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1965-12-28 第51回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十八日(火曜日)    午前十時二十分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二十七日     辞任         補欠選任      丸茂 重貞君     館  哲二君  十二月二十八日     辞任         補欠選任      館  哲二君     丸茂 重貞君      小平 芳平君     田代富士男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         小柳  勇君     理 事                 鹿島 俊雄君                 川野 三暁君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 徳永 正利君                 山本  杉君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 森  勝治君                 山崎  昇君                 田代富士夫君                 高山 恒雄君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        労 働 大 臣  小平 久雄君    政府委員        防衛施設庁長官  小幡 久男君        防衛施設庁労務        部長       江藤 淳雄君        外務省北米局長  安川  壯君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生大臣官房会        計課長      戸澤 政方君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働大臣官房会        計課長      上原誠之助君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      伊藤 栄樹君        厚生省医務局次        長        渥美 節夫君        労働省労働基準        局労災防止対策        部長       石黒 拓爾君        自治大臣官房参        事官       降矢 敬義君     ―――――――――――――  本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○労働問題に関する調査  (不当労働行為に関する件)  (失業保険制度に関する件)  (昭和四十一年度労働省関係予算要求に関する   件) ○社会保障制度に関する調査  (米軍食傷兵の検疫に関する件)  (国立療養所等運営に関する件)  (昭和四十一年度厚生省関係予算要求に関する   件)     ―――――――――――――
  2. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  委員異動についてお知らせいたします。十二月二十七日、丸茂重貞君が委員辞任され、その補欠として館哲二君が選任されました。また、本日、小平芳平君が委員辞任され、その補欠として田代富士男君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  ガン対策に関する件の調査のため参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  まず、不当労働行為に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言願います。
  7. 森勝治

    森勝治君 私は、埼玉県下に起こりました不当労働行為の問題について大臣に御質問をしたいと思うのでありますが、その前に、一点だけ聞いておきたいことがあります。それは、初めて私は議員となったものでありますが、かねてから本件につきましては担当大臣の御出席方をわずらわしておりましたが、再三再四にわたる出席要請にもかかわらず、御出席が願えなかった。押し詰まったきょうやっとおいで願ったようなわけでありますが、総理は、口を開けば慎重審議国民のための政治、人間尊重経済安定等、お題目はたくさん並べますが、さて、われわれが具体的な問題についての審議に移ろうとすると、所管大臣がなかなかおいで願えない。もちろん多忙な方でありますから、それは十分承知をいたしておりますが、かりそめにも当委員会定例会議等の場合においては、他を差し繰っても本委員会出席するのが所管大臣としての当然あるべき姿ではなかろうかと私は思います。したがいまして、まずこの点についてお伺いをしたいと思うのです。
  8. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 森先生から御指摘のございましたように、所管常任委員会である当委員会につきましては、私としましても、都合のつく限りと申しますか、優先的に私としては出席をいたすべきものと、かように心得ておるわけでございまして、従来におきましてもかような心づもりでまいったのでございます。その間、あるいは連絡不十分等のために御要求に応じられないことも、あるいはあったかと思いますが、私としましては、誠心誠意つとめておるつもりでございますし、今後も、もちろん同様の考え方で臨む所存でございますので、御了承いただきたいと思います。
  9. 森勝治

    森勝治君 それでは、誠心誠意お答えくださるものとお見受けいたしまして、以後私の質問をしたいと思うのであります。  御承知のように、もうすでに暮れもだいぶ押し詰まっております関係上、本件について、私は各関係方面の皆さんから十分御答弁をわずらわしたい、このように考えておりましたが、本日は他にも用意された案件が多々ある模様でありますので、私は、かいつまんで要件のみをお願いし、余す問題につきましては、後日またあらためてとくと御返答わずらわしたい、こういう考えで、以下質問を申し上げてみたいと思います。   第一点は、労働基準法の問題でありますが、基準法第一条によりまするならば、「労働条件は、労働者人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とあります。労働基準法労働者基本的人権を守るためにあることは当然なのでありますが、この点について労働大臣としての明快なる所見を承っておきたいと思うのです。
  10. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 基準法のねらいといたしておりますところは、まさに先生の御指摘のとおりであると考えます。
  11. 森勝治

    森勝治君 それでは、次にお伺いしますが、しからば、労働準法を担当する職員心がまえはいかにあるべきかという問題について、大臣にお伺いしたい。
  12. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 担当職員心がまえとしましては、一言にして申しますならば、あくまでも法の適正なる運営を行なう、こういう一語に尽きるかと存じます。ただ、私は、これも何と申しますか、いわゆる法の運用という問題になりますと、いわゆる法を生かして使うといいますか、そういう心がまえも、常にこれはひとり基準法関係ばかりではないと思います。そういう考えが望ましいのではないかと考えておるのであります。つまり事案によりましては、むしろ指導的な立場国民に親切に教えてやる、こういう心がまえがまず必要だろうと思いますし、また、事案によりましては、あくまでも厳正なと申しますか、厳格なと申しますか、そういう立場で法の施行に当たる、こういうことでございまして、いずれにいたしましても、最終目的は法を適正に運用いたしていく、こういうことであろうと思います。
  13. 森勝治

    森勝治君 いま御答弁をいただいたのですが、答弁によりますと、法の適正な運営をはかるために法を生かして使うということが一点。それから、そのためには指導的な立場を堅持することが一点、もう一点、すなわち第三点は、あくまでも厳正公正であるという、この三点だろうと思います。いま大臣からそのような基本的な労働基準担当職員心がまえをお伺いをいたしたわけでありますので、今度は、はたしていま三点にわたって大臣に御答弁をいただいた内容をあなたの部下はおやりになっておったかどうか、こういう問題について具体的な質問をひとつしてみたいと思います。  さて、具体的な質問の第一点といたしましては、本年二月に起こりました埼玉蕨市役所における職員の不当首切り問題についての見解を承りたいと存じます。本件につきましては、自治省からも参事官等の御出席をわずらわしておりますので、これらの方々には後刻御質問をしてみたいと思いまして、とりあえず労働省関係について、先に大臣に御質問をしたいと思います。  本件は、昭和三十九年十二月七日、ちょうどいまより一年前のことでございましたが、市民に対するサービスという美名のもとに、蕨市長が蕨市訓令第三号を発しまして、職員氏名札着用を命じたところから、市側労働組合との間に紛争が起こった事件でございます。この紛争の起こったその結果は、時間がありませんから、やりとりの問題についてはここで言及いたしません。その結果、市側は、組合側氏名札着用命令に対する不服従というものは組合役員の扇動によるものだという見方をいたしておるわけであります。そこで、ことしの二月一日になりまして、蕨市役所組合執行委員長でありまする小川清君をはじめとし、橋本正夫委員長森武司書記長上原勝紀書記次長の四名を、地方公務員法第三十二条、同二十九条による懲戒免職に付した不当労働行為事件であります。  そこで、私が末席でお伺いしたいことは、この全貌すべてではなくして、時間の関係上、労働基準監督署職務権限の問題についてこれからお伺いをしてみたいと思うのであります。  御承知のように、地方公務員には、労働基準監督署権限に属するものと、しからざるものとの二種があるわけであります。たまたま本件小川清執行委員長市立病院レントゲン技師でありましたので、監督署権限に属するわけであります。そこで、小川君の首切り問題につきましては、労働者の責めに帰すべきものという理由によって、すなわち解雇予告手当を支払わない手続首切りがなされたわけであります。御承知のように、この種の扱い方は、かねてから監督署に届け出てこの処分決定がなされて、しかる後に首切り手続をとるのが法のたてまえであるわけであります。したがいまして、当該市長は、解雇予告除外認定申請浦和労働基準監督署提出をしたところであります。この解雇予告除外認定申請は、労働省の指針によりますならば、迅速に処分をしなければならない、是非を明らかにしなければならぬということに相なっております。すなわち、昭和二十三年の五月の基準局長通達によっても、労働基準法による許可、認可及び認定申請に基づく行政処分は、すべてあとう限り迅速に処理すべきことは言うまでもないが、特に同法第二十条第一項ただし書きによる解雇予告除外認定については、事の性質上、特に迅速にこれを処理決定すべきものであるから、十分その取り扱いに留意せられたいとあります。また、昨年の四月の通達によりますと、内部事務処理基準によれば、許認可事務迅速化をはかるため、処理期間原則として二週間としたという通達が全国の各出先に送達されておるのは御承知のとおりであります。ところが、本件は、二月九日に浦和監督署長が、以上、事あげいたしました理由申請書提出があったにもかかわりませず、二カ月間も、二月から四月の半ばごろまで調査もせずに放置してあったということはどういう理由に基づくのか。先ほど大臣が言われました、法を生かして使う指導的な立場でということでありましたが、いま私が申し上げました二つの迅速にすべきだという通達にも違反をしておるわけでありますが、こういうことが出先で行なわれたというこの実態を私がとらえて特に大臣にお伺いしたのだが、こういうことが許されてよいものかどうか。もし許されるとするならば、先ほど基準監督担当職員心がまえの三点については、大臣の御答弁出先のあり方というものは全く相反する二つの姿が生まれておるとしか私は理解できません。したがいまして、どうしてこんな二カ月もほっておいたのか、この点についてお伺いしたいと思うのです。また、この問題についてはたくさん質問がございますので、御質問の範囲についてのお答えをいただき、次ぎにまた新たな御質問をいたしたいと思います。
  14. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先ほど私から申し上げました法運用精神から申しまして、先生の御指摘蕨市役所におきまする問題の取り扱いは、私も、いまお話を承ったところによりますと、必ずしも万全ではなかったと、かように存じますが、事は具体的な問題でございまして、私も詳細は、はなはだ申しわけございませんが、承知いたしませんので、誤ってもいけませんから、基準局長から答弁いたします。
  15. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいま森先生から御指摘のとおり、監督事務処理方針といたしましては、できる限り迅速にこれを処理する。そうして、できる限りと申しましても、その具体的な基準を示す必要があると存じまして、御指摘のように、原則として二週間で処理すると、こういう通達を出しておる次第でございます。ただ、労働争議状態にあります場合に、どのようにこれを処理するかという問題がございます。この点については二つの点から申し上げることができると思いますが、第一は、監督業務を公正に執行するという立場から、労使紛争が生じた場合には、いずれの側にも影響を与えるような措置をなすということについては、かなり慎重を期するという態度が要請されております。これはわが国だけのことではございませんので、ILOで作成いたしております監督官手引き等におきましても、そういった場合に監督官業務執行公正性を保持するための諸点といたしまして、労使紛争の場合には、いずれの側にも利益を与えるような形で事を処理することを慎む必要があるという旨が監督官庁などに示されておるわけであります。これは何もILO監督官手引きに書かれておるからということではなく、事の性質上、公正を期するためにそのような配慮が必要であるということは一般的に申せるかと存ずる次第でございます。  かつ、また、第二の点といたしまして、御承知のように、労働基準法は、主として個別的労働関係規制の対象としておりまして、集団的労働関係についてはほとんど触れるところがない。そこで、個別的労働関係に関する規制をいたしておりますが、ただいま申しました労働争議状態にあるというような集団的労働関係との接触の場をどのように処理するかという点については、具体的な業務執行上いろいろ問題のあるところでございます。そのような基本的な問題があるわけでございまするが、ただいま御指摘のケースにつきましては、処理期間が非常に長くかかったことと、それから、具体的な行政処分として許可すべきかすべからざるかという、行政処分を明確にせずに口頭で伝えて処理せしめたという、そういったやり方が正しいかどうかという問題があろうかと思うのであります。かなりその判断に長期を要したという点については遺憾に存じます。ただ、その真意が那辺にあるかという点でございますが、労働基準監督職長といたしましては、行政処分として事を処理するよりも、労使紛争状態にあることであるから、もう一度労使間で自主的に話し合いをして処理するのがむしろ結果的にはよくないかという判断をもちまして、この許可申請を却下するというような場合もあり得るわけであります。しかも、事案内容が明らかに否定的に出ておりますような場合には、その否定的見解行政処分として述べることよりも、もう一度労使間で十分話し合うべきであるという判断も成り立ち得るわけであります。要するに、事案処理の形といたしましては遺憾な点があることは私ども率直に申し上げたいと存じます。が、それとの関連におきましていろいろな事情がありましたこと、これもひとつ御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  16. 森勝治

    森勝治君 局長からそういう御答弁をいただいたので、私はいまの御答弁についてあげ足をとる心は毛頭ございませんが、私の気になる御答弁をいただいたので、明らかにしておくために質問するわけですが、前段でおっしゃられた、労使紛争の場においては、労使いずれの側にも利益を与えることのなきように、労使いずれかのほうに利益を与えることは、どっちか、甲とか乙とか、いいとか悪いとかという認定慎しめと、こういう方針だとおっしゃるが、しかし、それは局長らしくもないお答えじゃないでしょうか。基準法精神からいくならば、果敢に厳正に処理すべきものとするというのが明らかに法のたてまえ、これは明文化されている。それをあなたはそうおっしゃる。その点が一つ。  それから、もう一つ労使間の個別規制争議上の問題であるのでということで、後段でおっしゃられた労使関係が自主的に話し合いをすべきだと、そういう観点に立って本件処理したとおっしゃるが、さて、しからば首切られた労働者側市側理事者側話し合いしなさいという勧告をした具体的な事実がありますか。何にもありはせぬじゃないですか。市側とは連絡をとって指導をし、監督者がさせたのじゃないですか。まっかなうそじゃないですか。具体的にこのことについては、大臣はなるほどこまかいことは御承知ないでしょう。しかし、当該局長は、もうしばしば当該監督局長監督官をお呼びになって、もう数カ月前から本件についてはおさおさもう御準備なさった趣でありますので、局長はもう十分御承知のはずでありますが、どうしてそういうことおっしゃるのでありますか。いまの二点についてひとつお答えをいただきたい。
  17. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働基準監督官といたしましては、労働基準法執行につきましていろいろな任務を有しておるわけであります。そういう観点から事を処理するというのでございまして、労働争議がありました場合に、一方に有利になるようにいろいろ指導を加えるとかどうとかといったようなことは差し控えなければ、要するに法に定めた基準によりまして事を処理するということでございますが、この点につきましては、労働兼準監督官業務執行公正性を保持するという観点から慎重でなければならない、こういうことであります。  それと、もう一つは、いま申しましたように、法定基準違反があった場合どうするかということであります。違反があった事実をうやむやにするというようなことであってはこれはならないのでありまして、そのことと公正性の保持とはおのずから別であります。その点ちょっとことばが足りませんでしたので誤解があったかと存じますが、先ほど申し上げましたのはそのような趣旨でございますので、法定基準違反した場合には事は厳正に措置せざるを得ない、こういうことでございます。ことばが足りませんしたので、ひとつ……。
  18. 森勝治

    森勝治君 まあそうおっしゃるのですから、その点について私もこれ以上事あげしません。  そこで、いま慎重審議という、あるいは慎重調査というお話でありましたが、なるほど人の一生を左右する重大な問題についての取り扱いですから、慎重もけっこうでございましょう。しからば、どうしてこういう監督署の中で論争を巻き起こすような問題が起こったか、具体的に申し上げます。慎重けっこうでしょう。労使双方が盛んに頭へきているときには、なかなかそう簡単に理非曲直というものは明らかにすることは十分でないかもしれません。だから、なるほど五日や一週間は冷却期間というものを置く必要もあり得るだろうと思うのでありますが、本件はそういうのと全く趣を異にしております。なぜならば、これがまず対外的にわかりましたのはどういう場でわかりましたかと申しますと、これは労働大臣が指揮される出先監督署職員が、あまりにも管理者側やり方労働者側冷酷むざん、一方的に経営者にのみ加担した行動をなさっておるために、労働者基本的人権を守らんとする出先一般職員がたまりかねて――大臣、よく聞いてくださいよ。埼玉労働基準局長に笠間をした問題からこの事件が公に出されたのです。具体的に申しましょう。ほうっておいたわけです。二月九日に申請になりましてね、それで四月までほうっておいて、たまりかねた労働大臣部下出先職員団体の代表が局長団体交渉の席上において、蕨市役所首切り事件は、書類があがってきておるにもかかわらず、長い間放置しておくということは、法を守るわれわれとしてはまことに忍びがたい、一体、局長はどうあれを処理されるのだという、団体交渉の席上で基準局長質問されて、局長がびっくりして、それからあわてて調べ出した。ところが、こういう確かにほうっておいた事実があるので、局長浦和の所長に対して、すみやかに事態を処理したまえという命令を下したのじゃありませんか、それから関係者を呼び出したのじゃないですか、そうでしょう。あなたのように、命令慎重審議はどこにあるのですか、お答え願いたい。
  19. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、あの二十条のただし書き規定によりますところの即時解雇処分につきましては、事柄の性質上、一方においては早く結論を出す必要があると同時に、一方においては慎重を期する必要がある、非常にむずかしい問題でございます。そこで、御指摘甲案につきまして、特に問題になりますのは地方公務員法に定められた懲戒条項と、つまり地方公務員法第二十九条の規定によりまして、条例地方公共団体懲戒に関する規程を設けるといったような仕組みになっておりますが、その場合に、労働基準法第二十条ただし書きの「労働者の責に帰すべき事由」との関係についていろいろ問題がございます。これは一般私企業おいても同様でありますけれども、私企業におきましては就業規則などで懲戒規程を設けておりますが、そういった懲戒規程にはいろいろな内容がございまするけれども、ややもすると、いわゆる懲戒処分としての解雇イコール労働基準法第二十条ただし書きの「労働者の責に帰すべき事由」による即時解雇がなし得る場合であるというような誤った考えが出される場合も多いように見受けるのであります。労働基準法第二十条ただし書きの「労働者の責に帰すべき事由」として認められるかいなかということは、私企業における就業規則の定め方とか、あるいは地方公共団体条例で定めるところとは別な観点から、つまり即時解雇をされたけれども、やむを得ないような悪質または重大な義務違反があったかどうか、まあ別なことばで申しますと、社会通念上、客観的に見ましても即時解雇をされてもやむを得ないような事実があったかどうかという立場から判断を下すべきものである、こういうふうに私ども考えております。ところで、ただいま申しましたように、条例による懲戒処分規程があります場合、懲戒処分事項に該当するとして地方公共団体の長が一方におい判断を下した、一方においては、労働基準督監署長が、労働基準法第二十条ただし書き規定の解釈といたしまして、そういった処分に対しまして別な観点から判断をする、こういうことになってまいるわけでございます。私どもは、いま申しましたように、事業場における懲戒規程とは別に、別な観点から労働基準法第二十条ただし書き精神に立脚しまして即時解雇をなし得るやいなやの認定をなすわけであります。事実そういうような観点から認定をかりにするとすれば、第二十条ただし書きに該当しないという結論が出る、このような判断を現地の局及び署においても持っておったようであります。ただ、時間的に非常に処置がおくれたという点につきましては、一方において、地方公共団体の長が、なるほど条例によるところの処分とのかね合いという問題があろうかと存じます。いろいろ部内のいきさつにつきまして御指摘もございました。そのような御指摘をいただきまして、私ども、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。基本的な結論としては、以上申し上げたとおりでございます。
  20. 森勝治

    森勝治君 もっと具体的に申し上げましょう。慎重調査という点について、二月九日に当該署長より浦和署長あてに申請書が出され、全労働の役員と埼玉局長が、団体交渉の席上で、職務怠慢見るに忍びずという質問を受けて、あわてて監督署処理を開始したのが四月六日ではないですか。二月九日に申請書が出て、十日に受理して、職員のほうから不満が起こり、片手落ちだという――自分たちがこんなことをしておったら法を守れないという、素朴な職員団体の代表の申し入れによって審理を開始したのは四月六日ですよ。首切りされた小川君を呼び出したのは、局長、四月八日、何と二カ月間何もしていないじゃないですか。判定を下す、理非曲直を明らかにするためには、なるほど慎重な態度も必要でしょうし、時間的空間も必要でありましょう。しかし、二カ月何をしておったか、何もしていない、職務怠慢以外に何もない。これは意識的に私はあえて上部から本件について強力な指導があったということは、ここは権威ある委員会でございますから、そういうことは申し上げませんが、そういうことがあったのではないかという疑問がさしはさまれても弁解のしょうがないじゃありませんか。どうするんです。この二カ月ほうっておいたのはどこに慎重審議がある、それからじゃないですか。それから二カ月ほうっておいたのはどういうわけですか、それを答えてください。
  21. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 本件につきまして、いろいろ上から働きをかけたとか、そういう事実は、これは一切ございません。私の知りましたのは、むしろ森先生からお聞きしまして知ったようなことでございまして、個別的な案件は全部現地に一任いたしておりますので、そういう点、上からどうこうということはないのでございますが、いま御指摘のとおり、時間的な経過を追ってみますると、二月十日に申請書を受理いたしましてから、ちょうどこの問題について労使間でいろいろ団体交渉を行なうとか、いろいろやっておりましたときでございましたので、争議に介入すべきでないという判断から、監督署おいては事態静観という態度をとったという報告を受けております。しかし、その後に至りまして、御指摘のように、三月に入りましてから使用者側から事情を聴取すると同時に、引き続いて労働組合側からも事情を聴取するという活動を三月下旬に開始をいたしました。そうして労使それぞれの事情を聴取いたしましたあとで、該当職員を、四月のいま御指摘のように六日、八日、十三日というふうに、引き続いて招致いたしまして事情を聴取したといういきさつになっておるわけでございます。
  22. 森勝治

    森勝治君 私は、どうもあげ足をとるのはいやなんですが、またあなたの御答弁の内枠で質問しなければなりませんが、いまあなたはこうおっしゃった、森先生から言われて初めて知った、こうおっしゃっておるんですが、それでは私に言われたのは何月の何日ですか。月だけでもいい、日にちはけっこうです。
  23. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) これはどうも私のことばがちょっと過ぎまして恐縮に存じますが、日は、書いたものはございますけれども、申し上げるのはいかがかと存じますので、これは差し控えさせていただきます。
  24. 森勝治

    森勝治君 その点はそれじゃわかりました。  そこで、具体的に質問します。いいですか、こういう問題は、やはりこういう場で発言するとか、私のような立場の者、あるいは事件関係の者が直接労働省へ出向かなければ事件がわからないのですか。具体的に申しましょう。二月十八日衆議院の地方行政委員会では、この問題について数時間の論争を展開した、自治省おいでになっているからおわかりになっているはずだ。こんな大きな困難な首切りのでっかい問題を、ぬけぬけとこの席上で先ほどのような御答弁をいただく、御説明いただくことは、私はほんとうにちょっとさびしい気がしてしようがない。衆議院でこれはもう大騒ぎになったことでしょう。速記録もここにありますが、一〇ぺ-ジ以上、約二〇ぺ-ジ近い論争が、所管大臣と担当局長、専門員の中でかわされているんですよ。労働問題の首切り問題、それを自分の所管でそういう問題が論議になっているのに、この席上で、私は全然知りませんでしたと公的に言うならば、ここで私から質問を受けなければ知りませんでした、もっと具体的にいえば、役人の答弁として、恐縮だけれども、きょうあなたから質問を受けて初めてわかったんだというような答弁としか私は思えない。これはちょっとひどいじゃないですか、どうですか、それ。
  25. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 事案内容的な問題よりも、私のほうが事案を知ることのおそいことについての御指摘をいただきまして、たいへん恐縮に存じます。ただいま先生お話のとおり、地方行政委員会におきまして、自治省を中心にいたしましていろいろ問題があったということを後に承知をいたしておる次第であります。
  26. 森勝治

    森勝治君 大臣、ちょっとお伺いしたいのですが、いま私あまり時間をかけるのは恐縮ですから、内応説明しませんが、二月九日に除外申請が出て、本人を呼び出したのは四月八日、三月九日に局長からお目玉ちょうだいしたから活動を開始したんでしょうが、それは部内だけでやっているので、当該の該当者を呼び出したのは、蕨の市役所側の課長を呼び出したのは四月六日、小川君を呼び出したのは四月八日、記録上は。少なくとも二カ月もほうっておいた。大臣が三項目にわたって答弁いただいた趣旨と全く違うが、所管大臣としてどうですか、お答えを。
  27. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 本件取り扱いについての御意見なり御叱正なりでございますが、先生が御指摘のように、二月の十日に申請を受理いたしておきながら、これが調査を開始したのが四月に入ってからだということは、事情が争議中であったという、そういう事情があったにいたしましても、私自身、少しおくれ過ぎておったんじゃないか、率直に私常識的にそういう感をいま抱いておるのでございます。ただ、先生お話のように、基準監督署職員局長との団交の席で話が出て、それから局長調査の促進を監督署長命令した、こういうことのようでございまして、その団交がいつあったかも実は私も知りません。先生お話のうちにもなかったのでございますが、そういう事情からいたしましても、中央と申しますか、本省と申しますか、とにかく上のほうから下のほう、下の現地の機関に対してことさら本件をほうっておくようにとか、そういうことじゃなかったことは、これは御了察いただけるかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、たいへんおくれておったことは私も遺憾に存ずるわけでございます。
  28. 森勝治

    森勝治君 大臣が率直にそうおっしゃるから、私は次に移りましょう。  この除外申請というものは、申請書を出す前に、この申請書精神にあるような内容首切りを行なったとしたならば、それは法的にどういうことになりますか、大臣にお伺いしたい。局長でもけっこうです。
  29. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点は、労働基準法第二十条ただし書きの解釈の問題になろうかと存じます。実態的には、客観的に見まして、即時解雇されてもやむを得ないという事実があり、その事実を基礎にいたしまして即時解雇をしたというような実態が備わっております場合には問題はないわけであります。その判断の除外認定申請を受理しまして除外認定をしたと、除外認定の効果の問題でありますが、その「労働者の責に帰すべき事由」が客観的に存在したかどうかということと除外認定処分との関係はどうかというふうに私は先生の御指摘を理解したのでありますが、除外認定は、いわばこれを確認する効果を持つ労働基準法上の罰則適用の問題と、それから、いわば司法的効果の発生との関連における除外認定の効果というような点から見ますれば、罰則の適用の問題と、その確認的な効力を持つものであるかという点について、以上のような判断をした次第でございます。
  30. 森勝治

    森勝治君 それでは、さらに具体的にお伺いしましょう。一体この種の除外申請は、事前に認定を受けなければならないのでしょう、大臣、そうですね。明快にひとつお答えいただきたい、大臣から。
  31. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) そのとおりでございます。
  32. 森勝治

    森勝治君 いま大臣のおっしゃったとおり、私が考えたとおり、この種の除外申請は男前に認定を受けなければなりません。ところが、基準監督署は何をやったか、大臣、二月一日に首切りを行なっているでしょう、二月一日に首切りを行なっておって、二月九日に申請書を出してきた、申請書を出した時点にあなたのおっしゃった法違反ではないですか、それを受け付けたんではないですか。どうなんです。局長、受け付けたんではないですか。いいですか、もうこれだけでは不法文書ではないですか、申請書提出の時点において、すでに二月一日に首切りされた。申請書を読み上げましょうか。首切ってしまったから認めてくれという申請書ですよ。いいですか、この人間はこういう悪いことをしたから、解雇予告手当を払わないで首切りしたいからお認め願いたいというのが普通でしょう。原文を見直さい、申請書の、労働省から出した。ところが、原文を見てもわかるでしょう、首切ってしまった、ふらちなやつだから二月一日首切った、認めろ、解雇予告手当は払わない、申請をしたときから書類的に不備ではないですか。なぜ受け付けたか、しかも、二カ月間も放置しておいた、大臣お答え願いたい。
  33. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 手続のことでございますから、私からお答え申し上げます。確かに御指摘のとおり、解雇処分なり意思表示をしたあとで除外認定申請をするという手続は、これは当を得ないものでございます。ところで、そのあとで出した除外認定申請をしからば受理しないかということでございます。監督署長といたしましては、労働基準法第二十条ただし書きの「労働者の責に帰すべき事由」があったかどうかということの判断をいたすわけでございますから、申請手続が当を得なかったものであるにいたしましても、それを手がかりにいたしまして、「労働者の責めに帰すべき事由」があったかどうかということを判断をするというような手順に入るわけでございます。
  34. 森勝治

    森勝治君 私は、大臣答弁を求めたところが、局長が博学ぶりを示されたので、重ねて私は局長にお伺いするが、大臣答弁を何とあなたはお聞きになった、大臣答弁を。事前に認可を受けなければ、許可を符なければだめですとこの問題についてはおっしゃっておられるのですよ、あなたのいまの答弁は何です。何です。いまの答弁は。
  35. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど私が、前に申しました御答弁と合わせて御判断いただけますならば、つまり法律に定められました手続の問題と、即時解雇の効力が有効に発生するかどうかということとは別な問題として、実は別な時限でお答えしたのでありまして、まさに労働基準法上は、除外認定申請をいたしまして、その認定を受けた後に処置をするというのがこれは本来の筋でございます。ただ、その手続がおくれた場合の解雇は有効か無効かという、その処分の実質的判断をかりに裁判所で争うとすれば、私が先ほどお答え申し上げましたようなことで、即時解雇をなし得るかいなかは実質的に判断するということを申し上げたわけでありまして、労働基準法で定めた手続を歪曲してどうこうというような意思はさらさらないのでありまして、法の定める手順に従いまして措置していきたい、かりに裁判所で問題になりますればということで、先生の御指摘をあるいは多少私がその誤解に基づきまして解釈してお答えしたかと思いますが、その点は恐縮に存じます。
  36. 森勝治

    森勝治君 そこで、私は、先ほど大臣職員の仕事に当たる基本的な心がまえについてお伺いした第二点の、公正であること、よく指導をすることだということだが、しからば、二月九日に申請書が出されてきたのですから、内容を読めば、一読して二月一日に首切ったことが明らかになるじゃないですか。そこで、なぜ親切に教えてあげなかったのですか。これが法を生かして使うということではないですか。許可がなければ首切れたいのに首切ったと書いてある。その辺は当然生きた行政指導があってしかるべきじゃないですか、ものさし的にじゃなく。机の中に二カ月もほうり込んでおく、机に入れてかぎをかけておった。率直に申し上げると、かぎをかけてだれにも触れさせないでいたといわれている。あまり監督署の中に立ち入っては恐縮だが、所長みずから、これはおれが預かるといって机の中に入れて出さなかったとうわさされている、この問題ですよ。いま申し上げたように、くどいようですが、二月一日に首を切ったのだから、本来ならば二月一日以前に許認可の必要手続をとっておくべきだ。にもかかわらず、やらずに首切ってから申請書を送ってき方でしょう。ですから、その申請書がすでに文書的に誤りでしょう。そのときに指導を行なうのが正しいあり方じゃないのですか。それでかまわぬのですか。
  37. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点はそのとおりと存じます。解雇の通知をしたあとで除外認定申請をしているというのは当を得ないことでございます。先生の御指摘のような措置で処理すべきであるのが本則であると私どもも考えております。
  38. 森勝治

    森勝治君 だいぶ私の真意をおわかりくださってすなおにお答えくださったので、それでは次に移りましょう。  四月六日に審理を開始したわけですから、したがって、これに対する局則と申しましょうか、当該担当は浦和監督署ですが、監督署側の態度宣明がなされたはずですね、態度が明らかにされたわけでしょう。審理開始して結論を出したわけですから、対外的に発表するかいなかは別問題といたしまして、出先の機関としては、いま率直にあなたがこの申請書は不法文書だと認められた。認められたから、私はそのことについては深追いはしませんけれども、たとい不法文書にしても、それを審理開始したのだから、しからば、その不法文書をまともな文書だと監督署が誤解をして審理を開始したのだから、したがって、その審理した内容をひとつここで、結論が出たらしいですから、御発表願いたい。
  39. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 内容的にいろいろ検討いたしました結果、労働基準法第二十条の解雇の予告の保護を与える必要がないほど重大または悪質な事由があるというふうには認められないという判断に立ちまして、労働基準監督署長が口頭でその旨を市のほうに伝え、市当局から本件申請を取り下げさせた、こういう処置をいたしたわけでございます。
  40. 森勝治

    森勝治君 そうすると、内容はこういうふうに理解してよろしいですか。第一点は、蕨市職の小川執行委員長に扇動の事実がないということが第一点。第二点は、この事件が非常に軽微なので、ワッペンつけるかっけないかというような軽微な問題であるので、地方行政に何らの支障がないという二点が労働省出先の皆さんの結論であった、こういうふうに理解してよろしいですね。
  41. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 私ども、地方公共団体条例の解釈については、意見を申し上げることを差し控えたいと思いますが、労働基準法第二十条ただし書きの解釈といたしましては、「労働者の責に帰すべき事由」に相当するような事実が認められないという見解をとった次第でございます。
  42. 森勝治

    森勝治君 重ねるようで恐縮ですが、こういうことでしょう。解雇理由というのは、いま言ったように、労働者の責めに帰すべきことだというので、その内容は氏名の名札をつけるということを市職の小川執行委員長職員につけさせない、いわゆる扇動したということですね、それが首切り一つの有力な理由でしょう。業務を阻害したとかいうのでしょう。こういう理由なんですから、監督署側としては、当然他を扇動した事実があったかどうか、業務に支障を招来した事実があったかどうか、これは当然調査する責務があるでしょう。その調査をした結果、小川委員長については他を扇動の事実はない、ビラ一枚ぐらいでは証拠物件にならないと監督官は言われたはずだ、これを調べられた監督官は、さらにワッペンつけるかっけないぐらいで地方行政に著しい支障を来たすようなことは考えられない、こういうことなんでしょう。そうでしょう。したがって、蕨市長申請書は認めるわけにはいかない。官庁のことだから、文書で却下してしまえば済むけれども、それでは蕨市長の顔をつぶすというので、ここに片奇った監督署の善導がなされた。市役所側だけ呼んで却下させたのでしょう。そうじゃありませんか。一体、申請があった場合には、認定または不認定処分を必ず行なう義務があるでしょう。ありますね、そのことについてひとつお答え願いたい。
  43. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、申請を取り下げない限りは、認定、不認定処分をするということに相なります。
  44. 森勝治

    森勝治君 どうもあなたは逃げておられる。大臣はそうだといってうなずいておられるのに、取り下げればと言う。取り下げない限りと言う。取り下げないのを、あなた方は無理に取り下げさした事実があるじゃありませんか。監督署長室に呼んで、私は浦和監督署長に聞いてきたのです。私が蕨の幹部を呼んで取り下げさせましたと言っておる。あなた取り下げない限りじゃないじゃないですか。何で取り下げさせるのですか。事態が明らかになって、私はこれで三点申し上げた。第一点は、小川君は他を扇動した事実はない。第二点は、ワッペンをつけるかっけないかくらいでは地方行政の進展に何ら支障がない。第三点は、それが明らかになった時点で、大臣職員心がまえでおっしゃった、厳正公正を旨として、そしてちゃんと書類を出せばいいじゃないですか。出さないで、わざわざ呼んで却下さしたじゃないですか。こういうことを何と考えられますか。
  45. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど申し上げましたように、労働基準法第二十条ただし書きに該当しないという判断に立ちましてその意思表示をいたしておるわけでございます。したがって、一般私企業と異なりまして、地方公共団体の長がなした処分でございますから、そのような見解が表示された以上、そのような見解に従って行動すべきものとの判断に立ちまして、先ほど来先生が御指摘の、解雇したあとの申請でございまして、発端からどうもこれはおかしいのでございます。そういうような点から、現地の署長も非常に苦慮したようでございますが、形としては、内容的には、これは労働基準法第二十条ただし書きに該当しないという旨を含めまして取り下げさしたという形でございます。
  46. 森勝治

    森勝治君 非常に正直になってまいりましたね、お答えが。大臣は率直に、申請があった場合には認定、不認定というものの処分を必ず行う義務があるということは、大臣もそのとおりうなずいておられます。しかるに不認定処分をすると、いま私が前に指摘しましたように、国の機関が、蕨市長の免職処分が不当であったということになることでしょう。それじゃたいへんだというので、組合側が、すなわち小川君が著しく有利になり、公平委員会が行なう審理にも影響が大きいと監督署考えたとまで私は言いませんけれども、そういう邪推をされるような指導監督署がなされて、任用者である市側の不利益にならないように取り下げさしたものでないでしょうか。こう考えてまいりますと、本来救済さるべき労働者が、監督署が一方的に片寄った、すなわち、蕨市長のみのほうを指導ばかりしておって、労働者側を顧みませんでした。その結果、本来ならば労働基準法によってその身分を守られるべきはずの当該労働者が、逆にこの事件監督署がその処理をしなかったということで首切りされた。小川君は著しく不利になったのであります。もしこういうことが黙って見過ごされることがありとするならば、主さに国の機関としては不当な扱いをしたではないか。だから、私は冒頭に、この種の機関に携わる職員心がまえについて大臣に所見をただしたところが、三点お答えをいただいた。その三点、いずれもこの種の問題については該当しない、まことに私は残念だと思う。この点について、ひとつ大臣考え方をわずらわしたい。
  47. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先ほども申し上げましたように、本件取り扱いについては、まあ事情がどうであったにせよ、遺憾の点があったように思うと、こういうことを申し上げたわけでございますが、ただ、ただいまの先生のお尋ねの要点であります。このような取り扱いをしたことは市当局のほうの利益だけを考えて、小川君はじめ、労組側の職員立場が無視され、不利益を受けたのではないか、こういう御趣旨に承ったのでありますが、その点につきまして、私は、これはことばを返すようで恐縮ですが、若干異った感じをただいま受けたのでございます。と申しますのは、監督署といたしましても、やはり小川君らの解雇理由として市があげたこの事項が、少なくも基準法上はこの二十条ただし書きによる保護を与えるに価しないという判断をした、その間、まあ多少時間というか、日時を要し過ぎた感もございますが、それにしても、結局この小川君はじめ、数名の諸君の立場というものを十分理解をいたしましたがゆえに、この二十条のただし書きの保証を与えることの必要はないのだという、こういう決定をいたしたのではなかろうか。一方、また、市当局側に対しましても、これも先ほど局長から申し上げましたとおり、単なる一私企業でもございませんしいたしますので、基準法上はこういうことになりますよと、こういう判断ですよと、こういうことを口頭で申し、連絡をした。これもずばり文書でやることも確かに一方法でもございましようが、冒頭私が申し上げましたように、市当局がこの申請というものは事前にしなければならぬのだということを万々承知の上で、しかも、事後に申請をしたというのであれば、私は、ずばり、もう文書によって結論を通告すべきであろうと思います。あるいは市当局がそういった基準法についての深い理解がなかったかもわかりません。多少とも知っておったのか知らなかったのか、私は知りませんが、かりによく知らなかったと、善意と申しまするか、解しまするならば、やはり指導という面からして、内面的に監督当局の意向というものを伝えて、それをまた市当局が理解をして申請を取り下げた、こういうことも法の運営上あっても、生かして使うという意味からいえばそういう余地もあるのではなかろうかと、こういう実はいま感じを受けておるのでございます。いずれにいたしましても、市当局の利益だけをはかって、ことさら解雇された小川君等の利益を顧なかったということはないだろうと、かような私はいま感じを抱いておるわけでございます。
  48. 森勝治

    森勝治君 大臣からそういう答弁――大臣もなるほど苦しい答弁で、私もこれ以上追及するのもどうかと思うし、もう時間がありませんから、先へ進みます。  そこで、次の問題に移りますが、いま局長の説明にありました、蕨市役所連絡をさせて申請を取り下げた日にちはいつですか。四月の幾日ですか。
  49. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 取り下げさせました日は五月の六日でございます。
  50. 森勝治

    森勝治君 そうなりますと、五月の六日まで小川清君は蕨市役所職員でなければなりませんが、そのように理解してよろしいですね。首切りしたいと申請したが、監督署が書類を机の中に入れてあたためておったのですから、少なくとも申請を取り下げた五月六日までは小川君は蕨市役所職員であるということですね。
  51. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、労働基準法第二十条ただし書きに該当しない即時解雇でございますから、そもそも即時解雇としての効力は発生していないということでございます。
  52. 森勝治

    森勝治君 いまの御答弁で、小川清君は、少なくとも五月六日まで蕨市の市立病院レントゲン技師であるという労働者側の公的見解が表明されたわけであります。ところが、蕨市長は、浦和監督署のあっせんというか、慫慂というか、強要までじゃないでしょうけれども、取り下げろという指示を受けて取り下げてから本人に解雇予告手当を送付してまいりました。ところが、何と、この解雇予告手当は二月一日付であります。いいですか、せっかく御指導くださったならば、そういうところも御指導あってしかるべきにもかかわらず、県が取り下げてしまえば私のほうの所管でございませんからといって労働省出先の人はうそぶいておったのと違いますか。
  53. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど来私が御答弁申し上げておりますのは、一般的な問題をも含めておるのでありますが、ただ、即時解雇の意思表示をいたしました際に、一般的にもよくあることなんですが、かりに即時解雇という条件、その意思表示が即時解雇を要件としておるかどうかという不明確な場合の判断ですが、これは従来とも学説、判例とも分かれておりましたが、大勢としては、いわゆる相対的無効説と申しますか、即時解雇であることを絶対的な要件としていないという場合に、労働基準法第二十条所定の手続をとった場合にどうなるかという問題があるわけでございます。いま非常に具体的な問題についての先生の御質問でございますが、実はこれ以上の問題に発展いたしました場合には、行政当局の見解を申し上げるのがよろしいか、あるいは事の性質上、このような状態に相なりますると、裁判所の判断で決すべき問題でもあるように思いますので、その点をひとつ御了解をいただきたいと思います。
  54. 山崎昇

    ○山崎昇君 ちょっと関連して質問をさしてもらいたいと思うのですが、いま労働省見解では、第二十条のただし書きによる「労働者の責に帰すべき事由」で首切ることはできないのだ、こういう見解申請書が取り下げられた、こうなるわけですね。そうすると、いま森委員のほうから、二月の一日にさかのぼって解雇予告手当が出てくる、こういうことになると、公務員の場合には二つのやはり首切り事由があると思うのですね。一つ懲戒解雇であります。もう一つは分限解雇だと思うのですね。したがって、懲戒解雇の場合は理由がなくてはできない。あと残されたのは分限が残ってくると思うのですが、ここで自治省の降矢参事官にちょっとお聞きをしたいのだが、そうすると、解雇予告手当をあとから送ってきたという理由は、懲戒解雇ではだめだから分限で首を切りたい、そのためにはどうしても労働基準法の第二十条が関連をしてくる、こういう意味で解雇理由が変わってきているのではないかと私は思うのですが、その点について、自治省でもしも調査されたのであればお聞きをしたいと思うのです。
  55. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) ただいまの山崎先生の御質問でございますが、われわれの調査したところ、聞いておるところでは、解雇理由を変えた、いま御指摘懲戒を分限に変えたというふうなことは聞いておりません。
  56. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、労働省村上さんにちょっとお聞きしたいのですが、第二十条のただし響きでは理由がなくなった。そうすると、解雇がなくなったわけですね、懲戒解雇というものはなくなった。残されるのは二十条の本文だと思うのです。しかし、公務員が首切られる場合は、これは身分保障があって、一定の事由がなければ首切りは行なえないのであります。そうすると、解雇予告手当というのがこれはどういう関係になるのか、あらためてひとつ基準局長見解を聞いておきたいと思います。ほんとうはもう少し私どもこの訓令の趣旨なり、あるいは行政処分との関係なりをもっと聞きたいこともあるのですけれども、これはきょう時間がもう委員長からないということなので、あらためてお聞きしますが、いま森委員からお尋ねになった二月の一日にさかのぼって出したという解雇予告手当とは、一体何に基づいてやられるのか、あわせてお聞きをしておきたい。
  57. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点でございますが、即時解雇をなす場合、労働基準法第二十条に定められたところに従ってなされる場合は、大きく分けて二つあると思います。一つは、労働者の責めに帰すべき事由いかんを問わず、平均賃金三十日分以上の解雇予告手当を支払えば即時解雇ができるわけでございます。あといま一つは、先ほど来問題になっております労働者の責めに帰すべき事由、天災事変等の場合でございますが、そこで第二十条ただし書きに該当はしない、そこで、労働者の責めに帰すべき事由による即時解雇としては認められない場合であっても、第二十条本文によるところの解雇予告手当を支払った即時解雇という問題が出てくるわけでございます。そこで、先ほど来条例との関連で御質問がございましたが、そのことは労働基準法上は格別論ずる必要のないことでございまして、要するに第二十条本文の手続を経たか、あるいはただし書きに該当するか、いずれかの角度から判断するということになるかと存じております。
  58. 森勝治

    森勝治君 いまそういうお答えがあったわけであります。そこで私は申し上げたいのですが、私が先ほど申し上げたように、監督署の慫慂によって当該申請を取り下げ、かわって出たものは二月一日付の解雇予告手当でありますが、少なくとも監督署が取り下げさせた時点、すなわち、五月六日までは小川君は蕨市役所職員としての身分を保有するということでありまするから、したがって、二月一日にさかのぼっての予告手当は法的に明らかに無効ということになります。そう相なりますならば、小川清君は依然として法的に蕨市役所レントゲン技師であるということがこの委員会で明らかにされたと私は思います。  時間がございませんから、ほんとうはこれからもっと大切なことをしたいと思いましたが、後日にこの問題は引き続いて譲っていただくように委員長に取り計からっていただくことにいたしまして、大体終わりたいと思います。  そこで、私は、さて、それでは地元のいわゆる埼玉県の地方労働委員会は、この件に対してどのような見解を持っておったろうか、このことをちょっと申し上げてみたいと思います。これはこの紛争事件に端を発しまして、蕨市局の水道部会と現業部会が、埼玉県地方労働委員会に対し、団体交渉拒否の、市側の拒否に対し再開、救済の申請労働委員会あてに出しました。その命令書の一部を読み上げます。  「市の訓令による氏名札着用を肯んじないということだけで、地方公務員法第三十二条に定める、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務に違反したとして、同法第二十九条第一項一号により、その極罰たる免職処分に付したことが妥当であろうか。  その当否の判断は、労働委員会権限外のものであるが、」――これはまだここで出されておりません。この問題については団交再開の救済の申請のみでありますからこういうことを言っておるわけであります。「懲戒の方法には、戒告、減給、停職等、免職の前段階が法定されている限り、市側としては、相当慎重に妥当な措置を採るべきではなかったかと思料される。  一方被免職者は、その処分を不当として、市の公平委員会に不服申立ての手続を採り、」云々、こういう公式見解本件について埼玉県地方労働委員会が表明をいたしておるわけであります。私は、もとより本件が可及的すみやかにこの紛争がおさまり、労使が早く手を握ることを願うあまり、この委員会で以上の発言をしたわけでありますが、時間がございませんので、私は、大臣並びに労働省に対する質問はこれで後日に譲りますが、せっかく自治省から降矢参事官がお見えになっておりますので、委員長、申しわけありませんが、二、三だけ御質問をしてみたいと思うのです。この問題は、自治省側が訓令を発することができるという蕨市役所に対する回答がその糸口であったわけであります。不幸なできごとでありまするけれども、自治省ではごく簡単に出されたかしれませんが、当該市理事者、労働組合側では血みどろな戦いがその一札によって展開された糸口でありますが、このことについて先の衆議院地方行政委員会でいろいろ論議がかわされているようであります。そこで、この訓令で一体首切ったという事実が自治省の中であるのかどうか、また、降矢参事官が見て、訓令に違反すればばっさりやってもよいのかどうか、ひとつ社会常識的な御答弁をまずいただきたい。
  59. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) 訓令というのは、御案内のとおり、職務命令につきまして、全一般職員にそれを指示する場合の一つの形式としてとられていることは御案内のとおりであります。それに違反をした場合には懲戒をするという事態になりまして、すなわち、公務員法の三十二条及び二十九条の適用関係になりますが、それは事案によって判断されるべきもの、したがいまして、いま御暦間のように、訓令即懲戒あるいは解雇というようなことにつきましては、事案によって考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  60. 森勝治

    森勝治君 そこで、具体的な質問をして恐縮ですが、衆議院の地方行政委員会で、自治省の公式見解になりますので、そのことについてひとつ質問してみたいと思うのです。当時佐久間政府委員はこういう答弁をいたしております。前段は省きますが、「問題は、その処分のことでございますが、これも長が訓令を出し、さらに私どもが聞いたところによりますると、この訓令が守られまするように相当努力もいたし、職務上の命令も出しておるようでございまして、それに対しまして違反をいたしたということで長が懲戒処分を行なったということでございまするから、法律的に申しまするという別段何ら問題はなかろうかと思っておるわけでございます。」、この後段の、法律的に申しますと別段何ら問題はないという公式見解がちゃんと発表されておるわけですが、いまあなたがお聞きのとおり、不法な首切りがなされたこの事実が当委員会で明らかになりました。したがって、法律的には小川君は依然として蕨市局の職員であることがこの席で立証されましたが、一体自治省は、こういう見解を、先ほどの質疑応答を聞いて何と考えておられるか、どうですかこれ、改めませんか、こういう考え方は。
  61. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) ただいま佐久間局長の御答弁を引用されての御質問でございます。職務命令違反した場合に、それを公務員法の規定に照らしましてどういう措置をいたすかということは、先ほど申し上げましたとおり、事案によって判断すべきものというふうに考えておるわけでございます。なお、ただいま御指摘の後段の即時解雇の効力につきましては、基準局長からお話がありましたように、判例等の見解に従って判断すべきもの、いま私がここで基準法の解釈そのものを申し上げる権限も知識もございませんので、そういうふうに考えておるところでございます。
  62. 森勝治

    森勝治君 知識がございませんと言われてしまうと質問する勇気がございません。残念ながら時間もありませんので、多くの質問を省きます。  次の貸間に移ります。自治省の見解をお聞きしたいのですが、これはほんとうは労働省に聞きたいのですが、先ほどもう労働省質問しないということでありますから、質問答弁もなされないものとして、自治省に質問するのですが、こういう事実があるのですよ。三十九年の九月二日に、蕨市役所の市長室長、企画課長職員課長が、勤務時間中に直接部下の全職員を市庁舎の三階会議室に集合させ、勤務時間中ですから、これは職務命令でやったのでしょう、こういうことを言っているのです。仕事の性質上、組合員がいるということは好ましくない、特に組合と市当局間で問題が生じたとき、市長室の職員は市当局側に立ち、作戦を練らなければならない立場にあると訓辞し、職員団体からの脱退を慫慂したというこの事実があるが、降矢さんはこういうことをどう考えておられますか。
  63. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) 私たちはそういう事実を承知しておりません。
  64. 森勝治

    森勝治君 だから聞いているのですよ。こういうことがあったらどうだということです。どうされるのだということですよ。
  65. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) 職員団体の結成は法に従って当然できるわけでございますし、それに加入するかどうかということも、御案内のとおり、釈迦に説法でございますけれども、当該職員判断によって加入する加入しないということが当然にきめられるわけでございますので、したがいまして、職員団体そのものに対して不当な干渉をするということは、当然言うまでもなく慎まなければならぬ、こういうふうに考えております。
  66. 森勝治

    森勝治君 そういたしますと、こういう具体的な事例をあげてあなたのほうにお願いにまいりますと行政指導をしていただけますか。
  67. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) もとより、事前にわれわれのほうにまいりますれば、事案判断をして適切な行政指導をすべきもの、当然するというふうに考えております。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連して。そのいまの自治省の考え方と労働大臣にも私はいまの点について御質問をしたい。というのは、その不利益取り扱い、不当な処分行為を受ける、これは労組法では五条と七条で不当労働行為について明確に個人の救済、五条のただし書きでそうなっておる。公務員や地方公務員ではそういう明確なものがない。たとえば公務員法によったら、いま公平委員会に流れていく。いまのお話でその行政指導をしたいというのは、どういう法律の根拠によって個人の救済というものがどうなるのだということが議論されないと、行政指導のあいまいな形で個人の救済というものが裁判所に流れていって、裁判所の結審を得なければならぬという、私は労働関係法律上の不備だと思うのです。だから、私は、その業務が何であろうと、働いて労働力を社会に提供するということは、公務員であろうと民間労働者であろうと、同じなんです。業務上の問題は差異があるでしょう。国民の奉仕者として差異がある。しかし、労働者自身が労働することによって受けるその不利益処分行為、取り扱いという問題は、やっぱし労組法では五条、七条にあらわれるような明確なものが統一されなければならぬ、私はそう思うのです。だから、そういうぐあいにしないと、いまの基準法の二十条のただし書きの解釈そのことが――森君の言っているのは簡単に整理できないが、この概念がやっぱり生きてこなければならぬ。これは労組法の精神につながった、基準法につながったものが生きてこなければならぬという立論が、ここに不利益を受けた者の立場からすれば、そういう取り扱いをしてもらいたいということが出てくるわけでね。だから、私は、やっぱしそこのところは労働大臣としては、労働者はいずれにかかわらず、五条、七条の不当労働行為を適用するという方向に法改正をして保証をしていくというやっぱり方針と真剣に取り組んでもらわなければ、私はいかぬのじゃないかという気がする。長くなりますから、私は意見だけ申し上げておきますけれども、そういうやっぱし問題が明らかにならぬといかぬのじゃないか、こう思います。
  69. 三治重信

    政府委員(三治重信君) いまの点でございますが、公務員関係につきましては、御承知のように、現行法では、職員団体として、たとえば国家公務員が全部入るようになっておる。それから、地方公共団体おいても、市長、助役のような特別職以外の者は全部団結できるようになっておるわけですが、今度は八十七号関連で改正法案――一部はたな上げになっておりますが、そういうのでは団体――そのいわゆる管理者側につくものとそうでないものとが、大体人事委員会または公平委員会認定で区別されるようになる。これが施行されていくようになるといまみたいな問題は逐次解消されていくのではないかと思います。
  70. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  71. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 速記を起こして。
  72. 森勝治

    森勝治君 時間が――年末でございますので、まだあとに議題がたくさんありますので、私は一まずこの件についての質問をとどめ、後日また機会をいただきまして再質問をしてみたいと考えますが、私がここで発言いたしました心は、先ほども申し上げましたように、労使紛争がすみやかに解決して、首切りされた四名が引き続き蕨市職員としての身分を保持し、蕨の七万市民の期待にこたえ得る、市行政の一端をにない得る日の早からんことを願うがあまり、この問題を持ち出したわけであります。この件については、地元の県知事はじめ、各方面が心を砕いておるところでありまするが、労働省並びに自治省におかれましても、ひとつどうか当該市のよき御指導をいただいて、先ほどの中でも、断片的ではありましたが、市長の不法行為も明らかにされておるわけでありますので、こういう点もすみやかに話をしていただけるよう、しかも、その時期が一日も早からんことを願いまして、きょうの質問は終わります。
  73. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ちょっと速記やめて。   〔速記中止〕
  74. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 速記を起こして。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も不当労働行為の問題ですが、新東洋硝子の、十二月十三日の未明に北川運輸が釜ケ崎の労務者二百五十人をトラックで持ってきて、そうして青竹とこん棒でなぐって六十五名のけが人を出した。私は、こういう暴力行為というものはもう無政府状態だと思う。いままでなら多数とか少数とか、いずれにしたって組合運営組合の行き方について意見が分かれて、そして争いが起きたというなら、それはそれなりにいろいろ論争があった。これは組合に何の問題もない。職員組合だけが一部職制上の問題で多少のかっこうができたらしい状態で、組合内容については何のこともない。それにかかわらず、そういう暴力団をもってきて、そして組合職員を二百五十人が寄ってなぐって、入院七名、重態二名。それはこん棒でも、相当鉄棒かなんかでなぐらない限り、そういうことにはならないと私は思うわけです。だからこういう事件というものは、ぼくは大臣に申し上げておきたい。こまかくして私は聞きません。しかし、こういう事件というものは、瞬時にして事案内容というものが明確なんですから、労働大臣は瞬時にして談話を発表するか何かをして、労働関係が守られるという、き然たる態度を労働省としてはとるべきだ、このことを私は申し上げたい。この内容については、争議が長く続いているわけですから、争議に対して、そのこん棒でなぐった、即時ロックアウトをしているわけですから、これは法律上の対抗手段としてはあるでしょう。しかし、こういう形でこん棒と青竹の切ったやつを持った人間をトラックで運んできて、なぐり込みというか、無抵抗の者をなぐりつけて六十五人もけがをさして、そしてロックアウト宣言、まあロックアウトの問題は別ですけれども、私は、労働争議の中においてそういう行為というものは許されないと思う。だからこういう事件こそ関西の新聞はものすごくこの事態を取り上げています。私は警察から検事局から回ってまいりました。まことにけしからぬ、これは労働争議事件じゃない、暴力事案なんだという大体見解に立っているようであります。そして、何としても暴力団が、いままでの私の推定によりますと、暴力団を取り締まっているだけじゃない、暴力団に金を出している連中まで取り締まらなければ暴力行為というものはとまらぬという、こういう事態じゃないかと、私はそう思うわけです。だから、いずれ検察庁や警察もその立場からやってくれると私は思いますけれども、そのような事態が起きたときに、私はきょうは時間がないからこまかいことを言わぬけれども、労働大臣はこういう争議に対してこういう行為をやったらけしからぬということを、なぜ談話か何か見解を明らかにされないのかということが私は不満でならない。そのひとつ気持ちを労働大臣から聞かしておいてもらいたい。
  76. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生お話の新東洋硝子の争議で、いわゆる暴力ざたがあったということを実は私も新聞で承知いたしました。テレビでもこれは見ました。そこで、事務当局に、どうも困ったことが起きたということで、よくどういう事情か調べてみるようにと、こういうことを命じましたわけでございますが、言いわけがましくなりますが、予算委員会等で多忙でございましたので、その詳細をまだよく報告を受け取っておらないのでございます。いずれにいたしましても、先生の御指摘のように、労働争議の解決の道というものは、やはりルートがちゃんと法的にもきまっておるわけですから、そのルートに従って平和的に当然処理されるべきものと、私はかように考えております。したがって、そのかわりに暴力ざたが起きる、特にいわゆる暴力団というようなものを駆使して問題に出たるというようなことは、はなはだ遺憾しごくのことだと私も考えております。ただ、そういう私の気持ちなり見解なりを直ちに発表する機八五がありませんでしたことは、これは非常にむしろ私のいわゆる手落ちかと思いすすが、今後注意いたしまして、世間から見ましては、はなはだそういう好ましからざる事態に対しましては、そのつど見解を発表するようにいたしたいと思います。
  77. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一言私はこの問題で言っておきますけれども、私は、これは労政局長の係りだと思うので、これは労政局長、労政局の怠慢かと思います。私は、この十五日一日かかってこの問題の処理でまず工場に行きました。そうしたら暴力団が警察とおって、警察が暴力団を中に二百五十人かん詰めしたようなかっこうで警察が調べて、それから会社の課長グラスの幹部が出てきて、わしと亀田得治君と二人で、とにかく食堂と組合事務所はロックアウトからはずしているのかから、ひとつその事態はどうだったか、見せてもらいたいと、こう言って私が玄関の門のところに行ったら、警察は、それは入って見てもらいましょう、私服警察が見てもらいましょう。それから、会社も、そんなのならということになったら、暴力団が青竹を振って、だれが何と言おうと、ここは入れないのだから、入ってみろということで、青竹でなぐらんばかりにやるわけだ。これは無政府状態です。こういう事態というものがあって、私は警察に行ってものすごうおこって、直ちにああいう態度、ああいう事態を排除せい、組合へ行く道といったら、こうしなければ入れぬほど鉄線でがんじがらめにして、そうして興奮の中で理由を聞くと、組合事務所もむちゃくちゃになっているから、あれを整理するまでは見せぬのだと言うて、法律上の関係は何もなしに、暴力団が固まってきて青竹を振りかざして、会社が言おうと警察が言おうと入れないのだというようなかっこうで、これは事態をひとつ参考までに申し上げておきますが、そういう事件なんです。だから警察も検事局も、これは見のがすことができない問題だ。ところが、私が大臣にいま言ったように、これほど明確な暴力行為はないのに、何の見解も発表しないし、地労委が無関心で知らん顔をしているということで、これで許されていいのかどうか。これは川崎とあそこにあるから、管轄権の問題でいけば中労委だ地労委だということで、それは管轄権の指定は中労委が指定をしなければいかんかもしれんけれども、大阪のまん中にそういう暴力行為がある。争議の前段を申し上げれば、東洋製罐の下請工場で、ややこしい権力争いの中で、業績は上がっているのに、権力争いで争議が起こっているというような状態です。それは私はきょうは触れませんけれども、それだから、団体交渉で話が進んでいるのに、その権力争いの延長が暴力行為で、そういうことであって、そういう事態というものを私は労働省ももっと関心を持ってもらいたいし、関心を持って処置をしてもらいたいし、地労委もそういうものを知らん顔をしている。ようやく最近になって、来年の正月の十五日まで休戦をするという処置を地労委がようやく腰をあげて入ってきたそうでありますけれども、私は、こういう事案というものは、全く特徴的な問題だから、労働省は事務当局がもっと十分に把握して、やはり労働省のほんとうの存在価値を社会に訴える一番私は大きな問題じゃなかろうかと、私はそういま思っておるわけです。そういう点のことについて、もっとやはり積極的に調整機関、中労委、地労委というものとよく話をしていただいて、そうして暴力行為は暴力行為としてしかるべき処置を講じられるでしょうけれども、争議の解決をするために、ああいう姿勢を直すために、私は、使用打の姿勢を直すために努力をされてしかるべきじゃなかろうかということを考えますので、付け加えて申し上げておきますが、こういう事案が今日私は起こらないとも限らないと思うのです。だから、その点も十分に留意して処置してもらいたいということだけを特に申し上げておきたいと思います。
  78. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 私も、いまの大臣の発言に遺憾の意を表明しておきます。それは、ちょうど日韓の紛争中であり、委員会が開けなかったから、労政局に連絡して、実態を調査して善処をしてもらうように私は委員会を代表して言っているのだから、それを大臣が知らなかったでは答弁になりません。したがって、以後各局に十分にひとつ注意をされて、そういうものについては個人の私の発言ではなくて、委員会代表の発言として善処してもらうようにお願いしておきます。  他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  79. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 次に、失業保険制度に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  80. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、失業保険の問題について、労働省から発行されております「失業保険制度の現状と問題点」という資料があるのです。この中で、第一次廃業の失業保険の給付額というものが急激にふえておる事態というものは、一体どういうことでこういうふうにふえてきたのか、参考までにお聞きしておきたいと思います。
  81. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 先生指摘の、第一次産業の給付額が最近増加しておるという御指摘でございますが、これは御承知のように、農林水産業には、保険のたてまえ上、任意加入の制度をとっておりますが、最近三十七年ごろから任意加入を相当に認めてまいりましたので、これで保険金の支出が相当増加しておるという傾向に相なっております。
  82. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、法人もだいぶふえただろうと私は思いますけれども、この給付をされる――これまた労働省から発行されております資格者の適正化をどうするかという問題の資料が出ておりますね。この中で私はお聞きしておきたいのは、この二ページの(3)に書いてありますが、「結婚、妊娠、出産、育児、老病者の看護その他の家事、家業等の手伝い」というふうにこれを分析をされておるわけです。これはなるほどこういうことではその給付の対象にならない、こういうことにしていくのだろうと私は思うのです。この分析に対して私は見解をお聞きしたいのだが、一体日本の失業者に対するその失業者の構成による、早く言うならば十五歳から二十歳までの未成年者ですね、ここらのクラスにおける者の結婚退職、結婚退社というものはすべてこれ給付しないということになれば、もっと具体的に私は調査してもらいたいと思うのです。一体、結婚退社でなければ退社ができない環境があるという事実を知ってみえるかどうか。結婚退社ということにならなければ会社からひまが出ないという現実があるのです。これ一ぺん調査されたことがあるのか、この点お聞きしたいのです。
  83. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 結婚の事由によらなければ退社を認めないという実情でございますが、私どもはそういった点の調査をやったことはございません。また、それほど結婚という理由でなければ退職が認められないというふうな事案はそう耳にしてないのでございます。
  84. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 調査したことがないということであるのと耳にしてないということはだいぶ違うと思うのです。私は。耳にしたからやるというのじゃなくて、やはりこういうことをもって規制をして、給付の資格というものを与えないということであるならば、しかも、政府としては、事実退社というその事態についてはどういうことで退社をするのが多いのか。結婚退社が多いのか、あるいは、また、家庭における病人の看護をするためにやめるという、家事のためにやめる人もあるでしょう。事態を調査しないで、ばく然と結婚退職したものは給付の対象でないということになれば、これはたいへんだと私は思うのです。そういうあいまいな、調査もしないでこういう規制をするということについては不当じゃないかという私は考え方を持っているのですが、これどういうふうにお考えになりますか。
  85. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 結婚で退職した場合は失業保険を支給しないということをいっているのでなしに、失業保険は、あくまで労働の意思、伯方ということが前提条件になっておりますので、結婚退職の場合には、多くの場合、再就職の意思がないというふうに推定をされております。これはわれわれのほうのいろいろな追跡調査の結果も、相当数が結婚退職の場合には再度就職戦線にあらわれてこないという数字もございましてそういう推定をいたしておるわけでございますが、もちろん結婚でやめてさらに就職をする、あるいは子供が生まれても再就職をするという場合には失業保険を支給をいたしております。  先ほど御指摘の適正化通達の項目は、これはこの通達にもわざわざ引用してありますように、失業保険制度始まって以来のVの一五三五二という手引き番号でもおわかりのように、始まって以来この方針を貫いておるわけであります。そういうことをあらためてつけ加えたのじゃなしに、注意を喚起する意味でここに明確にいたしたわけでございます。
  86. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 なるほどあなたのおっしゃる結婚というものでほんとうに退社して、もう結婚間近だという人は、その失業保険を、たとえば三カ月先にするという判定の場合にもやらないということは言えると思うのです。これは。私そのことは十分わかっておるんです。しかし、結婚退社の内容というものを調査をしていかないと非常にこれはむらがある。たとえて申しますならば、会社をやめる場合、結婚退社を理由にしなければやめられない実情があることが一つ。もう一つは、結婚はしたいが、結婚ということでしたが、実際に自分は会社で相手がいない。郷里で結婚したいのだから、結婚先はこれから見つけるのだ。ただし、六カ月先か八カ月先かわからぬ、その間に働きにいきたい、こういう意思のものがあった場合、あなたは結婚退社で退社したのじゃないかという理由で、これはあなたのほうでは受給資格の決定は行わないと、こう断定されておるのです。この点が、労働行政のやり方としては、私はもっと幅のある方法でやるべきじゃないかということを考えておるのです。こういう点はどうお考えになりますか。
  87. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 繊維の場合に女子の労働者が多いわけですが、出身地に帰って再就職の機会をさがすというケースが非常に多いわけでございます。その場合に、退社理由が結婚ということになっておりました場合に、結婚退職だから資格がないのだというふうな断わり方は第一線ではやっておりません。結婚退職で退職をして郷里に帰った場合、安定所の窓口にあらわれてきますと、退職の理由のいかんを問わず、再就職の意思があるかどうかという観点から、支給の要件に該当するかどうか、認定をいたしております。したがいまして、今日のように女子の繊維関係労働者の求人が非常に多くあるというような場合には、必ず就職あっせんを積極的にいたしております。にもかかわらず、再就職の意思がないというふうな場合に初めて給付の制限というふうなことを行なっておりますので、ただ形式的に結婚でやめたからアウトになったというふうなことはいたしておらないつもりでございます。
  88. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは私は詭弁だと思うのですよ。書いてあるじゃありませんか。「一般的には労働の意思又は能力がないと推定されるので、」とあります。これは基本なんですよ。あなたのは詭弁ですよ、いま言っておられるのは。そうでしょう、推定するのだから、最初から。そうして最後にはどう書いておるかというと、私がさっき言ったように、「心証を得られない限り」その資格はないのだと決定的に断定されておるのですね。それはおかしいじゃないですか、いまの答弁は。大臣、どうです。この問題について。決定しておいて、原則をきちっときめておいて、原則だけはみずからがきめておいて、そうしてその該当にならないということをして、それは推定の一つ基準になっちゃっている。そうしてやってはいけないという断定をしているわけです。これはおかしいじゃないですか。明快なひとつ回答をしてください。
  89. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 個々の具体的な問題といいますか、ケースの取り扱いがどうなっておるか、これはなかなかむずかしい場合が多いのだろうと思いますが、原則的に申しますならば、失業保険は、もうあらためて申すまでもなく、再就職の意思が明確なときに支給する、こういうことでなければならぬと思いますので、いま局長から御説明申し上げましたような取り扱いになることはやむを得ないのじゃないか、かように思います。
  90. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、私は最初お尋ねしたのですが、一次廃業に対しての給付の人員は非常な増大をしておるのです。急激に。これは私は農閑期を利用しての出かせぎの労働者が多いということは、これはもう火を見るよりか明らかです。そういうふうに推定をされておるのですよ。実際に統計に出ておるのですよ。ところが、今度の給付する人員の制限については、「家事等の手伝いのために退職した者」と書いてある。これは給付しないのですよ。それは一体農閑期を利用して就職して働きに出た人が、六カ月で資格を得て失業保険をもらった、この人が家事の仕事をするのかしないのかという実際の判断はだれがするのですか。そうでしょう、原則的に支給の資格のないものについて、家事までここに入れている。こういう一方で拘束して、年少労働者に対する失業保険は適用しないというならば、年少労働者の資金によって他の失業者に対する補給をしているような事実があらわれている。これはちょっとおかしいですよ。
  91. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一次産業の支給の御指摘がございましたが、農閑期に出かせぎに出て半年間の資格をつけて、農繁期に郷里に帰って農業に従事するという場合は、これは失業者じゃございませんので、掛け金をかけても失業の認定は行なっておりません。ただ、その逆の場合といいますか、季節的に出かせぎに出て、農業にも従事しない。要するに失業の状態を繰り返しておるというふうなケースが相当ございます。これについては、もともと失業事故というものは偶発的な事故でなければ保険になりませんので、こういった種類の出かせぎ労働者に失業保険を適用するのがおかしいじゃないかという正論があるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、こういった種類の第一次産業の出かせぎ労働者については、失業保険をやたらと拡大をしていくということはやらないつもりでございます。こういうことをやり出しますと、全体の失業保険が破綻を来たすという状態になりますので、それは相当厳格に条件をしぼって、そういった保険の悪用にならないような給付にのみ保険の適用をいたしていきたい、こういう適正化の指導をいたしておるわけでございます。
  92. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 指導と、実際の私は給付の資格を得るまでの困難性をあなたに申し上げておるのです。指導はあなたのおっしゃるような指導でも、私は、悪用するものに対しては当然これは規制をしなくちゃいけないでしょう、保険のことですから。けれども、私は、しからば、かりに給付を受けておる人が自分のところの家事の作業を手伝ったらいかぬとか、遊んでおらなければいかないという解釈はどう判断いたしますか、おかしいでしょう。あなたはいままで何をしておったと窓口で係官の方が質問しますと、いや、うちで手伝いをしております。こういうのはやるのはあたりまえじゃありませんか。ところが、これは家事等の手伝いのために退社した者もこれはあかんわけです。そういうふうに原則をきちっときめてしまって、これは指導ではなくて、あなたのほうは、これに対しては適切な資格を有する者にはそういう取り扱いをせよという指示をしている。ところが、資格を受けた者が遊んでいるわけにはいかぬでしょう。何か家事の手伝いくらいはやるでしょう。これまで該当するということになれば非常に窓口の規制がきついし、ほとんどがもらっていないということを私は申し上げたいのですね。この規定を皆さん方が適用されるならば、これはもうかけっぱなしです。ほんとうに失業して、自分は自分の郷里で結婚したいのだ、ほんとう言えば。しかし、なかなか相手がおらない、都会では。自分は郷里で結婚したいというので退社した、で、郷里でさがすのも、そう半年やそこらではできない、あるいは一年かかったかもしれない。その間は失業だ、ほんとうは働きたいのだけれども、自分は失業だ、こういう場合は、当然あなたのおっしゃるように、一般的にそういう意思がある者については保険をやるべきでしょう。これはそうでしょう、これは間違いなしに。ところが、その前提が規制がしてある以上は、窓口でこれが全部とめられているという事実を私は知ってもらいたい。
  93. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 就職の意思がある場合には、退職の理由のいかんを問わず、支給いたしております。ただ、いま御指摘の家事に専念するという場合は失業とは認めない、失業であっても再就職の意思があるとは慰めないということを強調しております。それはやはり家事に専念をするという場合には再就職の意思が一般的にないというふうに認定をせざるを得ませんので、そういう場合は失業の認定をいたしておりませんが、家事に二通りあって、何といいますか、家業に従事しておるというような場合もございますが、これはもともと失業ではない、再就職の意思云々ではなくて、自分の家で商売をするという場合に家業に従事しているというのは、これはもう失業ではない。家事に専念をしているか、あるいは職がないから家事を手伝っている状態であるか、そこが非常に判定のむずかしいところでございますが、単に職がないから家事の手伝いをしておるという場合には失業として認定をいたしております。
  94. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはあなたのように、そういうお考えで接していただくならば私は文句は言わないのです。それだけ理解していただいておるならば私は文句は言わないのです。質問もしないのです。ところが、これだけの原則がございますと――私が皆さんに知っていただきたいことは、これは労働大臣もそうですが、日本の年少労働者の退社の原則的な理由は何が一番多いかということです。いいですか、十五歳から二十歳以下の年少労働者が三年か四年つとめて、十八歳くらいで退社するという場合には、何が退社の理由になるかというと、これは結婚退社か家事の御都合か、そういうふうにもう限定されてくるのですよ、そうでしょう。そうすると、その退職するときの理由を窓口に出すわけです。あなたは家事の都合ですね、こうなると、これは対象にならないのです。もう頭から窓口では、家事の都合じゃありませんか、こういうことになる。どうです。その点は。そのあやが、原則の中であなたのような公正な判断をしてくれるならいいけれども、窓口ではもうそれでけられる。これが五回行っても六回行っても七回行っても同じことを繰り返し聞かれて、そうして結果的には給付の対象にならぬという結論になるのです。この点は問題ですよ。一ぺん調査してみなさいよ、それがわからぬようだったら。
  95. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 繰り返すようですが、退職の理由だけで窓口にあらわれたときに資格がないという判定をいたしたことはございません。必ずその場合には就職の意思があるかどうかということを次の段階に聞いております。本人は就職したいのだということを主張します。だからこそ失業保険を認定して保険金を支給しておるわけです。最近の三十九年の支給の状況からいいましても、女子の受給者の数も率も決して落ちておりません。そういう非常に厳格な認定をしながら、公正な認定をしながらでも、やはりそれだけの支給の状況になっておりますので、その点は、そう窓口で泣き寝入りになるということはないと思います。本人が必ず再就職の意思を積極的に表明いたしますので、認定はそれに従って行なわれておると確信いたしております。
  96. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間もないから聞きませんが、何の資料によって受給資格の人員は落ちておらないとおっしゃるのか知りませんけれども、これは三十九年の九月に出された資料なんです。これが出された後の統計をとってみましたが。とって言われたのですか。とってあれば私はよろしい。いままでの事態と、これを出された後の統計が出ておるのか、それを教えてください。
  97. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これを昨年出しましたときには三十九年の資料がございませんでしたけれども、その後三十九年の数字が出ましたので、三十九年の数字も入れてあります。三十八年と比較いたしまして、落ちておりません。
  98. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは三十九年の九月に出されたのでしょう。
  99. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) ええ。
  100. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は九月以降の統計が出ていますかとお聞きするのです。前のことなら私もわかります。出ていないのでしょう。
  101. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 通達後の実績数字をこの「現状と問題点」に追加をいたしまして、最近その数字だけをつけ加えたものをさらに資料として整備いたしております。
  102. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、その資料は今度こちらに出してください、お願いします。この点の取り扱いについては特別の私は御配慮が願いたいと思うのです。これは出先でいまかなり支給を受けていない。そうして、しかも実態を申し上げますと、窓口に行くのにバスあるいは汽車に乗ってまいります。そうして三百円なり五百円の金は使っちゃうのです。それを四回も五回も繰り返す、そうすると、しまいには乗車賃だけでもう精一ぱいだ。わずかな金をもらって、そうして三回行ってもそれが給付の対象にならないということになると、あほらしくてもらいに行かないという者がたくさんあるのですよ。これは実際を私はもっと調査していただいて、こういう実情で退社しておる者の何割くらいが一体給付の対象になっているかという実態調査を私はしてもらいたいと思う。これは労働大臣にひとつ御回答願いたいと思います。
  103. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生から御注意のあります点につきまして、よく、実態を調査させたいと思います。
  104. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つ、私は労働省として考えていただかなければならぬということは、この「失業保険制度の現状と問題点」という分析があるのですね。いま一番問題になっておるのはここだということを書いておられると思うのですが、「就職支度金を受給して就職し、資格ができると再び退職するということを繰り返し、業者から失業保険があるが故に運転手不足をまねくと非難されている面もある。また、紡績女工の中には失業保険がつくと退職して保険金のある間バカンスを楽しみ、」こういう資料を出しておられるのです。これは労働省としてはあまりにも一方的で、一体、労働省というのは労働者のサービス機関じゃありませんか。こういう資料を堂々と出しておられるのですが、どうお考えになっておるのですか。私、姿勢のほどを疑うのですが、これを出された意味は何なのか。
  105. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 昨年「現状と問題点」を出しましたいきさつは、景気がよくなっても失業保険の状況は一こう改善されない。それにはどこに原因があるかということを一年がかりでいろいろな方面から検討いたしました結果、こういう実態になっております。問題はこういうところにありますということをはっきりいたしたのでございます。それまでいろいろ失業保険の運営について乱給の非難がいろいろな方面から出ておったのでございますが、これを現実の運営状態等を分析してみた結果、こういう世間の非難も当たらないわけではない、そういう一面もあるということを率直に認めながら、私どもとしましては、社会保険としての失業保険が健全な運営をなされるように、反省すべきところは率直に反省をして適正化を進めていく、こういう努力を続けておるわけでございますが、失業保険の問題は、先進諸国を通じて、いろいろとこれは共通する問題があります。いまの結婚退職の場合の扱い、実際の運営、これらについてもイギリス等は非常にシビアーにやっておる、それでも、なおかつ保険が相当危機に瀕するくらいに、何といいますか、悪用されている面もある。また、季節労務者の扱いについても、これは各国とも悩み抜いておる問題でございます。一歩誤るならば、カナダのように、失業保険財政が破綻をするというような事態も免れない状態でございますので、われわれとしては、やはりそういう問題については十分検討をして、反省をしながら運営の適正化をはかっていきたい、かような意味で問題点を指摘したわけでございます。
  106. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは理想論としてはあなたの意見は私はわかりますが、現実もこれは知ってもらいたいのですよ。いいですか、私は繊維だけを対象にして申しますならば、約百二十万と称しております全繊同盟が繊維産業としての組合をつくったのが約四十八万です。ところがその組合もつくってないものは、今日いまなお十時間や十一時間の労働をやっておるクラスがたくさんあるのです。すべて労働者には職業の選択の自由が認められているのです。法律上。そうでしょう。そうして、その会社に来たところが、その地域になれてきた、その域地になれてきても、私は十一時間働いてようよう一万円か、あるいは九千五百円しかもらわぬのだ、いや、こっちに行けば一万二千円くれる、二万三千円くれるといったら、友だちからそのことを聞いて転職するのはあたりまえじゃありませんか。悪用するから人を誹誇するというような行き方が労働省としていいかということを聞きたいのです。これはばかにしたやり方ですよ。紡績女工の中には、失業保険がつくと退職して、保険金のある間バカンスを楽しむ、保険金が切れて初めてまた就職する者がある、それならば労働省労働者に対して教育をすべきじゃありませんか。あまりにもこれは経営者の話を聞いて、そういう者があるということを聞いて、私は労働省としてはのせられたと思うのです。私はある人に聞いたら、経営者からそういうことを聞いたものですからということを言っております。あなたの理想とそれと全然迷うじゃありませんか。こういう一方的な資料というものは、労働省は、あくまでもあなたの答弁されておる公正な立場でやっていただくなら、何も皆さんに質問する必要はないのです。あまりにもこれは現実とかけ離れておる、だから労働省に対して私は最低賃金制を早くつくりなさいということを主張しておるのじゃありませんか。その最低賃金すら、もう労働省は終戦後二十年間、しかも、長時間働いておるその事実を把握しないで、誹謗することだけは一方的な経営者の言うような意見を聞いてやっているところに私は問題があると思うのです。これがいまの御答弁のような考え方であるならば、私は、労働大臣、この点は公正な立場に立って労働者の教育をやってもらいたい。一ぺん答弁をお願いしたいと思います。
  107. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 私は就任しましてからこの失業保険の現状等につきまして説明を受けまして、その中に、先ほど来お話が出ております。いわゆる季節労働者の失業保険の問題、あるいはここに先生からおしかりを受けておりまする、いわゆるバカンス保険といわれるような面のあることやら、それぞれケースケースによって事情は異なると思いますが、いずれにいたしましても、幾多の不合理と申しますか、あるいは常識的にはどうかと思われるような面もあることを承知をいたしております。しかし、とにかくこの保険制度のもとに労働者の諸君が、いわば安心して働けるようにと、こういうことをねらいといたしておるのでありましょうから、その保険の趣旨というものを、これは経営者の側にも、また、被保険者たる労働者の諸君にも、やはり正しく御理解願って、この保険が全体としてやはり公正に運用されるという方向に、なかなか一挙には言うべくして困難と思いますが、少なくともその方向に向かって労働省としては努力をしなければいかぬものだと、かように私は心得ており、また、労務当局にも私の気持ちを伝えておるわけでございます。そういう点から申しましても、先生の御指摘のように、やはり一般の被保険打の方に、この失業保険というものはこういうものなんだと、互いにいわば助け合いの気持ちで、全体が、正しく一人一人が運営する責任があるんだというような趣旨をやはりよほど徹底して、まあ教育すると申しますか、指準ずると申しますか、少なくともいまの保険そのもののねらいとするところをよくのみ込んでもらう、基本的にはそういう点が必要であり、それに一そうの努力を役所としても払わなければならぬであろう、また、私どももそのように努力をいたしたい、かように考えております。
  108. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 中正的な立場に立ってやっていただくという熱意だけは承っておきますが、最後に、私もう一つお聞きしたいのは、失業保険の農林漁業も含めた改正をしようという意図が今日出ておるということをちらちら私も聞くのですが、労働省としてはそういう意思があるのかないのか、お聞きしておきたいと思います。
  109. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) ただいまも申し上げましたように、現在の失業保険法のもとにおいてこれが理想的に運営されておるかと申しますならば、必ずしもそうでない面もあると思います。しかし、この法律自体を改正するならば、はたして、それじゃすぐ目的を達成し得るかというと、私は必ずしもそうばかりとも言えなかろう、こういう気持ちを持っております。したがって、法自体についての検討は、これはもちろんいたさなければなりませんが、さればと申しまして、いま直ちにこの法を改正するというところまでは私は考えておりません。むしろ法の適用というものを、これをより合理的にできるように、あるいは公正にできるようになお一そう努力することが当面の任務ではなかろうか、かように考えております。
  110. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 考えてないと言われることだけはわかったのですが、この国会に出そうという考え方はないけれども、あるいは来年出すかもしれない、こういう考え方なのか、当分はそういう考えを持ってないということなのか、もっと明らかにしてもらいたい。
  111. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) いま申し上げましたとおり、法自体がいかにあるべきかという検討は、これは当然の任務としてやらなければならぬ、また、現に事務当局もやっていると思いますが、しかし、いま申しますとおり、これはもちろん今国会に出す意思はありませんし、将来しからばいつの日に法改正するのかと申されましても、これは私がいまいつの口と、こう申し上げるわけにいきませんが、少なくともこの国会に出す考えはございません。
  112. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つ希望意見を申し上げておきますが、この給付の対象になる各地域におけるところの窓口の決定ですね、これは先ほどの答弁では、一本化されてその心配はない、働く意思さえあれば給付の対象になるのだ、この簡単に言っておられるのですけれども、これだけ被雑な問題はないのです。答弁は非常に簡単に言っておられますけれども、このぐらい複雑なものはないのです。これを正確に今後改正でもしてやろうという意図があるならば、私は、労働者の代表も入れ、学者も入れ、もっと厳密なものにして、そうしてだれでもほんとうに働く意思のある者は、いかなる事情があろうとも、こういうものとこういうものをみんなやるんだ、簡単にそれができるような方法を一回でもしてやるべきじゃないかという考え方を持つわけです。もしそういう試案を作成しようとおっしゃるならば、そういう作成の機関も設置される必要があるんじゃないか、これは希望意見として申し上げます。
  113. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめてねきます。     ―――――――――――――
  114. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめてねきます。
  115. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 次に、昭和四十一年度予算要求に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 予算の要求については私たちの意見がたくさんあるわけです。たくさんありまするが、時間がありませんので、年も追うてまいりましたから、私はここで議論はあまりいたしません。しかし、労働省は、一昨日予算委員会で議論をいたしましたように、経済の計画を立てるにしても、何としても労働者の保護、これが日本の経済のささえなんですから、そういう意味で、ひとつ労働行政と厚生行政というのは閣内においで、いかなる位置にあるかということは、もう私が申し上げるまでもないと思っております。だから、そういう心がまえ労働行政というものをりっぱに盛り上げていただきたいと思うのです。この予算決定に際しては、そういう心がまえでやってもらいたい。三割という制限があって予算書を出せということだけれども、そうじゃない。労働者が今日の不況の中で非常に困窮になってくる。こういうことになってくれば、三割であろうと五割であろうと、それは労働者の保護のためには、あなたは閣議でがんばって貫き、労働省が一体となってそれを実現するというかまえを私は持ってもらいたい。内容についてはあまり申し上げませんが、それだけは一つ確認をしておいてもらいたい、  そこで、二、三の点について申し上げて御意見を承っておきたいと思うのです。  第一点の問題は雇用の見通しです。雇用の見通しについてはここで議論をいたしませんが、予算委員会で各委員に出された資料だけを見ても、ここ一年の間に全産業が六%雇用が下がっている。それから、製造業も下がっているという計数が出ています。だから、私は、雇用の見通しについては、殺到率が地域的にどうあって、学卒がどうあって、この不況の帰休制度の関係からどういう見通しになるのだという資料をそろえて各委員に配ってもらいたい。あすで終わって全員これから帰郷するのでありますから、いままでできている問題をきょうとあすとで整理して自宅にでも送るようにしてもらいたい、これが一つです。これは注文です。  それから、見解を承っておきたい問題が次の定年制の問題です。どういう作業を進めているか、労働大臣見解を明らかにしてもらいたい。百八十万の技術労働者が不足しているという。ところが、五十五歳になって、その長年積み上げてきた技術を持っておる人を定年制でばさばさ首を切っていく、これほど矛盾したことはない。これが社会不安を起こし、そうして、今日の不況の状態を起こしている。これについての見解。  それから、一酸化炭素中毒者の処置というものは緊急事だと私は思っております。私は、この年が明けて再開までの間につぶさに調査をしてきたいと思っておりますが、これに対する大臣の決意のほどを承りたい。  それから、雇用安定については、駐留軍の労務者は政府雇用でありながら、こっちで首を切るかと思うと、こっちでまたふやすというようなかっこうになっているわけですね。駐留軍労務者の雇用安定。  それから、林野庁の問題。これは前の大臣と約束をしたわけでありますが、これは失業保険の対象になって、そうして、六カ月、八カ月だけ雇って、あと首を切り、失業保険を払って季節労働者とする。これは職安局長の重大な関心事でありますけれども、これは林野庁とひとつ談判をしてほしい。私は一昨日、総理の前で全部ひっくるめてけじめをつけたいと思っていたのですが、これができませんでしたので、これについての労働大臣としての心がまえを聞きたい。  それから、家内労働調査会というものがあって、この家内労働調査会が先日結論をお出しになったようでありますが、いまここで大臣にこれに対してどうこうということを聞いても無理だと思いますから、その家内労働調査会が出した資料をひとつ全委員に出していただきたい。あの新聞に出ているだけではなしに、積算基礎を含めて、詳しくしたものをひとつ出していただきたい。  それから、最低賃金の動向の調査も、これも資料として出していただきたい。  それから、お尋ねしたいのは、失対賃金が来年の見通しでどうなるか、このことでございます。失対事業の労務者がどうなって、賃金がどうなるかということをここで明らかにしておいてもらいたい。私は予算書の一つ一つについて議論したいのでありますけれどもさしあたって問題点を指摘して、労働大臣見解、事務当局の見解をお聞きしたい。それから、いま私が申し上げました資料は、ぜひ今年中に集約して各委員に送っていただきたい。そうして、各委員はそれによって労働行政の実態を把握をしたい、こういう考え方でございます。  一度に申しましたから、順次に……。
  117. 小平久雄

    国務大臣小平久雄君) 先生からの御要求の資料につきましては、できる限り整備をいたしまして、また、できるだけ早目にお手元に届くようにいたします。  それから、お話のうち、雇用の見通し等は資料で差し上げることにいたしまして、定年制についてでございますが、わが国では長年大体五十五歳ぐらいでの定年制ということが慣行的に行なわれてまいっておるわけでございますが、申し上げるまでもなく、平均寿命も、男子が六十九歳数カ月、それから、女子が七十二歳何カ月でございましたか、戦後二十年間で平均寿命が大体二十年近くも延びておる、こういう状況でもあります。そういった人の命それ自体が延びておるということが一面にはございます。また、先生お話のように、一方においては技能労働者が非常に欠乏いたしておる、こういう関係でございますから、結論的に申しますならば、私は、定年制というものはもっと延びていいんじゃないか。いわゆる定年がもっと高年齢になってもよろしいじゃないか、そうむしろすべきじゃないかという考えを持っております。ただ、問題は、率直に申しまして、わが国の賃金制度とも相当実は関連を持っておるのじゃないかというふうに私は考えておるのであります。いわゆる年功序列型という賃金のあり方のために、年をとればとるほどどこまでも賃金は上げていかなければならぬというような仕組みがやはり定年制というものを生んでおる一つ理由になっておるのではなかろうか、かように考えますので、定年を延ばすという反面におきましては、私は、やはり賃金制というものも、いわゆる質と量に応じた近代的な賃金制度というものに逐次移行していくべきだ。それと、いわば全部とは申しませんが、多分にうらはらの関係おいてこれは進められるべきものじゃなかろうかと、私、に申してそういう感じをただいまのところ抱いております。  それから、一酸化炭素の患者の処置の問題でございますが、これにつきましては、私も三池だけでございましたが、行って見てまいりました。さらに熊本等にもっと非常にひどい患者がおられるわけでございまして、そのほうを見られなかったのは非常に残念でございますが、いずれにいたしましても、非常にお気の毒な立場にあったわけでございますので、また、各方面からこの問題についての御陳情等も承っておりますので、事務当局にも命じまして、とりあえずは現行の法律のもとにおいてできる限りの処置をとるように、それも単に形式的なことばかりでなく、ほんとうにあたたかい思いやりに立って措置をとるように指示をいたしておるのでございます。つい数日前も、総評の太田議長さんはじめ、関係の各位からのお話もございました。そこで、今日やっておる措置をさらに改善をいたしますためには具体的にどうし方らよいかということも、来年一月一ぱいぐらい主でには具体的にひとつ結論を出すようにと、こういうことを事務当局に指示をいたしておるのでございます。  それから、駐留軍の関係でございますが、これにつきまして私も実は実情をよく存じないのでありますが、いずれにいたしましても、駐留軍関係の労務者が非常に不安定の関係にあるということは事実でございましょうから、よく実情を取り調べまして、できるだけ御趣旨に沿うように善処いたしてまいりたいと考えます。  それから、林野事業の従事者の関係でございますが、これももちろん林野庁はじめ、役所間での緊密な連係をとることももちろんでございますが、民間等に対しましても十分連絡をとりまして、なるべく作業の改善等を通じて、年間作業ができる方向に林野庁なり業者なりの諸君にも努力をいたしてもらう、こういう方向に労働省としても努力をいたしてまいりたい、方向としてはそういう方向でやりたい、こういうことを努力いたしておるわけでございます。  家内労働調査会の結論と申しますか、報告の問題でございますが、これはもちろん資料を提出いたします。これはだいぶ年月を要したようでございますが、つい最近報告をちょうだいいたしました。私も詳しくまだ見ておりませんが、その内容について若干申し上げますと、家内労働と一口に申しましてもいろいろな型がある。あるいは専業の家内労働、あるいは内職的な家内労働、あるいは副業的な家内労働、こういうようにいろいろとある。そのうちで、もちろん内職的な家内労働は一番多い。全体としては、たぶん八十四万からの方が家内労働に従事をいたしておる。そこで一番問題の点は、もちろん工賃の面、それから就業町間の面、あるいは安全衛生の面、これらの面は一番問題である。しかし、いずれにいたしましても、これが各家庭において行なわれておることなので、なかなか実態の把握というものが容易ではない。でありますから、この問題を処理するにあたっては、何をおいても家内労働の実態を正確に把握するこが一番大切である。そこで、調査会は一応の報告は提出をいたしましたが、さらに今後引き続いてこの実態把握ということをやること、それに対する施策を検討すること、さらに家内労働についての法制的な措置というものをどうするかということの研究、こういうものを含めて審議会のようなものを置くべきである、こういう点が今回の調査会の報告の中にまず一点としてうたわれております。さらに、当面の施策といたしまして、先ほど来申しました問題点、すなわち、の面であるとか就業時間の面であるとか、あるいは安全衛生の面であるとか、そういう面については行政的な措置を進めろ、こういうことがうたわれておるわけであります。  そこで、まあ私といたしましては、この報告を尊重し、その線に沿うて今後善処いたしてまいりたい、かように考えておりますのでありまして、具体的にどうするかという点は、どこから一体手をつけたらいいのかという点を事務当局にもいま至急に検討するようにと、こういうことを言っておるわけでございます。  それから、最低賃金制の問題につきましては、御承知のとおり、最低賃金制については各方面からいろいろなお説があるわけでございまして、そこで、労働省といたしましては、中央最低賃金審議会、これに今後の最低賃金制度というものはいかにあるべきかということについての御検討をいまお願いをいたしておるわけでございます。とりあえずの処置としては、とにかく四十一年度末までには、これも審議会の勧告というのでもないかもしれませんが、どういうのでしたか、要望と申しますか、それで最低賃金制の適用を受ける者をとにかく五百万までに持っていくようにと、こういう目標が示されておるようでございますので、それに向かった最大の努力を傾けてまいる、そういう方針でいるわけでございますが、今日では四百万はすでに突破をいたしたようでございます。  それから、明年度の失対賃金のことでございますが、明年度の失対賃金につきましては、目下、失対賃金審議会に諮問をいたしているところでございます。何と申しましてもこのような経済状況下でございますし、もちろん申し上げるまでもなく、失対賃金は同種の屋外の労働者の賃金を考慮して地域別にきめる、審議会の意見を聞いて労働大臣がきめる、こういうたてまえに相なっておりますので、物価が賃金をきめるというたてまえにはなっておらぬようでございますが、もちろん間接的には十分考慮さるべき筋合いのものであろうと私は考えますので、審議会の各位におかれましても、そういう点は十分御配慮の上に御答申をいただけるものと、かように期待をいたしているわけでございます。それが答申が得られましたならば、その線に沿うてもちろん最大の努力をいたすつもりでございます。全般的に予算のことにつきましては、先生が冒頭に申されましたように、こういう情勢下において、単に今日の情勢ばかりでなく、将来の労働情勢というものを見るときに、労働行政というものは非常に重要なものであるということは私もよく心に入れまして、できる限りこれを予算の上にも反映しますように、最大の努力を傾ける所存でございます。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあここで大臣のおっしゃったことについてもいろいろ御意見のあることと思いますけれども、あらためて年があけてからやることにして、私は資料をお願いいたしました。これは、単にここが何ぼになっておるというのじゃなしに、総合的に、たとえば定年制の問題にしても、大多数が民間では五十五歳で首切られて、六十歳になって厚生年金をもらう。それまでの間どうして生活ができるかということです。これを何もしないで賃金論を論じてみてもしかたがない。付加価値、生産性が昭和三十年から二三二となっておるのに実費賃金は安い。労働分率も、外国では五五%から六〇%くらいあるのに、日本は三〇%だというところを議論しないで、単に年功序列賃金が悪いのだということだけでは済まされない問題でありますから、これはひとつ年があけてから議論することにいたしまして、そういう資料をぜひ私は出してもらいたい。これは「失業保険制度の現状と問題点」というのをきょう初めて私は要求してもらったのですから、これは委員全部に配ってくださいということを言ったのですから、資料は出し惜しみせぬで、どんどん委員に出してください。どんな資料でも、労働省がつくられた資料は全部出していただいてみんなが勉強していただけば、何もわれわれが自己満足するだけではないので、ここは労働行政をどう高めていくかという立法の場ですから、そういう意味でひとつお願いを申し上げます。
  119. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  120. 小柳勇

    委員長小柳勇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、館哲二君が委員辞任され、その補欠として丸茂重貞君が委員に選任されました。  暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十三分開会
  121. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  社会保障制度に関する調査を議題といたします。  まず、米軍食傷兵の検疫に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  122. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ベトナム戦争におけるアメリカの傷病兵、これが日本のアメリカ基地の野戦病院に現地から飛行機で輸送をしてくる。そこで、コレラとかペストとか、天然痘とか発しんチフス、レプラを含んで、東南アジアは伝染病の震源地だといわれておるわけです。これが何の検疫もなしに日本にある病院にこれを連れてきて治療する。けがした人を治療するのは人道上の問題としてとやかく言う問題じゃありませんけれども、しかし、まずこれで問題になるのは、大臣おいでにならないのですが、一つは、伝染病が日本に入ったときどうするか。コレラとか予ての他の東南アジアから入ってきた防疫についてたいへんな問題を起こしました、日本が。この問題が一つあります。もう一つ、私は、アメリカ軍がベトナムのあのどろ沼の戦争の傷病者を日本の基地でそういう治療をするということの、個個の人間に対しての問題じゃなしに、そういうやり方についていいのかどうか。日本は平和を口を開けば総理大臣以下言っておるわけでありまするが、行き先の見通しなしの戦争が続いている。その傷病した者を、日本にアメリカ基地があるからといって、その基地で治療をするというかまえでどんどん病院を建築してやっていくというこの心がまえがいいのかどうかというのが問題です。この二つについて御質問をし、明らかにしたい。  そこで、だんだん読んでみると、たとえば米国兵の検疫は、米国の軍医がやったやつを日本側の検疫官が事後承認のような形でこれを出している。入国拒否できるかどうかということになると、このような検疫法には拒否権がないということになってくるとどうなるかということが出てくるわけです。現在もジョンソン基地には、すでにマラリア患者とか皮膚病患者が入っているという、そういうことが、何ぼ病院の外と中は別だといっても、空気は流通しているわけでありますから、日本の検疫、防疫ということになってくると、重大な問題がここにひそんでいるのではないかと、私はそう思うわけであります。これらについて、そのアメリカ軍との関係、それから厚生省としての防疫をする関係、外務省から見えましたが、外務省から見えましたら、外務省の日米安全のそのような日米間の関係というような問題を順次ひとつ御発言を願いたい。
  123. 安川壯

    政府委員(安川壯君) それでは、ただいまの御質問の最初の点、まあベトナムで戦争をしたアメリカの兵隊を日本の基地で治療するのがどうかという、御質問と申しますか、御意見でございますが、私、政府委員でございますから、政治的な意味の政府の政策というものをここで私が申し上げることは必ずしも、適当じゃないと思いますが、人道上を申しますか、の観点からだけお答えをさせていただきますと、安保条約のたてまえ上、これはアメリカの軍隊というものは、直接日本を防衛するという目的に限らず、極東全般の平和安全の維持のために日本の施設、区域を使用し得るというたてまえになっておりますことは御承知だと思うのであります。ただ、その施設、区域を戦闘、作戦行動のために使いたいということは、当然日本政府との事前協議が要るわけであります。それ以外の目的に使いますときは事前協議という事件がついておりません。条約上のたてまえから申しますと、傷病兵を米軍の施設内の病院で治療するということは、安保条約上は当然許容されているわけであります。それから、今回の傷病兵の治療につきましてのアメリカ側との関係でございますが、これは出入に際します検疫につきましては、すでに合同委員会で先方との合意ができておりまして、米軍の施設に直接入ります場合には、あらかじめ米軍の検疫官が必要な検疫をいたしまして、検疫上支障がないと認められるものにつきましては、あらかじめわがほうの所管の検疫所長から必要な書類を本人に交付するということになっておりまして、ただ、検疫官のほうで、これは検疫上そのまま入国させ、あるいは出国させることが不適当だと判断される場合には、日本側の検疫所長と協議をしまして、そして必要な処理をとると、こういうたてまえでございます。
  124. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 公衆衛生局におきましては検疫を所管しておりまして、その検疫のことについて申し上げたいと思います。  検疫につきましては、一般の人と、それから外国の軍用艦船等につきましては、若干取り扱い一般的に異にしております。外国軍の軍用の艦船に関する検疫法特例というのがございまして、それによりますと、どこの国をも問わず、外国の軍用艦船についての検疫のしかたというものが一般と若干異なっております。できるだけ優遇するような形にはなっておりますが、そのほかに、米軍につきましては、日米の行政協定に基づきまして米国が使用している施設に入港または飛行機が着陸するという場合におきましては、その地区を管轄する保健所長が米国の検疫官をして検疫を実施させております。そうしまして異状がないときには検疫済み証を向こうの検疫官が出すという形になっております。向こうの検疫官といいましても、日本側の検疫済み証を出す。そこで、そこに患者が発見され、疑いのある者が発見されるという場合におきましては、すみやかにこちらのほうの検疫所長と協議をして、そしてその処置をはかるというふうになっております。なお、そのほかに、こういう施設でなく、一般の国際検疫が行なわれているところに入ってきた場合におきましては日本の検疫官が検疫をいたしております。こういうことでございます。
  125. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まず、厚生省からお尋にしますけれども、アメリカの軍医によって検疫をさして、管轄の保健所長が証明書を出すという手続になっていると、基地においては行政協定によって。たとえばその基地は、労務者は日本人だし、その使用物質は日本から供給するわけでありますから、出入りその他を通じてどのような日々の防疫を行なわれるかどうかというのが一つの問題点になってくると私は思う。それから、もっと根本的には重大な問題だけれども、アメリカ軍の中の検疫だけで、あと平後承認、証明出しているだけでいいのかという問題がぼくはあると思うんです。  それから、外務省の方、さっきちょっとよくわかりませんでしたけれども、その防疫の必要性について判断をして、いい者については入れるが、悪い者についてはもう一ぺんそれを入れないとか処置をするとかいうことになっているとおっしゃったわけです。具体的にどこでどうやってるか、そこのところをどこでどうやって、どういうぐあいにして日本の病院に入ってくるかという道筋をひとつおっしゃってください。
  126. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) これは、おもに船で入ってくる場合におきましては大体まあ横須賀とかいうようなところに入ってまいります。そこにおきましての検疫は、これは日本の検疫官が行なうという形になってるから問題はないと思います。いま御質問の問題があると思われますのは、いわゆる飛行場でないかと思います。その飛行場におきましても、すでに検疫を行なえるところが大体現在六カ所ございます。羽田、岩国その他でございますけれども、そういうところにおきましては日本の検疫官がやる。そのほかにおきましては、たとえば飛行機で直接運ばれたところにおきましては、羽田に着かないで、直接飛行場のある基地に運ばれた場合におきましては、そこのいわゆる軍医の中に検疫官というのがおりまして、それが検疫をして行なうという、そして愚行があり、あるいは疑わしい者があれば即刻こちらに通報するということ。では、その処置は一体どうするかという問題になってくると、事実上中に入ったものを処置する場合におきましては、そこの施設なりに隔離をして、そして外に伝播しないというような措置をとらなければならないわけです。それは向こうのいわゆる施設なりというものがございますから、そこにおい一般の人と隔離をする。それから、その使用した飛行機なりというものを消毒するというかっこうになるわけです。これはもちろん日本側にもそういうような報告がくるわけになっております。それから、羽田等に着きました場合の処置というものにつきましては、それは事実上は日本の検疫所長、そこの羽田の検疫所長と向こうの検疫をやる軍医が協議をしまして、どういうふうにするかということにつきましては協議の上きめていく。いずれにいたしましても、病毒が他に伝播をしないで、そして患者というものが隔離をされていくということが一番の基本になっておりますから、その線に沿って協議をして処置をしていくという形になっております。現在までいわゆる検疫伝染病としてそういうふうに発見されたものはございませんです。
  127. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 具体的にどういう措置を日本側とアメリカ側でやるかということにつきましては、ただいま厚生省のほうから具体的に御答弁がございましたので、私特につけ加えることはないと存じておりますが、従来のこの検疫、あるいはその病人が日本に入国後の措置は、日本とアメリカ側がその状況に応じ、その事態に応じてそれぞれ密接な連絡をとりまして必要な措置をとっておりますので、今回のベトナムの傷病兵の取り扱いにつきましても、検疫につきましては、いま申し上げましたように、一応手続はきまっておりますので、その手続に従って具体的にアメリカ側と連絡しながら適切な措置をとっていく所存でございますし、また、検疫後の処置につきましても、外務省といたしましても厚生省当局と十分連絡をいたしまして、必要に応じてアメリカ側と連絡をいたしまして必要な措置をとっていきたいと考えております。過去のいろいろ例がございますけれども、御参考のために申し上げますと、昭和三十七年に台湾でコレラが発生いたしましたときにアメリカ側と連絡をいたしまして、厚生省の当局で在日海軍の軍医部長と協議されました結果、アメリカ側は、第七艦隊が台湾に寄港することを原則として取りやめまして、もし必要があって台湾に寄港する艦船についても乗り組み員の上陸を制限するというような措置を先方でとりまして、また、その艦船が台湾を出発して十日をたたなければ日本には入港しない。当時、コレラの潜伏期間は五日だそうでございますけれども、大事をとりまして、台湾に寄港した艦船は十日をたたなければ日本に入港しないというような取りきめをいたしました例もございますので、今回のベトナムの傷病兵につきましても、今後事態の推移に応じましてアメリカ側と連絡して、この防疫という面については万全を期していきたいというふうに考えます。
  128. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは三十五日の新聞にこういう記事が各紙出ているわけです。ですから、その入国を必要に応じて日本が拒否できるか、検疫法ではこのような拒否権はない。せいぜい病院に軍が隔離するといったら、もうそれまでなんだ。基地内に日本の検疫官が入るなんというようなことはできないでしょう、おそらく。ですから、事実問題としては向こうの言うことは御無理ごもっともです。どんな病気が起きておっても、いや、ありませんと言えばそれまでということになる。たとえばここの新聞にも出ておりますように、二十六年の朝鮮事変のときに、出入りの洗たく屋が天然痘のビールスによって発病して、二十六人の罹災者が労務者、町民から出たというのですね。だから、今度はまた、いま何もないんだとおっしゃるけれども、いまないから心配はないということは何を証拠として言い切れるかということですね。これはたいへんな問題じゃないか。基地内の隔離にしたって、そこからコレラでも発病したなんていえば日本国中上を下への大騒ぎ。この前のイギリス人か何か歩いたところは大消毒で、日本中大騒ぎになったことを覚えているのでありますが、この東南アジアの戦地、山岳地帯には、コレラをはじめ、こういうこわい伝染病が蔓延していることは、これはもうあらゆるところで国民がよく知っているところなんです。だから、いまのようなだいじょうぶです。アメリカ軍の軍医がこうですと言ったのに保健所長が証明を出すんだということだけで、直通に前線基地から軍用機で自分の基地に帰ってその病院に入ってどれだけの扱いをしているかわからぬと思うのです。わかるとおっしゃれば、ひとつ大臣来ていらっしゃるから言ってもらいたいが、アメリカ軍の基地における軍の移動とか、要するにそういう資材、器物の移動であるとか人員の移動であるとか、あるいは武器の移動であるとか、そういうものがわかるはずがない。人間の傷病者も、いま三千五百人収容する施設を作業中だ、こういわれるわけでありますけれども、そういうものを個々の人間にしたら、これは病気になって、生命というものはとうといものだから、処置することそれ自身は、個々の病気になられた人は気の毒だけれども、そのために一億の日本の人間がこの戦争のために付随してこういうことで被害を受けるということになったらたいへんだ。だから、私は、ここでその治療を日米安保条約または行政協定によって基地内で処置をするということであるなら、それは少なくとも日本の検疫官がその基地内でもきっちり立ち会って、イエスかノーかを判定をして万全を期するということをしなければ、私は、こんなあなたまかせのようなことではどうにもならぬと思う。だから、ここのところができるかできないかということをひとつ厚生省、外務省その他の立場からお答えをまず願いたい。
  129. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 防衛施設庁長官から……。
  130. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 先ほどから申し上げておりますことは、全部アメリカにまかせておればだいじょうぶだという趣旨で私は申し上げたつもりはございませんので、いろいろ事態に応じまして、私もほうっておいてだいじょうぶだということを言うんじゃ毛頭ないのでございまして、十分アメリカ側と連絡をとりまして、こちらとして万全を期すべきものは期し、向こうに要望すべきものはあくまでも要望しますし、そういう意味の連絡を、密にしたいということを申し上げたわけでございまして、決してほうっておいてだいじょうぶだという趣旨ではございません。
  131. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 外務省の北米局長に聞いておるのじゃなくて、基地内にアメリカ軍の飛行機が来て、基地の中でどのように管理しているかということについてはわからないのではないか、その点、基地のほうではどうかというので、ぼくは施設庁長官に聞いたのですが……。
  132. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 私のほうから。もちろん施設内で米軍がいかなる活動をしているか、具体的な米軍の活動を一つ一つ一本が検査するということは、これは協定のたてまえ上できないわけでございますけれども、同時に、地位協定にも、施設の運営については、公共の安全ということに多大の考慮を払わなければならぬということになっておりますので、基地の中だから何をやってもかってだということにならないのでありまして、特に検疫の問題につきましては、ここにいわれているような公共の安全ということに重要な関係があるわけでございますから、法律的な意味の検査をし得るかどうかということは別といたしまして、わがほうといたしましても、今後も厚生省と十分連絡をとりまして、防疫上どういう点が問題だという点がありますなら、それをそのまま伝えまして、アメリカ側がどういう措置をとっておるかということについて向こうに回答を求めるというようなことももちろん可能でございますし、もしそれがわがほうから見て不十分だと判断される場合には、それに対する是正を求めるということも可能でございます。そのことは今後厚生省と十分連絡をとりまして、必要な措置はアメリカ側と連絡をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  133. 小柳勇

    委員長小柳勇君) いま藤田委員質問しているのは条約、協定の運用の問題ではなくて、事実上基地の中ではどういう検疫などの具体的な方策をやっているのかというのを聞いているのだから、防衛庁の話を聞いているのだけれども、そのことまで外務省でやっているのか。しないのだろう。
  134. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 施設庁のほうは施設を提供いたしておりますので、全般的には責任を持っておりますが、ただいまのような検疫というようなことにつきましては厚生省の系統でやっております。
  135. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、外務省の北米局長ですか、お尋ねしますが、あなたのおっしゃることを言ったら、一つはヒューマニズムだ、公共の福祉だと、だから信頼しておいても間違いはないのだ、そういうおっしゃり方です。私の言っているのは、信頼して間違いがないとかあるとかいう問題も、一つの協定ですから、あるでしょうけれども、事実問題は、現地の保健所長がアメリカ軍の施設の中には立ち入り禁止で入れないわけです。入れるのですか。まずそれを聞きたいわけですけれども、入れない。入れないのに、その中で何が起こっているやら何もわからないのに、その中の軍医が、いや、これはそうでありません、これはそうであります。これはもしも外へうわさが漏れたら隔離しますということだけでは私はあなたまかせだというのであって、それなら入れるのですか、あなたまかせでないというなら。軍の施設の中を調べて、病院から何から全部日本の厚生省管轄の検疫官が入って病気その他を調べられるのですか。調べられないのじゃないですか。
  136. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 私は、もちろん最初に、あなたまかせで、向こうを信頼しっぱなしだという御質問に対しましては、私は率直に言って信用しております。というのは、アメリカ自体、これは日本の公共の衛生の問題ばかりでなくて、アメリカのほかにも軍人もおりますし、アメリカ自体の防疫の問題として向こうは必要な措置を当然とると思っておりますし、それから、また、全般的なことを申しますならば、アメリカの公衆衛生の意識は、私は専門家ではございませんけれども、かなり高いということも聞いておりますので、一般論として私は信用してよいと考えて、おります。しかし、わがほうとしまして注文するところがあれば、これは遠慮なく私はすべきであるし、また、し得ると思っております。  それから、立ち入り検査ができるかという御質問でございますけれども、これは法律的な意味で検査というたてまえでは、私はそういうことが必ずしも協定上当然の権利としてあるとは思いませんけれども、これはあくまで話し合いの問題でございますから、もしこちらの厚生省の専門家が中に入ってみたいという御希望があるならば、これは当然、アメリカ側に申し出て、どういう実情にあるかということを事実上調べることは、私は不可能じゃないと、そういうふうに考えております。
  137. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、あなたは、アメリカだから信用する、それじゃどの国なら信用できぬという一般的な公衆衛生上の概念を頭にしておっしゃっているんだと私は思うのです。だから、それはそれであなたの御意見なんですけれども、私の心配は、朝鮮事変のときに天然痘に二十六人も日本で罹病したという一事があるわけですよ。いまは三千五百人だが、どんどんどろ沼戦争になっていったら、もっともっと戦病名の治療地は日本だということになって、ふえていく予想がされるわけです。そのときにこの朝鮮事変の二の舞いが起きないという証明ができるのか。起きないという証明をやろうとすれば、日本の検疫官がアメリカの軍医と立ち会いでそのあらゆるものを検疫をして、万全を期する以外にないんじゃないですか。軍医がこう言ってきたから、そうですがと言って証明書を出すだけじゃ話がつかぬじゃないか、万全を期する、ことができないんじゃないかと私は心配をしている、また、国民もそういう心配をしていると思う。ただ信用しているというだけで通せる問題じゃない。まあ北米局長にばっかり言っているわけじゃないから、厚生大臣もお見えになりましたから、ひとつ具体的な日本にコレラ、天然痘はじめ、あらゆるものの危険があって、単にアメリカの軍医だけを信用して、それで事足れりとお考えになっているかどうか、これはたいへんな問題だと思う。そのことを言っている。
  138. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 日米行政協定に基づきまして米国が使っておりまする施設に入港したり、あるいは着陸をしたりする場合におきましては、その地域を管轄いたしまするわがほうの検疫所長がアメリカの検疫官に検疫を委任して実施をしてもらうと、こういうたてまえになっておるわけでございますが、やはり当該地域の検疫所長というのは、実は日本国民に対して大きな責任を負っておるわけでございます。したがいまして、絶えずこのアメリカの検疫官のほうと緊密な連絡をとり、情報を交換し、そしてこれが基地の外部に伝播するような事態の起こらないように十分細心の注意を払い、緊密な連絡をとってやってまいる、こういうことでございまして、私は、わがほうの検疫所長の責任を、決してこれによってあなたまかせというようなことでなしに、検疫所長は十分に責任を負って、そういう事態を起こさぬように対処していくというように指導してまいりたいと思っております。
  139. 小柳勇

    委員長小柳勇君) いまの質問の要点は、公共性とか道義とかではなくて、法的にはどういう根拠があるかということをくどくどと藤田君が聞いておるわけです。さっき北米局長が言ったように、公益性とか、そういうものが協定にありますと公益上安心であるから入ってくるんだと言われるが、ただ、防疫の問題についていま大臣の言われたのは、公衆衛生上、検疫所が責任を時っているとおっしゃるが、公的にどういう責任を持っておるか。北米局長とは違いまして、中のほうの米人にも影響があることであるから、中におる軍医なり検疫官が検査しますとおっしゃるが、米国だけに限りませんでしょう。将来ベトナム人が来るかもわかりませんね。そういうときの接点といいますか、接触する法的根拠は何であるか、このことを聞いておるのです。
  140. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) そのことは、すでに私が来る前に御説明申し上げたと思いまして、はしょったわけでございますが、外国の軍用の艦船、あるいは舶空機等に対する検疫は、御承知のように、外国電用艦船等に関する検疫法特例、これに基づいてやっておるわけでございます。そこで、アメリカの場合には日米行政協定でこの特例を適用することに相なっておるわけでございまして、一般の港、あるいは空港に入ってまいりました場合には、当該地域を管轄しておりまするわがほうの検疫所長が検疫をするということでございますが、基地の中におきましては、先ほど申し上げましたとおり、その地域を管轄しておる検疫所長が米国の検疫官に検疫を実施せしめておる、こういうことでございます。しかし、実施はさしておりますけれども、やはり日本国民に対しましてはわがほうの検疫所長が責任を負っておるわけでございますから、絶えず緊密な情報の交換、連絡をとりまして、そうしてこれが外部の日本国民に伝染する等の事態が起こらぬように万全の措置を講じておる、こういうことでございます。
  141. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だいぶ厚生大臣はあとからおいでになりましたから、話が前段の話になっておるわけですが、朝鮮事変のときに天然痘が二十六人も、あなたのおっしゃるとおり、やられて出たわけですね。そして当時よりももっと発達をして、基地内の飛行場に軍用機が戦地からそのまま入ってきて、そして処置をされておる。あなたは、いま北米局長がどうこうとおっしゃいましたけれども、アメリカの検疫官、軍医が、何もありませんと言えばそれで事終わりなんです。そして、もしもコレラはじめ、いろいろの伝染病が外へ出たならば国民はどうなるのか。だから私が申し上げたのは、万全を期するというなら日本の検疫官も立ち会って、そして検疫を実施することではないか。私は時間があまりないから集約して言いますけれども、それが一つです。そうでなければ万全を期することはできないじゃないか。  それから、もう一つの問題は、いま三千五百人という病床をつくっているというが、ベトナムのあの深刻な、いつまで続くどろ沼戦争だといわれておる。これが三千九百が九千、一万というように、あそこの傷病兵は日本でとにかく治療して、そして戦争を続けるということになる。そうすれば、個人については一日も生命を何とか延ばしたいというこの気持ちはわかりましても、日本に基地があるためにベトナムでアメリカが戦争をやっている。その傷病者その他の基地、補給基地は日本なんだということになれば、口でいかに日本が平和を弔えてみても、行政協定、安保条約でここまで予想がされていなかったと思いますけれども、日本が唯一の戦傷病者の治療基地なんだと、その上に立ってこの戦争が続いているんだということになれば、平和外交上の問題としては重大な問題が出てきはせぬかということが第二点なんです。この心配が出てくるんです。そしてあれは戦傷病の治療だけなんだと、言い切れるかどうかというと、言い切れない問題がある。B52がグアム島からベトナムまで爆撃をしているということを聞いております。アメリカの勢力範囲内といいましょうか、グアム島あり、 ハワイあり、そういうところになぜそれじゃ戦傷病名を運ばないのか、それなら日本ではあまり問題は起きない。しかし、それもみな安保条約、行政協定に基づいて、日本が必然的にこのベトナム戦争の傷病治療の基地になることも前からもうきめられていることである。これだけを言い切れるかどうかという問題が二点目の問題。それから、一番初めの問題は、一億の国民が安全だという安全対策として、朝鮮事変にも例があったことですから、これだけでいいのかどうかということを二つこの際明確にしてください。
  142. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 前段の、この基地内の検疫について、アメリカの検疫官だけにまかせずに、日本の検疫官も立ち会って検疫をしたらどうか、そうでなければ安心がいかない、これは藤田さんのおっしゃることはごもっともでございます。ただ、現在の日米行政協定におきましてはそういうことがなされないで、向こう側に委任してやってもらうというたてまえになっておるわけでございます。しかし、最近の事態は、十分わがほうとしても慎重にこれに対処する必要がございますので、外務省とも話し合いを厚生省としていたしまして、これを検討してまいりたい、このように考えます。  それから、第二の点につきましては、これは厚生省としてよりも、むしろ外務省を中心といたしまして、この新しい事態にどう対処するか、傷病兵の基地というような形に変わってきているというような問題につきましてはどう対処するかということにつきましては、外務省その他とこれも十分話し合いをいたしまして、その事態に対する検疫の問題は前段に申し上げましたが、こういう新しい情勢につきましてどう対処するかという問題は政府全体として考えたいと思います。
  143. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ですから、前段の問題は大臣がそういうようにはっきりおっしゃったのですから、日本国民の防疫上、検疫上の万全を期するために外務省と相談をして、要するに立ち合い検査ですか、朝鮮事変の二の舞いが起きないように最善の努力をしていきたい、これはわかりました。  それから、二番目の問題についても、いま外務省と相談してと、それは筋道はそうなると私は思いますけれども、単にここの答弁だけでなしに、一般通例的に安保条約、行政協定があるのだから、それはもう前に約束したことだから、なんぼどうなっても、日本とアメリカ以外の国との平和外交上の関係がどうあろうとも、それはきめたことだからやむを得ないのだと、そういう立場は見のがせない問題だと言っておるわけでございますから、そのことをひとつ真剣に外務省とよく相談をしていただいて、現在アメリカ本土、グアム鳥から北ベトナムの爆撃をやっておるわけですから、どうせここへ運んでくるのも似たような飛行機で運んでくる。グアム島と日本とどっちが遠いかということになると、そんなにあまり距離が違うわけでもなかろう。そこらの問題を考えあわして、私は、日本がアメリカのベトナム戦争の傷病兵の治療基地になって、外から見れば日本とアメリカが一体となってベトナム戦争を起こしておるのだというような理解が外国でできてくるとすればたいへんなことだ。私は、政府が平和を唱え、一日も早く戦争が終わることを期待し、平和を守っていく、憲法のたてまえによって。そうおっしゃっておるわけですから、だからこの点は十分にひとつ真剣に取り組んでやって、二段目の問題も取り組んで、全体の日本の平和、外交の立場から考えていただきたいということを大臣に特に私は要望しておきますから、心して処置していただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
  144. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言がなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度でとどめておきます。
  145. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 次に、国立療養所等運営に関する件について調査を行ないます。本件に関し、質疑のある方は、順次御発言を願います。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 私は、国立療養所、元大阪厚生園におきまして、昭和三十二年ごろより昭和三十九年一月ごろまで、約六年間にわたり実施されておりました、じん肺健康診断並びに一般臨床検査の料金を国庫に納入せずに、病院内に特別会計を設置して、関係幹部数人で恣意に支出していた不祥事件について質問をいたします。まず、厚生省、次に法務省当局から順次に与件の概況の説明をお願いしたいと思います。
  147. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 田代君、もう少し具体的に内容をおっしゃってください。
  148. 田代富士男

    田代富士男君 時間がないとおっしゃいましたので。
  149. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 具体的に四十分くらいの施囲で、どんなことがあったか、こういう質問から……。
  150. 田代富士男

    田代富士男君 ここにいらっしゃる皆さん方に事件の概要を申し上げますと、大阪にございます国立養療所、現在は近畿中央病院という名前に変わっておりますが、元厚生園長の瀬良好澄、また、元医務課長の高木善胤、研究検査課医長の横山邦彦の三名は、当国立療養所のエックス線技官、あるいは臨床検査技官及び主任看護婦を抱き込んで、昭和三十三年より昭和三十八年にわたる六年間、会社あるいは工場、銀行、約百十社と特別契約を結んで、一般検診、あるいは、じん肺検診を集団的に行ない、そうして国立療養所の施設を使用して、料金をば厚生省組織規程の会計法にもありますとおりに、医事係の窓口を通さずして請求書あるいは受領書を作成し、発行し、多額の金を取り、この金をかれら数人によって恣意に費消していた、このような不正事件でございます。これにつきまして、ただいま申し上げましたとおりに、順次説明をお願いしたいと思います。
  151. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいま問題になりました事件の経過の概要を私どもの立場から申し上げさせていただきます。  昭和三十年の七月に、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法という法律が制定されまして、それによりまして粉じん作業――粉を吸い込む作業、粉じん作業の労務者に対してけい肺の健康診断を実施することが使用者の義務となったのでございます。しかし、初めてでございますので、初回の健康診断に限って、同法の附則によりまして国が直接実施することになりまして、昭和三十一年、当時労働省の外邦団体である労政協会が、けい肺法に基づく健康診断の実施を請け負いまして、その計画に基づいて、国立療養所大阪厚生園の瀬良園長が従来からけい肺の専門家であるということから、その学識経験を買われまして検診の委託を受けたのでございます。そうして、それが三十一年から三十八年まで行なわれてまいりました。また、一方、けい肺法の対象外の石綿を吸い込んだ石綿肺、あるいは滑石作業の場合に滑石を吸い込んで起こります滑石肺、あるいはアルミの粉を吸い込んで起こりますアルミ肺、黒鉛の粉じんを吸い込んで起こる黒鉛肺、あるいは溶接工等が鉄粉を吸い込んで起こります溶接工肺等の各種のじん肺の調査と診断の基準を設ける必要から、けい肺法の制定の翌年であります昭和三十一年から労働省が一石綿肺の診断基準を研究する立場で研究班を設けまして、瀬良園長も委嘱を受けて、厚生園の周辺の地域に密集している石綿工場を巡回検診し、三十一年から三十三年までの間、研究資料を集めまして、当該じん肺の検診基準の制定、あるいは同法の制定の基礎的な資料を収集いたしました。昭和三十四年に大阪厚生園が現在地に移転いたしましたので、その整備にも忙しかったということと、さらに技術的に高度な研究もあわせてやりたいということから、従来、車等をもって巡回して検診しておりましたものを、さらに精密な検査を行なうためにエックス線検査の特殊撮影、あるいは肺機能の検査等をあわせてやるという研究上の目的もありまして、巡回診療をやめまして、けい肺、石綿肺の検診を病院に来院させてやることにいたしたのでございます。以上がそういう検診をやってまいりました経緯でございます。  これらの検診を行ないます場合に、当初は労働省が直接労働基準局に実施させました。費用は一件につき五百円を国が二分の一負担し、使用者に二分の一負担させるというたてまえをとってまいりました。したがって、瀬良園長がそれらの委託を受けました場合に、当然それらの検診に従事した謝金というようなものを受け取ったことは当然であろうと思います。また、その後三十四年以降につきましては来院させまして、そこで検診を行ないましたために、先ほどお話にありましたような、病院の検査技官であるとかレントゲン技師というような者が、基準監督署、あるいは外郭団体である労働基準協会のかわりに事実上金銭の授受、をやったということは事実でございます。これに対して厚生省はそういう経理のしかたについてどういうふうに考えておるのかということを申しますと、私どもは、この検診は、たとえば結核検診が方々で行なわれておりまして、それがいろいろな業者に受託され、一部が国立病院、療養所等が受託しておりますと同時に、けい肺の検診もきわめて特殊な専門的な検診でございますので、専門家である瀬良園長がこれを受託してやったものというふうに解釈いたしております。したがって、そのような検診について謝金を受けるというようなことも当然あり得るだろうと思いますし、また、一方、来院させてやった場合、今度来院さしてやる以上、その診断費等が当然園の正当なルートを通って経理されるべきではないかという御意見のようでございます。しかし、私どもは、これはどこまでも瀬良個人がそういう特殊な学識経験を買われて受託したものであって、本来の国立療養所が受託してやったものではないという解釈に立っておりますし御承知のように、国立療養所は一般会計でございますので、当然それらの事業を恒常的にやるということのためには予算を計上し、そして、その中から経費を支出し、また、その収入を国庫に入れるというのがたてまえでございますが、この問題は、そのように本来国立療養所として行なうべき業務とは考えませんで、どこまでもそういう学識経験者が個人的な立場で受託したものと考えておりましたので、これを園の経理に入れ、国庫に入れるというようなことは指導してまいりませんでした。しかし、それでも園の施設あるいは人を使っているではないかという御意見も出ると思いますけれども、これにつきましては、国立療養所といえども、当然診療行為のほかに、研究業務というものも使命となっております。ことに園長がこの方面の専門家で、その学識経験を高く買われている人間でございますので、園長がそういう園の施設を若干使ってそのような研究業務をするということは、研究を助成するという意味からいっても、いたずらにチェックし、その研究が不自由になるようなことのないようにという配慮も私どもいたしておったわけでございます。  以上が経過の概要でございます。
  152. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 田代君の質問に対して、法務省が現状について調査しておる段階の御説明をお願いします。
  153. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) ただいま厚生省から御説明の案件につきましては、現在大阪地方検察庁において刑事事件が係属しております。すなわち、本年八月五日、大阪地方検察庁の検察官に対しまして、国立療養所近畿中央病院の前事務部長浜崎梅治郎という人から告発がなされております。被告発人は近畿中央病院副院長瀬良好澄、同病院貝塚分院分院長高木善胤及び同病院研究検査課長横山邦彦の三名でございます。  告発事実の要旨は、国立療養所近畿中央病院は、昭和三十九年四月一日、旧国立大阪療養所と旧国立療養所大阪厚生園とが合併して設立されたものであり、当時、右瀬良好澄は大阪厚生園園長、高木善胤は同園副園長、それから横山邦彦は同園レントゲン技師をしていたものであるところ、同園が行なう、じん肺の検診及び検査診療料の保管等の業務に従事していた右三名は共謀の上、昭和三十三年十一月ころから昭和三十九年二月ころまでの間、右厚生園において、じん肺の健康診断及び一般臨床検査等を行ない、その検査診療料として一般外来患者から合評約百五十万円を受領し業務上保管中、これをそのつど同病院に納入しないで着服横領した、こういう告発内容でございます。  この案件につきましては、告発を受理いたしましたちょうどそのころ、参議院議員通常選挙の取り締まりの最中でございましたために、やや捜査のスタートがずれてはおりますけれども、目下鋭意捜査中でございます。問題点は、何ぶん捜査中のことでございますから、詳細に申し上げることを御遠慮さしていただきたいと思いますが、ただいまここで私が承っておりましたような、何と申しますか、私その方面の専門用話を存じませんが、この三人の被告発人の方のおやりになったことが園としての業務であるのか、いわゆるアルバイト的と申しますか、そういうようなものであるのか、その辺も一つの捜査によって糾明すべき点ではないかと思われる案件でございまして、それらの点につきまして現在大阪地検で鋭意捜査を行なっておる最中でございます。
  154. 田代富士男

    田代富士男君 いまのお話によりますと、厚生省の当局としましては、そのような、じん肺検診の権威者であるならば、そのような国立の療養所の施設を使ってもやってよろしい、施設も若干使っても権威者であるならばよろしいというようなお話でありましたが、これは間違いありませんか。
  155. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) これは結核療養所でございますけれども、結核というものと、じん肺というものは非常に密接な関係がございます。レントゲンの上の小さな影だけでは、結核の影であるのか、あるいは、じん肺の影であるのかわからないという問題もございますし、したがって、じん肺というものの研究は、特に結核との鑑別の診断上、非常に重要な事項でございます。したがって、じん肺の研究を行なうということは、結核医療それ自体にも非常に役立ちますので、結核療養所の職員の、特に医師による研究班を設けて、瀬良園長がその班長として研究を実施しておったようなわけでございます。そういう意味で、このじん肺の研究それ自体は厚生省も企図している研究でございまして、そういう研究の一環に園の施設を使用するということも当然あり得ることであり、われわれとしても、園の施設を利用してもそういうような研究が推進されることを望んでおります。
  156. 田代富士男

    田代富士男君 いまのお話でありますと、そのような、じん肺検診料等の謝金は受け取っても当然であると、そういうお答えでありますが、じゃ、いま国立の療養所が約百五、六十以上あると思いますが、そこでもそういうことをやって謝金を取っているわけなんですね。現在中央総合病院になっておりますが、これ以外のところでもやっているわけなんですね、その点お願いします。
  157. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) その瀬良園長のおりました大阪厚生園というのは、このまわりの地域に多数の石綿の工場がございまして、そういう意味で、この地域は瀬良園長にとってもきわめてかっこうな研究地域でもあったわけでございますので、厚生園がこれを非常に積極的にやっておりましたが、ほかの療養所ではそのような工場その他がないというような地域が大部分でございますので、ほかの病院でけい肺の検診を受託してやっていることは承知いたしておりません。
  158. 田代富士男

    田代富士男君 私が聞いているのは、全国の各療養所でこういうことをやっているのかやっていないのか、その点を聞いているんです。その厚生園のことじゃないんです。それをそのように認めるならば、謝金は受けるのは当然である。まして権威者であるならば、このような国立の施設を若干使ってもかまわないということでありますから、であるならば、全国の療養所でもやっているかやっていないか。いまのあれはお答えになっていませんよ。その点をお願いします。
  159. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 最後にその点を申し上げたのでございますが、ほかの療養所でそういう受託をやっているということは聞いておりません。
  160. 田代富士男

    田代富士男君 それであるならば、よそはやってなくて、じゃ、厚生園だけ認めるというような、そういうようなことはどうかと思うのです。まして、いま法務省の方が話されたとおりに、応は告訴事件になっているのです。また、そういうような金を自分たちが着服するということはできることであるかできないことであるか。だから、会計法の第二条につきまして、戸澤会計課長さんに、どのようになっているか、お願いしたい。
  161. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 一般的に申しますれば、そういう国の機関が国の施設とかスタッフを使って歳入をあげるというような行為につきましては、会計法上のたてまえから、それを成規の手続を踏んで国庫に納めるということが当然のやり方であろうと思います。しかし、本件の場合には、そういうけい肺の検診について、この厚生園が機関としてその検診を受託をしたというような委託契約、そういったものもないようでありますし、この院長が非常な権威者であったという個人的な立場に着目されて、個人的に頼まれたというような色彩が強いようでございます。そういうものにつきましては、必ずしも会計法のたてまえからして国の歳入に入れなくちゃならぬという解釈が当然出てくるかどうかは疑問ではなかろうかと考えます。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 疑問ではなかろうかという、最後のそれを私は聞きたいのです。だから私は、公計法の第二条にはどう載っておるか、今回の事件は、そのような瀬良病院長をはじめとした彼らが、そのような官の職責において国立療養所の人的、物的施設を使用し、料金を徴収しながら、国に納めなくちゃならないのを納めていないことが疑いであるかわからない、このようなうやむやなしかたはないと思うのです。こういうしかたはありませんよ。それはどうですか、はっきりしてください。疑いがあるかどうかわからない、その点を私があなたに聞いているのですから、その点お願いします。
  163. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) ただいま医務局長のほうからお答えいたしました実態に徴して考えれば、本件については会計法律違反ということはないのではないかというふうに解釈いたしております。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、会計法第二条はどのようになっていますか。違反でないとしたら、第二条はどのようになっていますか、お願いします。
  165. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 会計法第二条によりますれば、国の歳入、国の収入金ということになりますれば、それは国庫に納入すべきであるという規定になっておるわけであります。その収入金をそのまま国庫に納めないで使用するということが二条でもって禁止されておるわけであります。したがいまして、本件の検診料が国の債権であるということがはっきりいたしますれば、それを他の経費に充当したということは違法となりますが、先ほどのような実態からしまして、園長の個人的な研究のために検診を実施したというようなことになりますれば国の債権ではないというふうに解釈されますので、したがって、会計法二条の違反ではない、かように思います。
  166. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、園長が個人的なそういう問題でやったのは違法ではないと、間違いないわけなんですね。では、私お聞きしますが、国立療養所におきましても外来の患者があります。一回の集団検診は三百人から五百人来ます。じゃ、そのような国立療養所の病院長であるという責任者の立場の人が、公の建物あるいは施設を使いながら、純然たる国立療養所の外来の患者を差しおいて、自分自身がそのような権威者であるから、ただそういう名前のもとにそういう人々を診察をして外来の患者に迷惑をかけるということは、これは当局としてどういうお考えでありましょうか。当局の見解をお願いいしたいと思います。
  167. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 外来を大いに妨げてまでそういうような検診を引き受けるということは、それは適当ではないと思います。しかし、厚生園は外来の非常に少ない施設でございますし、また、そういう外来の妨げにならぬように、一年間に二百人か三百人程度でございますので、一日四、五十人とかいうふうに分けてやれば、そういう外来の業務に特に支障するというようなことも予想されませんので、当然そのような配意をしてやったものと存じております。
  168. 田代富士男

    田代富士男君 では、外来が少なかったらやってもよろしいというわけなんですね、いまの言い方でいきますと。外来が少ないからそういうことをやっても差しつかえない、認めた上に外来が少ないからやる、こんな言い方はないと思うのです。これは純然たる国に納むべき金じゃありませんか。それを権威者であるから、あるいはそういう中心的じん肺関係の工場があるから――であるならば私お聞きしますが、同じ大阪府下に刀根山病院もあります。国立療養所、ここにおいてもじん肺の検診をやっております。同じ大阪において行なっておる刀根山病院のじん肺の検診、あるいは京都にも国立の療養所があります。そこにおいて行なっておるじん肺の検診と、もちろん厚生園におけるじん肺の検診と、そのような権威者であるからという名前のもとに差別をつけなくちゃならないという理由を聞かしてもらいたいと思います。
  169. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいま御指摘にありました刀根山病院では集団的な検診は行なっておりません。ただし、けい肺の患者は入院いたしております。なお、京都その他の療養所はもちろん行なっておりません。先ほどとの関連で、外来が少なければ検診を行なってもいいかというお話がございましたが、これは外来の少ない多いにかかわらず、業務に支障のないようにしてそういう本来の業務外のものをやるという趣旨でございます。したがって、研究ということも、本来の診療業務に支障のないような方向でやっていくべきものでございまして、この受託検診も研究業務の一環でもございますので、それで本来の診療業務に支障を来たさない形でやっていくべきものと考えております。  また、専門家であればいいのか、専門家でなければいかぬのかというようなお話もございますが、何ぶんにも、けい肺というようなものは、比較的数の少ない地域的な問題でございますので、どうしてもそういう専門家が少ない。したがって、この瀬良園長がそういう特殊な学識経験を買われて、重要なる社会的資源、また、非常に数の少ない社会的資源として活用されるということは、これは人的資源の活用という意味からも適当ではないかと考えております。
  170. 田代富士男

    田代富士男君 いまの話によりますと、じゃ、そういうことはやってもよろしいということなんですね、個人であったならば。本人は国家公務員の一人であるし、一面では瀬良病院長個人である、そういうことと思いますが、だから、そういう国家公務員であっても、病院長の権限おいてそういうことはやってもよろしいのですか、その点をひとつお願いしたいと思います。
  171. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この問題は、先ほど来、医務局長からも御説明を申し上げ、また、法務省当局からもお話がありましたように、ただいま大阪検察庁において捜査中の事件でございます。田代委員の追及されるような観点で告訴をされ、これを検察当局がただいま捜査中のものであります。また、この問題は法務省からもお話がございましたように、その専門的な技術を買われて、そしてアルバイト的に研究に従事したものであるかどうか、これも非常に微妙な問題であろうかと思うのであります。したがいまして、当委員会におきまして、これが犯罪を構成するとか、あるいは構成しないとかいうようなことを断定的に結論を出すわけにはまいらない、検察庁の捜査の結果を十分見まして、これに対して厚生省としてはその結論を待って措置したい、かように考えております。
  172. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 現在身分はどうしてあるんですか。その告訴された三人はどういう待遇を受けているんですか、医務局長
  173. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 従来どおり、身分はそのままでございます。
  174. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 仕事をしているんですか。
  175. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 仕事をしております。
  176. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  177. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 速記を始めて。
  178. 田代富士男

    田代富士男君 だから、いまの問題点につきまして、幸い厚生大臣いらっしゃいますが、財政法第八条におきましては、そういう半額等で診療する場合には厚生大臣許可が要るようになっているかと思うんです。しかし、今回の瀬良園長のやったことは、そういう正式な手続もとっておりません。いま刀根山病院の問題が出ましたが、刀根山病院等は正式な手続をとっております。同じ大阪府下の国立療養所であって、片方は正式な手続をやる、片方はいまのように権威者であると、そのような立場であるならば認められる、こういう点、この第八条の問題をどのようにお考えになるか、御説明願いたいと思います。
  179. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 財政法の八条は、「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」と規定されておりまして、これも先ほどのく会計法の解釈と関連しますが、これが国の債権であるかどうかというところに問題の基点があろうかと思います。したがいまして、裁判の結果、国の債権であるということになりますれば財政法八条違反ということになりまするが、その結果、現在の段階では、あくまで個人的な行為である、国の債権ではないというふうに解釈しておりますが、このもとの解釈いかんによって八条違反かどうかということが決定する問題であろうかと思います。
  180. 田代富士男

    田代富士男君 いまの問題も、はっきりしたようなはっきりしないようなことですが、時間の関係で、また後日に詳しいことはお聞きしたいと思いますが、刑事問題であるから、そういう問題については触れられないということであるならば、厚生省の組織規程の第八十三条、八十四条にはどのようなことが載っておるか、御説明願いたいと思います。これは刑法は関係ありませんからね。
  181. 渥美節夫

    説明員(渥美節夫君) ただいま御質問の厚生省組織規程の第八十三条及び八十四条におきましては、国立療養所におきまする庶務課、事務部、医務課、医務部の分掌の事務の項目が掲げられております。したがいまして、おそらく本件関係のありまする面といたしましては事務部、つまり大阪厚生園、いまの近畿中央病院でございますが、その事務部におきまして「会計、物品及び営繕に関すること。」、これを事務部の所掌事務であるというふうに規定してあるといった点において関連があろうかと思います。が、これはあくまでもやはり事務部の分掌事項を規定したものである、こういうように解釈いたします。
  182. 田代富士男

    田代富士男君 八十四条。
  183. 渥美節夫

    説明員(渥美節夫君) 八十四条におきましては、医務課または医務部の事務についてその所掌を定めてあるところでございまして、本件関係あると考えられますのは、その第五号に、医務部におきましては、「医療の向上のための研究に関すること。」、こういう条文もございますが、先ほど来局長が御説明、御答弁申し上げましたとおり、国立療養所におきましては、一般の診療を行なうとともに、そのような医療の向上のための研究を行なうということがここで定められておるわけでございます。
  184. 田代富士男

    田代富士男君 いま八十三条、八十四条の説明がありましたが、これはいま庶務課はどういう仕事をやるか、あるいは医務課はどういう仕事をやるかと、その規定じゃないかと思うのです。その八十三条の中には「診療記録の保管」、あるいは「患者の入退所」、そのような事務は一切庶務課において行なう。八十四条におきましては、医者は愚考の診察に関係のある部分だけを、それをやっていくのが医者の仕事である。ところが、今回の厚生園の問題は、医者であるなら、医者は患者の診察に関する仕事のみであるにもかかわらず、診療記録を特別につくり、特別会計をつくって自分たちの遊興費としてそういうものに使っていた。こういうことは断じてこの八十三条、八十四条の違反に該当するんじゃないかと思うわけなんです。そういう点いかがでございましょうか。
  185. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいまの組織規程等に書かれておりますことは、国立療養所としての園の本来の業務についてのことでございまして、ただいま問題になりました瀬良園長の、じん肺検診の業務は、これは園の本来の業務としては考えておりません。どこまでも個人的な業務として、したがって、個人であるがゆえに個人的な診療記録も整備し、また、書類もつくったという経緯であろうと思います。ちなみに、この事業が療養所本来の業務として課せられ、このように何年間も継続しておる事業でおるといたしましたならば、本来これを予算の中にこのような経費を計上し、そしてその収入も見積もり、したがって、それらの事務は本来の園の業務として経理処理するのが適当であろうと思いますが、この検診についてのいろいろの経費というものは予算にも計上されておりませんし、したがって、収入も園の本来の収入にも入れてないというたてまえでございますので、どこまでもこれは本来の園の業務とは別個の個人的な事業であるというふうに考えております。
  186. 田代富士男

    田代富士男君 もう時間もあまりありませんから簡単にお聞きしますが、そういう個人の仕事として厚生省が正式に認めているならば、このような事件が起きたときに、フィルムの受け払い簿、あるいは金銭の出納の出入り帳ですね、そういうものを出してくれと請求されたときに瀬良園長は出さなかったのです。そうしてレントゲン・フィルムの受け払い簿は今里技官、肥田主任技官等が記帳し、監督しているわけです。彼ら自身が、この事件が起きたときに、これは不明瞭であるからといって瀬良園長のところへ返したわけなんです。その返したエックス線のフィルムの受け払い帳のうちの三十三年、三十四年の記帳したところが瀬良園長自身において削られたという、このような不明瞭なことをしなくてもいいのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  187. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 繰り返しますように、この事件が本来の園の業務ではない。したがって、これは正当の事務系統をもって、正規のルートで処理されるべきものではなくて、どこまでも個人的な形でやられたものと考えております。したがって、これに対する保管の業務とか、あるいはレントゲンのフィルムの出納というものも、個人的な立場で出納をされておりまして、園本来のフィルムを使ったということはございません。したがって、これはそのような研究グループの間でそれぞれ事務を分担してやったということだろうと存じます。
  188. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、時間の関係で次にお尋ねいたしますが、この問題に関しましては、事業主と厚生園との間に堺市の労働基準協会という団体が関与しているわけなんです。その協会を経由して中央病院とのそのような、じん肺の検診等が行なわれたわけでありますが、この労働基準協会自身の主体性について、どういう団体であるか、その点ひとつお願いしたいと思います。
  189. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 御説明申し上げます。  堺労働基準協会というのは、三十六年に、これまでの堺労政協会、その他二、三の団体が一緒になって設立をいたしたものでございまして、労働基準法の実施に対して協力をするという趣旨に承知いたしております。事務員等が二、三名にすぎない非常に小さな団体でございまして、大体会合とか何かの世話がおもなのでございますが、この事業工の行なうじん肺の健康診断については、申し込みをとってアレンジしてお医者さんのお世話をするということをいたしているようでございます。なお、法人格は持っておりません。
  190. 田代富士男

    田代富士男君 いまのお話によりますと、法人格も持っていない任意の団体と思いますが、今回の厚生園の事件におきましては、レントゲンの受け払いの手数料とか、そのような問題につきまして瀬良園長と共謀して、偽りのそのような報告書ですね、それを作成して近畿地方医務局に出したというような事実も聞いているわけでございますが、そうした場合に、労働省としてそのような労働基準協会に対し指導監督をする必要があるか、そのようなことは関知しないのであるか、その点一言お願いしたいと思います。
  191. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 瀬良医師と共謀して偽りの報告を出したというようなことにつきましては、私ども実は承知いたしておりません。任意団体でございますために、私どもの監督はあまり行き届いておりません。正規の監督の権限はないわけでございますが、基準法関係のある団体でございますので、仕事の上で接触もあるので、いろいろ指導はいたしておりますが、万一そのようなことがございましたら、もちろん直接的には検診が行なわれれば、その経理の処理等についてはタッチするものではございませんけれども、検診に随伴して不正な行為があるというようなことがございましたらば、私ども法律に基づく権限はございませんが、指導上十分留意して、ぜひ是正させるべき必要があると考えております。
  192. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、最後に、時間もありませんから。今回の事件は、公衆衛生活動協力の美名に隠れてただいま申し上げました特別会計を設置いたしまして、じん肺検診料のみならず、一般診療費等までも国庫へ納入せずして自分の恣意に使っていた、これが国立療養所において行なわれている、このような事実を、いまのお話によると、権威者という名前のもとに許されたわけです。全国にもあらゆる療養所があります。一部の有力者によりますと、こういうことが謝金として取られることを厚生省で認めるならば、全国の療養所の所長にも訴えていきたいという有力な人もいるわけなんです。これであったらば、国民大衆の気持ち、期待も裏切るようなことになるのではないかと思いますから、そういうことのないように、最後に厚生大臣の御意見をお伺いして終わりたいと思います。
  193. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) この問題は非常に特殊な、じん肺、けい肺の研究調査というようなことにからんでの問題であり、また、田代さんが御指摘になるような角度でこれを見た場合には刑事事件になるのではないかというような見方もあるわけでありますが、それらの問題はただいま検察当局において捜査中のことでございます。先ほど法務当局からお話がございましたように、この事件のポイントは、これが正規の病院としての仕事であるのか、また、アルバイト的な仕事としてなされたものであるかどうか、これがポイントになるわけでございまして、そういう点を中心に、ただいま検察当局で捜査中のことでございますから、いまここでいずれとも断定のできない事犯である、かように考えております。いずれにいたしましても、私どもは、かような世間からいやしくも疑惑を受けるようなことが今後起こらないように、国立病院なり国立療養所の監督指導につきましては、十分注意を払ってまいりたいと考えております。
  194. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ほかに御発言もなければ、本件に関する質疑は、今日はこの程度にとどめておきます。
  195. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 次に、昭和四十一年度予算要求に関する件について調査を行ないます。本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  196. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、私から先に、ほかにも予算に関しては質問があるようですから、私は問題点だけ指摘して御意見を承っておきたい、こう思います。  質問をする前に、会計課長が見えていると思うのですが、特別会計の措置は、われわれ予算要求書の説明をもらったけれども、特別会計は何で出さなかったか、われわれに示されなかったかということをちょっとあとでお話を願っておきたいと思います。  そこで、私は、まあ時間もありませんし、ここで主として議論をする段階ではないと思う。しかし、厚生行政というのは、非常に政府のうちにおいても、陳情、請願の一番多いのは厚生行政だと私は思う。それは何を物語っているかというと、一昨日少しこまかいことも議論したかったのですが、時間の関係で割愛をいたしました。しかし、いまの経済のひずみというものは、ものをつくる設備だけこしらえて、そのできたものを消化する条件がないから不景気になっている、かようなことです。このことがいまの不景気、不況なんです。これは大臣よく御承知のことだと思う。そうすると、その不況の一番大事なところは何かというと厚生行政ですよ、労働行政と厚生行政だと思う。だから、いかにして購買力をつくるかという一番の基礎は所得保障なんです。私は、大臣にあまり質問をしませんでしたけれども、総理と企画庁長官に十分に私は言ったつもりです。まだ足らぬ面がありますけれども、これは時間を制約されたが、十分に言ったつもりですが、厚生大臣もよくひとつお聞きになったと思いますから、その面で、まず国民の所得保障を根本にして、これは陳情がないと思います。しかし、経済は、ものをつくる設備はたくさんあって、そのつくったものがはけないからほこりをかぶって工場をとめているというばかげたことはもう許されないと思います。これは厚生大臣がしっかりおやりになることで、このひずみを一番先に是正する一番大きな柱を厚生大臣が立てられることだと、私はそう思っている。その意味で、単に三割増し行政じゃなしに、五割でも十割でも、何倍になっても、国民生活を守るために、国全体の経済を守るために厚生大臣はしっかり予算決定にあたってはがんばってもらいたいということを私は冒頭に言っておきます。  そこで、その中で特につけ加えて申し上げたいのは、看護婦の補充をどうしていくか、ちょっと会計課長、どこかへ書いてください、看護婦の補充を。看護婦の養成がこの状態でいいのかどうかということは、いろいろな中から看護婦の養成の材料を捻出しているというようなところにも根本の問題があるでしょうし、看護婦制度のいまの状態は、やっぱり他の面、社会面との関係で問題がある、だから、これはもう根本的に考えていただかなければならぬ問題の一つ。  二番目は、CO中毒、一酸化炭素の中毒は労働省関係でありますけれども、厚生省も無関心でおれないと思うので、このCO中毒に対して厚生大臣はどうお考えになっておるか、専門局長でけっこうですから、これをひとつ。  それから、身体障害者、重度身体障害児、三度精薄児、まあ児じゃなしに、者も入るわけですが、非常にたくさん気の毒な人がおるのに施設が足らぬので、この問題も私は重点にもっと力を入れなければならぬ問題ではなかろうか。  それから、国保の補正予算が出ましたけれども、ことしと去年とで、大臣承知のとおり、保険料を六割上げていま八百億だといわれるならば、六割というと四百五十億か五百億これは上げているわけです。市町村民の負担で上げておる。そして一般会計から百億も出している。今度補正されましたけれども、とてもとてもこれではどうにもならぬということなんでありますから、この一般会計との関係や地方住民の負担の問題や、私はやっぱり何らかの形で標準保険料的なものをこしらえて、とんでもない十万円も取っているというようなところのチェックはやっぱりせにゃいかぬのではないか。それから、資産割り、所得制、均等割りというものをいまの国民生活の関係からやっぱり配分を割り出して、苦しい生活をしている人には軽減をするような形で国保の問題も考えなければいかぬじゃないかということを、特に私はつけ加えて申し上げておきたい、御所見を承りたい。  それから、もう一つ、会計課長の管轄だと私は思うが、これは大臣にも聞いておきたいのだが、この補正予算を見ていまして、特別会計の分野の年金勘定の年金分の厚生保険の一割五分が二割になった財源措置が講じてない。あれはほおかぶりでいくつもりですか。これは、六月から年末まで一割五分から二割に法律が変わったのであるけれども、国家は補正も何もしないで、これは来年度の予算のときに、一ぺんにことしの分も追給してやるつもりなんですか。そこらはどうなっているか。健康保険の問題も似たようなことがあるのですが、健康保険の問題は、いずれ年をあらためて議論をしますから、私はここであまり追及しまけんが、厚生年金はこのままいけばほおかぶりということになりそうですけれども、国家が立法府で約束したことをほおかぶりで、財源処置もしないでほおかぶりするというのはちょっとひどいじゃかいかと思うので、これもひとつ聞いておきたい、こう思います。
  197. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 社会保障、ことに所得保障の充実ということが国民生活の安定福祉の向上の観点から、また、経済の不況対策としてもきわめて重要な意義があるのだという藤田さんの御所見につきましては、私も全く同感でございます。今日、所得保障が西欧並みの水準にまで充実しておりますれば、こういう経済の落ち込みは避け得るものだ、こう考えておりますが、残念ながら、まだそこまでいっておりません。しかしながら、この際、特に低所得階層に対して福祉改築を強化してまいるということは、これは低所得者層の最後の生活のささえは社会保障である、そこの生活に対する不安をなくするということが社会不安を解消することでもありまして、私は、やはり不況対策として一番大事なポイントであろう、こう考えております。そういう認識の上に立ちまして、私は、四十一年度の予算編成にあたりましては、微力ではありますけれども、最善を尽くしたい、かように考えるわけであります。  その他、看護婦の養成の問題、看護婦の確保の問題につきましては、御承知のように、いま看護婦の有資格者は三十八万人おりますが、実際に現役として働いておりますのは二十万程度でございます。どうしても四万内外の看護婦が必要でございますので、それだけの不足を告げておるのであります。そこで、文部省とも連絡をとりまして、現在、看護学科のある高等学校が十八校ございますが、来年度は四十校程度ふやして五十八校にしたいということで、文部大臣とも話し合いをいたしております。一校四十名から五十名程度をそこで養成をする。さらに厚生省関係といたしましては、国立、県立あるいは日赤等の養成施設におきまして毎年二万一千人程度を養成をしてまいる方針でございますが、二十万人の五%程度のものが一面においてやめていくというようなことでございますから、二万一千人養成いたしましても、結局ふえてまいりますのは一万幾ら、これが実質増ということになるわけでございます。昭和四十五年度に百万床の病床を持つことに計画を立てておりますが、そうなりますと、二十七万ないし二十八万人の看護婦が要ることになるわけでありますので、今後も看護婦の養成、確保につきましては力を入れてやってまいる考えでございます。  それから、重度精薄児、あるいは肢体不自由児、さらに重症身心障害児等のお気の毒な子供さんをかかえたところの家庭、また、そういう子供たちというものに対する今日までの施策は、確かに御指摘のとおり、不十分でございまして、大部分を民間にゆだねておったといっても過言ではないのでありますが、私も就任以来、このことを痛感をいたしまして、四十一年度を出発点といたしまして、これを年次的な計画で国立の収容施設をつくってまいる。また、コロニーの設置建設も計画をいたしまして、コロニー懇談会を発足をさせまして、その御意見を聞きながら、来年度はぜひ国立のコロニーを建設したいということで、ただいま計画を進めておるようなわけであります。また、収容施設に収容できます数にも限度があり、急速に全部を収容するということにはまいりません。そこで、在宅のそういう子供たちの療育を指導する体制をつくる必要があるということで、そういう面に対する研修等もやりたい。また、在宅の子供たちに対する養育の手当、こういうものも十分配慮していきたいと考えております。  それから、国保の財政の問題につきましては、私、就任いたしましてから、とりあえず臨時財政補助金四十億、さらに三十九年度の精算不足額百億、さらに四十年度の不足見込み額百億というものを補正予算に計上いたしまして、できるだけの財政対策を行なっておるわけでございますが、来年度におきましては、藤田さん御指摘のとおり、国保の負担は重いのでございますので、ただいま財政当局に対しましては、家族七割給付を実施いたしておりまする町村に対しましては、国庫四割を負担をするという方向でぜひ国保の財政の健全化をはかりたい。また、事務費につきましても、三十九年度から四十年度には百五十円から二百円に上げたのでありますが、さらに実情に近づけるようにということで、このたびは二百八十八円を要求をいたしておるような次第でございます社労委員会の皆さんの御協力も得まして、ぜひ来年度予算においてそれを実現をしたい、このように考えております。
  198. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 最初に、保険特会の予算について、この前十月だったと思いますが、本委員会で御説明いたしたときに要求がなかったのではないかというお話でありますが、そのときちょっと申し上げたかと思いますが、当時はまだ保険特会の財政対策というものが、審議会の意見も出ておりませんでしたし、全く立ちがたい情勢でございましたので、予算といたしましては、一応保険庁予算の前年度予算の三割増しということでもってワク要求いたしておったのでございます。前年度が約九百億足らずでありましたが、その三割増しということで、座敷だけをとっておくということで要求しておきまして、それが先ごろ十一月になりまして、本年度の財政対策等をきめる際に来年度の予算の見通しも一応つけられましたので、それに基づいて収支勘定を作成しまして要求いたしております。政管健保につきましては、来年度国として百五十億、それから、船員保険につきましては四億、それから、日雇健康保険につきましては、法定給付、法定補助率も含めまして八十八億というような一応のめどがつきましたので、それをもとにしましてバランスシートをつくって要求いたしております。  それから、もう一つ、厚生年金の国庫負担率が国会修正で変わった分を予算措置をしてないではないかというお話でございますが、これにつきましては、給付分につきましては別に支障はございませんし、それから、また、特会法のたてまえからいたしましては、その年度に必ず国庫負担分を満配しなければならないということはございませんで、精算した結果、足らない分は翌年度あるいは翌々年度に補充すればいいことになっておりますが、しかし、ああいういきさつで国庫負担率の変更がありましたので、ぜひ来年度の当初予算においてこの分をみてほしいということを目下大蔵省と打ち合せ中でございます。
  199. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっとおかしいじゃないですか、それは。今年の六月からあれは実施ですね、たしか。六月から実施して厚生年金の国庫負担が一割五分から二割になった。五分分というのは精算したら幾らになるのですか。そのことをこの間の補正の――第四次補正が出されるのか知りませんが、大蔵省へ折衝というような話ではないでしょう。大蔵省も承知の上で法律改正をしたんだから、当然いま給付に出さないでもいいから、それはことしは一兆三千億か四千億に積み立て金がふえるわけですから、差しあたり要らないからといって補給しないでほおかむり、何も言わなければほおかむりということになると、法律をきめたら、その財源は、給付を受けるのは労働省だ、その会計の中にはうり込んでもらわなければならない。これは来年度予算で大蔵省と折衝なんというのは、折衝する必要はない。二割ということは法律できまったんだから、それだけの分を大蔵省から取ればいいんだから、ことしの分を年金会計の中ほうり込んでおかなければ意味がないんじゃないですか、そのことを言っているんですよ。
  200. 梅本純正

    政府委員(梅本純正君) ただいまの御質問の厚生年金の国庫負担率が一五%から二〇%に上がりました五%分は約十九億でございます。この扱いにつきましては、来年度の当初に財源措置して、直ちに来年度の予算に入れる。もし本年度におきまして支障が生ずるような事態になりましたならば予備費から支出するというふうに話がついておりまして、これは衆議院の予算委員会におきまして大蔵大臣みずからが答弁をされたわけでございます。ひとつそういうふうに御了解願いたいと思います。
  201. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 支障が起きたらといっても、支障が起きるはずがないので、一兆何千億も金があるので、支払いに支障の起きるはずがないので、私の言っているのは、当然けじめだけはけじめとしてつけておかなないと、忘れましたでは済まされない問題であって、何も言わなければここで終わってしまうわけだ。こういうことをはっきりしなさいと言っているだけです。
  202. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) その点は藤田さん御指摘のとおりでございまして、必ず入れさせるようにいたします。
  203. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま藤田委員からも大臣質問があり、また、大臣からきわめて心強い答弁がありましたので、蛇足的にはなりますけれども、一、二点来年度予算について要望も加えて御意見を聞きたいと思います。  それは、新しい政策が次から次に出てくることになるのは、これは時代の要請ですから大切だと思うのですが、すでにいままで施行されております法律についても、もっと実効あるようにすることもまた大切ではないか、こう私どもは考えるわけです。そういう意味から、ぜひひとつ先般の保育所の全国大会とか、あるいは年金大会とか、あるいは社会福祉の大会とか、こういうところの陳情書を見ますと、きわめてささやかな内容になっているわけです。したがいまして、そういう点についてもぜひ御配慮をいただきたい、こういうふうにひとつ考えるわけです。  それから、社人会保障問題というのは、もちろん施設も大切でございますが、何といっても、この社会保障をささえるのは、それをささえるだけの心理的な面も大切じゃないか、こう思うわけであります。そういう心理的な面をささえるものは一体だれかと言えば、これは第一義的には施設に働いている労働者の方々が最も影響力を持つのじゃないか、こう思うわけであります。そういう点から、八月十一日の当委員会でも、母子保健法に関連して、厚生省関係の施設に働く方の身分、給与について十分お考えを願いたいということを大臣に申し上げまして、大臣のほうからも、今後具体的に措置をしたいということでありました。私は先日労働省に参りましたら、労働省労働基準局長から二回にわたって社会局長、あるいは児童家庭局長、医務局長あてに文書が出ているのです。これを見ましても、労働基準監督の立場から見て、どうも厚生省関係の施設には労働基準法違反事件が多いということを指摘され、特に予算編成の際には十分ひとつ御配慮願いたい。これは官庁同士のあり方から言えば異例の手紙だという御説明がございました。そういう状態でもありますから、ぜひこれらの点についてお考えをいただきたい、こう思うわけであります。  私は、いま全国的な例を調べておりますが、とりあえず、いま東京の老人家庭奉仕員関係のものをちょっと調べてみますと、これは厚生省から出された基準を見ても、何か原則的には常勤でやりなさいとか、あるいは一人の担当は六世帯でございますとかということが決定されているようですが、実態はそうなっていないという状況です。したがって、こういう例等も十分ひとつ厚生省で調べていただいて、この点についての御配慮を願いたい、こう私は思うわけです。これらの点についていまさら大臣からあらためて私は御答弁を願おうとは思いませんけれども、できれば決意の、ほどを述べていただいて、これらの施設に働いている諸君に安心を与えてもらいたいし、また、既存の施設の拡充、あるいは整備等についても、もっともっと意を尽くしてもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思う次第であります。
  204. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 社会福祉施設で働いております職員の方々の待遇の改善問題は、これは社会福祉事業がうまくいくらかいかないかということにかかわる重大な問題と私も考えております。しかるところ、今日までこの社会福祉施設、保育所等におきましては職員の昇給原資が確保されていない、それから、そういう施設の庁費が不足をしており、非常に動脈硬化のような形で、運営に弾力性がないというところに問題があるわけであります。そこで、私はいろいろ要求をいたしておりますが、職員の昇給原資、それから庁費の不足、こういう点に少し力を入れまして、何とか長年のこれは懸案でございますので、打開策を講じてみたい、このように考えております。
  205. 紅露みつ

    紅露みつ君 関連して。  いまいろいろな社会福祉の施設についても取り組んでおられると思いますが、老人家庭奉仕員でございますね、あれはたいへんに喜ばれて、実績をあげているようでございます。私たちが実地に老人たちに接して、どんなふうにしているかということをよく承知いたしておりますが、初めは何かちょっとしっくりしないようでございまして、何か監視されるようなひがみもあったかと思いまして心配いたしましたけれども、たいへんに要望が強うございますので、御答弁いただく心要はございませんが、私からもぜひこれはふやしていただきたい。待遇ももちろんでございますけれども、ぜひどうぞその点をお考えいただきたいと存じます。
  206. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) いま紅露先生からお話のありました点は、非常に各方面からの要望が襲い問題でございますので、私も十分考えていきたいと思います。
  207. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 だいぶ時間も迫っておりますので、私いろいろ聞きたいことがありましたけれども、要点をしぼって、ガンの問題と、それからインターンの問題についてちょっと御意見を伺い、これを予算にも反映していただきたいと思うのであります。ガンにつきましては、厚生省のほうで、大臣を初め、重要な問題として取り上げていただいて、いろいろ懇談会にも出して案を練っていただいておるようでありますが、私この点に対しては非常に感謝をすると同時に、私はこの際、ガンの取り組み方について、一、二の御意見を伺いたいと思うのであります。  このガンの問題に対しましては、やはり早期発見ということが一番要点であるということは御承知のとおりでありますけれども、集団検診による早期の発見、これに対しましては、国民が、あるいはまた三十四、五才から五十五、六才までのガンになりやすい年齢の君たちが、ほんとうにあまねく受け入れられるようなシステムにしなければ私は意味がないと思うわけであります。それにつきましてもいろいろ配慮はされていると思いますが、もっと具体的に、公費でこれをやるという考え方を如実に出していただきたいと思うわけであります。これについての考え方についてでありますけれども、結核というものが、あのようにして非常に取り組まれて、何年間でしたか、やはり二八%に近い検診率を上げ、しかも非常に結核の国であるという汚名を返上した効果をあらわしたというのは、やはりあれは伝染病であって、他人に感染を及ぼすという観点から、これを国で強制的に隔離をし、あるいはまたこれを治療をするということが十分に打ち出されたためにああいうふうになったのであります。ところが、ガンは伝染をしない、個人が死んでいくだけだということでありますので、他に社会に害を及ぼさないという観点からほっておかれたと思うのであります。この問題を考えますときに、前にも議論をされたことと思うのでありますが、ガンの状態は結核とは違いまして、結核は薬などの進歩によってどんな病状になってもなおし得るわけでありますが、ガンは早期発見しなければ死ななければならないという、決定的な重大な意味を持っておるわけであります。しかも、最近では統計上示されておるように十万人の人が死ぬ。あるいはまたかかっている人が非常に多い。五十万から六十万の人がいまその病床におるということであります。こういうような、質と数を考えましたならば、社会に及ぼす不安は非常に大きいものであります。ですから、私は結核に取り組んだと同じように、もっと公費負担でいくようにしなければならない。補助費とか補助金とかいろいろ出ておりますけれども、私はこれは根本的に考えて、もっと予防のために、予防検診のためにお金を、うんと補助をつけるということが一番重大な問題でなかろうかと思うわけであります。ことに、このごろ発表されておりますところの四つの柱として、厚生大臣が御発表になっているように、施設を充実したり、あるいはまた病院をこしらえたり、あるいは医学の研究に資する、あるいはまた予防検診をやるというこの四つの柱は御存じのとおりでありますが、この間の朝日新聞に発表なさっておりましたよう、に、初年度は三十億、その次は五千億、あるいはその次は七十億で、その四カ年計画では二百億出す、こういうことのお話であったわけであります。が、これはほんとうにそのように取り組まれているのかどうか、これを一応お尋ねしておきたいと思うわけであります。同時にまた私は、このガンの取り組み方については、いまのような施設をつくることも、四つの柱で必要と思いますが、もっとここに、問題点は、私はいままである既存の設備、これを十分に活用することが必要ではなかろうかと思います。たとえばいま癌研あたりでは検診車を持っている、あるいは各大学では、研究コースを持っている、あるいはまた医師会は、各医師会員がこれに対していろいろ設備を持ってこれに取り組んでおる。私はガンの病気を発見するためには、病状を持って、ガンらしい疑いを持って検診を受けるだけではなくて、何の気なしに、たとえばかぜを引いてのどがちょっとおかしい。見たときに、これは喉頭ガンのごく初期であったということが発見できるというふうに、私は第一線に取り組んでいる医者がやはりこれを十分に発揮できるような指導をしなければいけない、これに対する裏づけの補助をしなければならないと思うわけです。これはやはり私はもう少し明確にこの点が打ち出されなければ、非常に屋上屋を架す、たとえば補助金をもって、国のほうの金を出していく、あるいはまた一方では検診をやっていくということで、その金もダブるということになるわけであります。だから、私はこういうことをもっと明確にする必要があるのではなかろうかと思いますので、この点につきましてもよくお考えを聞かしていただきたいと思うわけであります。特に私がここで申し上げたいことは、この検診施設のために、いま千七百万ぐらいの対象人口があるわけでありますが、これに対していま行なわれて、この間うち発表されているところを見ますと、大体一五・七%ぐらいこれが行なわれるように書いてありますし、その中では四十億の金がかかると書いてある、こういうようなことを比較して考えてみまするときに、よほど公費負担ということを大きく打ち出さなければガン対策は絵にかいたもちになりそうになりますので、この点についてひとつ詳しく御所見を聞かしていただきたい。
  208. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) ガン対策は非常に私も重視いたしておるわけでありまして、明年度予算要求にあたりましては、いままでのガンに対する予算から見ますれば、相当力を入れた予算要求になっていると思います。ただ早期発見、早期治療ということが根本であるということにつきましても認識をいたしておりまして、そのために集団検診を広く実施をしたい、これは現在のガン専門の医療機関というものがごく限られておりまして、私はこのガン専門の医療機関の整備、あるいは専門の医師、技術者の養成、研修ということと相まって、これを年次的に集団検診の数がふえていく、そういう形でふやしてまいりたいと考えておるわけでございます。また、御指摘になりましたように、第一線で働いておりますところの開業医の方々に対しましても、ガンに対する専門的な知識なり技術を与えていくという、再教育と申しますか、研修と申しますか、そういうことも非常に大切なことだ、そうして、あらゆる健康診断なり、あるいはお医者さんに見てもらった機会に、どこかでこのガンが早期に発見されるというような態勢ができることが一番望ましいのではないかと、かように考えておるわけであります。で、集団検診に対しまして、公費負担のやり方をどうするか、これはいろいろ私どもも研究をいたしております。検診を受けた者一人一人にその半額なりを公費で負担するという方式でいったほうがいいのか、それとも専門の医療機関に検診車等を付置いたしまして、そうしてそれに専門医がおって、技術者が乗って、そうして専門医療機関と有機的な結びつきの上に検診が行なわれていく、そういう医療機関なり診療車なり、そういうものに、措置費に対して国が助成をして、そして検診の結果が結果において安く、いま三千円かかるものは千円で検診してもらえるようにするとか、そういうような検診をする施設なり人なり、そういう面に国が助成することによって安く検診ができるようにするというような方法がいいのか、そういう点をいろいろ研究をいたしております。大蔵当局とも具体的にそういう面についても話を詰めておるのであります。が、いずれにいたしましても、明年は六十万人程度の人に対しまして、そういう集団検診が負担を軽減しながら実施ができるようにということを目標に、いま予算の折衝をいたしておるわけでございます。
  209. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大臣からよくいままでからもお話を承り、また大臣も他に発表をなすっておられまして、そうした専門機関をこしらえる、あるいはまたその専門機関をこしらえても年次計画でやっていかなければその技術者がいない、こういうようなことをよく聞くわけであります。私はここでそのおことばを返すわけじゃありませんが、いまの大学の中でかなりそういうことに対しては研究に取り組んでおります。この間のヒヤリングの中でも、参考人にこられた中でも、どこのどういう先生についている者が一番の権威である、それはあると思いますけれども、各大学ともガンの問題に対しては相当取り組んでいるので、御研究を進めておるわけで、私どもはそういう観点よりは、やはり大学あたりでも独自にもっと発見のできるような補助の打ち方、これは文部省にも関係があるだろうと思います。そういうようなことの連絡もとって、そして私は推し進めるほうがより効果的であるのじゃなかろうかと考えるわけであります。それよりはそういうふうなことの整備をする、あるいはまた国立の病院をこしらえる、これも私はいいと思います。けれども私は、それが重点でなくして、いま国民が非常に不安におちいっておるところのこのガンの問題に対して、いまは早期発見ができないためにたくさん死んでおるわけです。現実に。だからしてこれをいかに早く発見をするかということに手を出すほうがより必要な観点であろうと私は思うために、今後の検診に対しては特にその財政的な措置も講じてもらって、そうしてすべての人が気楽にほんとうにその早期発見ができるというシステムを打ち立てることが必要である。早期発見をしてもそれじゃ受け入れ態勢があるか。これは私は大学で手術するくらいのことはできると思うのです。だから、このことに対するところの問題は、必ずしも国立の大きなガン病院を建てること以前に、もっとそういうふうなことに力を入れながら、しかも第二次的にそういう病院を整備していくほうが正しい立場ではないかと思うわけであります。そういう観点から、私は特に今度の予算措置に対してはそうしたことを第一に先に考えていただいて、そうして国民の不安、あるいはまた国民のそうした健康を守る上においてのより効果的な効果をねらっていただきたいと、こういうふうな考えを持つわけであります。特に、いろいろこの予算的な措置の問題で大蔵省との折衝もあるでありましょうし、また内部的にもいろいろ御意見があるようにも承っておりますけれども、やはりこの国民の健康ということを重点的に置いて、どこに一番力を入れるかということを重点的に考えてもらうことによって意思統一をしていただいて、そうして大きく予算の面に反映をしてもらわなければならないと、私はそう思うわけであります。私ども聞くところによりますと、大蔵当局でもかなりこの問題についても積極的に取り組んでおってもらえるというふうに聞きますので、特に私はその点をお願いしたいと思います。  それから、私先ほどちょっと大臣にも質問申し上げた、この間、新聞に発表されましたところのあのことに対しては、ひとつ大臣からその所信を一ぺん聞かしていただきたい。二百億をやるという、朝日新聞でしたか、新聞発表がありましたので……。
  210. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) ガンの問題はこれは非常に大事な問題でございまして、一年限りの対策で終わるような性質のものじゃございません。私は来年度を出発点としまして、これを年を追うて対策を強化してまいるという必要があると確信をいたしておりまして、そういう方向で努力をしたいと考えております。また、文部省関係の大学あるいは大学の付属病院等でたくさんりっぱな先生がおられるわけでございますので、厚生省だけじゃなしに、文部省関係とも十分緊密な体制をつくりまして、国としてガンと戦う体制をつくる必要があるということで、先般、政務次官会議等でもこの問題を取り上げて、内閣にそういう連絡協議会のようなものを設置いたしまして、各省が十分緊密一体の体制でこれと取っ組んでいくというようにいたしたいと思います。
  211. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 くどいようでありますが、その二百億の発表の点はかなり政策面に、相当固定したような形で進められておると解釈していいのでございますね。
  212. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 関連して。大臣がおられ、あるいは医務局長がおられる間はそれで通りますが、四年間の計画ですから法制化など恒常的なものを考えておかないと、これが時の波に流れる危険性があるが、そういう点でいかがであろうか、これがいま大橋委員の真意でありますが、結核対策などが当時の軍部の力によって支えられてまいった、そういう経過も聞いておるので、立法化の準備でもあるのかどうか。ありとすれば――私のほうでもいま与党の諸君とも話しておるけれども、あるいは暫定的な法律になるかもわからぬけれども、そういう恒常的な、国民に省令や政令で出す――もっと、高い次元の周知徹底も考えなければならぬが、恒常的なものとして立法化などの柱を立てたいと考えているが、厚生省でどういうお考えか、あわせて御答弁願いたい。
  213. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 私はまだ結核のようなぐあいに、一つの立法措置を講じてこれを恒久的なものとしてやっていくということまでは踏み切っておりませんが、しかし、この医療機関の整備なり、あるいは集団検診の組織なりというようなものを、やはり年次計画でもって相当の規模に拡大をしていく必要があるということを考えておりまして、そこでそれをどういう形で国の計画として進めていくかということについて、今後、立法措置がいいのかいろいろ研究してみたいと思っておりますが、当委員会の御研究等もあれば、十分それを参考にいたしまして、そういう方向へ推進していきたいと思います。
  214. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 金額の問題も、この間、笠さんの陳述も、お医者さん方の意見も、初年度二百億ぐらいぜひほしい。いままでにない前進をしておりますから厚生省の努力は多といたしますが、その専用家あるいはガン対の諸君が二百億ぜひほしいというその悲願をひとつ十分に踏んまえて、そこから出発するような決意でやっていただきたいと思います。
  215. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 もう少しいろいろ聞きたいことがありますけれども、それはまた末節になりますので後の機会に譲りまして、次にちょっとインターン制の問題についてぜひひとつここでお伺いしておきたいと思うわけであります。  これはやはり看護婦だとか、あるいはまた保母、ああいう形で医療に従事する者の教育とか、あるいは待遇とかいう問題の中に入るわけでありますが、このインターン制というものは、やっぱりこれは私は教育の中に含まれておるものだと考えるわけであります。ことにそういう観点からやはり国がやっておるのは、いままではこの義務教育だけであって、あとはみな個人の負担ということになっているわけであります。しかし、そういうことにはなっておるけれども、教育の整備ということ、あるいはまたそういうふうな観点からは国に責任があるわけでありまして、いままで国でやらずに放置されているような形になっておりました。ことにインターンという制度は、やはり私はアメリカのオープンのシステムからきている考え方が主になっておると思うわけでありますが、日本のようにクローズになっておる場合には、やはりそこに無理があるのではなかろうかと思います。また一面考えてみますときに、医者が医師の試験を受けて資格を得るまでの年限を考えてみますと、アメリカあたりでは二十一年半余りになっております。あるいはまたドイツあたりでも二十年ぐらい、フランスで十九年ぐらいとなっておりますが、これはインターンを含めてでありますが、日本ではインターンを含めなければ十八年になるので、やはり国際的ないろいろな意味もあって、このインターンというものにかなり大きくとらえられておるのではなかろうかと思います。しかし、クローズドシステムになっている日本では、インターン制がほんとうに必要であるかないかという点については大きな問題があると思います。これについてはどういうふうに一体厚生省では考えておられるか。ことに大臣の、あるいはまた医務局長のこの点についてのお考え方を一応聞いておきたいと私は思うわけであります。特に、私はこの状態を見まして、インターンの制度はフランスにはありませんけれども、ドイツとか、あるいは英国なんかを見ますと、英国なんかはあれは何か仮登録のもとに扱うようになってインターンなんかやっているようでありますが、ドイツなんかは開業する一つの条件みたいな形で、医師の免許証をもらったあとでインターンをやらせているけれども、そういうような形で、ほかの外国の例をとってみましても、インターン制をやっている中にはいろいろ差があるわけなんでありますが、そういう観点から申しまして、私はやはり日本において給料をもらってない者を病院で使っておるということが、私は非常に問題があると思うわけであります。特に、国立病院にいたしましても、あるいはまた大学病院におきましても、こういう人たちが一年間無償で働いて医療に半ば従事しておるということは非常に問題点があるわけでありまして、こういう点はやはり十分配慮をしなければならないのではないかと思うわけであります。今度なんかの問題については予算の問題に出ておるようでありますが、私はこの中で一応考えなきゃならぬことは、健保の三法の改正案あたりで、支払い面からいろいろこうした問題が一その看護婦の養成にしても、養成費は医療費の中から払われておるわけであります。あるいはまた、このインターンの無償の医療従事も、これは医療費の中に含まれているわけであります。そういったところの矛盾を考えると同時に、私はやはりこれはまた一面、医療の実態の面から言いましても、こうした人が非常にあいまいな状態で置かれているという観点から、私は二つの面から考えなきゃならぬと思うわけでありますが、そういうふうな点から見て、私はこのインターン制度というものを将来どういうふうに考えたらいいのかということを非常にいろいろ考えさせられるわけでありますが、やはりこの教育の中に含まれている、あるいはまたこういう日本のような医療制度の中にあっては、やはり私はインターンというものに対して、国からある程度の補助をして、そうしてこの給与といいますか、あるいはまたそういう人たちの身分の保障をある程度することが当然必要ではなかろうか、教育の場面から考えましても。こうした両面から考えましても、私はこのインターンの問題に対しては、もっと積極的な国の補助、あるいはまた国からそうした者に対しての身分保障をするということが必要なように考えるわけでありますが、こうしたことがやはり将来とも、先ほど藤田先生やあるいは山崎委員からお話がありましたように、看護婦とか何かの教育問題にも、一つは同じような考え方が立てられると思うわけでありますので、そうした点についてひとつ御高見を承りたいと思います。
  216. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) インターンの問題につきましては、いろいろ各方面に御意見がございまして、その御意見を伺いながら、私もこの問題に結論をもう出さなければならない段階にきているのじゃないかと考えております。で、自民党のほうにも、このインターン問題の小委員会を社会部会の中に設置をいたしまして、いま御検討を願っているわけでありますが、まだ終局的な結論ではございませんけれども、私といたしましては、医学校を卒業いたしました、正規の教育課程を終えました者につきましては、医者としての資格を与えて、そうしてしかる後、一年間ぐらいのインターンの期間を設けたらどうか。それに対しましては、国としても、その処遇についてやはり考える必要があると、このように私、いま私見といたしましては持っているわけではありますが、これをできるだけ早いうちに考えをまとめまして、施策の上にこれを実現していきたいと考えるわけであります。
  217. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 もう一言だけ。日本のこのクローズドシステムにおいては、インターンは要らないのじゃないかと思います。これについては。
  218. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) オープンシステムでございますと、当然それがちょうど日本における開業医と同じように、個人の医師が自分の医療に全責任を持つと、そういう意味で十分な訓練をやっておく必要があるのであります。日本のようにクローズドシステムであって、どうせ病院に勤務すれば、それぞれの先輩の医師の指導を受けるから、あえてインターンを設ける必要はないじゃないかという御意見と思います。しかし、現実にはこの医師免許をとって直ちに開業する方も相当ございます。そういう意味からいっても、そういうような最低の線だけは確保したいという意味から、たとい日本みたいにクローズの病院に勤務される方が多いにしても、全部がそうじゃないという意味から、やはり最後の防波堤としてのインターンを義務制に残しておきたいということでございます。そうでございませんで、インターンというものをドイツのように開業資格みたいなものにしようという考えの方もございまして、そういう方々は、現在のインターンを一年よりは二年、むしろそれ以上にしろという御意見もございます。しかし、いろいろございますが、先ほど先生お話にも出ましたように、もう一つは、日本の医師は十八年で促成栽培だ、外国の医師は二十一年からかかるが、日本の医師はお粗末だというような評価を受けることも、私ども国際的な視野で見ますと非常に遺憾でございますので、そういう点からいっても、少なくとも日本の医師は、文明国並みの教育水準が確保されているという実態をつくり上げたい。そういう意味からも、私ども日本の制度の中においても、インターンを義務制として課していきたいという考えでございまして、しかし、この運用が従来お粗末でございまして、厚生省の責任、文部省の責任もございますが、運用上のお粗末な点ではできるだけ改善していきたい、そのために、来年度はこのような制度の運用を合理的に充実させるための予算を大幅に獲得したいという所存でございます。
  219. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会