣に対して、こういう点をぜひ留意をしてほしいという勧告を正式にいたしておりますが、しかし、さらにそういった勧告ということも大切に違いございませんが、ふだんにおける通産、労働両省の緊密なる連携ということが私は非常に実際問題として大切である、かように考えますので、その点についてもそう一そう意を用いて、実質的に鉱山保安の目的を果たすように努力を当面はいたしてまいろう、こういう方針でいるわけでございます。
  42. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、次に移ります。  大臣説明にもありましたように、労働災害が非常に多くて、七十万人も死傷者が出て、死者が六千人を数えるというお話がありましたが、まことにこれは残念なことであります。なかんずく、工場、事業場の場合には、下請機関におけるこの種の事故、各種の不当労働行為というのが非常に頻発しておる状態であります。したがって、こうした事故をやはり未然に防ぐ努力は十分されておるでありましょうけれども、やはりこれは経営者側に対してのみでもいかぬし、労働者のみにそれを押しつけてもならぬので、労使相待っての適切な指導があってしかるべきだと思うのでありますが、こうした労働災害をなくすためには一体どうすればよいか、この点についてお伺いしたいと思うのであります。労働力の再生産という立場から見まするならば、労働者の疲労を少なくするために時間短縮も一つの方法だろうし、休日を十分与えるというのも当然でしょう。そうして失なわれた労働力を早く回復させるためには、やはりレクリエーション等のそういう施策を用いるということも必要でありましょうし、さらに、また、各種の栄養物をとるためには、やはり生活をささえるための賃金というものをさらに上げていかなければならぬ、こういうこともそうした労働災害を未然に防ぐ一つの方策の中に入るだろうと思うのであります。さらに、また、災害が起きた場合の補償がいまなされておりますけれども、なかなか長引いて、一定期間がたちますと法はこれを見殺しにするというのかたてまえであります。そうなりますと、それから先がたいへんで、その該当者は精神的にも非常に自己嫌悪、あるいは非常に心がめいって、社会に対する反感といいますか、生活に対する不安からくるもろもろのあせりがあり、さらに、また、なかなかからだが回復しない、周囲から白い目で見られるようなもろもろの問題が派生してくるわけであります。したがって、やはりそうした労働災害によってもろもろのそういう事態が招来した場合には、当然その労働者のからだが回復するまでやはりみてやるのが法のたてまえだろうと思うけれども、いまはもうなおろうとなおるまいと、一定の期限がくれば、はいさようなら式であろうと思うのであります。こういう点はわれわれはこれから法を抜本的に改正して、あくまでも労働者の再生産へのその第一歩をやはりそういう面からもみてやらなければならぬと考えておるわけでありますが、こういう問題についてどう今後対処されるのか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  43. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生の御指摘のとおり、労働災害の発生ということがあまり減少しないでいると、年々これによって相当の労働力が失われ、特に人命も多数失われておるということは、はなはだ遺憾にたえないところでございます。そこで、労働省としましても、災害防止のためには最重点の一つとして努力をいたしておるところでございまして、労働省の機構からいたしましても、労災の防止部というものも、御承知のとおり、設置をいたしまして、大いにこれに力をいたしておるわけでありますが、それにもかかわらず、なかなか減らぬという状況でございます。従来、労働省としましては、年々推進計画立てまして、何年度はどれだけ発生率を減すという目標をそれぞれ業界ごとに立てて、それに向かって業界の協力を得ながらやってまいったのであります。大体その目標は達しておりますが、何ぶんにも産業自体が膨張いたしてまいっておりますから、発生件数等は、絶対数においてははかばかしい減少を見ない、こういう実情でございます。そこで、特に先生の御指摘のように、あるいは下請であるとか、一般の小規模の経営の場合であるとか、そういう場合のほうが災害が多いということも事実であります。そこで、労働省といたしましては、下請作業と申しましても、たとえは造船業などにおけるがごとく、あるいは建設業におけるごとく、一つ職場で元請と下請とが同じ仕事、場所で作業に従事するというような場合には、全体としての管理体制というものを元請会社に責任を持ってつくらせる、その災害については元請側に責任を全面的に負わせると、こういった体制を整えることによって、企業別ではなくて、一体として災害防止に当たらせる、こういう指導もいたしておるわけでありますし、また、特に四月からは安全管理者等につきましても、たとえば安全管理者、これは従来五十人以上の使用者の場合に安全管理者を選任させたのですが、四月からは三十人以上についてこれを設置させる、衛生管理者についても同様でございます。そういうことによって特に小規模の事業における災害の防止というものについては、従来にもまして、一そう体制の面からはもちろんのこと、また、指導監督の面においても十分努力をより重点的に払っていきたい、かように考えておるわけでございます。先生も御承知と思いますが、総理府の諮問機関でありました産業災害防止対策審議会から答申が二十九日に出まして、これにおきましては、要するに、何と申しましても一番責任を感じなければならぬのは企業者である、企業自身がまず責任を感ぜよということ、あるいは、同町に、もちろんこれは労働者側にもこれに協力をしてもらわなければならないということ、あるいは、また、国は国としての責任を持って各種の施策を行なわなければならぬということ、さらに、専門教育などのために、大学にも安全衛生に関する専門の講座等もつくれというようなことやら、あるいは安全衛生センターというものをつくって、原因の究明、あるいは指導、そういった面をやらせるべきであるとか、その他、この中にも、特に安全衛生に関する行政の総合調整機関の設置、あるいは下請企業に対する規制の強化というようなことを答申をされておるわけでありまして、われわれとしてはこれらの答申をも十分尊重をいたして、労使はもとより、社会一般の方々の安全衛生に対する関心というものを高めていただき、同時に、国は国としてできる限りの施策をやってまいりたい、前にも申し上げましたが、従来も、監督機関が監督しまして、どうも安全上好ましくないというようなことがありましても、注意しっぱなし、あるいは場合によってはもちろん使用停止というようなこともやりましたが、なかなかさてそれを改善するとなると資金も思うようにいかぬというような面も確かにあったと思いますので、決して十分ではありませんが、本年は特に十五億円の融資のワクを設けて監督する、同町に、その裏打ちとしての金融も低利長期にめんどうみてやる、こういう施策も今度新たにやることにしたわけでありまして、実のある方策でこの災害防止の点は十分ひとつ努力いたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  44. 森勝治

    ○森勝治君 時間がありませんので、はしょりまして、私、最後に一点だけ質問をしてみたいと思います。私がこれからお聞きしたいのは、経営者側の労働者に対する不当労働行為の問題であります。  小樽市の北海道通信電設株式会社における労使の紛争につきまして、現在、北海道の地労委に申請され、審議中であるそうでありますが、不当労働行為救済申し立て害なるものが労働者側から北海道地労委に提出をされておるわけであります。この北海道通信電設株式会社は、いまも下請の問題が出ましたが、電電公社の北海道における下請工事会社であります。いま大臣が私の質問に答えて、労働災害の場合におきましても、下請側の問題については元請側に全面的に責任を持たせるような指導をされる、労働災害のときはそういうふうにされるというお話でございますので、労働災害以外のもろもろの労働問題につきましても、下請側における不当労働行為については、やはり当然元請側でこの問題についての指導責任というものが当然なされてしかるべきだと私は考えるものであります。そういうことはさておきまして、私は、この労使紛争が一日も早く、すみやかに解決を願うあまり、ここで質問をしたいのであります。これは局長にいまお伺いしてみたいわけでありますが、この種の問題がどうしてこういう提訴に相なったのか、その原因をひとつまずお伺いし、さらに、いま地労委でこれが審議過程だそうでありますが、どのように審議されておられるか。さらに、また、一体この問題が解決の見込みがあるのかどうなのか。問題は、私をもって言わしむるならば、ごく単純でありまして、会社側が不当労働行為をやめるならば、これは事態というのはすみやかに解決をはかることができるだろうと思うのであります。したがって、そういう問題についてどのようにいままで出先を指導されておられたのか。なかんずく、数年にわたる時間外労働手当の不払いというような、先ほども若干下請機関における不法行為、なかんずく、基準法違反問題を私が指摘をしたわけでありますけれども、その辺のところは一体どのような指導をこれら下請にされておるのか、この点についてひとつ伺い  たいと思います。
  45. 三治重信

    政府委員三治重信君) 北海道のこの通信電設会社の問題でございますが、これは非常に何と申  しますか、会社親睦団体である「ひまわり会」を組合ができたらつくって、そちらのほうに加入するように会社側が指導した、これから端を発しておるわけでございますからして、その組合側の申し立てによれば、せっかくつくった組合の組合員が組合を脱退して、この親睦団体のほうの「ひまわり会」のほうへ入っていく、会社側が組合の切りくずすしをはかっていると、こういう言い分でございます。それについて、地労委に対しては、不当労働行為を行なったことに対する陳謝文を書け、それから、二番目として、「ひまわり会」を解散させる、こういうことを要求しておったのですが、会社側と話がつかんで、現在、この三月三十日までストを実施しているわけでございますが、地労委におきましては、二月七日以後、現地調査を行ないますとともに、その後三回の審問をやっております。この地労委が中に入って審問をやっておりますときには、その審問がどうのこうのということにつきましては、これは準裁判的な機能でございますので、行政機能でございますので、行政機関のわれわれのほうがとやかく審問がどうなっているこうなっているということは、ちょっと申し上げにくいわけでございます。まあ聞くところによれば、これはいずれも御説明したように、たいした問題ではないので、いずれ近く円満に解決しそうだということでございます。それを中身を言えとおっしゃるかもしれませんが、当聖者がそういうことを言っているということだけを申し上げます。
  46. 森勝治

    ○森勝治君 いま最後におっしゃった、たいした問題ではないということは、事件が簡単だから、事件の内蔵する問題が簡単だというのか、簡単にこの事件がけりがつくというのか、その辺のことをもう少し詳しくひとつ……。
  47. 三治重信

    政府委員三治重信君) 一般の不当労働行為として争われる解雇とか、そういうような問題から見れば大体安易な問題で、これくらいのことが労使で話がつかない問題ではないし、現在労使双方におきましても、そういうふうな、何と申しますか、ことばによれば幾らでもあげ足をとられるわけですが、こういう不当労働行為、従来からの一般的な問題からいえば、そう解決困難な問題ではない、こういうふうに考えております。
  48. 森勝治

    ○森勝治君 それでわかりました。結局こういうことですね、この問題はいま地労委のまないたの上にのっかっておるけれども、この種の問題については会社側と組合側の双方の善意を信頼するということでいけば、おそらく近い将来解決の糸口をつかむことができるであろう、こういう推定をしているということですね。
  49. 三治重信

    政府委員三治重信君) 審問中、委員会としては双方に入って審問するわけですから、その間にはけりがつくことはありますが、いままで不当労働行為事件は、労働委員会で双方を呼んで話をしている間に、八〇%ぐらいは和解で解決しているのであります。これの解決の見通しを私が述べるわけではありませすが、北海道からの話によれば、お互いにそう遠くない将来に解決できるでしょうというふうな見込みを言ってきております。私が直接両者に話を聞いたわけではありません。
  50. 森勝治

    ○森勝治君 そういうお話でありますので、この問題がいま御説明なさったような方向づけで早く解決ができて、労使双方が円満になられんことを私は念願するものであります。ただ、この際、私は一言だけことあげしておきたいのは、これは電々公社の下請でありますから、いわば国家事業の一翼をになった建設会社でございます。こうした国家事業の一翼をになう建設会社の中で、かりそめにもこの種の不当労働行為というものがこうして対外的に明るみに出されるということは、これは経営者としての品性の問題を云々されてもやむを得ないのではなかろうかと私は思うのであります。少なくとも国家事業でありまするから、労働基準法の問題にいたしましても労組法の問題にいたしましても、やはり適法な運営を使用者側もやっぱりはかっていかなければならぬし、監督官庁たる労働省もそうした指導をやっていただきたいと思うのであります。いまお話のように、おそらく明るい見通しというお話でありまするから、私の質問はこれで終わりますけれども、もしまた万が一紛糾するようなことがあって、さらに困難な解決の問題が出ましたとするならば、私は再びここで御質問しますが、この事件が一日も早く解決されるよう、私も関係当局の皆さん方にお願いをこの際しておきます。これで終わります。
  51. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  52. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 速記を起こして。
  53. 紅露みつ

    紅露みつ君 私、席をはずしておった間に出ませんでございましたらお答えをいただいておきたいと思いますが、それは日雇い労務者の賃金のことでございます。もちろんこれは普通の労働者賃金と違うということはわかっております。失対のこれは救済事業でございますので、安いということはわかっておるのでございますけれども、先ほども委員お話の中に、日当六百円というのが出たと聞いたのでございますが、その六百円というものは、たいへんにこの日雇い労務者の日当というものにはランクがあるということでございますが、この六百円というのはどこのところでございましょうか、その位置づけをお聞きしたいと思います。
  54. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 御承知のように、明日から新年度の失対賃金として、全体としましては一二%、金額で六十七円五十八銭アップされるわけでございますが、その平均賃金としましては六百二十九円二十八銭でございます。これを地域別に、また、作業の種類、段階別に展開をするわけでございますが、六百円という額は、六百円ちょうどというのはないのでございますが、六百六円、これは保険料の関係で端数がついております。六百六円のところが、たとえば新潟市の中位といいますか、中間のところの賃金段階が六百六円になっております。
  55. 紅露みつ

    紅露みつ君 それで、六百円の位置づけはわかりましたけれども、たいへんに段階がありますということでございますが、私が特に心を痛めますのは、この六百二十何円でもたいへんだと思いますが、さらに女子の日雇い労務者はどのくらいの割合でありますか、これも伺っておきたいし、聞くところによりますと、いまもおっしゃったように、地域の差があるということでございますが、私どもの身近なところに働いております者は四百何十円というような日当を女子がもらっておるわけでございます。五百円に満たないわけでございます。この労働の性質から申しまして、都会等では街頭のお掃除をするというような軽い労働もあるようでございますが、地方に入りましてそれを位置づけるとすれば、ずっと低いところにいくのでばなかろうかと思いますけれども労働はこれと反比例いたしまして、地方に入りますと、ほとんど男子と同じ重労働をいたしておるわけでございます。生活保護にたよらず、女子でありながら、こうした男子と同じ重労働に服しておるという者に対しては、私は実にけなげだと思うのでございますが、その点をこれは大臣にも伺いたいのでございますが、大臣は理解の深い方ですから、これでいいとお思いにならないと思いますけれども、現在の物価の状態もあわせ考えまして、けなげに、生活保護にたよらずに、男子と同じ重労働に服するというような女子に対しての御考慮はもう少しあたたかくてもいいのではないかと思うのですが、大臣はこれを将来どういうふうにお考えか、これでいいとお考えになるか、伺っておきたい。それから、どのような割合で女子がこうした面に入っておるかということは事務当局から伺っておきたいと思います。
  56. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 男子と女子の失対労務者の性別の比率でございますが、昨年の十月末の資料によりますと、男子が五一・六%、女子が四八・四%、大体半々になっております。  それから賃金のきめ方は先ほど申し上げたとおりでございますが、作業の種類によって賃金の額が違いまするけれども、男女の差別はその間にございません。同じ作業についておれば男子も女子も同一賃金でございます。  それから、なお、私、二十六区分に分けられた各府県の地区別賃金日額表を手元に持っておりませんので、非常に恐縮でありますが、四国の場合の高松の中位号俸を見てみますと五百六十一円、今度の改定によりまして五百六十一円に相なります。従前の金額は四百九十六円でございますので、五百六十一円、大体この辺で二二%近く上がっているのじゃないかと思います。
  57. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 失対労務者の賃金につきましては、先生お話のとおり、私もこれで十分だとは決して思っておりません。私は先生お話を伺って、非常にむしろうれしく思ったのであります。というのは、私は率直に申し上げますが、なかなか一般的に私どもの耳に入るところでは、失対労務者はあまりよく働いてくれぬというような声が入ることがむしろ多いのですが、先生は、非常によく働いて、むしろ気の毒じゃないかというお立場でお話くださったので、私どもとしては、そういう声が非常に強まってくるということになりますれば、これはわれわれが、早い話が、予算要求をするにしても、非常に予算要求しよくなるわけでありまして、もちろん失対労賃をきめますには、各地方ごとに同種の屋外労務者の賃金等をしんしゃくして、審議会の議を経てでなければきめられない、こういうことになっておりまするが、しかし、一般的にこの失対労務者というものはあの程度の賃金であんなに働いては気の毒だ、こういうぐらいになってくれば、私どもは、これは予算要求をするにも非常にしよくなるわけでありまして、ことしも十分でありませんが、私どももこれは大臣折衝の段階まで実はがんばりまして、ようやく平均一・一%のアップということを認めてもらったようなわけでありまして、決して満足はいたしておりませんが、これもお小言をいただくかもしれませんが、まずまずと実は思っておるわけでございます。なお今後ともひとつ改善には努力いたします。
  58. 紅露みつ

    紅露みつ君 もう一度申し上げておきたいと思うのですが、労働に対しては男女同一賃金であるべきは、これは大原則でございますが、この行政指導、そういうことは行き渡っておりましょうか。私の聞く範囲では、私は四国でございますが、高松をいま例におとりになりましたが、私の場合は特殊なのでございますが、男子と女子とに区別があるようでございます。もっと、その仕事が、重労働に男子がつく、軽いほうに女子がつく、こういうことで区別されるならば、これはまたこれでわかります。だが、実際はほんとうにあのもっこをかつぎ、そしてシャベルを持って同じ重労働に従っておりましても、やっぱり男女の差があるということを私ははっきり聞いておりますが、しかし、それはその人たちの当事者の言うことでございますので、それだけの行政指導が行き渡っておると事務当局は信じておられるのでしょうか。  それから、大臣お話も、大臣ほんとうにたいへん御理解があるものですから、私は御信頼申し上げておりますけれども、まあ上がりまして五百円でございますが、それがさらに女子のほうが男子のほうによけい取られるということであれば、いまの貨幣価値から申しますと、これはあまりにもかわいそうな気がいたします。気の毒でございます。これは今後努力をするという、それはそのとおりちょうだいすればありがたいおことばでございますけれども、とかくこれはお役所のことばでございまして、どうか積極的にひとっこれを取り上げてやろうというお気持ちになっていただきたいので、私は時間がないという与党の立場でもございますし、御遠慮申し上げなければならないところであろうと思うのですが、あえて申し上げておるわけでございます。で、どうぞこの点はもっと積極的にひとつ考えていただきたい。それから、事務当局の行政指導、それはほんとうに徹底しているとお考えかどうか、伺っておきたい。
  59. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 作業の区分により、種類により、また、応能区分によって賃金がきめられておりますけれども、その間に男女の差によって賃金を差別する、性別によって差別をつけるということは絶対にいたしておりません。もしそういった同一の作業に従事しながら賃金が違うということであれば、私どもも第一線をさらに督励をいたしまして、そういうことのないように是正いたしたいと思います。
  60. 紅露みつ

    紅露みつ君 これは当事者から聞いておるのでございまして、私もそれを現場に行って支払いを見たわけではございませんが、どうかもう一ぺんそれは行政指導をやっていただきたいと思います。大臣にはくれぐれもお願い申し上げておきます。近い将来に何とか──これこそあたたかい政治だと思うのです。生活保護にたよりがちなこの低所得の人たちが、しかも、がんばって、ほんとうに男の人たちと同じ重労働をしているのをこれは私はこの目で何べんも見ているのでございます。それでどうかというと、差があるということを婦人の労務者が訴えておりますので、どうか一片の指令に見過ごされないで、もう一度行政指導を強力にしていただきいたということを申し上げておきます。
  61. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生の御指摘の実情につきましては、さっそく現地をよく調べまして、もし間違っていることをやっておれば直ちに訂正させることにいたします。なお、全体の賃金につきましても、及ばずながら是正いたしたいと思っております。
  62. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は、大臣の所信についてお伺いをしたいと思うのです。  大臣の所信を伺いますと、雇用の問題、身体障害者、出かせぎ問題、災害の問題と労使関係の安定の問題、いろいろおあげになっているのです。   〔理事佐野芳雄君退席、委員長着席〕 私は、この問題は当然なすべきことであると同時に、世論のしからしめるところによって今年もその政策をやっていこうと、こういう姿勢にすぎないのではないかと思うのですね。積極性がない、早く申しますならば。もっと労働省は、藤田委員ですかのおっしゃったように、もっと積極性のある労働行政をやってもらってはどうか。たとえば労使関係の問題も一応ここで取り上げておられますが、労使関係で解決のつかない労働条件の問題がたくさんあるわけですよ。私は例をあげますならば、退職金の税金の問題、今日のような物価の上昇がものすごい勢で実質賃金を追い越した物価の値上がりがしておる。不況の時代の退職金の値上げをしようと思っても、これは困難性がある。さらに、もう一つは、逆に、これを解決つけようとしても、労使では解決のつかない問題ですね。この税金等こそ、政府あたりが老後生活の安定のためをお考えになるなら、私は、当然この税金の免税措置を労働省あたりはとるべきだと思う。これは先ほど藤田委員もおっしゃいましたが、この定年制の問題ですね、これとも関連があると思うのですよ。いま男子の平均年齢六十九歳何ぼでしょう。女子が七十二歳何ぼですね。この平均年齢の延長から考えてみて、六十歳の定年制ということは当然のことだと私は信ずるわけです。ところが、一方、逆に、経営者は逆のコースを来ておる。しからば平均年齢がこれだけ延びておるのに老後の生活がそれでできるような日本のシステムかというと、そうじゃない。その上税金まで取ってしまうということになれば、これは何としてもいま政府立てておられる──大臣の所信表明が悪いとは言いませんけれども、所信表明をされたことは、現実世論、労働者の攻勢等によってどうしてもやらなくちゃいかぬもんだけを取り上げてやっているところに問題がある。そうではなくて、あくまでも労働者の擁護の立場にある労働省としては、一歩前向きの姿で、政治で解決つけるという問題になぜメスを入れられぬか、この点は私は非常に大きな問題だと思う。したがって、先ほども大臣は、この問題について、定年は六十歳は決して不当じゃないと、こういうふうにおっしゃっているのです。ところが、これは労使でないと解決つかない問題がありますね、労使でないと解決つかない問題があります。こういうふうに解決つかない問題は、それは労使で解決つけるという方法もありますけれども、やはり解決つくその退職金の問題等については、私は十分これを考えてもらいたい。もう一つこれに付加して、年金ですよ。年金の問題は労働者が掛けておるのですね。一ぺん税金を収入から取られたその金の中からもう一ぺん掛けて共済組合に出すのですね。それを六十歳以降になったら今度は年金をもらうわけですね、それにまた税金を取るわけですね。年金に対しても、もう身体障害者とか、特例の人でない人は税金のかからぬ者はないですよ。こういう問題を前向きの姿で私は労働省自体がやらないところに問題があると思うのですね。現行が悪いと私は申し上げているのじゃない。もっと前向きの姿で労働省自体がやれることをやってもらいたい。このことを私は大臣はどうお考えになっているのか、一応大臣考え方をお聞きしたい。
  63. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生お話はまことにごもっともでございまして、私どもも各方面の御意見には十分意を配りながら、できるだけ私どもとしては積極的に万般のことをやりたいと、こうつとめておるわけでございますが、確かになかなか意に満たない、実現ができてないという面もたくさんございます。それは今後の努力によらしていただくといたしまして、ただいま税金の問題等につきましても、労働省の立場から、あるいは勤労者の財産形成のためであるとか、あるいはたぶん退職金のことも、われわれのほうはわれわれとして税制調査会等にもこれは要求をしたはずですが、そればかりではなく、これは間接的になるかわかりませんが、たとえば保安施設等に対しての、これは主として言うまでもなく企業ですが、保安施設に対する減免の問題であるとか、税制の面でもずいぶん数多くの要求をしたわけであります。そのうち、実現したものとしないものとがございますが、その詳細は後ほど官房長から御説明申し上げます。なお、しかし、引き続いてもちろん努力をいたすつもりでございます。  定年制の問題は、先ほど私の考えを申し上げたとおりでございまして、先般、御承知のとおり、地方公務員の定年制といったようなことについていろいろ話題が出ましたが、私は、やはり労働行政の立場から自治大臣にも十分私ども考えておるところを申し述べたわけでありまして、あなたも御承知のとおりのことになりましたが、いずれにいたしましても、この問題についても、できる限りもちろん今後とも努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) ちょっと速記を一とめて。   〔速記中止〕
  65. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) 速記を起こして。
  66. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 御指摘のように、退職金につきましての税制の改正につきましては、従来から労働省は、数回ならず大蔵省との間で、政府部内で主張いたしまして、ただいまのところでは、御承知のように、一般所得と分けて課税をするということと、勤務年限一年について、五万円の控除をするというところまでまいったというように考えております。御指摘のように、それだけで十分かどうかにつきましては、なお検討をさしていただきたいと思いますが、特に勤労者財産形成ということもございまして、昨年、一昨年等から、退職金をさらにこれを勤労者財産形成的に使う場合には一そうの優遇をすべきであるということは、事務当局間で大蔵省当局とも従来とも話し合いをしておるところでございまして、今後とも努力をいたしたいと思います。
  67. 高山恒雄

    高山恒雄君 きょうはこれで打ち切ります。
  68. 阿部竹松

    委員長阿部竹松君) まだ質疑希望の方もおありのようですが、本日は午後三時から本会議が予定されておりますので、本日はこの程度にとどめ、次回は四月十二日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会      —————・—————