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説明員(
今里能君)
台風四号の
気象概況を御
説明をいたします。
お
手元に
台風四号の
速報という、こういうのがございます。それに基づきまして御
説明を進めてまいりたいと思います。
昭和四十一年の
台風四号は、六月の二十日の九時、トラック島の北の
海上に弱い熱帯低
気圧として発生いたしました。これは
カロリン群島沿いに西のほうに進行いたしまして、次第に
発達をいたしましたが、二十三日の十五時、ヤップ島の
北西方三百五十キロの
海上に達しまして、その強さが
台風の
程度となりました。それからゆっくり
北上を続けたのでございますが、二十六日の十五時には、南大東島の真南およそ七百キロの
海上に達しまして、
中心気圧は八百八十ミリバールと非常に強い
台風となりました。この
中心付近の
最大風速は毎秒八十メートルというすごいものでございました。それから二十五メートルの
暴風半径は四百キロにも達したのでございます。猛烈な、あるいは超
大型という形容がふさわしいような
台風に
発達いたしました。
しかしながら、その後進路を
北東方に転じまして、北にのぼってまいりますにつれて次第に衰えまして、大体速度は毎時三十ないし四十五キロでございましたが、二十八日の九時に潮岬の
南南東二百五十キロの
海上に達しまして、
中心気圧も九百六十ミリと埋積したのでございます。それから
中心付近における
最大風速は四十五メートルと落ちまして、二十八日の十八時には、
東京に近い富崎の
南南東百キロの
海上を毎時五十五キロの
スピードで
北東に進みまして、翌二十九日の三時、
房総沖をかすめて
三陸方面に向かったのであります。
大体以上が
台風の
概況でございますが、ただいま御
説明申し上げました経路は折り込みの
付図に示してございます。
次に、この
台風によりまして、
各地で相当の
雨量があったのでございますが、これについて申し上げたいと存じます。
台風の影響で雨が降り始めましたのは、二十七日の九時前後でございましたが、二十時ごろには、
近畿地方以北は全般に雨となりました。二十八日の六時、
東京の前六時間の
雨量は六十一ミリに達したのでございます。その後
台風の
北上とともに、
伊豆半島を
中心に非常に強い雨の
区域が広がってまいりました。二十八日の十五時には、この非常に強い雨の
区域はやや
北東に移りまして、
東京の西部を
中心にいたしまして、かなり広い範囲に
豪雨が降りました。十五時までの三時間の総
雨量は、船津で七十ミリ、熊谷で六十ミリでございました。二十八日の夜半から二十九日の早朝にかけまして、
台風四号は
鹿島灘から
三陸沖に、
スピードを増しながら進んだのでございますが、強い雨の
区域も、これにつれまして急速に
北東に移動いたしました。このために、
関東地方では夜半過ぎには晴れ上がったのでございます。
この総
雨量では、
静岡県から
関東平野の中部を経て、
福島県の
東部に達する帯状の
区域で非常に多うございまして、大体
平地で二百ミリ以上でございました。特に、
伊豆半島、それから箱根及び
神奈川県の北部の山岳では、四百ミリをこしたところもございます。また
平地でも、
埼玉、
東京、
神奈川の各
都県の一部では三百ミリをこしたところもございました。
千葉、
群馬、
宮城の各県及び
岩手県の
東部では百五十ミリ前後、その他では大体百ミリ前後でございました。これは、この
速報の
付図3、
付表等にこまかいことは示してございます。
次に、この
台風はどういう特徴を持っておったかということを簡単に申し上げますと、非常に
大型のものであったということでございます。最盛時は二十六日の十五時でございましたが、先ほど申し上げましたように、
中心気圧は八百八十ミリバールにも下がりまして、
最大風速が
中心付近で八十メートルというものすごい、猛烈な超
大型の
台風でございました。この
台風は、六月における
台風といたしましては第一位でございます。累年といたしましては、
狩野川台風、これは一九五八年の九月でございましたが、八百七十七ミリバールに次いで、第二位と申すことができます。
二番目に、この
台風は、以上申し上げましたように、非常に強い、超
大型のものでございましたが、この
状態に達しまするまでの
発達の
状況が、非常に急速であったということでございます。二十四時間に八十ミリバールも、
中心の
気圧が下降する、非常に珍しいケースでございます。しかしながら、
日本に最も接近いたしましたころは、だいぶ衰えまして、
気圧につきましても九百七十ミリバール、それから風も三十五メートル前後と衰えたのでございます。それで、強さは並み、大きさは、この
台風の規模でございますが、
大型と言える
程度のものに衰えてしまったのでございます。
それから三番目に、この
台風は、幸いなことに上陸いたしませんで、本土の南岸をすれすれに通りましたために、風は
各地において、瞬間
風速にいたしまして二十メートルをこえたところは、あまりございません。風は非常に弱かったということが言えるのでございます。
しかしながら、その反面、ちょうど
梅雨前線が
日本海の、
日本列島の
裏日本側に沿って走っておりましたために、これと合体いたしまして、
各地に、先ほど御
説明いたしましたように、六月の
台風としては非常に珍しいような多量の雨をもたらしたのでございます。
この
台風に関しまして、
全国の
気象官署は、各種の
警報や
注意報を発表いたしましたほか、
連絡会議等を開きまして、
十分警戒う促したのでございます。
注意報を出しましたのは、
全国三十九の都道府県でございました。それから
警報を出しましたのが、十一の
都県でございます。
以上が
台風四号につきましてのあらましでございます。
それからそのあと、
台風ではございませんが、低
気圧が
台湾附近から東進いたしまして、ちょうど
梅雨前線の上に乗っかりまして、
九州方面に百数十ミリ、あるところでは二百ミリ前後の
降雨をもたらしました。
以上、御
説明を終わります。