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1965-12-28 第51回国会 参議院 建設委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十八日(火曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  十二月二十七日     辞任         補欠選任      奥村 悦造君     田中 茂穂君  十二月二十八日     辞任         補欠選任      田中 茂穂君     奥村 悦造君      小山邦太郎君     植木 光教君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村 順造君     理 事                 稲浦 鹿藏君                 熊谷太三郎君                 村上 春藏君                 小酒井義男君     委 員                 植木 光教君                 内田 俊朗君                 大森 久司君                 奥村 悦造君                 平泉  渉君                 森田 タマ君                 山内 一郎君                 米田 正文君                 竹田 現照君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 白木義一郎君                 片山 武夫君                 春日 正一君    衆議院議員        発  議  者  田中伊三次君        発  議  者  奥野 誠亮君    国務大臣        文 部 大 臣  中村 梅吉君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        国 務 大 臣  福田 篤泰君    政府委員        近畿圏整備本部        次長       上田  稔君        行政管理庁行政        管理局長     井原 敏之君        北海道開発庁総        務監理官     小熊  清君        文部政務次官   中野 文門君        文化財保護委員        会事務局長    村山 松雄君        建設政務次官   谷垣 專一君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君   事務局側       常任委員会専門       員         中島  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○古都における歴史的風土保存に関する特別措  置法案衆議院提出) ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (高速自動車国道建設計画に関する件)  (関門国道橋の架設に関する件)  (北海道開発庁事業計画等に関する件)     —————————————
  2. 中村順造

    委員長中村順造君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨二十七日、奥村悦造君が委員辞任され、その補欠として田中茂穂君が選任されました。     —————————————
  3. 中村順造

    委員長中村順造君) 古都における歴史的風土保存に関する特別措置法案議題といたします。  まず、提出者から提案理由の説明を聴取いたします。衆議院議員田中伊三次君。
  4. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 年末を控えまして、皆さまにはたいへんお手数をわずらわしまして恐縮に存じます。  それでは、ただいま議題となりました古都における歴史的風土保存に関する特別措置法案につきまして、提案をいたしました自由民主党、日本社会党民主社会党を代表しまして、その提案理由及びその内容あらましを御説明申し上げます。  およそ一国の文化伝統は、その国独自の歴史的背景のもとにつちかわれた民族の源流であるとともに、国民共有世襲的資産であります。  肇国以来幾変遷、古い歴史伝統を持つわが国においては、由緒ある古跡文化財等が全国に散在するのでありますが、なかんずく、往時政治文化中心都市として、史上けんらんたる一時期を画した京都奈良鎌倉等史跡は、その明媚な風光と相まち、わが国固有代表的文化を象徴するものとして、あまねく人口に膾炙し、広く全国民に親しまれているところであります。これはまた、諸外国からも重要な文化観光資源として高くこれを評価され、多大の興味と関心が寄せられておることは御承知のとおりでございます。  このような代表的古都文化伝統を愛護し、保全し、これらを後世永劫に伝承することは、われわれ当代国民共通の義務であり、責任であるといわなければなりません。しかもこれは、内外文化向上発展に寄与するばかりでなく、国民国土愛の増進、民族意識の高揚に資するゆえんであると思うのであります。  しかるに、近時、いわゆる宅地開発ブームの醸成に伴い、これらの古都においても、俗悪な娯楽、観光施設工場等、その環境にふさわしからざる宅地の造成、建物建設計画などがみだりに進められ、それがために、古都のユニークな風趣景観が著しくそこなわれようとしておりますことは、まことに遺憾であります。  古都の美は、自然と人工の調和にあることは言うまでもありませんが、この長い歴史伝統にはぐくまれたてんめんたるふぜいが、心なき業者の恣意と利欲によってむしばまれるごとはまことに忍びないところであります。  はたせるかな、関係都市住民の間に世界的な財宝ともいうべき民族遺産を守ろうとするほうはいたる機運がとみに高まり、それぞれ風致保存団体を組織して熾烈な運動が展開せられてまいりました。いまにしてすみやかに強力な保全対策を講ずるにあらざれば、悔を後世に残すこと必定であります。このことは、ひとり関係地域住民のみならず、全国民的関心事でありまして、本立法の動きが巷間に伝えらるるや、主要な新聞、テレビ、ラジオはいち早くこれを取り上げ、いずれも筆をそろえて早期実現を強調する等、一般世論はきゅう然としてこれを支持してまいりまして、多大の期待と共感を寄せております。  もともと、この種古跡旧趾、文化財風致景観保全については、現に、文化財保護法都市計画法自然公園法等法規がございます。また、地域的に見ますと、近畿圏整備法京都奈良両市には、それぞれ単独国際文化観光都市建設法という立法がございます。しかし、惜しむらくは、関係行政機関が多岐に分かれておりまして、総合的施策に乏しく、かつまた、法規自体の不備、特に財源的裏づけがないために、現実の効果がこれに伴わず、いずれも古都の当面する緊急の事態を解決する究極のきめ手とはなり得ない実情にあります。  これがため、現行関連法規整備調整についてすみやかに新たなる検討を必要とすることはもとよりでありますが、竿頭さらに一歩を進めて、この際、別途に、これらの古都対象とする単独特別立法を行ないまして、国においても行財政上特段の施策の強化をいたしまして、これを確立することがきわめて喫緊の急務であると思量いたしまして、ここに関係議員の総意をもって本法案を提出するものでざいますが、この問題の重要性にかんがみ、本法を施行いたしました後の実情を深く見守りました上で、さらに改正の必要がありますような場合においては、改正をいたしまして、立法の趣旨の全きを期する気持ちでありますことを特につけ加えさせていただく次第でございます。  次に、この法律案内容の概要を一口御説明申し上げます。  まず第一は、わが国往時政治文化等歴史的重要な地位を持つ京都市、奈良市、鎌倉市及び政令で定めるその他の市町村古都と定義いたしました。内閣総理大臣は、その古都における歴史的風土保存のために必要な土地区域歴史的風土保存区域として指定することができることといたしまして、その区域指定をいたしましたときは、当該歴史的風土保存区域について、一定行為規制関連施設整備土地買い入れ等事項内容とする歴史的風土保存計画を決定しなければならないことといたしました。  第二は、内閣総理大臣指定歴史的風土保存区域内において、歴史的風土保存当該歴史的風土保存区域の枢要な部分、そのうち、特に大事な部分を構成すると考えられる地域につきましては、今度は建設大臣は、都市計画法の定める手続によって、都市計画施設として、歴史的風土特別保存地区指定することができることといたしました。これは都市計画法に基づいて地区指定するという意味でございます。  第三は、行為規制についてであります。  内閣総理大臣指定をいたします区域内におきましては、建築物その他の工作物の新築、改築または増築、土地の形質の変更その他歴史的風土保存に影響を及ぼすおそれのある一定行為をやろうとする者は、政令で定めるところにより、あらかじめ府県知事にその旨を届け出なければならないこととし、建設大臣指定歴史的風土特別保存地区内におきましては、同様の行為は、今度府県知事許可を得なければならない。こういうふうにいたしまして、知事は、政令で定める基準に適合しない申請に対しましては許可を与えてはならない、こういう積極的規定を設けたのでございます。  第四は、歴史的風土特別保存地区内における行為について許可を得ることができないため損失があると考える場合には、損失補償に関する規定を設けますとともに、土地買い入れに伴う規定を設けまして、府県は、歴史的風土特別保存地区内の土地歴史的風土保存上必要があると認めるものについて、当該土地所有者から許可を得ることができないため、その土地の利用に著しく差しつかえがあるということによって買い入れの申し出をいたしました場合には、その土地買い入れをすることといたしました。  第五は、以上申し上げました場合における費用について、国の費用負担及び補助についての問題でございます。  損失補償及び土地買い入れ等に要する費用については、政令で定めるところにより、国が、その一部を負担することといたしましたほか、地方公共団体歴史的風土保存計画に基づいて行なう歴史的風土維持保存及び施設整備に要する費用については、国は、政令で定めるところにより、当該地方公共団体に対し、その一部を補助することができることといたしました。  第六は、地方税の不均一課税を行なう場合における措置といたしまして、古都たる市町村歴史的風土特別保存地区内における家屋とか土地などに対する固定資産税にかかる不均一課税をいたします場合においては、地方交付税法規定による基準財政収入額の算定についての特別措置に関する規定を設けることといたしました。  最後に、歴史的風土審議会についてでございますが、総理府に、歴史的風土審議会を設置することとし、その権限組織等に関し、所要規定を設けることといたしました。  以上の措置に伴い、罰則その他についても、所要規定を設けることといたしました。  以上が古都における歴史的風土保存に関する特別措置法案提案理由及びその内容及びあらましでございますが、何とぞ格別の御高配を賜わりまして、慎重審議をいただきました上で、すみやかに御可決をいただきますように特にお願いを申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  5. 中村順造

    委員長中村順造君) 本案に対し質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 小酒井義男

    小酒井義男君 提案者に、まず数点お尋ねしたいのです。  実は、法案を拝見をした段階では、私は、いまいろいろ関係法律をおあげになりましたけれども、それとの関係を見た場合に、若干屋上屋というような感じを受けたんです。そこで、いま提案者がおあげになった文化財保護法あるいは都市計画法自然公園法、あるいは近畿圏整備法京都奈良にある国際文化観光都市建設法というようなものをおあげになりましたが、まだそのほかに建築基準法であるとか屋外広告物法であるとか、あるいは森林法等々、相当この法案関連を持つ内容が出てくると思うんです。そういう点について、これの取り扱い上、それらの法律内容になっておるものと、この新しい法律との重複するような部分取り扱いについて、少し問題ができてくるんじゃないかという気がするんですが、そういう点はどうなんですか。
  7. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) ただいまおことばのとおりに、既存法律が数個ございます。これらの法律との関係をどういうふうに扱うかという問題でございます。具体的に申し上げますと、都市計画法には、御承知のとおり、風致地区に関する規定がございます。それから文化財保護法につきましては、部分的ではありますが、史跡名勝に関する規定がございます。これは保護規定でございます。それから自然公園法につきましては、国立公園も含めまして、いろいろな、先生承知のごとき、許可事項が列挙されております。それから建築基準法あるいは、ただいまのおことば森林法がございまして、いろいろそういう規定がございますが、この法律を特に設けますゆえんは、これらの文化財保護法都市計画法自然公園法、いずれも、それぞれの都市計画個々文化財保護、それから公園法による規定とは別個に、特に歴史的な風土というものをこれらの中から取り上げまして、その歴史的風土を特に民族遺産として保護したいというふうに考えられるものにつきまして、審議会で十分にこれをしぼり上げて、最小必要な限度で歴史的風土保存をするために、特にこの法律によりまして保存計画を立てよう、そして歴史的風土保存していくために必要な個々計画を立てまして、その計画に基づいて、政府保存計画を実施していこうということにいたしましたわけでございます。くどくなりますから差し控えますが、たとえば文化財につきまして申し上げますと、個別的な史跡名勝というものは、やはり文化財保護法によって保護をしていくことになるのでありますが、その個々史跡名勝等背景をなすその土地の山林その他の景観土地環境というもの全体を保護してまいりませんことには、個々史跡名勝のみでは十分ではございません。そういう考え方から申しまして、具体的に個々史跡名勝並びにこれを史跡名勝として保存していくことに必要な背景をなすところの景観、そういうものを広くとらえまして保存計画に入れて、そうしてそれらのところに、「施設」ということばをこの法律は用いているわけでございますが、かりに、それに消防等施設が必要ならば、消防等施設も加えていこう、また、一定道路計画等が必要ならば、その道路計画等も、これに対して勘案をいたしまして、都市計画法による道路計画の実施にも及んでいこう、こういうふうに持ってまいりました。一口に申しますと、歴史的風土保存するという必要がある場合に限りまして、この法律保存計画を立てて、これを実施して保存をしていきたいという考えに立っております。
  8. 小酒井義男

    小酒井義男君 建設省あるいは文部省の次官も御出席になっておりますが、別にこれに対して問題になるようなことはありませんか、あなたのほうの取り扱いとの関係
  9. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 建設省政務次官ですが、いま御指摘のございました点につきましては、私たちのほうも、いろいろな法律がございますけれども、本法の目的が、歴史的な一つの環境対象にいたしましてやっていくと、こういうことになっておりますので、既存法律との問題につきましては、その運用について、いろいろ重複をする場合が中にはあるかもしれませんけれども、全体といたしまして、この運用の上において問題はない、かように思っております。この条文を読みますと、特別保存地域は、建設大臣のほうで、審議会の答申に基づきまして指定するとなっておりますので、重複のないようにできるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  10. 中野文門

    政府委員中野文門君) ただいま御提案になっておりまする歴史的風土保存に関する特別措置法案文化財保護法のねらいとは重複しないと、それは文化財保護法による指定地域とされたものも、ただいま議題となっております古都保存法とは、特に——地域的には重複いたしますけれども、おのおの権限措置内容等におきましては重複せず、ともに関連を持っていけると、かように承知いたしております。
  11. 小酒井義男

    小酒井義男君 こまかいことは省略しますが、それから建築制限がありますね。そうした場合、区域標識を立てるでしょう。区域標識を立てるところまでは、やはり規制を受けるわけですね。その区域内の建築規制でできるが、区域を一歩離れたら、そこは規制ができないのですね。そこにどんな建物ができても——全体の景観をそこなうようなものがつくられるような場合があっても、それはやむを得ぬのだというお考えですか。
  12. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) おことばのような場合には、この地区指定をいたします場合に、地区を広く指定をいたします。地区を広く指定して、そうして保存計画を立てますときに、その保存計画地区的内容を広くいたしまして建築制限を行なう、こういうふうにしていくことになろうかと思います。
  13. 小酒井義男

    小酒井義男君 そういう場合に、その地区の中にあっても、全体の調和を破らないようなものであれば、それをつくらしていくというようなことを積極的に考えられなかったかどうか。
  14. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) これは、制限ということに重点を置いてこの法律ができているように見えるのでありますが、保存計画を実際につくります上には、先生ことばのごとくに、あるいは、建築のやりようによりましては、建築物があったほうが景観がよくなるというようなことも、極端な場合にはあろうかと存じます。三階はいけないが二階以下はよかろうとか、二階以上はいけないが平家建てならよかろう、平家建築でも、日本式建築ならよかろうとか、あるいは色はこういった色のものなら差しつかえなかろうといったようなことになろうかと存じますので、場合によりましては、その建築制限をいたしませんのみならず、場合によっては、その建築は、あって一向差しつかえがないという場合があろうかと存じますが、それは、すべて内閣総理大臣の設定する保存計画の中でこのことを勘案してやらす考えでございます。
  15. 小酒井義男

    小酒井義男君 それから、少し前後しますが、第二条でおきめになっておる京都市、奈良市、鎌倉市ですね、「その他の市町村をいう。」といわれますが、「その他の市町村」というものは、どういうところに大体古都という名称に当てはまる場所があるか、そういう点はどういうふうにお考えになっていますか。
  16. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 時代を、どの時代以前を古都と申すのかという問題はございましょうと思います。しかしながら、それは民族遺産としての古都遺産考えられる古都という意味でございますから、ずっと徳川に入りまして徳川末期、場合によれば、明治に入りましてからのものも、やはりできるだけ広く解釈をしたほうがよかろう、そういう点から申しますと、たとえていまいわれておりますところでは、京都市と申しますが、京都市の市の地域境界線の外ということも考えられます。京都市というものは、たとえば、京都市というものに地域が定められております。しかしながら、一尺外に出れば古都でないのかと、この法律の適用がないのかと、こういうことになりますので、京都市、奈良鎌倉並びにその周辺というものが、政令指定される第一の候補でございましょう。それ以外には、たとえて申しますと、吉野山旧跡保存の必要があれば吉野山、私は参議院の選挙の際に、九州に行ってまいりましたが、西の都と書いて西都というところがございますが、ここには世界的な古墳が、日本唯一古墳群があそこに存在しておりますが、どんどんブルドーザーがその周辺をこわしております。こういうものを現実に見てまいりましたが、西都などは政令指定されていくべき筋のところではなかろうか。それから、徳川になりましてからの、私たち現実に見ておりますところでは、たとえば三重県上野市などというところがございますが、こういうところにも、非常に大事な地点が数個あるのではないかと思われますが、できるだけ広く、歴史的風土歴史的民族遺産考えられるものは、なるべく広く——古都ということばが少し言い過ぎであるかもわかりませんが、古都という文字はとったらいいじゃないかという意見もございましたが、特徴がなくなるので無理につけておりますが、できるだけ広く解釈をして民族遺産を守りたいと、こういう気持ちでおります。
  17. 小酒井義男

    小酒井義男君 いま二、三例をおあげになったんですが、歴史的風土ということになった場合、日光なんかはどうなんですか。
  18. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) もちろん風土がこわされるようなおそれがある場合には、政令指定される大事な場所と存じます。
  19. 小酒井義男

    小酒井義男君 すると、古都という名称の範疇に入るというお考えですか。
  20. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) これは、政令指定される「その他の市町村」ということばを用いております。したがって、古都ということばとは少しそぐわないのでございますが、市町村ならざるところは日本にございませんので、市町村、それを古都という特徴のあることばを用いておるところに少し無理があろうかと存じますが……。     —————————————
  21. 中村順造

    委員長中村順造君) 中途でございますが、委員異動がございましたので報告いたします。  ただいま、田中茂穂君及び小山邦太郎君が委員辞任され、補欠として奥村悦造君及び植木光教君が選任をされました。     —————————————
  22. 小酒井義男

    小酒井義男君 それから、もう一点お尋ねをしたいのですが、第十四条で、費用について、一部を国が負担するということになっておるのですが、これは、国の負担する分は、どのくらいの率をお考えになっておりますか。
  23. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) これは大蔵省当局、それから関係各省と熱心に折衝をしていただきました奥野提案者がここにおりますので、奥野さんからお答え申し上げます。
  24. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) 端的にお答えさせていただきますと、第一項の分につきましては、八割前後の国庫負担考えております。また、そういう意味において、建設省大蔵省との間で話し合いを進めていただいているものと、かように考えております。  二項の問題につきましては、補助対策内容によりまして、若干違ってくると思うのでございますが、類似の補助率を下らない範囲においてきめられていくべきものだと、かように考えております。
  25. 小酒井義男

    小酒井義男君 最後に、十七条で審議会を設けることになっておるのですが、この審議会は、内容的にいうと、非常に広範な内容の含まれたものを審議することになるのですが、たとえば、文化財保護その他の審議会等の中から、この審議会委員が出ていくというようなことも、関連のある各審議会があれば、その審議会委員から構成するというような考え方を持っておられるのか。そうでなしに、別に新しい人からこの審議会委員を選んでいこうという考えなのか。その点はどうです。
  26. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) これは、内閣総理大臣が選んでまいりますので、提案者としましては、いろいろ希望意見当局に述べておくということで、いままで述べてきたわけでございますが、全く新しい角度から、民族遺産とはどういうものかということがわかる学識経験者というような広い観点から、新しい角度からこれを選んでいく、しかし、従来までの審議会に、観光審議会その他ございますが、それらの審議会のメンバーの中に、そういう観点から適任者がありと認めた場合には、結果としては、そういう人々を若干採用するようなことにならぬものとも限らないと存じます。特に御質問のおことば関連して申し上げておきますと、これは、いやしくも議員立法としてお願いをしておることでございますので、参衆両院の建設委員会当局、それから文教委員会の当局、これらの方々と、責任あるその土地の人々に対しましては、委員の顔ぶれは、事前にねんごろに御相談を申し上げて、御意見を承って選任をしていくようにしろということを申しまして了承を得ておる、そういう事情でございます。
  27. 小酒井義男

    小酒井義男君 これで、運営の面でよほど、将来、問題があるのじゃないかと思うのですけれども、趣旨そのものには、私は賛成でございますから、そういう取り扱い上、十分、関係の各省との連絡などを考えた上でやっていただく必要があると思います。
  28. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 特にお許しをいただきまして、ただいまのおことば関連して御了解をいただきたいと、また、御報告を申し上げたいと存じますが、いまのおことばのとおりに、まず主管省は建設省でございます。それから、これにたいへん深い意味関連を持ちますのは文部省でございます。それから森林その他の関係というものもございますので、農林省も無関係ではございませんが、特に大事なのは、この法律ができまして、そして諸般の施設を行ないます場合、特に土地買い入れを行なう場合に財源が必要でございます。従来、この種の法律には、財源の裏づけがないために、どうもせっかく立法をしていただきましても、実際の効果があがらないというようなことが多いきらいがございました。そういうことでありましたので、特に大蔵省が重要な関係がございます。これらの大蔵省、文部省、建設省等との間には、どのくらい回数をいたしましたか、記憶はさだかでございませんが、とにかく二十数回にわたりまして大蔵省関係当局を招きまして、そうして三党との間に懇談をいたしました。そういうことをいたしまして、原案に修正を加えまして、ほんとうに入念にやりました結果、一致をいたしました。大蔵省も快くこれに了解を与えまして、その結果提案をするに至りましたような経過でございますので、各省との連絡は十二分についております。  ただ、ここで可決をいただきました場合に、四十一年度の予算折衝に対して、どれだけの金額を盛るかという、その金額的には具体的ではございませんが、適当なる額を予算にのせなければならぬということも、あらかじめ了解を得ている次第でございます。  この機会に御報告を申し上げておきます。
  29. 前川旦

    ○前川旦君 議員立法としてこういう法律提案されましたのに対して、敬意を表したいと思います。賛成という立場から、前向きの立場から二、三質問したいと思います。  第一は、損失補償の問題ですが、特別指定区域によっていろいろな行為制限を設けられております。これから生ずる損失補償するということになるわけですが、その評価の実際技術上の問題をどうこなされるのか。たとえば家の増築とか新築が制限されたような場合、どうそれを評価していくかという実際の適用の具体的な方針について、お伺いしたい。
  30. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) ただいまのお話の問題につきましては、たとえば第十一条の二項のところで、土地の価額などについては「政令で定めるところにより、評価基準に基づいて算定しなければならない。」、こうしているわけでございますが、一般的にそれぞれ損失補償規定がある現行法もございますので、それらと比重をとって行われるべきだ。この法律によって評価のしたかに特別な変更を加えるということは全然考えていないわけでございます。
  31. 前川旦

    ○前川旦君 もう少し具体的に聞きたいわけですけれども、たとえば増築、新築、改築まで制限をするということになりますと、どれだけのそれによって実損があったかという、その判断をどうやってやるのかという非常に困難性があるように思うわけです。その点については、どういう心がまえでいらっしゃるのか、もうちょっと聞かせていただきたい。
  32. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) むしろ政府当局に従来の運営をお答えいただいたほうがよろしいのじゃないか、かように考えるわけでございます。現行法によって特別変更を加えるという意図はございませんわけでございますので……。
  33. 竹内藤男

    政府委員(竹内藤男君) この法案の第九条第一項の規定において明示されておりまするように、「通常生ずべき損失」というのは、どういう基準で算定するかという問題でございますが、他の法令との比重も考慮して考えなければいかぬというただいまの提案者のお考えが述べられましたが、こういうような場合、通常他の法令におきまして考えておることを申し上げたいと思います。許可が得られないため受ける損失でございますので、不許可処分を受けることによりまして、土地の原状変更が禁止されるわけでございます。その禁止されることによって現実に受けた損失を、この場合、通常生ずべき損失というふうに見るべきだと思います。したがいまして、家屋の改築が禁止されたために、従前の営業が継続できなくなったというようなことによりましてこうむりました損失でございますとか、あるいは林業者が木竹林の伐採を禁止されたために、従前の事業が継続できなくなったということによってこうむります損失とかいうような、従前の土地の利用を妨げられたために受けた損失が、これに当たるものであると思います。したがいまして、特別保存地区内における規制にかかるということによりまして、一般的に地価が低落するといったような期待利益の損失というようなものにつきましては、この八条の許可を得ることができないために受けた損失というふうには考えられないのではないかというふうに考えておりますので、こういう場合、補償対象にはならないのではないか、こういうふうに考えております。
  34. 前川旦

    ○前川旦君 次に、その土地所有者から、当然得ることのできる利益を得られないということで買い取りの申し出があった場合には、これを買い取るものとすると、買い取らなければいけないと言っていいくらいのそれは強い規定だというふうに思うわけです。この場合、国の補助の比率というものは、先ほど八割前後というふうに伺いましたが、当初のお話では、全額国庫で見るべきではないかというようなお話がなされたというように聞いております。で、これと関連をいたしますのですが、たとえば文化財保護法の第四十五条ですが、「(環境保全)」という条項がございます。これは、いまここに出ております古都保存のこの法律よりももっと強い規制をされている条文ですが、ここでは国が、政府が責任をもって全額見るというふうに書かれているわけですね、これが第一。  それから第二の問題は、こういうことから考えて、奈良にいたしましても京都にいたしましても鎌倉にいたしましても、その財産というものが、単なる地方自治体だけの財産でなくて、全国民的というよりも、むしろ全世界的な国際的な財産だろうと思うのです。そういう点では国がほんとうに責任をもってやらなければならないというのは、趣旨としてはこれは当然ではないかと思うのですね、これが第二の問題。  それから第三には、八割まで補助するのであれば、あとわずかですから、一〇〇%国が持っても財政上の負担というのはそう大きな差があるのではないのではないかということ、これが第三番。それから第四番ですが、実際に適用した場合に、これはこまかい問題ですけれども、矛盾が生ずる場合があると思うのです。たとえば県境とか、県の境に接する場合に、いろいろな問題が生じた場合、たとえば京都なら京都から見て、これは京都の風致の保全のために必要な土地であるというその地域が、たとえば滋賀県にまたがっておる場合ですね、またがって指定された場合、そこでの買い取りという問題が起きた場合、あるいは補償という問題が起きた場合、地方自治体が負担するとすれば、京都府が負担する部分と、あるいは滋賀県が負担する部分というような矛盾ができてくると思うのです。滋賀県の場合には、自分のほうには何も関係がない、むしろ京都のほうのためにやるのでも滋賀県が二割持たなきゃならないというような矛盾が実際上出てくるかもしれないという話もあるわけです。そういう意味から、これはやはり全額国で負担するという姿勢が私は正しいのではないかというふうに考えるわけなんですけれども、その辺のことについて、どういうふうに考えていらっしゃるか。
  35. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) いま御指摘になりました点は、この法案をまとめる際に一番重要な課題であったわけでございます。当初は、国が責任を持って買い入れをし、補償するという考え方もあったわけでございます。ところが、いろいろ制限をしておりまする他の立法におきましても、制限を受けた場合の土地の買い取り請求でありますとか、あるいは補償でありますとか、そういう規定の入ってないのが非常に多いわけでございます。そうしますと、そういう法案との関連が新たに大きな問題になってくるという点が一つございました。  もう一つは、土地を買い取るにいたしましても、あるいは補償にいたしましても、地元から多々ますます弁ずるという形で無責任な要求が国に一方的に押しつけられることも困るのじゃないかというようなことがあったりいたしまして、責任の主体を府県に変えたわけでございます。国が行ないます場合にも、国の直轄事業につきましては、地元の負担のあるのが例になっておるわけでございます。その場合には、国の負担率が三分の二でありましたり、四分の三でありましたり、いろいろいたしておるわけでございます。そういうことも考えまして、責任の主体は府県に置かなければならない、法律国庫負担を要請する、こういうようなことで関係省とも話を続けてこの成案に至った次第でございます。  なおまた、二以上の府県間にまたがる問題、それはこういう問題に限りませず、始終起こっているわけでございますので、そういう場合には、やはり府県間の協調が一番大切でございますけれども、解決のできません場合には、そういう場合のあっせんを行なう政府部局もあるのでございますので、そういうところのお世話にもなっていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  36. 前川旦

    ○前川旦君 たとえば、いままでの例を見ましても、奈良の平城宮跡の買い上げは全額国庫でやっておられると思うのです。それから京都の修学院離宮でしたか、農地を宮内庁が買うことによって荒廃を防いだという例があると思うのです。私は、そういうことから現実にやはり実例もあり、あるいはまた、先ほどおっしゃられた地方自治体からやたらに買い上げの請求があるというようなことは、これはやはり良識で処理をすればいい問題であって、やはり基本的な考えとしては、全額国庫負担をやるべきではないか、あるいはまた、財政上の問題で現在不可能であっても、将来はそれを考えるべきじゃないかというふうに思っておるのですが、将来その法を施行する面についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  37. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) たいへん好意ある御意見を伺いまして感謝申し上げるわけでございます。ただ、先ほど田中議員からもお話しになったわけでございますが、この法律は、歴史的風土保存考えているのだ、したがって、重要文化財保護などについては、全体と部分といいましようか、全体と個といいましようか、そういう関係において一そう充実してもらわなければならないのだというようなお話がございました。私ども、平城宮跡の国費買い上げの例をお引きになりましたが、そういうものはやはり積極的に国費で買い取っていただかなければならない、かように考えているものでございます。それはやはり現行法その他の法律に基づきまして積極的にその関係の仕事を進めてもらうのだ、これは全体の環境保存するという意味において大いに努力するのだ、そういう意味において考えているわけでございますので、今後この仕事の進展に応じまして、お考えのようなことも背景に、検討を続けていくべきものだろう、かように存じております。
  38. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いまの問題につきまして政府としての意見を申し上げておきたいと思います。  この立法についての考え方は、提案者代表からお話しになったような事情で、先ほど来御説明があったとおりの考え方で大体いっておるわけでございますが、お話しのように、この趣旨といたしましては、全く一地方の文化財ということでなしに、民族的に保存をする、こういうことが大きな精神であろうと思います。したがって、本来ならば、そういうところは国でちゃんとして保存するということが、理論的に私は正しいと考えております。けれども、他の立法例や、実行してみないと、これがどういうふうにいくかわからないような次第でありますので、ただいまのところでは、先ほど来御説明があったようなことでおりますけれども、実行した途上で、これは地方に負担さすべきものではないという場合も起こるのではないか。そういう点を勘案いたしまして、将来やはり前向きと申しますか、この趣旨をほんとうに生かすようなことで財政的なことも考えていかなければならぬときが来る、そういう考え方で進めてみたい、今日ではかように考えております。
  39. 前川旦

    ○前川旦君 ただいまの建設大臣の非常に前向きなお答えでけっこうだと思います。  そこで、もう一つお尋ねいたしますが、所有者から買い取ってもらいたいという請求があった場合に、買い取るわけですが、買い取って所有権を取得するのは、この法律では地方自治体になっています。そこで、まあたいへんこまかい問題なんで恐縮なんですが、たとえば、先ほど例として述べました修学院などでは、農地というもの、耕作されているたんぼが歴史的な風土の非常に大きな内容をなしているという場合になっているわけです。そのほか奈良盆地の飛鳥地方にいたしましても、現在耕作されているところに非常に多くの古都としての遺跡がたくさんある。耕作の状態のままで置いておくことが最も保存に適当であるというような場合が出てくると思うのです。であれば、農地を取得しなければいけない場合が出てくると思うわけです。ところが、いまの農地法を調べてみますと、小作地については、地方自治体はこれを所有することができないということになっている。国でなければこれを所有することができないとなっているわけです。その点で、すべてを地方自治体が買い取るものだというふうにおきめになっていますけれども、これはやはり国または地方自治体というような形で——特にいまの小作人の場合は大きな問題がありますので、実際の運営の上で矛盾が出てくるというふうに考えるわけなんです。この点に対しまして、どうですか。
  40. 奥野誠亮

    衆議院議員奥野誠亮君) この法律は、原状を保存していきたいというたてまえになっておるわけでございます。ただ、しかしながら、変更する場合に許可を得なければならない、そういうことによって原状保存の保証にいたしておるわけであります。買い入れが原則ではないわけでございます。ただ買い取りの場合に、いま御指摘になりましたように、いろいろな法律との矛盾があるいは生じてくるかもわからないのでありますけれども、いま申しましたようなたてまえで運用してまいりたい。しかし、その結果必然的にいろいろな法律改正の問題が起こってくる場合には、そういう問題もあわせて将来検討していかなければならない、かように考えます。
  41. 中村順造

    委員長中村順造君) 委員長から申し上げますが、文部大臣が十一時半までしか出席できないということでありますから、文部大臣に質問のある方は、先に順次発言をお願いいたします。
  42. 小酒井義男

    小酒井義男君 文部大臣に、実はこの法案の「古都」という名称について、文部省としては、古都というものをどの程度にお考えになっているのか、ということを私はお尋ねをしたかったのですが、提案者からいろいろ説明を受けておりますと、非常に広範な、もう明治時代までも及ぶような内容だという実は説明があったのです。そういうことになると、あらためて古都考えられるのは、どことどこかとお尋ねをする私の目的というものは少しはずれたんですけれども、そういうことで、古都という名称を使うことについて、何か御意見はありませんか。
  43. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 文部省の文化財関係といたしましては、古都という範囲については、固まった考えがございませんが、いままで私どもといたしましては、京都奈良鎌倉、まあ奈良あたりは中心地のほかにいろいろな点在がございますから、将来、そういう点在した場所も逐次検討の上追加される、かように思っておった次第であります。
  44. 小酒井義男

    小酒井義男君 古都という名称について、私ども若干こだわっているものを持つのです。持つのですが、どことどこというようなことをここではっきりすると、法律がおかしくなりますからはっきりしませんが、そこで、文化財保護委員会との関係ですね、文化財との関係、いま言われているようなものを広範にこの法律の適用範囲にした場合、それ以外に、局部的ではあるが、非常に貴重だというような価値のあるものが認められたという場合、取り扱い上に差ができるというようなことはありませんか。
  45. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 文化財保護委員会としましては、いろいろな調査の上、必要がございますと、古都保存とは別に史跡指定等は行なってまいりたいと思っております。それと、文化財として指定をし、あるいは史跡として指定をしておりますところは、ごく局部的でございまして、この法律は、おそらくその環境までも保護していきたいという広い意味があると思います。したがって、従来の文化財保護からいいますと、そのもの、あるいは拠点の一部だけを指定をしておりますので、さらに広い範囲にわたって、古都保存の精神で、このような保存措置をとっていただくことは、文化財保護上は非常に有益なことであって、文化財保護の意義が一そう広まってくる、かように思いまして歓迎をいたしておる次第でございます。
  46. 小酒井義男

    小酒井義男君 それから、賛成だという御意見ですが、私、実は文化財保護に対する補助などの内容については、あまり詳細に知っておらないのです。この法律ができた場合、価値のあるものであれば、これを下回らないような補助はできるようになっているのですか。
  47. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 文化財保護委員会の村山事務局長から。
  48. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 文化財保護法では、御承知のように、史跡のみならず宝物、建造物、民俗資料、無形文化財等、広範の文化財にわたりまして保護措置を講じているわけでありまして、予算措置も、どちらかといえば終戦からのいきさつがありまして、宝物、建造物等が多くて、史跡等に対する保護予算は必ずしも十分ではございませんので、近年その方面に努力を重ねてまいっております。したがいまして、古都保存法によりまして、三都につきまして広範に保存措置が強化されるということになりますれば、文化財保護法といたしましても、史跡名勝等関連分野の保護措置につきましては、予算措置につきましても、一そう強化してまいりたいと思っております。
  49. 小酒井義男

    小酒井義男君 もう一つ。それでは強化する必要は生じるわけですね。
  50. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 率直に申しますと、古都保存法ができなくても、史跡保護につきましては、現在、強化の必要が感ぜられております。古都保存法によりまして、周辺保護措置が強化されるということになれば、文化財保護法としては一そう、その中心拠点である史跡そのものの保存措置は強化をはからなければならぬ、こういうぐあいに痛感しております。
  51. 小酒井義男

    小酒井義男君 局長のお答えはそれでいいのですが、政府としても、いまの答弁のように、必要があれば強化をしていくという御方針ですか。
  52. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) そういうように考えております。
  53. 春日正一

    ○春日正一君 大臣はお急ぎのようですので、こまかい具体的なことは、局長のほうから聞きますから、一つだけお答え願いたいのですけれども、本来の文化財保護史跡保護、そういうことは文部省のやるべきことだし、それが一番道理にかなったことだと思っているのですが、今度の場合、これを建設省の管轄でやるというふうに提案がされており、それに大臣は、賛成であります、と言っておられるのでありますけれども、そこのところが、切実に賛成される立場というもの、そこをちょっとお聞きしておきたいのです。
  54. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 常に一般にも議論されておりますように、保存と開発との組み合いというものは非常にむずかしいと思うのです。私どものほうは、重要な史跡文化財等を保存をして、そうして学術研究の資に供したり、あるいは歴史的な価値を保存してまいりたいと思っておるわけでございますが、ややもすると、そうした周辺というものが開発のためにいろいろ変革をされていく、そのために、せっかく貴重に思っております文化財というものが、俗に申しますと裸にされてしまって、周辺環境とのつり合い上感服しないような事柄が起こりやすい。そこで、都市計画とか開発関係を担当しております建設省が、この古都保存について中心になってやっていただきますと、おのずから開発と保存というもののつり合いが、よほど従来よりは是正されていくに違いないという角度に立ちまして、私どもとしては、都市計画の権能を持っておる建設省が中心になってこの古都保存法の施行をやっていくということについては、そういう意味でたいへん有意義であろうかと、かように存じておるわけでございます。
  55. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、結局、結論的にいえば、保存と開発とのかね合いということの中で、開発が、遺跡や文化財の問題について主導権をとるということを、文部省が大体承認されておるのだと、こういうふうに受け取っていいですか。
  56. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 文化財保護法自体については、文化財保護委員会を中心に、文部省の所管で従来どおり、あるいはより以上強化してやってまいりたいと思います。問題は、その価値を高め、あるいは保存していく上において、周辺環境というものに非常に影響力がある。この環境保存していこうというのが、今度の立法の目的であろうと思うのであります。そういう意味からいえば、開発を担当しておる建設省保存の上にも一役買うということになれば、従来よりも摩擦が少なくなり、保存の状況が強化されていくと、こういうように実は私どもは理解しておるわけであります。
  57. 春日正一

    ○春日正一君 もう一言あれしますけれども、この風土保存まで含めての史跡保存ということが、建設大臣指定するということになるわけですから、そうすると、結局文部省として本来やるべき一番大事な仕事ですね、それを明け渡してしまったという印象を受けるんですがね。それはやりますと言うけれども、指定をすると、これを守るという権限建設大臣が握ってしまう、だから文部大臣のほうは、結局一番大事なものを明け渡した、こういう印象を受けるんですがね。
  58. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) その点につきましては、私どもも気を配らないことはございませんが、問題は、特別指定地域などをきめて、重要な場所をさらに設定していくわけでございますが、そういうことは、審議会ができまして、審議会にはかってきめてまいりますから一世論を受けて私は適切な指定ができる、そうすると、そういう特別地域指定ができますと、一般の地域よりも非常に規制が強化されてまいりますから、その意味で野放しに従来あったよりはよほど改善されていくんではないか、環境保存が強化されていくんじゃないか、またさらに、確かにそうなる内容になっておるように思われますので、そういう意味で賛成をいたしておるわけであります。
  59. 春日正一

    ○春日正一君 つまり、こういうことですね、文部省としては文化財保護の責任当局でもあるし、それをやらなきゃならぬけれども、やってきたけれども、とにかく建設が進んでしまって、どんどん自分の意図に反してこわされていっちまう、だからこわすほうの側の建設大臣にげたを預けておいたほうがいいと、そういうことですね。
  60. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) この立法の趣旨から判断し得るわけでありますが、御承知のとおり、この法律は、文化財そのものについてのことでなしに、文化財等を中心とした付近の景観その他、問題は土地の利用に関する問題がこの法律の多くの部分を含んでおると思います。先ほど来ありますように、各種の工事制限も、結局その土地の形質の変更あるいは建物の増改築、新築等、結局土地の利用に関する点を調整して、いわゆるそういう保存すべき地域保存していく、こういうことが多くのねらいでありますので、そういう点を担当しておる建設省の所管と、こういうふうに立案されたのだろうと考えておりますので、これは別に文部省の所管を云々するとか、別に権限争いをするという観点は少しもございませんが、問題は、土地の利用状況をうまくやっていくということに大きなねらいがある、それを担当しておる建設省が適当であろうということで、かようにされておるものと考えております。
  61. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) ただいまの御発言は、たいへん大事なことであると思いますので、一言申し上げてみたいと思います。この個々の名所旧跡その他の文化財という、その個々文化財保存行政は、これは文部大臣が文部省の所管でやる。文部省のいまお話しになったように、その存在をする文化財の重要な環境は、この法律によって審議会が中心にやっていく、審議会できまったことは建設大臣が実現をすると、こういう筋でございます。その審議会は、一体保存計画を立てようとするその具体的な地域内に、どのような具体的な文化財があるのかということを見て、その文化財を大事にしていくためには、その環境としての地域はどういうふうな内容保存計画を立てるべきかと、こういうことを考えに入れてまいります。言うまでもなく、この法律にはございませんが、役所当局でありますから、審議会がその審議計画を、保存計画を設定してまいりますには、文部大臣所管の文化財保護委員当局の専門家の意見を十分に聞いていくと、そしてさらに、その個々文化財の存在価値が強くなってまいりますように計画を立てていくわけでございます。少しもその点に対立とか、いままで右がやったのが左がやることになるのだというような関係は起こらないのではなかろうか。あくまでも審議会が中心で、その審議会は、あくまでも関係当局意見を聞いた上で具体的計画を立てていく。でき上がりましたのは建設省に命じてそれを実現さすのだと、こういう形で運営をさす考えでございます。
  62. 春日正一

    ○春日正一君 私、大臣がお帰りになるというので小酒井さんの質問の途中で発言させていただいたのですけれども、この問題が一番大事だと思うので、あともっといろいろな点お聞きしたいし、そのほかの点お聞きしたいのですけれども、この文部大臣に関する限りは、これ以上聞いてもしようがないのですけれどもね。あと小酒井さんが御発言なさったあとまた発言させてもらいますから……。
  63. 小酒井義男

    小酒井義男君 文部大臣はまだちょっと一問くらい、時間があるようですから関連してお尋ねしたいのですが、実は私、今年の二月多摩御陵ですか、多摩丘陵に鶴川団地というのができるときに、原始時代の遺跡が発掘された、これを保存したいという非常な希望があるということを知りまして、何とかしてその部分だけ残せないのかということを政府に質問書を出したのです。これに対して、その答弁の中に——要点だけ抜いてお尋ねしますが、全国的に埋蔵文化財について遺跡台帳を整理したと、関係者へ周知をはかるため、その所在地図譜の作成を進めておるということですが、そういうものはもうできたのかどうかということが一点。  それから二つ目には、今後とも関係者間の連絡を密にするとともに、できる限り時間的余裕を持って、事前に詳細な調査を行ない、調査費の支出も増額して、遺跡の保護に遺憾なきを期したい、こう言っておるのですが、それでは、調査費の増額は要求されておるのかどうかということが第二点。  それからもう一つは、今後とも宅地開発にあたたっては、文化財保存あるいは調査について万全を期するよう、この統一的な取り扱い基準について——これは建設者の関係ですが、公団において、関係方面と協議の上作成するよう検討中である、こういう三つの要点だけ抜いたのですが、総理大臣から答弁をもらっておるのです。これは、こういうように進んでおりますかどうか。
  64. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 大体いま御指摘のように進行をいたしております。そして全国的にいろいろな遺跡の調査を実施しておりまして、全国遺跡地図等も作成をしてやっております。  それからもう一つは、いま御指摘のございました、住宅公団の団地造成などとは大いに関係がありますので、住宅公団との間に、一つの交換文書といいますか、覚え書きを結びまして、きわめて重要な区域については、団地から除外すると、そうでない方法で保存できるものについては、団地の中に緑地をつくりまして、その緑地の部分にそういう保存措置を講じていくというようなぐあいに、またやむを得ないものについては発掘調査をいたしまして、記録を保存して学術研究の資料にすると、ですからその発掘調査の完了するまでは団地を待っていただくというような点等についても住宅公団と覚え書きをかわしまして、答弁書で書きましたような精神をいま着々実行いたしつつある次第でございます。
  65. 中村順造

    委員長中村順造君) 文部大臣に質問ありませんか。——じゃあ大臣……。
  66. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) どうもありがとうございました、時間のとおりやっていただきまして。
  67. 前川旦

    ○前川旦君 この際あわせてお伺いしておきたいと思いますけれども、先ほど小酒井委員のほうから古都の概念というものがだいぶ出ました。たとえば東京、これは江戸、これはやはり現在の都であり古都であるという二つの性格があると思う。東京都の最近の旧江戸時代の雰囲気なり武蔵野の面影に対する破壊というものには非常に激しいものがあると思うんです。将来やはり東京をも古都という点でとらえて、これに対するいま言った環境整備なり環境保全なりの方法をお考えになるというような計画がありましたらお答えいただきたいと思います、将来の計画
  68. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 先ほどからくどく申し上げましたように、歴史的風土保存したい、その歴史的風土の最たるものは古都にあると、まあこういう考え方から出発して無理に古都という字をつけたのであります。古都という文字だけ省いたらどうだ、歴史的風土保存法でいいじゃないかという議論も出ました。出ましたが、どうもその古都ということばがいつから出てきたのか、これがありませんとびんとまいりませんので、これまあひとつつけておこうじゃないかと、しかしながら、指定をする対象は、古都云云ということになっておりますが、市町村ということになっております。どんなところでもこれは指定できぬことはないと、古都ということばがふさわしくないということは起こり得る、そういうことでありますので、将来はこれを、まあ先ほどの提案理由の中にも申し上げましたように、実施をしてみて、あまりに古都という名称をかぶせておっては窮屈ではないかという事態がありましたときは、将来はこの法律改正する方向に検討をしたいということも提案理由の中にうたってございますので、提案者考え方といたしましてはで、きるだけ広く——狭く解釈せいという意見もあるんです。政府のほうは狭く解釈せぬと金がたくさん要ることになります。そういう考えはございますが、提案者のほうといたしましては、できるだけひとつこれをルーズに解釈をいたしまして、将来は場合によっては古都の文字もはずしまして、広く市町村に対して大事なところは風致の保存ということで歴史的風土である限りは古都であろうがなかろうが指定ができるように、広く将来は適用のできますような改正考えなきゃならないというような心持ちであります。
  69. 前川旦

    ○前川旦君 具体的な問題ですけれども、第十一条の「(土地の買入れ)」、この問題です。やはりいま歴史的な風土を破壊をしている最も大きなものは宅地を造成する資本あるいはまた観光資本、こういうことだろうと思うんです。そういうことから、土地をこの場合に所有者から買い入れるべき旨の申し出があったときは土地を貰い入れるものだと、こういう規定になっておりますけれども、もう少し強く、たとえば先買権と普通いわれている先買い権を持たさなければ実際の運用として実効があがらないのではないかというふうにも考えられるわけなんです。たとえば文化財保護法の第四十六条では、文化財そのもの、単体の文化財に対しては非常に強い先買権というものを認めております。やたらに人には売れないと、売るときには国が先に買い取るんだというところまでの強い規制がされているわけです。ここまでの強い規制はともかくとして、もう少し先買権といったようなものを公共団体なりあるいは国なりに持たさなければ実際の実効があがらないのではないかというふうな思いがするわけなんです。そこで、この法案には先買権というものは認められておりませんけれども、この問題を、将来の問題でもけっこうでございますから、やはり先買権を持たすべきかどうか、あるいは持たすべきじゃないかという点についてお答えいただきたいと思います。
  70. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) おことばの場合も、だいぶん立案の際に論議をされました。されましたが、なるほどその先取買い入れの権利といったようなものがこの規定にはございませんけれども、この規定内容から申しますと、内閣総理大臣保存に必要ありと認めて地区の設定をすると、総理大臣が区域の設定をいたしまして、建設大臣がそのうちの重要な部分について地区設定をするという行為がありますと、その中で建築は自由にできない、新築は極端に制限をされる、改築まで制限をされるんだという制限規定ががんとしてあるものでありますから、これは所有者に対して行き過ぎたような先取買い入れ権を認めておかなくても、そういう制限規定ががんとしてございますので、その制限規定がものを言うてついに他人がこういうものは買わぬだろう、おそらく買い入れということを国がやらないでも、この制限行為というものが規定されておりますから、そんなもの買い手がない。買って工事をすると原状回復の義務を負わなければならぬことになるので、そういうばかなものは買い手がなかろう、こういう意味で先取特権的な行き過ぎた規定はなるべく慎しむべきではなかろうか。所有権があって、だれに売ろうが売るまいがその所有者のかってなんでありますから、憲法が保障しておるところでございますから、そういう行き過ぎた規定はつくらなくても不便はなかろう、こういう考え方から遠慮をいたしましたわけでございます。
  71. 前川旦

    ○前川旦君 ただいまの問題、たいへんごもっともだと思いますけれども、個々所有者の場合でしたら、そういう良識なるものが私は期待できると思いますけれども、一たんいまの宅地造成の資本なり観光資本なりの手に入って、あとの罰則との関連もあるんですけれども、罰金を払えばですね——何億という工事をやっているんですから、少々の罰金を払あうが払うまいがかまわないというような破廉恥な業者というものがやはりいると思うんです。そういう場合に、それ守るためにはやはりある程度の先買権というものが必要なんじゃないかという立場から申し上げたわけなんです。
  72. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) おことばごもっともで、そのお話も立案中に出てまいりましたが、いまのおことばのようなことが諸所にございます。罰金ぐらい納めるよと、こういうので何十億、何百億の工事を平然として行なう、そうして大事な風土に機械のつめあとを残していくなどということを何にも反省をしないということがございますので、このたびは、法務当局を呼びまして、いろいろもうほんとうに長く折衝をいたしました結果、懲役刑をもって処断ができると、思い切って懲役一年——金なら何ぼでも出すというやつでも監獄に一年間行くのはいやだというやつもおるでございましょうから、それで、だいぶ無理がございましたが、罰則の規定のように、懲役一年以下の規定をもって処断するのだ、こういうことで、しかもそれは選択をしていただくようにできております。罰金で役に立つまいと思われる相手に対しては懲役をもってすると、こういうことで互いの目的を達し得るようにその点は苦心をしておりますわけでございます。
  73. 前川旦

    ○前川旦君 次に参りまして、第十二条の問題でございますけれども、府県はこれを管理しなければいけないわけです。この管理の具体的な問題でございますけれども、費用については第十四条で、先ほど大体八割程度だというお話でございました。しかし、実際の地方自治体の話を伺ってみますと、こういうふうにして土地を所有したあとの管理については、政令である程度具体的な基準というもの、たとえば公園化する場合には補助は幾らだとか、あるいはそのままの現状維持の場合にはどうだとか、こういうようなかなり詳しい具体的な基準というものをきめていただくと、あとの管理がやりやすいというような話を伺ったことがあります。そういうふうなことを政令に盛り込んでいくお考えがあるかどうかということをひとつ。
  74. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 歴史的風土の中身が、一つ一つ違う中身であろうと存じます。したがって、一定基準を設けて、管理基準をつくるということは、なかなか時間のかかる容易なことでなかろうということから、すべてそういう管理に関しますことまで、審議会保存計画を立てます保存計画の中身で、この場合の歴史的風土保存はこういうふうに管理をしていけという、その具体的な管理の方針をきめさせていこう、こういう考えで、いま先生の仰せあるような一般的個々基準というものはつくらなかった次第であります。
  75. 春日正一

    ○春日正一君 御承知のように、共産党は、史跡文化財の継承保存ということは、私たち文化政策の非常に重要なものとして、そのために努力してきているのですけれども、そういう立場から見て、この法律にはかなり重要な点で問題があるというふうに考えますので、いろいろお聞きしたいのですけれども、そういう点を含んでお答え願いたいと思います。  第一点ですけれども、最初に、この問題をはっきりさせる意味で、現在、京都奈良鎌倉三都で、非常にそういう文化的な風土というものが破壊されている。緊急にこういう法律を出さなければならぬというような問題が出てきているわけですけれども、この点で、文化財保存局長ですか、保護局長ですか——のほうから、これらの都市での文化財の破壊の状況ですね、風土の破壊状況、これを必要としているような、それから、それとあわせて、全国でのそういう状況、その概況をひとつ説明を願いたいのです。たとえば、私たちでも、三笠山のそばにドリームランドができたとか、あるいは修学院離宮付近にいろいろまずいものができたとか、そういうお話しは聞いておりますけれども、それだけじゃなくて、もっと総体的に見て、どんなにこわされているかという点を聞かせてほしいのですがね。
  76. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 現在文化財保護法によりまして史跡指定をしております件数は、特別史跡を含め約八百件余でございます。で、この指定史跡区域内におきましては、幸いにして破壊ということは比較的僅少でございます。たとえば東京の武蔵国分寺あたりで無断現状変更による住宅の建設が行なわれた等若干の例がございますが、比較的僅少でございます。一般に史跡的なる文化財の破壊として報道されておりますものは一夫指定ではあるけれども非常に価値があるものについて破壊されておるということで伝えられるものが多うございます。そこで、指定はされておらないけれども歴史的価値があるものが全国にどのくらいあるかということでございますが、これは多くのものは埋蔵の状態で現存しておるわけでありまして、調査をしないとなかなかその価値そのものもよくわからないというのが実情であります。そこで、昭和三十五年以来三カ年計画で全国の埋蔵文化財の調査を行ないましたところが——一応これは聞き込み調査でございますので、まだ確実なところはわかりませんが、比較的調査の値打ちのあるところ、遺跡といたしましては、約十四万カ所というものがあげられているわけでございます。十四万カ所の中で、現在史跡としてはっきり指定されているのは、これは史跡のうちで埋蔵文化財的なものを含みますものは約七百件でございまして、きわめて僅少でございます。そこで、保存の価値があるのではないかと思われるケースと現実指定をされているものとのギャップが問題でありまして、その差のところで破壊が行なわれるというのが実情でございます。  そこで、現在埋蔵文化財につきましてどういう規制をやっているかと申しますと、これは指定をしておらないわけでございますので、現状変更を禁止するというような規制法律上なされておりませんので、これを発掘するような場合には届け出制になっております。届け出があった場合において、文化財保護委員会としては、必要と認める場合には指示をなすことができるというのが現状であります。  そこで、届け出がどのくらいあるか。つまり、埋蔵文化財を発掘するということは、学術的なものもありますが、物理的にいえば破壊を伴うわけであります。埋蔵文化財の発掘の調査がどのぐらい行なわれておるかということを御説明申し上げますと、これは年々増加しておりまして、最近では年間四、五百件に達しております。それで、発掘調査の理由は学術的なものと土木工事によるものとに分かれますが、最近では、学術調査によるものは横ばいないしやや減りぎみであるのに対しまして、土木工事によるものは非常にふえております。現状では、土木工事によるものが二に対して一学術調査によるものは一ぐらいの割合になっております。ここで破壊の問題が起こり得るわけでありますが、文化財保護委員会といたしましては、埋蔵文化財の発掘調査が届け出をせられますと、先ほど申し上げました必要な指示を行ないます。で、保存が必要ではないかと思われるものにつきましては、とりあえず都道府県が仮り指定をするという措置が認められておりまして、必要と認める場合にはこれを行ないます。さらに文化財保護委員会による国の指定の必要を認めるものにつきましては、専門的な調査を進め、文化財専門審議会にもはかり、指定を進めるということでやっております。最近では、鎌倉につきまして指定地外が荒らされるという問題が起こりましたので、緊急に調査をいたしまして、数カ所の追加指定を内定いたしております。  そのようにいたしまして、文化財保護法の上からも、遺跡を含む史跡保存につきましては、調査を進め、指定の強化をはかっておりますが、何と申しましても、この法律のたてまえによりますと、先ほど来大臣の御説明にもありましたように、学術的な史実に基づく小範囲の区域ということになります。ですから、指定そのものにつきましても、重要でありそうだというようなことですぐやるというわけにまいりません。きわめて慎重な調査を進めて、確実なものを選び出して指定するということになりますので、指定区域外において問題が生ずるわけでありまして、そういう意味におきまして、三都につきましては、古都保存法によって周辺まで、別の角度からではありまするが、保存措置が強化されるということは、文化財保護の立場からも歓迎すべき事態であるというぐあいに考えておる次第でございます。
  77. 春日正一

    ○春日正一君 私それだけの話でイメージが出てこないのですがね。だから、田中さんのほうから御説明願って……。京都なんかのほうはどうなんですか、実情は。
  78. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 第一に、京都では双ケ岡——先生御存じと思います。これは兼好法師が有名な「徒然草」を起草したところで、そういう史実が明らかになっておるところでございます。ここを事もあろうに某氏がこれを買収いたしまして、一大ホテル、何百億という金をかける一大ホテルをつくるという計画が進んでまいりました。何とかこれを京都市、京都府で買い求めよう、地元の商工会議所等が中心になって金を集めて買おうとしたのですが、金額がばく大である。買い手がついておるものでありますから、それ以上でなければ売らない、無反省な態度でございます。ところが、古都保存法と称するものができそうだ、まだできたわけじゃないのですが、起草に入った途中で中断をいたしたわけでございますが、中断以前のできごとでありますが、そういう法律ができて、ホテルをつくったって原状回復命令が来たらたいへんだということになりまして、この買い入れということはついに実現せずにうやむやになった様子でございます。ところが、一方において、その古都保存法の立案計画というものが消えてしまった。国会——衆議院の申しわけのない混乱でそういうことに勢いなったわけでございます。そうすると、今度は、オランダ人といわれるのでありますが、たいへんお金のたくさんある外国人があらわれまして、外国人が実地踏査をして、これを買う契約を結ぶ話ができた。これは一大事であるというところへ、またこの法案がいよいよ今度はものになる、衆議院を通ったということになってきたわけであります。昨今はオランダ人は手を引いたと、こういうふうに伝えられて、これが地元新聞に出ております。これが一つでございます。それから、京都で有名な史跡と申しますよりは、史跡、名所等古文化財はそんなにたくさんあるわけではございませんが、有名な京都の東山と並んで称せられる西山でございます。東山に対する西山でございます。この西山に最近ブルドーザーのつめあとが、だれが見ても明らかなようななまなましいつめあとが出てきた。これは大工事をやっておるわけであります。そこで、ただいま中断はしておるけれども、古都保存法というものは必ず国会を通過するんだぞ、これは工事をおやりになってもたいへんな損失になりますよ、その損失補償は一々できませんよということを、市長を通じましてこれを申し入れました。申し入れましたので、つめあとは出ておりますけれども、工事は中断されて今日に及んでおるというような事情でございます。それから、鎌倉山に御承知のとおりに大きなホテルを建造中である。昨今はその建造の勢いが中断されておるようでありますが、ここにも、そういう鎌倉の市民をあげて心配をして反対をしておりますような工事が平然と無反省に行なわれておる、こういう事態があるのでございます。それから奈良におきましては、ただいまもお話が出ましたように、平城宮趾につきましては、国庫が全額を持って、全部ではございませんが、その一部の買収をいたしておりますので、この被害はいまのところ起こっておりません。そういうふうに古都中の古都ともいうべきところで歴史的風土をこわす傾向がたいへんあちらこちらに出てきております。この法案がたいへん急がれておるわけであります。  これに関連をして一口お聞き取りを願いたいと思いますが、以上ずいぶんくどく申し上げたような中身を持っておりますので、四十一年度の予算は計上される見通しになっておりますが、かりに予算ということを度外視して考えてみましても、この内容を盛った法案でありますと、これが参議院の御高配をいただいて成立をしたということになりますと、単に成立をしたということだけで非常にこの重要な保護ができる、一切の工事はストップになる、一切の買収は中断されるということになることは火を見るよりも明らかな中身を持たしてありますので、違反をすれば監獄にも行くという中身を持たしてありますので、格別のこれについては御配慮をわずらわしたいと思います。
  79. 春日正一

    ○春日正一君 そういう状況、私も書いたもので見たり、聞いたりしておりますけれども、そういうものが、先ほども話に出ましたけれども、都市計画法による風致地区指定とか、国立自然公園法とか、文化財保護法、特に京都奈良では特別な都市計画法というようなものができて、当然保護されるというたてまえになっておるのに、なぜそんなことになるのか。これらの法律というものは実際役に立たないざる法なのかという問題なんでございますね。
  80. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) それは、先生お説のごとく、法律に欠陥があるのだと、言いにくいことでありますが、そういうふうに私は信ずるのでございます。たとえて申しますと、ただいまもお話の出ました文化財保護法、これは保全地域というものが御承知のようにございまして、そうしてその名所、史跡はこれを保存するわけでございます。しかし、それはあくまでも名所、史跡それ自体を保全するものであって、名所、史跡のバックとなっておる景観に関しましては、発言も処置もこの法律ではできない、そのことは無視しておるわけでございます。しかし、そもそもこの名所とか史跡とかいうものは、その環境に存在をいたしまして初めて意味がある。京都史跡を東京のまん中に持ってきても何にも意味はない。そういうことはどういうことかといえば、環境というものがたいへん大事だということになるわけでございますが、その大事な環境景観を守ろうとするところに法律規定が欠けておるという点があろうかと存じます。都市計画につきましても、風致の地区でございますが、風致の地区は、御承知のとおり、たいへん狭い範囲の個々別々な、甲と乙との地区の間には関連がございません。何にも関連なしに、この風致地区、あの風致地区、Aの風致地区とBの風致地区との間に何にも保存保護関連がない。そういうふうな欠陥があるものでございますから、このたびはそういう欠陥も補っていこうという目的も一つの目的として持っておるわけでございます。
  81. 春日正一

    ○春日正一君 御説明のような欠陥がある、そのために保護の目的が達せられない。まあ俗に私たちはそういう穴のあいた法律をざる法と言っておるわけですけれども、そうすると、京都鎌倉奈良というようなところは、文化財も密集しておるし、全体として金を持っておるような一つの地域ですけれども、しかし同時に、同じようなざる法で文化財保護がやられておる全国の貴重な遺産とか、史跡とか、その中にはやはり環境保存しなければならぬようなものもたくさんあると思うのですけれども、そういうものが結局、いまの地域開発とか新産都市とか道路の建設とかいうような事業の中で、この建設が進んでおる中で、どんどんこわされていっている。それで私一番最初にそのこわされていっている状況をお聞きしたのですが、結局それは十分なお答えがなかったんですけれども、こわされていっておる。たとえば手近な話、すぐそこですけれども、芝公園の山内なんかというものは、あれはひどいものですわ。私たちが子供のころは、芝公園というものは東京で一番いい、幽遠な古い形を残した公園だということで、私はあそこを楽しみにしておったのですが、あの一番幽邃なところが、テレビ塔になり、道路になって、野球のグラウンドのあれができてしまって、あそこの徳川将軍のおたまやの門がホテルの飾りものみたいになっているでしょう。増上寺なんというのはまる裸になって、ほんとうに殺風景なものになっている。東京のまん中で、京都みたいな全体的のつながりでなくても、一つの重要なそういうものがあれほどこわされているのを私は毎日見ておる。それから史跡、そういう面でいっても、先ほどお話のあった平城宮のあとですね。あれなんかも近鉄にこわされようとして、相当みんな運動されている。その結果ああいう措置をとられてたということになっているし、千葉県の加曽利の貝塚群というようなものも、京葉工業地帯の計画でもってこわされているというような問題が出てきている。特に日光の杉の問題ですね。これは、あとから触れたいと思うのですけれども、一番大事な大きい杉を道路を広げるために切ってしまうというような形で、至るところでそれが行なわれているということになっている。それが現状だと思います。どこでも、いまの建設が全国的に進んでいく中で、こわされていっている。そうしますと、この三都市だけになぜ限ったのか。そうすると、三都市以外のものは、いまの破壊の現状のままで放置されるのじゃないか。先ほど言ったように、いろいろ法律があるけれども、欠陥があって、こんな現状が出ておる。それを何とかしなければならぬというのに、とにかく三都市だけとりあえずといったら、ほかのものはこわれるにまかされると、そんなものがきまらないうちに早くやってしまえということになってしまう。そういう結果が出てくるのじゃないか。この点についてどうお考えになりますか
  82. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 三都市以外の土地について重要な歴史的風土保存を必要とするものがあろうではないかということになりましたので、なるほどということから、その他政令指定するところということで、この「その他」を入れたわけでございます。ところが、「その他」というものを非常に広範囲に入れてまいりますと、古都ということばは無理ではないかということも出てまいります。そこで、提案の際にも一口説明をいたしましたように、これは、実施してみて、なるほどこれも守りたい、あれも守りたいということが起こってまいります場合には、ひとつ竿頭一歩を進める改正を将来において行なって、お役に立ちたい。いまは、その他政令をもって定むるところということで、これを補いをつけておるつもりでございます。
  83. 春日正一

    ○春日正一君 先ほどほかの委員の質問に対しても、古都という限定、そしてあの法文にある三都市のほかの市町村というような形で、必要あれば全国どこでも適用できるじゃないかという御説明があったのですけれども、古都というふうに理屈っぽく言って限定すれば、やはりそれは相当範囲のしぼられたものにならざるを得ないし、それからまた、政令にありますように、全国どこでも指定できるじゃないかというなら、なぜ初めから限定する必要があるのか。先ほど言ったように、こわされていることは事実ですよ。そうだとしたら、初めから全体が対象になるようなものにしていくということが大事なんじゃないか。そうなると、やはり古都ということから三都市を出してきたものの中に、全体として日本文化財保護するというたてまえから見て、しかもいままであった法律に欠陥があって保護できなくて現実にこわされているという問題が事の大小にかかわらず緊急事態になっているという事態から考えれば、これだけの三つをとりあえず限定して出してくるというところに非常な矛盾がある。おれのほうがこわされていいのかという問題が全国から出てくると思うのです。その点どうですか。
  84. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) この法律を実施をいたしました後の状況をよく視察をいたしまして、お説のような場合にもこれを遠慮なく適用のできますような方向に将来の問題として改正をしていきたい。ただし、とりあえず鎌倉、とりあえず奈良、とりあえず京都等のつめあとを見るというと遺憾事が表面化しているものでございますから、とりあえずそれを守ろうということの意図から出発をしたので、こういう内容のものとなっているわけでございます。一応これをお許しをいただきまして、後日を期したい、こういう考えでございます。
  85. 春日正一

    ○春日正一君 その点あとでまた立ち戻って触れますけれども、この法の四条による「保存区域」これは総理大臣の指定する「保存区域」と、それから六条による建設大臣指定する「特別保存地区」ですか、こういうふうになっているわけですけれども、これをきめる基準、適用の範囲、こういうものは大体予定されているのですか。
  86. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 内閣総理大臣のきめます「保存区域」のほうでございますが、これはよほど広い観念でございます。京都東山なら東山、鎌倉山なら鎌倉山全体、こういうふうに予定をしているわけでございます。それから建設大臣の定めるその中での「地区」という、区域でないもの、地域というほうは、どういうことかと申しますと、そのうちの「枢要な部分」という文言を用いておりますが、その歴史的風土といわれる区域の中の中心的な意味のある、中心的な地域というふうにこれをしぼりまして、保存計画を立てたい、こういうことでございます。
  87. 春日正一

    ○春日正一君 もう少し具体的にお聞きしますけれども、十二月二十四日の朝日新聞によりますと、この保存法の成立ということを見越してとは書いてないけれども、大体見越して、「同法によって規制の加えられる保存区域の候補地として地元から建設省に要望の出ているのは、つぎの通りで、このうち、特別地区指定されるのは、建設省の試算によると約二千ヘクタール、その補償、買上げにはざっと八億円が必要という。」ということで、奈良の若草山その他、京都の東山、修学院付近その他、鎌倉の八幡宮付近その他と、かなり具体的な地名まであげて出ているのですが、これは建設大臣がお答えになるか、建設省がお答えになるかどうか知りませんけれども、現在こういうものが申請されてきているのかどうか、どのぐらいきているのか、そういう申請されてきたものはみんなやはり指定するということになるのかどうか、そこら辺をお聞きしたいのです。
  88. 竹内藤男

    政府委員(竹内藤男君) 特別保存地区建設大臣指定するようにこの法案ではなっておりますが、特別保存地区につきましては、現在おおむね四千ヘクタールぐらいの面積について関係府県市から指定の要望が出ております。これをどういうふうに扱うかということは、これから、法律が制定されましてから、審議会等の検討も経ましてきまるわけでございますが、ただ、要望としてはそういうものが出ております。
  89. 春日正一

    ○春日正一君 これの表にあるやつですね。おたくのほうから出してこられたもの、あなたも持っているのじゃないですか。まあ出ているものはこういうものといって、双ケ丘、嵯峨野、その他京都で七件、奈良で三件、神奈川で九件ですか、そういうものが出て、それに対する予算見積もりその他も出されているのですけれども、ただ一番問題になる、心配になるのは、そういう場合に、ここで新聞の伝えているもの、あるいは建設省の出してきたものと、京都——これは市役所のほうに照会して聞いたのですけれども、それとで見ると、だいぶ範囲が違ってくるのです。この表には七件——双ケ丘、嵯峨野、嵐山、東山、御室、衣笠、滋賀県大原こういうふうにあがっておりますけれども、市役所のほうでどういう地区を特別地区として予定しているかといって私ども聞いてみると、東山、修学院、ずっと入れて、一、二、三・四、五——十一件ですね、約二千ヘクタール、総額にして百二十億ぐらいの予算が必要だというふうに出てきておる。こういうふうに見ると、市役所、地元の市会が必要だといって望んでいるものと、建設省が必要として指定するものとの間に、非常に大きな開きが出てくる。そういう問題が一つあるし、同時に、それじゃ市役所のほうが望んでおる、ここにあげた十一というもので全部尽くしているかといえば、地元の住民なり専門の歴史家あるいは郷土史家というような人たちから見れば、ここもこわしたくないというようなものも、もっとたくさんあると思う。そうすると、結局、いろいろそういうものがたくさんある中で、建設省が特別地区として指定したところは、そういう形で保存されるとして、その指定から漏れたものは、こわしほうだいということになってしまうんじゃないか、そういう問題があるわけですけれども、この点はどうなんですか。
  90. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 審議会を設定し、その審議会委員の中身は、りっぱな人を新たなる角度に立って選ぼう、この法律の精神を生かせるような人材を集めようという考えでございます。その審議会がすべてきめてまいります。したがって、地元から要望したものも、参考にはいたしますけれども、それにはとらわれない、これをやるならばこれもやらねばならぬということは、十分に慎重審議をされることと存じます。審議会古都と呼ばれる地域全体について慎重に検討をいたしまして、地元の意見を聞く、地元から出ておりますものはむろん参考になると、こういう考え方で、広く手落ちのないように広範囲に、しかも事こまかくこの審議をしていくことになろうと存じますので、現在、要望として出ておりますものは、とわあえず問題になりそうなところは、地元から出ておる要望と存じます。それにかかわらず、行き届いた審議を行なうということで、手落ちのないようにやっていきたいと存じます。
  91. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、審議会の問題、あとでお聞きするつもりであったんですけれども、ここで出たし、これからも出てくると思うんで、審議会そのものについての問題も、お聞きしたいと思うんですけれども、たとえば、この法でいえば、審議会委員二十名以内、そうしてその構成は、関係行政機関の職員、関係地方公共団体の長及び学識経験者ということになってるようですけれども、大体こういう構成でいけば、まあ、あなたは提案者としては、当然そういう意図を持っておられるし、その意図を決して疑うわけじゃないんですけれども、しかし、結局いままでの各種の審議会ですね、そういうものはみんな、それもあなたの言われたように最高級の人を集めて万全を期するということでつくられたと思うんですけれども、しかしそういう場合でも、結局こういう構成というものは、文化遺産を守るために真剣に努力しておる地域の住民とか郷土史家、民主的な専門家というようなものの意見が、はなはだ反映されにくい。いまでも、たとえば文化財保護委員会その他に対して、いろいろ地方から破壊される現状が出されて、何しているんだという問題が起こっている。そういうことを考えますと、特に関係地方機関の職員とか公共団体の長とか、そういうような形でつくられるこの審議会で、それは十分審議して万全を期するといっても、やはりそういう民意、実情というものが十分反映されないのじゃないか、この不安が一つ残る。  もう一つ大事なことは、これはあとにも触れますけれども、結局、この審議会の性格というものは、内閣の諮問機関ということになるわけですね。最後の決定権は、総理大臣と建設大臣がお持ちになるということになれば、たとえば予算の都合だとか、まあいろいろな関係がありまして、最近の米価審議会や、国鉄の運賃の審議会とか、炭鉱の審議会とかいろいろな審議会でもって出ているように、たとえば健康保険の審議会や米価の審議会、そういうところで結論を出さぬうちに、政府がさっさと値上げをきめちまうというようなことがやられておるというふうな事態を考えますと、審議会という形をとるというのが、一つの民主主義的な制度としてこれはあるわけですけれども、現実には総理大臣の諮問機関であって、それが決定権は持っていない、決定するものは総理大臣だし建設大臣だということになれば、この審議会に対して大きな期待がかけられないというのが、いままでの実績から見た結論になるのじゃないか。この点非常に不安なんですがね、その点どう保障されるのか。
  92. 田中伊三次

    ○衆議院識量(田中伊三次君) 提案者もお説のごときことを考えます。非常にありがちな数多い審議会と似たようなことになっては困る。そこで、この場合は、この法律規定の中にもございますように、専門の事項を調査するために専門委員を特に設けよう、これは専門委員の数は、法律規定はしてございませんが、相当数の専門委員を選ぶ考えでございます。その専門委員が中心となりまして、これは専門家のみでありますから、その専門的知識によって、区域地域をいかに扱うべきかを十分に検討せしめ、それを保存するための計画をいかに内容に盛るべきかを十分に検討せしめまして、広い、一段高いところからものの見える審議委員に審議をせしめ、そうしてできました結論を、内閣総理大臣並びに建設大臣にこれを答申をするという形にいたしまして、一番基礎においては、専門委員を活用して遺憾なきを期する、そうして、上におきましては、いやしくもその審議会が答申をいたしました場合においては、審議会の答申の結果を尊重さすように努力をする、こういう上下の組み立てで、できるだけ先生の御心配をいただくようなずさんなことのないように、手落ちのないようにやっていけるのではなかろうか、こういうふうに配慮をしたわけでございます。
  93. 春日正一

    ○春日正一君 まあ、御説明ですけれども、そういう点の配慮は、やはりいままでのすべての審議会において、人選なり運用なりですね、それがほんとうに民意を反映して、政府政治に反映するというたてまえになっておったと思うのですけれどもね、特にそういう配慮があるということだけで心配ないということにはならぬというように思いますけれども、この点、私、次に譲っておきます。  そこで、さっき言った、やはり一番問題になるのは、一つは、この法案での保存区域指定権、歴史的風土保存計画の決定というものは、総理大臣がきめるということになっておりますね、総理大臣がきめると。それから、特別保存地区に至っては、その指定建設大臣が行なうということになっているんですね。やはり総理大臣、建設大臣が最終的にはきめるのだというたてまえになっているんですね。そうなりますと、きわめて一方的な、政治的な決定が行なわれる。これは、総理大臣にしたって、政党を代表してやっている政治家ですし、建設大臣にしたって、もちろんそうですから。そうすると、きわめてそういう立場からの一方的に政治的な決定が行なわれる、そういうおそれが非常に大きいではないか。そうしてこの総理大臣あるいは建設大臣指定すべき区域の選定権を結局持つということになるわけで、これは非常に大事なことです。総理大臣や建設大臣が結局いろいろ答申を受けるにしても、どこを残して、どこをつぶすかということの決定権を持ってしまう、選定権を持つ、そういうことになると思う、法のたてまえから言えば。そうなりますと、文化財保護とかその環境保護という見地から見て、どれほど重要な地域であっても、総理大臣や建設大臣指定すべき区域であるというふうに選定すれば、結局それは破壊にまかされてしまうということになってしまうし、そうして特にこういう問題が起こったことも、先ほど御説明のように、土建業者とかその他が自分の企業の計算だけでどんどん破壊をやっていくということから起こっておるわけなんですから、当然こういう土建業者、観光業者、そういったような者のしたいほうだいなことになってしまう。その点で一つ例を申しますけれども、日光のあの杉並木の杉の木を切る問題、私、去年の秋に行ってきましたが、あの一番大事な、一番大きい杉、この分が十五、六本、こっちから行けば入り口の、あそこに道路を通すためにこの十五、六本を切ってしまうということ。そこで、地元の有志は、あれを切られたのでは景観を損ずるし、山の中の一番大きい杉だからもったいないというので反対している。社務所も反対している。東照宮では杉の木が切られることは反対だといって、この杉が切られることには反対だという書いたものを、その杉の木に、自分の境内につけて、通る人に訴えた。そうしたら栃木県では、広告物条例違反だといってこの撤去命令を出してきた。これは労働運動に対する弾圧ではないけれども、一つの弾圧行為である。切られるということは困るからといって、その杉の木に、切られそうになっているから助けてくれと書いたら、広告物条例違反だ、撤去せい、こういうことが政治としてやられているんですね。そういう事実を考えてみれば、やはり建設大臣なり総理大臣が選定権を持つというようなことになれば、そういう事態というのは、もっと至るところで政治的配慮とかいったことから起こらざるを得ない。このことがやはりこの法案の非常に大きな弱点になっている、そう思うんですが、その点はどうですか。
  94. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) お説のごときこともあろうかと存じますので、将来の問題として十分に検討して、改正の際に考えていきたいというふうに思います。
  95. 春日正一

    ○春日正一君 そうして、さっきも文部大臣に言いましたけれども、特に文化財保護ということに対して責任を持つ、また、一番深い関係のある文部省とか、文化財保護委員会ではなくして、建設省指定権を与えるということは、非常にこれは問題だと思います。といいますのは、建設省というのは、仕事の性質からいって現状を破壊する仕事を推進している役所です、建設をどんどん進めていくということは、一方では現状を破壊することを推進している役所です。そうして現在京都奈良鎌倉だけではなく、至るところで文化財環境が、新しい土木建築事業によってどんどん破壊されていっておる。それをつかさどっているし、それをやっていく役所ですよ、そのほうの責任を主として持っておるそういう役所ですよ。ですから、この建設大臣指定権を与えるということは、先ほど私が中村文部大臣にも言ったように、文化財保護ということが、保護の仕事が文化財を破壊していく仕事に従属させられてしまう。保護が破壊に従属させられる、こういう結果にならざるを得ない。論理的に言っても、実際的に言ってもそうならざるを得ない。そうして文化財保護の立場からではなくて、むしろ建設省の立場、そういうものからいえば、先ほどの御説明にもちょいちょい片鱗が感じられるんでございますけれども、結局歴史的な文化財、その風土保護する、そうしてこれをわれわれが受け継いで後代に伝えていくという立場からではなくて、結局観光資源の開発というような観点が主になる。役所の性質からそうならざるを得ない、そういう危険が十分あると思うんですよ。当然そこにさまざまな利権やいろいろなものがからみ合って、ここの法律で最初に規定されているような目的に反するような結果になるおそれがある。もちろん私がこんなことを言えば、提案者の皆さんや大臣その他は、そんな利権や汚職にわれわれが犯されるものかと、それは厳正公平にやっていくと言うけれども、それは皆さんはそうだと思うし、私はここで皆さんを疑ってそうだと言うわけではないけれども、しかし過去の歴史的な事実、現在起こっているいろいろなそういう問題の関係というものに、必ずそういう利権の関係とか——日光の杉の問題でもそうだけれども、からんでくる。観光会社が事業をやろうとするために、役所に政治的な圧力をかけてそういう決定をさせる、いろいろなものがからんでくる。それは皆さんの良心を疑うとか何とかいう問題ではなく、客観的な事実の問題として私は言っているんですけれども、そういうことにならざるを得ないんではないか。ですからこの点に一番大きな弱点がある。つまり破壊していく、こわしていくそのものに保護をしろということは、結局破壊していく立場から、あまりひどくならぬように何とかやっていこうという程度になってしまう。だから私は保護は破壊に従属させられると思うんですけれども、保護するという立場からいえば、文部省なり文化財保護委員会なりが、本来こういうものに対して責任を持つし、一番深い研究もしておられるこの役所が責任をもってやらなければならぬし、法律としていえば、文化財保護委員会がどうするという法律にしてみたところで、日本法律なんだから、建設大臣からやはり拘束されるんだし、だからそういう意味からいえば、こういう規定を持たせれば、結局そういうことになるんじゃないか。たとえばこういう問題が至るところにあるんですね、さっきも私ちょっと言いましたけれども、田中議員のおられる京都ででも、あの石寺だとか苔寺だとかいって、寺そのものは——石のあるところはちゃんと保護されているけれども、まわりへバスをどんどんつけて、まわりをきわめて殺風景なものにしている。あるいは日光のさっきの話ですけれども、行ってみると、あそこの陽明門のところに入っていくあの道路へ、遊覧バスをずっと中まで入れろというようなことが問題になっているんですね。それは観光会社とすれば都合はいいけれども、バスを入れたら、おそらくあの杉並木の——杉は一番自動車の排気ガスに弱いから、あるいは私の家のまわりの杉は全部枯れてしまった。あそこの杉並木がバスをどんどん入れるようになったら弱ってくる。しかし観光会社の立場からいえば、そういうことが現に起こっておる。こういう場合建設省関係からいえば、近くまでやれば便利であろうというようなことで、歴史的な風土、条件、環境というものをこわしていくというようなことにならざるを得ない実例が幾らでもあるんですね。だからそういう点でそういうことになるおそれがないかどうか、この点が一番問題だと私ら思っているんですがね。
  96. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 先生お願いを申し上げたいのでございますが、どうかひとつこの法律のよって立っておりますたてまえをどうぞ御信用をいただきたい。これは建設省がかってに地域指定をして、かってに保存計画を立てて、かってに保存計画の実現をするという事情ではないわけでございます。特にそれがために内閣総理大臣計画の責任を負わしておるわけでございます。計画審議会の審議を経まして、内閣総理大臣がこれをきめるという立場でございます。そういう計画がきまりますには、建設の御意見も聞かなければならぬ、また文化財保護委員当局意見も聞かなければならぬ、ときによっては罰則その他の点については法務省の意見も聞かねばならぬ、また、金が出るか出ないかという点については大蔵省意見を聞かねばならぬ。そういう意見を十分聴取いたしました結果、特に専門委員の調査に重点を置いて基礎調査をなさしめたる上、審議会がこれを審議決定するということで、その責任はあくまでも総理府にある。審議会がこれをきめるわけでございます。きめましたものを建設におろしまして、建設がこれを実行するということになるんで、建設オンリーでこの工事がやれるわけでも、実施ができるわけでもないと、こういうたてまえに特に力を入れて立案をいたしておりますので、いろいろ建設に対しておしかりがあるようでございますが、どうかこの法案の立っておりますたてまえに御信用をいただきまして、極力さようなことのないように、よく議員としても今後は監視もしていきたい。おことばのごときことを忘れないように、よく頭に置きまして、その実施の状況を見ていきたいと、こういうふうに考えております。
  97. 中村順造

    委員長中村順造君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 中村順造

    委員長中村順造君) 速記をつけて。
  99. 春日正一

    ○春日正一君 それで、いまあなたのほうからこの法案のもって立つ立場において御審議願いたいというふうに言われたんですけれども、私もそこを一番中心にしているんで、いろいろこまかい——先ほどほかの委員からも出されたような買収の問題とか、具体的な問題になればあると思うんですけれども、そういう点を省いて、一番問題になる大筋の点だけお聞きしているわけですけれども、そういう意味からいうと、法のもって立つたてまえに立っての御審議ということになると、私はこう考えているんですよ。現在、全国至るところで民族文化遺産、その環境が先ほど言ったように急速に破壊されている。こういうときにこれを破壊から守り、保存していこうというなら、やはりいままでの法でいろいろ保護できなかったという問題は、もちろんあるわけですけれども、たてまえとしては文化財の範囲というものを今後新たに発見するものにまで広げる、同時に、文化財というものをまあその自然環境と不可分なものとしてともに保護するというような原則をはっきり確立した上で、こういう立場から、先ほど田中議員のほうからも御説明があったりしたような、いままでの文化財保護法の持っておる欠陥、つまりそれをこの法案で補強しようとして出ておるわけですし、その趣旨そのものには、われわれ確かに必要なものがあると思うけれども、しかしそういうことにすれば、先ほと言ったように、じゃ京都奈良とそこ以外のものはどうでもいいのか、もっと現実にほかにももうこわされていくものがあるんじゃないかというような問題が出てくる。そういう意味でこの法案の指摘しているような欠陥の是正というようなものまで含めて文化財保護法改正する、そして文化財保護法の中にこの法案の出されているようないろいろな処置もとらせるし、予算の裏づけもつけるというようなものにする。そうしてそれは当然文化財保護委員会あるいは政府が責任を持ってやるわけですけれども、その場合にそこの住民と専門家の要求ですね、これがやはり反映されて生かされていかなきゃならぬ。文化財保護で一番大事で痛切に感じることは、いろいろ法律があったり、政府施策があったりしても、そこに住んでいる住民がほんとうにみんなで守ろう、協力しようというものの裏づけがなければ、やはり十分な効果は期待できない。そういう意味では、いま私が言ったように住民とあるいは郷土史家、専門家のような人たち意見というものが直接反映されて、しかもそれが拘束力を持つような民主的な保障というようなものがなければ、結局ザル法にまたなってしまうおそれがある。一番言いたいことは、そうしてあなた方に最後にだめを押しておきたいのは、三古都というものを特別抜き出すのじゃなくて、あるいは建設大臣権限を持つというような形じゃなくて、本来やはり文部省なり、文化財保護委員会なり、それが持つ。その法律に欠陥があってこの事態が起きているのであるから、京都奈良も含めて全体が保護されるように文化財保護法そのものを改正強化して、さしあたって実施していく上で、京都奈良これらの地域が一番緊急だから、この実施の順序としてはこれを先にやるのだというような形をとれないものかどうか、そこの点ですね。
  100. 田中伊三次

    衆議院議員田中伊三次君) 大体大まかに申し上げまして、先ほどから述べておりますようなそういう心がまえで、とりあえずこの三古都を中心としてこれを実施していきたい、将来の改正ということに大いに期待を持っていきたい、こういうことでございます。
  101. 春日正一

    ○春日正一君 その趣旨はわかるんですがね。やはり私が指摘したように、この事態を局部的に見れば、何かいいみたいだけれども、全体の文化財保護という立場から見れば、非常にやはり有害なものが出てくるのじゃないかという私の感想を申し上げて質問を終わります。
  102. 中村順造

    委員長中村順造君) ほかに御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 中村順造

    委員長中村順造君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  104. 春日正一

    ○春日正一君 私いまいろいろ御質問で申し上げたように、第一に、この法律京都奈良あるいは鎌倉というような、古都の特定の史跡環境保存するという面では、一定の積極的な意味を持っているように見えますけれども、日本文化財あるいは史跡の全体の保存という点から考えてみれば、このことによってかえっていままでの文化財保護法その他によっても十分保護されてこなかったけれども、これがさらに破壊のままにまかされてしまう。そういう点が一番重大な問題としてあると思うし、それから具体的な内容の問題にしても、総理大臣から建設大臣が最終的にはこの指定権限を持つというようなことになって、十分にこの住民なり、専門家なりの意見が反映され、それが保障されていくというようなことになっていかない欠陥があるし、特に建設大臣がこの特別指定保存地区ですか、地区指定権を持つということによって、保護というものが破壊に従属されるような結果になって、部分的に見れば、非常にいいところがあるように見えるけれども、全体としては、かえって有害な結果を生むおそれがあるし、そういう欠陥をなくすためには、むしろこの法案で出されているような内容まで含めて文化財保護法を徹底的に改正して、それによって全国的な保護のワクをかけた上で京都奈良鎌倉のような緊急なところをやはりやっていくというようにすべきであって、こういう特別に別でやるべきじゃない。そういう立場から反対いたします。
  105. 稲浦鹿藏

    稲浦鹿藏君 私は賛成の討論をいたします。  京都奈良鎌倉等、この地域にはわが国の高い歴史文化を理解する上に欠くことのできない貴重な由緒の深い古蹟が豊富に点在しております。で、その保護環境保全には特に細心の注意が必要であり、もしこれをそのままにすれば、取り返しのつかないことになるものと思います。しかるに近時、宅地ブームによって、心なき者によって宅地の造成、建物建設等が進められ、これらの貴重な財宝が都市化のおそれが多分に起こってまいりました。まことに憂慮にたえない危険な状態に直面しております。したがって、これを阻止するためには、強力な立法をしてこれを阻止するほかはないと思います。それがために、私は、この法律には賛成するものでございます。
  106. 中村順造

    委員長中村順造君) 他に御意見もないようでございますので、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 中村順造

    委員長中村順造君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  古都における歴史的風土保存に関する特別措置法案を問題にいたします。本案に賛成の方は、挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  108. 中村順造

    委員長中村順造君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 中村順造

    委員長中村順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  110. 中村順造

    委員長中村順造君) 次に、建設事業並びに建設計画に関する調査として、高速自動車国道建設計画に関する件、及び関門国道橋の架設に関する件を一指して議題といたします。質疑のおありの方は、御発言を願います。小酒井君。
  111. 小酒井義男

    小酒井義男君 重点的にお尋ねしますが、まず最初に、建設省が関門架橋の発表をされたようですが、その件について、工事の着工、使用開始の時期、あるいはその年次計画といいますか、そういう点についてひとつ御説明を願いたい。
  112. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 技術的な問題等につきましては、道路局長が見えておりますから、必要があれば説明いたさせますが、関門国道の、御承知のように現在隧道でやっておりますが、いまの交通量の想定からいきますと、四十七年ごろになりますとちょっと許容量をオーバーする。これはまあ将来の見通しでありますから、その点、変更があるかもしれませんが、そういうふうに考えられますので、先年から、もう一本国道を通す必要がある、こういうことで調査を進めておったわけでございます。問題は、あの部分を従来のようにやはり隧道方式によるべきか、あるいは海峡に橋をかけてやるのが適当であるか、あるいはまた防潮堤方式でやろうか、いろんな技術的な問題があります。そういう点をあわせて今日まで検討をいたしておったのでありますが、技術的には、あるいはまた建設経費等からいって、架橋、長大橋をかけるのが最適である、かような結論を最近に至りまして出しておるわけであります。  そこで、いまお話しのように、これはいつやるんだというお話でありますが、私どもといたしましては、いまの、現隧道方式の国道が、先ほど申し上げましたような事情でありますから、できるだけその地点に支障のないように建設すべきである。かような構想を持っておりますが、けれども御承知のように、現行の四兆一千億の道路計画では遂行できません。したがって私どもとしては、少なくとも四十二年度から、現行道路計画を、四年目でありますが改定しなければならぬ、こういう構想で全国の道路網について検討を加えておりますが、その道路五カ年計画の改定の際に、これをその爼上にのせたい。   〔委員長退席、理事稲浦鹿藏君着席〕 したがって、できるだけいま申し上げましたような、交通事情に支障を来たさない次元でこれを解決をはかりたい、かように考えておりますが、いま何年度に着工をするということは明言ができないことでございます。
  113. 小酒井義男

    小酒井義男君 来年度の予算が、七千億といわれておる建設公債の発行をして、しかも道路住宅等を重点に施策として政府がやっていこうというふうに聞いておるのですが、前にもちょっと触れたのですけれども、目的公債ということであれば、これは従来の予算に新しく発行する公債の額というものがプラスをされなければ、ほんとうの意味建設公債だということが言えぬと思うのです。そういうことになると、もう一兆三千億円ぐらいの予算が四十一年度には建設財源として使われなければならぬという理屈になるわけなんですね。これはいろいろ厳格にそういうことも言えぬ、数字的には予算総額から公債発行額を引いて積算したらどうなるかというような問題が出ると思うのですが、どちらにしても政府がそういう建設関係を重点にやろうという方針であり、また今日のわが国の経済事情からいっても、道路や住宅にやはり力を入れることが、必要な時期にきておると思うのです。そういう点でいまお話になったように、現在の道路計画を四十二年度に改定をしていこうという準備を進められるとしますと、そうするとやはり四十一年度にはいろいろ工事計画なり、調査なりが積極的に進められていく必要ができてくるのじゃないかと思うのです。そういう点で高速自動車道の——たくさんありますね、いろいろ各地にできたですね。ああいうのをこれからどういうふうにして調査なり、着工なり、費用回収を早めるかどうかということについて、建設省として具体的な検討をされておると思うのですが、その点はどうなんですか。
  114. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いまのところ、関門、先ほど私、橋と申し上げましたが、これから先に申し上げますけれども、これはさっき申し上げましたように、今日までの調査で架橋方式でやるという結論を出しております。その架橋の地点の地質の調査とか、もう少し調査をする部分がございますが、四十一年度ではいま要求しておりますのは三千五百万ぐらいでありますが、それで終わりたい。そこで四十二年度から始める改定五カ年計画に入れて、早急に先ほど申し上げましたように、交通に支障を来たさないようにいたしたい。この点はこういう考え方でございます。  ほかの一般的な高速道についてはどうだというお話でありますが、これはいまの考えといたしましては、御承知の縦貫自動車、これはこまかく言いますと、東北あるいは中国、九州、北陸、そのほかに、いわゆる中央道の富士吉田から小牧に至るあれが残っておるわけでありますが、こういう部分が、年度といたしましては今年度から着工ということにいたしておるわけであります。少なくとも、北陸の部分の富山−新潟間はややおくれるかもしれません。これは地質その他の問題で非常に問題点がありますので、もう少し検討を要するものがございますが、そのほかの区間について、あわせて、おそくとも十年以内には完成すべきである、こういう構想で進めたいと思っております。  それと同時に、御承知のとおりに、現在すべて、もともと議員立法でできておりますが、各地区に横断的な道路網があります。そのほかに北海道、それから四国、こういうものもありますが、現在法律できめられておる路線の総延長は約五千キロになっております。将来を考えまして、この際、将来の日本の道路を中心とする構造はどうあるべきかということを従来から検討いたしておりますが、私どものいまの考えといたしましては、今通常国会に全国の高速道路網をこの際確定をしておきたい、こういうことで、合わせますと七千キロ、あるいは、それをオーバーするかもしれませんが、そのくらいの想定で全国の道路網をきめて、将来の日本の国土の道路を中心とした構造を明らかにしておきたい。これによって諸施策を合わせていくべきじゃなかろうか、かようにに考えております。といいますのは、これは余談でありますけれども、御承知のように、いろいろな経済のひずみ、あるいは大都市、あるいは後進地域各種のアンバランスがわが国にはございますが、これはいろいろな条件が、要素が重なっておると思いますけれども、私は一番の大きな要素は、やはり道路交通網の偏差にあるのじゃないか、こういうことを考えております。といいますのは、よく調べてみますと、現在のいわゆる幹線的な道路、一級国道、あるいは二級国道、あるいは一般道にしても、幹線的な道路網というものは一体いつの時代にできたのか、これを考えてみますと、その後に、ある程度はできておりますけれども、明治維新までに、言いかえると、戦国時代から徳川時代まで日本統一の際に、天下統一といいましょうか、その際にそういう構想で道路網ができておるように思います。現在やっておりますのは、あるいは幅を広げたり、舗装したり、あるいはカーブを直したり、これを中心に整備をしておるわけでありますが、おおむね、これがあと十年いたしますと、相当な程度に整備ができる。一体、現在の道路網は、人口三千万程度のときの民族の活動の動脈になっておる。いま御承知のとおり三倍以上、近く一億になろうとする人口でありますから、その動脈でこれだけの人口の活動を期待するところに今日の無理があるということを私は考えているのであります。夢みたいな話を申し上げて恐縮でありますが、今後五十年あるいは百年先のことはわかりませんけれども、この時代に新しい道路網というものをわれわれはつくって、そうして、それを逐次整備していくということにしないと、今日のいろいろな混乱というものは避けられない。言いかえますと、わが国の国全体の姿というものは、   〔理事稲浦鹿藏君退席、委員長着席〕 そういう意味において半身不随の状態に今日なりつつある、こういう考え方をしているわけでありますが、けれども、それは一朝にできる仕事ではありませんので、縦貫自動車道路をおそくも十年以内に完成する、それにつながるある程度の必要な高速道路もあわせて完成すべきである、こういう考え方道路計画を立てていく、こういう考え方であります。
  115. 小酒井義男

    小酒井義男君 道路局長にお尋ねするほうがいいと思うのですが、三十九年度から調査を始めているのがありますね。たとえば四国あるいは北海道、関越なんというものは三十九年度から始めているのですが、四十年度以内に調査を終わるのですか。
  116. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) それぞれの路線で調査の進捗が若干違っておりまして、必ずしも全部終わるとは申し上げられませんけれども、お尋ねの点は、たぶん縦貫道法に載っております別表、それを決定するときにはさらに、従来の現行法ですと、予定路線の法律を出さなければならぬということになっております。それに必要な調査は大体本年度の調査で概略終わるのではないか、かように考えております。ただ、いよいよ、続きまして詳細な調査を続けておりますから、来年度も今年度に続きまして、各路線とも約三億ぐらいの調査を続ける予定でございます。今年度は二億でやっております。調査は各路線とも継続する、こういう考えであります。
  117. 小酒井義男

    小酒井義男君 続いてお尋ねしますが、そのほかに九州、中国というのは、明年度から新しく調査を始めることになるわけですね。それから東海北陸自動車道というのは、これは調査を終わるのはいつごろの予定です。
  118. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 九州、中国はかなり調査は進んでおります。大体計画を決定できる調査が、本年の調査で終わると思います。東海北陸は一番おくれておりまして、実はまだ始まったばかりでございます。他の路線に比べまして一番おくれているかと思います。そういうような状況でございまして、まあ大体地形的に問題なければ、あと来年の半ばぐらいで予定路線を出せる段階の調査は終わると、かように考えております。
  119. 小酒井義男

    小酒井義男君 調査が長引くといいますか、年数がかかるのは、これは調査費の関係ですか、そうじゃない技術的な関係が多いのですか。
  120. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 必ずしも調査費ではございません。地形によりまして、非常にある経過地点を技術的に通ることがむずかしいかどうかということの判定が第一次的でございます。それがきまりますと、予定路線を出すだけの調査は一応終わると思います。ただ、それ以上続いて調査を必要といたしますのは、たとえばトンネルにいたしますと、地質の調査をしたり、あるいは橋梁等につきましても、概略の設計調査をする、そういうようなことで、さらに調査費が要るわけでございますから、段階的に、計画に持ってまいります前に基本計画をきめる、あるいは整備計画をきめる各種の法律上の手続がございます。その段階に従いまして調査費はさらに詳細に要るわけでございます。ただいま申し上げております調査は、一応従来から出しております予定路線を出すための調査というものを、第一次調査として申し上げておりますので、そういった調査に現在手をつけておりますのは、本年度並びに来年の調査も、大体中ごろで見当がつくだろうと思います。しかし、引き続きまして、ただいま申し上げましたように、詳細な技術調査が継続して行なわれる、こういう手はずになっております。
  121. 中村順造

    委員長中村順造君) 小酒井君に申し上げますが、建設大臣、御都合で退席したいということでありますから、質疑があれば、大臣のほうを先に……。
  122. 小酒井義男

    小酒井義男君 けっこうです。具体的なことですから、局長にお尋ねしますから。  調査を終わって着工する順序といいますか、これはもう非常にむずかしい問題だと思うのですが、全路線について着工をして進めて、その道路の重要な部分だけを優先的に開通させるというような方法と、そうでなしに、幾つかの高速道路のうちの重要だと思うものから優先的に着工をして使用開始をしていくという方式をとるのか、建設省としては、従来はどういうことをやっておるのですか。
  123. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 従来といいますと、ちょっと、非常にそれぞれの特別な方針を立てましてやってまいりましたから、ただいま考えておる問題について申し上げたほうがわかりいいかと思います。先ほど大臣が申し上げましたように、一応縦貫道路五路線十カ年で完成したいという一つの方針を出しております。それに従いますと、青森から鹿児島に至る四道並びに北陸道、これが基本になるわけでございますが、これが十カ年に完成するという目標で一つの方針を立てておりますので、それらを十年間にどういう手はずで進めていくかということが問題になるわけでございます。そこで、私どもは、ある路線、たとえば東北道を優先してやるという考え方でなくて、全体としてやはり十年間に仕上げますためには、もちろん緊急を要するところもございますが、その緊急度と全体として十年目に全部ができ上がるということを条件といたしまして、具体的には現地、それぞれ地元とのいろいろ交渉関係もございますが、そういう問題が片づきました区間、それも十キロとか二十キロとかの短い区間ではありません。まとまった区間で話がつきました区間から、具体的に整備計画を立てまして、それを実施に移していく、かように考えております。したがいまして、この五本のものにつきましては、特定の路線を優先するという考え方でなくて、各路線につきまして重点区間から進めたい。つまり、どの路線という主義ではなくて、むしろ各線、各路線を通じた区間という考え方で、できるものから着工していきたいという考え方でございます。
  124. 小酒井義男

    小酒井義男君 それで具体的な考え方がわかったのですが、どうなのですか。いままでより工事期間を短縮するというような可能性はないのですか。工事期間を短縮してやろうという考え方はないのですか。それはやろうとすれば、予算があればやれるということなのか。そうではなしに、工事がそれだけ困難だということなのか、どちらなのか。
  125. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) まあ私どもの最近の技術上の経験によりますと、工事そのものに要する期間というのは、最小二年から三年と考えております。それはたとえば百キロなら百キロという区間をとりまして、それを仕上げるための純工事期間というのは二年ないし三年というふうに考えております。そこに非常にトンネルなり他の構造物でむずかしいものがございまして、最後的に三年かかるものもあるでございましょうが、一般的な条件でございますと、大体二年半ぐらいでできるのでございます。問題は、従来六年も七年もかかったのは、その前段におきます用地関係の折衝、その地元との了解に時間がかかっております。これは具体的には設計協議という形で地元の各市町村と話をしておるわけでございます。どの地点を通ってくれとか、この個所は高架で通ってくれとか、いろいろこまかい御意見がございまして、それの調整のために、まあ準備期間として二、三年かかるということでございまして、工事そのものは非常に、いまの技術でございますと、早くやる方法が実際行なわれております。そういうことで、むしろ一番私どもで苦労しておりますのは、その前段階です。したがいまして、御質問に対しては、全体として早くする方法といいますのは、前半の用地取得の折衝期間というものをいかにして短くするかということであろうかと思います。それらにつきましては、今回着工いたします五道につきましては、できるだけ地元の御協力を仰ぎたいということで、この高速道路のいろいろ性格、趣旨、目的等を御理解願いまして、一日も早くできるような御協力を仰ぐこういうような態勢をとっていきたい。そういうことによりまして、一日も早く完成するというふうに持っていきたいと思っております。
  126. 小酒井義男

    小酒井義男君 最後に、先ほどちょっと答えていただいた中に入っておりますが、九州、中国の横断道路は、これは明年度から調査を始めるわけですね、予定路線の調査は。そうでないですか。
  127. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 九州、中国の横断道は前国会で通りましたので、予算的には来年度から調査させていただきたいと思っております。
  128. 小酒井義男

    小酒井義男君 そうすると、これを含めて来年度中には予定路線の調査だけは全部終わるという方針ですか。
  129. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 私、ちょっと御質問に対して誤解しておりました。九州、中国の縦貫道と思っておりましたが、横断道は来年から調査でございますので、来年中には結論が出ないかと思います。
  130. 小酒井義男

    小酒井義男君 それから東海北陸道は来年結論が出るのですか。
  131. 尾之内由紀夫

    政府委員(尾之内由紀夫君) 東海北陸道は、先ほど申しましたように、予定路線をきめる段階です。調査も来年の前半ぐらいでは終わるかと思っております。
  132. 中村順造

    委員長中村順造君) ほかに御発言はございませんか。——別に御発言もなければ、本件に関しましては、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  133. 中村順造

    委員長中村順造君) 次に、北海道開発庁の事業計画に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。
  134. 竹田現照

    ○竹田現照君 開発庁にお伺いをいたしますが、四十一年度の予算の内示の前なので、なかなかお答えがしにくいのではないかと思いますが、そのことを承知の上であえてお伺いするわけですが、御承知のように、四十年度の北海道の開発予算は総額九百四十五億に及ぶ大型予算でありますが、これは政府が前向きに北海道開発に取り組む気がまえを見せたものと認めるにやぶさかではありませんが、そういう意味では、後進性の打破を至上命令とする北海道の開発予算がふえるということは非常に喜ぶべきことだと思います。そこで、四十一年度の予算要求は、開発庁は今年度の約三割増で予備折衝を行なっておられるようですが、そこで二、三の点について簡単にお伺いいたしますが、この開発予算の膨張によって必然的に生ずる地方団体の財政負担をどう処理していかれようとしているのか、この点についてまず最初にお伺いいたしたい。
  135. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) 最近の赤字地方財政の立場からのいま御質問の点は、大きな問題があると思います。地元負担という点につきましては、私ども現地に参りましても、関係市町村からの強い要請を受けております。自治省あるいは大蔵省と軽減方についてはいろいろ強く折衝中でございます。具体的には政府委員から説明させたいと思います。
  136. 小熊清

    政府委員(小熊清君) 開発事業費がふえるに従いまして当然地方負担もふえてくるわけでございます。たとえば昭和四十年度、本年度の開発事業費の増加に伴いまして、前年度に対して地方負担だけで三十六億ばかり増加を見せております。全体の傾向といたしまして、やはり市町村ないしは道のほうで、従来国の直轄事業でありました分野がだんだん進むにつれまして、道の仕事、市町村の仕事というものに対して、これをどんどん伸ばす、それに対して、国の負担金なり補助金というものの要請が非常に強いわけであります。全体としての地方負担の傾向はやはり増加する傾向にあると思います。これに対して開発庁といたしましては、これが地方の消化にそごを来たさないように、予算の要求の前に、あらかじめ道なり関係市町村と十分打ち合わせを遂げるということはもちろんですが、さらに、自治省等に対しまして、交付税の面等でできる限り北海道の特殊な事情を盛り込んでもらうというようなことをお願いいたしております。また、これは北海道だけではございませんけれども、大蔵省方面のいわゆる単価が地方の現状に合わないという点が見受けられるものにつきましては、その是正方を予算の際に強く要望するといったようなことをいたしておるわけでございます。何とかして道内市町村負担に耐える限度で開発を伸ばしていきたいというふうには考えております。
  137. 竹田現照

    ○竹田現照君 四十年度の開発事業の地元負担額というのは、いまお答えがありました、前年度に対しまして今年度三十六億の増加と言われましたけれども、総体でどのくらいになっておるのですか。
  138. 小熊清

    政府委員(小熊清君) 四十年度開発事業費の総額が九百四十五億でございますが、その中で、地方負担額は二百十一億になっております。この二百十一億という地方負担額が、三十九年度の地方負担額に対しまして三十六億ふえると、こういうことでございます。
  139. 竹田現照

    ○竹田現照君 政府の開発事業に関連して、地方団体単独で行なう事業も当然ふえてくるわけですが、そのために一般行政費が非常に圧迫をされてきておる。これは九月ですか、決算委員として北海道を回りましたときも、道庁はじめ各市町村で同じようなことを陳情されたのですけれども、これに対して、開発庁としての対策はどういうことをお考えになっておりますか。
  140. 小熊清

    政府委員(小熊清君) これは先生よく御承知と思いますが、北海道の開発は本州等と違いましてまあ単独の開発法というものを設けて、できるだけ一つの国策と申しましょうか、国の手でその根幹的な部分を開発を進めていくということで、ここ十数年やっておるわけでございます。したがいまして、地元の方のほうでもまだまだ国の手でやってもらいたい事業が相当あるというふうなお話を始終伺っているわけでございます。もちろん、地元の自治体といたしましては、単独の事業を進めるということは自治の本旨と存じます。私どもといたしましては、市町村等がその予算の範囲内で国の補助を伴う事業、それから自治体の単独の事業というものを、バランスをとりながらやっていただくということは一番望ましいと思っておりますが、開発庁の立場としては、一応自治体のほうから御要望のありました国の補助事業というものについていろいろと検討し、また、推進をいたしたいと思っておるわけでございます。
  141. 竹田現照

    ○竹田現照君 長官、北海道開発の根本的な問題なんですけれども、年々この開発予算が大幅にふえて、いまずっと質問してきたように、ただ、北海道の地元の受け入れ態勢がまだまだ十分ではないと、こう思うのです。公共事業による先行投資に産業振興が伴っていかないという結果を生じてくるのではないか。これはやっぱり北海道の開発政策のかなえの軽重を問われることになると思うのですけれども、長官として、この点についてどういうふうにお考えになられるのですか。
  142. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) いま政府委員からもお答えがありましたが、実は大蔵省の意向としては、地元負担が依然として本州に比べてむしろ恵まれ過ぎじゃないかというような主張すら、昨年あたり出ました。もってのほかでございまして、北海道自体の開発の特殊性から見て、もっと国が本腰を入れて考えるべきだという考え方で、大蔵省を説得している最中でございます。  御指摘の先行問題でございますが、北海道自体のいわば民族的な自己資本の蓄積がまだ浅い、少ない。いわば底の浅いというか、そこで、第一次産業につきましては、われわれといたしましても、相当計画的に基盤を養成し、規模も拡大できますが、第二次産業については、なかなか困難な事情がたくさんございまして、この点についても、あらゆる手を打ちまして、第一次、第二次並行しながら開発に持ってまいりたいと、いま鋭意苦心をしている最中でございます。
  143. 竹田現照

    ○竹田現照君 その点で努力をしていただきたいと思いますが、非常に事務的な面で恐縮ですが、一点だけお伺いしますが、長官は行管の長官も兼ねておられるので、開発庁だけの問題について配慮するということは非常につらい立場におられると思うのですが、実は、ことしの開発予算がきまりましたときに、新聞の漫画に、「苗木はふえたが人手が不足」ということが出ておりました。それで、開発の予算は、これ去年は、人間の面は約九百二十一名に対して八十一名の増、ところが、実際は、事業費の負担額というのは、長官御承知のように、昭和二十六年を一〇〇として、四十年は三一〇、ところが、定員は一〇〇として二三〇、こういうようなことで、技術者の不足と相まって、予算の未消化のおそれが多分にあると思うのでありますが、こういう点について、開発庁としてはどういうふうにお考えになりますか。
  144. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) 開発庁が創設されました昭和二十七年、御承知のとおり、当時はスタッフが四千人、予算が百億という規模で出発したわけでございますが、今日では予算が約十倍になりまして、約一千億近い。しかし、一方、人員のほうは、定員のほうは三倍にしかなっていない、一万二千というような、こういうようなアンバランスな点も確かにございまして、特に現場的な開発の関係面では、御指摘のような人手不足という点が確かにあろうと思うわけであります。そこで、毎年予算の増加に伴います定員の増加も行政管理庁に要求しておるわけでございますが、実績から見ますと、三十九年度が四十一名、四十年度が八十名という低い線で一応要求が満たされた。本年度は新しいここに予算の執行にあたりまして、事務量も相当膨大にふえる見込みでございます。第二期開発計画のいわば締めくくりの年でございますから、そういう人手不足という点では、われわれは配置転換でありますとか、あるいは計画の樹立の場合、あるいはその他につきまして、いろいろくふうはいたしておりますが、どうしても相当の定員をふやさないとむずかしい面がだいぶ出ております。現在新規要求として四百五十三名を要求いたしておるわけでございます。ただ、大体のいままでの定員の増加に対します査定は、御案内のとおり、大体三割程度というのが基準というように相なっておりますが、北海道の開発という特殊性から見て、行政管理庁に対しまして実情をよく説明いたしまして、いろいろ要望をいたしているわけでございます。
  145. 竹田現照

    ○竹田現照君 それで、閣議決定ですか、何か定員の補充を凍結をしておりますね。これを金の面でも政府が、冒頭申し上げましたように、積極的に北海道開発に取り組んでいるわけであるけれども、それを動かす人の面で制約をしておったのでは、これは話にならないのですけれども、この開発行政の面から、この点は解除する、凍結を解除するという考え方は、行管としてはないんですか。
  146. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) 昨年の九月に閣議決定が行なわれまして、欠員に対する不補充の原則が決定を見たことは御承知のとおりであります。ただ、これは来年の三月末日までの間、一応有効となっております。現在、行政管理庁の新しく設けられました行政監理委員会では、最近の財政状況その他を勘案いたしまして、やはり昨年九月の閣議決定、いわゆる欠員の不補充という原則はもう少し延ばさなければいかぬじゃないかという議論が相当強いことも事実でございます。そこで、欠員の不補充という問題は、委員会の大体の考え方はそういう状況でございますが、御案内のとおり、不補充と申しましても、内訳を見ますると、相当弾力性を持たしてある。一般の公務員、全部で百十六万でありますが、一般のは五割しか認めない。しかし、現場に従事する者、あるいは防衛関係は十割認め、その中間の研究職の人であるとか、あるいは公安関係、これは九割くらい認めておる。いわば段階的に、内容的に取り扱いは弾力性を持たしております。で、北海道につきましては、わりあいに現場仕事が多いわけでありますから、この点は、先ほど申し上げました定員増加とにらみ合わせまして、実際の開発の仕事に支障を来たさないように、なるべく弾力性を持った面で緩和してまいりたい、こう考えておるわけであります。
  147. 竹田現照

    ○竹田現照君 表面上は政府考え方は定員の下補充も凍結だ、こう言っておりますが、私の調べたところによると、開発庁で非常勤職員というのは、四十年の十一月現在で約五千三百名おるのですね。そのうち、十カ月未満が三千百。十カ月以上というのが二千百人からおるのですね。しかも、その中にトラック、ダンプ、あるいは建設機械、こういったようなものを——とりわけ、こういうものは、冬といえども、除雪その他でどうしても必要だという運転手、あるいはまた、そういう技術者、こういう者がかなりたくさんいるんですね。これは、しかも、一年で切りかえ切りかえということでやっていくと、事実上定員化していいような者が相当の数いる。ところが、それがこういう凍結のようなことで、こういう便法で非常勤職員として雇用している。こういう状態は、やはり私は、正常な形ではないと思うのです。事実、雇われる者もたいへんだろうし、やっぱり技術者なんというものは、本来開発のほうにどうしても必要である者がなかなか集まらない、こういう結果にもなると思うのですけれども、こういう開発庁の現行の職員の半分近い非常勤を、もう常態として雇わなければ開発が進まない、こういう現状について、どういうふうに処置をされようとしているのか。
  148. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) 確かに、この常勤と非常勤の者は、これは開発庁だけではなく、各省もあるようであります。特に北海道については、そういう問題は、毎年実は議論として繰り返されておる。五月から十一月の間で見ましても、ピークでは四、五千人いる。しかし、これは数から申しましても、また、内容的に見ましても、絶えず変動いたしておりますことは御承知のとおりでございます。これをどう扱うか、常勤化するか、いろいろの問題については、まだまだいろいろな問題点がある。  なお、もう少し具体的な詳しい点は、政府委員から説明させます。
  149. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) いま御指摘の点でございますが、実は政府といたしましては、昭和三十六年の二月二十八日に、閣議決定で、定員外職員の常勤化防止という政策を決定いたしておるわけであります。それに引き続きまして、御承知と思いますけれども、昭和三十七年の一月十九日に、当時所在の者を行管が全部調査をいたしまして、定員繰り入れという措置を大々的にいたしまして、この三十七年の一月十九日の閣議決定によりまして、一応そういう定員外職員の定員化の問題を打ち切ったことになっておるわけでございます。しかし、御指摘のように、現場におきましてはいろいろな情勢がありまして、定員外職員給与によって相当な要員がかかえられておるかと思いますけれども、しかし、これはやはり日々雇用なり、臨時的な要素としてでありまして、これで定員に繰り入れる、定員内の人間とほとんど選ばぬ業種に当たっておるではないかということだけで定員に繰り入れるという措置は、いま現在の段階においてはできない、やらないというたてまえを貫いておるわけでございます。  そこで、先ほどのお話にもございましたが、欠員不補充措置というものは、必ずしもりっぱな、非常に、合理的な方法とは考えませんけれども、現在のような情勢下で行政費の膨張を押え込むというのには、権道と申しますか、やむを得ない方法として、昨年九月四日に閣議決定があったわけでありますが、現在の状況では、昭和四十年度一ぱいということに一応なっておりますけれども、方向としては、あるいはこのまま若干続行せざるを得ないのじゃないかということで、事務的には検討いたしておりますが、政府の方針がまだ未確定であります。そういうことでありまして、たいへん第一線の機関の利用等について御不自由をかけている点は多々あるのであります。ただ、こういう一般的な容観情勢でありますので、関係各省に対しましては、極力、事務の能率化、あるいは公共事業でありますれば、請負化の強力な促進というようなことで対処していただきまして、ぜひこの定員がふえないようにということに極力努力をしていただいている現状でございます。しかし、そうかと申しましても、いろいろ省によりまして実情が違いますので、定員不補充も一律に押え込むということではなしに、よくよくお因りの部署については、特認と申しまして、個々に御相談に乗っておるわけであります。そういう点で、若干の弾力を持って措置をいたしておるような次第でございます。  たいへん不十分でありますけれども、そういう考えでございます。
  150. 竹田現照

    ○竹田現照君 いまの御答弁の中で、省によっては弾力を持っておるというが、先ほどから私が言っているように、北海道の開発庁の関係での点は、その弾力条項を発動する考え方はないのですか。
  151. 井原敏之

    政府委員(井原敏之君) これは北海道だけのみならず、たとえば、いま申し上げましたように、現在の制度では、行政職は二人やめて一人補充するという処置をとっております。この行政職と申しましても、単純労務の、あるいは守衛さんであるとか、電話の交換手さんであるとか、そういう人たち、いわゆる行(ニ)職員でありますが、こういう人たちを二人やめて一人補充ということでは非常に業務が困るわけであります。そういうようなことがありまして、ケース・バイ・ケースでいろいろ行管としては相談に乗っておるわけでありまして、ただ、これとても、非常にシビアーにやっておりますので、関係各機関には十分御満足がいただいておりませんけれども、北海道開発庁についても、同じ姿勢で今日まで御相談にも乗っております。これからも乗る用意はあるわけであります。
  152. 竹田現照

    ○竹田現照君 私は先ほどお話ししました運転手だとか、そういうようなものは、御承知のように、かなり高額な機械を使っておるわけですね。ですから、これを、臨時的な者に何百万もするものを運転をさしたり、扱わせたりするということは、これは間違っていると思うのです。もう少しやはり責任ある身分、そのことを確立をして扱わせるということをしなければ、私は、国の資産ですから、そういう意味からでも、ぜひ、この問題については解決をしていただきたい、そういうふうに思うのです。とりわけ、この開発庁の人手不足というのは、ただ単に開発局の職員だけのことではなくて、北海道の開発予算に非常に関心を持っている者は、毎年このことについて指摘をしているわけです。ところが、さっぱり解決されない。それで四十一年度もまあ四百五十何名、去年からいうと半分しか要求してないわけですが、そういうことについても、十分長官これからも努力をされるわけでしょうけれども、行管としても、いまお答えのあった点も十分考慮をされてこれから対処していただきたいと、そう思うんです。  最後に一つお伺いしますが、これは来年度の予算の中の住宅、道路というのは国策の政策のようになっていますが、特に北海道で八カ年で五十万建てる、こういうことになっていますけれども、そのうち三割しか公共投資による住宅というものは考えてないですね。これはあれですか、今後も七割は一般が建てるんだと、こういう考え方で進められるんですか。先ほど長官が言われたように、北海道の人間というのはあまり金を持ってないから、資本の蓄積が十分でないから、道民みずからによって建てるということにあまり期待をされるのは無理ではないか、とりわけ、本州各県と比べて、家を建てるにも、寒地住宅の法律等によりまして建築資金も高いわけです。そういう面で、公共的資金による住宅建設の方向について、これをふやすという考え方は長官お持ちですか。
  153. 福田篤泰

    ○国務大臣(福田篤泰君) 本州に比べまして比率がたしか〇・五坪ぐらいふやして建築さしておるのでございますが、今後もやはり御指摘のように政府みずから、もう少し力を入れて住宅方面にはふやしてまいりたい。具体的には政府委員から詳しく説明させます。
  154. 小熊清

    政府委員(小熊清君) 御指摘のように、現在進めております八カ年間の計画期間で五十万戸を建設いたすと、そのうち二十万戸は公営住宅、公庫住宅といったような公的機関による建設、残りの三十万戸は民間の自力建設にまつ、こういう計画になっておるわけでございます。ただ、ただいま長官からもお話ございましたように、建設省のほうでも、住宅の建設計画につきましては、さらにいろいろお考えになっておられるやに聞いております。私どもといたしましても、この八カ年——なお、ことしが三年目でありますが、残り五年残っておるわけであります。五年の期間を残しておるわけでございまするから、さらに、住宅の公営による建設という点については、建設省のほうとも十分お打ち合わせして進めてまいりたい、かように思っております。
  155. 竹田現照

    ○竹田現照君 それでは、開発効果が開発予算に比例をしてあがるような措置をとられるように、これからの予算折衝その他でも御努力をされるように要望いたしまして、質問を終わります。
  156. 中村順造

    委員長中村順造君) ほかに御発言ございませんか。——別に御発言もなければ、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会      ———————————